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秋山政府委員 過去の二十九条を
中心といたします
中小企業安定法の
運用の
経過につきましては、ただいま
中小企業庁長官並びに
佐々木緘政課長から
概略を申し上げましたが、数字的に少しこまかい点を申し上げてみたいと思います。
現在
安定法が対象にしておりますのな、
内容から見まけと結局
緘維関係が
中心でございまして、
緘維以外でやっておりますのは
マッチであることは
先ほど説明のあった
通りでございます。
マッチの方は
安定法の二十九条の
発動としては
最初に
タオルとともに取り上げられたのでございますが、実は
価格面から申しますと、これはやや皮肉でございますが、一昨年の十一月二十九条が
発動せられますと同時に、実は従前よりもさらに
値下り傾向を示してきた。これは
需要の時期
的関係に基くものでございまして、まことに妙な話でございますが、
マッチは夏場が
需要期で、冬場は不
需要期でございます。二十九条が
発動されましたのがたまたま二十八年の十一月でございましたので、不
需要期に向いつつあったわけでございます。そんな
関係もありまして、二十九条が
発動されましても、ただちにそれが
価格面に
効果を現わすということに参りませんで、むしろ
値下り傾向を示したという
実績になっております。ただこの際特に私
ども注目いたしました点は、
製品の
価格においては若干の
値下り傾向にあったにもかかわらず、
マッチ業界自体としては安定の
効果が著しく見られた。年を越しまして、二十九年に入りましてあのデフレの激しい時期でございましたが、
マッチ業界としてはそれほど激しい苦境という
状態にむしろ陥らずに済んだのではないかと見られるのでございます。これは
あとから考えてみますと、実はこういう
設備制限あるいは
組合の塔行いたします
調整証紙を張らせることによりまして
生産数量ははっきり把握できた、同時にこれは御
承知の
通り消費税がかかっておる、そういう
関係で割合
数量の把握もしっかりできたという点もございまして、
金融機関が何よりも非常に
安心感を得た。そのためにあれだけの
金融引き締めの時期でありましたにもかかわらず、
マッチのメーカーに対しましては従来と
あまり差のない
態度で臨んできておった。これが現在もそのまま大体維持されておるようでございまして、そういう
意味では
安定法が考えました主として
生産数量あるいは
価格面における安定ということは、必ずしもその
通りの
目的を達しておりませんが、それらの間接的な
効果として
事業に必要な金がある
程度比較的円滑に融資を受けられておる。これが
マッチ業界で
安定法の
適用を受け、二十九条が
発動せられました、まず目につきまする
効果ではなかったかと考えておる次第でございます。
次に、
繊維関係につきまして二、三申し上げますが、まず
綿スフでございます。
綿スフ関係は、
日本の
繊維業界におきましても、
中小企業の
問題としては
中心をなしておる
業界でございまして、常に非常にむずかしい
問題が次々と起っておる
業界でございますが、またこういう
中小企業安定法、かつての
特定中小企業の安定に関する
臨時措置法という、当初
議員提案せられました法案でございますが、実はそれらの
動機をなしたのも、
一つはこの
綿スフ業界あたりにおける非常な
価格の不安定、
生産の
変動というようなことであったかと考えられるのでございます。こういうような
事情で、実は
綿スフにも早くから
安定法、特に二十九条の
発動問題があったわけでございますが、何しろ
業界のメンバーの数が非常に多い。本年の三月末で見ましても、事実は
調整組合として
相当発達した
状態においてでございますが、なおかつ
組合員一万五千五百名
余りに対しまして、非
組合員が千三百名、一割足らずではございますが、あるという
状態でございます。三月末の
登録織機数台で申しますと、三十三万七千台
余りの
組合員所属織機に対しまして、約一万五千台の非
組合員、
アウトサイダーの
所属織機があるというような
状況でございます。
組合内部をまとめるということに
相当手間がかかります。同時に
安定法の
運用自体の
問題といたしましても、こういう多数の
業者を相手にするわけでございますから、非常に
あとの取締りといいますか、
効果を確保する
手段において
工夫を要し、
検討を続けざるを得なかったというような
事情から、
問題が非常に延び延びになっておったわけでございますが、昨年の十一月になりまして、どうしてもこれは
発動せざるを得ないということで、二十九条による
設備制限命令が
発動せられました。当時はもとより
アウトサイダーが、先刻申し上げました現在の数よりもばるかに多かったのでございます。二十九条が出てようやく
調整事業も軌道に乗ったというふうに考えられるのでございます。
なお実は
綿スフ関係におきましては、
綿スフ調連に属する、あるいはそれに加入する資格のある
綿スフの織
布業者として、
紡績兼営の織
布工場というむずかしい
問題がございます。総
台数で申しますと、
登録織機約四十三万台に対しまして、七万六千台ほどが別に
紡績の
所有織機として存在しており、これは
相当能率のいい
機械でございまして、一台
当りの
生産量から申しますと、
一般の
組合員のレベルよりはるかに
生産数量等も高いわけでございます。そういう
意味で、実はこれら
紡績兼営織布業の存在というものが、
綿スフの
調整事業に対してもう
一つのむずかしい要素をなしているわけでございます。幸い昨年の秋に至りまして、
紡績との間の
話し合いが円満にまとまりまして、非公式ながら
公正取引委員会の方もある
程度同調する
空気を示してくれましたので、通産省といたしまして、公式に
紡績に対して、織
布業者の相談に協力してやってもらいたいという
意味の
勧告をいたしまして、当時は比較的円満にスタートいたしたわけでございますが、ただ現在として考えてみますと、当時の
空気必ずしもそのままうまくいっておるとも申しかねるのでございます。最近
綿業関係の非常な
不況が急速に迫って参りました
関係から、これは
紡績業者のみの責任ではもちろんございませんが、
紡績自体の、あるいはそれに関連する兼
営織布について、また
事業の機屋の
関係において、第二回目の非常にむずかしい時期に差しかかっておるというのが現在の
状況でございます。現在の
綿スフ関係におきましてはごく少し、すなわち
織機十台
未満の、
基礎工場と申しておりますが、
適用外のものを除きまして、
織機総
台数の一割二分に対しまして
封緘をする、中間的にはいろいろ休日制その他の
手段も講じましたが、
現状におきましては
封緘制を
中心にいたしまして、総
台数の一割二部を
封緘するという
やり方をやっております。しかしながら、実際はこれではまだ
生産数量の
調整には必ずしも的確な
効果を上げ得ない、ことに従来のような一律の
制限ではなかなか
実効を上げることがむずかしいということがだんだんわかって参りまして、最近ではむしろもう少しこまかく特殊の
品種ごとに
制限をすべきではないか、たとえばベッチン、
コールテンというようなものについて、一応現在議題に上っておりますのは、三割
制限という案が出ております。その
程度のある種の強化された
制限を
実施する必要のある
品種もありはしないか。ことに御
承知の
通り、約五十万コリに
相当する滞貨をかかえておりますので、
紡績の操短ももとよりでございますが、織
布面におきましても一層
操業短縮の
実効を上げるような
方法を考えなければならないだろうということで、なお現在
検討を続けておる次第でございます。
次に
綿スフの特殊の形態でございますが、別個の
組合を構成いたしております
タオルの
問題がございます。先ほど
緘政課長からも簡単に申し上げましたが、
タオルは実は二十九条の
関係といたしましては
最初に
発動を見たのでありまして、二十九年の四月から二十九条の
設備制限命令の
適用を受けております。同時に
組合自体といたしましては、
組合員のみの間において
生産数量の
制限をやり、二十九年四月以来ずっと
実施をいたして来ております。最近の
実施面におきましては、
設備制限は法的に二十九条によって行われておるわけでございますが、その以外のインサイダーだけの
関係で申し上げますと、
生産数量につきましては、
封緘されていない
織機一台
当り月間二百七十二ポンドという
基準数量をきめまして
生産の
制限を
実施いたしております。それから
織機の
稼動制限といたしましては、七台を控除いたしまして、七台
未満のものにつきましては
適用外ということにいたしまして、残りの四〇%を封織するというような
やり方をいたしております。もっともこれには
輸出実績を加味いたしまして、
輸出面に阻害を起しませんように、一部緩和の
措置を講じてございますが、原則としては四割を封織するという
やり方をいたしておる次第であります。実は
タオルの
関係におきましては、大体
生産の
中心地は量的には
大阪地区でございますが、
あと四国の
今治付近、同時に
三重県の北の方、この三
地区が
タオルの
中心でございますが、ことに
三重県の
北勢地域というところは、非常に
業界の団結も強固でございまして、いち早く
織機のたな上げ、すなわち
組合が中金の応援を得まして、
遊休織機を買い上げてしまうというようなことで、かなり
実効のある
設備制限を
実施いたしておるわけでございます。他の
地域もおいおいこれにならいまして、現在そういう面の準備を進めておるわけでございます。実はやや不
需要期の
不況がただいまに延びて参りまして、最近ことに
内需関係から
生産自体についての二十九条の
発動要望というものがかなり強く提起せられております。先ほど申し上げました一台
当り二百七十二ポンドという
月間の
生産割当というものは、
現状から見ますと、なおやや甘いのですが、その
程度では
生産数量を適量にとどめるためにはいささか不足でございまして、もう少しこれを圧縮すべきではないか。ところがこれをあまり強く圧縮しようといたしますと、とかく
組合からの
脱落者が出そうだということで、二十九条の
要望が
相当強くなってきておるわけでございます。
輸出面の
問題あるいは直接
消費者に与える
問題、
一般のすぐ
需要いたします
製品でございますから、そういう面も
相当考慮に入れなければならぬであろうと考えておるのでありますが、
業界の
実情から見ますと、まずこの
業界ならば、従来の
経過なりあるいは
組合の熱意なりから見まして、
生産数量についてもある
程度考慮していい時期に到達しておるかというふうにわれわれも見ておる次第でございます。なお
最終的決断を下すに至っておらないという
状況でございます。
次に絹、
人絹関係でございますが、絹、
人絹におきましては、綿、
スフと同時に、すなわち二十九年十一月に二十九条の
設備制限命令が
発動せられました。本年の四月末におきまして、
織機の
登録台数が十三万台余、そのうち
組合員に所属いたしますものが十二万五千台、非
組合員に属しますものが四千七百台という数字になっておりまして、まず
設備関係の
調整といたしましては、おおむね
目的を達しまして、
アウトサイダーの数も非常に少くなっておりますし、またこれには綿と違いまして、
紡績業者というようなむずかしい
問題もございませんで、一応
設備の
関係におきましては安定をしていると見てよろしいかと存じます。しかしながらこれまたそのままの
状態こ置きましては、
生産過剰は明らかでございますので、内部的にはや
ほり設備の
封印といいますか、
休機を
実施いたしております。大体
登録織機の二割を目標といたしまして
封印をいたします。同時に最近やはり全体的に
生産数量の圧縮を行いますために、絹、
人絹とも過去一カ年、すなわち二十八年十月から二十九年九月に至ります過去一カ年の各
企業の
実績に
生産数量を押える。この時期が大体あまり
過剰設備もそう激しくなく、およそ安定しておった時期ということで、その
程度まで
生産を圧縮するということを、
調整組合内部の申し合せによりまして
実施をいたしております。絹、
人絹関係、ことに
人絹でございますが、一時非常な
不況に見舞われましたが、最近は
輸出関係等から若干持ち直した
傾向を見せて参りまして、ただいま綿と比較いたしますと、どうやら
化繊関係、絹、
人絹関係の方は一応手を放しておけるという
状況にあろうかと見ておる次第でございます。
次に毛の
関係でございますが、実は綿あるいは絹、
人絹あたりが、
安定法の
問題が
操業短縮というようなことで非常な窮境に陥っておりました当初の時期におきましては、毛の
関係におきましては、必ずしもそうまで激しくなかったように見受けられます。かつては御
承知の
通りフラノ旋風でありますとかいうような、あるいは
集中的過剰生産と申しますか、そういうような激しい
不況状況に見舞われておったわけでございますが、ここ一両年のところ、それほど激しい
変動もございません。いずれかといえば、およそ安定した
状態にあったかと考えられたのでございます、ただこれは私
どもの推測でございますが、おそらく
綿関係が
スフを含めた
調整行為に出たということが、
一つの
動機と毛なったかと考えられるのでございますが、毛の
関係におきましても、少くとも
設備だけは今後あまり急激に増加することは、またほかの
業種の二の舞を演ずるおそれがあるというようなことで、だんだん
業界内部も固まって参りまして、
調整組合も結成せられましたし、やはり
日本の実態から見て、
設備制限自体は
実施した方がよろしい。公平に今後
過剰織機を押えて、内部的に
近代化なり
合理化なりの
処置をとる方が将来の
業界のためにもよかろうということで、本年の五月に二十九条による
設備制限命令を
発動いたしました。現在
織機の
登録を進めておるところでございます。過去におきまして
生産制限の
意見も
相当ございまして、個個の
組合におきましては内部的に
実施されたところもあったのでございますが、
調整組合連合会といたしましては、現在二十八年十月から二十九年九月、すなわち先ほど絹、
人絹のところで申し上げましたのとちょうど同じ
期間になりまするが、
実績のとれまする過去一年の
期間をとりまして、それの
平均運転率、これは各
業者のデータでございますが、その当時申し合せである
程度の
制限をいたしておりましたので、その当時の
平均運転率を越えて運転しないという申し合せをいたしました。現在比較的順調にこの方は進行をしておるというふうに見受けております。
最後に
輸出向けの絹、
人絹織物の
染色加工関係でございます。御
承知のように
染色加工業と厚しますのほ大部分が
委託加工の形式をとっておりまして、しかも主として商社の
委託を受けるわけでございますので、
輸出の好
不況によりまして非常に
安定性を欠いておる
状態でございます。ことにこの
業界は、小さいものはもちろん
染色設備が一台しかないというようなものが多数ございますので、
設備制限をすることの不可能な業態でございます。従いましてこの
業界におきましては、他の
業界と異なりまして、
設備制限を
実施いたしませんで、引き渡しの
制限という形で二十九条を
発動いたしております。今年の四月にこれを
実施いたしました。毎期
ごとに
輸出業者、
関連業者等も協議いたしまして、毎期の売り渡し総
数量をきめまして、それを各
業者の
実績に応じて割り当てるというような
やり方をいたしております。ただこの
組合で
一つおもしろい
やり方をいたしておりますのは、
実情にできるだけ合せるという
意味でございますが、もしみずから与えられた
加工ワクを使う必要がない場合には、これを
組合に申し出まして、
ワクを供出する。それを他の
受注量の多い
希望者に再
割当をするというような
やり方をいたしまして、そのかわり
ワクをもらいっぽなしで、しかも自分でも受注してそれをこなすということまでしないで、そのままほっておきますと、次にはその
実績を減らされるというような罰則がついておりますから、総
数量をあまりふやさないで、しかも各
業者間の
受注量をできるだけ
実情に合わせ、しかもある
特定業者に片寄っていかないようにというような、いろいろの
工夫を加えまして
実施しておるわけであります。四月から二十九条が出ましたばかりでございまして、
実績のほどは確実にはつかめておりませんが、過去にそういう
やり方もある
期間やってきておりますから、
アウトサイダーがこれによって同調いたしますならば、当分これでいけるのではないか。ただ私
どもの目から見ますると、やはり現在の
制限量が若干甘過ぎるのではないか、もう少し締めた方がお互いのためにいいのではないかという気もいたさないでもないのでございますが、
輸出業者等との
関係から見ますと、必ずしも急速に
大幅削減をするということも困難な
事情もございまして、海外の
状況等をもにらみ合せつつ、できるだけ引き締めていくという
態度で指導していけばいいのではないかと思う次第でございます。
現在二十九条の
関係を持っておりまするおもなる
業界につきまして
概略の御
説明を申し上げた次第であります。