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1955-06-07 第22回国会 衆議院 商工委員会中小企業に関する小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月七日(火曜日)     午後二時一分開議  出席委員    小委員長 永井勝次郎君       阿左美廣治君    菅野和太郎君       野田 武夫君    内田 常雄君       鹿野 彦吉君    前田 正男君       田中 武夫君    八木  昇君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      村上孝太郎君         通商産業事務官         (繊維局長)  永山 時雄君  小委員外出席者         議     員 笹本 一雄君         大蔵事務官         (主計官)   廣瀬 駿二君         通商産業事務官         (繊維局綿業課         長)      金井多喜男君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    秋山 武夫君         通商産業事務官         (中小企業庁指         導部指導第二課         長)      岡嶋 楢文君         専  門  員 越田 清七君         専  門  員 圓地與四松君     ————————————— 五月二十四日  小委員田中角榮君同日小委員辞任につき、その  補欠として前田正男君が委員長指名で小委員  に選任された。 六月二日  森山欽司君五月三十一日委員辞任につき、委員  長の指名で小委員に補欠選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  綿紡績操業短縮に関する件     —————————————
  2. 永井勝次郎

    永井委員長 これより会議を開きます。  綿紡績操業短縮に関する件について調査を進めます。政府説明を求めます。永山局長
  3. 永山時雄

    永山政府委員 最近問題になっておりますように綿業市況がすこぶる悪いのでありますが、この点につきまして従来の経緯とそれから現状、あるいは今後の問題についてどういうように考えておるかというような点を概要説明申し上げます。  綿業不況という問題は、実はこのところ約二年近く、一年半有余続けておる状況でございまして、特に綿の中でも織物価格が正常な価格に比較いたしまして非常に安い状態になっております。これはこういう品物は安いことが消費者のためにむろん望ましいのでございますが、ただそれにいたしましても、おのずから適正な価格というものがあるのでありまして、コストと比べてみましても、大体この一年半ばかりの間はほとんどコスト割れ状態を継続的に示してきておるというのがその実情であるのでございます。結局価格がそれだけ悪いということは品物の品質を落しているというような形で実際には経済が動いておるのでございます。それで、これは綿業自体が御承知のように国内におきましても相当に重要な産業でありますし、また業態が大体中小企業でございまして、しかも全国的に散在をしておるというようなことで、これを国の立場から見ても、いつまでもこうしたアブノーマルな状態を放置しておくということが適切でないということに相なりまするので、昨年の十二月に中小企業安定法の二十九条というのを発動いたしまして、まず設備制限実施をいたしたのでございます。この綿業界が悪いという状態は、これはそのときどきの経済状態によりまして一時的な原因というものが同時に伴っておるのでありますが、本質的、根本的には設備が非常に多い、そこへ持ってきて先ほど申し上げた中小企業形態であるというようなことがしんにゅうがかかって、少し業界の様子が悪くなると輪をかけて悪い状態が出てくるというようなことで、従ってこの根本の設備の過剰という問題について解決策を講じ、そうしてだんだんと設備内容合理化していくということに手を入れない限りは、いつまでもこうした状態は免れないということになりますので、昨年の十二月、ただいま申し上げたような方法実施をいたしたのでございます。この二十九条の発動といいますのは、現在以上に織機を増設をさせないということで、設備の増加を一応抑制をするということがその内容でございます。そらして一応そのラインで線を引きまして、現在ある織機についてはできるだけ合理化資金政府におきましてもあっせんをいたしまして、設備内容をたとえば古いものは新しい性能のいいものにだんだんと切りかえていくということで、台数をふやさないで一応安定線を引いた上で、その安定線の上に立って合理化実施をさせてみるということが二十九条発動趣旨でございます。これは今申し上げたようなことで、設備を要するに新しくふえるのを抑制するということでありますので、当面の市況に対しましては間接的な効果しかないということで、直面しております綿業界不況状況というものを改善するには直ちには効果を示さない。これはもとより当初からその覚悟でやったのであります。実施をいたしましても別段の特別な反響はなかったということであるのであります。そこで当面の市況市況として、これに対する対策は別途に講じなければならぬということで、本年の二月から、機屋業者が全国的な調整組合というものを作っておりまして、この調整組合が自治的に生産制限を行う、従来の操業率に対しまして約一割二分の操業短縮を行うということを決定をいたしまして、政府におきましてもこれを認可をして、二月一日から実行に入ったのであります。ただ、これのアウトサイダーといたしましては、糸から織物を一貫して作っておりまする綿紡績業者というものが、能力的にいきましても、実力的にいきましても、非常に有力なアウトサイダーでありますので、従ってこの中小企業機屋生産制限を行うという場合におきましても、アウトサイダーである紡績業者が協力しない限りは十分な効果は得られないということでありますから、一応アウトサイダーである紡績業者に対しましても、中小業者操短実施と同時に、役所の方からできる限り協力をするようにという意味勧告をいたしたのでございます。ただしこれは、今日講じておりまする紡績操短勧告というほどに強い勧告ではないのでありまして、好意的に、できるだけ自発的に協調するようにという程度の通達であったのでありますが、紡績業界といたしましては、糸と織物とを一貫をして作っております関係から、織物の部分だけを繰短をいたしまして、糸について操業短縮をしないということは、工場操業あるいは対労働組合、いろいろな関係からいきまして困難がありましたので、従って必ずしも十分な同調は得られなかったというような事情で四月ごろまで推移をして参ったのであります。二月のただいま申し上げた機屋中心とした生産制限実施によりまして、幾分市況回復はいたしましたけれども、とにかく客観的な情勢が悪い、綿業市況が悪いということは、ひとり日本ばかりの現象でなく、世界的に沈滞状況でありまして、輸出も今年に入りましてからだんだんと低下してきておるというようなことで、生産制限によって一時は若干値段回復をいたしたのでありますけれども、それも大勢に抗し得ず、大体もとの状態に戻ってしまったというような状況をたどって参ったのでございますが、四月に入りましてから綿業界としては非常に期待をしておりました。パキスタンに対する綿糸布輸出関係が、当初予定をしていたよりも実行先がに延びた。当初の予定では六月の半ばころまでに相当額、約一千万ドル近い額が輸出をされるということに予定をしておったのでございますが、先方のいろいろな都合でだんだん延び延びに延びて参りまして、ことしの末あたりまでに実行すればいいというような状態になって参りましたので、それを契機にいたしまして、綿糸値段が四月からかなり顕著な下落を示したのであります。それまでは織物関係は先ほど申し上げたように非常に慢性的な不況状況であったのでありますが、綿糸値段は必ずしもそれほど悪くなかった。いい値段でもなかったようでありますが、といってコストを割るようなひどい価格という状態では必ずしもなかったのであります。従って先ほど申し上げたような、糸について生産制限実行をすることを回避いたしまして、織物についてのみ生産制限を行なってきた。そういうような方法を講じて参ったのでありますが、四月に入りましてただいま申し上げたような事情で糸も顕著に下落をいたしまして、糸の相場としては、コストをほとんど割るような状態にまで落ちてきたのであります。一方織物価格適正化するという方の問題は、先ほど申し上げたような、いろいろな手段を一応講じて参りましたがなかなか効果が上らない。残された手段は糸の生産を少くして、それによって需給関係回復するということしか手がなくなってきておる。そこでもって糸の価格自体も、まずもって操短をさしても差しつかえないような、かなりひどい価格になってきたというような事情二つ重なりましたので、四月の下旬に糸についても操短をするということを決定をいたしまして、五月から綿糸操短勧告生産制限実施することにいたしたのでございます。なお五月からの綿糸操短勧告操短実施につきましては、今申し上げた綿糸布、特に綿布を中心とした価格適正化といいますか、改善という問題が一つ理由でございますが、そのほかにも、従来からこの綿業操業状態が国の立場から見ますと原料である原綿を食い過ぎておる。御承知のように国の輸入の問題といたしましては、外貨予算というものがありまして、毎年の原綿輸入量予定しておるのでございますが、それの月々標準といいますか、そういうものに比べてみますと、綿業界が実際に消費しておりまする原綿相当その標準量を上回っておる。いわゆる原綿過剰消費という問題が従来から行われてきておったのでありまして、これは一口に言えば外貨資金をよけい食っておるということになりますので、従って国の立場からいきましても、いつまでもこの状態を放置することは適当でないということに相なるのであります。この点につきましては、従来から公式、非公式に何回か綿業界に対しましては注意を喚起して参ったのでありますが、なかなか業界としては、いわゆる自転車操業といいますか、工場の経営のいろいろな都合もあって、原綿適正消費というところまでいき得なかったのでありますが、こういう点もありまして、先ほど申し上げた五月から操短をこの立場からも実行させるということにいたしたのであります。    〔小委員長退席内田委員長代理着席〕  さらにまたその他の重要な理由といたしましては、日本綿糸布輸出価格が、従来から国際価格に比べてかなり下回っておる。いわゆる英国あるいはスイス、フランス等の国からいたしますと、日本はダンピングしておるということで、機会あるごとに痛烈な批判を受けて参っておる。ことに競争相手である英国からは、相当いろいろな面から日本綿糸布の安売りに対しては非難攻撃が加えられて参っておったのであります。この点につきましては、従来からいろいろな措置は講じて若干は改善して参っておるのですが、それにしてもまだ改善程度が足らないということは確かに言えるのでありまして、従って操短生産制限ということによりまして、ある程度価格改善にも役立たせようということで、結局先ほど申し上げました点を要約いたしますと、綿糸布価格改善原綿過剰消費抑制、それから輸出価格適正化といいますか、改善といいますか、そういう三つの事情を主たる理由といたしまして、五月から綿紡操短に入ったのであります。この操短程度は、従来の操業に対しまして、大体平均して一割二分程度生産縮小させる。ちょうど織物の方が先ほど申しましたように一割二分の生産縮小実行いたしておりますので、それと合せる意味におきましても、糸について一割二分の操業短縮勧告いたしたのであります。これをとりあえず五月、六月と実施をすることにして現在まで推移してきておるのでございます。ところが最近におきまして、糸と織物崩落崩落を重ねて参りまして、現在新聞紙上をにぎわしておるような状態に立ち至っておるのでございますが、これにつきましては、理由を要約いたしますと、まず私ども二つ原因があるんじゃないか、二つ理由に帰し得るんじゃないかというように考えておるのでございます。  第一の問題は、原綿価格が不安定である。むしろ先安を予想されて非常に不安定な状態にあるということが、その一つであります。これは海外のニューヨークだとか、あるいはリヴァプールだとかいうところに綿の取引所があるのでありますが、その相場を見ましても先物が安くなってきておる、要するに先安だということ、それから特にアメリカは、御承知のように農産物が一般に非常に過剰状態で困っておるのでありますが、原綿につきましても約一千万俵近くのものをアメリカ政府手持ちをしておるというようなことで、原綿過剰状態で非常に困っておる。それに関連して八月あたりから原綿輸出に対して補助金を出すんじゃないかというようなことが、巷間の一部に予想をされておるのであります。この点につきましては、アメリカ政府の側といたしましては、はっきり補助金は出さないんだということは、別段公式な言明はいたしておらないのでありまして、少くとも七月までは出さぬということははっきりいたしておるのでありますが、八月からは出さないということも言明しておりませんし、出すということも言明していない、いわば非常にあいまいもこたる状態である。そこでよけい業界としては疑心暗鬼という感じを持ちまして、もし補助金を出されるとするならば、原綿価格が安くなる。それから糸の相場も安くなるだろうというようなことが、今回の糸価の低落の有力な原因になっておる、かように考えるのであります。この点につきましては、こちらの大使館を通じて、出す出さぬはとにかく、早くはっきりしてもらいたい。ひとり日本が因っているばかりでなく、フランスにいたしましても、イギリスにいたしましても、原綿を買う立場にあるものは、いずれも大同小異この問題に困惑をいたしておりますので、できるだけ早くはっきりしてもらいたいということの申し入れはしておりますが、今のところまだこの点についてははっきりしていない。大体非公式には関係の係官は、おそらく出ることはあるまいというような見方をしておりますが、少くとも万が一を心配する業界業者の心理を納得するだけの十分な責任ある言明は出ていないというようなことで、これが一つの不安定あるいは相場を引き下げる有力な原因になっておる、かように見ておるのであります。  それから第二の原因といたしましては、これはいわば日本だけの事情とも言い得るのでありまして、需給関係が均整がとれていない、均衡状態を失っておるというのがその第二の理由であると思うのであります。これは従来の生産が、大体月々約十九万何がし、二十万コリ程度月々平均生産量であったのでありますが、最近におきましては輸出が御承知のように一般的にふるわない。昨年の後半期におきましては月に一億四、五千万ヤード出ておった輸出が、ことしに入りましては大体八千万ヤードくらいに落ちてきておるというような状況で、輸出が非常に不振である。それから内需につきましても今日のような経済状況でありますので、むろんこの方もふるわないというような事情が重なって、月々の実需要というものがかなり低下を来たしておるのであります。これは人の見方によっていろいろ違いますが、まず大体十六万から十七万、十六万前後ではないかと、これは弱気の人と強気の人とではいろいろ見方がありますが、大体十六万から十六万五千くらいのところではなかろうかというように想像をいたすのであります。一方生産は、従来のベースそのまま行くと約二十万コリくらいになるということで、月々三万ないし四万コリくらいのものが在庫に入ってきておる。要するに生産がオーバーしておるという状況であります。一方在庫状態も約五十万コリほど現在手持ちのものをかかえておるのでありまして、普通ノーマル在庫が三十万から三十二、三万だということがいわれておりますが、従って十七、八万コリのものがよけいになっておるということで、要するに需要供給関係がバランスが失われておるというのが現在の実情でございます。そこでこの面につきましてはだれが考えても需要関係をできるだけ均衡化させるということになるのでありまして、先ほど申し上げた生産制限操短というものもその趣旨において出したのでありますが、今日行なっておりまする操短が確実に実行されますと、約十六万五千から十七万の間くらいに大体なるだろうと考えております。   〔内田委員長代理退席、小委員長着席〕 五月あるいは六月、少くとも五月は操短に入ったばかりで、各工場ともすぐに操短の態勢に切りかえることが困難であった。特に現在の操短平均いたしますと一割二分というようなところをめどにして決定をいたしたのでありますが、いよいよ実行段階実施計画というものを立てたあとにおいて見ますると、工場によりましては三割二分くらいの設備を封緘するということになるのであります。一万錘ある工場が三千二百錘をたな上げをするというような状態になるわけでありますので、かなり操業短縮としては規模がきついということが言い得ると思います。そこで五月からすぐそれにはついていけない、ステップ・バイ・ステップでいくというような意味で、五月は多少今申し上げたような生産数量よりも若干上回るのではなかろうか、六月はそれよりもさらに落ちて、七月、八月あたりからだんだんと予定をしております生産縮小規模数字が出てくるのではなかろうかということに想像いたしておりますが、今申し上げたような操短が確実に行われるということになりますと、大体需給関係はとんとんになる。在庫を約五十万というものが、市況に対しての非常な逼迫材料にはなりますが、この問題を抜きにして考えますと、まず需要生産との関係は大体均衡状態になっておる。かように考えるのであります。  在庫の方の関係は、先ほど申し上げたようなパキスタン輸出が、約二万五千コリから三万コリくらいのものが出ていくことになりますが、これは普通の輸出と違った、パキスタン日本との通商協定というものにプラスした輸出でありまして、アメリカにかわって日本が加工をして輸出をするという形態のものでありますので、いわば日本輸出にとっては一つのこぶといいますか、プラスに考えていいようなものであるのであります。従ってこういうものは、あるいは今後の輸出努力によりましてだんだんと在庫を縮小していく——多少これは時間かかかると思います。この十七、八万コリの過剰の在庫を今日の経済状態におきまして消化をしていくということは、特別に焼くか捨てるかしない限りは、多少の時間はかかると思いますが、確実に操短を守って参り、そして需要の開拓を続けていくということを、少しく隠忍してその努力を、続けて参りまするならば、だんだんと需給関係均衡もとれてくるのではなかろうか、かように思っております。  なお当面の市況対策としては、今まで申し上げたことのほかに、原綿の、何といいますか輸入をある程度しぼるさしあたりの問題としては、原綿の割当を一時的に停止をするという措置をとっております。これらの手段によってだんだんと均衡回復をさしていきたい。ただ問題は、先ほど申し上げた第一の方の、米綿の方の価格の問題が、見通しがはっきりしない限りにおきましては、どうも不安定状態というものが、少くとも八月一日に至ってその措置がはっきりするまでは、この不安定状態はある程度免れない、さような推測を持っております。  以上、大体の概要につきまして申し上げました。
  4. 永井勝次郎

    永井委員長 質疑を許します。阿左美広治君。
  5. 阿左美廣治

    阿左美小委員 綿業対策は、非常に簡単なようで非常に簡単でない、その施策はきわめてむずかしいのじゃないか、こういうふうに考えるのであります。ただいま局長さんの御説明をお伺いいたしましても、国内の方ばかりの対策解決はしない、米国においても一千万コリ滞貨がある、これに対してやはりアメリカも非常に対策に困っておる、これに対する補助政策をというような御説明をただいま承わったのでございますが、そういうことになりますと、これはきわめてむずかしい。下手な対策を立てると、かえってより以上の損失を受けなければならぬようなことになると思うのであります。先般新聞紙上で、政府は五十万コリ滞貨に対しまして十万コリ買い上げるというようなことがうたわれておりましたが、これらはただいまの御説明をお伺いいたしますと、よほど考慮を要することではないか、こういうように考えますが、ただいま政府は、この滞貨に対しますところの政府施策といたしまして、買い上げるというような政策をおとりになるお考えでありますか、一応承わりたいと思います。
  6. 永山時雄

    永山政府委員 ただいまの御質問でございますが、買い上げ機関の問題は、先般一、二の新聞に載ったようでございますが、私どもといたしましては、今別段それを実行していこうというような決定はいたしておらないのであります。これは阿左美先生よく御承知のような政府買い上げ機関ではないのでありまして、紡績業者が出資をいたしまして、輸出振興組合というものを作っておるのでありますが、これが俗にいわゆる買い上げ機関といわれておるのでございます。従って事の順序といたしましても、まずこれを作っておる関係紡績業者が、振興組合を使って買い上げをしたいのだが、それについて政府の応援を頼む——結局資金の問題になると思いますが、そういうようなことになって初めて、政府としてはそれを取り上げて考慮するかしないかということに、順序としてはなるのでありまして、その先の、第一段階紡績業界自体におきましても、買い上げ機関発動することが適切かどうかということについては相当議論がありまして、今もって足並みがそろっていない状態であります。従って政府としては、むろんこの問題について、今政府が率先して買い上げ機関発動していくというような考え方は持っておりません。
  7. 阿左美廣治

    阿左美小委員 どうかこの実行に当りましては、よほど御考慮を願いたいと思うのであります。  なおお伺いいたしますが、過去三カ年にわたる米綿輸入量、それに対して国内綿糸消費輸出の量がどういう数量になっておるか、その数量を一応お伺いをいたしたいと思います。
  8. 永山時雄

    永山政府委員 過去三カ年の数字については、正確なものは後ほど調べて差し上げたいと思いますが、大体輸入規模は、原綿からいきますと約二百万俵というのが年々の輸入量でございます。昨年は二百万俵を少し上回ったかと思いますが、ことしの計画では大体百九十五万というところで、平均しで大体二百万俵というところが輸入の量でございます。それから需要関係は、大体輸出が三分の一、内需が三分の二ということで、従って輸出量は戦前に比べましてもはるかに及ばなくて、綿業自体としても外貨収支としては相当な赤字を出しておるのでございます。輸出量は年によって非常に移動があるのでございますが、二十七年が七億六千二百万ヤール、二十八年が九億一千四百万ヤール、それから昨年は十二億八千万ヤールということで、御承知のように輸出が非常に伸びたのでございます。それがことしに入りましては急速に低下をいたしまして、先ほど申し上げたような平均八千万ヤール前後に落ちてきておるというのが大体の状況でございます。正確なところは後ほど資料として提出いたします。
  9. 阿左美廣治

    阿左美小委員 ただいま局長さんの御説明をお伺いいたしますと、現在の操短を継続するならば正常に戻る、こういうような御説明をお伺いいたしたのでございます。この二十九条の発動によるところの操短でございますが、そもそもこの安定法を作りますときに、生産調節をいたす場合においては予算の裏づけをほしいということは、その当時われわれも主張したのでございます。それはやはり大蔵省のいれるところとなりませんで、この安定法に裏づけがない、これは今後大いに支障を来たすのではないか、やはり業者操短をいたしますと非常な犠牲を払う、結局設備に対するフル運転をして初めて引き合うのでありまして、それの何割を減産するということになりますと、その分だけは赤字になるのであります。そういうような点に対しまして何らかの裏づけが予算的にありませんと業者は結局赤字になりまして、この操短も結局効果を上げ得られないということになると思いますが、幸いに今回安定法の改正というようなことも見られております。こういう面に対しまして政府は何らかの予算の裏づけをお考えになっておるか、一応お伺いをいたしたいと思います。
  10. 永山時雄

    永山政府委員 ごもっともな御質問ですか、ただ生産調整に伴う予算、損失補償というような意味といたしますると、なかなか今の国の財政からいたしまして、客観的にいって相当無理ではないかというように考えるのでございます。問題はやはり、根本は先ほどから申し上げましたように、綿業界におきましても、ほかの繊維業界におきましても、大同小異、同じような状況が多く見受けられるのでありますが、設備状態が過剰である、それから一方におきまして新しい繊維については設備関係の増設が行われる、片一方では遊休設備が出てきておるというようなことで、まことにもって相互に矛盾したような状況も出て参っております。そこで当面の施策といたしましては、生産調整というような方法もある程度実行するということはやむを得ないことと思うのでありますが、根本的には綿業関係を含めた繊維関係につきまして安定施策——これは場合によっては法律を出す必要もあると思うのでありますが、そうしたやや恒久的な、長期的な安定施策というものを確立いたしまして、安定した操業というものが行われるような措置を、今日を契機としてだんだんと講じていくということが必要ではなかろうか、かように考えます。
  11. 阿左美廣治

    阿左美小委員 私はこの繊維製品というものは確かに過剰生産である、どうしても調整をする以外には道はない、でありまするから今後操短ということはあらゆる面に大いに実施しなければならぬ、そうして生産消費をアンバランスにならぬようにすることがやはり中小企業の生きる道にもなるのではないか、こういうふうに考えるのでありますけれども、現在の状態ではその調整ということが複雑でなかなかできがたい、今の調整組合でこれを調整するというようなことは非常に屋上屋を重ねるような状態でありまして、これは協同組合法においてこれらの生産調整か直接できるような方法をとる必要がある、こういうように考えますが、いろいろ公取との関係もありますので、やむを得ずわけのわからぬような調整組合というようなものを作って、表面をかこったということになると思うのであります。これは何らか大いに改善をいたしまして、調整組合というようなものでなくして、協同組合ですべての生産の調節というようなものが直接できるような方法に改める方がよろしいと私は思いますが、こういう面に対しまするお考えを一応お承わりしたいと思います。
  12. 永山時雄

    永山政府委員 まことにごもっともな御意見でございまして、お話のような趣旨でただいま安定法の改正も考慮されておるように承わっております。
  13. 阿左美廣治

    阿左美小委員 現在の中小企業というものの立場から申しますと、ことに中小企業の中でも、繊維業者というものが現在のデフレ経済に対しましては一番直接の影響をこうむっておると思うのであります。しかしこれはどういたしましても生産の制限、経済を常道に導くという以外にはないと考えるのでありまして、現在の業者の金繰りというものを見ておりますと、利益とか工場経営とかいう立場を離れて、自分の振り出した手形を解決するために事業を営んでおるというような状態を現在継続しておるようなわけでありますから、これはよほど、一部的にお考えいただきましては解決をいたさないと思うのでありまして、あらゆる総合の面から現在の綿業関係あたりに対しましても施策を講ずる必要があると思います。今まではやはりこれは資本的な力をもって処置ができたのでありますけれども、相手のいろいろの業者が非常に弱くなりましたために、やはり業者も影響を受けておるというのが、実情だと思うのであります。こういうような面に対しましては、中小企業に対する非常なあらゆる面からの金融の援助を求めるというようなことを考えなければならぬと思うのでありますが、ただいまの状態からいうと市中銀行の金融に対しましても、二本立になっておりまして、弱い業者は歩積みあるいは預金をしなかったならば、手形の割引もでき得ないというような状態になっておる、こういうような面に対しまして大いに改善をする必要があるのではないか、そういうような意見が徐々に現在起きておりまして、歩積みをある程度返してもらい、また二本立では困る、やはり何とかこれに改善の道をというような意見がだいぶ全国的に起きておりますが、なかなか市中銀行も裏づけのないところのものに対しては、手形を割引きすることもでき得ないというようなことで、非常に業者は悩んでおります。こういうような面に対しましても、金融の道を何らか解決をつけるということになりますれば、おのずから綿業業者の問題は解決するであろう、この原因は単に一部分に偏しておるのではございませんで、総合的に原因ができておるのでございますから、ただ一部を解決いたしましても、全面的の解決はいたさないのであります。この際中小企業に対する金融に対しては大いは施策を講ずる必要があると考えますが、一つ御所見を伺いたい。
  14. 永山時雄

    永山政府委員 お話は私どもも同感でございまして、繊維関係施策は局部的な施策でなく、やはり総合施策を必要とするということを痛感をいたしておりますので、近く綿業あるいは絹、人絹その他の関係も入れた総合対策審議会というようなものでも設置をして、これの総合施策あるいはまた今お話のございましたような中小企業に対する施策というような問題もここで取り上げて、十分今後の対策を練っていきたいというように考えておるのであります。
  15. 内田常雄

    内田委員 議事進行に関して…。御承知のように、当商工委員会に中小企業金融公庫法の一部改正法案と商工組合中央金庫法の一部改正法案が上程せられておりまして、これは先般の本委員会におきまして質問が打ち切りになっております。修正案を出すかあるいは政府提案をそのまま通すということの決定を待つ段階に参っておりますが、しかし御承知のように、今般予算に関連をいたしまして自由党、民主党の両党で共同修正をするという議が起っております。この共同修正案によりますと、一般会計の歳出をある程度増加する、そのために従来一般会計でまかなっておった中小企業金融公庫その他の政府関係金融機関への出資を一般会計から追い出して、資金運用部の資金でまかなうということに相なると思いますし、また従来の予算の立て方で資金運用部でまかなっておった商工組合中央金庫の債券の引き受けを取りやめまして、商工中金の債券は一切一般の市中金融機関の引き受けにするというようなことに相なると思います。これはかなり重大な影響をこれらの両機関に及ぼすことであります。もっとも、その一方におきましては、中小企業金融公庫等に対しましては一般会計からの出資は減りますけれども資金運用部からの資金供給は従来に比べましてその金額を増額するというようなことで、資金量全体としてはふやす面もありまして、いい影響と悪い影響と両面を持ちますが、ただここでわれわれが一番問題にいたしますことは、中小企業金融公庫にいたしましても、商工組合中央金庫にいたしましても、今日の金利は必ずしもよくない。ことに商工組合中央金庫等におきましては、先般来各委員から質問があり、また私も質問いたしましたように、一年以上をこえる貸付については年一割三分もとっているというようなことで、これはどうしても引き下げなければならないので断りますが、今回の予算修正がもしできますならば、従来一般会計からただの資金の払い込みを受けておった中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫などは、今度は年何分かの利息がつく資金運用部の金を借りなければならない。これらの金は増額される面は、これは資金供給を豊かにしますから確かにいいのでありますけれども、これらの金融機関の経理を圧迫をいたしまして、利下げが困難になりはしないかという懸念があるのであります。そこでわれわれ委員の一部におきましては、今回中小企業金融公庫法の一部改正法案及び商工組合中央金庫法の一部改正法案につきまして、金利の引き下げを可能にするような何らかの修正案を出さなければなるまいというような議が実は起っておるのであります。これを私が考えますところによりますと、中小企業金融公庫におきましては、今までの政府の利息のつかない出資が減らされて、そのかわりに利息のつく金を供給せられることになるのでありますから、その分を何らかの方法措置するとすれば、今の現行法にこの公庫の剰余金の納付金の規定がある、公庫が一年間の収支を決算をいたしまして金が余った場合には、これを政府に納付するという規定があるのでありますが、それに関する規定を何か修正をすることによってこの公庫の経理を楽にすることができるのではなかろうか。さらにまた、この公庫におきましては貸し倒れ準備金の規定がありまして、年々貸付額に対する一定の割台の金額を貸し倒れ準備金として、損金として積み立てておるはずでありますが、その積み立ての問題に関しまして何らか修正をすることによって経理の圧迫を緩和できるのではなかろうかというような考えを持つものでありますし、また商工中金におきましては、先般もしばしば問題になっておりますが、従来この政府の出資額に対しては剰余金の分配をすることを要しないという規定が、商工中金法の四十九条にあるのでありますけれども、この規定が昭和二十七年をもってそのまま動かなくなっておる。今回商工中金には御承知のように、十億円の政府出資がある。この十億円の政府出資は、今度の予算修正がありましても、これは資金運用部等の金は置きかえることなく、一般会計から出資が残るようでありますが、この場合、この出資金に対して剰余金の分配を要しないというように、すでに昭和二十七年限り死んでおる四十九条の条文を改正して、十億円に対して政府は配当をとらないというふうにやるべきであるとも考えておる。ことにまた商工中金におきましては、先ほども申しましたように……。
  16. 永井勝次郎

    永井委員長 議事進行に関する動議でしょう。これは議題に供してからやったらどうです。
  17. 内田常雄

    内田委員 これらの問題について、すでに本委員会においては質問を打ち切っておりますし、予算と関連する問題でありますから、時間もとりませんから、この際私から各委員の意向を代表して、問題のありかたについて、ちょうど中小企業庁の部長及び大蔵省主計局の課長がせっかく見えておりますので、これは政府の財政収入にも影響する問題でありまして、皆さんの御同意を得て、この問題を途中に提出して、議題に供していただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  18. 永井勝次郎

    永井委員長 ただいまの内田君の御発言に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 永井勝次郎

    永井委員長 それでは中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案及び商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案に関連して内田君より発言を求められておりますのでこの際これを許します。内田君。
  20. 内田常雄

    内田委員 先ほどの発言を続けますが、商工組合中央金庫におきましては、商工債券の発行を運用部で引き受ける分が、全部一般市中の金融機関の引き受けにならざるを得ない。われわれは当初、この商工債券を運用部が引き受ける場合には、年八分五厘の利息をつけなければならないので、商工債券の引き受けによる方法のほか、同じく資金運用部の金を供給するならば、必ずしも債券の方法によらないで、国民金融公庫や中小企業金融公庫に対して認められておりますように、資金運用部から低利の貸付の道を開くように、資金運用部資金法の改正をはかってもらいたい。われわれの手によって、場合によっては今回の商工組合中央金庫法の一部改正法案の付則に修正条文をつけて、資金運用部資金の低利直接貸しの道を開くようなことを考えておったのでありますが、これを今回の予算修正によりまして、資金運用部からは今後商工中金に対しては、債券の引き受けたると、また直接貸付たるとを問わず金が出ないということになってしまったので、実はわれわれの最初の修正等についての考え方も破れてしまった。そこで、せっかくここに中小企業庁の振興部長と大蔵省の主計局法規課長が見えられておりますから、私の希望としては、まず中小企業者の保護をはからんとする振興部長から、この際の事態に対処してどういうふうの措置を施せば経理の圧迫を避け、また金利の引き下げを可能ならしめるか、どういう条文の改正をするかということを率直に御開陳を願い、またこれに対して非常に無理な修正をいたしますと、たとえば商工中金の十億出資に対する剰余金にいたしましても、あるいは中小企業金融公庫の剰余金の納付金にいたしましても、これはそれぞれ歳入に織り込まれる、あるいは織り込まれておらなくても影響のある問題でありますから、主計局の立場からこの改正等について両君から説明を得たいと思います。
  21. 秋山武夫

    ○秋山説明員 本日私どもの長官が参議院の商工委員会で、ちょうどただいま議題に供せられました金融国保の法案の説明に当っておりますので、僣越でありますが私からただいまのお答えを申し上げたいと思います。ただいま内田先生から非常に御同情のあるお話を承わりまして、かねがね私どもがひそかに希望をいたしておりました問題が全部あげられたわけであります。先日の予算修正の結果が、中小企業、ことにその金融関係にどういう影響があるかという問題でございますが、私どもとしては非常に悩んでおる最中であります。まず公庫の問題でございますが、公庫は現在一割の利率で利子をとっております。その結果本年度の政府機関としての中小企業金融公庫の予定損益計算によりますと、本年度すなわち三十年度末におきまして九十九百万円、約一億足らずの利益金が一応計上せられております。これはもちろん政府原案を基礎にいたした計算でございますが、先日の修正によりまして当初予定いたしました十五億円の出資が五億円に減り、それから九十五億円の資金運用部からの借入金が二十億ふえまして、百十五億円ということになりましたので、財政投資総額においては結局十億円政府原案よりふえたという形になっております。ただいま内田先生からお話がございましたように、資金コストがゼロの出資が十億減りまして、六分五厘の金利を支払う借入金が二十億になりまして、結果としては十億ふえたわけでございますが、金利負担は増すわけでございます。ただ資金運用総量が十億円ふえておりますから、その関係の運用収入で若干のプラスが出るということになるわけでございます。こまかい計算の資科をきょうは持って参りませんでしたが、ただいまのような計算の結果から見ますと、どうしても来年度末には若干利益金を減らすか、あるいは貸し倒れ準備金の内部留保額を多少落すか、いずれかの方法を講じなければならないだろうと予想せられておるわけでございます。なお私どもはまだ内部で研究をいたしておりまして、確定とは申しかねるのでございますが、最近の金利引き下げの一般の趨勢に対しまして、公庫としても多少の引き下げが可能であるならば考慮すべきではないかという議も起っております。あれこれ考え合せますと、今回の修正は実は公庫あるいは私ども立場といたしましては、必ずしも有利に変更せられたとは申せない状態ではないかと思われるのであります。従いましてただいま内田先生から修正案の一案として剰余金の納付規定を修正するというようなお話があったわけでございまして、もしそれができますならば、公庫の経理上は相当大きな利益となると考えられる次第でございます。ただこれはただいま伺いましたところでありまして、私ども内部的に十分の検討をし、関係省と連絡をして申し上げた意見ではございません。ただ結果的にこういうことになるだろうと申し上げましたことを御了承願いたいと思います。  次に商工組合中央金庫でございますが、御承知のように本年度十億円の政府出資をいたすことに提案をいたしたわけであります。これは今回の修正でも何らの変更を見ておりません。ただ中金関係で最も重大な問題として考えられますのは、本年度の商工債券発行計画のうちに予定いたしておりました資金運用部引き受けという形での二十四億円の債券が全額市中消化に回されるという決定を見た点であります。これは金利の面から申しますれば、運用部も現在市中消化として同様の条件を要求いたされておりますから、その面においての変化はないようなわけでございますが、実際問題として従来も大体六割、四割という比率で市中と運用部とにお願いをしておったわけでありますので、市中としては精一ぱい引き受けてもらっておったといってよろしいかと思います。従いまして月二億円という相当大きな額のものをさらに市中消化で完全にこなしていくということは私どもとしましても実はあまり自信が持てないのでございまして、聞くところによりますと、資金委員会というようなものが設けられまして相当強力な指導をせられるということでございますので、われわれといたしましては実はそれに全幅の信頼をして、何とかお願いをしようというくらいのことしかまだ数日のことでございますので考えをまとめておらないのでございます。もちろん中金当局、あるいは私どもといたしましても十分市中消化にあらん限りの力を尽すつもりではございますけれども、何分これだけでございませんで、ほかの金融債が全部市中消化に回るということになりまして、同時に国鉄の債券等も相当巨額のものが市中に出ることになりますと、果してそれらの中に伍して、なお年次の浅い中金債がどの程度に消化可能かという見通しが立たないということで、われわれ非常に苦慮いたしておる次第でございます。従いまして金利の条件等はいずれ金利引き下げ問題として考えるべき問題でございますが、従来この委員会でもしばしば御意見が出ておりました、また私どもも真剣に検討いたしておりましたが、中金の金利引き下げ問題ということは、少くとも原資の大部分を債券にかえる形態をとる限りいよいよもってむずかしくなりそうだというふうに見通されるわけでございます。かりに運用部が貸付というような形で二分あるいはその前後の金利の引き下げをしていただけますならば、ある程度本年度から引き下げの実行が可能かと考えておったわけでございますが、ただいま内田先生のお話のようにその道もまず一応ふさがれた形でございます、おそらく企業努力により引き下げ得る余地というものを制度的に引き下げるという程度にはまず達しがたいのではないかと現在のところは考えておる次第でございます。できるだけそういう意味政府出資の十億円に対して、たとえば後配の形式をとる、あるいは配当の免除をしていただくということになりますれば、これまた金利引き下げの財源としてややまとまった金額に達し得るという意味において、私どもは他の方法がまず見込みなしという現在、わずかにそれに期待をいたしておるという実情でございます。
  22. 内田常雄

    内田委員 中小企業庁の振興部長のお話はわかりましたのですが、私はこう思う点があるので、これを大蔵省主計局の課長から承わりたいのです。今の利益金の一般会計への納付をやめにする、とにかく政府にとられる金を中小企業金融公庫としてやめにするのであるから、それをやめにすれば中小企業金融公庫は大いに助かるから、われわれとしてはさような点について修正することが適当ではないかと実は考えるのでありますけれども、しかしまた翻って考えてみると、今の公庫における納付金の規定というものは、利益があったら納付しろという規定ではなかろうか。従って、今後中小企業金融公庫の経理が苦しくなり、さらにその上に利下げをしようとすれば——利益を政府に納めることを考えないで、どんどん利下げすることを勇敢にやってしまえば納付金はゼロになる、法律の改正をしないでゼロになる。ゼロになれば納めなくてもいい、こういうことになるのではなかろうかと思われる点もまたあるのですが、この点について、通産省の振興部長並びに大蔵省の法規課長、さらに中小企業庁の指導課長もお見えのようでありますから承わりたい。  さらにまた、先ほども触れました貸し倒れ準備金のことは、どういうふうに今の法律に載っておるのか知りませんが、これもまた私が今申しましたように、法律の改正を待たないでやれることか、あるいは法律の改正を要することか、今の振興部長からの説明ではその点が十分ではなかったので、それをお三人から承わりたい。
  23. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 主計局の立場からも一言意見を述べさしていただく機会を与えていただきまして、内田先生にお礼を申し上げます。  まず中小企業金融公庫の問題につきましてお答え申し上げます。ただいまお話のごとく、一つには民自の予算の修正によりまして出資という無利子の金が、有利子の金に変ったということ、及び一般的な金利水準の引き下げというラインに沿いまして、もし中小企業金融公庫が現在の一割の貸付利率というものを下げましたときに、資金コストが非常に高くなってきて逆ざやになるではないか、まさにその通りであろうと存じます。あるいは企業努力ということもあるでございましょうが、少くとも収支の見込みとして、悪くなるということは確かでございます。その場合に、一体中小企業金融公庫について、いかなる法的措置を講じたらよいかというお説でございますが、主計局の立場から申し上げますと、現在の中小企業金融公庫の納付金の規定というものは、中小企業金融公の収支を強制して一定の益金を巻き上げるという規定ではございません。内田先生のおっしゃいますように、全額国から出資しております一種の国の金融機関に益金が出ましたときに、その益金の帰属を国に移すということは当りまえの話でありまして、他の、たとえば開発銀行にいたしましても、国から全額の出資を得て、それで一種の金融業務を営んでおります機関につきましては、もし、その営業の結果、益金が出ました場合に、これが出資を全額仰いでおります国庫に帰属するということは、その益金の処理としては最も自然な形でございます。ただそうだとはいっても、その一定の益金を巻き上げるために、一定の収支、あるいは貸付なりあるいは預金というものの制度を強制するというふうなものではございません。従って、今まで申し上げましたような、資金コストが高くなった結果、中小企業金融公庫の収支が悪くなりました場合には、たとい納付金の規定を削らなくても現実には納付金が出て来ないということになるであろうと存じます。ただ政府といたしましては、予算の修正をいただきましたけれども、歳入につきまして一定のはっきりした修正をしない限り歳入欠陥が明白に残ってくるというような事実を表に表わすことは非常に困るのでありまして、そういう意味から納付金の規定を削るということは、われわれの立場といたしましては反対申し上げたい、こういうふうに思っておりますし、中小企業金融公庫の逆ざやという問題からも、処理につきましては、少くとも今年度あの納付金の規定を削るか削らないかということは実質的には関係がないのではないかというふうに考えております。  それから第二に、貸し倒れ準備金の問題でございますが、現在たしか予算には千分の十近くのものが組んでおると思うのでありますが、これも法定せられた率ではない。私今ちょっと条文を手元に持っておりませんのではっきり確言いたしかねますが、そういうふうに聞いております。従って、昨年度はたしか千分の十五の貸し倒れ準備金を積んだということでありますが、今年はその収支計算の面から大体税法上の千分の十程度でいいのではなかろうかということで、千分の十というものが一応収支としては見込まれているらしゅうございますが、この規定につきましても、今申し上げましたような中小企業金融公庫の収支計算というものが変化しましたときに法律を直さなければどうであるということではないじゃなかろうか、こういうふうに私は了解いたしております。  それから次に商工組合中央金庫の問題でございます。これは中小企業金融公庫とは違いまして、予算の修正によって無利子の出資が有利子の借り入れ金に変ったという関係ではございませんで、従来中小企業金融公庫から貸し付けておりました金を、今般一般会計からの出資に切りかえるということで、資金コストはむしろ逆によくなっているということであります。ただ一般的な金利水準の引き下げという傾向に関連いたしまして、今後商工組合中央金庫の貸し出し利率をいじりますと、内田先生のおっしゃいますことと同じような問題が商工組合中央金庫についても起って参るというようなことになるのではなかろうかと思うのでありますが、こういう前提につきまして、それでは一体どうしたらよいか、その手段として、現在すでに死んでおりますが、商工組合中央金庫法の四十九条によって劣後配当の規定をもう一度生き返らしたらいいではないかというお説でございます。われわれ主計局といたしまして、劣後配当というものをどういうふうに考えているかということから御説明しなければならぬのでありますが、われわれの立場といたしましては、民間に対するいろいろな財政援助のうちで、政府の劣後配当というものは、これは金融機関でありましてもあるいは航空会社でありましてもいろいろな財政援助をする対象はあると思いますが、その場合政府といたしましては——企業の将来性ということにつきまして、普通の企業のごとく見込みが多くないという場合に、その企業の設立につきまして、民間資本の動員ということは非常に困難になるわけであります。その場合に政府の株の配当というものはある程度遠慮して、他の企業と同じように適正な資本計算が可能であるぞというふうな、いわば好餌というか、えさというか、通俗な言葉で非常に恐縮でありますが、そういうふうな条件を財政援助として提供して、そうして民間資本の動員を援助するという場合に劣後配当の規定を置くわけでございます。それから終戦後、御存じのいわゆる政府の財政援助に関する制限という法律が出まして、その結果、戦前におきましては非常にたくさんの劣後配当の規定がいろいろ特殊会社にあったのでございますが、ほとんどなくなりまして、ただいま御指摘の四十九条により死んだわけでございまして、その法律ができました後におきましては、私の知っております限りにおいては、大日本航空に対する規定がただ一本あるだけでございます。そういうふうな点から申しますと、政府といたしましては、そうした一定の行政目的から特殊な企業を盛り立てようというときに、そうした民間資本の動員が非常に苦しいという場合にのみ例外的に許される伝家の宝刀と申しますか、現在の政府の財政援助の制限に関する法律がある限りにおきましては、少くとも政府が国民の血税を預かりまして、これを一定の会社に出資いたしますときに、その将来の利益を放棄するということは慎重にやらねばならぬのじゃなかろうかというふうに考えております。問題は商工組合中央金庫の点でございますが、これは、私が全部説明申し上げましたそういう理由から申しますと、すでにでき上っておる金融機関でありまして、かつ現在まで利子がついておった金を出資に切りかえて、少くとも資金コストとしてはよりよくなったという現状であります。ただ、一般金利水準の引き下げということに従いまして、ある程度利ざやが薄くなるというような条件だけであるということを考えますと、これはどこの民間金融機関の株主でも、同じような条件の影響を受けるわけでございます。そういう点から申しますと、たとえば現在五分の配当をいたしております商工組合中央金庫が、一般の金利水準の引き下げによって三分になるという場合に、その株主に対する期待権を傷つけるということも、全般の出資家の立場から申しますと、あえて不当ではないのじゃなかろうか。そういう意味と、先ほど申し上げましたように、政府といたしましても劣後配当の規定というものはほんとうに例外的な場合、たとえば、先ほど申し上げました日本航空のごときは、国際航空というようなものは、既存の地盤を持っております。ほかの国の航空事業に比べますと、非常におくれておる、しかし先進国の仲間入りをするのには、そういう会社も、あるいは企業も作らねばならぬというふうな立場から、無理に作らせておるという場合にのみ、例外的に発動されておるというふうな事情から申しますと、主計局の立場といたしましては、この四十九条の規定を復活させるということは、非常に率直に申しますと、反対と申しますか、できるだけそういう措置がないようにお願いいたしたい、こういうふうな気持を持っております。
  24. 内田常雄

    内田委員 今お話の剰余金の規定については、この法律を修正しないでも、金利引き下げ等によって実際に剰余金が生じないようにやってしまえばそれでいいのだということについて、通産省の方ではそれで了解できるかどうか。さらにまた貸し倒れ準備金については、確かに法律事項であって、法律で直さなければ動かせないというふうに私は記憶するが、その点を、今の主計局以外の関係者からもう一度御説明願いたい。それから商工中金の十億円の出資に対して、配当を取るか取らないかということについては、私は主計局の今の御説明とは見解が違うのであって、どうせあれは従来中小企業金融公庫から利息をつけて借りておった金で、利息は取られておった。従って今度はそれが出資に振りかえられるのだから、配当をつけても同じじゃないか、むしろ配当は今日の例でいうと五分であるから、かえって負担は軽くなるじゃないかという御説明のようだけれども、今までの借入金、中小企業金融公庫から借りておって今後返さなければならぬ分は経費として落せたのですが、今度は出資に配当をつけることになると、それは経費では出せない。商工中金は特別法人税を納めておるので、配当すべき利益については税金を取られるのであるから、決して安くならないという事態にあると私は考える。ことに私が聞いておるところによると、今までは政府の出資はわずかに二百十万円であって、昭和二十七年以降はこれは剰余金の分配をしなければならぬはずであるけれども、実際は政府に剰余金の分配というか、繰り入れをしておらない、実際は二百十万円はただで使っておるということを聞いておりますが、今までもただなんです。今度は十億出資した機会に、厳格に配当を取るということになるのかどうか。今までもただなら今度もただでいいので、法律を用いないでただで出資をしておったとすれば、きちんと法律を直しておいた方が、われわれも安心するし、人も安心する、かようにも考えるのでありますが、この点お答えを願いたい。
  25. 秋山武夫

    ○秋山説明員 ただいまの御質問の公庫の関係につきましては、公庫の国庫納付金に関する政令という、公庫全般に共通の政令が出ております。これによりますと、その計算の仕方は大蔵大臣が定めるということになっております。大蔵大臣の定める方法によって計算をせよということを命ぜられておるのであります。たしかこれは、銀行局長から公庫に対する通達によって計算方法が定められておったと記憶いたしておりますが、ただいま手元にその通牒を持ち合せておりませんので、詳細をお答えできないのでありますが、法規面だけで申しますれば、ただいま法規課長からお答えいたしましたように、利益があったならば納付せよといり規定でございますから、計算上利益が出ない、つまり、銀行局長の通牒によったやり方で計算をした場合に利益が出なかったということであれば、この規定は事実上動かないということに相なるのであります。  それから商工中金の方の問題は、ただいま内田先生が、特別法人税を取られるからかえって公庫に対する金利よりは高いと御指摘になりました通り、特別法人税年間十二カ月全部を見ますれば、三五%納めるわけでございますから、五分の配当のほかに、利益金処分の関係での税金が三五%加算されるわけであります。従って、五分配当をしようと思えば、利益金としては八五%を計上しなければならぬ、ごく単純な計算でありますが、およそその計算になります。
  26. 内田常雄

    内田委員 公庫の貸し倒れ準備金は法律では幾らですか。
  27. 秋山武夫

    ○秋山説明員 公庫の方は、ただいま申し上げましたように、その貸し倒れ準備金の計算方法を銀行局長の通達によってやっております。
  28. 内田常雄

    内田委員 納付金ではなしに、法律で……。
  29. 秋山武夫

    ○秋山説明員 法律では、ございません。法律には積立金の規定は入っておりません。
  30. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 ただいまの内田先生のお話しについて、ちょっと私の申し上げたことが不十分であったかと存じますので、補足して説明させていただきたいと思います。  中小企業金融公庫については、もし剰余金が出ないように、利益金が出ないように計算すればそれまでのことじゃないかということ、まさにその通りでございますが、先ほど申し上げましたように、主計当局といたしましては、最初から歳入欠陥が出るのだというような前提でものを考えるということは非常に困るということをちょっと申し上げさしていただきたいことと、もう一つ、商工組合中央金庫については、従来の貸出金の償還よりは配当の方が金がたくさん要るのだということ、まさにその通りでございましょう。私の申し上げましたのは、商工組合中央金庫としての影響は、単に一般金利の引き下げという傾向に従って貸付金利を引き下げた場合にどういうふうに収支計算が悪くなるであろうかという、その影響に関する問題にあろうと私どもは了解したものでありますから、そういう点から申しますと、たとえば一般の金融機関につきましても、やはりそういうふうな利ざやの減少ということはあるのでありまして、その場合、たとえば今五分というような配当をしておりましたのを三分なり何なりに引き下げて、一般の資本の利益というものも国の出資と同じように引き下げるということによって収支計算の悪化を防ぐという方向も、これも必ずしも不当ではないのではないかということを申し上げただけでございます。
  31. 秋山武夫

    ○秋山説明員 ただいま一言申し落しましたので、補足さしていただきます。  現在中金が、公庫から借りております二十億円に対しまして支払っている金利は五分五厘であります。それだけちょっとつけ加えておきます。
  32. 内田常雄

    内田委員 今までは、政府出資に対しては剰余金を分配していなかったかどうかということを聞いたのですが……。
  33. 秋山武夫

    ○秋山説明員 私、ちょっとその点をはっきり記憶しておりませんので正確に申し上げかねますが、たしか、二百十万円に対しても一応配当計算はしておったように私は記憶いたしております。ただそれが国庫に納められておったかどうかの点をちょっと確かめておりません。いずれ調査いたしましてお答えいたします。
  34. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 先生のおっしゃいました二百十万円に対する配当の問題でございますが、これは二十九年三月及び昭和三十年三月には政府及び民間に対しては五分の配当をしておるようでございます。
  35. 内田常雄

    内田委員 大体通産省並びに大蔵省の御意向はわかりましたから、これはわれわれ委員が十分検討いたしまして修正案を用意いたしますが、修正案に関連をして小委員長にお願いをいたしたいことは、これはいずれか態度をきめなければならないのでありますが、それと同時に一つ委員長のお手元で決議案を用意をして決議を通していただきたい。  それは一つには、中小企業金融公庫並びに商工中金を通じまして、この際中小企業金融の現況にかんがみて金利の引き下げを推進すべきであるという決議案が第一。第二には、商工中金につきまして、先ほどから私からも申し上げ、また通産省の部長からもお話しがありましたように、商工中金債というものは資金運用部の引き受けがなくなって、全部一般の金融機関の引き受けになる。しかしたくさん競合するから果して年間二十四億円の資金の引き受けが可能であるかどうか、非常に危ぶまれますので、この際他の金融債とは違って、すなわち長期信用銀行でありますとか、あるいは興業銀行、農林中金とは違いまして、この商工中金は中小企業のために非常に乏しい窮屈な金を動かしておりますから、設置せらるべき資金委員会等機能を通じて、優先的にこの商工中金債の民間消化を促進する措置政府は講ずべしというようなことを内容とする決議案。それからもう一つは、商工中金に対する資金運用部資金の供給でありまするが、これは先ほどから話しが出ておりますように、今度の予算修正に伴って商工中金に供給する予定の金は資金運用部には一文もなくなったわけでありますけれども、しかし資金運用部の金というものは、これは予算ではなくて郵便貯金が幾らふえるか、あるいは簡易保険が幾らふえるかというようなことで、今後一年間の見通しいかんにかかっておる。今度の予算修正で二百十五億も金がよけい出るわけでありますから、私は郵便貯金もよけいふえるし、あるいは簡易保険もよけいにふえると考えますから、もし資金運用部資金に余裕を生じた場合におきましては、これは商工債券の引き受けではなしに、他の国民金融公庫や中小企業金融公庫と相並んで、商工中金に対しても、資金運用部資金の低利の直接貸しの方法を開いてもらいたいといったようなことを決議案の内容につけていただきたい、かようなことを私は考えるものであります。小委員長のお手元においてできるだけ一つこれらの決議案を作っていただきたい。ことに資金運用部資金法につきましては、委員会の一部において商工中金法の改正の附則においてこれを改正しようかという議があるのでありますが、この資金運用資金法の改正は政府提案となって大蔵委員会に出ておりますので、あっちの委員会でせっかく審議をしておることをこっちが他の法律において、つまり商工中金法の附則等において改正することは、やり方としても乱暴であるし、ことにこの段階において資金運用部資金から供給すべき金がないことになっているので、それを法律に入れることはあまり意味をなさぬと思う。私は決議案等の方法でやることが適当ではなかろうか、かように考えるものであります。
  36. 永井勝次郎

    永井委員長 この問題については各党それぞれの立場があって意見が一致しがたいものではないか。もし意見の調整がはかられて一致の決議が得られればそういう措置を講じたいと思いますが、とにかく委員会の意見は金利を引き下げるべしとしてあったのに、今度の共同修正案は金利を高めることをやっておる。金利を高くしておいて引き下げることを決議するということは自己矛盾じゃないか、こう思いまするし、それから資金運用部資金も、原資をもっとふやせという委員会の要望に対して、これを削ってしまって余裕金があったらということは、われわれとしては一部には相当反対の意見もありますから、これは内田委員の御趣旨はよく体しまして各党意見を調整して参りたい、かように存じます。
  37. 八木昇

    ○八木(昇)小委員 これはおそらく蛇足だと思いますし、また特に皮肉めいて言うわけではございませんけれども、今明日のうちに民自両党の折衝によるところの予算修正案が通過するわけでございましょうが、その結果ただいま内田委員が御心配になっておられるような結果が出ることをあらかじめ承知の上でそういった修正がなされ、そのために今度はそれを補うためにこの委員会で何らかの形を考えるというようなことについては若干の疑義を感ずる。さればといって御提案に全面的に反対だというわけではありませんが、しかし国会審議はなお参議院でもなされるのでありますから、ただいまの御希望はこの委員会としての全体的の意向というわけではなくて、一応研究をしていただく、こういう取扱いに願いたいと思います。
  38. 永井勝次郎

    永井委員長 よく了承いたしました。
  39. 八木昇

    ○八木(昇)小委員 ちょっと御質問を申し上げます。私ども綿紡績操短というようなことを聞きます場合に、非常に矛盾を感じますことは、どうもこれは生産者側の利益ということについては相当考えておられるけれども消費者側の立場というものをどういうふうに見ておられるだろうかということについて、私どもは非常な矛盾を感ずるわけです。国際的な問題は別としまして、国内的な状態を考えました場合、実際に綿製品が国民の間に十分に行き渡って、そうしてもはやあまり綿製品の必要を感じていない、従って需要が減っておる、こういう状態ではないわけです。国民一般としては非常に不十分な綿製品の消費生活であるけれども、しかし値段相当なものだし、自分の収入も少い、こういうわけで買えないという状態にあるわけです。ですから本質的な意味においては国内需要というものはまだたくさんある、こういうふうに考えられるわけです。こういう点からいけば、生産設備も戦後復興してきた、どんどん作る力がこれだけあるようになってきておる。こういう面からいくと、価格がどんどんと安くなっていくということは、消費者の側からすれば大きな利益なんです。従ってそういう点から考えれば、そうそう簡単にこういうふうな操業短縮というようなものは行わるべきものではなかろう、こういう観念を、持つわけです。そこで最初にそういった点についての基本的な考えをこの際ちょっとお伺いしておきたい。
  40. 永山時雄

    永山政府委員 まことにごもっともな御意見でございまして、私どももその観念には全然同感でございます。従って生産制限あるいは操短というような問題に対しましては、できるだけそうした事態は避けたい、あくまでもこれはアブノーマルな手段である、かように私どもは考えておるのであります。ただ今般の措置につきましては、やはりその観念からいろいろ検討をいたしまして、必要やむを得ざる措置ということに結論を得て実施をいたしたのでございますが、たとえば綿糸操短というような問題は、昨年当時からすでにかなり業界としてはこれを希望して参っておったのでございます。私どもも綿布の価格をある程度改善をする——これは話が少しはずれますが、綿布の価格自体は、先ほど申し上げましたように、約一年半以上の間非常に安い値段になっておりまして、これは少しく御調査をいただけば御了解を願えると思うのですが、糸代、あるいは工賃、そういうものを加えた適正なコストというものから比べますると、まさに生産費を相当割っているような状態が約一年半近く続いて参っておるのであります。結局先ほど申し上げたのですが、品質を低下しておるというような状態でそれを泳いできておる。また国際的には非常な安売りになっておるというようないろいろな芳しからざる現象がそこに出て参っておりますし、また綿企業界というものは、労務者にいたしましても約三十七、八万人、四十万人近くのものがこれで生計を維持している。また国内的に見ましても、御承知のように業者の数も多く、生産額からいきましても相当膨大な金額に達する重要な産業でございますので、従ってこれをいつまでもそうした状態に放置しておくことは、どうも国の経済の動きという点からいっても正当でない。むろん現在のような経済界でございますから、時に物の値段の上ったり下ったりすることはむしろ当然でありまして、従ってたまたま値段が下ったからすぐあわててそれに対しててこ入れをするというようなことは、政府としてはやるべき措置でないと思うのでありますが、綿布の業界につきましては、ただいま申し上げたようなアブノーマルな状態が非常に長く続いておって、それがいろいろな悪現象をもたらしておるというような事情から、綿布の改善措置につきましては、先ほど御説明を申し上げましたような経過でいろいろな措置をとって参ったのでありますが、その綿布価格改善方法としては、糸の操短をするということが何といっても一番的確な方法なんであります。綿布の関係業者は約十二、三万業者ございまして、これに的確に生産制限を行わせることもなかなか事実問題として困難でございますので、従って糸の供給を制限をいたしまして、そうして生産制限をしていくということが一番イージーな方法なんでありますが、しかしお話のような趣旨で、われわれとしては操短というものはできるだけ避けたい、またやるにしてもできるだけ最小限度の範囲にしぼっていくべきだというような観念から、他の手段相当困難であり、それだけにまた効果も必ずしも期待通りに現われないかもしれぬというような見通しはある程度持っておったのでございますが、あえて糸の操短というものな避けてきたというのが従来の経緯でございます。われわれの及ぶ限りは他の手段を尽して糸の操短を避けようということで参ったのでございますが、先ほどから申し上げますような事情で、どうしても糸の操短をやらざるを得ない、また糸自体が価格相当下ってきたということで、その面からいっても必ずしも不当ではあるまい。また綿糸としては直接消費者に直面をするよりも、むしろ生産資材であります。綿布はわれわれ一般の消費生活に直接の関係を持ちますが、綿糸自体はそれほど直接の関係もないというようないろいろの事情を総合勘案をいたしまして、綿糸についても操短をやることにいたしたのでございます。要は私どももただいまのお話の趣旨と観念は同じでございまして、できるだけ操短というような措置は避けたいという観念については同感であるのでございます。
  41. 八木昇

    ○八木(昇)小委員 抽象的なお話は承わるのですけれども、しかし朝鮮動乱直後の非常なアブノーマルな経済変動の直後行われた昭和二十六年から七年にかけての操短、これにしましても相当の批判が私どもとしてはあるのですが、しかしああいったふうな事態の場合にはある程度やむを得なかったかなということも考えられますけれども、最近のような状況は、具体的にお伺いするのですが、何か急激なる価格の低落というような統計でも出ておるわけでございますか。私ども消費生活をしておる者から見まするとそういうふうに感じないわけです。そこで最近のいわゆる価格の変動を端的にお答えいただきたいということが一つと、それからもう一つは、もし非常に価格下落して困っておるというようなことであったとしましても、わずか一カ月や二カ月の若干の操短をやることによって一体いかほどの効果が期待できるか、しかも将来に向って一体どういうふうに事が健全に進んでいくという見通しがあるのかということについてお伺いしたい。それが政府当局あたりが言われることは、いわゆる拡大均衡を今後はかっていくということでありながら、石炭においても紡績においても、きわめて当面の糊塗的手段によって最も安易な小手先細工のみに終始しておる、こういうふうに感じますので、今の二点について具体的に端的にお答え願いたい。
  42. 永山時雄

    永山政府委員 まず織物価格でございますが、いろいろ品物の種類は多いのでございますけれども、たとえば標準品物として白木綿のある規格のものを取ってみますると、糸の価格、それから工賃というものを勘案してみますると、二百八十円程度いたしますものが、昨年の一月においては二百五十円で、約三十円近くのものがマイナスになっているのでありまして、こうした状態がずっとこの一年半ばかりの間続いておる。他の織物につきましても大体大同小異でございまして、同じような状態になっております。また輸出価格の点から見ましても、他の国の価格に比べてみまするとやはり五%から一割方低い値段で売っておる。これは特に日本の競争国であります英国あたりは、痛烈に日本の安売りを非難いたしておりまして、たとえば現在問題になっておりますガットの加入の問題だとか、あるいは近く始まります日英通商協定の問題とかいうようなときに、先方の日本に対する攻撃、非難の有力なる武器に使っておるのでございます、これはもとより日本立場からいきましても、安売り、はなはだしいときは原綿代そこそこの値段輸出をしておるというような状態もかなり続いておるのでありまして、これは日本経済からいっても当然反省をしなければならぬということで、逐次これの改善策というものは講じて参っておるのでございますが、現状におきましてもなおまだ相当に海外の値段に比べると安い。また綿糸値段でございますが、このコスト生産費という問題は、そのときの原綿価格によって——特に生産費の中で綿代というものが非常に大きな割合を占めておりまので、綿の価格というものが非常に大きな意味を持つのでございます。従って生産費と申しましても、そのときの綿代が幾らかということによって非常に違いますし、また工場によってかなり工賃というものも違っておるのでありまして、たとえば工賃にいたしましても、低きは一コリ当り八、九千円、高いところは一万二千円から一万三千円というようなところもあるのでございまして、その間四千円から五千円くらいの工場によっての開きがあるというようなことで、非常に区々たるものがございますので、標準生産費がどのくらいかという点はいろいろ問題になりますが、大体私どもがめどにしておりまする生産費、これははだかの生産費といたしましては大体七万五、六千円というところを一つのめどにいたしておるのでございますが、かなりこれはきつい見方のようです。銀行関係等から見まするともう少し高く見ているようでございますが、そういうような生産費というものをとってみましても、現在の相場は六万八千円ぐらいの状態——若干この一、二日回復したところで六万八千円というようなことで、かなり生産費を割っている状況であります。これは比較的中小紡関係が、割合に生産費としては高くついているんじゃなかろうかと思いますが、そうしたところはおそらく七万五千円の生産費ではカバーはできていかない、それが現在の相場からいたしますと、七万円を割る六万七、八千円というようなところになっておる状態で、綿業自体からいきましてもかなりきつい相場である。で、これが今申し上げたような綿布の価格の問題あるいは輸出価格の問題、そうした問題にいろいろな悪影響をもたらしますので、今回のそうした措置はわれわれとしてはやむを得ない措置であると考えております。
  43. 八木昇

    ○八木(昇)小委員 時間も大分遅くなりましたので、最後に一つだけお伺いして終ります。  これは希望ですが、現在のような状態を続ければ、中小企業あたりが困る。そういうふうなことについてはこれは操短などということでなくて、別途に方策をやはり十分研究してやってもらいたいということは、今のお話しから聞きましても、非常に急激な変動が行われたというふうには考えられません。そういった点をやはり考えるべきじゃないか。それからまた海外価格の問題、今相当のダンピングが行われておる、イギリスやその他の圧力があるなどというようなことは、これは操短とは無関係だと思う。そういう措置は、私は業者に対する政府の監督その他の措置によって十分に効果を期待でき得ると思います。で、そういったことをやはり考えるべきじゃないかというふうに考えるわけです。これは私の要望ですが、それで最後に——説明を中途から聞いておりましたので、あるいは御説明があったかと思いますが、今行われております操短は一応今月末をもって打ち切る、こういうことでございましょうか。
  44. 永山時雄

    永山政府委員 そうです。お話しの点は、よくわれわれも頭に置いて今後も検討をしていきたいと思います。今のお尋ねの中の最後の操短の期限の問題でございますが、現在出しております操短勧告は、五月、六月両月ということで出しております。ただし現在の綿業界状況あるいは今後の見通しというようなところからいたしますると、何らかの形においてこれをある程度続けざるを得まい、かように考えております。
  45. 田中武夫

    田中(武)小委員 ただいまの同僚八木委員の質問に関連して一言だけお聞きいたします。大体今の御説明を聞いておりますと、結局は赤字生産になるから操短をやるんだ、こういうことなんです。もしそうだとしたら、先ほど八木委員も申しておりましたが、一月や二月やって根本的な解決になるのか、こういう疑問をわれわれ持っておるわけです。そこで五月、六月の二カ月なのですが、これをやった効果といいますか、それはどういうように今現われつつあるか、そんな点がわかっておりますれば言っていただきたいと思います。
  46. 永山時雄

    永山政府委員 先刻冒頭に御説明を申し上げましたように、現在の綿製品の需給関係というものは、国内的にいきましても、あるいは輸出の面からいきましても、はなはだ不振な状態でありまして、従って需給の関係というものを改善をしていくということがどうしても必要である。これは今後の見込みも、直ちに輸出の面に非常にいい材料があるようにも思えませんし、また内需関係もさしたる変化もないんじゃなかろうかというように考えますのと、それから手持ち在庫品が非常にふえておりまして、これが非常に市況を圧迫をしている。つまり需要供給関係から見ても、供給が非常に多くなっている。供給過多の状態になっておる。しかも一朝一夕にしてこの供給過多の状態は改まりそうもないというような見込みでございますので、従って操短というものをある程度継続してとらざるを得ないと思いますし、またこれをとったからといいまして、すぐに効果が的確に出るという性質のものではないと思います。今申し上げましたように、供給関係が非常にオーバーをしておりますので、たとえば、非常に極端な、一カ月生産を停止してしまうとかいうような、非常に極端な方法をとるならば別でございますが、経済も生きものでございますから、生産制限をある程度の限度にとどめざるを得ないということになりますので、その限度を保っていく限りにおきましては、直ちに一月や二月で需給関係が直るということは期待ができませんので、これを継続して徐々に需給関係を直していくということしか考えようがないと思います。従って価格の面におきましても、少くとも現在の操短によって、くずれていく速度というものをある程度ささえる効果はあったと思いますが、積極的に上げるという現象はむろん今までにも出ておりませんし、今後といえどもそうした効果は比較的乏しいのじゃなかろうか、だんだんと改善をしていくという程度のことであろう、かように考えております。
  47. 田中武夫

    田中(武)小委員 結局需給関係からだ、こういうことなのですが、供給面だけを押えてもうまくいかないと思う。これは一繊維局長だけの問題ではないと思うのですが、一面需要を喚起する方法も考えなければならぬと思います。われわれこう見ましたところ、これは一般の購売力にも関係があると思うのですが、国民全体がそういい綿布を着ておるとも思いませんし、相当不足している人も個人にはまだまだあると思うのです。そういうような面についても検討してもらいたいと思います。私この前の公正取引関係の小委員会のときにもこの問題で繊維局長に申し上げたと思うのですが、操短は労働者に対して大きな影響を与えるものであるので、私はこういった面から来る一つの救済方法は、ただ操短というような安易な点で考えることなく、もっと大きな面から検討してもらいたい、こういうふうに思うわけであります。
  48. 永井勝次郎

    永井委員長 繊維局長に申します。が、繊維関係の、操短を必要とする経済的な、客観的な諸情勢、それの推移、国際関係、こういった一切の資料をできるだけ早く出していただきたい。  本日はこの程度で散会いたします。    午後四時一分散会