○
池田参考人 私は今御
指名を受けました
池田でございますが、ちょうど歯を痛めまして、義歯をはずしておるのではなはだお聞き取りにくいと思いますが、御容赦願います。
きょうは突然のお呼び出しでございまして、あまり
用意はいたしておらないのでございます。第一は
総合エネルギー対策、これが
閣議決定になったようでございます。ことしの春でございましたか、前
内閣時分にもこれと同じような問題で
閣議決定がありましたし、また
通産委員会の決議もあったことは承知しております。私
ども経団連で私が
総合燃料対策委員長といたしまして、ずいぶん長くかかってこの二月に結論を得たのでございますけれ
ども、それと今度の
閣議決定を比較してみますると、あまり変っておりません。ただこれを見ましての私の感じを簡単に、率直に申し上げますが、全般的にはむろん異見はございません。私もこの
エネルギーの問題それから
総合燃料対策の
問題等を考えました場合に、ほんとうにこの狭い国土に
——先ほ
ども話があったように、やがて十数年後には一億の
人口になると思います。この
人口をかかえ、乏しい
資源によりまして憲法に保障されました平和な
文化生活ができるかどうかということなんでございます。はっきり申し上げますれば、今度の六年
計画にもこの
エネルギーの問題ははっきり
解決されておらぬと思いますが、私は不可能だと考えます。そこで大体
文化生活を上げまして、二十七年が六千五百カロリーの
石炭換算で一・二一トン
——一体この
エネルギーをどうして得るかということになりますと、私
どもは自信がございません。そうしますと結局は
人口問題で
解決するにしても、生まれた者は殺すわけにもいきませんから、これから
受胎調節等をいたしましてもなかなかめんどうな問題でございまして、結局はやはり
生活程度を下げる
——文化主舌を上げるよりはむしろ
生活程度を下げるということを考えなけれで
解決はつかないのじゃなかろうか、こう思うのでございます。そこでなおこの
燃料、あるいは
エネルギー資源でもよろしゅうございますが、これを考えた場合にいかにも心細いのでございまして、たとえば
水力、今までは
水主火従となっております。
松永構想でこれを逆にいたしまして
火主水従にする、これはけっこうだと思います。ただしかしこれによってもなかなか問題は
解決しにくいのでございまして、二千二百万キロワットの
水力がもう十年も開発しましたら有利な点はおそらくなくなるだろうと考えます。豊富低廉でなくかえって高い
電力をわれわれ
消費者は使わなければならないというふうになることは当然だろうと思います。それから
石炭にいたしましても百五十万トンくらいは
埋蔵量を見ておられますけれ
ども、これまた実際に有利に安く掘れる
石炭というものはずっと減るのじゃないか、こう考えたりいたします。石油は三十四万か三十五万くらいしか出ておりませんが、これとても百万キロリットルまでいくのに容易じゃない、
天然ガスも大きな期待はできない、こんなふうに考えます。しかも
薪炭は燃やしてはいけないのでありますから、そういうふうに考えますと、ますます心細くなるというように考えられるのでございます。しかし何といたしましてもやはり
日本の
エネルギーの大宗は
水力とそれから
石炭にある、これはいなめない事実だと思うのでございます。そこで今言いましたような結果から見まして、どうしても私
どもは何かここで至急に
総合エネルギー対策を確立しませんといかぬということは理の当然でございまして、
政府でも結局こういった
総合計画につきましての
閣議決定になったことと思うのであります。ただ私
どもは最近の
傾向はどうかというと、いろいろ
戦時中から、私も大体
石炭屋が本業でございますけれ
ども、
戦時中あるいは戦後のいろいろな国の
経済情勢その他
政治情勢からいいまして、
石炭業というものはまことに不健全な
復興をしたのでございます。不健全な
復興もいたしましたが、同時にかりに健全な
復興をいたしましても、生まれついた
条件の悪いものはよくなるはずはございません。結局不良な
条件をカバーしていくには、
技術の振興よりほかにはないと考えております。しかしある
程度、これは
程度が問題でございまして、ある
程度の適正な
出炭量を維持するということは、これは
国策としてはっきりここできめていただきたいと思うのであります。ただ適正な
程度といいますのは、五千五百万トンがいいのか、五千万トンがいいのか、四千五百万トンがいいのか、四千万トンがいいのかということは、非常に大きな問題でございます。これは私も
意見がございますけれ
ども、今日は申し上げませんが、とにかくある
程度適正な、
適正量をきめましたならば、これは何としてでも
国策として徹底した
政策を立てて維持していくということが絶対必要だと思っておるのであります。そこで原則といたしまして、今度の
閣議決定には大体私は賛成いたします。ところが今の
適正出炭量をまずきめて、これを維持していくためには、
石炭業は非常に
弾力性の乏しいものでございまして、ほかの
産業と違いまして、ちょっと
工場を休み、また始めるといったことはできません。一度つぶしたものはなかなか
復興はむずかしい。また新しくやりましても、四、五年はかかります。そんなことからいたしまして、この
石炭業というものは
特殊性というものを十分考えまして、
エネルギー対策を立てる必要があるだろう、こう思います。先ほどタウン・
ガスのお話もありましたけれ
ども、これよりはもっとむずかしい
弾力性のない厄介な
企業だと考えております。この点を考えました
総合燃料対策でなければいかぬのだろう、こう考えるわけでございます。そこで私は、大体の考え方は
石炭鉱業といったものは、そういったようなことを十分認めまして、
国家といたしましては絶対ある適量は
生産維持しなければならぬということをすべて
国策のもとに考えていただきたい、こう思うのでございます。従ってこれに応ずるためにはある場合にはある
程度の強い
行政指導も必要であろう、また法的な規制も当然必要になると思います。そんなことからいたしまして、今度の
石炭鉱業に関する
合理化法案あるいは
重油消費規正法案、今度の
関税法案といったものを
政府がお出しになったのだろうと思います。そこでこれにつきましては
総合エネルギー対策、
石炭対策がございますが、この法的な措置に対する論議がいずれ議会でもされておることと思いますけれ
ども、これには私は必ずしも
意見はないわけではございません。大体申し上げますと、この
関税問題からいいましても、どうも
消費者という
立場がほとんど無視されているのじゃないかという気もするのであります。これはきょうの問題でないと思いますけれ
ども、たとえば
残存炭鉱に十五円の
賦課金をかけるとか、あるいは
関税は全部
消費者で負担されるかのような
説明があったかのように聞いておるのであります。
石炭の値段を引き上げるために
関税をかけるというようなことを伺ったこともありました。これらの点私
どもも必ずしも賛同できませんが、ただしかしある
程度の
関税をかけて、これをはっきりすれば、むしろ目的税にする。これはフランスやドイツでもはっきりしておりますので、むしろその方が今よりはベターではないか、こうも考えておるわけでございます。
なお
重油転換、消費規正等につきましても、ちょっとこれにつきましても考えたいと思いますのは、たとえば
日本は、過去十カ年、といってもそのうちの最高数と最低数を除きました年での平均した数字を見てみますと、これは御承知の通り最近はここ数年間続きまして大豊水でありましたが、これが変りますと、八百万トンの
石炭が二割変りますと百六十万トンくらい減る。大体
日本は百四十万トンから百五十万トンが適正貯炭でありますのに、二十八年に四百二十万トンくらいの貯炭がありまして、あの
石炭危機にそれから追い込まれたといってもいいのじゃないかと思います。そんなふうでこの調節を
石炭業だけでカバーしていくことはむずかしいのでございまして、その点では
重油輸入等につきましても、ある
弾力性を持つような法規が必要ではないか、こんなふうに考えております。
それから石油対策でございますけれ
ども、今申し上げたことと関連したことを申し上げますと、とにかく私
どもは
需要者の
立場から、なるべく
関税のかからぬ
重油を使った方が今は安いのです。安いから使いたいのですが、もっと深く掘り下げて考えますと、
石炭はおそらく労銀が四九%くらいでありましょうか、そのほかの坑木だ何だといったものの労力を入れますと、おそらく六七、七〇%くらいの労銀になっていると思います。
日本の
産業の将来を考えますと、これは当然雇用関係というものを考えないでは
国策はきまらない、こう思っております。そういたしますと、ただ安いから便利だから
重油を輸入していいということにはならぬだろう、こう考えるのであります。われわれはあくまでも実際国の経済
政策なりあるいは社会
政策なりを考えた上での
重油対策をきめなければならないじゃないか、こうも思っておるのでございます。そういう面では私は
関税もある
程度は賛成いたしましたし、また考え方はそういう面から考えていかないといけないのじゃないか、こうも考えておるのでございます。それよりも石油の対策といたしましては、いかにも
日本の石油
資源の調査探鉱が不十分だと思います。たとえば一番いい例は、ドイツでもあるいはフランスでもあんなに油が出ると思っておらず、イタリアの
天然ガスな
どもあんなにあるとは予想されなかったのでありますけれ
ども、各国とも探鉱の結果相当
天然ガスなり
重油が出ておるのでございまして、これに対して考えますと、私
どももっともっとこの
閣議決定の趣旨によりまして石油
資源の探鉱に力を入れたらどうか、そのためにはその場合あるいは
関税目的税も必要になるかもしれないというふうにも考えておるのでございます。ちょうど天然ウランがない、フランスにもないといっておったのですが、それは探さなかったからないのでありまして、
日本も探さなかったからないのか、あるいはほんとうに探してもないのかということが問題だろう、それと同じことが考えられるのじゃないか、こうも考えておるのでございます。
それから
天然ガスには
意見がございません。
それから
化学への有効
需要、これはただいま
都市ガスについてでございますけれ
ども、私
どもの考え方といたしますと、あるいは
ガス事業者の考えと、また私
ども総合的に使います
需要者の
立場からいいますと、変った
意見が出るかもしれぬと思っておりますが、大体において
都市ガスを大いに奨励するということは私
どもの結論にもはっきり出ておるのであります。
それから
都市ガス対策、これは申し上げません。
電力対策も、これはまたこちらで松永さんからお話があるそうですから申し上げませんが、少くとも
石炭を新しい発電所を作りまして
——今悪いのは熱効率がおそらく一三、四%くらい、アメリカで新しいのが四二くらい、今度新しくやりかけておるものが三二%くらいになるのじゃないかと思うのであります。こうして
技術が進歩いたしますと、
石炭の
付加価値が上るのでございますから、多少
石炭が高くてもこういうふうな
過程において吸収できるということでございまして、私
ども消費者からいうと、そういう方面に努めなければならぬ、こう考えておるのでございまして、松永さんなどにも、相当仮定が入っておりますから、あんなふうになるかどうかということは相当研究の余地があるだろうと思いますけれ
ども、これは十分精細に研究いたしまして結論を出すべきだろう、こう考えておるのでございます。
それから
薪炭につきましては、ただいま
本田さんからもお話ございましたが、私
どもの結論でも、もう
薪炭をたくといったようなことは絶対やめるというくらいにしまして、これを
石炭に持っていって
石炭需要を確立するということが必要じゃないだろうか、あるいは便利なところはむろんタウン・
ガスにかえていくということもけっこうだろう、こう考えておるわけでございます。大体私は、実はきょうここで拝見しました
総合エネルギー対策を読みまして、私
どもが結論を出したのと大した違いありませんが、ただこれを見ました感じを今申し上げたのでございます。
大体今申しましたようなことからいたしまして今度の三つの法律も出たのだろうと、私
どもはこの法律の出たことに対しましても、ただいま申しましたような
石炭のある
適正出炭量は、繰り返して申しますが、確保すべきだという見地から考えておるのでございます。そこでそれにはやはりただ民間だけでもいかぬと思います。われわれ
需要者とそれから
石炭業者ということだけで話が
解決つく問題ではないと思いますので、これにはぜひ先ほど申しましたように
政府がある
程度の
行政指導をする、あるいは法的規制をしましてでもこれを調整していくべきだ、こう考えておるものでございます。そこで
石炭業者からしますと、むろん高いといわれております昨年の今時分でございますと、大体アメリカから見ますと三倍、イギリスから見て二倍、ドイツから見まして一・七倍ぐらいだったのです。その後
石炭が非常に下りました。今度
合理化法案で二割下げるよう、あるいは三割下げようということをいわれておりますが、私はあの数字には非常に懸念を持っております。しかしある
程度はぜひ下げてもらわなければいかぬし、下るでしょうと思いますが、ただしかしこれはあまり数量を出し過ぎますと、
石炭の特異性からいいまして、豊富低廉にならないので、豊富かえって高価ということがあり得ることでございまするから、繰り返して申しますと、相当慎重に
適正出炭量はきめていただきたい、こう思っておるのでございますが、それには
石炭業者としてもコスト引き下げに対しまして今以上に十分に
努力をする必要があるだろう、こう思うのでございます。そこで私
どもは
需要者として、やはりほんとうの国の
政策に沿うためには協力しなくちゃなりませんし、また責任もあるわけでございます。それに私もかつて
石炭業者であった
立場からして、今
化学工業関係に身を置いているのでありますが、
化学工業から
石炭鉱業を見ますと、
石炭鉱業界の方ももっと視野を広くしまして、
石炭化学工業というものをもっと深く御認識になって、われわれと一緒に協力してもらった方がいいのじゃないか、こうも思うのでございます。しかし今実際を申しますと、怒られるかもしれませんが、
石炭業者に非常に手を広げていろいろなことを研究するほどの力はないかもしれません。私はちょうど三十年前に
石炭掘りからやっておりましたけれ
ども、もう
日本はただ
石炭掘りだけで安んじてはいかぬというので、
化学工業をやらなくてはいかぬと思い立ちまして、ちょうど二十年前に会社を創立いたしましたが、終戦後引っ込んでおります。しかし今日はこの
石炭化学工業のまた革新の時代にきたのだろう、こう考えられるわけであります。そんなふうに考えまして、私
どもは先ほ
ども申しましたように適正出炭を維持したい。できるだけここで
石炭の
需要量を増していきたい、こう考えておるものでございまするから、それには私
どもといたしましてはできるだけ
付加価値を高めまして、その間に価格の高い点を吸収して参りたい、こう思っておるわけであります。大体の私
どもの考え方はそういう考え方でございます。そこで、
化学工業とは申しませんが、一体粗悪炭というものは、私
ども日本の
現状でありますと
石炭を掘っているのではありませんで、硬炭、ボタ炭を掘っているのでありまして、この硬炭を一体どう処理するか、あるいは
石炭でも洗い減りがありますし、そのほか粗悪炭、あるいは今までロスになっているものをキャッチしまして、これをどう使っていくかということは、これは非常に重要な問題だと思います。これは皆さん、御承知でありましょうから申し上げませんが、最近になりまして塩はほとんど食料塩が半分くらいしか国内
生産はございません。その半分と、そのほか工業塩は全部輸入に待っておるのでございますが、それらを今海岸に近い、あるいは島にある炭鉱で、製塩をいたしますと、今のように食料塩が
国策として保護される限りは相当利益あるコストで出るだろう、こう思いますから、これはぜひ一つその方面にもっと力を入れてほしい、こう思います。ただしかし今までの真空高圧法等もまだ
技術が確立しているとも私は思っておりませんで、それらの問題も共通の問題といたしまして国が中心となり、あるいは専売公社が中心でもいいと思いますが、ぜひ協力して、あるいは研究組合を作る等によってこの研究、
技術を確立して参りたい、こう思っておるものでございます。なお私
どもの
立場からいいますと、これら塩素は非常に
化学的
需要が多くなります。そんなことから申しますと、場所によりましては何も固形の食塩を作る必要はないのでございまして、途中の液体の食塩水にしまして電解等に持っていくということも考えられるのじゃないだろうか、こうも考えるわけであります。そのほか坑内のメタン
ガスでございますが、おそらく
石炭に換算しますと三百万トンくらい一年にあるだろう。これをみんな利用するといったようなことは考えられませんけれ
ども、これはぜひ坑内保安上からいいましても必要なことでありまするからして、これをキャッチいたしまして、あるいは自家発電に使いますとか、タウン・
ガスに使いますとか、あるいは
天然ガス同様に
化学工業方面に使うということは考えられようと思います。これはちょうど
日本瓦斯
化学が新潟の
天然ガスを使いまして今メタノールを作っておりまして、従来ありましたメタノール
工場はだんだんやめて、そちらからメタノールの
供給をしておる。それから硫安、アンモニアを作るとか、尿素を作るとか、いろいろな方法があるだろうと考えられるわけであります。
それから先ほど家庭用
燃料に
薪炭をやめまして、
家庭燃料を作るということもございますが、大体微粉炭は二百四十万トンから三百万トンくらいあると計算されておりますが、これらも有効に利用することが必要じゃないだろうか、こう思っております。これは粗悪炭の利用でございます。
それから他の良質炭の利用でございますが、先ほ
ども言ったように、発電所が
水主火従が
火主水従になりますと、ここで非常に能率が上るということも、これはわれわれ
石炭の
消費者としての義務だろうと考えております。しかし能率が非常に上りますと、絶対の
石炭の
消費量は上るわけでもなさそうでございます。結局出力は非常にふえるけれ
ども、絶対の
石炭の
消費量はそれほどでもないということになるのじゃないかと思います。メタン
ガスのことは申し上げません。
乾溜工業でございますが、これがなかなか問題だろうと思います。私はタウン・
ガスにつきましては、
日本は、先ほ
ども、いろいろ
コークスを作るので
外国炭を入れるとかということがございましたけれ
ども、いかにも
日本の粘
結炭が足りないのでございますからして、できればこれも
国策としましてある
程度完全
ガスをもっと研究する余地があるのじゃないだろうか。これは私全然しろうとでございまして、これは
本田さんの畑でございますから申し上げませんが、そうも考えておるのでございます。そのほか乾溜による
コークスでございますが、これも従来のようた利用方法だけではどうかと考えます。いろいろ高度化したものにもつとやっていきますと、多少
コークスが高くてもその間に吸収いたしますれば負担力が出るということでございまして、これは時間もありませんから申し上げませんが、近ごろ議会でも有機合成
事業の育成の決議もなさったようでございますから、この点をずっと進めていってもいいのじゃないだろうか、こう思うのであります。たとえば
天然ガスからいたしましても、ただメタノールを作るということでございませんで、もっと先から先まで考えていくということも必要じゃないかと思います。これは
コークスからもございますが、さらにその出ました
ガスの利用法等は今日差し上げました私の書いたものがございますから、それでごらん願うことにいたしたいと思います。
それから、タール中からいろいろなものができますが、これな
どももっと私
どもは高度化したものに持っていきたい、こう考えております。これも書いたものに譲りまして申し上げません。ただ
日本独特の研究といたしまして、溶解抽出により、高圧高温により処置すると無灰炭になりまして、アルミニウムの電解等にも使えます。低い温度で常圧にいたしますと膨潤炭になります。あれは弱粘
結性炭を強化することもできます。あるいはまた練炭の粘結剤にもなりますことは御承知の通りであります。
そのほか水素
ガスの問題、これがなかなか問題だろうと思います。ただ、今から二、三十年くらい前からですか、
石炭の
化学工業といいますとすぐ人造石油ということで、私
どもその当時相当大騒ぎしたものでございますが、ちょうどこの人造石油業法ができたのは
昭和九年だったと思いますけれ
ども、近ごろはそれではいけないのでありまして、ことに
日本のような場合は、もしこういうようなものを扱う場合は、もっと高度化したものをやるということが絶対に必要になるわけでございます。これも書いたものをごらん願うことにして申し上げません。
それから炭素化の問題、これはおもしろい問題でありまして、アメリカではカーベート、イギリスではゼラニウム、ドイツでもやっております。
日本でも最初やりまして、これがいろいろな面に範囲の広いものでありまして、こういうものを伸ばしていったらどうかとも考えております。
それからなお水素を作る、アンモニアを作る、硫安を作る、尿素を作るという場合でございますが、私
ども前にやっておった時分は電解より
石炭の方が非常に安かった。その当時は私
どもガス法でやったのでありますが、
石炭が三倍くらいに上っても
石炭による方が電解よりも安かったのであります。最近ではこれが逆になりまして、水の電気分解法によって水素をとるというふうになっておりますが、なお現在でもしかしそういった水の電気分解法によるものが、これは硫安でございますが、三三%、
石炭法によるものが六七%になっております。
石炭は二百五十万トンくらい使っておるのでございますが、これとても今のような状態では比較研究する余地があるのじゃないか。これは私は自分で計算しておりませんから確信はないのでございますが、これは私だけでございませんで、
エネルギーを考える人で私と同じような疑問を持っておる人がございます。そこで、一体
石炭法でやっていいのかあるいは水の電気分解法でやるのがいいのか、これが一つ問題点じゃないだろうか、こういうふうにも考えておるのでございます。それには、今度
日本水素工業でも、具体的にいいますとコッパースから、つまり常磐の割合に低品位炭を使いまして
完全ガス化しましてこれを硫安
原料あるいは尿素の
原料にするようになっております。これとよく比較になります日産
化学では
重油を分解して水素塩にすることを考えております。この辺のところは先ほど申しましたように雇用関係も考えて、われわれが
重油を使った方がいいのか
石炭を使った方がいいのか、あるいは
電力を使った方がいいのかということで、これは
国策として考える余地があるのじゃないだろうかと思います。私はかつていたしましたとき、ウインクラーを使いました。そのとき、前の計算でございますけれ
ども一キュービックメーターの水素に対しまして大体十一円五十銭、普通の
ガス化しますと、ウインクラーによりますと七円八十銭、コッパースによりますと六円七十銭、こんな計算になりまして、非常に進歩したのでございます。たとえば宇部興産でもコッパースを使っておりますけれ
ども、あれよりは格段の進歩をいたしました。こういったことを考えまして、私
どもやはり総合的なこの辺の比較研究も必要じゃないだろうか、こんなふうにも考えておるのでございます。
大へん時間が超過いたしましたが、なおドイツでの最近の
石炭の処置の問題でございますけれ
ども、これはかつては先ほど申しましたように人造石油といった問題がやかましく取り上げられておりました。これはOX法もございましたし、フイッシャー法もございました。最近では改良フイッシャー法も、OX法もできまして、ただ人造石油といったものじゃございません。ずっと高度化した芳香族の炭化水素を作りまして、高級アルコールとか脂肪酸とか合成樹脂可塑剤とか洗剤とか溶剤とか石けんとか、高級
燃料等を作っておるのでございます。こんなふうに、なおルルギーも同じでございます。私
どもは乾留炉をずっと前、ドイツが使ってないときに初めて使って見たときがございましたが、ルルギーの
完全ガス化法として非常に進歩をしました。こういう点を考えまして、特に私は感じるのでございますけれ
ども、どうも
日本が東南アジアに
技術協力をするといったようなことをよく言われますけれ
ども、
日本は何かというとドイツ、アメリカから
技術をもらったり援助を受けておるような状態で、東南アジアにおける
技術援助ができるものかと私は心配するものであります。先ほど申しましたが、やはり
技術の振興ということが何をおいても目下の急務じゃないだろうか、こう考えておるのでございます。そこでドイツは
日本以上の戦災を受けました中で、さっきもコッパースの話をいたしましたし、ルルギーの話もいたしましたが、あるいはアセチリン関係
——このことは申し上げませんでしたけれ
ども、ああいう方面の画期的ないろいろな発明をしておるのであります。
日本もPBレポートを手本にしてやっていた時期は過ぎました。そして何かというとドイツに走るという状態にあるのでございまして、これは
日本として、今後ともわれわれの
立場としましても、よほど反省してこの
技術振興というものに思いをいたしていくのでなければいけないのじゃなかろうか、こうも考えまして、私は繰返して申し上げます。ある
程度の
石炭の
生産は絶対に維持すべきである。これには
政府も
石炭業者も
需要者側も協力する義務がある、こう考えております。それには私
ども需要者といたしましてはできるだけ一つこれを高度化利用をいたしまして、そうして多少炭価は高くとも私たちの手で、
技術の進歩によって吸収していって協力したい。これよりほか方法はないのじゃないか、こんなふうにも考えております。大へん時間を超過いたしまして恐縮いたしました。これで私のお話を終えさしていただきます。