○永山
政府委員 前回大体
綿紡操短についての概要を御
説明いたしましたが、本日はお
手元に綿糸布操短
関係資料というのがお配りしてあるのでございますが、一応これに即しまして最近の
状況を、あるいは先ほど
加藤委員から
お話のありました点につきましても含めて御
説明をいたしたいと思います。
資料の最初に綿スフ織物の操短の実施というのがございますが、これが先般御
説明申し上げたまず綿布織物の方につきまして、市況の改善、価格の改善をする必要があるということで、今年の二月一日から操短の実施をいたしたのでございます。その
資料が最初の綿スフ織物の操短実施ということでございます。ここに詳細書いてございますが、要は先般御
説明申し上げましたように、この一年半ばかりの間に特に綿布につきまして非常に市況が悪くて、その
程度は適正な
企業の運営をおびやかす
程度の
相当にひどいものである。適正な
コストを継続的に慢性的に割って赤字の
状態を出してきておるという
状況でありましたので、昨年の十二月に安定法二十九条を発動いたしまして
設備制限を実施いたしたのでございますが、それを
一つの基礎段階といたしまして、本年二月綿スフ調整組合連合会というものが、従来の操業機に対しまして一割二分
程度の操短、
生産縮小をしたいということで、これを
認可いたしたのでございます。その
効果は、これによって一時的には価格の若干の回復を示したのでございますが、その後の一般の経済
状態の推移あるいは輸出の推移というような事情に伴いまして、、だんだんもとの
状態に返ってしまったというような経緯をたどりました。
それから
資料の第二は、綿糸
生産制限の実施という問題でございまして、これが当面の
綿紡績の操短の
関係の
資料でございます。これはただいま申し上げた織物に対する対策というものにつきましては、もとより糸の
生産をするということが一番有効な
方法であるということは、だれが判断いたしましてもすぐ出る対策であるのでございますが、当時の
状況におきましては、糸と製品、織物との
関係は、織物の価格がただいま申し上げましたように
相当ひどい価格で、慢性的な
不況状況であったというに対しまして、糸の価格はそれほどひどい価格とは言い得なかった事情でありましたので、段階的に、まず今御
説明をいたしました織物についての
生産制限というものを実行いたしたのでございますが、これがただいま申し上げましたような経緯をたどりまして、十分な
効果を得られなかったというような
関係と、その後糸の市況というものがだんだんとひどい
状態になって参る
傾向が出て参りました。そこでこの織物の価格の改善をするためには、やはりどうも糸の
生産制限をせざるを得ぬということ、糸自体の価格がまた
相当下降
傾向を示して参りまして、価格的にいきましても、糸の
生産制限を実行いたしましても、まずそれほどの実害を生み出さぬだろうということ、それからなお前回申し上げましたように、原綿の過剰消費、あるいは輸出価格の改善というような諸理由を総合いたしまして、五月一日から綿糸の
生産制限を実行するということにいたしたのでございますが、その
資料が今申し上げた
資料でございます。内容の点を前回御
説明を申し上げましたのですが、五月、六月ということに、とりあえず期限を二月に限って、従来の操業に対しまして、大体一割二分
生産制限というくらいのところを一般的な基準として実行いたしたのでございます。この
綿紡の操短は、四月の二十日ごろに決定をいたしまして、五月からすぐに実行に入るということでありましたので、五月におきましては各工場、各
会社すぐに操短を実行し得る態勢には必ずしもなかったのであります。実施に至るまで約十日
程度しか期日がなかったのでございますから、労働者の問題、資金の問題、工場経営に伴ういろいろな問題について、必ずしも十分な準備の期日がなかったのでございますが、ただ
綿業界の
状況は、当時におきましても
相当な
不況状況でございましたので、勧告を受けました
紡績業者も極力これに協力するという態度に出まして、五月は混紡糸も含めた数字で十八万一千コリ
程度の
生産に下って参ったのであります。四月は二十万一千コリというところで、大体従来は約二十万
程度の
生産が続けられて参ったのでございます。これはうしろの方に
資料が添えてございますが、綿製品需給表というところに、綿糸の
生産高というのがございます。月によってでこぼこがいろいろでございますが、二十万くらい、平均して十九万七、八千コリになるかと思いますが、約二十万水準の
生産が従来続けられておったのに対しまして、五月は十八万一千コリというところまで低下いたして参ったのであります。おそらくは六月もさらに
効果を上げるのではなかろうかというように期待をいたしておるわけでございますが、六月につきましては操短率を——五月はただいま申し上げたような事情で若干経過的に、各工場とも全部
一つの線に右へならえをするということができかねて、多少の工場についてはやむを得ず経過的な緩和措置を、各通産局長の認定で少数例外を認めて参ったのでございますが、六月につきましても、全部百パーセント右へならえというところまでは困難かと思いますが、五月より一そうその緩和の工場の数あるいはその緩和の
程度というものがしぼられて参っておりますので、六月はさらに目標とする数字に近づいてくるのではなかろうかというように期待いたしておるのでございます。目標とする数字というものは、六月の操短がかりに百パーセント完全に行われるという二とになりますれば、十六万七千コリというくらいなものになると思います。
現在の需要がどの
程度かという点は、見る人によって需要の数字が違うのでございまして、統制経済ではなく自由経済でありますので、いずれも需要ば
政府といえども予想するという以外に出で得ないのでございますが、大体現在の輸出が八千万ヤード前後ございまして、コリ数にいたしまして大体六万から六万五千コリというところに推測をいたしておるのでございます。内需につきましては、特に需要の実体を予想するということは非常に困難でございまして、人によっては十一万もあると言いますし、町あるいは弱気の人は九万とも言います。その問いろいろの推測が行われておりますが、大体十万ぐらいというところに見当をつけております。そういたしますと、需要といたしましては、月々実需要が大体十六万から十七万足らずというところだと思いますが、従って現在の
生産制限というものが完全に行われるということになりますれば、ほぼ需要と供給とが見合うことになるのでございます。ただそれにいたしましても、ここに出ておりまするように、在庫高が糸換算をいたしまして四月末で四十九万六千、約五十万コリございますので、これが市況に対して
相当な圧迫
材料になっておることも事実でございますし、また今後の市況改善に対しても、大きな圧迫
材料になるだろうということも当然予想されるところでございます。需要につきましては、まず何といいましても輸出の
関係を極力出す、振興することがむろん第一義でございまして、先般決定をいたしましたパキスタンに対する輸出も、これは通常の輸出計画に対してばプラス分になる輸出です。従ってこういうものが出て参りますると、先ほど申し上げましたように操短下におきましては
生産と需要とが大体見合うわけでございますから、そうした輸出がよけいに出れば、数字的には在庫が減ってくることになりますので、従ってパキスタン式の輸出あるいはその他一般の輸出にいたしましても、極力輸出を伸ばすことによって需給
関係を改善することが当然その第一義だと思います。ただ現在の
状況からいたしますと、世界的にも綿業はなかなか不景気でございまして、ことしの初めから輸出は御
承知のような
状況で、昨年の後半に比べまして
相当強度な落ち方をいたしておるのでございます。今後先行き輸出が飛躍的に伸びる見込みがあるかという点になりますと、目下その的確な見通しができないというような
状況でございますので、現状においては消極的ながら
生産制限というものを極力励行し、あるいはでき得べくんば
生産制限というものを若干強化をいたしまして在庫を減らしていくことが必要だ、かように考えるのございます。需給
関係の改善の問題は結局そこに尽きるかと思うのでありますが、ただ先般来の綿業、特に綿糸相場の崩落という問題は、先般ここでも御
説明を申し上げましたように、第一の
原因は米綿の先安不安の問題が直接の動機であったように思うのであります。それから第二の
原因ば、今
説明で触れました需給
関係のいわゆる供給過剰ということだと思うのでございますが、その第一の方の
原因は若干薄らいでおるのでございます。あの崩落の当時におきましては、ニューヨークの取引所の相場もあるいはリバプールの取引所の相場も
相当顕著な先安という相場を出しておりましたし、それからアメリカが手持ちの過剰の原綿を輸出する必要から、原綿の輸出に対して補助金を出すのじゃなかろうかという不安がかなり一般的に予想されておったのでございます。後者の方の事情は今もって判明をいたしておりません。従ってまだ出すとも、出さぬとも、あるいは出る場合にどの
程度出るかというようなこともはっきりしていないのでございますが、一時出すかもしれぬということが、いつの間にかむしろ出そうだというようなところまで想像が進んで先般のような
状況になった、いわゆる不安にしんにゅうがかかってきた
状況だと思うのであります。少くとも現状においてはそのしんにゅうの部分がなくなりまして、出るか出ないかわからないという
程度の不安といいますか、不安定な
状態になっております。従ってこの点が解消をしない限りは、それから出て参ります不安のファクターが、何らかの形においてすでに綿糸の価格に
影響をもたらしてくるということは免れ得ない点だと思います。ただしこれも八月一日からアメリカの綿花の年度が改まるわけでございますので、従っておそくとも八月一日までには、何らかの形においてはっきりするのではなかろうかということでございます。
それから需給
関係の問題は先ほど御
説明を申し上げたようなことでございますが、ただ
生産の数量も簡単に減らし得るならば問題の解決はしごく容易でございますが、工場もたくさんの人をかかえ、あるいはまた複雑な金融、あるいは製品の売買というような複雑ないろいろなきずなに縛られております
関係上、これを簡単にさらに強化するということは、なかなかそれに反発をする諸事情がございます。一挙にこれを行うということは、工場も当然生きものでございますから、従ってその点も十分考え合せて実行しなければなりませんので、今後の操短の問題の進め方につきましても、われわれの方としては事態の推移ともにらみ合せながら慎重にその対策を講じておる次第であります。現在の
状態ば、御
承知のようにここ一週間ばかり、かなり相場は持ち直してきておるのでございます。これは
一つには、さきに申し上げた過剰不安といいますか、しんにゅうの部分というものが少くとも米綿の問題についてはかなり緩和してきているんじゃなかろうか、その点が
一つではなかろうかというように考えますし、それから需給
関係も、五月に実施をいたしました操短が六月あるいは七月と逐次日を追うに従ってその
実績を上げてくるのではなかろうか、特に先般の崩落に刺激をされまして、お互いに
政府の勧告を励行していこうというような機運も
相当強くなって参っております。その
生産制限というものが確実に実行されるならば、当然需給
関係の
相当な緩和になるわけでございます。従ってこれを期待をし、あるいはそれを励行する機運が強まってきているというような
状況が、相場の価格の問題にも当然
一つのある意味の好
影響をもたらしてきておる、かように考えるのであります。われわれの方といたしましては、現在
程度の推移で行くならばけっこうだと思っておりますが、ただ供給過剰の
状態が何と申しましても五十万コリからの在庫をかかえておりまして、しかも今後先に何らかいい
材料があるかという点になりますと、米綿
関係にいたしましても、それほど不安なファクターが強いわけではございませんが、今米綿が先行き相場が高くなるというようなことはもとより想像もできませんので、世界的な綿花あるいは綿糸の相場の
影響を受けました場合にも、その
影響が軽くて済むように、動揺が軽くて済むように、できるだけ需給
関係の足を軽くして置くということの必要を感じますので、従って操短問題につきましては、現在の線をできるだけ励行をし、事態の推移によってはさらに強化の線もある
程度考えざるを得ないのではなかろうか、かように考えておるのであります。大体最近の
状態を御
説明申し上げました。