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1955-06-13 第22回国会 衆議院 商工委員会私的独占の禁止並びに公正取引に関する小委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月十三日(月曜日)     午後二時一分開議  出席小委員    小委員長 小笠 公韶君       秋田 大助君    齋藤 憲三君       笹本 一雄君    内田 常雄君       村上  勇君    帆足  計君       伊藤卯四郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         通商産業事務官         (企業局長)  徳永 久次君         通商産業事務官         (繊維局長)  永山 時雄君  小委員外出席者         議     員 加藤 清二君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長官房         総務課長)   熊谷 典文君         通商産業事務官         (繊維局綿業課         長)      金井多喜男君         専  門  員 越田 清七君         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  生産集中企業合同に関する件  綿紡績操業短縮に関する件     —————————————
  2. 小笠公韶

    小笠委員長 これより会議を開きます。  生産集中企業合同に関する件につきまして調査を進めることといたします。まず政府よりその説明を求めることにいたします。横田政府委員
  3. 横田正俊

    横田政府委員 説明の便宜上、まず公正取引委員会で扱っておりまする合併営業の譲り受け等の方法によりまする企業合同傾向につきまして、御説明を申し上げます。  御承知のように昭和二十二年に独禁法が施行になりまして、二十四年の六月に改正がございますまでは、合併営業の譲り受け等はいずれも公正取引委員会認可を必要といたしておりまして、しかも認可をいたしまする条件もかなり厳格になっておりました、従いましてお手元に差し上げました第一表にございますように、合併等の数も比較的少かったのでございます。ところが昭和二十四年六月の改正法律によりまして、認可制が改められまして、いわゆる事前届出制になりまして、届出をしてから一カ月、別に公取から問題があるとしてとめられません限りは、合併等も実行してよろしいということになりまして、また一方企業合同も、機運が次第に醸成されて参ったというような関係からいたしまして、その数が急激に増加して参っておるのでございます。合併におきましては、昭和二十四年の四百四十八件をピークといたしまして、その後逐年減少傾向にありますことは、第一表に示されておりまするが、これは企業集中傾向が減退したことを示すものではございませんで、むしろ弱小企業整理統合が一応完了いたしまして、大企業間における企業集中活動が開始されたというふうに解すべきようでございます。何となれば、第二表の資本金別構成表をごらん願いますと、弱小会社間におきまする統合の数が減少傾向を示しておりますのに反しまして、大規模会社、特にその資本金が一億ないし五億、あるいは十億ないし五十億というような大きな会社の間の統合が著しく増加していることを見ることができるのでございます。それから景気の変動と合併営業の譲り受け等の関係につきましては、必ずしもその関係を明白につけることは困難でございまするか、昭和二十六年度におきまする合併が三百三十一件でございまして、前年度に比して八十九件の減になっておりますのは、昭和二十五年に起きました朝鮮事変一般的好況の結果と見ることが妥当でございましょう。その後事変ブームの終結とともに不況が到来いたしまして、昭和二十七年度においては合併が三百八十五件、前年度に比して五十四件の増加を見せておりますのは、不況に基く企業統合増加と言うことができるでございましょう。さらにこの不況時代から、いわゆる企業系列化動きが活発となりまして、製鉄業その他各種分野におきまして大企業を中心とする企業統合が促進されて参りましたことは、見のがし得ない事実でございます。ただ企業系列化の場合は、必ずしも合併営業の譲り受け等の直接的な統合方式をとりませんで、昭和二十八年九月の独禁法改正によりまして、競争会社間の株式所有役員兼任等がある程度認められるようになりましたことによりまして、これら株式所有役員兼任等手段によりまして支配関係を拡大強化して企業系列化をはかっていることがうかがい知れるのでございます。なお昭和二十九年度について見ますと、前年度に比しまして合併件数減少しておりまする一方、営業譲り受けの件数増加しておりますが、これは企業統合手段といたしまして、危険の割合に多い合併方式をとることを避けまして、その危険が比較的に少い営業譲り受けの方式をとる傾向が増大したために起った現象ではないかと考えられるのでございます。  大体合併営業譲り受け等を通じまして見られまする企業合同につきましての概括的な御説明は以上の通りでございますが、今までに公正取引委員会で扱いました事件の中でやや問題となったものの一、二を申し上げますと、たとえば磐城セメントが、富士セメント東洋セメント、助六石灰工業という三社を合併いたしました場合には、かなりその生産能力増加したのでございまするが、御承知のようにセメントにつきましてはなお他に有力な業者がございますので、一応問題にはいたしましたが、この合併は認められることになったのでございます。それから旧住友本社林業部、これはメモランダムによりまして六分割されたのでございますが、その後統合をいろいろ企図いたしまして、昭和二十九年末に至りまして六社の統合を完了いたしまして、住友林業として再発足をいたしたのでございます。これはメモランダムの趣旨には反するわけでございますが、しかし独占禁止法の線に照らして、新会社能力等を考えます場合には、格別に問題にする程度ではございませんので、この統合も認めたのでございます。  さらに旧三菱商事系商社統合は何回にもわたって行われておりまして、特に不二商事は数個の同系統の会社合併されたものでございます。あるいは東西交易、これも数社の合併の結果なったものでございます。東京貿易、これも数社の合併の結果なったものでございますが、その三社がさらに合併いたしまして三菱商事系会社統合が行われたのでございます。これもこうなりますとかなり能力が増して参ります。しかしこれとてもいわゆる戦前の三菱商事等に比べますと、諸般の点におき.ましてとうてい問題にならないのでございまして、これもやはやはり独禁法現行法の規定に照らしまして認めたわけでございますが、しかしその三菱商事につきましては、いわゆる旧財閥系のものでもございますし、今後の動向というようなことについては相当注意を要すべきものがあるように考えております。  なおやはり同じ三菱につきましては、三菱地所、陽和不動産開東不動産、これはやはり解体を命ぜられてこの三社になったものでございますが、これが昭和二十七年に合併をいたしまして、これも三菱のあの辺をいわゆる一つ取引分野と見まする場合に相当パーセンテージを占めることになるのでございますが、しかし他にいろいろな不動産会社もできております関係、あるいは三井不動産というような有力なものが他にございます関係で、やはり独禁法上問題にならないということになったわけであります。  なおこれは最近に申請手続がございましたが、御承知三井系の三社の合併の問題がございます。これはやはり三菱商事と同じように、旧三井物産系商社がかなり何回にもわたりまして合同を重ねて参りまして、その結果、最近に至りまして第一物産、日本機械貿易及び第一通商、この三社が営業譲り受け及び合併の二つの方法によりまして一つ合同するということになっておりますが、これもやはり先ほど申し上げました三井物産の例と同じように、現行法のもとにおきましては、さまで問題にする必要がないように思われるのでございます。しかしこれはまだ申請があったまででございまして、まだ一カ月の期間を経過しておりません。なおこういうふうにいたしまして、最近にいろいろ合同傾向が見えておりまして、これはある意味におきまして、特に商社関係等につきましては、非常に弱小な商社がかなり有力なものとなり、国際場裏に有力な活動ができるという面から申しますと、むしろ好ましい点があるのでございますが、しかしここにもやはり限度がございまして、これは非常に有力なものになります半面におきまして、いろいろな手段によりまして他の事業者活動を不当に制約するという面が出て参りますことにつきましては、公正取引委員会として十分に注意をして参りたいと考えております。  それから企業集中の問題につきましては、お手元主要産業における生産集中度というものを表にいたしまして、大体各産業につきまして上位五社の生産実績、それからその企業において占めます集中度パーセンテージというようなものをあげまして、さらに累積集中度というものをパーセンテージにして示してございますが、これをごらんいただきますれば、最近におきまするこれらの主たる産業集中度を御理解願えると思うのでございます。公正取引委員会におきましては、ここにあげました産業は、わずかに三十業種でございまして、このほかになおその他の、これはおもに生産業でございますが、その他のものにつきましても、現在二十九年度の資料を集めつつございますし、なお既往にさかのぼりましては、昭和十二年におきます、つまり日本が戦争に入ります前におきます昭和十二年のいろいろな産業集中度調査いたしますと同時に、終戦後の昭和二十四年度につきまして、やはり各種産業につきまして集中度調査して簡単な書物にいたして、すでに発行いたしておりますが、それから五年たっております二十九年度のこれを御比較願いますと、大体の動きが御理解願えると思うのでございます。この各産業につきまして一々詳しいことを申し上げますことは、はなはだ煩瑣になりますので省略いたしますが、ごく簡単に申し上げますと、昭和二十四年当時に比べますと、概して上位三社とかあるいは五社とかあるいは十社の集中度割合に下っておるということがわかるのでございますが、しかしこれはやはり各業種によりまして、そう一概には申せないのでございまして、たとえば電球でございますとか、硫安でございますとかいうようなものについて見ますと、集中度相当に高まっていることがわかるのでございます。一面にかなり低まっておるものもございます。たとえば造船綿紡あるいは綿織物関係石油精製関係というようなものはかなり下っておりますが、この下っております原因も各産業それぞれの特質がございますが、たとえば造船業等につきましては、御承知のように新しい造船会社が非常にできておりますこと、あるいは綿紡等につきましては、御承知のように新紡、新々紡というような著しい数の新しい事業者が興りまして、しかもそれらがいろいろな関係から非常に生産設備を拡大いたしましたような関係から、いわゆる十大紡績実績が、集中度の方から見ますと、非常に落ちておるということが見られるのでございます。しかしこれはやはり落ちておるとは申しながら、依然その業界においては隠然たる力を持っておることは御承知通りでございまして、この集中度が下ったということだけで、その事業界における地位を簡単に云々することはできないのでございます。綿織物につきましては、御承知のように、これまたおびただしい数の設備増加がございました結果、やはり集中度というものは非常に下っておるわけでございます。しかしこれは御承知のように昨年あるいはことしというような非常に不況時期を過ぎて参りますと、だんだんそういう中小のものが倒れて参る、これは一面には、中小のものは倒れましても、またその同じ設備を持ちまして、新しく他のものが興ってくるという現象もございますが、やはりこれには限度もあろうと存じますので、こういう不況時を通りましたそのあとの結果から見ますると、あるいはまた上位会社集中度が高まっているというような現象が見られるのではないかと思うのでございます。なおいろいろ個々企業については申し上げたいことがたくさんございまするが、この程度にいたします。なおこのたくさんの企業の中には、すでに御承知のように、たとえば原油のごとくほとんど一社が九八%の生産量を占めておるというようなものがございますし、あるいは板ガラスは二社の独占的な企業でございます。あるいはフィルム、ビール、アルミの地金というようなものに至りますと、これは全く三社の独占というような形になっておるわけでございます。またその独占企業の間にまた興ったり、抜いたり抜かれたりというような関係がございますが、そもそもわずかな企業で全企業が支配されておるというような状態でございます。これはやはり競争を促進するというような面から申しますると、相当注意を要する業界であるというふうに理解できると思うのでございます。  はなはだ簡単でございまするが、以上をもちまして、集中並びに最近におきます企業合同傾向のごく簡単な御報告でございましたが、一応私の御報告を終ることにいたします。
  4. 小笠公韶

    小笠委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。  なおこの際、小委員外商工委員の御発言につきましては、随時これを許すことにいたしたいと存じますので、御了承願います。加藤清二君。
  5. 加藤清二

    加藤清二君 ただいま横田さんから、詳細にわたって企業合同に関する原因、それから今までの経過というものについて承わりましたが、このことが行われましたことから生ずる影響でございます。たとえば生産会社合同したおかげで大へん生産の能率が上ったとか、あるいはコストが下ったとか、あるいはまた商社合同したおかげ貿易が伸びたとか、あるいはその会社の成績が非常に向上したとかというような好影響がございましたら承わりたいのでございます。それからまたこれが行われたことによりまして、あるいは国民経済の上に、あるいは同業種業界相当悪影響をも及ぼしたではないかと考えられる節がございまするが、そういうことは杞憂にすぎないのか、果してあったのかなかったのか。この点まず及ぼされた影響がお手元にわかっておりましたならばお漏らしを願いたいのでございます。  それからもう一つ、またこの企業系列化につきましては、ただいま御説明がございましたように、これは一つの流行のようにあちらでもこちらでも今後もなおこの傾向が続いて行われようとする空気が見えておるようでございまするが、この事柄は今後生産会社においては一体どの企業に多く行われようとしているか。そのことは国家経済から考えて望ましいことであるのか。あるいはそのことは望ましいことかもしれないが、それから生ずるところの悪影響が思考されるとするならば、その功罪をあわせバランスしてみて、果していずれが国家経済に得であるか。もし悪影響を除去してもなおやらなければならないということならば、政府におかれましてはこの悪影響未然に防ぐところの措置が講ぜられているかいないか。この点は公取委には関係がないかもしれませんが、これをもしここでお漏らし願えるならば大へん仕合せに存ずるわけであります。
  6. 横田正俊

    横田政府委員 合同傾向にかんがみまして、その結果よい影響があるというようなことを調べたことがあるか、あるいはその結果どういう悪い影響が起ったというようなことを公取として認めておるかという点でございますが、これはそういう個々合併の結果の調査というものをまだ十分にいたしておりませんので、これは抽象的にはいろいろ申し上げられるかと思いますが、しかしその点につきまして自信をもちまして、その合同の結果どういうよい影響、ことにコストの引き下げというようなことが行われたかどうかにつきましては、ここではっきり申し上げる資料を持っておりませんことをはなはだ残念に存ずる次第でございます。しかしこれらの点は、いずれある時をかけますればおのずからそういう結果が出て参ると思いますので、ただいまのお話十分心にとどめまして、そういうようなあと調査と申しますか、監査と申しますか、そういうことに意を注いで参りたいと考えております。  次に系列化傾向がだんだん見えるというお話でございますが、これはまさにおっしゃる通りでございます。特にどの業界にそのことが著しいかということにつきましては、いろいろ見方もございましょうが、たとえば鉄の関係等におきましては、いろいろそういうことがうわさされておりまするし、またそういうことを非常に強く希望しておるような向きもあるように存ずるのであります。この系列化につきましては、われわれの立場を簡単に申し上げまするならば、系列化、つまりある企業が他の企業と縦につながりまして、その間に密接な連絡をとって事業を営むということは、種々の面においてよい点があることは想像できるのでありますが、しかしその系列化なり企業結びつきというものは、あくまでも自由な意思に基く自然な結びつきでなければならないのでございまして、この点は独占禁止法にはいわゆる不公正な取引方法というものをいろいろ規定しておりますが、それらの手続によって行われます場合には、これはやはり独占禁止法の問題としてそういう不自然なやり方による系列化は防止しなければならないと考えております。なお系列化の結果いろいろの利点がある反面に、そこにはやはりいろいろな面で事業の自由な活動の性格というものがあるはずでございますので、それが度を越して参りますと、結局日本のその企業なりその他の関連産業なりにいろいろな不当な不利益を及ぼすという結果にも陥りかねないのでございまして、この点につきましては、われわれといたしまして独占禁止法の線に沿いまして、それらの点にまでこれが及んで参りました場合には、是正方を講ずる覚悟でおるわけでございます。  それから利害得失いろいろございます場合に、まずその調整をどうするか。あるいはそのおもしろくない点を防止して、よい点だけを伸ばすように、何か国家として考うべきではないか。まず現にどういうことをやっておるかというお尋ねでございますが、この点につきましては、公正取引委員会としましては、そういう面につきまして特に何とも申し上げることはないのでございまするが、しかしわれわれの立場といたしましては、主としてその弊害面を見るのが公正取引委員会の任務ではございまするが、しかし他にいろいろな手段を講じまして、その弊害面を除去するということが保証されまするならば、われわれといたしましても、必ずしも独占禁止法のいわゆる自由競争の促進という線それのみが金科玉条とは考えておりませんので、そういうような点に政府としまして十分な手が打てますことは、われわれとしましても非常に望ましいことと考えておる次第であります。しかしそちらの面につきましては種々の諸官庁がございますので、そちらの方で十分に考えていただきたいと考えております。
  7. 加藤清二

    加藤清二君 お説ごもっともでございまして、私も戦後雨後のたけのこのようにぞくぞくと生まれました企業が、今日のこの状態のままにおいて、あのはげしい世界市場でけんかができるとは思いません。何らかの形においてコストを引き下げる、あるいはロスを省くということを行わなければならないことは、産業人であればだれしも考えることでございまするが、政治家としてはここから生ずるところのいわゆる悪影響をどう未然に防ぐかということをよく心得た上において施策を施さなければ、この悪影響おかげ倒産し、あるいはつぶれていく者が、結局政府の打った手、あるいは大きな業界の打った手を喜ばずに恨む結果が生じてくると存じます。このことは国家にとっても、あるいは国家経済にとっても大きなマイナスではないか、こう思うわけでございます。ここに私の関係しているところから一例を拾い出してみまするならば、今日綿業界が、戦後初めての不況にぶつかった大いなる転換期に立たされている、こういわれておりまするが、これに先だちまして、すでに御承知通り機場は二十九条の発動をみずから政府にお願いをして、自粛自戒をしているのでございまするけれども、その効果というものは一向に予定したほどかんばしくない。また政府の方におかれましても、十大紡を初めといたしまして、この綿業界に操短という救いの手を伸べられたわけでございますが、これも綿業界不況を打開するにはそれほど万能薬ではない。この効果はもそっと先へいかなければはっきり出てこない、こういう状況下にありまして、すでに系列化ということが前々から業界には起っておったのでございます。この系列化資本の面の系列化でございましたが、これはやがて材料の面にも及んでくることになりました。すなわちこの親会社系列下にあれば思いの糸がもらわれるけれども、親会社系列下にない場合には希望するところの糸がなかなか入手できない。こういうことの結果は、ついに好まざる糸でも入手でき得る糸を買って織らなければならない。こういうことになりまして、中小機場、つまり系列からはずれた機場は、あるいは向うのバイヤーあるいはエージェントなりから注文受けた通りの品物を作るということが非常に困難な状況に追い込まれております。これは繊維局長さんも綿業課長さんもいらっしゃいますから周知のことと存じますけれども、もう一つは金融の面で系列に入っておれば割合融資が容易に行われる、ところが系列に入っていないとなりますると、ここはなかなかこの努力をいたしましても銀行融資さえも十分に行われない、材料の面、税金の面、販売の面で押されたこの方々は、せめて資金繰りの面へと銀行へ殺到しても、ここでもまたつれない態度をとられる。やがてこの関係商社がばたばた倒れ、そのしわ寄せば機場にも参りまして倒産が続出したことを公取委員長もよく御存じだと思います。また最近に至りましては泉南の方にもこの傾向が盛んに見られるでございましょう。これにつきまして一体これをこのままの姿に放置してよいものか、政府としてはどのような施策があるのか、業界としてはひたすらに政府からの救いの手をのみこいねがっているというのが現状のようでございまするが、今にしてこのことを放置するならば、この春からきょうこのごろにかけまして泉南に起りましたあの倒産影響は、やがて尾西地区から知多あるいは浜松の綿業地帯、特に機業地帯にも必ずやこの連鎖反能を及ぼしてくるということは火を見るより明らかなことと存じまするが、一体政府の方としてはこれに対してどのような救いの手を伸べられようとしておられるのか。この点は繊維局長からも承わりたいことでございまするが、まず公取委としては先ほどおっしゃいましたように、この悪影響の面を考えなければならないとおっしゃいましたのですが、考えていらっしゃるとするならばこれに対するいかなる施策がございましょうか、承わりたいのでございます。もちろん私の申し上げておりまするこの綿業界不況ということは、決してこの原因企業合同とか系列化だけにあるのだということはございません。長年にわたって放置されまして自由放任の姿に置かれた施策の結果のしわ寄せが、ここに来ていることは事実でございまするが、それにかてて加えてこの企業系列化は追い打ちをかけているように思われるのでございまするが、この点ぜひ一つ救いの手のうちを見せていただきたいものだと存ずるわけでございます。
  8. 横田正俊

    横田政府委員 ただいま系列の過程におきまするいろいろなおもしろくないことは、たとえば不公正の取引方法として取り締るというようなことを申し上げましたが、その問題はやはり系列をはずれたものに対して、系列外にあるということを理由にいたしまして、たとえば原料の供給の道を断つとか、あるいは非常な差別的な価格でそれを供給するとかいうようなことが、非常に顕著であるというような場合につきましては、先ほど申しました不公正な取引方法の問題になり得るのではないかと考えております。しかしこの問題は非常に微妙な問題でございまして、いろいろなそのケース、ケースの具体的な事実と非常に密接な関係がございまするので、はなはだ抽象的なお答えしか申し上げられませんが、しかし筋はそういうようなことになるのではないかと考えておる次第でございます。金融の点につきましても、さらにこれはもっと非常に微妙なものを含んでおるのでございます。しかしこれもやはりもしその間に非常な差別的な関係がございますれば、問題は同じことになるのではないかと考えております。
  9. 加藤清二

    加藤清二君 貿易商社の統制というような言葉が、当てはまるかはまらぬかは知らないのでございますが、商社活動そのものは、外貨の割当によってその領域がほとんど限定されているようでございまするが、これは輸入の場合でございまするけれども、商社がものを輸出しようとする場合に、その統制とか制限とか限定とかいうことが、公取委の方では行われたことがございますか、ございませんか。終戦後だけのことでけっこうでございます。
  10. 横田正俊

    横田政府委員 ただいまの御質問に、あるいは少し筋のはずれたお答えになるかと思いまするが、公取委の仕事といたしましていろいろ貿易関係、ことに輸出関係動きを見ておりますと、特に商社による過度の競争を防止するというような観点からいたしまして、たとえば生産業者が輸出します物資につきまして、いわゆる商社を指定いたしまして、その商社を通じてのみ出すというような問題が相当あるようでございます。これはやはり輸出入取引法の問題とも関連してくるわけでございますが、公正取引委員会といたしましては、この輸出入取引法の問題につきましても、ある程度そういう協定によって歩調をそろえるという必要は十分認めるわけでございますが、やはりその度が問題でございまして、結局輸出入取引法の要件の言葉を借用して申しますならば、いわゆる関連業者の利益を不当に害するというおそれがあるかないかということが、この問題を決する基準になるわけでございまして、はなはだしくその商社の窓口を狭めるというような結果、他の商社が不当に押し出されるようなことがあることは、われわれといたしましては十分警戒しなければならぬことと考えております。これはあるいはただいまの御質疑に対して、ちょっと的はずれの御返事かもしれませんが、そういうことがわれわれの仕事を通じて感ぜられるのであります。
  11. 加藤清二

    加藤清二君 今の問題でございますが、私の質問があまり簡単過ぎて、御了解願えなかったかもしれませんが、現在お説のように、いろいろな不当競争や、あるいは不当ダンピングを防くために、 チェック・プライスやフロア・プライスがあるとか、あるいはミシン業界のダンピングに対してある程度の勧告を発したとか、あるいはまたバンブー・チャイナについてはある程度の制限を加えたとか、こういうことは、これは業界全般のことでございまして、この点はよく知っておりますし、また輸出入取引法にも違反しないはずだと存じますが、私がお尋ねしておりますことは、すでに通産大臣にも尋ねましたし、それから通商局長にも、先般貿易促進特別委員会で尋ねたことでございますけれども、たとえば国を限定して輸出する場合に、その国への輸出の権限、権能というものを商社を限って与える。甲乙丙丁とあった場合に、甲乙にはこの権限を与えるが、丙には与えない、こういうようなことが戦後公取委で問題にされたことがありますか、ありませんかということだけです。ありますか、ありませんか、これだけのことでございます。
  12. 横田正俊

    横田政府委員 詳しいことは調査した上でお答えいたしたいと思いますが、ただいま記憶にございますのは、たしかアルゼンチンに対しまして鉄鋼を輸出いたします際に、商社を限定するというような問題があったように記憶いたしておりますが、しかしこの場合も、たしか一社とかいうような、非常に限定的なものではなかったように思っております。なおその他にもそういうような問題がございますかどうか、その点はもう少し調べてからお答えいたします。
  13. 加藤清二

    加藤清二君 委員長みずからが御存じないということであれば、わそらくこの問題はそう重要には取り上げられなかったのじゃないかと存じますが、御承知のトルコとの貿易につきまして、あなたのところから発行されておりまする書物の中に、七社を限定されたところの経過が載っておるのでございます。私今ここへ持ってこなかったのですがね。しかしそのことは、どうも公取委の方でおやりになりたことではなくて、通商局の方でおやりになったようでございます。その結果は、当然この貿易は——御承知通り向うが非常にインフレでございます。そのおかげで、いわばバーターのような格好になっている。買わなければ売れないというようなことでございますが、これをどういう法律によって、制限令によって定められたものか、七社に限定されたのでございます。その結果どういうことが起ってきたかと申しますと、協約の中にうたわれました貿易額の数字は非常に遠慮した数字でございましたにもかかわらず、目下のところその数字の二〇%にも到達していない、つまり貿易が行われないという結果が生じて参ったのでございます。これは一体なぜそういうことが起きたかと申しますと、その七社なるものが、戦前の実績はなるほどあったのでございますが、戦後の実績とか、あるいはこの国の輸出入に対する意欲を持たない会社に限定されて、ほんとうにこの国情をよく知り——ここへ一体何が向くか、向うから何を持ってくればよろしいかの問題を、抽象的には知っていても、具体的に新しい情報を知らない方々が、金刀比羅会談のおかげで、決定された。それが今日この悪影響を及ぼしている。当然通産大臣のい三ところの拡大均衡は、ここにおいても十分に行い得るはずであるのに、これのみは商社を限定されたおかげで、行われていないということは、これは日本貿易業界のみならず、向うのトルコの政府に対しても申しわけないことであるし、あるいはまたトルコの新聞業界も、この点については相当非難の論調を載せていることが寄せられておりますけれども、これについて、かようなことがございましたとしたならば、公取委としては、これは拱手傍観される筋合いのものでございましょうか、それとも調査の価値のある仕事でございましょうか、公取委委員長にお尋ねするわけでございます。
  14. 横田正俊

    横田政府委員 ただいま伺いまして、もう少しいろいろ具体的な事実を把握いたしませんと何とも申し上げられませんが、しかしそういうようないろいろな問題が含まれておるもののように思われますので、この点はいずれ役所に帰りましてから十分に資料を収集いたしまして、研究いたしたいと思います。
  15. 加藤清二

    加藤清二君 通商局長も通産大臣も、このことについては苦慮している、あなたのおっしゃる通りに、拡大均衡の上からいっても、日本の経済にとってもマイナスのことである、従ってこれは早急に調査し、そうして善処するという答えでございました。すでに通商局長のところへは、いわゆる指定された以外の業界からどんどん苦情が出ているようでございます。通商局長はこのことをよく御存じでございます。そこでほんとうに輸出拡大ということが日本経済立て直しのキー・ポイントである今日のこの国情から見まして、ぜひ公取委の方といたしましても、そういう精神になり変った通産大臣や通商局長に御協力いただきまして、一日も早くせっかく結びましたトルコとの協定が円滑に実現できるよう御協力願いたい、かように要望いたしまして私の質問を終ります。     —————————————
  16. 小笠公韶

    小笠委員長 次に前会に引き続き綿紡績操業短縮に関する件について調査を進めます。前回の小委員会におきまして政府よりその概要について一応の説明を聴取いたしましたが、その後の経過についてまず政府より説明を聴取することにいたしたいと思います。永山政府委員。
  17. 永山時雄

    ○永山政府委員 前回大体綿紡操短についての概要を御説明いたしましたが、本日はお手元に綿糸布操短関係資料というのがお配りしてあるのでございますが、一応これに即しまして最近の状況を、あるいは先ほど加藤委員からお話のありました点につきましても含めて御説明をいたしたいと思います。  資料の最初に綿スフ織物の操短の実施というのがございますが、これが先般御説明申し上げたまず綿布織物の方につきまして、市況の改善、価格の改善をする必要があるということで、今年の二月一日から操短の実施をいたしたのでございます。その資料が最初の綿スフ織物の操短実施ということでございます。ここに詳細書いてございますが、要は先般御説明申し上げましたように、この一年半ばかりの間に特に綿布につきまして非常に市況が悪くて、その程度は適正な企業の運営をおびやかす程度相当にひどいものである。適正なコストを継続的に慢性的に割って赤字の状態を出してきておるという状況でありましたので、昨年の十二月に安定法二十九条を発動いたしまして設備制限を実施いたしたのでございますが、それを一つの基礎段階といたしまして、本年二月綿スフ調整組合連合会というものが、従来の操業機に対しまして一割二分程度の操短、生産縮小をしたいということで、これを認可いたしたのでございます。その効果は、これによって一時的には価格の若干の回復を示したのでございますが、その後の一般の経済状態の推移あるいは輸出の推移というような事情に伴いまして、、だんだんもとの状態に返ってしまったというような経緯をたどりました。  それから資料の第二は、綿糸生産制限の実施という問題でございまして、これが当面の綿紡績の操短の関係資料でございます。これはただいま申し上げた織物に対する対策というものにつきましては、もとより糸の生産をするということが一番有効な方法であるということは、だれが判断いたしましてもすぐ出る対策であるのでございますが、当時の状況におきましては、糸と製品、織物との関係は、織物の価格がただいま申し上げましたように相当ひどい価格で、慢性的な不況状況であったというに対しまして、糸の価格はそれほどひどい価格とは言い得なかった事情でありましたので、段階的に、まず今御説明をいたしました織物についての生産制限というものを実行いたしたのでございますが、これがただいま申し上げましたような経緯をたどりまして、十分な効果を得られなかったというような関係と、その後糸の市況というものがだんだんとひどい状態になって参る傾向が出て参りました。そこでこの織物の価格の改善をするためには、やはりどうも糸の生産制限をせざるを得ぬということ、糸自体の価格がまた相当下降傾向を示して参りまして、価格的にいきましても、糸の生産制限を実行いたしましても、まずそれほどの実害を生み出さぬだろうということ、それからなお前回申し上げましたように、原綿の過剰消費、あるいは輸出価格の改善というような諸理由を総合いたしまして、五月一日から綿糸の生産制限を実行するということにいたしたのでございますが、その資料が今申し上げた資料でございます。内容の点を前回御説明を申し上げましたのですが、五月、六月ということに、とりあえず期限を二月に限って、従来の操業に対しまして、大体一割二分生産制限というくらいのところを一般的な基準として実行いたしたのでございます。この綿紡の操短は、四月の二十日ごろに決定をいたしまして、五月からすぐに実行に入るということでありましたので、五月におきましては各工場、各会社すぐに操短を実行し得る態勢には必ずしもなかったのであります。実施に至るまで約十日程度しか期日がなかったのでございますから、労働者の問題、資金の問題、工場経営に伴ういろいろな問題について、必ずしも十分な準備の期日がなかったのでございますが、ただ綿業界状況は、当時におきましても相当不況状況でございましたので、勧告を受けました紡績業者も極力これに協力するという態度に出まして、五月は混紡糸も含めた数字で十八万一千コリ程度生産に下って参ったのであります。四月は二十万一千コリというところで、大体従来は約二十万程度生産が続けられて参ったのでございます。これはうしろの方に資料が添えてございますが、綿製品需給表というところに、綿糸の生産高というのがございます。月によってでこぼこがいろいろでございますが、二十万くらい、平均して十九万七、八千コリになるかと思いますが、約二十万水準の生産が従来続けられておったのに対しまして、五月は十八万一千コリというところまで低下いたして参ったのであります。おそらくは六月もさらに効果を上げるのではなかろうかというように期待をいたしておるわけでございますが、六月につきましては操短率を——五月はただいま申し上げたような事情で若干経過的に、各工場とも全部一つの線に右へならえをするということができかねて、多少の工場についてはやむを得ず経過的な緩和措置を、各通産局長の認定で少数例外を認めて参ったのでございますが、六月につきましても、全部百パーセント右へならえというところまでは困難かと思いますが、五月より一そうその緩和の工場の数あるいはその緩和の程度というものがしぼられて参っておりますので、六月はさらに目標とする数字に近づいてくるのではなかろうかというように期待いたしておるのでございます。目標とする数字というものは、六月の操短がかりに百パーセント完全に行われるという二とになりますれば、十六万七千コリというくらいなものになると思います。  現在の需要がどの程度かという点は、見る人によって需要の数字が違うのでございまして、統制経済ではなく自由経済でありますので、いずれも需要ば政府といえども予想するという以外に出で得ないのでございますが、大体現在の輸出が八千万ヤード前後ございまして、コリ数にいたしまして大体六万から六万五千コリというところに推測をいたしておるのでございます。内需につきましては、特に需要の実体を予想するということは非常に困難でございまして、人によっては十一万もあると言いますし、町あるいは弱気の人は九万とも言います。その問いろいろの推測が行われておりますが、大体十万ぐらいというところに見当をつけております。そういたしますと、需要といたしましては、月々実需要が大体十六万から十七万足らずというところだと思いますが、従って現在の生産制限というものが完全に行われるということになりますれば、ほぼ需要と供給とが見合うことになるのでございます。ただそれにいたしましても、ここに出ておりまするように、在庫高が糸換算をいたしまして四月末で四十九万六千、約五十万コリございますので、これが市況に対して相当な圧迫材料になっておることも事実でございますし、また今後の市況改善に対しても、大きな圧迫材料になるだろうということも当然予想されるところでございます。需要につきましては、まず何といいましても輸出の関係を極力出す、振興することがむろん第一義でございまして、先般決定をいたしましたパキスタンに対する輸出も、これは通常の輸出計画に対してばプラス分になる輸出です。従ってこういうものが出て参りますると、先ほど申し上げましたように操短下におきましては生産と需要とが大体見合うわけでございますから、そうした輸出がよけいに出れば、数字的には在庫が減ってくることになりますので、従ってパキスタン式の輸出あるいはその他一般の輸出にいたしましても、極力輸出を伸ばすことによって需給関係を改善することが当然その第一義だと思います。ただ現在の状況からいたしますと、世界的にも綿業はなかなか不景気でございまして、ことしの初めから輸出は御承知のような状況で、昨年の後半に比べまして相当強度な落ち方をいたしておるのでございます。今後先行き輸出が飛躍的に伸びる見込みがあるかという点になりますと、目下その的確な見通しができないというような状況でございますので、現状においては消極的ながら生産制限というものを極力励行し、あるいはでき得べくんば生産制限というものを若干強化をいたしまして在庫を減らしていくことが必要だ、かように考えるのございます。需給関係の改善の問題は結局そこに尽きるかと思うのでありますが、ただ先般来の綿業、特に綿糸相場の崩落という問題は、先般ここでも御説明を申し上げましたように、第一の原因は米綿の先安不安の問題が直接の動機であったように思うのであります。それから第二の原因ば、今説明で触れました需給関係のいわゆる供給過剰ということだと思うのでございますが、その第一の方の原因は若干薄らいでおるのでございます。あの崩落の当時におきましては、ニューヨークの取引所の相場もあるいはリバプールの取引所の相場も相当顕著な先安という相場を出しておりましたし、それからアメリカが手持ちの過剰の原綿を輸出する必要から、原綿の輸出に対して補助金を出すのじゃなかろうかという不安がかなり一般的に予想されておったのでございます。後者の方の事情は今もって判明をいたしておりません。従ってまだ出すとも、出さぬとも、あるいは出る場合にどの程度出るかというようなこともはっきりしていないのでございますが、一時出すかもしれぬということが、いつの間にかむしろ出そうだというようなところまで想像が進んで先般のような状況になった、いわゆる不安にしんにゅうがかかってきた状況だと思うのであります。少くとも現状においてはそのしんにゅうの部分がなくなりまして、出るか出ないかわからないという程度の不安といいますか、不安定な状態になっております。従ってこの点が解消をしない限りは、それから出て参ります不安のファクターが、何らかの形においてすでに綿糸の価格に影響をもたらしてくるということは免れ得ない点だと思います。ただしこれも八月一日からアメリカの綿花の年度が改まるわけでございますので、従っておそくとも八月一日までには、何らかの形においてはっきりするのではなかろうかということでございます。  それから需給関係の問題は先ほど御説明を申し上げたようなことでございますが、ただ生産の数量も簡単に減らし得るならば問題の解決はしごく容易でございますが、工場もたくさんの人をかかえ、あるいはまた複雑な金融、あるいは製品の売買というような複雑ないろいろなきずなに縛られております関係上、これを簡単にさらに強化するということは、なかなかそれに反発をする諸事情がございます。一挙にこれを行うということは、工場も当然生きものでございますから、従ってその点も十分考え合せて実行しなければなりませんので、今後の操短の問題の進め方につきましても、われわれの方としては事態の推移ともにらみ合せながら慎重にその対策を講じておる次第であります。現在の状態ば、御承知のようにここ一週間ばかり、かなり相場は持ち直してきておるのでございます。これは一つには、さきに申し上げた過剰不安といいますか、しんにゅうの部分というものが少くとも米綿の問題についてはかなり緩和してきているんじゃなかろうか、その点が一つではなかろうかというように考えますし、それから需給関係も、五月に実施をいたしました操短が六月あるいは七月と逐次日を追うに従ってその実績を上げてくるのではなかろうか、特に先般の崩落に刺激をされまして、お互いに政府の勧告を励行していこうというような機運も相当強くなって参っております。その生産制限というものが確実に実行されるならば、当然需給関係相当な緩和になるわけでございます。従ってこれを期待をし、あるいはそれを励行する機運が強まってきているというような状況が、相場の価格の問題にも当然一つのある意味の好影響をもたらしてきておる、かように考えるのであります。われわれの方といたしましては、現在程度の推移で行くならばけっこうだと思っておりますが、ただ供給過剰の状態が何と申しましても五十万コリからの在庫をかかえておりまして、しかも今後先に何らかいい材料があるかという点になりますと、米綿関係にいたしましても、それほど不安なファクターが強いわけではございませんが、今米綿が先行き相場が高くなるというようなことはもとより想像もできませんので、世界的な綿花あるいは綿糸の相場の影響を受けました場合にも、その影響が軽くて済むように、動揺が軽くて済むように、できるだけ需給関係の足を軽くして置くということの必要を感じますので、従って操短問題につきましては、現在の線をできるだけ励行をし、事態の推移によってはさらに強化の線もある程度考えざるを得ないのではなかろうか、かように考えておるのであります。大体最近の状態を御説明申し上げました。
  18. 小笠公韶

    小笠委員長 何か御質問はありませんか。
  19. 加藤清二

    加藤清二君 この近年まれに見る綿業界繊維業界不況に対して、繊維局長が日夜大へん苦慮をしていらっしゃることはよく存じておりまするが、何と申しましても、先ほど局長がおっしゃいましたように、この不況を打開する根本の策は輸出を振興することだと存じます。国内市場の開拓もさることながら、輸出を振興する、市場を海外に求めるということが一番大事なことだと思いますけれども、その海外市場の非常にいい市場を、日本政府施策の手おくれのゆえに放棄しているという国がありますが、それは御承知のインドネシアです。これにつきましては、局長も非常にここに輸出が伸びるべく御努力なされ、過去にアメリカの関係筋へも交渉をなさったやに承わっておりまするが、このインドネシアは御承知のように綿製品、綿糸の一番いいお得意さんであったはずでございます。それがこの輸出のこげつきから、遂にただいまではほとんど禁止状態に相なっておりまするが、この輸出を振興させるには、まずあそことの国交、賠償の問題を早期に解決するということが何より大切でございまするが、繊維の輸出振興の立場に立って、繊維局長としては、ここの国交回復にどのような見通しを持っていらっしゃるかということが第一点。  次にアメリカの余剰農産物買付から来るところの三角貿易と申しましょうか、これの交渉の結果、一体どのような見通しがございますのか、まず承わりたいと思います。
  20. 永山時雄

    ○永山政府委員 ただいま加藤さんの御指摘のように、日本の輸出市場としてはインドネシアは最大のお得意でありまして、おそらく自由に、売れる限り輸出をするということになれば、三億ヤード以上のものが出るのではなかろうかというような市場でございますが、現状におきましては、まず半分以下に落ちておるというのが大体の実情だと思います。従って当然日本の繊維業界一つの興廃といいますか、そういう点には、インドネシアに対する輸出の障害を取り除くということがその振興策の第一だと思っております。これまた加藤さんただいまのお話のように、賠償問題その他がからみまして、なかなか簡単な事情ではございません。むろん繊維の立場としては、できるだけこれを早急に解決のつくように持っていきたいというように、常日ごろからいろいろの形で希望はいたしておるのでございますが、御承知のような状況でなかなか思うように進行していないというところでございますが、そこで第二の御質問のような三角貿易というような問題が一つの考え方として生まれてくるのでございます。これはただいま私の方でもある程度研究中でございます。またいろいろな形で非公式にそれについてのトーキングをしておる状態でございまして、今ここでこういう見込みだとか、こういう状態だとかいうことをまだお話し得る状態に立ち至っておりませんので、お許しを願いたいと思います。
  21. 加藤清二

    加藤清二君 インドネシアに対する繊維の輸出は、今お話通り日本の繊維業界のこの不況を打開するには最もいいお得意先でございまするが、ここは御承知通りアメリカの余剰農産物の重要な部門を占める綿、それをわが国がいろいろな関係で買わされまして、そうして加工する。こういうことは、日米通商航海条約の立場からいきましても——なおアメリカの国際条約の影響によって事実あそことの賠償問題がこんなに遅延しているということにも相なるわけでおりますから、日米通商航海条約の精神からいって、当然に繊維局長のアメリカ国に対する交渉は筋の通るものである、当然これはあなたの先般行われましたあの精神をアメリカ側は受けてしかるべきものである、かように、私のみならず業界も考えているようでございますので、あなたのインドネシアに対して打つ手は、一挙手一投足を、業界が旱天の慈雨のように期待をしてながめておりまするので、ぜひこれは早急に打っていただきたいもの、だと存じます。  それからこの間打たれましたパキスタンの綿の委託加工の問題でありますが、これも業界では繊維局長の御努力に対して非常に感謝をしているようでございますが、これはもうほとんど完了をしておりますか、発表する時期に至っておりますか。もしその時期に至っておったら、ここで要点だけを御発表願いたいと思います。
  22. 永山時雄

    ○永山政府委員 パキスタンの問題は、加藤さんも御承知のように当初におきましては、かなり急速に日本とパキスタンとの問において話がついて、製品自体も、大体当初の話では、六月十五日までに船積みを完了するというような話も一時伝わっておったのでございますが、それがだんだんと延びまとて、契約終了後五カ月内に積み出せばよろしいというところまで緩和してきて参ったのでございまして、それが先般の市況の悪化の少くとも小さな一つ原因にはなっておるというふうに考えられるわけでありますが、現在のパキスタンと日本との話し合いは、総額九百七十万ドル日本が輸出をするということになっておるのであります。内容といたしましては、糸が大体四百二十万ドル分、織物にして五百五十万ドル分、合せて九百七十万ドル分を日本が引き受けて輸出をするということになっております。パキスタンは、日本以外ドイツにもイタリアにも英国その他にも発注をしておるようでありますが、全体で約二千万ドルのうち、日本は九百七十万ドルということで、むろん日本の製品の輸出が第一ということでございます。これは御承知のように、日本はアメリカから原綿を引き取りまして、それを加工いたしてパキスタンに輸出をするというのが本則でございますが、品物の関係はおそらく逆になりまして、現在の手持ちの綿あるいは手持ちの製品でまず輸出をして、それに相当する外貨をアメリカのCCCから受け取る。大体数量的に約四万俵ぐらいになるかと思いますが、そういうことであります。これは大体基準となる価格が日本政府とパキスタンとの間に協定ができたので、その価格のベースを基準といたしまして、先方の輸入業者、こちらの輸出業者、それぞれが個別交渉をいたしまして、どういうような品物を幾らの価格で輸出するか基準の価格がきまっておりますので、それによって、その他の銘柄でありますれば、おのずからそこに尺度があるわけでありますので、従って価格は逐次きまってくる、それから数量も全体の九百七十万ドルというものをはみ出さないという程度において、それぞれの輸出業者、輸入業者がそれぞれ協定して契約を結ぶということになるわけでございまして、政府間の価格がきまりまして、ただいまこちらから輸出する輸出業者が先方の輸入業者とそれぞれ個々的な話し合いを進めておるという段階でございます。
  23. 加藤清二

    加藤清二君 私がその国へ行きました折に、向うのコットン・チェンジの関係の人たちが、日本の繊維製品を買うことはよいのですけれども、その契約した折の値段と、いよいよ荷物が着いた折の値段というものはだいぶ開きがございます、つまり常に日本の繊維製品の値段は波を打っています、その上昇しておるときはよろしゅうございますが、下降に向ったときはえらい欠損をします、それだから思い切って買うことはできません、これは困ります、こういうことを言うておったのです。それがほかの国の繊維ですと、高いなら高いなりに大体安定しておるからエージェントにしても商社にしても先行きの見通しがはっきりしておる関係上、欠損するような憂いが少いというのです。日本製品の売れ行き不振の一つは、コストが高いからだという人がございますが、必ずしもそうではなくて、価格の不安定が輸出振興の大きな阻害の原因になっておるように思う。特に戦後日本商社がそのしわ寄せを引き受けるだけの資本力あるいは経済力を持たない関係上、直接その影響が向うのエージェントにおっかぶさっていくというところにあると思います。賢明な局長は、この交渉に当っても、この点を御留意なされてやられたことと存じますが、このルピーと円との交換でいくのか、ポンドとドルとの交換でいくのか、あるいはどういう決済で、どのように安定策を練っていくのかというような点について承わりたい。  それからまた今申しましたようなこの国の決済だけではなく、綿そのものがこのように安くなったからといって、必ずしも輸出振興策の一助にはなっていないと思う。そこで安定策が必要だと考えますが、それに対して何か御計画があるのかないのか。もしないというならば、今度は通産委員会の方でこの問題について意見を戦わせてみたいと思うわけです。
  24. 永山時雄

    ○永山政府委員 問題は二つのように拝聴いたしましたが、第一のルピーと円との問題の不安定というか、その問題は、一応こちらから輸出をした場合に、向うがLCをルピーで開設をいたして参るのでございますが、そのLC開設後のルピーに万が一何らかの変動、ことに通貨の価値の切り下げというような問題がありました場合には、それは先方の政府が補償することになっております。従ってその通貨の上の心配は一応ないようにしてあるのでございます。  それから日本の方の綿製品の価格が不安定、特に先安だというような場合には、パキスタンの輸出ばかりでなく、一般的に輸出の上に非常に悪影響があるのではないかというお話でありましたが、これもきわめてごもっともな話であります。従来からある程度の輸出制限の措置、紡績会社別に輸出実績によって輸出の数量をしぼるというような処置を多少そうした問題についても講じて参りましたし、また輸出価格を少くとも国内価格と一本にする。従来非常に輸出価格が国内価格に比べて安かったし、しかもそれが非常に不安定な状態であったので、その点についていろいろな措置をとりまして、現状においては、輸出価格と国内価格と一本になっているという状況にして参ったのでございますが、ただ今後の問題といたしまして、今の御指摘のような点は依然として消えておりませんし、また国内価格が安くなれば輸出価格もそれに引きずられて低下をしてくるということは、一つの経済現象として当然なことでございますので、輸出価格の改善というような意味合いにおきましても、先ほど来申し上げた需給関係に対する改善というような問題もできるだけ今後強力にその措置を進める必要を痛感いたしておりまして、そのような意味での操短の督励というようなことも考慮いたしておるものでございます。当面の価格の問題につきましては、先ほど御説明を申し上げましたように、需給関係から出て参る事情と、それから世界的に綿花の相場が先々安くなるだろう、少くとも高くはならない。現状のままいくかあるいは若干安くなるか、後者の見込みの方が一般的には強く予想されているように思うのであります。そういうような事情から出て参ります先々多少安くなるという点は、ある程度これは日本だけの事情でなく、世界的な一つ現象でございますので、やむを得ないところである。ただ現在の日本の需給関係が先ほど来申し上げましたように、かなりの供給過剰の状況になっておりますので、ちょっとした弱味がすぐにしんにゅうをかけられ、すぐに行き過ぎになるという傾向は確かにございますので、その点は需給関係の面をできるだけ改善することによって解決する。これも先ほど加藤さんの御指摘のように、相当日本綿業の一つの現在のあり方から出てくる本質的な問題にもからんでおりますので、従って需給関係について当面着実に手を講じていくということのほかに、根本的に日本の綿業のあり方、これは紡績ばかりでなく、織布業者、それからさらに綿業ばかりでなく、繊維全般の総合的な分野におきまして、今後の見通しをできる限り的確に立てた上で、総合的な対策を講じていくべき一つの段階にきておるのではなかろうかというようにも感じていますので、その面の研究あるいは場合によってはそれに対する措置を今後講じていきたい、かように考えております。
  25. 加藤清二

    加藤清二君 最後に輸出振興の上からして、価格の安定策をはかる、特に国内価格に影響されないような輸出価格を設定する要ありやいなやとか、あるいは外貨の割当先を、設備でなくて商社に持たすことでその運用の妙を発揮させるとか、いろいろ打つ手はたくさんあるでございましょうが、きょうは公取委関係と申しましょうか、この委員会の性質上、その問題はいずれ別の委員会でやるといたしまして、制限強化の問題で一つちょっとお尋ねしたいと存じます。当然供給過剰は市場開拓が行われなければ、やむなく自粛つまり制限を強化する、こういうようなことになると存じますけれども、先般行われました綿の二十九条の発動、これも半年すでにたった今日、なおこれでは十分でない。そこで業界は、ある程度の老朽織機を封緘してしまって、そしてこれを政府の方で買い上げてもらう手はないものか。ちょうど中小炭鉱の不況に当って政府がここに救いの手を伸ばそう、それには中小炭鉱の整理統合その他に対して相当の援助資金を出してやろうということが行われようとしているようでございまするが、こういうことを綿業界に対してやる意思ありやいなや、そういう計画がありやいなや。またそれをしないとするならばほかに何かいい手があるかないか。こういう問題が一つ。  それからもう一つは輸出と申しますといつも製品のことにウエートが置かれるようでありますが、今日諸外国はどこでも軽工業くらいは自給自足でいこうという空気が濃厚になっておるようでございます。これに対してプラント輸出とか機械輸出をすれば製品の輸出ができなくなって困るというような、井の中のカワズみたいな理論を立てる人もあるようでございますけれども、世界の趨勢に逆行するということは不可能なことだ。もしプラントなり機械を日本が輸出しなければ、機械のできる国から買って自給自足の立場に後進国も向うのじゃないかと思うのです。たとえば南米ブラジルあたりでも、去年あたり五万錘ほど機械が出たようでございます。これは自給自足を一生懸命にやろう——東南アジアもそうでございますが、ブラジルもそうなんです。そこでこの五万錘は華僑の手に渡って、華僑経営が行われようとしておる、こういうことでございます。幸いここに丁紡績は去年一万五千錘ばかり買って、これを突破口にして市場開拓をやろう、やがて技術輸出から合法的な人の輸出までやろう、こういうような考えで、これは当然過剰人口を制限するに当っても、あるいは内地の機械設備が過剰であるという点からいっても、あるいはまた機械メーカーを救うという立場からいっても必要なことではないかと存じますが、この機械を輸出する、プラントを輸出するというような計画ば通産省にありますか、ありませんか。またかりに通産省になくても民間会社でこういう新しい天地を開拓しようとする場合に援動をするのが当然だと思いますけれども、そういうお考えがありますか、ありませんか。この点をお尋ねしておきたい。  最後にこの不況は民間人、政界人、議員ともどもに一致協力して、党利党略をこえて、この不況打開に当らなければならない、かように思っておりますやさきに、何か業界人と政界人との繊維懇談会とか何とかいうのが発足したとかしないとかいうことを聞いておりますが、私一向通知を受けておりませんし、わが党にはこのような通知はないのですが、これは与党の人たちと業界とでやられた方がよろしいというお考えなのか、あるいは何かの行き違いで通知がなかったのか、一体これはどういう状態になっておりますか、これを承わりたいのでございます。私としてもまたわが党といたしましても、こういうことは党利党略で政府攻撃の材料にするとかしないとか、そういうみみっちいことを考えておるわけじゃない。この不況を打開し、競争の激烈になった世界市場へ、かっての日本綿業界と同じように、日本の綿製品あるいは繊維製品を勇飛させるまでには、ほんとうに挙国一致の態勢を整えて競争に立ち向わなければならない、こう考えておるのでございまするが、せっかくそのようなものができたとするならば、もろ手をあげて賛日成でございます。そうして大臣の公約であるところの拡大均衡ということの実を上げるべきときに到達しておるものと思うのでございますが、いかがなものでございましょう。
  26. 小笠公韶

    小笠委員長 加藤さん、最後の質問は政府委員に聞くのは無理だと思うのですよ。これは自発的に議会人と関係業界との話で、政府職員は参加しておらぬのが実情ですから……。
  27. 永山時雄

    ○永山政府委員 お話の第一の、過剰設備を石炭の場合と同じように買い上げをする考えがあるかどうかというような点でございますが、私どもは先ほど申し上げましたように、綿紡績あるいは綿織布ばかりでなく、一般的にその他の分野におきましても、繊維関係相当な過剰設備があります。また一方、新しい繊維の分野においては、設備の増設をある程度行なっておりますし、また今後も行わざるを得ないだろうというような傾向もございまして、ある意味においてはそこに一つの二重投資が行われているというような見方もできるような状況になっております。従ってただいまのお話のような点も含めた意味で、いろいろな総合的な対策を検討して参りたい、かように考えております。いずれこれらの問題は近いうちに何らかの形において政府部内で、民間人も入れた機構で、その総合対策を練る方法を講じていきたいというように考えておるのであります。  なお御承知のように、タオルの調整組合におきましては、設備の封緘を組合で相当程度やりまして、業界としては設備の抑制の面あるいはまた操業の面におきまして相当ないい成績をおさめておる例もあるのでございます。従って他の分野におきましてもそうした態勢のでき得るものがありますれば、われわれの方も極力これを後援をいたしまして、個々的な、具体的な操業の向上といいますか、成績の向上といいますか、そういう措置を講じていきたい、かように考えておるのでございます。  それから第二のプラント輸出の問題は、むろんわれわれも加藤先生のような御意見でございまして、極力その輸出の振興をはかりたい、かように考えております、  第三の点は、先ほど委員長お話のように、われわれは関知いたしておりませんから……。
  28. 小笠公韶

    小笠委員長 それでは私が一つ政府委員に伺いたいのですが、不況の諸対策は主として糸並びに輸出の面に置かれておると思う。国内の綿機の問題でありますが、冒頭経緯の説明に、今年の二月から綿スフ織物調整組合連合会に対して設備制限を行わしめた、しかるに効果不十分であるというお話があったようであります。しからば現段階のような需給の急迫した事態におきまして、生産制限に対して同法二十九条の命令を発動して、ここに生産制限の実を上げる用意ができておるかどうか、これをまず第一に伺いたい。
  29. 永山時雄

    ○永山政府委員 まことにごもっともな御質問でございますが、機屋の関係におきましては、御承知のように非常に企業も多うございますし、地域的にも全国的に散在いたしております。また業態も非常に千姿万態、いろいろな杉でございます。従ってなかなかその施策がむずかしいことは御承知通りでございます。そこで現在の状態は、先ほど来御説明をいたしましたように、まず設備制限を行い、しかして綿調連自体としては一割二分の操短を決定いたしまして、私どもの方もそれを認可して、極力これを督励しておるという状況でございますが、さらに現在の深刻なる事態に対しましては、もう少し生産制限の問題を具体的なそれぞれの事業に即するように改善を加うべきではないか。これは綿の機屋の関係でも、あるものは比較的好況のものもございますし、あるものはまた極端に悪いということで、その調子のよしあしというものも業種によってかなりの違いがございます。従って一律にさらに操短を強化するというような措置をとることも、必ずしも適切でございませんし、またそれをやっても、なかなか実施が困難であろ。現在の一割二分についても、その実施の状況必ずしも百パーセント成績を上げておるとも存ぜられませんので、従って今後これを改善し、あるいは場合によっては強化するという際におきましても、もう少しそれぞれの業種あるいはそれぞれの地方の具体的な事情に即した措置をとっていくことの方が適切でもあり、その必要もあるというように考えておりますので、その意味の検討を今進めておるのであります。
  30. 小笠公韶

    小笠委員長 今の答弁によりますと、品種ごとに事情を異にしておる、従って綿布一般ということでは困るが、品種ごとの実情検討の上、改善を加えるということを言われる。改善という言葉はアウトサイダー命令を出すという意味と解釈していいかどうか。
  31. 永山時雄

    ○永山政府委員 ただいまここでアウトサイダー命令を出すということは申し上げかねますが、二十九条の発動の問題も含めて検討しておるということであります。
  32. 小笠公韶

    小笠委員長 善処を願いたいと思うのであります。  第二に私が伺いたいのは、政府委員の説明を聞いておりますと、政府の操短勧告による綿糸紡績の操短の実施状況が必ずしも政府の意図の通りには動きかねる、たとえば百パーセントいければこうなるであろうけれども、てき得べくんばもっと操短を強化したい、こういう言葉をもって答弁をされておるようでありますが、政府による操短勧告の是非は別として、政府による操短勧告というものがしかくはっきりと動きにくい理由はどこにあるのか。もしはっきりその通り実施に移すことが困難なりとすれば、今日のごとく繊維特に綿関係の重大な時期に際して、早急なるいわゆる操短対策をとるという手を別に考えないかという点について伺いたいと思います。
  33. 永山時雄

    ○永山政府委員 はなはだむずかしい御質問なんですが、まず綿糸の操短につきましては、戦後の紡績の形態というものは、戦前とよほど様相を異にしておりまして、今日では中小紡というのですか、いわゆる新紡、新々紡という種類のものが非常に頭数も多くございますし、それからまたその錘数、設備能力からいっても相当大きいのであります。従って戦前と違いまして、その業種のあり方が、各企業によってそれぞれの違い方というものが戦前よりも一そう複雑になってきておる。従っていわゆる紡績という言葉から連想する、少くとも戦前のわれわれの頭は、国際的な競争日本で対処していく有力な産業であるというようにとかく即断しがちなのでございますが、今日の綿紡績業というものは、必ずしもそうした企業ばかりでなく、先ほど申し上げました中小紡というようなものは、国内的な他の企業に比べても、必ずしも強力な企業であるということは申し上げかねるような事情にございます。ところが一方におきましては、依然として国際的に相当な強い競争力を持っている。いわゆる十大紡というようなものも、相当生産量を持って活動しておるというようなことでございまして、従ってその間操短というような施策をとるにいたしましても、いずれを主として頭に置いて実施するかということにも、いささか重点を置きかねる点があるのであります。まず常識的に申し上げれば、綿製品の需給状況を改善する上に、むろん操短ということも一つ方法でございますが一原綿が御承知通りにほとんど全部輸入に依存をしておるという現状でございます。従ってこの原綿の輸入を少くすればよろしいということにもなるのでございますが、各企業の力というもの、あるいはそれを端的に表わしておる在庫原綿の手持ち数量というようなものも、その間非常に千差万別でございまして、従って有力なところを標準にして原綿をしほるということにいたしますれば、中小紡は非常な期待を落す。中小紡というものを基準にしていけば、あまり原綿をしぼる効果も出てこないという事情もあるのでございます。そういう一例が示しますように、その間非常に事情は千差万別でございまして、従ってこれに対する操短というような点も当然同じような問題に逢着する。それからまた最近の状態におきましては、戦後の企業はいずれも——繊維産業ばかりでなく他の業種にも共通した問題でございますが、企業自体の力というものは一般的にひよわになっている。特に繊維産業におきましては最近の不況続きによって非常にその底力というものもたくなって参っておりまして、従って操短というものは当然コストに大きな影響をもたらしてくるわけでございますから、操短によって価格か上ってくそということにたりますれば、コストの値上りも、価格の改善によりある程度カバーされるのでありますが、最近のような状況で操短はまず価格の低下を防ぐという程度効果であり、大して値上りの方の実を示すことが困難であるというような点になって参りますと、企業の耐久力というような問題からも、操短ということについては相当慎重な考慮を払わざるを得ないというような、いろいろな点が加わって参りまして、われわれとしてはその間のほどのいいところを選ふということに苦慮しているのでございます。
  34. 小笠公韶

    小笠委員長 ほかにございませんか。——なければ本日の会議はこの程度にとどめます。  次会は追って公報をもってお知らせすることといたしまして、本日ばこれにて散会いたします。    午後四時七分散会