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松前重義君 詳しい御
答弁ありがとうございました。そこでもう一ぺん集約いたしまして二つだけ
お尋ねいたします。
かつて八木・岡部サーキットというものがあった。これは私の専門ですが、それはマイクロウエーブでありました。これは私
どもの学生時代でありましたから、今から三十年くらい前に
わが国においてマイクロウエーブが世界で初めて出た。これはアメリカでも注目し、英国
あたりでもドイツでも注目いたしまして、世界の称讃を浴びたのはその当時でありました。ところが
わが国において発明され、発見されたところのマイクロウエーブは、アメリカとおいて育ち、英国において具体化して電波兵器となり、
テレビとなって現われて参ったのであります。結局レーダーというものができて第二次世界大戦で
日本がむざんにやられたのは、やはりレーダーが
一つの大きな問題であります。
日本自体がみずから持っておる宝を、宝ということを知らないで、それが洋行して今ごろ帰ってきて盛んにマイクロウエーブ、マイクロウエーブと近ごろ国会
あたりでも言い出した。実業界が近ごろになってアメリカから輸入したマイクロクエーブだとか、あるいは英国から輸入したマイクロウエーブだとかいって、
外国のものだから今度食いついてきたというような
日本の
経済界の実情であり、また政界の実情であります。こういう歴史もわが民族的な非常な悲劇だと思いますが、こういう悲劇が起るということはまだほかにもたくさん例がございます。三島博士の三島鋼にいたしましても、本多博士のKSスチールにしても、このKSスチールは世界で最もいいパーマネント・マグネットの材料であったのが、私がウエスターン・エレクトリックに行ったら、ウェスターンが盛んに製造して当時
日本で輸入しておった。それで私は
日本に帰ってきてい
日本の
特許だからこれは
日本で使うべきだといって、住友金属にやらせたことを記憶しております。このようにして
日本の
科学というものは一ぺん洋行して、そうして
外国の
製品として
わが国が高い値段で購入するということは、
日本の政治と
経済界の悲劇だと思う。こういう
態勢に放置したのでは、
日本民族は永遠にアジアにおいて貧困な
立場に置かれるより方法はないと思う。こういう悲劇をどうして解決するかということが今度の新しい国作りのあり方でなければならぬと思って、日夜これについて心を砕いておったのでありますが、要するにこの問題は何といっても
日本の
経済という
考え方が、やはり
科学技術というような根底からの、いわゆるゼネレイティヴな、創造的な
頭脳資源の開発というものは第二義にして、
現実的な金繰りだけを
考えておる、いわゆる大蔵省的な
考え方にすぎない。こういう
考え方に終始しておるならば、いわゆる高利貸しによって支配される社会において結局世界の落伍者になるより方法はないと思う。大蔵省の人はおられぬでしょうから多少悪口は言っていいだろうが、とにかくそういうことであります。でありますからどうしてもここに
科学の世界と
技術の世界と
経済の世界とを
日本の
国内においてつながなければならぬのでありますが、遺憾ながら
経済の面というものが
科学や
技術を軽視する
傾向をたどってきて今日に至っておる。
科学や
技術を
一緒にすると、結局それに対する理解のない諸君によって、
科学技術というものが
独立の
機関でないから進まないという
考え方を私
どもは非常に持っておるのであります。持っておるのでありますが、何をおいてもこの
科学の世界の発明発見ということが
日本で起っても工業化されないというところに、両者の間に非常に大きな溝がある、スリップがある。歯車がかみ合わないというところにそういう非常に大きな
欠陥があるのでありますが、これを
一つ何とか全面的に総合化して、
科学と
技術とをつないでやる、生産
技術ともつないでやるという役割を果すことが新しい
科学技術行政として必要ではないかと私
どもは思う。この歯車というものが今までなかったから、
科学は
科学のまま洋行してしまって、それが
日本に帰ってくるときには高い値段になって帰ってくる。そうして
日本経済を圧迫する作用をなしてきているのが
現実であります。優秀なる頭脳を持っておる
日本人が、せっかくの
頭脳資源を金で
輸出するのではなくただ取りされておる。そしてこれが今度は
特許権となって
わが国に渡ってくる。こういうみじめな格好が
わが国の歴史であった。どうしてもこれは、文部省その他にも
研究所がありますが、そういう
研究所といわゆる工業
技術とをつなぎ、これを
製品化するという役割を務めるだけの作用をするものが
日本には必要であると思う。工業
技術院においては、ある程度そういうものの工業化に対する
補助金等を出してこの
促進に当っておられることは承わっておりますが、とにかく全般的に見て文部省その他の
通産省以外の
研究所との
関係においても、これらの問題を総合化する必要があると私
どもは思っております。それで
工業技術院長に伺いたいのですが、今までの経験に照らしましてこういう問題に対してどういう御所見をお
持ちであるか、大体の感想を伺いたいと思います。