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荒牧参考人 私労働組合の代表であります
自動車産業の危機、こういうことでありますが、各業界の一線に立っておられます社長さん方々と見方が若干違いますが、そういう意味で
意見としてお聞き取りを願いたいと思います。もちろん私
どもは同じ企業の中で
生活をしている労働者であります。しかしながら、私
どもの
考えますことは、お互いすべての
国民がよりよい
生活を営むために、各産業のいわゆる分担をやりまして、そうして物を作りお互いが供給し合って、いわゆる産業の使命はおのおのの持たれた職場の中でやられるべきものだというふうに
考えております。ところが今までの
状態の中で、非常に物事が一方的に進められて参りたわけであります。先ほど来からも各
参考人からも申し上げられておりますが、軍の必要によって終戦までは
保護育成政策がとられ、終戦と同時に、どういう形か知りませんが、すべてが御破算になった。その中で
自動車の産業に携わってきた労働者、経営者は、ほとんど育成対策というふうなものがない中で、とにかく営々として廃墟の中から立ち上って参ったわけであります。もちろん運転
資金といわず、これはお互いに苦しい中で、労働者は遅配に苦しみ、そうしてドツジ・ラインのあらしの中で首も切られていきました。そういう中で私
どもは経営者の方々ととも
どもやって参ったわけです。その結果
昭和二十四年には、大体三輪から二輪、これらを入れまして二百三十億程度のいわゆる
生産量しか上らなかったものが、もちろんインフレの情勢の中にもありまして、同じ台数の比率とは申し上げませんが、二十八年度に参りまして千五百二十二億という大飛躍の
生産を上げ得るまでに到達をして参ったわけであります。しかしこの
状態までは、企業競争の中でおのおのが苦しんで参って、ほとんど市場の問題といわずそうそう問題にはなって参らなかったわけですが、二十八年度に入るころがら顕著な例が現われて参ったわけです。それで、特に二十九年度におきまする、私
どもから言わせると入超の赤字の調整程度しか実際の効果がなかったであろうと思われる、いわゆるデフレと称せられる
政策の中で、いろいろ金詰まりその他の問題が起き、倒産に次ぐ倒産というふうなものが逐次露呈して参ったわけです。その結果昨年の春以来
自動車産業の全体の中においては減産をやり、減産
計画の中でまたまた操短へというふうな相当明らかな方向がとられていったわけです。そのために私
ども労働者の立場におきましては、率直に申し上げましてこのデフレ経済下の苦境は労働者の
生活を圧迫するといいますか、これは極言だかもわかりませんが、そういう中で企業競争に勝ち抜いていくんだというふうな、いわゆる現実の問題として出てくるもろもろの問題と、私
どもは広い意味の
自動車産業防衛のために戦って参ったわけです。少くともトヨタにおきましても、昨年の秋操短によるところの賃下げが出されて、大体
平均一千円以上経常給の方が削減をされ、同時にまた報奨金まで入れまして膨大な金額が下りました。いすずにおきましても大体操短によるところのもので、実質賃金の低下はやはり千二百円くらい、それから報奨金まで入れたならば七、八千円くらいの低下を余儀なくされるというふうな
状態に、各主流の
メーカーの労働者は置かれたわけです。その結果、下請企業はどうか、親企業のそういう不振の中で、非常に零細な企業の経営者を入れまして、金繰りの面、長期手形の発行、そういうふうな中で非常に苦しんで参りまして、昨年一年間の中に、臨時工という不遇な名前で使われておった、少くとも千六百億の
生産を上げるように努力をしてきた、五年も六年も働いた労働者は千二百名も首を切られて、職場から街頭にほうり出されたというのが去年一ぱいの状況であります。そういう現在の各企業の
状態の中においては、私
どもの立場から、真の
自動車産業の育成
政策というものをどうしても立っていただかなかったならば、私
どもの
生活もあり得ないし、また広い意味で近代化学工業として総合的な、工業である
自動車産業の育成をやらないと、これに関連するところの電気、鉄鋼、そういうふうな各関連産業に対しまして大いなる変革を来たすような内容を持っておるわけであります。特に
国民経済の立場に置かれておるところの現在の
自動車の地位といいますものは、先ほど来
佐川さん、団さんという方々のやはり
参考人としての見解が述べられました通り、非常に重要な地位を占めておる産業であります。その産業に対しまして、少くとも
国家として何らかの
保護育成対策をとっていただかなければならぬ。そのためには、今いろいろな意味で言われている合理化、この合理化のしわ寄せを一に利潤の追求といいますか、その具に供されるような合理化ではなくして、国としての立場から
自動車産業の育成を
考える中で、経営者の諸君におきましても十分に広い意味でお
考えを願って、私
どもの真意とするところの
日本の
自動車を輸出産業にまで仕立てるところの努力をやっていただかない限り、私
ども産業に従事する労働者は当然生きてはいかれないような苦境に立つことは事実であります。現在におきましても、七月一日に明和
自動車、三輪車でありますが、御存じだと思います、ここD
会社におきまして全員解雇であります。六百三十名ばかり出ております。それから日野の方で管財人を引き受けてもらっております三井精機におきましても、何とか
会社更生法の中で立ち上ろうとして労使ともに苦しんでおります。オオタ
自動車はやはりいろいろ御批判もあろうかと思いますけれ
ども、竹崎管財人の辞任の問題をめぐりまして、ここの約一カ月くらいが非常に重大な危機に直面するのではないかというふうな
状態にきておるわけであります。
これらの現象面は何によって参ったかというふうなことを私見として申し上げたいわけであります。これらはまず三輪
メーカー、二輪
メーカー、それらに対する
政府としての御配慮がほとんど見られておらないという現況、それからもう
一つ、
日本の
自動車産業というものが
一般産業並みに扱われておって、たとえば――これは当りがあるかと思いますが、パチンコの
機械を作る産業も、
国民生活になくてはならぬような性格を持った
自動車も、同率に見られておるような現況に
自動車産業が置かれておるということ、そのために工業界といわず、そのほかの方々がいろいろ御努力をされましても、
自動車の苦況を乗り切る根本的な対策というものが皆無の
状態に置かれているような状況であるわけです。現在経済審議庁でいろいろ
計画をされておるように漏れ聞いておりますが、まずこの辺で少くともこの中に
日本の
自動車産業はいかにあるべきかということを
政府としてぜひとも出していただいて、今まで放任されておったこの
自動車を、どうしても国際的な水準へ引き上げるような御努力を要請しておかなければならないというふうに
考えます。特に私
どもは自分の
生活を守り、同時に
日本の民族産業として
自動車を発展させなければならぬという基盤においてやっておるわけでありまして、その点は特に御理解をいただきたいと思うわけであります。
そういう現況になっておりますが、私
どもとしましては二月の二十日に芝の公会堂におきまして
生活権擁護、
自動車産業の危機突破大会を開催いたしました。全国代表者一千名を入れまして十三項目によるお願いをやったわけであります。そういう行動の中から、いろいろ現在まで御努力を各政党の方にはいただいておるわけですが、十三項目の中でやはり私たちとしてどうしてもやっていただきたいものをきめておりますので、その点をあわせてお願いをしておきたいと思うわけです。
まず問題は、現在の国内マーケットの状況を見ますと、少くともとの
状態の中において各社が勝手な方向をとっていったならば、早晩この
自動車の各社の危機は到来するのではないかというふうに
考えられるのであります。少くとも月産二千五百台から三千台と推定される
乗用車と称する車ができております。たとえばトヨタ一社の例をとりましても、最近は下取り車が、
販売台数の五〇%が
販売店の手持ちになるというふうな現況を呈しておりまして、いわゆる新登録と称して車を買ってくれるような
状態にないわけであります。そのためにやはり下取り車の中古
販売株式
会社といいますか、そんなものを作りまして、何とかそれをさばいていこう、いわゆる苦肉の策を講じていこうというような状況にあります。でありますからどうしても現在の状況においては、まず第一点としては、自由貿易による市場の拡大を積極的に
政府として取り上げていただきたい。もっと具体的に申しましたならば、現在の
自動車の置かれた立場は、戦略品というふうな名称を受けまして、いわゆる共産圏に対する輸出のワクをはめられておりますので、全然出ていきません。そういう
状態でありますから、ココムの制限の緩和といいますか、まずこれをやっていただいて、極東から東南アジア
方面へかけての販路の拡大をぜひ具体的にとっていただきたい。それにもう
一つ、部品工業界におきまして一昨年苦況乗り切りのために中国に参りましていろいろ折衝むし、私
どもの漏れ聞いておるところによりますと、大体三億ドルの商談を成立して参ったということであります。ところが昨年
通産省、大蔵省、外務省、
運輸省、いろいろな関係官庁にもお願いをして行動したそうでありますが、遺憾ながらそういうふうなために輸出はまかりならぬということで、少くとも七百億に近い部品が輸出をとめられておるというような、非常に困った状況になっておりますので、この際これを組合側としても
政府の方にお願いしたいと思うわけであります。
それから二つ目はMSAの協定による現物支給並びに無
為替輸入の問題、これも本質的な問題としてぜひとも行政協定等に関係があると思いますけれ
ども、何らかの処置をとっていただきたい。たとえばいろいろ各官庁の中で漏れ聞いているところを伺いますと、この問題におきましては
アメリカあたりでは自分の国で作ったものを持ち出したならば、持ち帰ってはいかぬというふうになっているそうであります。英国あたりでは逆に入国をする者は帰るときには必ず持って帰らねばならないというふうになっているそうであります。しかしそれらの問題をめぐって何とか行政
措置その他で御配慮を願うと同時に、本質的な問題としてMSAによる現物支給、無
為替輸入というものはどうしても排除していただきたい。そうでないと、現在出ておりますところのいすずの操短、これらは端的に六社の自衛隊の受注がゼロに近い現状の中で操短という現象が出ておりますから、これは何とか業界のためにも積極的な手を打っていただきたいというふうにお願いするわけであります。
それから第三点は、ガットの加入によるところの
自動車の関税の引き下げ、これはどうしても反対をしていただきたいというふうに
考えるわけです。たまたま今回は聞くところによりますと、四〇%、これが三五%で妥協がついたと言われます。そういう
状態のように漏れ聞いておりますが、
日本で現在までの、いわゆる貿易の協定を結ぶ国は、少くとも
自動車をその国の工業の中心に置いている現状の国々が多いわけであります。そのために必ずやこのガット加入による場合にはなお関税の引き下げが続けられると思いますが、この点は将来のためにも、現状においてもなお一層の御努力をお願いしたいわけであります。
それから
国産小型車の
物品税の禁止、この点はやはり現在の国内マーケットの状況その他から問題になっておりますので、業界としても一本でお願いしておられると聞いておりますが、この点はことに困難ではあろうと思いますけれ
ども、何とか御配慮をお願いしたいと思うわけであります。
それから第五には、今の
自動車の現状を見ますと、先ほど来
佐川参考人の方から申されましたように、今
日本の車を輸出をした場合に、何としてもその性能が額面通りいくかどうかということが非常に疑われるような現象が輸出先から出ているという事実、これは
日本の現在
国家としてやられているところの
政策の欠除といいますか、その点から各社が思い思いの構想を持って
研究を続けてやっている関係で、極端に言いますと、新車のいわゆるテストもできないというような状況の中にそれが出てきているように
考えられるわけです。そこでたとえば
自動車産業育成のために
国家の責任において総合
研究所の設置をやっていただきまして、少くとも現在
通産省の
自動車課の方へいろいろ
意見具申をされておりますととろの、木曽川の上流にまず高速度試験
道路を具体的にとっていただきたいというふうに
考えるわけです。なおまた村山の
研究所の場合におきましても、これは標準悪路が全然ないという形で、まず当面でさえも困っているというような問題もありますので、でき得ましたならば、これを即刻学者のエキスパートにも、いろいろ問題もあろうかと思いますけれ
ども、
国家としてそういうふうな問題も十分に御配慮いただきまして、まず即刻お
考え願いたいと思う。総合
研究所の設置という中から
日本全体の
自動車の規格統一、品質の管理、そういうふうなものを徹底的にやっていただいて、輸出産業としての
自動車が生きられるように即刻手当をしていただきたいというふうに
考えるわけであります。
次に、第六点といたしましては、現在私
どもが
考えておりますのは輸出の問題であります。しかしながらこの輸出の場合におきましても、たとえば貿易協定が結ばれた場合におきましても、相手国においては非常にシヴィアな支払い条件を押しつけてくるわけであります。たとえば今までの
状態の中におきましては、タイ国の場合は大体普通支払い条件は二年、それから台湾は米国車を入れる場合には四年の年賦払いというふうな
状態、ブラジルにおきましてはやはり五年以上というふうな長期支払いを条件として商談が成立しておるというふうな状況、こういう中におきまして、
日本の
自動車を国外に出す場合においても、
自動車としての底の浅い
経済状態に置かれている場合には、これはとうてい耐えられないわけです。そこで
国家の責任におきまして
自動車の輸出促進のために、いわゆる融資対策を即刻お
考えを願いまして、何らかの方法をとっていただかないと、
自動車としては当然生きられないような結果を招来するというふうに
考えます。
以上、六点を
要望として申し上げておきたいと思うわけでありますが、私
どもは冒頭申し上げましたように、この運動は私
どもの
生活を維持すること、同時にまた
日本の
自動車産業を国際的水準に引き上げるための運動であり、同時に
日本経済の大きね役割を果すところの
自動車を、徹底的に
外車駆逐の線まで持っていかなければ、遺憾ながら達成できないというふうに
考えているために、これをやっているのであります。
もう
一つ、今の私
どもの
考え方を率直に申させてもらえますならば、業界におきましても当然一貫した方針というのは、
国家的見地においてもあまり聞いておらないわけであります。
政府におきましてもやはり今までにおきましては、ついでというと言葉が悪いかと思いますが、やむなく育成をするような態度を若干とらざるを得なかったというふうな程度にしか
考えられないような
状態で今日まで参ったわけであります。もっと極言をさせていただきますならば、
日本の
自動車丸という船は、海図のない、船長のいない、いわゆる乗組員だけで大海に押し出されておるというふうな観を呈しているといっても、何ら過言でないというふうに私
どもは
考えます。その結果が私
どもの首切りであり、賃下げであり、そういう中に生きようとする活路を求めるために、私
どもはどうしてもこの運動を進めないと、われわれは
生活すらもできない
状態に立ち至り、当然また現在出ておるところの追浜の富士
自動車に、たまたま三カ月くらいのめんどうを
政府で見るという緊急処置が、首切り対象者にとられているような
状態も
新聞紙上で見ておりますが、こういうふうな
状態で、今の
自動車の既存の設備と現在の能力からいったならば、近い将来にこれを放任しておきますと、必ずやそういう事態が参るというふうに、私
どもは現在までの実績の中で
考えているわけです。
そこで特にこの問題は、コロムのいわゆる制限緩和という中から、私
どもの生きられる道を見つけたいというので、自分の死活の問題をかけてこの問題を戦っております。経営者の諸君とは若干
考え方が違うと思いますが、少くとも
日本の
自動車産業を育成して
国家的な産業に仕立て上げるのだというところにおいて、僕たちは一致するのではないかと
考えております。その意味で今後私たちは、現在までいろいろ御努力をいただきました各先生方にはなお一そうの御努力をお願いしまして、何とかこの問題にお力添えをいただきまして、
日本の
自動車の生きられるように今後とも御支援を願い、近い将来に
自動車のいわゆる海外飛躍の実現できるようにお願いしたいというふうに
考えております。
以上をもちまして時間が過ぎましたが、
考え方を述べさせていただいたわけであります。終ります。