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1955-07-05 第22回国会 衆議院 商工委員会科学技術振興に関する小委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月五日(火曜日)     午前十時四十五分開議  出席小委員    小委員長 前田 正男君       小笠 公韶君    齋藤 憲三君       長谷川四郎君    森山 欽司君       神田  博君    小平 久雄君       加藤 清二君    帆足  計君       佐々木良作君    中崎  敏君  小委員外出席者         議     員 秋田 大助君         議     員 大倉 三郎君         議     員 笹本 一雄君         議     員 山手 滿男君         議     員 内田 常雄君         議     員 南  好雄君         議     員 片島  港君         議     員 田中 武夫君         議     員 永井勝次郎君         議     員 松平 忠久君         防衛庁課長(装         備局武器課長) 山本 一彦君         通商産業事務官         (重工業局自動         車課長)    柿坪 精吾君         運輸事務官         (自動車局業務         部長)     岡本  悟君         運輸事務官         (自動車局整備         部登録資材課         長)      井上 健一君         運 輸 技 官         (自動車局整備         部整備課長)  宮原 繁門君         運 輸 技 官         (自動車局整備         部車両課長)  桑折 謙三君         参  考  人         (富士精密工業         株式会社社長) 団  伊能君         参  考  人         (国産乗用自動         車振興普及協議         会副会長)   佐川 直躬君         参  考  人         (全国自動車産         業労働組合連絡         協議会中央事務         局長)     荒牧 武一君         参  考  人         (トヨタ自動車         工業株式会社常         務取締役)   大野 修治君         参  考  人         (日産自動車株         式会社社長)  浅原 源七君         参  考  人         (いすず自動車         株式会社社長) 三宮 吾郎君         参  考  人         (日野ヂーゼル         工業株式会社社         長)      大久保正二君         参  考  人         (富士自動車株         式会社社長)  山本 惣治君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ――――――――――――― 七月四日  森山欽司君六月七日委員辞任につき、委員長の  指名で小委員に補欠選任された。 同日  加藤清二君六月二十三日委員辞任につき、委員  長の指名で小委員に補欠選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  自動車工業に関し参考人より意見聴取     ―――――――――――――
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  本日は自動車工業に関し、参考人各位の御意見を承わることにいたします。本日御出席参考人の諸君は、団伊能君、佐川直躬君、荒牧武一君、それから午後の予定でありますが、大野修治君、浅原源七君、三宮吾郎君、大久保正二君、山本惣治君、以上八人の方であります。  この際参考人各位に一言申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず、特に本小委員会に御出席を下さいましたことを厚く御礼を申し上げます。申すまでもなく自動車工業は、近代科学の粋を集めた総合工業一つであり、諸外国におきましても、つとにこれが保護育成に努めて参っておるのであります。わが国におきましても、激化せる国際競争に打ち勝つために、政府におきましても、また直接生産に当っておられる皆様方におかれましても、鋭意努力されておられるのでありますが、何分にも種々の隘路があり、なお解決を迫られている幾多の諸問題が山積しておると考えております。本日は参考人各位から、自動車生産の現状、将来の計画等について御説明を願い、果して隘路というものがどこにあるか、これらの隘路打開のためにはいかなる対策を立てねばならないかということについて、己憚のない御意見を承わりたいと存じます。またあわせてドイツ等外国において成功をおさめている低廉な国民車等大量生産等についても、わが国で可能であるかどうか、そういうようなことについてもお話を伺えれば幸甚と存じております。  なお御意見発表の時間はおおむね一人十五分程度とお願いいたしまして、御発言の順序は、勝手ながら小委員長におまかせを願いたいと存じます。御意見の御開陳が終りましたならば・委員から質疑もあるかと存じますので、あらかじめお含みおきの上お願いいたします。  それでは団伊能参考人よりお願いします。
  3. 団伊能

    団参考人 ただいま委員長から御紹介をいただきました富士精密工業の団でございます。今日自動車工業関係者をお呼び出しいただきまして、この委員会で御調査いただくことを私どもははなはだ光栄と考えておりまして、自動車工業は今日非常に重大な段階にあり、また従来国の生産といたしましても相当の業績を上げておりますがこの方面におきましては、造船あるいは鉄道その他と比較いたしまして、いささか新しい生産でございますために、委員各位の御関心を得ることも薄かったようにも考えますがこういう機運に至りましたことを、われわれ一同非常に喜びといたすところでございます。  実は自動車工業一般の状況また将来に関しての意見を述べろというお話でございますが、私ども自動車生産会社自動車工業会というものを作っておりまして、自動車工業会を通しまして、われわれの意見政府国会方面に具申しておりますので、その点、一般正規自動車工業会を通してのわれわれの要望は、その方面からまた御聴取いただきたいと思います。きょうその会長浅原君も午後からお見えになるようでございますが、一般に関しましての自動車工業会要望は、そちらにおまかせいたしたいと思います。私はここで、私どもが運営いたしております富士精密工業プリンス自動車を製造いたしておりますが、それに関すること及び私の意見を短く申し上げさしていただきたいと思います。  実は自動車の利用が急速に伸びまして、これは運輸省からの統計の御発表によりましても、人間及び貨物輸送自動車によるものが急増いたし、その線が年々非常に上昇いたしております。これらの数字はまた運輸省その他で御研究いただきたいとは思いますが、たとえば輸送貨物につきましては、二十六年には全貨物の五六%が自動車によっております。鉄道が三一%、船舶は一三%という工合貨物輸送されておりましたが、二十八年に至りますと、五六%の貨物が六四%に上っております。船舶はそのかわりに九%落ちております。貨物輸送量は二十六年が三億二千四百万トン、二十八年が、自動車輸送するものが四億五千五百万トンという工合に上っておるのであります。そういう点から、貨物輸送がほとんど自動車にだんだんかぶさって参りましたし、また人員輸送におきましては、今日国鉄とほとんど同数人間自動車によって運ばれておりまして、自動車輸送が昨二十九年で三十五億人、国鉄が三十六億という数であります。その他地方鉄道が二十五億というような数でございますが、まず国鉄自動車とが人員輸送について同数であるというくらいの重要性を持ってきておりますので、こういう時代に対処いたして、われわれ自動車工業を特に政府といたし、また国会といたして何らかの方策を立てていただき、これはまた国の施策といたしまして少し力を入れていただきたいということが、われわれ関係者の非常に切実な要望でございます。自動車工業会その他からいろいろ、要望も出しておりますし、また今日荒牧君が見えておられますが、全国自動車労働組合の方からも同じような要望がいろいろ出ております。これら要望において大部分非常に一致する点が多いのでありますが、その中で重要なポイントだけを三つほど申し上げますと、一つは、なぜ日本国産自動車が発達しないか、というのは、むろん外車輸入ということが日本では非常に盛んでありますが、いわゆる正規のルートで、為替を通して輸入されるものは、今日の状態において決して不適当でない、適当であると考えます。従来非常に問題である駐留軍の将兵、軍属その他を通して持ってきて、それが中古車としてこっちで売りさばかれるいわゆる無為替輸入というものが、非常に大きな数でございまして、ちょっと二十八年の統計を皆さんに申し上げても、国産乗用車を――大型はもちろんございませんけれども小型でありますが、一年に七千四十九台生産しております。しかるに同じ年に無為替で入ってきたアメリカ自動車が一万二千五百三台、一年間に一万台以上無為替で入ってきているという情勢で、国産はそれよりはるかに少い千台であるというところに、われわれ国産自動車工業が伸びがたい非常に大きな原因がございます。これは再三政府に陳情いたしておりましたが、昨年あたりから多少中古車に対する規定を変えていただいて、前は新車を入れて半年使えば中古車として売っていいことになっておりましたのが、多分今日の規則で二年使わなければ中古車として売れないというような状態に変りましたので、だいぶん手かげんしていただきましたために、これは少くなって参ると思います。二十九年には多少減りまして、一万二千台の無為替輸入が七千五百台付近に減少しております。それでだんだんこれを減らして参るという政府の取扱いには非常に感謝しております。今日までこれができなかったのは、こういう理由によるのであります。  なおまた次は、物品税の問題が、トラックにはございませんが、乗用車はなかなかきびしい物品税で、小型でも一割五分を払わなければなりませんし、大型は三割ということになっております。この点で日本国産車価格が非常に高いというお話は方々で承わりますが、しかし国産小型自動車最終価格八十万円くらいとすると、それから一割五分を引きますと六十万円台に落ちるのであります。この辺の措置も私ども国産車が高い理由一つ考えておりますが、この物品税に関してはなお自動車工業会その他から正規要望も出ておると思いますので、その辺に問題はお譲りしておきたいと思います。  なお自動車工業がこれだけ多くの、国鉄と同じ人間を運び、また貨物輸送は断然六〇%以上を運んでおる今日の自動車工業に対して、その経営に当りますこれらのメーカーに対する国の金融措置というようなものの援助は、きわめて希薄でございまして、造船その他いろいろの経済的事情において浮沈がございます際には、相当お手厚い国の保護がございましたにかかわらず、自動車工業に対してはかなり冷たい態度と申しますか、国の援助というものは薄いといわなければならないと思います。今日数社に対して開発銀行を通し、きわめてわずかでございますが、一億あるいは二億の開発銀行資金が出ております以外には、さしたる援助はございません。しかしこれらの国産自動車仕事は、決して幸運であるばかりではなく、今日のデフレの波の中にありまして皆非常に苦しくあえいでおります。自力で何とかこの困難を克服しておりますが、決してこの国産車生産に当っては犠牲者がないわけではなく、相当われわれ同僚の中に大きな犠牲となって今日非常な困難に陥っておる会社もございます。これらは相当いい技術を持ち、経験を持っておるのでございまして、国全体の生産からすれば、単にこれが倒産するということにまかせておくべきものではなく、何らかの方策をもってこれらに対する御援助の方法も考えていただきたいと、私は同僚のために考えるのであります。この辺はいろいろ経験者からまたお話もあるかと思います。われわれ自動車工業会といたしましては、各社違った種類の自動車も出し、もちろん販売競争も激甚ではございますけれども、今日の段階においてはそういうことを言っておる場合でなく、一丸となりまして国産自動車外車に対して共同して守るという上に、相当はっきりした共同作業をいたしておりますので、われわれ同僚の中に非常につまずきやすい一つまずくような場合には一つ共同して助けたいという気持でおりますが、何と申しましても資金面その他の援助において、また市中銀行あるいはその他の銀行において、ただいわゆる採算本位で融資されて参りますので、非常に困難をいたしております。これも工業会からまたいろいろ要望を申しつける点もあるかと存じますが、少くとも今日の運送状態運輸状態考えますと、船舶等よりもはるかに大きな輸送の任務に当っておりますので、その点鉄道を凌駕しつつあるわけでございますから、国民の物資の配分とか、人間の移動とかに関する重要な役割を果すために、一つ援助いただきたいと思います。  これらのほかに、なおつけ加えまして私どもの私見を少し言わしていただきますと、最近の発表で、竹山建設大臣も御了解のように、新聞紙上に出ておりましたけれど、北海道から鹿児島に至る縦貫道路建設が、いよいよ議員提出か何かで出るという話でございます。実際の問題は私知りませんが、少くとも新聞紙上では、これを非常に明るい希望のある案であるといって賛成をしておりました。このオートバーンとも申します縦貫道路は、仄聞いたすところでは、従来から田中案とか建設省の案とかいろいろございまして、議論がおありと思いますが、国の政治として縦貫道路を作るという国土の計画が始まって、近代的な国家としての当然の姿を持っていくことは非常に賛成するところでございますが、しかし業者として考えますと、第一にこのオートバーン、たとえば北海道から鹿児島に至る三千キロの道路ができたといたしまして、一体この縦貫道路にいかなる自動車を走らせようというお考えであるか、その点を非常に私どもは伺いたいと思います。実は最近フォードとかシボレーが非常に馬力を増加いたしまして、百八十馬力ぐらいの膨大な馬力をつけております。われわれは東京の町で乗りまして、アメリカはぜいたくな国である、こんな馬力をこんな車につける必要があるかということを疑ったのでありますが、米国全土を通貫いたしておりますハイウェイ考えますと、ちょうど明治神宮の表参道にありますように、まん中が非常なスピードカーで、両わきが緩行車であります。スピードカーは大体百二十キロぐらいの速力でございます。そうして非常な長距離のハイウェイを走るという問題になって参りますと、馬力がどうしても百八十、百五十ぐらいないと、そのスピードウェイを走っていく速力に耐えられない。そこでみな速力を出して走っておりますスピードウェイに、一台おそい車があったら追突してしまいますので、これは横の緩行道路に入らなければならぬ。  そうすると、ただいま国で生産されている車のどれがこの縦貫道路を走り得るかという問題になって参りますが、小型車が東京市中のタクシーとして非常に適当であるということは私ども考えますし、また国が貧しいから安い車に乗ることは当然ではございますけれども、もしも縦貫道路ができたとき、がぜんその力を発揮するのは、やはりフォードシボレーないしビュイックとかキャデラックとか、非常にパワーの強い車である。あるいはドイツ小型のベンツというようなものが非常な力を発揮すると思います。そうなったときに、国産車はわき道ばかり歩いていなければならないという哀れな姿になるのでございます。そこで今日通産省あるいは運輸省その他の――運輸省のお考えは知りませんけれども日本は小さいから自動車小型でいいというお考えは、自動車工業として非常に一方的な考えで、自動車としての性能を発揮し得るあらゆる機種について、政府といたしましてはすべて国産はこれを奨励していただく、日本は小さいから小さい自動車でいいという考えは捨てていただきたい。そして広く国産を使っていただきたい。すでにバスにおきましても、だんだん大型になって参りましたし、トラックも今日は七トン・トラックができてきて、どんどん効率を上げておりますので、乗用車も長い道を走るときには、大きな馬力と大きな速力を要する、そうしてこれらの縦貫道路には山もあり谷もあり、また風雪もある。その中を安全に突破し得るものを製造することもどうぞお考えに入れていただきたい。ややもすれば日本は小さい自動車でいいという主張をする方がありますが、自動車という機械考えるとき、決して小さいだけがいいのではない、大きいのもまた非常に必要であると思います。わが国自動車工業の発展におきましては、昭和十年ごろでありましたが、オースチンという小型が参りました。それでオースチン大型にして、その下の小型の特権というものを日本国産車に与えるために、オースチン以下のホイルベースの短かい二メートル一〇〇くらいの車を国産車として奨励なさったといいますか、これによって戦争中ございましたダットサンというものができたのであります。あのダットサンによって、われわれはあの大戦争を戦うというような結果になり、しまいには、そのとき軍部はどうだったかというと、結局フォードシボレーを追っかけて、探して徴発した。ダットサンはやはりあとへ回されて、役に立たず、国民はまた車はなくて、牛車で疎開するというような、まさに何等国ですか、野蛮人の原始的な生活に返らなければならなかった。そういうことからやはり自動車工業政策としてよく考えていただきたい。自動車というものはエンジンを持って、速力を出す機械でありますから、機械に忠実な、あらゆる型でも国産は御奨励いただくように私は切に要望するものであります。しかしながら今日の経済状態といたしまして、こういうものをメーカーとして作りまして、果して売れるかどうか、また技術的に適当なものができるかどうか、これは別個な問題でございまして、今日各社とも作っておりません。けれどもやがては作るときがくると思いますので、そういう場合にお考えいただきたいと思います。  なお今日御下問にもございましたが、国民車という問題でございます。これにつきまして一言言わしていただきたいと思います。私ども会社は、ちょっと申し上げますと、終戦の後に占領軍政策によりまして、ガソリン乗用車は作ることが禁止された。自動車日本人で作ってはいけないということになれば、これは日本自動車工業のためにはなはだ悲しむべき命令でありましたが、ガソリンをたく自動車日本で作るなんてぜいたくだ、必要ないという野蛮人扱いを受けたのであります。そのときに勇敢に乗用車を作りましたのは、立川飛行機会社であります。ガソリンがいけないからといって、電池を積んだ電気自動車を作りまして、二十二年からあまりりっぱな形ではありませんでしたが、これを作ったのであります。これは今日こちらに同道いたしました私どもの方の外山専務がこれを引き受けて、勇敢に多摩自動車という電気自動車を作りました。その後ガソリンエンジンを積んでいいことになりまして、私が関係しておりました富士精密中島飛行機荻窪工場エンジンを作りまして、多摩自動車に乗せまして、昨年この多摩自動車株式会社と、後プリンスと名を改めましたが、これと富士精密一緒になりまして、今自動車一貫作業をいたし、エンジンもボディも私の方で作っております。実は今日同道いたしました私の会社技術部長の中川君、これは中島飛行機時代にゼロ戦闘機エンジンを発明した人でありますが、ことし正月からずっと洋行しておりまして、外国における小型自動車の問題を専門に研究して参りました。なおこういう問題につきまして外国状態について詳しいお問い合せがございましたら、時を改めて、また書類を差し出しましても外国小型自動車状態を御報告いたすことができると思います。  私ども考えて、アメリカ国民所得平均が、一人年額千八百ドルであります。ところが日本国民所得平均は百六十四ドルでございます。五万円足らずの金が日本国民の一年の収入なんです。これは収入のない人も一緒に勘定して均等に割ったのでございますから、そういう数が出た。大体国民の俸給なり所得の十カ月分というものが自動車の値段として考えられておりまして、アメリカは一人平均千八百ドルで、フォードは大体二千ドルちょっと以上いたしますけれども、大体マッチしていると思います。その考えでこれを日本に適用いたしますと、四万円ぐらいがまず自動車を買う価格であろうと考えます。それならば必ずしも自動車に乗らなければならないか、国民車という、車であるものならば何でも、大体それにマッチするものならばいい、それが国民車と呼べるという考え方もございます。そういたしまして四万円から五万円と申しますと、自分の広告をいたすようではございますが、私どものところで作っております自転車エンジンをつけたものが四万円ぐらいでございます。バイクモーターといいますが、既製自転車に小さな一馬力ぐらいのエンジンをつけたものであります。このバイクをつけた自転車がまず国民所得計算からは合って参るようなわけになります。しかしながらそれは国民全体ではなく、自動車を使うというのは、国民の中でもやや所得のある方で、かつ国家のために有意義な仕事をしておいでになる方に限って考えますと、まあ十二、三年ぐらい会社にいて、課長級になったぐらいの方からは自動車が持てるようにすると、大体月給が二万五千円ぐらい、その十カ月として考えますと二十五万円ぐらいで自動車が手に入ったならば、経済的な基礎からいうと国民車といえるかもしれません。そういうとき、私どもはっきりした御報告は知りませんが、先日新聞紙上におきまして、まだ決定いたしていないのでございましょうが、通産省におきまして二十五万円で国民車を作るというお話がございました。これは国民所得、いろいろ血生活状態から考えればきわめてプロパーなお考えと思いまして、私もできるならばあらゆる技術員を動員して二十五万円の自動車を作るべく努力をいたすことは決してやぶさかではございませんし、現に小型自動車研究もいたしておりまして、その点についてはいささか研究も進めております。しかしこの金額に縛られますとなかなか困難点のあることは皆様よくおわかりでございまして、たとえば今日のオートバイスクーターが十八万円ぐらいと思いますが、オートバイスクーターも車が二つでございますが、さらに車輪を二つつけまして、これを四輪にいたしますと、すでに二十万円を出てしまう、タイヤがやはりオートバイタイヤで四つで一万五千円ぐらいいたしますので、その車輪をふやしただけでも価格が上りまして、やはり二十万円を出ます。この辺の詳しい計算はまた申し上げてもよろしゅうございますが、なかなか困難であります。ことに乗用自動車ということになりまして、一割五分の物品税を払いますと、二十万円といたしましても三万円の物品税をこれから引き、また販売政策におきまして全部政府がお買い上げ、いただくというならこれまた別でありますが、これを市中に売るとなればどうしても販売のマージンも出さなければならないし、少くとも三万五千円以上は販売者に渡さなければならない、広告もしなければならないということになりますと、まあどうしても二十五万円という車は十八万五千円か十九万、二十万で渡さないとできない、そうするとメーカーといたしまして二十万円で車を作らなければならない。今日各社の車の製造における価格比率は大体材料費が非常に大きいのでありまして、材料費が五五%六五%くらい、さらに七〇%くらい、すなわち鉄材その他の費用であります。こういう状態でございますので、まず十二、三万円は材料費といたしまして、あとの費用としていろいろな人件費、労銀その他に割り当てて参りますと、非常にこまかく考えますとなかなか採算がとれないものになって参ります。二十五万円ということを新聞でちらりと承わりましたが、この辺の詳しい的確なことはおきめになったのでもないと思いますが、一応そういう目安を置いて考えていきますと、一体自動車という形のものができるか、できるといたしましてやはり人間の生き身を乗せて歩くのでありますから相当の安全性と速力、ことに国民車といたしますと二シートで二人乗るのでは不便で、少くとも四人、夫婦に子供三人が無理すれば乗れるということになりますと、少くとも昔のダットサン程度まで参りますといたしますと、これが相当価格を突破することはやむを得ないと思いますが、ここに浅原君もおいでになりますので、皆さんから御質問いただきたいと思いますが、戦争中にありましたダットサン、あれを今日あのままでお作りになったならば一体どのくらいの価格でできるかということを御調査いただけば、二十五万円はどのくらいの自動車になるかということが大体御想像がつくと思います。  ただいま委員長お話ドイツあるいはイタリアその他で小型車の研究が非常に進んでおるということをおっしゃいましたが、まことにごもっともでありまして、その通りでございますが、それにつきましては一つだけ約二十万円くらいの計画でできている車もあります。実際の製造はあまりいたしておらないようでありますが、イタリアにイセッタという車がございます。これは生産価格約二十万円、四輪車と申しますが、うしろの方の車は一緒にいたしまして大体の形は三輪車、二汽筒サイクルの車であります。イタリアでは生産いたしておりませんが、今日ではドイツ会社が取り上げましてこれをいろいろやって作り出すという話であります。それらが多少参考になりますが、はたしてそれが国民車であるか。国民車と申しますと遊びに乗るのではない、スポーツに乗るのでもない、毎日の実用に乗るのでありますから、そういう点に適するかどうか、この点は非常に疑問といたす次第であります。  時間が参りましたのでまだ申し上げたいこともありますが、はなはだ短かい話でありますが、ただ私がここで申し上げたいのは、この国民車というとわれわれは非常に熱心でありまして研究いたしておりますが、まだ採算的には結論が出ませんが、ただここにわが国の経済としてある事実は、スクーターオートバイが約十六万円から十八万円、ホンダモーターのドリーム号が最終価格十八万円で売っております。ところが自動車になりますと一躍七十九万円とか八十万円で非常にギャップが大きい。そこで十八万から二十万円のスクーターオートバイと八十万円の小型自動車との間に非常な開きがあることが非常な問題であって、この点をついて何か一つの施策というものができはしないかと思って私ども研究いたしております。  最後に一言申し上げたいのは私どもの方は関係ございませんけれども自動車業界がいろいろ行き悩んでおります原因の一つは、一つの例でありまして、あるいは佐川さんからお話があるかもしれませんが、あえて日本政府を攻撃するわけではございませんけれども、これは日本の実情といたしましていたし方ないと思うのであります。たとえば非常に貴重な自動車技術、ウィルス・ジープを作る仕事を三菱さんが引き受けまして、イギリスに技師も出しパテントも買い、いろいろしてジープを作られたのであります。そして百五十台ばかりのジープを防衛庁に納めておりましたが、突然仏印かどこかの古いジープを持ってくるから日本のジープは作る必要なしという命令一下、この自動車は一台も売れなくなってしまった。これはいすず、日産なども防衛庁の防衛生産としての特殊車の御注文を受けておりましたが、これも一時にやめたと言われればそれでおしまいです。やめられるのは一向かまいません、それは国策で仕方がないでしょうけれども、せっかく作った工場とその技術、それを何らか温存させるだけのお手当は政府としてやっていただきたいと思います。大蔵省にも陳情いたしまして、私も自動車工業会長と陳情に参りましたが、よそから古いものをただもらうものがあるならば、日本のものは要らない、作る必要がないという冷い一言。私はジェット・エンジンの方も関係しておりますが、古物をもらえばそれでいい、もう日本で作る必要がないということになったら、日本の工業力はどうなるか。だれも明日を期して働けないようなことになります。少くとも技術保存の上から、これは社会党、保守党で御意見も違うでございましょうが、将来ある程度の防衛力を日本が持つとなると、大事なものは防衛生産すなわち補給でありますが、そういうものも金をかけて少しづつ技術を保存しつつやっていただくという情は持っていただきたいと思います。  商人といたしまして、少し御下問の範囲を出てこういう政治問題に触れましたことははなはだ失礼でありますが、業界を思い、また国の産業を思う商人の一言として、以上のことを申し上げた次第でございます。
  4. 前田正男

    前田委員長 参考人の方に申し上げますが、本日は自動車関係のこと、トラック関係のこと、あるいは政治にわたることも御遠慮なく必要なことはおっしゃっていただきまして、別に自分の立場にとらわれなくてもけっこうでございますから、遠慮なくおっしゃていただきたいと思います。なお、なるべく時間は十五分程度にお願いいたしたいと思います。  次に佐川直躬参考人から御意見を伺います。
  5. 佐川直躬

    佐川参考人 私佐川でございます。今回日本自動車のために委員会でお取り上げ下さいましたことを厚く御礼申し上げます。  御承知の通り自動車総合工業でありまして、化学工業、あるいは繊維工業、ゴム工業、金属工業、ことごとくの頂点に立っておる工業でありまして、自動車工業の盛衰はこれら各企業の盛衰にかかわる、こういう観点から私たちは自動車の振興普及をやっておる次第であります。大体申しますと、日本は、バスは世界における四位に当っております。トラックは六位でありまして、まずバス、トラックはしばらくおいて、最も悪条件下にある乗用車工業というものの振興普及をはかるべきではないかということで、先年来私たちは一つの団体を組織いたしまして、これに挺身して参りました。そこで今日本自動車はどういう工合になっておるかを御説明申し上げますと、今年の四月現在の登録台数は約百三十三万台となっております。その中で乗用車、つまり三輪車、二輪車というようなものを除いたいわゆる大型小型乗用車が全体の一九%を占めて十四万台となっております。そのうち外車と申しますか大型自動車が八万二千台で乗用車のうちの六〇%、小型四輪車が五万八千台、こういう数字を示しております。先ほども団さんがお話をされましたが、これはもちろん人口を基礎にしあるいは国民経済を基礎とした上に立って乗用車というものを勘案すべきでありますが、先ほどの団さんのお話のように、米国の国民所得一人当りが千八百ドル、日本国民所得が百六十四ドルか六ドル、米国人に比して九%の所得しかない日本であります。それが乗用車の六〇%を外車に依存しておる。この現状を見ますと、その八万二千台に該当する人間は、米国の富豪のまねをしてつっ走っておるわけであります。私らが国産乗用車を振興普及しなければならぬということも、一にこういう理由に基いておるのであります。この貧乏な、国民所得のわずかな日本人が、千八百ドルからもの収入のある米国人のまねをして外車を乗り回すということは、日本の復興に大きな阻害になるから何とかこれをやめてもらいたいという見地から過日中村高一代議士でありましたか田原代議士でありましたか、私忘れましたが、運輸大臣に質問書を出しました。運輸大臣は、官公庁の持っておる一万二千台の外車を一ぺんに売り払って国産の新車にかえるということは予算措置上できないと申しておられます。なるほど国家予算の措置の上において無理かもしれませんが、国産車の三倍のガソリンを使っておる大型車を、政府がどうしても国産車に置きかえようという御意思があるならば、こういうあいまいな、私は全くその場当りと存じますが、予算措置上新規のものは買うが、今までのものは外車をぼつぼつ国産車に置きかえていくというようなことをおっしゃらないで、どうか委員各位のお力添えによりまして、一ぺんにばさっとやめてしまって、来年度の予算にこれの組みかえをして、みんな売ってしまって国産車に置きかえていただきたい。今申しました通り、ガソリンを三倍使っておりまして非常に不経済である。国産車は三分の一のガソリンでいいのでありますから、そういうことも予算の上に御考慮願って、多少無理をなすっても国産車を使っていくようにしていただきたいと思います。  それから、今の世界の車種別のパーセンテージを見ますと、平均七六%は乗用車になっております。そうして二三%はトラック、〇・七%くらいがバス、これが世界各国の車種別の平均数になっております。日本はそれが逆になっておりまして、七八%がトラックであります。乗用車が一八%、バスが四%。世界各国はトラックよりも乗用車をうんと作っているにもかかわらず、日本は逆の勘定になっております。先ほど団さんがお話をされましたように、輸送力におきましても相当活発に荷動きはしておりますけれども人間の動きはすこぶる緩漫不精で非能率的な動き方をしておるということは、この数字が如実に示しておるのではないかと思うと同時に、日本自動車工業力が非常に低いものであるということを示しておると思うのであります。これはいろいろ理由がありまして、大正七年に自動車ができて以来、国策として自動車を取り上げて、政府がこれを後援して保護するということがほとんどなかった。ただ軍用トラックのみが国策の一環として取り上げられ、乗用車は捨て去られた。これが非常におくれた原因ではないかと私は存ずるのであります。しかも終戦後、先ほどのお話のように、総司令部のメモによりまして生産が禁止され、そうしてようやく二十五年か六年にその生産の制限解除がされて、まだ数年を出ずして日本乗用車は相当な発達をしてきた。まだまだ技術的あるいは性能的な面におきまして及びませんけれども、わずか数年の間にこれだけの発達をしてきた。生産当時は御承知の通り百四十万円もしておった国産乗用車が、今日ではそれが百万円、二割五分ないし三割の低下をしておる。この勢いで進みますと、数年を出ずして日本乗用車工業は大発展をするということを、私はここで断言をしてはばからない、こう存ずるのであります。しかし現在のコストが果して日本国産乗用車を振興させるに至るかどうか。外車を買えば安定もあり、故障も少い。しかも価格が安いじゃないか、こういうようなことが今残されて、私どもといたしましては、今の日本国産乗用車がそのままの姿でいっていいのかどうか、大きく疑問を内蔵しておると思うのであります。それは御承知と思いまするが、コスト・ダウンはどうしても量産以外にはないのであります。もちろん技術的にもありましょうが、とにかくたくさん作ってコストを下げる以外にはないのであります。現在四月の調べによりますと、トヨペットは六百六十何台、ダットサンは四百台、オースチン、ヒルマン、ルノーが各二百台くらい、これは月産であります。各社が思い思いに自分の企業のもとに勝手に莫大な設備資金を投入しまして、そうして生産されたものがわずかこれだけの数量で、これがコスト高の大きな要因をなしておると私は思います。これはあるいは言い過ぎかもしれませんが、設備は一つあればいいものが、A社もこの設備があり、B社もこの設備があり、C、Dそれぞれこの設備をやるということは、少くとも二重投資、三重投資、五重投資になる。しかもそれがアメリカのようにどんどん量産をして、各社が十何万台というものを作られるなら、それもいいでしょうが、わずか二百か三百かの車を作るのに、各社が莫大な設備資金を投入してやるということは、私は不可解に存ずると同時に、これに対しては政府も大きな再検討をすべきものではないかと思うのであります。これは政府に対する要望として申し上げたいのであります。  しからばこの乗用車工業の振興をどうしたらいいか。かって軍部がやってトラック工業のみを国策に入れましたが、今度は乗用車を国策の一環として取り上げていただきたい。これがまず第一ではないか。それ以外に私は国産乗用車の振興はあり得ないものと考えている次第であります。先ほど融資の問題もありましたが、政府の投融資もけっこうでありましょう。あるいは低金利の融資あっせんをやられる。あるいは今非常に乗用車工業の機械は老朽しております。むしろ設備の投資を三重にも五重にもしないで、老朽した機械を新たな能率的な機械に更改していく。いわゆる量産方式に対する再検討、みなおのおの各社が特色を持っておりまして、あそこと合同するのはいやだ、あれと一緒にやるのはいやだというようなお考えもおありでしょうけれども、これは国家将来の乗用車工業をお考えになった場合、私らはどうしても量産方式を政府において再検討をしていただきたいと存ずるのであります。またせっかく各国との賠償問題が起きておる今日でありますから、この賠償の対象としてこの自動車をワク内に組み入れるということがもし可能ならば、これは全くけっこうなことではないか。自動車を量産に移し、また自動車工業を振興しながら、賠償の対象物としてこれを持っていく、こういうようにしていただけば、まことにけっこうではないかと存ずる次第であります。  それから先ほどもお話がありました国民車計画でありますが、これはさっきの中村高一代議士D質問に対して内閣の答弁を見ますと、超小型車を作ってこれを育成する、そうして輸出産業に持っていく、こういうような答弁でありました。それが可能ならばそれもけっこうでしょうが、現在日本には日本機械工業の二〇%を占める、最も大きい力のある工業力があるのでありますから、まずこの会社に命じて、国民がたやすく便利に使用するような車を割り出して、これに作らす、こういう方式が一番いいのじゃないか。私は国民車とは名はつけませんが、国民大衆車――あんな小型でなくて、今ある小型四輪車を先ほどの量産生産方式に変えて、そうしてこれに国民大衆車を作らす、これが一番望ましいことじゃないか。そうして一つ国民大衆車ができて、日本でそれを国民がみんな使うということになって、あらためて内閣の答弁にあるように、超小型四輪車を設計されるということもいいでしょうが、それは第二段の方であって、まず第一段としては、現在の設備を利用し、できるだけたやすく生産されるような方式と、なおかつ低廉な価格に持っていく方策考えて、これを国民車に持っていく、これが一番適切ではないかと思うし、同時に輸出を可能ならしめる基盤を作り上げるものだと私は思います。  最後に、勝手ながら政府への要望、これを話さしていただきたいと存じます。英国、ソ連、ドイツ、フランス、こういう先進国はもちろんのことでありますが、中共、ビルマ、インド、ブラジル、アルゼンチン、こういう後進国に至るまで、ことごとくが、政府の権限内において自動車工業建設をなし、発展に力を尽しておるのであります。わが国のみが限られた軍用トラックのみに力を入れて、いまだかって乗用車に対して政府は耳を傾けたことすらない。第一次大戦後、英国の老首相マクドナルド氏が、疲弊した英国を救うためには自動車工業以外にない――自動車工業は向うでは七六%が乗用車ですから、乗用車工業ですが、乗用車工業以外にないというので、みずから国産車に乗ってハンドルをとって、ロンドン市中を宣伝した。これは有名な話であります。こういう首相が日本にはいない。何十年か前に、加藤高明総理がちょっと十二分間ばかり試乗したのがたった一つでありまして、以来何もないのであります。せっかく本日委員会でお取り上げ願ったのでありますから、大きな勇気と決意を持たれまして、各外国の例にならい、またマクドナルド首相にならって、どうかこの自動車工業を推進していただきたいと思います。それは、立法措置の上に立ってこの乗用車工業の助成、保護、奨励、あらゆる点において、これならばお前たち乗用車工業はやっていけないことはないだろうというととろまでお力添えを願いたいと存ずる次第であります。以上で終ります。
  6. 前田正男

    前田委員長 それでは次に、荒牧武一参考人に御意見を承わります。
  7. 荒牧武一

    荒牧参考人 私労働組合の代表であります自動車産業の危機、こういうことでありますが、各業界の一線に立っておられます社長さん方々と見方が若干違いますが、そういう意味で意見としてお聞き取りを願いたいと思います。もちろん私どもは同じ企業の中で生活をしている労働者であります。しかしながら、私ども考えますことは、お互いすべての国民がよりよい生活を営むために、各産業のいわゆる分担をやりまして、そうして物を作りお互いが供給し合って、いわゆる産業の使命はおのおのの持たれた職場の中でやられるべきものだというふうに考えております。ところが今までの状態の中で、非常に物事が一方的に進められて参りたわけであります。先ほど来からも各参考人からも申し上げられておりますが、軍の必要によって終戦までは保護育成政策がとられ、終戦と同時に、どういう形か知りませんが、すべてが御破算になった。その中で自動車の産業に携わってきた労働者、経営者は、ほとんど育成対策というふうなものがない中で、とにかく営々として廃墟の中から立ち上って参ったわけであります。もちろん運転資金といわず、これはお互いに苦しい中で、労働者は遅配に苦しみ、そうしてドツジ・ラインのあらしの中で首も切られていきました。そういう中で私どもは経営者の方々とともどもやって参ったわけです。その結果昭和二十四年には、大体三輪から二輪、これらを入れまして二百三十億程度のいわゆる生産量しか上らなかったものが、もちろんインフレの情勢の中にもありまして、同じ台数の比率とは申し上げませんが、二十八年度に参りまして千五百二十二億という大飛躍の生産を上げ得るまでに到達をして参ったわけであります。しかしこの状態までは、企業競争の中でおのおのが苦しんで参って、ほとんど市場の問題といわずそうそう問題にはなって参らなかったわけですが、二十八年度に入るころがら顕著な例が現われて参ったわけです。それで、特に二十九年度におきまする、私どもから言わせると入超の赤字の調整程度しか実際の効果がなかったであろうと思われる、いわゆるデフレと称せられる政策の中で、いろいろ金詰まりその他の問題が起き、倒産に次ぐ倒産というふうなものが逐次露呈して参ったわけです。その結果昨年の春以来自動車産業の全体の中においては減産をやり、減産計画の中でまたまた操短へというふうな相当明らかな方向がとられていったわけです。そのために私ども労働者の立場におきましては、率直に申し上げましてこのデフレ経済下の苦境は労働者の生活を圧迫するといいますか、これは極言だかもわかりませんが、そういう中で企業競争に勝ち抜いていくんだというふうな、いわゆる現実の問題として出てくるもろもろの問題と、私どもは広い意味の自動車産業防衛のために戦って参ったわけです。少くともトヨタにおきましても、昨年の秋操短によるところの賃下げが出されて、大体平均一千円以上経常給の方が削減をされ、同時にまた報奨金まで入れまして膨大な金額が下りました。いすずにおきましても大体操短によるところのもので、実質賃金の低下はやはり千二百円くらい、それから報奨金まで入れたならば七、八千円くらいの低下を余儀なくされるというふうな状態に、各主流のメーカーの労働者は置かれたわけです。その結果、下請企業はどうか、親企業のそういう不振の中で、非常に零細な企業の経営者を入れまして、金繰りの面、長期手形の発行、そういうふうな中で非常に苦しんで参りまして、昨年一年間の中に、臨時工という不遇な名前で使われておった、少くとも千六百億の生産を上げるように努力をしてきた、五年も六年も働いた労働者は千二百名も首を切られて、職場から街頭にほうり出されたというのが去年一ぱいの状況であります。そういう現在の各企業の状態の中においては、私どもの立場から、真の自動車産業の育成政策というものをどうしても立っていただかなかったならば、私ども生活もあり得ないし、また広い意味で近代化学工業として総合的な、工業である自動車産業の育成をやらないと、これに関連するところの電気、鉄鋼、そういうふうな各関連産業に対しまして大いなる変革を来たすような内容を持っておるわけであります。特に国民経済の立場に置かれておるところの現在の自動車の地位といいますものは、先ほど来佐川さん、団さんという方々のやはり参考人としての見解が述べられました通り、非常に重要な地位を占めておる産業であります。その産業に対しまして、少くとも国家として何らかの保護育成対策をとっていただかなければならぬ。そのためには、今いろいろな意味で言われている合理化、この合理化のしわ寄せを一に利潤の追求といいますか、その具に供されるような合理化ではなくして、国としての立場から自動車産業の育成を考える中で、経営者の諸君におきましても十分に広い意味でお考えを願って、私どもの真意とするところの日本自動車を輸出産業にまで仕立てるところの努力をやっていただかない限り、私ども産業に従事する労働者は当然生きてはいかれないような苦境に立つことは事実であります。現在におきましても、七月一日に明和自動車、三輪車でありますが、御存じだと思います、ここD会社におきまして全員解雇であります。六百三十名ばかり出ております。それから日野の方で管財人を引き受けてもらっております三井精機におきましても、何とか会社更生法の中で立ち上ろうとして労使ともに苦しんでおります。オオタ自動車はやはりいろいろ御批判もあろうかと思いますけれども、竹崎管財人の辞任の問題をめぐりまして、ここの約一カ月くらいが非常に重大な危機に直面するのではないかというふうな状態にきておるわけであります。  これらの現象面は何によって参ったかというふうなことを私見として申し上げたいわけであります。これらはまず三輪メーカー、二輪メーカー、それらに対する政府としての御配慮がほとんど見られておらないという現況、それからもう一つ日本自動車産業というものが一般産業並みに扱われておって、たとえば――これは当りがあるかと思いますが、パチンコの機械を作る産業も、国民生活になくてはならぬような性格を持った自動車も、同率に見られておるような現況に自動車産業が置かれておるということ、そのために工業界といわず、そのほかの方々がいろいろ御努力をされましても、自動車の苦況を乗り切る根本的な対策というものが皆無の状態に置かれているような状況であるわけです。現在経済審議庁でいろいろ計画をされておるように漏れ聞いておりますが、まずこの辺で少くともこの中に日本自動車産業はいかにあるべきかということを政府としてぜひとも出していただいて、今まで放任されておったこの自動車を、どうしても国際的な水準へ引き上げるような御努力を要請しておかなければならないというふうに考えます。特に私どもは自分の生活を守り、同時に日本の民族産業として自動車を発展させなければならぬという基盤においてやっておるわけでありまして、その点は特に御理解をいただきたいと思うわけであります。  そういう現況になっておりますが、私どもとしましては二月の二十日に芝の公会堂におきまして生活権擁護、自動車産業の危機突破大会を開催いたしました。全国代表者一千名を入れまして十三項目によるお願いをやったわけであります。そういう行動の中から、いろいろ現在まで御努力を各政党の方にはいただいておるわけですが、十三項目の中でやはり私たちとしてどうしてもやっていただきたいものをきめておりますので、その点をあわせてお願いをしておきたいと思うわけです。  まず問題は、現在の国内マーケットの状況を見ますと、少くともとの状態の中において各社が勝手な方向をとっていったならば、早晩この自動車の各社の危機は到来するのではないかというふうに考えられるのであります。少くとも月産二千五百台から三千台と推定される乗用車と称する車ができております。たとえばトヨタ一社の例をとりましても、最近は下取り車が、販売台数の五〇%が販売店の手持ちになるというふうな現況を呈しておりまして、いわゆる新登録と称して車を買ってくれるような状態にないわけであります。そのためにやはり下取り車の中古販売株式会社といいますか、そんなものを作りまして、何とかそれをさばいていこう、いわゆる苦肉の策を講じていこうというような状況にあります。でありますからどうしても現在の状況においては、まず第一点としては、自由貿易による市場の拡大を積極的に政府として取り上げていただきたい。もっと具体的に申しましたならば、現在の自動車の置かれた立場は、戦略品というふうな名称を受けまして、いわゆる共産圏に対する輸出のワクをはめられておりますので、全然出ていきません。そういう状態でありますから、ココムの制限の緩和といいますか、まずこれをやっていただいて、極東から東南アジア方面へかけての販路の拡大をぜひ具体的にとっていただきたい。それにもう一つ、部品工業界におきまして一昨年苦況乗り切りのために中国に参りましていろいろ折衝むし、私どもの漏れ聞いておるところによりますと、大体三億ドルの商談を成立して参ったということであります。ところが昨年通産省、大蔵省、外務省、運輸省、いろいろな関係官庁にもお願いをして行動したそうでありますが、遺憾ながらそういうふうなために輸出はまかりならぬということで、少くとも七百億に近い部品が輸出をとめられておるというような、非常に困った状況になっておりますので、この際これを組合側としても政府の方にお願いしたいと思うわけであります。  それから二つ目はMSAの協定による現物支給並びに無為替輸入の問題、これも本質的な問題としてぜひとも行政協定等に関係があると思いますけれども、何らかの処置をとっていただきたい。たとえばいろいろ各官庁の中で漏れ聞いているところを伺いますと、この問題におきましてはアメリカあたりでは自分の国で作ったものを持ち出したならば、持ち帰ってはいかぬというふうになっているそうであります。英国あたりでは逆に入国をする者は帰るときには必ず持って帰らねばならないというふうになっているそうであります。しかしそれらの問題をめぐって何とか行政措置その他で御配慮を願うと同時に、本質的な問題としてMSAによる現物支給、無為替輸入というものはどうしても排除していただきたい。そうでないと、現在出ておりますところのいすずの操短、これらは端的に六社の自衛隊の受注がゼロに近い現状の中で操短という現象が出ておりますから、これは何とか業界のためにも積極的な手を打っていただきたいというふうにお願いするわけであります。  それから第三点は、ガットの加入によるところの自動車の関税の引き下げ、これはどうしても反対をしていただきたいというふうに考えるわけです。たまたま今回は聞くところによりますと、四〇%、これが三五%で妥協がついたと言われます。そういう状態のように漏れ聞いておりますが、日本で現在までの、いわゆる貿易の協定を結ぶ国は、少くとも自動車をその国の工業の中心に置いている現状の国々が多いわけであります。そのために必ずやこのガット加入による場合にはなお関税の引き下げが続けられると思いますが、この点は将来のためにも、現状においてもなお一層の御努力をお願いしたいわけであります。  それから国産小型車の物品税の禁止、この点はやはり現在の国内マーケットの状況その他から問題になっておりますので、業界としても一本でお願いしておられると聞いておりますが、この点はことに困難ではあろうと思いますけれども、何とか御配慮をお願いしたいと思うわけであります。  それから第五には、今の自動車の現状を見ますと、先ほど来佐川参考人の方から申されましたように、今日本の車を輸出をした場合に、何としてもその性能が額面通りいくかどうかということが非常に疑われるような現象が輸出先から出ているという事実、これは日本の現在国家としてやられているところの政策の欠除といいますか、その点から各社が思い思いの構想を持って研究を続けてやっている関係で、極端に言いますと、新車のいわゆるテストもできないというような状況の中にそれが出てきているように考えられるわけです。そこでたとえば自動車産業育成のために国家の責任において総合研究所の設置をやっていただきまして、少くとも現在通産省自動車課の方へいろいろ意見具申をされておりますととろの、木曽川の上流にまず高速度試験道路を具体的にとっていただきたいというふうに考えるわけです。なおまた村山の研究所の場合におきましても、これは標準悪路が全然ないという形で、まず当面でさえも困っているというような問題もありますので、でき得ましたならば、これを即刻学者のエキスパートにも、いろいろ問題もあろうかと思いますけれども国家としてそういうふうな問題も十分に御配慮いただきまして、まず即刻お考え願いたいと思う。総合研究所の設置という中から日本全体の自動車の規格統一、品質の管理、そういうふうなものを徹底的にやっていただいて、輸出産業としての自動車が生きられるように即刻手当をしていただきたいというふうに考えるわけであります。  次に、第六点といたしましては、現在私ども考えておりますのは輸出の問題であります。しかしながらこの輸出の場合におきましても、たとえば貿易協定が結ばれた場合におきましても、相手国においては非常にシヴィアな支払い条件を押しつけてくるわけであります。たとえば今までの状態の中におきましては、タイ国の場合は大体普通支払い条件は二年、それから台湾は米国車を入れる場合には四年の年賦払いというふうな状態、ブラジルにおきましてはやはり五年以上というふうな長期支払いを条件として商談が成立しておるというふうな状況、こういう中におきまして、日本自動車を国外に出す場合においても、自動車としての底の浅い経済状態に置かれている場合には、これはとうてい耐えられないわけです。そこで国家の責任におきまして自動車の輸出促進のために、いわゆる融資対策を即刻お考えを願いまして、何らかの方法をとっていただかないと、自動車としては当然生きられないような結果を招来するというふうに考えます。  以上、六点を要望として申し上げておきたいと思うわけでありますが、私どもは冒頭申し上げましたように、この運動は私ども生活を維持すること、同時にまた日本自動車産業を国際的水準に引き上げるための運動であり、同時に日本経済の大きね役割を果すところの自動車を、徹底的に外車駆逐の線まで持っていかなければ、遺憾ながら達成できないというふうに考えているために、これをやっているのであります。  もう一つ、今の私ども考え方を率直に申させてもらえますならば、業界におきましても当然一貫した方針というのは、国家的見地においてもあまり聞いておらないわけであります。政府におきましてもやはり今までにおきましては、ついでというと言葉が悪いかと思いますが、やむなく育成をするような態度を若干とらざるを得なかったというふうな程度にしか考えられないような状態で今日まで参ったわけであります。もっと極言をさせていただきますならば、日本自動車丸という船は、海図のない、船長のいない、いわゆる乗組員だけで大海に押し出されておるというふうな観を呈しているといっても、何ら過言でないというふうに私ども考えます。その結果が私どもの首切りであり、賃下げであり、そういう中に生きようとする活路を求めるために、私どもはどうしてもこの運動を進めないと、われわれは生活すらもできない状態に立ち至り、当然また現在出ておるところの追浜の富士自動車に、たまたま三カ月くらいのめんどうを政府で見るという緊急処置が、首切り対象者にとられているような状態新聞紙上で見ておりますが、こういうふうな状態で、今の自動車の既存の設備と現在の能力からいったならば、近い将来にこれを放任しておきますと、必ずやそういう事態が参るというふうに、私どもは現在までの実績の中で考えているわけです。  そこで特にこの問題は、コロムのいわゆる制限緩和という中から、私どもの生きられる道を見つけたいというので、自分の死活の問題をかけてこの問題を戦っております。経営者の諸君とは若干考え方が違うと思いますが、少くとも日本自動車産業を育成して国家的な産業に仕立て上げるのだというところにおいて、僕たちは一致するのではないかと考えております。その意味で今後私たちは、現在までいろいろ御努力をいただきました各先生方にはなお一そうの御努力をお願いしまして、何とかこの問題にお力添えをいただきまして、日本自動車の生きられるように今後とも御支援を願い、近い将来に自動車のいわゆる海外飛躍の実現できるようにお願いしたいというふうに考えております。  以上をもちまして時間が過ぎましたが、考え方を述べさせていただいたわけであります。終ります。
  8. 前田正男

    前田委員長 次に大野修治参考人に御意見を承わりたいと思います。
  9. 大野修治

    大野参考人 トヨタ自動車大野でございます。今日はお呼出しを受けましたので、一応自動車工業の現況ということと、生産計画並びに国民車の問題でございますが、大体今までの経過を拝聴しておりましても、その重点は乗用車にあるやに考えられますので、大体乗用車を中心といたしまして現況を御報告申し上げたいと思います。
  10. 前田正男

    前田委員長 きょうは乗用車トラックにかかわらず問題は何でもけっこうでございますから、どうぞ自由に御発言になっていただきます。
  11. 大野修治

    大野参考人 日本における自動車工業の歴史は、御承知のごとくまだ日が浅いのでありまして、当社のごときに至りましても昭和十二年にトヨタ自動車ができたというふうな経過でございます。そういう経過をたどっております関係上、まだこの産業の基礎が確立しておるということは当然考えられいのでございます。しかしながら当社がこの事業に手をつけましたゆえんは、先代発明王が自動車工業をして日本人の仕事にしろ、こういう遺言でございました。これを前社長喜一郎氏が実行に移したという段階でございます。さような関係から、当社といたしましては、この事業をどうしても日本人の手で完全な仕事にするという使命をわれわれは今実行中でございます。しかしながらこの自動車工業については、戦争中にありましては軍の御支援ということもございましたが、その後においては確たる自動車工業の育成に、根本的な政策というようなことは考えられない。また政府御当局においてもさようにまでこの自動車工業についての関心があるやには感じられなかったのでございます。しかしながら当社は、最初は乗用車を主体といたしまして、この会社設立と同時に乗用車生産に入り、戦前すでに大型乗用車を二千台程度作り、その後事変等がございましたので、トラック乗用車の並行生産をいたして参ったわけでございます。かような事態で、戦後におきましては御承知のごとく、乗用車生産を禁止をされまして、二十四年に初めて生産制限が解かれたというような事情でございます。トラックの方の問題は、御承知のごとく大体現在のところ性能の点につきましても、外国車には劣っていない、かような自信を持っておるわけでございます。輸出をいたしました南米等におきましても、使用されたその結果等から見ましても、また引き続きその輸出の話が進行中である等の結果から見ましても、また現地を視察いたしました結果等から見ましても、まずまずこれならばトラックにおいては今後も推進ができるであろう、かように考えております。しかしながらこの乗用車の問題につきましては、私のうちの歴史は古いといたしましても、戦後における再びの生産は、まだ日が浅いのでございます。二十四年以降でございまして、その間も当社は乗用車研究は続けておりましたが、なかなかこの国産乗用車を作るということには、いろいろな支障があったわけでございます。この乗用車国産化のために、当社は設備合理化をいたします資金といたしまして、現在までにすでに三十億の資金を投じておるわけでございます。そういたしまして、現在ではやっと大型トラックが月産千台、小型トラックが月産千台、乗用車が約千台というふうな設備が大体でき上ったわけでございます。  最近たまたまその乗用車の問題につきまして、値段が高いというようなお話をわれわれはしょっちゅう聞かされるのでございまするが、二十四年以来当社がとって参りましたこの乗用車の施策は、なるほど最初には百四十万円近い価格でこれを御提供せざるを得ない状況にあったのでございますが、その後逐次値段を下げまして、ただいま皆様に非常な御愛顧をいただいておりまする車は、マスターにおきましては八十九万円という台までこれを引き下げることができたのでございます。そうしまして、この車がさように価格を引き下げ得たということは、先ほど申しましたような設備資金三十億というものを投じてやっと今日までに至ったわけでございますが、なおこの価格をより引き下げるためには、われわれは今後とももう少し設備の更新をいたしたい、かように考えておるわけでございます。今後考えられますことは、私たちがいかにしてこの乗用車をより安くし、そして輸出の対象に持っていくかということで、これが現在の一番大きな目的でございます。なるほど今日まで、ここ三、四年の間に百四十万から八十万台に下ったとは申しながら、今後は非常な努力をしなければ、この価格を引き下げることができないのでございます。そのためには、あとわれわれの計画しておりますところの設備の合理化を続けまして――今計画的には、今年度並びに来年度を通じまして、残り約三十億をこれに費したいと考えております。しかる場合においては、相当の価格の引き下げが可能になるであろう、こういうことも考えております。また月産千台をコンスタントに出し得るならば、今の価格も立ちどころに、あるパーセンテージは引き下げ得るという見通しもついて参った次第でございます。しかし今後のこの自動車工業考え方といたしまして、当社の今の生産計画並びにその能力――先ほど佐川参考人からもお話がございましたが、自動車工業というものは、何よりも一番数を作らねばならない仕事でございます。そこにおいて初めて性能もよくなり、品質も均等化される、また価格も引き下げられるという産業でございます。それだけに私たちは、いかにして価格を引き下げ、そうした上にいかに多く量産できるかということに、ただいま全力を傾倒しておるわけでございます。  かような状態にありまするが、現在の自動車工業というものはまだ日も浅く、企業としていわゆる底固いものではないのでありますので、この総合工業であります自動車産業を、国としてもう少し積極的に取り上げていただけるならば――これは、この方面に従事される方々も非常に多数の方を擁しております。直接考えましても、約五十万という数字が考えられる。あるいは鉄鋼その他の製品が自動車に使われる部分を考えますならば、おそらく日本において百万近い方が、直接並びに間接的にこの自動車工業に携わっておるということが一つ。もう一つは、との自動車の輸出ができまするならば、これは総合工業でございますので、それについておりますいろいろな部品、そういうものが一挙に輸出できるという関係にあるのでございます。これらを考えますならば、今後もし日本がこの輸出ということに重点を置かれる限り、こういう自動車のようなものを輸出されることが、一番多くいろいろな種類の産業に好影響を与えるのではないか、かようにわれわれは、我田引水かも存じませんが、考えておる次第でございます。  そういうふうな関係にありますとの自動車工業のわれわれが、今何を政府にお願いするかということは、当社が乗用車の千台計画を立てましたのは、今から約三年前、通産省におきまする、早く乗用車の確立をせよ、そして月産千台までに早く持っていけ、こういう御要望によりまして、われわれは積極的にその対策を立てたのでございまするが、現在の状況は、なかなかそのときのお話のようには進められておりません。そしてただいま佐川さんあたりからもお話のありましたように、何か自動車産業には一貫した将来の施策が見当らないというふうに考えられますし、またその点をお話しいたしましても、いろいろ御事情もあることと存じますけれども、なかなか確答が得られないということが、この基礎の浅い自動車産業にまたまた不安を与えておるという現状であります。こういう意味から、また総合工業であるこの自動車工業に、幸いにして今回はこの委員会におかれまして非常な関心を持たれまして、われわれがお呼び出しにあずかり、業界の考え方をいろいろとお聞き下さる機会を得たことは、私は今日まで自動車に携わっておりまして初めてのことであり、また非常に積極的なこういう会合にお呼び出しをいただいたことも私自身初めてでございます。こういうことで、ぜひこの機会を中心にいたしまして、今後の日本における自動車工業の育成、すなわちそれは国内を充実するとともに、輸出し得る産業にまでこれを推し進めていただく、それがまた総合工業であるだけに、その影響の範囲が非常に広いということは皆様のすでにおわかりのことと存ずる次第であります。同時に、私どもといたしましては、先ほど来申しましたように、そういう国のお考えがあるならば、皆様方の御要望に沿うべく、また私ども今日まで努力をして参りましたように、今後とも一層良品を安価に提供できるように十分な覚悟を持って、今日まで進んでおると同時に今後ともさような方針に邁進したいと思うのでございます。それは今までのところは御不満であったかとは存じますけれども、ここ数年にいたしまして、まず大体最初の価格の半分にまで到達し得た、半分に近いという数字でございます。こういうふうなことをこの実績としてお考えいただきまして、今後これを国民車に、あるいは輸出にどういうふうに持っていくかということは、まずまずある程度の段階までは進行し得たと私は信じておるのでありまして、今後はわれわれの歩く足取りを力強く押していただくならば、このまま前進をいたしまして、国内はむろんのこと、輸出においても御満足していただけるようなものを御提供できる、かように私は信じておるわけでございます。  私のところの生産計画等でございますが、これは先ほど申しましたように、一応大型トラック千台、小型トラック千台、乗用車千台、幾分の残業をいたしますならば、現状においてそのくらいな能力は持っております。もしこれを外国のようにツー・シフトにいたしますならば、倍とは申しませんけれども、それだけの生産はできるわけでございます。しかしそういうこととともに、もう一面には、コストを引き下げるためには、どうしても社内の合理化をしなければならぬと考えておりますので、今後ともわれわれは、今申し上げましたような合理化をいたすべく、すべての資金等の努力もいたしておりますが、こういう点についても、その内容を御検討の上、もしこれがなすべきことであるとお考えをいただいたならば、政府御当局においても積極的な御支援をいただきたい、かように思うわけでございます。  さようなことが現況でございまして、私たちがこの機会に要望事項を申し上げまして、もしお聞き届け願えれば幸いと存ずる次第でございます。  国産乗用車の問題、これはトラックには物品税がございませんので、乗用車物品税の問題でございますが、今発表して販売しております価格は、あれには一五%の物品税が含まれております。こういう物品税を相なるべくはできるだけ軽減をしていただきたいこういうことが一つ。  それから、ただいまのところはガソリン税の問題がまだ未決定のようでございますけれども、このガソリン税もたびたび問題に取り上げられる重要な問題であります。そういう関係から、こういう国民自動車を作るというようなお立場にあるならば、ガソリン税のごときもあまり重税にならぬようにお考えをいただきたい、かように考える次第でございます。  もう一つは、これは出過ぎたことかもしれませんけれども、われわれが輸出を考えます場合に、いろいろ賠償の問題等がありますので、商談が進まないというような事実を幾つか体験しておるのでございます。こういう場合に、この国産自動車を賠償の対象物件としてお考え願えるようなことができるならば、これは先ほど申しましたように、ただわれわれ、あるいは日産とかいすずさんとか、それだけの数量を言うのではなく、これに関連するたくさんの産業、それによるところの製品が輸出できる。こういうような面からぜひこの点も御検討いただきたい、かように思うのであります。  今日のところは時間もございませんので一応概略を申し上げ、当社がトラックの場合はむろんのこと、乗用車におきましても、かような考え方で今日まで進行し、また今後先ほど御説明いたしたような考え方で進めようとしておるのでございますので、どうかとの機会に自動車工業をもう一度顧みられまして、政府においても力強い推進と御検討をいただくことを希望いたしまして私の公述を終ります。
  12. 前田正男

    前田委員長 それではただいま御意見を承わりました団、佐川荒牧大野参考人に対しまして、質疑があればこれを許します。  なお、この際小委員外の商工委員の御発言も随時許可したいと存じておりますので、御了承願います。  なお、政府側からは運輸省の整備課長、車両課長、防衛庁の武器課長が説明員として出席しております。  なお質問の希望者が七人ほどおいででありますので、なるべく簡単にお願いいたしたいと思います。斎藤憲三君。
  13. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 簡単に御質問申し上げたいと思います。先ほど団参考人からのお話では、自動車工業は資材が七〇%というお話でございましたが、私はしろうとでよくわかりませんが、第一にボディの鋼材、エンジン、それが大きな部分を占めていると考えるのであります。自動車工業の基本的な面としてボディということになりますと、結局鋼材の質とプレス作業というものが大きなファクターではないがと思うのでありますが、この点に関しまして日本の実情はどうなっておるか。と申しますのは、話に聞きますと自動車産業のプレス能力というものは大きなトン数を必要とする――少くとも二万トンとか三万トンというような大きなプレス能力がないとうまくいかないのだ、そこに日本自動車産業の欠陥がある、こういうふうに承わっておるのでありますが、その点鋼材の質と価格及びプレス能力というものはどうなっておりますか承わりたいと思います。
  14. 団伊能

    団参考人 プレス能力がボディの生産に特に必要だというととはお話の通りでございまして、今日各社ともボディを生産しておる会社はプレス化に集中しております。このプレスはその質により物により場所によりまして、必ずしも大型ばかりではございません。小さい部面もございますが、各種プレスが必要であるということでございます。なおプレスの性質といたしまして、非常に多量生産に移しますと、いわゆる水圧プレスでは間に合わないということで、大体日本にありますのはハイドロ・リック・プレスでございますが、これもほかのプレスも速力の速いプレスに変えつつあるということが事実でございましょう。事実あまり早くプレスしますと材質を痛めるということもごさいますので、ある場合にはハイドロ・リック・プレスもまた有効ではございますけれども外国のような多量生産ということを考えますと、プレスの時間を早くするということが多量生産一つの方式になっております。今日各社ともでございますが、プレスでボディを生産することは――元来ボデの生産トラック生産がおもでございましたから、プレスによって非常にいいボディを作ることは今まであまり必要でなかった。ところが最近の自動車工業乗用車を作り始めてから、プレスの問題が非常に大きくなって参っております。これらにつきましては、今日各社ともプレスに集中し、中には欠陥のない会社もありますが、大体試験面ではプレスのために非常に問題を起し、またプレスの必要が非常に多いので、その点に自動車生産費が高くなるという点がございます。しかし全体の材質についてもう少し鋼材の上で研究していただきたい。これは必ずしも固いのがいいのではありません。プレスで使うボディの金も鋼板というものは非常にもろいために、今日ロスが相当多いのでございます。これらの点は製鉄において特にボディ生産に適するような鋼板の研究を進めていただきたいということを切実に望んでおるのでございます。  なお全体の中で材料費が非常に高いということでございますが、これは各社によって相当違うかもしれません。また買付資材の問題でときどき違いますので、これらの鋼材の購買方法が経営技術に属しておるわけでございますが、大体六〇%以上はこの鋼材の費用でございます。これは鋼材ばかりではございません。また七〇%と申しましたのはその中に外注生産も多少入っておりますので、外注品も含めますと数字は大きくなりますが、大体六〇%ぐらい材料費がかかるのはやむを得ない。それで自動車価格引き下げは、今のところ材料の引き下げが一番中心問題で、価格を引き下げようとするならば、ただいまお話になったような物品税はもちろんでありますが、生産費としては材料費をできるだけ安くすることをわれわれは考えております。こういう点が一番能率的に価格引き下げが実現できる問題かと考えております。
  15. 前田正男

    前田委員長 質疑応答はなるべく簡単にお願いいたします。なお通産省自動車課長が説明員として出席しております。次に小平久雄君。
  16. 小平久雄

    ○小平(久)小委員 簡単に二、三点承わりたいと思います。第一に団さん及び大野さんに御所見を承わりたいと思いますが、乗用車の問題で、今外車の国内組み立てというか、国産化ということが一方において進行しておる。これも大体オースチン、ヒルマンあるいはルノーと、大体三種類あるようであります。それに加えてというか、時期的には前からでありますが、トヨペット、ダットサン、さらにプリンスといった工合に純国産とも称すべきものが大体三つ代表的なものだけあげてある、こういう工合で、主として乗用車考えますと六種類あるようでありますが、この種類は、一体わが国の現状、特に自動車工業界の現状からして考えようによっては多過ぎるのじゃないかという考え方もあるかと思いますし、その現われとしてはもう少し代表的な、いわば国民車的なものを作るためにも統合したらどうかといったような意見もあると思うのであります。そういう点に関して先ほど佐川さんからも御意見発表があったのでありますが、いわば純国産生産に当っておられる団さんあるいは大野さん等におかれては、今後のわが国自動車産業、特に乗用車生産の振興という大局的な見地に立って、今の現状というものをどうお考えになっておられるのか、このくらいはあった方が将来ともいいのだというお考えなのか、できれば統合してやった方がいいというお考えで皆さんおやりになっておられるのか、こういう点について一つ御所見を簡単でけっこうでありますからお漏らし願いたいと思います。
  17. 大野修治

    大野参考人 お答え申し上げます。今国内にあります乗用車の点から申しまして、普通乗用車並びに小型乗用車を約十四万台と一応仮定いたしましても、これをもし十年ごとに償却いたしますとすれば、年に一万四千台という数字になります。もし五年ごとに償却いたすといたしますならば、これは年に二万八千台要るということになるわけでございます。そしてまた現在この三、四年間の自然増加の率を見ますると、大体一二・三%の自然増加を示しております。しかし昨年から本年にかけますデフレの影響がわざわいいたしましたか、二十九年度、三十年度の間はほとんど横ばいでございまして、これが自然増加はしておりません。これらを考えますと、この自然増加というものをどう考えるかということが一つ、それから実際に乗用車を使っても十年使えるかといったことは、これはいかがかと思いますが、果して五年でかえるといたしましても、先ほど申したように年間二万四、五千台という数字になるのじゃないかと思っております。それで大体通産省運輸省の方のお考えは、年間三万台くらいをお考えになっておるのじゃないか、かように私たち考えております。もしそういたしますと、これを頭割にいたしますれば、五社といたしましても、五社で三万台ではあまりに数が少な過ぎる、これでは量産に持っていく方法はございません。こういうことでは私が先ほど申し上げましたように、量産をいたしまして価格を引き下げる、あるいは品質を向上するということは不可能だと考えられます。合同云々の問題につきましては、これはまたいろいろ検討する余地があると思いますので、私ども率直にそういうことは申し上げかねますけれども、今申したような需要の面、少くとも輸出をするというには国内においてある量産をしてこそ輸出できるような価格になる、こういうふうにも思います。そうしますと、現状のようなままに進むならば、どこかにその無理がくるのではないかというふうに私は存じております。さようにお答え申し上げます。
  18. 団伊能

    団参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。私はこういう工合考えます。なるほど自動車が量産をして価格を低下するということは、アメリカの例を見ましても御承知の通りであります。今日の価格を低下するにはどうしても量産が主要な問題であるととは私どもは疑いを持たないのであります。しかし自動車乗用車工業というものは、今日考えますとほとんど四、五年の問題で、今ここに政府がこれを御奨励になったのもなく、相当おのおのの危険のもとにみずから自分で出発してこういうものを作り始めた、いわば今日は試作時代と私は考えております。そこで各社ございますが、各社ともとの自動車技術についておのおのできるだけの努力をいたし、その独創を出している、いわゆる芽を出しているところでございます。そこでこれが一応みなの結論にも達するでございましょうし、また大体は自動車を作ってみましても、日本のマーケットにどんなものが売れるかということはみんなわからない、これは冒険です。そして今日までの状態として各社製造を始めている状態でございますので、私はむろん将来国家考えて、これが量産による価格の低下は非常に必要でございますことは、決していなむものではございません。また国家の要請によってそういうことにいたすことに参加することはやぶさかではございませんが、まず仕事ができればすぐ合同するなり統制してしまって、そのもの自身がみな死んだ形になると申しますか、活気のない形になるということは、必ずしも業界発展のために好むところでもないと思います。これは国家として初めからお勧めになってお作りになった仕事じゃなくて、民間から自然にはえてきた仕事でありますから、もう少しこれをごらんになって、その辺は最後におきまして一つ会社になるなり何なり、日本一つの国策会社でつながるということも必ず悪いとは申しませんけれども、この辺の試験時代というものを経て、よい自動車をお互いに競争して作るということが、今日の問題として一応お考えいただきたい問題かと考えます。
  19. 小平久雄

    ○小平(久)小委員 先ほど来政府ないしは国会に対するいろいろの御要望も承わったわけでありますが、帰するところはいかにして安いまたよい自動車を作るかということとだと思うのであります。ただわれわれがしろうと流に考えておるところを申し上げますと、まあ私どもの見聞しておるところが誤まっておれば問題が違いますが、先ほど来のお話、あるいは今大野さんのお諸等を承わりましても、どうも現状だけでいったのでは、一体量産というものはほとんど日本では不可能なのじゃないか、特に欧米あたりの自動車工場の生産と比べますと、一つの工場のユニットというか、単位というものが、大体向うで言う一日分をこっちは一月かかるくらいで作っておる、大ざっぱに言うと、大体そんなところじゃないかという気がするのです。そうしますと、今御両氏のお話を伺っておると、安いまたよい車を作るというのは、全くこれは百年河清を待つというような現実じゃないかという気がするのであります。そこで将来のわが国自動車生産で理想的な工場のユニットというものをかりに想定をされたら、生産のユニットです、月産でも日産でもけっこうでありますが、これならば大体国民所得等からして大いに普及し得る自動車生産できる、その点はどんなぶうにお考えか、ちょっとお漏し願いたいと思います。
  20. 団伊能

    団参考人 ただいまのお話のユニットというのは生産量でございますか。
  21. 小平久雄

    ○小平(久)小委員 日産幾らとか月産何台とかですね。
  22. 団伊能

    団参考人 私ども考えますのは、何と申しましても日本のマーケットは狭い、しかしマーケットというのは人間は多いのでありますから、これは輸出というものを除いて考えますと、日本の中で自動車をだれでも持つという一つの新しい生活の形にはだんだんなって参ると思います。決して今日のようなマーケットが将来のマーケットではないと存じますけれども、しかしまず自動車会社として相当の世界の水準に乗せていく自動車会社といたしては月産二万から三万が相当いい会社で、世界的な会社として成り立つのではないかと思います。これは将来の輸出を加えての考えでございまして、それに到達するのは何十年かかるかわかりませんが、しかし少くとも私ども自動車を一万くらいは生産していくということが世界の大会社相当の形ではないかと思います。今日の輸出状況が、アメリカ自動車が輸出されているような状態にまで進めば、その生産というものは決して天文学的な数字ではないと考えております。
  23. 小平久雄

    ○小平(久)小委員 それでは次に問題を変えまして、大体今まで国産車がなぜ普及しなかったかという点を考えますと、もちろん価格の点もありましたろうが、より根本的なことは耐用命数が少いというか、すぐガタになってしまう、こういうことであったろうと思うのです。そこで最近における自動車関係の材料の材質というものは、メーカーの立場からすると、外国のものと比べてどんな工合になっておりますか、とれまた簡単でけっこうですから御説明願いたいと思います。
  24. 大野修治

    大野参考人 価格の問題並びに材料の問題でありますが、価格の問題は先ほど申しましたように量産ということと設備の合理化ということに尽きると思います。  材料の面につきましては、この二、三年来、日本として代表いたします富士あるいは八幡製鉄、この御両社が自動車というものに非常な関心を持たれて参りました。それも昔はおれのうちのこういうものをお使いなさいという形で、われわれの要求に沿うものをなかなか作っていただけなかったのですが、最近は今言うように非常な関心を持っていただいて、富士、八幡あたりが技術者を現地に派遣いたしまして、そしてプレスの型を見てそれに合うようなものを作るということで努力しております。またそれが相当いいものができて参りました。ただ遺憾ながら現在のところでは歩どまり等においては、輸入いたします材料とはまだ差がございます。しかしながらこれはわれわれが国産でやる限りどうしても富士、八幡というか、国内でできる材料を積極的に使わなければならないので、現在もそういう方向に進んで相当の効果を上げております。ですから私はこの点は現在のような方法で続けるならばもうじき解決すると思っております。ただ一面心配なのは乗用車の屋根でございますが、ああいうものは非常に幅が広いので、これが富士、八幡のロールに合わないというものもございます。こういうものは技術をもってこれを突いてプレス化しようということまで富士、八幡と折衝を続けております。現在まではここ一、二年の間に非常に進歩した、こうお答え申し上げたいと思います。
  25. 小平久雄

    ○小平(久)小委員 最後に佐川さんに伺いますが、佐川さんの御構想も先ほど来承わったのでありますが、かりにそういう国民大衆車というか、そういったものを作ることについて政府なり国会なりがいろいろの点で援助すべきだ、その一つの方法としては立法措置等ももちろん考えられると思うのでありますが、今まであなたの御研究の結果、かりにこの立法措置等によってあなたの構想を実現することになろうとした場合に、一体その法案なるものは主としてどういった内容を持つべきであるか、具体的に、その点についてて御意見を承わっておきたいと思います。
  26. 佐川直躬

    佐川参考人 私は先ほど国民大衆車というお話を申し上げましたが、これは狭い視野に立ってこういうものを論ずべきでなく、むしろ内閣とか通産者に自動車審議委員会のようなものを作って、官民合同で御研究をなさる。それで私の考えといたしましては、それを前提としてですが、こういうものができた場合には、現在物品税は先ほど来廃止することが論議されましたが、私は二十億に該当する物品税の廃止が大蔵省あたりで認められる、あるいは政府で認められるなら、なおけっこうでございますが、まずこれができるならば、それに一つの恩典を与えてやる。こういう大衆車に対しては物品税を廃してやるんだ、法人税を廃してやるんだ、なお政府が特に力を入れて相当額の財を投入してやる。あらゆる方法で保護政策をとってやる、こういうふうにしていただけば大へん安い、少くとも今の半額以下で車ができて、将来輸出産業に持っていく基盤が形作られるのではないかと存じております。
  27. 前田正男

    前田委員長 片島港君。
  28. 片島港

    ○片島港君 佐川さんにお尋ねしますが、その前にお話の中に、たとえばこれ以上発展していくには量産をする以外にないというお話がありました。かつ参考人お話を聞いておりますと、どうしてもこれが輸出の方にまで伸び、また賠償の対象にしていただくというためには、ただ量産をやってよけい作れば会社が引き合うということでなくて、自動車そのものの技術的な水準が諸外国との競争に打ち勝つだけのものができなければそういうものの対象にならないと思います。海外にどんどんと日本乗用車が発展をしていく、たとえばトラックとかバスというようなものが外国に遜色がないまでにいっているということは、先ほどからもお話があったように、これは技術的にりっぱな品物ができている。ところが乗用車はそういうわけにいかないから、実は競争に負けているのではないか。そうすればどうしても対外的に技術的な水準を上げて、それに打ち勝つだけの構想がなければ、私はそういうものの輸出の拡大とか、賠償の対策にはならぬと思いますが、それに対してはどういうふうなお考えを持っておられるか。  それと同時に一緒に聞いておきますが、政府当局におきましても、これは鳩山内閣成立以来国産車を奨励するといって外国乗用車に乗らないとまで言っておられたけれども、今に至るまでみんな外国乗用車に乗っているが、その後国産大衆車に対してはどのような育成方法を考えておられるか、それから鳩山内閣が成立してから後は外国乗用車は入っているか、入っておらないか、入っているとすればどういう方面に入っているか続いて御答弁を願います。
  29. 佐川直躬

    佐川参考人 お答えいたしますが、お説の通りでございまして、技術の向上は当然やらなければならぬ。それからまた量産して賠償の対象と申しましたが、これは計画的に賠償を――今一ペんに何万台出せと言ったってできませんから、これまでこういう工合乗用車がおくれてきたという理由は、先ほど申し上げましたように、いろいろな悪条件下に置かれてきた、しかもそれがここ数年だけでこれだけ発展してきたのでありまして、この点政府があらゆる保護助長の政策をとられるならば、非常に発展をし、量産に持っていける、こういう意味で私は申し上げたのでありまして、もちろん技術を上げる上におきましては、先ほどこちらの参考人が言われたように、自動車技術研究しようという総合研究所のようなものを私も設置していただきたいと存じます。そうして急激な、大きな力でぐっと自動車を押し出して下さるならば、自動車メーカはおそらく御期待にこたえ得るんじゃないかと存じます。それから量産ということにつきましても、先ほど来いろいろありまして、量産以外に、あるいはまたその他の方法でコスト・ダウンをやるといいますが、先ほど来のお話のように、資材というものが非常に高い。幾ら量産しても資材が高いから、かりに七〇%としましても、その七〇%の資材というものはあまりコスト・ダウンができない。それはさっき大野参考人も言われたように、日本の製品でいわゆる歩どまりをよくする、こういう研究もだんだん成り立っていくということと、あるいはまたついでながら鉄鋼とかゴムとか、こういう供給源に対して政府も一段と御関心を持って、もう少し安く資材が入るように御努力を願えるならば、とても安い車ができるのではないかと存じます。
  30. 柿坪精吾

    ○柿坪説明員 通産省自動車課長でございます。第一点の国産車育成について政府はどのような施策をとっておるかという御質問でございますが、これにつきましては、従来から国産車技術的な向上という点につきまして、特に業界の技術陣のみならず、各学界の技術者を結集いたしまして、自動車技術会というものを作り、また官としましては村山に研究所を作りまして、それに対して従来国家予算をつける、最近におきましては、競輪、オート・レースの振興費というものがあがっておりまして、その費用をこれにつぎ込みまして、技術の向上という点で、これは官民一体になってやろうということで、三十年度の予算といたしまして約三千万円これに傾注いたしまして、技術研究に資する。これは研究費でございますが、設備関係の財政投融資といたしまして、約五億ないし六億というふうな予定で現在実施中であります。  第二点といたしまして、国産車政府が率先使用するという点につきましては、これは閣議できまりました通り現在実施いたしておるわけでございますが、これは新しく購入する場合に、国産車を買う、外国の車を買わないという決定でございまして、現在政府機関並びに公共団体の持っております自動車の数は非常にたくさんございまして、これを一挙に国産車に切りかえることは財政上とても許しませんので、昨年におきまして、会計法の改正によって、保有しておる古い外国の車を売った場合においては、その金を国産車を買うための財源に充ててよろしいというふうな改正をいたしまして、それによって新しいものを買うときに国産車に逐次入れかえていくという方法がとられております。  第三点の、あれ以来外国の車がどれだけ輸入されたかという御質問でございますが、これは一昨年、現内閣の前でございますが、一昨年の暦年昭和二十八年の実績から申しまして、外貨割当で輸入しましたのは約五千六百台であります。それを昨年は四百台に縮小したわけでございまして、それの主たる用途は、大型の米国車につきましては、新聞報道関係、それから中型、小型の欧州車につきましては、ハイヤー、タクシー関係、それと一部病院用という方面――病院、新聞については需要者を限定いたしまして、それからタクシー、ハイヤーにつきましては、これは業界の自主的な配分方法並びに抽せんというようなことで、最小限度の数字が入っておるわけでございます。
  31. 片島港

    ○片島港君 時間がありませんからもう一点だけお伺いしておきますが、どうしてもこの日本乗用自動車生産を発展さしていくためには、いい品物を安く作る、技術を向上させて、コストを下げていくということが一番大きな問題でありまして、これについて先ほどから大野さんでございましたか、合理化をやらなければいかぬというようなお話が出て参りました。今大へん合理化ばやりでございますから、これはどうしても合理化をやって、技術を上げてコストを下げるということはけっこうだと思うのですが、ややもすると非常に安易な合理化を考えて、現在非常に競争が激しいとか、あるいは従業員の数が多過ぎるとかいうような形で、いつでも合理化をやる場合には、設備を少しよくして、従業員の首切りをやって、その設備をやる場合には何か政府の方から幾らかでも援助をしてもらうというような合理化方式があらゆる産業においてとられつつある。私はただ単に合理化というと非常にそういうことが気になるのですが、もし合理化という構想を持っておられるなら、どういうふうな考えを持っておられるか、需要の拡大ということを一つ大きな前提条件として合理化方策というものは考えていかなければならない。今の需要の程度において合理化ということを進めていこうとすれば、自分の会社の利潤がどうにかうまくいくようにということが中心になりがちです。そうでなくして、先ほどから非常に拡大していこうと言われるからには、何らかの違った構想があるのじゃないかと思いますので、お伺いします。
  32. 大野修治

    大野参考人 この合理化というのには二つの考え方があると思います。今御質問のようなことがたまたま行われておりますので、こういう御意見があるかと存じますが、私のところでは今までの人員をそのままにしまして、そしてこの乗用車という仕事を完成いたしますためには流れ作業のようなものがそれだけふえて参ります。ふえてくることを設備によって補うという意味であって、人を減らすという考え方の合理化ではございません。そうして御承知のごとく現在すでにここ一、二年の間に、月産百二、三十台であった乗用車が、すでに六百台を越した生産になっておりますので、設備と人の力によりまして、仕事がふえてきておる。そういうふえてくる見通しのない合理化は私は意味ないと思います。そういう見通しをつけてやるためで、これは従業員にはよりよい仕事がくるということであって、仕事がなくなるということではない、こういうふうにわれわれは計画をし、そういうふうに今進めております。私の方の合理化ということは、人員を減らすということを考えない、そうでなくして、よりよい仕事をよりたくさんやるという考え方に基いて進行しています。さよう御承知を願います。
  33. 前田正男

    前田委員長 次は松平君。
  34. 松平忠久

    ○松平忠久君 佐川さんにお尋ねしたいと思います。もう一つ運輸省の方がおいでになっておりますから、運輸省の方にお伺いします。  この自動車産業と、鉄道つまり国鉄との関係が一番日本では問題になるのではないかと私は思うのであります。アメリカで三分の一の自動車の投資が、三倍の鉄道を追いまくってしまった、こういう状態なんですが、日本では国鉄つまり国家の経営しておる鉄道というものがありまして、これに非常にウェートを置いておる関係上、私は自動車交通というものが、とかくこの鉄道を救済するというか、温存するという考え方に支配されるのではないか、こういうふうに私自身は見ておるのであります。本年にいたしましても、たとえば新線二十三線を計画しておる。それから全然採算のとれないような鉄道も敷いておるというような状態が各地にあるのでありますが、将来この鉄道自動車交通とのどこに調整を求めていったらいいか、これが私は日本における自動車産業の一番みんなが触れようとして触れない点ではないかと思うのでありますが、この点に関する鉄道運輸との調整についてのポイントについて、佐川さんと運輸省の方に御説明を願いたいと思うのであります。
  35. 佐川直躬

    佐川参考人 当初私申し上げましたように、私は乗用車振興普及協議会ということで、乗用車を主体として参ったのでありまして、なるほど現在の鉄道輸送量自動車輸送量というものは自動車の方が非常に多いことは先ほど団さんのおっしゃいました通りでありますが、私がお答えするのに、そういう数字はむしろ団さんにお願いしまして、乗用車鉄道とどういう工合に調整をとるべきかということについては、はっきりした数字を持っておりませんが、おいおい日本にも縦貫高速道路ができますと、いわゆる山間僻陬の地にまで道路が延びていく、これはおそらく鉄道ではやっていけないのじゃないか。だからどうしても自動車を使わなければならぬ。ことにそういう場合に、もちろん貨物輸送も大切でありますが、人間もそれに乗って行かなければならぬ。こういう意味において乗用車というものは将来の大きな需要層を持っているという工合に存じております。調整をいかにすべきかということにつきましては、私はっきりした数字は持っておりません。どうぞごかんべん願います。
  36. 前田正男

  37. 森山欽司

    森山委員 先ほど来の参考人お話を伺ったのでありますが、自動車研究した人の中には日本はバス、トラック生産に専念して、乗用車は自国産は断念して外国車を輸入せよと論ずる人もあるやに聞いているのですが、先ほど来のお話の、わが国乗用車生産の現状から見て、この議論は必ずしも無視はできないと思うのであります。私はそこまで極端な議論をしないといたしましても、自動車はマス・プロでなければよくも安くもならない、これは疑問の余地がないと思う。わが国の年間の需要は三万か四万程度を目標にして、六社で乗用車を作ったり組み立てたりしておっては永久にマス・プロはできない。これは先ほど佐川参考人が言われた通りであります。外国車に圧倒されることは当然であろうと思う。特に純国産車国産組立車も値段がまだ非常に高くて、四割も関税をかけられる外国車に対抗する手段としてはまことに高いわけです。そこで外国車を輸入制限する結果、この高い車を国民に提供するということになって、外国車が自由に輸入されない結果、国産車も組立車も非常に外国からの刺激がなくなって安逸をむさぼることになるというような傾向はないか。その問題について各参考人の御意見とそれから政府の説明員の説明を伺いたい。
  38. 大野修治

    大野参考人 お答え申し上げます。乗用車の問題は、えてして一般から今御心配のようなお言葉をわれわれもいただいたことがございます。しかしながらこれは先ほどちょっと私が説明いたしましたように、ここ三年間ばかりの間に約半分近くとは申し上げましたが、大体百四十万円程度の車が現在八十九万円程度になっている。しかもその八十九万円の現在の車は先ほどもちよっとお話がありましたように、最初は非常に量が少かったために足回りは小型トラックと共通にしておりました。それがためにいわゆる乗用車と肥していろいろな御注意をいただきましたので、今回本格的な乗用車をわれわれは考えまして、あるいはチェンジの方法をリモート・コントロールするとか、あるいは低床式にするとか、そして六人乗りにもいたしましたし、またハイポイドギヤーを使うとか、いわゆる乗用車としての技術的な質的な改良をいたしまして、なおかつ今申し上げたような価格にまで引き下げて参ったのでございます。これはわれわれの努力がまだ足らぬという御批判はあるかもしれませんけれども、過去の実績はこのように努力しておりますので、外車が入らないから国産メーカーはうぬぼれているというようなことは絶対にないと私どもは信じております。これは私たちだけでなく、たくさんの乗用車をやっております各社は、いかにしてこれを品質の上にまた価格の上に追いつこうかという努力に日夜没頭しておりますので、今御質問のような御心配はまずないような努力をさしていただいている、かようにお答えいたします。
  39. 柿坪精吾

    ○柿坪説明員 外国車が急激に減少いたしましたけれども、現実の需要に対しまして自動車の供給はまだ相当過剰でございます。従いまして買い手市場という状況下におきまして相当各社の競争がはげしゅうございますので、これをいかにして売っていくかということについては各社おのおの非常に御努力なさって、技術的改善並びに価格の引き下げに現在十分過ぎるくらい刺激があるのじゃないかというように見ております。またそういうふうでなければ向上しないということを十分自覚しておりまして、現に本日各社の首脳者が参考人で見えておられますが、各社ともいずれもその気持でやっておりまして、またわれわれもそういうように持っていきたいと思っております。
  40. 前田正男

    前田委員長 次に加藤清二君。
  41. 加藤清二

    加藤(清)小委員 私は自動車産業育成のためにいろいろ質問を持っておりますが、だいぶ午前中の時間が午後に食い込んで午後に回してくれという委員長のお言葉をそのまま額面通り受け取りまして、午後にいらっしゃらない人だけに午後では聞けない質問をちょっとだけしてみたいと思いますす。  まずトヨタさんにですが、私郷里が愛知県なものですから、トヨタさんの車についてはしょっちゅう気をつけているわけなんですが、トヨタさんの車の歴史を終戦後見ておりますと、終戦後車のなかった時代にはあなたのところの車を買ってハイヤー業などやりますと非常にもうかったことがあった。ところがしばらくたつというと、いけないということになった。それは一つには中型、小型の欧州ものがたくさん入ってきて、そうしてこれを食ったという点もございますが、あなたのところの車がすぐにこうがたがたとしちゃって、それから九百CCばかりの内燃機があのボーっという音がしますね。私も手をあげるときには必ずお宅かダットサンプリンスかにきめているわけですけれども、ところがあの音もどうも工合が悪い。ところが今度の型は非常にスマートであるし、よくなった、もうこれで欧州ものの中型、小型を駆逐できるのでありますからやれ嬉しやと思った矢先、今度料金がごちゃごちゃいたしまして、八十円に元に戻っちゃったですね。それで国内で車を使われる方々の意見によりますと、内地の車を使いたいのだが、減価償却の面からいくと非常に損だ、こういう意見が圧倒的に多いのですね。それからもう一つは、どうしても日本人は舶来品、外国製という言葉にあこがれる。従って料金のところにある程度の格差がないというと競争ができない。あるところはそれはルノーやワーゲンと比べてみれば、お宅の車やプリンスでもダットサンでも非常によくなってほとんど乗り心地は大差がない、乗った中の感じはほとんど変らないのですが、外見が違う。そこで料金の面である程度の格差をつけることがやがて国内の消費をふやす原因の一つになるのではないかと存じますが、料金の面についてメーカーの方々はどのように考えていらっしゃいましょうか、その点をまずお伺いいたします。
  42. 大野修治

    大野参考人 お答え申し上げます。終戦直後に作りました車は、これは先ほどもちょっとお断りいたしましたが、数が少いためにトラックと共通の部分を使っておった。これはまことに相済まないのでございますけれども、そういう事実がございまして非常にクッションがかたいということがございました。その車を発表いたすと同時に、その車をずっと研究して参りまして、ただいまではまずまず――うぬぼれかも存じませんが、一応お使いいただける車になったと私は考えておりますが、これをもって満足するものではございません。私の方の技術研究部等はあのまるまるの車に十分な検討を加えて次のものをすでにいろいろ研究しているような状態でございます。これは製造技術の問題と戦後における材質の一般的な低下の問題とが一緒になっておりますので。私の言いわけでなくして、どなた様も経験された事実だと思いますが。今後は材料方面も。先ほど申しましたように非常な積極的な御協力を賜わっておりますので、こういう問題は私の方の技術とともに相当の効果を上げ得る。かように存じております。  それから感じの問題ですが、これは非常に適切な御意見なので、ある方は、極端にいいますと、アメリカの車がたくさん入りましたときには、もうお客さんがアメリカ・タイプでいこう、その後欧州の車が入りますと、欧州の車はなかなかいいぞ、こういうことで、今のお話のようにほんとうに乗り心地をお考えいただいている方がどのくらいあるかということは、ちょっと疑問なんでございます。見た感じということが相当影響しておると思いますが、乗用車は見た感じということもまた大事なことでありまして、これをおろそかにすることはできないと思います。われわれは今までの経験で、まず丈夫なものを作って、そうして安くこれを御提供するということから出発いたしまして、現在の車は今申しましたような過程を通っていささか皆様にも――御意見をいただくにしましても、前ほどでないものに触り得た、かように考えております。  それから減価償却の問題ですが、これは私そのお使いになる方々によってだと思いますけれども、減価償却の点については、日本で作られておる車は部品が非常に安くなっておる。外車は、車は安いがあとの部品が高いということがございます。この点は今国内のすべてのアセンブルされました車の価格と部品の価格が非常にバランスがとれております。そういう意味合いから、維持費の点については、私はむしろ国内で作られておる車の方が安いのではないか、かように考えております。  それから料金の問題でございますが、この点は私こういうふうに考えるのでございます。車を安い料金で長い間走らせた方が利益になるのか、高い料金でそう走らないようにした方がタクシーの経営としてはいいのか、この点実は私わかりかねておるのでございます。ただいまもたまたま何か料金の問題について御意見がないかということを承わるのでございますが、私に一言言わせていただきますならば、料金を安定していただきたい。料金を安定いたしますならば、その料金で引き合う、その料金でかせいで、そうして償却できる一番いい車をお客さんが求められるであろう。この料金が不安定で、いつどうなるかわからないということでは、どの料金をもって経営の単位にするかということが不安定になるのであります。ですから、料金を七十円とか八十円とかいうことについては、運輸御当局においてもいろいろ御調査さされておるように聞いておりますので、どれが適当であるか、私にはわかりかねますけれども、適当とおぼしめしたところで安定をしていただきたい。そうすれば、その安定をした料金で一番経営に適当な車をタクシーの経営者が選ばれるであろう。それが選ばれれば、その車が一番多く使われることになり、その車を作る会社も安定してくる、こういうふうに私考えております。今の料金がどうかという点については、私いささか研究不足でございますので、七十円とか八十円とかいうことについてはお答え申しかねるのでございますが、御当局の調査による料金でまず安定をしていただいて、その中から経営にマッチするような車を需要家がお選びになれば、おのずから安定してくるのではないか、私はかような程度にしか考えておらないのであります。
  43. 前田正男

    前田委員長 加藤君、簡単にお願いします。
  44. 加藤清二

    加藤(清)小委員 それじゃもう一つ。車体はよくかった、乗り心地もよくなった、そうすると、減価償却の面からいって耐久力を比較しても国産車は欧州の小型、中型ものに比較して決して劣らない、かように心得てよろしゅうございますか。
  45. 大野修治

    大野参考人 これはメーカーの私といたしまして、それだけの信念を持っておるということでございまして、御需要者の方から見ますならば、とにかく小型というサイズの中に入れておりますので、エンジン馬力は御承知の通り千五百CCという範囲に限定しております。小型で細い道をうまく運転するように、ホイルベースは百インチというふうになっております。小型の規格の中でどこまでいい乗り心地にし、どこまでいい外見を得て、どこまで持つ車にするかということが、今日本国内における自動車技術者の一番苦しんでおられるところだと思います。もしエンジン馬力を大きくしてもよろしい、燃料を食ってもよろしい、あるいは乗り心地をよくするために、ホイルベースを長くしてもよろしい、こういうことならこれは別なんでございますが、日本小型の規格に入れておくことが、税金その他の面、あるいは燃料消費その他の面から一番適当だと思いますので、小型の規格の中に入るもので一番いいものを作りたい、こういう念願で現在作っておりますので、どんなものと比べてもということではございませんので、その点は御了解願いたいと思います。
  46. 加藤清二

    加藤(清)小委員 委員長の注意もありますので、総合的なことは午後お尋ねするとして、簡単にお尋ねしますから、簡単にお答え願いたい。それは国産車を多く使用しているタクシー会社が、東京都内でもずいぶん不渡りを出して困っている向きがございまするが、こういう状況はやがて国産車の消費といいますか、あなたの方でいうと売れ行宮を困難ならしめる原因ではないかと考えるわけでございます。そこでお尋ねしたいのは、国産車を使いますというと、早くガタがくる、こういう評がございますが、そのガタも、今度トヨタさんもそれからプリンスさんの方もダットサンの方も非常によく御研究いただいて、結果は国内の素材の悪い点をある程度克服して、耐久力も相当よくなったと解釈してよろしゅうございますか。なぜそんなことをお尋ねしなければならないかというと、せっかく七十円に下ったのが、今度また逆に上ったのですね。ところがこれは耐久力が問題だ。これがガタがくるようになったら、また下げなければならぬといううわさがもっぱらでございます。そこで今あなたのおっしゃいましたように、料金は、ほんとうはそうでこぼこと糸へんの値段のように毎日変ると困るわけです。そとで安定させる原因の一つにガタがくるかこないかということに大きいウエートが置かれておるわけです。そこでプリンスさんの方は七十円、同じような格好で新しいのがお宅の方に限って八十円にさせられたのです。あなたの方がしたのでなくて、仲間同士でそうなったのです。それで大いに注目に値することだと思うてながめております。特に国産の車を国内でまず第一番に喜んで消費していただくようにならなければ、なかなか輸出は困難だと思うわけです。それでお尋ねしたわけです。  もう一点だけ。輸出振興のことが出ておるわけなんですが、トラックをほしいという国がございまするけれども、それがいろいろな人為的な事情で今出ないという状況になっておる、たとえて言うと、中共のごときそうなんですが、これがどういう状況になったならば、メーカーの方々も喜んで輸出に御協力いただけるでございましょうか、なぜそんなことを申し上げるかと申しますと、この間中共の使節団がこちらに来られました折に、トラックメーカー会社が見たい、それからぜひ買いたい、こういう話が直接ございましたので、蔵前高工出身の方も来ておられて、私親しく何回か話し合いました。しかしそれが工場参観も思うよりにできなかった理由は、主として人為的な原因でございました。そこでどういう状態が来た場合にメーカーの方々も喜んで中共輸出に御協力いただくしとができるかということを最初お話しいただきたい。まず団さんにお伺いしたいと思います。
  47. 団伊能

    団参考人 前の質問でございますが、加藤さんの質問でプリンスが七十円というお話がございました。私どものはまだ新車の型を出しておりません。十月に出します新車からはトヨタさんのマスターと同じに八十円になっております。新車の型を出しますのがちよっとおくれまして、今年はこれという新車を出しませんでした。この次は八十円になりましてもガタが来ないような、丈夫な車を作りますように、それを御期待願えるように今非常に苦心しております。  それからトラックの問題でございますが、私どもといたしましては、トラックは多少輸出しております。乗用車も輸出の引合いはございますが、御承知のように賠償などに入れていただくと日本人同士の取引でできますけれども外国の方、ことに東南アジア方面は、政府におきましても相当のお力を入れていただいておりますけれども、実際の取引の面まで参りますと、いろいろ為替その他の連絡で非常に不安もございますし、これも為替銀行その他の点で十分安心のいくような形における取引ができるようにしていただく、これには中に立っていただく貿易会社というものに御信頼申し上げて、十分その点ができるようにもしていただきたいと思いますが、現にその方面における貿易の取引はいろいろなトラブルを起しておる例もございますので、われわれもその辺に不安もございます。また中共に対しましては戦略物資という点で私どもの作っておりますトラックは輸出できない形になっております。トラックと申しましてもあれは一トンでございますが、御存じと思いますが、一トントラックというのはほとんどトラックに入らないものでございまして、日産さんの製品はあるいは入るかもしれません。われわれのところは入っておりませんが、それもわれわれといたしましては業者でございまして、いろいろな面におきまして日本内地ばかりでなく、対外的にそういう行為を行いましても何らの制約も受けないとか、あとでいろいろ言われるとまたあとの注文がとれなくなるとかいう、政治的懸念のない形にお置きいただくことが私どもとしてまず要求いたします第一でございます。そうしないと貿易というものにとりかかる前に一つの不安があるような状態では、私ども好んでこれに出るという勇気は、実は弱き業者としてはございません。
  48. 加藤清二

    加藤(清)小委員 組合側に一点だけ伺います。組合の方々がこのたびは国会へ再三陳情にこられたことを記憶しておりますが、その内容は賃上げではなくして、業界の不振を何とかして振興していただきたいという御希望の趣きだと心得ておりますが、組合の方々がこういう点にまで研究を進めて御努力いただいておることに大へん敬意を表します。そこで承わりたいことはたくさんあるのですけれども、ごらんの通りの時間ですから何ですが、現在の状況でありますと、賃上げはおろか賃下げとか首切りとかいうことが行われるやに聞いておりますが、去年一年、あるいはその前でもけっこうですが、あるいは最近の傾向等々から見まして、この状況が政府の何らの援助措置もなくして放任された場合に、自動車産業に従事なさる労組の方々にどの程度の賃下げあるいは首切りが襲いかかるものでありましょうか。いわゆる労働者の恐怖と申しましょうか、そういう点をほんの少々お漏らし願いたいと思います。
  49. 荒牧武一

    荒牧参考人 将来のことを予測するのではっきりしたことは申し上げられませんが、まず現状の中でお考えを願うことがなお適切なような感じもするので申し上げたいと思うのですが、たとえばこれはまだこまかくは情報が入っておりませんが、明和の三輪車、先ほど申し上げましたアキツ号、明和自動車、ここでは大体予想として考えられるのは二カ月くらいの滞貨があるというふうなことが考えられる状況に置かれたわけであります。そうすると今いろいろな設備の金について自動車課の方で言われたように、四、五百億というような程度の援助がある。ところが滞貨融資に対しては弱小メーカーにおいてはなかなかうまくいかぬわけです。そのために率直に言って、いわゆる不渡りを出しまして最悪の場合に直面しておるような実態であります。ですから組合の立場を申し上げますと、まず現在やられておる金融措置の方の問題を二つに分けて、広い意味の自動車産業の育成という対策を立てられると同時に、これは極端に言いますと設備資金の問題ですが、弱小メーカーにおいては非常に借りにくいわけです。それからもう一つは、自動車工業の状況が総合産業であるために非常に苦しい状態に置かれておるのは、各大メーカーがその人員だけで現在の生産さえ維持することは実際は不可能であるという状況にあります。少くとも系列企業の中小企業の設備資金援助といいますか、こういうものを具体的にとっていただかれないと、遺憾ながら質の向上をどんなにやっていただいても、そのできてくる部品が精度の悪いものができるような、いわゆる老朽した設備では、現在は遺憾ながら放任と言うと言葉が過ぎるかと思いますが、放任されておるような現状に置かれておるわけです。ですからまずこのように具体的にやっていただ、同時に私ども労働者の置かれた立場は、まず現在の人員を最低としてお考えを願って、その上に立って生産性の向上といいますか、先ほど来いろいろ一万台とか、理想とすればという数字までも各参考人からも申し上げられておるような状況に国家として持っていくような対策、これは結局は貿易の問題だろうと思います。そういう対策を立てていただかないと、私どものこれからの判断でありますけれども、私の判断としてはそうそう二年も三年も現在の状態が続くような甘い情勢ではないというふうに考えられます。と申しますのは、トヨタさんにおきましても一応操短は解除いたしましたが、またまた七月に入って操短をやらざるを得ないような先行き不安といいますか、こういうものが出ている。その結果、具体的には神奈川県にあります関東自動車ではすでに操短を実施して、今月から土曜、日曜というふうな形で減産計画に自動的に入るというように、中小企業の経営者、労働者が全部ひっくるめて進められておるのが現状であります。でありますから市場の拡大、いわゆる貿易の裏づけをいろいろな意味でやっていただいて、それが可能でないとすると、現在の設備をフル運転してもなお外車に太刀打ちでき得ないような生産能力しかない日本自動車界において、遺憾ながらそれを遊ばせてどんどん縮小し、滞貨の整理をしていくというような運命をたどらなければならないような宿命に置かれているのが実態ではないかと思うわけです。ですから、少くとも私どもの心配の焦点は、いろいろ参考人としても申し上げておられますけれども政府として一貫した自動車産業育成の根本対策を立てられて、その上にのった整理というものが全体的になされなければ、遺憾ながら、私どもの判断としては、やはり首切りを最終的なものとして、賃下げ、労働強化といったものがことしの暮れあたりから大量に出てくるような情勢ではないかというふうに、私個人としてはそういう苦しい状態にありますので、判断しております。もちろんこれから私どものいう合理化という中で、経営者の方々と協力してそういう事態のないように日常やっていきたいと思っておりますが、その点をお含みいただきまして、ぜひとも先ほど要望いたしました六つの焦点をお考えいただかないと、今御質問のあったような首切り、賃下げなどが当然出てくるというふうに、私どもがあえて証言をしても差しつかえない情勢が自動車の現状だというふうに御理解をいただきたいと思うわけです。
  50. 前田正男

    前田委員長 それでは午前の会議はこの程度にとどめます。  この際午前の参考人の方に申し上げますが、御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見を承わりまして、本問題調査のために多大の参考となりましたことを厚く御礼申し上げる次第であります。なお、差しつかえなければ午後も御出席願いたいと存じます。  それでは午後二時まで休憩いたします。    午後一時三十四分休憩      ――――◇―――――    午後二時五十一分開議
  51. 小平久雄

    ○小平(久)小委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き自動車工業に関し参考人各位の御意見を承わることにいたします。午後御意見を承わる参考人の方々は次の通りであります。日産自動車株式会社社長浅原源七君、いすず自動車株式会社社長三宮吾郎君、日野ヂーゼル工業株式会社社大久保正二君、富士自動車株式会社社長山本惣治君、以上であります。本日は御多用中にかかわらず特に本小委員会のために御出席下さいまして参考人各位にはまことにありがとうございました。なお御意見発表の時間はおおむねお一人十五分程度とし、御発言の順序は勝手ながら小委員長におまかせを願いたいと存じます。まず浅原源七君にお願いします。
  52. 浅原源七

    浅原参考人 本日は参考人としてお呼び出しをいただきまして、日本自動車の現状あるいは将来について御質疑があるようでありますが、日本自動車工業は御承知のように終戦後一時先行きがこんとんといたしておりましたが、財政的には朝鮮事変を契機といたしまして各社とも立ち直りをいたしました。特に普通自動車関係において著しいのであります。三輪車、二輪車の方は、これは戦前戦時を通じて特に政府あるいはその他から特別の費用を得ないで全くのコマーシャル・べースでやっておったのでありますが、これは朝鮮事変も一部影響しているかもしれませんが、それよりも近年の輸送のやり方が、大型以外に小型輸送機械化という面からして、今日ごらんになりますように三輪車は急速な発展をとげまして、昔日に比べますと三輪車のメーカーには相当有力なるメーカーができました。この工業は外国には割合にない工業でありまして、ドイツあたりに若干ございますが、日本とは比較にならぬ程度でありまして、この工業は特に近年日本独自の発達をいたしております。なお輸送機械化に伴い、オートバイのような二輪車、スクーターがこれまた非常な増加をいたしておりまして、近年は毎年年産十万台程度の生産をあげているのであります。そういう面を合せ含めまして、部品工業も非常に活発に発展して参りました。通産省の推測では今年はおそらく部品は約四百億円くらいの生産があるだろうといわれているのでありますが、そういう面も発展いたしまして、四輪、三輪、二輪並びにこれに付随いたします部品工業、いずれも発展、増加をいたしまして、近年の生産額は御承知のように年産千六、七百億円というような生産額に達しまして、日本機械工業のうちで第一を占めるに至りました。第二位の機械工業に比べましても約二倍弱の生産額をあげるというような目ざましい膨脹をいたしました。ただ若干遺憾なことは、そのうち国内消費が大部分でございまして、輸出はなおわずかであります。昨年度あたりが約五、六百万ドルかと思うのでありますが、本年度努力目標一千万ドルということで通産省からもそういう域に達するようにという御要望もありますが、これは必ずしもただいまの状況では不可能ではないと考えております。ぜひこの面の外貨獲得の有力なる一翼になることをわれわれも目標にいたしております。また適当なる車種製品を得られますならば、これを増加することは必ずしも難事ではない。ただ御承知のように、日本におきましては材料が、たとえば鉄鋼その他燃料、いずれも割高でありますので、自動車工業の基幹になりますこの種原材料の面において、自動車製造先進国に比べまして不利な立場にいるのであります。従いまして簡単なる、たとえば裸車種というものはなお輸出に困難を感じております。大体一割五分内外の割高であります。従いまして裸車種の輸出におきましては、今日あまり伸びていないのでありますが、これに車体を加装いたしまして、各種の特殊車両、バスを含めましてそういう車両は今日東南アジア方面初め南米、中近東その他にも現実に輸出をいたしております。特にタイ国でありますとかあるいは南米のブラジル、アルゼンチンのようなところには、すでに数百台という車がまとまって輸出契約ができて走っているのであります。これらはいずれもバスもしくは消防自動車でありますとかあるいはその他建設用のものであるとかいのような特殊加装をいたしました自動車であります。なおかつディーゼル機関を備えた車がこの目的にはいいようでありまして、従いまして日本自動車工業といたしましては、輸出面では当面の間この種の高度の加工装備をいたしました車両をもっていたしますれば、必ずしも出血輸出どころか、ある程度の黒字をもって輸出できる場合も相当あるのであります。ただこれが大てい長期支払いになりますので、日本の輸出入銀行その他これの金融方面との連絡調整がなお不十分でありますので、ドイツその他の諸外国に対応いたしましてそういう販売条件の面においていつも困難を感じておるのでありますが、この点を是正いたしますれば、この種の特殊車両においては輸出も伸びるものと考えております。そういうわけで、国内における生産量も非常にふえましたし、輸出も適当な車種を選べばなお伸びる可能性がありますので、なお同時に国内におきます食糧事情と申しますか、あるいは生活費の点からと申しますか、だんだん輸送機械化の方が経済的である。少くとも経済競争上運送時間の短縮という点において――日本のような高金利の国では時間が非常に大きな経済上のファクターになるのも理由があると思うのでありますが、回転率のいい輸送をしなければならぬ。商品の回転率をよくする便利もありますし、かたがたもって東京その他大都市においては、少くとも今日牛馬車はほとんどわれわれは見なくなった程度に輸送機械化されて参りました。この面では、先ほど申しましたように、三輪車のような日本の特殊事情に適合した車種が如実に生産量もふえて参りましたし、一トン半以下の小型トラックも著しき増加をいたしております。これらは輸送の様子が単なる模倣時代か、・いわゆる合理化された日本の経済事情あるいは中小企業の数が多いといったような日本独自の状況にだんだんと適合して参りまして、必ずしも外国の例にならって大きな車だけでなく、それに交えて、中小の車が使われるというような点もありまして、私はこの意味においては今後自動車というものは、もちろん各種の経済事情に左右されはいたしますが、特に燃料の量の確保が現在程度にでき、あるいはもっと積極的に液体燃料の獲得を十分にいたしましたならば、むしろ自動車輸送を拡大するということの方が、経済活動上有利であるという点から、なおこの産業は伸びる可能性があると考えております。そういう将来伸び得る分野がある。今日たとえば、先ほど千数百億円と申しましたが、これはごく大ざっぱにドルに直して考えてみますと、約年間五、六億ドルの生産量の工業であります。日本には他にこの種の工業はありませんし、少くとも機械工業としてはございませんし、それからこれはかりにその一部もしくは全部海外から外貨をもって購入するということはほとんど不可能な域にまで、自動車の使用、普及は伸びておりますので、国民経済の見地からいってもこの工業を維持発達せしめる理由と基盤がすでにできておると考えております。こういう情勢でありますので、われわれ自動車工業関係者といたしまして直接生産に携わっておるものといたしましては、いわゆる一般に見られる合理化という点と申しますか、あるいは価格の引き下げのために生産手段、生産施設を改善するという方向に自然持っていくことになると思うのであります。七の合理化というものは、合理化々々々と一口に申しますが、合理化の方法手段はいろいろあると思います。設備の改善、新設、新規取りかえというのも、これも一つの手段方法でありますけれども、そればかりがもちろん今申し上げたコスト切り下げの唯一の方法ではないのであります。コストのほかに自動車はいわゆる互換性のある製品をもって組み立てるのでなければならぬので、国内における修理あるいは維持はもちろん、輸出をいたします場合にはなおさらその後の補修用の部品を送りまして、それがそのままはめかえ修理に使われるという程度の精度を持っておらなければならぬ。いわゆる互換性が非常に大事な製品であります。卑近な例で申しますと、ある自動車を買って故障があった、あるいは部品の破損があった場合、その部品を買ってもすぐにはめかえられない、そのためにバスなりトラックなりが一日も二日も休む、そのために運賃収入が減少を来たす。そういうことではその車は使用されないことになりますので、そういう意味から施設の更新ということは、単なるコストの切り下げに加えて品質の精度の維持という面から、生産手段の改善更新をはからなければならぬ、こういう事情があると考えております。それで、新しい機械人員の節減になる、こういうことは大ていの場合多いのでありますけれども人員の節減によってコストが下るというのは、人件費はこれは部品あるいは会社別によって違いますが、大体二割五分ないし三割が現在の日本の事情であると思うのでありますが、それの一割、二割下げても、全体のコストの上からいえば必ずしもそういう意味での節約は大きなファクターではないのでありまして、もちろん工賃が下るということは、切り下げの一つの要因ではありますけれども、この合理化の必要性は、むしろ部品の精度の維持、互換性の維持という点からいやでもやっていかなければならぬ。ところがその設備費その他が過剰の投資になる。つまりマーケットが小さいために、その機械の稼働時間を十分に使うことができないといううらみが日本の今日の自動車工業においては間々経験されるのであります。この点において経営者としては、この機械の稼働率の向上ということは始終考えていなければならぬ。これには、抜本的には需要がふえるということがもちろん一番望ましいことであるのでありますが、需要を増すにはやはり値段が安くて性能がよいという簡単なるところに返ってくるのでありますが、私は各社ともそういういろいろな面を総合考慮しながら今日市場の拡大に努力しておるものと見ておるのであります。冒頭に申し上げましたように、私は自動車工業の前途は拡大すると考えておりますので、その点では、今申し上げた大局的の需要増は、一応今のデフレ下においては頭打ちその他で非常に困難ではあるかもしれませんが、長い目で見れば、必ずしも悲観すべきものではない、こう考えておる次第であります。  また後ほど御質問によって述べさしていただきます。
  53. 小平久雄

    ○小平(久)小委員長代理 次に、山本惣治君がやむを得ざる都合があるそうでありますので、山本惣治君にお願いをします。
  54. 山本惣治

    山本参考人 ただいまお呼び出しを願いました山本惣治でございます。私はまだメーカーというカテゴリーに入らないのだそうでございますが、経験者とでも申しますか、本日参考人の一人にお呼び出しを下さいましてありがとうございました。  それから、これは余事にわたりますが、最近私のところで大へんな失業者を出しまして、そのために社会の非常な耳目を引きまして、皆様にいろいろと御迷惑をかけましたことをおわび申し上げるとともに、また厚く御礼を申し上げます。  すでに浅原社長からも、国産自動車一般について詳しいお話がありましたのですが、私も昭和の八年から日産自動車建設に当りまして今日に至ったのでありますが、今日私が申し上げたいことは、当時の構想に織り込まれておる一つの車であるのであります。小型自動車につきましては、当時ダットサンを率先してやりましたのですが、当時はそういうものはなかった。これは必ずしもタクシーに使うという考えではなくて、主としてオウナーに使いたいという考えであります。それからグラハム・ページという会社の設備を持って参って、トラックは一応でき上りましたのですが、その当時グラハムという人とページという人が組んで乗用車を作った。それがやはりトラックと共通エンジンでありまして、大きさは三千五百CC程度のものでありましたが、戦争乗用車は遠慮した方がいいということで、その型は全部つぶされてしまったのであります。  私はその後に富士自動車というのを始めまして、追浜で米軍の車両の再生に従事したのでありますが、アメリカの車をすっかり解いて、国産の部品をこれに加えて、そして再生産をやっておるのでありますが、もうこの域に達しますと、アメリカ車と――あるいは外国車と申しますか、国産品とが抱き合って、渾然一体となって工業の形を作っておるということは、私ばかりでない、実際に従事しておる工員に至るまで、みなそういう感じを深くしておるのであります。  それで二十七年に英国へ参りまして、オースチンあるいはヒルマンの話をして参ったことがある。アメリカ車では、クライスラー会社のプリムス・べースというのを、製造の約束をして参ったのであります。二十七年以来、完成車のワクで、一応ノック・ダウンで持ってきまして、約三割五分国産化いたしまして今日までやっておるのでありますが、初最は百八十台ほど、次は二百八十八台ほど、それから為替が圧縮を受けまして、その後に数量が非常に減りましたが、また同時に再輸出のプログラムが完備されまして、ただいまこちらで組み立てたものをさらに再輸出しておるようなわけであります。  私は実は初めから、必ずしも輸入業を歓迎しておったのではないのでございます。そのために自動車業界からは、山本輸入をするという考えか、国産化をするという考えかというので、今日ではかなりはっきりして参ったが、当時は、昼飯を一緒に食べましても、どっちの方に属するのかといって、どうも大へんに危惧の念を抱かれたのであります。結局日本のような機械工業、ことに自動車工業が欧米各国に比べまして非常に劣っておる、でありますから、まずアメリカ技術輸入することが肝心である。しかしながらそれで万事終ったわけではないのでありまして、逐次それを私どものものとして、ほんとうにその技術を血となり肉となるような形に持っていかなければならぬのであります。そういう信念から、二十数年来やって参ったのでありますが、このグラハム・ページというのは、ダツジ、デソート、それからプリムス、三つが共通エンジンでありまして、三千五百CCで非常に能率のいい、当時作られた車から見ますと大へんな差があるのであります。小型自動車は非常な発展をしました。しかしタクシーに供給しただけで能事終れりというわけではないのでありまして、これが逐次自家用車の方向に転向して参るはずであります。私は小型自動車はどうでもいい、大型自動車が要るのだ、こういうふうな考え方ではなくて、一応政府当局も、小型自動車をまず国情に照らした線において完成しようという御熱意とその企図については全く賛成するのでありますが、しかしたとえば外国から人が来たとか、あるいはこれから弾丸道路ができるとか、相当な階級の人の自家用車というようなもので、どうも大型自動車がある程度の数は要るのであります。大型自動車といいましても、たとえば四千CC以上とか、百二十インチ・ホイール・ベース以上のいわゆる高級車、そういうものをねらっておるのではありません。自動車事業法がしかれた当時、いわゆる大衆車として考えられたものを考えておるのであります。まず最初におきましては、ただいま申しましたような六割五分程度の国産化をただいま実現しておりますので、日産か日野かあるいはいすずがやっておらるるように、これを五カ年計画にして、五カ年の間に逐次国産化に移して、そうして完全に私どものものにしたいという念願であるのであります。小型自動車といろのは、これは国情柄必要であるということは当然であります。そのために私どもも当初そういうことをやってきたのであります。しかし現に大型自動車で、いわゆる大衆車でダッジ級のものが十五カ年間も使っておったのが四千台以上もある、こういう形になっておりまして、非常にライフの長いものであります。タクシーは御承知の通り、私どもが毎日約二、三十マイル走るのに対して、約十倍あるいは十二、三倍の距離を走ります。ですからどうしても早くいたみやすい、それには堅牢な車がほしい、またイニシアル・コストが安くてもガソリンが少くても、休車が多いと稼働率が悪いという計算もあるのであります。私はぜひいわゆる大衆車を国産化したいという念願でただいまも続けておりますが、実際問題としては、たとえば再輸出するにしても、やはりこの程度の車がほしいと考えるのであります。またアメリカでは御承知の通りガソリンも豊富、道路も長くよくしますから、大きな車が相当よく発達しておるのでありますが、あるいは欧州、英国等におきましても、最近は逐次いわゆる大衆車と称する私どもの三千五百CC程度のものを作り始めておるのであります。これはかってからあるものでありますが、最近は特に長い距離を運転するために疲れの少い、かつまた長ければ長いほどガソリンの消費量が節約される、能率化される、こういうような考え方から逐次大型車を作るような傾向があるのであります。私は大型車でなければならぬ、小型車でなければならぬという意味ではありませんが、そういうものを取り合せてそれぞれの用途に入れてサプライスすることが必要であろうと考えております。最初はある程度のドルを拝借して、そしてそれを三分の一ほど再輸出をする。そして三年目くらいにはもう拝借したドルはなくて済むような計画を立てることができると考えております。これはなかなかむずかしい問題でありますが、しかし現に私どもがかってはやってきたのでありますから、この種の車は国際情勢の要請もありますので、ぜひとも一つ皆様の御了承を得て製造に移したいと念願しておるようなわけであります。  もう一つボデイなどの問題については、アメリカのゼネラル・モータース式に参りますと、各社がそれぞれのダイス、それぞれのプレスでやることなく、一つのボデイ工業というものを統一したらどうか、こういうようなことで政府方面から相当働きかけておられるように承知しております。私どもその話を伺ってぜひともそういう方向に持っていかなければならぬと考えておりますが、各社がおのおの同一な設備を重複することのないような方向に持っていくことはできないかということが一つ考えられるのであります。  それから二重投資の問題はしょっちゅう議論されるのでありますが、少くとも新しいプロジェクトをやる場合は既存の会社が全部持っておるというわけではない。これは最近各社が実験された外国車が国産化された事実にかんがみましても、みなやはり新しい設備がいるのでありまして、一応自動車会社というと何を作ってもそこでやれるのだという思想は非常な誤りで、これは私どもも反省しなければならぬのであります。かつて昭和の初めに自動車工業計画したときに、当時の中島久萬吉商工大臣が、日本にはプレスがうんと余っておる、ですから二重投資にならぬようにこういうものを一つ利用してくれないかということをおっしゃった。それで調べてみたのでありますが、それは絶対に違う。大きなストロークで大きなシャフトをたたくのと、二インチそこらのシャフトを一時間に何百本と製造するものとは、そのストロークにおいてもパワーにおいても全然違う。でありますから、一つの新しいものを作り上げるときには、どこの自動車会社でもみんな持っているという考え方は違うのであります。それは二重投資であるというような間違った考え方をしてスタートしてみると、今日作られている一つ会社の製品について新しい設備を要求されるところを見ると、全く新規の設備が要るのであります。従来の会社であれば大した設備がなくてもできる。新たにやる会社は大へんな設備が要るのだ、こういう考え方は是正しなければならぬだろうと思います。  もう一つは、私どもが始めた当時というものは大へんな設備、何もかも全部自分で作らなければならぬ。それでも数において五割五分、金額において五割くらいのものを下請に出したのでありますが、今日は中小企業も非常に発達し、専門部品業も大へんに発達して参ったのでありまして、何もかも自分で作らなければならぬことはない。これをできる限り中小企業あるいはまた専門部品業に一任して、大事な部品だけは自分が作るというやり方で設備の節約が非常にできると考えておるわけであります。でありますから最小の設備で最大の生産を上げる。そうして自家製品でみずから作るという考え方でなしに、これをできるだけ多くの専門部品メーカーに出すといういき方をいたしますれば、自家の設備というものはそんなに膨大なものは要らないのであります。この点も一つぜひ御認識を願っておきたいと思うのであります。  さらにこれから皆様方から専門的なお話があると考えるのでありますが、私は年来やってきたうちで、特に観光とかあるいは特殊の需要に向けまして、これもわずかな数量なのでありますが、二百とか四百とかいうような月の生産で、しかも分散的な仕事をしていきたい、こういうふうに考えます。特に観光客につきましては、どうしても大型車を入れないと、外国から来た人に中型車、あるいは小型車で日光とか鎌倉とか箱根などへ連れていくことはほんとうにむずかしいことでありますから、ぜひ実際に即して私の考えておりますことを実現できるように、何分各位の御了承と御後援をお願い申し上げる次第であります。ありがとうございました。
  55. 小平久雄

    ○小平(久)小委員長代理 この際山本惣治君に対する御質問がございますれば……。内田常雄君。
  56. 内田常雄

    ○内田小委員 山本さんのお話を承わりましたし、また専門員の方から専門的のお話も伺ったのでありますが、途中でありまして私よくわからないところがございます。一体国産化することに対してどういう大きさというか、型の自動車、特に乗用車を作ることを日本としては考えていくべきか、オースチン、ヒルマン、ルノーというようなものの国内組み立てをやっておる、五年以内には完全に国産化するというような計画のように承わっております。また一方プリムス、トヨペット、ダットサンというものをやっておられる。ところがけさの団伊能さんのお話では、とりあえず日本自動車生産というものは小型車でけっこうだ、けれども小型車だけに力を用いるべきでない、山本さんのお話のように、高速自動車道路というものを計画されておるので、自動車は相当大きな力を持って早く走らなければならない、そうすればどうしても大型自動車生産ということも考えていくべきだというような団さんのお話もあって、山本さんと共通のように思われる。一方国会議員のどなたからか、政府に対して質問書を出されたのに対する政府の回答では、何か一台当り二十五万円とか何かの小さい車を目標に大量生産に持っていくように政府は努力するのだというお話があったということも承わっておるのでありまして、大体今お話がありましたように、日本乗用車の市場というものは国内においても非常に小さい。またいろいろの制約があって、今直ちに国内で完全に組み立ったものが外国にどんどん出ていくことも考えられない際に、大きなものをやらなければならぬ、また今やっておるような中型というか、小型というか、物品税が一五%のものもやらなければならぬ。政府がまたさらに一番小さい何かスクーターに毛のはえたようなものを考えておるとすれば、大勢寄ってたかっていろいろの車種のものをちびりちびりやるようなことで、どうもわれわれ門外漢から見るとこれでは行きつく先がどこへ行きつくのかわけがわからぬのじゃないかというような気がするのであります。今の山本さんのお話はちょうど団伊能さんのお話と共通するところもあるのですが、これはほかの専門員あるいは政府の重工業局の方も見えておられますが、どういう考えでやられるのか、山本さんあなたは小型車ばかり作っておるから……。
  57. 山本惣治

    山本参考人 私はただいまの内田議員の御質問に対して全部お答えできるかどうか、それぞれ各社の社長もおられることでありますから御意見も出ることと思います。多分通産省考えられて、いわゆるずっと小さな――五百CCくらいでたしか三十万円とおっしゃいましたが、車を作りたい、これは多分ドイツ国民車一つの思想からお取り上げになったものだと思うのでありますが、私どもが最初ダットサンを作ったときは五百CCで千百四十円くらい、七百五十CCについて千七、八百円で売りましたが、当時は月給約三百円程度の人が自家用車として月賦で乗れるというような考え方になっておったのであります。それで非常な勢いで普及したのでありますが、つまり自転車の次に来るものは何か、こういう考え方、それで当時ゼネラル・モータースの方々が見えまして、変なものを始めたな、とこう言うのです。それで需要はどんなだろうという言葉だったのですが、自転車が当時八百万台、今は千百万台と言っておられる、それの百人に一人乗るだろうか、二百人に一人乗るだろうかという御質問もあったのですが、一万人に一人乗ればいいという計算の基礎でありました。ドクトルス・カーと言いますが、ドクトルは当時何人あったか、五万人です。これが十人に一人くらい乗るだろう、それで五千台、合せて一万三千台の当時年産の計画をしたのでありますが、もっぱら自家用車をねらったのです。それではどうして今日自家用車がふえないかと申しますと、今車の値段があまり高過ぎる、七、八十万円というのですが、これではなかなか自分で買って乗るというところにはいかない。そして車がだんだんと中型から大型の方に、つまり上へ上へ参っていっているようなわけであります。そして五百とか干CC以下のものがちょっと空白のところが出てきたわけであります。小型自動車の免許をどこにしたらいいかということは、政府研究をなさったのですが、どうもタクシーに使うおそれが多分にあるから、やはり千五百CCくらいに上げておかなければならぬと私は思うのであります。それでこの小さな車というのは、主として自家用車をねらっておられるに違いない、またそうしなければ実際ならないのであります。自家用車でしたら今日一万、二万という車が市中に走っておりますが、これは十万、二十万という車が走っておるのと同じ程度に走っております。タクシーであります。でありますからやはり価格の問題が一番大きな問題であろうと思うのであります。だからいつか、これは事実どうか知りませんが、浅原さんがもうしばらくたつと今やっておる中小型自動車が二、三十万円でユースド・カーがうんと出てきますよ――そういう一つの御意見がある。今大型車が大へん売れ行きが悪いと伺っておるのですが、これはどうしてかといいますと、ちょうど朝鮮事変のときにアメリカ乗用車をうんと作ったためにもたれが生じて、ユースド・カーがうんと上ってその消化にかなり苦しんだわけであります。今うんと大型自動車を売ろうとされても、トレード・イン、つまりそれだけのものを引き取って、新しい車を売って  やらなければならぬということで、これまたユースド・トラック価格というものが大へん上ってきてしまったように承知しておるのであります。ですからむやみに数をラッシュしてどんどん作ってやるということは、アメリカのような四千万台も作っておるようなところでもそういうことが生ずる、三、五年の後には大へんなもたれを生ずる関係で、日本においても数を作ればいいといっても、実際にそれだけのデマンドがないと実際はもたれる、こういうわけでありますから、これはよほど考えてやらなければならぬ、ぜひともその面におきましてタクシーはもう少し堅牢な車を使ったらいいじゃいかというようなことが、私の意見ではございませんで、識者間の意見であるように承知しておるのであります。  そこで私どもから申しますと、ダットサンが五百CCから七百CC、八百四十CC、千CC、今度は千五百CCと、ぐんぐんと各社の小型自動車が上へ上ってきたのであります。そこであいておるところは二千CCから三千五百CCくらいのところがあいておるのであります。それから小型自動車ではずっと下の方があいてしまっておる、そこで先ほどからお話の三輪車、二輪車というものが価格の点においてそこへ入ってきたのであります。そういう三十万程度までのものが実用化されつつあるのであります。ですから実用車というものを作るときはよほど考えてやらなければならない、今のランキングからいって、そこがあいておるから、そこへ一つ突っ込んだらいいといっても、実際に需要供給の面からいうと、あるいはそれにおよそひとしいようなものがユースド・カーとしてどんどんはんらしてくるかもしれません。そこらのことはなかなかむずかしいことでございます。ですから私思いますが、通産省がこの間説明されたという小型自動車というのは、五百CCで三十万円、どんなものができますか、まことにけっこうであります。自家用車としておねらいになることはけっこうなことだと思いますが……。
  58. 小平久雄

    ○小平(久)小委員長代理 ちょっと申し上げますが、あとまだ参考人の陳述が残っておりますから、おそれ入りますが、簡潔に一つ……。
  59. 内田常雄

    ○内田小委員 私がお聞きしたい要点は、今オースチンとかヒルマンとかルノーとかいう輸入車の組み立てをやっておる、あなたがおっしゃるのは従来よりも大型の三千五百CCですかのダッジやプリムスの組み立てをやっておられるのですが、あるいはこれからさらに引き続いてこれをやりたいとおっしゃるのですが、この需要の狭い、市場の狭いわが国において、小型、中型の組み立てをやりながら、一方において他社があなたのところでそういう大型の組み立てをやって、それが国内の事業として確立する可能性が一体あるのかということです。またこれをやるとすれば、五年とか十年の期間内に、全部国産化する、国産部分が三五%とかいう今のお話じゃないが、八〇%まで国産化するという見通しが得られるものであるかどうか、見通しが得られないのなら、そんなことをやってみてもしようがないから、日本小型、中型でいくし、どうしてもいけなければ完成車を輸入してもやむを得ないことになりはせぬかということを承わりたい。
  60. 山本惣治

    山本参考人 ぜひあなたの前段の方法で、今オースチン、ヒルマン、ルノーがやっていっらしゃるように、ある期間中にこれを国産化して、今アッセンブリのようにおっしゃいますが、実際はもう製造に入っておるのであります。それと同じ方法でアメリカ車を組み立てから製造に入りたいというのが私の考えでございます。需要はあると信じます。
  61. 小平久雄

    ○小平(久)小委員長代理 次に三宮吾郎君の御意見を承わります。
  62. 三宮吾郎

    三宮参考人 自動車工業の大体の様子につきましては浅原参考人からお話を申し上げましたし、なおそのほかに御参考に刷りものを浅原さんからお配りしてありますので、それをごらんいただきますと自動車の現状というものは大体おわかり願えると思います。先ほどのお話で去年の自動車生産金額は千八百七十何億であるということで、これは全機械工業の中の第一位で二〇%を占めておるというお話をされましたが、去年の生産高は普通車で――これは普通車、トラック、バスというような言い方でありますが、普通車が二万五千二百台、バスが五千六百台、それから小型の四輪乗用車が一万七千五百台、同じく小型の四輪トラックは一万七千三百台、そのほかスクーターとか二輪車、三輪車等自動車と名のつくものが二十五万八千三百台ほどありまして、合計三十二万三千九百台ほどできております。この生産状況で世界の水準からはどのくらいかということになりますと、パスの生産高は世界で第三位でございます。トラックは第五位、オートバイスクーター等入れましたものは四位でございます。そういうわけで最近非常に自動車がふえておりまして、二十年の十二月すなわち終戦の年の暮れには全部で十四万四千三百五十台くらいしがなかったものが、去年の暮れには百三十万二千九百台くらいになり、さらに今年の二月には百三十四万二千台というふうに急速にふえております。その中で自動車、先ほど申したように大きいのもあり小さいのもあるということでございますが、大体普通自動車、これはトラックとバス、それから小型大型乗用車、三輪車、二輪車ということでございますが、私どもでやっておりますのは、三輪車、二輪車、オートバイ等はやっておりませんで、もっぱら普通のトラック、バス、それから中型の乗用車ということになっておりますが、そういうことについて申し上げますと、終戦後輸送面におきましてトラック、バスというものを通じて非常に役に立ちましたものはディーゼル自動車であろうかと思っております。御承知のようにディーゼル自動車は軽油を使いまして、いわゆるディーゼル・エンジンがついておりますが、ディーゼル・エンジンは熱効率が非常にいいということで、油の使用料がガソリンに比べて大体半分で済む、また油の生産費もそれだけ安い、税金も安いということからガソリンの半分の値段でございますから、うまく使えば維持費が四分の一で済む、まずく使っても三分の一もあればたくさんであるということから、戦争後非常にディーゼル自動車が普及しまして、ことに五トン以上くらいあるトラックあるいは大型のバスにおきましては、だんだんとその分野が広がっております。最近の調査では、バスでは大体五割がディーゼル車になっております。またトラックでは、相当進んでおるというものの、わずかに一二%くらいがたしかディーゼル化しておりまして、あとの大部分がまだガソリン車でございますが、だんだん車が大きくなると、これは自然にディーゼル化する方が非常に有利であろうかと思っております。これは外国の例から見ましてもそういうふうにだんだんなっているわけでございます。そこでこの自動車の問題が、生産高が機械工業の第一番といってみたり、あるいは千七百億あるといってみたりしますが、一般の方々の日本自動車工業というものに対する認識は存外薄いのではないかと思っております。これは大体われわれ自動車を作る者の宣伝とか努力が足りないのだろうと思っておりますが、現在でもたくさんの関連産業を持っております。日本自動車工業で、ほかの工業に対する、あるいは製品に対する使用割合というものをごく大ざっぱに拾ったものを見ましても、工作機械で約二五%、板バネで八一%、線バネ、コイル・スプリングでは五五%、バネ鋼が五四%、バッテリーは四四%、特殊炭素鋼が三九・五%というふうに、非常にたくさんの関連産業に寄与しておるわけでございます。そしてこれに従事する者が直接の者、間接の者を入れましてかれこれ五十八万人働いておる、家族を入れましたならば百万以上の者がこの自動車関連のもので食べているということになって参っております。日本における自動車がどのくらいまでふえるかということにつきましては、いろいろな見方もあるようでございまするが、まだまだたくさんの需要が残っておるだろう、と申しますことは、道路の状況から見ましても、舗装道路は約五%程度のものでありまして、あとのものはまだまだ砂利道であるとかいうふうなことで、相当改善されるだろう、この道路の舗装改善によりまして今後ますます輸送が盛んになる、鉄道輸送の部分がだんだんに自動車の方にも入ってくるのがあるのじゃないか。かれこれ想像しますと、乗用車におきましてもあるいはバス、トラックにおきましても、今後の自動車というものは相当に見込みが多いのじゃないか。しかしある程度になりましたならば、必ずこれは一応そこでとまる、そうするならばこれに対する年々の代替、今は七年とか八年とか、長いものは十年以上使っておりますけれども外国の例で見ましても五年なり六年、戦争の前の日本の非常によく代替しておったときの状況で見ますと、三、四年なんというときもございますので、この代替ということを考えたならば、行き詰まったとしてもまだまだ相当の需要がある、従って生産の目標も立つというものでございます。いわんやまだ行き詰まりというところに行っておりませんので、相当伸びる余地を持っておる、以上のようなことで自動車の国内におけるところの需要というものは相当にあるだろう。しかし何と申しましても国内需要だけを対象にしたのでは、自動車産業は立っていかないだろうと思いますので、どうしても輸出、海外に出すということを考えなくてはならぬ。現在の状況では、先ほどお話のございましたように、多い年でも、たとえば二十八年におきましては六百六十万ドルくらいしか出ておりません。ことしは一千万ドル、あるいは数年後には二千万ドルというふうなことを考えておるようでございまするが、そんな程度ではなかなかおさまらないのじゃなかろうかというふうに思いまするが、これに対しましては品質の向上であるとか、あるいは価格の引き下げというふうなことにつきまして、たくさんのやる仕事も残っております。このやる仕事には自動車メーカーだけがやることと、それから関連産業のたくさんある、たとえば鉄鋼屋さんがこれに非常に大きね分野を占めておりまするが、こういう原材料を作るところのメーカーさんたちの非常に大きな御努力、御協力というものが当然望ましいのでございまして、われわれはその点につきましても関係業者に対しまして大いに御期待申し上げ、また監督官庁に対しましてもいろいろな意見も申し上げ、お願い申し上げておるわけでございますので、おそらく相当期間内にはこの原材料の引き下げは、むろん品質は向上いたしましてのことでございますが、相当望みがあるだろうと思っております。  次に、私の方でもやっておりまするし、日産自動車さんあるいは日野さんでもやっておりますが、外国自動車製造会社技術提携をしまして国産化に努力をいたしております。私の方ではヒルマン・ミンクスをイギリスのルツという自動車会社と提携いたしてやっておりますが、過去一年半ほどの経験ですでに現在では三〇%程度のものが国産化しておりまするし、ことしのうちにはエンジン等を含めまして五割くらいなものは国産化するだろう、そしてあと一年半かそこらの間にはこれを国産化してしまうのだということでやっておりまするが、むろんこれは品質が落ちるのでなく、価格も上るでなく、下げていくべきだという目標のもとにやっておるのでございまして、あえてロイアリティを払って外国会社と提携するということは、われわれが過去において持っておる自動車製造技術、これが特に乗用車におきましては戦争中のおくれ、戦争後のおくれというものが、アメリカはもちろんでございますが、ヨーロッパ各国に対しましても相当なギャップがございます。これをできるだけ早く埋め、そしてできるだけ早くいいものを安く作れるようにして、輸出市場において外国の製品と争えるようになるためには、多少の金を払っても、りっぱな新しい技術を取り入れてこれを自分のものにする、さらに先ほど申しましたような、たくさんの協力工場に対しましてもこれらの技術を移し入れまして、その技術平均水準を高くする、それによってこれをまとめたものは当然りっぱなものに触るということを目標にしまして、あえてこれをやっておるわけでございます。これにつきましては、われわれが契約をした一年半ほど前の事情と、その後の政府の御方針と多少変更もございましたが、できるだけ期間を切り詰めて、できるだけ少いドルを使ってこれを達成いたしたいということで、目下努力もし折衝いたしておるわけでございます。  次に申し上げたいことは、二十五年度から、名前は何べんも変りましたけれども、現在の防衛庁、自衛隊ができまして、これに使う特別な車、これはいろいろな車がございますが、二十五年度におきましては予算が三十二億一千七百万円で千九百台の車を買っておられる。二十六年度も同じ三十二億一千七百万円で千六百二十二台の車を買っておる。それが二十七年度になりますとずっとふえまして、九十三億九千九百万円で車は五千二百三十五両、二十八年度は多少減りまして七十八億で四千三百四十二両というふうに、逐次整備が整うにつれまして、予算の増減は多少ありますけれども、年々ふえて参ったのでありますが、二十九年度になりますと、がぜん七億というふうな非常に少い予算になりまして、車両の数量も自然二百五十台というふうにがた落ちになりました。これはいろいろな関係がございまして、政府において予算を剰られた、ところが一方米軍からは中古の車を一万四千六百三十四台無償で提供されたということで、一応つじつまは合ったようでありますが、そのためにこうむりました自動車を製造している者、これは経営者も従業員諸君もむろんでございますが、非常に大きな一種の被害を受けておるわけでございます。  話は多少違いますが、二十四年の例の朝鮮事変で米軍並びに朝鮮の方で買い上げた日本トラックが合計で一万台だということを聞いております。この一万台の車で自動車はもちろんでございますが、いろいろな産業が相当に息を吹き返したということもございましたが、そのときの一万台を越える一万四千何百台という車が無償で提供されたということが日本の企業並びに産業労働者への影響というものはけだし相当のものがあったろうというふうに申し上げても差しつかえないと思います。言葉は悪いのですけれども、その結果はアメリカの経営者並びに労働者のために日本のそれらのものが非常に犠牲を払ったというふうなことにもなるかと思いますので、今後のそういうふうなことにつきましては、日本でできるものは日本のものをできるだけ買ってもらいたい、それが日本自動車産業並びに関連産業というものに対して相当いい影響があるのだということで特にお願い申し上げたいと思っております。  そのほか輸出を盛んにするということのためにいろいろな施策がとられねばならぬと思いますが、大きな戦争日本が敗戦を喫した後におけるところのヨーロッパ各国の自動車産業におきまして、いろいろな意味のアメリカ援助だとか、これには金や物やいろいろあると思いますが、これによって自動車産業というものはイギリスはむろんでございますが、イタリアも、ドイツも・フランスも非常にりっぱに設備の入れかえを行なっておりまして、すでに完了しております。これらアメリカ援助によって自動車工業というものをりっぱに立て直したのであります。その結果として多数の製品を海外に輸出しておるのでありまして、その影響を日本が受けているということを考えますと、日本の戦後自動車産業だけに投入しました設備資金、これは現在まで大体百億くらいでございましょうか、三十年度約八十六億と予定しておりますが、これを全部入れましても二百億足らずでございます。まだまだそんなものでは完全なる設備の入れかえ――御承知のように戦争によりまして日本機械設備というものは非常にいたんでおります。また戦争後もなかなか思うように入れかえができておりませんので、外国のそれらと競争をするのには非常に大きなハンディキャップをしょっていると思っております。むろん自力でこれを入れかえるということについては相当努力をしておりまするし、また政府におきましても非常に苦しい中を財政投資によりまして一部の資金を貸していただいておりますけれども、まだまだその程度ではなかなか足らぬのではなかろうか、今のうちに自動車工業を立て直し、中共を初めこの近くの市場を開拓しておかないと、どんどん外国の車、特にドイツの車、イタリアの車、イギリスの車、フランスの車――アメリカのものを別にしましても、どんどん流れ込んでしまう。先に入れ込まれれば、あとから入るのに骨が折れるのは当然でございます。そういう点につきまして、そのような設備資金ということについての特別な考慮、これをくれというのではございませんが、これが取得しやすいようにお考え願いたい。  また自動車は戦後御承知のように値段が張っておりますので、これを工場ではほとんど月賦で売っております。アメリカでは月賦制度が発達しております。これは主として対象が月給取りの高給生活者が多いのでありますが、日本の月賦制度はバス業者あるいはトラックの業者、それも相当大きな会社を対象にいたしまして月賦制度をいたしております。自動車の抵当法がありまして、一部の保全はされておりますけれども、手続等の関係がございまして、これはなかなか普及いたしておりません。そこでもう少し簡便な方法で月賦販売ができるというふうな法制化したものができるならば、一層一般の業者というものも買いよくなり、普及できるのではなかろうか、従いましてこの生産台数がふえ、コストも安くなることがあろうかと思っております。この点につきましても御一考が願いたいと思っております。  それからもう一つ申し上げたいことがあるのでありますが、それは輸出を振興するためのいろいろな方策でございます。その一つといたしまして外国では月賦をこえた、さらに長期の年賦払いの方法をやっております。これは日本がやらなくてもほかの国がやりますから、結局引っぱられるわけであります。そういう点につきましても、現在の政府が御計画になる程度の年限ではなかなかはけない部分が出てくると思います。これも相手方の経済状況であるとか、あるいは貿易関係等がございまするが、これら諸外国等の例も十分おわかりと思いますので、適宜これを御考慮願い、あるいは委託販売制度に関してもっと効率的な運用ができるようにするとか、輸出に関する鉄鋼その他重要物資の特別な価格措置等を講じられるとか、今後大きな問題になるであろうところの賠償に関する品目の中に必ず自動車を入れていただくとか、生産台数を何とか確保できるようにしていただくというふうなこともあわせてお願い申し上げたいと思っております。  さらに先般来国会でも問題になっていると存じますが、軽油自動車に対する税金を非常に引き上げようとされておりますが、ディーゼル自動車というものが戦後の輸送面におきまして非常に効果があった、また経済的にも非常に有効なものでありますが、このいい車を税金によって台なしにしてしまうというふうなことはどうかと思うのでございます。この点につきましては各界に驚きまして非常に反対の陳情を申し上げ、お願いもしておりますが、国会におきましても格別の御考慮をお願いいたしたいということをこの機会に申し上げておきます。以上で私の申し上げることを終りたいと存じます。
  63. 小平久雄

    ○小平(久)小委員長代理 次に大久保参考人にお願いいたします。
  64. 大久保正二

    ○大久保参考人 大体において私の申し上げる点は皆様お話になったと思いますので、簡単に輸出の問題と乗用車の問題について申し上げます。  バス、トラック生産量は、ヨーロッパ諸国と日本とはほとんどそう変っておりません。従って値段においても当然輸出できるものと考えております。近東以東並びに南米諸国へ各社ともいろいろ手を打っておりますが、これは努力と、それに先ほどもお話があったかと思いますけれども金融措置の問題、これを講ずれば必ず日本の製品が出ていくと思います。特にわれわれの目標は、ドイツが摩擦の一番の焦点になっております。ドイツ、イギリスの大使と申しますか、外交官は、一番先頭に立って商売をしておる。この間ドイツの、日本でいえば通産大臣ですか、そういう人がみずから南米に行って商売をしている。日本の外交官は右こ左べんしてなかなかやってくれない。この点を国として、これは自動車ばかりではございませんけれども日本の産業を伸展するのに外交の考え方を一つ直していただきたいと思うわけでございます。先年私ヨーロッパから帰りがけパキスタン、インドを回ったわけでありますが、そのときにドイツの商社がいろいろなものを売ったあとを、大使館員が来てその労働者にチップをやっております。日本の役人がそういうことをしたら、何かコミッションでももらっているのではないかというような気を起すのではないかと思いますけれども、もう少し日本の役人自体、特に海外に行っている方々は、日本はもうビジネスによって立たなければならないのだという考えを持つように私どもお願いしておるわけでありますが、いま一段とそういうふうにお願いしたいわけであります。  次に、先ほど乗用車の問題が出ましたが、山本さんからも大型を作れという意見が出ました。私は日本の乗用者は大体小型と中型でまかなうべきものだと思います。一部高級乗用車が要るとは思います。ドイツに参りましても、大体七割は小型であります。フランスに参りましても、パリの七割は今東京を走っていますルノーであります。イギリスへ参りましても、オースチン、ヒルマンの車で、大型もありますけれども、これは皇族、貴族の乗っているものであります。かりに現在の状況で中小型に全部置きかえたと仮定いたしますと、おそらく現在の車両で燃料が百四、五十億要らなくなるわけであります。これを逆に現在の燃料で中小型に置きかえたら、今おそらく十数万台だろうと思いますけれども日本自動車の保有量がおおむね五十万台近いものになるだろうと考えております。そういたしますと、先ほど日本自動車は大量生産でなければならぬものがたくさんあるとおっしゃいましたが、私は五社や六社はいいだろうと思います。まずヨーロッパの生産コストに追いつくには、大体一社平均が一万台で追いつくと思っております。年産一万台、月産約千台。ヨーロッパは大体その十倍の十万単位でありますけれども日本はいろいろな観点からいいまして、まず十分の一でよかろう。アメリカはその十倍の百万が単位でありますけれども、それはヨーロッパの車はモデル・チェンジをいたしません。アメリカはそれだけ大きなスケールでありますから、一年にモデル・チェンジをやりましても合うわけでありますが、そういうふうに単位が違いますから、ヨーロッパはなかなかモデル・チェンジはいたしません。従って日本もヨーロッパ式にやって、いろいろな面から検討しますれば、大体年産一万台見当でヨーロッパの水準には追いつけるだろうと思います。現在私どものルノーは五割四分国産化しております。来年は七割五分、その次に全部国産化を完了する予定でございます。また必ず実施することを通産省にもお約束申し上げているようなわけであります。  先ほど大型の高級車というお話もありましたけれども、これはおそらく日本の工業としてはなり立たないのじゃないかと思います。日本国民として考えなければならぬ点は、自分の計算自動車を動かさないという点であります。いわゆる適切な言葉の社用族と申しますか、あの人たちはどれだけ車にかかっているかを知らずにみな乗っておりますけれども、自分の車という考えになったら、おそらく中型もしくは小型になるべきだと思います。そういうふうにいたずらにガソリンの消費をしないで、消費を節約して中小型に置きかえて、大型は観光その他に多少要ると思いますけれども、果して日本の工業としてあれだけのりっぱな大型がなり立つかどうかということは、数の点においておそらく非常にむずかしいんじゃないかと思う。その点が山本さんと私と見解が違う点であります。おそらく各社の方もそうじゃないかと思います。大体こういう方針でいけば、日本自動車工業は数年の間に成り立ちます。しかしいろいろの困難がありますから、政府並びに国会におきましても、自動車問題に対して御関心をお持ちになって、何とか国産の育成をお願いしたいと考えております。  大へん簡単でございますが、ほかのことは全部皆さんが申し上げて、私から申し上げる点はないようでありますから、以上で終ります。
  65. 小平久雄

    ○小平(久)小委員長代理 以上をもちまして参考人意見の開陳を終りました。  これより質疑に入ります。賃疑は通告順にこれを許します。加藤清二君。
  66. 加藤清二

    加藤(清)小委員 けさほど来御熱心な御説明を承りまして、しろうとの私もどうやらほんのりわかったような、わからぬような気がしている状態でございますけれども、要は自動車の業界がこのままの状態では共倒れになりそうである、それは長い間研さんして、新しく外国車に負けないようなりっぱな車ができたといえども、なお市場と申しましょうか、売れ行きと申しましょうか、それが思うにまかせないので、コストも思うように安くならない、従って将来はコスト引き下げに努力すると同時に、市場拡大をもあわせてしなければならないというように承わったのでございます。  まず第一番に私がお尋ねしたいことは、先ほどの質問者と同じように、私自身が少しわからなくなってきた点があるのでございます。それは皆さんおっしゃっておりますことを額面通り正直に受け取りますと、ますますわからなくなってくる。たとえて申し上げますと、日本の車と外国の車と比べてコストが高い、こういうことなんですね。コストが高い理由一つに量産が行われていないからだ、量産が行われていないということは市場が挾隘だということだ、こういうことなんです。そこまではようわかるのでございます。ところが輸入自動車状態を調べてみますと、オースチンありヒルマンありルノーありウイルスあり、これを政府では将来国産化そうという予定のもとに外貨の割当を行なっていらっしゃる、こういうことなんです。それからそれに加うるにプリムス、 カイザー等々が組み立て車として輸入されている、こういうことなんです。私の考えでは量産をコンスタントに行うには、むしろ国内の現在純国産と言われておりまする、たとえばトヨタあるいはダットサンあるいはプリムスとかいうものも、なおこれはでき得るならばドイツのように型をそろえて、国産車型なるものをつくっていただいた方がかえって量産にはいいのではないか、こういうふうに思うのでございます。だから先ほど来同じような意見国産型、国民型とか、名前はいろいろあったようでありますけれども、そういう車を作った方がいいじゃないか、こういう御意見も出ているように承わるわけでございますけれども、片やそうやってまとめた方がいいということは、私スプリングの工場を見学いたしましたときに、同じスプリングで、同じようなかっこうをしておりますけれども、納入する会社先によって同じ一つのスプリングでもいろいろな型を作っておる、これじゃあコストを引き下げようといったって無理じゃわいとつくづく思ったことでございまするが、型が違うおかげで部分品までも変ってくるということは、やがて修理をする場合にもなお困難性が生じてくるということで、部分品のコスト引き下げには非常な悪影響があるんじゃないか、従って国産車を固めて、各社が集まってどうなさるか知りませんが、それをお作りになるということならけっこうなことでございまするが、果してこういうような状況下において、各会社が相談してコンスタントに、ストレートに量産をして、安くするためのいわゆる企業合同とでも申しましょうか、技術提携とでも申しましょうか、そういうことができるかできないかということが一点、それからもう一つは当然品種を、銘柄を縮めて生産した方がコスト引き下げにもよろしいということがわかりつつも、何がゆえに国産化を予定にして、海外の自動車の部分品を組み入れてこれを国産化しようとなさるのか、これは政府の態度を承わりたいのでございますが、国産化予定のだけでもなお四種類もある、部分品だけでも二種類現在あるという状況でございまするが、政府としてはこれは全部、六つなら六つの中で守り立てて、将来経営が成り立つようにしようとしていらっしゃるのか、それとも外貨の割当が欲しい欲しいというて方々の会社から見えたのでやむなく許可をされたというのか、一体将来としてはどれを守り立ててどれを削ろうとするのか、そういうことなしにすべて守り立てようとすれば、いわゆる量産ということは口では言うけれども、実際は逆行した政策が行われておる、こういうことに解釈しなければなりませんが、政府としては一体どういう考えであるか、業界の方々としてはこの現状をどう把握し、どう処理して、ほんとうの量産の目的を完成なさろうとしていらっしゃいますのか、私業界のためにこれを憂うるわけでございます。またこの業界に働いている労働者の方々が、やがて賃下げ、首切りということを午前中に聞きましたので、それを心から憂え、未然に防ぐためにこの手を打たなければならないじゃないかと思えばこそお尋ねするわけでございます。
  67. 小平久雄

    ○小平(久)小委員長代理 加藤君どなたに御質問ですか。
  68. 加藤清二

    加藤(清)小委員 日産、いすず、日野、新三菱さんが国産化の予定のこれをやっていらっしゃるということですから、この方のうちから、果してまとめることができるかできぬかの御意見を聞きたいし、それから純粋国産乗用車のトヨタとか、あるいはダットサンとかで、果して技術提携なり何なりをまとめてすることができるようになるか、つまりいわゆる国産車ができるようになるかならないかという点を承わりたい。
  69. 浅原源七

    浅原参考人 それでは私その点についてお答え申し上げます。ただいま量産ということを言いながらできないのではないかという御質問でありましたが、私はこういうふうに考えております。ただいまの問題は乗用車の問題と理解いたしておりますが、現在日本においては、これは日本だけでありますが、乗用車の約九割は営業用車でありまして、残りの一割の内容も、よく見ますと、先ほど大久保さんのおっしゃったいわゆる社用族使用が多々あるのでありまして、ほんとうの意味の個人で車を持っておいでになる、特に新車をお買いになるという方はりょうりょうたるものでありまして、たいていほんとうの個人使用者はユーズド・カーを安くお使いになる、こういう実情でありますので、もし日本乗用車工業の将来における目標を営業車に限りますと、この設計なり生産のやり方は全然違って参ります。現状におきましては事実問題として、今五つございますが、各製造業者とも大体今申し上げました営業用車、つまりタクシー、ハイヤーといったような、そういう面の用途なり御要望に沿い得るような設計をいたしておりまして、九割も営業用に乗用車が使われておる。その意味では外国でいわゆる乗用車工業は日本では存在しておらないのでござまいす。そういう特殊な状況下に、しかし先ほど私から申しましたように原料が高い、マーケットは、なるほど国民所得から見まして、タクシーのような、国民何百人が一台ずつクラブ組織かあるいは共用自家用車をかかえるといったような戦前以来のコンベアーかエスカレータのような使い方をしておる。そういう特殊事情がある。材料も高い、マーケットは少い、これは客観的に見てどなたも、私どもその仕事に携わっておる者以外の人もよく御承知であります。しかもこれが外国から入っております、たとえばフランス輸入アメリカの車である安い大きな車も、町に、日常津々浦々に走っているのを見ますと、営業車といたしましてはいろいろな御要求がありまして、ただ荷物を運ぶというのと違って、人間を運ぶのでありますから、見えがよくなくちゃいかぬ。乗り心地もよくなくちゃいかぬ。一日三百キロ、四百キロ走ってもこわれないようにしなければいけない。修理も容易でなければいかぬ。いろいろな御要望がござまいす。従いましてお好みが今のところ統一されておらぬのであります。全国のタクシー会社もしくはタクシーをお使いになる大衆一般日本でできる車ならば一色でよろしい、全部かりにこういうことになりましたならば、これはまた話が若干変って参りまして、一種類、二種類に集約できる。それでももし先ほど申しましたように、日本乗用車工業の近い将来における目標が営業車であるとしますと、その一カ年の需要量はおそらく有限のものであろうと考えます。これは全部寄せましても、それではごく特殊の用途に対するものでありますので、必ずしも非常な大きな意味での量産は期待できない。やはり乗用車の本質から申しまして、たとえば先ほど山本さんが、私がそういうことを言ったのではねいかというようにお話になりましたが、確かに私私談として申しておりますが、ユーズド・カーというものは――ちょうど自動車は家と同じ不動産の一種で、抵当法も設定されておるぐらいの品物でございまして、これが人に譲れるあるいは自分が長く持っておってもいいですが、そういう性質の品物でありますので、新しい着物を買って、これを質屋に入れて流すとかあるいは古着屋に売ることができると同じように、自動車は余裕のある方が新車を買って、そうして一年、二年使って、これをある値段でそれよりも一つ下と申しますか、収入なり支払い能力が一級下の人に流していく、そたが三年、五年使われる。これが国民の保有しておる自動車である。そういう状況になりますと、需要層が非常に幅が広くなりますので、そういうものを目標といたしますと、もしも将来五十万、百万の需要があれば、そういう意味では電気洗濯機、電気冷蔵庫と同じように広く国内に行き渡る。そういうことになりますと、かりに中古車が百万台ありますと、十年はおそらく持ちますまいが、かりに十年といたしましても、そこに十万台という需要が出て参ります。五年にすれば二十万台です。そこで今加藤さんのお話の、私ども業者といたしましても、当然その層の年産二十万台ということになりますれば、国民が最も好まれるモデル、価格的にも性能的にもいい車を当然作るように設計なり方針を業者としてはきめるはずでありますが、実は私はまだその段階に――日本乗用車工業は古い歴史を持ってはおりますけれども、ほんとうにコマーシャル・ベースで始めましたのはつい三、四年前からでありまして、日本自動車工業はある意味でまだ赤ん坊の時代だと考えております。まだあれかこれかという時代でありますので、先ほど山本さんがおっしゃいましたように、その方の見方によっては高級車と申しますか、山本さんは高級車とはおっしゃらなかった、大衆車、プリムス、アメリカのスタンダードの車もある程度需要がある、こういう見方の方もありますが、今山本さん御欠席で、欠席裁判で非常に悪いですが、そういう意味で、アメリカのユーズド・カーが現在きわめて安い値段で売られておるし、将来もこれを輸入するつもりであるならば、非常に安く入るというような事情から、需要が一番少い層を今お考えになっておるのじゃないか。これは私個人の山本さんのお見通しに対する見方なんでございますが、各メーカーともどの層が国民に最もたくさん使われるタイプの車であろうか。しかも性能が外国車に匹敵いたしませんと、一年、二年は何らかの人為的手段でとめられましても、経済行為としていつまでもとめておれない。悪くて高い車を売っておるというのでは国民が承知をいたしませんから性能を上げなければならぬ。先ほど組み立て車のお話もございましたが、私などは日本乗用車工業の一これは部品を含めてでありますが、その水準を外国車に近でける一つの方法として、今や他の化学工業その他においてやっておるのと同じように、技術導入をするのも一つの方法である一輸入して組み立てて売っておるばかりが能でないととは製造業者として万承知をしております。その間の月謝を払わなければならない。これはロイアリティの形で払う形式のものもございましょうし、一部部品を輸入して商売のプロフイットの何パーセントというように、プロフィットで払う方法もございましょうし・現在は輸入売買という形で開発し、もしくは設計技術から払っておる時代でありまして、今練習中であると考えております。なるべく早くこれは一年、二年のうちに卒業してしまいたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  70. 加藤清二

    加藤(清)小委員 どうもりがとうございました。  政府にお尋ねしたいのですが、また時間がなくなって、あとの質問者が多いとお気の毒ですから、要点をかいつまんでお尋ねしますからかいつまんでお答えを願いたいと思います。先ほど三宮さんのお話でございましたか、日本は多くても一万台だ、ところで欧州は十万台だ、アメリカは百万台になっておる、お説ごもっともでございまして、これでは値段の上においてけんかにならないというのは、これはしろうと考えにもわかるのでございます。型も大型がいいという人があり、中型がいいという人があり、小型がいいという人がある。銘柄もオースチンがいいという人、ヒルマンがいいという人、ルノーがいいという人がある。その他たくさんある。その中に立ちまじって、いや国産がいいというお方があって、これでは業界のお方にお話を聞いても一体どれを助けて、どれをどうしたらいいかという見当をつけるのに、ちょうど先ほど同僚議員がおっしゃったように、全くこれはあなたの方はあいまいもこですから、こっちもあいまいもこたらざるを得ないのでございますが、このことをただいまは試験中であるからとおっしゃいましたが、もしこれを放任をしておきますと、重大なる問題に逢着すると存じます。それはほかでもございませんが、私繊維に関係しておりますのでよく知っておりますが、ガチャ万コラ千の時代においては野放しにふやさせた。それで今はどうにもならないから操短、二十九条の発動、こういうことをしなければならなくなった。つまり政府の権限の発動によって自粛をしなければならないことになっちゃった。これと同じ形はミシン業界がさようでございます。出血輸出をものすごく仲間同士でやって、ついにはどうにもならなくなっちゃって、これをまたさる権力によって自粛させてもらいたいということをこの業界から言われるようになって参ったのでございますが、この販路は幾らでも拡大しておるという時代ならばそれでよろしゅうございましようが、悲しいことに今日では販路拡大、市場獲得と申しましても、そうそう思うようにはいかないわけでございまして、この点は必ずしも政治が悪いとだけは言えないと思う節がたくさんある。自分たちがもうけたいためにこの仕事をやればもうかるというわけで、それでガアっと各会社がそれを競争でやる。結局総体をながめてみた場合には、ついにでき過ぎちゃって、設備の過剰投資、ストックが多過ぎた、こういうことになるのですが、その整理をされる場合に困るのは経営者であり、そこに働く労働者である、こういうことでございますので、この見地に立って政府側にお尋ねしたいのでございます。政府はころばぬ先のつえをつかなければならぬと思うのでありますか、一体どのような考えでこのことを進めていらっしゃいますか、簡潔にお願いしたい。
  71. 柿坪精吾

    ○柿坪説明員 お答え申し上げます。現在作っております乗用車の種類が非常に多いという問題、何がゆえに技術提携いたしましたかという理由も過去の言いわけ的になりますが、これは当時の乗用車技術が戦時中並びに戦後の空白のために非常におくれておったため、どこかオーソライズの製作社一社に学資をやるから勉強せいといってもとても追いつけないであろう、ここは競争によってだれが早く峰に到着するかというような競争態勢をとらなければならないのではないか、そういう判断に基きまして結局外国技術提携というものを実施したわけでございます。それの効果は着々上っておりますが、車種としてそれではどれがいいかという決定版はまだ現われておりません。ただこのままいずれもが惰性で、どこまでも進んでしまうということでは困りますので、ぼつぼつ業界の方にもその辺のことについて反省をしていただきまして、特に部品の統一の問題から入りまして、それとともに将来のあり方について――現在やっております乗用車を大きく分けましても、これはもっぱら中小型と言われるものでございますが、千五百CC程度のものに一グループがありまして、それからもう一つは千CC以下七百五十までという、これはルノー、ダットサン級でありますが、そこに一グループがある。そこに同じ程度の車がグループをなしているわけでありまして、その間におのずから将来の乗用車の理想的なあり方が現われてくるのではないかというふうに考えているわけであります。ただ統制経済と違いまして、将来の大過なきを期するように現在ぽつぽつとそういう点について業界において善処されたいというようなことを警告しているのにすぎませんので、これは将来非常に過大な設備が投入されますとか、そういうときにはおのずからそのときの情勢に即した措置をとらなければならぬのではないか、そういうふうに考えております。
  72. 小平久雄

    ○小平(久)小委員長代理 加藤君、他に質者者もありますから、要点だけ簡潔に願います。
  73. 加藤清二

    加藤(清)小委員 それでは要点だけ簡単にお尋ねいたします。そうすると、目下外国車に学ばなければならない技術、そういうものがまだ数多く残されているのかいないのか、この点を政府側と同時に――国産車で午前中にスタイルもよくなった、クッションもよくなった、見えもよくなった、そして欧州のものと比べて決してお客さんからもきらわれないものができた、この十月にはまた新しい一つのスタイルが国産でできる、こういうお話がございましたが、純国産の側になお学ばねばならない技術があるかないかをお尋ねしたいのでございます。流行を追っておれば自動車は毎年何年型々々々というものが出てくるが、私のお尋ねしているのは流行ではございません。自動車を作成するに当っての技術はどうしても及ばない、学ばなければならないもの、それなるがゆえに輸入はあえてしなければならぬ、こういうものがあるかないかをお尋ねするわけでございます。トヨタかプリンスさんから伺いたい。
  74. 柿坪精吾

    ○柿坪説明員 国産組み立て車におきましても、現在まだ相当量の部品を輸入しておりますが、その理由は、これは現在まだ国産の材料、国内の技術をもってしては生産不可能であるということのために入れているわけでございまして、この点につきまして決してメーカーがなまけていてできないというわけではございませんで、つとに先方の図面をもらいまして――これは非常に詳細な製造に関する図面でございますが、その他作り方、そういうふうなことを教わりまして、鋭意試作をやっているわけであります。しかもなおそのでき上らないものが相当あるわけであります。そういうふうに現在国産化の進度は約半分程度まで進んでおりますが、その程度までの技術はマスターしたけれども、あと半分ぐらいはまだ学ばなければならぬ点が残っているという段階でございます。国産車につきましても、なお改善すべき余地は決してないわけではございませんで、今後努力すべき余地があると考えております。年々型が変っておりますから、改善は当然のことでございます。その点は国産車を作っている方に一つお話を願います。
  75. 大野修治

    大野参考人 先ほど御質問の中に、十月ごろ新車が出るというお話がございましたが、これはプリンスさんがお答えになったことでありまして、当社は先ほど御説明いたしましたように・自動車というものは固定しておりませんで進歩の段階にあると存じます。それだけに今後の自動車界の進歩とともに改善される部署は絶対にないということは申し上げかねると存じます。しかしながら現段階においてわれわれの今考えております乗用車、いわゆる経済車にしてしかも日本小型の規格に合い、そうして今申したような日本の国情に合っている小型の範囲において、しかも価格の点においてはまだ勉強中であるとは申しながら、一応われわれといたしましては完成したという感じを持っております。しかしながら当社が技術会館を作りましてこの研究に没頭しておりますゆえんは、外国車のにおいても日々進歩があるものと存じます。われわれは当然今のものをもって満足はいたしませんけれども、十分御利用いただける状態になったというふうに一応考えておりまして、これを段階として次の飛躍を別に考えているわけであります。
  76. 浅原源七

    浅原参考人 今学ぶべきものがあるかというお話がありましたが、たくさんございます。これはでき上った車をごらんになります――と一応私どもダットサンを作っておりますし、他にも国産車もありますが、私どもが今学びたいと思いますのは、ユーザーが十分満足して多年お使いになれるプロパビリティのある車はどういうふうなところに設計のコツがあるか、これを作る施設をどういうふうにやっているか、そういう会社の中に入ってみたい、図面一つにいたしましてもそうであります。日本は先ほど申しましたように四、五年前から乗用車を本格的にやりましたので、たとえばボディについて申しますと、全機械生産、全プレス、全溶接、そういうことを見よう見まねで私どもはやっております。そこで世界で数十万台現実に売っている、また輸出もしているそういう会社はどういう設計図を作って、どういう構造の部品――部品と言うと何ですが、部分を組み立ててやっているか、それらの一つをどこで割って、どれだけの板数にして溶接すれば最も軽くて最も強度のあるボディにすることができるる、これは飛行機も同じでございますが、その点についてわれわれはまだだめだと考えております。世間でもって日本乗用車が世界のレベルから十年、十五年遅れていると言われておるのはそこでありまして、そういうことを提携いたしまして、奥の奥まで見せてくれれば――見られないのは多少別問題でありまして、それはこちらの努力と腕だろうと思いますが、それを現在勉強しておるのでありまして、その点についてはまだ学ぶべきものがあると思っております。私の会社はトヨタさんとは好敵手でありまして、年来純国産をやっておるのでありますが、会社々々にそれぞれの伝統と考え方がございまして、そういう点では学ぶべき点があると存じております。
  77. 加藤清二

    加藤(清)小委員 科学は日進月歩でございますし、特に自動車は年々歳々型が新しくなりますので、これを学ぶべく御努力していらっしやるあなたに私は敬意を表します。それと同時に、しろうと目に見れば、決して外国車に劣らないある程度の完成の域に到達された御努力に対して、私は国産車を作っていらっしゃるあなた方に、国家のために敬意を表したい。それは、模倣はやがて創造への過程でなければならぬのでありまして、また外貨の今日これだけ不足しております矢先、日本の経済を立て直すには、これは与党といわず、野党といわず当然のことながら、この外貨の節約をしなければならないという点においては、無上命法であると思います。そこで、そういう立場から考えました折に、国産車がとにかく外国車と東京のどまん中で競争して、こんなに値段が安過ぎては国産車の方にお客がついてしまうから、これをせり上げてくれなければ困るというところまで伸びてきたという点については、私は国家的に慶賀すべきことであると存じておるわけでございます。これについて政府側に今後の問題、今日の問題についてお尋ねしたい点がありますが、時間の関係で、これはいずれ政府側だけと委員会の折に御質問したいと存じます。  次にあらためて別なことをお尋ねいたしますが、こういう矢先に外貨が不足して困るという折に、昭和二十八年度約六千四百台の許可を与えておる、去年は千二百台の許可を与えておりますが、その正式許可は別として、その許可をはるかに上回る一万八千台以上の無為替輸入が今日行われておる、その結果は、東京都内の町はまるで自動車の世界博覧会みたいな格好を呈しております。これは、好きな車をお客が好きなように拾えるという点においてはけっこうなことかもしれませんが、しかしこれはやがて修繕の点においても部分品の点においても、先ほどの御説明にもありましたように、スペアがないおかげでドックに入っておる期間がずいぶん長くなって困るというような話も聞いたことがございますが、すべての点にロスが多くて、日本経済をほんとうに着実に築き上げる点においてはあまり効果的でないと考えております。そこで、このたび今年度の外貨のこれに対する割当について、正式の割当もさることながら、無為替で入ってくるものに対する今後の基本方針を、具体的でなくてもけっこうですから、ここでちょっと承わりたいと思います。
  78. 柿坪精吾

    ○柿坪説明員 本年度の無為替の見込みといたしますと、これは今年早々四月十三日に告示を開始いたしまして、特に無為替で一番大きな量を占めておりましたのは、軍人軍属が無為替で持って参りましたものを円で日本人に渡すという中古車供給でございまして、これが先ほどおっしゃいました昨年度八千台でございます。それからその前年は一万三千台というふうなことが非常に大きな数字に上っていたわけでございます。これにつきましては、やっと米軍側の了解を申しましょうか、協力を得ることができまして、四月十三日の告示でもって相当強化いたしまして、ほとんど新しい車については日本人に流すことができないという程度まで強化された措置が取られましたので、これは今後その措置が実効を現わして参りまして、急激に減ってくると予想いたしております。そのほか外交官でございますとか、あるいは第三国人で縁故のある人からもらったとかいうようなこまかいものがございまして、これが年に数百台というごくわずかな数でございまして、これは何とかもう少し強化したいということを考えておりますが、それは技術的と申しますか、国際儀礼的に見まして、こういう車を断わるのはどうもおかしいじゃないかというふうな国際儀礼上の問題も相当ございますので、量は少いけれども、何とか強化はいたしたいと思っておりますが、そういうむずかしい問題がございますので、これはそういう技術面の研究を十分いたして強化していきたい、こう考えております。
  79. 加藤清二

    加藤(清)小委員 この問題はこのままでは済まされませんので、保留いたしまして、いずれ時間のあるときにお尋ねをいたします。  次にお尋ねしたい点は、防衛庁の国産車使用の方針でございますが、午前中の御説明によりますと、せっかく防衛庁から注文を取りましたところが、いつの間にやらこれが外国車にすりかえられました。こういうようなことになりますと、先行き不安で安心して増産計画も成り立ちませんというお話がございました。これはメーカーにとってはしごくごもっともな御意見ではないかと存じます。すべてコンスタントに注文が流れ作業できてこそありがたいわけでございますが、あるときにはどんと注文したけれども、あるときには全然なかったというような、それもその間隔が一月や二月の間隔ならよろしゅうございますけれども、一年も二年も間隔を置かれたときには、こんなものはどこの会社でもとうてい引き受けられないことだと存じますが、この点トラックその他同じ形のものを大量に購入される相手はメーカーにとってはまことにけっこうなお客さんであるにもかかわりませず、それがそうなっていないこの現状は何がゆえであるかということと、もう一つは、防衛庁の国産車の需要の計画は一体どうなっておるのか、将来の見通しはいかになっておるのか、メーカーは安心してこの需要に応ずることができるのかできないのか、これを見きわめたいためにお尋ねするわけでございます。
  80. 小平久雄

    ○小平(久)小委員長代理 防衛庁の方は今見えておりませんから、適当の機会に答弁を願うことにしてはいかがでしょうか。
  81. 加藤清二

    加藤(清)小委員 見えていなければやむを得ませんので、この点も保留をいたしますが、今困っている国内のメーカー計画的に生産できるような援助くらいは与えたって罰は当らぬと思いますし、こんなことは予算の要らぬことです。政府に何かお願いすると、予算がない、予算がないといって逃げますけれども計画には何も予算はかからぬはずでありますから、ぜひ一つこれは業界のためにも、日本経済振興のためにも、近き将来において明らかにしていただきたいと思うわけでございます。  最後に、これはメーカーの方におしかりをこうむるととかもしれませんが、午前中のお話の中に、イギリスの首相は国産車愛用のために自動車に乗って歩いたとか、あるいは先ほどのお話には、ドイツの役人はみずから海外に宣伝活動をやっているという、まことにけっこうなお話があった。それは非常にけっこうなことだと存じまするが、そこで私思いまするに、自動車産業に限らず、何でもでございますが、これほど通信綱が発達し、交通が発達して参りますと、地球はぐっと短かくなってきておる。従ってコスト引き下げという問題と、市場拡大という問題と同時に考えなければならぬことは、宣伝活動であると思うわけでございます。そこで、せめてできることを一つ提供してみたいと思いますが、やっていただけるかいただけねいか。日本の総理大臣に、国産車を運転させようと思ったら予算がないと必ず言いますから、トヨペットのお方は、この間新聞で見ますと、どこか御寄付なさったとかいうことを聞いておりまするが、不幸にしてお足の悪い閣僚が多いようでございますので、せめてここへ御寄付なさったらいかがでございましょうか。そうしたら必ず乗って歩かれるでございましょうし、またせめて各党の委員長級くらいに一台ずつ御寄付なさったら、きっと乗って歩かれると思う。これは海外にまでも宣伝するいい材料になると思いまするが、そういう宣伝活動というものは糸へんや薬の業界では盛んに行われていることなんです。特に新製品の場合には、宣伝活動をしなければ、薬や糸へんは絶対に売れません。一体こういう点は自動車業界には要らざるおせっかいでございましょうか。それともドイツやイギリスのように、首相みずからが宣伝活動に乗り出さなければいけないものでございましょうか。各党の委員長が多過ぎていけなかったら、せめて総理大臣か重光外相くらいに寄付する勇気があるかないか、この点をお尋ねしたいと思います。
  82. 小平久雄

    ○小平(久)小委員長代理 それでは業界を代表する意味で、浅原源七君。
  83. 浅原源七

    浅原参考人 それでは今度は日産自動車社長でなく、自動車工業会会長として、皆様を代表してお答えを申し上げます。ただいまの宣伝活動の方式、そういうことをやってみたらどうかということにつきましては、最近業界も多少気がつきまして、何分非常に内気な工業でございまして、あまりそういう方はこれまでやっておりませんでしたが、御意見は拝聴いたしまして、会員にお伝えいたします。工業会会員八社おりますので、皆さんにお伝えいたしまして、善処いたします。  それから先ほどの防衛庁の問題でございますが、これは私も会員の御関係数社の社長さんと、前自由党内閣時代でございましたが、おやめになる直前に、木村防衛庁長官並びに各党の幹事長のところへ公式に陳情に参りまして、防衛車両の生産についてぜひ御考慮を願いたいということを自動車工業会といたしまして、陳情をいたしまして、陳情書も各党に差し出したはずでございます。――失礼いたしました。各党でなく、衆議院と参議院の専門員の方を通じまして、しかるべきところへ御伝達いただきたいということで差し出しました。そのときのお願いは、先ほど三宮社長が内容を言われましたが、きわめて突如として、一万数千台の車が――私ども業者としては全然存じませんでした。当時の防衛庁の相当高級の方も事後にお知りになったようなふうに伺っておりましたが、とにかく一万数千台の車が日本の各防衛隊に無償配付されまして、予算も突如として二十何億円が大蔵省で削除されました。私ども在来二、三年来防衛庁の注文で防衛車両を製造いたしておりましたメーカーは、手持品を抱えて困りました。下請け産業にも突如部品の製造の中止を命ずる、あるいはきわめて少量に削減するというような措置をとりまして、現実の商売にも非常な打撃を受けたのであります。ただ商売の点だけでなしに、私ども日本自動車メーカーといたしましての見地から、あるいは一つ意見から、一体日本の将来の防衛隊は日本の業者が作る車両をもって装備なさるか、それともそういうときどきの外国の払い下げのようなものでその場予算がないからというような理由だけであるいは装備をなさるのか、その点をはっきり承わりたい。私どもとしては将来日本の防衛をやるならば、いつでも現地で部品その他補修一般の整備のできるわれわれ日本製造業界の製造力を基盤にした車両を使っていただきたい。これは商売のみならず、国としてそうあるべきではなかろうかというところまで申し上げまして、その点をぜひ御考慮願いたい。われわれの感じからいいますと、ぜひわれわれが防衛車両を作りたい。りっぱにつくれるのだから、ぜひ日本会社の手をもって日本の将来の防衛車両をやってもらいたい。今回は済んだことであるから、われわれもあとでいろいろ申しませんが、来年度からそうしてもらいたいという陳情書を出しましたら、直後内閣もかわりまして、その後実はそのままになって今年に及んでおる、こういう実情もありますので、私ども業者の意向はそうであるということを工業会といたしまして、お答えかたがたお願い申し上げておく次第であります。
  84. 加藤清二

    加藤(清)小委員 いろいろありがとうございました。世はスピード時代、そのスピード時代スピードを一そう増すところの車を作っていらっしゃる皆さんは、ほんとうは時代の寵児であるべきである。ところがそれがいろいろな事情によって困難に逢着していらっしゃるということでございまするが、いかなる困難があろうともこれは暫時の問題であって、世のスピード化ということは、これはどうすることも溶きない時代の流れだ、大八車がリヤカーに変り、リヤカーオート三輪に変っていくという状態は、農村のすみずみまでもう行き渡っておる。従って金のあるなしにかかわらず、このスピードにおくれたら日本の産業そのものが瓦壊していく、こういうことになりまするので、まさに皆さんは重要なポイントについていらっしゃるということでございます。私野党でございまするが、こういう問題は与党野党を問わず、超党派的に日本経済に寄与することならば大いにない知恵をしぼって努力したい、かように考えておりますので、一つ今後大いにがんばっていただきたい。こういうことをお願い申し上げまして終ります。
  85. 小平久雄

    ○小平(久)小委員長代理 佐々木良作君。
  86. 佐々木良作

    ○佐々木(良)小委員 朝からずいぶん御勉強で質問も大がい尽きておりまするから、私一、二だけ簡単に御所見を承わりまして終りたいと思います。  ただ、その前に申し上げたいことは、この自動車の問題は、午前中に全自動車組合の荒牧さんからお話がございましたように、この小委員会で今度取り上げた一番出発点は、実は労働組合から、産業の危機を突破するために総合的な施策が欠けておるので、何とかして総合的な施策を樹立して、そうして自分たちの職場が失われないようにしてほしいというところから出発したわけでありまして、最初私から取り上げてこういうふうに発展したわけでありますが、私今日までのこの問題を取り上げましてからの動きを見ておりまして、実は一、二心配が出て参りましたので、所見を承わりたいと思います。  自動車もあくまでも一つの経済のワクの中で動いておるものでありますから、これをいかに保護育成するといたしましても、これはあくまでもある一定の経済のワクの中で動かなければならないものだと思います。従いまして、私は狭隘触る国産品の保護奨励という方策にこの問題を取り上げたことが一挙に変っていくことをまず心配いたします。戦争中でもその辛酸はなめましたし、私は実際に土木用の機械等を扱いまして、これは必ず日本でできる、できるものを外国品を買うのはけしからぬといって、非常にひどい目にあった経験があります。しかし両方比べて現場で使ってみれば明らかに違う。私は自動車産業の保護育成のための施策を強調するところから、一挙に法的な権威を持ち、従来あったような狭隘なる国産品の奨励育成政策にならないように、特に経済家の皆さんにお願いしておきたいと思います。  それからもう一つは、先ほどお話いたしましたように、この問題の出発点は労働組合から取り上げられたのであります。私はこのことをはなはだ遺憾に思うのでありますが、ともかく労働組合から取り上げられたのであります。そして午前から午後を通じてのお話をずっと聞いておりますと、おそらく問題の中心点は、第一に少くとも従来のトラック、バス並みに、国産乗用車に対しまして技術とコストの点で少くともバス、トラック並みの国際水準に達せられないかということが、おそらく中心の研究課題になってくると思いますが、その際に、従来の日本の産業がそうでありますように、合理化の一番中心点は人件費を下げるというような安易なる方策をとられないように特にお願いしておきたいと思います。  同時に私は一、二お伺いしておきますが、先ほど言いましたように労働組合側から取り上げられた問題であります。先ほど加藤さんからもお話がありましたように、私不思議に思いますことは、今度少し扱ってみまして、この自動車産業ほど、総合的施策が必要であるにかかわらず、それが何らないままに放置されておる産業を見たことがないような気がいたします。先ほどの荒牧君の話によりますと、自動車丸は船長のない船のような格好で、どこに行くかわからぬような格好で船員だけで動いているという話がありました。私にもまさにそのような気がいたします。理屈を言うようでありますけれども、一方におきまして国内産業を保護育成するために、四〇%、五〇%になんなんとする関税障壁を設けておる。そしてまたできた品物に対しまして、これはぜいたく品だからといって一五%の物品税をかける。これほど矛盾した施策はないにかかわらず、そういう施策がまだ自動車には行われておるのでありまして、自動車には総合的な施策が全然とられていないのであります。私はその意味におきまして、どういうわけでこれほど自動車産業が放置されておったのか、了解に苦しむわけであります。労働組合から取り上げられたということで出発したわけでありますけれども一つ浅原さんに簡単にお伺いいたしたいのでありますが、自動車工業会会長とされまして、従来こういうメーカーなり関係業者が一本になりまして、政府に対して包括的な、あるいは総合的な対策を要請されたり、あるいは陳情されたり、運動されたりしたことはありましたでしょうか、あるいはそういうことが従来非常に他の産業に比して行われにくかったとするならば、その理由はどういうところにあったのだろうか、つまり国内での競争があまり激甚であったのだろうかというような点につきまして、簡単に一つお話願いたいと思います。
  87. 浅原源七

    浅原参考人 ただいまお尋ねになりました自動車産業の結集がどうか、あるいはそういう意味で政策的に強度に施策を立ててもらうように運動するとか、自分自身でも施策を立てるということはなかったのではないかというようなお話がございましたが、私も二十数年来この業界に関係しておるのでございますが、日本自動車工業といたしましては、最初少くともトヨタさん、あるいは日産のようなところは大衆車の製造ということで、いわゆるコマーシャル・ベースでスタートしたことは事実でございまするが、それを達成する手段といたしまして、当時自動車製造事業法というような非常に制限的の法案を通して保護政策をとっていただいた。補助金のような金銭的の援助はありませんけれども輸入制限というような援助のもとにスタートした。これが二、三年してようやく工場整備ができて、ある程度生産ができるようになったら戦争に突入して、自動車の実際の行政は当時の軍部の手に移った。終戦に至りますまで実質的にそうでありまして、軍用車の製造にほとんど転向したわけであります。在来の軍用車製造自動車会社はもちろんでありますが、われわれコマーシャル・べースでいくべき会社も大部分、八割五分くらいまでは戦時中当然軍の準軍用車として使用されました。敗戦後先ほど申し上げましたように、混乱の中にどうなるかというような状況でありましたが、GHQのどういう考えか知りませんが、トラック生産は続けてよい、乗用車は製造禁止だ、こういう政策下に再出発を細々として、そのうちに朝鮮事変になって少し金が入った。それでようやく財政的に目途がついた。こんなことで朝鮮事変の際の労務者、労働者を抱えて今日に及んでおる。その後朝鮮事変が済んだりして何か不景気がくるのじゃないかという話もありましたが、自動車輸送機械化のために、反対に当初に申し上げました非常なブームになってきた。こんなことで、一応そんな状況下に育って参りましたので、業者自身が非常な困難に遭遇して、競争も競争ながら、額を集めて自動車工業全体のために動きをしようというような場合は、先ほどの防衛庁の問題でありますとか、そういう個々の問題については、自動車工業会を中心にいたしまして寄り寄り協議をして陳情もし、打ち合せもいたしておるのでございますが、大きな意味において自動車工業全体としての動きは、お恥かしいですが、今日までその機械があまり育たないできておって、近ごろに至りまして自動車工業がたちまち機械工業の第一位になった。従いまして自動車労働者も数万の労働者が相当脚光を浴びる状態になってきたし、産業自身もそういう機運になった今日、先ほど三宮君からお話がありましたが、自動車工業総合工業であります性格上、電池でありますとか、あるいは特殊鋼でありますとか、その他の部分品に、自動車価格の約六割五分内外を私どもは他の産業に、自動車価格として受け取りまして、これを回しておるわけであります。その産業の動きが、たとえば電池でいえば、四十何%は終戦後は自動車に回っている。つまり今日は自動車が最大の消費者でありますけれども、その前は潜水艦でありますとか、通信でありますとか、こういうものがあったものですから、必ずしも自動車が第一のお得意でなかった。それらの関連メーカーを一致した方向にまとめませんと、自動車のコストを下げるにいたしましても、私どもの直接関知いたしますのは直接指揮下三五%でありまして、これは先ほど私申し上げましたように、労務費を少々削りましても、全体のコストにそれほどきくものではない。非常な非能率な労力の使い方をすれば別でございますが、他の六割五分の関連産業内におけるそういう面も一致してやらなければならぬ。そういうことをまとめる上で自動車工業会の存在もあまり力強くはなかったのでありますが、最近会員の各社もそういう意味で、これではいかぬ、さっきの防衛庁のことも一例でありますが、もっと大所高所からいろいろな面で政策的に確固たる立場で動かなければ、この大きな産業が、職場の維持の面からも、あるいは企業経営の面からもこれじゃいくまいというようなことになってきていることは事実であります。今メンバーが極力努めておるつもりでございますが、在来比較的微弱であったかと、仰せの通りに私どもも反省いたしております。今後大いに日本自動車工業の地位を考えまして、皆さんやろうじゃないかということになっておりますので、どうぞ御援助をお願いいたします。
  88. 佐々木良作

    ○佐々木(良)小委員 これから一緒になって御相談もされるようでありますから私一つお願いしておきたいと思います。それは先ほど来のお話を聞いておりますと、話のポイントが違っている。つまりもしほんとうに国内に乗用車をふやそうとお考えになるならば、先ほど浅原さんの言われましたように、現在の国内の乗用車の九〇%が営業用のタクシーでしょう。そうしてそれを取り締るための交通規則は非常に複雑である。おそらく世界じゅうで、自動車を対象とした交通規則がこれほど複雑になっているのは、他にないはずです。つまり営業用のタクシーを焦点に置いたところの乗用車の普及は、もうほとんどリミット以上に来ているということだと思います。従いまして、もし先ほど来お話がありましたように、乗用車というものをもっと国内に普及させようとお考究になるならば、観点を全然違えて自家用車に――戦前はちょっとその方向を向いておったことがあると思いますが、自家用車の方角をとり、同時に今度は役所に対する対し方も、これは運輸省の分になると思いますけれども、あの規則につきまして営業用のタクシーと同じような形で、あれほどやかましく取り締られたら、運転手は大へんですよ。自動車を買うよりも運転手になる方が私はむずかしいだろうと思います。私は幸いにして議会の権限を行使して、もらいましたけれども、そういう意味で先ほど来お話がありましたけれども技術の点もコストの点ももちろん中心でございますが、どうかその目標をはっきりと――従来の営業用のタクシー、営業用の自動車に置かれる限り、もう役所の施策もそれから交通量も、はっきりとマキシマムにきたということを御承知になりまして、そうして輸出に向かせるためには、どうしたって一般日本人の経済観念で大体使えるような感じまで持ってきてから外に向けるのでなければ、ダンピングのそしりを免れないと思いますので、どうかその方角を取られて自動車産業の保護育成のための一番のもとを一つ考え願いたいと思います。従来のような大体営業用のタクシーを中心にしていくのか、そうでなくてもう一つ山を越すところまで腹をくくっていくのかということによりまして、役所の取締り規則までも変ってくるでありましょうし、それからまたわれわれの政策も変ってくると思います。  それから一点だけ具体的のことをお伺いしておきたいのでありますが、トヨタさんにちょっとお伺いいたしますが、大体勘でどのくらいまで――午前中に国民車という話がありましたけれども、それは別として、大体大きな工業界の再編成をやらなくて今のような状態で皆さんが努力されまして、大体現在から近い将来にどの程度国産車のコストが、低くなり得る見込みが立ちましょうか。といいますことは、先ほどこの四、五年の間に非常にコストが下ったという話をされました。まさにその通りであります。私はこのコストの下ったのは一つ外車、特にヨーロッパ中型車との競争が非常に大きく私はむしろ逆に刺激していると思います。従いまして、今度は競争が経済的のリミットに来ているのか、まだこれから、今のような調子でも下げられる見込みがあるのか、もし見込みがないということになりますと、今度は国民車みたいな、私は別な考え方を起さなければならぬのじゃないかと思いますけれども、これは責任のあるお話でなくてけっこうですが、勘としてまだこの調子で行って、この三、四年の間に、たとえば三、四〇%は下げてみせるとか、そういう感じが常識的に言えるものであるかどうか、ちょっとお聞かせいただきたい。
  89. 大野修治

    大野参考人 お答え申し上げます。午前中御説明申し上げましたのは、私乗用車生産台数を設備の上で約千台ということを申し上げております。この千台と申しますのは、一つの単位と心得ております。この千台の単位と申しますのは、現在月産約六百五十台程度でございまして、この中に二種類の車がございます。その一種類をマスターと称しまして、一種類をクラウンと称しております。これは今のお説のように営業車のみに考えておりますが、東京あたりではマスターを営業車にお使いいただきまして、自家用方面はクラウンをお使いいただいております。これは多少ボディ回り等の変化がありますので、マスターの価格が八十九万五千で、クラウンは九十九万五千になっております。これはボディ等について多少差がございますので、エンジン等は同じでございますが、そういう上ものの差によって生ずる違いでございます。こういう意味でございますが、今私がここで皆様の前ではっきり申し上げられますのは、一応月産千台の設備を目途として用意がしてございまして、この千台を上回ることができますれば、必ず現在の価格より一割は引き下げ得る、そういうことだけははっきり申し上げられると存じます。なおこれを二倍にし三倍にしということにつきましては、現在私の方の乗用車の設備が千台の程度でございますので、その範囲の検討を十分加えております。今申し上げますことは、千台を上回る時期が参りましたならば、今の価格は一割の引き下げをいたしたい、こういうことだけはお答えできると思います。
  90. 佐々木良作

    ○佐々木(良)小委員 時間も過ぎましたからこれで終りますけれども、今のお話で補足的にもう一つだけお伺いしておきたいと思います。大体千台以上いけるというなら一割程度下げられるというお話でありますが、今の原価構成の中で材料費が大体七〇%ぐらいのものだと思います。そうすると材料費の七〇%は大体据え置きに見てそういうふうに言えるわけだろうと思いますけれども、材料費というものが外国車と比べて、質並びにコストで非常に大きな差があるものかどうか、ちょっとつけ加えてお答え願いたいと思います。  それから、他の問題は全部あとの機会に譲りたいと思いますが、どうか、先ほども申しましたように、せっかく私ども総合工業としての自動車工業というものを何とか本格的な保護育成対策をもって、そうしてでき得ればこれを外貨獲後のセンターにまで持っていきたいという感じでお話を承わっているわけでありますが、繰り返して申しますけれども、経済の原則というものはとても厳格なものであります。従いまして法で守られたり権威で守られましても、高くて悪いものは必ず長続きしないと思います。現に私は今の状態でありますと、どういうふうに言われても、百万円のヨーロッパの中型車と内車と比べて、私運転してみまして、正直な話、あれに四〇%の関税がついて、しかも大体とんとんの値段になっておりますけれども、私は自分で運転してみて、まだ内地車に対して不安を禁じ得ない。従って日本自動車工業の基礎ができるかできないは、ちょうど今年あたりから、ほんとうの意味の国際的に経済的な太刀打ちのできるところまで持っていく自信があるかということと、あるならば、それに対して政府は強引な総合施策を樹立するということ、この二つが相待たなければできないと思います。その意味において、真剣なお取り組みと同時に、私どもへも十分お教えをいただきますようにお願いいたしまして、私の質問を終ります。先ほどの材料費の点とコストの点、それだけをつけ加えておいていただきたいと思います。
  91. 大野修治

    大野参考人 お答え申し上げます。大体各社とも多少内外製の差がありますので、外に払う金額として、六五%といい、あるいは七〇%といい、その程度の差はあると思います。これは材料費並びに部品費とお考えいたたきたいと思います。当然タイヤとか、ガラスのようなものも入っておりますので、そういうふうにお考えをいただきたいと思います。また各社とも何種類かを作っておりますので、その種類によっては、外部に支払いをする金額にも、六〇%、七〇%といいながらも、多少の差があるかとも存じます。大体六〇%ないし七〇%の間が、内製が多いか、外に頼むものが多いかによって生ずる差のようにお考えをいただきたいと思います。  材料の問題については、午前中にもちょっと申し上げましたが、材料の質の点については、日本を代表すべき材料メーカーが、自動車産業というものに非常に関心を持たれまして、最近は技術的に相当の進歩をしてこられた。われわれの車の質がよくなった。なるほど終戦直後においての車はがたがたであったという先ほどの御批判の中には、われわれの主責任とともに、この部品なり、材料をお作りになる先の負っていただかなければならない責任もあったかと存じます。しかし、これは当然カーメーカーの責任として、私は先ほどその通りお受けした次第でございますが、そういうことと反対に、最近においては自動車工業に対する関心が非常に高まって参り、午前中御報告いたしましたように、富士、八幡のようなところでも、技術者がみずからわれわれの工場に出向きまして、機械にかけるプレスの板をプレスをするところまで見て、研究をしていただけるという状態にまでなりました。質の点について相当向上したと思いますが、価格の点については、まだまだこれからわれわれが努力いたしますと同じような御協力をいただかなければ、今輸入するとすれば価格の差があるように考えております。ものによっては一割五分というものもあり、部品の方においては三割、五割あるいは倍ではないかというようなものがあるわけでありますが、これはわれわれ国産車の立場から申しますれば、そうだからといって、これを外注しておったのでは、国産としての進歩、発達がとまりますので、そういう部品メーカーの方々とも協力いたしまして、当社の工場内容の整備とともに、われわれのお取引している先が約百二十軒ございますけれども、そういうところの設備あるいは技術の方々と当社の技術陣のタイアップによってでき上ったものが、最近のわれわれの車、かようにお考えいただきたいと思います。  なお現在において、すぐ外国品と価格の上において匹敵するかといわれますならば、まだまだそこには努力をしなければならない点が残っております。しかし、そういう方々が非常に自覚をされ、御努力されておる今の姿を見ますならば、私は、近い将来に解決する、かように信じておる次第でございます。
  92. 佐々木良作

    ○佐々木(良)小委員 承わりました。先ほどの、近い将来で見通せるととろによると、千台いけば大体一割程度のコスト引き下げは可能であろうというお話です。しかし私が危惧の念を持ちますのは、現在四〇%の関税に守られているということであります。従いましてほんとうに今のままでいくならば、せいぜい一割ということではやはりだめだということになるわけです。そうしますと、もう一歩突き進んだ、今度は全然違った施策が考えられなければならないということになってくるのではなかろうかと思います。そうなってきますと、非常に大きな問題でもありますので、別の機会に譲りたいと思います。先ほど申し上げましたような意味におきまして、十分私どもにもお教えいただくようにお願いいたしまして質問を終ります。
  93. 小平久雄

    ○小平(久)小委員長代理 中崎敏君。
  94. 中崎敏

    ○中崎小委員 時間もだいぶ過ぎたようでありますから、ごく簡単に申し述べてみたい思います。実は先ほど佐々木委員から話がありまたように、この問題の発端は、自動車の労働組合の幹部の諸君が、熱心に国会を通して自分たちの立場を守ると同に、自動車産業に対して重大な関心を持ち、あわせて自分のそれぞれの会社に対する愛着の現われと情熱の発露であるというふうに考えておったのでございます。これに対しまして私たちは、君たちはなかなか熱心にこうして私たちの方にも実情を言うて見えるけれども、経営者側は一体どうしているのか。労働組合は組合としての立場、感覚、角度等もあるんだが、同時にまた経営者の側からの何らかの考え方がわれわれ国会議員の上に反映するような努力をされる必要があるのではないかということでしばしば申し上げたのでありますが、そうしたようなことが結果において本日皆さんに来ていただくようなことになったのであります。これに対して初めて国会を通して業界の意見を述べる機会を得たということについての感想が述べられたのでありますが、今後においてはこうしたような考え方の上に皆さんが十分に国会を通して皆さんの立場が実現できるような努力をあわせてやっていただきたいと思います。私たちももちろん皆さんの要望があるなしにかかわらず、進んでやるべきでありますが、何しろ非常に広範な産業経済全般に触れている問題でもあり、なかなか自分で進んで一々どうなっているかということを聞くだけの余裕もないのでありますから、その点について特に今後認識を深められて、一段の連絡をお願いしておきたいと思います。この際私は、ことに社会党の立場といたしましては、別に利権とか物質的な報酬を決して要求するものでないということをあわせてはっきり申し上げておいて、われわれは終始国政の発展のために、さらに日本経済の発展のために、誠意をもって進むべき道を進んでいくんだということを御了承おき願いたいと思います。  さていろいろ意見を聞いておりまして、あるいは質疑応答の中において、大体自動車産業の置かれている現実について認識を深めたのでありますが、ことにその中におきまして、自動車産業は元来マス・プロダクションの上に立たなければ、なかなか技術的な進歩向上も十分に期待できないし、さらに進んではコストの点についても十分期待にこたえることはできないという実情はわかったのであります。しかしこれがためには、まず国内的に、政府の側においても強力な総合的な施策を打ち立てると同時に、業界においてもさらに一段と努力を傾けられる必要があるのではないか。ことに現在の段階においては、自動車工業も一応進むところまでは進んだ。多少乗用車についてはまだそうでないのでありましょうけれどもトラック、バス、さらに進んでは小型貨物車については一応のそういう段階である。さらにこれを契機にして相当行き詰まりといいますか、業者問の競争の激化の影響等もあって、中にはこの犠牲に立たなければならぬというふうな状態に置かれておるような業界も見受けられるのではないか。さて今後乗用車等に対するところの強力な策を進める上においても、一応業者間において、たとえばパーツの一つの協調といいますか、何らかそこに一致の歩調を見出すことによって、合理化をはかるべき事態があるのではないかということを考えると同時に、これはパーツ問題に限りませんが、全体としてもう少し業者間において自主的にそういう方向に進むような努力をされるような必要があるのではないか。これと同時に政府の側においても、表裏一体となってこれを促進するような方向に進んで、いたずらに無計画な自由競争のもとにおいて多数の犠牲者が出ていくというようなことになると好ましい姿ではないということを考えながらこうした問題に取っ組んでいくべきじゃないか。そうしてまた総合的な経済、ことに技術面におけるところの施策を強力に推進していく上において、たった三千万円程度のスズメの涙みたような金をもって一時を糊塗するというような、こういう姑息的なあり方ではいけないのではないかというふうな点について、われわれは国会等においてさらに強力な発言をしていきたいというふうに考えておるわけであります。一方におきまして物品税の一割五分の問題についても、これは全廃すべきであるのか――理想からいえばそうでありましょうが、これを漸進的に引き下げていくのであるかということも検討の上、これは各党の歩調さえ合えば国会において比較的簡単に物品税の改正はできるのでありますから、これはやり得ないことはないのでございまして、時によれば政府の意向いかんにかかわらず、国会において相当強力に議員間の足並みさえそろえば実現し得るような問題でもある。国全体の経済から見ればこの物品税の減免がそう大きなるところの財政的影響を持たずして、業界には大きなるところの力になる、大きなる刺激になるというようなことを考えてみたときに、私たちはこの問題をもう少し真剣に今後検討していくべきものではないかと思うのであります。そうしてまた融資の問題についても、一カ年間千五百億円にも上っておるところの大きなるところの産業、ことにこれがいわゆる総合工業として相当広範なる範囲において関係を持つところの、国の二次的産業としては非常に大きなる分野を持つ重要な産業に対しましてわずか五億やそこらの融資をもっていたしましては、とうていこの設備の合理化、近代化というものは十分に目的を果し得ないのではないかというような点等もわれわれは十分に考えてみまして、もう少し強力にこの問題を推進していくべきものだと思うのであります。この問題はすでに国会において、予算審議の過程において、国の財政投融資の中において検討されるような機会があったならば非常に都合がよかったのでありますが、現在においてはそうしたような問題も一応およその輪郭というものができておる関係上、なかなか容易でないと思うのでありますが、さらにまた今後においても一段とこの問題についてもわれわれは情熱を傾けて、そうして自動車産業の健全なる育成に努力をしていきたいというふうに考えておるのであります。そうしてまた一面において、この輸出については先ほど来いろいろ話があるのでございますが、ことに乗用車については、幾多の点において輸出に適当であるかどうかは私たちにはわかりませんが、少くともトラック、バスあるいは小型三輪車等については相当に外国へ進出する余地があるのではないかというふうにも考えられますので、これには中共貿易等に対す制限等もあるのでございますが、私は先般、ことに中共貿易はこの自動車工業の輸出ということを土台にして、政府に強力に一つこの際この紐帯を絶ち切っていくだけの熱意と覚悟を持って進むべきであるということを要求いたしました。これに対してであるかどうか知りませんが、石橋通産大臣は閣議において、少くともココムの取引協定についても中共に対してはソ連に対すると同じ程度に緩和するような努力を、払っていきたいという決意を表明したということが言われておるのであります。さらにこれらの点を強力に推進することによって、中共に対する自動車の輸出をはかり、さらにパーツの問題についてもけさほど意見があったのでございますが、一億ドル程度のパーツの話があったのにかかわらず、どこでか知らぬがうやむやになってしまってそれができない、こういうようなことであったのであります。この点について私は先般石橋通産大臣に対して、一体外国の品物はどんどん中共に、パーツなんか入っておるというのだけれども日本だけが入らないというのはどういうことなのかということを聞いたら、密貿易の形において入っておるのだろうというような、実情を十分にわきまえない、きわめて不熱心な御答弁でありましたが、これらの点についてもさらに強力にわれわれは政府を督励鞭撻をして、そうしてこの問題について一段と努力をするように心がけていきたいと考えおるのでございます。そのほかの地区についても、こうした輸出については一段と努力を傾け、ことに賠償問題についても、外国なんかは自動車工業の輸出等に非常に身を入れておるのだから、日本の国もまたこれと同じような熱を入れて、自動車を賠償問題の項目の中に入れ、あるいは通商協定の中に組み入れるような努力をすべきものであるというような点などについても、われわれはとくと皆さんと心を合せて、これらの目的達成に努力していきたいというふうに考えておるのでございます。至って浅い知識の中からでありますが、そういったような問題を一つ一つ取り上げることによって、自動車産業の真のあり方をわれわれは究明、検討していきたいというふうに考えておるのでございまして、今後一段と皆さんと手を合せて努力していきたいと考えておるのでございます。私の質問はまだたくさんあるのでございますが、一応皆さんから聞き得た知識を参考にして、今後私たちが進むべき道と私の考え方を申し上げたわけであります。そこでこの委員会としては、あるいは決議等によって商工委員会に報告するなり何なりということは、今後委員各位と十分な相談をして、そうして適切な措置を講じていきたいということを申し上げておきたいと思うのであります。
  95. 齋藤憲三

    ○齋藤小委員 議事進行について。本日午前中から現在まで各参考人から貴重な御意見を拝聴いたし、毎日のように自動車に厄介になっておりながら、日本自動車工業のあり方についてほとんど知識を持っておらなかったということは、私も内心じくじたるものがあるのでありますが、いろいろお話を承わってみますると、ずいぶんたくさんな問題があるようであります。国内の自動車国産にかえるだけで日本自動車工業は満足すべきものでなくして、これを逆に海外に輸出するということになりますと、おのずからその生産体制のキャパシティというものも国際的に考えていかなければならぬ。ことにその材質の問題、いかなる質をもってボディから各部品まで作っていけば国際的なレベルに到達するのであるかということになりますと同僚委員からいろいろお話がございました通り、これはいわゆるテクノロジーの分野に入る。生産技術が根底にならなければならぬ。単にこれをどう組み立てるか、あるいは格好をどう作るとかいうふうな問題ではなくして、もっと深く質に入っていかなければならぬというふうにも考えられるのでありまして、幸いに自動車工業の問題が、同僚委員各位の御尽力によりまして科学技術振興に関する小委員会の問題となったということは、これを深く追及して参りますと、いわゆるわが国の科学技術振興の本流に合致してこれを解決し得ない科学技術振興であっては、日本の科学技術振興というものは空名であろうと思う。そこで委員長一つお願いをしたいのは、ここでいろいろ御説明を伺い、いろいろ御質問を申し上げてもどうもわからぬ。実際問題としてはやはり現場で御説明を承わるのが一番いいと思いますので、なるべく近い将来において、この自動車工場の視察を一つ計画願いまして、さらにその上でまたごめんどうでも皆さん方にお集まりを願い、政府当局も一緒になってわれわれと質疑応答を重ねて、自動車工業を何とかわれわれの得心のいくような線にまで持っていきたい。このためには法的措置も必要であろうと思うのでありますが、どうか一つ委員長におかれまして、この問題を進行する上において適切な処置を講ぜられんことを切にお願いいたしたいと思います。
  96. 佐々木良作

    ○佐々木(良)小委員 関連して。今の齋藤君の意見に賛成であります。ただ申し上げておきたいことは、本委員会におきまして触れた問題は、全部今のところ政府は答弁もほとんどできないままで預かって参っておるわけであります。従いまして、この委員会において適当な結論を出すなり、あるいは決議等でもって政府に要請するなり、あるいはさらに政府の関係官を全部ここに並べて、はっきりとその施策をただすなりして、今の齋藤君の現地視察の問題と兼ねて、従来やりかけになっております政府との関係につきましても同様に一つ善処をお願いいたしたいと思います。
  97. 小平久雄

    ○小平(久)小委員長代理 齋藤君並びに佐々木君の御発言はごもっともと存じますので、早急に委員各位と御相談の上、視察の日取りやらあるいは政府関係筋をお呼びしての質疑やら、早急に行うことにいたしたいと思います。  他に御質疑ございませんか。――他に御質疑がないようでありますから、質疑はこれをもって終ります。  この際、参考人の方々に申し上げます。御多用中のところ長時間にわたりまして貴重な御意見を拝聴し、本問題調査に多大の参考となりましたことを厚く御礼申し上げます。  本日の会議はこの程度とし、次会は追って公報をもってお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十三分散会