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1955-07-22 第22回国会 衆議院 商工委員会 第47号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十二日(金曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 田中 角榮君    理事 首藤 新八君 理事 長谷川四郎君    理事 山手 滿男君 理事 内田 常雄君    理事 前田 正男君 理事 永井勝次郎君    理事 中崎  敏君       秋田 大助君    小笠 公韶君       菅野和太郎君    齋藤 憲三君       笹本 一雄君    椎名悦三郎君       鈴木周次郎君    中村庸一郎君       野田 武夫君    淵上房太郎君       森山 欽司君    加藤 精三君       鹿野 彦吉君    神田  博君       小平 久雄君    篠田 弘作君       堀川 恭平君    南  好雄君       村上  勇君    加藤 清二君       片島  港君    櫻井 奎夫君       多賀谷真稔君    田中 武夫君       帆足  計君    八木  昇君       渡邊 惣藏君    伊藤卯四郎君       池田 禎治君    菊地養之輔君       田中 利勝君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川上 為治君         通商産業事務官         (石炭局長)  齋藤 正年君         労働政務次官  高瀬  傳君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 菅田清次郎君     ————————————— 七月二十一日  委員松平忠久辞任につき、その補欠として池  田禎治君が議長指名委員に選任された。 同月二十二日  委員加藤清二君及び櫻井奎夫君辞任につき、そ  の補欠として帆足計君及び渡邊惣藏君が議長の  指名委員に選任された。 同 日  委員渡邊惣藏辞任につき、その補欠として櫻  井奎夫君議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法案内閣提出第一一  三号)  臨時石炭鉱業安定法案多賀谷真稔君外十三名  提出衆法第四九号)  株式会社科学研究所法案小平久雄君外三名提  出、衆法第六二号)     —————————————
  2. 田中角榮

    田中委員長 これより会議を開きます。  前会に引き続き、石炭鉱業合理化臨時措置法案を議題とし、質疑を続行いたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。田中利勝君。
  3. 田中利勝

    田中(利)委員 私はすでに本会議において、本法案について政府に対する質問をいたしまして問題点をただしたのでありますが、本日はそれに基いてさらに具体的にお伺いしたいと思うのであります。  最初に大臣にお尋ねしたいのでありますが、私の第一点の問題は、法案第三条の石炭鉱業合理化基本計画に関する問題であります。同第三条の合理化計画は、その第二項第一号及び第二号のいわゆる合理化実施と第三号の炭鉱買い上げの二つに大別されるのでありますが、まず合理化のことについてお伺いしたいのであります。  第三条第二項第三号の、事業団買い上げ採掘権基準は、同三項では石炭品位及び生産能率をもって定めるとあるのでありまするが、現在の石炭鉱業におきましては、実質的に見て世界的水準よりも品位の悪いのは周知の事実でありますが、しかしながらわが国の鉱区の入手は先願式によりまして、よい品質、よい鉱区というものは勢い大部分資本力の大きい企業に独占されておるのであります。従って品位の悪い鉱区は、おおむね中小炭鉱経営しておるという形でありますが、この品位をもって買い上げ基準と定めるとするならば、勢い中小炭鉱に限られるのではないかということでありますが、この点について政府の方針をお尋ねしたいのであります。
  4. 石橋湛山

    石橋国務大臣 実際問題として御説のように現状がどうしても中小炭鉱の万が条件の悪いところに多くあるということでありますから、特に中小炭鉱をつぶして大炭鉱を助けるというような意味ではありませんが、事実においてある程度そういうことになるかもしれないけれども、中小炭鉱の中でも品位がよし炭層相当いいものもございますので、そういうものについて十分合理化資金供給して機械化してやっていきたい。ただし今の、ほんとうに物理的条件の悪いところは、現状のままで参りましても結局競争力の上から終末においてはよい結果をもたらしませんので、万やむを得ないものについてはこの買い上げによって混乱を救おう、こういうわけであります。
  5. 田中利勝

    田中(利)委員 品位及び生産能率について、カロリーに換算してどの程度石炭基準としておるのか。それから品位基準及び地区別にきめるかどうか。地区別にきめないとすれば、買い上げ炭鉱の数というものは常磐地区の数が多くなってくると思うのでありますが、この点について御説明を願いたい。
  6. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは整理の基準が、お話のように地区別に実は炭層条件が違いますので、この合理化基準と申しますのは、法律にありますように審議会にかけてきまるのでございますから、その通りにきめるかどうかは審議会を開いてみないとわからないのでございますが、われわれの現在考えております考え方では、各地区別にきめたい、こういう考え方であります。それから品位でありますが、大体最終目標の九〇%という基準考えております。最終目標は大体現在六千百カロリーでございますが、平均がそれより若干上った六千三百カロリーぐらいを一応最終年度目標にいたしまして、それの九〇%というところを基準にしたい、こういうふうに考えております。
  7. 田中利勝

    田中(利)委員 同じく三条第二項によって事業団買い上げるところの炭鉱の数というものは全国三百三十一炭鉱と報告されておるのですが、この通りでよろしいのですか。
  8. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは前にも再再お答えいたしましたように、実は出炭能力として三百万トン程度というふうに考えておりますので、具体的に山の数がどれくらいになるかというようなことは正確には実はわれわれとしてはわからない、また具体的にきめてあるわけではありませんので申し上げようもないのでありますが、比較的中小炭鉱が多いので、数からいえばまあその程度になるのではないかというふうに考えておりますけれども、三百三十一という数字はわれわれから申し上げたことはないのじゃないかと思っております。
  9. 田中利勝

    田中(利)委員 そうすると、今の答弁によりますと三百三十一炭鉱というのは当局の方で発表した数字でないというわけですか。だいぶこの三百三十一炭鉱という数がしばしば問題になっておるのですが、この三百三十一炭鉱という数は、全国炭鉱月産四千トン未満の炭鉱の八割に及んでおるのであります。これでは低品位炭鉱採掘買い上げる、そうして操業を停止するということになりますならば、結局採炭大手筋並びに中小炭鉱ということになると思うのですが、これについてお伺いいたします。
  10. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これはわれわれが調査いたしましたのは、この買い上げ基準によりましても、能率品位という客観的な基準買い上げさすということになっておりますので、そういう客観的な基準で調査いたしました。その比較的能率の悪いというところをとりますと、今お話が出ましたように中小炭鉱がそれに該当するものが多いということになるのでありますが、しかし中小炭鉱で客観的に能率が悪いものが必ずしもコストの面からして経営が困難だということにはなりませんので、実際に買い上げをいたします場合には、相当異同が生じてくるのではないか。お話月産量が非常に少い炭鉱と申しますのは、租鉱権炭鉱が非常に多いのでありますけれども、租鉱権炭鉱の中には、なるほど客観的に能率はあまりよくないが、しかし経営が非常に身軽と申しますか、弾力性がありまして、それが実際に経営見通しがつかないで買い上げを希望するということになるかどうかということは、必ずしも全部そうというふうには考えられないと思っております。
  11. 田中利勝

    田中(利)委員 低品位炭活用対策については、わが党の伊藤委員並びに左社の多賀谷委員からも質問がありまして、この点について詳しく質問しようと思いませんが、七月一日の多賀谷委員質問に対して石炭局長は、常磐地区に大体七万キロワット、それを目標とした資金は四十億円、石炭消費量は三十万トン程度の低品位炭利用発電所を設置する計画があるという答弁をいたしましたが、この計画は本法案合理化基本計画と並行して実現されるのかどうか、この点をお伺いしたい。なおその資金の調達という問題についてもお答えを願いたいと思います。
  12. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは再々お答えいたしましたように、こういう常磐計画は、ボタと俗に申しておりますが、選炭をした残りは通常これを捨てておるのでありますが、その残りの再選炭したものを使うということになりまして、この分だけは結局従来の上品位炭コストを下げるということになりますので、まさに合理化計画の一環として考えていい問題だとわれわれ考えております。そういうことで重点的に資金を出したい、資金を出すルートは、これは電力卸売会社ということになりますので、一般電源開発計画による公益事業会社計画並み政府資金はつける。それから石炭業者出資分につきましては、石炭合理化資金からめんどうを見るというふうに考えております。期間は着工いたしましてから二年程度で大体でき上る見込みでありますので、この合理化最終目標年次を待たずして完成し得るものと考えております。
  13. 田中利勝

    田中(利)委員 そうすると、この計画常磐炭鉱を持った石炭鉱業権者関係電力会社との共同出資による会社が当るという構想でありますか、もっとその内容を説明してもらいたいと思います。
  14. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 たびたびお話いたしましたように、これは常磐地区採掘をいたしております鉱業権者のうちで、比較的出炭量の多いもの数社と電力会社のうち関係のある電力会社、すなわち東京電力と東北電力出資してもらいまして、電力側出資分石炭側出資分と半々くらいでやりたい。計画の規模は今お話になりましたように第一期計画は七万キロ程度でございますが、それに対して資金は大体四十億程度が要る。石炭消費量は、負荷の率は最終的にきまっておりませんが、大体二十万トンから三十万トンくらいの間にあると考えております。
  15. 田中利勝

    田中(利)委員 そうしますと、事業団によって中小炭鉱買い上げがどんどん進められていけば、低品位炭採炭しておる中小炭鉱は、この出資者から除外されるのではないかという問題と、それから生き残った優秀な中小炭鉱だけの経営改善になるということにもなるのではないかと思うのですが、この点についてお伺いいたしたい。
  16. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 そういうような御心配は全然ないようにやりたいと思っております。今おもなものというように申されましたが、これはそれ以外の炭鉱の参加を拒むという考えは毛頭ございません。ただ話を進める上に便宜であるからというので、代表として数社入ってもらうというだけでありまして、出資を希望いたしますれば、その会社はもちろん出資を認めていこう。それから石炭供給につきましては、出資をするとしないとにかかわらず、石炭業者の団体と新設会社との間に石炭価格数量について一定供給基本契約をいたしまして、その契約通りに納めようという業者につきましては、常磐地区内の鉱業権者については、いずれも除外するという考え方はございません。むしろ全体の基本契約に入ってもらって石炭供給確保するということが必要だとわれわれは考えております。
  17. 田中利勝

    田中(利)委員 この新しい会社が使用する石炭は、ボタを選炭して、標準発熱量三千五百カロリーということを聞いておりますが、こういうことになりますと、買い上げ炭鉱基準も変ってくるのではないかと考えますが、その点について伺います。
  18. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 先ほど買い上げ基準で御質問がありましたときにお答えいたしましたように、買い上げ基準地区別品位能率も変えますので、その点で常磐地区は当然ほかのところよりも若干低いところにきまると思うのですが、それを別といたしまして、今申しましたようにこの発電所は従来捨てられておりました石炭を活用するということのために作るものでございますので、従って買い上げ自体とは直接関係がないものでございます。
  19. 田中利勝

    田中(利)委員 通産大臣にお尋ねいたしますが、本法の第六条には、「政府は、石炭鉱業合理化実施計画に定める石炭鉱業合理化のため実施すべき工事に必要な資金確保に努めるものとする。」かようにうたってありますが、資金のうちには当然財政投融資額が入ると思うのでありますが、この財政投融資額計画が変更された場合、そうして必要な資金確保ができなかった際には、本法案実施期間が延長されるのではないか。それとも五ヵ年でこの通り打ち切ることになるのか、この点について大臣の御答弁を願いたい。
  20. 石橋湛山

    石橋国務大臣 この石炭合理化はここには五年とありますが、実はできるだけ早くやりたいのでありますから、財政資金につきましては必要なものは十分に出してもらうようにすでに大蔵大臣の方とも話をつけまして、この法案を作った次第でありますから、この点については十分のことをいたしておるつもりであります。
  21. 田中利勝

    田中(利)委員 重ねてお尋ねしますが、月産四千トン以下の炭鉱の大部分買い上げ対象予定とすれば、第一年度より合理化計画を受けないことになるのか、この点もお尋ねします。もしそうでないとすれば生産能率の幅は適用を受ける炭鉱とますます較差が広がって炭価の引き上げが困難となってくるのじゃないかと思うのであります。そうしてみますならば、本法は直接に買い入れしないが事実は真綿で首を絞めるように買い上げされるように追い込んでくる、こういうことになりまするならば、中小企業が圧迫を受けることになりはしないか、こういう点について伺いたい。
  22. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは買上基準に該当するものについては合理化資金を全然融通しない、そういった考え方は毛頭ございません。現在この買上基準程度能率まではございませんでも、将来飛躍的にこれを改善する見込みが通れば、これはもちろん合理化資金の融資の対象になるわけであります。これがどの程度そういった合理的な改善ができるかという点につきましては、企業診断制度を活用いたしまして、炭鉱の立ち直りのために実はずいぶんやっておりますが、今後もそれを活用して、できるだけ早く各炭鉱にどの程度合理化が可能か十分見通しをつけて、買い上げを促進すると同時に、中小炭鉱合理化の促進をはかりたい、こういうふうに考えております。
  23. 田中利勝

    田中(利)委員 買上炭鉱採掘権及び鉱業権評価については、事業団基準をきめると二十六条の第二項第一号に規定をしておりますが、その政府の構想している基準案がありましたならばこれを明示していただきたいと思います。
  24. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 鉱業権評価につきましては、従来伝統的な評価方法があるようでございます。たとえばホスコルド方式というようなものがございまして、大体業界で一般的に認められておる方式があるようでありますから、こういった方式に従ってその炭層鉱区埋蔵炭量、炭質、それから採掘のための条件の難易というふうなものを考慮してきめることになります。それから一般鉱業施設につきましては、これは一般評価方法すなわち大体取得価格から一定償却をした価格、本来あるべき帳簿価格というようなものになるでありましょうが、そのあるべき帳簿価格基準にして実際の損耗度なり何なりを考慮に入れて認定することになります。
  25. 田中利勝

    田中(利)委員 実際買上評価価格炭鉱負債のアンバランスとなった場合に、負債支払いにも不足を生じた場合に、この事業団はいかなる処置をとるのでありますか、この点について伺いたい。
  26. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 会社によりましてはお話のような問題が起ることは考えられますが、これは、買い上げにつきまして問題のありますものにつきましては、地方通産局関係官それから金融機関あるいは一般資材代その他の債権者というような関係者代表による委員会のようなものを作りまして、そういった利害関係者利害の調整をはかるというふうにやっていきたい、再々お話しいたしましたように、債権者なり経営者なりあるいは労働者なり、そういうほかの方面で非常に強い反対があるような場合には、実際上買い上げが困難になりますので、買い上げを促進する意味関係者十分了解を取りつけるような措置は通産省の通産局を通じてやっていきたいと思っております。
  27. 田中利勝

    田中(利)委員 特に買い上げ炭鉱が関連しておる産業に対して負債を持っておる場合、その関連産業において労働者に対する未払い賃金を生じた場合いかなる処置をとるか、この点をお聞きします。
  28. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 関連産業未払いにつきましては、実はこの事業団でもそこまで調査も不可能でございますが、資材代金について十分な支払い確保されるようにいたしますれば、この問題は解決するのじゃないか、そういう面にも今申しました委員会等を通じて、単純に金融機関等の一方的な利益を確保するということにならないようにやっていきたいというふうに考えております。
  29. 田中利勝

    田中(利)委員 第三十四条は賃金代位弁済規定しておりますが、この買い上げによる影響は直接に鉱山労働者にも及ぼすことはもちろんでありますが、関連産業労働者全体、さらに特に下請負程度中小企業に及ぼす影響は非常に大きいと思うのでありますが、これらに対してどのようにお考えになっておるか。
  30. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 この事業団が直接鉱業権者のさらに債権者に対して交渉を持つことは不可能でございます。今申しましたようにそういう債権者に対しましては、その債権額についてできるだけ十分な支払いができるようにするという形によって関連産業労働者の問題を解決する以外にないのじゃないかというふうに考えております。
  31. 田中利勝

    田中(利)委員 第三十六条には納付金のことを規定しておりますが、日本石炭協会が六月作成したところの石炭鉱業界現状という資料によりますならば、二十九年度の大手十八社の収益状況というものは、退職手当引き当て償却引き当てを十分にしないで、また法人税還付金営業外収益より除外して計算しておりますので、トン当り二百三十円の赤字となっておるのでありますが、これらの引き当て不足を正確に計上して、正常なる操業に必要なる維持費の問題あるいは修繕費の繰り延べを計算していきますならば、実際の赤字トン当り五百七円になると報告しておるのでありますが、さらにこれに加えて合理化計画の進行によって償却引き当てを増額し、かつトン当り二十円の納付金を計上するとすれば、トン当り赤字はもっと大きくなるのではないかと思うのであります。従って納付金支払い大手筋十八社ですら困難でないかと思うのでありますが、これについて大臣の御答弁をお願いいたします。
  32. 石橋湛山

    石橋国務大臣 政府委員から答弁いたさせます。
  33. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 なるほど二十円という額が新しくふえるというその点だけから申しますれば、それだけ負担がふえるわけでありますが、三百万トンの非能率炭鉱買い上げまして、それだけ生産能力が減りますと、結局残存炭鉱はその分だけ操業度を引き上げることができる、三百万トンと申しますと実際の出炭量に比べまして七%ぐらいになるわけでありますが、それだけ下りますれば今まで再々御説明申し上げましたように、石炭鉱業は、全コストの七割程度から八割程度近くまでが固定費である。従って操業度が上ればそっくりその分はコストが下ることになりますので、計画通りに参りますれば二十円程度負担はその中から十分支弁し得るのではないかというふうに考えております。
  34. 田中利勝

    田中(利)委員 第三十八条以下では納付金強制徴収規定しておりますが、第二十九条では地方税に準じて怠納した場合は処分すると規定しておりますが、この規定法的根拠はどこに求めておるか、その点をお伺いしたいと思います。
  35. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 この納付金はもちろん税金ではございません。ただ公租公課というその公課に準じた性質のものであるというふうに考えております。すなわちこの事業団公法人でございまして、公法人がその事業の運営に要する金を徴収する場合でありますから、公課に準じて強制徴収ができるのではないかというふうな考え方でありまして、これは臨時鉱害復旧法、現在の鉱害復旧に当ります事業団につきましてもこういった規定がございますので、それに準じて規定いたした次第でございます。ただし実際問題といたしましてはこういうふうな処置をとることはほとんどないのじゃなかろうか、今まで臨鉱法の運用上もこういった強制執行をいたしたというケースはほとんどございませんので、実際問題としてはこれほどの措置はとらなくても十分納付金確保し得るものとわれわれは信じております。
  36. 田中利勝

    田中(利)委員 本法案の第五章、販売価格及び生産数量の制限についてでありますが、第五十八条では、石炭生産費基準とし、石炭輸入価格石炭以外の燃料の価格その他の経済事情を参酌して石炭販売価格基準額をきめるということになっております。従って本法の目的からしますならば、標準価格は次第に逓減しなければならないと思うのであります。しかし政府は、昭和三十四年度合理化完成時には、生産原価の想定を行いまして、二十九年度の採炭能率平均十二・五トンとし、三十四年度には十八・四トンに上昇するといわれておりますが、これに対して炭価は二十九年度の送炭可能原価を三千九百七十四円としておるのであります。三十四年度には三千二百二十円にまで下げて、約八一%相当まで下げることを想定しておるのであります。この炭価には電力料金値上り全国平均二〇%を織り込んでおり、さらに賃金ベースも据え置きである、すこぶる不可解な点が多いのでありますが、重要な点は炭鉱経営コストで計上すべき経費が計上されていない点をどうしておるかという一点であります。現在の大手筋十八社の収益状況から見ましても、五年間に二〇%近くも炭価を引き下げて、かつ経理の健全化を維持することができるかどうか、確信があるか、その点についてお尋ねします。
  37. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 現在の炭価というものが実は非常に問題でございまして、これは電気料金価格のように一本の価格ではありませんで、今まで再再お話も出ましたように、一般のものに比べて、千円もあるいはそれ以上も安い価格で置かれておるものもございます。その間のいろいろ段階がございますので、どれをとらえて何割下るという議論をするかが非常に問題でございます。この表はコストとしては大体二割程度下るといっておるのでございますが、価格も現在の価格、たとえば一番安い価格というようなものをとりまして、それに対して二割下るというようなことは、もちろん困難であると思っております。それからお話の現在の赤字の点もございますので、そういう点も健全な経営ができるというような前提のもとに標準価格というのを定めることはもちろんでございます。そういう前提考えました場合に、それではどのくらい下るかという点でございますが、これは今申し上げましたように価格基準があまりはっきりいたしませんので、申し上げにくいのでありますが、しかし今の大口需要の安定した価格というふうなものを基準にいたしますならば、二割きっちり下るかどうか別にいたしまして、大体コストの低下に近い比率で価格を引き下げ得るのではないかというふうに期待いたしております。
  38. 田中利勝

    田中(利)委員 第七十八条に業務または経理に関する勧告の項がありますが、勧告よりももっと強くするようにこの条項を改める考えはありませんかどうか、お聞きいたします。
  39. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 この規定は、合理化を促進するために必要な規定であるわけでありますが、これは勧告より強くいたしますと、命令という以外にないのでございますが、この勧告は個個の会社に個別にする形になりますので、それを命令に変えますと、これは命令によりまして起る損失というものを政府が完全に補償しなければならぬということになって参ります。この辺に財政的に相当無理な点が生ずることが懸念されますので、勧告ということにいたしたわけでありますが、実際上はこの勧告で大体目的を達成することと考えております。
  40. 田中利勝

    田中(利)委員 労働政務次官にお尋ねいたしますが、この離職者に対する失業対策でありますが、政府は本法案実施以降五カ年間に六万六千人の炭鉱労働者が離職すると想定しておりますが、このうち事業団による炭鉱買い上げによって二万七千二百人が離職すると、これまた想定しておりますが、この二万七千二百人の離職者の地区別発生数を明らかにしてもらいたいのであります。
  41. 江下孝

    ○江下政府委員 地区別の離職者の発生見込みについてのお尋ねでございますが、これは一応の予定でございますので、多少はこの数に動きがあると思いますが、一応予定いたしておりますのは、三十年度におきまして、北海道で約六百、東部で約五百、西部で約三百五十、九州で約三千二百というような、三十年度の一応の予定を立てております。
  42. 田中利勝

    田中(利)委員 これらの失業対策は、さきの答弁を聞いておりましても、一般公共事業、緊急就労事業鉱害復旧事業あるいは北九州の川崎線工事等があげられておりますが、これらはいずれも移動性の激しいものであって、一時的な失業吸収対策だけでありますが、この法案によって、政府の責任で失業者を出すのでありますから、政府は責任を持って、これらの人たちの人権を尊重する意味から、恒久的な職業あっせんというものをしなければならないと思いますが、これについて政府考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  43. 江下孝

    ○江下政府委員 仰せの通り、今回の買い上げ措置によります離職者につきましては、これは永久的に離職するということに相なるのでございますから、従来のような、単に失業対策事業に吸収せしめるという一時的な失業対策ではなくして、相当期間続きます建設的な事業にそれを吸収するという予定で計画を立てておる次第であります。
  44. 田中利勝

    田中(利)委員 今度の失業対策は九州地方に局限されているように聞いておりますが、常磐地区においても同じような条件があると思うのであります。従って買い上げ炭鉱の数も想定されるのでありまして、常磐地方に何か具体的な失業対策をお持ちであるかどうか、この点もお尋ねしたいのであります。
  45. 江下孝

    ○江下政府委員 昨日来申し上げましたように、大よその計画といたしましては、河川道路等の大規模な計画考えていきたいと思っております。ただ具体的に今、どこの道路というところまでは、関係者と折衝中でございますので、決定しておりませんが、離職者の発生までには必ず間に合うように措置をいたしたいと考えております。
  46. 田中利勝

    田中(利)委員 最後に一点お尋ねいたします。北九州の川崎線の問題が、この委員会においてもしばしば取り上げられておるのでありますが、常磐地方においても同様な条件があると思うのであります。昨年、一昨年から問題になっておる只見電源の総合開発の緊急と思われているところの只見鉄道、特に急を要する田子倉までの建設、これに常磐地区の離職者を向けるとするならば、これも一つの方法ではないかと思うのでありますが、この只見線の建設について大臣はどのようなお考えを持っているか、お尋ねしたいのであります。
  47. 石橋湛山

    石橋国務大臣 只見川の開発については、御承知のように、至急にこの開発ができるように、ただいま開発会社等に命じてやっております。このための道路の建設、それから鉄道の建設等も、むろん付随してやらなければならぬものと考えております。
  48. 田中利勝

    田中(利)委員 なお只見の電源開発と田子倉線とに関連して、今回の常磐地区の離職者をこれに振り向けるように、今後通産省、運輸省、それから労働省、三省協議の上においてすみやかに実現されるよう希望いたしまして、これをもって私の質問を終了いたします。
  49. 田中角榮

  50. 小平久雄

    小平(久)委員 本法案につきましては、今までの質疑によりまして大体了承したのでありますが、若干のことにつきまして私からお伺いしたいと思います。  まず通産大臣にお伺いいたしますが、本法の目的とするところ、さらにまた本法にのっとりまして今後行わんとする施策といったものは大体わかりましたが……。   〔発言する者多し〕
  51. 田中角榮

    田中委員長 御静粛に願います。
  52. 小平久雄

    小平(久)委員 ただ、言うまでもなく本法案は、政府のいわゆる総合燃料対策の一環として提案をされたものと思います。そこで例の重油ボイラーの制限とか、あるいは重油関税の復活とか、こういうものの一環としてというか、それらの二法案の附帯のもとに初めてこの法案が完全実施できる、いわゆる三位一体のものであるといわれておるわけであります。ところが御承知のように重油ボイラー等の制限に関しましては、世上いろいろ論議がありまするし、われわれといたしましてもいろいろ考えておる点があるわけであります。こういう点で、この法案がかりに成立いたしましても、なかなか、政府が最初に予定した通りの重油等の規制が加えられるかどうか、これまた現状においては不安定な状況にあるわけであります。さらにまた本法案を遂行する上において、一つの支柱というか、最も基本的な施策である、非能率なあるいは低品位炭鉱買い上げ——三百万トンから買い上げる、こうおっしゃっておられまするが、これもまたもっぱら自発的な希望によって買い上げるのである、こう言われておる。従ってこの買い上げにつきましても、果して政府の予定通り買い上げができるかどうか、これまた多くの疑問があると思うのです。われわれが聞くところによると、本法等の実施の結果といたしましては、政府価格の引き下げを意図しておるのでありましょうが、逆に炭価が上るのじゃないか。従ってそうむやみに売り渡しはできぬというようなことも聞きまするし、あるいはまた根本的に、企業家としては、長年自分がやってきたこの企業をそう簡単に手放したくないという気持もこれまた当然だろう、その空気の中にあって、単に申し出によって買い取るのだ、しかもこれがこの法律の根本をなしておる条文でありますからして、私は、本法がかりに成立いたしましても、政府が所期するような目的を果すことはなかなか容易でないのじゃないかという気がいたすのであります。資金の面も、通産大臣から大蔵大臣にもあらかじめ打ち合せたから大丈夫だというようなお話もありましたが、そういういろいろな条件考えてみますと、なかなか容易じゃないという気がするのでありますが、こういう条件のもとにあって、政府の根本的な心がまえとして、一体どういうふうにこれをやっていこうという考え方であるかをこの際最後に一言伺っておきたい。
  53. 石橋湛山

    石橋国務大臣 お説のように、この法案の実行はなかなか大へんだと私も考えております。これは法案を御協力して通していただいたそのあとが大へんなんです。これは容易ならざる問題でありますから、決して甘く見ておりません。相当な困難が伴う、それを打ち破っていかなければならぬと考えております。同時に、これは石炭だけではいけないので、いわゆる総合燃料対策、総合的に今後の日本の燃料対策、エネルギー対策をどうするかという観点から石炭も考慮しなければいかぬ。従って先ほどお話のありましたように、重油の問題とも非常な深い関連がありますから、石炭界から一方的に要求されるように、重油を規制することだけで石炭が救われるとはわれわれは思いませんし、またそれでは日本の産業は行けませぬから、重油の規制もありますが、これはよほどむずかしい。石油についてはよほどの考慮をしつつやっていかなければならぬと考えておりますから、ぜひ一つ重油の方も御考慮願いたいと考えております。これは非常な決意をもってやるつもりでおります。
  54. 小平久雄

    小平(久)委員 そこで炭鉱買い上げの問題に局限して考えた場合に、大体重油ボイラー等の規制の法案においては、ボイラーの再転換までも政府は勧告できるという勧告権を裏づける法案を出しておるわけです。ところがむしろ今度の法案は、一面においては炭鉱全般としてはある意味においては炭鉱の救済策という意味もあると思う。これは国全般の必要から言えば必ずしもその救済だけではないという見方もありましょうが、しかし実体から言えば、このままにしておいてはやがて崩壊するであろう石炭業界を立て直すという意味においては少くとも救済という意味があると思う。にもかかわらずこれだけの施策をするのに、炭鉱買い上げについては、この買い上げは単に希望だけによってやるのだということで、お前のところは一定基準に合わないから売ったらどうだという勧告をする権限すらこの法案にはうたってない。そういうことになると、重油との関係、油との関係においてはそういう点この法案は非常に甘くできておるような感じをわれわれは受けるのです。そこで先ほども申し上げましたが、なかなかこの法案実施は容易でない。自由申し込みだけを待っておったのではなかなか思うように計画通りにいかぬという場面が現われるような場合は、実際問題としては勧告権は持たないでしょうが、果してどういう処置をとられるのか。いわゆる行政指導というか、そういうことでお前のところは標準に達しないのだからこの際売れというようなことで、法律にはないがやっていくこともあるのか。さらにまたそれでもなおかつ目的を達しないという場合には、最後には強制買収等までやってもこの法案の目的を達しようという決意があるのか、その辺のところを一つお聞かせ願いたい。
  55. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ちょうどお話と逆の心配をしている人もあって、一方においては合理化によってコストの安い石炭が出てくる。その圧迫をこうむって中小炭鉱がいよいよ困るだろうと心配される方もあります。これもごもっともです。でありますから現状においては中小炭鉱からの申し出によって買うことによりましても、実際経営が金融に詰まって困り、いろいろの点でも現在非常に行き詰まっておるのでありますから、申し出の程度でいける。強制買収ということになるとなかなか容易ならざることでありますから、そこまではいくつもりはございませんが、申し出て、それから行政指導というのはある程度やる必要も起りましょう。各通産局の出先においても十分各地の炭鉱の事情を知っておりますから、それらによっていろいろ相談をしてしかるべくやっていくということでいける、こう考えております。
  56. 小平久雄

    小平(久)委員 御承知のように反対のことを心配する方もあることは承知しておりますが、しかしさっきも申しましたが、いわゆる申し出を待っていて手をこまねいているという程度であっては、本法計画し意図しておるような成果はなかなか上げ得ないのではないかという気がいたすのであります。それはいずれ実施の実績というものを見てからでないとわかりませんから、大臣から今御答弁があった程度で本日はよろしゅうございますが、その点は実はせっかくこういう法案を作るのですから、何とか最後の目的を果すように当局でも一つしっかりお願いしたいと思うのです。  それから次に私は公取の委員長さんに一、二お伺いしたいのであります。この法案によりますと、生産数量の制限に関しての指示ということが六十二条にうたってあります。それからまた販売価格制限に関する指示については六十三条に規定のあることは御承知の通りであります。そこでまた公取との関係については六十八条の手続きが必要である。大体共同行為の関係でありますが、独禁法においては例の不況カルテルあるいは合理化カルテルというようなものが認められておるわけであります。その他いろいろ独禁法にも例外規定がありますが、従来の例から申しますと、いずれもが業者の申し出、願い出というか、それによって共同行為を認可する。いずれにいたしましても、業者の自発的意思というものがまず根本になっておったのであります。しかしこの法案によりますと、表向きは通産大臣の指示によって共同行為をするのだ、こういう建前になっておるのであります。これは一つの新しい例ではないかと思うのであります。綿紡の操短などにおいては、あるいはすったりもんだりして当局の指示に基いた共同行為が行われておるかもしれませんが、しかし表向きから打ち出して、むしろ役所の方で積極的に共同行為を指示するのだ、それに基いて共同行為をやらせるのだということは初めてのように思うのであります。このようなことまでしなければならない現在の石炭業界というものを公取委員長としては一体どういうふうに御認識になっておられるか。ということは、業者が進んで不況カルテルなり、あるいは合理化カルテルなり、そういうことをかりに業者の方から申し出た場合には、認めなければならぬというような状態に現在立ち至っておると認められておるかどうか。こういう点について、まず公取委員長のお考えを承わりたい。
  57. 横田正俊

    ○横田政府委員 今回の法案によります指示に基く共同行為の点でございますが、これは六十二条にいろいろ規定してありますように、それは一見不況カルテルに非常に近いいろいろな要件が規定してございますが、しかしこの六十二条の根本の考え方は、その前の第四章以前にございますいろいろな石炭鉱業合理化基本計画の一環といたしまして出て参るものでございます。従いまして非常に似た点はございますが、基本的な考え方が違います結果、ここにおきましてやや一つの統制的な行為としまして政府の指示ということが中心になりまして、その指示を中心として共同行為というようなものが行われる、普通の不況カルテルあるいは合理化カルテルというのとはやや方向の違った形になっておりますのはそういう関係からかと思うのであります。私どもも石炭鉱業合理化、この法案につきましてはいろいろ根本問題もございましょうが、しかし現在の石炭鉱業の実情から申しまして、やはり何とかして政府がある種の統制行為を行わなければならないという点につきましては私どもも同感でございまして、従いまして不況カルテルの規定あるにかかわらず、さらにそれに加えましてこのような政府の指示に基く共同行為ということが、やはり石炭鉱業については認められていいのではないかというふうに考えるわけであります。  それから現在の石炭鉱業がいわゆる独占禁止法上の不況カルテルの条件を備えておるかどうかという点でございますが、これは実は最近の詳しい材料を私ここに持ちませんので、はっきりいたしませんが、今年の初めあるいは昨年の暮れ等の状況におきましては、ほぼ不況カルテルに近い要件にはまるような状況にあるということを、公取の事務局方面でもいろいろ調べました結果言っておるわけでございます。しかしこれはやはり業者が自発的に歩調をそろえまして認可の申請をいたすという点になりますると、またここにいろいろむずかしい問題があるようでございます。そういうような関係からしまして、独占禁止法に基く認可申請ということにはなっておらないわけでございます。従いまして今回のこの六十二条あるいはそれ以下にございますような規定は、ある意味におきまして現在の石炭鉱業の非常に行き詰まりました点を打開するためには、ある程度効果がある制度ではないかと考えております。
  58. 小平久雄

    小平(久)委員 そこで次に承わりますが、この共同行為の関係につきましては、公取との間では事前の協議、事後の通知、そういうことで大体済むことになっております。このうち私がちょっと不審に思いますのは、もちろん通産大臣が発します共同行為の指示、この内容はここの六十四条に規定してあります。特にそのうちの第二号の「一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。」これは当然のことでありますが、ここに規定されておる。そうするとこれの認定も、この法案から申しますと通産大臣だけが認定して、これに適合しないような場合には通産大臣が共同行為の指示を変更し、取り消しすればよいことになっておる、この認定は、果して第二号に該当するかどうかということの認定は、特に一般消費者の利害ということを考えますと、公取は少くも通産大臣にあらかじめこういう段階ではありませんかというくらいのことは、申し出る権限を公取としては持っておることが、公取の本来の立場上必要じゃないかという気がするのですが、こういう点はどう考えておりますか。
  59. 横田正俊

    ○横田政府委員 この点は、結局六十二条、六十三条の生産制限、販売価格の制限等の問題は、先ほど申しましたように、政府の指示が中心になりまして行われるものでございまして、通常の業者が自発的にやります共同行為とは非常に違った面がございます。六十四条にあります一号、二号の要件、ことに二号の要件に、公正取引委員会が特に通産省の方へ申し入れをいたしまして、入った項でございます。この一と二の要件はもちろん通産大臣が指示をされます際の要件でもございますが、六十八条におきまして公正取引委員会がその指示に対して協議を受け、協議に対して公取の意見を申します際の重要な要件にもなっていようと思うのであります。従いまして公取としましては、ことにこの二の要件につきましては相当重点を置いて参りたいと考えておるわけでございます。しかしたとえば通産大臣が、これはあまり利益を害しておらぬと認められました場合に、公取の方では、これは相当重大問題であると言っていった場合の規定がないではないかというお話のようでございますが、この点はもともとこれは一種の統制行為でございまして、こういう形で参ります場合に、公正取引委員会通産大臣の行われます統制行為に対して、その取り消しを請求するとか、あるいはそれがきかなかった場合に、さらに法令にたくさんございますような、独占禁止法がある一定期間を経過いたしますと自然に発動するというようなところまで参りますことは、やはり事柄の性質上相当行き過ぎであるとわれわれは考えました結果、法律の上には取り消し請求の規定は出ておりませんけれども、この法案を審議いたします際の通産当局とのいろいろな折衝の間におきまして、この協議につきましては公正取引委員会の意見を十分に尊重していただくということ、それから要件が欠けるに至った場合に、公正取引委員会からいろいろ通産省の方へ公取の意見を申し出ました際には、それを十分に尊重していただく、こういう了解が実はできておりまして、もしこの法律が施行ということになりますれば、その了解に基きまして文書の交換までいたすというような話し合いに進んでおるわけでございます。
  60. 小平久雄

    小平(久)委員 この点はあえて通産大臣答弁を求めませんが、しかし石炭は言うまでもなく一般産業界あるいは国民生活に非常に影響があると私は思う、従って石炭業の合理化はもちろん重要でありますが、同時に一般消費者の利害というものをよほど重視して——当然かかっておられましょうが、その必要が大いにありと、かように考えますので、私はこういう質問をしたのですが、この法案では一向、今私が申しました一般消費者に不当の害を与えるようになっても、公取の方から何か申し出ることができるということが一つも書いてないようなので私は質問した、こういう点は運用上ぜひ御留意をこの際願っておきたいと思います。  それから局長に一、二点だけお聞きしますが、今度の法律案の実施に当って、実際がどういくのかということが、どうもばく然としてわれわれにもわからぬところがあるし、一般業界の方にもわからぬところがある、そこで政府が基本計画、来年実施計画を作る、それでやってみてこの計画通りいかないときには大臣は共同行為を指示してやらせる、こういうことになるのじゃないかと思いますが、一体基本計画は別としましても、実施計画等は全国一本で作るのですか。それとも各地区ごとに作るとか、さらにはこまかく各山元ごとに作るとか、そういうことまではいかないのだ、計画としては、一本で作って、あとは共同行為式に、この山は幾ら出せとか、この山は幾ら出せ、そういうことでやらせるというのか、実際のやり方ですね、そこをちょっと御説明願いたい。
  61. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 今のお話合理化計画というよりも、一種の生産数量の問題についての御質問ではないかと思うのでありますが、その年の需給計画を定めます場合に、十分確実な計画を立ててやるつもりでおります。この計画はもちろん全国一本でございますし、個々の業者について、この業者は幾ら掘るというようなことを指示するような考えは毛頭ございません。ただこれは全般的にたとえば本年度四千三百万トンでありますものが来年度四千五百万トンになりますれば、大体この程度に自分のところは掘っても売れるという見通しをそれぞれの事業者が持っておりますので、その見通しに基いて各業者が個々に生産をいたすわけであります。それによって生産が過剰になりますれば、先ほど御質問がありました規定によりまして生産の制限なり何なりすることも起り得るわけであります。
  62. 小平久雄

    小平(久)委員 そこがはっきりしないのです。国一本で大きく本年度は何千何百万トンという計画だといって、あとは業者にまかしておくのだ、これは実際問題として計画に近い数量が出るかもしれませんが、さきに申しましたように、この法案実施した結果、果して炭価が高くなるのか低くなるのか知りませんが、いずれにしてもあとは各山を掘るのは勝手なんだ、そういう不安定な要素をかかえながら、そうして表だけ見れば、何年先には何千何百万トンで炭価はどう下るというように、いかにもきわめて計画的な内容に、法案そのものもなっておるし、御説明もそうなっている。ところが一歩掘り下げると自由だ、こういうことになっているが、そういうことはそれでできるのですか。
  63. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 今御答弁いたしましたのは言葉が不足しておって十分おわかり願えなかったかと思いますが、各炭鉱はそれぞれ自分の販売分野というものを持っております。全体の需要量がこれだけ、それからその需要量の内訳は、たとえば電力用はこれだけあるいはガス用はこれだけというふうに需要の内訳が大体わかりますれば、その会社が自分でどのくらい売れるかという見当がつくわけでありますので、一応それを基準にして生産をいたしますれば、そう大きく狂ってくることはないわけでございます。ただむしろ需要側の、たとえば豊水というような問題で非常に需要が変動したというような場合には、需給関係が狂ってくることが考えられますので、その場合には政府の指示によって生産制限を一時的にやるということは考えられるということを申し上げたのであります。
  64. 小平久雄

    小平(久)委員 それではお伺いいたしますが、通産大臣が指示をして共同行為をさせたという場合に、その共同行為に反した行為をする一つまり協定よりもたくさん出したとか、そういう場合に罰する罰則がありますか。
  65. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは罰則等はございません。ただ指示に基いて関係業者が協定をすることができる、指示の範囲内で協定をする限りはこれは独禁法の適用外であります。その協定である程度お互いが牽制し合うという措置をきめることは、もちろんその程度をこえない限りにおいては許されることでございます。
  66. 小平久雄

    小平(久)委員 どうも聞いておりますとたががゆるんだというか、はなはだ不確定のものの上に、きわめてがっちりした計画が立っているという感じがするのでありますが、時間もだいぶ過ぎたようですから、このくらいにしておきます。なおいろいろこまかい点を聞きたいのですが、時間がありませんから省略いたしまして、最後に、先般われわれは北海道の方に視察に行ったのでありますが、そのときいろいろの陳情等を聞きまして、そのうちには、先ほど質問もあったと思いますが、今度の処置によって買収される鉱山、その場合に労働者に対する処置というものは一応ここに規定されておりますが、あと火薬だとか倉庫の関係だとかその他の山につながる業者関係であるとか、利害関係者が非常に多いと思う。そういう人たちの債権関係についてはどういう処置をなさるのですか。そういう人たちの意向も相当取り入れる方法をお考になっているのですか。
  67. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 先ほども田中委員からの御質問に対してお答えしたように思いますが、これはもし事業団買い上げる代金が、鉱業権者の債務額に足りないというような場合にほ、地元の通産局関係官とかあるいは金融機関関係者とかあるいは関係行政機関の関係者あるいは債権者代表者というふうなもので委員会のようなものを作りまして、関係者が全般的にお互いに譲り合って満足できるような解決策を、政府が中心になりましてあっせんをして作りたいというふうに考えておる次第でございます。
  68. 小平久雄

    小平(久)委員 それと関連して、三十三条に、買い上げる山につながる労働者のことが載っておりますが、それには、選炭その他の業務に携わる鉱山労働者とあります。そうするとここで選炭その他というのは一体どういうことを大体予定しているのか。それから鉱山労働者規定しているが、そうすると買い上げた山の事務系統の者は一体どういう取扱いになるのですか、その点を伺っておきます。
  69. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 選炭その他の業務と申しますのは、要するに石炭採掘に付属する業務一切を含んでおる考え方、ただこれは鉱山の所在地と遠く離れております本社の従業員というふうなものは含まれないという考え方でありまして、現場の事務所に雇われておる人間は、ごく短期の臨時工みたいなものを除きまして、全部含まれるわけであります。お話の事務員その他の職員も当然——この鉱山労働者という言葉はちょっとおかしいのでありますが、法律上の用語を使いましたので、これは全部含まれるというふうにわれわれは考えております。
  70. 小平久雄

    小平(久)委員 最後に労働政務次官にちょっと伺いますが、この間北海道で聞いた話のうちにおきましても、今労働省がやっておる失対事業費の割当というものは、とかく大都会中心主義であって、地方にある炭鉱のある都市、小都市とかあるいは町村もありましょう、そういう場合は全然無視されておる、こういう声が非常に強かった。そこで従来一体どういう方針でこの失対事業費というものを割り当てておるのか。それからさらにこの法案実施しますと、直ちに、その市町村は小さいが、相当の失業者も出るというところが現われてくると思う。そういう点に対して、今後失対事業費の割当をどう考慮しようと思うのか、大ざっぱに一つお答え願います。
  71. 高瀬傳

    ○高瀬政府委員 ただいま小平君から言われたように、どっちかといいますと、大都会には失業者が非常に多い、従って都会に対して失対事業の経費の割当がたくさんの額でいくということは事実でありますが、決して大都会だけ偏重でありませんので、小さな都市に対してもできるだけやっていく、しかもただいま問題になっております炭鉱地帯の失業対策については、今までもそうでありますが、今後もどしどし全力を尽していたしますから、どうぞ御安心を願います。
  72. 小平久雄

    小平(久)委員 今の答辞のように、大都会地に失業者の絶対数が多いことは言うまでもないのです。しかしその土地その土地の人口との比例において、あるいはまた大都会ならばその人口も多いが職業も多い、ところが炭鉱のあるような地区では炭鉱以外には職がない、極端にいえばそういうことになる。従って単なる絶対数の多い少いだけをあまり重視されては困る、そういう点を今後留意しておやり願いたい、これだけ申し上げておきます。
  73. 田中角榮

  74. 永井勝次郎

    ○永井委員 簡単に大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、最近は合理化ばやりだと思うのであります。肥料も合理化だ、鉄鋼も合理化だ、石炭合理化だ、合理化ばやりである。これは自由党、民主党、保守党を通じて自由経済の行き詰まりとして何らかの措置を講じなければならなくなった、こういう行き詰まりを合理化するための合理化政策ではないか、こういうふうに思うのでありますが、お答えを願いたい。
  75. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これはおそらく社会党の内閣になりましても、やはり合理化は必要だろうと思います。むろん今の経済が世界的に全体に行き詰まっているということは御承知の通りでありますから、行き詰まりがないとは申しませんが、保守党の行き詰まりを打開するために政策的にやっておることでございません。経済産業の行き詰まりを打開するためにやるというのが眼目でございます。
  76. 永井勝次郎

    ○永井委員 合理化そのものにはわれわれ反対でないのでありますが、合理化の性格と内容であります。石炭合理化の内容を見ましても、これに財政の投融資をする、金利を下げてやる、税金を安くしてやる、こういうことで大企業への集中救済だ、その反面中小企業労働者が犠牲になる、労働者中小企業合理化による犠牲の上に大企業を育てていく、こういうのが合理化の内容でありますから、こういう合理化にはわれわれは承服しがたいと思うのでありますが、大臣はこういうような合理化が果して国民経済的な立場で、また日本経済の基礎産業の基盤を確立する合理化の政策であると考えているのかどうか。この法案を審議する最後の段階に当って、もう一度石橋通産大臣の良心的な目ざめを期待しながらこの質問を行うわけであります。
  77. 石橋湛山

    石橋国務大臣 われわれは中小産業をつぶしてというようなことは考えておらないのでありますが、全体の合理化の上において事業の整理を必要とすれば、大企業をつぶす必要がある場合もありましょう、中小企業をつぶさなければならない場合もありましょうが、これは実際の問題でありますから、だれがやりましても、合理化するときは、整理をするとすればだれかを整理しなければならない、できるだけ整理することなしに中小企業を助けていくというのが私どもの念願でありますが、これはたとえば日本の石炭でいえば、石炭コストを下げ、合理的な値段の石炭供給し、かつ日本の石炭鉱業全体を生かすためには、ある程度の犠牲を払ってもらう必要も起りますが、これがどこへいくかというと、われわれは特に中小企業に持っていく、あるいは労働者に犠牲をよけい払わせるという気持でやっているのでは決してございません。ほんとうの大局から見て、しかるべく犠牲を払ってもらわなければならぬ部分にはお気の毒だけれどもある程度の犠牲を払ってもらう、かような考えであります。
  78. 永井勝次郎

    ○永井委員 われわれは言葉のあやでいろいろ質疑応答をするということではなくて、現実の事態がどう動いていくかという客観的な諸条件というものを正確に把握して、この結果こうなるという実証的な基礎に立たなければいけないと思う。現実に中小炭鉱の三百三十万トン前後というものが買いつぶしされ、大企業に集約されるということは事実である。そして一千二百九十億という政府計画に基いても、それだけの自己資金を含めて財政投資が行われるということも事実である。その結果六万人の首切りが行われる、あるいは中小炭鉱に払われた金が大部分銀行のこげつきの回収となって結果され、中小炭鉱の買いつぶしを通して銀行の救済になるのだという現実は明らかな事実なんですが、これだけのことをやる、そこから現われてくる結果はどうかというと、失業者に対する対策も何ら具体的なものはない。あるいはこうなるという見通しは何もない。石炭価格は二割コストが下る、こう言っているけれども、その二割下る根拠というものは数字的に何ら示されていない。金は大企業へつぎ込むだけは正確にできる。そして集約されてくる事実の結果は正確に出ておる。しかしその結果としての石炭炭価切り下げなりあるいは労働対策なり、ここにも不明確なものがあるのです。こういう一つの顕著な現象を前にして、これでも中小企業を苦しめるものではない、労働者の犠牲をしいるものではないと言われるのか。自由、民主両保守党を通じての大企業への奉仕、合理化の名によって国民の目をごまかしながら言葉のあやで現実にこういう結果を招来しようとするやり方である、大臣は良心的にそういうふうにお感じになられませんか。これは最後でありますから、一つ大臣の答えを承わっておきたいと思います。
  79. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私どもは国民経済に奉仕しようとしているので、大企業に奉仕しようとしておらないのであります。国民経済を生かすためにはどうするか、その場合に犠牲がどこにいくかというと、お話のように残念ながら現状においてはそれは中小企業に多く行くでありましょう。しかしこれはどなたが——あなたが合理化をおやりになりましても、やはりどこかに犠牲が行く。合理化が全然要らないといえば別問題でありますが、合理化をする限りはやはりだれかがある程度の犠牲を受けなければならぬ。それがたまたま現状においてはそういうお話のような傾きを持つことは私は認めます。従ってこれに対しては失業対策——失業対策というよりは、私はもっと事業を興して、いわゆる失業対策でない、恒久的な職場を多く作るということに努力したいと思っておりますが、そういうことによっていわゆる離職者の配置転換を行う、こういうことには強力に努力したい、かように考えております。
  80. 永井勝次郎

    ○永井委員 時間がありませんので何ですが、ただいまの大臣答弁をもってしても、問題はこの政策がどうこうという前に、その前提条件として大臣のそういうものの認識そういうものの価値判断、こういうものに対してまず大臣の頭を洗脳手術が必要であるということが確認されたとわれわれは思うのでありますが、そこでこれに並行して重油の規制の問題でありますが、これは北海道の現地公聴会に参りましたときにも、業者の方から重油の規制はもっとどんどん強くやってくれ、それから石炭業者への財政投融資、税金の引き下げ、こういうことはもっと徹底してやってくれという要求がありました。しかしまた自由経済でなければいけないから、この石炭価格の問題についてはあまりやかましく言うな、今大臣答弁と同じような認識を持っている業者がいる。ほかの方はうんと規制をやれ、石炭業だけは金をどんどんつぎ込んでくれ、石炭価格だけは自由にせい、これが自由経済だ、こういう認識に立っていることは、今の政府の政策がこのように民衆に正しく理解されているということを理解しなければいかぬと思うのであります。  そこで本年度の重油の規制の問題でありますが、政府は重油を一方において規制しておきながら、一方において石油のケミカルを強化するという方向でこれを助長しようとしております。これは国際的に力を持つ石油資本への気がねかとも思われるわけでありますが、そういう気がねによって原油を入れる。入れた原油は国内においてボイラーに回るのか、あるいはケミカルの方に回るのか区別ができない。実際における重油の消費量を調べてみますと、輸入した量よりも消費の量がうんと多くなっておる。これは相当のやみが行われているのではないか。またやみではなくして堂々と正面から政府の黙認という形をとって入ってきておるのではないかと思いますが、日本の国内が非常に過剰生産で困っておる石炭ケミカルの合理化に力を入れないで、石油のケミカルをやって、日本にない外貨を相当量犠牲にしてこういうことをやらなければならない理由がどこにあるのか。そしてこのような量が国内に入ってきて国内においてこれはケミカル用だ、これはボイラー用だというような用途別の規制がほんとうにできるかどうか、こういう問題に自信があるかどうかを伺いたいと思います。
  81. 石橋湛山

    石橋国務大臣 石油ケミカルのことは、これは技術の上においておくれますから、日本の現状としてぜひとも確立しなければいかぬと思います。そして現在石油ケミカルの製品というものは日本の産業に非常に需要が多いのであります。しかしながらその石油ケミカルのために私は重油等の供給を非常にふやすということはしないつもりでありますし、またそうでなくてケミカルはやれると考えております。  それから石炭の方の化学工業のことは、この間から石炭局長の方から幾度もお答えいたしましたように、これもむろんやらなければいけませんが、現在においてはまだ残念ながらこの技術が日本においては確立しておらないというようなことから、遅々として進まない遺憾な点がありますが、これもこの間から申しますように、一つ十分なサーヴェーを行なって、日本の石炭をいかに利用するか、どういうふうに経営するか等の外国の知識等も入れまして、合理的なやり方をしたい、かように考えております。
  82. 永井勝次郎

    ○永井委員 これらの質疑を通じて、また本法案が本委員会にかかりましてから長期にわたっての質疑を通じて、大体政府合理化というのは、大企業へ財政投融資をし、援助をするための擬装の看板である。そういう名において掲げて大いに援助している。そうして中小をしぼり上げ、大企業の安定をはかる案だ。そういう方式で今後大企業が行き詰まれば大企業合理化、鉄鋼が行き詰まれば鉄鋼の合理化、肥料が行き詰まれば肥料の合理化、こういうことでどんどん金をつぎ込む。きのうの肥料審議会においても、また肥料の合理化をやって、財政投融資をし、税金を下げるというようなことを新聞に発表しておるようですが、こういう形を通じて、だんだん口で言いながら実態はおしりの方からしっぽをそろそろ出してきておる。こういう実態が今の内閣の経済政策だというふうに理解いたしまして、われわれは次の討論において十分徹底的に戦います。
  83. 田中角榮

  84. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 最大何分時間がありますか。
  85. 田中角榮

    田中委員長 十二時半までにお願いできればけっこうであります。
  86. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 時間がきわめて制約されておりますから、簡単に最後に何点か伺っておきたいと思います。  先ほど自由党の小平君からも、この法案質問をし、審議をすればするほどなっておらぬということを言われました。従ってこの法案に自由党は必ず反対されるだろうと私は信じます。また私もこの法案が正直なところ仏作って魂が入っておらない、膨大な国家資金をつぎ込んでそれを具体的に生かす筋金が入っていない。これは先ほど小平君も言われたように、需要と生産の関係というものについて何ら規制すべき何ものもない。これはこの間から私も十分論議をしてきておったが、この点が明らかになっていなければ、この法律のほんとうの筋金が入っていないのです。そういうことは別に今論議しておるわけではありませんからいたしませんけれども、単的に言うとそういうことです。私が何点か最後にお尋ねしておきたいと思いますことは、五年後の三十四年度に四千九百万トンまで需要を拡大するということを政府はおっしゃっておられるのですが、この新しい需要増の見込みについて、重油との関係をどのように具体的に計画的にこれを作っておられるのか、あるいは低品位炭の新しい需要増としてのガスなり電気なり、その他のものに対してどのような需要増の数字をお作りになっておるのか。
  87. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 重油につきましても前にお答えしたかと思いますが、鉱工業用の重油、すなわち石炭関係のあります重油につきましては、七十万キロ程度を減らすということになっておりますが、その中でこの石炭の需要増として見込みましたのは、八十七万トンでございます。(「数字が違うよ」と呼ぶ者あり)これは非常に確実に見込むという考え方と、それから一部はガス、煉炭というふうなほかの需要にまわっておりますので、そういうふうな計画をしたわけであります。それから低品位炭の活用につきましては、これは主として現在ボタで捨てられておりますものを活用するという考え方でございますので、これはこの生産数量から外数に考えておるわけであります。
  88. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今重油を七十万キロリットル今後切っていくとおっしゃるのは、昨年度の五百三十七万から七十万切るとおっしゃるのですか。今度の重油ボイラーで規制する、さらにプラス七十万切ろうとされるのであるか。そういたしますと、四百五十万キロリットルくらいに今後なるということであるが、そのように重油を制限されていかれるのであるか。それからこれを石炭の立場から制限をされるのならば、石炭に換算するならば、百四十万トンの石炭がふえなければならぬはずであるが、それを八十万トンという見込みはどういう計算をしておられるのか、その点を一つ伺います。
  89. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは、私が先ほど申しましたように、鉱工業用の重油すなわち石炭と競合する面の需要について 二十九年度の実績に比べまして、今お話しました七十万キロ程度を減らすということを申し上げたわけでありまして、そのほかに漁業用、運輸用というような、毎年確実にふえていく需要がございますので、その分は別にふえていくわけでありますから、配給量といたしましては、もちろんそのように減るわけではございません。  それから八十七万トンの問題でございますが、これは先程も御説明いたしましたように、この油から転換される需要の中で、たとえば暖厨房用の需要というふうなものはガスあるいは電気というふうなものにかわる、あるいは煉炭というふうなものに振りかわるという分がございます。そういう分はほかの石炭の需要の中にすでに盛り込まれておりますので、そういうふうなものを差し引き、なお確実に石炭の転換の需要を算定いたしますと、まずこの八十七万トン程度になる、こういうふうに考えたのでございまして、百七十万キロの分を全部石炭に換算して入れますと、二重計算になってくるような面がございますので、二重計算の分を差し引いて計上したわけであります。
  90. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今お伺いをしていても、あなたの方ではただ机上数字を一応お作りになっておるだけであって、どこにこれを実施していくかという確信の上に立っての答弁をされておるとは私は受け取れません。けれどもこの点をさらに突っ込んでいってみたところで、これは幽霊に私が論争をしかけておるようなものであって、問題にならぬ。そこで私はこの点はもうその程度にしておくが、今の低品位炭の需要増は生産炭でなくて、ボタ山の炭を低品位に使うのだととれたのですが、その通りですか。いわゆるボタ山から選り出したものを低品位炭としてガス化やら火力発電に使う、こういうようにお考えになっておるのですか。先ほどの答弁を伺っておるとそういうふうにとれましたが、どうですこれは……。
  91. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 現在われわれのところで計画しております製塩事業なりあるいは発電事業なりは、これは現在商品炭として売られているものでないもの、すなわち捨てられているものを活用するという計画でございます。ただガス化の問題になりますと、ボタの再選によります二号炭だけではこれは困難であろうと思いますので、そういう計画が具体化いたしますれば、もちろん広い意味の低品位炭、すなわち商品として売られている低品位炭も使わなければならないわけでございます。ただ完全ガス化等の需要につきましては、今まで再々お答えいたしておりますように技術的にはっきりめどがついておりませんので、この需要増の中には計上しておらない次第でございます。
  92. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 製塩とかその他いわゆるボタ山から選り出したやつを使うというのは、どのくらい需要増を見ておられるのか。それからさらにガス化であるとか火力発電とかいうことを今後起していこうとする、その新しい需要増について、この五年計画の間に三十四年度までにどのくらいその方面にこの新しい需要増の数量が要るという計画をお持ちになっておるのかどうか、この点をお示し願いたい。
  93. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは使う炭の品質によりますので、一律には申し上げられませんが、先ほど御説明いたしましたように、常磐の火力発電所につきましては、三千五百カロリー程度石炭を二十万トンないし三十万トン年間で使うという計画でございます。それから製塩事業につきましては、現在三つの計画が確定しておりますが、三つ合せて年間七万トン程度の塩の生産量でございますから、石炭品位にもよりますが、大体十万トンないし十五万トン程度が使用されるということになるわけでございます。
  94. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それは年々十万トンぐらい使用されるということですか。
  95. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 その通りでございます。
  96. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうもそういう点意見を伺っておってまことにきっちりとしていないのです。もっとも法案自身がさっきから申し上げるようにきちんとした筋金が入っておらぬのに、それに枝葉をつけるというのだからなかなかあなたの答弁は苦しい。私は同情にたえないという気も実はする。そこでそれはそういうことにしておいて、この間から伺っておるのですか、大臣も御答弁されたりなんかしておりますけれども、どうもはっきりいたしません。というのは、今度はいわゆる需要と生産をはっきり調整をしてやるということは具体的になっておりません。それは自由経済だからそんなことはしないのだとおっしゃっておる。ここにこの法案の大きな欠点があるのです。こんなばかばかしい点はありません。需要と生産と組み合して、需要の要るだけ生産をやらしていくという一応の年度計画を立ててやるのが当然なんです。この法律の山はこれなんです。これがない。だから従って非常貯炭が起った場合においても責任を持たぬでもいいということになる。だからこういう点がなってないんです。こういう点がまるきり法案としての体系をなしておりません。そこで一体、それにしてもやはり一応こういう法律を作ってやる以上は、貯炭ができた、それを今度は生産制限だけで押えつけていくということだけではこれは私は問題にならぬと思うのです。だからやはり経済界変動、天災地変で非常貯炭ができれば、これに対してはすみやかにやはり責任処置というか、政府が何らかの責任処置をするということでなければこの法案意味は何もないと思う。ところがこういう点においては法律の上からこれを具体的に解決しなければならぬという点は何にもありません。昨日でしたか、この間から中小炭鉱の分の未払い労働賃金に対する金融融資の問題——これも四、五カ月か半年ぐらいになっておるようですが、たとえば九州の分につきまして信用保証協会が政府の金の預託を受けてこれを銀行に預金しておる、そしてこれを貸すというような処置をおとりになろうとしていたようであるが、解決ができたということを齋藤石炭局長大臣に耳打ちをしておられたようであるが、まだこれは解決しておりませんよ。これは県議会を開かなければならない。県議会はまだ開いておらないではありませんか。そういうことで、一体いつの日になったらそういうことが解決するのか。今まででも解決しないではありませんか。従って今法律を作っても、非常貯炭の場合に融資をいたしますぞといっても、それが半年も八ヵ月も一年もかかるということになれば、それは未払い賃金の解決も、山の再建も何もできやしないじゃありませんか。こういう点においてはやはり従来通り別個に緊急措置において、その非常貯炭に対しては非常措置を時間的にするという案が何かあるのでしょうか。法律にもないから何もないというわけですか。
  97. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは年々実施計画を作っていくわけですから、非常な狂いを生ずる危険はないと思います。しかし万一ある程度の狂いが生じた場合には、これはそのときの行政措置でやる以外に道はないと思います。あらかじめ需要をどうするということは法律できめられないと私は思います。
  98. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 この法律でやるといったって、法律にそれがないじゃありませんか。需要年度計画を法律で政府が責任を持つという点が何にもないじゃありませんか。ただ需要計画というものは、石炭局かあるいは経済審議庁が一つの机上プランとして作っておるだけではありませんか。それを法律で保障すると何にも書いてないじゃありませんか。従ってこれに見合う程度の生産をするということも何も書いてないじゃありませんか。ただ余ったら生産の方を押えていこうというような程度じゃありませんか。そうするならば、従って非常貯炭のできるということは当然です。生産は勝手にお前たち自由にやれ、掘り過ぎたら押えるぞ、ただこれだけではありませんか。そうすれば、従って掘り出したものは自分でよいところによく売ろうというような、いわゆる競争がよけい激しくなってくるでしょうし、また依然としてそこに優勝劣敗というか、あるいは投げ売りというか、そういう競争が深刻になってくるでしょう。それをどうするということもできないじゃありませんか。そういう点においてこの法案意味がないのです。幾ら石橋通産大臣が先見の明があり、神通力を持っておられるか知りませんけれども、来年雨が降るか降らぬかということはあなたはおわかりになりませんよ。ごらんなさい。去年雨が降り過ぎたために例年より二百五十万トン電力会社は火力発電に炭をたいておらぬじゃありませんか。従って貯炭が二百五十万トンそのために余ったじゃありませんか。こういうことは必然に起ってくるのです。それから経済界の変動によっても起って参ります。そんなら今度非常貯炭ができたから、あと貯炭は一つもないようにしてよいかといえば、そうはいきません。やっぱり経済界の変動ということもありましょう。それからまた早魃続きで、渇水で非常に炭が要るという場合もあります。そういう場合のためにやはり二百万トンや三百万トンや四百万トンくらいの非常貯炭というものは、ある場合には常になければならぬのです。国家として一国の産業経済、国民生活を維持していくために必要だ、そういう場合において、この法律を作った以上は、そういう経済界の変動、天災地変、それから当然持っておらなければならぬ非常貯炭に対しては、政府がこれらに対する責任のある処置を講ずるということは、これは当然のことですよ。この点においてどうお考えなんですか。やはり従来通りに出たとこ勝負で、苦しくなったらそのときに陳情してくるだろうから、労働者未払い賃金で食えなくなったら、また大騒ぎするから、そのときはそのときでいいじゃないかというお考えですか、どうです。
  99. 石橋湛山

    石橋国務大臣 再々申し上げるように、年々実施計画を立てていくのでありますから、そんなえらい大きな狂いが——今あなたが言われるように、もし狂いが起るとすれば、これは経済界の見通しというものも正確にはいきませんが、経済的な変動から石炭の事情がこうなるということは、今日ですからある程度見通しはつく。問題は、雨が降るか降らぬかということは、確かに神様でなくちゃわからぬでしょうから、穴はこれだけです。これについては、もう近年のように年々豊水が続くとなれば、計画においてもおのずからその考慮をして——現にこの需要量についての計算は、また反対の御意見もあるように、かなりきつい計画を立てておる。でありますから、もしその計画のもとにおいても、雨の関係で狂いが生ずれば、それは現在もやっておりますように、必要な限りにおいて電力会社にこれを買わせるとか、あるいは鉄道に買わせるとかいう処置ができますから、その点は御心配になるようなことはない、かように確信しておるわけであります。
  100. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いま一点だけ。これは質問すればするほど、どんどんしなければならなくなってくる。時間もありませんから、大事な一点だけお尋ねしておきます。  今度三百万トン買い取るという予定計画なんですが、この三百万トンは、一応一トン当り二千三百五十円で買い取るということに予算を立てておられるようですが、この中に労働者の離職金というものは入っておるのですか。それが一点。  それから、二千三百五十円の買取価格というものは、どういうところからそういう値段を定められたのであるか、その算定の基礎。この二点を伺いますが、しかしこれは一片の答弁だけではいけませんから、委員長、いま一点だけ、この答弁を聞いて質問をやらして下さい。
  101. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 労働者に対する支払いの分は、二千三百五十円の中には入っておりません。全然別の計算であります。  それから、トン当り平均二千三百五十円という計算を出しましたのは、若干の炭鉱の規模別に選定いたしまして、それで評価を試算してみまして、その試算に基いて、大体われわれが今考えておるような評価方法でやるとこの程度になるというところから出た数字でございます。ただし実際に買い上げます場合には、これは山別に非常に変って参ります。ただ資金の所要量を計算するために、便宜二千三百五十円という数字を出したわけでございます。
  102. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 離職者の分は入っておらぬということですが、この離職者の数、これも二万何千ということを言われておるようでありますが、ここではっきりしておいていただきたいと思うのは、この三百万トンを買い取ることによって、厳密な計算においてどれだけ失業者が出るのか。それから、その人々に渡す離職金の総額は幾らであるのか、これをいま一ぺん伺いたい。それから、あとの二千三百五十円のトン当り買取価格の問題ですが、これはあなたの今おっしゃった基礎がなっておりません。その証拠には、これで買い取られて経営者のふところに一万円の金でも入ったら、私はあなたにお目にかかりません。おそらく、それで買い取られたって、労働未払い賃金、退職手当あるいは鉱害復旧の何をする、あるいは借金をといったら、買い取られてなおかつ借金が非常にはっきり残ってきましょう。これはもしあなたがここで、伊藤さん、あなたはそう言われるけれども、どこそこの山では何万円経営者のふところに入りましたぞということがありましたら、おっしゃって下さい、私はあなたに首を上げる。そういうことで、これはでたらめである。これはなっておりません。またその算定の基準もなっておらぬ。物価の上から見たってなっておらぬ。しかし、それを私が今ここでやかましく言ってみたところで、もう時間もないことでありますから、時間がありましたら、またあとであなたに一応述べさせなければならぬけれども、時間のないことはあなたにとって救いの神だ。こういう問題は、後日の、われわれと政府側との間で十分論争をしなければならぬ大きな問題として残しておくが、今の二つの問題について一応はっきりした答弁を願います。
  103. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは再々申し上げますように、買上炭鉱が具体的にきまっておるのではありませんので、大体の基準でこういうふうになるということでございます。従って労働者の離職する予定の人員も、大体基準に該当するような炭鉱平均能率から計算いたしましたので、この通りになるというようなことを決して申し上げる論拠はございません。ただし一応われわれの予定した数字を申しますと、二万七千六百人。それから支給する金額でございますが、これも平均賃金の三十日分でございますから、これはそれぞれの本人の取り高によってきまりますので、幾らという数字ははっきり申し上げることはできないのでありますが、これはわれわれは大体二万円程度になるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  104. 田中角榮

    田中委員長 これをもって本案に対する質疑は終了いたしました。  この際お諮りをいたします。多賀谷真稔君外十三名提出臨時石炭鉱業安定法案につきましては、別に質疑及び政府の発言の通告もございませんので、この際ただいま議題となっております内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法案多賀谷真稔君外十三名提出臨時石炭鉱業安定法案を一括議題として、これより討論に入るに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 田中角榮

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって石炭鉱業合理化臨時措置法案内閣提出第一一三号及び臨時石炭鉱業安定法案多賀谷真稔君外十三名提出衆法第四九号の二案を一括して討論に付します。討論の通告がありますので、順次これを許します。山本勝市君。
  106. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 日本民主党を代表いたしまして、ただいま提案になっております内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法案並びに両社会党提案の臨時石炭鉱業安定法案について、前者については賛成、後者については反対の趣旨を申し上げます。  簡単に申し上げます。石炭鉱業現状が行き詰まっておることはもう申し上げるまでもありませんが、私たちは、結局これは戦争以来戦後にかけて、やれ重点主義だのやれ傾斜生産だのといって、しゃにむに石炭の経済性を無視した増産を遂行してきたことも、やはり今日の行き詰まりの大きな原因になっておると思うのであります。結局今日に至って合理化という言葉で表わしておりますけれども、ほかの言葉で申しますと、長年にわたるそういう重点主義ないし傾斜生産が大きな原因となった結果のしりぬぐいといいますか、始末をしておるように私は少くとも思うのであります。先ほど永井委員から自由経済の行き詰まりをここで合理化の名において云々というお言葉がありましたが、私は決してこれが社会主義経済の結果とは申しませんけれども、しかしどちらかといえば、戦争中における統制経済、いわゆる重点主義、傾斜主義というようなもののもたらした結果が多いのであって、必ずしも自由企業の原則の上に起きたところの原因とは考えないのであります。ですからむしろ永井さんとは反対の考えすら持つのであります。もちろん社会党の諸君の質問を聞いておりましてまことに傾聴すべき点が多々あります。そういうイデオロギーからくる自由経済だの何だのという点は、まことに反対でありますけれども、しかし実際に炭鉱地帯に行かれて、そうして実際の生活を見ておられるところの質問にはわれわれも大いに啓蒙され、傾聴させられるのであります。伊藤さんは雨が降ることが予測できるかという質問でありましたが、できないことは社会党の諸君といえどもできないのであります。従って雨が降ることが予測できないからこそ社会主義の計画経済というものはむずかしいのであります。私は決して自由に放任しようというのではありません。公共の福祉を考えて、規制すべきは規制しなければなりませんけれども、この石炭鉱業の行き詰まりを企業自由の原則の責任に負わせることは賛成できないのであります。とにかく失業対策、この長年の跡始末のことについて、政府当局におきまして長年研究をしてこられたことは私どもよく承知しておるのでありまして、いろいろ質問を聞いておって、むずかしい問題は実にむずかしい問題であります。しかしこれ以上に智恵をしぼれといってもなかなかしぼれないけれども、おそらくはこれでやってみて、もし実際問題としていろいろの予測せざる問題が起きた場合は、何としてもそこに働いております労働者あるいは長年憲法上に保障されて自己の職業としてやって来られた方々の大きな犠牲を払うことでありますから、そういう方の立場を肝に置いて政府は善処さるべきであり、善処されるものと期待いたしております。とにかくこのままほうっておくわけにいかぬ、これ以上の智恵をしぼってもなかなか出ないという意味においてわれわれはこれに賛成するのであります。社会の提案に対しましてはこれはやや現実離れがしておりまして、これを実行するということになりますと、とうてい日本が破産してしまってもむずかしいものであると思いますので、反対いたします。
  107. 田中角榮

    田中委員長 片島港君。
  108. 片島港

    ○片島委員 私は社会党を代表いたしまして、まずただいま議題になっております政府提出石炭鉱業合理化臨置措置法案に対して大反対の意見を申し上げます。  石炭政策は、石炭鉱業がその上昇期ないし絶頂期にあるときに、合理的な手を打つべきであったにかかわらず、これを今日まで放任した結果、炭鉱特に中小炭鉱は未曾有の危機に直面し、すでに昭和二十七年から二十九年の間において、中堅炭鉱を含めて約二百鉱、人員にして約十万人に近い労働者が職場からほうり出されたのであります。これは自由党にもまたもちろん大きな責任があります。職場から締め出された炭鉱労働者は、糟糠の愛妻を、またかわいい娘を街頭に立たしめて、みずからの身を売らしめてもなおその生活をささえることが困難となり、この気の毒な話が世間に報道せられまするや、東京あたりの小学校の児童まで、五円、十円という浄財を集めてその救済に立ち上ったのであります。この情勢はとうてい政府としても放置するわけにもいかず、この際大手術をして締めくくりをつけようというのが、この石炭鉱業合理化法案でありましょう。この大手術の成否は、日本の産業経済全般に及ぼす影響がきわめて重大でありますから、いわゆる今国会の重要法案として世間の注視の的となったことは当然でありましょう。われわれはこの法案の中身をよく吟味してみなければならぬのでありますが、昨年十一月貯炭量の増加に伴い、中小を含む一割出炭制限協定が結ばれた。ところが出炭量は三〇%でも、特殊の強みを持つ中小を押えることができず、ここにカルテルを実効あらしむるためいろいろと研究された結果、この際いろいろと考えているよりは、一挙に中小を締め殺した方がさっぱりしてよかろうというのが本法案の一つのねらいであります。縦坑の開さくあるいは機械化によってコストを引き下げるというのは名目であって、この法案の本質は、先ほどわが党の委員から言われた通り、流行の独禁法破りのカルテル法案である。事あるごとに合理化の名のもとに独禁法を骨抜きにするという近ごろ流行の新戦術である。  まず第一に、本法案の表面上の眼目とされる需要の拡大、能率の向上、生産コストの引き下げには実質的な裏づけがなければならない。通産大臣は豊渇水による電力石炭の需要量の動きにはお手あげであると述べられている。たとい自然現象による石炭の危機であっても、これを救うのが政治であって、この自然現象に加えて政府みずからのデフレ政策の破綻、大手のダンピングなどをたなに上げてお手あげというごとき発言は、無責任きわまるものであります。さらに加えて低品位炭の利用及びガス化、石炭化学を含む需要の拡大については、その具体策がきわめてあいまいであることは遺憾にたえない。さらに炭価の引き下げについて見ましても、政府は机の上における需要に見合う増産、物価の据え置き、賃金のストップ、資金上、税法上の優遇等の諸条件前提要件でなければならないが、資本主義政策のもとにおいて、向う数年間これらの諸条件はどれ一つとして確信の持てるものはないじゃありませんか。昭和二十九年度において、この一カ年間においてさえ、当初の四千八百万トンが四千六百万トン、四千三百万トン、四千百五十万トンと、このような大きな見込み違いをしているのに、五年も六年も先のことを言ってもだれも信用するものはおりません。参考人の意見を聞いても、コストの引き下げは労働の強化、賃金引き下げ以外にないという感をひとしお深くしたのみである。標準炭価の問題についても、何らの拘束力のない標準炭価というものは、独占が支配権を握ったあとにおいては最低炭価となるおそれが多分にある。政府は非能率炭鉱買い上げにより未払い賃金にあえぐ労働者を救済するといっているが、非能率炭鉱の多くを占める租鉱権については何らの考慮が払われていないことは全く片手落ちの措置であるといわざるを得ません。法第三十二条に、買収の対象になった採掘権の上に設定された租鉱権についてのみ、しかもその鉱業施設だけを買い上げることにしているが、これにより救済される租鉱権者は非常に少く、鉱業権者と租鉱権者との間に買収をめぐって血みどろの紛争が惹起されることは火を見るよりも明らかである。また鉱区の面積の制約よりして、十五ヘクタールもある租鉱区はほとんどまれであり、鉱区の分割譲渡を受け買収の対象にすることは至難であるといわざるを得ません。本法案経営難に苦しむ中小炭鉱を救うと言っておるが、これこそ羊頭を掲げて狗肉を売るというものでありましょう。政府能率コストという技術的な面は見ておるけれども、資本家と労働者という関係を見のがしている。本法案に賛成する諸君の考えは、一つにはいかにしてこの急場をしのぐか、そのために労働者の首切り、賃下げを法律をもっていかに合理化するか、そうしていかにして国家資金をより多くより有利に引き出すかというあせりからきているのであって、政府の説明は、長期計画でありますけれども、実は最短期計画ということをねらっておる。しかしてこの最短期計画は、本法案提出となり、六万人の首切りと千二百九十億円の資金引き出しと、競争相手の中小締め出しに成功しようとしておるのであります。特に強調しておきたいのは、首切りによって生ずる失業対策であります。労働大臣は本会議答弁においてまことしやかな詳しい答弁をされましたが、生きている人間をこのような不安定な事業場に配置するといっても労働者は安心はいたしません。本委員会質疑応答によって明らかなごとく、本法案通過によって生ずる炭鉱業者の就労配置計画についても、本法案に見合うところの事業計画は何も具体的なものが出ておらない。政府答弁では希望を述べておるだけである。炭のことや山のことは、五年も六年も先の計画を出しておるが、職場から締め出された労働者の配置計画、就労すべき具体的な事業計画事業計画に伴う具体的な資金計画は明らかにされておらない。事業が不安定なばかりではない、合理化による炭鉱業者のほかに、政府の六カ年計画にもかかわらず、年々月々増大する一般業者の救済対策はきわめてお粗末であり、無責任であるときに、この一般業者炭鉱業者とをどのように調整して雇用するかということについても具体策が示されておりません。  本法案が成立すると、わずか一カ月の離職金という香奠料で追い出される諸君の身の上を思うとき、まことに心を痛めるものがあります。これら諸般の困難を救う対策といたしまして、われわれ左右両派社会党は臨時石炭鉱業安定法案を本委員会提出いたしまして、中小炭鉱を救い、危機に瀕している炭鉱労働者の生活を守らんとしたのでありますが、ここに民自両党の強引な多数の力によってこれが葬られることはまことに残念であります。しかしながらわれわれの対策に対して反対はされぬだろうと思っておった。ところが山本委員は反対された。一回も内容を読んでいないで、たった一回の質問もしないで反対をするというのは、まことに不見識きわまるものであると思うのであります。このような重大な法案については慎重に審議をしなければならぬ。また委員長も今日まで非常に民主的な運営をしてきたにかかわらず、われわれのこの対策についてはきわめてあっさりと取り扱い、特にこの法案の裏づけとなっておる重油ボイラー法案などについてはごうも審議をやっていない。今日までの民主的な運営はまさに九仭の功を一簣に欠くと言ってもいいのであります。名委員長の今後のために私は残念に思うのであります。  以上をもって政府原案に反対、両派社会党の案に賛成の討論といたします。(拍手)
  109. 田中角榮

    田中委員長 神田博君。
  110. 神田博

    ○神田(博)委員 私は自由党を代表いたしまして政府提出にかかる石炭鉱業合理化臨時措置法案につきましては賛成の意を表し、多賀谷真稔君外十三名提出にかかる両社共同提案の臨時石炭鉱業安定法案につきましては反対の意を表するものでございます。すなわち政府提案の法律案にいたしましても、石炭鉱業合理化する上から考えまして、必ずしも満足すべきものではないのでありまして、考慮を要する点が多多あるのであります。時日が許すならばさらに慎重検討の上充足整備をしたいのでありますが、今日わが国の石炭鉱業は、空前の危機に直面しておるのであります。すでに社会不安、人道上の問題を惹起しておることは御承知の通りであります。こうやって論議しておる間も弱小炭鉱は相次いで倒産をし、失業者はますます増加して、このまま放置しておくことはできないというのが実情であります。先般の現地調査におきましても、この事態はわれわれはまざまざと見て参ったのであります。この法案に首切り法案だと言って反対しておる者がございますが、もしこの法案が通らなかったならば、それは首つりを座してながめておるというのがこの法案反対の実情だと私は思うのであります。この法案に対しまして一部の諸君の中においては反対をしております。あるいはこの法案がなくても救済できるのだというような議論もあるようでありますが、法的根拠がなくては私は一般企業である石炭鉱業につきまして特殊の恩恵は施し得ない。これはどうしても法的根拠を与えることを考えなければならないと思うのであります。この炭鉱の危機を救うということはなかなか容易でない。そこでこの法案を一日も早く成立させたいというのが結論であります。  すなわち炭鉱を愛し、経営者の血のにじむ苦衷を察し、従業員諸君その他の関係者に心から同情するがゆえに、満足ではないけれども、とりあえずこの法案を成立せしめて、そうして実施の状況にかんがみて他日適当な修正を施そうというのが自由党のわれわれの考えでございます。これは社会党の諸君といえども、炭鉱を思い、従業員その他の現在の窮状を知悉する限りにおきまして、今直ちに政権を握るというような自信もないのでありますから、私はこの法案を成立させた方が社会党の諸君のためにもなると思う。両社提案の法案をなぜ十分審議してくれぬかということでございましたが、私ども両社提案の法案を実は一読、再読、三読いたしまして、これはいかにもあわてた法案である。すなわち政府が提案をされた、そこで代案なくしてはまことに世間の評判がかんばしくないから、一夜か二夜ででっち上げたというような感を深くいたすのであります。もっとも提出されたその限りにおきましては、私はその御努力に対して敬意を払うにやぶさかでないのであります。この法案の成立いたしますにおいても、私どもいろいろの希望はありますが、とにかく今申し上げたような根拠に立ちまして、一日も早く成立させたい、そうして合理化を進めまして、石炭鉱業が基幹産業であり、石炭鉱業以外の各産業また国民も、ひとしくこの安定を望んでおるのでありますから、ここに政府案を成立せしめよう、こういう考えをもちまして本案に賛成する次第でございます。
  111. 田中角榮

    田中委員長 中崎敏君。
  112. 中崎敏

    ○中崎委員 社会党を代表して両派社会党提出臨時石炭鉱業安定法案に対して賛成をいたし、政府提出法案に対して反対の意を表明せんとするものであります。  最近におきまする石炭業界の混乱はその極に達しておりまして、社会不安もまたゆるがせにすべからざるところの重大なる段階に立ち至ったのであります。これはひとり石炭関係事業のみにとどまりませんけれども、ことに石炭業界においてはその程度の深刻なることについて目をおおうことができないのでありまして、その責任の大半は一にかかって政府にあるということを施定せざるを得ないのであります。ことに政府は昨年度における石炭の需要見込みを四千六百万トン程度に押えまして、これを完全に目的達成のためにあらゆる努力を払うということを、しばしば国会においても明言したのであります。ところがその実績を見ますと、四千百五十万程度の大きなるところの相違というものが、この石炭業界の大きなる混乱をもたらしたところの重大なる原因でありまして、ことに現在においては全体を通じて一トン当り五百円程度の採算割れの価格をもって販売されておる、こういう不自然きわまるところの現象というものは、いやしくも経済について多少の見識を持つ人のとうてい見のがすことのできないところであります。ことに中小炭鉱に至りましては、はなはだしきは一トン当り千五百円程度の採算割れの価格をもって販売しておる、こういう実情あるに至っては、これをこのまま放任しておくところの政府の政治的責任はきわめて重大だといわなければならぬのであります。これに対しまして政府は何といっても一番必要なところの金融に対しまして、ことに中小炭鉱に対しては目をおおいまして、ほとんどこれに対するところの融資の道を考えていないのであります。これがついに行き詰まりまして、好ましくないところの千五百円程度の採算割れの安い値段をもってダンピングしなければならぬという状態に追い込まれております。そこでこうした石炭問題と真剣に取り組む場合におきましては、まず金融の適正な道を講ずることが第一であり、第二には販売機構について、これら中小炭鉱の側について十分に計画的な経済活動がなし得るような道を政府みずから率先して講ずべきであるのにかかわらず、手をつかねて何らこれに対して適当な対策を打たないわけであったのであります。さらにまた生産の計画につきましても、やたらに膨大な、実情に沿わないような机上の計画をもって業界を指導するところに大きなるところの政治的責任があるのでありまして、これらの大きなる三つの要素がついに炭鉱業界をして収拾することのできないような現在の状態に追い込んでしまったのであります。そこで私たちはこうしたところの当面の問題を解決するがためには、こうした急進な石炭鉱業合理化法案というものを出す前に、まず第一に現在瀕死の状態に陥っているところのこれらの炭鉱に対して適当なる融資の道を講じ、そうしてまた販売機構等の点についても十分に組織的、統一的活動をするような道を講じ、そうして新しいところの需要の開拓についても政府が一段と熱意を払い、さらに電力あるいは鉄道等の大口消費者についても十分の協力し得るような態勢を打ち立てることによって、現在の急場は救い得ると私は考えておるのであります。しかる後において一応不十分であるが、立ち直っておるところのこれらの炭鉱業者に対しまして、あらためてお互いに手に手をつないで、ただ一人の落伍者も出さないような、そういう合理的な方法によってこの道を講ずる、そういう手段を講ずることは決して絶無ではないと考えておるのでございます。現に紡績の操短について考えてみましても、紡績業界にも相当大きなるところの混乱が来ておるのでございます。ところがこれに対しては何ら独占禁止法を排除するような法的根拠がないのにかかわらず政府は一つの腹を持って、責任を持って、一面において多少の問題を持ちつつも、紡績操短の手を打つことによって、さらに業界に適正な指導をすることによって、まず第一に繊維業界における混乱を食いとめておるという実情を無視してはならないのであります。この紡績操短によりましてただ一人の失業者も出ないようにという政府考え方の上に立って、多少の紆余曲折はありといいながら、紡績業界は漸次安定の道に立ち直っておるという状況を見ましたときに、こうした無理な、首切り浅右衛門ではありませんが、中少炭鉱業者を次から次へと首を切ってしまう、あるいは多数の炭鉱従業員の首を切ってしまって、知らぬ顔の半兵衛というような政策を講ずる前にただいま申しましたような手を打つべきものであると私たちは信じておる次第でございます。かりにこの法案が通過して実施に移された場合において、政府考えておるところの三百万トンの買い上げ計画によってこれが一応実現したといたしましても、その次にはまたこれに準ずるような中小炭鉱が次から次へと首を切られる、最後には少数の大手炭鉱、大資本家のみがひとり政治と結託することによって国民の犠牲の上に繁栄するものであるということを私たちは憂慮するものでございます。そうしたような行き過ぎたといいますか、お互いに国民がひとしく手に手をつないでその所を得るというふうな考え方をするがためには、もう少し考え方を改めていくべきものだというふうに考えておるのでございます。かくのごとくにいたしまして、合理化の名前のもとに日本経済は漸次ピラミッド型に変貌しつつあるのであります。中産的な立場にあるところの事業あるいはそういう階級の人たちが漸次影を没しまして、大きなるところの資本の組織のもとにおいて、多数の国民がほとんど生活もできないような状態に追い込まれるというがごとき政治のあり方ということに対しては、われわれは目をおおうことはできないのでございます。そういう意味合いにおいても、こうした反動的と申しますか、大資本家擁護の法案に対しては賛成ができない次第であります。  次に本案は欠陥と矛盾に満ちたところのものでありまして、まず第一に、本法案炭価の引き下げを第一にねらって、国際経済の流れにさおさしていこうというものでございます。ところがそれがために三十四年度には炭価の二割引き下げを目標として進んでおるのでございますけれども、その二割の炭価の引き下げが、こうしたような不徹底なやり方によって果して実現できるかどうかということは、私たちは大きな関心を持って見ておるのでございます。かりにそれがある程度値下げが実現したといたしましても、まず当座といたしましては現在の五百円程度炭価の値下りをまず第一に引き上げなければならぬのであります。言いかえますと、現在よりも少くとも五百円程度炭価の引き上げが行われない限りにおいては、この炭鉱の行き詰まりということは食いとめられないということは火を見るよりも明らかなのであります。もしこれを食いとめんとするならば、たとえばかつて政府炭鉱業者に対して融資しておりましたところの復興金融金庫の金を、現在開発銀行に引き継いでおるのでございますが、これらの金のさらに金利の棒引きとかあるいは元金のたな上げ棒引きというふうな、言いかえれば国民の膏血からしぼり上げたところのその犠牲の上に、さらにまた今後縦坑その他炭鉱合理化の名前のもとに予定されておるところの千三百億円程度の国民の血の税金を出すことによって、さらにその金利を大幅に引き下げることによって、これら一部炭鉱業者が利益するがために生ずるところの炭価の引き下げ、言いかえれば、国民の犠牲においてされるところの炭価の引き下げ、あるいはまた法律が実施されまして、カルテルがいよいよ実施される際において、標準炭価と符牒を合せるがごとくに、炭価の引き上げが行われることは、火を見るより明らかであります。政府考えているところの産業合理化よりも、反対の方向に進むものであることは、火を見るより明らかだと考えるのであります。かりに昭和三十四年度におきまして二割の引き下げをする。その二割の引き下げについては、特に賃金につきましては現状を維持するというのであります。そうして炭価の構成要素といたしましては、賃金が約四割程度の比重を占めておるというのでありますから、残りの六割程度のその他の経費をもっていたしまして、二割を引き下げしなければならぬのであります。そういたしますと、いわゆるその他の経費をもって節約すべきものは、三割二分程度の引き下げをしなければ、政府考えておるところの二割の炭価の引き下げにならないのであります。果してこれが実現できるかどうか。いわゆる縦坑開発をすることによって、三割二分程度の物件費の引き下げができるかどうか、重大な疑問を持っておるのでございます。こうしたような考え方の上に立って、政府は二割を目標として炭価の引き下げをするということは、羊頭狗肉でありまして、この法案を強引に通過せんがために、われわれに一時的に説明するというところの机上のプランにすぎないということを申し上げておきたいのであります。こういうふうな点から考えてみましても、さらにまた政府の経済六ヵ年計画の中におきまして、国民生活の水準が三十四年度においては一割五分程度の引き上げになっておるにかかわらず、この炭鉱従事員の給与そのものが現状維持であるという点を考えても、いかに政府計画の中が矛盾だらけであって、行き当りばったり、その場限りの説明にすぎないかということを私たちが考えてみましたときに、政府の説明をそのままにうのみすることができないことは明らかであります。果してそうであるならば、いわゆる計画生産の上に一つの計画を立てて、石炭に関するところの鉱業を合理的に処理するという考え方というものは、私たちはそれをそのまま信用できないということを考えてみましたときに、そうした上に立ったところのこの法案に対しては、そのまま賛成できないということも、自然に出てくる結論であるというふうに考えなければならぬのであります。  次に貯炭に対する問題につきましても、この計画を十分に効果あらしむるがためには、貯炭に対するところの問題についても、十分法的措置が講ぜられるような方法がなければならぬのでありますが、この問題については、政府はたとえば昨年度において、ただ電力に関する石炭だけでも二百数十万トンの大きな誤差が現実にあった。これは自然の現象によるものであったといたしましても、そういう大きなるところの自然現象に左右されるところの要素があるにかかわらず、それがまた炭価を安定し、業界におけるところの安定をはかる大きな障害になっておるにかかわらず、そうしたような問題について何らの考慮が払われていないというところに、この石炭業界におけるところの安定の大きな欠陥があるといわなければならぬのであります。そういうふうな点につきましても、政府が一体どの程度の責任を持つか。ただ合理化資金と申しますか、設備資金についてのみその資金を裏づけするというのでありますが、こうした問題についても十分の考慮を払われない限り、この合理化法案意味は、いわゆる画龍点睛を欠くといわなければならぬのであります。     〔「まだあるのか」と呼び、その他発言する者あり〕
  113. 田中角榮

    田中委員長 お静かに願います。
  114. 中崎敏

    ○中崎委員 さらにまた失業対策の問題につきましても、この法案実施によって政府が用意をしておるところの直接の対策費は、四千人程度のものにすぎないというわけであります。果してそうであるとするならば、これは全くこうしたところの実情を認識しないことはなはだしいといわなければならぬのでございまして、現在多数の失業者のある上に、この法案実施の結果生ずるところの失業者、並びに社会不安の大きさ等を考えてみましたときに、全く不用意きわまるものであるといわなければならぬのであります。そこで私は、少くともこの法案は継続審議をいたしまして、次の国会までに十分の予算的な措置等も講じてその裏づけをして、これを審議決定すべきものだというふうに考えておるのでございますが、これらの点についてはいずれまたあらためて論議することといたします。  次にまた市町村財政の問題について考えてみますと、現在炭鉱地区におけるところの市町村というものは、ほとんどそのほか見るべき産業がない地区が大部分でありまして、現在においても相当大きなるところの財政の危機を招来しておるのであります。まず第一にこうした失業者が出ることによって、生活保護者が漸次ふえて参るのであります。そうしてその二割程度負担はやはりその市町村に命ぜられておるようなわけでございまして、これが財源をいかに確保するのか。さらに失業対策事業にいたしましても、その市町村に対しましてある程度の割合の負担が要求されておりますので、その裏づけとなるところの金を一体どこから調達するのであるか。さらに固定資産税の減収、あるいは住民税の減収、その他事業税等の減収等によりまして、直接間接に市町村におけるところの打撃というものは、実に甚大なるものがあるのであります。これに対してほとんど見るべき考慮を払われていないというところに、この法案はその関係市町村の財政を全部一ぺんにあのいけにえにする法案であると申しても過言でないと思うのであります。こうしたような点を考えてみましたときに、市町村に対する考慮が十二分に払われてこそ、初めて裏づけが行われていくものだと思うのであります。  次に低品位炭の高度利用を初めといたしまして、石炭の液化、その他石炭を原料炭として使用するという面に、相当考慮が今日まで払わるべきであるにかかわらず、しかも政府は莫大なる国民の血税をつぎ込んでおるにかかわらず、こうした重要な国の産業を支配するという、ふうな大きな政策については、ほとんど考慮を払われていないという無責任きわまる政府のやり方に対しまして、この際猛省を促してやまないのでございます。今後一日もすみやかにこの問題について、たくましい前進をすべきものであるというふうに考えるのであります。  さらに租鉱権につきましても、租鉱権は一つの財産権であるということは、これは明らかであります。名目的なるところの鉱業権を保護するの余りに、実体的な財産権であるところの租鉱権をあまりに軽視しておるというところにも、また見のがすことのできない反動的な考え方があるといわなければならないのであります。  さらにまたカルテルがこれによって結成されたときにおいては、少数の大きな炭鉱業者の横暴というものは、実に目に余るものがあるといわなければならぬのであります。国民の生活をあえて顧みず、あるいは国の産業の基幹である燃料を供給しておるところの産業であるということを顧みず、一方的に自分の利益擁護のためにカルテル行為を十分にほしいままにした場合におきましては、政府考えておるところの炭価の値下げはもう望むことができないばかりでなく、国民の経済生活の上に大きな関係を持つものでございまして、こうしたカルテルにつきましては私たちは十二分に反省をいたしまして、そうして国民の生活をいたずらに傷つけることのないように望む次第でございます。  さらにまたこの罰則がないということは、何といっても致命的なものでありまして、この大きなる国民生活の犠牲の上に打ち立てられるところのこの法案に、何ら罰則が伴わないというような、こうした法案に対しましては、私たちは国民とともどもに反対をせざるを得ないのであります。  以上のような理由に基きましてこの法案に反対をするものであります。
  115. 田中角榮

    田中委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。まず多賀谷真稔君外十三名提出臨時石炭鉱業安定法案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  116. 田中角榮

    田中委員長 起立少数。よって本案は否決すべきものと決しました。  次に石炭鉱業合理化臨時措置法案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  117. 田中角榮

    田中委員長 起立多数。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  ただいま神田博君外二十六名民自共同提案にかかる附帯決議案が提出せられました。この際提出者の趣旨弁明を求めます。神田博君。
  118. 神田博

    ○神田(博)委員 この際本員は民自両党を代表いたしまして、ただいま可決されました石炭鉱業合理化臨時措置法案に対する附帯決議をいたしたいと思うのであります。  まず案文を朗読いたします。   石炭鉱業合理化臨時措置法案に対する附帯決議(案)  一、政府は、本法の施行に当っては、労働問題の重要性に鑑み、労資双方の全面的協力を求めること。又、失業対策について配置転換その他につき遺漏なきを期するとともに、これに要する予算措置について留意すること。  二、政府は、標準炭価制度の運用に当っては石炭の品質及び用途による市価の格差を考慮して弾力的運用を図ること。  三、政府は、石炭化学工業の振興その他石炭の需要の喚起、特に高度の利用のため、格段の努力を払うこと。  四、政府は、鉱業権等の買収に当っては、火薬、坑木その他の未払代金が回収不能とならないよう善処すること。  五、事業団は、整理対象となる租鉱権については、適当な考慮を払うこと。  六、石炭鉱業現状は過大借入の重圧下にあるに鑑み、これが速かな処理に万全の措置を講ずること。 以上であります。  各委員の御賛成をお願いします。
  119. 田中角榮

    田中委員長 本附帯決議案につきましては質疑、討論の通告がありませんので直ちに採決をいたします。本案に本附帯決議案の通り附帯決議を付することに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  120. 田中角榮

    田中委員長 起立多数。よって本案には、神田博君外二十六名提出にかかる附帯決議案の通り附帯決議を付することに決しました。  この際お諮りいたします。ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 田中角榮

    田中委員長 御異議なしと認め、さように決定いたします。  この際石橋通商産業大臣より発言を求められております。これを許します。石橋通商産業大臣
  122. 石橋湛山

    石橋国務大臣 長い、非常に御熱心な御審議によりまして本案が通過いたしましたことを、まずもってお礼申し上げます。  この際民自両党の提出されました附帯決議については、先般来の質問応答の間に申し上げましたように、われわれとしてもこの通り考えておったわけであります。附帯決議の御趣旨に従いまして万全を期したいと思っております。どうぞ今後とも御協力をお願いします。     —————————————
  123. 田中角榮

    田中委員長 次に日程第三、株式会社科学研究所法案を議題といたします。  本法案の原案は、通商産業省及び工業技術院により成案を得たものであり、本委員会科学技術振興に関する小委員会において十分審議済みのものでありますから、質疑及び討論を省略し、直ちに採決するに御異議ありませんか。     〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  124. 田中角榮

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって質疑及び討論は省略いたします。  これより株式会社科学技術研究所法案について採決をいたします。本案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  125. 田中角榮

    田中委員長 御異議なしと認め、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  126. 田中角榮

    田中委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  本日の会議はこの程度にとどめます。次会は明二十三日午前十時より会議を開くことといたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後一時二十六分散会      ————◇—————