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1955-07-21 第22回国会 衆議院 商工委員会 第46号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十一日(木曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 田中 角榮君    理事 首藤 新八君 理事 長谷川四郎君    理事 山手 滿男君 理事 内田 常雄君    理事 前田 正男君 理事 永井勝次郎君    理事 中崎  敏君       阿左美廣治君    秋田 大助君       小笠 公韶君    菅野和太郎君       齋藤 憲三君    笹本 一雄君       椎名悦三郎君    鈴木周次郎君       野田 武夫君    淵上房太郎君       森山 欽司君    山本 勝市君       鹿野 彦吉君    神田  博君       小平 久雄君    堀川 恭平君       南  好雄君    村上  勇君       片島  港君    櫻井 奎夫君       多賀谷真稔君    田中 武夫君       八木  昇君    伊藤卯四郎君       菊地養之輔君    佐々木良作君       田中 利勝君    松平 忠久君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁調         整部長)    松尾 金藏君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川上 為治君         通商産業事務官         (石炭局長)  齋藤 正年君         労働政務次官  高瀬  傳君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 七月二十一日  委員帆足計君辞任につき、その補欠として八木  昇君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 七月二十一日  株式会社科学研究所法案小平久雄君外三名提  出、衆法第六二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会における参考人招致に関する件  株式会社科学研究所法案小平久雄君外三名提  出、衆法第六二号)  石炭鉱業合理化臨時措置法案内閣提出第一一  三号)     —————————————
  2. 田中角榮

    田中委員長 これより会議を開きます。  本日本委員会に付託せられました株式会社科学研究所法案議題となし、審議に入ります。まず提案者より趣旨の説明を求めます。小平久雄君。
  3. 小平久雄

    小平(久)委員 ただいま議題となりました株式会社科学研究所法案について御説明いたします。  狭隘な国土に八千万を算する膨大な人口を擁し、しかも天然資源に乏しいわが国が苛烈な国際競争に伍して経済の自立を達成するためには、科学技術振興し、もってわが国産業技術的基盤を強化することが必須不可欠の要件であることは、論を待たないところであります。さらにわが国産業技術的基盤を強化するためには、研究活動の一そうの推進が必要であります。思うに最近の研究は、研究分野が著しく専門化していく傾向が強く、今後の研究の方向は、これら分化発達した各分野研究総合化を必要としている段階にあるのであります。換言しますならば、現代科学技術振興は、電気、化学、機械材料等、各研究分野の知識を総合結集するのみならず、基礎研究から応用研究工業化試験までを一貫して行う強力な総合研究に待つところきわめて大きいのであります。  現在わが国におきまして、かかる総合研究を行う研究機関としては、株式会社科学研究所がありますが、同研究所は、わが国唯一総合研究所として歴史的伝統と優秀な研究員を擁し、財団法人理化学研究所として創立して以来三十年、わが国科学技術発展に幾多の貢献をしてきたのでありますが、昭和二十二年財団法人より株式会社に改組され、民間法人たる株式会社科学研究所として再発足したのであります。しかるに同研究所は発足後なお日浅く、産業界よりの数度にわたる資金援助にもかかわらず、資金的基礎が脆弱なため、極度の財政的不振に陥り、現状のまま推移すれば、総合研究所としての機能はますます弱体化し、国家的にも重要な研究の続行が不能となり、遂には閉鎖の悲運に陥る懸念なしとしない状況にあります。元来基礎研究を含む総合研究機関は、最初からコマーシャルベースにおいて経営することはきわめて困難で、国家からの援助が是非とも必要なのであります。これは、旧理化学研究所の改組に当り、衆参両院が、財団法人理化学研究所に関する措置に関する法律昭和二十二年法律第一三一号)の附帯決議として、同研究所に対し財政並びにその他の援助をなすべきことを決議している慕情に照らしても明らかなことであります。  本法律案は、右の趣旨により科学技術に関する総合研究を急速、かつ計画的に行う実施主体として、広く産業界資金の参加を得て、半官半民の特殊会社として株式会社科学研究所設立し、所要助成措置を講ずるとともに、他方では研究所に対し、必要な監督を行おうとするものであります。  すなわち、私どもがあえて本研究所設立を企図いたしましたゆえんのものは、第一に試験研究総合的実施推進する主体として、国の意見を反映することのできる機構が必要であり、そのためには、本研究所のごとく国の強力な支持とまた研究自主性を不当に拘束しない程度監督とを期待し得る研究所設立が望まれたこと、第二に、わが国産業界がかかる試験研究に投下し得る資金にはおのずから限度があり、またリスクに富む研究特殊性からして、科学技術総合研究を純然たる私企業の運営のみにゆだねることは、資金取得危険負担の両面において少からぬ困難が予想されたこと、第三に、科学技術総合試験研究産業界に与える直接間接の利益考慮すれば、研究に要する資金の一部をこれらの企業の協力にまつことがむしろ適当であり、またこれにより従来よりも民間資金の活用が可能であることにあったのでありまして、私どもといたしましては、このような強力な機構の確立により、科学技術の今後における飛躍的な進展を期待している次第であります。  次に本法律案概要を御説明申し上げます。第一には、研究所設立目的は、前述のように、わが国産業振興及び発展に寄与する科学技術の向上に必要な事業、特に総合的な試験研究推進に存するものであり、従って、研究所の行なう事業範囲は、これら試験研究及び研究成果の普及を主たる事業として行なうのほか、附帯事業としては、研究所目的達成に必要な事業通商産業大臣認可を受けたものに限定いたしました。  第二には、研究所は、国の科学技術行政施策に協力して、試験研究業務推進する機関とする趣旨から、研究所は、本法に基く特殊会社たることを明らかにし、かつ政府は予算の範囲内において、研究所に出資を行うことができることといたしました。  第三には、研究所の性格にかんがみ、各種の助成措置を講ずることとし、研究所に対しては、その設立及び資本の増加に際し、登録税を免除するとともに、国は研究所試験研究業務に必要な経費の一部を補助金として交付することができることとし、さらに社債発行限度の特例を規定することにより、資金確保に遺憾なきを期しました。  第四には、以上と表裏して、研究所代表取締役及び監査役選定等決議、合併及び解散の決議事業計画等の設定及び変更、定款の変更社債発行利益金処分重要財産譲渡等については、通商産業大臣認可を受けることとし、右のうち所要事項については、大蔵大臣と協議すべきことといたしたのであります。  第五には、研究所設立経過規定につきましては、昭和二十七年八月四日設立された株式会社科学研究所は、株主総会特別決議を得て、研究所に対してその営業の全部を出資することができるものとし、かつ、その出資する営業価格評価については、臨時通商産業有に設ける評価審査会において評価するものとするほか、設立委員任命等研究所設立に必要な諸規定を設けることといたしました。  以上本法律案提出理由並びにその内容に関する概要を御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、御賛同あらんことを切にお願いする次第であります。
  4. 田中角榮

    田中委員長 本案に対する質疑あと回しにいたします。     —————————————
  5. 田中角榮

    田中委員長 前会に引き続き石炭鉱業合理化臨時措置法案議題となし、質疑を続行いたします。質疑通告順によってこれを許します。ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  6. 田中角榮

  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この前の質疑に続きまして大臣に承わりたいと存じます。今度の買い上げはむしろ大手筋の独占を促し、さらに金融機関債権確保であるといわれておるわけであります。すなわち今度予定されておるといわれております金額が、トン当り二千三百五十円ともいわれあるいは二千三百円ともいわれ、二千五百円ともいわれておるのですが、それはともかくといたしまして、この程度金額では現在抵当権を有しております金融機関に返せば残りはほとんどない、こういうような状態になっておると思うのですが、大臣は、どういうように御判断になっておるかお聞かせ願いたい。
  8. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは前回にもこの委員会でお答えしたと思うのでございますが、買い上げ対象というものは何べんも御説明いたしますように、炭鉱側の申し入れによりまして買い上げをいたしますので、従って買い上げ予定炭鉱のみについてどのくらいの債務があるかということを調査することは理屈の上からいっても困難でございます。また中小炭鉱につきましては正確な経理状況調査のまとまったものが比較的少いものでございますので、正確なことを申し上げることは非常に困難でございます。ただわれわれの方で地方の局を通じまして、暫定的に調べたものがございます。これは全国で炭鉱数として二百ばかりのものでございますので、これで全部を尽しているというふうにはもちろん申し上げられないのでございますが、その調べによりますと、大体金融機関等、あるいは個人の融資先も含めまして、大体千三百円くらいの負債になっておる状況でございます。それでそのほかに未払いその他がございますので、それを全部入れまして千九百円くらいになっております。これはもちろん別に特に能率の悪い炭鉱ということではございませんで、たまたま資料を取り入れた炭鉱についての調査でございますから、買い上げ炭鉱につきましては、結果としては若干これと違ってくるかもしれませんが、これが中小炭鉱の大体の趨勢であろうと思います。この数字は動産その他の、要するに事業団買い上げ対象にならない財産は当然これから差し引いて考えてしかるべきだというふうに考えられますので、今お話のように金融機関救済のみに終るようなことは、この数字としてはちょっと考えられないように思います。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私も全般的な中小炭鉱債務状況は把握しておりません。しかし現実に倒れました炭鉱につきましては、私は、数カ所実際倒れました当時に、各銀行関係が集まりまして作りました債務内容を持っております。それによりますと、たとえば昨年倒れました岩屋炭鉱におきましては、債務が七億二千万円、筑紫炭鉱が三億六千万円、平田山が一億八千万円、これだけ債務を負うているわけであります。そのうち金融関係から借りております借入金が、岩屋の場合において二億五千八百万円、筑紫におきまして九千八百万円、平田山が三千九百万円、こういう状態でございます。そういたしますと、一応閉山をするような状態になりますときの出炭は著しく落ちておりますから、そういうような状態でなくて、やはりこれだけの人員がおれば十トン程度は出るだろう、こういう想定をいたしまして、どちらかといえば政府案に近いような案を作りましても、どうしても私たちは納得ができない。すなわち十トンで千二百人を有しておったと仮定いたします岩屋におきましては、あなたの方で大体予定されておりますトン当り支払い金によりますと、三億三千万円になります。そうすると三億三千万円のうち金融機関だけでも二億五千八百万円になる。このほかに商社その他の借入金だけでも、合せまして四億一千万円ある。それから労働者賃金あるいは各社会保険公租公課、あるいはその他の資材代金というものも含めまして今申し上げた通りでありますが、これではとうてい離職金を払い、未払い代金を払い、金融機関に払えば、もうそれこそ大臣の言うお手あげです。ほかのところには一銭も行かないような状態です。しかも金融機関の分にはほとんど抵当権を設定していると思いますから、抵当権が優先をしてこれをまずとるならば、一般には全然行かない、このように考えられるのですが、どういうような御調査になっておるか、これをお聞かせ願いたい。
  10. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 今ここに岩屋炭鉱その他の資料がございませんので、岩屋炭鉱について申し上げるわけには参りませんが、お話のように従来倒産しました炭鉱につきましては、そういうケースもございます。今私が申し上げました数字は、そういった倒産した炭鉱数字ではございませんで、中小炭鉱全般について資料の集まった炭鉱が平均の数字を申し上げた次第でございますので、場合によりましては、そういうふうな炭鉱の起ることもあり得ると思うのでございます。ただ申し上げておきますが、例の離職金でございますが、これは二千三百五十円のトン当り買い上げ価格の中に入っておるものではございませんので、これは全然別個に事業団から支払うわけであります。またこの二千三百五十円という計算基礎でございますが、工事につきましては埋蔵炭量によってきまりますし、それから施設につきましては現実にどれだけ投下した施設があるかということできまるのでありまして、特に借金の多いような炭鉱につきましては、実際の生産よりも生産能力の方がかなり多い場合がある。従って現実生産数量債務を割りますと、超過と申しますか相当多額になる場合もありますが、実際の買い上げ価格は、そういう場合にはトン当り二千三百五十円にならない。設備としては、たとえば二千トンの設備をした。ところがいろいろの隘路がありまして、一千トンしか出ていないという場合に、二千三百五十円という計算は二千トンの能力に対しての計算でございますから、必ずしも実生産で割った額で買い上げられるわけではないのでございます。そういうような関係もございまして、相当債務の多いところでも他に退職金等の金が出せないというふうには必ずしも考えられないのじゃないかと思われます。なお事業団買い上げにつきましては、買い上げに際しまして事業団責任者なりあるいは地方通産局長なりそういった関係者委員会のようなものを作りまして、債務処理についてお互いに十分に話し合いをし、またあっせんもいたしまして、関係者が円満に納得できるような整理の計画を立てて買い上げをするというふうに実行上いたしたいと考えております。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 岩屋筑紫平田山とあげましたが、この炭鉱借金が多過ぎてコストが高くて倒れたのじゃないのです。これは御存じのように、石炭の販路がなくて倒れた。ですからこの炭鉱はどちらかといえば、俗に借金が少な過ぎるから銀行がさらに救済をしなかったのだろう、こう言われるくらい借金の方がどちらかといえば少い炭鉱です。その少い炭鉱の例を取り上げてみましても、今申すような状態で、なるほどコマーシャルベースに乗らないような炭鉱については、あるいは借金が少いかもしれません。その日かせぎかもしれませんが、いやしくも政府石炭合理化法案の最も大きなバック・ボーンとして買い上げ対象にするというような炭鉱全部を含めるのですけれども政府がねらっている炭鉱というのは、やはりコマーシャルベースに今まで乗ったけれどもどうにもならない、こういうような炭鉱を大体考えて資料を出さるべきであろと考えるのであります。ところが今申しましたように、どういうところから債務状況というものを調べられたかわかりませんが、どうも実情とかなりかけ離れた資料が出されて、それでお話をなさっておる。私は個々の倒れていった炭鉱の実態を見まして、これでは結局労務者の未払い賃金を、それも優先的に支払うということですから、それを支払うにしても、金融機関に払えばとうてい退職金にはいかないだろう。さらに鉱害賠償なんてとんでもない状態になる、こういうことを憂えるものですが、一体大臣はこういうものについてはどういうようにお考えですか。あなた自身は調査されてないのですか、一つ大臣に御答弁願いたい。
  12. 石橋湛山

    石橋国務大臣 さようなこまかいことは、むろん専門の石炭局でやるのですから、私は一つ一つ炭鉱について調べておりませんが、今局長が言うように、これは個々事情が違うでありましょうから、その違う事情については、現地の通産局その他と関係者が十分打ち合せてやるよりほかないと思うのです。今ここで大ざっぱに言いましても、これは特殊の事情のあるところもあるし、いいところもありましょうし、一がいには言えないと思いますから、実際の処理はそれぞれの実情に応じてやる、かようなこと以外にないと私は考えております。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると特殊な事情考慮して買い上げ代金はきめられますか。
  14. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これはすでに何回も御説明いたしてございますように、その炭鉱鉱業権代については、埋蔵炭量と炭質あるいは炭層状況というものを考慮したもので評価して買い上げる、それから鉱業施設につきましては、資本投下額減損額とを基準にいたして買うわけでございまして、債務状態その他というふうなことは、もちろん考慮の中へ全然入らないわけです。ただ具体的に買い上げをいたします際には、今多賀谷委員からの債務超過というような問題がありますれば、これはまた実際支払います際に債務超過であるような場合には、抵当権者が、支払い計画了解がなかなか具体的につかなければ、抵当権滌除というものを了承しない、抵当権滌除しなければ買収しないということになりますので、どうしてもこれは鉱業権者から債権者あるいは事業団も仲介に入りまして、債権者と話をつけなければ買えないわけでございます。  それから鉱害につきましては、結局事業団権利者になりますので、最終的には結局事業団が負担しなければならぬということになります。従って事業団の方も、鉱害賠償につきまして金額に十分な了解がつかなければ、事業団としても買い上げができないわけでございます。従ってそういった債権者債務者同士話し合いをつけなければ実際に買えませんので、お話のような場合には、通産局長なり事業団責任者なりが中心となりまして、関係者十分話し合いをつけて処理をするというようにいたしたい、その際には当然退職金等につきましても考慮に入れてあっせんをするということにいたすつもりでございます。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、債権者同意がなければ買い上げない、こういうことははっきりしておるのですか。法の上にどこか規定がありますか。
  16. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは法律的に申しますれば、抵当権というものは公租公課にも優先する権限でございます。それで抵当権者同意がない限り抵当物件処分ができないわけであります。この本人が売ろうと思っても売れない、事業団が買おうと思っても買えませんので、少くとも抵当権を持っておる債権者につきましては、その承認を得ない限り、買い上げはできないということになるわけであります。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから抵当権を持っておるのは金融機関だけです。結局金融機関承諾がなければ売ることもどうすることもできない。そうすると今度は本人が売りたくなくても、金融機関の方で、売れ、そしておれらは債権確保しなければならぬという。そこで、いやおれは売らないというと、金融機関の方がそんなら金融しないと言えばばったりいくのです。結局買い上げる、買い上げないといっても、その申請をする意思は、事実問題としては金融機関が握っておると思う。もしも買い上げ申請をしなければ金融をとめる、こう金融機関から言われれば、今の炭鉱金融をとめられればばったりいくことはわかっているのですから、結局その最終的の意思決定金融機関が握っておると私は思うのです。今抵当権滌除承諾がなければという話ですが、抵当権を持っているのは金融機関ですから、私は金融機関だけは大がい払うだけの金額はあるだろうと思うのです。ところがそのほかの債権者は、これは労働者退職金を含めて、あるいは予告手当を含めて、もらえないのじゃなかろうかと私は考える。そこでわれわれは、これは金融機関債権確保だ、こう言っておるのですが、その点はどういうようになっておりますか。
  18. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 この点も再々お答えした次第でございますが、要するに労働者側もある程度納得いたしませんければ買い上げはいたさない、ということを再々申し上げておる次第であります。従って結局いろいろな条件がそろいませんと買い上げをいたしませんので、銀行の方もいたずらに抵当権に固執しておっては、事業団に買ってもらえない。もし事業団に買ってもらわないで、抵当権をたてにとって債権者が回収しようと思えば、抵当権に基いて公売しなければならぬ。ところが事業団に買ってもらいたいような炭鉱については、もし公売をいたしますならば、おそらく事業団買い上げ価格よりもはるかに安い価格でなければ処分ができない、あるいは全然買手がつかないかもしれないということになりますれば、抵当権者の方としても、事業団に買ってもらうについて、ある程度労働者側なりあるいは他の債権者の側なり、そういうふうなものにある程度の譲歩をしなければ問題が片づかないのでありますから、結局関係者がみなお互いに譲歩して納得しない限り、買い上げができないということになりますので、金融機関だけの意思買い上げがきまるというようなことはないと思います。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 初めの方の話は、結局あなたの方の考え方が間違っておると思うのです。私は、本人は売りたいとて言っていないのです。本人はそう売りたくなくても、金融機関の方が売れ売れと言うだろう、ということは、売ったその代金は、抵当権を持っております金融機関が優先的に支払いを受ける権利を持っておりますから、金融機関だけには、まるまるその買い上げ代金がいくから、金融機関はとにかく売ることは賛成です。金融機関が反対するなどということはどうも考えられない。ところが問題はそうじゃなくて、本人はそれほど考えなくても、また売ろうとしなくても、また労使は反対であるけれども金融機関の方で債権確保をするために売れ、あるいは買い上げてくれ、こういうことを主張するだろう、こういうように言っておるんです。その場合にあなたの方の話は、一般債権者との話し合いがなくてはと言われますが、金融機関の方は権利を持っておる。ところが一般債権者は何もそれに対して権利を持たないし、労働者としても——事実問題として労働者は抵抗いたしますけれども、それほど現在の市民法確保された権利はない。そういう状態であります。ですから私は、これは金融機関意思いかんによって決定するじゃないか、その債権確保はほとんど金融機関のみに行われる、かように考えるわけです。大臣数字はわからないにしても、今までの論議はかなりわかったと思うのですが、結局金融機関だけがもうける法案だとわれわれは考えておるのですがどうですか、間違いないでしょう。
  20. 石橋湛山

    石橋国務大臣 いや、そういうのは表向きから言えば、あなたのような議論が成り立つでしょうが、実際においては、金融機関だってそう我を通すわけにいかぬと思うのです。それから事業団側が買うのも、経営が今後続けてできるような、ある資格にはまったものは買わないのですから、もし金融機関なり何なりが売りたいと言っても、今後続けて経営ができ、事業そのものが成り立つものであるならば、事業団は必ずしも買わないのでありますから、単に金融機関が売れ売れと言ったから、それじゃ売らなければならぬということにはならないと思うのです。それは抵当権とか権利とかやかましいことを言えば、抵当権者が一番優先するかもしれませんが、実際問題としてはそういうことは起り得ないと思います。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも大臣局長実際問題を把握されていないと思うのです。実際炭鉱が倒れていく状態は、銀行があすから金をとめますと言うから倒れていくのです。そうしてある銀行は、これは炭鉱倒しの銀行だと通産省の現地の役人が憤激するくらい銀行はきびしいのです。ですから成り立っていくような炭鉱は何も業者も売ろうとしませんし、もちろん金融機関だって売りなさいということは言いません。今成り立っていかないけれども、ここでがまんすればやっていけるという場合において問題が起るのです。現在スムーズに黒字が出ているときに何も金融機関だって売れということは言いませんし、もちろん事業団も買いません。問題は、労使が歯を食いしばって何とかここで事業を継続していきたい、ところが金融機関の方はどうも今のうちに債権の取り立てをしておかなければ危ない、将来この時限立法がなくなると大へんだ、こういうような場合に問題が起る。そういう場合に、あなたの方は、法律上の表向きはそれは抵当権の問題があるし、金融機関が強いだろうが、実際はそういうことはないだろうと言われますが、実際上少しも権利はないのだし、金融機関は要するにベースに乗らない場合には、相手は商売ですから冷たいのです。そういうことを十分御存じの大臣がここに人情論を出されるとはどうもおかしいのですが、明確に答弁を願いたい。この席でそういう一般債権者並びに労働者同意がなければ買い上げ対象にしない、こういうことをはっきり確約してもらいたいと思います。
  22. 石橋湛山

    石橋国務大臣 歯を食いしばっても経営ができるという場合はある基準に合う炭鉱であります。けれども基準に合わないものを経営者がただ一人でもってがんばってやるということも無理がありますから、それは何も金融機関に頭を下げるということだけの意味でもない、実際の炭鉱が経営できるかできないかという実情の判断によるものと思います。われわれの方では無理に合理化の基準に合うものを買い上げるなんということは考えてもおらぬし、また買い上げてはならないのですから、幾ら銀行が言ってもそういう経営ができそうなものは買い上げ対象にならない、ただしあしたから銀行金融をとめる、そしてそのために倒れるということはあり得るかもしれません。それは今までもあるのでありまして、そういう場合にほんとうに炭鉱を助け得るものならば、これは別途助ける道があるだろう。ですからだれだれの承諾がなければ買わないとかということをそうはっきり法律に書かぬでもよろしい。むろん局長からしばしば申しました通り、銀行だけの要求によって買い上げるというようなことはありません。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、労働者並びに一般債権者同意があったかなかったかということを事業団は十分勘案して、そしてそれによって買い上げる、もしなかったら買い上げない、こういうことに了承していいですか。
  24. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私はそれはよろしいと思います。ただある一部の債権者だけの要求によって無理な買い上げをしようということは絶対に考えておりません。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いよいよ買い上げ代金を支払われる場合ですが、先ほど鉱業権、それから鉱業施設、こういうように分けられてお話がありましたが、私はどうも鉱業施設とか鉱業権を評価して代金をきめるという考え方に納得いかないものがある。それは普通の売買の場合でありますとその通りでございますけれども、これはいわば政府の法的処置によってこれを消滅しようという場合であります。その場合に大体買い上げられるような炭鉱の鉱業権を評価するということ自体がおかしい。大体鉱業権というのは政府認可することによって与えられた価値です。本来国の所有物です。これをたとえばAならAに先願に基いて政府が与えた価値を、政府買い上げるなんというばかな話はない。しかもその買い上げられる炭鉱というのは大体現在の経済情勢においては価値のないものである、これを買い上げようとしているのですから、どうも私は納得がいかない。これが価値が幾らであるとか埋蔵量が幾らであるといいましても、本来国の所有物であったものを先願権によって価値を与えた、その価値を今度は政府が金を出して買い上げてやろう、しかもその買い上げるものは現在の経済情勢においては価値がほとんどないものである。これを評価の標準にするということはきわめておかしい。さらに鉱業施設にいたしましても、莫大な投資をしても炭鉱の場合は工場のモーターなんかと違うのですから、陸に上げますとあまり役に立たない。ですから鉱業施設の部分を評価に入れるということはむしろおかしい。私はいやしくも買い上げ対象の基準をきめる場合には、その炭鉱がやめるについての善後処理に要する経費を評価の基準にすべきであると思うが、その点大臣はどういうふうにお考えですか、これをお聞かせ願いたい。
  26. 石橋湛山

    石橋国務大臣 お話のように、私は専門家でありませんから、こまかいことはわかりませんが、評価というものは非常に困難でありましょうけれども、そうかといってお話のように善後処理に必要な資金を全部出すというようなこともできないことでありますから、やはり買い上げるとすれば、そこに具体的に現われているところの権利なり、あるいは実際の資産なりを評価するという方法によってやることが至当だと思うのです。とにかく国家がそれだけの直接、間接の援助をしてやるのですから、そうむやみに金を出すことはできないと思います。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私はむやみに金を出せと言うのではなくて、有効に金を出しなさいと言っている。なぜかといいますと、問題は租鉱権にある。租鉱権は今度は買い上げ対象にならない。これは先ほどからもいろいろ論議があったと思うのですが、きわめて不合理である。一応政府の味方をして考えても、この点はきわめて不合理である。なぜかというと、今申しましたようなところに評価の標準を置かれているからであります。標準がないと、こう言われますけれども、なるほど善後処理に要する経費を一々算定しては、標準はないでしょう。しかし過去の出炭量というものは、私はあらゆる要素をこれに加味し、いろいろな要素を含んだものが出炭量において表現されていると思う。ですから私はこれを、六カ月で悪ければ一年の平均でもいいですが、その過去の出炭成績を考えておやりになり、到れる寸前はアブノーマルの状態ですから、これはそれから除外されることもけっこうですけれども、そういうように考えられなければならぬ。善後処理の経費を一々算定することは、私は基準なくしては困難だろうと思いますが、出炭量というのはあらゆる要素をここに表現したものであろう、かように考えるわけです。  そこで続いて局長にお尋ねしますが、今申しましたような観点からすれば、私は租鉱権というものについても、買い上げという言葉は悪いかもしれませんが、とにかく善後処理に要する経費を出すべきである、こういうように考えるわけです。あなたの方では租鉱権は本来鉱業法上譲渡の対象にならない、だから譲渡の対象にならないものを買い上げるわけにはいかないし、また租鉱権を一応買い上げることができないにしても、何らかの形で消滅したとして、今後鉱業権者が租鉱権を許すという場合に困るじゃないか、こういう話がありますけれども、私はそれは坑口開設の制限の規定もあるのだし、何らかの方法で租鉱権者が単独に鉱業権者意思いかんにかかわらずこれを休止した場合に補償の代金をもらうことができる、こういう方法を講ずべきであると考えるが、局長は名案はないか、一つお尋ねいたしたい。
  28. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 今多賀谷委員から租鉱権を買い上げることが不可能な理由を申し述べられたのでございますが、その通りでございまして、どうも法律技術的には租鉱権自体を買い上げるということは不可能でございます。ただ鉱業権とともに買い上げる場合には、これはできることになるわけでありまして、その場合には当然租鉱権者の施設買い上げるわけであります。そしてこの鉱区はもちろん分割ができるわけでありますから、租鉱区の部分だけを分割いたしましてそれと一緒に買い上げてもらえばよろしい、こういうことになるわけであります。その辺の点につきましては、租鉱権者が買い上げを希望するような場合、鉱業権者としても、それを租鉱に出しておいても、実は租鉱料も十分とれない、また租鉱に出して採算が合わないぐらいならば、もちろん自己経営もできないことに当然なる。通常の場合にみずから経営しても経営的に不利でありますから、租鉱に出すのでありまして、従って租鉱権者が経営できないような場合には、親権者がそれを引き取って経営するのはなお困難であるというのが通常の場合であります。従ってその場合には当然親権者も鉱業権を譲渡することに承諾するのではないか、その辺のあっせんについては通産局なり事業団が十分あっせんに乗り出すわけでありますから、実際問題としては、相当租鉱権者も救われるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実際問題として救われないからお尋ねをしておるのです。局長は最近福岡県田川郡の籾井炭鉱に起った事件を、陳情があったから御存じであろうと思いますが、要するに鉱業権者が租鉱権者を圧迫して現在ああいう状態になっておる。そこで租鉱権者であった債権者が詰めかけたところが、鉱業権者が暴力団を使って追っ払ったという話であります。そういう話も聞かれたと思うのですが、現実の問題はそういう状態になっておる。われわれが福岡の公聴会において租鉱権者から陳情を受けて、切々たる陳情があったのをわれわれは聞いたわけですが、全く実際問題として大へんな紛争か起ると思う。そんなに簡単ではない。ことに筑豊炭田のような租鉱権のまところ、ことにまた封建性の非常に強いところ、経営者といえども近代的な感覚を持っていない経営者がおるのです。租鉱権者もそうですし、また鉱業権者もそういう人が多い。ですからこういうところに私はやはり法律の規制をしておかなければならない、かように考えるのであります。そこで、ここは立法府ですから、鉱業法はこうだと言われましても、鉱業法を一部改正するということを附則につけることもできるのです。ですからあなたの方で鉱業法によって租鉱権は譲渡できないのだ、こう言われれば、この合理化法案がせっかくできるのですから、この合理化法案の附則の一部に、この法律の限時立法の間これを買い上げることができるとか、こういうことだってできるのです。そういう措置をなぜとらなかったか。役所では、聞くところによりますと、何回も研究されたそうですが、これほどの画期的といわれるような法律案をあなた方が出されるならば、どうして五年なら五年停止することができるというふうにお書きにならなかったか、この点をお聞かせ願いたい。
  30. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 先ほど多賀谷委員は、鉱業権というものは政府が設定したものであるからというふうなお話がありましたが、これは確かに政府の設定行為によって発生する権利でございますが、一旦発生いたしますと、これは通常の財産権と同一の私権でございまして、その既得権を何らかの個別の理由で奪う場合には、必ず完全なる補償をしなければならぬというのが憲法の規定でございます。従って、もし租鉱権を買収いたしましてその後に新規に租鉱権の発生を禁止するということにいたしますと、鉱業権の存続する限りそれについて完全なる補償をしなければならぬ、こういうことに理屈の上からいえばなるわけでございます。そういたしますと、長期にわたって完全なる補償をするくらいならば、鉱業権を買い上げた方が適当ではないかということになりまして、鉱業権とともに租鉱権者の施設買い上げる、こういうことにいたしたわけであります。ただ先ほどるる御説明いたしましたように、租鉱権者が租鉱を廃止したいというふうな場合には、もちろん鉱業権者としても、それを経営できないような場合でありますから、実際上はその鉱業権者同意をとることはそんなに困難ではない。租鉱権として経営できなければ当然租鉱料も入らない。租鉱料も入らないようなものを相当の値段で事業団から買い上げてもらうのでありますから、実際問題として経済的にその方が有利でありますから、話がつくのではないかというふうにわれわれは考えて、こういうふうにいたしたわけであります。なお先ほど籾井炭鉱の例がございましたが、これは非常に特殊なケースで、われわれも十分調査しておりますが、これをもって一般的なあり方というふうに論ずることは困難ではないかと考えております。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 先ほど憲法の論議が出ましたが、あなたの方では権利を制限することはいかぬという話ですが、坑口の再開の許可だってそうでしょう。再開の制限だって、あなたの方の議論からいえば、坑口再開の自由についてはこの法律の間は、これだけ大きな条件を付すのです。それではその人間についてはあなたの方では適正な賠償をされますか。あなたの方でそういう論議をもってこられるなら、なぜ坑口再開の制限をおやりになるのか。これだって鉱業法上にちゃんと明記した権利である。それを一方においては、坑口再開の場合にはその憲法の問題をうたわれぬでおいて、租鉱権の今後の発生の制限についていうならば、それは憲法の問題がある、補償しなければならぬ——補償されてもけっこうなんですが、坑口再開の制限をやるくらいなら、やはり租鉱についても考慮があってしかるべきである、かように考えるわけです。あなたの方でも権利の制限をこの法律でしておるじゃないですか。
  32. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは憲法の補償の規定はなかなか議論があるところでございまして、私がその有権的な解釈を申し上げる資格はもちろんございません。しかし一般的に論じられておりますところは、一定の基準によりまして画一的に公益上の理由に基いて制限を加える場合には補償しなくてもよろしい、それから個々処分によって制限を加える場合には補償しなければならぬというふうに考えられておるようであります。坑口開設の制限は一般的にかけられる制限でありまして、許可される場合も一定の基準に基いたものによって許可され、禁止される場合も一定の基準によってそれに該当するものは全部禁止されるわけです。ところで租鉱権の設定の禁止の場合には、たまたま租鉱権者がその希望で買った場合には、そのあとのものについて租鉱権の設定を禁止するということでございますから、これは国が公益上の必要に基いて定めた一定の基準によって設定を禁止せられるというふうなものではない、こういうふうにわれわれは考えたのでありまして、この解釈はこれが絶対だというふうに申し上げるわけではございませんが、われわれの考えた理由を今のように申し上げたのであります。  実際上の理由といたしましては、先ほど再々申し上げましたように何とか実際問題としては大半の問題が片づくのじゃないか、その点について解決がつくように政府としても十分努力をいたしますということを申し上げたわけです。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この租鉱権の問題はかなり筑豊炭田では大きい問題です。これは筑豊だけでなくて全国そうでしょうが、この租鉱権を買い上げ対象にしていない。もちろん権利としては、今話がありましたがなかなか困難にしても、これは何らかせっかく、あなたの方は限時立法を作られておる、その立法期間中は何とかそれが可能であるような——租鉱権の放棄をやって、そうして鉱業権者が租鉱権の発生を今後しない、あるいは発生しても坑口再開の許可はしない、こういうことになれば私は可能であると考える。せっかくこういう法律を作りながら、ほんとうに買い上げてもらいたいという希望を持っておるのはむしろ租鉱権者です。普通の鉱業権者ですらやっていけない時代に租鉱料を払ってどうしてやっていけますか。こういうような連中がむしろ私はあなたの方で出された買い上げ対象として浮び出てくるものだろうと思う。そうするとこれは対象にしないというのでは、どうも私はこの法律は、あなたの方の側に立って見ても片手落ちである、かように考えるのです。これは一つ政治力で何とかあなたの方で解決してもらいたいと思いますが、一つ御答弁をお願いしたい。
  34. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは技術的の問題でありますから十分研究しなければわかりませんが、今私から申せば今石炭局長から申し上げた答弁を繰り返す以外にはないと思います。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大体法案の多いせいか大臣はどうも勉強が足らぬように思いますね。これはやはり現地では重大な問題なのですよ。なるほど日本の官僚は非常に優秀なそうですけれども、役人の頭というのは法律範囲以外は出ないようです。しかも今までの法律はなるべく改正しないでいこうというような腹です。ですからあなたの方でそこがうまくいかなければ鉱業法なら鉱業法の一部改正をするというようにされなければ、この法律は全くあなたの方の側の希望が満たされぬと思う。実際困っておる。あなたの言われる放って置けばつぶれるじゃないかというのは租鉱権者です。租鉱権者が救われぬというようなばかな法律がありますか。これは全くおかしいのですが、再度御答弁を願いたい。
  36. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私は同じことを繰り返すようになりますが、この法律によっても租鉱権者が救われないことはないと思います。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうしても救われないのですがね。どうしてですか。大臣はどういう認識でこれは救われないことはないとおっしゃるのですか。実際問題としてこれは救われませんよ。
  38. 石橋湛山

    石橋国務大臣 租鉱権者の持っている施設も買うのでありますが、ただ租鉱権そのものは今局長もるる説明したような事情がありますから、これは鉱業権とともにでなければ困るというのでありまして、租鉱権者の経営が困難な場合に買い上げ対象にはなるのでありますから、租鉱権者を全然無視しているわけではないのであります。
  39. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 今大臣が御説明せられましたが、私繰り返し答弁いたしましたように、実際問題としては大部分解決されるのじゃないかということを申し上げたいのであります。
  40. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実際問題については大部分と言われる。大部分の範囲にもよるのでしょうが、なるほど大手筋炭鉱にあるところの租鉱権というものは、確かに鉱業権者も許すだろう。ところが必ずしも大手筋炭鉱でない炭鉱にあるところの租鉱権というものは、私は非常に問題を起す、かように考えるわけです。斤先料が入ってこないのですから承諾しませんよ。斤先料という制度があるのですから、あなたの方でそれについて考慮があれば、租鉱権を何とかして——租鉱権とはいいませんが、施設でも買い上げ対象にし、その代金の一部を鉱業権者に払うというように、内部的に業者の間でするのではなくて、あなたの方で法律に書かれるならばできると思うのですが、どうですか。
  41. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 同じことを何べんも御説明いたすようでございますが、要するに租鉱権者の施設買い上げます。今申しましたように鉱業権者同意は、大体租鉱権者が売りたいような場合は実際問題として租鉱料も払えないのでありますから、租鉱料の払えないような場合は鉱業権者の方も了解して、その鉱区を分割して譲渡することを認めるだろう。実際問題としては租鉱権者の施設買い上げることはできるはずだ。租鉱権自体としては、鉱業権と違いまして、最長五年の期限しかございませんので、そう大きな資格があるものではございませんから、結局租鉱権者の財産的な価値のあるものを買おうといたしますれば、施設買い上げれば大部分カバーできるわけであります。そういう形で買い上げたいということを申し上げたのであります。
  42. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 関連して。大臣局長買い上げる、買い上げると言うが、この法律の三十一条にちゃんと書いてあるじゃありませんか。「事業団が買収することができる採掘権は、次の各号に適合するものでなければならない。」といううちの一に、「その採掘権の上に租鉱権が設定されていないこと。」と書いてあるじゃありませんか。租鉱権の設定されたるものは買い取らぬと書いてあるじゃありませんか。これを一体どういうふうに解釈されますか。
  43. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 言葉を返すのではございませんが、次の第三十二条第二項をごらん願いますれば「事業団が買収することができる租鉱権者の鉱業施設は、」と、ちゃんと鉱業施設を買収するということが規定されております。買収はいたします。
  44. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 こういうあいまいなことを書いてあると、解釈によってどうにでもとれることになるだろう。さっきから坑外、いわゆる外の設備だけは買うということは言われたようだが、租鉱権者がやっている投資のうちで、坑外に対するものは百分の一にも該当しない。百分の九十九までは坑内に資金が投入されていることは、石炭局長が百も御承知でしょう。百のうち九十九まで坑内施設に投入されて、坑外は百分の一にも該当しない。それこそ九牛の一毛にも該当しないものだけを買い取るんだ。その百のうちの九十九の坑内施設に投資したものは買い取らないんだということですね。それさえも法律の中にはっきりしてないじゃないですか。なぜこういうことをはっきりしないのか。それから租鉱権の坑内に投入したものを買い取らないという理由は、どこにあるのですか。
  45. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは鉱業権の場合にも租鉱権の場合にも、坑内の稼働施設は買い取ります。はっきり申し上げますが、買い取るつもりでございます。それから租鉱権者の施設を買うということは、今申しましたように三十二条に載せてあるのであります。ただし鉱業権を買う場合には、その上に租鉱権が設定されたままでは買いません。こういうことを三十一条は書いてあるのでございまして、要するにその部分は分割しまして、もし租鉱区を設定している租鉱権者が同時に事業を廃止することを承諾しなければ、その部分は分割して、残りの分を買う。租鉱権者が承諾しまして一緒に施設を売る場合には、三十一条と三十二条で鉱業権者の分と租鉱権者の分と両方買う、こういうことになるわけであります。
  46. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 あなたの説明を聞いていると、だんだん疑惑が深まって参ります。租鉱権があるものは分割をしなければ買わないというのでしょう。あなたが分割という場合は、租鉱権の独立鉱区というものは五万坪以上でなければならない。租鉱権がもし五万坪以下であった場合は、独立鉱区に分割した経営形態は許可されぬでしょう。許可しますか。五万坪以下の租鉱権が分割をされて、それを独立鉱区、独立経営として分割するとおっしゃるが、それを許可しますか。鉱業法との関係はどうなりますか。それが一つ。  さらに坑内施設も投資分も買い取るというのなら、何でこの中に鉱業権と同等に租鉱権の坑内施設も買い取るということを明文化しませんか。解釈上で苦しくなってくると、そうするつもりであるとか、そう解釈するとか言うけれども法律というものは不動のものである。だから租鉱権の坑内のを買い取るなら、鉱業権と同一に買い取るということを明確にする。買い取らないなら、買い取らないことにする。分割するというのなら、独立鉱区で五万坪以下になっているものも分割して独立経営を許すなら許すということをなぜはっきりしませんか。そこをもっとはっきりして下さい。
  47. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 坑内施設の解釈につきましては、鉱業権者も租鉱権者も全然変りはございません。同一の基準で買い取りをいたします。従って坑内施設はもちろん鉱業権者の分も買い取りますし、租鉱権者の分も買い取りをいたします。それから今お話の五万坪の問題につきましては、これは鉱業法の規定で五万坪以下の分割は禁止しておりますが、その趣旨はどういうことかと申しますと、五万坪以下では独立した事業の経営ができないほどに小規模であるからその分割を認めないという趣旨であります。従って独立の経営のできないような単位に分割してそれを買い取るということは、ちょっと理屈がおかしいので、そのままにしてあるわけであります。
  48. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣はそこでお聞きになっておるが、石炭局長の答弁はまことにしどろもどろになっておる。だから租鉱権者の坑内投資の分も買い取るなら、鉱業権者の坑内の分と租鉱権者の坑内の分と同等に買い取るものなら買い取ると、はっきりしたらいいじゃありませんか。買い取るならなぜここにわざわざ三十一条の一号に買い取る条件として、採掘権の上に租鉱権が設定されていてはならないということが書いてあるのですか。買い取るなら三十一条は要らぬはずです。鉱業権も租鉱権も同等に買い取ると、こうはっきり書いたらいいでしょう。  そこでさらに先ほど石炭局長の言われたように、もし租鉱権者が同意しないという場合に、それは独立に分割してやるとおっしゃるなら、鉱業権の五万坪以下は独立経営、独立鉱区を許さないというなら、分割する場合は五万坪以下でも独立経営、独立鉱区として許すということをはっきりしませんか、もっと法文を明確にしなさい。大臣どうお考えでありますか。私の言うことが正しいでしょう。
  49. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 この法律の用語の定義にありますように、鉱業施設範囲につきましては命令をもって定めるということになっておりまして、これは省令の規定事項でございます。ただ現在われわれは坑道その他の施設も買いたい、こういうふうに考えておる次第でございます。そうして鉱業権者と租鉱権者との鉱業施設について、その範囲が違うものでないことは、同一の字句が使ってあることからもおわかりのことと思います。それから租鉱権が設定されたものでないことというのは、要するに租鉱権者と鉱業権者とは独立の経営者でございますから、従って租鉱権のついたまま買うということは、結局租鉱権者の承諾なしに租鉱権の部分まで鉱区を買ってしまうということになるので、それはできない、そういうことはいたしません。従って租鉱権が設定されておる場合には、租鉱権者の同意を得て租鉱区の分も一緒に買ってもらうか、そうでなければ租鉱権者の鉱区とその分を分割して、その分は鉱業権者のものにしてしまいまして、残りの鉱区と施設を買ってもらうか、そういうふうにしなければいけないという趣旨を書いたのでありますが、この文章の書き方が非常につたなかったかどうかということにつきましては、私はこれが最上の文章であるとは決して申し上げておりません。
  50. 八木昇

    八木(昇)委員 関連して……。これは文章の書き方の巧拙の問題でなくて、租鉱権と鉱業権を分離して、片方は買い上げ対象にするが片方はしない、こういうところに非常に筋の通らない状態が出てきておる、こういうふうに私どもは考えておるわけです。そこで最近の例を見ましても、佐賀県あたりは非常に中小炭鉱が多かったためにだいぶつぶれたわけです。御承知かと思いますが、向山炭鉱、新屋敷炭鉱あるいは岩屋炭鉱、こういうふうなところはいずれも先ほど多賀谷委員の質問もありました通りに、金融機関がもう金融をしない。そこで非常に有望な山であるにかかわらず鉱業権者は投げ出してしまう。そうして別に金を持った人が現われて租鉱権を取得して、半年前くらいから坑内労働者を従来の半数くらいに減らし、営々辛苦して労使一体になってやっておるわけです。こういうのが気息えんえんたる炭鉱の実態です。こうなってくると、鉱業権者の方はうまい法律ができた、売りたい。しかし、租鉱権者の方は今始めたばかりだ、こういうふうなことで事実上非常な紛争が起きるわけです。あるいは場合によってはこういうのが裁判に持ち込まれるとか、いろいろなことがあるだろう。こういう実態であるからしてわれわれとしては問題にしておるわけであります。大体今のように租鉱権と鉱業権というものを区分したりして非常に筋の通らぬ措置をせられる根本的な理由をもう少し明確に御説明願いたい。
  51. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 私の説明の仕方が不十分でどうもおわかりが得られないかとも思いますが、今お話のようなケースがまさに租鉱権が設定されたままでは買えないという理由にした例でございまして、今のお話では、鉱業権者は売りたいと思うが、租鉱権者は事業を継続したい、そういう場合に租鉱権が設定されたまま鉱業権を売り渡すということになりますと、事業団が鉱業権を買い取りまして、しかも租鉱権者はその上に残るということになります。そうすれば事業団としては本来過剰能力を縮減するために買い取りをやるのでありますのにもかかわらず、事業団が買い取った鉱区の上において事業が継続されるということは工合が悪いので、従って租鉱権が消滅した後でなければ買わないということにいたしたのであります。それから租鉱権は買わないといたしましても、租鉱権というものが鉱業法上の規定では相続その他の一般承継の対象になりませんので、従って法律的に譲渡の対象になりませんから買えないという点と、もう一つは鉱業権者に対する補償の関係が非常にめんどうな関係になるから租鉱権という権利は買い取りませんが、しかし租鉱権者の財産の大部分である施設は実際に買う、こういうことにいたしたわけであります。
  52. 田中角榮

    田中委員長 ちょっと速記中止。   〔速記中止
  53. 田中角榮

    田中委員長 速記開始。五分間休憩いたします。    午前十一時三十五分休憩      ————◇—————    午前十一時四十九分開議
  54. 田中角榮

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際石橋通商産業大臣より発言の要求がありますのでこれを許します。石橋通商産業大臣
  55. 石橋湛山

    石橋国務大臣 先ほどから御意見のありました租鉱権の問題につきましては、この法文に明らかのように租鉱権者の施設はこれを買い上げるということが明白になっております。これは決して地上の施設だけではございません。鉱業施設全部でございますから、坑内においても同様でございます。ただし今の政府側の法律の解釈によりますと、租鉱権そのものは完全な財産と認められないから、これは買い上げ対象にならないということだけでございます。しかしながら実際の処理としてはどうなるかというと、これは先ほどから繰り返して申しますように、鉱業権者あるいは債権者、労務者その他の十分な了承のもとにやらなければならぬのでありますから、実際の処理としては租鉱権というものもわれわれは一つの財産として認めて、租鉱権者にも、その場合々々でありますが、相当の補償があり得るようにいたしたい、かように考えておりますからどうぞ御了承願います。
  56. 八木昇

    八木(昇)委員 先ほど私ちょっと質問をいたしましたが、そのちょうど逆の事例もたくさんあるわけであります。鉱業権を持っておる人は、やはり山をやめたくない。そして売り渡しもしたくない。けれども租鉱権者がずっと経営をしてきたが、どうにもこうにもならぬ。だから売り渡すよりほかにしょうがないという場合があり得るわけです。そういう場合に、先ほどの御説明だと、その租鉱権者が持っておる坑外の設備と坑内の設備だけは買い上げる。これは鉱業権者の承認を受けても受けていなくても買える、どうもこういうことのようですが、そうであるかどうかをまず第一。その次に、そうである場合、では働いておる労働者はどうなるか。働いておる労働者未払い賃金あるいはまた一カ月の解雇予告手当も、単に設備買い上げの金だけではどうにもならないのです。その辺のところはどうなんですか、お伺いをいたします。
  57. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 お話のようなケースも理屈の上からは考えられますので、そういう場合には通産局長その他地元の人間があっせん役をいたしまして、鉱業権者と十分話がつくようにいたしたいと考えておるわけであります。それから租鉱権者の鉱業施設は、今お話がありましたように、地上施設あるいは坑内施設買い上げをいたしますが、その場合には、その租鉱権の稼行しておる鉱区とともにでなければ買い取らないということになるわけです。
  58. 南好雄

    ○南委員 関連して。今御質問のありました租鉱権でありますが、租鉱権者が稼行することが不可能な状態になってきた、それで労働賃金なりその他の不払いが起きたというような場合に、その労働賃金の不払いとかそういうものは租鉱権者に対する債権なのか、それとも採掘権者に対する債権なのか、そこをはっきりしていただければ、私らその問題についても解釈ができると思いますが、夜逃げした場合にどうするかという問題もありますし、そういうような租鉱権が政府の買収の権利としての対象になるかならぬかという問題がございます。要はそういう場合の債権債務関係は採掘権者にあるのか、租鉱権者にあるのか、これは政府委員でけっこうですから御返事願います。
  59. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 租鉱権者が雇用しております労務者に対する未払いその他の債務はもちろん当然租鉱権者の債務でございます。従って租鉱権者が雇用しております労務者に対しましては、租鉱権者の施設買い上げます場合には、当然離職金その他も鉱業権者と同様に支払うつもりであります。
  60. 南好雄

    ○南委員 施設買い上げに要するいわゆる買い上げ代金、そういうようなものは民法の規定で当然労働賃金に代位弁済できるのですか。
  61. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 未払い賃金その他は三十四条の規定によりまして租鉱権者の場合も代位弁済はいたします。
  62. 八木昇

    八木(昇)委員 いろいろこの法案の重要な諸点について疑義があり、打ち合せの関係もありますから、午前中はこの程度をもって休憩にしていただきたい。
  63. 田中角榮

    田中委員長 ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止
  64. 田中角榮

    田中委員長 速記を始めて。二時十分まで暫時休憩いたします。    午後零時一分休憩      ————◇—————    午後二時三十七分開議
  65. 田中角榮

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際小委員会における参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  日本経済の総合的施策並びに国土総合開発に関する小委員長より、国土総合開発並びに電源開発に関する調査のため、来る二十六日小委員会において、西吉野発電所に関する問題及び愛知用水計画に関する問題について、参考人として関西電力副社長森壽五郎君より参考意見を聴取いたしたいとの申し出があります。小委員長の申し出の通り参考人の出頭を求めるに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 田中角榮

    田中委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  ついで石炭鉱業合理化臨時措置法案議題となし、質疑を続行いたします。多賀谷真稔君。
  67. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 先ほどの租鉱権の問題ですが、この問題につきまして、政府の方では運営上しかるべくやるということですけれども、どうしてもふに落ちないのは、租鉱権は大体今九州あたりでは一万坪から二万坪です。ところが鉱区を分譲するといたしましても、鉱区というのは最低五万坪なければならない。そうするとかりに一万坪か二万坪の租鉱権のために鉱業権者が三万坪から四万坪の他の鉱区を譲ってやる、あるいは増区してやる、こういうことは実際問題としては非常にむずかしいと私は考えるわけです。そこで政府は、この五万坪という最小限度の制約があるが一体これについてはどういうようにお考えであるか、これをお聞かせ願いたい。
  68. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 鉱業法の五万坪の規定につきましては——正確には五万坪ではございませんが、大体五万坪というこの規定につきましては、それが通常の場合合理的な開発の最小限度であるという考え方でこの区域の制限をいたしておる次第でございます。新規に事業団買い上げいたしますのは、要するに将来生産能力として残るものを買うという建前でございますので、そういう見地からこの鉱区の制限をこの際撤廃することは適当ではないんじゃないかというふうに考えた次第でございます。ただお話のように、その租鉱権の実際の鉱区だけでなしに、そのまわりの鉱区も含めてとありますれば、これは買い上げ対象になるわけでございます。通常租鉱権は、御存じのように、五カ年間が最長期限でありまして、実際上の運営は二、三年というふうな契約がむしろ多いようでございますが、それは一カ所を掘りますとまた次へ移動するというふうな関係で、さしあたりの契約は面積は狭いという場合もあるわけでございますが、将来稼行の予定地、あるいはすでに稼行して終掘になった土地も全部含めますれば五万坪になる場合があると十分考えられますので、運用上はできるだけこれが障害にならないように運用いたしたい、このように考えております。
  69. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 租鉱権の問題ばかりをやっておりましてもらちがあかないのですが、実際北海道なら十五ヘクタールくらいある租鉱権も多いと思いますが、九州あたりは一万坪から二万坪の租鉱権がほとんどであります。五万坪の鉱区の最小の面積を有する租鉱権というのは非常に少ない。その租鉱権者のために、鉱業権者がわざわざ増鉱してつけてやって買い上げ対象にさすというような親切な鉱業権者はほとんどおりません。ですから私は、事実あなたの方で運営でやると言われましても、これはきわめて困難な問題を生ずると思う。さらに省令とかなんとかでそれについては書くと言われましても、いやしくも権利関係法律に明記せずして、省令や政令にゆだねるわけにはいかない。ですから私はどうしても納得できないと思うのであります。しかしこの問題はあとにほかの委員もおられますし、また時間がありましたら、私は再度質問いたしたいと思いますので先に進みたいと思います。  次に鉱害賠償の問題でございますが、現在この法律にも鉱害賠償規定はかなり詳細に書いてあるようであります。しかし市町村の理事者の方はこの鉱害賠償について非常な心配をなさっておる。また現地におきましても非常な心配をしておるわけであります。そこで私は、この賠償対象になりました鉱害賠償を伴う鉱業権者につきましては、これは事業団が全部肩がわりをして、そうして鉱害賠償の責めに任ずる、こういった方が簡明であり、また被害者に安心を与えるのではなかろうかと思うのですが、その点について局長はどういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  70. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これも再々御説明をいたしましたように、従来すでに発生をいたしておりまして、復旧に適する、あるいは処理に適するような状態になっておるものが処理せられておらないというふうなものにつきましては、これは事業団が引き継ぎましても問題が解決しないということになりますので、これはこの事業団買い上げ、鉱業権が移動する際に、できるだけ整備しておいた方かよろしい、こういうふうに考えまして、法律の中にもわざわざ裁定の規定を設けまして、この際懸案になっておる鉱害は解決して事業団が引き継ぐというふうに業務運営上やりたいと考えておる次第であります。ただし法律上の建前から申しますれば、すでに発生しております鉱害につきましては、鉱害発生当時の鉱業権者とそれから現在の鉱業権者とが連帯の責任を持っておるわけでございますから、もし解決がつかないままに買い上げをいたします場合には、これは当然事業団も責任を負わなければならないわけであります。ただそういうやり方をいたしますと、事業団は無制限に存続する法人ではございませんので、あとで非常に紛糾が生じますから、すでに解決に適しているような状態になっているものにはできるだけ裁定その他の制度を活用いたしまして、解決をしてから引き継ぐようにいたしたい、運用上はかように考えている次第であります。
  71. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、法三十五条の鉱害賠償の積立金というのも、今後発生するであろう鉱害だけでなくて、すでに発生している、しかしまだ未解決の部分について賠償を将来しなければならぬという分についてもこれが充当されるわけでございますか、お聞かせ願いたい。
  72. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 お話がございましたように、この三十五条の規定は、すでに鉱害が発生はしているがまだ安定しておらない、あるいは解決の時期に達しておらないというものも含めて考えておるわけでございます。しかしすでに解決の熟しておりますものでも、何らかの事由で裁定に持っていけなくて事業団が引き継がなければならないようなものが起りました場合には、当然この規定賠償の財源に充てるために積み立てをするということになるのであります。
  73. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、事業団としては、未解決の場合、どうしても解決しなかった場合には最終的には引き継ぐ、もっとも連帯責任ですから求償の問題はあるでしょうけれども、一応事業団としても連帯責任のその責任を負うというように解してよろしいでしょうか。それともこの法律によってそういう鉱業法上の賠償責任は一応免責される、こういうふうに解するのですか。やはり鉱業法上の連帯責任をそのまま受け継ぐというふうに解するのですか。その点間違いなく、はっきり御答弁願いたい。
  74. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 事業団が鉱業法上の鉱業権者として十分な権利義務を有することになっております。事業者としての義務と事業団の本来の性格と矛盾する面以外は完全なる鉱業権者でございますので、おっしゃる通り被害者に対しましては責任を持つことになるわけでございます。
  75. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、特定の炭鉱買い上げた、そしてその炭鉱賠償引当金を積み立てた、その賠償積立金をもってしても十分賠償できないという場合にはどういうように処置されるのか、積立金の範囲賠償されるのかどうか、その点をお聞かせ願いたい。
  76. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは買収いたしまして代金支払いをいたします場合に、大体どのくらいの賠償金を支払わなければならぬかを一応予算いたしまして、その分だけ代金から差し引きまして積み立てるわけでございます。しかし見通しと違って計算以上に損害また賠償がふえて参りました場合には、当然積立金の額の有無にかかわらず事業団としては賠償の責任を負わなければなりません。
  77. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 かなり明白になりました。そういうことを聞けば被害者も安心するだろうと思うのですが、この法律によってむしろ金銭賠償の打ち切り補償が促進されることのないように実際的には留意してやってもらいたい、かようにお願いするわけであります。  続いて質問をいたしますが、あまり通産省にばかり質問して、労働省が他山の石のような顔をしておられますので、労働政務次官にお尋ねいたしたいと思います。実は最近いろいろな産業において合理化が促進されておる、そうすると当然失業者が出るわけです。合理化の対象に主としてなっておるのは第二次産業ですが、第二次産業をどんどん整理をされておる。ところが実際吸収する道がないのです。あなたの方ではどんどん合理化を促進されておるが、将来において政府としてはどういうような雇用政策を持っておるのか、お聞かせ願いたいと思うのであります。と申しますのは、実は政府が出しました経済六カ年計画にいたしましても、この労働に即したところの生産年令人口というのがあります。それがどのくらい労働人口に入ってくるかというので、労働力率というのがある。ところが政府は最初出しました十六カ年計画におきましては、労働力率を、現在六八・一であるにかかわらず、三十二年度は六六、三十五年度は六五と下げておる。労働力率を下げるなんということは常識上全く考えられないのに、労働力率を下げて、完全失業者を少く見せかけておる。ところがこれが指摘されると、労働力率はそのままにして、今度はあわてて人口をいじる、すなわち奄美大島を入れるとともに、人口の増加率を逆に少くして、完全失業者を少し合した、あなたの方ではこういう手品をされるわけです。一体どういうところから労働力率が変更になったのかお聞かせ願いたい。
  78. 江下孝

    ○江下政府委員 これは経済審議庁から御答弁した方が適当かと思いますけれども、労働力率を変更しましたことは委員の仰せの通りであります。変更しました理由につきましては、当初六カ年計画を作りました際に、これはあくまでも一つの目標であって、なお必要に応じて今後改訂を加えていくということが書いてあります。それに基きまして各方面の意見を聞いた結果、かように訂正したということでございます。すなわちできるだけ実情に合うように労働力率を合した、こういうことであります。
  79. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 変更されることはけっこうですが、どうもとんでもない基礎数字変更されるので困る。労働力率というのは生産年令人口がどのくらい労働力になっていくかということで、これを勝手に変更されるようなことでは、私は一国の政治はできないと思う。それがいかぬということになると、それを据え置いて、今度は人口の方をいじり出す、こういうような作業をされるということは、今後われわれが経済的な政策をやる場合に非常に困る、かように思いまして御注意を申し上げたいと考えるわけであります。  続いて質問をいたしますが、現在合理化を盛んに促進されておる。ところが電力にいたしましても硫安にいたしましても、合理化をして生産はずっと上った、トータルにおいてずっと生産が上っておるにかかわらず、労働人口は減っておる。これは石炭においてもそうです。石炭においても五千万トンになるのに従業員は減っていく、こういう関係になる。あらゆる産業がこういう状態になりますと、一体どういうことになるか。私は具体的に、石炭では従業員は減るけれども、どこの産業においてどのくらいふえる、あるいは第三次産業に回ってどのくらいふえる、こういう見通しを一つお聞かせ願いたい、かように考えます。
  80. 江下孝

    ○江下政府委員 非常にむずかしい質問でございます。これも経済審議庁から御答弁申し上げた方が適当と思いますが、一応この六カ年計画によりまして策定いたしました数字は、御承知と思いますけれども、今後の就業者の動きについてある程度のめどを示しております。これによりますと、三十年度におきましては、このまま放置いたしますならば約二十万程度の失業者が増加するであろう、こういう予定のもとに政府の予算編成等にも当ったのでございます。  なお合理化等によりまして失業者がふえるということでございます。まあこの問題に付きましては、石炭企業につきましては明らかに人員の減という問題がございますが、そのほかの産業につきましては今後の問題として検討いたさなければならぬと私は考えております。石炭産業等によりまして失業者が出てきますというものに対しましては、先ほど申し上げましたようなことで一応本年度予算を編成して失業者の吸収に当ることになっております。  なお全体といたしましての雇用の動きでありますが、これにつきましては、第一次産業、すなわち農林水産業等におきましては今後もあまり受け入れの余地がないのでございまして、この点については従来とあまり変らない数字を見込んでおりますが、第二次産業におきましても、これは一般的には減少するという建前をとっております。ただ第三次産業、すなわち販売部門等におきましては、若干数の増加を見込んでおることは事実でございます。これについていろいろ御意見があると思うのでございますが、私どもといたしましては従来の就業構造の動きというものもにらみ合せまして、第三次産業にある程度就業者の増加ということを見込んでこの六カ年計画が策定されておるように聞いておるのでございます。
  81. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 第三次産業というと、なるほど公務員とか銀行員も入るのですけれども、この産業に入るのはかつぎ屋とかその他半失業者がほとんど多い。あなたの方では第三次産業に入るというけれども、第三次産業は半失業者の部類が非常に多い、数字の上でどうにもうまくいかない場合は、第一次はあまりふえない、第二次も減るだろう、全部第三次に回って、完全失業者はあまりいない、こうおっしゃいますけれども、第三次産業の中には正常ならざる雇用がほとんど全部これに隠されておる。全く多くの人が全部第三次産業へ入っていくのだというような政府の答弁ではどうも承服しかねるのであります。雇用問題が十分考えられなければこういう合理化法案というものもうまくいかない。そこでこの合理化法案が国会でいろいろ論議になろうとする際に、労働省では一体どういう失業対策その他を持っておるか、こういうことに対しましては当時は江下局長も答弁をなさいませんでした。まだ研究中であるということでした。それでやっとあわてて作りまして、西田労働大臣が本会議で答弁をされましたが、私はこういうようなことがこの合理化法案に対して国民に非常な不安を与えておると思うのであります。そこで一体政府は、たとえば一億円なら一億円投資をする場合に、これによって雇用がどのくらい増加するかということをお考えになり、研究されたことがあるかどうか、お聞かせ願いたい。
  82. 江下孝

    ○江下政府委員 結局御質問の点は、本年度の予算の問題に帰着すると思うのでございます。先ほど申し上げましたように、本年度におきましては、放置いたしますならば相当失業者が増加するであろう、その増加数につきましては大体二十万という数字をはじいておるのでございます。その二十万に対しましての失業者の吸収方策を考えて予算を組んだというのでございます。なおもう少しこまかく申し上げますと、御承知の通り労働省で実施いたしております失業対策事業でございますが、これにつきましては昨年度と比較いたしまして約四十三億、すなわち人数にいたしまして五万人の増加を見込んでおるのでございます。それから昨年特に閣議決定を行いまして、公共事業への就労促進を強力に行うということになりまして、その措置によりましてやはり四万から五万程度のものを吸収して参る、さらに鉱害復旧事業の増加あるいは水道事業の増加等も見込みまして一万程度、なおインテリ階級の失業救済といたしましてできるだけ国勢調査その他官公庁におきます調査事務等に失業者を吸収するということにいたしまして、これらを合せますと約十四万程度になります。なおあとの六万ということでございますが、これにつきましては公共職業補導所の人員増加ということも考えまして、補導所への入所促進をはかることによって措置をいたしたい、こういう見当で本年度の予算を作成いたしたのでございます。
  83. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一般の失業対策、特別失業対策を合せて五万人ほどと言われますけれども、昨年の一月から三月まですでに一般においては十九万人になっているのですから、実際問題としてはこの一月から考えてみるとあまりふえていない、かように考えるのであります。聞くところによりますと、現在は予算をかなり押えて、後半期に使おうとされているようですが、筑豊炭田あたりの失業のひどい場所に行きますと、市町村ではもうワクをくれても受けられぬ、こう言っているのです。そういうような状態であるのに、政府はそれに対してどういうように対処されようとしているか、たとえば特別失対事業を起して、今度は労銀も三分の二より五分の四支給してやる、さらに資材費も三分の一から二分の一にしてやると言われましても、資材費は二百十円に上っておりますから、絶対量として市町村の負担が多くなる、しかも単に労務費だけの負担でなくて、用地の買収その他をやらなければなりませんから、失対事業というものは大体二分の一くらいは負担しております。それで今非常に窮迫しておりますところの市町村財政では、政府がワクをやろうといいましても、とうてい受けられぬ態勢にある、こういうことに対して労働省はどういうふうに考えられているか、一つ政務次官から御答弁願いたい。
  84. 高瀬傳

    ○高瀬政府委員 お答えいたします。われわれはただいま多賀谷君の言われたようには解釈しておりません。現にここに失対のワクをくれということを陳情してきているある市もありますが、全体的に、そういうところもあるかもしれませんけれども、われわれとしてはそうは考えておらないのであります。
  85. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも認識不足もはなはだしい。私は炭鉱地帯のような特殊な多くの失業者の発生しているところの話をしているのです。一般の全国的に見ればワクをくれというのは当りまえです。ところがそういう特別なところは鉱産税も入ってこぬ、固定資産税も入ってこぬ、住民税も前の年の所得税の何割かということでありまして、所得税が少くなっているから、当然住民税も入ってこない。一方出す方といたしましては、あるいは給食費も出さなければならぬ、その他生活保護法の費用も見なければならぬ、失対事業も見なければならぬというので支出は多くなっているのです。ですから手をさげている。現にこれは炭鉱地帯だけでなくて、呉でも門司でも大牟田においても、いくらワクを政府がやろうとしてもどうにもなりませんという状態になっている。ところによると、退職金労働者から集めて、そしてその退職金を市が借りて失対事業をやろうというところすらある。いやしくも政務次官がそういうところはありません、今陳情がきております、そんなばかなことを——陳情のきているのは私も知っております。それは炭鉱地帯ではなく、ほかのところの話だ。炭鉱地帯にはどういうふうに処置されているか、全国的なことになれば大きな世論になるから、私が、あえて言う必要はないが、局部的で、しかも深刻であるから言っているのです。再度御答弁を願います。
  86. 高瀬傳

    ○高瀬政府委員 詳しいことは江下政府委員から答弁させます。
  87. 江下孝

    ○江下政府委員 仰せのような例が炭鉱地方にあることも私は承知いたしております。そこでこれに対しましていろいろな方法を考えたのでございますが、第一に考えましたのは、できるだけ補助率を上げてやるということでございます。これは労働大臣からも答弁いたしましたように、本年度相当折衝いたしましたけれども、一応そのような特別失対事業という形で従来より補助率を上げるということで一応処理されたのでございます。なお特に炭鉱地方等におきましては、今後仰せのごとく失業状態が深刻になり、自治体も相当負担がむずかしいということに相なりますので、前回申し上げたと思いますが、この建設的な事業、特に県営事業というものに重点を置いて道路河川等の事業を行なっていく、市町村が悪くなりますならば県もある程度財政は悪くなるのでございますけれども、しかしながらその点につきましては県を督励いたしまして、そういう地帯におきましては県営事業をできるだけ大幅に実施するということで失業者の吸収をできるだけ多くはかりたいというふうに考えております。なお市町村で負担のできないというものにつきましては、私どもとしては、別途自治庁ともできるだけ折衝いたしまして、起債のワクの拡大あるいは平衡交付税の手直しということもやらせるように今後努めたいと思います。
  88. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 例のいつでも失業対策で最も建設的だと言われている鉄道の問題、すなわち川崎線の問題につきましても、少くとも合理化法案を出す前に新線の計画は決定しておかなければならぬと思うのですが、私はまだ決定していないように聞いているのです。これはどういうふうになっているか、いつ決定されるのですか、お聞かせ願いたい。
  89. 高瀬傳

    ○高瀬政府委員 実は川崎線の問題につきましては、この石炭合理化法案が出ましたときに、すでに本年度の大体の失業対策の予算を決定しておったのであります。従ってその後この合理化法案が出て参りましたので、予算の折衝の際にわれわれは党内においても大いに意見を述べ、政府に対して約五億程度の追加の失業対策の費用を請求いたしまして、昨日ここで論議になりましたように、第四・四半期に約四千七百名の失業者を特に炭鉱地帯において救済しようということになりました。それからもう一つは川崎線でありますが、一般の失業対策で二億一千万円程度、川崎線で二億五千万円程度、約五億程度の追加の予算の請求をしたのでありますが、遺憾ながら政府の認識が足りないのか、われわれの力が足りないのか、今のような状態でありますので、川崎線の建設が九州炭鉱地帯の失業の救済に役立つことはわれわれ十分承知いたし、その後努力を続けております。鉄道としては鉄道建設審議会に約五億の追加予算がありましたから、それは当然川崎線の建設費用も含むものとわれわれは解釈しております。その問題は鉄道建設審議会に移っているわけであります。
  90. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 国務大臣である石橋大臣にお尋ねいたします。なおあなたは通産大臣としてもこの立法の責任者ですから、お聞かせ願いたいと思いますが、労働大臣ははっきり三十年度には鉄道建設事業に九百名使うと言明している。ところがまだその鉄道建設の決定がなされていない。法案は自由党も民主党ももうあげると言っている。基礎的な前提準備ができなくて、法案だけあげようとしているのですが、政府は一体本会議において言明をしているにもかかわらず、いまだに決定を見ていない。決定してからでも測量をしたりして時間がかかるのですよ。かなり長い時間かかって計画ができる。それでは人が使われるのに間に合わないじゃないですか。一体政府は三十年度ほんとうに九百名使われるような準備ができるかどうか、国務大臣として一つ責任ある回答を願いたい。
  91. 石橋湛山

    石橋国務大臣 鉄道の問題につきましては、いろいろないきさつがあったことはほぼ御承知と思いますが、これはどうしても鉄道建設審議会の了承を受けなければならぬと思う。そこで運輸大臣と打ち合せまして、審議会にかけて——まだ審議会できめておらぬようでありますけれども、大体了承する空気のように聞いております。これはいかに金がありましてもあそこが通過しなければやれませんので、あそこの関門にかかっているわけであります。その関門を通過する場合には必ず実行する決意でやっております。
  92. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうしますと、必ず鉄道建設に九百名ないし千名の人間が本年度の間に十分使用できる、政府は責任を持ってやる、こういうことですか。
  93. 石橋湛山

    石橋国務大臣 その通りです。
  94. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、この内閣も長くはないかもしれないので、それは前の内閣だと言われると非常に困るのですが、しかし失業した人は非常に困っておりますので、一つ大臣は積極的にやっていただきたい。これは非常に重大な問題です。今きまりましても、果して工事に三十年度に着手できるかどうか疑問があるのです。今から測量をして、それも一カ所だけでなくて数カ所に分けて事業を始めようというのですから、私はかなり問題があると思う。しかしこの法案を通過さす以上は、政府は責任をもってやってもらいたい、かように考えて次の質問に移りたいと思います。  次に、労働問題に関連をしてですが、通産省の方では賃金を据え置きにされておる、すなわち賃金据え置きと申しますのは、政府が経済の資料としてわれわれに配付された中で、三十四年度における生産費の見積りの中で賃金を据え置きにされておる、こういうのであります。西田労働大臣は、賃金については大体三五%から四〇%が適正である、こういうようにお答えになった。しかし西田さんの話は、私はあのときの委員会審議状態から見て、果して国務大臣としての、それほど責任を持っての御答弁であったかどうかはわかりませんが、あるいは経営者として夢よもう一度という気持で言われたのかもしれませんけれども、とにかく政府としては、コストの中に占める賃金の割合はどれくらいが適正であるとお考えになっておられるか、お聞かせを願いたい。
  95. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 労働大臣のお答えは、もちろん経営者としての御経験も考慮に入れてのお答えであると思いますが、同時にやはり事業のあり方としてはそういう程度が適当ではないかというふうにお考えになってのお答えであろうと思うのでありまして、これは戦前の統計を見ましても大体そういうことになっておりますので、現在の五〇%をこえるというふうな状態は、要するに間接の賃金が非常に多くなって、そのために全体の能率としては上っていないという形になっておるのでありますから、坑内の作業条件が合理化されれば、もう少し人件費のパーセンテージを減らしてもいけるのじゃないかというふうに考えます。
  96. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大体どのくらいを考えられておるか、お聞かせを願いたい。
  97. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 合理化完成時の原価想定という資料をすでに提出してございますが、その完成年度におきます労務費のパーセンテージは大体四〇%程度というふうになっております。
  98. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 あなたはどこの国の生産費に占める賃金を基準にしてお話になっておるのか知らないが、よく西独とかアメリカとかの話がありますが、私も世界のあらゆるところについて調査をしたのでありますが、アメリカでも、一九四九年ですけれども、六五・三%を賃金生産費の中で占めておる。イギリスが六六・七%、一九五二年で占めておる、ルールが五五・三%一九五三年で占めておる、それからフランスが三分の二は賃金だというから六六%程度、こういう状態で、よその国のトン当り生産費に占める労務費の比率というものはかなり高い。そこでよく経営者は労賃が高いと言われるけれども、日本の生産コストに占める労賃の割合というものは各国に比して決して高くはなく、むしろ低いと私は思う。しかもよその国は、逆にトン当りの話をしておるのでありますから、実質上はずっと多い、賃金で言えばものすごいパーセンテージになる。そこで、日本のように能率が悪いのに賃金はこの程度しかコストの中において占めていない。こういう点をどういうふうに認識されておるか、何を根拠に四〇%が適正であると言われるのか、それを一つお聞かせを願いたい。
  99. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは現在の状態基礎にいたしまして、坑内の作業条件が改善されて、合理化が完成されましたときに、コストのそれぞれの項目がどうなるであろうかということを試算いたしますと、それがたまたま四〇%程度になったということを申し上げたのでありまして、四〇%でなければならないというふうに考えているわけではございません。ただ外国のことは別といたしまして、戦前もその程度でございましたし、それから戦後も、五〇%をはるかにこえた時代から、経営がだんだんノーマルになって参りますにつれて、少しずつパーセンテージが下っていったという事実もございますので、この三十四年度の完成時の原価の配分が、特に労務費の部分がおかしいというふうには考えてはおらない次第でございます。
  100. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この一年間労務費の生産費に占める割合いは下っておりません。ずっと並行線をたどっておる。それで戦前の話を言われますけれども、能率という点についてもあとでお聞かせ願いたいと思うのですが、日本で最も能率がよかったのは昭和十年の十八トン、このときには北海道は三十一トン出ておる。それから東北においては十三・二トン、九州においては山口を含めて十六・三トン出ておる。北海道が三十一トンというのは、北海道の労働者の方がよけい働くという意味では必ずしもないであろう。これは山がよかったという意味を示しておる。自然条件でこのくらい差がある。ですから、現在の状態では、この前も申しましたように、採掘条件が非常に悪くなっておりますから、北海道の、当時の三十一トンと九州の十六・三トンが大体均衡を保つ、こういうような状態を勘案してみますと、非縦坑対象炭鉱の三十四年度の能率はとうてい政府が言っておるように十七トンにはなり得ない、かように考えるわけでありますが、これについてどういうようにお考えであるか。これが一つ。  さらに先ほどの問題でありますが、経済審議庁が作りました六カ年計画の国民所得の一人当りの消費量の増加は十四・九%になっておる。すなわち二十九年度に比べて一一四・九になっておる。一般の国民所得が一四・九%ふえておるのに、なぜ炭鉱労働者だけが賃金を据え置きにされておるか、これをお聞かせ願いたい。
  101. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは全体の国民所得というふうな問題ではございませんで、全く計算の便宜だけの問題でございます。従ってこの原価計算につきましては、将来の何年か先にどれだけに賃金が上るのだということは建前上も予測が困難でございます。従ってそれは抜きにいたしまして、現在のベースを一応取って計算するとこういうふうになるということを申し上げただけのことでございまして、三十四年度まで賃金は一切据え置かなければならないという意味では毛頭ございませんので御了承願います。  それから能率の点でございますが、これはなるほど戦前の場合には労働時間も現在よりもだいぶ長かったわけでございますし、それから自然条件も現在よりはいいというものも多かったということはわれわれも考えられるわけでございます。しかしながら同時にやはり戦前に比べましてこれだけの、十年の歳月がたちますと、それだけの技術の方も進歩する。たとえばいろいろの採炭機械でありますとかあるいは切羽のカット、その他切羽の開さくの技術の改善でありますとか、輸送上の改善でありますとか、そういうふうな面で技術の進歩がございますので、その技術の進歩と考え合せれば、戦前に近い能率をそれらの障害を克服して上げることも不可能じゃないのじゃないかというふうに考えております。
  102. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 政府が作った六カ年計画の一環としてこういう法案が出されておると私は理解する。その合理化法案においては一般の所得は一一四・九%になっておる。それにあらゆる経済事情基礎にして作ったところの炭価の値下りの算定において、労賃を据え置いてみるということは私は非常に不見識であると考えるわけです。いやしくもほかのものは上ることを考えておるのです。政府がそれだけ認めておるなら、私はやはり炭鉱労働者にもそれだけベース・アップして組まれるのが至当である、かように考えるわけでありますが、その点について、なぜこれだけ据え置きにしておったのでありますか、お聞かせを願いたい、かように考えるのであります。  さらに労働次官にお尋ねをいたしますが、経済審議庁の資料を引き合いに出しておそれ入りますけれども、あなたの方にも相談があったと思いますが、経済審議庁の資料によりますと、一週間の労働時間が現在四十七時間であるが、三十五年度は四六・三になって労働時間が少くなっておる。これは将来政府としてはなるべく労働時間を少くしていこう、こういうような考え方であるかどうか、それならばけっこうであるが、お聞かせ願いたい。
  103. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 第一の御質問についてお答えいたしますが、すでにお答えいたしましたように、これはただ計算の便宜のためという以外に何らございません。ただこれは業種別の賃金の動きにつきましては相当違いますので、一律に賃金上昇率を計算をすることもどうか。かえってそういう数字を出しますと、それが将来について一つの何か規制的な数字のようにとられるとかえっておかしい、そういう意味で一応ただ据え置きをとっただけでございます。
  104. 高瀬傳

    ○高瀬政府委員 先ほどの質問は、いずれ詳細に調べまして、後ほど政府委員から御納得のいくように答弁いたさせます。
  105. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはかなり重大な問題ですよ。労働時間をだんだん少くさそう、こういうお考えは非常にけっこうな政策です。ところがあなたの方は今自由党の方からけしかけられて、基準法も一つ改正をして、労働時間も延長しなければならぬというので盛んに吹き上げられておる。こういうときにあなたの方は民主党の内閣としては非常にいい政策の、労働時間を下げてやろうという政策を掲げられておりますから、私たちは非常に敬意を表しておるのですが、その基礎がわからぬ、しかも労働省が知らぬということでは相ならぬと思う。一体労働時間を下げてやると言われるが、これはどういうところから労働時間が下ってきたのか。民主党の政策は労働時間を下げてやろう、こういうような政策であるか、あるいは土曜日は全部半ドンにする、こういうようなお気持であるかどうか伺いたい。
  106. 高瀬傳

    ○高瀬政府委員 あまり不正確のことをお答えしても非常に多賀谷君に恐縮でありますが、私の想像ではおそらく経済六カ年計画ですか、それで昭和三十五年度になりますといわゆる労働力人口というものは四千三百七十万人になる、そして完全失業者というものは四十三万人になる。従って経済規模が非常に拡大して失業者の数が減る、そういうことから就労時間がだんだん平均して減っていく、労働条件が改善されていく、こういうように想像しております。あなたはいかがお考えになりますかわかりませんが、私は大体そういうふうに考えております。
  107. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 やはり政府としては、従来の政策よりも、かなりその政党の性格からして変更されるような点については、十分審議をしてもらいたいと思う。いいかげんな資料を出して、人心を惑わすようなことのないように、一つ御注意を促しておく次第であります。  それから石炭の問題に返りますけれども、輸送の問題であります。現在御承知のように、石炭の出るのは北海道と九州で輸送費が非常にかかるわけです。トン当りにいたしまして、政府の発表いたしましたところによりましても、東京までは千五百円、あるいは阪神までは千二百円かかっておるようであります。そこで高炭価の一つの原因も——九州においては高炭価という問題は起らなくても、東京、阪神については高炭価の問題が起っておる、こういうことは産業立地の問題からいたしかたがないと言われればそれまでですが、何らか輸送面について政府は考えておられるかどうか、大臣から御答弁を願いたい。
  108. 石橋湛山

    石橋国務大臣 無論輸送費というものについては、ことに石山灰のようなパリティ物資については、非常な問題でありますから、鉄道運賃、あるいは海上運賃というものはなるべく低下をはかるということについては努力いたしておりますが、御承知のように鉄道について申しますと、鉄道自身が今ちょうど非常な赤字で経営難でありまして、むしろ鉄道だけをとってみますと、運賃を上げなければならぬ、というような矛盾に陥っておりますから、この矛盾をどうして除去するかということは、今簡単には解決のできかねる問題でありますから、これは十分鉄道の方の経営の合理化その他によって、これが下るようにいたしたいと思っております。
  109. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 石炭の物資総輸送量中に占める比率というものは、非常に大きなものがあるわけでありまして、国鉄総輸送量の二六%が石炭である。内航船でも六五%が石炭。さらに機帆船の三〇%が石炭を輸送するのに使われておる、こういう状態であります。そこで私はこの輸送並びに荷役施設の合理化について政府はどういうようにお考えであるか、局長から答弁をしていただきたいと思います。
  110. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 全くごもっともなお話しでありまして、これはわれわれも石炭の統制時代からずっと引き継いだのでありますが、港湾施設計画を組みますような場合には、石炭関係の積み出し、あるいは受け入れ等の港湾施設を特に重点的に取り上げてもらうように、絶えず折衝をいたして参りました。それから先ほどお話しが出ました川崎線、それに関連いたします苅田港の問題というようなものも、これが単に失業対策あるいは一般的な総合開発というふうな問題のほかに、特に石炭のコスト切り下げに役に立つようにという意味で、通産省としても推進をしておる次第であります。
  111. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 荷役施設の合理化には具体的にはどういう考えであるのか、あるいは資金確保その他もやられておるのかどうか、さらにまた低品位亜炭を山元でガス化してそれを輸送する、こういう問題はどの程度具体的に話が進んでおるのか、それをお聞かせ願いたい。さらに統制時代は御存じのように運賃諸掛りはプール平準化が行われておったのですが、こういう問題についてはどういうようにお考えであるのか。これは産業立地の関係でいたし方がない、こういうふうにお考えであるのか。これだけをやってみてもだめだ、こういうふうにお考えであるかどうか、伺いたいと思います。
  112. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは石炭の主要積出港の場合には港湾関係が国の直轄あるいは補助港湾ということで、大体国の予算が中心になっております。それから石炭の積出港の施設でも、主要なものは大体国の関係のものが多いのでございますから、予算の配分に際しまして、できるだけ石炭関係のものに重点的に充当してもらうように、運輸省その他と折衝をしておるのでございます。  それから低品位炭のガス化の問題でございますが、これは今まで再々御説明いたしましたように、まだ技術的に若干問題がございますので、その点を資源技術試験所——これは通産省の所管でございますが、そこを中心にして今研究をしてもらっておるわけでありますが、さらにこの研究をもっと促進するように、来年度はぜひ予算措置等を十分にやってもらいたいというふうに考えております。  それから運賃プールの問題でございますが、これは現在のような自売態勢でございますと、政府がかれこれする問題ではございません。しかし実情といたしましては——ここに運賃諸掛りについての資料をお配りしておきましたけれども、実際は産炭地におきます値段と消費地におきます値段とを比べてみました場合に、ここに書いてあるほどの差はないようでございまして、実際上これは若干運賃プールの思想で販売をやっておるというふうになっておるようでございます。われわれ標準炭価を設定する際にもその実情は十分勘案してやりたいというふうに考えております。
  113. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 買い上げ対象になりました炭鉱の鉱業権は、事業団を解散いたします際にはどういうようになるのか、現在どういうおつもりでおられるのか、お聞かせを願いたいと思います。  さらにこの買い上げられた炭鉱の住宅でございますが、これは失業者が失業対策事業に行こうといたしましても住宅がなくてはならないのです。そこでこの住宅についてはどういう考慮が払われておるか。この二点をお聞かせ願いたいと思います。
  114. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 この買い上げになりました鉱業権が、この法律の施行後どうなるかということは、事業団の存続期限をどうするかということにかかって参るわけでございますが、これは五年間の期間が過ぎましても、鉱害等で解決のつかない問題がございますれば、その解決のつくまで存続させるという考え方でございますが、その後は今のところ、鉱業権については政府に帰属させるということにしたらいかがかというふうに考えております。  それから炭住についてお話がございましたが、これも鉱業施設という観念をどこまでにするかの問題でございますが、できるだけ炭住も買いたいと考えております。もちろん事業団が買いました場合にも居住権のようなものはあるわけでありまするから、実際問題として、他に転業するまでは人が入っておるものを買うというよりいたし方がないのじゃないかと考えております。
  115. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうしますと居住権があるから、事業団買い上げても他に転売をして追い出すようなことはない。少くとも事業団買い上げておる五年間はない、かように解していいのですか。
  116. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは絶対にどうこうするというふうな問題ではなしに、その実情によっても考えなければいけませんが、しかし居住者の基本的な権利を無視するような扱いはしないようにいたしたいと思っております。
  117. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 現地ではこの問題でかなり紛争を見るだろうと思いますので、一つはっきりした御答弁を願いたい。要するに、今の話ですと政府は、事業団がなるべく買い上げる。私は全部買い上げてもらいたいと思うのです。そしてそれは現在居住権を持っておる従業員にそのまま貸与する、追い出すようなことはしない、こう解釈していいわけですね。
  118. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 炭住は相当期限が限られておりまして、その間に一般財産処分しなければいけませんので、できるだけそういうことで支障のない限度で居住者の利害は尊重するようにやりたいということを申し上げておるのであります。
  119. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私はまだ質問いたしたい問題もありますけれども八木君が質問するそうですから、一応そちらに譲りたいと思います。
  120. 田中角榮

    田中委員長 八木昇君。
  121. 八木昇

    八木(昇)委員 それでは時間が迫っておるそうでございますので、若干の点について質問を申し上げたいと思います。  最近二、三カ年の間に、炭鉱の不況によって労働者が非常に減少をいたしまして、失業問題が非常に大きな問題になっておることは、先ほど来多賀谷委員からるる御質問があったわけであります。ところが、元来これらは北海道とか福岡とか、そういうところについてはある程度の認識があるようでございますけれども、佐賀県あたりについては案外認識がないようです。  そこで私は一、二お伺いをいたしたいと思います。政府からいただきました資料によりましてもはっきりいたしませんのでお伺いをするのでありますが、佐賀県あたりで昭和二十八年度にはどのくらいの炭鉱があり、どのくらいの炭鉱労働者がおり、それが二十八年、二十九年と経過するに従ってどれだけの失業者が出たか。そしてそういう失業者たちは今日どういう生活の状態にあるか。こういうことについて概略をお伺いしたい。
  122. 江下孝

    ○江下政府委員 佐賀県で特に炭鉱の離職者数が二十八年に比べて幾らというのは、今ちょっと手元に資料を持っておりませんが、二十八年から今日までに相当の離職者が出たことは承知いたしております。それに対して労働省といたしましては、当座の生活安定といたしまして大よそ九割見当は失業保険制度によって六カ月の生活保障をいたしておるのであります。なおその間におきまして、それらの離職者のうちですでに郷里に帰るという人もございますし、また他の炭鉱に行ったりあるいは他の職業に配置転換されるという者も相当ございます。なおどうしても他の職業に配置転換ができないという人につきましては、公共事業あるいは失業対策事業を起しまして、これらに吸収をいたし、これによってできるだけそれらの人に対する生活安定をはかっておるというのが実情でございます。
  123. 八木昇

    八木(昇)委員 これは抽象的なお話では困るのですが、大体概数でも、政府の方でどういうふうにつかんであるかをお伺いしたかったのであります。それで、佐賀県の教育委員会が作った統計を持っております。これによりますと、昭和二十八年度に二万五千名の炭鉱労働者である。それが二十八年度に約五千名減少し、二十九年度に五千名を減少いたしておる。二万五千名中わずか二カ年で一万名が減少いたしておる。今日では二万五千名である。ところが、一万名の失業者があるにかかわらず、佐賀県内の県並びに各市町村一切を含めての炭鉱失業者だけでなく、一切の失業者のための失対事業割当の人員が、本年度当初において二千名ちょっと、こういう状態でございます。そこで、先ほど多賀谷委員からの質問もありましたが、たとえば、川崎線の問題などというようなものでは、焼け石に水でおりますけれども、もしそれがお話の通り実施せられるとしても、これは、労働大臣の本会議での答弁によりますと、ごく一部福岡県のものだけであります。そこで、佐賀県あたりの場合を例にとりますと、佐賀県の産物は米と石炭と言われておる。そういうところについて、何らかの失業対策事業を起す計画がおありであるかどうか。もしこの合理化法案が実施せられますと、わずか残った一万万千名が、さらに今後五カ年間に五十名減少するものと想定いたしております。その辺のところを御説明願いたい。
  124. 江下孝

    ○江下政府委員 お話の通り、佐賀県全体として失業対策事業を実施しておりますのは、比較的少いのでございます。しかし、私の方としては、特に炭鉱地帯は、最近の情勢にかんがみて、できるだけ優先的にこの面で扱うことに行政上はしております。そこで問題は、各地区ごとの就労状況がどうなっておるかということでございますが、これは五月の実績でございますけれども、佐賀市はあまり炭鉱関係ございませんが、佐賀市においては、登録者総数が千八百十二人、このうち失対の適格者が千百七人と相なっております。これに対して、平均出頭いたしますのは、千八十八人、これに対して失対事業その他で吸収をいたしまして、平均二十一日の就労を確保しておるという実情になっております。  それから、唐津でございますが、唐津は従来から特に炭鉱のつぶれるのが多くて、問題が多かったのでございますが、五月の実績によりますと、相当就労日数が上りまして、二十六日というような就労日数を示しております。武雄が少し落ちまして、一九・四日でございますが、今では二〇・四日というように、ほぼ全国平均的な就労日数を示しております。そこで、今回の買い上げによって、相当失業者が出るということは、私も承知いたしておりますが、これに対しては、労働大臣が本会議で申し上げましたように、特に閣議決定も行なっております。これらの買い上げによる失業者に対しては、特に建設的な河川、道路等の事業を、これらの地帯に重点的に実施をするということに相なって、関係各省も全部これは了承しております。佐賀県においては、本年度は比較的数が少いのでございますが、来年度以降において相当失業者が出ましても、来年度建設的な事業を実施する予算は当然組んで、これらの失業者を吸収するという予定にいたしておりますので、そう大きな問題となるおそれはないと私どもは考えております。
  125. 八木昇

    八木(昇)委員 それでは来年あたりで、何か計画してあります具体的なものをあげてくれませんか。
  126. 江下孝

    ○江下政府委員 昨日も申し上げましたように、特にどこからどこまでの道路をやるというようには、まだ具体的にはきめておりませんけれども、この点については、もちろん来年度の失業者が発生する時期に間に合うまでに決定をいたしたいと思います。私どもが佐賀地域で考えておりますのは、どうしても道路改修が主体になると思っております。そのほか河川の改修というようなことをそれに副次的に並べて実施をいたしたいと考えております。
  127. 八木昇

    八木(昇)委員 非常にのんびりした話ばかり伺って、実際にその近所で私どもまのあたりにその状況を見ている者は、実は率直に言うて非常に憤慨にたえません。それで、これまた教育委員会資料によりますと、炭鉱地帯の失業者は、佐賀県の場合最近二カ年間で一万でありますけれども、そのために欠食児童が、昨年九月には炭鉱地帯の町村で六百七十二名であったものが、本年の三月には千四百三十名になっている。それから長期欠席者、学校に弁当も持って行けないので行きたくない、こういう長期欠席児童が、昨年の九月に三千九百四十九名であったものが、本年三月では六千百三十二名という膨大な数に上っているのであります。これは佐賀県教育委員会調査によるありのままの実績であります。これに対して給食問題などあるでしょうが、こういう状態にかてて加えて、さらに追い打ちを食わすような形で今度の合理化法案が出るのでありますから、何か具体的な計画と考え方というものが、単に労働省だけでなく、こういう案を立案した通産省方面においてもあるはずだ。そうして何らかこういうことをやりたいというので折衝したというようなこともあるはずだと思います。これらの点について大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  128. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私も何々川とか何々道路のどこからどこまでということは、今記憶いたしませんが、しかし建設省、労働省と事務的には十分研究いたしまして、かなり具体的な案を立てております。この法案がいよいよ実行されるときになれば、直ちに着手するように準備はしているつもりであります。
  129. 八木昇

    八木(昇)委員 では具体案はほとんどないようでもありますので、今後そういった実情を正しく御認識いただきまして、これは炭鉱の能率を上げるとか、コストを引き下げるというような問題でなく、実際問題として大きな社会問題でありますから、ぜひやっていただかなくてはいけないと思っております。  それから今度事業団を作って、約八十億の金で炭鉱を三百鉱ほど買い上げる、こういう計画でありますが、その八十億の金は、これを具体的に分けて、労働者の手に渡るのがどのくらい、金融機関の手に渡るのがどのくらい、公共団体の手に渡るのがどのくらいのお見込みであるか、これをお伺いしたい。
  130. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 中小炭鉱の負債状況については、先ほど御答弁いたしました。資料も出しております。数字はそういうことになるのでございますが、これは必ずしも買い上げ対象になる炭鉱ばかりではございません。従って買い上げ対象になるものについて、どのくらいになってどうなるという資料は、現在のところ作成のしようがない。ただ中小炭鉱一般的な趨勢を示した資料はすでにお配りした通りになっておりますので、それによりますと、おそらく買い上げになる炭鉱は、これよりも経営状態の悪い、景気の悪いものが多いと思いますので、これよりも悪くはなると思いますが、この資料によりますと大体相当のものは、経営者の方も労働者の方も、また関係債権者の方もある程度満足は得られるのではないかというふうに考えられるわけであります。
  131. 八木昇

    八木(昇)委員 それではこの中で、たとえば未払い賃金とか一カ月分の予告手当、こういうようなものに見合う額はどのくらいですか。
  132. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 事業団支払います離職料と申しますか、法律規定支払います分は、これは経営者の経営状態に全然関係なしに支払われるわけでございます。従ってこれは大体平均賃金の三十日分でありますから、まあ二万円くらいになるわけであります。未払い賃金につきましては、これは前に申しましたように買い上げ炭鉱の分の未払い賃金というものがとってありませんので、何とも申し上げようがないのでございますが、従来買い上げ炭鉱という問題を離れまして、未払い賃金がある炭鉱について、未払い賃金の平均がどのくらいになるかということを調べたものがございますが、それによりますと大体一カ月分くらいにになっておるようでございます。従ってその程度のものが、これは代位弁済いたしますので、大体支払いが確実に払われると思いますが、その程度のものは渡ると思います。それから退職金につきましては、これは全くまちまちでございまして、その炭鉱の協約によってきまっておるものもあり、あるいは全然まだ協約がきまっておらなくて、離職に際してあらためて協定するものもあるのではないかと思いますので、これはどのくらいになるかということはちょっと見当がつきかねる次第でございます。
  133. 八木昇

    八木(昇)委員 これは実際に労働者は、特につぶれるような炭鉱労働者は非常に困っておる。そういう状態を一年も二年も続けた上につぶれる。しかも中小炭鉱の場合には御承知の通り相当年令の高い労働者の方が多いわけです。しかもそれらの方々が住宅も追われる。実際に電力会社が電気をとめますから、住宅はみなろうそくなんかをつけておる。ところがろうそくをつける金もないので、つぶれた山の炭住の夜はまっ暗です。こういうふうな状態ですから、これは何らかの措置をして、そうして一カ月分などということでなくて、これは事業団を作って金を出すのでありますから、何らかの、もっと労働者に金が渡るような措置が講ぜられないものか。八十億のうちわれわれの計算では五億くらいしか労働者の手には渡らぬと思う。なぜそういうことに原案がなっておるのか、事情をもう少し御説明願いたい。
  134. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは今申しましたように、退職金は各炭鉱実情によりまして非常にまちまちでございますので、その点は全然別にいたしまして、事業団から支払います離職金が大体三十日分で二万円程度になるのじゃないか、そういたしますと二万七千人でございますから、今お話がございましたように五億くらいになるということでございますが、それはいわゆる離職料だけでございまして、そのほかに代位弁済でする未払い賃金も入る。それからもし整理の際に退職金も、関係者の間で話合いがつきますれば、別にそれは入るわけでありまして、八十億のうちで事業団から直接に労働者に支払う分が五億円でありますが、そのほかに未払い賃金の代位弁済の分なりあるいはその他の部分から退職金は別に出るわけであります。
  135. 八木昇

    八木(昇)委員 それは一月分だけでなくて、二月分、三月分にしたって、一向工合が悪くないじゃないですか。何か工合が悪いわけですか。
  136. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 これは今申しましたように、退職金未払い賃金も別に支払われておるわけでありますから、政府がこの事業をやるに際しまして、労働者が職場を離れるについてのいわゆる慰謝料というような性質のものでございます。普通の離職の場合と全然別に、政府の特別な施策によって払われるのだからという意味で支払うものでございますので、大体普通に一カ月分程度が適当だというふうに考えておるわけであります。
  137. 八木昇

    八木(昇)委員 そういうような実情から考えましても、失業して非常にせちがらい世の中にほうり出されていく労働者に対しては、血も涙もない措置であるというふうに実は考えざるを得ないわけであります。  そこで、それはそれといたしまして、次の問題を御質問申し上げたいと思うのであります。  将来の石炭需要の見通しということについても、極度にこれを内輪に見積って、この際やっていけないような炭鉱はつぶしてしまわなければいけないというような結論を無理につけて、これを救済し、拡大生産の方へ持っていくという方向をとらないで、この際弱小炭鉱をつぶして大きな資本にこれを集中して、しかも大資本についてのみ政府資金を三百二十億も出して、縦坑開発その他をやっていく、こういうふうなあり方に問題を持っていっておるように私どもには見えてはならないわけです。将来の石炭消費の見通しというものが非常に内輪に見積られておるのではないかというような疑いは、電力の食うのであろう石炭消費についても明らかに出ておると私は思う。そこでそういう点から若干お伺いをいたしたい。今度の五カ年間の電力の消費する石炭の消費見通しについて——本日は公益事業局長がおられませんので、両者の意見を聞くことができませんが、今後五カ年間の電力需要の増加の見込みを大体何%ぐらいに見込んでおられるか、お伺いしたい。
  138. 齋藤正年

    齋藤(正)政府委員 この電力用の石炭の需要の数字でございますが、この算定につきましては、公益事業局の方の計画に合せて、火力の発電量の計算数字をとっておるわけでございます。ただわれわれの計画は、これは三十年度についてもそうでございますが、実は二十九年度におきまして公益事業局の計画をそのままとりまして、それが実際は消費量におきましては二百万トンもの差が生じまして、二十九年度の炭界混乱の非常に大きな原因の一つになったという事実がございましたので、われわれは確実な需要の見積りをする方が計画としては混乱を起すおそれがないんじゃないかと考えまして、出水率は若干の豊水、大体われわれの考えでは四%ぐらいの豊水であるものと見込みまして、石炭の消費量を計算いたしたわけでございます。この辺は要するに、お説のような御意見ももちろん成り立つと思いますが、従来需要の過大見積りということで非常に炭界の混乱を起しましたので、あまり実情と遠くないという限りにおいて、どちらかといえば控え目に見積る。実際昭和二十九年度も八%ぐらいの豊水になっておりますが、三十年度は四%程度の豊水というふうに、いわば従来の実績との中間ぐらいのところをとりまして計画したわけてあります。
  139. 八木昇

    八木(昇)委員 今の電力の問題ですが、電力関係のどの専門家に聞いても、ただいま石炭局長の言われたような平水年プラス四ないし五%というようなことはおかしいと言うのです。それで御承知の通り電力の場合、平水年値の最近十三カ年の実績をとっているわけです。その十三カ年のうち、出水の一番多かった年度と一番少なかった年度の二つはのけてあるわけです。そうして残りの十一カ年の平均をとっているわけです。しかも最近数カ年間の豊水時期も含めて平均をとっているわけですから、電力関係の専門家に聞くと、全部、そんなことは絶対にありませんと言うのです。四ないし五%の上を今後五カ年全部とるというようなことは、そんなことは絶対ない。そういう点において非常に山をかけたところの見込みであると断定せざるを得ないと私は思うわけです。  そこで最後に一つだけ、大臣にお伺いをいたしておきます。これは企画庁とも関係があるわけですが、日本の包蔵水力というのは、御承知の通りに最大限二千万キロワットと言われておる。これを漏れなく百パーセント開発したところで、今日の人口一人当りの電力消費量にこの二千万キロを直しますと、今日、ただいまのフランスの人口一人当りの電力消費量とイコールにしかならない。包蔵水力全部開発したところで、今日ただいまのアメリカの人口一人当りの電力消費量の二分の一にしか当らない。ですからこういうことを考える場合に、将来の火力建設の重要性というものは加速度的に高まってくるわけで、これによるところの石炭消費というような問題についていかなる見解を持つかということが一つ。  それからもう一つは、コマーシャルベースとか、外国の石炭価格とつり合わせなければならぬというようなことを言ったところで、日本においてはそれはできっこない相談である。それは米やその他を外国のものと比べても同じことである。だからこそ、採算からいけば合わないのだけれども政府は百億からの金をかけて石油の特殊会社を作ろうとしているのですが、こういう国内産業の発展を期すことのために、小手先のやり方でなく、もっと積極的にやる考えがあるかどうか、この二点をお伺いしておきます。
  140. 石橋湛山

    石橋国務大臣 お説のように、将来の経済をどれほど発展させるかという問題にかかるわけでありますが、日本のエネルギー消費が現状のままにあるとは思いません。またあってはいけないので、これは経済六カ年計画数字よりももっと大きいところへ持っていきたいというのがわれわれの希望なんであります。でありますから、その意味においては、電力二千万キロの開発ということも、経済的に見たらこれは困難でありましょう。従って、ほかのエネルギーに頼らなければならぬ。石炭もある程度はできましょうが、石炭もやはり限度があるではないか。そういたしますとやはり石油とか、そのうち原子力というものも出てくると思うのであります。ですから、石炭の需要量も今日考えるよりもっとふえるだろうということが私どもの想像であるし希望でありますが、しかしそうかといって、先ほどお話のように、今の電力の豊水の問題を、石炭の需要が多いということから楽観的に見て計算することは、当面の需給の問題として、過去一、二年の経験によりますればずいぶん痛い目にもあっておりますから、そういう点で幾らか警戒的な計算をしているわけであります。大局的としてはお話の通りに考えているわけであります。  それから、日本の資源を開発しなければならぬ、これはもう言うまでもございません。ですから、資源開発には十分の努力をいたしたいという考えでございます。
  141. 田中角榮

    田中委員長 残余の質疑は次会に継続することといたします。次会は明二十二日午前十時より開会することとします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時六分散会