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加藤(清)
委員 ただいま上程せられておりまする
繊維製品品質表示法案につきまして、私は
各派共同提案になりますところの、
繊維製品品質表示法案に対する
修正案を上程したいと存じます。
まず最初にその
修正案の
案文を朗読いたします。
繊維製品品質表示法案の一部を次のように
修正する。
第五条第二項第一号中「
罰金以上の」を削る。
第十二条中「一年以下の懲役又は十万円」を「二十万円」に改める。
第十四条中「
罰金刑」を「刑」に改める。以上でございます。
この
修正案を上程するに当りましては、
各党各派ともに
慎重審議を重ねました結果、ここに完全な
意見の一致を見た次第でございまするが、これにつきまして私はこの際
政府に要望すると同時に、その理由の一端をここに申し述べて
修正案上程の弁にしたいと存じます。
まず第一番に、私どもがこの
法律を審議するに当りまして、特に考えなければならなかったことは、すでに
品質表示は
使用者の便益のために行われている事実もありますが、それでは不十分であるとしてこの
法律が作られたのでございます。
製品の
品質の
表示は、すなわちこれを作る
メーカーの
純粋度の
表示でもあるのでございまして、この法がなくてもすでに
表示が行われているものが多いのでございますが、この
法律がいかに規制いたしましても、なお
表示を行うことのでき得ない
品物もまたあることを知らなければなりません。ところがこのでき得ないものに対して
刑罰を行うということは、あまりにも苛酷に過ぎるのではないか。
刑罰は
不正者に対する制裁であると同時に、
犯罪予防の手段として
立法者が持つ
最後にして最悪の道具であるのでありまして、かしこい
立法者の数多くとらざる道でございます。いわんやこの
法律は、
教育法であり
指導法であるゆえに、初歩においては当然のこととして
指導がよく行きわたるまでは厳罰で臨むべきではないと考えるのでございます。この
意味におきまして、
メーカーないしは販売する者が
表示を行おうとしても行い得ないもの、すなわち材料が
雑繊維で識別や
品質の
表示が困難なゆえに、
表示しようという意思はあってもこれができ得ないものがあるのでございます。たとえば
太番手の
製品の
毛布であるとか
オーバー生地であるとか
婦人子供服地、
メリヤス等がそれでございます。また
繊維を混合させることによって
品質を向上させることができる
品物がございます。これを
表示することは
純毛、純綿にノスタルジテを抱く
国民にいたずらな
混乱を生ぜしめるのみであります。たとえて申しますと、
純毛の
毛布と申しましても、縦糸はほとんど綿糸でできておるのが定石でございます。
コール生地は絹を一〇%加えることによって、その
品質を向上させているのでございます。ウーステッドの
しま糸しかり。夏の
ポーラ生地のごときは、三割以上これが加えられておるので、ございます。
婦人子服地の
飾り糸またしかりでございます。
また第三点に、
既成服にした場合に、
表示が非常に困難になるものもございます。それは御承知の
通り、
婦人子服地の
既成服のごときは、今日の
流行を追わなければなりませんが、その
流行は必ずしも一色の
生地で服を作るということではございません。数多くのきれを取り合わしてデザイナーが作るというのが、今日の最も先端を行くものでございまして、これを
表示せんか、一着の服に十色くらいの
表示をしなければならない。こういう結果が生じて参ります。また
学童服その他
裏毛服、それから
婦人子服地、その
婦人子服地をとりまぜて作った服等々でございます。こういう次第でございまするので、私は
最後にここに申し上げておきたいことがございます。
繊維の
歴史は非常に古いのでございまして、
言語的転化となり、これが常識化されている面があるのでございます。ときにこれが固有名詞とも相なっておるのでございます。綿で作っても
毛布というのでございまして、綿布とは言いません。また
綿繊維をかき立てることを起毛と称しまして、この起毛されたものが
メリヤスの裏にほとんど使われておる状態でございます、
裏毛シャツというのは決して毛ではございません。これは常識でございます。ナイロンで作っても
ウーリーと申しますごとく、毛と毛を混合することを
混綿という場合もございます。毛に
スフを加えることを
混スフといわずに、
混綿という場合もございます。
以上のごとく、
繊維業界は
言語に
転化を生ずるほど
歴史は古く、呼称の示す文字の
意味と
品質が異なるほど多岐多彩にわたっておりまして、文化の
発達を
意味するものであり、すでに
無形文化財となっているものもあるようでございます。しかも化繊の
発達は、
繊維の素材のみならず、その
製品を一層複雑化して参りました。このゆえに
一つの単純な
法律によってこれを規制し、ないしは
単純表示化をしようとすれば、無理が生ずることは当然でございますが、この無理が
業界を
混乱に陥れ、やがて
国民に誤った
表示を押しつける結果になることをおそれるものでございます。
要は適時適当な方法を行うことによって、
国民が適当な
品物、好む
品物をより安くよりよく買える、こういう制度の一里塚として、この
法律が適用されることを切に切望いたしまして、私の
修正案の
趣旨弁明にかえる次第でございます。