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1955-07-08 第22回国会 衆議院 商工委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月八日(金曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 田中 角榮君    理事 首藤 新八君 理事 長谷川四郎君    理事 山手 滿男君 理事 内田 常雄君    理事 前田 正男君 理事 永井勝次郎君    理事 中崎  敏君       阿左美廣治君    秋田 大助君       小笠 公韶君    齋藤 憲三君       笹本 一雄君    中村庸一郎君       野田 武夫君    森山 欽司君       加藤 精三君    鹿野 彦吉君       神田  博君    小平 久雄君       篠田 弘作君    堀川 恭平君       村上  勇君    加藤 清二君       片島  港君    櫻井 奎夫君       田中 武夫君    帆足  計君       八木  昇君    伊藤卯四郎君       佐々木良作君    田中 利勝君       松平 忠久君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         通商産業政務次         官       島村 一郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (通商局次長) 大堀  弘君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川上 為治君  委員外出席者         参  考  人         (三菱レイヨン         株式会社社長) 賀集 益蔵君         参  考  人         (第一物産株式         会社業務部次         長)      堀井 清章君         参  考  人         (関谷産業株式         会社東京支店         長)      新保 英一君         参  考  人         (早稲田大学講         師)      堀江 忠男君         参  考  人         (全日本中小企         業協議会貿易専         門部会長)   山下 保市君         参  考  人         (東京教育大学         教授)     楫西 光速君         参  考  人         (日本綿糸布輸         出組合常務理         事)      長谷  稔君         参  考  人         (帝国石油株式         会社会長)   鮎川 義介君         参  考  人         (帝国石油労働         組合中央執行委         員長)     加藤  勇君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ――――――――――――― 七月八日  委員片島港君及び多賀谷真稔辞任につき、そ  の補欠として櫻井奎夫君及び佐々木更三君が議  長の指名委員に選任された。 同 日  佐々木更三君辞任につき、その補欠として多賀  谷真稔君が議長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月七日  石炭鉱業界不況対策確立に関する陳情書  (第三〇九号)  同(第  三九〇号)  中小企業金融に関する陳情書  (第三一〇号)  横浜繊維品検査所川俣支所を本所に昇格等の陳  情書(第三一一号)  石炭鉱業合理化臨時措置法案の一部修正に関す  る陳情書外三件  (第三四二号)  川崎市臨海工鉱業地帯整備促進法制定に関する  陳情書(第三八五  号)  只見特定地域総合開発促進に関する陳情書  (第三八六号)  都市にガス施設拡充に関する陳情書  (第三八七号)  石炭鉱業合理化臨時措置法制定反対に関する陳  情書外二件  (第三八九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  輸出入取引法の一部を改正する法律案について、  参考人より意見聴取石油資源開発株式会社法案  並びに石油及び可燃性天然ガス資源開発法の一  部を改正する法律案について、参考人より意見  聴取     ―――――――――――――
  2. 田中角榮

    田中委員長 これより会議を開きます。  本日はまず輸出入取引法の一部を改正する法律案を議題となし、御出席参考人各位より御意見を伺うことにいたします。御出席参考人の諸君は、三菱レイヨン株式会社社長賀集益蔵君、日本毛織工業協会常務理事高好一君、第一物産株式会社業務部次長堀井清章君、関谷産業株式会社東京支店長新保英一君、早稲田大学教授堀江忠男君、全日本中小企業協議会貿易専門部会長山下保市君、東京教育大学教授楫西光速君、日本綿糸布輸出組合常務理事長谷稔君、以上八名の方々であります。  申すまでもなく輸出入取引法は、貿易基本法としての役割を果すものであり、わが国貿易の消長は本法いかんにかかっているとも申せるのであります。今回政府輸出貿易において過度競争を防止することを目的といたしまして、輸出業者協定締結に関する制限の撤廃、輸出貨物生産業者または販売業者協定の認容、輸出入組合創設等を内容とする大幅な改正案国会に提出いたしたわけでありますが、その及ぼすところ、貿易業界はもとより、ひいてはわが国経済影響を持つものであります。巷間種々論議のあるところでもあり、本日は貿易業界方々並びに学識経験者方々に特に御出席を願いまして、本案について忌憚のない御意見を承わろうとするものであります。御意見御開陳の時間はおおむねお一人十分程度にお願いすることといたし、その順序は委員長におまかせを願いたいと存じます。御意見御発表後、委員の側から種々の御質疑もあろうかと存じますので、あらかじめお含みの上お願いいたしたいと思うのであります。  では最初賀集参考人にお願い申し上げます。
  3. 賀集益蔵

    賀集参考人 私はただいま御指名にあずかりました賀集でございます。紡績及び化繊業参考人としての御意見を申し上たいと思うのであります。  戦後十年を経まして世界貿易自由化方向が明らかになりまして、その結果輸出のための国際競争はさらにいよいよ激しさを加えた次第であります。このときにあたりまして、貿易立国を建前とする日本の最も重要なる輸出産業として、繊維産業戦前にも増して大きな役割を果している次第でありますが、その実情をつぶさに検討いたしますときには、実に寒心にたえない点が多々ございます。すなわち現状におきましては、繊維品の場合は国内における過度競争の結果、輸出市場安売りとなって、これが海外の非難の声が大きく、反響を与えている次第であります。ことにはなはだ遺憾なことは、日本ガット加入交渉に際しましても明らかに障害となっている点があるのでございます。今にしてこの安売り品質粗悪化を防止する根本的対策を樹立しなければ、いたずらに米英その他海外需要国や、あるいは競争国から指弾されて、わが国が積年の努力によって築き上げたる貿易産業は全く後退の余儀なき事態に至るのではないかと思います。ひいては国運の将来にも重大なる暗影を投ずることにもなるわけであります。  ここにおいてわが国繊維品輸出貿易実態について申し上げますならば、まず第一に、輸出業者生産業者は完全に表裏一体となることが一番大事なことであります。第二番目には海外競争者を相手にして最も機敏に迅速に商機をとらえなければならぬという、この二点が一番肝要だと思うのであります。しかも前にも触れましたような過度競争は、今日では輸出商と同様に生産業者の間にも熾烈な競争になりまして、安売りとか、あるいは品質粗悪化とかいう傾向は、むしろ私として申し上げるのははなはだ遺憾でございますが、生産業者にもあるとさえ言えるほどであると思うのであります。これは多くの場合輸出実態生産者の意思によって決定されることが多く、輸出業者は単にコミッションを得て海外輸出する実務を担当するという役割にすぎない次第であります。この点一般的の理解がはなはだ不徹底のように思われるのでありますが、従来の輸出取引法においては全く輸出業者のみの立場考えられているために、この肝心な生産業者ということは考えに入っていないために、はなはだその実効は上らず、今次法案につきましてもなお不満な点が多いのであります。われわれ繊維生産業者は、現在国会において審議いたしておりまする輸出入取引法改正案に対しては、先ごろすでに業界意見を具申して参った次第でありまするが、今までに申し上げました根本的な考え方に即しまして、具体的な意見を申し上げたいと思うのであります。  本国会において審議される取引法改正は、生産業者協定については、一歩を進めたかの考えになっております。その趣旨は大へんけっこうでございますが、本来一体であるべきはずの輸出業者生産業者との輸出取引に関する活動を、法律的なしゃくし定木によって、輸出波打ちぎわから外は輸出業者のみの届出制によって、協定を認める改正案でありながら、波打ちぎわの内側である生産業者の場合は、同一の輸出貨物を取り扱うにもかかわらず、きわめて限定された条件のもとに、しかも段階的にこの制約や認可制をとるという差別的な協定を認めることは、商機を第一とする輸出取引実態にはなはだ不適当なものであるとわれわれは考えておる次第であります。  さらにまた輸出業者生産業者と、輸出のための国内取引について協定締結する場合には、輸出美者の側からのみ発議し得るように規定されておりますが、生産業者は個々にしか輸出業者と結び得ない、つまりくまで式にひっかけるような取引状態でありまして、かような改正案ができております。これらの要点については、生産業者国内販売業者が、輸出すべき貨物国内取引を行う場合においても、輸出業者波打ちぎわから外に向って協定締結する場合と同等の条件協定し得るように、ぜひ改めていただきたいと思うのであります。その他アウトサイダーについても、輸出業者の場合と同様の規定が絶対必要と考えておる次第であります。  以上述べました点につきまして、具体的な問題を逐一御説明するのでございますが、そのうちの四、五の代表的な問題についてここに例をあげますから、われわれの主張するところをよく御了解願いたいと思うのであります。  この例といたしましては、パキスタン向けの過剰綿加工輸出問題でございますが、最近パキスタン向けの過剰綿加工輸出問題について、政府取扱い商社を数十社に制限する意向であるかのごとくでありますが、本件のような加工貿易の場合には、交渉の実質的な主体は紡績者であるから、価格の決定に当りましては商社窓口制限や、商社協定だけでは絶対意味をなさぬとわれわれ考えるのであります。ですからこの際ぜひ紡績業者価格協定を認めることが、国際交渉上最も有力であると考えるのであります。  次にパキスタン一括買付の場合の例でございますが、また加工輸出の場合でなくとも、一昨年より昨年当初にかけて、パキスタン日本綿布一括買付を行なった場合のごときは、日本側輸出組合窓口商社を選定したが、その窓口商社が弱体のために、買いたたかれた例があるのでございます。紡績業者が頑強に安売りを拒否したために、パキスタン側も譲歩したのでございますが、このような場合に紡績業者価格協定があれば、交渉は一そう有利に運ばれるのじゃないかと思うのであります。  次に堅牢染めの問題でありますが、堅牢染めと申しますのは、その綿布及び化繊織物染色が、洗たくや太陽熱のために色があせない、堅牢な染色の問題であります。この染色堅牢度向上は、加工綿布及び化繊織物輸出についての世界的な傾向でありますが、特に従来普通色下級綿製品輸出の多かった日本製品においては、堅牢度向上は今後の加工綿布及び化繊織物輸出振興上に最も重要な問題でございます。従って南ア連邦とか、あるいは豪州、ニュージーランド、カナダというようなところは、堅牢度の最も高いのを要求する市場に対しましては、普通の染色による輸出を禁止いたしまして、堅牢染め輸出をはかることは緊要な問題であると思うのであります。こういうことは商社だけの協定では実行は不可能でありまして、生産業者協定商社協定とが並行して初めてこの実効実現するのであります。  もう一つは、バンコック向けキャンブリックの問題でありますが、さきに輸出商社の間にバンコック向けキャンブリックについては、安売り防止協定が希望されてきたのでございます。かりに商社間の協定ができましても、業界実情では、商社としてはせいぜい取扱いコミッシヨンつまりマージンについての協定はできるのでありますが、チェックプライスの維持についての有効な協定はとうてい不可能であります。この点から考えまして、紡績会社販売価格協定をしない限り、商社だけでは価格協定をしても効果がないということが痛切に感ぜられた例がございます。  次はリベートの問題でございますが、現在安売りチェックプライスによって防止せられることになっておるのでありますが、実際にはチェックプライス以下で輸出する場合には、リベートの形がとられておるのでございます。こような商社チェックプライス制をくぐっていく安売りは、生産者価格協定によって商社への安売りを維持する以外に有効な対策はないと思うのであります。  次に新市場開拓でございます。新市場開拓につきましては、少数の窓口商社をきめることが必要であると同時に、輸出価格も新市場に進出可能な価格で売り込むことが必要でございます。これらはいずれも紡績業者とか、あるいは化繊業者共同行為がなければ、商社協定だけでは実現が不可能でありますから、これもやはり商社生産業者との並行的な立場にあるということは明らかに立証しておる次第でございます。  次に人絹輸出でございますが、昨年の秋中共向け人絹輸出の話がございました。輸出業者協定締結を試みましたが、生産業者の方では協定が従来の法律では封ぜられたような形になっておりますので、この実現ができません。これがためイタリアに大部分の輸出をとられたという実例がある次第でございます。  インドは世界における最も大きな人絹市場でありまして、輸入側一括購入をするために、最近では常にイタリア生産業者一手輸出機関によって、われわれの販路を奪い表られた例もございます。これらに対抗するにはメーカー自体協定が迅速に締結できるようなことは、絶対必要であるとわれわれは感ずるのであります。  以上わが国貿易振興わが国経済に重大なる要素でございますから、われわれの切なるこの希望をぜひ御参考としてお取り入れをお願いして、私の話を終りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  4. 田中角榮

    田中委員長 次に楫西光速参考人にお願いいたします。
  5. 楫西光速

    楫西参考人 楫西でございます。時間が限定されておりますので、結論を大ざっぱに申し上げたいと思います。何分突然のことでございますし、検討がよく参っておりませんし、取扱いの面も私の方は業者の方ではございませんので、具体的なことをいろいろ申し上げることはできないかもわかりませんが、一般的な方向で私の考えを申し上げたいと思います。  本法案趣旨は、これはよくうたってございますように、いわゆる輸出業者相互間の過度競争排除、それによりまして輸出取引秩序確立をする、そして国際信用の保持をはかっていくそれによって貿易振興をはかっていこう、こういう点でございまして、大へんけっこうなことでございますが、しかしそれに入ります道筋、それがいろいろの点において問題があるところじゃないかと思われます。   〔委員長退席山手委員長代理着   席〕 まだこれでは不徹底である、もっといろいろ、いわゆる統制を加えていかなくちゃいけないというような御意見もあるようでございますが、その過度競争排除ということを、今度の法案の場合のように、輸出業者輸出取引について協定を結ぶことを原則的に自由とし、また国内取引につきましても協定を結んでいく、またそれが生産業者等につきましても、あるいはそれとの国内取引につきましても協定を結んでいくということを認めております点は、法案逐条審議の場合の説明にもございますように、いろいろそこには考慮を払ってございます。たとえば協定を結ぶ場合には十日前に届出をする、あるいは国内取引協定を結ぶ場合には認可を必要とする、あるいは生産業者等協定の場合においては、必要な最小限度ということをうたってございますが、しかしその説明の中にもちらほら見えておりますように、あるいは一般の消費者の利益を害するおそれがあるのじゃないか、あるいは経済的な弱者を圧迫するおそれがあるのじゃないか、あるいは独占の弊害がそこに見えるのではないか、そういうようなことを提案者みずからでございますか、いろいろ心配をしておいでになるようでございますが、そういう点がどうしましても——法律としてできました以上、いろいろそこに限定がございますが、その限定をこえまして、法律が独走的に走って参るということは、これはいろいろの場合の事実だろうと思われます。そういう点においてよほど考慮を払っていただきたい。むしろこれは、ある意味においてはやはり行過ぎじゃないか。なお次にあります輸出入組合の問題に関連しまして、これは補充的というようには説明されておりますが、アウトサイダー規制というようなことがございます。アウトサイダー規制命令というものが発せられる。そういうようなことになって参りますと、よけい官僚統制と申しますか、そういうところに入り込みやすい。これは輸出取引法輸出入取引法、それからだんだん現在の改正を行われて参ります一つの線を表わしておると思う。全体といたしまして、戦後の日本経済がいろいろな意味におきまして開放されたところから、だんだんと規制されていくというようなところに、やはりその線があるのじゃないか、こういうように思われます。結局のところ今度の法案が、最後におきまして独禁法適用除外ということをしなくちゃいけない、独禁法を緩和して、それをやらなくちゃいけないというところまで、現実にそういう結果を予定をしているということになりますか、結局戦後だんだん進みつつありますところの銀行、メーカー商社、その系列化ということがどうしてもここに進んでくるのじゃないか。この系列化でなければ、貿易統制ができないというお考えがあるのではないかと思われますが、その系列が弱小の中小経営に及ぼす影響考えて参りますと、どうしてもこれは軽々に付することはできない。中小企業の問題、中小経営の問題は、いろいろな方面から説かれておりますが、この面からも大いに考えていかなくちゃいけない問題じゃないか。特に官僚統制というようなとこまで入って参りますと、そこにいろいろな意味におきまして、弊害が生じる可能性が多分にあるのではないか、こういうように考えられます。今度の問題は特にそういう一つの線を出します。これは諸外国の例にもいろいろあるんだそうでありますがしかし現在の日本情勢から見ましてどうしてもその方向ということを大いに考慮してやっていかなくちゃいけないのではないか、こういうように考えられます。今度の場合におきましては、法案の極官を最も端的に表わしてきますものといたしまして、輸出入組合というものを創設する、こういう趣旨が最も大きな問題ではないかと思われます。これは法案にもございまするように、中国をおもに考えておる。中国とインドネシアということなんでございますが、中国について特に大きな問題が起っておるし、またそれが論議の対象になっておるようでございます。戦後中国との貿易が大へん縮小されまして、これをどうするかということが大へん大きな問題ではないかと思われます。これをこのままでけっこうだというような考え方もあるかもわかりませんが、どうしましても戦前状態考えていきます場合に、やはりそれについて大きな考慮をしていかなくちゃならない。特に中小企業中小経営というものを考えていきます場合に、これを軽々に付することができない、こういうような問題があるのではないかと思われます。戦前と戦後の情勢というものはずいぶん変っておりまして、たとえば戦前には消費財が中心であった、戦後には生産財ということにだんだん移りつつあり、またいろいろの障害がそこに起ってきております。現実にあるということは考えられますが、それをどうしても育成していかなくちゃいけない、こういうことが大きな要点ではないかと思われます。育成していくかいかないか、こういうことはあるいは問題になるかもしれませんが、ともかく私どもとしましては、育成をしていく、そうして特に中小企業の場合、中小企業業者方面からの要望が多々ありますように、この方面開拓ということが大へん大きな問題になるのではないかと思われます。それもなかなか軽々に付することはできませんが、今度の法案の場合に、この問題の解決をどういう工合にお考えになっておるかと申しますと、全国に一つ輸出入組合を置きまして、いわゆる窓口を一本化する——向うが一本だからこちらも一本にするというお考えらしいのですが、その一本化をやる場合、日本の場合には現実にその窓口ができ上っておるからそれを尊重したらよかろうという意見もございます。窓口一本化を現在の日本情勢において強行する場合におきましては、この場合にもやはり事業経営の利害というものがオミットされるという危険がかなりあるのじゃないか。たとえば組合員の資格は組合の定款できめるわけでありますが、過去三年間の実績できめていくということになって参りますと、現実の問題としていろいろ起っておるようでありますが、どうしても大きな商社というものがやはり大きな立場を占めるというようになるのじゃないか。それをいろいろ考えて参りませんと、かえってよく言われます中日貿易縮小化と申しますか、停滞、そういうことに結局落ちつくのじゃないか、ため直していくため方が大へん問題になるのじゃないかというように思われます。むしろ最初に申しましたように、中日貿易を大いに促進していくという考え方で出ていきますならば、そこに道がおのずから別に開けてくる。たとえば中国からの提案をどういうように受けますか、これはいろいろ問題があろうと思いますが、そこにいろいろ考慮すべき問題も出てくる。その中には支払い協定の問題、通商代表部の設置の問題、政府間の協商というところまで進んでいきたいというようなことがいろいろあるそうでございますが、そういう点に解決方向を求めていくのが、むしろ中日貿易を促進していく際の本筋ではなかかろうか、こういうように考えられます。それに関連していろいろな問題が出て参りますが、一般的に申しましてやはりそういう線が考えられなくちゃいけないのじゃないか。縮小よりもむしろそれを大いに促進して開いていく、こういう面がやはり考えられなくちゃいけない。その面におきましては、輸出入組合創設ということはかえってマイナスになるのじゃないかと考えられます。  あとアウトサイダーの問題とかいろいろございますが、一般的に申しましてこの法案が前の輸出入取引法改正という面を出しまして、大へん広範な改正を行なっていくという意図がどこにあるか、そういう点がはなはだ疑問ではないか。現在必ずしもこれをこういう形で早急に出すという必要はないのじゃないか。ごく遠慮して考えましても、そういうことになるのじゃないかと思います。そういう点において慎重に審議していただきたい。特に中小経営ということを考えてみる場合においては、法案一つ一つというものが大きな影響があるということを考えていただきまして、慎重に審議をしていただけばけっこうだと思います。
  6. 山手滿男

    山手委員長代理 次は長谷稔君。
  7. 長谷稔

    長谷参考人 はなはだ突然でまとまった意見を持って参りませんでしたけれども、今度国会提案されております輸出入取引法改正案は、今日本に三十四の輸出組合がありまして、それぞれ商品別に輸出組合を作っているわけですが、その連絡会におきましても、従来組合を運営した立場から、輸出入取引法をこういうように変えていただきたいというみんなの一致した意見もありまして、その線で改正案が出ているやに承知しておるのであります。先ほどメーカーの方からも言われました通り、輸出業者メーカーが一体となって協定をするというようなことをしなければ、なかなか協定の効果を上げ得ない場合が確かにあるわけです。しかし前の参考人も言われました通り、取引法自体を見る場合に、輸出業者生産者というものは、おのおの商売としての取扱いの分野がある。また力の差もありますし、独禁法を前提としてその範囲内で輸出入の取引のために必要最小限度の穴をあけるといいますか、そういうような建前をとって、不公正取引を防止して輸出秩序の確立という目的を持ったこの取引法の範囲内では、われわれとしては十分な改正をしていただいておるし、またこれだけの改正はぜひとも必要であるとして、改正案が一日も早く国会を通ることを期待しておるのであります。そういう意味におきまして簡単に私の意見を申し上げたいと思います。ただ生産業者から出ております、さらにこれを直すということにつきましては、法律案の十分な御審議に期待いたしまして、決して反対をするものではございません。その点を申し上げておきます。
  8. 山手滿男

    山手委員長代理 次は山下保市君。
  9. 山下保市

    ○山下参考人 山下でございます。この法案につきまして私の属する団体及び他の諸団体におきましていろいろ討議せられましたので、私の意見にはそれらの討議が反映されておるのであります。それを要約いたしますと、一、何ゆえかくのごとき法案が必要であるのか、しかして中小企業者はかくのごとき内容の立法の必要を感じていないこと。第二点は、この法案が実施せられて起ると予想せられます種々の結果について非常な危惧を持っているということであります。提案者や賛成者の方は、ダンピングの防止のためとか、中国が一本だから日本も一本でなければならないというふうに主張されているようでありますが、ダンピングにつきましては、昨年輸出がある程度伸びたのはダンピングが大きな役割を果していることを指摘しなければなりません。私はダンピングがよいと言うのではなくして、政府が補償制度によってダンピングを励ましているという事実を指摘したのであります。そうしてこの立法の結果ダンピングがかえって助長せられると思うのであります。すなわち大企業がカルテルによって国内価格をつり上げ、ダンピングに有利な基礎を確立するにかかわらず、ダンピングをなさしめた国内的、国際的環境が変っていないからでありまして、これは貿易の健全な発達の道ということはできません。次に、中国が一本だから日本も一本にすべきであるという主張につきましては、日本の現状にそういう考えが当てはまるかどうか、非常に問題だと考えます。それは中国市場は別としまして、日本では大企業と中小企業とは利害を異にする面が非常に多いし、民主主義の発育も不十分でありまして、無数の矛盾と相剋に現に悩んでいるのであります。このとき全国一本の組合と作ってもいたずらに一大混乱を惹起するにすぎません。  次に、中小企業者は、先ほどいろいろの方が言われましたように、主として対米貿易の面で値くずしに困っておる。そして何かよい方法はないかと思案しているのも事実でありますが、しかし中小企業者が最もきらうのは、戦時中の体験からして官僚統制であります。また広く全般的にカルテルを促進していくようなこと、いわんやそうした基調に立っての、しかも中国に対しての全国を通じての一個の輸出入組合の結成は、いまだかつて中小企業者が希望したことはないのであります。次に本改正案の特質を見ますと、輸出輸入のおのおのの面におきまして、業者間においてほとんど無条件協定が結べるようにしたこと。二、協定を届主義にして重加したこと。生産者もしくは販売業者協定締結できること。四、生産者または販売業者の間で協定を認めたこと。そして新たに特定地域すなわち中国に対して全国一個の輸出組合を作ること。最後に主務大臣の統制の範囲が拡大されていること。以上だと考えます。すなわち全体としてカルテル化の促進とその基調の上に立って特定地域すなわち中国に対しまして全国一個の輸出入組合が結成せら礼、主務大臣が非常に広範な統制権を持つことになります。私どもが本法の帆立の暁におきまして深く危倶します点は、第一、貿易縮小均衡の方向へいくことであります。すなわち本改正案の第五条第二項の第一号に、「外国政府又は国際機関との間に締結された条約その他の取極に違反するおそれがないこと。」という規定がございますが、これはココムの制限を撤廃しようとする中小企業者を初め、わが国民大多数の要望を阻止するような働きをするものだと考えます。そしてこれを対中国貿易の現状に適用されますと、ココム制限のために輸入超過になっておるので、制限を緩和ないし撤廃しないまま輸出額を基準として規律せられることになりますと、結局輸出縮小均衡となるのであります。  次にわれわれ危惧します第二の点は、ことに対中国貿易または東西貿易におきまして、大企業による貿易の独占であります。組合がもし民主的に運営されればという意見もありますが、民主主義の発育不十分なわが国におきまして、国際貿易促進協会や中日貿易会などの従来の自主的団体による貿易促進の過程におきまして、初めて不十分ながら民主的運営が育成されるのでありまして、この過程を無視して、にわかに官僚統制に持っていって、大企業の方に有利な態勢に持っていってしまっては、せっかくの民主的精神の芽を刈り取るのにひとしく、民主的運営などはとうてい考えられないのであります。今度の中国向け大豆の問題でも、抜けがけの功名をねらって暗躍したのは一部の大商社でありまして、吹付もまた実績五千トン以上という案を出しましたのは、七十八社の中十数社にだけ貿易を認めようとしたことに結果としてはなるので、民主的運営の期待できる根拠を発見できないのであります。また、組合という形はなるほど形式的には民主的でありますけれども、ての陰には中小企業者がいつも組合幹部の顔色をうかがって生きていっているという現状をよく認識していただきたいと思います。  第三点は官僚統制の問題であります。自主的な活動の中から不十分ながら自主的統制の芽が伸びていくのに、その部分的欠陥のために、あるいはそれを口実として官僚統制にすりかえることは、貿易の促進やその健全な発達、ひいては国民経済にきわめて有害でありまして、歴史の長い観点に立って常に民意を伸長していくという方向に立ってこそ実は最大な利益なのであるということを主張したいのであります。  第四点は、この立法によりまして私的独占の禁止に関する法律が骨抜きになるという点でございます。この点につきましては、資本主義は自然に独占の方向にいくものであって、それを禁止することは無理だという意見がありますが、この私的独占の禁止に関する法律は……。
  10. 山手滿男

    山手委員長代理 山下君に申し上げますが、参考人がたくさんあります。時間がございませんので、要点だけをかいつまんで簡単にお願いをいたします。
  11. 山下保市

    ○山下参考人 この法律は第二次大戦の結果中小企業が得た基本的な保護法であるにもかかわらず、すでに数次にわたって除外例が作られ、独禁法は一路解体化への方向へ向っている感がございますが、この法が成立しますと、本法による種々協定、実に広範にわたるところのそれらの協定が除外されることとなりまして、独禁法は事実上死文となると考えます。もし立案者が暗にこのことをねらっているのならいざ知らず、そうでなくて、中小企業に対する一片の良心の持主でありまた国民経済の安定について憂えるならば、かような内容の立法は直ちに思いとどまるべきであると一考えます。  最後に、今わが国におきまして何が一番大切であるか、それは貿易市場を広げるということでございます。サンフランシスコ条約の結果わが国が独立したといわれますけれども、実際はだれでも対米従属国としか思っておりません。諸外国もまたそのように評価しております。もし本法が最近問題となっておりますところのダンピングの損失補償制度にかえて、そのかわりに一部のものに貿易の独占利潤を与え、東南アジアに向っての計画的なダンピングを助長することとなり、また東西貿易の交流への努力を圧殺して、ひいては世界の平和を阻害し、貿易が全体としまして縮小して、ますます従属的な地位に入らざるを得ない結果を生じましたならば、ひとり中小企業者のためばかりでなく、わが国の将来のためにはなはだ悲しむものであります。以上。
  12. 山手滿男

    山手委員長代理 堀井清章君。
  13. 堀井清章

    ○堀井参考人 堀井でございます。私の所見を申し述べたいと思います。  現在行われておりまする輸出入取引法は、貿易の健全な発展を目的としまして、まず輸出取引の正しい秩序を立てるということのために、二十七年に制定されました。その翌年第一次の改正を見たのでありますが、あまりいろいろなことを考え過ぎたと申しますか、特に外国に対する反響を案じ過ぎましたきらいがありまして寸結果としまして、法の目的を達成するのにはなはだ不徹底なものがあることが漸次明らかになって参りました。具体的に申しますと、現存取引法のもとにおきまして、いわゆる業者協定というものも、現在ほとんど見るべきものがありませんし、また三十数個の輸出組合が設立されはいたしましたが、その多くは仕事らしい仕事を十分にしているという状態ではないのであります。従いましてせっかく法律は作られましたが、所期の目的を果していないというのが現状であります。言葉をかえて申しますと、法の期待する目的を達成するためには、こうもしたい、あるいはああもせねばならぬといったことが多多出て参りましても、現行法ではやれない。またきわめてやりにくいといったことが多くございまして、たといやりましても効果が上らないうこともあります関係上、どうしても再改正する必要があると痛感されて参ったわけであります。このような観点から今般の政府提出の改正法律案を拝見しますと、一通り従来の問題点をとらえておりまして、改善を期待しております。確かに一歩前進したものとしておおむね妥当と考えるのであります。従いまして私の意見といたしましては、結論を先に申し上げますと、この改正法律案に賛成するものであります。  個々の改正点に対する賛成の理由につきましては、お申しつけがございましたらその都度申し述べたいと思いますが、長らく貿易の実務を担当して参りました者がいつも悩まされておる問題、何とか手を打たなければならぬといつも痛感しておりますのは、過度競争をいかにして防止するかということであります。独占とかカルテルとかいう形態は、現在の日本経済状態では、特に対外取引におきましては、ほとんどその心配はないのじゃないかと考えますが、ある意味ではそんなに進んでいないと申しますか、一つ市場を左右いたしましたり、あるいは独占したりするほど実は実力がないのであります。ところがそ反面に過度競争にさらされておりまして、それも外国品との競争と申しますよりも、国内業者の間における競争によりまして、結果として国全体の対外取引における利益を阻害しております。また単にこちら側の利益を阻害しておるというばかりでなしに、相手国の輸入業者の利益を害しておりますし、現に外国商社日本品を扱いますと、値段も品質もまた供給数量におきましても、きわめて不安定でありまして、予想利益が得られなくなるばかりでなしに、しまいには自分の会社の信用にも影響すると申しまして、取り扱いをしないものもおるような次第であります。日本商社でもとかく輸入には熱心であるが輸出には不熱心の傾向があるとよく非難されるのでありますが、この原因もこの取引の不安定にあるのでないかと思います。きょう十ドルで買って、まだその品物が着かないのに、同じ品物に対して九ドルの値段をもし持ち込まれたり、またその九ドルでほかの商社がこれを買ったりいたしますと、売る方では大いに勉強したつもりでおるかもしれませんが、買い手の方では決して喜ばないのでありまして、前に買いました十ドルの分に対する損失の方を先に考えるということになるのは当然だと思います。そういうわけでございますので、よい物を安くするということはもちろん大切なことでありますが、現在多くの日本輸出品に関する限り、より大切なことは売り方をどうするかにあるのでないかと思います。換言いたしますならば、取引方法の安定をはかって、生産業者もまた輸出商にもまた相手国の輸入商にも、小売商にも、妥当な利益を確保するというのにはどうすればいいかということが問題ではないかと思います。現在わが国輸出産業の重要な部分を担当されております中小企業におきましても、この不安定のためにどれだけ不安な立場に置かれておることかわからないと思います。もちろん中小企業といえども、いたずらに国家の救済とか援助といったものを要求しておるのでなくて、要するに企業の安定性というものを確立して、その基盤の上に立ってみずからの努力を積み重ねたいと念願しておられるわけであります。その上過度競争というものは相手方にも迷惑を及ぼすものでありまして、現にアメリカ向けのミシンだとかカン詰、合板、双眼鏡いずれにおきましてもいろいろな問題が生じておりまして、中にはダンピング税を課すべしとか、あるいは輸入の制限をすべしとかいう議論が出て参っております。大体もうけ過ぎて文句言われるならわかるのでありますが、損をしておりながらあげくの果てが、やれダンピングだとかあるいは輸入制限だとかいわれては、全く立つ瀬がないのでありまして、知恵のない話だといわねばならぬかと思うのであります。よくばかな競争ということがいわれますが、過度競争弊害をだれでもよく認識していながら、取引の規範と申しますか、商売倫理と申しますか、そういった良識でもって解決できないとしますならば、やむを得ず法律によって規制するほかはないかと思われます。このようなわけで輸出入取引法が必要でありますし、また法律である以上、はっきりした規定によりまして、目的を達成し得るように改正される必要があるかと思うのであります。ただしいて申しますならば、さきにも申しましたように、わが国経済界の実力が回復しまして、将来いわゆる恒産ができまして恒心が失われるようになります。良識にまかせ得るなら目的の大部分がこのような法律を用いなくても行われるかもしれないのでありますが、また逆に申しまして、この法難を通して商売道義の高揚を期待するといたしますと、現在の法律は少しわかりにくいのでありまして、はなはだ読みづらいのであります。従ってそういう意味におきまして、いま少しわかりやすくしまして、一般に法の目的をよく理解し得るようにしたならばさらによろしきかと思うのであります。  最後に、この改正法案の各条項に直接関係はないかと思うのでありますが、運用の面におきまして次の二点に注意していただきたいと思います。第一は、実際に協定などを行う必要もないのにいたずらに組合を設立しまして業者に費用と時間のむだを負担させることのないように、行政的によろしくやっていただきたいということであります。第二は、組合の存在を基盤といたしましてこの法律の規定を変えて、あるいはまたいたずらに拡大解釈いたしまして、官僚統制を行うということのないようにお願いしたいということであります。  以上で終ります。
  14. 山手滿男

    山手委員長代理 次は新保英一君。
  15. 新保英一

    新保参考人 私は本日お呼び出しにあずかりました関谷産業の東京支店長の新保でございます。私の会社は名古屋に本社を持ち、東京、大阪、一宮、香港等に支店を持ちまして、毛織物を主として、ほかに農水産物、金属、軽機械、絹、人絹、雑貨等を取り扱っております商社で、農水産物、毛織物業界では一応名が知れておりますが、地方商社の関係上、皆さんの大部分の方には認識が薄いと思いますので、これを機会に今後の御指導をお願い申し上げます。なお当社は中京地区では一流といわれておりますが、貿易商社全体の面から見ますと中の上程度で、いわゆる中小商社立場から本件について、少しく卑見を述べさせていただきたいと思います。  本件に関しましては昨日急にお呼び出しでございまして、新聞紙上その他参考資料によって知り得た改正趣旨について、以下述べさせていただきたいと思います。結論を先に申し上げますと、希望条件を付して御賛成申し上げたいと思っております。  まず第四条につきましては、商社にとっては厳罰でございますので、実施に当りましては過失犯意等を十分御検討の上、慎重に行われんことをお願いいたしておきます。  第五条の一につきましては、資源の少い、人口の多いわが国経済の復興は、加工貿易を中心とした貿易立国以外にはないのでありまして、貿易振興はその第一線兵士たる貿易商社の育成強化が第一義であり、メーカーは兵站部で、重要ではありますが貿易戦ではあくまで第二線部隊であります。ところが戦後商社育成強化は、声は大でございましたが、具体策として何ら見るべきものがございませんで、従って商社に力なく、海外事情にうとく、売り込み技術を知らないメーカーが、かなりの部門において貿易の指導性を握っておりまして、メーカー自身の自己採算のみを基準として輸出価格をきめておりますので、国際価格海外市場の動きに関係なくメーカーがきめております関係上、不況になればたたき売りをするという状態のために、外国に足元を見られて、少し不況になると買いたたかれることが非常に多く、結果的現象のみを見る方には商社安売り競争をやるというように言われております。しかし先ほど申し上げました通り、戦後の商社経済力をもってしては、特殊の場合——いわゆる実績かせぎ等を考えられました場合を除きましては、自己の負担で安売り競争をする力はないといって過言でないのでございます。せいぜいあったところで三鬼の利益を一%に下げる程度のことしかできないのが、現在の商社の実力でございます。しかしこれとてもほめたことではございませんが、食わんがためにやむなく薄利多売主義をやっているのでございまして、従って第五条の改正による輸出取引協定が原則的に自由に認められるということは非常にけっこうなことと思います。但しその中にありまして、価格品質、意匠等の協定というのは有効と思いますが、数量の協定ということは、ややもすると割当等という問題が権利化する心配がございますし、それから法案にもあります通り、相手国との国際協定があった場合はその数量にとどまるということでございますから、それからまたうんと向うが買ってくれるものを何もこちらが制限する必要はないので、値段だけきめておけばよい。値段と品質において制限してどんどん売っていくことが商社としての務めじゃないか、こう思っております。但しこの協定の実際の作成に当りまして、先ほどどなたかからお話がございましたが、輸出組合内部における作成というのは、幹部商社の横暴ということがややもすると行われがちでありまして、この点につきましては監督官庁におかれまして十分御注意をなされ、監督指導及び蔭の声を聞かれることをこの際希望といたしておきます。  第五条の二の国内取引協定、第五条の三の生産者との取引団体協定にしても同様のことでございます。  第五条の四の生産者協定は、第二次的なものと説明してございますが、前述いたしました通り、貿易生産者協定から逆算してやるという貿易戦は、国際物価とのにらみ合せにおいて立っておる関係上、非常に失敗する公算が多いのであります。従ってこの協定は例外的にまれなる場合以外は認可されないように実施の場合にはお願いしたい、こう思っております。特に原局が他省であります農林物資については、官庁間の連絡及び意思疎通が不十分のことが多いので、特に御留意願いたい、こう思っております。  次に本法関係において、いわゆる実績主義ということが特に輸出入組合に強く取り入れられておりますが、一応の基準としての実績主義は当然と考えられますが、実績百パーセント主義あるいは実績万能主義でやられては、中小商社は商売量が漸減していきまして、自滅以外に方法がないのであります。従って中小商社の生存権維持という立場からは、少くも二割程度はまじめな中小商社が努力していけば働けるという活動範囲を実績の上に残していただきたい、こう思っております。これは皆さんも御承知の通り、今次大戦の完全統制の時代であっても、一割、二割の留保量というものがはっきりあったのでございます。まだそこまでは今度の統制——統制と申しますとおしかりを受けるかもしれませんが、この法律もそこまではいってないと思いますが、ただ実施面においてそれをよく留意されてやっていただくならば、賛成いたしたい、こう思っております。それから、もしそうでなくて、またこの貿易行政上に実績主義という仮面をかぶって中小商社を整理するというお考えならば、それはもう正々堂々と別な面で商社整理を考慮をお願いしたい、こう思っております。また事実貿易は、内外の商社との長い間の人的の関係、また商品において繊維、雑貨、農水産物のような群小のメーカーからできてきます物資については、必ずしも大商社に適したものではなくて、中小商社によって初めて貿易振興に資するところが多いものであります。なお、先ほどお話のありましたアウトサイダー命令及び承認申請の組合経由等について賛成いたします。  繰り返して申し上げますが、実績百パーセント主義の是正と、協定成立の際における組合幹部の横暴を十分監督していただくということを条件として、本案に賛成いたしたいと思います。以上をもって簡単でございますが終らせていただきます。
  16. 山手滿男

    山手委員長代理 次は堀江忠男君。
  17. 堀江忠男

    堀江参考人 堀江忠男でございます。皆様がいろいろとお話になりましたので、重複を避けまして簡単に私の感じましたこと、それも実務とは全く関係のない立場におりますので、ごく一般的なことでございますが申し上げたいと思います。  この輸出入取引法の一部改正案を拝見いたしますと、要点一つ輸出取引と関連するいろいろな取引についての独禁法の大幅緩和という実際上の効果をもたらすところがある点、もう一つはいわゆる特定地域の輸出入組合の設立、三番目がその両方に関連します政府統制の強化ができるような条項が含まれておる、こういう点であると思います。このような法律改正案がこういう形で出るということが全体の国際経済情勢の動き、それからまたそれと結び合せました国内経済のほんとうの自立の方向に沿うものであるかどうかを考えますときに、私にはどうもそれがはなはだ疑わしいと思うのであります。その点を申し上げます。第一の輸出業者輸出取引国内取引及びそれに関連しましての生産業者取引についての協定等々ができるという点、これは実際土はほかの方々も御指摘になりました通り、中小の貿易関係、それからまた輸出に関する生産関係の業者方々に非常に不利な影響を及ぼしはしないか、簡単に申せばやはり独占の強化という影響をもたらしはしないかという点であります。その点につきましては、この法律案のみならず、いわゆるデフレ耐乏予算ということがいわれるこれからの政府のいろいろな施策を拝見しますと、要するに優良企業を育成して輸出を強化しなければ日本は食えないのだ、そういうお考えからいろいろな一連の措置がなされておると思うのであります。それは一見しますとごもっとものようでありますけれども、輸出の強化ばかりをお考えになって日本経済が立ち行くかと申しますと、輸出の強化という措置をおとりになるために中小企業が非常に不利な地位に立ち、あるいは倒産し、また優良企業内部においても合理化によって競争力はつくかもしれませんが、そのかわりコスト下げによって購買力が押えられる、そういうことになりますと、結局国内市場縮小いたしますす。少くとも相対的に縮小いたしますから、国内では売りにくくなる、だからいよいよ輸出を強化しなければならなくなる。そういたしまして現在の国際情勢からいいますと、輸出競争はいよいよはげしくなる、そこに食い込むために国内市場を狭めていよいよ食い込んでいかなければならない、そういうところに入っていきはしないか、その点が心配だ、こういうわけでございます。   〔山手委員長代理退席委員長着席〕 従いまして現在のわが国経済自立ということを考えますときに、そういう方向だけで努力するのではなく、もっと総合的な観点から個々の施策が調整されて考えられなければならないのではないか、こう申し上げたいのであります。それにはもちろん中小企業の保護育成あるいはそれの協同組合化によって発展の道を探し求める、そういうことももちろん必要であります。それのみならずいわゆる優良企業あるいは優良商社、そういうものの自主的統制——自主的統制というと言葉は美しくございますが、それにまかせていいかといいますと、外国のことでありますけれども、アメリカの国防長官のウィルソンという方は、ゼネラル・モータースという世界一の会社の社長でありますけれども、ゼネラル・モータースにとっていいことはアメリカにとっていいことだ、こうおっしゃたのであります。そこの社長さんの主観ではそうでありましょうけれども、実際にはそうでないのであります。それと同じく自主的統制ということも、全国民の利益に資すると当事者はお考えになるかもしれぬが、実際は必ずしもそうであり得ないということが明らかなのであります。そういう意味合いでは全国民的な利害の観点から、優良企業、中小企業それからすべての商売の基礎になるところの国民全体の購買力の培養、そういうことを考えた上でないと、結局は優良企業だけを育成して輸出競争に首を突っ込んで日本はくたびれてしまう。私はそういう心配をするわけであります。それから第二点に移りまして、輸出入組合の設立の点でありますが、法案を拝見いたしますと、結局輸出入の均衡ということを非常に念頭にお置きになる。その結果今御承知のように中共貿易は多少の入超であります。これも均衡調整ということに重点をお置きになって結局は入超が少しあるから輸出の方をそれでかげんしよう、そういうことになりますと、時勢に逆行であると私は思うのであります。御承知のように中共貿易が伸び悩んでおるという唯一最大の理由は、やはり禁輸品目の統制であります。これは皆様に申し上げるのは釈迦に説法かとも思いますけれども、たとえば今の中共関係の禁輸リストによりますと、小型自動車の輸出は許されておるけれども、その部品は戦略物資として許されない。これは全くナンセンス、無意味であります。完成品は戦略物資でなくて部品は戦略物資だというのは、要するに部品を輸出できなければ完成品も輸出できなかろうから、輸出させまいということ以外に実効はないと思います。そのような統制に対していわゆる特認申請というような努力をもっともっと拡大していくということが本筋であるとしか私には考えられないのであります。その点では昨年の対中共輸出は、ちょうど昭和二十五年度と同じほどに金額は伸びておりますけれども、二十五年度には御承知のように輸出品目の約四分の三は現在の禁輸品目、鉄鋼製品その他であります。現在では二十五年に輸出されたものの約四分の一に当る、中共にとっては大してほしくもない品物を広げて売っておる、こういうわけでありますから、この禁輸リストをせめて対ソ貿易程度に広げるだけでも、ただちに大きな拡大均衡という方角が開けるのではないかと思うわけであります。それからまた国際経済情勢を見ましても、今までアメリカという国は非常に禁輸に熱心でありました。ところが一昨年、昨年、今年にかけてアメリカの貿易というものは日本、ドイツ、イタリア、フランス、イギリス等々に追い越されまして、それは絶対額は非常に大きくございますけれども、この一、二年アメリカの貿易額は少し減っておる。逆に今言った国たの貿易が伸びておる。それも一つにはやはりアメリカがソ連圏との貿易制限ないし禁止したことが逆に非常に響いてきておるわけであります。従って今度はそれらの国々の対米競争を緩和する意味でアメリカ自身が日本の中共貿易であるとか、それからイギリスその他の国々の東欧圏との貿易をゆるめねばならぬという世論が出ておるときであります。それからまた四巨頭会談が間もなく開催されまして、世界はやはり戦争よりも平和の方にどうしても向っていく。そうするとどうしても輸出競争が激化する。こういう時期には見通しとしましても、中共貿易の拡大ということは、日本の国民が努力すれば必ずそのワクが広げらる時期にあると思うのであります。そういう時期に私が拝見したところでは、非常に消極的な案をお考えになる。これは文面だけでは消極的とも積極的とも断言はできないようでありますけれども、今までの政府のおやりになったやり方を考えますと、どうしてもそういうふうになるとしか思われないが、これは困ると思うのであります。そうしてそのような輸出に関するカルテル化といいますか、それと輸出入組合の設立、この二つがまた政府統制で裏打ちされおるという形、こういう形は私はやはり賛成できかねます。反対でございます。そういう意味で結論的に申しましたならば、もっと内外情勢をお考えになって、もっと根本的に国内の購買力をふやすような方向で、そうしてドル依存の貿易を減らすような方向で万事お考えになる、そういうことをお考えになった方がよかろうと存じます。簡単でございますが……。
  18. 田中角榮

    田中委員長 この際申し上げます。高好参考人は急病のため欠席される旨の連絡がありましたので、御了承を願います。  以上をもちまして参考人各位の御意見の開陳は終りました。参考人方々に対し質疑があればこれを許します。小笠韶君。
  19. 小笠公韶

    ○小笠委員 私は簡単に楫西参考人、山下参考人堀江忠男参考人の三氏に対して御質疑をいたしたいと思うのであります。この三氏の供述は共通して今回提案されておる輸出入取引法の一部を改正する法律案が適当でないという結論の供述であったように聞くのであります。その理由とするところはいろいろございましょうが、まず基本的な考え方として、たとえば堀江忠男君の説によりますれば、貿易戦線を強化する前に他の国内経済施策を総合的に、かつ国民購買力の増強をはかることが先決であるべきだ、国民の購買力が増強してある程度の落ちつきを持った後にならば考えられるであろうがというような趣旨説明であったと思う。私は日本の現在の経済実勢から見まして、日本経済再建のために各種の総合政策をとらなければならぬということは同感であります。また何人もこれを否定するものではないと思う。その総合政策の一つとして現実日本貿易戦線における、特に輸出戦線における過度競争の事実は、われわれの国民購買力を不当に海外に流出しておるものとも考えられるのであります。この事実に目をおおうてこれはあとでよろしいと立論せられる根拠は何であるか、私はまずその点を堀江参考人に伺いたいのであります。
  20. 堀江忠男

    堀江参考人 今の御質問、とおっしゃるよりむしろ反論でございますが、私が国内購買力の培養ということを申しましたならば、実はこの改正法案そのものが逆にいえばそれに役立つのだというような御見解のように承わりました。というのは、現在のところ過度競争をしておるからそれを防止すればかえって国民がやせ細らないで済むのじゃないか、こういうような御見解のようであります。そういうふうに文面をとればなり得る、そしてまた過度競争がないとは私も申しません。けれども実際上の動きというのが、新保さんでしたかどなたかほかの参考人の方もおっしゃいましたように、現実にはやはり幹部商社それから有力企業、それと結びついている銀行、そういう系列で動かされるであろう、そうしますと今の御趣旨のようなよい意図というのが実際には実現しなかろう、そういう心配があるから——やはり総合対策がちゃんと示されておらない、総合対策というのは私がさっき申し上げました通り、総合対策として今までに出ておる考えでは、やはり輸出強化の方が先だ、そうすると耐乏しておれば今にうまくいくというような考え方しかありませんので、こういう根本的な考え方の上に立った総合対策ではどうも額面通りには信用できない、こういうふうな意味でございます。
  21. 小笠公韶

    ○小笠委員 参考人は現在の貿易戦線において、過度競争がある事実を認められておる、だが一方において有力企業と有力貿易商社の結合によって、ここに独占的な利潤をはかっておるものがある、これも一部事実だ、しかしながらこの一連の事実をもって全部がしかり、こう独断するところに、先生であられる参考人はもう少し公平にものを見ていただきたいと思うのであります。私は両面の事実を認めます。私はそういう意味におきまして、この改正法の運用の問題に当りまして、参考人意見は十分尊重すべきだと考えるのでありますが、運用の問題と法自体のねらいとの混同ということになりますと、理解が少し困難であります。  山下参考人にお伺いいたしたいのは、同様な趣旨でございますが、中小企業界は全然本法の改正を必要としないという前提のもとに議論を進められたようであります。この改正法の問題は全面的にいろいろ考えなければならぬ点がございますが、中小企業界全般として必要としないという独断は少し強過ぎはせぬか、特に一例は、どなたかもあげられたようでありますが、ミシンの部品の過度輸出、最近日本の新興製品として竹製品、釣ざおのごときものがどんどん出ていったのが、最近非常に値くずしをされておる、私どもの若いときに模造真珠が輸出一つの花形であった、それがだんだんに値くずしされて、御承知のような状況になっておる、こういうふうな事情もごさいますので、ただいまの冒頭の立論に当りまして、中小企業は全部この改正案を必要としないという強き御立論の根拠というものについては、忍は若干疑義を持つのであります。中小企業界には御承知の通り系列下にあるものあるいはそれ自体にあるものもございますので、ここらのところは公平なる分析の上に立って議論を進めていただきたいと思うのであります。従いまして私の伺いたいのは中小企業界全体としてここに一律に本法の改正を必要としないという御立論の理由を伺いたい。
  22. 山下保市

    ○山下参考人 お答えします。中小企業全般がこういう提案の内容の立法を希望するということと、値下げ価格の混乱で困っておるという事実がいろいろあるということとは別個な問題であると私も考えております。その混乱があるということは、私は先ほどの陳述でそれを前提として出発しておるのであって、中小企業者がこういう改正案を要望していないということを前提にして申し上げてはおりません。ただそういう事実がありまして、主として対米関係からそういう何が多い、中国の方にはそういう実例は少い、それで何とかそれの対策がほしいという声があるということは事実だが、このような改正案の内容を望んでいるとは思われないということを申し上げたわけであります。
  23. 小笠公韶

    ○小笠委員 今の山下参考人の御意見は、これは速記を見ればわかるのでありますが、あなたの最初の話の一言二言を取り上げたのですが、今の御説明で大体そういうつもりだということがわかりました。  そこで私は、時間がありませんので簡単に楫西参考人にお伺いしたいのでございます。楫西参考人の御意見は非常に抽象的でありまして、捕捉に困難をいたしたのでございます。概してお言葉はやわらかいようでございますが、本案は独占禁止法の骨抜きであり、その実施の結果は必ずや予定以上に走り過ぎるであろう、そしてそこに独占強化、弱肉強食といった言葉は悪いかもしれませんが、そういう事実が起りはせぬか、民主化に逆行しやしないかどいう趣旨の結論であったように思う。私はこの法律案の運用に当りまして、ある程度の注意を要することについては同感でございますが、この改正案が全然そういう方向にのみ意図されておるというふうにお考えになるのは少し行き過ぎではないかと思うのと、現実貿易戦線の認識から見て少くとも過度競争輸出戦線における過度競争に何らかの一つの手を加えなければならない、しからざればここに安売り競争になり、日本貿易というものはだれかのお話のように次第に縮小均衡の道をたどるおそれがあるという事実をお認めになるかどうか、この点だけ伺いたいと思うのであります。
  24. 楫西光速

    楫西参考人 お答えいたします。本法の運営と中にうたってあることとは違うから、運営についてお前は心配するが、そういうことはないだろう、こういうことなんで、これは私も大へん抽象的に申しましたので、あるいは水かけ論になるかもわかりませんが、これはごく一般的なことでは何でございますが、法律が今できますと、どうしてもそれが独走します。私少し関係しております中小企業安定法の場合も、中小企業が、法律が安定を考えておりながらなかなか安定しにくいというようなこともございます。これと何と一緒にするということはいけないことかもわかりませんが、そういうことを特に御注意を促していただきたい、こういうことなんでございます。それで結句初めに申し上げましたように、過度競争ということは、これは大へん困ったことで、これは日本貿易に初めからくっついて出て参ることなんで、これを何とかしなくちゃいけないということは大いに考えなくちゃいけないことだと思います。これが明治の初めから今までいろいろなことをおやりになりましても、ちっとも実が上っておりません。それを今度おやりになるということなんでございますが、これが実がどれだけ上りますか。それが上らない前に、何と申しますか、今申しましたような大いに行き過ぎになって、せっかくの中小企業というものまでなくしてしまうということになれば、かえっておやりにならない方が、少くとも慎重におやりになった方がいいじゃないか、こういう考えでございます。
  25. 田中角榮

    田中委員長 帆足計君。
  26. 帆足計

    ○帆足委員 いろいろ有益な意見を伺いまして参考になりました。そこで二、三の点を、今後の審議を慎重ならしめるためにお尋ねいたしたいと思います。輸出振興のためにこの法案は提出され、審議に付されているわけですが、輸出振興のための政策はいろいろありまして、この問題だけではないと思います。この組合法における一番の難点は、中小企業の利益が従来無視されがちであることと、それから新規業者の進出の道をふさぐ結果になりやすい。それはもう統制のすべてに通じての弊害でございまして、私は先ほど関谷産業の新保さんの御意見、まことに着実な御意見として拝聴いたしました。組合がややもすればボス化する。官庁が公正であるべきであると思いますけれども、なお大資本の圧力のもとに、御当人は公平にやっておるとお考えになっても、客観的には大資本偏重になる、それは今日の常識でございます。この常識を直すことが国民の議会のやはり役割でございますから、この常識で肯定されていることが間違っていることならば、これを直すことが私は必要なことであると思います。そこで新保さんにお尋ねしたいのですが、先ほど、価格品質等に対する打ち合せは、これは必要な場合もある、しかし数量に対する割当等についてはよほど慎重にしてくれないと困るという御意見がありました。従いましてこのためには組合が民主的にできており、少数意見、また資力の小さい人たちの意見も尊重するように風習つけられていなければならず、法律の上にもそれが明記されておらなければ、単にその運用にますというだけでは、従来の日本の醇風美俗からいって信用することは私はできないと思うのです。従いましてこの点をどういうふうに具体的にすればよいか、何かお考えがありますれば伺いたい。  それからもう一つは、これは審議の途中ですから政府委員からも一緒に一言おっしゃっていただけば業界参考になると思いますが、出資口数によって発言力が影響されるのか、それとも組合員はみな平等の発言権を持つようになるのか、その点についての御意見も承わりたいと思います。
  27. 新保英一

    新保参考人 御回答申し上げます。具体的の例について、私もこの業界に長くて、いろいろ考えておるのでございますが、今のところ、どうしたらいいかということを具体的に申し上げるまでにはいっておりません。それから法律的にどうするかということはなおさらしろうとでございまして、立法技術はわかりませんので、小笠さんあたりの方が詳しいのではないかと思っております。もう一つ、これは政府委員のお答えと対抗するのでございますが、昔は出資口数になっておりましたが、現在は大商社といえども、小商社といえども一つでございます。しかし実際には各組合理事会の決定したものはほとんど総会を通るのでございまして、理事会を構成するものは大商社でございます。そこのところをどういうふうに調整するかということ、それからまた総会でがちゃがちゃ言う人というのは一人か二人ございまして、やはりいろいろな商売がございますので、それで正面切ってけんかということが、どうも議会のようにはうまくできないのでございまして、そこら辺にどういう具体的な考えがあるかということは、むしろ専門の代議士の方にお考え願いたいと思います。ただその点がうまく行けば私はこの法律は必ずしも悪いとは思っておりません。それは先ほど申し上げた通りであります。
  28. 帆足計

    ○帆足委員 まことに率直な御意見の御開陳があってたいへん参考になりました。わが社会党は良識に富む党でございますから、私どもの発言や意見は保守党の諸君にも参考になることと、われわれ自負いたしておるような次第でありまして、この点は先ほど発言の同僚小笠議員も、保守党においても、こういう問題があるということは御了承下さると思うのです。  戦前ならばこういうことは放置しておいてよいのですが、戦後の組合において、今の新保さんのようなまじめな中堅的な業界の方が、やはり理事会というものはボス政治になりがちだ、総会へ出してみたところで満場一致でついきまってしまって、発言しようとする人も、ただ陰でがちゃがちゃ言うけれども、発言を控えるというのが業界実情である、私はまさにその通りであると思うのです。しかしそういうような日本であってよいのでしょうか。これは保守革新を問わず、小さなものには小さなものとしての生存権と妥当な発言力が認められるような形になってこその組合法でなければならぬと思うのでありますが、そのことは後ほどお尋ねいたします。  そこでもう一つ、これは堀井さんと賀集さんにお尋ねしたいのですが、今日中共貿易促進の一番重要なかぎはココムの打破です。これはもはや戦略物資ではなく、日本商品を圧迫するための商略物資になっておることは西ヨーロッパの世論が示す通りで、あまりにもひどい状況になっているのです。この重要なときに組合法の設立を急いで、一体現実に中共との取引について今日輸出入調整組合法を作らねばならぬ理由が、商品別に幾つあるでしょうか。考えられ得るものでは大豆の問題が多少ありますけれども、大豆は組合法によらずとも——これは別に政府に聞きたいと思っておるのですが、いかなる法的根拠かわれわれも存じませんけれども、ある統制がただいま行われようとしております。米、塩等については専売関係の指定商社制度がありますし、その他の商品にはある程度の背後のメーカーの自主統制も行われております。そうだとすれば急いで統制をせねばならぬ理由、また統制するために利益になる問題が幾つ残されておりましょうか。実業人というものは常に実際的でなくてはなりませんし、お考えのほどもございましょうから、賀集さんと堀井さんにお尋ねしたいと思います。
  29. 堀井清章

    ○堀井参考人 中共と日本貿易につきましては、実は先般の協定が行われますときにも、当該担当者であります業界の者がもっと中心になってやるべきであったにもかかわりませず、議員連盟の方にいろいろと御苦労を願ったというようなことになっておりますが、またその他任意団体がありまして、それらに現在国全体の利益のために御奔走を願っておるのであります。しかしながらこれらの任意団体におきましても、従来日本中国との間の取引関係を調整するために非常に力を尽してくれた、その功績は顕著なものがあったと私は思うのであります。しかしながら今回協定もできまして、これを運行いたします場合におきましても、先般の協商の途中で向うの申し出があったと仄聞いたしておりますが、日本政府の方で保障はこうしてもらいたいというような希望もあったかと聞いておりますが、何らかの国内法規に基礎を置いた団体なり、法人でありませんと、おのずから機能に限度がございまして、当該担当者は非常に熱心にやっておられるにもかかわらず、単にその人がエーブルであるからということだけではなし得ないという点もあります。従って今回輸出入取引法改正されますとともに国内法規に基いた一つの方針を作って現在の足らないところを補なっていくという意味において私はやはり任意団体というものの限界がここらあたりにできたのではないか。ただもちろん輸出入組合を作りましても、これの運用ということにつきましては非常にむずかしいのであります。従って現段階では輸出入組合を作るということは絶対必要であります。ただ問題はむしろ輸出入組合をいかにして作るか、及びこれをいかに運営するかという問題にあるのではないかというふうに考えております。
  30. 帆足計

    ○帆足委員 代議士の御答弁のような抽象的な御意見を伺いまして大へん恐縮いたしましたが、私がお尋ねしたかったのは、品種別、商品別に具体的にどういう必要があるか、また総合的に政府協定ができていない今日、どういう支障があるかという具体論を伺いたかったのでありまして、国家百年の計を今お尋ねしようとは思っていなかったのでありますが、時間が限られておりますので、次に移ります。  そこでただいま各委員から指摘されましたことの結論は二つあります。一つ中小企業または中堅の企業の方が統制によって不当に圧迫されるおそれはないか、もう一つはこれは過渡期にまだありますので、新規業者の進出の道が不当に押えられるおそれはないか、官僚独善の弊に陥ることなきや、また組合が大商社のいわゆるボス政治に陥るおそれなきや、この四点が重要な問題の一つだったと思います。そこでこれに対する対案といたしましては、この法案の中に、たとえば関係業着、消費者の利益を考慮すべしという点がありますが、さらにそのほかに中小企業の利害をも十分慎重に考慮せねばならぬというような意味のことも含め、あるいはまた統制発動の場所に、関係業者消費者の利益並びに中小企業の利害をも慎重に考慮して統制をきめ、さらに新規業者に対しても進出の直を残すようにというような趣旨をも書き、あるいはまた統制発動の際に中小企業安定法には業界意見を十分聞くように書いてありますのを、関係業界消費者並びに中小企業者の声も十分に徴してというような言葉を入れる等、これらのこともかりに法案を肯定するとすれば、そういうことも考慮せねばならぬ。なお肯定してそれを入れても実効に乏しい、また現在の過渡期のような状況では時を得ないというようなことがあればこれまた全面的に再検討せねばならぬいろいろな問題があるわけですが、ただいまのような点をかりに考慮するということは、賀集さんや堀井さんのような有力な商社立場から見て、それは不当なものであるとお考えでしょうか、あるいはまた新保さんのような中堅の着実な業者の方はどういうお考えでございましょうか、あるいはまた中小企業を代表されて御発言になりました山下さんのお立場から考えてどういうふうにお考えでございましょうか、それぞれの立場から簡単でけっこうですから、実際的な御意見を伺いたいと思います。
  31. 堀井清章

    ○堀井参考人 ただいま帆足先生のおっしゃいました点については、十分考慮してやるべきだと思います。
  32. 山下保市

    ○山下参考人 この改正案は非常に根本的な重大な問題を含んでおりますので、若干の修正では現状に適合した立法ができない、こういう意味で、修正よりも根本的な検討を必要とする、こり考えます。
  33. 新保英一

    新保参考人 私も帆足さんの御意見に同感でございます。これをやめるという山下さんのお話もございましたか、過度競争弊害ということは非常に痛切に大商社も小商社も感じておるのでございまして、これは先ほど私の申し上げました意味をおくみ取り願いまして、皆さんで御審議願って、いい法案考えていただきたいと思っております。
  34. 帆足計

    ○帆足委員 いろいろ伺いまして、われわれの方もこれを慎重に審議いたしますが、同僚議員の質問が続きますので、これで終ります。
  35. 田中角榮

    田中委員長 永井君。
  36. 永井勝次郎

    ○永井委員 新保さん、堀井さんに第一にお伺いいたしたいのでありますが、過度競争というためにこの法案が必要であるというようなお話でございましたが、現在の中共との貿易の面において、具体的に過度競争があるかどうか。あるとすればそれはどういり形で出ておるか、具体的な例を示していただきたいと思います。
  37. 新保英一

    新保参考人 私のところは中共貿易をやっておりませんので、具体的の御答弁ができないのは残念でございます。
  38. 堀井清章

    ○堀井参考人 私も具体的に品名、数量、金額といった工合には記憶していないのでありますが、あるしは大豆なんかでも、現在までのところでは、日本へ売られておる値段が欧州方面へ売られておる値段よりもやや高いというようなことがございます。これらはやはりこちらが、何といいますか、買い競争をしておる結果ではないか、こういうふうに思います。そのほかあるい化学品なんかも輸出競争のあるために値段がたたかれておる。そうして人絹糸なんかにもそういう例があったと記憶しております。具体的に幾らのもりがどうかという工合に、比較対照してお答えができないのであります。
  39. 永井勝次郎

    ○永井委員 実際の取引がないという前提に立ってのお話ですから何でありますが、大豆の場合のごとき、これは貿易の面においての過度競争ではなくて、国内事情における関係から出ておるものである。やはり現在は貿易の関係について言っておるのでありますから、その面について制約してお話が願われなければならぬと思いますが、参考人はそういう関係と直接関係がないということでありますから、それでは従来の中共との貿易の面において、過度競争上このような法案を作らなければならないというような事態があったかどうかということについて、山下参考人から伺いたいと思います。
  40. 山下保市

    ○山下参考人 中小企業関係は、むしろ主として米国、いわゆる自由諸国関係の方におきまして、相互の非常な競争による弊害が出ておりますが、中国関係では、まだそういう、問題として取り上げる事態はないと私は考えております。
  41. 永井勝次郎

    ○永井委員 次に楫西参考人堀江参考人にお伺いいたしたいと思うのですが、本法案に対するいろいろな点について先ほど来貴重な御意見を伺ったのでありますが、私はやはり本法案を独立した分析して場合、両先生のお話のようないろいろな問題点があると考えます。なお本法案提案せしめたその背景となっている日本経済の環境というもの、その背景というものも、この法案がどういう形になって、実行面にどういうふうに現われてくるかという本法案の仮面をむいて、その実態をわれわれは見通さなければいけないと思うのですが、今この背景となっておる日本経済は、貿易がこの今日のような不振になったのは、三井なり三菱なり、こういう大商社が集排法によって解体されたことによるのだ、従ってこれを打破するには、もとの通りにこれを復元しなければ、根本的な治療にはならないのだということで、経済界でもこの復元を非常に強力に運んでおりますし、保守党の勢力もこれを助けておりますし、官僚もその手先となって、いろいろな立法措置を通し、行政措置を通して、これらのことを助けておる。従って金融の面においても大企業への集中融資が行われておる。さらに財閥関係の金融機関が自己の系列の方に大部分流しておる。大きな企業については金融が、有望なところへは三割ないし四割五分というような投資をして、さらにこれをはかっておる、こういうような面で現在の日本経済は金融資本が牛耳っておるといっても差しつかえないような金融支配の態勢が整備されてきておる。さらにメーカーの面においては、たとえば肥料の合理化という名によって、中小を削って大企業へこれを集約して、合理化の名によって財政投融資をどんどんこれにつぎ込んでおる、あるいは石炭鉱業の合理化におきましても、中小炭鉱を買いつぶして大手に集約しておる。あるいは鉄鋼の合理化においてもやはり中小をつぶして大企業へ集約しておる。そういうふうなメーカーの面における企業合理化の名による大企業への、集約というものは着々とプログラムに従って進んでおる。さらに残られておる商社の面における最後の一つの段階として現われてきたのが、この今回の輸出入取引法である。輸出法があり輸入法があって、これの運用でもやれる、し、現在実際法的な背景がなくても行政措置においていろいろやっておる。しかも現在正常貿易方向に国際的に動いておるときに、これは輸入の面においては非常に強力な管理貿易をやっておる、さらに輸出の面においてこれを行わしめる、こういうような形になしてきて、銀行と金融とメーカー商社と、こういう系列によるところの独占支配というものが企図されておる。その一環としてこれは現われてきておる。従って先ほど来新保氏にしましても、あるいは堀井氏にいたしましても、この運用に当ってはこれこれという点が心配なんだ。その心配の点、そこが一つのカムフラージュで、ねらっておるところであって、いかにもそこは線をはずしたような格好をしながら、過度競争を排するのだ、貿易の調整をはかるのだ、こう言いながら、実際は大企業への集約をねらっておる。中共貿易の面においては、ココムという障壁を輸出入組合法というところに持ち込んで、アメリカなり、国際的に日本の国民の怨嗟の的にココムがならないように、国民みずからの統制輸出規制されるんだというようなところに持ち込む。そういう国際的な圧力で保守党がこういう法案を作り、官僚がその手先になってこの法案が出てきた。こういう背景でありますから、各業者の人々が心配になるところは、全部そこがほんとうのねらいだと思うのでありますが、この法案の性格なり、これを背景としておるいろいろな現在の経済界の動きなり、そういうものから出てくるこの法案が、どのよりに運用されて、どのように国民経済を圧迫し、日本経済自立を危うくするものであるかということについて、簡単でよろしいですから、両先生の所見を伺いたいと思います。
  42. 楫西光速

    楫西参考人 りっぱにおっしゃっていただきましたので、別にそれにつけ加えることはございませんが、そういう系列の中でこの法案考えていかなくちゃいけないということは、実は私の申し上げたかったことなんです。私が最後にこの法案がどうして必要なのかわからないと申し上げましたのは、この法律ができてさらに困るところがあるかわりに、この法律を大へん必要とする側がある、こういうようなことになるんじゃないかと思われます。そういう点で今おっしゃいました法律の中にうたわれております目的、そういう法律の意図、そういうものがいろいろな系列の中から、結局においては独占的な方向への日本経済の動きの中に如実に現われてくるんじゃないか、こういう点を特に申し上げたいと思います。
  43. 堀江忠男

    堀江参考人 私もいろいろ御同感なお話を承わったので、あまり申し上げることはございませんが、一つつけ加えさしていただきますと、今こういう法案改正が必要なのは、日本貿易が小さいままでは、つまり昔の大商社が解体されたままでは競争力が劣るから、それがすべて日本貿易の入超なり、不振なりを来たした根本原因だ、そういう考え方に基いていろいろな施策が推進されておるが、その考え方は間違いではないかという点についてちょっと申し上げたいと思います。経済的な原則といたしましては、貿易に限らず、何でも小よりは大の方がいいのでありまして、抽象論としてはこれはその通りで正しいのであります。これは生産でも同じであります。ただ国民経済全体として考えますと、そのときに大きくなるのがいいからといって、小をつぶして、あるいは大のもとで働いておるものを押えて、そういうふうにして大を生かして、それでうまくいくか、その話をはずしておられるのではないか、そういう点を入れて考えなければ、問題は全面的に展開しないと思います。  今のは一般論でありますが、日本の問題につきましては、日本貿易不振というのは、そういった単なる商社の大小だけの問題ではない。戦後の貿易不振の根本原因は、やはりあまりにもドル依存である、そして地域に対しては、徹底的な入超でしかあり得ないような態勢を打開する努力をしないという点にあるわけであります。その点を打開する努力をむしろなおざりにして、現状を肯定して、そうして主観的には自治的統制という言葉をお使いになるけれども、結果的には大企業だけが有利になるおそれが皆さんがおっしやるように非常にある法案をここにお出しになる。それでは国民経済の内外均衡がうまくいかないように発展するとしか見通せない。こういう心配をしておるのです。
  44. 永井勝次郎

    ○永井委員 次に山下参考人にお尋ねしたいのですが、この法案は主として中共貿易をねらっておるものでありまり。輸出に見合った輸入を制限しよう、こういうところにねらいがある。現在り輸出が行き悩んでおるというのは、何もコマーシャル・ベースの面において甘き詰まっておるのではなくて、そういう経済的な条件ではなくて、ココムというこの障壁によって制約されておる。その結果としてアンバランスになっておる。そういう背景、そういう具体的な事象を無視して、ただ輸出入のバランスのシートだけを見て、そろばんを合わせようというのが、現在のこの法案のねらおうとしておるところではないか。そのことは、これによって不利益をこうむるのは日本経済であり、このことによって利益を得るのはイギリスなりアメリカなり、それぞれの協定をもってあそこに市場開拓しようとする国々が、かえって利益を得る結果になるのじゃないか、非常に貧乏な日本の国がみずからの経済の自立を危うくしてまで、他人に義理立てをする根拠はどこにもないのじゃないかと思うのでありますが、その点について、この法案が中共貿易に最も集中的に表現されるのではないかという心配についての御意見を伺いたいと思う。  それから新保さんと堀井さんに伺いたいのでありますが、あなた方はここでは本法案には結論的には賛成だと言われるのですが、今貿易業者で役人を前にして本法案に反対であるとか、役人の意思に反するような言動というものは、ネコの首に鈴をつけるネズミの役割もできないようなにらみをきかされておる範囲においては、ほんとうのことが言えないのではないか。ほんとうの気持は本法案が出て、官僚統制が強化されて、今輸入外貨割当の面だけでも皆さんはいやというほど暗い気持になっておる。そのために今、日の目に見ていない業者もあるわけでありますが、公正に見て、日本経済から見れば非常に陰うつな日々を送って商売をやらなければならぬという中に、さらにそれに上向きのこのようなものが出てきて、官僚統制が強化されるということに心から賛成だということはあり得ないと思うのですが、これはここに坐っておる次長なり官房長なり、こういう通産省の役人のにらみの前に平伏して、心ならずも言っているのではないか。小さい声でいいからほんとうの声を漏らしていただきたい。
  45. 山下保市

    ○山下参考人 対中国貿易におきまして、私も必ずこれは縮小均衡の方向をとるであろう、こういう予想をしております。これは中小企業者、ひいては国民経済にとってますます国内市場を狭隘化させていくものである。縮小均衡をとっていく理由につきましは、私が陳述の中で最後に申し上げてありますので、こういうわけでそうなるということについては省略させていただきます。むしろ日本貿易について一番の問題は、輸出、輸入の均衡の面におきまして最大の問題は対米貿易から来ているのであろう、しかるに本法は、通覧してみますと、中国貿易に対する全国一つ組合を作る、対中国貿易をねらっておりますことは、どこからそういう必要が出ておるか、私どもはその立案の根拠について不審を抱いておる次第でございます。
  46. 堀井清章

    ○堀井参考人 私は、海外貿易におきまして、実は日本におきます取引の秩序が十分でないために不必要に相手方に利益をもたらしているということを感じまして、ぜひ日本全体の利益を確保するために何らかの取引秩序の確立か必要であるというふうに考えております。逆に申しますと、そういう規則なしに野放図な自由取引といいますか、そういったものを行います場合には、必ずその弱点が露呈して参りまして、おそらく中小企業の方は非常な迷惑をこうむられるのではないか、こういうふうに考えます。従って少くともある程度の取引の秩序を確立するということが必要だと信じまして、この取引法のごときものはどうしても必要じゃないか、こういうように考えております。なお念のために、この席におきましてはすべては身柄は保障されていると思っておりますので、安心して自分の信ずるところを申し上げておるようなわけであります。
  47. 新保英一

    新保参考人 お答え申します。ただいまの御質問でございますが、私は全面的に賛成した覚えはないので、先ほど申し上げた通り、この実績百パーセント主義ということを是正していただきたいということと、組合運営を民主的にやっていただきたいということを条件に賛成申し上げております。それで、そういう関係上、お役所がおいでになったからうそを言ったというようなことはございません。ただ先ほど申し上げた通り、具体的方法はどうかという問題については……。
  48. 永井勝次郎

    ○永井委員 そういうことは不可能です。
  49. 新保英一

    新保参考人 それは不可能でもないのであります。それは私やってやれないと思わないのです。同じ業界の中に三人ぐらい闘士がいればできるのでありますが、一人では全然総会では問題にならないので、ただそうなると、人の問題になりまして、法律問題じゃないのでございますが、その点についてはむしろ皆様のお知恵をかりて何かいい方法——私はあなたのおっしゃるお言葉を返して失礼でございますが、それほど悪く感じておらなかったもので、実はきのう質問されたものですから、あまり勉強もしておりませんので、この程度のお返事でかんべんしていただきたいと思います。
  50. 田中角榮

    田中委員長 加藤清二君。
  51. 加藤清二

    加藤(清)委員 時間がないようでございますので、私は簡単にお尋ねしてみたいと存じます。  御承知の通り、この法律貿易振興をはかって日本経済の復興をはかろう、こういうことが最大の眼目であるようでございますが、日本経済の復興をはかろうとするには、その経済の大半を占めているところの中小企業を救わなければならない。特に商社信用の増大の叫ばれております今日、中小の貿易業者を救わなければならないということは、これはもう無上命法でございますが、この法律の実施された暁には、それはうらはらな結果が生ずるではないか。大貿易会社は救うことはできるが、やがてその陰に吸収され、滅ぼされていく中小貿易業者が生ずるではないか、こういう心配がこの法律を中心に全国津々浦々に起っているようでございます。その根本的な問題は永井委員が触れましたので、私はあくまで具体的にこの問題をお尋ねしてみたいと存じます。  まず第一番に。こういう法律ができない前におきましても、今日から過去半年間をたどってみましても、今私が心配しましたこと、日本中の貿易業者が心配しておりますことが、すでに起っておるのでございます。第一番はトルコ問題でございます。トルコ貿易問題の指定にかかわる問題でございます。次には大阪の輸出ミシンの組合を結成いたしますときにこの憂いが十分に出ておることは、すでに皆様がよく御承知のところでございます。これと時を同じういたしまして、陶器の輸出にバンブー・チャイナ事件というものが出ております。これはあまりにも国際的に大き過ぎまするので、この時間に取り上げることは私は差し控えたいと存じますが、これはただ日本業界をゆすぶったのみではございません。近くは中国大豆の問題でございます。これもやはり大商社は生きる道を与えられたが、中小の貿易業者は、そのなりわいを遮断されてしまった。こういうことがすでに起りつつあるのでございます。いわんや、この法律が通過いたしました暁におけるそのおそれというものは、決してこれは杞憂にすぎなくはないだろう、こう判断するのは、あに私一人のみではございません。  そこで第一番にお尋ねいたしたいことは、大臣がいらっしゃらないようでございまするので、次官か官房長にお尋ねいたしまするが、この法律を施行するに当って、果して中小の貿易業者を救うことができるかできないのか。
  52. 田中角榮

    田中委員長 加藤さん、できるだけ参考人に集約してお願いいたします。
  53. 加藤清二

    加藤(清)委員 簡単にそれだけでいい。救う意思があるのかないのか、救うことができると思うのか、思わないのか、それだけでけっこうです。
  54. 島村一郎

    ○島村政府委員 お尋ねでありますから、簡単に申し上げます。私はできると思います。
  55. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではお尋ねしなければならないことが生じて参りまするが、輸出入取引法の一部改正と同時に、中小企業安定法の改正が上程されておるようでございます。この内容を比較検討してみますると、輸出入取引法において協定を結ぶ場合におきましては、輸出業者のみの協定がすぐ結べるようにできております。これができない場合に、それでもなおいけないという場合には、これに生産業者を加えて協定を結ぶことが直ちにできるようになっておる。それでもうまくいかないというときには、生産業者協定もまた可能に相なっております。ところがこの三段階を経ずに、ずばりそのもので、直接この五条の三で、そのすべての協定ができるようになっておることは、学者の先生たちよく御存じのことでございます。  ところが同じことを行なうに当りまして、中小企業安定法をながめてみますると、この法律によるものは、中小企業だけでありまするが、まず第一番にたとえば陶器の輸出にいたしましても、業種指定の認可を受けなければなりません。次に調整組合を作る必要が生じて参ります。次にはその規程を作らなければなりません。次にその認可を受けなければなりません。やがて二十九条が発動されることになり、アウトサィダーを規制するという六段階を経なければ、このことはできないことに相なっておるのです。この六段階を最短距離で走ったといたしましても、少くとも七、八ヵ月から一年、過去の実績から見ますと、両三年ぐらいかかっている組合があるのでございます。そのことはよく御存じのはずでございます。そうなりますと三……。
  56. 田中角榮

    田中委員長 ちょっと申し上げます。が、参考人の方は時間がありますし、なお本法案に対する政府委員に対しての質疑は後日引き続いて行うのでありますから、本日は参考意見に対してのみ集約して御質問願いたいと思います。
  57. 加藤清二

    加藤(清)委員 委員長の注意を額面通り受け取りまして、この問題はあとで徹底的に政府の方に伺いますが、かくのごとく一つ組合を結成し、協定を結ぶに当りましても、大企業の方はそのものずばりをできるように相なっております。ところがよちよち歩きの中小の方は、少くとも半年から一年、しかもその間にいろいろな操作をしなければできないことに相なっております。景気は動くからそのうちにこの必要性は逃げていってしまいます。こういうことで、果して中小と大とが平等な地位に置かれているとお考えでございましょうか。学者の方から中立的立場に立ってのお答えをいただきたいと思います。
  58. 楫西光速

    楫西参考人 ごく簡単にお答えいたします。御指摘のように大と中小は差別待遇と申しますか 大へんな違いを受けているわけです。中小はそれでもまだ救われない、大はそれで大いに伸びていく、こういうことになるのではないか、私ここで具体的なことを申し上げる何はございませんが、大体そういう方向考えられるのではないか、特にこの法案の中からそういうことがくみ取れるのではないか、こういうように思います。
  59. 堀江忠男

    堀江参考人 先ほども申し上げました通り、法案を拝見いたしますと御趣旨は全部非常にけっこうなのであります。そうしてこの改正法案もそうであります。それから中小企業安定法もそうでありますが、それを二つ比べてみますと、おっしゃるような結果が出る、そこに非常に問題があると思います。従いまして政府は常に全国民のために目を配って下さるという建前になっておりながら、実際はそう動かない。その点を今御質問になった方々あたり、もっと政治の面で直していただきたい、こういうふうに考えております。
  60. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではお尋ねいたしますが、それでもなお足りない、これほどアンバランスが行われているにもかかわらずなお足りないで、本法案をもっと大企業のみに有利にしてもらいたいという陳情がきょう行われたわけであります。そこで賀集さんにお尋ねしたいと思う……。
  61. 田中角榮

    田中委員長 賀集参考人は退席されました。
  62. 加藤清二

    加藤(清)委員 こういうことを称して大企業の横暴というのです。せっかくお尋ねしたい相手がおられませんので、それでは第一物産の堀井さんにお尋ねいたしますが、こういう矢先になお大メーカー貿易業者と同じようにストレートで届出さえすればよろしい、ということはつまり大企業の意思通りにやってよろしい、こういうことになるわけです。直ちに協定が結べる、こういうことに相なるわけでありますが、私の見たところでは、少くとも今までのダンピングであるとか、あるいは原料高の製品安であるとか、あるいは輸出の難点は、大企業がすべての実権を握って商社には口銭かせぎをやらせておる。こういうところに大きな原因があると存じますが、それでもなお大企業、つまり紡績業界協定届出さえすればよろしいというふうに改正した方がなおけっこうであるとお考えになりましょうか。この点を水上さんの代理で見えました堀井さんにお尋ねしたいと存じます。
  63. 堀井清章

    ○堀井参考人 私は率直に申しまして大体この法案自身を読みますと、先ほどもどなたかおっしゃいましたように、波打ちぎわから向うの取引を中心にしまして、その協定がうまく行かない場合にというふうになっておるように了解しておるのですが、現段階ではあるいはその程度でいいのではないかというふうに考えております。しかしそれが所期の目的を達しない場合には、メーカー段階にもそれを及ぼすということの必要が起るかとも思いますけれども、この点につきましてもどちらが現段階でいいかということをはっきり申し上げるだけの自信がないのであります。
  64. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたの答弁の中にもやはり大企業の圧力が十分に浸透しておると受け取らなければなりません。日本の糸へんはダンピングが行われておるという話でございますけれども、事毛製品に関しては、イギリスの製品と比較して日本の品物が安く海外に出ておるとは決して考えられない。ただ安いというのは国内相場と比較してのことであります。その原料面から加工賃からすべてを比較いたしまして、イギリスよりも日本の糸値の方が高くならなければならないという原因はどこにも発見できないにもかかわりませず、なおイギリスの紡績の出し値と日本紡績の出し値とにすでに五割の相違があることはあなたがよく御存じの点であります。これを輸出の場合に出血ということになる。出血は内地の価格と比べての出血なんです。イギリスの値段と比べてではないのであります。そのことはあなたがよく御存じのはずなんです。こうやって国内の相場がつり上げられておるということは、やがて紡績のカルテルのおかげなんです。そのおかげで国内消費者までが一ポンド手編み毛糸千二、三百円で十分買えたものを、今年の値ぎめは千八百円でなければならぬ。その出し値も紡績が値をきめておるのではありませんか。そのことをまさか商売の専門であるあなたが御存じないというはずはない……。
  65. 田中角榮

    田中委員長 御意見や討論にわたらないようにお願いいたします。
  66. 加藤清二

    加藤(清)委員 絶対に脱線ではありません。  それでは次に話題を変えまして、最後にもう一つだけ簡単にお尋ねいたしますが、資格であります。組合員の資格、先ほど来組合理事会の決議は総会のうのみになる。一票々々ではどうにもならないのだというお話があったのでございますけれども、それについてお尋ねしたいのです。先般水上さんに私がお尋ねいたしました折に、この問題は登録制にすればそれでよろしいのだというお話でありましたが、登録制にする場合の基礎条件であります。これを会社の方から出していただきたいとお願いしておきましたが、いまだに出石おりません。そこでその登録制の基礎となる問題で腕によるべきか、貸本金によるべきか、実績によるべきか、あるいはその相乗積によるべきかこいうことを私はお尋ねいたしましたか、それは後ほど答える、こういうお答えでございました。一体いつごろこり答えがいただけましょうか。きょうここで答えられないということであれば、後ほど書面をもってお答えいただいてけっこうでございますが、いかがなものでございましょうか。
  67. 堀井清章

    ○堀井参考人 私そのことにつきまして水上さんから何も聞いておりませんので、お言葉の趣きをお伝えいたしておきますからさよう御了承願います。
  68. 加藤清二

    加藤(清)委員 最後に、ではその問題について政府側としては一体どのようにお考えになっておるかをきょう伺いたいのですが、時間がないそうでありますから、この次に承わりたいと存じますので、一つ御研究おきのほどをお願いするわけであります。
  69. 田中角榮

    田中委員長 松平忠久君。
  70. 松平忠久

    ○松平委員 同僚の各委員から非常に詳細な質問があり、いろいろお答えがあって、大へんお疲れで恐縮でありますが、一つだけお伺いしたいと思います。この法案の過慶の競争ということと、特定国に対する一本立ということがあるわけでありますが、先ほどの特定国、つまり中共貿易に関しては今のところあまり過度競争はないというようなお話があったわけであります。そういたしますと、これは第一物産の堀井さんにお伺いしたいのですが、先方の中共においては相当強力な統制をしておる。しかし日本には過度競争はないけれども、やはりいろいろな商社競争してやっておる。そういうわけで大豆のごときも値段が上っておるというような現象もある。法案に賛成する理由の一つは、中共側は非常な統制をしておる、だから日本もある程度の統制をしなければならない、そういりお考えで御賛成なさっておるのかどうかお伺いしたいのであります。
  71. 堀井清章

    ○堀井参考人 ただいまおっしゃいましたように、中国では窓口一つになっております。そしてこちらが多岐に分れておりますので、双方でいろいろ話し合う場合でも、向うにも非常に迷惑をかげておって、日本側の足並みがそろわないために、一体日本業者としては何を考えておるかというような点につきましても多少向うに対して徹底を欠くといったようなこともあるわけであります。ただいま御質問がございましたような点も、確かに中共貿易をやっていく上において輸出入組合を作った方がいいという理由の一つであるというように考えております。
  72. 松平忠久

    ○松平委員 そこでお伺いしたいのですが、業者の方から見て中共の貿易統制というものは現在どういうふうになっておるか。言葉をかえて言えば、中国進出口公司というものが何%くらいの貿易をやっており、一般の貿易業者が何%くらいの貿易をやっておるか。そうして一般業者というものは、将来中国においてはふえていくのか、あるいは減っていって進出口公司一本だけにしてしまうという傾向があるのか、その点の見きわめというものをつけなければならないと思うのであります。そこで業者方々がごらんになった場台において、一体中国は今後ますます貿易を進出口公司一本にしていくということであるか、あるいは現在約二千程度の業者がおりますけれども、これらの業者のおのおの活動分野というものを認めて、しかも向うの経済の発展に応じて貿易をやらしていくということであるのか。もう一点は、中国進出口公司は各分公司というものを各地に狩っております。北京の進出口公司の本店が各分店に与えるところの自主的な独立した権限というものをどの程度持たしておるかということについて、業者方々、ことに堀井さんの方で見ておられるところを参考までに伺いたいと同時に、早稲田の堀江さんに、もしそういうようなお見通しとか情報等がありますれば、ここで御開陳願いたいと思います。私はこれがこの法案を審議するに当ってのバック・グラウンドとして非常に必要なことではないかと思うのでお伺いするのであります。
  73. 堀井清章

    ○堀井参考人 向う側がどういうような動向にありますか、根拠のある知識を持たないのでありますが、少くとも過去の実績で参りますと、最初は半分くらいであったものが七五形ぐらいに集中され、漸次九〇%ぐらいまで集中されて、現在では非常に高度な集中をやっております。それで私の直感では、やはり当分こういう集中的な操作を行うのではないかというように感じております。もちろん分公司がございまして、それも与えられた範囲内においてやっておりますが、もちろんそれは中央の指図に従ってやっておるのでありまして、実質上は中央の方針によって統一されているというように考えて差しつかえないものと思っております。
  74. 堀江忠男

    堀江参考人 私もそれについての情報というものは別に持ち合せませんけれども、計画経済の本質といたしまして、貿易も国家が独占しなければ計画経済がうまくいかないというので当然完全な集中化にいくに違いない。これは必然的なものだというふうに考えております。そしてその場合の独占というのは、ある個別企業の利潤獲得を推進力とする、そういった動きをする企業の独占と違いまして、国家全体の独占でありますから、独占が悪いということは言えない性質のものである、こういうふうに思います。
  75. 松平忠久

    ○松平委員 今の第一物産の堀井さんのお話ですが、だんだん進出口公司に集中してくるとおっしゃいましたが、それは輸出であるか、輸入であるか。私は実はこれは非常に大事であるので先方の政府の対外貿易部長あるいは進出口公司の総経理とこの点について話をしたことがあるのですが、そのときの会談の結果では、大体、二千軒程度の貿易業者は整理をしない。そうしておのおのの範囲において貿易をやらしていって生活の安定をはからしていく。将来もその方針をとっていくので、これは整理をしないということを言明をしているのであります。従って進出口公司の輸出については——油糧公司とかその他いろいろありまして、国で統制を非常にきびしくしておりますけれども、貿易の個々の業務について輸出については相当貿易業者にまかして、外国為替だけを強力に統制するというやり方をしておるのであります。従って私どもの今までの折衝の過程から得た印象といたしましては、これ以上貿易業者を整理していくというような考えはないようにわれわれは判断しているわけですが、ただいまおっしゃったことは、九〇%も進出口公司が独占するというようなお話でありましたが、それは輸出であるか輸入であるか、その辺のことを、私の思っておること、また私が向うと話をしておった結果とは違っておりますから、もう一度お答えを願いたいのでございます。
  76. 堀井清章

    ○堀井参考人 私の申し上げましたのは、たしか昨年の秋ごろに私の手元にありました資料を読んだときの記憶があるのでございまして、輸入も漸次集中の度合いが進められつつあるというような数字を見たのでございます。その後アップ・ツー・デートの数字は持っておりませんが、あるいはそういう私企業を養成するといいますか、維持するといいますか、そういう政府の方針かもしれませんが、不勉強でよく存じないのであります。
  77. 田中角榮

    田中委員長 以上をもって質疑を終了いたします。  参考人方々には、長時間にわたり貴重な御意見の御発表を賜わりまして、本案審査のために多大の参考になりましたことを深く感謝いたします。  午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時二十分まで休憩いたします。  念のため申し上げますが、午後の会議は第八委員室において開きます。同時刻には石油資源開発株式会社法案並びに石油及び可燃性天然ガス資源開発法の一部を改正する法律案両案に関し参考人を招致しておりますので、委員諸君は定刻に御参集を願います。  暫時休憩いたします。    午後一時二十一分休憩      ————◇—————    午後二時三十九分開議
  78. 田中角榮

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  石油資源開発株式会社法案並びに石油及び可燃性天然ガス資源開発法案について審議を進めます。本日御出席願いました参考人は、帝国石油株式会社会長鮎川義介君、同じく帝国石油労働組合中央執行委員長加藤勇君、以上二君であります。参考人の方には御苦労さんでございました。  まず加藤勇君下り御意見を伺います。
  79. 加藤勇

    加藤参考人 それでは労働組合を代表しまして、この法案に関する労働組合意見並びに希望を申し上げたいというように思います。  初めに、石油資源総合開発五ヵ年計画の実施、国内石油の増産を目的とした石油資源開発株式会社の設立に必要な法案を連日熱心に審議しておられる委員各位の御努力に対し、帝石労働組合を代表して深甚なる敬意を表するとともに、本日本委員会の席上意見を述べる機会を与えられましたことに対し、深く感謝するものであります。  法案並びに石油資源開発株式会社の運営について意見を述べる前に、石油鉱業のあり方に対するわれわれの基本的態度について少しく述べさしていただきたいというように思います。  基幹産業のエネルギー源として、また化学工業の原料としての石油の重要性、国内石油総消費量に対する国内石油生産量の比率、輸入原油並びに国内石油精製業に占める外国資本の現状を見ますときに、国内石油生産量を増加させるということは、国家的な急務であると考えますが、翻って国内石油鉱業の実態を見ますときに、その生産量の貧弱さと格安な輸入原油との競争という両面からの制約を受けて、利潤追求を主目的とする私企業としては、消耗資源産業の使命である積極的探鉱活動が行い得ない状態にあるのであります。しかもなお経営者は、利潤追求の手段として、積極的な探鉱に必要な資金捻出の名目のもとに、われわれ労働者に低賃金と首切りという悪条件を強制して参ったのであります。事実われわれは、過去において二回の首切りにあい、終戦直後一万名をこえていた従業員は、現在その半数に減少しているほどであります。このような二回にわたる首切り反対闘争の経験から、私たちは積極的探鉱活動によって新資源を確保し、拡大生産の方向に進まない限り、われわれの労働条件の安定向上はあり得ないし、また私企業として石油鉱業が存在する限り、積極的探鉱活動は期待できないことを痛感し、石油鉱業の国営ないし国家管理が行われて初めて石油鉱業労働者の安定があり得るという結論に達しました。そこで石油鉱業の遂行は、国営または国管で行わるべきだという基本的態度を打ち出し、当面の目標としては、石油資源総合開発五ヵ年計画の全額国家資金による完全実施ということをスローガンとして、石油鉱業確立闘争あるいは職場確保闘争等と名づけて運動して参ったのであります。  以上のようなわれわれの基本的態度からしますと、今回政府提案された石油資源開発株式会社の設立には、全面的には賛成できないのでありますが、現実の政治情勢と、ここで何らかの手を打たない限り、いわゆるジリ貧に陥る石油鉱業の将来を思いますときに、次の条件が許容されるという前提のもとに、石油資源開発株式会社の設立に賛成し、国内石油資源の確保に挺身の努力を払い、協力したいと考えておるものであります。  その条件と申しますと、すなわち、一、将来石油化学へ移行する部門を除き、すなわち石油採掘部門は新会社のもとに統合されること。二、新会社は、当面の目的を五ヵ年計画の完全実施に置くこと。三、政府は、五ヵ年計画実施に必要な資金額を明確にし、常に二分の一以上を必ず出資すること。四、新会社は、五ヵ年計画の完全実施を目的とするものでありますから、人員の直接雇用、資材の購入等のための資金の使用は最小限にとどめ、積極的探鉱作業が行えるよう事業計画を組むべきであります。またこの計画に沿って、必要な人員を帝石より充足すべきであります。この場合においては、帝石労組としては全面的な協力を惜しまないものでありますが、具体的な人員興亜の問題について、鮎川会長の言明と政府当局の意向の間に幾分の違いがあると思われますので、この点についての危惧の念が現在ぬぐい切れない状態であります。五、従って帝石は、新会社への人員補給源として人員を保有していくべきであり、いかなる名目においても人員整理を行わないこと。このためには、帝石の今後の企業発展に対して十分なる考慮がなさるべきであります。六、新会社設立に当って、新会社、帝石とも人員整理、労働条件の切り下げを行わないこと。七、新会社における労働組合運動を制約しないこと。  以上のような観点から、本法案に対する具体的希望意見としては、第一条及び第二条において本会社が当面五ヵ年計画の実施を目的とすること、政府はこれに必要な資金の二分の一以上を必ず出資しなければならないと規制できるよう修正していただきたいのであります。もし修正不可能な場合には、附帯決議によってこの点を明確にしていただきたいと考えております。また労働条件、人員異動の点に関しましては、法律の中に挿入することは困難だと考えますので、これもまた附帯決議かあるいは法案審議過程で明確にしていただきたいというように要請するものであります。  以上述べましたようなわれわれの希望意見を十分御理解の上法案を御審議なされますようお願いいたしまして、私の意見といたします。以上であります。
  80. 田中角榮

  81. 鮎川義介

    ○鮎川参考人 私は経営者を代表いたしまして、この法案に対する意見を申し上げます。  大体帝石の今度の五ヵ年計画というのは、私が昨年経営を引き受ける前からすでに存在しておりました。その政府考えられておることを遂行するために私は登場した人物でありますので、その後はこれをいかに現実的に遂行し得るかということについて日夜検討を進めたのでありまするが、私は初めに非常な錯覚をやっておりました。それは何かというと、この石油の五ヵ年計画というものは政府全体の案だと思いました。ところが受けてみると、あにはからんやこれはただ通産省の案であって、そうして閣議を経ておらぬものである。私至って疎遠でありまして、そういうことを検討するに至らずして、早のみ込みをいたしまして受けたのです。受けてみますると、この五ヵ年計画というものは非常に有意義であるということを認めましたが、それは何かと申しますと、一つには政府として考えられておりまする石油の資源というものが、私がその後研究してみますると、まだまだ非常に大きな資源があるのではないかという、これは空想であります。ことにこの点は最近になって私の見通しが誤まっていなかったじゃないかということを証拠立てる一つの先例がありますから、それをちょっと申し上げておきたいと思います。それは最近、ずっと二、三ヵ月前に出しておきました技術陣営の人が、ドイツ、フランス、イタリアに参りまして、むろんアメリカは最初に十分検討いたしました、その足を欧州に向けたのでありますが、われわれが一番——皆さんもそうであると思いますが、一番不思議なのは、日本よりも油が出なかったと思われるドイツ、フランス、イタリアに最近に至ってめきめき産出量がふえておることであります。どうもその点がはっきりしなかったのです。いろいろ文献にもありますしするが、ぴんとこなかったのであります。それがどうしてそういうふうになったか、ことにドイツがそういう目ざましい発展を遂げた。最近にはアラビア方面からイェーメンの方面、その他最近私の情報の何するところによりますと、インドネシア方面にも手を伸ばしておる。これは非常なカをもって潜行運動をやっておりまして、すでにアラビア、エジプト方面、シナイ半島にはコンセッションを全部アデナウアーの手で私が昨年行ったあとすぐ取った。イエーメンも私が行っておるときにすでにもう取りかけておったというようなことで、われわれが一番脅威に感ずるのはドイツであります。英米はすでに御承知のようにたらふく資源を食っており、保有しておってそれ以上手を回すということになるとなかなか容易ではない。最近いわゆる未開の地のコンセッションというのは、所有主の方が大分こすくなりまして、コンセッションのリースの期限を非常に短くしたりする。御承知のように前は野蕃国に行くと九百九十九年というものがありまして、日本にも、近ごろはありませんが、九十九年というものが前にあったのです。ところが石油もそうであったものが、最近には五年とか十年、十五年、長いので二十年、その間にかくかくの条件のもとにやれなかったらみんな元へ戻せということで、どんどん回収して、また新しい志願者を求めるということになってきた風潮がずっと未開の国に今はやっております。でありますから、すでにたらふく資源を持っておって着手しないものをたくさん持っておるところから言うと、手がつかないのでありますから、そんなものは取らないでおくというのが残っておるわけです。そういうようなものは、われわれのように石油の資源に非常に恵まれておらないものから見ると垂涎三千丈のものであり、たらふくあるものから言うと、今言ったようにほしいことはほしいが、あとがこわいということで、そういうものが残されておる。そこへドイツが目をつけております。えらいうまいものが残っておる。ドイツとしてはそういうものをどんどん取り得る資格はあるし、国内においても今どんどん出つつある。もう二百万トンには達しておると思うのです。こういうわけでそんなに急激になったかということを今度帰った人から聞きますと、ドイツが今日二百万トンも国内から出るようになったという趨勢は、原因をさかのぼりますと、ヒトラーの時代に全部調査が済んでおる。戦争中にそれから先をやれぬものですからそのままにしておいたのですが、すでに戦争になる前に全部の物理探鉱というものを了しておる。それが網の目が非常に小さくこまかくなっておるそうです。普通の網で言うと、メダカでも入るといったような網の目が張ってありまして、ドイツ全体のステートが物理探鉱の網にかかって、そうしてえたいは全部知れておる。いわゆる地質学の方法でなしに、物理的の方法によってこまかくわかっておる。それを戦後になってその計画の線に沿って今実行しておるわけです。それが着々と当るわけなのです。非常に学理的に綿密な調査を尽しておりますから、今の日本の天気予報よりも、もう少しよく当るそうです。そういうことで着々と出ておりますから、日本よりも資源が少いと考えられたところに出るわけです。日本あたりでも三紀層でなければ油がないのだというようなことは全部くつがえっております。ずっと古い層、古生層の方で非常なものがあるということを立証しておるそうです。それからフランスにおいてもまたしかりであります。イタリアにおいてもガスはもとよりのこと、石油についてもどんどん新しいところを物理探鉱によって見つけております。これに比べますと日本の調査というものは至っておくれておる。しかしながらこれをするにはどうしたかというと、ほとんど全部が政府の力によってこの探鉱を遂行しております。そうしていよいよ探鉱してその地質がわかったら今度は民間にそれを許して、民間は何ぼもうけてもよろしい、政府はやきもちをやかぬ、どうぞ勝手にもうけてくれ、そうすれは税で召し上げる、だから自分たちは民間でやってやれぬところだけやっていくということでやった結果が、非常に画期的なものができた。しかしそういうところを調べるのには相当な時間と労力と金を費しております。そういう金は日本で言いますと全部が無利子の金である。日本でも、もしも石油を大いにやろうと思うならば無利子の金を要するわけであります。ところが日本では有利子の金でも一割以下のものはほとんどない。ただ一つあるのは、政府のお金は無利子であります。それで五カ年計画であれだけのものを遂行するというのは、私の見るところでは日本としては画期的であります。その画期的のものをやるのには現在の帝石の力ではとてもできない。特に帝石へ私が行ってから、ガス工業を興したいと考えておりますと、両方はやっていけない。ガスはどうしても早くやらないと、これは非常に時代におくれる節もあります。この石油は幾ら増産して足らないのであります。千万トンになってもなおかつ足らないのであります。今の五カ年計画はもしも政府の力をもってやってよかったら、これは十倍にも二十倍にもなり得るのじゃないかということを考えます。ことにわれわれが従来着手しておらず、この五カ年計画にもうたってない日本海の海底油田、オフショア油田というものは非常な望みがあるのじゃないかという空想を私は持っております。これらをやるためにはまだ多くの無利子の金を要するわけであります。その金はどうしても皆様の協賛によって、そうして国民の血税の中からさいておいていただいて、そうして第二、第三の八橋が出たならばその利益をお返しして国民に迷惑をかけないのみならず、日本経済に寄与するところは大きいだろうという見通しを立てまして、この案が通るようにということでその後いろいろと帝石の立場と、また群小の採油業者のことも考えまして、両面から私は言うべきことを言ってきたわけであります。それによりますと、最初はこの五ヵ年計画というものは民間のよくしないところ、すなわち無利子の金がなければいかない部分はやってもらうつもりだ、こう考えております。これは世界各国の今まで石油がなかったというところがやっておる画期的な図であります。ちょうどその線に沿うた考えを持っておりました。アメリカにおいても、大きい会社、スタンダードオイル、あるいはカルテックスという大きい財閥の持っておる金というものはほとんど無利子の金をたくさん持っておる。あちらでは預金には利子はつかぬものがたくさんありますから、政府以上の資金繰りがつくわけであります。そういうものを動員して探鉱を進めておるわけです。日本にはそういうものがないために、やりたくても五ヵ年計画を遂行することができないというのが私の理論であったのであります。しかして今度こういう法案にしていただくには民間のよくしないところだけお願いすればそれでよい。事業についても十分含みがありますから、それはいつでも私の方も繰り出すことができるのであります。今の組織にあまり変動を起さないようにして、そうして新しいそういう不可能な点だけを政府の力によって解決していただくというのが私の第一の希望であります。それを私どもは政府筋にこれを請願にして出したのでありますが、いろいろ経路を経まして、どうしても今度の特殊法人というものは石油もやらなければならぬ、それでなければ通らぬというようなことになったものでありますから、握りつぶしになって、できないよりも、次善をとったらよかろうということで、私はまあ百点をよう取れませんでしたが、七十五点くらいで満足したというのが私の偽らぬ告白であります。それゆえにもしもこの問題が日本に恵みを将来くれることができようということを考えた場合には、ぜひとも一日も早く、本法案のままでもよろしゅうございますから通していただきたい。ただ先ほど加藤君の言われるような問題は、私も労使の使の方の関係からかんがみまして、労の方から申し出はとくと承知しております。どうしても私は首を切りたくない、政府が奨励しておりました完全雇用の線に沿うてお互いがやらなければならぬということになりますると、帝石は至って微々たるものであります。人間の数からいえば全体でたった六千人しかない、われわれの方で五千人、あと約千人足らずというものが中小、群小であります。六千人の石油マンというものの問題は労働問題としてはそれだけのことであります。これを炭鉱あたりに比べてみますると、炭鉱では全体で四十万の労働者がある、そうして今度群小の炭鉱の整理をいたしますると約三万人の人間がはみ出すわけである、それから比べると帝石の問題はほとんど問題にならぬ。それゆえに社会に対する反響というものが至って少いのもやむを得ないと私は思います。しかしながらそれぞれの部門を承わっておる人は、その部門における完全雇用の問題を十分に考えてやるのが当然の義務だと私は思う。それゆえに私は帝石の経営者、責任者としてこの五千人の人間の将来に対することは十分考えておりますが、おそらく今度政府と私の方とが組んでやるところのこの五ヵ年計画というものは、ほんとうに将来とも予算をとってあの通りをやっていくならば、私は今の帝石陣営では足らぬので、まだまだ雇用をしなければならないということを考えております。首を切るどころではない、もう少しよその方から応援を願わなければならぬようになるのじゃないか、それは新しく資源を探す方面にあるわけでありまして、従来持っております、今油の出ておるところはそうはいきません。これは八橋にいたしてもだんだんと凋落していきましょうから、それに対するかわりのものを作っていくということが、私の残った帝石を経営していく一つのねらいであります。それにはガスの工業を進めていきたい、これもすぐはもうかる仕事じゃないが、その間に現在の含みのある八橋あたりの利益を使って将来永続性のある企業に転換していきたいと思う。そうしてこれから政府はなるべく未知の方に力を出していただく、もちろんわれわれはできるだけの協力をすることによりまして今度もわれわれは三億円を出す、またほかの同業者もほんの喜捨的な株を持たれることと考えております。でありまするから政府は進んでやっていただきたい。幾年からはおそらく——ことしは資金源といたしますると政府の方で約四億五千万円の現物出資がある、その上に少くとも過半数ということになりますると、民間はもう四億五千万円出さなければならないのですから、そのうち三億は私の方の帝石の負担になり、あとの一億五千万円がほかの業者の出資になる、そうしますると約九億円の資本が第一回として成り立つじゃないか、その上に政府の補助金の三億、これがきますから、全部で十二億の金が使えるのです。これからこの法案が通りまして実施に移るのはおそらく十月になると思いますから、あとたった六ヵ月しか今期はないのです。半年に十二億を使ってもいい、悠々たる含みを持っております。おそらくそれだけは使えないと思いますが、来年はそれが政府の出資が十億を越して二十億近い金が使える、その勢いで進むことになるだろうと思います。そうするとかつてない現象がそこに起りまして、人間が非常な働きをしければならないし、機械力も十分に整えてかからなければならないという現象が起ると思います。しかしながらなるべく政府が金を出さぬようにしたいということであれば、それは不可能になる、あるいはそのために人間の失業を起すということがありはせぬかということを私は心配しておるわけであります。政府さえ議会でこのことを進んで協賛していただくならば、今の人間はずいぶん古い人が多いのですから、毎年やめていく老齢の人がはみ出していきますから、新しい事業をつちかっていくということになりますると、相当の人の補給をしなければならない。でありますから私としては少しも加藤君の言われるような首切りなんという問題を考えたこともありません。どうしてよけい使おうかということで苦心しておるような次第であります。これは詭弁でも何でもございません。ただしもしもこれが株主総会で通らないと、いけないのです。こういう条件を今度株主の過半数がもしも賛成しないことがありとすれば、この法案は私の方でのめぬということになる、ほかの群小がありましてもこの法律というものは役に立たぬことになりはせぬか、そうすると自然の結果として首切りもやむを得ないということに陥るということを私は心配しておる、だからどうしても今度の株正総会が無事に満場一致をもってこの法案をのみ込むだけの文句にしていただかぬと、そこに非常な無理がかかって、採算からいえばそんなことをしない方が、帝石は借金がよけいあるじゃなし、また売掛代金があるじゃなし、地上に出た原油は一トンが二十五ドルになりますから、ただ水を抜きさえすれば二十五ドル、すぐドルになるというものはほかにはないのです。大がいは手をかけて——鉱石でも何でも第一次精錬、第二次精錬をしなければ価値がないものでありますが、これだけは上へ吹きさえすれば二十五ドル、そうして皆さんが喜んでどんどんとっていかれて、売掛代金どころじゃない、先に証拠金もいただける、非常に冥利に尽きる会社であります。借金といえども至って少い、また金も、補給金もあるから、別に苦しんでこんなことをやらぬでも株主の方からいうと——ちょいちょい私の力をそそのかす人があって、君やらぬ方がいいじゃないか、ほったらかしておいても二割の配当ができるじゃないか、少しずつ出せば十年や五年でなくなるわけでないから、その方がいいじゃないか、むずかしいことをやるよりは……。それはその通りです。もうけ主義からいえば人間の首切っても差しつかえなければその方が一番安直でありましてそうすれば年に十億でも余分にもうかる、退職慰労金をうんと張り込んでも一年で、あとはもうかるから、残った人に二割やそこら増給しても何でもないじゃないかというようなことを言うてくるから、それは打算的にいえばその通りです。しかしながら社会的にいって、完全雇用というような大大事な問題を考えますと、そういうことに盲従することはできない、どうしても積極的にやっていくことが私はいいと思うのです。加藤君初めいつでも首切りはせぬかと、そればかり言うて見えますが、私はそういうことは考えておらぬ、もしも一首を切る場合に到達したら私の方から逃げる、首切りの上手な人があとから出てきたら、そのときは私は至って下手だから逃げるからということを申しておる次第でございます。どうかそういうふうに御了承願いたい。  なおもう一つ、これは含みになるのでありますが、今度先ほど申しましたように、ドイツ当りが残飯の中に非常にいいものがあるので、だんだん進出しております。炭鉱の機械をどんどん出しております。その図を私は見たのでありますが、非常に残念に思うのは日本にそれだけの度胸を持って出る用意ができておりません。それゆえに今度はその方面の陣容をうんと用意しておきまして——インドネシアにいたしましてもその他日本を迎えるところはざらにあります。英米の残飯が日本では白米の上等なものになるのですから、そういうものをちょうだいに及びたいという点においては、陣容を整えていい機械の設備と取っ組んで、早く新しい石油マンというものを養成をしておく必要がある、それにはこの五ヵ年計画は打ってつけなのでありまして、また一面には失業救済をするというようなばかなことをしないで、進んでやれば、第二、第三の八橋が出て、なお一そういいということになります。そういうふうなことがポシビリテイーがあるということを将来お考えになって、どうかこの法案をますます実行のできるようにしていただいて、そうしてお金を惜しまぬようにしていただきたい。来年は倍でも三倍でもしてやろうというおぼしめしを一つちょうだいしたいと思っております。
  82. 田中角榮

    田中委員長 以上両参考人に対して質疑があれば許します。伊藤卯四郎君。
  83. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 鮎川さんに一つお伺いしたいと思います。この間も私どもの委員会参考人として御足労願い、またきょうも願って、なかなか熱心な御意見を伺いまして、私ひそかに喜んでおる一人でございます。つきましては、先日もお伺いしてありますから、ただ一言二言だけお尋ねしておきたいと思いますことは、御存じのようにこの法案が成立をして新会社が発足をいたしまして、さていよいよ計画事業をやるということになりますと、そのほとんどは帝石の協力によらなければならぬ、あるいは鉱区においてもあるいは設備機械においても、あるいは技術者、従業員においても、これことごとく帝石のによってでなければ発足ができないということは明らかなんです。従って帝石はそのために鉱区を初めとして非常な多くの犠牲を払わなければならぬ、同時にまた協力するために自分の事業分野は非常に狭められてしまいます。将来は別として、一応はとにかくいわば自分の血肉をさいて協力をされなければならぬことは申すまでもない。そこで多分そういうことを心配されて鮎川さんもおっしゃったと思うのですが、自分はこういう熱意を持って一生懸命になって新会社に協力をするが、自分のところの株主の過半数がこれに同意をしてくれなければ困る、この点が心配だというような意味をおっしゃったと思うのです。それはごもっともだと思います。私はその点いささか鮎川さんに非常な信頼というか、期待を持ち、そういうことをひそかに喜んでおる一人ですが、それは先日おいでになったときであったかと思いますが、過半数の株主から、とにかく鮎川お前に何でもまかすから、お前のいいようにやってみろという激励を受けておるということを何かおっしゃったように思うので、多分あなたの熱意というものは、過半数の株主はもちろん同意されて、あなたの方針に帝石は圧倒的にすべて協力されるもの、こう私は信じておるのです。そういう点の見通しについて、あるいはここでおっしゃることが後日どういう影響があるかということを考慮される必要もあるかと思いますけれども、私は今申しましたようなことを百パーセント信頼をしておるが、そういう信頼をしておいてよろしいかという点について、一応御所見を伺っておきたいことが一つと、それからさらに政府側として、先ほど申し上げるように帝石の非常な犠牲によらなければならぬのであるから、政府側は絶えず帝石の方に諸般の点について十分了解を求めながら、また理解、協力をしてもらえるような相談を政府が絶えず行いつつあるか、どうもそういう点が十分でないように思いますので、その点についても一つ伺ってみたいと思います。  それからもう一つは、新会社が発足してもすぐ人間がどんどん要るわけではないと思いますから、そこでやはり新会社がいろいろなものを人員を初め求めていく給源地というか、いわば帝石はそれをかかえておいて、必要に応じてどんどん新会社の方にあるいは設備なり機械なりあるいは特に人員などは私は補給してやられるようになろうと思います。それで帝石は、これは多過ぎるのだけれども、しかし新会社の方が今これだけは急に受け入れられぬ点もあるから、これは一つ帝石の方で協力する建前から、人員整理をしたり待遇を切り下げたりしないで、新会社の方が求めるまではとにかく帝石はこの給源地、補給地というか、そういうような使命を帯びておるものであるから、とにかくそれだけの犠牲は覚悟して、一つ補給源としての帝石の使命を果そうというようなことをお考えになっておられるかどうか、この点私は実は非常に大事な点だと思いますから、そういう点について一つお伺いしたい。
  84. 鮎川義介

    ○鮎川参考人 伊藤さんの第一の御質問、もしも帝石がほんとうに政府の案に協力するならば非常に犠牲をするのではないか、そうじゃありません。割合に私の方は都合がいいです。というのは、大体今度の三億円の喜捨をする、喜捨するといっても、これはただ差し上げるのではないのです。やはり株にして、将来は二百円くらいの株になるかもしらぬという考えで私は投資するのですが、五年ぐらいはしんぼうして、無配でもよろしゅうございますから甘んじて——私は損になると思って出すのではないです。これは犠牲という考えは私の方にないのです。非常なうまいことをやっていただくのだ、それは政府が当然のことをやってくれることによって私の方は受くるべき当然の利益を得るものだと私は考えておりますから、決して政府に対して私の方が犠牲になるからという考えは毛頭持っておりません。三億というものは、従来も三、四億というものはいつも試掘に出し来たったものでありますから新しく出すのではないのです。従来は三億を私の方が出そうと思うならば、政府の補助金はおそらく一億くらいしか出してもらえぬような三億であった。それが今度は、三億出すというと政府はその倍を出さなければならぬ。主客転倒するわけですから、私の方としては非常にけっこうなことでありまして、私はその犠牲を払うなんということは毛頭考えておりません。それで送り出す人についても非常に勇躍として私は送り出すわけで、その人々も非常に喜んで、自分の職域がふえるということを思って勇んで行ってくれるものだと、私なら勇んでいくがということを再々言うておる。首切りなんて私は考えない。もし私が行っていいなら、私は進んで、古いおばあさん会社を持っているより、おっぱいがかれる会社を持っておるよりは新しいぴちぴちした青年と一緒に私は働いていきたいのでありますが、私はそれをやることは欲しませんから受けるわけにいかぬかもしれませんが、しかし、もし私が若くして、そうしてほかにそれ以上の職業がなければ私は喜んでやるのです。そうすれば皆も喜んでくるのでありますから、これはしかるべく政府において御人選があることと思います。でありますから私は犠牲と思うておりません。  それからもう一つは、残ったおばあさん会社はどうなるかということになりますと、むろん今のところは八橋とようなおっぱいのよく出るところを持ておりますが、これも吸っておるとじきにしわになる。正確にはそう十年も二十年も持っておるわけにはいきませんから、これが今ある間に私はそのおっぱい、滋養物を使って新しい卵をかえしていく。そうしてこの八橋その他の含みは、鶏の卵でいうと白身に私は使いたい。白身をもって黄身をかえして、ひよこが育って大きな鶏になって、また次の卵を生むという芸をしなければならぬのであります。それにはどうしても白身がなくては卵はかえらない。ひよこにはなりませんから、その白身に私はこの何を利用したい。そうしてガスの化学工業というものは永続性のものに進んでいきたい。そうしてその間には株主はどうかといいますと、現在一割五分の配当を帝石はやっております。そうして七十円足らずの株価を持っております。大体これは当りまえからいうと、六十円ならばけっこうの御の字だ。大体パーじゃないか。一割二分くらいのものは五十円が至当だ。しかし帝石は将来性があるからそれにプレミアムが十五円ないし二十円ついておるというくろうと筋の説明であります。だからしてそれ以上のことをわれわれは希望いたしませんが、しかしながら従来の配当というものは、なるべく持続しないと、あとの化学工業をやるために資金を集める、その資金をまた求めることができない。これは政府によるわけにいきません。民間資金を集めなければならぬから、社債にしろあるいは株にしろ、みんなそれは利害関係の非常に輻湊した金を使うわけでありますから、それがどうしてもできるような程度にはこのおばあさん会社をしておかねばならぬと、こう思うわけです。そういうことでありますので、あとは伊藤さんが御心配になるようなことはない。  今の第二の御質問の、人が余っておるだろうが、それを忍耐して将来のために凍結しておくかというお話でありますが、私は今のところ実際に今だけの仕事では五千人の人間は多過ぎる。おそらく半分で十分だと思います。あるいは能率を上げれば三分の一でもよくはないか。外国の機械をどんどん入れてやります場合には、おそらく三分の一でまかなえる。しかしながら今ここに見えております石橋通産大臣あたりが新任されたときに言われた名文句の、完全雇用ということは、私もほんとうにやるつもりで言われたかどうか知らぬが、しかし私はきまじめにそれを百パーセントとりまして、そうして少くとも私の関係しておる範囲において完全雇用をやっていきたい。のみならずほかのルノペンもこの中に収容したいというので今度の法案になったわけでありますから、私はそれだけの人を含んでおるのは将来のために、あるいは海外にでも行くときにはそういう人は多々ますます弁じるということでありますから、私はこういうふうな特殊の人はかかえておかなければならぬ、ただ普通のその方に余っておる人、そう言っては悪いが、役人であるとかあるいは銀行家であるとかそういう人はそんなによけいおってもじゃまになるといったようなことも——これは失礼であるかもしれません。あとで懲罰は甘んじて受けますが、そういうことはこの帝石のようなああいう特殊の技術を持っておる者は急にこれを製造するわけにいきません。でありますからこれは非常に大事に温存すべきものである。けれども遊ばせちゃいけませんから、遊ばさぬように何とか巧妙に仕事を与えていきたい。それには第一に新しい資源を探す方にエーブル・マンをやって、あばあさん会社にはあばあさん会社を、一つおばあさん同士でやっていくというような考えでおるわけであります。決して御心配はない。しかしながら停年になって、年がきてどうもしょうがない人は、これは仕方がありませんが、そのかわり、若い人をだんだんあとを養成していく考えであります。その御心配は、私のおる限りにおいては全然要らぬと思います。そういうことを申し上げるわけであります。それでよろしゅうございますか。
  85. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 もっと簡単でけっこうです。
  86. 田中角榮

    田中委員長 質問も簡単にお願いします。端的に三…。
  87. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 先ほどお尋ねした点が残っておりますが、これもごく簡単でよろしゅうございます。その帝石の株主総会において、あなたの新会社に協力をするというその御意見御方針は、必ずその通りになるものであるとわれわれは信頼してよろしいかということが一点。  それからもう一点、新たにお伺いしておきたいのは、私は大へん帝石は犠牲を払ってやっておられると思って心配をしておりましたが、いやそうじゃないのだ、株価相応にもうかるのだ、おれの方は非常に愉快なんだということを聞いて、私はそれ以上にますます愉快になってきたのですが、そこで問題は、従業員の人員を新会社に補給するところの帝石は貯水池である、これをかかえておいても、新会社のために帝石は大いにもうかるのだから、この人間を相当をかかえておいても決して損はないということもここで明らかになったと思いますから、従って新しく政府がここに新会社の所要人員表というものを出しております。これに従って多分私は帝石から人員を分けてやられるだろうと思うのでございます。そこで分けてやるのが少いと、帝石がどうもこれではかかえ切らぬというようなことが起るのでなかろうかという心配を私はしたのでございますが、しかし新会社のために帝石は非常にもうかるのであるから、大丈夫だから伊藤さん安心しろということですから、そうすれば多分この所要人員について帝石がかかえ過ぎるというようなことがあっても、そのために、新会社のためにもうかるのですから、十分この補給人員についてはかかえておいて、現在の帝石従業員に一人でも整理やら不安を与えることはないであろうことを——私はそういう点から安心をいたしましたが、この点大いに安心していいかどうかを一つはっきりしておいていただきたい。
  88. 鮎川義介

    ○鮎川参考人 少し違って、あまりつけ上られても困るですから、ちょっと冷やしておかなければならぬと思います。それは決して反対を言うわけではないのですが、第一の問題は、株主はどうかというお話でありますが、私がこの大株主から頼まれて引っぱられたときのその株は、私の方で取ったのですから、その以外の株主のことはよくわからぬです。それが私のものになっちゃったりです。ですからそれは私が言うのと同じことなんです。それは他はどういうことかは私はわからぬです。しかしながら部外の大株主が、今の帝石には昭石あるいは日石の方が、代表者が出ておられますから、それは相当の大株主でありますが、その方々とは、重役で、毎月一回は必ず私は相談して、細大漏らさず大事なことはやっております。その際にはちょいちょいこういう問題は始終言うておりまするが、私と同じ意見であります。ただそれだけで絶対過半数がとれるかどうかということは、他に株主もたくさんあることでありますから、これは私は証言の限りではない。そういうものはどうしても総会に訴えるほかないのです。そのときは一株主をたくさん雇うて大いにやるつもりでありますけれども、しかし私はこれはほんとうに株主のためにならぬということが起ると、そのくらいのことでは防ぎ切らぬです。しかし大体私の方が大株主であるし、政府は今のところは非常な大株主で、この二つが一致すれば、大体元は約半分になっておる。今度は少し減りましたけれども、それにしても三分の一以上あると思われますから、大体私は大丈夫、無理なことさえなければ大丈夫。すなわち従来の帝石の株主に少くとも損を与えぬ——労働者に損を与えぬと同様に、株主にも損を与えぬで、一挙両得の問題にさえなれば、これはオーケーになると私は思う。決してその点は御心配がないと思うのです。  もう一つは……。
  89. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大へん帝石の新会社ができたのがもうかるが……。
  90. 鮎川義介

    ○鮎川参考人 私はもうかるとは言わぬ。都合がいいということを言っておる。速記録をごらんになれば、もうかるとは言うておりません。というのは、私はただこのままじっと寝ておるなら、それはもうかるです。しかしながら新しいガス化学工業というような、新しい分野にどんどん進んでいきたいと思うと、その投資をして、それが実がなって、そうして果実を株主に提供し得るまでの間は、培養々々でございまして、数年間というものはそれに入れた金は、有利子の金を無利子に転換するわけでありますから、経営としてはなかなか容易じゃないのです。もうかるという段階にはなかなかいきませんから、もうかってほくほくして、余るというのじゃないのです。それをやるためにできるだけ蓄積を使うのであります。ただ転換作用をやるわけで、もしも今度のようなことができなくて、探掘も全部三分の二出さなければならぬというときには、ガスはやれないわけですね。それでありますかり、都合がいいということを申し上げたので、大いにもうかってしょうがないから、ベース・アップはどうだ、こういうことに……。
  91. 田中角榮

    田中委員長 参考人の方に申し上げますが、こういうことなんです。新会社が余剰人員を引き受けるまでの間は、一ぺんに引き受けることはできないですから、その間にあなたのところでは、首を切らないで引き受けるまで待っていていただけますか、こういうことですから、一つ簡単にお願いいたします。
  92. 鮎川義介

    ○鮎川参考人 私は今度の新しい法人の採掘会社にどれくらいの人員が要るかということは、まだ聞いておりません。しかしながら私がもしやる場合には、おそらく政府よりももうちょっとよけいいるように言いやせぬかと思う。おそらく倍くらい言いやせぬかと思う。なぜならば私のやろうとすることはもう少し積極性がありますから、どうしても採掘を早く同時に網をかけたいという点がありますと、帳場を非常にふやさなければならぬということですね。そうしますとおそらく、今のは少しやり方がめめしいのじゃないか、従来のような歩調に少し速度を加えたということになりやしないか、金か惜しい、こうやってまで大蔵省をいじめて出さした金だから、何とかして金を使わぬようにしようという考えが、全国にみなぎってきやしないかということを心配する。私はどうしても使ってやらなければならぬと思う。ますます使わなければならぬ。従って人間がいると私は考えております。でありますから、人間はおそらくそれでは足らぬと思うのです。しかしそれくらいのことで、かりに千人なら千人、五千人の五分の一まず一回にとっていただきましても、あとはむろん従来と別に変りはありませんから、現在の情勢において株主が満足していただくならば、すぐ化学工業に着手するわけではありません。しかしながら化学工業をやると、少くとも一単位三十億の金をすぐ出さなければならぬのです。そうしますと、このガス工業の計画が立ちませんから、それをやるためにはどうしても蓄積を持っておらぬと、すぐもうからぬ。自己資本を相当に投資しなければならぬ。でありますから、もうかってしょうがないということにはなりません。しかしながら必要な人間は現在でもかかえておりまして、相手のべース・アップにも応じておるような現状でありますから、決して御心配はないと私は思う。その点はそういう意味において御心配はないようにお考え願えばけっこうだと思います。
  93. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 関連して。十分お話はわかりましたので、返事をイエス、ノー程度にはっきりとお願いいたします。ちょうど大臣と社長と組合委員長と三人お立ち会いでありますので、その三人ではっきりと返事をお願いいたしたいと思います。今の伊藤さんの問題と実質的にはほとんと同じでありますけれども、はっきりとお願いいたします。きょう配られましたところの所要人員予定表というのによりますと、三十年度は合計して千二百二十五人というのから始まって三十六年度まで、ずらっと数字が掲げてあります。ごらんの通りであります。私が実際に数字を要求いたしましたのは、所要人員表ではなくて、実施計表を予定いたしたのであります。そこではっきりとお伺いをいたしたいのは、今の鮎川さんのお話によりますと、採掘部門の仕事はあげて新会社にいくのだから、従って人間も少な過ぎるくらいだろうから、なるべく一ぺんに持っていってくれということが、おそらく御希望のようなお話だと思います。従いまして現在三千人程度、帝石の石油採掘に従事をしておる従業員がおると思いますが、この三千人程度をなるべく早く一ぺんに持っていってくれということを、おそらく鮎川さんはおなかの中で考えているのだろうと思います。それから今現に出されております所要人員表によりますと、千二百二十五人から始まって、最後の七年目に五千八百七十五人となっておる。ところが私、三人お立ち会いの中ではっきりと御答弁をお願いいたしたいのは、審議の途中で、採掘を中心とする現場の仕事のやり方について、大体新会社では、最初のうちは請負制度を中心は考えておられるようなお話があった。つまり初年度あるいは二年度におきましては、まだ内容が充実していないから一ぺんに人員をかかえ込んでも困る。また人件費、物件費がかかり過ぎるという意味で、大体請負制度でもって、管理部門の入間程度を新会社には従属をしておいて、主として現場の仕事は大体請負制度に考えておられるように承わりました。従いまして質問の一番中心は、三十年度と三十一年度二年だけでもよろしゅうごさいますけれども、この千二百二十五八と千九百十三人はあげて会社の従業員を予定しておるのかどうか、つまり請負に渡すつもりなのか今帝石は直営でやっておられますから直営でやられるおつもりなのか、はっきりとイエス、ノーだけでけっこうですから……。今帝石は三千の人間を便って直営でやっておられる。それから新会社では初年度が千二百二十五人、三十一年度は千九百十三人と書いてありますけれども、従来のお話によりますと、このうちのほとんど大部分は請負に渡して出る金であるように承わっておったのであります。従いましてこれは人員充足計画であるかどうか、つまり出す方と受ける方の話が食い違っておりますと、従業員の不安はどうしてもぬぐい切れないものがありますから、それをイエス、ノーではっきりとお答え願いたいと思います。
  94. 川上為治

    ○川上政府委員 差し出してあります資料の初年度千二百二十五人というのは、これは五ヵ年計画を遂行するに当りましての初年度におきましては、これだけの人数が要るということでありまして、それからまた資金計画その他のものを出してありますが、これは請負に出そうがあるいは直営でありましょうが、いずれにしましても、どっちをやるにしましてもこれだけの金が要るということでありまして、私どもの方としましては最初千二百二十五人全部引き取ってやっても、ちっとも差しつかえないという考えでございます。
  95. 鮎川義介

    ○鮎川参考人 私の方の考え方を申し上げます。つまり今度試掘の方に要る人は、私の方が同様のことを現在やってもそれだけの人が要るならば、私は差し上げるつもりでおります。それに便乗してついでに一緒に持っていくというような考えはないのです。私の方がよけいもうけようと思って要りもせぬ人間をやるという考えではないのです。私がこれを立てたのではありませんから、これだけ要るという根拠がありますならば、どうしてもこれだけの人は差し上げなければなりません。よけいな人をとってもらうという考えはありません。これだけほんとうに要るかどうか、これよりもう少しよけいないと、スピード・アップができないのではないかという疑いを持っておるだけのことでありまして、実際はフィギュアだけはできておることですからやってあると思います。だがしかしながらそれでは、これだけのものの費用がどれだけだから、私の方が向うにとってもらえば、私の方はそれだけのものが助かるということにはならぬ。なぜならばもしあなたがおっしゃるように、請負に出すならば、請負賃をもらいますから、請負賃には労働者に払う賃金は全部含まれる。損をして請負うわけではありませんから、もうかるということからいえばそれはもうけた方がいいかもしれません。しかし私はもうけたいとい思わない。だからそれは同じことになるわけです。ただ私はどっちかというと、新しい会社ができたらその会社と行動をともにする考えでないと、及び腰でやるような人では油は出ない。そういう会社ができたら、これとともに一緒に自分は命を捨てる覚悟でやってもらって、初めて油というものは出るものでありまして、安全を考えてばかりいて油の出たためしはない。そういうことから私はできるだけ……。
  96. 田中角榮

    田中委員長 ちょっと申し上げます。が、今本会議から、四時に採決をする必要がありますから、各委員会はできるだけ早く終了するようにというのですが、あとに櫻井君と加藤清二君及び南好雄君の三人あるのですが、どうしますか。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  97. 田中角榮

    田中委員長 速記を始めて。
  98. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうすると、先ほどの政府の方のお話の、三十年度、三十一年度のこの数字は、これは所要人員であると同時に、会社の従業員としての所要人員、こう考えてよろしゅうございますか。つまりこれだけの従業員を充足する人数だと考えてよろしゅうございますか。
  99. 川上為治

    ○川上政府委員 私の方といたしましては、これに基いて全部資金計画を立てております。
  100. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 その点組合委員長からはっきりと意見を伺いたい。
  101. 加藤勇

    加藤参考人 この問題につきましては、先ほど鮎川会長から答えがありましたように、請負で引き受けるという場合にも請負費というものは払うのであるから、かかる費用に変りはないという説明がありましたが、それはその通りであります。しかし実際は当初この新会社は調査、試掘をやっていくだけでありまして、日本の現在の開発地域というのは裏日本だけにあるわけです。でありますから、冬季はその調査、試掘ができないわけであります。そうしますと、調査、試掘の人員をかかえ込んで、冬季その人たちは遊んでいるという不合理な、非効率的な人間の使い方をするという結果が生まれてくるわけです。ですから私どもの心配するのは、そうではなく、現在の帝石に当初はかかえ込んでおいて、それで冬でも採掘作業はいたしますから、その方面の仕事をして、人間を有効的に帝石の中で使っていく、そうして冬の間遊んでいるときの人件費はこれを試掘、調査の方面に使うということが、有効的な金の使い方じゃないか。この新会社が最も合理的な資金の運営をしていくということが将来のためになるという観点から、われわれ主張しているわけであります。
  102. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今佐々木君がお尋ねしておる問題を結論的にはっきりさせましょう。さっき鮎川さんは従業員について心配がないとおっしゃった。その新会社の大株主は政府であるから、そこで帝石と新会社との間に、こうい人員の異動の問題あるいは待遇の問題、諸般の問題について覚書を交換をして、そしてそういう異動上において不安なからしめるような処置を政府の責任においてとり得るかどうか、この点をはっきりしてもらえば問題はおのずから解決します。どうです、その点は。
  103. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 それは伊藤君の言われる通りですが、実はこれは技術に関係しますから、抽象的に議論してもわからない。そこでこの問題は十分帝右側と相談をしまして、今組合長が育ったように、最も合理的に人を使い、最も合理的に資金を使う方法で、必要な部分だけは新会社に人を引き受けます。また場合によっては、帝石にいわゆる請負制度によって当分のうち試掘もしてもらうという方法もとろう、こう思います。それはいずれにしても十分打ち合せてやりますから御安心下さい。
  104. 田中角榮

  105. 櫻井奎夫

    櫻井委員 時間がないので簡単に意見を述べたいのでありますが、本日、昨日の要求に従って人員の予定表が出ました。私どもがこれを要求いたしました最も重要な理由は、先ほどから同僚の伊藤さん、あるいは佐々木さんの方から、るる話がありましたように、せっかくこういう会社が発足いたしましても、石油開発事業における労使の関係が、このために非常に混乱に陥ったり、あるいは紛争が生じる、こういうことを懸念いたしまして、将来の人員配置の計画についてはっきりと政府及び帝石の当事者から、この公開の場所において考え方を述べてもらいたい、こういう意味合いで、こういう資料も要求いたしたわけでございますが、ただいまの伊藤さん、佐々木さんの質問に対する皆さんのお答えによって、大体意のあるところはわかりました。時間もありませんので、私が要求いたしたいことは、今大臣のおっしゃるように、最も合理的に、能率的に人と資金を運営される場合、あくまでも摩擦が起らないように、特に人の問題は、問題が多いのでありますから、十分組合意見を聞かれて、組合と帝石、あるいは新会社、この三者の間に十分な話し合いをつけられて、いやしくもこの会社が発足したために、首切りであるとか、人員整理であるとか、そういうことが起きないように——私は先ほど大臣のお答えでだいぶ心丈夫に感じたわけでありますが、その点を重ねて私は要望いたしたいと思うのであります。
  106. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 その点は十分承知いたしました。首切りをするのは、最も不得意な鮎川氏でありますから、首切りの起ることは絶対にないと思っております。(「政府は大丈夫か」と呼ぶ者あり)政府の方は、これは新会社ですから、会社の必要なだけ引き受ければ……。
  107. 鮎川義介

    ○鮎川参考人 私から言うと手前みそになりますが、私が帝石を受けましてから今日まで、政府筋との話し合いで、一ぺんもいざこざはなかったと私は考えております。今後もおそらく私がやっておる間は、帝石と新会社は、これはどなたがおやりになるか知りませんが、先ほどの通産大臣のような考えでやられる方であれば、必ず摩擦はないと思います。みんな話し合いがついていくことと私は信じております。私も別にすぐかわるわけじゃありませんが、そういうことにやれますから、自分が言うとおかしいのですが、御心配のようなことはないと保証いたします。
  108. 田中角榮

    田中委員長 加藤清二君。
  109. 加藤精三

    加藤(精)委員 私はせっかくお三人さんがおそろいですから、いろいろお聞きしたいことがたくさんありましたが、前三者が全部私の質問を聞きましたので、これで終ります。
  110. 田中角榮

    田中委員長 以上をもちまして参考人御両君に対する質疑を終ります。参考人には長時間にわたり種々意見をお述べいただき、本案審査に多大の参考になりましたことを深く感謝いたします。本日の会議はこの程度にとどめます。次会は明九日午前十時より会議を開きます。本日はこれをもって散会いたします。   午後三時五十分散会