○鮎川
参考人 私は経営者を代表いたしまして、この
法案に対する
意見を申し上げます。
大体帝石の今度の五ヵ年計画というのは、私が昨年経営を引き受ける前からすでに存在しておりました。その
政府の
考えられておることを遂行するために私は登場した人物でありますので、その後はこれをいかに
現実的に遂行し得るかということについて日夜検討を進めたのでありまするが、私は初めに非常な錯覚をやっておりました。それは何かというと、この
石油の五ヵ年計画というものは
政府全体の案だと思いました。ところが受けてみると、あにはからんやこれはただ通産省の案であって、そうして閣議を経ておらぬものである。私至って疎遠でありまして、そういうことを検討するに至らずして、早のみ込みをいたしまして受けたのです。受けてみますると、この五ヵ年計画というものは非常に有意義であるということを認めましたが、それは何かと申しますと、
一つには
政府として
考えられておりまする
石油の資源というものが、私がその後研究してみますると、まだまだ非常に大きな資源があるのではないかという、これは空想であります。ことにこの点は最近になって私の見通しが誤まっていなかったじゃないかということを証拠立てる
一つの先例がありますから、それをちょっと申し上げておきたいと思います。それは最近、ずっと二、三ヵ月前に出しておきました技術陣営の人が、ドイツ、フランス、
イタリアに参りまして、むろんアメリカは
最初に十分検討いたしました、その足を欧州に向けたのでありますが、われわれが一番——皆さんもそうであると思いますが、一番不思議なのは、
日本よりも油が出なかったと思われるドイツ、フランス、
イタリアに最近に至ってめきめき産出量がふえておることであります。どうもその点がはっきりしなかったのです。いろいろ文献にもありますしするが、ぴんとこなかったのであります。それがどうしてそういうふうになったか、ことにドイツがそういう目ざましい発展を遂げた。最近にはアラビア
方面からイェーメンの
方面、その他最近私の情報の何するところによりますと、インドネシア
方面にも手を伸ばしておる。これは非常なカをもって潜行運動をやっておりまして、すでにアラビア、エジプト
方面、シナイ半島にはコンセッションを全部アデナウアーの手で私が昨年行ったあとすぐ取った。イエーメンも私が行っておるときにすでにもう取りかけておったというようなことで、われわれが一番脅威に感ずるのはドイツであります。英米はすでに御承知のようにたらふく資源を食っており、保有しておってそれ以上手を回すということになるとなかなか容易ではない。最近いわゆる未開の地のコンセッションというのは、所有主の方が大分こすくなりまして、コンセッションのリースの期限を非常に短くしたりする。御承知のように前は野蕃国に行くと九百九十九年というものがありまして、
日本にも、近ごろはありませんが、九十九年というものが前にあったのです。ところが
石油もそうであったものが、最近には五年とか十年、十五年、長いので二十年、その間にかくかくの
条件のもとにやれなかったらみんな元へ戻せということで、どんどん回収して、また新しい志願者を求めるということになってきた風潮がずっと未開の国に今はやっております。でありますから、すでにたらふく資源を持っておって着手しないものをたくさん持っておるところから言うと、手がつかないのでありますから、そんなものは取らないでおくというのが残っておるわけです。そういうようなものは、われわれのように
石油の資源に非常に恵まれておらないものから見ると垂涎三千丈のものであり、たらふくあるものから言うと、今言ったようにほしいことはほしいが、あとがこわいということで、そういうものが残されておる。そこへドイツが目をつけております。えらいうまいものが残っておる。ドイツとしてはそういうものをどんどん取り得る資格はあるし、
国内においても今どんどん出つつある。もう二百万トンには達しておると思うのです。こういうわけでそんなに急激になったかということを今度帰った人から聞きますと、ドイツが今日二百万トンも
国内から出るようになったという趨勢は、原因をさかのぼりますと、ヒトラーの時代に全部調査が済んでおる。戦争中にそれから先をやれぬものですからそのままにしておいたのですが、すでに戦争になる前に全部の物理探鉱というものを了しておる。それが網の目が非常に小さくこまかくなっておるそうです。普通の網で言うと、メダカでも入るといったような網の目が張ってありまして、ドイツ全体のステートが物理探鉱の網にかかって、そうしてえたいは全部知れておる。いわゆる地質学の方法でなしに、物理的の方法によってこまかくわかっておる。それを戦後になってその計画の線に沿って今実行しておるわけです。それが着々と当るわけなのです。非常に学理的に綿密な調査を尽しておりますから、今の
日本の天気予報よりも、もう少しよく当るそうです。そういうことで着々と出ておりますから、
日本よりも資源が少いと
考えられたところに出るわけです。
日本あたりでも三紀層でなければ油がないのだというようなことは全部くつがえっております。ずっと古い層、古生層の方で非常なものがあるということを立証しておるそうです。それからフランスにおいてもまたしかりであります。
イタリアにおいてもガスはもとよりのこと、
石油についてもどんどん新しいところを物理探鉱によって見つけております。これに比べますと
日本の調査というものは至っておくれておる。しかしながらこれをするにはどうしたかというと、ほとんど全部が
政府の力によってこの探鉱を遂行しております。そうしていよいよ探鉱してその地質がわかったら今度は民間にそれを許して、民間は何ぼもうけてもよろしい、
政府はやきもちをやかぬ、どうぞ勝手にもうけてくれ、そうすれは税で召し上げる、だから自分たちは民間でやってやれぬところだけやっていくということでやった結果が、非常に画期的なものができた。しかしそういうところを調べるのには相当な時間と労力と金を費しております。そういう金は
日本で言いますと全部が無利子の金である。
日本でも、もしも
石油を大いにやろうと思うならば無利子の金を要するわけであります。ところが
日本では有利子の金でも一割以下のものはほとんどない。ただ
一つあるのは、
政府のお金は無利子であります。それで五カ年計画であれだけのものを遂行するというのは、私の見るところでは
日本としては画期的であります。その画期的のものをやるのには現在の帝石の力ではとてもできない。特に帝石へ私が行ってから、ガス工業を興したいと
考えておりますと、両方はやっていけない。ガスはどうしても早くやらないと、これは非常に時代におくれる節もあります。この
石油は幾ら増産して足らないのであります。千万トンになってもなおかつ足らないのであります。今の五カ年計画はもしも
政府の力をもってやってよかったら、これは十倍にも二十倍にもなり得るのじゃないかということを
考えます。ことにわれわれが従来着手しておらず、この五カ年計画にもうたってない
日本海の海底油田、オフショア油田というものは非常な望みがあるのじゃないかという空想を私は持っております。これらをやるためにはまだ多くの無利子の金を要するわけであります。その金はどうしても皆様の協賛によって、そうして国民の血税の中からさいておいていただいて、そうして第二、第三の八橋が出たならばその利益をお返しして国民に迷惑をかけないのみならず、
日本の
経済に寄与するところは大きいだろうという見通しを立てまして、この案が通るようにということでその後いろいろと帝石の
立場と、また群小の採油
業者のことも
考えまして、両面から私は言うべきことを言ってきたわけであります。それによりますと、
最初はこの五ヵ年計画というものは民間のよくしないところ、すなわち無利子の金がなければいかない部分はやってもらうつもりだ、こう
考えております。これは
世界各国の今まで
石油がなかったというところがやっておる画期的な図であります。ちょうどその線に沿うた
考えを持っておりました。アメリカにおいても、大きい会社、スタンダードオイル、あるいはカルテックスという大きい財閥の持っておる金というものはほとんど無利子の金をたくさん持っておる。あちらでは預金には利子はつかぬものがたくさんありますから、
政府以上の資金繰りがつくわけであります。そういうものを動員して探鉱を進めておるわけです。
日本にはそういうものがないために、やりたくても五ヵ年計画を遂行することができないというのが私の理論であったのであります。しかして今度こういう
法案にしていただくには民間のよくしないところだけお願いすればそれでよい。事業についても十分含みがありますから、それはいつでも私の方も繰り出すことができるのであります。今の組織にあまり変動を起さないようにして、そうして新しいそういう不可能な点だけを
政府の力によって
解決していただくというのが私の第一の希望であります。それを私どもは
政府筋にこれを請願にして出したのでありますが、いろいろ経路を経まして、どうしても今度の特殊法人というものは
石油もやらなければならぬ、それでなければ通らぬというようなことになったものでありますから、握りつぶしになって、できないよりも、次善をとったらよかろうということで、私はまあ百点をよう取れませんでしたが、七十五点くらいで満足したというのが私の偽らぬ告白であります。それゆえにもしもこの問題が
日本に恵みを将来くれることができようということを
考えた場合には、ぜひとも一日も早く、本
法案のままでもよろしゅうございますから通していただきたい。ただ先ほど
加藤君の言われるような問題は、私も労使の使の方の関係からかんがみまして、労の方から申し出はとくと承知しております。どうしても私は首を切りたくない、
政府が奨励しておりました完全雇用の線に沿うてお互いがやらなければならぬということになりますると、帝石は至って微々たるものであります。人間の数からいえば全体でたった六千人しかない、われわれの方で五千人、あと約千人足らずというものが中小、群小であります。六千人の
石油マンというものの問題は労働問題としてはそれだけのことであります。これを炭鉱あたりに比べてみますると、炭鉱では全体で四十万の労働者がある、そうして今度群小の炭鉱の整理をいたしますると約三万人の人間がはみ出すわけである、それから比べると帝石の問題はほとんど問題にならぬ。それゆえに社会に対する反響というものが至って少いのもやむを得ないと私は思います。しかしながらそれぞれの部門を承わっておる人は、その部門における完全雇用の問題を十分に
考えてやるのが当然の義務だと私は思う。それゆえに私は帝石の経営者、責任者としてこの五千人の人間の将来に対することは十分
考えておりますが、おそらく今度
政府と私の方とが組んでやるところのこの五ヵ年計画というものは、ほんとうに将来とも予算をとってあの通りをやっていくならば、私は今の帝石陣営では足らぬので、まだまだ雇用をしなければならないということを
考えております。首を切るどころではない、もう少しよその方から応援を願わなければならぬようになるのじゃないか、それは新しく資源を探す
方面にあるわけでありまして、従来持っております、今油の出ておるところはそうはいきません。これは八橋にいたしてもだんだんと凋落していきましょうから、それに対するかわりのものを作っていくということが、私の残った帝石を経営していく
一つのねらいであります。それにはガスの工業を進めていきたい、これもすぐはもうかる仕事じゃないが、その間に現在の含みのある八橋あたりの利益を使って将来永続性のある企業に転換していきたいと思う。そうしてこれから
政府はなるべく未知の方に力を出していただく、もちろんわれわれはできるだけの協力をすることによりまして今度もわれわれは三億円を出す、またほかの同
業者もほんの喜捨的な株を持たれることと
考えております。でありまするから
政府は進んでやっていただきたい。幾年からはおそらく——ことしは資金源といたしますると
政府の方で約四億五千万円の現物出資がある、その上に少くとも過半数ということになりますると、民間はもう四億五千万円出さなければならないのですから、そのうち三億は私の方の帝石の負担になり、あとの一億五千万円がほかの
業者の出資になる、そうしますると約九億円の資本が第一回として成り立つじゃないか、その上に
政府の補助金の三億、これがきますから、全部で十二億の金が使えるのです。これからこの
法案が通りまして実施に移るのはおそらく十月になると思いますから、あとたった六ヵ月しか今期はないのです。半年に十二億を使ってもいい、悠々たる含みを持っております。おそらくそれだけは使えないと思いますが、来年はそれが
政府の出資が十億を越して二十億近い金が使える、その勢いで進むことになるだろうと思います。そうするとかつてない現象がそこに起りまして、人間が非常な働きをしければならないし、機械力も十分に整えてかからなければならないという現象が起ると思います。しかしながらなるべく
政府が金を出さぬようにしたいということであれば、それは不可能になる、あるいはそのために人間の失業を起すということがありはせぬかということを私は心配しておるわけであります。
政府さえ議会でこのことを進んで協賛していただくならば、今の人間はずいぶん古い人が多いのですから、毎年やめていく老齢の人がはみ出していきますから、新しい事業をつちかっていくということになりますると、相当の人の補給をしなければならない。でありますから私としては少しも
加藤君の言われるような首切りなんという問題を
考えたこともありません。どうしてよけい使おうかということで苦心しておるような次第であります。これは詭弁でも何でもございません。ただしもしもこれが株主総会で通らないと、いけないのです。こういう
条件を今度株主の過半数がもしも賛成しないことがありとすれば、この
法案は私の方でのめぬということになる、ほかの群小がありましてもこの
法律というものは役に立たぬことになりはせぬか、そうすると自然の結果として首切りもやむを得ないということに陥るということを私は心配しておる、だからどうしても今度の株正総会が無事に満場一致をもってこの
法案をのみ込むだけの文句にしていただかぬと、そこに非常な無理がかかって、採算からいえばそんなことをしない方が、帝石は借金がよけいあるじゃなし、また売掛代金があるじゃなし、地上に出た原油は一トンが二十五ドルになりますから、ただ水を抜きさえすれば二十五ドル、すぐドルになるというものはほかにはないのです。大がいは手をかけて——鉱石でも何でも第一次精錬、第二次精錬をしなければ価値がないものでありますが、これだけは上へ吹きさえすれば二十五ドル、そうして皆さんが喜んでどんどんとっていかれて、売掛代金どころじゃない、先に証拠金もいただける、非常に冥利に尽きる会社であります。借金といえども至って少い、また金も、補給金もあるから、別に苦しんでこんなことをやらぬでも株主の方からいうと——ちょいちょい私の力をそそのかす人があって、君やらぬ方がいいじゃないか、ほったらかしておいても二割の配当ができるじゃないか、少しずつ出せば十年や五年でなくなるわけでないから、その方がいいじゃないか、むずかしいことをやるよりは……。それはその通りです。もうけ主義からいえば人間の首切っても差しつかえなければその方が一番安直でありましてそうすれば年に十億でも余分にもうかる、退職慰労金をうんと張り込んでも一年で、あとはもうかるから、残った人に二割やそこら増給しても何でもないじゃないかというようなことを言うてくるから、それは打算的にいえばその通りです。しかしながら社会的にいって、完全雇用というような大大事な問題を
考えますと、そういうことに盲従することはできない、どうしても積極的にやっていくことが私はいいと思うのです。
加藤君初めいつでも首切りはせぬかと、そればかり言うて見えますが、私はそういうことは
考えておらぬ、もしも一首を切る場合に到達したら私の方から逃げる、首切りの上手な人があとから出てきたら、そのときは私は至って下手だから逃げるからということを申しておる次第でございます。どうかそういうふうに御了承願いたい。
なおもう
一つ、これは含みになるのでありますが、今度先ほど申しましたように、ドイツ当りが残飯の中に非常にいいものがあるので、だんだん進出しております。炭鉱の機械をどんどん出しております。その図を私は見たのでありますが、非常に残念に思うのは
日本にそれだけの度胸を持って出る用意ができておりません。それゆえに今度はその
方面の陣容をうんと用意しておきまして——インドネシアにいたしましてもその他
日本を迎えるところはざらにあります。英米の残飯が
日本では白米の上等なものになるのですから、そういうものをちょうだいに及びたいという点においては、陣容を整えていい機械の設備と取っ組んで、早く新しい
石油マンというものを養成をしておく必要がある、それにはこの五ヵ年計画は打ってつけなのでありまして、また一面には失業救済をするというようなばかなことをしないで、進んでやれば、第二、第三の八橋が出て、なお一そういいということになります。そういうふうなことがポシビリテイーがあるということを将来お
考えになって、どうかこの
法案をますます実行のできるようにしていただいて、そうしてお金を惜しまぬようにしていただきたい。来年は倍でも三倍でもしてやろうというおぼしめしを
一つちょうだいしたいと思っております。