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1955-07-01 第22回国会 衆議院 商工委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月一日(金曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 田中 角榮君    理事 長谷川四郎君 理事 山手 滿男君    理事 内田 常雄君 理事 前田 正男君    理事 永井勝次郎君 理事 中崎  敏君       大倉 三郎君    小笠 公韶君       菅野和太郎君    笹本 一雄君       鈴木周次郎君    野田 武夫君       淵上房太郎君    山本 猛夫君       加藤 精三君    鹿野 彦吉君       神田  博君    小平 久雄君       南  好雄君    加藤 清二君       片島  港君    田中 武夫君       多賀谷真稔君    帆足  計君       八木  昇君    伊藤卯四郎君       田中 利勝君    松平 忠久君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         経済審議政務次         官       田中 龍夫君         総理府事務官         (経済審議庁調         整部長)    松尾 金藏君         通商産業政務次         官       島村 一郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (石炭局長)  齋藤 正年君         通商産業事務官         (通商局次長) 大堀  弘君         通商産業事務官         (繊維局長)  永山 時雄君         労働政務次官  高瀬  傳君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長官房         総務課長)   熊谷 典文君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         長)      板根 哲夫君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 七月一日  委員田中彰治君及び千葉三郎君辞任につき、そ  の補欠として山本猛夫君及び森山欽司君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 六月三十日  繊維製品品質表示法案内閣提出第一三七号)  地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、  工業品検査所出張所設置に関し承認を求め  るの件(内閣提出承認第四号)の審査を本委  員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会における参考人招致の件  過度経済力集中排除法等廃止する法律案(内  閣提出第四二号)(参議院送付)  繊維製品品質表示法案内閣提出第一三七号)  地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、  工業品検査所出張所設置に関し承認を求め  るの件(内閣提出承認第四号)  石炭鉱業合理化臨時措置法案内閣提出第一一三号)     —————————————
  2. 田中角榮

    田中委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りをいたします。木材利用合理化に関する小委員長中崎敏君より、来たる四日小委員会において、木材利用合理化に関し、参考人鋼材倶楽部理事長清水芳夫君より意見を聴取いたしたい旨の申し出があります、小委員長申し出通り参考人の出頭を求めることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中角榮

    田中委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 田中角榮

    田中委員長 次に昨六月三十日本委員会に付託になりました繊維製品品質表示法案及び地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、工業品検査所出張所設置に関し承認を求めるの件を一括議題となし審議に入ります。まずその趣旨説明を求めます。石橋通商産業大臣
  5. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただいま本委員会に上提されました繊維製品品質表示法案につきまして、まずその提出理由を御説明申し上げます。  化学繊維増産により、繊維全体の中においてその比重が増加いたして参りましたこと、新しい合成繊維などが続々として生まれて参りましたこと等は、最近の世界繊維事情の著しい特徴をなしております。わが国におきましても、特に天然繊維に恵まれない事情もありまして、最近の世界的なこの傾向と軌を一にして、化学繊維増産は者しいものがあります。このような実情もとにあって、繊維種類が増加いたしますとともに、各種繊維の混紡あるいは交織製品が生まれ、繊維製品種類は複雑となりまして、その識別がはなはだ困難になってきております。各種繊維は、それぞれの特色を持っておりまして、そのすぐれた特質を生かすことは繊維製品消費者にとって最も大切なことでありますが、このためには消費者が容易に繊維製品内容を知り得ることがまた必要であります。しかるに以上のように繊維製品識別が困難な実情にありますので、繊維製品内容を適当な方法によって表示することが消費者利益を保護するためには最も大切なことでありまして、これが一般の強い要望になって参っております。政府は、この上要請に対して、数年来消費者保護の見地から所要の法的措置を講ずべく検討を加えて参りましたが、ここにその成案を得ましたので、法案として上程いたすことになったのでございます。  本法案は、全文十四条から成り立っておりますが、その中に規定いたしております骨子は次の通りであります。  まず第一に、重要な繊維製品についてその品質を示す名前とその名前の示す繊維製品内容とを明らかにしております。  第二に、繊維製品製造業者販売業者等が、きめられた名前を使用して繊維製品を表わす場合には、必ずきめられた内容のものでなければならないことにいたしまして、正しくない表示をすることを禁止しております。  第三に、繊維製品表示につきましては、もとより業界自発的措置によって適正な表示が励行されることを期待いたしておりますが、業界の自主的な措置のみによっては、あるいは表示が励行されないとか、あるいは正しくない表示が横行すること等が起りまして、表示の秩序が混乱して、消費者に不測の損害を与えるというようなことが起る場合には、生活必需品である繊維製品について、表示を強制し、あるいは表示者を限定する等の措置を講ずることにしております。  さらに、本法の適用いかん製造業者販売業者消費者等々に影響するところが少くありませんので、運用の慎重を期するために、繊維製品品質表示審議会なるものを設置して、この審議会の活用によって円滑適切な運用をはかることを期待しております。  以上が本法案骨子でありますが、各条については今後逐条御説明申し上げたいと存じます。  何とぞ御審議の上御協賛下さらんことをお願いいたす次第でございます、  次に、工業品検査所清水出張所設置に関する提案理由を御説明申し上げます。  本件は、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基きまして、工業品検査所出張所設置について、国会の御承認をお願いするものであります。  工業品検査所は、輸出品取締法に基く輸出品検査等を行なっておるのでおりますが、現在本所を東京に、支所を大阪外二カ所に、出張所横浜外五カ所に設置しております。今回出張所設置しようとする清水市は、逐年輸出が伸長しつつある清水港を控えており、工業品検査所の所掌する検査品目に属する貨物であって同港から輸出されるものは、その金額において昭和二十九年度には約十億円に達し、今後にないため、やむを得ず東京または名古屋より一々出張して立ち入り検査を行い、また米国向輸出品に対する原産地証明検査を実施しておるのであります。この出張検査は、昨年度百二十九件に達したのでありますが、清水港輸出件数に比較いたしますと、なおきわめて不十分であります。  かかる状態を放置しておきますれば、清水港より輸出される商品の品質を維持いたしますことはまことに至難であり、ひいては海外における本邦輸出品全般の声価を害するおそれがあるのであります。よって、清水市に工業品検査所出張所を開設いたしまして輸出品取締法に基く輸出品検査を能率的に実施せしめたいと考える次第であります。  なおこの増設につきましては、さしあたり職員の配置を三名前後と予定し、現行予算範囲内で検査業務の運営をはかることとしております。  清水出張所増設理由は以上の通りでありますが、今後における輸出貿易の健全な発展を期するため、よろしく慎重御審議の上、御承認を賜わらんことを切にお願いする次第であります。
  6. 田中角榮

    田中委員長 繊維製品品質表示法案に対する質疑は後日に行い、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、工業品検査所出張所設置に関し承認を求めるの件についてのみ質疑を許します。——質疑申し出がありませんから、本件に対する質疑は終了したものと認めるに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 田中角榮

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって本件に対する質疑は終了いたしました。  討論の通告がございませんのでこれを省略いたし、直ちに採決に入るに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 田中角榮

    田中委員長 御異議なしと認めます。  本件について採決をいたします。本件承認を与えるべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 田中角榮

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって本件承認を与えるべきものと決しました。  この際お諾りをいたします。本件に対する委員会報告書の作成の件につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 田中角榮

    田中委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  11. 田中角榮

    田中委員長 次に過度経済力集中排除法等廃止する法律案議題となし、質疑を続行いたします。永井勝次郎君。
  12. 永井勝次郎

    永井委員 公取横田委員長にお尋ねいたしますが、今政府のやっていることは、独禁法趣旨と反するような方向に動いていると思うのであります。独禁法という一つワクを置きながら、石炭、鉄鋼、肥料というふうに、大きなものについて一つ一つ独禁法ワクを乗り越えてやっていく。こういう形になりますと、一体独禁法というものがあってもこれは死物化するし、何ら意味をなさないという状態になってくるのではないかと思うのでありますが、現在政府で今議会にいろいろ提案されている大きな議案のうち、提案までの過程においていろいろ公取の方と職務権限について話し合いがあったことと思うのでありますが、そういう案件は今回提案されている法案の中で何と何であって、どの法案については、どの点が問題であったかということを一つ列記的に詳しく御説明を願いたいと思います。
  13. 横田正俊

    横田政府委員 今回提案になっておりまする政府提出法律案の中で、独占禁止法関係のものがいろいろございますが、その中で問題になりました点をかいつまんで申し上げますと、まず輸出入取引法関係につきましては前回の当委員会で私から申し上げましたような経過でございまして、大体改正方向といたしましては、公正取引委員会といたしましても大して異議はなかったのでございますが、御承知のようにカルテルをかなり広く認めて参るという方向に進みまする関係上、それから生じまする弊害を防ぐに必要な範囲内におきまして、公正取引委員会はその内容についていろいろと発言ができますように、通産当局——主として逸走当局でございますが、法案成立までの過程におきましていろいろ折衝いたしました結果、大体公正取引委員会といたしましては、この線が守れれば、さまで弊害は生じないという確信を持てます線ができましたので、輸出入取引法につきましてはこの提案同音心をいたしたようなことでございます。それから石炭に関しましては、これは大体御承知のように石炭産業と申しますものは、やや特殊な関係に立っておりまして、これに対してはいわゆる単純なる自由競争というような線だけで押していくこともできない面がございますことはわれわれも認めまして、あの案の大体の骨子につきましても賛同いたしたのでございますが、ただ価格が、最後の案が指示になっておりましたか、勧告になっておりましたか、ちょっと正確なことを失念いたしましたが、通産大臣が一定の場合に操短を命ずるという規定がございました。これに関しましてややいろいろ論議がございましたが、やはりその必要性があるものと認めまして、これは公正取引委員会と協議をしてきめるという線におきまして話がついたような次第でございます。  なおその他二、三の法案の中に多少こちらの関係のものがございましたが、大体すでにございますものを改正でございまして、また今まで公正取引委員会がこちらの考えを織り込むために、同意見であるとか、いろいろなものが規定してございます。その線がそのまま守られておるわけでございます。これにつきましても別段の異議はなく提案になっておる次第でございます。  なお衆議院において提案されております中小企業安定法につきましても、提案者の方々といろろい折衝いたしました結果、私ども意見相当御採択になりまして、まずこの線ならば必要以上に安定法がゆるぐということはないという確信を持った次第であります。
  14. 永井勝次郎

    永井委員 立法措置という手続を経ないで、広く慣例的に行われておる独禁法を無視した経済行為というものが、相当に広く行われておる、こういうふうに思うのでありまして、その点について公取からいろいろ注意を発しておる面もあろうかと思いますが、これらの中で最近顕著にこういう関係の現われて参りましたものが、どういう状況にあるのか、それを一つ伺いたい。
  15. 横田正俊

    横田政府委員 御承知のようにこれは業界によりましていろいろ事情は違っておるようでございますが、たとえば最近の綿紡関係問題等につきましては、ことしの最初のころの段階におきましては、操短をいたしますことはなお時期尚早であるという観点からいたしまして、通産当局に対しましてそういう意見を申し上げたことがあるのでございますが、しかしそのだいぶん情勢が悪化して参りまして、御承知のように操短が続いておるわけでございます。しかしこれに対しましてはわれわれといたしましては、なお今後の推移を見守りつつ、もしここに独占禁止法の線に違反するような線が出て参りました場合には、公取といたしまして適当な措置をとって、これはあるいは独禁法を適用して云々ということばかりでなく、通産当局にもいろいろお話をしまして、弊害の除去に努めていただく所存でございますが、ただいまの段階ではいまだそういう必要を認めておらぬのでございます。  なおその他の業界におきましていろいろ設備過剰等もあるいは新しい設備と古い設備とによります生産の調整というふうな問題等がいろいろ起っておるようでございまして、この点はこの前の二十八年の改正におきまして、いわゆる不況カルテル合理化カルテルを認めたのでございますが、不況カルテルにつきましてはなおこの認可要件に合致しておると認められまする業界は、きわめて少いのではないかと思いますが、合理化カルテルにつきましてはだんだんにその動きが出て参りまして、これも私どもといたしましては法律上ああいう制度が認められまする以上は、正式な法律上認められました形において行われることが望ましいのでございますので、そういう態度合理化カルテルの申請につきましては厳重な調査はいたしておりますが、大体弊害のないものにつきましてはすみやかな認可をするという態度に出ておる次第でございます。しかしなおそういう正式な表に出ておりませんいろいろなカルテル、いわゆる地下カルテルと申しますか、そういうものがいろいろなところにあるようなうわさも聞いておりますし、また若干われわれの方でも調査はいたしておるのでございますが、これらにつきましては適当な機会にいろいろな手を打ちたいと考えておる次第でございます。
  16. 山手滿男

    山手委員 関連して。前回のこの委員会において、またただいまは横田委員長から公取立場からしまして、独禁法そのものに関していろいろ御発言がございました。特に輸出入取引法改正の問題にからんでこの委員会において相当の緩和をしようということに対する明確な公取としての見解をお示しになりました。私ども傾聴する御意見であるとは思いますが、公取立場にばかり御賛成を申し上げるわけにはいかない。と申しますのは、この輸出入取引法の制定当時からの経緯を見ておりますと、あの当時は日本の独立前後であった関係もあろうと思いますが、今度改正をしようとするこの法案に書かれておる文句というものは、日本のためにこの法律を作ったというふうな色彩よりか、仕向地に体裁をつくろう、仕向地に迷惑をかけないために日本ががまんをするというふうな法律になっておる。たとえて言えば、今度の改正案によって全部削除されるのでありますが、第七条におけるカルテルを認める場合のごときは、仕向地における損失を向うに与えないというふうないろいろこまかい条項があって、その場合にのみカルテルを認めようというふうなことがある。これは公取の非常な意見によってこういうふうにむずかしい条件をはめられておって、日本利益のためというよりか外国利益のためにこの法律ができたようなふうにさえ言う人がある。その当時私どもはそれに反発を加えて、今度改正しようとする程度までにはこれは緩和しようといったら、その当時は公取は猛烈に外国向うさんの利益をおもんぱかって、外国との関係を考えてこの程度にとどめてもらわなければいかぬということを執拗におっしゃったのである、ところが今日幾ばくもならずしてこういう改正をしようとしておる、公取というふうなものはいつでも日本商売の第一線に乗り出してきて、いわばいつでも裁判所のようなものの意見を聞いて商売をやっていかなければいかぬというようなシステムは私どもは反対である。横田委員長がおっしゃろうとすることは、公取カルテルを認める場合には通商産業大臣同意を与えた場合だけ通商産業大臣認可をしてもいいというふうに、あくまでも公取立場を厳然と守り通していこうという御意見もあるのじゃなかろうかと私は思うのでありますが、いつでも公取が国民の商取引の前面に押し出してきて、いつでも公取意見を聞いては商売をやっていくというふうなやり方がどこにある。私は公取は一種の裁判所みたいなものであって、悪いことがあったら公取意見を言って、それを是正さすというふうな立場で十分だと私どもは思っておる。初めから公取意見を聞き、公取同意を得なければ何も商売が軌道に乗っていかぬというふうな法律の建前は、私は独禁法の不当な強制であると考えておって、それを修正しようとしておる。公取はそれに対して、きのうも、前回委員会においても、本日も非常な御不満の口吻を漏らしておられますけれども、これについては私どもはあくまでこの委員会において修正をするつもりでありますから、公取の皆さんにまたあまりこの本質論を展開されないように私は希望をしておきます。
  17. 永井勝次郎

    永井委員 山手委員から関連質問というから、もっと掘り下げた話かと思ったら、土俵を広げた話で何したのですが、次にお尋ねいたしたいのは法律でどんどん独禁法土俵ワクがくずされていっておる、それから地下カルテルでいろいろ実際の活動の中で公取が無視されてきておる、そしてまたいろいろな事実の中に危なっかしい線がいろいろ出されておるという御答弁であったと了承するのでありますが、そういたしますと現在の日本経済活動のいろいろな動きの中には、独禁法趣旨がよく徹底して、そうして公取活動がしごくしやすくなってきておるというような傾向にあるのか、それとは逆で、独禁法じゃま者である、こういうやっかいなものは早く改廃していかなければならないというような動きが強くなって、独禁法をどんどん乗り越える動きが強まってきておるのではないか、そうして公取活動が、そういった関係抵抗線があっちにもこっちにも強まってきておるのではないか、こういうふうに考えられるのでありますが、そういう関係は率直に横田委員長から見てどうなっておるのか、これを承わりたいと思います。
  18. 横田正俊

    横田政府委員 この前ある機会にその点に多少触れて申し上げたと思いますが、独禁法改廃の論は法律ができましたときからすでにございまして、それが今日に及んでおると思うのであります。ただし最近におきましては、いわゆる廃止という論はあまり聞かないのでございます。しかし二十八年に相当大幅な改正がございました現行法を、さらに改正を加えたいという意向はことに業界の中に相当あるようでございまして、この点につきましてはわれわれといたしましては、機会のあるごとに独禁法がやはりわが国経済のために必要があるという態度に出ておるわけでございます。また政府におきましてもこの独禁法に対する考え方は必ずしも一致していないのではないかというふうに思われまするが、しかしやはり最近の動きといたしましては、大体独占禁止法そのものをあまり大幅に緩和するということについては相当の疑義が持たれておるようでございまして、改正につきましても個々の産業あるいは特殊の方面について必要な限度における改正を加えるという線が大体現在のところでは守られておるように思われます。しかしそれが結局また業界不満を買っておるようでございまして、この改正の問題はなおかなり力強い動きとして、ずっと続いておるというふうに私は考えております。
  19. 永井勝次郎

    永井委員 集排法によって解体された関係のものが、集排法廃止になればこれはまたもとに戻っていいのかどうか。一たん解体されたものが実際は形を変えて漸次もとに戻りつつありますが、この集排法廃止になりますと、さらにその復元情勢が強まっても参り、また早まっても参るのではないか、こう思われるのですが、この復元関係については集排法廃止あるいは現在行われておる独禁法、実際の動き、この三つの関係について一つ詳しく御説明願いたいと思います。
  20. 横田正俊

    横田政府委員 集排法前回も申し上げましたように、いわば過渡的な法律でございまして、昭和十二年の七月一日から二十年の九月一日までの間に過度経済力集中の行われました企業につきまして、昭和二十三年の九月三十日までに持株会社整理委員会が指定をいたしまして、適当な排除措置を講ずる、こういうのがこの法律の使命でございました。従いましてある意味におきましてもう二十三年にその仕事は一応終りまして、現在までこの法律が残っておりましたのは、いわばその残務の処理、昨年の終りに電力会社のある会社最後手続を終結いたしたので、従いましてこの法律の必要はなくなった、こういうわけでございます。そこでこの法律によっていろいろ排除手続を受けましたそのものが、さらに合同その他の方法集中していくということができるかどうかという点でございますが、これは前回申しましたように、今後は独占禁止法の原則によって一切がまかなわれて参ります結果、この集排法規定のでき工合は多少独占禁止法と違っておりまして、大きいものそのものを問題にするという線が出ております結果、この線に触れましても今後の独占禁止法では必ずしも違法でないものが理論的にあり得るわけでございます。現にすでに集中排除でいろいろな手続を経たものにつきましても若干の動きがございまして、またその中ですでに公正取引委員会関係で、合併、営業譲り受け等で認められたものも若干あろうかと存じますが、これは要するに集排の基準がやや独占禁止法と違っておるという点にあるわけでございます。なおこの点は実は集排だけではなくて御承知のようにあの財閥の解体等はこの集中排除法ではございませんので、その前の連合軍のいろいろなメモランダムに基きましていろいろな措置がとられておるわけでございまして、それらの関係のものも今後は独占禁止法の線に触れない限りはまた合同ができるという結論になるわけでございます。しかしそうだと申しまして、旧態依然たるいわゆる財閥的な大企業が発生いたしますることに対しましては、公正取引委員会といたしまして独占禁止法の線を通じて監視をいたしておるわけでございますので、現在までのところ独占禁止法の線に触れるというようなものはまだ出て参っておりません。
  21. 永井勝次郎

    永井委員 集排法が適用され、そうしてあと持株整理委員会で一応の事務の処理が終った、こういうことであります。これは当時のいろいろな状況、進駐軍のいろいろな目的のためにこれが行われたという点もありましょうが、こういう関係で一応の整理が終った、この整理の基礎に基いて次の段階としての集排法にかわるべき——集排法が現在持株整理委員会で一応の整理ができた今の段階において、発展した一つ集排法、にかわるべきこういう法案が必要であるとわれわれは考えるのでありますが、その必要性についてはどういうふうに考えておるのか伺いたいと思います。
  22. 横田正俊

    横田政府委員 その点は非常にむずかしい問題でございまして、いわゆる反トラストの制度が生まれましたアメリカにおきましても、成立のときから現在に至るまでの問題になっておるわけでございます。要するに企業の大きなそのものを問題にすべきかどうかということが中心になりまして、その点はそう簡単に決しがたいものであります。むしろ昭和二十八年の改正におきましては御承知でございましょうが、事業能力の較差という規定が削除になりまして、ただいま永井さんのおっしゃったのとはやや反対の方向改正が加えられたのでございます。この改正につきましては、社会党はたしか全面的に反対をなさったと思うのでございますが、先ほど申し上げましたように大きなもの自体を問題にするかどうかという点はよほど慎重に検討する必要があると考えておる次第でございます。
  23. 永井勝次郎

    永井委員 大臣にお尋ねいたしますが、大臣は昨日来の話によりますと、日本経済を国際的な市場において発展させるためには、小さなものを整理して大きな企業に集約していかなければならない、それが合理化の目標である、要約すればそのような御答弁であったと思うのであります。そういたしますとこの合理化の目標なり段階というものの基準をどこに置くかということによって違ってくるわけでありますけれども、現在雑然とある企業の組織を、一応現在の合理化によって中小をつぶして大企業に集約するという第一段階、次には大企業の中においてさらに第二次の集約が行われる、こういう形によってどんどん——これもまた特別立法によって独禁法を越えていく、こういうことになれば、さらに日本の鉄なら鉄が、富士と八幡が合同すれば、これは日本の国全体の鉄というものを独占的に支配することができる、それから繊維関係についてもセメントについても、こういった関係でどんどんそういう方向が首肯されていくということになるわけであります。大臣の経済的な一つの考えからいえば、そういう本質的なものを持ち、そういう発展性を持っておると思うのでありますが、これに対してはどうお考えになるか。きのうの御答弁がそのまま大臣の間違いない考え方であると、こういうふうにお考えかどうか、あらためて伺いたい。
  24. 石橋湛山

    石橋国務大臣 昨日申し上げた通りでありますが、私どもはそんな——たとえば製鉄事業を日本一つにしてしまおうというようなことは考えておらない、大は大、小は小でそれぞれ持ち味があり、特色があるのでありますから……。ただ海外に対する競争のような場合には、たとえば中小企業の製品というものは——中小企業そのものをおっ放しておけばやはり過度競争になったり、いろいろ弊害が生じますから、そういうものもやはり組合等によってできるだけ海外に競争力を伸ばす、そうして中小企業の特色のあるものは中小企業を生かしていく、こういうのが私どもの考えであります。ただむやみに一緒にするなんということは毛頭考えておらないことば、永井委員も御承知だろうと思います。
  25. 永井勝次郎

    永井委員 日本の大きな企業が海外に大いに発展して国際市場で戦う、そうして国内においてはおのずから大企業の限界と中小企業の限界とがあって、中小企業は中小企業として果し得る限度で何する、こういう境界線が法制的にもあるいは慣行的にもあったというわけではないが、おのずからそういう限界があった、ところが終戦後ことに最近不況が深刻になってくるとともに、海外の市場から追い出された大企業は、国内においてどんどん中小企業のやっていた仕事の中に入ってきて、国内における市場の独占をはかっていく、国際市場から追い出されてきたこれらの大企業は、国内における市場の独占をはかって中小企業をどんどん併合していく、そうして集約をはかっていく、これが今日不況カルテルなりあるいは合理化カルテルなりによって、独禁法一つ一つ法制的に越えてやろうとしておる政府の考え方である。そして法制化されてないものは、地下カルテルとして実際に行われておるところのやり方であります。この事実を無視して大臣が中小企業を安定させるのだ、発展させるのだ、大企業の独占ははからないのだということは、これは答弁が間違っておる、うそを言っておる、間違ったことを言っておる。だから大臣がほんとうにそのように考えておるならば、大臣の経済見識を疑いますし、白を黒と強弁するならば、あまりにもひどいやり方じゃないかと思うのでありますが、実際そういう大企業が中小企業をどんどん併合していくこの姿を大臣は、どうお考えになっておるか。
  26. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ある部面において、経済的の力の上から大企業が優勢になるということもあろうと思います。しかしながらそれが全部不当な独占になるというようなことはむろん独占禁止法で禁止されておりますから、お話のような方針で政府がやっておるということは絶対ない、やはり国民全体を生かさなければならぬのでありますから、ただ単に大企業を作っていいなんという考えは毛頭持っておりません。
  27. 永井勝次郎

    永井委員 これらの問題については、本質的に資本家の利益を擁護する立場に立つ現内閣と、国民経済利益を守るという立場に立つわれわれとは平行線で、相交わることがないのでありますから、その本質さえわかればけっこうなんで、あまり長く質問を続けようとは思いませんが、現在集排法は機能を失った、従って集排法の適用した、これが実施をされた精神を生かして、旧集排法の発展として新たにこの集排法にかわるべきものを用意して、これを廃止するというならば私はわかると思うのでありますが、これはそのまま廃止しっぱなし、それから独禁法の方はだんだん弱く廃止していく、そうして一つ一つ特別立法によって独禁法を越えていく、そういうことによって日本経済界というものが今混乱の渦中に巻き込まれておるわけでありますが、大臣はこの集排法にかわるべき措置、解体された旧財閥がさらにまた復元していくという、こういう現在の動きに対して何らかの措置を法法律的に講ずるお考えがないかどうか。また経済的に行政措置として現在のこういう措置に対して対策を立てる、対処するお考えがあるかどうか、この二点だけ一つ承わっておきたい。
  28. 石橋湛山

    石橋国務大臣 この集排法にかわるものを作るという考えはただいま持っておりません。そのかわりは独禁法において十分御指摘のようなことができる、かように考えておる次第でありますから、独禁法によって今後は処理していく、こういうつもりでおります。
  29. 永井勝次郎

    永井委員 けっこうです。
  30. 田中角榮

    田中委員長 他に質疑の通告がありませんので、これをもって本案に対する質疑は終了いたすことといたします。  引き続いて本案を討論に付します。討論の通告がありますので、順次これを許します。中崎敏君。
  31. 中崎敏

    中崎委員 日本経済を民主化して健全な国民経済を発展せしめるために、占領政策の一環ではあったと思いますけれども集中排除法が制定せられてこれが実施せられ、一方において独占禁止法が制定せられて今日に至っておるのであります。言いかえますと、大企業によるところの大衆生活の圧迫、ことに中小企業者の正当なる生活を守り、利益を守る、この大資本によるところの政治的、経済的、社会的この大きなる力によってこれらの弱い大衆が犠牲に供せられるということを守ろうとするのがこの経済力集中排除法であり、独占禁止法であったのであります。いわばこの二つの車の両輪の動きによって初めて公正なる国民の取引が確保せられ、国民生活の確保がここに守られておったと信ずるのであります。ところで、この集中排除法の一面の目的であるところの大資本の解体などはある程度実施されたのでございまして、その後において公正取引委員会が機能を麻痺しておる実情ではありますが、現在の実情を静かに考えてみますと、これらの大資本というものはますますその後において結集されまして、この大きなるところの力によって今や中小企業者も大衆もまたその生活にあえいでおるというのが現在の状態であります。してみますと、その後の運用において漸次大資本結集の方向が強く現われておる段階において、たとい一面の目的を果したとはいいながら、さらにその大きなる使命というものは依然として強く残っておるのが現在の姿なのであります。かつて池田通産大臣のときに、中小企業者の五人や十人つぶれてもそれは当りまえのことであるということで大問題を起したのでございますが、石橋通産大臣は口でこそそう言わないけれども、その考えておるところの考え方においては、何らこれと変りがないということを私たちはしみじみ感じておるのでありますが、その現われはまたこの集中排除法の中にもあるということを私は断定せざるを得ないのであります。そういう意味合いにおきまして、形の上において一応その使命を果したとはいいながら、その実態において、その精神において依然として強くこの使命を果さなければならないという、そういう使命を持っておるところのものに、新しく生まれ変らせるということは、これは必要であると固く信じておるのであります。そこで、この集中排除法の内容相当に変更いたしまして、言いかえれば法律改正いたしまして、そうして国民経済を守り抜こうという考え方の上に立って私たちは対処しておったのでございますが、何しろこの時間が足りないというふうな点もございまするので、そこであらためてその精神が必要であるという考え方をもちまして、現在急いでこの法案を通過されようとするところの段階においては、さらにわれわれはこれに対するところの新しい要求をひっさげて立つということを前提といたしまして、その精神においてこの法律廃止に反対をするものであるのでございます。そしてまた独占禁止法審議過程において、経済力集中排除法があるのだから独占禁止法はきわめて不十分である——たとえば会社の傍系会社あるいは子会社関係会社などに対するところの重役の兼務、兼職等の問題についてもそうでありましたが、これは経済力集中排除法に規定してあるのだから、独禁法の場合については不十分であるが、これは一応二つは一緒になって機能を果すのだから差しつかえないというふうな答弁もされておるという経過もあるのであります。そうして、現在独禁法はそのままだんだん一条破られ、次にまた一条破られ、そうしてほとんど骨抜きにされるのではないかという心配があるときにおいて、独禁法があるから大丈夫であるという主張は、どうしても私たちは安心できない。独禁法をさらに強化していく一面において、その補足的な意味において、車の両輪の片一方をかつぐという意味合いにおいて、集中排除法の精神を生かしたところの新しい法律の誕生を要求してやまないのでございます。そういう意味合いにおきまして、この法律案廃止に反対するものであります。
  32. 田中角榮

  33. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいま議題となりました過度経済力集中排除法等廃止する法律案に対し、私は社会党を代表して原案反対の討論を行いたいと存じます。  過度経済力集中排除法は、過度経済力集中排除し、国民経済を合理的に再編成することによって、民主的で健全な国民経済の基礎を作ることを目的として、昭和二十三年十二月に公布施行せられたのてあります。しかるに政府は、今般過度経済力集中排除指令に基く再編成の実施完了を理由といたしまして、集排法廃止しようとしているのでありますが、皮肉にも目下生産の集中企業の合同が顕著に進行を続けており、新しい基盤の上に立つ財閥傾向の復興再建と独占資本の強化が推し進められておるのが日本経済の現実の姿であります。そしてかかる日本経済方向は、当然の結果として、このしわ寄せを中小企業集中し、それはデフレ傾向の浸透とともに一段と速度を加えて、もって中小企業の生存を困難ならしめておるのであります。そのことは今日鉄鋼業界の現況一つを見ても明らかであります。政府はこの事態を私的独占禁止法の活用をもって防衛し、さらに集中排除法の廃止後に予想せられる過度経済力集中の新たなる事態に対してもこの旨を言明いたしておるのでありますが、その反面、石炭鉱業合理化法案輸出入取引法改正法案中小企業安定法改正法案等々のごとく、私的独占禁止法をその一角よりくずし、私的独占禁止法を有名無実化するための適用除外法案を現に幾多提案しており、みずから言明したところをくつがえす努力を続けておるのであります。これが現鳩山内閣の姿であります。この現況において、集排法廃止することは、社会的経済的にきわめて危険であることは言うを待たないのであります。われわれは日本経済の合理的な編成と民主的な運営とを確保するためにぜひとも本法は必要であると確信いたしております。しかしながら本法が現に現状に即さない部分のあることはわかりますので、改正は考えておりますが、本法を廃止することについては絶対に反対であります。委員各位が日本経済の現況を十分御認識下さいまして、中小企業を大企業の圧迫から守るための本趣旨に御賛同下さいますことを期待して討論を終ります。
  34. 田中角榮

    田中委員長 以上にて討論は終了いたしました。  過度経済力集中排除法等廃止する法律案について採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  35. 田中角榮

    田中委員長 起立多数。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  この際お諮りをいたします。本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 田中角榮

    田中委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  37. 田中角榮

  38. 石橋湛山

    石橋国務大臣 この前の委員会石炭の統計のそごについての御質問がありました。経審の方の数字と今回の石炭合理化法案の数字の食い違いにつきましては、経審の方から説明していただきます。  電力会社の経理の場合の石炭の需要量、それから今回の石炭合理化法案における需給見通しとに数字の食い違いがございますが、たとえば三十年度について申しましても、電力用炭の消費見込み、電力需給計画の方では石炭八百八十一万トンと計算いたしておるのでありますが、石炭の今回の需給見通しにおいては七百二十五万トン、ここに差引百五十万トンの食い違いがございます。これは確かに事実でございますが、しかし電力用炭の電力需給計画における計算は国際的にも認められております方式、これは大体三十年くらいの長期間をとるべきものだというのが一般の理論だそうでありますが、その理論に従いまして平水べースをとって、それを基礎として計算をいたしますので、自然かような需給計画におきましては石炭の需要量の数字が出て参るわけであります。これは一たん渇水になれば直ちに入用な石炭で、ございますが、しかし今回の石炭合理化法案における需給見通しにつきましては、近年実際の需要につきましても、現に三十年度にも百五十万トンの違いがあるので、もしこの百五十万トンが電力の需給計画の方のように百五十万トンそのまま利用されるものと見まして石炭需給計画を立てますと、実際問題として非常な食い違いを生じますから、石炭合理化法案における統計におきましては、近年における実際の需給状態をもって統計を作りました。こういうことから食い違いが生じておるわけでありまして、何らごまかしでも誤りでもないわけであります。むろん電力がもし渇水になりますれば、これは電力の方の需給計画通りに必要であります。それからまた万一、われわれの方の今回の需給計画による数字をとっておった場合に、もし渇水が起ったといたしましても、これは現在貯炭もございますし、あるいは電力会社にもそれだけの余裕がございますから、電力需給計画の方の数字でも、実際問題として必要が起れば十分それだけの供給はできる、かような見こみで需給計画を立てておる次第でありますから、どうか御了承願いたいのであります。
  39. 田中角榮

    田中委員長 次に経済審議庁政務次官田中龍夫君より発言を求められておりますので、これを許します。田中政府委員
  40. 田中龍夫

    田中(龍)政府委員 前回御質問がございました、経審長官が参議院におきまして発表いたしました六カ年計画、、これは一月十八日の閣議了解でございますが、この総合エネルギー・バランスにおきまする一人当りのエネルギー消費量の石炭換算において、一・六トンと申し上げましたその計数と、通産省が発表いたしました総合エネルギー・バランスの一人当りの石炭換算消費電との間の食い違いについての御指摘でございます。石炭消費量の数字の点におきましては、通産省との間に推計上の若干の開きもございますが、この誤差の出ました主たる原因は、通産省と経済審議庁との統計の表におきまして、経審の六カ年計画の数字におきましては、電力の方におきまする発電量の石炭換算におきまして、水力の分と火力の分と双方を石炭換算して合計してございます。これは表の備考には二重計算になっておりますることを明記してはございますが、そういう点におきまして計数上のそごが生じた次第でございます。なおこの六カ年計画は、ただいま申し上げましたような誤差がございますが、その後の前記三カ年の数字におきましては、通産省の方と緊密な連絡のもとにやっておりますので、その点は誤差がございませんので、どうぞこの点を御了承いただきたいと思います。
  41. 田中角榮

    田中委員長 質疑を継続いたします。多賀谷信稔君。
  42. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 経審長官の発言の問題でありますが、まことにおそれ入った答弁であります。次官が今答弁になりました内容を聞いておりますと、経審ではどういう作業をしているのか、かようにずさんな作業を聞いた例を私は今まで知りません。電力の換算分と石炭の換算分を両方一緒に出しておったというようなことでいきますと、当然それだけの誤差は出るであろうと思うのです。しろうとが考えましても、エネルギー総合対策を樹立する場合に、しかも総合エネルギーの総合計を出す場合に、火力の分と、しかもその火力に使う石炭の分を合算して出しておったというようなことは、これは大きなミスでありまして、われわれはこういうことは承知し得ないのであります。ですから、経審長官は何らかの機会に参議院の本会議において弁明される必要があると考えるわけであります。  さらに今通産大臣の方から電気料金の算定の場合には平水ベースをとらざるを得ないと言われました。しかし石炭の消費の見通しをする場合には、それでは非常に危険であるから安全率を見たという話がありましたが、この点は、どうしても承服できないと思うのです。最近はなるほど豊水になっております。二十六年が一〇四%、二十七年が一〇七%、二十八年が一二%、二十九年が一〇八・五%となっておりますけれども、やはりこれらも三十年度の平水を見る場合にはこれらの数字が加わっているわけであります。ですから、平水が漸次高くなっているということを考えざるを得ないのでありまして、この点も承服できませんが、こればかりやっておりましたら私の時間がなくなるので、この点につきましては後刻いろいろ質疑を展開いたしたいと思いまして、次に進みます。  まず石炭の需要の見通しについて、何と申しましても重油の問題が最も大きな要素を占めておるわけであります。重油につきましては別に法案が出ておりますので、その際詳しく質問をいたしたいと思いますが、一応一言だけ私はこの際大臣に質問をしておきたいと思うのであります。  本年の一月二十日付の読売新聞に、通産省の役人をして、石油産業は、もはや日本政府より強大である、こう嘆ぜしめたという記事を報道しております。すなわち現在の日本の製油会社のほとんどは外資によって経営をされておるのでありまして、東亜燃料工業のスタンダードオイル、あるいは興亜石油のカルテックス、あるいは昭和石油のシェル石油、あるいは三菱石油のタイドウオーター、こういう会社はほとんど五〇%以上が株式の取得を外資にゆだねておるわけでありまして、重役も半数を外人によって占められておるという状態であります。しかも販売におきましては、シェル、スタンダード、カルテックスという外油三社で直接占める比重が四五%を占めておる。間接的にはほとんど占められておる。また日石とカルテックスの原油提供と製品販売に関する契約におきましても、きわめて不平等である。こういうことを考えますときに、戦争前におきましては、少くとも日本の石油は自主性を持って、おったと思うのであります。選択の自由を持っておったと考えるわけであります。場合によりましては、ソビエト石油やルーマニア石油の輸入によって、国際石油資本の市場独占に対抗した、こういう事例を知っておるわけですが、今全く日本側には自主性がない状態になっております。一体これをどういうように御判断になっておるか、大臣にお聞きしたいと思います。
  43. 石橋湛山

    石橋国務大臣 御指摘のように現在の日本の石油は、占領中からの一種のいきさつで、外油、ことに英米系統の外泊に非常な勢力を占められておるということはその通りであります。しかしこれは今の日本の石油そのものの生産が、現状においてはきわめて少いものでありますから、どうしても外油によらざるを得ないというところからそういうような事態が発生したのであります。従ってわれわれとしては、日本における石油の生産も一つできるだけふやすように努力したい、こういうわけで、近く試掘の法案も出して御審議を願うことになっております。同時に外油の方も、必ずしもこれは今の外油だけにたよるということではなく、ほかからも輸入ができるような方法は講じたい、かように考えております。
  44. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 石炭需給の見通しでありますが、これは局長でけっこうです。重油よりの転換分というのが、三十年度は二十七万トン、三十四年度が八十七万トンと書いてあります。ところが同じようにいただきました資料で、石炭と重油との需要量の比較というところで、鉱工業及び暖厨房用の重油の使用量が、三十年度におきましては三十五方キロ、三十五年度におきましては七十四万キロリットル実は減っておるわけであります。これが当然転換分になると考えるですが、そういたしますと、石炭に換算をいたしますと、三十年度におきましては、少くとも六十四・四万トン、さらに三十五年度におきましては百三十四万トン、こういうようになるわけでありまして、ここにもかなりの差が生じておるわけであります。どうも了解できないのですが、一体どういう事情になっておるか、御説明願いたい。
  45. 齋藤正年

    ○齋藤(正)政府委員 これは御存じのように、鉱工業用重油という中には純粋の鉱工業用のほかに、暖厨房用の重油の使用量も入っております。この暖厨房用の重油を削減いたしましても、それが全部石炭の需要に転換するとは限らないわけでありまして、その辺を見込みまして、今の二十七万トン、八十七万トンというふうに見込んだわけであります。この辺は昨日も多賀谷委員からお言葉がございましたが、われわれの石炭の需要見通しにつきましては、従来過大見積りで相当われわれ自身が苦しんで参りましたので、将来の需要予想につきましてはできるだけ手固く見積るという態度でやっておりますので、その辺も十分今のような事情を考慮いたしまして、この程度に織り込んだわけであります。
  46. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この点もどうも私は承服できないと思うのです。暖厨房用は暖厨房用で石炭の需要をふやしておるのです。どうもこの点も鉱工業の石油の消費の方が下っておれば、これは確かに石炭と競合する部分であろうと考えるのです。競合する部分であれば当然これは重油よりの転換分として現われなければならぬわけですが、その点もどう納得できません。しかし時間がありませんから、この点は後日また答弁をしていただきたい、かように考えて、質問を続けていきます。  次に低品位炭の問題でございますがが、わが国の近代科学をベースとした工業技術は、すべて欧米で発達したものを輸入しております。そこでこれらの技術はすべてその発達した国の資源的経済事情を基礎として作られたものであります。でありますから、日本のほとんどの工業技術というものは、たとえば外国の高品位の石炭あるいは粘結炭のの石炭を使うことを前提に形作られておるわけでありまして、この点日本にそのままこれが行われておるという状態では、日本におきましては必ずしも合理的な状態を呈していないのでございます。あるいはまた海外原料に依存する形になって現われてきておると思うのでございます。ところが日本におきましては従来とも石炭の使い方を、今まで通りに固執しております間に、外国におきましてはおのおの自国の資源の実情に合った、合理的な使い方を促進しておるようでございます。ドイツにおける褐炭、泥炭の利用、強粘結性を必要とするコークス炉形式から脱却、あるいは高圧分炭のガス化、微粉炭の化学的処理方法、低品位炭の利用方法等を行なっておるようであります。アメリカにおきましても、アンモニア工業が一時石炭から天然ガスに移行いたしましたが、また天然ガスの量的制約、価格上昇から、石炭依存へと逆転をした傾向、あるいはまた低品位炭を豊富に持っております南アフリカ、オーストラリアにおきましても、エネルギー転換をやっておるようであります。またパキスタン、インドにおきましても同様な研究が行われております。そこでこれらを見ますると、各国とも、先進国であると後進国であるとを問わず、おのおの自国の資源を活用して、その特性を生かして合理的に企業が行われておるようでございます。日本石炭は、申すまでもございませんが、第三紀層に属しておりまして、ヨーロッパ諸国の重要炭田が大部分古生代の後期かあるいは中生代に生成されておりますのに反しまして、炭価が不十分で、品位が非常に劣っております。そこでいわゆる二号炭というものが非常に多く出まして、あるいは低品位炭のボタが出ておるような状態であります。そこで低品位炭の利用がいろいろ叫ばれておりますけれども、なかなか具現をしておりません。今度いただきました資料にも、財政投資のところで低品位炭の利用ということが書いてありますけれども、具体的な計画を見せていただきますと、何ら記載をされていないのであります。一体大臣はどういうようにこれを考えられておるか。たとえばガスにおきましても、低品位炭を使う、あるいは従来使っておりました原料炭あるいはGIでいきますと発生炉用炭を使わないで、一般炭並びに低品位炭を使うということになりますと、少くとも三倍くらい費用がかかるそうであります。こういうものにつきましてそのままいかに低品位炭を使え、使えといいましても、必ずしも低品位炭が利用されるという段階にいかないと思いますが、政府は具体的にどういうように低品位炭を使わすような方法を考えられておるか、これを具体的に大臣からお聞かせ願いたい。
  47. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私も技術者でございませんから、こまかい具体的な事実はわからないのですが、しかし原則論としてはお話の通り日本の技術というものが明治以来急速に進展をしなければならなかったという特殊の事情によるものと思いますけれども、とにかく外国の技術そのままを持ってきたものが多い。従って日本の資源とマッチしないということは、非常な欠点でありまして、私もそういう議論はずいぶん長いこと今までしてきた一人でございます。ですから御趣意には全部賛成でありますが、さて今すぐにそれではどうするかということになりますと、何しろ日本の技術そのものの研究が、日本の資源にマッチしたような技術の発達をまだ見ていない状況でありますから、急激に、たとえば石炭にいたしましても、日本石炭をどういうふうに経済的に利用し得るか、こう言われると、実はその方法等ははなはだ乏しいわけであります。でありますが、現在やれる限りの、たとえば石炭の産地において低品位炭による発電とかいうようなものは、現在の技術においてもやれるそうでありますから、そういうものをできる限り奨励をしていく、こういうことでこれは技術の研究と相呼応して逐次進む以外には道はない、かように考えておるわけであります。
  48. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 財政投資のところで、縦坑だけでなくて、いろいろ書いてございますが、その中に低品位炭の利用ということが書いてある。ところがいよいよ具体的な計画を見ますと、何ら記載されていない。ですからこの点は一体どうなっておるのか、局長から御答弁を願いたい。
  49. 齋藤正年

    ○齋藤(正)政府委員 低品位炭の利用につきましては、これは実はわれわれとして最大限度に促進を心がけておるのでありますが、大臣からお話がありましたように、中心になりますガス化の問題につきまして、技術的にまだ未解決の点が非常に多いものでございますから、その点は遅れておりますが、しかし技術的に解決のついたものにつきましては、縦坑計画あたりと同順位のウエートをもって推進していきたいというふうにわれわれは考えておるわけであります。具体的に二十億の計画について申し上げますと、現在具体化しております第一が、低品位炭専門の発電所を作る。先ほど日本の工業施設が、外国の高品位炭を使うようにできておるというお話がございましたが、たとえば火力発電について申し上げますと、終戦後の品質の低下に悩みまして、発電力の低下が起りまして、それに非常に悩みましたために、最近の発電所はみなカロリーの基準を相当下げておりまして、戦前は大体六千カロリーが基準でございましたが、現在できております新しい発電所は、ほとんど全部五千カロリーを基準にいたしております。五千カロリーと申しますのは、それがちょうどまん中になるわけでありますから、四千五百カロリーから上の炭は使えるということになっておりまして、その点では現在全国平均の出炭カロリーが六千百カロリーになっておりますので、かなり低品位炭が使えるという形にすでになっておるわけでありますが、今度われわれが計画しておりますのは、そのもう一つ下のボタの選別した低品位炭のみを使って発電をしたいということで、現在常磐地区にその発電所を作ろうということで研究をいたしまして、研究の方は一応結論が出まして、今会社設立の話し合いをしておる段階になっております。われわれの計画では大体七万キロワットを第一目標にいたしまして推進したい、資金は大体四十億程度、それから石炭消費量は三十万トン程度が期待されております。  次に機械製塩の計画がございます。それは御承知のように現地国内の食料塩が百万トン程度の需要に対して、国内生産が四十五トン程度でございますので、なお五十五万トン程度は食料塩の需要がございます。食料塩につきましては、工業塩ほど価格の問題が、重要でないわけではございませんが比較的コストの負担力がございますので、これについてはでき得る限り国産化したいというのが専売公社の考え方でございまして、その線に沿いまして低品位炭を使って機械製塩をするという計画がございます。現在確定いたしておりますのは四社くらい計画がございますが、そのほかになお二、三社計画が出てきているような状況でございます。大体計画は年産二万トンないし二万五千トンの製塩をいたすということになっておりまして、今われわれの方で計画しております分だけで約十万トン程度の製塩をやる、このために石炭はその一・五倍ないし二倍程度、これは品位によって違いますが、そのくらいの石炭が要りますので、十五万トンないし二十万トンの石炭を消費する。それから資金はトン当り二万円という常識的な評価でございますので、十万トン程度のものをいたしますには二十億程度がいるということになっております。なお低品位炭と申しますか、その以下のボタを専門に使う火力発電所を炭鉱の山元に作ったらよかろうということになっておりまして、現に二、三の実験が成功いたしておりますので、この方面にもできるだけ計画が具体化する限り、資金を優先的につけて参りたいというふうに考えております。これはこの委員会でも御発言がございましたが、ガス化の問題でございますが、これにつきましては先ほど申し上げましたように、まだ技術的に未解決の問題が非常に多いわけでございますので、それにつきましてはなおもう少し試験研究をやらなければいけない。そこでこの研究につきましては、従来工業化試験あるいは応用研究補助金というような試験研究の補助金を交付します場合に、重要研究項目としてこの二、三年毎年取り上げておりますが、残念ながらまだ工業化の見込みがあるという計画まで出ておらないような伏態であります。
  50. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今お話になりましたガス化に関連いたしまして、都市ガス問題もありますが、時間がありませんので次に進みたいと思います。  実は直接この合理化法案内容の問題ですが、まず標準炭価の設定についてお聞きいたしたいと思うのであります。標準炭価はどういうように決定をされるつもりであるのか、おそらくバルク・ラインでいかれると思うのでありますが、限界生産費でいくとするならば、大手炭鉱はきわめて有利になる、かように考えます。現在のところはあるいは中小の方が中にはコストが安い、こういう場合もあるでしょうけれども、御存じのように、炭種別に見ますと、原料炭、発生炉用炭の九〇%は大手が持っておる。しかも鉄鋼、ガス、窒業の大口需要者にこれらが売られておるということで、非常に有利である。カロリーの面から見ましても、二十八年の出炭の実績は、大手が六千三百カロリー、中小は五千七百カロリーになっておる。そうすると六百カロリーからの差がそこにあるわけであります。すなわち自然条件において大手は非常に恵まれておる。しかも広大な鉱区を持って可採炭量も豊富でありますから、縦坑その他の機械化に適しおり、また財政投融資もほとんど大手に行われると考えるわけでありますが、そういたしますと、この資料にもありますが、筑豊炭田のある炭鉱のごときは、発生炉用炭を多く出しておる、そうして送炭原価が現在の四千五十六から二千八百九十四円になる。しかも出炭は九十六万トンから百五十三万トンになる。こういうことになりますと、大手と中小がはなはだしく差がつくわけであります。  そこで、この自然条件の問題ですが、御存じのように、大体日本の未採掘の鉱物は国の所有であります。ですから自然条件がいい悪いというのは、本来先頭主義で鉱区がいい悪いということになる。その鉱区のいい悪いというのは、国の行政権が付与した権能でありまして、鉱区というのは権利であります。国の行政権が付与した権利によって、その優劣がつくわけでありまして、これは企業努力によって優劣がつくのではない。その点他の産業と非常に違うと思うのであります。しかもこの機械化その他の問題も、自分では十分資金の調達ができずして、従来とも財政資金によってやっておる。自然条件とその近代化、しかも近代化は国家の財政投資による、自然条件も国家の行政行為によって付与された権利である、こういうことになりますと、結局この優劣というのは、全く企業努力でなくて、国家のいろいろの行政行為その他の投資による優劣で、ありまして、その点画一的な標準炭価をきめられるということについては、社会正義の面といいますか、そういう面から私はどうも矛盾を感ずるわけですが、大臣はどういうようにお考えであるか、これをお聞かせ願いたい。
  51. 齋藤正年

    ○齋藤(正)政府委員 私からお答えいたします。標準価格と申しますのは、御承知のように石炭の市価の基準となるべき価格を作ろうということでございます。御存じのように、価格というものは一物一価の法則ということでございまして、いかにコストが高くても、いかに条件が悪くても、それには関係なしに一つの市場では一つの価格できまるということになっておりますので、お話のように中小炭鉱におきましては、品質その他の面でコスト上不利な炭鉱もございますが、そういうことに関係なしに価格としては一つの価格を作る以外に方法がないのではないか。ただしこの標準価格はあくまで標準でございますので、実際の取引におきまして特に有利な売り先を見つけまして、標準価格より若干高い価格で売るという場合に、それを禁止する考え方は毛頭ないわけであります。
  52. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 技術的な問題でなくて、考え方等について大臣に御答弁願いたいと思うのです。普通の産業ならば、なるほど企業努力で価格を安くすることができるのですが、炭鉱の場合は非常に限界がある。優劣というのは、企業努力でなくてほとんど自然条件と国家の財政投資によっておる。こういうところに私は問題があると思うのです。この法律による標準炭価で差異をつけるということは、あるいは困難かもしれませんが、価格を一律にきめるというところに、私はかなり問題があろうと考えるわけであります。これに対する大臣の答弁をお願いすると同時に、局長から、この標準価格の法的性格はどういうものであるかということと、さらに価格を設定する場合に、従来公団時代には、たとえば九州は二つ、それからたしか山口、常磐、、北海道二つというような建値できめられておったと思うのですが、そういうように各地区別々におやりになるかどうか、さらに炭種別あるいはカロリー別におやりになるかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  53. 齋藤正年

    ○齋藤(正)政府委員 今の多賀谷委員のお話の価格の性格問題は別にいたしまして、建値の方法につきましての技術的な問題と、それから標準価格の法律的な性格の問題だけをお答えいたします。建値の方法につきましては、これは現在のところまだ最終的にこういうふうにきめるんだということは、何もわれわれの方としてきめておりません。これは合理化審議会の中に当然石炭の生産業者も需要者の代表の方も入ってこられますので、合理化審議会で十分検討していただいて、その関係者の納得のいった線でやりたいと思うのでございます。ただ標準炭価というものの性格からいたしまして、これは公定価格のように、具体的に価格を確定するものではございませんで、一つの目安を示すものだ、そういう性格でございます。従って建値の方もあまりこまかくきめる必要はないわけでございまして、公団時代にいたしましたような地区別、カロリー別、建値場所別というような、非常にこまかい作業をやる考えは毛頭ございません。地区別程度の区分をつけるかどうかもなお今後研究していきたい。要するに石炭価格の一つのレベルをこれによって示せばよろしいという考え方であります。もちろん炭種別に需給関係相当違っておりますので、その辺も問題になるのでありますが、そういう点もできれば取引の実際におきまして自然にきまる、炭棟別のメリットにまかしていくというやり方が適当ではないか、ただし特殊の炭種のものが、従来の商慣習のメリットに比べまして異常に高騰したというような場合には、それについては別にまた措置をするということが必要ではないか、こういうふうに考えるのであります。  それから標準炭価の法律的な性格でございますが、これは要するに政府の見解を発表したというものでございまして、この価格自体に法相的な拘束は何もございません。ただこの価格を基準といたしまして、ある程度以上下った場合には、それが生産制限なり価格協定なりの指示をいたします条件の一つが成熟するということになりますし、またこの標準価格からある程度上昇いたしました場合には、引き下げの勧告を発動するということになります。結局価格の上限なり下限なりをきめる場合の一つの基準になるということでございます。  それから同時に石炭の価格の決定につきましては、御存じのように重要産業の需要で、しかも大量的な需要につきましては、需要家と供給者側との一種の団体交渉のような形で現在価格がきまっております。そういう価格決定のあり方から考えますと、政府がこの程度のレベルが適当であるという見解を表明いたしました場合には、具体的な契約の締結に際して、それが有力な一つの基準になるだろう、こういうのがわれわれの考え方であります。従って今私が申しました上限、下限の間におきまして、通常契約が締結されている限り何ら標準価格に拘束されるものではないものと考えます。
  54. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただいま政府委員からお答えしたところで大体尽きておると思いますが、今の自然条件云々ということは、これは実際日本でどれだけの石炭が本年度なら本年度、来年度なら来年度要るかということが目安になって標準炭価というものがおのずからきまるものであります。ですから審議会においてその中小炭鉱の生産コストというものももちろんしんしゃくいたしまして標準価格をきめるのでありますから、今にわかにお話のように、それでは大炭鉱は非常に自然条件がいいからこれをどうするということはちょっとむずかしいと思います。それから今の資金の問題は、これは何もわれわれは大炭鉱だけにやろうというのではないのでありまして、なるほど縦坑を掘るというような場合には多くは大炭鉱に行くかもしれませんが、そのほかの機械化等につきましては、今後日本石炭鉱業を維持していく必要上、中小炭鉱というものにも十分援助ができるわけでありますから、お話のような非常な不公平ということは、今までの自然条件がおのずから不公平になっているということは一応議論になりますが、今後その不公平をさらに助長していくというようなことではございません。
  55. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 標準炭価の話がありましたが、あるいはこれはかえって経済の混乱を来たしはしないかという気持がするわけです。なるほどいろいろな手が打たれるわけですが、先ほどからも議論がありました、政府ですらお認めになっております例の電力用炭の問題でも、平水であるのと若干、一割ぐらい豊水であるのとは二百万トンぐらい違う、そうすると石炭の生産の方には弾力性がないわけです。さお雨が降ったからそれではすぐ掘るなというわけにもいかないでしょうし、渇水になっておるようだから、天気続きだからどんどん掘れというわけにもいかない。そこで生産に弾力性のない企業でありますから、ここに非常に問題が起ると思うのです。ですからいやしくも需要計画をおきめになり、需要量を決定なさるのでありますから、もし需要量を決定され、そのいろいろの処置をされて、需要がそれに満たない場合には政府としてはどういう処置をお考えであるか、これをお聞かせ願いたいと思うのであります。
  56. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これはお説の通り石炭鉱業というものは非常に生産に伸縮性の乏しいものですから、昔から、非常な波乱のあった鉱業であることは御承知通りであります。ですから非常にむずかしいのです。しかし一応の標準炭価をきめて、そのきめるときにはできるだけの検討をして、需給にアンバランスがはなはだしく起らないような計画を立てて標準炭価をきめるということは、この法案を実行し、そうしてとにかく合理化によって日本の炭価全体を合理的に逓減しようというのには、やはり標準炭価というものはきめる必要がある。ただこのきめ方はお話の通り相当むずかしい問題でありますから、十分そのとき、どきの事情を考慮して、誤りがないようにやらなければならない、それではその来年度の石炭の需要はどれほどか、計算をして、やったところが、たまたま非常な豊水が起って石炭が余るというようなことに対しては、実はこれは手なしなんです。
  57. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣から手なしだと言われて、正直であることはけっこうですけれども、それでは私は責任ある石炭行政を担当する大臣としては非常に遺憾であると思うのであります。ですからせっかくこれだけ手を打たれておるのに、最後のきめ手がない、すなわち政府がいやしくも需要計画を立てて、そうして審議会等の意見を聞かれて慎重審議をおやりになるのでしょうが、それでやられてまた情勢が悪いというのでいろいろその他の手を打たれて、さらに実際の問題は先ほど申しましたように生産の弾力性がない企業ですから、おいそれといかない、そうすると水力だけの関係一つ見ましても、これでもう火力の関係におきまして二百万トンから差がある。その他一般の経済情勢を考慮するときに、相当の差が出てくると思うのです。豊水と渇水になりますと五百万トンから差が出る。ですからこういう事情になって手がないということではやはり困るのでありまして、何らか政府が金でも持ってそのときには操作するような気持があるのかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  58. 石橋湛山

    石橋国務大臣 まあその予想がはずれる程度によることになりますが、普通の豊水、渇水の差くらいならばそのときそのときで常に需給関係をにらんで調節して参りますから、はなはだしいストックができて困るというようなことには陥らないものと思います。(「それが今出ておる」と呼ぶ者あり)これは今までほうってありましたから。ほうっておけばこういうことになります。
  59. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは私たびたび引用するのですが、ちょうど昨年の三月ごろ愛知通商産業大臣が予算委員会で四千八百万トンと言われた。それが昨年の六月ごろになりまして石炭局長は四千八百万トンは誤りでした。旗をおろします。今度は四千六百万トンです。こうおっしゃった。そのうちにだんだん下って四千三百万トンになり、四千二百万トンになったのが昨年の状態です。これだけ生産と需要との関係がアンバランスになる企業ですから、その点を大臣としては十分考えられておかなければならないと思うので、私はこの点を次の機会に再度質問をいたします。  最後に流通部門についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。最近、ことに二十九年度における流通上の変化を見ますると、これは大手対中小、さらに大手の中でも中央大手と地方大手、こういう競争が非常にはげしくなっておることをわれわれは見るわけであります。昨年の三月と九月の状態を比較してみますると、需要総量は減退をしておるのに、大手及び販売業者の荷渡しはふえておるような状態であります。ことに中小企業者は非常なしわ寄せを食っておるわけでありまして、また同業者間においても非常な転売をしておるような状態であります。ことに近畿地方におきます大手のダンピングといいますか、大手筋が特約店を通じて市場を広げようとしておったわけであります。いな、しておるわけでおりますが、新銘柄を作りまして、低価格で特約店にそれを、六千カロリーの粉炭においては一月から三月において一〇〇で売っておりましたものを十月から十二月におきましては、一般銘柄は七五%であったにかかわらず、新規銘柄は六二%で売られておったと、これは通産省が発表しておるのであります。かくのごとく大手は直需口の確保を行うとともに、一方特約店を通じて市場の拡大をいたし、白系統の特約店に隠蔽された形において、終局的には中小炭鉱を駆逐しておるような状態になっております。ここでこの昨年の状態を見ますると、市場の再分割を生じておる。こういう状態になりまして、中小はますます苦しい状態を呈しておるわけであります。昨年倒れました幾多の炭鉱を見まするときに、必ずしもコストが高くて倒れておるという状態ではございません。日満鉱業の新屋敷にいたしましても、新目尾(サカノ)にいたしましても高倉鉱業の岩屋、平田山、筑紫にいたしましても、中堅炭鉱でありますが、相次いで倒れた。この倒れた原因を直接それにいろいろタッチいたしました関係上私は詳しく知っておりますが、これらは販売るを持たなかったというところに大きな原因があるようであります。そこで先ほども私申しましたように石炭は鉄鋼なんかと違って——鉄鋼は独占的なメーカーによってすぐに生産の調節をやりますが、必ずしも炭鉱の場合はそういう状態にはないということと、さらに弾力性がない。そこで少し好況に向うと思惑買いが出てくる、今度不景気になると思惑買いがないかというと、逆に不景気になったらなったでまた過剰炭が販売業者を通じて。ダンピングされて、思惑の余地を生じておる、こういうような状態であります。そこで私は、こういう中間利潤を得ておるところの機構を排除して、この販売機構について政府は何らか改革される気持はないかどうか。この点を解決しなければ、中小炭鉱を救う救うと言いましても、非常に困難じゃないかと考えるのですが、大臣はどういうふうに考えておられるか。
  60. 石橋湛山

    石橋国務大臣 前の需給の調整の問題でありますが、お話のように長い歴史を見ますと、今まで石炭というものはときどきひどい需給のアンバランスを起しておりますが、この法案によってできるだけ需給のアンバランスが起らないようにしようというのがこの法案一つのねらいでありますから、さように御了承願いたいと思います。  それから今の販売機構の問題は、実は通帳省としては中小炭鉱の販売機構について、何らか共同的な販売機構を作るように今まで指導して参ったのでありますが、実際において中小炭鉱自身が、今もちょっとお話があったように、景気なり不景気なりの場合に、各自が共同しないで行動するというような傾きが、これは炭鉱だけではなく、中小企業者全体の一つ弊害と思いますけれども、そういうことから今までうまくいきませんでした。この法案には別段販売機構についてはございませんが、通産省としてはお話のように中小炭鉱の石炭もできるだけ売れるように今までも指導し、今後も販売機構については——これは実は中小炭鉱者自身の反省も要するのでありまして、政府の力だけでいくわけではありませんが、その機構については一つ十分検討して指導していきたい、かように考えておるわけであります。
  61. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも大臣の答弁にはふに落ちない点が多いのであります。この法律で需給のバランスをとっていくことにすれば十分やれるとおっしゃいますけれども、私はどうも不安でたまりません。さらに質問を続けたいと思いますが、時間がありませんのであらためて質問いたしたいと思います。
  62. 田中角榮

  63. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 詳細な点についてはいずれ法案の逐条審議のときに質問することにいたしまして、きょうは、さっきから大臣の答弁を伺っておりますと、自信を持たないで法案をお出しになっておるようで、私はまことに遺憾であると考える。詳細な点は後日に譲るとして、法案の組み立てとそれを実施していく政府の信念というか、どういう目的でこの法案をお出しになったかという点について、時間は一時間だそうですが、一つ政府の答弁もだらだらして時間つぶしにならぬように答弁してもらいたいと思う。  この石炭鉱業合理化法案の目的は、条文の冒頭にも書いてありますように、国民経済の健全な発展に寄与するためにやると政府は明らかにしておるようであります。そこで、現在の炭鉱経営は国民生活に寄与していないのか。寄与していないからこれをおやりになるのであろうと私は思うのでありますが、その寄与していないという理由の数々の点を具体的にお聞かせを願いたい。
  64. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私は現在の石炭鉱業が国民生活に寄与していないというようなことは考えておりませんし、この法案の中にもそういうことはないだろうと私は思っております。むろん現在の石炭鉱業そのものは、国民生活に過去においても寄与し、現在においても寄与しておるのでありますが、ただ、申し上げるまでもなくよく御承知通り、現在の石炭鉱業というものは非常な一種の危機に瀕しておる。そこでこの危機を何とか切り抜けると同時に、石炭の価格を国際的に外国炭または重油等と十分競争のできるだけの基盤に持っていかないと、今後の日本石炭鉱業というものが十分に国民生活に審与することができませんから、そういうことによっていわば一そう国民生活に寄与するように持っていきたいというのがこの法案の目的であります。
  65. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 非常に抽象的ですが、寄与するためにやると書いておられる。寄与しておられるのなら、何も寄与するためと書く必要はない。寄与していないから寄与するためにやるのだということは三つ子でもわかった話なんです。そういう考え方自身もあいまいなんです。順次私はお尋ねをしていきますが、私はこの法案をもってしては、政府の言うように石炭鉱業は国民経済に寄与することはできないと思う。政府のこの法案をもってやったのでは、国民生活に寄与するような基礎的なものができないということを私は信じておる。その点について漸次申し上げていきますが、なぜ私がそういうことを言うかというと、石炭鉱業の現在までの危機というか、不安定を解決して経営の健全化を確立するという具体的な方策は何ら条文化されておりません。たとえば石炭の年度別需要量を策定して、これを法律で保証する点が全然考慮されておりません。それから需要と生産を調整する組織も機構も制度化されておりません。たとえば、もしこれを健全なものとしようとされるならば、すでに石炭業者の中には御存じのように大手炭鉱は石炭協会というものを作っておる。それから中小炭鉱はそれぞれの地区に組織を作って、全国的な意味において連合会を作っておる。この二つの組織が自主的な統制方式をもってこの危機を乗り切ろうとして、すでに調整をはかっているじゃありませんか。なぜこれらを生産の一つの調整機関として法人化して、そしてこの力をかりないのか。さらにまた需要においても年度計画を立て、この配炭というかその操作をやるところの組織機構というものを法律的に明らかにして、需要と生産を取り組ましてやっていくというところに石炭の危機も去り、安定化して、いわゆる需要と生産の調整を完全にはかり、そこから政府の目的とするところの基礎ができ上っていくと思うのであるが、その点についてどのようにお考えになっておりますか。
  66. 石橋湛山

    石橋国務大臣 石炭の需要というものは、石炭だけではきまらないのでありまして、全体の経済活動によるのであります。ですからこれと見合って、それで年々の需要量をきめていくという以外には方法がないと思います。私どもは決して信念なしではないのでありまして、その需要量を十分検討しまして、それぞれそのときどきの経済活動の状況に応じまして、需要量を算定をしていく。それに合わして生産を調整していく。同時にたとえば重油とか、あるいは外国炭の輸入とかいうものについても、常に考慮を払って総合的に見ていく、こういうことでやっていくのが、これはもう唯一の手だろうと思う。その観点からこの法案を出しておるのでありまして、この法案によりまして、必ずその目的は到達し得るものと確信いたします。それからなお現在の石炭鉱業会等をなぜ利用しないか、これは石炭鉱業会そのものあるいは連合会そのものを利用するようになってはおりませんが、むろん石炭業者の十分なる協力を受けなければならぬ。石炭消費者の協力も受けなければならぬ。あるいは労務者の協力も得なければならぬ。その中でも石炭鉱業会あるいは連合会等は、十分の発言力を持ち得るものと私は信じております。
  67. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣はさきに石炭だけが何も燃料じゃないと言われるが、そんなことは三つ子でもわかっておる話です。全体のエネルギーの計画の上からやるのだとおっしゃるなら、総合エネルギーの計画の上から、今度の法案石炭をどれだけ掘って、どれだけ需要さすという計画の上に立ってこれは出されてありますか。総合燃料対策の上から、水力は幾ら、あるいは火力は幾ら、油は幾ら、石炭は幾ら、これだけを必ず五カ年計画の上に保障するという上に立って、この法案は出されてありますか、それを一つお伺いしておきます。
  68. 石橋湛山

    石橋国務大臣 それは、だれでも、今のこの変動をする経済界において、五年も十年も先までの需要を必ずこの通りに実現すると言い切れるものはおそらくないだろうと思う。しかし一応われわれのめどは、ここに資料に出してありますように、今後の相当年数の間の各種のエネルギーについては、総合的の計画を立てておる。さらにこれはむろんなお審議会等ができまして、十分検討してもらわなければなりませんが、そうしてこの長期の計画を立てると同時に、年々歳々そのときどきの経済状況その他に応じて、当面の需給計画を立てていく、こういうことがわれわれのこの法案の考え方でありまして、おそらくそういうこと以外に、今需給計画を立てるというようなことはできないだろうと思います。
  69. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私は十年も先のことを聞いておりません。この法案の時限法である効力期間だけを聞いておる。五カ年間に一応総合燃料対策の計画の一環として、石炭昭和三十年度の年度需要量はこれだけ、それから五年後に至ってこれだけというものを、はっきりこの法律の中においてその需要を保障するということが、総合燃料対策の一環として作られてこ子権威あるものと思うのですが、どうですか。先ほど政府が言っておられた、勧告をする、勧告をされたって痛くもかゆくもないように、この法律はなっております。別に罰されることば何もないじゃありませんか。そうすればやはりこの法律の権威を維持していこうとするのなら、先ほど大臣が言われるように、総合燃料対策の一環としてこの法律を出されるのなら、石炭の需要度をこれこれにするということを明らかにして、その年度計画を法律で保障していくということが、私は当然法律の持つべき使命であると思うが、その点についてはどうですか。
  70. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは御議論でありますが、ものの需要を法律規定するということはなすべからざるものだと思います。これは政治問題であり、経済問題だと思います。ですから一面において経済六カ年計画、これにもいろいろ御批評がありますが、われわれはこれから大いにあの線に沿うて、経済活動を増していかなければならぬ。これはどうしてもやらざるを得ない必要事でありますから、本年度の財政等におきましては十分のことはできませんでしたが、これは一つ馬力をかけて経済活動の伸張をはかりたいと実は考えております。こういうわけでありますから、一応政府案としてここにお見せしました需給計画くらいのことは必ず石炭の需要はあるもの、こう確信して、一応の政府案を作っておるわけであります。年々の具体的な問題は、そのときにならないと、これはだれでも立てられないと思います。その辺で一つ御了承願いたい。
  71. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私はその年度計画を法律の条文でこまかく書けと言っておるのではありません。そんなことは私も論じておりません。ただこの法律を出すに当って、くどいようであるけれども、総合燃料対策の一環として石炭の需要度を定めていこうとされるなら、それに伴う生産をやらしていく。そこにおいてこれはきわめて計画的に行われておる。その一つの裏づけとするものが、あるいはどういう行政機構をもってそれをやろうとするのか、法律の条文になくても、計画を実施していくということが、やはりこの法律にそれだけの力がなければ何も意味がないでしょう。私はそう思うが、どうです。その点を聞いておるのです。
  72. 石橋湛山

    石橋国務大臣 むろん当面の行政庁としては通産省がその責任を負うのでありますが、しかしながらこれは全体の政府の計画ですから、全体の政府として、第一経済六カ年計画というものも同じことでありまして、これは実行していかなければならないのでありまして、数字には多少の変化は計算の上でできましょうけれども、とにかくわれわれは雇用量をふやしていくことを目途としていくのでありますから、それで年々の計画は、それぞれの専門家あるいはその他を集めた審議会等において、十分石炭の問題については検討をしていくのでありますから、それでいいと私は考えております。
  73. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 政府は需要と生産等に伴って石炭を安定化して、そうしてたとえば能率を上げていく、あるいは炭価を下げていく、そして国民生活に寄与していくという点については、何ら具体的なものを、政治的な力をもってしてもやろうとしておらぬということが、ここに明らかになったことを私は申し上げておく。その点を私はさらに追及していっても、これは石橋通産大臣がしどろもどろになって、結局ボロに出す以外にないと思うから、差し控えておきます。そこでこれは石炭鉱業の危機不安をほうっておけないというこの三、四年来の現状に政府は追い詰められて、苦しまぎれに窮余の一策——窮余の一策にもなりませんけれども、その程度で出した法案といわざるを得ないでしょう。だからこの法案合理化という美名に隠れて、法律の力によって、中小炭鉱というか、悪い条件の炭鉱を企業整備をする。合理化ではない。これは企業整備をするところのものであって、その結論としては、大手炭鉱の条件のいいところのみが独占安定がされる、こういう結論に私はなると思う。そういう考え方でこの合理化をやろうとする政府の意図であるならば、私はおそらくこれは第二次、第三次という合理化というか企業整備をやらざるを得ないというところに漸次また追い詰められていくであろうことは火を見るより明らかであると思う。そういう点について、この合理化というか企業整備というものはもうこれ以上やらないんだ、ほんとうにこれからは安定化していく、たとえば需要等も、何でも政府は五年後には五千万トンとかいうことを一応考えておるというふうな話もひそかに聞くが、そういうように今後は需要を上昇さしていくんだ、断じて炭鉱をより以上に不安定に陥れて、合理化企業整備をやっていくということはないんだ、こういうことについて確信を持っておられるかどうかを一つ伺いたいと思います。
  74. 石橋湛山

    石橋国務大臣 もし鳩山内閣が五年、十年続けば必ず実現をするというわけでありますが、これはしかし伊藤さん、日本石炭が今四千二百万トンがらみ、四千三百万トンも売れないというようなことは、どこかに必ず間違いがあるのです。こんなことでは日本の国民は仕事もなし生活の向上もできないのですから、私はこれはもういかなる者か政府をやりましても、石炭の需要がこれ以上減るというようなことは絶対なし得ないことであります。でありますから私は、この計画で一応三十五年度にはとにかく五千万トンとなりますが、五千万トン程度石炭が今後数年の間に需要が起らないということは、これは絶対にないと確信しております。これはやらなければなりません。
  75. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 石橋さんも通産大臣になられると同時に政府委員からも報告を受けておられると思うのですが、昨年のこの委員会で、その当時はなるほど吉田内閣の時代でありましたけれども、これは今の与党の諸君もいわゆる全会一致の形で、昭和二十九年度、昨年度は四千八百万トン日本石炭を消費する、こういうこともきめられた。油その他はこれに見合う程度に制限をする、これもきめられた。その後当時の愛知通産大臣は、四千八百万トンはちょっと無理かもしれぬが、四千六百万トンまでは絶対責任を持ちます。こういうことも答弁した。四千八百万トンを四千六百万トンまで自分が責任を持つと言った。ところが現実はどうですか。二十九年度は御存じのように四千百五十万トンそこそこじゃありませんか。こういうようになってきている。ただいま鳩山内閣の続く限りとおっしゃるが、鳩山内閣の公約違反のことをここで私は聞いたってもうだれも信用しません、もうそういうことではおそらくだまされないでしょう。だから、とにかくあなたが今おっしゃるように、いわゆる年度計画をほんとうに実施していこうとされるならば、これについては政治力だけでは——まして鳩山内閣は政治力はありませんからね。とにかく政治力のほかにやはり法律の条文として、法律としてこれを保障するなりその裏づけがなければ、これはやれるものではない。いろいろほかからも問題が起ってきますから、やはり需要の問題、生産の問題というものを一応びしっと定めておいて、あとはこれに見合う程度にやはりこの制限なり抑制なりをしていく、こういう建前に立たなければ、どんなに石橋さん、あなたが通産大臣として政治力があったといたしましても、それはやれるものではありません。やはり法律の力が必要なんです。その点についてあなたはそういう法律は、まあこの法律は勧告程度で、聞かなくても痛くもないようになっている、あってもなくてもいいような法律であって、これはおれの政治力でやるからというように自信を持っておられるのかどうかしりませんが、まあ自信を持っていそうもありませんけれども、とにかく法律があってもなくてもやれるとお考えになっているのか、その点を一つ明らかにしていただきたい。
  76. 石橋湛山

    石橋国務大臣 石炭の需要を興すということは、消極的な意味においては、外国からの重油の輸入を減らすとか、あるいは外炭の輸入を減らすとかいう方法である程度消極的意味においては日本石炭の需要を興すということは可能と思います。しかしながら積極的に日本の生産を興して、そうして全体の燃料、エネルギーの消費をふやすということは、お話のように法律を作りましても、これは水のふちに馬を連れていくのはいけるかもしらぬけれども、飲ますことはできないということになると思うのです。ですから、これは石炭だけに取っ組んだのではできないと思うのです。そうでなく、全体の経済政策の問題であると私は信ずるのであります。これは政治力があるとかないとか、無能とか有能とかいうことはおいて、とにかく今の日本のこういう現状をこのままにおけないということは、これは何人も認めざるを得ないのでありまして、現在以上に国内の経済活動を萎縮させて、それで燃料の消費もなお減るというようなことはやれないのでありますから、これはいわば一種の至上命令としてやらざるを得ないことだと考えますので、これはだれがやってもやると思います。
  77. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 全くこれは何というか、のれんに腕押しみたいなもので、自信のない、出たとこ勝負で答弁をされているのですから、全くたよりないことおびただしいですよ。私は、今そういう計画の上に立ってと大臣はおっしゃっていますが、これは大事な点ですから伺っていきますが、私が二回にわたって要求をしておる資料がございます。これは私が第一回に要求してから、もう一月以上になります。それからまたこの間もこの委員会等で要求をしておきましたが、それは、エネルギーの増産と拡張の計画数字はこの前から発表されてありますが、しかしこの結果が日本のおもなる産業と家庭生活にどのように安く寄与することができるか、その分析をした資料をお出し下さいと言ってある。それからさらに、どのエネルギーを拡張増産した方が今後のエネルギーが安くなるか、それらに必要なる拡張資金はどのくらい要求すべきであるか、こういうことを私は求めておるのであります。そこで、これについては経済審議庁は、国家の産業経済の計画庁として、御存じのように膨大な機構を持っておる。だから、もちろん作られてあるであろうと思うが、しかし具体的なそういうまとめをしておられぬのである。その結果が、先日多賀谷君が質問をされたときに、数字の上についてしどろもどろとして、ついに委員会を継続することができないという醜態を演じて、きょうその誤りを釈明しておられるというようなことです。民主党鳩山内閣はと、さきに大臣はおっしゃっておられるが、鳩山内閣の六カ年の経済計画というか、これを発表されておる。このエネルギーは日本産業経済、国民生活の原動力ともいうべきものであるから、鳩山内閣もさだめしりっぱなものをお作りになっておると思うので、私が今資料要求とともに、求めておりますこの計画についてどのようなものをお持ちになっておるのか、一つ具体的に——それは資料でよろしゅうございますが、一応の、あるのならある、ないのならないと言って手をあげるかどうか、その辺を明らかにして下さい。
  78. 齋藤正年

    ○齋藤(正)政府委員 御要求の内容に完全に適合するというほどではございませんが、現在われわれのところで調べ得る限りのものは資料にいたしまして、すでに御提出してあるはずでございますが……。
  79. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私の言った資料が出ておりますか。私がさきに言ったような日本産業経済、国民生活に寄与するという考えに基いた具体的な資料が出ておりますか。これは具体的にまだなっておりません。見取図みたいなものがちょっと書いてあるだけであって、こんなものは総合エネルギーの計画を確立していくその基礎的な権威ある資料になっておりません。だからその点は、私があとでまたいずれ法案内容にわたって審議をしていくときに要求いたしますから、あらかじめ一つそのつもりで準備をしておいて下さい。  それからさらにお尋ねをいたします。さっき多賀谷委員からもこの点については詳しく質問をしておられたようであるから、私は重複を避けるようにいたしますが、何といってもこれはやはり油に押されてくる、あるいは五年も後になれば、原子力の平和利用というようなものにも押されてくることはわれわれも一応考えておかなければならぬと思う。そうすれば石炭をただ燃料としてたいてしまうというだけでなくして、当然国としては十分準備と用意をして、石炭を原料として新しい利用増を拡大していくべきであると私は思う。そういう点から、先ほど齋藤石炭局長から常磐地方というか、その簡単な点を御発表になりましたが、その程度では私は新しい利用増の点にはならぬと思うのです。そういうことで、この低品位炭の完全ガス化というか、あるいは火力発電というか、こういうものについては国家が資金を出しさえすれば、相当これは効力があることがすでに明らかにされておるのであります。たとえばガス化の問題につきましても、日本は文明国と言っておりますが、しかしながら家庭のガスの消費量から申しますと、欧州各国は一番少いところで五、六〇%使っている。日本の場合はまだ十三%くらいしかガスを使っておりません。そこで日本瓦斯協会などで相当研究をいたしまして、低品位炭の完全ガス化の十カ年計画などというものも作って発表しているようであります。それなどを見ますと、今までのガス化は外国からの高い原料炭を輸入してコークスをとるためにガス化をやっていたようでありますが、低品位炭の宅全ガス化は輸入の原料炭を使わない、いわゆる外貨を使わないで日本の低品位炭によって、完全ガス化が行われる。この十カ年計画で日本石炭を四百四十三万トン消費し得るということを明らかに発表しているのでございます。ただこれを実施するのに多額の資金が要るということが一つの問題点であろうと思いますけれども、一応ドイツでもやっている。それから日本の瓦斯協会などでもそういうものを発表している。政府石炭安定策の一つとして今後低品位炭を原料として使っていくということを十分お考えになっているかどうか、これは将来に対しても非常に重大なる問題であると思いますから、一つお伺いしておきます。  それから本日多賀谷君が質問されて、電力会社との問題、同貯炭問題について論議になっておりましたが、九電力会社の火力用石炭消費の実績を見ますと、水の出方が過去三年間は非常に多かったというところから、予定の需要量が非常に少く済んでいるということになっているのです。たとえば昭和二十七年は石炭が五十四万トン要らなくなった、二十八年には百万トン要らなくなった、二十九年度には二百五十四万トン要らなくなってきたというように、つまり水の出方によってせっかく炭鉱は当てにしておった石炭電力会社の方に買ってもらえないという結果になる。こういう点も炭鉱の大きな悩み、芳しい原因の一つになっておることは申すまでもありません。そういう点から、電力会社は渇水の準備積立金が三年間のうちに百九十億円できた、これは非常に政治上重大な問題として考えるベきものじゃないかと私は思うのです。炭鉱の方は火力発電にこれだけ買ってもらえると思って掘り出した、ところが雨がよけい降ったために水が非常に多かったから、今申し上げるように石炭が要らなくなった、そうすると電力会社は百五十億円からの渇水準備金を持っておる、その反面炭鉱は貯炭の山をなして非常に苦しんでおる——この電力会社というのはいわば軽い意味において国家が管理というほどではないが、相当監視をしてやっておることは申すまでもない。そうすればこの現状において政府は何らの手を打たないでこれを見のがしておるということは、何といっても無策だといわざるを得ない。そういう点から私はやはり電力会社が火力用としての一定の貯炭量というか、たとえば三百万トンくらいは渇水の準備貯炭というか、電力会社用としてこれを貯炭しておく、あるいはこのために炭鉱が苦しんでおるものに対しては貯炭融資をする、あるいは渇水準備貯炭として政府が手持ちの非常用貯炭としてこういうものを持っておるということは、電力会社が今申し上げたように三年間に百五十億円からの準備金がたまってきておるのですから、こういう点等に私は政府がやはりそういう措置を当然とってしかるべきであると思うのであるが、何らの手も打たれてないが、こういう点に対してはどういう理由があったのか。今後それらの点をどうしようとされるのかという点について、一つ具体的にお話を願いたいと思う。
  80. 石橋湛山

    石橋国務大臣 こまかいことはなお政府委員から申させますが、ガスについては、私どももぜひガスの普及をはかりたい。ただ今の石炭の完全ガス化ということは、先ほど政府委員が言いましたように、まだ技術的に若干問題があるようでございますから、それはともかくとして、ガス事業を大いに普及して、少くとも都市においてはガスが大いに使われて、現在の薪炭等にかわるようにしたいということは、私どもの念願でありますから、これに対しては十分できるだけ政府資金等も、あるいは融資等の方法によってガス普及の方策は講ずるつもりでおります。  それからこれも私は技術者でありませんからよくわかりませんが、今までの日本の電気は大体いわゆるダム式でないものが多かった関係から、ことに火力との関係がむずかしく、つまり豊水になれば石炭が要らないというようなことになっておるのでありますが、だんだんこれから、ダム式の水力になりますと、むしろ水力の方が調整作用をして、近ごろ問題になっておりますようりに、火力を常備的にたいていくということも技術的に可能になって参りますから、そういう点をも十分指導してコンスタントリーに貯炭が常備されるようにぜひやりたいと考えております。  それから準備金の問題は技術的に許すならば、準備金を石炭に持っていくということも一方法でありましょうが、果してこういうことが技術的に許されるかどうかという問題があると思います。
  81. 齋藤正年

    ○齋藤(正)政府委員 電力用炭の問題につきまして、大臣の答弁に補足してちょっと申し上げておきます。政府は何らやっていないということではないのでありまして、現在上期の今までの経過におきまして、豊水のために相当引き取りが減っておりますので、会社の従来の計画に比べまして、最低限度の引き取りの義務量のようなものをきめまして、その程度までは消費の有無にかかわらず引き取ってもらうように電力会社に指示をいたしまして、電力会社もその線は了承しております。現在御承知のように電力会社は百三十万トン程度の貯炭を持っておるのでありますが、これは現在の時期としては、むしろ非常に異例の貯炭でございます。大体貯炭能力が百五十万トン程度でございますので、電力会社としては技術的に積み得る限度に近いところまで買っておる誠意はあるわけでございます。なお引き取りのできませんものにつきましては、電力会社の方から個々の会社に申し入れをいたしまして、もし必要ならば山元貯炭ということにして、その資金のめんどうも見たいという申し入れもいたしておるようなわけでございます。ただ今申しましたように、電力会社の貯炭場のスペースの関係から、十分引き取りができないという面の制約と、それから御承知のように、今お話がありましたように、昨年あるいは一昨年の渇水準備金まで積むということは、物理的な貯炭場のスペースの問題とは別に、石炭の貯蔵期間の問題から困難でございます。それで技術的に今のところ可能な限度におきましては、消費量にかかわらず引き取りを促進する、あるいは代金支払いを促進するような措置を講じておる次第であります。
  82. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今大臣のおっしゃったことも、齋藤局長のおっしゃったことも、それはしろうとをごまかしておるという程度にすぎません。というのは、たとえば国鉄にしても、電力会社にしても、それぞれ今苦しければ買っておこうとか何とか、いろいろ手を打たれて、それで解決したかのごとくおっしゃったけれども、それはそんなことはありません。たとえば国鉄においても契約しておるところの炭鉱から、その契約期限中における数量を幾らか早目にとってやろう、しかし総数量においては変りはないぞというのです。これは電力会社も同じです。それは貯炭がよけいできたからといって、何もその契約外に買ってやろうというのではない。それでは何も貯炭の解決をしたことにはなりはしません。だからそういう点でさっきお尋ねしたのは、政府が貯炭融資というか、政府が非常用のために三百万トンなり四百万トンの準備貯炭をして置く。たとえば天災地変なり経済界の変動のための用意と準備をするということは、こういう法律を作ってやる以上は、当然そこまで手を尽しておくべきであるということを聞いておるのです。需要と生産の上において、経済界の変動、天災地変が起った場合における非常用貯炭に対して、政府は責任を持ってやっておられるか。それをやっておらないと、この法律を作っても、何も炭鉱の危機を助ける条件の一つになりません。そういう点において大臣はどのように考えておられるか伺いたい。  私は二、三十点についてお伺いしたいのですが、時間が許しませんから、あと二、三点にしておきます。政府は炭価が高いから四百億円の国家資金を導入して、縦坑六十八本ですか、これを掘って、高能率、低コストにするというのが大体目的のようです。そこでこの膨大な借入金を投資して縦坑を掘っても、私企業によってはとうてい政府が希望するように炭価が下り得ないということを経営者自身も言っておる。たとえば縦坑を掘るならば縦坑を百パーセントに動かして石炭をどんどん掘り出させてくれるなら、ある程度値下げができるが、しかし今のようなことでは、縦坑を掘っても、その能力の半分あるいは六割程度でやられていたのでは、こういう資金を投入してもとうてい政府の希望するように炭価は下げられないというのがこの数字で現われているじゃありませんか。これは石炭局長あなたは御承知でしょう。そういう事情一つ。それからいかに今炭鉱全体が赤字であるかということは、石橋大臣も十分御存じと思うが、三菱は御存じのように三井、三菱と並んでの大鉱業家である。その三菱が赤字経営の結果、会社の最高幹部が全部責任をとって総退陣をしてしまっておるのを御承知でしょう。それから炭鉱が今どういう窮状にあるかを私はここで発表いたしますが、炭鉱は現在九百億円以上の借金がございますよ。これはもうおわかりでしょう。それから炭鉱全体を平均して、トン当り大体四百円の赤字であるということは、これは間違いございません。そういう点から年間大体百四、五十億円の赤字になるであろうことも石炭局長石橋大臣も御存じだと私は思う。さらに炭鉱の関連産業への未払いが大体二百億円くらい今あります。炭鉱が支払いをしてくれないために、関連産業が破産、倒産しておることは炭鉱地区に多くあることを御存じでしょう。さらにまた、もちろんこれは政府の無計画なデフレ金融引き締めによる点も非常に多いのですけれども、さらに労働者も御存じのようにほとんど賃金値上げはストップされてしまっておるという現状である。そういう現状において、炭鉱労働者への未払い賃金——労働者は働いた賃金がもらえなければ生活はできません。何をもって労働者が生活しますか。その未払い賃金が七億から八億円あるではございませんか。これは御存じでしょう。こういうようにして炭鉱が破産、倒産して、非常な悲惨の状態になっておることは、斎藤局長もおそらく自分のことのように胸を痛くしておられると思いますし、大臣もそういう点でいろいろ苦労しておられる点も私はわからぬではありません。ところがおととしと去年とこの一年半くらいの間に、御存じのように八万人からの失業者が出ております。そのうちに、大体われわれの計算では、臨時の鉱害復旧というか河川修理というか、何かそういう臨時的なものに就職し得ておるものは大体二割くらいしかありません。こういうような悲惨な現状である。こういうところにこの四百億円の資金を投入して縦坑六十八本を掘って、私がさっきから質問しておるように、需要の保障はしてない、生産においてもはっきりした計画の上に立ってやらない、そういうなすことを知らずというようなことで、一体この苦しい現状に四百億投入して、政府の意図するような五年の後に二割、三割石炭を下げられ得るという自信の根拠は、どういう点から割り出されておるかを明らかに承わっておきたいと思います。
  83. 石橋湛山

    石橋国務大臣 御質問の点は、この法案の中に織り込んでありますように、縦坑ばかりではありません、できるだけ機械化をしてコストを下げる。むろんコストを下げても生産が非常に落ちたり、あるいは機械化されても一人当りの出炭量がふえるにかかわらず従業者がやはりそこに大ぜいおるというようなことでは、これは希望通りにいきませんが、その点の解決をいたします。同時に需要の方は先ほどから質問応答がありましたように、需要の増加ということは法律でいかんともすることはできないのでありますから、法律の上からいえばいたし方がない、こういうことになりますが、これは全体の経済政策の上で需要の問題は解決する、かようにして参りますれば、私は今の炭鉱の非常な窮境というものはこの法案によって解決できるものと考える。これは窮境を打開するだけの法案ではございませんが、窮境も同時にこれによって解決ができる、これ以外に当面その方策はない、かように考えます。
  84. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今のこの具体的な内容等についても何らこの答弁は説明がされてない。今私がお聞きしたような点は、やはり国家資金を投入してこの成果が上るか上らないかということについては私は非常に重大な問題であると思う。さっき私のお尋ねしたような問題は、具体的に解決をこの法律でやるのであるということを、自信を持っておやりになるのでなければ、この法案意味がありませんよ。今私が順次数字的にも申し上げた、それから需要を高めていかなければならぬという問題についても申し上げた、そういうことが具体的に法律で解決するという自信を持っておられないじゃありませんか。だからそういう点から、私はこの内容程度法律であるならば、炭鉱を救うことにも、値下げをすることにも意味がないと言っておる。これはいずれ順次時間を追うて質問をしていきますから、それらについて一つ明確に答弁のできるように十分勉強しておいて下さい。  それからさらにお尋ねをいたしますが、政府石炭炭価が高い高いといつもよく言っておられる。だから合理化をして値下げをするのだと言っておられるが、高いという根拠を一体どこに持っておられるのか。この高い根拠を一つ聞かして下さい。それだけではどうもあまりあなたをいじめ過ぎるようになるから、具体的に私が少し言います。政府の今の考え方であると、炭鉱のみに石炭炭価の高い責任があるように言われておる。たとえば非能率のためにコストが高いというか、あるいは経営者の経営がまずいというか、あるいは労働者が賃上げというか、何かストライキをやっておるから、こういうような点にすぐ責任を持っていこうとしておられる。この間自由党の神田君がここで質問しておるときにも、何かそういう点を盛んに質問をしておられたようである。そういうような考え方が私は政府にあるように思います。私はこの見地から今度のようなこの合理化法を提出したのではないかという気がする。炭価の高い原因は、生産費を構成しておる諸要素というか、御存じのように、生産をするためにいろいろな経費がかかります。たとえば鉄道の運賃あるいは電力、金利まだその他いろいろありますけれども、この輸送賃と、電力と、金利は政府が行政措置上値下げをさすことができるのです。これはいわば政府機関みたいなものですから……。ところがこれらについては全然これを高いから値下げをする——石炭炭価を下げるためには生産費を構成しているもろもろの経費が高い、政府の行政機関上やれるものについては、当然政府もこれを年度計画を立てて、一割あるいは二割というように漸次これを下げていく、こういうことを私は並行して御発表になることが、またおやりになることが当然な処置だと思いますが、これらについて何らそういうお考えもないようであるし、またやろうともしておられない。発表もしておりません。御存じのように電力のごときは、昨年の夏より本年のこの夏は逆に二割ですか相当電力料金を引き上げているじゃありませんか。それから新しい国鉄総裁は、国鉄が赤字だから今度運賃をさらに値上げしようということを言うているじゃありませんか。金利を下げましたか。こういうものについては一つも手を触れないで、そして炭価が高い高いといって、これを経営者と労働者だけに負わしていこうという行き方が片手落ちと思いませんか。法律というものは公平なる見地に立って作られるべきだと思う。こういう点について一体どのようにお考えになっているか。この点はきわめて大事な点ですから、私は大臣から具体的に伺っておきたい。政府はこの法律によって炭価が高ければこれを下げるとか、あるいは安ければ生産制限をするとかいうことを言っている。そして標準炭価を定めるというようなことも一言っておられる。一体高いとか安いとかいうのは何と比較してそう言われるのですか。いかなる物価と比較して高いと言われるのか、この点を私は伺いたい。そして標準というか適正というか、そういうものをどういう点から定めてやろうとしておられるのか。これも非常に大事な点ですから、必ず実行するという信念を伺いたい。さらに生産費を構成しているもろもろの要素を今後絶対上げない、電力も上げぬ、国鉄のそういう輸送賃も上げぬということの責任を大臣はお持ちになり得るかどうか、これをはっきり伺っておきたい。  それから何か日本石炭外国石炭と比較して高いようなことを言われておったような気がしたのですが、一体日本石炭がどこの石炭と比較して高いのか。アメリカと比較しては高いようだが、イギリスととんとん、日本は少し安い。欧州各国ははるかに高い。こういうように何も日本の炭価のみが高いのではないので、外国石炭は高いのだ、そして御存じのように生産費を構成している諸物価は高いのだ。こういう点等も何ら考慮されていないので、一つはっきりした点をお聞かせ願っておきたい。
  85. 石橋湛山

    石橋国務大臣 鉄道については御承知のように国鉄が赤字である。三億ほど運賃の値上げは押えている。電力についても、国鉄とは要素が違いますけれども、とにかく電力も押えていることは御存じの通り。でありますからこの上運賃や電力料の上ることはむろん私は希望しませんから、極力これを押えていくつもりではありますが、しかし石炭には石炭事情がありまして、石炭そのものも下げてもらわないと、これは価格のそういう問題をやっておりますと堂々めぐりになってしまう。ですから石炭のコストが下るということはぜひともやっていかなければならない。  それから石炭が高いのは何と比較して高いかというお話でありますが、数字は政府委員から言いますが、たとえば一般物価と比較して高い。今運賃の問題がありましたが、運賃の値上りと石炭の値上りとはどっちが高いか安いか、こういう問題であります。いま一つ外国輸入炭あるいは重油等を国内へ持ってきた国内価格との比較、それから今伊藤君の言われた英国なら英国、アメリカならアメリカにおける石炭日本石炭とどっちが高いか安いか、こういう問題、大体二つあると思いますが、その数字については通産省当局としても調べたものがありますから、これは必要があれば政府委員から申し上げます。
  86. 齋藤正年

    ○齋藤(正)政府委員 重油なり輸入炭なりとの価格の比較につきましては、別に資料をお配りしてございますが、その中に掲記してございます。それでおわかりのように現在重油に比べてはなお相当高い、従いましてこれが重油をこのように進出を許した大きな原因になったということは言えるわけでございます。それから物価の倍率から申しますと、これは一時に比べまして非常に差が縮まってきた。しかしまだ消費市場におきましても若干高い。それから運賃を除きました山元価格で比較いたしますと、一般物価の倍率に比べてなお相当に高くなっている。それから外国の値段とのお話でございますが、アメリカはちょっと日本とはけんかになりませんのでこれは除外いたして考えましても、イギリスはもちろんのことだいぶ日本よりも安い。まずわれわれの目標といたしましては、せめて西ドイツ程度まで下げたいという考え方であります。鉄鋼用のコークス用炭を例に取りまして比べますと、日本が十七ドル程度でありますのに対して西ドイツは十三ドル程度、従ってわれわれとしてはこの辺まで持っていきますれば重工業の今後の一層の発達によりまして石炭の需要もなお非常に拡張するというように考えております。
  87. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 あともう二点だけありますが、時間の関係もありますから一緒に伺ってしまいますから一緒に御答弁を願います。政府合理化をやるために設備の近代化というか、先ほどからお尋ねしているように、大手の方は縦坑、これははっきりしばしば聞かされております。そこで中小のみが石炭が高いとは言えぬことは御存じの通りである。そこで設備の近代化という上に立って、そうして縦坑もやるが、あるいはその他のところもいわゆる設備の近代化をやって、これによって高能率、低コストというものを極力はかっていく。やはり日本産業、国民生活、そして世界の市場に戦い勝つためには、私どもも当然これはやらなければならぬことであると思う。そこで縦坑以外のいわゆる中小その他の設備の近代化というものについて、どのくらいの設備資金を一応見込んでおられるかということを伺っておきたい。それから高能率、低コストをやろうとするためには、設備の近代化とともに、鉱業法を改正して、鉱区の整理統合をやるべきだ。これは長年の懸案になっていたのであります。それをやらなければならぬということはずいぶん昔からの話なのです。それを今度の合理化法をお出しになるときに、いの一番に取り上げなければならぬはずである。これによって、鉱業法改正で鉱区の整理統合をするということをなぜ入れられなかったのか、どういういきさつがあったのか、この点を伺っておきたい。この法案は、先ほどから私がお尋ねしておるように、結論として炭鉱側とその労働者のみにその犠牲を負わしてしまうようになるのである。そこでこの法は、罰則法ということより、いわば協力法ともいうべき性格を持っておると私は思う。経営者と労働組合側がどれだけこれを理解し、熱意をもって協力をしてくれるか、この点に求めなければならぬ。これが法律じゃなかろうかと私は思っている。この性格の考え方について大臣はどのようにお考えになっておるか。経営者がそっぽを向くであろうと、労働組合が反対であろうと、この法をとにかく思い切ってやるんだ、それで必ず成功させてみせるんだという自信をお持ちになっておるのかどうか。私はおそらく自信がなかろうと信じております。しからばやはりこの法がもし法律となるならば、経営者と労働組合があげて協力してくれなければ、法の目的を達成することはできない。そこでこの法律をお作りになるときに、経営者側と労働組合側と十分懇談をし、意見も聞きながら法案をお作りになる方がいいといって、私はしばしば苦言を呈したことがある。ところが何かはれものにさわるように、おっかないものにさわるようにして、そういうところは手を尽されてありません。だから経営者の中でも半分は賛成、半分は反対、いや、賛成の方も、今の政府程度じゃだめだ、かりにいつ通すとしても、根本的に修正しなければだめだ。中には反対だ、労働組合は反対だ。一体協力法で受けて立つ方の側がそういうような情勢で、この法案を通して成果を上げる自信がございますか。幾ら石橋通産大臣が心臓が強くとも、何とかかんとか手練手管で言いくるめようとしても、これはできぬと思うがどうですか。
  88. 石橋湛山

    石橋国務大臣 前半の問題は政府委員から答えてもらいます。  あとの協力法という言葉は、なかなかおもしろいけっこうな言葉で、確かにそうだと思う。いかなる法律でも国民、ことにその法律に直接関係をする人々の協力なしに、うまく実行ができるものとは思いませんが、ことにかような経済法においてはその点は確かに強くわれわれも考えております。経営者とも労働組合の方とも相当の接触をいたしますが、経営者の方は大体ごく最近の傾向は、つい昨日も参りましたが、ぜひともこの通過を希望しております。(「根本的に修正してという条件です」と呼ぶ者あり)さようなことは私に申しておりません。労働組合の方にはだいぶ反対がある。これはいろいろな誤解があると私は思いますが、これは第一伊藤君に賛成をしてもらえば、その方は安心だと考えております。妙な回り合せで、前に石炭が非常に足りない戦争直後、私は大蔵大臣としてやはり石炭の問題で苦しんだ。そのときには石炭が足りないで苦しんだ。今度は当面の問題としては石炭が余って困っておる。事情は違いますが、前の石炭の足りないときには伊藤君に大いに御協力を願いまして幸いに切り抜けられた。どうか今回の場合においても伊藤君が先達になって御協力を下されば、これは必ず全国の炭鉱労務者はこぞって賛成してくれると思います。どうぞお願いをいたします。
  89. 齋藤正年

    ○齋藤(正)政府委員 縦坑以外の合理化工事にどの程度の資金を使っておるかということでございますが、これはお配りした資料の中にございますように、本年度の予定では縦坑として四十億程度でございますが、一般合理化工事に五十七億程度のものを予定する。坑道の切りかえであるとか、機械化工事でありますとか、あるいは切羽の修理でありますとか、そういった方面に使いたいというふうに考えております。
  90. 田中角榮

    田中委員長 本案に対する総括質疑は一応これをもって終了いたします。残余の質疑は後日行うことといたします。  次会は来たる七月六日午前十時より会議を開きます。  本日はこれをもって散会いたします。   午後一時四十六分散会      ————◇—————