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1955-06-29 第22回国会 衆議院 商工委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十九日(水曜日)     午前十一時開議  出席委員    委員長 田中 角榮君    理事 首藤 新八君 理事 長谷川四郎君    理事 山手 滿男君 理事 前田 正男君    理事 永井勝次郎君 理事 中崎  敏君       秋田 大助君    大倉 三郎君       小笠 公韶君    菅野和太郎君       齋藤 憲三君    笹本 一雄君       小平 久雄君    南  好雄君       加藤 清二君    櫻井 奎夫君       田中 武夫君    帆足  計君       八木  昇君    伊藤卯四郎君       菊地養之輔君    田中 利勝君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君  出席政府委員         公正取引委員         会委員長    横田 正俊君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      村上孝太郎君         通商産業事務官         (通商局次長) 大堀  弘君  委員外出席者         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長官房         総務課長)   熊谷 典文君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         長)      坂根 哲夫君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局審査部         審査第三課長) 八尋  昇君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君         専  門  員 圓地與四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 六月二十九日  委員賀谷真稔君辞任につき、その補欠として  加藤清二君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  小委員会における参考人招致の件  過度経済力集中排除法等を廃止する法律案(内  閣提出第四二号)(参議院送付)  特定物資輸入に関する臨時措置に関する法  律案内閣提出第八九号)  輸出入取引法の一部を改正する法律案内閣提  出第一三一号)     —————————————
  2. 田中角榮

    田中委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りをいたします。ただいま本委員会において審査中の中小企業安定法の一部を改正する法律案について、昨日農林水産委員会より連合審査会開会申し入れがありました。この申し入れを受諾することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中角榮

    田中委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。なお連合審査会開会の日時につきましては、農林水産委員長と御協議の上、追って公報をもってお知らせすることにいたします。  日程に入り、過度経済力集中排除法等を廃止する法律案特定物資輸入に関する臨時措置に関する法律案輸出入取引法の一部を改正する法律案、以上三法案一括議題となし、審議を進めます。質疑は通告順によってこれを許します。小平久雄君。
  4. 小平久雄

    小平(久)委員 最初に前提として承わりたいのでありますが、日タイ間の貿易協定の概要及び現在の実情についてごく簡単でよろしゅうございますから、あらましだけ承わりたい。
  5. 大堀弘

    大堀政府委員 日タイ貿易についてのお尋ねでございますが、日タイ間の貿易は、現在通商協定によってきめられておりまして、四月から三月まで一年間の協定をいたしているわけでありますが、本年の三月に改訂の交渉をいたしまして、さらに従来よりも若干拡大する方向に相談がまとまっているのでございます。現在貿易額といたしましては片道大体六千万ドルから七千万ドルの間でございまして、現在までのところこちらから買っておりますものは砂糖−昨年は大体三十万トン以上買いましたのですが、砂糖、米、塩その他のものを買っているわけであります。輸出につきましては、重工業生産品及び雑貨につきましても相当大事な市場でありまして、こちらで買いますだけは大体におきましてそれだけの輸出が実行されているわけでありまして、貿易バランスからいいますと、現在のところかなり円滑に行っておりまして、三十年度にはさらに九千万ドル程度まで拡大するということに了解が成立しているわけであります。本法案関係ございます点といたしましては、砂糖砂糖価格安定及び輸入に関する法律関係がございますが、バナナパイナップルカン詰につきましては、これは国内的には不要不急品でございますけれども、やはり先方日本雑貨相当たくさん買ってもらっておりますので、その関係上向うの特産品でありますこれらの物資を買ってやることが貿易拡大に役立ちます関係上、バナナにつきましては年間四百五十万ドル、パイナップルカン詰につきましては一年百万ドルの輸入許可するという協定になっている次第であります。
  6. 小平久雄

    小平(久)委員 そこで今御説明のような事情によってバナナ輸入する、あるいはパイナップルカン詰輸入する、砂糖輸入する、これもやむを得ぬと思いますが、従来これらの輸入につきましては、わが国における輸出振興のために、その輸入権輸出業者に与えるというような方法がとられておったように承知するのでありますが、今度それを廃止する。それで今回この提案のような方法をとられるわけでありましょうが、その間の事情と今までの方法を廃止したことが今後のわが国輸出にどういう影響を及ぼすか、あるいはそれに対してどういう対策を当局としてお考えになっているか、一つ大臣から承わりたいと思います。
  7. 大堀弘

    大堀政府委員 昨年の九月までお話のようにバナナ割当につきましては、台湾向けに若干輸出いたしましたものに対してリンクをして渡しておったのでありますが、その結果はどういうことであるかと申しますと、結局バナナによります輸入利益というものが先方業者に吸収されてしまう、結局輸出価格が安くなるということで、必ずしも日本側利益にならないでこれらのものはそういった形で吸収されてしまうというのが現状でございます。なおそれ以外にこういった制度をとりますことで輸出市場を合理的に維持していくということが必ずしもできないで、やや秩序を乱す結果にもなりますので、この際むしろ輸入利益法律によりまして吸い上げることが適当であると考えたのでありますが、そのために雑貨輸出価格の面で困難になるという事情には、私ども台湾輸出につきましては考えておらないのでございまして、今後もこれを切り離しましても十分輸出の実行ができると考えている次第であります。
  8. 小平久雄

    小平(久)委員 今の御説明によりますと、台湾向け輸出影響は特に難貨については考えられないという点に重点があったようですが、従来バナナ輸入ということは、必ずしも台湾向け輸出業者だけでなく与えておったものと思いますが、その面の影響はどうですか。
  9. 大堀弘

    大堀政府委員 バナナにつきましては従来台湾向け輸出だけに限っておったわけでございます。
  10. 小平久雄

    小平(久)委員 そうしますと本委員会にかかっているのはバナナパイナップル関係でありますが、関連して砂糖関係についてはどんなことになっているか。
  11. 大堀弘

    大堀政府委員 砂糖につきましては昨年度はプラント船舶その他の輸出リンクといたしましてやっておったわけでございます。その結果につきましては先ほど申し上げましたと同様に、やはりかなり輸出価格に不当な値下げを招来しているということが一方の弊害でございますが、同時にこれは相当大きな商品でもございますから、国際的に相当大幅の運用をいたしておりました関係上、国際的批判を受けるという関係もありますので、今回この措置を打ち切りまして、国内に発生する過剰利潤特別会計に吸い上げるという方向に切りかえたわけでございます。その後の輸出対策といたしましては、やはり正常な輸出を伸ばしていくための輸出振興策といたしまして、われわれとしては対策を考えていかなければならぬわけでございまして、船舶車両等につきましては、国際価格関係も十分競争できるような情勢になっております。一般プラントにつきましては、なかなか困難な事情があるのでありますが、それらの点につきましては、私どもといたしましては、輸出保険料をできるだけ安くして参りますとか、あるいは機械の売り込みにつきまして、国際エンジニアの機能を拡充いたしまして、政府の助成によってそういう技術的工業的な正常な経済援助を強化して参りまして、今後輸出を伸ばしていくという方向に持って参りたいと考えております。
  12. 小平久雄

    小平(久)委員 この法案に関連しましてお配りを願った実施要領でありますが、これ等を見ますと、手続等が非常に繁雑なように思われるのでありますが、一体特別利益と申しますか、政府が取り上げようとしておるような利益が生まれるものは、政府はさしあたりバナナパイナップルカン詰について考えておるようでありますが、大ざっぱに申せば、一時ほどではないにいたしましても、輸入するものはほとんどもうかるというか、輸入商は非常にいい成績を輸入面では上げておると思う。そうしますと、今後これらの品目は政令で定めることになっておるようでありますが、だんだん範囲を拡大される傾向にあるのかどうか。それと同時に、またこのような繁雑な手続を経て取るならば、どうせ取るという一つの手段でありますが、もう少し簡単な方法で取ることを御研究なさったかどうか。たとえばわかりやすく言えば、一人について幾ら取るとか、大体そういうことでやっても別段差しつかえないようでありますが、これは一種の入札制みたいなことで取るようでありますが、もう少し手続等も簡単に、同じ取るにしても取る方法を研究なさったかどうか。そういうことを研究なさっても取らなかったのはどういう理由なのか。物資範囲と徴収の方法について御説明願いたいと思います。
  13. 大堀弘

    大堀政府委員 最初品物範囲の問題につきましては、御指摘のように確かに輸入利益の多いのがかなりあるわけでございますが、全体といたしましては、必要品につきましては、外貨事情が好転すればできるだけ輸入をふやしまして、必要なものは値段を下げていくのが方向でありましょうが、バナナとかパイナップル関係あるいはその他比較的不急不要なものにつきましては、かなり外貨事情がよくなりましてもかなりの制限を行わなければならない。そういうものにつきましてはやはり価格差益というものが出て参るのではないかというように見まして、私どもといたしましては、特定物資輸入といたしましては、一般物資ではなく、比較的不急不要の品物で入れなければならぬものについて、この法案によりまして過当な利益があります場合に吸収して参る、かように考えておる次第でございます。  第二点のお尋ねの点でございますか、なるほど定額差額を取りますことが、手続的には一番簡便になるわけでございます。しかしながら定額をきめます場合に、国内価格がなかなかむずかしいことがございまして、行政の運営といたしましては、かえって差益幾らときめたかということについての行政運営上の不適正な結果が出ることがおそれられるわけでございまして、むしろ入札の方式によりまして、国内価格との差額業者の判断によって、入札によって運営して参る方が、結果において適正な結果か得られるのではないか、かように考えまして、バナナにつきましてはさような運用を考えておる次第でございます。
  14. 小平久雄

    小平(久)委員 入札関係でありますが、これで見ると最近の最低額ですか、これをきめておいて、それ以上に入札したものには輸入の権利を与える、外貨割当をする、こういうことになっておるようでありますが、そうしますと、極端に言えば、政府最低予定額すれすれに入れたものが一番納付金が少くて済む、こういうことになるのじゃないかと思うのですが、輸入業者というものもそうたくさんあるようでもないことになりますと、大体一般入札制度と同じように、いわゆる談合というか、そういうことが行われて——この点は従来もこのバナナ輸入についてはわれわれもずいぶんいろいろな話題を聞いておりますが、またしてもそういった弊害が起きて、結局この政府予定しているような収入が確保されないという結果に終るのじゃないかという気もするのですが、そういう点はいかがですか。
  15. 大堀弘

    大堀政府委員 政府におきまして最低納付金をきめまして、それによってビッドにするわけでございます。従いましてビッドの際に納付金の多い人から逐次外貨割当をして参るわけでありまして、その点につきましては、普通の入札の場合と同様に運用ができることになるのではないかと考えておるわけでございます。談合の問題につきましては、これは業者の数もかなり多いわけでございまして、私ども十分注意を払いまして、さようなことのないように運用して参りたいと考えておる次第でございます。
  16. 小平久雄

    小平(久)委員 今の点で普通の入札の場合ならば、言うまでもなく普通の工事の入札ならば、一番格安に入れた者一人に当るわけです。今度の場合は必ずしも一人でないのだろうと思うのです。要するに政府予定した納付金以上に出た者は何人かが当るということになる。こういうことになると、同じ入札でも違うだろうと思うんです。そうすると、同時に入札をして比較的多く納めた者は、逆に言えば、ばかを見るような格好になるんじゃないかと思う。その点は、そういうことが起きてもそれに対する処置というものは何らないわけですか。
  17. 大堀弘

    大堀政府委員 この点につきましては、先般の本委員会におきましても御意見がございましたので、われわれの方も研究いたしたのでございますが、入札によりまして、その場合に一人当りの取り口というものはある程度実績等に応じて一定の限度を設け、一口の数というものをきめて、幾らよけい取っても何口以上はできないということにしまして、一人の商社が独占してしまうような弊害を一方において防ぎたいと考えておるわけでございます。同時に今お尋ねの点は、結局納付金の高い人は総体的にはよけい取れるということになるわけでございますから、その点は不公平なく——普通の入札の場合でありますと、逆に低い人に入札するということになるわけでありますが、本件の場合は納付金をよけい納めた人から逐次取っていく、こういうことになりますので、そのためによけい納めて不利になるということにはならないのではないか、かように考えておる次第でございます。
  18. 小平久雄

    小平(久)委員 その点がよくわからないのですが、納付金の多い順にとにかく取っていくのでしょう。しかも一人に対する許可の額というものはせいぜい一口とか二口、何日になるか知らぬが、制限しておくというのです。かわにわかりやすく例示すれば、指数でいって、一〇〇なら一〇〇と政府最低を押えた。入札するものがそれより高く一五〇のものもある、一四〇のものもある、一二〇のものもある、一一〇のものもある、あるいは九〇のものもある〇九〇のものは落ちてしまうからいいが、一五〇に入れたものも一四〇に入れたものも一〇〇に入れたものも、一口なら一口きりしか許可にならぬということになるのだろうと思うのです。そういうことから見ると、もうすれすれに納めたものが一番得だ。高く政府に納める予定を出したものも同じ数量きり輸入許可にならぬ。結局政府収入も、政府予定額を一〇〇なら一〇〇と押えておるのかもしれないが、予定額以上の収入というものは、ともかくあまりふえないという結果になるのだろうと思う。これは逆に一番高いものに全部許すのだというならばこれははっきりしているのですが、どうも実施要領を見るとそうでないようだからお尋ねしておるのです。
  19. 大堀弘

    大堀政府委員 入札という言葉を使いますが、入札いたします場合に、各ブロックごと入札をいたしまして、その場合に政府のきめました最低価格以上の納付金であって高い人から逐次取って参るわけであります。従いまして結局はやはり高く入れている人がよけい取れることになるわけでございます。それについてあまりに一人に片寄ってはいかぬというので、頭打ちは作っておこう、かように考えておる次第でございます。これで運用していけるのじゃないかと私どもは考えておるわけでございます。
  20. 小平久雄

    小平(久)委員 その点あまりよく理解できませんが、時間がありませんから次に進みます。  そこで特別利益関係ですが、これは要するにあちらの輸出価格とそれからこちらの予定販売価格との差額のうちから生まれるわけですが、台湾実情をこの資料によって見ますと非常に独占的になっておるようです。こういう方法日本でとるようになった場合に、台湾の方での輸出価格を非常につり上げられるという心配はないのでありますか。
  21. 大堀弘

    大堀政府委員 この点につきましては、台湾との間に価格協定ができておりまして、現在一かご七ドル五十セント以下で買うということになっておりまして、上げられる心配はないと考えております。
  22. 小平久雄

    小平(久)委員 それから円地の販売価格、これについては政府に申請した額というものが何も拘束力があるというわけではないのでありますか。ただ一応の予定で、政府から外貨割当をもらえば、入れた以上は自由に各地で販売してよろしい、何らその予定額というものに拘束力がないものかどうか。
  23. 大堀弘

    大堀政府委員 その通りでございます。制限はしておりません。
  24. 田中角榮

  25. 中崎敏

    中崎議員 最近の貿易状況を見ますと、輸出の面において必ずしも当初期待しておったような状態でないように見受けられるのでございます。ことに相当期待しておったところの鉄鋼輸出も、そしてまた繊維製品にしても必ずしも所期のような効果が期待できないのではないかということが心配されておるのであります。ことに輸出の為替じりの見通しについての状況は一体どういうようになるのかを一つお尋ねしておきたい。
  26. 大堀弘

    大堀政府委員 ただいまちょっと最近の数字を手元に持っておりませんが、大体の情勢といたしましては、輸出の点は昨年はかなり上昇を見て参っておりますが、昨年から今年にかけて輸出か増進して参りまして、今年度は上ったところで横はいにいっておるわけでございまして、現状のところは特に輸出数字が落ちておるということはないと私どもは考えておるわけでございます。これに全体の見方といたしましては、長い目で見まして将来必ずしも楽観ができるということを申し上げるわけではございませんけれども、当面本年度中あたりにつきましては、大体現在程度で横ばいでいくのではないか、かように考えておるわけでございます。繊維製品綿糸布につきましては若干楽観できない情勢がございますけれども鉄鋼等につきましては相当先物契約をいたしておりまして、今年度の輸出計画までは十分輸出が伸びるだろう、かように考えておる次第であります。
  27. 中崎敏

    中崎委員 国内産業の現在の状態を見ますと、たとえば紡績のごときも最近に至っては相当の操短を余儀なくされておるような実情にあります。ことに鉄鋼界においても薄板のごときはほとんど非常な打撃を受けて、事業もほとんど継続しかねるというような苦境にまで追い込まれておるような状態であります。ソーダ工業にしても相当ソーダ値段等が不採算のために、行き詰まっておる。あるいは自動車にしても相当過剰生産等で行き詰まっておる。自転車産業についても相当業界そのものが青息吐息の状態に追い込まれておる。そうしたほとんど国内事業の大部分というものが非常に苦境に追い込まれておるわけなのでありますが、これらはほとんど輸入並びに輸出増強処置によってでなければ解決つかないというような実情にあるのではないかと思うのでありますが、一体これらの点についても大臣はどういうふうに処置していくのか、概括的な御意見を聞いておきたいと思うのであります。
  28. 石橋湛山

    石橋国務大臣 一つ一つ品物について事情相当異なっておるようでありますが、今のお話の中の薄鉄板のごときは旧設備によるものが新設備によるものに対してコストの上で競争がむずかしくなって、大分困難をしておるという状況であります。その全体の日本の薄鉄板がなるほど国内の景気があまりよくありませんから、その点の打撃は確かに各方面とも受けておりますが、しかし輸出などの方面においては今政府委員からも申しましたように、非常に大きな望みがあるとも言いかねますけれども、現在のところでは国内価格が下っておるだけに、輸出はやはりある程度伸びるものと思われます。ですから全体の産業をどうするかということになれば、これは国内需要をもっと起すということに観点を置いて施策しなければならぬ。かように考えております。
  29. 中崎敏

    中崎委員 たとえば今薄鉄板の例が出たのでありますが、これに対しましても、産業近代化ということは自然の趨勢でありまして、日本においてもまたこの線に沿うて漸次進むべき方向だけはこれは明らかになっておると思うのであります。その間におきまして相当大きなるところの犠牲、ことに中小企業者並び労働階級犠牲というものは実にこれに耐え得ないというような実情にあると思うのでありますが、この間の不調和というか、いかに大臣はこの問題を処理して対処していかれようとするのかお聞きしておきたいのであります。
  30. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただいま申し上げましたように、根本策としてはある程度国内需要を起すということがやはり必要だと思います。同時に今のお話のように、だんだん設備等近代化というものを要するのでありますから、旧設備によるコストが新設の設備にかなわないものは他に逐次転換するという方策をとる以外に道がない、こう考えております。
  31. 中崎敏

    中崎委員 それは大きな障害と摩擦がなくていければ申し分ないのでございますが、その間に大きな障害犠牲があるから、一体これはどういうふうに処置しようとするのかということを私はお聞きしておるのでありまして、たとえば鉄鋼工業合理化法案というようなものを出して一つ方向をはっきりすると同時に、また業界における一面需給のアンバランス等の無計画によるところの問題を、ある程度カルテル行為を認める等のことによって処理しようとするのか、そうしてできてくるところの中小企業者並び労働者の問題を一体どういうふうに処理しようとするのか、等の点について、具体的に大臣の御意見を聞いておきたいのであります。
  32. 石橋湛山

    石橋国務大臣 鉄鋼についてはお話のように鉄鋼合理化法案と申しますか、とにかく鉄鋼合理化についての案はただいま研究をいたしております。
  33. 中崎敏

    中崎委員 これらの問題と関連いたしまして、国内需要増強をはかるというふうなことも言っておられるのでありますが、具体的にこれをこういうふうにやってこの程度増強するのだというふうな策がなければ、絵にかいたもちをここで言ってもらったところで私たちは何も役に立ちません。そこで具体的に国内需要をどういう線に沿って、どういう方策のもとに、どの程度需要増強せんとするのか、この問題を一つ聞いておきたいと同時に、一面また輸出の問題は相当困難であるとは思うけれども政府の方において相当に決意を持って進んでいかなければならぬのじゃないか、ことに中兵貿易の面においても、中共の側においてはあれだけの薄鉄板のごときはほしいほしいというように要望しておる、それにもかかわらず、どうしたことか知りませんか、どうしても中共への道が開けていかないということによって、国家的な損失というものは実にはかるべからざるものがある。そこでこれが戦略物資とかなんとかいうような考え方の上に立って、そういうことであるならば、私はお聞きしたいのでありますが、現在の世界状況はそれほどに逼迫しておるものであるのかどうか、この薄鉄板がそれほど戦略物資として大きな役割を果すものであるのかどうか、かりに世界状況が将来ともに逼迫するような状況があったとしても、日本がそこまで国民の経済を大きく犠牲にしてやらなければならないのか、他の国のつき合いみたいに、逼迫しないものについてのおつき合いはあるいはいいかもしれませんが、ことに日本鉄鋼業というものは大きな行き詰まりを来たしておる、何十万の人間がこれによって生活の道を失おうとしておる、多数の中小企業がこれによって犠牲を受け半身不随になる、こういうふうな大きな犠牲をほったらかしておいて、何がゆえにこういうように向うが買いたい買いたいというものを売らないで押えておくのか、そこのところを一つお聞きしたい。
  34. 石橋湛山

    石橋国務大臣 中共貿易については、しばしばここでも話が出ましたように、これは日本の立場としてはむろん制限をできるだけ解除して、薄鉄板のごときは輸出いたしたいのでありますが、現状においてはまだそこまで話がつかないというわけであります。これは極力話がっくように絶えず努力はいたしておるのでありますが、例のココムの関係で、日本だけがそれから離れて勝手に輸出をするというわけには参りません。これはほかの関係がありますから、中共とだけ勝手に貿易して、あとの方はどうなってもいいということで日本がいくというめどがつけばこれも一つのいき方でありましょうが、私は現状においてはそうはいかぬと思います。従って、ほかの自由主義国家群と協調を保ちつつ、しかもできるだけ中共貿易も伸ばすように努力する、こういうように、はなはだ煮え切らないように見えますが、それ以外にはいきようがないと思います。それでさような方針でいきたいと思います。  それからほかの方面輸出も、たとえば繊維品の——この間から加藤君からもこの委員会で話がありましたが、インドネシアにおける三角貿易というような問題も努力をいたしております。だからそういうことではなはだ遅々として進みませんけれども、各方面にあらゆる手を打っていく、こういうこと以外には今のとえろいきようはないと思います。  それから国内需要をふやす問題は、どうしても国内に仕事を興すということでありますから、今後何とかそういう仕事を興すような方向政府も努力をするようにしていきたい、これは通産省だけでやれることじゃございませんから、政府全体の方針としてそういう方向へ進むように、私も政府部内において努力するつもりであります。
  35. 中崎敏

    中崎議員 中共貿易に関するココムの取りきめなのでありますが、これは正式な手続をとって国民の了解と納得の上に作り上げられた取りきめでないというふうに私たちは断定しておるのでありますが、それは一応それとして、どうしてもこれは入る当時から、日本の特殊事情の上に——日本はこれだけの人間と少い物資の中で、加工しかやっていけないものであるということは明らかなのであるから、そうした実情の上に立って、このココムに入るとしても、幾多の条件でもつけて、入ることができなくても、その後においてそういった実情を十分にうたって、日本の行き詰まった逼迫した事情を打開するような努力がもう一つほしいのじゃないか、ココムでどういうふうな努力をしておるのか知らぬが、ただ単に聞き入れられないからというようなことでなしに、もう少し政府としても、また国民の総意を結集してそれが対外的に反映できるような措置政府の方で考えるべきではないか、またそういう余地、そういう方法があるのではないかというふうにも考えられるのでございます。ことにはなはだしいのは、先般裸銅線というものが、一応輸出が認められておったものが、逆に今度は制限方向にいったということを新聞でちょっと見たのでありますが、その実情は一体どうなのか果してそういうように今まで認められたものが新しく制限までやられるような事態になっておるのかどうか、そこらも聞いて、おきたいのであります。
  36. 大堀弘

    大堀政府委員 ただいまの制限は、規格その他の問題で若干議論があるようでございますが、現在のところ従来と変更はない、こういう現状でございます。
  37. 中崎敏

    中崎委員 次に先ほど申し上げましたソーダ工業については、御承知の通り塩が主原料になるのでありますが、そうしたものの輸入についても、最近は中共からの輸入もやや増加をされて、割合安い原料塩が使えるようになったので、漸次改善はされつつあるようでありますが、それにしてもなおかつ非常に値段の高い遠方からの塩を輸入するために、日本ソーダ工業、ことにソーダ価格というものは国際価格に比ベて非常に高いという現状にあるために、あらゆる化学工業はこれによって相当打撃を受けておるということも事実であります。そこでこの原料塩の輸入について、さらに一段とこの中共塩を輸入するような考え方を持っておるのかどうかをお聞きしたいのであります。
  38. 石橋湛山

    石橋国務大臣 むろんそういう原料塩のごときものは、できるだけ輸入いたしたいと考えております。お話のように中共に関する貿易問題は、私ども歯がゆいほどいろいろの障害がありまして、これは何とか打開しなければならぬということは始終焦慮しておるのであります。少ししぼられてきましたら、一つ全力をそういうことに向って注ぎたいと思っております。
  39. 中崎敏

    中崎委員 次に硫安についてでありますが、これは相当中共からも需要がある、それなのにかかわらず従来から政府の方では言を左右にして、輸出をややもすれば押えていこうという傾向がある。最近多少緩和した事実があるようであります。しかしなおかつ政府の方で輸出について目を大いに開いて、それならばたとえば輸入の片貿易であるというふうな問題も相当に解決するのではないか、と思うのでありますが、この点について一体どういうふうに考えておるのかを聞きたいのであります。
  40. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは先般肥料審議会を開きまして、できるだけ輸出をいたしたい、ことに増産がだいぶできる見込みでありますから、相当輸出ができると考えております。
  41. 中崎敏

    中崎委員 次に自動車工業でありますが、これは今言ったように、最近においてはことに国産自動車の製造が著しくふえて、しかもこれが実際においては輸出が十分でないために、過剰生産の感がある。従って自動車製造業界相当に混乱の兆候が見えておるというわけでありますが、国内需要はしばらく別として、まずアメリカなどからの自動車の輸入を極力制限すべきである、ことに特需物資といいますか何か知れませんが、アメリカの力から相当大量に日本に流されて、しかもそれがもう骨董品みたいに使用にたえないものが流されるために、その修繕費だけでも大へんな利子を払わなければならぬということも聞いておるのであります。高級乗用自動車の制限はもちろんでありますが、そうした自衛隊等に使うような特需向けの自動車の輸入制限、並びに今度は逆に自動車の輸出について、中共等においても相当輸入を期待しておるということも言うておるのでありますが、実際にはほとんどこっちから輸出をされていないという実情であります。ことに部分品などについても輸出が認められていないというのでありますが、一体これはどういうわけですか。部分品の輸出が認められないと、ここに自動車の輸出はあり得ないと思いますが、これらの点について実情をお聞きしたいのであります。
  42. 石橋湛山

    石橋国務大臣 詳しいことは政府委員から申し上げさせますが、中共に対する自動車ないし部分品はやはり禁輸品の中に入っておりまして、今のところでは出せないというはなはだ残念な状況にあります。それから駐留軍が一種の非合法に持ってくる車については、いろいろの形が大分きびしい制限を現在はいたしておりますから、漸次減少はすると思っております。しかしこれを全くとめることができないことははなはだ遺憾でありますが、それを防ぐことは極力いたしたいと思います。ただ今度は英国との貿易協定もしなければならぬことになっておりますが、英国とかアメリカあたりは輸出品の非常に重要な品目として自動車を数えております。そこで日本から英国なりアメリカなりに輸出をしたいという場合には、そのかわりに向うからも、こっちが必ずしも好ましくないものも入れてやらなければならぬということもありまして、そうい中に自動車が入ってくるので、自動車の輸入を全然とめてしまうということになりますと、今のありさまでは貿易上にやはりある程度の支障を来たすと思います。ですからやむを得ずある程度は入れておるのでありますが、しかしこれも輸入品としては、輸入車を使う方面では非常な苦情があるほど輸入車はとめておるというのが現状であります。
  43. 中崎敏

    中崎委員 ことにアメリカについては自動車が重要な輸出品であるかもしれ京せんけれども日本国内においては、今日では自動車を保護するということがまた重要な工業政策でもなければならぬと思うのであります。ことにアメリカに関する限りにおいては、輸入があれだけに超過しておるのでありますから、逆にどんどんアメリカの方から買ってもらうというような政策が積極的にとられて、そして片貿易の問題をここにおいて解決しない限りにおいては、日本貿易はほとんど改善できない。ありとあらゆるその他の地方においての制約を受けておるのでありまして、ことに中共貿易の点についてはもうほとんど手も足も出ない状態に追い込まれておるのに、ことに一方大量の輸入をするアメリカから、われわれから言えばほとんど不急不要の自動車までつき合いに買わなければならぬということになりますと、これはもう政府の政策がいかにノーズロであるかということを私たちは非常に憤慨、慨嘆せざるを得ないのであります。ことにそうした面についてもう一歩政府の方で腹を据えて、そういう片貿易を調整するのだという考え方の上に立つて、この問題に取り組んでもらいたいと思うのでありますが、大臣の今後の政見、腹のうちを聞いておきたい。
  44. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただいままでドル地域からの輸入が多かったのは、御承知のように特需その他の、つまりドルの貿易外の供給があったことから起ってきておりますが、これもだんだん減りますから、片貿易は自然にその点は修正されると思うのであります。われわれとしてもできるだけドル地域からの輸入を押えて、ポンド地域なり何なりに回そうという努力をしておるのでありますが、さてそのポンド地域に回そうとすると、またそのポンド地域が日本へ持ってきたいものが自動車であったり、機械であったりそれからこっちから持っていくものがミカンのカン詰であったりマグロであったりというようなもので、向うも、それを入れるならおれの方からこれを入れてくれというようなことで、それもある程度ギブ・アンド・テークでやむを得ないと思うのであります。決してユルフンでやっておるわけじゃありません。むしろ少し輸入制限がひど過ぎるなと私は思うほど現在当局者としてはやっておるのであります。しかしこれは御趣旨はよくわかりますから、そういう方針に従って、ただし輸入をただとめるということだけが私は日本経済に寄与するものではないと思いますから、輸入もできるだけやるがよろしい、そのかわり日本のものが輸出ができるような方策を講ずべきだ、こう考えております。
  45. 中崎敏

    中崎委員 それは理屈としては今大臣の言われる通りでありまして、輸入もどんどんやる、輸出もどんどんやる、いわゆる貿易振興するということは、この日本の当然あるべき姿、日本貿易振興なくして、日本のこれだけの人間は養っていけない、国民生活の向上もあり得ないというのは、これは当然なのでありますが、現実にさてどういう方法輸出振興するかということになればできないのだから、そうすると今度、せっかく現在国内でようやく芽ばえつつあるところの工業を全部つぶしてしまうかということになって、日本で何を残すか、全部食えない、飢えた人間だけが、そこにしかばれをさらすという以外に方法はないのでありますが、そういう意味において、石橋さんの積極的な経済政策も非常にけっこうでありますが、その裏づけになるような具体的な政策ができない限りにおいては、勢い、消極的であるといいながら、まず国内産業を守るということが第一じゃないかというふうに私は考えるのであります。言いかえますと、正常の貿易振興によって解決づける範囲において、輸入というものも認めるべきであるが、それが打開できない限りにおいては、まず国内産業というものを第一に助長していくべきである、またこれを守るべきであるというのが、私の考え方なのでありますが、この点の順位、考え方は一体どうですか、もう一度お聞きしたい。
  46. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私もお説の通り日本の一番の今の問題は、どうして増加するところの生産力人口に職場を与えるかということであります。これは第一の要件であります。ただそれをどうしてそこへ持っていくかということになると、やはり非常な妥協が出て参ります。極端に言えば、アウタルキーでやってしまえば簡単なのであります。けれども、そういかないのが現在の世界でありますから、そこで貿易というものをやらなければならぬ。貿易をやるとそこにいろいろな赤字が出るとか為替が足りないとかいうような問題が起るものですから、種々なる妥協をしていかなければならぬ、そういうところに実際の経済政策の悩みがありますが、根本はどこに置くかと言われれば、これはむろん国内産業の助長に置く、ことに生産力人口に職場を与えることに置く、こういうことは忘れてならないことと私は考えております。
  47. 田中角榮

    田中委員長 五分過ぎました。
  48. 中崎敏

    中崎委員 それじゃこの一つだけ。次に大豆の中共からの輸入を五万トンか、かねて話し合いが進んで日本業界においても、国民としても一応これのすみやかなる実行を期待しておったのでありますが、何だか最近の新聞によると、通産省ではこれを取り消しというか、あるいはグローバル方式であるのか、逆トーマス方式か何か知りませんが、事実上はこの輸入がほとんどできないような方針に変更した、取り消しをしたということが出ているのでありますが、その実情一つ大臣からお聞きしたい。
  49. 石橋湛山

    石橋国務大臣 こまかいことは政府委員から申し上げますが、大体は、向うから七十何社かに対していきなり輸入の引き合があった。しかもその価格は非常に高い、それで中共自身も西欧の方へ売っておる値段日本へ売る値段と、今の相場によりますと非常な違いがある。数字政府委員から必要があればお答えいたしますが、そういうわけでありますから、そういう高いものを——しかも何うのいう逆トーマス方式というようなものも、はなはだあいまいである、そういうのをこの際入れるということは非常に困りますから、そこでほかの問題はとにかくとして、今差し迫って解決をしなければならぬ大豆だけはグローバル方式で、どこから入れてもよろしい、そのかわり中央の物も競争で入れる、決して入れないというのではないが、世界価格で、競争で入れてもらいたいこういうことで、グローバル方式にしようと考えておるわけであります。
  50. 中崎敏

    中崎委員 先ほどからの大臣のお説によりますと、ギブ・アンド・テークだ、どんどん日本の物を買ってもらうためには、向うの物もいろいろな条件等を含んで、ときには不利な物も入れざるを得ないのだというようなことを言っておられたのですが、大豆についてはそれがどういう関係になっておるか知りませんけれども、少くともそうしたような考え方の上に立っておるのかどうかということが一つ、もう一つには何らか第三国方面からの圧力などがあったのかどうなのか。あまり中共との貿易が進むことを喜ばない国々がかれこれあるようにわれわれは理解しておるのだが、この場合においてもそういうものの反映、延長であるのかどうか、これをお伺いしておきたいのです。
  51. 石橋湛山

    石橋国務大臣 最後のお尋ねのどこから何かの圧力があったかということは私の知る限りでは絶対にありません。今のグローバル方式にしようというのは、全くわれわれの考え方できめようとしていることでありまして、他からの制肘を受けておりません。  それから中共全体としては、むろんさっき申し上げましたように、ギブ・アンド・テークです。実際ほかの国もそういうことをやっているから、ある場合には砂糖のごときも高いところからわざわざ買っておる。そして日本輸出を伸ばすことにずいぶん犠牲も払っておるわけでありますから、中共に対してもむろん同じような態度で進んでおるわけでありますし、今後もそういうようにいたしたいと思うのでありますが、しかし今度の場合は、それだけの物を入れて果して日本品物をかわりに入れてくるのかどうかが非常にはっきりしないのであります。ですから、その点にはっきりしたものがあれば、なお価格の点は考え直すべきものは私は考え直します。けれども今のところそれもわからぬ、そして値段は高い、それもいいのですけれども、ちょっと気持が悪いのです。よその西欧へは安く売って、日本へなぜ高く売るか、その差別待遇というものに対して、中共の考え方がもう少し直ってくれないと困る、こう思っておるわけであります。
  52. 中崎敏

    中崎委員 さっきの問題を残しておいたのですが、自動車の部品の中共への輸出ですが現に中共へは、たとえばイギリス製品でも、アメリカ製品でも、自動車も相当入っておるようです。部品なんかどんどん入っておる。ところが日本の場合においては部品が禁止されておるというので行っていないというのでありますが、その間の実情を調査しておられるのかどうか。果してそうであるならば、日本はばか正直にいつまでもそんなことをやっていて、国民を殺すような目にあわしてもいいのか、どうなのかそこのところを一つお伺いしておきたいのであります。
  53. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これはいろいろスマッグリングというようなものもありましょうから、どこの経路を通ってどうしておるかわかりませんが、とにかく正式にはどこの国も輸出はしていないはずであります。
  54. 田中角榮

    田中委員長 田中武夫君。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 私は過度経済力集中排除法の廃止の点について質問をしたいのですが、その前にただいまの輸入の問題につきまして大臣一つお伺いしたいと思うのです。それはコンニャク玉の輸入の件ですが、この問題につきまして、先日の予算委員会において大臣から当分これは輸入するつもりはないというようにお答えになったのでありますが、相当コンニャク製造業者に反響を呼んだようでありまして、コンニャク新聞とかいう新聞を見ますと、相当な反響が現われているわけであります。というのは、内地生産に比べて輸入品が安いというところからだろうと思うのでありますが、コンニャク製造業者は御承知のように零細な業者の方でありますし、そのことによってコンニャクの価格影響があると思うのです。ですから大臣としてはコンニャク玉の輸入については先日の予算委員会のときの御心境に変りがあるのかないのか、またそのような反響を呼んだとしたら、今後考えられるお気持があるかどうかお伺いいたしたいのであります。
  56. 石橋湛山

    石橋国務大臣 どうもコンニャクとかハッカとかいうようなものは、農村との関係がありて困るのでありまして、確かに国内価格が高過ぎるのでありますが、やはり国内の農村の生産者から言わせると、輸入されちゃたまらぬということで反対をしているわけであります。単に純粋にそういう利害関係、農村を考えなければ値段の安いものは入れた方がいいと思いますが、しかし、今のところはこれを入れて農村にいろいろの打撃を与えるようなことがない方がよい。とにかくコンニャクなどは多少高いかもしれませんが、がまんのできないこともありませんから、今のところは入れてもおりませんし、また今後も当分入れるつもりはありません。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 たしか輸入は内地産に比べて価格が三分の一以下ではないかと思うのですが、幾らぐらいなのですか。
  58. 大堀弘

    大堀政府委員 国内の相場は一駄という単位で、一駄が四十五貫だそうでありますが、一駄十四、五万円くらいの線であると思います。輸入いたしますと大体三万円でございます。但しこれは原産国ではほとんど野生のものでございますので、原価からいうと非常に安いものでございますから、そのままの比較ということは少し無理があるかと思いますけれども輸入価格としては確かに非常に安いわけであります。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 輸入すれば三万円くらいのものが十五万円というような値段がついているのでありますが、今言われたように、内地の農業生産に対する保護という観点もあろうと思います。しかし一面コンニャク製造業者の方から大臣のこの間の御答弁で強い反響を呼んでいるのでありまして、そういうことを考えていただいて一つ検討してもらいたいと思います。  次に過度経済力集中排除法の問題に関連して一、二御質問いたしたいと思います。この法律を廃止する提案の理由としては、もう必要がなくなったからだということであります。しかし過度経済力集中排除法の第一条に、この法律の目的が明記されておりまして、御参考までに読み上げますと、「この法律は、平和的且つ民主的な国家を再建するための方策の一環として、できるだけ速やかに過度の経済力の集中を排除し、国民経済を合産的に再編成することによって、民主的で健全な国民経済再建の基礎を作ることを目的とする。」こううたってあるわけですが、これが必要でないということならば、民主的で健全な国民経済再建の基礎がすでにできたとお考えになっているのか、なおさかのぼるならば、平和にしてかつ民主的な国家の再建がすでに終ったとお考えになっているのか、その点をお答え願いたいと思います。
  60. 横田正俊

    ○横田政府委員 過度経済力集中排除法は、御承知のように成立の過程がやや変則的でございまして、私的独占の禁止法ができました後にできたのでございますこれができます。際の当時の話では、独占禁止法は今後日本経済のあり方を示すいわば経済憲法、こういう趣旨でできたわけでございますが、その当時の日本経済界の事情は、従来のいろいろな関係からかなり経済力が片寄っている。これはもちろん独占禁止法である程度処理はできるのでございますが、しかし抜本的に従来のこり固まりを整理するためには、何か特別な椎過的な措置が必要であるというようなことに気がつきまして、独占禁止法ができました後にこの法律ができたのでございます。ちょうどよく例が引かれますが、経済の健全な形を川の流れにたとえますならば、川の流れが非常にスムーズにいくことを監視するのが独占禁止法の使命でございますが、いかにも当時の日本経済事情はいわば川の流れのあちらこちらに流れを阻害するようなこり固まりができている、それを急速に取り除く、取り除いた後の流れを独占禁止法で見ていく、こういう説明があったのでございます。従いましてただいまもお読みになりました第一条の基本的な精神は、すでに独禁法の中に盛り込まれているわけでございまして、その第一条の最も特徴といたしますところは、できるだけすみやかに措置をするという点にあったように思うわけでございます。すみやかなる処置といたしましては、御承知のように最初は非常に多くの会社が対象に取り上げられたのでございますが、これがかなりの行き過ぎであるということで、実際に措置をされましたものはきわめてわずか、数十社ということになったわけでございまして、大体この程度で当初に企図いんしましたいわゆる川の流れのこり固まりというものは一応とれたというふうに考えられるわけでございます。これを放置するわけではなく、今後もやはり民主的で健全な国民生活の発展を目途といたします独占禁止法で今後は見ていく、こういう関係でございますので、現在といたしましてはこの集中排除法の必要はなくなったのではないか。ことにこれは実に持株会社整理委員会というものがずっと前に廃止になりまして、この廃止になりましたときにもすでに過度経済力集中排除法というものはその中身がなくなってしまったわけでございます。ただ経過的にまだ措置が残っているものがありました関係上、今日までいわば形が残っているということでございまして、そういう関係になっておりますので、健全な国民経済の発達ということには、これを排除いたしましても別に支障がないというふうに考えております。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると集中排除法の目的は、制定当時の状況といいますか、それだけを対象としてやった革のであって、その後のものについてはこれでやるものではない、こういうことなのですか。
  62. 横田正俊

    ○横田政府委員 さようでございます。
  63. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますとその趣旨は独禁法に入っているので、それでやっていくのだ、こういうことなのですね。
  64. 横田正俊

    ○横田政府委員 今後は一般法とでも申しますか、独禁法で見ていくということになると思います。
  65. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえばこれによって製鉄業のうち数社が指定を受けている。ところが最近になりまして、私は技術的なことはよくわからないのですが、ストリップ法ですか、何ということでものすごく生産が上るような方法を取ってきているために中小鉄鋼業者が危胎に瀕している、こういう状況が起っているわけなのですが、それによりますと、たとえばこの法律によって指定を受けた鉄鋼業が、指定を受ける以前と同じような状態になっている、こういうことが言えると思うのですが、それによってもなおこの法律が目的を達した、こういうふうに言えるのでしょうか。
  66. 横田正俊

    ○横田政府委員 ただいま鉄のお話でございましたので鉄について簡単に申し上げますが、実はこの点は前の私的独占小委員会においても、集中度のお話を簡単ながらいたしたわけでございますが、鉄は御承知のように日本製鉄が大きく二つに分れて二社になりました。その後だんだん一般メーカーもほかに台頭して参りました結果、形から申しますと、戦前のいわゆる日本製鉄一社というような形とは大分違った形になっていることは御承知の通りでございます。その意味におきまして集中度は相当分散して参っているわけでございます。ただこの鉄につきましては、いわゆる八幡、富士の二社がいろいろな意味におきまして非常な力を持っているということは御承知の通りでございまして、ただしかし大きいというだけが独占禁止法の問題になるのではなく、大きいことからいろいろな他の事業を、同業者の競争を排除する、あるいは支配をいたしますとかあるいはその下の段階のいろいろな製鉄鉄鋼関係業界を支配するというようなことになって参りますと、これが独占禁止法の線に乗ってくるわけでございまして、私どもといたしましてはなるほど相当分散はいたしておりますが、八幡、富士等の実力からいたしまして、またその地位からして、いろいろ業界に対して支配的な活動が行われるおそれがあるという点につきましては、常時注意をいたしているわけでありまして、決して昔のような独占的な形態になるということはないように十分な注意をいたしているつもりであります。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 今鉄鋼の話が出たので、これに引き続いてお尋ねしたいのですが、鉄鋼においてはそのようなことがないように注意しているからと、こういうことなのですが、先ほど申しましたように、ストリップ法とかなんとかいうので、ものすごく生産能率が上ると申しますか、これによって、今はフルにやっていないが、フルにやれば一カ月四万トンから六万トンとかの製鉄も可能である。また小さな鉄鋼業は大きなところから材料をもらって、第二次的な作業をしているというところもあって、そういうところが原料を押えられるというために、今委員長が言われたような第二次的な生産を支配するという傾向が現に現われていると思いますが、その点はどうなのですか。
  68. 横田正俊

    ○横田政府委員 今お話のような関係が多少見受けられることは事実でございますが、しかも非常にむずかしい点でございまして、ただいまお話のストリップ・ミルの生産というものがだんだん伸びていきますこと自体が独占禁止法上の問題にはなり得ないのでございますが、しかし材料面におきまして、今お話のような、そこに作為的なことが行われ、そのために一貫メーカーでないところの他のいろいろな業者の活動が支配せられるということになりますれば、これはやはり独占禁止法士の問題が出てくるわけでございます。しかしこれは独占禁止法の線とはまた別の線かもしれませんが、それらの点につきましては別な合理化方法というものが当然考えられていいのではないかと思います。その点通産当局の方からもお話があったと存じますが、いわゆる合理化法というものがその点で浮かんでくるわけであります。
  69. 田中武夫

    田中(武)委員 鉄鋼のことにつきましてはまたそれが問題に上るときがあると思いますので、そのときにやることにいたしまして、話を本題へ戻したいと思うのですが、今委員長からいろいろ説明を受けたわけなんですが、私は過度経済力集中排除法を、必要がなくなったから廃止するのだということがまだ十分のみ込めていないわけです。またその後は独禁法によって処理ができるのだ、こういうようなことであるのですが、これはむしろ横田委員長よりか、他の政府側の方の方がいいのではないかと思うのですが、独禁法といわれるのですが、今度の国会に提案を予定せられている法案を見ましても、それぞれの理由は一応あるにいたしましても、たとえば石炭鉱業合理化法案あるいは中小企業安定法の改正法案、あるいは輸出入取引法の一部を改正する法律案等を見ましても、これは独禁法というものがあるのに、それを一面からくずしていく、こういうような法案のように考えられるわけです。こうしておいて、独禁法があるが、一方から、これは別だ、これは特別な理由があるのだ、これはこうだということにしてくずしていく、そうして一方経済力集中排除法を廃止する。こういうようなところに、現内閣の経済的な問題、生産に対する逆コース的な施策が現われているように考えるのですが、それらの点につき、どなたでもけっこうですが御説明していただきたい。
  70. 田中角榮

    田中委員長 これは次に政府側が来られときにまた継続審議をしますからどうぞ一つ……。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 それではこれでけっこうでございます。大臣が来られたらお伺いします。
  72. 田中角榮

    田中委員長 ただいま審議をいたしております輸出入取引法の一部を改正する法律案に対して、公正取引委員会の意見を聴取いたしたいと思います。横田政府委員
  73. 横田正俊

    ○横田政府委員 輸出入取引法の改正は、この前の国会にも問題になりまして、そのつど若干の改正を見ておりますが、今回は今までの法律施行後のいろいろな経験に徴しまして、かなり思い切った改正が加えられておるわけでございます。この改正案が作成いたされますまでの間におきましては、この案に最も関係の深い通産省と公正取引委員会との間に時間的に申しますとかなり長い間の折衝があったわけでございます。その折衝をいたします主要な内容と申しますか、こまかなことは省略いたしまして、どういうところにそういう折衝を続けなければならなかったかという点をごくかいつまんで申しますと、われわれの立場といたしましては、輸出振興することが日本産業にとってきわめて重大なものであるということについての認識は、あえて人後に落ちないつもりでございまして、この点におきまして、今までの輸出入取引法がかなりいろいろなこまかなやかましい制限を、たとえば協定をする条件等について設けておりますこと等につきましては、やはり相当の緩和を必要とするということを考えておったわけでございまして、そういうような点は今度の法案にかなりはっきり出ておるわけでございますが、ただわれわれといたしまして非常に懸念をいたしましたことは、輸出を伸ばします必要ということ、その半面におきまして、その結果本日の国内におけるいろいろな取引にいろいろな悪影響を及ぼすおそれがあるのではないか。これは御承知のように日本輸出に依存する度が高くなればなるほど、いわゆる全体の生産量、取引量マイナス輸出という関係になりますと、あとは国内、この国内取引と輸出取引はうらはらの非常に密接な関係がございますので、もし輸出取引に関しましていろいろなことが行われますと、それは当然あるいは場合によっては必然的に国内取引に影響を及ぼしまして、それがいわゆる関連事業費あるいはひいては消費者の利益を害するというおそれが出て参ります。この点を私どもといたしましては非常に懸念をいたしたわけでございます。協定を認めます要件の中に、御承知のように相当関連事業者利益を考慮いたしました規定や、あるいは消費者の立場を考慮いたしました規定や、あるいはその協定の当事者の間に差別待遇にならぬように考慮いたした規定等が入っておりますのは、全くそういう観点からでございまして、なおまた一方これは他の適用除外法において必ずそういうふうにして参ったわけでございますが、かりに輸出のためでありといたしましても、不公正な取引方法に該当するような行為は認めがたいということがわれわれの考え方でございまして、そういうような点につきまして基本的な考え方といたしまして通産省と折衝したのでございます。  まず第一に、輸出取引オンリーの関係につきましては、今度は御承知のように届出制がとられたわけでございます。これは私どもといたしましても従来認可事件として通産省の方から回していただいておりまする事件を見ますると、なるほどまことに認可を必要としないような、きわめて軽い程度のものがかなり多いのでございまして、これを一々認可する必要はまずあるまい。あるいはまたこれは認可手続をきわめて簡素化することによっても、ある程度の解決をはかれるわけでございます。しかしいっそ思い切りまして、この点は届出制度にする。しかしながらそこに十日間の期間を置きまして、もしそれの内容がおもしろくないものであったら、私どもストップをかけてあるいは変更を命ずる、あるいは締結を差しとめるというような道を開くことにして、届出制度をとったわけでございますが、その他の輸出業者間、あるいは輸出業者と生産業者間、あるいは生産業者同士の間の国内取引に関しまする協定案、かりにその物資輸出にかかわるものでございましても、先ほど申しましたような観点からいたしまして、いろいろな国内的な取引上の問題がからんでおりますので、この方は、大体認めまする要件は、先ほど申しましたような公正取引委員会の立場から申しますると、大体似たような点が考慮の要件になっておりまするが、認可制度をとりまして、そしてこれについては公正取引委員会の同意を必要とするという線を出したのでございます。この点は、通産当局としましては協議でもよいではないかということで、これは考え方の相違ということになりまするか、いろいろ折衝いたしました結果、やはり同意ということで認めていただきまして、案が出ておるわけでございます。それから、先ほど申しました不公正な取引方法に関しまする部分につきましても、いろいろ折衝いたしました結果、やはり従前の輸出入取引法あるいはその他の適用除外法のほとんどすべてにそういう同じ規定がございますので、それはやはり今度もそのまま踏襲していただくということにいたしまして、案ができたわけでございます。  もう一つは、認可あるいは届出の問題につきまして、その後の事情によってその内容がいろいろ不都合なものになって参りました場合に、公正取引委員会から通産大臣に向いまして、その認可の取り消し等の手続を求めるということも、これはすでに現行法にあることでございます。その点につきましても若干の折衝がございましたが、結論的には現行法の制度をそのまま維持するというような形になりまして、今度の改正案ができたわけでございます。  この認可制度あるいは公正取引委員会の同意ということに、業界といたしましてはいかにもそこに非常な重々しさを感じまして、これでは自由な取引ができないのではないかというような懸念が相当あるようでございまするが、これは毎々私ども申しておりまするように、われわれの同意というものは、ケース・バイ・ケースによく考えまして、できるだけすみやかに手続をするということと、それからあまりしゃくし定木的な、これはやってみないとわからない場合が多いのでございますので、しゃくし定木的な規定の適用はしないという方針で参りますれば、認可、同意というようなことも、そう業界心配されるような、足手まといになるようなおそれはないというふうに、実は考えておるわけでございます。しかもこの公正取引委員会の権限の発動、それから通産省の認可その他の処置との間には、密接な連絡をとりまして事を運ぶ必要もございますので、もしこの法案が成立いたしました場合、その後のいわゆる権限の調整と申しますか、具体的な仕事のやり方につきましては、通産省との間に密接な連絡をとります意味におきまして、いろいろのこまかな打ち合せも、実はすでにかなりできておりまして、もし法案が成立するということになれば、直ちにその線に沿った文書の交換をいたしまして、今後輸出入取引が円滑にかつ弊害なく行われるように処置したいというふうに考えておるわけでございます。  はなはだ簡単でございまするが、今回の改正法に対しまして公正取引委員会が考えております主要な点はそういう点でございます。
  74. 田中角榮

    田中委員長 以上三案に対する残余の質疑は、後日これを行うことといたします。     —————————————
  75. 田中角榮

    田中委員長 この際お諮りいたします。科学技術振興に関する小委員長前田正男君より、小委員会において自動車工業に関し参考人より意見を聴取いたしたい旨の申し出があります。小委員長の申し出の通り、参考人の出頭を求めることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 田中角榮

    田中委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお日時及び参考人の選定につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 田中角榮

    田中委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  次会は明三十日午前十時より、石炭鉱業合理化臨時措置法案の質疑を続行する予定であります。  本日はこれをもって散会いたします。   午後零時二十五分散会