○曽田
政府委員 実情を御承知の上でお尋ねになっているので、試験を受けているような気持がいたすのでありますが、この事件が起りましたのは、具体的には六月の十六日に、いわゆる患者大会が開かれまして、所長退陣を含むそのほか十三項目の要求が出た。その後、いろいろ所長が回答をいたしまして、その回答が不十分であるというようなことで、遂に患者のすわり込みが起った。それに対しまして、地元関係の
国会の先生方及び県の議会に出ておられる方々が仲裁に立たれたりしまして、すわり込みは一応解かれた。またその際に、所長といたしましても、これだけのことを処置はいたしましょうというようなことを申したようでありますが、その中には、その後私
どもの方に報告を受けたのでありますけれ
ども、直ちに実施することが必ずしも可能と思えないというようなものもございます。特にその期日を切ってというようなものについては、他の施設との関係もあって、患者とあまりにはっきりとした約束をいたしますと、その約束を守れないよううなことがありはしないかというようなことも注意をいたしたこともあるのであります。その後、所の幹部と患者といろいろと折衝をいたして——これは数回持たれているのでありますけれ
ども、六月の二十八日ごろから施設側と患者代表と、いわゆる懇談会というようなものを開きまして、そうして文書でもって患者と施設の方との申し合せ、覚書を交換したいというような話になりまして、お話のように、七月四日にもう一ぺん集まりをしておるようであります。それから七月六日に、一
通り話をつけたというような形になっておるのであります。この十四カ条の患者の要求というものにつきましては、一応私
どもが報告を受けておりますのは、また私
どもの方からもある程度指示をいたしたような事情もあるのでありますが、それに基いて、施設の方で患者と話を大体進めました。
一つは、
医療内容を充実して、からベッドを
解消するということについては、これは当然、
医療の内容を充実することは所の責任でございまして、そのためには、この施設の整備及び職員の充実をはかっていく。一時は七十床くらいからベッドがあったということでありますが、ただいまこれは幾分ずつ減少してきておる。
それから、このことはその次の
問題にも関連があるのでありますが、外科医による手術を行なって、カリエスの専門医を招聘してもらいたいということであります。これは定員の関係から、直ちにというわけに当時はいかなかったのでありますけれ
ども、せめて非常勤の職員というものでも招聘いたしまして、そうして患者に対し、ある程度の外科手術が行えるようにいたしたいということで、これは大体人選も済んで、もうすでに行き始めているのではないかというふうに、私
どもは承知いたしておるのであります。具体的にだれに頼むというようなことは、大体話をきめたのであります。しかし、この点につきましては、この前に御質問がございましたときにも申し上げたのでありますが、私
どもの二百近い施設のうち、私
どもとしましては、外科治療に重点を置くか、あるいは長期の安静療法を主とするかというようなことについては、これはやはり療養所療養所に特徴を持たすべきだというように考えておるのでありまして、足利につきましては、これが外科療法を中心とする療養所として将来進んでいくかどうかということについては、まだ疑念を持っておるのであります。しかしながら、とりあえず非常勤としましても外科医を配置いたしたいということは、私
どももその方針でおるわけでありまして、そのような
措置をいたしたわけであります。
それから面会所を作ることということは、これは当然療養所には、面会所を設くべきものであります。患者の方からは、何か二カ所ぐらい作ってくれという話があるようでありますが、二カ所の必要は必ずしも私
ども認めないのでありますが、少くとも一カ所は設くべきであるというふうに考えまして、これは私
どもも直ちに設けようということで、現在とりあえず病室の
一つか何かを充てておるはずだと思っております。
その次には外気舎の廃止の
問題であります。この外気舎は、かなり方々の施設にもあるのでありますけれ
ども、御承知のように、むしろ戦争前に作ったものが多いのでありまして、結局言いかえますれば、小さな小屋でございまして、従って恒久性が非常に乏しいのであります。荒廃もいたしております。それに対しまして、最近におきましては、治療として、昔のように日光とか単純に空気とかいうようなことだけで療養するという考え方は変って参ったのであります。進んだ外科療法とか、あるいは化学療法というようなものになってきましたので、軽快期にある者にしても、これはばらばらに生活するよりも、やはり、むしろまとまった、整った病棟に患者を収容するということの方が、より合理的であるというような考え方になってきておるのでありますが、今日使い得る外気舎を、直ちに取りくずすというようにも考えておらぬのでありまして、ことにこの足利の場合としましては、足利で外気舎を直ちに全廃するというようなことは考えておりません。所の
意見がどういうふうに患者に取られましたか、患者がこの
問題を出しておるようてありますが、所の回答といたしまして、直ちに外気舎をつぶすというようなことはいたさず、外気舎に収容することが適当だと
医師が認定した患者は、外気舎に入れるということを申して、患者もこれを了としておるようであります。
第五番目には、外出、外泊の
制度を簡単にしてもらいたい。何か患者の言うところによりますと、刑務所のように非常に厳重に取り締っておるというようなことを言っておるようでありますけれ
ども、ともかく病院に患者を預かる以上は、これはもちろん患者の自由を束縛するという
意味ではございませんけれ
ども、療養のために病院や療養所に入所するという以上は、その
医師の指示によります療養
方法、療養生活を厳重に守っていただくというのでなければ、十分な診療は行い得ないのでありまして、無断で外泊とか外出をするというようなことは許されないことであるというふうに、私
どもも考えておるのであります。ただ、この
制度をあまりに繁雑にするとか、外出泊を願い出ても、その許可が出るまでに非常な手間を取るとか、あるいはまた不公平な取扱いがあってはならぬ。この手続を簡素化し、またこの許可の
制度をできるだけ公平にいたすということは、患者の要望を十分いれて実施していきたいということを申しております。
それから、これは非常に具体的なことでありますけれ
ども、六番目に、ある病棟の主治医が非常に不親切である、あるいは
医師として技能的にも信頼が置けない、これを更迭してくれ、この話は、実はこの
問題か起きます前から聞いております。それで、本人にも申し含めて、大体交代するということに話はきまっておったのでありますけれ
ども、後任者を求めることが、必ずしも直ちにできなかった関係というようなところで、少し手間取っておったのでありますが、その後は、たしかこの
医師は、現在はやめておるはずであります。そして直ちに適当な後任者を補充するつもりでおるわけであります。
それからもう
一つは、いわゆるマイクを作って、そうして患者にも使わせろというような要求があるのでありますが、このマイクは、私
どもが聞いておりますのでは、何か多少故障しておるそうであります。マイクにつきましては、便利な点もあるのでありますけれ
ども、新しい近代的な療養所においては、このごろはマイクを使わぬというのが、むしろ方針になっておるのでありまして、軽症者には、むしろレシーバーによって、ほかの者のじゃまにならないように、いろいろラジオですとか何だとか、そういうものを聞かせるという方針になっておるのでありまして、私
どもは、どこの療養所でも、マイクをこしらえて、そしていろいろなことを公正に患者に知らせることに、患者に対してもこれを使用させるということは、必ずしも本筋だとは考えておらぬのでありますが、患者の希望というようなものは、この所の患者に対してお世話いたす上に妨げがない、あるいはまた患者が、大きい声でもってマイクで鳴り立てますことをいとわぬというようなことであるならば、支障のないように気をつけてならば、ある程度使わせてもいいじゃないかというこを、所から患者にも申しておるようであります。
それから入浴場でございますが、これは足利だけではございませんで、私
どもが頭を痛めておるものの
一つであります。これは患者ばかりではございませんで、職員に対しましても、浴場が非常に不備であり、中には広ささえも不足であるというようなところが多いのであります。足利におきましては、一応職員用が二つあってそして患者用が
一つであるということでございまして、患者からは、ぜひ患者用を二つにしてくれという要求があるのであります。これは私
どもとしましても、職員ががまんをしても、むしろ患者のサービスを先にすべきであるというふうに考えておりますので、所の方としましても、さように考えて、とりあえず職員用の
一つを患者の方に回すというような
措置をとったはずであります。
それから九番目には、患者と職員の調理場を別にしてくれということでありまして、この
問題も、ときによりますと、他の施設でも
問題になることがあるのであります。しかしこれは、ときによりますと患者の誤解もあるのでありまして、患者の中には、療養所の炊事場施設というものは、患者の給食だけのものだというふうに考えておる者があるようでありますが、私
どもとしましては、患者及び療養所が給食の責任を持っております職員に対する調理というものも、これは行うべきものである、看護婦の生徒等に対しましては、同一の調理場、調理道具でやるべきものというふうに考えておるのであります。もちろん、これはやり方としては、全然別個の調理場を作っていけないということはないのでありますけれ
ども、経費の非常に緊迫しております現状としては、同じしかけを二重に整える必要はないのであります。ただこの際、患者から不平が出ますもののうち、私
どももっともだと思いますのは、患者の食品の材料、それから職員に給します食品材料というようなものとが、ことに経費といたしましても、これは両方平等でございませんで、職員の方が幾分安くなっておりますので、それを一緒にされると、結局
予算としては患者よりも低く見積られておる職員に患者の費用がみな食われてしまうのじゃないかというような心配を患者がいたします。私
どもは、さようなことのないようにということを申しておるのでありますけれ
ども、ともすれば、患者から指摘されるようなことが、あるいはあるかもしれぬということをおそれます。少くともそういうおそれを生ずるような体制になっているのはおもしろくないという
意味で——飯のようなものは、同じものでございますけれ
ども副食物等で患者と職員に給するものが違いますときには、別々に調理をする、そうしてその両者の間に混淆が起らないように明確にいたすようにするということで、施設の方から、このように取り計らいたいということは患者に申しておるようであります。施設は、私
どもが考えておりますよりももっと進んで、場合によれば、そこにスクリーンのような、板ででも仕切りをしようというようなことさえも言っておるようでありますが、私
どもは、設備がありますならば、はっきりと両者に分けることはけっこうであるが、同じなべ、かまを使うというようなことは、ときによれば必要なので、その際に、今の患者の食費が職員の食費に食い込まれてしまうというようなおそれ、あるいはそういう疑いを持たれるような運営をしないようにという方針でおるわけであります。
それから、患者の洗たく物を全面的に洗ってくれというようなことの注文がございますが、この全面的にと申しますのも、いろいろ限度もあるのでありまして、所の持っております洗たく施設というようなものにも、ある程度限りがございます。そいうような
意味で、そう何でもかんでもというわけには今のところいきかねる、私
どもとしましても、この炊事場及び洗たく場の整備ということには、今後努力をいたして参りたいと考えておるのでありますが、ただいまの所の能力から参りますと、所で給与いたしておりますシーツ、あるいはまくらカバーというようなたぐいの、いわば官給と申しますか、官から貸与いたしておりますいろいろ被服、こういうものにつきましては、大体週に一ぺんずつは洗たくいたそうということを申しておるのでありまして、余力があるならば、私物に対しても洗たくをするというのでありますが、こんなことを申し上げてはどうかと思いますけれ
ども、洗たくにつきましても、再々洗たくをするということを喜ばない患者も実はございます。ことに私物の洗たくというものは、かなり看護婦あたりが勧めましても、被服が非常にいたむ。これは洗たくのやり方が下手くそな点もあろうかと思いますけれ
ども、あまりそう再々やってもらいたくないというような
意見もあるようなのが、これは必ずしも足利という
意味ではございませんけれ
ども、そういう
問題がございまして、まず週に一ぺんくらいずつやるというところが適当なところではないか。足利でも、さように患者と話をしておるようであります。
それから被服費の
問題につきまして、これは相当な被服費が
予算には組んであるのだが、どうも自分
たちは恩恵をこうむらないようだというような考え方、これに対しましては、実は本省におきまして一括購入をいたす値段が比較的安いというような点もありまして、特にシーツのようなものでありますが、一括購入をして現物で支給をする、こういうようなことが、患者に必ずしもはっきりいたしませんで、所が現金を持っておるのであろうというふうに考えられたようでありますが、実情はこのようであるということを話しまして、大体了解を得ております。
それからもう
一つ、この
問題について患者から不平が出ておりますのは、近隣のやはり療養所で、割合に豊富に被服を持っておるとところがあるのであります。足利に比べますと、たとえば病衣のようなものもたくさん余分に持っておって、そうして患者に貸してくれる。足利においてはそれが借りられぬ、全部私物でまかなわなければならぬというよなところが不公平ではないかというような不平が、足利の患者から出たようであります。これはこの療養所の中にも、いろいろございまして、業務関係の施設でございましたところは、比較的よけいに施設を持っております。それは事実であります。しかしながら、さればといって、これをほかの療養所に全部分けてやるというほどたくさん持っておるわけでもないというようなところから、必ずしも各療養所の入院患者に平等にこれを分けるということができず、多少の不均衡は起っております。このことに対しても、患者が不平を申しておったようでありますが、実情はかくかくということを
説明しまして、これもおおむね患者は了承してくれたものと考えております。
それから、食事の運搬道路を作ってくれ、食事の運搬道路というのは、これは私
どもの方としましては、必ずしも特別に設けるという必要はないと思うのでありますが、この足利の療養所は、炊事場の位置が悪くて、炊事場から他の病棟に配膳するというようなときに、いろいろ患者のじゃまになるというところから、コンクリートのような道路路を作ってくれということですが、これは大体所で一部は作ったという報告を私
どもの方によこしております。
それから一番厄介な
問題は、残飯の
問題であります。これも理論的に言いますと、いろいろな
問題があるかもしれませんが、私
どもこの残飯というものは、一応患者に給しますが、患者がこれを残しました場合には、やはり所で処分すべきもの、所で管理すべきものというふうに私
どもは考えておるのであります。ことにこの食事というものは、結核患者の療養には大切なものでありまして、どれだけの食事を給して、どれだけを患者が食べてくれたかということは大切なものでありまして、私
どもとしても、各療養所に残飯量がどれだけ出たかということを、毎月報告させておるというような状況もあります。残飯の処理ということは、やはり所にやらせてもらうのが、療養所の管理上正しいのであろうということで、患者によく話をいたしておるのでありますが、この点については、患者はまだ必ずしも釈然とした了解を得ておらないというふうに聞いております。
それから最後は、所長の退陣でございますが、この
問題は、もちろん施設長としては、患者と折衝すべき
問題ではない。患者からは何と申されましても、所長としては何とも言えないということを言っておるようであります。私
どもとしましても、人事、ことに所長のように最高の人事というものにつきましては、もちろん患者なり他からのいろいろな御批評は、すなおに耳を傾けて聞きはいたしますけれ
ども、そのことをもって直ちに所長を退陣を命ずるというようなことは、軽々行い得ないということで、私
どもは慎重に
検討いたしておるのが現状でございます。