○井堀
委員 私は、議論を好むものではありませんが、徴収の点について、熱心に
大臣がおやりいただいたことについては、まことに保険のために慶賀すべきことだと思うのであります。しかし、皮肉を言うわけではありませんけれ
ども、今日の
大臣の存在と申しますか、政務多端な、そういう事柄は心得ていても、なかなか目が配れないような
大臣の激務の中で、そういうものが目にとまるくらいですから、相当そういうものが見送られているという証拠にもなる。でありますから、今日私は、特に厚生行政の中で気をつけていただきたいと思う。国税のようなものは権力で取り立てるのだから、ほっといてもいいのです。あれにえらい力を入れておる。ところが、今度のような保険の危機を伝えられているときに、当然つちかいの道があるにかかわらず、
審議会において、私はあえて策動という言葉を使いたくありませんが、経営者の目前の利害
関係のために、できるだけ
負担を少くするという小乗的な欲望から、保険の大精神を誤まるような
審議会における動きというものを、厚生省はどの
程度キャッチしておるかという点も、大事なことだと思います。そういう
意味で、
審議会の
答申になりました経過なり、あるいは
審議会におけるところのそれぞれの
立場、これは三つの
立場に分れておるようでありまして、その公益側のことをたまたま口にされておりますが、私が今お尋ねしようとする趣旨からは、逆の
意味でこれが使われておる。これは言質を取るようで失礼ですけれ
ども、何か公益側の
委員が、今度の
改正に対して一方において矛盾を感じ、一方においては余儀ないという
意味で消極的な賛成、あるいはある
部分的な積極的な
改正を認められたような発言が、ここに見えておるのですが、私は非常に迷惑しておることだと思う。私も保険
審議委員をしばらくやったことがあるのですが、私のつき合った公益側の
委員というものは、みんな紳士です、保険の精神をよく了解しております。絶えず経営者側が、経理の苦しい
立場から追い詰められて、
負担を軽減しようとする主張に対しては、なだめ役に回っていることは、私は認めている。今回の場合も、そういう努力をなされたものと私は信用したい。そういう過程をくぐってここに出てきた
法案でありましょうけれ
ども、
審議会の意思は反映していない。私はそういう
意味で言っているのです。話が回りくどくなりましたが、
根本的な問題は、きっとここに触れられたと思う。ですから、いきなり
標準報酬を実額に合せて、こんな大きな
数字が出たから、それを直ちに取り立てる。取り立てようと思えばできます。理論的、
法律的にはできますけれ
ども、そういうことは、また政治の上に摩擦が起きますし、また保険の精神というものは、権力で相手をひっぱっていくということは、やむを得ない場合において行わるべきものであって、あくまで了解と納得の上で、すなわち、保険の精神に協力してもらうということをやはり前提にしなければならぬと思う。こういう点に対する努力が、果して過去に払われてきたか。私の経験する限りにおいては、人のことを申し上げることは失礼ですけれ
ども、そういう方面に対する配慮が足りないのか、あるいはそういうものに努力するような機構になっていないのか、この点にも問題があると思うのであります。
それから、この
審議をめぐって、私は終始ずっと拝聴しております。政治的に作為があるものは、これはカットして
考えなければなりませんが、良心的な質疑応答の中に、
政府の態度というものはどうもふに落ちないものがある。それは、
法案を出したから、そのまま通したいという意図はわかるけれ
ども、しかし、相手がいい
意見を出したら、それに乗ってくるという態度がなければ、ただ自分の作ったものは絶対に動かせないという態度では、
国会の
審議は前進しない。それはその
内閣の生命をかけて争うようなものならば、これは秘術秘策を練ってやったらいいと思う。しかし、こういうようなものは、社会保障
制度を育て上げていこうとするならば、保守であろうと革新であろうと、経営者であろうと労働者であろうと、一致点はあるはずだと思う。そういうものを中心に私は論議を進めてほしい。こういう
意味で私はお尋ねをしておるので、さっき資料を出してくれぬかということに対して、私は出してもらえることはないと思う。ぜひ
一つ、これは重ねての要求でありますが、現在の被
保険者の対象となるべき
賃金給与の
実態に対してつかめないはずはないでしょう。
局長はずるいものだから……。こういうことをやることが、
ほんとうのあなたの仕事なんです、そういうものを出していただきたい。それはこの
程度の資料に基いてという前提があっても仕方がない。それと今の
標準報酬とはこう違っておる、それをどうしたらいいかということは、私
どもの判断にまかせていただきたい。政治はこっちがやる。
事務当局は、忠実に事実をわれわれに紹介して、われわれに努力させる道を開けばいい。そういう材料を要求しておる。これはこういう機会に出さなければ、私は篤志家でないとできないと思う。
政府がこういうものを率先して出すべきである。くどいようでありますが、
結論を申し上げますと、
給与賃金の
実態と
標準報酬の
現実とを、そう詳しくなくても、荒くてけっこうですから、ぜひそれを出してください。それに基けば保険財源はどうなるか
——それが出たからといって、こういう
数字があるからこれを取れ、すぐにこういうふうに言うほど私はやぼではない。そのために長々と私の
意見を述べたのです。
質問は簡単です。保険が赤字だというならば、現在の
法律通りに取れる財源がどれだけあるか。しかし、それはこれこれの
事情で取れない、こういうふうにすなおに
説明をして聞かせてもらいたい、こういう
質問なんです。これに対して、材料を提供していただける御意思があるかどうか、くどいようですが、もう一度……。