○滝井
委員 まず第一点に生活保護法との比較を出されました。この点は、ずっと前の
委員会で、私が
健康保険と生活保護との比較論をやったときに、これは社会局長がおいでになっておればよくわかるのですが、社会局長は、私の方は最低の医療基準で、
健康保険と違いますということを、はっきり申しております。それが違うことは、私も納得いたしております。生活保護は、御
承知のように全額
国庫負担で、八割が国、二割が地方公共
団体ということになっておるのですが、
健康保険の方は、相互扶助の建前を取っておるのであります。たまたま今度国が十億だけ
出したのですが、今までは国の発言権は大してなかった。事業主と被
保険者が、それぞれ半額ずつ
出し合って
運営しておるものであって、今まで国が出さなかったのが不思議なくらいです。生活保護は当然国の費用ですが、
健康保険の方は自分の金でやっておるのです。だから、生活保護にそういう規定があることは、ある
程度やむを得ないにしても、
健康保険は相互扶助の組織なんです。自分で
保険料を積み立てて、自分の健康を守ろうというのですから、これは根本的に
議論の対象にならないということです。
それから第二点は、強制規定がある方がいいのだ、あっても使わないと言っておりますが、今までそういう規定がなくてさえも、監査要綱で、あると同じようなことをやっておったのです。だから、今度それができれば、どういうことをやるかわからないのですよ。そういう規定がなくても、平気で患者の家に立ち入り検査をして、
保険証を見せてごらんなさいとか、どんな診療明細書を取ったか見せてごらんなさいと言ってやったものです。また患者の財産や患者の家族まで尋ねてやったものです。だから、この規定ができたら、どんなことをやるかわからない。
社会保障制度審議会も、この規定は行き過ぎだという答申をしておるはずです。だからその点は、どうも今の局長の
答弁は当らないのですよ。あっても、この伝家の宝刀は抜きませんと言うけれ
ども、規定がないときに、すでに抜いてやっておるのだから、あったら、その上どういうことをやるかわからぬということなんです。しかも、監査要綱というものは、そのままやるのでございますと言うけれ
ども、監査要綱は必要ないのです。今度新しく
改正された九条の一項と二項があれば必要ない、これで全部できますよ。そして、しかも今までの慣例は、診療内容の不正または不当があった、そういうものに限られておった。ところが、今度こういう
強化の規定になれば、事業主であろうと被
保険者であろうと、療養担当者であろうと、またこれは住居であろうと事務所であろうと、勤務場所であろうと、どこでも自由自在に行ける。しかも医者であろうと、事務官であろうと、自由自在に行けるということですね。こういうむちゃな
法律を作るならば、これはもう
議員修正で、基金なり、それからあなたの方の
保険事務所なりを監査する規定を作らないと大へんだ。基金なんか、莫大な金を使っておる。これは調査する部面が相当あると私見ております。あなたの方が譲らぬというならば、われわれの方で、いずれそういう規定を挿入してもらって——それはどうしてかというと、ちょっと申し上げますが、こういうことが佐賀県に起りつつある。患者は、被
保険者の方は
保険料を納入しておる。納入しておるが、その事業主が倒れた。倒れて、今度は事業主が新しくかわった。事業主がかわったが、被
保険者の方で、われわれも
健康保険の対象者にしてくれ、前の事業主が倒れて、新しい事業主ができたからかえてくれといって申し出た。ところが前の事業主に滞納があるので、労働者は追っ払われる。事業主がかわっただけだから、お前らだめだという。かてて加えて金をくれないという事例が、佐賀県に非常にひんぴんとして起りつつある。こういう事例がある。こういうことになると、なぜやらなかったんだということになる。強制適用の事業場の労働者、善意の労働者が、前の事業主が滞納しておったために、
健康保険の被
保険者になれないということは重大問題です。そういうことがあるのです。こういうことになると、社会
保険の出張所へ行って、そういう事例はどこもかしこもやっておるのか、やっていないのかということをわれわれはずっと調査しなければならぬ、監査しなければならぬ。これは患者にとっても、療養担当者の医者にとっても、重大問題です。そういう事例が現在たくさん佐賀県なんかにある。こういう点について、あなた方の方は、おれの方は完全なことをやっておるんだとおっしゃいます。あるいは昨
年度における百万の被
保険者の算定の
見積りの誤まり、これらのものについても、当然あなた方の帳簿の不備について、われわれは監査する必要があると思う。あなた方がそういう不備なことをやったから、療養担当者がこういう
赤字の
責任を負って、われわれ医師の診療費の支払いというものが遅延をしてくるという
責任問題が出てきた。水増し診療をした、事業主が不正をしたから、お前らの監査をやって、帳簿を検査するというなら、逆にあなた方の行政のミスによって起る点についても、当然これは民主主義の国家ですから、監査をする規定を置いてもいいと思う。なぜならば、この社会
保険立法というものは、相互扶助の自主的な社会
保険なんだから、当然です。
政府が監督するならば、監督する側においても、監督がうまくいっておったかどうか、強制適用がうまく実施されておったかどうか検討すべきだと思う。
先般、私は新聞を持ってきて御指摘したように、社長を呼び
出したけれ
ども、その社長は言を左右にして、強制適用をしていないというようなことで、労働者は困難にあった、そういう点で、
保険経済の
赤字というものは、患者と療養担当者、事業主の
責任ではない。あなた方は基金の支払いを早くすると言いながら、実際はおくらせつつある。こういう点について、あるいは莫大な基金の金の運用——生活保護が入ったから、おそらく千億をこえるでしょう。そういう基金の金の運用の問題は、単に医師会なり、あるいはあなた方なり、第三者が入って、
理事ばかりでやっても、必ずしも全部が正しいとは限らない、こういうことになるわけです。
健康保険というものは、何も
政府が
出している金ばかりではない。
政府は十億なんだから、大
部分の四百億というものは被
保険者が
出しており、事業主が
出しておるものです。従って、あなた方が引っ込めないというならば、私らはそういう基金なりなんなりを、民主的に、自主的に監査する機構を今度は作っていかなければならぬ。そうして、うまく強制適用が行われておるか、
保険料の納入がうまくいっておるか、差し押えをしたものをそのまま取って被
保険者の迷惑にならないように行われているかという、そういう歩み寄りながら
赤字を解消する
対策は立てていかなければならぬ。今の御
答弁ではこういう結論になってくる。そういうことで、あなた方がこれは行き過ぎだということをお認めにならぬ限りは、われわれはそういう主張をせざるを得ないという意味なんです。お認めになれませんか。