○野澤
委員 取り消すほどの答弁ではないと思いますね、あいまいで、やはり両方にひっかかっておるのですから……。そしてもうこれは問答しても無意義ですから、要するに
政府の
考え方というのは、今度の
法案というものが、時期的に見ても、また内容から検討してみても、
医薬分業実施ということにははるかに遠い、しかも効果的には相当の期待はずれがある、こういう
政府の態度であるということだけ了承します。
それからもう一点、先ほど
大橋委員が
質問しておりますときに、
医薬分業というものには
経済問題がつきものだ、
経済的態勢というものが確立しなければ、
分業というものが進められないのだ、こういう
質問に対して、うやむやのうちに、
大臣の方でもその見解に同意だというようなことを言われておる。さらに、今度はいろいろと受田
委員から
質問されておるうちに、あなたの御回答は、
分業を
実施しても、この診察の技術と物の対価とが、ただワク内で分離されていくだけであるから、
医師あるいは
薬剤師双方に対して
経済的な変化はほとんどない、こういう解説をされた。これはおそらく
医師の実質
収入の変化がないという
意味を申されたのだと善意に解釈しております。そこで、先ほど
昭和二十七年の
医師の所得の問題について、
医師が二万七千円、
薬剤師が一万二、三千円だという御解説を願ったのでありますが、ちょうど健康保険の組合連合会の健保の当面する諸
情勢という文書の中に、はっきりした統計が出ていました。これは二十八年度の統計でありますけれ
ども、この統計を見ますと、
医師の所得というものが相当の
金額に上っている。これは相当根拠のある
資料で作られたものだと思うのですが、総医療費千七百七十六億二千三百万円で、これを健保の連合会では
医師の総数、歯科
医師を含んで十万九千六百六十一人で割っておるのです。そうしますと、
医薬一人当りの年収が百六十二万ということ、これを月に直しますと一カ月約十三万円ということになるわけであります。そうすると、その十三万円のうち、何パーセントがこの医業を続けていく上においての経費かはわかりませんが、大体従来のこの統計等から見て、たとえば五〇%にこれを判断しますと一カ月純所得六万五千円という
数字が生まれてくる。そうすると、あなたの方で説明された二万七千円とはるかに開きがあり、しかもまた
平均賃金の一万七千七百十四円というものから
考えると四・二倍くらいの所得になる。これが基礎的な健康保険の連合会から発表された
数字であります。こういうふうに
考えてみますと、先ほど受田
委員にお答えになりました二万七千円とは格段の差がある。ただし、実質
収入として
——純
利益としての計算ではないかもしれません、パーセンテージのかけ方で二万七千円にもなれば三万円にもなるというところですが、このいう
医師の
収入状況と現在の
薬局の
収入状況等から判断しまして、少くとも
医師、
薬剤師というものを国家が養成している以上は、その
収入のバランスを取ってくれ、同額にしてくれとは申しません。しかし、少くとも同一業態で大学教育まで受けておるのでありますから、その基本
数字というものは二万円なら二万円、二万五千円なら二万五千円というものに相近い、しかも勉学の年数等から比較して、比例
配分されてもよろしいが、自然そういうふうに増収になるように、お互いに工夫することが必要じゃないか。
医師は医療の担当者で、
薬剤師は雑貨屋だからということであれば、別問題でありますが、今日の
分業闘争というものは、初めから
経済闘争でないのだ。現在の
薬剤師のように身分法を作るにしましても、
薬剤師とは何ぞやと言うても、
薬剤師というものは、薬科大学を卒業して国家免許を取った、その業務は何だといったら、何でもありません。製薬もちびっと、劇毒物もちびっと、しかも
調剤に関してはほとんど処方せんも出ないという現況です。ここに
分業をしなければならないという
薬剤師の切々たる願いがある。しかも、それによって医療内容が拡大するとか、医療制度が改悪されるというのではなくて、世界的な常識として
医薬分業を
推進さるべき時期なんです。従って、なるべく
薬剤師に処方せんを多く出して
薬剤師の業務が成立するよう、また
医師の実質
収入が少くならないようにしてやっていくことが、ほんとうの行政でもあり政治でもあると思うのであります。こういう
意味合いから、あなた自身が、ただ二万七千円、一万二、三千円、受田
委員の方では半分ですねということで終りであります。しかし、実際今日の
医師の特権的な
生活水準というものは、何人が見ても、相当なぜいたくができ、相当な
収入があるということはわかっているのです。わかっているにもかかわらず、しかもまた
医薬分業は
経済的な要素を含むものであるから、これを
実施してはならない、
医者だけを擁護して
薬剤師は死んでしまえというような行き方では、時代逆行もはなはだしいと思うのです、こうした面について、今度の改正法の
医師法の精神あるいは
薬事法の精神等を見ますと、国民や
患者の
立場を
考えてという提案者の説明はまっかな偽わりでありまして、実際は
医師そのものの特権的な
立場をいよいよ擁護する上においての一方的な意思表示だ、しかもそれが成文化された絶果は、
分業の
考え方も全然ゼロに近い
数字になってしまう、こういう結果になるのでありますので、どうか
政府当局においても
——この
委員会においてあいまいな答弁しかできないというあなたの
立場もよく推察はできます、これ以上いじめてもしようがありませんから、ただきぜんとした態度で、よいことを国政の上に反映させるという精神で、どうか今後とも十分な御検討を続けていっていただきたい。これだけ希望いたしまして、私の質疑を終ります。