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1955-07-20 第22回国会 衆議院 社会労働委員会 第46号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十日(水曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 中村三之丞君    理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君    理事 松岡 松平君 理事 大橋 武夫君    理事 山下 春江君 理事 山花 秀雄君    理事 吉川 兼光君       植村 武一君    臼井 莊一君       小川 半次君    亀山 孝一君       草野一郎平君    小島 徹三君       横井 太郎君    亘  四郎君       越智  茂君    加藤鐐五郎君       小林  郁君    高橋  等君       野澤 清人君    八田 貞義君       岡本 隆一君    滝井 義高君       中村 英男君    長谷川 保君       福田 昌子君    柳田 秀一君       井堀 繁雄君    受田 新吉君       神田 大作君    中原 健次君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 川崎 秀二君  出席政府委員         厚 生 技 官         (医務局長)  曾田 長宗君         厚生事務官         (薬務局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (保険局長)  久下 勝次君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 浜口金一郎君     ————————————— 七月二十日  委員横錢重吉君及び田原春次君辞任につき、そ  の補欠として福田昌子君及び受田新吉君が議長  の指名で委員に選任された。 七月十九日  クリーニング業法の一部を改正する法律案(大  石武一君外八名提出衆法第五六号)  公共企業体職員等共済組合法案植竹春彦君外  二十七名提出参法第二〇号)(予) 同 日  歯科衛生士名称存続に関する請願横錢重吉  君紹介)(第四二八〇号)  同(小林郁紹介)(第四二八一号)美容師法  制定に関する請願福田昌子紹介)(第四二  八二号)  クリーニング業法の一部改正に関する請願(高  津正道紹介)(第四二八三号)  健康保険における医療給付費の二割国庫負担等  に関する請願山崎始男紹介)(第四二八四  号)  同(生田宏一紹介)(第四二八五号)  同(阿左美廣治紹介)(第四二人六号)  同(三宅正一紹介)(第四三〇六号)  同(田万廣文紹介)(第四三〇七号)  同(門司亮紹介)(第四三二二号)  同(神田博紹介)(第四三五六号)  国立公園施設整備費国庫補助復活に関する請願  (池田清志紹介)(第四二八七号)  健康保険法等の一部改正に関する請願矢尾喜  三郎君紹介)(第四三〇三号)  同(倉石忠雄紹介)(第四三〇四号)  同(淡谷悠藏紹介)(第四三〇五号)  争議行為における人権じゅうりんに関する請願  (八木昇紹介)(第四三五四号)  四国電力株式会社不当労働行為事件に関する  請願八木昇紹介)(第四三五五号)  あん摩師はり師、きゆう師及び柔道整復師法  の一部を改正する法律案の一部修正に関する請  願(原捨思君紹介)(第四三五七号)  定員外附添婦生活保障に関する請願草野一  郎平紹介)(第四三五八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員補欠選任  公述人選定  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する  法律案内閣提出第七〇号)  医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正す  る法律の一部を改正する法律案三浦一雄君外  四十九名提出衆法第五二号)     —————————————
  2. 中村三之丞

    中村委員長 これより会議を開きます。  医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。     —————————————
  3. 中村三之丞

    中村委員長 まず本案につきましての公聴会公述人選定の件についてお諮りいたします。  本公聴会公述人につきましては、先刻の理事会において協議いたしたのでございますが、来たる二十一日、午前十時より日本医師会会長水越玄郷君、日本薬剤師協会会長竹中稲美君、日本歯科医師会専務理事鹿島俊雄君、午後二時より日本獣医師会会長荒井研君、健康保険組合連合会会長宮尾武男君、全国国民健康保険団体中央会総務部長松沢風有司君、以上六名の諸君を公述人選定するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  なお、公述人方々より変更の申し出がありました場合には、選定その他すべて委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
  6. 中村三之丞

    中村委員長 次に本案についての質疑を継続いたします。大橋武夫君。
  7. 大橋武夫

    大橋(武)委員 提案者にお伺いいたしたい点がありますが、それは昨日の委員会におきまして、野澤委員からもたびたび質問のあった点でございます。すなわち今回の修正案におきましては、薬事法の第二十二条の改正によりまして、薬剤師のほかに医師歯科医師獣医師も、薬剤師と同じように販売または授与目的調剤できるようにしたい、こういう規定が出ておるのでございます。しかしながら、従来の改正法規定によりましても、医師歯科医師自己診療した患者に対して調剤ができることになっておることは、これはもう御承知の通りだと思うのでございます。今度の規定を拝見いたしますと、法律的には、従来の調剤範囲をほとんど広くも狭くもしてないように見受けますが、いかがでございましよう。
  8. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。これは従来の法律におきましても、お説の通り調剤能力と申しますか、それは認められているような形になっております。これを明記しましたのは、前にも野澤委員にお答えいたしましたように、どうせ患者調剤をしてやる以上は、医者もある程度調剤できることが法律で認められているという安心感患者にはっきり与えたいという考えと、もう一つは、今までの第二十二条によりますと、薬剤師でない者は調剤できないことになっております。そしてこれを犯した者は三万円以下あるいは三年以下の罰金なり懲役を課せられることになっておるわけであります。ところが、実際に医者自分処方せん以外の患者調剤をするという例はほとんどないと思います。医者しろうと処方せんによって調剤することは絶対にございませんし、まず自分処方せんだけによって調剤するのが大多数であります。ただ、しいて自分処方せんでない処方せんによって調剤をするという例は、おそらく東京大学病院とか、いわゆる大病院あるいは大先生処方をもらって帰った患者が、いなかへ持って帰って、なるほどそれならばといって、いわゆる大先生処方せんによって調剤するくらいのところが精一ぱいだと思います。ただ、医者としても、自分の技術に対しては一つのディグニティを持っておりますので、どうしても自分処方せんによって、自分診察投与するのが当りまえでございまして、今までもこの二十二条に違反しまして三年以下の懲役ということは、実際あり得ないことでありまして、むしろその必要はない、またあまり苛酷な懲罰は要らないと私は思うのでございます。  もう一つは、かりに医者自分処方以外の大先生処方せんによって調剤いたしましても、それは反社会的な、人に危害を及ぼすようなことはないわけでございます。こう考えますと、三万円以下の罰金あるいは三年以下の懲役ということは、あまり苛酷に過ぎますので、むしろこのような刑罰はない方がよかろうと考えるわけでございます。こんなわけで、これを改善したいと考えたのがこの改正点でございます。
  9. 大橋武夫

    大橋(武)委員 理由として、第一は患者安心感を与える、第二は罰則が重過ぎる、こういう御説明でございました。そうすると、提案者の御説明によりますと、現在の薬事法規定のもとにおいては、患者は安心して医者から薬をもらっておらない、こういうふうにお感じになっておられるわけでしょうか。
  10. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。そうなるわけではございませんが、いわゆる刑罰が重過ぎるとも思いましたし、別に今の患者医者から薬をもらう場合に、安心感を持っておらないということはないと考えておりますけれども、こう直した方がしっくりできると考えたわけでございます。
  11. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、現在患者は、医者から安心して薬をもらっておる、従って特に実際上ぜひともこういうふうに直さなければならぬという理由はないわけでね。ただ医者の立場からいえば、この際にこういう、ふうに改めてもらえれば、一そうよろしい、こういうことで、現在差し迫ってこの改正が必要だというわけではないように受け取れますが、いかがでございましょうか。
  12. 大石武一

    大石委員 大体差し迫ってこの改正をしなければ、薬事法なり医師法がどうしてもなめらかに運用されないということではございません、おっしゃる通りでございます。ただこうした方が、一そう明確になってよろしいと考えておるわけでございます。
  13. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、この規定は多少医薬分業解決に際して便乗的に入り込んだ、こういうふうに見てよろしいのでしょうか。
  14. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。そう問い詰められますと、私どもとしても非常に困るのでありますが、便乗的でないということをお認め願いたいと思います。
  15. 大橋武夫

    大橋(武)委員 しかし私どもは、この法案提出されました主たる動機は、来年四月に迫っておるところの医薬分業に対して、事前の調整をはからなければならぬ、こういう御趣旨であったと思うのでございます。そうしますと、この薬事法規定改正の眼目とするところは、調整上この際必要であるということは、必ずしも言い切れないのじゃないでしょうか。
  16. 大石武一

    大石委員 この法律改正というのは、なかなか何回もできないと思うのでございます。でございますから、やはりこれを附則に入れるよりは、こう直した方が非常になめらかにいくと考えましたので、今罰則の点もございましたが、この際一緒に不合理と考えられる点は直した方がいいと思っておるわけでございます。
  17. 大橋武夫

    大橋(武)委員 この点は原案通り通らなければ、今回の法案提案はその本旨を没即するものである、従って全体として通らない方がよろしいのだという程度まで考えておられますか。
  18. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 これがどうなるかは別といたしまして、われわれといたしましては、国会権威によりまして、こういうことを明確にいたしておく方がいいと確信いたします。
  19. 大橋武夫

    大橋(武)委員 これは医師法二十二条の改正案の点と、差し迫った現在の段階における重要性とは、だいぶ事の重要性に差異があるとわれわれは理解して、提案者の御趣旨を曲解することにはならないでしょうか。
  20. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 今申した通りでございますが、これは国会の議員の方々によりまして、軽重あるいは緩急ということは、御議論があることでございますが、私どもは、むしろこれを明確にいたしたいと思うのでございます。
  21. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、お前たちがどう思うかは別として、提案者としてはどちらも平等の値打ちを持って出したのだ、こういう御説明ですか。
  22. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。実は私たちが来年四月からの医薬分業法律修正いたしたいと思いますのは、第一番に国民に便宜なように、国民に楽な一番いい治療を受けさせるということを念願としております。その次に考えられますことは、医師会薬剤師会との調整をはかりたい、こういう二つ考えであります。これを考えてみますと、私たちは来年の分業法案というものは、大体において非常に薬剤師側に片寄っておる法案であると思っております。その根本は医薬分業というものを前提としておりますから、そう思います。ことに第二十二条には「医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認める場合には、患者又は現にその看護に当っている者に対して処方せんを交付しなければならない。」という大前提がありまして、医薬分業ということを強くうたったわけでございますが、ただこの改正案では、その中に多少除外例を設けまして、そこのところをなめらかにしたいと思っております。  もう一つ医師会というものは、全面的に分業廃棄を叫んでおりますが、私は当今の時代においては、全面的な廃棄は不可能だと思います。従いまして、分業方面に今申した調整をはかるという意味からして、片方ではあくまでも分業というものを建前とする、片方ではやはり調整をはかる、医師調剤能力調剤権と申しますか、調剤を認めるということが、多少、卑俗な言葉でいえば医師会の顔を立てた、ここで二つの間で調整がとれていると思うのでございます、そういう意味で私はこの条項はどうしても必要であると考えております。
  23. 大橋武夫

    大橋(武)委員 もしそうであるといたしましたならば、医者が全く薬剤師と同じ調剤権を持つということならば、これは御趣旨のような説明で通ると思うのでございます。しかし、この規定を拝見いたしますと、依然として医師歯科医師調剤し得る場合は、自己処方せんによってみずから調剤する場合に限っておる。そういたしますと、法律的には、調剤できる範囲というものは、現行制度と何ら変りがないと言わざるを得ない。従ってこの規定というものは、法的には実質上何ら改正されてはいないわけです。ただ書き方を、原則をあとで書いて例外を先に書くというような書き方にして一これはしろうとの目をごまかすやり方とは言えるかもしれませんが、法律的には何ら従来と内容では違いがない、こう私どもは理解しておるけれども、それともやはり内容的に従来と違ったことをこれでねらっておられるのですか。
  24. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。調剤をする、患者に薬を授与するという点から申しますと、現行のものと今度の改正案とでは、実質的にいえば、おっしゃる通りそう変りはないと思います。ただ問題は、実際適用されない三年以下の懲役というものは、意味のないむだな刑罰は取ったがよろしいという意味が含まれてありますので、その点もお考えを願いたいと思う次第であります。
  25. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、安心感云々というのはあまり大したことではない、実質上の問題は、罰がなくなるという御説明でありますか。
  26. 大石武一

    大石委員 大体その通りでございます。
  27. 大橋武夫

    大橋(武)委員 罰則ということになりますと、医師自己処方せんによらずして調剤をするということは、従来から禁止をせられておったわけでありまして、それに対しては、従来から罰則というものがあったわけであります。これを罰則なしにいたしますと、あなたの御提案によりますと二十五条の二ですか、この条項は全く罰則を伴わざる不完全規定になってしまうのですが、それでよろしいのでしょうか。
  28. 大石武一

    大石委員 罰則は、刑罰はございませんけれども行政処分がございます。前に申し上げましたように、医者が不正な行為を働いた場合あるいは不名誉なことをした場合、いろいろな場合における行政処分が十分規定してありますので、防げると思う次第であります。  それからもう一つは、今申しましたように、今までの、二十二条では、医者自分処方せんによらないで調剤した場合はということでございますが、そのような場合は、先ほど申しましたように、ほとんど考えられないことでございます。しろうと処方せん調剤することは絶対ございません。これは考えられると思います。しろうとが書いてきた処方せんで、医師しろうとの言う通り調剤する理由はございません。必ず自分のものとして、自分診断をした上でならば調剤することもございましょうけれどもしろうとの持ってきた処方せん調剤することは、当然あり得ないと思います。  もう一つは、あり得ることは何かと申しますと、いわゆる大先生処方せんだとか、大病院処方せんを地方の人がもらって帰って、この通り処方せん処方してくれと言ったときに、大先生処方せんはけっこうでありますといって調剤することはあり得ると思います。せいぜいこのくらいのことだと思いますが、この場合に大先生なり大病院なりは、いずれもれっきとしたお医者でございますので、その処方せんには間違いがあるわけはございません。従って、そのような法律をかりにお医者が犯して調剤いたしましても、これは別に反社会的ではないと思います。患者に対して危害も加えなければ、決して患者のためにはならないと思うのであります。このような場合三年以下の懲役に処するということは、あまりに過酷な法律だと思うのであります。従って、あり得ない、反社会性のない場合に対して、三万円の罰金あるいは三年以下の懲役という条項は、行政処分で押えても十分である。それでも決して社会的に危害を及ぼさないと考えますので、このような刑罰は取りたいと念願する次第であります。
  29. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ほかの規定は、大体罰則で矯正することになっておるわけであります。特に調剤に関する制限に違反した場合に、罰則で矯正せずに、行政処分だけでよろしいという論拠が私にはわからない。実際そういう罰則に触れるような場合は、非常に少いとおっしゃいます点は、これはおそらく少かろうと思います。少ければ、いかに苛酷な罰を食う者が少いわけですから、何も特に改める必要はないわけです。しかし、この規定というものは、たまたま医者として、そういうものはめったにあるわけのものではありませんが、しかし特別に悪い医者がおりまして、ただ電話一本で診察もしないで薬を渡す、あるいはまた薬剤師でもないのに自分のところで一般売薬のごときものをこしらえて売るとか、そういうような場合には、医者であろうがなかろうが罰せられる。特に医者だけが、そういうことをした場合に罰せられなくていいという理屈は、なかなか立ちにくいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  30. 大石武一

    大石委員 この項とは別に、医者しろうとから電話一本で、診察しないで投薬した、いわゆる無診投与という場合には、五千円以下の罰金がございます。これで無診投与処分せんを作らないで自分が投薬した場合には、これと別に罰金の制裁がある、刑罰があるわけでございます。それから薬剤師医者処方せんによらないでしろうと処方せんなり、自己の勝手な判断、いわゆる処方せんによらないで投薬した場合——これはほとんど私も例が少いと思うのでございますけれども、このような場合には一万円以下の罰金、一年以下の懲役でございます。しろうと処方せんによって薬剤師が投薬をするということは、ごく例が少いといたしましても、それは明らかに反社会性がございます。その患者診断をしておりませんから、どのような薬が合うか合わぬか、その処方した薬の極量なり分量に間違いはありませんけれども、果してその病人に合う薬かどうかは非常な危険がございます。でありますから、これは明らかに反社会性があるわけです。これによって患者危害を及ぼすことはあるわけでございます。このようなおそろしい場合に一万円以下あるいは一年以下の懲役だけであって、しかも医者が、かりにこの法律に違反しましても反社会性がない、何らの危害を及ぼさない場合において、三年以下の懲役というのは、あまりに私は均衡がひど過ぎると思う。  こういうわけでございますから、これは十分に考えまして、反社会性はないけれども、この法律に違反した場合は明らかに不正な行為でありますから、営業停止とか医権の剥奪でありますとか、そのような行政処分で十分やっていけると考える次第でございます。
  31. 大橋武夫

    大橋(武)委員 薬務局長見えておられますか。
  32. 中村三之丞

    中村委員長 来ておりません。今呼んでおります。
  33. 大橋武夫

    大橋(武)委員 では、提案者に続けて伺いますが、従来の第三十二条に伴う第五十六条の罰則というものは、無免許売薬のようなものを取り締まろうという趣旨ではないのでしょうか。
  34. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 私がお答えをすると、少し違うかもしれませんが、ちょうど薬事法と同様に、今度の二十二条は、第二十二条の「薬剤師でない者は、販売又は授与目的調剤してはならない。」これに該当することであると思います。法制上の問題ですから、専門家から答弁しますけれども、それはちょうど今度の二十二条に改正された薬事法の二十二条と大体において同様なことであるのであります。
  35. 大橋武夫

    大橋(武)委員 この薬剤師でない者が販売または授与目的調剤してはならないという規定は、薬剤師というものは、一般的に販売または授与目的調剤ができるし、医師歯科医師獣医師の場合には、自己処方せんでなければいけない。この処方せんというものは、患者を見なければ書けない。従って医師調剤ということは、調剤そのものを専門的にやる人ではないのであって、これは診療をするのが目的である。その診療に必要な範囲内において、薬剤師でなくとも、医師自己患者にだけは特別に調剤をしてもよろしい、こういうのが従来の法律趣旨であったろうと思うのですが、この点はおそらく提案者といえども医師調剤をするということは、一般薬剤師と同様に、あらゆる場合に認むべしとは思っておられないと思うわけでございます。従って、今度の調剤内容といたしましても、法規の書き方は違っておるが、実際上は従来と変りはない、こう見ておる。そこで、罰則の適用については、本来の薬剤師よりは、医師薬剤師と同じようなことをした場合には、しろうとよりは軽くていいということはいえるかもしれませんが、しかし、薬剤師と同じに罰しなくていいという理屈は、ちょっと立ちにくいじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  36. 大石武一

    大石委員 おっしゃる通りでございます。罰しなくていいということは、決してございません。でございますが、今言ったように、まずない、ほとんど考えられない規定であると考えます。しろうと処方せん医者がそのまま受け入れて薬を作るということはございません。その場合には、必ずそのしろうと薬剤師になると思います。それから医者自分の威厳にかけても、しろうと処方せんをただもらう、医者が見もしないで薬を発行するということは絶対にあり得ない、考えられないことであります。ただあり得ることは、同業者の作った処方せんであります。これは自分権威がありますから、しないと思いますが、いわゆる大家処方せん患者が示されて、これがきくから作ってくれ、よかろうといった場合だけでございます。これが果して反社会的な、大きな刑罰に相当するものであるかどうかと思います。この法律がある以上、この法律には違反しますけれども、実際どれほど反社会的な、罰しなければならぬほどの理由があるでありましょうか。私はそういう大家処方せんを、同じ先輩の医者が作った処方せんを、自分がそれを信用してやったからといって、ちっとも患者を困らせるわけではないし、反社会性はないと思う。これを三年以下の懲役に処するということは、あまりにひど過ぎると思う。でありますから、これを削って、この法律に違反しただけが悪いのでありまして、明らかに不正な行為でありますから、これは行政処分で、営業停止とか。罰しないということではなく、この程度でやった方が、法律としては気持よくやれるのじゃないかと思う次第でございます。
  37. 大橋武夫

    大橋(武)委員 行政処分の点については、すでに一昨日の当委員会においても触れたことで、行政処分というものは、実質上においては千円や二千円の罰金よりは、よほどこたえるものです。そしてまた実際行政処分をやろうということになると、千円や二千円の罰金なら簡単に取れますけれども医者免許の取り消しとか、それから一時の免許状停止というようなことは、非常に重大なことであって、簡単に気やすそうに行政処分でけっこうですと言われるけれども、やれるものでもない。また実際こんなことで一々やったらば、これはお医者さんの方でも非常な問題だろうと思う。従って、軽いという点になれば、私はむしろ現在の罰則の方が軽いじゃないかというふうに思うわけです。なるほどあなたは、懲役三年というところをつかまえて、懲役三年は重い重いと言われますけれども、これは三年以下の懲役または三万円以下の罰金なのです。だから、そのやった事柄の軽重に応じて罰金千円の場合もありましょう、あるいは懲役三カ月の場合もありましょうが、これは裁判官の良識に待つのであって、裁判官が、すべてこういう事柄については、必ず三年の懲役に処するのだということならば、これは確かに罰則を改めるということが私はけっこうだと思うわけです。少くとも、今あなたの企図しておられまする医者自己処方せんによらずして調剤したような場合、これは何ら制裁しないでいい事柄とは、あなたも思っておられないわけです。しかし、それが非常に重大な犯罪とはあなたも思っておられない、おそらく千円か二千円の罰金でいいじゃないかというくらいなことを思っておられるのじゃないかと思うのですが、それならば罰金をもっと安くする、あるいは懲役はやめてしまうというようなことを考えるべきであって、いきなり罰則をやめて、そういう場合には必ず行政処分にするのだということにすれば、私はこれはかえって本来ねらっておられるお考えと合わなくなるのじゃないかと思うのです。ごらんの通り五十六条には、違反した者は必ず三年以下の懲役または三万円以下の罰金に処するのだ、こう書いてある。であるから、もしこの条項から、自己処方せんによらずして調剤した場合は、この罰則にかけないのだということならば、われわれといたしましては、当然これと同じように、もし自己処方せんによらずして調剤した場合においては、免許の取り消しまたは免許停止に処する、こう書かなければ、われわれとしては満足できないわけです。なぜかというと、現状のようなやり方で、やるかやらないかが全くお役所まかせになっておるというようなことでは、これは制裁として意味をなさない。制裁である以上は、その身分にかかわらず、そういう犯罪行為があったならば必ず処罰するということでなければ、制裁としての意味をなさない。だから、あなたが、もしどうしても罰則をお取りになるということならば、そういう場合には必ず医者の免状を取り上げてしまうのだという趣旨で、そういう規定をこれと同時におつけにならなければ、均衡が取れないのじゃないかと私は思いますが、いかがでございますか。
  38. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 大橋君の御議論、一応ごもっともであります。医者自己処方せんによらずして処方を盛るなんということは、私は想像し得られぬ。何となれば、ただいま希有の場合を言いました。だれかに処方せんを書いてもらいまして、自分が見ずして、その処方によって売り渡すなどということは、医者がみんな誇りを持っておりますがゆえに、売薬業者ではありませんから、かようなことはない。しいて申しますれば、ただいま大石君が申されたごとく、だれか先輩から処方が出たのだからというので、それをそのまま、見ずにやるということでありますが、さような場合も、小僧が取りに来て、その処方によって渡すなんということは、医者として断じていたしません。多い中でございますから、そういう人があるかもしれませんが、いやしくも医者に対する今の社会上の儀礼といたしまして、本人が参りまして、私はこういうからだでこういう処方をもらいましたから、御参考にというか、あるいはこれを一つ盛っていただきたいと言えば、今度は医者自身がその人を見ますがゆえに、その処方通りに盛りましても、医者自己の判断の処方と同様の価値があるのでありまして、かような場合はほとんど——私はほとんどといわず、絶無と申しても、実際問題としてよかろうと思いますがゆえに、さように御心配になる必要はなかろうと思うのでありますが、しかしそういう場合におきましてのこの罰則の問題につきましては、しろうとと同様にこれを罰する、あるいは薬剤師処方せんによらずして薬を調剤した場合と同様に見るということはいかがなものであろうか。実際何らの実益のない、ただ薬剤師医者との商売の分界の点において罰することでございますがゆえに、さような絶無と申していいようなことに、罰則を特につけなければならぬということはないと思うのです。ことに病人といたしまして処方せんを持っていくのに、何を苦しんで医者のところへ持って参りますか。薬剤師のところへ行ってもらうのが当然実情に即したものではないか、医者が見ずに、その処方によらず売薬行為をするということは、医者の誇りとして断じてやりません。これはおそらく全部そうであると思っておりますが、実情に即せざるとか、絶無のようなことに罰則を——特にしろうとが薬を盛ったとき、処方せんによらずして盛った場合と同様に見るということは、いささか実情に即しておらないかと思いますが、その罰則の点を削った点につきましての主張というものは、大石君が述べられたと同様に考えておりまして、実情にないということの実情を申し述べた次第であります。
  39. 大橋武夫

    大橋(武)委員 世の中には、実際罰則ができておっても検挙の実例がないという罰則はたくさんあります。私は、実際上ないからというだけで罰則を取るということは、ちょっとそれだけでは納得できない。実際上ないということと、理論上あり得ないということとは違うわけであります。医者たるものが薬事法規定に違反するということは理論上あり得ないのだということならば、これは罰則を残すことはおかしい、取るべしという理屈になりますが、今日まで実際なかったというだけでは、私は取る理由にはならぬ、こう思うわけです。それで、自己処方せんを書かずに調剤するなどということはないと言われますが、なるほど医者調剤をされるときには、一応処方せんは書かれるでしょう。しかし、診察もしないで勝手に医者処方せんを書かれて、そうして自分調剤した、そうしてこれを一般売薬として売りさばいたという場合においては、これは従来かちの考え方によれば、しろうとがやった場合と同じに処罰されるところが、そういう場合は今までなかったかもしれぬが、理論上ないとは言えないわけです。それを一体なぜ罰しないことにすべきであるかということ、これは理屈はなかなかつけにくいのではないかと思います。
  40. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。ただいまの大橋委員の申されました実例はございます。それはこの条項に当てはまらない条項でございます。医師法でいう無診投与診察しないで投与した場合には無診投与、また投与しないで処方せんを書いただけでも、これは五千円以下の罰金でございます。ただいまの例と違います。これは患者が持ってきた処方せん医者調剤してやるだけで、これは理論的にもあり得ないことと思います、仮定すればあり得ると思いますが、理論上はあり得ません。しろうとの持ってきたものを医者調剤するということは考えられません。ただ、実際上にもございませんし、私が……。
  41. 大橋武夫

    大橋(武)委員 理論的にはあり得るでしょう。
  42. 大石武一

    大石委員 理論的にはあり得ないということはありません。ただ、理論というのは、想像や仮定を入れれば別でございまして、そこのところの問題はありますが、これはむろん取り消してもよろしゅうございます。そこで、たとえば実例を申し上げますと、私に姉がございますが、この姉はしょっちゅうからだが悪くて私が見て薬をやってもきかない、私の先生が薬をやってもきかない。たまたま東京で、額田教授に見てもらって薬を調合してもらったら、よくなった。ところが、この薬は医者が見れば何のこともない、何も大して効果のないような処方せんでございますが、それを金科玉条としていいと思っているので、私らもよろしい、よろしいというてその薬を調合してやっております。これは私が前に一ぺん姉を診察しておりますから、別に無診投与にはなりませんで罪にはなりませんが、これがひっかかるのは、これ以外にないのです。しろうとの書いた処方せん医者調剤するということは、絶対あり得ないことです。ですから、ないことのために三年とかいろいろな刑罰を作らなければならぬということはないのです。今言ったように、行政処分にしたらいいじゃないかということでございますが、これは明らかに医師法にございますから、これはできると思います。それから無診投与の場合でも、すでに罰則がございますから、これは別にない方が、私は法律としてはいいような気がするのでございます。  それからもう一つ現行法でも改正法でも、薬剤師でない者は、販売または授与目的調剤してはならない。しかし、医師自分処方せんによって調剤してよいとありますが、これはなぜこんな条項があるか不思議でならない。歴史的にはこういうことはあるかもしれませんが、実際医者調剤しているのでありますから、なぜ薬剤師以外に医者調剤できないか。実際はしておるのに調剤できないというのは、不思議でならない。これは医薬分業の建前としての条項だから、私はこのような法律ができておるのだと思うのです。ですから、実際やっているのならば入れて医者調剤能力を認めて、そうして医薬分業の建前から、これはどうしても医者が無制限に調剤してはいけないから、自分処方せん調剤をして、それ以外に手を伸ばして薬剤師の職能を侵してはいけないぞといった方が、私は一番この法に合う行き方ではないかと考えるわけでございます。
  43. 大橋武夫

    大橋(武)委員 今、薬務局長がお見えになりましたので伺いたいのですが、現行法の薬事法第二十二条に「薬剤師でない者は、販売又は授与目的調剤してはならない。但し医師歯科医師又は獣医師自己処方せんにより自ら調剤し、又は薬剤師調剤させる場合は、この限りでない。」とこう書いてありますが、この規定はどういう趣旨でございますか。
  44. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 本文の方は、調剤というものは薬剤師がなすべきものであるという原則をうたったのでございます。ただし、医師その他の者が自分処方せん自分調剤する場合はその原則を解除している、こういうことに尽きると思うのであります。
  45. 大橋武夫

    大橋(武)委員 その次にこの改正法律の二十二条によりますと、医師自分処方せんでみずから調剤する場合を限定いたしております。この限定された場合以外において、医師がみずから自己処方せんによって調剤した場合も、やはり改正法においては、自己処方せんによらずして調剤した場合と同じように罰せられることになっておる。これはどういう意味でございますか。
  46. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 御質問の趣旨をあるいは取り違えたかもしれませんが、薬剤師調剤あるいは医師調剤というふうなことも、これは法律で認められて初めてその法律上の権能といいますか、そういうものが生まれてくるものと思うのであります。従いまして改正法で限定された場合に、自分処方せん自分調剤できる、かようにただし書きで解除をいたしておりますので、このただし書きで解除いたしました以上のことを行いました場合、すなわち省令に違反をして、実体的に申しますと、省令に書き上げられておる場合以外になした場合には、本文に戻りまして、薬剤師でない者は販売または授与目的調剤してはならない、これと同じような原則で罰則を課する、かように考える次第でございます。
  47. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうしますと現行法の二十二条によって医師歯科医師薬剤師調剤の権能を与えられておる、それを改正法の二十二条においては狭くいたしておりますね。
  48. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 さように了解すべきものでございます。
  49. 大橋武夫

    大橋(武)委員 この改正法によって狭くされた範囲の事項について医師歯科医師に違反があった場合に、なぜ一般人と同じ基準で処罰をされなければならないことに改正法はできておるのでしょうか。
  50. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 その当時の立法趣旨を、私よく事情を詳しく承知をいたしませんのでございますが、私の考えますところでは、改正法におきましてもそうでございますし、現行法におきましてもそうでございますし、その前の法制におきましてもそうでございますが、医師または歯科医師等が、一定の限られた場合に調剤をすることができるということを認められました、その認められた範囲以外にやりました場合に一般人と同様に処罰をするという思想は、おそらくは先ほど私が申し上げましたように、医師調剤の権能というものは法律で認められた範囲だけであって、従ってそれ以上に出た場合には一般人と同じように罰するのだ、こういう思想であろう。これは、私は十分当時の立法理由を調べておるわけではございませんが、私の考えるところは、そういう思想であろうと存ずるわけでございます。
  51. 大橋武夫

    大橋(武)委員 思想はわかっているのです、その通りだと思いますが、改正法によって限られた範囲外であり、しかも現行法の範囲内である事項、その事項について、特に一般人と同じように処罰しなければならぬ実質上の理由があるのでしょうか。
  52. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 これはあるいは私の個人的の意見になるかもしれませんが、一般人の場合と医師の認められた範囲外の調剤とを、同じように罰する必要はあるいはないのじゃないかというふうに考えております。
  53. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それは全然罰する必要はないということですか、それとも多少程度を変えて罰しておいてもよろしい、こういうことですか。
  54. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 全然罰する必要がないということを、私は申し上げておるのではありません。その反社会性と申しますか、そういうふうな実害の点から申しまして、あるいは医師たるものの本質と申しますか、さような諸般の関係から申して、罰則に差別をつけても何ら差しつかえはないのではないか、かように存ずるわけでございます。
  55. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、提案者は先ほど、この範囲については行政処分があるから罰はいらない、こう仰せられましたが、ある種の制裁を設けることは必要である、しかし行政処分があるからよろしい、こういうことになるだろうと思います。また薬務局長の御説明によりますと、この場合においては一般人と同じような罰はいらないのじゃなかろうか、しかしこれもまたある程度の制裁は必要だ、こういうことになったわけであります。  そこで、医務局長に伺いたいのでありますが、この薬事法の二十二条の改正案で制限され、しかも現行法の範囲内——現行法より改正法医師調剤の権能を制限いたしております。この制限された範囲外であり、現行法の制限の範囲内である事項について、改正法の反則行為になりますね、その場合に、医務局長のお考えでは、必ず何らかの行政処分をおとりになりますか、それとも、とらない場合が多いでしょうか。
  56. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 前にも申し上げましたが、医業の取り消しまたは期間を定めての停止というような行政処分は、私どもとしては非常に重大な処分でありまして、軽々しくは行い得ない、一一医道審議会にかけまして、その上で初めて決定するのであります。もちろんこの実施については、必要な処分をゆるがせにするということはいたさないつもりではございますけれども、なかなか簡単には行い得ないものだということだけを申し上げておきます。
  57. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、事実上その程度行為の場合には、刑事罰がない以上は行政処分はほとんど行われない、従って制裁なしという状態になるであろう、こういう結論を出してよろしいでしょうか。
  58. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 さような事態を想像いたすのでありますので、明確なことは申し上げかねますが、きわめて困難であるということだけを申し上げておきます。
  59. 八田貞義

    ○八田委員 関連して。今、大橋委員薬事法第二十二条の問題につきましてお尋ねがあったのでありますが、医師法を見ますと、医師法の第二十条におきまして、自己処方せんによらないで投薬した場合には無診投与になり、この場合は医師法第二十条違反となりまして、五千円以下の罰金がかかってくることになっているわけであります。従いまして、薬事法でさらに重ねて罰金刑を制定する必要はないと私は考えておりますが、いかがですか。
  60. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。私ども考えます場合には、今八田委員の申されましたように、私ども改正案の第二十二条に抵触する違反というものは、ただいま仰せられたいわゆる無診投与の例だけだと思うのであります。それ以外のものは何らの実害もない、これは別に犯罪としてつかむべき性質のものではないのであります。従いまして、大体その無診投与ということについての刑罰がございますので、一応大体それで実際的にはやっていけるとは思うのでございますが、大橋委員の理論的なお話には、なるほどこれを除くのも少し悪いような気がしまして、二十五条の二のあとに多少の罰則を加えてもけっこうであるというような考えに、私は今なったわけでございます。
  61. 滝井義高

    ○滝井委員 関連して、医務局長でも薬務局長でも——お尋ねしますが、今医務局長の御答弁の中で、医師法の七条並びに四条に関連する行政処分については、医道審議会等にかけなければならぬが、それは非常に困難だという御答弁があったのですが、現在医師法なり薬事法における無診投薬その他の罰金懲役ですね、そういうものがどの程度、たとえば昭和二十九年度中に何件ぐらい行われたのか、これを一つ説明願いたい。もしそれが行われていないということになるならば、これは五十歩百歩で、大して変らないのではないかというような、感じがするので、御答弁願いたい。
  62. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 ただいま資料を持ち合せておりませんから、明確にお答え申し上げるわけにいきませんが、私記憶しておりますのでは、おおむねこの行政処分を受けます場合は、麻薬の違反あるいは堕胎罪あるいは偽証罪というような明確な犯罪行為がございましたような場合に、あわせ行政処分をするということが多くの場合でございます。
  63. 滝井義高

    ○滝井委員 麻薬の乱用とか堕胎というような他の犯罪に付随をして、たまたまカルテその他を調査したらそういうことが出てきた、こういうことで罰則なり過料、罰金と申しますか、それが課せられた、こういうことですね。
  64. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 さような意味ではございませんで、その犯罪行為があり、しかも多くの場合これを反復犯したというような場合でございまして、かような犯罪行為がたび重なるということは、医師の品位を汚したものであるというような意味であります。
  65. 滝井義高

    ○滝井委員 そうなりますと、たびたびそういう不正な行為が重なって医師の品位を汚したということになれば、医師法の七条にいう医師の品位を汚しあるいは不正の行為があったということによって、行政処分の対象になるのではないでしょうか、いわゆる行政処分の対象になるのだと思うのですが……。
  66. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 ただいま滝井委員から言われましたような理由行政処分を課しておるというふうに了解しておるのであります。後半の御質問の意味を明確につかみ得ないのでありますが、今申し上げましたように、かなり明確な犯罪があったというような場合に、この行政処分を課しておることが普通であります。
  67. 滝井義高

    ○滝井委員 私が申し上げるのは、医師法二十二条あるいは薬事法二十二条に単独に違反したために——無診投薬とか、あるいは他人の処方せん医師が作った、こういう場合の単独犯でその罰則が適用されたものがどのくらいあるかということを、実はお尋ねしておるのであって、麻薬とかあるいは堕胎というような主たる犯罪があって、それに付随して無診投薬というようなものがついたものでなくして、単独の医師法薬事法二十二条関係の罰金あるいは懲役刑に課せられたものがどのくらいあるか、こういうことを言っているわけです。
  68. 曾田長宗

    ○曾田政府委員 御承知のように、ただいま施行されております法律は「医師歯科医師又は獣医師自己処方せんにより自ら調剤し、又は薬剤師調剤させる場合は、この限りでない。」調剤して差しつかえないというような建前になっております。これに違反して、それに基いて行政処分を課すというような事例はございません。
  69. 滝井義高

    ○滝井委員 実は私もそうだと心得ておるのです。さいぜん大橋委員からいろいろ御論議になったこの医師法薬事法改正の二十二条というのは、来年の四月一日から動く法律で、現在まだ動いていない。そういう点において、たとえば薬剤師医師処方せんによってでなければ調剤することができないという規定も、これは来年からしか動かない規定です。現実に薬剤師は、無診投薬と申しますか、そういうものをやっても、おそらくちょっとくびりようがないというところだと思うのです。そういう、医者処方せんでなければ薬剤師調剤してはならぬという規定は、前の法律にはありませんから……。これは改正法はまだ動いていない、現行法が現実に動いておる、こういうことだと思うのです。だから私は、罰金というものは、今おそらくない、こう思うので、ちょっと議論が交錯しているような感じがしたので、その点を確かめておいたわけです。これでいいです。
  70. 中村三之丞

    中村委員長 野澤清人君。
  71. 野澤清人

    野澤委員 前会に引続きまして提案者にお尋ねいたすのでありますが、この前はっきりした御了解がなかったように思われます「第三条中薬事法第五十六条第一項の改正規定を削る。」これに対して、もう一度大石委員から、どういう見解なのか、はっきりした御説明をまず承わりたい。
  72. 大石武一

    大石委員 これは別に大した問題ではございません。で、第二十二条が、今度われわれの案で改正になりまして、以前は薬剤師でなければ調剤してはならない、それに違反した者は、いわゆる三万円以下の罰金あるいは三年以下の懲役になっておりますが、これを薬剤師医師歯科医師及び獣医師でない者は調剤できないというのでありますから、こういうような者が調剤しても罪にならない。罪になるのは、一般しろうと調剤した場合だけでありまして、そのように内容変りましたので、医師なり獣医師なり歯科医師なりの罰則を削ってあるのがこの条項であります。
  73. 野澤清人

    野澤委員 なお今回の改正案の二十五条の二というものは、全然罰則の適用はないと了承して差しつかえありませんか。
  74. 大石武一

    大石委員 罰則はございません。
  75. 野澤清人

    野澤委員 そこで、提案者にお尋ねいたすのでありますが、先ほど大橋委員から、この二十二条の「薬剤師医師歯科医師及び獣医師でない者は、販売及は授与目的調剤してはならない。」この条文について、理論的な検討やら、現実の問題やらの応酬がありましたので、大体私自身としましても、考え方の基本線だけは一応了承できたわけであります。ところで、この二十二条と二十五条の二と、二つ並べてあわせ考えた場合に、現行法より以上逆行するということを、私前回も指摘いたしたのであります。さらに法律二百四十四号の規定から見ますと、調剤できる範囲というものを、限定された調剤行為として認めている。それを今度は、さらに広範に医師調剤能力というものを本文の上において認めようという行き方であります。そうすると、薬剤師医師歯科医師も、調剤行為に関する限りは全く同格になってしまう。そうした場合には、たとい二十五条の二の規定がありましても、制約される部分というものは、非常に広範な範囲を含むのではないか。一昨日の御説明では、二十二条の原則規定があっても、二十五条の二によって一応範囲をきめられていくのであるから、何ら前の法律と支障がないということを大石さんが説明されております。しかしながらすなおにこれを見ていきますと、なるほどそういう感じはいたしますが、逆に今度は考えてみまして、二十五条の二という法律の違反行為が生まれた場合に、どういう法律を適用してこれを取り締っていくか。つまり「自己処方せんにより自ら調剤するときのほかは、販売又は授与目的調剤してはならない。」こう二十五条の二で規定してあります。しかし、自己処方せん以外のものでも調剤することができるように、逆に解釈がいくと思うのでありますが、それについてはいかがでありますか。
  76. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。先ほど大橋委員にお答えした答弁で、大体御了解つくかと思うのであります。二十五条の二で違反した場合には、すでに大体において無診投与に近いものでありますから、これは明らかに医師法で別に罰してございます。それ以外に、医者が他人の処方せん調剤するということはちょっと考えられない。先ほども出ました大家の例がございましたが、それ以外に考えられないのでございますが、先ほど大橋委員のお話におきまして、なおこれにも罰則をつけた方がよろしいという気もいたしますので、あるいはこれにも罰則をつけてもよろしいという感じはしております。
  77. 野澤清人

    野澤委員 非常に局限された例をもって示されるものですから、話のつじつまが合わぬのだと思うのです。それで、大石君自身によく考えてもらいたいことは、二十二条の調剤に対する本則というものは、全くこれは分業形態を否認して、しかも医薬を兼業できるという医師に対する基本的な兼業の法文であります。従って、この法文が存続する以上は、二十五条の二でどんなに取り締りましても、十人の開業医が結托して、一軒の家に薬局を設けたと同じように、十人の中の一人の医者が、他の医者から持ってくる処方も、販売または授与目的調剤することができることになるのです。結局、そういうことをやっても何ら差しつかえないということでありますから、むしろ薬剤師調剤権を奪われたのではなく、薬剤師調剤権というものを根底から否認して、医師みずからが他人の処方でもできることを、ここで原則的にうたった、こういう解釈が成立すると思うのでありますが、この法的な解釈を、どうあなた方でお持ちになっておりますか。
  78. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。あとの段では、おっしゃることがちょっとわかりませんでしたので、あとでまたお答え申し上げますが、初めの方は、私は第二十二条のこの条項ができても、医薬分業の精神に反しないと思っております。調剤できるものはできるとはっきり認めて何ら差しつかえないと思う。ただ医薬分業の精神を生かすために、できるけれども薬剤師の職分を侵してはならないから、職分を侵さないように、医師はよけいな調剤をしてはならないということに、分業の精神を生かしておると思うのであります。  あとのことは、十人が結託してお互いに処方せんのたらい回しのようなことをするという話でありますが、これはちょっと私ども考えられないことでありますから、答弁ができない次第であります。
  79. 野澤清人

    野澤委員 医薬分業の精神は決して破壊しておらないということは、全く理論的な根拠が何にもないので、あなた自身の主観のしからしむるところでありますから、議論の余地はないと思います。要するに、見解の相違であります。しかし明治初年から今日まで、歴史的な事実として、薬学を分離し、薬剤師に国家免許を与えるという以上は、薬剤師の本業ということに対する決定的な身分の保障をしてきたわけであります。ところが、今回の改正案の二十二条を見ますと、もう医師薬剤師歯科医師も、販売または授与目的調剤することができるのだという原則論が生まれてくる。従って、この原則論があって、しかもこれの違反者というものは何ら罰せられないから、二十五条の二の違反者も何ら罰せられない、こういうことでありますならば、故意または過失によって犯罪を犯した、われわれが薬剤師の立場から見れば、われわれの業権を侵しているのだ、こういうふうなものがたとい出たとしても、二十二条の規定に照らし合せますと、他の医者処方せんを集めて金を取って調剤してやっても何ら差しつかえない。そうすると、町の薬局と同じ業務を医師歯科医師 獣医師ができるという論拠が生まれると思うのです。この点に関して、どういう御解釈をされるかということです。
  80. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。調剤ができるということと、調剤するということとは、別だと考えております。私は薬剤師の仕事は、調剤だけではないと思います。わざわざ国が国立の大学を作って薬剤師を養成するのは、単なる調剤をするだけの入間を作るだけではないと思います。もっともっと高遠な、分析とかいろいろなものがある、ここに薬剤師の使命があると思う。調剤だけにこだわったのでは、明らかに薬剤師の立場はなくなるかもしれませんが、薬剤師とは、そのようなものだけであってはさびしいと思います。もっと高遠なものがあると思う。ここに政府がこういう法律を作るゆえんがあると思います。私は調剤ができるとしたことには、何ら不都合はないと思う。調剤していいか悪いか、お互いの職分を侵さないようにするというところに、この医薬分業の精神があると思うのです。これが私の信念でございます。  それから医者が薬局に持っていく処方せんを、別の医者にたらい回しにするというか、調剤するというのですが、このような不見識なことはないと思うのです。それは考えられません。医者というのは、みな見識を持っております。薬剤師も見識を持っておると思います。お互いの見識を持っておりますから、このように見識のないものと考えたら、議論の余地はないと思います。
  81. 野澤清人

    野澤委員 そういう架空な話ではなしに、現実に二十二条をどう解釈するかというと、表向きはあなたの言う通りかもしれぬが、逆に考えると、薬局で調剤する行為、それは販売または授与目的調剤ができるのであります。できるという原則から考えると、そういう不徳な医者はいないとあなたが御認定なさることは勝手であります。しかし、不徳な人があって、医者調剤を専業として、要するに販売または授与目的で商売ができる、こういうことになってきますと、医薬兼業をはっきりと法文の上で認める結果になるのじゃないか。薬学の範囲がどうこうということを、私はお尋ねしているのではないのです。要するに、今まで薬剤師でなければ処方せんによって調剤できないのだというのを、医者薬剤師歯科医師獣医師も同格にできるのだ、しかもそのできるという、調剤が可能であるということだけならよろしいですが、販売または授与目的調剤ができるということになる、そうしますと、町の薬局がお医者さんの処方せんによって調剤して薬の原価と調剤手数料とを加えて一日分幾らとしてお客さんにその薬を売っていることと同じように、今度は医師みずからが、そういう不徳義な人はないとは想像しますが、万一あった場合に、十人いる医者に、処方せんをおれのところに持ってこい、おれのところは医者ははやらぬから、今度は薬盛りをやるのだ、こういうことをやられたからといって、処罰の方法もなければ、取締りもできぬじゃないか。そんな者はいないのだというのは、これは理屈であります。いたらどうするかという問題であります。そういうふうに解釈できるんじゃないかと思います。
  82. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。そのような場合があれば、医師がもうかっているのです。というのは、たとえば野澤医師のところで見てもらって処方せんをもらった患者が、その次に今度は八田医師のところに行って、見て調剤してもらう場合に、八田医師は当然何がしかの規定診察料も取りましょうし、何も取りましょうから、医者はもうかるし、患者は非常に損をするのです。そんなばかなことは、患者はしないと思うのです。それから、かりにあったらどうするか。なるほど、それはピンからキリまであるのでありまして、どこの社会にも不徳義な者もおりましょうから、考えられないけれども、あり得るかもしれません。あった場合には、先ほど大橋委員のおっしゃいました通り、やはりこれに対する刑罰は、多少そのあとに加えた方がいいと考えております。
  83. 野澤清人

    野澤委員 根本の理念からして相反しておるのですから、これは幾ら議論しても始まりませんが、大体こういう規定を出すこと自体が横暴だと思うのです。限定された調剤能力ということを、歴史的に附則でもって認めてこられたものが、今度は本則に入って、ひさしを貸しておもやを取られるどころではないのです、全く家の中から追い出されてしまって、医師にいわゆる調剤権というものが全般的に国家的に容認されるという結果になるのでありますから、これは医薬兼業の基本を条文に表わした、また医薬分業の絶対否認であるということがはっきりするわけであります。しかも、こういうことをしても何ら罰則も適用されない。先ほどの大橋委員の質問に対しまして、多少の罰則は仕方がないじゃないかということは、少くとも罰則を適用するということは、限定されたもののうち外において罰則の適用なら理屈が合うのであります。ところが、こうして原則的に医師歯科医師あるいは獣医師というものが、薬剤師と同格に本則においてきめられた以上は、どんな場所であっても、この二十五条の二にたとい違反したとしても、おそらく裁判所に行きましてもこれは係争にならない。要するに、訴えをした者が負けるという基本的な条文になるのではないか、このように心配しておるわけであります。従って、この条文については、提案者といたしましても、あらゆる角度から再考を願いまして——薬剤師の本業というものが調剤ばかりでないからいいじゃないか、こういう御議論でありますが、これは医薬分業を一貫して行おうということの基本線とは、全くかけ離れておる。従って、最初にお二人にお尋ねいたしまして、今度の改正案分業を暫定的にでも実施する目的で立案した事柄とは、根底から全く相反するものと断定してさしつかえないと思うのであります。こういう事柄を、私はいわゆる社会悪だと思うのです。しかも国会において、すでに三年前にこうした改正法というものが、しかも医師歯科医師あるいは薬剤師会というような各種の代表者によって話し合いが進められ、ここまで分業の——いわゆる分業法と言うておりますが、私再三申し上げます通りに完全分業ではない。全くこれは任意分業の変形でありまして、決して法律によって強制されるほど強力な分業でないと私は考えております。こういう法律が今日せっかくでき上ったにもかかわらず、さらにこれを逆行させ、しかもまた薬剤師の本業を根底からくつがえすような法律の立案というものは、時代錯誤もはなはだしいと思うのであります。それを提案者といたしましては得得然として、要するに調剤権があるのだから明文化していいじゃないか。しかも一昨日の私の質問に対して、大石君は、調剤能力調剤行為に対しては、多少薬剤師医師とでは違うところがあるのだ、こういうことを言われております。違うことを認めていながら、同じにしようという論拠はないと思います。こうした点について良識ある医師の身分でおられるお二人の方々でありますから、提案する以上は、それ相当の理由がなければならない。ところが、理論的な根拠もなしに、ただ、従来慣習で調剤ができたのだから同格に扱っていいじゃないかということは、全く暴力ざたであり、策謀である、私はかように考えますが、この点に関してもう一度大石君なり、加藤先生なりの御見解を拝聴したいと思います。
  84. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 われわれは説明答弁が下手でございましたけれども、とにかく野澤君の御質疑には、しばしば答えたことでございまして、繰り返すようでございますが、私どもは先般も申し上げた通りに、文化が進み科学が進歩すれば、分業になるのが当然であると思うのであります。しかし、これは実情に即していかなければならぬということを、しばしば申したのであります。それで二百四十四号が、先般三年か四年前に法律になった。これは、私どもの見るところによりますれば、少し進み過ぎたものであると思います。あなたは常に、策謀であるとかいろいろな言葉をお使いになる。その形容詞は一切抜きますが、とにかくあの当時の事情として、圧力が加わった占領治下の法律でありまして、前進すべきものが一歩も二歩も大足に歩きましたために、これをわれわれは現在の国情に沿うように引き直そうとするのであります。時代逆行ということを仰せになる形容詞は御自由でありますが、私どもはこれが前進の制度であり、われわれは終始国民全体の幸福、健康、保健ということの上に立って、実情に即して国民が便利で安心ができ、どちらが安価に上るかという国民の見地に立ってやっておるのでありまして、私が医者であり、あなたは薬剤師であるという立場ではないでございましょうが、私が医者である立場から言うのではありません、たまたま医学に少しぐらいの知識がございますがゆえに、しろうとのお方よりはよくわかるであろう——わかっておらぬかもしれませんが、そう自負いたしておりますがゆえに、これをやるのであります。先般来、この法律がいまだ実施せざるに先だってこれを改正されんとするのは何ごとであるというような御議論もあるのでございますが、ストーブのそばに子供が遊んでいるときに、そばに行くとやけどをするといって——あるいはやけどをさせてから熱いということを知らせるのも手であるかもしれませんが、すでにわかっておりますれば、これを予防するのが私は賢明な議会人のなすことであると思います。実施せざるに先だってという御議論、これも一つの見方でありますが、すでに欠陥があるということが明確にわかりますれば、高邁な見識において、皆様がこれを前もってそこに至らぬようになさるのが、国民に親切なことであり、われわれの当然の務めであるというように、はなはだ失礼でございますが感じておるような次第でございます。  そこで処方せんの問題でございますが、お前らは空のようなことを言うということであれば、それは失礼でありますが、むしろあなたの方にその言葉は返上いたしたいと思うのであります。そういう筆法からいたしますれば、現実の問題を申し上げなければならぬと思います。二十二条の処方せんの問題を、現実の問題として皆様に訴えてみたいと思う。たとえば、ここに外科医がおりまして、手術をいたします。その前に注射もいたします、麻酔も施します、腹も切ります、あるいは胃とか心臓などに対して重大なる処置をしてこの手術を終ります。その際、注射もいたしますし、あらゆることをやりますが、最後にその者があるいは渇を訴え、あるいはどうかすると口から入れる薬が必要になることもあります。そのときに、これが病院であったらよろしいのでありますが、個人の家でも、りっぱに処置することがありまして、薬剤師がいないところもあります。そのわずかな薬、あるいはブドウ酒を盛るときもあるし、あるいは何か清涼剤を盛るときもある、その処方をどこかに持って回らなければならぬというような迂遠なことが、一体医者の責任としてできることでございましょうか。身命を賭しての重大なる処置をやって、最後に少しぐらいの薬を飲ませるときに処方せんを出さなければならぬということは、まるっきり形式にとらわれた議論であると思うのであります。  ことに、先刻来の二十五条の問題でありますが、これは大石君よりお述べになりましたごとく、また私も実情から申しましたごとく、かようなことは、私ども医者の常識として、自負心を持っておる医者においては、さようなことは信じられぬのであります。むしろそういうことを仰せられればあるいは逆襲するようで、はなはだ失礼でお許しを願いたいのでありますが、医学上の治療上の知識のない薬剤師の方が、無診投薬と申しますか、診察せずしていろいろ調合なさるということは、私は現行薬事法において、これは一体何だと思っておるくらいでございます。二百四十四号におきましては、医者処方せんによらざれば薬を調合することができぬとあるのでありまして、これは当然なことであります。これをわれわれはひどく言うのではないのでありますが、これと一体どちらが保健衛生の上において重大なる問題であるのでございますか。私は逆襲するつもりはありませんが、少しく実情を申し上げた次第でありまして、二百四十四号において、医者処方せんによらずんば調剤することができぬとあるのは当然でありまして−私は法律はよくわかりませんが、現行薬事法には、先刻もお話がありましたごとく、その罰則がないのでございます。  それから薬剤師のことは、先刻も申しましたが、薬剤師とは何であるか、法律が明確に規定してあるのでありまして、あなた方非常に深遠な御学問をなさいましたが、調剤というものも、その一つの部分にすぎぬのであります。これはあえて逆襲するつもりではございませんが、少しく実情を申し上げまして、われわれはこの法案はきわめて実情に適するものであって、時代に逆行するとか、封建思想であるとか先般仰せになりましたが、そういうことではないのでありまして、これがわが国情に最も沿い、保健衛生の上において、われわれとしてはきわめて適切なものと確信して提案いたした次第でございます。
  85. 野澤清人

    野澤委員 たびたび高邁な御高見を拝聴しますが、私自身から見ると、実にありがたい御宣託のようでありますけれども、長い御談義は、私の質問した事項とは全く方向違いでありまして、故意に薬剤師を悪く言うような加藤先生の良識でもないと思いますので、一言申し上げておきますが、やけどの引例で、いまだ実施にもならない法律改正するということについて、だいぶんこだわっておるようであります。私は三日間にわたって質問をいたしておりますが、いまだ実施しない法律改正する根拠についての追及は、私はいたしておりません。むしろ今度の改正案についての逐条の質問をあなた方にしております。それをことさらに大先輩である加藤先生が、やけどの例まで持ち出されて、実施しないうちに改正するということの御説明をされておるということは、内心行き過ぎた改正案を出したというあなた自身の良心を、ここに披渡したものだと私は思うのであります。これは論議の余地がない。要するに、医師の立場から自分は審議しているのではない、国会議員の立場からだということを言われておりますし、また私が時代逆行であるとか横暴であるとかいうことの話をしたことについては、後刻ゆっくりその原因についてお尋ねを申し上げます。  そこで、私自身は、こうした無謀な法案がなぜ生まれなければならなかったかということについて御質問いたしたのでありまして、それと同格に扱った事柄について、提案者としては、それが一番合理的な現状に即した正しい行き方だということは、見解の相違でやむを得ませんが、お二方にお尋ねしたいのは、もしも二百四十四号という法律が実際に施行された場合、直接影響を受けるのはだれかということであります。それから医療担当者である医師への影響が多いことも、社会通念として当然だと思いますけれども、それ以外にあらゆる面を考えてみて、直接国民に影響する点は、どういうところにあるかということの御見解をお聞きしたいと思います。
  86. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。私は来年四月からの法律が実施されれば、一番困るのはやはり国民であると思います。たとえば、一々省令できめられて一例をあげますれば、手術後、渇を訴えた場合にも、一々処方せんを持って薬剤師のところまで行かなければならぬということは、やはりこれは相当不便だろうと思います。このような事例がたくさん中で出て参ると思います。それから医者も困ると思います。医者も不便であると思います。これは私は何も一医者の業権を擁護するというのじゃなくて、ほんとうの医療というのは、すべての国民の医療を担当する者が、ほんとうに情熱を傾けて、愛情を持ってこれを行うのでなかったならば、ほんとうに国民に対する正しい医療というものは行われないと思うのであります。もし医者が不満であり、不便であって、ほんとうに医療に情熱を傾けることができなかったならば、医者の存在はありません。それ以外にもっと大きなものは、国民の医療に対する低下でございます。この意味から申しまして、私はどうしても日本のすべての医者が喜んでこれに協力し得るような方針でなければ、やはりこれは片手落ちの法案だと思います。  それから、念のため申し上げておきますが、昭和二十六年にこの来年度から実施の法律ができましたときに、私は国会議員をし、厚生委員をいたしておりまして、その法案の作成に参加いたしております。その場合に、これは決して医師薬剤師みな当時納得したのでございません。非常な不満があり、私どもは極力その不当をなじりまして、アメリカの総司令部に出て行きました。当時、日本の法律を制定する場合には、われわれに主権はなくて、アメリカの総司令部の許可を得なければならぬ、いわゆるオーケーをもらわなければ、絶対に国会提出することはできませんでした。私たちは、何回も総司令部、ことにサムス準将のもとに足を運びましてその不当をなじり、この法律の制定に極力反対いたしましたが、どうしてもいれられず、一蹴されまして、心ならずもこのような法案が作られたのでございまして、決して私どもが当時納得してできたもの、日本の実情に適した法律だと思って制定したものでございませんから、念のために申し上げておきます。
  87. 中村三之丞

    中村委員長 それでは午前中はこの程度にとどめまして、午後二時半まで休憩いたします。    午後零時二十三分休憩      —————・—————    午後三時三十七分開議
  88. 中村三之丞

    中村委員長 休憩前に引き続きまして再開いたします。  この際小委員補欠選任についてお諮りいたします。去る十一日横井太郎君が委員を辞任せられましたのに伴い、医療機関に関する小委員に欠員を生じましたので、その補欠選任を行いたいと存じますが、再び横井太郎君が委員に選任されておりますので、同君を委員長より指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
  90. 中村三之丞

    中村委員長 次に、内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案を議題となし、審査を進めます。  本案についての質疑はすでに終了しておると存じますが、本案についての質疑は終了したものと認めるに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 中村三之丞

    中村委員長 御異議ないと認め、そのように決します。  ただいままでに委員長の手元に各派共同提出にかかる本案に対する修正案提出されております。この際提出者より趣旨説明を求めます。山下春江君。     —————————————
  92. 山下春江

    ○山下(春)委員 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案に対する修正案に対し、各派を代表いたしまして、提案理由説明を申し上げます。  戦没者遺家族、戦傷病者、老齢旧軍人は、過ぐる太平洋戦争の犠牲者中、最も気の毒な人たちであります。もちろん第二次大戦の戦火は、程度の差こそあれ、戦闘員、非戦闘員の別なく、全国民に何らかの形において打撃を与えておりますが、肉親を戦場に失った人々、完全なる身体の機能を喪失した人々、生涯の大半を軍務にささげ尽した人々は、かつての国家権力、公的権力によって直接戦争の犠牲となった人人でありますから、他の一般戦争犠牲者とは異なった角度から国家の補償を受くべき性質の人々であります。言いかえますれば、これらの人々は、国家権力の制約を受け、軍務を遂行して倒れた方々の肉親であります。与えられた任務に服して傷つき、病に冒された人々であります。これらの人々を戦争犠牲者中の犠牲者として、第一義的に取り扱わなければならないゆえんも、ここにあると思うのであります。従いまして、民主国家として再出発した日本が、これらの人々に対してその処遇を厚くすることは、全国民がこうむった被害に対し、国として間接的ながら遺憾の意を表する行為にも通じますし、ひいては二百万戦没者の英霊を慰め奉る精神にもつながるものと信じて疑いません。援護法の制定も恩給法の一部改正も、私はこの精神を基盤としてなされたものと考えております。しかし、現在行われております援護法並びに恩給法による国家としての補償はなお多くの点で改正すべき要素を残しております。  その第一点は、戦没者の死亡原因に関する認定基準であります。従来、恩給法にいう公務傷病とは、軍の医療設備が完備し、衛生材料の補給も円滑に行われ、軍医官等もそれぞれ専門の部門につき、軍人や軍属が傷を受け、病に冒されても、急速にしかも適切な医療処置が講じられるという大きな前提に立って判定されたように承知しております。しかるに、今次の大戦では、戦線が広範囲にわたり、戦地の気候風土も千差万別であり、戦闘期間も四年の、長きにわたっております。ことに戦争の末期においては、兵站ルートの多くは麻痺し、衛生材料は欠乏し、専門医官が不足し、適切な医療処置が講ぜられた戦域はごくまれであったと断言できます。これに加うるに、動員兵力が増大するにつれ、本来ならば過激な軍務、ことに強靱なる体力を必要とする戦闘勤務にはとうてい、応じられないような、いわゆる弱兵まで多く召集され、第一線に送り出されたのであります。この二つの要素、すなわち従来の恩給法が想定していた戦没規模をはるかに越えた戦闘形態と、大量動員された水準以下の虚弱者との二つを背景に、国家補償のあり方を考えますと、恩給法上の公務傷病も、それを起点とした援護法上の公務傷病も、その認定基準において、太平洋戦争の実態にそぐわない点が多々あると思います。以上が修正を要する第一点であります。  次は、戦没者の身分についてであります。現在援護法におきましては、旧国家総動員法に基いて徴用され、または総動員等軍務に協力させられた者及び旧陸海軍の要請に基いて戦闘に参加、協力して死没した方々の遺族に弔慰金三万円を支給することになっておりますが、法的にこれらの範疇に入れられる戦没者の実態をしさいに検討いたしますとき、三万円の弔慰措置が果して当を得たものであるかどうか、疑いの念を禁じ得ません。一、二の例をあげますと、沖縄の戦闘では、数千の青少年学徒が、あるいは勤皇鉄血隊員とし、あるいは通信隊員とし、あるいは看護婦として戦死しております。また旧満州国の開拓任務を帯びて大陸に渡った人々の中に、開拓少年義勇隊と申す開拓訓練隊がありましたが、終戦時約二万二千五百を数えたこれらの少年義勇隊員中、三千余名が悲壮な最期を遂げております。さらに全員玉砕のサイパンでは、いたいけな小学生が通信隊の連絡要員となって、熾烈な十字砲火の中をかけ、任務を遂行し、あたら春秋に富む若い命を南海の島々に失っております。さらにまた、旧国家総動員法に基く学徒協力令により、軍の直轄工場、監督工場等には多くの青少年学徒が動員され、勤務中空襲等により死没しております。その数はいまだ正確には把握しておりませんが、すでに弔慰金三万円の裁定を行なった件数だけでも二千四、五百件と推定されます。その他、戦地、非戦地の別なく多くの青少年が動員され、少からざる戦没者を出していると考えられますが、これらの戦没青少年に対する補償措置は、決して満足すべき段階に達しておりません。弔慰金三万円の当否はしばらくおくといたしまして、まず考うべきは、彼らの身分をどう扱うかという問題であります。沖縄の戦没学徒にしろ、満州の少年義勇隊員にしろ、学徒協力令による動員学徒にしろ、彼らの服した勤務の内容、身分上の拘束度等は、援護法にいう有給軍属とは差別のつけられない場合が多かったと考えられます。私は彼らの身分を直ちに有給軍属のワク内、もしくは正規軍人の資格内に引き入れよと申すものではありませんが、彼らの純粋な愛国心と、洋洋たる前途を軍務にささげた事実とをあわせ考えるとき、再度国家補償の出発点に立ち返り、彼らの身分に再検討を加え、その基底に立って彼らへの補償を立て直すべきだと信ずるものであります。  身分上の取扱いについて次に考うべきは、いわゆる無給軍属の処置であります。彼らの多くは、その勤務内容において、全く戦地勤務の軍属でありながら、給与の支払者が民間企業体であったため、戦闘行為に倒れたにもかかわらず、法の対象外に置かれております。南方の軍報道業務に従事した報道班員、南方進出企業の従業員、大陸の国策事業会社の従業員等がそれであります。その他、有給軍属以外の戦務協力者で、身分の取扱い上再考を要すべき者が少くありません。以上が修正を要する第二点であります。次は、法にいう戦地規定の適否についてであります。およそ戦地という概念は、その反対概念として、内地もしくは非戦地、つまり交戦による戦火が直接的にも間接的にも及ばない地域というものを持っているはずであります。従来の恩給法並びにそれを基盤とした援護法は、このように画然と区別できる二つの地域を想定し、その一つを戦地として補償体系を立てたものと考えられます。こうした地域別による補償の差は、日清戦争日露戦争、第一次大戦、日支事変、太平洋戦争の初期においては、一応の妥当性を有してはおりましたが、太平洋戦争中期以後、特にサイパン陥落後の戦局におきましては、戦地、非戦地の別を定める区分基準は、非常にあいまいになったと断言できます。内地は敵機のじゅうりんにゆだねられました。日本本土沿岸海域にも戦雲が立ち込めました。このような戦局下にあっては、戦地、非戦地の別による条件差は、きわめて接近したと申さねばなりません。たとい、百歩を譲って、戦地という概念の中には、内地を離れたという精神的な重圧、海を隔てて肉親と相離れているという感情的な苦痛が含まれているとする一部の主張を容認したといたしましても、それなら戦争末期の台湾や朝鮮を、何ゆえに戦地としないかとの疑問がわいて参ります。今次の大戦におきましては、すべての日本人が戦火に見舞われ、すべての同胞が物心両面において大きな打撃を受けました。激闘の繰り広げられた戦域も、北はアリューシャン、南は豪州、東はハワイ、西はインドにまで及んでおります。従いまして、現行援護法に規定された戦地には、根本的に改正のメスを加える必要があると考えられます。私はこの際、法に定められた戦地規定は、原則としてこれを削除し、国家権力が個人に対し、勤務の内容、身分の拘束度について、どのような強制力を及ぼしたかという点にこそ、国家補償の出発点を置くべきだと信ずるものであります。これが修正を要する第三点であります。  最後は、戦没者遺族の範囲についてであります。現行援護法は、大体において新民法を基礎に遺族の範囲を定めてはおりますが、なお実情に即さない点が少くありません。一例をあげますと、再婚関係に入った戦没者の妻には遺族年金の受給権が認められておりませんが、これらの女性は、夫を戦野に失い、国家のあらゆる処遇を停止され戦後の混乱期にほうり出された気の毒な方々であります。彼女らの多くは、再婚関係に入らない限り、人間としての生きる権利すら放棄しなければならない状態に追い込まれたのであります。かつてもてはやされた靖国の妻という誇りを捨て、あえて再婚するまでには、筆舌に尽しがたい辛酸をなめた はずであります。もし国家か国家の名において補償を継続し、憲法に規定する文化生活を彼女らに保障していたならば、あえて年金受給権を失う行動は取らなかったと断言できます。私は、再婚関係に入り、現在において不足ない生活を営む方々にも年金を与えよと申すものではありませんが、少くとも一定期間内に再婚解消した未亡人には、当然国としての補償をなすべきだと、主張するものであります。現に恩給法においては、昭和二十八年度の敏正により、戦没者の父母は、氏を改めない限り、配偶者を迎えても失権しないとの規定を設けました。これは戦没者の妻であり、あれは戦没者の父母であるとの違いはありますか、もし再婚という男女関係をもって受給権喪失の動かしがたい理由といたしますならば、このような恩給法上の改正は不可能だったはずであります。女なるゆえに、妻なるゆえに彼女らに課せられた失格規定は、旧民法時代の家の制度と、夫を国家にささげた場合は国家が十分なる補償を行うという前提に立っていたものと考えられます。敗戦はこの制度を崩壊せしめ、この補償を中断いたしました。その間にこうむった損失と打撃については、国として何らの責任も取らず、ひとりか弱い戦争未亡人にのみその責任を追及するのは、道義の名においても許せない措置だと申さなければなりません。その他未認知の子、事実上養親子と同一関係にあった親、または子についても補償の道を開くべきであります。憲法改正による家族制度の廃止、終戦後の社会事情、経済事情、戦後七年にわたる国家補償の一切の停止、これらの諸条件を考え合せ、法に定める遺族の範囲はさらに拡大すべき要があると考えられます。これが修正をいたしたい第四点であります。  以上公務の認定基準、公務員の身分・戦地、非戦地の別、遺族の範囲に関し、修正すべき論拠を述べましたが、国家財政の現状を勘案いたしますとき、補償の実施に当っては、なお少からざる制約もやむを得ないと考えられます。しかしながら、技術的な面から諸種の制肘を加える以前に、私たちとして深く考うべきは、今次の大戦は、旧来の恩給法等が想定していた戦域、戦闘形態の限界をはるかに越えていたこと、国民総ぐるみの抗戦が展開されたこと、長期にわたる戦闘の後、むざんな敗北を喫したこと、そして軍人、軍属及びその遺族に対し、ほとんど全面的に補償が停止され、しかもその期間が七年の長きにわたったこと等であります。これらは、私たち日本人としては、かつて経験しなかった大きな悲劇であり、その処理には、国力のすべてを傾けるべき性質のものであります。従いまして、その第一条に「国家補償の精神に基き、軍人、軍属であった者又はこれらの者の遺族を援護することを目的とする。」とうたってある援護法におきましては、従来の補償技術にとらわれることなく、自由にして、実情に即したおおらかな精神に立ち、少くとも歴史に悔いを残さない心がまえをもって、申しました四点につぎ抜本的な改善を加うべきであろうと信じます。しかも補償に要する経費は、ここ二、三年のうちには激減すべき必然性を有しておりますから、国に殉ずるとはいかなるものであり、これに報いる国家の補償とはいかなるものであるかを全国民に認識せしめ、もって国家再建の精神的基盤を確立するのもここ一、二年の間にかかっております。  これらの諸点を背景に、以下援護法に対する修正案の各項について御説明を申し上げます。  その第一点は、遺族年金の増額、公務扶助料の増額に伴い、援護法の適用を受ける遺族に対する年金を三万五千二百四十五円に増額いたしました。ただし、昭和三十年十月分から昭和三十一年六月分までは三万一千五円といたしました。  その第二点は、公務先の範囲拡大であります。軍人及び準軍人については、故意または重大な過失によって負傷し、または疾病にかかったことが明らかでないときは、公務による負傷または疾病とみなすことでございます。ただし勅令第六十八号による恩給停止以前にすでに恩給権の裁定を受けた者につきましては、援護審査会の議決を必要といたしております。  第三は、軍属については戦時災害の要件をはずし、単に公務上の負傷または疾病のみを要件といたしました。  第四点は、満州開拓青年義勇隊の隊員に対する弔慰金の支給であります。満州開拓青年義勇隊の隊員が、昭和二十年八月九日以後、業務上負傷し、または疾病にかかり、その負傷または疾病が原因で死亡したときは、その遺族に対し弔慰金を支給することといたしました。  第五点は、養子でなくなった者の遺族年金の受給権復活の範囲拡大であります。昭和三十年六月三十日までに離縁または縁組みの取り消しにより養子でなくなった配偶者、子及び孫について遺族年金の受給権を与えることといたしました。  第六点は、戦犯として拘禁中死亡した者についての遺族年金、弔慰金の支給の適正化であります。巣鴨に拘禁中死亡した者についても、厚生大臣が公務による負傷または疾病により死亡したものと同視することを相当と認めたことを、遺族年金及び弔慰金支給の要件といたしたのであります。  以上が改正の要点でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
  93. 中村三之丞

    中村委員長 以上で説明は終りました。  この際、厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許可いたします。川崎厚生大臣。
  94. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま御提案になりました修正案の中には、厚生当局が今回原案を提出した気持とは、やや異なるものもありますが、予算修正の際おおむね了解をいたしたことでありまするし、この段階におきましてはほぼ妥当と認められますので、修正案のように御決定になりますれば、それに従って善処いたすつもりでございます。(拍手)
  95. 中村三之丞

    中村委員長 次に、ただいまの修正案趣旨弁明並びに厚生大臣の発言に対しての御発言はございませんか。  それでは戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案並びに本案に対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、両案につきましては討論の通告もございませんので、これを省略し、直ちに採決に入るに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  採決いたします。まず各派共同提出修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を願います。     〔総員起立〕
  97. 中村三之丞

    中村委員長 起立総員。よって本修正案は可決せられました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。本部分を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立〕
  98. 中村三之丞

    中村委員長 起立総員。よって本部分は原案の通り可決せられ、本案修正議決すべきものと決しました。(拍手)  なお本案に関する委員会の報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
  100. 中村三之丞

    中村委員長 次に医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を継続いたします。野澤清人君。
  101. 野澤清人

    野澤委員 午前に引き続いて質問を継続いたします。  提案者に、医薬分業が実施された場合に、直接影響を受けるのは、国民にとってどういう場合だという御質問をいたしたのでありますが、そのお答えとしては、はなはだ満足し得ない状態でありますので、あらためて、医薬分業が実施された場合に、その医療担当者である医師への影響が大きいことはすでに明らかであります。この医師への影響ということが、直接国民の医療制度の上にどう影響するか。たとえて申し上げますと、自由開業医の自由診断と、あるいは保険診療等における面と、どちらに医薬分業が直接影響がいくか、こういうことのお尋ねをしたのでありますが、午前中のお答えでは、全く見当違いのお答えが出たのであります。そこで、いつの場合でも、お医者さんの立場とか、あるいは薬剤師の立場というようなことから議論されますために、あたかも一般国民は、医師薬剤師の米びつ争いであるかのごとき感を、この分業問題について感じておるのでありまして、今回のような法案提出等に関しても、一般国民はかなり行き過ぎた思い過ごしをする場合があると思います。少くとも昭和二十六年に成立いたしました、いわゆる分業法と称する法律二百四十四号は、決して医師薬剤師の経済闘争の成果でもなければ、これによって薬剤師の収入が増加したり、あるいは医師実質収入が削減されるというようなことはないのであります。ただ、多年それぞれの分野において分科課程をたどった医学、薬学の学問の分野から、それぞれ国家免許を与えられた医師薬剤師の立場を技術的に尊重する法的措置を講じたものでありまして、何人も、この自然な医薬の分業形式は、当然の結果であると賛成せざるを得ない事柄であると思うのであります。ことに、世界中、強制あるいは任意というようなことも言われておりますが、現在世界中で分業形態をとっておらないのは、日本とエチオピオだけであるとまで言われております。ことにおのおのが専門分科課程において、それぞれの技術を生かし、社会に貢献することが正しい学問のあり方であり、この分業の法則に従って、社会制度を逐次確立して、理想的な医療制度の完璧を期待することが、最も正しい行き方でもあり、結論でもあると思います。しかるに、四十有余年間反対し続けた医師側の態度は、相当高度な学問をした、いわゆる社会の最上層部に位するインテリであるにもかかわらず、この分業問題に関する限りは、全く先ほども加藤先生から、そんなことはないというおしかりをこうむりましたが、陰謀や術策にひとしいことをあえてしている、ほとんど暴挙にもひとしいものであると私は思います。集団的な医師の横暴こそ、独立日本の嘆きの材料でもあると思います。そこで、分業法が明年四月一日から実施された場合に、直接国民に影響をもたらすものは、むしろ社会保険関係でありまして、現行の社会保険医療における薬物の投与に関しては、分業形態に入った場合と、現在のままとを比較した場合に、どういう結果をもたらすかという大きな問題になると思います。特に法律二百四十四号をそのまま実施した場合には、必ず社会保険の医療の保険経済に相当の影響があるとわれわれは考えております。ことに、昨今のように、健康保険の赤字問題を中心にして、いわゆる保険財政の根本対策の一助として、この分業がもし実施されるならば、赤字解消の要因にもなることはもちろんでありますし、また医療内容そのものが公開されて、患者も、医師も、薬剤師も、また保険団体等においても、正確な医療費の算定が実際上行われるという結果を招来いたしますがゆえに、私は、この分業法案を実際に正しい社会制度の上に適応させなければならぬと考えます。  ところが、この問題につきましては、すでに昨年の国会に諮られましたいわゆる新医療費体系という問題があります。この新医療費体系を基礎にして、分業とこの新医療費体系を不可の形においてこれを実施しよう。物の対価と技術料とを分離して、最も合理的な医療費算定の基礎を確立すべく、相当の調査費も政府においては予算化して、これが作業を継続しているのであります。かようなときにおいて、万一今度の提案のような法律が通過することになりますと、せっかく社会保険経済の上において明るい見通しのつきました新医療費体系の適用や、あるいは分業制度の活用が、かなり変革されるのではないか、かような面からいたしまして、提案者にお尋ねいたしましても、この点については、さほど注意をされていないようでありますので、政府委員である保険局長にお尋ねをいたしたいと思います。つまり今度の改正法案のようなものが生まれてしまうと、せっかく予算を組んで準備されている新医療費体系はどうなるかということであります。少くとも医薬分業が実施されて、国家、国民の上に直接影響をもたらす部面といたしますと、地域の問題は別といたしましても、社会保険の上に大きな影響を来たすものである、こういう考え方から、今後政府の方で作業を続けていられる新医療費体系と分業法案との関係について、政府の所見を伺いたいと思います。
  102. 久下勝次

    ○久下政府委員 途中で参りましたものですから、あるいは御質問を取り違えているかもしれませんが、新医療費体系そのものにつきましては、私がお答えをする立場にございません。御案内の通り医務局長の担当になっております。ただ保険との関係につきましては、新医療費体系に基く新しい点数表の関連におきまして、表裏一体の点数表が出て参ります関係がございますので、そういう意味で申し上げたいと思います。  新医療費体系につきましては、ただいま御指摘のように、政府においては具体的な調査を進め、この調査に基いて、国会で御指摘のありました昨年の新医療費体系の再検討をいたす予定でございまして、ただいまの段階は、調査が進行中でございます。内部でいろいろ打ち合せをしております見込みといたしましては、大体九月ごろに新医療費体系の再検討を終るような見込みでやっておるのでございます。それと並行いたしまして、私どもとしては、点数表の問題を考えていくべきものと考えておる次第であります。  そこで、御質問の要点は、今度提案になって審議されている法律案と新医療費体系の関係はどうかということであろうと思いますが、私実はまだ正確に検討しておらないのであります。提案者もおっしゃっておりますように、処方せんの発行される可能性が多くなるということでありますれば、私どもとしては、現在の点数表のままでは適当でないと思っておりますので、合理的に考えていくべきだ、その際には当然単なる処方せん料だけの問題でなしに、新医療費体系のような考え方で新しい点数表を決定いたすべきだというふうに考えておるのでございます。問題は、この改正案がかりに通過をしたと仮定いたしまして、その場合に、そういう制度のもとにおきまして、処方せんの発行が現状と変らないという見通しであるか、あるいは相当な変化を来たすという見通しであるか、この辺におそらくかかってくると思うのであります。くどいようでございますが、この改正案のような形が成立いたしました場合でも、なお現状と変った処方せんの発行が非常にひんぱんに行われるようになるという見通しでありますれば、やはり新医療費体系は当然必然にやらなければなるまいと思います。なお、これは私見にわたりますけれども、医療費の支払い制度につきまして、従来から現行の制度がいろいろ批判されておるのでございまして、これには根本的な検討も必要でございますが、また新医療費体系のような考え方を、医療費の支払いの中に取り上げていくということは、これは分業問題を離れましても、一つの重要な研究課題であるというふうに考えまして、その意味も含めまして、実は検討を進めておるような次第でございます。
  103. 野澤清人

    野澤委員 わざわざ保険局長にお尋ねしたということは、この医薬分業と不可分の関係にあります新医療費体系の採用という問題が昨年から起きまして、昨年のいわゆる分業法案が一年三カ月延期された要因も、この新医療費体系にあったわけであります。ところが、実際に新医療費体系をこの分業形態の上に採用した場合に、直接国民と影響のあるものは保険経済だけじゃないか、一般の自由診療等にまで、あの新医療費体系を適用するというわけにはおそらく参らないという観点からしますと、保険経済と密接不可分の関係にこの新医療費体系があるのだ、しかもその新医療費体系の操作をするために相当の予算を政府は取って、薬務局の方でも分担をしていろいろな調査資料等も集め、また医務局の方でもこれらの操作について相当の努力を払われているということはわかっております。しかし結果的に見て新医療費体系が実施された場合には、ほとんど大部分は保険経済に影響のあるものだ。こういう観点からすると、この分業法と不可分の関係にあるという建前で新医療費体系を現在検討中で、しかも分業法案そのものの内容が百八十度転換してしまった場合には、この操作を続けていっても何にもならぬ。  そこで、お伺いしたいことは、新医療費体系というものが何ら意味がなくなったにもかかわらず、作業を継続するということになっては意味もない。けれども、保険経済のあり方から見て、どうしても新しい考え方でものの対価と技術の対価というものが画然と区分されるような計算のあり方が、おそらく国民もまた政府においても望ましい姿じゃないか。こういう点から見ますと、かかって医薬分業の論点は保険経済に直接影響をもたらすものじゃないか、こういうことをお尋ね申し上げたわけであります。従って、分業法案がどうなろうとも、新医療費体系を実施するという腹であれば、これは別問題でありますが、分業法案がつぶれてしまえば、新医療費体系は採用されないのかどうか。この可分不可分の論は、昨年の国会において十分尽されたと思うのです。現在こうした議員提出で変った内容法律提出されたのでありますが、保険局長としては、今後の医務局あるいは薬務局との作業の継続として新医療費体系が生まれた場合に、これをどういう形で実施するお考えか、あるいはまた分業法案が骨抜きになってしまえば、これも捨てるというお考えか、この辺のところをお尋ね申し上げておるわけです。
  104. 久下勝次

    ○久下政府委員 先ほど私はただいま御質問の問題に触れましては、私見として申し上げたのでございます。御指摘のように、医療費の支払いの体系をものの対価と技術の対価とに分けて支払いをするという方向につきましては、その内容の決定は別といたしまして、そういう方向につきましては、多くの方面に御異論のないところであろうと思うのであります。そういう意味合いから考えますと、医薬分業をやれば新医療費体系、少くとも昨年も一般に発表いたしましたような形における新医療費体系はどうしてもやらなければなるまいと考えております。しかしながら、逆に、同じ不可分とは申しなが、新医療費体系がそれとは別に先行してやっては悪いかというような議論になりますれば、私の私見といたしましては、それが非常に合理的に新しい点数体系がきまっていきますならば、今申し上げた一般的な御批判にもこたえる意味におきまして、やってしかるべきものと考えております。ただ問題は、そうなりますと、単に昨年発表いたしましたような医薬分業実施に必要な部面だけの点数に手を入れるということでなくて、今の医療行為全般につきましてその指数を取り入れていくという必要がありますので、形もおのずから変ってこざるを得ない。分業と関係させて新医療費体系と申しますか、新点数表と申しますか、こういうものを考えます場合と、分業と関係なしにものの対価と技術の対価を分けて考えるという考え方を取り入れます場合には、おのずからその範囲におきまして大きな開きが生ぜざるを得ないのではないかという意味考えておるのでございます。厚生省全体の方針といたしましては、少くとも現在は、御承知の通り国会の議決を経て法律に基いて準備を進めておる段階でございますので、今分業が行われないということを前提に置いて、新医療費体系を分離した別の考え方でやるということは、まだ省としても、少くとも私は御相談にあずかっておりませんから、省としての意見を申し上げることはどうかと思いますが、今申し上げたようなことで御了承をいただけると思います。
  105. 野澤清人

    野澤委員 大体新医療費体系に対する政府の方針、考え方等も、これではっきりしたのでありますが、過般健康保険の問題その他について資料の提出をお願いしておって、一昨日また再要求しましたところが、社会保険医療担当者事故内容調というのが提出されました。また官公立病院診療所等監査結果表というのが出てきました。これは単なる保険診療に対する内容調査ということだけでなしに、今回の医師法歯科医師法薬事法等の罰則削除ということにも直接関係があると思いますので、この内容について一応局長から御説明を願いたいと思うのであります。
  106. 久下勝次

    ○久下政府委員 お手元に差し上げました資料は、実は先ほど詳細に検討いたしてみまして、御要望の点に全面的に触れてないきらいがございますので、足りません部分は、後ほど追加をいたすことにいたしますが、一応お配りをいたしました資料につきまして申し上げることにいたします。  ただいま御指摘のございました官公立病院診療所等監査結果表、こういうものが二枚刷りになって出ておるのでございます。昭和二十五年度以来昭和二十九年度までの実情を書いてございます。これは監査の対象になりましたそれぞれの年次の総数が実績数としてあがっております。そのうち処分の内容に応じまして契約解除、戒告、注意、未定、無事故というような工合に実績を一番上に各年次ごとにあげてございます。その下の経営主体別事故別%と申しますのは、それぞれの経営主体、つまり国立の病院につきまして、昭和二十五年には監査を十六ヵ所いたしております。そのうち戒告を受けましたものが七、注意を受けましたものが六、無事故が三という結果で、総数が十六になっております。これを百分率の比率で見ますと、戒告が四四%、注意が三八%、無事故が一八%、そういうふうにごらんをいただきたいのでございます。  事故別経営主体別%と申しますのは、二枚目の表の一番最後に計とありまして、そこの該当欄がそれぞれ一〇〇になっております。これは結局全体の国立、公立、法人立、その他と分類してございまして、さらに細分してございますが、それぞれのものにつきましての対象数、たとえば今の例で、国立病院については十六が対象になったということでありますが、それが全体の数からいうと二二%になっておるというふうにごらん願いたいと思います。それから戒告の数は、個々の区別に応じて各全部を一〇〇として、そのうち国立病院は七ヵ所戒告を受けております。それは全体の戒告数に比較すると一六%である、そういうふうに全体をごらんいただきたい資料でございます。  これはいずれにしても、官公立病院診療所等の監査結果表でありまして、私が先ほど申し上げたように、全体の監査の結果ではございませんので、後ほど全体の監査結果表をお手元に差し上げることにいたしたいと思います。  もう一つ、社会保険医療担当者事故内容調、これは指定取り消し処分を受けた者についてだけ、昭和二十九年度と二十八年度の実数をそれぞれ出しておるわけでありますが、簡単に御説明を申し上げます。  昭和二十九年度の欄をごらんいただきたいと思いますが、この場合、昭和二十九年度全体におきまして被監査請求明細書枚数、つまり監査の対象として問題にした請求明細書枚数が七千七百五枚というふうにごらんを願いたいと思います。それから同時に、こういう監査に当りましては、常に患者の実地調査をいたします。従って患者の実地調査をした数、つまり患者数が三千百九十三名であります。これは一般と歯科に分けて同様の数字が掲げてあります。その次に請求上、診療上、その他というふうに事故内容が区分してありますが、これは監査の対象となりまして問題となりました事故件数を、各請求書に一件ずつ拾い上げて集計をしたのであります。こまかい点は備考の注の中に書いてございますが、たとえば架空請求というのが全部で七百十二件、これは件数であります。ただし、これは同じ枚数に架空請求が二件ありますと、やはり二として上っておる数字であります。つけ増し請求が六百八十二件、そういうふうにごらんをいただきたいと思います。それから診療上の問題で、濃厚診療が三十五件、診乱療が四十八件というふうにごらんいただきたい。  そうすると、結局全体に対する比率はどうかと申しますと、事故の総計数二千百五十一件を一〇〇として、それぞれの内容の一〇〇に対する比率を見ると、架空請求が三三・一%、つけ増し請求が三一・七%というふうにごらんをいただいてもわかるように、請求上の事故のうち架空請求、つけ増し請求がほとんど過半数以上、六十数%、三分の二以上を占めておるということが、これについてごらんをいただけると思います。  その他の問題では、案外多いのが無診投薬でございます。これが比率からいいますと九%を占めておるわけであります。そういうふうに同一の請求書の中で、該当が二つ以上ありますものは、二として上っております。あるいは二以上として上っておるものでありまするから、たとえば歯科の場合が一四〇%というような百分比が出ているのは、そういう結果から出ている数字であります。歯科の場合におきましても、架空請求が最も多くの件数を占めておりまして、この傾向は昭和二十八年愛におきましても大体同様の傾向を示しております。  以上、簡単でございますが、これをもって説明にかえることにいたしますが、こういう資料を作りましたのは、厚生省の技官が地方の技官と一緒に立ち会って監査いたしましたものと、それから地方からそれぞれの内容について報告がございまするその報告書のつづりから、一つ一つ拾い上げて出した数字でございます。そういう意味で、これは多少急いで作ったものでございますから、若干の誤差はあろうかと思いますが、以上申し上げたようなことで御了承を願いたいと思います。
  107. 野澤清人

    野澤委員 そこで局長の方に伺いたいのですが、架空請求三三・一%とか、つけ増し請求三一・七%とありますけれども、これの内容について、たとえば治療方面で架空請求があるのか、薬物方面で架空請求があるのか、もしその比率がわかったら、お教え願いたいと思います。
  108. 久下勝次

    ○久下政府委員 その点までの細分はいたしておらないのでございまして、ただここで、請求上の事故で、架空請求とございまするのは、全然診療していないものを診療したと称して請求したものを架空請求と称しております。それからつけ増し請求というのは、注射を三本しかしていないものを、患者実調等で調べた結果五本と請求していたものはつけ増し請求、そういう観念で区別しております。多くの場合が薬物関係であろうと思いますけれども、この辺は実はもう一度精細に細分いたしませんと出て参りません。今日のところは御了承願います。
  109. 野澤清人

    野澤委員 これは非常に大事な要点だと思いますので、この内容について、もし分割してお示し願えたら、明後日でもけっこうですから、薬物によるものであるかどうかということの集計を一つ出してもらいたい。どうしても出ないということであればやむを得ませんが、出していただければ、薬物であるか、治療であるかという点が、つけ増し請求のところについても、架空請求のところについても、おそらく判然とするのではないかと思います。一応お願いしておきたいと思いますがいかがでございましょうか。
  110. 久下勝次

    ○久下政府委員 実はこれだけの資料を作るにつきましても、これは参議院の社会労働委員会の御要求に応じまして作らせたものでございますが、ごらんいただきますように七千七百枚の対象になった請求書を一つ一つ拾って作り上げたものであります。短時日の間にお話のようなことをやり直すためには、また全部にわたってひっくり返さなければならないのでありますし、先ほども申し上げましたように、手術を架空請求するというようなことは大体考えられませんので、大体投薬とか注射に関連したものが多いものというふうに御了承いただきまして、ごかんべんをいただきたいと思います。時間的にちょっと御要求には応じかねると思いますので、御容赦を願いたいと思います。
  111. 野澤清人

    野澤委員 どうも久下局長の方でだいぶ遠慮されているようですけれども、このくらいの枚数のものを調べるのに、そんなに時間をかせがなければできぬということはないと思います。七千七百五枚あっても、その中で架空請求が七百十二枚ということで、おそらくチェックか何かしてあると思いますから、それらのものをひっくり返して調べても、二日もあるならば一応の調べはできるわけでございます。ただ、今の御説明のように、ほとんど大半が薬物だという断定ならばよいが、おそらく断定できまいと思います。資料を提出された以上は、やはりその内容について正確にわれわれに示してもらうことが、今後のいろいろな法案審議上にも大きな資料になるのでありますから、どうしてもこの点については協力してもらいたいと思うのであります。それが二日ではできぬ、四日かかったらできるという限界があるならば、それを待ちますし、一応手はつけたが、七百十二件のうち二百件だけしかやらなかったが、その内容はこうだったということのお示しも誠意ある示し方だと思うのです。そういう作業について、それはもう未来永劫できないのだということは困りますけれども、おやりになる熱意があるならば、簡単に行くのではないかと私は思いますが、もう一度御考慮願いたいと思います。
  112. 久下勝次

    ○久下政府委員 私は率直に申し上げたのでございまして、時間的な制約がございますと、私は実際にこの資料を作っております実情をちょっと瞥見をしておりますけれども、それが整理いたしてございませんものですから、そういう事務担当者の処分報告書というものは、一括してつづってある大部の書類の中から、関係の書類だけをまず探し出して、それからこう拾うという作業になるのでございまして、それで実は日数を要するということを申し上げたのであります。部分的でもよろしいということでありますが、一応帰りまして担当者に話をしてみたい、この程度一つ御了承願いたいと思います。
  113. 野澤清人

    野澤委員 そこで、この医薬分業というのが、先日来新しい改正案によって、全く根本からくつがえされるというような論証を私の方で申し上げ、また提案者の代表者としては、いや、分業の精神は捨てておらぬ、漸進的に分業を実施するのだ、こういうようなお話でありますけれども、たとえば、この社会保険経済の一点を見ましても、こういうふうに架空請求やつけ増し請求があるということは、この表によっても事実としてわれわれは首肯せざるを得ない。ところが、こうした要因を作るのは何かというと、現在の医療制度の欠陥に私はあると思うのであります。従って、現在の保険の赤字対策、その他の根本対策等がやかましく論じられておる今日であります。少くとも、こうした面から見ましても、医薬分業という制度を、一日も早く実際制度の上にこれを実施して、こうした架空な要因をなくすということが、国民の立場としても、あるいは立法府の立場としても正しい行き方だと思います。これらにつきまして、保険局長の方では、大体薬物が主体でないかということを聞きますと、なおさらわれわれはそういう感を深くいたすのでありますが、これらに対して、提案者であります御両君の方で、こうした事故は保険の事故であるから全然別だ、自分たち分業案とは関係がないのだというお考えか、あるいはまた、一応分業形態にすると、こうした要因が救われるとお考えでありますか、この点お尋ねいたします。
  114. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。これは制度の欠陥というよりも、要するに私は、国民の教養の程度の現われだと思います。従いまして、急に多少制度の形を変えましたからといって、根本的にこのような問題が解決されるとは考えておりません。
  115. 野澤清人

    野澤委員 それでは、こうしたものが発生する原因について、大石さんはどういうことが根本原因とお考えになっておるか、それをお聞きいたします。
  116. 大石武一

    大石委員 要するに、国民の教養の程度問題だと私は考えております。
  117. 野澤清人

    野澤委員 そうしますと、この医療監査等において、こうした事故が発生した場合には、医者の責任でなく、国民の教養の程度によって国民に責任がある、こういうお考えでございますか。
  118. 大石武一

    大石委員 国民の責任ではなくて、要するに各団体なり各方面にいろいろな問題が起って参りますが、そういう問題は、すべてその団体なりその方面だけの独得の問題ではなく、すべては、要するに国民の教養のレベルの現われだと思うのであります。国会議員が悪い悪いといって、いろいろ新聞からも非難されている点がありますけれども、これは日本の国会議員だけが特に悪くて国民がみんないいのではなくて、要するに国民全体の教養のレベルがこの程度である、私はこういう意味で申し上げたのであります。
  119. 野澤清人

    野澤委員 非常にばく然としているのですが、保険医が監査を食って指定取り消し処分等まで受けるということは、国民の良識の範囲で決定すべきものじゃないと思うのです。国会議員の良識を疑うような不徳行為があったから、国民も責任を負えということは、一応理屈は立つと思います。しかし医者そのものがつけ増し請求をしたり、架空請求をしたりすることが、国民と何の関係があるかということです。それを、あくまでもあなたの方では国民に転嫁しようというお考えなのかどうか、提案者としてのあなたの御見解を聞いているわけです。
  120. 大石武一

    大石委員 国民に責任を負えと言った覚えはございません。これはやはりやった医者の責任ではございますけれども、それは医者の責任としてそのまま処罰されていいのであって、ただよってくる根本的な原因は何であるかというと、その程度国民の教養のレベルであるということを申しただけであります。
  121. 野澤清人

    野澤委員 そうしますと、あなたの言う国民というのは、医者を含んで国民と言うたのですか、それとも国民全体をさして、医者はその中に入らないということですか、どういうことですか。
  122. 大石武一

    大石委員 医者国民の一部でございます。
  123. 野澤清人

    野澤委員 医者国民であると言いますが、それでは、その良識の程度に差があるからそういう事故が起きたといいますけれども、被保険者がその医者にかからなければ、こういう事故は起きないと思うのです。かからなければ起きないのだから、かかったのは、それは国民がぼんやりしておるからだという理屈に、あなたの理屈を引用するとなると思うのですが、私はこういう保険事故等に対して、架空請求とか、つけ増し請求というものは、その医者自体の本質的なあやまちだと思う。国民とは何ら関係がないと思うのです。一応関係があるということを立証するとすれば、その医者にかかったからという第二義的な意味はありますけれども、かかってもいない患者のカードに架空請求をして出す、こういうことは医者そのものの欠陥でないかと思うのです。これはどうしてもお認めになりませんか。
  124. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 私は架空の請求をいたしましたり、虚偽の請求をいたしますことは、まことに悲しむべきことでありまして、これは医道の頽廃である、こう私は深く思うのでございます。われわれ同業者にさような件数があることは、まことに遺憾に存じておる次第であるのでありまして、大石君の意も、そういう意味であろうと私は推察いたす次第でございます。
  125. 野澤清人

    野澤委員 加藤先生の穏健な御解説が出て、私も納得をしたのですが、大石君自身も、おそらくそういう意味だと思いますという加藤先生のお話ですが、国民に責任を転嫁された大石君の言明を、もう一度お聞かせ願いたいと思います。
  126. 大石武一

    大石委員 ただいま、私は決して国民に責任を転嫁いたしてはおりません。悪いことをした医者そのものの責任で、責任そのものは厳重に処罰されなければならないと思います。しかし、そういうものが一部にあったからといって、医者全体が悪いという考えは、私は決して持っておりません。たとえば、学校の先生の中にも、ずいぶん悪いことが新聞に出ておる。この前宮城県の新聞で見ましたら、宮城県の薬剤師がペニシリンを注射して死んでしまった、その場合に、医者に頼んで架空の診断を作ってもらったという刑事問題が起っておるのが出ておりましたが、そのことをもって、私は薬剤師全体が悪いとは言いません。そのやった人間そのものは悪いけれども、それをもって全体を推すことはできないと思う。ただ、このようなものがあっちこっちにあるということは、それは確かにそのものが悪いのでありますけれども、それは日本の国民全体の教養のレベルがその程度であるだろうということを考えまして、今悲しく思うだけでございます。これが私の考えでございます。
  127. 野澤清人

    野澤委員 なかなか加藤先生のように率直に、あなたも自分の言うたことに対して取り消さないようでありますから、これは気持は同じものだと思って善意に解釈しておきます。了解しておきます。  そこで、こうした資料をながめた場合に、率直にわれわれが反省しなければならないことは、単なる不正診断とか水増し請求とか、こういうことをこのまま放任しておいて、ただ不徳な一部の医者に対する悲しむべき現状であるというて割り切るのには、あまりにも大きな問題じゃないか、こういう感じがいたすのであります。そこで、これは一部の医師の不正行為、摘発されたもの、発見されたものだけについての不正事実でありますので、医者全般に対する不正事実だということを指摘しておるわけではないのです。ただこうした不正請求とか、あるいは架空請求というようなことのできるような保険医療の実態を、このままに放任しておいていいかどうか。むしろ、まじめな医者も不まじめな医者も、そうしたすきを与えないようにすることが、今後の施策の行き方ではないか。従って私は、摘発された者だけを悪く言うという意味ではなしに、いわゆる放任されたままに置いて社会悪の温床になったのでは何にもならぬ、善良な医師もつい誘われてそういう結果に陥る場合があるんじゃないか、こういうことを考えたものですから、一応この資料に基いてお尋ねしたわけであります。  そこで、これも加藤先生でも大石先生でもけっこうでありますが、これはだれが何と言うても、一つの制度上の欠陥だと私は思うのです。野放しにしておいて、こうした不正事実を摘発することが現在の保険監査の目的のようでありますが、健康保険法の今度の改正に際しましても、これは私は本会議でも強く要求しました。つまり、根本対策を立てておらないで、単に敵本主義に医者の不正だけをあばくというような監査の行き方は間違いだ、それよりも一歩前進して、現在の制度の中で欠陥のあるものは、すみやかにこれを是正するような行き方が、良識ある国民としての立場でないかと思うのであります。政府も国会もこうした点について協力することが、ほんとうに正しい行き方でないかと思いますので、こうした点について御質問を申し上げたのであります。加藤先生大石先生どちらでもけっこうですが、この制度上の欠陥であるということを率直にお認めになるかどうか、この点お伺いいたします。
  128. 大石武一

    大石委員 おっしゃる通り、このような保険その他いろいろな方面において不正行為の現われますことは、確かに先ほど申し上げましたように、教養のレベルの現われであるということも事実でございますが、そのほかに、確かに制度の上に大きな欠陥があると私は考えております。おそらく人間と生まれまして、だれでも悪いことをしたいと思う者はないと思います。できるだけ正しいことをして、豊かになりたいと考えておると思います。それが、一番学校を出た教養のあるべきはずの医者が、このような不正行為をするということは、これはやはり相当せっぱ詰まったから、不正行為をする例が多いと思うのであります。これは明らかに今の保険制度の欠陥であると思います。これを根本的に解決をすることが、私は不正行為を防ぐ一つの手段であると考えております。私はこの保険制度は、分業になったから、ならないからといって、別にそう大して変りはないと思う。もっとも、現在私どものこの法案は、医薬分業を認めることを前提として出しておりますから、これはお互い見解の相違になると思うのでありますけれども、別に分業問題で解決されるとは考えておりません。ただ私は、これはもっと考えなければなりませんけれども、保険制度の根本的な改革は、非常に困難だと思います。なぜならば、結局は日本の国は貧乏だからであります。国が貧乏であり、国民が貧乏だからであります。乏しいふところで、アメリカ人が受けるような非常に高価な治療をしなければならぬ。これはすることが当然でありますけれども、そこに私は日本の保険のこのような欠点があると思うのであります。これはまあ国の運命であるとも考えるのでございますが、このような制度も、できる限り直していき、そして国民の教養を高めて参れば、このような不正はだんだんに減って参ると考えております。
  129. 野澤清人

    野澤委員 制度上の欠陥であるということを、率直にお認めになったようでありますが、現在の、たとえば保険医療だけを考えた場合に、その欠陥を是正するのには、あなた自身の立場で、どういうふうにしたならば是正されるとお考えでございますか。
  130. 大石武一

    大石委員 要するに、現在の保険制度は、その保険制度を実施するだけの経済力に乏しい、経済力が伴っていない、これが一番大きな欠陥だと思います。
  131. 野澤清人

    野澤委員 国民の経済力というものは、国民全般を基盤にした場合に、経済力ということと医療の対価との比較対象ができると思うのであります。それで私が指摘していますことは、現在の保険医療の内容においてこうした不正事実ができるということは、制度上の欠陥ではないか、こういうことを申し上げたら、あなたの方で、率直に制度上の欠陥であると思いますということを言われた。そうすると、この制度上の欠陥であるということは、国民の収入や国民の貧乏さとは関係がないのであります。ただ保険医療の中で、水増しやあるいは架空請求をしなければならぬという欠陥は、どうしたら補えるかということを聞いているわけであります。この点について、ごめんどうですが、もう一度お願いいたします。
  132. 大石武一

    大石委員 この制度というものは、一番経済を基盤としてできているものでございます。たとえば点数にしましても、あるいは一点の単価にしましても、すべてこういうものが基礎となってこの保険制度はできていると思います。この点数やあるいは単価なりその他いろいろな点が、国民なり国の経済を基盤にしてできている。たとえば、国が豊かであれば、大部分を国費によってこの保険制度を運営していくことができるでありましょうし、アメリカのように、ほかにろくな保険制度がなくても、国民の経済力が豊かであれば、やはり十分の医療が行えるのでありますが、日本では国も貧乏でありますし、国民も貧乏でございます。その貧乏であるためとも言い得るでありましょうけれども、貧乏な割合に日本は保険制度が発達していると思う。でありますから、頭でっかちで足がふらふらしているというのが、日本の保険制度だと思うのであります。結局、これは国並びに国民の経済力が弱いからであります。それが保険の運営の一番大きなガンであると考えております。
  133. 野澤清人

    野澤委員 だんだん狭まってきました。現在の制度上の欠陥は、国の貧富の差によって点数その他にしわ寄せされているから、そういう欠陥が生まれるのだというように了解したのでありますが、私はそういう外面的な総括的な議論でなしに、現に医療を担当しておられます医師の立場等から、不正請求とか架空請求とか、つけ増し請求というようなことをしなければならないような制度の欠陥があるじゃないかということを申し上げているのであります。いわゆる内部的事情をお尋ねしているのであります。あなたの御説明を聞くと、点数や単価の問題がしわ寄せされて、全体の収入が少いから、やむを得ず医者だって食うために悪いことをしてもいいじゃないか、こういう議論になると思う。そうしますと、国民全般がたとい刑法に触れても、どろぼうをしなければならぬ、強盗に入らなければならぬという理屈と同じだと思います。そういう失礼なことを、私はお尋ねしているのじゃないのです。善良な医師の立場から、しかも高等専門教育を受けられたお医者さん方が、こういう切実な、いわゆる不徳行為によって処罰されるということも、実際に望ましからざる事態であると思いますけれども、こうした事態を容認せざるを得ないのには、内部的な制度の欠陥があるのじゃないか、これを防ぐのにはどうしたらいいかという内部的な事情をお尋ねしているので、外部の総体的なものについてのお尋ねを申し上げているわけじゃないのであります。もう一ぺん丁寧に一つお願いいたします。
  134. 大石武一

    大石委員 これはまた同じことを申し上げるのでございますが、私は初めから、だれも悪いことをしたい者はないと申し上げております。私はこのような医者の一部の者が不正行為を働いたからといって、これを是認しているのではございません。こういう者は処罰しなければならぬと申し上げております。ただ、なぜこういうことをしなければならないのかというお尋ねでございますから、おそらくそれは今のような保険制度の欠陥によって、そしてせっぱ詰まったのと、もう一つは、やはり全体としての教養の程度が低いから、その一つの現われとしてこのようになったのであろうということを申し上げておるのでありまして、できるだけ国民はよいことをしなければならぬ、悪いことをしていいとは思っておりません。別に国民が食えないからといって、どろぼうをしていい、詐欺をしていいということは、私は決して認めているのではないのでありまして、そのようなことさらの曲解は——ことさらではないかもしれませんが、一つ御了承願いたいと思います。
  135. 野澤清人

    野澤委員 非常に大事な問題ですから、重ねて御質問いたしますけれども、あなたの方では、さわらないようにしようというのだし、私はなるべく内部の方にさわろうというのだし、やむを得ず——私は医者がこうして悪いことをするということを指摘しているのではないのです。何かそこには欠陥があるのじゃないかということを申し上げたら、あなたは欠陥はありますという。それでその欠陥の焦点が、私の方は内部の欠陥であるというし、あなたの方は、総体的な国民経済からの欠陥であるとこういう御答弁です。そこで、今度の医師法歯科医師法薬事法改正を見ますと、医者は悪いことは絶対にしないのだという前提のものに、この罰則というものは全部はずすという考え方で新しい法案提出された。その法案の審議の過程として、私はあなたに内部的な事情があるのじゃないかということをお尋ねしたことは、もう少し制度上親切な国家なり社会なりが行き方をしてくれさえすれば、これらのものはある程度まで防げるのじゃないか。しかも貧に窮して悪いことをしたというなら、これは別でありますが、大体こういう保険監査を受けて処罰されるというような方が——時折お医者さんからでも、われわれのところに見えますが、そういう人の内情を聞いてみますと、あながちそうした経済面だけの事故じゃないのです。そうした経過から見ますと、やはりどこか制度上の欠陥があるのじゃないか。それで、私があなたにしつこくお尋ねいたしましたことは、たとえば、医療内容が秘密にされておるために、だれもわからないから、知っておるのは当事者だけだからというような考え方から、架空な請求を出したりあるいはその医療内容をだれも知らぬのだから本人に黙ってつけ増し請求をする、こういうチャンスを与えるということが、いわゆる内部的な制度上の欠陥じゃないか。こうした面について、少くとも良識ある国会議員として、あなた自身が考えないことはないのじゃないか。それも問題外だ、やはり国民の教養の程度によるのだということで解決されたのでは、あまりにも国民がかわいそうだと思いかす。
  136. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。ただいまのお話では、別に経済的に困らない医者が、あえて悪いことをするのだというお話でございましたが、そうだとするといかなる制度であっても、よくても悪くても悪いことをする、これは人間の性格だと思います。教養だと思います。そういう人間は私は論外だと思います。  それからもう一つ、今、内部的原因とか外部的原因とおっしゃいますが、私はどういうことかよくわかりません。いわゆる内部的原因と一いうことは、どういうものかよくお教えを願いたいと思います。  それからもう一つ医者は秘密診療をする、秘密治療をするというのですが、どういうことか私にはわからない。この前二、三日前の御質問でも、だいぶ議論が出まして申し上げたのでありますが、どういうことが秘密治療であるか、どういうことが秘密診療であるか、一つお教えを願いたいと思います。
  137. 野澤清人

    野澤委員 この間も、わかりましたというてお答え願って、きょうはわからぬというところに、大石君の頭のよさがあると思うのです。今私が申し上げたのは、たとえば事故を起して指定取り消し等を食った医者の中でも、貧すれば鈍するというような考え方から、あなたは保険経済というものを、国民の経済能力から事故が起きてくるという説明をされた。私が例証したのは、そういう人もあるだろうが、その中には豊かな人でも事故を起すのだ、事故を起すような要因を作ることは制度の欠陥ではないかと、こういうのです。それはどういうことかというと、治療が秘密だということは、たとえば、この間あなたが、うどん粉問答をされて、精神的な患者に対して催眠剤をやるつもりでいらっしゃる、だんだん減らしていく過程において重曹やうどん粉をやっていくということを、これは一つの例証でありますから、うどん粉をやろうと重曹をやろうと、そのいろいろな治療方針に従ってやっていきますからやむを得ませんが、事柄がたとえば肺結核でない者に対して肺結核であると断定する不徳な医者があったといたしましても、だれがこれを監査するかということです一しかも、カルテに関しましても、あるいはその投薬内容に関しましても、その人自身だけしか知らない。患者ももちん知らない。こういうつけ増し請求をされたり、架空請求をされても、患者が全然知らないのです。知っている者はお医さんだけ。それをあなたの筆法からいけば、それは国民としての常識のレベルが低いから、そういう欠陥なんだという議論になります。そうすると、医者のレベルの低いということを、あなたが指摘しているような感じがするのです。そういうのではなしに、少くともそうした場合に、多年論議された医薬分業等の施策が実際に国家の制度の上に行われるということになりますと、特別の事例を除いたほかは、少くとも処方せんが表に流れていきます。あるいは薬局で調剤される場合もありましょうが、このつけ増し請求等、あるいは架空請求等が行われる余地がなくなってくるのじゃないか、これは一つの具体的な対策ではないかと思うのであります。こういうことを称して、私は内部対策と申し上げたのであります。これらに対して、単にえこじに歪曲するという考えなら別ですが、あなたの常識ならば、大学の先生までしたのですから、少くともそういう趣旨についての突つかい棒を作ることについて反対ではないと思うのでありますが、もう一度御解説願います。
  138. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。肺結核でないのに肺結核であるといって、患者をだまして、金を取ったりというようなことを申されましたが、私はそういう医者はほとんど少いと思います。われわれの知っている医者には、ほとんどないのでありまして、そのようなことをしても、すぐ暴露されるのが今の現状であります。たとえば、肺結核でないのに肺結核であるとしてだましたのが秘密治療であるというならば、そういうことを、かりに医者がほんとうの肺結核であると信じて言った、発表したものが、何が秘密でありましょうか。それは何を秘密というのかわからない。レントゲンの写真も、カルテも作ってありますから、もししかるべき筋からカルテを見せろといえば、見せなければならない。カルテをとってあり、レントゲン写真もとってある。写真を示して、これこれであるから肺結核であると教えたと思います。それでなければ納得しない。私は肺のどの辺が悪いのでしょう、どの程度悪いのでしょうと、レントゲン写真を見せられたり、赤血球の沈降速度が何である、こうであると説明していると思う。少しも不思議はないと思う。かりに、うどん粉と申しましたが、乳糖といってはおわかりにくいといけないと思って、うどん粉と例を引いたのでありますから、重曹なり乳糖なり与える場合にも、ちゃんとカルテには書いてございます。点数を請求する場合には明らかに請求する、記録がちゃんとできていますから、だれにも隠しておらない。その場合、患者に乳糖だ重曹であると教える必要はない、これは治療のことである。こういうことを秘密治療であるというならば、おかしなもので、あなたは医薬分業は、処方せんが出れば内容が全部公開されて知れ渡るというお話は、少し浅薄な御意見だと思います。だれも処方せんを見ただけで、この病気の診断が何であるか、病気の程度がどの程度であるか判断つくような医者は、おそらくありますまい。まして、しろうと薬剤師がその処方せんを見て、あなたは何の病気でございますね、この病気のどのような状態でございますねと言い得る者がございましょうか、こっけいな話でございます。処方せん見たからといって、その医療内容の公開であるというのは、あまりにもそれは医療ということを御存じない人の御議論ではなかろうかと思います。処方せんを出したら、その処方せんは必ずカルテに書いたもので、薬局にございます。処方せんがなければ調剤ができない。医者自身が調剤するにしても、そういうものをしかるべき筋から見せろといえば、いつでもお目にかけるようになっている。患者処方せんを発行しても、ちっとも隠していない。まして処方せん一枚やったからといって、患者の病気の状態、病名がわかると思ったら、これはこっけいな話でございます、何もわかりはしません。ですから、これでもって病気の秘密治療だとわかるというお考えは、私は不思議な議論だと考えております。また私どもは、医薬分業考えているのでございますから、あなたのお考え、御方針と、ちっとも変らないと考えております。
  139. 野澤清人

    野澤委員 今、大石君の方に、だいぶ感情的におっしゃられているようですが、私が言うているのは、この保険監査の結果、指定取り消しを受けたもので架空請求が三三%もあり、またつけ増し請求が三一%もある、この事柄について、あなたにこういうことを防止するのには、どうするかということのお尋ねをしている。全部の医者が悪いことをしているという意味で申し上げていないことは、前々から申し上げている。それで大石君の言われるように、この処方せんを出して、薬局でその病名がわかるとかなんとかいう話は、私は申し上げていない。要するに、請求の内容等にこういう不正事実があるというて指摘されている。指摘されている以上は、どこかに欠陥があるのではないか。あなたは、医者の方ではそんな悪いことをする者はないと言うが、現にこれだけの証拠が上っている、上っている事柄をどうしたら直すことができるかということを、私はお尋ねしたので、決して一般的な医師に対して不徳行然があるということを、私は責めているのではありません。前々から申し上げております通りに、たとえばこの請求の内容というものが、あなたの言われるようにカルテにも書いてある、またレントゲンもとる、そうした患者に対しては、架空請求というものはあり得ないと思うのです。見てもいない、治療もしてない、投薬もしてない、そこで初めて架空請求もあれば水増し請求もあるのじゃないかと思うのです。その事柄を、一つの現象について私はお尋ねしたので、一般的なことを、あなたの非難されるほど、野澤君の常識が違っているのだと言われればそれまでですが、私はそういう感情的なものの言い方をして責めているのではない。こういうわずかな部分であっても、これが国民の大きな誤解にもなり、保険経済や保険医療の建前から見ても、大きな禍根になるのではないか。そうすれば、これらを早く発見するのにはどうするか、また不正請求を指摘されないようにするのには、どうしても何らかの関門なり、あるいはまた制度なりが必要ではないかということを冷静にお尋ねしているのです。どうぞ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  140. 八田貞義

    ○八田委員 関連してお尋ねいたします。今、野澤委員の質問を伺っておりますと、これは野澤委員が前から言われていることですが、秘密診療というものに対しまして、盛んについておられます。この秘密診療については、野澤委員考えの底には、国民処方という問題があると考えられる。それで、この国民処方の問題について、局長に御質問いたしたいのであります。  野澤委員は、秘密診療というものが、処方せんの発行によって公開処方ということになってくれば乱診乱療が防げる、あるいは自粛監査ができるということを言っております。実際今大石委員が申したように、処方を見て、すぐにこれが乱診乱療ということを判断できるかどうか、これが問題になるわけであります。これに対しまして、野澤委員がおっしゃるのは、国民処方という問題がその考えの底にあるというふうに考えます。この国民処方というのは、四十五種の処方内容を認めておるわけであります。この四十五種の国民処方に対しまして、改正法には二十四条の第一項として「薬剤師は、医師歯科医師又は獣医師処方せんによらなければ、販売又は授与目的調剤してはならない。」というふうに書いてあります。この国民処方というのは、厚生省の告示によって出されているものでありますけれども、今度の改正法通りましても、この国民処方というものは依然としてやっていくのかどうか、これが無診投薬の非常な問題点と考えますので、薬務局長の御見解をお伺いしておきたいと思うのであります。
  141. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 今の国民処方の問題は、薬務局長から御答弁があると思いますので、その後また私もお答えすべきことがありましたらお答えいたしますが、先刻来の野澤君からの御質疑に対しまして、私も大まかにお答えいたしたいと思います。医道が頽廃いたしまして、架空な請求をしたり、あるいは点増しと申しますか、水増しをいたしますことは、まことに私は痛嘆にたえぬのでございますが、いかなる時代におきましても、そういう犯罪を犯す悪い者は、これはやむを得ぬことでございまして、適当な法律によって処置するなりあるいは行政処分をするなり医師法に明記してあるのでございますがゆえに、これは当然すべきことであるのであります。しかるに、今回そういう犯罪があるにかかわらず、そういう頽廃しておる医者に対して、あるいは五千円以下の罰金の項を削除したり、その他薬事法の五十六条でありましたか、そういう体刑、罰金を取るというのはけしからぬと、こう仰せになりましたが、これとは全然趣きを異にいたしております。今の保険局長の報告のごときは、どろぼうに類したものであるのでありまして、処方せんを交付せざるということと、自己処方せん以外に他の処方せんで盛ったということとは、全然性質を異にいたしておるということだけ御了承を願いたいと思います。医道の頽廃ということは、まことに私も痛憤にたえぬ次第でありまして、これは適法な措置がこの医師法にあることでございます。これは制度の罪もあるでありましようし、大石君からお答えのごとく、全体の道義の頽廃が、また医道の頽廃になっておることも当然でありますが、今度の罰則を取ったということとさきのこととは、全然別個の問題であるということを、一つ御了承おき願いたいと思います。  それからただいまの八田君の御質問は、私ではございませんで、薬務局長から御答弁あることと存じます。
  142. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 野澤委員の御質問に関連をして、国民処方が関連があるというような御趣旨の八田委員の御質問でございますが、どういう関連があるのか、私ちょっと了解できませんので、あるいは御質問の筋をはずしてお答えするかもしれませんが、国民処方というものについての御質問と心得てお答えを申し上げます。  国民処方というのは、一口に申せば、今日はございません。昔そういうものがございました。というのは、昭和十八年ごろであったと思いますが、戦争中に薬業の企業整備をやつだのでございます。その時分に、薬局で当時一品目ずつ許可を受けて製造をしておりまして、売薬処方数が数十万方に上っておったのでございます。さようなことでございましたので、企業整備の観点から、この数十万方という薬局売薬処方のうちで、優秀なものを都道府県から調べて取りまして、それを厚生省でさらに選定をいたしまして、百幾らでございますかのものに、これを一定したわけでございます。それを国民処方と当時言っておったのでございます。ところが、昭和二十三年でございますか、第一版の国民医薬品集が出版されまして、その際にその国民処方が同じような趣旨国民医薬品集第二部というものに収載されたわけでございます。その内容を簡単に申し上げますと、たとえば、解熱剤というのがございまして、そして解熱剤の一号、二号、三号、四号、五号まであって、一号はこれとこれとこれとを処方したものである、幾ら幾らをまぜてどうしたものである、二号はこれとこれとこういうものであるというふうになっております。それで、これが百二十処方であったと思いますが、そういうものを収載いたしておったのであります。それで、国民医薬品集第一部の方は、日本薬局方と大体同じような形のものでありまして、今のような形とは全然違っておる。ただ国民処方というものを第二部の方に受け継いで、そういう形でできておったのであります。ただし、先般国民医薬品集第二版を出しまして、第一版は、廃止になったことは今御指摘の通りであります。それでこの際に、国民医薬品集第二部、そういうふうな処方の形で収載されておりましたものは、その第二部を全然廃止をいたしましたので、その中で必要な品目は、第一版の方に形を変えて、と申しますのは、今の処方の形ではなく、薬局方と似たような形でもって取り入れたりいたしまして、第二部というものは廃止をいたしておるのでございます。従って国民処方というものは、今日存在をいたしておりません。  それからもう一つ、今の第二部なり国民処方なりが存在いたしました当時におきましても、ただいま調剤と関連をして、無診調剤といいますか、無診療投薬ということの関連において御質問のようでございますが、これは今のようなことで、公定書に載っておる一つの薬でございまして、これを薬局におきましては、薬局の設備基準というものがございます、従って薬品の製造を、薬局に備えつけておる程度の器具、器械でできるものにつきましては、薬局の製造業というものを薬事法は認めております。従いまして、その国民処方当時の国民処方、あるいは第二部に載っておりますものにつきましても、一々製造業の登録を取り、それから品目の登録を取って製造、販売をいたしておる、こういう形になっておりますので、これはいわゆる処方に基いて調剤をするというのとは違うのであります。さようなことになっておりますことを申し添えておきます。
  143. 八田貞義

    ○八田委員 今、国民処方が存在しないということは、われわれも承知しておるのであります。ところが実際において、あなたは法規上は全然ないのだとおっしゃるのですが、現在薬局において、国民処方によって投薬をしておる者がたくさんおるわけです。こういうことに対して、あなたの方では、そういうような無診投薬の事実が、どういうような場合にたくさん多かったかぐらいの調査の資料がおありになると思うのですが、それを一つお出し願いたいのであります。  それからもう一つ、高田局長は、多分仙台においてのペニシリン事件をすでに知っておられると思うのですが、これは第二指にとげがささった普通の患者が、薬剤師のところに行ってペニシリンを買って、それを用いて死んだという事件です。この問題について、薬事法によって見ますと、四十四条の七号によって、いわゆる抗菌性物質あるいは抗生物質というものは売ってはならぬということになっておるのです。ところが現在こういう事件が起っておる。そしてこの場合、新聞を見ますと、医師法十七条の違反であるというふうに書いてあります。これは明らかに薬事法違反を起しておるわけでありますが、この場合薬務局長は、薬事法の第何条違反であるかをお示し願いたいのであります。
  144. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 無診投薬をやっておる場合に、それが国民処方に基いて売ったのだと薬局が言っておるという点については、私、御質問のような事態があるかどうか、ただいまつまびらかにいたしませんが、無診投薬というのは、現行薬事法におきましては、医師処方せんに基かないで調剤してもよろしいということになっておるわけです。それでむしろ医師法の方で、医師にあらざれば診療のようなことをしてはならないということがありますから、御指摘のように、あるお客さんが来て、その人が私はどこそこが悪いのだ、そして薬剤師医師にまぎらわしいような診察をしたり、診断をしますれば、それは医師法違反になると私は考えております。  それから、第二の、仙台のペニシリンを売って云々ということにつきましては、私もちょっと耳にしておりますが、まだ報告が参っておりません。従って、その事件の内容をつまびらかにいたしておりませんが、もしペニシリンを販売して、かりにそのペニシリンを患者が使ったことによって事故が起り、その患者に対して何らの指示もしていないということでありますれば、薬事法四十四条七号違反になります。それからその際、あるいはペニシリンの注射をしてやったのだということになりますれば、今申し上げましたように医師法の方の違反になるわけでございます。
  145. 八田貞義

    ○八田委員 そうしますと、今のペニシリン事件について、ちょっと一点伺いたいと思いますが、投薬表示には必ず医師処方せんまたは指示によることを記載しなければ、薬事法第四十一条第七号によって不正表示薬品となるわけです。医師処方せん並びに指示によるものということが記載してあれば、不正表示にならない。それが四十四条の七号によると、それを医師の指示とか処方せんに基かないで売っては悪い、こういうことですね。ところが、こういうものがよく行われておる。実際に抗生物質とか抗菌性物質が、ほとんど医者の指示によらず、あるいは処方せんによらないで、どんどん薬局から売られておる。買われておる。多分薬務局長、あなたもやっておられると思う。こういうことは違反事項ですね。こういうことに対して、どうされるつもりですか、それについて私は聞きたいのです。今日ペニシリンについて、いろいろな問題があります。抗生物質の問題がありますが、第一にペニシリン・アレルギーというものが、今日非常に起ってきておる。医師処方せんとか指示というようなことになりますと、指示は電話でもいいということになりまして、ペニシリンのアレルギーによるところの惨禍というものがふえております。さらにまた、これを薬局でもってどんどん四十四条七号の違反をやられていきますと、耐性という問題、抗体菌現象ということも起ってくるこれらの現象について、薬務局長の十分なる監督を願いたい。  さらに、野澤委員は、医師側の乱診、乱療、不正診療という問題を盛んにつつかれておりますけれども、現在薬剤師の側におかれましても、こういったようないわゆる抗生物質、あるいは抗菌性物質というものを、全く医者の指示によらないで、またあるいは処方せんによらないでも売っておる。これらの点について十分に薬務局長考えてほしいのであります。  それから、もう一つ言いたいことは、これは山下代議士がおられるので申し上げるのでありますが、山下代議士が選挙に際して、オーレオマイシン・トローチを飲んでおると、演説するときに声がかれないと言われて、それで盛んにオーレオマイシン・トローチを飲んでおられたのですが、ところが選挙中にトローチが切れた、それで薬局に買いにいかれた。そうしたところが、薬剤師が、オーレオマイシンであれば、トローチでもカプセルでも同じだということで、カプセルをもらって、山下代議士はずっと飲んでおられた。土曜日の晩ですか、山下代議士と会食したところが、きょうは腹の中にガスがたまってどうも気持が悪い、これはオーレオマイシンを飲まなかったせいでしょうかと聞かれた。冗談じゃない、一体何日飲んだのですかと山下代議士に聞いたところ、もう十日以上、二十日にわたって飲んでおられる。これらのことは、四十四条七号の違反が非常に広く行われておるということなんです。このようなことについて、私は薬剤師の側に対して非常に不信を持っておるものですが、その点について、薬務局長はしっかりした考えをもって、薬事監視を十分してほしいと思います。  関連ですから、これでやめます。
  146. 大石武一

    大石委員 提出者から、今の八田委員の御意見なり御質問に対して、補足的にお答えをしておきます。私どもも、医薬分業をだんだん進めて参りたいと思います。いずれ近い将来には、できるだけ完全な医薬分業にいたしたいと思いますけれども、現在の段階では急には参りませんので、お手元に差し上げましたような修正案でがまんしておるわけであります。一例を申し上げますと、たとえばいろいろな抗生物質、ペニシリンであるとか、オーレオマイシンであるとかいうものは、現在は医者処方によって使えというような表示があれば、薬剤師として売っても買ってもかまわないということであります。現在はかまわないのでありますが、私はこれはけしからぬことと思います。現在オーレオマイシンなりペニシリンなり、あるいはクロロマイセチンなりを、どのくらい使えばよいかということは、医者以外にはわからないのであります。いろいろな病気の程度によって、病勢によって、みな使用量が違うのでありまして、これを全然しろうとが買って飲むということは、非常な危険があります。ところが現在は、しろうとの多くが買って、自分勝手に飲んで、あるいは淋病の治療に当てたり、いろいろなことにしておる現状であります。そのために、みな中途半端に飲んでやめてしまう。たとえばのうが出なくなったり、熱が下ったりすればなおったと思ってやめます。みな半分なおって治療をやめておるから、これらの病菌はいわゆる抗抗生物質といいますか、非常にそれに耐える、抵抗する力が出てきまして、ますます病原菌のたちが悪くなって病気がなおらない。そのために薬がきかなくなるというような現象が非常に多いのであります。従いまして、私どもは当然これらのものは絶対医者処方せんなしには売らせない、あくまで厳重な医者の監督か、処方せんのもとに売らせるように、現場で処置するということに進まなければならぬ、それが医薬分業の進むべき一つの方向であろうと思います。
  147. 野澤清人

    野澤委員 関連質問で八田君から非常に御質問が出たのですが、こういうことに私は医薬分業の必要さがあるのだと思うのです。医師の不正事実を野澤君が一生懸命になってついておるといいますが、私は一生懸命ついておるわけではない、ただ保険医療の上において不正事実があるという証拠が出たから、こういうことを直すのにはどうしたらよいか、こういうことをさせないようにするのにはどうしたらよいかということを、私はまじめに検討しておるのです。ただいま抗生物質等を薬局で売ることがけしからぬ、こういうおとがめのようでありますけれども、今大石君が言われたように、薬剤も医者処方を出して指示するならば、おそらく日本の医薬制度というものは健全な発達をするのじゃないかと思うのです。ところが、すべてのものは野放しであります。注射薬の宣伝にいたしましても、アメリカ流でいくならば、医学雑誌あるいは薬局の雑誌だけにしか宣伝が載らない。日本の注射薬は、それが医者の使う注射薬であっても、一般の日刊紙に載せなければ売れない。こういう欠陥というものは、やはり野放し診療、野放し医薬制度というものが大きな欠陥をなしておるのだと思う。八田君が心配されるように、薬局で対症投薬することが、あたかも罪悪のごとく言われますけれども、この根本をなしておるものは何かというと、今度の改正案にも出たように、医者診察治療をする以外に、薬屋をやりたいという考えを捨てないからであります。これを捨ててもらって、ほんとうに健全な発展をしていくことこそが、国民の利益になることでありますので、そのために多年医薬分業ということを主張もされ、また去る昭和二十六年に、不完全ではありますが、分業形態をとって、技術の分野をお互いに尊重していこうという、こうした案が出たのだと私は思うのであります。従って、そうした欠陥について御指摘になる熱意があるならば、昭和二十六年の二百四十四号の法律を、実際制度の上にこれを適用せしめて、そして何カ月でもこれをやってみさえすれば、逐次そうした面が解決されていくと思うのであります。一面において、薬局で当然調剤を行うべきその調剤権さえ剥奪をする、しかも調剤を行う行為については、法律の上に、専門家でない医者と、それから専門の勉強をしてきた薬剤師と同列に置いております。また処方せんも、医師の主観だけによって発行しなくていいのだ、こういう暴論を吐いておきながら、一面において薬局の問題について触れるということは、むしろそこに大きな欠陥があるのじゃないか、社会的なこうした欠陥について是正していくことが、いわゆる分業の理念であります。たびたび申し上げておりますが、それだけの熱意を、どうか国民のために、その法律全体として、実際制度の上にこれを打ち立てるように御努力願いたいと思うのであります。  なお、大石君からは、自分たちも逐次分業をやりたい、完全なものにしたいという御熱意については、さすがは大石君だと敬意を表しますが、ただ今度の法律が、昭和二十六年の法律よりも逆行しているということをたびたび申し上げ、また八田君が関連質問だといって、質問されたチャンスというものも、時間かせぎにはけっこうでありますが、私はそういう意味で申し上げたのではない。要するに内部的なこういう架空請求とか、つけ増し請求とかいうものを起さないようにするのにはどうするか、それには一応分業形態をとられる方がよろしいような感じがするので、私はお尋ねを申し上げた。それがとんでもないところへ飛び火をしてしまったわけであります。  そこで、総括的に大石さんにお尋ねするのですが、現在のような野放しの薬屋の状況、あるいは医者の状況というものを、現況のままで置いておいてはいかぬ、何らか漸進的でもよろしいから、これを完全なものにするためには、分業形態をとった方が早道であるとあなたはお考えでありますかどうですか、この点をお伺いいたします。
  148. 大石武一

    大石委員 お説の通り分業形態をとっていけば、この野放し状態を多少でもいい方に向けていくということには同感でございます。私どもも全く野澤さんとそれは同感でございますので、ごらんの通りわれわれの法案は、分業を前提としたものになっているわけでございます。ただ、昭和二十六年に制定されましたあの二百四十四号は、当時私もおりまして、いかにこの法案が日本の現状に即さないものかということを盛んに主張して反対したのであります。おっしゃる通り、全くの野放し状態でございますので、これを急激に一ぺんに統制下に置くということは、非常な混乱を生ずるわけでございます。従いまして、漸進的に行こう、急激に行かないで、時間をかけて階段的に分業の方に持っていこうと念願いたしまして、一生懸命に総司令部にかけ合ったのでございますが、断固として彼らのオーケーがもらえず、あのような法律ができたのでございまして、私は野澤さんの御意思に沿うべく、この野放し状態を少しでも早く漸進的に混乱を起さないでいい方に持っていきたいと考えまして、あの急激な二百四十四号の法律を現在のものに改正した方がよかろうと考えておるわけでございます。
  149. 野澤清人

    野澤委員 過般来の質問で、多少まずいとか、あるいは逆行であるとかいうことも、大石君認められております。しかし、多少はやむを得ないからこういうふうにするんだということを、御説明願ったように記憶しておるのでありますが、そうしますと、大石君自身は、今度の改正案によって、分業に一歩でも近づけようという御精神でおやりになったように拝聴したのですが、これに間違いございませんか。
  150. 大石武一

    大石委員 その通りでございます。
  151. 野澤清人

    野澤委員 それが間違いないとするならば、あなたは大きな錯覚や誤謬を犯していると思う。医師法の二十二条の改正についても、処方せんはなるべく出さないように法律をきめていきたい、また薬事法の二十二条を見てみますと、医師薬剤師も同じ調剤能力調剤行為ができるのだという解釈をしている。こういうところに大きな矛盾があると思うのですが、この点に関して、あなた自身は、決して矛盾はないというお考え方ですか、矛盾があるというお考えでございますか。
  152. 大石武一

    大石委員 私は決して矛盾していないと考えております。たとえば医師法の二十二条に関しましても、大体はそう違わないと思います。これによって私は処方せんを押えるとは考えておりません。ただ、医者にも患者にも、この方が非常にやりやすいという考えのもとに、省令というものを省いたのでございます。それから薬事法の第二十二条でございますが、これは医者にも調剤能力がある、あるいは調剤することができるということをはっきり認めておるのでございまして、それで全部調剤させるというのではないのでございます。この点をどうぞお間違えないように。現実を正直に見ることは正しいと思う。たとえば調剤ということは、医学と薬学と——私は医学の一部だと思いますけれども、かりに対等に見ましても、要するに調剤というところは、医学と薬学の中間の両方重なってきたところが調剤だと思います。ここから右は全部医学、ここから左は全部薬学という画然と区別するものは何もございません、必ず相重複しております。この重複しているところが私は調剤だと思います。だから、当然薬剤師の権限でありますけれども医者もできるし、また現実に調剤しておるのでございます。また今後も、患者が希望した場合は調剤をしなければならぬのでありますから、当然医者にもそれができるということを認めるのは正しいと思う。これをことさら認めないとするところに法律の間違いがあったので、私はこの法律は間違いだと思います。正しい自由民権の思想からいったら、間違っておったと思う。できるものをできると認めるのは、正しいと思います。ただ、医薬分業を推進せしめるには、薬剤師には薬剤師の権限があるから、その職能を侵さないようにやり方を制限して、薬剤師の働く分野を広げるということが分業の精神に合致していると考えているのでありまして、従って、私の考えは矛盾していないと思います。
  153. 野澤清人

    野澤委員 矛盾撞着はなはだしいものを、幾ら指摘しても論理が合いませんから、もう多くは申しませんが、調剤行為そのものに対するあなたの考え方は甘過ぎる。調剤ということは、単に薬をまぜ合せて患者に与えることだけが調剤じゃない。そのまぜ合せします原料が適品であるかどうかという薬品鑑定までもしなければならぬ。この能力は、医者の方とある程度まではそれは重なる点もあると思いますが、赤く色のついた重曹を持ってきて、これを重曹だといって突っぱる医者もないと思います。しかしながら、この間も話したように、サントニンと重曹とどう違うかという外観の判定になったならば、お医者さんとしては、薬局へ行って聞け、あるいは薬剤師に聞けという以外には方法がないと思います。さらにそれを鑑別するためには、相当の時間をかけて分析をしなければならぬ。簡単なものの分析は、これはお医者さんでも、当然分析をやっておられるのですから、わかるはずでありますけれども薬剤師の使命というものは、五千種類もある薬物の中で一の誤薬のないように、また効力の減退したものや、あるいはまた腐敗したもの等を、そのまま医薬に使ってはならぬから、薬品の鑑別が大きな使命になってくる。どの薬品を見ましても、その外観だけでわからないときには、効力検定もする、性状も調べなければならぬ、こういうことを含んでおりますために、薬学の進歩があるわけでありまして、従ってそういうために、同じ能力があるとお考えになることは少し行き過ぎじゃないか。ないとは私は申しません、科学者ですから。しかし、そういうものの分野を医者として持っていくのは大へんだから、一応薬学を分離して、今日のようなこの医師薬剤師を国家試験まで受けさせて免許を与えていると思うのであります。その同じ国家免許を受けた者が、一方は、その人たちの勝手な解釈によって、これも能力があるんだ、これも医者の主観でよろしいんだ、こういうことでは、決して社会のためにもならないし、また社会制度の発展にもならない。こういうところに、私は論理の合わぬところがあると思うのです。あなたの議論を聞いていると、矛盾は全然ないのだ、自分はそう感じないのだ、そうして分業の本旨というものを根本からたたきつぶしておいて、おれは分業論者だ、漸進的に分業で行くんだ一これはきわめて暴論であります。なお、先ほど加藤先生からも答えてもらいましたこの医者の不正事実に対して、私は三三%もあるこの架空請求とか、つけ増し請求ということは、加藤先生は、医道の頽廃という表現の仕方をされた。しかもまた罰則を削除するについては、医者は善良であって、決して悪いことをしないのだから罰則は必要ないのだ、こういうことを言われているところにも、かなりの矛盾があるのではないか。一方においては、悪いことをした者については、医道の頽廃だといって一応これを認め、反面においては、今度は医者は善良なものである、従って絶対に悪いことをしないのだ、法律に照らしても罰則を適用されるような者はいないのだ、こういう御議論のように拝聴いたしたのであります。これに対しては、私は感情的な解決の仕方でなしに、ある程度制度上の欠陥であるということをお互いに認め合って、これらに対する対策をどうするかを真剣に考えるのが、国会議員の立場でもあり、国民の立場でもあると思うのでありますが、この点いかがですか。
  154. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 まず初めの問題から申し上げます。薬物が変質しているかどうかということ、この検定は、医者より薬剤師の諸君の方が深い学問を持っておられることは、よく了承いたします。しかし、実際問題といたしまして、薬剤師であるがゆえに、一々薬を盛るときに分析して、あらゆる薬をお盛りになるというようなことは、おそらくなかろうと思う。一つの重曹、一つの甘天、一つのサントニンをお盛りになるときに、一々これが変質しているかどうかという化学的分析などは、断じてされているものではないと思います。そこにおきまして、医者も薬物学は習っておりますし、それから調剤学というものは、医者も習い薬剤師も習うのでありまして、たとえば、私はよく知りませんが、法学部におきましても経済学部におきましても、両方とも重複して憲法はやっておると思います。そういうことで、医者調剤学を習っておりますから、検定ということに対しましては、実際問題として一々さようなことは繁雑でできるものではなし、また見ただけで変質しているかどうかということはわからない。十年前のものを使うということはない。何となれば、治療の責任というものは医者にあります。変質したるもの、効果のないものを使いますれば、自己の信用を失墜いたします。ごれが医者に課せられたるところの一番大きい問題でございますがゆえに、かようなことは御同様であると言ってしかるべきである、こう私は思います。ことに虚偽の請求をしたもの、これは不正の行為でございますがゆえに、犯罪を構成するのは当然でありまして、処罰するのは当然であります。しかしながら、処方せんを交付する繁雑を省いて調剤をしたというようなことは、これとは全然別個な問題であるのでありまして、私は午前のときに申しましたが、大いなる手術をして、ただ口へ入る経口的な薬物について、処方せんを出して本人に見せて、そしてその後に処方を盛らなければならぬというようなことと全然性質が違っておるのであります。これの処罰ということは、刑事上の背任や詐欺と全く趣きを異にいたしておりまして、こういうことはあり得べからざることであるのであります。ことに自己以外の他人の処方せんで、見もせずに盛るなどという医者は、権威を汚されたものである、侮辱されたものである。りっぱな絵かきのところへ行って、この通りにまねてかけなどと言ったら、その絵かきはいかがでありましょう。医者でありましても、品位を保っておる者が、他人の処方を持ってきて、この通りに盛れと言われても、自己処方以外にだれが盛りますか。薬剤師のところへ持っていけば、不愉快な念を起さずして、顧客としてその処方を盛るのであります。医者のところにおいては、そういうことはあり得べからざることであります。もしそういうことがあったといたしましても、何らかの医師の証明がありますがゆえに、直接危害を及ぼすことはなかろうと思う。これは薬剤師医者の権限を尊重するがための一そういう場合の、自己以外の処方せんによって調剤をしたる場合というのは、薬剤師医者調整の上にできたことなのでありまして、背徳、不信だとか、犯罪、どろぼうとか、詐欺ということとは、全然趣きを異にしておるということを申し上げておきたいと思います。
  155. 野澤清人

    野澤委員 この点も見解の相違でありますから、議論をしても、終点まではとうてい行けないと思いますが、重ねて御質問いたします。それほど権威あるお医者さんが、現在の社会制度のもとでは、自分診察した患者に薬を盛る際に、自分みずから調剤するという規定になっておりながら、実際はやっておらない。女中にやらせたり看護婦にやらせたりしておる。そこでわれわれとしましては、決して不正をあばくという意味でなしに、これだけ発達しました現在の医薬品の情勢から見て、普通開業医はどのくらいの薬品を使うかということの調査を全国的にやった。それで、それをどういう方法でやったかと申しますと、地方の医者納めを中心にしている卸売問屋について、二ヵ月間の品目別の納入数量を調べてみた。これは二ヵ月でありますから、必ずしも正しいものとは言えませんが、一番少いお医者さんで——これは外科とか内科とか小児科とか一々分けて調べたわけではありませんで、アルコール心、クレゾールを一品々々数えて調べ上げたのでありますが、昨年の調査の結果上ってきました納入品種が、一番少いお医者さんで二十六種、それから普通のものが大体百二、三十種で、多かったのが二百三十種だったと記憶しております。そうしますと、私のいとこにも医者がおり、また親戚にもおりますが、これらの薬局をのぞいてみましても、実際に看護婦に調剤させても、あるいは奥さんが調剤しても、大体間違いのない薬品しかないということです。その限定された範囲内で処方調剤をしておるのでありますから、あるお医者さんのごとき、親子二代でもう五十年も医者をしておりますけれども、うちでは看護婦や女中に調剤させているが、絶対に間違いを起したことはない、いまだかつて事故を起したことはないという話を伺ったことがあるが、私はおそらくそういうお医者は毒にもならない薬にもならないような薬品を調剤している人だと思います。少くともこれだけ発達をしました毒物や劇物、劇薬、さらにまた催眠剤等を与える上において、単に女中まかせや奥さんまかせにしておくということは、きわめて大胆な行き方だと思うのです。これは悪いことだと私は指摘するのではありません、社会の習慣で、一つのそういう悪習が公然と行われておるのでありますから、これをせんじ詰めていきますと、医者調剤する薬品の内容というものは、医療内容の向上どころか、旧態依然として重曹、苦味チンキの処方せんの域を出ないのではないか、こういう心配がありますので、せめて分業にでもなれば、その投薬します薬品が自分の薬局になくとも、当然これはもよりの薬局とか、どこそこの薬局にあるから、そこで調剤した方がいいというような意見が必ず出るはずだと思うのであります。従って、処方せんを公開するということが、どれだけ医療内容の一助ともなり、また患者も安心して信頼し得る医者にかかることができるか知れないということを申し上げておるのであります。しかし、これは何ぼ議論しても、加藤さんと私との感覚では合わないと思います。それで、ただ医薬分業がいいとか悪いとかいうことは、すでに三年前にもう結論づけられて、お医者さんの話では、極力反対であるが、とうとうまとまったという格好にまで国会の意思で形づくられた。しかもまた、国民の期待というものは、分業になったら、どんなにいい薬が即座に用いられるかというように、逐次年を経るに従って理解の度も高まって来ております。二、三日前のラジオのニュースと討論を聞いておりましても、逐次大衆が分業に対する理解と熱意を持ってきておるところを見ましても、分業というものの是非善悪は、社会の世論にも問わなければならぬ、かように考えるわけであります。従って午前中に、私が陰謀だとか謀略だとか言ったことが、加藤さんに気に食わぬということでありますが、もしそういうことが気に食わぬということであれば、今回この法案提出されましたあなた方の基本的な考え方、また事前にどういう考え方でこうしたものをお出しになったか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  156. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 今、医薬分業を実施するがいいか悪いかという議論は、これはあなたと私と何日議論しても尽きるところがないのでありまして、私は医学を知る範囲におきまして、たまたま医学を知っておりますがゆえに、むしろまあ信仰と言ってよかろうと思う。あなたも、それは信仰と言ってよかろうと思いますから、いわば、昔、宗教上の問題で、僧侶と牧師とが議論したと同じことで、これは幾ら議論をしても尽きるところがないのでありまして、私は常識の発達したる国会の議員諸君の御判断を仰ぐがよかろう、こうしばしば申しておるような次第でございまして、この点はもう前から申し上げた通りで、もはやこれは繰り返しません。ただこの際、医者が二十五、六種しか薬を持っておらぬということは、私は驚き入った事実であります。これはどういう調査でありますか、私はわかりませんが、そういうことがあったといたしますれば、その医者は、今のこの世の中において生存し得ざる落後者になる人であるので、いやしくも自分の信用を高め、自分の収入を多くし、声望を高める上におき一ましては、二十五、六種の乳糖だとか重曹とか苦味チンキだけではなおりません。それはできるだけ努力をして多くの薬を集めて、もしこういう薬があるとすれば、それを新たに購入してやるのは当然であります。しかし、例外もあるのでありまして、医者も人殺しもあればどろぼうもありますから、破格の例をもって仰せになりましては、私は答弁する必要がないと思う。こういう議論になりまして、根本理念に至りましては、私が先般来申した通りでありまして、これは繰り返しませんが、今のようなのは破格の例であります。あるいは眼科の医者であり、あるいは外科の医者であるといえども、私の知る範囲において、幾らいなかの医者でも、二十五、六種の薬では、それはよほどどこかにえらい人であろうと思う。そんなことは私はできないと思いますが、そういうことがありとすれば、そういう人は今の時代の医学からおくれた人でありまして、それはいずれは落後者になっていくべき人だと思うのでございます。
  157. 大石武一

    大石委員 私は補足の答弁をいたします。私は野澤さん、加藤さんとはちょっと考えが違います。私は医者は、薬を少く使う医者ほど偉い、上手な医者だと考えております。私どもの仲間では、薬はできるだけ少い量で、少い種類使って一番効果あらしめることがわれわれの理想であると考えております。私は、今、医者を実際はやめておりますけれども、大学におりましたころは、できるだけ少い量で、少い種類で一番病気に効果あるように努力して参ったのであります。おそらく私は、医者は百種類の薬を十分に、自由に使いこなせたら、大てい十分だと思います。三百も五百もの種類というのは、使い切れぬものであると思います。たとえば、睡眠剤といったって、大きく分ければ三つしかない。何十種類、何百種類もございますが、中身は三種類しかございません。その中で、どれかを使えばいい。製薬会社によって名前は違いますが、大体同じです。ビタミンでも、たとえばアクタミンでありますとか、あるいはオリザニンであるとか、いろいろございますが、いずれもビタミンB1ならB1の含有量がきまっておれば、私は同じだと思う。特に悪質な会社は別でありますが、少くとも一流会社が作ったものであれば、どの製薬会社が作っても、私は同じ量が入っておると思うのです。そういうことを考えれば、百種類の薬があれば、大体ほとんどすべての病気に使える薬が包含されると思う。だから、百種類の薬を使いこなせる医者は、ずいぶん偉い医者だと思います。だから、それらの百種類の薬について、しょっちゅう使っていれば、薬の性状、色、あるいは変り工合とか、いろいろなことがわかってくると思う。だから、それが変質したかどうかということは、おのずから見ただけでわかります。いじくっただけでわかると思います。それを使うごとに一々分析する必要はないと思うのです。そんなわけで、薬を少く使うのが私は偉い医者だと思います。薬を少く使って最善の効果をあげることは、むずかしいと思います。それから処方せんを発行すれば医者の使う薬がふえて内容が向上するというが、これはおかしなことであると思います。処方せんを一々薬剤師に渡さなくたっていい。医者患者をなおすことが一番の生命であり、またそれが自分の繁栄の道であります。患者がなおらなければ、医者ははやらないのです。医者の責任を果せないばかりでなく、いい生活ができないのですから、医者というものは常に努力して、できるだけ新しい医学に沿うように勉強して参っております。新しい薬ができれば、それを文献も調べ、使ってみるでありましょう。努力するのでありますから、別に処方せん薬剤師にやったからいい薬が使え、医学が進歩するというのは、これは私は医学者だからかもしれませんが、きわめて感覚が違うと思うのでございます。そんなわけでございまして、薬の種類が多いか少いかということは、別に問題にならぬと私は考えております。
  158. 野澤清人

    野澤委員 この点も、議論をしても切りがないようでありますから、一応この辺でとめまして、今回の改正案提出されまして、その後提案理由説明を聞いたり、また個々の問題について御質問をいたしまして、不満足ながら一応解説を得たのでありますが、これだけ重大な法案提出される議員として、私は総体的に見まして、きわめてずさんであったという結論だけしか得ないのであります。この改正案提出された意図については、たびたびお尋ねをいたしておりますが、結果的には、医薬分業を推進する目的でやったと答えておられますが、本質的な医薬分業の理念さえもわきまえておらないというのが、現実ではないかと思うのであります。全く場当りの提案であると極論申し上げても差しつかえないと思うのです。長い年月を要して、社会問題として多年論議されましたこの分業法を、こうした簡単な操作によって改廃されるということは、国家国民にとって全く不幸きわまりないことであると私は考えるのであります。ことに、今度の改正案内容に至りましては、これが果して良識ある議員の行為かと、あぜんたらざるを得ないのでありますが、個々の面について論議を重ねていきますと、見解の相違であるという一語に尽きるよりほかない。ただ一貫して私は今度の法案提案されます動機から経過を考えてみまして、さらにまたこの提案者のお二人の態度から見ましても、今度の法案提出というものは、実際に何らか陰謀または策謀によって行われた感じしかしないのであります。これは私の感じでありますから、陰謀といわれ、策謀といわれたことがしゃくだといわれるなら、これは別であります。しかしながら、あなた方として今度の改正案をお出しになるについて、成規の手続をとってやられておるのでありますから、十分自信に満ちた手続であるということをお考えになると思うのであります。しかし、私たちの方から見ますと、この提案の動機、経過等から考えてみましても、あるいはたびたび新聞に載っております大石案というものが生まれます経過についても、少からず疑問を抱いておるのであります。あるいは誤解かもしれませんが、 こうした点について、私は陰謀があるという断定のもとに申し上げ、加藤先生からは陰謀がないと言うてしかられております。これらについて、大石君自身の良心に訴えて、果して陰謀でないということを、あなたは自信を持ってお答えできるかどうか、この点をお伺いいたします。
  159. 大石武一

    大石委員 それは何と申されましても、私は陰謀とは考えておりません。私は医者としてではなく、医者のこともよくわかっておる国会議員として、この改正案が来たるべき四月から実行される法律第二百四十四号よりは、国民の医療に、生活に適合するという信念を持って出したのでございます。陰謀とかいうことは、どのようなことをさすのかわかりませんが、私、実は考えたことはございません。
  160. 野澤清人

    野澤委員 こうした問題は、将来の分業の問題にも影響いたしますし、また事理を明らかにしておく必要がありますので、特に大石先生加藤先生提案者の代表として立っておられる以上は、一応はっきりさせておく必要があるのじゃないかと思うのです。そして大石君と私との関係は、第十五国会から以後のつき合いでありますので、本年の四月以降、あなたとは十分いろいろな公けの場合、私の場合のおつき合いもして参りました。たまたま医薬分業の問題については、二人で期せずして話し合いをしたはずであります。しかもそのときは、重大な問題であり、しかもそのバックには医師薬剤師というものがいるのだ、お互いにこれはしのぎを削ってけんか、抗争をしないようにしようじゃないかという話し合いを再三いたしております。しかもまた、先月の末にも、そうした事柄について、私どもの万でも一応医師会の方の御了解のいくような案を作ってみたい、あるいは薬剤師の方も了解するような案を作ってみたい、こういうような話し合いも非公式にやっております。ところが、突然七月の二日か三日でありますが、加藤先生から自由党の総務会に話をされたときには、医師会薬剤師会も納得をし、また両派社会党も賛成をして、四派共同提案改正案を出すのだ、こういう解説があったとか承わっております。しかし、これは自由党内部のことでありますから、どういういきさつがあったか、私は存じませんが、ただその際に、重要な案件だから、これは君秘密にしようじゃないかということを言われた。こういうことで、すったもんだしておりますうちに、これは民主党も自由党も、提案を有志によって出すことは差しつかえないということで提案された。これも私は、成規の手続をとってやっておられるのですから、何ら差しつかえないと思う。ただその間に、どなたか若い医者の議員の方が、民主党、自由党の議員のところを歩きますときに、医薬分業改正案であるが、これは妥協案だ、この案は医師会薬剤師会も話合いがついた改正案であるから署名してくれというて誘ったということと、今度は反対に、この改正案は妥協案であるから、医師会薬剤師会も反対しているが、ぜひ成立させたいから署名してくれというような話をしたとか、こういうことで、実際に内容を知らずに判を押した者もあるということであります。これは勧誘する立場の方としては、当然なことであろうと思いますが、私は今回提案をされました改正法案の出ます根拠というものは、決して今国会だけに——私は大石君との話し合いが原因だというように考えておるわけではありません。長い間の闘争経過から見まして、おそらく昨年当りから包蔵されていた一つの闘争の流れというものがこういう結果に立ち至ったのだ、しかもその間には、たとい加藤先生がどう言われたということを聞きましても、それが正しいものと私は了解しているわけではありませんが、ただそういうふうに曲解された、いわゆる歪曲された話し合いでこの提案がされたという事実に対して、私は陰謀術策がとられているのではないかという感じがするわけであります。こうした点について、それはお前の間違いであるというならば、私もいさぎよく取り消しをするつもりでありますが、少くとも昨年の秋からこの夏にかけましての、いわゆる医系の方々の動き工合から見ましても、やはりそこには作為があったように感ぜられるのでありますが、こうした点について、お二方はどんな御見解をお持ちですか、御説明を願いたいと思います。
  161. 大石武一

    大石委員 ただいま野澤さんから、いろいろとこのいきさつについてお話がありましたが、私も私の気持を申し上げたいと思います。  私と野澤君とは、久しい前からの友人でございます。一緒にいろいろなこともして、この医薬分業問題でも、お互いに今度の二月の選挙で当選して以来、何とかしてお互いの納得のいくような、医師会薬剤師会もけんかしないようなことにしようじゃないかということを私から申し上げて、野澤君も納得されて、お互いに努力しようと約束して参っておりまして、それは仰せの通りであります。ことに私は、二月以前は国会議員ではございませんでしたし、また医師会というものの表面的な活動に一切入っておりませんでした。昨年以来のいわゆる医師会薬剤師会の抗争には、一切関知しておりませんでした。遠くから見ておって、この医薬分業の問題をめぐって医師会薬剤師会が相抗争するということは、決して国民のためにいいことでないし、医師会薬剤師会のためにもよくないということを考えておった次第でございます。それで、一日も早くけんか抗争をなくしたいという考えのもとに、当選して以来野澤君にもそのことを申し上げ、お互いに努力して解決をはかろうじゃないかということを言っております。でありますから、私どもは、この改正案を企図いたしまして、いろいろな案を作っておりましたが、この案の草稿ができたときには——私はみなにしかられるかもしれませんが、野澤君に案を上げて、こういう案ができたから、検討して、どういうことが悪いか、悪かったら聞かせてくれということをあなたに申し上げたはずだ。それであなたは、それを受け取って三日、四日たったあとで私のところに来て、なかなかあれはむずかしいぞということを言われたことを御記憶のことと思います。私はこのようにして誠意をもって、あなたとともにでき得るならば手をつないで、あなたは薬剤師会をなだめ、私は医師会をなだめて、お互いに提携して納得のいくような筋合いのものにして、けんかをなくしたい、こう努力して参ったわけであります。自由党内のことは、私はわかりません。たまたま各党で共同で提案しようじゃないかという相談をしまして、このような案をお互い有志が集まって作りたわけであります。自由党内にこういう問題が出たときに、どういう事情があったか一切わかりませんでした。あなたは多少誤解をされたようで、あれ以来その問題については、あまり親しく話をしていないのが実情でございます。  私どもが、何でこの国会にこの問題を取り上げたか、来年の四月から実行される法案を、なぜ今ごろ取り上げたかということでございます。私は今はっきり申しますが、去年でも、医師会薬剤師会の抗争というものは、実に激しいものでございまして、世間では泥試合と言った。今後これを放置しておいて来たるべき通常国会においてこの問題が取り上げられますならば、必ず猛烈な泥試合が行われて、血を見るような争いが起ると私は思います。去年と比べまして、いよいよ来年四月から実行するとなれば、来たるべき通常国会を通じて、お互いがけんかの準備を整え——かりに薬剤師側は一切けんかはしないと言うかもしれません。医師会としては、おそらく絶対に納得できないと思います、あの法律第二百四十四号は、絶対納得できないと思います。これを改正しようとして努力されると思う。あの延期の場合でさえ、あのような抗争があったのでありますから、これを改正しようという場合には、猛烈な抗争が起ると思います。そうしてお互いが全国から医師薬剤師を動員して争いをしたならば、それははなはだしい泥試合になって、どうにもこうにも収拾がつかなくなってくる。これは政治家としては、最も避くべきことであると思います。でありますから、私は、これをそのような泥試合にならないように、国会において自主的に、そのような外部勢力に左右されない判断によって、この問題が解決されなければならないと考えまして、医師会薬剤師会も戦闘準備をしておらない時期をねらって、この国会においてこれを改正したらよいと考えて、あえてこの国会にこの法案提出したわけであります。従いまして、私どもは決して陰謀とかなんとかいうものがあったわけじゃありません。野澤君にもその草案をお目にかけたはずであります。お互いが納得づくで、お互いのバックにある団体をなだめようじゃないかということを約束したはずです。私はこの修正案は、おそらく現在でも日本医師会は不満だと思います。われわれは医師会に、全面的な廃棄法案を作るように迫られましたが、私は断わっております。医師会には、全面的な医薬分業廃棄考える者が多くあるようでございます。しかし私どもは、現在においてはやはりこの程度修正案が一番妥当だ、それ以外に解決の道はないと思いまして、あえて多くの医師の反対を押して、応援も得ないで一あなた方はしょっちゅう薬剤師の方がたくさん傍聴に来ておられるし、いろいろな応援もあるようでございます。私たち医師会のバックがない。医師会は、この案の通過には何らわれわれに協力してくれません。しかし、われわれはこうすることが医師会薬剤師会の戦いをなくすことであり、国民の医療に多少でもプラスになると考えまして、一生懸命がんばっておる状態でございます。でありますから、決して私どもは陰謀なんということはございません。
  162. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 一言言わせていただきます。この法案は、ここに成規の手続を経て論議しておるのでありまして、その前の問題については、私事にわたりますので、かれこれ——ただし、ただいま仰せになりましたような、私は陰謀などはいたしておりませんということを申し上げます。また、だれかがうそを言って署名を取ったなどということを仰せになりましたが、私の方に対しては、断じてさようなことはいたしておりません。とにかく問題は、これが成規の手続を経て委員会提出されて、その是非を論議することでありまして、その前の問題は、かれこれ表ざたにすべき問題ではないのでありますが、事実は違っておるということを申し上げます。
  163. 大橋武夫

    大橋(武)委員 議事進行について。ごらんの通り、民主党の諸君はほとんど当委員会に出席いたしておりません。(「おるぞ、おるぞ」と呼ぶ者あり)今わずかに一人ようやく出てきております。それで、この委員会が始まりましてから今日まで、民主党の諸君の出席が非常に悪いことは、すでに委員長も御承知の通りでございます。われわれは、特に民主党の理事の諸君の出席があまり悪いために、何とかかわってもらいたいというような考えも持っておったようなことは、すでに委員長も御承知の通りでございます。今日、会期も非常に押し詰まっております際に、この重大なる医薬分業法案もまだ審議中であり、さらにまた政府の重大な法案となっておりまする健康保険法案のごときは、ほとんど審議に着手したばかりで、いつから本格的に審議ができるか、わからない状況になっておる。で、この問題については、先ほど民主党の理事の諸君から、非公式に、来週早々から一つ健康保険法案の審議を始めてもらえないか、こういうお話があったのでございますが、こういう民主党の諸君の出席の状態では一この委員会におきまするいろいろな法案、特に政府提出の重要法案の審議が遅れておるということは、全く民主党の責任である、こう言わざるを得ないと思うのでございまして、委員長はよくこの事実を銘記せられまして、至急に民主党の委員諸君の出席を要請せられんことを希望いたします。
  164. 中村三之丞

    中村委員長 今呼びにやっております。できるだけ出席するように、党においても督励をいたしております。はなはだ出席率の悪いことは、私も民主党に属する委員長といたしまして、まことに恐縮にたえませんが、われわれとしてはできるだけ努力をいたしておるつもりであります。どうか民主党と同時に、この委員会は全員出席していただく、こういうふうに一つ御同様努力をせられたいと思います。  それでは質問を続行いたします。野澤君。
  165. 野澤清人

    野澤委員 先ほど大石委員から、いろいろと御説明をお聞きしまして、何ら陰謀がないということでありますから、これは善意に解釈して、私も了承いたしますけれども、ただ私との話し合いについては、少くとも二、三日中に話し合いをしようという段階まで約束しておきながら、これを踏みにじったということは、あなた自身の議員としての友情や、良識に、私は満たないものがあるということだけ申し上げておきます。  それからさらに、今度この案を出しますことについて、医師会が全面反対であるということも、お医者さんである、医師会会員であるあなたからのお話でありますから、これも私は了承いたします。ただ今度の案は、廃案より以上にひどい案であるということがわれわれの見解であります。従って、廃案を主張する医師会が反対するということは、廃案という言葉がないので反対するだけで、内容を検討しておらなためであるとわれわれは思うのであります。従って、長年の医師薬剤師の闘争のごとく誤解されたこの問題に関して、ただ医師薬剤師の泥試合いは十分避けていくべきだということは、あなたの言われた通りであります。そうしてお互いに善良な了解のもとに、この案をいかにして実施するかということについてこの前提として、相互協定もしよう、話し合いもしよう、十分に話し合いをした上でもって、お互いにあやまちのないようにしようじゃないかという話し合いも、これは個人的にした問題でありますから、公けの席上でどうこう言うことはどうかと思いますけれども、一応経過だけは申し上げておきます。しかもあなたの御見解は、何ら医師会薬剤師会も戦闘準備のできないうちにこれをやってしまいたいというので、急遽上程したというのでありますが、これも一方的な意思決定でありますから、やむを得ない事柄だと思います。ただ私が申し上げたいことは、昭和二十六年に分業法の改正案を決定した国会権威というもの、あるいは審議権というものに対して、どういうお考えを持っているか。しかもまた今度の医系議員の行動というものについては、少からず私の方では疑問を持っている。その疑問を持っているということは、どういうことかと申しますと、昨年の十二月三日でございましたが、分業実施を延期されるときに、各党派が話し合いをいたしました上、参議院、衆議院とも一年三ヵ月延期するということを決定しました。この一年三ヵ月延期するということは、分業法を実施するという前提のもとにしておるのであります。その一年三ヵ月延期するということを決議された国会が、今度は根底からくつがえるような案を出さなければならぬということは、たとい加藤先生大石先生のお話を百万べん聞いてみても、了解に苦しむわけであります。しかも、その内容がわずかに違うというならともかく、その考え方においても、立案の仕方においても、また立方形式から見ても、きわめて不純な動機や経過が包蔵されておるのではないかという点であります。特に今度の提案者となられました百六十名からの議員というものは、その真相を何ら知ることなくあるいは調印した方もあるように聞いておりますし、あるいはまた、意識的に賛成者になられたような方もあると聞いておりまして、この立法措置に対しましては、厚生議会史の上に大きな汚点を残すものでないかという感じが私はいたすのであります。その理由は、かつて衆議院の予算委員会の席上で申し上げたことがありますが、政治献金とこの国会内におけるところの政策の転換というものが、不可分のうちに誘導されていくという傾向がもしあるならば、ゆゆしき大問題ではないか。この政治献金というようなものも、医者の団体が医系の議員に政治献金をするということは、これは当然であろうと思います。同一業種でありますから当然であると思いますが、何ら関係のない方々百名も百五十名もに政治献金をしておる。そうして、政治献金だからこれは制限がないという法務大臣の答弁も得ましたのでありますから、私はその点については、金額の高によらず、これはまあやむを得ないことだと思うのであります。ところが、今回のこの改正案提出の経過を見ますと、当時正式に選挙管理委員会に届け出た、いわゆる医政会から献金を受けた方々が大部分を占めているということ、しかも提案者になっております者が、自由党二十五名、民主党二十五名でありますが、そのうちはっきりと届け出をされまして、最高百十万、最低七戸というような方が五十名のうちに二十一名もおる。また賛成者のうちに二十五名もそうした献金を受けた方々がいる。こういう一つの政治活動の一貫した流れを考えてみますと、かなり不純な動機が含まれているのではないか。特に私今度の政治献金の問題につきまして、予算委員会のときに、法定選挙費用は七十万円であげるべきものであるのに、百万も百四十万も献金するということは、選挙を利用しての一種の贈賄行為になるではないか、こういうことは政界のあり方としましても、選挙のあり方としても工合悪いじゃないという質問をしましたが、不得要領であった。そこで、今度のこの提案の流れを見てみますと、多数の同志を獲得するために、かなり活発な御活動を短期間にしたようでありますけれども、その五十名のうちで二十一名もの人が、選挙の際に献金を受けた方々だ。こういうことを結び合せて考えてみますと、大事な国政が、選挙のときのいわゆる醸金によって左右されていく、しかもまたその中には、自分自身が献金を受けておりながら、この賛成署名はしないが、あるいは朋輩に義理があるからということで、賛成署名を慫慂したというような方も聞いております。こういうことが実際に現在の国政の上に行われておって、しかも時代逆行もはなはだしいと私が申し上げましたことは、法案そのものが、一歩前進するならよろしいが、百歩も後退するような内容を盛って出てこられたというところには、やはり昨年末から本年の一月のいわゆる医師会の選挙対策等から端を発した一つの金力によるところの権力政治に、逐次分業問題が移行しておるというような感じがするのであります。こうした問題等をかね合せてみますと、今度の医薬分業改正案というものは、相当の陰謀術策をたくましゅうされておったと、私が想像して申し上げましたので、この点について、お二人のどちらでもけっこうです、何ら関係がないといって御釈明になればそれまででありますけれども、一応これらの関連性というものは、われわれが疑いを持つことよりも、国民自体が相当の疑いを持って参る問題だと思うのであります。七十有余年来の分業闘争史の上において、今度くらい大金が使用され、しかも広範囲に政治献金がされたということは、おそらく初めてでないかと思うのであります。この点について明確な御所見を承わりたいと思います。
  166. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 まず、初めに一つお答えいたします。昨年延ばしましたのは、必ずいつ幾日より実施するという御意見の方もあったでございましょうし、またその間に、あの短時間の間に改正法律案を通過させ、起案することも困難であるがゆえに、その間延ばすということもあるのでありまして、あなたの御解釈になるようなことではなかろう。そういう方もあったかもしれませんが、しからざる方もあった。その間に、この法案を延期をしておる間に、われわれは改正案を出したいというつもりでありましたから、これは御解釈でありますが、われわれはそうであると思います。  それから、私はまことに紳士としてあなたに敬意を表しておりますが、イタチが最後っぺを出すときは、いろいろな武器をもって戦って、かなわぬときに最後っぺを出すのであります。これはまことに最後っぺと申すのでありますが、この問題について、あなたは正々堂々と鶴翼の陣を張って、われわれに対して御議論をお進めなさった方がよかろうと思います。ことに、ただいま何やらと金の問題がありましたが、あなたが配付されました、あのわれわれのところに送られました医薬何とか、薬学何とかいう新聞に御掲載になっておることである。ことに、これは予算委員会においてあなたが御論議なさったことでございまして、政府当局、警察当局及び法務大臣の答弁もあったことでございますから、私どもから申しますれば、薬政会と申しますか、こういう方の方は絶対そういうことはなかったでありましょう。どうでありますか。さようにまことに醜態なことは、われわれはまことに恥じるのでございます。われわれは届け出るべきものはちゃんと届け出てあるのでありまして、これは官報とか何かに掲載したことが明らかになっておる、これはごらんになったことであろうと思います。こういう品位のないところの議論よりも、堂々と御発表になって、この法律案について御論議になるように、私はあなたに紳士として御忠告申し上げたい、こう思うのであります。それはたびたびやっており、たびたび予算委員会においてお言いになり、そしてわれわれ全員にそういうものが配付されたことであろうと思います。このようないやがらせよりも、堂々御論議あらんことを切望いたしておきます。
  167. 野澤清人

    野澤委員 いかにも正々堂々でないようでありますが、私はそういうことが誤解の種になる、泥試合の焦点になるのではないか、こういうことで、今回の法案提出された動機に不純な動機がある。しかも陰謀術策がたくましゅうされたということを私は申し上げた。それについて、陰謀術策は絶対にない、それは思い過ごしだといいますから、私はその一つの経過として事実を申し上げたのであります。さらに、どうしても正々堂々で戦えということでありますならば、なぜこうした献金が、縁もゆかりもない議員のところにいくのかということを申し上げなければならない。それまで申し上げてよろしいということであれば、遠慮なく私もあなた方初め一切申し上げることにいたしましょう。
  168. 大石武一

    大石委員 お答えいたします。日本医師連盟は、いろいろ優秀な国会議員として当然出したいと思う人を公認して、それ相応の援助はしたことと思います。私も日本医師連盟の公認を受けまして、何がしかの公認料をいただいて選挙を戦って参っております。しかし公認料をもらいましたことと、それをもって国会議員としての身分を左右されることとは違います。私どもは、かような援助を受けられ、公認された方々は、そのような卑しい気持で金を受け取られたのではないし、また当選された後においても、そのような卑しい気持で行動されているとは考えません。それほどわれわれの同僚たる国会議員は卑しい人間だとは考えておりません。それから薬政会でも、相当の公認料を出していろいろな援助をしていることをわれわれ知っておりますが、それはわれわれと同じ気持、同じ感じで受けられたと思います。あなた自身も、薬政会からいろいろ公認料を受けられたと思いますが、あなたもわれわれと同じような気持でおられると思うのでありまして、これを本法案と結びつけて考えられるところに、考え方が不純であると思います。国会議員としては、もう少し正しい気持から行動されたらいいと思います。
  169. 野澤清人

    野澤委員 もっともらしく聞える事柄でありますので、一応それを了承してもよいのですが、公開の席上で、加藤委員は二回ほど、政治は力である、あえて話し合いをする必要はない、力で戦えばよいのではないかということを言明されております。この力というものがどういう内容を含んでいるかはわかりませんが、私自身が拝聴したところでは、大石君と私が話し合いをしていたことも、おそらく政治は力なりでもって、お前ら話しても始まらないからやめたらどうか、こういうようなことで力を発揮されたのだと思います。公然とこの国会内で力の勝負をするということになると、相撲を取れば私は負けないつもりですが、とにかく莫大な金でもって金力で争われたのでは、とうていわれわれはかなわない。医師会が選挙で五千万円使った、六千万円使ったというような問題が持ち上っている。しかも私が質問をしたら、すでに終ったのではないかと言われますが、私はそういうことが、今度の提案の大きな動機になっているのではないかということを申し上げている。しかも、そのとき申し上げたことは、薬政会もこれこれの金を使った、歯科医師会もこれこれの金をととのえておったということをはっきり申し上げております。決して医師会だけを申し上げているわけではありません。しかし、その金額があまりにも差があり、しかもまた人員がきわめて広範であるということから、一般の社会の誤解を招くようなことがあってはならない。特に、この分業法案についてとかくの批判のありますときに、こうした不純な動機で一般国民の誤解を招いては、医者薬剤師も損でありますから、なるべくこれを円満にやりたいという考えで、大石君とも話し合いをしたけれども、その約束を踏みにじってまで、しかも各党が了解の上で共同提案でやるのだからということでやられた、こういうところに私は相当の陰謀術策があると申し上げたのでありまして、この点について加藤先生が、陰謀術策では絶対にないのだと言われれば別問題であります。しかし、力の政治というその表現の仕方はどういうところにあるか、お話し願いたいと思います。
  170. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 私がある会合において、政治は力なりと言いましたことは事実であります。横車でも無理でも、力があれば通り、正義も力がなければ通らない、政治は力であるということを申したのであります。力とは、あなたにお答え申し上げるまでもなく、議会においては頭数であります。これを力というのであります。相撲を取るとか、げんこを振り回すとかいうことではない。力すなわち数によって処置する、こういう解決をするよりほか手がないのである。これが民主主義の当然のルールであります。政治は力なり、正しいことを守るには、力をもってしなければ守れない、これが何が悪うございますか。
  171. 野澤清人

    野澤委員 またしかられましたが、私は悪いということは一言も申し上げていません。ただ力の政治というものの限界を、私は聞いたわけであります。実際問題といたしまして、今日の国会において、何でもかでも頭数をそろえればよろしいということは、一応私も納得いたします。しかし、七十年も続いたこうした重要な問題を審議するに当って、単に力の政治ということでこれを解決するということは、少し行き過ぎではないか。しかし、たとい行き過ぎであっても、私は悪いとかよいとか批評しているんじゃありません。その根本を流れるものは、過般の医師会関係の政治献金というものが相当の影響があったのではないか。しかも、その当時うわさされた、一億集めたとか、一億二千万集めたとかいうような、その内容について私は申し上げているのじゃありません。ただ選挙管理委員会に出たものだけでも、約五千万の金が流れ、しかもまた歯科医師会の方も一千二百万の金が流れている、こういう事実に即しまして、今日の力の政治といわれる頭数を獲得する動機になったのではないか、万一そういうことがあるとすれば、国民の大きな誤解を招くから、この点は実際問題といたしまして、われわれはなるべくこうしたことの誤解を避けなければならぬ。これを明らかにするために、私は大石君と二人でいろいろ苦心したのですが、大石君に一ぱい食わされた。しかし、今日になって頭数を調べてみると、一日か二日のうちにこれだけの頭数がそろった。そろったが、その提案者二十五名のうちでも、すでに二十一名が政治献金を受けた人たちだ。こういうことをもってしますと、今度の医薬分業改正案の内面に伏在していることは、医師会のきわめて巧妙ないわゆる陰謀術策であると私は考えるのであります。これは見解の相違でありますから、あくまでもそういうことはないということであれば、また別問題でありますが、一応こうした点について、泥試合になることを避けるために、紳士協約までしたことを踏みにじって、今日力の政治であるなどといって数で押し切るというようなことになったのでは、国民の正義感も、あるいは国政の審議権というものも、全く地に落ちなければならない。国民の正当な批判も受けなければならぬと私考えましたので、そうした意見を申し上げたわけであります。
  172. 加藤鐐五郎

    加藤(鐐)委員 これはどこか薬剤師協会と申しますか薬政会と申しますか、名はわかりませんが、われわれの答弁する限りのことでないと思います。この民主主義は、話し合いをいたしまして、できるだけみんな一致して  いきたいのが本義であることは申すまでもないのでありますが、最後は力の頭数でケリをつけるよりほかいたし方がない。まことに悲しむべきことでありますが、結論はこれ以外ないのであります。しかして私は、この中に政治献金あるいは選挙のときに公認料をもらった方が、どの方であるかは知りません。それはこんな問題とあなたがいろいろ結びつけてお考えなるのでありましょうが、薬屋の方も官報に出ておる通りでありまして、相当御献金なさったことであろうと思いますので、目くそ鼻くそを笑うがごときことであるのであります。こういうことは、われわれが答弁に立つ必要はないと思いますけれども、誤解を解くために、これも申し上げておきます。
  173. 大石武一

    大石委員 私も、ただいまの私に関することについては、別に答弁を申し上げる必要はないと思います。私が裏切ったとかなんとかいうことは、おかしな話でありまして、そんなことは、私は決して考えておりません。ただ、言えばわかりますように、私が同志の約束を破って、ことさらにないしょで、われわれが作ったこの法案を最初にあなたにお目にかけまして、これで十分考えてほしいと言ったことだけをもって、果してわれわれが裏切ったかどうか、何らの回答もして下さらなかったあなたの方にも落度がないかどうか、お考え下さればおわかりになると思います。  それから、あなたは、すべて金をもらったことがこの法案に関係があると言うが、この提案者は、みな同僚の国会議員であります。あなたと同じ立場の、おそらく同じような正義感を持っておる国会議員だと思います。その同僚が金で動かされたというお考えは、あまりにさびしいと思う。そのようなお考えをあなたがお持ちになって、ほかの人間もそうであろうとお考えになるのはおかしい。少くとも私の尊敬しておるあなたは、そのような下等な下劣な考えはお持ちにならないと思います。従って、あなたの信頼する同志であり同僚である国会議員が、そのような下劣なことで、自分の信念を変えることはなかろうという私の考えでございます。
  174. 野澤清人

    野澤委員 この問題については、私自身としては、何も内面暴露をするとか不徳義漢呼ばわりをしようという考えで申し上げておるのではなくて、今度の法案提出しまするに至る動機や経過から見て、相当陰謀術策をたくましゅうしてやられた、こういう感じが私自身いたしますから、万一そういうことでないならば、国民に対して誤解のないようにしておかなければならぬ。万一そういうことであるならば、その内容を検討されるこの委員方々は、相当慎重にこの法案を取り扱ってもらわなければならぬ、こう考えて申し上げましたので、この政治資金がいかように使用されましょうとも、また結果的にどのような効力を発生しようとも、私自身は、それについて関知するところでありませず、また何らの興味も持っておるものでありません。ただ、民主政治を口にしながら、こうした不浄な政治資金によって、わが国の権威ある国政が左右されるということが、万一国民の間に誤認されるようなことがあったならば、議会政治確立の上からも、立法府浄化のためにも、国民の不可解な政治資金の悪影響を防ぐ上からも一、さらに社会正義のためにも、敢然としてこれらの不徳行為と戦わなければならぬと思うのであります。従って、あなた方にこれの回答をせいというのでなしに、そっちへ行ってはうそっき、こっちへ行ってはだまし打ちをし、しかもまた政党全体に対しては、重要問題であるから秘密にしておけというようなことまで言われたといううわさも聞いておりますので、その間には、何らか秘密の策略があってやられたような感じがするのであります。これ以上お互いに議論いたしますと、私自身といたしましても、必要以外の人の名前も申し上げなければなりませんから、万一あなた方が御希望であり、今度の提案者の中のこれこれの人がこれこれの金額をもらっておるということが聞きたいということでありますれば、この少人数の委員で議論しても始まらないと思います。あらためて委員長から全員招集していただいて、その席上で私の方から全部発表いたしたいと思いますので、本日はこれにて私の質疑はとどめまして、明後日継続して質問をいたしたいと存じます。
  175. 中村三之丞

    中村委員長 明二十一日午前十時から医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案についての公聴会を開会することとしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十九分散会