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1955-07-07 第22回国会 衆議院 社会労働委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月七日(木曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 中村三之丞君    理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君    理事 山下 春江君 理事 山花 秀雄君    理事 吉川 兼光君       植村 武一君    小川 半次君       亀山 孝一君    草野一郎平君       小島 徹三君    山本 利壽君       横井 太郎君    亘  四郎君       越智  茂君    倉石 忠雄君       小林  郁君    八田 貞義君       多賀谷真稔君    滝井 義高君       中村 英男君    八木  昇君       横錢 重吉君    神田 大作君       矢尾喜三郎君    中原 健次君  出席政府委員         法制局参事官         (第三部長)  西村健次郎君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 浜口金一郎君         専  門  員 山本 正世君     ————————————— 七月七日  委員岡本隆一辞任につき、その補欠として八  木昇君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員八木昇辞任につき、その補欠として小川  豊明君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員小川豊明辞任につき、その補欠として岡  本隆一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月六日  戦傷病者割当雇用に関する請願神田博君紹  介)(第三五九〇号)  健康保険法等の一部改正に関する請願小林か  なえ君紹介)(第三五九一号)  同(長谷川保紹介)(第三五九二号)  同(八木昇紹介)(第三五九三号)  同(井谷正吉紹介)(第三五九四号)  同(小坂善太郎紹介)(第三五九五号)  同(前尾繁三郎紹介)(第三五九六号)  同(三輪壽莊君紹介)(第三五九七号)  クリーニング業法の一部改正に関する請願(小  笠公韶君紹介)(第三五九八号)  昭和三十年度簡易水道事業国庫補助に関する請  願(川野芳滿紹介)(第三五九九号)  公立病院整備費補助金交付に関する請願川野  芳滿紹介)(第三六〇〇号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  失業保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第九四号)  労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一一号)  四国電力株式会社人員整理問題     —————————————
  2. 中村三之丞

    中村委員長 これより会議を開きます。  四国における電産の整理問題について、発言の申し出がありますので、これを許可いたします。八木昇君。
  3. 八木昇

    八木(昇)委員 実はあるいはお聞き及びかと思うのでございますが、電産労組四国地方におきまして、ただいまからおよそ三年前に電産、炭労の大きな争議がございましたが、その当時の電産四国地方本部執行委員長以下幹部十一名の処分問題が、それから三年近くを経過いたしました今日、突如として今起っております。これは将来の労働者のいろいろな運動にとりまして、影響するところきわめて大きな問題であると思いましたために、本日緊急に質問をお願いしたわけであります。  おそらく御承知だと思いますが、最初にお伺いいたしますが、四国地方本部組合幹部十一名の懲罰問題が起きておるというようなことについて、労働省当局はこれをすでに御承知になっておるかどうか。もし御承知になっておるといたしますならば、これに対してどういうふうな見解を持ち、またどういうふうにしようとしておられるか、その辺を最初にお伺いいたしたいと思います。
  4. 中西實

    中西政府委員 四国電力会社懲戒事案につきましては、われわれもある程度詳しく存じております。この問題は、例の昭和二十七年秋の争議にからんでの問題でございまして、おっしゃるように、その後日時が経過しておりまして、その点で、実は組合としても問題にしておるようでございます。これは現在、会社懲戒委員会で事実をさらに検討することになっておるようでありまして、これに対しまして、実は電産から争議予告労働大臣並びに中労委に出ております。これは法律に従って提出されましたので、われわれの方でも受理いたしまして、その後の成り行きを見ておるわけでございます。私どもとしまして、この問題について今特にどうこうというふうには考えておりません。  この懲戒事案のうちの刑事事件になったものにつきましては、現在検事控訴あるいは被告人からの控訴がなされておりまして、それによって刑事事件は解決していく。さらに懲戒事案につきまして、これが不当なものなれば、それぞれあるいは地労委あたりに提訴される手段もございますので、われわれ労働省といたしまして、特にこの問題について積極的に何かするということは考えておりません。
  5. 八木昇

    八木(昇)委員 これは、ただいまのようなお答えでございましたが、非常に大きな問題を実は含んでおりまして、私どもとしましては重大な関心を持っておる。大体概略御承知だと思いますけれども、簡単に御説明申し上げますと、昭和二十七年のストライキの際における四国地方本部委員長菅正三郎氏以下四国地方本部の全部の常任執行委員並びに当時の組合幹部を含めまして十一名を懲戒処分に付さんとしておるわけであります。ところが、その中身を見ますと、この十一名の人たちの大多数というものは、刑事上の問題にももちろん何ら問われておりませんし、正当な争議行為をやっておるわけであります。ところが、これに対して会社側が、どういう理由でこれを懲戒にかけようとしておるかと申しますと、昭和二十七年の秋季において違法不当な争議行為企画指導並びに遂行し、かつ実行した。このことは会社就業規則に照らして不都合な行為であるこれは会社懲戒理由書の原文そのままであります。こういうことで懲戒をしようとしておるわけです。そういたしますと、これは労働法によってストライキ権を与えられ、それに基いてストライキをやった以上、正常なる会社事業運営支障を来たすことは当然であります。そのことをもって、これを就業規則に照らして不都合な行為であるとして処断しようとしておるわけであります。  しかも、その十一名の内容を見ますと、幾多の矛盾をはらんでおるわけであります。御承知かと思いますが、この電産ストに関連して、電源ストは合法であるということは、再三にわたって判決が出ておる。ところがそうではなく、ピケットを張ってそのために会社側との間に若干のトラブルを起した、この問題で六つの起訴事件が起きたわけでありますが、それによって第一審において罰金刑を受けた者が二名あります。ところがその二名の人は、すでに第二組合に加入しておるという理由でございましょう、そういう人たち処罰対象となっておりません。それから、はなはだしい例を取りますと、渡辺という人のごときは、この処罰を受ける直前によしまして、四国電力がたくさん株を持っておる姉妹会社美馬水力という会社就職あっせんをして入社せしめておる。そういう人が二名もおるわけであります。また先ほど申しました通り高知の支部の委員長のごときは、何らの刑事上の問題その他もないにかかわらず、これが懲戒委員会にかけられておるという事態になっておるわけです。  そこで、この際私がお伺いたしたいのは、元来労働省というのは、労働者のいろいろな運動に対する取締り機関でないことは申すまでもないことであります。労働者のいろいろな福祉を擁護するという主たる任務を持っておるものであるというふうに思いますので、そういう観点から、労働省はこういった事態に対してどういう考えを持ち、どうしようとしておられるかということをお伺いしたいために以下の事柄を聞くわけです。  まず第一に、ストライキを行なった幹部に対して、それを就業規則に照らして不都合な行為であるとして処断できるということが蓄えるかどうか、こういうことについての労働省当局のお考えを率直にお述べいただきたい。
  6. 中西實

    中西政府委員 労働組合の結成、加入、それから正当な組合活動、これは憲法にも保障されておりますし、それに対する不当な処分がありました場合には、労組法によって保護の規定もございます。問題は、組合活動の正当な限界の問題でありまして、正当な限界を越えた行動は、たとい組合活動の一環としてやりましても個人的な責めを免れない。従って、その正当な限界を越えた問題で会社懲戒処分に付するということは、あり得るのじゃなかろうか。特に裁判所で有罪の判決を受け一もちろん確定しなければわからぬわけでありますけれども、そういうような事案について会社就業規則あるいは労働協約等規定に従って懲戒処分を行うということは、あり得るのじゃないかというふうに考えております。
  7. 八木昇

    八木(昇)委員 私は刑事問題云々を聞いているのではないのであります。そしてまた、会社もそういうことは一切理由といたしておりません。そうではなくて、争議行為がいろいろ会社業務支障を来たして、需用家に多大の迷惑を与えたということです。こういうことが、実は一つ理由となっておるわけであります。さらには業務支障を来たしたということが、一つ理由となっております。この二つの理由をもって、会社就業規則に照らし不都合な行為であるということで、地方本部の全執行委員処罰せんとしているわけであります。これはいまだかつて私はその例を聞いたことがないのであります。よく会社事業が不振である、企業整備をしなければならないという理由のもとに、たとえば千人おる会社で、二百人なり三百人の人員整理を行う際に、かつて組合幹部であったような人々を馘首対象者の中にうまく織り込んでやられたような事例は聞くのでありますけれどもしかし、ストライキをやって需用家に迷惑をかけた、会社業務支障を来たしたという理由をもって、当時の最高幹部のみを処罰対象者にしたという無謀な例は一つも聞かないのであります。そこで、そういうことについて、実はお伺いしておるわけでありますが、今回の刑事云々というような問題につきましても、松山裁判所で出ました判決文にもはっきり書いてありまして「労働者団体交渉権争議権憲法の保障するところであり、従来犯罪とせられた行為でも右権利の行使としてなされた行為労働組合法第一条第二項により刑法第三十五条の適用の結果、罪とならなくなったことは弁護人等主張通りである。」これは当然のことでありまして、先ほどお答えのような点をお伺いしているわけではありませんので、重ねてお伺いをいたします。
  8. 中西實

    中西政府委員 刑事事件にかかる、かからないは別にいたしまして、違法、正当性限界ということに、問題はかかってくるわけであります。そこで経営者側が、正当な限界を越えて、つまり組合活動としても許されざる限度の行為があったという場合に、それの責任者懲戒に付するということはあり得るわけであります。もちろん、正当の範囲を逸脱したかどうかということについての公けの判定は、労働委員会あるいは裁判所がやる問題ではございます。もちろん、最終的には裁判所でありますが、行政的には、労働委員会公益委員会議認定するということになりますけれども、一応そう認めた場合に、責任者経営者懲戒対象にするということはあり得ると思います。
  9. 八木昇

    八木(昇)委員 それは最終的には労働委員会もしくは裁判所決定でございますので、ここで法律上の厳密な見解をお伺いいたしましても、ある意味においては無意味でございまして、むしろ労働者のいろいろな権利福祉を守るという本来の任務を持っておられる労働行政担当省としての労働省の、もっとフリーな立場での御見解を実はお伺いをしておるわけであります。従来、停電ストというのは、スイッチ・オフを伴うので違法であるということで、なかなか問題になりました。労働省もそういった見解を出されたようなこともあります。これにつきましては、私が申し上げるまでもなく、東京高裁その他随所で、これについては正当であるという判決文が出ましたことは、私がここで読み上げるまでもないと思います。持ってきておりますが、停電ストさえそうでありまして、電源ストの場合は、労務を提供せず職場を自然に去る、こういう争議行為でありますので、これはもうほとんど適法、不適法というようなことの論議の対象には当然なっておらない、こういうふうに思うわけです。そういうふうな状態に対して、しかもその後は、御承知通りに、労働者の非常な反対があったにもかかわらず、すでにスト規制法も施行して、それからすでに二年九カ月ほど経過しておる。こういう段階に当って、これほどいろいろ問題があるような処罰行為に出ることについて、労働省として拱手傍観しておってもらっては実は困ると、私どもは思っておるわけであります。その辺につきましての労働省のお考えその他をお伺いしたい、こう思っております。
  10. 中西實

    中西政府委員 問題は、結局正当性範囲にとどまったかどうかの事実認定でございます。すでに三年近く前の話でもございますし、われわれはそのときの実地をよく存じておりません。しかし、聞くところによりますと、単なるウォーク・アウトあるいはスイッチ・オフというのではなくて、発電所のところにピケを張り、会社側が入っていくのを力をもって阻止したということが原因のようでございます。従って、それが当時の状況において正当な限界を越えたかどうか、もしも実力をもってピケ経営者側を阻止したということになりますれば、これは行き過ぎではあります。ただ、その場の事情をわれわれも詳しいことは存じませんから、わかりませんけれども、一応そういうような理由会社が取り上げておるわけであります。従って、そうだとしますれば、就業規則その他に照らして、懲戒に付するということも、不当とも考えられないのであります。ただ問題は、あまりにも以前の事案を今ごろ持ち出したというところが、われわれとしましても、何だかちょっとずれ過ぎておるという感じがいたします。この点につきましては、私ども会社側にそういう気持を申したこともございますが、会社側としましては、当時この問題は刑事事件として検察当局がタッチした、従って一応その結論が出るまではというので、そのときは差し控えた。ところが、裁判が長引きまして、やっと最近になって初審の判決が出たということて、今ごろになって懲戒を持ち出したということらしいのであります。私どもとしましても、もう三年前の事件を今ごろ取り上げるのは、時期的に見てどうかと思うことは感じております。しかし、そうだからといって、原因のあることを取り上げてはいけないということもございませんので、会社にわれわれの気持を伝えて、それでも、やはり会社としては理由があるのだからということになれば、今度は法的に労働委員会なり裁判所で争ってもらうというよりしょうがないのではないか、そういうふうに実は考えております。
  11. 八木昇

    八木(昇)委員 非常に貴重な時間でございますから、もう多くを費しません。あと幾つかの質問をいたして終りたいと思っております。それで、ただいまのお話でございます。実は労働委員会なり何なりというようなものについても、これは労働省どうこうとするという筋合いのものではございませんけれども、私ども非常に遺憾なんです。と申しますのは、二十七年の争議の終りました直後から、組合分裂について、会社側随所において不当労働行為をやったという事実を実は私は聞いておるわけです。そこで実は香川県地労委高知地労委、愛媛県地労委、徳島県地労委、すべてにわたって七県ですか、不当労働行為申請をしておるわけであります。これは二十八年に申請をしておる、ところが。三年近くも経ました今日に至るも、各県とも全部判定を出さないのであります。右とも左とも、何とも二年半以上にわたって出さない。しかも、その間一回、非公式にこの地労委から、これは明らかに不当労働行為と思われる節々がある、しかしながら、何とか和解の道はなかろうか、こういう申出が二年を経過した今年の春あったそうです。しかしながら、そういうことでは話にならないということで、今日に至るもこれについて判定を下さないという、まことに遺憾千万な事態にある。そこで、これらについても、ほんとうにこういう会社側不当労働行為に対する判定をし、会社側に厳重な戒告をなすべき任務を、労働委員会あたりが果しておらない、こう思っておるわけです。これらにつきましても、直接労働委員会に対して、どうこうということはないでございましょうけれども労働省当局はお考えを願いたいと思います。  それからもう一つの点は、これも実は御承知かと思いますが、同じく四国におきまして、四国電労という第二組合に対して、会社ユニオンショップを結んだ。ところが本組合である第一組合とはユニオンショップを結ばない。しかも第二組合の方から本組合の方へ籍を移した人に対して、ユニオンショップをたてにとって馘首をしておる、三名首を切っておる。これはもちろん地方裁判所で争っておりますから、そこで決定を出してくれると思っておりますが、全体としてそういう非常な不当労働行為的な背景の上に、今度の事態が推進されておって、労働者に対してさらに追い打ちをかけておる、こういうふうな実態にあるわけであります。従いまして、今の労働委員会不当労働行為に対する態度その他につきましても、一応この際労働省の御見解を承わっておきたいと思います。今の不当労働行為申請に対して、二年半も判定を下さないというこの状態に対しての、労働省見解伺いたいと思います。
  12. 中西實

    中西政府委員 労働組合の問題で一番厄介な問題は、労使間の問題よりは、かえって組合相互間の問題、これが実は一番解決の困難な問題でございます。結局組合の組織の問題は、われわれとしても、いかんともしがたい問題であります。できました第二組合が、明らかに御用組合ということの認定があれば、これはまた別でございますけれども四国労働組合は、今や総数五千九百幾らで、あと電産の組合員は、最近は六十四名というようなことです。こういう実態から、やはり地労委としてもなかなか結論が出しにくい。これはわれわれも労働委員会事務をしておりまして、十分に推測ができるのでございます。従って、こういった実態から考えて、やはりいろいろ問題は処理されなければならない。ことに今のユニオンショップの問題でございますが、これは法規にもございますように、過半数以上の組合ユニオンショップを結べるわけでございます。そうだとしますと、それが有効に結べられますれば、これは実務上いかんともしがたいということになりますので、この組合の問題といいますものは、それぞれの実力というものによって問題が処理されていくのじゃなかろうか、われわれがそこに妙に介入いたしますことは、かえって事態混乱に導く。電産の主張は、まことによくわかるのでございますが、一応実態から考えまして、その進展に待つよりしようがないのじゃないかというふうに考えます。
  13. 八木昇

    八木(昇)委員 私の問いに対しての直接の答えでなかったように思います。私が問うておりますことは、次のようなことを問うておるわけであります。二年半前に組合分裂をいたしまして、その当時分裂をした組合というのは、二年半前組合員数はわずかであった。そのときに不当労働行為というものを申請したのは、会社側がこういうことをやったということの不当労働行為を指摘して労働委員会申請をしておった。ですから、それによって当然判定をすべきである。その後の、二年半も判定を引き延ばしておいて、実態が、第二組合が数がふえたとかふえなかったとか、そういうふうなことを問題にすべき筋合いではない、こう私は思うのです。  それはそれといたしまして、とにかく労働委員会不当労働行為申請を受けて、それに対しての判定を二年半にもわたっていずれとも下さない、こういうことについて、どういうお考えかということであります。
  14. 中西實

    中西政府委員 労働委員会決定は、できるだけすみやかになされることの望ましいことは申すまでもございません。ことに調停ですら一カ月以内というような、大体訓示的な規定もあるくらいでございます。この不当労働行為決定も、なるべく早く出るに越したことはございません。ただ労働委員会弁護をするわけではございませんけれども事案によりましては、かえって白黒をつけますために問題がこんがらがるという場合もございます。これは裁判所においてすら、和解ということで問題を円満に解決する道ができておるくらいでございます。従って、特に労働関係というものは、法律上はある程度理論的に割り切れましても、これをぴしっときめますことが、かえって混乱を起すという場合もございます。そういう場合には、勢い決定が非常に渋っていく。そうして、できれば和解によって解決したいという労働委員会の努力もわからないわけではございません。しかしながら、われわれとしましては、常々なるべく調停事案、またこういった不当労働行為事案は、できるだけすみやかに結論を出すことを期待もし、またお願いもしておるということでございます。
  15. 八木昇

    八木(昇)委員 まあそれ以上の質問は差し控えます。それで、いずれにいたしましても、これは御承知だと思います。先ほど御説明もありました通りに、この問題は明らかに会社の方がストライキ責任者を全員処罰する、こういうふうな出方でありまして、非常な将来の労働運動に対するはっきりした、いわば挑戦という格好であります。労働者としては、これをそのままないがしろにして見過ごすわけにいかないのであります。そういうふうな格好から、先程の御説明もありました通りに、電産はあの後二年半以上を経過いたしました今日、初めて全国的なスト通告を十六日にやるに至っておるわけであります。それから御承知通りに、分裂いたしました電労連並び四国電力におきまする第二組合、これもいずれもこの処分反対決定をし七、地元の第二組合の方につきましては、すでに三、四回にわたって団体交渉が行われ、現地におきましてはすわり込みが行われると、こういう状態になっております。情勢によっては全国的なストライキ行為に発展しようとする形勢に実はなってきておるわけです。こういう三年前の問題のために、会社側がこういう強引な仕打ちをすることによって、おそらくこのまま事態が伸びていきますと、また社会全般に対して大きな問題を投げかけるような争いに、漸次なってこようとする形勢にあるわけであります。何とかこれは労働省の本来の任務である労働者福祉その他を守るという立場から、ぜひとも善処方をお願いしたい。これは局長さん以下だけでなく、労働大臣の方にも事情を御説明の上に、ぜひこういうトラブルが今後本格的な争いに発展していかないように善処方をお願いするわけであります。当初会社側も非常に強引な仕打ちで、一挙に解雇をしようとする意図のもとにやったようでございますけれども、すでに地元の新聞その他は非常に大きくこれを報道しております。その後の形勢から、今のところ一時保留の格好のようでございます。非常に今微妙な段階にございますので、ぜひとも労働省当局もお骨折りをいただきたい、こういうふうに思うのであります。  以上をもちまして一応終ります。
  16. 中村三之丞

    中村委員長 次に、失業保険法の一部を改正する法律案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題となし審査を進めます。発言通告がございますから、これを許可いたします。中原健次君。
  17. 中原健次

    中原委員 前会に引き続きまして御質問を申し上げます。ちょっと間がずれましたから、少々重複する場合があるかもしれませんが、親切にお答え願いたい。  まず第一番に、短期の労働者の分類と申しますか、その意味で失業保険を給付されておる給付期間中における就職の状況と申しますか、これを一つ数字的にお示し願いたい。
  18. 江下孝

    ○江下政府委員 昨年調査いたしました結果でございますが、大体現在でもそう違いはないと思っております。失業保険金受給者のうち、百八十日分全部を受給し終りますのは、全体の約半数でございます。残りの半数につきましては受給を終りました直後の六カ月の間に就職または自営業開始等をいたしておるものと見られておりますが、実はこの失業保険金をもらい切りましたあとの調査というのがなかなか困難なのでございます。私としましては、一応往復はがきでその人たちに照会をいたしまして、返ってきましたのは、全体のうち非常にわずかな数しか回答がございませんでしたので、これをもって全般の推計をいたすということもいかがかと思いますけれども、一応それによりますと、保険金受領者のうち、約半数の者が受給終了後二カ月ないし三カ月の間に就職をしておる。そういたしますと、差し引きまして三カ月後、つまり受給期間経過後三カ月を経たあと、なお推定として職業を求めておるであろうと思われる者が全数の一八%程度ではないだろうか。これはさっき申しましたように非常に不完全な調査でございますが、一応そういう数字になっております。
  19. 中原健次

    中原委員 そうなりますと、失業保険金の給付期間中にともかく就職し得る人というのは、半数ということになるわけでございます。従って、その短期間に就職のできる、その意味でいわば恵まれた立場労働者の場合と、それからそうでない、全期間中についに就職することができず、さらにその期間を経過しても就職することのできなかった失業労働者人たちが、実情としてはどういう業域を職を求めてさまよっておるか、そういうことについての何か御調査がございましたら、お示し願いたいと思います。
  20. 江下孝

    ○江下政府委員 先ほどお答えいたしましたように、この調査が非常に困難でございますが、受給期間が過ぎて、全部もらい切ったあと三カ月の間に、また約半数が大体就職を行う、残りの約二割弱程度が一応まだ職を求めておるということでございます。おそらくこれらの方々は、なお期間をかけて縁故就職等を続けてくる、なおどうしても就職が困難で、肉体労働が向くという人は、安定所に登録いたしまして失業対策事業に就労をする、こういうことに相なっていると思います。なお、今手元に詳しい資料を持っておりませんが、失業対策事業にも、若干失業保険受給終了後落ちているというのもございますが、数字はまた後ほどお話しいたしたいと思います。
  21. 中原健次

    中原委員 先般の御答弁の中で失業保険の受給者の中の分類について、当該法案に関係のある短期労働者のパーセンテージのお話があったのです。実は日経連の新聞であったかと思いますが、事こまかにそれを報道いたしております。これはおそらく政府がどこかで御発表になられた数字のように、その全文から受け取りましたが、その場合における短期労務者のパーセンテージと、先日こちらで御答弁を伺ったのとが、実は一致しておりませんのですが、これはどういうことなのでしょうか。
  22. 江下孝

    ○江下政府委員 おそらくこういうことではないかと思います。私が先般申し上げました期間別の受給者の数は、二十九年度の数字から推定したものでございます。日経連では歴年を取ったのではないかと思われる節がございます。いずれにいたしましても、そう大きな数字の狂いはないのではないかと考えております。
  23. 中原健次

    中原委員 それによりますと、全受給者の中で、約一五%が一般の失業者、つまり短期労務者とみなされる者、それから約一・八%ほどかいわゆる季節労務者、こういう数字が掲げられているわけであります。これはもちろん日経連の新聞をたてにとってお尋ねするのはおかしいと思いますけれども、しかし、これはその新聞の記事の状態から見ますと、政府が御説明になられた数字によっているようでありますから、そうするとやはり出所はあなたのところになると思うので、お尋ねしているわけですが、こういうパーセンテージの配列になるのかどうか、この点、もう一度伺いたいと思います。
  24. 江下孝

    ○江下政府委員 日経連のそれを私見ていないので、何とも申し上げられませんが、季節労働者が一五%でございますか、これはおそらく出かせぎに行くということで、ある程度明確に把握し得るものを数字としてあげたのではないかと思います。ところが、現実に季節的労働者といいましても、必ずしも出かせぎにいく者ばかりでもございませんで、自分のうちの近くでやるという者もございますし、その他相当そういうものもありまして、私の方では、一応この前ここで申し上げたような数字が、大体正確じゃないかと考えております。
  25. 中原健次

    中原委員 そのことは、またあとで関連が出てきますからお尋ねしますが、今ここで私が心配しておりますのは、この短期労務者の人たちが、実際にはどういう状態に置かれておるのか、どういう状態のもとでその仕事をしておるのかということを知りたいためであったのでありますが、ここでもう一度念のために、ただいま申し上げました二点についての分類を数字的にお示しを願ってみたい。私の聞き違いがあったために、こういう食い違いがあるのかもしれませんから……。
  26. 江下孝

    ○江下政府委員 それではもう一度私の方の計算を申し上げますと、昭和二十九年度におきまして失業保険金の受給者総数は約百五万、このうち離職前の被保険者期間が六カ月から九カ月以下の者の数が二十九万一千、これは全体の受給者のパーセントにいたしまして二七・七%に達するのでございます。この二十九万一千人のうち、受給者の離職前の業種、雇用期間あるいは失業保険の反復状況ということから、季節的に、また循環的に失業保険を利用すると認められる者につきまして推計いたしましたのが二十二万九千人でございまして、これが六カ月から九カ月以下の受給者の七八・九%に当る、こういうことでございます。
  27. 中原健次

    中原委員 それではただいまの二十二万九千人の中を、もう少し分類していただきたいのですが……。
  28. 江下孝

    ○江下政府委員 その分類とおっしゃいますと、どういうことでございましょうか。
  29. 中原健次

    中原委員 業種的に、いわば季節労務者、あるいは循環的なそういう作業の労務者が二十二万九千人、こういうふうに承わったわけです。そこで、この人たちがいうところの季節労務者に全部該当しておるのか、それともそれ以外の人をも含んでおるのかということです。
  30. 江下孝

    ○江下政府委員 先ほど申し上げました二十二万余の人は私どもとしては季節的な労務者がそのうちのおそらく八割程度を占めておると思います。残りの二割程度が循環的な労務者であると考えております。
  31. 中原健次

    中原委員 そこで、こういう数字の計算の基礎というものが、ずいぶん問題になると思うのですが、ただこれだけ見ておりますと、二〇%というものは、いわゆる雑種な中から拾い上げたものというふうになってくるわけです。従って八〇%が今回の改正法律案対象として考えられておる、こういうことになるのですか。
  32. 江下孝

    ○江下政府委員 そうではございませんで、今回の改正では、失業する前の一年間に被保険者期間が六カ月から九カ月であった者、つまり先ほど申し上げまました数にいたしまして二十九万人、これが従来ならば給付期間が百八十日であったのを九十日に削減する、こういうことであります。
  33. 中原健次

    中原委員 それでは二十九万一千人の人たちが、今回の九十日の分の給付に転換をする対象、こういうことですね。そこで問題になりますのは、いやしくも二十九万一千という数字が出ておるからには、相当大きな数だと理解します。その大きな数の人が、百八十日の給付を受けておったものが九十日に引き下げられていくということになってくれば、この人々は、失業保険法に対する立場が、せっかく今まで、はなはだ不十分ではあるが、しかしながら辛うじてこの失業保険の給付に力を得て生存を続けておった立場の人であります。それだけに、この人々をこのような措置で処理するということになってきますと、今日の失業救済の政策そのものに、やはり問題が出てくるのではないか。はなはだありがたからぬということが出てくる、いや、はなはだ迷惑であるということが出てくる。従って、これに対処する具体的な措置とというものが、当然用意されなければならぬと思います。その用意をなされないままで、これだけのものが給付が半減されてそのまま放置されたのでは、これは大へんなことになると思うのですが、この点についてはどのようなお考えでしょうか。
  34. 江下孝

    ○江下政府委員 今回の改正案は、季節的労働者を主体といたします短期保険者の受給期間を削減いたしますと同時に、長期の被保険者であったものに対しまして、給付期間の延長をはかっておるのでございます。これは季節的労働者を主体とします短期被保険者の削減のみを問題にすべきではなく、私どもとしましては、全体としてこの保険法の改正考えておるわけでございます。  そこで、実はこの季節的な労働者を主体といたします短期被保険者の問題でございますが、これはお話の通り、一応表面的にはそういう給付日数の削減ということが言われると思うのでございますが、実際にこれを数字において見ますと、被保険者期間の六カ月から九カ月でありましたものの平均の受給日数を調べてみますと百十日でございます。今回私ども考えておりますのは、これを九十日にする。百八十日が九十日に形式的には減ることになりますが、実際問題としましては、季節的な労働者が主体となっております関係上、百八十日もらう者はほとんどないわけでございまして、みな季節的に、冬場働きに行けない場合だけ、その期間だけを彼らは失業保険によってまかなっておるのが実態であります。そこで、現実には百十日という平均受給日数になっておりますので、そう大きな、これによっての打撃と申しますか、混乱が起るということは、私ども考えていないのでございます。  実はこのお話が出ましたので、前会も御答弁いたしたと思いますが、季節的に雇用される者というのは、本来失業保険法の建前といたしましては、失業保険から除外される建前になっております。なぜ季節的に雇用される者を除外したのかと申しますと、これは毎年繰り返して失業保険をもらう、つまり一定の期間だけ働けば、必ずあと失業保険をもらうということになりますので、前々申し上げますように、失業保険法本来の制度の趣旨から見まして、適当でないのであります。また保険法を初めに作りましたときの季節労働者というのは、非常に短期のものが多くございまして、従って保険料のかけ捨てにもなる、こういう面も考えて除外をいたしておったのでございます。ところが、だんだん経済実態が大きく変って参りまして、最近は季節的に雇用される者というのが、非常に長期間働くようになって、しかもそれが毎年繰り返して失業保険をもらう、こういうことになってきたのでございます。法律の字づらからいいますと、一応除外という建前に相なりますので、私ども事務的にも、いろいろこの問題を検討いたしておるのでございますが、実際問題といたしましては、季節的に雇用される者とそうでない者との限界というものは、なかなかむずかしいのでございます。たとえて申し上げますと、出かせぎに行く者でございましても、当初から私の方で業種を指定するというような形でもとらない限りは、困難なのでございます。たとえば北海道に土建に働きに行く人は季節的なものである、こういう指定をしなければならぬ。ところが現実には、これらの人の中でも、季節的に行く者と行かない者との差があるし、また当初は長くいるつもりであっても、半年ぐらいで帰ってくる人もある。雪が降ればやめるつもりであったのが、雪が降らなかったために一年中働いた。こういういろいろ雑多なものがございまして、ごく短期のものならば、これは季節的であるかどうかという判定がつきますけれども、そうでない長期のものにつきましては、季節的か季節的でないかという判定は、実際問題としては安定所では困難でございます。しかしながら、大体におきまして毎年繰り返して出かせぎに行っておる、あるいは循環的に一定の人員が毎年繰り返して失業保険をもらっておる。私どももよく耳にするのでございますが、都市等でも、ごく短期間だけ働いて失業保険をもらう、また短期間働く、こういうような事情が相当多いというふうに私ども聞いておるのでございます。こうい点から考えまして、あれこれ考え合せまして、今回の保険法の改正におきましては、結局業種による区別ということは困難である、あくまでも期間によって調節をすることが妥当であろう、私ども実はこういう結論に達したのでございます。仰せのごとく、この中の短期間労働者の一部には、先生の御心配のような点があるかとも思いますが、しかし、これらの人たちに対しましては、これは申し上げるまでもなく、安定所におきまして職業紹介活動を活発にいたしますとともに、政府の行なっております失業対策の各般の施設にこれを吸収していくということを、当然考えていきたいと思っております。
  35. 中原健次

    中原委員 政府の各般の施設、救済施設あるいは救済事業に吸収されておる、私どもはそのようには簡単によう考えません。それならば、現在失業者がこのような混乱を起すはずはない。その議論はいたしません。  それでは、ただいまの二十九万一千人と御指摘になられましたこの人々の失業保険金の給付期間中における就職の分類ですね、つまり何カ月日にどれだけ減った、何カ月日にどれだけ減ったというふうな大体のものがあるだろうと思いますが、これを一つお示し願いたい。
  36. 江下孝

    ○江下政府委員 二十九万の内訳でございますが、これはまことに申しわけございませんが、その給付期間中にどれだけ就職したという調査はございません。おそらく私の考えでは九割以上が、大体平均百十日もらったあと就職をしておると考えております。
  37. 中原健次

    中原委員 それはどうもはなはだ遺憾でして、おそらくというようなお示しでは納得ができません。少くともこの問題を対象として方針を立てなければならぬ問題に直面しておるときに、やはりこれはつぶさに御検討になられて、あるいは調査されて、明確にこの数字が立証されるのでなければ、立案者としてははなはだ不親切だと、私はこう思います。ただいまの御答弁では、誠実を傾けた措置あるいは立案と受け取ることができなくなりますが、どうでしょう。
  38. 江下孝

    ○江下政府委員 先ほど申し上げましたように、この中には季節的な労働者または循環雇用的な労働者が約二十二万おるわけであります。これらの人は、先ほど申し上げましたように、平均百十日の受給日数を持っておるということでございますが、この季節的な労働者につきましては、おそらく全部——おそらくと申しますと、またおしかりを受けるかもしれませんが、これは当然北海道その他に出かせぎに行けるようになるまで失業保険をもらって、それからまた出かせぎに行くのでございますから、これは全部受給期間中に就職をする、こういうことでございます。その他の一般の被保険者でございますが、これは調査が非常に困難でございまして、先生のおしかりももっともだと思いますけれども、実ははっきりした調査はいたしませんが、先ほど申し上げましたように、大体ごく短期の失業保険の受給者と申しますのは、約半数が受給期間中に就職をいたし、残りの半数のうち三カ月以内にさらに半数程度が就職等をしておる、こういうことで私大体考えております。
  39. 中原健次

    中原委員 そうなりますと、この二十九万の人たちの場合の就職の比率は、全般の比率と同じだということになるわけですか。
  40. 江下孝

    ○江下政府委員 このうち約二十二万程度の者は、失業保険をもらうのは仕事のつなぎにもらっておるのでございますから、当然受給期間中に二十二万程度の者は保険をもらってあとすぐ就職をする、こういうものであると思います。そのほかの一般の短期被保険者につきましては、大体私は一般の被保険者と同じではないか、こういうふうに申し上げたのであります。
  41. 中原健次

    中原委員 それでは、関連しまして、この法律案が成立、実施されれば、三十年度内は三億、それから平年度は十二億から十三億の保険財政の黒字への転換が可能である、このように私は承わっておるのです。おそらく先日の速記録をごらんになれば——私が聞き違っておるとすれば、この数字は何であったかということになるのですが、こういう計算の基礎になるものを一つ説明願いたい。
  42. 江下孝

    ○江下政府委員 私が答弁いたしましたのは、今度の受給期間の調整と適用範囲の拡大ということによって、本年度において差引しまして、改正をしないとすれば支給金が十億程度は減る、こういうように私は申し上げたつもりでおったのでございます。保険経済が黒字になる——これはもちろん黒字になるわけでございますが、どうもそういうふうに実は記憶しておるのでございますが、何か私の勘違いでございましたら、また御指摘を願いたいと思います。
  43. 中原健次

    中原委員 速記録を持ってくればよかったのですが、私もそうと思えば、もう一度精密に見るのでしたが、そのときに私が書いたのがここにあります。これは大臣の口からであったと思います。従って、多分あなたがデータをお出しになられたはずです。改正による赤字克復は三十年度において三億、それから以後平年度は十二億ないし十三億、こういう説明だった。ですから、この中身が私は聞きたい。そのときは、時間の関係で私は締め出しを食ってしまいましたから、質問を継続しなかったわけです。
  44. 江下孝

    ○江下政府委員 私もどうも記憶が確かでないので、一応先生のおっしゃる三億ということを大臣が申し上げたとしますれば、こういうことではないかと思います。これは結局本年度の予算の問題になってくるわけでございます。昨年度におきましては、お話しいたしましたように十億の赤字が出まして、これは積立金からその分をおろしまして、政府負担分は翌々年度までに補てんをする、こういうことになっておるのでございます。ところが本年度におきましては、この改正をいたすといたしますと、先ほど申し上げましたように、保険金の給付面におきまして、差引十億の減が出る、その減が出ることによりまして、結局保険の収支が三億の黒字というふうに申し上げたのではないかと思います。
  45. 中原健次

    中原委員 昭和三十年度内はそうなんです。その後の年度は十二億ないし十三億というのですが、これは私の聞き間違いでしょうか。何か数的な根拠があるに違いないと思うのです。
  46. 江下孝

    ○江下政府委員 これはおそらくこういうことだと思います。私の方で、一応この改正をやることによりまして、来年度以降保険経済がどうなるであろうかということをはじいたことがございます。当然これははじくべきことでございますが、これは将来の予想でございますので、実は数字の基礎を出すのが非常にむずかしいのでございます。たとえば五年以上の受給者がどのくらい出るか、あるいは十年以上の受給者がどのくらい出るかという推定は非常に困難でございますが、三十年度におきましては、一応五年以上の受給者が、全体の受給者のうち約七%程度であろう、こういう推定をいたしております。それから平年度におきまして、この法律が完全に動き出しましてからは、おそらくこの受給者の数が約倍近くにふえるであろう。これはわかりませんので、ほんとうに推定でございます。そういうような推定と、一方におきましては短期の被保険者、六カ月から九カ月のものが全体の大体二七%でございますか、これを越えないであろう、むしろこれは若干減るのじゃないかという計算のもとに一応はじいてみたわけでございます。そうしますと、まあ平年度においては十億程度の黒字になりそうだ、これならまずまず保険経済面としてもこの改正案でいけるじゃないか、こういう予想のもとに一応考えたのが、この案なのでございます。三億、十何億というのがかっちりと、これは将来の予想でございますので、断言できない点もございますけれども、一応私どもでそういう基礎ではじきました結果の見込みを申し上げたのでございます。
  47. 中原健次

    中原委員 まことにたよりなく感じます。たとえば将来受給者の数が、推定ではあるが倍加するものと予想して、計算をお立てになられて——倍加するわけですね。しかし、にもかかわらず、この短期者はやはり二七%で一応押えておる。そうなって参りますと、短期者の方はふえないということになるわけでございますか、これはどういうわけでしょうか。
  48. 江下孝

    ○江下政府委員 短期者の方は、今度の保険法改正によりまして、受給期間が相当減りますので、おそらく従来のように給付をもらいに来る人はないのじゃないだろうか、こういう推定でございます。
  49. 中原健次

    中原委員 それでは短期者は、この法律案が成立すれば減る。もちろん減るに違いないが減るから短期者の計数はふえないと見ることができる、とれにつながるわけですね。
  50. 江下孝

    ○江下政府委員 私の申し上げましたのは、短期者が、今度は九十日の給付期間になりましたので、二十七万という二十九年度の実績以上に実人員があまりふえない、大体この程度の数字でいけばいいじゃないか。これは給付期間が減るから、当然給付額は減るわけですから、実人員はむしろ減ってもふえないのではないか、こういう考え方であります。
  51. 中原健次

    中原委員 そこで問題はますます複雑になるのですが、実人員はふえない、これが非常に大事なんです。私はそのことが非常に気になってくるわけです。給付の措置が低減する、給付が減額されるから、給付額が、そのパーセンテージに維持できるというなら、倍加するということと大体論理が合うわけです。ところが実人員がやはり依然としてそこを維持するであろうということになると、やはり短期者の実態というものはふえないということにつながって参るわけです。法の措置を受ける者は、いわゆる給付額は減りましても、給付期間は減りましても、実人員は依然として動かないところに問題の混乱があるのではないかと思います。全般の受給者の数は倍加するであろうという予想、これは当然です。これが減るなどと考えたらとんでもないことで、現在の失業の実態から考えますと、これは遺憾ながらどんどんふえてくると思います。政策がふやすようにできているといっても極論ではないと思うほどの経済政策に今日なっております。これはどうしてもふえます。従って、これが減るなどということは、もちろん議論になりません。だから、ふえるということはあくまで正論です。今の状況の中で言えば当然の論ですが、ただ問題は、短期者の実数がふえないという御推定を、もう少し科学的な説明を聞かせてもらいたい。なぜふえないか、ちょっと私にはわからないのです。
  52. 江下孝

    ○江下政府委員 短期の被保険者は、毎度申し上げますように、季節的な労働者が現在主体になっておるのでございます。これらの人は、現在北海道あるいは遠方に出かせぎに参りまして、六カ月たったらきちんと帰ってきて保険金をもらっておるのでございます。そこで、もしこれを先ほど申し上げましたように九十日に削減をいたしますならば、失業保険をもらいに帰ってくるのがばからしい、九十日しかもらえない、こういうような影響が当然あるのじゃないか。そうすれば、この季節的な労働者においては、むしろ失業保険の需要は減るのじゃないか、働いた方がやはりいいじゃないか。こういう点から、私どもはこの短期の労働者は一応ここ二、三年の間は、大体現在の数字で行くであろう、こういうことです。
  53. 中原健次

    中原委員 まことにけっこうな御分析でして、そういうふうになりますかしら。保険金の給付を受ける者は、給付を受けるというだけをねらいとして失業するのでしょうか。その言い方は、私政府当局者として、労働省を侮辱するものだと思うのです。給付金をもらうために失業するのでしょうか、仕事があるのに仕事を捨てて戻るでしょうか、とんでもない認識だと思うのです。そういうものじゃないと思うのです。やはり仕事は離したくないのです。仕事を離したい者はおりません。それをそういうふうな御認識で失業対策をお考えになられ、労働者を取り扱われるということになったのでは、日本の労働者はそういう政府の考え方に対して、反抗しなければならない。そうでしょう、そういうものじゃないと思うのです。保険金をもらいたいから仕事を捨てて帰ってくる、そういう心理、そういう事実があるでしょうか。これはもう少し実情を御調査になられる必要があると思うのです。なぜ失業したのだろうかという失業の動機を一つ——私は局長労働者に対するいろいろなものを十分御理解になっておいでになると思い切っておるのです。だから、今の御答弁は、ちょっとびっくりするのです。そういうものではないと思うのです。これは労働者の前で、その言葉をあなたがおっしゃったらどうなるでしょう、おそらく労働者承知しません。実際のところ、けっこうな仕事を持ちながら、その仕事を捨てて失業保険の給付を楽しむというようなばかな話はありません。従って、この数がやはり維持されるという御見解は、分析がはなはだお粗末過ぎると思います。実情に対する認識が欠けておるのじゃないかといわなければならぬと思うのですが、いかがでしょうか。
  54. 江下孝

    ○江下政府委員 私が実数と申し上げましたのは、実は私の考え違いでありまして、これはパーセントでございます。従って、失業保険の受給者が全体としてふえますれば、やはり短期労働者もそのパーセントはふえていく、全体の率といたしましては二七・七%という一応の率ではじいておる、こういうふうに訂正させていただきたいと思います。
  55. 中原健次

    中原委員 そこで、約二十九万一千人の労働者の中で、いわゆる季節的な労務者を除いた人、臨時労働者といいますか、臨時工といいますか、臨時労務者といいますか、これも少し具体的に分類をしていただきたいと思います。
  56. 江下孝

    ○江下政府委員 具体的にと申しますと、どういうことに相なりますか、要するに、それら以外の人につきましては、これは季節的なものではないのでありますが、一般の会社、工場等におきまして、六カ月から九カ月の程度雇われて解雇された、こういう人たちだと私は考えます。
  57. 中原健次

    中原委員 問題は計数の基礎に実は誤まりがあると考えられるから、どう考えましても納得できないのです。話は少しあとに戻りますけれども、日経連の新聞で、日付をちょっと思い出せませんが、私はここにメモしておるのです。新聞を持ってくればよかったのですが、これは何でも政府の何かの機関で、あるいは政府の諮問機関で政府が発表しておるのです。その数字によりますと、パーセンテージがさっき申しますように季節労務者の方が少いのです。今の説明では、季節労務者がほとんどになってしまった。それで季節労働者を除くあとの臨時的な労働者というものは、まことにりょうりょうたるものだという印象を受けるわけです。そうすると、政府は重要な政府機関で御発表になられたはずの数字は、どういう基礎の上で御説明になられたのか。やはりこういう法律案をどのようにするかについての審議をする場合には、間違った御説明があったのでは、妥当な結論が出ないのはほんとうなんです。これは大へん責任が重いと思うのです。そこで、日経連の新聞の発表しておる基礎になったある機関は、何機関だったか、多分審議会か何かではないかと想像するのですが、そこがどうしても私はうなずけないのです。この基礎が違いますと、法律案の扱い方ががらっと根本的に変ってくるわけです。ですから、私どもは、これは一大事だと思うのです。だから、これが違うということを、私が得心行くように御説明いただきたいのです。
  58. 江下孝

    ○江下政府委員 その統計は、今私の方で見てみますと、一二%というのはございますが、これは北海道への出かせぎによるものと明確につかまえられたものの数が一二%ということでございます。私が先ほどから申し上げております二十二万の中には、そういう北海道への出かせぎという形をとらなくても、定期的、季節的に雇用される者、あるいは循環的に雇用される者、こういうものを加えましての計算でございますので、御了承願いたいと思います。
  59. 中原健次

    中原委員 それでは北海道あたりへ出かせぎする、すなわち季節労務者として把握できたものが一二%と計算した、こういうことですね。ではさらに、そういう季節労務者でない臨時労務者といいますか、これはほんとうはもっとあるのじゃないですか、ないとはうなずけぬのです。東京で見ても、大阪、福岡で見ても、臨時的な仕事をしておる人、これは季節じゃないのですが、そんな数ではないはずです。これはどうでしょうか。
  60. 江下孝

    ○江下政府委員 臨時労務者の数というのじゃございませんで、六カ月から九カ月までしか被保険者期間を持たなかった人で、離職して失業保険をもらいに来た者の数が、今申しましたように季節的な循環的なものを除きまして、二十九万のうちから二十二万引きますと約七万程度あるということであります。
  61. 中原健次

    中原委員 現在の失業状態の中で、職安あたりでずいぶんいろいろなことを扱っておりますが、それ以外のことも含めまして、継続的に長期にわたって就職することのできない人がどれくらいあるのでしょうか。たとえば今の六カ月から九カ月——受給資格は別ですけれども、実情としてそういう短期の職業についておる人の実数は、どれくらいあるのでしょうか。
  62. 江下孝

    ○江下政府委員 安定所の窓口に出て参ります求職者、これは失業保険の受給者も求職者になるわけですから、全部入るわけですが、毎月五十万人失業保険の受給者が求職者として入っておる。そのほかに一般の、失業保険をもらわない求職者が約五十万人おるわけでありまして、約百万人。ときによっては百万をオーバーいたしておりますが、まあ百万人から百二、三十万という程度が現状でございます。これらのものが、公共職業安定所に求職をしておるのであります。これに対して求人が、これも月によっていろいろ違いますが、大体三、四十万人でございます。そうして就職いたしますのが、年間平均として毎月十五万から二十万程度就職するのが実情であります。
  63. 中原健次

    中原委員 どうも割り切れぬのです。こういう状態から考えますと、かりにその中で就職をなし得るものが十五万ないし二十万と押えまして、この人々の実情と就業後における勤続の状態、こういうものはどういうふうになっておりますか。
  64. 江下孝

    ○江下政府委員 これらの十五万のものがどういう産業に雇用されておるかということは、私の方で調べておりますけれども、雇用されましたあとの実情は、職安関係では把握してないのでございます。
  65. 中原健次

    中原委員 現在こういった形の就業状況のもとで、労働者立場から言いますと、最近新聞紙上でよく報道されますように、職を得ることができなかったために、あるいは職を失ったために、たくさんの悲劇が続出しております。これは当然のことなんです。従って、そういう状態考えの中に入れて参りますと、今度の失業保険法改正措置というものは、現在の状況に対して、政府の労働者に対する責任のある熱意のある措置ではないということになってくる。というのは、こういう状態がかなり軽く扱われておるということになるからでありまして、しかもそういう関係の中で、短期労務者全般に対する給付額を半減して、年度内に三億の黒字へ転換していく。赤字克服後においては平年度十数億円の黒字というような、これは妙な言葉を使いますが、政府はいわば失業保険かせぎをやることになります。でなければ、この黒字が出るということは、どうしたってうなずけない。これは失業保険かせぎを政府はたくらんだということに、この法律改正部分についてのせんさくを通して遺憾ながらなってくるのです。大体失業保険法を通して赤字を克服し、これがもし政府のお手柄だとするならば、その赤字克服の下敷きになる労働者は、文字通り全く飢餓のほかはない。これには耐えがたいのろいを感ずるであろうと私は思います。しかも、先ほどからお尋ねしておりますけれども、根っから出てこないのです。臨時のはずの労働者が、この失業保険の給付対象の資格を取ることができないという状況の中に、いわば投げ散らかされていくという格好になり、これはみごとな改正法律ができた、この法律によれば当面の失業救済措置としてはまことにけっこうである、こういうことは言えないと思う。大臣は提案説明で、なかなかうまいことを言っていらっしゃるのですけれども、その提案説明のどのような美辞麗句にもかかわらず、実態はこういうことになってくるのじゃないか、どのように好意的に考えようとしても好意的な結論は出てきそうもないのですが、これはどうでございましょうか。
  66. 江下孝

    ○江下政府委員 先生御承知通り、日本の失業保険法は、従来六カ月だけ働けば、あと百八十日の給付期間をもらえる。六カ月以上何年働いてやめても、やはり六カ月しかもらえない、これが日本の失業保険法であります。当初におきましては、この失業保険の運用は、あまり世間の人が知らなかった、と申しますと語弊がありますが、あまり乱用等のことが行われなかったのでございます。現実には六カ月しか保険料を納めなかった人が、六カ月保険金をもらう。そういうことになりますと、保険料は、御承知通り本人負担は千分の八であります。六カ月払いましても、これが千分の八の六倍ですから千分の四十八でございます。給料の千分の四十八の保険料を払いまして、やめればあと百八十日というものは、自分の俸給の六割をもらえる、こういう考えようによっては非常に甘い制度になっておるのでございます。失業保険法本来の建前は、これは先生もよく御承知と思いますが、不慮の失業、つまり思わざる失業に対処して一時の生活安定をはかるというのが、保険法の建前だというふうに私ども承知をいたしておるのでございます。そこで、先ほどおしかりを受けましたが、ある程度失業保険を当てにするというような形が、最近だんだん出て参っております。六カ月働いて——これは先生のおっしゃるように、職のない場合もあると思います。思いますが、しかしそうでない場合も相当ある。東北地方ではこれが社会問題化しまして、こういう甘い保険制度を作っておるから働かなくなる面もあるというふうに、私どもとしては、実は攻撃も受けておるのであります。もしこれを悪意に解しまして、六カ月だけ働いて六カ月保険金をもらう、こういうような情勢がもし一般的になりましては、これは大へんだと思うのでございます。先生が仰せのごとく、この措置によりまして、一方においては保険金の受給期間の延びるものもございます。なお切られまして、若干従来よりは不利になる人もございます。私どもとしましては、失業保険はあくまでも一時の、つまり失業したごく短期の間の生活保障を失業保険の建前とするということでございますので、これらの人に対しましては、先ほど申し上げましたように、私はできるだけ政府の力によりまして、就職のあっせん、あるいは失業対策事業による就労というようなことによりまして、そのギャップを埋めるように努力をいたしたいと考えておるのであります。
  67. 中原健次

    中原委員 長期の人に給付額を増額したというところに、一つの法改正のいい面があるというふうな御説明でありました。私どももちろん長期の勤労者の失業に対して、給付額がふえたということについては、異存がありません。しかしながら、問題は、にもかかわらず、五年以上が全体の七%と先ほど言われたと思うのですが、あとの九三%はそのらちの外に置かれるということになる。しかも、その多数の人が給付額が半減されたという措置、これは給付を受ける労働者立場から考えますと、全般としてやはり給付額は減少されたことになる。これは間違いないと思うのです。労働者という一つの集団、大きな階級から考えますと、受け取る額が少くなる。あるいは労働者という言葉が適当かどうか、むしろ農民の中にもしばしば適用を受ける立場になる人があると思います。従って国民全般といいますか、そういう勤労国民の立場から考えましたら、やはり失業保険法を通じては大きな損をさせられる、これだけは否定しようがないと思います。なぜなら、先ほどからのお話のように、赤字克服をねらった法改正だから、いやおうなしに労働階級の方へそれだけはやはり食い込む、あるいはそれだけはすくい上げられていくことだけは間違いない。労働階級が潤されるということではない。もし失業保険法の法精神から考えてみるならば、それなら失業者が完全に就業し得る状況を作らなければならぬ、それをなぜしないかということになる。これはあなたの責任ではない、現在の政治責任だと思うのですが、なぜ完全に就業のできる、みんなが希望に燃えて、生き生きとした気持で働けるような積極対策をとらないか、これは大きな問題であると思います。それをようなし得ないばかりでなく、失業者がどんどんふえてくるのじゃないか。八十万を数えるような状態まで政府のいわゆる完全失業——私どもからいえば、これは相当議論がありますけれども、今日その議論をしようとは思いませんが、とにかく八十数万を出さなければならぬ。それが七十万に減ったら、大きな手柄のように宣伝をされるけれども、実情は就職に見切りをつけて、仕方がないから、借金をしてでもいいから、まあ学校へでも行けということで、子供の方向転換をしたということまで含んで、辛うじて八十数万が減ったということにすぎない。もっとふえるだろうと、私は残念ながら予想いたしますが、そういうおそるべき失業対策の状況のもとでは、やはり失業保険法の性格も当然変ると思います。これは国家の責任です。変らなければならぬと思います。やはりこの点から考えますと、そういう措置に不可避的に、いやおうなしにずっと追い込んでいくということになって参りますと、せっかく政府の労働行政が、労働者のサービス的な職責を負うてでき上ったものとばかり労働階級は思うておるのですが、その機関が、逆にふところからあいくちをのぞかせたような格好に実はなりつつあるということを、否定し得べくもないことになるのじゃないか。このような内容を持った法律案をお出しになられて、あなたが具体的な御説明の衝に当られたことは、私は気の毒に思う。これは良心があるならば、はなはだ不本意に思われるはずなんです。そんなものを、さも理屈ありげに、さも正当であるかのように、さも労働階級のための政策の合理性があるかのように言わなければならぬ立場は、実際私は同情申し上げます。とんでもない。これは今日は大臣に出てもらいたかった、これは大臣の責任です。大臣はヒューマニティの立場に立たれて、いろいろ御論議がなされる。もちろん私どもは、ある程度そのことを認めますが、であればなおさらのこと、こういう隠されたあいくちが労働階級の前に突きつけられてくるということになると、これは大へんです。実際そうなんですよ。なるほど説明は、あなたのよろしい頭でみごとになさるけれども、どうも裏が見えてしようがない、御説明を疑うほど裏が見える。どうもおかしいという気持に私の頭は充満します。これはもう少し真剣にこの問題の改正点の中身をもっともっと分析させていただかぬことには、どうしても了解ができないということになるのです。こういう点について、私はいろいろ尋ねたいことばかりですが、あまり時間を取ると委員長にしかられるかもしれませんが、先日来の宿題ですから、きょう一日私が受け持たせていただきます。この条章を追うて参りますと、一々どれもこれもそういうことにつながっておると私は見るのです。これは私の頭が少しぼけておるのかもしれませんけれども、どうもこの法律案を逐条審議して参りますと、どの個所もどの個所もやはり一貫して今日のような不況の中に追い込められておる日本の労働者にとっては、これはおそるべきあいくちのひらめきといわなければならぬのです。これはまことにみごとに御説明ではございますけれども、御説明とはものが大分違って参るのであります。  さらに条を追うというよりも、むしろ便宜上第十三条の二の被保険者資格得喪の確認というところです。これはどういうことになるのですか、御説明一つ聞きたい。
  68. 江下孝

    ○江下政府委員 現行法におきましては、被保険者の資格の取得、喪失についての具体的な規定はないのでございます。こういう条文がございます。これは第六条でございますが、第六条の一番初めに「左の各号に規定する事業主に雇用される者は、失業保険の被保険者とする。」こう書いてあります。そうして次にずっと事業を掲げてあるわけでございます。そうしましげ、現実の扱いといたしましては、事業主から私の方に——公共職業安定所の方でございますが、安定所の方に事業主から、自分の方は適用事業になったということを届け出る、それだけでございます。こういう形で現在運用しておるのであります。ところが、これがどういう結果に相なるかと申しますと、資格取得について、個々の被保険者についての何らの確認がないということでございます。そうしますと、これらの事業主に雇用されております労働者が離職いたします。その離職いたしましたときに、果してその雇われておった本人が、六カ月間被保険者として具体的に雇われた人であるかどうかということは、離職表の提出を待って初めて安定所が調査をしなければならない、こういうのが現在の実態でございます。それからいま一つは、最近、そういう個々の被保険者の確認がございませんために、事業主が架空の被保険者を作りまして、そうして安定所に出頭をさせて、現実には雇わなかった人が失業保険金をもらいに来る、こういう現象も相当これがふえておるのでございます。これは何によってこういうことになるかと申しますと、被保険者の資格の取得、喪失について、何ら個々の被保険者についての確認がないために起っておるということでございますので、今回はこの規定を置くことによりまして、被保険者個々のまた権利を擁護すると同時に、保険料の通脱、あるいは不正受給の原因となるものをこの規定によって除きたいと思います。  この規定の運用はどういうふうにいたしますかと申し上げますと、強制的に適用事業場になりました場合には、その事業場の事業主が所轄の公共職業安定所に被保険者の名簿を添えて適用届を出すことにいたしております。名前、年令等も書いて安定所に出し、安定所におきましては、個々の被保険者について、これは確かに在籍をしておるという確認をいたしまして、確認書というものをその事業主に渡す。これによって、個々の被保険者の資格取得が明確にされるのでございます。もし途中においてこの被保険者に異動がございました場合は、これも一定の条件によりまして安定所に届けさせます。安定所の方で、被保険者の台帳を事業主別に作っておきます。そういたしますと、離職いたしました場合にも、台帳との照合によって一目瞭然に、被保険者であったかどうか、何カ月あったかということも、つかめるわけでございます。この制度によりまして、保険料の通脱を防ぐとともに、被保険者の明確な資格取得の権利を確立する、同時に不正受給の防止に資する、こういう建前でございます。
  69. 中原健次

    中原委員 そうなりますと、第六条というのはもう要らない。少しこれは言い過ぎかもしれませんが、あまり必要なくなりますね、それはどういうことになりますか。
  70. 江下孝

    ○江下政府委員 これは一般的に、強制適用になる事業はこういうものであるということを宣言する規定だというふうに私ども考えております。これをさらに具体的に、それではどういうふうに行政手続によって確認するかというのが十三条の二の規定であります。
  71. 中原健次

    中原委員 ただいまのような、そういう思いつきをなさった基礎になる、つまり不正な被保険手続、これはどれくらい件数にしてありましたか。
  72. 江下孝

    ○江下政府委員 受給資格がなくて不正受給をいたしたものというのが、大体この項目に該当すると思いますが、件数にいたしまして——これは私どもの方で乏しい人員をもちまして調査したのでございまして、このほかにも相当漏れがあると思いますが、四百九十七件、金額にいたしまして一千三百十四万七百八十五円ということに相なっております。
  73. 中原健次

    中原委員 今、理事の方から、お昼の休みにするからというような御注意がありました。従って、まだ実はたくさん質問があるわけですが、これで一応休ませていただきます。
  74. 中村三之丞

    中村委員長 それでは午後お願いいたします。  午前中はこの程度にとどめまして、午後二時まで休憩いたします。    午後零時二十九分休憩      ————◇—————    午後二時三十一分開議
  75. 中村三之丞

    中村委員長 休憩前に引き続きまして会議を再開いたします。  失業保険法の一部を改正する法律案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案の二法案を一括して議題となし、質疑を続行いたします。
  76. 山花秀雄

    ○山花委員 議事進行について。ただいま失業保険法の質疑をやっておりますが、午前中の中原委員質問も、ずっとかたわらで承わっておりましたが、議事を進行するために、政府当局に一つ要求をしたいと思うのであります。この法案はなかなか複雑で、案文だけではちょっとわれわれ理解できない点が多いのであります。そういう関係から、質疑が非常に時間が長くなりますので、質疑が短かくなるために、参考になる書類の御提出を願いたいと思うのであります。それで失業保険法改正案の逐条解説というのを、労働省で出しておられるそうでありますが、それを出していただきますと、質疑も非常に短くなると考えますので、ぜひそのように委員長の方から政府当局に要求をしていただきたいと思うのであります。
  77. 中村三之丞

    中村委員長 今、山花君の議事進行のお話の通りでございますから、政府においてはそのようにお取扱いをお願いしておきます。これは急を要しますから、どうぞ至急お願いいたします。  それでは中原健次君。
  78. 中原健次

    中原委員 私も今の山花委員の御要求につけ加えまして、これも一つ要求しておきたいと思います。この法律案を御起草になるために、いろいろ審議機関と御折衝になり、あるいは審議機関の答申なども当然御入手になっておいでになるだろうと思います。従いまして、審議会の特に専門部会とでもいいますか、そういう機関があると思うので、その関係専門部会の議事録あるいは答申その他法規関係書というものがあるはずだと思いますから、それをあわせていただきたいと思います。このことを申し入れておきます。これは委員長よろしくお取り計らいを願います。  午前中に引き続きまして、もう少し二、三の問題点に触れてお尋ねをいたしたいと思います。ちょっと話が逆もどりになるようでありますが、午前中どうも根っから納得がいきかねて大弱りいたしているのでありますが、そのことと関連することで、東京都下で、ただいま大正製薬が争議をやっていると聞きます。この争議の中心問題が、やはり一種の臨時工を本工に切りかえる要求闘争というふうにわれわれは理解いたしております。従って、こういう場でわれわれが考えつくことは、大正製薬といえば、そう小さい製薬会社ではないと思いますが、その大会社でさえ、ほとんど全員六カ月で打ち切られて更新しているというような雇用関係になっていると聞き及ぶのです。従ってこれが争議の中心問題になっている。そうなってみますと、先ほどから私がお尋ねしているいわゆる臨時工というものが、全くこの法律の中の大きい部分を占めるのではなしに、いささかそういうものも入るであろうかという程度の御説明を承わったのでは、やはりそこに疑問が残ってくる一つの証左ともいえるのです。従って、こういう状態は全国的にも相当ほんとうはあり得るのでありまして、あり得る状態であるためには、やはりこの二十九万一千人の中に、相当程度そういった形のものが包含されはすまいかということが、どうも私は心配でならぬのであります。実は先ほどちょっと申し上げました日経連の機関紙で発表しているものはこれでありまして、ごらんにならなくても、この新聞でもすぐおわかりになると思う。これなども、やはりパーセンテージが、一般労働者という人々の占めるいわゆる六月から九月までの間に該当する労働者のパーセンテージが相当大きいわけです。従ってこの問題は本法律案の審議の中で非常に大切なことだと私は思います。そこで、ひとり季節労働者だけでなくして一般労働者がかなり大きな比率を占めているということを、そうではないということをもっと具体的に説明をいただかぬことには、やはりこの心配を取り除くわけにはいかないと思います。この点について、いかがでしょう、話がちょっと妙なことに回りましたけれども、そういう関係の中で、やはり私どもとしては、依然としてその疑問は解けないというわけです。この点に関しまして一つ……。
  79. 江下孝

    ○江下政府委員 私も先ほどその新聞を見たのでございますが、先ほど御答弁いたしましたように、そのうち一二%が季節的なものであると申したのは、これは明確に北海道方面への出かせぎの数を押えられるわけでありますから、その押えた数字を一応あげたというのが一二%であります。その残りの、実は一八%のうち、さらに北海道以外の全国の各地域におきます出かせぎ、季節な労働者が別にございます。  それから、今引例になりました大正製薬のお話でございますが、私が先ほど申し上げました二十二万の中には、六カ月毎に雇用期間をきめて、六カ月で一応雇用を切って、あとは失業保険でやるというような事業主の傾向がだんだん出てきつつある。それは先ほど申し上げましたように、失業保険法規定が、六カ月あればいいということでございますので、六カ月だけ雇う、こういうことに実は出てきておる。そういう六カ月だけをきめて次々と一部解雇をしていくという循環的な雇用でございます。これらも含めての話で、二十二万という数字を私は申し上げたのでございます。そこで二十九万から二十二万を引きました七万が、当初は長期に雇用されるつもりであったのが、やむを得ない理由のために短期の被保険者としてやめざるを得ない、こういうのが七万程度ある。その残りは季節的なものであるが、そういうふうに事業主が最初から六カ月ときめて順繰りに失業者を出していくという循環的な雇用——失業保険が切れるとまたその人たちを雇う、そのかわりまた一部の者を解雇する、こういう循環的な雇用が二十二万の方に入っておるのであります。そこで、残りの七万が、まあ一番気の毒な人たちであるので、先ほど申し上げましたように、これらの人に対しましては、特別な措置をやはりわれわれとしては考えて、就職あっせん等を十分実施したい、こういうように申し上げたのであります。
  80. 中原健次

    中原委員 それは二十二万が循環的な雇用者も含めた季節労務者の範囲に入る。そうなりますと、この二十二万のパーセンテージの分け方、これはできないわけですか。この新聞によりますと、ちゃんとできているようですが、その中で一二・八%と一四・九%というふうに分けて出ておるようでございます。これはどういうことになりますか、一つ説明を願いたい。
  81. 江下孝

    ○江下政府委員 これは実際問題としては、区別するのは非常に困難でございます。これは事務的に正確に出そうと思っても、実際は季節的に雇われるというのと、循環的に雇われるというのとは、区分がつかない。しかしながら、私どもの推定では、この二十二万のうち、相当な部分がいわゆる出かせぎ的な季節的なものであるというふうに考えます。
  82. 中原健次

    中原委員 いずれにいたしましても、二十九万あるいは七万をのけた二十二万の人々の詮議はあとに残すといたしまして、午前中の最終にお答えをいただきました問題についてのお尋ねを続けたいと思います。それによりますと、資格なき労働者、いわゆる不正受給者が四百九十七件、金額が八千三百十四万七百八十五円となっておりますが、この数字は違いますか、違うのがほんとうだと思うのですが、もう一度確認したい。
  83. 江下孝

    ○江下政府委員 一千三百でございます。
  84. 中原健次

    中原委員 そこでいわゆる不正受給者なるものは、たとえば受給資格は持っておるけれども、離職後において当然受けるべき事情から離れた場合、つまり就職でもしたというのですか、そういう場合給付を受けておったという人が入るのか、それともそうではなくて、全く初めから資格のない、無資格者がこれだけあったということなのか、この点をお伺いしたい。
  85. 江下孝

    ○江下政府委員 今のその数字は、全然受給資格がない者が不正受給をしたということでございます。
  86. 中原健次

    中原委員 そこで問題になりますのは、そのようなことを避けるために、改正法律案が作成されたということになるものと理解いたしますが、そうであれば、この第十三条の二の、取得及び喪失は労働大臣の確認によってその効力を生ずるというと、その確認というのは、どういう経過を通して確認するということになりますか。
  87. 江下孝

    ○江下政府委員 特定の事業場が適用事業場になりますと、その事業主が自分のところで働いておる被保険者名簿を作りまして、これを所轄の公共職業安定所に提出をいたします。そこで安定所におきましては、必要に応じ調査いたしました結果、この被保険者個々について確認するという確認書を事業主に渡すのでございます。そういう手続によりまして確認をいたします。
  88. 中原健次

    中原委員 現在の法律の中でもそれを確認することはできる。届出の手続は、これと違った別の方法であると思いますが、これはどういうことになりますか。
  89. 江下孝

    ○江下政府委員 現在の法律では、私の承知しておりますのは、被保険者個個についての報告を取りますためには、四十九条の規定によってできないことはないのでございます。「行政庁は、命令の定めるところによって、被保険者を雇用する事業主に、被保険者の異動、賃金その他失業保険事業の運営に関して必要な報告文は文書の提出を命ずることができる。」ただ、この四十九条は、被保険者全体に対して、つまり全事業主に対して一般的にこういう調査をするという場合は、必ずしも予想いたしませんで、必要があった場合にこういう調査をすることができるというように一応私ども考えているのでございます。もちろんこの条文を小まめにやるということになれば、できないことはないのでございますが、なるほど、名簿を出させましても、先ほど申し上げました労働大臣が一人一人についてこれは資格があるというように確認することについては、この条文ではできないのでございます。
  90. 中原健次

    中原委員 大体取扱いの面から考えますと、私はここであえて取得、喪失確認をしなければならぬというような判断は生まれてこないと思うのです。なぜそのようにきびしく刑事被告人を責め立てるような取扱いが要るのだろう。大体失業保険法なるものは、これはむしろ本人の職を求める意思に反して職を失うた者に、従ってその失業者に対する国家の救済措置としてとられた保護制度だと思うのです。そうであってみると、そのように、いわば重箱のすみをほじくるということをいいますが、そう犯罪者でも追い回すかのような扱い方をしなけはばならぬほどにこの問題を処理しなければならぬということが、どうも判断がしがたい。やはり第四十九条の現行のそれを責任を持って処理していけば、私はそのことは解決されるのじゃないかと思う。わざわざここへ、確認によって効力を生ずる、ときつくおどし文句を並べるということは、何だか一面失業保険法そのものが、労働者に対して妙にこう敵対的な立場を作りあげていくというようなことにもつながるような感じがいたします。従ってこれは、むしろある意味では非常に一方的な、極端な言い方をしますと、労働大臣がこれを拒否しようと思えば拒否できることになる。極端過ぎますか、そういうこともないじゃないと思います。そういう感じをこれが与えるのです。非常にきびしい、こういう犯罪者を処理するような態度で法を処理していかなければならぬほどに、この失業保険法の問題がそういう事情の中に置かれておると認定する、そういう判断をするということは、これはやはり私は失業問題に対する根本的な心がまえの点に一つ問題があるのじゃないか、こういうふうに思うのです。いかがでしょう。その点については、これはきわめて当然な、妥当な法的措置とお思いになりますか。
  91. 江下孝

    ○江下政府委員 私どもといたしましては、この規定は、先ほど申し上げましたように、ひとり乱給の防止、不正受給の防止という面でなくて、保険料の徴収という面にもひっかかってくるのでございます。保険料の徴収は、これは御承知通り事業主が個々の被保険者の俸給から差し引き、自分の負担を加えて政府に納入するわけでございます。被保険者の立場から考えましても、自分はいつの間にか知らない間に保険料が納まってなかった、そのために被保険者として、離職した場合に保険金がもらえなくなるというような事態も間々起るおそれもあるのでございます。そこでこの条文の二項に書いてありますように、「前項の確認は、次条の規定による届出若しくは第十三条の四の規定による請求により、又は職権で行うものとする。」ということで、これはむしろ労働者側から、どうも自分は確認が抜けておるかもしれぬといったような疑いのある場合には、当然これを要求できるということもはっきり書いておるのでございます。むしろこの被保険者の権利の擁護という面も、ここで明確にいたしております。  さらに、これについて、労働大臣が思うようにやるのではないか、そういうおそれがあるじゃないかというお話でございましたが、これは先生も御承知通り、ずっと先の方の条文になるのでございますが、四十条の一項で「失業保険金の支給に関する処分」を、「被保険者の資格の得喪の確認若しくは」云々というように改めまして、三者構成からなる失業保険審査会のこれは審査事項になっております。従って、労使各代表及び中立委員からなります厳正な審査会で、この問題について疑義がある場合には、取り上げて適正な判決をいたすことになっておりますので、御心配のような点は私どもはないというふうに考えておるのであります。
  92. 中原健次

    中原委員 そうだといたしますと、大臣が確認するというその確認の時期、時点といいますか、そういうふうなものは、大臣の一方的な判断できまるということにもなるわけですが、これはどういうふうに御決定になりますか。届出のあったものをそのまま認めるということになるのですか、それとも大臣の判断でそれを動かすことができるということになりますか。
  93. 江下孝

    ○江下政府委員 十三条の三の条文に書いてありますように、適用事業場の事業主は「命令の定めるところにより、その雇用する労働者についての被保険者の資格の取得又は喪失に関する事項を労働大臣に届け出さなければならない。」そこで一応被保険者の名簿を出して、これだけの者が取得したのだということを安定所に届け出ることになるのでございます。それを受けまして、この十三条の二で労働大臣が届出を受けて確認するというのでございますが、中には事業場等でずるけて、あるいは故意に届出を怠るというものがあっては困りますので、十三条の二の第二項の一番おしまいに、労働大臣が職権でこの資格の取得、喪失の確認を行い得るという規定をおきまして、そういうずるいあるいは故意に怠るものに対する通脱を防止するという建前をとっておるのであります。
  94. 中原健次

    中原委員 この届出にこたえて、大臣は直ちにこの確認の事を処理していくということになるわけですね。そうだとすると、この処理の時間的な責任は、どういうことになりますか。かりに、届出を受けて、一カ月もあるいは五十日もこれを放置しても、別に大臣の責任はないのですか、これはどういうことになりますか。
  95. 江下孝

    ○江下政府委員 これは届出の日と、その被保険者の資格の取得、喪失の日とは必ずしも一致しない。そこで安定所に持ってきましても、この人はいつから雇い入れたということで、それにさかのぼって確認をいたしますので、その点については、日にちがずれるというようなことがないようにいたしたいと思います。
  96. 中原健次

    中原委員 時間がずれるような取扱いをすることのないようにするということは、一応当然なことでありましょうが、しかし、ずれても責任はない、そのことはこの法文ではどういう——つまり大臣側の時間的な責任には、どういう限界が置かれておるか。
  97. 江下孝

    ○江下政府委員 これは、労働大臣は必ず資格の取得のあった日付で確認をしなければならぬ、法律上はそうなると私は思います。
  98. 中原健次

    中原委員 さらに、この場合にもう一つ伺っておきたいと思うのですが、それは被保険者である者が離職した場合に、その離職の事情でというのは、自分の意思に反して離職がどんどんあるわけですね。そういう関係から、その離職者がいろいろな雇用事情の中から、自分の意思に反して離職したが、期間のズレから保険金を受給する権利を持たない、こういうことがあり得るわけです。ちょっと表現がまずかったですが、たとえば離職した離職者の中で、当然被保険者であった人が、期間が短かいために保険金を受けることができない、受給資格を持たない、こういう人が相当あると思うのです。これはどれくらいあるわけですか。
  99. 江下孝

    ○江下政府委員 これは五人以上の適用事業場の離職者数がどれだけあるかという総数から、結局保険をもらったものは何人おる、これを差し引いた数、一応そうなると私は思うのでございます。そこで、五人以上のものからどのくらい毎年離職者が出るかということは、実はここに統計を持っておりませんので、正確に数字を申し上げるわけにはいきませんで、御了承願いたいと思います。
  100. 中原健次

    中原委員 私はここに三十人以上の製造業者の統計を持っております。何かの参考になると思う。これは全然無関係ではない。それによりますと、離職率が月平均二%です。失業保険金の受給申請者がその二%の中で〇・六五から〇・九。従ってその人を除く残余の分、一・一から一・三五が非受給の範囲に入る、こういう集計が出ております。これは全然無関係とは思えない、やはり何かの参考になる。これは三十人以上です。そうなって参りますと、そのかなり大きな部分は、政府としてはどういうふうに把握しておいでになるか。これも保険財政を判断するために、労働者の側の利益、不利益を考えれば、相当大きい問題だと思うのです。これはもう受給の資格がないのだからいいじゃないかというわけにはいかない。労働者の納めた金が、それだけ吸い上げられてしまった形です。戻らないのです。労働者の手に返ってこないというところに、大きな問題がある。私はそういう関係を知らないのだが、そういう人があるということに対する認識です。この点はどうなりますか。
  101. 江下孝

    ○江下政府委員 先生がおっしゃった数字の保険をもらわない者のうちには、直ちに他に就職をしている者も相当あるのではないか、また受給資格のつかない人もあるのではないか。それから就職しない者も、もう仕事は定年でやめたのだからこれ以上働かない、こういう人も入っているのじゃないか。そこで、そういう点を調べてみませんと、実は明確な御答弁ができないわけでございますが、やめた者が二%で、保険をもらった者は〇・九%であるから、残りの一・一%は資格がつかない。つかないと申しますと語弊がありますが、要するに保険をもらう必要がないという人も相当その中に入っておるのだろうと思います。
  102. 中原健次

    中原委員 そうです。その受給資格のない人、しかし、もちろん被保険者資格はあった人です。これはやはり財政の収支の関係からいいますと、その金は、しからばどこへ、だれに与うべき金かということになるわけです。そうすると、労働者の犠牲においてその金が保険財政の中に入っていく。話はずっと前に戻りますけれども、運用部資金の方へぶち込まれていくという金の中に、これが包含されるということになるわけですね。
  103. 江下孝

    ○江下政府委員 その金は、いずれにいたしましても労働者がまた保険金としてもらう金でございます。その金を政府が取り上げるということはないわけであります。一応必要な場合には積み立てをいたしておきまして、保険金の支給がふえました場合にそれを出すわけでございますから、結局はその金が労働者の方に還元されるのでございます。
  104. 中原健次

    中原委員 そういう説明も成り立ちますけれども実態から申しますと、そのことがはなはだ心細い話になるわけです。実は出しにくいということになる場合が多いと思う。しかも、それが私のこれまで集計した数字から出てきた判断で申し上げますと、たとえば保険資格者が大体七百万と見まして、その中でこの比率で申しますと、年間一二%くらいの計数が出てくるわけです。そうすると七、八十万の人がそういう憂き目を見ておる。保険法の建前からいえば、該当せぬのであるから、受給できないことはわかっておるのですが、そういういわば労働者の側からいえばマイナスがあるということなのであります。そこで、そういうことに対する御判断はないものか。先ほど、不正受給者があったということで、非常に大きな問題点が出たわけであります。ところが、こういう部分はどうですか。
  105. 江下孝

    ○江下政府委員 六カ月間の保険期間を満たしますことは、千分の八を六回納めればいいということなのであります。それで百八十日もらう人が一方においてたくさんあります以上、保険料がある程度かけ捨てになる人が出ることはやむを得ないところであります。先生もさっき申されましたように、保険がこういうものであるということは、御承知通りでありますが、結局そういうことで保険は成り立っておるものでありますので、もしそういう人たちに対しても、何らか保険的なものをやるということになりますと、やはり保険料率の問題その他、根本的に考え直さなければならぬということに実はなるのであります。
  106. 中原健次

    中原委員 そこで問題は、そのような犠牲も、もちろん当然に包含されておるのであるから、先ほどからの話で、百八十日のものを九十日に削減した措置というものは、そういうことまで考えてみると、やはり半分に切り下げたというこの措置そのことが、これはちょっと行き過ぎになっていないか。本来救済する措置なのでありますから、今日の段階における問題としては、失業保険というものは、私は相当国が犠牲を払ってよいと思うのであります。これで赤字が少々出たからといって国があわてふためいて、すぐ解消しなければならぬというような措置に出ることそのことに問題がある。少くとも仕事を求めて、労働者が仕事を失ったとき、これほど大きな衝動はない、経済的にもこれほど大きな打撃はないわけです。あるいは一生の生活態度が、そのためにくずされることになる。そういう犠牲に対して国家が救済措置を講ずるということは、きわめて当然なことである。そうなってみれば、ただいま御指摘申し上げましたような、そういうこともあり得るのであるから、何もあわててその赤字解消のためにずばりと九十日と押える、しかもそれでは片面あまりひどいというので、二百四十日をわずかな者に出して、相当よい措置を与えたかのごとき幻想を与えるところの法の措置というものでは、この法律案の内容に純粋性がない。何だかそうでもしておかないと労働者が、極端な言葉を使いますれば、欺瞞されかねない。九十日になったけれども、二百四十日まであるのであるからというところに事を託して、何だかあたかもこの法律案改正法律案であるかのごとき印象を与える、改悪でないという印象を与えるという道にもつながるのではないか。これについてはいかがでしょうか、どうお考えでありますか。
  107. 江下孝

    ○江下政府委員 私は実は、先生から何回もお話がございますが、やや違った考えを持っておるのであります。日本の失業保険の制度は、これは世界各国の例と比較するのは、日本は国柄が違うからそれまでだとおっしゃれば、それまででありますが、政府が金の三分の一の負担をしておる。これは世界各国の例といたしましても、最高であります。国によっては全然政府が負担していない国も相当ございます。三分の一の国庫負担を出すということは、私は政府としてこの種の保険制度におきましては、世界一流国の例だと考えます。  それから、今お話しになりました六カ月未満の者に対する対策というようなお話でございましたけれども、保険が国の三分の一の負担、あとは労使三分の一ずつという負担で成り立っておるという観点に立ちますと、どうしても私どもとしましては、この保険の乱用というものをやはり考えなくちゃいかぬ、あるいは先ほど申し上げましたように、根本論になるわけでございますが、保険はあくまでも思わざる離職後の短期の生活安定に資するという建前をとっております以上、どうしても私どもとしましては、そういう毎年繰り返して保険をもらうというようなことがあっては、せっかく国なり労使の納めました金が正当に公平に使われて用いるというふうには、やはり私は考えられないのでございます。そこで、先生のおっしゃるように、それでは失業対策がなってないじゃないか、こういうことになりますと、これは政府としても、この保険以外の面で失業対策については万全を期さなければならぬというように考えております。本年度の一兆円予算におきましても、予算額が一兆円に限られましたために、思うように失業対策費もふえなかったのでございますが、それでも全体からいたしますと、百十九億五千万円が百六十八億何がしになった、相当増加率は高いと私は考えております。決してこれで十分と申し上げるわけではございませんが、こういう一般の雇用対策の面で、これらの落ちこぼれた人に対してはできるだけの措置をいたして参りたいというふうに考えておるのであります。
  108. 中原健次

    中原委員 なるほど予算の数字がわずかに上昇したということも、これは否定できない事実ではあります。しかし、それよりももっと大事なことは、失業状態が悪化したということは、何としてもこれとあわせて問題にしなければならないと私は思います。失業状態が悪化したのじゃなくて、失業状態がだんだん救済され良化されてくる中で予算がふえたというのならば、それはそのふえた予算を問題にして、それだけ国がこのような問題に対して力を入れておるということの立証になると思いますけれども、それはせっかくの御議論の基礎としては、はなはだ遺憾ながらどうも了解できないのです。やはり今日の日本の失業状態というものは、どう考えましても、相当非常手段を講じなければ、私は失業救済、失業対策措置というものはほんとうに妥当を得ることがむずかしいと思います。従って、そういう場合における日本の失業保険制度でありますから、日本の失業保険制度というものは、そういう今日の極端に悪化を呼び寄せておる国の経済諸政策の中から、当然責任が出てこなければならない。そうすると、やはり国が三分の一を負担しているということが、国際的にはかなりいい方の部に属すると仮定いたしましても、私はしかあるべきであって、当然だと思います。だから、これをもってわれわれは、何も今日の日本の失業保険法が、国際的にいっても、上位にある、りっぱだというふうに理解するわけにはいかぬのであって、ことに他の国の場合で申しますと、労働者の最低生活というものが相当な地位を確保されておる、その就業中における労働者の生活が相当程度に確保されておるというそのことが、かりに失業したとしても、その失業した場合における生活条件が、日本の場合とは相当違うわけです。かれこれ考えて参りますと、日本は一応特殊事情の中における失業対策ということになると思いますから、それだけに、この法律案はどう考えましても、失業対策の一環としての保険措置としてどうも適当じゃない、何だかばかに労働者を追い込んでいく、むしろ逆に労働者に負担をかけ、労働者の収得を減していくということのための措置としか受け取れない。でありますから、労働組合等においても、おそらくどの労働組合を問わず、それが左的だろうと、あるいはそうでない組合だろうとを問わず、どの組合といえども、みなこの問題に対しましては、相当きつい反対を表明しておるし、これに対しまして、非常に反撃を加えようとしておる立場になっておるのは、きわめて私は当然のことじゃなかろうかと思うのです。従ってそういう点を、特に労働省当局におかれては、相当真剣に御判断を願わぬことには、せっかく御提出になられたこの法律案が、納得はいかないまでも、労働者ががまんをすることもむずかしいということになるように私は思うわけです。少し理屈になりましたけれども、いずれにいたしましてもそういう諸点を考えて参りますと、どうしても改正措置が改悪措置になっておるというふうに思うのです。  なお、この場でもう一点お尋ねしてみたいのですが、季節労働者ということがしきりに問題になりますが、しからば季節労働者とは、一体どういう人人なのか。大体常識上は、季節労働者というのは、農村から出てきて、北海道その他特殊の季節関係の仕事に雇用されておる人々というふうに考えますが、この季節労働者というものは、どういう境遇の、どういう職柄の、どういう経済上の人かということです。これについて一つ……。
  109. 江下孝

    ○江下政府委員 本来季節労働者というのは、昔は本業がありまして、自分の本業のひまを見て他に出かせぎに行くというのが、季節労働者ということじゃないかと思うのであります。最近におきましては、東北地方から北海道方面へ出かせぎに参りますのは、先生の仰せの通り、農漁村の人たちが多いのでございますが、この方々の中で、もちろん本業を持っておられる人も相当おりますが、大体におきまして農村の手伝い、家族従業者というような方方とか、あるいは漁業のひまなときを見て行く、こういう人が大部分のように私は承知いたしております。ただこれらの人たちが、現実に——私、先ほど極端に申し上げまして、おしかりを受けたのでございますが、事業主の方方の意見も聞いてみますと、出かせぎに来て、大体六カ月程度でやめて国に帰って保険金をもらう。ところがその保険金が、その地方の一般の賃金よりは高い、こういうような実は奇妙な現象を示しておるのでございます。なせそういうことになるかと申しますと、季節的な労働者というものは、どうしても半年とか八カ月とか、期間を区切っておりますので、これらの人はその期間だけは非常に働くかわりに、賃金が非常に高いのでございます。従って、失業保険金はその賃金の六割でございますので、かりに日給五百円のものにいたしましても三百円でございます。国の方で保険金を三百円ももらっている、こうなると、どうしてもほかに仕事があっても、三百円が保険でもらえるのだから、自分らとして仕事に行かない、こういうような風潮が出て参るのでございます。もちろん、中にはほかに仕事がないという人も相当おられると思うのでございますが、私どもとしましては、そういう人たちに対しては、どうしても働かねばならないのなら、公共事業なり失業対策事業というのがあるのでございますので、これらの事業を実施して働いて収入を得てもらう、こういうことで実はいたしたいのでございますが、現在のところは保険制度がありますために、それは消極的な原因ではございますが、就労意欲をある程度、減殺して保険にすがらせる、こういうふうになっているのが実情のように私は承知いたしております。
  110. 中原健次

    中原委員 そこで、そういう実態の中から季節労働者として出られていく。そうなりますと、大体農漁村が主である。現在の国内のいろいろな統計の中から、その農漁村は、大体主としてどの地域の人ですか、これがおわかりでしたら……。
  111. 江下孝

    ○江下政府委員 北海道への出かせぎの季節労働者は、大体青森、秋田、岩手、山形、そういう方面が主体でございます。しかしながら、この季節労働者の失業保険をもらうという風潮は、最近はもう全国ほとんど至るところでございます。こういう制度がありますために、みな季節的に働きに行って、あとは保険でつないでいくというような風潮が全国的に出ておりまして、特にはなはだしい県は、先ほど申し上げましたようなところでございますけれども、大体農業県、漁業県等におきましては、大なり小なりこれが見られるのでございます。
  112. 中原健次

    中原委員 その出かせぎに参ります季節は、大体いつごろが多いのですか。
  113. 江下孝

    ○江下政府委員 季節は、花咲く春から木の葉の落ちます秋、こういうことになります。大体四月ごろから十月ごろまで、こういうことになります。
  114. 中原健次

    中原委員 四月から十月の間が多いといいますが、そうなると、四月から十月の間といいますと、前半はちょうど農繁期に大体なると思うのであります。先ほどのお話では、農家、漁業者の子弟、あるいは農業者、漁業者の中からというふうに言われたのでありますが、その人々が農繁の季節に出かせぎをするということはどういうことですか。
  115. 江下孝

    ○江下政府委員 農繁期ではございますけれども、現実に調べてみますと、農業関係の人とか漁業関係の人が大部分出ておるというのが実情でございます。
  116. 中原健次

    中原委員 ネコの手も借りたいというのが農繁期の合言葉です。農繁期の四月から十月までの間、夏のまっ盛りはどうか知りませんが、それでも国の草取りが忙しいのですが、そのネコの手も借りたいはずの農繁期に、わざわざ出かせぎをせなければならぬという農村、漁村の職業の実態、これはどのようにお考えになりますか。
  117. 江下孝

    ○江下政府委員 現在の就職情勢が非常に悪いのでございますので、私どもといたしましては、やはり農村にも相当潜在的な失業者があると思います。これらの人が出かけるのではないかと思うのでありますが、それにいたしましても、先ほども申し上げますように、季節的に雇用される者というのはこれは実は毎年その季節になって行っては保険をもらうということを繰り返しておる。こういうことになりますと、先ほど私がるる申し上げましたような、いろいろな弊害が出て参るのでございます。そこで、そういう人たちに対しましては、北海道に出かせぎしておる間は、北海道で働いて収入を得ますけれども、帰ってきました場合には、安定所に出頭をしてもらいまして、そこで必要ならば、保険のかわりに失業対策事業を実施して吸収する、こういうことでなくてはならないのではないかと私は考えます。
  118. 中原健次

    中原委員 農村関係あるいは漁村関係のこういった労働力の過剰といいますか、あの状態の中から、その潜在失業者が北海道その他の各地域に渡って季節労働を求めて働きに出なければならぬということそのことですね、これはやはりそれだけ農家経済というものは非常に苦しい状態の中に追い込まれておるのであろうということが予想されるわけです。そうであってみれば、ただいまお話がありましたように、保険金が一般の賃金並みより非常によろしくて、いわば最高の給付をもらうのであるから、ために六カ月間働いて六カ月間その給付を受けることをねらいとしてやるというふうに扱われました何らか一種の非常に悪意に満ちた、労働者がそのようなものをねらって、そういう保険給付をねらうことが、農村、漁村の過剰人口の、あるいは潜在失業者の一つの手段であるというふうに受け取れるのですが、従って、そういう観点からこの改正措置がなされたということになるのとは違うのですか、いかがですか。
  119. 江下孝

    ○江下政府委員 私の答弁がまずいために、どうも御理解願えないのですが、私は、とにかく毎年、半年働いてあとの半年は失業保険で暮す、こういうことを、一体失業保険制度で認めていいのか、これがやはり問題じゃないかと考えます。失業保険料というのは、全国の労働者から集めて、あるいは政府もこれに一般の税金から三分の一を出して運営しておる金でございます。それが特定の、そういう出かせぎの、半年だけ働いてあとは保険でもらうというような人たちを、恒常的に残しておくということは問題だと私は考えます。これらの人は、私先ほど言葉が足りませんでしたが、昔は北海道に出かせぎに行ったときには、大体貯金をして帰るわけでございます。そして、あとの国に帰った間は、その貯金である程度生活をするというのが、従来の実情であったのでございますが、最近は保険がもらえるので、結局北海道に出かせぎに行って高い賃金をもらって帰ってきて、あとは保険料をもらう、こういう形のものは、やはり今の全体の雇用の実情から見まして、失業保険制度も考えなければならぬというふうに私は考えておるわけでございます。
  120. 中原健次

    中原委員 本来仕事を求めておる者の立場から判断しますと、半無季節的な、一種の臨時的な仕事について、その仕事を離れて保険金をもらってのうのうとしておるということが、ほんとうに労働者の求めておる気持だろうか、どうだろうか。これは全くそうじゃないのです。その逆だと私は思うのです。やはりいやしくも自分がつかんだ仕事は、一生の仕事でありたいのです。これはだれだってそのはずなんです。にもかかわらず、それにこたえるようなみごとな仕事が保障されておらぬところに、臨時の仕事、季節の仕事でもあさっていこうと心理が起ってくるわけです。だから、これはやはり私はそういう六カ月を保障するというようなことの繰り返しがいけないということの前に、そのことがむしろ大きい課題になるのじゃないか。なぜこの人々を、むしろ、一生を通して働く職場たらしめることができないのか。これはやはり今日の政治としては非常に大きい。これはあなたにこんなことを申し上げて、少々無理なことを申し上げておるように思いますので、これは本来このことについて私は大臣に、一つ次の機会でもいいのですが、聞きたいと思うが、大臣はどう思うのだろうか。それでいいのかどうか、これは大きな政治問題だと思うのです。そういうことを繰り返さしめておる。何らか私がひがんでおるのかもしれませんけれども、この法律案を読むにつれて感じることは、ばかに労働者を犯罪人扱いにしておる。労働者が何だか横着者で無理ばっかり言うから、それに対してはこう答えるのだといわんばかりのものに全文がなっているということを、だから感じるのです。従って、この法律改正案の皆さんの御苦心が、私はそういう観点の上に立ってなされてきたのじゃないか、それとも筆を進めながら、ほんとうは良心的に反省しながら書かれたのかとも思うのです。それほどにこれは実に極悪非道な法律案です。こんなばかな改正案はないと思う。そう思うのです。これは実にひどい。これはもう少し労働者の労働権を尊重し、人格を尊重し、入間権を尊重しておるならば、こういう草案ができっこはないと思うからなんです。これは私の言葉が極端に聞えるかもしれませんけれども、そういう極端と思われるかもしれぬほどの言葉をもってしても、この法律案の内容には値すると思うのです。私はそう思います。どうもはなはだ善意の上に立った改正法律案とは思えないという感じが、従って非常に深く起ってくるわけです。そういうようなわけで、農繁期との関係から考えても、むしろ肝心の農繁期で、外へ仕事に出てはならないはずのときに、どんどん出ていくというところに、これは大きな問題点があるわけですから、この問題点は、これは政府、国会を問わず、みんながもう少し本気で建策する必要があると私は思います。おそらくこのような措置の中であわせて問題になるのは、農村の二男、三男——二、三男対策ということが非常にやかましく言われておりますけれども、おそらくその中には二男、三男の青年諸君も相当おるのじゃないかと想像されるわけです。そうすると、二男、三男といえばもちろん青年、もう老後で、何でもいいからその場しのぎの仕事で、保険金でももらえば安気にいけるというような立場の人とは違って、これから一生涯の自分の職分をきめなければならぬ青年が、農村の二男、三男諸君がその中にまじっておるというような予想がつくなら、これはいよいよもって一大事、従って私は、そういう人々まで含んでの農村の労働者、漁村の労働者であってみれば、これは政府がもっと本格的に、立場をかえて、腹を据えて、善意の解釈、善意の認識の中から法律案の処理がなされていくのがほんとうじゃなかったか、こう従って判断するわけです。これに対しまして、局長の御見解を承わりたい。
  121. 江下孝

    ○江下政府委員 どうも御理解願えなくて、非常に私は残念でございます。実はこの法律が、非常にそういう暗い印象を与えるというお話でございましたが、私どもから見ますと、その法律の中には、そうでなくて、むしろ制限しないいい面も相当入っておると実は自負もいたしております。たとえば二十七条の二で、福祉施設を設置するという規定を置いております。これは明らかにこの法律に基きまして、労働者のための職業補導あるいは宿泊施設等を、もう少しこの根拠規定に基いて活発に実施していく、そういう法律の条項でございます。これはいかに見ましても、先生がおっしゃるように、労働者のためにならぬことはないと私は思っております。それから資格期間の問題でございますが、過去一年間に長い病気にかかりまして資格がつかない者については、特にもう一年延長いたしまして、そうしてできるだけ資格のつくようにしてやる、この規定も入っております。そのほかの規定といたしましては、受給期間の調整の問題がございますが、これは先ほど来論議されたところでございます。そのほかの点は、これは保険料徴収の確保の見地から出ました規定が、あとは大部分でございます。事務的に、従来法律の根拠がないためになかなかスムーズに実施できなかった点を、今回の改正によって幾分でも明確にいたしたい、不正受給の防止等もあわせて対策を講じたいというのが、今度の失業保険法改正のねらいでございまして、決して先生のおっしゃるように、制限するとか、あるいはやかましく取り締るということばかりの法律では私どもはないというふうに考えております。今の季節労働者の問題でございますが、私が先ほど申し上げましたのが私の考えでございますが、北海道方面で非常に高い賃金を毎年季節労働者として行ってもらう、これで帰りまして保険金をもらえるということになりますと、賃金が高いのでございますから、どうしてもその地方の一般の職種別賃金より高い保険金をもらう。こういう事態になりますと、どうしても一面におきましては勤労意欲を阻害する面もございます。そこで、全体の国民に完全な雇用を与えないからだとおっしゃれば、これはもう私も何も申し上げることはできないのでございますが、私からこういうことを申し上げるのも口幅ったいのでございますが、今度経済六カ印計画等を作りまして、できるだけそういう方向に政府としても持っていくように努力をいたしておりますので、その点もあわせてお含みの上、本法案の改正につきまして御了承を得たいと思います。
  122. 中村三之丞

    中村委員長 それでは本会議開会のため、ほかに横銭重吉君、中村英男君、横井太郎君、滝井義高君、多賀谷真稔君の各委員からも発言通告がございますが、これは明日午前十時半から開会いたします次会に譲っていただくことにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十九分散会