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1955-06-29 第22回国会 衆議院 社会労働委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十九日(水曜日)    午前十一時二十七分開議  出席委員    委員長 中村三之丞君    理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君    理事 松岡 松平君 理事 大橋 武夫君    理事 山下 春江君 理事 吉川 兼光君       植村 武一君    臼井 莊一君       草野一郎平君    小島 徹三君       床次 徳二君    山本 利壽君       横井 太郎君    越智  茂君       小林  郁君    中山 マサ君       永山 忠則君    野澤 清人君       八田 貞義君    岡本 隆一君       佐々木更三君    多賀谷真稔君       滝井 義高君    八木 一男君       横錢 重吉君    井堀 繁雄君       受田 新吉君    神田 大作君       堂森 芳夫君    山口シヅエ君       山下 榮二君    中原 健次君  出席国務大臣         労 働 大 臣 西田 隆男君  出席政府委員         総理府事務官         (調達庁労務部         長)      海老塚政治君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      富樫 總一君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 浜口金一郎君         専  門  員 山本 正世君     ————————————— 六月二十九日  委員越智茂君、加藤瞭五郎君、加藤清二君、山  花秀雄君、井堀繁雄君及び受田新吉辞任につ  き、その補欠として船田中君、永山忠則君、多  賀谷真稔君、佐々木更三君、山下榮二君及び田  原春次君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員田原春次辞任につき、その補欠として井  堀繁雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人招致に関する件  けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護  法案内閣提出第七二号)  健康保険法等の一部を改正する法律案岡良一  君外十一名提出衆法第五号)  国民健康保険法の一部を改正する法律案山下  春江君外五十四名提出衆法第一五号)  国民健康保険法の一部を改正する法律案(木崎  茂男君提出衆法第一六号)  医師国家試験予備試験受験資格の特例に関す  る法律案大石武一提出衆法第二一号)  船岡弾薬集積所労働問題     —————————————
  2. 中村三之丞

    中村委員長 これより会議を開きます。  この際、船岡弾薬集積所労働問題について、発言の通告がありますのでこれを許します。佐々木更三君。
  3. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 私は駐留軍に対する労務提供と、この管理状況につきまして、特に宮城県の船岡における火薬廠に従事する従業員に対する米軍当局の重大な人権じゅうりん問題を中心といたしまして、政府に対して若干の質問をいたしたいと存じます。  この船岡弾薬廠は、昭和二十五年の十月に米軍基地として開設されまして以来、同廠に働いておる日本人従業員に対する米軍労務管理は、日本政府のそれぞれの機関無視して、一方的かつ強圧的であることであります。加うるに、一部日本人幹部の保身のために、これが米軍に対して策動する節があり、労務上の各種事業処理に当っては事ごとに公正を失して、大多数の従業員は、常に不安の念にかられるに至っておるのであります。ことに米軍当局が、日本政府代表機関たる労管無視いたしまして、直接に日本労務管理に対して、著しく出過ぎたる圧迫の方法を講じておるのであります。特に民主主義を標傍する米軍日本労働組合に対する態度は、不可解きわまるものがあるのであります。このため、取るに足らないささいな事柄が紛争の原因となりまして、一般従業員にとっては、近来の労務管理は支離滅裂となり、大きな脅威となっておるのであります。こういうような従業員無視する不当な取扱いをなすに至っては、米軍の横暴もさることながら、日本労務管理に、はっきりした強い自主的態度がないということが、この問題の起きてくる原因ではなかろうかと思うのであります。そこで、これはいわゆる行政協定に基いて、駐留軍に対する労務提供日本間接にこれをなし、労務管理日本政府責任においてなすのでありますから、この際はっきりした自主的かつ民主的な、日本国民の名誉と体面を損傷しないような態度を、政府当局にとっていただきたいということを、要望する次第であります。その具体的な例といたしまして、近来起きた幾つかの事件を申し上げて、政府の所信をただしたいと思うのであります。  第一には、米軍当局は、日本労管があるにもかかわらず、従業員病気欠勤をする場合においては、直接家庭調査をして、これらに従事する職員に対し、著しく出過ぎた調査行為をやっておるということでございます。すなわち米軍当局は、日本機関であるところの労管に委任をして、間接的に病気欠勤者状況調査を行わしめる旨、文書をもって全従業員に示達しておきながら、最近では労管の係官とともに、軍の直接代理者、すなわちレーバ・オフィス勤務日本人幹部をして、直接従業員家庭に差し向けて調査を実施せしめております。この軍の直接調査のため、病気欠勤中の従業員は、心理的圧迫を感ずるばかりでなしに、家族及び近隣の体面上も、はなはだおもしろくない結果を招来いたしておるのであります。われわれは、日本人であるのでありますから、日本政府機関によって調査されることは、あえていとうものではございません。しかし、たといその使者が日本人であっても、それが米軍の直接代理者としてわれわれの家庭内にまで立ち入って調査をするということは、とうていわれわれ日本人としての自尊心がこれを許すことはできないのでございます。のみならず、これは明らかに行政協定に基く基地管理権乱用であり、はなはだしき越権行為であるといわなければなりません。そして、この行為の根底を流れるものは、条約無視ないしは日本政府軽視の思想であって、日本人人権無視する考え方に立つものであると思うのであります。この点に対して、政府はどういうふうに考えるかということでございます。たとえば、これを具体的に申しますと、弾薬取扱夫小池乙治という者が、高血圧と傷の切開手術のために、医者診断書をつけて十日間欠勤したが、米軍からは病気を再調査されて、この程度のことでは軽労働はできるではないか、こういうわけで強制的に出勤を命ぜられたために、再び病気が再発をして、現在病臥中ということでございます。これは明らかに行政協定無視した米軍人権無視だと思いますが、政府はこれに対してどう考え、どういうふうな対策を講じられるか、御意見を伺いたいのであります。  この際、一括して御答弁を求める関係上、引き続き——たとえば結婚休暇に対する不当な拒否をしたという事実であります。本年一月十九日に、一従業員が、結婚のために二日間の休暇を願い出たところ、軍は業務多忙理由に、結婚の日取りを変えたらどうか、一生の記念すべき最も大事な結婚の日を変えたらどうか。そうしてそれができないということになりましたところが、それではたった一日しか休暇をやれないというふうな、こういう態度でございます。これは日本人の慣習を無視するばかりでなしに、日本人の人格だとか幸福だとかについては一顧だに与えない、薄情きわまりないやり方だと思うのでございますが、政府はこういうことに対して、どう考えておるかということでございます。  それから妻やその他が病気で、この看病のために早退を願うと、そんなものは帰りたければ帰れ、かくして、帰れば、直ちに解雇の通知があとから届けられるのではなかろうか、そういう不安の前には、これらの従業員は戦々きょうきょうとして、妻の看病さえもできないというような、非常に不当な状態が行われておるのでございます。  特に近来、軍当局は、日本人労務者に対して、不当な強制労働指令してきておるということでございます。最近、軍は、当基地運転手全員に対して、弾薬処理援助をすべしという指令を一方的に出しました。政府当局も御存じの通り運転手は車を安全に運転することが使命でございまして、これ以上に弾薬運搬の義務はないと私は考えておるのであります。こういうものに対して、軍当局が、日本労管事務所を除いて、直接に運転手に対して、当然拒否してもよろしいようなかかる弾薬処理援助指令をいたしまして、むろんこれに従わなければ、当然解雇をするというような指令を出した関係上、こういう不当強制労働にも、これらの職員は応じなければならないという、まことに独立国日本労務者として、悲しい状態に現在置かれておるわけでございます。こういうことは、すでに当局に対しましても、詳細報告があることでもございましょうし、単に船岡のみならず、聞くところによりますと、全国にこういう事例が幾多あると聞くのでございます。この際政府は、まず第一に、全国的にこういう事例がどういうふうになっておるか、調査が行き届いておりますならば、これをお聞かせ願うと同時に、この起きておりまするところの船岡火薬廠に従事する従業員に対する米軍当局行き過ぎ人権無視のかかる措置に対して、政府はいかなる対策を今日まで講じておったか、また将来どういうふうにしてこれを解決するかということについて、私はこの際政府の御所見を伺いたいと存じます。
  4. 海老塚政治

    海老塚政府委員 駐留軍労覇者労務管理につきましては、一般国内産業に使われておりまする労務者の場合と異なりまして、日本政府は、法律上の雇い主にはなっておりますけれども、事実の使用関係につきましては、直接米軍がいたしておるというような関係もありますために、いろいろ労務管理上、問題になる点が多く出ていることは、御指摘通りであろうと思います。私どもといたしましては、できるだけ労務管理を円滑にしていく立場から、時々、問題につきまして、米軍と折衝をいたしているわけでございますが、ただいま御指摘がございました船岡の問題につきましては、直接関係いたしております問題が、休暇あるいは早退の問題になっているわけでございます。病気休暇につきましては、九十日間米軍有給休暇を与えることができるという規定になっておりますが、その他の自己の都合による休暇その他につきましては、米軍作業都合を見て許可を与えるというふうな日米間の取りきめになっているわけでございます。従いまして、ただいま御指摘がありました船岡の問題につきましてお話を聞きますと、いろいろ労務者側に相当の理由があるにかかわらず、軍側でその要求が応じられないという事例のように私ども考えているわけでございます。実はこの問題につきましては、御承知のことと思いますが、二十四日の現地におきまする団体交渉の際に、問題が明らかになったわけでございまして、私どもといたしましては、県に対しまして、至急軍側に対して、この問題について調査をすると同時に、しかるべく所要の措置を講ずるように指示いたしておるのでございますが、県側においては、それ以前に軍と協力して、これらの問題につきまして事実の内容につきまして調査中でございます。追って調達庁の方にも連絡があると思いますが、なお軍側におきましても、この問題を非常に重要視いたしまして、関係将校に対しまして——二百二十九部隊司令部でございますが、召喚を命じまして、事実その他につきまして調査しているということも、県側から申しておりますので、詳しい情報が到着いたしました暁におきまして、私どもといたしまして、県側あるいは直接極東軍等と折衝するようにいたしたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  5. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 労管が、今日そういうような努力をして、特に米軍もこれに対する解決策を急いでおるということは、これは両国関係のために、またこれらの基地内における労務者のために、まことにけっこうだと存じますが、先ほど私が聞きましたように、米軍当局が、たとえば病気欠勤をした場合に、この病気に対して疑いを持って調査する場合には、当然これは条約に基いて日本政府機関をして調査せしめることが適当ではないかと私は確信するものであります。ところが米軍当局は、日本政府機関を信用しないのかどうか、ともかくも労管事務所のみずからの機関をもって、みずからの機関の直属の日本人をもってこれを直接に調査せしめるということは、私はやはり米軍当局行き過ぎであり、こういうことがいわゆる人権無視ではないかと考えたのであります。こういうものに対して、政府はいかにこれを考え、また将来どういうふうに処理されるつもりか。私の言わんとするところは、この際日本政府は、きぜんとして条約に基くところの自主性をここで確立してもらいたい、そういうことにおいて、基地労務者に対して安定感を与えてもらいたい、この点に対する政府考えはどうか、この点を重ねてお伺いいたします。
  6. 海老塚政治

    海老塚政府委員 先ほど申し上げましたように、病気有給休暇につきましては九十日間、米軍本人の申し立て、医者診断書その他によりまして許可をしているわけでございます。これは現在、私ども知ってはおらないのでございますが、過去におきまして、この有給休暇乱用というような問題があったことを聞いております。そのために、軍側といたしまして、せっかく日本側医者診断書その他の書類を添えて有給休暇許可したのにかかわらず、現実には有給休暇乱用の事実があったということを私ども聞いているのでございますが、そういうことのために、ただいまおっしゃったような、米軍自体が、あるいは実際に自宅その他を訪れて、ほんとう病気であるかどうかということを調査しているというようなことも知っております。この場合、おっしゃる通り日米間の円満な関係を維持することを考えますれば、日本側医者その他を信用して、実情調査もやっていただければけっこうだとは思うのでありますが、現実の問題といたしまして、日本側医者その他の診断書提出にもかかわらず、事実は反したというようなこともあったということのために、米軍日本人医者その他を伴って実際の調査をすることになっているというふうにいたしております。これは望ましいことは、日本側医師を信頼してやることはもちろんでございますが、現在におきましては、この点やむを得ない点もあるのではないだろうかというふうに考えている次第でございます。
  7. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 そうすると、あなたの解釈としては、疑いがあれば、労務提供の直接の責任者である日本政府機関をそっちのけにして米軍がこれを調査することが妥当だ、こういうふうにおっしゃられるのですか、その点どうですか。
  8. 海老塚政治

    海老塚政府委員 先ほどから申し上げておりますように、病気有給休暇につきましては、日数その他についても、もちろんでございますが、米軍におきまして本人病気であるということを認めて許可をするという建前になっていることもありますし、事実そういうような問題もありましたので、現実において米軍調査をするということは、やむを得ないものではないかというふうに考えております。
  9. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 どうもあなたのお考えは、あまり米軍におべっかを使い過ぎているのではないか、あまり遠慮し過ぎるのではないか、こう思うのです。どう見ても、日本労務者は、使用の面においては、なるほどこれは直接監督を受けるでしょう。しかし、一般的な雇用関係においては日本政府を通して間接雇用だ、これは違いありませんね。そういたしますと、病気であるということに、日本政府医師診断の上において証明をして、そうして休暇を与えた以上は、これに疑いを持つ場合でも、これの調査は当然日本政府をもって調査せしむるのが建前ではなかろうか。米軍が直接行って、お前はほんとう病気かどうか、こういうような調査は、私は行き過ぎだと思う。あなたは、行き過ぎであるかないか、そこのところをはっきり聞かせていただきたい。
  10. 海老塚政治

    海老塚政府委員 日本政府法律上の雇用主でございますが、雇用主と申しましても、実は事実問題につきましては、ほとんど権限がない、使用その他につきましては、米軍が事実上の管理を与えるということになっておりますことを御承知願いたいと思います。  それから、医者診断書につきまして、実は当初日本側医者その他の診断書につきまして、病気休暇のことの証明を添えて軍側に申請をいたしておるわけでございますが、間々そういうような医者診断書報告に反して、必ずしも乱用にならなくないというような事実もございましたので、また実際上そういう調査をいたしまして疑いが晴れれば、もちろん米軍もその必要がなくなるわけではございますが、現在のところ若干の地区において、米軍においてそういうような措置を講ずるということは、現状においてやむを得ないのではないかというように思っております。
  11. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 だいぶ労働委員会の正規の議事に支障を来たすので、あまり長く質問することはどうかと思いますが、そうするとあなたは、日本政府日本医師をして病気静養する必要ありという診断書をもって静養させておる場合も、米軍がこれに疑いを持てば、日本政府を除いて、日本政府でなく、自分みずから、軍当局みずからこれは調査することが妥当だ、こういうことですか、はっきりここのところをおっしゃっていただきたいのです。
  12. 海老塚政治

    海老塚政府委員 医者診断書が、常に米軍がその診断書によって認めた通り状況であるということが、今まですべての場合でありましたならば、米軍ももちろんそういうことをする必要もないと思います。また私どもといたしましても、そういうふうに日本側医者診断書米軍が信用いたしまして、病気休暇の実施が円滑にいくことが望ましいことであることは、御意見通りでございます。また私どもといたしましても、できるだけ米軍がそういう事実調査をするというようなことがないようにすることにいたしたいということも、御意見通りでございますけれども現実に、今までのようなことがありましたので、ある程度米軍で実際していることについて、これに強い反対を示すということも、現在の段階では、米軍側に話しましても、なかなかむずかしいのじゃないかというふうに考えておるのであります。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 関連してちょっとお伺いしますが、日本政府労務官駐留軍側労務官といいますか、レーバー・オフィスといいますか、それの一つの仕事の分野ですが、労務の繰り込みといいますか、作業場につけるまでは、日本政府がやるのじゃないですか、その作業場における仕事指揮監督米軍がやる。ですから、今お話がありました、たとえば、一応作業場から離れて休暇をもらっておる、この休暇についても、私はあとから一、二点聞きたいと思うのですが、有給休暇という場合の中に、病気の場合の有給休暇と、一般基準法にいう有給休暇とあると思うのです。とにかくその日は休んでおる、こういう場合においては、その関係が全部日本側管理にあるわけじゃないかと思うのですが、どういうような事情ですか。
  14. 海老塚政治

    海老塚政府委員 病気有給休暇、もちろん休暇中は作業いたしておりませんが、有給休暇を与えますのは、米軍が与えておるわけでございます。
  15. 佐々木更三

    佐々木(更)委員 私はやはり作業場の内部においては、米軍が直接管理すべきものと思うが、しかし、一たび許可を与えて作業場外にある場合においては、これは当然日本政府機関条約に基いて、自主性をもって管理すべきものだという考えを深く持します。この点は、あなたとは全くその見解を異にいたします。そこで私は、きょうは質問をこれで留保いたします。これで了承いたしません。これで留保いたしまして、あなたの速記録等を調べまして、重ねて私はその疑点をあなたにただすことにいたしまして、本日はこれで質問を打ち切ります。
  16. 中村三之丞

    中村委員長 ちょっと速記をやめて下さい。   〔速記中止
  17. 中村三之丞

    中村委員長 速記を始めて下さい。  けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案を議題とし、審査を進めます。  他に本案について御質問はございませんか。  なければ、本案についての質疑は終了したものと認めるに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、本案質疑は終了いたしました。  ただいままでに委員長の手元に、各派共同提出にかかる本案に対する修正案提出されております。この際提出者より趣旨説明を求めます。大石武一君。
  19. 大石武一

    大石委員 本修正案の案文を朗読いたします。    けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案に対する修正案   けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案の一部を次のように修正する。   第三条第一項第三号中「従事した期間が三年以内のもの」を「従事したことがないもの」に改める。   第三条第五項中「前四項」を「第一項から前項まで」に改め、同条第六項中「(昭和二十二年法律第四十九号)」を削り、同条中第四項を第六項とし、第五項を第八項とし、第六項を第九項とし、第三項の次に次の二項を加える。  4 使用者は、前二項に規定する場合のほか、別表第二に掲げる作業に常時従事させる労働者のうち、労働基準法昭和二十二年法律第四十九号)第五十二条第一項の規定による健康診断において医師により肺結核にかかっていると診断された者に対して、遅滞なく、けい肺健康診断を行わなければならない。ただし、同項の規定による健康診断を行う前において、第五条第一項、第六条第三項(第七条第二項において準用する場合を含む。)又は第三十一条第二項の規定によりけい肺第一症度けい肺第二症度又はけい肺第三症度けい肺にかかっていると決定された労働者については、この限りでない。  5 使用者は、第八条第一項の勧告に係る労働者当該事業において粉じん作業以外の作業に従事しているときは、その者に対して、三年以内ごとに一回、けい肺健康診断を行わなければならない。ただし、当該けい肺健康診断の結果、けい肺症状がその直前のけい肺健康診断の結果の症状に比較して進行していないときは、その後は、けい肺健康診断を行わなくてもよい。   第三条第六項の次に次の一項を加える。  7 使用者は、第四項本文に規定する労働者で同項ただし書の規定により同項、のけい肺健康診断を行わないもの及び第八条第一項の勧告に係る労働者当該事業において粉じん作業以外の作業に従事しているもののうち、労働基準法第五十二条第一項の規定による健康診断において、医師により、肺結核にかかっているが、それが活動性肺結核でないと診断された者に対して、遅滞なく、機能検査を行わなければならない。   第四条中「第四項」を「第六項」に、「又は」を「若しくは」に、「及び労働者」を「又は労働者」に、「第五項」を「第八項」に改め、同条に次の二、項を加える。  2 使用者は、前条第七項の労働者に係る労働基準法第五十二条第一項の規定による健康診断において、当該労働者医師により活動性肺結核にかかっていると診断されたときは、その者について、遅滞なく、その診断の結果を証明する書面当該事業場所在地を管轄する都道府県労働基準局長提出しなければならない。  3 使用者前条第七項の規定により機能検査を行ったとき、又は労働者が同条第八項ただし書の規定により提出すべき書面使用者提出したときは、使用者は、その者について、遅滞なく、同条第七項に規定する医師診断の結果を証明する書面及び機能検査の結果を証明する書面当該事業場所在地を管轄する都道府県労働基準局長提出しなければならない。   第十四条中「二分の一」並びに第十七条第二項、第十八条、第十九条第一項第二号及び同条第二項中「三分の二」を「二分の一」に改める。   第四十九条及び第五十三条第一号中「第四項」を「第七項、」に改める。   附則第一項に次のただし書を加える。   ただし、附則第二項の規定は、公布の日から施行する。   附則第二項中「第四項」を「第六項」に、附則第三項中「その症状を決定し、その旨を当該使用者に通知するものとする。」を「その症状を決定するものとする。」に改め、附則第五項を削り、附則第四項を次のように改める。  5 前項の規定による症状等の決定は、第五条第一項の規定による症状等の決定とみなす。   附則第二項及び附則第三項をそれぞれ附則第三項及び附則第四項とし、附則第一項の次に次の一項を加える。   (この法律施行前に打切補償又は打切補償費の支給を受けた者に対する特例)  2 けい肺にかかった労働者若しくは労働者であった者又は業務上、外傷性せき髄障害にかかった労働者若しくは労働者であった者が、この法律の公布の日以後この法律の施行前において労働基準法第八十一条の規定による打切補償を受け、又は労働者災害補償保険法第十二条第一項第六号に規定する打切補償費の支給を受けたときは、その者について、その者が当該打切補償又は打切補償費の支給を受けた日から、第十一条から第十三条までの規定を適用する。   附則第六項中「第六項」を「第九項」に、「附則第二項」か、「附則第三項」に、附則第七項中「附則第二項」を「附則第三項」に、「三分の一」を「二分の一」に、附則第八項中「附則第二項」を「附則第三項」に、附則第十項中「三分の二」を「二分の一」に改め、附則第十二項中「、機能検査若しくは結核検査」を削り、「第五項」を「第八項」に、「第四条第一号」を「第四条第一項第一号」に改め、附則第十三項中「その症状を決定し、その旨を当該使用者に通知するものとする。」を「その症状を決定するものとする。」に改める。   附則第十四項及び附則第十五項を次のように改める。  14 前項の規定による症状等の決定は、第五条第一項の規定による症状等の決定とみなす。  15 都道府県労働基準局長は、附則第十三項の決定に係る第五条第一項の通知をしたときは、遅滞なく、附則第十二項の規定により提出されたエックス線写真及び書面使用者に返還するものとする。  なお本修正に関する国庫の経費は、昭和三十年度で約七百万円でございます。これは今国会の会期は六月三十日までございますので、七月一日から計算しての金額でございます。  以上でございます。
  20. 中村三之丞

    中村委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終りました。  次に、国会法第五十七条の三には「法律案に対する修正で、予算の増額を伴うもの若しくは予算を伴うこと、なるものについては、内閣に対して、意見を述べる機会を与えなければならない。」と規定しておりますので、この際内閣より発言があればこれを許可いたします。  それでは内閣の代表として労働大臣に発言を許します。
  21. 西田隆男

    ○西田国務大臣 ただいま法律案の修正の内容を伺いました。今度の修正によりまして、この法律の公布の日から支給するという点に関しましては、これは予算上、避くべきであると考えますが、御修正の趣旨にかんがみまして、善処いたしたいと思います。その他の修正の部分につきましては、御修正の意思を尊重して了承いたします。
  22. 中村三之丞

    中村委員長 これにて本修正案に対する内閣の発言は終りました。  次に修正案並びにただいまの修正案に対する内閣の意見につて発言の通告がありますので、これを許します。大石武一君。
  23. 大石武一

    大石委員 労働大臣にお尋ねいたします。ただいまの修正によりまして、この法律施行前に打ち切り補償または打ち切り補償費の支給を受けた者に対する特例が、附則第二項におい規定されました関係上、この法律の公布はでき得る限りすみやかに実施する必要があると存じます。従いまして、この法律の公布は、この法案が両院通過直後に行わるべきものと考えますが、これに対する労働大臣の御決意を伺いたいのであります。
  24. 西田隆男

    ○西田国務大臣 ごもっともな御意見でございます。従って物理的に可能な限り、すみやかに実施いたしたいと思います。
  25. 中村三之丞

    中村委員長 他に御発言はありませんか。
  26. 山下春江

    山下(春)委員 ただいま労働大臣の御答弁は、可能な限りすみやに実施するという御回答でございましたが、その可能な限りというのは、本院及び参議院を通過いたしました時刻から何日ぐらいを要しましょうか。
  27. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。参議院を通過いたしましてから、事務的に多少の時間を要するのでございますが、事務的な手続が完了いたしますれば、その日から公布いたします。
  28. 山下春江

    山下(春)委員 これは私どもとしては、非常な努力をして譲った規定でございますが、その手続と仰せられるのは、どういう手続で、何日ぐらいを要しましょうか、御回答をいただいておきたいと思います。
  29. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 手続と申しますのは、天皇の御裁可を経る手続と、あとは印刷局におきまして、官報に印刷し、発行する手続だけであります。(「どのくらいかかる」と呼ぶ者あり)どのくらいか、一両日ぐらいで何とかできはせぬかと思いますが、そこは誠心誠意やりますので、御了承願います。
  30. 中村三之丞

    中村委員長 ほかに御発言はございませんか。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  31. 中村三之丞

    中村委員長 速記を始めてください。  それでは次にけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案並びに本案に対する各派共同提出にかかる修正案を一括して討論に付します。討論は通告順にこれを許可いたします。植村武一君。
  32. 植村武一

    ○植村委員 私は日本民主党を代表して、本業案に対して日本民主党、自由党、日本社会党両派共同提案にかかる修正案に賛成し、修正部分を除く原案に賛成するものでございます。  本法案が、本法案によって援護される立場におる人々の多年の要望であったことは言を待ちません。従って、本法案がここに提案されたことは、まことに慶賀にたえない次第でございます。  本法案が、すべての人々に満足させるだけの完全無比の法案とは言いにくい点は多々ございますが、現在の国家財政状態その他経済情勢を考えましたときに、本修正程度をもって、せめて  一歩でも本案の欠けたる点を修正するに満足するよりほか、いたし方ないと考えます。  今後、本法が十分にけい肺その他運命的な病気に悩む人々を満足さすに足るものになることを希望して、本修正案に賛成し、修正部分を除く原案に賛成する次第でございます。
  33. 中村三之丞

  34. 山下春江

    山下(春)委員 不治の病といわれましたこのよろけ病は、人道上放置できない重大な問題でございましたが、今回労働大臣初め関係当事者の方々の長い間の御努力が結晶されまして、本法律案ができましたことは、まことに御同慶の至りと存じます。私は自由党を代表いたしまして、各党の共同修正案に賛成をいたし、修正部分を除きました原案に賛成をいたすものでございます。  せっかくのこのようなヒューマニズムに立ちましたりっぱな法案ができたのでございますが、ただ私どもがこの法律を通過させるに当りまして、一抹のさびしさを残したことを非常に遺憾に存ずるのであります。本日のまの修正案は、国家財政上、やむを得ないということはもちろん了承いたすのでありますが、本法全体が、これらの気の毒な方々が長い間放置されておりましたものを救い上げようという、まことにあたたかい気持から出た法律であるにもかかわらず、本法が本委員会に付託されました日から公布の日までにこの法律で救われない人々を、大約七十人近く数えなければならないということは、本法を扱いました本委員会の委員全体のまことに遺憾しごくな点であったと思うのであります。これも国家財政上やむを得ないということではございましたが、過般労働大臣は、これに対する負担は全額国庫がいたすべきものであるという御信念のようでございました。なおまた、労災補償保険法の適用を受けた者等に対しましても、千二百日という打ち切りでなく、これは生涯めんどうを見たいというようなお考えでございましたから、私どもは人道上、大臣のまことにあたたかい気持を了といたしまして、やむを得ないこととして今回了承するのでありますが、過般社会保障制度審議会におきましても、特にいろいろ議論があった中で、本法適用の外に出された人々を何とか救済する方法はないかということが、この法律に対する全員の一致した希望でございました。そういう点を考えまして、今後、わずかの日にちの違いでこの法律の適用を受けなかった人人に対しましても、労働省といたしましては、できるだけあたたかい保護の手を差し伸べて、これらの人々を救済する方途を考えていただきたいということを、心から念願をいたすものであります。  それらの諸点を、本法を賛成するに当って私どもは心から念願をし、気持をつけ加えて修正案に賛成をいたし、修正部分を除いた原案に賛成をいたす次第であります。
  35. 中村三之丞

  36. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は日本社会党を代表し、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案に関し、意見を述べるものであります。  けい肺対策が、二十世紀初頭に南7連邦に取り上げられて以来ここに五十数年、その間一九一二年の南ア連邦のけい肺法、一九一八年の英国の労働補償法の改正を初め十数カ国において、けい肺に関する特別な法制、積極的な対策が行われ、三回にわたり国際けい肺会議が開かれているのであります。わが国におきましても鉱業法、鉱夫扶助規則において、けい肺を業務上の疾病として正式に取り扱われるようになったのは、昭和五年であったそうでありますが、終戦後、労働保護立法の制定、その対策の推進とともに、このけい肺問題は、きわめて重要な人道的社会問題として認識されるようになったのであります。昭和二十二年、当時労働科学研究所長瞳峻博士を中心としたけい肺対策の準備会が設立されて後、金属鉱山復興会議けい肺対策委員会の発足となり、昭和二十三年四月、金属鉱山復興会議の名において、本院に対し鉱山労働者けい肺対策に関する建議が提出されたのであります。全日本鉱山労働組合連合会を初めとし、炭鉱、窯業の労働組合けい肺対策委員会を設け、その特別立法の制定に熾烈な運動をし続けてきたのであります。本院においては、第十三回国会、昭和二十七年二月一日の労働委員会において、けい肺対策委員会が設置され、自後引き続き審査を継続してきたのであります。昭和二十八年八月六日、第十六回国会において、参議院に社会党両派の議員立法としてけい肺法が提出され、その後毎国会に提出され審議されてきたのであります。政府昭和二十四年、けい肺措置要綱を出し、その保護対策の第一歩を踏み出したのでありますが、その後、経営者の頑迷と無理解に押されてか、その対策も遅々として進まず、昨年に至り小坂労働大臣より、けい肺法制定の言明がありましたが、これもその後の政変で実現せず、ようやくにして本法案提出になりましたことは、おそきに失する感はありましたけれども、まことに喜ばしききわみであります。不治の病人として病床に呻吟し、きわめて悲惨な状態にあります患者並びにその家族、今、粉塵作業場に罹病の不安を抱きながら従事している労働者並びにその家族にとりまして、本法案の成立はまさに福音と感ぜられるでありましょう。  今、提出になりました修正案につきまして、意見を申し上げます。  第一点、健康診断につきましては、三年に一回とありますが、一年一回という外国の立法もあり、遊離けい酸の濃度の関係もあり、少な過ぎると考えるのであります。それを是正する意味において、ことに結核が合併する場合の病状の進行状態より見て、基準法規定健康診断を行う際、結核のおそれある者についてけい肺健康診断を行うことは、適当な措置考えるのであります。なお、政府におかれても、今後十分調査研究の上、危険度の高い作業場は区分して、多くの回数診断を行い、万遺漏なきよう今後の改正に期待するものであります。  第二点、費用負担の問題でありますが、国庫補助金の率でございますけれども、民主、自由の両党で、すでに予算修正がなされたところであり、その予算修正全体の話し合いについては、私たちには不明朗な点もありますけれども、この点につきましては了承、賛成いたす次第であります。  第三点、従来の患者の取扱いでありますが、わが党といたしましては労基法、労災法の打ち切り補償を受けた人には、全員適用すべきであると考えたのであります。その人員も八百二十五名であり、そのうち死亡された方もありますので、多くの人数ではなく、その方々の実情を察しますと、ぜひとも全員に適用されたいと熱望した次第でございますが、各党の御事情もありますので、やむなく了承いたしたいと思います。  以上のごとく、修正案に賛成し、修正点を除く原案に対し了承するものでありますが、この際本案に対する党の意見を明確にしておきたいと存じます。  第一点は、本法案の性格についてであります。本法案は、社会保障としてのものであるのか、労働基準法の補完的立法であるのか、きわめてその性格が不明確であります。職業病として発足し、前三カ年間は業務上の疾病として、労働基準法並びに労災法の適用を受けて療養し、その後二カ年間は、国民的人道的見地より国民病として取り扱われ、療養並びに休業の給付を受けるということは、理論の一貫せざるものを感ずるのであります。ことに労働基準法八十一条、労災法十二条に規定する打ち切り補償費の支給を受けた後、二ヵ年間の本法の給付を受けることになっているのでありますが、いまだ二カ年間給付を受け法の適用があるにもかかわらず、わざわざ打ち切り補償を行わなくても、本法の給付を受けて後二年後に打ち切り補償を行うのが、最も実情に即応し、合理的であると考えるのであります。しかるに、政府並びに経営者は、事業主の責任の延長をおそれ、あくまで三カ年が責任の限界であると固執するの余り、全く矛盾に満ちた法の体系になったことは、まことに遺憾に存ずる次第であります。船員法八十九条は業務上の負傷疾病の場合、船舶所有者に、なおるまで療養の負担を負わせ、重篤な廃疾者には、終生死亡まで障害年金を支給することを考えますとき、法均衡上、けい肺等特殊な保護措置を要する病気に関し、事業主の責任を延長するも、無過失賠償責任の限度を越えるものではないと思量するのであります。この点、西田労働大臣の、終生政府において給付をしたいという理想が実現する場合は、国民病として事業主の責任から除外されることもけっこうでありますが、二年という期間を限定される限り、事業主の責任を明確にし、その間の雇用関係の継続を保証すべきであると思うのであります。  第二点、転換給付についてであります。転換を要するものは、法第八条に規定されているけい肺第三症度ないし第二症度のものであります。政府は、病気ではあるが療養休業を必要とするものではなく、かつ労働能力を喪失していないことを理由に、何ら障害補償的なものを支給すべきではないとされております。しかし、転換給付を認めること自体が、そこに災害補償的なものを支給しなければならないことを自認した証拠であると考えるのであります。労働能力を喪失しているとわれわれは考えるのであります。百歩を譲って、政府の言うごとく、たとい通常の労働能力を喪失していないといたしましても、その作業場にそのまま作業を続行していけば、症状は進行し、労働能力の喪失どころか、必ず死に至るのであります。そこで、作業転換を要するこの状態の患者は、当然補償の対象になり、災害補償の請求権があり得ると考えます。日本の法体系、ことに労基法の中に的確にその病状に対する補償の規定がないとしても、それは法が予定しなかったような病状であるからでありまして、すみやかに改正を要すべきであると考えるのであります。しかし、現行法で準用するとすれば、当然労働基準法第七十七条の障害補償であると考えるのであります。労働者災害補償保険法施行規則別表第一の第十一級に胸腹部臓器に障害を残すものは、平均賃金の二百日分を支給することになっており、第七級、胸腹部臓器の機能に障害を残し軽易な労務の外服することができないものは、平均賃金の五百六十日分を支給することを規定しております。現実の問題といたしまして、鉱山の粉塵作業場の坑内から坑外に作業転換を命ぜられたものは、五〇%も賃金収入が減少し、その損失は甚大といわなければなりません。  一九五〇年の第三回国際けい肺会議の第二十九条に、けい肺患者がなれた職を離れたときには、あらゆる努力を払って直ちに彼を職につけなければならぬし、あるいは彼を訓練して適当なかわりの職につけなければならない。この際は彼の生活水準を引き下げてはならない。またかわりの職につくことが彼の補償額を減少させるようなものであってはならないという勧告がなされているのであり、外国の多くは、年金を支給して目的を達しているそうであります。この点将来への法の改正を要望しておきます。  第三点、第八条の作業転換、第九条の規定は、健康の保持と生活の確保の調整の問題であります。これが強制的に行われ、それが乱用され、かえって労働者の保護立法の性格を離れ、首切り立法にならぬよう、行政官庁においても十分留意されていただきたいと考えるのであります。  第四点、法三十八条の就労施設は、すみやかに次期国会において予算措置を講じていただきたい。  第五点、粉塵作業に従事した者で離職した者の健康管理につきましては、特別に考慮を払われるとともに、十分調査の上、必要あらば将来法の改正をしていただきたい。  第六点、平均賃金のスライド制の実施は、休業補償についてのみ実施しておりますが、打ち切り補償、その他の補償についても今後改正していただきたい。  第七点、船員法、船員保険法適用の労働者につきましては、実はこれは忘れられたとも、あるいは誤まった解釈をしておったとも言われておりますが、実際適用から除外されており、法技術の問題といたしましても、きわめて不備を感ずるのでございます。この点につきましては、私は行政官庁に今後こういうことのないように、十分留意していただきたいとともに、すみやかに法の改正を要請するものであります。  以上、わが党の意見を述べた次第でございますが、わが党といたしましても、今述べましたごとく、多くの不満な点、了承しかねる点はございますけれども、多年にわたるけい肺患者、その家族、粉塵作業場に従事する労働者、いな全国の労働者の念願であった立法が、ようやく実現の運びになった次第でございますので、この点にかんがみ、今後その法の充実に期待いたしまして、修正案賛成、修正点を除く原案に賛成をいたす次第でございます。(拍手)
  37. 中村三之丞

    中村委員長 午前中はこの程度にとどめまして、午後はけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案の討論採決を行います。  午後二時半まで休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      ————◇—————    午時二時二十五分開議
  38. 中村三之丞

    中村委員長 休憩前に引続きまして会議を再開いたします。  けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案を議題となし、討論を続行いたします。吉川兼光君。
  39. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 私は日本社会党を代表いたしましてこの法案に対しましては、各派の共同修正案が出ておりますが、その修正案に賛成いたしまして、修正案以外の残る部分におきましては、政府案を認めるものでございます。簡単に討論いたします。  わが党におきましては、この法案に盛られておりまする、すなわちけい肺病なるもは、先般来の公述人その他の陳述によってもわかりますように、これは一たんかかりますと、現代の医学をもってしては回復不可能である、こういうふうに結論づけられておりますところのおそるべき職場病でございます。従ってわれわれは、この病人に対しましては、政府はもとより、関係事業主方面におきましても、最大の犠牲を払って対策を講ずべきである、こういうふうに確信しておるのであります。従ってわが党といたしましては、この問題を取り扱う党内の機関にかけまして、この法案に対する修正案というものを、あらかじめ用意いたしたのでございますが、しかしながら、この委員会の審議の経過に見ます場合に、わが党の修正案のみを押し通すことは、他党との関係においてきわめて困難であるということが十分に認識されますがゆえに、われわれはあえて一党の修正案をここで強く主張することを避けるのであります。しかしながらわが党といたしまして作りました修正案がありますので、これを機会に労働大臣のお耳に入れておきたいと思います。きわめて簡単でございますから、わが党の修正に対する根本的な考え方を、この機会に明らかにいたしておきたいと思うのであります。  まず、第一条関係におきましては、この法律の目的に、労働者けい肺にかかることを予防する旨の条文を明らかに挿入することであります。  それから同じ第一条関係の第二といたしましては、療養、休業等の給付は、療養、休業等の補償と改めたいと思うのであります。  さらに、第三条におきましては、けい肺健康診断のうち、同条第二項は二年以内ごとに一回とし、基準法による健康診断の際けい肺疑いありと認められる者は、本法のけい肺健康診断を行うことを請求することができるというふうにいたします。  さらにまた三条の第二項といたしましては、第一項第三号を削除すること、また三といたしましては、第八条もしくは第九条による作業転換または離職者については第三条第三項を適用すること、さらに第四項といたしましては第九条以外の離職については、労働者の請求に基き健康診断を行うこと。  さらに第三点といたしましては、第八条、第九条関係でありますが、その中に作業転換の実施については、勧告された当該労働者の意思を十分尊重する旨の規定を挿入すること。  第四点といたしましては、第十条の関係でございますが、転換補償は労働基準法第七十七条に定める障害補償等級に相応した補償をすること。第五点といたしましては、第十四条関係でありまして、この法律に必要な費用のうち二分の一を国庫負担とすること。  第六点といたしましては、その他といたしまして、まず第一に、従来の患者に対する措置として、この法律施行前すでに基準法第八十一条または労災法第十二条第一項第六号の打ち切り補償を受けた者にもこの法律の適用を行うこと、さらに第二といたしましては、予防法を具体的に規定すること、第三といたしましては、この法律けい肺に関する最低の保護措置である旨の規定を設けること、第四といたしましては、第三十八条の就労施設は、すみやかに予算措置をとること、第五といたしましては、本法案と関連して労働基準法第十二条の平均賃金のスライド制をすみやかに実施すること、第六といたしましては、船員法適用の労働者にも本法の適用をすること。  以上が、わが党が根本的に考えておりますところのこの法律案に対する修正意見でございます。このわが党の修正に対する考えは、このたびの各派共同提案にかかわります修正案の中におきましては、生かされた面もありますし、生かされておらない面もあるのでありますが、すでに各派共同修正ということができておりますので、ことさらに私はその中にあって異を唱えるものではありませんけれども、わが党がこの法難案の修正に対しまして最低の線として考えておりますことを、この際労働大臣の御参考までにお耳に入れた次第であります。  繰り返すようでありますが、このけい肺患者の将来につきましては、きわめて悲観すべき情勢にありますがゆえに、政府におかれましては、将来の機会において、なお不十分と思われまするこの法律を、一段と理想的なものに改めることに御努力あらんことを希望いたしまして、簡単ではございますが私の討論といたす次第であります。
  40. 中村三之丞

    中村委員長 中原健次君。
  41. 中原健次

    ○中原委員 私は労農党の立場から、本法律案に対する要請の発言をいたしたいと思います。なお各派共同提案によりまして修正をいたしたすべての事項及び残余の政府提出案に対しまして賛成をいたすことを、まず最初に申し上げておきます。  すでにお互いに経験して参りましたように、昭和二十六年に全鉱の労働組合の方から、けい肺病等に対する法的な措置、国家的な補償措置を講じてもらいたいという陳情あるいは提言がなされましてから以来、本国会においても、小委員会を設け、あらゆる機会をもってこれに対する研究、調査、討議を重ねて今日に至ったことは、一にかかってこのけい肺病そのものが、長い歴史の中に立証されて参りましたように、いわゆる不治の病であるから、何とかして近代科学あるいは医学の力をもってこれを抜本的に根絶するの策はなきものかということで、これに対する数々の努力が払われて今日に至っておるわけであります。しかしながら、各般の事情は、その善意の努力にもかかわりませず、その要請にこたえるに足るものができ上ったとは申し上げられないことを、はなはだ遺憾に思っておるものであります。  各党の代表諸君によって、ただいま御討論が重ねられましたが、その御討論の中に、それぞれ重要な点についての御指摘がございましたように、本法律案は、幸いにも満場一致の修正案をこうして決定は見ましたものの、これが直ちに実施施行されると同時に、改正を約束づけなければならないことが、すでに前提になっておるということは、われわれの最も留意を置かねばならない点と思うのであります。  ことに、御存じのように、外国においても、けい肺病に対するいろいろな研究が進められて今日に至っておるようでありますが、比較的小国においてさえ、実は抜本的な施策を講ずるために、いろいろと努力がなされておる、いう事実を知ることができるわけであります。  ことに私は、抜本的な措置を講ずる必要のあることを痛感するの余り、まず本法の制定と同時に、予防的措置か講ずることの格段に重要であるということを指摘申し上げましたし、要請も申し上げておりますが、御存じのごとくに、たとえばソ連やスイスなどにおいては、主として予防の措置に国家的な施策が集中されておる。そうしてこの病気を起さしめることのないようにすることに国の努力が払われておるということは、確かに見るべきものがあり、学ぶべきものがあるのではなかろうか、このように私は痛感をいたしておるのであります。従いまして、日本においても、この法律の制定と同時に、直ちに研究調査、討議を進めなければならぬ点は、まず抜本的な措置としての予防施策をどのように取り上げるべきか、あるいはそれに対する医学的、技術的各般の方策が吟味されるということに、最も努力が必要になって参ることを、私は特に強調しなければならぬと思うのであります。  御存じのごとくに、この病気は、いろいろな説明はついておりますものの、さきの委員会において大臣から御答弁がありましたごとくに、本来ならば、有毒なる作業は禁止すべきものである、従ってこのような有毒な作業は、当然禁止すべきものの範囲に入るものであるけれども、遺憾ながら国家的、社会的にこの作業を禁止することが、国家の存立上、経済の発展上許されないものであってみれば、やむを得ずそのような危険作業をもそのままに認めていくからには、その意味においても、作業に従事する労働者に対する国家的、社会的責任は、今や議論する余地は毛頭ない、こういうことが当然結論として出ておると思うのであります。従いまして、このけい肺病に対する国家的、社会的な補償措置というものが、異論なしに当然法律改正になることは、言うまでもないのでありますが、その意味から、本法案に対しまして、私どもはさらに思いを深くしなければならぬと思います。従いまして、せっかくここに各派の共同修正によって成立を見るこの法律案は、その将来のよき改正への決意と展望を持ちながら、この法律案を制定するということに相なったことを、私は特に指摘いたしておきたいと思うのであります。  なお、配置転換の問題に対しましても、これは多々議論のあった通りでありますが、いわゆる配転は、同時に失業を招くというようなおそれが、いろいろ吟味してみますと、当然出て参るのでございます。従いまして、配転後における失業ということが予想されるだけに、そのことの対策がまた当然講ぜられなければ、労働者としては、安んじてその業につくことができないということになって参ることは申すまでもございません。従いまして、配転に対する補償等につきましても、一そうの注意を深めて、これに対する妥当適切な措置が講ぜられるように努力を払われたいものであると考える次第であります。同時にまた、療養の手当金、あるいは休業の手当金、あるいは打ち切り補償の場合等に関連しまして、それらのすべて、いわゆる経済的な補償措置というものが、国家的、社会的に責任のある事項であるだけに、さらに格段の配慮がここに講ぜられて、この立法がその線に約束せられていかなければならない、このように痛切に感ずるものでありまして、これらの諸点を指摘して、私はきわめて大づかみでありますが、私どもの希望といたすわけであります。  同時にまた、診療を行います場合の診療の機構と申しますか、その機構の現状を思いまするときに、これははなはだ不完全である。従って、現在予想されるような、あるいは現存するような診察の機構であってみれば、これは二十数万の該当労働者を診察しなければならない機構としては、はなはだ心細いものであるという感を深ういたすのでありまして、それだけに本法律案の公布、施行と同時に、この診療機構について一そうの整備拡充をはかるということは、せっかく当局におかれても積極的に具体的に御配慮が願いたい。このことを私は付言いたしておきたいと思うのであります。  先ほど各党の代表委員諸君から、具体的な点を御指摘になられ、本法律案に対する賛成討論を通して、さらに改正への展望を持ちながら御討論がなされましたので、私はこれ以上の多言を要しないと思いますので、ただ一応以上のことを訴えまして、本法案各派共同修正案並びに修正部分を除く政府原案に対しまして、暫間的な今の場において賛成の意見を表明する次第であります。(拍手)
  42. 中村三之丞

    中村委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  まず各派共同提出にかかる修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君は起立を願います。   〔総員起立〕
  43. 中村三之丞

    中村委員長 起立総員。よって本修正案は可決せられました。  次に、修正部分を除く政府原案について採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  44. 中村三之丞

    中村委員長 起立総員。よって本部分は原案の通り可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。  次に、本案について、小島徹三君より、附帯決議を付すべきであるとの動議が提出されております。趣旨説明を求めます。
  45. 小島徹三

    ○小島委員 私は四派の共同提案による附帯決議を付したいと思います。  まず附帯決議案文を読み上げます。   本法施行に伴い、引き続きその保護の万全を期するため、政府は特に次の諸点の早期実現に努力せられんことを望む。  一、法第十条所定の転換給付については、速かにその増額措置を講ずること。  二、法第三十八条所定の就労施設設置のため、その予算措置を講ずること。  三、本法と関連し労働基準法第十二条所定の平均賃金について、そのスライド制の実施措置を講ずること。  四、船員法適用の労働者に対しても本法の趣旨に副うような措置をとること。 以上の附帯決議を各党全員賛成の上、御可決あらんことを望みます。
  46. 中村三之丞

    中村委員長 これにて趣旨説明は終りました。  次に、ただいまの趣旨説明に対する発言があれば、これを許可いたします。発言はございませんか。  それでは動議について採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  47. 中村三之丞

    中村委員長 起立総員。よって本附帯決議は可決されました。  なお、本案に関する委員会の報告書作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認めて、そのように決します。     —————————————
  49. 中村三之丞

    中村委員長 次に、岡良一君外十一名提出健康保険法等の一部を改正する法難案、山下春江君外五十四名提出国民健康保険法の一部を改正する法律案、木崎茂男君提出国民健康保険法の一部を改正する法律案、及び大石武一提出医師国家試験予備試験受験資格の特例に関する法律案、以上四法案につきまして、それぞれ成規の手続をもって撤回の申し出がありますが、本案はすでに委員会の議題といたしました関係上、衆議院規則第三十六条によりまして、委員会の許可を得なければなりませんが、これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、四案の撤回をいずれも許可するに決しました。     —————————————
  51. 中村三之丞

    中村委員長 なお、この際参考人招致の件についてお諮りいたします。医業類似行為に関する小委員会よりの申し出により、先ほどの理事会におきまして協議いたしました結果、医業類似行為に関する問題につき、参考人を招致して本問題の調査を進めたいとの結論を得ましたので、適当な日に参考人を招致いたして意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認めて、そのように決します。  次に参考人といたしまして、全日本鐵灸按マッサージ師会会長小守良勝君、日本鍼灸師会会長花田博君、全国療術協同組合緊急法制対策部長黒田保次郎君、日本手術技療術師協会会長松原秀雄君、東京大学名誉教授三沢敬義君、国立箱根療養所所長岡原寅猪君の六君を選定し、その手続等に関しましては委員長に御一任願うことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  本日はこの程度にとどめまして、明三十日午前十時より開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十分散会      ————◇—————