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1955-06-17 第22回国会 衆議院 社会労働委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月十七日(金曜日)     午前十一時七分開議  出席委員    委員長 中村三之丞君    理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君    理事 松岡 松平君 理事 大橋 武夫君    理事 山花 秀雄君 理事 吉川 兼光君       植村 武一君    亀山 孝一君       草野一郎平君    小島 徹三君       床次 徳二君    山本 利壽君       横井 太郎君    亘  四郎君       越智  茂君    小林  郁君       高橋  等君    永山 忠則君       岡本 隆一君    滝井 義高君       中村 英男君    長谷川 保君       岡  良一君    神田 大作君       堂森 芳夫君    山下 榮二君       中原 健次君  出席国務大臣         労 働 大 臣 西田 隆男君  出席政府委員         厚 生 技 官         (医務局長)  曽田 長宗君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         検     事         (刑事局公安課         長)      桃沢 全司君         参  考  人         (生光会療養所         事務長)    阿部 哲郎君         参  考  人         (生光会療養所         労働組合委員         長)      佐竹 和子君         参  考  人         (警視庁警備第         一部長)    片岡 清一君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 浜口金一郎君         専  門  員 山本 正世君     ――――――――――――― 六月十七日  委員清瀬一郎君、永山忠則君、島上善五郎君、  井堀繁雄君、岡良一君及び田中利勝辞任につ  き、その補欠として松岡松平君、加藤鐐五郎君、  長谷川保君、山下榮二君、堂森芳夫君及び神田  大作君が議長の指名で委員選任された。 同 日  理事松岡松平委員辞任につき、その補欠とし  て同君が理事に当選した。     ――――――――――――― 六月十六日  理容師美容師法の一部を改正する法律案内閣  提出第一三二号) の審査を本委員会に付託された。 同日  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関す  る陳情書  (第二〇三号)  精神薄弱児並びにし体不自由児福祉増進に関  する陳情書  (第二〇四号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法による船員の取扱  に関する陳情書外三件  (第  二〇五号)  社会保障費増額に関する陳情書  (  第二〇七号)  元満州開拓民及び満州開拓青年義勇隊員の処遇  に関する陳情書  (  第二〇八号)  同  (第二五九号)  医業類似療術行為期限延長反対に関する陳情  書  (第二〇九号)  同外二件  (第二三六号)  同(第二六四  号)  医師法の一部改正等に関する陳情書  (第  二一〇号)  社会保障費予算確保に関する陳情書外六件  (第二一一号)  日本住血吸虫病対策確立に関する陳情書  (第二一二号)  国立療養所附添廃止反対等に関する陳情書  (第二一三号)  国立療養所附添廃止反対に関する陳情書外二  件(第二  三七号)  同外一件  (第二六〇号)  昭和三十年度社会福祉関係予算増額に関する陳  情書  (第二三九号)  同外五件  (第二六二号)  同外一件  (第二九七号)  大学卒業者就職促進に関する陳情書  (第二四〇号)  戦没者遺族等援護強化に関する陳情書  (第二四一号)  同  (第二六五号)  同(  第二九九号)  けい肺法制定に関する陳情書  (第二四三号)  簡易水道予算増額等に関する陳情書  (第二  五四号)  けい肺病患者休業補償費増額等に関する陳情  書  (第二六一号)  健康保険法の一部改正反対に関する陳情書  (第二六三号)  出所戦犯者住宅あつせん等に関する陳情書  (  第二六六号)  静岡労働基準局人事行政に関する陳情書  (第二六七号)  理容美容業における徒弟制度復活反対に関する  陳情書  (第二  九六号)  社会保障制度確立に関する陳情書  (第二九八号)  国民健康保険助成費増額等に関する陳情書  (第三〇〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  小委員及び小委員長選任  失業保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第九四号)  中小企業における労働争議問題について  足利療養所の問題について     ―――――――――――――
  2. 中村三之丞

    中村委員長 これより会議を開きます。  まず理事補欠選任を行います。去る六月七日、松岡松平君が委員辞任せられたのに伴い、理事に欠員を生じましたので、その補欠選挙を行いたいと存じますが、再び委員選任されました松岡松平君を理事に指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認めそのように決します。     —————————————
  4. 中村三之丞

    中村委員長 次に小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。先刻の理事会において協議いたしました結果、医業類似行為に関する件について小委員会を設置し、本問題の調査を進めたいとの結論を得ましたので、小委員五名より成る医業類似行為に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認めそのように決します。  なお、小委員及び小委員長選任に関しましては、委員長より指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認めそのように決します。  それでは    松岡 松平君  中川 俊思君    山下 春江君  長谷川 保君    受田 新吉君 の五君を小委員に指名いたし、小委員長には松岡松平君を指名いたします。     —————————————
  7. 中村三之丞

    中村委員長 次に失業保険法の一部を改正する法律案を議題とし質疑を続行いたします。中原健次君。
  8. 中原健次

    中原委員 まず大臣に一応お尋ねしてみたいと思います。失業保険法の一部を改正する法律案提案説明、非常にけっこうな文字が織り込まれて御説明になっております。しかし、各改正条項を検討してみますと、根っから割り切れないと申しますか、合点の参らない点が多々ありますので、一部はあえて大臣答弁を求めるまでもなしに、局長から御答弁を願ってもいいと思いますけれども、主体は一応大臣の御答弁を期待いたします。  まず最初失業保険予算の問題でありますが、改正された暁、大体予算措置はどのような見通しを持っておいでになるのか、その点について伺いいたしたいと思います。
  9. 西田隆男

    西田国務大臣 お答えいたします。詳細な数字は、私ただいま記憶いたしておりませんが、この保険法が通過いたして実施されますと、二十九年度は若干赤字が出ておりますが、本年度では、その赤字を見ないで、三億程度黒字が出るという予定をいたしております。それから明年度、いわゆる平年度におきましては、十二、三億くらいの黒字が出る、こういうふうに私は記憶いたしております。詳細なことについては、政府委員から御答弁申し上げます。
  10. 中原健次

    中原委員 そういたしますと、三十年度は三億、以後は十二億ないし十三億くらいの黒字見通しておる、こういうことです。この黒字赤字議論は、する必要はないのですが、本来、今のわが日本経済状態、あるいはそれに関連して雇用状態をながめてみますと、失業保険情勢の進行の中に、むしろこれは赤字が出ることの方が理屈に合うように私は思うのです。というのは、赤字が出るほどに給付がどんどん上ってくるというような状態が実は出ておるのではないか、そういうふうに考えます。従って、このような中で黒字をかせごうという考え方が、今のそういう情勢の中から考えて妥当なことかどうか、これを一つ伺いたい。
  11. 西田隆男

    西田国務大臣 お答えいたします。私は失業保険黒字を出さねばならぬという観点に立っては失業保険そのもの考えておりません。しかし、中原さんのおっしゃるように、失業保険赤字が出るのが、保険給付を受ける人間が多いからいいじゃないかという御意見に対しては、必ずしも賛成でありません。なぜかと申しますと、失業保険というものは、臨時的な摩擦によって起る一時の保険という意味制度でありまして、失業保険を受け取る人が多いということは、結局はその国の経済実態そのものがノルマルでない、こういうことになりますので、実を申しますと、失業保険受取人が少くなって、みな所を得て職を得られて、そうして保険料率でも下げていかれるような格好に、結果としてはなることが一番望ましい、こういうふうに考えております。従って、摩擦が起きて一時的に失業になったものを、一年間で百八十日、九十日、あるいは二百十日あるいは二百七十日という段差を設けて保険給付をすることによって、その職につくまで生活の不安を解消したい、こういう意味合いが失業保険目的であろう、このように考えております。
  12. 中原健次

    中原委員 摩擦的な、臨時的な、一時的な現象として失業が起る、従ってそういう失業対策がとられておる、大体そういう御見解であると思うのであります。しかし、今日の失業状態実態をよく見ますと、これは単純に摩擦的な現象として扱い切れるものかどうか、いわば一種の慢性的な状態が出ておる状態であります。やはり暫定的な、臨時的な措置としての考え方で、今日の失業対策、ことに失業保険制度が取り扱われて妥当なのかどうか、ここに一つ問題があるのじゃないか。つまり、失業様相は、慢性的様相だと私は考える。ここにもう少し腰を入れた、従って摩擦的とか、臨時的とか、暫定的というような考え方でなくて、対策が立てらるべきものではないか、こう思うのですが、これはどうお考えですか。
  13. 西田隆男

    西田国務大臣 失業保険で、長期に労働者諸君生活の不安を解消するという考え方は、保険趣旨の中に、私は含まれておらぬと思います。従って、失業者がふえてきてどうこうという問題に対しましては、失業対策事業というものを興して、そこでやはり生産的、建設的な、言いかえれば、働きながら生活が維持していけるという方向に、政府としては力を入れべきであって、どこまでも失業保険というものは、暫定的なものであり、摩擦的な原因による失業者の一時的な生活の不安を解消する目的のために作られておるものだ、従って失業保険運営はそういう意味において当然運営さるべきである、かように私は考えております。
  14. 中原健次

    中原委員 その見解のことは、議論になりますから、一応控えるといたします。しかし、そうであるとすると、今、赤字の問題が急に非常に問題になっておるわけですが、二十九年度赤字が十億と聞かされ、あるいは八億と聞かされるのですが、どっちがほんとうですか。
  15. 江下孝

    江下政府委員 十億でございます。
  16. 中原健次

    中原委員 そのことについて、いわば摩擦的な一つ措置として取り上げていくのが本体である、従ってこれはあくまで暫定的なものであるというように御説明のようであります。そうであるとすれば、その見解から、この赤字は、もちろん大へんだと思いますが、しかしながら、赤字のもう一つ前に問題がありはしませんか。つまり、年々積み立てられておる保険料金があるということであります。いろいろな文書にも載っておるのです。そうすると、これは財産があるということになるのです。失業保険財政の中には財産がある、積立金がある。これはどういうことになりますか。これに対するお考えは……。
  17. 江下孝

    江下政府委員 仰せの通り失業保険は従来黒字でございまして、徴収いたしました保険料積み立ていたしましたのが、現在約二百五十億ございます。ところが、御承知通り失業保険法規定されております通り、この積み立てにつきましては、一定の義務額がございます。これは大体その月の給付総額の六倍、三十億といたしますと、百八十億円積み立てをいたさなければならない、こういうことになっております。実はこの十億の赤字も、積立金からおろしたのでございます。今後におきましても、こういう問題が起りました場合は、もちろん積立金という問題も考えられますけれども、今申し上げました趣旨から申し上げますと、積立金が非常に多いということでもないと思います。
  18. 中原健次

    中原委員 ちょっとこれは脱線ぎみの質問になるかもしれませんが、その二百五十億あるいは二百六十億と見込まれておる、事実現在積立金があると思いますが、その金は何に使われておるのですか。
  19. 江下孝

    江下政府委員 これは法律規定によりまして預金部資金に納められ、預金部資金運用といたしまして、これが各方面に出ておる、こういうことでございます。
  20. 中原健次

    中原委員 そこで、私はちょっと議論が出てくるのです。労働者から集めた金が預金部資金に回されて、しかも、その金があるいは労働者あるいは貧農たちの必要としておる資金要求にこたえることが、最近非常に困難のようです。そうすると、その金は運用部資金の中から、一体どこへ出ているのか、こういう議論が出てくる。何だか労働者のそういう零細な金をかき集めて蓄積された資金が、特定の大企業、大産業の資金に流用されておる、こういうことも言えるわけです、今の預金部資金としてそういうように出ておるとすれば。ここに私は一つ、蓄積された失業保険金使い方としては非常に妥当性を欠く、こういう議論が当然出ると思うのですが、これはどうでしょう。
  21. 西田隆男

    西田国務大臣 お答えいたします。私はこの預金部資金——預金部資金の中で失業保険積立金労災保険積立金あるいは簡保の積立金等々たくさんありますが、それが財政投融資として、原資として日本経済のために政府から投融資されておる。それは必ずしもどの資金をどの方面に幾ら流すということでなくて、預金部資金そのものを総括的に何千億、何千億というものを一応見積りまして、そうしてそのうちからいろいろな方面資金が流されておる。言いかえますならば、今中原さんの言われたような面にも行っておるかもわかりません。しかしながら、そうでない方面、たとえば中小企業金融公庫とか、あるいは労働金庫に対する間接の預託であるとか、あるいは国民金融公庫に対する政府出資というふうなことで、必ずしも大財閥と申しますか、大資本と申しますか、そういう方面にだけ失業保険労災保険積立金が流れておるということはいえないと思いますけれども、本来として、失業保険とかあるいは労災保険等労働者のふところから出た金によって蓄積された資金は、原則的には、やはり中原さんのおっしゃるように、労働者福祉増進のために使われることの方が適切であろうと私は考えております。
  22. 中原健次

    中原委員 もちろんその金が内容の一つになっておる預金部資金であります。そっくりそのまま全額特定独占資本の方へ回っておるとかなんとかいうふうには考えません。けれども、その回っておる率から、あるいはその構成しておる部分について、その金の利用対象が、むしろ片寄っていはしないかというところから考えると、やはりこれは問題になると思うのです。しかし、その議論はいいでしょう、ここでこれ以上議論する必要はないと思いますが、私はあくまでこの点については異存があるということを、最初に申し上げておきます。  なお、その積立金利子の問題、利息は、一体一年間幾らですか。
  23. 江下孝

    江下政府委員 昭和二十九年度におきまして、積立金からの利子収入は十二億ございます。これは私どもといたしましては、最初に事実を申し上げますが、この十二億のうち五億五千万円——実はここではなはだ恐縮でございますが、訂正さしていただきたいのでございます。一昨日五億五百万円と申しましたが、五億五千万円であります。これは失業の予防という見地から当然還元すべきであるということで、総合職業補導所日雇い労働者宿泊施設建設運営の費用に充てられる。残りの七億は政府失業保険事業運営いたしますための行政事務費に充てます。
  24. 中原健次

    中原委員 ただいまのお話で、これはあとで実はお尋ねしようと思ったのですが、関連してきましたからお尋ねいたします。今度の改正案の第三章の二の第二十七条の二の福祉施設の項ですが、これによりますと「前項の施設は、被保険者及び被保険者であった者の利用に支障がなく、かつ、その利益を害さない場合に限り、これらの者以外の者に利用させることができる。」とい条項がありますね。もちろん、このことに異存を申すのじゃないのです。しかしながら、この福祉施設は、従って必ずしも失業保険対象の人々にだけ極限された施設でもないことになるのじゃないかと思うのです。多分今の御説明は、これにもつながるのじゃないかと思うから申し上げます。そうしますと、こういう福祉施設は、むしろ失業保険金積立金利息をもってだけこれに充てなければならぬという考え方は、果して妥当なのかどうか、むしろ一般会計から何らかの協力措置を講ずべきことではないのか、このように思うのですが、これについていかがでしょう。
  25. 江下孝

    江下政府委員 二十七条の二で、新たに失業保険福祉施設に関する規定を置いたのでありますが、一昨日申しましたように、失業保険施設を置き得るという根拠は、現在の失業保険特別会計法の三条に「保険施設費」という言葉が出ております、それによって置いてきたのであります。その経費といたしましては、今申し上げましたように、保険料積立金運用収入の一部をさいてこれを行なったわけであります。先生も御承知通り失業保険法規定の中に、政府失業保険事業のために保険料を徴収するという規定がございます。失業保険事業といいますのは、私ども考えでは、今申し上げました失業保険福祉施設というのも、失業保険事業の一環であるという考え方で、これは理念的な問題になりますが、本来なら保険料算定基礎として差しつかえないものであると思うのでございますが、しかしながら、現実に保険料積立金というものが相当ございます。そこで、今相当保険料もあるのでございますので、保険料で云々ということよりは、現在積み立てました保険料運用収入でこれを充てていく、こういう考え方が適当ではないかと考えまして、現在さように措置いたしておるのでございます。福祉施設と申しますのは、結局失業保険経済一つのワク内の問題です。  それからなお、被保険者または被保険者であった者以外はどうするかということでありますが、これは先生も御承知通り職業安定法に、職業補導事業を地方の団体に行わせるという規定があります。これによりまして現在一般職業補導事業につきましては措置をいたしておるのでございます。
  26. 中原健次

    中原委員 一歩譲るといたしましても、しかし、今日のような不況失業者のおそるべき増大を予想させられている段階において、当然社会保障政策の各般にわたっての段取りが進められなければならないと思います。そうなってみると、百歩譲って考えましても、ひとり預金部資金運用の中から、つまり失業保険金の中から生ずる利子対象としてだけ、この福利施設を行うということが、どのような基礎の上に立っていたにいたしましても、そういう今日の段階特殊性から考えて、やはり妥当性を欠くのじゃないか。これはどのような場合にも、一般会計が協力する建前にはあるわけでありますが、やはり一般会計からの配分でこれに協力させるという建前をとることは、必ずしも間違いではないと私は思うのです。ことに去年の結果として赤字が出たことに驚いて、しかも今後の見通しとしてのまだまだ大量の失業者を造出するであろうという予想、あるいは今日までとってきた経済政策の中から起ってきた不可避的な一つ不況、そういうものから考えてみますと、失業保険財政赤字が出るということは、必ずしも驚くに値せぬと思うのですが、それだけにあわてて、その赤字にすぐ対策を立てる、しかもその対策が一体どこに向くのか、これからお尋ねしなければわかりませんけれども、それがどこにしわ寄せが向くのかということを考えて関連させてみますと、どうも利子使い方をもっと慎重に考える必要があるのではないかというふうに思うからお尋ねするわけですが、いかがですか。
  27. 江下孝

    江下政府委員 仰せごもっともな点があると私は考えております。そこで、失業保険運用収入を、私どもとしましては、全部こういう失業保険福祉施設に充てるべきではないか、七億というものを行政事務費に充てているのはいかなるものか、行政事務費は、先生おっしゃる通り一般会計が負担すべきものである、こういう積立金から負担させることは適当でないということで、私ども例年大蔵省折衝しております。そこで、実は福利施設でございますが、先ほど申しました十二億のうち、今年は五億五千万円でございます。昨年は三億八千万円でございます。その前の年はもっと少い。逐年実は私どもとしましては、この運用収入をできるだけ還元するという考え方でやっております。来年度におきましては、先生も今お話しになりましたような線で、われわれとしては、極力これが労働者福利に還元されるように、全力を尽して折衝をいたしたいというふうに考えております。
  28. 中原健次

    中原委員 来年から極力その方向に努力するというお話でございますが、それは期待いたします。しかしながら、本年度たちまちこの一部改正に関する法律案の中に盛り込まれているような措置が行われなければならないというときに、やはり端境期の問題として、もっと労働省当局の腹をきめていただかなければならぬときじゃないかと思う。ことに、せっかくヒューマニズムの立場に立ってすべての施策を考え、あるいはいろいろな御議論をなさっておいでになる西田労働大臣は、こういう場合にこそ、一つ大臣の持ち前のいいところをここで具体化する、実際の上に現わしてみせる必要があったのではないか。私どもがかねて予備知識として概念を持っておりました西田さんなら、こんなことを、仕方がないというのでのまれるとは思わないのです。だから、どうも私は釈然としないという感じがするわけです。人によっては、まあこの程度なら、それくらいのことはやるだろうということはを思いますから、疑問を持ちません。期待を持つだけ失望が大きいし、従ってどうも私の頭が解けないのです。この法律案を審議するに当りましても、どうも何だか先に先にじゃまになるものが先行して、どうもはっきりつかみがたいのです。西田労働大臣がこのことを御承認になった御見解を、御説明願いたい。
  29. 西田隆男

    西田国務大臣 お答えいたします。私が失業保険の問題に取り組みました第一の原因は、失業保険の悪用ということは言葉が悪いかもわかりませんが、失業保険給付を受ける人たちの中に適当でない、これを乱用されているような受給者があるということ、それから短期労務者の問題ですが、六カ月間働いたことによって六カ月間給付を受けるというような、失業保険の本旨にだいぶ遠ざかった給付をやっている。これを私は、労働省に行きますと、すぐ失業保険の問題を取り上げますときに、事務当局に非常な文句を言いました。なぜこういう短期労務者にこんな給付をしているのかと言ったら、法律的には根拠はないが、自然にそうなってしまったのだという、きわめてルーズな話がありましたので、これは何とか改正しなければならぬということが一つ趣旨です。  もう一つは、実は今中原君の言われた積立金利用活用の問題、これは実を言いますと、労務者住宅建設資金等積立金を充当させたいということで、大蔵省折衝をさせましたけれども、実は住宅の融資となりますと長期のものになります。積立金そのものを、そういう長期にわたる方面に融資することによって、失業保険運営に非常な支障を来たすというようなことになってもよろしくないという大蔵省見解がありましたので、実はその問題はその程度にしたのでありますが、ただし、保険金の積立金運用による収入、言いかえれば利子収入、こういうものを一般歳入として大蔵省が計上していることはまことにけしからぬ、全部これを出してしまって労務者福利施設のために使うべきであるということも、強硬に主張いたしましたが、結局一億数千万円の増額に三十年度予算ではとどまっております。しかし、これは継続的に、私は何年かかっても、少くとも失業保険あるいは労災保険等積立金運用による収入は、全部やはり労働者福利施設のために使わるべきである、これを一般歳入なんかに振り向けるべきでないということを強く考えております。私が労働大臣をいつやめましても、あとまで労働省に残っております役人さんたちに、必ず大蔵省との折衝をさせて、私が考えております程度のことは、ぜひ実行いたしたいと考えております。大へん中原さんは私を期待しておったのが、どうも期待を裏切られたというようなお話がありましたけれども、実に政治というものはむずかしいものでして、それか理屈通りに行きますとさっぱりするのですが、さっぱりしないところに日本の政治の悩みの根源がある、私はかように解釈いたして、努力は一生懸命にいたします。
  30. 中原健次

    中原委員 現実の矛盾した経済機構の中で、矛盾した政治を立てていくのですから、ごもっともです。それはよしとしまして、しかしこの次の機会というのは、通常国会の場だと思いますけれども、もちろんそれまでいすは続けられておると期待しております。けれども、一国の大臣は、政治情勢の変化はどういうことがあるかもしれませんけれども、やはりその場でその玉を離してはならぬということがいえるのではないか。だから、この失業保険法の一部改正のただいまの御説明のように、短期労務者の中に不当な受給者もある、あるいはまた六カ月働いて六カ月の給付を受けることは不合理だ、いわばいろいろな不満な議論も出ておった中で、やむを得ずこういう措置を講じたということでございましたが、しかし、これには、実はまだまだ問題が発展しなければならぬことがあると思うのです。この集約をいたすためには、相当あると思うのです。ということは、今の失業者がなぜ出たかという、失業者を出した経済的な根拠ですね、これはやはりせんさくしなければならぬ。そうすると、そういう政策を立てた政府担当当局の政治的責任というものは当然ある。失業者というものは、その失業者それ自身の責任だとは思わない。もちろん皆無とは申しません、何分かの個人努力は要ります。けれども、それは全部じゃない、むしろ失業者を造出するための根拠は政治にあると思います。これは政治的責任、国家の責任、こういうことにつながっておりますだけに、失業対策考える場合の考え方は、腹の置きどころをそこに持っていただかないと、妥当な政策は実際には出ぬのではないかと私は思うのです。このことについて、議論は控えます。とにかく、私はそう思いますが、大臣もおそらく御否定にならないと思います。  そこで問題は、先日この委員会で、他の同僚委員から御指摘になって、何かしらんと調査しましたら、五月二日付の官報付録にありまして、いろいろ出ております。別に目新しいものでもなんでもない。潜在失業者六百万人と明確に書いてありましたが、むしろこの六百万人というのは、私どもからいえば——ども言葉で、官僚統計、官僚計数という言葉をいつも使いますが、数字にいわゆる政治的な含みがある。これはせんさくしますと、六百万や七百万では、この問題に対する答えとしての数字ではないと思うのです。ということは、俗にいわれております潜在失業の予想数は、一千万をこえておるという実態が出る。これは私が申し上げなくても、労働省当局は、それくらいのことは知っていらっしゃるはずです。従って六百万を驚くには値しないという現状です。そうなって参りますと、潜在、顕在、完全失業、いろいろなものを予想する場合に、これからは減るというお見込みをお持ちでしょうか、それとも、まだそうはいかないということでしょうか、立案者のお立場から、このことに対してはどういうお見通しを持たれますか。
  31. 西田隆男

    西田国務大臣 お答えいたします。中原さんのおっしゃるのは、潜在失業者が減るかふえるかということでなくて、完全失業者が減るかふえるかという……。
  32. 中原健次

    中原委員 関連があるのですから……。
  33. 西田隆男

    西田国務大臣 それでは総括してお答えいたします。経審で立てております六カ年計画によりますと、最終年度における国民の総所得が相当に増加することによって、潜在失業者と今いわれておる人々は減少するであろうということが一応予測されます。これを具体的に個々の産業による計数を出せといわれましても、これはちょっと今ここでお答えはできませんし、私自身、概念的にも、日本の潜在失業者というものの基準をどこに置いて、どう判定するかということに対して、まだ結論を得ておりません。これは、アメリカとかイギリスとかいうような、その国の八割から九割以上も雇用関係が成立しておるというところでは、比較的つかみやすいと思います。従って英国なんかでは、完全失業者は労働力人口の三%ぐらいまではあっても差しつかえないのだ——差しつかえないという言葉は悪いかもしれませんが、経済的に見た場合は、それはあるのが当然だというような見解を持っておる人もあるようでございますが、日本でもしそういうことを考えましたならば、これは大へんなことです。狭い国土に大ぜいの人間がおるから、失業者が当然あると思いますけれども、今われわれがつかんでおります完全失業者は、四月では七十万程度を完全失業者と呼んでおりますが、これは日本の労働人口から申しますと、イギリスあたりで考えておるパーセントからは、はるかに低いパーセントである。英国などから見ますと、日本では少くとも二百万以上の完全失業者がおってもいいのではないかという結論になるわけですが、産業構造が非常に違いまして、雇用関係に置かれておる労務者日本では非常に少いために、なかなかその判定は苦しゅうございます。私自身としても、潜在失業者日本に今実際幾らおるのかという問題になりますと、的確なお答えはいたしかねます。従って、労働行政の面におきましては、一応完全失業者の形において出た失業者対象として、この連中に職を与える機会、生活に不安を感ぜしめないような方法をとっていきたい、これが今のところ労働行政の面では精一ぱい、こういうふうに私は考えております。
  34. 中村三之丞

    中村委員長 中原さんに御相談ですが、岡本隆一さんも労働大臣に質問したいと言っておりますから、どうぞそのおつもりでお願いいたします。
  35. 中原健次

    中原委員 完全失業者の問題についても、あるいは潜在失業者の問題につきましても、これは無関係でないのです。実は非常に組み合わせたものです。ことに、もう一つ問題になりますのは、完全失業統計の算出の基礎といいますか、これは私には大分議論があるのです。とにかく、ちょっとでも仕事に手を出したら、もう完全失業者じゃないのですね。そうしますと、実は三十日の間まるまる何にもしないでおるという状態は、なかなか許されないのです。気持からいっても、それはとうていがまんならないし、経済的にもとうてい実は許されないと思う。かりに、失業保険給付を受けておるにいたしましても、現在の給付額で、そんなに安閑と生きておられるかというと、生きておられません。やはり何のかんのと、何らかの形で不安定な仕事に取りつくという状態はあるのです。けれども、それは決して就業しておるという言葉では呼べないのがほんとうです。ですから、失業問題を考えられる場合に、そういう統計は、政策を立てる側からいえば、非常に都合のよろしい基礎に立っておりますけれども、それだけで、機械的に失業状態を把握するわけにはいきませんし、従って対策を立てることも適当でないと思うのです。そうなって参りますと、そういういろいろな考え方の中から、今日の失業実態をつかむために、いろいろ努力されておると思いますが、失業実態をつかむことは、なかなかむずかしいと思います。けれども、そういう意味で大まかのワクは出ておると思う。その大まかのワクが、それならこれから漸減するという経審当局の見解ということに承わりましたが、どうも実は、そうなりますと、政府考え方にさらにもう一つ疑問が出てくるのです。果してそうなんだろうか。たとえば、先日たしか大臣のお言葉かにあったと思いますし、今ではわれわれの常識でもそうなっておりますが、炭鉱合理化法案の問題に関連して、すでにそれだけ考えても、二万七千でしたかの失業者が大体予想される。これは政府の方でそう思っておる、実態はもっとひどいかもしれません。次から次へ起ってくるいろいろな合理化政策の中から、今後、やはり相当失業状態はかさんでくる、決して漸減どころではないと思います。これは、今議論する必要はないので、もうすぐに実態が出てくると思います。なるほど、三月と四月の比較をいたしますれば、十四万減ったということになっておりますけれども、これも御存じの通りで、職を求めようとする意欲を放棄して、そうして借金で困っておる家庭で、いろいろ苦労して学校にやるとか、いろいろな方向転換した者も加わった数の減少だと思う。従って、七十万になったからといって、なるほど確かに十四万減ったぞという結論にはならぬと思う。やはり失業しておる実態、あるいはやむを得ず就業しようとする意欲、希望をやめたというところに、大きな悲劇があるとさえ考えられるのです。ちょっと政治全般から考えると、こういう実態に対しても、相当深い配慮が当然なくちゃならないと考えるのです。そうなって参りますと、だんだんそういう完全な失業状態も減るであろうし、あるいは完全という計数で報告されておらない多数の中に、まだまだ実は一種の失業対策を必要とする対象がたくさんあるということの大体の見通しをお持ちになっておいでになるはずだと思うのです。これについては、いかがでございましょうか。
  36. 西田隆男

    西田国務大臣 私といたしましては、日本の完全失業者というものが、今の統計面に現われております七十万という数字で、間違いないというふうには考えておりません。職安関係におきましても、四月に職を求めに来た者が、少くとも百四十万をこしておるという実態。しかし、そのうち七十万を完全失業者と見、残余の者を、完全失業者以外の潜在失業者のうちに入るかもわかりませんが、そういうふうな意味合いでのけておるというところに、何も理論的な基礎もなければ、実態調査の結果も現われておりません。従って、きわめて広い範囲に解釈しますと、職を求めに職安に来た百四十万というものは、一応完全失業者と見るべきだとして、労働省としましては、この完全失業者七十万、職を求めた者百四十四万一千、あとの残余の者に対しましては、少くともそれが失業者であるかないかという動態調査をやらなくてはいかぬと考えておりますけれども中原さんも御承知のように、現在の人員で今までの考え方、やり方では、これをつかむことすらもできないでいるというのが、労働行政の面における実情でございます。従いまして、さっきから言われております潜在失業者の問題に至っては、もう、なおさらどうにも今のところ手のつけようがない、調査の方法もない。しかし、それをないからといって、うっちゃっておくということは考えておりません。社会政策的な政策がどんどん実行されていきますと、減るのではなくて、かえって失業者状態がはっきりつかまれる、あるいはそういう意味において失業者が増加するという中原さんの御意見のような結果が生まれてくるかもわからないと考えております。しかし、少くとも現在の日本経済実態そのものを基盤にして将来の構想を立て、計画を作りまして、そうして事業規模の拡大がはかられ、生産が増強され、国民の総所得が増加していけば、少くとも現在の生活状態を基盤にしますならば、失業者はだんだん減っていくであろうという一応の推定をせざるを得ないわけでございます。詳しいことをはっきり労働大臣の意見として挙証して述べろとおっしゃられても、現在では、私にはその力も資料もありませんので、一つこの程度で御了承願います。
  37. 中原健次

    中原委員 物事に重大でない問題はないといえばないのでありますが、しかし、これは非常に重大だと私は思います。政府政策は、とにかく一つの安定した政権の上に、それぞれよっておるということでなくちゃならぬ。ところが、最近の実際の動きを見ますと、政府の出してくる施策のことごとくがと言っても言い過ぎではないほどに、どうもそれに失業を伴う。これは実に妙なことです。どうもそこに失業が伴ってくる。産業の合理化、経営の合理化と言えば、一応言葉は非常にりっぱに聞えます。しかし合理化とは何ぞやと追及してみると、やはり労働を強化する性格が伴ってくるし、人員を削減する性格が伴ってくるし、働く者の側から考えると、この合理化という言葉は、実は首を絞める言葉になると思います。ですから、日本の今の労働者の常識から考えましたら、合理化政策などと聞いたときに、だれだっておそらく安心しません。目をさらのようにして、その政策の動きを凝視いたしております。それほどに目のかたきにしなければならぬほどの矛盾をはらんだものが、今日の段階では合理化なんです。ところが、これから起ってくるものは、いろいろな政策を見ますと、どうもその合理化の線にずっと乗っかっていくように思えるわけです。従って、そこにいわゆる現実の段階における経済の矛盾があるのだと思います。これはやむにやまれない一つの矛盾であります。しかし、その矛盾をどのようにして調和し、どのようにして乗り切るかというのが、政治だろうと思います。その政治の衝に当られる、特に労働者政策を背負って立つ労働省の当局におかれては、その点については、やはり私ども見解のような立場に勇敢に立つということの方がほんとうなのであります。それが閣議でどういう論争で火花が散ろうとも、その主唱者がなければ、将来この矛盾段階をとにかくがまんのできる程度に乗り切ることはむずかしい。従って、自己破産に陥るというふうに私は思うのであります。みずからの破産を招くことになる。従って、どうもそういう政策で進みつつあるのじゃないかという感じがするために、執拗にお尋ねしておるわけであります。どうも仕方がない、おれの立場としてはそうはいかないといって済むかどうか、労働大臣のセクションというものはそこに問題がある。そこに今日のいろいろな抵抗のもとに、労働省はやはり強い抵抗を示していく、いわば戦いの場であると思います。それが期待できなければ、労働省は無用です。これは極端な言い方をしますけれども、そのようにさえ私は思っております。  大臣も時間が何で、あとに質問者もあるそうでありますから、大臣に対する質問はこれで終りまして、引き続き大臣の質疑の終った後、局長その他にお尋ねしたいと思います。
  38. 西田隆男

    西田国務大臣 お答えいたします。今中原さんのおっしゃったことは、非常に重大な問題だと考えております。私は、概念的に申しますと、人間が一つの社会を多数で作っておる。そうすれば、作っておる一定の土地、言いかえますれば立地条件というものに対して、少くとも個々の能率には差があるにせよ、一定の、能率点という言葉を使っておりますが、能率点の労働というものは当然やらなくちゃいかぬ。合理化ということが、能率点以上に労働を強制するということであるならば、私は中原さんのおっしゃることは、そのまま認容できると思うのでありますが、私は決して、必ずしもそうであるとは考えておりません。従って、戦争に負けまして以来の日本のいろいろな経済基盤のもとにおいて、四つの島国に九千万人に近い人間が生きていかなければならないというほどの立地条件のもとにおいて、果して日本労働者がどの程度働けばよいかということの一応の基盤が、現在はまだ作られていないと思います。なぜそういう能率点というものが重大であるかと申しますと、生産を行うことによって、この能率点にも到達し得ない多くの人たち、言いかえますならば、われわれの兄弟、妻子あるいは老年者という人たちに対して、同じ国内に住んで、そこで生活をさせていかなければならないという責任を、私たちは社会人として負っておる。ただ自分の働く量そのものが、能率点と言うのは問題があるでしょうが、かりに一〇〇働かねばならない、これが健康な労働者の能率点であると仮定しました場合に、過去においては八〇しか働いてなかった。それを今の言葉で申しますと、合理化ということによって能率点たる一〇〇働いてもらおうという場合に、それは二〇の労働強化であるという考え方を持たれることは、私は必ずしも妥当ではない、少くともそれは一〇〇働くことによって、どうしても八〇も働けない、六〇しか働けない人たち生活の保障を、国民全体がこれをバック・アップしていくという考え方の方がいいのじゃないか。議論をするのではありませんが、能率点の問題に対してさように考えております。従って、現在行なっております石炭の合理化のごとき、これは能率点を越えた労働強化ということを目的としていないことだけは、一つ御了承願いたいと思います。それは個々の業態で違うと思いますが、私、炭鉱を経営しております。私の経営しておる炭鉱は、三井、三菱、麻生、このまん中で、立地条件はほとんど全部一緒です。そこで企業をしておりますが、私の炭鉱の生産能率は、ちっとも無理しないでも、十六トンないし十七トン行っている。三井さんや三菱さんは十三トン行っている、麻生さんのところは十二トン行っている。同じ労働者で、同じ立地条件で、同じ設備をして働いてもらっておる。ただ、私のところの労務者諸君は、私の事業所の技術面のことを完全に征服し切っているということだけで、能率がこんなに違う。労働時間を延長してやっておるのでもなんでもありません。これは一つの例でありますが、そういうふうに申しますと、同じ立地条件のもとにおいて、同じ設備で同じ労働力で働いた場合に、どこまで働くことがいわゆる働くことになるのかという点を考え合せて、合理化、機械化等の問題も、私は考えるべきであろうと思う。ただ、労働者諸君の労働生産性のために、全国民をまかなっていかなければならぬということは考えておりません。経営者の方は経営者の方として、また労働者側の能率点と同じような経営の能率点が私は当然あると思う。この二つのものが並行して、順調に運用されていった場合に、初めて国全体としての生産の能率点が生まれてくる。そこからいろいろな問題の解決がつくのじゃないか。これは議論をするわけではございませんが、私はさように考えております。従って、合理化といえばふるえ上るという考え方は、もう少し一つ御検討をいただいて、中原さんにおいても、労働組合側にも御説明していただいて、必ずしも合理化はふるえ上るようなおそろしてことではないという概念だけでも、植えつけていただくようにお願いいたします。
  39. 中村三之丞

    中村委員長 岡本さんに申し上げますが、労働大臣は三十分程度でお願いいたします。岡本隆一君。
  40. 岡本隆一

    ○岡本委員 今度の失業保険法改正の重要なのは、適用範囲の拡大と給付期間の改正とが大きな二点だと思うのです。その二つの問題について、具体的な問題でお尋ねをしたいと思います。  まず第一に、第六条の適用範囲の問題でありますが、第六条で、従来の法律では第一号のイからホまでのいろいろな業種が適用をはずされておったのであります。それはどういう理由に基くものかということを、まずお伺いしたいと思います。一つ一つの項目について、どういう理由で従来は適用されなかったかということをお伺いしたい。
  41. 江下孝

    江下政府委員 お答え申し上げます。第六条で現在除外いたしておりますのは、イからホまでの五つのグループでございます。これは、実は失業保険法施行の当初におきましては、まだこのほかにも除外例がたくさんございます。たとえば土木建築事業とか、あるいは旅館等の接客業、こういうのを除外しておった。ところが、なぜ広範囲に除外いたしましたかと申し上げますと、当時、失業保険法を初めて日本に取り入れまして、この運営等につきましては、相当慎重に考えていかなければならぬということで、いろいろな事情で除外をいたしておったのでございます。この中のイとロの農林漁業関係でございますが、これは先生承知通り、実際問題として、産業の動向の影響を受けることが非常に少い部門でございます。農業の失業という面は、お考えようによれば、ほとんど失業という面はない、農業を失業するということはない。ただ、農業に雇用されておる人たちについては問題になりますが、これは御承知通り、非常に数もわずかでございます。しかも現実には、その雇用形態が家族的な従業面が非常に強くて、雇用形態をはっきりつかむことが困難で、こういうような事情で現実には除外をいたしたのでございます。農林関係も、ほぼ同様な事情でございます。それから次に掲げてございますハニホ、これはこういうことでございます。第一点といたしましては、離職の率が非常に少い。つまり、保険料のかけ捨てになる面が非常に多いということが第一点。いま一つは、現実には保険金をもらいます者は、安定所に求職者となって現われるのでございますが、安定所におきまして、これらの方々についての職業紹介等の事業はほとんど困難である、こういうようなこと等がおもな理由になりまして、従来除外いたしておったのでございます。そこで、今回この改正案によりまして、ハニホ、この三つの業態は比較的似ておるわけでございますが、一応この三つの事業につきまして強制適用をしたらどうか。と申しますのは、だいぶ失業保険法実施当時から見まして、社会経済情勢も変っておりますし、相当離職者も出ておるというような事情からいたしまして、これらを強制適用にいたしたいと事務的に考えたのでございますが、ただ今回、ハの教育、研究または調査の事業だけを除外したのでございますが、実はこの三つの中で、教育、研究、調査の事業が、最も離職率が低いのでございます。私どもの算定によりますと、一般の事業に勤めておる人たちの離職率が月一・一%、それからニとホの病者、社会事業等は大体〇・七%、教育関係ば〇・五%、こういうことでございます。考え方によれば、教育関係もこの際入れていいんじゃないかという御議論も成り立つと思うのでございますが、一応離職率の面から見て相当低いといいますのと、いま一つは、実は学校関係の団体からいたしまして、実際問題として保険料のかけ捨てになるだけであって、安定所においてはなかなか職業のあっせんが困難だ、こういった事情で、強い反対の陳情もございます。それこれ考え合せまして、今回までは、これを強制適用にするということはいたさなかったのでございますが、次回以降におきましては、当然考究されるべき問題だと存じます。
  42. 岡本隆一

    ○岡本委員 お話を承わりますと、ハからホまでは離職率がきわめて少い、言いかえますと、景気、不景気の変動によるところの影響のない職業、そういうふうな職業にあっては、従って失業者としてその従業員が町に投げ出されるということは少いわけです。そういうふうな職業を、ここに今度新たにお入れになるということは、悪く解釈いたしますと、昨年あたりから非常に失業保険経済がだんだん苦しくなる傾向が出て参っております。失業保険事業月報を御配付願ったのを見ますと、二十八年度保険料の収納が二百四億、二十九年度は二百二十四億ですか、今度給付額の方を見ますと、二百五十四億から三百五十五億と、非常に急激に二十八年から二十九年にかけてふえておる。おそらくこれは、今年ももっとふえていくんじゃないかと思います。従って、この保険経済の出てくるところの赤字を、先ほど二十九年度は十億とおっしゃいましたが、これを幾らかでもカバーするために、安定度の高いような職種を今度は強制適用の——自然適用というのですか、それの範囲の中にお入れになったのじゃないかというふうな悪い解釈をするのですが、そういうことはございませんか。
  43. 江下孝

    江下政府委員 どうも非常に私どもからいたしますと、実は心外なことでございます。先生も御承知通り、社会保障制度というのは、もちろんその恩恵を受ける人が助かるわけでございますが、その負担を共同の責任でやる、それに国家の力が加わるということでございますので、これはもう理念的に申し上げますれば、できるだけ幅広く適用範囲を持つということが望ましいと私ども考えて実は今回の措置をいたしたわけであります。結果といたしまして、先生の仰せになるような面も多少はあると思いますけれども、しかし、考えましたのは決してそういう考え方でこれを考えたのでございません。この点は御了承願いたいと思います。
  44. 岡本隆一

    ○岡本委員 健康保険にいたしましても、失業保険にいたしましても、相互扶助の制度であるということは重々存じているのです。しかしながら、今回の改正に当って、特に比較的安定度が高くて、同時にまた比較的高給を取っている——医療事業であるとか、あるいは社会保障事業は必ずしもそうでもないかもしれませんが、教育の何であるとか、そういうふうな高給を取っている側の方の、経済的に保険経済から見ると特にプラスと見られるような面だけをお取り上げになって、イとロを除外されているというふうな点において、私はそういうことを考えるのです。イとロという業種は、今あなたは、比較的にこの対象にはなりがたいというふうなことをおっしゃいましたが、しかしながら、水産方面あるいは林業の方面では、今日相当の雇用者が使われている。そういうようなものを失業保険のワクからおはずしになっているということについては、私はそういう疑念をぬぐい去ることができないのですが、いかがでしょうか。
  45. 江下孝

    江下政府委員 今回の適用範囲拡大によりまして、収支の関係でございますが、平年度におきましては、特に適用範囲の拡大によります保険料の収入の予想を二億七千万円と考えております。これに対しまして保険給付が三億二千万円——もちろん、これは国家の負担が保険料収入には伴いますので、若干この面で黒字にはなりますけれども、そう大きな黒字になるということでもございません。  それから農林関係、水産関係を除外いたしましたのは、先ほども申し上げましたような理由でございますが、実は先生承知通り、これは任意包括適用という制度がございます。そこで、もしそういう五人未満等で小さい事業等が、どうしても入りたいというものがあれば、私どももそれによって加入させるということで、今日まではこれを強制適用にいたさなかったのであります。
  46. 岡本隆一

    ○岡本委員 ここで考えられることは、失業保険保険料——健康保険の場合にあっては、一定の最高額がきめられていますね。ところが失業保険の場合には、保険料の最高額というものがきめられていないのです。従って、ことに医師のごとく非常に高給を取るというふうな人は、非常に大きな保険料を負担しなければならない。しかも、給付を受けるのは三百円をこえてはならないということになっておる。同時にまた、先ほどのお話にもあったように、こういう人々は、決して安定所へ出てくるような職業じゃないのです。従って保険料は全くかけ捨てになると思うのです。従って、そういうふうな状態のものと、それから景気不景気によって非常に大きな変動があって、失業の危機に非常にさらされているというふうな人が、同じような形において保険料を負担するというふうなことになると、相当な不公平があると思うのですが、その点についてのお考えはいかがでしょうか。
  47. 江下孝

    江下政府委員 実は先ほど申し上げましたように、これは理念的な問題になると思うのですが、私どもとしましては、今回の適用範囲の拡大につきましては、相当慎重を期しました。もちろん関係の各団体に対しまして、この適用について意見を文書で求めております。これに対しまして日本医師会、歯科医師会あるいは研究調査の事業、みな賛成であるというお答えをいただいておるのでございます。先生のおっしゃるような面は、確かに事実上出て参りますけれども、この際はそういう面で、社会保障制度の大きな育成を遂げるという意味で御協力を願う、こういうことでございます。
  48. 岡本隆一

    ○岡本委員 社会保障制度の育成の意味で協力せよというふうなお言葉でありますけれども、そういうことは、政府の責任においてなさなければならない。従って、被保険者のみにそういうふうなことをおっしゃることは、これは政府の片手落ちであります。ことに、日本の今の経済状態が非常な苦況に陥っているということは、敗戦後今日までの政治のあり方が悪いから、一そうこういうふうなことになった。それの責任を、被保険者みずからの手でもってやるより仕方がないじゃないか、従ってそういうふうな、社会保障制度の一環として一部の人もがまんしろというふうな、保険料のかけ捨てもがまんしろというふうなお言葉は、これは少し納得ができないと思うのです。  さらに、もう一つ次の問題で私お伺いしたいと思います。それは第二十条の給付期間の問題でありますけれども、今度の改正によりまして、六カ月未満の人の給付期間が短縮されましたが、その短縮によってどれくらい給付額が節約されるか。それからまた、十年以上のものが延長されましたですね、五年以上も延長されたですね。その延長分によってどれくらい支出が増加するかという二点をお伺いしたいと思います。
  49. 江下孝

    江下政府委員 今回の給付期間の長短の是正によります給付額の増加と減少の面でございますが、保険給付の面におきまして、本年度九カ月でございますが、約差引十億円程度の減少になるというふうになっております。
  50. 岡本隆一

    ○岡本委員 そこで、問題になって参りますのは、また今のようなおしかりを受けるかもしれないですが、十年以上同じ事業場に働いているというふうな人は、相当高齢になっていると思う。おそらく四十才を越え、四十五才に、あるいはそれを越えているというふうになってきておる。そういう人たちの就職というものは、今日ではほとんど不可能に近いといってもいいくらい、失業した場合に次の就職が困難な状態であります。そういうふうな人たちに、九カ月の間に、安定所の方では職業をちゃんと世話をする御自信がおありになって九カ月とおきめになったのかどうかということをお伺いします。
  51. 江下孝

    江下政府委員 現在安定所の窓口に、毎月百万人程度のものが出て参っております。この中には、先生も仰せの通り年の若い人、年を取った人、いろいろありますが、確かに年の若い人の方が就職率がずっといいわけであります。年を取った人は、非常に就職あっせんがむずかしいのでございます。実は、年令別にまだ数字を取っておりません。いずれ取ったら、また御説明いたしたいと思っておりますが、相当むずかしいと思います。現在の制度が、実は五十になっても六十になっても、六カ月しかもらえないということでございます。そこで、私ども考えとしましては、百尺竿頭一歩を進めると申しますか、すべてこれらの人々に対して、給付期間の延長をはかるということによって、生活安定の期間を若干長からしめるということを考えたのが、今度のねらいでございます。
  52. 岡本隆一

    ○岡本委員 仰せの通り、今度の制度は、私はなるほど改正だと思うのです。いい思いつきだと思うのです。従って、私の考えるのは、制度改正に伴って、今度は保険経済の上で十億の黒字が出るわけですが、この黒字分を、長期間同一事業場に勤務した人の給付期間の延長もしくは——こういう人は高給を取っていると思うのです。大ぜいの子供を持っていると思うのです。従って、そういう人は、三百円ではとても暮らせないと思うので、そういう人たちのために金額をふやして、同時に、もっと給付期間にゆとりを見て、何でもかんでも、お前はどこへ行け、どうにも仕方がない、年を取って自分ではできないと思うが、そこへ行かなければならぬというのではなしに、もう少し自分の年令、あるいは今までの生活状態というものに適合した職業が見つかるまでのゆとりを与える、こういうような温情を出していただけないか。黒字をそのまま保険経済赤字の解消に充ててしまわないで、この給付期間の改正によって生ずる黒字を全額、そういうような長期同一事業場に勤務していた人へのあたたかい給付に充ててもらえないか、こういうことの労働大臣のお考えを承わりたいと思います。
  53. 西田隆男

    西田国務大臣 お答えいたします。まことにごもっともな御意見であります。私がこの失業保険法考えましたときには、今あなたのおっしゃるような黒字が出た場合には、料率の値下げをするということは考えておりましたが、長期間雇用されておった失業者に対する給付金の増加ということは、実は考えておりませんでした。今、お話を承わりまして、なるほどごもっともと考えております。  それから、あなたは三百円と言われますが、現在最高は四百六十円を給付いたしております。この金額は、必ずしも妥当だとは考えませんけれども、それだけ金額が引き上げられたことは事実であります。それともう一つは、この法案を作りますときには、最初五年以上を二百七十日ということで、五年というのに一応基準を置きまして、ある程度これは熟練労働者である、ある一定の職に五年間おれば、相当期間おったのですから、就職は困難であろう。そういう人に何らかの措置をとるべきだと思って、審議会にかけたのでありますが、審議会では五年は三十日、十年は九十日ふやすという審議会の答申が参りましたので、とにかくその精神を尊重いたしまして、この法律案に盛り込んだのであります。今あなたのおっしゃったことは、十分考えたいと思っております。
  54. 岡本隆一

    ○岡本委員 最後に、先ほどお話のあった問題でありますが、預金部運用資金に回されているところの利息のことです。これを行政事務費に使うのは間違っていると思うのですけれども、今年の予算を見ましても、政府の負担が百十七億、その中で事務費は二・六億というふうに聞いているのですが、政府がわずか二・六億の事務費を出す、そうして利息の中から七・七億のものを行政事務費にひっぱり出してくるというようなことは、労働者の乏しい経済を食って行政費に充てているということで、行政事務費というものは当然税金の中からまかなわれなければならない、すなわち政府の負担において行われなければならない。従って、来年はこういうことを絶対にしないようにしていただくということを、ここで言明していただけるかどうか、大臣のお考えを伺いたい。
  55. 西田隆男

    西田国務大臣 お答えいたします。さっき政府委員からもお答えしましたように、利息収入を一般の歳入として見積って政府の財源にするという考え方自体が根本的に間違っておることは、あなたの御指摘される通りです。三十年度予算折衝にあたりましても、私自身は、全部この収入は労働省福祉事業によこせと言って頑強にがんばった結果、約五億五千万円、昨年に比較して一億数千万円の増加で実は妥協したわけでございますから、来年度において、はっきり取ってしまえるという確信はございませんけれども、今後も全部労務者福祉施設利用できるように、全幅の努力をいたしたいと思います。
  56. 中村三之丞

    中村委員長 それでは午後二時より生光会療養所の争議問題について調査を進めることといたしまして、午前中はこの程度にてとどめ、休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ————◇—————    午後二時二十六分開議
  57. 中村三之丞

    中村委員長 休憩前に引き続きまして、会議を再開いたします。  中小企業における労働争議問題のうち、生光会療養所の争議問題について調査を進めます。     —————————————
  58. 中村三之丞

    中村委員長 この際、本問題について警視庁警備第一部長片岡清一君を参考人に選定するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  まず参考人より意見を聴取することといたします。阿部参考人。
  60. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 生光会清瀬療養所の事務長をしております阿部哲郎でございます。ただいまから生光会の沿革と争議の実情を申し上げます。  そもそも生光会清瀬療養所は一昨年六月結核療養所としまして発足いたしました。なお昨年の三月十日財団法人組織になりまして、それ以来結核療養所として運営されて参りました。  従業員は療養所所長以下現在六十三名でございますが、設立以来日が浅うございまして、事務的に不備な点が多多あったわけでございます。たまたま本年四月二十七日、従業員組合を結成したから認めろというようなことで、組合員全員並びに外部団体員都合百二十名ほどが理事長室へ押しかけて参りまして、組合を結成したから認めてもらいたい、ついては明二十八日第一回の団交に応じてもらいたいという申し出があったわけでございます。それで翌二十八日、組合側は外部団体員を含めた百余名が理事長室に押しかけて参りまして、交渉に入ったわけですが、組合側からの要求項目は二十二項目にわたっております。二十二項のうち二十項目は待遇改善等のいわゆる経済問題であったわけです。他の二項目の一つは、組合事務所を設置してもらいたい、他の一つは、吉田炊事長——これは非組合員でありますが、これを解雇してもらいたい、こういう申し出であったわけです。しかも、その二十二項目の要求事項のうち、待遇改善等のいわゆる経済問題は、全部それを了承いたしまして、経営者側はのんだわけでございます。そして組合事務所設置の問題は、これは病院の特殊性にかんがみまして後日回答する、よく考えた上で後日回答するということで即答はしなかったわけですが、もう一つの吉田炊事長の問題は、これは理由が非常に薄弱であるために、これを解雇するわけにいかぬという考えもありまして、一週間後にその問題は実態調査の上で回答する旨を組合側に話しをしまして、その二十八日の第一回の団交は終ったわけです。  その後五月十二日に、明十三日に、この前の吉田炊事長の問題について、あるいは組合事務所設置の問題について、回答してもらいたいということがありまして、翌十三日に第二回の団交をいたしました。そのときには、すでに組合側から覚書を作って参りまして、二十二項目の待遇改善等の問題はもちろんのこと、組合事務所設置の問題、あるいは吉田炊事長解雇の問題を理事者側は了解しておる、いわゆる組合側の申し入れによって解雇をするというように言質を与えたということから、解雇してもよろしいというような文面の覚書を作成して参りまして、これに署名せよ、こういうことであったわけです。ですが、その吉田炊事長の問題は、覚書の内容が、話し合ったこととはだいぶん相違があるから、この覚書に署名するわけにいかぬということで、こじれまして、その日は物別れとなったわけです。その後十八日——五月十三日に交渉が始まりまして、吉田炊事長の問題に関する覚書の点で、組合側から食い下られたわけですが、あくまで吉田炊事長の解雇を要求いたしまして、組合側が作成してきました覚書に署名せよということであったわけです。ですが、その後種々実態調査をした結果、解雇する理由がないということから、その覚書に対して署名するわけにいかぬという回答をしたわけであります。  その後、二十一日に第四回目の交渉がありまして、前日と同様、組合側はやはりあくまで吉田炊事長の解雇の問題に拘泥しまして、それ以外のことには触れずに、ただそれ一本で押してきた。同じように吉田を解雇せよ、こういう申し出であったわけです。ですが、問題は人事の問題であり、組合側が、従業員同士である、いわゆる従業員の首を切れということを経営者に申し出るのはおかしい、そういうことは、組合側としては言うべきじゃないということをたしなめたのですが、なかなか組合側は承知しそうもなかったわけです。しかも外部団体員の——この交渉に当りまして、まあ終始そうでありますが、外部団体員の者が発言の九割九分までを占めるというほどでして、非常に強硬態度であったわけです。それで、いろいろもつれました結果、経営者側としましては、何ら解雇に足る非行がないために解雇するわけにいかぬ。ついては、その間一週間休職させておったわけですが、その休職を解いて、二、三日中に復職させる予定である、絶対解雇はしないという旨伝えたわけでございます。たまたま、そのとき私が交渉委員として出ておりまして、理事長は他に用事があった関係上、当日交渉には出席していなかったわけですが、さんざんその四回目の交渉がもつれたあげくに、非組合員である看護婦長を強引に一方的に引っぱり出しまして、これを二時間余にわたってつるし上げをしまして、強引に脅迫行為による行動をもって、理事長宅まで看護婦長が迎えに行けば、理事長は出て来るはずだろうから、理事長を呼んで来いということで、自転車の荷物台に乗せまして、真夜中の二時四十分ごろ、幹事の者が五名ほどつきまして、強引に理事長宅まで連れて行ったというような事実もあったわけですが、しかもこの第四回目の交渉は、二十一日の午後五時半ごろから始まりまして、翌二十二日の午前四時に至るまで、私以下四名の者が出るに出らないような状態でして、監禁状態で罵詈雑言の限りを尽されたというようなことであったわけです。  それで、その二十二日の朝四時に解散するときには、翌日の十時に理事長と組合側とは交渉を持つという約束をしまして別れたわけなんですが、たまたま理事長とも相談をいたしました結果、終始議場騒然とするような、また脅迫行為による一方的な交渉には、どうも応ずるわけにいかぬというような考えがありまして、いわゆる正式なルールをきめて、いわゆる団体交渉協定を取りきめた上で、そのワク内で今後交渉を進めていこう、そういうようなやり方を承諾するならば団体交渉に応じたいということを申し入れたわけですが、組合側はこれを突っ返してよこした、そういうような状態であったわけです。それで、その夜七時半ごろから、病院本館の理事長室初め廊下、看護婦長室あるいは看護婦長寝室、玄関、そういったところに墨、インクなどをもって落書きをいたしまして、この損害を見積りましたところが、大体において四十四万ほどになるのですが、そういう損害をこうむったというような状態であったわけです。  それで、早急解決あるいはこれを収拾するために、理事長は種々外部の者とも相談をしました結果、たまたま理事長が長年同志的つながりのあります護国団なるところへ行きまして相談をしましたところが、そういう状態で病院の秩序が著しく紊乱しておる、しかも建造物あるいは器物の損壊をされたというような実情であるなら、進んで秩序を守るために協力をしようということで四、五名の者の派遣を受けまして、特別警備員としてこれを配置しまして、一応警備に当らせたというような状態であったのです。しかも、この落書きの事項に対して、いわゆる組合活動を逸脱した行為であるというような判断もいたしまして、争議中で、あるいは組合活動を弾圧したかのように誤解されるおそれもあるようですが、この行動に対して、断固解雇しなくてはならぬということから、組合幹部五名に対しまして解雇の通告をしたというような次第であります。  非常に簡単に申し上げたわけですが、当生光会の労働争議を起しました現在までの経緯を、かいつまんで申し上げた次第です。
  61. 中村三之丞

    中村委員長 次に、佐竹参考人にお願いいたします。
  62. 佐竹和子

    ○佐竹参考人 生光会組合員を代表いたしまして、お答えいたします。  まず第一に、私たちが入りますときに、誓約書なるものを書かせられました。その誓約書は、  今般御所生光会療養所に御採用願いましたについては就業規則を守るは勿論上司の指示に従い友愛互譲信義協力の精神を基として公正な秩序の下に責任を重じ誠実を旨とし常に発刺たる創意を以て業務に精励し事業の発展に努力尚左記事項を厳守致します      記  一、所の建物、附属物件を愛護し万一重大過失によって棄損したときは弁償の責に任じます  一、名称の如何を問わず組合又は団体運動には参加、参入いたしません  こういうものを最初に一札とられまして、そのあとから婦長が来ましてから、婦長の口から、組合運動には絶対に参加してはいけない、それから看護婦の場合は、患者さんと恋愛をしてはいけない、そのことを守らない場合は絶対にやめていただきます、こういうことを口約させられております。  それで、組合結成前の理由を申し立てたいと思うのです。看護婦、雑役、事務と三分析させていただきまして、看護婦は婦長の圧迫のもとにしいたげられ、採用時には、組合を作ってはいけないと、今言ったようなことを口約させられまして、月給も事務会計でなく、婦長が決定する始末で、個人に来る手紙を、婦長が先に検閲し、その後手渡され、五分間の買いものにも、婦長さん行ってきます、ただいま帰りましたとあいさつし、信用して秘密の話を打ち明けると、それを大きく広げて事務所で看護婦の悪口を言い、外出、外泊には一々許可書を取り、外泊すれば、パンパンみたいだなどと言い、またある人は、個人的交際までもしてはいけないと支配されたり、少しでも意見を言えば、感情的になり、はれものにさわるようなびくびくした勤務状態でした。何回となく総会を開いてもらいたいと話しましたが、一部の赤の扇動だと受け付けてくれません。こうした中に、意見を言った者を陰で工作し、何とかしてじゃまになるからやめさせたいと理事長と話し合ったりしたことが看護婦全員の耳に入り、怒りが爆発して婦長の非をなじりましたところ、経営側に泣きついて、つるし上げされたと言い、また一方的なる見解をもって理事長も全面的にそれを信じて、私は生光会の婦長であるから、私についていけない者はみなやめてよいとの暴言を婦長に平気で吐かせ、朝八時から日勤は五時まで、当直者は明日十二時まで勤務させ、当直料も払ってくれず、超過勤務手当も認めておりませんでした。四月より、当直料だけは認めさせました。一方雑役の人たちは日給制で、一年以上勤務しておっても、病欠しても差し引かれ、朝七時から六時半までで、昼休みもできないほどの労働強化でした。意見を言えば、やはりすぐ首にされます。事務の人は二人で、この二年間一日おきに当直して、当直料も払われず、日曜日の休日も満足に取れませんでした。第一に就業規則は全然なく、給与体系もできておらず、最低一カ月五百円の子もあり、二千円、三千円という人たちもおり、給与の明細もありませんでした。月給は、普通ですと事務会計から支給されるべきですが、看護婦は婦長から、雑役は理事長の奥さんである常務理事から支給されており、常識では考えられないようなことばかりでした。  ここにおいて、組合結成の要望が個々に起り、四月二十六日、結成いたしました。組合員四十九名です。女三十一名、男十八名。さっそく理事長に組合宣言に参りましたところ、無礼者とどなられ、ごみやつらとか、小娘になめられてたまるかなどと言われましたが、第一回の団交は、電光石火にやったため、四月二十八日、覚書交換に調印いたしました。ところが、これと同時に、さっそく雑役から一名、看護婦から一名、二名の首切りを、組合結成の扇動をした理由で通告し、また五百円の子は、個人的に親に手紙を出して引き取らせようと工作しましたが、これは組合員全部で撤回させました。なお、この撤回問題で、理事長宅に組合員が参りましたところ、田無の星野刑事が来て、酒を飲んでおりましたところを組合員が見ております。これは個人的に来ていたかどうかわかりませんけれども……。受付に今までいた女の子を婦長室にやり、むすこさんであるところの武啓男さんがすわり、出勤簿を事務所から持ち出し、だれだれは十時に来るとか、一つのいやがらせをやり、組合委員三名で交渉に行ったところ、あとからすぐ炊事で働いている吉田氏が来て、二人を手で突き飛ばし、お前らもっと静かに話をしろと言い、私もその委員の中に入っており、横やりを入れないで下さいと話しましたところ、手首をつかみ、こっちへ来いと暴力で来ました。組合員が心配して半分ぐらい集まりますと、また、お前ら勤務につけと大声でどなり散らし、あげくのはてに、組合を妨害してやるとはっきり暴言を吐く始末で、婦長の権限をかさに着て、組合員の一人々々が、この人のために今まで苦しめられることが多く出て参り、たとえば、患者さんの食事が足りなくて取りに行くと、何年看護をしているのだと言い、ぞうきん水をぶっかけたりし、その人は泣いて自分の食事を出すという実例もあります。また、おばさん方もみなそうです。それから看護婦の手を握ったり、いやらしい格好までしている始末です。そういういろいろなこともありまして、五月十三日団交に吉田さんの問題が取り上げられ、組合側の面前で再度はっきりと、組合なんか作ったら絶対に妨害してやると言ったために、私たちせっかく組合を作りましたが、今ここで暴力のためにこわされることはどうしてもがまんができず、吉田氏解雇を要望しましたところ、理事長はついに承認いたしました。時間の都合で、調印は後刻に延ばされ、五月十七日調印してもらうため会見したが、理事長は出てこず、阿部理事長代理人と称する人が来て、話しがわからないから理事長に出てくれと言っても、理事長はどこにいるのかわからないとうそぶき、そのあげく、計画的に車が来て、私たちをしり目にゆうゆうと帰ってしまいました。五月十九日にもう一度交渉をしようと申入書を出しました。  五月二十一日団交、六時になり、この日も理事長は来ず、理事長の出席を要求したが、やはり阿部氏が出てきて、理事長はいないとの一点ばりでしたが、午後七時半、池袋から清瀬駅に行って自宅に入ったのを組合の一人が見ており、どうしても連れてきてくれと押し問答になり、組合員六名が理事長宅に行ったところ、息子さんが田無の警察に電話し、不法侵入するからすぐ来てくれと言っており、あまりのことに組合員もあぜんとして病院に帰り、阿部さんに対し、どうしても理事長を連れてこいと言ったところ、自宅に婦長と行き、二時間ぐらいたってから酒を飲んで帰ってきて、きょうはおそいから理事長は会わないと言ったとのことに、組合員は、酒を飲んでよく帰ってこれると激しく抗議しましたところ、主観の相違で、酒を飲んでくることは悪いことでないと公然とうそぶかれ、くやしさで、良心に恥じない等のことをなじって婦長にも出てもらい、看護婦側から婦長に対して、もう少し責任を持って連れてきてくれと話しましたところ、五月二十二日正午十二時まで会見、七時になって田村代理人が来て、覚書とは全然異なり、婦長を失心状態に至らしめるほど組合員が脅迫した、阿部理事長代理人に対して同罪であるから謝罪せよ、並びに団体交渉は五名、後日をきめてやろうと、人を食ったことを書いてよこし、理事長出てくれと田村氏にも話しましたが、東京に行って、いつ帰るかわからないと取り合わず、積り積って怒りが爆発して、組合全員、壁にビラを張り、直接絵の具で壁にも書くに至りました。五月二十三日、この壁のことを口実として、警備員と称して土足で五名の者が受付を占領しました。  五月二十四日、理事長久しぶりに現われ、団交を要求しましたところ、午後二時から三時までの一時間限り、人員は組合代表二名、オブザーバー二名、書記一名の五名なら交渉してもよいと回答し、組合は、そんなものは団体交渉になっていないと反対し、さらに交渉を申し出ましたが、理事長は、あすは給料日だ、おれが出なければ金ができるか、話す必要はないと、暴力団をたよりに組合員を押しのけ、姿をくらましました。阿部理事長代理に、すぐ団交を開くよう交渉し、二十五日午後十時より二時まで山田理事長を出席させるとの覚書を取り、二十五日に待っておりましたところ、約束は踏みにじられ、経営者側は、池袋から電話一本かけたきりで姿を見せず、団体交渉は、理事長がやる必要がないと言ったから取り次ぐと、阿部氏は電話を切ってしまい、しかも、今までなかった給料の遅配をされ、護国団は二十六日に十二名に増加され、腕章もはっきりと護国団親衛隊と変り、裏門には鉄条網を張り、表は両方に陣取り、患者さんの面会人まで詰問し、患者さんは、ここは刑務所かとの憤りがあり、鉄条網は取りはずされました。  五月二十七日、内容証明をもちまして、鷲野委員長外五名を、壁に書いたことを理由に企画扇動者であるから解雇すると通知し、器物破損で二十名を告訴までしております。また一名は、移動証明を持って来ないから解雇すると言って来ました。この移動証明は、以前話しました吉田夫妻も、過去一年半にわたって入れておりませんし、米も持ってきておりません。  こうして、何ごとも一方的にのしかけて参り、二十八日には私たちの夜の食事をとめ、これは組合全員の声で撤回させました。二十八日に、護国団は告示を出し、病室の安静時間にも、婦長の許可を得たからとビラを配ろうとし、病棟主治医にしかられて、安静後許可なしに病室を歩き回り、全部の患者さんからビラを突き返されております。そのあげく、おれはから手の名人だ、二、三年の監獄生活なんか何とも思っていないと、入れ墨を出したり、すごんで見せ、私たちを恐怖のどん底に突き落し、お風呂もゆうゆうと先に入り、どっちが本職員だか、わからない始末でした。  五月三十日には、警告文を張り、五名の解雇者の移動は、いなかに強引に送ってしまおうとし、役場から断わられています。また婦長は、出勤簿をはがしてしまい、文書で白衣を返却するようにと言ってよこし、五月分の当直料もわざと解雇者に出さず、そのあげく、解雇者とは口をきかないとはっきり宣言し、六月二十五日付のはずが、意地悪くいやがらせに出ているわけです。  三十一日には、護国団の手で解雇者をつまみ出すことを計画し、皆で一部屋に固まっているよう悲壮な決意までしましたが、患者さんの方から、警告文に対しての怒りが爆発して、午後十一時までかかって取りはずされる結果になり、一応私たちの危害も免れました。  六月一日、患者さんからの要望と都労委のあっせんにより、一時退去しましたが、理事長室は駅前にあり、二、三名は寝泊りしているそうです。  六月二日、山倉という団員が一人病院に来て、四、五名の組合員を一人ずつ呼び、六名の首切りは絶対撤回しない、たとい山田が倒れても、おれたちは断じてやると言っております。都労委のあっせんによる団交にも、幹部級の団員が来て団交の席上に入り、どっちが経営者であるかわからない錯覚にとらわれました。都労委の団交も、理事長は二回すっぽかしを食わし、今度は、病院がつぶれても解雇は撤回しないとはっきり言って、団交を持とうともしないありさまです。  なお、阿部さん、田村さん、理事長、秘書、奥井さん、書記、熊谷さんと称する方たちが、組合結成と同時に勤務につきましたが、阿部さんが事務長であるということを、所長先生初め、だれも紹介も受けずわからず、理事である養鶴さんもわかりません。なお解雇問題も、理事会で決定すべきであるにもかかわらず、理事会も開いてありません。理事である養鶴さんも、それを知っておりません。  以上であります。
  63. 中村三之丞

    中村委員長 これにて参考人の陳述は終りました。  次に、質疑の通告がありますので、順次これを許します。山花秀雄君。
  64. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま生光会の紛争議につきまして、それぞれ参考人から御意見の御発表がございましたが、労政局に一つお尋ねをしたいのでございます。  昨日から行われました中小企業並びに少人数の労働組合の行う労働争議について、御出席の局長も、よくお聞きになったと思いますが、ことごとく暴力団が介入し、争議の早期解決をかえって遅らせておるような傾向が各争議に見られておるのであります。それからもう一つは、経営者側の考え方が、大体労働組合運動に対して非常に無理解である、知識があまりになさ過ぎるというような感じが、私どもは聞いていて、するのでございますが、労働省当局としては、どのようにお考えになっておるかという点を、最初にお伺いしたいと思うのであります。
  65. 中西實

    ○中西政府委員 暴力団の問題についてでございますか、それともどの点でございましょうか。
  66. 山花秀雄

    ○山花委員 暴力団が介入しておるということについての労働省当局の御見解と、それから経営陣があまりにも労働組合に対する知識がなさ過ぎる、あるいは無理解である、こういうようにわれわれはうかがわれるのですが、こういう点につきまして……。
  67. 中西實

    ○中西政府委員 後に申されました中小企業、ことにこういった特殊な企業におきましての労務管理、これに対する経営陣の理解に欠けておる点は、確かに一般論としては言い得ると存じます。それがきっかけになりまして、やはりいろいろとトラブルが起る。起りますと、つい集団で行き過ぎが起る。それに対するまた対抗のために、今度は経営陣が実力を増強するというようなことになる例がしばしばでございます。私としまして、昨日も申しました通り、この問題につきましては、早急にこういうことの根絶はむずかしいかと存じますけれども、あらゆる機会を通じて、各種中小企業の日ごろの労務管理ということにつきまして、今後特段の努力をいたしていきたい、こういうふうに考えております。
  68. 山花秀雄

    ○山花委員 そこで一つお尋ねをしたいと思うのでありますが、労働省には、たしかこれは労政局の管轄下に入るかどうか、私もちょっと今覚えておりませんが、労使の近代的な団体活動あるいはその他のことについて、特に労働組合運営、あるいは経営者の労働組合に対する見解の向上と申しましょうか、そういう関係で教育課を置いて、ある程度予算を組んで教育活動をやっておられると思うのであります。が、よく言われますように、役所の仕事は何をやっておるかわからぬというような悪口を言うのもございますけれども、その悪口がどうも当っておるような気がするのであります。一応、今重点的にどういうところに労働教育の中心を置いておるかということを、一つお伺いしたいと思います。
  69. 中西實

    ○中西政府委員 労働省の中でも、労政局の仕事は、広い意味で申せば、これは一種の社会教育でございまして、われわれの機構あげて、このいわゆる労働教育ということに努めておるわけでございます。そこで、御承知と思いますけれども、占領直後、占領政策としまして日本の民主化、そのために労働組合の育成強化ということが大きな題目に取り上げられまして、そうして当初は、会議の開き方はどうするか組合の結成の仕方はどうするかというような、きわめて初歩的なことにつきまして、あるいは紙芝居だとか、壁新聞とか、幻灯とかいうようなことで、いわゆる視覚教育ということが重点として取り上げられてきたのであります。ところが、もう現在では、そういった段階が済みましたので、それよりは今われわれとしまして労働教育の方法として考えておりますのは、またやりつつありますのは、個々の具体例、中小企業あるいは大企業にもございますが、いろいろのいい点、悪い点、ことに中小企業につきましては、日ごろの労務管理上いい点、悪い点、こういうものの実例を教材にいたしまして、そうして相談があった場合の相談に応ずるのはもちろんでございますが、さらには進んで各府県の主務課、さらには労政事務所というものを通じまして、できるだけそういった気持を普及宣伝していくということに努めております。社会教育というものは、そう右から左へ効果の上るものじゃございませんので、気長に、しかしながら終始たゆまず努力をしていくという気持でやっております。
  70. 山花秀雄

    ○山花委員 最近労政事務所で、ただいま労政局長が言われましたように、労働教育と称して、多くは労働組合の中心分子を集めて、いろいろ教育をなすっていることを仄聞するのであります。労働組合員を集めて教育をなさることも、これは私は絶対必要であろうと考えておりますが、経営者を集めて、この種の理解、普及をせしめるような活動をやったということはあまり聞かないのです。労働教育と同じように、経営教育を並行的にやっておられるのか、なお重点を労働教育の方に置いておられるのか、その点、一つお伺いしたいと思います。
  71. 中西實

    ○中西政府委員 私の方としましては労使、さらには、できれば一般国民の理解をも深めるということで努力いたしております。しかし、やはり行政の性格上、どちらかといえば、重点は労働側に置かれて参ってきております。ただし、最近におきましては、ことに中小企業におきましては、問題の出発において使用者側にその原因の多い場合が認められますので、労政事務所単位に、府県の労政課はもちろんやっておりますが、使用者側の各種懇談会、こういうものを通じまして、それぞれの企業における労務管理の向上に資するということにも努力いたしております。ただ、どちらかと言いますと、中小、商よりは工業に実は重点を置いておりまして、こういった病院その他の特殊なものにつきましては、あるいはそこまで手が行き届いていないのではなかろうかというふうには考えております。
  72. 山花秀雄

    ○山花委員 今日基準局長おいでになれば、いろいろ基準問題についてもお伺いしたいと思ったのですが、何か他に会議がございまして、本日出席できないというようなお話がございましたので、それは私も了承いたしましたが、同じ労働省に机を並べて仕事をしておられる労政局長さんもおられるので、お尋ねしたいと思います。  昨日から、この種の争議の実態を調査しておりますと、全部といっていいほど、労働基準法違反が明確にされておるのであります。この生光会の労働省からお出しになった報告書の一ページにも、その点がはっきりうたってあるのであります。四の項目になっておりますが、争議に至るまでの経過として、本療養所は以前から就業規則もなく、給料の明細も明らかでなく、労働条件も比較的悪かった、これが大体組合結成の原因ともなり、紛争議の原因ともなった、このように報告されておるのであります。労働基準問題に関して、いつも労働省の御答弁によりますと、人員が足らなくて、なかなか広範な数の多い監督はできない、こう、われわれから見ると逃げ口上のような御答弁をなすっていられるのでありますが、今度の場合、全部基準法違反がからんでおりますが、こういう傾向について、あるいは人員が足らなければ人員をふやすとか、あるいはこれではどうにも仕方がないというのだったら、予算をもう少しふやすとか、こういう積極的御要請をなすった方がよいのではなかろうかと思います。この点につきまして、基準局長おいでになれば一番いいのでありますが、労政局長は同僚の御関係もありますから、お考え一つお漏らしを願いたいと思います。
  73. 中西實

    ○中西政府委員 基準行政につきましては、成立の当初からだんだん陣容その他も減っております。かつて私基準局長をやっておりました時でも、経常の経費にも非常に不足がちで、その点は、われわれとしましても、予算の要求のたびごとに相当努力はいたしております。ただ、考え方によりますれば、こういった監督行政というものは、いわば、言い方によれば切りがないものでもございます。そこで、できるだけ重点的に業務を進めるより仕方がないんじゃなかろうか。なお問題は、幾ら役人をふやしましても、結局労使の認識がありませんと、とうてい目の届くわけのものでもありません。従って、労働基準法があり、いろいろな保護があるということについて、勤労者側に十分の理解がございますれば、違反があれば申告してくる、申告してきますれば、必ず労働基準監督関係は発動いたしております。従って、結局は労使の自覚をいただくということが非常に必要じゃなかろうか。労働基準行政につきまして、労使行政も同じことでありますが、同様のことが言えるのではないかというふうに考えております。
  74. 山花秀雄

    ○山花委員 労働者の方から申告して参れば、直らにこれの監督を行う、あるいは注意を行うというようなことを言われましたが、ここにあなたの方から報告されましたものの内容によりましても、就業規則もなく、給料の明細も明らかでなくということで、これは完全に基準法違反が明確になっております。これははっきりわかったわけです。申告のあるなしにかかわらず、一応わかったわけであります。こういう場合に、当該事業所が紛争議の渦中にあるときには、これは労働省当局としては、紛争議が終るまで介入しない、争議の中立性か何か、そういう建前をとっておられるのか、それとも、紛争議中でも、明確に基準法違反があった場合には介入をして監督をするかどうかという点でありますが、これはどういう扱いになっておるのでしょうか。
  75. 中西實

    ○中西政府委員 その紛争議のケース、ケースによって違うかと存じます。時と場合を誤まりまして、監督官が入ったために、かえってスムーズに解決するものが非常な混乱を起すということもないとは保しがたいのであります。しかしながら、紛争議がある間は絶対に監督官がその監督を行使しないという原則はとっておりません。ごく近い例で、これは皆さん御記憶かと思いますけれども、たとえば近江絹糸の争議の際、紛争が続いておる間に、やはり基準法違反は違反として——これはやはり一つの刑罰をもって保障しておる行政であります。従って、必ずしも紛争議があればやらないということでないということでやっております。
  76. 山花秀雄

    ○山花委員 時に応じ機に臨みというような御答弁でございましたが、そこで、これは具体的事例がここに上っておるのであります。たとえば生光会の問題も、これは明確に基準法違反があるということはわかっております。昨日の愛世病院の問題も、印鑑盗用をして役所をごまかしたということがある。これは経営者側で否認の陳弁がないから、明らかだと思います。これは事実ケースでありますが、この場合、監督行政の立場に立っておるあなたの方では乗り出すのか、あるいは見送るのか。これは個々のケースがはっきりしておると思いますが、どうですか。
  77. 中西實

    ○中西政府委員 今の愛世病院、それから生光会、これの具体的な取扱いについて、基準監督関係がどういうふうに取り扱っておるか、ちょっと私からはお答えいたしかねます。
  78. 山花秀雄

    ○山花委員 労働省当局に対する質疑は一応終りまして、基準局長もおりませんから、後日お尋ねをすることにいたします。  ただいま経営者側を代表いたしまして、阿部参考人からいろいろ陳述がありましたが、これも労働省当局の御報告によりますと、阿部参考人は、この紛争議が始まって五月十八日以降(部外者後に事務局次長となる)が、理事長の委任状を持ち団体交渉に臨んでいる、こういう御報告がありましたが、五月の十八日から、この紛争議の行われておる期間中に生光会においでになったのか、前から御関係があったのか、この点明らかにしていただきたいと思います。
  79. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 五月の十八日以前は関係ありませんでした。五月十八日に事務局次長並びに療養所の事務長として就任いたしたわけです。
  80. 山花秀雄

    ○山花委員 今度の紛争議につきましては、私ども委員会といたしましては、具体的事例を一つ詳細に参考意見としてお述べを願って、将来の中小企業の紛争議に善処をしていきたい、こういう念願で参考人のお集まりを願ったのであります。そういう意味で、生光会の場合には、よく内容のおわかりになっておる代表者をお願いしたのでありますが、代理として、五月十八日から関係された阿部参考人がおいでになっておりますが、予定された参考人は病気か何かで来られないのでしょうか。その点、何か委員長の方にお話しがあったでございましょうか。
  81. 中村三之丞

    中村委員長 お答え申し上げます。別に理由の申し出はございません。ただ代理人を派遣するということでございました。
  82. 山花秀雄

    ○山花委員 私は、阿部参考人に対してとやこう言う立場の者ではありませんけれども、やはりこの種の問題につきましては、初めから関係された、そして内容のよくおわかりになる方の御出席を心から願ったものであります。十八日から御関係なすったということになりますと、病院設立の事情、あるいは紛争議のいきさつ、あるいは部内の空気、模様、こういう点について、ざっくばらんな話、あまり詳しい参考意見が述べられないのではないか、こういうふうに推察をいたしますが、この点は阿部参考人におかれましてはどうでございましょうか。代理として出られて、十分御意見が述べられる確信を持っておいで願ったものでございましょうか。
  83. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 大体の過去のことはよく聞いておりますので、ほぼわかっておると思っております。つきましては、もちろん何かわからぬ点がありましたならば、率直にわからぬ旨を申し上げたいと思っております。
  84. 山花秀雄

    ○山花委員 そこで、お尋ねをしたいと思いますが、この病院はいつごろできたもので、どういう組織になっておるのでございましょうか。
  85. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 一昨二十八年六月に生光会清瀬療養所として発足したわけで、このことに関しましては、先ほども大体申し上げたわけです。財団法人組織になりましたのは二十九年の三月十日でございます。
  86. 山花秀雄

    ○山花委員 今度、阿部参考人の生光会における役職は、事務局次長という役職になっておりますが、これは大体どういう仕事を中心になされる規定になっておるのでございましょうか。
  87. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 先ほど申しましたように、財団法人組織でございまして、財団法人生光会事務局が、全般的な事務を扱っておるわけです。現在は清瀬療養所のみが財団法人生光会の病院でございますが、近き将来は、他にも病院経営をするというような予定もございますので、事務局は、すべてそれらを統轄するという意味なのでございます。いわゆる生光会本部でございます。しかも事務局長は、現在のところ理事長が兼務いたしておりまして、私が事務局次長であります。  なお、事務長といいますのは、現在争議になっております清瀬療養所、いわゆる病院の方の事務長を兼務しておるわけでございます。
  88. 山花秀雄

    ○山花委員 そういたしますと、この事務局次長という職責は、大体全体を総轄してやられる理事長か事務局長ということで、その補佐役、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  89. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 その通りでございます。
  90. 山花秀雄

    ○山花委員 お尋ねしたい点は、この紛争議が起きまして、先ほど労働組合側からの陳述もございましたように、護国団あるいは親衛隊という腕章をつけた方々が大ぜいおいでになって、そしていろいろ暴言を吐かれておる。この組織は、たしかせんだって右翼暴力団ということで、手入れを受けた組織というふうに承わっておりますが、そういうことを御存じでお呼びになったのでございましょうか、その一点をお伺いしたいと思います。
  91. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 私個人は、護国団が暴力団としてかつて手入れを受けたという事実があったということは、承知しておりません。これは、先ほどもちょっと申し上げましたように、理事長個人の過去においてつながりのあった人たちが幹部としてやっておる団体らしく、私は聞いております。
  92. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま阿部さんのお話は、個人としては、暴力団であるか、あるいは何か手入れを受けたことがあったかなかったか知らない、理事長個人がこの団体のつながりのある役職員をしているような関係で、そういうところから来たのじゃなかろうか、こういうお話でございましたが、少くとも、大体社会常識を持っておられる方は、護国青年隊と申しましょうか、機関紙も発行しておりますが、内容は一人一殺、井上日召の主宰する暴力団であるということは、私は常識で考えればわかることだと思います。特にこういう紛争議が起きておるところに、こういう団体が介入してくると、いかなる場合においても円満解決が、かえって逆に長引くという傾向が各地に見られておるのでありますが、そういうことは全然御存じなく——こういう表現を使っていいかどうかわかりませんが、窮余の一策として、これらの人々の助力をお願いした、こういうふうに私どもは理解して間違いないと、あなた方はお考えでございましょうか。
  93. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 私どもは、決してそう考えておりません。先ほども申しましたように、理事長個人の過去においてつながりがあるという団体らしく聞いておりまして、理事長が窮状を訴えまして、それに対して同情をしまして、一つ進んで病院の秩序を守ってやろうということでお願いしたのだ。ついては、山花先生が言われるような状態で、争議の解決のために連れて来たというような節はない、私はそう考えております。
  94. 山花秀雄

    ○山花委員 そういたしますと、病院側で頼んだというよりも、理事長個人と懇意であった関係上、向うの方からやってきた、こういう形になっておるのでございましょうか。ただいまのお話を聞いていると、そういうふうに聞えますが。
  95. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 向うが自発的にやってきたとは、私決して申し上げないつもりですが、もちろん理事長が個人的につながりのある護国団の幹部に窮状を訴えて、お手伝いを願ったということだと思います。
  96. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま組合側の佐竹参考人のお話によりますと、雇い入れの条件として、労働組合に加入してはならないという一札を取られて雇われたと承わりましたが、病院側としては、雇い入れの際にそういう書類を発行して署名捺印をさせた上雇用条件を確立するようになっているのかどうか、お伺いしたい。
  97. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 現在はそういう事実は全くございません。ただ私が仄聞しますに、一昨年六月に病院が発足したわけですが、八月ないし九月ごろに採用した一部の者に対してそういうことをやったことがある、そういう誓約書を書かせたことがあるということは聞いておりました。それ以後、現在に至るまで、そういう事実はないようでございます。
  98. 山花秀雄

    ○山花委員 佐竹参考人にお伺いをいたしますが、ただいまの阿部参考人のお話によりますと、一昨年あたり一部入社の者に対して、さような処置をとったかもわからないが、現在はさようなことはないというお話でございます。あなたの知っている限りにおいて、ただいま阿部参考人の言われたような事情でございますかどうか、お述べを願いたいと思います。
  99. 佐竹和子

    ○佐竹参考人 お答えいたします。一昨年入った者は、ほとんどやめているのです。それで、一部でなくて、そのとき勤務した者は全部でございます。それは今七、八名しかありませんけれども、全部病院に取ってございます。それから、その後婦長が就任しました後は、全部それを口約させられているわけでございます。書類では取っておりませんけれども、組合運動をしたものはやめていただきますと、はっきり言われております。
  100. 山花秀雄

    ○山花委員 だいぶん勤務をする人の永続性が、ただいまの話を聞いておりますと、長くないという感じを受けましたので、これは条件その他によって、あまり長続きをしていないのじゃなかろうかと、反面推察できるのであります。今日は警視庁の方からもおいでになっていると思いますが、昨日も、中小企業の争議にいろいろ暴力団介入の暴行ざたの事件がここで陳述されました。その陳述を聞いておりますと、暴行が行われている現場においては、警備においでになっている警官は全然これを制止しない、それが終るとやって来て、つまらないことをするなとか、やめろとかいうようなことをやる。どうも扱い方が、警視庁の派遣警備警官の扱い方として理に落ちない、こういう陳述が多うございましたが、この点について、警視庁側としてはどういうふうにお考えになっているか、一つ取締り方針をお聞かせ願いたいと思います。
  101. 片岡清一

    ○片岡参考人 お答え申し上げます。昨日のお答えした人というのは、私よくその関係を存じておりませんが、私が警備の責任者として部下に命じております方針は、暴力行為が現に行われておるというような場合には、当然即刻行って、そういう違法な状態を直ちになくするということをすべきでありまして、ただ、状況によりまして、それが違法な状態には至らないという場合には、鎮圧警備のやり方としては、争議に介入したという疑いをこうむらないように、十分冷静に沈着に事に当らなければならぬということを、常に命じておるのでございます。
  102. 山花秀雄

    ○山花委員 昨日の細井化学の労働争議にいたしましても、愛世病院の労働紛争議にいたしましても、それぞれ参考人から陳弁がございましたときに、ただいま私がお尋ねいたしましたような陳弁がなされたのでありますが、結局、暴力団に暴行を受けておるときは、警備に来ていらっしゃる方がいても、手出しはしない、それが終るとやってきて、まあというような、どうも見ていても黙認をしておる感じがする、こういうような陳弁でございました。  ただいま警備の方針が明らかにされたのでありますが、そこでもう一つお尋ねしたいことは、清瀬の生光会の問題につきまして、たしか町議会の方も、護国青年隊が徘回をしておることは不祥事の原因であるということで、田無警察の方へ取締りについていろいろお話に行った、けれども、なかなか適切なる対策を立ててくれなかった、こういうようなことを言っておるのでございますが、そういうことがあなたの方に報告されておるかどうかということを、ちょっとお聞きしたいと思います。
  103. 片岡清一

    ○片岡参考人 田無の町当局からそういう要請があったことは、私は聞いておりませんが、護国団員とおぼしき者が入っておることは聞いております。しかし、そのやっております状況が、まだ警察事案として処置すべきものであるというふうに考えておりませんので、先ほど申し上げました警備のやり方に関します根本方針に従いまして、争議の介入と疑わしい行為にわたることをおそれまして、何にも措置をとっておりません。
  104. 山花秀雄

    ○山花委員 こういう暴力団を雇い入れる場合、あまり団体名を明らかにせず雇い入れて争議団に対抗する、これが通例の一つのあり方でございますが、特に清瀬の場合には、はっきり護国青年隊というような腕章をつけて、これが一応軍隊組織のような関係になり、護国団の機関紙も私の手元に入っておりますが「清瀬生光会病院の不当争議に出動す」というようなことで、隊員の規律などをここに掲げて、おそらくこの新聞なども争議団員、付近にまいたのだろうと想像されるのでありますが、ちょっと一、二を読んでみましても、これは争議団員その他付近の町民にも、相当恐怖の観念を与えるだろうと私は思うのであります。「護国団々員は親子兄弟の契りをなし一心同体、相互扶助の実をあげんことを期す。」というような、少し近代離れのしたような文句を使っておりますが「護国団は善良なる国民大衆の味方となり金力、権力、暴力其他の不当圧迫よりこれを擁護せんことを期す。」というように書いて、その下にでかでかと大きな広告で例の一人一殺井上日召というような名前を書き散らした機関紙を発行しておるのであります。この機関紙の掲載の内容を一々読み上げるひまもございませんけれども、大体ただいまの一事で万事を御理解願えればいいと思うのでございます。昨日から本委員会で参考人に御出席を願って、これらの中小企業の紛争議を調査して参りますと、ことごとくが暴力団が徘回し、昨日の委員会でも各委員諸君が御承知のように——くりからもんもんを入れておるからいいとか悪いとか、さようなことは私は申し上げませんが、くりからもんもんを見せびらかして、おれは安い給料では来ていないのだ、おめえらの一人や二人というようなことで暗に恐怖観念を及ぼすような暴言を吐きながら争議団員に対抗をしておる。こういう傾向が東京の都内において争議に行われるということは、これはゆゆしいことであろうと考えておるのでありますが、これらの問題に関しまして、警視庁当局また公安関係の関係当局においては、こういう傾向をどういうふうにお考えになっておるかという点を一つお述べを願いたいと思うのであります。
  105. 片岡清一

    ○片岡参考人 私は公安を直接担当いたしておりませんが、関連いたします問題でございますので、私からお答え申し上げます。  今お話ございました護国団というものが、今お述べになりましたような傾向の団体であることは、私の方で承知をいたしております。先ほど申し上げましたように、この争議に護国団が行っておるという話を聞きましたので、今、山花委員がお述べになりましたようなことが起るおそれが多分にあるということで、私は田無の署長に、その点は十分よく警戒をして、いやしくもそういう暴力事案が起きるおそれのある場合、それらのことについては十分注意をして、犯罪予防の措置なり、あるいは起きた場合には鎮圧の措置を十分講ずるようにということは、念のために申しておる次第でございます。
  106. 桃沢全司

    桃沢説明員 先ほどから伺っておりますと、中小企業における争議というものは、だんだん深刻になって参った感を受けるのであります。もともと中小企業の争議は、大企業の争議とは異なりまして、それまでに経営者側もあるいは労働者側も、争議になれていないという一面もあるようでございます。従って、労働争議のルールというものが、お互いに守られにくいという点もあろうかと存じます。いずれにいたしましても、この労働争議をめぐって、もしこれが暴力化するというようなことがございましては、これはゆゆしいことでございますので、私どもといたしましても警察側と協力して、そういう事態に立ち至らないように、また暴力事犯が起りましたときには、これを看過しないように心がけている次第でございます。ただ、山花委員の仰せられましたこの数種の争議の実態につきまして、まだ詳しい報告を受けておりませんし、まだ事件として検察庁は一件も受理していない状況でございます。ただ、それらの点について、いたずらに看過することがないように、私どもとしても十分注意を喚起いたしておる次第であります。
  107. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま経営者側の参考人は、護国団あるいは青年隊というのは、暴力団というふうには承知していないというようなお話でありましたが、これはだれでも知っておるというわけでも私はないだろうと思うので、それはそれとして了といたしますが、私の記憶によりますと、この団体に対して手入れがあったということを承わっておりますが、どういう犯罪容疑で手入れをされたか。もし、こういう犯罪容疑で手入れしたのだということが明らかにされるようでございましたならば、一つお述べを願いたいと思います。
  108. 片岡清一

    ○片岡参考人 日は忘れましたが、最近国会の内部におきまして、政党の領袖の方に何か陳情といいますか、意見をお伺いに行きまして、その結果自分の気に入った返事がもらえないということで、何か暴力行為に及んだということでございまして、そのことについて警視庁がこれを検挙したということは、私の直接のあれではございませんが、聞き及んでおります。
  109. 山花秀雄

    ○山花委員 これは警視庁の方にお答え願う方が妥当か、あるいは公安課長さんの方にお答え願うのが妥当か、これは私ちょっとわかりませんが、護国団の発行している新聞に、井上日召の一人一殺という広告がよく出ておるのですが、ああいう広告は公安上どんなものでしょうか。公安を害するおそれありと見られるような広告であるか、あるいは別にそういうおそれなしというふうな御見解を持っておられるのかどうか。どこも私どもが見ますと、何か威圧を与えるような、公安を害するような気配がするのですが、取締りの関係当局においては、どういうふうにお考えになっておるか、どういう感じがなされるか、ちょっとお知らせを願いたいと思います。
  110. 桃沢全司

    桃沢説明員 ただいま検閲関係もありませんし、一人一殺という記事が出ておりましても、それをどうということは、ちょっと申し上げかねるのでございますが、山花委員の仰せられますように、それが一つのテロリズムを表わしておるのではないかという心配を世に与えることは事実と考えます。ただ、私の記憶では、一人一殺ということを主張しておるのではなくて、かつての記録をまとめたものを「一人一殺」という題で著書にしておる、その著書の広告の文言ではないかと私は記憶しておるのでございますが、さようになりますと、現在井上日召氏が一人一殺ということを考えておるのではなくて、かつての井上日召氏の経歴をそういう題名の本にしたというにとどまるのではなかろうかとも考えられる次第でございます。
  111. 山花秀雄

    ○山花委員 この問題は、私はなかなかデリケートな問題だろうと思います。確かに今お答え願ったように、過去の記録を著書にした一つの表題である。ところが、その一人一殺というのがばかにでかく書かれて新聞の購読勧誘をやる。しかも、来られる方が、一見してたくましい風格と申しましょうか、どうもそれが私どもは気になるというだけのことでありまして、これは将来の問題としておきます。  今日は厚生省から医務局長さんもおいでになっておりますが、最近ひんぴんとして起る、特に結核収容の病院においてこういう労働紛争議が起る。その原因はいろいろございましょうが、端的に申しますと、他に比して非常に待遇が悪いというようなところから、こういう不祥事件が次々と起きてくるように思われるのでありますが、監督の立場にある厚生当局としては、これらの問題に対してどうお考えになっておるか、一つお知らせ願いたいと思います。
  112. 曽田長宗

    ○曽田政府委員 私どもの担当いたしております仕事は、医療の業務が十分に行われているかどうかという点でございまして、その職員の待遇という問題につきましては、特別にとかくの意見を施設に対して申しておりません。
  113. 山花秀雄

    ○山花委員 あなたのおっしゃる通り、医療の業務、これに関連する問題でございますが、これらの紛争議の起きておるところの患者さんは、これは率直に申しまして、大なる迷惑を感じておられると思うのであります。ただいま患者さんの方から、当委員会委員長あてでございますが、陳情書も参っておるのであります。これは生光会の紛争議に関してでありますが、安静ができないというのです。絶対安静の時間中においても、ところ狭しと横行闊歩をする、あるいは高声を発して威喝的言辞を吐く、そういうようなことで、何とかならないかという一つ陳情書が本委員会あてに参っておるのでございます。特に財団法人関係のこれらの病院で、こういう問題が次から次にと起きてきているということは、これは医療の方面にも相当大きな影響を及ぼすと思うのでございます。単に僕の方は待遇問題はあずかり知らぬというようなことで、この問題を看過なされるということは、職務上少し怠慢ではなかろうか、私どもはさように考えますけれども、もう一度これらの問題についての見解を、一つお述べを願いたいと思います。
  114. 曽田長宗

    ○曽田政府委員 もちろん医療の業務を十分遂行いたしますためには、病院あるいは診療所の管理ということを十分やっていかねばならぬのでありまして、その意味におきまして、この物的な設備等のみならず、人事管理ということについても、遺漏のないように仕事を進めていただくということが、管理者としては望ましいことでありまして、それに対する指導監督というようなことは、私どもとしてもなすべきものというふうに考えております。
  115. 山花秀雄

    ○山花委員 いろいろお尋ねしたい点もたくさんございますが、他の同僚委員の方からも質疑があるそうでございますから、私の質問は一応これで終りますが、最後に希望意見として申し上げたい点は、労使の方も今日はおいでになっておりますので、一つ謙虚なる心境に立ち返っていただいて、これらの紛争議の一日も早い解決のためにお骨折りをお願いいたしたいと思うのでございます。また監督官庁に対しましては、万全の措置一つとっていただいて、不祥事件の発生しないように、適切なる対策をこの際とっていただきたいことをお願い申し上げたいと思うのであります。労働省当局に対しましても、東京のまん中であげられました四つの中小企業のこの紛争議は、内容を調査すればするほど、全く時代感覚のずれた、大正末期に見られるような紛争議である。これは何といっても労働省当局の労働行政に対する大きな黒星であろうと私考えておりますので、今後かかる事件の発生しないように、労働組合あるいはその他労働行政について、万全の措置を講じていただくように心がけていただきたいことをお願いいたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  116. 中村三之丞

  117. 松岡松平

    松岡(松)委員 労使の方にお伺いしたいのですが、最初に佐竹和子さんにお伺いしたい。私はあなたの御発言を途中から聞きましたので、あるいはそごする点があるかもしれませんが、二、三点お伺いしたい。  この写真は御存じですか、何でしたら差し上げます。その写真の内容ですが、写真にとられている落書というのでなくて、乱暴書というのですか、その事実を御存じですか。
  118. 佐竹和子

    ○佐竹参考人 これは組合員全部の怒りで承知をして書いたものですけれども、ここまで行くにはそれ相当の原因がありましてこれだけになったのです。その原因といいますのは、前々からのほとんど個人的な婦長の問題なども多くでありますけれども、前から婦長の圧迫に看護婦は会ったわけです。いろいろな点で、たとえば個人的に手紙が来ても、事務所に来るのですが、事実婦長の手元に渡り、婦長が検閲してからでないと本人に渡さない、外泊とか外出の場合には一々許可書を取る。外泊する場合はパンパンである、そういうふうに自分たち看護婦を全然かばってくれない事実がありました。それで団交の場合には、私たち理事長さんに何回も申し込んだのですが、二回、三回とすっぽかされて、三回目はちょうど日曜日だったのですが、日曜日ちょうど十二時から出てくるという覚書を取りました。それで、日曜日十二時までに理事長さんがおいでになるということだったので、組合は全部待っていたのです。日曜日だったので、予定していた宝塚の切符五百円くらいのものをむだにした人も五、六名おりました。それで待っていたが、七時になっても見えなかった。七時になりまして理事長さんが来なくて、田村さんという代理人がいらっしゃいまして、覚書と全然別個な阿部さんを脅迫したことに対して、婦長を脅迫したことに対して謝罪せよ、そういう文面のものを持ってきました。それで私たちも、理事長さんを出してくれと田村さんに話しましたのですけれども、田村さんは、理事長は東京に行って、全然会わせることができないとおっしゃいました。そのあとで、全部今までのことが爆発しまして、こういうことになったのです。
  119. 松岡松平

    松岡(松)委員 およそ争議にはいろいろ原因もあるでしょうが、この争議には、多くの婦人の従業員の方が参加しておられると思うのです。この写真にある文句を見ますと「山田追出せ」——これは理事長ですね。またもう一つを見ると「山寅のめかけ出てゆけ」「藤原由紀子バカヤロ」「婦長の犬め」とか、ちょっと常識的には考えられないような乱暴書が乱暴に書かれてある、しかも壁にですね。おそらくあと壁を手入れしなければ、直らないようなことをしておる。おそらく、これは私どもから見まして、暴力ですね。ストライキというものは、暴力とは私考えていないのです。あなたはこれを暴力とお考えになるか、お考えになりませんか。少くとも、争議としてこういう手段をとることが妥当であるとお考えになっておるか。あなたは先ほどから、怒りだ、怒りだとおっしゃいますが、怒りはけっこうです。怒りはけっこうだが、争議は少くとも社会的に認められたる手段を用いて行うことでなければならぬ。社会的にこういうことをやっていいことかどうか、これを一つお伺いしたい。
  120. 佐竹和子

    ○佐竹参考人 常識でいいますと、第三者の方がごらんになると、確かになるほどひどいとお思いになるのは当りまえだと思います。ですけれども、私たちのあのときの気持というものは、何というのですか、第三者の方には理解できない、いろいろな苦しい立場もあったし、それだけに感情的に勃発したことも事実です。そのあとで、壁のことに対しては、われわれ組合で消すということは、はっきり言っております。二万円くらいしかかからないということもちゃんと計算に入れてあります。
  121. 松岡松平

    松岡(松)委員 私の根底にお尋ねしたいことはそこなので、金は二万円で済むことかもしれぬ、壁塗りをして直るかもしれませんが、およそ争議を行うについて、これだけの手段を用いなければならぬという思い詰めたことだとおっしゃるが、これはどういうふうに思い詰めても、私どもから考えると、妥当な手段だとは考えられない。あなた方、思い詰めて団体交渉をなさる、要求を掲げて折衝せられる、けっこうです、大いにやっていただきたい。しかし、こういう手段は、いついかなる場合でも、争議の限界ではなくて、暴力の限界である。これに対して、あなたは少しも考えておられない。怒りが爆発した、感情のおもむくままだから仕方がない、こうおっしゃる。その点どうですか。
  122. 佐竹和子

    ○佐竹参考人 これは前にも団体交渉の場合に、理事者側から、組合側にあやまれ、そういうことを言われましたですけれども、私も個人的に返答できる問題でありませんし、組合全体のそのときの意向にかけましたけれども、そう書かせた原因は、理事者側にあるのですから、両方であやまるのでなければ、私たちは悪いと言えないというのが組合全体の答えです。
  123. 松岡松平

    松岡(松)委員 私は、国民の名においてあなたに聞いておる。私は企業者の代弁者ではない。これから企業者にもお伺いすることがあるのです。私ども冷静な国民の立場から見た場合、はっきりと争議行為を逸脱しておると思うのです。先ほど山花委員からもお話があったのでありますが、中小企業の争議には、幾多のこういう古い時代があったような現象が出ておるということを指摘されておるのでございます。これは、少くともこの病院の争議として用いらるべき手段とは考えられない。企業者との間に、あなた方利害が対立しておるから、あやまれ、あやまらぬと言う。それは交渉はあるでしょうけれども、国民の前にあなたがお答えになるときには、行き過ぎたということを言い得ないということはないでしょう。言えるのですか、言えないのですか。
  124. 佐竹和子

    ○佐竹参考人 では、経営者と全然別個の問題として、かけ離れてお答えすればよろしいのでございますね。これは言っておかないと何ですが、経営者側の方でも二十名告訴しておるのです。私たち、それでうっかり悪かったとあやまると、それを認めて、何を口実にするかわからないということは事実なんです。
  125. 松岡松平

    松岡(松)委員 よくわかりました。  それで経営者側にお尋ねしたいのですが、阿部哲郎さんに、先ほどから伺っておりますと、護国団というものは親戚筋ですか、関係筋ですか、そういうようなお話が出てきておるのですが、一体護国団というのは、客観的に見て病院の特殊関係筋とは思えないのですが、いかがでしょう。
  126. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 お答えします。特殊関係人とは私申しませんが、理事長個人が過去においてつながりを持っておったということなんです。護国団のある某幹部と個人的に親密であったということで依頼したということであります。
  127. 松岡松平

    松岡(松)委員 大体似たことですな、関係筋ですよ。あなたはそういう言葉を使われても、真髄は関係筋ですよ。女が多数の病院内の争いに、そういう勇ましい部隊を動員なさらなけれどならぬという理由はどこにあるのか。そうでしょう、赤子の手をねじるように、若い婦女子を相手に争議をやるのに、鶏をさくに牛刀を用いるたぐいの感をお持ちになりませんか。もっとも、あなたは争議中においでにならなかったのかもしれぬが、これは一面私らから見て、婦女子の方々が、先ほども怒り爆発したとおっしゃっているが、ある意味において事情を掬すべきものがありますよ。そういう勇ましい、先ほど山花委員からも言われたように、巨体を怒らして迫ってこられれば、本の広告じゃないけれども、一人一殺というような、聞いただけでもふるえ上りますよ。私は二十三貫ありますけれども、それを聞いただけでふるえ上りますよ。生ある者は、みな生きたいですから、殺されてはたまらない。そういう人まで使って押えつけなければならぬという必要が一体どこにあるのか、ほんとうに伺いたいのですよ。これしきの争議に、山田理事長ともあるものが、一体話がつけられないわけはないでしょう。一つあなたのほんとうにお考えになるところを聞かせて下さい。今後こういう問題はたくさん出るかもしれません、大いに参考になることでありますから。
  128. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 お答えいたします。この紛争は、当経営者対従業員だけの紛争でないというように、私どもは解釈しておるのであります。といいますのは、どうもへ理屈になりそうで、まことに私自身遺憾に思っておるのですが、実は外部の団体員が非常に病院内に入ってきておりまして、たとえば交渉を持つ場合、ほとんど私が一人で何十人を相手に話し合いするのですが、実に終始議場騒然とする状態でして、もう暴力一歩手前の言動をもって、私はおどかされておるというような状態であったわけです。特に二十一日午後五時半から翌二十二日朝四時まで十時間半、完全につるし上げを受けまして、一歩も外へ出してくれなかった。たとえば、トイレに出かけるにも、二、三名の者がうしろへついてくる、玄関先へ立ちどまったならば、そでを引っぱられるというような状態で、あるいは私が部下の者をして使いに出そうと思っても、それを連行して私のおる部屋まで連れてこられたというようなことでして、明らかに監禁状態であったわけです。決してそういう状態になったから護国団を雇ったのじゃありませんが、当時の大乗的考えからしまして、これはとても病院の秩序を守るためには特別警備員を置かなくちゃならぬという考えから置いたわけでして、しかも決して挑戦的な態度に出ようという考えのもとに置いたわけでございません。今ここで私が申し上げますことは、松岡委員のおっしゃる通り、確かにあるいは行き過ぎであったとも考えますので、今後はこの点十分考慮してやっていきたい、そう考えております。     —————————————
  129. 中村三之丞

    中村委員長 ちょっと松岡君、お待ち下さい。御報告申し上げたいことがございます。  本日午後二時半、金属鉱山関係の大手六社の争議が円満に解決いたしました。いろいろ委員会で御心配をいただきましたのでお知らせいたしますという電話が、日本鉱業協会北里総務部長よりあったそうでございます。     —————————————
  130. 松岡松平

    松岡(松)委員 今ほど阿部さんから率直なお言葉をちょうだいいたしましたが、私最後に、阿部さんにも佐竹さんにも聞いておいていただきたい。阿部さんの方からすれば、多少恐怖錯覚症にも陥っていられる点が多々あったかもしれない。またこれだけの争議に護国団を使うべき筋合いはありません。またあなたの方でもちょっと行き過ぎが多い。次に、外部の人々があなた方をあまりに応援し過ぎた。また組合側も、その外部の団体を誇張して宣伝し過ぎたという事情も多少そこに介在しているのではないかと考えられる。これは多くの争議にありがちですよ。企業者と働く人の側が裸になって話をすれば、大ていのことは片づくものです。それを応援団がつきますと、ものことはどうも多くわき道にそれていってしまうのです。ことに話を伺えば、まだ争いは解決されていないと承わります、また刑事問題云々ということも言われておる。これは企業者におかれても、あまり被害妄想に陥らないで、もっと率直に話を進められて、かような争いはすみやかに打開せられんことを切に希望するものであります。ことに、そういう暴力を主体内容とするかしないかわかりませんが、社会的に見て、おそらく暴力を一枚看板にするがごとき評のある団体を使用せられるよりは、そういう多数の者が入って取締りがきかぬならば、柔道五段の人でも雇って門衛に置きなさい、守衛に置きなさい。りっぱに給料を払ってそういう暴力を鎮圧してもらう。なぐられたら警察に行きなさい。そのために警察がある。何のために警察の力を頼まないのですか。一つなぐられてみるのですよ。犠牲になぐられなさい、大したことはないですよ。事務長のあなたを見ても、なぐってみても一つも痛くもかゆくもないと思う。そういうところで、一発なぐられることをおそれてそういう団体を雇うよりも、なぐられて警察の援助を頼む方が、よほど合理的ですよ。私はこの点を付言して反省を求めてやみません。
  131. 中村三之丞

    中村委員長 滝井君。
  132. 滝井義高

    ○滝井委員 阿部さんにお伺いしますが、生光会は、発足の当初は普通の結核療養所であったと思うのですが、さいぜんの御説明でも、そういうことで発足したということになるのですか。
  133. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 最初は、生光会清瀬療養所は結核療養所として発足したわけです。
  134. 滝井義高

    ○滝井委員 普通の結核療養所として発足したものが、昨年三月十日に財団に切りかえたらしいのですが、なぜそれを財団に切りかえたのでしょうか、その理由がおわかりになれば御説明願いたい。
  135. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 率直に申しまして、財団法人組織にしまして、種々なる医療診療以外の企業も営むという想定のもとに、財団法人の組織に切りかえたわけです。
  136. 滝井義高

    ○滝井委員 その財団の理事には、どういう方々が名を連ねておられますか、それを御説明願いたいと思います。おそらく財団というものは、主としてその理事会が中心となって運営をせられておると思うのです。全部わからなくても、おそらく有名な人がおられると思いますが、二、三の名前をあげて下さい。
  137. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 理事は現在五名おります。山田寅次郎理事長、それから山田末野常務理事、石原勝、これはお医者さんでございます。それから養鶴徳二というのがおります。これは病院に勤務しておりますが常任しておる理事でございます。それから吉本理一、これは病院以外の企業をしておる者ですが、この五名で形成されております。
  138. 滝井義高

    ○滝井委員 この財団に切りかえるには、いろいろな事業をやるために財団に切りかえた、こういうことですか。今まで、財団に切りかえる前に相当の所得があって、相当の税金を払っておった、こう思うのですが、財団に切りかえることによって、これは財団法人ですから無税になってくる。従って病院の経営というものは、相当よくならなければならないと思うのです。佐竹さんに御質問しますが、あなたは財団になった前からお勤めですか。
  139. 佐竹和子

    ○佐竹参考人 はい。私は六月病院が発足いたしまして、七月に入りました。その場合も、財団法人だということは最初から言われて入りましたわけです。最初から財団法人だと思っておりました。理事長はそう言って私を採用いたしました。
  140. 滝井義高

    ○滝井委員 これが財団法人になったのは、昨年の三月十日になった。あなたはそれ以前からお勤めになっていらっしゃったのですか。
  141. 佐竹和子

    ○佐竹参考人 それ以前です。
  142. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも昨日みたいに話しが食い違うのですが、財団の場合は税金なんか何も払わないのです。従って、その経理内容というようなものは、普通のいわば私的な病院の経理内容とは、非常に違ってくると思うのですが、あなた方の待遇の方で、昨年三月に財団になった後の状態とそれ以前の状態とは、何ら変っておりませんでしたか。
  143. 佐竹和子

    ○佐竹参考人 別に変っておりませんです。ただ六カ月たちますと三百円ずつの俸給が増すということだけはちょっとあったのですけれども、それも守ってもらえる人と守ってもらえない人があって、別にそれ以上変ったことはございませんでした。
  144. 滝井義高

    ○滝井委員 これは阿部さんにお尋ねいたしますが、この病院は、入院患者なりあるいは外来でやってくる患者さんは主として結核でしょうから、生活保護の対象者あるいは健康保険対象者が多いと思いますが、大体そういう状態ですか。
  145. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 大半が、九割までは健康保険の被保険者になっております。その他は生活保護でして、いわゆる施療の患者というのはほとんどありません。あっても、一人か二人だという状態です。
  146. 滝井義高

    ○滝井委員 健康保険の患者さんが多いということでございますが、最近御存じのように、健康保険は非常に赤字になっております。それから生活保護等も、予算の関係で相当の引き締めが行われております。従って、多くの財団でできている結核療養所というものは、最近経理内容が非常に悪くなっておる傾向が出てきておると思うのですが、あなたの病院は、特に最近そういう傾向が見えてきておりますかどうか。依然として隆々——ベッドも満員ではないようでございますが、この二百四十のベッドに百三十名の患者しかいないという状態のようにあるのか、最近非常に入院の患者の減少傾向が見えるというような傾向がありますか。
  147. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 大体においてその通りでございます。減少の傾向にあります。
  148. 滝井義高

    ○滝井委員 医務局長さんにちょっとお尋ねしたい。実は昨日も同じような財団法人の結核を取り扱ったのですが、本日の生光会も同じように結核なのです。そうしますと、従業員は、雇われるときは多く国家公務員と同じだとか、非常にいい条件で初めは雇われておる。ところが、だんだんやっていくうちに、その条件はどこも満たしていない。昨日のも満たしていません。おそらく今日のも、初め入るときはいい条件で入れてくれたのでしょうが、行ってみると、就業規則もなく給料の明細書もないということなのです。先ほど局長さんは、自分の方は、給料なんというものではなく、病院の管理がうまくいっておるかどうかということだとおっしゃいましたが、結局医師あるいは看護婦、薬剤師等の入るときの条件と、入った後の条件は、がらりと違っておるということになれば、当然そこに医療の能率が上らないで、医療の内容の低下を来たすことは明らかなのであります。というのは、看護婦さんにしても、医者にしても、約束の給料がもらえないということになれば、労働能率を自然に落さなくても落ちてくる。また経営者にしても、今御説明になったように、最近健康保険にしても生活保護にしても、財政状態が悪いために患者が減ってくる。そうすると、おそらく財団法人に切りかえたということは、いろいろ多くの事業もやろうということもあるが、これは税金がなくなるという一つの魅力があったと思うのです。で、そういうことでやったのでしょうが、財団に切りかえてベッドをふやすことになれば、おそらくいろいろなところから借金を負ってきておると思う。そういう利子も、まあまあ患者がふえるであろうという期待を持ってやったのだが、ふえないということになれば、高い金利で病院の施設の費用は払っていかなければならぬ、金利として取られていく。そうすると、どうしてもそのしわは従業員なり患者に寄ってくるという形が出てきておる。現在の日本は、すでに二十万以上の結核療養所のベッドは充実してきた。ところが、実際にその運営が全面的に充実した形で行われないという姿が至るところに出てきているということなんです。これは氷山の一角として、こういう結核財団に、いわば争議の形として現われてきていると思うのです。こういう点は、今後の日本の医療行政、特に結核行政を推進する上においては、私たちは注目をしなければならぬ問題だと思うのです。すでに国立自体においても、これはある程度の行き詰まりが出てきていると見ていますが、すでにこういう民間の二百五十、三百というベッドを持っておる療養所においても、すでに労働争議の形で端的に病院の経営自体が行き詰まりの状態で出てきているということなのです。これは明らかに日本の健康保険赤字であるとともに、私が主張しますように、日本の医療機関全体が赤字であるということです。健康保険だけでは解決しない、もはや医療単価の問題と政府がまっこうから取り組む以外にはだめだという状態が出てきているということです。これは先般も病院協会の神崎博士が指摘されたように、日本の病院自体が、もはや赤字のために死の十字路の上に立っておるんだということを言っておりました。そのしわ寄せは、病院の従業員が過重の労働をやっておる、朝から晩まで働き、休むひまもないということが、病院の委員長から出ておる陳情書の中にも出ております。病院の従業員にしわが寄らなければ病院の建物施設にしわが寄ってきておる。おそらく雨が漏ってもそのままだ、こういう変った形ですでに出てきておると思うのです。これは医務局長さん、あなたはどうお考えになりますか。これは私は重大な労働問題として取り上げたのですが、即日本の医療問題にも、これは重大な関連を持っておる問題だと思うのです。こういう点について、まずあなたの御見解をお伺いしたいと思います。
  149. 曽田長宗

    ○曽田政府委員 今日におきまして、日本の全般的な医療の普及程度あるいはその内容の水準というようなものが十分であるかどうかという問題につきましては、非常に不満足な点が多いのでありまして、今後に期待しなければならぬところが、はなはだ多いと思っておるのであります。その意味におきまして、ベッドの増床あるいは病院の増設、あるいはその内容の設備の改善というようなことに努めて参らなければならぬということは、考えておるのであります。それに対しまして、それではその医療費の負担というものが、いかようにしてまかなわれていくかということは、きわめて密接に結びついた問題でありまして、ただ片一方だけ、すなわちただベットだけをふやしていけばいいというようなものではございませんで、実際にその医療費がいかようにしてまかなわれていくか、またその方法というようなものを十分に検討しながら、この医療機関の増設拡張ということをはかっていかなければならぬという御意見に対しましては、私も全く同感でございます。
  150. 滝井義高

    ○滝井委員 昨日からいろいろ参考人の方の意見をじっと聞いておりますと、結核というものが私は食い物にされておりはしないかという疑いを、どうも持たざるを得ない感じがするのです。たとえば、医者でない人が財団を作って、そうして大きな国の財産の払い下げを受けたり、あるいはまた今まで普通の病院であったものが、財団に切りかえて、そして結核で一もうけしよう、形は財団の形をとっておるが、どうもそういうニュアンスが、日本の結核対策という波に乗って出てきておるのではないかという感じがするのです。私はこの財団法人で結核を取り扱うものについては、相当検討を要する時期が来ておるんじゃないかと思うのですが、局長はどうお考えになりますか。
  151. 曽田長宗

    ○曽田政府委員 この点につきましても、私どもいろいろ複雑な事情が存在するというふうに考えておりますので、ただ単にベッドがふえればよろしい、どこにふえてもよろしい、またいかなる形においてふえてもよろしいというふうにも考えておらぬのであります。ことに公益法人というふうに認められまして医療事業が行われるということについては、よほど慎重に考慮しなければならぬというふうに考えておりまして、この社会福祉法人の認可は、本省におきましては社会局、地方は多くは民生部あるいは民生局等で取り扱っておるのでありますが、私ども直接にこの相談をいたしております社会局の方には、その意向を伝えまして、これを許可する場合には、厳重に実態をきわめてから、また将来の仕事の発展性というようなもの、あるいはその性格等を十分吟味して認可するというふうに話しております。社会局の方も、おおむね私どもの方の考えを了としてくれておる事情であります。
  152. 滝井義高

    ○滝井委員 私は、やはり今後財団法人で特にこういう結核を扱うものについては、相当検討を要すると思います。  次に、阿部参考人にお尋ねをいたしたいと思うのであります。あなたの病院では、看護婦とかいろいろこういう方々の給料から、税金は当然源泉徴収しなければならぬと思いますが、それはお払いになっておりますか。
  153. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 払っておると私は考えております。
  154. 滝井義高

    ○滝井委員 佐竹さんにお尋ねします。あなた方は、まあ安い人は所得税を取られないと思いますが、しかし所得税は取られなくても、市民税は取られるはずです。東京では区民税と申しますか、それを取られるはずですが、あなた方が給料をもらった場合に、その給料袋から、多い人は、たとえば医者なんかは所得税、区民税を取られる。あなた方は、少くとも区民税は取られると思いますが、そういう源泉徴収をされておりますか。
  155. 佐竹和子

    ○佐竹参考人 これははっきりした明細が、いまだにちゃんと書いていないのですけれども、ただ所得税として、私の場合四百九十円と書いてあります。ですけれども、何か税務署でこの間調べに来たとかいっておりましたから、果して払っているかどうかわかりません。ただ明細書には、四百九十円取られるということが書いてあります。
  156. 滝井義高

    ○滝井委員 佐竹さんにお尋ねしますが、所得税のほかに、健康保険とか失業保険とかというようなものもあるだろうと思うのです、組合までお作りになっておるのだから。そういうものは引かれておりませんか。それから、今所得税とおっしゃいましたが、たとえば区民税なんかあるはずだと思うのですが、所得税だけで、そういうものはないのですか。
  157. 佐竹和子

    ○佐竹参考人 別に区民税とか、そういう分析したものは引かれておりません。ただ健康保険の方だけで、厚生年金は全然入っておりませんし、看護婦の場合は、失業保険も入っておりません。これは入らなくてもいいことになっているらしいのですけれども、全然そういうものは取られておりません。ただ健康保険だけ引かれております。あと食費三千円、それから宿舎代です。普通病院の宿舎は、全然部屋代を取られないわけですが、百六十円引かれております。それだけであります。
  158. 滝井義高

    ○滝井委員 阿部さんにお尋ねしますが、今のように、どうも区民税なんか取っておらない、ただ所得税として四百何がしを取られておるということですが、この辺の事情なんかは、あなたは病院の事務長さんですから、そういう所得税、区民税というようなものは、当然あなたの手元で一括して源泉徴収されておらなければならないと思うのですが、それとも所得税という内訳の中でやっておるのですか。こういうことは、明らかに労働基準法の中にもあるように、本人の給料袋にきちっと書いて取るべきだと思うのです。あなたは事務長さんですから、当然そういうことはおおかりになっておると思うのですが、その辺はどうでしょうか。実はここに出ておる、これはその病院から出た、いろいろ労働条件なんか書いてあるものですが、その中には、税金も引かれておらないし、明細書もわからないということを実は書いてきておる。少くともあなたは事務長さんですから、もう少し事務的なことはおわかりだと思います。健康保険の関係、厚生年金の関係、それから今言った区民税の関係、こういうところをもう少し明白に、取っておると思いますがでなくして、単に基金にお金を請求するばかりでなく、その他お金を今度は配分する上において、またそれぞれそれを所管庁に納めなければならないのですから、一番病院の事務の中で大事なところだと思います。これが事務長のやる大きな仕事で、労働争議をやることじゃなくて、病院の事務長というものは、基金に対する請求の事務とか、今言ったように給料を払ったり、あるいは給料の中から源泉徴収をやって官庁に納めるということが一番大事なところだと思いますが、その辺、もう少し明白に御答弁を願います。
  159. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 まことにはっきりした答弁ができませんで、申しわけございませんですが、先ほど申し上げましたように、先月の十八日から私やって参りまして、実は事務的な不備がありましたので、これを早急に組織を作るべく実は参ったわけですが、たまたま争議の紛争の最中であったものですから、そういう細部のことまで、まだ私深くタッチいたしておりませんので、責任のある御返事ができかねます。
  160. 滝井義高

    ○滝井委員 きわめて大事なところを御答弁ができないので、遺憾でございます。  最後に一つお尋ねいたしますが、さいぜん護国団を雇われたということでありますが、大体幾らくらいの給料で護国団というものをお雇いになったか、これはあなた就任の後のことだろうと思いますので、参考人のために一つお聞かせを願っておきたいと思います。
  161. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 私は事務長としまして、また財団の方の事務局次長としまして、私が自分の手で支払ったということはもちろんありませんし、理事長にお聞きしまするに、いわゆる金銭づくで来てくれたんじゃない、決して報酬は払ってない、また今後も払うつもりはないということをはっきり申しておられます。そんな状態です。
  162. 中村三之丞

  163. 岡良一

    ○岡委員 私がお尋ね申し上げたい趣旨は、滝井さんがはっきりと言われたので、厚生大臣なりあるいは公衆衛生局長保険局長に今後の対策等についての意見を申し上げたいと思うので、その裏づけの材料として、二、三お尋ねいたします。これは佐竹さんにお尋ねいたしますが、お宅では正規の免状を持った看護婦さんは、患者を何人受け持つのでございますか。
  164. 佐竹和子

    ○佐竹参考人 一人、大体七人ぐらいを受け持っております。
  165. 岡良一

    ○岡委員 それは二交代ですか、三交代ですか。
  166. 佐竹和子

    ○佐竹参考人 結局当直制ですから、二交代みたいなものになっております。
  167. 岡良一

    ○岡委員 常勤の医局員は何人おられますか。
  168. 佐竹和子

    ○佐竹参考人 常勤の医局員は女医さんが一人で、あと八月まで当直ですけれども、その方が今臨時に毎日来ていらっしゃいます。ですから、今の間だけは二人ということになります。
  169. 岡良一

    ○岡委員 医務局長にお尋ねいたしますが、今お話を承わりますと、つい最近まで二百五十の届出のベットを持っておる病院が、常勤の医師を一名しか持っておらぬ、あとは臨時の医師が来ておる、こういうことは、どう思われますか。
  170. 曽田長宗

    ○曽田政府委員 ただいまのお話のような実情が存在いたしますとすれば、私どもとしては、これはそのまま放置はできないものというふうに考えます。
  171. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 医者の場合、常駐云々ということは、非常にめんどうな問題ですが、現在私どもの療養所には、院長以下六名の医者がおります。ただし、四名は一日交代に来てもらっておるわけですが、これは東大の美甘内科の医局員であるために、四名は一日置きに来てもらっておるという状態であります。
  172. 岡良一

    ○岡委員 阿部さんは任期が浅いからおわかりでないのだろうけれども、病院としては、そういうことは許されないことであります。少くとも財団法人として、二百五十もベッドを持った病院としては、最低どれだけぐらいの医師が必要であるということは、これはあなたは病院法をお調べになれば、すぐおわかりになるはずであります。そういうインターンなんかで臨時にアルバイトに来ておるお医者さんなんかで、いいかげんに定員をそろえるということは、非常に病院経営の不健全さ、患者に対する不親切さがあると思います。  それはそれでいいとして、その医局員に対する手当は、その二人ないし四人の平均の月給は、幾ら払っておられますか。それから、看護婦に対する平均の月給は、幾ら払っておられますか。
  173. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 医局員は、所長の場合月額四万円になっております。医局長で三万円、それから二万七千円、二万三千円、一万八千円というようになっております。看護婦の方は、主任看護婦が一万円以上、最低七千円ということになっております。
  174. 岡良一

    ○岡委員 財団法人で理事長、理事がおられる。そして理事長が事務局長を兼ねておられる。これは財団法人の組織としてはおかしいと思いますが、理事長の手当はどれだけでございますか。それから、うがった話ですが、阿部さん自身はどういうお約束で入っておりますか。
  175. 阿部哲郎

    ○阿部参考人 先ほど申しました、たとえば看護婦の場合は最低七千円と申しましたが、これは食事は現物給与になっておりまして、食事付になっておるわけです。ですから、これは一日百円の計算でやっておりますので、三千円アップということになります。  私の俸給は、今ここで申し上げるのはどうかと思いますので……。医局長は三万円、事務局長理事長が兼務で、理事長の俸給は三万円になっております。
  176. 岡良一

    ○岡委員 うがった質問をして、ほんとうに恐縮でした。佐竹さん、どうですか、今の医局員の待遇は、阿部さんのおっしゃったようなものですか。大体人の頭数も違うようだが、どういうものですか。
  177. 佐竹和子

    ○佐竹参考人 医局の方は待遇がよろしいんです。一日おきに三人来られるのも事実です。それからポイント、ポイントの押え方が非常に上手です。常勤の医局員は確かに高給です。ほかの、特に雑役の方は二千円とか三千円とか、それから新制中学を卒業した人は三千円とか、そういうどんぶり計算が多いのです。
  178. 岡良一

    ○岡委員 患者特に結核患者は、申し上げるまでもなく、給食の方が非常に大切な問題になってくるわけですが、給食の方はどうですか。金銭的な数字は別として、佐竹さん、あなたは患者に接触されて、給食問題について、いろいろ希望がありませんか。これは公正な看護婦の立場から見て、結核療養所としてはこれでいいとか、足りるとか、そういう点はどうですか。
  179. 佐竹和子

    ○佐竹参考人 患者さんの件では、私、特に病棟の責任者として、よく食事のことは見ているのですけれども、すごく量が足りない場合が多々あったんです。そういう場合は、直接炊事へ行ってかけ合ったこともありました。それで何とか補っておりますけれども、このごろ患者の方で、国立ですと、何か牛乳が一日のうち一回は必ず出るとか、それから生卵がつくとか、そういうような不平が出ておりますが、うちではそれを実行しておりません。
  180. 岡良一

    ○岡委員 どうせ現場でも見せてもらわなければ、よく私ども判断がつかないのですが、これはやはり滝井君がさっき指摘したように、現在の結核行政というものが、ベッドを作る、あとの維持についてはあまり関心がない、少くとも裏づけとしての保証が営まれていないということ。これは単価とかいろいろなものに関係するでしょうが、そういう点が一つです。それからもう一つは、財団法人の名のもとに、結核を中心とする医療事業があるが、それが財団法人の公共性のもとに運営されておらないのではないかということが、今の医局員の陳述の中に何か看取されるのです。そういう点、これは曽田さん直接の所管ではないのですし、これはいずれ委員会として問題になると思うのですが、私どもの希望としては、やはりもう少し、ベッドを作ったら、その後の維持運営に関する手当、あるいは財団法人として許可をするという場合の条件というものは、架空な条件を——どうせそれは当の民生局か衛生局が認めるのでしょうが、これはやはり相当はっきりとした具体的な保証をとってやる、また事実上そういう約束がほごにされたというような場合は、これは取り消しをやるのでしょう、局長さんどうですか。
  181. 曽田長宗

    ○曽田政府委員 もちろん病院を作りますときには、医療法の基準がございます。それからただいまの財団法人並びに特に福祉法人というものにつきましては、大体社会局の方で基準を持っております。それに沿っておりまする上は、そのほかの点もあわせ考えて、認可を与えていると思います。にもかかわらず、その後その認可の条件を十分に満たしていない運営が行われているということになりますれば、注意を与えて、それが再三この訂正の機会があるにもかかわらず、直っておらぬということになりますれば、認可の取り消しというようなこともできるはずでございます。
  182. 岡良一

    ○岡委員 こういう事態がたまたま昨日も今日もこうして、いわゆる財団法人名で結核のみを、あるいは結核を中心に医療事業が行われておる中に、今申し上げたような事実があるわけなので、この際やはり厚生省としても、せっかく結核の予防に力こぶを入れるならば、この際許可の際には、福祉法人だけは一つの基準を与えてそれを励行せしめる、しかし、医療法人なり財団法人なりで公衆衛生局所管になればこれは野放しだというわけにはいきますまいと思うのですが、そういう点で、いずれこれはあとで問題にしたいと思いますけれども、医務局としても、やはり医療法に基いて適切な監督行政の責任があるわけですから、十分今後ともお考え願いたいと思う。     —————————————
  183. 中村三之丞

    中村委員長 次に足利療養所の問題について、神田委員より発言を求められておりますので、これを許します。神田大作君。
  184. 神田大作

    神田(大)委員 時間がありませんから、簡単にお尋ね申し上げたいと思いますが、国立足利療養所におきまして、所長の退任を含めた十四、五項目の要求を出しまして、ストライキといいますか、患者のレジスタンスが行われておるのでありますが、これに対しまして、私きのう足利に参りまして、結核にかかっておる患者の方々が、所長の部屋の前にすわり込みをするというような事態になりましたものですから、私は仲介に入りまして、すわり込みというようなことに対しましては、説得いたしまして一応やめさせたのでございますが、こういうような状態に陥りましたにつきまして、私はたくさんの国立療養所そのものに対する欠陥があると思うのであります。この点等につきまして、医務局長に根本的な原因につきまして御考慮願いたい、こう思いまして緊急質問するわけでございますが、この足利療養所の患者の要求に対しまして、二月末から五月にかけまして、再三にわたって医務局にいろいろ要求が出ておった。しかも、医療に対する患者の不信が最大原因であると思うのでございますが、こういうような要望書に対しまして、厚生省は今まで手を打っておらなかったと思うのでございます。これに対しまして、どういうふうにお考えになりますか、御質問申し上げます。
  185. 曽田長宗

    ○曽田政府委員 足利の問題につきましては、私どもも最近に至りますまで詳細な事情を存知しておらなかったのであります。患者の間からこの職員の、特に医師でございますが、医師のある者に対して不信の意向と申しますか、これを申し述べられておった。所におきましても、その当否というようなことについていろいろ吟味しておるというような事実はございましたが、それ以上に詳細なことについては、最近に至るまで存知しておらなかったような次第でございます。
  186. 神田大作

    神田(大)委員 足利国立療養所は、二十七年におきましてもこのような問題が起きまして、仲介者が中に入りまして、この騒ぎが一応ケリがついたのでございまして、再びこのような問題が起きたのでございます。このこまかいことを申し上げると時間がかかりますので、後ほど療養所の今後の動きによりまして御質問申し上げますが、それでは、一体足利療養所の所長の退陣の要求を含めた十四、五項目の要求書は、大体おわかりだと思うのでございますが、これに対しまして、医務局長さんはどういうようにお考えになっておりますか。
  187. 曽田長宗

    ○曽田政府委員 このいわゆる十五項目の要求というものは、ただいまは私存じておるわけでありますが、その中には、療養所の性格というようなものから参りまして、必ずしも患者さんの言われる通りに、直ちに実施できるという筋合いでないものもございますが、中には、こちらでも考えております線と同様な要望が出ておるのでございまして、いろいろ措置を講ずるということにいたしましても、敏速にそれがいかずに、そのために患者からいろいろ不満の声が起ったというような事情があると思いまして、その点につきましては、私どもは非常に遺憾に存じておる次第でございます。その事情について、療養所にいろいろと事情をただいまのところ聴取いたしております。まだこまかい報告を受けておりませんが、私どもただこの際にちょっと奇妙に思いましたのは、いささか私どもの部内の恥をさらすようかもしれませんけれども、私どものところにも、患者から今のような要求書のようなものが送られて来ておるのです。それから先生方のところにもいろいろお送りしてあるようなふうに聞いております。また地元のいろいろな機関に対しても送付されたような事情があるようであります。にもかかわらず、療養所の所長はそれを見ておらない、また所長に対してそういうような要求をしたことを聞いておらないというような、非常に奇妙な事態がございまして、どういう事情なのかというようなことを、私どもただいまいろいろ調査をいたしておるような次第でございます。
  188. 神田大作

    神田(大)委員 これは現実に起っている問題でありますので、厚生省の方で善処してもらえるものと思いますけれども、とにかく医者と患者の問題で、命を預かる医者に対しまして不信任を出すというようなことは、よほどのことであろうと思うのでございます。その一つの例といたしまして、ある患者が、足利療養所には外科医の人がおりませんので、外科手術のときに、内科関係の医者がやって、間違って肋膜に指を入れて、しまったというようなことを言っていたとか、あるいは十四項目が十五項目にわたるところの、医術に対する不安というか、そういうものが出ておりますので、これは国立療養所の医療陣そのものに対する問題が含まれているのではなかろうかと思うのでございますが、たとえば、足利のような不便なところへは医者はどうせ来ないのだ、そういういい医者が来ないというようなところから、何か医療に対する患者の不安が、この争議のおもなる原因ではなかろうか、こういうようにわれわれは考えるので、この問題に対しましては、たくさんの問題が残っておると思うのでございます。しかし、局長は今詳しくわかっておらないというので、詳細に一つ検討を加えて、これに対しまして善処してもらいたい。しかも、所長の退陣というようなことに対しましては、われわれも非常に遺憾なことだと思っております。そういうことは表面に出すべきじゃないということを、再三にわたって説得したのでございますけれども、その問題につきまして、患者側としては非常に強硬であります。われわれといたしましては、そういうことでなしにこれを解決すべきであろうと思うのでございますけれども、しかしながら、前にこういう問題が起きたにもかかわらず七年の長きにわたりまして、また再びこういう問題を起しているというような所長を一つの療養所の所長として置くというようなことは、やはり行政措置としてどうかというような点も考えられるので、この点は微妙な問題がありますから、ぜひ善処を願いたい。こういうふうに申し上げまして、後ほどこの推移を見ましてお尋ねを申し上げたい、こう考える次第であります。
  189. 中村三之丞

    中村委員長 次会は公報をもって通知することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十四分散会