○
高田政府委員 ただいまの
提案理由の
説明で、
要点は尽きているわけでございますが、なお若干敷衍をいたして御
説明を申し上げます。
毒物、
劇物取締法によりまして、
毒性のあるものを取り締っているわけでございますが、最近新しい非常に
毒性の強いものが出て参りまして、いろいろと問題を起しているのでございます。
皆様方よく御存じの
パラチオンといわれております稲の二
化メイ虫を殺します
農薬、これなどがその顕著な例でございまして、この
パラチオンは、これを本格的に使い始めましたのは二十八年からでございます。その
事故の概要を簡単に御紹介してみますと、二十八年一年間におきまして、
事故の総
件数といたしましては千七百五十五件ほど起っておりまして、そのうち千五百六十四件は
中毒事件でございます。百九十一件は生命を落した
事件でございます。それから昨年の二十九年の
状況は、
事故の総
件数におきまして二千百九十四件という、前年より若干上回った
数字を示しておりまして、その内訳といたしましては、
中毒事件が千八百八十七件、死亡いたしました者が三百七件というような
数字を示しております。もっとも二十八年と二十九年におきましては、この
パラチオンの
使用量あるいは
使用面積がずっと増加しておりますので、その割合からいたしますと、
事故は少くなっておりますが、ともかくさような
件数を示しております。さらに注意すべきことは、ただいま申し上げました百九十一人、三百七人という
死亡者の中で、二十八年におきましては百二十一人、それから二十九年におきましては二百三十七人というのが、これを
使用して自殺をいたしたものなのでございます。かような
状況が
パラチオンの
状況でございますが、さらに新しく
ペストックス3というような新しい
農薬も使いたいというような要望もございますので、それらの情勢に即応いたしまして、ただいまの
毒物及び
劇物取締法では、若干心配な点がございますので、今回の
改正をお願い申し上げた次第でございます。
改正の
要点につきましては、ただいまの
提案理由説明でおもな点は大体尽きているわけでございますが、簡潔にさらに
内容につきまして御
説明を申し上げます。お手元にお配りいたしました資料の中の五番というところに、
新旧条文の
対照表がございますので、これをござらんになっていただけば仕合せだと存じます。
改正の第一点は、これが最も重要な
改正でございますが、
毒物の中で
毒性の特に強烈な
特定の
毒物につきまして、これを
特定毒物という概念を
一つ設けまして、それに必要な
規制を加えたことでございます。この
特定毒物に関する
規制の
内容が五つに分れるわけでございますが、その
一つといたしましては、第二条に第一項を加えまして
特定毒物の
定義を設けたことでございます。
現行の第二条では、
毒物及び
劇物を
定義いたしまして、
別表第一に掲げる物であって
医薬品以外のものを
毒物といい、
別表第二に掲げる物であって、
医薬品以外のものを
劇物ということにしておりますが、
毒物の
毒性の特に強烈なものを
特定毒物といたしまして、第三項を起し、
別表第三を新たに設けて、これに列挙いたしたわけでございます。この
条文の最後のところに、
別表第三というのがございますので、
ごらんをいただきますと、
別表第三の一の、四
エチール鉛と二の
モノフルオール酢酸は、
現行法の第十六条第一項に掲示されておりまして、前者はオクタン価を高めるためにガソリンに混入されるものでございます。後者は野鼠の
駆除のえさに混入して使うものでございます。
別表第三の三号から六号までは、これは
現行法の第十六条第一項の
規定に基きまして、
政令で指定をいたしておる
毒物でございます。第三号及び第四号が先ほど申し上げました
パラチオン及びメチル・
パラチオンと称されているものでございまして、主として稲の二
化メイ虫の
駆除に用いられるものでございます。第五号と第六号は現在は
使用されておりませんが、
ムリタン及び
カストリックスと称しまして、
野ネズミを殺す
目的で
使用されるものでございます。それから第七号に掲げておりまするオクタメチルピロホスホルアミドというむずかしい名前でございますが、これは
パラチオンと同じく
有機燐製剤の一種でございまして、
現行法ではまだ
毒物として指定されておりません。従って
現行法の第十六条第一項で
取扱いに特別の
規制を受ける
毒物に指定されておらぬのでございますが、最近その
使用が望まれているので、新たに掲げることにしたものでございます。この
製剤が先ほど私がちょっと申し上げました
ペストックス3の
商品名で知られております。柑橘類のダニの
駆除に用いられるものでございます。なお八号を掲げましたゆえんは、
毒物というものは科学の進歩とともに新しいものが出てくるのは当然でございますので、八号を設けましてそのような事態に応ずる用意をいたしたわけでございます。
以上が、
特定毒物の
定義に
関連いたしました
規定でございまするが、
特定毒物に
関連いたしまする問題の二番目といたしましては、
三条の二を新たに起しまして、
特定毒物につきましては
毒物劇物営業者等一定の
資格のある者以外の者に対しまして、その
製造、
輸入、
使用、
譲渡、譲り受け、
所持等をすべて
禁止したのでございます。
現行法の第
三条では、
毒物または
劇物の
製造業、
輸入業または
販売業の
登録を受けた者でなければ、
毒物または
劇物を
販売、
授与の
目的で
製造したり
輸入したりまたは
販売、
授与することは
禁止しておりますが、これ以外のものが単に
販売、
授与の
目的でなしに、
製造したり
輸入したりまたは
譲渡をすることにつきましては、別に
禁止されておりません。しかし
特定毒物につきましては、その
毒性が特別に強烈な点にかんがみまして、
販売、
授与を
目的とするといなとを問わず、この第
三条の二によりまして、およそ
製造、
輸入、
使用、
譲渡、譲り受け、
所持等について、
一定の
資格のある者以外の者に対して
禁止することにいたしました次第でございます。
第
三条の二の特別のものだけにつきましては、この
禁止の解除をいたしたのでございます。それで第
三条の二の
条文には十一項まで
規定がこまかくございますが、第一項は
製造の
禁止の
規定でございまして、
毒物または
劇物の
製造業の
登録を受けている者と、
特定毒物研究者すなわち
学術研究のため
特定毒物を
製造し、もしくは
使用することができる者として、
厚生大臣の
許可を受けた者でございますが、この
特定毒物研究者以外の者の
製造を全面的に
禁止いたしておるのでございます。
第二項は、
輸入についての
禁止規定でございまして、そこに掲げてありまする以外の者の
輸入を全面的に
禁止をいたしておるわけでございます。
第三項から第五項までは、
使用に関する
禁止規定でございまして、そこに掲げてありまする者が、そこに掲げてあるような
目的に
使用する場合のみを許している、こういう筋合いでございます。
第六項から第九項までは、
特定毒物の
譲渡、譲り受けに関する
規制でございまして、これもその
条文をお読みいただきますればわかりまするように、そこに掲げてあります者が、かような場合にだけ
譲渡、譲り受けができるという
規制を加えたものでございます。それから第十項は、これは
所持の
禁止の
規定でございます。かような場合にのみ
所持してもよろしいという
規定でございます。かような場合以外は
所持してはならないという
規定でございます。
それから第十一項は、
特定毒物使用者について、
使用することができる
特定毒物以外の
特定毒物を譲り受けることを
禁止したほか、その
所持もできないことにしておる
規定でございます。
以上、この第
三条の二の
規定に違反した者に対しましては、第二十四条の
罰則規定によりまして、三年以下の懲役もしくは五万円以下の罰金に処しまたはこれを併科するということに相なっておるわけでございます。
以上が
特定毒物に関しまする
禁止行為の
内容でございますが、
特定毒物につきまして
改正されました第三番目の点は、第十六条をお開きをいただきますと、ここにあるわけでございますが、
取扱い等の
基準を第十六条によって定めたものでございます。
現行法の第十六条に、そこに
ごらんになりますような
規定がございまして、今日では
改正法で
特定毒物と指定されるような特に
毒性の強いものは、すべてこの
現行法の第十六条によってこれが
規制されておるわけでございますが、この
現行法の第十六条の中で、ただいま申し上げましたようなわけ合いで、
三条の二の方で
規定された
内容のものもございますし、なお
現行法の第十六条におきましては、
毒物が付着したりあるいは
毒物を包含しているものにつきましての
規制ということが明確でございませんので、それを明確にいたしましたり、以上のような
条文の整備を加えたわけでございます。
次は、
特定毒物につきましての
改正の四番目の点でございますが、六条の二におきまして、
特定毒物研究者の
許可のことの
規定を新設いたした次第でございます。
それから
特定毒物の
改正の第五点でございますが、二十一条におきまして、
登録が失効した場合等の
措置の
規定を
改正いたした次第でございます。
以上申し上げました五点が、
特定毒物に
関連をいたします
改正の
要点でございまして、この
特定毒物に
関連をいたします
規制が、
改正の第一番目の重要な点でございます。そのほか
改正の
要点といたしましては、第五条におきまして、
毒物劇物営業の
登録の
基準を改めましたり、それから第八条におきまして、
事業管理人の
資格についての
規定を改めましたり、第十五条の二におきまして、
廃棄の
方法について
規定を新設いたしましたり、あるいは第二十条におきまして、聴聞についての
関連する
規定の
改正をいたしましたり、あるいは二十二条の二項におきまして、
業務上
毒物または
劇物を取り扱う者が、
毒物または
劇物の
貯蔵等に関する
規定に違反したときは、相当の
期間を定めて
措置命令を出すことができるというふうな
規定を新設いたしましたり、それから
罰則を整備いたしましたりしたような
改正点がございますが、これらはいずれも、申し上げてみますれば、やや技術的な
改正の点でございまして、特に詳しく御
説明をする必要はないかと存じます。
なお、そのほかに
経過規定といたしまして、
改正法は公布の日から起算して五十日を
経過した日から
施行するというふうに、
施行期日に余裕を設けておりますが、これは
現行法のもとにおいて、合法的に
毒物を
所持している者が、
改正法によりまして
特定毒物を
所持することができない者になる場合に、
施行期日をおくらせることによりまして、適当に処分させることができるよう考慮したことが
最大の
理由でございます。なおこのほか、この
法律の
施行に
準備期間を若干必要とする、すなわち
政令の
整理改廃というようなことが必要になりますために、かような
猶予期間を設けたわけでございます。なお、やはり附則の第三項でございますが、この
法律施行前にした
違反行為に対する
罰則の適用についての
経過規定を設けた次第でございます。
以上、ごく
要点だけを簡潔に申し上げました。おわかりにくかったかと拝察いたしますが、不明な点は、御
質問を得まして
お答えを申し上げたいと存じます。