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1955-03-30 第22回国会 衆議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年三月三十日(水曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 中村三之丞君    理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君    理事 松岡 松平君 理事 大橋 武夫君    理事 山下 春江君 理事 山花 秀雄君    理事 吉川 兼光君       植村 武一君    臼井 莊一君       亀山 孝一君    草野一郎平君       小島 徹三君    山本 利壽君       横井 太郎君    高橋  等君       中山 マサ君    八田 貞義君       岡本 隆一君    多賀谷真稔君       滝井 義高君    中村 英男君       長谷川 保君    横錢 重吉君       堂森 芳夫君    山口シヅエ君       山下 榮二君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 川崎 秀二君         労 働 大 臣 西田 隆男君  出席政府委員         通商産業政務次         官       島村 一郎君         通商産業事務官         (軽工業局長) 吉岡千代三君         労働政務次官  高瀬  傳君  委員外出席者         労働事務官         (労政局長)  中西  實君         参  考  人         (アルコール専         売労働組合執行         委員長)    鶴岡 信親君         参  考  人         (アルコール専         売労働組合書記         長)      青木金治郎君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 山本 正世君         専  門  員 濱口金一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣に関する件  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(内閣提出、  議決第一号)  労働行政に関する件  厚生行政に関する件     —————————————
  2. 中村三之丞

    中村委員長 これより会議を開きます。  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件を議題とし審査を進めます。  本件に関しましては、前回の委員会におきまして、参考人より意見を聴取することに決し、その選定に関しましては、委員長に一任という形になっておりますが、理事方々協議いたしました結果、公共企業体等仲裁委員会委員長及びアルコール専売労働組合委員長書記長出席を願うことといたしましたところ仲裁委員長及び委員は、本日やむを得ざる用事のために出席できないとの返事が、ございました。よってアルコール専売労働組合委員長及び書記長のみが出席されております。以上御了承をお願いいたします。  この際参考人に一言、ごあいさつを申し上げます。参考人の諸君には、ご多忙中御出席下さいまして、委員会を代表してここにお礼を申し上げておきます。  それでは、まず参考人の方より、この裁定に至ったまでの経過その他について御説明を願したいと存じます。参考人アルコール専売労働組合品中央執行委員長鶴岡信親君。
  3. 鶴岡信親

    鶴岡参考人 私はアルコール専売労働組合中央執行委員長鶴岡でございます。本委員会におきまして、私ども仲裁裁定の御審議をわずらわしていただいたことを深く感謝する次第でございます。  趣旨を御説明する前に、私ども組合現況を御説明申し上げます。アルコール専売労働組合は、通商産業省のアルコール専売事業特別会計に従事する千四百名余りの職員をもって構成されておりまして、昭和二十八年一月、公労法適用によって発足したのであります。工場事業所通産局、こういった三十四に上ります事業所をもちまして、全国に分布しております。  組合は、結成以来いまだ日も浅く、全国組織単一組合として、特に公労法精神にのっとりまして、公共事業の意義を体して、終始一貫合法的活動をモットーとして運営してきているのであります。     〔委員長退席山花委員長代理着席〕  それでは本件仲裁裁定経過を概略申し上げますと、組合は昨年の二月二十三日、通商産業大臣に対しまして、東京通商産業局磐田アルコール工場福岡通産局相知工場及び四国通産局アルコール課に勤務する職員勤務地手当現行一級地を二級地に、東京通産局新潟事務所は二級地を三級地にそれぞれ引き上げ、また福岡通産局肥後大津工場出水工場小林工場、それから四国通産局近永工場は新たに勤務地手当を、すなわち一級地を支給せられるよう要求書を出したのでございます。数回の団体交渉を行いましたが当局側は、予算上実行不可能であるという正式回答を三月三十一日に出したのでございます。  そこで組合はそれぞれの事業場のあります福岡地方調停委員会東京地方調停委員会高松地方調停委員会にそれぞれ調停申請を行なったのて、あります。この申請に対しまして、福岡地方調停委員会は八月二十四日に八月一日より実施東京は八月三十日に四月一日より実施、また高松は八月二十一日四月一日より実施という調停案が提示これたのであります。  この調停案に対しまして、私たち組は各委員会に対しまして、九月十三日に受諾するという回答を出したのでありますが、当局側は、団体交渉のときと同じような理由、つまり予算実施不可能であるからという理由で、受諾しないという回答書を、東京高松地方調停委員会には九月二十三日、また福岡地方調停委員会には十月五日に出したのであります。  私たち組合としましてはこの紛争状態解決方法としまして、公労法第三十四条第二項の規定によりまして、公共企業体等仲裁委員会に対しまして昨年十一月十六日に仲裁裁定申請を行なったわけであります。  この申請に対しまして、本年一月二十九日に至りまして福岡相知工場を除いた七事業所につきましては、それぞれ現行級地より一級地引き上げることが認められたのであります。以上の経過をたどりまして、今回公労法第十六条によりまして、国会の御審議をわずらわした次第でございます。  この裁定内容は、昭和二十九年度におきましては、成立予算範囲内で両者協議し、また昭和三十年度につきましては、これが完全実施が示されていることは御承知通りであります。合法手段による解決を要望する私たち組合の唯一のまた最終解決方法である仲裁裁定でありますので、どうか国会の名におきまして、この仲裁裁定が、三十年度はもちろん、二十九年度におきましても実施できますよう、御審議をお願いする次第であります。  なお、当委員会審議に必要と思われます細部の御説明を、青木書記長より御説明させていただきたいと思います。
  4. 山花秀雄

  5. 青木金治郎

    青木参考人 私はアルコール専売労働組合青木書記長でございます。たいま委員長から申し上げましたように、私は本日の委員会におきまして、御審議をいただきますにつきまして、必要と思われます細部の点につきまして、多少御説明させていただきたいと思うわけであります。  まず第一点は、この仲裁裁定実施に必要な経費の額でございます。これにつきましては、むしろ当局側で発表いたされております数字がございますので、それを申し上げた方が御納得いくかと思いますからこれを申し上げますと、裁定実施に必要な資金の額は、公労法適用職員、すなわち組合員の分といたしましては月四十三万三千九十五円でございます。それから公労法適用職員すなわち管理職員と申しておりますが、この分といたしましては三万二千七百四十五円、この両者を合わせまして、総計月額といたしまして四十六万五千八百四十円であります。すなわち裁定実施に必要な額は月約四十六万円ということであります。これで参りますと、年間にいたしましても約五百五十二万円程度に相なるかと思います。この程度のものは、当局側もたびたび申されております通り会計上大した負担に相なることでもございません。今回国会議決を求められふした理由は、ただ明年度予算にその分の経費が計上されていないという点が、わざわざこのように国会の御審議を願わなければならなくなった原因であると私どもは了解をいたしているわけでございます。  それから第二に申し上げたいのは、この裁定と他組合との関係についてでございます。勤務地手当と申しますと、すぐ問題になりますのは、すなわち一般公務員との問題でございます。この一般公務員の例には、幾多の例外があるのでございまして特にそれは公労法関係についてでございますが、国鉄や電通等におきましては、一般公務員と全然別個の体系を持っているというところもございますし、また造幣局におきましては、これは造幣広島支局でございますが、これは昭和二十八年の七月に広島地方調停委員会から一般公務員と異なった一級上の調停案が出されまして、当局側たる大蔵省はこれを受諾いたしまして、翌八月から現在まで実施し続けて参っているわけてございまするさらに林野におきましては、過去の五段階制当時で、ございましたが、これは双方の協約によりまして独自な級地指定を行なった例もあるのでございます。こののように一般公務員より多少とも異なった指定団体交渉で優遇的に協定したところもございます。また調停案を受諾して行なったところもございます。こういったほかの例もあるのに、アルコールのみが団体交渉で決裂し、また調停案組合は受諾したのに。官側、か拒否してしまった。しかのみならず、仲裁裁定もかような事態に相なっているということについては、継合としてもまことに当局側に対しまして遺憾に存じている次第でございます。  なお、一般公務員との関係について申し上げますと、仲裁裁定書にも書いてあります通り当局側仲裁委員会におきまして、みずからこのように申しております。すなわち「一般国家公務員に関する人事院勧告から単に予算関係から実施されない場合においては、アルコール職員について、あくまで一般国家公務員との均衡を固執するものでない」、こういうふうに明確に当局側の態度を表明されておりますので、これ以上組合側から敷衍することもないと思うわけであります。すなわち、筋といたしまして、一般公務員予算的に実施できない場合も、アルコールについて予算的なものが講じられれば、当局側としても一般公務員と多少のそこに実施あとさきがありましても、これにこだわるものではない、アルコール独自で実施しても差しつかえないということを、当局側が言明されている次第でありまして、組合側からこれ以上申し上げる必要もない、かように思うわけであります。組合としても、アルコール専売組合事業所が実は三十四カ所もあるわけでありますが、このうりち特に内部の均衡の問題あるいは緊急の度合い等を考慮いたしまして、八カ所を選びまして裁定を仰ぎました以上、この裁定を受けました分の完全実施をお願いすることこそ真の目的であることを、組合はこの際進んで申し上げておきたいと存する次第であります。     〔山花委員長代理退席委員長着席〕  第三点は、仲裁裁定権威の問題であります。御承知通り公労法の三十五条におきまして次のように規定されているのでございます。すなわち「仲裁委員会裁定に対しては、当事者双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならない。」のように規定されているわけでございます。仲裁裁定争議権を認められない国営企業労使聞におきます法的に定められました最終の結末なのであります。この権威ある仲裁裁定も、ただ予算上、資金上不可能といった場合にのみ、それに限って国会議決を求めることによりまして、予算上の措置国会で講ずるという仕組みに相なっているのでございます。  今回政府から提出されましたこの公労法第十六条第二項に基き、国会議決を求めるの件の政府提案の事由によりますと、「現況において予算上可能とは認めがたい」と記されております。これが提案理由になっているようでございますが、公労法の十六条にいっております絶対に不可能だという場合との関連点が、どうもわれわれとしては明確でないのでありまして、特にこの際注目されなければならないのは、裁定が出されましたのは三十年度予算編成の前であったということであります。二十九年度におきましては予算移流用等解決し、三十年度におきましては暫定予算に組み入れていただきたかったと組合希望として思っているわけでございます。特に公労法によります仲裁制度争議権の代償として保障されているものであります以上、仲裁裁定は最大限の権威が与えつれなければならないものとわれわれは信じているわけでございます。この点民主党内閣におかれましても、先般来納得のいく政治を行うということをいわれております。私とも公労法精神にのっとりまして、仲裁裁定権威が完全に守られることを一に念願していものでございます。  先日労働省おきまして、西田労働大臣と会見いたしました。この会見の席上には労政局長にもお立ち会いを願ったわけでございますが、労働大臣はこの点につきまして、みずからこの裁定を尊重し、あくまで筋を通すということを表明いたされました。組合としても、この点は一応安堵をいたしておるような次第であります。この点は、特に政府方々の御処置をお願いいたしたい、こういうふうに思うわけでございます。  このように組合として委員会にお願い申したいのは、仲裁裁定完全実施ということでございますが、御承知通り裁定内容は二十九年度内の問題と三十年度内の問題と、この二つかり相なっているわけであります。まず二十九年度内問題点でありますが、これにつきましては、仲裁裁定は、成立予算余裕のある範囲内で労使双方協議によること、こういうふうに記されているのであります。組合といたしましては、この裁定を提示されまして、直ちに当局側協議を進めたわけでございますが、当局側は三十年度の見通しがつかない限り、年度内は切り離しては考えられないということで、協議は一向に進展せずに今日までに至っているわけであります。すでに年度内は今明日限りでございまして、この裁定に示されました年度内実施も、この今明日中に結論が出ない限り、裁定年度内実施されなかったという結果に相なるわけでございます。この点特に早急に御審議を願い、できれば予算移流用等措置をとることによりまして、裁定両者協議によりまして実現できますよう、御支援をお願いしたいと思うわけでございます。  次に、三十年度につきましては、もはや暫定予算も本院を通過いたしました現在においては、ただ本予算にぜひ御計上を願いたいということを、ひたすらお願いするのみでございます。この点につきましては、幸い一昨二十八日の衆議院の予算委員会におきまして、重光副総理、一万田大蔵大臣、それから西田労働大臣におかれましても本予算においてま考慮するということをはっきり明言されております。この好意ある御答弁をいただきまして、組合も、一応安堵をいたしておるわけでありますが、こういった経過もございますので、当委員会におかれましても、何とぞこの御答弁を裏づけをいたされまして、裁定完全実施議決していたたくことを、組合といたしまして切にお願い申す次第であります。
  6. 中村三之丞

    中村委員長 以上をもちまして参考人説明は終りました。  この際参考人並びに政府に対する御質疑がございますならば、これを許可いたします。小島徹三君。
  7. 小島徹三

    小島委員 鶴岡さんちょっとお尋ねをしたいのですが、この事業場三十数カ所のうち八カ所だけ勤務地手当要求された理由はどこにあるのですか。
  8. 青木金治郎

    青木参考人 かわりまして私からお答え申し上げます。  アルコール事業所は、小さいものでございますが、一応三十四カ所全国に散らばってあります。このうち、もちろん東京の本省、通産局、大阪、福岡、名古屋といったものは最高の四級地をいただいておるわけで、この点は問題ないわけであります。これら以外のものについても、もちろんこの程度でよろしいといったところもございますし、またどうしても上げていただきたいというところもございます。ただ組合といたしましては、何でもかんでもむやみに持ち出すということも、われわれとしてとるところでは、ございません。よく配置転換等が行われるところで早急に処置をしなければならない、たとえば、例で申します。と福岡の局は四級地でございますが、その管内に無級地工場がございます。この間の配置転換等が非常に行われるわけでありますが、ちょっと行ったとたんに二割下ってしまったというふうな例があるのであります。これてはどうしても配置転換等毛スムーズに行かないし、職員もこれらの点について、生計費等から非常に引き上げの熱望が出る、そういったところが多く、組合員か特に緊急に処置してもらいたいというところのみを取り上げまして八カ所選んだわけであります。本部としてたきつけたということではなくて、現地の非常に熱烈な希望のあるところのみ、こういった調停仲裁にお願いをした、こういった経緯があったのであります。
  9. 小島徹三

    小島委員 そうしますと、私は人事院地域給勧告というものの日にちを忘れたのですが、人事院地域給勧告とは何ら関係がないのですか、それとも多少あるのですか。
  10. 青木金治郎

    青木参考人 その点は、私たちが御要求申し上げましたのは、昨年の二月二十三日で、ございまして人事院勧告はそれから三カ月以上もおくれまして、五月の二十九日となっております。それ以前からの職員熱望であるということをおくみ取り願いたいと思います。しかも要求時期は二月二十三日に要求いたしましたけれども実施は四月からお願いするという形をとつたわけでございます。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 当局にお尋ねいたしたいと思いますが、実は私は、通産大臣が見えなければ、審議内容に入りたくなかったのですけれども、時間の都合もございますので、一応政府委員の方に質問をいたしたいと思います。  今、参考人からお話しがありましたように、造幣並びに林野におきましては、すでに地域給級上げを行なった、こういうことを聞いたわけでありますが、それは事実であるかどうか。またいかなる理由でそういうことが行われておるのか、さらに予算措置はどういうように行われたのか、おわかりになったら、一つお答え願いたいと思います。あるいは通産省でおわかりなければ、労働省でもけっこうでございます。
  12. 中西實

    中西説明員 大蔵当局にお聞きいただいた方が、かえっていいかと思いますか、私の聞いておりますところでは、林野におきましては、特に一般公務員地域給と違った実施をしたところはないように聞いております。造幣におきましては、広島の五日市というところで、一般公務員地域給と違った地域給実施いたしておりましてたしか二十万円くらいの原資で実行されておるようでございます。これは、この問題についての調停委員会における調停案、これを双方が受諾しまして、そうして実行しておるというふうに聞いております。なお詳細はちょっとわかりかねますので、あるいは大蔵省当局、ある、いはそれぞれの当局にお聞きいただきたいと思います。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 林野については意見が 食い遅っておりますが、造幣については実施したということは、政府当局も お認めになっておるわけです。そういたしますと、現在の予算、「たとえば二十年度予算でもけっこうですが、一応この広島造幣局といいますか何といいますか、そこにおいては、級上げのベースで今度の予算は組まれておるかどうか、これも一つお尋ねいたしたいと思います。
  14. 中西實

    中西説明員 私ちょっとその点明確に存じておりません。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 造幣とか林野を聞くと、なかなかお答えにくいと思いますけれども、しかしこれは関連性があるので、いやしくもアルコール専売が出されたら、当然あなたの方では御答弁の用意をされておらなければならぬわけです。当然造幣は増しておるのですから、どうして増したのか、あるいは現在の予算措置はどういうふうになっておるか、だれでもけっこうですから、一つ把握されておらなければいかぬと思うのです。造幣大蔵省であるから大蔵省に聞いてくれということでは、やはりアルコールの方が出され、それを拒否されておる根拠に乏しいと思うのです。ですから、一つ通産省でもけっこうですからおわかりになったらお知らせ願いたい。
  16. 吉岡千代三

    吉岡政府委員 大蔵省にその点を質問したところによりますと、ただいま労政局長からお答え申し上げましたように、造幣広島の場合においては、非常に金額が少額であって、大蔵省としては何ら予算措置を講ぜずして、既定の予算範囲内で実施したのである、こういう説明でございました。三十年度につきましては、ただいまのところ明確に承知いたしておりません。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 金額が少いといいましても、労働条件の基準は変っているのですから、これはやはり他にも影響があるわけです。ですから、そういうふうに個々別々におきめになるというのが、私はむしろ公労法精神だと思うのですが、こういうことになりますと、これもこだわる必要はないので、当然アルコール特別会計からは出てくる問題ですから、造幣だけを認めてアルコールを認めないという根拠きわゆて乏いと思う。これだって、金額はきわめて少いと思う。それから三十年度予算造幣の問題ですが、給与総額が、金額が少い、予算範囲内でできるというても、それは年度の終りになって金額が余っている場合には、そういうことは私は可能だと思うのですか、初めから予算を組む場合は、やはり広島造幣局級上げした分だけを当然組んでおかなければならぬ。もしもそれを組まないで、そうして組まなくてもできるんだということになれば、その予算はきわめてずさんな予算であって、水増しの予算であるといわざるを得ない。ですから、金額の多募にかかわらず、やはり予算編成の前においては、給与総額に組まれているべースというものは、私は確実にその通りになっておらなければおかしい、かように考えるわけであります。そこで私は、どうも答弁をされる方が把握されておらないので非常に困るのですが、これは一応保留しておきまして、二十九年度のごの場合にはどうして支出ができないのか、当局からお聞きしたい。
  18. 吉岡千代三

    吉岡政府委員 御承知のように、仲裁裁定におきましては、二十九年度分については、成立予算余裕のある範囲内においてということになっております。この解釈は、公労法全般の問題でございますので、労働省を通じまして、法制局から法律上の解釈をお聞きいたしたわけでありますが、結論といたしましては、給与総額範囲内において何らの予算措置を講ぜずして実行できるのが、この成立予算範囲内である、こういう解釈でございます。そ、こで、アルコールの場合について、申し上げますと、二十九年度給与総額は若干不足をいたしておりまして、この勤務地手当は、御承知のように基本給の中に含まれているわけでございますが、基本給におきまして二百六十万ばかりの不足を生じております。この赤字につきましては、他の諸手当等給与総額余裕をもってこれを充当いたしております。  それから年末手当の支給に関しまして、御承知のように公労法関係の年末手当につきましては、一般公務員年間を通じて一・二五カ月分に丸して、一カ月分の予算しか計上されておらない。それでこの点につきましては、いわゆる業績手当といたしましてこれは給与総額以外から流用することが予算総則の上で認められておりますので、不足額を他の費白から流用いたしまして、一・二五カ月分の年末手当を、支給いたのたわけでございます。なおその際に、たとえば予備費等から流用することはどうであるか、その他いろいろ流用の手段につきまして、可能と認められる方法について検討を願ったわけでございますが、これらはすべて解釈上、成立予算範囲内に該当しないという法制局結論でございまして従って二十九年度につきましては、今申し上げましたように、現実に予算上支給できなかった、こういう実情でございます。  なお、三十年度につきましては、仲裁裁定尊重の公労法上、当局としてはこれを実施すべき義務を負っておるわけでございますので、その点につきまして、大蔵省に口頭益びに文書をもって予算措置要求はいたしてございます。しかしこれ気しては、現在のところ暫定予算であるから、性質上そういうものは組むことができないのだという解釈で計上されておらない、こういう関係になっふおるのでございます。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一応当局の態度はわかりました。すなわち当局では、二十九年度については予算の支出上可能な場合は裁定内容になっていないのだということで諮らなくてもいい、こういう見解であろうと思います。私は形式論としてはわかるのですが、しかしこの仲裁裁定内容に、次のように書いてあるのを、非常に不思議に思うわけです。「また本年度アルコール専売事業の予算はかなり窮屈であって、当局勤務地手当改訂の余裕はないと主張しているが、従来の実演に徴するに、運用の如何によっては或る程度余裕も生じ得るとも認められるので、主文のとおり裁定した。」——そこで「従来の実績に徴するに、運用の如何によっては或る程度余裕も生じ得るとも認めてらるので」こういう文句であります。今井さんは大蔵省におられたし、さらに従来の経緯から、仲裁委員会としては予算総則がどういうものであるか、あるいは流用し得る場合はどういう条件の場合であるかということを、よく承知しておるはずであります。承知しておる仲裁委員会が、ここに「運用の如何によっては或る程度余裕を生じ得る」ということを書いておる。しかも、この勤務地手当というのは、先ほどお話になりましたように、給与総額範囲に入るものであるということを考えますときに、私はどうも理解に苦しむのですが、当局としては仲裁委員会のこの裁定内容を、どういうようにお考えであるか、お尋ねいたしたい。
  20. 吉岡千代三

    吉岡政府委員 その点は、仲裁委員会の万にお尋ねを願いませんと、私どもとしては何とも申し上げかねるのであります。ただ、現実に二十九年度の経理実情は、ただいま申し上げた通りでございます。
  21. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 関連して。今のお答えですが、仲裁委員会に理いてくれと言われますけれども、あなた方は仲裁裁定実施するに当って、仲裁委員会が一体どういうつもりでその裁定文を書いておるか、その裁定文の内容はいかなる意味であるかということを、法制局に行って聞いたと言われるけれども法制局へ行って聞かれる前に、まず仲裁委員にその真意を聞いて、そうしてその裁定内容を実行するように努力しよう、こういうことを考えるのが筋じゃないかと思うのです。仲裁委員に聞かずに法制局に聞きに行って、法制局でこう言ったからこうですというわけでございましょうか。
  22. 吉岡千代三

    吉岡政府委員 仲裁委員会におきましては、われわれの主張はいたしたわけけでございますが、裁定が下りました以上、これに対しましては、その内容の定めねところに、よりましてわれわれとしては措置をとらなければならぬという立場にあるわけであります。その解釈等のつきましては、御意見の点とあるいは異なるかと思いますけれども、私どもといたしましては、公労法関係の法律問題という意味合いにおきまして、労働省ともお打ち合わせいたしまして、法制局にその解釈をお聞きするのが適当である。こういう考えをもって、先ほど申し上げたような措置をとったわけでございます。
  23. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そうすると、あなたの方の解釈については、その係争の相手方であるところアルコール専売労働組合でも、あなた方と同一解釈ですか。もし当事者間において裁定の文意の解釈が一致しないような場合には、法制局というような政府機関に聞くべきではなくて、裁定下したところ仲裁委員会双方から行って、まずどういう意味であるかということを聞く、それはもう当然の社会通念だと思うのでございます。そういう手続をせずして、勝手にその当事者の一方が、これはこういう意味なのだというようなことでやられるとすると、裁定の意味が非常に歪曲されて、勝手に解釈されて、さらに紛争を生するおそれもあると思う。そこでそれについて、さらに政府当局の御答弁を伺うと同時に、組合側の諸君は、政府のその解釈に同意をしておられるのかどうか。この点を一つはっきりお答え願いたいと思います。まず政府の方から一つ。
  24. 吉岡千代三

    吉岡政府委員 先ほどちょっと申し上げましたように、給与総額外から移流用等によりまして給与総額そのものをふやすということは、予算総則におきまして、場合が非常に限定されておるわけであります。これは御承知通りと思います。それで、この可能なる場合の解釈につきまして、先ほど申し上げましたように、いろいろの方法を考えまして、これにつきまして法制局の見解をただしたということでございます。先ほど申し上げ方が少し悪かったかと思いますが、問題は、予算総則において流用等の可能な限度がどの程度であるかという問題であると存じますので、この点はやはり法制局において結論を出していただくことが至当て、あろうと考えた次第であります。
  25. 青木金治郎

    青木参考人 この「運用の如何によっては或る程度余裕も生じ得るとも認められる」というこの文については、仲裁委員会におきます仲裁裁定の段階におきまして審議されました経緯からわれわれは完全に了解しておるつもりであります。それは「運用の如何によって」ということは、この仲裁委員の事情聴取は、二十八年度の決算書をもとにして今井委員長は判定をされたかと存ずるわけであります。二十八年度の決算書等に見ますと、たとえば光ほと局長から御答弁がありました年末手当の〇・二五が給与総額において、低く見られておるということによる、むしろ給与総額を必要最小限よりもさらにしぼって組んであるために、大蔵省みずからが窮地に追い込まれたということから、いろいろ給与総額に便法を請じてやっておる状況でございます。その業績手当という名によりまして〇・二五を追加するとか、あるいは給与総額内の諸手当が非常に辛く組まれたために、年度末まできたときに、にっちもさっちもいかなくなったという場合に、年度末においてそこにある程度予算措置をしたという例があるわけであります。そういった例からここに掲げられておるということ、これもまた本年も予測して、この仲裁裁定が必要であるというならば、国会の御審議をわずらわさなくても、行政措置によってその程度のものは期待し得るということを、今井委員長はこれに書かれたものと組合は了解いたします。給与総額内の問題につきましては、日ごろわれわれが経験いたしておりますか、必要最小限度よりもむしろ下回る組み方をしておりますので、余裕がないことは事実でございます。
  26. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 両者意見を聞いて大体明白になったわけですが、従来政府公労法精神を無視して、給与総額というワクを設けた。ところが、事実問題として、ワクではどうにもいかなくなった。そこてそこにあります業績手当その他の特別給与を従来いろいろの形で出しておる、ここに私はいろいろ公労法上の運用の誤りがあると思う。みずから墓穴を掘っておるような感じがするわけであります。みずから作りました給与総額に縛られてどうにもならないから、給与総額をこの予算総則規定に反して移流用を行なっておる。そうせざるを得ない。でありますから、私は根本的には、給与総額を制定したことが間違いであると思うのですが、しかし今さらそれを申しても仕方がありません。  そこで、先ほど組合の方から、三十年度の見通しがつくならば、二十九年度は支出してもいいということを当局は言っておると言われた三二十年度の見通しがつかないから二十九年度はできないのだという言葉の裏は、何とかしてできるのだということである。法律上できるのだ、運用上できるのだということであり、それは当然今までの団体交渉内容から明らかであると思うのです。私はその行き方を責めるわけではない。給与総額というものができました関係で、当局は非常に苦心をされて、特別給与としていろいろ条件がありますけれども、その条件を満たさない場合においても支出されておる。従来こういう慣例があるわけでありまして、そういうことを仲裁委員会は十分御承知の上で、運用のいかんによってはある程度余裕を生ずるのだ、こう書いてある。ところが、それを今度は逆に、文字通り従来の慣行と運用を無視して答弁をされるということは私は、その答弁はいささか正鵠を失しておると考えるわけであります。そこで私は、そういう形式論でなくて、実際当局としては、二十九年度についてはどういうようなお考えであるか、その真意をお尋ねいたしたい。
  27. 吉岡千代三

    吉岡政府委員 ただいま御指摘の点は、若干組合の受け取り方と私の方と気持が違っておるわけでありまして、二十九年度が決定しないがゆえに二十九年度の支給をしないのだという考えは、毛頭持っておらないわけでございます。二十九年度の実情からいたしまして、給与総額範囲内に余裕がないがゆえに支給しないのである、こういうように御了承願いたいと思います。
  28. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうかたくなってお答え願わなくてもけっこうであります。従来、給与総額を上回っても実際特別給与として支給しておりましょう。条件がそろわなくても、支給しておるのです。それは、従来国会も認め、政府も認めてやっておる。国会でも、一カ月分しか組んでいない期末手当を一・二五やれと、委員会で決議をしておる。これはどうにも仕方がないから、特別給与で出しておる。従来、給与総額が無理であるから、政府国会も認めていろいろな形で予算の移流用の最大限度を利用して、大蔵大臣の承認によって行われておる、こういう慣行になっておる。私は、これはむしろ予算総則が悪いために、こういうことが行われておるのだと思うのです。そこで、やはり二十九年度のこの関係については、私は、三十年度がきまれば、当然あなたの方では出していただけるものである、こういうように考えておるのですが、違いますか。
  29. 吉岡千代三

    吉岡政府委員 公共企業体の経理につきましては、建前の上では、ある程度一般公務員と別個の仕組みになっておるのでございますが、実情におきましては、ほとんど一般公務員に近いような予算的規制を受けておるということは、御指摘の通りでございます。その点につきましては、基本的に一つの問題点はあるかと思います。従いまして、業績手当の画におきましても、業績によって浮動するものであるから、基本のベースは一般組合より低いのである、ここにも一つの問題はあると思います。従いまして、一般公務員と同程度の支給をいたします場合には、もちろん、説明といたしましては業績向上の資料を整えまして、それによって支給を受けておるわけでございますが、実質におきまして御指摘のような関係はあると思います。ただ、一般公務員に対する勤務地手当その他の基準を越えまして支給する場合に、そのような弾力性のある解釈が許されるかどうかという点につきましては、これは、形式上はもちろんで、ありますが、実質におきましても、きわめてかたい解釈になるのではないか。また、現実に給与、総額自体におきましては、御承知のように、これはそれを増額し得る場合がきわめて限定されておりまして、これに運用あるいは解釈によって融通性を持たせるということは困難である、このように考えておるのであります。
  30. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは、二十九年度分についてもぜひ出していただくように、私は希望するわけですが、あまり追い詰めますと、かえって困ると思いますので、これ以上追及いたしません。しかし、一般公務員との均衡を固執するものでない意向が終局的に明らかになったということを、仲裁委員会は、あなたの方の審議の過程において発表しているのですが、一体通産省としては、一般公務員との均衡最終的には固執するものでないというように御答弁になったのかどうか、これをお尋ねいたしたい。
  31. 吉岡千代三

    吉岡政府委員 この点は、機会を見て私どもの気持を申し上げたいと思っておったのでございますか、八ページの中ごろの辺の、「人事院勧告に対しては、当局は、「権威あるものとして妥当と認める」との見解を表明し」という点と関連性を持つわけでありますが、仲裁委員会におきましては、当初、アルコール特別会計において、一般の地域給と別個に、地域差を検討して地域給の級別を作ることはできないかというお尋ねがございました。これに対しましては、私どもは、そういう関係を専門に調べる能力を持っておりませんし、人事院という政府機関があって、常時そういう問題を検討されておるわけでありますので、行政機関としては、その人事院の検討されました結論権威あるものとして考える。しかし、その勧告自体が、国会においては人事委員会では通過いたしておりますが、国会全体としては議決されないままに終っているという問題があるわけでございます。そうして、九ページの後段のところにあります「一般国家公務員に関する人事院勧告が単に予算関係から実施されない場合においては」という。その場合には、アルコール職員について、あくまで均衡を固執するものでない。しかし、人事院勧告かいかなる理由議決を得られなかったかという点は、実はわれわれとしては明確になっておらないのであります。仲裁委員会におきましては、一般公務員については予算関係実施せられなかったのだという御見解のようでありましたか、終局的に国会の御意向が明確になっておりませんので、その点につきましては、私どもとしては、単に予算関係から実施されない、しかし人事院勧告内容そのものは、国会として妥当と認めるというような場合には、アルコール職員については、経理上は別個の関係になりますので、あくまで一般公務員との均衡は固執するものでない、こういうつもりで申し上げたのでございまして、その点が、この表現ではちょっと不明確になると思いますので、その点を申し上げます。
  32. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 非常に苦しいような答弁ですか、国会の方は、むしろまだ人事院勧告以上に幅を広げようという修正案すら出んとしておる。一般公務員に関する人事院勧告実施されないのは、何といいましても予算関係、命がないから、こういうことです。これは自由党においても民主党においても同じであろうと思う。そこで予算関係から実施されない場合というのは、今度のような場合です。ですから、そのような場合においては、アルコール職員については、あくまで一般公務員との均衡を固執するものではない、こういうことをおっしゃったなら、政府としては、当然この分だけは、一般公務員については予算上出ないのだから、この分だけは出す、こういうのが付載委員会審議の過程から見て当然の見解である、こういうように考えられるわけですが、あなたの方は何か仲裁委員会で発言をしたことと、それから国会においてなされることと違うわけですか。私はどうもふに落ちない、かように考えるわけです。
  33. 吉岡千代三

    吉岡政府委員 仲裁裁定については、私どもはここで意見を申し上げる立場にないと思いますが、たた仲裁委員会において申し上げました意見についてのその当時の気持を、明確にいたしておきたいということで申し上げたわけでございます。もちろん当局といたしましては、裁定がありました以上、予算獲得については、努力は現にいたしておるわけでございます。その扱いにつきましては、一昨日も予算委員会において各関係大臣がお答えいたしておりますので、その考え方によりまして、——暫定予算においてはこれは性質上組んでおらないけれども、本予算の場合には一昨日お答えいたしておりますような趣旨において考慮するということを申しておりますので、そういう結論の出ることを、私どもとしては期待しておる次第でございます。
  34. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは大臣に出てもらって、政府全般としての気持を聞いてみなければ、これ以上内容審議に入ってもむだであると思うのです。ことに仲裁の過程においては、今も私が指摘いたしましたように、一般公務員に関して予算関係から人事院勧告実施されない場合においても、アルコール職員において最終的には実施するのだと、こう言っておる。これは当局がそういうように説明をし、態度を明らかにしておるのです。ところが現在問題になっているのは、一般公務員との関係である。そこで、一般公務員はまだ予算関係実施ができない、そこでこれはどうするかという問題になっておると思うのです。ですから、政府の態度を私は大臣からはっきりお伺いしなければ、これ以上審議に入ることはできないと考えるわけです。ですから、すべからく委員長においては、通産大臣を呼んでいただきたいと、かように考えます。
  35. 中村三之丞

    中村委員長 お答えいたしますが、午前中はむずかしいような返事があるのであります。しかし、お説のように通産大臣が来て御説明をせられるのは当然だと思いますから、委員長においてしかるべくお取り計らいをいたしたいということを申し上げておきます。  大橋君。
  36. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 これは私も委員会に出ていなかったごとがありますから、あるいは他の委員からの御質問に御答弁になったことがあるかもしれませんが、それだったら、そうおっしゃっていただいてけっこうです。三十年度の分につきまして予算上不可能という理由提案になっておりますが、なるほど暫定予算には、この関係経費が上っていないからして、暫定予算に関する限りは予算上不可能なのだ、こういう御説明のように承わったのであります。そうすると、本予算にも、政府としてはこれに必要な経費を載せないのだという御方針を、すでにおきめになっておられるのですか。
  37. 吉岡千代三

    吉岡政府委員 この点につきましては。一昨日の予算委員会におきまして労働大臣並びに大蔵大臣から御答弁になっておりますので、その内容をお伝えいたしたいと思いますが、福田昌子委員の、本予算こは実施されるということでございますかという御質問に対しまして大蔵大臣は、今それについて考慮をいたしておる、大蔵大臣としては、今のところでは検討を十分加えるというところであるという御趣旨の答弁をされております。それから、同じく福田委員の御質問に刻しまして労働大臣は、アルコール専売仲裁裁定の問題は、暫定予算であったがために計上いたしておりませんので、従って本予算に対しましては、午前中大蔵大臣もお答えいたしましたように考慮することにいたしております、こういう答弁でございます。
  38. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 政府は、労働大臣の考慮することにいたしておるという意味を、それは予算措置を講ずるという意味で言われたのですか、それとも講ずるかどうか研究するという程度の意味で言われたのですか。
  39. 吉岡千代三

    吉岡政府委員 その労働大臣のお気持ちは、労働省におきましても、まだそこまで内容については聞いておらないということでございます。
  40. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そうすると、政府ではまだきまっていないわけですか。
  41. 吉岡千代三

    吉岡政府委員 それ以上のところは、どうも私から……。決定しておるということには至っておらないと思いますが、十分考慮するということは言っておりますので。
  42. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 私は政府委員というものは、やはり一つの政府の代表者と思って質問しているのであって、何か聞けば、ほとんどどうだかわからぬというようなことを言われるのですが、一体あなたはどういう資格でここへ出ておられるのですか。
  43. 吉岡千代三

    吉岡政府委員 実は、けさも通産大臣とはお打ち合せいたしました。通産大臣といたされましては、本予算編成までに地域給に関する何らか別個の制度ができない限りは、仲裁裁定を尊重する建前において考慮せざるを得ないたろうということを言っておられます。しかし、これはいずれ関係大臣で最終的に本予算編成の際に御決定願うととになると考えます。
  44. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そうしますと、この議案は、一応予算上不可能ということで出てはおりますが、政府の本予算に対する方針といかんによっては、予算上可能になることもあるわけですね。
  45. 吉岡千代三

    吉岡政府委員 さかのぼって実施すという方針が決定いたしました場合は、可能になり得ると思います。ただ公労法の上から申しますと……。
  46. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そうすると、その場合にはこの議案を政府はどういうふうに取扱われることになるのでしょうか、撤回されるのですか。
  47. 中西實

    中西説明員 一昨年ベースアップの裁定が出ました際、一応このときには予算上不可能ということで議決を求める件を出しまして、その後一月から実施するということに政府の方針がきまりまして、あらためてそういう御決議をいただいたことがございます。今度の問題も、現在、一応形式的にも不可能だということで本案が出ておりまして、もしも本予算の際に態度がはっきりしますれば、それによってこの議案が変ってくる。それでわれわれの見解では、もしさかのぼって予算上可能たということになれば議案は自然消滅になるというふうに考えております。
  48. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そうすると、今われわれの方で審議を急いで、本予算の出ます前にこれをかりに否決でもしてしまうと、国会の否決したものを政府が実行されるということになると、われわれは何のために否決したのかわかりぬということもあり得るわけですか。
  49. 中西實

    中西説明員 もしも不承認とはっきりしますと実はそういうことにもなるかと思います。
  50. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そうすると、不承認ということになった場合には、その予算か出ると、不承認だか承認だかわからない。こうなると、この委員会審議は全く意味をなさぬということになるわけです。そうすれば、結局われわれとしては本予算が出るか、少くとも本予算に対するこの問題についての政府方針が明確になるまでは審議しても無意味だ、こういうことになるのじゃないかと思いますので、そうなりますと、われわれといたしましては、どうしてもそれについての政府の態度を早くおきめ願わなければならぬ、こう考えるわけです。  そこで、委員長にお願いいたしたいのですがそういう点を考慮されまして、政府が何らかの態度を明らかにするまで、この問題の審議はしばらくお休みいただくということをお諮り願ってはいかがかと思います。
  51. 中村三之丞

    中村委員長 ただいまの動議は、理事会でお諮りすることにいたします。  それでは午後二時まで休憩いたします。     午前十一時三十四分休憩      ————◇—————     午後二時三十一分開議
  52. 中村三之丞

    中村委員長 休憩前に引き続きまして会議を再開いたします。  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件を議題と上、審査を進めます。質疑の通告があります。順次これを許します。多賀谷真稔君。
  53. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 まず大臣に、今提案になっております公労法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件について、質問をいたしたいと思います。  この政府が出されました国会議決を求めるの件という題名のその趣旨内容を見てみますと、一体何を政府はわれわれに求めておるのかわからない、こういう状態であります。それは私たちは、仲裁委員会内容について、とやかく言う権限はございません。協定内容について審議する権限はないわけであります。ただ予算上可能であるかどうか、こういう見地からこれを検討しなければならないと思うのであります。ところが、予算上可能であるかどうかに対する予算提案権は、政府にあるわけであります。政府の方からこれに対して何ら具体的な実質的な意思表示が出ておりません。ただ形式上、現在の暫定予算には盛られていないから不可能である、こういうことだけでありまして実質上、政府としては三十年度予算に組むわけに行かないから、これを認めるわけに行かないというのか、あるいは組めるというのか、あるいは暫定予算では組めなかったが本予算では組めるという意思表示であるのか、われわれは了解に苦しむのであります。大臣におきましては、一体どういう趣旨でこれを出され、さらに政府としてはどういう考えであるかをお答え願いたいと思います。
  54. 西田隆男

    西田国務大臣 公労法第十六条の規定は、公共企業体の予算上または資金上不可能な支出を内容とする仲裁裁定が、ございましたときは、これを国会に付議するように規定されております。従って暫定予算におきましては、そういう新規なものは組めないという建前をとりまして、暫定予算の中にはこれは計上いたしておりません。  それからもう一つの問題は、それでは通常予算に組むのかというお話でありますが、この問題に関しましては、仲裁裁定は、労働大臣としてはこれを尊重しなければならぬと考えております。従って、衆議院の予算委員会におきましても、本日の参議院の予算委員会におきましても、大蔵大臣も三十年度予算には考慮を払うという答弁をしておりますので、私の考え方では、当然計上さるべきものだと考えております。
  55. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それでは、三十年度予算においてはこれを考慮し、労働大臣としては計上されるものと思う、こういうお答えでありますので、これ以上申し上げません。  しかし、私は根本的に、提案の仕方というものについて疑問を持つのでございます。なるほど法律には十日ないし五日という期限が付してあるので、十日ないし五日という期限を付したのは、当然政府として十日ないし五日の間にはこれに対する見解をもって臨むべきであると考えるわけであります。これは本来争議権を中止する問題であるわけであります。争議が発生しようとしますその瞬間において争議を中止するために仲裁裁定が行われる。でありますから、その長い期間におきましては、労使双方意見は出尽しておるわけであります。ですから、仲裁裁定がありますと、当然それに対する政府の態度というものはおのずからきまる、きまっておらなければならない、こういうように考えるわけであります。そこで十日ないし五日の期間において国会議決を求めるというのは、政府として予算上の見地からどうするかということについてはっきりした態度を持って国会議決を求められるのが当然であると考えるわけですが、今度の民主党政府においては、何ら具体的な考え方を持たずして出されてお る。いわば白紙で出されておる。こういうような状態になっておるように考 えるわけです。ことに労働大臣は、各関係の大臣と違いとまして、公労法に対する所管の大臣でありますので、その提案の仕方について、御考慮願いたいと思います。それに対する大臣の御意見を伺いたい。
  56. 西田隆男

    西田国務大臣 ごもっともな御意見と思いますが、この仲裁裁定あるいは人事院勧告等の問題につきましては、先例もありましたので、法律論として多賀谷委員の今言われましたことが妥当であるかどうかということは別問題としまして、内閣としては公労法の十六条によりまして、私は五日以内と記憶しておりますが、提案しなければならない。従って三十年度の通常予算を決定いたしますまでの日にちがそれ以上かかりますので、その過程においてはどうしても国会の御承認を経なければならぬという先例を重んじまして国会提案したのでございます。
  57. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 なるほど、前例のあることは知っております。政府提案をして、その後に態度をきめたことも知っておるわけです。しかし、従来民主党におかれても、その態度はいけない、自由党の態度は何を審議を求めておるのかわからない。あるいは予算上不可能であると考えて、国会において一応否決して、その後に政府においていや可能である、あるいはまた審議の途中において可能なる場合もあるし、こういう状態ではわれわれの審議権を軽視するものである。こういう御議論が先ほどからも出ておるわけであります。今後政府はこういう問題について、どういうようにお考えであるのか。ただ先例があるからということで、今後もそういう出し方をされるのかどうか、お尋ねいたしたい。
  58. 西田隆男

    西田国務大臣 政府としましては、決して国会委員会を無視したりなんかする考えは毛頭持っておりません。午後の問題につきましては、法律的に内閣としてどういうふうな解釈をするかということが重点だろうと思いますが、今回のところは先例に従って出しております。多賀谷君の御意見も十分伺いまして、内閣としましても、はっきりした態度をきめたいと考えております。     —————————————
  59. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 せっかく大臣が見えておられますので、私はこれについてはこれ以上追及いたしませんが、その池労働行政一般について質問をいたしたいと思います。まずけい肺法の件でありますが、けい肺につきまして今さら大臣にその内容について私が申し上げるまでもないと思いますが、この問題は、十六回国会において参議院に議員立法として提出され、現在継続審議中でございますが、自由党の政府においてすらも、これについては十分考慮しようというので、本来ならば昨年の十二月に始まります国会において、われわれは提案を受けるように聞いており、また政府もそのように申し述べてわったわけであります。しかし政変がございまして、民主党が内閣をとられたわけですが、このけい肺については、大臣はどういうふうなお考えであるか、これについてお答えを願いたいと思います。
  60. 西田隆男

    西田国務大臣 私、労働大臣に就任いたしまして、さっそくけい肺の問題についての説明を承りました。当局としましては、ある程度の準備をしておったようであります。しかし、私その法案の大体の出与え方について話合いをしまして私としましても考えておることがありますので、その意思を事務当局に伝えまして、ただいま成案を得べく検討中でございます。従って成案を得ました場合においては、再度けい肺審議会にかけまして、その御了解を得た上で国会提案したい、かように考えております。
  61. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、今次国会予算並びに法案の提案が間に合いますでしょうりか、お尋ねいたします。
  62. 西田隆男

    西田国務大臣 今次国会提案するように極力進行いたしたいと考えます。
  63. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では大臣の言葉に期待をいたしまして、われわれとしては、けい肺法の提案がなされることを希望するものであります。  次に失業対策の問題ですが、大臣は郷里に帰られてこのときは自治庁の長官でございましたが、失対事茱は全部国庫負担でやるのだ、こういうことを新聞で言われたことを拝見したのであります。その言われた言われないかは別といたしまして現在多数失業者が集団的に発生しております市町村におきましては、財政上非常に困難でございますので、その負担金を十分負担する能力かございません。そこで、せっかく国のワクが来ても、返上したいというようなところすらある。あるいは失業者がこれ以上出ても、市町村としては負担し切れない、こういう市町村もあるわけでありますが、この補助率について、考慮される考えはあるかないか、これをお尋ねいたしたい。  なお、現在失対事業が非常に低能率である、こういうことをよく言われております。給与の悪い点もそうでありますが、資材費の不足をわれわれは痛感するわけでありますが、これについてどういうお考えであるか、あわせてお聞きしたいと思います。
  64. 中村三之丞

    中村委員長 今多賀谷君は、労働行政一般に対する御質問でございますから、あらためて委員長から、労働行政一般に関する質問を許します。
  65. 西田隆男

    西田国務大臣 私が自治庁長官として話しました新聞記事等について、今お話がございました。御承知のように、地方財政は今非常に困窮の極に達しております。従って自治庁長官としましても、国の行う失業対策事業というものに対して、地方の負担をさせるということはどうか、かように考えまして、自治庁長官時代は国の行う失業対策事業に対しましては、全額国庫負担をしてもらうよう、大蔵大臣ともこれは十二分に話し合いをいたしております。労働大臣になりましてからは、失業の状態を聞きまして、自治庁長官をしておりましたときと同じように、これは全額国庫負担で失業対策事業を遂行せなければならぬということは、なお一そう信念を固めたことであります。ただし、失業対策事業と申しましても、国だけで全部をやってしまうのだという性質のものではないので、地方は地方でやらねばならぬ失業対策事業もあると考えております。従って、労働大臣としましては、三十年中度の本予算につきましては、自治庁長官時代に考えておりましたように、全額国庫で国の行う失業対策事業費はまかなってもらいたいという折衝を今続けております。これが財政上の見解から、果して百パーセント完成できますかあるいはある程度財政的な理由で譲歩しなければならぬかということは、まだ結論は出ておりませんけれども、そのつもりで大蔵省と折衝いたしております。
  66. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 国の行う失業対策事業、こういうことですが、現在失業対策費として組まれている緊急就労事業とか、鉱害復旧のほかに、一般的な失業対策事業というものが、組まれておりますが、これは事業主体は本来地方自治体ということになっておるわけです。大臣の言われるのは、一般失業対策事業で現在地方自治体でやる国が三分の二補助しておる分についてお答えであるのか、建設者あたりでやっておる公共事業の性質のものをおっしゃっておるのか、この点を明確にしていただきたい。
  67. 西田隆男

    西田国務大臣 お答えいたします。国で負担するのがどういう種類のものであるか、地方でするのがどういう種類のものであるかということを判別するのは、現在では非常に困難でございまして、従って地方ですべきものも、国ですべきものも一緒になって、現在失業対策事業というものは考えられておるわけであります。別に地方だけですべきものというふうには考えておりません。
  68. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では今まで予算で組んでおりました失業対策事業というものは、大体国でするものであり、さらに地方自治体において独自の失対事業を施行する場合には、それは県及び市町村おやりになるのだが、従来やっておる失対事業というものは 本来国でやるものであって、現在国でやることが至当であり、全額国庫でやるように折衝しておる、こういうように理解してよろしいわけでありますか。
  69. 西田隆男

    西田国務大臣 必ずしもあなたがおっしゃったようには、現在まだ言明はいたしておりません。これは国が重点的に腰を入れてやる失対事業というものと、地方でやっておる失対事業というものは、将来何とかして区別をつけていきたいと考えておりますけれども、現段階においては、はっきりした区別はまだつけておりません。従って、私が申します失対事業の全額国庫負担は、大蔵省と折衝の過程において、果して今までやって来ておった失業対策事業を含めて全額国庫負担ということが成り立つのか、あるいはただいま申しますように、地方の負担分として考えられるような事業もありますので、そういう事業を含めましてどういうパーセントになるのか、いずれにせよ二十九年度よりも相当引き上げてもらうという意気込みで今折衝いたしております。
  70. 中村三之丞

    中村委員長 大橋武夫君。
  71. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 労働大臣は、先般当委員会におきまして御就任のあいさつを兼ねまして、労働行政についてのあなたの基本的なお考えをお話し下さったわけでございます。そこで私は、この数本的なお考えに関連いたしまして二、三の質問をいたしたいと思っておるのでございます。その大臣の御発言の中に、今回大臣が経済閣僚懇談会のメンバーとなられているということを特に述べられておったわけでございますが、このことには、何か特別な意味があるわけでございますか。
  72. 西田隆男

    西田国務大臣 これから先の日本の経済問題を論議する上において、労働問題をはずして論議するということは、経済問題解決のために適当ではない、かような見解で、労働大臣が経済閣僚懇談会に、今までも入っておりましたけれども、今回特に入れていただきまして、そうして労働問題との関連性において日本の経済問題を片づけていきたい、かような考え方を持っております。
  73. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 その経済閣僚懇談会のメンバーはどういう大臣でございますか。
  74. 西田隆男

    西田国務大臣 大蔵大臣、経審長官、農林大臣、それに労働大臣、もう一人は通産大臣、これでございます。
  75. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そこでこういうメンバーとして労働問題と経済問題とを関連させて解決していきたいということをこの前も述べておられますし、また今日も述べておられますが、そのことは、一体具体的にいうとどういうことを意味するのでございますか。
  76. 西田隆男

    西田国務大臣 具体的に申しますと、今内閣は、経済六カ年計画を検討中でありますがこの経済六カ年計画を遂行していきますような予算を作っていく上におきまして、ある場合においては能率の向上、企業の合理化という、面から、相当な失業者が出ることが予測されますので、そういう失業者が出ることを予測される場合においては、労働大臣といたしまして失業対策といいますか、失業した労働者を他の面に吸収する点について、非常に重要な発言をしなければならないし、その問題が片づかないままでの経済六カ年計画の遂行は、失業者群をいたずらにふやすという結果になることも考えられますので、そういう観点に立ちまして労働大臣としては、経済閣僚懇談会で重要な労働行政の面をやっていきたい、かような観点に立ってメンバーとしての活躍をするつもりであります。
  77. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 元来、この労働間臨は、沿革的に見ますと、これは大臣よ御承知のように、むしろ産業問題に従属しておったと思うわけであります。産業革命の初期におきましては、労働者の人格すら産業に従属させられておった。そこで労働問題というものが塩て来たわけでございまして、この労働問題の出発は、産業問題のほかに労働者の生活問題というものがなければならぬ、という点が、この労働問題の出発点であったわけであります。終戦後のわが国の労働運動の急激な展開に伴いまして、普通に言われておりますことは、むしろ労働問題というものが、今日の日本においては多少行き過ぎて来ているのではないか、こういうわけでございますが、それは労働者の生活問題を取り上げる取り上げ方が、あまりにも大きくなり過ぎて、そうして産業の経営というものがその犠牲になっておるのではないかという点が、問題となっておるのじゃないかと考えるわけであります。こういう意味におきまして労働問題の陰に、隠れてしまった産業問題というよのを、労働者だけの生活でなく、国民全体の生活問題の根本として再び取り上げていかなければいけない、こういう段階が今日の段階だと思うわけでございます。従って、労働問題というものは、最初の時期においても、また今日においても、常に経済問題と関連して考えられることは当然のことでございまして、大臣のおっしゃる労働問題と経済問題を関連させるということは、そういう当たり前のことを言っておられるのではないのではないか。しいてそこに意味をつけて解釈するとすれば、問題は、現在の労働問題の解決に当って、産業問題に重点を置いて解決すべきか、あるいはまた、労働者の生活問題に重点を置いて解決すべきか、ここが労働問題に対する根本的な考身方の分れるところだと思うのであります。あなたが経済閣僚会議のメンバーとなっておられることは、そのどちらの立場を意味するわけでございましょうか。
  78. 西田隆男

    西田国務大臣 もちろん労働問題も産業問題も、でき得れば同時に解決しなければならない問題であると考えておりますが、経済六カ年計画を遂行いたします上におきましては、労働に重点を置くか、あるいは企業そのものに重一点を置くかということは別問題としまして企業の合理化をはかって生産費の低減も行わなければなりませんし、生産の増加もはかって貿易の伸展にも寄与するようにしなければなりません。そういう過程におきまして、少くとも日本の現毎の企業と労働のあり方でありますと、ある場合においては、合理化をするための人員の整理という問題が付属して考えられます。その際に、今までは、ただ企業と経営という間だけの問題として労働問題が処理されて来ましたために、起さないでも、いいような紛争が起きてみたり、あるいは、国家として何とか援助、助成の手を講じてやったならば、そうならないで済んだであろうと思われるようなことまでも、労使聞の紛争として今まで起きて来た実例があります。従って、私としましては、そういう観点に立ちまして、一つの計画のもとに各産業が企業の能率を上げ、合理化をはかり、そして企業の負担だけで労働者の生活そのものを安定した方向に持っていけないというような企業がもしありました場合は、企業だけの負担でたくて、国として何とか労働者の生活身ささえ得るような方法を考えなければならない。そのためには、労働大臣として、ただ産業関係の大臣だけの話し合いでまとめてもらうことは非常に因るという観点で、私は特に経済問題に関連して、その一環としての労働問題を考えたい、かように考えております。
  79. 大橋武夫

    ○大橋武委員 そうしますと、労働問題の取り上げ方に、産業政策を根本にして、それに引きずられて労働問題がついていくということになりますか。それとも労働政策というものが出てきて、それに産業政策を調和させていくという考え方で行くわけですか。どちらでございましょう。
  80. 西田隆男

    西田国務大臣 経済六カ年計画の中におきましては、御承知のように完全雇用ということを一応の目標に置いております。従って、両方の問題を同時に解決して行くという考えの上に立って六カ年計画はできておるものと考えておりますけれども、それは考え方であって、実際現実の問題としては、あの案で考えておりますようなことが完全に行われるかどうかということは、確信はできません。従って、その過程において生ずるトラブルを、労働大臣としては起さないような方向に労働問題の解決を持っていくと同時に、企業の合理化、能率の増進をはかりたい。欲はこのようにございますけれどももそういうように考えて実は入っておるのでございます。
  81. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 やはり労働問題の所管として労働大臣があられます以上は、一応、労働大臣の立場というものは、産業政策についていくというだけでなく、むしろ労働者の生活を擁護することを念頭に置きつつ産業政策を考えていくという行き方でなければならぬと思うわけでございます。そういう意味におきましてこの経済閣僚会議というものの構成を考えてみますと、労働者の生活問題のために労働大臣がおられると同時に、一般国民生活の問題については、厚生大臣がメンバーに入るべきじゃなかろうか。そうして初めて経済閣僚と数の上でバランスがとれるばかりでなく、実際上、産業問題と生活問題という両方のバランスがとれるのじゃなかろうか。労働大臣がせっかく入られることによって労働行政に意義を任ずるならば、そうした経済閣僚会議に、将来厚生大臣をも加えられることが、さらにいいことじゃないかと私は思うのですが、これについてのお考えを伺いたいと思います。
  82. 西田隆男

    西田国務大臣 ただいまの御意見は、ごもっともだと考えます。
  83. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 それでは、自今政府はそういうお扱いをなさることになりますか。
  84. 西田隆男

    西田国務大臣 私自身、経済閣僚懇談会に出まして厚生大臣を加えるよう発言をいたします。
  85. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 なお私は、この閣僚会議におきましては、できるだけ先ほど申し上げたような趣旨で労働大臣が行動されることを希望するわけでございますが、今労働行政において一つの問題となっておりますものに、労働三法の改正問題というものがあるわけでございますが、これについての大臣のお考えはどういうお考えでございましょうか。
  86. 西田隆男

    西田国務大臣 私は、今のところ労働三法を改正しようとは考えておりません。
  87. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 総選挙の前に当りまして、大臣の属しておられます民主党は、選挙の公約というものを発表されております。その中に、やはりこの労働三法の問題がはっきり公約として打ち出されておるわけでございますが、どういうふうに民主党は打ち出しておられますか。
  88. 西田隆男

    西田国務大臣 民主党の政策の中に、労働三法に関する表現があることは、私は承知いたしております。しかし、労働一二法の改正が是か非かをめぐって、いろいろ議論はされておりますけれども、私は、そう簡単に労働三法に手をつけるべきではないという考えを持っております。私自身も企業をやっておった経験を持っておりますから、労使の間というものは、今直ちに労働三法に手をつけなければ、今より以上に労使の間の平和が維持できないというふうには、私自身は考えておりません。従って、現在の段階では、労働三法を直ちに改正しなくてはならいというふうには考えておりません。
  89. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そうしますと、労働大臣のお考えは、民主党の選挙の公約とは多少食い違いがあると申しますか、多少開き」があるものと理解いたしてよろしゅうございますか。
  90. 西田隆男

    西田国務大臣 党の政策としましても、選挙後すぐ改正するというふうには言っておらぬと思いますが、労働三法の改正は慎重を要しますので、どうしても改正しなければならないような周囲の情勢が生じてきました場合はおいて考えたい、かように考えておのます。
  91. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 どうも、選挙のあとにすぐできた内閣で、選挙の公約と全く違った政策をここで述べておられますが、そのお考えについては、閣議で御相談になったことはございますか。
  92. 西田隆男

    西田国務大臣 閣議では、労働三法の改正の問題につきましては、まだ議論をしたことはございません。
  93. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 そうすると、それは政府全体の責任ある答弁として受け取ることがでぎるでしょうか。
  94. 西田隆男

    西田国務大臣 政府の統一ある答弁と申しますと、閣議で決定したということが一つの根拠になると思います。閣議ではまだそういうことを議論したことはございませんので、労働大臣個人の意見としてお聞き願いたいと思います。
  95. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 実は、民主党におかれましては、選挙前においては、労働三法については改正の問題がある、しかし、これをすぐ改正するか改正しないかということは、選挙に当ってうかつにしゃべることは不得策であるということで、そこでこの問題は、一応公約においてはぼかしましたが、しかし全然この問題にタッチしないという態度でなく、慎重に考慮する、こういう表現が用いられてあるわけでございます。私は労働大臣か就任されました以上は、選挙の公約をまず実行されるのが、大臣のお役目でございますからして、まず就任後この問題を真剣に取り上げて慎重に考究さるべきではないかと思うわけでございます。そういう意味でただいま伺いましたのですがむぞうさに労働三法の改正はやらぬ、こういっておられます。これでは、選挙の公約にも反する次第でございますから、この問題については、今すぐここでお答えをいただくことができないかもしれませんが、一つ選挙の公約もあることでございますから、労働大臣は十分慎重に御検討の上、しかるべき機会に、私もこの問題についてさらに重ねてお尋ねしたいと存じます。
  96. 西田隆男

    西田国務大臣 私、まだ労働大臣に就任しまして、きわめて日も浅うございますし、閣議が暫定予算の問題だけにひっかかっておりまして、あとは委員会に出ておりますので、閣議でそういうことをゆっくり議論「するひまがなかったのでありますが、党の方ともまだ連絡をとっておりませんので、党の政調会ともよく連絡をとりまして、態度をきめたいと思います。
  97. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は先ほどの続きの論議をしてみたいと思いますが、失業対策の問題で一番困っているのは、やはり資材費だろうと思う。現在四十五円で、単価が頭打ちになっております。三分の一の比率ですから、十五円になっておるのですが、今度の予算ではどういうようにお考えですか。三十年度予算においては、どういうように資材費を上げるつもりであるか、労働大臣のお考えを承りたい。
  98. 西田隆男

    西田国務大臣 私がさっきから申しておりますのは、失業対策に使う経費を全額国庫負担にしてもらいたい。その中には労務費も資材費も諸経費も一切含まっております。
  99. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実は国庫負担の率の問題でなくて今資材費全般の経費のことを聞いておったのです。そうすると、大臣はかなり建設的な事業をやる、こういうことをおっしゃっておりましたので、建設的な事業をやるということになると、当然資材費はかなり値上げをされる、かように了解してよろしいでしょうか。
  100. 西田隆男

    西田国務大臣 その通りでございます。
  101. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 さらに失業対策の中に、現在やっております、いわば清掃事業とか、そういった長い間停滞しております労務者、この労務者は必ずしも建設事業には向かない、こういうような趣旨で、前は建設的な事業と社会保障と失業対策を一貫したものと区別してのお話のように承わったわけですが、それでは現在比較的長い間日雇い労務者として停滞しておりますたとえば老齢者あるいは女子労働者、こういう人には、どういうように考えておられるかさらに具体的にお答えを願いたいと思います。
  102. 西田隆男

    西田国務大臣 大体私が考えておりますことは、今までの失業対策と申しますのは、ただ登録されておる失業の人数だけが対象になって失業対策事業を行われておった。従って持っております労働力の差がどういうふうになっておったかということが非常に問題がございまして、果して持っておりまする労働力そのものを完全に敷率化するような失業対策事業であったかどうかということについては、私は疑念を持っております。従って失業者の質という問題に対して、今調査を命じておりますが、この調査が完成しますと、たとえて申しますれば、百パーセント労働力を持っておる人には、百パーセントの労働力の発揮のできるような失業対策事業を与えて、賃金の増収をあわせてはかってやりたい。そしてまた全然ないといっては語弊がありますが、非常に労働能力の低い人たちは、今言う労働力を使わないで済むような清掃事業とか公園の手入れというような方面に失業対策事業を考えて、その方面に充当して行く。そして同じ国の税金を使うことですから、少しでも効率的に、しかも今の断片的でなくて、継続的と申しますか相当長い期間にわたっての失業対策事業というものを考えまして、そして、これがもっと大きく言いますならば、一種の継続雇用になって一つの事業になり、事業の従業員というような本質を持ったところまで、一つ失業対策事業というものを進めていってみたいかような考え方に基いて、今いろいろなことを計画をいたしております。
  103. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 現在の日雇い登録資格がある者は、一世帯で一人ということになっております。これが非常な悲劇を生んでおるわけですが、大臣においては、やはり働く意思があり、働く能力がある者は、何も一世帯に一人か資格かあるということでなくて、もう少し拡充をしたい、こういう御意思であるかどうかお尋ねしたい。
  104. 西田隆男

    西田国務大臣 これは仕事の問題と金の問題でございますが、今の一家族一人としての失業対策事業に出払っております金は、決して労働者諸君の生活を満足せしめるものとは考えておりません。従って、そういうものを上げたいとは考えておりますけれども、これは国の財政問題と関連して、でき得れば逐次そういうことは解消して行きたい、かように考えております。
  105. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実は新聞で失業保険法の改正の問題を見たわけであります。ことに最近日本経営者連盟から送って来ました資料によりますと、かなり詳細に書いてございます。失業保険法の改正については、どういうお考えであるかお伺いしたい。
  106. 西田隆男

    西田国務大臣 失業保険法の改正については、現在行われております給付条件というものが、必ずしも現在の社会実態と合致しておるとも言い切れませんので、そういう点を勘案しまして、ある短期間の、何といいますか期間労働者といいますか、六カ月就業してその次は休んでおる、そういう者に対して六カ月給付するというような場合は、これは何とか少し短縮をすることによって、そのかわりに長期労働者として失業された人は、これはもう少し長く保険の給付をしたらどうだろうかという考え方を今持っております。
  107. 山下春江

    山下(春)委員 ちょっと労働大臣に伺っておきたいし、そして今後御協力を願いたいと思うことがございます。  昨日、私、舞鶴へ第十一次引揚船を迎えに参りました。今回帰りましたのはあの中国大陸の非常な各所、あらゆる地域から引揚げたのでございます。中国の内情が非常に詳しくわかりましたのですが、従来引揚げました人には、相当の金なども持って帰った引揚船がありましたが、今回帰りました八百十五名中、ほとんど大部分の人か、ほとんど着のみ着のままで、資産らしいものを持って帰っておりません。帰りまして、すぐあそこで強く要望されましたことは、就職問題——なお現在大約六千人くらいの者が残留しておるようでございますが、それらはデマでございましょうけれども、日本に帰ると就職できない、あちらにいればほとんどみんな職を持っておるが、こちらに帰れば就職できないというようなことを危惧して、帰りたいには帰りたいが、帰国を希望する勇気が出ないというような状況にあるようでございます。従来の引揚者の就職については、労働省でも非常な特別な御配慮を願っておることは承知しておりますが、今回りに特別でございます。特にあちらで結婚しておりまして、そして離婚して子供たけ三人くらい小さいのを連れて帰ったという特殊婦人が非常に多い。そういう者に対して、今回は特に強い要望がありましたので、労働省の方として、これに対してどういうふうなお考えをお持ちいただいておるか、ちょっと伺いたい。
  108. 西田隆男

    西田国務大臣 お答えいたします。今までの引揚者の求職者に対する就職をあっせんしましたのは、自分でつてを求めて就職されました以外に、中共からもソ連からも引き揚げた者を含めまして、約六〇%程度の就職ができております。これは労働省の役人の非常な努力の結果だろうと考えております。今回の八百人以上の引揚者に対しましても、職安の者は、もちろん舞鶴に出しておりますが、いろいろのあっせん機関を通じまして、できるだけ就職ができますように努力したいということを当局も打ち合せております。なお今お話を承わりましたので、当局ともよく相談しまして善処したいと思っております。  それから、引揚者がお金を持っておらないということにつきましては、これは労働省関係でなく厚生省関係でありますので、厚生省の方でどのくらいの金額か知りませんか、ある程度のお小づかいを差し上げるということを、川崎君が参議院の労働委員会答弁いたしておりましたから、厚生大臣ともその点をよく打ち合せておきたいと思います。
  109. 山下春江

    山下(春)委員 そういうふうに、ぜひお願いたしたいと思います。従来各県の職安で特別にやってくれておることに、よく承知しておらます。職安の人々も、ほんとうにこれは省からの命令を越えてやっておることを承知しておりますが、今回のは特に困窮者か多いので、大臣からも職安の方へなおその点を熱心に要請していただきまして、まだあちらに残っておる者——帰りました人の言葉によりますとあと一年帰られなければ発狂するであろうという、従いまして、私ども引き揚げの問題を長く扱っておりました者としては、捕捉できない感情でございます。帰りたくない、帰国を希望しないといって残っておきながら、あと一年も帰れないと発狂するであろう。そこに非常にむずかしい問題がありまして、帰っても就職できないだろうというようなこと、か、あちらへ伝わっておることを何とか解消したいためにも、今回は子供連れ、それから非常に困窮者、そういう者でございますので、特段の御配慮を願いたいことを、重ねてお願いをいたしておきます。
  110. 西田隆男

    西田国務大臣 よくお話わかりましたから、督励をしまして、御期待に沿うようにしたいと思います。
  111. 中村三之丞

    中村委員長 もうございませんか。  ちょっと速記をやめて不さい。     〔速記中止〕
  112. 中村三之丞

    中村委員長 それでは速記を始めて。  次に健康保険の赤字対策に関する件につきましてお諮りいたします。  本件に関しましては、前回の委員会において委員諸君より御熱心なる御質問があり、先刻の理事会におきまして協議いたしましたところ、本委員会において決議をいたし、関係大臣に送付すべきであると決定いたしましたので、その案文を作成いたしました。  案文を朗読いたします。   健康保険の赤字対策に関する決議案   社会保障制度の重要なる基盤をなす健康保険の収支は、今や、数十億に上る赤字を示すに至り、今にして抜本的対策の樹立を見ることなくしては、その運営上著しい支障を生ずべき実情にある。   よって、政府は健康保険の危機に対処するため、制度並びにその運用について必要な改革を行うとともに、併せて給付費に対する国庫負担の方途を講ずべきである。   右決議する。  以上のような決議をし、その取扱いに関しましては、委員長に御一任願うことに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  113. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なしと認め、さよう決します。  この際厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。
  114. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま本委員会におきまして、健康保険の赤字対策に関する決議が行われ、健康保険の危機に対処、するため、制度並びに運用について必要な改革を行うとともに、給付費、に対する。国庫負担の方途を講ずべきであるという御決議をいただきましたことは、政府としても、赤字克服のみならず、健康保険の財政の収支均衡化のために、また先年来社会保障制度審議会等の勧告もありましてこの決議は十分に尊重して霊一処をいたしたい、かように考えております。      ————◇—————
  115. 中村三之丞

    中村委員長 次に委員派遣に関する件についてお諮りいたします。  ソ連地区残留同胞が来月十八日舞鶴に引き揚げて参りますので、この際本委員会より委員を派遣して、その援護状況などを調査いたしたいと存じますが、議長の承認を求める手続派遣委員等については、すべて委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 中村三之丞

    中村委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。
  117. 山下春江

    山下(春)委員 ただいまの委員派遣とも関連しております引き揚げの問題でございますが、昨日第十一次引き揚げが舞鶴へ到着いたしまして、八百十五名帰って参りました。今回は中国の各地から集団したものでございまして、従来の引き揚げと違って非常に貧困者ばかりであります。同時に、大部分が結核に冒されている非常に健康状態の悪い人ばかりであります。もう一りの条件は、中国人と結婚している婦人が非常に多かったために、小さい子供を二人、三人と連れ帰ってきた母子が非常に多かった。そこで毎度出ることでございますが、引揚者の代表から、私ども国会および政府に対して協力な申し出がございました。それは、第一点は、就職の問題でざいます。特に今申しました、ように母子を中心にして十人くらいを集めて行う集団職業補導等の、いわゆる母と子が生きていける方法をぜひひとも考究してもらいたいということが一つ。一つは住宅でございます。それからそのほかにもう一つ、帰還手当が従来おとなが一万円、子供が五千円でございましたが、大臣はその帰還手当一万円と五千円について、その全額を増額する御意思がおありになりましょうか、どうでありましょうか。
  118. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 大体御質問は中共ソ連からの引揚者に対する応急援護、それから山下委員承知の厚生対策といいますか、定着援護については、従来ともに、できる限り手厚く受け入れられるような措置は講じておるのであります。そこで、就職の問題の方は、先ほども参議院において御質問があったのでありますが、これは自己就職などを除きまして、公共職業安定機関などであっせんをいたしましたものは、第一次から第七次までの引揚者に対して八〇%以上という相当な好成績を示しております。それから第九次の場合たけでも、約四〇%——これは昨年の十一月だと思いますが、そういう就職率を示しておりますので、これは今後相当上昇するものとも見込まれておりますし、労働省とも協力をして、一そう善処したいと考えておる次第であります。  ただいまの最後の御質問の問題は、現在帰還手当というものは、おとなが一人一万円、子供が五千円、ただいま御指摘の通りであります。これらは十分に実情に沿うように善処いたしたいとは考えておりますけれども、すべて法律で今日まできめられ、またそれに伴う措置としてきめられた範囲内で、今日のところ実施をいたしておるのであります。その実情は御了解を願いたいと思います。  それから、私よけいな答弁ではありますが、先ほど労働大臣の申されたことと数字が少し違っておりますのは、それは中共、ソ連も全部含めて、そうして労働大臣のは、先ほど聞いておりますと、第一次から第九次まで全体を含めて六〇%、つまり第九次の就職が約四〇%になっていますから、それだけ低下をしておると思います。率が違っておったということは、先ほど参議院の答弁を聞百いておってわかりました。それだけよけいでありますがつけ加えておきます。
  119. 山下春江

    山下(春)委員 その帰還手当の問題なんでございます。これははなはだ困ったことのようでございますが、実は民主党から深川先生が政府代表という肩書きで御出席になりました。そこで、その政府代表としての、ごあいさつの中に、帰還手当がこんな長い間苦労したにもかかわらず、おとなが一万円、子供が五千円なんということはとんでもないことである。これは直ちに引き上げましょう、こういうふうな御発言でございました。  それからもう一点、これはやはり引揚者から強い要望がございましたか、就職をいたしますのにもも何しろ手持ちの金がございませんので、西に行き東に行きするのに旅費等もないので、どうか一つ一カ月の就職に必要な鉄道パスを発行して、もらいたいという要望がございました。これは毎度出る要望でございますけれども、なかなかそれは技術上困難のようでございますので、私どもも何とかなだめすかして、そのままにしておったのでございますが、昨日政府代表たる深川先生が、それを今まで出さないことはとんでもない話だ、それは出すようにいたしましょう、こういう御答弁でございました。そこで本日の読売新聞によりますと、現場を存じませんが、地方引揚援護局の局長は、何も中央からそういう指令を受けていないので、それはなかなかできないというようなことを言ったかどうか、すわり込みをしたというようなことの新聞の記事も出ておりますか、その点はどうでありましょうか。現場はわかりませんが、そういう問題か起っておりま場すので、非常に困ると思うのでありますが、ここで一つ大臣の御答弁を聞きまして、現場にも、厚生大臣のお考えはこうだというふうなことを伝えたいと思います。私ども、社会党の右から受田議員、それから左から楯議員、それに私の三人、衆議院から参りまして、三人とも承わっておるのでありまして、これは政府にお願いして、ぜひそういうふうにしてもらいたいということで帰りましたが、できることとできないこととありますので、大臣の御決意を承わっておきたいと思います。
  120. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 御指摘のこういう帰還手当の問題であるとか、あるいはそれに伴う種々の援護措置につきまして足りない点があるのは実情だと思います。そういう点については実情をしんしゃくして次第に肇をするように努めるのが、厚生省としての立場ではあろうと思いますが従来の法律並びにそれに伴う各般の措置に基いて今日はやっておる、将来については改善をすべきが当然だと私は思っております。  なお、深川委員のことに御言及でありましたが、これは政府の責任者であるわけかないのでありまして、政府与党の立場から個人としての御発言であろう。かように考えております。
  121. 山下春江

    山下(春)委員 それではそれはそのように了承をいたして、さように伝達をいたします。  もう一つの問題は、これは文部省かもしれませんが、引揚援護局の関連事項として御答弁願いたい。学校の問題について、ソ連、中共から帰りました者は、日本語をほとんど知りません。二十才ぐらいの者でも、ほとんど知りません。それ以下の者は、日本語は一つも知らないのでございます。これに対する措置を何とか考えてもらいたいということでございます。特にその中で、二十才くらいで上の高等学校その他に行きたい者も、地理、歴史、それから英語というものを全然知らない。それらについての政府の、厚生省としてのお考え、それからもう一点は、不具廃疾の者が非常にたくさん帰りましたので、それらに対する援護方法についての大臣の御所見を承わっておきたいと思います。
  122. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま御指摘の事情は、非常に重大な問題でありまして、そういうことがあるとは予想されてはおりましたまた同時に、現に出てきておる問題だと思いますので、これは文部省と十分連絡をしまして、そういう人々が学校等に入学をする場合において、他の者より非常に劣悪な条件に置かれるということのないように努めたいと考えておる次第であります。
  123. 山下春江

    山下(春)委員 その子供の中に、第三国国籍で日本国籍でない、要するに中国人と日本の婦人とが結婚いたしまして子供は全部中国人の主人の戸籍といいますか、姓になっておりますので、日本の国籍がございません。そういう者に対して、どう扱うかということについつの大臣の御所見を承わっておきたいと思います。
  124. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 はなはた恐縮でございますが、そういうような問題については、私はまだ就任日浅いものでありますから、十分了知はいたしておりません。これらの問題も、文部当局と連絡をいたしまして、ただいま御指摘のような実情がありますれば、十分善処いたしたい、かように考えております。
  125. 中村三之丞

    中村委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十八分散会