○安村
証人 先ほど申しましたように、
教科書を生協が取り扱うという契機は、敗戦後の事情もそれに大きく作用しておるわけでありますが、現場の声としては、ひたすらに教育の復興をはかりたい、しかも生徒の使う
教科書の需給
関係を円滑にしたい、こういうことがねらいであったわけであります。その立場上、私
どもは出版
会社にそれぞれ御連絡申し上げまして、
契約方をそれぞれに懇請をしたのでありますが、
昭和二十六年に実施しました
会社は、先ほど申し上げましたように教育出版並びに中央書籍の三社であったわけであります。二十七年度の方針といたしましては、二十六年度の体験に基きまして、
内容と申すよりも評判のいい
教科書でたくさんとれた
教科書は先長く使える、しかも
生活協同組合の経営上大きくプラスするというふうな
考えも一部働いておったわけであります。そういう立場から、二十七年度の大体の目標として、
福岡県に評判のいい、しかも実際に大量に採択されている
会社と
契約したいという念願に燃えたわけであります。たまたま、評判のいいというのは、大
日本図書の理科の
教科書は従来とも
福岡県では圧倒的な採択を持っておりまして、さらに新しく「
科学の
世界」というものが検定に出されまして展示会に出たわけでありますが、これもずいぶん評判がよくて、結果はやはり予想いたしました通りに大量の採択ができておったのであります。こういう立場から私
どもは大
日本にその
販売と申しますか
契約方を懇請しまして、理科、数学のいずれも懇請したわけでありますが、ねらいとしましては、理科だけでも、新しいものであるし、ぜひこちらの方に
お願いしたいということで懇請いたしたわけであります。この折衝はなかなか妥結いたしませんで、数回にわたりまして私
どもお願いしたわけでありますけれ
ども、その具体化に至っては遅々として進まなかったわけであります。いよいよ、日にちははっきりしませんが、
契約の前でありますのでおそらく前年の二十六年の十二月近くではなかったかと思いますが、大
日本の方の意向としては、
現地の円満なる解決がつけば
中学の生協に
契約してもよろしいという意向が見えましたし、私はそう確信いたしたのであります。勢い、
教科書会社との
話し合いが残っておりますので、早晩
教科書会社との話をうまく進めまして、ぜひ
中学生協の方に
契約を進めたいという念願に燃えたわけであります。たまたま、そういう連絡があったのかないのか知りませんが、
教科書会社の
菊竹氏からも
話し合いをしたいという意向が漏らされましたので、私
ども両者間で話を進めたのであります。
菊竹氏の言い分では、大
日本図書といいますと大きなしにせでありますし、実績も
福岡県で持っておりますので、その一部が生協に移るということは非常に痛手であるから、何とか譲ってもらえまいかという話がたびたびあったわけであります。私
どもも、
教科書の取扱いを始めて二年目でありますので、ぜひこの問題は私
どもの方で取りたい、こういうふうに
考えて、ずいぶん長く
話し合いを進めたわけであります。帰するところは、私
どもも一応反省いたしまして、将来全
教科書を扱いたいという念願に燃えておった当時でありますので、創業二年目にして大きな摩擦を起して将来の発展に挫折を来たしてはならない、こういう立場をとったわけであります。その際、
菊竹氏の方からも、まああなた方でそういうふうに大きな立場から譲っていただくならば、私の方も若干の好意を示したい、こういうふうな話であったわけであります。その
話し合いを
現地で進めまして、私
どもも無為にして金をもらうということは忍びないので、では私
どもできる限りの
協力の
仕事をしてみよう−。で、いろいろな
協力のことを
考えてみたのでありますが、その当時の
話し合いで、はっきりした記憶もありませんけれ
ども、ねらいが
供給の円滑化にありましたので、転校生の需給を即時に行う、そのためには現場の先生が一番詳しいし、現場の先生が生協の組織を通して申し出てもらうことがわれわれの前に掲げておりました需給の円滑化という問題を解決する
一つの方法ではないかというふうに
考えました。さらに、
福岡県は、御存じのように、炭鉱地帯がありますし、工業地帯がありますし、農山村地帯がありますし、非常に固まった地域にしかも経済要素が違っておりますので、そういうことから来る
早期販売の問題なんかもいろいろこんがらがってくるわけであります。
早期販売と申しますのは、新学期に買わなければならない
教科書について、いろいろな
発行会社の資金問題とかあるいは全体の
供給の円滑というような問題から一月ごろにはすでに実施する問題であります。その
早期販売とか、あるいは円滑化とか、地域の状況が違いますので、分割購入の仕方とかいうものを
現地についていろいろ研究してもらう。こういうのも
協力になりはしないか。さらに、経済状況が違いますとどうしても古本使用の問題が大きく出て参りますので、古本使用の
調査をする。さらに、小売店の
供給業務を指導するというような、いろいろな
供給上の
協力事項を
考えまして、こういうことで
協力しようというようなことになったわけであります。
契約書には折半と書いてございますけれ
ども、実際はこれはその後一冊一円の割合になっております。以上が
経緯と並びに詳細であります。