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1955-07-11 第22回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月十一日(月曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 篠田 弘作君    理事 佐々木秀世君 理事 高木 松吉君    理事 濱野 清吾君 理事 南  好雄君    理事 山中 貞則君 理事 山田 長司君    理事 神田 大作君       木村 文男君    松岡 松平君       三田村武夫君    森下 國雄君       山本 勝市君    山本 猛夫君       米田 吉盛君    鹿野 彦吉君       塚原 俊郎君    福永 一臣君       猪俣 浩三君    高津 正道君       辻原 弘市君    西村 力弥君       佐竹 晴記君  委員外出席者         議     員 加藤 清二君         証     人         (元文部省教科         用図書分科審議         会副会長)   石井 一朝君     ————————————— 七月十一日  委員今松治郎君、菊地義郎君、薩摩雄次君、志  賀健次郎君、山村治郎君、二階堂進君及び春  日一幸辞任につき、その補欠として森下國雄  君、山本猛夫君、濱野清吾君、木村文男君、山  本勝市君、塚原俊郎君及び佐竹晴記君が議長の  指名で委員に選任された。 同 日  理事山村治郎委員辞任につき、その補欠と  して濱野清吾君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  小、中学校における教科書関係事件     —————————————
  2. 篠田弘作

    篠田委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事山村治郎君が委員辞任いたされましたので、その補欠を選任いたさなければなりませんが、その選任につきましては、先例に従い委員長において指名いたすことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 篠田弘作

    篠田委員長 御異議ねければ、さよう決します。  理事濱野清吾君を指名いたします。  前会に引き続きまして小、中学校における教科書関係事件について調査を進めます。直ちに証人石井一朝君より証言を求むることにいたします。  石井証人に申し上げます。宣誓趣旨等につきましては前会で十分に御了承のことと存じますが、念のためあらためて申し上げます。  昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証雷を求める場合には、その前に宣誓をさせねければならないことと相なっております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者・四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあった者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び、医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあった者がその職務上知った事実であって黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むととはできないことになっております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは三月以上十年以下の懲役に処せられることとなっておるのであります。一応このごとを御承知になっておいていただきたいと思います。  では、法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。   〔証人石井一朝朗読〕    宣 誓 書  良心に従って、真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
  4. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、宣誓書署名捺印して下さい。   〔証人宣誓書署名捺印
  5. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないことまた御発言の際にはそのつど委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。
  6. 高津正道

    高津委員 議事進行について。去る八日午後の当委員会において石井一朝証人は「私は本席にもし出頭しなければ罰金一万円以下禁錮一カ年という脅迫状みたいなものをもらって出て来たのです。しかも多忙であります。証人に対してただいまの高津委員発言は」云々という発言をされたことが速記録にも明らかに載っておるのであります。これは本委員会に対する侮辱的言辞と聞えるし、少くとも妥当を欠いた発言だと存じます。委員長は、証人に対し、ただいま私が速記録から引用した部分の取り消しを命じていただくことを私は提案するものであります。
  7. 篠田弘作

    篠田委員長 石井証人に申しますが、去る七月八日の本委員会において証人証言された中に、ただいま高津委員より発言された通りであれば、証人においてはその言葉を取り消す御意思がありますか。
  8. 石井一朝

    石井証人 申し上げました言葉の中の召喚状に関する部分は、やや誇大な表現があったと心得ますので、取り消してもよろしいです。ただし、ただいま高津委員のお読み上げになった中に、あなたの御発言に関する部分幾らかあったように思います。そういう部分は、取り消しません。
  9. 高津正道

    高津委員 本委員は、「罰金一万円以下禁錮一カ年という脅迫状みたいなものをもらって出て来たのです。しかも多忙であります。」、そこまでであります。
  10. 石井一朝

    石井証人 その点は、やや誇大な表現であるやに心得ますので、取り消します。
  11. 高津正道

    高津委員 よろしゅうございます。
  12. 篠田弘作

    篠田委員長 証人はただいま取り消すことを言明いたしましたので、さよう御了承願います。  これより委員諸君発言を許しますが努めて重複を避け、一人十五分くらいにお願いいたしたいと思います。沖田大作君。
  13. 神田大作

    神田(大)委員 証人に若干お尋ね申し上げます。  証人は、八日の発言の中で、いわゆる日本教育におけるところの教科書内容が非常に偏向しておるというようなことを申されまして、その偏向した実例をたくさんおあげになりましたが、それは、どれとどれとで、どこから出版になった本であるか、もし実物があればお見せ願いたいと思います。
  14. 石井一朝

    石井証人 これは、先般、お求めになりましたので、手元にありました分は申し上げたと思います。先般も申し上げましたように広範な調査活動をいたしておりますので、そのうち逐次出て参ると思います。先般申し上げましたのは、記録に載っておりますので、繰り返してここに申し上げないことにいたします。
  15. 神田大作

    神田(大)委員 証人は八日に読み上げました本をそこにお持ちのようでございますから、それを一つお見せ願いたいと思います。   〔証人教科書を提出〕
  16. 神田大作

    神田(大)委員 証人は、偏向したという本の内容におきまして、当然読まなければならねいことを読まなかったり、書いてないことをわざわざ読んだりいたしませんでしたか。
  17. 石井一朝

    石井証人 読まねばならないところを読まなかったというのは判断相違でありまして、私は読んでお聞かせした方がよろしいと思ったところは読んだわけであります。それから、読み落したというような御発言でございますが、そういう個所があったかもしれませんけれども、読み落さないつもりで読んだのでございます。
  18. 神田大作

    神田(大)委員 証人は、ソビエト中国に関する事例をたくさん持ち出して読みましたが、その上にアメリカソビエトなどということが書いてあるにもかかわらず、わざわざアメリカを読まなかった、あるいは中国というのが書いてないのに中国を入れたりした、そういうようにして、あたかも偏向であるかのような証言をいたしておると思うのでございますが、そういう点につきまして、あなたは証人としての正しい公平な立場に立って証言するのでなく、何かためにせんがための一方的な証言であるようにわれわれには聞えるのでございますが、その点、証人はどうお考えに漁りますか。
  19. 石井一朝

    石井証人 私は、日本人であるなら共通に受け取れる語感に従いまして、言葉から受ける感じ、ないしは言葉意味を受け取りまして、これは偏向であると考えて申し上げたのでありまして、きわめて公正であると考えます。
  20. 神田大作

    神田(大)委員 私は何も証人教科書内容について理論闘争をやるわけではありませんが、少くとも、今日教科書問題が話題になりまして、行監で取り上げて八千万国民の注視のうちにこの問題をやっているのは、ほんとうに子供のための教科書にしたいという念願に立ってわれわれはやっております。そういう片寄った一方的な表現のみを誇張して、あたかも日本教科書のすべてが左に偏向しておるというような印象を与えることは、教科書問題を論ずる上において非常に重大な過失であろうと思うのでございますが、証人はいかがお考えになりますか。
  21. 石井一朝

    石井証人 先般私が申し上げましたことを御想起願いたい。私は現在数多くある教科書をたんねんに調査しておるけれども、現在までに目についたものをごこに取り上げてお知らせする、中にはこういう非常に片寄ったものがある、——これは、御臨席になった大西委員から、それは全体ではあるまいという御指摘がございましたので、私も、その通り、全体ではない、部分的ではあるけれども、そのような傾向のある教科書が一冊でも二冊でも文部省検定を経て出てくるところに問題がある、公教育を厳正に維持するという立場から考えますと、そのようなものが一つであるから、部分であるからよろしいという性質のものではなくて、一つであっても、部分であっても、そういうものは、その原因となるものが著者であるなら著者文部省検定調査がずさんであるなら検定調査の事務、出版社がいけないのなら出版社、そういう原因を除去することが日本教育を正しい方向に持っていく努力の現われじやないか、そのためにこういう資料があるという意味で申し上げたのであります。私としては誤まった印象を与えるつもりで申し上げたのではないのでありまして、そういう点は御了解願いたいと思います。
  22. 神田大作

    神田(大)委員 それでは証人にお尋ね申し上げますが、あなたは、九日に言われたように、左の——われわれは左と思っていない、当然のことと思うのですが、あなたから見ると左のように見えたのでしょう、そういう事例をあげましたが、そういうのでない、ここにこういうのがある。「お父さんの苦しい立場に気のついた英子さんは、ある日、りょうしんの前に出て、はっきり、言いました。「おとうさんお母さん、どうぞ、わたしを、富岡へ行かせてください。わたし一人でも参ります。」お母さんは、英子さんの熱心なありさまに、驚いてしまいましたが、おとうさんは、「英子よく言ってくれた。しっかりはたらいてきなさい。」と、うれしそうに、言いました」——これは女の子を製糸工場にやる一場面です。これを考えてみますと、親孝行というようなことを観念づけ、それから製糸工場へ行くというような女工哀史一つの現われを美しい言葉によってごまかしておる。こういう教科書もある。こういう教科書もあるのに、片方教科書ばかりを証言に出して、このような教科書証言に出さないというのは、少くともあなたは何らかの意図によって証言をしておるというようにしかわれわれには考えられない。証人はだれかに頼まれてそういう一つ意図を持って証言に参ったのか、それとも、そういう意思があるのかないのか。
  23. 石井一朝

    石井証人 まずもって申し上げておきますが、どうも、私の言うことをまともにうなずいていただけない方に共通——被害妄想的に考える方は、だれかに頼まれたのではないかと絶えずおっしゃる。これは事実無根であります。はやり言葉で言えば事実無根です。そのような懸念のないようにお聞き取り願いたいのであります。私の言葉をまともに受け取っていただけない結果に触りますから、そういうお考えはとっていただきたい。私は、自発的に研究いたしまして、自発的に考えて申しておるのでありますから、これは強調しておかなければならぬのであります。強調して申し上げなければ、私の証言が絶えずそういうふうに陰に陰に受け取られる。これはどうも不愉快でありますから、申し上げておきます。  それから、一方の傾向だけを取り上げて論じておるのではないか、他方の傾向のものは見のがしておるではないかというようなお言葉でございますけれども、意識的にそうではございません。そういう事実があるかもしれません。私は、今繰り返して申し上げておりますように、まじめに一生懸命に教科書全体にわたって調査しておるのでありまして、むろん、先日も申し上げましたように、過度にわたる封建性を強調するということ、こういうことは許されねい、封建性への反逆はわかる、日本の国の国是がデモクラシーでありますから、その範囲でねらわかると申し上げたのでありまして、その限度を越えた教科書があるなら、それは右翼でありましょう。それは大いにともに排撃いたす所存でございます。私が教科書研究をいたします建前としておりますところは、申し上げておきますが、学習指導要領、それから国会でおきめになりました教育関係法規もとにして調べております。
  24. 神田大作

    神田(大)委員 あなたは私を誇大妄想的ということをはっ透り申しましたが、私はあなたに誇大妄想だと言われるいわれはない。私は事実を申し上げておる。
  25. 石井一朝

    石井証人 それなら、私がだれかに頼まれたというのはお取り消し下さい。相殺しましよう。
  26. 神田大作

    神田(大)委員 われわれから見れば一方的な証言ばかりしておるから、あなたはだれか特殊な人にそういうことを依頼されたのではなかろうかと言ったのに、それに対しましてあなたの返答であります。これは取り消す意思はありません。  一つ本論に入りましょう。あなたが言うように、教科書を作る上において指導要領というのが示されておる。この指導要領の中に、奴隷制度とか、労働協約とか、罷業の問題とか、そういう問題は懇切に説明しろというようなことを書いている。それに基いて教科書は作られておるのであるから、これは一つ偏向でないとわれわれは考えるのですが、そうすると、あなたは指導要領それ自身を否定するのですか。
  27. 石井一朝

    石井証人 それは、私先般るる申し上げたつもりなんでありますが、学習指導要領にもちろんそういうことを書いてありましょう。従って、子供労働組合運動に対する正確な知識を与え、労働協約に関する知識を与え、争議に関する知識を与えるということは、私は否定いたしません。それは重要な教育だと思います。しかしながら、それは、今日の労働法規を調べ、今日の労働運動実態を調べて、正しい判断ができるようにさしてもらいたい。そういう建前から言うと、たとえば、労働者奴隷を比べて、その生産したものが自分のものにならないから奴隷に似ているという言い方は、たとえとしてはおもしろくない。こういう扱い方は正確にやらなければだめだ。労働運動その他の問題は、今日的な問題でありまして、すぐ引き続いて政治的な課題、政治的な紛争のもとになるものでありますから、そういう点は十分顧慮して、公正な適切な解説をすべきである。そういう教育そのものを私は否定しているのではないのであります。
  28. 神田大作

    神田(大)委員 それでわかりました。労働協約の問題や労働のいろいろの知識をわかっていただくために学習指導要領というものがあるが、あなたが申された中の、いわゆる奴隷であるということは、一体どこに書いてありますか。
  29. 石井一朝

    石井証人 それは、そのときに指摘されまして、そうであるとあとで私も思ったのですが、高等学校教科書
  30. 神田大作

    神田(大)委員 高学等校教科書をちょっと貸して下さい。高等学校教科書をやっているわけじやないのだから……。
  31. 篠田弘作

    篠田委員長 和田君に申し上げます。それは高等学校教科書であったから、すぐ委員長から注意してやめさせたのです。
  32. 神田大作

    神田(大)委員 高等学校教科書まで持ち出して小中学校教科書問題を論じているが、主観相違ねんです。たとえば、教員組合教育を民主化する機関だ、——証人教育を民主化する機関じゃないと言う。ある意味においては教育を民主化する機関じゃないか。これは主観相違です。故意に高等学校のいろいろね進歩的なことを書いてあるところだけを持ち出して、教科書偏向しているというようなことを証言するのは、はなはだけしからぬと思う。どういう意味でこういう議題外の書類を持ってきてやるのですか。
  33. 石井一朝

    石井証人 私は、教科書問題ということで、小学校から高等学校教科書を全部調べているのです。たまたま小中というふうに限定されているということを失念していたものですから、これは私の間違いでありましょう。しかし、私の申し上げたのは、その高等学校教科書は誤謬はきわめて軽度である、問題は小中学校教科書だということを申し上げたはずであります。そういうふうにお受け取りを願いたい。  それから、ただいま教員組合教育を民主化するための機関だ、私はそう思うという質問者の意見でございますけれども、私は、単なる主観を申し上げているのではなくて、教育公務員法その他現行法規もとにして申し上げているわけであります。
  34. 神田大作

    神田(大)委員 あなたはいろいろと言いわけをいたしますが、労働者労働によって作られたものが労働者のものとはならないで雇用者のものになる、この点は奴隷、徒弟に似ている、これは労働と違っているということを書かれているが、その前後にはこれを解釈する言葉があるのです。そういうことを言わないで、これだけ取り出して、あたかも偏向したように聞かせる。しかも、大事な小中学校教科書問題を論じている委員会高等学校のものまで持ってきてみんなに偏向印象づけるというととは、教育を冒涜するものだと思う。そういう意味合いにおいて、証人は正しい証人としての資格がないと思う。
  35. 篠田弘作

    篠田委員長 神田君に申し上げますが、大体証言委員長から求めた場合の証人発言は自由でありますから、あなたの個人的印象でそういうことをおっしやらないように、私はお願い申しておきます。
  36. 神田大作

    神田(大)委員 そういう意味合いにおきまして、あなたは片方の例ばかりをもって教育偏向しているというようなことを印象づけたことに対しまして、われわれは非常に遺憾に存じている次第であります。まだたくさん質問申し上げたいのですが、委員長が催促ばかりするからやめます。あとでまたあなたにいろいろと質問します。
  37. 篠田弘作

  38. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 証人にお伺いいたしますが、二日にわたる石井証人の証書によりまして、大体教科書編集あるいはまた供給、採択、この点に対してだいぶ真相が明らかになったのでありますが、教科書以外に、夏休みのおさらい、あるいはテストブック、あるいはワーク・ブツク、そういう種類のものが多数出ております。われわれ調査いたしますと、その金額も決して少額じゃございません。何十億という金額に上るのであります。教科書はいわゆる検定によって発行されておりますが、夏休みのおさらい張などというものは、これは検定がないのであります。しかも、発行所発行人などを調べてみますと、東京教職員組合、こういう名前によって発行されていいる。この実態をながめますと、これは、いわゆる教職員の方々が自発的に作りまして、価格もそこできめられて、そうして学校の生徒が使っているのだと私たちは思います。これは東京都のむのでございますが、全国ともこういうような傾向になっておりますかどうか、承わりたいと思います。
  39. 石井一朝

    石井証人 この夏・冬の学習帳は、昭和二十三年に日教組が初めて作ったのでございます。日教組教育文化部部長が当時黒岩君と申しまして、私は当時編集部長をしておりました。学習帳内容のずさんなものが全国に出ているというので、正しいものを一つ作ろうじやないか、それで昭和二十三年に最初に「なつやすみ」を作ったと記憶しております。ところが、ちょうど紙もあり校せんときでしたが、これは文部省から七戸ポンドばかり紙をもらって作ったのでありますが、ちょうど日照りのととろに水のようなものでありまして、全国へ行き渡りまして、相当多量の利潤をあげることができたのであります。そとで、その後一回、日教組で「ふゆやすみ」を全国的ねものとして作ったと記憶しております。あとは、各県教組でやった方がよいのではないかというので、二十五、六年のころからは私の記憶によりますと各県教組でこれを編集いたしておると思います。県によりまして普及率の大小はございますが、相当多量にこのものが出ておる、そういうふうに考えます。やっていない県もあると思いますが、その比較は、やっていない県はやっている県に比べますとはるかに少いのではないかというふうな考えを持っております。以上でございます。
  40. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 教職員組合、しかも最初日教組においてこれをやったというのですが、多数の利潤をあげたという御証言でございました。こういう夏休み冬休みのおさらい帳学童に売りつけて多数の利潤を得るということは、私は教職員組合の仕事の趣旨ではないと考えるのでありますが、その利潤はどういうように処分されましたか、もし御記憶であったら承わりたいと存じます。
  41. 石井一朝

    石井証人 日教組の場合は、その利益金日教組の本会計に納めました。他の各府県のことは私よく存じません。利益金の処分につきましてはよく存じません。以上でございます。
  42. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 これは私重大なる証言を承わったのであります。この夏休みのおさらい帳冬休みのおさらい帳を作るに当りましては、教職員組合実費頒布だと言っております。ここにも書いておりますように、実費で頒布しておるということであります。との実費で頒布しております教職員組合が多数の利益をあげるということは、まさに学童を偽わっている行為だと思いますが、この実費頒布というととは、当時、あなた方において、日教組において、地方の教職員組合において、こういうことをお誉めになったのでございますか、それとも最初から利潤考えてこういうむのを発行するようになったのか、それを承わりたいと思います。
  43. 石井一朝

    石井証人 その実費頒布というのは、東京都の教職員組合が一昨年くらいから言い出したものであるように私は記憶しております。それは大へんけっこうなことである、こういうものを、業者よりもいいものができるのだから、それを安く実費子供にやるということは大へんけっこうなことである、こういうふうに思っております。現在はそういう傾向でありましょうけれども、当初はやはりそうではございませんで、それから利益があがるということを目算においてやった次第でございます。
  44. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 安くてよいものを出すという趣旨から、実費頒布ということであればわれわれは問題にしないのであります。しかるに、この夏休みのおさらい帳を見ますと、ざら紙であります。この紙がどのくらいかかるかと先般業者に聞きましたところ、この「なつやすみ」の紙代は四円だそうであります。印刷はどのくらいかかるかと聞きますと、印刷に四円かかって実費八円でできるということであります。しかも数がよけいになればねるほど安くなるのであります。これは百万単位、二百万単位調査したのでありますが、その程度でできると言う。しからば、東京都の教職員組合が出しているこの「なつやすみ」は幾らかといえば、十八円であります。八円でできるものを十八円で児童に売って、そうして実費頒布をやっているなどと言うことは、われわれとしては解せないのであります。その他この「なつやすみ」のほかテストブック、これなどは現在二十五円で児童に頒布しております。二十五円で頒布しておりますが、その実費は、−学習研究社で発行しておりますので、学習研究社に参りましてその発行所から出す価格幾らかということを調査してみました。そうすると、大体二十五円で販売するが、十三円五十銭ないし十四円までの間でおろしをやっているそうであります。その価格のものを四五%ないしは五〇%近くの利潤を取って供給者あるいは学校利潤が入るというのでありますが、私らがこういう実態を知るときに、この教科書を食いものにするといういろいろな「全貌」に出ておる記事とか、その他いろいろな新聞等を見ますと、全く戦標せざるを得ないのであります。御承知の通り、こういうような内容が明かにされたのでありますが、たとえば、そのほかに、国会においては教科書発行会社に対して三分の利子であったものを法律によって一分引き下げの、いわゆる利子補給ですか、利子補給の審議がなされて、しかもその審議に加わった人たちが八分園で業者から招待を受けた、こういうような点はまさに造船疑獄以上の国民に疑惑を与えるものだと思うのです。社会党の諸君は、先般来、この本の価格の高い安いなんということは問題ではない、こういうことを言っております。もちろん十八円と二十五円というだけの価格の高い安いは問題でございません。しかしながら、全国において二億四千万冊も作るということになれば、その金額は膨大なものになるのであります。その負担をこうむるのはことごとく児童であります。しかも、われわれ大人で言うパンと同じでありまして、必ずなくてはならないものであります。いたいけない児童からとういうような暴利をむさぼって、しかもこれに対して国会議員の方々が参画している。私たちに申させますと、利子補給をやって一分を引き下げてそうして本の価格が事実安くなったというならば、何をか言わんであります。しかしながら、それ以後においてもなおかつ物価指数からいたしまして千二百倍、千三百倍という価格の本が発行されているのでありますが、この利子補給に当ってあなたはいろいろ社会党の代議士の方々と連絡をなされたようであります。とこにも書いてありますが、八芳園に集まった人は社会党の荒木正三郎君、この方は日政連合会の会長ですが、あるいは小笠原二三男君、小林信一、成瀬幡治君、矢嶋三義君、こうした一連の社会党左派の人たちが八芳園に集まっているのでありますが、これにはほとんど総勢となっております。これから承わりますが、証人はこの方々を集めるあっせん役をしておりますが、そのときの状況を一つ詳しくお話し願いたいと思うのであります。なぜならば、それによって本が安くなっているというならば私たちは問題にいたしません。せっかくあなた方がお骨折りして、安い本を児童供給してやりましょうという意味で一分の引き下げを行ったその行動、その活動は私たち決して責めるものではねいのであります。しかし、安くなっていないのに、そういうことを国会できめて、しかもその業者からごちそうになったなどということは、まさにわれわれの選挙で言うとこれは供応であります。この点に対して、当時のことを思い浮べて、大勢出ているということでありますが、大体の概要を一つお話し願いたいと思います。どういう点から出発して、あなたが奔走なさって、そうしてどういう会合であったか、この点をお話し願いたいと思います。
  45. 石井一朝

    石井証人 これは何分にも古い話でありますので、記憶にずれがあるかもしれません。当時、昭和二十七年だったと記憶いたします。教科書臨時措置法などに定めてありました保証金でございます。教科書会社は出版をいたしますにつきまして政府にその信用保証をしなければならぬわけであります。保証金というものを出すわけであります。それがたしか三分であったと思います。これは高過ぎる、つまり、政府の金庫に金が寝ているわけでありまして、教科書会社が金融難で困っているのに、こういう寝せた金があるということは不合理だというので、その保証金の率を下げる改正案が出ました。それが討議されていたあとと思うんです。——いや、前ですか。前後がどうもはっきりしないのですが、何しろそういう問題がございまして、主としてそれを討議する文部委員、それに日教組出身の代議士など、教科書のことを詳しく知っておいた方がいいだろうということで、教科書の勉強会みたいなことで集まろうやということで集まったのです。ですから、その利子を下げてもらう、保証金を下げてもらうとかもらわないとか、そういうことは話には上らない。ただ教科書のことを勉強するというふうな意味——この間小林信一委員から一身上の弁明もございましたが、小林信一委員記憶と私の記憶幾らか違うと思いますけれども、小林信一委員記憶では、その法案が通ったあとでの儀礼的なもてなしであったと記憶しておる、こういう御発言でありました。あるいはそうであったかもしれません。とにかく、私ははっきり記憶いたしませんが、教科書のことを勉強するというような意味のことをふれて歩いたと思います。
  46. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 その八芳園の会合の費用は、全部その教科書の発行会社から出たのでありますか、ある特定の会社から出たのでありますか。
  47. 石井一朝

    石井証人 私、よく存じないのです。私、列席しておりましたが、先に帰りましたし、私と一緒に帰りました議員もおりました。
  48. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 先ほど社会党の方方から、石井君があっせんしたということでありましたが、あっせんするに当って、会費が幾らだとか、あるいは会費はきょうはいらないんだとか、何かそういうことが私はあると思うんです。だれか払った人は必ずあると思うんです。今まで借りておるわけはないと思うんですが、その費用の点はどうなっておりましたか、一つ思い起していただきたいと思います。
  49. 石井一朝

    石井証人 今申し上げますように、私教科書のことには大へん詳しゅうございましたけれども、会費の点は確実な記憶はありません。長く席にいなかったと思うのです。それで、金銭上の関係はどうなっておったか、詳細記憶しておりません。
  50. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 そうすると、あなたはごちそうになったと思っていらっしゃいますか。あなたは会費出さないでしょう。
  51. 石井一朝

    石井証人 私は一文も出しませんでした。
  52. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 その会費の点でございますが、これは非常に重大な問題と思うことは、小林信一君の先般の話では、この法案が通ったので軽いお礼の意味で夕食程度のごちそうになったんだ、こういうお話でございました。そういう軽い意味にいたしましても、国会議員はそういう法律をきめる職務権限を持っておるのであります。職務権限を持っている代議士が、特定の会社の利益をはかるための法律に賛成して、しかもそのために料理屋に招待を受けたということは、これはいわゆる職務権限に属することだ、私はそう考えます。しかるに、また、ただいまの証言によりますと、この率の引き下げを国会で審議する前だったかと記憶しているということでございました。前だとすると、ことさらこれは事前運動であります。あとであればこれは供応であります。どちらにいたしましても、この教科書の費用に使う利子を下げることに当ってこうした人たちを招待するということは、これは間違ったやり方だと考えておりますが、そのときは、日教組関係の代議士だけを呼んだのですか、それとも文部委員という形で人を呼んだのですか、その記憶がありましたら承わりたいと思います。文部委員という方々を招待して、そのほかに日教組関係の代議士を呼んだのか、そうでなく、単にこの教科書に関係ある代議士だけを呼んだのか、その点を一つはっきりと御証言願いたいと存じます。
  53. 石井一朝

    石井証人 その法案の審議との相関関係ですが、これは、先ほども申し上げましたように、ありてに申しますと、建前としてはそういうことを考えないで集まったと思います。そのときは、文部委員というんじやなくて、日教組出身の代議士がほとんどであったように記憶しております。
  54. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 この点は、一つ委員長において事務局の方でお調べ願うように願いたいと思いますが、小林委員の申しましたのは、この法案が通って終ったあとに軽い通常ある謝礼の意味での招待だった、こういうお話でございました。本日の石井君の証言では、そういう話でなく、ただ日教組関係の代議士を発行所が招待したのだ、こういうことでありますから、そこに非常に食い違いが起きておりますので、この真相は、ことに今後の教科書問題にからんで重要な問題だと存じますので、事務局ではこの真相を一つ調査願いたいと存じます。  それから、もう一つは、前回に証言されたときに、ただいま申し上げました社会党の日教組出身の国会議員の方方、荒木君とかあるいは小笠原君とか、こういう方々のととについて、例のビルマの大会に参りますときに本屋から相当の金が出た、あるいはまた選挙のときに本屋から金が出ている、こういう一つ一つの具体的な人の名前をあげて山中君からの御質問があったのに対しまして、石井証人は、事実でありますと、こうはつきりと御証言をいただいたわけであります。しかるに、社会党におきましては、ついきのうかおとついの新聞に、石井君の証言に対しては告訴するとかしないとかいうようなことが出ております。その真偽のほどはまだわかりませんが、そういたしますると、国会でまじめに審議していることに対して、石井君の申しました証言がまるででたらめであったというような印象を受けるんじやないか、こうも考えます。また、社会党の人たちが告訴するというのですから、何か事実を持って、あなたの言っていることが根拠がないものだというようなことになるかとむ存じますので、われわれといたしましては、どこまでも、正しい、しかも誤まりのない、事実は事実としてここで調査したいと存じますので、もう一度、これらの人たちに対して、ビルマに行きましたときの費用とか、あるいは選挙のときに出たというような、この「全貌」に書いてありますことが、あなたの言葉から、これは確認できるとか、これは事実だとか、これはとう聞いたとかいうことを、再度ここで御証言願いたいと思います。
  55. 石井一朝

    石井証人 私も、昨日でありましたか一昨日でありしまたか、左派社会党の国会対策委員会の決定なるものを拝読いたしました。告訴するということでございます。まことにけっこうでございます。真偽をきめる時間が節約されるだろうと思います。私も歓迎しております。それから、私の精神鑑定を何とかかんとかいうことでございます。私は生まれて初めて狂人扱いにされたのでございますが、私の精神が異常であるかどうかについては、それを判断する者の精神が異常であるかどうかによってきまると思うのであります。
  56. 篠田弘作

    篠田委員長 石井君に申し上げますが、そのことは議題になっておりませんから……。
  57. 石井一朝

    石井証人 そういうお言葉がありましたので申し上げているのです。私はその点については確信を持っております。私が先般証言いたしましたことはすべて事実でございます。それを繰り返して申し上げるわけでございます。
  58. 篠田弘作

    篠田委員長 佐々木君に申し上げますが、あなたの持ち時間は来ております。
  59. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 それでは、ただいまの石井証人証言から、この社会党の方々に対して各本屋から出た金の出方、あるいは選挙や海外に行くときに金が出たことは事実であるという証言を確認いたしまして、私の質問を終ります。
  60. 濱野清吾

    濱野委員 関連して。証人に答えておいてもらいたいと思いますが、証人昭和二十九年十一月八日午前十時、日教組委員長の小林武氏あてに上申書を提出した、これはほんとうでありますか。
  61. 石井一朝

    石井証人 私、お言葉を返しておそれ入りますが、私は、ここへ証人として呼ばれましたのは、教科書行政に関する監察上の必要があって召喚を受けたわけであります。先般も繰り返しましたが、なるほど日教組といざこざがございました。ございましたけれども、それには触れたくない、触れたくないと、返す返す申し上げたわけでございます。私の一身上の問題は大へん興味がございましょうけれども、これは教科書行政とは面接関係がないわけであります。証言を拒否することはできないことになっておりますけれども、そのような種類の問題については私はお断わりを申し上げたい、こういうふうに考えております。
  62. 濱野清吾

    濱野委員 教科書の問題に直接関連していることでございますから、私は拒否されては困ると思います。あなたの上申書のうちの末端の方に、教育を階級闘争の手段と化しとある。しかも、われわれ同僚の、質問に対して、教科書の中に相当部分偏向の文章が載っていることを証人は指摘し、その事実をここで証言しております。そうして、そうした教科書検定通り、しかも採択に教員組合の諸君まで関連している事実がございます。これらも証人は承知していることだと存じます。でありますから、教科書問題に関連いたしましては、単なる教科書だけの意味でのみ証人証言をとるということは当を得ていないと私は考えておるのであります。そこで、証人は拒否したい意見のようでありますが、私は、あなたの、教育を階級闘争の手段に化しという、この重大ねる問題について、あなたが書いたか書かないか、この上申書を出したか出さなかったか、こういうことにつきましては、教科書と直接関連があるのですから、遠慮なく、あなたがここまで勇気を出して教育のために努力をされて証言をされているのでありますから、出したなら出したということでやってもらいたい。
  63. 篠田弘作

    篠田委員長 石井君に申し上げますが、それが証書の範囲を逸脱しているかどうかという問題につきましては、委員長判断をいたしますから、あなたは委員の質問に対してお答えを願います。
  64. 石井一朝

    石井証人 それでは、委員長のああいうお言葉でございますから、お答えいたします。  上申書というようなものじゃございません。意見をする、そういう意見書というものを出しました。その中に、教育を階級闘争の具にしようとしているという言葉を書き加えたと思います。それは、そういう事実があったからです。その事実を立証しろというのねら、私はここに資料を持ってきておりますが、日教組関係の文書のうち、とりわけ教育研究集会の運営並びにその諸決定をめぐって、確かにそうであるということを私は立証することができます。以上です。
  65. 濱野清吾

    濱野委員 重大な証言を得たわけで、私どもは心強く感じているわけであります。教科書内容は、証人証言を待つまでもなく、さらに幾多の証人によって、しかも教師の諸君がその編集に関連した事実は、証言としてわれわれは拝聴いたしました。しかして、さらに、いろいろの人々の証言によりまして、その検定をパスせしめ、そして出版会社と関連し、そうして学生協その他の諸君が採択に直接関連して、一部の人々に利潤を与えていることもよくわかりましだ。恐縮でありますが、ただいまのあなたの発言について、短時間でけっこうでありますから、最も有力なるものの二、三を一つ証言を願いたいと思います。
  66. 石井一朝

    石井証人 私の手元に、日教組が出しております教育評論という雑誌がございます。この雑誌の第四巻第二号で、第四次教育研究全国集会の報告ということになっております。これは日教組教育文化部で編集して出したものでありますから、日教組としては十分公的な資格を持ったものであろうと思います。この報告書によりますと、教育研究集会で何をやったかということを書いてございます。私はこれをつぶさに研究をいたしました。その中で特に問題にいたしたいと思いますものは、一つは社会科の運営をめぐっての結論であります。社会科という教科は取扱いが非常にむずかしい教科でございますが、日教組は、これを教育研究集会で取り上げまして、この社会科をどう運営すべきかという問題について三つの分節を作っております。第一の分節では人権教育をやれということを書いてあります。第二分節では国際理解の教育をやれと書いてある。第三の分節では郷士教育を展開すると書いてある。  そこで、その人権教育、国際理解の教育、郷士教育というもののやり方を私はこの文面でとったのでありますけれども、人権教育については人権は守られていないという前提に立っている。守られていない前提に、日鋼室蘭の争議の場合であるとか、北九州の炭鉱の問題であるとか、いろいろ例があげてあります。討論の模様も出ております。そして最後に、人権教育を妨げているものがきびしい民族の現実であり、その背景には国家権力がある、それと対決する姿で教育を進めなければならぬというふうに書いてございます。  それから、国際理解の項では、いろいろな研究発表があります中に、こういうことなんでございます。アメリカに片寄る教育が行われている、——この事実は私も否定いたしません。それを是正して穏健中正な方向に持ってこようという意図ならば、これはいうところの国際理解になると思うのでありますが、ここで言われているのは、ソ同盟——ソ同盟という呼び方もちょっと特異な呼び方なんですが、ソ同盟をどう教えるかというような課題がございまして、そこでいろいろ発表があった中に、たとえば、福岡の場合はソビエト・ユニオン及びソビエト・ニュース、岡山の場合はモスクワ放送を中心にして時事教育をやっているというようなことが書いてありまして、そして最後に、ソビエトの文学あるいは音楽を教材に取り入れることによって、ソビエトの民族文化に親しませ、正しい理解を持たせる素地とすることが提案されたと書いてあります。そして、特に情緒に訴えなければならぬから、知的な面だけでなくて、情緒を通じてもそういうソビエト理解を行えというのであります。それが公正な範囲ならいい。公正な材料によるものならいいけれども、ここに指摘されているモスクワ放送というものは、これは私は短波も中波も非常に興味があるものですから聞いておりますけれども、これは非常に謀略宣伝的なにおいの濃いところの放送であります。そういうものを直ちに教材に取り入れることが是であるか非であるかということは、非常に問題であると考えるのであります。それから、地域教育でありますが、郷士教育の項も、これは主として講師の高橋硬一氏が指導したようでありますけれども、出てくる結論は、教科書の中に出てくる百姓一揆であるとか何であるとか、そういうものを中心にした民衆史を建前にして、それを骨にして時代発展の法則をとらえさせていく。それは先般申し上げましたように小学校の歴史の教科書に如実に出ておるわけであります。  もう一つ、私が教育研究集会で指摘したいのは、これは非常に長くなりますから、省きますけれども、父母や青年と教師の結合を強めるための教育活動をどのように進めるか、——ここに書いてありますところのレポートは、左派社会党も書かないであろうし右派社会党も書かないであろうような内容に満ちております。詳しく申し上げるととは避けますが、総じてそこである特殊な社会理解、世の中を理解する特殊な原理、つまりマルキシズムでありますが、それにささえられた教育理論がそこにあるということを考えざるを得ないわけであります。  そういう見地から、——前々にもそういうものがございました。その前の研究集会でもございました。これは日教組の諸君自身がよく知っています。そして講師団を何とか少し衣がえをしようではないかということで、私もその相談に参画したことがございます。徐々にその傾向は現われつつあるようであります。そういうことは認めますけれども、長野の研究集会の場合にはまだまだそういう公正な立場が守られていないというふうに考えるわけでございます。
  67. 濱野清吾

    濱野委員 まことに明快にお答えを願いまして恐縮に存じます。結論は、こうした神聖な、しかも中立化すべき教育を、証人の言によりますと、マルクスの理論を根底として教材にあるいはその他の教育資料に突進しているというように考えて差しつかえないのでありますね。
  68. 石井一朝

    石井証人 日教組の諸君がそういう意図でもってやっているとは私は申し上げません。そういう偏向した傾向というものが、日教組の諸君が意図するといなとにかかわらず、教育研究集会の結論——そういう研究発表があったというのじゃなくて、結論その他に出てきておる。それは日教組の諸君が意識的にそうやったのかどうか私は確認をいたしませんが、そういう傾向が結論にもその討論の過程にも出てきておる。これは、私は単なる憶測ではいけないと思いまして議事録も見ました。日教組が出したものも見ました。それから、そこで行われた研究発表の数々も見ました。そうして、これは、先般申し上げました教科書に出てきた傾向とともに、日本教育の今後のためにはよろしくない、しかもそれを全国の教員諸君がそれをのんで、るというならともかく、そうでないにむかかわらず、一部でこういう行動が行われるということはどうもよろしくない。過日申し上げましたが、そういう懸念がありましたので、私は日教組教育文化部長の佐藤幸一郎君に申しましたところ、そういうことはなかろうということでしたが、いや、そうではない、日本共産党の「前衛」の五月号は、高々に原久雄という人間が——この人は実在しないそうですが、あの機関誌に、日教組の研究集会が党の指導でやった、しかもそれが党の新綱領の線に具体的に高まりつつある、しかも私ががく然としたのは、あの教育研究集会という集まりが新しい形の労働運動だと書いてあるのであります。これは、大西委員発言によりますと、共産党がよくそういう高ぶったことを言うから、その手であろうということを言われますけれども、私は、いろいろな材料を検討した結果、決して日本共産党の諸君が根も葉もないことを言ったのではなくて、あれが事実であると私は認めた。それで、教科書を調べてみますと、教科書の中にはあの傾向が陸続として出てきておるではありませんか。そうして私は確信を持って当委員会で御証書を申し上げたわけであります。以上であります。
  69. 篠田弘作

    篠田委員長 濱野君に申し上げますが、あなたの持ち時間はもう来ておりますから、簡単に願います。
  70. 濱野清吾

    濱野委員 もう一点願います。  明快なる証言を得て恐縮です。もう一点お伺いいたしたいと存じます。ここには社会党の左派の諸君もいらっしゃるが、代議士諸君がおっても勇敢に一つお答えを願いたいと思います。  このたび衆議院行政監察特別委員会教科書問題調査を開始するや、言論界の一部あるいは日教組その他関係方面では、この調査目的を曲解して、現在の検定制度を国定制度に持っていく下心を持って行監では調査を始めたものであると、非常に神経をとがらせたことは新聞等によっても察知されるのでありますが、決してわれわれはそういう国定にせんがために今調査してあろうかどうだろうか、証人は非常にその内容を知っているのでありますから、勇気を出してお答えを願いたいと思います。
  71. 石井一朝

    石井証人 私は、左右いずれにいたしましても、社会党員じゃないので、政権をとった場合にどうするかというようなことは大へんわかりずらいことでありまして、ただ、社会党の皆さんのやっていらっしゃる事柄につきましては、かって私は非常に共鳴を覚えたこともございました。右か左かは申しませんけれども……。それで、出します党の綱領を今ここにも持っております。こういうふうに線をひっぱってよく研究するのでございます。左の社会党綱領、右の社会党綱領といろい研究いたしました。右の方の皆さんの統一綱領には、教育、言論、出版の自由を政権をとっても許すと書いてある。そういうことになりますと、これはおそらく検定の線ではないか。左派社会党の統一綱領を見ますと、これは後にお書きかえになったということですから、よくわかりませんが、教育、言論、ジャーナリズムは社会主義的傾向の方へ持ってくる、これは当然でございましょうが、そういうことを書いてございます。だから、そういうことは想像できますが、それは検定でも国定でもできるわけでありますから、国定にするのか、検定にするのか、私にお尋ねになるよりも、社会党の方にお尋ね下さった方がよろしいのじやないかと思います。
  72. 篠田弘作

    篠田委員長 濱野君の持ち時間は来ております。もうそれでやめていただきます。ほかの諸君にもそういうことになっておりますから。
  73. 濱野清吾

    濱野委員 それじゃ、やめます。
  74. 篠田弘作

    篠田委員長 山中貞則君。
  75. 山中貞則

    ○山中委員 二点ほどお尋ねいたします。  第一点は、偏向教育内容についていろいろと思慮った立場からの尋問が続けられたわけでございますが、その偏向内容を、偏向ではない、われわれはそういうふうに考えるので、正しいのだ、あるいは、それに対する証人証言の仕方について、特定の方向を持って証言した等の意見もあったようであります。しかし、私は、教育というものは、いかなる角度を親たちが持つにせよ、次代の国民には少くとも教育は長い目で見て最も公正中正な立場で行われねければ、一国の国民というものが世代の推移によって非常に太きね予期せざる変動をするという事態が起りますので、私どもはあくまでも教育は公正中正でなければならぬと考えます。その意味から言いますと、大体証人証言もそういうところに根底を置いているようでありますが、私は、右でも左でも、どちらでも、偏向されたものがあってはならない、事義務教育に関する限り、もちろんその延長と見られる高等学校についてもそういうことが準じてなされなければならない義務があると考えますが、一部でも一冊でも教育には偏向した内容のものが教科書に用いられてはならぬと思いますし、また、教育者自体については、五十人ないし六十人の純真無垢な、どんな色にでも染められるような白紙の生徒を預かって次代の国民を作る立場にある者には、一人といえども許してはならない、そういう立場に私どもは立っておるわけであります。証人はどういうようにお考えでありますか、お聞かせ願いたいと思います。
  76. 石井一朝

    石井証人 私は絶えず次のように考えております。教職員も市民でございますから、憲法に保障された思想、信仰の自由があると思います。従って、教員が共産主義者であろうと社会主義者であろうと、あるいは保守的な考えを持った者であろうと、それはおのがじし自由であると思うのであります。その自由まで法で拘束するというわけにはいきませんし、不可能でありますし、それは法の上でも許されておると思います。しかしねがら、一たび教壇に出ましたときには、彼が共産主義者であるから共産・主義の教育をしてよいということにはならないと思います。彼が社会主義者であるから社会主義の教育をしてよいということにはならないと思います。教職員が教壇に立って職として教育に任ずる以上、そこには法律の上での制限もあると思います。それから社会的ね事実の上でも制限があると思います。従って、私も、彼が職として行う教育というものは、日本の現在の教育関係の諸法律に明記されました厳正な態度をとって教えなければねらないものである、こういうふうに考えるわけであります。特に義務教育というものは公教育であります。公けの教育でありまして、そういう教員個人の主義主張によってわがままに右へ向けたり左へ向けたりすることは許されないことであります。特に私が一つ強く感じておりますのは、非常に観念的な物事の考えが強過ぎて、人権教育をどうするとか国際理解がどうだとかいうことに熱中をいたしまして、基礎学習の面が怠られてくる。日教組は三ヵ年五百万円の金を投じて学力調査をやりまして、子供の学力が低下したという発表をしておるのであります。それは私はまさしく事実であると思います。その原因はいろいろありますけれども、教職員の諸君が一般の世上の事柄に悩まされ過ぎて、右だ左だということを教室の中まで持ち込もうとするから、この基礎学習の面が怠られて、子供の学力低下というような現象が起きてくるのではないかと思う。そういうことをも含めて、教師が教壇に立った場合には、教育関係の諸法規をよく熟知して、自分自身の信条はどうあろうと、学校で八時間か十時間か定められた労働時間の間はだれが見ても公平な教育をすべきであると思います。その公平と申しますのは、あくまでも現行の教育関係法規を中心にいたします。それが法治国としての秩序であろうと私は考えております。
  77. 山中貞則

    ○山中委員 教職員についての御見解は私も同感であります。ただ、私の言うのは、教科書の問題が重点にねって、付随的に話をしたわけですが、教科書についても同様の見解を持っておられるということを前提にして申し上げますが、証人が前会で証言をされました冒頭の数々の偏向の実情というものがいわゆる文部省検定済みとしてそれが教壇に送り込まれておるところに大きな制度上の問題点をわれわれはくみ取ったわけです。その意味におきまして、そういうような教科書がなぜ教師の手元に、あるいは生徒の手元に送られて、しかも、国に対して責任を負い、次代の国民に対して責任を負う最高の教育行政省たる文部省がそのようなものを検定済みとして渡されなければならないか、非常に問題だろうと思います。証人は、ずさんきわまるものであって、はっきり言うならでたらめという結論を出してもいいというようなことを冒頭に言われたんですが、私どもとしては、いかなる制度上の欠陥がそのような事態を生んだかという点について、中にあって詳しい立場のあなたからもう少し教えてもらいたいと思います。われわれはそれを参考にいたしたいと思います。
  78. 石井一朝

    石井証人 問題は検定調査員にあると私は申し上げました。現在の調査員は千二百名から千四百名、これが東京近郊で集められまして、短期間に調査をする、こういう状態でございます。しかも、教職にある者でございますから、ひまひまにやる。これは非常に不可能なことであります。難きをしいるということになると思いますので、私はこれを改善するなら次のような方途がよかろうと考えております。調査員を固定するということでございます。毎年々々入れかわって、勘でもってそそくさに検定をしなければならないようなことではなくて、調査員というものを固定いたしまして、いかなる条件を持った教科書がよろしいかということについて、日夜専心研究をすると同時に、調査事務にも当る。そういうふうな固定化された調査官というか、調査員というものの選定はむろん民主的にやる必要があると思いますが、そういうものを作っておく必要がある。もう一つ、この調査員につきましては、固定した調査員は、何々大学の教授であるとか、何々大学の講師であるとか、キャッチ・フレイズになるような大先生を持ってくる必要はない。持ってきた方が弊害がある。調査員は教壇の日々の教育事実にぶつかって、どう教えれば子供が納得するかというふうな具体的な技術的な経験を身につけた人であることが望ましい。そこで、そういう調査員は、自由勤務ではありますけれども、時折は学校を訪れてそこで授業をやってみることのできるような人人がよろしいのではないか、そうすればこういうふうに観念的に高ぶって教育技術を抜きにしたような教科書もでき安くなるのではねいか、こういうふうに考えております。  要は、調査員というものを固定して、もう少し精密に研究をさせる、それから、もう一つは、調査員相互の間に連絡をとる機関が必要であると思うのであります。つまり、国語の調査員は国語の教科書の中に出てきた科学的な材料についてはこれを理科のそういう事柄に通じた調査員に見てもらう。そういうことをしないから、国語に出てくる科学的な読みものについては事実がでたらめである。逆にまた、社会科の調査員はできた原稿を国語の調査員に見てもらう。相互に流通する機関を設置する。何か名前をつけまして、そのことを専門に調査する統一委員会を作っておく必要がある。そうすれば、現在行われておるようなずさんなことが格段に改善をされるのではないか。もう一つ申し上げますと、現在の調査員はきわめて薄給であります。十分な手当をもらっていないのであります。そこで、これは悪いことではありますけれども、あるいは動労意欲がそがれるという事態が起きるかもしれません。そこで、調査員には十分な手当を出して優遇をしてもらいたい。その人たちの採点いかんによって日本教育が左右されるのでありますから、十分優遇をしてあげてむらいたい。そういうふうな改善案をただいまのところ持っております。
  79. 山中貞則

    ○山中委員 次に、私どもは、本委員会におきまして証言を求める際には議題外のことについては触れないように、証人にも冒頭において委員長から宣告をいたしますし、われわれもそういうつもりでやっております。しかしながら、前回の委員会にきまして山田長司君が質問をいたしました際に証人が答えられましたいわゆる名づけて繊維疑獄事件なるものは、私どもとして無視できないものがあると考えます。従って、議題外のような形でありますけれども、すでに本委員会において左派の山田君より証言を求められた結果について非常にいろいろの動きが起っております。たとえば、先ほど佐々木君との間のやりとりにおいても、証人の方もそういう話をされたのでありますが、私どもの知る範囲においても、左派社会党は、その当日対策を協議した結果、証人を加藤君、荒木君に対する誣告罪で訴えること、並びに証人の精神鑑定を要求すること、以上の二点を正式に党として決定をされたようであります。しかしながら、本日の委員会においては、一方の本委員会に関係のある精神鑑定要求等の件については具体的に出て参りませんので、私は社会党の左派の諸君の良識をあらためて見直したわけでございますが、しかしながら、そのような政治的な動きが大きく取り上げられて参ります反面において、日教組は、その証言のありました夜、関係者を集めまして、その対策に非常に狂奔をいたしておるようであります。そういたしますると、本委員会においてたまたま議題外のことでありましたが証言がなされたことによって現在起っておりまする教育界あるいは政界の混乱というものは、私どもとして日本教育に重大な影響を与えるおそれがあると考えます。従って、具体的にその結果については、証人はすでに告発済みということでありまするから、法の権威においてこの結論は下されるわけでありましょうが、しかし、私どもとしても、当然、問題になった以上は、本委員会の問題としてその事件の概要というものを具体的に知っておく必要があると存じます。何と怒れば、委員長と会ってそれをどうしようかと言われたときに、委員長は、行監ではそれはやらない、法的な措置をすべきであろう、こう言われたそうですが、私どもは、その内容のいかんによっては、あるいは行監で取り上げて議題とするかもしれないということも考えますので、この問題については具体的に内容をお述べ願いたいと思います。
  80. 石井一朝

    石井証人 私は先般この席上でも申し上げましたが、その前に日教組の書記局の塚原君と会いましたときに、私が行監に呼ばれたことについて事実を曲げて理解している向きがありましたので、よく言って聞かせたのであります。自分が呼ばれたのは元教科書審議会の副会長として呼ばれたのであって、教科書問題に関することなんであるから、その問題を中心にして論じ合えばよいのであって、証言をすればよいのであって、そういう懸念は全くない、そういうことは委員会の席上でやるべきではない、お互いにまずいことになる、——私が先般申し上げましたように、当委員会の権威にも関することであるから、そういうことを引き出したり、言い出したりしないようにという話し合いで実は済ましておりました。そのつもりで私はここに出てきたのでありますけれども、山田委員の方から、しつこいと私は受け取れたのでありますが、そういうふうな質問でございまして、私がそのことを申し上げなければ、よし除く嫌疑を受けるというおそれがありましたので、一つ簡略に事件のてんまつを申し上げたわけであります。これは、社会党の方々は事実無根である、こうおつしやる。誣告罪で告発するとおっしやるわけでありますが、これはそのようになすってけっとうだろうと思うのであります。私は六月十四日に告発をいたしまして、正式に受理いたされております。これは刑事訴訟法二百三十九条による告発でありまして、犯罪があると思量いたしましたから告発をいたしたわけであります。これは詳細を申し上げますと長いことになりますけれども、よろしゅうございますか。(「議題外だ」と呼ぶ者あり)関係書類がありますから…。
  81. 山中貞則

    ○山中委員 ちょっと……。
  82. 篠田弘作

    篠田委員長 発言中です。議事進行ですか。
  83. 山中貞則

    ○山中委員 ちょっと待って下さい。私の真意をもう一ぺん申し上げます。議題外だという声がありますから、議題外の問題であるから……
  84. 篠田弘作

    篠田委員長 それは委員長は何も言っていません。委員長発言を許しております。
  85. 石井一朝

    石井証人 私はあまり申し上げたくないのでありますけれども、申し上げます。こういうてんまつにねります。かねがね私が日教組と事あったことは御承知のことであります。日教組はいろいろ事実無根だと言い立てておりますけれども、ところが、私どもが真実をあからさまにしたいと思う気持がございましたものですから、その機会を待っておりました。ちょうど松江で大会がございましたので、そこで大会へ出かけて——日教組は私を懲戒免官という不当処分をしております。日教組のいかねる規定を見ましても、——私はその規定をすべて承知しておりますが、いかなる規定を見ても懲戒免官などという規定はないのであります。が、しかし、そういう場合には大会に申し出ることができると書いてありますので、規定にないもので懲戒免官した以上——私は日教組では書記と認めておりますので、組合員でございませんから、大会に申し出ることはできないけれども、日教組の方でも規約無視をしてやったことであるから、われわれの方も一つ大会の方へ申し出てやるということで、大会へ出かけようと準備をしておりましたところ、日教組の元厚生部長、中央執行委員でありました郡司義光という男が私のところへ参りました。私を半年間探した、こう言うのであります。いろいろなつてを探してもわからなかったが、ようやく見つかったと言って参りまして、実はあなた方のやっていることについて非常に賛成をしておる、私自身もこれに類する事件をたくさん知っておる、義憤を感じてここまでやってきた、行をともにしたいという話でございました。それは大へんありがたい、それでは近く松江に行くことになっておるから行をともにしないか、こう申しましたところ、喜んで出かけるということでありました。松江へ出かけましたととろ、私は実は松江へ出かけまして松江の印刷所で日教組への申出書を印刷したのです。そうすると、郡司義光君は、自分も書きたいから、それを一つ印刷に付して大会でまいてもらいたい、こういうことでございました。それなら書けというので書かせましたのがこれでございます。石井佐藤意見書問題についてというふうなものを書きました。これは原稿でございます。
  86. 篠田弘作

    篠田委員長 ちょっと石井証人待って下さい。山中委員に申し上げますけれども、ただいま山田委員から……   〔発言する者多し〕
  87. 篠田弘作

    篠田委員長 静かにして下さい。ただいま山田委員から申し出がありまして、社会党としては、そういう謹告で訴えるとか、あるいは精神鑑定をするというようなことを個人的に言った人はあるかもしれないけれども、党議としてそういうことをきめたこともなければ、正式な会議において論議されたこともないから、そういう問題に関する質疑応答は、これは的はずれであるからやめてもらいたいという意見がありました。もしそうであるとするねらば、仮定の問題に対して論議されるということは適当でないと思いますから、その問題につきましては論議を差し控えていただきたいと考えます。
  88. 山中貞則

    ○山中委員 ただいまおっしゃったことが事実でございますならば、私の発言中その問題に関連する部分は、そういうことがないならば、それで私としてはその基礎によっては発言いたしません。ただ、私の言うのは、行監委員会において私どもは議題外のことは論議しないということでお互いにやっておるが、たまたま左派社会党の山田君がそういう方向の証言を求めたことによって、本委員会においてすでに公けのものとしてこれが提議されて、しかもそれがいろいろの反響があるということであるならば、私としては、その事実をわれわれ委員会において承知しても、われわれの委員会としては派生的ねことであるけれども、場合によっては委員会の議題として取り上げる必要があるのじゃないか、こう考えますから、その事件の内容は、左派社会党のお言葉がどうあろうとも、私は具体的にお述べいただくことが正しいと思います。ただ、証人によってその事前の過程についていろいろ述べてもらうことは私としては必要でありませんので、その事件の内容について具体的に説明してもらいたいと思うだけです。
  89. 篠田弘作

    篠田委員長 山中君の御発言の時間はもう過ぎたのです。証書の方だけをして下さい。
  90. 石井一朝

    石井証人 どの程度を申し上げてよろしいやら、見当がつかないのでありますが…。(「犯罪事実だ」と呼ぶ者あり)読み上げましょうか。(「告訴状を読んで下さい」と呼ぶ者あり)六月十四日東京地方検察庁に告発いたしまして、受理された告発状があります。それを読みますと事件の概要が明確でございます。   〔「ここで刑事事件になっていることをやるなら、今までのをみんなやりましょうよ」と呼ぶ者あり〕
  91. 篠田弘作

    篠田委員長 委員長判断におきまして申し上げます。理事会の申し合せによりまして、すでに問題が検察庁の手に移った場合には委員会においてこれは取り扱わないことになっております。従って、山中君の証人に対するいろいろの文書の読み上げ等は、すでに検察庁の手に移っておりますから、この際差し控えていただきたい。
  92. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 議事進行。ただいまの委員長の言われました、すでに検察庁に告訴されておる問題だから云々の問題でありますが、それは、理事会でのきめ方は告発されているものを当委員会においてなるべく取り扱わないということであります。しかし、その事実の内容を聞くことと、委員会において取り扱うか取り扱わないかということとは、これは別個の問題であります。すでに当委員会において左派の山田委員からその内容証人より証言を求められているのでありますから、その内容をわれわれ委員も具体的に知るというととは、これは、取り扱ったということと違いますので、ただいまの山中君のいわゆる証言を求められたことに対して、直ちに証人証言を求められんことを動議として提出いたします。   〔発言する者多し〕
  93. 篠田弘作

    篠田委員長 ちょっと速記をやめて下さい。   〔速記中止〕
  94. 篠田弘作

    篠田委員長 速記を始めて下さい。
  95. 山中貞則

    ○山中委員 私はこれを行監でどうこうするということを言っているのではないが、疑惑のあるものが、山田君の尋問により一端が引き出されて、それが相当大きな話題になりつつあります。従って、その内容を具体的に本委員会が知る必要は当然あると思います。すでに論議された内容を具体的に示せというのでありますから、休憩する必要もなければ、証言をとめる必要も全然ないと思います。続行願います。
  96. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、採決いたします。(「議事進行に関して発言を求めているじやないか」と呼ぶ者あり)——佐々木君の動議が出ています。佐々木君の動議に対して御賛成の方の御起立を願います。   〔賛成者起立〕
  97. 篠田弘作

    篠田委員長 起立多数。それでは、佐々木君の動議のごとく決しました。  石井証人にはその文書をお読み下さい。
  98. 石井一朝

    石井証人 読み上げます。この告発状に詳細がございます。    告発状  告発人 東京都新宿舟町七番地    新日本教育者連盟     事務局長  石 井 一 朝   東京都港区三田豊岡町六〇番地           佐 藤   豊  被告発人 東京都千代田区参議院会館    参議院議員  荒 木 正三郎   東京都千代田区衆議院会館    衆議院議員  加 藤 清 二  第一 告発の理由   日本教職員組合(以下日教組という)は、日本教育の振興を目的として全国教育者によって組織された団体であるから、その指導君は、とりわけて高潔な出動をもとめられ、その団体の経理も、どんな団体のそれよりも公正であることがのぞまれる、然るところ、過去および現在にわたる日教組の経理には、幾多の不公正、もしくは不正の事典が絶えざるのみか、それらの事実を自ら熟知しているはずの指導者たちにも、いっかな自省の気配がみられないうえ、その事実を指摘した善悪の個人に対しかえって中傷を加え、攻撃し、名誉毀損の言動さえあるので、ここにやむなく、その不正の具体的事実を告発し、厳正なる法の裁きを期待するものである。  第二 告発する具体的事実   放出毛織物に関する公文書偽造および行使ならびに業務横領の件   昭和三十年五月十八日告発人石井一朝に対し、元日教組厚生部長郡司義光(現在東京都文京区春木町二の一居住)は、自らの犯行をも含め、次に掲ぐる公文書偽造および行使ならびに業務横領の事実を、関係資料を提示して告白した。   郡司義光の自筆による供述書は別に添付したが、以下はその供述の要旨である。   一、昭和二十三年十月、被告発人加藤清二は、愛知県内に莫大な毛織物が分散保管され、これが放出の計画あるを探知し、被告発人荒木正三郎(当時日教組委員長)、小笠原三二男(現左社参議、当時日教組委員長)、小松幹(現左社衆議、当時日教組書記次長)、横井八三郎(当時日教組中央執行委員)、郡司義光(当時日教組中央執行委員)、小牧初穂(当時日教組中央執行委員)その他と謀り、これを全国の教員に配給し、ひとつには日教組の組織強化をはかるととむに他面多額の利潤を獲得する計画をたてた。   二、ところが前記の毛織物は、すでに経済安定本部(当時長官は和田博雄)において配給計画が確定しており、かつ日教組には、繊維統制規則(令)等によって受配の権利がなかったので、被告発人荒木正三郎以下のものは、商工大臣水谷長三郎、労働大臣加藤勘十等の援助をもとめ、ついに商工大臣の特別譲渡命令という名目によって、縫製業者に割当済の三六、九〇〇ヤードの毛織物を獲得した。   三、被告発人加藤清二は、かねて繊維事情にくわしく、前記毛織物には、帳簿数量をはるかに上廻る余剰毛織物が含まれていることを熟知し、被告発人荒木正三郎その他と謀り、この余剰毛織物を合法的に帳簿より抹殺し、ひそかに処分して、多額の金員を捻出、横領の計画をたてた。   四、このため、前記の事情に明るくない文部省係官(当時教育資材第二課、錦織繊維係長)に働きかけ、机上計数によって裁断可能着数を算出せしめ、これをもととして全国への配給計画を通達させた。   五、被告発人加藤清二は、郡司義光と共同して、前記配給着数を一ノ宮東洋倉庫において裁断し、莫大な余剰毛織物を残したまま文部省指示数量のみを全国に配送した。   六、この際横領余剰毛織物を、計画的に良質のものに集中させたため、関係書類を偽造する必要が生じ、主として郡司義光が中心となって、関係職員を買収し、政府代行機関たる放出毛織物処理委員会発行の請求誓および領収証を偽造するとともに、その正規の印鑑を盗用して日教組会計監査委員会に対してこれを行使し、その虚偽の決算報告を認めさせた。   七、昭和二十四年四月、以上の手続によって、帳簿上抹殺、無籍化された余剰毛織物は約一千着、当時の価格では推定一千八百万円にのぼるが、これらは一部は現物のまま横領され、他は、被告発人加藤清二が中心となつて、主として名古屋市周辺でヤミ売りされた。   八、かくして横領売却された毛織物の代金は、一部は現金で横領消費されたが、大部分は、日本勧業銀行名古屋支店および大和銀行名古屋支店等に、荒木正三郎、加藤清二、加藤義光(加藤溝二と郡司義光の姓名を合わせて作った架空のもの)等の名義で預金された。   九、右の横領金員の使途は現在不明であるが、郡司義光の供述によれば大部分は被告発人加藤清二の領得に帰し、他は被告発人荒木正三郎、小笠原二三男、赤松勇(現在祉衆議)、加藤勘十その他に配分されたと推定出来るという。 以上であります。
  99. 篠田弘作

    篠田委員長 この際お諮りいたします。議員加藤清二君より一身上の弁明につき発言を求められております。衆議院規則第四十六条の規定によりまして、同君の発言を許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 篠田弘作

    篠田委員長 御異議なしと認めます。よって加藤清二君の発言を許します。加藤清二君。
  101. 加藤清二

    ○加藤清二君 許可を得たので、申し上げます。一昨日及び本日ただいま行われました石井君の証言の中に、荒木君、私を含む数多くの日教組出身議員や日教組の名誉を著しく傷つける言辞がございますので、委員長のお許しを得て一身上の弁明を行いたいと存じます。  すべての人は名誉を重んじますが、特に議員の名誉は議員の生命でございます。その名誉は常に危険にさらされがちでございます。ニュース・バリューがあるからというて、この名誉を傷つける行為は、刃物なき殺人行為でございます。石井君の証言に対しまして、過日の証言やまたただいまの発言は、私を昭和二十三年の毛織物配給に関して不正がありとして東京地検に告発した旨の証言がございましたので、いわゆる事件の内容については当然検察庁の手に渡っているようでございますので、その場において明らかにすべきだと存じますが、ただ、結論的に申し上げますならば、全くこれはでたらめな証言でございまして、私は天地神明誓って恥じぬことのみをまず明らかにしておきたいと存じます。  なお、石井君はこの問題については全く無関係の人でありますが、告発前に私と面会した際に、その事実を肯定したかのごとく証言がございましたが、配給の事実は申し上げましたが、そういう悪事があったなどということは、私は全くないとはっきり申し上げておる次第でございます。虚偽の事実までも証言したかということでありますが、何がゆえに石井君がこういうことを申し上げたかということでございますが、思うに、面会を強要した際に、私にどういう恨みがあるのだ、なぜそういうことをするのだと私はあなた尋ねたことを記憶しておりますが、その際に、あなたは、何も君が憎たらしいわけじゃないのだ、おれは日教組幹部をたたき、日教組出身の議員団をたたくことによって日教組を空中分解さすのだ、こういうことを言っておられるのでございますが、その政治的目的を放言したところからしても、およそあなたの意図がわかるのでございますが、私は、かかる石井君の、特定の目的を持ち、私の名誉初め、多くの日教組出身議員団の名誉をいたく傷つけた行為に対しては、——ただそれのみにとどまらず、国会の名誉を傷つけ、品位を落したことは、とうてい許されることではございません。さらに、この問題は社会正義に反することでございますので、かかる行為をあえてするような者は絶対に社会的な糾弾を必要とするものでございます。  なお、私自身のことにつきましては、やがて法廷で明らかになることと存じまするので、ここで多くを語ろうとはしません。  以上であります。   〔石井証人委員長々々々」と呼ぶ〕
  102. 篠田弘作

    篠田委員長 これは一身上の弁明でありますから、証言を必要としません。   〔石井証人「事実と違うことがある」と呼ぶ〕
  103. 篠田弘作

    篠田委員長 石井君に申し上げますが、ここは議論をする場所ではございません。証言を求める場所でありますから、委員長から証言を求めた場合だけ発言して下さい。  次は三田村武夫君。
  104. 三田村武夫

    ○三田村委員 前回の委員会、本日の委員会で、いわゆる教科書問題に関する質疑と証言が行われました。時間の制約がありますから、簡潔二、三の点をお尋ねします。どうぞ証人も簡潔に御証言をお述べ願いたいと思います。  まず第一に、石井証人はずいぶん長い間日教組の組織と機構の中で御活躍になっておったしようであります。前回来の、証言を伺いますと、日教組の内部を相当詳しく御存じのようであります。そこで、まず第一点、お尋ねしますが、いわゆ日教組日本の中小学校教育のその実際面において、その教育活動の面においてどのような影響力を持っておるか。これは、抽象的な概念論でなくて、実際活動の面においてどのような影響力を持っておるか、証人がその経験の中から体得されたものを率直にお述べ願いたい。
  105. 石井一朝

    石井証人 過般日教組の指令に基きまして振りかえ授業というのが行われました。実施された人数は約八割と報告されております。これで概要見当がおつきになるのじゃないだろうかと思います。以上であります。
  106. 三田村武夫

    ○三田村委員 約八割という御証言がありましたから、大体日教組なるものが中心になって日本の中小学校教育に相当強力な指導力、影響力を持っておるということは事実のようでございます。  第二点といたしまして、その日教組の中で以前活躍しておられました石井証人が、昨年でありましたか、日教組を離脱しておられます。離脱された場合のその心境と申しますか、社会的立場について、前回の委員会以来とかくの論議がなされております。率直に私からお尋ねいたしますが、それは従来の日教組の活動、別な表現をいたしますと思想傾向とか世界観とか、そういったものに対して証人が何らかのあき足らないものをお持ちになってか、ないしは反対の意見をお持ちになってか、私はそのいずれかのように前回の委員会以来伺っておるのでありますが、そのように理解してよろしいでありましょうか。
  107. 石井一朝

    石井証人 私が過去七カ年日教組におりましたことは事実でございます。その間、私の立場は、多くの者は赤色攻勢の防波堤などと私を称したことがございます。これは本席にお立ち会いの方も御承知の向きもございますはずでございます。中には、私とその政治的見解を異にするために、つかみ合い寸前までいった方も本席にいらっしゃいます。引き続きましてそういう立場を持ち続けておったわけでございます。日教組の移り変りに対しましては、数々の不満不平がございます。それについては、過日のこの証人席で、大阪の書記長の東谷君の書状を朗読してかえました。批判は持っておりましたが、これから脱して外から傾向を改めるほどの気持はなかったのであります。なかったのでありますが、私の同僚の佐藤豊君とともに私が締め出されるというような個人的な処遇を受けたので、それに対するいろいろな手も打ちましたけれども、その締め出し工作は相当広範な計画的なものでありまして、話して納得がいく種類のものではないと認められました。この組織を脱するにつきましては、ずいぶん腕組みをして三ヵ月ばかり考えました。長い間一緒にやってきた諸君であります。なかなかその戦列から外へ出てこれを糾弾する形になることは容易ではございません。私はその直後に脅迫状ももらいました。福島あたりからもやってきましたけれども、赤いインキでしやれこうべの絵を書いて、お前もこうなるぞと書いた脅迫状なんであります。私は現に保存しておりますが、そういうものも参りましたし、別にこわいとも思いませんが、気分としてはただならぬものがございまして、長い間悩みましたが、同僚とともに意を決して出たというのが実情でございます。短い期間にがらりと変ったとか何とかいうお話がございましたけれども、そういうものではございませんで、長い歴史を持っておるわけであります。
  108. 三田村武夫

    ○三田村委員 先ほど証人も言っておられましたが、新しい憲法のもと、何人も思想の自由が保障されている。従いまして、日教組の内部を構成しておられる人々が、世界観としてマルキシズムを信奉されようと、共産主義的な思想、行動に共感を持っておられようと、それは自由だと思います。証人の言われるように、ここで問題になっておるものは、公教育立場からそれが正しいかどうかをここで調査しておるのであります。証人の御発言のことごとくがこの委員会の権威になるとは思いませんが、われわれがここで必要とするものは、証人の長い間の教育活動の中から体得し、また自分自身の思想の中に持ち込まれたものを伺いたいのであります。  そこで、次の質問に移るのでありますが、前回の委員会で、同僚委員、社会党の高津委員大西委員から、証人は転向者だという言葉が出ました。転向者という言葉は、証人も御承知の通り、歴史的な用語例がありまして、長い日本の政治活動、思想活動の中から、転向者という言葉が使われる場合は、おおむね左から右への転出、転向あるいは転籍を意味していると私は考えておるのです。証人は、偶然か必然か高津、大西両委員が用いられました転向者なる言葉を、どのように解釈されますか。御所見を伺いたい。
  109. 石井一朝

    石井証人 私のただいまの思想は右であるか左であるか、それは私自身確認しておりません。それは私が申し上げました事実に即してお受け取り願えばよろしいのであります。私は事柄について一つ一つ私の所見を申し述べているわけでありますから、それで御判断を願いたいと思います。高津委員大西委員が転向者という言葉をお使いになったその意味はどうだ、——私に対してそうおっしゃっているものなら、それは当らないであろう。当るわけがない。——昔使われたああいうような意味でならです。しかし、考え幾らか変ったとか何とかということなら、私は認めます。今まで考えておったことが間違いであるということを認めた個所が幾つもございます。こういう傾向は、私がこの間申し上げましたように、私自身は向上であると考えております。退歩でも何でもないと考えております。いささかも恥ずるところはございません。
  110. 三田村武夫

    ○三田村委員 証人の思想傾向が進歩であるか、あるいは転向であるか、右寄りか左寄りかを、ここで私は論じようとも問題にしようとも思いません。私がことで問題にしたいのは、前回の委員会以来、この教科書偏向について、実に鋭い、また深くわれわれが傾聴しなければならない議論が展開されておるのであります。社会党の左派の諸君といえども、国権の最高権威たる国会において論議される場合でありますから、——その思想の立場においては私たちはその自由を尊重するにやぶさかではありません。けれども、一たび教科書問題に触れまして、との調査活動を中心にしてとこで論議される場合は、それが特定の思想を持って、あるいは特定の政治的意図もと日教組が中心になってある種の活動が行われておるといたしますならば、これは事きわめて重大であります。その意味から、前回以来の石井証人証言はきわめて重要であります。同時に、社会党の諸君が、先日の委員会で、高津、大西両委員石井君を転向者と言われた言葉もきわめて重要であります。石井君がもし転向者であって、今の日教組の中央指導部の思想系統もしくは指導方針と別の考えを持っておるがゆえに転向者と言われるならば、石井君の思想傾向が前進であろうと後退であろうと、私は問題は別な観点に立たざるを得ないと思うのであります。この言葉の裏にあるものは、今のいわゆる日教組、終戦以来今日まで非常な力を持って、日本の文化活動の中に、あるいは教育活動の中に指導力を持って参りました日教組、これが石井証人の言われるようにマルキシズムないしは共産主義の世界観の上に立った指導が行われておるといたしますならば、個人の思想は自由であっても、偶人の政治活動は自由であっても、憲法の保障する政治活動の自由の前にはわれわれもあくまでも尊敬と尊重の念を失いませんが、思想的にも精神的にも肉体的にもいまだ成熟せざる小中学校児童の中に一定の政治目標を持った強力な思想活動が行われておるとするならば、当委員会は別な角度からさらに掘り下げて検討を加えなければならぬと思うものであります。  そこで、私は証人に伺うのでありますが、私が今申し上げたことをどのように解されるかもう一ぺん端的に申し上げますが、今の日教組が、前回以来証人証言になりましたように、いわゆるマルキシズムあるいはそういった意味の社会主義的な世界観、思想のもとに指導されてきたことを証人は認められるかどうか。その点の御意見を率直簡潔に伺いたいと思います。
  111. 石井一朝

    石井証人 以上のお話につきましての判断は、日教組の運動方針、指令その他を見て御判断願うよりしようがないのでありますが、ただ、表われ方は、御承知のように、総評の運動方針を是認し、確認し、みずからの運動方針をやっております。その文章の中から受け取れますものは、そうと断定するほかに仕方がない。明らかに階級闘争ということを書いております。お目通し願えるなら資料はございます。そういうわけであります。
  112. 三田村武夫

    ○三田村委員 私は、日教組の活動方針ないしは総評あるいは左派の政治綱領を取り上げてここで論議しょうと思うのじやないのであります。前回来の証人証言をじっと聞いておりますと、証人証言の中に日教組の性格なるものは出てくる。これは評論家の意見じやありません。証人自身が日教組の中に実際にその指導的影響力を持っておられた方でありますから、評論家の意見じやない。つまり実際実践活動の中から体験してこられた証人の意見でありますから、私が別の角度から評論家的ね立場で議論を申し上げるのではなくて、証人が前回からことで述べてこられました意見を総合し判断いたしますと、今私が申し上げたような見解になるのです。階級闘争的なマルキシズム的な思想、理念をもつて旧教組というものは指導されてきたのだということを証人は前回からここで申された。その証人の証書に対して、高津委員大西委員は、彼は転向者だと言われる。従って、転向せざるものは何かという議論が出てくるのです。理論闘争をやるんじやない。前回の委員会以来の証人証言委員の質疑の内容を承わっておりますと、そういう結論になるのだから、私はお尋ねするのです。私は今申し上げたことを繰り返して申し上げません。前回の委員会証人は「前衛」を持ち出して、この通りこれを立証すべきものがあるのだと言われました。他の委員から、それは共産党の勝手な宣伝だと言われました。それが勝手な宣伝であるなら、非常に左派の諸君は迷惑なことであります。日教組の諸君も迷惑なことでありますから、適当に公正な取り消しなり訂正なりの手続がとられなければならない。それがそのままで置かれることは——「前衛」が共産党の合法的機関誌であることは天下周知の事実であります。そこの中に日教組教育活動の指導方針というものが堂々と取り上げられ、あたかも共産党の方針であるがごとくとれが一般の世間に伝わることは、日教組の幹部諸君に対しても、あるいはまたそれと系列——と言うと語弊がありますが、それを一つの友誼団体として政治活動をやっておられる社会党の諸君も非常に迷惑だと思うのです。この点は、どちらにいたしましても私は明確にしておく必要がある。それが、事教育に関してこの委員会で取り上げている中心課題なるがゆえに、私はこの言なきを得ねいのであります。  私は、結論として、今まで申し上げたことにもう一ぺん証人から結論づけていただきたいのでありますが、繰り返して申しましたように、前回の委員会から今日の委員会を通じて、同僚委員証人との間に繰り返された論議を聞いておりまして、帰納される結論は、日教組は階級的な、マルキシズム的な指導理論を持った実践的教育団体だ、こういうことになるのでありますから、その点についての証人の明快な、今までの経験の上からの御見解を伺っておきたいのであります。
  113. 石井一朝

    石井証人 それは否定できないと思うのです。まさしく事実である。それなるがゆえに各種の具体的な闘争事実があるわけです。それを判断していただけばわかる。
  114. 篠田弘作

    篠田委員長 猪俣浩三君。
  115. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 時間もたっておりますし、証人もお疲れであろうと存じますから、私はごく簡単に一つ事項だけをお尋ねしたいと存じます。  証人は、現行の教科書が大へん偏向しておる、それから教職員組合偏向しておるという、証人の研究の結果結論を得られ、それを是正すべき活動を起され、昨年の十一月八日に、さようなことを書いた文書を持って日教組の本部及び文部省、文部大臣にもお会いになったはずであります。そこで、あなたにお尋ねいたしますことは、昨年の十一月八日あなたが実践活動に出発なされることについて、その計画について教科書偏向その他を是正するあなたの実際活動に踏み出されることにつきまして、あなたの同僚であります佐藤氏とは御相談したと思いますが、そのほかに、さようなことについて相談をしたり、あなたが十一月八日に実際活動に入るのだというようなあなたの意中を打ち明けた人が佐藤君のほかにおられますか。
  116. 石井一朝

    石井証人 そのことについては私は多くを語ることを好みませんでしたので、佐藤君と相談をいたしましていろいろやりましたが、その周辺におりました者は承知しているかもしれません。その他については、みずから進んで語ったというふうな記憶はございません。
  117. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 その周辺におる者と申しますのは、あなた及び佐藤君、そういうふうな関係の人をお指しになりますか。また、政治家なんかも入っているわけですか。
  118. 石井一朝

    石井証人 そういう計画は申し上げませんでしたが、——御質問の御意思は大体受け取れるのでありますが、そういう話はいたしませんでしたけれども、日教組に対する不満の意見を述べたことをお聞き取り願った代議士もいらっしやるかもしれません。
  119. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 十一月八日の日にあなたが日教組その他に対して活動をなさったそのことです。十一月八日にそれを断行するということを明らかに話をされた代議士はありますか。
  120. 石井一朝

    石井証人 記憶がございません。
  121. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたは原田憲という方を御存じでありますか。存じておりましたならば、どういう身分の方で、どういう政党に所属している方とあなたはごらんになっておりましたか。
  122. 石井一朝

    石井証人 私は日教組の新聞の編集をしておりましたので、いろいろな方に会っております。原田憲という方も、お名前はすでに早くから存じております。自由党の文部委員である、こう私は伺っておりました。お顔は存じ上げておりませんでしたが、いつでございましたか、私が事を起しましてから、何か正式の会合であったと思いますが、私が呼び出されて話をした席上にいらしたことは記憶しております。そして、日教組の書記長の平垣君と同級生である、平坦君はときどき会っておったという話は聞いたことがあります。そんなものです。
  123. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 その正式の会合というのは、どういう会合で、そこに原田氏が出ておったときに、あなたがどういうことをお話なさったのか、簡単にお聞かせ下さい。
  124. 石井一朝

    石井証人 紹介されたわけです。との方が原田さんというので、紹介されました。それば私が事を超しましてからずっとあとのことでございます。
  125. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あねたが十一月八日にごの実践活動に入られたあとの話ですね。
  126. 石井一朝

    石井証人 そういうわけです。
  127. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたは坂田道太君という人を御存じでありますか。御存じでありますならば、どういう関係で、これはどういう政党に所属の代議士であるか、お話し願いたい。
  128. 石井一朝

    石井証人 日教組にいて坂田道太を知らぬ者はあまりない。私は初めから知っておりました。日教組の元委員長の岡君、これと討論会などいたした人物でございまして、自由党にそういう文部委員がいるということはかねがね承知しておりましたし、私は、自由党であるからとか、民主党であるからとか、あるいは共産党であるからとかいうことで人ぎらいはいたしません方でございます。日教組のために有益なる材料でもあれば、どこへでも出かけて話をしてくるという主義でございました。一ぺん会いたいと思っておりました。そこで、そのつては安いかと尋ねておりましたところ、光村図書という教科書会社がございます。そこの社長の大江さんという人を承知しているのでございます。その方の何でもお娘さんのお婿さんというようなことで、そこに頼めば会えるだろうというようなことで、お会いしたことがあります。よく承知しております。
  129. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 十一月八日あなたが実際教科書問題あるいは日教組の問題について日教組の本部その他を回られた。十一月八日にそれをやるということを坂田君にお話しなさったことがありますか。
  130. 石井一朝

    石井証人 日取りまで明確にしてしやベったような記憶はございません。日教組のやっていることについて憤懣はあるという話し合いはしたことがございます。
  131. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたも証人として宣誓をなされて証言をなさっておりますので、とこに偽証の問題などが出されますとお気の毒に存ずる。昨年のことですから記憶も薄らいでおるかも存じませんので、あなたからその記憶を呼び起してもらって正確なる証言をしていただきたいと思います。なぜかと申しますと、昨年の十一月八日あなたは戦端を切られたのであるが、あなたが十一月八日に、戦端を切るということを原田憲氏はよく知っておる。その原田憲氏が、坂田氏から聞いたのであるか、あなたが直接話されたのであるかわかりませんが、知っていると思われる証拠がある。それは原田憲氏から自由党の池田幹事長にあてた手紙があるのです。その手紙を読んでみるから、あなたは思い出していただきたい。「冠省 金曜日 朝打ち合せいたしました件にっき、日教組新聞編集局長石井より具体的に申し出をして来ました。六十万ほどの担保はあるが、三、四十万貸してほしいということです。坂田君は坊ちゃんで、よい人ですから、今日も私に幹事長のととろへ一緒に行って話をしてくれと言いますから、電話をしましたが、箱根行きと推察しましたが、留守のためにお会いできません。私は本日帰阪しまして、四日朝帰京する予定なので、坂田君に、日曜日にでも君一人で行って話をしろ、幹事長は心得てくれているんだからと元気づけておきましたので、月曜日に訪問すると思います。もし即日来なかったら幹事長から先手を打ってやって下さい。五十万渡してやっていただければ今後の動きについてやりやすいです。なお石井は八日に計画を実行します。万事手はずは整えました。」こういう意味の手紙を原田憲氏が池田幹事長に渡されております。そこで、これが原田憲氏がやった手紙触りとするならば、十一月八日にあなたが決行することを原田氏は知っておったはずです。池田幹事長にもそれを進言したはずだ。しかも、この金曜日というのは二十九日か何かです。日曜日というのは三十日か何かですが、決行する一週間触り十日前に少くとも坂田君はこれを知っておったはずだ。私は先ほどあなたにお尋ねしたのだが、そんな日まで言った覚えはないとおっしゃるけれども、原田氏の池田幹事長にやった手紙が其実の手紙であるとするならば原田氏は知っているはずである。原田氏が面接あなたから聞かぬとするねらば、坂田君から知っているはずです。そうでしょう。そうして、あなたは、坂田君だか原田君だか知らぬが、おそらくこの文面から見ると坂田君と思われますが、あなたは借款を申し込まれた。そしてその件について池田幹事長と原田氏、坂田氏ねりは相談を遂げておる。そしていよいよ万事手はずは整えた。八日に決起することが書いてある。それで、あなたが先ほど、原田や坂田は知っておるけれども、十一月八日に自分が立ち上るようなことを知らぬはずだ、こうおつしやったが、違いはしませんか。もう一ぺんお確かめいたします。
  132. 石井一朝

    石井証人 その話もしばしば聞いております。何か非常に貴重ね資料であるらしく、日教組の連中もしきりに私に言うのでありますが、私は真偽のほどは知りません。真実ならというお言葉でございましたが、一つ、真実であるかどうか、原田さんなり坂田さんなりにお聞き下さいませんか。私はそういうことは知らないのです。
  133. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私はここに現物の写真を持っておってあなたに今質問しておる。しかし、これが真実ねりやいなやは、あなたのおっしやる通り、あなたの問題では安い。これは原田君なり坂田君に聞いてみる問題ですが、あなたに確かめることは、この手紙を読んでみますと、とにかくあなたは坂田氏になり原田氏になり金融をお頼みになり、そして——それはまあ金はもらってもいいと思うんだ。あなたはいろいろ運動をなさるなら金もいるだろうから。ただ、それをあなたはもらわれたかどうか、金融を受けられたかどうか。坂田氏なり原田氏なり、あるいは池田幹事長——その前にちょつと聞きましょう。池田幹事長にお会いになったことがありますか。
  134. 石井一朝

    石井証人 会ったことはございません。新聞などでお顔は拝見しておりますが、会ったことはございません。
  135. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、坂田君なり原田君から、この手紙によると、あなたは何か借款を申し込まれているように見えますが、あなたはお金をお借りになったことがありますかどうか。
  136. 石井一朝

    石井証人 いろいろと金に困ったなどの話はしたことはございますけれども、別にちょうだいもお借りもいたしません。
  137. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、原田君の幹事長にあてた手紙を見ると、五十万ばかり渡してやってくれ、そうすると今後の動きについてやりやすいですと、こう書いてある。そうして、石井はいよいよ八日に計画を実行しますと書いてある。あなたは五十万円はもらわなかったわけだね。
  138. 石井一朝

    石井証人 もらわないのです。ですから、御心配のほどは、お調べになりたいと思われましたら、池田勇人さんなり原田さんなりにお尋ね下さいませんか。私は知りません。
  139. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたがもらったかどうか、それをお聞きすればいいのだ。そうすると、池田ねり原田なり坂田なりから金をもらったことがない……。
  140. 石井一朝

    石井証人 ありません。
  141. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それでは、借りたこともありませんか。あるいは、何らかの名義、この教科書問題その他に関係ない何らかの名義でも金を受け取ったことはございませんか。
  142. 石井一朝

    石井証人 はっきり申し上げておきます。そういう話が方々であるので、私は大へん迷惑しております。何か中野に家を新築したとかなんとか、五十万ですか、五十万が三百万になったり二百万になったり、区々ばらばらなんで、私は大へん一月分の株が上ったと思って喜んでいるのですが、そういう金は一銭ももらいません。
  143. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうしますと、原田君が池田幹事長にあてた、八日に計画を実行する、万事手はずは整えましたというようなことは、あなたは全然関知しないとどこまでもおっしやるわけですか。偽証になりませんか。大丈夫ですか。
  144. 篠田弘作

    篠田委員長 猪俣君、証人に偽証を言う前に、あなたの文書は個人の文書ですが、どうしてそれを立証されるか、それを説明されなければ、証人は答えられない。
  145. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは写真版がありますから、これを委員会に私は資料として出しておきます。
  146. 篠田弘作

    篠田委員長 石井証人に申し上げますが、二日間にわたっていろいろと証言を求めたわけでありますが、これまでの証言に関して意を尽さなかったと思われる点がありましたら、簡単にお述べ下さい。(「何をやれというのか、そんなことは必要ない」と呼ぶ者あり)今のような問題で……。
  147. 石井一朝

    石井証人 ただいま委員長からまことにありがたいお言葉がございまして、大体意を尽したと思いますが、加藤代議士が、私と会ったことを申し立てて、その間のやり取りをちょっと申しましたが、あれは大へんうそがございます。その点だけは言っておきます。(「一身上の弁明はおかしい」)そういう機会が与えられましたので、やります。加藤君との話し合いによりまして、私は事実を認めたことがないという言葉でございましたけれども、なお念のために、後日さようなことが起ろうかと思いまして、私は二人の会談を正確にメモに取っております。しかも実はテープ・レコーダーでも置こうかと思ったのですが、代議士に対して非礼であると思って、やらなかったのであります。加藤代議士は、この帳簿——ごれはどういうふうに処理したかという帳簿でございますが、この帳簿を持って一つ一つ当って、これはどうだこれはどうだと言ったら、今反証の材料はないということを言った。つまり、そういう事実は認められたわけであります。これははっきりしております。事実を認められたのであります。以上だけはっきりしておきます。
  148. 篠田弘作

    篠田委員長 石井証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。  証人には長時間にわたって御苦労でございました。  次会は来たる七月十三日水曜日午前十時より開会し、証人日本教職員組合教育文化部長佐藤幸一郎君より証言を求めることにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十七分散会