○
由井証人 教科書の定価の算出につきましては、
昭和二十八年八月の告示第百十三号で、
文部省検定済
教科書定価認可基準というのがございまして、今日この基準に基いて各
発行会社は定価をきめております。あるものによっては、この基準一ぱいに利用して
——利用というよりも、定価決定のために基準までいっておるものもあります。その例は、たとえば図画、工作とか、あるいは
地図帳の類でございます。こうした加色刷りを要するようなものは、やはりその限度までいっておりますが、活版一色ものとか、オフセット一、二色ものにつきましては、これは必ずしもその限度までいっておりません。そういう
意味では、この基準に基く限り
教科書は決して高くございません。これはつけ加えることになるかと思いますが、私は
教科書以外の雑誌、書籍も全部業務
局長として見てきておったのでございますが、
教科書は決して高くない。むしろ実に安い。この
地図帳がよく二百二十円でできますねと言われますが、それは
教科書だからでございます。頭を抑えられているからであります。そういう二百二十円なり、
高等学校ものでも二百六十円というのが一番高い値でございますが、これもページ数と色数から言って限度一ぱいであります。これを一般の市販ものとした場合に、とてもとても二百六十円などできるものではありません。おそらく三百五十円なり、三百八十円くらいの定価をつけなければならないのではないか。ただ、
教科書は、部数がどれだけとれるかわかりませんが、大体この
教科書であったらこれくらいの
採択部数がとれるであろうという想定のもとに定価づけをするのでございまして、ときにその部数が予定通りいきません場合には、
発行元の損失においてこれを措置しなければならない。こういう事実がございます。また、実際に定価をつけたよりも、予想よりも非常に部数がたくさんとれたというふうな場合には、そういう
意味では若干利益が出ます。その分だけの利益一〇%なりは定価の引き下げに持っていくことができます。
次に、かりに定価が高いというならば、どの辺で定価を引き下げることができるか、こういうことに対しては、もちろん当事者として考えております。その場合については、私は
錦会の
立場から申し上げますが、今日
錦会は四十三社でございますが、この四十三社の規模は比較的小さいのでございます。その売り上げにおいても、おそらく大きいところでも全体の中では八位とか十五、六位とかいうところが
錦会の
会員でございます。こういう比較的小
発行部数をやっている
会社におきましては、
展示会の見本本、これを
小学校、
中学校は全部
展示会に出すとすれば二千三百五十冊、
高等学校は千百五十冊、これは
展示会用のためまたは
都道府県教育委員会などに
研究用に提出するところの数でございますが、こうした数だけでも、実際その
採択数がかりに
小学校で二万三千五百冊とれた場合その一割が結局
展示会のために要する
費用で、これが宣伝販売費ということになるのでございます。あるいはその部数がたくさんとれれば、それが一割でない、
採択部数が倍になれば五%、さらに十倍になれば一%ということになるのでありますが、
展示会に出品するものも
発行元の
責任においてしなければならない。そのほかに献本がございます。
展示会川以外に出している献本というのがございます。この献本の数もなかなかにばかにできないのでございます。大体の大見当でございますが、
小学校が二万三千校、
中学校が一万五千校、さらに
高等学校が四千校前後。小、中においては
展示会以外にどうしてこのように献本をしなければならないか。問題は、
展示会に
先生方が来て下されば何も用はないですけれども、今日は、大体御想像がつきますように、遺憾ながら
展示会が十分活用されておりませんので、どうしても生徒をたくさん持っている
学校とか、あるいは
採択の可能性ある
学校に対しては献本をやる。こういうことも、考えれば非常にむだでございます。こういう献本などはなく、実際に公設といいましょうか常設の
展示会場で十分
検討していただけば、こういうむだも省けます。綿会においては、おそらくそういう献本も十分なし得ない
発行元もあります。というのは、
展示会の見本を作るだけでも相当なものでございます。たとえば、職業
家庭科などは三コースあるわけでありますが、この三コースを全部送るとしますれば、九冊ございます。そんな膨大なものを何校か、かりに五百校というようなことになりましても、たちまちうちに四千何百冊、こういうことになりますと、
展示会に出す倍前後の部数を献本として刷らなければならない。こういうことは、小さいところにとりましては非常にむだでございます。その他なお幾多の支出がございますが、そうしたむだが省けますならば
教科書は安くなる。さらに、これは
個々のいわゆる
展示会を含む宣伝販売でございますが、原価構成上から申し上げますならば、紙そのもの
——結局、この
教科書を作るには、御承知のように、組み、いわゆる製版、印刷、紙、製本、あるいは直接生産費として原稿料とか印税ということもございますが、そうしたものの占めるうちの紙は、戦前の情勢から推して、当時総支出の三〇%であったものが、今日は、これは私の
会社になりますが、四〇%になっております。そういう
意味で、まず何といいましても、この
教科書を一冊作るのにどの部分が一番金がかかるかというと紙でございます。それで、戦前よりもその比率は一〇%多くなっております。印刷とか製本料金というものは、時の流れによっておのおの、
——またその組合あるいは
会社の方針で一定の基準はございますけれども、昔のようにマル公というものが順守されておるわけではございませんので、おのおの
発行元との話合いできまっておるだろうと思いますが、あるいはこういう面においても印刷、製本、各担当
会社の話合いによってはさらに引き下るものかも存じません。大体原価の面から申し上げますならば、紙を主として、さらにこれに付随するものとしては、何回か前に申されたことではございますが、雑誌は特別運賃、いわゆる特運というものがございますのに、
教科書は年一回しか
供給のために発送をしないということで何らの恩典を受けておりません。こういうことなども、悪口を申し上げますならば、このごろはだいぶ不良本が少くなりましたが、本拠本も第三種ということになります限りにおいてはやはり特別の
取扱いを受けておりましたが、
教科書はそうした恩典に全然あずかっておらない。こういうことからすれば、
教科書も当然その恩典にあずかるべきだ、こう考えております。まあ原価構成上、あるいは今のは諸経費の中に入るかもしれませんが、そういう
意味で、原価構成上と、この
展示会あるいは
採択に関する
取扱い方法の整備、合理化によって、
教科書は、そういう
意味でむだが省けますならば、おそらく五%やそのくらい、あるいはもっと合理化すれば、政府のそういう国家補償でもございますれば、あるいはさらにその何%かは値下げができるのではないかと信じております。