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1955-06-27 第22回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十七日(月曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 篠田 弘作君    理事 佐々木秀世君 理事 田中 彰治君    理事 南  好雄君 理事 山中 貞則君    理事 山田 長司君 理事 神田 大作君       濱野 清吾君    松岡 松平君       山本 猛夫君    米田 吉盛君       塚原 俊郎君    徳安 實藏君       福井 順一君    井手 以誠君       高津 正道君    大西 正道君       小山  亮君  委員外出席者         証     人         (公正取引委員         会委員長)   横田 正俊君         証     人         (学校図書株式         会社社長)   川口芳太郎君     ————————————— 六月二十七日  委員福永一臣君及び荒舩清十郎君辞任につき、  その補欠として福井順一君及び徳安實藏君が議  長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小、中学校における教科書関係事件     —————————————
  2. 篠田弘作

    篠田委員長 これより会議を開きます。  前会に引き続き小、中学校における教科書関係事件について調査を進めます。直ちに証人より証言を求めることにいたします。  ただいまお見えになっておられる方は横田正俊さんですね。
  3. 横田正俊

    横田証人 そうです。
  4. 篠田弘作

    篠田委員長 この際証人に一言申し上げますが、現在わが国において小、中学校における教科書は多極多様にわたり、大小出版業者が乱立の結果、これが検定並びに採択に関しとかくの風評も生まれ、これらが学童並びに父兄に及ぼす影響を懸念し、世上大いに関心を抱いている向きもありますので、義務教育の本旨にかんがみ、これが真相を明らかにすることはきわめて意義あることと考え、本委員会本件調査に着手した次第であります。証人におかれましては率直なる証言をお願いいたします。  それでは、ただいまより小、中学校における教科書関係事件について証言を求めることになりますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なっております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が、証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあった者、及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあった者が、その職務上知った事実であって黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになっております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは三月以上十年以下の懲役に処せられることとなっておるのであります。一応このことを御承知になっておいていただきたいと思います。なお、証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものであるときは、その旨をお申し出願いたいと存じます。  では、法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。   〔証人横田正俊朗読〕     宣誓書  良心に従って、真実を述べ、何事もかくさず、また何事もつけ加えないことを誓います。
  5. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、宣誓書署名捺印してください。   〔証人宣誓書署名捺印
  6. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。まず委員長から概括的に証言を求め、次いで各委員から証言を求めることになりますから、御了承願います。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになっていてよろしゅうございますが、お答えの際には御起立を願います。  証人の略歴について簡単にお述べ願いたいと思います。
  7. 横田正俊

    横田証人 私は大正十二年に大学を出まして、以来ずっと司法部におりました。東京地方裁判所東京高裁大審院等の判事を歴任いたしました。もっとも、その間昭和六年から十三年までは司法省司法書紀官といたしまして民事局に勤務いたしました。それから、昭和二十二年に、ただいま勤務いたしております公正取引委員会に移ります風前に、やはり司法省にしばらくおりまして、その司法省から昭和二十二年の七月にただいま申し上げました公正取引委員会委員になりまして、昭和二十七年の二月に現職委員長になった次第であります。
  8. 篠田弘作

    篠田委員長 証人は、昭和二十七年六月七日、当時の教科書懇話会幹事長河村敏雄君並びに文部大臣天野貞祐あて教科書発行会社の不公正競争方法についてという文書を出しておられるようでありますが、その理由及び事実の内容を具体的に述べていただきます。
  9. 横田正俊

    横田証人 だいぶ古いことでございますので、記憶違い等があってはならないと思いまして、いろいろ書きものにいたしましてただいま手元に持って、おりますが、それに基きまして陳述いたしてよろしゅうございますか。
  10. 篠田弘作

    篠田委員長 よろしうございます。
  11. 横田正俊

    横田証人 二十七年にただいま仰せられました警告を発するに至りました事情を少し詳しく申し上げます。  この問題は、そもそも昭和二十七年の五月、当時の教科書懇話会幹事長河村敏雄氏、副幹事長金井英一氏、同じく水谷三郎氏の三氏から公取に対して陳情があったのでございます。その要旨は、教科書発行会社間におきまして、特に一部の発行会社教科書採択をめぐりまして過度の売り込み競争を行い、教科書業界を撹乱し、多大の悪影響を及ぼしておる、ついては、独禁法上の不公正な取引方法に当るのではないかと思うが、もしそうであるならばその面から取締りをしてほしい、こういう要旨でございました。当時この三氏から公取事務局に話のありました概要を申し上げますと、御承知のように、検定制度になりましてからは、検定を通りました教科書はすべて採用せられる、もしこれが採択ということになりますれば、いかなる会社の作りましたものでもこれが採用になるというような関係からいたしまして、即常に発行会社の数がふえて参りまして、たしか当時で七十八社——最初は七社くらいのものが、だんだんにふえまして、ついに七十八社というような飛躍的増加を見ましたし、需要部数にいたしましても実に二億——たしか当時のことでは二億三千ということに話があったと聞いておりますが、二億三千にも及ぶ、こういうような関係がございまして、これらの業者のうちには、いわゆる次代をになう学童が使用する教科書発行するという公益的な観念がむしろだいぶ薄れまして、いわゆるただ売らんかなの、手段を選ばない売り込み競争を起すというようなことで、これは業界を混乱に陥れるばかりでなく学校側にもいろいろ迷惑をかけておる、そこで、教科書懇話会といたしまして、これらの不当な売り込み防止するためにいろいろ研究をいたし、教科書出版に関する倫理綱領というようなものを作って、いろいろ自粛自戒に努力し、また監督官庁である文部省に対しても、そういう悪弊の防止方につきまして陳情を何べんか行なっておる、しかるに、この懇話会話合いというものは、単なる業者間の話合いであるために、何らの規制力がなく、どうも成果があがらない、もしこれが独禁法上の問題ということになるならは、やはり公正取引委員会に乗り出してもらって、何らかの手を打ってほしい、こういうことでござていました。  そこで、委員会といたしましては、さっそく、こういう問題につきまして、果してこれが独占禁止法上の問題になり得るかどうかということについて一応の検討をいたしました結果、これはその後多少法律が変りましたが、当時の法律で申しますと、いわゆる不公正な競争方法という中に、事業者が不当な利益または不利益をもって自分競争についての顧客を自分の方に取引をするように勧誘をしたり強制をするということが一つの不公正な競争方法として独禁法違反ということになっておるのでありますが、ただ、この教科書の問題は、今の規定そのままの表面から申しますと、いわゆる教科書の場合は、需要家と申しますものはせんじ詰めますれば学童あるいは父兄ということになるかもしれませんが、それに直接に働きかけるのではなく、いわゆる採択あるいは選択権限のある者に向っていろいろな売り込み競争を行なった結果、自分の商品を学童に売りつけるという形でございまして、普通のよく行われております需要者に直接働きかけるものとはちょっと違った面がございますが、しかし、この規定の精神を解釈いたしますれば、やはりこれに該当するというふうに解釈し得ると考えました結果、この問題は公正取引委員会で取り上げることにいたしまして、まずその前提といたしまして、教科書検定方法展示会制度採択方法採択権限所在、あるいは発行供給方法等、その前提となりますいろいろな面の制度上の問題の調査、それから発行会社販売宣伝方法、その内容、ことに、駐在員というものがあっていろいろな活動をしておるようでございましたので、駐在員の資格とその活動状況というような問題の実態調査を始めたのでございます。この調査方法といたしましては、大体主要発行会社営業担当の部長、課長クラスにつきまして、当委員会事務局で直接いろいろ聞いたのでございます。  この調査の結果によりますと、各社とも、宣伝販売方法といたしましては、展示会に見本を出品する、これは法律の定めました正当なる売り込み方法でございますが、学校側自社発行の目録、定価表の印刷したもの、あるいはその他のパンフレットなどを配布しておる。また、当時発行部数の多い発行会社や急激に採択部数の増加したような会社について見ますると、いずれも駐在員、参与、嘱託というような名義をもちまして、各府県の有力な元小学、中学校長などを採用いたしまして、教科書宣伝販売に従事さしておるというようなことがわかって参りました。この駐在員は、本来から申しますれば、自社採択部数の正確な報告あるいは教科書内容の批判、地方教員の要望などを本社に連絡することがむしろその業務の本来の姿であろうと思います。これらの点につきましては大した問題はないのでございますが、実際には、その限度を越えまして、学校側採択関係のありまする教員、さらには教育委員会に対して積極的な運動を行いまして、教科書採択かなりの成功をおさめておるらしく見えたのでございます。ことに、この駐在員のうちには現職教育委員県会議員市会議員指導主宰など採択に再要な影響力を持っていると思われる人が相当数おることが判明いたしたのでございます。また、発行会社は、主としてこれら駐在員を通じまして、毎年、展示会の間近になりますると、教育研究会工場見学等の名目で東京招待をいたしまして、旅費、宿泊料持ちで各種の招待供応を行いましたり、あるいは近県の温泉地採択委員である教員学校長などを招待いたしましたり、また、いろいろな種類講習会開催して、多数の教員を集めて宣伝し、おみやげや記念品を贈呈するというようなことも大体わかって参ったのでございます。当時、発行部数が増大いたしました発行会社について見ますると、この採択増加原因は、もちろん必ずしも今申し上げましたようなあまりおもしろくない売り込み方法ばかりによってのみこういう成果があがったとは思わないのでございまするが、しかし、これらの運動かなり効果があったと判断いたしますることは、大体間違いがないところであろうと思うのでございます。  そこで、一応この程度調査である程度の心証を得たのでございますが、もしこれを独占禁止法上の非難事件として正式に取り上げますことになりまするならば、なお、先ほど申し上げましたように、これは主として発行会社側担当者からいろいろな資料を集めたのでございまするが、さらには進みまして学校側校長先生というような方面までも調べて、かなりはっきりした事実の認定の上に立って事件を扱わなければならぬことになりまするが、そのためには相当の期間が必要でございまするし、また、問題の性質上、学校当局者に対していろいろなそういう手を伸ばしますることは、学生、生徒に及ぼす影響という、ようなことも十分考える必要がございましたし、また、ちょうどこれは二十七年の五月から始まったことでございまして、御承知のように、ちょうど来年度の教科書展示会開催の間近でもございましたというような点、あるいは、この問題は、もちろん業者の行き過ぎはございますが、制度そのものにもいろいろな問題点がございますというような点から考えまして、審査事件としてそういう厳格な調べを進めますよりも、ここで公取として何らかの意思表示をいたしまして、それをこういう弊害是正の方に影響せしめる方がむしろ妥当であるという結論に達しました結果、先ほど問いのございましたように、まず第一に、教科書懇話会に対しまして、そういうおもしろくない売り込み方法自粛するようにという一般的な警告を発しますると同時に、他方文部省に対しまして、こういう警告をやったということと、これはやはりいろいろ制度上の問題も含まれているようであるから、十分すでにその点は検討されていることとは思うが、十分に御検討を願いたいということを申したのでございます。  大体二十七年の警告のいきさつはそういうことであります。
  12. 篠田弘作

    篠田委員長 昭和二十九年六月二十八日付をもって、証人は、文部大臣大達茂雄あて教科書発行供給に関する不公正取引方法についてという申し入れ文書を出しているようでありますが、特に左の点について御説明を願いたいと思います。まず第一に、教科書採択の自由を阻害している根本原因はどこにあると考えられますか。
  13. 横田正俊

    横田証人 昭和二十九年六月の文部大臣に対しますこの申し入れは、これと同時に発行会社特約供給所等にもいろいろの申し入れをいたしましたことと並びましていたしたものでございます。主として、文部大臣に対しましては、制度上の問題といたしましていろいろ御研究を願いたいということを申したのでございます。その中に、結局採択の自由ということがわれわれの研究の結果非常に重要なことでございまするし、またそれがいろろいろ阻害せられているような向きがございましたので、特にその問題を申したわけでございます。  ただいまお尋ねの採択の自由をはばむ根本原因は、先ほど申しました業者の不当な売り込み競争ということも一つではございまするが、他方、この警告申し入れをいたします前に聴聞会を開きましていろいろ検討いたしました結果によりますと、特約供給所等の本来供給の面を担当すべきものが採択の面に結びつきまして、そこに採択供給との一種の結びつきができまして、その結果自由な採択がゆがめられているのではないかという疑いが非常にございました、この点がやはり自由をはばむ根本原因一つでございます。しかし、制度的に考えて参りますと、そもそもこの教科書検定制度は、御承知のように臨時措置法というような法律を根拠にいたしておりまして、きわめてその規定も簡単でございまするし、その内容もはなはだ不明確な点が多いのでございまして、ことに採択の責任の所在かなりはっきりしておらないのでございます。ことに採択、さらに詳細に申しますれば、その前提となりまする選択をだれがやる、どういうふうにやるというようなことにつきましても全然規定がないわけでございまして、結局採択選択との関係の不明確な点、従いまして、採択方式というものが中央地方によって非常にまちまちになっておるというような点がやはり根底にございまして、それが先ほども申しました採択供給との間の結びつきというような原因にもなりまして選択の自由がはばまれておるのではないかと思われましたので、文部大臣に対しましては、特にそのあとの制度的な点についての整備をお願いしたいというような趣旨で申し入れをいたした次第でございます。
  14. 篠田弘作

    篠田委員長 ただいま、採択供給との結びつきによって自由な採択をはばむというふうに申されましたけれども、教科書採択供給制度の面で、それではどういうふうに改革したならばいいかということについて、何かお考えがありましたら述べていただきたい。
  15. 横田正俊

    横田証人 これは実は重要な問題でございまして、何かお役に立つようなことが申し上げられればいいのでございますが、実は、私個人といたしましても、また公正取引委員会といたしましても、抽象的にこれをどうすることが好ましいことであるかということは申し上げられません。さてそれではどういう具体的な形にして現わしたらよいかということになりますと、非常にむずかしい面がある、ように思うのでございます。たとえば、一例をあげますれば、いわゆる特約供給所の問題について申し上げましても、これが現在各府県におきまして一ヵ所の場所が相当ございまして、むしろ一特約供給所というのが原則のようになっておりますが、複数制のところがございまして、この一つがいいか複数がいいかということは、単純にわれわれの独占禁止法のような考え方立場から申しますと、複数供給所がございましてそこで公正なサービス競争を行なってくれるということが望ましいようでございます。しかし、複数供給所がございます場合に、これがいわゆる公正な立場競争しておればまことにけっこうでございますが、もしそのうちの一つ特約供給所採択面の方に組織的にあるいは種々の行為的な行為によりまして結びついておるということになりますと、二つあることがかえって自由な選択に支障を来たすというような面が出て参りますので、この点は、ただいまの一例を申し上げましても非常にむずかしい面があるようでございます。また、この教科書採択前提となりまする選択の問題につきましても、これは、一つの理想から申しますれば、この教科書を使って子供を教えまする末端の先生の良識のある選択に従いまして採択が行われるということが最も好ましいようではございまするが、しかし、諸般の点から考えますると、やはりブロック別と申しまするか、ある程度一つのかたまりとなりまして、この採択問題を大いに協議した結果、共通のものを採用するというようなことも、いろいろな面で非常にいい点があるようでございます。また、不当な売り込み競争防止というような面から申しましても、個々のそういう組織的な一つ選択方法なり採択方法が採用されて参りますると、売り込み競争効果というようなものが相当減殺されてくるというような面もございますので、その採択方式につきましてもいろいろの問題が実はあるように考えられます。私といたしまして、この問題をどういうふうにすればいいかということにつきましては、大体の方向は先ほど申し上げたようなことでございまするが、はっきりしたことを申し上げるだけの準備がまだできていないのでございます。
  16. 篠田弘作

    篠田委員長 証人警告に対して文部大臣はいかなる措置をとったか、文部大臣のとった措置に対する所見を一つ述べていただきたいと思います。
  17. 横田正俊

    横田証人 二十七年にやりました警告に対しましては、文部大臣文部省当局におきましても、かなりいろいろ申し入れ内容検討されました結果、当時業者の一親睦団体でございました懇話会教科書協会という社団法人組織のものにまで高めまして、さらに、各府県教育委員公等に対しましても、業者の不当な売り込み競争に乗ぜられないようにというような点で種々積極的な指導を行なってこられたように聞いております。また、その指導の結果でございましょうか、先ほども申しました駐在員につきましても、その地方の有力な人を、ことに採択方面関係のあるような有力な人を置くというようなことがほとんど影をひそめてなくなってしまったというような面が見えまするし、また、一時のような非常に派手な売り込み競争というものもだんだん姿を消しましたことは、これは、単に文部当局の尽力ということだけでなく、もちろん業界のその点についての自粛というものがあるのでございますが、しかし、この面におきます文部当局のいろいろな努力は高く買わなければならぬと思います。しかし、何と申しましても、現在におきましてもやはりそういう傾向がございますことは事実でございまして、この点につきましてなお文部当局としても打つべき手がいろいろあるのではないかと考えます。ただ、二十七年と二十九年の双方を通じまして、私どもといたしましては、そのよって来たる根本教科書採択配給に関しまする基本の法律制度組織そのもの検討されて、ここに、臨時措置法というようなものではないところの、もっとはっきりしたものを作っていただきたいというのが、あの二回にわたる申し入れの念願でございました。この面につきましては、たとえば展示会開催というようなものにつきましては、かなり改善の跡が見えるようでございます。その他の面につきましては、なおいろいろめんどうなむずかしい問題がからんでおるとは思いまするが、この点についての検討はなお結果が出ておりませんことは、私といたしましても非常に遺憾に存じておる次第でございます。
  18. 篠田弘作

    篠田委員長 証人は、昭和二十九年六月二十八日に、教科書供給協議会全国連合会幹事長今井兼文並びに佐賀県教育図書株式会社外九社に対して、教科書発行会社の不公正取引方法についてという文書を出したことがありますか。あるとすれば、その内容について述べて下さい。
  19. 横田正俊

    横田証人 先ほどちょっと触れましたが、文部省に対しまする申し入れと同時に、ただいまお問いにございましたような警告教科書供給協議会全国連合会幹事長並びに、この連合会に加入しておりまする特約供給所が十二ほどございますが、その十二に対しまして、出ましたことは事実でございます。  これを出しますに至りました理由は、先ほどもちょっと触れましたように、特約供給所が一ヵ所でございます県につきましては問題がございませんし、また二カ所以上ありまするものにつきましても、地域をお互いにきめておりまする場合や、あるいは配給すべき教科書種類を異にいたしておりまする場合には、これは実質的には一ヵ所の供給所がある場合と同じでございまするが、複数教科書がございます場合にいろいろの問題が生じておるのでございます。そのよって来たりまする原因は、えてして供給所は独占的な地位になりがちなものでございまする結果、そういう地域におきましてはいろいろな不都合が出ておりまするので、あるいは学校側先生方、あるいはPTAというような方面からしても、そういう供給所だけでは困るというようなところからいたしまして、いわゆる新興供給所がぼつぼつと出てきておるわけでございます。これは、一つは毎年供給の経営が悪くあるいは金融等関係から没落して参りますところに新しく出て参りますものもございまするが、また、あるいは特殊の特定の出版社とのつながりからいたしまして、ある地域にそういう新興のものが出て参ることもございます。一番問題になりましたのは、御承知のいわゆる学生協関係のものでありまして、その学生協が、ただいま申しますようないわゆる供給所の独占的な不当な地位に対しまして、独自の立場から教科書供給を始めるというこの動機はまことにけっこうでございまして、われわれのいわゆる競争というものを大事にいたしまする面から見ますれば、そういう点はまことにけっこうな考え方であったわけでございます。ところが、残念なことに、この先生方供給所というものが結局教科書採択面につながっておりまする結果、どうも先生方自身が供給をなさるということはおもしろくないのではないかということから、すでに昭和二十七年に文部省から学生協自体にそういうものを扱うことは好ましくないというような警告がございました結果、この学生協に始まりました供給所は現在は御承知のようにすべて株式会社あるいは有限会社の組織になっておるのでございますが、しかし、この点につきまして、昭和二十八年度中に福岡、佐賀等におきまして聴聞会を開きまして、いずれも数十人の各種の人を公正取引委員会で調べました結果によりますると、やはりこのできました会社というものは、組織の上から申しましても、その後のいろいろな動きから見ましても、実質的におきましては学生協時代とあまり変っておりません。その結果、この供給所を通しまする採択というものがやはり曲げられておるのではないかという疑いを持ったわけでございます。つまり、教科書というものは、先ほども申しますように、先生自分の良心に従って選択をする、ここが本来の行き方であるわけでございますが、それが業者先ほど申しましたような不当な勧誘によってそれが設けられるということが、一つの非常におもしろくない面でございますると同時に、採択を行いまする者がある種の特定の供給所とのつながりにおいて採択をいたすというようなことになりますれば、やはりこれは一種のゆがめられた採択と言わざるを得ないわけでございまして、この点におきまして、いろいろな批判がこう聴聞会で出て参ったわけでございます。発行会社から申しますれば、採択につながりのある供給所を利用しまして自分発行しまする教科書をいやがおうでも売り伸ばしていくということになりますし、供給をいたします供給所の側から申しますれば、その会社のものをいやが上にも売り込むことによりましていろいろな供給所の収益、あるいはその下の機関でございます取次所あるいは供給所の出張所というようなところを通じましていろいろな収益が上って参るというようなことは、本来の教科書採択あるいは配給のあり方としましてあまりおもしろくないように思われましたので、この聴聞会の詳細な調査の結果に照らしまして、先ほど申しました二九年六月二十八日に教科書発行会社に一これは先ほど申し落しましたが、まず発行会社に対しましてはそういう採択とからめたようなことをしないようにということを申しまして、それから、供給所側に対しましては、連合会並だにアウトサイダーの個々の供給所に対しまして、そういう採択供給というものとを截然と分けたようなやり方としてほしいという趣旨におきまして警告を発した次第でございます。
  20. 篠田弘作

    篠田委員長 委員長よりの尋問は一応この程度にいたしまして、これより委員の発言を許します。  その前に委員諸君に申し上げますが、現在横田証人に対する発言要求も相当数ありますし、午後から二名の証人を喚問しておりますので、努めて重複を避け、大体一人の委員が十五分程度のご質問にお願いしたいと思います。  濱野清吾君。
  21. 濱野清吾

    ○濱野委員 私は十五分を必要といたしません。  先ほど証人のお話では、文部省にも警告を発し、会社にも、さらに他の団体にも採択並びに供給に関して警告を出したそうでありますが、正直のところ、今日でもまだ不正取引が行われているといううわさがもっぱらでございます。証人の見るところでは、先ほどちょっと触れたようでありますが、今日でもあるかどうか。この点、抽象的でよろしいから、証言を願いたいと存じます。
  22. 横田正俊

    横田証人 この二十七年の警告は、いわゆる売り込みの問題についてでございますが、この点につきましては、その後公正取引委員会といたしまして最近の事情は実は調査をいたしておりませんので、正確なことは申し上げられませんが、しかし、いろいろ聞くところによりますと、かなり是正はされておるようではございますが、なお潜在的にいろいろな売り込み方法がとられておるというようなことも聞いておりますし、あるいは編集に当る面の関係の方が採択の方の人に働きかけておるというような面があるということも、これは二十八年の公聴会、聴聞会の場合等にも見えておりまして、先金にこれが是正されておるとは考えておりません。
  23. 濱野清吾

    ○濱野委員 聴聞会並びに公聴会等においてこういうことを聞かなかったか証言願いたい。採択供給等はもとよりの話でありますが、それに関連して、図書を作る過程まで含めた大きな範囲において、ある会社等においてはただ売らんかなの一点張りの方策をとっているというようなうわさがもっぱらでございますが、証人はそういうことを聞いたことがあるかどうか。
  24. 横田正俊

    横田証人 ただいまも申し上げましたように、最近の事情につきましては詳細な調査をいたしておりませんが、そういうことは事務局の方で耳にはいたしておるようでございますが、どの会社がどういうことをしているというような具体的な事実はまだ把握しておらないだろうと思います。
  25. 濱野清吾

    ○濱野委員 もう一点お聞きしておきます。先ほど採択供給に関連して、地方の各会社駐在員、あるいは嘱託、参与というもの、地方のきわめて有力なる市会議員であるとか、あるいは教育委員であるとか、はなはだしきは現職の人々もこれに関連している疑いが十分あるような御発言がありました。そればかりではなしに、全く今日の教科者は公共性を失うて、そうして売らんかなの、むしろユダヤ式の取引が十分行われているといううわさがもっぱらであります。しかも、売らんかなの商業政策は文部省にまで食い入って、そうして採択供給、その他また教科書を作るときの基礎条件にまで会社の人々が官庁にもぐり込んで計画をしているということさえ伝えられておるのでありますが、そういうことは証人は耳にしませんでしたかどうか、その点お伺いします。
  26. 横田正俊

    横田証人 この点も、実はうわさといたしましていろいろ聞いておることもございますが、先ほども申し上げましたように、発行会社とそういうような特殊の関係につきまして特に公正取引委員会で調べたことはございませんので、具体的にどういうことが問題になっておりますか、私としては存じておらぬ次第であります。
  27. 濱野清吾

    ○濱野委員 それでは、もう一点お尋ねいたしますが、検定基準をする場合、検定基準は御承知の通り三項目に分れているのでございます。第一は、教育基本法、学校教育法の目的と一致しているかどうかというようなことを調べるそうであります。第二は、特定の政治、宗教に片寄ってはいないかというよりなことが本を作るときには検定基準として注意されているようであります。さらにまた、第三は、各教科の指導目標と一致しているかどうかというようなことがきめられているそうであります。この指導目標というところが今非常に問題の中心になっておることでありまして、指導目標をどう作るかということが、教育界のためにも政治的にも非常に重大な影響があることは御承知の通りであります。しかるに、売らんかなの資本がこういう中枢の中にもぐり込んで一つの作為的な計画を行なっておるといううわきがもっぱらでございます。しかも、指導要領というようなものがここで作られて、これらの人によって決定され、それが採択にまであるいは影響しておるというようなことを私どもは聞いておるのでありますが、もしまさにそうだとするならば、国家の一大事であると私どもは考えておるのであります。しかも採択とか選定とかいうことにかかわる、ここまでユダヤ的な思想が突入しておるというようなことを私ども聞いておるのでありますが、証人はこの点お聞きにならなかったでしょうか。
  28. 横田正俊

    横田証人 検定の問題につきましても、当初この問題を取り上げまする際にはいろいろ研究はいたしました。しかし、ただいまお示しのようなことに現在検定の基準をめぐりまして実際の動きがなっておるというようなことは、私としては存じておりません。
  29. 濱野清吾

    ○濱野委員 教科書は国の最も大事なものでございまして、しかもこれに対する供給とか採択とかいうようなことは、公正取引委員会においても十分注意しなければならぬことだと私は考えております。そのためにこそ警告も二回に及んで発せられたということを承知しておりますが、むしろそれ以上鋭くユダヤ思想がここに食い入っておるというようなことまで御探求を願えば非常にけっこうだったと思うのであります。  私は、この程度で私の発言をとどめまして、いずれ機会を得て申し上げたいと思います。
  30. 篠田弘作

    篠田委員長 山中貞則君。
  31. 山中貞則

    ○山中委員 前提といたしましてお尋ねをいたしておきますが、二十七年の第一回の警告を発せられました場合は、主として販売面の、すなわち発行会社についての警告、第二回は供給採択面の不当なるあり方に対する警告、そういう角度をもっておやりになったものと了解してよろしゅうございますか。
  32. 横田正俊

    横田証人 大体おっしゃる通りでございます。
  33. 山中貞則

    ○山中委員 ではお尋ねいたしますが、第一回の警告に関連をいたしまして、教科書発行会社販売競争に関しまして独占禁止法違反事件を摘発したことがおありかどうか、お尋ねをいたします。
  34. 横田正俊

    横田証人 その点につきましては、先ほども申し上げましたように、昭和二十七年の方針は、警告によってその目的をすみやかに、できるだけ早く効果をおさめたいというところに力点を置きました結果、ああいう警告の形になりまして、事件としまして取り上げておりません。その後、この問題につきましては、いわゆる独占禁止法違反事件としての中で審判開始をいたし審判手続を経て審結をするというような正式の手続をとっておらないのでございます。もちろん、この問題につきましては、先ほども申し上げましたように、文部省の当局よりもいろいろ誠意をもっての申し出がございまして、その警告後われわれがいろいろ調査をいたしました後に文部省といろいろ折衝がございましたが、その際にも、文部当局より、この問題はいわゆる特殊の問題であって、学童等に対する影響も非常に大きいから、これは文部省にまかせてくれといったってのお話もございましたので、われわれといたしましては、一応その問題を文部当局におまかせいたした形できておったわけであります。従いまして、現実の問題といたしまして審判開始をいたすに至っておりません。
  35. 山中貞則

    ○山中委員 今後のこともありますので、証人に申し上げておきますが、証人はどうも文部省を過大評価しておられるようであります。証人のおっしゃるような、少くとも第一回の警告にあった販売面の会社に対する文部省の権威などというものは全く皆無にひとしいのでありまして、肝心の文部省が直接、間接において責任を負うべき第二回の勧告の重点である供給採択面措置についてすら、文部省としてはせいぜい好ましくないという表現しかできないような役所なんである。従って、この問題を今後放置されるお気持はないでありましょうから、今後やられる場合においては、そういうように文部省がまかしてくれと育ったからと言って、あなた方は法の立場において厳正にそれを進められる委員の方々でありますから、文部省そのものの力は皆無であるということを前提にしておやりにならないと、皆様方のせっかくの御努力は社会面において全くの効果がないということを私は申し上げておきたいと思う。その証拠には、先ほど証人からもお話がありましたが、当初七社くらいであったものが、すでに第一回の警告を出されたときには七十八社にもふえるという事実でありまするし、現在はそれが九十数社にふえておるのであります。従って、そのようにふえていくことは、反町文部省のそれらの面に対する制約とかあるいは意見とかいうものが全く反映されないということである。あるいは、会社の方から言うならば、教科書販売会社というものは実にけっこうな会社である、おれも一つ少し何とか金をためて作ってみようか、あるいは、やりくりして会社を創設しよう、そうして、何とか文部省に食い込み、あるいは地方で激烈なもぐり競争に耐え得られれば、相当ぼろいもうけである、こういう考えが浸透しているということを、あまりに雄弁に物語っていると私は思うのであります。従って、このような傾向を、少くとも直接法的な影響力を持つ立場にあるあなた方が、現状のままでその推移を見守られるといたしますならば日本の教育の将来にゆゆしい事態を引き起してくる心配が多分にあると私は思うのであります。もし、こういう事態を、今御証言になられましたように、文部省を信頼して、摘発した事実はないという態度を今後も続けていかれまするならば、少くともこの問題に関しまする限り、あなたの公正取引委員会の存在の意義もなければ、あるいはまたその法的な効果ももちろん社会に現われてくるはずはなく、この面に関する限りは、あなた方の存在は無意義だと、かように私は断定せざるを得ないのであります。この二十七年の警告の重点である会社販売競争があがって、警告の発せられた事実があるにもかかわらず、依然としてそのような不当な傾向が進展しつつあるという事実について、証人は、文部省というものを信頼しないという前提において今後いかなる角度と態度をもって進まれるか、お伺いしたいと思うのであります。
  36. 横田正俊

    横田証人 この問題は、実は公正取引委員会といたしまして真剣に考えなければならぬ問題であると私自身も考えております。ただ、本日証人として上りまして、この問題につきまして公正取引委員会の今後の態度につきましていろいろ申し上げることもどうかと思いまするが、私の個人の考えを申し上げますならば、一応文部省におまかせをしたというような経緯にございまするが、依然としていろいろな面で改められないということがはっきりいたして参りますれば、公正取引委員会といたしましても、その職責の範囲内におきまして適当な手を打たざるを得ないというふうに考えております。
  37. 山中貞則

    ○山中委員 さっきから申し上げておりますように、文部省ではだめだと申し上げている。だから、あなたとしては、過去の第一回の警告文部省というものを信頼してその措置を一応終られたわけでありますから、今度は新たな段階で、文部省ではこの会社供給面に善意の方向をとらせることはできないものだということを前提にして、少くともこの大きな問題の解決に協力していただきたいと思うのであります。でありませんと、いたいけな童心に及ぼす影響もさることながら、教育に携わっている人々はほとんど純心な先生方であります。その先生方を、会社のみずからがもうけんがための不正なる競争によって、あまりにも幾多の事例が示しておりますように、転落せしめておる、教科書会社の出張招待を、自分たちの立場から考えてまことにありがたいことだと受けて、純粋に旅行に出かけた人たちが、帰り着いてみたならば門には検察庁の人が待っておったというようなことも具体的に例があるのであります。でありますから、こういうことは放置することなく、積極的な態度でもってお進めを願いたい。それが日本教育のためにあなた方の立場として果していただく少くとも義務でなければならぬ、かように私は考える次第であります。  次に、第二点の供給採択の面について話を進めて参りたいと思います。先ほどから触れられましたので、重複する点を避けて参りますが、私は、この生活協同組合というものが、単に先ほど指摘されましたように数県ないしは十県程度の散発的のものでなくして、全国的なる規模においてある意図をもってこれが進められているものであることを十分御承知願いたいと考えるのであります。それは、一つの具体的なものを申し上げますると、「学生協教科書供給取扱に就て」という全国学生協連合会においての決議がございます。それは簡単でございますから読んでみますと  一 本年六月二十八日、地方学生協教科書供給取扱をする場台、中央に於てこれが指導と援助をすることを決議して、全国地方学生協に指令した。   爾来全国各地の動きは頓に活溌となつた。  二 指令内容   1 展示会前に県指導課に依頼して「教科書供給状況」の調査をすること。   2 供給業者に完全供給の誠意なきものと認めて、学生協発行者と交渉して取次、特約に代つて、契約を進め、内諾した発行者の教科書展示会に於て推薦すること。   3 授業に支障を来たさないよう完全配給を期すること。   4 従来の欠点    ○供給業者に屡々警告したにも拘らず、国定時代の夢がさめず業績は依然改善されていない。    ○供給状況が悪い実例を挙げること。    ○前金払を学校当局に要求している。    ○とりかえ、不足に応じない。    ○学校内の集金は全職員を過労に陥れている。その上何等の報酬を支払っていない。                以上 こういう内容でございます。これの意図するところについてはおわかりになったと思いますが、これは全国的な指令というものによって動いているということである。従ってまた、その企図として、そのねらいとして何をねらっているかがここに明らかに浮び上ってくるわけなのでありますが、それは、その当時において年額約百億に上ると思われ心教科書の売り上げに対しまして、手数料の占めまする比率が、御承知でもありましょうが、取次と供給と特約とを含めまして約一六%に上ります。その膨大なる手数料というものに対しまして、この学生協の組織といいうものは明らかにこれをみずからの手に掌握せんとしたねらいがまずあるのでありまして、これはすなわち業界といたしましては独占禁止法に該当する独占を意図していることは明瞭であります。次に、その考えておりまする点は、具体的な方策として、既存書籍商を締め出す、こういうことがねらいなのであります。従って、そのスローガンとしては、教科書配給の民生化ということを表面に押し出しまして、何らこれに抵抗できないスローガンのもとに既存の弱小書籍業者がこの膨大なる全国的なる規模の組織によって押しまくられている。このようなねらいが具体的に現われてきているわけであります。しかもまた、反面において、最も好都合なことに、現在の法によりましては配給書店の選択は出版が別個にそれぞれ各自にやってさしつかえがないことになっていまするから、このような法の立場というものを前提にして考えた場合に、この学生協の全国組織を持つ力というものはまさに偉大なものである。言いかえるならば、教科書販売供給機構というものを全く一手に掌握するだけの力を持った圧倒的なものである。かようなことを私は思うのでありますが、その現われました影響一つとして、いろいろございますがここには松山市の教科書供給業者一同の教科書問題について県下PTA、教育委員の皆さんに訴える文書があります。内容は煩雑でございますから詳しくは申し上げませんが、この自由な制度を認めて、自由に販売されるべきであるにかかわらず、この学食協のような強力なる組織団体ができ上ったために、既存の自由販売を旨としております既存業者がいかに圧迫されたかということを父兄に訴えるとともに、さらにまた、その団体によって一方的にそれが占められたために起ってきます現象として、教育的にこれらの人々が心配をいたしておりますることは教科書の選定が非常に片寄ったへんぱなものとなる、そして内容のよい価格の低廉なる教科書を子供に与えることが漸次できなくなってくるおそれがある、かようなことを教育委員並びにPTAの人々に訴えておるのであります。そのおしまいの方には、表を加えまして、当初二十五年度において既存業者だけで二十二万五千冊扱っておったものが、だんだん圧倒されまして、しまいに六万九千冊しか扱えなくなり、一方において学生協の方が十五万六千冊も扱っていく、このような、全く業者としては教科書供給面においてみずからの生業というものを全然成り立たせられないような立場に追い込まれておることが示されておるのであります。   〔委員長退席、佐々木(秀)委員長代理着席〕 さらにまた、例をあげまするならば、先ほども若干指摘をされたようでございますが、山口県あるいは愛媛県、あるいは佐賀県、秋田県等においてもその具体的な顕署な例が見られるわけでありますが、たとえば、愛媛県等におきましては、教科書の扱い数量が売り上げ総額一億に上ります。従って、この学生協団体が一括してこれを強力な力によってさばくといたしまするならば、推定手数料が、特約、取次両方を合せまして一六%に及びますために、金額にして一千六百万円というものがその学生協という協力な組織の中にほとんどむぞうさに流れ込むという現象さえ呈しておるのであります。もちろん取引委員会におきましては佐賀県その他の十県について処置をされたようでありまして、その内容についても御承知でありましょうけれども、文部省が第一回のあなた方の出した警告に基きまして次官通牒を発しました後、それらの人々は、表面においては、好ましくないというその表現に順応するために、その組織を変えまして、株式会社にいたしております。しかしながら、先ほども御証言下さいましたように、その内容というものは、株式の持ち工合あるいは構成の機構、人事その他の面において、全く名前を変えたにすぎない同じような性格のものであって、しかもそれは現状いまだにそのまま続けられておるというのがその実情であります。といたしまするならば、あなた方としてはもちろんそのようなことは御承知の上の措置であったろうと思いますが、このような現状というものをいかに認識しておられるかをお伺いしたいと思います。
  38. 横田正俊

    横田証人 その点につきまては、二十八年に調べまして、その後注意はいたしておりまするが、ただいま質問されましたようないろいろな具体的な問題につきまして、果して私どもの方の事務局で心得ておりますかどうか、ここではっきり申し上げることはできませんが、なおそういう新しい動きにつきましても今後十分注意して参りたいと思います。
  39. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 山中委員に申し上げます。大体お願いしました時間が参りましたので、結論をお願いいたします。
  40. 山中貞則

    ○山中委員 先ほど読み上げましたこの学生協連合会の決議、これで、自分たちが発行者と交渉して、そうして取次、特約にかわって契約を進めて、その条件を承諾した発行者の教科書展示会において推薦する、こうはっきりと文書において全国に指令がいっておるわけであります。とすると、これは今後このままで無視できない。すなわち、採択供給面の責任ある人々が、その採択供給という武器を持って供給面に圧力を加えている。その絶対的な立場をもって、より高い立場でもってその会社に対して交渉を進めていくことが明らかにできるし、会社としてもまた、屈伏をせざるを得ない半面、明らかに渡りに舟と喜ぶ条件がそろっているのであります。このような明らかに好ましくない状態というものを御承知かどうか。御承知であるならば、すみやかにこの問題に対する態度を公正取引委員会としてはおきめにならなければならないものだと考えるのでありますが、いかがでございますか。
  41. 横田正俊

    横田証人 私個人といたしましては、ただいま初めて伺いましたので、その点十分検討いたしたいと思います。
  42. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 次に高津正道委員
  43. 高津正道

    ○高津委員 横田証人にお尋ねしますが、独占禁止法の中心のねらいはどこにあるのか。すなわち、独占的事業者の事業がますます独占的となって、サービスは悪くなるし、横暴をきわめるし、消費者は非常に迷惑をする、それを抑制することが独占禁止法の中心のねらいではあるまいかと私は考えますが、証人はどういうお考えをお持ちでありましょうか。
  44. 横田正俊

    横田証人 御承知のように、独禁法は主たるねらいがそこにあることは仰せの通りであります。
  45. 高津正道

    ○高津委員 私もそうであろうと思ったのでありますが、公取委員長の口からそれを聞いて非常にうれしく思うのであります。ところで、一県一ヵ所に特約供給所があるのが三十九県もある。あと、東京は七ヵ所、あと数府県が二つずつとか、あるいは三つあるのは二県くらいしかないはずです。それで、一番横暴をきわめているのはそのような独占的な立場にある特約供給所だとわれわれ思う。その横暴や見るにたえないとして、そういう新興特約学生協というものが起きたのであって、その学生協が起きると、寄ってたかって公取がその方をいじめて、元の特約供給所という独占的地位を各府県において占めているものを助けるような仕事をするというのは、いわゆる公正取引法の通を行くものであるまいか、私はそう考えるが、横田証人の意見を承わりたい。
  46. 横田正俊

    横田証人 この点は、先ほどもちょっと申し上げましたが、単独の供給所のございますところにいろいろの弊害があることが指摘されまして、その一つの現われとして学生協による供給所ができた。これは、公正取引委員会の基本原則といたしております、いわゆる公正自由な競争を促進するという、この面から申しまして非常にけっこうなことであるというふうに先ほど申し上げたのでございます。つまり、そういう形で起って参りますこと自体に対しましては、われわれといたしましても、動機と申し、非常にけっこうだというふうに申し上げましたが、しかし、われわれといたしまして問題にせざるを得なくなりましたのは、何も既存の独占的な地位にございました供給所立場を救済するというような面は全然考えておらないのでございまして、要するに、先生方のそういう組織が新しく起ること自体ははなはだよろしいのでございますが、それが教科書採択という面に結びつきました結果、結果的に申しますると、はなはだ申し方が悪いかと思いますが、ある種の発行会社先生方が利用せられているという結果になっているのではないかというふうに私は考えるのでございます。これは、先生方の方から申されれば、いろいろな面があるかと思いまするが、われわれが問題にいたしておりますのは、むしろ、そういう面がございます結果、供給所につながっていない他の発行会社は、いかに良心的なものを出しましてもそれが売れないということになるところに非常に遺憾な点があるという、その面から実は取り上げておるわけでありまして、結果的に申されますと、あるいは既存のものをいたずらに擁護しているのじゃないかという御批判も起ろうかと思いますが、われわれの意のあるところはただいま申しました点にあることを御了承願いたいと思います。
  47. 高津正道

    ○高津委員 資本主義がここまで発達してくると、資本主義の本質である弱肉強食の特色を現わして、あらゆる産業で大きいものが小さいものをなぎ倒し、中のものもまたなぎ倒して、大きいものがだんだん独占的になっていっておるのでありますが、これらのあらゆる産業の部面を見ておられて、教科書の出版、供給の事業に起る不正競争というものが、他の産業よりは質においても量においてももっとひどいものである、こういうようにお考えであるか、それほどではないと、こうお考えになるか、その点を聞きたいと思う。
  48. 横田正俊

    横田証人 その比較は非常に困難でございまするが、全体的に考えまして、ことに取り扱いまする商品が教科書という他のものと非常に違った性格のものであるという点を勘案いたしますると、この業界におきまする競争のあり方というものはあまり好ましくないというふうに私は考えております。
  49. 高津正道

    ○高津委員 私は、教科書出版会社のやっておることが好ましかろうか好ましくあるまいかということをお尋ねしたのではなしに、他の産業に起っておる不正不当な競争教科書出版に行われておる不正不当な競争とどっちが——どっちがというよりも、非常に目立つほどこの面が一番悪いという状態にあるのか、それほどでもないのか、そういう点をお尋ねしたのです。
  50. 横田正俊

    横田証人 これは見方でございまして、ほかの業界でも、いろいろな競争の激しい、またあまりおもしろくない競争をやっておる業界もあるようでございまして、そのどれと比べてというふうに申し上げますと非常にむずかしくなりますが、先ほど申しましたのは、教科書というものの性格から考えまして、どうも他の業界の弊害と比べておもしろくない面が多いのではないかというふうに申上げたつもりでございます。
  51. 高津正道

    ○高津委員 教科書について言えば、教科書に独特な重要性があるだろうが、銀行は銀行というように、あらゆる産業についてその特殊性を数えていけばみんな数えられるので、ここはあなたと論争してもしようがないのであります。今濱野委員がユダヤ思想から説き起されたのであるけれども、私はユダヤ思想は別に問題にいたしませんが学校図書という日本一の教科書会社がございまして、そこから重役である近藤寿治という人を、日本の教育を審議する最高機関としての中央教育審議会の委員に送り込んでおる。それは文部大臣が抜いたのであるけれども、そういうことになっておるのであります。その人は元文部省で数学局の局長をやっておった人で、いわゆる教学グループの親玉なのであります。また、その中央教育審議会を主管しておる局は、文部省では調査局であります。その調査局長にやはり学校図書の吉田孝一という人を持ってきて据えたのであります。それから、新教育の一番の中心は御存じのように社会科でありますが、その社会科の学習指導要領の主任視学官にまた八千株も学図の株を持っておるという人間が学図をやめてこっちへ入って、そこを担当しておるのであります。それは小沼洋夫という人であります。あるいは、そのほかに、戦時中再門学務局長として学年短縮をやったり学徒の勤労動員を打ち出したりして盛んに戦争に協力をした永井浩という人物かいるのでありますが、それももちろん学図に入って重要な仕事をしております。あるいは松下寛一、阿原謙蔵、今たまたま数えたこの名前は、教学局グループ六人衆というもので通っておる人間でありますが、およそこういうような人間が文部省の根元に入り込んで、そして教科書の編さんなどの実情を早く知るような関係になっておるのでありますが、公正取引委員会というものはだれか申告しなければ出動しないというものではない。タカが下の獲物を見ておるように、自分がずっと見ておって、そこが悪ければやはり出ていけるものであろうと考えますので、私はここにこの問題をあなたの前に出したわけでありますが、こういうような問題こそ最も不正な、最も巧妙なやり方であって、公正取引委員会は、学生協などをいじめないで、ここにこそ目をつけてこれを扱うベきであろう、本員はこのように港えるのでありますが、横田証人はどういうお考えをお持ちでございましょうか。
  52. 横田正俊

    横田証人 学図の関係の人と文部省との関係につきましては多少聞いておりますが、現実の問題といたしまして、こういう機構的なつながりと申しますか、それがいろいろな面にどういう影響を持つかということにつきましては、なおいろいろ検討いたしたい点でございまして、先ほど仰せられましたように、もちろん公正取引委員会は何も必ず告訴、告発を待って動く役所ではございませんので、こういう問題が独占禁止法のどういう点につながってくるかということにつきましては十分に検討いたしたいと思います。
  53. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 高津委員にし上げます。時間が参りましたので、ちょっとお知らせしておきます。
  54. 高津正道

    ○高津委員 それでは、これでけっこうです。
  55. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 委員長からちょっと横田証人にお答えを願いたいと思いますが、先ほどから学生協という簡略名称で高津委員からも質問されておりますが、学校教職員生活協同組合の法的性格、それからその組合員の構成、事業の概要について、お知りの範囲を述べていただきたいと思います。
  56. 横田正俊

    横田証人 私は学生協そのものの内容につきまして実はあまりよく存じておらないのでございまして、学校の先生方のいわゆる生活協同組合、これは現実にどういうような仕事をやっておられるか、これは全国にございまして、またその連合会というような形がもちろんあることと存じますが、要するに、先生方のいわゆる生活協同組合としまして、いろいろな事業はやっておられることと思います。具体的にどこの学生協がどういうことをやっておるかということにつきましては、あまりはっきり存じておりません。
  57. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 組合員の構成はどうですか。
  58. 横田正俊

    横田証人 組合員の構成は、おそらく学校の先生方だと思います。
  59. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 先生だけですか。
  60. 横田正俊

    横田証人 私、ちょっとその範囲をはっきり知っておりません。
  61. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 学生も入っているというようなうわさも聞いておるんですが、そういうようなうわさは聞いたことはございませんか。
  62. 横田正俊

    横田証人 私はよく存じておりません。
  63. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 もう一つだけ伺っておきますが、この学校教職員、生活協同組合は、図書なんかの販売、あっせんをいたしますときに、それから入る利潤などに対しては、税金の力は、もちろん協同組合ですから納めていないと思うんですが、そういう点について知っている範囲のことを承わりたいと思います。
  64. 横田正俊

    横田証人 これは、現在は、先ほど申しました関係から申しますと、会社が直接に特約供給所の仕事をやっておるわけでございまして、いろいろな手数料等はこの会社に入るわけでございます。それが学校教職員生活協同組合の方へどういうふうにつながるかということにつきましては、いろいろ調べておる者があるか知りませんが、私自身ただいま心得ておりません。
  65. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 次に神田委員
  66. 神田大作

    ○神田(大)委員 時間がありませんから、簡単にお尋ね申し上げます。  最初に、公正取引委員会でもって警告を発しなければならなかった動機といたしまして、三人の方から、申請といいますか、申し入れといいますか、そういうことがあったということですが、その三人の方の職業並びにその人たちの立場等を御存じでありましたならば、お知らせ願いたいと思います。
  67. 横田正俊

    横田証人 これは教科書懇話会というものがございまして、その幹事会の河村敏雄、この方は大日本図書の専務でございます。それから副幹事長の金井英一、この方は中教出版株式会社の専務、それから水谷三郎、この方は実教出版株式会社の専務、この懇話会の幹事長と二人の副幹事長 こういう資格で陳情があったのでございます。
  68. 神田大作

    ○神田(大)委員 こうすると、その三人の方はそれぞれ教科書全社の枢要な地位を占めておる方々でございますけれども、こういう申し入れをいたしました人たちの教科書会社は、今あなたが警告を発したような事態はこの会社にはなかったのでございましょうか。
  69. 横田正俊

    横田証人 私、実はあまり詳しいことは存じませんのでございますが、こういう資格で来られたのでございますが、これらの会社自体が、果して先ほどあげましたようないろいろな問題のうらのどれかに関係があったかどうかということは、正確に把握はいたしておりません。ただ、聞くところによりますると、たとえば駐在員を派遣しておる、しかもいろいろな人をその駐在員にお願いをしている、あるいは嘱託、顧問というよりにお願いをしておるということは、かなり有力な出版社のどれもがやっておるということを聞いておりますので、そういうような点ではあるいはそういうことがこれらの会社にもあったのではないかとも思いますが、この点は、ここでそういうふうに思いつきましただけで、正確ではございません。
  70. 神田大作

    ○神田(大)委員 それらの人たちの意図はわれわれもわかりませんが、特に学生協に対しましてそれらの人たちはどういうような考えを持ち、そういう学生協のあり方に対しまして公正取引委員会といたしまして警告を発してもらいたいというような意味が含まれておったかどうか。お尋ね申し上げます。
  71. 横田正俊

    横田証人 ただいまの三人の方の陳情昭和二十七年の五月でございまして、この当時は実は公取委員会といたしましても学生協の方はあまり問題にしておりませんので、この陳情もおそらく不当な売り込み競争の問題で見えたのだろうと思います。この際にはおそらく学生協の問題は出なかったのではないかと思います。
  72. 神田大作

    ○神田(大)委員 それでは、二回目の警告を発したときは、公正取引委員会といたしましては学生協の問題を念頭に置いて警告をお発しになったのでございますか。
  73. 横田正俊

    横田証人 二回目は、先ほどどなたかの御質問のときにも申し上げましたように、主として学生協の問題が中心でございまして、これはいろいろな方面からの申し入れももちろんあったと思いまするし、あるいは出先の、ことに九州でございますが、九州には公正取引委員会地方事務所等もございますので、いわゆる旧供給所からそういうところへいろいろ申し入れがあっただろうと思いますが、要するに、この問題は自然に公正取引委員会が取り上げたというふうにお考え願っていいのではないかと思います。
  74. 神田大作

    ○神田(大)委員 非常に大事なことだと思うのでございますが、第二回目の警告を発するにつきまして、今証人が申されました特定な人と申しますか、そういう人の申し入れというものを具体的にお教え願いたいと思います。
  75. 横田正俊

    横田証人 ただいま、私、どういう人がどこへどういう申し入れをしておるということにつきまして資料を全然持っておりませんので、これは帰りまして事務局の者につきましてそれらの間の消息をよく確かめまして、別の機会に申し上げたいと思います。
  76. 神田大作

    ○神田(大)委員 公正取引委員長といたしまして、大事な、ことに申し入れの主体がちょっとここではわからないというようなことにつきましては、われわれは了解に苦しむのでございますけれども、特約供給所等が、学生協教科書販売に携わるということにつきまして、何か自分の利益が非常に侵害されるというような観点から、公正取引委員会にこのような申し入れをしたのでありますか。
  77. 横田正俊

    横田証人 おそらくそういうことがあったのではないかと思います。これは、そういう問題を取り上げまして、二十八年に先ほど申しましたように福岡と佐賀で聴聞会をいたしました際にも、いわゆる旧特約の連中も出て参りまして、いろいろなことを述べておりますところから見ましても、おそらくいろいろな申し出があったのではないかと思いますが、これも私ちょっと、どこがどういうことを申してきたかということは、責任を持って正確にお答えできませんが、そういうふうに想像いたします。
  78. 神田大作

    ○神田(大)委員 先ほど高津委員からも御質問がありましたように、地方特約供給所あるいは取次供給所というものは、一府県に一ヵ所、あるいは一学区に一ヵ所でもって、われわれから見ますると、まことに独占的な企業をやっております。学童に対する教科書の配給につきましても、先ほども申されました通り、日にちを切って、いつ幾日までに教科書を買い取れ、あるいは前金をもって教科書の代金を先生方に集めさせて、それを取次所へ払い込めとか、たくさんの独占的な下親切なことをやっておる。しかも、学童といたしましても一番迷惑な——本をなくしてしまったとか、あるいはどこかへ転居するというような場合においては、少しばかりの教科得についてはめんどうくさいので、そういう教科書はないとかなんとか言って、非常に独占的なことをしておったのでございますけれども、こういう地方特約供給所並びに独占的な取次供給所に対して公正取引委員会は何ら警告を発せずして、これらの不親切に対して先生方がこれを黙視するに忍びず、やむを得ず立ち上りました民主的なこれらの団体に対しまして、このような警告を発するということに対しまして、これは片手落ちのようにわれわれは考えるのでございますけれども、あなたはどうお考えになりますか。
  79. 横田正俊

    横田証人 ごもっともなお尋ねでございまして、先ほども申しました不当な売り込み競争、それから採択面供給面とのつながりから出て参りまする欠陥、そのほかに、特約供給所が独占的でありますために、その地位を乱用いたしまして、学校側なりあるいは取次店等に対しまして非常に不当なことをしておることも存じておるのでございます。第三点につきましては、実は公正取引委員ははなはだ微力でございまして、十分の手が打てないことを残念に思っておりますが、実はいろいろな手を打っておりまして、現にこの方面では独占禁止法違反といたしまして取り上げた事件も若干ございますし、また正式な事件までに至りませんものにつきましても、たとえば坂次店をいじめまして非常に差別的な扱いをいたしましたり、あるいはボイコットというようなことをやります者につきましても、一々それを取り上げまして、その是正方を命じておるわけでございまして、これらの点は、つい最近までそういう問題が出ておりまして、大体こちらで取り上げますれば、そういうまずい点がある程度是正されるという結果になっておりますが、私どもの力の至らない結果、第三者としてごらんになりますと、あるいははなはだ片手落ちだという御批判もあろうかと思いますが、私どもはそういう意思は毛頭なく、また独占的な地位の乱用につきましては今後といえども十分な手を打っていきたいというふうに考えております。
  80. 神田大作

    ○神田(大)委員 これは非常に大事なことだと思います。少くとも特約供給所なり取次供給所等が独占的なふるまいを長きにわたってやったことに対しまして、これを黙視するがごとき態度をとり、この独占的なやり方に対しましてこれを是正せんとして立ち上りました販売店に対しまして、何かこれをじゃまするような、そういう一方的な警告の仕方に対しまして、われわれは考えなければならぬと思うのであります。公正取引委員会の二回にわたる警告におきましては、この特約供給所並びに取次供給所の独占性に対しまして一言も触れていないというようなことに対しまして、あなたはどういうようにお考えになっておりますか。
  81. 横田正俊

    横田証人 これは、警告というようなことは実はこの中に盛られておりませんが、先ほど申しますように、具体的にいろいろな手を打っておりますので、このやり方がまだはなはだ不徹底であるという御批判はあろうかと思いますが、私どもといたしましては、警告以上に及ばずながら具体的に手を打っておるつもりであります。
  82. 神田大作

    ○神田(大)委員 私は、横田さんは証人でありますので、これ以上追及することはやめます。  次にお尋ね申し上げますが、高津委員からもちょっと触れました通り、この二回にわたるこれらの申し入れに対しまして、文部省は、私の見るところにおいては、単なる形式的な取扱いをしたにすぎない。この公正取引委員会のこのような警告を果して忠実に実行に移したかどうかということについて非常に疑問があるのでございます。ここでも大きな問題があると思うのは、学校図書株式会社という有力なる教科書会社文部省の中に食い入って、そうして文部省それ自体がこの公正取引委員会に対しまして大きな阻害をしておるというような事実に対しまして、公正取引委員会では、このような教科書会社文部省との特殊な因縁情実関係を御存じの上でこの警告を発せられたのであるかどうか、お尋ね申し上げます。
  83. 横田正俊

    横田証人 実は、お恥かしい話でありますが、私個人といたしましては、先ほど高津さんが仰せられましたような具体的の形でこの問題を存じておらないのであります。ある程度聞いてはおりましたが、ただいま具体的にお示しをいただいたわけであります。この点は、独占禁止法の観点からどういうつながりを持ちますか、慎重に検討いたしておるところであります。
  84. 神田大作

    ○神田(大)委員 私は、独占禁止法とのつながりというよりも、むしろ公正取引委員会文部省に出した警告とのつながりにおいて大きな関係を持っておると思うのでございます。こういう関係を薄々知っておったというような御証言でございますが、これは重大な問題でございます。あなたたちがいかに公正取引委員会の名前でもって文部省に何回警告を発しましても、文部省内においてこのようないきさつ因縁があれば、あなたたちの警告は空文にひとしいということをあなたは御存じであろうと思うのでありますが、非常に大事なことであろうと思いますので、こういう観念に立って、どうかこういう点を十分御考察願いまして、公平なる委員会の処置をお願いしておきます。
  85. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 山田長司委員
  86. 山田長司

    ○山田委員 先ほど同僚山中委員が発言しまして、発言早々帰られてしまっているようですが、実は証人に伺うだけでなく、むしろ山中君にも聞いていただきたかったのです。  先ほどから学生協の問題が論議されていますが、このことについて、できた原因というものが本問題を究明する上において一番重要だと思いますので、私は最初にこのことを証人も御存じであるかどうかを伺っておきたいと思うのです。  戦後教科書の不足なときにこの学生生活協同組合というものが生まれたのは、各地にあります特約供給所かなり横暴な書籍の扱い方をしていたところにあったように、私が調べた範囲ではあるわけです。それで、山の中の学校では、教科書不足のためにこれの配給がないので、大へん不便であった。山の中の先生は、金とリュックを背負って三里も五里も山の中から本屋まで出かけて行き、さらに教科書と学用品の抱き合せまでされて教科書を買わなければならぬ時代があった。さらに、本が数カ月も本屋の店頭に放置されていながら、これを山の中の学校には配らなかった。こういうような状態から、これでは完全に学校の子供の教育ができないというところから、この学生生活協同組合を教員の人たちが作ったものと思われるのです。さらに、学校に対する書店の好ききらいがあったり、距離があったりして、それがためにどうしても学校へ届かなかったというようなことで、万やむなくこういうものを作らなければならない端緒ができたという話を聞いているんですが、証人はこういうことをお聞きになったことがあるかどうか、参考に伺っておきます。
  87. 横田正俊

    横田証人 その点は先ほどもちょっと申し上げたつもりでございますが、私が公取事務局から聞いておりますところも大体おっしゃる通りでございまして、その進出するに至った動機と申しますか、いきさつにつきましては、いずれも旧来の特約供給所が独占的な性格のためにサービスが非常に悪い、供給上にいろいろな支障を来たしておるというようなことで、教育界、取次業界父兄等からの非難を生ずるに至ったために、これが完全供給の実をあげるべく出発したものであるというふうに事務局の方から報告を受けております。
  88. 山田長司

    ○山田委員 先ほど高津委員からも特約供給所の問題につきましては発言があったのでございますが、この特約供給所の中に、大都市を除いてはほとんど一つの県に一ヵ所の特約所しかございません。それがために特約所の横暴というものは今もなおかつ続いているという話でございます。私はきのう一つの都市で調べたのでありますが、宇都宮の例を申しますと、書籍を扱っている本屋の数よりも、扱わない数の方が何倍も多いという話だそうです。それで、私はこのことから痛切に感じたのですが、私は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法というものの全体の解釈がよくできないのですが、この特約供給所というものは、この第二条の七の二項に属する「不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。」これの違反にひっかかるのではないかと思うのです。なぜかといえば、地方の本屋さんの間で、小さな本屋さんと目されるものについては、本を扱いたくても特約所が本を出さないそうです。きのうある本屋に立ち寄って尋ねてみたのですが、教科書を扱いたいと言ったところで、保証金を三十万円出せと言う、しかもどこかの本屋さんの御主人がなくなったそのあとならば扱わせるけれども、そうでなければ扱わせない。こういうことをその本屋の御主人は私に忌憚なく申しておりました。こういう状態から考えてみて、一体この一つの県に一つ特約供給所があるということ自体が独占禁止法違反にひっかかるのではないかと私は思うのですが、証人はこの道の専門家でありますから、法律の解釈が十分にできると思うのですが、この特約供給所はひっかからないかどうか、この点についての明快な御答弁を一つお願いをしたいと思うのです。
  89. 横田正俊

    横田証人 この問題は実は独占禁止法の上におきまするいわゆる私的独占の定義の問題になるのでございますが、現実に独占体があるということ、そのこと自体が直ちに私的独占ということにはなりませんので、定義的に申しますと、要するに、他の事業者活動を支配しあるいはそれを排除するというような行為を通じまして独占体を築き上げていく、その形を取り上げておるわけでございまして、従いまして、個々の各県におきまするその特約供給所がどういう経過を通じましてそういう地位に達しておるか、また現在どういう活動を通じてそういう地位を保っておるかということが独占禁止法土の問題になるわけでございまして、この点は、単に独占的な地位にあるということだけでは違法というふうにはならないのでございます。  なお、今お話しになりました、そういう独占的な地位があるために、たとえば教科書を扱いたいという、取次店になりたいという者に不当に差別的にいたしまして、結果的に申しますとむしろ供給に支障を与えておる場合があるかと思います。その点は、先ほどから申し上げましたように、いろいろな個々の事件が方々でございまして、供給所の方から申しますと、あれは信用できないとか、何とかかんとかいろいろな理屈を一応立てているようでございますが、問題になりますれば、われわれはそれが単なる口実であるかどうかを調べまして、その向き向きによりまして適当な手を打っておるわけでございます。私どももこの独占的な特約所のあり方については非常に警戒をいたしておるわけでございます。
  90. 山田長司

    ○山田委員 最初に参考に意見を申し上げておきます。それは新たに地方教科書を扱いたい本屋ができて、その本屋が中央の発行所に申し出た場合に、発行所では、今証人が申されたように、みな、信用しないというようなこととか、あるいは調査してからでなければ送れないとか、金を先によこしておかなければ送れないというようなことで、実質的には、よほどしっかりしたところでなければ、供給所以外に教科書を扱うことはできないそうです。たまたま、佐賀と愛媛と山口と秋田というふうな地域学生生活協同組合ができて、その教科書を扱うことによって、ただいま山中議員が佐賀では千六百万円もうかったというような話をしておるが、私はそのことをついでに知っておいていただきたいと思うのですが、戦争前から今日まで続いているような特約所というものは実際はどれほどもうけているかわからないのです。そういうところが依然としてそのままに放置されていて、むしろ、新たに生まれた、しかもサービスを主として努力しようというところが今四ヵ所爼上に上げられているところに問題があって、私は実に残念だと思うのです。  そこで、私は証人に伺いたいのです。東京の教育大学という国立大学の中に、あるいは広島の国立大学の中に財団法人の、東京の場合においては東京教育図書研究会、広島の場合には学校図書研究会というものがあります。この研究会の中には、いずれも、教科書に関連のある学校の先生方教科書の編さん執筆に当られる方々が入っている。まあ財団法人という名前であるけれども、国立大学の中に学校図書という会社が金を出した財団法人が認められているという点で、教科書の編さんに当るこれらの人たちに筒抜けにならない、話がされないでいるということの断言をだれができるかということです。教科書の執筆者が国立大学の中にいる、しかもそういう形をとっているという点において、何かしら公平を欠く感じがするのですが、証人はこれらの問題についてどんなお考えをお持ちですか、参考に伺いたいと思うのです。
  91. 横田正俊

    横田証人 実はこの問題も具体的にただいま伺ったのでございますが、こういう発行会社の息のかかりました学校内の機関を通じましていろいろな問題が実はあるのではないかと思います。この点もただいまここで伺いましたので、私個人の意見をすぐには申し上げられません。十分に検討に値する問題だと思います。
  92. 山田長司

    ○山田委員 きのうもだれかが別な教科書を持ち出して、ここでばらばら事件の話をしましたが、実は、学校図書で出した教科書の中で、展示会に出したときには寒冷紗がちゃんとつけてある。こういうふうにつけてあるのが展示会に出ていて、いよいよ学校で配給した場合には寒冷紗がつけてなくて、みんなその本がばらばらになってしまった。こういうばらばらになってしまった教科書を学校図書で調べ上げてみたところが、学校図書ではこれは三万冊だけそういうばらばらになった教科書があったのだと言っているそうですが、実際教員の力を借りて調べてみると、富山県だけで三万冊ばらばらになっておった。公正取引委員会ではおそらくこの寒冷紗がちゃんとついているときの教科書でこの値段が妥当であると見ているだろうし、あるいはその教科書展示会に出ていて値段がついていることについて一応世間的な認め方もこれが公認されていると思うのですが、そういう書籍がたくさん全国の子供にばらまかれている。学校図書あたりでは、この寒冷紗が除かれているだけでも、大黄の書籍であるからして、何らか利益があるだろうといわれている。そうしますと、図書会社のこういう問題を文部省では黙認していたということになると、これは大へんな問題だと思うのですが、一体公正取引委員会としてこれについて何か勧告をしたものかどうか、参考に伺っておきたいと思います。
  93. 横田正俊

    横田証人 ただいまの問題は、どうも直接にはわれわれの方の問題につながっておらぬように思いますが、しかし、確かに教科書の配給に関しましてそういうおもしろくないことがございますることは全く困ったことでございまして、この点は文部省当局としてももちろん十分にそういう点の考慮をしていることと思います。私どもといたしましては、そういうものがなくなることを心から念願しております。
  94. 山田長司

    ○山田委員 最後に証人に伺いたいと思うのですが、公正取引委員会で今日までいろいろな問題を扱っておられるだろうと思いますが、その中でおもなるものはどんなものをお扱いになられたか、参考に伺っておきたいと思います。
  95. 横田正俊

    横田証人 教科書の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、不当な売り込み競争の問題につきましては警告をいたしまして、実はいろいろないきさつがございまして、文部省当局の善処方を見ておったわけでございます。この点について今後どういう態度で臨むかということにつきましては、先ほど申しましたように、十分に考えていきたいと思っております。  なお、今まで教科書問題の事件として取扱いましたものは、主として出版会社と特定の、これは一箇所でございますが、特約供給所とが結びまして、他の出版会社の扱いをお互いに拘束し合う、あるいは取次店を作ることをお互いに拘束し合うというような問題がございました場合に、これは東京書籍株式会社外二名に関する件ということでございますが、三重県の教育用図書特約供給所の問題でございまして、これは事件として取り上げたのでございます。そのほか、岡山県、滋賀県、東京都内にもございますが、あるいは長野県、鳥取県等につきましてもやはり同様な独占的な地位にある特約供給所が取次店等に対しましてはなはだ差別的な不当な扱いをしたものについて一応取り上げました。先ほど申しましたように、中には取次店の方の言い分が通らなかったものもございまするが、大体において供給所側の不当な面は是正をさせたということになっております。  大体教科書関係につきましてはそういうようなことになっております。
  96. 山田長司

    ○山田委員 私は、現在の特約供給所制度というものがこういうふうに考えられるのですが、証人はどうお考えになりますか。なお、私の考えていることに不備な点があったら一つ御指示を願いたいと思います。特約供給所制度というものは、ちょうど、りっぱな道路を一本こしらえておいて、この供給所の道路の方はきちんと途中に橋までかけてあって、目的地に行けるようになっている。   〔佐々木(秀)委員長代理退席、委員長着席〕 もう一つ制度は、いかにも、供給所はできるのだ、やってもいいのだ、独占の仕事じゃないのだ、こう言っているけれども、実際は、そう育ったところで、一定のところまで道路は行っているが、橋もなければ、あるいは山を越す場合に山道も作ってないというような状態で、全然特約供給所独占の仕事にこれは与えられているものと思うのです。そうすると、学生協みたいなものがかりにできて、何とかこれがサービスに努力しようとした場合に、株主に学校の先生の家族がいるからというような理屈でこれをつぶしてしまうというようなことになってしまっていて、特約の配給所だけはずっとりっぱな国道で行けるだけの設備が作られているけれども、片一方は全然途中で道がなくなってしまう、こういう機関になっていると思うのです。そこでこの特約供給所制度というものを、何とかしてやはり国で育成強化をするような方法をとられなければ、各府県特約供給所一ヵ所というものはかなり横暴なことをこれから先もすると思う。品物が最近はかなり出回ってきたから、多少緩和されるかもしれないけれども、本の発行前に金を集めるとか、あるいは集めた金を銀行に積んでおくとか、そういう事例が今までたくさんあったのですが、これからもないとはだれが断言できるかと思うのです。ですからそういう点では、公正取引委員会としては、特約供給所というものが一ヵ所でなく、何とかしてもう一、二カ所できるような方法を考えられないものかどうか。そういう点について何か名案がございましたら御教示願いたいと思います。
  97. 横田正俊

    横田証人 実は、けさほど委員長からも、何かこの問題についていい考えがあるかというお尋ねがございましたが、非常にこの問題はむずかしい問題でございまして、一例として特約供給所の問題もあげまして、一つにした方がいいか、あるいは複数で公正な競争をさせた方がいいかということにつきまして、われわれの立場から見れば、理論的には複数制が望ましいということを申し上げたのでございますが、もしかりに、これをいろいろな点から考慮いたしまして一つというようなことにいたしますれば、これはよほどの統制と申しますか、これに監督を加えるというようなことが当然その裏づけにならなければならないというふうに私は考えます。これは、主として、私どもの方の問題ではなく、いわゆる文部行政といたしまして、この点にはよほどしっかりした考え方を持っていただかなければならぬと思っております。はなはだ簡単でございますが、そういうことを考えております。
  98. 篠田弘作

    篠田委員長 大西正道君。
  99. 大西正道

    ○大西委員 簡単にお伺いいたします。  今証人の発言の中に、こういうふうなスキャンダルをなくして公正なる取引をするためには、採択の面においては今のような採択の方式でなしに組織的な採択方式をとってはどうかということも自分としては考えておる、こういう御意見であったのであります。たまたま、この間文部大臣が、府県一本、すなわち府県で一種類教科書採択するというようなことも構想として発表している。これは証人の私見であろうと思いますから、私も参考のためにここでちょっと聞いておくわけですが、こういうことで不公正な取引、さてはまたスキャンダルを防止することができると考えるその証人の根拠はどういうことなんですか。教科書採択の面におけるわが国における歴史的な事実を検討しますときに、たしか明治三十五年であったと思いますが、あの教科書疑獄が起りました。このときの制度もいわゆる検定制度であり、採択委員会を設けて道府県種類採択をしておったのであります。なるほど、今の不正な売り込みによって各学校、教育委員会がばらばらな採択をしているということも、こういうふうなスキャンダルの起る原因であろうと思うけれども、私はむしろこういうふうな府県一つにしての採択ということも考えようによってはなお一そうスキャンダルの起きる原因になるのではないかと思うのでありますが、証人はむしろそのような方法が望ましいと考えるとも言われるのでありますが、その根拠を伺いたい。
  100. 横田正俊

    横田証人 先ほど申しましたのは全く私の私見でございまして、大した価値を置いていただきたくないのでございます。申し上げました理由は、結局個々の発行会社が要するに働きかける余地の少いようにという点から考えまして、そういうブロック別採択ということになりますと、その選択から採択までに至ります間に相当多くの人が関係し、協議をし、その結果そういう結論が出されるというふうに考えられますので、そういう面から考えますと、そう全体に向って働きかけをするということはむずかしくなるんじゃないか、そういう面からいたしまして、そういう考え方もできると申したわけでございます。しかし、それによってどれだけ弊害が除去できるかというようなはっきりしたことは、なかなか申しかねると思います。同時に、ブロック別の問題は、御承知のように現在は個々ばらばらな教科書でございますので、あるいは転校あるいはその他の場合に非常な支障のあることも聞いておりますので、そういうこともある程度防げるまた別な面もございますので、われわれは独占禁止法の観点から、ちょっとそういうことを申し上げたわけでございまして、それ以上のいろいろな問題が含まれている、こういうふうに考えるのであります。
  101. 大西正道

    ○大西委員 それは証人の私見でありますから、私はここでそれ以上追及いたしませんが、それは、私が前に事実をあげましたようなことをお考えに入れますと、証人の期待するところとむしろ反対の結果が私は出るものと考えているのです。  さて、私がここでお聞きしたいのは、すでに前委員においてかなり質問が出ましたが、学生協並びに学生協から発展改組したところの取次供給店の株式会社がなぜ発生しなければならなくなったか、なぜこういうふうなものができなければならなかったかという理由を、なお証人の口から一つお聞きしたいと思います。
  102. 横田正俊

    横田証人 これは先ほども申し上げましたように、私どもの方の事務局でいろいろ調べました結果によりますとやはり従来の教科書はいろいろ不都合な点がございまして、それを是正する意味におきまして、学生協がこういう問題にタッチをするようになったというふうに聞いておりまするし、また事実そうであろうと私も考える次第であります。
  103. 大西正道

    ○大西委員 その不都合な点というのを私はお伺いするのですが、たとえば発行会社から特約供給店に対し四%の利潤が渡るわけです。さらに特約供給所から取次供給所に対して一二%、合計一六%の利潤が上るわけでありますが、こういう高い利潤に対しまして、こういうふうな取次供給店に至るまでの配給機構というものが、独禁法の趣旨によるところの一般消費者の利益を確保するという具体的な問題からして、教科書が高過ぎるのを安くするというような観点から見て、証人は妥当であると思われるかどうか、御意見をお聞きしたいと思います。
  104. 横田正俊

    横田証人 この発行会社特約供給所、取次店の三位一体と申しますか、この段階が果して教科書供給という問題について必要であるかどうか、あるいは妥当であるかどうかということについては、いろんな意見が立ち得ると思います。実は、三十八年の聴聞会の際にもいろいろな意見が出たようでございまするが、大体の一致した意見は、やはりこの三段階の方式が教科書という特殊なものの配給につきましては妥当であるという結論が多いようでございました。ただし、手数料の問題になりますると、四%、一二%というのが果して妥当であるかどうか、これも非常に疑問ではございまするが、むしろ手数料よりも——これは私の承知いたすところでは定価の基準の手数料と思いますが、それよりも定価そのものがむしろ問題ではないか。定価はもう少し安くなるのではないか。これは、見方によりましては、たとえば不当な売り込み競争等をいたしますれば、それなども営業費として当然に定価の中に織り込まれてくるわけでありますが、もしそこに非常に甘い線が出ておるといたしますと、この四%や一二%はいいといたしましても、結果におきましてその需要者でございまする学生、生徒、父兄というものに不当な負担をかけておることになるのでございます。結局、私は、問題はこのパーセンテージよりもむしろ定価そのものにあるのじゃないかと考えております。
  105. 大西正道

    ○大西委員 今の定価は文部省が基準を示してきめるものでありまするが、証人は、公取立場から、文部省の今定めておりまする定価の基準というものは当然もう少し下げるべきだ、それは当然配給機構の整備あるいはその手数料をもっと合理化することにおいてそれが望ましい、こういうような見解をお持ちでございますか。
  106. 横田正俊

    横田証人 私といたしましては、現在定価が高いか安いかということについてここではっきり申し上げる資料も持ちませんし、またこの問題について特に研究もしておりませんので、はっきりしたことは申し上げられませんが、そういうような批判もあるようでございまして、この点は十分に検討に値するものではないかというふうに考えておるわけでございます。しかし、私自身といたしまして、高いか安いかということについては、ただいま確信を持った意見を申し上げることはできません。
  107. 大西正道

    ○大西委員 私はこの手数料は高いと思います。ところが、この手数料のほかに、出版会社発行会社が資金を回収するまでには、私の計算では半年くらいかかるわけですが、そういうことから、出版会社が資金のやりくりのためにさらに特約供給所から、特約供給所は取次供給所から、さらにこの取次供給所はこれを、市中銀行から借りるといっても十分ではありませんから、結局は学校の生徒から前渡し金とか前金とかいって教科書代の一部を前に集めておる、こういう事実があると思うのでありますが、これは御存じですか。
  108. 横田正俊

    横田証人 それらの事実も公取の調べで相当詳細にわかっております。
  109. 大西正道

    ○大西委員 そうしますと、こういうふうな事実を打破しようとして、手数料も安くし、こういう不当な前金というようなものをなくして、その他にもこの完全な配給をやろうとする建前に立って、学生協並びにそれから転化したところの取次供給所が株式会社の組織を持って、ここに従来あるところの独占的な取次供給所と対抗するという場合に、末梢的ないろいろな問題はあろうと思うけれども、この基本的な独禁法の本旨から言いまして、消費者に要らぬ負担をかけないでなるべく安く物を提供する、こういう建前から言って、ただ単なる動機というよりも、この学生協から発展したところの株式会社取次供給所のあり方というものに対しては、むしろ私は公取委員といたしましては好意的な立場でこれを育成強化されることが妥当ではなかろうかと思うのですが、いかがでしょうか。
  110. 横田正俊

    横田証人 学生協並びにそれに関連します会社の動きにつきましては、まことに了とすべきものがあるというふうに先ほど申しましたし、それから、その他の面につきましても、たとえばその結果公正な競争が助長され、それがひいては需要家である生徒、父兄に利益をもたらすという点は、これは、私どもとしましては、そういう結果が持ち来たされるのでございますれば、その点に何ら異存はないのでございますが、先ほどから申しますように、問題は教科書採択の問題でございまして、この点は、私どもとしましては、採択供給との分離ということがやはり一つの正しい姿ではないかというふうに考えますので、その一点におきまして、この新興学生協系の特約供納所の動きに対して一つの批判的な態度を持っておるわけでございます。
  111. 大西正道

    ○大西委員 学生協々々々と言われますが、今学生協というものが教科書を扱っておりますか。
  112. 横田正俊

    横田証人 学生協影響のある会社というふうに申し上げたつもりでございます。
  113. 大西正道

    ○大西委員 それでは、この学生協影響のある会社というものは全国で幾つあるのですか。
  114. 横田正俊

    横田証人 正確には存じません。資料もございますので、後ほど申し上げてもよろしいと思いますが、これはそうたくさんはございません。しかし、この関係会社が相当活発な動きをしておるということは事実でございます。
  115. 篠田弘作

    篠田委員長 大西君に申し上げますが、時間が来ておりますから……。
  116. 大西正道

    ○大西委員 私どもの知っておる範囲では五つか六つだと思います。これはその府県におけるところの独占的な取次供給事務をやっておるのですか。このほかに従来の取次供給所が各府県にあるのだろうと私は思うのですが、これはどうなんですか。
  117. 横田正俊

    横田証人 もちろん、新興供給所でございますので、その前の旧特約所が必ずあるわけでございます。
  118. 大西正道

    ○大西委員 そうしてその新興の取次供給所の株式会社というものを非常に警戒しておられるようでございます。一体、今の趨勢から見まして、この学生協から転化した新興の取次供給所というものが今後ふえる傾向にあると思いますか。そういう素地がございますか。私はその点についてはもうないと見ておるのです。
  119. 横田正俊

    横田証人 その点は、私といたしましても何とも申し上げかねますが、あるいはもうこれ以上ふえないという見方もできると思います。いろいろ先ほどほかの委員からおっしゃいましたような線が非常に強くなって来ますれば、あるいはもっとふえるという可能性も考えられないこともないと思います。
  120. 大西正道

    ○大西委員 これは非常に認識不足なのでありまして、私の調べたところでは、これ以上ふえる傾向はございません。しかも、学生協から軟化した株式会社といいましても、その内容は漸次あなた方の御心配に及ばないような方向に転化しつつあるという事実なんです。これもお調べ願わないと、学生協学生協といって、学生協の実態がそのまま株式会社の仮面をかぶって、しかもそれが既存の取次供給所を大きく食い破っていくというような傾向のあるごとく大きく取り上げて、これに対して一般の売り込みと同様にこれに大きく警告を発するようなことは、私は大きな教科書配給の建前から見まして少し片手落らじゃないかと思うのです。もっともっとこれよりも既存の収次供給所のやっておる、前委員からたびたび指摘のありましたような問題点にこそメスを加えていただきたい。初めはなるほど学生協影響があったかもしれないけれども、今はりっぱな株式会社に資本の内容も構成もだんだんに転化しつつあるという、これを見ていただかないと、私は、公取が、この数府県にわたるところの、しかも今は学生協でない株式会社に対して警告されるのは、あまりに苛酷ではないか、何か思うところ、期するところがあるのではないかと考えるのであります。私は供給面と採択面というものは、これは公取の対象として取り上げることも必要ではあろうが、よそよりも、もっと教育面から深甚な考慮をしなければ、公取委が単なる他の経済現象と同じようにこの教育的な問題を取り扱うことについて、意図するところと反対になる大きな懸念があると考えるのです。たとえば、こういうことからいろいろこれが新聞紙上に問題になりますことによって、あなたがすでに私見として出されたような、ブロックによって一つ種類採択するという意見は、採択の面から結局今の検定制度をくつがえして国定制度に持っていこうとするような傾向に発展するのであります。これは公取委としても十分考えていただかなければ、目前のものをおおって新しい教育の根本義であるところの検定制度をくつがえすようなことがあってはならぬと実は私は考えます。本日は証人に対して証言を求めるよりも私の意見を述べたようなことが多かったのですが、今後もこの問題については慎重にお取り計らいを願いたい、こういうことを申し上げます。
  121. 篠田弘作

  122. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 同僚委員から大体質問がございましたので、私からはただ一点だけお伺いいたしたいと存じます。  ただいまも大西委員から問題にされておりました採択供給との部面でございますが、それと関連いたしまして検定と製作との問題でございます。過般文部省の局長を呼びましていろいろ証言を求めましたが、文部省の役人が図書会社の重役であったり、あるいは戻って役人になったりして、関接的に検定制度の不明朗さがあると思われますと同時に、また供給部面におきまして採択権を各教員が持っているわけであります。しかも、教科書というものは必ず児童が買わねばならない品物でございます。しかもその採択に当ったところの教員が生活協同組合を組織して供給するなどということは断じて廃止しなければならないと思います。そういう考え方からいたしまして、この一点だけは公坂といたしましても容認できないという御証言でございました。そこで、私が申し上げたいことは、この生活協同組合が変って取次供給所となっておる、現在佐賀県などにも佐賀県教育図書株式会社ですか、こういうものがございますが、その株式会社の構成を見ますと、現に教員が株主として株を持っておるという実態をわれわれは知っているのであります。そういうことを御存じかどうか、承わりたいのであります。
  123. 横田正俊

    横田証人 その点につきましては、二十八年の調査によりまして、個々の会社につきましてかなり詳細にその株主構成、役員関係等がわかっております。おっしゃる通り、会社によりましては、たとえば佐賀県のごとく非常にたくさんの先生方が株主であられるものもございますし、あるいは福岡のある会社でごいましたが、割合に株主の数が少いというものもございますが、いずれにいたしましても、先生方が相当のパーセンテージを占めておられますことと、その会社に連なります発行会社が相当部分の株を持っておるという面も調査の結果はっきりいたしております。もちろん、これは二十八年のことでございますから、その後あるいは多少の変りがだんだん出てきておるかと思いますが、二十八年の調査の結果はそういうことになっております。
  124. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 そこで、お伺いしたいことは、ただいま御証書のありましたように、採択される教員が取次供給所の株主であったり、あるいは検定をする人が元図書会社の重役であったりするところに思わしからざる問題がたくさん起る欠陥があると私は思います。公坂といたしましては、採択者が株主であるような会社を今後とも認めていく方針であるか、あるいはまた検定をする人が発行所に関係しているようなものを認めていくかどうか、この二点と、もう一つは、供給する場合に、先ほどから同僚委員からいろいろ御質問があったように、取扱いの上において児童や学校に対して非常な不便あるいは横暴があったからこういう生活協同組合が発生して供給を取り扱うようになった、こういう点に対しましては、都府県に一カ所というような点が欠陥だと思いますが、その三点について、将来公取としてはどういうお考えをもって改正し、あるいは是正しようとなさるか、承わりたいのであります。
  125. 横田正俊

    横田証人 現在の学生協から変って参った会社に対してどういう処置をするかということでございますが、これは、われわれといたしましては、先ほどから申しておりますように、採択と配給の結びつきを分離することが望ましいのでございます。もしこの会社の組織なりその他の面がどうしてもそのままであって、採択と配給の面の分離というものは困難であるということになりますれば、われわれといたしましてもまたいろいろ考えなければならぬと思います。この問題は、あるいはその会社のその形においても、その結びつきが適当に是正されるということでございますれば、またそれに応じた態度がとれるのでございますが、この点は当面の会社組織そのものがいかぬとは言い切れないというふうに考えております。  それから、一府県に一供給所という問題につきましては、先ほどから申し上げますように、これはいろいろな考え方があるわけでございますが、先ほど申したように、これは一配給所でとかいうようになりますれば、おのずからいろいろな弊害も生じまするので、もし一府県一つということになりますれば、これは特別な監督というふうなものが必要ではないか。なお、ただいまわれわれといたしましては、独占禁止法の線によりまして、その独占的な形態から生じまする弊害を除去するということに力を尽したいと考えております。
  126. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 独占禁止法に違反するかどうかという問題でいろいろありますが、私たちの考え方では、終戦後のいわゆるいろいろな事業形態というものは、たとえば戦争中のマル通の運酒店の問題を見ましても、現在もう複数にはっきりしておるのであります。この一県下一店などということは、弊害の起ることは当然でありますので、おもしろからざるところがあればということでなしに、すでに思わしからざる点がたくさん起きておるのでありますから、公取といたしましては、これは複数にするというはっきりした態度で臨んでもらいたいと私は思います。それから、供給所の問題にいたしましても、現に教育の道に携わっておる人が利害の伴う会社の株主であるなどということは、これはだれが増えても、常識的に考えても許さるべきではないと思います。こういう点に対しても、いわゆる思わしからざる点があればというようなことでなしに、厳正なる態度で公取が臨んでいただくならば、こうした思わしからざる点が直ちに除去されると思いますので、私の所見を申し上げて、質問を終ります。
  127. 篠田弘作

    篠田委員長 横田証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。  証人には長い時間御苦労さまでありました。  午後は二時三十分より、証人学校図書株式会社社長川口芳太郎君より証言を求めることにいたします。  暫時休憩いたします。    午一時二十二分休憩      ————◇—————    午後二時四十六分開議
  128. 篠田弘作

    篠田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  直ちに証人より証言を求むることにいたします。  ただいまお見えになっておられる方は川口芳太郎さんですね。——この際証人に一言申し上げますが、現在わが国において小、中学校における教科書は多種多様にわたり、大小出版業者乱立の結果、これが検定並びに採択に関しとかくの風評も生まれ、これが学童並びに父兄に及ぼす影響等を懸念し、世上大いに関心を抱いておる向きもありますので、義務教育の本旨にかんがみ、これが真相を明らかにすることはきわめて意義あることと考え、本委員会は本件の調査に着手した次第であります。証人におかれましては率直なる証言をお願いいたします。  それでは、ただいまより小、中学校における教科書関係事件について証言を求むることになりますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び融雪等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なっております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が、証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあった者、及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあった者が、その職務上知った事実であって黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになっております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは三月以上十年以下の懲役に処せられることとなっておるのであります。一応このことを御承知になっておいていただきたいと思います。  では、法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。   〔証人川口芳太郎朗読〕   真心に従って、真実を述べ、何事もかくさず、また何事もつけ加えないことを誓います。
  129. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、宣誓書署名捺印してください。   〔証人宣誓書署名捺印
  130. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証官を求むることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。まず委員長から概括的に証言を求め、次いで各委員から証言を求むることになりますから、御了承願います。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになっていてよろしゅうございますが、お答えの際には御起立を願います。  証人の略歴について述べて下さい。
  131. 川口芳太郎

    ○川口証人 私は明治二十九年十二月生まれ、高等小学校を終えてから家業の印刷業に従事し、昭和二年に先代の業務を継承いたしまして、昭和十八年に株式会社に改めまして、それから引き継いで現在社長をやっております。その間に、昭和二十三年五月、学校図書株式会社を設立いたしまして、同時に社長に就任しまして今日に至っております。
  132. 篠田弘作

    篠田委員長 証人の主宰しておる会社名及び役員に就任したる時期。
  133. 川口芳太郎

    ○川口証人 図書印刷株式会社の社長は、称号は違っておりますが、昭和十八年の四月だと思います。今日まで社長をいたしております。それから、先ほど申した通り、二十三年の五月に学校図書株式会社を設立いたしまして今日に至っております。同時に社長に就任しております。そのほか慶応通信株式会社の監査役をやっております。
  134. 篠田弘作

    篠田委員長 学校図書株式会社の沿革、資本金、営業種目について述べて下さい。
  135. 川口芳太郎

    ○川口証人 学校図書株式会社昭和二十三年五月設立いたしまして、その当時は資本金は二百万円でございます。現在は資本金八千万円でございます。営業種目は、小学校、中学校検定教科書並びにそれに付随する指導書、ワーク・ブック、掛図の編集、出版並びに販売、これに付随する一切の業務となっております。
  136. 篠田弘作

    篠田委員長 会社発行する小、中、高等学校における教科書発行部数及び採択された重要な地域について御存じの点をお答え願いたい。
  137. 川口芳太郎

    ○川口証人 それらの三十年度でようしゅうございますか。
  138. 篠田弘作

    篠田委員長 三十年度はまだ採択されておらないのじゃないですか。去年、二十九年度が一番いいでしょうね。
  139. 川口芳太郎

    ○川口証人 部数は、小学校が二千七百万冊でございます。中学校が六百七十万冊、合計しまして三千三百七十万冊でございます。
  140. 篠田弘作

    篠田委員長 高等学校はやっておられますか。
  141. 川口芳太郎

    ○川口証人 高等学校は実は別の会社でやっておるのを委託経営みたようにしてやっております。
  142. 篠田弘作

    篠田委員長 今のは私の考え違いでありまして、三十年度はすでに採択されているそうですから、三十年度について述べてください。
  143. 川口芳太郎

    ○川口証人 私の申し上げましたのは三十年度使用のものを申し上げたわけであります。採択は二十九年に採択されました。
  144. 篠田弘作

    篠田委員長 採択された重要な地域について。
  145. 川口芳太郎

    ○川口証人 大体当社は全国平均と申しましてもいいくらいなのでございますが、ただ北海道とか佐賀県とかがちょっと悪い程度で、あとはそんなにも違っておりません。大体平均でございます。
  146. 篠田弘作

    篠田委員長 教科書販売するために講じている方法あるいは中継ぎ方法中いろんな問題が起っておるわけでありますが、どういうような方法で売り込んでおられるかということを聞かしていただきたい。
  147. 川口芳太郎

    ○川口証人 御承知の通り、展示会で正式には決定いたしまして、需要表によりまして各地の教育委員会から私どもにそれが参ります。それから、なお、文部省から発行部数について指示命令と一緒に参ります。それがまあ決定ということですが、その間に見本本を多少展示会のほかに送っております。これは主として中央教育委員会とか、各県の教育研究所、それから地方の出張所、郡市の教育委員会、それから日本教職員組合の文化部とか、その他特に学校側から要望のあったところに送っております。まあそんなところでございます。
  148. 篠田弘作

    篠田委員長 学校側の要望のあったところはもちろん送られるでしょうが、要望のないところに送るようなことはありませんか。
  149. 川口芳太郎

    ○川口証人 それはほとんどないと思っておりますが……。
  150. 篠田弘作

    篠田委員長 大体献本というのは年にどのくらいされるのですか。
  151. 川口芳太郎

    ○川口証人 これは教科科目にもよるのでございますが、大体小学校の場合には少し多くて、中学校は少し少いと思っております。主要科目は大体一千部前後でございます。各科目一冊当り送っております。
  152. 篠田弘作

    篠田委員長 どこへですか。
  153. 川口芳太郎

    ○川口証人 それを今申し上げたところに送っております。
  154. 篠田弘作

    篠田委員長 一ヵ所一千部ですか。
  155. 川口芳太郎

    ○川口証人 いいえ。これは、たとえば国語の一なら一というものを一千部くらい全国に送っております。
  156. 篠田弘作

    篠田委員長 全国で……。
  157. 川口芳太郎

    ○川口証人 それは展示会以外のものでございます。展示会には大体二千三百冊くらい。二千三百冊作るときに、その他の見本本の意味で一千部前後作っているわけです。
  158. 篠田弘作

    篠田委員長 各学校に、要求されないけれどもどんどん献本があって、要らなくなって余った本はまとめて売っているなんというような評判もあるけれども、そういうことはあなたのところはやっていませんか。
  159. 川口芳太郎

    ○川口証人 それは私は存じませんでございます。よく昔中学校の本の時代にそういう話を聞きましたけれども、今ごろはそういうことはないんじゃないですか。
  160. 篠田弘作

    篠田委員長 全国で一千部ですね。
  161. 川口芳太郎

    ○川口証人 私も科目によりましてよくわかりませんが、一千部、多くても二千部くらいしか作っていないようでございます。それは、大体今申し上げる通り、果の教育委員会とか、郡市の教育委員会とか、教育研究所とか、日本教職員組合の文化部とか、そういうところだけ会社から送っておりまして、あとは申し込みによってですから、送っても送らくてもいいのです。
  162. 篠田弘作

    篠田委員長 各地に駐在員もしくは連絡員等を置いておられますか。
  163. 川口芳太郎

    ○川口証人 置いております。
  164. 篠田弘作

    篠田委員長 その人数とか、そのおもなる経歴を一つ述べて下さい。
  165. 川口芳太郎

    ○川口証人 人数は四十七名でございまして、それからもう一つ何か……。
  166. 篠田弘作

    篠田委員長 大体どういう経歴の人を採用されていますか。
  167. 川口芳太郎

    ○川口証人 それは教育に経験のあった人を主として採用しております。それから、前にちょっと名誉職的な人を頼んだことがありますけれども、これは、先年、私どもの事業者団体の倫理綱領の上から、そういう人は全部やめてもらいました。現在はただ教育に経験のあった人だけが四十七名でございます。
  168. 篠田弘作

    篠田委員長 駐在員という人から献本されるというようなことはないでしょうか。
  169. 川口芳太郎

    ○川口証人 それはそういう場合があります。
  170. 篠田弘作

    篠田委員長 それを入れるとどのくらいになりますか。
  171. 川口芳太郎

    ○川口証人 全部でそうなんです。
  172. 篠田弘作

    篠田委員長 駐在員を入れて一科目について千部ですか。
  173. 川口芳太郎

    ○川口証人 これは、主として発送の経済とか、頼まれたとか頼まれないとかということで、送るのに便利のようにそういうものを使うときがあるのです。
  174. 篠田弘作

    篠田委員長 講習会研究会等を開催しておられますか。
  175. 川口芳太郎

    ○川口証人 講習会研究会は開催しております。
  176. 篠田弘作

    篠田委員長 全国的にどのくらいの回数で、何ヵ所くらいやられますか。
  177. 川口芳太郎

    ○川口証人 大体三百ヵ所くらいだと思います。各県で年に五、六回でございます。
  178. 篠田弘作

    篠田委員長 そういう場合に、文部省とか、そういう学校に関係のある官庁から講師を招いて研究会をやられる場合もあるわけですね。
  179. 川口芳太郎

    ○川口証人 文部省から招いたということは一度もありません。
  180. 篠田弘作

    篠田委員長 講習会をやったあと一ぱい飲むというような習慣が非常にあるということですが、あなたの方は……。
  181. 川口芳太郎

    ○川口証人 それはよく耳にすることで、これは非常に問題になっていることだと思いますけれども、当社といたしましては、先ほど申しましたように、教育事業の性質上そういうことはいたさないで、やむを得ないときは弁当をその席に取り寄せて食べるということは聞いておりますが……。
  182. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたの会社としてはそういうことはないのですか。
  183. 川口芳太郎

    ○川口証人 私の……(「あった場合どうする」と呼びその他発言する者あり)それはその者——昔と言うと変ですけれども、倫理綱領の実施されない前にあったかもしれませんけれども、今はありません。
  184. 篠田弘作

    篠田委員長 それじゃお尋ねいたしますが、長野県で採択に関する有力者を浅間温泉に招待した事実がありますか。
  185. 川口芳太郎

    ○川口証人 それも実は事件後私は報告で知ったわけでありますけれども、その当時の駐在員の中山が、昭和二十六年でございますが、浅間温泉において何か自分の著作物を執筆していたときに、たまたま同所付近に長野県の教職員の寮があったそうでございますが、その寮に泊っていた校長さんが知り合いであって、ちょうどそこで数回会った。それと、それから長野県の教職員の方が東京に参ったときに、本社の工場を視察したことがある。その二つを同業の方から土地の新聞か何かに投書したか、新聞の人がそれをどうかしたらしいのでございますけれども、要するに、検察庁の問題になって、私の方からは社員である奥村と担当の古山役員が取調べを受けました。当時、不起訴になって、非常に世間を騒がしたということに対して私は恥じ入ると同時に、将来を社員に戒めたわけなんであります。
  186. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、あなたはこの事実を認めますか。学校図書株式会社の長野県担当の参与をしていた中山旭美君は、同氏と師範学校時代の友人であった太田美明という梓村中学校校長に対して、学校図書株式会社発行する図書を採択してもらうよう依頼し、昭和二十六年一月ころから六月ころまでの間に浅間温泉に数回にわたって太田校長を初め多数の教職員を招待した、招待費六万円を中山参与の方が支出供応した、また太田校長は数名の教職員を引率し上京、学校図書の印刷工場を見学するといって同会社を訪問、同社の応接室で三万円をもらい、その半額を教職員に分配し、残額を自分が取った、以上の事実が警察署に知られ、新聞等にも掲載されるや、太田校長は間もなく辞任した、刑事事件として調査をした長野地方検察庁では、本件に関し、校長は責任をとってやめたこと、教科書採択権の所在についても不明確であること、学童に与える悪影響が大きいこと等を考慮し、起訴猶予の処分にした、この事実をあなたは認めますか。
  187. 川口芳太郎

    ○川口証人 初めて聞いた点がありますけれども、事件があったことははっきり認めております。
  188. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと、この招待費六万円というのは中山参与が個人的に支出をしたということですか。これは検察庁の調べですよ。社長が御存じないわけはないと思います。
  189. 川口芳太郎

    ○川口証人 その当時ちょっと米国の方へ行っていた関係もありますので、よく存じません。
  190. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、この工場の見学に来られたときに、応接間で三万円を太田校長に渡したというのは、だれが渡したのですか。
  191. 川口芳太郎

    ○川口証人 そういうわけで、実は私は詳しいことはそこまで存じません。報告もまだ聞いておらなかったわけなんです。
  192. 篠田弘作

    篠田委員長 昭和二十六年分報告がまだ……。
  193. 川口芳太郎

    ○川口証人 いや、それは、その当時私が二、三ヵ月留守をしておった関係上、おそらくこまかいところが漏れたのではないかと思います。
  194. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、あなたは社長として、そういうことは今のところまだ御存じないわけですか。
  195. 川口芳太郎

    ○川口証人 存じておりますけれども、その数字とか、いつどこでどういうふうに渡したかというところまでは知りません。
  196. 篠田弘作

    篠田委員長 しかし、あなたは先ほど、中山参与が個人的な執筆をしておった関係でそういうことをしたと言われたけれども、会社の応接間でそういうことをしたということは御存じですか。——聞いておられない……。
  197. 川口芳太郎

    ○川口証人 はい。
  198. 篠田弘作

    篠田委員長 そうですか。それでは、またあとで委員から御質問があると思います。  それでは、お尋ねいたしますが、証人会社に在職していた者で、現在文部省に転職している者があれば、あなたの会社におられたときの職務内容と、現在文部省における職務内枠について、御存じでしたら述べて下さい。
  199. 川口芳太郎

    ○川口証人 小沼洋夫となっておりますが、この人は昭和二十一年に図書印刷会社に就職いたしました。それから二十三年に学校図掛の方の仕事にかわりまして、二十七年の十月退社いたしました。そのときは福井大学の教授になるような話を開いておりましたが、その後二、三ヵ月たってから文部省に入ったということを知りました。もう一人古田孝一、この方は二ヵ月くらい前になくなりました。昭和二十三年に学校図書株式会社に入りまして、二十六年に退社をいたしました。大阪大学の事務局長かでやめたわけなんです。その後文部省へ行って調査局長か何かでなくなったように聞いております。
  200. 篠田弘作

    篠田委員長 それだけですか。
  201. 川口芳太郎

    ○川口証人 はい。
  202. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、永井浩、阿原謙蔵というような人は、これはもと文部省におった人じゃないのですか。
  203. 川口芳太郎

    ○川口証人 文部省におりました人はまだほかにもおります。
  204. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたの会社で……。
  205. 川口芳太郎

    ○川口証人 はい。今委員長のお話では、文部省へ行った人ということでしたから……。
  206. 篠田弘作

    篠田委員長 それはあなたの力から文部省へ行った人ですね——文部省にもといた人であなたの会社に現在入っている人はどのくらいいますか。
  207. 川口芳太郎

    ○川口証人 それは、近藤寿治氏が文部省にもおられたし、広島大学の学長をしておられた方です。永井浩、阿原謙蔵、この方たちも終戦当時までおられたですが、とにかく私の会社に現在嘱託あるいは取締役としております。
  208. 篠田弘作

    篠田委員長 特にその近藤さんという人が現在あなたの会社でやっておられる仕事はどういう仕事ですか。
  209. 川口芳太郎

    ○川口証人 近藤さんの仕事は、編集の一部分と、諸外国の教科書調査に主として当っております。この編集の一部分と申しますのは、実は編集技術上、主として著者が当っておるのですけれども、それを会社の編集部と共同してやっておるわけなんです。そしてこの間に各科目の担当セクションがあるわけです。そのセクションとセクションの間をつながなければ、横の関連と私ども申しておりますけれども、教科書の実際指導上おもしろくないのでございます。その横の関連をどうしても老練な人にやってもらわぬと、編集部と著者との非常な意見の対立やら、議論が沸騰する場合や、また各科目ごとの連絡というのは実は率直に言ってなかなかよくつかないのでございます。そういう場合に近藤氏のような人がいることが非常に役に立つわです。それから、もう一つ指導要領とかによって検定にパスすればいいのだというだけなら簡単なんですけれども、やはり指導要領を著者は著者なりに、編集部は編集部なりにそこに味をつけなければならない、妙味をつけなければならぬ。従って、諸外国の教科書などを詳細に調査して、そしてその指導要領の範囲とか検定基準の中でできるだけそこに教育的にものを生かしていこうという仕事をやっておるわけなんです。
  210. 篠田弘作

    篠田委員長 証人の主宰する図書印刷株式会社というのが静岡県の原町に新しく印刷工場を設置されたと聞いておりますが、その設置された経緯について述べてもらいたい。
  211. 川口芳太郎

    ○川口証人 申し上げます。原町工場は昨年十一月二十四日に開所式を行いました。その目的は、日本の印刷設備、技術が大まかに申して約三十年くらいおくれておるわけなんでございます。私ども業界としましても一番信頼をいたしておりました当時の政府の印刷局の矢野博士が、これは日本としてもどうしても解決しなければならぬ問題だということは十五年も二十年も前からおっしゃっていたことなんです。それで、私どもも学校図書において何とかいい教科書——内容的に努力して編纂はしておりますけれども、印刷製本上はわが国においては遺憾ながらこれ以上進歩を望めないわけなんです。従って、約十一億の資金をもって米国一流メーカーとの間に幸いに契約がととのいましたので、通産省その他に願い出まして、これはモデル・マシーンとして認可があったわけであります。そのときに、とかくこういうものを入れても秘密主義にやっていて困る、せっかく許可するのだから襟度をもって公開しろということがあったのですけれども、そんな意味もありましていろいろごたごたあったのですけれども、第一通商株式会社という輸入閥があります。そこへ手続を委嘱しまして、約百三十万ドルの機械を輸入し、またそれについて技術の導入ということを——実は私がここで申し上げるのもどうかと思いますけれども、非常に苦心しまして導入ができたわけであります。土地は、いわゆる国土計画的に考えて、地の利を得るがために、静岡県の工場誘致方針の協力を得た関係上、土地を二万坪ばかり手に入れまして、現在約五千坪の建物を建てて、実際に近代的に合理化した工場を作ったわけであります。これは、キャパシティからいきまして、教科書にしますと現在年間三千万冊くらいできるようになっております。とにかく、学校図書の内容と相待って、いいものを安く作りたい、ここにポイントを置きまして作り上げたのであります。だんだん自信を持って生産を上げつつあります。
  212. 篠田弘作

    篠田委員長 これは学校図書印刷会社でお買いになったのですね。
  213. 川口芳太郎

    ○川口証人 学校図書と図書印刷との両方の役員会議で決定して、共同的な事業になっております。手続上は、機械の輸入は学校図書がいたしまして、その他付随の国産でできるものはみな図書印刷が作りました。建物その他は図書印刷がやりました。要するに今は本機だけを学校図書から借りているような形になっているのです。
  214. 篠田弘作

    篠田委員長 八千万円の会社で十億円の品物を買うことは相当むずかしいだろうと思うのですが、その資金はどういうふうになっておりますか。
  215. 川口芳太郎

    ○川口証人 これは、ただいま申し上げましたように、図書印刷の方は一億八千万円の会社でございます。両方から資金を出し合って買い合ったわけであります。これについて図書印刷の方が五億七千万円調達いたしました。日本長期信用銀行から一億八千万円、生保団五社で一億二千万円、静岡銀行、駿河銀行から一億円、三井銀行、富士銀行、協和銀行から七千万円、増資によって一億円、これが大体五億七千万円の内訳であります。それから、学校図書の分は五億三千万円でございます。三井銀行より一億五千万円、それから増資によりまして六千万円、それから学校図書と図書印刷の自己資金、両方の金繰りの結果三億二千万、これが五億三千万円の内訳でございます。
  216. 篠田弘作

    篠田委員長 証人会社発行教科書の中で、昭和三十年度採択の分の中から製本がくずれてばらばらになった本が各地に多数見られておる、それで児童が非常に迷惑しておる、こういう事実がありますか。
  217. 川口芳太郎

    ○川口証人 存じております。
  218. 篠田弘作

    篠田委員長 それはどういう事情によるものですか。またそれに対してどういう対策をあなたの方でやっておられますか。
  219. 川口芳太郎

    ○川口証人 これは非常に遺憾のことでありました。配本前にこれがわかれば問題にならなかったのですけれども、配本後出たということは非常に申しわけないわけであります。これをいち早く完全なものと取りかえることに実は足を運びまして、大体今月の初めまでに取りかえを終えたつもりでおりますが、あるいはまだ若干出るのじゃないかとも思いますけれども、大体その数がきょうまでにわかっておりますのは六万四千百八十一冊に上りました。これは、当時現場からの始末書なり報告書なりによりましてわかったのですけれども、実は、ちょっとした下津意でそういう大きな問題を引き起したわけです。きょうお尋ねがあるのじゃないかと思って、実はその一部の部分品を持って参りましたけれども、この機械の中に繊維の目立てをするところがあります。この目立てをするのを取りかえるのを機械の従事員がちょっと一、二回怠ったわけです。これは別に故意でもなんでもありません。これは労働組合の中でも非常に問題になったし、本人はやめると言うくらいまで私の前で実は非常にざんげをいたしたわけです。決して故意にやったわけではないのです。要するに、この目立てがきかなくなったのを気がつかずにおったというときが二月の七、八日ごろから十五日ぐらいまでの間に二、三回あったわけであります。それがもとになりましたのですが、何しろ配本されてから気がついたものですから、処置がなかったわけであります。これを機会に、私も非常に感ずるところがありまして、技術的な指導に当る者にも厳重な注意をいたしたのですれども、当社といたしましては、これは意気込んで輸入した機械であり、技術である、これに対してつまらないミスを犯したということは、ほんとうに私、残念と申しますか、おわびのしようもない感じでおります。何と申しましても、本年配送しました総部数一千三百三十四万冊の中でありまして、もし御理解がいただけるならということを私はひたすら願っておるわけなんです。当時文部省に対しましてもこの報告をいたしまして、そうして、至急に取りかえることだ、こういうことを申されましてとにかくいいものと取りかえることが先決問題だ、それから、その他については自信があるのか−。そこで、私の方からも現場の方からの技術的な報告書を見せまして、これはほんとうに自信どころでない−。一体この製本の様式というものは、日本では針金でやるか糸かがりでやるか、この二つしかないのです。しかし、諸外国の現状は、その中間をいきます無線とじ、つまりこの問題ののりでやる。この針金と糸かがりの中間をいく無線とじでいくものが相当にたくさん出ておるわけで、それを取り入れたわけなんです。それがたまたまこういうことになったので、実は会社としても非常に遺憾この上もない問題になっているわけです。実は、労働組合の方も、これはやめさせて差しつかえない人間だ、どうしてもやめさせろ、職制とのいろいろ問題があったのですけれども、私、本人を呼びまして、これは世間が承知してくれれば、こんな得がたい経験はないのだから、ぜひこれを将来について生かしてもらいたいという態度で、その後は一人で努力してやっております。  それから、もう一つこの際申し上げたいことは、寒冷紗をつけたものと寒冷紗をつけないものとあったのです。この寒冷紗をつけるということは、本の厚みが大体一インチ以上のものにつけ、一インチ以下のものはつけないのが諸外国の常識なんです。それを、最初、外人の技師が来る前に、見本本を作る時代に、時間的なずれがあってつけてやったわけです。その後これはつけちゃいかぬ、同時に、そのかわりこのグルーに対してはこのグルーを使え、これは専門的に言いますと、骨からとったにかわと、皮革からとったにかわと血液からとったにかわと、この三種類があるわけですが、この血液からとったものを使って、寒冷紗は使っちゃいかぬのだということを言われたわけです。そこで、当時文部省にも中間的にその話をいたしまして、実は寒冷紗はとりました。生産価格からいきますと、むしろ寒冷紗をつけないグルーの方が高価でありまして、高くついているのですけれども……。
  220. 篠田弘作

    篠田委員長 証人は聞かれたことだけしゃべって下さい。あまりあなた一人で聞かれないことまでしゃべる必要はありません。  そこで、今の寒冷紗の問題ですが、あなたは労働組合の人の責任のように言っておられます。またそういう機会もお示しになっておりますが、見本を出されるときに寒冷紗をつけて出されたでしょう。問題はそこにあると思うのです。それは工場の間違いであるか事務の間違いであるか、わからぬけれども、こういうふうに寒冷紗をつけて丁寧なものをお出しになった。しかるに、その後、これは一インチ以上のものでなければつけないことが常識であると、だれがおっしゃったのかわかりませんがおっしゃった、今度ほんとうに子供に渡すときには寒冷紗をとって渡したから、こういうふうにばらばらになった、問題は一千二百三十余万冊の中の六万四千冊がこわれたのだから大したことじゃないじゃないかというふうにあなたは安易に考えておられるようだけれども、世田谷のある学校では四千冊の中で千何百冊というものが出た。しかも児童の手に渡って二ヵ月でこういうふうになってしまったというものもあるのだから、一千三百三十余万冊の中から六万冊というのは、それは全体としてはそうかもしれぬけれども、場所によってはそうはなっておらない。そこへ持ってきて、見本には寒冷紗をつけて出した。これは、それが常識であるかないかということは、しろうとにはだれもわからない。しかし、この見本と同じものが来るだろうと思って注文したことは確かである。ところが、今度は見本と違ったものを送っておる。これはどうも非常に大きな問題だと私らは考えておる。見本と同じものを送られたら、おそらくこういうことはなかったんじゃないか。この点についてどういうように考えておられるか。
  221. 川口芳太郎

    ○川口証人 寒冷紗をつけると、かえって表紙の裏に寒冷紗が出てきたり、体裁も悪いし、のりづきの点が厳密に言とよくない、こういうふうに言うわけなんです。それで、寒冷紗をなくしてもこのグルーを使えばのりづきの点が正確であるということは、実は専門家である米国の技師が言うわけなんです。それで、本年も実は見本本は全然寒冷紗をつけないで出しております。
  222. 篠田弘作

    篠田委員長 委員長からの尋問は一応これで終了いたしました。  委員の御発言を許します。一言申し上げておきますが、時間の都合上、各委員の御発言は大体十五分以内くらいにお願いしたいと思います。
  223. 高津正道

    ○高津委員 議事進行について。この証人については必ずしも十五分と限定しないで、ある場合には、質問者が特別だらだらと長くやっておるというのでなしに具体的な問題を一々聞くというような場合には十五分の中におさまらない場合もあるので、そういう場合は、委員長において、十五分程度で五分や八分はみ出ても、これをそのまま認めていただきたい、こういうのが私どもの意見なんですが、委員長はそのように計らってもらえましょうか。
  224. 篠田弘作

    篠田委員長 高津君の御意見に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  225. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、さよう取り計らうことにいたします。  濱野清吾君。
  226. 濱野清吾

    ○濱野委員 証人は、かつて満州国が関東軍に支配されておったころ、本庄という予備少将を仲介にして関東軍と交渉をして、満州国の教科書を独占しようとする意図のもとに、会社の設立を計画したことがあるかどうか。
  227. 川口芳太郎

    ○川口証人 会社の設立を計画したことはありません。
  228. 篠田弘作

    篠田委員長 ちょっと証人に申し上げますが、発言するときは委員長の許可を受けてやって下さい。
  229. 濱野清吾

    ○濱野委員 もし新しい会社の設立を計画したことがないとするならば、あなたのかつて持っておりました川口印刷株式会社の工場等を満州国へ新設する計画をしたことがあるかどうか。
  230. 川口芳太郎

    ○川口証人 ございます。
  231. 濱野清吾

    ○濱野委員 会社を新しく作ったことはないが、東京証人が持っておる会社の工場を満州国へ移そうとしたことはあるという。その工場の規模は大体幾らぐらいな資金でしかもどういう意図でそういう工場を作ろうとしたのか、お述べ願いたい。
  232. 川口芳太郎

    ○川口証人 当時日本印刷業界は飽和状態でありまして、私ども当時の金で五十万の資金で向うに支店を設けました。そして満州国の教科書などをやっておりました。これは昭和六年から昭和十一年まででございます。昭和十一年の年に、日本政府並びに関東軍の当時の経済部から、これを特殊会社にするとか、これを譲り渡せ——私をして言わせれば、簡単に明して強制買収を食いました。
  233. 濱野清吾

    ○濱野委員 当時内地の印刷界は飽和状態にあったと言うけれども、理由はそうではないのではないか。事業家として非常に雄大な志を持って満州国の教科書を独占しようとする勇敢なる意思のもとに支店を設けたのではないか。
  234. 川口芳太郎

    ○川口証人 その希望は持っておりました。しかし、関東軍の当時の庁舎の近くに印刷工場もありました。その工場を軍が経営しているとうまくいかないからというので、私は委任経営を命じられて、その方の経営もやりました。
  235. 濱野清吾

    ○濱野委員 希望か、あるいは意図であるかどうか、それはわからぬが、いずれにしても、そうした愚図が挫折した重大なる理由があったはずだが、それはどうして挫折したと思うか。
  236. 川口芳太郎

    ○川口証人 それは、日本政府の意図する満州国経営と申しますか、それに統制経済を実施するというのが根本であったように思います。
  237. 濱野清吾

    ○濱野委員 私の知る範囲においては、確かに、あなたがここで申されるように満州国の教科書を独占しようとする希望——証人の言う言葉で言えば希望でありますが、その意図でやってみたが、しかし、あれだけの膨大なる本を印刷出版するためには、その工場の規模がとても満たない、そういうことでやめにしたのではないか。
  238. 川口芳太郎

    ○川口証人 お答えいたします。それは、私は実は率直にそのときに、私の支店で完全にできるものをどうして統制会社にするかと言って、ずいぶん反対いたしました。
  239. 濱野清吾

    ○濱野委員 あべこべの証言のように聞えるのだが、統制されなければ国定教科書などはできないはずです。むしろあなたは統制されることを望み、しかもあなたの意図は約八〇%くらいは成功したのだが、当時の出光の日本の官憲から文部省問い合せがきて、さらにまた技術上その他設備上の事情について問い合せがあって、証人の考えているような小さい設備やあるいは資本ではとうていこの満州国の国定教科書を独占することは不可能であるという日本政府の言葉があって、それで結局満州国ではそれをとりやめて、その後、諸君が今知っているように、この証人の工場は買収されたのではないか、それがほんとうであるのではないか。
  240. 川口芳太郎

    ○川口証人 これは、結果から御説明すればおわかりいただけると思うのです。当時奉天にも教科書をやっておる会社がありまして、私の方と大体半々くらいでやっていたんじゃないかと思います。それから、その特殊会社は当時の半官半民の会社であったけれども、公称は二百万円の会社でありましたが、できた結果は払い込みは五十万円であります。ですから、実際に評価委員会ができて評価した結果、私はよく記憶しておりませんけれども、当時七十何万円か私の方に戻ってきたように思います。ですから、結局小さいからとか大きいからとかいう問題ではなかったと私は思っております。
  241. 濱野清吾

    ○濱野委員 そういう証言はむだな証言であって、この場合独占する意図のあったということだけは、確かに正直な証言として承わっておきます。  そこで満州国におけるかつてのそういう経験をもって、今日証人はこの最もすぐれたるコット・レールという印刷機を輸入するに至ったのかどうか、この点明確に一つお答えを願いたい。
  242. 川口芳太郎

    ○川口証人 独占するしないということを私に突き詰めても、私自身にそういう意図はないのですから、そう申し上げておるのです。ただ、御質問の委員の方にはなはだ失礼なことを申し上げるようですけれども、事業をやる者はある程度まで失敗も覚悟すると同時に発展することを唯一の希望としておることは事実です。その失敗することを覚悟しておると同時に発展することを努力しているというその事実が独占であるとおっしゃるならば、私もやむを得ないと思う。コット・レール機云々とおっしゃるけれども、これはお許しをいただけるならば、日本の技術について、また印刷業界についてちょっと申し上げなければおわかりにくいのじゃないかと思いますが、少し長くお話をしてよろしゅうございますか。
  243. 篠田弘作

    篠田委員長 あまり長くない方がいいのです。簡単に一つ説明して下さい。
  244. 川口芳太郎

    ○川口証人 コット・レール機を使えば、教科書がよくて安くできるということです。
  245. 濱野清吾

    ○濱野委員 独占的な欲望に燃えていることはそれは事業家としては必ずしも了解できないことではない。安くてよい本を作るために先ほどコット・レール印刷機を輸入したというようなお話を承わったのでありますが、その安くていい本を作るというのは、どういう本を作ろうとしてそのすばらしいコット・レール機を輸入したのか、営業上どの面をつかんでその性能の高い機械を輸入したのか、その直接の意図を承わりたい。
  246. 川口芳太郎

    ○川口証人 学校図書会社は、先ほど委員長にお答えしましたが、すでに三千五百万冊とか四千万冊ここ数年間やっておりまして、どうも手先の作業に多くをゆだねるということは、いい本ができたり悪い本ができたりして非常に因るわけである。少くとも平均ないいものができなければ困るという観点が一つ。それから、近ごろアジア向けの出版物の引き合いも相当ありまして、実は日本の業界ではそれを必ずしも全部引き受けられないような技術の水準でございます。それから今これから新しく写実ということから出発していい雑誌かなんかを作ろうと思っても、なかなかそれが新企画には乗らないのでございます。新企画に乗ろうとすれば、どうしても、自己宣伝になるようですけれども当社の原町工場のようなものでなければできないわけです。
  247. 濱野清吾

    ○濱野委員 これが重大なんですが、コット・レール印刷機を入れる直接の営業施策、営業対策、どういう仕事を獲得してこれだけ大きい機械の償却をしようとするのか、直接の目標をどこに置いたのか、こういうことを聞きたいのです。   〔委員長退席、南委員長代理着席〕
  248. 川口芳太郎

    ○川口証人 コット・レール機でやりましても二千万冊ないし二千五百万冊教科書としてできるわけなんです。
  249. 濱野清吾

    ○濱野委員 それは、時間は……。
  250. 川口芳太郎

    ○川口証人 大体十二時間くらいです。
  251. 濱野清吾

    ○濱野委員 性能はそれでわかりましたが、どういうところに業圈を拡張していこうとするのか、コット・レール機を使ってどの仕事をとろうとするのか、先ほどから言うのはこの点なんです。
  252. 川口芳太郎

    ○川口証人 教科書の現在やっているものだけで企業の目的は大体達するわけなんです。その余力は一般の受注に応じよう、こういうわけなのであります。
  253. 濱野清吾

    ○濱野委員 学校図書の教科書の買われているのは年間三千二百万冊でございますか。
  254. 川口芳太郎

    ○川口証人 三千四、五百万冊、多いときには四千万冊くらいございます。
  255. 濱野清吾

    ○濱野委員 コット・レール機によって十二時間に二千万冊ができるのですか。
  256. 川口芳太郎

    ○川口証人 それは、一年を大体二百五十日と見まして、十二時間を倍したものでございます。
  257. 濱野清吾

    ○濱野委員 そうしますと、あなたの出版物ですが、「原町工場開設記念建設記録」という中に「建設の構想」といって、こういうことを書いてある。「新工場の生産は、当社受注の大宗たる傍系学校図書株式会社・株式会社好学社の発行する検定教科書の製造を主体とする。」こういうことを書いてあるのですが、あちら向けの印刷とかなんとかいうことを先ほど御説明になっておったが、このコット・レール印刷機を輸入するに至った直接の動機は、検定教科書を対象としておやりになったことは間違いありませんな。
  258. 川口芳太郎

    ○川口証人 ありません。
  259. 濱野清吾

    ○濱野委員 それでは、もう一つお尋ねいたしますが、こうしたすぐれた印刷機で、しかも九十幾つかの教科書出版会社がある、この機械を遊ばせないためには、検定などにつきまして十分配慮がいるはずだと思います。私も事業をやっておりますから、事業をする気持はよくわかるのでありますが、十億になんなんとするこの機械を輸入して、そうしてこの減価償却をするためには、営業対策はどうしなければならぬかという、あらかじめの計画は社長として当然持つべきであります。そこで、その営業対策について打っている手は、一体どういうことをおやりになっているか、たとえば検定であるとか、あるいは先ほど申します通り、あなた方の発注を受けるまでの過程においてどういう営業政策をとろうとしていたのか、この点簡潔に一つお話し願いたい。
  260. 川口芳太郎

    ○川口証人 この工場ができるまでは、本社の工場におきましては四〇%ないし四五%外注に出しておりました。外注に依存するということは、教科書の性質上責任を果せない。これをまず果そうというのが目的でありました。従いまして、今すぐに仕事を増加しなければならぬという会社の内部事情はありませんですけれども、注文なり要求がありました場合には若干応じよう、こういうわけでございます。
  261. 濱野清吾

    ○濱野委員 簡単でいいですが、どこへ外注しましたか。
  262. 川口芳太郎

    ○川口証人 大体六十ヵ所くらいのところに外注しましたから、よく覚えございません。ここでは今わかりませんが、後ほどまた御入用なら調べて申し上げます。
  263. 濱野清吾

    ○濱野委員 二十八年、二十九年の外注場所と冊数を後ほど一つ委員長から求めていただきたいと思います。  それでは、次に質問申し上げますが、先ほど委員長の質問と少しく関連いたしますけれども、営業対策としてきわめて巧妙な手を打っているように私ども拝聴しているのであります。いろいろ運輸省その他の日通関係等においても、この議論は一時非常にやかましく行われたことでありますが、教科書関係について直接関連のある、世間でいうところの教学グループというものをあなたは御承知ですか。
  264. 川口芳太郎

    ○川口証人 教学グループというのは、実は私この三月以来一、二の新聞めいたもの、あるいは雑誌めいたもので見ております。それ以上はちょっとわかりません。
  265. 濱野清吾

    ○濱野委員 教学グループというのは、昨年の三月ごろできたグループではございません。証人会社にとうに入っておったグループで、あなたの会社に入っておった文部省関係の高官連中は、一体だれの紹介であなたはお入れになったか。これは幹部でありますから、社長が知らぬはずはない。どういう人の紹介でこれらの文部省の高官が入社なさったか、この点端的にお話し願います。
  266. 川口芳太郎

    ○川口証人 終戦直後、御承知の通り非常に落ちつきがなかったわけであります。そこで、図書印刷株式会社においては、文化部というものを設立しまして、教養面の研究とかなんかをする機関としたわけであります。そのときに、会社の経営からいきましても、結局文部省関係の人が一番適役じゃないかということだけは、私、はっきりしておりますけれども、その当時、たとえば率直に言うと浪人をしている人をいろいろ探したわけなのでございます。それで、その人たちに来ていただいたわけなのであります。ですから、入社したときにはみんなまちまちであります。
  267. 濱野清吾

    ○濱野委員 そうしますと、日本通運株式会社が運輸省の役人を探し求めて業務の都合上雇い入れたと同じような形で、証人もやはりそういう手をお使いになったのですか。
  268. 川口芳太郎

    ○川口証人 日本通運会社のことは一向存じませんでございます。
  269. 濱野清吾

    ○濱野委員 貴殿の方はどうです。営業政策から見てその方が都合がよろしいということであなたは入社せしめたということに了解してよろしゅうございますか。
  270. 川口芳太郎

    ○川口証人 はあ。
  271. 濱野清吾

    ○濱野委員 たくさん聞かなければならぬのですが、もう二、三点一つお願いいたします。  元文部省の高級官僚が学図社内の上層部に身を置いた、それがあなたの方の営業政策上都合がよろしいからこれを入社せしめた、これは単なる川口社長の人情話ではなくて、営利政策から出た一つの政策である、そういうようなことが一つはっきりした。そこで、もう一つ聞きたいのでありますが、証人会社、すなわち学図へ、終戦混乱時において文部省の教卓局所有の莫大なる用紙がやみからやみに横流しされたということが盛んにうわさになっておったが、こういうことは記憶はございませんか。
  272. 川口芳太郎

    ○川口証人 絶対にありません。
  273. 濱野清吾

    ○濱野委員 原町にコット・レールの機械を入れるような場合には、当然占領中でありますからGHQや安本の認可を得なければならぬ。そのときにあなたの方の会社のある人が盛んに外部から働きかけてその運動をしたのであります。主管課長は刊行課長の近藤唯一でありますが、この人が、外部の圧力によってそうした仕事をすることをがえんじなかった。そのためにその人は左遷されたという事実があるが、これはあなた御承知ですか。
  274. 川口芳太郎

    ○川口証人 それは私耳にいたしておりますけれども、ナンセンスですよ。近藤さんという人は長く教科書課長をしておりましたから知っておりましたけれども、そんなことは絶対にありません。今度の輸入については文部省は何にもタッチしておりません。
  275. 濱野清吾

    ○濱野委員 世間では、政商として最もすぐれたる、優秀なる商人であるということがもっぱらであります。  最後に、時間がありませんから一点聞きますが、今度学校図書の職員であった人、ことに重役であった人々が再び文部省の相当の地位に帰っているはずでありますが、それはどなたのあっせんでお帰りになったか、この点明確にお答え願いたいと思います。
  276. 川口芳太郎

    ○川口証人 先ほど委員長にもお答えしたのですけれども、小沼氏は福井大学の教授になって行かれることだけ私は知っておりまして、それ以外のことは存じません。それから、古田孝一さんは、大阪大学の事務局長になって行かれるということだけ知っておりまして、どういう関係かということは私にはわかりません。
  277. 濱野清吾

    ○濱野委員 もう一点。あなたの学校図書では東京都の出版物の大半を受注しておるそうでありますが、今回東京都の前用度課長の秋間課長が収容されたことを知っておりますか。さらにまた、教育局の総務部長であります関という方を御承知ですか。この二点をお答え願います。
  278. 川口芳太郎

    ○川口証人 東京都庁の仕事はほとんどやっておりませんのでございます。前の人は何とおっしゃるのですか。人が二人今出ましたね。
  279. 濱野清吾

    ○濱野委員 前用度課長の秋間という人です。今収容されております。
  280. 川口芳太郎

    ○川口証人 全然知りませんのであります。
  281. 濱野清吾

    ○濱野委員 学校図書では東京都の仕事を一つもしておりませんか。ほとんどしておらぬというのですか、しておるというのですか。
  282. 川口芳太郎

    ○川口証人 私の知っておる限りでは、しておりません。
  283. 濱野清吾

    ○濱野委員 社長さんなのにわかりませんか。——それじゃ私はここでとめておきます。
  284. 南好雄

    ○南委員長代理 山中貞則君。
  285. 山中貞則

    ○山中委員 証人にまずお尋ねをいたしますが、あなたの会社の規模、すなわち今出版しておられる教科書は現在出版されている総教科書の大体何パーセントを占める内容を有しておられますか。それから、その内容は、いわゆるパーセントの順位においてどの程度教科書界に位置しておりますか。お知らせ願います。
  286. 川口芳太郎

    ○川口証人 全教科書の大体一八、九%じゃないかと思います。それから、その次のお尋ねは何ですか、ちょっともう一度おそれ入りますが……。
  287. 山中貞則

    ○山中委員 あなたは、さっきからお聞きしておりますと——私の声は普通の人の声よりか大きいのですよ。それを、時間を限られているのに一ぺん一ぺん半分ずつ聞き返されたのでは、仕事ができません。私の声ははっきりしております。いい声なんですよ。だから、そういう問い返しなんということはお断わりいたします。しかし、今度だけお許しいたしますが、その順位はどの程度の順位になっておりますか。
  288. 川口芳太郎

    ○川口証人 順位は同業各社で筆頭でございます。一位でございます。
  289. 山中貞則

    ○山中委員 先ほど委員長並びに濱野君から御質問のありました問題でございますが、この展示会に出されたものは装丁その他がしっかりいたしておりますからりっぱな本であるが、一方においてあなたの言われるような技術的な手落ちによって学童に配給された本が二ヵ月後においてこのような状態になったことについてのあなたの弁明を聞きますと、主として技術的な問題、あるいはまたその遺憾であったばらばら教科書の占める比率はあなたの会社から出された教科書の中でごくわずかであったという問題に要約されるようであります。しかしながら、あなたの今までのお話を聞きますと、質問者に開き直ったりして、なかなか商魂たくましき方であるような気がいたします。私は、それは普通の仕事をされる商売人としてけっこうであると思います。しかしながら、残念ながらあなたの扱っておられるのは教科書であります。私が今さら教科書のことをここで言わぬでもよろしいが、教科書がいかなる国家的な役割を占めるも一のであるかについては十分御承知でこの仕事をあなたは昔からおやりになっておると私は考えます。私らの聞きたいのは、二ヵ月目にこのようなばらばらになるような本を、技術的な手落ちであれ、あるいはパーセンート幾らしかないということであれ、この教科書を受け取った児童等の純真な気持をいかに傷つけるかということを私は重視するわけであります。教科書出版の仕事に携わる人は少くとも教育に対する情熱を持っていなければなりません。真心を持たなければなりません。私はあなたをしかっておるのではない。あなたの答弁がその面に触れていないから申し上げるのです。こういうような非良心的な考え方のもとに技術の面やあるいは占めるパーセントだけの面で答弁するという考え方では、私は、あなたは断言すれば教科書出版会社の社長たるの資格がないと思います。私は、先般緒方局長に質問しましたときに、さような非道徳的なことを行なって、しかもまた本を取りかえればそれで済むというような態度をとるような会社は、現在の文部省の持っておる権限内においてでもすみやかに検定を認めない、自由企業であっても、このような教科書という重大な道徳的な内容の出版に関する限り、その道徳において手落ちありと認めて、文部省はこの会社を一年なり採用の対象からはずすという処置ぐらいとったらどうかというきびしい意見を述べたのでありますが、かような問題についてあなたは実際にはどのようにお考えになっておるのか、お述べを願いたいと思います。
  290. 川口芳太郎

    ○川口証人 私の先ほどの説明と申しますか、言葉が行き過ぎた、あるいは足りなかったと思いますが、何と申しましても、一冊たりとも悪いものができたことに対しましては私恥じ入る次第であります。この点、教科書に携わる者として幾重にもおわびをいたしたいのでございます。先ほども申しましたけれども、これを貴重な経験として、絶対に今後こういうことを繰り返さないようにやっておりますので、どうか御理解をお願いいたしたいのであります。
  291. 山中貞則

    ○山中委員 あなたは、先ほどからの証言の中において、アメリカから高度の印刷機を輸入し、そうして米人技師をわざわざ招聘したことを、日本の印刷業界教科書印刷業界あるいはまた自分会社の印刷技術の面を良心的に向上せしめてりっぱなものを作るためにそういう努力を膨大な経費をかけてされたように証言されたと思います。かような膨大な努力を良心的な教科書出版のために注がれたあなたの会社がなされた行為としては、私はあまりにも現実において極端に違い過ぎると思います。しかも、あなたはイーストマン・コダック、テナック・プロダクト・カンパニーから米人技術を招牌されるに当っては月給を八十万提供しておられるということでありますし、また熱海には豪壮なる邸宅をもさらに提供しておられるということでありますが、その点についての真偽いずれかをお述べをいただくことにいたしまして、かような膨大なる内容のいわゆる印刷技術と教科書出版への良心、情熱を傾けられたあなたの会社が、その社長であるあなたが、このような童心を傷つけ、しかもまた日本の印刷業界に汚点を印されるような行為をなされたということについては、私は少くとも事教科書出版に関する限りは見落してならない重大な問題であると思います。先ほど申しましたいわゆる米人技師の月給の問題と熱海の邸宅、そのような事実の有無とともに、さらにまた今後のあなたのそういう内容についての具体的な考え方をお知らせいただきたいと思います。
  292. 川口芳太郎

    ○川口証人 米人の技師は総理府の科学技術行政協議会及び大蔵省の認可を得て招いたわけであります。その総数は七名でありまして、ほかにまた向うの費用で機械に付いて来た人もおりますけれども、当社で招聘した技師は七名でありまして、大体週給でございまして、百五十ドルから二百五十ドルくらいでございます。そのほかに、こっちに滞在している間はホテルを利用いたします。実は沼津の付近には洋式のホテルがありませんので、やむを得ず主として熱海ホテルを利用いたしております。お尋ねのように決して豪壮な邸宅であるとか八十万円とかいうような、そんな数字ではないのであります。もうこれはきちっときまっておりまして、スタックの許可の範囲でしかできないのでありまして、われわれとしても、また会社経営の上からいきまして、ほかのサービスはいたしましても、直接生活費にかかるようなことは努めて遠慮してもらって、実は熱海ホテルの一室でみんなやってもらいましたのですが、何か、先ほどお尋ねのような資料があるならば、それは私から言わせればちょっと違っているのではないか、こういうふうにお答えしておきます。
  293. 山中貞則

    ○山中委員 また一つ落されたのですが、私の言うのは、その事実の有無についてお答え願うとともに、そういうふうに良心的な努力を技術的にされているあなたの会社が、現実にはこのような童心を傷つけるがごとき非良心的な現実行為をされているということについて、あなたのお考えに、実際に子供に提供する教科書をよりりっぱなものにし、完備されたものにするという熱意があったなら、私はこういうことは起り得なかったとさえ考えられるのであります。あとの証人があるいは触れられるかもしれませんが、あなたの会社につきまとううわさは、会社の資産ではとうてい及びもつかないような大規模なものを買って、何を意図しているのか、あるいは持ち前の独特の政治的手腕を発揮して、これを文部省の国定教科書みたいな形に持っていって、膨大な資産の既得優先権によって自分が一括納めようという腹があるのではないか、こういう痛くもない腹を——あるいは痛いかもしれませんが、探られることになるのであります。従って、このような非良心的なことをされることが、あなた方にとってはそういううわさをされる余地が残るわけでありまして、私は、あなたのその内容の改善について努力されたことが良心的であるかどうかということについては、ただいまのお答えだけではどうしても結論が出ないのでありますが、そこらの点について、もう一ぺん御意見を伺いたいと思います。
  294. 川口芳太郎

    ○川口証人 一度入った先入観は…。
  295. 山中貞則

    ○山中委員 そういうことを聞いているのじゃないのです。
  296. 川口芳太郎

    ○川口証人 私も、実は、時間の許す限り、工場の中にも入りまして、そして自分の見解なりを面接従業員にまで話しているわけですが、何分にも、先ほど申したように、わずかこののこぎりのようなところを取りかえることを工員が二、三回忘れたといいますか、取りかえなかったことで、そこがそういう原因になったのでありまして、私としては、これはもうほんとうにただ申しわけなく、将来を誓う以外にはない、こう思いましてやっております。
  297. 山中貞則

    ○山中委員 どうもあなたの答弁は要らぬことがくっついてくるのです。たとえば、そんな技術の小さいところでもっていろいろ言われますが、紫雲丸事件だって、あれだけの大きな事件を起しましたが、かじを右に切ったか左に切ったか、それだけです。右にぐるっと回すか左に回すかだけであれだけたくさんの人が死ぬのです。あなたのこの行動は、教育出版に携わる者としてはまさにこれは紫雲丸の運転士にも匹敵するような大きな過失なんです。私はそういうことを聞いているのです。十分御反省願いたいと思います。  次に、あなたの会社の営業の基本方針と申しますか、運営の角度というものを私はお尋ねしてみたいのでありますが、大体この教科書出版会社は大なり小なり文部省といろいろ関係のある人を入れているのが通例のようであります。それもごく一部に一人ないし二名を相談相手にしているという程度であります。ところが、あなたの会社に関する限りは、文部省の、先ほどは教学グループと言っておられましたが、そういう文部省の中枢の官僚であった者がうんと入っている。しかもまた、それが、文部省から入ってきた者があるかと思えば、今度は文部省に帰っていって現職で活発に働いている者もいる、あるいはまた現職のあなたのところの重役が中央教育審議会の委員になっている、そういうことを見ますと、あなたの会社は明らかに——どの会社にもそれぞれ特色のある会社の運営方針というものがあるはずでありますが、明らかに、あなたの会社は、いわゆるあなたの教科書出版立場から言えば文部省だけになるでありましょうが、政治的な運営というものを最大限に利用することによって、あなたの先ほど言われた言葉をかりるならば、できるならば最大限に飛躍をしたいという情熱を燃やしていられるように思うのですが、そのような意図を持っておられるかどうか、お伺いをいたします。
  298. 川口芳太郎

    ○川口証人 文部省におられたことは事実でありますけれども、先ほど申しましたように、決して現職の人をひっこ抜いたというようなことはないのでありまして、ただ、私の会社としては、経営の許す限りは、広い意味の家庭教育なり、学校教育なり、社会教育なり、いわゆる教育全般について社の者が知るということは営業上最も大切なことでありまして、それについては、早道として、経験のある方にテーマは会社として出して、それを研究してもらって、それをまた社員の資料にし、また社員を啓発する基礎にいたしているのでありまして、何だグループとかなんとかいうようなことは私どもわかりませんけれども、また政治的云云とおっしゃるけれども、教育全般について知らなければなりませんし、とにかく若い社員を一人でも有能な人にしたいという観点からやっているわけであります。
  299. 山中貞則

    ○山中委員 それだけであればけっこうでありますが、あなたは、先ほど、問わず語りで、語るに落ちた点が出てきた。というのは、近藤寿治氏ですか、この人の仕事について、あなたが委員長から聞かれたときに、編集に妙味を発揮しなければならない微妙な問題がある、いわゆる編集には言うに言われない妙味がなければならぬ、こういうことを言われた。なるほど、そういうことを言われると、近藤さんは非常に妙味のあるところに行っておられる。それはあなたのところの現職の重役でありながら現在文部省の中央教育審議会の委員をしておられるわけであります。なるほど、そうおっしゃいますと、中央教育審議会の委員であれば編集にも妙味が発揮できるでありましょう。あるいはまた、先ほどあなたは関知しなかったと言われますけれども、小沼洋夫氏、この人などは初中局の視学官をしておられますが、この人は、実際に教科書会社が、来年あるいは今年の文部省の教育指導方針はどういうふうになるのだろう、指導要領はどうなるのか、それによって自分たらの会社がいち早く他社に先がけた文部省の新しい運営方針に基いた教科書内容を作らなければならないということで、教科書の編集に着手する最も基本的な方針をきめる場所にあなたの会社から転出されておるわけであります。そうなりますと、あなたの先ほどおっしゃった編集に妙味を発揮するという言葉は、まさにお言葉通りでありまして、その点に関する限り、あなたの会社は他の社と比べて非常に恵まれた立場におられるとわれわれは考えるのでありますが、いかがでありますか。
  300. 川口芳太郎

    ○川口証人 近藤、小沼両氏は——もうすでに七、八年前から三、四年前まで小沼氏はおられたわけであります。この二、三年は全然会社とは関係がないわけであります。それから、近藤氏は、やはり五年も六年も前からおられまして、そして中央教育審議会の委員には、本年たしか一月ごろだと思いましたが、私詳しいことは存じませんけれども、私どもなったということを新聞で実は知ったわけであります。それで、そのことを逆に尋ねてみますと、いや、もう新聞に出てしまったから、自分も相談するひまもなかったけれども、一応引き受けたのだ、しかしあまり世間がうるさいならば私はもうすぐにでもやめるから、こういう話を聞いて、その後二度ほど何か辞表を持って出たことを私聞いております。いまだに受理されてないことも知っております。とにかく、先ほど妙味というお話もありましたけれども、この指導要領だけででは——たとえば、文部省のセクションがあるために、横の連絡というものは何もないわけでございます。それを、それではたとえば国語を中心にして算数、社会……。
  301. 山中貞則

    ○山中委員 簡単にして下さい。時間が切られているのですよ。
  302. 川口芳太郎

    ○川口証人 そんなところでございます。
  303. 山中貞則

    ○山中委員 あなたは今年の一月ごろと言われましたが、あなたはよく知らない社長ですから申し上げますが、私の質問に答えた緒方局長の証言によりますと、安藤文部大臣が就任されたときに近藤さんは中央教育審議会委員に就任をされております。その時期が期せずして一致するのですが、あなたの会社は安藤元文部大臣とは別段御関係はございませんか。
  304. 川口芳太郎

    ○川口証人 全然関係ございません。
  305. 山中貞則

    ○山中委員 申し上げておきますが、軽く考えて御答弁なさいますと、偽証罪というものがありますから、おどしをかけるわけではありませんが、そういうふうに簡単にお答えになると、あとでお困りになりましょう。全然御関係ありませんか。私どもではわかっております。もう一度御答弁を願います。
  306. 川口芳太郎

    ○川口証人 関係と申しますと、どんなことをおっしゃるのか知りませんけれども、たとえば金銭等とかあるいは交際が深いとかいう意味に私実は感じたわけでございますけれども、顔を知っている程度のことは私存じ上げております。
  307. 山中貞則

    ○山中委員 これはあとの質問に引き継ぎます。  あなたの方で、検定調査審議会の中に四十名くらいのメンバーを送っておる新日本教育研究会という財団法人に、三十万円ほどの基金を提供しておられますか。
  308. 川口芳太郎

    ○川口証人 新日本教育研究会には送っております。三十万円の基金を出したことがあります。
  309. 山中貞則

    ○山中委員 そうすると、あなたの方にはその新日本教育研究会から出されておる四十名くらいの検定調査員というものは、大体三十万円基金を提供して発足させたことだし、暗黙のうちにどういう方が調査員になっておられるかはおわかりになっておるわけでございますね。
  310. 川口芳太郎

    ○川口証人 それは何か誤解じゃないかと思いますが、編集の団体でありまして、それですから、おそらく調査員というものは一名も出ておらぬのじゃないかと思いますが……。
  311. 山中貞則

    ○山中委員 これもあとに譲ります。教科書の定価という問題は、あなたも当事者でございますからいろいろとお考えのことと思いますが、世論として、ばくとして自分たらの子供に教科書を買って与えるときに高過ぎるのではないかという声があることは、私が言わなくても御承知だと思います。試みに現在の教科書の定価についてこれを見てみますと、平均して所要経費が資材及び加工費に五〇%程度費されておるのが普通のようでございます。印税が五%ないし七%、供給手数料、これは特約供給所と取次供給所とでそれぞれ四%、一二%で、合しまして大体一六%程度、それからその残りが純益を含む営業費となりまして、二〇%ないし二九%が平均になっておるようでございます。そういたしますと、大体現在の事業というもので、純益を含む営業費というものの自由に使える金が三割にも上る事業はなかなか発見できないのではないかと考えます。そういたしますと、私どもとしては、しろうと考えで、お笑いになるかもしれませんが、教科書の定価は、現在の経済状態において正常と思われる状態に経営を維持しながら、これに改正を加えて引き下げる余地が多分にあると考えるのであります。その引き下げる余地とは、たとえば、公正取引委員会から、教科書販売の特殊会社にもあるまじき警告を受けている事実等から考えましても、その裏には不要の人件費もあり、あるいはまた純真な学校教育者の諸君をあなた方のしつこい勧誘その他の手段によって全く知らないうちに泥沼の中にほうり込んでしまうような行為が再三指摘をされております。検察庁においてもこれを法的に取り上げておりますが、ただ、教育の影響ということを考えて不起訴処分にはいたしておりますけれども、法律を厳正に扱う検察庁ですら、なおかつ手心を加えざるを得ないというのが教育であるということを考えますならば、教育の出版に携わる者として全く良心に一点の非の打ちどころのない人間が要求されるわけでございます。従いまして、そのような良心をお持ち合せであるということを前提といたしまして、あなたの会社の経営から考えて、この教科書の値段というものをもっと国民の全部がありがとうと感謝し、子供が喜ぶような値段の切り下げというものができないのか、お聞かせ願いたいと思うのであります。
  312. 川口芳太郎

    ○川口証人 他の会社のことは存じませんけれども、当社といたしましては、大体展示会の約一ヵ月前くらいに、文部省から、何日何時を切って定価の申請をしろ、こういう通達があるのであります。それは、値段については各社みんな競争でありますから、実はなかなか秘密にしておるわけなんであります。逆に言うと、入札みたいに定価を文部省に届けるのであります。
  313. 山中貞則

    ○山中委員 簡単に答えてくれませんか。
  314. 川口芳太郎

    ○川口証人 特約の手数料が一六%、間違いはありません。それから、私の方としては、資材費として三五%、それから印刷製本その他で二二%。それから発送費が四・七%、これは、御承知の通り、教科書は全国の島の果てまで、たとえば長崎県の例をとりますと、長崎には三百幾つの島がございます。みなこれは発行会社の責任であります。ほぼ印税はお説の通りでございます。編集費が四%かかります。それから見本本とかいわゆる普及費が展示会の費用を含めて二・五%かかっております。それから一般管理費。会社のいわゆる手取りは一一・一ということになっております。それで、教科書教科書とおっしゃるけれども、教科書にはこれだけの指導書なりいろいろなものがいるわけであります。これがないと教師は教授ができないのであります。こういう費用も全部含まれております。たとえば国語の教科書は全部でこれだけであります。それに対してこれだけのものがいるわけであります。
  315. 山中貞則

    ○山中委員 もっと下げる余地はございませんか。
  316. 川口芳太郎

    ○川口証人 本年は昨年より実は二%ほど下げました。
  317. 山中貞則

    ○山中委員 将来下げる余地はないですか。
  318. 川口芳太郎

    ○川口証人 原町工場の方が成功しますと、下げたいと思っておるわけです。ことしはとりあえず二%下げました。   〔南委員長代理退席、山中委員長代理着席〕
  319. 山中貞則

    ○山中委員長代理 山田長司君。
  320. 山田長司

    ○山田委員 証人から先ほど伺ったお話の中に寒冷紗の話がありましたが、もう一度そのことについて伺いたいと思います。展示会に出した製品には寒冷紗がちゃんとついておったのに、それがついておらなかったことによって大へん全国的に学校に迷惑がかかったわけですが、あるいは、そればかりでなしに、子供の勉強する上においても大へんな支障が起っていると思うのですが、これについて、でき上った本に寒冷紗がついてないことによって大へん経費の点に少くなった点があるのじゃないかと思のですが、この点についてどうして教科書の値段を変えなかったかということを最初に伺いたいと思います。
  321. 川口芳太郎

    ○川口証人 完全な製本ができなかったことはまことに申しわけないと思っております。今後必ず完全なものを供給するようにお誓いいたします。寒冷紗がなかったことは先ほども申したのですけれども、外人の技師の来る前に、ちょうど時間にずれがありまして、昨年の展示会が始まる前にどうしても見本本を作らなければならなかったのです。技師の日本へ来るのが間に合わなかったのです。従って、われわれが、寒冷紗を使うというような感じで、使って一応出したわけなんです。ところが、技師が来まして、一インチ以上の厚みのもの以外は寒冷紗を使わないのが常識だ、そのかわり薄いものはこういうグルーを使うのだと言って、そのうちの高価なグルーを示しまして、そして——高価なグルーを使いますと寒冷紗より実は若干高くなるわけです。高くなるけれども、やはり本の体裁とか、開き工合が寒冷紗を使ったよりもよくいくという結論なのでございます。そこで、全部寒冷紗をとったわけでもないのです。当時文部省にもそのことをちょっと報告といいますか、了解といいますか、申し上げておいたわけなんですけれども、それは、あらためて認可とか許可とかいう手続がしていなかった点で、私どもちょっと手落ちがあったと申しますか……。要するに、ことしの展示会には寒冷紗をつけて出してございませんのでございます。それをもって一つお認めをいただきたいと思います。
  322. 山田長司

    ○山田委員 文部省では、こういう見本と違った製品について、何もあなたの方にこれが注意をなさらなかったかどうか。
  323. 川口芳太郎

    ○川口証人 文部省からは顛末書を出せと言われまして、出してあります。
  324. 山田長司

    ○山田委員 文部省では、顛末書を出しただけで、あなたの方には何らそのあとの注意はなかったのですか。
  325. 川口芳太郎

    ○川口証人 私の記憶では、なかったように思います。
  326. 山田長司

    ○山田委員 先ほど、あなたは、六万四千百八十一冊という配本上においてばらばらになった教科書があったというふうに報告をされておりますが、東京の場合などは、聞くところによると、安藤さんと安井都知事が親しかったので、これに手を回して、こういうことについては一つあまりばらばらになったことを正確に言わないでもらいたいということを言われたとの話があるが、一体八十一冊というような半端な数字が出るような印刷の仕組みになっておるのですか、一応伺います。
  327. 川口芳太郎

    ○川口証人 安井都知事とか安藤前文部大臣ということは、おそらくこの話は今日でも知らないと思います。  はなはだ、失礼ですが、もう一つの点を……。
  328. 山田長司

    ○山田委員 配本上における半端な数字が出る仕組みの機械なのかというのです。
  329. 川口芳太郎

    ○川口証人 これは、自動的に続いて出る機械でありますけれども、できるのは一冊ずつできます。一秒間に二冊できます。
  330. 山田長司

    ○山田委員 手を回して、こういうばらばらな教科書がたくさんできておる問題については一つ内緒にしてくれというような話が、大分方々に言い触らされておるようですが、そういうことはないですか。
  331. 川口芳太郎

    ○川口証人 実は、ある新聞の方面から、これを当社のある者に向って、百万円出せばこの記事を書かないがというおどかしがあったようでございます。ところが、書くなら書いて下さいというわけで、はねのけたわけであります。そういうことはありましたけれども、私の方から逆に手を回してこうしたということはございませんです。
  332. 山田長司

    ○山田委員 今の新聞社の名前を明確に一つ言っていただきたいです。
  333. 川口芳太郎

    ○川口証人 お答えします。日本教育新聞社だと言っております。
  334. 山田長司

    ○山田委員 いつごろで、さらに日本教育新聞の何という記者がそういうことを言っていたか。
  335. 川口芳太郎

    ○川口証人 お答えいたします。その点は、私もそれ以上のことを聞いておりませんので、いずれ担当の者から調べてお答えいたしたい。
  336. 山田長司

    ○山田委員 あなたの方の担当の人は、何という人がこれを担当したか。
  337. 川口芳太郎

    ○川口証人 お答えします。古山敏雄でございます。
  338. 山田長司

    ○山田委員 もう一ぺん今の問題を尋ねておきますが、いつごろで、どこで言われたか。これがわかっていたら一応お答え願います。
  339. 川口芳太郎

    ○川口証人 それもあわせて調べて……。(「およそでいい」と呼ぶ者あり)およそは、日本経済新聞に出る一週間くらい前じゃなかったか、こう思います。
  340. 山田長司

    ○山田委員 あなたの方でお金をお出しになられて、国立大常の東京教育大学、さらに広島教育大学中に財団法人の研究会ができておる。東京の教育大学の中にあるのは東京教育図書研究会、広島には学校図書研究会というのがある。この二ヵ所に大体どれだけの金を出したのですか。
  341. 川口芳太郎

    ○川口証人 これは、財団のできる当時、たしか三十万円ずつ基金が出たと思います。
  342. 山田長司

    ○山田委員 財団はいつごろ作ったのか。さらに、この財団の中にいる学校の先生方はどういう顔ぶれの人たちか。それらの人たちで、この教科書を作ったメンバーは幾人いるか。
  343. 川口芳太郎

    ○川口証人 財団のできたのは昭和二十二年ごろだと思いますが、はっきり私今ここで記憶しておりませんです。その教職員全部がそのメンバーであります。これは実験学校でありまして、こういうことをやらなければならないのが筋であったと記憶しております。
  344. 山田長司

    ○山田委員 非常に政商の誉れ高いあなたの会社のことなんですが、一体選挙のたびなどにどのくらいの金を政党関係者に献金されているか、一応わかっている範囲だけを詳細に願います。
  345. 川口芳太郎

    ○川口証人 私の会社では政党には献金いたしておりませんでございます。
  346. 山田長司

    ○山田委員 会社ではなく、それでは社長個人ではどうですか。
  347. 川口芳太郎

    ○川口証人 私もいたしておりませんでございします。
  348. 山田長司

    ○山田委員 選挙に関係のあるのでなくて、それでは選挙が終ったあとでもいいです。ものすごい当選祝いなどをやったことはないか。
  349. 川口芳太郎

    ○川口証人 実は、私、政治家の方は、あまりよく存じませんくらい数か少いのでございまして、そんなに選挙の費用まで出すような必要が、率直に言ってないわけでございまして、まあその辺でおわかりいただけますでしょうか。
  350. 山田長司

    ○山田委員 いや、この場合は、少いとか何とかいうのでなくて、この辺でおわかり願いますなんという、そういう抽象的なことではだめです。わかっている範囲だけをやはりこの際言っていただきたいと思うのです。
  351. 川口芳太郎

    ○川口証人 私の記憶としてはございませんでございます。
  352. 山田長司

    ○山田委員 いや、あなただけの手腕で、政治家の二人や三人に、終ったあとのお祝いを出されないなんということは常識的に考えられないんです。一つよくお考えの上、もう一ぺんお答え願います。
  353. 川口芳太郎

    ○川口証人 私は政治家の方と食事をしたこともほとんどないのでありまして、従って、特殊におたずねしたこともないし、私がたずねられたこともあまりないのでございます。
  354. 山田長司

    ○山田委員 先ほどの日本教育新聞の百万円を要求したという問題については、いつお答え願えますか。
  355. 川口芳太郎

    ○川口証人 明日でもよろしゅうございます。まあ本人の古山の都合がどうなっているか、それによっては明日でもいいと思います。
  356. 山田長司

    ○山田委員 古山さんはうしろの方の傍聴席におられますから、さっそく聞いて下さい。この席をはずして……。  一つそのことを委員長許していただきたいと思います。
  357. 山中貞則

    ○山中委員長代理 ただいま山田委員から要求のありました通り計らってよろしゅうございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  358. 山中貞則

    ○山中委員長代理 さよう取り計らいます。川口証人はただいまの山田委員の要求に応じて下さい。——証人にお尋ねしますが、ここでは話せませんか。
  359. 川口芳太郎

    ○川口証人 よろしゅうございます。私はよろしいです。
  360. 山中貞則

    ○山中委員長代理 では、さように願います。  証人に申し上げますが、山田委員の要求で各委員が賛成されましたことは、せっかくここへお見えになっておりますので、はっきりした事実なので、この場で話し合って、証人たるあなたの口からお答え願いたい、こういうことであります。
  361. 川口芳太郎

    ○川口証人 それではお答えしたいと思いますが、どういうことですか、もう一度おっしゃって下さい。
  362. 山田長司

    ○山田委員 日本教育新聞の記者の名前、それから、大体いつごろであったのか、日本経済新聞に出るときよりも前だということを言われたのですが、そのことをよく一つ古山さんと相談されて、これは重大な問題だと思うのですから、一つ古山さん、御親切にお答え願いたいと思います。
  363. 川口芳太郎

    ○川口証人 お答えいたします。名前は杉下という人だそうです。何日かというのは、やはり記憶がはっきりしませんけれども、日本経済新聞に出るやはり一週間くらい前だったか、こう言っております。場所は大阪屋という喫茶店だそうです。
  364. 山田長司

    ○山田委員 どこです。
  365. 川口芳太郎

    ○川口証人 三田の大阪屋だそうです。日にちは記憶はないけれども、日曜の日だったそうです。
  366. 山田長司

    ○山田委員 その席にはだれかほかの人がおったかどうか。
  367. 川口芳太郎

    ○川口証人 古山をここに呼んでよろしゅうございますか。
  368. 山中貞則

    ○山中委員長代理 よろしゅうございます。
  369. 川口芳太郎

    ○川口証人 同席者はいなかったそうです。
  370. 山田長司

    ○山田委員 同席者はいないとして、さらに、金額は百万円の要求に間違いないかどうか、もう一ぺん証人から古山さんに伺って下さい。
  371. 川口芳太郎

    ○川口証人 この表現につきましては、ちょっと先ほどのことを訂正させていただきたいと思いますけれども、五十万か百万出して穏やかにした方がいいだろう、こういう表現だったそうでございます。
  372. 山田長司

    ○山田委員 大へん内容的に変化が起っていることになるが、五十万か百万で解決をつけた方がよいというのは、教科書のばらばら事件を世に出さないというふうな意味のことでそう言ったのですか。さらに、もう一つ、その席にはだれもいなかったというが、その部屋の様子もついでに御報告願います。
  373. 川口芳太郎

    ○川口証人 この表現については、悪口を書かないような意味で話があったのだそうです。それから、そこの店先には客人らしいものはおらなかった、こういうわけです。
  374. 山田長司

    ○山田委員 さらにお伺いいたしますが、杉下という名前だけで、名前は何というのか。それから、年ごろは幾つくらいであったか。さらに、服装の点はどんなだったか。
  375. 山中貞則

    ○山中委員長代理 山田委員は所定の時間は経過しておりますれども、このまま続行願います。
  376. 川口芳太郎

    ○川口証人 杉下何某で、名前は今記憶がないそうであります。それから四十才くらい。それで、せびろを着ていた。こういうわけであります。
  377. 山田長司

    ○山田委員 杉下何某でなく、名刺か何か出されたか、それとも口で杉下何という者ですと言われたのか。それから、新聞社の記者としてこれは責任ある立場のような名刺であったか。その点、おわかりでしたら、もう少し具体的に願います。
  378. 川口芳太郎

    ○川口証人 広告関係で顔は前から知り合いの仲であったために、特に名刺の交換はなかったそうです。
  379. 山田長司

    ○山田委員 知り合いの仲であれば、なお、どういう形でか調べる方法があると思うのですが、それは調べてすぐに御返事願えますか。
  380. 山中貞則

    ○山中委員長代理 証人は御返事願えますか。
  381. 川口芳太郎

    ○川口証人 お答えいたします。電話をかけて調べることにいたします。
  382. 山田長司

    ○山田委員 事務局の人が一緒にさっそく電話口へ行ってください。——ただいま証人が連れて参られた古山さんからだいぶ具体的にいろいろ話が明確になってきたのですが、この五十ないし百万円の金を出して解決つけるならば悪口を書かない、こういうことを言ったというが、これについて、今の古山さんが証人に対してどういうふうな話の仕方をしてきたのか、具体的にこの話をして下さい。
  383. 川口芳太郎

    ○川口証人 それは、当時のことでございますか。
  384. 山田長司

    ○山田委員 当時の。
  385. 川口芳太郎

    ○川口証人 当時は私はあまり知らなかったのですけれども、今度証人に喚問されるについて実は聞いてきたわけであります。
  386. 山田長司

    ○山田委員 こういう重大な発言がなされる以上、杉下という人の名前もわからなければ、それからさらに、顔は知っておるけれども教育新聞の記者であるというだけで、これが立場上におけるもっとしっかりした話がなされておらないけれども、おそらく百万円でこのばらばら教科書が世に出るか出ないかというような状態であるとすれば、これは必ず古山さんがあなたに、出して解決つけた方がいいか、あるいは出さずにこのままにしておくか、これについて相談したに相違ないと思うのです。このことについてあなたはどういうふうに古山さんに返事をしたのかと聞いているのです。
  387. 川口芳太郎

    ○川口証人 私はそういう問題については一切金を出さないという主張をしておる一人でございます。従って、出さない方がいいと言ったと思います。
  388. 山田長司

    ○山田委員 思いますじゃなくて、もう少しはっきりした考え方があるはずだと思うのです。こんなにばらばらな教科書を世に出している以上は、何か必ず世論が起ってくるぐらいのことはあなたも承知しなければならぬと思うのです。文部省がこのことについて何も証人会社に強い要請がなされておらないということ自体がおかしいのですから、この点、何かもっとはっきりしたことが浮び上らなければならぬと思うのですが、その点どうですか。
  389. 川口芳太郎

    ○川口証人 非常に迂遠な話でございますけれども、当時はばらばらの本が出たということは知ったのですが、まだ調査中でありまして、実は、これはどこの会社でもあることですけれども、責任者に対してはあまり大げさに物を言わない惰性があるわけなんです。従って、私もその当時としてはそれほどたくさん出たと実は思わなかったわけです。文部省の方へはどうしたかと言うと、これこれの書類を出してあるとか、何と言ったかと言うと、どうしましたとか言う程度だったのです。そして、今も申し上げましたように、新聞へ出てからむしろ非常に大きくなったわけです。その前は、私どもも報告のとり方がおそかったか、それほど重大問題のように感じていなかったのですが、新聞に出てからむしろ重大に感じたような程度でございます。文部省に対しては、実はすでに二週間に一度ずつ三回ほど報告書を出してあるわけであります。それで、総額が先ほどの数字になっておるわけなんです。これは府県別、学校別にみな出してあります。
  390. 山田長司

    ○山田委員 私の質問はこれで終りますが、ただいまの教育新聞の人の名前が明確になりましたら、あるいはまた再質問するかもわかりません。
  391. 山中貞則

    ○山中委員長代理 山田委員にはその問題のときには再質問を許すことにいたします。  大西正道君。
  392. 大西正道

    ○大西委員 今の教育新聞の杉下君からの百万円の要求の話でありますが、この問題については、学図が従来から売り込みの不正の問題が喧伝され、特に最近は教科書のばらばら事件が問題になって世の中の非常に強い非難を浴びているこの現状で、ジャーナリズムの口を抑えるという工作から、むしろあなた方の社の方付として、各方面へ手配をして、金銭をもって、あるいはその他の方法をもってその口どめのために私は働きかけたのではないかという疑念を持つのであります。これは、学図がこれまで二年余りにわたっていろいろな宣伝をやってきたやり口から見まして、私も他に二、三学図自体からいろいろな働きかけのあったということも聞いておるのでありますが、そういうことがとられたのではないかということを考えるのです。まず、社長のあなたが、社としては非常に重大なときに、こういう方針をむしろ支持したのではないかと思うのであります。はっきりとそういう特定の新聞社に対してそういう交渉をしろと言ったことはあるいはないと否定するかもしれませんが、それに似たような一つの対策というものをどのように考えたか、一つお聞かせ願いたい。
  393. 川口芳太郎

    ○川口証人 御疑念をお持ちになっておるようですけれども、これはぜひ御理解いただきたいと思います。私どもは、教科書の仕事に専念するだけで、ほかの方へ気が回らぬのであります。従いまして、よく世間で言う赤新聞的なものには、何も働きかけどころじゃなく、弱っておるわけなんです。従って、私どもそういうものに対して働きかけなどする必要もないし、いかにして断わるかということで悩まされておる事実なのであります。
  394. 山中貞則

    ○山中委員長代理 大西委員にここで御相談申し上げますが、先ほど山田委員の要求によって電話をかけた結果がわかったそうでありますから、ここで山田委員に若干の再質問を許したいと思います。よろしゅうございますか。——では山田長司君。
  395. 山田長司

    ○山田委員 名前がわかったそうですから、その名前をお教え願います。
  396. 川口芳太郎

    ○川口証人 杉下博だそうであります。
  397. 山田長司

    ○山田委員 電話をかけて本人に呼び出しをしていただいたのですが、ついでに、これは遠距離にいるのか、それとも近くの距離におられるのか、ちょっと伺ってみてもらいたいと思います。
  398. 川口芳太郎

    ○川口証人 当社の留守居にデスクを探さてして、名刺の古いのがわかったわけであります。
  399. 山田長司

    ○山田委員 それじゃ、よろしゅうございます。質問を終ります。
  400. 山中貞則

    ○山中委員長代理 それでは、大西正道君。
  401. 大西正道

    ○大西委員 今の御答弁でありますが、私は、他にある教育者の団体に対してあなたの会社の人が行って、この問題は何とか穏便にしてもらいたいと頼みに来たということを二、三聞いておるのであります。あなたは、社の最高方針として、そういうことについては何ら積極的な支持はなさらなかったとしても、末端の外交面に携わる方はそういうことをする十分な条件がそろっておると思うのです。一つこの点について、もう少しあなたの思想を整理して、思い出したところはないか、お答えを願いたい。
  402. 川口芳太郎

    ○川口証人 私の知っている範囲では全然ありません。もし丸負のうちにその必要を感じて行動した者があれば、これは私がおわびする以外にないと思います。
  403. 大西正道

    ○大西委員 それじゃ、その問題はそれだけにしておきますが、はからずも、あなたから、ある新聞社のこういう金品の強要があったという陳述でありますから、それではまだあなたの社に対して同様な話し込みがあったのではないかと思うのですが、もしあったといたしますれば、この際お聞かせを願いたい。
  404. 川口芳太郎

    ○川口証人 耳にはしていることはありますけれども、具体的に今ここで述べて、また訂正というようなことになるといけませんから、もう一度古山を呼んで聞きただしてお答えしましょうか。それとも、そのままでよろしいでしょうか。
  405. 大西正道

    ○大西委員 あなたの記憶にある範囲でけっこうですから、なるべく記憶を呼び起して、そしてあなたの意をまげないように聞かしていただきたいと思います。
  406. 川口芳太郎

    ○川口証人 同じ日本教育新聞から、昨年秋三百万円事業資金を貸してくれろということは、私は直接聞いたことがあります。それから、最近には、新政治という雑誌がありまして、大きな疑獄が始まっているような見出しなんであります。これでやはりゆすりがあったことを聞いておりますが、詳しくは内容は知りません。
  407. 大西正道

    ○大西委員 それだけですか、あなたの記憶にあるのは。
  408. 川口芳太郎

    ○川口証人 はい。
  409. 大西正道

    ○大西委員 それでは、私はここに委員長に提案をいたします。今の日本教育新聞の問題は、これは非常に重大な問題であります。従って、日本教育新聞の杉下君を証人として追加されることを、私は提案いたします。お諮りを願いたい。
  410. 山中貞則

    ○山中委員長代理 ただいまの大西君の御提案は、理事会で御相談申し上げたいと思いますが、よろしゅうございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  411. 山中貞則

    ○山中委員長代理 さよう取り計らいます。
  412. 大西正道

    ○大西委員 学図さんの発展の状況は、まことに目ざましいものであります。あなたの証言を聞きますと、発行部数は最高だそうであります。私のお聞きしたいのは、会社設立以来年次ごとにどのような数量的な増加を示してきたか。これを簡単に年次別にあげてみて下さい。
  413. 川口芳太郎

    ○川口証人 お答えいたします。ここにある資料ですと、昭和二十七年には四千万冊でございます。昭和二十八年には三千六百万冊、昭和二十九年には三千三百万冊、昭和三十年に三千五百五十万冊でございます。
  414. 大西正道

    ○大西委員 それ以前の二十三年ですか、それから聞かして下さい。
  415. 川口芳太郎

    ○川口証人 その資料が今ここにございませんで、ちょっと……。
  416. 大西正道

    ○大西委員 それが大事なんで、上り坂になってきたところを聞きたい。
  417. 川口芳太郎

    ○川口証人 二十六年、五年、四年などというのは、検定教科書はほとんどまだ出ておりませんから、大した問題はないと思います。
  418. 大西正道

    ○大西委員 あなたのその資料は、まことにかってな資料を持ってきておるのでございまして、私の知りたいのは、二十三、四、五、六、学図が一出版会社から飛躍的に伸びて、確かに昭和二十七年は最高になったと思うのです。この経緯を聞きたいのです。資料がなければやむを得ませんが、大へんな躍進ぶりであります。あなたの御手腕のしからむるところだと思うのでありますが、この非常な躍進ぶりの陰には、なみなみならぬあなたの御尽力があったと思う。その中で、どういう手を用いてこういう非常な躍進ぶりが結果さおたか。精魂を傾けて経営に当られたのであろうから、いろいろな売り込み、その他学図独自な何があるといわれておりますから、そういうところを一つ聞かしてもらいたい。
  419. 川口芳太郎

    ○川口証人 私はもっぱら編集に力を入れました。あとは造本に力を入れました。
  420. 大西正道

    ○大西委員 ところが、世評というものは、そういういう編集とか造本じゃなしに、学図の売り込み宣伝というものが非常に熾列であって、その後の教科書疑獄というようなスキャンダル、こういうものを起している原因だと言っているのであります。ときあたかも、あなたもご存じでしょうが、公取委から教科書発行会社の不公正競争防止について文部大臣警告が出ているのであります。この警告の中に「一部教科書会社は、その販売部数を増大せんがために、相当多額の経費をかけて教科書採択者に対し、各種の招待、饗応を行っている。」こういう表現が出ているのであります。この一部の業者という中には、その最も尤なるものとして学図が暗々裏のうちに意識されている、こういうことをいわれているのであります。今のあなたの発行部数の増加の統計を見ると、ちょうど二十七年が最高にのし上ったときなんです。このときに教科書業界がハチの巣をつついたようになったのであります。私は、そういうふうに考えますと、あなた方の非常に発行部数が増加したという裏には、ただ編集とか製本とかいうような問題ではなしに、あらゆる宣伝売り込みの陋劣なる手段が講ぜられているという世評を信じなければならぬと思います。ここで私はちょっとお聞きをいたしますが、この文部大臣に対する公取委の警告に対して、文部省からあなた方は何かの注意その他を受けましたか。
  421. 川口芳太郎

    ○川口証人 文部省から受けました。
  422. 大西正道

    ○大西委員 そういう文部省の注意に対して、どういう具体的な措置をおとりになりましたか。
  423. 川口芳太郎

    ○川口証人 それは、同業者の会合をしばしば催しまして、これは任意団体ではいけないから、もう少し法的根拠のある社団法人にして自粛自戒をしようじょないかということで、実は教科書協会が生まれたわけなんです。そのときに、設立準備委員長には私が当てられまして、私は適任じゃないからと言ったんですけれども、君が出なければ——業界にはいろいろな習わし、空気がありまして、あなたが一番中立的立場にあるからやってくれろ、こういうような態度であったために、私、委員長を引き受けまして、実は教科書協会を設立いたしました。設立後は今の会長に全部をゆだねてあるわけです。従って、公正取引委員会警告やら、あるいはわれわれの申し合わした教科書出版倫理確立のための宣伝実施要綱というようなものまで作りまして、そしてその後は世評から誤解のないように努めてはおるつもりであります。
  424. 大西正道

    ○大西委員 教科書協会を作ったときに、あなたが設立準備委員長になったということは、あなたとしてはあなたが適任者であるようにまわりの方が見たように言われておりまするが、一番問題になっているのが学図だから、学図の社長をこれに祭り上げて、そうして自分から一つ自粛自戒をしてもらわなければいかぬ、こういう風潮ではなかったかと思うのでありますが、いかがですか。
  425. 川口芳太郎

    ○川口証人 もしそうであったら、私はばか者であります。
  426. 大西正道

    ○大西委員 私はあなたにばか者の決定を下そうとは思いませんが、その後の教科書業界の動きもうすうす私は知っておるのであります。教科書協会ができましこも、遺憾ながらこの中で一番横紙破りをやるのが学図であるということは、これは単なる商売がたきの悪口ではないと私は見ておるのであります。こういう意味から、この教科書発行部数がふえたということについて、私は二、三あなた方に聞いてみたいことがあるのであります。あなた方の方は駐在員や連絡員というものを地方に置いておりますが、なかなか活発な動きをしております。一体こういう人たちに交際費としてどのくらい年間に予定され、支出されておるのですか。
  427. 山中貞則

    ○山中委員長代理 大西委員の持ち時間は経過しております。
  428. 川口芳太郎

    ○川口証人 お答えいたします。原則的には、俸給のほかには実際の車馬賃だけでございます。
  429. 大西正道

    ○大西委員 これは事実あなたの言われることとは全く反対なことが各地方において続々行われております。これは枚挙にいとまがないのであります。どうしてああいう採択のときに学図の末端機構が中心になっていわゆる供応とかその他の招待が行われるであろうか、これはもう一々言うまでもないのであります。これは公平に見てそうなのであります。あなたは証人として車馬賃以外に何も出していないということを言われるのは、あまりにも遁離が巧妙であろうと思うのであります。この点は決してあなたをここでつるし上げるというのじゃないのだから、こういう問題について一つ正直に証言をしてもらいたいと思うのです。  それから、私のお伺いしたいのは、非常に巧妙なる会社の運営をやっておられるのでありますが、その一例には、文部省とのつながりが今いろいろ論議されました。あなたはいろいろな人の名前をあげて、それは大した関連がないように言われておるのでありまするが、一つだけ私はお伺いをいたしますけれども、安藤文部大臣のときに中央教育審議会委員に新たに就任されたところの近藤さんという方は、あなた方の会社の重役でありますね。そうですね。
  430. 川口芳太郎

    ○川口証人 そうです。
  431. 大西正道

    ○大西委員 安藤さんが近藤さんを中教審の委員にされたということについて、そのいきさつはどういういきさつでありますか、聞かして下さい。
  432. 川口芳太郎

    ○川口証人 世評に対して疑念をお持ちになっていることは、私、非常に遺憾でありますけれども、私は率直に言いまして今のところ孤立無援のような感じがしております。それから、安康文部大臣のときに近藤さんが中央教育審議会の委員になったということは、先ほども申し上げました通り、たしかことしの一月ごろの新聞で私は見ておる。それも秘書の者が持ってきて、見ろと言うから見て、それから一両日たって近藤氏に聞いてみたところが、いや、新聞発表になったから仕方がない、引き受けてしまったのだけれども、御相談しなくて済みませんというような表現でありました。それで、そのときに私に向ってこういうことを言った記憶があります。船会社や製糖会社なんかの重役もなっているんだから、教育に関係する発行会社も一人ぐらいあってもいいじゃないかというようなことを言いましたが、これは少し単純だなあと思いましたけれども、私は、そうかなあ、もう過ぎたことだと思っておった程度でございました。
  433. 山中貞則

    ○山中委員長代理 証人に申し上げておきますが、孤立無援だとか、そういうようなことは求められた証言の範囲を越えておりますから、おやめになっていただきたい。  それから、大西委員の御質問の中で機密費の問題についての質問にお答えになっていただきたいと思います。
  434. 川口芳太郎

    ○川口証人 駐在員に対する機密費はございませんです。
  435. 大西正道

    ○大西委員 近藤さんは当時あなたの会社でどういう地位だったのですか。簡単でいいです。
  436. 川口芳太郎

    ○川口証人 昭和二十二年……。
  437. 大西正道

    ○大西委員 いやいや、当時御交渉のあったときです。引き受けたときです。
  438. 川口芳太郎

    ○川口証人 私のところの取締役であります。
  439. 大西正道

    ○大西委員 あなたの会社では、取締役が最も重大な他の職を兼ねるというような場合、社長に何の話し合いもなしに、事後にそういう茶飲み話で話をする、そういうしきたりになっておるのですか。私はどうもそういうことは言いのがれだと思う。少くとも、それまでにもたびたびあなたの会社文部省とは世評の的になっているそういうときに、取締役の重大な役目にあるような人が、しかも近藤さんという昔の文部省地位から言えばりっぱな方が、そういう非常識なことで、あとであなたに茶飲み話をしたというようなことは、これは世論が許しません。あなたは孤立無援だと言われるけれども、世論、衆目の一致するところは、そうこれはばかにしたものではないと私は思う。もう少しはっきりおっしゃってください。
  440. 川口芳太郎

    ○川口証人 先ほど申しました通り、私が新聞を、むしろ表現はきつくなりますけれども、突きつけた形で尋ねたわけなのです。そうすると、新聞へ出てしまったから引き受けたというような話でありました。
  441. 大西正道

    ○大西委員 まことにもって、この証言というものは言いのがれだと私は思います。そういうことは天下の人は許しません。明らかに、この問題は、あなた方の一つ会社の運営の方針の意図をもって入っておるということを私は認めざるを得ないと思うのです。  それから、もう一つ私がお尋ねいたしたいのは、非常な巧妙な方法をやって文部省とのつながりを持っておるということは、確かにこの五月の終りから六月の初めだと私は思いますが、文部省で社会科の指導主事その他の会議があったはずであります。各部門にわたっての指導主事の会議がございました。そのときに、その終ったあとで、文部省から、文部省主催のその会に、学図の静岡のあの工場を見学したい者は申し出ろ、こういう印刷物が配付されて、何人行ったか私は知りませんが、そこに自動車が横づけになって、この静岡のあなたの会社を見学に行かれている、こういう事実を私は知っておるのであります。公正取引委員会の勧告の中には、売り込み一つの巧妙なる宣伝方法として工場見学というようなことをこれは警告いたしておりまするが、もしこれが事実であるとすれば、文部省自体に対しても私は追及をしなければなりませんが、こういうふうに、文部省と結託して、文部省主催のこういう会合に全国の指導主事を集めて会社の見学などをさせるということは、私は全く売り込み宣伝といたしましては常軌を逸したやり方であると思うのであります。こういう事実があったかどうか、一つお聞かせ願います。
  442. 川口芳太郎

    ○川口証人 何かの会議の人たちが見学に来たということは存じておりますけれども、それが文部省主催であったとか、あるいは社会科であったというようなことは、私、存じません。
  443. 大西正道

    ○大西委員 これもおかしなことでありまして、これ一回限りじゃないと私は思っております。あなたの会社の開所式に文部大臣以下各政界の有力な人を招待されておりますが、それはそれとしていいでありましょう。ですが、こういうことについて、何かの会合なんということでなしに、この問題についてはっきり一つ御答弁願いたい。これは私は重視しておるんです。
  444. 川口芳太郎

    ○川口証人 社に帰りましてよく調べて御返事申し上げたいと思います。それから、この工場は、日本ではモデル・マシンとして許されたものであるからで、できるだけ公開をしろということは一つの条件になっておりますので、各方面の方に御招待を差し上げたことは事実であります。
  445. 大西正道

    ○大西委員 こういう証人証言では、肝心かなめの具体的な問題になれば、これは調べなければわからぬというようなことであっては、証人喚問の理由がわからぬと思う。私のここで申し上げておることは、これはいわゆる学図が文部省に対しての働きかけの最も具体的な一つの事実でありまするから、この問題はぜひとも私は事実がありやなしやということを明らかにしてもらわなければならぬと思います。
  446. 山中貞則

    ○山中委員長代理 ただいまの大西委員の御提案で、各委員御異議がなければ、本日の進行の状況いかんによっては、川口証人はなお証人として引き続き次の委員会にも御出席願うことに取り計らってもよろしいと思います。いかがでございますか。
  447. 濱野清吾

    ○濱野委員 議事進行について。委員長から、もう一度、先ほど宜誓したその要旨を川口証人に重ねて注意を促していただきたいと思います。というのは、もしその場のがれの答弁が生じて、しかも証拠をあげられれば川口君も非常に迷惑を感ずるであろうと思いますし、またわれわれも同僚とともにこの議事を円滑に正確に進めるわけにも参りませんから、重ねて御忠告を願いたいと思います。
  448. 山中貞則

    ○山中委員長代理 よろしゅうございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  449. 山中貞則

    ○山中委員長代理 では、ただいまの濱野君の御意見がございましたので、委員長から再度宣誓及びそれに要する本委員会の条件について申し上げます。  あなたが当初宣誓されました宣誓書は、読み上げられたので御記憶であると思いますが、再度ただいまの御要請によって読みます。  良心に従って、宣誓を述べ、何事もかくさず、また何事もつけ加えないことを誓います。  それから、委員からこういうことをあなたに御注意申し上げてあるはずであります。  証言を求める前に証人に一言申し上げまます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宜誓をさせなければならないことと相なっております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が、証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあった者、及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあった者が、その職務上知った事実であって黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになっております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは一律以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは三月以上十年以下の懲役に処せられることとなっておるのであります。一応このことを御承知になっておいていただきたいと思います。  こういう前提において、ただいま本委員会はあなたに御証言を願っておるわけでございますから、再度まことに失礼でございましたが、ただいまの御要求によって御記憶を新たにしていただきまして、この趣旨通りの証言を願いたいと存ずるものであります。
  450. 大西正道

    ○大西委員 学図の教科書を使う地域研究会、講習会には、学図自体がその教科書の編集者に費用を支弁して講師その他として派遣しておるという事実がごごいますね。これすべて学図はそういうものを学図の費用でもって派遣をされておるのでありますか。   〔山中委員長代理退席、委員長着席〕
  451. 川口芳太郎

    ○川口証人 講習会研究会に講師を派遣するときには全部会社で持っております。
  452. 大西正道

    ○大西委員 なお、学図の教科書を使う地方の現場の先生、あるいはそれに関係しておるところの地方の顧問、教育委員会の方々、こういう人が東京へ来るときに、学図がその宿泊その他を世話をして、そうして無料でお泊めをしたり饗応しておるという事実がありますが、これもお認めになりますか。
  453. 川口芳太郎

    ○川口証人 そういうことはいたしておりません。
  454. 大西正道

    ○大西委員 絶対にございませんか。
  455. 川口芳太郎

    ○川口証人 ありません。
  456. 大西正道

    ○大西委員 私はその事実を知っておるのでありますが、ありませんか。
  457. 川口芳太郎

    ○川口証人 ありません。
  458. 大西正道

    ○大西委員 次の機会にこの問題は明らかにいたします。  なお、最後に申し上げたいことは、あなたは初めは濱野委員の質問に対して、業者が雄大な意図を持って、そうして企業を拡大して行くということは、これは当然だ、それが独占になろうがどうなろうが、それはわしは知らぬ、こういうお話でございます。しかし、その裏で、満州国の国定教科書を一手に引き受けたいというようなそういう意図を過去に持っておられたのでありまして、最近、教科書検定制度が、制度そのものはりっぱな制度であっても、教科書の数が多過ぎるとか、あるいは採択の面に多少の不備ある、転校した場合にもなかなかそのかわりがないとか、そういう末梢的な事務的な不便のために、一部においてはこれに便乗して、そうして国定制度に持ってきて、思想的に一つの統一をやろうという非常に深謀遠慮な計画が一部で主張されておる。そういう一つの教育界の主張と同時に、あなた方は、時の安藤文部大臣と一連の連絡のもとに、会社の経営の面から十億にも及ぶようなこういう最新式の機械を設備されて、そして企業の上から独占形態に持っていかなければならぬじゃないか、こういうことが符節を合わすがごとくわれわれには看取することができるのであります。今お話の最新式の機械は、初めのあなたのお話では、三千万部くらいは刷れるんだ、こういうお話であります。ところが、濱野委員の追及にあいまして、二千万部か二千五百万部だ、こういうことを言っておられるのであります。この機械を宣伝せられたときには、確かに教科書の総所要量の三分の一はこの機械でまかなえるのだというようなことを私は聞いたのでありますが、一体どのくらいの能力があり、あなたの会社としてこれを設備し、それを維持していくためにはどの程度発行部数を確保しなければならぬのか、これを一つお聞かせ願いたい。
  459. 川口芳太郎

    ○川口証人 選択の自由ということが根本でありますので、選択された結果その量が多いということは、私はそんなに遠慮することはないと思っておるのであります。従って、私の方が人為的に商略的にたくさんの数をどうしようこうしようということでないと私は考えておるわけであります。従って、国定に持っていこうとかなんとかということは、少し何か誤解があるようにしか私には受け取れないのです。私の方はあくまで出発が検定教科書をやるのが目的で会社を設立いたしておるわけであります。検定教科書以外のものをやるという会社の設立の根本じゃないのでございます。
  460. 篠田弘作

    篠田委員長 ちょっと大西君に申し上げますが、あなた時間は相当超過しておりますから……。
  461. 大西正道

    ○大西委員 それでは、いいです。
  462. 篠田弘作

    篠田委員長 この際皆さんにお諮りいたしますが、時間も相当経過しておりますし、証人もだいぶん疲れておるようでありますから、本日は質問者の通告がまだ数名ありますけれども、これを次に延期いたしまして、本日はこれで散会いたすことにいたしたいと思います。
  463. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 次会に質問する都合があるので、もう少しこの印刷会社のやっている仕事の資料をほしいのです。それを証人一つ要求していただけませんか。
  464. 篠田弘作

    篠田委員長 ただいまの松岡君のは、ご意見ですか、動議で出されたのですか。
  465. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 意見です。
  466. 篠田弘作

    篠田委員長 松岡君の御意見に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  467. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、ちょっと証人に申し上げますが、今申しましたような事情で、あなたも大へんお疲れのようであるし、松岡も相当経過しておりますので、次会にもう一度御足労をわずらわしたいと思いますが、その際は、もうちょっと綿密というか、充実した資料を持っておいでを願いたい、こう思うのであります。
  468. 川口芳太郎

    ○川口証人 きょうお尋ねになったことならわかるのですが、何が御質問の筋かということで詳細に調べてきたいと思うのですけれども、今後お調べになる要綱みたいなものでも前もって一日、二日前にいただくと、私の方でははっきりした数字を持って参ります。
  469. 篠田弘作

    篠田委員長 それは、要するに、書籍の出版全般に関して、あなたの会社関係しておられることを各委員からお聞きしますから、そう限定した問題ではないわけですから、それだけあらかじめ御用意願って、もしあなた一人で資料のあれが不足であれば、だれか資料を持たして連れてこられてもかまいませんから、そういうふうにしていただきたいと思います。
  470. 小山亮

    ○小山(亮)委員 質問の参考資料といたしまして、今の学校図書株式会社と図書印刷の二十七年度、二十八年度、二十九年度の決算書、貸借対照表、損益計算書、これらを資料として要求します。
  471. 篠田弘作

    篠田委員長 今の小山君の要求に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  472. 篠田弘作

    篠田委員長 では、そのように取り計らいます。
  473. 高津正道

    ○高津委員 社長、自分でね、三百万円日本教育新聞から自分自身もよこせと申し出られたことがある、こういう発言があったのですよ。その名前もやはり知らせてもらいたいですな。
  474. 篠田弘作

    篠田委員長 要するに、委員会を次回に開くことにいたしましたから、その節皆さんから詳細に説明を求められたらいいと思います。  本日引き続き尋問の予定の証人、大日本図書株式会社常務取締役早川康一君につきましては、来る六月二十九日、水曜日に出頭を求めることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  475. 篠田弘作

    篠田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお、他の証人の出頭日時等につきましては順次繰り延べることにいたしますから、さよう御了承願います。  次会は来る二十九日水曜日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十五分散会