○山中
委員 時間を制限されましたので先を急ぎます。あなたも御承知の通り、古い話ですが、明治三十八年に金港堂事件というのが世人の耳目を聳動せしめて、世に
教科書疑獄と言われたのですが、そういう大きな事件がありまして、国民の世論が沸騰したことがある。ところが、現在の状況はいわゆる野放しでありまして、このままの状態でほおっておきますならば、もちろん明治時代とは世論そのものがもっときびしく鋭くなっているわけでありますから、そこまで腐敗ということを私どもは考えたくないのでありますが、おそるべき状況が予想されるわけであって、現に今までに実例としてあがってきたものでも、たとえば、研究会とか講習会とかいう名目にかこつけて、その会費負担を
会社がやったり、終了後は必ずと言っていいはど懇親会というものをやって、そこで暗黙の取引をする、あるいはまた
教科書採択に直接間接の権能を有する有力者をあらゆる名目において招待をする、あるいは
学校側の自主的な旅行等に便乗をして実際上は自分たちの有利になるような協力、招待、供応等々をやっておる、こういうこと等があるわけであります。たとえば、鹿児島県において二葉株式
会社が全県下の校長を温泉あるいは旅行に招待をしたために、それらの
先生方は全く善意の行為であったにもかかわらず、帰って待っていたものは検察庁であったというような事件がありました。あるいは、長野県の
学校図書株式会社が起した同様な事件もまた同じく検察庁の問題となつおります。しかしながら、検察庁としても、これは法的にも、直接、たとえば一校長がそのグループになってよばれたからすぐにこれを取り上げ処罰をするということは、その権限から見てもおかしいし、また
教育的な効果、児童に与える
影響等も考えて、ほとんど内密に、そうして不起訴処分にしておりますが、しかし、これはすでに公然の事態となって世人がひんしゅくする事実であります。あるいは、千葉県においては、一方の
会社が一方の
会社は負けず劣らず一教務主任の校長
会議を招待をすれば、
会議を自分たちが招待をするというような、どう考えてみても、
教育の神聖あるいは
教育の良識というものを逸脱するような行為に純真な
教育者の方々をかり立てていく現在の
教科書出版
会社のあり方というものは、何としても放任すべきではないと考える。現に、本日の毎日新聞を見ましても、千葉県の四街道小
学校の教員全員が静岡県の
教科書会社に見学に行って、温泉に一泊して帰っておる。もちろん
教科書会社の方はそういう事実はないというように否定をいたしておりますし、あるいは校長等は、いろいろな具体的な疑惑を新聞その他で指摘をされたのですが、この場合そういうことはないと否定はしておりますが、先ほどあなたが初中局におる
視学官についても述べましたように、大部分そういう疑惑のあるような行為を
会社の方がやっておる、勧誘をしておるという事実は、ここに明らかになるわけであります。こういうようなことをほおっておきますと、現在の
教科書制度の持っておる
考え方の基本的な美点等が、こういう問題
——明治の金港党事件は結局それを契機として
国定教科書に持っていくような端緒を開いたのですが、そういうことでみずからが墓穴を掘るような行為をすることになる、私どもはかように考える。でありますから、かような頻発する問題がすでに現在もなお行われつつある状況を見ますときに、
文部省としては、先ほども再三申しましたが、これらの問題についてもっと日本の
教育を守る責任が自分たちにある、
教育行政の責任は自分たちにあるのだというその自信の上に立っての正しい行為を積極的にやるべきだ、われわれはかように考える。その点についてあなたの御見解を伺いたいと思います。