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1955-06-24 第22回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十四日(金曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 篠田 弘作君    理事 佐々木秀世君 理事 高木 松吉君    理事 田中 彰治君 理事 南  好雄君    理事 山中 貞則君 理事 山田 長司君    理事 神田 大作君       菊池 義郎君    志賀健次郎君       濱野 清吾君    松岡 松平君       三田村武夫君    荒舩清十郎君       塚原 俊郎君    福永 一臣君       米田 吉盛君    井手 以誠君       高津 正道君    辻原 弘市君       西村 力弥君    大西 正道君       春日 一幸君    小山  亮君  委員外出席者         証     人         (文部省初等中         等教育局長)  緒方 信一君     ————————————— 六月二十四日  委員臼井莊一君及び倉石忠雄辞任につき、そ  の補欠として濱野清吾君及び南好雄君が議長の  指名委員選任された。同日  理事倉石忠雄委員辞任につき、その補欠とし  て南好雄君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  小、中学校における教科書関係事件     —————————————
  2. 篠田弘作

    篠田委員長 会議を開きます。  この際理事補欠選任の件についてお諮りいたします。理事倉石忠雄君が委員辞任いたされましたので、その補欠選任をいたさなければなりませんが、これにつきましては先例に従い委員長において指名をいたすことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 篠田弘作

    篠田委員長 御異議なしと認めます。よって、理事南好雄君を指名いたします。     —————————————
  4. 篠田弘作

    篠田委員長 これより小、中学校における教科書関係事件について調査を進めます。  直ちに記入より証言を求むることにいたします。  ただいまお見えになっておられる方は緒方信一さんですね。
  5. 緒方信一

    緒方証人 はあ。
  6. 篠田弘作

    篠田委員長 この際証人に一言申し上げます。現在わが国において小、中学校における教科書は多極多様にわたり、大小出版業者が乱立の結果、これが検定並びに採択等に関しとかくの風評も生まれ、これが学徒並びに父兄に及ぼす影響も懸念し、世上大いに関心を抱いておるのであります。義務教育の本旨にかんがみ、これが真相を明らかにすることはきわめて意義あることと考え、本委員会は本件の調査に着手した次第であります。証人におかれましては率直なる証言をお願いいたします。  それでは、ただいまより小、中学校における教科書関係事件について証言を求むることになりますが、証言を求むる前に各証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合にはその前に宣誓をさせなければならぬことと相なっております。宣誓または証育を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあった者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、弁護士、弁理士弁護人公証人宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあった者がその職務上知った事実であって黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになっております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは三月以上十年以下の懲役に処せられることとなっておるのであります。一応このことを御承知になっていただきたいと思います。なお、証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものであるときは、その旨を申し出願いたいと思います。  では、法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人緒方信一朗読〕    宣誓書  良心に従って、真実を述べ、何事もかくさず、また何事もつけ加えないことを誓います。     〔証人宣誓書署名捺印
  7. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得て答えるようお願いいたします。なお、こちらから証言を求めるときはおかけになっていてよろしゅうございますが、お答えの際は御起立を願います。  まず証人略歴を簡単に述べていただきます。
  8. 緒方信一

    緒方証人 明治三十九年七月二十九日生まれであります。昭和五年に当時の東京帝国大学法学部を卒業後、内務省に入りまして、終戦後は追放になりまして一旦役人をやめましたが、昭和二十八年八月末に文部省初等中等教育局長に任ぜられまして、今日に至っております。
  9. 篠田弘作

    篠田委員長 文部省で行なっている小、中高等学校で使用する教科書検定方法について、まず審査機関内容について御説明願います。
  10. 緒方信一

    緒方証人 教科用図書検定につきましては、教科用図書検定規則がございまして、それに従って行なっておるわけであります。検定をいたしますのは文部大臣が行うのでありますが、その手続といたしまして、教科用図書検定調査審議会というのがございまして、その中にまた分科会が二つあるのですが、その分科会一つであります教科用図書検定調査分科審議会諮問をいたしまして、その答申によって検定をする、こういう仕組みでございます。  なお、実際に検定をいたしますその検定調査仕事に当らせるために、この審議会調査員を置いております。この調査員が、申請してきた教科書原稿調査をまずいたしまして、調査員調査をこの検定審議会に持ち込みまして、そこでその結果を検討いたしまして答申を行う、こういうことでございます。  そこで、調査員関係を少し詳しく……。
  11. 篠田弘作

    篠田委員長 調査員関係は要りません。審議会だけで……。  その次に、審査方法はどういうふうにやっておりますか。
  12. 緒方信一

    緒方証人 今のお尋ねは調査員調査方法だろうと思いますが、大体毎年——これは申請の件数によりまして違いますけれども、三十一年度の教科用図書検定について例をとってみますと千四百名の調査員をきめておりまして、この千四百名の調査員を大体五人ずつに組み合せを作りまして、五人の人が一つ原稿を見る、かようなことにいたしております。調査員選任につきましては、各学校種別、それから教科種別によりまして、小、中、高等学校先生学識の高い人として大学教授、この両方を選んでおるわけてございます。今の五人の組み合せの中には、五名が学校先生であり、二名が大学教授、こういう組み合せになっております。そうして、出て参りました原稿を五人の調査員がそれぞれ各別に調査をいたします。これは一定の検定基準があるのでありまして、それに従いましてこれに採点をいたします。その採点を平均いたしましたものを検定審議会に報告いたしまして、そこでさらに審査をする、かようなことになります。  そこで、ただいま行なっておりまする合否の決定の基準でありますが、各検定基準にも二通りありまして、一つは絶対要件、それから必要要件、二つのものがきめられております。絶対要件と申しますのは、教科書としておよそ絶対不可欠の要件、すなわち、わが国教育目的と一致しているかどうか、あるいは政治や宗教について特定の政党、特定宗教に片得ったものでないかどうか、そういう題材等が取り入れてあるかないか、そういうことでございます。それから、さらに、その原稿目的としております教科指導目標教育上一致しておるかどうかということが絶対条件になっております。必要条件の方は、これは各教科によって変っております。たとえば、教科や学年によって異なっておりますが、内容の正確、信頼性、児童の心身の発達段階に即応するものであるかどうか、あるいは教材組織配列等が適当であるかどうか、分量等教科書として必要と認められるか、適当であるかどうかというようなことが必要条件となっております。そうして、これらの条件につきまして、特に必要条件につきましては点数できめる。その各調査項目に応じて採点をいたします。各調査項目ごとに五人の調査員でやりますが、その五人を平均いたしましたものが合格点以上であるということが一つ条件であります。ただ、しかし、全体の合計が合格点に達しておる場合には、一つ項目が三項目だけ合格点に落ちておってもよろしいという条件があります。さようなわけで、五人の調査員採点を総合し、平均いたしましたものが合格点に達しておるかどうかということで、その判定をいたすわけであります。それに対しまして、調査審議会におきましても十分検討いたしまして、その可否の意見をきめまして、それを文部大臣答申をするということになっております。
  13. 篠田弘作

    篠田委員長 発行者から原稿を受けてから検定審査の終了するまでの期間は大体どのくらいかかりますか。
  14. 緒方信一

    緒方証人 これは大体二カ月くらいかかるであろうかと考えます。
  15. 篠田弘作

    篠田委員長 それで、合格率はどのくらいでしょうか。
  16. 緒方信一

    緒方証人 三十一年度、このたびの教科書合格率は八一%になっております。大体従来とも七〇%、七五%、——七五%前後であります。
  17. 篠田弘作

    篠田委員長 審査はもちろん厳正に行われておると思いますけれども、調査員出版業者、あるいは採択者編集者というような関係もありますので、教科書審査というものが厳正に行われておるかどうか、この点についてお聞きしたい。
  18. 緒方信一

    緒方証人 私は厳正に行われておると考えます。
  19. 篠田弘作

    篠田委員長 それから、教科用図書検定調査審議会の中で、調査員任命方法、あるいは調査員任命基準というものはどういうふうになっておりますか。
  20. 緒方信一

    緒方証人 調査員任命方法でありますが、これは教科用図書検定調査審議会令という政令がございます。その中に調査員事項がきめられておるのでありますが、学識経験者の中から審議会意見を聞いて文部大臣任命をする、かようになっております。それで、文部省といたしまして今やっておりますことは、各都道府県、と申しましても、これは東京を主としその他近県でありますが、都道府県教育委員会並びに大学学長等に、こちらからその教科あるいは学校種別等条件をつけまして推薦を依頼いたしまして、そして各教育委員会なり大学から推薦した者の中から人選をいたしまして、そして今規定にございますように審議会意見を聞いて任命をする、こういうことにいたしております。なお、推薦を求めます場合に実際上こちらから申しております条件でありますが、これは、学識経験が豊かで、考え方が公正であり、教職歴を五年以上勤めた者——学校先生が多いのであります。年令は満三十歳以上、それから検定教科書編著作にかつて関与しまたは現に関与してない、こういうことを要件にいたしまして推薦を依頼するということにいたしております。
  21. 篠田弘作

    篠田委員長 氏名非公開となっておるはずでありますが、非公開理由はどういう理由ですか。
  22. 緒方信一

    緒方証人 非公開にいたしております。その理由は、調査厳正を期するという理由であります。  それから、なおつけ加えて申し上げますけれども、氏名のみならず、その調査をする原稿がどの著編者原稿であるか、あるいは会社原稿であるかということがわからぬようにするために、原稿も番号だけを付して調査をする。それから、充ほど五人で一組ということを申し上げましたけれども、これは特別に自分のことだけしかわからないようなことにいたしてあるわけでございます。お互いの連絡ということもないようにしてあります。そういう意味でそういうことをいたしまして、著編者あるいは会社方面との連絡がつかないように、不当な影響力が及ばないようにという配慮からいたしまして、現在は非公開制度をとっております。
  23. 篠田弘作

    篠田委員長 教科書発行者間のうわさでは、調査員名前はすぐ知れるということが言われております。これについてあなたはどういうふうに考えておられますか。
  24. 緒方信一

    緒方証人 私もそう言われていることを存じておりますが、一つ理由といたしましては、調査員になる人が大体きまってしまう、毎年調査員を委嘱される、だから事前にわかるということが一つあるのではないかと思います。これは、私実情を申し上げますと、たとえば、ことし調査中に、昨年やった人というのは、これは非常に少いのであります。と申しますのは、これは先ほど申し落したかしれませんが、任期は一年であります。毎年これを改めるわけでありますけれども、ことしの調査員の中には昨年やった人は非常に少くなっております。その前、昨年は大体半数くらいの改選じゃないかと存じます。半数くらいは前にやった人がやるということになるのではないかと思います。相当改選をやっていますので、私はそうたやすく世間に言われるようにすぐわかるということにはなっていないのじゃないかと考えるわけであります。ただ、実情につきまして詳しいことは私存じません。
  25. 篠田弘作

    篠田委員長 調査員の中に、ひそかに教科書発行業者編集に携わっている人がある、そういううわさももっぱら飛んでおるわけですけれども、そういうことはないですか。
  26. 緒方信一

    緒方証人 具体的には、私全部調べたわけではございませんので、はっきりしたことを申し上げられませんが、私はないと考えております。ただ、前に調査員をやっておった人が編集をやるということはあり得るのではないか、かように考えております。
  27. 篠田弘作

    篠田委員長 ただいまあなたが言われました、調査員半数くらいずつかえる、その理由はどういうわけですか。今年はかわった、こうおつしゃいましたね。これは別にかえることになっているわけではないのですか。
  28. 緒方信一

    緒方証人 別に再任は妨げないということになっておりますけれども、やはり、同じ人にそう長くやってもらうというよりも、かえた方がよかろうという観点からでございます。さっきちょっと申し上げましたけれども、ことしは非常に少いのであります。これもはっきりした数字は申し上げられませんけれども、ごく少数でございます。
  29. 篠田弘作

    篠田委員長 それは、残られた方が少いということですか。
  30. 緒方信一

    緒方証人 そうでございます。
  31. 篠田弘作

    篠田委員長 それから、現在の文部省職員の中に元教科書会社に勤務しておった者がある、また現在の教科書会社職員の中に元文部省職員をしていた者がある、こういう状態があるわけでありますが、その氏名、どういうふうにそういうことが行われていたかということを説明してもらいたい。
  32. 緒方信一

    緒方証人 今のお話のうち、教科書会社にいて今文部省職員をしている者がおるかということが一つあったと思いますが、その点につきまして、私のはっきり存じておりますことを申し上げます。これは、私の局に視学官が二人おりますが、そのうちの小沼視学官、これは前学校図書株式会社に勤務しておったのでございます。これはちょっと事情を申し上げますと、小沼君は昭和五年に東大の文学部を卒業しまして、文部省嘱託になっております。自来あるいは高等学校教授図書監修官教学局教学官そのほかを歴任いたしまして、終戦昭和二十一年の二月に依願退官になっております。そのときに、やめまして職を求めて教科書会社に入った、こういうことであります。それから、あとで、二十七年の十二月にその会社をやめまして、二十八年の一月に初中等局視学官任命された、こういうことであります。
  33. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、小沼君は、前に文部省におって、途中から教科書会社に入って、現在また文部省に戻ってきているわけですね。そうして文部省視学官をやっているわけですね。
  34. 緒方信一

    緒方証人 さようでございます。これは、文部省にずっと前からおったわけであります。そして、戦後ちょっとやめまして、その間教科書会社に勤めまして、今申し上げましたように二十八年から視学官として文部省で働いております。最近文部省に入った、こういうことでございます。
  35. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたは、小沼君は文部省で一番最初嘱託みたいなことをしておったと言われましたけれども、文部省教学局思想課長をしておったのではないですか。
  36. 緒方信一

    緒方証人 これは、ずっと経歴を申し上げますと長くなりますが、最初入りましたときに文部省嘱託ということで入りまして、翌十年に弘前高等学校教授をやり、それから二十年七月に教学局思想課長になっております。二十年十月に文部省視学官になりまして、さらに官房総務室主事、二十一年二月に依願退官、かような経歴でありまして、一時やったことがあります。
  37. 篠田弘作

    篠田委員長 そのほかにもまだあるでしょう。
  38. 緒方信一

    緒方証人 そのほかは、私、はっきり存じませんので、出し上げかねます。
  39. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、元文部省教学局宗教課長吉田孝一さん、この人が文部省から学校図書株式会社取締役になったことを知りませんか。
  40. 緒方信一

    緒方証人 私は、先ほど略歴のときに申し上げました通りに文部省は比較的新しいものでございますから、いろいろ具体的には存じません。しかし、昨年吉田氏が文部省に参られました当時、そういう話は聞いております。
  41. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、元文部省教育局長近藤寿治という人が学校図書株式会社重役として入社されたことも知りませんか。
  42. 緒方信一

    緒方証人 入社されたその辺のことは存じませんが、文部省先輩としておられたことは存じております。
  43. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、元総務局長永井浩氏、国民教育局長阿原謙蔵氏が文部省をやめて検定図書出版株式会社というものを作り、その後昭和三十三年五月に学校図書株式会社を作って、そこに入った事実はありますか。
  44. 緒方信一

    緒方証人 今お話の事実は私は経緯を存じません。しかし、今おあげになりました三氏でございますか、これはやはり文部省先輩でございまして、存じております。
  45. 篠田弘作

    篠田委員長 その両氏が図書会社において主として文部省との教科書折衝に当ったということをあなたは聞いておりませんか。
  46. 緒方信一

    緒方証人 それは教科書会社に入っておられたのでありますから、いろいろ折衝はあったかと存じますけれども、それ以上のことは私存じません。事実存じません。
  47. 篠田弘作

    篠田委員長 先ほど、あなたが、委員とか調査員名前は非常に極秘に付しておる、原稿にはナンバーをつけただけでやっておるというふうにお話しになりましたけれども、現在、今申しました近藤さんが文部省から学校図書取締役になっておる、同時に中央教育審議会委員というものに就任しておられますね。この中央教育審議会というのは図書には関係がないのですか。
  48. 緒方信一

    緒方証人 中央教育審議会はもちろん教育全般について審議をされる諮問機関でありますので、もちろんその意味関係がありますが、教科書行政に対して特別に関係があるというわけじゃありません。ただ教育行政全般についてのいわば一番最高諮問機関でありますので、その意味関係があります。
  49. 篠田弘作

    篠田委員長 教科書についての直接の関係はないが、教育についての最高諮問機関ですか、そういう意味ですか。
  50. 緒方信一

    緒方証人 教育全般につきまして……。
  51. 篠田弘作

    篠田委員長 教科書には関係ないですか。
  52. 緒方信一

    緒方証人 その意味ではございます。学校教育社会教育文部省の業務全体につきまして意見を述べるわけでありますから、その意味ではございます。
  53. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたは、先ほど、この機構の問題として、委員名前も発表しない、あるいはまた原稿ナンバーをつけてだれにもわからぬようにしておると言われるけれども、現在、文部省職員をしておられた方がこんなにたくさん教科書会社に入って、教科書会社で職を奉じた人がまたさらに文部省に戻ってきて教科書の問題を扱っておるという関係上、それが全然わからないというふうに考えることは、われわれの常職では考えられないが、その根拠は文部省としてどこにありますか。
  54. 緒方信一

    緒方証人 事務の取扱いと、今お話しような審議会との関係は別であると思います。私の関係します限りにおきまして、厳正にやっているつもりであります。秘匿すべきものを漏らすということは、これは何人に対してもやるべきではないと考えておりまして、さようにやってきていると信じております。今の審議会といたしましては、これは制度あるいはそのほか一般の重要事項につきまして審議をされる機関でありますので、あるいは教科書制度につきましての論議はそこで取り上げられるかもしれませんけれども、具体的にだれが調査員であるというような問題につきましてこの審議会が触れることはございません。それからまた、私が先ほど申し上げました、私の局にも前教科書会社に勤めておった人がおりますけれども、私はこの人物を信用いたしております。それを漏らすような人じゃないと私は信じてりおます。
  55. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたの建前として、事務と人情は別問題だということは、これは当然そうあるべきものです。あなたが部下を使っている以上は、その部下に対してある程度の信頼感がなければ使えないことはわかっております。しかし、漏らし得るような機構にしておいて、そういう人事の配置にしておいて、あなただけの信念で漏らしておらないと言っても、世間に通りますか。
  56. 緒方信一

    緒方証人 私は、今の前段で申し上げました審議会との関係——審議会委員になっているので、そこに筒抜けになるということは、役所の仕事建前としてないと考えます。それからまた、私は職員に対する信頼はいたしておりますが、その視学官は、局の中でありますけれども、教科書課ではありません。これは教育内容につきましてのいろいろな仕事をいたしております。教科書に直接関係いたしておるような配置ではないのであります。その点は御了承願いたいと思います。
  57. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、信念の問題を論じてもしようがありませんから、戦前文部省の理科の国定教科書監修官をやっておって、それから一昨年まで文部省初等中等教育局におられた岡現次郎という人が、現在ある書籍会社に入っておる、そうして一方において社会一課の教科書の作成に参画するとともに、その書籍販路拡張に尽力しておられるということを聞いておりますが、あなたは御存じでありますか。
  58. 緒方信一

    緒方証人 はなはだうかつでありますけれども、存じておりません。去年やめましたそれ以後のことは私存じておりません。
  59. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、最近小学校教科書の中で地方版がふえておるといわれておる。全国共通の要求に応ずるとともに、地方実情をあれするというような基準で立てられておるということを聞いておりますが、この地方版というものはどういうわけで作られておるのですか。
  60. 緒方信一

    緒方証人 これは、特別に地方版という名前であるかどうかは別でありますけれども、現在の教科書制度建前といたしまして、教科書制度建前と申しますか、それ以前に申し上げなければならぬことは、戦後におきまする教育やり方の問題に関係いたしますけれども、戦前におきまして、いわゆる国定教科書時代には、教科書でもって全国画一的に教育内容を規制をしていく、こういうやり方であったと存じます。戦後におきましては、若干それが修正を加えられまして、最も重視すべきは学校における各教師教育指導計画が中心であって、教科書はその教育活動を進める上における最も主要な教材である、こういう考え方をとってきておるわけであります。従いまして、その建前だけから申しますと、多極多様の教科書ができて、各地域あるいは各生徒の特性やあるいは実情に即応するようなものが準備された方がいいという考え方が出てくるわけであります。これに対しましては、またいろいろ別の批判もあるわけでありますが、その意味で、同じ学卒の同じ教科教科書で幾種類もできておるということは事実であります。ただいま私が申しましたような意味で、各種の教科書を用意して、それから自由に教師越択をしてそれを学校に使う、こういり建前でありますので、そういうことになっております。
  61. 篠田弘作

    篠田委員長 その地方版というものは、地方版と言っておるかどうか正式にはわかりませんが、それは非常に妥当なものが作られておるというふうに文部省は見ておられるわけですか。
  62. 緒方信一

    緒方証人 私どもとしましては、先ほどから申しますような検定制度に従って仕事をいたしておりますので、これは私ども役人だけが見てそれを判断するわけではございませんで、いわば民主的な方法によりまして、調査員あるいは検定審議会の議を経まして、多数の良識でもって判断する、こういう制度をとっております。この検定制度を通過してできておりますので、私どもといたしましては妥当だと考えております。
  63. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、現在の検定制度というものについては非常に妥当に行われておるというふうに文部省は解釈されておるわけですか。
  64. 緒方信一

    緒方証人 検定制度そのもの、制度諭といたしましては、これはいろいろあると思います。しかしながら、現在立っております現行の制度の実施につきましては、今検定につきましては先ほどから申します通りに実行いたしておりますので、私は適正に行われていると考えております。
  65. 篠田弘作

    篠田委員長 最後的に教科書を採択する者、いわゆる採択権と申しますか、それは一体だれにあるのですか。
  66. 緒方信一

    緒方証人 採択権といたしましては、これは教育委員会法に規定がありまして、その学校を所轄いたしまする教育委員会に採択権があるのでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、教科書学校におきまする教師教育指導計画に即応するものを教師が選んでやっていくという建前でございますので、これは教師あるいは学校、これが十分選定をいたしまして、その意見が十分反映して教育委員会においてこれがきめられる、こういう立場をとっております。
  67. 篠田弘作

    篠田委員長 最後的な決定権は学校先生にあるわけでございますね。
  68. 緒方信一

    緒方証人 決定権は教育委員会にあります。しかし、実際上そこに先生意見が反映すべきだという見解を私どもとっております。
  69. 篠田弘作

    篠田委員長 次に、展示会のことについてお伺いしたいのですが、展示会の開催の目的あるいは開会の時期とか期間、あるいは展示会そのものがその目的を達しているかどうかという点について一つ……。
  70. 緒方信一

    緒方証人 展示会の目的でありますが、現在の教科書制度こおきましては、先ほど申し上げますように、何人もこれは、著作、編集することができるので、そしてそれを発行することができる、ただその際に文部大臣検定を経なければならぬ、学校におきましては検定を経た教科書を使う、こういうことになっておるのでありまして、検定を経た教科書教師あるいは学校がこれをよく研究し、そして教育委員会が決定する。これが採択でありますが採択いたします場合に、十分その教科書内容がわからなければならぬわけであります。果して学校教育計画にマッチするかどうか、これが一番大事なことであります。これは、学校といたしましても、教育委員会といたしましても、わからなければなりません。それを選定をいたします機会といたしまして、教科書展示会という制度を設けたわけであります。この教科書展示会に対しまして、各発行会社はその教科書を出品することができるようになっておりまして、そこで学校先生がよく比較検討いたしまして、そして教音委員会がきめる、こういうことになっております。期間は大体十日間です。今年は六月二十五日から十日間行うことになっております。
  71. 篠田弘作

    篠田委員長 十日間で何千種類という教科書を展示して、十日間の展示会で先生が比較検討して、どれが適当な教科書であるかということを判断して結論を持ち得ることができるかどうか。
  72. 緒方信一

    緒方証人 これは、私どもとしてはいろいろ意見は持っております。もう少し期間が長い方がいいんじゃないかという意見も持っております。ただ、各県におきまする現在の状況を申し上げますと、二十カ所ないし二十四、五カ所くらいでございますか、学校数を平均しますと、これは平均して妥当かどうかわかりませんが、小、中学校といたしましても二万校ぐらいございましょう。ですから、展示会場が一千ヵ所くらいですから、二十校くらいで一展示会場を見ることになります。ただ、言われますように、これに出品される点数は多いのでありますけれども中学校高等学校になりますと、各教科がきまっておりまして、各日教師も各担任の教科を持っておるのでありまして、こっちの方は割合選定しやすいのではないかと思います。たとえば、国語なら国語、数学なら数学という教科の担任の先生は、その担任の教科書を見ればよろしいのでありますから、何千とあるものを全部見なければならぬということはないのであります。ただ、小学校先生につきましては、これは全科担任でございますので、これは相当重荷じゃないかと思います。ただ、もう一つ申し上げなければならぬことは、その年に新しく出ました教科書だけじゃなくて、前からの検定の効力でありますけれども、年限が今の制度ではないのでありまして、従前から使っておつた教科書もそこに出ておるわけであります。そこで、全部を見なければ比較検討ができないということはなかろうと思います。十日間の期間で見ますことは相当困難な仕事であると思いますけれども、大体私は目的を達しておるのではないかというふうに考えております。
  73. 篠田弘作

    篠田委員長 一年なら一年の教学の教科書だけでも、小学校の場合なんかでは二十種類くらいある。去年使っておった教科書のほかに、自由に出版されるのでありますから、おそらくなんぼ専門家でも何十種類かのものは見なくてはいけない。それを十日間であなたが目的を達しておると考えておるということは、僕らの常識では考えられない。どういう根拠で十日間で目的を達しておると言うのか、文部省は十日間で十分だという考え方であるかどうか、かつて文部省の中に十日間で十分でないという意見があったのじゃないか、そういう問題について一つ御説明を願いたい。
  74. 緒方信一

    緒方証人 今お話のうちの、数学なら数学二十種類ある—。二十種類ということは、その使われておる教科書の全部でございますので、新しい教科書、古い教科書も含めてのお話であろうと考えます。ただ、期間の問題につきましては、今お話のようなことはございます。私どもといたしましても、もう少し期間を長くすべきじゃないか、できれば、展示会を常設化しまして、教師が常に研究のできるような、何か陳列をするような方法をとったらどうであろうかということも考えておるわけであります。これは各都道府県教育委員会に対しましてもその旨を申しまして、これは少しずつでございますが、そういう傾向に指導しつつあるわけであります。それから、最近学校図書館の方も漸次充実して参りましたので、そういう施設を利用いたしまして、何とか平素も教科書研究をすることができるようにすることが必要であろうということを私ども認めております。
  75. 篠田弘作

    篠田委員長 もっと常設にしたらいいという意見を持ってあなた方は地方に対しても指導しておる、それから、さっき言われた十日間で十分目的を達しておる—。どっちがほんとうなん一です。
  76. 緒方信一

    緒方証人 よりよく選定の機会を与えるためには、今申しましたよう方な法をとった方がよかろうということを考えておるわけでありまして、それは程度の問題でございます。先ほど申しましたのは、現在十日間でやっておりますが、何と申しますか、それで、これは非常に困難ではありますけれども、非常に負担が大きいと思いますけれども、一応目的を達しておると思うということを申し上げたのであります。
  77. 篠田弘作

    篠田委員長 よりよくやるためには常設にした方がよろしい、こういうことですね。
  78. 緒方信一

    緒方証人 そうです。
  79. 篠田弘作

    篠田委員長 よりよくいっていないということですね、現在。よりよくいっていないということは、目的を達せられていないということじゃないですか。
  80. 緒方信一

    緒方証人 これはやはり程度の問題だと私は存じます。
  81. 篠田弘作

    篠田委員長 大体の目的は達しておると思っておる……。
  82. 緒方信一

    緒方証人 ええ。
  83. 篠田弘作

    篠田委員長 展示会の前にすでに教科書の採択を完了して、この教科書を使うというような事実はございませんか。
  84. 緒方信一

    緒方証人 展示会前に採択ですか。展示会前に採択ということは普通ないわけでありますが、どういう意味でありますか。展示会を経て、そこで選んで採択をするという建前にいたしておりますが……。
  85. 篠田弘作

    篠田委員長 建前は展示会を終ってから採用するということになっておるが、現に福島県なんかでは展示会前にもう使う教科書をきめてしまっておるということになると、展示会というものは実際において有名無実、形式的なものにすぎないということになるのじゃないですか。そうじゃありませんか。
  86. 緒方信一

    緒方証人 福島県の事実ははっきり知りませんが、おそらく、今御指摘の点は、これはあとでお話が出るかと思いますけれども、教科書の種類が非常に多いというような点が批判の的になっているのでありますけれども、何か県の教育委員会あたりで、——展示前というのはこれは非常におかしいと思うのでありますけれども、地方教育委員会に対しまして採択の意見を指導助言しているという事実はあると思いますが、はっきりした福島県のことは存じませんので、お答え申し上げかねます。
  87. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、今度は教科書の売り込み方法でありますが、発行者が展示会でやるのじゃなくて各学校にどんどん献本をして、中にはその教科書を集めて売っておる先生もあるということを聞いたのですが、そういうことはありませんか。
  88. 緒方信一

    緒方証人 これは、売り込み競争と申しますか、教科書を自由に出版し、これを発行していくという建前でありますので、業者といたしましては、少しでもたくさん売ろうという活動はあることと存じます。ただ、その方法がどうであろうかという問題になって参りますが、今御指摘の献本、これは事実あると存じます。教科書内容をなるべくよく知ってもらうためにということで発行会社がこれを献本するということは事実あると思います。
  89. 篠田弘作

    篠田委員長 次に、発行者側が主催する研究会、講習会というようなものについて一つ説明をして下さい。
  90. 緒方信一

    緒方証人 講習会、研究会というものも、これは、発行会社が自分のところの教科書を十分内容を知ってもらうとか、指導方法について会社として研究したところを伝えるとかいう試みが行われておることもあると思います。具体的にどういう状況であるということは存じませんけれども、そういうことはあり得ると思います。
  91. 篠田弘作

    篠田委員長 その講習会とか研究会に文部省事務官とかそういう職員が講師として、特定会社書籍の研究会の講師として出席しておる、そうして直接間接に、——名前もわかっておりますが、そういう会社の売り込みに有利に活躍しているという事実はありますか。
  92. 緒方信一

    緒方証人 私の知る限りにおきましては、ないと考えます。
  93. 篠田弘作

    篠田委員長 それから、発行者が各地に駐在員とかあるいは嘱託連絡員というような名目でいろいろな売り込みの方法が行われておりますが、その問題についてあなたの知っているだけのことを一つ話して下さい。
  94. 緒方信一

    緒方証人 これも、その発行会社が宣伝目的一つあるかと思いますが、もう一つは、完全供給をしなければなりませんので、その業務を助けるということで、駐在員と申しますか、名前はいろいろあるようでありますけれども、地方にそういう人を置いておるという事実があります。このことにつきましては、かつて公取におきましても問題になりまして警告が発せられたこともございます。
  95. 篠田弘作

    篠田委員長 非常に弊害が多いということですね。
  96. 緒方信一

    緒方証人 これは、特に顔と申しますか、いわゆる採択に対しまして影響を与え得るような、影響力を持つ人をそういう駐在員等にするということになりますと、これは弊害が非常に多いと考えております。従って、警告が出まして、その当時いろいろと措置をしたことがございました。
  97. 篠田弘作

    篠田委員長 最終的に教科書を採択する者が学校の教職員であるという建前から、会社、工場の見学とか、あるいは旅行とかいうことに名前をかりてそういう学校先生方を特別に招待をしたり、あるいは温泉に引っぱっていったり、その他いろいろなよくない事実をやっているということをあなたは御存じですか。
  98. 緒方信一

    緒方証人 これは、かつて、私がまだ文部省に参る前でございますが、昭和二十何年でございますか、かつてそういう事件が起りまして、司法事件としても取り上げられた事実があると思います。それから、最近におきましても、新聞紙上等にも伝えられておりますが、私ども調査しているような事実もございます。そのことは果して内容がどうであろうかということは私どもよく確認いたしませんけれども、そういうことが伝えられておることは事実でございます。
  99. 篠田弘作

    篠田委員長 同時に、採択考に対していろいろな名義で金品が贈られていることも文部省では何か調査しておられますか。何かそういうことがありますか。
  100. 緒方信一

    緒方証人 金品が贈られているということにつきましては存じておりません。
  101. 篠田弘作

    篠田委員長 それから、昭和二十七年六月七日の、公正取引委員会委員長の横田正俊君から文部大臣天野貞祐君あての「教科書発行会社の不公正競争方法について」という文書に基いて、同年の七月一日に、各都道府県教育委員会に対して教科書展示会と採択について注意を喚起しておる。そういうことが文部省においてやられたことはありますか。
  102. 緒方信一

    緒方証人 ございます。
  103. 篠田弘作

    篠田委員長 それはどういうわけですか。
  104. 緒方信一

    緒方証人 これは、二十七年の七月一日に、文部次官名で、都道府県教育委員会、知事あるいは国立大学の学長、小、中高等学校を有する大学の学長というところに対しまして書面を出しております。これは、公取の警告に即応いたしまして、採択が最も公正に行われるようにという注意を喚起するために出したわけでございます。具体的に項目を掲げて指示を出しております。
  105. 篠田弘作

    篠田委員長 ところが、昭和二十九年六月二十八日、再び公正取引委員会委員長横田正俊君から文部大臣大達茂雄君に対して「教科書発行供給に関する不公正取引方法について」という文書を出しておるのですが、これは前の警告というものがあまり効果がなかったことを示すものだと思いますが、これに対してどういう措置をとられましたか。
  106. 緒方信一

    緒方証人 この際も地方に対しまして通達を出しまして、採択の公正を期するように、これは二十九年の七月八日だと思いますが、初中局長名で同じく通牒を発しております。先ほど申しました前の二十七年の次官通達の趣旨をさらに十分に守るようにということを申しております。
  107. 篠田弘作

    篠田委員長 現在、佐賀県、愛媛県等に、もと学校生活協同組合事業部が取り扱った教科書の供給業務を引き継いで佐賀県教育図書株式会社教育図書販売株式会社というものがありますが、これらの会社教科書の自由な採択に対してその自由を阻害しておる懸念があるということをいわれておるのですが、これに対するあなたの見解を述べて下さい。
  108. 緒方信一

    緒方証人 かつて学校職員生活協同組合というのが教科書の供給の末端の業務をやっておったという事実はございます。学生協と申しますと、学校先生がその主体でございまして、採択の方と関連がそこにございますので、教科書の選定に当るべき先生、その同じ先生を、正体とする学生協が供給業務をやるということは好ましくないという見解をとりまして、先ほど申し上げました昭和二十七年の通達の中にも、このことは好ましくないということでその意思表明いたして、そういう指導をして参っておるわけでございます。最近におきましては、これが漸次商事会社に変りまして、内容も漸次更新いたしつつある、かような状況に見ております。
  109. 篠田弘作

    篠田委員長 それから、最近、教科書の発行会社が見本として学校や展示会に出されるものと実際に児童に売られるものとの間に非常に品物が違っておる、展示会に出されるものは非常にしっかりしたのを出しており、そうでないものは子供が使用の途中にばらばらになって使えなくなる、こういうような事実があるということをいわれておるが、あなたはそれを知っておりますか。
  110. 緒方信一

    緒方証人 ことしそういうことが一つあったのを私存じております。これは某会社でありますが、新しい機械を購入しまして、新しい方法によるとじ方を始めた、それが一部うまくいかないで、子供の手に渡ったあとでそういう不備なものが出たという事実があります。これにつきましては、会社からもその事後措置等につきましても報告を受けております。
  111. 篠田弘作

    篠田委員長 一部と言われるけれども、ここにその見本があるのですが、これは展示会に出されたものですけれども、はっきりミシンが入っておるのですね。それから、こっちの方は児童に直接渡ったものだけれども、これは二カ月だそうですけれども、こういうふうになっちゃった。こっちは引っぱったってとれないでしょう。このくらい見本には、ミシンがしっかり入っているけれども、片方は引っぱらなくたってとれてしまう。こういうのはあなたの方でどういうふうに取り締っておりますか。
  112. 緒方信一

    緒方証人 これは、見本の審査もいたしますので、その点は十分検定の際に見ているはずなんです。ただ、今の展示会に出たのとそれから実際に渡ったのが違うという点につきましては、私よく存じません。
  113. 篠田弘作

    篠田委員長 全然、君、ミシン入っていないんですよ。全然入ってない。見本の方はちゃんと入っている。これは全然入ってない。こういうものが要するに売られて、しかも、ここに世田谷の京西小学校調査しところによると、そこで使った八千百五十二冊のうち千五百七十七冊、約二割というものが、子供の手に渡って二カ月でもう使用にたえなくなった、こういう不良な本が富山県に三万冊、千葉県に四千冊も出ておる、こうわれわれの方の調査ではなっておる。こういうものに対して、あなた方の方でどういうふうな監督をしておられるかということを一応お聞きしたい。
  114. 緒方信一

    緒方証人 その事実を知りまして、会社に報告を求め、さらにその不備の教科書の善後措置を十分に早くやるように指示いたしました。そして大体私どもの方でも報告を受けておるわけでありますが、東京が一番多かったようです。各県にも出ておる事実を知っております。そいつをなるべく早くいいものと取りかえるように措置をさせまして……。
  115. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと、あなたの今のお話では、こういうものが渡って子供がニヵ月で使えなくなったものに対しては、その教科書会社がやはりこういうりっぱなものと取りかえる、こういうことになっておるのですか。
  116. 緒方信一

    緒方証人 そのばらばらにならぬようなものと取りかえさせるように十分指示をいたしております。
  117. 篠田弘作

    篠田委員長 実際は取りかえていますか。
  118. 緒方信一

    緒方証人 実際取りかえたと思っております。報告を受けております。
  119. 篠田弘作

    篠田委員長 最後に、教科書の種類が非常に多い、また地域ごとに非常に違っておる、また使用年限も非常に短かい、去年までこれを使ったと思うとことしになってもう学校のあるいは校長さんの一存でそれが廃止になるというようなことで、父兄、生徒、児童というものが非常な不便を感じておるといわれていますが、これに対する文部省意見はどうですか。
  120. 緒方信一

    緒方証人 これは先ほどもちょっと申し上げましたような、現行の制度の立っておりまする基本が、なるべく多様な教科書を作って、その中から学校が選んでいく、こういう考え方がありますので、そうしてその教科書を民間の著編者が、あるいは会社が自由に発行できる、こういう建前になっておりますので、現在のように一教科につきましても相当種類が出ておるという現状になっております。これに対しましてはいろいろ意見があります。世論としましても批判があることは十分承知いたしております。ただ、現在の制度といたしましては、かように種類が多いという事実が現出しておりますのは、建前からいたしましてさようなことに相なる、かように考えております。
  121. 篠田弘作

    篠田委員長 次に、教科書の価格の問題ですが、価格のきめ方はどういうふうになっておるか、また現在の価格は、妥当であるかどうか、それに対するお考えを聞きたい。
  122. 緒方信一

    緒方証人 価格は文部大臣の認可制になっております。文部省といたしましては最高価格を定めております。一ページ当り最高価格をきめまして、それを示しております。その一ページ当りの最高価格を標準にいたしまして教科書会社のつけてきました定価に対しまして、私どもの方といたしましては、きめております最高価格とページ数で計算ができますので、その範囲内で認めていく、かような制度にいたしましております。これは適当であるかどうかというお話でありますが、この価格の問題は非常にむずかしいものであると思います。実は、現行の制度は三十七年に改めておりますけれども、その前は原価計算方式でやっておったわけであります。これは教科書制度が始まりました当初いろいろ専門的な検討をいたしまして原価計算方式をきめましたけれども、この原価計算方式によりますと、採択部数がきまりませんと価格がきまらぬ、従って展示会に出るときには価格のきまらぬものが出るということもございますので、二十七年の実績を基礎にいたしまして、そうして一ページ当り平均値を出して、それを今の最高価格に抑える、これが現在の実情であります。教科書学校の児童生徒が義務教育の段階におきまして、必ず求めなきゃならぬものでございますので、少しでも価格が低くなることが望ましいと思います。
  123. 篠田弘作

    篠田委員長 この際委員諸君の発言を許します。申し込みが多いのでありますけれども、各党一名ずつ交互に御発言を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは菊池義郎君。
  125. 菊池義郎

    ○菊池委員 教科書地方ごとにばらばらになっていて、全国共通の要求に応ずる教科書が少いというようなことは、国民の思想を統一する上において非常に欠陥があると考えるのであります。さらに、国民が一致団結せんければ、ならぬという場合もある。そういう場合において、片一方の地方の子供は知っておることを、片一方の地方の子供は知らぬ、北海道の青年は知っておることを九州の青年はわからぬ、そういうようなことでは、国民の団結、たとえば事あるときにおいて団結することはできない、思想の統一はできない、そういうことをわれわれは痛切に感じておるのでありますが、先ほど委員長が聞かれた第六の点でございますね。なるべく全国共通の要求に応ずる点を多くしたい、そうして地方地方の特色を持った書科書は別にこれを作ったらいいとわれわれは考えておるのでありますが、これは一つ教科書の中に盛り込まれておるのですか。
  126. 緒方信一

    緒方証人 教科書の種類が多いと申しますか、一教科でも相当数の教科書が出ておりますが、これは、先ほど申しましたように、現行の教育やり方あるいは考え方、それから許可制度考え方に出発しておると思います。     〔委員長退席、佐々木(秀)委員長代理着席〕 ただ今お示しの地域性だけから教科書が多いということじゃないのであります。同じ教科書の中にいろいろな地方版といったものがあるということはないのでありまして、地方の特色を生かすということは一つの要素にはなっておりますけれども、そのほかの観点からいたしましてもいろいろな種類の教科書が出ておるというのが現状であります。私どもといたしましても、これは特に義務教育の段階におきまして国民の知識——これは私の意見になってはなはだ恐縮でございまして、申し上げていいか悪いかわかりませんが、一定の水準を保つということはもちろん必要であろうと考えております。ただその教え方、指導計画というようなものは種々なものがあってもいいということでありまして、それに即応するようないろいろな種類の教科書が出ておるということでございます。必ずしも北海道と九州とで教えることが全然違うということじゃないわけであります。
  127. 菊池義郎

    ○菊池委員 それで、全国共通教科書は当然作るとともに、また地方色を帯びた、その地方々々に適応すべき教科書というものは別に作った方が適当じゃないかとわれわれは考えますが、文部省はこれに対してどういう見解を持っておられますか。
  128. 緒方信一

    緒方証人 これは制度のことになりますので、私ここで意見をすぐ申し上げることはいかがかと存じますけれども、現在の実情は、今申し上げましたように、実は教科書教育内容を規定していくということでは今の考え方はないわけでございます。教育やり方というものは、文部省で学習指導要領というものをきめておりまして、これに教育の目標なりあるいはその教育に取り上げる内容なりをきめておるわけであります。その学習指導要領にきめております教科内容を教えるための一つの最も重要な教材といたしまして教科書ができておるわけでありまして、同じことを教えますにしても、いろいろな角度と申しますか、方法がある。それがために種々な教科書が出て、それを学校の方では一番適当な教科書を使う、こういうことであります。もちろん地方色も出ております。出ておりますけれども、これは各地方にそれぞ参れ適応するような地方色がそれぞれ出ておるということじゃないのでありまして、そういうものが相当出ておるという程度であろうと考えております。
  129. 菊池義郎

    ○菊池委員 そうしますと、その教科書審査に当る人は、各県ごとに別だにきめるんですか、あるいは中央にみなおって、そうして各県の特色を盛った教科書をきめるわけでありますか。
  130. 緒方信一

    緒方証人 それは中央できめます。
  131. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 山中君。
  132. 山中貞則

    ○山中委員 委員長があまり詳しく聞き過ぎて、質問もたくさんできませんが、重複する点を避けて局長にお尋ねいたします。  現在文部大臣名でもってやります小、中学校教科書検定、採択、供給、価格等に関するところの法的権限、一応これを述べて下さい。
  133. 緒方信一

    緒方証人 検定につきましては、学校教育法の中に、学校におきましては、——この条文の字句に即応いたさぬかもしれませんが、内容を申し上げますと、文部大臣が著作権を有する教科書か、あるいは文部大臣検定した教科書を使わなければならぬ、こういうことになっておりまして、文部大臣検定権を持っておるということは御意見の通りであります。それから、その検定やり方につきましては、検定規則というものを省令できめてやっております。それから、供給につきましては、教科書発行に関する臨時措置法に基きまして、発行者文部大臣に対してその発行の届出をしなければならぬことになっております。そうして文部大臣発行者に対して発行の指示をすることができるわけであります。それから、採択につきましては、文部大臣は、教育委員会が採択の権限を持っておりますので、これに対して指導助言をすることはできますが、直接には採択に関係いたしません。それから、定価につきましては、教科書の発行に関する臨時措置法の第十一条によりまして、「教科書の定価は、文部大臣の認可を経なければならない。」かようになっております。
  134. 山中貞則

    ○山中委員 ただいま述べられました法的な権限の実際上の効力、と申しますと、こういうような権限は、文部省が守るべき範囲内において良心的に教育的見地から行おうとすれば実際上相当な権限を持つものであるにかかわらず、この問題に対して文部省は非常に消極的であるというふうな声も聞かれるわけであります。そういう実際上の効力について、文部省としては、先ほど述べられました公取の勧告に基くところの次官通達などは一種の例でありましょうが、そういうように積極的に実質的効力を発揮せしめるような具体的意思があるかどうか、またそのような気持でこの権限というものをよく消化しておるかどうか、お示しを願います。
  135. 緒方信一

    緒方証人 検定につきましては、先ほどもるる申し上げましたように、この法令にきめまする手続によりまして、私ども厳正にやっておるつもりであります。ただ、今のお話の点は主として採択の関係であろうかと思いますが、これに対しまして公取から両回にわたりまして警告が出ましたことに対しましては、私どもその教科書行政の責にある者としては非常に申しわけないことと存じております。従いまして、これに対しましては、地方に対してはほとんど毎年通達を出しておりまするし、それから、展示会の前には、展示会の実施要綱等を配付いたしましてその展示会が有効に、あるいは採択が公正に行われるように指導してきたつもりであります。なおまた、これは公取の警告等が契機になっておりますが、教科書協会——教科書発行会社の大多数がこれに入っておりますが、これらに対しましては、時々文部省の意図あるいは自粛すべき点等につきまして、いわゆる売り込み競争につきまして指導をいたしてきておる、かような実情でございます。
  136. 山中貞則

    ○山中委員 次に、現在あります教科書発行会社の数並びにその経営規模の概況をお示し願いたいと思います。経営規模の概況とは、たとえば、現在発行されておる教科書の中の何十パーセントを占めるまでのカを持っておる会社が何社、また従ってそういう会社以外の弱小業者はどのくらいの。パーセントを占めるかという意味の概況をお示し願いたい。
  137. 緒方信一

    緒方証人 発行会社の数でありますが、三十一年度の発行会社の数は九十六社あると思います。それから発行の規模でありますが、三十年度の使用教科書の採択の実績を申し上げますと、大体総数の九〇%くらいは二十二会社くらいのものを採択をしております。かような実情でございます。もう少し詳しく何か申し上げることがあれば申し上げます。     〔佐々木(秀)委員長代理退席、委   員長着席〕
  138. 山中貞則

    ○山中委員 先ほどのあなたの御証言の中にも出てきたのでありますが、業界で団体を作って大部分の業者が入ったということでしたが、そういう大部分の業者が入った団体以外に別な団体がありますか。
  139. 緒方信一

    緒方証人 発行会社としては別に私ないと考えておりますが、七十社前後ぐらいが今の協会に入っておると思います。
  140. 山中貞則

    ○山中委員 次に、委員長からおおむね質問がございましたので簡単に再質問いたしますが、調査員の問題についてです。ほんとうは調査員は秘匿されておるのが原則であっても、それがほとんど公開同様と申しますか、もう公然の事実で、必要とするに足りるだけの調査員氏名については各発行会社はほとんど不自由をしないと言っているのが現状であって、実際にこの制度はこのままでは私はナンセンスだと考えるわけです。事実、新聞論調等では、今度は調査員を公開にせよというような主張も行われておるようですし、あるいはまた、現在の文部大臣である松村文相等は、匿名検定制度を廃止するというような意向を発表いたしておるようであります。しかし、この点は、公表したからといって果してこれらの現在指摘されておりまする正しからざる点が是正される方向に向くものであるか、あるいはまた逆に反面私どもが憂えるところである、公開にしたためにかえってそういう調査員の人人を関係会社等があの手この手で堕落せしめていく、言いかえれば、せっかく公正な立場をとるために原則として祕匿する立場をとったその趣旨を全く崩壊せしめる、いわゆる公開は逆行するものだという考え方等もわれわれにはあるわけですが、そういう問題等について、文部大臣の見解が云々ということは別にいたしまして、現在責任担当者としてのあなたの立場からこの問題をどういうふうに判断になっておられますか。
  141. 緒方信一

    緒方証人 私、きょうは証人としての資格で申し上げておるわけでございまして、制度論につきまして担当者として申し上げていかがか、私よくわかりませんが、ただいま御指摘の点につきましては、第一調査員が全部知れているという点につきましても、私反証をあげかねますので、確信を持ってそういう事実はないということを申し上げかねるのでありますけれども、言われますようにこれが知れ渡っておるかどうかという点につきましては、私、むしろ疑問を持っております。先ほど申しましたように、毎年改選をいたしておりますし、全部が公表同様だという状態になっておるということにつきましては、私、もう少し検討をすべきではないかと思います。  それから、今お示しになりました点は、一言意見を申し上げますならば、私、同感でありまして、これを直ちにただ公開制度にするだけで公正な競争が行われるかということは、もう少し検討の余地があると思います。私の意見を申し上げますことはいかがかと存じますけれども、もし公開にいたしまするならば、その競争の点につきまして、いろいろな不当な競争が行われないような環境と申しますか、そういう点の情勢が伴って制度化されるような方法が必要じゃないかというふうに感じておる次第であります。
  142. 山中貞則

    ○山中委員 先ほど出版会社文部省との間の人的な関連について委員長から大体の質問があったのでありますが、それに付随的に私がいま少しく聞きたいことは、たとえば小沼洋夫ですか、今、あなたの初中局にいる、しかし自分としては信頼しておるし、また教科書問題には全然タッチしていないとおっしゃるのですが、小沼君の初等教育視学官の立場は教科書問題について強い発言力を持っておる——あなた方が法的に解釈されて発言力と言うのがいけないということならば、強い影響力を持った立場にあると私どもは思っているのですが、そういうことは全然ありませんか。
  143. 緒方信一

    緒方証人 先ほど私申し上げたのは、特定会社のために何かやる立場があるか、利するようなことをやる立場があるかどうかということについて申し上げたわけでありまして、教科書そのものの作成につきましてはもちろん関係はございます。それはどういうことかと申しますと、視学官でありますので、先ほどちょっとお答えのうちに申し上げましたように、学習指導要領の作成等につきましては中心になって仕事をいたします。文部省視学官を中心として教科内容専門の職務がありまして、こういう人たちが教科内容を研究し、あるいは具体策をきめていく、こういうことであります。それで、学習指導要領をきめまして、それに従って教科書が作られるわけでございまして、そういう運用におきましてはもちろん御指摘のように関係がある。しかし、特定の立場というものは私はないと思っております。
  144. 山中貞則

    ○山中委員 それは、もちろんあなたはそう言わなければ局長として使ってゆけないわけであります。ところが、小沼君の関係があった会社というのは学校図書株式会社で、学校図書株式会社の経営方針と申しますか、営業方針を見ると、文部省と深いつながりを持つことによって自分たちの会社の発展、言いかえるならば教科書出版の業務を発展させようという意図を明らかに持っておるように私は考える。従って、先ほど委員長からも指摘のありました吉田君にしろ、あるいは中教審の委員をいたしております現在の学校図書株式会社の重役の近藤君にしろ、そういうような意図が歴然と私どもには看取せられるわけであります。私どもが指摘いたしましてただいま肯定されましたごとく、またあなたが委員長に先ほど答えられたように、小沼君は、これに全く無関係の者だが、文部省内の仕事そのものにおいて教科書発行に対する強い影響力、発言力を持っていることが明らかになったわけです。あなたはそういう職員でないと思っても、一方において学校図書株式会社は、自分たちは社にいた人を送り込んでいる、そういう立場をもって努力をすることは商売人として当然のことだと思う。従って、私どもは、あなたがいかに信頼をされても、こういう者が過去あるいは現在今あなたの証言によると、そういう立場の関係者であった者がいるという。文部省のそういう関係に対する考え方についてどうしても釈然としないのです。小沼君をあなたの立場から信用できても、もしかりに私どもがこれから学校図書株式会社連絡ありというような点を発見した場合、あなたは絶対にそれを否定するだけの自信があるかどうか、それをお答え願いたいと思います。
  145. 緒方信一

    緒方証人 私は、その小沼君の仕事関係といたしまして、教科書を発行する上において特定会社を利するといったような立場はないのではないかということを申し上げておるわけでございまして、私は先ほどから申し上げ、ますように信頼をして使っておるわけであります。ただ、具体的にその関係ということがどういうことであるか、私ちょっとよくわからないのでございますが、教科内容につきまして、視学官としてはいろいろ研究をし、あるいはいろいろなものをきめていく、こういう仕事をやるわけでありますから、教科書発行そのものにつきましては、仕事建前から申しましても関係はないわけであります。ただ、教科書というものが学習指導要領を基準にして作られる、これは事実でありまして、その意味におきましては当然関係はあるということでありまして、ちょっと私はその御指摘の点はわかりかねます。
  146. 山中貞則

    ○山中委員 もちろん、あなたのお考えのこともあるでしょうが、正しからざる事件が起ったときに役人としてその措置を考えるものでなくて、そういう起り得る余地のあるような機構、配分、手続、人事の問題で余地を残さないことにあるのです。事前にこれを防ぐことが最善の策なんであって現在の東京都庁の汚職を例にとるまでもなく、現在衆議院の決算委員会審議をいたしておりますが、各省の役人が犯しておりまする非合法的あるいは不法なる行為というものは全く膨大な数に上りまして、しかも、これに対する責任者の考え方というものは、公僕としての国民に対する謝罪というような形を全く具体的に表わしてない。私どもとしては非常に憤慨しておるわけですが、そういうような役人一般の考え方が、事前におけるこのような小沼君の存在というようなものを無条件信頼しておられる。そういうようなことを私どもとしては最も心配しておる。起ってしまってからではしょうがない。現に事実疑われておる。これは、私からだけではない。委員長から、おおむね各委員を代表するものとして、この問題についてあなたに質問があったはずです。従って、そういうような疑問を指摘されたならば、あなたの考えそのものが全部正しいのじゃないのですから、そういうような疑いを未然に防ぐ、疑いが現実にならないためにも未然に防ぐ努力をあなたは責任者として考慮をされなければならぬ、私はこう思うのですが、いかがですか。
  147. 緒方信一

    緒方証人 もちろん、役所の公務は厳正に執行しなければならぬことは当然でございまして、いやしくも疑いを受けるようなことがあってはいけないと考えております。その点につきましては、私ども常に深く反省をして仕事をしなければならぬと考えております。ただ、非常にくどいようでありますが、これは現在の私の考え方を先ほどから申し上げておるわけでございまして、私ども常に反省をして今後とも進んでいきたいと脅えております。
  148. 山中貞則

    ○山中委員 先ほど委員長からの質問にもありました現在中教審の委員をしております学校図書株式会社の重役折藤君、この中教審の委員任命につきましては大体文部大臣任命するこになっておりますが、私どもの知り得ました範囲におきましては、あなたも仕えられたことのある安藤正純文部大臣がこの学校図書株式会社と非常にごじっこんの間柄にあられるそうでありまして、従って、私どもは、この中教審の委員学校図書株式会社の重役である近藤寿治君が任命された時期はあるいは安藤文部大臣の就任された時期ではなかったか、こういうふうに考えるのですが、その点の関連はありますか。
  149. 緒方信一

    緒方証人 私は中教審の関係は所管外でありますので正確なことは申し上げかねますけれども、任命の時期はたしか今お話の通りであったと聞いております。
  150. 山中貞則

    ○山中委員 ただいま、正確には所管外であるから覚えてないが、任命の時期は私の指摘した通りだということがはっきりしましたが、これではっきりするじゃありませんか。私が先ほど言っておるように、学校図書株式会の経営方針、営業方針というものは明らかに文部省に食い込むことをまず基本的な考え方にしておる、これが明らかになってくるわけです。従って私はそういう一例を学校図書にあげたのですが、出版会社等のいわゆる発行会社文部省に対するそのような一定の意図を持った接触というものに対して、これからはより厳正に、そしてもっと良心的にこの問題の取扱いをしていかれるように希望いたすものであります。  次に、菊池委員から少しく触れられたようでありますが、教科書の種類についてですが、文部省のあなた方が、昭和二十七年六月、小学校教科書編集執筆者、検定調査員教科書採択委員、教員、PTA、学識経験者など六百三名に対して、教科書問題について意見を求めて、その回答を得られたことがある。御存じでしょう。その回答の内容というものがいろいろ載っておりますが、これによりますと、——あなたは先ほど、教科書現行制度建前から考えて種類が多過ぎるとは考えない、こういうふうに言われた。ところが、そのあなた方の文部省調査をされました、直接教科書問題に関係のある人々の世論によりますと、教科書の種類が多過ぎると答えた人は六百三名のうちの六四%の多きに上っております。ちょうどよいと答えた人は二七%、もっと多くてもよいと答えた人は九%しかありません。どの教科書も似たり寄ったりで選択に苦しむといった教師の声、このように多いのは国民経済上無益だという一般の世論等も加えまして、教科書の種類が多旭ぎるというのが、あなた方が直接調べられました調査の回答として現われてきたわけであります。しかも、これらは教科書問題に直接携わっておる人々の良心的な回答である。こういうふうに考えれば、あなたが先ほど多過ぎるとは考えないという証言をされましたことについては、私はどうしても合点がいかないのですが、その点について御説明を願いたいと思います。
  151. 緒方信一

    緒方証人 ただいまの、文部省のかつてやりました調査にそういうふうな計数が現われておりましたことは私も存じておりますし、いろいろ御意見のあることは私も十分承知いたしております。ただ、先ほど私がお答えいたしましたのは、現行の制度の立場をとります場合にはどうしても現在のように多い種類が出ることになる、こういう事実を申し上げたわけであります。ただ、非常に教科書が多いために、今お述べになりましたように、採択に困るとか、あるいは父兄の立場として教科書がしょっちゅう変って困るとか、あるいはそのために全体として見まして経済的にもロスがあるとかというような問題はあろうかと存じます。一方、現行教科書制度あるいは教育制度といったような建前もごごいますが、その間の調整をどの辺に持っていくかというような問題は、これは制度論としてあるだろうと考えます。ただ、私が先ほど申し上げましたのは、現在の制度の立場をとります場合にはどれくらいになるか、漸次ふえて多くなってきたのだ、こういう事実を申し上げたわけであります。制度としては私どもも十分研究して参りたいと思います。
  152. 山中貞則

    ○山中委員 そこは、私が冒頭に申し上げておるでしょう。文部省がいろいろな権限を法的に持っておるにもかかわらず消極的だといわれておるということを私は申し上げた。今あなたの答弁を聞いたら、これは全く失礼だが役人の答弁。役人というものは、右手に法律を持ち左手にそろばんを持っておれば何とかいく、そういう考えであって、今の現行制度ではやむを得ないのだ、これ以上ふえても、これは現行制度の根本精神を認識して、それを了解している立場に立つならば私どもとしては何とも言えないということですが、しからば、あなた方が自分たちの行政執行の参考にするために調査したその声は、多過ぎるという声が圧倒的であるとするならば、あなたは当然教育行政の最高責任者の一人として、自分たちがこのいい制度の根本精神を生かしながらなおかっこのような多くの人々の疑問に答え不満を解決するためにはどういう努力を続けていくべきかという研究を当然始めるべきだと思う。そのような努力をしなければ、いかにいい制度であっても、放置されるばかりで、それは全く改善されていくことのない制度となるわけであって、現在あなた方のただいまの問題に対しとられておる態度については私どもははなはだ不満ですが、あなたの回答は、こういう意味を含めた回答ではなくして、現行制度の根本批判になるから答弁ができなかったというような気持であるならば、もう一ぺん御答弁をお願いいたします。
  153. 緒方信一

    緒方証人 御指摘のように、何の制度にいたしましても、その衝に当る私どもとしましては常に改善をはからなければならぬのは当然でありまして、世論に聞き、漸次少しでもよくしていくように努力しなければならぬと考えております。私がお答えしましたのは、現在の制度そのものについてここで申し上げることはどうであろうかと思うので、現在の制度下の問題として申し上げたわけであります。今後におきましては十分検討いたしたいということもつけ加えて申し上げます。
  154. 山中貞則

    ○山中委員 それから、教科書の使用年限の問題ですが、やはり同じ調査によると、回答を読んでみますと、三年間がよいとするものが五六%、六年間以上が二四%、五年間が一六%、毎年違った方がよいと答えたものが四%となっております。三年を主張する理由は、三年聞くらい使ってみなければ教科書のよしあしがわからない、あるいは毎年変っては教師や児童の研究不足や混乱が起り、父兄の経済負担も多くなるという点があげられております。こういうことを考えますと、現在、転校すれば直ちに教科書を全部買いかえなければならない、あるいは昔兄さんが使っておった教科書のお古を弟が持っていくというような、いわゆる家庭経済を少しでもその面から救っていくというような現象等も期待できない、そのような現象があるわけです。しかも、文部省は、そういう現象についてこういう回答があったことを知っていながら、何ゆえにか学習指導要領というものを毎年変えていきますから、従って、教科書発行会社というものは、少くとも文部省の意図する方向についていく。むしろ一歩前進するくらいのたくましい商魂で、文部省のことしの学習指導要領はこういうふうになるのだと考えたならば、直ちに全教科書を改正するくらいのことは平気である。そういうことをやれば、ますます拍車をかけていくのであるが、文部省はこれに対してどういうような考えを持っているのか、そしてこれに対して将来どのように処置されようとしておるのか、その点をお答え願いたい。
  155. 緒方信一

    緒方証人 ただいま学習指導要領のお話が出ましたから、その点をまず申し上げますが、毎年改訂しているということは、そうではないと思います。大体学習指導要領というものは各教科ごとに出ております。国語は国語、算数は算数、理科は理科というような工合に、各教科目ごとに教育の目標ないしその指導内容というものを学習指導要領にまとめまして、それを教育一つ基準としてきめておりますが、これは、占領治下におきまして、昭和二十二年に最初のものがきまりました。そのあとの改訂としては、たしか昭和二十六年に大きな改訂はいたしております。その後、特に社会科の内容の改訂改善等に伴いまして、あるいは高等学校教育課程の改善等に伴いまして、学習指導要領は改訂して参りましたけれども、各教科の学習指導要領はしょっちゅう変るということが伝えられておりますが、さような状況ではないことを申し上げます。  それから、教科書がいつも変って困るということにつきましては、父兄の要望としてまことにごもっともだと存じます。これは主として採択の面だろうと考えますが、現在の採択の制度は、先ほど申し上げましたように、教育委員会が責任を持ち学校で選定するということでありまして、父兄の、要望というものはその採択の際に反映すべきものであるというふうに私どもは考えるわけでございますけれども、文部省といたしまして、今の制度で、これを変えないとかいうような指導はいたしておりません。これも、先ほどから御指摘のような制度全般の問題としては、今後研究すべき問題であろうとは考えております。今日はこれ以上のことを申し上げることはちょっとできないのであります。
  156. 山中貞則

    ○山中委員 次に、展示会の問題ですが、先ほどの委員長の質問に対しましては、十日間で大体の目的は達している、ただしこれは考え方の問題ではあるが、表現としては一応の目的を達しいるものと思うというような答弁でありましたが、これは、私どもからその実情を見ると、十日間では効果は絶無ではないかと思う。絶無と言うとあなたは反論しますから、効果は非常に薄いということを私どもは指摘したい。というのは、実際に、十日間では、その展示会開催の区域の学校先生方が良心的に出かけて、たくさんの教科書すべての種類を見きわめて、自分たちの採択の方向をきめるについてはあまりにも短かい。従って、結局、その目的が十分達せられないことが、だんだんに関心が薄くなっていくということになるのだと思う。あなたは、先ほど、福島県の教育委員会が展示会の前に採択の公表をしたということについて、展示前ということはあり得ないじゃないかというような答弁をしましたが、明らかに展示会前に発表しております。ということは、展示会そのものは一種の儀礼であって、これは後ほど述べますが、採択については、直接研究会その他に教科書出版会社の係員等が来て説明したら、あるいはそのあとの会合で万事よろしく頼むくらいの杯の献酬等があれば、実際には事欠かないのだから、むしろそっちの方が楽しい行事であるくらいのことで、従って十日間の展示会というものは実際上にはほとんど関心が薄れて効果がなくなってきつつある、かように私どもは考えるのでありますが、その福島県の教育委員会の展示会前に採択完了を発表したという実情についてお述べを願うとともに、もう一ぺん十日間の展示会についての考え方をお聞きしたいと思います。
  157. 篠田弘作

    篠田委員長 山中君にちょっとお尋ねいたしますが、まだたくさんありますか。
  158. 山中貞則

    ○山中委員 委員長が休憩を希望されるならば休憩してもいいです。もう少しです。しかし、あと三十分はかかります。
  159. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、緒方君、今のことにお答え下さい。
  160. 緒方信一

    緒方証人 これは、はなはだ遺憾でございますけれども、私、福島県の具体的な事例を承知いたしませんので、その点についてはちょっと申し上げかねるのでありますが、かりに展示会前に採択がきまっておったとすれば、現在の制度を逸脱するものだと考えます。これは非常に遺憾なことであります。  十日間が十分かどうかということにつきましては、いろいろ御意見もありますし、私どもも意見を持っておりますことは先ほど申し上げた通りでございまして、私どもとしましては、なるべく常設の方向に持っていくように努力いたしたいと考えております。
  161. 高木松吉

    ○高木委員長代理 動議を提出いたします。要するに、毎日々々こうやられてはたまらないというのが一般の意見です。それで、一日置きに変更してもらいたいという動議を出します。
  162. 篠田弘作

    篠田委員長 ただいまの高木君の動議でありますが、毎日やっている理由を一応御説明申し上げます。本月の末をもちまして国会は終了いたしますので実はそういうふうに組んだわけでありますが、国会終了後も継続的にやるということであれば、高木君のおっしゃる通りでもけっこうと思いますが、それには満場一致を必要といたしますが、高木君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、そういうことにいたしまして、この国会が延長になるかあるいは終了になるかわかりませんが、終了後も引き続いてこの問題を、取り扱うことにいたします。さよう決定いたします。  暫時休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ————◇—————
  164. 篠田弘作

    篠田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  緒方証人より引き続き証言を求めることにいたします。  山中貞則君。
  165. 山中貞則

    ○山中委員 先ほどの検定の問題ですが、こんな実例があるのです。これは今年使っている三十年度の検定を済ました本ですが、これは別個の会社なんです。一方は教育芸術社、一方は教育出版株式会社、別の会社ですが、教育芸術社——縦に長い方の本の会社が、この形態を見まして、あくる年には同じ形態のものを採用して、本年度の検定に出して通っているのです。ところが、まねをしたのはよかったのですが、今度は中の教材もまねをして羊という題の音楽を中に入れたのです。これはそっくりそのまま入れたわけなんですが、ところが、悲しいかな、盗用したために音譜を間違えてしまった。これじゃピアノにもオルガンにも指の乗せようがない音譜があるのです。しかもこれが文部省では検定済みとして通っている。ピアノもオルガンもひけないのですよ。このままそっくりまねをしたつもりだった。ところが、まねをしたけれども、オルガンでもピアノでも指の置きょうのないように、音譜をすっかり盗用して間違えてしまった。こういうことをやったことそのものも問題になりますが、あとで出版会社等の人たちに聞きますけれども、こういうものを通して、表紙に文部省検定済と押すということは、文部省として当然責任を感じなければならない。生徒が教わったって、ピアノのひけない、音楽にならない音譜になっているということは、全くとんでもない話だと思います。こういうことは御存じですか。
  166. 緒方信一

    緒方証人 今お示しのその教科書の事実につきましては、私存じませんでした。午前中に申し上げましたような方法で、正名の調査員で慎重に調査をして、審議会でなお再審いたしまして答申が出る、かような仕事の順序でありますので、私どもとしましては、十分な検討が行われているということで、それを信頼いたしまして文部大臣検定ということにいたすわけでありますが、今お示しの点が事実であれば、これは今後の調査につきましてもまた十分に注意をいたしますと同時に、その問題につきましても十分調査をしてみたいと存じます。
  167. 山中貞則

    ○山中委員 時間を制限されましたので先を急ぎます。あなたも御承知の通り、古い話ですが、明治三十八年に金港堂事件というのが世人の耳目を聳動せしめて、世に教科書疑獄と言われたのですが、そういう大きな事件がありまして、国民の世論が沸騰したことがある。ところが、現在の状況はいわゆる野放しでありまして、このままの状態でほおっておきますならば、もちろん明治時代とは世論そのものがもっときびしく鋭くなっているわけでありますから、そこまで腐敗ということを私どもは考えたくないのでありますが、おそるべき状況が予想されるわけであって、現に今までに実例としてあがってきたものでも、たとえば、研究会とか講習会とかいう名目にかこつけて、その会費負担を会社がやったり、終了後は必ずと言っていいはど懇親会というものをやって、そこで暗黙の取引をする、あるいはまた教科書採択に直接間接の権能を有する有力者をあらゆる名目において招待をする、あるいは学校側の自主的な旅行等に便乗をして実際上は自分たちの有利になるような協力、招待、供応等々をやっておる、こういうこと等があるわけであります。たとえば、鹿児島県において二葉株式会社が全県下の校長を温泉あるいは旅行に招待をしたために、それらの先生方は全く善意の行為であったにもかかわらず、帰って待っていたものは検察庁であったというような事件がありました。あるいは、長野県の学校図書株式会社が起した同様な事件もまた同じく検察庁の問題となつおります。しかしながら、検察庁としても、これは法的にも、直接、たとえば一校長がそのグループになってよばれたからすぐにこれを取り上げ処罰をするということは、その権限から見てもおかしいし、また教育的な効果、児童に与える影響等も考えて、ほとんど内密に、そうして不起訴処分にしておりますが、しかし、これはすでに公然の事態となって世人がひんしゅくする事実であります。あるいは、千葉県においては、一方の会社が一方の会社は負けず劣らず一教務主任の校長会議を招待をすれば、会議を自分たちが招待をするというような、どう考えてみても、教育の神聖あるいは教育の良識というものを逸脱するような行為に純真な教育者の方々をかり立てていく現在の教科書出版会社のあり方というものは、何としても放任すべきではないと考える。現に、本日の毎日新聞を見ましても、千葉県の四街道小学校の教員全員が静岡県の教科書会社に見学に行って、温泉に一泊して帰っておる。もちろん教科書会社の方はそういう事実はないというように否定をいたしておりますし、あるいは校長等は、いろいろな具体的な疑惑を新聞その他で指摘をされたのですが、この場合そういうことはないと否定はしておりますが、先ほどあなたが初中局におる視学官についても述べましたように、大部分そういう疑惑のあるような行為を会社の方がやっておる、勧誘をしておるという事実は、ここに明らかになるわけであります。こういうようなことをほおっておきますと、現在の教科書制度の持っておる考え方の基本的な美点等が、こういう問題——明治の金港党事件は結局それを契機として国定教科書に持っていくような端緒を開いたのですが、そういうことでみずからが墓穴を掘るような行為をすることになる、私どもはかように考える。でありますから、かような頻発する問題がすでに現在もなお行われつつある状況を見ますときに、文部省としては、先ほども再三申しましたが、これらの問題についてもっと日本の教育を守る責任が自分たちにある、教育行政の責任は自分たちにあるのだというその自信の上に立っての正しい行為を積極的にやるべきだ、われわれはかように考える。その点についてあなたの御見解を伺いたいと思います。
  168. 緒方信一

    緒方証人 教科書が民間の会社におきまして自由に出版されまして、そうして自由競争のもとに内容も向上し、あるいは定価も安くなる、こういうことであれば、まことにけっこうであると存じます。しかしながら、その間において、ただいま御指摘のような、公正に採択すべきものを、その公正さを歪曲するような動きがあるといたしますれば——また、今いろいろ事例についても御指摘のように、これは過去にも事例があったようでありますが、かようなことは厳に排除すべきことだと考えております。文部省といたしましても、ただいま御指摘のように、さような面につきましてさらに積極的に行政指導を強化していくべきだと考えております。従来の点につきまして、ただいまおっしゃったような事実につきましては、まことに責任を痛感する次第であります。
  169. 山中貞則

    ○山中委員 次に進みます。先ほど委員長から若干触れられましたが、公取委員会から二十七年、二十九年の二回にわたって厳重なる警告を文部省が受けておるということは、まことに私どもとして遺憾千万なことであり、先ほども述べられましたように、こういう警告は実際上何ら役に立たなかった、従ってその事態は改善されていないということを認めざるを得ないのです。第一回の警告の重点は、教科書会社側のあり方に対する見解が主であったと思いますが、二回目は、今度はこれを供給する側、すなわち学校職員、生活協同組合事業部というものが、いわゆる特約供給所の立場をとって児童に本を供給する役割を演じておる、そのことについて公取の立場からの警告であると私どもは見るわけなんです。ところが、その警告によって学校職員生活協同組合事業部というものは機構をかえまして会社組織にしたわけでありますが、その内容というものは、出資においても、あるいは構成員にいたしましても全く同じと言って過言でないような内容を持つものであって、その限りにおいて、形においては文部省もその公取の警告に従って措置をやったわけでありますから、その措置に従って幾分の反能はあったわけでありますけれども、しかしながら、その学生協の内容そのものは、会社にかわっても、実際においては公取委員会で指摘した警告に全く順応しておらない、むしろ合法的にこれをのがれた形になっておると私どもは考えるわけですが、その二点についてお答えを願いたいと思います。
  170. 緒方信一

    緒方証人 お話のように、公取の警告の内容にさような点が指摘されておるわけでありますが、これは午前中にも申し上げましたが、公取の警告に基きまして文部省としまして出しました通牒の中にも、その点は実はうたっておるわけであります。この問題点といたしましては、これも午前中に申し上げましたけれども、供給と採択面との分離と申しますか、採択が公正に行われるためには供給と採択が完全に離れた形でなければならぬということであろうと考えますけれども、採択する立場にありまする学校関係のそういう団体があるということは好ましくない、こういうふうに文部省としても意思を表明しております。その後第二回の公取の警告もございまして、ただいまお話にもございましたが、文部省としましてもこの点につきまして指導をいたし、努力を重ねてきたわけであります。今日におきましては、大体学生協自体が教科書を扱っていることはまずない、会社組織に改まって参っております。今御指摘のように、内容におきましてその前の要素が残っておるかどうかという点でありますけれども、文部省といたしましては、的確に申し上げる資料をただいま持ち合せないのでありますが、あるいはその問題は新しく生れました会社の資本関係あるいは役員関係等に何かその要素が残っていはしないかと考えますが、私、的確に申し上げる資料を持ちません。前の関係者が役員等に全然いなくなるというまでにさせるためには、さらに何か法的の処置でもしなければ非常に困難ではないか、かように考えております。漸次学生協としての色合いだけなくなってきたことは事実であります。
  171. 山中貞則

    ○山中委員 時間を急ぎますから、そういう問題について御調査されるときの資料として参考までに申し上げておきますが、現在山口、愛媛、佐賀、秋田等がその具体的な事例だと思います。中でも愛媛県などは扱い量が一億に上る内容であります。従って、特約供給所の四%と取次供給所の一二%、それぞれの手数料一割六分というものが、結局一千六百万円の手数料となってそれらの株式会社の収入となっている。こういう事実等はやはり大きな問題だと思いますので、いろいろと具体的に調査をされる場合の対象として研究されたいと思います。  次に、値段の問題でございますが、現在の父兄のばく然とした世論の焦点は、教科書があまりにも高過ぎるということに大体あります。というのは、家庭から教科書代について持ち出されるときに直接父兄が感ずるのは、いわゆるその負担でありまして、種類が多いとかあるいは制度がどうとかいうことよりも、あまりに高過ぎるのではないかという声が、ばく然とした表現ではありますが、相当にあると思う。文部省としては、最高価格というものをきめておるということでありますが、きめられた最高価格の内部の分析をしてみますと、ほとんどの会社の平均的な数値から言うならば、資材及び加工費が大体五〇%、印税が五—七%と見られます。その次に、先ほども申し上げましたが、供給手数料として一六%、それの内訳は、特約供給所が四%、取次供給所が一二%。その残りの二七%ないし三九%のものは利潤を含む営業費でありますが、この二七%ないし二九%の使途というものは、先ほど申しましたような純真な教職員の人人をよこしまなるふちに誘い込むような行為をする金に大部分充当されるおそれがあると見るのであります。従って、われわれは、この二七%ないし二九%というのは、文部省最高価格を決定するに当っては十分考慮をして、いかなる内容によって最高価格を決定するかは相当慎重にやらなければならぬと思いますが、現在の最高価格というものはいかなる基準によってお考えになっているか。先ほど申し上げましたようなことで、その具体的な基礎数字というものはいらないのでありますから、今言ったような角度から見て、そのような会社のもうけの内容の使われ方の面を考えたとき、最高価格の決定はいま少しく別な角度を持つべきである、こう思いますが、文部省としての見解を伺いたい。
  172. 緒方信一

    緒方証人 現行の最高価格の抑え方は、——午前中に申し上げましたように昭和二十七年度に新しい制度に改めたわけでありますが、改めた理由につきましては、先ほど申し上げました通りでございますので、重複を避けまして省略をいたします。二十七年度の実績を抑えて最高価格にいたしたわけであります。このことは、教科書の数がだんだん多くなりますと、一種類当りの発行部数というものは従って減るわけであります。やはり一定部数の発行がなければ採算関係がとれないということにもなりましょうと存ずるのでありますが、昭和二十七年度当時には、大体平均いたしまして十万部程度、九万六千冊くらいが、平均になっております。その程度のところで実績を抑えて最高価格を押えたということになっておりますが、その後の各一種類の教科書の発行部数は漸次減っておりまして、その点から見ますと、結果論でありますけれども、二十七年度で押えたことはその点ではよかった、かようなことになるのではないかと思います。文部省が認可いたします場合には、文部省独自で定めております一ページ当りの最高価格をページ数につけまして、その範囲であればこれを認めるということでございます。それから、ページ数につきましては、毎年その教科書原稿の受理種目の告示をいたします場合に、各教科課目にわたりましてページ数を制限いたしております。さようなやり方最高価格を抑えているわけであります。
  173. 篠田弘作

    篠田委員長 山中君に申し上げますが、あと五分くらいで質問を打ち切って下さい。
  174. 山中貞則

    ○山中委員 では、この問題はこれで一応やめますが、先ほど委員長が手に持って示されましたように、展示会に出品したものはちゃんととじてあって、学童に実際配られたものは三カ月でばらばらに分解するような図書を頒布する、そのような非良心的な会社が、実際の運営に当ってはどういうことをやっておるかと申しますと、たとえば、外国から、アメリカからですが、最高度の輪転機を輸入いたしまして、これと同時に、イーストマン・コダック、テナック・プロダクト・カンパニーという会社から米国人の技師を招聘いたしまして、これに驚くなかれ月に八十万円の待遇をしております。しかもその米人の技師に対しましては熱海に豪壮なる邸宅を提供しておる。こういうような、私どもが考えても、今日幾らインフレの世の中とはいえ月八十万もの待遇を与えるような、いわゆる技術面における良心的な会社と思われるような行為をしながら、一方学童たちに配給をした場合には、ニヵ月でばらばらになるような、いたいけな童心を傷つけるような行為を平然と犯しておる。     〔委員長退席、高木委員長代理査着席〕 何としても私どもは合点がいかない。一体何のためにこういうような高額の招牌料を払い、月給を払って、豪壮な邸宅を熱海に提供して、そうして自分の会社の技術を向上せしめんと努力するのか。私どもはその趣旨がどこにあるのかわからなくなるのであります。その点をもしあなた方が御存じであるとするならば、そういうような会社に対しては、少くとも教科書の発行に対する非良心的な態度を——先ほどはただ単に交換させたということで終ったようでありますが もっときびしい態度で、文部省に持っております権限の最大の力を発揮して、このような会社の非良心的な態度をこらしめるだけの努力は日本の教育のために当然さるべきだ。犠牲になるのは子供であるということを十分考えられたいと思うのですが、御見解を伺いたいと思います。
  175. 緒方信一

    緒方証人 午前中の御質問にもお答えいたしましたが、この事実が最初新聞によって伝えられましたので、私どもとしましては、会社を呼びましてその説明を求めたわけであります。その報告によりますと、主として小学校教科書につきましてさようなばらばらになったような不良のものが出ていることがわかったわけであります。従いまして、当面の措置といたしまして私どものやるべきことは、なるべく早くこの善後処置を講じまして、完全な本と取りかえることであろうと考えまして、そのことを厳重に会社には指示いたしました。その後その措置の状況につきましても報告を求めまして、現在その措置が終った旨の報告を受けておるわけであります。主として東京都がパーセンテージとしては一番多かったようでありますが、東京都以外におきましても該当の事実が起っております。この取扱いにつきましては、会社の方からの報告によりますと、現在のところ十分措置を済ませておるような次第でございます。私どもとしましても、この点につきましては、その行政に当る者としまして、かような不良なものが出ましたことにつきまして、まことに遺憾であると存じております。
  176. 山中貞則

    ○山中委員 そういう返事はさっき聞いたのです。それは、いわゆる役人として、そういう誤まりがあったのでそれをたださせたというにすぎない。私の言うのはそういうことではない。こういうことによっていたいけな童心が傷つけられたものは救いようがなくなるのです。先生方が展示会に行ったときはりっぱなとじがしてある。送られてきたものはとじがしていないというそういう事実、生徒たちはそういうところまでは知らないかもしれませんが、先生が選んで、先生がりっぱな本だと教えてくれたものが三ヵ月でばらばらになるというようなことには、生徒はそれこそばく然とながら童心を非常に傷つけられる。そういう非良心的な行為をやった会社が、一方では一人の外人技師に八十万も月給を払うというような行為をしておる。一体そういう会社は良心的な教科書を出版する資格のある、道徳を持った会社かどうかということを私は申し上げておるわけなのです。従って、私が言うのは、教育に携わる者として、そういう会社に対しては、非常に小さな権限だと思いますが文部省が与えられてあるところのその権限の最大の力を発揚して、たとえば、そういう行為があったために教育効果上甚大な悪影響を与えたから、この会社教科書は一年間これを採用しない、あるいは検定の対象からはずす、それくらいのきびしい態度をとらなければ、業者の自粛ということは望めない。野放し競争でありますから、もうけるためには業者はどんなことでもするわけです。またそれが野放し経済の当りまえの姿なんです。だから、それを防ぐためにあなた方の最大限の努力をする意思がなければ、もはや教育行政の最高責任者としての資格のないもの、かように私どもは断定せざるを得ないと思う。もう一ぺんお答えを願います。
  177. 緒方信一

    緒方証人 私ども文部当局といたしましても、この問題については、完全な措置ができておるかどうか、さらに全国的に調べてみたいと思っております。ただ、教科書会社の義務は完全な供給義務を果すということでありますので、かようなことで十分な義務が果されないということであれば、これは十分に戒告しなければならぬと考えております。ただ、その方法につきましては、今のお話もありましたが、いずれ私どもといたしましても検討いたしまして適当な方法とらなければならぬと存じております。
  178. 高木松吉

    ○高木委員長代理 山中君に申し上げます。持ち時間が経過いたしましたから、そのつもりで願います。
  179. 山中貞則

    ○山中委員 それでは、まだ一問残っておりますが、やめます。やめますが、どうも、緒方さん、あなたの頭はかた過ぎます。あと完全に措置がとられておるという報告を受けておる、そういう事実があるならばもう少し自分としては調べてみたい—。そういうことを私は言っておるのではない。いわゆる悪徳な会社をあなた方はほうっておいてはいけないということを申し上げておるのです。そのためには、あなた方は、非常に乏しい権能ではあるが、最初私がお尋ねしました限りにおいて、法的に権限というものがあるわけですから、そういう悪徳な会社については、教育的な良心の見地から断固麿懲の鉄槌を下すということが、あとの会社に対しても大きな自粛の教訓になるのです。それくらいの強い態度は決して自由営業の圧迫ではないのです。あなた方は文部行政の責任者であると同時に日本の教育に対する責任者の一入でもあるのですから、そういう問題についてはきびしい態度をおとりなさい、私はこういうことを申し上げておるのです。だから、たびたび繰返しての答弁は求めません。これで終りますが、こういう会社が自由にやっていい制度下にあったとしても、そういうものが、教育に対して不当なる悪影響を及ぼすような行為を一方にしておりながら、一方においてはどこから見ても正常でないような放漫な会社の経営をやっておるというような事実については、厳重なる処分をさるべきが至当だ、それでこそ教育行政の首脳部だと私は考えるわけです。十分この点を御考慮願いたいと思います。  非常に他の委員の方々に御迷惑をおかけいたしました。以上で終ります。
  180. 高木松吉

    ○高木委員長代理 辻原弘市君。
  181. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間の制約を受けましたので、要点だけお尋ねをいたしたいと思います。  本問題をめぐりまして、父兄その他の関係から、先ほども同僚議員もいろいろ申しておりますように、主として価格の問題、あるいは種類が多いという問題、あるいは改訂の度数がはなはだしいために非常に不便を来たしておるというようなことは、一般的にそこはかとない世論となっております。ここで、特にあらかじめ申し上げておきたいのは、この教科書の問題をめぐってそうしたいろいろな世論が起き、あるいはわれわれも十分その世論に対して肯定をしなければならぬ幾多の問題をはらんでいるということは、一体これが今日制度として実施されている検定制度そのものの欠陥であるのか、あるいはそうではなくしていわゆる教科書の取扱いの面から発生をした付随的な問題であるのかという点に、私たちとしては重大な関心を払っているので、その点について特に本日の緒方証人から私はお伺いをいたしておきたいと思うのであります。  価格その他の問題は、私は検定制度それ自体の本質的な問題とは考えません。しかし、今日われわれが日常伺っております非常に切実な意見は、これらに関係するものがほとんどであります。従って、先ほどからもお答えがありましたが、ここで重ねて私はお尋ねをいたしておきたいのでありますが、あなたは価格はあまり高くないというふうに答弁をせられました。しかし、先ほど山中委員から指摘されましたように、文部省調査等による世論の傾向も、高いというのが大部分である。しかりとするならば、あなたがただ単に私は安く思うということだけでは事済まないと思います。そこで、一体客観的に現在の教科書価格それ自体がどうであるかということを具体的に示す責任があると私は思います。その一つのよりどころとしては、やはり、教科書制度が実施されました当時、あまり価格の問題について声が大きく出ていなかった、いわゆる国定制度実施下における当時の物価から考えた教科書の価格というものをもとにしまして、それを今日の物価指数に引き面したいわゆる検定教科書の平均価格というものとの間に一体どの程度の開きがあるのか、これを例をあげて具体的にお示しを願いたい。
  182. 緒方信一

    緒方証人 最後の御質問に対してまずお答えいたしますが、私どもの調べによりますと、全部平均いたしました現行の単価は、昭和十年当時の単価の九十二倍から百三十三倍くらい、これくらいに相当するように私どもは推計いたしております。でございますから、他の一般的な物価の上昇率ということから見ますと、ただいまお話のように必ずしもこれをもって高いということは言えないのじゃないかと思います。ただ、教科書の価格という問題は、特に義務教育の段階におきましては、児童、生徒が必ず教室で使うものとしてこれを求めなければならぬものでありますので、父兄の負担を少しでも軽くするという意味において少しでも低い方がいいという論点からいたしますと、今世諭としても起っておりますように、もっと引き下げてもらいたいという声の起るのも当然であろうと思います。
  183. 辻原弘市

    ○辻原委員 十年当時の九十二倍そこそこの価格を示しているというお話でありますが、それではまだ判然といたしませんが、時間がありませんので、別の機会に、当時のある教科書をとって、その価格と、今日のその教科書と類似の教科書の価格とを比較してみて、一般物価の上昇率から見て均衡がとれているかどうかの資料を一つお示し願いたい。  今最後に言われたように、ともかく戦前と比較して大した差を見せていないとしても、しかし、少くとも父兄の負担の増大、さらにまた義務教育教科書という立場に立ちますと、できるだけ安くしなければならぬという点を力説しましたし、われわれもそれには全く同感でありますが、今日までわれわれは文部省がこの教科書価格の引き下げについてかくかくの具体的な努力をしたということを寡聞にして聞かないのであります。その点についてどのような努力をなされてきたか、これを承わりたいと思います。  ついでに申し上げておきますが、私たちとしては、いろいろな面から価格引き下げの具体的な方法があろうかと思いますが、若干例をあげましても、あるいは用紙についての国家的な恩典、あるいは運賃に対する特別な補償、あるいは価格の中に換算されるいわゆる教科書会社その他の編集から出版に至るまでの資金需要についての金繰りの問題、こういう具体的な点がいろいろと指摘されるのでありますが、そういう点について従来何か手を打たれたか、もし打たれたとするならば、それについて具体的に御説明を願いたい。
  184. 緒方信一

    緒方証人 現在教科書関係につきまして特にいろいろの恩典を受けている点をまず御説明いたしたいと存じます。税金の関係でございますが、これは教科書の用紙に対しましては物品税が免税になっております。それから、教科書出版社、教科書供給業者に対しましては事業税が、これは地方税の関係で免税になっております。運賃に対しましては、特に貨車扱いの運賃に対しましては、これは特別扱いの措置がとられております。貨車便扱いの場合には二十一級という特別扱いがされております。ただ、客車便の扱いの場合にほ教科書もそう安い扱いになっておりません。ただ、しかし、教科書はやはり重量物でありますので、実績から見ましても貨車便で扱う率が一番多いのでありまして、この貨車便につきましては相当の恩典を受けているわけであります。それから、そのほかの点につきまして、今お示しの用紙価格に対する手当、あるいは金融の手当等につきましては、これは現在文部省としては別に特別な措置を考えておりません。大体文部省が手を打ったと申しますか、現在受けております教科書関係の恩典と申しますか、いろいろな軽減措置につきましては、今申しましたような通りになっております。なお、私どもの方といたしましても、教科書協会等におきまして運賃等につきましてもさらに運輸当局等に交渉がありますれば、それをバツクいたしまして努力いたしたいと思います。
  185. 辻原弘市

    ○辻原委員 今伺った範囲におきましも、物品税その他の関係にしても、他の公共的な物件等の取扱いの域から一歩も出ていないことは明らかであります。最後に話のあった運賃の問題等につきましても、一例をあげてみるならば、たとえば定期刊行物の雑誌であるならば、その内容がたとい今日問題になっている不良出版物であっても、やはり第三種郵便物の取扱いを受け、法的な効果を受けております。その分だけは少くとも価格から低減されているというのが実際であります。ところが、教科書に至っては、定期刊行物ではないという理由だけに基いて、この面に対する何らの法的な効果が行われていない。私は、その資料が的確であるかどうかわかりませんけれども、少くともこの運賃によるコストヘのふくれ上りが少くとも三%程度あるということを聞いております。安くしようという気持をほんとうにあなた方がお持ちになっているとするならば、こうした直接的な問題に触れて解決する手は私はいくらでもあると思う。さらに、価格の問題等につきましても、現在考究しておらないようでありますけれども、高いと言われているならば、なぜそういう問題を具体的にあげなかったかという点がわれわれとしてははなはだ了解に苦しむ点であります。まず、価格の問題については今後なお解決でき得る具体的方途があるということを私は申し上げて、この問題はそれだけにとどめます。  次は種類の問題でありますが、ここでお伺いしておきたいのは、数が多くて不便であるという一般の声の中には、主として転入学の際の問題が出ておるのでありますが、従来文部当局からこれらの問題をお伺いしたときには、十分その手当はしてあるというふうに私は聞いた。ところが、実際今度は転入学してみると、あるいはその教科書がなかった、あるいは、あるけれどもそれが間に合わないというふうないろいろな事例を聞きますが、一体転入学の問題については年間どの程度の数があるのか、またその数に対してほんとうにあなたの方で処置をされているのかどうか、また現実にこれを取り扱っている取次店あるいは扱い店等が親切に学校当局と十分連携を持って絶えず転入学生徒、児童の要求を満たすに足るような準備態勢を整えているのかどうか、この点を承わっておきます。
  186. 緒方信一

    緒方証人 転入学の問題でありますが、これは調査が非常に複雑でありまして、私どもの方でも数につきましてはまだ的確な調べはできておりませんが、一部の県の教育委員会のお調べによりますと、小、中学校だけの調べでありますけれども、転入生が二・一三%、こういう調べを前にいたしたことがございます。私どもといたしましても、さらにこの調査は進めたいと考えております。  それから、この転入学の生徒、児童に教科書を十分に届けるということは、発行者法律によって受けております義務でありまして、末端まで転入学生に対しましても十分に供給しなければならぬということになっているわけであります。ただ、実情としまして、地方の取次店に常にこれを備えておくということができない間に合わない場合が間々出てくるかと考えております。具体的に文郎省としまして各県の供給業者に対しまして直接のさしずはできませんけれども、発行会社がそういう末端の供給まで責任を持っているわけでござといますので、この点につきましては、発行業者等に十分徹底指導をいたしているわけでございますか、間々そういう声がありまして、御迷惑をかけている点につきましては私ども責任を感じます。今後さらに努力はいたしたいと考えます。
  187. 高木松吉

    ○高木委員長代理 辻原君に申し上げます。持ち時間が経過いたしますから、簡潔にお願いします。
  188. 辻原弘市

    ○辻原委員 今のお話でありますが、教科書協会の資料を見ておりますと、全国平均大体三・五%だという資料が出ております。また、山形県の一例をあげてみれば、大体千人に二人程度の転入学しかなかったという程度のサンプリング調査の結果が出ておりますが、そのときどきのこのサンプリング調査を傾向的に見てみますと、戦後から今日に至るまでの状況としては漸次この転入学生の数が減っている。とすれば、これは、方法において少くとも取次店その他において十分なる手当を行い得れば、この面から起ってくるところの不便さ、不十分さというものは十分除かれるということをまず私は指摘しておきたいと思います。教科書問題にしましても、現在いろいろ献本その他うわさがまかれておりますが、供給に当って、以前の教科書頒布の数から見ますればきわめて微々たる数でもってこれは十分充当できるということを、あなた方はもう少ししっかり御検討願わなくてはならぬと思います。  価格、種類等の問題につきましては、他にいろいろ問題がありますが、委員長の注意もありますので、これはこの程度にいたします。  結局、今お伺いをいたしましても、要するに、いかなる制度をとっても、社会的現象として起ってくるこれらの問題については、ほとんど積極的な態度でもって文部省が問題の処理に当っていなかったということだけは、私ははっきりここで申し上げることができると思います。その証拠に、今日、教科書取扱いに関する法的な措置にいたしましても、わずか昭和二十三年に出された臨時措置に関する法律一つしかない。こういうところにも今日の教科書問題の根本的問題があるのではなかろうかというふうに考えます。だから、これらの問題については、努力をし、今日の欠陥を拾い上げていけば十分解決の道があるということを私は考えますが、その点についてあなたはどういう見解を示されるか、参考に承わっておきます。
  189. 緒方信一

    緒方証人 私ども、教科書制度をよりよくするために努力をしなければならぬ余地は御指摘のようにたくさんあると思います。今後私どもも十分そのつもりで努力したいと考えます。
  190. 辻原弘市

    ○辻原委員 次に、この制度の根本問題である検定の問題についてお伺いをいたします。先ほどから説明がありましたが、その説明によりますと、検定に至るルートは、まず出版社から申請があって文部省に来、文部省がそれを覆面しているところの調査員にそのデータを渡し、その申請の原稿を渡す、その五人の調査員審査を経て文部省に帰る、その帰ってきたものを今度は審議会にかけて大臣に答申をするという経路であるようでありますが、そういたしますと、この検定に当っての最も重大な部分というものは、審議会にあらずして、これを受け取った文部省調査員、この関係にあると私は考えます。そこで、現行の検定制度が実施されて以来明確になっていることは、検定はあくまで民間人の手による、いわゆる民間検定であると言われておるのであります。ところが、この間に、文部省任命した調査員文部省とが最も大きなウエートを占めているということは、何かしらこの民間検定制度というものにわれわれは納得のいきがたい点があるわけであります。そこで、文部省は、実際の申請のあった教科書検定についてどの程度内容に対すサゼスチョンをし、どの程度のそれに対する修正意見等を加える権限を持っておるのか、この点を一つ具体的に承わりたいと思います。
  191. 緒方信一

    緒方証人 ただいまお話の、検定は民間検定であるということは、その意味といたしましては、民間の人を委嘱して、そうしてその人にやらせる、こういうことであろうと思います。今の調査員というのは、文部大臣任命する非常勤の職員であります。その意味におきましては、今御指摘のように、民間人がそのままやるわけではありません。しかし、いやしくも検定という仕事文部大臣の権限に属する国家の事務でありますから、今申しましたように、調査員というものを任命いたしまして、その人に当らせる、その一端を担当させるということであろうと思います。これが実打的には民間検定ということであろうと考えます。これが一つであります。  それから、もう一つは、文部省の権限でありますけれども、これは文部省検定の権限がある。文郡大臣の検定であります。ただ検定審議会答申を待って文部大臣がするので、その過程においては検定に対する権限は文部大臣が持っている。審議会諮問機関でございますので、文部大臣自体の権限がそこにあると考えるわけであります。しかしながら、実際のやり方を申し上げますと、これは数多くの原稿がございますので、審査文部省自体がやるという建前にはいたしておりません。そして、事実上千四百名の調査員調査をしてもらいまして、その採点の結果を審議会に持っていき、審議会答申を待って、その答申の結果をいれて検定をするというのが事実上の運営の方法であります。
  192. 辻原弘市

    ○辻原委員 形式的なことをお伺いするのではなくして、委嘱した調査員の検討の結果をなまで審議会にかけられるとか、ないしはその間に文部省視学官あるいは係が実際の検定内容にタッチをしてそれを修正し得る権限を持っておるのか、また実際そういうことをやっているのかやっていないのかということをお伺いしたのであります。あなたの今のお話によると、法的に検定権は文部大臣にあるが、実際問題は委嘱をした調査員審議会にすべてをゆだねておるということであるが、そのすべてというのは、実際上その間に何ら視学官ないしは係がその個個の教科書検定にタッチしていないという趣旨であるのかどうか、この点を伺っておきます。
  193. 緒方信一

    緒方証人 視学官はタッチいたしておりません。視学官教科書には関係ございませんのでタッチしておりません。ただ、教科書についても専門職がおりますので、この専門職が見ておるわけであります。しかし、これは数少いので、今までもとうてい全部見られるわけではありません。従って、調査は主として——主としてと申しますか、調査員がやるのが実情であります。ただ、しかし、見ておりまして気つきました点等につきましては、審議会にその原稿がかかります場合に意見としてそれを持ち出すことは当然であります。
  194. 高木松吉

    ○高木委員長代理 辻原君に申し上げます。時間が経過しておりますから、そのつもりでお願いします。
  195. 辻原弘市

    ○辻原委員 今のお話では、結局、形はどうあっても、教科書専門の文部省の係が、中間的であるか最終的であるかわかりませんが、文郎省検定教科書に対する内容的修正についての権限を行使しているということが明瞭であります。そういたしますと、これは先ほども問題となりましたが、文部省の中に特定教科書会社と関連を持つた人がおったり、またかつて文部省のそうした方面におった人が教科書会社に行っておったり、あるいは調査員と出版会社との間に何らかの関係を持っておったり、この文部省、出版社、調査員の三角関係の中にいわゆる何かの因縁情実関係を持つということになれば、これは、いかに制度をりつぱにいたしましても、その教科書は事実において必ずしもほんとうの意味における民間検定という形においての検定教科書であるとは言い得なくなると私は考えるわけであります。ところが、先ほどから指摘されておりますように、現実に文部省の中にはそういう人たちがおり、また現在相当優秀な会社である教科書会社の中にそうした人もおって、この関係のままで検定教科書が作られていくということになれば、これは私は重大な問題であると思います。それらについては先ほどからいろいろ問題があったのですが、私は、今日のこの制度においては、もし今教科書会社文部省との関係を是正しないならば、これは完全な一教科書会社文部省とのなれ合いによって特定検定教科書が生まれておる、こういう断定を世論がいたしましてもやむを得ないと思いますが、その点はどうでありますか。
  196. 緒方信一

    緒方証人 ただいま私が御説明申し上げましたのは、多少誤解があったようでありますが、これは、文部省の係が全部見られるわけではない。一応見ることもある。その場合に気づいた意見といたしましては審議会に持ち出す。直接にそれでもって検定をするという意味で申し上げたわけではありません。審議会に持ち出して審議会で決定するということでありますので、検定の合否の決定は審議会答申を待って行う、こういうことであります。
  197. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間がないようでありますので、次の問題に移りますが、今の問題も釈然とはいたしません。審議会の性格、並びに審議会委員が一体いかなる基準によってそれをきめられておるものであるか、こういう点についてもはなはだ不明確であります。あなたは審議会々々々と言われるが、審議会の最終的な決定方法は、これは単なる資料に基いて形式的にそれをきめるという、そういう従来の慣例を持っておるように私は受け取っておるわけであります。審議会が最終的に、その調査員の検討を待って提示したものを、審議会であるのゆえをもってけ飛ばしたとか修正を加えたというような例はなかろうと私は思います。従って、実際の教科書を作る権限というものは調査員文部省のこの関係にあるということを申し上げておきます。  次に、今指摘いたしましたのは特定会社文部省との結びつきでありますが、こういう事実についてあなたは御存じであるかどうか。それは、現在学校図書株式会社というのがあって、先ほどから言われておりますように相当問題を提起いたしておりますが、この学校図書株式会社文部省との関係、これは、考えようによれば、一つ会社検定をスムーズに通し得るパイプを持っておる、こういうのであるが、同時に、この会社がかりに今度はその通った教科書を最もスムーズに採択できるような機構を考えたとしたならば、これは私はおそるべき計画であると思うのであります。今日新日本教育協会というのが生まれておりますが、この新日本教育協会という教育団体を見てみますると、その中心の人物は学校図書株式会社編集長伏見さんその人である。さらに、時間がありませんので多くを申し上げませんが、そのほかに幹事の役割を果しているのも、学校図書株式会社関係を持った有力な社員である。さらに、地方の組織等において活躍をしておる人の中には、これまた学校図書株式会社関係浅からざる、採択についての相当有力なメンバー、こういう人たちが寄りまして、今日全国で六十二の支部を結成し、そうして会員数が優に二千を突破するという現況であります。しかも、この団体の手によって相当ひんぱんな講演会あるいは講習会というものが今日まで行われてきておる。これらの費用はあげてこの新日本教育協会の本部の負担によって支出をされておるという。このことだけをとらまえてみましても、もしそれ、この人的構成からながめてこの特定会社との結びつきを考えてみた場合に、これを動かして採択を容易ならしめようとするならば、優にこれはできる問題であると思う。そういう点について文部省はその具体的な事実を知っておるかどうか。また、こうした講習会あるいは研修会などによって使われる金が教科書会社から全部支払われておるとするならば、これはやはり教科書のコストの中にそうしたものが持ち込まれておるということも想像にかたくないのであります。こういう問題は、少くとも教科書行政にからまってわれわれとして見のがすことのできない問題であるが、あなた方はそれを御存じあるのかどうか、御存じあるとするならばそれに対してどういう見解を持っておるか、この点を承わりたい。
  198. 緒方信一

    緒方証人 ただいまおあげになりました新日本教育協会ですか、これは私は教育関係の新聞等で散見いたします程度でございまして内容を存じません。また教科書会社との関係につきまして、今までそういうことがいわれたこともよく存じません。従いまして、その点につきましては私申し上げることができませんので、お許し願います。  それから、なお、先ほど教科書検定調査員文部省でやるのだ、こういう御断定でありましたけれども、それは、私が先ほどから申し上げておりますように、調査員の方でいろいろ意見がありまして、それを審議会に持ち込んで、審議会がその意見に基いてさらに検討するということ、これは当然あることでありまして、決してその審議会がただ形式一片でここは素通りということじゃないということをつけ加えて申し上げておきます。
  199. 高木松吉

    ○高木委員長代理 辻原君に申し上げますが、他に八人の発言要求者がありますので、簡単にお願いいたします。
  200. 辻原弘市

    ○辻原委員 もう一点で終ります。  次に、採択の問題でありますが、先ほどあなたの言われたのは、採択については教育委員会に権限がある、こう言われたのでありますが、それは政府部内で完全に意思統一ができた見解であるのかどうか、この点を承わっておきます。
  201. 緒方信一

    緒方証人 これは、政府部内——私ども文部省としてはさように解釈いたしております。前に法制意見局との間で決定したことがあるかどうか、これは記憶いたしません。私はさように考えております。
  202. 高木松吉

    ○高木委員長代理 辻原君に申し上げます。簡単に願います。
  203. 辻原弘市

    ○辻原委員 公正取引委員会文部省に対する勧告を見ても、この点に対する取扱いがきわめてあいまいであると付記されておる。従って、単にあなたが文部省の法的解釈によって委員会にあると、こうすることは、なお今後も混乱を重ねていくもとであると思う。この点については、法制局との十分なる検討の結果はっきりした意思統一のできた見解を示すべきである。なお、採択の問題に関連いたしまして重要な点は、何といっても、先ほど来言わたておる展示会でありますが、この展示会が明日から十日間にわたって本年度開催されることになっておりまするが、要するに、ただいまの展示会のやり方でもってしては、とうてい現場の教員の意思を反映して採択するというこの検定制度の根本精神が貫かれないということだけは、私はだれしもの見解が一致しているところであろうと思う。ということは、それだけの欠陥を持ちながら今日まで文部省が展示会方式に対して何らの改善を加えていないというその怠慢さを私は責めなければならないと思う。従って、その解決手段としてはいろいろあると思うが、少くともこれが現場の意見を反映し得る、いわゆる先生方が十分この展示会を利用して検定教科書内容を精読し得るに足るだけの時間と余裕を与えるために、国家的な保護であるとか恒常的な展示会センターというものを設ける必要をわれわれは痛感するのであります。それについてあなたは従来手を染められたか、なお今後それを早急に実施していこうというお考えがあるか、これを最後にお伺いいたしまして、なお質問は尽きないのでありますが、時間の関係でこれで終ります。
  204. 緒方信一

    緒方証人 常設展示会の問題につきましては、私どもも実現に努力しておったのでありますが、はなはだ遺憾ながら十分な結果を見ておりません。漸次府県に指導いたしまして少しはできつつありますけれども、まだ十分でないことは御承知であろうと思います。今後も努力していきたいと思います。
  205. 高木松吉

    ○高木委員長代理 神田大作君。
  206. 神田大作

    ○神田(大)委員 時間が制限されておるので、簡単に要領だけをお尋ね申し上げます。  まず第一に、教科書が制定されるに当りまして、調査員というものが任命されまして、調査員によって教科書が評価されますが、それに対して検定基準というものがあるということを聞いておりますけれども、この検定基準は一体どういうものであるか、お尋ね申し上げます。
  207. 緒方信一

    緒方証人 教科書検定基準に文字通りなるものでありますが、各教科科目ごとにできておる。その基準の中には絶対条件必要条件と二つあります。絶対条件といいますのは大体三項目あります。ちょっと具体的に申し上げてみますと、第一は、わが国教育目的に一致しているかということ、教育基本法及び学校教育法の目的に一致し、これに反するものがないかというようなこと。それから、第二は、立場は公正であるかという点であります。政治や宗教について、特定の政党や特定の宗派に片寄った思想、題材をとり、またこれによってその主義や信条を宣伝したり、あるいは非難したりしているようなところはないかというのが第二であります。第三は、当該の科目の指導目標と一致しているかということであります。この指導目標というのは学習指導要領に示しておりますが、そういうものと一致しておるかということ。この三つの点が絶対条件としてあります。この絶対条件にはずれれば、その教科書は合格になりません。それから、必要条件でございますが、これはいろいろございます。第一、内容の点がどうであるか、事実が正確であり信頼できるかといったような点、あるいはまた、児童の発達段階に応ずるものであるかどうか、教材の組織、配列等が適当であるかどうか、そのほか表現がどうであるかといったような具体的な条件を各教科科目ごとに示してあります。これが検定基準であります。
  208. 神田大作

    ○神田(大)委員 この検定基準なるものは、いつ作られまして、その後においてはどういうふうに改訂されておったか、簡単でけっこうですから、経緯を御説明願います。
  209. 緒方信一

    緒方証人 これは、各教科科目につきまして指導要領が改訂になりますと、その部分は改訂をいたします。そうでなければ改訂はいたしません。そこで、これは一律には申し上げかねますけれども、たとえば、最近社会科につきましては改訂をいたしましたので、その部分につきましては最近改訂をいたしました。
  210. 神田大作

    ○神田(大)委員 この各科の指導目標を作るに当りましては、実資的には文部事務官が参画して、その指導のもとに各科の指導目標というようなものが作られておると聞いておりますが、さようでございますか。
  211. 緒方信一

    緒方証人 指導目標とおっしゃいますのは、学習指導要領のことだろうと思いますが、これは文部省としましても慎重に考えておりまして、たとえば、このたびの社会科につきましての改訂の手続を申し上げますと、まず教育課程審議会にかけまして、そこで大綱について審議を願い、その答申を待って文部省が方策を決定し、それをさらに具体的にするためには、教材調査研究会というものがありまして、それにかけ、文部省もそれに加わりまして研究し、その結果をさらに文部省で検討しまして慎重に決定いたすわけでございます。
  212. 神田大作

    ○神田(大)委員 そうすると、この検定制度なるものは、実査的には文郎省の検定であるようなにおいが十分感ぜられるのであります。こういう点についても教科書問題について大きな問題があるのであろうとわれわれは考えておるのでありますが、こういうことについてはあなたはどうお考えになっておりますか。教科書が一年々々改訂され、生徒は違った教科書を使わされる。中には内容はほとんど同じであっても字句を少し違わせて学童に配られておるというような事実が所々にあるのでありますけれども、明らかに教科書を売るためのこういう改訂に対しまして、どうお考えになりますか。
  213. 緒方信一

    緒方証人 最初にお話しになりました教科書検定は、文部大臣検定でございます。この点は間違いございません。ただ、手続として民間の人を委嘱して調査することが月間検定といわれるゆえんであろうと思います。戦前にも検定制度がございまして、文部省監修官がおり、文部省の役人が検定した時代もあったのであります。それに比べまして、今の制度が民間検定といわれますのは、民間の学校先生なり大学先生方に委嘱しまして調査会なり審議会を作りまして、これにかけて検定をしておる、これが民間検定といわれるゆえんでありまして、検定はあくまで文部大臣検定であります。  第二点でありますが、改訂が行われます場合はいろいろあると考えます。しかし、今お話しのように、ただ教科書を変えてそれを販売するという目的のためにかりにそういうことがあるとすれば、これは排除すべきものだと考えております。ただ、そういう意味の改訂が、そういわれるほど頻繁に行われるかどうか。私は、具体的にははっきりは申し上げかねるのでありますが、そうはないと考えております。ただ、前のものを変える場合には必ず改訂という形をとります。四分の一以上を変えます場合には新しい教科書と同じような検定を受けてでなければ改訂はできないことになっております。
  214. 神田大作

    ○神田(大)委員 次に、展示会の問題でございますが、展示会の問題について、あなたは現在の制度のままでもいいじゃないかという御意見のようでございますけれども、今展示会が有効になされておらないところにいろいろと世聞の疑惑も起き、またそのすきに乗じていろいろと誘惑が行われているとわれわれは思うのであります。この展示会につきましては、たくさん費用もかかるであろうと思いますが、その費用は一体だれが負担しているのですか。
  215. 緒方信一

    緒方証人 これは府県費で負担しております。都道府県教育委員会が主催をいたします。
  216. 神田大作

    ○神田(大)委員 展示会について、府県費でもってまかなうことができなくて、業者がこの展示会の費用をカバーしておるというようなことが行われておるとわれわれは聞いておるのです。が、そういう事実をあなたはわかっておりますか。
  217. 緒方信一

    緒方証人 私は存じておりません。
  218. 神田大作

    ○神田(大)委員 それでは、次に御質問申し上げます。私は、今度の教科書問題についていろいろと疑惑を持たれる根源は、先ほど前の委員によって御質問がされておりましたように、元教科書会社等におりまして、取締役とかいうような枢要な位置を占めておった、そこにおられるところの近藤さんとか、あるいは小沼洋夫さん、そういうような人が文部省に返り咲いて、教科書のいろいろの問題について大きな圧力になっておる、しかもそれが民間の教科書製作会社と有無相通じておるというようなことがうわさされておるのを、あなたのような責任者が知っておりながら今日までこれを黙認しておった、あるいは故意に知らないというようなそぶりをしておるというようなことが、今日会社あるいは学校あるいはその他の関において醜聞が持たれておる大きな原因であると思いますが、文部省の指導的立場に立っておるあなたはこの問題に対してどういうふうにお考えになりますか。
  219. 緒方信一

    緒方証人 私は先ほど私の局の中における関係の人のことにつきましては申し上げましたが、これは午前に申し上げた通りに考えております。ただ、今の教科書検定制度は、先ほどから申し上げますように、一定の調査会または審議会を通じまして厳正に実施されておると私は考えておりまして、そこに何らかのカが加わる余地はないと私ども考えております。さように御了承願いたいと思います。
  220. 高木松吉

    ○高木委員長代理 神田君に申し上げますが、持ち時間が経過しておりますから、ごく簡単に願います。     〔高木委員長代理退席、委員長着席〕
  221. 神田大作

    ○神田(大)委員 これは今度行政監察委員会教科書事件として取り上げる上において大きなポイントをなしておると思う。教科書をたくさん売り込むために、心ではそう思っておらない人たちを無理やりに工場を見学させたりあるいは旅行に誘ったりしておるこの業者の態度に対しまして、私たちはこれは今度の問題における疑惑の中心であろうと思うのでございますけれども、そういう業者と長い間密接な関係を持っておる者を文部省の枢要な位置に据えたり、あるいはまた文部省の枢要な位置に立っていた者を民間の教科書の製作会社へ送り込ませるというようなことが前の安藤文部大臣のときに行われたというようなことをわれわれは聞いておるのであります。文部省自体がそういう世間から疑惑を持たれるような人事をすることによって、業者が学校へ誘惑の手を差し伸べることに対してにらみがきかないのではなかろうかとわれわれは思う。これは文部当局の重大なる責任であると思うのでありますが、あなたはその責任者の一人といたしましてどうお考えになりますか。
  222. 緒方信一

    緒方証人 人事の問題につきましては先ほど来申し上げました通りでございまして、ただ私は私の所管関係以外のことにつきましては深く事情を存じません。しかし、その問題と、ただいま御指摘になりました教科書会社の不当な売り込み手段と申しますか、さようなものとは、別の問題であろうと考えております。もしさようなことが伝えられるようにあるとするならば、これは私どもとしましても十分な監督をしなければならぬと考えております。
  223. 神田大作

    ○神田(大)委員 それでは、その問題はやはり今度の教科書事件をわれわれが審議する上において大きな問題になりますので、それは後日また改めて御質問申し上げることにいたしまして、次に調査員の問題について少しくお尋ねいたしますが、調査員というものは、その名前が秘密であるにもかかわらず、われわれは相当調査員名前教科書製作会社に知られておると思うのでございますけれども、先ほどあなたはそれがわからないと申されております。大学推薦地方教育委員会推薦によって、その中から文部大臣任命する調査員が、私は世間に秘密を絶対守れるとは考えない。これは必ず漏れると思うのでございますけれども、一体調査員氏名の秘密というものは守られておるものか、あるいはこの秘密というものが漏洩されておるものかというような点について、あなたの常識的な一つの御判断をお聞かせ願いたい。
  224. 緒方信一

    緒方証人 私は、午前中にも申し上げましたが、全然漏れていないということを反証をあげて申し上げる確信はございません。これはたくさんでございますので、あるいは自然にわかったという事実はあるかもわかりません。これは私はわかりません。しかし、私どもが常識的に役所の仕事を運営しております立場としましては、漏れないように絶えず細心の注患を払っておりますので、それが事実全然漏れてないということを確信を持って言えと申されますと、さようには申し上げかねますけれども、今申し上げたような理由で、私は秘密は守られておると思います。
  225. 神田大作

    ○神田(大)委員 調査員調査しました教科書に対しまして、文部省事務官が検定調査審議会名前をもってこの調査員調査事項に干渉するというような事実をわれわれは聞いておるのでございますが、そういう事実はありましたか。
  226. 緒方信一

    緒方証人 これは、先ほども御質問に私答えましたけれども、調査員調査文部省の役人が関与するということはございません。
  227. 篠田弘作

    篠田委員長 高津正道君。
  228. 高津正道

    ○高津委員 私は文部省の中枢は初等中等教育局だと思うのです。それは、学童の数があまりに多いということ、そうして一番最初に教育を施すその対象になるのだから、白紙にものを書くようなものであって、ここが一番大事だと思うのです。そこで、最初に聞きたいのは、あなたは大学を出るとすぐ内務省に飛び込まれた、はえ抜きの内務官僚だが、その人が今や文部省の中枢に入っておられる。これは、追放が解除になったら法律的には資格は全部同じですけれども、しかし、学校の施設関係に行くならだが、ああいう思想を持った大達文部大臣に引っぱられて、ちゃんと一番大事なところにすわっておられる。それだから聞くのです。そうでなければ聞かないのですが、追放の理由はどういう理由だったのですか。
  229. 緒方信一

    緒方証人 私の略歴は午前中申し上げましたが、追放になった理由というお尋ねでありますが、これは言わなければならぬとしたら申し上げます。戦後の追放のときに、私、ゾルゲ事件というものを戦争前に検挙いたしましたので、その事件の関係で追放になりました。
  230. 高津正道

    ○高津委員 それでは、第二点をお尋ねいたしますが、小沼視学官というのは問題の学校図書株式会社の株を八千株持っておったのです。それから、その役目は社会科の学習指導要領の作成の今主任なんです。これは重大ですよ。彼の役目は出版とは無関係だということをあなたは言われるが、学習指導要領を学校先生が見てそれに合うのは、その人がこしらえたんだから、学図の出版物に実によく合うようになっておるのですよ。それじゃ今度はあっちを買わなければ、この指導要領には合わないということになる。そういうところへ学図におった人が入っておれば、ほんとうにおそろしいことだとわれわれには社会通念でわかるのですよ。それなのに、やっぱりあなたは無関係だと言われるのですが、その民間の常利でやっておる教科書会社編集にも採択にも関係が及びますよ。私はそういうことにはしろうとじゃないのですよ。
  231. 緒方信一

    緒方証人 ちょっと、私よく御趣旨がとりかねますが、学習指導要領、教育内容教科内容あるいは教育目標等につきまして、もちろんこれは視学官関係いたしますけれども、それが特定会社教科書編集ということに直ちに結びつくということは私は考えません。
  232. 高津正道

    ○高津委員 それじゃ、少し的をずらしますが、学校図書株式会社では、営業上、早く文部省の方針を知ったら同業者の中で勝てるという、これこそ社会通念だと思う。これを否認するかどうか。口じゃどうでもよい。われわれは社会通念でいくのだから、その上に立って申しますが、元の文部省課長だった吉田孝一氏が学図へ入社した。少し民間でよくもうける会社におった人間が今度返り咲くと局長ですよ。緒方総理は、鳩山さんを批評して、出たり入ったりまた出たりと育ったが、学図へ入ったり出たり、文部省へ入ったり出たりまた入ったりだ。ずいぶん出世して入るものだ。それから、文部省総務局長永井浩という人は長崎県の知事などをやった人だが、これは学図では月給をもらっておりますよ。必ず高給をもらっておりますよ。あるいは阿原謙蔵という人もあれば、そういう出入りが文部省との間にずっとある。われわれは、これは白昼公然と教科書会社文部省を乗っ取るんだと思う。それを、関係がない、影響はない、秘密なんか漏れない、こういうように言われるのは、いかにもあなたが学図を弁護されるようにぼくには聞えてしょうがないんですよ。それから、近藤寿治氏のごときは中教審へ入られたが、中教審は教科書関係ないなどと言われるが、あそこが社会科をどう変えるかという変える大元じゃないですか。そういうことばかり扱っているんですよ。日教組対策やそういうことばかり考えているんですよ。そこに人間が入っていったのだが、私は簡単に言いましょう。あれを推薦したのはだれですか。それから聞きましょう。
  233. 緒方信一

    緒方証人 私は中教審と教科書は全然無関係だとは申し上げておりません。教育全体の問題につきまして中教審は審議をする機関でありますので、その意味においては関係があると申し上げたのです。ただ、具体的に教科書編集まで、そこまではタッチしないであろうということを私は申し上げたのです。  それから、最後の御質問は私は存じません。
  234. 高津正道

    ○高津委員 それから、教科書の数がどうも多いから数を少くした方がよかろうというような議論であって、それは教科書の出版屋が多いからというように話しが進められておるようなのを私は聞いて驚いたのですが、今の小沼視学官が扱っておる学習指導要領が、ほかの教科書よりも一番数が多く、この三月に第五回目の改訂をやっておる。そんなにそれを変えていくと、それをいち早くだれが知るかといえば、あなたは否定するが、私は学図が一番早く知ると思いますけれども、そうすれば、株の関係——八千株はやっぱり月給取りとしては大きいものですよ。それで、どうしても、そういうように変えていくことが、教科書の数を、前のを捨て新しい教科書を出すようになるのであって、種類が多くなるのは文部省が原因を作っておると私は思うが、学習指導要領を幾ら変えても種類を多くすることには関係がない、これをあなたはやっぱり主張するのですか。やはり社会通念で行きましょうよ。
  235. 緒方信一

    緒方証人 先ほど私はそう申さなかったと思いますが、改訂を毎年やっておるだろうというお話ですから、それは違うだろうと申し上げた。学習指導要領というものが最初できましたのは先ほど御説明申しましたように二十二年。二十六年に大きな改訂があった。学習指導要領というものは各教科科目ごとにあるわけです。ある教科につきまして改訂をするという場合が起っても、他のものを必ずしも改訂するというわけじゃございません。最近行なっておりますのは、占領治下にできました学習指導要領が今日では再検討すべき時期が来たものがたくさんありますので、それを今再検討いたしております。そこで、最近行いましたのは社会科の改訂であるということを申し上げました。それから、先ほど何か五回改訂をしたというお話でございましたが、これは高津委員の誤解であろうと思います。これは社会科の改訂につきまして中間発表を五回行なったということであります。と申しますのは、なるべく早く現場の職員もあるいはまた教科書会社におきましてもこれを知ることが必要でありますので、改訂が進みますごとに四回中間発表をやりまして、五回目に最後の発表をしたこういう意味でございますので、御了承願います。
  236. 高津正道

    ○高津委員 その五面というのは現場の教師から聞いたので、あなたの今の答えは間違いないのですか。社会科の学習指導要領は今まで何回変えたのですか。
  237. 緒方信一

    緒方証人 私、今度が初めての改訂だろうと考えます。二十六年に一回変えただけであります。先ほども申しましたように、大体の傾向を申しますと、昭和二十二年にできて、それから二十六年に改訂を一回しております。このとき改訂をどの程度いたしたか、今申し上げるものを持っておりません。私の就任前でございましたから…。最近といたしましては、大きな改訂はおそらく今度が初めてだろうと考えております。
  238. 高津正道

    ○高津委員 特約供給所は、七カ所も八カ所もあるのは東京都、あとは大阪、兵庫というようなほんの二、三ですよ。それから二つあるのがほんの四つあるだけです。それで、一カ所になっておるから、ひどいことをやる。何というか、独占の妙味を満喫するために勝争なことをやる。サービスは悪いし、そうして、今学図のやり方だけを見ても、非常に横暴なものであって、そういうような実情であるから、それではいけぬというので、いわゆる学生協なるものが生まれたわけです。その生まれた分を、今度は今の教科書会社の大物の利益を擁護するかのようにたたきつけたわけですね。公取までが警告を発するに至つた。それで、今度は警告にかなうように組織がえをして、何ら非の打ちどころのないようにしておる。自信を彼らは持っておるわけです。それを、依然として、まるで会社の代言人かのように、あれがどうもいいものとは思えませんというように言われるが、われわれがちゃんと学生協というものはちつとも違法性はないものだということを立証した場合、やはりああいうような表現で、ああいうような考え方であなたはおられるのかどうか。次回に公取の万に聞きますけれども、その点を私は文部省の意向として確かめておきたい。
  239. 緒方信一

    緒方証人 私、先ほどお答えいたしたのは、学生協の問題自体について、その限りにおいてお答えいたしたわけであります。ほかの関連は何も私はお答えいたしておりません。それが会社一つでなければならぬとか、二つでなければならぬとかいうことは私の方は関係いたしておりません。私の答弁は、——ただ、現在の状況としましては、私先ほど申しましたように、私どもつまびらかにいたしていない点があります。元の学生協が取り扱っておったことが好ましくないというのは、採択する人と供給する人と、人的な連繋があっては公止な採択ができぬだろうという趣旨でございます。それだけの趣旨であります。そこで、文部省としましても指導をいたし、そうして漸次会社組織に変える、あるいは会社も場所によってはほかの会社と統合したというようなところもあるようであります。しかし、その会社に前の学生協関係の人が役員などで全然残っているかいないかという点については確信を持ってお答え申し上げかねますけれども、もしもこれもいけないという御判断であれば、これはさらに検討しなければならぬだろうということを先ほど申し上げたわけであります。
  240. 高津正道

    ○高津委員 きょうはこれでけっこうです。
  241. 篠田弘作

  242. 濱野清吾

    濱野委員 私のは非常に簡単なのです。君が内務官僚であったということはみな知っておるので、弁説の徒にならぬように正直に答えてもらいたい。そこで、正直に言ってくれると思いますが、高津君の質問に関連しますが、学習指導要領は昨年の末までに、三カ年のうちに五回変更を行い、それを発表しておりますが、この事実を知っておりますか。
  243. 緒方信一

    緒方証人 ちょっと御質問の趣旨が私とれかねるのですが、社会科の改訂でございますか。
  244. 濱野清吾

    濱野委員 そうです。
  245. 緒方信一

    緒方証人 社会科の改訂につきましてはこういうことであります。社会科というのは戦後新しく教科としてできました。これは、終戦直後に、修身と日本地理、日本歴史というものが禁止になりました。それから話が出発するわけでございますけれども、これは、いわば、修身あるいは地理、歴史といったような科目を独立した教科で教えるということでは、新しい民主社会に生きる態度や習慣を養う上に適当でないというような観点からいたしまして、社会科という科目が新しく生まれたわけであります。そして、この中で、平和、道徳というもの、あるいは地理教育も歴史教育もやる、それを含めて、——ただその知識を与えるだけでなしに、生活態度をそこで養っていく、こういうわけで社会科というのが生まれたわけであります。しかし、それが出発いたしまして、いろいろとこれに対して批判がございました。特に地理、歴史につきまして、子供たちが系統的な知識をだんだん持たなくなる、あるいは道徳教育におきましても欠けるような点が出てくる、かような批判がありましたために、これを文部省は取り上げまして、昭和二十七年の末に教育課程審議会諮問いたしました。社会科の改善について、特に児童、生徒の道徳あるいは地理、歴史の教育につきまして、遺憾なく育成するにはどうしたらいいかという点について諮問をいたしました。それに対しまして、教育課程審議会は慎重審議を重ねまして、翌年の昭和二十八年の八月に答申が出たわけであります。その精神に基きまして、さらに文部省ではその改訂の仕方、大綱をきめまして、その大綱を、これは内容を申し上げることは省略いたしますけれども、さらに学習指導要領として具体化しなければなりません。その具体化の仕事をそれから始めたわけです。そこで、今お話しのように、さかのぼって三カ年間とおっしゃるのは、今の文部大臣教育課程審議会諮問いたしましてからの年月をさしておることと存じます。そこで、教育課程審議会教材調査研究会に諮問いたしまして、これは学校先生やあるいは学者がそこで具体的に検討いたしまして、少くともまとまったたびごとに改訂の結果を発表したのであります。学習指導要領を四回改訂したということではないのでありまして、その一つの改訂の作業の途中で四回発表した、こういうことでございます。
  246. 濱野清吾

    濱野委員 それはどちらでもよろしい。しかし、その指導要領によって社会科が変ってくることだけは、予見できたでしょう。予見しておるでしょう。——そうすると、今後もその回答のあった線に沿うて再々変える計画ですか。
  247. 緒方信一

    緒方証人 その第五回目の発表と申しますのは、大体最終の段階に達しましたので、第五回目の発表をいたした。ただ、今おっしゃいました中に、予見できるだろうとおっしゃいましたが、その一回ごとに変るわけじゃありません。学者指導要領の改訂というものを五回発表いたしまして、それで最終段階になるわけであります。でありますから、今後さらにそれが変るということはないわけであります。
  248. 濱野清吾

    濱野委員 大体指導要領をおもに取り扱っている役所の方は何とおっしゃいますか。
  249. 緒方信一

    緒方証人 これは、初等科、中等科というのがございまして、そこに専門の係がおります。それから初中局に視学官がおります。こういう者が役所としてはおります。
  250. 濱野清吾

    濱野委員 そのおもなる人の名前一つ……。
  251. 緒方信一

    緒方証人 社会科の改訂につきましては、視学官としまして保柳という視学官が最初やっておりました。それからあとで保柳視学官が転出いたしまして、今主任としましては小沼という人がやっております。
  252. 濱野清吾

    濱野委員 多分小沼さんだろうと思っていましたが、指導要領などというものは、答申のあったのが二十八年の八月だというんですが、本屋のためから言えば、やはり小刻みに刻んで今後十回でも二十回でも発表した方が都合がいいですね。そう思いませんか。
  253. 緒方信一

    緒方証人 それはどういう意味でありますか、なるべく早く趣旨に従うような原稿を書くという意味ではさようだろうと考えます。
  254. 濱野清吾

    濱野委員 原稿を書くこともそれは立場の人によっては都合がよいし、その原稿をもとにして本を作っている方から言えば、これは非常に仕事が多くなって——天下の父兄の負担の犠牲は考えることはありません。本が変って、たくさん出版できるような仕事が多くなればけっこうではないか、こういうふうに考えているのですが、いかがでしょう。
  255. 緒方信一

    緒方証人 これは今の中間発表の話とは少し違うと思いますけれども、もしも指導要領がたびたび改訂をされるということによってたびたび本が変らなければならぬ場合でございますと、これは父兄の負担はふえることになるでございましょうから、これは工合が悪いことだと思います。
  256. 濱野清吾

    濱野委員 工合の悪いということだけは証人は御承知ですか。——そうすると、この指導要領の変更によって新しく作ったことによって、一カ年間に幾ら父兄に犠牲をかけたかということの御計算はございませんか。
  257. 緒方信一

    緒方証人 ちょっと私はその意味をとりかねますけれども、御趣旨を……。
  258. 濱野清吾

    濱野委員 きわめて簡単なんですよ。第五次の発表まで小刻みに、小沼さんや小沼さん以前の役人が指導要領の改訂をしたわけです。そうすれば、その指導要領の線に沿って出版会社はその本を作って販売した。父兄は自分の子供のためにその本を少くとも二冊くらい買わなければならぬ計算になるわけです。そして、小学校の二年から六年まで、中学校の一年から三年まで、全国のこれらの子供たちがみな買うということになりますと、毎年父兄はどれだけの犠牲を払わなければならぬかという計数を証人は考えたことがございますかということです。
  259. 緒方信一

    緒方証人 それは中間発表を四回いたしておりますけれども、四回教科書が変ったというわけじゃありません。ちょっと、私、検定とその時期的な計算は今できませんけれども、最初の発表が二十九年の三月だったと思いますが……。
  260. 濱野清吾

    濱野委員 知らないことは言わぬでいい。
  261. 緒方信一

    緒方証人 その発表されました結果、先ほど申しましたような意味で、現場におきましてもなるべく混乱を避けるようにというような意味で、まとまるごとに発表いたしましたけれども、その教科暫は各段階でそれほど変ったということじゃないと思います。
  262. 濱野清吾

    濱野委員 これはそう変っていないというお答えでございますけれども、私どもは、指導要領が変ってそれが発表されれば、当然にその線に沿うて本を作らなければならぬ義務があるので、すから、これは当然変っていると考えております。意識的に次々に第一次から第五次まで、さらにまた小沼さんがやっておれば何回変更されるかわかりませんが、発表されて参りますと、これは文部省が出版屋に対する出店であって、これは決して父兄のための、あるいは子弟教育のための文部省じゃなくなってしまう。先ほど高津君はうまいことを言った。文部省は乗っ取られると言ったが、私は全くその通りだと思うのです。  そこで、もう一つあなたに聞いておきたいのだが、かつて昨年の末に、社会科の第五次指導要領発表前に学校図書の作られたものと、その作った後の指導要領の発表を見ると、あるいは偶然かどうかわからぬが、神通力があったのかわからぬが、それが全く一致しておった。文部省のある係官もびっくりしているし、業界でも驚いておったというのだが、こういう話は御承知か。
  263. 緒方信一

    緒方証人 今のお話は、学習指導要領と一致しておったのですか、どういう意味でございましょうか。
  264. 濱野清吾

    濱野委員 わかりませんか。もう一度申し上げましょうか。君がもしあの事件にかかわっておったなら非常に神通力があるはずだが、そのような方々がおよそ学校図書の社員のうちにあったかもしらぬと思うのです。昨年末の指導要領の変更発表のあったときに、すでにその前に作られたその本が指導要領の線にぴったり合って、何の狂いもない、そのままどんどん押し出して売り出せるところの本ができ上ったということなんです。さすが貴殿の部下の者も驚いたし、業界の方もそれに驚いて、いかに神通力の大なるかにほんとうにびっくりぎょうてんしたのです。一体こういう事実があるのを貴殿は知っておるかというのです。
  265. 緒方信一

    緒方証人 それは私存じておりません。昨年度作られた教科書がそのあとに発表された指導要領の最終の発表と合っておった、こういうお話であると存じますが、私はそれは調べてみないとわかりません。
  266. 濱野清吾

    濱野委員 十分よく調べて下さいませ。今からでもびっくりするのはおそくはない。  そこで、もう一つお尋ねしておきますが、先ほど委員長の質問の要綱の十のうちの二、三に関連しておりますが、発行者側が主催する研究会もしくは講習会についてということ、発行者が各地に社員、嘱託、参与等の名義で置いてあるといわれる駐在員または連絡員について、このうちに文部省の役人が出て非常に業者に有利に活動しておるということを知っておるかという質問が先ほど委員長によってされた。そのときに、証人は、私の知る限りにおいては知らないといううまい答弁をしておった。実は私どもも知っておる。九州地区において非常に文部省の役人が業者のために協力したという世評が高いのでありますが、ほんとうにあなたは知らないのですか。
  267. 緒方信一

    緒方証人 協力したという意味が、先ほどお話しのは、教科書会社の研究会、講習会等に文部省の役人が出て、何か指導を手伝った、こういう意味だろうと私はとったのでありますが、そういう御趣旨なら、私は存じません。
  268. 濱野清吾

    濱野委員 それでは、もう一つ伺います。証人としては非常にやっかいな証人で、知らぬ存ぜぬの一点張りですが、先ほど高津君の言ったように、われわれは常識的に聞いているのですから、知らなければ知らないでよい。大体、先ほどの委員長の質問の中に、福島県下では展示会が行われないのに、すでに採択はずいぶん多くきまってしまった、こうした事実もございますね。これはあなた御承知ですか。
  269. 緒方信一

    緒方証人 これは、午前中もお答えしましたが、その具体的事実を知らないのでございます。もしそれが——どうも私もよくわかりかねるのでありますが、展示会前に採択をすることは、これは展示会の制度を逸脱していると思います。これはいけないと思います。
  270. 濱野清吾

    濱野委員 そこで、私はもう一つ聞いておきたいのですが、そういうことがよくあるのです。これはお調べにならなければいかぬと思うのでありますが、そういうことが白昼制度を破って堂々と行われておることと、展示会は十日間では少いとか、あるいはもっと常設的に行うべきだったという議論と対比して、あなたはどうお考えになりますか。
  271. 緒方信一

    緒方証人 今のことの関連は、展示会前に採択が行われるということは、展本会に出す前に教科書がどこかの現場に送られて、それを見てやるということであると考えますけれども、今の採択の制度から申しますと、初めに発行指示を文部省がいたしまして、そのあとで文部省教科書目録を作りまして、これを教育委員会学校にみんな送るわけです。それと一方並行いたしまして展示会が行われる。教科書の目録を見、それから現物を展示会で見て、そうして適当なものを教科書として採択する、これが現行制度の根幹であります。従いまして、今のようにそれを全然無視されてその採択がきまるということでありますと、あるいは、想像いたしますと、新しく検定を受けた教科書は全然問題にしないで、昨年までのものを対象にしてそれを選んだということが考えられます。かようなことは、一面、展示会との関係から申しますと、展示会の期間が短かいものですから、もう少しこれに十分の余裕を与えれは、そこで十分な選定ができるけれども、そうじゃないから、見ただけで採択するのだ、そういうことであるとすると、先ほども御意見が出ましたようなことにも結びつくかと考えます。
  272. 濱野清吾

    濱野委員 今度は君の証言がわからなくなっちゃったのだが、献本などというものはどういうときに行われるか、御承知ですか。
  273. 緒方信一

    緒方証人 どういうときと申しますと……。
  274. 濱野清吾

    濱野委員 どういうときに何のためにそういうものを出しているか。
  275. 緒方信一

    緒方証人 それはやはり教科書内容をよく知ってもらうために、学校教科書会社一つの宣伝の方法として送るものと考えます。
  276. 濱野清吾

    濱野委員 展示会前に相当部数献本をされることがあるそうでありますが、福島の事件とあわせ考えて、そういうことを想起することはできませんか。
  277. 緒方信一

    緒方証人 それは、あるいはそういうことが関連があるかもわからないと思います。献本がいつごろの時期に行われるかということは、私も的確には存じませんけれども、早くできた会社等では、あるいは早く送られるということもあり得る、こう考えます。
  278. 濱野清吾

    濱野委員 私は、この問題についてはもっと的確な資料を持っているのでありますが、証人にただ一言申し上げておきます。証人は、われわれがここで文部省を裸にしようというものに対し、文部省のある役人たちと営利会社とが実にうまい交際をしていらっしゃることをことさらに隠蔽しておるような証言をされておるが、もしこれがはっきりした証拠が出て、まことにけしからぬという委員会意見がまとまりましたならば、あなたは責任をとりますか。知らぬ存ぜぬといって一切逃げておりますけれども、それでいいのですか。
  279. 緒方信一

    緒方証人 私は私の関係いたします限りのことを申し上げておりますけれども、さようなことはないと考えております。私の関係いたしております以外のことは、私はお答えできません。
  280. 濱野清吾

    濱野委員 私はこれで終ります。いずれまた証拠を提出いたします。
  281. 篠田弘作

    篠田委員長 大西正道君。
  282. 大西正道

    ○大西委員 緒方証人がこういう行監の席へ出られて教育の中心課題である教科書の問題を取り扱う場面において証人に立たれるというのは、私は国の教育の上から申しましてまことにこれは遺憾だと思うのです。この取り上げられるべき問題は当然文部省の行政面においてつとに解決しようと思えばできた問題もあろうかと思うのです。これが行政の警察的部門である行監において取り上げられ、これはもうおそらく新聞にも大きく報道されて、教育の上に大きな影響を及ぼすものだ、こういうことを初めに考えるのでありますが、この点、緒方証人に対しまして、文部省の初中局長としての心境を一応お聞きしたいと思っております。
  283. 緒方信一

    緒方証人 今お話しになりました御意見に対しましては、御同感申し上げる点もございます。文部省として、私どもは厳正仕事を取り運んでおるっもりであります。けれども、ただ力及ばずしていろいろな事件が起っておることは事実でございまして、この点につきましては、私どもまことに申しわけなく思っております。しかし、これは、私どものみならず、関係者全部が協力して、この教科書につきましてよりよくする努力をこういう機会に強くすることは、はなはだけっこうなことであろうと考えます。
  284. 大西正道

    ○大西委員 あしたからですか、全国で展示会が開かれて、これから続々と採択されるわけであります。文部省検定にパスしたものに対しては公平な立場で採択されるということを期待されていると思う。そのための努力であろうと思う。私は、本委員会におきましては行政監察の立場から悪いものはびしびしここで追及しなければならぬと思うのですが、こういう重大なときに特に証人として呼ばれる方々は有力な出版会社であり、社としては生命をかけた一つの段階にあるわけです。こういうふうな段階におきまして、私が前に申し上げました、文部省として行政的な面から当然打開すべきものを、私から言わせれば文部省がそれを怠ったがゆえにこういう立場において警察的な存監の機関において取り上げられるということについて、文部省としては、採択の公平の上から、特定の出版会社にあるいは利益を、あるいは不利益を与えるということについてどのようにお考えになるか、これは一つの責任ある立場からお答え願いたいと思います。
  285. 緒方信一

    緒方証人 特定会社のことが論議せられまして、それがもしも採択に関係があるということになると、今お話しの、採択の公正といいますか、それに関係を持つことになるかと存じます。ただ採択の公正ということは教育に当る人々、あるいは教育委員会がもっぱら教育的観点から選ぶということであろうと考えますので、その関係者が信念を持って選ぶということが必要であると考えるわけであります。ちょうどこの機会にこういう問題が取り上げられましたことは、若干の関係はある、このように考えます。この際、先ほど申し上げましたように国民的な関心もこの教科書制度のあり方につきましてさらに改善の方、向に気持が向うことは、私はけっこうなことだと考えます。
  286. 大西正道

    ○大西委員 こういうふうないろいろな問題が起きてきた責任の大半は文部省教科書行政に私はあると思うのです。この点について局長はどのようにお考えですか。
  287. 緒方信一

    緒方証人 教科書検定、発行、供給、採択というこの一連の現行の制度につきましては、私どもといたしましては厳正にやっているつもりでございますけれども、しかしながら、その行われます過程におきましていろいろな問題があることは事実であると考えます。これが、先ほどどなたかの御意見にありましたように、果して制度からくる欠陥であるか、あるいはまたやり方の問題にあるのか、この点は相当検討を要すると考えますけれども、事柄によりましては、私どもの力及ばざる点もあるかと考えます。
  288. 大西正道

    ○大西委員 責任を認めながら、それは制度上の問題か行政的な問題かというようなことでぼやかしているということになるのですが、制度上の問題もありましょう。それはそれとして検討いたしますが、私が今あなたにお聞きしたいのは、文部行政の当然の一つの欠陥としてこういう情勢が出ていないかということです。この点をこれまで同僚議員がいろいろ話をしておりますが、あなたの証言ではほとんど、知らぬ、結論いたしますと、大した手落ちはなさそうだ、こういうふうに私は聞くのでありますけれども、たとえば、今問題になっている某会社の重役が文部省視学官になっている、この問題につきましても、社会科の指導要領が改訂されるごとに教科書は改訂されなければならぬのでありますから、やはりこういう人がいるということは、あなたが公証であろうと一言われましても、これはどうしても関係があると言えると私は思う。こういうことに対する文部省の努力は認められない。また、私は検定制度が初めできたときから長らくその検定委員をやっておりましたから、この点についてはあなたより詳しいのでありますけれども、昨年、検定に出した教科書が不合格になった、ところが、それと同じものを年度を改めて出したところがパスしたという事実を私ははっきり握っているのであります。これをあなたは御存じであるか御存じでないか、おそらく知らぬと言われるであろうと思いますが、これは私証拠を出してもよろしい。検定の面におきましても、私は内容のことをよく知っておりますが、これは悪意からではない。しかし、こういうことを見ると、確かに十分でない点があるのです。また、あなたは制度の面がどうかと言われるけれども、この採択の面につきましても、今いろいろな醜聞が飛んでおりまして、これをかぎつけて検察庁が取り調べをしたという事実がかなりあるのです。これは御存じでしょう。こういうものに対して、あなたはどういうふうな手を打たれたか。公取の勧告に対しましては、通牒を流したということが言われております。しかし、それ以後の努力が何ら見られない。また、今問題になっております教科書のばらばら事件、これなんかも、果して過失と認めていいものか。私はもっと大きなところに問題があるのではないかと思うのであります。こういうところに対しても、やはり文部省の業者に対しての監督、地方に対しての指導という立場が十分でない。それから、今申しました文部省内部の機構の問題などは直接文部省の責任です。こういうところについて、あなた方文部省の責任というものを大きく感じていただかなければならぬと思うのですが、いかがすか。
  289. 緒方信一

    緒方証人 ただいま御指摘のような事件が確かにあることも知っております。業者に対する監督あるいは地方に対する指導等につきまして、そういうことを起しましたことにつきましては十分責任を痛感いたします。今後十分検討いたしたいと存じます。
  290. 大西正道

    ○大西委員 それでは一つ具体的に突っ込んで申します。学図のばらばら事件でありますが、これは単なる一時の過失としてあなたの方は認めているのかどうか。私の聞くところによると、この学図は外国から十億にわたるところの資本を借り入れてあのりっぱな施設を作ったそうであります。ところが、今の発行数では維持ができないいうことを私は聞いておるのであります。しかも、この十億の金を借りるのに、時の文部省の首脳部あるいは時の与党、政府の首脳部がこの資金のあっせん等をやったということもあるのであります。もしそういうことであって、そういう会社の維持のためにこういうふうないろいろな売り込みということが熾烈をきわめてくるということになると、単なるばらばら事件でもって、これを取りかえさせるということではだめで、教科書事件の根源というものはそういう経済的な大きな会社の生きるか死ぬかという問題にかかってきていると思うのですが、そういうところについてはどのように考えておられるのでありますか。
  291. 緒方信一

    緒方証人 各個の教科書会社の経営の内容につきましては、またおしかりを受けるかもしれませんが、よく存じません。また、あのいわゆる、はらばら事件でございますが、これはまことに遺憾なことでありまして、私ども今後ともさらに先ほど申しましたように調査をいたしたいと考えております。十分監督を強化していきたいと考えております。
  292. 大西正道

    ○大西委員 こういう行政的な面はそれにとどめておきますけれども、制度上の問題ということについていろいろあなたの意見がありましたけれども、私から言わせれば、この教科書行政に対する根本の法規というものは、今あなたが言ったように、一つ学校教育法、片一方は地方教育委員会法または文部省設置法、しかもそれが臨時措置法という名前をもってばらばらにきまっておる。だから、施行規則というものも全く統一がないわけです。私は、今回のようなこういうふうな教科書の問題が起ってくるその一つの原因は、大きくはこういう一つ制度上の問題にあると思うのです。これはあなたの見解と一致しているのだけれども、だからといって、あなたは言い抜けにはならぬと思うのであります。そこで、こういうふうな問題を契機として、今ばらばらになっておるところの教科書に対する各種の法規を一本にまとめて明確にして、そして採択の面におけるところの売り込み宣伝によっていろいろのスキャンダルが起きないように、あるいはまた検定の不明朗を除くように、そういう確固とした単独立法をやって、そうして教科書行政というものをはっきりとしたよりどころあらしめるということが、私は当無考えなければならぬ一つのことだと思うのでありますが、この点についていかがですか。
  293. 緒方信一

    緒方証人 具体的にお示しのような単独立法をするということは、私は今日今の立場で申し上げるのはいかがかと存じます。しかし、いろいろ御意見のございましたところは私も同感の点がございます。ただいま教科書制度につきまして私どもといたしましても十分検討を進めたいと存じておりますので、今後、よりよき制度を作り出しますように努力いたしたいと存じます。
  294. 大西正道

    ○大西委員 まるで政府の答弁みたいな答弁ですが、そうではなしに、あなたの考えをもっと素直に言ってもらいたいと思っております。  それでは、もう一つ採択の問題で聞きますけれども、この間、これはあなた個人ではありませんが、この問題が行監で取り上げられるということになりますと、文部大臣は急遽つけ焼き刃の教科書政策を発表したのでありますが、あなたは当然将来における教科書行政の責任者でありますから、この点について将来の採択の問題と関連して私はお聞きするのでありますが、その中に、一府県一種類というようなことを言っておるのであります。前々からいろいろ考えていたようなことだというように言っておりますけれども、もう通人から甘わせますれば、あれは教科書問題が行監で取り上げられたのであわてて作ったところの文部省の対策だと言っておるのであります。こういうことをやることにおいて、あなたは今問題になっておるところのスキャンダルがなくなると思いますか、どうですか。
  295. 緒方信一

    緒方証人 今後どう検討していくかということは、私きょう政府委員の立場ではございませんので、先ほどもああいう御返事をいたしたわけでございますが、その点は一つ御了承いただきたいと思います。ただ、一種類にしたらスキャンダルがなくなるかという点でございますが、これはまた別な観点から言われておることではなかろうかと思います。教科書の種類が多いとかあるいは毎年変っては困るとかいったような要請があることは、これまた事実でございまして、その点の問題として、一種類にするとかしないとか、採択するとかいうことがまあ問題になるだろうと思いますが、私、繰り返して申し上げますけれども、文部大臣の発表されたその今後の対策につきましては、ここでお答えする立場ではないと思います。
  296. 大西正道

    ○大西委員 それでは、あなたに参考のために申し上げておきますが、明治三十五年だったと私は思うのですが、ちょうどこの教科書検定制度がしかれておりまして、採択の面においては、各通府県は、師範学校長とかあるいは知事だとかその他の人をもって構成する府県一本の採択委員会を作ってやったことがある。そのときに御承知の教科書の一大疑獄が起きたわけです。ですから、このような教科書の疑獄をなくする、予防することの建前から、こういうことを軽々にやるのは私はよほど考えてもらわなければならぬと思う、こういうことをこの際につけ加えておきます。  もう一つ、この際にあなたにお聞きしておきたいことは、文部省とある特定出版業者との間の人事の交流の問題については、あなたは、これは問題ない、こういうふうに言っておられる。ところが、供給面における販売供給業者に対し学生協が取り扱ってるのに対して、公取委からああいうふうなものが出ておりますが、そういう勧告を守って、これが教科書販売供給の株式会社としてりっぱに脱皮更生しておるものがある。こういうものに対しても、あなたの答弁を聞いておると、何か供給業者と採択業者との間に関係があって、これはおもしろくない、ここにスキャンダルの根源があるようなことを言っておられるけれども、文部省はこういうふうな供給業の株式会社の資本構成に対してまで何か特別な規制を考えておられるのかどうか。
  297. 緒方信一

    緒方証人 先ほど私が申し上げましたのは、学生協時代からの経緯についての御質問がありましたから、それに対する見解を申し上げましたが、すっかり換骨奪胎をしてその学生協当時の色合いがなくなったということについて私申し上げたわけでありますが、ただ今私実態をつまびらかにしていない点がありますので、もしそういうものが残っておるとすれば、やはり再検討をする必要があるのではないかということをつけ加えて申し上げたわけであります。
  298. 大西正道

    ○大西委員 そこなんです。初中局長のあなたが供給業者の資本構成の内容にまで立ち入ってそういうことを言う権限がありますか。株主がどういう人であるということを洗って、それをあなた方がいいとか悪いとか言われる根拠はどこにありますか。
  299. 緒方信一

    緒方証人 私は、意見を求められましたから、供給と採択との間は完全に分離しなければならないということを申し上げておるわけでありまして、具体的にどこがどうだということを言っておるわけではありません。
  300. 大西正道

    ○大西委員 こういうふうな問題が取り上げられることにおいて、検定制度のよさがほんとうに認識されずに、これを機会に定価を安くする、あるいはまたスキャンダルをなくするというその事柄のために、せっかくのいい新しい制度である検定制度というものをくつがえして、そうして、昔の国定に持っていこうとするような一つの動きが出てくるということを私は警戒するのです。この点について、あなたはそういう懸念を教科書行政の中枢におられて感じませんか。少くともそういう意図が、全部ではないが、ある一部の者にあるということをお考えになりませんか。
  301. 緒方信一

    緒方証人 私どもといたしまして、この制度をどういうふうに持っていくか、改善するといたしましても、どういう改善をはかるかということは、これは、ただいま検討いたしておりますので、私は今日ここで申し上げることはできないことを繰り返し申し上げておく次第であります。ただ、きょう私が申し上げておるのは、現行の制度の上に立って行われておりますいろいろな事実、さらにそれにつけ加えて若干の意見を申し上げておりますので、それを根本的に変革するとか変革しないとか、あるいは今後どう持っていくか、その点につきましては、きょう申し上げる立場ではないのであります。
  302. 大西正道

    ○大西委員 これは小さなことを聞きますが、あなたは、今の教科書が多過ぎると思いますか、あるいはまた値段が高過ぎると思いますか。これは一般が高過ぎるということを言っておるということをあなたからお聞きしようとするわけではありません。あらゆる物価の変動その他を勘案して、これが多過ぎると思われますか、高過ぎると思われますか。あるいはまた、教科書が多過ぎる多過ぎると言われるけれども、諸外国の教科書制度をどのようにお考えになりますか。その過程においてこれくらいの教科書が出たということに対して、これは多過ぎるというふうにお考えになりますか、どうですか。
  303. 緒方信一

    緒方証人 まず価格の問題でありますが、これは、大西委員おいでにならなかったかと思いますが、私、先ほど申し上げました。それで、ほかの諸物価の上昇指数の関連だけから申しますと、必ずしも高くなっておらぬと思います。これは計数的には割り出せると思いますが、しかし、教科書というものは学校教育において欠くべからざるものでありますので、特に義務教育においてどうしても買わなければならぬものでありますので、少しでも安くするという努力は継続しなければならぬだろうということは申し上げられるかと思います。  それから、数の問題でありますが、これもやはり考え方の問題でありまして、現在のような立場にたっておりまする制度建前から申しますと、こういう状況に相なるであろう。ただ、しかし、なお工夫をすればもう少し少くすることができる方法があるいはあるかもしれぬということは考えます。
  304. 篠田弘作

    篠田委員長 西村力弥君。
  305. 西村力弥

    ○西村(力)委員 局長は、教科書の値段は一般物価の指数に比べて安いと言われておる。あるいはその通りであると私は思うのですが、しからば、なぜに父兄たちがそうであってもなおかつ高い高い、こう言うておるのか。その点についてはなぜそのような父兄の声が盛んに出てくるのかということを、あなたはどう考えるか。
  306. 緒方信一

    緒方証人 これは繰り返して申し上げておりますが、教科書というものが、その物価指数等は別にいたしましても、各家庭におきまして必ずこれは買わなければならぬものでありますので、その負担にたえないという声はやはり出てくるのじゃないかと考えます。
  307. 西村力弥

    ○西村(力)委員 結局現在のわが国民の生活程度が非常に低いということを認められておることだろうと思うのでございますが、そういう場合に、先ほどからいろいろ問題がありましたが、指導要領を盛んに改訂せられる、こういうことは相当慎重を要することであると思います。しかも、その指導要領が常に試案という形で出てくる。試案という形で出てきておりながら、それが検定基準となってやはり編集者出版業者を拘束する。こういうことです。これは文部省としては少し身勝手ではないかと私は思う。試案として出しておるもの、これをもって検定基準として、それを切ったり足したりするということは、あまり文部省としては身勝手が過ぎるではないか、こう思う。その関係についての御所見を伺いたい。
  308. 緒方信一

    緒方証人 私ども、決して指導要領をいたずらに回数を多く改訂しようという考えは全然持ちません。ただ、しかし、先ほども申し上げましたように、終戦直後作られました指導要領が今日の段階において検討をすべきものが相当あることは事実であります。従いまして、これは漸次私ども研究を進めていきたいと考えております。ただ、そのために教科書が変りまして国民負担がそれだけふえるということは、これはまことに申しわけないことでありますけれども、しかし、また一方、大切な教育内容でありますので、独立いたしました今日におきまして、日本がやはり従来の指導要領というものを改訂していって学力の水準を高めるといったことにつきましては、努力をしていかなければならぬと存じます。
  309. 西村力弥

    ○西村(力)委員 試案として出しておいて、なぜそれを基準にするかという問題です。試案として出しておるならば、本番ができるまではそれは基準とはせない、こういう工合にどうしてできないのか。それは、もちろん、そのたびごとに、少しでも研究が進んでこれをよしとするならば、ただちに教科書を改訂なさることもいいとは思うが、そう簡単ではない。そのたびごとにやはり教科書が変るということになれば、父兄の負担がよけいになる。ただでさえも高い高いと言う父兄が、ますます負担にたえなくなる。だから、試案として出しておる過程においては決してこれによって検定を左右することはしないということを注意書きとしてうたうということを、文部省の態度、立場としてどうしてとられないか。
  310. 緒方信一

    緒方証人 これは私の意見でありますけれども、今後におきましての改訂につきましては、試案という形ではなくて、決定的なものとして出していきたいと考えております。
  311. 西村力弥

    ○西村(力)委員 この指導要領の作成の委員文部省の役人が加わるというのはどういう考え方か。どういう法的な基礎に基いて加わるのか。それをよいと思うか悪いと思うか。そういうことについての見解を伺いたい。
  312. 緒方信一

    緒方証人 これは法律にきまっておるのでありますが、ちょっと法文をお示しするのができませんので、大ざつぱに申し上げますけれども、教科内容というものは、これは文部大臣がきめることであります。それで、その教科内容は学習指導要領の基準によるという法律の規定があります。従いまして、これは文部省できめます。
  313. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そういうことになっておりますけれども、教科内容は大臣がきめるにしたって、それの基く指導要領というものは、これは相当幅の広いものにならなければならぬと思う。そこに文部省の係官が加わって実際権限をとるということは、これはもう教科書出版の当初から、文部省の意思というもの、考え方というものが相当強くこれに入ってくることになるのではないか、こういう工合に考えられる。そういう点については、今後われわれも研究いたしたいと思いますので、答弁を求めませんが、私の聞いておるところでは、そういう工合にして指導要領を作られる過程において、今年の二月に安藤文部大臣がその指導要領に個人的な圧力を加えた、こういうようなことを聞いておる。たとえば、天皇の問題について、あるいは日の丸の問題について、文部大臣安藤氏は、その点はこうすべきであると強く圧力をかけたということを聞いておる。そういうようなことに対して、証人はそれとなく聞いておるかどうか。
  314. 緒方信一

    緒方証人 私は担当の局長として圧力をかけられてはおりません。
  315. 西村力弥

    ○西村(力)委員 次に、調査員の問題でございますが、先ほど、当初の委員長の質問に答えて、調査員を秘匿しておくというのは非常に理由のあることで、私どももよりよいことであると思う、こういうような御答弁でありましたが、一昨日でしたかの新聞を見ますると、文部大臣の談話として、公開にする方がよろしい、こういうことを大臣が言ったという、しかもこのことについては文部省の係官が指示を与えておる、こういうような記事がございましたが、文部省のあなた方の立場としては、やはり公開を妥当とするという、そういう意向になりつつあるのかどうか。あくまでも非公開というのがよろしい、かように考えておられるかどうか。
  316. 緒方信一

    緒方証人 制度全体に対しまして検討を必要とする段階になっておることは事実でありまして、私ども検討を進めるわけでありますが、はなはだ申しわけございませんけれども、今日私の立場として、こういうふうにする方がよいという制度論をここで申し上げることはごかんべんを願います。
  317. 西村力弥

    ○西村(力)委員 調査員を秘匿しておくのは、一見したところ大へん公正に行われるように見えますけれども、しかし、事実は、先ほど来各同僚委員が述べられました通り、このことによってむしろ極端な陰の取引が出て、思わしくないことがあるのであります。意見を申し述べたくないと仰せられるのですが、やはり白日のもとにさらして、一般人あるいは教師のそういう批判の中に調査員の良識を置いた方が一番いいではないか、こういう工合に考えられるのであります。非公開にすることによってこういうような問題が出ていると思います。  調査員の問題について、日本読書新聞の四月二十五日号にいろいろ載っておりますが、これを局長はごらんになられましたか。
  318. 緒方信一

    緒方証人 読んでおりません。
  319. 西村力弥

    ○西村(力)委員 読んでいなければ、しょうがない。(笑声)この新聞には、調査員が非常に能率が低いということ、それから調査員調査についていろいろとどこからか圧力のようなものが加わってくる、そういうふうなことがたくさん実例として載っているのです。これは読んでおられないならば直ちにごらんになって、こういうことが絶対にないようにしてもらいたいと思うのです。例を申し上げると大へん長くなりますけれども、これを見てみますと、調査員採点方法というものが、たとえば、「山びこ学校」のものが一ぺん採択されたが、今度は、暗過ぎる、「山芋」のものも、これもいけないとか、あるいは「武士の世の中」で、従来封建制下において苦しんでおった農足が自分の生活を守るために農民一揆を起した、これは支配者に対する抵抗を表わすことであるからいかぬ、こういうようなことで調査員がこれをだめにしている。こういうようなことはたくさん実例として載っているのです。この点から言いまして、私たちは、やはり調査員を秘密にしておくということはまことにおもしろくない、かように考えるわけでございます。この点については、今度田中文部次官も出て参りますので、その際までいろいろ文部省内において権討をしておいてもらいたいと思う。局長ももちろんこの新聞をお読みになって、一体こういうことがあるかどうか、こういうことも検討してもらいたいと思うのでございます。  次に、先ほど、見本と実際に配給になる本が違うというばらばらの問題がありましたが、そのほか、文部省が、版組みをさせる場合において調査員の意向を押しつけて、それを改訂しない以上はどうしても認可をしない、こういうわけで、見本を出してから実際に渡ったものが内容が違う、こういうようなこともあると聞いております。こういうことは御存じありませんか。
  320. 緒方信一

    緒方証人 修正意見を押しつけてというお話でございますが、調査員調査をいたしました場合に、修正意見が出てくることがあります。それを発行者と申しますか編著者に示すことはあります。しかし、それを聞かなければあるいは合格にならぬかもしれません。意見が違うという場合も起るかと思いますけれども、それは、何と申しますか、調査を懇切にやるという意味におきまして、いろいろなミスなんかがある場合もあると考えます。修正意見を示すことがあると思いますけれども、ただ押しつけるという形ではないと思います。
  321. 西村力弥

    ○西村(力)委員 見本と実際と違ういうことになりましたが、私は委員長にこの際尋ねたいのでございます。見本の本と配給の本の紙質、これを公式の鑑定人を依頼して各会社の全部について判定を公式にとる、こういうような工合に一応やっていただきたいと思うのですが、委員長の見解はどうですか。
  322. 篠田弘作

    篠田委員長 それは、委員長の問題ではなくて、理事会に一応お諮りいたしまして、理事会の賛成を得ればその下調査をすることはできまずから、一応理事会に諮ることにいたしたいと思います。
  323. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それでは、さようお取り計らいをお願いしておきます。
  324. 篠田弘作

    篠田委員長 西村君に申し上げますが、持ち時間が少し経過しておりますから……。
  325. 西村力弥

    ○西村(力)委員 もう一つだけちょっとお聞きしたいのですが、文部省の行政上の怠慢というか、先ほどから盛んに追及がありましたが、怠慢であるかどうかということを、私は一つの答弁によってはかってみたい。第一番は、常設の展示室というか機関というか、そういうものを一体全国に何カ所作れば妥当であると考えておられるか、それに対する費用はどのくらいかかるか。やる意思があるということは先ほどから何べんも言っている。やる意思があったら、そのくらいのことは研究が積まれているだろうと思う。それとともにお聞きしたいのは、あの展示会というのは、国がああいうものをやらせている。あの費用一切は国家で持つべきが当然である。普通の商品見本市みたいなものとは違う立場で考えていかなければならぬ。商品見本市は、各個人の業者が自分の商品を売らんとするプライベートな立場でやるのでありますが、あの展示会はそういう性質のものでない。だから、政府で費用一切を見なければならぬと私は思う。その常設のものを何ぼ置けばいいか、何ぼかかるか。
  326. 篠田弘作

    篠田委員長 西村君にお尋ねいたしますが、研究を出せというのですか、答弁をしろというのですか。
  327. 西村力弥

    ○西村(力)委員 答弁しろというのです。
  328. 緒方信一

    緒方証人 常設展示場を何カ所置けば十分であるかというお話でありますが、現在展示場が一千八百幾らでございますかございます。これを全部常設展示場にしなければならぬというふうには考えておりません。各地区ごとに相当数あれはいいと考えております。これを今幾つで幾らかかるかということを、言えということでありますが、私はここに準備がございませんので、今日は申し述べられません。
  329. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そういう準備がないだろうと思って質問しているのです。それでは困ると思う。各学校に各会社が、これは生き死にの問題ですから、一生懸命売り込みに見本をどんどん送って、そのロスやら、あるいは経費がかかるというならば、常時研究できるようにして、ほんとうに教師の批判の的にさらしておいて、その批判がほんとうの良質の教科書を選んでいく、こうしなければ決して教科書はよくならないと思う。そこのところをねらいをつけて、あなたは今度やろうと考えていますという答弁であったから、そのくらいのことはもうできていなければならぬと思っている。ところが、何らそこには研究ができていないというならば、やはりこの一事をもってしても、なかなかもって教科書制度に対するほんとうの熱意と努力はあまりなされてなかったということを言わざるを得ないわけなんです。どうぞ、その点は早急に御研究願って、今度田中次官が来るときにあなたの案を御提出願いたい。調査員というものは、いろいろなことを考えて、現実を見つめるよりも、現実はバラ色の夢の国であるという方向に一生懸命やる。それを文部省のあなた方がいろいろおしりをひねってやらせておる。そういうことがちゃんと載っておる。そういうことに対する文部省の反論、これを一つと、それから、今の教科書常設展示室というものに対するプラン、これをぜひ今度次官出席のときまでにやっていただきたい。  以上をもって終ります。
  330. 篠田弘作

    篠田委員長 春日一幸君。
  331. 春日一幸

    ○春日委員 私は小沼視学官とこの学校図書株式会社との関係についてお伺いをしたいと思います。小沼視学官はこの学校図書株式会社へ入社される前には文部省視学官としてどういう事柄を所管されておりましたか。それが一つ。それから、文部省へ復帰される前の学校図書株式会社における地位、それはどういうようなものであったか。それから、現在あなたのもとにおける視学官としての所管事項は何であるか。この三点をお伺いします。
  332. 緒方信一

    緒方証人 その会社においてどういう地位であったかということを除きましては、午前中にお答えしました。さらにお尋ねでありますから、繰り返して申し上げます。文部省には昭和五年に入っております。昭和二十一年の三月に依願退官しました。その前の仕事をずっと申しますと、弘前高等学校教授をやったり、あるいは図書監修官をやったり、教学局の教学官をやったり、教学局の思想課長をやったり、さらに視学官をやったり、それから官房総務、主事をやっておりました。現在は初中局の視学官であります。
  333. 春日一幸

    ○春日委員 視学官としての所管事項は何ですか。
  334. 緒方信一

    緒方証人 視学官というのは教科内容につきましての仕事をやるわけであります。  それから、会社における立場は私は存じません。
  335. 春日一幸

    ○春日委員 その履歴書なり何らかの資料に、学校図書株式会社において占めておられた地位というものは私は当然書いてあると思うが、どういう地位におられたか、それをお答え願いたい。
  336. 緒方信一

    緒方証人 失礼しました。ここに書いたものがございました。これは書いたものを申し上げることでございまして、実際は存じませんけれども、最初入りましたときは社員であります。二十一年三月に図書印刷株式会社の社員、二十三年五月に学校図書株式会社ができて取締役になった、こういうことであります。
  337. 春日一幸

    ○春日委員 そこで、伺いたいのは、文部省をやめられて、すぐ図書印刷株式会社に入られた、それから今度は学校図書株式会社の軍役になられて、それからまたもや元のいすに復帰されておる、こういう経過を経ておられると思うのでありますが、この一連の出処進退を通じて考えられることは、初め文部省におって、それから印刷会社に行ったり、また文部省に帰ったりしておられるわけでありますが、一体そういうように文部官僚はやめたり入ったり、経歴というものをそんなに手軽に便利にできるものですか。
  338. 緒方信一

    緒方証人 終戦後二十一年にやめまして、就職のあっせんをしてもらって会社に入った、こういうことになっております。二十一年にやめまして、二十三年から学校図書株式会社に入りまして、二十七年の初めころから——これは私本人から聞いたわけでございますが、病気のために欠勤をいたしておりました。四月ごろ辞意を表明して、結局二十七年十二月にやめた、こういう経歴であります。それで、さらに文部省に復帰をしたということであります。終戦後にやめたというのは、追放じゃありませんが、自分からやめております。民間に参りまして、そして、さらにまた復帰をした、こういう形であります。
  339. 春日一幸

    ○春日委員 数年前にも、行政監察でありましたか、大蔵委員会でありましたか、こということが問題になって糾弾されたことがあります。それは、大蔵省の銀行局において、東京海上火災保険株式会社の社員が大蔵省の保険課長になって、その保険課長の立場において各種の立法を行なってきている、たとえば、保険料率算定に関する法律だとか、保険採集取締りに関する法律だとか、そういうような保険会社のためになる法律を作って、その事なるや、また再び東京海上の会社へ帰っておる、こういう事柄が指摘されて、これは営利会社と官僚との結託であるということで、大へん大きな政治問題となって論難されたことがありましたが、今回の小沼君の出処進退から受ける感じは、まさしくこれに匹敵するものがあるような感じを受けるのであります。少くとも営利会社の重役が、その会社を格別の事由もなくしてやめて、今あなたのおっしゃったように、七月にからだが悪いということならば、当然文部省のそんな視学官なんかには健康上の理由でもって就職できるはずはない。それは何らかの作為がそこにありはしないかということを私どもは心配せざるを得ない。——行政監察的感度で判断すると。七月ごろに病気でどうも任にたえぬということでその会社へ辞表を出しておいて、そんな健康状態の者が文部省視学官になれるはずはないわけなんです。営利会社の重役が、そういう会社を監督すべき役所、その重要な席を占めるということは、文部官僚と出版会社との間において、密約というか、何かそこに含んだものがありはしないかということを非常に深く印象を受けるのであります。そこで、現在この視学官が担当しておる事柄の中に、小、中学校における教科書の問題、たとうえば検定その他の事柄についての問題は含まれておりますかどうか、この際伺っておきたい。
  340. 緒方信一

    緒方証人 先ほどちょっと申し落しましたので、つけ加えて申しておきますが、二十七年の十二月にやめて、文部省へ入りましたのは二十八年の一月であります。病気がどうとかおっしゃいましたから、その事実を申し上げておきます。先ほど申しましたのは、病気は二十七年の初めごろということです。
  341. 春日一幸

    ○春日委員 休んでいたのですか。
  342. 緒方信一

    緒方証人 それは私は存じませんが、そういう話を聞きました。それから、教科書検定や発行の仕事には直接の関係はありません。
  343. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、どういうつながりを持っておられますか。この際、つながりのある面をお述べ願います。
  344. 緒方信一

    緒方証人 先ほど申し上げましたように、教科内容の研究あるいは学習指導要領の編成等でありますから、その関連においては教科書にもつながって参りますけれども、具体的に教科書の発行あるいは検定ということとにはっながりはないと思います。
  345. 春日一幸

    ○春日委員 直接のつながりはないけれども、間接のつながりはあるというところに、私どもは重大な疑惑を抱かざるを得ないことを申し上げておきます。  そこで、伺いますが、調査員の名簿、千五百人あると言われましたが、こういうものは秘密に保存されておるということでありますが、どういう方法でこの秘密か保たれておりますか、これをお伺いいたします。たとえば、その名簿のプリントしたものがあるかどうか、その名博はだれが管理をしているか。
  346. 緒方信一

    緒方証人 名簿は、最初選任の場合に成規の方法で決裁を受けます。その管理は教科書課で行なっております。私はプリントはあるかないか知りませんけれども、おそらく、そういう秘密にしておるものでございますすから、厳密に保管をしておることと思います。
  347. 春日一幸

    ○春日委員 それはだれが保管しておりますか。その決裁をするのはだれか。決裁においても、プリントした資料によって、関係者たちはだれが調査員になるかということを知らなければならない。千名をこえる名前一つずつ書くわけにもいかないから、私は相当部数のプリントが行われておるだろうと思う。少くともあなたはその名簿を見たことが一度もないというわけはあるまいと思うが、プリントをしたものかしてないかくらいは、書いた字か印刷した字かで区別ができる。ありのままを答弁してもらわなければ困る。
  348. 緒方信一

    緒方証人 私は原案を見たのです。原案に決裁いたします。そのほかのプリントは見たことがありません。
  349. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、調査員なるものは一体身分はどういう形のものになるのであるか、それから調査員に対する報酬はいかに支払われているのであるか、それを伺います。
  350. 緒方信一

    緒方証人 身分は非常勤の職員であります。その報酬は、非常勤の手当として一冊平均二千円あてに支払われております。原稿審査一つ当り二千円ということ誇ります。
  351. 春日一幸

    ○春日委員 いろいろお伺いしたいことがありますが、だいぶ私の質問はダブっているようでありますから、いずれまた後ほど伺うことにいたします。
  352. 篠田弘作

  353. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 同僚委員からだいぶ聞かれておりますので、二点だけお伺いいたします。  第一は、教科書の値段の問題ですが、先ほど来、物価指数から見てこれは高くない、あるいは高い—。輿論によりますと、高過ぎるというのが七五%でありますが、私の判断では非常に高過ぎると思います。なぜならば、高過ぎるということにおいて、また発行者が利益があるということにおいて、スキャンダル等が起きると思うのであります。たとえば、先ほど委員長の方から出されましたのは、国語が八十円であります。われわれが小学校へ行っていたときの国語が大体六銭か七銭であります。それを見ても千倍以上になっております。はがきは一銭五厘が五円ですから、現在三百倍ちょっとであります。ただ観念的に物価指数から考えて高いとか安いとか言うべきではないと思うのです。同時に、こういう教科書というものは絶対に買わなくちゃならぬという性格の商品でありますから、普通の市中に販売されている物価指数から見てもずっと安くなくちゃならぬのです。しかし、そういう物価指数から見ても高いと私は思う。そうした点から見まして、利潤が多過ぎるのでスキャンダルが起きるのではないかと考えます。たとえば、われわれの耳に入っているのでは、最近こういう教科書による利潤が三割あるとも聞かされているのであります。一割は大体宣伝費にとられている、あとの二割が販売業者の利潤になっている、こういうことも承わっております。教科書などにおいて三割の利益をとるなどということは、あなたのおっしゃるようにどうしても買わなくちゃならぬ商品から言って、こういうような市中販売利益というものはあり得ないと考えるのであります。  それから、もう一つは数の問題でございます。値段をきめるに当っては、なかなか売れないものは三割、五割、中には時計のごとき七割、十割をかけるものもあるといわせております。しかし、教科書のごときは、この数字をもって見てもわかるように、昭和二十九年度においては二億一千四百万冊を印刷している。それから三十年度においては二億三千六百万冊、このような膨大な発行部数を持っているなんという図書は、教科書以外にはございません。御承知のように、文芸春秋が一番出ているといわれていても、これは六十万部であります。そういう点から、利潤がごく少くとも発行所はもうかる。かかる印刷物などは、紙を売るというか、部数によって価格がきまるのです。二億万冊というような膨大な印刷をやる教科書は、いわゆるはがきと国語を比較しても、はがきは三百数十倍、国語は私の計算では千倍以上の指数になっております。こういう点から見ると、非常に高い利益がある。あるからこそそこにスキャンダルが起きてくる。こういうような見解を私は持っておるのですが、もっともっと安くして、損をかけてはいけませんが、むしろほんとうにその発行所の経営が成り立つ程度の利益を盛ってもけっこうだと私は思うのでありますが、いわゆるあなた方の考え方としては、そういうような物価の指数から、あるいは発行部数から比較されまして値段を検討されたことがありますかどうか、承わりたいと思うのであります。
  354. 緒方信一

    緒方証人 先ほど、私、物価指数の対比を申し上げてお答えいたしたわけでありますけれども、これは平均について申し上げたのでありまして、今の小学の現実の書物につきまして比べました場合の対比は、私の方はまだ具体的に個々のものにつきましてはやっておりません。これはさらに研究いたしてみたいと思っております。ただ、内容等につきましても国定教科書時代とはだいぶ違うことは違うだろうという感じを持っております。お尋ねの点だけについて申し上げておきます。
  355. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 国定教科書検定教科書、この点はよろしいですが、そのほかに、われわれはうちの家内からなどもよく聞くのですが、今学校で非常に金がかかるということは、教科書のほかにテスト・ブックあるいは参考書あるいは一年間の学習、それから中学コース、こういうようなそのほかの書籍が今各学校においては教員を通じて非常に販売されているわけです。そういうものが検定教科書のほかに金額にしてどのくらいな割合が出ているか、御調査になったことがありましたかどうか、伺いたいと思います。
  356. 緒方信一

    緒方証人 御指摘のように、今の問題は確かにあると存じます。新しい教育建前と申しますか考え方といたしましても、先ほどもちょっと触れましたように、教科書は最も主要な教材でありますけれども、そのほかにも有効な教材というものは、これは使ってもよろしいということになっております。従いまして、学校で、あるいはまた教師が、教科書以外の図書を選んで使わせるということがあると考えます。ただ、しかし、これが何と申しましょうか無制限に増加することになりますと、生徒の家庭の負担を増加いたしますので、その点は十分検討する余地があると存じますけれども、これは各学校の個々のやり方でありまして、調査が非常に困難でございます。以前文部省学校教育費の調査をいたしました場合に出て参りました若干の調査がございますが、今御指摘になりました教科書以外の学習書等のみに関しまする調査はなかなか困難でございますが、今後私どもはやってみたいと思います。前に調査いたしましたものの中で、教科書とそれ以外の図書費の比較が出ております。大体教科書の半分くらいの数字になっております。教科書費の半分くらいになっております。これは計数も持ち合しておりますので申し上げますと、ちょっと古い調査でございまして昭和二十七年でありますが、この調査によりますと、小学校で、教科書費が六百四十九円に対しまして、補助学習用図書費というのがありまして、半分と申しますが、この関係では三分の一、二百二十一円、それから、中学校におきましては、八百二十四円の教科書費に対しまして、四百円の補助学習用田図書費があります。
  357. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 そこで、私が申し上げたいことは、昭和二十九年度のいわゆる発行部数と昭和三十年度とを比較いたしますと、二千二百万冊増加しております。そういうような比例に基きましてこの教科書以外の先ほど申し上げましたような書籍が、地方によって違うというのですが、われわれの家庭で聞いておりますと、教科書の倍かかっておるといわれておる。それが毎年ふえておるのに、倍かかっている。そうすると、その調査を信用し、私の言うことと半分にいたしましても、教科書にかかるくらいの費用がかかっておるわけであります。そうして、教科書それ自体の総額は、一年間に大体二百億以上になるわけでございましょう。そうすると、値段にして、教科書と同じ価格のものが発行されておるとすると、四百億からの教科書並びに教科書に付随する書籍が発行されており、また発行されているからには販売されておるという形になるのであります。それが膨大な数字でございますから、ごくわずかの利潤でも、その金額というものは相当大きな数字になるわけであります。今のあなたの方の調査によりますと、二十七年といいますから、非常に古い調査のようですが、もし文部省調査した最近のものがありましたら、一つ委員長のもとにでもお届け願いたいと思います。そういう点に対しましては、私は意見は申しませんが、非常に大きな数字になります。この教科書の価格というものは文部大臣がきめるといわれておりますが、文部大臣がきめるわけではございますまい。文部省においてそれぞれの係の人たちがその価格をきめることだろうと思いますので、これに対しては、物価指数なり、あるいは今申し上げましたような発行部数等も十分検討されて再検討を願いたいというのが一つであります。  もう一つは展示会の問題でありますが、たとえば、展示会に出されるときには、この本はこの形において、この内容において価格は幾らだということが提示されて展示されるのかどうか、承わりたいと思います。
  358. 緒方信一

    緒方証人 展示会におきする展示本には定価をつけて出します。
  359. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 ここに同じ本が三冊ありますが、この一冊のしっかりした本は展示会に出された本だそうであります。これには価格が書いてありません。価格が入っていないのです。この本は現に生徒が使われておる本です。それには八十円とちゃんと書いてあります。こういう点に私は非常に不明朗な点があると思うのであります。展会に出すときには、値段をきめるのならば値段というものは印刷しなければならぬ。これには八十円と書いてある。しかるに、もう一冊の方には、定価と書いて、そこに何も書いてない。そこで、今度展示会が通ったら、あとで価格の紙を別にして張るような、こういうようなやり方を見ると、そこに、もうすでに、販売業者あるいは発行所において、展示会さえ通れば、あとは価格の問題やあるいは紙の質の問題などはどうでもいいというようなことに観点を置かれているのじゃないか。そういうことで二億万冊からも出る。教科書一冊においてたとえば一銭の違いがあっても相当の金額になると私は思いますので、もしこうした場合においても厳重に定価を書かなくちゃならぬということであれば、これにも完全に印刷させなくちゃならぬ。こういう点に対しては相当文部省の責任があると私は考えます。それに対してのお答えと、もう一つは、先ほど西村委員から展示会の費用は国が持つべきだという話がありましたが私は、これは三割もの利益があるものであってこれだけの部数があるのですから、もっとこの本を安くして、そうして利潤のないものであれば国家が展示会の費用くらい持ってもいいと思いますが、現行の形においては当然業者が持つものだ、こういう見解を持っております。それらの費用の問題、それから、この価格を記入するしないという問題に対して、あなたから御答弁を願います。
  360. 緒方信一

    緒方証人 展示会に出しまする書物に定価をつけることにはしております。先ほどもちょっと御説明いたしましたが、昭和二十七年から、この制度を改めたわけでありますが、教科書制度を当初は原価計算でやっておりました。それで、展示会には値段のないものを出しまして、採択する部数がきまって初めて原価計算ができますので値段がきまる、こういうことでやっておりましたが、これでは採択する方で困るということで改めまして、先ほどから申し上げましたが、二十七年の実績を基礎にいたしまして一ページ当りの値段をきめるわけであります。それ以後は、展示会に出しまする本にも、それから教科書目録を文部省で発行いたしますが、それにも値段をつけて出す、かようなことにいたしております。私も、今のそこに印刷がされなくて張ってある点につきましては、どういう事務的な手続になりますか、ちょっとここで御説明いたしかねます。事務的の手続や順序がどういうふうになってそういうことになっていますか、わりませんけれども、十分検討いたしたいと考えております。  それから、展示会の費用の問題でございますが、これは意見を申し上げまして恐縮ですが、展示会の費用を業者の負担ということにしました場合に、展示会の費用が、現在の価格そのままであるということでありました場合に、どういう計算になるかわかりませんけれども、またはね返って教科書のコストの中に入れて計算されるということになりますと、これはやはり工合が悪いのじゃないかという感じを持ちますので、感じだけを申し上げます。
  361. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 その心配はないと思います。なぜならば、展示会に出すときは本の価格をきめているのですから、私は心配ないと思うのです。このように、展示会に出すときには値段をきめないでおいてパスしてからきめるということになれば、あなたのような御心配がありますが、価格をきめるのは文部省できめるのですから、その点は心配ないと思います。ここであなたと議論しようとは思いませんし、時間がありませんから、またあとで……。
  362. 篠田弘作

    篠田委員長 山田長司君。
  363. 山田長司

    ○山田委員 実は、私、きょうは質問せずにやめるつもりでおったのですが、ただいま佐々木委員の質問並びに証言を聞いていると、実を言うと私にはかんにさわるような事態なので、発言を求めたわけです。  私は、教科書の問題について高い安いということを言うのではないのです。今高い安いという話が出たから一応言うわけですが、大体憲法の二十六条によれば、義務で普通教育を受ける人たちには一応少くとも教科書くらいは国家でこれを負担するくらいのことまで考えていいというのが私の持論なんです。なぜそういうことを私が言いたいかというと、私は決算委員で、実は造船疑獄事件を追及した一人なんですが、船会社だけに何百億というほど国家補償をしていながら、小学校の子供に対する教科書代の十億くらいなものが補償できないはずはない。だから教科書の問題で高い安いということが議論されているけれども少くとも文部当局はそのくらいな気がまえで大蔵当局に交渉して、少くとも初等教育を受ける人たちの教科書くらいは無料で配給するくらいなところまでの気概を持なければならぬ、こういう点について、局長はまで大蔵当局へどういう交渉をなさったか、一応それを最初に伺います。
  364. 緒方信一

    緒方証人 義務教育全体の教科書を無償にすることは、今までやっておりません。これはいろいろ考え方があるだろうと考えます。各国の制度におきましてもこれはいろいろございます。国によりましては、国費なりあるいは公費で購入しまして、それを生徒に貸与して使わせるというようなところもございますけれども、個人購入の手続をとるところもあるようです。これは非常に大きな問題でございます。私どもとしまして、従来義務教育全体の教科書を無償にする政策はとっていないわけであります。従いまして大蔵省に対しましての交渉は——ただ新入学の一年生に対しまする教科書はちょっとこれは観点が違うのであります。解点が違うと申しますか、新入学を祝うというような意味で、国語と算数の教科書だけを無償にするという制度がございました。これにつきましては、補加金の整理どいう建前から、国家財政の要請によりまして、二十九年度より整理を受けたわけであります。従いまして、この制度も今は生きていないのであります。
  365. 山田長司

    ○山田委員 私はただいまの話を聞いてなほ憤慨をするわけですが、日本の場合にはかなり思い切った事例があるわけです。なお、私はきのう特に決算委員として憤激を感じたのですが、五千万以上の滞納者が数十カ所あって、しかもそれをどこの会社かも一軒も発表しないでおいて、しかもその会社は配当を三割しているというような実例が、きのう実は決算委員会に出ておるわけです。あなた方は少くとも大蔵当局と常に予算の折衝をしておる当面の責任者だと思う。そういう点について当然そういう財源を見つけ出すくらいな、日本の将来を背負う子供に対する気がまえが起ってよいはずだ。今国会に貴金属の問題の法案が出ておるが、一体これが何千万になるか、まだ正確な数字が出ていないけれども、戦争中に取り上げた物資が日銀の地下室にはたくさん眠っている。こういう問題だって何もあなた方は国会で論争するのを聞いておるだけではなくて、当然これらの問題についてはやはり日本の将来を背負う子供についての予算面として情熱を持ってやるべきで、類のない造船利子補給なんという問題だって、日本の政府の人たちは今まで船会社へ出しているんだから、日本の将来を背負って立つ子供たちの教科書の問題はただの千億ぐらいのものだから、これらについてちっともあなた方はやっていないということについては、私はさらに憤激を感ずる。  もう一つ私はあなたに聞きたい。調査員の公開という問題が全然なされていない。調査員の公開ばかりじゃなしに、私は、本屋の立場で別に本屋を擁護するわけではありませんが、不合格で本が採用されなかったとする。そうすると、本屋はただ泣き寝入りで、何らの手も打たれずにばく大なる欠損を受けてしまうような本屋ができるわけだと思うのです。だから、本屋自身もこれについてどんな贈賄でもやって何とかして本の採用をしてもらいたいと努力するのは人情のしからしめるところです。そこで私は尋ねるのですが、なぜ調査員には判定理由を明示さして、そうしてこれを判定した問題について編集者と大論争させないか。私はこういうことは当然あってしかるべきだと思うが、一体、そういう点も、文部当局では、採用されない本ができた場合に、編集者はこれについておそらく何らかの発言を求めてだれかに言ってくると思うんだが、こういう点についてどういうふうな採用の仕方をしておるか、あるいはどういうふうなことをしておるかということをまず聞きたい。それから調査員の公開という問題はそういう点でぜひ必要だと思うが、こういう点についてはどうお考えになっておるか。二点だけ…。
  366. 緒方信一

    緒方証人 調査員の公開、非公開の問題は先ほど来お答えいたしております。これはいろいろ御意見はあると思います。しかし、現在の建前といたしましては、これはやはり公開いたしますと不当な圧力がかわるのではないかいうことを配慮いたしまして、その配慮から非公開にいたしております。そのほか、調査員調査をしますにつきましては一切わからぬようにいたしております。そういう建前をとっております。これはいろいろ御意見はあると思いますけれども、現在の建前はそういうようになっております。その理由は今申しましたようなことであります。
  367. 山田長司

    ○山田委員 日本の将来を背負う子供の使う教科書を真にりっぱな教科書に作るためには、圧力がかかるとかかからぬというのではなくて、当然、私は、教科書の採用については、一つの大きな世論を巻き起して、そうしてその教科書のいい悪いを判定して採用すべきものと思うのです。そういう点で圧力がかかるとは、どういう点に圧力がかかるのです。
  368. 緒方信一

    緒方証人 調査の公正を期しますためには調査員氏名を秘匿いたしまして、だれがどこの会社の本を調査しているのかわからないようにするのがよろしいという判断から、今ではさような制度をとっている、こういうふうに申し上げておきます。
  369. 山田長司

    ○山田委員 今ではそういう制度をとっていると言うが、本気になって教科書についてとことんまで論争されて、どこがいいか悪いかということを明らかにされて、そうして採用するかしないかきめるということが、どういう点で悪いと思われるのですか。
  370. 緒方信一

    緒方証人 その制度をどうするかという問題を私はきょうここでお答えする立場ではないのじゃないかということを先ほどお断りいたしてあります。
  371. 山田長司

    ○山田委員 あなた個人の考えでも……。
  372. 緒方信一

    緒方証人 個人と申しましても、私は当局の責任者でありますので、個人といたしましても、これからどうしますということをここで申し上げることはいかがかと存じております。いろいろ検討はしておる、あるいはいろいろな御意見もある、現在の制度はこういう理由からこうしておりますということを御説明するのが私のきょうの立場ではないかと考えております。
  373. 山田長司

    ○山田委員 しかし、実際は業者の人たちは血眼になって、だれがうちの本を調査をしているのかということの認定を大いに努力してやっていて、結果的にはわかっているというじゃないか。そういうことが世間では完全に言いふらされているのですが、わかっているという現実がいつの教科書の場合でもあるといわれているのに、何でそんな表面だけ非公開にしているような態度をとらなければならないのですか、一応伺います。
  374. 緒方信一

    緒方証人 これは、いろいろその実情につきまして全部私どもが承知しているわけではございませんので、全然漏れていないということを私は証拠をあげてここで証明することはできません。しかし、これは私は午前中にも申し上げましたけれども、年々解任もいたしております。再任もできるわけでございますが、特に本年度は、以前にやっておった人で残っているのは大体一%くらいだろうという話でありまして、だいぶもう解任いたしております。さようなことで、そうたやすく事が漏れるということには考えていないわけであります。
  375. 山田長司

    ○山田委員 公平なる人を選んでいる、あなた方はそのように思われるかもしれぬけれども、立場々々によって、われわれは文部省で選んだ人たちが必ずしも正しい人たちだと思っていない。そういう点で、何を基準にして——さっきもあなたは言われているけれども、もう一ぺん私は尋ねるのだが、しからば何を基準に、正しい中正な、しかも適任者と認定を下して、年中かえているのですか。
  376. 緒方信一

    緒方証人 選任方法につきましても、これは午前中お答え申しましたように、教育委員会あるいは大学の学長に推薦を求めまして、適任者を選ぶわけであります。それを審議会にかけまして、その上で文部大臣任命をする、こういう順序で私どもは公正を期しているつもりでございます。いろい御意見はあると存じますけれども、これは皆様方の御見解は御見解として承わるほかはございません。
  377. 篠田弘作

    篠田委員長 小山君。
  378. 小山亮

    ○小山(亮)委員 本筋だけ簡単に伺いたいと思います。  文部省は、現在ほうはいとして巻き起っておるこの教科書の問題に対する世間の非難というものに対して、抜本塞源的な対策をお考え中でありますか。
  379. 緒方信一

    緒方証人 教科書制度のみならず、教育制度というものは、国家百年の大計に関係いたしまするし、それから全国の現に行われつつある教育の現場に非常に重大な影響がございますので、これに対しましては非常に慎重な態度をもって臨まなければならぬと考えますが、しかしながら、今日の国民の世論といたしまして、教科書制度に対しまする批判の声が高まって参りまする現在といたしましては、私どもはやはり十分に検討しなければならぬと考えております。
  380. 小山亮

    ○小山(亮)委員 この教科書に対するいろいな非難あるいはいろいろな希望というふうなものを文部省はどういうふうな方法で御調査になりますか、それを伺います。御調査にならなければ、世間のいろいろな非難が肯繁にあたるものかどうかということがわからない。そうすると、やはりあなたの方でこれを何かによってお調べにならなければならないが、お調べになっておいでになりますか。
  381. 緒方信一

    緒方証人 私ども、全国的にまんべんなく調査をしたということはまだございませんが、いろいろ問題ごとにサンプル調査的にはいたしたことはございます。これは調査対象も比較的制限されております。そういう調査はいたしておりますが、全国的な規模における全体的な調査ということはまだいたしておりません。
  382. 小山亮

    ○小山(亮)委員 この委員会でも本日いろいろ論議されましたが、そういうような非難はもうあなたの方では十分に御承知のことなんですか、初めてお聞きになったようなものがあるのですか、それとも大体そのくらいのうわさは聞いておるということなんですか。
  383. 緒方信一

    緒方証人 ただいま申し上げました文部省調査いたしました中にも、ただいま出ておりますような意見は出ております。従いまして、問題点というものは私どもは承知いたしております。しかし、それをいかにするかという点は、これは非常にむずかしい問題でございますので、今日までも慎重に検討いたして参りましたが、今後さらに慎重に検討を要する問題と考えております。
  384. 小山亮

    ○小山(亮)委員 ただいまの御答弁から伺いますと、今の委員会で問題になっておるようなことは、もう大体においてあなたの方は耳に入っておる。そうすると、その原因とかあるいはその対策というふうなことも研究を進めておいでになるんじゃないですか。もうだんだんに、その内容をどうしたらいいかということを研究しておいでになるんじゃありませんか。ただ漫然としてうわさを聞き流して知らぬ顔をしておるというのじやなくて、それに対しては何とかしてこれを正しくしなければならぬというので、研究調査を進めておいでになるわけじゃないでしょうか。
  385. 緒方信一

    緒方証人 研究調査を進めております。
  386. 小山亮

    ○小山(亮)委員 そうしますと、ただいまの全国的に起きている教科書事件のいろいろなスキャンダルというようなものに対しても、大体お耳には入っているわけなんですか。うわさは聞いておいでになるわけですか。
  387. 緒方信一

    緒方証人 いわゆるスキャンダルなるものの内容はなかなか具体的にはつかみにくい点がございますけれども、私どもとしましても調査したものもございます。
  388. 小山亮

    ○小山(亮)委員 そうしますと、どうすればこれが軌道に乗って正しい教科書問題の解決になるかということも研究を進めておいでになるわけですね。もしそうでないとすると、これはそこで文部省の監督者としての責任が追及されるということになる。私はこの委員会でいたずらに罪人を出そうというふうな考えはないのです。ただ国会が取り上げますことは、最も厳粛でなければならぬところの教育の、しかも教科書の問題がこういうような事件でいろいろ左右されるというふうなことになりましたら、日本の将来の教育をどうするか、ここが大きな問題で、従って、いろいろな問題が今でございますけれども、特にこの教科書の問題を取り上げて国会の問題としたということは、国会が教育という問題をいかに重大視しているかということなんです。従いまして、その監督的立場にある緒方局長の考えというものがまず私どもの納得を得、あなたの改革意見が少しでも私どもの参考になって、それがきっかけとなって日本の教科書問題というものがきれいになったら、これに越した仕合せはない。そこで、私ども主としてあなたにいろいろお伺いしたいのは、責任者であるあなたの考え方というものを私どもとしては第一印象として非常に強く取り上げなければならぬと思うので、従って、あなたは、そういうことを先ほどから同僚議員が聞いているのに、それは知らないとか聞かないとおっしゃるが、そうでなくてうわさでは聞いておる、しかしながらこれはこう直さなければならないのだという御意見がおありならば、それを言っていただきたい。そこがおわかりになったら伺いたい。
  389. 緒方信一

    緒方証人 私、先ほどからお答えしておりますことは、たとえば文部省の人事等についていろいろお話がございましたので、それで私の知らぬことは知らぬと申し上げておるわけであります。ただ、教科書制度を検討し、これをいかように改書するかという具体的な対策につきましては、これはやはり政府全体としましても、あるいは文部省全体としましても十分検討した上で発表すべきものだと考えます。従いまして、私がここで個人的な意見を発表いたしますことは、今も申しましたように、衝に当る者でございますからいかがかと存ずるわけでございます。先ほど申し上げましたように、いろいろな意見があり、批判がある、これらにつきまして私どもは先ほど申しましたようなことでございますが、十分調査はやるつもりでおりますし、さらにこれに応じます対策につきましてもいろいろなものを考えていきたいと考えますけれども、これは非常に重大問題でございますので、私はここでこの制度論を私の個人の意見としましてもやることはいかがであろうか、私は証人としてきょう御質問を受けておるわけでありますから、その点は御了承をいただきたいと存じます。
  390. 小山亮

    ○小山(亮)委員 そうしますと、あなたはきょう局長としておいでを願っているわけですが、どういう立場ならばあなたの御意見を御発表なさることができるのですか。たとえば、私は率直に言いますと、悪いことをした人間の名前をあげろとか、これを公表しろとかいうのではない。この教科書のような問題の抜本塞源的な正しい行き方、その筋道をあなたが考えておいでになるとすれば、いいことは御発表になってもいいんじゃないでしょうか。何でもかんでも発表できない立場であればこそ、これをこうしなければ日本の教科書の将来の問題の解決はつかないのだというようなしっかりした御意見をお持ちにならなければならぬはずだと思うのですが、いかがですか。
  391. 緒方信一

    緒方証人 御説は、教科書制度——先ほどから問題になっております検定あるいは発行、供給あるいは採択、この一連の制度を現行制度としてとっておりますけれども、一体どこに欠陥がありどこに改善すべき点があるか、かような点を具体的に言えというお話であろうと私考えまして、先ほどからお答えをしているわけであります。制度をいかに変えるかということは、これは一つの政府の政策でありますので、その点はやはり文部省全体として、政府全体として決定した上で発表すべきものだろうと考えます。私どもは、事務当局といたしまして、問題点を洗い、調査をし、事務的にまとめるという立場でありますので、今日は御了承をいただきたいと思います。
  392. 小山亮

    ○小山(亮)委員 局長の御答弁としてはずいぶん無責任な御答弁のように私は考えますが、そうすると、ただいまおっしゃいました検定であるとか供給であるとか採択であるとかいう点について、どこに一番欠陥があるとお考えですか。
  393. 緒方信一

    緒方証人 どこに一番欠陥があるかという御説でございますが、どの部門にも意見があると思います。たとえば、先ほどからお話の出ています中にも定価の問題にしましても、あるいは種類の数の問題にいたしましても、いろいろな御意見が並んだわけであります。そこでただ一つの点だけを取り上げて欠陥を指摘するのはむずかしいのじゃないかと思います。問題によりまして、こういう問題にはここに研究すべき点があるということが出てくると思います。たとえば、今の教科書の数が非常に多いという批判があります。これもまたいろいろな立場がある。非常に数が多くて、全体としまして経済的に非常なロスがある、そういう立場を強くとるならば、これは少くしなければならぬ方策になると考えます。ただ、今の制度といたしましては、学校教育というものがその現場の学校教育指導計画というものを重視していく、学校先生が自分の学校教育に適応するような教科書をなるべく多くの中から選ばせる、こういう建前がこの検定制度にありますので、そこを重視しますならば、必ずしも多くないじゃないか、こういう意見になってくるわけであります。その辺のところの検討が両面からなされなければならぬ。これは例でございますけれども、そういうことになると思います。でありますので、その各面につきまして、各角度からする検討が必要でありますので、簡単に私ここで申し上げますのは、はなはだ御趣旨に沿わないかもしれません。今日ここで申し上げることは尚早だろうと思います。
  394. 篠田弘作

    篠田委員長 小山君に申し上げますが、約束の時間が過ぎておりますから、簡単にお願いいたします。
  395. 小山亮

    ○小山(亮)委員 今のお話をお伺いしますと、各角度から見て批判がある—。しかし、私のお聞きするのは、各角度からどういう批判があるかということをお聞きするのではない。それを、あなたは前段のお答えで、調査をいろいろな方法でしておるから大体のことはわかっておると、こうおっしゃった。そうすると、各角度からのいろいろな批判はあなたは御承知になっておる。そこで、それを取りまとめて、教育の一番の、教科書の問題の一番の監督的地位にあるあなたとして、その取りまとめた意見として、どの点において一番欠陥があるのか、こういうことを私はお聞きをしたいのです。そうでないと、ただ、話を聞いた、話を知っておった、知っておるけれども言えない、——これは、いかにも、国家の費用であなたは俸給を得ておって、そうして国のためにならぬことが目の前に置いてありながら、それに対して何らの改革をする案もない、また、それを心配して国会が協力して直そうといってあなた方にこういうことを質問しておるにもかかわらず、それでも話をすることができないいうこどだったら、一体どうしてこの改革をやるか。文部省でいずれきめてと言うが、いつきめるのですか。内閣でもかわったらきめるとおっしゃるのですか。私はこれだけはっきり言っておる。私は、あなたが今現に考えておることを率直に伺えばよいので、それであなたの責任をどうするというのではない。ただあなたの御意見として伺いたい。御意見ですから、何も決定的なことを、政策の発表をなさるのではない。あなたの御意見を伺いたい。
  396. 緒方信一

    緒方証人 お答えいたします。同じようなことを繰り返し申し上げまして非常に恐縮でありますけれども、これは、ただ一点だけここを押えればもうみなすっかりよくなるという問題ではないと思います。非常に複雑な機構ででき上っておりますので、それをどう全体のバランスをとってやっていくかということでありますので、これは、政府として、文部省全体としましてよく検討し、きめた上でございませんと、私ここでただ断片的な意見を申し上げましても、これは誤解を受けると思います。
  397. 小山亮

    ○小山(亮)委員 よくわかりました。  もう一つ聞きます。そうしますと、今問題になっておる教科書事件をめぐるスキャンダルということがあります。それは大体調査されておいでになりますね。そうでないと、この間から文部省教科書問題に対するいろいろな新政策を発表したでしょう、何も調査をしないで、これから教科書はこうする、ああするというようないろいろな意見の発表はできないわけです。そうでしょう。一県単位にするとかなんとかいうことが出ましたが、それには多少の調査をしておいでにならぬとそういう新しい方針が出ないわけです。でたらめに、何にも調査しないで、わけもわからない、文部大臣に相談もしない、そうしてあなたが勝手に意見を発表するということになると、これは世の中を騒がすだけです。私は、やはり何か基礎的な調査をなさったから、これはいかぬ、大きく問題にならぬうちに手を打とうと思ってお出しになったのではないかと思う。そうすると、スキャンダルは調査しておいでになるということになりますね。そうすると、あなたが知らぬ知らぬとおっしゃることは、うそを言っていることで、知っておいでになるということになる。そこが私は心配だからお聞きするのですよ。あなた証人として呼び出されておって、心配だから、あとになって、あれは知っておったのだと言っては困るから、お伺いしたのです。
  398. 緒方信一

    緒方証人 スキャンダルとおっしゃいますと、そのことはございますが、私が先ほど知らぬということを申しましたのは、文部省の人事関係のことでございましょう。(「違うよ」と呼ぶ者あり)具体的に伝えられるいわゆるスキャンダルというものを全部こまかに私ども把握しているということは申し上げかねますけれども、調査している事項もございます。
  399. 小山亮

    ○小山(亮)委員 大づかみのことは知っておいでになるですね。     〔「きょうはもうやめよう」と呼ぶ者あり〕
  400. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、緒方証人に対する尋問はこれにて終了いたします。  証人には長時間にわたり御苦労さまでありました。  本日の証人尋問はこの程度にいたしまして、公正取引委員会委員長横田正俊君につきましては、来る六月二十七日月曜日に出頭を求めることに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  401. 篠田弘作

    篠田委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。  次会は来る二十七日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十二分散会