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1955-06-22 第22回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十二日(水曜日)     午後二時十二分開議  出席委員    委員長 島上 善五郎君    理事 早川  崇君 理事 小金 義照君    理事 片島  港君 理事 井堀 繁雄君       大村 清一君    薩摩 雄次君       杉浦 武雄君    大坪 保雄君       橋本 龍伍君    堀川 恭平君       森 三樹二君    山口丈太郎君       佐々木良作君    鈴木 義男君       石野 久男君  出席国務大臣         国 務 大 臣 川島正次郎君  出席政府委員         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 薫治君         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      兼子 秀夫君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁選挙部         選挙課長)   降矢 敬義君         総理府事務官         (自治庁選挙部         管理課長)  櫻澤 東兵衛君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公職選挙法改正に関する件     ―――――――――――――
  2. 島上善五郎

    島上委員長 これより会議を開きます。  前会に引遂続遂公職選挙法改正に関する件について調査を行います。  まず前会において調査請求のありました兵庫養父郡及び北海道小樽市の選挙取締りの件について報告を求めます。中川政府委員
  3. 中川薫治

    中川(薫)政府委員 兵庫養父郡における公職選挙法違反被疑事件調査の件についてと、及び北海道小樽関係事件についての調査状況を御報告いたします。  兵庫養父郡の関係事件につきましては、去る総選挙の際に、養父郡における教職員関係の方による公職選挙法百四十二条違反被疑事実の状況を探知いたしましたのでこの問題は法律に容認をされていないはがき頒布した事件容疑でございますが、その点につきましていろいろ内偵を進めたのでございます。事柄真実発見するためには、警察といたしましては慎重な処置をとる必要がありましたので、いろいろ頒布されたはがき状況その他の内査に努めておったのでありますが、ちょろど投票も終りましたので、投票の終りました直後関係者の方の被疑者の方の取調べに着手いたしたのであります。被疑者取調べに当りましては慎重にやるべきは当然でございますが、本件につきましても、その用意を十分にいたしまして事を処理したようでございます。ところが、本件容疑内容が、被疑者数名の方々がそれぞれ意思を通じてこういったことがなされる容疑が見受けられましたので、こういう選挙違反事件につきましては一般的に捜査に当りまして比較的に通謀のおそれがある、むしろそれらの被疑者を隔離して真実発見する方が捜査の公正を確保できると兵庫県では考えまして、関係被疑者六名の方につきまして逮捕いたしまして、逮捕に基きましていろいろ事情取調べいたしたのであります。他面、逮捕した被疑者にとどまらず、それ以外に、任意で、ことにはがき頒布された関係につ遂ましては、もちろん逮捕すべき限りでございませんので、そういう違反文書を受け取った方につ遂ましては任意事情を聴取いたしまして、事案真相発見に努めて参ったのでございます。それで、ただいま申しましたごとく、六名の被疑者につきましては逮捕という刑事訴訟法に基く強制処分をしておるのでございますが、そのほかにも任意でやりました被疑者もございまして、現在のところ七名の被疑者が公訴を提起されておるという状況でございます。それから、本件事案につきまして真実発見のために事情を聴取いたしました者等は百四十名前後に上っておるのでございますが、そういった関係は、すべて、被疑者というのでなくて、被疑事実の真実を知るために、特に文書を受け取った人たちから事情を聞いた、こういう状況でございます。  それから、御報告の第二点は北海道小樽市にかかる問題でございますが、小樽市におきまして教職員の方による戸別訪問容疑が認められましたのでこれは地方選挙の場合でございますが、それで関係事項の聴取を警察としては努めて参ったのでございます。うち五人の被疑者につきましては強制処分をいたしておるのでございます。強制処分とする理由でございますが、もともと、こういった被疑事実につきましては、各警察とも極力任意取調べによりまして事情発見努力するという建前をとっておるのでございますけれども関係被疑者がそれぞれ連絡して事犯を犯したと認められる容疑の場合にお遂ましては、やむを得ず、関係被疑者を隔離して事案真相をはっきりした方がより公正であると考えられます場合は強制処分をしておるのでございますが、本件につきましても、五人の方につ遂ましては、この事案内容がそれぞれ相当打ち合せ等が行われた結果こういう戸別訪問等事柄が行われるのではなかろうかというように推測するに足る相当の資料がございますので、この五名の者につきましては強制処分によりまして事案真実発見に努めて参っておるのであります。それで、この被疑者につきましては、逮捕し、その後検察庁に送付したのでございますが、今日事案真相はまだ捜査中でございまして、現在のところはまだ結論は出ていないのが現状でございます。
  4. 島上善五郎

    島上委員長 以上の報告について御質疑はありませんか。佐々木君。
  5. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 兵庫県の養父郡の教員組合事件についての調査報告を承わりましたが、今のお話でありますと、普通の通り一ぺんの御報告でございまして、それがほんとうに行き過ぎておるようなものであったかどうかということを認定する材料に非常に不足しておると思います。特に、私は、ちょうど学期末であったこと、並びに、おそらく任意出頭の形だと思いますけれども、最初集中的に出頭を求めて調査された者が大体女の先生並びに校長先生等でありまして、普通の形から言うと教職員組合幹部とみなされない者であったこと、その辺の事情につきましても、特に学期末であって一生徒を通じて父兄に与えた影響がまことに深刻であった点等も、できますればあわせて御調査を願いたいと思います。  なお、出頭を求めた者、逮捕請求を出した者六名であり、任意出頭等の形で調べた者は約百四十名というお話でありましたが、百四十名のこう多きに上ったのは、はがきが散布されたので、その散布された先の人を呼んだというお話でありまするが、それならば、百四十名中どれだけがはがきを受け取った形で参考に呼ばれたのか、あるいは出した方の疑問で出頭を求めたのは何人あるかという点も承わりたいと思います。  それから、さらに、この調査最終段階におきまして、地方検察庁から、特に巷間伝えられるところによりますと、腕ききの検事数名が乗り込んで行って、大体それまで私どもがこの辺だという話を聞いておったのと相違して、もう一ぺん初めから調べ直すみたいな形で、起訴並びにその次の事件が発展したと思っておりまするけれども、その最終段階において、そういうふうに地方検察庁当局から乗り込んで行って調べ直したような事実があったかどうか等々も、あわせてお尋ねしておきたいと思います。
  6. 中川薫治

    中川(薫)政府委員 御質問の三点につきまして逐次お答えいたします。  まず、第一点の、本件被疑事実を探知いたしました警察において、まず女の先生を呼んで逐次やっていったじゃないか、こういう点についても私調べたのでありますが、その状況は、ただいま申しましたような事実が探知されましたので、二月二十七日投票終了を確認いたしましてから、それぞれ各捜査員を手分けしてやりましたので、おおむね同時刻になっておりますが、その投票終了直後任意出頭を求めてお調べいたしました被疑者の方は合計十名でございますが、うち七名は男子職員の方で、残り三名が女子の職員の方でございます。それで、女を先に調べて男をあとから調べるということが必ずしも悪いわけではございませんけれども本件事案については、そういった事情を確認するために、その実際の行為について最も事実の発見に資すると思われる方十名を選びましたが、それが必ずしも女ばかりねらったとは認められないのであります。数字的に申しましても、七名が男子で、女は三名でございますので、そういうふうに私たち数字のみで判断するのはいかがかと思いますけれども、そういう実情でございます。  それから、第二点の、百四十人調べた内訳でございますが、はがきを受け取っという事情を明らかにしたいために聴取した方は百四名でございます。それから、はがきを出した方の者は、それを直接出された方、並びにそれに相談にあずかったであろう、またはその事柄について事情を知っておるであろうと思われる人、この方が数字は四十八名でございますが、その性別は、男三十六人、女十二人、こういろ状況でございます。その調べ方方法は、強制処分が六名、任意事情を聞いたのが四十二名、こういう状況でございます。従って、原則として任意事情を聞いておる、こういうことがこれまた数字上から言えようと思うのであります。  御質問の第三点の、最後の締めくくりのときに検察官が出張って行ったじゃないかという点でございますが、これは一般的な問題としてお答えいたしたいと思うのでございます。この選挙違反事件に限りませんけれども、おおむね刑事事件は、まず第一線組織を持っておりますところの警察が大体探知する場合が多いのでございます。警察が探知いたしまして、その警察が探知したことに基きまして、事実をだんだん明らかにして参って、そして一応警察として見当がつきました場合においては検察庁送致するのでございます。これは御案内のごとく刑事訴訟法の定むるところでございますが、その刑事訴訟法に基きまして検察庁送致する。送致を受けた検察庁は、その調書その他を検討し、さらに必要が認められる場合におきましては、検察官においてさらに捜査願って、しかる後に起訴、不起訴を決定する。これがすべての刑事事件建前でございますので、本件ももちろんその原則に基いて事が処理されたと思うのでございますが、検察庁処置そのもの自体の問題につきましては、私どもこれを調査することは適当でありませんので、そういった点は法務省関係でいつも御検討願っているのでございますが、一般問題としてそういう建前になっておりますので、おそらく本事件につきましても、事件送致後は検察官がお調べになったということはむしろ当然であると思います。捜査内容等につきましては、法務省等がこれをいつも監理していらっしゃるという事情を申し上げておきたいと思います。
  7. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 これだけの関係でもって、今申し上げた文書図画頒布容疑事件調査が行き過ぎておったかどうかということを判断するのは非常に困難だと思います。しかしながら、御承知のように、兵庫県の養父郡というところの事情をよくお考え願いましたならば、一郡の中で小中学校の先生が四十八名調べられた、その中に女の先生が十二名もおったということだけでも、非常に大規模な調査であったことを想像するにかたくないと思います。しかも二月の終りから三月にかけてのほんとう学期末の事件でありますので、その影響がどれだけ大きく動いたかということは、この東京からでも私は想像するのにそれほどむずかしくない状態にあると思います。しかも、私は、まだ事情をよく知りませんけれども頒布されたと称せられるそのはがきは、そのはがき自身ほんとう犯罪を成立せしめるかどうかについても、相当疑問のあるはがきだと考えます。当時それに似たような問題が各所に起りました際に、選挙運動員警察あるいは選挙管理委員に、こういうことは違反になるかどうかと質問に行ったこともたびたびあったにもかかわらず、結局それはわからないという返事が大多数であってこの事件自身わからないという返事をしたかどうか私はわかりませんけれども、いずれにしても、これはそのまま犯罪であるかはまことに判定しがたいものである。しかも、何か聞くところによりますと、二、三十枚というはがきの分量だと聞いております。私もよくわかりませんけれども、かりにそれが数十枚であったとしても、それは御承知のように子供の病気見舞はがきで、それに追って書きで書いたとかいう事件でありますので、私はあの土地の地方事情にきわめて大遂な影響を及ぼした点から、行遂過ぎの調査であったというふうに考えておるわけであります。その辺の御意見もお聞かせ願いたいと思います。  なお、これも私は必要なことだと思いますけれども、関連的に、実はちょうど、こういうことが起きるよりも前に、今度はさかさまに、候補者を誹謗する文書が全然別のところから流された事実があるわけであります。これは明らかにその意味では選挙妨害に該当し得る文書であります。この文書は、実のところを申し上げますと、私どものよく承知しておるところによりますと、頒布された文書はおそらく万に上っております。それはちゃんと封書にして送られております。そうして、今のは小学校の先生が三、四十枚書いたか書かないかというぐらいですが、それに対しまして、妨害文書だと思われる方のは、まあ捜査上の必要があったか知りませんけれども、小さく扱われている。しかし、この影響は、少くとも当事の兵庫県の養父養父郡だけではありません。今申し上げたのは宍粟郡、但馬一円にばらまかれておりますけれども、その郡内に、検察庁取調べておるかどうか私は知りませんけれども調べておるといううわさはほとんど出ずじまいであります。ところが、こっちの方の先生の方は、これは猛烈な社会問題だ。私は、その辺の二つの事案を見まして、まことに遺憾ではありますけれども、非常に不思議な感じがしたわけであります。最近聞くところによりますと、その妨害事犯と目されるものについても何か調べが行ったとか行かないとかいううわさを聞きますけれども妨害事犯と、それかから違反容疑と、これは法律的には完全に別個でございますが、行政的あるいは政治的にはうらはらのものでありますから、片一方が非常に大きく出て、片一方が非常にこまかく取り扱われているということは、私どもとして考えられないわけであります。何らかの政治的な意図があったのではないかという疑いをかけられてもしかたがないような状態であったのではなかろうかと私は思います。この辺の事情につきまして、もし今のことを調べられるにつきまして、現地等からの話をお聞きになっておりますならば、あるいは選挙当時いろいろな情報が入っておると思いますけれども、入っておりましたならば、その辺の事情につきましても御所見を伺いたいと思います。
  8. 中川薫治

    中川(薫)政府委員 これは公職選挙法解釈としてわれわれいつも悩む問題でありますが、ただいま申しましたように、公職選挙法百四十三条の条文は、「選挙運動のために使用する文書図画は、左の各号に規定する通常葉書の外は、頒布することがで遂ない。」こういうことが明文で規定されておるのであります。従いまして、いろいろ事案が起りました場合にお遂まして、「左の各号に規定する通常葉書」は選管等で明らかになっておるはがきでございますので、違反文書ということになるためには、それ以外のその文書の中に選挙運動内容が書いてあることを要する。そこで、選挙運動とは何ぞやということに相なろうかと思うのであります。選挙運動とは何ぞやという点は、これは判例等にお遂ましても、行政解釈におきましても、おおむね一致した解釈が成り立つのでありますが、これを合理的に解釈いたしますと、特定候補者当選せしめる目的文書であろう、こういうふうに理解せざるを得ないのであります。われわれ、犯罪捜査をいたします場合におきましては、事案内容文書特定候補者当選を得しめたるための文書である、こういう認定をされる限りにおきましては違反文書になる、こういう理解で行くのでございますが、われわれ、選挙運動期間中に、こういった文書選挙運動文書と言えるかどうかということをよく聞かれる場合があるのでございますが、その場合の解釈も常に今申したような根本理念に基いて申し上げているのでございます。事柄が、配布方法とか頒布内容等態様簿によって、当選を得しめる目的であるかどうかというような認定をせられる場合もありますので、事柄内容におきましては、当時の選管におきましても警察におきましても、頒布状況等によっては違反にならぬ、こういうふうに答える場合もあろうかと思うのでありますが、必ずしも解釈の不明確な結果そうであるということでなしに、事実認定がそういうものであるという、ことは法律上当然のことではなかろうかと思うのであります。  それから、第二点の、甲派違反はどしどし警察はやって、乙派違反はあまりやらない。こういう点は、われわれ常々そういう御批判をいただきまして、警察運営上大いに検討しておるのでございますが、公職選挙法に基く各種の犯罪は、ことに選挙運動期間前後を通じて少くとも今日の現状におきましては相当多数行われる実情でございます。警察は、発見することに非常に努力をいたしまして、その発見することに努めるのでございますが、警察発見することがおそい場合ということがあり得ますので、そういうことがないように、少くとも主観的には公平にやらなければならぬことは当然でございますが、客観的にも、その甲派違反ばかりをやって、乙派のやつが見つからぬということがあれば、選挙公平確保上大へんな間違いになりますので、そういう点も常に認識を置いて各警察署ともやっておるのでございますが、まあ相当たくさんある犯罪中で警察で見つからぬという場合もあろうかと思うのでございます。それで、選挙違反捜査というのは、根本問題として、国民とともに選挙が行われるのでありますので、違反捜査も、われわれは責任は転嫁いたしませんけれども国民の目に違反であるということが映った場合におきましては警察にあるいは告発してもらう、こういろ制度等もありますので、両々制度相待って公正な捜査ができる、こういう立場をとって、われわれとしても大いに努力し、国民の皆さんの御協力を得て、結果において公正な選挙違反捜査が行われるということを念願しておるのでございます。ただいまの御質問の点もそういう趣旨で御了承を願いたいのでございますが、おあげになりました他の派の犯罪につ遂まして、私、調査はいたしませんでした。そのいたしません理由は、各地とも相当選挙違反件数が多いのでございまして、犯罪統計として数字はもちろん私の方でまとめておりますけれども、個々の事件全部を報告を求めておるわけではございませんので、国会等におきまして御調査を命ぜられた事項等につきましては調査いたしておるのでございますが、今回も過般の委員会におきまして御調査をお引き受けいたしました事件調査いたしました。従いまして、今おあげになったような事情調査いたさなかったのでありますが、さらに調査はいたしますけれども選挙違反捜査につきましては、すべての違反が見つかるように努力しておるのでございますが、これは悪意があってそうしておるとはわれわれ思わないのでございますけれども、見つからぬやつがあり得る。その点は、国民方々の御協力とともに、警察もまたそういう片方だけの事件が見つかるような捜査方式はとらないということはもちろん当然でございますけれども国民監視のもとの選挙でございますので、そういった点の御協力とともに公正な捜査が行われるよう、われわれは日夜努力しておるつもりでおりますが、今後とも大いに御協力を願いたいのであります。御質問が重ねてございましたので、今お述べになりましててところの、ただいま調べました事件以外の派の文書につきましても一応調べてみたいと思うのでございます。
  9. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 同僚諸君質問もありますので、時間の関係上これで一応質問を打ち切りたいと思います。なおこの委員会の性格から見ましてもこの辺で打ち切ることにいたしますが、特に私はこの問題の集約として最後に一点だけお伺いしておきたい。  それは、大体これほどややこしい選挙法でありますので、われわれの解釈を一定いたしまして、現在の警察の能力で末端にまで、この辺は大体いけない、この辺は大体釈放せよと、そこまで徹底させるということが、今度の場合は私はほとんど不可能であったと考えます。従いまして、不可能であったから、地区でまちまちにその認定が行われたがために、ほんとう選挙違反の、本来犯罪を構成すべき買収、供応という本質的な問題がどこか途中ですっ飛んでしまって、むしろ形式犯事犯を追って力一ぱい調査活動といいますか検挙活動をしたがために、いろいろ選挙違反捜査に出過ぎた状態が出て、しかもこれがいなかに行けば行くほど政治活動から一般を遠ざからしめるような悪結果を来たしているように思うのであります。特に警察立場から、今度解釈末端まで徹底し得たとお考えになるかどうか、それと相待って末端まで徹底したようなかっこうで違反容疑なり違反があがってきているというようにお考えになるかどうか、この辺の御判断をお聞かせ願いたいと思います。  なお、先ほど申し上げました養父郡の教員組合に関する問題と関連して出しました別の選挙妨害事件につきましては、この委員会でお調べ願っていいかどうかわかりませんので、別の立場でまたお確かめ願いたいと思います。はっきり申し上げてお遂ますけれどもはがきの方は数十枚、それから妨害文書はちゃんと郵便局から出した手紙です。これは私が勘定したところでは万に上るはずだ。それが全然違った活動がなされたことは事実でありますので、御参考までに申し上げます。それは別にまたあと調査をお願いいたしたいと思います。  問題の根本に戻りまして、あれほどややこしい選挙法解釈を下部まで徹底できるとお考えになるかどうかということと、ちょうどそれを証明するがごとくに違反事件があがっているわけでありますから、大体あの違反事件としてあがってきた結果と、それから警察当局でずっといろいろな関係でこういう点をこうせいと流された方針とが大体マッチして理想的に行ったというふうにお考えになるかどうか。これは、選挙法自身を扱うのに対しまして、今の警察力ときわめて大きな関係があると思いますので、率直なる御意見を承わりたいと思います。
  10. 中川薫治

    中川(薫)政府委員 率直にお答えいたします。公職選挙法は、確かにかくのごとく条文も多うございますし、むずかしいのでしございまして、私らも一生懸命勉強したのでありますけれども公職選挙法の各条文ことごとくを十二万の警察官全部が知っているということは言えないと思います。それだからといって、警察は取り締りができないという結論には私はならないと思うのであります。と申しますのは、公職選挙法の各条項、ことに解釈上の問題については、われわれ目標としては十二万の警察官全部に徹底すべく努力しております。ただし、努力の結果すべての巡査までことごとくが知っているということは言えないと思います。ところが、実際犯罪捜査する場合におきましては、聞き込みとか、事情を目撃するとか、話を聞くとか、ないしは告訴があろとかいうことによって犯罪端緒または端緒らしきものを警察官が入手する。入手したことに基きまして、まず第一次には警察署長または署長にかわるべき幹部のところでおおむね検討いたしまして、疑わしきは県本部報告いたしまして、そういう組織を通じて検討しておりますので、結果として、そうめちゃな間違った解釈のもとに警察捜査が行われる、ことごとくが間違いだらけだということにはならないと思うのであります。繰り返して申しますと、全警察官ことごとくに各条文がわかるように徹底はいたしておりますけれども、それは完全を保しがたい点がありますので、事件捜査に著手するに当りましては、それぞれ警察署長県本部というような組織を通じまして個々に検討し、さらには検察官等とも必要に応じて相談もし、そういうふうにやっております。組織的に運用されておりますので、間違いなきを期するという態勢は相当できるのじゃないか、こういうふうに私ども思っておるのであります。  それから、再度の御質問の別の事件につきましては、さっそく調査いたしますが、先ほども申しましたごとく、選挙違反捜査は、不幸にして現在は、公職選挙法の定める犯罪の多い関係もございますけれども、それぞれ選挙運動期間前後を通じて相当ございますので、一生懸命努力しても見つからぬよりな事件もあろうと思います。そういった点につきましては、警察も大いに努力いたしますけれども国民監視のもとに行われる選挙運動でございますので、国民の目からのがれるということは民主主義の原則からしてないように努めるのが原則でございますので、国民の御協力のもとに適正な捜査によって国会のお定めになった公職選挙法が確保できる、こういう態勢は仕組めると思いますので、皆さんの御協力のもとにそういうことができると思います。それによってこの法律の執行は可能である、こういうふうに思っておりますので、御了承願いたいと思います。
  11. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 力一ぱいの能力を発揮すれば何とか期待に沿うような活動がで遂るのでなかろうかという御返事、御意見だろうと思います。今の事件がありましたので、私、この事件だけでなく、あちらこちら地方選挙に参りましたから、各地方の末端警察官やあるいは県警察等の意見も聞いて回ったわけであります。そうすると、大体ざっくばらんに言って二派に分れると思います。一つは、大体こんなものは無理だ、こんなものをやって、一体どこに線を引いてよいかわからぬし、これを取り締れと言うのは無理だという話と、大体、この選挙違反だけでなくて、ほかの問題も全部無理なんだから、どこに線を引いても、これはどうしようもない、ざっくばらんに言うと私ども選挙期間中は一番商売繁昌するときで、力一ぱい活動してできるだけのことをするだけだという話があったわけであります。今のお話を聞くと、万遺憾なきを期したいというお話でございます。そうして、ある程度期待し得るのではないか、というのは国民の監視があるから云々というふうに聞えます。いなかに行ってみなさい。公平に見て、選挙違反の問題については、偉い人、こわい人は警察の方では手を染めないのだ、そうでない方は強硬に行くのだというのが国民の常識です。従いまして、供応または買収に類するものは、大体陰に隠れてこっそりやられているので、それは常習的に目をおおうというのが、いなかの警察の常識です。そしてむしろ今度出てきた文書違反文書図画の方は一生懸命にやる、この前もお話がありましたけれども、電柱の陰に隠れておってやるというぐらいで、そういうことが常識的に目につくぐらいだと私は思うのであります。従いまして、先ほどのお話によりますと、国民の監視の中で行われる選挙であるから、今の警察の力を一ぱい出してやれば、何とか遺憾なきを期し得られるように考えられるという御意見のようでありましたけれども、私は、ほんとうのことを言うと、今度あがってきている違反事件あるいは違反容疑事件と、この改正前の違反容疑あるいは違反事件と比べてみて、その辺から、ほんとうにこれは今の警察では無理だとか、あるいは常識的にどうだとかいう率直な意見を実は伺いたかったのです。この委員会、ではお立場もあろうと思いますので、そういうことを言っても、ざっくばらんの話になるかどうか疑問でありますけれども、私は重ねて、今のような御意見につきまして、ほんとうに改正前と後との違反事件から演繹して責任者としての御意見を承われれば幸いだと思うのであります。先ほどと同じ御意見でありましたら、けっこうでございます。
  12. 中川薫治

    中川(薫)政府委員 佐々木委員が各地方を回られて警察官の言動等意見を伺われた。警察官個人がいろいろの意見を申すことは自由でございますが、こういうことが言えようと思います。選挙違反事件外の事件にも共通な事件がございますけれども選挙違反事件相当多くの犯罪目的罪である、当選を得または得しめる目的で何々の行為をした者、こういうことになっているので、犯罪捜査の技術として非常に困難がある、ある行為が行われても、当選を得または得しめる目的かどうかということを判定するのに非常に困難がある、そういう事実を証明するということが必要であるので、そういう努力は大いにするけれども、全国で行われておる犯罪のすべてを、神様から見れば犯罪と思われるすべての事件を証拠に基いて犯罪として立証するのには大へん困難であろう、こういうような考え方に基く意見であろうと思うのでありますが、そういう点はわれわれも同様に考えるのであります。ところが、その点は、証拠に基いて捜査しなければならぬことは当然でございますが、大体神様から見ればここでこうこういう事犯があったと思われるけれども、それを証拠に基いて捜査するのには困難である、こういう場合はあろうかと思います。そこで、そういう証拠主義の原則をくつがえす考えはわれわれございませんけれども、証拠という点になると、それを見聞した人とか、それに関与した人とか、それを見ておったという人たちが、その証拠収集に協力いたされまして、あの場合には確かにこうこういう行為がございました、こういう点の相互関係協力がないと、証拠が少い。そういう点から、証拠が見つかりやすいかどうかという点で、すべての犯罪、ことに選挙犯罪のごとく目的を証明しなければならぬ犯罪捜査には困難な点がある、こういう点は言えようかと思うのであります。ところが、佐々木委員の御意見の一つに、今度公職選挙法が過般改正された結果、警察形式犯ばかり多くやって、買収とかそういった事件をあまりやっていないじゃないか、こういうふうに、私、誤解したかもしれませんが、受け取ったようなお話があったのでございますが、これは、犯罪統計の面から見ますと、今回の事件も買収関係が圧倒的に多うございまして、それ以外の事件は買収の件数に比しては少い、こういうことに統計上相なっているような実情でございます。
  13. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 この問題は、押し問答みたいになりますので、この辺でとめておきたいと思います。  最後に、意見を一つだけ言っておきたいと思いますが、本来ならば、こういう選挙法みたいなものはたびたび修正変更すべきではなくて、法の運用によってだんだん悪いところを直していってたとえば非常に厳格な形式犯をたくさんうたった法律でありましても、これを一ぺんに法律を直しますと、取り締る方も運動する方もこんがらかってしょうがない。従って、法自身には少しぐらい不満があっても、それをだんだんと運用によって、この条文が死文に化するような状態にまで持っていって、それをすぽっと落していくというふうにして、改正していくのが私は理想だと思うのであります。従いまして、今度の改正選挙法が行われました際においても、その前の旧選挙法当時と同じように、選挙で一番の犯罪というものは供応、買収なのであって、その他のものは犯罪ではない犯罪ではないと言えばおかしいのですが、犯罪を惹起する可能性があるので一応法的に犯罪だということにしてしまおうということですから、そっちに目的があ、るのではなしに、供応、買収という本格的なところに一番本来の目的があるので、そこに目的をしぼって運用を持っていって、理想的な選挙法にしていくのが私はほんとうだろうと思うのです。ところが、まことに残念な話でありますけれども、わが国の現状は、国民の常識も、あるいは運動する方もでしょうが、また警察の取り締る方のやり方を見ましても、むしろ形式違反の方は逆に最大の拡張解釈をして、そうして今度はまた敵方を陥れる場合にもそうですが、そうしていって、結局どうも、運用でもって一番本質のところに問題を追い込もうとするところからだんだん遠ざかっていく可能性がある。従って、今の警察の方針からいくと、幾ら選挙法を変えてみても、ややこしくてしょうがない。早い話が、警察の態度を見ると、今度の選挙法では、自動車に乗って手を振ると、これは違反だと言うけれども、あなた方はほんとうにそう思うかと聞いてみたところ、大多数の警察官は、明らかに違反で、候補者が車に乗っていて手を振るのは違反だ、しかしながら大目に見る方針を取っておる、こういう話でありました。また、あるところでは、いや、そんなものは犯罪ではない、選挙違反の取締りの対象にならないのだから、それは違反と見るべきではない、こういう話のあったところもあります。従って、そういう話が出ますと、いなかの場合には、手を振っても悪いのだそうだということから、それは大目に見られておるのだから、何かほかの場合に警察に文句を言おうものなら、あのときに手を振ったのは違反じゃないかとしかられるのに違いないというおそれから、それを言うて行かないので、その結果逆に選挙活動が放漫になっているというふうにさえ感じられるわけであります。従って、選挙違反の取締りというものは、犯罪発見するということだけでなくて、政・治行為と結びついておりますから、運用上、取締り上、この辺でもってほんとうに一段と目的的なというか一段と反省された取締り方針がとられない限り、選挙法の問題というのは前進しないという気がしてしようがないわけであります。これは意見でありますから、お聞き流しを願えばけっこうでありますが、選挙法を扱う委員会といたしましては、今の警察の取締りのやり方というものと密接不可分に関係せざるを得ないということを痛感しておったわけであります。先ほどの私の区域に関する事件の御調査を願ったのもそういうわけであります。時間の関係もありますので、これで終ります。
  14. 島上善五郎

    島上委員長 森三樹二君。
  15. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は今中川政府委員から報告されました小樽事件についてお尋ねしたいと思います。私が先般あなたに調査を御依頼いたしましたのは、事件そのものの報告ではなくて、警察の行遂過ぎがあるから、その行き過ぎがあるかどうかという点を究明していただきたい、このように私は申し上げたのであります。すなわち、過般の小樽地方選挙において婦人の教職員の方その他男子方々を長い間勾留したことが不当であるというように私は先般の委員会において申し上げたのですが、その不当なる行き過ぎについて、あなたの方から小樽警察署あるいは捜査主任等に対して一つ十分調査をして、その間違いを是正してもらいたい、こういうように私は希望を申し添えてあったのでありますが、それについてはどういう調査ができておるのか、その調査の結果をお聞きしたい。
  16. 中川薫治

    中川(薫)政府委員 森委員の御質問の趣旨は、今重ねておっしゃられたような趣旨に私も理解して、その意味で調査をいたしたのであります。犯罪がありました場合に捜査するということは、これは理屈つぼくなって恐縮でございますが、われわれ警察法律によっての義務は曲げるわけにはいかないのでございますが、調査の要点は、方法において、任意事情を聞いて真実発見目的を達すべきものを、法律に定めがあるからとは言いながら強制の処分まで用いてしなければ真実発見ができなかったかどうか、強制の処分まで用いても真実発見ができるような事案であるのに強制処分を用いたとすれば、これは御指摘のように行き過ぎである、こういう考え方をもちまして、本事件を北海道本部をして調べせしめたのでありますが、最後には事実認定の問題になろうかと思うのでございますが、何でもかんでも違反だ、全部令状をもって強制処分するのだ、こういう態度を持っておるならば、確かに行き過ぎでございます。本件の場合にはそういう態度であったかどうかということを慎重に調査したのでございますが、本件の場合においても任意捜査を極力するように努力をした形跡もあるのであります。ところが、本件事案については現在捜査中でありますので、事案はまだはっきりしない点も確かに多いのでございますが、容疑内容は白であるかもしれませんが、容疑内容が、複数の関係者方々が相互に関係をせられて、それに基いての事案にあらずやと疑われる節がありましたので、ねこそぎ強制処分をしたわけではありませんが、たとえば、出頭に応じていただけなかった方々、それから、出頭には応じていただいたけれども、どうも相互関連等についてはっきりしない、こういう方につきまして、やむを得ず強制処分の措置がとられておる、こういうふうに見受けられるかどうかということもありますので、本件事案につきましては御指摘のごとく行き過ぎでなかろうかと疑われる節も皆無とは申せませんけれども、これが大へん行き過ぎであろう、こういうふうにも理解できない。それで、非常にずさんな言葉を使って恐縮でございますが、ボーダー・ライン・ケースでなかろうか、こういうふうに思って調査の結果を聞いておった次第でございます。それで、何でもかんでも強制処分をするのだ、強制処分をしなければならないのだというような考え方をかりに持っておるとすれば、御指摘の通り行き過ぎでございます。ところが、本件は、そういう角度で私ども調査せしめたのでございますが、なるべく任意でやりたいという意図を持ち、ないしは関係者の方についても事情を聞くような態度をとり、それから、任意事情を聞くべく呼んだけれども、ある方には応じていただけなかった、こういう問題もあり、また、応じていただいた方も相当多いのでございますが、この方も全然事情発見するに登る資料の御提供がなかったので、事柄が相互に関連する容疑がございましたので、これは、本人の被疑者のためにも、隔離して事情を聞いて、むしろそういう捜査をやることによって事案真相発見に努めた方が公正感を与える、こういう判断をしたことが、北海道の警察がこの場合大へん行き過ぎだというふうな結論も出ない御指摘のような考え方を持ちまして調べたのだけれども、大へん行き過ぎとも言えない。ところが、これが堂々たるもので何ら、行き過ぎがないと、言い切れることもできない。ちょうどホーダー・ライン・ケースでないか、こういうふうな感じを受けているのでございます。
  17. 森三樹二

    ○森(三)委員 ただいま中川さんから非常にデリケートな御答弁をなさったのだが、それで、私は一つ一つ問題を究明していきたいと思う。まず第一に、婦人の河村遂きくという教職員の方、その人の犯罪内容というものを聞いているのかどうか。大体容疑としては個別訪問で三軒か四軒回ったそうです。それは、学校の児童の家庭訪問という習慣が毎月一ぺんないし二へんある。その家庭訪問の習慣であって、先生方は、選挙中であろうとなかろうと、家庭訪問をして、そうして子供たちの教育の向上のためにはかるということは当然なさなければならない義務です。そこで河村きくという女の方が回ったというのですが、それを警察で聞いて、私は本人からも聞きましたが、三軒ないし四軒だそうです。そのわずか三軒か四軒の家庭訪問をしたのが果して選挙法上にいうところの個別訪問の犯罪に該当するかどうかということも、これは問題でありますが、いやしくも三軒、四軒の個別訪問をしたというその先生を十数日間拘禁しなければならないということは私は絶対ないと思う。そこに行き過ぎがあると思う。あなたは御存じかと思いまするけれども、過般の総選挙終了後、官憲の不当なる圧迫によって全国で七名の自殺者を出しておることもあなたは御存じだと思うのです。そこで、衆議院の法務委員会におきましても、この警察当局捜査の行遂過きを是正するために、なるべく形式犯あるいは個別訪問等のごとき犯罪に対しては逮捕するというような手荒なことをしないで捜査しなければいけない、こういう決議をなしまして、全国の検察庁あるいは警察、これらの方面に通達したわけであります。それをあなた方は知らないはずはないと思う。もし知らないなら知らないと言っていただいてけっこうですが、その通牒を発せられておる、しかも本件小樽の場合におきましては、先生方を召喚して、そうして、本人が何ら逃亡するとかあるいは証拠隠滅のおそれがないにかかわらず、その女の先生を十数日拘禁するということは果して妥当かどうか。あなたがみずから警察を指揮監督する任におってこれを容認するならば、私は日本の警察というものはもう警察みずから暴力を肯定しておるものと言わなければならぬと思うのです。かりによしんば河村きくという女の先生がやったことが犯罪に該当するとしても、私は逮捕なんというのは行遂過ぎだと思う。それと同時に、警察としては大体個別訪問を何軒くらいしたものは犯罪成立の認定をしておるか。これはあなた方も検祭当局と打ち合わしているはずである。大体、私の知る範囲内においては、個別訪問を五軒以上やらなければ処罰していないのです。一つや二つ個別訪問をして、たとえばだれそれ頼むと言ったような事案があったにしても、これは不起訴にしている。大体処罰しているのは五軒以上程度。私は調べておりまするが、これも私はあなたの見解を聞きたい。従って、その河村きくなる者は、警察捜査によって、あなたの手元にどういう報告が来ておるか知らぬけれども、三軒か四軒しか訪問していないのです。かりに投票依頼行為があったとしても、それは処罰としては微罪という範囲に属していると思う。そういうふうに、犯罪があったにしても微罪だということが初めからわかっている者を、どういうわけで強制収容したか。私はこの問題で小樽警察署長とも会ったのです。何と言うか、はなはだげすな言葉で言いますが、成り上り者だそうだ。全く刑事訴訟法の本質を十分わきまえないところの、いわゆる何でもかでも小さな事件捜査して、そうしていわゆる事件を数でこなそう――こういうような言葉は悪いかもしれないけれども、非常にあさましい警察根性、刑事根性を持った人だ、これは非常に非民主的な警察だということを言われておる。あなたは、小樽警察署長からの直接の答弁を聞いたとか、あるいは小樽警察署長に会って直接この事件調査しておるのではないようですが、私は直接捜査してもらいたいと思う。北海道方面隊か何かの本部を通じてやっておられるようでありますが、私はこういう問題を直接やってもらわなければ、その事件真相はキャッチできないと思う。そういう曲りくねってだんだんと人を中に置いて話をすれば、真相はキャッチできない。こういう調査を北海道方面本部を通じてやったのでは、当然札幌の本部では小樽警察であろうがどこの警察であろうが自分の所管の警察がやったことに対してはかばってやるでしょう。行き過ぎでないんだといってかばってやるところの基本方針に基いたところの調査があなたのところに来ておることははっきりわかっておる。これは、われわれだって、たとえば同僚の悪事であるとかあるいは過失に対しては、できるだけかばってやるというのは人情です。あなた方も、警察という立場においては、自分の取締りの対象になっておるところの小樽警察が不当な行遂過ぎをやりました、これはあなたは心に思ってもなかなか言えないだろうと思う。しかし、それを毅然としてやらなければ、この警察の行き過ぎというものは是正することができない。私はその点を一つあなたに承わりたいと思うのです。
  18. 中川薫治

    中川(薫)政府委員 まず根本的の点からお答えいたしますが、私ども、日本国憲法に根本は由来すると思うのであります。ほかのこともそうでございますけれども犯罪捜査をするに当りましては、個人の基本的人権を十分に尊重しなければならぬ、これはもう憲法に由来する民主主義の根本原理でございまして、私ども憲法治下の国民としても当然そう理解する。国民としてそう理解しておるばかりでなしに、私ども公務員でありますので、公務の執行に当りましては、個々の個人の人権を尊重して、それと公共の福祉を調和して公務を執行する。その具体的方法は、国会でお定めになった法律に基いてそれを具現する、こういう態度で、自分もそう考えておりますし、そういう根本原理で警察の教養が行われておるのであります。それで、ことに犯罪捜査に当りまして、逮捕とか、その他押収とか、そういった強制処分の定めが刑事訴訟法等によってございますけれども、その定めに基いて強制処分をするに当りましては、必要最小限度にしぼるべ遂であろう、そういう強制処分をすることなくして真実発見ができて、それに基いて刑事手続の円滑な運用に資して、公共の福祉を達成することを理想とする、こういう点は根本原理で、ございまして、御承知の通りでございます。過般当院の法務委員会におきまして、自殺者ができた事情等にもかんがみられ、極力任意捜査の方式を用いること、こういう文字が使われておりますが、それもその精神に出るものと思いますが、その法務委員会の御決定の趣旨も全国の警察に通知いたしまして、この根本原理は憲法から出ること当然でございますけれども、その趣旨もよく了得しておるのでございます。  本件の場合、君自身で行って調査するならわかるけれども、北海道本部に調査さしてはだめじゃないかという点は、一応御趣旨はよくわかりますけれども、私どもの大体の考え方は、警察のやり方が不当でないように事前防止にまず努めるのでございますが、不幸にして行き過ぎたのではなかろうかという事件発見した場合におきましては、それぞれ警察には最末端事案につきましては上級畜督組織官僚機構だといってお叱りになるかもしれませんが、そういう役割でそれぞれ北海道本部等が置かれておりますので、そういう使命を果させるのには最も格好な機関でありますので、その格好な機関をして調査せしめたのでございます。それから、実際事務的に申しましても、こういう事件を個々に調査するのに、東京から行きましても日数等もかかるしいたしますので、現地のそういった第一の署長等の非行等を監督する組織がございますし、ことに、かりに非行がありました場合におきましては、問題の事案は地方公務員でございますので、地方公務員に対しましては私ども法律権限として懲戒する措置もできませんので、そういった面は北海道の警察の定めるところに基く懲戒措置ということにならざるを得ないのでございます。そういう必要等からも、北海道本部をして調査せしめたのでございます。根本精神は森委員の御覧の通りでございますが、本件事案が直に行き過ぎかどうか、こういう点でございますが、先ほどもお答えしたつもりでございますが、十日間とめておいたのはけしからぬという点でございますが、私は責任は回避いたしませんが、まず本件事案逮捕の必要ありと認定いたしましたのは当該警察でございますので、警察に責任がございます。そうして、これは御案内の通り四十八時間以内に身柄を送致しなければならぬことになっておりますので、送致して、勾留すべきかいなやという点は、警察意見も十分御参酌願ってはおりますけれども、最終決定としては検察官が御決定になって、その検察官はしかも裁判官の勾留状を御請求なさるという措置でございますので、責任は転嫁いたしませんけれども、こういう機関につきましては、われわれは大いに連絡を密にし、協力をする責任はお互いに持っておりますけれども、最終決定機関は検察官でございます。ところが、お互い連絡を密にする責任を持っておりますから、大いに協力すべきであって、相互の責任は相互に反省し合うということは当然でございますが、今回もこういったことでいたずらに長くとめているのじやなかろうかという疑念は確かに私も持ちまして調べたのでございます。比較的過去によくあり得たのは、一ぺんも調べないで長く勾留しているということがずっと昔あった例がありますので、そういうことではなかろうかと思って調べたのでありますが、本件事案に関する限りは、毎日警察官または検察官真実発見のために調べておる実情でございますので、調べもせずすっぽかして長いこと放置しておったというそしりは、この場合は当らない、こういう点だろうと思うのであります。  それから、その次の御質問の、何軒回れば戸別訪問かという点は、法律解釈としては釈迦に説法だからいたしませんが、御案内の通り、犯罪がありましても、現行刑事訴訟法起訴便宜主義でございますので、検察官は、犯罪の情状その他の状況にかんがみまして、起訴すべきか起訴すべからざるかということを決定する。釈迦に説法でございますが、検事は起訴便宜主義をとっておりますので、起訴しない事件というものが相当たくさんあり得るわけです。それで、戸別訪問事件で何軒くらいやれば戸別訪問起訴するかという点は、皆さん、ことに法曹界においてはいつも御研究と思いますが、一応検察官の内部で起訴基準というものがございます。ところが、これはわれわれも承知しておりますけれども、これはうそをつく意味では決してございませんが、検察官として当然だろうと思いますが、起訴基準をあまり天下に公表いたしますと、その起訴基準がかりにX軒となっておりますと、Xマイナス一軒までは大丈夫ということになって、防犯の目的も達せられないので、検察庁におかれましては起訴基準は公表しないという態度をとられております。その態度は相当理由があろうと思いますので、私どもよく存じておりますけれども、そういう関係等を念慮に置きまして、ここで申し上げることを差し控えたいと思うのであります。  それから、河村きくさんの関係の訪問先が何軒であったかという点でございますが、これも捜査中でありますので終局決定は出ておりませんが、今お述べになりました、三軒か四軒と森委員は御調査のようでございますが、私ども警察関係調査では、それよりも多い数字になっております。
  19. 森三樹二

    ○森(三)委員 基本観念等については、今あなたの言った憲法の精神を順奉してということになる。お互い議員もあるいは公務員も、憲法を守るということは、これは憲法九十九条の規定がある。まさにその通りです。あなたのような方ばかりが警察官なら、それはいいかもしれぬけれども、全くそれは教養の低い、言っては悪いけれども、刑事の諸君なんといえば、ほとんど、犯罪がはっきりしていなくても、これを逮捕して手柄にしよう、選挙違反等についても、件数を上げて、そうして功名を立てようということで、とにかく、昔はこの警視庁管下においても選挙違反事件を十件あげた者はこれに警視総監が金一封を贈ってこれを表彰したという例もあるのです。やはり警察は一つ件数を上げようという心理が働いていると私は思う。そのために、何も逮捕しなくてもいいものを非常に無理な検挙をやる。あなたは戸別訪問として私が申し上げた三軒ないし四軒よりか多いというようなことを言われますが、これは私もよく調査してあるのです。これはあなたも今後調査してもらわなければならぬ。先刻も言いましたように、衆議院の法務委員会におきましては、形式犯とかあるいは簡単な戸別訪問等については手荒なことはしないように、なるべく任意調べる、強制収容すべきでないということを言っている。私は小樽警察署長にそういう通牒が来ているはずだと言ったところが、それに対しても知らないというような答弁をしておりました。あなたは、さっき、警察の持ち時間は四十八時間だ、それを過ぎれば検察庁に身柄を渡して、検察官によってその身柄が強制収容されるのだからと言って、何だか責任の回避のようなことを言っておりましたが、そもそも事の起りは、警察が身柄を逮捕するというところに問題が始まっている。それで、私は検事にも会いましたが、検事も、警察逮捕した者は、一応やはり勾留の形を継続して、そうして調べないというと、検事が絶えず犯罪捜査をしておる第一線の警察官逮捕してきた者をすべて放してしまうというと、その警察官犯罪捜査の熱意というものが今後期待できないというような、検事の警察官に対する非常な気がねがある。これも事実です。従って、警察官逮捕してきた者はやはり一応検事も相当期間勾留するというような態度をとっているのです。これも間違った考えだと私は思うのですが、そもそも事の始まりは警察逮捕したことにあるのであります。それだから、その河村きくその者を逮捕しなくても、犯罪があるとするならば幾らでも傍証によって捜査の裏づけもできるわけなんです。あるいは、あなたがおっしやるように、戸別訪問が五軒以上十軒も二十軒もあるならば起訴もできるでしょう。ただ本人を強制収容しなくても、本人の取調べだけでなく、傍証によってこれを起訴しようと思えばできる事件でしょう。それを、たくさんの児童をかかえて貴重な授業をやらなければならぬ教職員を無理やり逮捕して、その逮捕は実に十二日間に及んだわけでありますが、これは重大な問題だと思うのです。その人がもっと実質的な選挙違反犯罪を行なっておったというならば、また格別でありますけれども、先ほどのようなわずかな件数の戸別訪問をしておったというようなこの事案についてこれを逮捕するということは、私はどうしても行遂過ぎだし思うのです。そこで、あなた自身がこれを警察官として取り扱う場合一体どういうお考えを持たれるか、あなた自身が、これは行き過ぎでなかった、当りまえだ、自分としてもその河村きくという者を逮捕して取調べすることが正当だと思うという判断を持つのか、あるいは、これは行き過ぎだったというように反省するお考えを持っておられるか、これもお尋ねしてみたいと思うのです。
  20. 中川薫治

    中川(薫)政府委員 現在本件捜査中でございます。戸別訪問先が三、四軒だとおっしやいますが、われわれの現在の捜査ではもっと多い、こういうことを申し上げたのでございます。これは最終的にはどうなりますか、現在、本件起訴すべき限りでなければ、そういう捜査段階で進みます。個個の問題になりますので、そこら辺のことはよしますが、本件事件逮捕したことは行き過ぎかどうか、君はどう思うか、こういう御質問であります。これは率直に申しますと、たとえば河村きくさんが戸別訪聞を若干やられて、それを無理やりに逮捕したということだけで、あったならば、行き過ぎがあったと思うのであります。しかし、それも態様々々によりますから、必ずしも一がいに言えませんが、そういう関係もあるかと思います。本件事案は、先はども申しましたごとく、複数関係の万々が大体しめし合せてやられたのではなかろうかと推知遂れるような資料がございました。それぞれ任意でやっておりますと、その方が通謀なさるかどうかは別といたしまして、通謀し得るプロバビリティがあるという捜査になってくる。それが公正な捜査とは必ずしも言いがたい。そういう観点をあわせて考えて参りますと、本件事案は、逮捕するのが当然だと言うのにはいささかちゅうちよいたしますけれども、これがまことに行き過ぎであるということも言えない。繰り返し申し上げて恐縮でございますが、私が直接やった事件でも、この河村きくさんだけが単純にこういう事件をやられた場合に当りましては、御批判が当ろうと思いますけれども、複数の関係の方方が相互に脈絡を持たれたと疑われる理由相当ある実情でございますので、かりに脈絡がなくてやられておったかもしれませんが、それぞれ隔離して事情を聴取した方が真実発見の公正感を得るという判断をとることが行き過ぎである、こうも言えない。河村きくさんの被疑事件だけが独立して行われて、それと類似の事件はその日に一つもない、こういう事件とは違う態様でして、御案内のごとく強制処分をする場合は、御指摘がございましたごとく逃亡のおそれがある場合、証拠隠滅のおそれがある場合、私たちは大体こういうふうにしぼって考えておるのでございますが、河村きくさんが逃亡のおそれありとは私は認められないと思います。これは逃亡のおそれなしと思いますが、証拠隠滅のおそれありという関係は、御案内の通り、被疑者が複数の場合は相互に連絡が自由な関係にあると証拠隠滅のプロバビリティが多いものであります。森委員は法曹界の大先輩でございますので御承知のように、収賄と贈賄という関係はよく隔離して調べないとわからないのと同様に、複数の関係事件は隔離して調べることが、真実発見のために公正感を与えるという念慮もございますので、全く河村きくさんの事件だけが独立した事件であれば御指摘の点も当ろうと思うのですが、相関連して意思が通ずるということが疑われる状態の場合におきましては、いささか頭をかしげざるを得ない、こう思うのであります。
  21. 森三樹二

    ○森(三)委員 中川さんは、警察官の取締りの立場において、部下といいますか、地方で起ったことに対しては、やはりそれをかばうという心理の方が先に大きくあなたの答弁の中には影響しておると思うのです。それが行き過ぎであるかのごときないかのごとき、結論ははなはだわからないのですが、しかし、あなたの答弁されるごとくであるとしても、とにかく、そのほかに、河村きく以外に五人の男の先生逮捕しておるのでありまするから、それがかりに謀議したとか相談したとかいうことであったとしても、その五人の他の男の人々を調べれば必ずこちらの方の問題もわかってくるのであって、この河村きくという四十幾つになる女の先生逮捕するなんということはまことに行き過ぎであり、いやがらせであって、教育というものに対して非常な悪影響を及ぼしておると私は思うのです。そうしなければそれが調べられぬというようなことでは、私は日本の捜査官の腕前というものは全く信用できないのです。刑事訴訟法上、取調べに際して逮捕しなければならないということは原則ではないのです。逮補しないで調べることが原則なんです。なるべく人身の拘束をしないで調べられるものは調べる、万やむを得ざる場合においてこれを逮捕するというのが建前です。何でもかんでもいいから逮捕するのが先だというような警案官の今日の考えというものは、そこに大きな人権じゅうりんが行われる可能性があると私は思うのです。あなたは、先ほど来、この事件は謀議性といいますかお互いに相談をし合っておる可能性があるというような前提のもとにお答えになっておりますが、百歩を譲って、かりにそういうような可能性があったにしても、何も河村きくという人を逮捕しなくても、警察あと五人の男の先生をちゃんと握っておるのですから、それらの供述からこの河村きくなる人が謀議に参画しているかいないかというようなことは当然出てくる筋合いなんです。私は、やはり、こうした場合において女の先生逮捕したということは、あくまでも小樽警察の行き過ぎだと思う。しかも小樽警察署長は非常に非民主的な署長であるということは一般市民の声です。こういう場合に私は何もあなたにわざわざ小樽へ行ってくれとは申しません。しかもこの忙しい中において、あなたは全国を調査している関係で行けるはずはありませんが、小樽警察署へ書面をやって、衆議院の委員会において森委員もこういう発言をしておるけれども、そういろおそれはなかったかどうかというような書面上の取調べは可能性があると私は思うのです。そうしなければ、北海道の本部でもってこの事件というものは握りつぶされてくる。圧縮されてしまう。結局、この事件は、そのままあなたのところへ来ないで、北海道の本部でもって札幌と小樽とは汽車で四、五十分のところですから、やはり自分たちの仲間をかばおうという一つの職域的なお互いの立場に立って、小樽警察署長が行き過ぎ、であった、こういう捜査の行き過ぎがあったというような報告はできないのじゃないかと思うのです。私の考、えではこれは直接あなたが小樽警察署に書面をもってお調べになるものだと考えておったのですが、今後そういうお取調べをしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  22. 中川薫治

    中川(薫)政府委員 御趣旨の点はよくわかります。私は悪意はないのですけれども、いろいろかばうとおっしゃいますけれども、ざっくばらんに申しますと、お互い人間ですから、友だちをかばうとか、兄弟をかばうという心理もあると思いますが、私たちは警察をよくしたいという念願は人後に落ちないと思うのです。国会等においても十分論議していただ遂、批判を仰ぐことによって、従来間違っておったことはもちろんでございますが、間違いそうなところをまずなくしていく、こういう態度でやりたいと思っております。それで、お気づきの点は公けの席でもどしどしお教え願って、私どもの職務としては、りっぱな警察にしたい、国民の期待にそむかない警察にしたい、こうういう熱意で、思ったことを率直に言う、こういう態度をとりたいと思います。私が直接小樽署長に手紙を出すのも一案だと思うのですけれども、これは、札幌に所在します北海道の本部を指定してと申しますけれども、本部でかってに作文をして私の方へ報告してもらっては困りますので、そういう点がないように十分今までの調査も進めたつもりであります。それから、他の機会にここでいろいろ御批判を仰ぐ問題も、盛んに中間段階でかってに作文して、いいかげんにしておくというような態度はとりたくない。そんなことをしていては、警察はちっともよくならぬと思いますので、直接的に真実発見できるような方法は、過去も工夫したつもりでございますし、今後も工夫していきたいと思います。君ら、どうせ警察仲間だからかばうのじゃないか、ことに北海道本部ならさらに親近感が強いからかばうのじゃないか。皆さんからごらんになれば、そういうふうにこらんになるのも無理はないと思いますが、そういうことをやっていては、警察がよくなりませんので、そういう点をお互いが反省し合って、ずさんな言葉で言えば、警察の悪口を率直に言っていただく、よくしていただくために資料をどしどし御提供いただくことは幸福だと思っております。私が直接手紙を出しますことは、いやではありませんが、私はやはり中央機関の一員でございますので、それが越権して――北海道の本部長が人事権を持っているわけですから、僕が調べてこれはけしからぬということになったところで、かりに北海道の本部長が悪くて処置してくれないと、意味がありませんので、北海道の本部の責任関係を明確にして、その明確にしたことに基いて事柄真相発見することが警察をよくするゆえんであり、それが御趣旨に沿うゆえんだと思いますので、方法等は今申されたことも念頭に置いて今後もやっていきたいと思います。
  23. 森三樹二

    ○森(三)委員 今、中川さんは、警察官の行きすぎその他不在があったならば、公けの場を通じてこのようにいろいろと意見を述べてもらいたい、今後われわれはできるだけそれに対して協力するようにしたいという御発言がありまして、この点は私非常に欣快に考えます。しかしながら、なかなかこれは油断のならぬことでありまして、昔の選挙法刑事訴訟法の時代においては、警視庁あたりでは警察官がよく被疑者をなぐった。共産党の諸君に対する警察官の暴行などというものはひどいものであった。それから、選挙違反なんかも、数人の刑事が夜も眠らさないで取り調べるという例もあります。それから、持っている木刀でなぐったというようなこともあるのであります。そうした乱暴な警察官によって、ついないことを虚偽の自白を強要された被告人が、公判廷でもって、私はこういう刑事になぐられた、それで、もう夜は眠らしてくれないし、裁判になったら私は明るみを立てようとして、言われるままに調書に氏名を記載した、こういうことを申し立てる事案があったわけです。そこで、その警察官を証人として呼んで、法廷で、君はこの被告人をなぐったことがあるじゃないか、何月何日の夜の何時に木刀でなぐったじゃないかといって質問いたしましても、けろりとして、いや、私はなぐったことは絶対ございませんと言って、何といっても言わないのです。結局なぐり得だということは、われわれしばしば経験している。今日の警察官は、あなた方の非常な努力によって、大体なぐるということはないとは言いません。間々ありますが、なぐりはせぬけれども、なぐるにかわる別個な方法によって、黙否権があるということも告げもしないし、言わなければとにかく今晩とめるんだ、言わないうちは何日でもとめるんだと言って、あなたも言われたように警察では四十八時間の持ち時間しかないにもかかわらず、お前が言わないうちは何日でも帰さないんだというような脅迫や、その他いろいろな脅迫がましいことを言って、自白の強要をしている例は全国ざらです。そこで、あなたは札幌の本部からの報告に基いて今ここで回答されたのでありますが、結局、小樽警察署の方へ札幌から調査をやりました場合、われわれは決して行き過ぎはありません、河村なる者はこういうようにやっているんですと言って、事件を誇大に作って報告書を札幌の方へ提出する。札幌の方ではそれをそのまま東京の方へ、決して小樽警察署は行き過ぎがなかったんだと言ってくれば、結局あなたとしては行き過ぎがなかったという答弁をせざるを得ない。それじゃ全く意味をなさないのです。従って、私はあなたの立場は実に重大だと思う。人権を擁護し、警察官の行き過ぎを是正するところの単大な使命を課せられていると思うのです。あなた方がしっかりしてもらわなければば、ほんとうにファッショ警察になるおそれがあります。自分の職権を乱門して、飲み食いをしても金は払わぬ、あるいは婦女子に悪いことをする、行き過ぎている警察官がたくさんある。私は、例を申せというならば、新聞記事を持ってきてあなたにお見せしてもいい。あまり目に余る警察官があったから、私、警察署に行って問題にしたことがありますが、あなたとしても、警察官の教養はもとより、その犯罪捜査において、いわゆる選挙違反などは、違反にかかっている人は、その辺の悪質などろぼうとか常習のすりだとかそういうものと違うのであって、社会的にも相当立場もあり、職業もあり、あなたの言われているごとく逃亡などする人はほとんどいないのですから、十分その辺はお考えになってやるように、今後全国的に取締りをしていただかなければならないと思うのです。  そとで、本件に立ち返るのですが、小樽署長は非民主的で、小樽市民の評判から言っても非難ごうごうたるものである。私も二日ばかり滞在したけれども警察官としてはまことに非民主的な男であるという印象を強く受けた。こうした者に対しては、あなたは自分の地位と職場の尊いことを勘案されまして、今後注意を促してもらいたい。しかも、この事件の解決につきましては、われわれとしてはわれわれの立場においてこれを擁護しなければならぬと思うのですが、こういう実に行き過ぎた警察官によって自分の職業をじゅうりんせられ、しかも強制収容されたところの被疑者に対しは、私はまことに気の毒だと思っておるのです。その点はあなた方もお考えを願いたい、かように思うのです。中川さんにおいても、今後一つ十分注意をして、そうして、札幌の方へも、小樽警察に関しては今後十分行き過ぎがないように注意をするようにという指令をしてもらいたいと私は思うのです。
  24. 島上善五郎

  25. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 今森委員が言われた警察官の行き過ぎという面から見ると、私ほんとうに同感にたえないのでありますが、今森委員の話された警察官の行き過ぎという点にもう一つつけ加えまして、見込み捜査先ほどのは、たとえば、はがき違反ならはがき違反があった、こういうはがき違反があるからそれを探そうというのですが、そうでなく、たとえば名刺が一枚出た、そうすると、このうしろには必ず買収容疑があるに違いないということで、とっつかまえてきて、泥を吐け泥を吐けと言うが、幾ら言ったって、ないものは吐けない。しかし、それをとてもおどしつけて何か糸口をつかもうとする。これは私のところにもあったわけでありまして、よく私も承知しております。今の森さんのお話の中で、戸別訪問は三、四軒だ、いや、そうじゃない、たくさんあると言われましたけれども選挙違反というものは、御承知のように、ある場合には、調べられる警察官よりも選挙運動をしてもらっている候補者の方がよっぽどよく知っていることがある。それで、ほんとうのことを打ち明けられることがたびたびある。私どももそういうことを打ち明けられてよく知っておって、ほんとうにそうだと信じて疑わない。ほんとうにそうであっても、警察の方は見込み捜査で権限を発動して何でもやれるのです。私の方は警察を動員することはできないからやれない。初めからゼロと百との捜査の違いがあるわけです。従って、先ほどの森さんのお話で、ほんとうに三、四軒かどうかということは、それは実数のほどはわかりませんけれども、とどのつまりは、結局こういうことに落ちる。何か始末書みたいなものを一ぺん書かせて、これさえ書けばそれなら帰してやる。ほんとうはそれに非常に不服なのです。そんなととはないのだけれども、それを書けばこの事件はこれで不起訴にするということで落ちるわけです。それは、本来ならば、警察の方から言うと見込みをもってやったけれども、実際は見込みの結論が出なかったということなのでしょう。警察の方から見れば、この野郎とうとう隠しおおせてしまったと見るほかない。あのやつをあれだけたたいたが、とうとう結論が出なかった、といって結論が何にも出なかったということになると工合が悪いものだから、始末書みたいなものに判を押させられて、そして今後は似たようなことを一切いたしませんというようなことをめてあって、もし何かおかしいことを言えばこれが発動するぞといっておどしつけられる。それに対して、今人民の方の側は何ともやりようがない。私はどうせ警察とのけんかだからだめだ。今の教員組合の方は、公けの問題だから明らかに出しましたけれども、個人的な関係で、しかも相手は警察だと言われれば、僕はだめだ。養父郡程度の、あるいは但馬地方程度の警察とけんかするならば、こっちは社会党を出す、警察がそう言うなら、それを書きなさいというので、書かさせた事件があります。そういうこと自身も、私の関係の場合には全部不起訴起訴かがきまってしまった後でなければ、私はこの委員会においても一つも口外していない。あるいは起訴か不起訴かきまったあとでも、何かしら危険を常に感じておる。あとで何かの場合には言われるぞという危険性を感じているから容易に言わない。私自身もその心配をするから、この委員会その他の言うべき場所においてもなかなか言えない。  せっかく、中川さんは、何とか直していこうじゃないか、聞かせてくれということを言われましたから、つい私も関連して言うわけですが、興味をお持ちになることがないかもしれませんが、もし興味をお持ちになったならば、先ほどの問題と関連してお調べを願いたい。それは、やはり第五区の投票のちょうど二、三日前に、私の実兄ですけれども、これを逮捕した。任意出頭かもしれぬが、いなかでは任意出頭逮捕も効果は同じことです。警察に引っぱっていかれることです。結局それは何もなかったわけですが、それに関連したある女の人、それが相当とめられて、ほんとうを言うと、女の人で素っ裸にされて、とてもひどい取調べを受けた。それは私には言いますけれども、そんなことを外に言ったら、これは行商人をしておるわけですが、行商も絶対に許さぬということで、絶対口に出せぬということになっておる。ですから、私がこれを言って、中川さんにお取調べを願うのに、ほんとうは非常に心配しているの査です。もしそのことがあの辺の警察に知れた場合、には、おそらくその女の人は行商等のことができなくなるだろうという危険を感じておる。だから私は言わなかったわけですけれども、ちょっと何か調査をされれば、じきにわかります。私の兄貴から頼まれたということで、戸別訪問をしたという容疑になっております。これも不起訴にきまりましたから申し上げるわけですけれども、しかもそれは、お前は買収をしたに違いない、証拠があがっている、お前はそれを言わぬけれども佐々木は落選になると言っておどしをかけられて、とてもひどい目にあった。私は、この委員会はそういう人権擁護のための委員会ではありませんが、法律をよくするための委員会だと思って、調査をお願いした。今の小樽事件はああいう形で中川さんが調査を進められるようになったそうでありますので、この委員会として取り上げて調査するということではなくて、私は、非公式でいいから、どうか今の問題をこっそりとお取調べを願いたいと思います。もうすでに済んでおりますから、くれぐれも申し上げますけれども、これが妙なかっこうで出ますと、ほんとうにその人も行商できなくなるほどの危険を感じておることを申し上げておきます。  今の森さんの意見につけ加えて申しますと、警察ではそういう権力を持っておる。普通の人は警察でこうしたことを立証し得る手段は何も持っていない。片一方は、たとえば、これは十軒歩いたと見ておる、そうすれば、十軒歩いたということを立証するために、言わぬものまでとうとう言わせていく、ある場合には、仕方がない、めんどうくさい、行ったこともないのに五軒も言ってしまえというところまで追い込む、そういう権限を持っておるから調べられる。ところが、こっちの方は、逆に警察がそういうことをしたということを立証する何ものも持っていない。それは持っていると言われれば言われましょうけれども、そんなことはみんな隠して言うものではない。そんなことを言えというのは聞く方がやぼみたいなものです。従って、先ほどの森委員のように、ほんとうにこれをうまくやるかやらないかということは、中央でほんとう根本的な、抜本塞源的な態度をもって臨まれない限り、私はもう不可能に近いとさえ考えておるわけであります。今の森さんの意見に関連して、質問といいますか、意見ともつかぬことを申し上げたわけであります。
  26. 島上善五郎

    島上委員長 この際自治庁長官より発言を求められておりますから、これを許します。川島長官。
  27. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 先般の当委員会におきまして森委員より御発言がありました、四月十五日の官報資料版に「地方選挙について」という自治庁からの指示のろちに、地方選挙は党より人だということを記載したことは、これは不穏当ではないかという御意見であります。自治庁の発表した文書として有権者を指導するような文句を書いたことは、私もまことにこれは行き過ぎだ、かように考えるのでございます。きわめて近い官報の資料において取り消しをするということをその際お誓いをいたしておいたのでありまするが、六月十五日発行の官報付録の資料におきまして、「訂正」といたしまして、「四月十五日付官報資料版「地方選挙について」のうち、第三節は、地方選挙においては党より人という点が穏当を欠くので、削除する。自治庁」ということをはっきり明示いたして、これの取り消しをいたしました。同時に、自治庁の部内に対しまして次長から通牒を発しまして、今後再びこういうことを繰り返されないように戒告をいたしたのであります。あわせてその通牒文もここで御披露申し上げてお遂ます。「当庁の名において外部に発表する意見等の取扱いについて、最近自治庁名で官報資料版に掲載された資料の取扱いについて粗漏があり、訂正するの余儀なきに至った事例のあったことはまことに遺憾にたえない。今後当庁の名において外部に意見等を発表する場合はこれが取扱いに慎重を期し、事前に十分上司と打ち合せを行い、遺憾のないようにせられたい。右命により通知する。」こういう措置をとりました。どうか御了解を願いたいと存じます。御報告申し上げます。
  28. 島上善五郎

  29. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 今長官から御報告の、この資料について取り消しを通牒せられ、しかも今後の取扱いについても適正を期すべき措置をとられたということは、私としては、非常におそまきではありまするけれども、すなおな措置と考えるのでありまして、歓迎をするのでありますが、しかし、今伺いますると、この資料の三の初めにあります「候補者が何党に所属するかは国の選挙ほどは重要でない。要は候補者の人物本位で考えるべきであろう。」この文について取り消されたといたしましても、むしろそれ以後の後段の「国の政治は、その性質上いろいろと主義主張が分れ、これによって個々の政策が異ってくるのに対し、地方の政治においては、主義主張の異る余地が余りないのである。したがって、首長や議員になる者は、住民の福祉を平等に実現する人が要求されることとなる。」以下ずっと四の初頭にも「地方自治団体の赤字財政を顧慮しないで急に学校や道路や橋梁等の改修行を行い、住民の歓心を求めるようなこともその一例である。」というように例証まであげて指導がされておるのでありますが、今言われました意味は、三項の前段のみのお考えでありますか、それとも、三項の全部にわたって、また今読み上げました四項の前段というよりも、四項の全部についてもきわめて不穏当な文章でありますが、これらの一切を含めて取り消し、訂正をなさったのかどうか、そういう点を一つはっきりしたいと思います。
  30. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 四月十五日の官報の資料に書いてありますうちの第三節は全部取り消すという意味です。ただ、前回御議論になりました際、党より人という点が非常に重点的に御質問になりましたから、これを引例いたしまして、第三節は全部取り消す、こういう意味の告示をしたわけでございます。
  31. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は、今申し上げましたように、この文書の全体の精神は、これは第三項を中心にしてその前後、特に第一項の点におきましては、「情実因縁に左右されて不公明な投票を行うおそれが多かったのが過去の実情である。また、候補者側もこのような実情を巧妙に利用して買収行為に出ることが多いと思われるので、この点は十分警戒し、」というように、きわめて平易なところから説き起してあるわけなんです。ところが、これならば問題はないのでありますが、第二項の後段からぼつぼつ三、四項の精神に直結をしてくる。前文と思われる精神が入って、そうして三、四項になっておるのですから、従って、三項だけを取り消されましても、きわめてそれは文章上から言っても不都合なばかりでなく、なおこの四項においてはその中間が抜けた形の文章ということになりますから、従って、これは遂わめて不穏当な意味に解されてくると思うのですが、こういう点についてはどういうお考えでいらっしゃるか、お伺いしたい。
  32. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 前回の当委員会のときに御議論になりましたのは、主としてこの第三項でありまして、私も第三項、特にその中にある、地方選挙は党よりも人だというところに重点を置かれての御要求でありました。まことにごもっともな御意見と私は思いましてこれを尊重して取り消したのであります。第四項につきましては、今のお話もありまするけれども、これにつきましては当時御議論もなし、格段の考慮は払わなかったのございまして、まずこの際は第三項だけははっきり取り消しておこうというので、こういう処置に出たのでございまして、そういうように御了解願っておきたいと思うのであります。
  33. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 それで、私はその精神が問題で、取り消された意味がこれで明らかになったと思いますが、そこで、庁内における取扱いについて、今その文書を披露になりましたが、しかし、それは今後を戒める問題として当然でありまするけれども、しかし、自治庁は選挙のいわば総元締とも言うべき中央官庁でありますから、従って、こういう軽率な取扱いをしたその責任者に対して、通り一ぺんのいわゆる文書による通達だけをもってその責任が十分とれるとは私は考え得ないのですけれども、といって、私はいたづらにその人を左遷せいとかどうとかいう意味で申すのではありませんけれども、しかし、一片のそういう文書で庁内のいわゆる取扱いが改まっていくとも考えられませんし、要は、こういう資料を出しますのは、これはそのときの職場の安易さに慣れて、言いかえますと同じポストに長くついていて、そうしてその事務の取扱いなどにあまりにも安易になり過ぎておる、従ってこういう過誤を犯す結果になる。そこで、これを契機として、庁内における人事の異動、ポストの変更等、人事を刷新して、そうして再びこういうあやまちのないように慎重な職務を行うような措置をとられることが、最もこの問題を処理する上においても適切な措置ではないかと思いますけれども、そういう点については長官はどういうお考えでしょうか。ただ、こういう文書を出すことによって庁内を引遂締めることができ、従って今後はこういうことはなくて済む、こういう工合にお考えにっているのか、私は、そういう点を、とられた措置についてお考えを述べていただきたい。
  34. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 ただいまの御意見は今後私が自治庁を統括していく上についての参考として、つつしんで拝聴しておきます。
  35. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 それから、私は地方選挙関係で一、二お尋ねをしておきたいのですが、今度の選挙では、地方の首長選挙あるいは地方議会の選挙、こういう選挙になりますると、当落の差というものがきわめて接近して、一、二票を争うような接近した場面が非常に多く出て参るわけであります。それだけに、選挙事務の取扱いにつきましては一そうの厳正公平が要求される、こういうことになると思うのでありますが、各地方における実情を見ますと、どうも、新聞紙上に報じておりますのは、仙台地方におきましても、あるいは大阪のある地方におきましても、その他数地方にに報ぜられるこの選挙管理の不適正というものは非常に遺憾な事態を引き起しておると思うのであります。これらの点について自治庁はその後どういう態度をとって指導されておるのか、また、この有効無効の問題は最終的には裁判等でその候補者が争うこととなるでありましょうけれども、しかし、それまでに、選挙管理の適正不適正等についてもそれぞれ反省をして、そうして不適正なものがあれば、ちゅうちょなくその不適正なところについては勧告するなり適当な方法をもって是正していくような措置を講じなければならないと思うのですけれども、それらについてどういう措置をとっておいでになりますか、一応お伺いいたしたいのであります。
  36. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 現在の選挙管理は、党派にこだわらないようにというので、管理委員会の制度でやっているわけであります。先般の地方選挙に当りましても、多少不手ぎわな管理委員会がありまして、問題を起した地方もあるのであります。これらに対しては、十分指導をいたしまして、再びあやまちのないようにということを遅滞なくやっております。この点につきましては、自治庁としては、平素も十分管理委員会に対しては注意も与えておりまするし、また事件の起るごとにも、個々の管理委員会に対しても適切な指導を行なっているわけであります。
  37. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 これは、新聞紙上等に報ぜられているのは非常に具体的な事例を報じておるようです。従って、その個々の事例についてその取扱いの当否等を決定するということは当然非常にむずかしいだろうと思います。また、実際にはそれは行い得ないことであって、その結果の適不適は最終的には裁判によってその当時考間に論争をせられて結末をつけるよりほか方法はないとも考えられるのであります。しかし、そういう不手ぎわな事件を起した選挙管理委員会そのものに対し、あるいはそういう自治体に対しましては、やはり具体的に適切なる方法をもって臨まれることが自治庁としての役目ではないか、こういうふうに考えておるのであります。それらについて、どういう措置をとっておられるのか、単に通牒等による一片の形式的な指導に終っておられるのか、この点を一つ伺っておきたいと思います。
  38. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 先般の地方選挙の際において問題になりました選挙管理委員会については、個々に注意を与えておるわけであります。全国的に見まして、管理委員の中には相当ふなれな人もおるのであります。管理委員会は常に公正な行動に出るようにということは、機会あるごとに注意を与えておるわけであります。先般も福井でもって選挙管理委員会の会合がありましたので、自治庁から特に選挙部長を出張させまして、その際も非常に注意も与え、また先般の選挙できわめて優良な選挙管理をやった団体に対しては表彰もいたして参りました。賞罰を明らかにするという意味において、そうした処置をとっておるようなわけであります。
  39. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は、具体的な事例で、言いますと、選挙の管理の公平を期するということは、これはもう言葉で表現するまでもなく当然のことであります。そうして、公明選挙運動等も、民間団体としてそういうような団体を作ってまで協力をして運動を展開しておる。しかし、その公明を期すべく協力をした団体が、ややもすると不公平な団体になる。一方的に、自分に都合の悪い方の政党へ、言葉では言い表わせないような、いわば意地の悪い圧迫等をかけて、言わず語らずのうちに特定の候補者へのいわゆる宣伝的な行為をやる。こういうようなもの、あるいは、直接私は経験をしておりますが、ある政党に属する候補者の場合は、十数人がはち巻を締めて、自転車などで何隊も何隊もの隊伍を組んで、表面は公明選挙場運動に協力している団体かのような態度を見せておるのでありますけれども、それが実際には特定の候補者の宣伝隊の役目を果して歩いておる。それを選挙管理委員会に報告をいたしましても、選挙管理委員会の方では、そういうものに対しては取締りの権限はない、こう言うのであります。そこで、今度は警察の方に連絡をしますと警察の方では、いや、管理委員会の方から何もそういう通知がありませんからというわけで、一向にそれを捜査しようとはいたしません。しかし、一方ある政党の方に対しましては、たとえば、運動員が何も知らないで、掲示する。ポスターに街頭演説のことが書いてある。それは違法なことである。もちろん法規違反をしておるのであります。けれども、それは微細なものであります。それを大げさに、とにかくも写真、機を持ってきてそのポスターの写真をとるわ、そのポスターのはたにその張った人物を連れてきて立たして、それを一緒に写真をとるというように大げさなことをやるものですから、従って、大衆がわんわんと雲集して、何事かという工合で見に参る。こうなりますと、これは今申しますように言い知れない一つの圧迫であります。なぜかと申しますと、その。ポスターにはちゃんと名前が書いてあるのでありますから、ほほう、こういうことかというわけで、それは言い知れない圧迫であります。それを一向に取締りを公平にやろうとしない。こういうような事例があるのであります。この二つの対照的な事例に見られるようなことに対して先ほどからもるる質疑応答が繰り返されておるのでありますが、こういうような事態は地方選挙にお遂ましては特にはなはだしかったのであります。これらについて自治庁では将来どういう調査をされようとしておるのかということが一つと、それから、公明選挙ということで、公明選挙を大いに普及徹底させるための協力団体を認めることはけっこうでありますけれども、しかし、この公明選挙を推進する団体が往往にして今申したような弊害を伴いつつありますことも、これは長官自身もよく見ておられるのではないかと思います。従って、これらの団体に対する規制の方法について、よほど慎重であるべきであると同時に、野放しの状態には置けない重要問題であろうと思いますが、これが規制についてどういう考えをお持ちになっておるか、この二点についてお伺いをしたいと思います。
  40. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 今山口さんからお示しの事例は、選挙管理委員会で管理する範囲になるのか、それとも選挙違反の取締りの対象として警察で取り締るべきかということについては、なかなか微妙な点があるのだろうと考えるのであります。当然警察が発動して取り締らなければならぬということも多いのじゃないかと思うのですが、選挙管理委員会のやるべき仕事の範囲内でありますならば、これは選挙管理委員会としては公平な態度をもって処置するのは当然でありまして、もともと、戦前のように官僚的な選挙管理をしないで、管理委員会というものを特に置きまして、民主的に選挙管理をやろうという趣旨からできておる委員会であります。各党派にとらわれないで、独立の立場で公平にやるのがその任務でありますから、もしもその任務に欠けるようなことがありますれば、これは私どもとしては十分戒告も加えなければならぬし、是正もしなければならぬと、こういうふうに考えております。今お示しの事例につきましては、私は的確に申し上げられないのですが、警察等で取り締るべ遂ものは警察で取り締るし、また選挙管理委員会として処置するものは選挙管理委員会として公正に処置するように今後とも仕向けたいと、こう考えます。
  41. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 もう一点。私が今申しました、公明選挙に名をかる、いわゆる公明選挙を推進するということで、あたかも協力しているように見せておりますけれども、その事実はそれに名をかりた巧妙な特定候補の宣伝行為というものが伴っておる。こういうような公明選挙推進の団体を野放しにするということは、私は非常に公明選挙そのものを汚す結果になると思うのであります。こういう点につきましては、現在はこれは届出団体にもなっていないのじゃないかと思います。そうすると、だれでも十人寄ればそれが団体となって、そういうようなものを推進していくことになる。これらについては、ある程度の規制をして、ほんとうの公明な選挙を推進する運動に役立つようなものにしなければならぬと思うのでありまして、これらについてはあまりにも野放しの状態にあると思うがどうかという質問をしたのであります。それに対して自治庁ではどういうお考えを持っておられますか。
  42. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 公明選挙に名をかりて特定の候補者の運動をするということは、これは当然選挙違反になろうかと思うのですが、先般の衆議院の選挙でも問題になりましたのですが、ごく少数者で政治団体を作って、それが盛んにトラックを回したりなんかすることは、それは法の盲点だということがいろいろ論議されまして、これらにつきましては、いずれ当委員会においてもお取り上げになって是正の処置をされるのだろうと、こう考えますが、今お話の公明選挙運動という名前で特定候補者選挙運動をするということは、選挙管理というよりはむしろ選挙法違反として厳重に取り締るべきものだと思います。私はかように考えるのでありまして、政府といたしましても、警察担当の大臣等においても十分考えてもらうようにいたしたいと思います。
  43. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は前回の委員会でも警察の方にはいろいろ質問をしておきましたが、本日は担当時間も経過をいたしておりますから、希望として申し上げておきたい点は、今長官から申された地方選挙資料に対する自治庁の態度としてとられました措置の中で、私が後段に申し上げましたように、こういうあやまちを犯すようなことが惹起されましたのは、その業務に長く携わって安易に流れ過ぎる結果生じてくる一つの職権に対する錯覚である。従って、私は、通り一ぺんの庁内における長官の通達等をもっていたしましては、それだけで万全の措置がとられておるとは考え得ないのであります。そういうところにお気づきにならずに、ただ机上託画的なといいますか、そういう措置のみしかとられておらぬことは、まことに遺憾に思うのでありまして、どうか自治庁内における人事の刷新による事故の防止ということをこの際極力断行していただきたいと私は思います。そうして再びこういうあやまちを繰返さないようにしていただくとともに、政党否認行為に対しましては、これは日本政治史上きわめて重大な一つのできごとでありますから、従って、自治庁としては、ただ通り一片のそういう取り消し文書を出すだけではなく、さらに、これに匹敵する通達をもって、根本的な政治のあり方、あるいは考え方等に対しまして修正を加うべき文書等を出していただいて、そうしてしかるべき適切なる措置を請ぜられるように希望を申し上げたいと思うのであります。  第二の点は、今申しました公明選挙の推進に名をかるいわゆる巧妙なる運動の規制法あるいはそれに対処する選挙管理委員会としての管理の適正化につきましても、あるいはまた投票の管理等について起きておりまする各所における遺憾なる事態につきましても、自治庁として適切なる管理措置を講ぜられるように希望を申し上げて、私の質問を終りたいと思います。
  44. 島上善五郎

    島上委員長 本日はこの程度とし、次会は公報をもってお知らせいたします。  これにて散会いたします。     午後四時三十五分散会