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1955-07-21 第22回国会 衆議院 建設委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十一日(木曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 内海 安吉君    理事 高木 松吉君 理事 山口 好一君    理事 瀬戸山三男君       荻野 豊平君    大高  康君       廣瀬 正雄君    松澤 雄藏君       大島 秀一君    仲川房次郎君       二階堂 進君    町村 金五君       有馬 輝武君    三鍋 義三君       山田 長司君    中島  巖君       前田榮之助君    三宅 正一君  出席国務大臣         建 設 大 臣 竹山祐太郎君  出席政府委員         建設政務次官  今井  耕君         建 設 技 官         (道路局長)  富樫 凱一君  委員外出席者         議     員 宮澤 胤勇君         議     員 楯 兼次郎君         議     員 竹谷源太郎君         参  考  人         (道路調査会会         長)      鮎川 義介君         参  考  人         (国土総合開発         審議会会長)  飯沼 一省君         参  考  人         (全国道路利用         者会議会長)  本多 市郎君         専  門  員 西畑 正倫君         専  門  員 田中 義一君     ————————————— 七月二十日  委員西村力弥君及び二階堂進辞任につき、そ  の補欠として坂本泰良君及び吉田重延君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 同月二十一日  委員吉田重延辞任につき、その補欠として二  階堂進君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月二十日  建築士法の一部を改正する法律案参議院提出、  参法第一九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国土開発縦貫自動車道建設法案阿左美廣治君  外四百二十九名提出衆法第二六号)     —————————————
  2. 内海安吉

    内海委員長 これより会議を開きます。  国土開発縦貫自動車道建設法案を議題とし、昨日に引き続き参考人より意見を聴取することといたします。  本日は、参考人として道路調査会会長鮎川義介君、国土総合開発審議会会長飯沼一省君、全国道路利用者会議会長本多市郎君、以上三君をお招きしております。それではこれより参考人各位より意見を聴取するのでありますが、その前に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位におかれましては、御多忙かつ炎暑の折柄、本委員会の懇請にまげて御出席下さいまして、まことにありがとうございました。何とぞこの機会において御意見のあるところを御開陳をお願い申し上げます。  それではただいまより御意見開陳をお願いすることといたします。鮎川義介君。
  3. 鮎川義介

    鮎川参考人 私の本法案に対しての意見を聴取せられるということでありますので、実はこの法案内容を非常によく検討して参ったわけではございませんけれども、平素私が考えておりますることを遠慮なく申し上げたいと思います。  私は日本全体の道路の問題については、いろいろ研究して参りましたが、ここに二つやり方があると思うのです。一つはただいま現存しております道路を改修するなり、あるいはそれを広げるなりして、そしてそれの疎通をよくして、能率を上げるということをもって満足するというようなやり方、それが一つあります。もう一つは、国作り式の非常に徹底しましたところの根本的な考えからスタートする道路やり方、この二つが大別してあると思うのです。  私が従来研究いたしましたのは、それは現在あるものについての能率を上げるということを主体としてやったものでありまして、いわゆる国土開発という問題ではないのであります。でありますので、至ってこれはじじむさい案になっております。けれども現在経済問題を主にしまして、その方から検討いたしますと、現在の道路を何らかの方法によってよくすることによって、それが経済にどのくらい寄与するかということは、現在までの資料を整えますと、それはおのずから出てくるわけであります。それはそろばんに乗るわけであります。そろばんに乗れば、どのくらいのお金をかけて、どういうところを改装するなり、あるいは拡張するなり、強化するということによって、どのくらいの利益が生まれるだろうか。そのために国民所得がどのくらい上るかというと、だんだん詰めていきますと、答えが出るわけです。それは普通想像している以上のもうけになるわけです。もしも私が非常な金持であって、その金を何に投資するかということになりますれば、私はずいぶん長い間いろいろなことをやりましたが、もし許されるなら、私はこの金をそういう道路に投資するならば、非常に大きな利益がある、こういうことを考えるわけであります。これ以上確かで利益があるというのは割合少いのであります。道路の方は割合に照り降りがないのでありまして、非常にもうかって、すぐもうからぬようになるとか、あるいは景気が悪いためにもうからぬ、景気がよくなれば非常にもうかるというようなものではない。非常に運動量が太いものでありますから、少少客観情勢が変りましても、道路経済価値というものはあまり動かぬものであります。でありますから非常に安全なる投資ができるわけであります。いわゆるペイするのは、これ以上ペイするものはないというふうに私は思ったのであります。そういうことから考えますと、これは国としてこの方面に投資することが、一番安全にして根本的のものに近いものができる、こういうことです。しかしながら理想からいうと、それは非常にまずい点がたくさんある。やっている間にどうもこんなことはやらぬ方がいい。いっそのこと、新規すっかりまき直しで、そして革命的にやった方がよろしいというようなことがやっておる間に考えられる。そういうことになりますと、いわゆる国土開発というような、かえって多元方程式を解くというような考えからいきますと、今度の縦貫道路というようなものが出てくるわけであります。  それで今案になっておるのが一番いいかどうか私はわかりませんが、それはまさに国土開発という方からきておる問題でありまして、私が今まで研究いたしましたような、単に現在のものを経済価値を高めるというのとは全然趣きが違っております。実はそういうことはやりたい問題であるということは、今のじじむさい案をやっておる間に、始終頭の中にあったわけであります。つまり現在住んでおる人の立ちのきを命ずるとか、いろいろな非常にややこしい問題が出てくる。ちょうど水力電気をやるときに、水車を買収したりいろいろなことに一億かかるという現象が必ず起ってくるわけです。それを解決していくということはずいぶんめんどうくさいことになりまして、いっそそういうことが随所に起るならば、あらためてすっぽりした今度のような案をやりたいということは、われわれもこういう案をやりおる間に再々出てきた問題である。しかしながらこれは一つ目的といいますか、イデオロギーが一つ違っておりますから、それはそれ、これはこれというふうにしたらよかろうということを、私らはやりおる間に考えたわけです。  そうするとこの国土開発というもの以外に、いわゆる国防問題といったものから考えますと、縦貫道路のごときものは非常な価値が出てくるのでありまして、これはわれわれがそろばんに乗せるということは非常にむずかしいのです。万人が首肯するような、そろばん勘定を立ててみせるということはできない。ただ観念的にこういうものをやれば、必ずいいだろうということは考えられますが、果してそれがどのくらいになるだろうかという経済価値を算出することは、至って困難であります。不可能ではないと思いますが、至ってむずかしいのです。データが足らぬわけで、新しい仮想的のデータがたくさん入って参りますために、みんなが首肯するような結論を導き出すということは至ってむずかしい。しかしやりたいものだということを考える。でありますから現在出ておりますこの法案が、いわゆる国土開発ということが三体になっておりまして、これにはおそらく国防的の問題がその裏にあるものだろうと考えますから、これはどうしても一つやりたいものだということを考えております。  やる方法はいろいろありましょうが、要するにこれは莫大なる長期資金を要求するわけでありまして、今日の情勢で今日の行政上これをやるということは至ってむずかしいだろう。しかしながらこれはどうしてもやらなければならぬものであるとするならば、ここに一つ法案が出ておりますが、私の考えではこういうことを調査され、研究されるには、まだまだ時間と労力を費し、ブレーンを必要とする。それには相当の予備的のお金が要ると思いますから、少くとも一億円くらいの金を議会で捻出していただいて、それでもってこういう法案前提条件研究されるということが、一番要領のいいことじゃないか。ただ大きな問題は若干やりましてもなかなか容易でありませんから、まず一応皮切りに一億円くらいの予算を立てて、今度の議会ででも一つ通していただいたならば、それが契機になりましておそらくりっぱな案が遠からず出ることじゃないかと思います。私は今のじじむさい案——現在の道路を改良していくのにも、ほんとう調査に正味一年かかった。それに間接費を入れますとおそらく千万円使ったと思います。私が個人的にやりましてもそれだけの金と時間がかかる。そうして知能と材料は諸官省から民間からほとんど全部を網羅したと思います。人も専門にそれに従事したいろいろな人を使ったということでありますから、国ごしらえ式の道路計画になりますと、少くとも一億円の予備金を持って、それを使って研究をおやりになることを私はお勧めしたいと思います。私の意見はこれで終ります。
  4. 内海安吉

    内海委員長 飯沼一省君。
  5. 飯沼一省

    飯沼参考人 私はただいま国土総合開発審議会の方に関係をいたしておりますが、今日申し上げることは、国土総合開発審議会としてきまりました意見でも何でもございません。実は私昨日初めてこの法案を見せていただいたようなわけでございまして、詳細のことは実は私もまだ十分研究しておらぬ点がございますが、大体一読いたしまして、私個人として感じましたことを申し上げたいと思います。  わが国が今当面しております問題のうちで、最も大きな問題の一つ人口問題であろうと思います。この人口問題に対する対策として、いろいろの方策が考えられておりますが、私ども一つ見のがしてならぬ問題は、人口の再配分といいますか、あるいは内地移住とでも申しますか、そういう方面にまだ大いに考えてみる必要があるのではなかろうかということでございます。つまり例を東京にとってみますと、大体全国人口の一割というものがこの狭い東京都の中にひしめきあっておる。東北六県の人口に大体相当するものが、京浜地区に集まっておるというようなことは、どう考えてみましても不合理であり、しかもそれがいろいろの面に悪い影響を及ぼしておるのでありまして、経済上、産業上の能率は低下して参りますし、いろいろの犯罪は多くなる。東京道路の上を見ましても、もう殺人的な交通の混雑、飲料水も現に見込みがないというような状態でありますので、どうしても東京というような大都市に集まって参ります人口を、もっと全国にばらまくことが必要ではなかろうかと思うのであります。国土総合開発におきまして、主として未開発後進地域と称せられる地方開発に力を尽しておりますのも、一つにはそういう点にねらいがあると思うのであります。ところがなぜ東京なら東京というところにばかり人がたくさん集まってくるかと申しますと、これにはいろいろの理由があろうかと思いますが、考えてみますと、大体において国の施設がそういうふうにできておるように思うのでありまして、これを分散させる施策がきわめて足りないように思われます。東京に非常な魅力があるので、東京人間が集まって参ります。これを法律をもってとめるというようなことはできないのでありまして、やはり他の地方魅力のある場所を作って、自然に人口がそちらの方に流れていくことを計画するよりほかにいたし方がないと思うのでありまして、そういう意味から申しまして、ここで御提案になっております国土開発縦貫自動車道、これはその一つの手段としまして、その精神において大へんけっこうなものではないかと私は考えます。  国土総合開発の方におきましても、各府県においてそれぞれ計画を立てておりますし、それからまた特定地域と称せられますものにつきましては、その総合開発計画が閣議で決定になったものが約十近くありますが、これらを見ておりますと、大体河川の開発を中心としてこれまで行われて参りました電源の開発などが、大へんに進んで参りました。しかし見ておりますと、せっかく起りました電気がみな他の地方、他の大都市の方に流れてしまっておるのでありまして、その地方開発というものにはややもすれば役に立っておらぬような状態であります。地元ではしきりに工場誘致を叫んでおりますけれども工場はなかなか参りません。豊富な電気が起るのを見ながら、みなそれが他の地方に流れていきまして、その地方にはさっぱり工場ができないという例が多々あるのであります。なぜそういうことになるかということを考えてみますと、それは主として交通関係のように思われます。原料なり製品の搬入搬出に非常に不便だということが、その大きな原因の一つのように思われるのでありまして、そういう点から考えますと、この縦貫自動車道のごとき施設は、きわめて未開発地域開発に役立たせる上において、そしてまた人口を分散せしめる上において、きわめて適当な施設であると私は考えます。  ただ注意しなければならぬと思いますことは、先ほども申しましたように、大都市というものが非常な吸引力をもって人間を引きつけておるのでありますから、こういう交通網ができました場合に、それがやはり大都市をますます大きくするようなことに逆に使われることを、極力避けなければならぬと私は思うのでありまして、どこまでもこの道路人間を、人口の非常に稠密な地力から人口の希薄な地方に移すために役立たせなければならぬと思うのでありまして、そういう意味から申しまして、この法案の第六条でありますかに書いてあります内閣総理大臣が調整をする項目があげてありますが、これはきわめて大事な問題であると思うのであります。この縦貫自動車道に接続する主要な道路または一般主要な道路整備充実、それから新都市または新農村の建設、これが非常に大事な問題であると思うのであります。ただ果してこれだけでこの目的が達し得るかどうか、もう少し制度の上なり立法の上で、これらの点について研究を要する問題があるのではなかろうかと考えられます。  大体私がこの法案を拝見いたしまして感じたことは以上の通りでございますが、先ほども申し上げました通り大都市人口集中力というものが非常に強い力をもって働いているのでありまして、これを反対に遠心力に切りかえるための努力が、国政の上に必要だろうと思うのであります。そういう点からこの法案が十分研究されまして、りっぱに法律としてでき上りますことを私どもは希望いたす次第でございます。
  6. 内海安吉

  7. 本多市郎

    本多参考人 本日は意見を申し述べる機会を与えていただきまして、まことに感謝にたえません。まことに研究不足でございますが、準備して参りました資料に基きまして、意見を述べさしていただきます。  わが国自動車も、御承知の通りすでに百十万台を数えるに至りましたが、それのみならず、この台数は毎年二割ないし三割を大幅に増加していくという傾向でございます。これは国民生活の向上の上において、まことに心強い限りではありますが、交通のために、自動車が必要であると同じく、道路もまた大切でございます。しかるにわが国道路の現状はどうかと申しますと、まことに立ちおくれまして、何をおいても道路を整備することが、今日国家にとっても最大の善政である、急務であるというふうに考えられるのでございます。  政府今期国会に提案いたしました道路予算及びその関連法案を見まするに、道路整備積極的用意に欠けるところがあるばかりでなく、せっかく前内閣によって決定、公示されました五カ年計画事業内容すら、相当の圧縮変更を余儀なくされるではないかと憂慮いたされますことは、はなはだ残念であります。  さて、高速自動車道路近代交通の粋ともいうべきでありまして、これによって初めて自動車の機能が高度に発揮できるのは、すでに世界の常識であります。日本道路政策自動車道路の問題が大きく取り上げられるのは必至の勢いであったのでありますが、今日、多数の議員各位によって自動車道建設法案が提案されましたことは、多年にわたる道路行政に強力な活を入れるものでありまして、私は多大の帯びをもってその成果に期待を寄せるものであります。今回の建設法案を拝見いたしまするに、規模と気魄とにおいて雄渾をきわめておりますけれども、その内容の堅実さにおいて、あるいは構想の横軸と思われる節々において、必ずしも私ども考えと一致しない若干の点があるように思われますので、いささか意見を述べて参考に供したいと存じます。  第一に述べたいことは、道路の働きであります。道路動脈幹線といい、あるいは街路といい、あるいは産業道路といい、あるいは、観光道路といい、さらにまた開発道路というように、それぞれの目的と使命がありましょうけれども、すべてひとしく車というものによって園児に承仕する点においては、差別はないのであります。そしてまたその車の目的観光であろうと、開発であろうと、いやしくも交通需要の現存する限りいずれをとうとしとし、いずれを卑しとする差別はつけがたいのであります。今回提出法案の名前には、国土開発という形容詞がつけられておるのでありますが、これはあたかも未開発地予想交通が、既開発地現存交通よりも大切であるかのごとき誤解を与えるおそれがあります。かりにもし本法案の主眼が、道路交通普遍的改良にあらずして、未開発地開発にあるといたしますならば、自動車道という字を改めて、開発道路と訂正すべきでありましょう。なぜかならば、開発道路なるのゆえをもって、自動車道を作らねばならぬとする理由はきわめて乏しいからであります。  第二点は、自動車道路はいかなる路線に適用すべきかの問題であります。一般道路といい自動車道路といい、いずれもひとしく道路たることに変りはありません。自動車道路でなければ自動車が通れないわけでも決してありません。自動車道一般道と異なるのは、速度の劣る他種交通の混入を排除して、自動車だけ高速走行を可能ならしめる点にあるのであります。他種交通の排除には特別の経費を要しないかもしれませんが、高速走行を確保するには、高度の構造規格が要求されますので、その建設費は著しくかさむのが通例であります。国道改修費がおおむねキロ当り二千万円ないし四千万円程度で足りるのに対し、たとえば建設省の企画にかかる東海道の弾丸道路では、キロ当り三億円に近い建設費が見積られておりますが、かよう両者の間には著しい懸隔があるのであります。およそ急がない自動車交通というものは考えられないのでありますが、さればといって、すべての道路高速構造規格を与えがたいのは、かくのごとく多額の建設費を要するからにほかなりません。しからばいかなる道路高速自動車構造を付与すべきかといいまするに、それは一にかかって交通量の多少によると思うのであります。たとえば一日交通量一万台の路線は、一日交通量一千台の路線に比べて、十倍の建設費の負担にたえる条理であります。ついでに東京神戸間の一号国道交通量を昨年の調査に見ますると、一番少いのは静岡県浜名湖付近であって、一日約七百台の由であります。  第三点に移ります。以上申し述べましたるごとく、自動車道を企画するに当って最も大切な要件は、その路線に予想される交通量いかんの問題でなければなりません。法案にはすでに予定路線があげられておるのでありますが、これら路線に予想される交通量が、果して高速自動東道規格を要求するに足るかいなかについて、今日、確信のある人はおそらく一人もないのではありますまいか。しいて申すならば、予定路線の大部分交通量は、二車線道路能力限界、すなわち一日約五千台以下のところでおさまると見るのが、むしろ妥当ではないかとさえ思われるのであります。まして本案路線は、おおむね未開の山地に選ばれております関係上、果して幾らの交通量を誘発し得るかについては、慎重な審議を遂げた後において、初めて予断さるべき性質のものであると思うのであります。自動車道調査立案が必要であることは、論議の余地はないと信じます。けれども調査に先だってあらかじめ路線を法定いたしますことは、はなはだしい早計ではあるまいかと存じます。調査の結果、路線選定の誤まりを発見し、これを変更、是正しようという場合は、法の面子にもかかわりまするばかりでなく、沿道の局地的利害にからまる紛争のために、ついに大局的、国民的利益が曲げられるという事態すら予想されるのであります。全国道路利用者会議は、右の理由をもって、別表予定路線本案中より削除せられたい旨、すでに請願をいたしたのであります。  第四に、遠距離高速走行のかけ声に眩惑して、道路政策を誤まってはならないということであります。法案自動車道には、国土開発という形容詞に加えて、もう一つ縦貫という形容詞がかぶせられておりまして、いかにも遠距離交通を誇示するかに見えます。また建設第一次線には、東京神戸間の中央山岳道路が予定されておるかの印象を受けるのでありますが、この路線山地開発もさることながら、東京神戸間五百キロの遠距離走破にねらいが向けられているかに、感ぜられます。もしそうであるとするならば、あるいは的はずれのそしりを免れないかと存じます。なぜかというに、総じて交通量の最重要部分近距離交通によって占められるからであります。鉄道道路に比べて遠距離交通を得意とするのは、世界の通則でありますが、国有鉄道貨物輸送統計の二十八年度分に見ましても、輸送距離五百キロ以上の貨物は全体の一五%にすぎず、また百キロ未満の貨物は全体の四〇%を占めておるのであります。道路交通については、この種の統計が不備のようでありますけれども東京神戸間を直走するような遠距離交通量は、きわめて僅少であろうということが容易に想像されるのであります。中間近距離交通が重なり合い、つづり合って延々五百キロの動脉流をなしまして、これが道路交通ほんとうの姿であります。東京神戸間の長距離走破に幻惑して、近距離交通重要性を忘れるようなことがあっては、正しい道路交通政策は立て得るものではないと言わねばなりません。かくして中央山岳道路価値の判断は、遠距離交通観点からでなく、主として山地開発に伴う誘発交通量観点に立たねばならぬわけでありますが、山地に比べて格段の生産力を持つところの浜名湖付近平野地を走る国道が、一日七百台の交通量にとどまるという事実にかんがみまするならは、中央山岳自動車道経済価値は、はなはだ疑問であるとしなければなりません。  以上いろいろ申し上げましたが、最後に結論的に申し述べてみたいと存じます。道路、なかんずく動脈幹線道路近代化は、焦眉の急務であります。そしてしてまたいやしくも未開発地の存する限り、その価値に応じた開発をはかるための道路開通をすることも絶対必要であります。思うに、国土開発縦貫自動車道建設法が起草されました趣旨は、右の二鳥を一石をもって打ちしめようというのがねらいではあるまいかと存じますが、悲しいかな、そのことは右の二鳥は相いれがたい接着性を包蔵するようであります。道路構造規格交通量との関係、並びに交通量そのものについての研究が困難であるだけに、行き届いていないからではないでしょうかと思います。財政、経営方式、保護立法、交通量交通量に相応する構造規格等にあわせて、路線の選定もまた、政府並びに審議会のすみやかなる研究に待つように、法案を修正していただきたいというのが私の意見でございます。なお取りまとめたものは陳情書といたしまして、各位のお手元に差し上げております。要するに今回の計画はまことに喜びにたえないのでありますけれども自動車道高速道路建設は、国土計画の根幹を定めるものであって、全国民の活動動脈の構成を永久にきめるものでございます。そこでまた巨額の費用も要することでありますから、その路線をどういうふうにきめるか、構造交通量の多寡に応じていかに企画づけるかが最も大切な点であります。最大限度に投資経済効果を期するために、あらゆる科学、経済知識を動員して調査研究をした上に、この路線決定並びに構造規格決定は慎重にせられたいというのが、陳情いたしておりますところの趣旨でございます。まことに研究不足意見ではございましたけれども、以上、資料に基きまして申し述べさせていただいた次第でございます。御清聴ありがとうございました。
  8. 内海安吉

    内海委員長 以上をもちまして、参考人各位の御意見開陳は終りました。それではこれより質疑に入りますが、この際皆さんにお知らせしておきます。提出者であられる宮澤胤男君、楯兼次郎君、竹谷源太郎君の三君がこの席に見えております。参考人だけではなく、提案者に対しましても、どうぞ随時に御質疑あってしかるべきと存じます。では通告順によりまして、順次これを許します。三宅正一君。
  9. 三宅正一

    ○三宅委員 参考人の御三方に簡単にそれぞれ御質問を申し上げます。  最初に鮎川先生に御質問いたします、鮎川先生が、現存の道路の改修等につきまして、非常に創造的な御意見をもって御努力を下さっておることは、私どもも非常に敬意を払っておるのであります。しかしながら日本の状況を見まするときに、アメリカだとか、満州における道路開発の事情と全然異なりまする点は、日本における人口産業等が、ほとんど平坦部に集中をいたしまして、この狭い国土でありながら、農耕地は一割六分しかない。そうして七割に当る山村地が未利用に放置されておるということが一点であります。これの開発が、開発政策それ自体として必要である。飯沼参考人も言っておられますように、人口産業を分散しなければならないことも、これはさまっておることであります。同時に、そういう事情がアメリカなどと違いまして、たとえば東海道において高速自動車をやるなどということになりまして、立体交差をやるというようなことになりますと、住家はずっと並んでおる。そうして土地は三石以上の美田であり、そうしてそこへ立体交差をしなければならないということになれば平地として盛り土をしなければならないというような観点におきまして、私は、現存の道路の改修それ自体は、これは別個に大いにやらなければならぬと思いますが、新たに最近の自動車量等のふえておることによって、本多君からもお話の通り高速自動車道路というものを作らなければならぬということが、問題に出て参りまする限りにおきましては、私どもはそういう意味においては、この国土縦貫中央道のような構想が、一番やはり経済的でもあるのではないか、実際的でもあるのではないか、交通政策それ自体としても正しいのではないかというふうに考えておるわけであります。しかもこの法案は、内閣審議会を作りまして、もとより権威を集めてこれから調査をするのでありますが、鮎川さんが既設の道路の改修のために、すでに私財一千万円を投ぜられて、御勉強下さいましたのと同じように、中央道に関しまする限りにおいては、たとえば田中君などが、それこそ何年にわたりまして、非常な努力もしておられ、私どもも現地を見て来たような事情もございまして、もちろんこれでもって調査が足るとは考えませんけれども、大局的に考えまして、日本におきましては新しいものを作るとすれば、こういう観点でいくべきものであると私どもは確信をいたしておるわけであります。同時に、自動車交通政策、あとから本多君に別の問題として御質問いたしたいのでありますが、自動車日本を縦貫的にも早く結ばねばならぬが、表日本、裏日本関係を結ばせまする上におきましても、背骨を通りますことが、肋骨道路との関係におきまして、利用者も非常な大きな利用効率を高め、表日本、裏日本間をつなぎ、さらに縦貫的に鹿児島から北海道に至る距離を縮めるという、時間を縮めるという意味におきまして、この縦貫中央道というものの構想が、私は一番経済的でもあるし、合理的でもあるというふうに考えておりますが、その点について、鮎川さんの総括的なお考えを承わりたいと思います。
  10. 鮎川義介

    鮎川参考人 非常にごもっともなお考えと思いますが、先ほど申しましたように、今の縦貫道路研究というものは、田中さんはずいぶん前からやっておられますが、しかしまだ私は足らぬものがたくさんありはしないかというふうに考えるのです。全体的に考えまして、日本の全体の国土ということから考えますと、もう少し研究されれば、構想そのものは至ってけっこうだと思うのですが、その方法論に至りますと、もう少し研究を要する点が多々あるがごとく私は考えております。この方の研究は、私の方でしておりませんから、それを非常に深く御説明することは不可能であります。しかしあの案が一番いいということを申し上げることはできないと思います。まだ研究を十分にやっていただく必要があると思います。こういう国土開発式のものになりますと、非常に方程式が多元的になりますので、はからぬ利益が私は伏在しておると思うのです。これは今なかなかわかりにくい点でありますけれども、構想的にはそれは非常にけっこうなものと思います。もしも非常ないい総理大臣があって、おれはこういうことをぜひやりたいということであったならば、必ずいい結果が出ると思うのです。でありますけれども、そういうものをやるまでの間に、やはり古家の造作をしなければならぬ。今住んでおる家を、やはり子供がたくさん生まれる間は、何とかしてかけ出しでもしなければならぬ。そういうものができるのを待っては、現在のものが行き詰まってしまうので、その行き詰まっておる点を一つ緩和するという策が私どものやっておることで、これは徹底しておるわけではありません。けれどもそれと同時に、今言うような田中さんの案のようなものを基礎にして、そして縦横十文字に多元方程式を立てるということは、どうしても私はやっていただきたのであります。でありますけれども、あの案が一番いい案だということに共鳴することは、私はまだ早いと思いますからして、その意味において、もう少し研究をなさることを私はお奨めしたいと思うのです。これは私の方で欧州、アメリカをずっと、一人の考えでやるために、私の方の人をやりまして、六カ月間ほど実際にやってみたのですが、各国々においていろいろな地方的な事情がありまして、みんな違っております。ドイツはドイツの方法があります。イタリアはイタリアの重要性からくる国土に対する観念からみな出発しておりまして、相当の成果を上げております。日本もまた、この日本の要求に対して特殊の問題がありますからして、それをやるためには、外国の例をもう少し深く縦横に研究されたならば、あるいはこの田中さんの案が一番いい案として出るかもわかりません。しかし今のところ、私らはそこまでのことを申し上げることはできない段階にあると私は考えております。それでよろしゅございますか。
  11. 三宅正一

    ○三宅委員 私も既設の道路の改修について、もっと力を入れることについては全然同感であります。それはそれだけれども、それによって第三交通路としての高速自動車の専用道路というようなものは、なかなかそれができるまでほうっておいていいというようなわけにはいかない。本多君も言われた通りに、毎年二割、三割ずつふえていきまする飽和状態において、とてもそんなそそくりをやっておったとて問題にならいし、それから飯沼さんも言われた通り、入口の疎開というようなことも考えるとすれば、私は田中君のあの路線をそのままとれというのではないけれども、少くとも基本的な構想理念として、表日本、裏日本を最短でつなげ、そして非常に細長いために経済的効率を落しておりまする日本を、まるい国土にするようにするという構想、そして多目的ダムと同じことで、日本のような貧乏な国におきまして、ただ一つ目的だけのために金を使えるものではないからして、この六割、七割に及ぶ国土の未開発地帯を、一つ開発するという線を考えることは、非常に大きなことであると私は思うのであります。こういう意味におきまして、鮎川さんのような一つの創造力をお持ちになる先輩が、この問題につきましても一つ並行して御協力を願いたいと考えるわけであります。——何か御答弁がありますか。
  12. 内海安吉

    内海委員長 ありませんそうです。
  13. 三宅正一

    ○三宅委員 なければ飯沼さんにお伺いいたします。飯沼さんの御意見に、私ども全く同感でございます。私ども考えまするのに、ほんとう人口の疎開をやろうと思いまするならば、飯沼さん御指摘の通り、一番大きな原因は交通だと思うのであります。もう一つは、私どもは電力の開発などにつきましても、単価を下げるだけでなしに、送電のロスがあります。たとえば、非常な矛盾をしておると考えておりまするのは、木曾川水系における——あれは兼山ですか、一番下の関西電力の持っておる十三万五千キロ出ておりまするが、近い名古屋へ持っていけば、送電ロスというものはほとんどない。それを何割かのロスを出して関西へ送って、名古屋の方では、足らぬといって火力発電を起しておって、結局国家的経済から見れば、二、三割電力を損しておるというようなばかなことをやっておりますることが、入口の疎開にも影響があると思うのであります。今日、電力を非常にたくさん使います産業におきまして、ロスの分だけを電源地に送って安くする。工業用電力を安くするというような線を入れまして、それに交通政策を加えますれば、私は、少くとも精密化学工業であるとか、あるいは電力に大部分依存する工業というようなものは、ほとんど地方分散することが可能だと思うのでありまして、こういう意味の政策の見地からいきましても、中央道というものは非常に大きなことであると思うのでありますが、あなたの方のやっておられまする国土総合開発審議会との関連も、そういうところにあると思うのでありますが、何かそういう意味において、あなたの方の審議会におきまして、これに類似いたしますような道路政策というようなものは、今まで話に出たことがありますかどうか、お伺いいたします。それから人口地方分散、工業の地方分散に関連いたしまして、電力料金のロスの部分だけでも、電源地帯から近距離のところに安くするというような方策を建議されたようなことがあるかないか、この点について御意見を伺いたいと思います。
  14. 飯沼一省

    飯沼参考人 ただいまのあとの方の問題——電気の問題につきましては、国土総合開発審議会において、まだ何もやっておりません。そういうことをいたしたことはございません。それから交通の問題でありますが、これは各地方において、それぞれ幹線となるべき道路計画を立てております。しかし全国にわたって、この案にありますような縦貫道路というような全国的な計画は、まだ立っておりません。私どもの希望としましては、この法案に現われております縦貫道路と、それから各地方で立てております国土総合開発計画道路との連絡が、十分うまくいきますように、そうしてその未開発地域開発にそれが役立ちますようにということを、私は希望するわけでございます。
  15. 三宅正一

    ○三宅委員 本多さんにお伺いをいたしますが、本多さんの御陳述は、日本高速交通自動車専用道路というようなことが、政治上の問題として取り上げられてきたことは、非常にけっこうなことだという前提のもとに立たれまして、この法案に対しまして二、三の難点を指摘されたようであります。私どもは東海道の高速弾丸道路と、この国土開発道路とは、全然別個なものだと思います。ただ実際問題といたしますれば、予算関係がありますから、こっちをやれば向うができぬ、あるいは何年かおくれるというようなことが出てくるかと思いまするが、性質からいけば別個なものだと思うのであります。思うのでありますが、どうも本多さんの議論を拝聴しておりますと、交通量の多いところを通さなければだめだという、既成の理念で言うておられるようであります。これは一つ提案者の方からも御説明を願いたいと私は思うのでありますが、東京−大阪間におきましても、たとえば一番人口の希薄な、直線距離で五十キロも距離の少いところを通しました高速交通自動車道ができますれば、私はこの肋骨道路で、静岡にいたしましても、富山にいたしましても、あるいは長野にしても、直江津にしても、それぞれ利用することができて、しかもトラックによりまして、アメリカなどの道路の状況を見ておりますと、トレーラーで何十トン、五十トンくらいのトラックをずいぶん遠いところ、あるいはテキサスからニューヨークまで持っていくというようなこともやっておるようでございます。きのうも八田参考人が言うておられるようでありましたが、鉄道貨物ですと、大体操車場に寝せておく部分があったり、持っていったら運送屋に寝せておく面があったりして、大体貨物の歩いておる距離は、二キロから四キロくらいの人間の歩くくらいの時間がかかっている。そういう点で、鉄道は安いにかかわらず、窓から窓へということで自動車が使われております。しかもだんだん機械が精密化されてくるし、精密工業のような単価の高いものであるとか、いろいろのものがだんだんふえて参りますれば、ますます東京−名古屋−大阪間の長距離交通量が非常にふえてくると思うのでございます。それに近距離の関係もこの肋骨道路通りますし、それからまた非常に大きな耕地をつぶす抵抗であるとか、こういうことも見なければならぬ。それから平地においては、先ほども私申し上げたのでありますが、立体交差をやることについても非常な困難がある。それで盛り土をして、立体交差をやるということから見まして、山手を直線で行きます方が非常によろしい。それのみならず、傾斜としては三%なり四%なり以上やらない。それで百何十キロの高速ができるという技術的な線さえ確保されておりますれば、私はやはり一石二鳥をねらっておるところに弱点があるといわれますけれども、多目的ダムと同じことによって、その一石二鳥をねらった国土開発と縦貫ということに、大きな意味があると思うのであります。それで議員全員がほとんど署名をいたしておりますが、どうして議員全員が署名したか、それぞれの議員についていえば、私ども初めしろうとが多いけれども、政治家の直感をもって考えまするときに、こうやって国土の重畳なのを実際においてもっと狭め、そして表日本、裏日本を通じ、しかも耕地などをつぶさずに高速自動車道を作って、国土開発がしかもできるというところに、非常に大きな魅力を感じて作っておることと思うのでありまして、私は道路関係の専門家であります本多さんについて、そういう点についての一つ御認識をさらに深めて、御協力を願わなければならぬと思うのであります。今言った私の議論にどこかまずい点がありますかどうか。一つお教えを願いたいと思います。
  16. 本多市郎

    本多参考人 今後の交通の見通し、さらに大都市周辺の非常な交通が多くなるというような見通し、それに対応する考えとしては全く同感でございます。今回の高速道路縦貫道路につきましても、その概念構想には全く賛成でございます。しかしそれは構想として雄渾でありまして、賛成はいたしますが、そのかわりその実施については十分な研究を遂げて、国費の効率を上げなければならないと考えますので、予定線を今から想定されておくということでなく、いろいろな実際に審議された結果、こうした方がよろしいというようなところは変更ができるように、審議会の審議を待って確定していかれるというふうにしていかれたらよかろうというのが、私の陳述の趣旨でございます。背骨を一本通すのが一番いいという考え方については、これはなかなか割り切ることはむずかしかろうと思います。東京−名古屋間というような遠距離交通が非常に多くなるだろうと言われますけれども、私がさいぜんから公述いたしました通り、何といっても多いのは近距離交通で、この都会から次の都会までというような間が非常に多いのでございます。しかるに、もし背骨を一本通すということになると、かりに考えてみますと、静岡から浜松まで行こうというような場合、背骨のところまで行くのに十数里かかる。それから横に十数里行って、それからまた下りに十数里かかるというようなことになって、都市と都市との間は、この背骨を通る高速道路はほとんど利用できないというようなことになってくると思います。そうかといって、ずっと下の方の田畑をつぶしてしまうようなところを通せというのかといいますと、必ずしもそうは考えておりません。その辺のところを十分審議して、適当にきめてもらいたい。できるだけ都市と都市との間の交道も、その高速自動車道路を利用し得るようなふうに考えてもらうならば、これは非常にいいのではないかと考えます。また莫大な経費を要する高速道路でございますが、もし山岳の背骨を通るというようなことになりますと、東京から少くとも京都あたりまでこれが貫通しない限りは——十年、十五年と工事を続けていっても貫通しない限りは、大体使えないというようなことにもなるのでありまして、東海道辺は今日交通も非常に混雑しておるようでございますから、できるならば、たとえば静岡辺までできたら非常に便利に使えるのだというふうに、支線といってもその支線がきわめて短距離で、都市にもつながり得るような地点を、あまり耕地なんかつぶさないようなところを使いつつ、きめていくというふうにしていただくのがいいのではないか、かように考えておるわけであります。今後の交通の見通しとか、高速自動車道の構想については、全く三宅さんの御意見に同感であります。
  17. 三宅正一

    ○三宅委員 ただいまのお話わかりますが、要するに私の言っておるのは、本多さんになおお伺いをいたしますが、たとえば静岡と浜松の関係なんというものは、裏日本におけるそれこそ富山と新潟とよりずっと道はいい。しかしこれ自体も、今後の交通としましては、もうちょっといいものでなければならぬことはきまっておりまして、これには努力しなければならぬ。しかし日本全体を考えましての交通の幹線といたしますというと、静岡だけは便利はいいけれども、富山の品物は高速道路をちっとも利用できぬということでは私はいかぬと思います。しかしながら日本アルプスの頂上を通るなんということはいけませんから、最高標高八百メートル程度のものであって、しかも背骨でなしに、南面のところを通って、そうしてその傾斜としては三%、しかも一番近い距離で行くということについては、昨日それぞれ土木の専門家が来られまして、技術的にちっとも不可能な点はないと言うておられるのであります。私はそういう意味におきましても、そしてそういう道路ですから、まさか名古屋のまん中を通っていくわけにいかぬけれども、名古屋の五キロ先を通っていって、それから以上は飛行場だって高速道路と同じことですから、そういう関係考えて、表日本も裏日本もそれぞれの主要な都市が利用できるということが、これは非常に大きな利益であります。それで信州の山の中にできたり、畑にできたものを静岡に持っていったり、東京にも持ってくる。なま乳のままでも持ってくる。距離の関係において、時間の関係で今までだめであったのが、大体東京−福島間の時間で、東京−青森まで行けるということで、青森の津軽地帯におけるなま乳が東に持ってこれるということになりますれば、経済圏が非常に変ってくるわけであります。従って交通量も非常にふえるということになりますので、私は大いに研究することについては賛成であります。賛成でありますが、しかしながら基本的には日本における各府県の主要都市と最もよく連絡しながら、しかも未開地を通っていく。そうして耕地をつぶさない。そうして表日本と裏日本との関係においても、片方が犠牲にならないようにしたい。静岡に通りましたって、裏日本関係のものは何の利用もできない。しかも普通の道路の何十倍という金がかかる。一キロ二億ないし、三億の金のかかる仕事をやりますのに、それではこれは問題になりませんので、私どもはその地方の利害というようなことを考えてやっておりません。われわれ何らの利害関係のないこの法案に、熱心に私どもが提案者の一人となって話をしておりまするのは、全く国家的な利益からでありますが、そういう点について、一つ役所のセクショナリズムとか、つまらぬ行きがかりなんということを捨てなければいかぬ。それから一民間人が考えた構想であるからというようなことで、これを一種の特権意識や技術者の特権意識などで排撃するというようなことがあってはならぬと思います。そういう点についてこそ、私は政治家の聡明性を持ち、正しいものを生かさなければいかぬ。民間人の努力に対しても感謝しなければいけない。そしてさっきも鮎川さんから話がありましたが、私はやはり一つの政治的な非常に重みがあるから、総理大臣などで熱心なものが出てくればできるのだといわれたのですが、吉田前総理大臣なども、われわれと政治的意見は違いますが、この点だけは非常に熱心に考えておったという事態も、私ども承知いたしておるわけであります。でありますから、予定線は、そういう意味において私はある程度鉄道施設と同じことだと考えておりますが、実測の結果、これは直していってよろしいけれども、根本原理としてはやはり国土を縦貫する、そして表日本と裏日本を緊密に連絡ができて、ほんとうの立体構造として完全なる自動車道路ができる、この基本観念には御賛成だと思いますが、いかがですか。
  18. 本多市郎

    本多参考人 縦貫道路を中央山岳の部に作ることが、理想的であるかどうかということについては、必ずしも賛成できません。縦貫道路を山の上に一本作ることだけによって、それが百パーセント利用されて、日本中の交通が非常に利便を受けるというふうになるものか、あるいはやはり日本の細長い国ではあるけれども、まん中一本では足らないのであって、結局表日本、裏日本と別々に縦貫道路を要する時期がくるのではなかろうかということも考えていかなければなりませんから、幅は狭いようでありますけれども、実際に走ってみると、日本の奥行きも、山のてっぺんから海岸までは相当あるのでありまして、そこまで行かなければ高速道路の利用ができないというようなことでは、不便ではないかという心配がございます。しかしその雄大な構想には、心から敬意を表しております。どこまでも私がさいぜんから申し上げました通り高速道路というものは莫大な経費のかかるものでありますから、経済効果というものの十分なところへ敷いていくことが大切だろうと思います。経済効果は何であるかと申しますと、三宅さんも言われました間接的な開発効果、観光効果というもの、衛生上の効果というものもあるかもしれませんけれども、何というても自動車の数であります。自動車がいかに多くその道を利用するかということが、効果の中心問題であるのでございますから、どこに作ることが最も自動車がよけい利用するか、それがすなわち路線経済効果になるのでございます。東京から江ノ島近くまでのターンパイクというのを民間会社で計画して、これは希望的な点もありますけれども計画書を発表しておりますが、実に自動車の数の力というものは偉大なものでありまして、百五十億くらいも建設にかかるというのに、国家的、総合的な利益は、二年間くらいに全額償還ができるという計画すら立つくらいでありまして、それはわれわれが今日まで予想することもできなかったほどの経済効果を上げる。その経済効果はどういうものかといいますと、自動車が多く通るということでございます。自動車がいかに多く通る地点を選ぶか、これに帰するのでありまして、その点から考えまして、山の上を一本作る方がそうした経済効果が多いか。それとももう少し下ったところに、あんまり畑や田をつぶすというのではありませんけれども、利用しやすいように作る方が効果が多いかというようなことを、これは全く概念的でありますけれども感じているわけでございます。しかし、自説に何ら科学的根拠があるわけではありませんから、幸いできまする審議会等において、十分そうしたことを研究されて、路線、それからその道路はどの程度の強い構造にしておかなければならないかという、構造規格等をきめられるがよかろうというのが私の意見でございます。
  19. 鮎川義介

    鮎川参考人 私は今三宅さんと本多さんの御議論を静かに聞きまして、第三者として意見を申します。三宅さんの言われる縦貫道路に肋骨をつけるということは、私は非常におもしろいと思います。その肋骨をつけるということは、多元的な問題を解決する一つ方法だと思うのです。本多さんの言われるのは、縦貫道路だけのような話でありますが、そうじゃないと思うのです。それがやはりあってどうなるかということを考えないと、三宅さんのおっしゃることには合わぬようにも私は感じております。でありますが、今の五島慶太さんの計画しておられますような、東京付近から江ノ島まで行くというターンパイクのようなものは、そろばん勘定は、これは民間企業としてのそろばん勘定であるし、日本全体の国民所得考える問題としては私は少いと思うのです。その意味では、私設の会社がやる場合と国がやる場合では、経済の立て方が、いわゆる普通のそろばんとは違って出ると思うのです。ごく平易に申しますと、たとえば水車を一つどうしてもつぶさなければならぬが、今日の情勢からいうと、その水車を一つつぶすために一億円の賠償をしなければならぬということのために、非常に高くかかるからして、これはだめだ、経済価値はないからやめるということがよくあるのです。私はそれは違うと思うのです。それはなぜかならば、もしも一つの電力会社が、民間の金を集めてその株式の配当なり利益をその線だけで、その面でもって解決しようとするならば、その水車一つつぶすのが非常に大きな問題になると思うのです。しかしながら国全体としてこれを考えた場合には、経済が違ってくると思うのです。それはお互いが、甲の人は非常にもうけて、不当なもうけをする。乙の大衆には、非常なそれが税金なり何なりとなって害を与えるというものでも、それすらも、やってあとの効果がどうかということをそろばんに入れないと、それだけの問題では、私はいわゆる国としての経済を論じるわけにいかぬと思うのです。いつも間違いますのは、私鉄等で一つの株式会社をこしらえて株式の利益をはかり、あるいは社債の利益をはかるというやり方と、そういうものは損があっても全体としてどのくらいもうかるかということは、最後の締め上げを見ぬとわからぬと私は思うのです。ごく極端に申しますと、商品を一つ作りまして、それをお互いが共食いで買ったり売ったりするという場合には、あるいは値段が高いと消費者が損をする場合、しかしながらこれは製造家はもうけるが、国としては損をしてももうけてもこれは同じことです。それはお互いが損をした、得をしたというのでは、国全体の冨の上からいいますと何も変っておらない。左の手で持っておるものを、右の手にやったというにすぎない。しかしながらもしこれが外国貿易になった場合に、安売りをして、そうして一たん安く出たものは、他国の人がもうけて日本人が損をする場合には、これは大きな問題です。海外貿易をやるような場合と、お互いが国内で商品をやりとりする場合と、これは非常なセンスが違ってくると思うのです。そういうことはよくあるです。この道路の問題も同様に、国道式の問題で考えるかどうかということになりますと、私は今ちょうど研究をもう少し進めてみたいと思うて、今の縦貫道路のような問題がどういうふうになるだろうかというのを、できるだけ勉強しようと今やっておりますが、おそらくこれは現在のものに協力ができはせんかと思うております。それはなぜかというと、いわゆる国土開発——毎年水害のために非常な日本は損をしておる。これは自分自身が、一人々々がどういうふうになるかということを考えないものですから、九州あたりで毎年水害になっても、東京の人はあまり考えないです。それは実にそういうものです。だけども国全体から考えると、非常な大きな目に見えぬ損をしておるのです。そういうものはやむを得ないとして臨時出費をしますけれども、実は非常な損をしておるのです。そういうものを根本的になくす、半減にするとか、あるいは少くとも三分の一に減ずるということができるならば、これは非常に大きな副産物ができるのです。しかしながらそれは一つ水力電気会社がやるとかいうことになると、経済の立て方が違いますから、ディメンションが違ってくるわけですから、考え方が、すでにそろばんの入れ方が違っておるのですから、損益は別の式が立つわけです。それでありますから、私は今の肋骨問題なんかになると、治山治水という問題が一つ出てくると思うのです。現在の道路を改修したからといって、それは治山治水のためには何ら貢献をする力はない。あるいは途中でいろいろなことをやりましても、それは上から非常に水害があって、今のような情勢でありますと、砂防工事ということは、徳川時代からいって、非常に今日ではネグレクトされておるために、毎年大きな洪水が出て、決壊しておるようなわけであります。これは根本から一つ治めていかなければならぬ、そういうことを解決するには、この肋骨問題というのは非常に私は役に立つと思う。これは、自動車交通量でもって今あるものを動かすという問題とは全く別の問題で、そういうことは、現在の道を幾らか便利にしたのでは解決はつかぬ。源を治めるのでなければならぬ。そういう意味において、縦貫道路を持っていって肋骨をつなぐことは、その方からいうと大きな副産物があると私は思う。おそらくその方が大きいのじゃないか。自動車交通量考えて出す結果と、損益の問題と、ほんとうにやってみたら何倍かその方がもうかりはせぬか。これは答えを出すことは、皆さんが首肯されるようなソリューションを与えることは非常に困難です。しかし不可能ではない。非常に高度な方程式を使えば必ず出ることであります。今のアメリカでやるようなコンピューターを使って、電気の機械を使いますれば、どのくらい損をした得をしたということは、二時間、三時間でわかる。それを今までのそろばんや筆算でやるならば、おそらく六カ月か八ヵ月かかる。それが二時間、三時間でできる機械がありますから、多元方程式を解くことは割合楽になってきた。その点やってみていいことです。だから一つのプランを作ってみて、それにいろいろな人が携わって、それからディライブすることによって、必ずしもできぬことはない。全体の人がどのくらい利益を得るか、治山治水によってどのくらいの川をせきとめることができるか、あるいはダムができれば、水力電気自体としてはもうからぬでも、それによってほかでもうかる。それは国民所得の上に全部かかる。国民所得というものを一つのべースに置いて、それがもうかるか損をするかということを私は考えなければならぬ。皆さんがこうやってやられるのも、地方的な問題じゃないと思う。そういう場合には、自動車交通をやっておる人のインテレストを考えるべきではない。日本の全体がどのくらいそれによって利益するかということをやるのが、この問題じゃないかと思うのです。私の今まで申し上げたのは、そういう問題じゃないのです。ただ一つ交通の問題で現在のものをどうするかということだけでは、これは平面的の問題で、立面的の感じじゃない。ですから、今言うたようなことで、方程式は非常に複雑になって、多元的になる。それを解決する場合には今の方程式じゃいかぬと私は思う。それはよほど考え方を深く考えていただきたい。そういうことをやるならば、もう少し研究が要るのじゃないかということを申し上げるわけです。私は今実は、自分の方ではなかなか経費がかかって容易にできませんから、そういうものがないのです。森林原野を開拓するのと治山治水をやるのと、つまり寒冷地を耕して幾らかでも麦をよけい作るということのためにやるのと、現在交通量の多いところをやるのは、これは全然無縁の問題です。これは比べることは至ってむずかしいと思う。比べられぬ問題だと思う。極端に言えば、おもりと長さを比べるようなものじゃないかと私は思う。これはよほど頭の整理をしてかからぬと混雑してしまっていかぬと思う。普通の常識からは、なかなか私は割り切れぬ問題だと思う。非常に複雑になって参ります。ですから今の治山治水、これが一番大きい。何としても大きい。それで山のてっぺんの方に近いところをやれば、今、未利用の山林というものを開発して、そうしてまた植林ができます。今のようなことでもって、この小さい角度では、なかなか山林を開拓するということは大へんな経費がかかっていかんことになる。これは今の自動車交通量からは出ない問題だと思う。そういうものをやるには、まず今の川を伝って、川を修復していくということは、百年河清を持つことになりはしないか。何らか新しい交通網をこしらえる必要がある。  なお私が申し上げたいのは、まず耕地をつぶしちゃいかんとか、田を何するのはいかんという考えはやめていただきたい。これは田をつぶそうが、あるいは現在の耕地をつぶしてしまっても、そのためにそれ以上の効果が上ればいいじゃないか。必ずしもイデオロギーにとらわれる必要はないと私は思うのです。米が足りなければ外国からもとる方法はありますから、それにはこちらの耕地なり、その他治山治水をよくして、それによってもうけたのでカバーすればいいわけですから、必ずしも鎖国的のことを考える必要はないと私は思う。だからそういうふうな、絶対に田をつぶさないというような、あまりかたいことをお考えにならないで、つぶしてもかまわぬ、ときにはつぶしてしまってもやむを得ない。経済にその方が非常に得だからやるということでないと、どうしてもつぶしちゃいかぬということは私は少し考え過ぎじゃないか、こう私は思う。よけいなことを申し上げました。
  20. 竹谷源太郎

    竹谷源太郎君 たがいま中央道における交通量のことが問題になっておりまするが、提案者としてわれわれの考えるところを簡単に申し述べさしていただきます。これは建設省等において、東海道の弾丸道路交通量調査いたしまして、大体中央道ができますならば、昭和三十六年度完成のときにおきまして 東海道国道並びに鉄道から転換するところの旅客貨物を輸送するために、三千八百台の車両が東京—小牧間を通る。すなわち東海道を通る。この区間だけについて言いますると三千八百台、なお区間の短かい中距離もしくは短距離の自動車は千三百八十台、そのほかに誘発交通量といいまするか、この中央道ができますことによって増加する交通量は二千二十台、合計七千二百台が昭和三十六年には通る、これが昭和四十年になりますると、大体一万台に増加する、こういう見込みを持っておるのでございます。  次に本多参考人のお話のうちに、日本アルプスのてっぺんを通るかのごとき御陳述がございましたが、これは言い違いかもしれませんが、実はそうではございません。先ほど三宅委員から申されたように、八百メートルないし九百メートルが最高でございまして、しかもそれは南斜面であり、道路が高くなりますると、雪積あるいは氷というような問題、あるいは山を回りくねって、延長が長くなるというような観点から、最も合理的な低いところにおいて、しかもまっすぐに通る路線というところで、赤石山糸を九百四十メートルのところでトンネルに入りまするが、これが最高でございまして、二千メートル、三千メートル級の中部山脈のてっぺんを通るわけではございません。  それからまたただいま鮎川参考人からきわめて適切な治山治水のお話がございましたが、この道路は東海道を流れるたくさんの大河川の上流を通るわけでございます。その急流がダムとなり、あるいはその付近に電源開発をやることによりまして、治山治水の非常に大きな目的を達成し得ますとともに、助骨道路によりまして、その山と山のはざまを——たとえば新潟まで走るという場合に、そこに次々とダムを建造し、電源開発と同時に、洪水のない日本を作るというのが、この縦貫自動車道一つの非常に大きなねらいであるということを、この際付言しておきたいのでございます。
  21. 内海安吉

    内海委員長 次に山口好一君。
  22. 山口好一

    ○山口(好)委員 ただいま三宅君の御質問に対しまして、いろいろと有意義な御意見開陳いたされました。大体私のお伺いしようといたしましたところを尽しておりますが、一、二点お伺いをいたしたいと思います。この法案は、大体われわれ衆議院議員の各党の人々ほとんどすべてを網羅して、提案者として提出いたしておりますわれわれももとより技術家でなし、またこの縦貫自動車道についての深い検討をいたしたというわけでありませんが、あのアメリカのニューディール政策に基きましてのTVAの問題と同様に、あらゆる面で沈滞し、行き詰まっておりますところの日本の運命を打開して、そうしてこの日本の破れた国土の中に大動脈を作って、ここに脈々たる若い血潮を注いで、日本をぜひ再建させたいというような考え方から、この提案者としてわれわれ署名をいたしたのであります。皆さんの御意見に基き十分なる検討をいたして、その目的を有効に達成したいというふうに考える一人でありますが、ともかくもすべての議員が提案し、署名いたしておりますので、これは大体手続的に申せば、すみやかに議会を通過するようになると考えるのであります。その点について、今別表の問題などについていろいろ論議がなされ、また実際この別表に盛られております路線というものは、相当重大な問題であろうと思うのであります。従いまして、このごらんになります別表、これは大体一府県について一ヵ所ぐらい、しかもその付近というようなことで、先ほども三宅さんから申しましたように山間僻地をも開いて、そこに都市を建設する、また人口を分散し、産業あるいは未開発の資源の開拓というようなことも目ざして、何々付近というようなことで大体の路線を示しておる別表であります。こういうものを盛り込んだこの法律を近いところでわれわれが通すことになると思うのでありますが、そういう趨勢にありますので、これについてのひっくるめての御意見を重ねてお伺いをいたしたいと思います。鮎川さん、飯沼さん、本多さん、この三参考人それぞれの御意見をお願いいたします。
  23. 内海安吉

    内海委員長 ただいまのは、これを要約すれば法律に付属したる別表問題についての御質問でございますか。
  24. 山口好一

    ○山口(好)委員 そうなると思います。
  25. 鮎川義介

    鮎川参考人 だんだん枝葉になるように思いますが、これは私研究し尽して申し上げるわけではないが、ただほんの、そういうこともあり得るということを御参考にしてもらいたい。それはその縦貫道路のことになりますと、今私は帝石の責任者でやっております。このごろ油を掘りますのには、道のないところにその井戸をこしらえなければならぬものであります。道のへりにあることは絶対ない。そういうところでないところにボーリングをやると非常に金がかかるわけです。新たに自分の手で交通を作らなければならぬ問題です。それを作っても、井戸を一本掘り当てれば、それは消し飛ぶということでやるわけであります。このごろはどういうふうにやっておるかというと、大がい今までの道を使わない。新たに山の尾根をずっと伝って上る。これが一番安い。なぜ安いかと申しますと、川を横切ることがない。極端に申しますと、山の尾根だけで川は一つもない。川を通りますと、どうしても水掛だとか、橋をかけかえるとか、せっかくやりよる間にいろいろな工事が停頓しまして予定が狂うわけです。予定が狂うと仕事ができにくい。ことに夏の間にボーリングをやらなければならぬ。北国に行きますと雪が降って、冬はやれないということになりますと、それを四、五月の間に処理しなければならぬ。そういう、天災にでくわさぬようなことをやるのが要締です。そうなると、道がなくてもかまわぬから、山の尾根にずっと道を新たに作るわけです。このごろ行ってごらんになりますとそれがたくさんある。私もこの間行って、妙な山のてっぺん——なぜ下にやらぬか、ところが今までの既存の道を行くのが一番高くかかるのです。それよりは道が混雑するようなところを通らないで、災害なんかない山の尾根をやるということが現実にある。これを敷衍して考えますと、山の中腹をやるのは、私ははなはだおかしいと思う。というのは、中腹でもやはり水害をこうむる。その中腹の上の泥をかぶる。よほど砂防工事がよくなっておれば別問題でありますが、これは非常な金がかかる。一番かからぬのはてっぺんです。てっぺんだと雨に見舞われる面積が一番少い。途中だと低いところへ来てみなやられるわけです。なるべく高いところをやりさえすれば雨が少い。雨が少ければ被害が少いということになります。落差のために水害を起すわけでありますから、下へ行くほど落差が大きくなる。集まった水が一番害をする。ばらばらに降った雨ならそれほど害をしない。そういう場合には山の尾根をやるということが一つの問題です。アルプスの上でもかまわない。それはこっちもかまわない方法がある。それはいかぬという観念はこのごろはやらぬ。それは機械力がずいぶんできまして、そんなことはカナダあたりでは考えておらぬ。ですからあまり従来の考えにとらわれると、途中をやる、途中をやると必ずはからざる被害を受ける。そういうことを絶対ないようにするには一番上をやる以外にない。自動車の道が三割や二割遠いというのは問題にならない。それで諸君も平生御承知でしょうけれども、とまったりなんかするものが一番損です。長くてもいい、急がば回れ、自動車はことにそうです。今後ハイ・スピードになりますれば、遠いということは問題にならぬ。だから直線が近いということではなく、回った方が近い場合が幾らもある。そういう地理的な問題から考えていくと、川を通るという、そういう考え方は今はやらぬ。やはりそれは遠くてもかまわぬというように観念を切りかえていかぬと、面線が一番短かいのだということはあり得ない。実際問題として直線が一番遠い場合もある。ですから下からずっと上って行った方が、川を渡るよりいい場合がある。水害のある場合はそれがいい。そういう場合は必ず日本では一ぺんか二へんある。お互い個々にそういう目にあっていて、そうしてやはり直線が近いのだと、こういう観念論でいる。実際はそういうことはない。始終日本は水害に見舞われる。なるべく水害のない方法でやって、遠くてもかまわぬという観念に切りかえていかなければならぬ。そういうことは研究しないとわからぬ。普通の観念ではこれはいかかぬ。ですから私はやはり尾根を通った方がよくはないか。上へ上る方が案外いい場合がある。そういうことになるというと、肋骨などというものは非常に趣味がある。意味深長なものであると思う。そういう考え、これはごくしろうとの考えであります。あなた方がお考えになる上に、考え方の参考のために申し上げるのです。そういうことを織り込んでおやりになったら、十分日本に適したものができはしないか。外国ではあまり雨が降りませんから、雨というファクターを忘れてやっておる。しかしこちらは雨を考えないといけない。雨の被害の一番少いところをやるのが要諦です。始終くずれたりするところをやってはつまらない。そのためにはいささか迂回してもかまわない。あるいはそのために畑をつぶしてもかまわないということになりませんと——畑はつぶしてはいけない。それから今までの橋をどうしてもかけなければならぬとか、上は寒いからいけないとか、雪が降るからだめということになると、あまりいい案はできないと思います。今度やられる場合には、これは画期的な問題だから、よほど革命的な考えでやっていただかなければならぬ、その意味において調査が必要だ、考え方の基礎をかえてかからなければならぬということを私は申し上げたいと思います。
  26. 本多市郎

    本多参考人 私はすでに申し上げたのでありますけれども、私の考えていることが多少皆様方にお伝えできなかった点もありますから、つけ加えておきたいのであります。  自動車の受ける利益を重点に、経済効果を考えなければならぬと申し上げましたが、これはもちろん道路のための開発利益、治山治水の利益、その他の利益等、国家的利益も総合的に計算し勘案して、路線の位置をきめなければならぬと思います。そうしたことを考えてきめるのでありますが、その中心になるのは自動車の受ける利益が一番大きいのでありまして、さいぜんもターン・パイクの話をつけ加えたように、非常に大きなものでありますから、その点において非常にマイナスだという路線を選んだならば、間接的な効果を計算しても追いつかないだろうと思います。そこでそういう間接的な利益、さらに交通量からくる利益というものを総合的に十分調査をされて、その上で路線決定していかれるということが間違いのない方法でありまして、今からどこの町の付近と書いてあるだけであっても、その町の付近を通らない方がいいという結論が出た場合に、そこを変更しようとすると、その町の法律上の既得権だということになって、なかなか変更することが困難になる場合もありますから、どうしても路線決定だけは、あらゆる総合的な効果というものを科学的に調査されて、そしてその十分研究された結果きめられるということにしていただくことが、非常に効率的な建設ができるゆえんだろうという感がいたします。今日までの御調査では、もちろん未開発地開発増加数も一応は出ましたけれども、それは間接的な効果やそういうものの十分な調査ができているはずがございませんので、せっかく権威のある審議会ができることでございますから、そういうところを十分研究されつつ、その上で進行されるという意味から、別表だけは除外して法律を作っておかれる方が、将来いろいろな改良をやる場合に便利ではなかろうか。またやらなければならぬことでも、時勢によって不可能になるおそれもあるから、そういう心配をなくすことではなかろうかというふうに考えている次第であります。
  27. 飯沼一省

    飯沼参考人 別表についての意見をまだ申し上げませんでしたが、この何何付近と書いてありますのを相当広く解釈することにすれば、私はこのままで差しつかえないのではないかと考えております。
  28. 山口好一

    ○山口(好)委員 もう一点、鮎川さんに簡単にお尋ねしたいと思います。この大きな事業を完成することは、相当の日時とかつ資金を要すると思うのであります。かつ技術的にもなかなかの困難性もあると思いますが、資金面につきましてもわれわれはいろいろと考えなければならないし、審議会としても、その他のメンバーといたしましても研究を要すると思いますけれども、本事業につきましての外資導入の可能性とその価値と申しましょうか、そういうようなことについて御意見を伺いたいと思います。
  29. 鮎川義介

    鮎川参考人 外資導入にもいろいろございますが、政府政府の外資導入、あるいは政府対向うの命を供給する民間、民間対民間、そういうふうに三つも四つも外資のルートがあるわけであります。たとえばターン・パイクですか、有料道路のようなもの、これはペイしますから民間外資が十分来ると思うのです。とにかくそれだけの範囲においてペイすることでありますから、ペイすれば外資ができるのです。ただしペイの仕方が非常に長い、百年もかかってペイするという問題であるとか、あるいは国防に寄与するために、それが回り回って日本の国民の利益になるということになりますと、民間外資は起るわけはないのですけれども、政治借款もそういう場合にはなかなか起りにくいのです。しかし世界情勢、政治情勢から考えました場合に、普通の商売の問題でなしに、普通の経済でなしに、そろばんに入らない問題でもある場合には外貨はどんどん入ってくる、そういう機会は従来あったのですが、ミスしているのです。二、三回、ミスしている。これは私は政治家の罪だと思うのです。政治借款になると経済人の関与するところではない。マーシャル・プランのごときものを受け入れて、今どういうことになっているかという効果を見ますと、非常に惜しいことをした場合が日本には二、三回あるのです。これは民間人の責任ではない。全く国の政治をつかさどっている人々の責任だと思うのであります。そういうことになりますから、外資にはいろいろ時期とルートがありますが、これはみな可能性があるのです。時によって、道というものに対して政治借款も必ずでき得ることも、従来でもあったと私は思うのです。  民間投資のものは、今後でも相当あるのです。観光というような普通の日銭をかせぐものから見ますと、五島君あたりの立てているものはみな日銭勘定から来ているのでありますが、そういうものならばできやすいのです。ただそれをやる場合に、法律的に施行する場合に、今のそういう道を通すのに非常にじゃまになる問題がたくさんあります。ことに二つの会社が競争しておって、どうしても相いれないような問題のときには、外資はなかなか入らないのですが、そんなむだなことを二つもやらないでも、一つでもいいじゃないか。二つあるためにお客は二つになり、そうして倍の建設費がかかって、経済問題からいえば、お互いに経済を半減している、そういうことのために、日本に向っては外資が入らないという場合がたくさんあるのです。私はせんだって向うで聞いたのでありますが、ああいう箱根土地とか東急というものがもつれている間は来ないというのです。危ないのです。お客は半分で、けんかして、両方要らないことをやるために、せっかくもうかるものがもうからないということがあるのです。これがもしも、向うが投資関係からいって必ずそれが引き合うということになれば、必ず外資はできると思うのです。こういう問題は、従来のいきさつや何かから割り切らないと、経済問題がただ一つの会社の問題ではだめで、向うだってそういうことはなかなかよく考えております。  ですから、外資の問題はいろいろ時期があります。方法もいろいろありますが、その時を誤まると、過ぎてしまうと、もうそれは何にもならないのです。前に相当いい時期があったと思うのですが、これは政治家の方の罪で、民間人の罪ではないのです。これから先は民間人がやる時期が相当来ると思うのです。民間投資のターン・パイクであるとか、こちらの方からのお話のようなものが、ターン・パイクとして考える場合には相当いろいろあるのです。それは国との問題で、考える必要のないことです。もうけるという問題からいえば、その会社ならその会社がもうける方法はたくさんあります。今の縦貫道路があったからといって、それでザッツ・オールではない。まだまだいろいろの複雑なものができてくれば、必ずもうかるのです。だからそういういわゆるもうける問題も、国としてはやらなければならぬ。多元的な問題は全然これは別で、ときどきそれを混雑して競輪されるところに、頭を少し整理していただかなければならぬ点があると思う、こういうふうに感じます。はなはだ失礼を申し上げました。
  30. 内海安吉

    内海委員長 有馬輝武君。
  31. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 本多先生にお伺いしたいと存じます。先ほどのお話の中で、国土開発という理念と縦貫という言葉に関連してお話がございました。国土開発という立場からものを考える際には、相当考慮しなければならないという、否定的な意味の強い立場でのお話でございましたし、また縦貫という点につきましては、遠距離輸送というよりも、むしろ近距離輸送に現在の実態があるという立場からのお話でございました。この点につきまして、私は国土開発あるいは縦貫というのは、接頭語というか、歌のまくら言葉みたいなもので、特に国土開発なり縦貫という言葉の持っておるイメージとは、おのずから異なったものがあるのじゃないかというふうに受け取っております。そういった意味から申し上げますと、適切な接頭語じゃないとも言えるでありましょうけれども、そうかといって、この言葉をなくしてしまうと、この法案の名称それ自体が不明確になって参りますので、あえて私これにかわる言葉を探し得ないのでございますけれども、そういった点からいたしますならば、私は先ほどお話のありました現在の道路状態を相当考慮しなければならないということと、この道路の持っておる意義とは、おのずから異なって参るだろうというふうに受け取っております。そういった面で経済効果についてのお話がございましたけれども、たとえば私たちの国の状況などから申し上げますと、この点について先ほどのお話にいま少し敷衍した御説明をいただきたいと思うのでございます。それはなぜかと申しますと、同僚の二階堂君はおりませんけれども、私の方の鹿児島へ帰りますときなど、遠いところへ帰るというよりも、むしろ時間的に十年くらい昔の状態に一歩一歩帰っていくような気がいたすのでございます。地場産業の発展の問題を考慮いたしますときにも、資源その他の問題に先がけて起って参ります問題は、この輸送の問題であります。そういう点から、私はこの道路ができることによって起る経済効果というものは、むしろきのう三宅委員が的確な表現をされましたけれども、縦に長い日本の立地条件をまるでまるくしてしまうようなものだというお話がございました。そういった意味で、私は大きな意義を持ち、日本経済発展の一つのバック・ボーンになるのではないかというような受け取り方をいたしておるのでございます。もちろん先ほど御説明のように、現在の道路自体についても、それは日本の年間の予算編成の際にも、基本的に考え直さなければならないほど重要な状況になってきておりますけれども、それとこれとは別個に推し進めるべきものだというふうに考えておるのでございますが、その辺について、いま少し先ほどの御説明を敷衍して御説明願いたいと存ずる次第であります。
  32. 本多市郎

    本多参考人 私が申し上げましたのは、高速自動車道を作る限り、最も自動車を利用する有望な自動車道をきめた方がよろしいというところにあったのですが、それは決して開発等を考えないわけではございません。開発のためには開発の必要なところへ支線を作ることもできます。これは自動車道のようなそんな高い金の必要なものではないのでありまして、開発に必要な程度の道路を作りさえすればいいのでありますから、その幹線道路の今度の大動脈だけは、最も総合的利益の大なる地点を選んで設定してもらいたいということでございまして、開発を度外視しておるわけでも何でもございませんが、しかし開発になるからということで、自動車道の位置として、非常に大きな不利益な地点を選んだとしますならば、大へんな国家的な投資がむだになることになりますから、総合的な利益の一番上る地点を選んで路線をきめ、そして特に開発に必要なものについては、自動車道の百分の一もかからないほどの開発道路を支線として作っていけばよかろう、こう考えておるわけでございます。決して開発考えておらぬわけではないのであります。
  33. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 今の点につきましては、御説明の立場はわかりました。私先ほども申し上げましたように、開発あるいは縦貫という点にこの法案の持つウエートがあるのじゃなくて、とにかく一本通すというところにあるのじゃないかと受け取っておりましたので、今みたいな御質問を申し上げたわけでございます。これに関連いたしまして、提出者であります楯兼次郎君にお伺いいたしたいと思うのでありますが、現在の輸送面における自動車の持っておるウェートが大きくなってきておることは、もう論じないでもはっきりいたしておりますが、たとえば一つの区切りをいたしまして、今後十年間にふえるであろうところの貨物というものを予想されて、現在の鉄道その他の輸送機関、これが十年後のその貨物に適応するような状態にあるかどうか、こういった点について一言お伺いいたしたいと思うのであります。
  34. 楯兼次郎

    ○楯兼次郎君 今有馬委員から御質問がございましたし、先ほど来大局的立場に立って、この縦貫自動車道の意義がいろいろ論議をされましたので、私ども考えております具体的な問題につきまして、簡単に申し上げてみたいと思います。私は例を東京、大阪あるいは名古屋にとってみたいと思いますが、現在日本の国内で輸送をいたしております陸上の貨物の量が、経済審議庁の調査によりますと大体六億トンであります。これを鉄道自動車によって輸送いたしておるのでありますが、鉄道ではもはやダイヤを増設する余地がない。この施設を維持するために、保線関係から私どものところにも陳情があるのでありますが、何とかしてもらわなければこの保安の維持が困難である、こういうような状態でございます。従ってただいま自動車道ということを想定いたしますと、何だかおかしな感じがいたすのでありますが、大体この自動車道が完成を見る十年後を想定いたしますと、自動車道ができなくても、鉄道を複々線にするか、あるいは東海道に自動車道を作るか、あるいはこの法律案の別表のような個所に自動車道を作らなければ、東京−名古屋あるいは大阪間の貨物輸送はできないということになります。そういう必然性から私どもはこの自動車道というものに賛意を表しまして、私も提案者の一人になっておるわけでありまして、大体昭和四十年には八億トンの貨物輸送になるわけであります。どうしても何とかして東海道なりあるいは中央道なりに輸送機関を作らなければならない。さてそれでは一体どこへ作るかということになりますると、東海道へ——この鉄道を複々線にするということより、今日の自動車の激増の趨勢から見まして、どうしても自動車輸送ということが将来の課題である。そういうことになりますると、東海道へ自動車道を作るか、中央道へ自動車道を作るか、こういうことになります。ここで考えられますのは、先ほど来論議をされておりましたように、世界各国の自動車道の様子を見てみますると、先ほど論議をされておりましたようにアメリカのハイ・ウエイ、それからドイツのオート・バーンというのが代表的な路線として上って参ります。ところがアメリカの方は御承知のように交通緩和を目的として建設をされたものであります。ドイツは国土開発ということを主たるねらいといたしまして建設をされております。どうせ作るならば、東海道のいわゆる交通緩和というものを目的としたところより、国土開発という使命を持たしたこの中央道に建設をした方が、貧弱な日本経済面からいって最も効果的ではないか、こういうふうに考えまして私ども提案をいたしておるわけであります。ただ先ほど本多先生がいろいろ御陳述になりましたように、既存の道路を改修した方がまだいいじゃないかというような御意見もあったと拝聴をしております。しかし現在ありまする国道等を改修をいたしましても、これは混交交通であります。従って人や荷車やあるいは自動車等が混交をして走っておりますので、ただいま私が申し上げましたような、自動車による輸送を達成するという使命を果すことにならないと思うのであります。人や荷車が走っておるところに自動車が入りましても、自動車の持つ能力のスピードを出すことができません。もしほうっておきましたならば、ただいま運輸委員会審議をいたしておりますように、自動車事故ばかり多くなりましては何にもならない、こういうふうに考えまするので、もちろん既存の道路を改修してそうして近距離輸送には十分活用していただかなければならないということは十分わかるのでありまするけれども、本法案がねらっておりまするところの使命を貫徹するということはちょっと困難ではないか、こういうふうに考えておるわけなのでございます。きのうも論議がございましたが、そんな金があるならば、今言いました理屈は別といたしまして、既存道路を直してからやった方がいいじゃないか、こういうような御意見も再度出てくると思いますが、なかなかそういうふうには私は参らぬと思います。といいますのは、今日鉄道の新線建設の予定が百二十線ぐらいあるわけであります。この新線建設をせよという声が非常に強い。従って本年度は三十億円ばかり出しまして、今建設にとりかかっておりますものが二十三線あると承知をいたしております。これの完成に大体四百億投じなければなりません。このようになるほど、道路の悪いということはわかるけれども、さりとてこの道路のみを主体にして、鉄道建設であるとかあるいは自動車道をほうっておくということはこれはできないと思います。私どもの構想では、日本交通体系というものは将来、陸上でありますが、鉄道それから既存の道路あるいは自動車道路、この三者が一体となって日本交通体系というものが立てられなくてはならない。従ってそういう意味からいいますならば、鉄道自動車道が競合してはならないと思います。それから国道に接近をいたしまして、やはりこれも競合をしては意味の大半を失うと思います。お互いに間隔を置いて相関連をしてこの鉄道網、自動車網あるいは道路網というものが形成されていって、初めて日本交通体系というものができ上る、こういうふうな考え方からもぜひ一つ、何も交通機関のない中央道にこの自動車道を作るということが最も適当ではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。簡単でございますが、私提案者の一人として感想を申し述べた次第であります。
  35. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 いま一つお伺いをいたしておきたいと存じますが、それは就労対策の面からでございます。昭和初年の、私たちが小さいころ……。
  36. 内海安吉

    内海委員長 ちょっと有馬さん、お話し中ですが、なるべく参考人の方へほこ先を向けていただきたいのです、時間がもうありませんから。
  37. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 それでは機会を見つけて今の点は御質問をいたします。
  38. 内海安吉

    内海委員長 それでは次に前田榮之助君。
  39. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 もう皆さんから御質問がありましたので、大体私が問おうといたしておるところもほとんど終っておるのでありますが、ただ最後に一言だけ本多参考人にお尋ねを申し上げておきたいのです。どうも今質疑を聞いておりますと、本多参考人は、縦貫道路という一つのコースを予定してきめてある今の法律というものには、趣旨は大へん賛成であるがと言われますけれども、どうも反対の意思を表明されておるがごとくに聞き取れるのであります。その根本となるべきものは、道路はいかなる道路でも自動車輸送をするから、自動車が中心でなければならないにもかかわらず、その自動車の最も要求しておる都市と都市との関連性において、非常に欠けておる点がある。ことに開発云々というけれども開発なら開発だけの道路を作ればいいじゃないか、こういうことまで申されておるのでありますが、まあ開発の議論やいろいろなことを申し上げますと、時間がかかりますから申し上げません。本多さんは道路については非常な関心を持っておられて、その点については非常な御理解があると思うのです。ただ今日本道路の改修について、道路五カ年計画等、建設省でいろいろな計画が立てられたのでありますが、まことに残念なことには遅々として進まない。この遅々として進まないところはどこにあるかと申し上げますと、私の見たところによりますと、普通の道路は県道であろうが、今の一級国道、二級国道等にいたしましても、この道路は、一般物資にいたしまするならば、いわゆる消費物資と同じことです。現在まで経済及び人間交通に使用されておる。従ってここから莫大な、いわゆる賃取り道路みたいに金を取り上げるわけには参りません。ただ特別に施設をいたしましたところの関門トンネル、こういうような施設を特別に作った場合においてのみ金は取れる。それ以外に取ることは現状においては不可能だと思う。従って国家財源の一般財源の中から公共事業として出すから、従って一兆円予算の中で一割出すか五分出すか八分出すかということになると、これは今の非常な距離のある、また非常に今までに未改修に終っておる日本道路では、これはなかなか思うようにいかぬわけです。従って都市と都市との点も必要であるということは、国民全部の人が痛感しておりながら、またその担当である建設省もよく承知しながら、なかなかできてこないので、現実のこの道路改修というものを一歩飛躍しなければならぬという点が一つあるわけであります。それからもう一つは、東海道にも必要である、それから将来必要なときには裏日本にもできるだろう、こういうことも言われておるのでありますが、そう裏日本にも東海道にも、また横の日本海と太平洋とを貫く五、六本の大きい線を作る、こういうことも言うだけのことであって、できない相談であろうと思う。ただできる相談として考えられるのは、せめて一本だけは日本国土の中に縦貫したところの道路はできるのじゃなかろうか、それは金を取ってもいいのじゃなかろうか、それは外資も導入できるのじゃなかろうか、こういうところに目がつけられておるわけであります。そうするならば、三宅君が言ったようないわゆる脊髄道路であって、裏日本、表日本等にも使われる、各都市との連絡に最大な効率を上げるようにやっていく道路というのは、いわゆる縦貫道路以外にはないのじゃないか。ここに四百数十名の議員の魅力があり、賛成したゆえんがある。ただ御説のように、そうではあっても、飯田市を通れとか、あるいは大垣を通るのだということになると、これはあまりも予定し過ぎて、もう少しいいところがあっても、それにこだわるようなことになるのじゃないかということは、これは私も賛成し、そういう部面があるならば、改正すべきだと思っておる。ただ中央を一本貫くということに、一大改革を加えなければならない支障があるということだけが、私は難点だと思う。そういう点であなたがいかにも御反対なさるような格好になるのは、道路に精通されたあなたとしてはあまり適当でないように思う。それは反対でないと思うのでありますが、その点をもう少し率直に、議会におるわれわれ議員四百幾人の心持がどこにあるかということについて、御理解できないものであろうかということを一つお尋ね申し上げておきます。
  40. 本多市郎

    本多参考人 ただいまの前田さんのお話の中で、路線をあらかじめ予定しておくことはどうかと思うというようなお話もございましたが、大体そういう心持ならば、構想において変りはないと思います。それは私は日本にも一本くらい縦貫道路があってもいいのじゃないかという考え方からでなく、日本にも縦貫道路のあることが国家的利益だ、経済的に見て非常な国家の利益になるのであって、それだけの道路は一日も早くした方が日本を富ますためであり、やらないでおくことが道路を食いつぶして貧乏しておるということになるのであるから、そういう点からあるべきであって、決して体裁で考えるのではない。それから裏日本道路の場合も、作れないだろうけれども、しかしなおあった方が国家的利益である。もし自動車道路が裏日本にできれば、これほどの国家的利益があるじゃないかということがここで計算上現われてきますから、その時分にはできるのでありますから、またやらなければならぬのであって、決して図面の上で見てわれわれがちょっと両方から利用できて便利じゃないかとか、二本は要らないというような考え方でなく、自動車交通の趨勢からいって、ここには引き合う、ここには引き合わない、ここには一日も早く作らなければならぬということが計算的にはっきりきまってくるわけでありますから、そうした方法で、かりに南側を通っていたにしても、北側にもやがてできる時期があるであろう、またやらなければならぬ時期がくるであろうということを申し上げた次第であります。ただ今度の構想全体については、さいぜん提案者のお話もありまして、まことに自動車高速道路の性格というものをよく御認識になって、提案されておることを知りました。その通りでありまして、これはどうしても画期的な自動車道建設が必要であります。今回の提案はまことに雄渾ではありますが、その雄渾さに眩惑されてしまって、ほんとう自動車道路の効率というものを最大に上げる地点であるかどうかということについて、十分の研究が必要だということを申し上げておるだけでありまして、決して私にいたしましても、東海道をずっと神戸まで、都市の近くを通っていかなければならぬというようなことを申し上げておるのではないのであります。この地点が、さいぜん提案者から、やや山の上の地点を通る、今から十年後には一万台通る想定になっておると仰せられましたが、山の上であれば十年後一万台というが、もしそれを少し緩和して近い都市でも利用できるような地点に置いたために、数万台あるいは十万台も利用できるような違いを生じないとも限らないのですから、それをやはりよく研究されて、今の計画路線が最善の地点であるか、それとももう少し研究してやる方が最も利用される地点であるか、建設費の点からも総合開発利益の点からも十分研究してきめていただいた方がよくないかと心配しておるわけでありまして、前田さんのつけ加えられました別表の問題について、そういう感じを持っておられるといたしますならば、何ら私は変った考えは持っておりません。一つ御了解願いたいと思います。
  41. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 お互の心持が理解されたことを私は非常に喜ぶものでありまして、今後われわれといたしましても、本日参考人として御出席いただいたお三人方の精神を尊重して進むことにいたしまして、私の質問はこれをもって終ります。
  42. 内海安吉

    内海委員長 それでは最後に中島巖君。
  43. 中島巖

    ○中島(巖)委員 時間もすでに一時近くになって、御参考人の方は大へん御迷惑かと思いますので、ごく簡単に要約いたしまして申し上げたいと思います。本日お三人の方に参考人として御出席願って、それぞれの観点からいろいろ有益なお話を承わったのであります。鮎川参考人は、まず法案を通して、一億くらいの予算調査したらどうだ、しからばおのずから名案が出るだろうというふうに結論的に伺ったのであります。また飯沼参考人からは、この案は非常にけっこうである、人口の都市集中というようなことを避ける上においても必要でありますが、逆に都市に集中するようなおそれがあるによって、その点をよほど考慮して削減の施策をしなければならぬというふうに御注意をいただいたように伺っております。また本多参考人の御意見といたしましては、交通量の多寡によって決定すべきものである。すなわち現在の交通量を基盤といたしまして、その上に立っての専門の御批判をいただいたというように私解釈いたしております。また三宅委員からは、提案者の立場といたしまして、戦後狭められた国土に充満しておる民族、それから南から北へ長いところの日本国土をいかに距離を縮めて有効に開発するかという観点、つまり多目的計画であるというようなことを言われた、かように私は考えるわけであります。別に参考人の方にお伺いいたしたいことは多々ありますけれども、時間がなくて御迷惑と存じますので、今後参考人の方々のいろいろ御研究をいただきまして、何かと御注意をしていただくことをお願いし、参考人の方々の御出席を労といたしまして、私の質問を終ることにいたします。
  44. 内海安吉

    内海委員長 他に御質疑もないようでございますから、本日の参考人から意見を聞くことはこの程度といたします。  本日は参考人各位におかれましては、このお暑いところ長時間にわたって貴重なる御意見を御開陳いただきまして、われわれが審議の上において全く有益であったことを感謝申し上げる次第でございます。御苦労さまでございました。委員会を代表して御礼申し上げます。  それから委員の各位に申し上げますが、午後二時から運輸委員会建設委員会がこの問題について連合審査会を開くことになっております。実は午後一時から開くわけでございましたけれども、この通り時間が経過いたしましたので、午二時といたしました。そこで皆さんにおかれましては、ふるって御出席をいただきまして、どうぞ御質疑を願いたいと思うし、なお提案者の四君におかれましても、ぜひとも御出席をいただきまして、そうしてどんどんこの御要求に御答弁を願いたいと存じます。なお建設省の政府委員の方々も、道路局長その他来ておられますけれども、昨日同様にやはり菊池技官なりいろいろな体験者もどんどん御出席してくださって、そうして一面においてはこの問題が道路行政運営の上において最も貴重なる問題でもあるし、さらにまた、委員各位から質疑も起り縛ると思いますから、ふるって御出席されんことをお願いします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十三分散会