○大沢
会計検査院説明員 二十六
年度の分から御
説明申し上げます。三三八ページの一一七三号でございますが、これは国鉄の
工事のうち比較的小さなものは、各保線区などが契約できることになって
監督検修もやっておるわけでありますが、こうした小さな
工事をまとめて二十六
年度分としまして釧路と青函と両鉄道管理局の分を調べてみたわけであります。その結果がきわめて事実に合致しない経理をしているのが非常に多いということを
指摘してあるのでありまして、第一にありますのは、請負
工事に出したその
工事名称と全然違った仕事をしている、あるいは
工事名称を出しているが、実際は物を買っているというようなものは、全部で
金額にしまして百六十万円ほどのものがある。
工事の
件数としては二十
工事、具体的に申しますると、たとえばここに書いてありまする特殊軌条修繕
工事という名称で出してありますが、実際は特殊軌条を買っておる。こうした名義だけの違いもあります。また中には、砕石場のレールを修繕するということで、実際は本を買っておるというのもあります。そうしたような
事態が(1)に掲げたものであります。それから(2)に掲げてありますものは、
工事がまだ着工しない、または完成してないというのに対しまして、完成したことにして請負代金を払っておる。これは大体
年度末に行われているのでありますが、まだ完成してないものに対して完成代金を払っているといいますものが、
工事の
件数にしまして十八
工事、
金額にしますると二百四十万円ほどのものがあったわけであります。それから(3)に掲げてあります分は、これは設計書、図面等があるのでありますが、それと大した違いはないが、多少違った仕事をやっておる。たとえば鉄板の屋根をふくという設計になっておるものを、実際はスレートぶきにしている。これは設計書を作りましてから、
あとからこの方が都合がよかろうということで口頭で請負人に指示してやっておるものでありますが、そうした場合は、当然設計変更の手続をとるべきでございますが、そうしたことをやっていなかった
工事が十二
工事、
金額にしまして十九万円ほどある、こういう
事態でありまして、いわば小
工事に対する
監督検修その他の
処置というものがややもすればなおざりになるきらいがあると思います。この両鉄道管理局を特に選んで調べた結果、こういう
事態になっております。その後またときによって小
工事は調べておりますが、これほどひどいところは今のところ発見しておりません。
次は一一八一号を
説明いたします。一一八一号は、本庁の資材局で信号用錠前——信号用錠前といいますと、信号のいろいろな
機械を入れたものをいたずらされては困るので、ふたを締めましてそこを締めておきます南京錠であります。従来使っておった錠前がもう陳腐化してだれでも下手するとあけられる、そうしたことで肝心な通信保安を乱されてはならいので、新しい様式をきめまして
全国統一的にしようというので信号用錠前を十六万二千個、三十九百万円ほどのものを購入したわけであります。しかしその購入したものを見ますと、やはり従来と同じような南京錠であります。でありますからこの南京錠の腕といいますか、腕をやすりで切れば、こわそうという人になれば簡単にこわしてしまうというので、従来のものから見てそう今度のものが大丈夫だというわけにはいかない。またあけ方でありますが、従来は普通の南京錠のようにかぎであけることになっておったが、今度はねじを入れてあけることになっております。これは構想はよかったのかもしれませんのですが、偶然われわれが現物を見ますと、簡単な操作であく、ねじのかわりにやわらかい木片か何か挿入してみるとあくというような状態でありまして、あまり従来よりも優秀になったとは思われない。こうした
関係で何も現在使っておるものがもうこわれてしまったというのではありませんので、そうしたものを逐次取りかえて行くのならいざ知らず、統一的に改良しようとしてこうした厖大なものを購入したのは、購入方法として妥当でなかったのじゃないか、こう考える次第であります。
次に、一一八五号、これは大宮工場の物品経理が非常に乱れておるという点であります。これは当時大宮工場の経理が乱れておるということを聞きまして、特別に精密にそのたなおろしなり帳簿の照合をやった結果でありますが、これも厖大な資材の全部にわたって行うのも困難でありましたので、そのうち特に木材と地金を中心として各品調査をやったわけであります。その結果によりますと、用品庫というのは資材を持っておる倉庫でありますが、区工場とその倉庫の間に取りかわされる授受の
書類、何を幾ら渡すという
書類、それの
金額を直しておるといいますものが、多く直しておるのが百九十万円、少く直しておるのが百三十万円というようにしまして、勝手にいわばそうした引き渡しの
書類の
金額を直しておるという点が
一つ。それから第一は、たとえば丸鋼の何ミリのものを現物引き渡す、ところが帳簿の上の払い出しは丸鋼のたとえば径五ミリのものを渡しておきながら、三ミリのものから帳簿上払い出しておるということにしておるということで、現品の払い出しと出納簿の払い出しとが一致していない、これが
金額にしますと全部で約七千百万円ほどのものが一致していない、こういう状態になっております。それから出納簿に全然登記されていない品物をそのまま工場に使わしておる、こういうものが約八十万円、そのほか出納簿の上のいろいろな単位のとり方が非常にあいまいでありまして、そのために実際の本数と枚数とそれをかけた出納簿上の重量というものが一致していないというのがちょいちょいあります。そのほかすべて物品経理が乱雑であった次第であります。なおこの大宮工場に関しまして特にこうして調べました結果、注意を喚起しまして、これは工場用品庫の上の組織である
関東地方資材部でそれのたなおろしをして、一応全部整理いたしました。その後大宮工場につきまして抽出的に現在でも
検査しておるのでありますが、こうした極端な
事態はその後解消いたしました。しかしながら、工場の物品の経理といいますものは現在でも国鉄全部を通じてまだ妥当ではないのじゃないかというように思われます。たとえばほかの工場で要るものを、成規に保管転換の手続をせずに、帳面上は通さずに貸し出しておるということで、現品と帳簿が全然一致していない、あるいはほかから受け入れたものが向うから幾らという保管転換の
書類が来ないので、現品はありながら帳簿には登録し得ないで、そのまま使わなければならぬので使ってしまう、帳簿を通さずに受け入れ使用してしまう、こういうような事例が現在あるのであります。これは制度上の欠陥もありますので、最近この
年度末の
検査にもそうした点を調べました結果について、国鉄の方へも注意を喚起いたしまして、何とか制度上の改善もやってもらおうということにしております。ちょっと話が余談になりましたが、以上で一十六
年度の御
指摘のあった件の
説明を終ります。
次に二十七
年度の三九七ページ一七八一号以下であります。この一七八一と八三と八三と八四の四つは一連の収入金の取り立て
処置が緩漫であるいとう
事態であります。
まず一七八一号は私鉄会社あるいは自動車会社との間の連絡運輸の国鉄の取り分の徴収が非常におくれているという
事態でありまして、これはいわゆる交互計算になりまして、取り分のある分と払い分のあるものがあると思いますが、大体取り分が多いことになっております。この取り分の方は翌月中に交互計算いたしまして、その翌月ですか、少くとも当該月後二カ月ほどの間に徴収するのを建前にしておりますが、実際調べてみますと、三カ月以上延滞しているのが三十会社で、その
金額が一億六千万円にわたっている、三カ月
程度はまだいいといたしましても、はなはだしいのになりますと一年も延滞している、これが五会社分で九百万円からある、六カ月以上おくれているものが十七会社分で四千四百万円、こういうような状態でありまして、徴収
処置に一段の努力が必要であると感ずる次第であります。
次の一七八二号は同じような
事態で、貨物の後払い運賃でありますが、これは運送会社あるいは大きな荷主との間に後払い契約を締結いたしております。ある
程度の保証金を積みまして、運賃を後払いで受けるということになっておりますが、これが非常におくれているのにそのままになっている。これは契約上はおくれれば解約して後払い契約を解除することができることになっているのでありますが、そうした
処置に至らずに日をおくらしたために非常に徴収がおくれ、延滞額がかさんで徴収に困難を来たしているというのであります。表に書いてありますので、その表をごらんいただくとわかりますが、このうち北陸通運とか富山通運、高岡通運という金沢管内のものは、おくれながらも
あとから
あとから入ってきてある
程度がたまっているという状態でありますが、そのほかにはもうとれなくなったもの、その後後払い契約を解除しているが、依然としてとれなくなったというようなものがある
事態であります。
一七八三号は東京周辺の土地を貸し付けているもの、これに対しましての貸付金の徴収
状況を調べた結果であります。大体貸付料は使用前に前納させるという契約になっているのでありますが、実際は使用前に前納さしたというものはありませんで、大体使用中に逐次徴収しているわけであります。しかしながら使用させながらまだ全然
年度末において徴収していない
事件のうちのおもなものをここに掲げたわけであります。東京におきましては昨年
相当論議されました鉄道会館、それから隣りの国際観光会館、それからツーリストセンター、
日本ホテル株式会社、これは東京駅
関係であります。それから秋葉原の秋葉原会館、高円寺の高円寺復興協力会、大きなものはこうしたものでありますが、そうしたものが、貸しながらまだその使用料を
年度末になってもとっておらなかったというものであります。その後においては摘要欄に書いてありますように、それぞれ代金を決定して徴収しております。それから使用させながらその使用について契約をしていないというのか、これも東京管内に
相当ありまして、土地で二十四件、建物で四件、そのうちのおもなものは四〇〇ページの表に掲げてありますが、そうしたものがまだ契約にも至っていなかった。その後それぞれと
処置はされております。ただそのうちの表のまつ先にあります秋葉原の
日本運輸倉庫株式会社の土地五百平方米というものについては、これは通路だからという理由でいわゆる貸与ということでなくして、通路として使用さしておるということで現在もまだ使用料を徴収しておりません。これはその現場も見ましたが、やはり専門的に使用さしておる土地でありますから、使用料を徴収すべきであろうと考えまして、最近も国鉄の方にその旨をお話ししまして、現在
実情によっては何とか善処してもらうということになっておる次第であります。
その次に出ておりますのは代金を取ることにしまして相手方に徴収決定をして納入通知をしておりながら金が入っていないと言いますものが、これも東京鉄道局のごく都市の周辺だけを調べた結果によりまして、七百二十件ほどの現場を見ました中で百五十八件、八百万円というものが
年度末では入っていない。そしてそのうち三百万円
程度のものは八月になってもまだ取っていないというような状態で、非常にこれも土地の貸付料の徴収
処置が緩慢である。同じような
事態が東京以外の札幌、青函、
大阪、門司各鉄道管理局にありました分を表に掲げてありますが、これな
どもその後は徴収しております。
それから一七八四号は食堂車の使用料を
日本食堂株式会社から徴収しておるわけでありますが、これは契約は四月と十方に納めるということになっておりますものが、一十七年の四月と二十七年の十月に納むべき使用料が翌年の二十八年の四月になってようやく徴収しておるというので、食堂車の使用料の徴収が非常に緩慢であると考える点を掲げたわけであります。
次に二十七
年度の一七九七について御
説明を申し上げます。四一一ページから書いてあります。これは先ほ
ども申しました大宮工場の
事態でありますが内容は違っておりまして、大宮工場で工場内に発生しますところの土砂とか石炭殻というようなものを取り捨てるために、役務の請負をさせようとして入札をさしたわけであります。その場合に予定価格は立米当り六十円という予定価格で入札させましたところが、
相当参加者が大勢ありまして、たしか二十人ほどの参加者がありました。そのうち最低入札はただ、零円で落札、二番札が一円、三番札が四円五十銭、こういうふうな入札がありまして、最低の零円の高橋というのが落札いたしまして、その取り捨てをやっておったわけであります。それば二十七年四月から始めたのでありますが、その後六月になりましてどうもただというのは危ないということで一年間の契約を解約しまして、七月以降あらためて入札しました。その場合には人数も指名競争で限定いたしまして、五名の指名競争をさせました。そうしたところが大貫というのが四十五円で落札して、その後
年度末までこの四十五円で契約しておる、こういう
事態でありますが、零円、ただでもいこうというのがありますれば、当然この零円の最低入札に契約さして一年間の契約を持続さすべきではなかったか。ただ危ないという理由は工場内の監視を十分にすればいいのではないか、特に途中で改めて、指名競争で四十五円というような値段を払う必要はなかったのではないかというように考える次第であります。なお二十八
年度になりますとまたもとへ戻りまして、こうした高いのでなくて零円の入札というものに請け負わしてその後やっております。
次に四一五ページの一八〇三号、これはきわめて奇異な
事態でありまして、
大阪鉄道管理局で洗たく代としまして千五百三十八円支払う必要ができたというので、経理部長が支払いの伝票に判を押しまして、それが出納課長の方に回ったわけでありますが、どこですりかえられたのか、この千五百三十八円の支払い伝票というものが、窓口に来たときには五百九十万四千五百三十八円という
金額に変っておる。最初正当に添付されておった証拠
書類が、今度は偽造された証拠
書類が添付されて、この五百九十万円に合うような受取り、請求書その他が添付されて窓口に来た。取りに来た者もだれが取りに来たかわからないということで、その千五百三十八円の債務に対して五百九十万四千五百三十八円を支払い、五百九十万三千円の損失を来たしました。これを見ますると、どうしてこういうことが出たか、その
原因がどこにあったか、われわれも検討してみたのでありますが、まず第一には支払い伝票に千五百とありますれば、普通の伝票だと、千の上が空欄の場合には、そこに判を押すとか、あるいは¥の字を入れて、もう書き込めないようにする、これが常識だと思うのでありますが、空欄が空欄のまま残っておりましたので、千を直して四千にして、上に五百九十万という伝票に書きかえた。経理部長が判を押した正当な伝票が、いつかそういうふうに改ざんされてしまった。そこに
一つの欠陥があったのではないか。もう
一つは支払い伝票を保管しておりますところが、普通の事務机の引き出しのようなところに入っておりまして、職員ならだれでも通行できるところにある。支払い伝票というような、
相当有価証券的なものでありますから、こうしたものはもっと厳重に保管させておったら、途中で改ざんされるということはなかったのではないかという点が
一つ。それからもう
一つは、これは千五百円という小さな契約だけしか執行できないところの部局の支払い要求に基く伝票でありますから、最後に支払う場合に、支払いの請求書を繰ってみますると、八十万円とかいうふうな大きな請求書が出ておるわけであります。こうした契約の権限のないところから、そういう支払いの請求が出ておるということはおかしいと、当然支払いの場合に感づくべきではなかったか。それをうっかりしてただ計算だけすると請求書の
金額と、上の五百九十万円が合っておるので、ただ渡してしまった。その点にも調査が疎漏な点があったのはないか。最後にもう
一つは、支払い日に大ぜい窓口に来ますものですから、だれのものかわからない。その支払い伝票や請求書を渡して、これはあなたのですかというふうに、窓口で閲覧させて支払うということをやっておった。大勢でありますから、そのときにひょっとやって何か直したか、そういう点もわからないというような点で、どこで紛失したかわからない。これはその後検察庁及び鉄道公安室で
相当関係者一同を取り調べているのでありますが、現在までまだ犯人が判明していない。こういう
事態でありまして、出納事務が一連として適当でなかったためにこうした損失を来たしたものと考える次第であります。
以上御
説明を終ります。