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大沢会計検査院説明員 二十六
年度の
検査報告の二六二
ページに掲げてあります九〇七号と九〇八号をまず御
説明申し上げます。この九〇七号と九〇八号に書いてありますのは、実はこれよりもっとずっと幅の広いものとして、二十五
年度の
検査報告に掲げてありましたそのあとの残った分を
報告したのでありまして、当時まだ
電気通信省であった時代であります。このうち各地の電話局の
工事とか線路の
工事とかいうものを日本電信電話
工事株式会社でありましたか、それが昔はやっておったわけであります。それが終戦後司令部の
指示によりましてこれを直営でやれ、
電気通信省でやれということになりまして、当時会社の職員が一括して
電気通信省の職員に編成がえされまして、それが建設部というところに所属しまして各地の
工事をやっておったわけであります。その
工事の様式は直営
工事でやれということにして各地に資金前渡官吏を配置しまして、その金によって
材料を買い、あるいは人夫を雇うということで
経理しておったわけでありますが、その
経理の実際を見ますると、直営でやっておるように
経理しながらも、実際は切り投げ、いわゆる一括してある
部分を請負わせてしまうようにして請負わした分や、当時
本省の建設部の方で人が足りないというので、その方の職員——人夫という名義になっておりますが、事務をする職員、そのものの給料を各
工事費から捻出しまして、それを本部の方に送金しまして、本部の方で、それで人夫賃を払っておった、あるいは各
現場で接待費などに使っておったというように、証拠書類上出しております支払いの名義と、実際に使った名義とが全然かけ離れておったという
事態が非常に多かったのであります。
昭和二十五
年度にこうした
工事が九十九件ありましたうち、多かれ少かれこうした架空の
経理をしておったのが四十数件ありました。それの二十五
年度に掲げた残りがここに出ております。ここに書いてありますのは仙台と水戸の
工事で、架空の名義で金を出し、切り投げにしたり
本省へ人夫賃として送金したり、接待費等に使ったりしたものがあるわけでありまして、この二件だけで捻出したのが
総額二百五万円
程度になっておりますが、二十五
年度の
検査報告に掲げたものを合せますと四千百九十八万円という
金額を捻出したのでありまして、切り投げに二千六百万円払い、あるいは
本省の方へ人夫賃として三百七十万円ほど送金したり、あるいは接待費その他に使ったりしたのであります。こうした
経理は証拠書類を偽わるものでありまして、妥当でないのでその後大いに注意を喚起した結果、
電気通信省当時におきましてこうした直営制度をやめまして、実態に合うようになったといいますか、請負
工事の方へ移行いたしました。二十五
年度から二十六
年度にかけて
検査報告に掲げましたあとは、こうした事例は
検査の結果も発見することはない次第であります。
次に九〇九に書いてあります
経理が紊乱していたものといいますのは、これは
電気通信省の電気通信研究所——三鷹の方にありますが、ここの
経理がきわめて紊乱しておったのを一覧として
報告してある次第であります。まず第一に、物が入ったとして金を払った、事実物は入って金は払ったことにしている。ところが実際はそれをすぐ納入者に渡さずに、しばらく
会計で保留しておりまして、ほかの方にいろいろ使ったりして、数カ月たってからこれを請負人あるいは
物品納入業者に払ったというのが(一)に書いてありますもので、これが三件ほどありました。今度は逆に物を売った場合に、その入って来た代金をすぐに収入に立てずに保留しておりまして、しばらくたってからこれを収入に計上したというのが(二)に書いてあります。(三)に書いてありますのは、乗用車の借り上げ
契約をしましたが、こちらで
検査すると——自動車の運行日数とかその他いろいろな自動車の書類と突き合わすとどうも多過ぎるではないかと思われる。いろいろ調べ、また
電気通信省の部内
検査に依頼しまして調べた結果、自動車の借り上げ金で約六十六万円という金を過大に払っている
計算になっている。同じようにしまして、自動車の修繕につきまして、三十五万円が過大に支払われている。次は什器類の修理、これを書類その他いろいろ当ってみますと三十三万円ほど過大支払いの事実があった。それから(四)は、仕事はもうとっくにしてしまって、
契約書をあとになって作成してやっているのでありまして、はなはだしいのは半年前に実際の仕事をやってしまったのに、半年あとになってから
契約を結んでそれからあと完成をしたというように書類がなっている、いわばやっていないのに
契約だけ先にして仕事をしてしまったというようになっているのであります。
以上のように電気通信研究所の
経理は非常に紊乱しておりましたが、その後
会計関係の職員も全部入れかわりまして、
経理も改善されて、最近においてはこうした事例はありません。しかし二十六年当時は非常に紊乱しておったように見られる次第であります。
なお、飛びまして二六八
ページに書いてあります九一二号、これも同じく電気通信研究所の
契約でありまして、これは建物の中の電気配線を請負わしたのでありますが、その場合に、作成を全部請負い業者にまかして、幾らだか
一つ予定価格を算定しろということで算定させまして、その値段のままで入札に付した。結局予定価格を算定した業者が落札して
契約したのでありますが、設計図面等によりまして
会計検査院の方で一応調べてみますと、絶縁電線とか電線管とか所要
材料が予定価格においてどうも
相当過大に見積られておるのではないかという感じがしまして、なお再積算をさせましたところが、百十二万円という予定価格であったのでありますが再積算した結果によりますと約七十二万円くらいのものである。こうした非常にずさんな予定価格に基きまして
契約入札しました結果、非常に不利な
契約をしたという点を九一二号に
指摘した次第であります。
なお本件
工事に関しまして、ほかに官給
材料としまして通信研究所にありました電線類等を交付したものがありますが、この交付したものが
工事に使われずにそのままになっていたものもありまして、その後使われてなかったものは回収し、請負代金の一部を減額させて収入として取り上げて行くという
事態であります。以上で二十六
年度の御
指示になりました点の問題は終りまして、二十七
年度の四三二
ページに書いてあります分が、これも同じく電気通信研究所に
関係するものでありますが、これは
土地の交換がまず
土地の評価において妥当でなかったということと、その手続が法令に違反しておった、この二点を掲げているわけであります。この電気通信研究所というのは、従来神奈川県の座間の方に
土地を持っておりました。ところが、三鷹の方へ集結することになりまして、座間の方の
土地が要らなくなった。それで座間の方の
土地と、三鷹の現在の研究所の隣接地と交換することになったわけでありますが、この評価を見ますと、こちらで渡した方の評価が非常に安過ぎるのではないか、向うから受取った方の評価は、座間の町が昔の中島飛行機ですか、富士産業、それから
購入しまして、こちらに提供しましたので、これは大体値段としては妥当な線と思いますが、こちらの渡したものは、たんぼが坪
当り十六円とか、畑が七円というようにいわば農地法に基きますところの農地の買い上げ価格をほとんど標準にして評価されておる。ところが本件の
土地は、座間の町が町営
住宅をつくったり、緑地帯にするために交換してほしいという申し出で、渡したものでありますから、こうした低い評価をする必要はないじゃないか。また山林な
ども、これまた農地の
関係の評価ではないのでありますが、非常に安い感じがしました。その後ほかの会社に評価を依頼して評価したところによりますと、田は大体坪
当り二百八十円くらいするだろう、それを十六円で売っている。畑は二百三十円くらいだろう、これを七円で売っている。山林も二百円くらいだろう、これも十二円で売っている。非常に渡したものの評価が低過ぎるのではないかと考える点であります。評価の妥当でない点と、もう一点は、当時はまだ
電気通信省のもので、いわゆる国有財産であったのでありますが、国有財産を交換する場合には、
土地と
土地、あるいは堅固な建物と堅固な建物との交換を認められておりますが、
土地と立木または家屋などと交換することは認められてないのであります。本件の場合には、先ほど
説明しました
土地、いわゆる田、畑、山林のほかに、立木や家屋も含めて渡してしまった。これも一応評価はしているのでありますが、こうしたものまで含めて交換したことは、国有財産法の規定に違反するという点と、今度
電気通信省の内部の規定によりましては、こういう固定資産の交換については、電気通信研究所長だけではできないことになっております。必ず電気通信大臣まで稟請いたしまして、その
指示を受けることになっておりますが、本件の交換に
当りましては、そうした手続をとらずに、
電気通信省限りでこれの交換処理をしております。そういう点も規定に違反しているというように考えまして、
検査報告として掲げてある次第であります。
次の四三五
ページに書いてあります一八一〇号の国際電信電話株式会社に対する件でありますが、これは御
承知の
通り、二十八年の四月一日に国際電信電話株式会社が発足いたしまして、従来
電気通信省の後身であるところの電信電話公社が経営しておりましたところの国際電気通信部門を、現物出資として電信電話株式会社に出資したわけであります。出資の方はそれぞれ評価員を設けて、評価価格で出資したわけでありますが、その場合にもう一度帳簿から払い出しましたところの保守
工事用のいろいろな需用品、これを全部無償で国際電信電話株式会社の方へ渡してしまった。これは当然出資する場合に一応貯蔵品に繰入れて、貯蔵品として出資額の現物出資の中に加算し引き継ぐべきではなかったか、こういうようなことでありまして、この
金額を算定いたしましたところ約千六十万円ほどありました。
会計検査院でこれを
指摘いたしまして
検査報告に掲げたわけでありますが、その後電信電話公社の方におかれまして、まさしくこれは無償で引き継ぐべきではないという結論に達しまして、この
金額はそのまま会社の方から公社の方へ回収いたしておる次第であります。以上御
指示のありました点を御
説明申し上げます。