○小峰
会計検査院説明員 二十六
年度に指摘いたしました運輸省の八三八号、これについて御
説明申し上げます。これは下関にございます第四港湾建設局で五十トン起重機船の貸付料を六十九万円
余り取りまして、これを
歳入に入れないで自由に使ってしまった、こういう
案件であります。この船は起重機船としては最も大きいものでありますが、昔海軍の持っていた起重機船であります。
福岡の財務局から二十四年の十二月港湾建設局が直営工事用に使う、こういうことで一時借り受け中だたつわけであります。それを二十五年の九月十八日から民間の
会社に——これは連合国軍の仕事をしておった
会社でありますが、それに転貸してしまったわけであります。自分で直接使うという条件に反しまして転貸したわけでありますが、
会社から貸付料をとりまして、それが合計で
最初の
会社から百万二千円、それから第二
会社から四十九万円とつたのでありますが、これを、先ほど申し上げましたように国の
歳入に入れませんで、自由に使うということをしたわけであります。一部は現金で持っていたわけであります。
第二に、貸しました桝谷組海事工業所、これが借り受け中に、
会社の本拠である宇部へ門司から回航いたしまして、また門司に帰って来る途中、当時は瀬戸内海も非常に危なかったのでありますが、啓開航路外に出て参りまして、触雷沈没ということで、この起重機船を沈没させてしまったわけであります。この
検査報告を作りました当時は、沈没した船の跡始末はまだきまらなかったのでありますが、その後桝谷組から弁償させることにいたしまして、これが満足にほとんど入って来ない。
会社は事実上税金を滞納して差し押えを受けるという状態になっておりまして、現在のところ弁償の見込みはないという
状況であります。これは二十七年の一月三十日の衆議院の行政監察
委員会でも取り上げられまして、大ぜいの証人を呼ぶということで、いろいろ御論議があった
案件であります。賠償金は当時の船価を七百四十七万円と評価いたしまして、これを沈んだままでスクラップとして売りました五百五万円、これを差し引いた二百四十二万円、それにその時期までの遅延損害金百十九万円を加算して三百六十一万円ときめたのでありますが、現在までに入りましたのが六万九千円
余り、三百六十一万円のうち六万九千円ほどしか入っておらぬという状態であります。
それから二十七
年度でありますが、二十七
年度の一五一七から一五一九までの
経理の紊乱の
案件であります。これは海上保安本部——海上保安庁の出先
機関でありますが、この海上保安本部で、当時ほかの建設省などにも相当ございました例の
架空名義によって
経費を捻出して、
予算を現金化して手元に置く、それをやみで使う、こういうケースの一例であります。
まず一五一七号、これはここにございますように、第一、第二、第五、第六、第七、第九、この各海上保安本部で——海上保安庁は御承知のように二十三年の初めに発足したのでありますが、当時の住宅
事情が非常に悪い。こういうので
修繕費とかあるいは
職員旅費、こういうところから七百十五万
余り金を捻出いたしまして、また民間からの寄付金二百十四万円、これを合せまして、
職員の
宿舎十九棟を新築または購入したわけであります。これを今の
旅費とか、
修繕費とかから出して購入いたしましたので、それを正規の
国有財産として登記することはできません。そこで
国有財産として処理しないで、海上保安協会——これは財団法人でありますが、この名義で国が借りる、こういうことにしていたわけであります。十九棟のうち六棟は、財務局——御承知のように公務員
宿舎を借ります場合には大蔵省の財務局が借りる、こういうことになるわけでありますが、
架空経理をして
国費で買いましたものを借りたことにし、そして財務局に家賃を払ってもらうということをしたのであります。はなはだおかしいのでありますが、当時はこの家賃が九十七万二千円、これは財務局から受け取ったのであります。それから居住者から徴収しました
宿舎料四十三万九千円、これを別に
経理いたしまして、その
宿舎の
修繕費、こういうものに充てていた、こういうケースであります。これはその後私どもの方で全部整理してもらって、現在ではこういう変なものはすベて
国有財産、こういうことに整理がえしてございます。
それから一五一八でありますが、これも今と同じようなケースでありまして、
架空の名義による船員
旅費、航海日当、
修繕費、こういうものを出しまして、それを
職員旅費とか
会議費、食糧費とかに使っておる、こういうケースであります。
一五一九は物品の
架空経理と申しますか、海軍が置いて参りました
機械類をスクラップとして売りまして、その金を国の
歳入に納めないで、一部は使い、大部分はどこへ使ったかわからない。七十万円で売ったのでありますが、これは第六管区広島であります。その中三十四万円については、船員詰所の用地補償に伴う補償料ではっきりしておりますが、三十六万円は使途が不明だというケースであります。これは
責任者が刑事問題になりまして起訴されまして、まだ判決がきまっておりません。
それから(2)の分は、石炭を二百トン買いまして、百五十九万円払ったのでありますが、実際に納入されたのは百八十七トン、
差額の十三トンは、ちようど刑事事件になって問題になった
あとで納めた、こういうケースであります。
それから(3)は、物品の取扱いが悪い。出納簿にも載っていないのがある、こういう物品
経理の悪い
案件であります。
それから一五二八以下四件ほど運輸省の港湾
関係の災害復旧事業費補助の代表的な事例をお示しになっておりますが、その前に運輸省の補助事業の
検査概要をごく簡単にお話しておきます。港湾補助というのは全国では相当数が多いのでありますが、二十七
年度は千九百八十カ所全国にあるわけであります。そのうち九百十八カ所を
会計検査院で実地
検査をしたわけでありますが、そのうちの半分で、これは建設省とか農林省ではとてもこれだけは
検査できないのでありまして、農林省は六%くらい、建設省でも一五%くらいしか見られないのであります。港湾工事は数が相当多いとはいいながら、農林省の工事や建設省の工事が何万とあるのと違いまして、比較的実地
検査がよくできたわけであります。
検査いたしてみますと、出来高が設計
通りできてないで、不足している、あるいは設計上もとの石が使えるのに、それを使わないで全部新しく購入している、あるいは災害復旧とは認められないいわゆる便乗工事、こういうものが相当にありまして、同時に事業主体として当然負担しなければいけないものを負担しないで、国庫補助金の範囲内で工事をやってしまう。これは農林省や建設省には非常に多いのでありますが、運輸省でも二十七
年度に出ているわけであります。そこで設計
通り金を使いませんので、非常に工事の出来高が悪い。すぐにこわれてしまったものもある。またこわれそうだ、こういうものもあるわけであります。これが二十万円以上で整理いたしますと六十六件、これだけ
検査院で二十七
年度分として見つけたわけであります。十万円以上といたしますと百三十二件、倍になります。この六十六件の中から、先ほど話のありました一五二八号以下というのがこの表の中にございますが、この表ではちょっとわかりにくいので、代表的なケースとして三百十三ページに(1).(2).(3).(4)として文章で取り上げて書いてございます。この文章で書きました
案件だけを先ほどお取り上げになったわけであります。これについて簡単に申し上げます。
まず
最初の一五二八号、これは(1)として愛知県の
案件であります。これは疎漏工事の代表、設計の手抜きが非常に多くて、一部がすでに完成後わずか五カ月でこわれてしまった、こういうケースであります。これが百四十四万円、国庫補助が五十七万八千円でありますが、師崎の修築工事であります。練石積護岸延長七十メートルの積石に約四分の一は規格外、これは小さいものを使ったわけであります。護岸の水中部分の胴込みコンクリート、これが非常に粗悪だ。そのために完成後わずか五カ月間で七十メートルのうち半分の三十五メートル、これがこわれてしまった、こういうケースであります。
それから(2)としましたのは一五五四号であります。これは山口県の日本海岸の方でありますが、日置という村があります。ここの災害復旧工事で五百三十二万円、国庫負担金が三百六十八万円でありますが、港内に堆積しました三万立米を浚渫した、こういうことで補助金が要ったわけでありますが、実際には三万のうち一万二千しか浚渫しておらぬ、残りのものは、これは河口の港でありますが、川の水の流下によって自然に流れてしまった、そういう
案件であります。三万のうち一万二千しかやらないで済んだ。そこで国庫負担金はさっき申し上げました三百六十八万円でありますが、その実際の工事費は二百二十七万円で足りてしまった、百四十万円余ったわけであります。百六十三万円の自己負担をしないばかりか、国庫補助金が百四十万円余ってしまった。そこで川の導流堤、これは全然設計にない査定外の工事でありますが、川の導流提をつくってしまった、浚渫が導流堤にかわってしまった、こういう
案件であります。これは便乗工事の代表的なケース、こういうことになっております。
それから(3)が一五六二号であります。これは徳島県の椿港、これはやはり災害復旧であります。防波堤の捨て石、これが二百十四万円ほど過大に見込んである、こういう
案件であります。いわゆる設計過大、設計の水増しと俗に申しますが、水増し設計の代表的なケースとしてここにあげたわけであります。二十七
年度に着工いたしまして、まだ五百万円の工事を始めたばかりだったのでありますが、五百万円に対しまして、工事費は実際は国庫負担金以下の四百十六万円でやつておった。そして本来五百万円に対しまして地元が三十万五千円負担しなきゃいかぬのですが、それを負担しないばかりか、五十三万円ばかり国庫負担金が余ってしまった、こういう
案件であります。それから最後に大分の西中浦、これが松浦港災害復旧でありますが、これは四百十三万円、国庫負担金が三百二十一万円で防波提の復旧をした、こういうことになっているのでありますが、捨て石の出来高が不足しているためにこの工事費は国庫負担金と同額ということで、村が負担したとしておる九十一万円を全く負担していない、こういうケースであります。