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1955-07-12 第22回国会 衆議院 外務委員会農林水産委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月十二日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員   外務委員会    委員長 植原悦二郎君    理事 大橋 忠一君 理事 菊池 義郎君    理事 須磨彌吉郎君 理事 北澤 直吉君    理事 福永 一臣君 理事 穗積 七郎君       伊東 隆治君    草野一郎平君       並木 芳雄君    山本 利壽君       稻村 隆一君    高津 正道君       細迫 兼光君    森島 守人君       西尾 末廣君    松岡 駒吉君       岡田 春夫君   農林水産委員会    委員長 綱島 正興君    理事 安藤  覺君 理事 白浜 仁吉君    理事 松浦 東介君 理事 鈴木 善幸君    理事 足鹿  覺君 理事 稲富 稜人君       五十嵐吉藏君    井出一太郎君       石坂  繁君    大森 玉木君       木村 文男君    楠美 省吾君       原  捨思君    足立 篤郎君       川村善八郎君    助川 良平君       田口長治郎君    松野 頼三君       赤路 友藏君    淡谷 悠藏君       石田 宥全君    楯 兼次郎君       佐竹 新市君    中村 時雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君  出席政府委員         外務政務次官  園田  直君         外務事務官         (大臣官房長) 島津 久大君         外務省参事官  矢口 麓藏君         外務省参事官  安藤 吉光君         大蔵事務官         (主計局次長) 正示啓次郎君         農林政務次官  吉川 久衛君  委員外出席者         外務省参事官  石井  喬君         外務委員会専門         員       佐藤 敏人君         外務委員会専門         員       村瀬 忠夫君         農林水産委員会         専門員     岩隈  博君         農林水産委員会         専門員     徳久 三種君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本海外移住振興株式会社法案内閣提出第一  三六号)     —————————————     〔植原外務委員長委員長席に着く〕
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより外務委員会農林水産委員会連合審査会を開会いたします。慣例によりまして私が委員長を勤めますからさよう御了承を願います。  日本海外移住振興株式会社法案を議題といたします。通告順によって質疑を許します。石坂繁君。
  3. 石坂繁

    石坂委員 この海外移住振興株式会社法案につきましては、すでに外務委員会でそれぞれ権威ある方々から相当質問がなされておりまして、私も一応外務委員会会議録を拝見いたしたのでありますから、なるべく重複を避けましてお伺いをいたすつもりであります。  第一に私のお尋ねいたしたいことは、今後の移民外交展開ということでございます。この移民問題につきましては、さき吉田総理も非常に御熱心であったようでありまして、この三銀行の借款の成立のごときも、これは吉田総理の遺産だといってもよろしかろうと思いますが、引き続きまして鳩山内閣になりまして移民問題を非常に大きく取り上げて参ったことも御承知通りであります。重光外務大臣は、第二十一国会、第二十二国会におきましてその外交方針演説の中にもこれを取り上げております。園田政務次官は、この法案審議に当りまして、この機会に戦後の移民外交の大転換を考えておる、こういうふうに七月二日の外務委員会仰せになっております。私はこのことにつきまして大きく期待いたしておるものでありますが、第一中南米諸国との移民協定、これはまだ成立いたしておらないようであります。これまで南米諸国に対する移民につきましてはいろいろの批評がなされておる。外務委員会におきましても稻村委員は、アマゾン移民は棄民である、こういうことも言うておられるのであります。なお松原移民辻移民につきましても、これは行き詰まっておるという批評を受けておる。かような状態に立ち至りましたことには、それぞれいろいろの事情はあろうと考えますけれども、私の考えるところでは、これらの移民について政府協力が乏しく、国と国との間の話し合い、つまり両国間の交渉がなかった。そのために受け入れの準備が十分でなかったということが、大きな原因ではないかと思うのであります。それで、この後日本からの移民を多量に送出するということにつきましては、これはその受け入れ国との間の移民協定をすみやかに締結する必要がある。イタリアのごときはすでに移民協定がなされて毎年多数の移民を送っておる、こういうふうなことであります。外務委員会における外務当局答弁を聞きますと、ボリビアには今進行中だ、しかしその他の国におきましてはその交渉が始まっておるのか、あるいはどういう程度に進んでおるのか、これらの点についての答弁が明確でないのであります。何といたしましても、政府が今計画されておるような移民を強力に推進するためには、まずもって移民協定締結の必要があると思いますが、かような点についての外務当局のいわゆる移民外交推進の過程及び今日までの段階とこの後の見通しについて伺いたいと思います。
  4. 園田直

    園田政府委員 御指摘通りでございまして、移民を飛躍的に推進して参りますのには、過去の移民実績を考えましても、国と国との協定による責任ある移民を推進することは当然のことでございます。しかしながら一例をブラジルにとりましても、日本移民障害というものは多々ございまして、その一番大きな障害は、かつてのわれわれの責任もございますが、日本人が戦前のごとく軍国主義的な考え方によって、日本人が組織的に日本人の勢力を自分の国に浸透するのではないか、あるいは移民をした日本人の人々が集団を作って、日本人村というか、日本人部落を作るというような点などが、いたく相手国を刺戟をいたしておりまして、為政者との間にいろいろな移民話し合いを進めますと、それは大体今のところにおいては順調に参るのでございますが、これが一つ法案となって、正式に議会もしくはその他の機関審議を受ける段階に入りますと、以上のような面からなかなか困難な点が現在のところではあるわけでございます、従いまして、政府といたしましても、将来は移民をやる国とは、政府政府との責任ある協定によって保障された移民を推進するために、各国との移民協定を考えておるのでありますが、今日の段階においてはボリビア移民協定話し合いが進んでおるだけでありまして、他の国々とは内々そういう方向に前進しょうとして努力を続けておる段階でございます。
  5. 石坂繁

    石坂委員 ブラジルに対する移民協定の問題につきましては、大体同様の答弁がすでに外務委員会でなされておるようであります。しかるに外務省構想では、単にブラジルだけではなく、中南米各国その他東南アジア方面等まで広く移民を送るというような構想を持っておられるようであります。なお、ただいまいただきました移民関係資料によりましても、移民協定締結のために相当の予算を計上されておることが明らかになっておりますが、この予算の面から考えましても、単にブラジルだけでなく、他の方面との関係からいたしましても、ただいまの外務政務次官答弁では満足できないのでありますが、その他の関係においてどういうふうに進行されるつもりなのか。あるいはまた国と国との交渉によると相手国を刺戟するおそれがある、こういうふうなことを言われますならば、ブラジルに対する大量の移民ということは非常に困難ではないかと考えられる。そこに非常な政策上の矛盾と申しましょうか、答弁政策の上に矛盾があるように考えられる。そこでブラジル以外の国との移民協定の問題及びブラジル国に対しましての移民を多く送出するために政府は何もしないのか、あるいは他に適当な方法をやるつもりでおられるのか、あわせてその点を伺いたい。
  6. 園田直

    園田政府委員 ブラジルにいたしましても、現在政府機関にかけると協定が成立しにくいという状況ではございますが、逐次好転もいたしておりますし、なおまた移民外交を推進することによってそういう誤解を解きブラジル日本の国との間に協定を結ぶように進めていきたいと考えております。なおそのほかブラジル以外のボリビアドミニカあるいはその他の国々東南アジアにおいてはカンボジア、ビルマあるいは、将来はボルネオなどの国国とも話し合いを進めていきたいと考えております。
  7. 石坂繁

    石坂委員 ただいまいただきました移民関係資料の二十五ページ、三十年度移民関係予算中に、移民協定締結のための外国旅費ということで二百五十一万円計上いたしておるようであります。これは一体どこの国との交渉のための予算ですか。
  8. 石井喬

    石井説明員 私からお答え申し上げます。本年度予算においては、一応の見通しといたしまして、一つボリビア移民協定を結ぶ、一つアルゼンチンないしはパラグァイあたり移民協定を結びたいということで予算の計上をしております。しかし現状におきましては、先ほど政務次官から御説明申し上げました通りボリビアとの間には現に進行しております。それから私どもアルゼンチンよりもむしろパラグァイなりドミニカなりの方が、先にできるのではないかというふうに考えております。いろいろ話し合いをいたしまして、最もできやすいところから逐次に結んでいきたいというふうに考えておる次第でございます。
  9. 楠美省吾

    楠美委員 一つ関連して。ただいま石坂委員質問外務政務次官また石井さんがいろいろお答えになりましたが、私は移民という仕事については、今日本はほとんど神代時代であり、これからほんとうにやるのだと考えております。この会社等も、いかにも大きな会社を作っているかのような印象を与えておりますが、こんな問題は小さな問題でございまして、将来ほんとう日本がこの人口をはこうとするならば、あるいは他国と一緒に、たとえばブラジルならブラジル日本合弁の大きな会社をこしらえたり、あるいはドミニカとやったり、あるいはボリビアとやったり、そうした両国合弁のもとに大きな国策会社でもこしらえて大きくやらなかったならば、とうていこの移民問題は人口問題の助けにはならぬと考えます。それで希望したいのは、移民の事業と申しましても神代時代のような、ほんとうの初歩でございますから、外務省当局が主として当っておりますが、これは何に当っているのかといえば、ほとんど日本国内において移民をどうすればいいのかというのが重点のように私は考えます。これは非常に遺憾なことでございます。何と申しましても相手があることでございまして……、これが外務省のおはこでございますが、外務省専心移民外交重点を置きまして、国内自分らの姿は簡素な姿に置いて、あるいは連合会あるいは農林省農業協同組合、そういうものに一切託するくらいの決心移民外交を大きくはばたいてやってもらわなければ相ならぬと考えます。私はその点については、外務省当局と絶えず折衝しておる一人でございますが、その点について、この正式の場所において、外務省はもっともっと真剣に、この移民外交について十分なる決心のもとにやっていただかなければ、いたずらに国内摩擦を起し——これはおれがやるんだ、それはお前がやるんじゃないというような摩擦が絶えないと思うのでございます。そういう意味におきまして、外務政務次官決心を承わっておきたいと思うのでございます。
  10. 園田直

    園田政府委員 仰せ通りでございまして、移民に関しましては、移民あっせん所に入るまでの国内体制については、関係各省農林、通産、労働の各省の御協力を願い、あっせん所から渡航いたしたあとの問題につきましては、外務省が全責任重点を置いて今後遂行しなければならぬと決意をいたしております。
  11. 石坂繁

    石坂委員 移民外交問題の次の問題は、いわゆる欧州国家間移民委員会加盟する意思があるかどうか、その加盟見通しはどうかということであります。最近このことが日本の新聞にも出ておりますが、これは御承知通りに、昭和二十七年二月に発足いたしまして、欧州移民を出す国々米大陸豪州等二十六カ国が加盟いたしているということでありますが、加盟国分担金は年約五千万ドルといわれております。そのほかに、加盟国ばかりでなく非加盟国なりあるいは団体個人等からの寄付金を基金といたしまして、関係国から移民送出の経費の補助を行なっているということでありまして、本年二月までに三十万人の輸送の援助をいたしているということであります。そこでかような団体加盟できれば、日本移民の上にも非常に仕合せであると思うのでありますが、私の仄聞いたすところでは、日本政府もこれに加盟希望しておられるということでありますが、この具体的な話が進んでいるかどうか、それを伺っておきたい。
  12. 矢口麓藏

    矢口政府委員 私からお答え申し上げます。まことにお説の通りでございまして、外務省としても一日も早くこれに参加したいというのがかねての要望でございます。ただ今日までは、わが方の出先官憲にようやく話をした程度でありまして、すなわち国連に参りました加瀬大使、それからゼネヴァの総領事にその旨を伝えただけでありまして、まだ具体的な動きは見ていないわけであります。しかしようやく移民外交の根拠もでき上りましたから、近く非常に力を入れまして、何とかしてこの委員会に入って、より有利な条件のもとに移民を送り出したいということを考えております。
  13. 石坂繁

    石坂委員 ただいまの御答弁非常にけっこうだと思いますが、今後ぜひこの委員会日本加盟できるように、一そう御努力を願いたいと思います。  なおこれに関連いたしまして、いわゆるWCC、世界教会協議会と訳しますが、プロテスタントの方もカソリツクの方も一緒になった教会の会でありますが、このクリスト教協議会日本移民送出をあっせんするという希望を持っているということであります。これも現在どういうふうに進行いたしているのか。かような先方からの希望があれば、これに乗って、日本移民送出に役立たせるということもきわめて必要だろうと思うのでありますが、これもあわせて伺いたい。
  14. 矢口麓藏

    矢口政府委員 これまたまことに御同感でございまして、先ほどの欧州国家間移民委員会と同じように、この方面にも力をいたして、日本移民を送り出したいというので、そういう意図はかねがね持っておりますが、現にそれと関連のありますことで、御承知でございましょうが、カシミターという宗教家東京においででありますが、この人が先日来非常に熱心に、南米の各地に若干でも日本人を入れるような基地を作りたいというので、各国に働きかけていてくれております。もちろん私たちはこの人と緊密な連携を保って、目的を達するようにいたしておりますし、また世界キリスト教協議会の一翼であります東京キリスト教連盟といいますか、ちょっと名前は忘れましたが、そこの代表者の武間という人が、先日来ゼネヴァ宗教会議に出まして、日本移民を有利に送るような情勢についての所見を発表してくれております。どのような結果を生みますかわかりませんけれども、これまたやはり政府側が後押しいたしませんと、所期の目的を得られないわけでありますから、前段に申し上げたことと同じように極力力をいたしまして、この次お目にかかるときには何がしかの成果を得たいということを考えております。
  15. 石坂繁

    石坂委員 私は、今後の有効適切な移民外交展開を切望してやまない次第であります。ところで現実移民送出計画は、本年は五千五百人、政府さきに十年間に四十二万人を送出するということを言われ、なお七月二日の外務委員会におきまして、園田政務次官が毎年五万人、十年間に五十万人の移民送出する、こういうことを答弁されておるのであります。まことにこの計画はけっこうだと思いますが、しかし昭和二十七年から今日までの送出実績に徴しますと、年間五万人の送出というものは非常に困難ではないか。そこで年間五万人の十年間五十万人の送出についての具体的の計画、なお計画計画といたしまして、将来一体どのくらい中南米に送ることができるのか。あるいは外務当局の一部の人の話を聞きますと、急がなければ将来また排日の問題が起ってくるかもしれない、こういうことも言われておるのであります。ですから、計画もさることながら、現実の問題としても、計画についての具体的な案及び現実にどれくらい送られるかということを伺いたい。
  16. 園田直

    園田政府委員 移民送出年度計画につきましては、数字のみをあげて、今までの計画を御報告をいたしておきましたが、その詳細な計画の御報告につきましては、その後、日本移民問題から見て五十万人くらいではとうてい移民成果が上らないといういろいろな御意見もございますし、かつまた今日の状態では、主として中南米でございますが、将来は近距離の、渡航費その他の費用がなるべく少くて済む近隣、東南アジア諸国等もございますので、こういう点につきましても検討を加えなければならぬし、さらにその詳細なるものは今度移住局の設置を許可せられ、かつこの会社ができますと、内閣移民審議会を設置して、審議会内閣総理大臣に対する答申の計画に基いて、さらにこの計画を検討し直すべき段階に参りましたので、詳細な御報告は避けておるわけでございます。中南米移民につきましては大体今のところ、これも見通しでございますが、十年間くらいは大体受け入れる見込みはある、このように成算を持っております。
  17. 石坂繁

    石坂委員 計画はまことに大きな計画でありますが、戦後移民が開始されましてからの今日までの実績は、当委員会説明通りであります。最初は五十四人、これは昭和二十七年度の年末でありますから、わずかでありますが、二十九年度をもっていたしましてもわずかに三千七百四十一名であります。これは政府答弁されるところであります。そこで十年間五十万人の計画だということはなかなか実現することは困難ではないか、それはしかし将来政府の善処を待つことにいたしますが、現在当面の問題といたしまして移民送出にいろいろな隘路があります。その第一は、渡航資金の問題であります。この渡航資金貸付の問題につきましては、外務委員会において、この移民会社関係いたしまして、いろいろ各方面から質問応答が繰り返されておりますから私は省略いたしますが、実際渡航費の問題が非常に問題になっております。これは現在農林省等でやっている内地入植者に対する補助の金額から考えますならば、一世帯五十万円程度の金は、これは貸付ではなくてむしろ補助する方がよろしい、私どもはかように考えております。園田政務次官は、現在財政の都合上やむを得ないけれども、将来はそういうふうにしたいというような希望的なことを述べられておりますが、現在においても現に内地入植者については五十万、七十万というものが一世帯当り補助金として与えられておる。そうすれば今日の渡航費等補助金としてやってもいいのではないか、これが一つ。  もう一つの問題は、こちらから参りますのに、雇用移民は別といたしますが、向う計画移民で行く者に携行資金を一世帯当り十五万ないし二十万持たせてやらなければならぬ。従来の移民はおもに農業移民であり、この後もまた主たる移民農業移民であろうと思いますが、その人たちが金を作るのにはどうしても農地とかあるいは農村においての家屋、宅地を売る。しかるに私どものように末端の移民を取り扱っておるものとして一番痛切に感じますことは、携行資金調達に非常に困難をするということであります。それは中央においていよいよ決定いたしまして出発までの日にちが非常に少い。その間に農地等処分をいたそうといたしますと、第一に法規上いろいろ制約を受けておることは御承知通りであります。しかもいよいよ出発ぎわになってどうしても捨て値で売らなければならぬというような羽目にある人たちに対して、好意的に、同情的に高値で買ってくれればよろしいのでありますが、その逆でありまして、安く買われてしまう。こういうような状態で、この携行資金調達に非常に苦労しております。現に私どもが扱った事件、これはまれなケースであるかもしれませんが、その日の午後一時に壮行会を開こうとしておるのに、十二時過ぎになって手紙を持ってきて、どうしても携行資金ができませんからやめますといって、出発まぎわに断わってきたのもあります。こういう事態がときどき出て参ります。ですから、政府がせっかく移民問題を推進しようとするならば、渡航資金補助あるいは携行資金についての貸付というようなことを政府が講ずることによって、その移民隘路を打開していただきたい。かようなことを私ども平素痛切に感じておるわけでありますが、今後かような問題について外務省なり農林省なりがどういうお考えを持っておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  18. 石井喬

    石井説明員 私からお答え申し上げます。ただいま御指摘のございました点、私どもまことに痛感しておる点でございまして、実は合格の通知が参りましてから出発までの期間が非常に短かいということで非常に悩んでおりまして、できるだけ早く許可が参るように相手国政府と折衝いたすのでありますが、何分にも私どもの思うようになかなか運んでくれませんので、そうかと申しまして、向うの確定的な許可がありませんうちに、こちらでもって財産処分をするというようなことは、あとにいって非常に困る問題が起りますので、やはり向うで大丈夫だ、ヴィザの許可を与えたという指令を待ちましてから、すぐ支度をしてくれということになりますので、その点まことに申しわけないと思っておる次第でございますが、これは今後向う側ともよく折衝いたしまして、できるだけお話のような方向努力いたしたいと思っております。  なおただいまお話のございました携行資金の問題でございますが、当初は実は携行資金について特に相手国の制限はございませんでした。ほかの国はございませんが、ブラジルにおいては例のウナ事件が起りまして以来、移民は必ず十八ポンドに相当する円貨の携行資金を持ってこい、これはつまり一年間生活資金に当るものと思いますが、それを持ってこいということになっておりますために、それだけは日本でもって作って持っていってもらう。今後会社ができますれば、営農資金等につきましては、ある程度そちらの方でめんどうを見ることができるようになると思います。この点果して十八ポンド必要であるかどうか。それは会社ができました上でさらに相手国と十分に折衝をしていきたいと思っております。ただいまお話がございましたように、携行資金を作るために国内で非常に困難をしておられるという点は、私どもも痛感しておるところでございまして、この点につきましては農林省とも十分に打ち合せをいたしまして、ことに国内農地処分の問題は農林省の所管でございますが、いろいろと案を作っていただきたいと思っております。それから渡航費をこの会社を通じて貸す、これを補助金でいいではないかというお話ですが、これは先ほど前前から政務次官からお話申し上げております通り、私どもはできればやはり補助金ということであるのが一番いいと思っておりますが、現状におきましては、遺憾ながらまだそこまでいっていないという次第でございます。
  19. 吉川久衛

    吉川政府委員 石坂委員のただいま御指摘になられました通り移民出発に際して土地を処分するという場合に、いつもいろいろ問題を起していることは事実でございます。私も昨年中南米に参りまして、ボリビアのサンタクルースが日本移民に適地であるということを見て参りましたので、自由党の今村忠助君も二年続けて行って見てこられたのも、非常に好適な場所であるということであったと思いますが、帰って参りまして私が向う事情お話をしているうちに、国会に勤めております若い職員が、家族を連れて最近ボリビアへ旅立たれたのでありますが、その人が立つに際して、今石坂委員指摘通りの問題が出まして、足元を見られて非常に安く買い取られたと涙を流してくやしがっておりました。私も勧めた関係責任を感じていろいろめんどうを見て上げたのでございますが、この問題については、農林省としてはきわめて重要な問題でございますので、町村役場、農協、農業委員会等の御協力を得るように指導をしたいと思います。特に農業協同組合あたりがもっと責任を持って、その組合員の農地処分等については、もう少し親切に深入りをしてめんどうを見てやるようなことのできるように、農林省としては指導いたしたいと考えております。
  20. 石坂繁

    石坂委員 ただいまの問題につきましては、私も不安を持っておりますけれども、これはここで押し問答をいたしますよりも、委員会外で外務省なり農林省当局と折衝いたしまして、問題の解決に当りたいと思います。  なおもう一つ移民送出隘路は、これは確かに船腹の問題であります。そこでかりに年間五万人の計画、それを半分にいたしましても、現在の船腹の状態ではなかなか容易ではありません。ただいまの資料二十三ページを見まして、移民船の現状のところはわかりますけれども、確かにこの隘路をいかにして解決するかということは、この資料ではわからないのであります。現在の大阪商船の船、ぶらじる丸、あめりか丸、あふりか丸、それにさんとす丸、さらにロイヤル・インター・オーシャンラインズ、これらで送っているようでありますが、それらの数は非常に少いのであります。この後政府は多量に移民送出しようという計画を持っておられるならば、資金関係と同時にまた船腹の問題も速急に解決してもらわなければなりません。飛行機等の問題も資料には書いてあるようでありますが、これも将来やっていただけましようが、とりあえず船腹の問題だと思いますが、これについても現在政府の具体的船腹増強の方法は、どういうふうにお考えになっておられますか。
  21. 園田直

    園田政府委員 ただいま御質問の点は、外務省といたしましても痛切に感じたところでございまして、今年度予算折衝に当りましては、移民のための造船の費用として十六億円のもの二はい、三十二億の予算折衝をしましたが、いろいろ予算折衝の経過において、今年度には予算現実に実現はいたしませんでした。しかし今年度送出計画につきましては、ただいまのところこの船及び外国船等の準用によってまかない得ますので、将来逐次増加するにつれましては、御指摘通り移民のための造船を考えております。
  22. 稻村隆一

    稻村委員 関連して伺います。実は先ほど園田次官のお話の中に、移民協定ボリビアしかできていない、こういう話ですが、これが私非常に大切な問題だと思う。この間私は実は本会議質問するつもりであったのですが、日伯関係のいろいろむずかしい問題が起るし、今後の移民にも重大な関係がある、その点を考えまして自発的に私は質問をやめたのでありますけれども、この移民協定ができていないということが非常な問題なので、たとえば松原さんという人が移民をやって失敗した、いろいろな苦労がある。この人はいろいろ聞いてみると人間としては非常にまじめな人でないかと思う。ところが移民協定ができていないで個人でやるところに非常に悲劇を生む。たとえば六月十八日の英文毎日を見ますと、ヴァルガス大統領からだいぶ広大な土地をもらった。そこで五千家族入れるというので、大統領の秘書であるアルヴェスというのに百万円の献金をした、それが暗殺の費用になって、大統領の反対派の暗殺の費用に使って、その責めによって大統領が自殺した、こういうことが出ているのであります。これは誇張かどうか存じませんが、個人的にやるとそういうような松原氏としてもやむを得ずして献金しただろうと思うのですが、そういう政治的なことによっていろいろ利害関係が必ず生じてくる。それはどこの政界でもそういうことはありがちであります。特に南米諸国はそういうことが多いということを聞いているのですが、そういうふうな悲劇を生んでいる。私はいろいろな南米移民の悲劇を事実知っているし、手紙をたくさん持っておりますが、今も農林委員の人から鳥取県の海外協会の大久保事務局長が、聞いたこと、約束したことと全然違う、実に惨たんたるものでお話にならぬと新聞記事が出ておりますが、見せていただきました。そういうようなことは移民協定がないからである。たとえばイタリア、ドイツあたりはちゃんと政府が選抜をいたしまして一切調査して受け入れ態勢を作っておる。いよいよこれは何といっても日本の国民が移民しなければならぬ。そこでそれは最初から安楽な生活をするとか楽しい生活をするということはないので、むろん初めは苦労するのが当然なのですが、しかし問題は行ってから惨たんたる奴隷的な生活やら、あるいはルンペンになる、あるいは死んで白骨となってしまう、こういうふうな実例がいろいろある。そういうのが多いので、山崎剣二元代議士が行ったのでありますが、それが現に呼び寄せ移民であります。最近藤原道子さんに私聞くと、息子さんから手紙が来まして、とうていおれないので、船でもって向うに、サンパウロの方に今逃げ出しておる。山崎剣二君は飛行機で先に逃げ出した、こういうふうなことがあるのです。そういうふうな海外移民といっても、ただ日本民族が発展すればいいというようなそんなむちゃな考えではいけないのであって、どうしてもこれは日本国民の生活を救ってやる、生活問題を解決づけるというのが基本なのです。それを全然無視したような無責任移民政策、これは許すことができないと私は思うのです。これはこの前の外務委員会でも申し上げたし、また重大問題として、どうしても本会議で緊急質問として質問したいと思ったのですが、いろいろ差しさわりがあるということを私認めたので、ひっ込めたのでありますけれども、一体今の外務当局政府当局は、まじめにこうした問題を真剣に考えているか。昔の軍国時代のように、ただ人を送りさえすればいいということで送って、その人間を悲惨な目にあわせるということを平気でやっていることは、私はけしからぬと思う。その点移民会社もよろしい、私は大賛成だ、それから移民努力されるもよろしいが、こういう点を根本的に解決しなければだめだと思うのです。ブラジルなど勝ち組と負け組という問題があるでしょうけれども移民政策をもっと積極的になぜやらないか、こういうことを私一言御質問申し上げたい。
  23. 園田直

    園田政府委員 ただいままで移民をされた方が非常に苦労されて、特に中南米等におきましては、成功された方もございますが、相当悲惨な状態におられる方もありますし、あるいは御指摘通りに脱走したり、あるいは事件があったり、松原機関の失敗等があったことも事実でございます。その原因は、まさに御指摘通りに、第一は、これが政府政府責任ある移民協定によって、いろいろな事件があったりその他の場合に、政府政府と折衝できる根拠がなかった。すなわち、法的に保障されていなかったために、向うに行ってみますと、こちらから出るときの話と向うに行ったときの話といろいろ条件の食い違いや、あるいは土地が意外に豊かでない未開発地であったり、あるいは雇用内容、契約条件等が非常に変っておったりすることが、一番大きな原因であり、しかもそれを、政府として側面から援助したり、外交によって向うに要請することはできますけれども協定の根拠によって相手国にいろいろな折衝のできないことが一番大きな原因であるのと、もう一つは、向うに行かれたあと、生活や営農資金等、一人前の移民として新しい天地を開発するための基金がなかった等、法的と物的に政府責任を持って援助できなかった点が、御指摘通りに、今日までの移民の方々が苦労された原因であると非常に深く反省しております。従いまして、政府といたしましては、この時期に、まず外務省みずからも、しばしば申し上げます通りに率直に反省いたしまして——今までは移民と申しますと、本省におきましても外交の中のごく一部の事務的な問題として取り扱われ、しかも出先の領事館あるいは在外公館等におきましても、移民というもりは、外交の中の情報のごく一部の事務的な問題に扱われておった傾向が確かにございます。従いまして今後は先般のお願いにより本省におきましては移住局を作り、在外公館等には専従の外交官を付置し、関係各省と人事の交流をいたしまして、専門家を配置するなど事務の推進をはかるとともに、移民会社の設置をお願いして、それによって生活の保障なり基金の保証をして、今までの悲惨な状態を早急に食いとめたい。なお、法的にこれをまとめますために、ただいまはボリビアだけでありますが、逐次各国とも話し合いを進めていきまして、移民というものが移民政策というものだけではなく、移民外交であるという点から、御指摘のような協定を早急に結ぶよう努力して、今までの欠陥を取り除く所存でございます。
  24. 石坂繁

    石坂委員 海外協会の問題でお尋ねいたしたいのでありますが、この法案がここまで参ります途中に、会社一本で移民事業をやらせるか海外協会との二本建でやるかということにつきましては、当局の間でもずいぶん議論があったようであります。外務委員会におきましてもこの点はまたいろいろ論議されております。しかるにこの法案を見ますと、会社と海外協会、つまり第八条第二項の外務大臣の指定する団体、すなわち日本海外協会連合会だと承知いたしますが、これに渡航資金貸付をやらせる、こういうことになっておるようでありまして、私はこの二本建の方がよろしい、こういう見解を持っておるものであります。それはそれといたしまして、政府の考えておられるところは、海外協会連合会は単に資金の貸付をするだけなのか、従来海外協会がやっておりましたような啓蒙宣伝、選考、そうした仕事を海外協会でやらせられるものだと私は了解いたしておりますが、この点はいかがでしょうか。
  25. 園田直

    園田政府委員 海外協会連合会と今度できます移民会社と一本にせよという意見と、二本で行けという意見の食い違い、内閣内において意見の対立がございました。国家資金を出す、しかもその渡航費の回収という問題でいろいろ意見があったのでございますが、今日ではその意見が調整されまして、政府としてきまりました意見は、御承知通り会社と海外協会と二つにわけられる。渡航費貸付は、会社政府から借りてその事務を海外協会連合会に委託をする、なお今日までやっておりましたいろいろな業務については、そのまま海外協会連合会にお願いする。これは費用の面から申しましても、とうてい会社自体で日本各地に出張りまして、いろいろな選考その他の実務はできませんので、このように考えております。なお海外協会連合会の機構なり人事なりその他については、いろいろ御注意等も受けておりますので、早急にこれは検討強化をしたいと考えております。なお海外協会連合会が国家資金の貸付によって事務を委託されることになりますには法的な措置が必要でございます。これは会社の業務が的確にわからなければ、海外協会連合会の業務がどのように制約されるか不明でございますから、この会社の性格がはっきりきまって、会社が法律的に御認可を受けたら直ちに法的の措置をするつもりであります。
  26. 石坂繁

    石坂委員 日本海外協会連合会の機構、人事等につきましては私はこの際触れません。触れませんが、従来通りの業務をやることは、ただいま園田政務次官の御言明によりましてよく納得いたしました。ところで連合会は、その末端の組織といたしまして、各都道府県にその土地の海外協会を持っております。そうしてこの地方の海外協会が末端の業務、すなわち地方においての啓蒙宣伝、下選考をいたして参っておりますのが今日までの実情であります。ところが、海外協会は経済団体でありませんので、その経営は非常に困難をいたしております。私のやっておる熊本海外協会のごときは実に明治四十二年に発足をいたして今日に至っております。その間いろいろな事業をいたしておりますが、各地の海外協会また大同小異だと思います。年数においては私の方ほど長くありませんが、そういうのが大体の状況だと思います。その仕事に当っている人たちは実に気の毒な状態で仕事を続けております。先日私海外協会の各地の人たちの陳情を受けましたうち、兵庫県の海外協会の人の申すところによりますと、自分たちは費用が非常に乏しい、そこで通信費までも自分のポケット・マネーをさいてやっております。こういうふうの実情を訴えられまして、私自身非常に困難を続けてやっておりますだけに、深くその人に同感をいたしたのであります。さような菲薄な困難なうちになお仕事を続けておりますのも、いささか国策のためだという誇りと申しましょうか、みずから満足するところでやっているのが地方海外協会従業者の大方の心境でございます。しかるに本年度予算を見ますと、連合会に対しましては千二百万円の補助金が渡されておる。しかるに実際の末端の仕事をやっておる地方海外協会の実情は、それぞれの都道府県では幾分の補助はいたしておりましょうけれども、これまた赤字続きであります。御承知通り地方公共団体は非常な赤字です。しかしどうしてもこの末端の海外協会がなければ移民の仕事は非常に支障を来たすという現状でありますから、地方の海外協会の育成強化の方法、その事業を強化する方法を講ずることは、どうしても必要だと私は心得ております。そこで地方の海外協会の業務を強化するにつきまして、政府は何らかの施策をお持ちになっておるかどうか、それを承わりたい。
  27. 園田直

    園田政府委員 各地方の海外協会支部の補助金は、外務省農林省から支出しておると思いますが、その額は今年度にいたしましても全国の支部でわずかに五十数万円でございまして、農林省の方と両方合せまして百十万か二十万くらいであると考えております。もちろんこれで海外協会に御委託をしておるいろいろな業務ができるとは考えておりませんか、今御質問になりましたる通り、この支部の成立がほかの財団法人あるいは協会等のごとき性格ではなくて、海外移民に御理解のある各地方の支部の有力者の方々が作られた協会でございますから、今日国家財政緊縮の折柄、まず戦後の移民というものが大転換をしなければならぬ基礎を作るということに予算支出の重点を置きましたので、今年度は非常に無理なことになっておりますが、将来この協会の法的措置等が伴うにつれまして、農林省、大蔵省とも相談をいたしまして、いろいろな委託された事務が円満にいくように補助金の増加をはかりたいと考えております。
  28. 石坂繁

    石坂委員 現在海外協会ができておるのは私の承知いたしておるところでは二十七県下です。ただいまの園田次官の言われておったような金額でございまして、事務の費用にはもちろん足りない。人件費に非常に困っておるような状態です。とくと御考慮を願いたいと思います。
  29. 植原悦二郎

    植原委員長 石坂君、なるたけ徹底するように御質問願いたいと思います。もうあなたはほぼ一時間をこえております。ほかにもたくさん質問者がありますから、そのおつもりで質問に焦点を置いてお願いいたします。
  30. 石坂繁

    石坂委員 承知いたしました。  次に私は現地の状況について、政府のその後の施策についてもお考えを願いたいのでありますけれども委員長から注意もありましたので、その点は省略いたしますが、最後に一つだけ従来中南米に実習生の移民制度というものが行われておった。これは御承知だと思います。昭和七年から十五年ごろまでにかけまして引き続いて優秀な青年を毎年二十人ないし三十人送っておりました。それが総数三百人余りにもなっておるということを承知いたしております。それが今回の戦争で中断しておりますが、現在アルゼンチン等においても例のアンデーノー・クラブ、お互いの相互親睦の団体でありますけれども、在留邦人の中堅といたしまして活動いたしておる状況であります。そこで当然移民送出ももちろん必要でありますけれども、かような優秀な青年を現地に送りますということは非常に必要だと思うのでありますが、かような制度を政府は復活される方針はありませんか、お尋ねしたい。
  31. 園田直

    園田政府委員 非常な成果を上げておると聞いておりますので、早急に復活したいと考えております。今度要求する明年度予算についてのその点の費用を計上して折衝するつもりでおります。
  32. 石坂繁

    石坂委員 最後に一つ、従来アマゾン地方の現状につきましてはいろいろ御議論があるようでありますけれども、だんだん現地を調査いたしました人の話を聞きますと、なお上流の方にはテーラロッシャという非常に肥沃な土地があるようであります。先日楠見委員の御質問でも、グァマ川流域に二百五十万町歩の水田可能の土地があるということで御質問になっておりますが、従来は土地の選択が悪かったからこういうことになった。従来土地の選択に誤まりなければなお有望なところだと思います。最近ブラジル国の政情も変っておる。連邦の植民地の予算も半減されておる状態であり、雇用移民は中断しておる状況でありますから、これは適当な場所を選択いたしまして、なお従来の営農の方法を再検討いたしまして、機械化するなりその他熱帯農業に適するような指導をしなければならぬ。さようなことはもう会社の開発業務でやられることであろうと思いますけれども、さような点についての、つまり土地の選択並びに営農の改善等についての農林省なり外務省のこれに対する計画は現在お持ちになっておるかどうか。
  33. 園田直

    園田政府委員 御質問の点につきましては、すでに関係各省と相談をしてこれに視察団を派遣する計画をいたしておりまして、ごく最近出発するはずでございます。なおまた学者、専門の技術者等を派遣したりあるいは向うの旅行に付随して調査を行わしたり、いろいろそういう方面の検討をしたいと考えております。
  34. 石坂繁

    石坂委員 これで済みました。
  35. 足鹿覺

    足鹿委員 関連して。本日いただきました移民関係資料、膨大なものでありますが、どこかに載っておるとは思いますが、私の見たところでは見当りませんのでお伺いをいたします。ブラジル移民要綱というもの、あるいはその他のアルゼンチンならアルゼンチンに対する移民要綱というものがそのつど発表され、日本から行く移住者はその移民要綱によって現地に納得をして行くわけです。今まであなた方がお示しになった移民要綱を資料として御提示願えますかどうか。特にこのいただいた資料の別表第六の、昨年一月十五日ヴェルティラ地区の第一次移民としてアマゾン流域に入った際の移民要綱について、詳細な資料がいただけるかどうか、まずこれを伺いたい。
  36. 石井喬

    石井説明員 移民要綱と申しますのは、おそらく移民を募集します際の募集要領のようなもの、いろいろな募集条件を書きましたものだと思いますがこれは私どもにございますから、さっそく作りましてお出しいたします。
  37. 足鹿覺

    足鹿委員 そのつどのものをお願いいたしますと同時に、ただいま私が例示しましたヴェルティラ地区第一次移民等に対する移民条件については、特に詳細に御提示を願いたいと思います。と申しますのは、私は鳥取でありますが、鳥取の海外協会の事務局長をいたしております大久保毅一君が、貨物船で行って貨物船で帰るという非常な強行軍をし、六ヵ月有余にわたって現地をつぶさに踏査して帰りました。まだ親しく情報はキャッチしておりませんが、それによりますと、この移民条件と実際とが非常に食い違っておる。先ほど石坂委員の質疑に対して、園田政務次官はそういう点も御肯定になっておりましたが、特に最近なまなましい食い違いに基いて、悲劇が起きておる事例を地方紙に談話として発表して、その原因としては、外務省というものは現地というものを全然知らぬ、現地に対するところの世話をやっておらぬ、こういうところに大きな欠陥があるのではないかということを言っておるのです。そういう点について、どういうふうに今後対策を立てる御所存であるか、それが私は一番大事な問題だろうと思うのです。会社をお作りになろうと、その他のいろいろな団体をお作りになろうと、とにかく一つの条件を示したものが現地に行って食い違う、それに対して始末がつかぬ、結局泣き寝入りになって、移民は、現地で倒れるか、あるいは引き揚げるかというようなことでは、移民の所期の成果目的というものは達成できないのではないか、こういうことが言い得られると思うのです。その移民要綱をお示しいただいてからさらに私はいろいろとお尋ねを申し上げますが、特にこのヴェルティラ地区に入った移民は、本年の一月十五日に入っておるわけなのです。その当時外務農林両省に提示した条件というものは、ゴム採園に一カ年間は雇われる、それ以後は希望によって時日または契約の更新ができる、家族構成は満十五才以上五十才未満の働くことのできる三人以上あればよいなどの条件であった。ところが現地に着いてみたところが、四月中旬ごろから日本人の解雇問題が起きて、リオデジャネイロの連邦政府農務局からは、五月限りで未成年女子の雇用を禁止するとの発表があり、去る五月二十七日には日本人の雇用は一人も認めない、直ちに開拓者として七月中に移動せよという通知があったので、同地区には六十家族が集団移民しておるが、この立ちのき命令に全員が憤慨をしておるという、著しい事実との食い違いがある。ですからこういう問題に対しては、最終的には一体だれがその責任を持って、だれがどういうふうに始末をつけるのか、移民会社というものは、ただ単に現地に送り出すだけの責任と任務を持ったもののようにわれわれには思えるのでありますが、それだけで私この移民問題の解決がつかないと思う。そこに問題が伏在し、どうしても対策を立てなければならない点があるとは私は思うのであります。そういう点で、特に私ども農林委員でありますから、外務委員の諸氏にお願いをしておきますが、今私が述べたような点、その他いろいろな幾多の事例が現地においてある。特に日本人の婦人の発狂者が非常に多いということを現地で見てきて言っております。その原因はどこにあるかといえば、外人はみな夫人同伴でいろいろなところの会合等にも行くが、日本人の場合、初期の開拓当時においてはそれもできない。また相当の成果を上げてもそういう余裕もないというようなところから、何らの娯楽のない婦人が、結局においては一万数千名の入院患者のうち八百数十名の日本婦人が発狂者であったという、悲惨な事例を数限りなく持っております。しかし私の見たところでは、この大久保君はそれらの問題を解決して、どこまでもこの移民を完成していかなければならないという積極的な意図と建設的な気持にあふれて言っていると思う。ごく最近、先月二十五日に、現地を六ヵ月、ほとんど不眠不休の踏査旅行をやって帰ってきております。こういう人材を一ぺんお呼び出しになって、現地のなまなましい声をお聞きになり、しかる後、今後のいろいろな足らざるところを処置されることが適当ではなかろうかと思いますので、これは外務委員の諸氏なり外務委員長において、しかるべくお取り計らい願いまして、私がただいま述べたような事例等々についてもよく真相を御調査願いたい、かように思う次第であります。
  38. 植原悦二郎

    植原委員長 御意向はよくわかりました。次に赤路友藏君。
  39. 赤路友藏

    赤路委員 外務委員会審議の過程において、当局の方の答弁によりますと、この会社への政府の出資は一億円、民間出資が五千万円、そして社債として資本金の五倍を募るというようなことがあったわけなのです。そうしますと資本金が一億五千万円の、社債が七億五千万円、こういうふうになるわけですが、この民間出資と社債について十分消化し得るという見通しがあるのかどうか、この点をお伺いしたい。
  40. 園田直

    園田政府委員 いろいろ困難な点があるとは思いますが、この会社の事業内容とする問題が重大な、しかも働く人々に土地を与えるという大事な公益的な問題もございますし、なおまた民間資本を募集するに当っての会社経営の損益の面から見ますと、当初においてはいろいろ意見もございましたが、今日においては一番問題になっております渡航貸付費というものの委託及び財源を、大蔵省との相談によりまして国家予算から出す。しかもその渡航貸付費を回収するに当ってのいろいろな損失その他の点についての調整の措置が講ぜられましたので、ただいまの段階では、いろいろ移民事業の重大さを指摘をしてお願いをすれば、四、五千万の民間資金は集まるのではないかと考えております。
  41. 赤路友藏

    赤路委員 社債の方はどうですか、見通しがありますか。
  42. 園田直

    園田政府委員 今後事業をやるにつれて、社債も募集できるという条項になっておりますが、これもその後の会社の経営いかんによっては、可能になると考えております。
  43. 赤路友藏

    赤路委員 答弁によりますと、この資本金は主として国内の事務操作その他に使うということである。従って事業資金については米国の三銀行の方から千五百万ドル、五カ年間で借款するという、このことは、きょういただきましたこの事業目録の中にもあることなのでございますが、この千五百万ドルの五カ年間における借款ということは確実になっておるのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  44. 矢口麓藏

    矢口政府委員 私から御答弁申し上げます。昨年の十二月七日にアメリカ三銀行におきまして、本件借款の基本方針というものをきめたのでございます。それによりますと、日本側の政府が本件借款の元利を保証いたしますならば、アメリカ側では貸し出すであろうという趣旨の基本方針でございます。しかしその借り手でありますところの本件会社の内容がまだきまってないものでありますから、すなわち本法案が通らないものでございますから、向うといたしましては最後的な回答はまだいたしておりません。本案ができますと同時に、これを翻訳いたしまして三銀行に渡し、そこのナショナル・シティ・バンクの総裁がこれを持ちましてニューヨークにただいま行っております。もちろん本件だけの用事で参ったのではないようでありますけれども、とにかくこれはニューヨークで検討されております。でありまして政府が保証するということは、言葉の言い回しは違っておりますけれども、そういうことに相なっておりますから、この法案が通れば、アメリカ側からのオーケーが取りつけられ得るものと判断いたしております。
  45. 赤路友藏

    赤路委員 今の御答弁によりますと、政府が保証すればアメリカ側の方は貸す、こういうことであったと思う。しかしながら、かりにも千五百万ドルの金を貸そうというのでありますから、従ってその事業内容等については十分話し合いがされていると思う。この法律が上る上らぬにかかわらず、計画があって借り入れの交渉をする限りにおいては、十分それらの話し合いはあったと思う。その事業の内容についていかなる話し合いがなされ、どういうような了解がなされておるのか、その点についてのいきさつを御説明願いたい。
  46. 園田直

    園田政府委員 この借款折衝の経緯につきましては、当初受け入れ機関の機構あるいはその他について、いろいろ銀行側からの条件等もあったようでございます。しかしそれは日本国内においても、金を借りる側はなるべく条件なしで借りたいのでございまして、いわんや外国資本でございますから、国家資金を出す会社といたしましては、いろいろな条件を付せられるということは、われわれとしては相当考慮しなければなりませんので、いろいろ折衝いたしました結果、事業内容等につきましては、この法案に盛られておる程度の話はしておりますが、それは金を借りる条件ではございませず、政府が元利を保証するということ、受け入れ機関は確実な会社なりその他の機構ができるということ、それだけで金を借りるという交渉になっております。
  47. 赤路友藏

    赤路委員 今の次官の御説明によりますと、いろいろの条件はあるが、大体事業内容についてはこの法案の業務範囲に盛られておることだ、こういうふうに了解いたしますが、非常に広範な業務範囲にわたっておるわけなのです。従ってこの法案を読んで参りますと、どこに一体重点が置かれておるのか、農業移民重点を置いておるのか、それとも事業に重点を置いておるのか、この重点がいささかぼけておると思う。第八条の第一、第二、これと三、四というものはいささか違いがあり過ぎるように思いますが、この法案重点は一体どこにあるのか。
  48. 園田直

    園田政府委員 この法律案の記載の形式の面におきまして、まず事業内容の第一が渡航費貸付ということになっておりまして、その次に、いろいろな移住者団体の行う事業がありますが、第二号に書いてあります移住者及びその団体の行う農業、漁業、工業その他の事業に必要な資金の貸付を行うということ、この後段の方がこの会社重点であるとわれわれは計画しております。この後段の業務内容の中において、農業移民が主か漁業移民が主かというお尋ねでございますが、われわれは農業、漁業、工業に関係なしに、ただいままで国内で失業したとか、国内で生活が困難であるとかいう人が、逃げ場所を求めるような印象を本人にもこちらの方にも与えるような移民ではなくて、農業、漁業、工業等の技術移民と申しますか、技術と知識を持って移民を行い、相手国でいろいろな機械的な近代的な事業を行う移民重点にいたしております。その中で農業が主であるか漁業が主であるか、工業が主であるかということは、これはイタリアを初め各国とも、その移民状態が逐次変化しておりまして、今までは日本は主として農業専門の移民でございましたから、これを切りかえるにいたしましても、そう急にはできませんので、やはり今明年中は農業が重点でございますが、将来は農業、漁業、工業と区分をしないで、三者を一緒に考えた技術移民というか、知識移民というか、そういうものを重点に考えております。
  49. 赤路友藏

    赤路委員 そこに問題点があると思います。農業、漁業村民はわかりますが、工業移民ということが問題になると思います。この外務委員会における答弁の中にも、この移民に関連する事業ということがある。今の次官の御答弁でいきますと、技術移民というのは、農業移民に関連する事業あるいは漁業移民に関連する事業、そういう意味における工業であるのか。それとも、極端な話でありますか、技術移民ということになれば、ラジオだって技術移民、あるいは自転車だって技術移民、そういうものをもこの工業の中に含むのかどうか、この点が非常に不明確でありますが、その点はどうですか。
  50. 園田直

    園田政府委員 この点は相手国の適地、農業が適地であるか漁業が適地であるか、あるいは工業にいたしましても、どの工業が一番適しておるか、そういう点で変ってくると思いますので、その個条でこれが何だということは具体的には申しかねますが、中南米諸国に一例をとってみますと、専門の工業化を非常に急いでおりまして、これに即応してわが国の資本と技術が進出し得る分野が相当開けてきておるわけでございます。特に中小規模の企業は非常に有望でありまして、ドイツ、イタリアの例から見ましても、その採算性は、投下資本を一、二年で償却し得る程度であると考えております。たとえばブラジルにおける陶器の製造は、日本の原料よりも優秀な原料を半額程度で入手して、その製品は日本以上の値段で売却できるというような例がございます。これはごく一例であります。
  51. 赤路友藏

    赤路委員 私の心配するのは、今の御答弁で参りますと、この工業移民というものが非常にばく然と広範にわたるように思うわけです。中南米の方は工業化を非常に希望しておるということは言えると思います。そうすると、中南米の工業化を日本側の方が促進していくために技術移民をやるということは、アメリカ側から申しますならば、みずから融資をしてやって、それによってみずからの市場が狭隘になってくるということになりはしないか。私が冒頭にお伺いいたしましたのは、千五百万ドルという金を貸そうという限りには、何かこの事業内容についての明確なる話し合いがなければならぬ。この千五百万ドルの金の使う方途というものについては条件がなければならぬと思う。従ってその点をお聞きしたかったのです。
  52. 園田直

    園田政府委員 その点については特にわれわれは考慮したところでございまして、千五百万ドルの借款をいたしまして、これの使い区分について向うから指図を受けることになりますと、御指摘通りのような欠陥が招来されます。従いましてこの金の使い方については三銀行はもちろん、アメリカ側からといえども指図を受けるものでなく、これを内閣直属の審議会において立案計画をし、その答申に基き外務大臣の監督によってこの会社が事業を計画することになっております。
  53. 赤路友藏

    赤路委員 これ以上押し問答しておっても始まらぬので、私は希望条件として申し上げておきますが、少くともこの会社の成立の本質的な意図から行きました場合は、農業に関連する、あるいは漁業に関連する工業、要するに農業移民、漁業移民に関連する工業にこそ重点を置かれるべきだ、こういうふうに私は考える。この点だけはとくと御考慮おきを願いたい、かように思います。  それからこの事業目論見によりますと、第一年度の所要資金、一応の数字であるとこううたっております第一年度の所要資金が、合計いたしまして五億四千万円になっている。そうするとかりに千五百万ドル五カ年間で借りますと、年間三百万ドル、従って日貨に換算いたしますと十億八千万円になると思いますから約半分、十月から出発いたしますのでちょうど半分になっております。ところが第二年度は十一億一千五百万円になっている。これは当然十億八千万円借りられて五億四千万円が別途これにかぶさって参りますから十六億二千万円にならなければならぬ。ここに相当な金額の差が生じておる。この点はどういうふうになっておりますか。
  54. 園田直

    園田政府委員 先ほどから申し上げます通りに、年々の送出移民計画数自体が、予算面等も加味しまして本年度は一万を考えておりましたが、それも約半数しか実現できなかったような状態で、基礎ができるにつれまして国家財政の面と相待って、明年度から飛躍的にふやしたいと考えております。従いまして初年度においての金の使い方が、計画においては幾分か差がついて少くなっているわけであります。また特にここで御了解を願いたいと思いますことは、先般ブラジルで百万町歩のコンセッションを前代議士の上塚氏が設定をしてこれの認可を受けましたが、上院においてこれが否決された例がございます。これは理由はいかなる理由かと申しますと、日本人が組織的に、集団的に日本人の勢力を浸透してくるという、今まであったブラジルの排日のばく然たる考えから出てきたものでございまして、今ここにわれわれが提示いたします海外移民のための年度長期計画等も、暫時これを発表することを御猶予願い、詳細なる御報告をここでできません一つの理由は、長期莫大な計画相手国の了解と相手国の打ち合せができないうちにいたしますと、それによっていたずらなる刺激を招いて、その計画が中途において挫折するおそれが非常に多いのでございます。従いまして、この会社法案通りましたならば、直ちに内閣直属の審議会等に御相談申し上げまして、詳細なる計画を立て、さらにそれに基いて具体的な計画を立てて内々に御報告、御了承を求める考え方でおるのでございます。
  55. 赤路友藏

    赤路委員 その点はそれで了解いたしておきます。そこでもう一点お伺いいたしたいことは、この融資に当りまして、現在すでに移住している既農業移民ですが、この人たちの営農を助長していくということのために融資をするお考えがあるかどうか、この点を伺いたい。
  56. 園田直

    園田政府委員 ただいまの御質問は、非常に実質的に検討しなければ即答ができない点でございます。と申しますのは、今まで出ております移民が松原機関初め各所に失敗をしたり赤字を出しております。従いまして今会社ができまして、各種機関の赤字の補てんにこの会社の資金貸付等が使われることになりますれば、これはこの会社が発足当時に運行不能になるおそれがございます。かといいまして、今出ていっておられる方々の悲惨な状態をほうっておくわけには参りませんから、まず渡航費等の面におきましても、この法案をお願いしたあと渡航費と、今まで行かれた方の渡航費の取扱い方が違いますが、これは法的に措置をして、直ちに同等な取扱いをいたすようにするとともに、向う移民されている方方の生活については、詳細にこれを検討して、援助すべきは援助し、しかし一般機関というか、今までの機関の失敗の赤字穴埋めにこの金が使われるようにはしたくない、このように注意をいたしております。
  57. 赤路友藏

    赤路委員 今の御答弁で、現在の農業既移民に対しては、調査の結果基本的にはこれは融資をする、こういうふうに了解をいたしておきます。そうしてこの会社は投融資をするだけでありますか、現地の移民に対する世話はどこがやるのですか、この点をお聞きしたい。
  58. 園田直

    園田政府委員 この会社を作りますに際してのわれわれのほんとうの心持はそこにあったわけでございます。と申しますのは、各国にただいままでのところ移民しておりますが、これに対する技術的な指導、あるいは計画的な規制あるいは援助ということをやりますと、相手国から、日本政府移民をやった後までも自分の国に入ってきて勝手な干渉をするのかということで、非常に相手国を刺激するのでございます。これはそれだけの問題ではなく、たとえば先般中南米諸国に、今までの移民がいろいろ問題があるから適地かどうかを調査したいということで、学術調査団を派遣するときに、外務省といたしましても、当然のことでございますから、積極的にこれを援助して調査したいという計画を発表しましたところ、相手国としては、日本政府自分の国に入ってきて干渉するのか、移民というものは自分の国にもらった養子だ、それを日本人は入ったあとまでも日本人だと思って、日本人の部落を作るのかという、非常にわれわれとしては奇妙な考え方がやはり残っているわけでございます。従いましてこの会社を作って、民間会社の形式をもってわれわれは移民の同化政策をとらなければならない。しかし日本の方が向うへ行ってから一人前の移民の生活をされるまでは、国家としてこれを擁護するところの責任と義務があるわけでございますから、従いまして、両者の目的を達するために、この会社の手によって援助したりあるいは保護をしたりする、こういうことを考えているわけでございます。
  59. 赤路友藏

    赤路委員 どうも今の次官の御答弁は、わかったようでわからぬのですが、移民に出したそのあとのめんどうまで見るということは、これは内政干渉じゃないかというようなことを言われる。こうなってくると、今まではそういう意味でほうっておいたということになるのでしょう。まことにけしからぬと思います。そこで今次官がおっしゃったような御懸念があるから、それでこの会社を作ってめんどうを見ましょう、政府がやるのでないのだ、それは会社がやっているのだ、こういうことで一応実質的に現地へ出した移民のめんどうを見ていこうというのじゃないですか。
  60. 園田直

    園田政府委員 私の言ったのはその通りでございますか、私の説明がまことに不十分でございました。
  61. 赤路友藏

    赤路委員 それではそういうふうに理解します。それでは具体的に、ほんとうに現地の指導をやられるのですね。世話をするのですね。
  62. 園田直

    園田政府委員 そのつもりでおります。
  63. 赤路友藏

    赤路委員 その点は了解いたしまして、もう一点お聞きしておきたいのですが、先ほど石坂さんなりあるいは稻村君からいろいろ話が出まして、そして次官の方から、今までの外務省のあり方というものに対して反省をする、今後移民については外務省は新しい角度から十分勢力的にやっていきたい、こういうようなまことに率直なお話があったと思う。ところが聞いてみますと、それに抽象論なのです。本省における移民関係の人事異動、これからの移民先に対する基本的な理念というものをお話願ったと思う。具体的にどういうふうにやっていかれるか、今までお話がありましたように——今も足鹿君からヴェルティラ地区における問題が出ましたが、こういうようなことがあちらにもこちらにも発生しておる。この事実はおおい隠すことはできないわけです。これは次官も先ほど言われたように、受け入れ態勢が非常に弱体である、この受け入れ態勢の現在弱体な状態においてこの会社を作って、そうして政府もバック・アップして、ほんとうに正しい移民というものを推進していく責任が持てるかどうか、この点の腹がまえを一つお聞きしたい。
  64. 園田直

    園田政府委員 ただいまの質問に対しましては、具体的にお答えをした方が御納得がいくと思いますので、具体的にお答えをしたいと考えております。今質問されたうちのおもなる点は、外務省の人事その他の点を見てもというお話がございましたから、いろいろな受け入れの問題として、特に政府としてこれを今報告申し上げました線に従ってどのようにやろうとするか、その具体的な点を言えという御趣旨であると考えております。  まず人事の点につきましては、これは農林省を含めまして今日の日本外務省の人事は四分の一が他省から受け入れた人事交流をやっておりますが、今までもそうでございますが、今後は特にただいま農林省の方からは、この移民会社並びにその他の法案の成立に伴い、人事の申し入れを具体的にわれわれは受けております。これについては事務当局といろいろ相談をいたしまして、いろいろな事業計画ともにらみ合せ、農林省の方々の御意見をわれわれは受け入れたいとただいま準備中でございます。なお在外公館に専従の移民その他の専門の技術的な人員を配置したいという点につきましても、まず移民外交の点からワシントン、次には移民をやっておる各中南米諸国の在外公館に対する人事交流は、ただいまのところその時期ではございませんが、早急な時期にそういう点等も考慮いたしております。  なおまた関係各省、特に資金の面については大蔵省、それから技術面、実施面につきましては一番関係の深いのは農林省及び貿易その他資金の面が関係しますから通産省及び選考募集及び技術移民という面を、さらに具体的に小さく考えますと、一般労働者などの問題も出て参りますから、労働省との関係が出て参ります。従いまして当初この法律案を作りますに際しましては、大蔵省、外務省農林省等の間には相当大きな意見の食い違いがあったことは率直に御報告しなければならぬと考えております。しかしながら私は議会から派遣された政務次官としまして、折衝の過程においてしばしば各省との間に相当な意見の開陳がありましたが、これは職務を遂行するために所管事務を担当している各省が、おのおの非常に熱心に主張することは、これは責任を逃げるのじゃなくて、むしろ責任を買って出る段階でございますから、きわめて喜ぶべき段階であると考えていろいろ折衝を受けました。従ってそのためにこの法律案の提案が非常におくれたわけであります。その後大蔵省と外務省との間には意見がまとまり、続いて労働省、農林省等との間にも、内閣官房長官等が立ち会いまして裁定をし、本法律案を御相談願い出る段階になったわけであります。従いましてこの法律案の出された経緯においてはいろいろ意見がございましたが、終局の場合にはまず第一番にいろいろ各省の間の意見の食い違い——意見の食い違いとはなわ張り争いにあらずして、職務遂行の熱心さは、農林大臣、外務大臣及び通産大臣と各省の大臣が審議会の委員としてこれに立ち会い、それから資金面については法律案に書いてある通り、大蔵大臣と外務大臣の協議事項がございます。農林省、労働省、通産省と外務大臣との監督の権限は、先ほどから委員の方々からもしばしば御指摘があります通り、送った以上は技術面あるいは計画面について御協力を願うことは当然ではございますが、対外交的な問題でございますから、全責任は外務大臣が負うべきものであると考え、監督は外務大臣になっておりますが、その監督するまでの段階におきましては、次官申し合せ等などを作りまして、両方の意見がよく一致をして、各省の意見が通るような段階を作って、外務大臣の監督に至るように考えております。
  65. 赤路友藏

    赤路委員 今の御答弁まことにいい御答弁であったと思う。なわ張り争いはしていない、責任をおのおの負うために問題を起したのだ、こういうことであって、これは次官の答弁まことにけっこうであります。そこで私のお尋ねしたいのは、外務大臣が外交上の問題であるから監督する、このことは了解いたしでおきましょう。この附則によりますと、認可をしようとするときは、大蔵大臣に協議をしなければならないと、特に大蔵大臣だけを指摘をしておるわけであります。私の申し上げたいのは、先ほど来申し上げておりますように、少くともこの会社目的、本質、そうしたものはあくまでも農業移民であり、将来発展するであろうところの漁業移民、これに関連する事業、こうしたものを進展させていくための会社だと私はこう思う。そうなって参りますと、当然これらに対する指導なりというものが大きく浮び上ってこなければならない。これは農林大臣に一つの大きな責任がある。農林省と現在人事問題について話し合いをしておる、そこに次官もおられますが、肝心かなめのこの法律の条文の中に、最も重要な農業移民あるいは漁業移民ということが中心になっておるにもかかわらず、農林大臣に対して何ら認可の前に協議をするという事項がない。私は当然大蔵大臣同様農林大臣に事前において認可の際は協議をすべきであるとこう思うが、その点どうお考えになっておるか。これは外務省の方の意見と、次官がお見えになっておりますから、農林次官の御意見をお聞きしたい。
  66. 吉川久衛

    吉川政府委員 私も昨年中南米をつぶさに視察をいたしまして感じましたことは、向うで求めているものはほとんど農業水産移民でございました。これが向うの国に協力をするのである、こういうことで移民を送ってくれるならば、全面的に受け入れたいということを非常に熱心に求めているのを見て参りました。これはただいま御指摘通りでございまして、この点については外務省ともいろいろ話をいたして参ったのでございますが、法案の中には確かに協議に応ずるようにはなっておりませんが、今後この運営の問題について、外務省の方から十分話し合ってやりたいというお申し出がございますので、その点でその点は補われるのではないかと考えております。
  67. 中村時雄

    ○中村(時)委員 関連。吉川政務次官にお尋ねしたいのですが、この法案の内容を見ましてもたとえば渡航費貸付並びに移住者及びその団体の行う農業——団体とはこれを意味しておるのです。その経営内容なりあるいは実際に移住していった人たちほんとうの経営が、政務次官もおっしゃったように、経費が少かったり、政府間の交渉がうまくいかなかったり、そういうところに欠陥があると指摘されていらっしゃる。その内容の一番の重点農林行政の中にある。しかも農業移民として出ていく人たちは、あちらに行って農業によって生活ができることが基本なのです。その最も重点をあなたがそういうようなごまかしではぐらかしていくというふうなことになったら、大へんな問題です。今言った答弁において、あなた自身の良識に訴えて発表してごらんなさい。政治的な問題にこれを取り上げられるということは大へんなことです。さっき言ったでしょう、なわ張り争いはやらないのだ、ほんとうにみんなが意識してやっているという、そのほんとうの意識を出してごらんなさい。今いいチャンスでしょう。あなたがそのために行ったことは実際よくわかるのです。あなたの意見を出して下さい。
  68. 吉川久衛

    吉川政府委員 ただいまの問題に関しましては、農林省といたしましては異存はございませんけれども外務省の方から……。(「どっちに異存がないんだ」と呼ぶ者あり)私の異存のないというのは、御指摘の点について異存はございませんが、外務省の方から近く具体案を提起したいという申し出がございますので、私の方ではそれをお待ちして、運営の上で目的が達成されるのではないか、かように期待をいたしている次第でございます。
  69. 赤路友藏

    赤路委員 あのね次官、法案審議をしているんですよ。その点をよく考えていただかなければならぬ。この問題はまだあと質問者がおりますから、私は最後に外務次官にお伺いいたします。今までの外務委員会審議の過程における答弁の中に採算ベースという言葉がよく出ている。この会社のあり方としてはコマーシャル・ベースである、会社であるから採算がとれなければ困る、こういうようなことだと思うわけなのです。しかしながら、私たちは、これはあくまでもやはり農業移民なり漁業移民あるいはそれに関連する工業が重点だと思う。そうすると、この移民事業というものと、この会社の本質からくる採算ベースに乗らなければならぬということとは矛盾すると思う。移民事業はもうかるもんだなどということは、だれ一人として考えていないと思う。当然これは赤字の出てくるものなんです。それが移民事業なのです。それを政府がバック・アップしていくということによってこそ、ほんとうにこの会社の仕事は伸びていくと思う。単に採算ベースのみを考えてやるということになれば、およそ絵にかいたもちにしかすぎぬと私は考える。この調整をどういうふうにしておやりになるか、この点を伺います。
  70. 園田直

    園田政府委員 採算ベースと答えましたのは、一般会社の営利の点を言った意味ではございません。その前後を読んでいただけばわかりますが、この会社が、移民として国家がやるべきものを、国家の手を離れて会社が身がわりでやるからには、この会社を運行不能に陥らしめないように、その利益ということは、年々収支つぐない、この会社が赤字によって破産しないとい意味を言ったのでございます。従いまして今御指摘をされましたような、赤字が出るのが当然であって、その赤字を補償すべきであるという点は、大蔵省と十分相談いたしまして、これにつきましては具体的な方途をわれわれは持っております。
  71. 植原悦二郎

    植原委員長 お諮りいたします。ここで休憩して 午後継続したいと思いますが……。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 植原悦二郎

    植原委員長 次は淡谷悠藏君の質問でありますが、なかなかいい御質問をなさると思いますから、午後引き続いて行うことにして、暫時休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後二時三十八分開議
  73. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。淡谷悠藏君。
  74. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 さっき楠美委員から日本の開拓は、まだ神代時代だという発言がございましたが、私は神代時代どころではない、戦国時代だと思っております。と申しますのは、移民が一応国家的に推進されまして、国家的に大きな失敗をした事例として満州開拓がございます。楠美委員ども満州開拓には非常に重要なポストを占めておられました。これは神代時代以上に戦国時代だと私ども思っておりますが、一体今度の移民会社の設立と満州の開拓との間に比較検討が十分なされたか、いろいろ問題が起っておりますが、移民の失敗の原因として満州開拓に学ぶことがあったかどうか、一つお答え願いたいと思います。
  75. 園田直

    園田政府委員 今日の移民の世界の趨勢は、各国自分の国の国民を集団的に国家の意図のもとに移民せんとする方向は戦争と同時に消滅いたしまして、各個人が国境を越え、民族を越えて自分の働く場所を自由に求めて個人個人が移民をされる、その移民を親元という意味において国家が援助をし、これをお助けをするというのが、今日の移民の趨勢のように感じております。外務省といたしましては、移民を実施するに際しましては、特に満州開拓移民の失敗を繰り返してはならぬということを深く肝に銘じておりますし、また各国移民受け入れ相手国も、この点を非常に深く注意しているところでございます。従いまして具体的にはまず第一番に、国内移民の募集を終りましたあと、訓練が問題になって参ります。かつては、この訓練は主として日本政府の方針を移民に徹底せしめる、もしくは集団的な訓練をやっておりましたが、今後はこの訓練の重点は、相手国の国民の一員として移民開拓に当るだけの教養あるいは国際慣例その他機械的な面等を訓練の重点にしなければならぬと考えております。なお移民されましたあとは、政府の一括した意図のもとに、これを集団的に規制をしたり、あるいは指導したりすることは極力避けつつ、あくまで政府としては相手国移民をされた方が、相手国の国民の一員として、国家の福祉と向上に貢献されるよう、それの援助や補助をしなければならぬと考えております。
  76. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 満州の移民の失敗した原因を勘考しまして、今度の移民計画の成功を期するという政府の腹は十分わかりますが、具体的にいって、満州移民の失敗はどの点にあったとお考えになっておるか、具体的に今度の移民と対照してお答え願いたい。
  77. 園田直

    園田政府委員 満州開拓移民の第一の失敢は、日本帝国主義進出の一環として取り上げられたところにあったと考えております。
  78. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 大へん率直でありがたいのでございますが、さっきの次官の答弁についてなお一点お伺いたします。今度の日本海外移住振興株式会社を設立して、政府が直接手を染めるというと非常に誤解を招きますから、こういう会社を作って、そのうしろに政府があって援助するという意味の御答弁があったのでございますが。そういたしますと、現在のブラジルも満州と同様の移民計画であっては、向う政府自体が乗ってこない、アメリカの政府自体も承認しない、こういう心配から、政府がやるべきものをこの会社にやらせるのだ、こう理解してよろしゅうございますか。
  79. 園田直

    園田政府委員 その誤解を避けるためもございますが、政府がやるべきことをこの会社にやらせるという意味では決してございません。この会社政府の援助によって、移民された方々の援助なりあるいはその他の保障をやる、こういう意味でございます。
  80. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そうしますと、この日本海外移住振興株式会社はかつての満州における満拓と同じような性格のものと考えてよろしゅうございますか。政府の国策に基いてこの会社独自の事業を向うでやる、こう理解してよろしゅうございますか。
  81. 園田直

    園田政府委員 満拓と違いますところは、この移民会はあくまでこの会社の自主性に基いて計画を立案し、事業を実施する点であって、政府はむしろそれを規制、指導するのでなく、この会社の振興に伴い資金面あるいはその他の面において援助する、かように考えております。もっと具体的に申しますと、移民される方々の渡航の準備及びされたあとの生活の保障や営農、あるいは企業の資金のお世話、あるいは場合によっては会社みずからが事業を行いまして、移民された方々の御援助をする。政府としては、その移民された個人もしくは団体が、向う政府との間にいろいろな問題を起した場合に折衝を行なったり、あるいはその御意見に従っていろいろな施策を行うべきであると考えております。
  82. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 日本海外移住振興株式会社とアメリカの市中銀行のニユーヨーク・ナショナル・シティ、バンク・オブ・アメリカ及びチェス・マンハッタンの三行との関係を具体的にお話し願いたいのであります。
  83. 園田直

    園田政府委員 単なる貸借関係だけであって、その他の具体的関係はございません。
  84. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 外務省移民課から出された移民関係資料の中に、今言いました三行から千五百万ドル、五十四億円の移民借款成立の見込みがついたので、今国会日本海外移住振興株式会社法案を提出する、こう書いてある。こういうふうな資料を提出されましたのは、どういう必要と、関係があるのか、この点を明らかにされたい。
  85. 園田直

    園田政府委員 千五百万ドルの借款がもし成立いたさない場合におきましても、国家資金から財源を求めて、こういう会社を設立するなり、あるいは民間から資本を集めて、こういう会社を設立いたしまして、過去の移民をされた方々の欠陥を早く救済すべきであるという意図のもとに準備を整えておりましたが、幸いに千五百万ドルの借款契約成立の見通しがつきましたから、提案したのでございまして、千五百万ドルの契約が成立する見通しがついたから、それに伴つてこの会社法案を提出したわけではございません。
  86. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この借款が成立いたしますと、この日本海外移住振興株式会社がこの借款を受けるという見通しでございますか。
  87. 園田直

    園田政府委員 その通りでございます。
  88. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それでこの海外移住振興株式会社の性格がややはっきりいたしましたが、私、主として農業移民について御質問を申し上げたい。満州における移民が国策の誤まりから失敗したというような御答弁でございましたが、国策を誤まらなくとも、ブラジル移民が今相当困難している実態が、他の委員から具体的に例をあげて、外務委員会で述べられております。そうしますと、現在までのブラジル移民の失敗、現在におけるあのさまざまな苦しみというものは、一体どこに原因があると思われるか、その点を御答弁願いたい。
  89. 園田直

    園田政府委員 先般も御報告申し上げました通り、第一の理由は、政府責任において移民協定を締結して、その保障のもとに移民が今まで行われておりませんので、渡られたあと、契約やあるいはその他のいろいろな条件の差異があった場合に、これを的確に政府指摘をし、相手に改善を求めなかったこと。第二の理由は、渡航されたあとは、団体または個人、あるいはまた向うとの雇用関係においてやっておられますので、日本の国家として、物的に何らの援助の処置がなされていなかった。この二点にあると考えております。
  90. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 日本海外移住振興株式会社はそういうふうな移民の実態について何らかのはっきりした了解とまた対策を持っておるかどうか。政府が助けておられますか。
  91. 園田直

    園田政府委員 現在の移民につきましては、いろいろ御指摘も受けております。外務省自体といたしましても、在外公館または特別の調査団等を派遣いたしまして、情報の収集をいたしておりますが、今後とも各種の調査団あるいは在外公館に対する人員の付置、及び将来移民を実施する各地にこの会社の支店等も計画をいたしまして、これに対する資金の援助なり、あるいはいろいろな援助、場合によっては直接事業経営等をして、この方面の今までの欠陥を取り除くためにこの会社法律案を御相談願ったわけでございます。なおまた国家と国家の問題につきましては、将来逐次外交の好転につれて、でき得るだけ各国移民協定をしたいと考えております。
  92. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私はもう少し具体的な対策をお答え願いたいと思うのでありますが、今のブラジルその他の南米移民は、資本を投入すると、それだけで成功する性質のものであるか。今次官がお答えになりました通り、まず正規の移民契約が成り立って、外交的にこれが調整されて、初めてはっきりした成功の道につくものかどうか、その点はっきりいたしません。またさっきの御答弁では、まだ外交上の問題が残っておるように承わりましたが、外交上の問題を残したままで、このような会社を設立いたしまして、果してその外交上の折衝を進める助けになるのかどうか。その点の関係はまことにぼんやりしております。もう一点は、この会社政府とは独立いたしまして、実質的に移民政策を助ける会社であるという御答弁でありましたが、またただいまの御答弁では、何か国策を遂行する機関のような口吻が感ぜられるのでありまして、一体国策会社なのか、あるいはまた民間会社政府が自発的に援助されるのか、その性格がまた再びここにぼんやりして参りまして、その点をもっとはっきり一つ率直にお答え願いたいと思います。
  93. 園田直

    園田政府委員 現地において資金なりその他企業等の御援助をするということと、政府一つの方針のもとにこれを規制をしあるいは指導することは、別個のことであると考えております。政府の規制もしくは指導あるいは一つの国家の計画に基いて移民集団を採用しようということは断じて考えておりません。あくまでも移民の個人あるいは団体の御援助をしたいと考えております。外交と本移民会社との関係は、移民会社を設立をして外交を推進しようというのではございません。幸いに逐次戦後いろいろな国々との移民関係の外交は好転しつつございますから、それと伴いつつこの会社を設立をして、両方の関係において推進していきたいと考えております。
  94. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 国内で従来移民を世話をしておりましたさまざまな団体があるようでございますが、この資料に基きますと、目下それらとの間の関係は検討中である、研究中であるという言葉が再々見えておるのでございます。今頭をかしげておられる方がございますが、はっきり指摘いたしますとこの中に二カ所ございます。これはもう研究が済んだのかその内容がはっきりしたのか、その点のお答えが願いたい。
  95. 園田直

    園田政府委員 資料の中に記載してございます「研究」という意味はこういう意味の研究でございます。ただいま移民のいろいろな選考、募集その他のことをお世話願っておるのは、先ほど話題になりました海外協会でございますが、この海外協会の今までのあり方についていろいろ御指摘も受けております。なおまた政府から貸し出されるところの渡航費をこれに委託するということになれば法制化をしなければならぬ必要もございます。もちろんこの海外協会の法制化は今起った問題ではなくて、ずっと以前からその問題が起っておったのでございますが、受け入れ機関たるこの振興株式会社の業務内容、性格等につれて、海外協会の行うべき業務等も変更をしてきますので、そういう法制化やあるいは機構や、さらに先ほどいろいろ委員の方から御注意願いましたように、機構の強化などについて検討しておるという意味でございます。
  96. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 現地の受け入れ機関についても若干質問したいのでございますが、ここに書いてございますブラジル拓殖組合、パラグァイ拓殖組合、この二つが書いてございます。この組合は今まで移民についてどのような世話をしてきたのか。この移民に対する貸付金の世話以外に貸付をしたあとの世話をされたかどうかという点を一点お伺いをしたい。
  97. 石井喬

    石井説明員 私からお答え申し上げます。ブラジル拓殖協同組合について申し上げます。これは戦前に御承知のように、国内の移住組合連合会というものがございまして、それが現地におきましていろいろ植民地の経営をするというために作りましたのがブラジル拓殖協同組合でございます。従いましてこれはブラジルにおきまして四つの移住地を経営することを主たる目的として仕事をして参ったものでございます。それに伴いましていろいろの、たとえば製糸会社というような仕事をやって参りました。しかしこれはその後移住地の経営関係国内におきましては日南産業株式会社というものが継承することになりました。それの現地機関というような格好で現在までやっております。  それからパラグァイ拓殖協同組合でありますか、これもやはり戦前パラグァイのラ・コルメーナ移住地の経営ということをやって参りました組合でありまして、これはその後現地ができ上りまして向うの産業組合に変りまして、現在においては清算事務が残っておる組合であります。しかしこれにつきましては別途戦後におきまして、パラグァイ移民を出すことになりました関係上、別にパラグァイ拓殖組合というのが現地の法律によって設立されております。
  98. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 先ほどから各委員がついております通り、これらの現地の受入れ組合が非常に現移民の諸君に苦労をかけて、困った状態に追いやっておる。それに対して何らさまざまな障害を克服するような力をお持ちにならなかったのかどうか、この点をお伺いしたい。
  99. 石井喬

    石井説明員 戦後におきましブラジル移民が再開いたしますにつれて、ブラジルにおきましては別途松原安太郎氏が七年間四千家族という契約をとりました。そのために松原安太郎氏が日本拓殖協同組合というものを作って、これが移民の世話をいたしております。それからアマゾンにおいては御承知の辻機関がこれをやっております。従いましてお話に出たいわゆるブラ拓、それから戦前のパラ拓というものは戦後におきましては特別に取扱いをいたしておりません。ただパラ拓につきましてはただいま申し上げましたように戦後また新しいパラ拓ができまして、それが移民の世話をいたしております。
  100. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 次官から御答弁が得られませんでしたけれども、これらの現地におけるさまざまな移民政策の欠陥、これはこの会社の設立によりまして、若干の資金を投入する、それだけで一体直るものでありましょうか、それとももっと重要なものは外交上の処理でありましょうか、それをもっとはっきりしていただきたい。相並行すると言っておりますが、この会社の設立に力を入れておるところを見ると、資金措置が十分に移民の発展の上に大きな要因となるようにも考えられますが、現在のブラジル移民に多くの資金を要するという、その資金の使える場所などが、具体的にはどういうことになっておるのか、あるいはこれらの移民団体の経済的な苦況を救うというようなことになってしまって、直接移民には利益をもたらさない、こういうようなことも考えられますが、その点いかがでありましようか。
  101. 石井喬

    石井説明員 私から資金の使い方の内訳を簡単に申し上げてみたいと思います。大体法律案にありますような仕事をするわけでありますが、私どもまず考えておりますのは、現地のすでに移民されました方々、それからこれから行かれる方々の営農資金の供給ということが第一の仕事になります。その次にはいわゆるコロノ移民、雇用契約で向うに行かれる移民の方々があります。この方々は行かれました当座は実は資金の需要はないわけであります。向うのコーヒー園なり何なりに入りまして労働をされて労働賃金を得て生活されております。しかしこの方々が二、三年、あるいは五、六年たちまして、いよいよ独立されるときには、中にはもちろんその間に自分の労働その他でもって相当独立資金を得ることのできる方もあるかと思いますが、中にはそういう独立資金が十分ない方もおられる。その方々に対して独立資金を貸していく、これが第二点であります。それから、その他移民の方々の個人、あるいはその団体が、一つの事業をやろう、たとえば農産加工事業をやろうという場合には、必要なら団体に対して生産資金の貸付というようなことをいたします。それ以外にこの会社が発展して参りまして、将来向うの事業でもって、日本移民受け入れてやろう、たとえばコーヒーのプランテーションを日本人の有力な人が作ってみよう、それに日本から大いに移民を入れようという場合、必要がありますれば、そのための資金をあるいは融資を、必要があれば投資をいたすというようなことを考えております。
  102. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 今の御答弁だけではどうも納得しかねるのでございますが、この会社が万一損をした場合に、政府が無制限にその損を埋めてやろうという性格のものなのですか、あるいはまた独立自営の会社として大きな穴をあけてはいけない、こういう営利的な観点に立った会社でございますか、その点もお聞きしたいのです。
  103. 園田直

    園田政府委員 一般の営利会社ではございませんが、政府が無条件に損失を補償するという性質のものでもございません。損失につきましては渡航費が一番問題になっておりますので、天災または本人の死亡、その他やむを得ざる状態等において渡航費の回収ができない場合には、将来提案される処理立法によってこの損失を埋めたいと考えております。
  104. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 どうも答弁が食い違うのですが、さっきの御答弁では営農資金、あるいは独立農民を作るためのさまざまな資金を貸し付けるというし、次官の方では渡航費などを貸し付けるので純利潤がないと言う。そうしますと国策会社と独立の会社との中間みたいな、つまり半官半民の会社というふうにこの性質を規定してよろしいのではないかと思います。国策会社でもなし、民間会社でもなし、そのあいのこみたいな会社を何と言うのでございましょうか、質問しておきたいのですが……。
  105. 園田直

    園田政府委員 損失補償について御質問がございましたから、この会社が損をした場合に無条件に国家がこれを補償するかどうかという面についてお答えしたのがさっきの答弁てございまして、この会社が損をしたからといって政府が無制限に損失を補償するものではございません。渡航費関係についていろいろな未回収分があった場合にはこれを補償する。その他の事業については大体この会社として採算その他を考えて、会社自体で運営ができるとわれわれは想像しておるわけでございます。資金についてはとりあえず国家が一億の資金を出しておりますが、やる業務につきましては審議会、外務大臣等監督はいたしますが、国策を遂行するためにこの会社を使いたいとは考えておりません。
  106. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 政府の出す一億円の資金、それからアメリカの市中銀行からの借款は、おそらくこれには比較にならないほど大きくなるだろうと思いますが、それにいたしましても、政府が一億円の出資をする会社が、役員が三人で従業員が十人というような形でもって、果して非常に困難をきわめておるブラジル移民の問題の世話ができますか。もっと端的に言って、この会社は国策を遂行する上に、政府ブラジル移民との間に立って金の取次をする会社というふうにはっきり規定できないものでしょうか。もっと率直なことを言ってもらいたい。もしほんとうに広範なブラジル移民のために世話をするならば、三人の役員に十人の従業員を置いて、一億円の資金を背負ってやれるはずはない。非常にあいまいな点を持っておりますが、その点をもっと率直にお答えを願いたいと思います。
  107. 園田直

    園田政府委員 当初この会社の人員は、発足の際に大体四十名程度を考えておったのでございますが、予算関係上資金も一億となりましたし、あるいはそのほかいろいろ資金面のことも考えまして、発足に際してとりあえず今御報告申し上げましたようなことを考えておるわけでございます。将来この会社が発足をし、自由なる運行ができるとともに逐次これを拡大いたしまして、各移民先国等にも支店を置く程度会社を考えておるわけでございます。そういう意味から社債等の点も他の会社とは違って五倍以上の社債が発行できるという条項にしたわけでございます。
  108. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この会社は仕事をどんどん進めて参りますというと、現地において一つの独立をした移民関係の事業を営むのでございますか。それとも現在おります移民あるいはこれから出します移民の世話をするだけの会社でございますか。
  109. 矢口麓藏

    矢口政府委員 私からお答え申し上げます。この会社が直接仕事をやるのは、原則でございませんで、やむを得ないような場合にやるという意味でございます。たとえば一例をあげてみますと、ドミニカ等におきましては日本の工業技術を持ってきてほしいという要望が相当あるのであります。またパラグァイにおきましても同様な要求がございますけれども、果してそういったふうな民間の工業企業者あるいは農業企業者、主として企業者を入れての意味でありましょうが、そういう適当な人がない場合には、仕方がありませんからこの会社がかわって最初のうち道を作ってやりたいといったふうな、原則的ではありません、むしろ例外的な考えを持っておるのであります。
  110. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 例外的には事業も行う。そうしますと現地で移民の世話をし、かたがた事業をするというのでは、ますます満拓のような性格がこの会社にははっきり現われてくる。果してこれは外交上にプラスになるかマイナスになるか、この点は次官に伺いたいと思いますが、私は主として農業移民のことについてお伺いをいたしたい。一体この会社が、さっき言ったように営農資金の世話をする、あるいは雇用労働者でおった者を独立の農民にする、こういうお話がございましたが、一体どのような形をとるとブラジル移民というものは安定するのですか。雇用労働者にもたくさんある。これは日本の資本でまかなって、たとえばこの会社がやるような農場の雇用労働者にするのか、あるいはまたどの程度の規模の自作農民にするのか、そういう構想がこの会社には立っておりましょう。
  111. 石井喬

    石井説明員 私からお答え申し上げます。今一番問題になっておりますのは、自作農として現地の連邦政府の植民地に入りました移民につきまして、一番問題があるように聞いております。現地の連邦政府の植民地に入りました場合には、これの管理は全部相手国政府がみずからいたしておりますから、なかなか日本側から十分な手を伸ばすことができないわけであります。その場合におきましては、大体場所によって違いますが、三十町歩ないし五十町歩の土地をもらって生活いたしております。それから南の方のサンパウロそのほかコロノでもって入りました移民につきましては、これはいろいろ雇い主の間の契約に差がございまして、一がいには申し上げかねるのでございますが、たとえばコーヒー園でございますれば、一つの例を申し上げますと四年契約、五年契約というようなものがございます。四年契約、五年契約と申しますのは、大体コーヒーの苗を育てる契約をするわけでございまして、四年間たちますと大体苗が一人前になり多少実がとれる。しかしこの四年目の収獲というものは大してございませんために、その間の生活その他は雇い主が持つ。それから五年契約、六年契約となりますと、五年目、六年目まで育てまして、五年目、六年目の相当大きいコーヒーの収穫をごっそり自分がもらう。従いましてそこで相当収益が上りますために、それ以前の生活費は全部自分で持つというような契約であります。ただこの五年、六年の契約というようなことになりますと、その五年目、六年目に相当多額の収入を上げることができますために、それを元手にして、あえて会社から金を借りませんでも相当の自作農になれるというふうに考えられますが、独立をいたしました場合の面積ということになりますと、これまた場所によって違いまして、奥地に入りました場合には相当広い面積を持っていろいろ作らなければ間に合わない。しかし都会の付近に出て参りますれば、野菜の栽培などは五町歩もあればそれでも十分やっていけるというような形態もございますので、一がいにはなかなか申しかねると思いますが、一般的に申しまして、ブラジル国内で五十町歩程度の地主というのはまず一番下級の地主であるというふうに言われております。ただ野菜でございますとか果樹でございますとかいうことになりますと、多少また違った形態もあるようでございます。
  112. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この会社が新しく行く移民だけではなくて、既設の農家にも資金の貸付をするように見ておりますが、現在のブラジル移民の中で資金の貸付を望んでおるような農家、あるいは雇用労働者は一体どれくらいの数になっておりますか、お調べがございましたらお聞かせ願います。
  113. 石井喬

    石井説明員 移民と申しましても戦前非常に古く参りました者も移民でございまして、その中にもまだ現在十分成功いたしませんで困っておる人も相当いるように聞いております。しかし私どもは、そういう人は一応対象といたしませんで、主として戦後向うに参りました人々を対象にしてやっていきたいというふうに考えております。そういたしますと、まだ具体的な詳細な統計は私どもとっておりませんけれども、まずいわゆる自営開拓というような関係で入りました人は、そのほとんど全部がおそらく資金の供給を受けたいというふうに考えているだろうと思います。それから雇用契約で入りました人につきましては、ただいま申し上げましたような関係で、資金を需要する人としない人とあると思いますが、私どもは詳細な統計がございませんので何とも申しかねますが、まず半分くらいの人はやはり独立資金を借りて独立したいというふうに考えておるのじゃないかというふうに、きわめて大ざっぱなお答えで申しわけないのでありますけれども、統計がありませんので……。
  114. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この会社がどういう理由かしりませんが非常に設立を急がれて、法案までも準備されておるようでございますが、基礎をなす調査は非常にずさんであります。そうしてその点をつきますと国策上支障があるとか、移民に行くお嫁さんがなくなるとかいうような理由からこれをひた隠しに隠しておいて、ただ法案作成だけを急がれる気持はどうも私は納得がいかない。特に資金の貸付を要する人の基礎的な数字まで明らかにされないで会社の設立の準備をして発足をする、こういう点は普通の会社と違って、半ば国策の意味を持つ会社では許されないずさんな態度だと思う。特にこの会社はアメリカの市中銀行からの借款を受けて向うの金の融通をするようにうかがわれますが、そうしますと国内の金と外国の金とが同時にこの移民会社の手によって現地の移民に貸し付けられる、さように理解してよろしいかどうか、この点もお伺いしたい。
  115. 石井喬

    石井説明員 向うでもって使います資金は、もちろんアメリカから借り受けます千五百万ドルというものを事業資金にいたしまして、それを必要に応じて現地に送りまして、現地の通貨で貸すということになると思いますが、私どもは将来はできるだけ現地の——現地に相当成功した日本人がおりますので、そういう人々の資金も、将来日本移民の援助のために、できるだけ集めて使っていきたいというふうに考えております、
  116. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ちょっとはっきりしないのですが、外国資本と日本の資本と両方使うのですか、使わないのですか。
  117. 石井喬

    石井説明員 内地資金は、私ども向うに送ることは今のところ考えておりません。
  118. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 内地資金を送らないとすれば、貸付の金というものは渡航費用だけですか、それとも渡航費用の中にもたくさん金をつけてやろうというのですか。現地のブラジル移民ですから、向う移民に貸し付ける以上は国内の金を出すだろうと思うのですが、それではこれはただアメリカの金の取次をするだけですか、その点を一つ……。
  119. 植原悦二郎

    植原委員長 ブラジルと一口に言ってもアマゾンやサンパウロの移民状態は全く違うでしょう。それだからしてそういう点を、たとえばサンパウロにはどのくらいおって、サンパウロのおもなる者はどういう仕事をしておる、農業に従事しておる者もあるし商工に従事しておる者もある、アマゾンの移民はこうだ、松原の移民はこうだという、数をあげてその状態を御説明になれば今の淡谷悠藏君の御質問に対して大がいおわかりになるようにお答えできると思います。
  120. 石井喬

    石井説明員 それではそういう趣旨でお答え申し上げます。アマゾンにおきましては御承知のように戦前相当の数が入りましたが、一時非常にマラリアがしょうけつをきわめまして、大部分の者が南に逃げてしまったことがあります。残りました連中が戦争中に収容されまして、アカラ等に集められましたのがピメンタを栽培いたしました。戦前アマゾン一帯でジュートを栽培いたしまして、これは一時非常に成功いたしまして、ジュートの格づけ権まで日本人の手にあったのでありますが、これは遺憾ながら戦争のために取り上げられまして、そのために、ジュートにつきましては現在大きな産業にはなっておりますが、日本人としては仲買いをやっておる程度でございます。それからコショウは御承知のようにアカラに百家族足らずおりまして、これが非常な成功をいたしております。それ以外はほとんど全部が戦後参りましたいわゆる自営開拓移民でございまして、非常な上流グアポレあたりからアマゾンの河口に近いところまで三カ所、四カ所に入っております。これは自営開拓移民でございますので、原始林を焼き払いましてそれにいろいろなものを植えて生活をしておるという状況でございます。  それから南方におきましては、現在ブラジルに約四十万の在留同胞がいるということがいわれておりますが、そのほとんど全部が南部諸州、ことにサンパウロとパラナあたりに集結いたしております。これはもう歴史が非常に古くなっておりますために、主としてコーヒー園主とかその他農業関係の人が多いのでございますが、中には二世、三世が出ておりますために、いろいろな工業、商業、サービス業、各方面に進出いたしております。従いましてこういう人々の資金を将来集めていくことがぜひ必要だというふうに考えておりますが、戦後この地方に参りましたのは全部が雇用契約による労働者移民でございまして、日本人のコーヒー園あるいはブラジル人のコーヒー園というようなものに分散して入っております。その数は、大体戦後政府から渡航費貸付を受けて参りました六千名余りの人のうち、その半数以上がいわゆるコロノ契約で行った人でございまして、これがほとんど南西地帯に入っております。この人々は現在、たとえば養蚕移民でございますとか、中には紡績移民という形の変ったものも多少行っておりますが、まだ雇用契約の労働に従事いたしておりまして、ことしの終りかあるいは来年ぐらいから、だんだん独立をしていくという格好になると思います。  向うに行っております人間の状況は、大ざっぱに申しますと大体そういうことであります。
  121. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そういう人たちに資金を貸し付けるために、おそらくアメリカの市中銀行だと思うが借款をするでしょう。国内の資金はちっとも出さぬのですか。アメリカの資金だけ貸し付けるわけですか。
  122. 石井喬

    石井説明員 国内資金、つまり日本で集めた資金という意味だと思いますが、現在のところでは、当分の間は少くとも千五百万ドルを現地に送って使えばいいのではないか、それから日本国内で円を集めましても外貨事情関係で現地通貨にかえることがなかなかむずかしいのではないかと思いまして、私どもの当分の計画としては日本の円を向うに送ることは考えておりませんけれども、将来もしそういうことが可能になりました暁には、やはりそういうことも考えていいのではないかというふうに思っております。
  123. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そうしますと、結局この会社は、この資料にも書いてあります通り、アメリカ市中銀行三行が五十四億円の移民借款をやる、この借款と移民との間に立ってトンネル会社を作るというふうに結局考えてよろしいのですか。国内で集めた国内資金を出すのではないのだ、外貨事情もあるから……。しかし貸付を受けるのは現地の移民である。この借款を目当てにして日本の国策を盛ったトンネル会社的の性格のものであると考えてよろしいのですか。
  124. 石井喬

    石井説明員 先ほど政務次官からお話のございました通り、私どもは、実はアメリカ三銀行からの借款がかりに成立しなくても、将来こういうものは必ず作らなければいかぬというふうに考えておりましたので、もちろんできるだけ国内におきましても、もし集め得る余裕がありますれば金を集めまして、それを向うに参りました移民のために使わなければならぬというふうに考えておりますが、たまたまアメリカの銀行から借款ができましたために、しばらくはそれにたよろうということでございます。それと先ほど申し上げましたように、私どもはできるだけ現地において成功した日本人等から資金を集めまして、それをもこの目的のために使っていきたいというふうに考えております。
  125. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この会社の設立をするのは内地でしょうか。日本の商法に基く設立でありましょうか。それで仕事をするのはブラジル、こうなるのですか。
  126. 石井喬

    石井説明員 設立いたしますのはこの法律に基きまして、この法律に書いてないところは日本の商法によるということになっております。それが現地においてそういう仕事をするわけでありますが、ただこれは現地の事情から申しまして、果していわゆる支店という格好でできますかどうか、これは場所によりまして疑問だろうと思っております。私どもが今までいろいろ当ってみましたところによりますれば、たとえばパラグァイあるいはボリビアとかいうようなところは、支店を作りまして、事業の経営ができるのではないだろうかというふうに考えておりますが、ブラジルアルゼンチンあたりは、支店という格好ではなかなかできないのではないかというふうに考えております。従いましてそういう場合には、かつて日南産業が先ほど話に出ましたブラ拓を現地の機関として、実質的には支店の機関として働かしておりましたような形態を、この場合でもとらなければならないことがあり得るというふうに考えております。
  127. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 だんだんはっきりして参りましたが、結局そうしますと、この会社を作りまして、政府がバック・アップをして、現地で体のいい銀行みたいな会社を作って、ブラジル移民の金持の中から金を集めて、それを貧乏なブラジル移民に貸してやる、あるいはまたアメリカの市中銀行から借款を受けて、それに融資してやる、そういうふうに簡単に解釈してよろしいのですか。非常にむずかしくなっておりますが、お話の聞き方はそうなるようです。今の非常に乏しい国内の資金では、向うまで出せない外貨事情もあるようですから、結局支店なりその他の形をもって、この会社の手でそういうふうな金融的な仕事をするのだ、こう理解してよろしいのですか。
  128. 石井喬

    石井説明員 ただいのま御質問、いろいろニュアンスのある問題だと思いますが、きわめて端的に申し上げますと、そういう面が非常に多いだろうと考えます。
  129. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 大体会社というものはわかりました。一つ農林次官にお伺いしたいのですが、この移民は内地の農業のあり方とどのような関係を持ちますか。端的に言うならば、もはやこういうふうな移民をしなければ、内地の農業の構造が成り立たないようなところに追い詰められているかどうか、その点を率直にお伺いしたいと思います。
  130. 吉川久衛

    吉川政府委員 淡谷委員十分御案内の通り、私どもは農村の次三男対策として考えざるを得ないという立場に立っております。
  131. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 さっきも質問が出まして、この会社に対する農林省協力がはなはだ乏しい。私はなわ張り争いでなしに、もっと大胆率直に御協力を願いたいと思うのでありますが、その前に農業の面から見たブラジルというものは、果して日本移民に好適であるかどうか、あるいは現在の農業移民という形がそのままでよろしいかどうか、農林省の率直なる御意見を伺いたい。
  132. 吉川久衛

    吉川政府委員 こと中南米に関する限りにおきましては、向うの非常に熱心な要望は、日本農業移民であります。今日まで日本から移民した者の業績が非常に高くその真価を評価されまして、中南米の農業開発は日本移民に期待をしたい、こういうことから今日の移民が非常に要望されているのであると私は見て参りました。従って今後も今までのような棄民でなくて、優秀な素質のある者を送り出して中南米国々の産業に貢献をする、協力する、こういうことでなければ、やがてまた排斥をされる日が近づくのではないかというように考えております。
  133. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 向うで要求いたしております日本農業移民は、農業労働者としての農民でございましょうか。あるいはまた土着するような自作農を要求しておりましょうか。その点をはっきりお示しを願いたい。
  134. 吉川久衛

    吉川政府委員 ピメンタにいたしましても、ジュートにいたしましても、コーヒーの栽培あるいはカンピナスの東山農場を中心とする農業経営のやり方等を見まして、日本人の農業経営というものに向うの連中は非常に関心を持っております。私の見て参ったところでは自作農を望んでおると思います。
  135. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 現在の向う移民は、自作農と農業労働者との比率は一体どうなっておりますか。またこの農業労働者が自作農になるためには、どれくらいの土地が一体要るのですか。この構想はできておりましょうか。もうその整理がつく前にどんどん内地から押し出して行ったら、また混乱状態を呈すると思いますが、現在向うにおります移民の調査が十分行き届いておるかどうか。
  136. 吉川久衛

    吉川政府委員 農業関係の技術指導と申しますか、高い指導性を持った人人が非常に欠けているような感をいたしました。従って今後自作農となって一本立ちをしていくためには、私は指導的な技術者が必要ではないかと見て参ったのでございますが、困難を賭して、いわゆる契約移民として、農業労働者として入る者はこれは自作農となる一つの入口と申しますか、前提として一時的に契約移民をやってもらうのであって、やがては自立をして自作農となるのだ、こういう考え方でみな雇用労働に従事している現実を見て参りました。それからまたこれは所によって違いますが、都会の近辺等においては、今日まで日本から移民した農民は極端な収奪農法をやっておりました。そして奥地奥地へと原始林を開発していったのでありますが、交通等の関係でその産物の輸送に費用を要して経営が成り立たないというので、奥地へ奥地へと発展をして参りましても、これにはおのずから限界がございます。また子供の教育の問題等もございまして、結局ある限界にとどまった。中には再び最初の非常にやせ衰えた土地に逆戻りをして、最近では肥料等を使って日本に見られるような集約的な経営に変ってきているところもございます。そんな関係で経営規模はどのくらいかということは一がいには申されませんが、先ほど外務省の方からもお答えがあったと思いますが、都市の近辺では四町歩、五町歩でりっぱに成り立っておるところもございます。奥地へ参りますと、私は二十町歩か二十五町歩は少くとも要るのではないかと思います。
  137. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 さっき外務省の方からは具体的な数字についての調査はないとの御答弁でございましたが、農林省外務省答弁に依存するようではやはり具体的な数字の調査はないものと考えますが、事は海外移民でございます。ちょっと帰ろうにも太平洋を越えてこなければならないような状態です。満州ですらあの戦争の失敗のために非常にたくさんの犠牲者が出ているのであります。さっき外務次官からも懇々とお話がございましたが、日本の帝国主義的な野望をもってする移民ではない、こういうことが言われております。しかしアメリカの政府が、日本政府があまり露骨に向う移民に手出しをすることは好ましくないということをはっきり言われておるのであります。そうしますと、自作農主義をとって次三男の移住を企てましても、果して要求するような膨大な土地を向うの方で提供するかどうか、この点は一体どうなっておりましょうか、これは外務省の方にお伺いしたい。一体どれくらいの土地の見通しがあって、そういうことを申されるのか伺いたい。
  138. 石井喬

    石井説明員 土地を手に入れる見通しがあるかどうかという御質問だと思います。連邦政府の植民地につきましては、これは向う政府自分の手で作る植民地でございまして、従いましてその中で一戸にどのくらい土地をやるかということにつきましては向う政府がきめます。従いまして日本側はこれだけほしいということを申し出ることはかまわないのでありますが、なかなか実現できないと思います。それからコロノその他でもって今後独立していく人が果して土地を得ることができるかどうかという問題だと思いますが、これは私どもの考えでは幾らでもできるというふうに考えております。先ほど農林省政務次官から御説明がございましたように、たとえばコーヒーにいたしましても、当初サンパウロの州内で非常に盛んに行われておりましたものが、それが少し地方が劣えるとどんどん奥地の方に入っていく、奥地の方に幾らでも入っていけるだけの広い面積を持っているわけでございます。従いましてその奥地の方に土地を得ることも自由でございますし、あるいはすでに奥地に入りましたあと現在牧場等になっておりますようなところを手に入れまして、それに集約的な農業を行なっていくというようなこともできると思います。全般といたしまして——例をブラジルにとりますれば、その面積が大体日本の二十二倍ほどございまして、人口が現在五千万という数でございますので、土地の余裕は幾らでもあるのではないか。それから現在問題になっておりますボリビアにいたしましても、面積は大体日本の三倍でございます。その三分の一近く、例のアンデス山脈等がございますが、それにいたしましても、そこに住んでおります人口の数が三百万というようなことでございますので、土地の取得という点につきましては、私どもは現在におきましてはあまり心配していない次第でございます。
  139. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 あまり心配していないとか、土地が幾らでもできるとかいう御答弁でございますが、これは外交上はっきりした契約ができておるのですか。かつて満州の移民時代も満州に行くと土地は幾らでもある。ただ同然だ。三十年もやっていると自分のものになる。そういった宣伝につられましてたくさんの青年が行きました。最後はどうなったでしょう。それを考えました場合に、幾らでもできるとか、たくさん土地があるとかといって他人の土地を目当てにして行ったところで、非常に危ない芸当になると思いますが、何か外交的にはっきりした契約があるのかどうか、この点を伺いたいと思います。これは農民に対する宣伝とは違うのでありまして、方針を決定する国会でございますので、そんなぼうばくとした御答弁では満足できません。どういう資料に基いて、どういう契約に基いて幾らでもできるというのか、その心配は要りませんというのか、その点をお伺いしたい。
  140. 石井喬

    石井説明員 私からお答え申し上げます。先ほど政務次官からいろいろお話がございましたように、現在におきましては、まだ移民協定という格好で、はっきりできているところはございません。従いまして、協定を締結して日本人移民のために土地を得るという規定はございませんが、通商航海条約の中で現地人と、その国の人と同じような待遇を受けるという規定があるところもございます。それから技術上の問題といたしまして、従来そういうことのためにトラブルが起りました例もございますので、私どもは一応将来これは協定を締結いたします際には、当然考えなければいけませんですが、今のところはまだそこまで進んでいない段階でございます。
  141. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 まだ移民協定ができていないといたしますと、土地は幾らでもできるとか、あるいは心配は要らないというようなことは、そういう気がするというだけに考えられますが、もしそういうふうな場合に土地があるといってきた場合に、この会社は土地を買うための金を出すのですか。移民の要求があった場合には、そういうふうな向うで土地を買い入れるという金を出すのですか。その点を伺いたい。
  142. 石井喬

    石井説明員 そういうふうな農耕地を得まして、これを分譲するというような具体的な計画につきましては、私ども現在考えておりませんが、将来コロノが独立していかなければならない。そのための援助をしていかなければならないということをいろいろ考えますと、もし非常に安いしかも将来性がある土地があるというようなことがはっきりいたしました場合、しかもその土地を手に入れて経営しようという人がほかにないというようなことがありました場合には、会社がやった方がいいということになりますれば、会社がやることもあり得るというふうに考えております。
  143. 植原悦二郎

    植原委員長 外務大臣は、今御出席になりましたが、約一時間ぐらいしかここにおいでになれませんから、もし外務大臣に対する質問があるなら、その質問をどうか先にして下さい。そうして事務的の質問あとに残していただきたいと思います。
  144. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 わかりました。さっそく外務大臣にお尋ねいたしますが、さっきからいろいろ日本海外移住振興株式会社法案審議を行っておるのですが、伺ってみますと、まだ移民協定ができていない。移民協定ができていない前にこういうような会社ができて、移民地で資金を集め、移民地でその金を貸すような方法がなされるということである。あるいは今の答弁にもあったように、売地が出ましたら次第によっては、この会社が土地を買ってもよろしい、こういうふうな線まで今打ち出されております。これはしかし現在のように協定ができないような状態のままで、そこまでこの会社が深入りをしても危険がないかどうか、外務大臣からはっきりお伺いしたいと思います。
  145. 重光葵

    重光国務大臣 私は今移民協定がなくても大よその見込みは立っておるわけでございますし、また従来も移民協定を作ることを先にやらずして移民はできておったわけでございます。そこでこれは移民協定なくしてもこの会社がさような事業に携わるということを、今きめても差しつかえないと考えます。
  146. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 移民協定ができなければ移民ができないというのじゃないのです。私は移民協定ができないままにこういう会社を作って、この会社がどんどんというわけにはいきますまいが、売地が出たら買ってやる、あるいはまたブラジル移民が若干の金を作って土地を買おうとする場合にこの援助をする、こういって土地をどんどん金で買っていく、その場合に非常にあいまいな協定あるいは協定なしにやって、かつて満州で失敗したような失敗をまたしてもやるのではないか、この点を心配するのであります。たとえば一例を申し上げましたならば、そうして買った土地の所有権は一体どうなるのか。あるいは向うでできます農民の土地に対する権利はどう行われておるのか、その点は移民協定なしにはいかように理解してよろしゅうございますか。
  147. 重光葵

    重光国務大臣 その土地を買うということは今日の場合でなくて将来買おう、こういうわけでございますから、それで差しつかえないと思いますが、前からの議論の御趣旨がよくわかりませんから……。
  148. 中村時雄

    ○中村(時)委員 関連して。今外務大臣は不意にいらっしゃって今までの経過がわかっていらっしゃらないと思うのですが、今まですでに農林省政務次官の発表にもありましたように、自作農を非常に期待しておるということが骨子になっておる。そういたしますと、この会社ができ上った場合に、たとえば土地を買おうかどうかという問題がすぐに起ってくるわけです。なぜならば、この中に「その団体の行う農業」とある。土地購入ということも当然考えられる。にもかかわらず現実に土地購入というものは行われておる。それに対するところの耕作権確立の方針なりそういうものが政府政府協定なくして行われるかどうか、事実それが行われないとすれば松原移民のように、政府の力が弱くなっていく、あるいは向うの大統領が死んでしまって根本的にひっくり返ってしまった、こういうような状態が幾らでも起ってくる。そこで協定なしには移民がそういう危険な状態に入っていかなければならぬ。その点を今淡谷委員はお尋ねしておるわけです。
  149. 重光葵

    重光国務大臣 私はこれはこの会社ができ、そういう段取りになればすぐ協定をこしらえることに着手しなければならぬと思っています。
  150. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは重光外務大臣のお考えは、政府政府協定ということをお考えになっていらっしゃるわけですか、そうなんですか。
  151. 重光葵

    重光国務大臣 そうです。
  152. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それならば、この会社一つの趣旨というものが政府政府の問題として取り上げられるということにあれば、なぜこういうようないろいろの問題を出してくるか、これは関連性があると思いますので、あとで私の時間のときに申し上げたいと思っております。
  153. 園田直

    園田政府委員 先ほどからしばしばお答え申し上げております通りに、いろいろ相手国話し合いは進めておりますが、いろいろな関係で今のところは移民協定を結ぶに至っておりません。従いまして外交の好転するにつれて将来はどこの国とも協定を結びたいと考えておりますが、協定を結んで政府政府責任を持って移民の条件等を作りました際におきましても、移民したあと、その条件を相手の国が守るかどうかということが政府の仕事でございまして、移民した人々の生活なり事業なりその他の援助は、この会社がやるわけでございます。
  154. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今大臣のおっしゃったのは、この法案が通れば直ちに協定を結びたいとこうおっしゃっておられるのです。将来どうこうと言っておるのではない。もっと具体的なのです。この法案が成立すれば直ちに協定を結びたいというならば、それに対する対案があるわけです。それなくしてただごまかしでそういうことをやっておるというのは非常に迷惑です。
  155. 園田直

    園田政府委員 ただいまでも協定を結ぶべく外交上いろいろ努力しておりますので、協定とこの会社の業務は並行して進んでいくべき問題と考えます。
  156. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 何かこの会社ができなければ移民協定ができないような御答弁に聞えますが、一体移民協定とこの会社はどういう関係があるのですか、この会社はできなくても移民協定は結べるか、この会社ができれば移民協定をやるつもりか、できなければどうするか、
  157. 園田直

    園田政府委員 その通りでございます。外相が法案が通れば協定を結ぶというのは言葉の何でありまして、会社がなければ協定を結べないという…。     〔発言する者多し〕
  158. 植原悦二郎

    植原委員長 委員長質問者と御答弁の間に誤解があると思います。なぜかなら、土地の所有権の問題はブラジルや今問題になっておるところでは問題にならない。当然日本人が所有できるのです。それのみならずコンセッションで日本人が持っておる所有権も安全だ。それがもし危険な状態になるということを仮定されて言えば、そういう場合には外務大臣の政府政府と話ができる。この会社の別問題と私は了解しておったのです。委員長はそういうふうに了解いたします。
  159. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それはあなたのおっしゃる通りなのです。ところが問題が発展してすでに問題は次に来ておるのです。この法案ができなかったならば協定ができないという政務次官の御意思と——今までの発表はそうですよ。それから今外務大臣のおっしゃるのは、これに基いて協定をやっていってその確立を願いたいとこうおっしゃっておられるのです。
  160. 園田直

    園田政府委員 私の答弁はこの会社ができなければ協定が結べないという答弁をした覚えはございませんが、もしもそれでありましたならば誤解を解いておきます。この会社法案協定とは別個の問題でございます。
  161. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そうしますと確認したいのでございますが、この会社ができてもできなくても移民協定は結べるのでございますか、それとも移民協定を結ぶ上にはどうしてもこの日本海外移住振興株式会社という会社が必要なのでございますか、その点をはっきりしていただきたい。
  162. 園田直

    園田政府委員 協定を結ぶのに移民会社を設立することが必須条件ではございません。
  163. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それならば今のこの法案を出してどうしても通過させなければならないという理由はどこにあるのですか。金もこっちから出すのじゃない、現地で集める。現地で土地の所有を許し、生活を許し、向うの市民として扱われておる日本人が、この貧弱なる会社を持っていかなければ融資できないのか、その点はどうなのですか。
  164. 園田直

    園田政府委員 この会社の設立をお願いしておるのは、協定を結ぶために必要な条件であるからお願いしておるわけではございません。今日までの移民がいろいろと苦労しておられます。その苦労しておる原因の一つは、渡られたあと日本の国家として何らの補助も援助もただいままでできておりませんから、この会社を作って早急に移民されたあと移民の方々の資金なりその他の面について援助をしたいという意味でございます。
  165. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今政務次官は名答弁をされたとお思いになったかもしれませませんが、冷静に考えてもらいたい。あなたのおっしゃるのは、この法案と今言った問題は別だとおっしゃった。ところが重光外務大臣はこの法案が通過すれば協定を結びたいとおっしゃておる。答弁の内容か違うでしょう。片一方は別のものだと言っておる。片一方はこれができればそれによって協定を結びたいと言っておる。御答弁の仕方が全然違っておる。外務大臣と二人の御答弁を願いたい。
  166. 園田直

    園田政府委員 決して名答弁のつもりではございません。私が言っておりますのは、今日移民が苦労しておられる原因が二つございます。その一つ政府政府責任ある協定によって保障されていないという点と、もう一つ移民されたあと国家として何ら物的な援助をしていないという点と、二つございます。従いまして一方はなるべく早い時期に協定を結んで、そうして政府政府との間にこれを保障する関係をつけ、一方においてはこの会社の手を通じて援助をしたい。この両者は、会社ができれば協定を結びやすいでございましゃうし、協定ができれば会社の進展にも都合がいいでございましょうし、無関係ではございませんが、その両者がお互いに必須条件だとは考えておりません。そういう意味でございます。
  167. 重光葵

    重光国務大臣 今よく伺ってみますと、今政務次官の言った通りに私も考えます。
  168. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 事は重大でございますから、私もっとはっきりお伺いしたいのですが、さっきからたびたび言っております通り、かつて満州におけるあの移民の失敗を再び繰り返したくないというのは、もう次官の答弁ではっきりしております。この会社国策会社にあらずと言っておきながら、だんだん国策会社の線がはっきりしてきているじゃないですか。この会社ができれば協定も結びやすくなる、協定ができればこの会社もできやすくなる、政府はこれに一億円の投資をしておる、日本移民政策をこれによって担当しておる、これ以上の国策全社かございますか。この会社が国策的な性格を持って現地移民の金融面の困難を打開してやるのだ、こういうふうに理解していいとすれば、これは明らかに満拓の使命と同じようなものを新しくまた持ち始めると言っても私は過言ではないと思う。一体この会社なしには金の融通ができないという原因がどこにあるのか、はっきり大臣、御答弁を願いたい。この会社を作らなければどうしても現地の移民が金の融通ができないのだ、この会社がそんなに移民に十分資金を融通する余裕のないことは、先ほどの御答弁で明らかであります。これができましても、結局はアメリカの市中銀行の借款を得、あるいはまた現地の移民の豊かなるものから金を融通するのだということになれば、現地の金融機関をたよらないで、どうしても国内におけるこういう会社の設立を見なければならないという必要が一体どこにあるのか、その点も御答弁を願いたい。
  169. 園田直

    園田政府委員 満州開拓団の失敗を繰り返すなということは、具体的に言うと、国家の基本方針によって移民を訓練し、移民団体を国家の方針によって規制をし、移民したあとまで国家の何らかの意図によって動かしたことが、私は満州開拓団の失敗した基本的な原因であると考えております。なおまた今後の移民につきましても、移民協定なりあるいは移民について障害があるとすれば、そのような疑いを受けることが移民を阻止する最大の原因であると考えております。従いまして今日政府におきましては、断じて移民されたあとの諸団体を規制をし、あるいは指導をし、あるいは何らかの国家の意図によってこれを動かすことは考えておりません。しかし少くとも日本の国民であった方が、向うへ出ていって新たなる天地に働く場所を求められた場合においては、国家として、一人前の生活の基礎なり産業の基礎を築かれるまでは、国家で援助する責任と義務があると考えます。その責任と義務を遂行したいと考えているのがこの会社でございまして、この会社を使って国家の意図なりあるいは何らかの具体的統轄規制をしたいとは考えておりません。
  170. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 今の御答弁ははなはだ納得できない。満州の移民の失敗は、国家が国家の政策を行おうと思ったから失敗したのではなくて、国家の移民政策が誤まっていたから失敗したのです。少くとも国家が必要に応じて移民する以上は、これははっきり正しい移民政策をとらなければならぬ、正しい移民政策をとるならばこ国家がこれを援助し、またその移民政策によって誤まらないようにするということは当りまえの話です。その点私はこの移民政策の樹立については決して反対をいたしませんし、むしろ推進をしたいのです。ただそれを何かあいまいに、この日本海外移住振興株式会社なんというものの陰に隠れて、遠慮しがちに移民政策を行うような形が私はいけないと思う。それをはっきり国策会社なら国策と打ち出してもかまわない。国策に誤まりがなければ、国策の遂行を移民は何ら阻害いたしません。その点は一体どうなのです。それともまた、今次官の御答弁のように、国の政策はあるのだけれども、一切はこの会社にまかして、一億円は投資するけれども、これは野放しにして、この会社のするままにまかしておくというのか、その点をはっきりしてもらいたい。
  171. 園田直

    園田政府委員 一億円は投資をするが野放しにするという意味ではありません。法律の各個条にあります通り、おのおの資金面については大蔵大臣と協議し、計画その他の監督については外務大臣が責任を持ってやることになっております。ただ私が申し上げましたのは、移民されたあと移民のいろいろなことについて政府は干渉をしない、援助だけをする、こういうことでございます。
  172. 赤路友藏

    赤路委員 関連して。今の次官の答弁はけさほどの話とちょっと違うのではないかと思う。移民に対しては国が責任と義務とを負わなければならぬということであったと思う。ところが資料をいただきましたが、私がけさほどからやかましく言いますように、この資料のどこにも最後の点はないのです。今次官のおっしゃったことは、これは移民対策としては一番重大な点だと思う。この点がぼけてしまうと、これは何にもならぬと思う。そのことはけさほどから各委員から現地の実情等が話されておる。この中には移民の募集であるとか、選考であるとか、あるいは訓練であるとか国内的な対策、そうしたものは全部明細に載せられておる。ところが現地で、行った移民に対する指導なり世話なりをどうしてするかということは一項も載っていませんよ。だから今の次官の御答弁は、今までのことと関連して聞いてみますと、ただ移民をした人に対して金融の道をつける、それでポンとあとは切れておる。それから先をどうするかということは一つもない。そこが一番重大な問題だと私は思う。この点は一体どうお考えになるか。
  173. 園田直

    園田政府委員 移民されたあと移民された人々が相手の国の政府の方針なり、あるいは行政の方針に従って自分の生活を開拓をされる、その生活を開拓されるについてわれわれはこれを援助するのが仕事であって、これを指導したり統制をしたりすることは控えなければならぬと私は考えております。
  174. 赤路友藏

    赤路委員 それは少しおかしいと思う。私は、統制とかなんとかいう言葉を使うこと自体がおかしいと思う。もう外務委員会でも問題になったように、移民であって棄民ではないのだ。移民であって、あなたがおっしゃるように国が責任を持ってこれらのめんどうを見るということなれば、統制とかなんとかいうことでなしに、金を貸しっ放しでなしに、少くともそのあとのめんどうまでは会社が当然見てやるべきじゃないか。会社が見ないとするなれば、私はこの会社を作る意味がないと思うのです。そこを私は問題にしている。その点がここではぼけておるから、一体どういう意図なのだ、そういうことなんです。
  175. 園田直

    園田政府委員 渡られたあとの資金の面なりその他の面について援助をし責任を持つのは、当然この会社の仕事であり、またこれはひいては政府責任であることは当然でございます。ただわれわれとして考えなければならぬことは、そのいろいろなものについて指導したり、こちらが干渉することになることは避けなければならぬということを申し上げておるのでございます。
  176. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 他の委員の質問もございますから私は意見は控えますけれども、御答弁をいろいろ聞いておりますと、まだ日本海外移住振興株式会社なるものの性格は、はっきり了解するまでに至っておりません。特に今の次官の答弁におきまして、援助はするが指導はしない、つまり行くまでの金は貸してやるが、あとは野放しにしておくのだ、こういうふうに理解せざるを得ない。その場合に援助という形で金を貸しただけで済むと思われるかどうか、その点だけをはっきりしておきたい。どうでもこの会社をこしらえておいて、たくさん金を集めて、欲するままに金を出して、あと向う政府にまかしておく、こんな形で援助と言えるかどうか。これははっきり次官の見解を聞いておきたい。
  177. 園田直

    園田政府委員 渡航費及び向うに行かれた資金を貸し付けただけで責任が果せるとは考えておりません。その後いろいろ起るべき問題につきましては、相手責任者とそれぞれ折衝をして、いろいろな打開をしたり、あるいはその他の面で援助をすることは当然であると考えております。
  178. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 最後に一点だけ伺っておきます。今までの御答弁はもう完全に政府会社の重役みたいな御答弁であったのです、ほんとうの話……。この会社政府を離れたものだと言っておる。国策会社ではないと言っておる。ところがどこにその重役がいるのか設立の発起人がいるのかわからない法案を出して、答弁を聞いていると、政府が全部会社の重役みたいな答弁をされます。これで国策会社でないと言えるか。国策会社でなければそれでよろしいので、その関係はどうなのですか。政府日本海外移住振興株式会社関係はどうなのですか。一億円という投資をして大株主の資格でさまざまの御答弁があったのか、あるいはまた政府がこの会社を一体援助したのか、その点を一つ聞いて私は質問を終ります。
  179. 園田直

    園田政府委員 設立発起人その他は今後できますので、会社法案審議をお願いするに際して、この会社はどのように運営をされるかという点について、政府として意向を御報告申し上げただけでございます。
  180. 植原悦二郎

    植原委員長 中村時雄君。
  181. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私はこの法案に入る前に二、三概念的にこの移民の問題を取り上げてお尋ねをしておきたいと思います。
  182. 植原悦二郎

    植原委員長 中村君に申し上げますが、外務大臣に御質問がなければ、外務大臣は時間が迫っておりますから、御退場願ってよろしいですか。あと政務次官がおりますが、事務上のことは……。それでもし外務大臣に御質問があるなら、この際にしていただければ大へん都合がいいと思います。
  183. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それがあったからこそ、余分のものを二、三概念的に打ち出しております。御忠告ありがとうございますが、よく注意をしながらやっております。  そこで政府は、大臣を初め移民の重要性を認識して、常にうまくやっているという宣伝を行なっているのでありますが、その実績を見てみますと、昭和二十七年、二十八年、二十九年、この三カ年における総計は八百六十三家族、人員にいたして五千三百四名となっております、私が昔移民送出されましたときには、ちょうど昭和八年であったのですが、二万三千人の者が出ております。戦後いろいろな国内的なあるいは対外的な変化があって、種々困難な点があったと思いますが、私は最も大きな問題は、国内におけるところの政府部内において、各省がなわ張り争いをやったがために、そのために移民送出というものが非常に外交的におくれておったと思うのであります。この点に対して大臣はどういうお考えを持っていらっしゃいますか。
  184. 重光葵

    重光国務大臣 過去において移民事業がはなはだ思う通りにいかなかったことは私事実と思います。各省関係もあったでございましょう。何とかして移民受け入れ態勢を現地において筋道をつけていって、よく移民のできるようにしていきたいと思うのがわれわれの考え方でございます。そこでこの移民をどうやって向うによくありつけようかということにつきましては、なかなか金もないのでございますので、今回のような移民借款のような機会にかような会社を作って十分世話をするようにいたしたい、こういうのがわれらの基本的の考え方でございます。
  185. 中村時雄

    ○中村(時)委員 まことにわかったようなわからぬような御答弁で、考えることは幾らでも考えられる、政務次官は非常に熱心の余りこういうふうになっているのだとおっしゃっているのです。移民というものは何も旅行者でもありません。また向うに居住している者でもないのであるから、他国へ渡って、相手の生活の中に溶け込んでいって生活しなければならぬという義務を持っておる。ただ政策の上でこうしたい、ああしたいという観念的なものでない。やっている者は現実的に苦しい思いをしている。そこでこの現実の問題がどういうように現われたかということを具体的に申しますと、アマゾンを一つの例にとってみましょう。今までやっておる移民のうちで、アマゾンは七〇%以上を占めておるから私は言うのです。そこでアマゾンに対しまして、当時の外務省資料に基いた計画を見てみますと、二十六年から五カ年間に五千家族を送出したいと計画していた。ところが二十七年、二十八年と合せまして五百二十家族、二十九年はまだ発表されておりませんが、そういたしますと、その数の違い、あるいはまたそれに伴うところの、何ゆえそういう欠陥が出たか、二十九年度はどういうことになっているのか、そういう点をお尋ねしたい。
  186. 石井喬

    石井説明員 アマゾン移民につきまして、辻氏が五千家族のコンセッションをとっておることは御承知通りでありますが、それが思うように遂行できなかった原因ということになりますと、私どもは、まず第一に渡航費が足りなかったという点にあると思います。アマゾンに参ります自営開拓移民は、全部政府から渡航費貸付を受けて参りました移民でございますために、渡航費貸付を行い得ません限り出ることができなかったわけでございます。
  187. 中村時雄

    ○中村(時)委員 よくわからなかったからもう一度言って下さい。
  188. 石井喬

    石井説明員 アマゾンに辻移民の割当通りに人が出なかった一番大きな原因は、渡航費がなかったということであります。
  189. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そこで外務大臣にお尋ねしたいのですが、問題の重点渡航費ということになっております。そういたしますと、外務大臣は、常日ごろ移民に対しては非常に熱意を持っておる、あらゆる角度から私たちは研究しているとおっしゃる。現実渡航費、というよりは予算の上を見ますと、わずか五億円、日本国内産業はある程度発展して来て戦前に返ったと言いながら、事実こっちの実態はわずか五億円、そのうち渡航費が半分以上を占めておる。それでもって実際移民の契約なり計画なりの上においてどのようなものが考えられるか。この予算の上から一つ答弁を願いたい。
  190. 重光葵

    重光国務大臣 渡航費の点は非常に窮屈だと私も思います。そうしてこれは十分に予算措置をすることができなかったことを私は非常に遺憾としておるのでございます。一人当りの渡航費という点から割り出すことだけでなくして、御承知通り日本の船の準備が十分できない状態で、費用の点だけじゃありません。それだから、かようなことは実は一足飛びにすべてを整えるわけにいきませんから、ごく最小限度の出発点をもって満足するよりほかに道がないということで、実は予算措置などについて非常に窮屈に相なったわけで、それでもって私もやむを得ず出発をしようと、こういうことに考えてきたわけでございます。
  191. 中村時雄

    ○中村(時)委員 次の来年度予算において、あるいは補正予算の中において、外務大臣は、このような偏見のあるような予算をどのようにお考えになって、たとえば来年度においてはどの程度にお考えになっていらっしゃるか、それまで続くか続かぬか別として…。
  192. 重光葵

    重光国務大臣 本年度は、御承知通り五千五百名を出すことにようやくこぎつけたわけでございます。これでも非常に困難であります。そうしてただ満足すべき点は、前年度よりも増してやるということでございます。これは満足であることは、私は申し上げて差しつかえないと思います。それからそれを基礎にして来年度は一万何千名というところにしたい、こう思っております。思っておりますが、これは私一人の考え方で実現のできる問題でないということは御承知通りであります。私は最善を尽して順次に移民の事業を築き上げていこうと考えておるわけでございます。
  193. 中村時雄

    ○中村(時)委員 何といっても予算を伴う移民問題なのです。そこで五億円というものはこの際とるにもなかなか苦心をされた、こうおっしゃる。ところが以前からのものを考えてみたときに、戦前におきましては移民というものは政府援助です。政府の払いでやってきておるわけです。今度は貸付でやっているのです。貸付でやっている五億円ぐらいの金を云々されて、それさえとることが困難だ、むずかしいということになると、移民行政というものはてんでなっておらぬということになる。そうお思いになりませんか。私はそういうふうに、真剣に考えた場合に思うのです。それに対してのあなたの熱意を聞いているのです。
  194. 重光葵

    重光国務大臣 私もこれははなはだ貧弱だと思います。思いますが、これをすら十分にやれないということではしようがありませんから、これでもって全力を尽してやるだけのことをやってみよう、その上にさらに積み上げていこうというので、これでもって十分御援助も得て、事業をやっていきたい、こういうことがわれわれの考え方であります。
  195. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あなたと話していると、うわさでは非常に移民に関心を持たれてやっているけれども、何かぬかにくぎというのですか、どうもはっきりしないのです。そこでその問題を転じまして、先ほど政務次官は、政府政府協定に基いた交渉ができ上っていないということが第一点、向うへ行ってからの日本の国家として物的援助ができなかったということが第二点、こういうふうなお考えを持っていらっしゃるようでありましたが、私もその通りだと思う。そこでそれに対して一、二お尋ねしておきたいことは、まず第一に資金の金融面の問題であります。今のところは資金といたしましては渡航費の問題ですが、渡航費貸付資金の回収はどのようになっておりますか。
  196. 石井喬

    石井説明員 私からお答え申し上げます。渡航費はまだ現在元本を回収する時期に到達しておりません。利子だけを回収しておる時期でございますが、この回収成績は非常に悪いのでございまして、従来回収すべき額が二千一百万円でございますが、このうち返っておりますのが五十九万六千円という数字でございます。これも実はこの前中村先生から予算委員会で御質問がございました。かつて契約上、十二月末日をもって移民は利子を払えということになっておりましたので、十二月末日に洋上にありまして回収できないものにつきましては神戸でこの金を徴収していた事実がございます。それも含めましての数字であることを申し上げておきます。
  197. 中村時雄

    ○中村(時)委員 その前にだれか外務大臣に御質問があればやって下さい。これは非常に重要な問題に入ってきたので、私は深く入りますから。
  198. 足立篤郎

    ○足立委員 外務大臣にお伺いいたしますが、最近外務省から出ている話によりますと、企業移民というような言葉が非常にクローズ・アップされてきております。なお出所は私はよく知りませんが、巷間伝えられるところによりますと、何だか日本移民政策が転換したのではないかというようなことがいろいろ伝わっております。と申しますのは、たとえば人口問題の解決のために移民をはかるというのではなくて、世界の平和に寄与するために、文化交流のために移民をやるのだというふうな線に変ったかのごとき報道も伝えられておりますが、この際外務大臣に移民政策の根本的な考え方につきまして私はお伺いいたしたい。鳩山内閣として今後の移民政策をどのようにお考えになっておるか。基本的な構想と申しますか、これをまずお伺いをしたいのであります。
  199. 重光葵

    重光国務大臣 今のお話は、日本移民向うの土着移民として送り出そうとする意向であるか、それとも企業もしくは商業、通商方面に役立つ移民として送り出そうとする趣旨であるかどうかということに大体帰着するように思いますが、もしそうであるとするならば、われわれの移民政策というのは、実はその両者を含んでおるわけでございます。日本の人口問題を移民問題で直接に解決するということは、私はほとんど不可能なことだと思います。つまり日本の若干の人間を向うへ出して、それがためにその数だけ日本の人口を少くして、それで人口問題を解決する、これはたとえば日本のごく近くのところに広大な領土でもありまして、それでやるという場合がもし起るならば別としまして、今われわれのさしあたって現実の問題として考えておるのは中南米移民の場合であります。ここに持っていって日本の人口問題を解決するために、毎年百万以上ふえるこの人口問題の解決のために移民をやるということは、なかなかこれは容易なことではないと思います。しかしながら数がたとい少くても、数千であっても、またわれわれの希望しておるように数万の移民を送ることがもしできるならば、これは私は日本の人口及び経済問題に非常に寄与することだと思います。つまり直接に日本の人口問題の解決にならずとも間接には日本の人口問題に非常に寄与することだと思います。それだけ土地に土着をする移民を送り出していく、日本の人口はそれだけ少くする、これが直接の影響でありますが、それだけではなくして、向うに送り出した移民からこれに付帯する通商の問題等を考えてみますと、これは非常に大きな影響を持つものだと思います。従いましてその移民は、移民受け入れる国の状況によって、また移民の種類が必ずしも一様でないと思います。私は、移民受け入れ態勢によりましては、やはり土着をする移民を送るという、土地に移民を植え付けるということが一番いいと思います。これがまたその移民の生活の安定の上からいっても一番確かな道だと思います。しかしながら国の受け入れ態勢によっては、あるいはいろいろな手工的の職業に従事する者とか、あるいはまた工場労働者とか、あるいはまた技術労務者とかいうようなことが最も適する場合があると思います。これは勢い数は少くなると思います。しかしそういう場合においてこれもやはりけっこうなことだ、そういう事態に応じて、日本はこれに適合する移民を送り出して少しも差しつかえないと思います。そうしてそれによって直接の人口問題解決というよりも、間接に日本の経済問題の緩和に寄与することができ得るようにしむけることが非常に重要と思っておるのであります。私ども移民に対する考え方は、大体こういうことを考えておる次第であります。
  200. 足立篤郎

    ○足立委員 日本の外務大臣が移民によって人口問題を解決することは困難であるということを言い切ってしまわれることは、私は事が非常に重大じゃないかというふうに実は考えるわけなのです。もちろん今外務大臣のおっしゃった気持はよくわかります。なぜかなれば満州にあれだけ大がかりに移民をいたしましたその実績を見ても、十年かかって今日の日本の人口の自然増の二年分にも足りなかったということから考えてみて、おっしゃる通り手近なところに廊下を渡ってげたをはいて行けるような気持で行ける場所でもあれば、これは直接的に非常に効果のある人口問題解決のための移民ということになりましょう。ですから外務大臣のおっしゃることはよくわかるのですが、さりとて日本が今日人口問題で非常に困っいる、お先まっ暗です。その日本の国の外務大臣が、移民では解決できないのだと言い切ってしまわれるということは、諸外国に与える影響等も考えますと、これは事が重大じゃないかと私は思うのです。占領政治時代にはマッカーサーもあえて日本の人口問題には目をおおうていました。当時アメリカからの学者が日本国内事情を調査に来られましていろいろなレポートを書いております。しかし日本の人口問題に関する限りは翻訳を禁止しておったようであります。私は占領政治時代に国会から派遣されてアメリカへ行ってみて実は逆に驚いたのですが、ルックというアメリカの雑誌が日本は人口問題で爆発せんとしているという大きな写真入りで、図解で日本の人口問題がいかに苦しい場面に来ているかということを、大々的に取り上げているのを見まして——あの当時国内ではつめのあかほどもわれわれはそういうことを口にすることができなかった、うっかり口にすると、何だか昔の帝国主義的な考え方のような受け取られ方をしたので、みんな遠慮して口をつぐんでおった。今日誤解を受けるような出方はまずいと思いますが、しかし千五百万ドル借款できるのも結局日本の人口問題は重要だ、人口問題解決のための一助にもこの際移民はどうしても必要なのだということが、一つの基本になっているのじゃないかと私は思うのです。ですから千五百万ドル借りてこれで会社を作ってやるのだという法案をここに提出されておきながら、外務大臣が移民では解決は困難であると言い切ってしまわれることは、私は非常に危険があると思いますが、外務大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。なお私は極端に言えば、一人でも平和のうちに海外へ出て、そこへ定着してくれることは、日本の人口問題の解決にそれだけ役立つ、同時にまた向うで活動して外貨も獲得するし、いろいろな関係日本の得るところが多いと思うのであります。単に中南米だけではなくて、東南アジアその他に対しましても幅広く門戸をたたいて、平和のうちに外交交渉によって、今後の分野を開拓していくという御熱意がなければ、これは絶対に進まないと思う。それを外務大臣が移民じゃだめなのだというお気持、率直に正直におっしゃったお気持は私もよくわかりますが、それでは私は今後発展性がないと思う。やはり日本の人口問題は非常に困っているのだ、これを解決するには一人でも多く平和外交によって、移民を送り出すということをしなければならぬと思う。それに対する熱意をもっと持っていただかなければ私は解決しない、かように考えますが、御所見をお伺いいたしたいと思います。
  201. 重光葵

    重光国務大臣 私は移民によって日本の人口問題解決に貢献することはないというようなことは、一つも今言い切りもしなければ、申したことはございません。それは今の御了解が間違いでございましょう。私は移民問題について、日本移民は、百万以上毎年増加する日本の人口問題を直接に解決する政策とはならないと思います。間接に人口問題に貢献するところがきわめて多いということを申し上げておったつもりです。それだから移民には受け入れ態勢を最も重視しなければならぬ。ただこっちがどれだけ出したいからといって出していっても、なかなか、向うにはありつきはしない。それからまた日本のこの重要な人口問題はお話通り根本問題で、私は日本の国策中の国策に関係している問題だと思う。そうしてアメリカから見れば、日本が侵略政策をとったのは、人口問題が原因だということに非常に考えを及ぼして、アメリカ占領軍時代において、アメリカは日本の困難はどこにあるかということをあらゆる方面から研究をして、官民ともにこれは人口問題にあるのだという結論に達して、人口問題が日本というか、東亜の形勢を支配するものである、これは爆発性を持っている問題だということを論じたことはその通りです。私もそれはよく知っております。さような重大な人口問題であるから、日本のこの人口問題を解決するのに移民で解決するのだと日本が言いましたらどうなりますか。外国にはこれは日本は侵略に来るのだ、侵略政策すなわち移民政策だというふうにとられましょう。さようなことはよくない。そこで東南アジアでもまた豪州でもすべて、まず第一に日本政策は平和的であるということを十分に徹底せしめ、理解せしめて、その上で日本の通商を発展させ、それからまただんだん移民も行くようになるのであって、移民をまっ先に立て、この爆発性を縛っている人口問題解決のために、日本人がどんどん押しかけていくということに相なりましては、これは日本の平和外交の趣旨を徹底せしむることはできません。私はこれは非常に注意しなければならぬ点だと思います。日本人はもう平和政策なのだ、そこでその勤勉な日本人受け入れても、われわれは何にも自国のために憂うることはない、日本人は完全に同化するりっぱな移民として受け入れることができるのだという空気がだんだんできてきましたこの際に、日本はあくまでもやはりその空気に沿うた政策をとることが、日本の平和政策であり、また発展するゆえんだと私は思います。きらわれるようなことはできるだけ防いでいく。そしてさような作用は日本の人口問題を間接に私は解決することに非常に貢献するものだ、こう思っております。私は今あなたの言われた御趣旨と全く同感だと思いますが、しかし私の言ったことについて誤解を持たれては私も困りますから、これだけの御説明をいたすわけであります。
  202. 足立篤郎

    ○足立委員 私も言葉じりをとってどうこうということは考えておりませんが、先ほどの御答弁の中に移民では人口問題は解決できないのだということをやはり言い切っておられたように思います。そこで私はああいう質問をいたしたのであります。これは速記録を見ればはっきりすると思いますが、ただ私が期待しておりましたのは、重光外務大臣が外国との関係を非常に顧慮されていることは外務大臣として当然わかりますけれども、私は今日の日本の人口問題の実情からいたしますと、思い切って少くとも自由諸国に対しては日本の実情を訴えるだけの勇気を持っていただいていいのではないかと思う。そうして理解をしてくれるところから移民に対する協定などを結んで進めていく、たとえば賠償も済んでおりませんので困るのでありますが、インドネシアあたり、私去年行ってみますと、ことし総選挙があるそうでありますが、マシュミ党あたりが勝てば、軍との関係も非常にいいので日本からの移民は相当期待できる。しかも水産にしても農業にしても林業にしても、ほとんどあらゆる分野にわたってあの大きな島々が未開発だ、こういったところの開発は日本人の手によって開発してもらう以外にないのだということで、向うの為政者も相当理解があるように私ども現地で聞いて参りまして、非常に心強く思ったのでありますが、これは賠償問題等もからんでおりますから、今すぐとは言えませんけれども、しかしこういう天地は私は大きな期待が持てる、大きな天地が開かれているというふうにも感ずるわけです。そこで先ほども申し上げた通り、この際外務大臣が勇気を持たれて、この人口問題によって困っている日本の、生活程度もますます下ってこざるを得ないジリ貧の状態に追い込まれている実情を、世界に向って訴えられる勇気はないか、そこまでやっていただきたいというのが私の偽わらざるところの願いです。  なお、先ほどもほかの委員からも出ましたけれども、今回の会社法案関係いたしまして、外務省移住局をお作りになった。その人事の問題までも、先ほど話に出ておりました、また昨日ですかの新聞にも何か出ておりましたが、過去あるいは現在までの移民の実情からいたしますと、何といいましても農業移民が主体です。最近また水産関係移民も相当歓迎されておるようで、ぼつぼつ出始めておるようでありますが、そのほか外務省が新たに企業移民ということも打ち出されておる。これもある程度は必要でありましょう。しかしこれは数からいったら私は限度がある、ごく微々たるものだと考えますし、おそらく九十何パーセントは農業移民だろうと思う。この農業移民に対する取扱い方につきましては、従来外務省農林省とずいぶんごたごたを繰り返してきた。去年も農林委員会でさんざんもみまして、現在の政務次官吉川さんが先に立たれまして、農林委員会でもずいぶんやったのであります。その結果事務次官覚書というものができて、今いただいております資料にもそのことが出ているわけです。そうしてこの通り外務省農林省の間にやはり連絡がつくと思いますが、願わくはこの移住局をお作りになるのであれば、これは一元化した組織であることが一番望ましいのであります。政府部内でのなわ張り根性でがたがたしておったのでは、せっかく大切な国策がこれによって足を引っぱられ、あげ足を取られたりして、うまく進まないということになる。そうするとこれは迷惑するのは政府じゃないので、実は移民をするものが迷惑をするわけです。重大なことなんです。ですから、移住局を作られるならば、外務省に作るということはこれは筋道からいってやむを得ぬと私ども思いますけれども、作る以上は、人事の配置等についても外務大臣は思い切ってお考えになって、少くとも移住局ができれば課長の一人や二人農林省からとって、農林省と完全なる意思疎通がはかられるように、連絡も十分つくように、あらためて事務次官覚書というような、政府部内で、しゃくし定木のかみしもを着たような連絡折衝をしないでも済むようになさるべきじゃないですか。これは何かもう人事の発令もあったようでありますが、この際外務大臣のお考えをはっきり伺っておきたいのであります。
  203. 重光葵

    重光国務大臣 そのお考えは私もしごくけっこうだと思います。そうしなければならぬと思います。しかしこの委員会移住局の課長をどうする、こうするというようなことをおっしゃるのではなかろうと思います。これは当然連絡をとって、一体移民というものは日本の国で入口が余っておる、これを出したいということは日本の国で簡単にできます。しかし出したいだけじゃない、これがどうやって成功するかという、その主体はどこにあるかというと、向うに行ってりっぱにその移民が仕事にありついて、受け入れ国において成功するということが主体であります。その用意をしなければ私はいかぬと思います。そこでさような取扱いをする仕事をしなければいかぬ、これは国外に送り出して、国外でありつける仕事をしなければいかぬ、しかし国内においてどういう移民を出すかということを考える方面は、これはまた重要でありますから、これと十分連絡をとり、意思疎通をはかっていくということは当然のことであって、これが外務省だとか、どこだとかいうことは私は必要ないくらいに考えておる。それはどうしてもやらなければいかぬ、そしてまたやる意思があるわけです。人事の交流もけつこうでしょう。そういうことについてはまた十分に打ち合せをして、それがために各省には次官もおり、局長もおるのですから、十分に連絡をとってやればいい、こういうふうに私は考えております。
  204. 足立篤郎

    ○足立委員 何か誤解があるようですが、私は別に課長をどうこうせよということを申し上げておるのではない。私の申し上げている意味は、移住局を作って移民に対する国内の体制を飛躍的に強化していこうというのですが、そうすれば、この際そうしゃくし定木にかみしもを着て打ち合せをするような、政府部内で開き直って事務次官覚書というようなことでやるのではなしに、関係の深い各省からの人をどんどん送る、ちょうど経済安定本部を作ったときと同じように、もうツーツーで連絡がつくようにすべきだと思うのです。そしてこれの主管は外務大臣でけつこうです、その方が外務大臣として仕事が徹底してうまくできるし、また大きな仕事ができるのではないかというふうな感じがするものですから、私は申し上げたのです。もう人事も発令があったようですし、私は別に課長をどうこうせよということじゃないのですが、今私が申し上げたように、今まで九十何パーセント農業移民だ、その方の主管は農林省だ、これからは農林省に連絡をとってやるのだ、こう言われますが、農林省が重大な関心を持ち、また熟練した技術を持ち、人間も今まで全国に四千人も配置してきておるのですから、こういう機構と人材を動員しなければうそです。そういう意味で少くとも農林省から課長の一人や二人を移住局に送ってもちっともおかしいことはない。それを外務省が独占してしまうということは今までのなわ張り争いをなおこれからも続けるような感じがするので申し上げたわけであって、課長の人事をどうこうせよというような指図がましいことではありませんから、誤解のないように願いたいと思います。
  205. 重光葵

    重光国務大臣 今の御趣旨は私は全然御同感です。そうやらなければならぬと思います。そういう行政方面のことは、これは行政部門へおまかせになってしかるべきものだと思いますが、立法府としての御批判は、私は全くその通りだと思います。私はそうやってやりたいし、まただんだん聞いてみますと、次官通達などのごときは、実は外務省希望ではなくして、他の方面からの事務上の調整のために必要があったわけで、そうかたくとらぬでも、十分に連絡をとるように、御趣旨によって私は指令を出しますから、そういうふうに御了承願いたいと思います。
  206. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今外務大臣は、熱意は持っておるけれども、わずか五億円という話がありましたから、その分析を一、二してみたいと思います。今非常に重要な発言に入ってきたようですが、たとえば回収率が二千百万円に対してたった五十九万円、その五十九万円の回収に対して以前私が御質問をして、皆さん方にその考え方を翻していただきたいというお願いをしたことがあります。その五十九万円の中に、たとえばあなた方があっせんをしておる神戸あっ施所において、渡航する以前に天引きしている金額は入っておるかどうか。
  207. 石井喬

    石井説明員 これは入っております。
  208. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私は以前にも注意したのですが、そのように移民をされる人たちのわずかの金を先取りをしていって、利子によってこれを穴埋めしていこうというような考え方を依然として続けるつもりですか。
  209. 石井喬

    石井説明員 これは、二十七年度、二十八年度においていたしまして、二十九年におきましては一切やめました。従いまして、二十九年度におきましてはこれの収入はゼロであったわけでございます。
  210. 中村時雄

    ○中村(時)委員 その天引きでやったのはこの金額のうちの幾らですか。
  211. 石井喬

    石井説明員 ただいまはっきりした資料を持っておりませんが、私の記憶によりますれば、五十九万円のうち現地から参りましたのは十二、三万円だったと思っております。
  212. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、ほとんど回収はできていないといっていい程度だと思うのです。なぜそういうことができていないかというと、現地がそれほど苦しいということを意味している。あなた方が内部機構の問題やいろいろなことで騒いでいるうちに、現地はこれほど苦しい実態に追い込まれているのです。その一つの問題を取り上げてみましょうか。たとえば五億円と先ほどおっしゃいましたけれども、その五億円は貸付資金の一戸当りにしまして一体幾らになっておるか。営農資金として持っていける金が幾らになりますか。
  213. 石井喬

    石井説明員 五億円と申しましたのは、おそらく渡航費だと思います。渡航費は従前におきましては大体一人当り十万円とごらん下さればけっこうでございまして、一家族当り大体五十万円でございましたが、今年度から一割値下げをいたしまして、多少それを下回っております。
  214. 中村時雄

    ○中村(時)委員 その渡航費を引いて現実向うへ持っていって使える金は幾らあるのですか。
  215. 石井喬

    石井説明員 ただいま外貨の関係で認められておりますのは、一家族当り二十万円、これを外貨にかえて営農資金として、あるいは生活資金として現地に持って参ります。
  216. 植原悦二郎

    植原委員長 中村さん、外務大臣はもう時間ですから、外務大臣に聞いていただくこともいいことですけれども、外務大臣の質問が終ったら、外務大臣はお帰りになって……。
  217. 中村時雄

    ○中村(時)委員 大事なことです。外務大臣はこういうことを知らぬのです。よく頭の中に入れておいてもらって、予算のときにはうんとがんばってもらわなければいかぬ。そこで、大体私の調べた中においては、一家族五人としまして一人当り七千五百円なんです。向うへ持っていけるのは、営農資金として使っているのは……。そういたしますと、大体において日本において開拓農民が一人当り百万円です。一戸の人間が営農するのに百万円です。しかも向うの大規模の土地農業をやっていくのに、その一戸当りの比率がこれだけ違っておる。一方ではせいぜい一万円前後だ。一方は百万円です。それですらなかなか内地においてはできない実情なのです。だから、百分の一くらいしか持っていなくて向うへ行ったら、資金が足りないというのは当然のことなのです。だから五億円くらいをもって、私はまことにりっぱな移民政策の行政に対して熱意を持っています、それですらなかなか困難ですという言いわけはつかぬと思う。これに対して重光外務大臣はどういうお考えを持っておりますか。
  218. 重光葵

    重光国務大臣 そうでありますから、移民借款も歓迎しなければならぬ状態であります。来年度以降においてはさらにそれをもとにして先に進んでいこう、いわばもとがなかったわけですから、それを作って先に進んでいきたい。それについては、私はたびたび申し上げましたが、十分皆さん方の御協力を得たい、こうお願いをしておるわけでございます。
  219. 中村時雄

    ○中村(時)委員 借款の話が出ましたが、それではその借款の問題に関しまして、一応現在ブラジルにおきましてはドル換算をやっております。しかもインフレ傾向は非常に強い。そういう中においてこの借款の問題を取り上げた場合には、一体その基本になっていく現在の為替レートを幾らに踏んで考えてやっていらっしゃるか。
  220. 石井喬

    石井説明員 現在公定レートをもって換算いたしております。
  221. 中村時雄

    ○中村(時)委員 ところが実際にブラジルにおきましては非常にインフレの強いときなのです。たとえば二十七年において一ドルが二十八クルゼイロ、二十八年は四十二クロゼイロ、二十九年は九十クルゼイロ、このようなインフレの傾向が非常に強い中において、片方だけ資産を固定しておいて、これに対処するお考え方はどういうふうな方法をもってお考えになっていらっしゃるか。これは大臣にお尋ねします。
  222. 石井喬

    石井説明員 私でよろしゅうございましょうか——まことに何でございますが、ただいま御指摘のようにブラジルその他中南米におきましては、大体慢性的にインフレ傾向にあることは御指摘通りでございます。これは為替の差損が出て参るのでございます。これをどういうふうにするかということにつきましては、なお大蔵省と折衝中でございます。
  223. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私はその方はあとでよく御研究を願いたいと思います。私はあなたに対する質問は——事務当局とよくやっていきたいと思っております。あなたと抽象的なことをやっていく時間は非常にもったいないと思いますから、どうぞ……。今の御答弁に対して私ははなはだ遺憾に思う。あなたは今インフレ的傾向がこういうふうになっておるから目下大蔵省と話し合いをしております、こういうふうにおっしゃいました。このインフレ傾向は今言ったように二十七年から起っておるのです。それを今ごろになって話し合いをいたしますという答弁がのうのうと言えるかどうかということをよく考えてもらいたい。今まで何もやっていなかったのです。
  224. 石井喬

    石井説明員 これは会社が発足いたしまして、会社で金を使う、従いまして回収の問題が起って参りますので、研究しなければならない問題でございます。大蔵省と種々話し合いをいたしておるのでございますが、結局において会社の損になるか、あるいは政府がそのしりを見てやるかという問題に帰着すると思うのであります。その点のあれがまだ大蔵省と話し合いがついていないという意味でございます。
  225. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それじゃもう一点お尋ねしますが、今までやっておったのは、連合会に金を貸して、そうしてその回収の依頼を向うにしておったはずなのです。その回収の依頼に対する向う機関向うの法的根拠との関連性はどういうふうになっておりますか。
  226. 石井喬

    石井説明員 従来の契約におきましては、この渡航費貸付の回収につきまして、ただ単に連合会から現地の受け入れ機関に対しましてその回収を委託しているだけでございます。従いまして現地の受け入れ機関移民からこれを回収して連合会に支払う義務があるわけでございますが、その移民連合会との契約というものが現地の法律によりましては法的な裏づけを持っておりませんから、現状におきましては、移民が持ってきた金を集める、あるいはせいぜい移民に対して返すことを要請するという程度のことしかできていないのが現状でございます。
  227. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今言ったように法的の裏づけもなければ協定もないということがそこに現われてきたわけです。こういう実情で実際に移民行政をやっていこうといったって当初から無理なのです。しかもそういう政府協定すらできていないときにこれをやってみて、この会社をかりに作ったといたしましても、やはり依然として法的根拠のないこの方法が打ち出されてくるわけだと私は思うのです。これに対して政務次官どうお考えですか。
  228. 園田直

    園田政府委員 ただいま許されておりますのは自由相場で送金が許されております。ただ換算率の差が問題になって参りますから、その点についてはさらに研究いたしたいと思います。
  229. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そういうばく然たるお答えだったら、私はもっとお話を願いたい。ということはたとえばそれでは今まで個人が、辻でもよろしい松原でもよろしい、個人が向う政府協定をして、そうして話し合いをつけて移民送出をやったわけです。それに対するブラジル政府受け入れ、あるいはそれに対する援助、あるいはそれに対する具体的な内容というものがあるかということをお尋ねします。
  230. 園田直

    園田政府委員 御指摘通りでありまして、将来早急に移民協定をやるように努力をしたいと考えております。
  231. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今言ったように向うに法的の裏づけもない。こういうふうに何もできていないときにこの会社法をかりに可決いたしましても、結果は同じような状態が起ってくる。受け入れにいたしましても送出にいたしましても、それは政府としての今までのしきたりが、たとえばオランダやイタリアのようにほんとう協定ができていないために宙に浮いたような格好になってしまう。それが常に不安と動揺を来たしているのです。それはあなたも御存じのように、ヴァルガスが死んでしまったら松原さんがたちまち困ってしまった、そして引き揚げなければならぬという状態になっておる。これは一つの例ですが、個人と個人が結びつくからこういうことになる。裏づけがちっともないのです。だからそれに対してあなた方がもしもどうしてもこれを裏づけしてやっていこうとおっしゃるならば、政府のそういう法的根拠に基いた打ち出しがなければならぬ。あなたはそれをどういうふうにお考えになりますか。
  232. 園田直

    園田政府委員 御指摘通りでございまして、法的裏づけがないわけでございます。しかしただいまのところは移民協定を結ぶ段階には至りませんが、相手国と始終打ち合せをやって、なるべくそういうような矛盾や条件の違いを是正するように折衡をいたしております。しかし法的の裏づけにつきましては早急に協定を結びたいと考えております。
  233. 中村時雄

    ○中村(時)委員 ほんとうを言えば、私は協定ができてからこういうものができ上るのが本筋だと思っているのです。しかし反対にこれができてから協定をやりたいという重光先生の御意見もあったようですけれども、それは考え方の相違でありますからここで深く問題にいたしません。次いでこの法文の中に入っていきたいと思うのです。この法文をよく読んでみますと、まず第一条のうちの、二行目でございますが、「渡航費貸付並びに移住者及びその団体の行う農業、漁業、工業」この団体の行う農業の範囲をどういうふうに限定されておりますか。
  234. 矢口麓藏

    矢口政府委員 農業の範囲と申しますと、第一には開拓移民に対する援助であります。具体的に申し上げますと、たとえば脱穀機がほしいとかあるいは向うでトラックがほしいとか、そういう面で非常に困っておりますので、そういうものに対する融資をいたしたい。それからコロノ等に対する雇用労働者が独立いたしますときの資金を貸し出したい、こう考えております。
  235. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それが非常に重点のように聞えますが、その「漁業、工業その他の事業に必要な資金の貸付を行うほか、必要に応じ、移住者を受け入れる事業に対する資金の貸付及び投資並びにその事業の経営を行うことを目的とする」この目的ですが、非常に広範な内容を含んでいるわけです。ここを読んでみますと、字で書いてみれば簡単ですが、この内容というものは大へん広範なものです。あなた方は今の資金でこれだけの内容が一分完備できると思っておりますか。
  236. 矢口麓藏

    矢口政府委員 千五百万ドルと申しますけれども、毎年割当は御承知通り三百万ドルでございます。約十億ちょっとばかりでございますから、これを一挙にやるということは非常に困難なことでありまして、さればこそ人員も整理いたしまして初めは手がたくやっていく。そういたしまして成功いたしますれば、先ほどもほかの委員から御指摘もございましたが、現地の資本も集まってくるのじゃないか。またこの成績いかんによりましては、米銀の借款も拡大し得る可能性もあるのでありまして、まず初めは手がたくやって、それが成功いたしますと、おのずと情勢が有利に展開してくるのじゃないか、そういう工合に持っていきたいと思っております。
  237. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あなたのおっしゃるのはまことにけっこうな話です。ところが私が今まで何のために概念的な問題を投げかけたかといったら、今言ったように利子の回収さえできにくいという現状なのです、しかも十億円貸すといったら、その中には旅費を含んでいるはずです。
  238. 矢口麓藏

    矢口政府委員 いや……。
  239. 中村時雄

    ○中村(時)委員 含んでいないのですか、事業資金だけですか。それではその事業資金についてお尋ねいたしますが、事業資金ということになると、ある種の営利ということが問題になる。そうでしょう。すなわちアメリカの三銀行から借款をするにいたしましても、当然これはある程度の利潤があるという見解があってこそ金を貸すのです。損をして使い込まれるのに何で金を貸しますか、貸す理由がない。そうしますと、それに基いた営利ということになりますと、今言ったように農業移民の完全な考え方としてはマイナスを起している。実際には利子の回収さえできない経営状態なのです。それに持っていって投資をして果して——あなた方はある程度の利潤が浮き上るような考えを持ってこの会社を作っていらっしゃるのかどうか。
  240. 矢口麓藏

    矢口政府委員 その点で苦悩しているのでございまして、御承知通り一つの営利的な採算ベースに乗っかってやっておりますけれども、もちろんこれは移民を推進するのが最大眼目でございます。右の端は営利、左の端は移民を推進するといったようなむずかしい二つの線路にはさまれているのでございます。考えておりますのは、具体的に申し上げさせていただきますと、開拓移民等につきましては、個々の開拓移民に貸し出すよりも、御承知通り協同組合をおのおのの入植地においては作っておりますから、協同組合を相手といたしまして、そして何がしかの担保、たとえば場合によりましては青田貸しになるかもしれません、あるいは持ち込み担保と申しますか、トラックとか脱穀機とかいうようなものが担保になるかもしれません。そういうものを担保にして貸し出す、少くとも損はしないようなところでやりたい。利ざやはこの法案にもございます通り四分で計算しております。一応のアメリカ側の了解を得てございますから四分にしてございますが、ブラジルにおきましては一割以上の利率でございますので、その間にまあ幾らで貸すかは別といたしまして、相当の利ざやがございますので、この利ざやでもって現地の経費をまかなっていきたい、何とかして貸倒れのないような線でいきたい、こういう工合にもくろんでいるのであります。
  241. 中村時雄

    ○中村(時)委員 どうもあなたのおっしゃることは抽象的で、納得がいかない。というのは、農業移民が九九%で、それが中心になっている。その農業移民の実態は、今あなたの言った通りです。あなた方はそれを肯定した。にもかかわらず片一方においてはある程度の企業形態で取り上げていきたい、片一方ではある程度の損失がある、ある程度じゃない、そのうちの九九%までは農業移民なのです。そういう考え方を持ってこの会社の設立ができますかということを聞いているのです。  それからちょっとお伺いしたいのですが、今度移民の入植せられる地区はどこだったですか。
  242. 矢口麓藏

    矢口政府委員 最初に地区の問題を申し上げますと、今入ろうとしておりますところはパラグァイでございます。ちょっと脱線するかもしれませんけれども、しばしばアマゾンでは事件がございますし、本年度はアマゾンから重点を少しはずしまして、幸いにほかにパラグァイとかドミニカとかあるいはボリビア等喜んで入れてくれる国がございますものですから、そういう方面に主として出す考えでございます。  それから目論見書案というものがございますが、これでおわかりになります通り、今の計画といたしましては全資金のうちの大体二五%くらいまでは農業、漁業以外のものに充てたいくらいの計算でこれを出しているのであります。
  243. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今政府委員のおっしゃった、たとえばドミニカの問題一つを取り上げましても、向う受け入れる組合を作らせてはおりますけれども、ほとんどあそこは農業移民というものは在来なかった、私はそう記憶しております。行っている人は、ほとんど商売人です。もしそういう商売人の方が農業移民受け入れ態勢を作ったといたしましても、これは人を悪くいったら困りますけれども、おそらくそれに対するところの搾取よりほかにないと思う。事実その土地における農業の実態もわからなければ、あるいは土地の肥沃度もわからなければ、あるいは転換されていくところの新しい農業形態もわからなければ、そういう方々によって受け入れ態勢を作ってそれに責任を持たしても何ができるか、私は真剣にそう考えてみたい。これに対してどうお考えになりますか。
  244. 矢口麓藏

    矢口政府委員 ドミニカのことを申し上げさせていただきます。ドミニカは、ちょうど去年の九月ごろから急激に登場して参りましたので、現在は公使館員以外には日本人は一人もおりません。農業移民もおりませんし、工業をやっておる者も、商業者も一人もおりせん。全部今度新たに日本人を送り出すのでございます。それで近く農林省外務省で調査する一つのグループをこしらえまして、来月中に立地条件その他をよく調べまして、できるだけ間違いないようにして、今度こそはいい意味の移民政策をやりたい、こう考えております。
  245. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今度こそというのは、今までが悪かったということです。  次に問題になってくるのは、今申しました配分の状況です。たとえば農業に対しては幾らになっているか、漁業に対しては幾らになっているか、工業に対しては幾らになっているか、その内容を明確にお示しを願います。
  246. 石井喬

    石井説明員 ただいまのお尋ねは、第一年度におきまして三億四千五百万円割り当てるうちの、農業と水産の割合という意味でございますか。
  247. 中村時雄

    ○中村(時)委員 この法文の第一条にちゃんと出ているでしょう。「渡航費貸付並びに移住者及びその団体の行う農業、漁業、工業その他の事業に必要な資金の貸付を行う」ずっと出ている。間口を広げているじゃないかと言ったら、実際には農業以外のところに持ってきて二五%の貸付をいたしたい。こうおっしゃった。そうでしょう。だから農業以外の問題に関して、農業では幾らなのか、ほかの種類はどうなっているのかということをお尋ねしておる。
  248. 石井喬

    石井説明員 農業と水産と一緒にいたしまして第一年度三億四千五百万円、工業関係におきまして一億九千五百万円、これは一応の数字でございまして、ただ一つの目安を出しただけでございますから、実際問題といたしましては、現地の実情に応じましていろいろ会社自体が変えた数字をやっていくだろうと思います。
  249. 赤路友藏

    赤路委員 関連。今の御答弁はおかしいと思う。この所要資金——一応の目安といって逃げられたら困るのですが、農業と漁業以外は二五%という。この一億九千五百万円というのは二五%にならぬ。二五%といえば一億三千五百万円。数字が違う。一応の目安ではいけませんよ。
  250. 石井喬

    石井説明員 ただいま二五%という数字は間違いでございまして、今計算をいたしてお答えいたしますが、一応の数字と申しますのは、いずれ会社ができまして、会社の首脳部が集まりまして、それが現地の事情をよく調査いたしました上で具体的に本年度はどこにどういう金を使うかということをきめます。それに対しまして……。
  251. 赤路友藏

    赤路委員 その答弁は重大だ。大体これはこの法案審議をやっているのですよ。少くともこれに対してはもっとも明確なものがなければならぬと思う。こんなずさんなものを出してここで審議さすのですか。それじゃ審議できませんよ。もっと正確な資料を出して下さい。そうでなければ審議できぬ。——議事進行。今の答弁では私たち審議を継続することはできませんから、もう少しこれに対する正確な、明瞭な……。
  252. 植原悦二郎

    植原委員長 もう少しこちらの説明を聞いていただきたい。     〔「説明は幾らでも聞きますよ」と呼び、その他発言する者多し〕
  253. 石井喬

    石井説明員 先ほどのパーセンテージは申し違いでございまして、農水産関係が六四%工業関係が三六%……(「金では幾らか」と呼ぶ者あり)金ではお手元に差し上げましたこの目論見書案というものに書いてございますが、第一年度三億四千五百万円、六四%に当ります。それから工業関係が一億九千五百万円、これが三六%に当ります。
  254. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今議事進行で非常にもめましたけれども、実はそういう間違ったことが——ほんとうにまだ向うの方にできていないから、そういう資料を提出してくれ、こういう願いをしたのです。そういうところを一つ誤解のないようにしてもらいたい。  それで次に私が言ったのは、間口が広過ぎるという問題なのですが、大体三億四千五百万円は先ほど言いました農地を購入する場合の資金、あるいはそのほかどういう面に使われますか。
  255. 石井喬

    石井説明員 ここにたくさん間口を広げて書いてあるという御指摘でございましたが、私どもはこれを全部一時に行おうというふうには実は考えておりません。先ほど申し上げましたように営農資金の貸付でございますとか、独立資金の貸付でございますとか、この許されました資金の範囲内で必要に応じていろいろ仕事をやっていきたい。ただ将来にわたりましてそういう必要が起きました場合には、あるいは移住者受け入れに対する資金の貸付、投資、あるいはこれは先ほど矢口局長から申し上げましたように、きわめて限定された場合には直営することもあり得ると書いた次第でございます。
  256. 中村時雄

    ○中村(時)委員 これは非常な問題なのです。それではそのうちのあなた方が最も考えていらっしゃる入植後における必要な営農資金であるとか、あるいは土地代金の問題であるとか、あるいは機械化の問題であるとか、あるいは地方減退の問題であるとかいろいろあるでしょう。そのうちであなた方は何を最も農業の生産力増強、あるいは生活の安定に対する重要な問題として導入しようとしていらっしゃるか。
  257. 石井喬

    石井説明員 私どもは、農業関係におきまして一番必要なものは、先ほどから問題になっておりますように、自営開拓移民として入った人々の営農資金を見てやることだと思います。先ほど渡航費が全然返らぬので、そういう金はもう全然返らぬのではないかというお話がありましたが、渡航費以外に、新しく入りました移民は全部現地の銀行からいろいろ資金の借り入れをいたしております。これにつきましては先へいってさらに金を借りるというような必要もございまして、大体何とか工面をして返しておりますが、今後私どもがこの会社を通じまして、より安い資金を貸してやることもできると思います。そういうことになりますれば、それもある程度は回収できると考えております。それがまず第一にやらなければならぬことだと思っております。
  258. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それは日本で簡単に考えた農業経営の本質的なあり方であろうと思います。ところがあちらの方は大陸農業であって、どちらかと言いますと地域によって違います。それを指摘せよと言えば、一地域一地域全部について詳細に指摘してもいいのですか、概念的に言いましても大体三十町歩前後を作っておる。三十町歩作ったといたしまして、実際には三カ年くらいでまた次に移行していくわけです。そうするとその移行していったところはそのまま土地放棄をやっております。これは家畜営農の問題もあれば、借りた者は地代の問題もあります。そこでまた金融の問題も出てきます。そういうふうにして土地放棄をやっている現象が一地大きいのです。たとえば家畜の導入であるとか、あるいは機械器具の購入であるとか、そういう営農とおっしゃいましても一がいには言えない。現実にはいろいろな資金の問題が起きてきているのです。私が言うのは、せっかくここまでお考えになるなら、具体的にもう一歩突っ込んで、一体どういう計画をしてどういうふうにしてやるかという、その事業計画をお持ちであろうと思うのです。それをお聞きしたい。
  259. 石井喬

    石井説明員 ただいま御指摘がございましたように、地域によりまして、おのおのみんな形態が変って参ると思います。ただ私どもはこの金をどこの地域でどういうふうに使うかというところまでは考えておりませんで、農水産関係で初年度三億四千五百万円ですか、それを地域によりまして最も必要性の高いものからいろいろな形態で使っていきたいと考えておる次第でございます。
  260. 中村時雄

    ○中村(時)委員 まだ私はこれを見ていませんが、日本海外移住振興株式会社の目論見書案というものが出ております。今初めて拝見いたしました。これを見ましても私にはすべてがぴんとこない。というのは、向うの実情に即応してやっているのじゃない。ただ人数とそれに伴う概念だけを打ち出しておる。外務省だったらこういうことで認められるかどうかわかりませんが、少くとも農業をやろうという感覚を持った人には、おそらくこれでは納得がいかないだろう。次官は一体これで承認されますかどうかお尋ねしたい。こういう目論見書案で農業経営の一つの目標としてのあり方ができますかどうか。
  261. 吉川久衛

    吉川政府委員 まだ相談にあずかっておりませんから……。     〔「それみなさい、だめじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  262. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今のでおわかりだろうと思うのです。農林省政務次官すらまだ御相談にあずかっていないのです。だからこういう抽象的な、われわれから見たらほんとうに何を言っているかというような問題が出てくる。これでは答弁にも何にもならぬから、農林省政務次官とよく話し合って、そうして的確な資料をぴしゃっと出して、これでどうだというところへ持ってきてもらいたい。
  263. 植原悦二郎

    植原委員長 委員長からちょっと申し上げますが、ブラジル一カ所だけの問題ではありません。ただ委員長として御考慮願いたいことは、ボリビアの問題もウルグァイの問題も、それぞれ所違ったところで新しい計画をされたところもあります。実際調べてみた上で、日本年度計画を立てた事業でも、その計画通りには実行できないことがしばしばであります。それゆえに遠隔の地で今年新しい計画を立てて、そうしてかりにブラジルだけで農業の問題を考えても、アマゾンの考える場合とサンパウロ付近の考える場合とでは、同じ農業と言いましても非常に違うと思う。またアルゼンチンの問題において、農業や漁業を考える点においても違うと思うのです。それだからしてそういう先々のことは、何百何名にどれだけの費用をどういうふうに割り当てるというような計画までは、一年や二年でできることではないと思う。それだからなるほど政府答弁においてもかなりの欠陥のあることを私認めますけれども、はっきり具体的にどこにどれだけ使って何にどういうふうに使うかということはよほど困難なことではなかろうかと思います。
  264. 赤路友藏

    赤路委員 委員長のおっしゃることはわかるのです。移民計画書を見てみれば多方面にわたっている。それを一々明細に現地の状況を調べてきてこうだああだとやれと言っているのではないのです。委員長はこれをごらんになったでしょう。この会社の事業目論見でいいと思いますか。いいと思われないでしょう。先ほどからの御答弁の中に三十年度移民する地区というものがありましたが、そう広範にわたっていない。しからばその地区に適したような計画は、こういうものでなしにもう少し精細に出なければならぬ。委員長のおっしゃるようにこまかく何もかもというのではなしに、もっとこういうものでない目論見書を出し、事業計画らしいものが出なければならぬ。しかも農業移民なんだ。農業移民重点を置く限りにおいては連絡があるはずだが、農林次官は知らぬと言っているのですよ。そういうことでおやりになるからずさんなものしかできない、こう中村君は言っているのであって、何も委員長の言うように広範なものを何もかも調べてやれと言っているのではないのです。委員長誤解ですよ。
  265. 植原悦二郎

    植原委員長 農林次官の弁護に立つわけじゃないですけれども農林次官はそういうこまかしい点までよく見ておらぬということです。
  266. 赤路友藏

    赤路委員 こまかしいとは何ですか。それは誤解ですよ。これは外務省だけの責任の問題じゃないと私は思うのです。農林省にとっても重大な責任がある問題なのです。だからもっと農林省外務省の間でよく相談をして、こういうようなものに対する事業目論見なり計画なりを立ててここに出していただきたい。もう少し整理された資料をいただきたいということなのです。
  267. 園田直

    園田政府委員 これは大事なことでありますから、私の方からも今の点について申し上げます。今資料として差し上げてございます会社の事業目論見書は決して会社の事業計画ではございません。この会社を作るに当っての一応の目論見を出したものでございまして、大体こういう方向でやりたいということでございます。会社審議の御認可があれば、それに基いてそれぞれ協議すべきところは協議をし、あるいはお力を拝借するところは拝借して、そして内閣にできます審議会で一応の立案が総理大臣に答申をされる。それが監督の外務大臣から会社の方に回されて会社で最後の事業計画を立てるのが当然でございまして、会社の事業計画であるとわれわれは考えておりません。一応この会社について御相談申し上げるために、この程度のことでございますという方向を御報告申し上げたわけでございます。従いまして今問題になっておりますのは、農村省と外務省の間の問題についてでございますが、この点については先ほど大臣からも御答弁申し上げましたが、さらに大事な点でございますから、私からも今日までの経過を具体的に申し上げてみたいと考えております。  ただいま問題になっております本件会社の業務運営に関しては、海外移住審議会幹事会においては十分議を尽してほしいという意見が次官会議の席上で農林省の代表から発言があり、これにつきましては通産省からも同様趣旨の発言があり、外務省を代表する事務次官はその趣旨に沿うべき旨を明らかにしたばかりでなく、外務省は事実上の問題として会社の事業計画の作成認可に当っては関係省の意向を十分しんしゃくすることが、会社の運営を円滑ならしめるゆえんと考えまして、その具体的方法として関係省との間にはっきり次官申し合せという一つの書類に残してこれの協議方法を作りたいということを考えております。この点につきましては参議院の方でもしばしば私からお約束を申し上げておりますが、本委員会においても右の信念を御報告申し上げたいと考えております。  なおこういう関係から、農林省及び外務省との間に責任を回避すべきでない、進んでみずからの持っておる所管事務の権限において業務を遂行したいという熱意から意見の食い違いがあったことは事実でございますが、資料の中にも書いてございます通り移民行政に関しては閣議の了解事項があり、会社の運営に関しては同じようなことがあり、審議会については審議委員の構成に当っては、農林省外務省と十分相談をして政府においてこれを裁定するということになっております。なお最後に外務省農林省との意見は、お互いに相談をいたしまして、今日の段階においては私は省と省との間には意見の食い違いはないと考えておるばかりでなく、関係事務担当官にも私は直接お話を申し上げたわけでございまして、この両省の熱意からくる意見の食い違いは、法案作成の過程におきまして、農林省は事業計画を立てる場合においては、農林大臣に協議すべきことを条文に明記せよという主張が確かにあったのでございます。それはその後いろいろ折衝した結果、内閣として統一した意見は、農林大臣が外務大臣と協議してやるべきことは当然ではあるけれども、これを法文中に規定することは政府責任を不明確にするおそれがあるから避けて、農林省の、主張は外務省が運営面においてこれを生かしていくという旨の了解が成立をし、それに基き両次官申し合せを作りまして、あるいは人事の交流等におきましても農林省の事務当局から申し入れ等もございますから、そういう点をしんしゃくをして十分協力し、お力を借りていきたいと考える、この点については法案ができました際、農林省にもいろいろ意見の食い違いがございましたが、政府において意見の統一をし、法案を提出したからには、この法律案で御協力願えるのかどうかということを言いまして、山本参事官だと思いますが、御意見を承わりましたところ、農林省としましてもそれは当然であるから両省協力して法案の御相談を願い、できたる暁においてさらに協力をして移民を推進していこうということになっておりますので、この点われわれの誠意だけは御了承を願いたいと思います。
  268. 赤路友藏

    赤路委員 次官の御答弁まことにうまいものです。了解いたします。しかしながらあとの方のことはちょっと了解に苦しみます。ではこの附則の第四の大蔵大臣は消しなさい。この問題は私まだ触れないつもりだったが、次官が今の御答弁におっしゃったから言いますが、それじゃ外務大臣が責任を持つのでしょう。大蔵大臣に協議する必要はないのでしょう。条文の中からこれは消せばいい、そういうことになりはしませんか。
  269. 園田直

    園田政府委員 御指摘の点につきましては、大蔵大臣と外務大臣は一つの方針のもとに協力すべきだという趣旨のほかに、国家資金を支出しておりますので、大蔵大臣は会社の監督、会計上の責任を持っております。これは今まで国家が資金を出しました日本航空にいたしましても、その他のいろいろな会社にいたしましても、国家資金を出した会社の経営については非常に問題があったり、大蔵大臣として困ることもある実情でございまして、これは協力関係ではなくて会計の監督事項でございますから、外務大臣と大蔵大臣との資金の計画等に関する協力を規定したのみでございまして、決して大蔵大臣と農林大臣との間、また外務大臣との間に権限の差異を来たしておるとは考えておりません。もちろん人事や、審議委員等に対しましても、政務次官あるいは事務当局、大臣等にはよく相談をして、委員の方々の御趣旨は必ず通るようにしたいと考えております。
  270. 赤路友藏

    赤路委員 この問題は後日なお論議されなければならぬと思います。今の政務次官の御答弁から参りますと、端的に申しまして、政府資金が出る、従って大蔵大臣と協議をするということがうたわれておるのだ、こういうことだと思う。この会社目的とするところは、先ほど来るる皆さんがおっしゃったように、少くとも重点農業移民にある。しかも、今までの農業移民の経過からいった場合、失敗をしていることがわかっている。これらの面についてはいろいろ議論もあり、今後そういう失敗を繰り返さないためには、少くとも移民の真剣な営農指導が必要ではないか。これは技術的にも、いろいろな面について言えると思う。そうした場合、当然これは農林大臣が責任を持って指導すべきだと私は思う。移民というものは外務省の所管であり、外務大臣の監督下に置かれることはわかるのです。私は、この農業移民ほんとうに完成するためには、政府資金を出すというための大蔵大臣の重要さより以上、もしくは同等のウェートを置かなければならぬ、こう言っておる。これはこれ以上は言いません。御答弁は要求いたしません。なおこれは自後の問題として、中村君にあとを譲ります。
  271. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今のお考え方を、私ちょっと整理してみたいと思うのですが、たとえば、今園田政務次官のおっしゃるような考え方に基いていきますと、移民の現地におけるこのような世話は、一体だれがやるのですか。
  272. 園田直

    園田政府委員 移民の直接の世話は、御承知通りに、主として連邦政府の方でやりますので、日本政府が直接お世話をすることは、相手の国と日本政府が折衝をしたり、あるいは現地の移民の方々の御意向に従って、いろいろな要求をしたりすることであります。その他の点につきましては、資金あるいは事業の援助等でお世話のできるものはこの会社でやりたい。向う相手国でやるものは、相手国にゆだねる、こういうことを考えております。
  273. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そういたしますと、相手政府受け入れ後におけるいろいろの世話をする。送出に関する問題だけを当政府で引き受ける、こういう結果になるわけですが、私のお聞きしていることは、送出されて行った結果、今言ったように、いろいろな立地条件の不完備から問題が起ってきている。その送出されて行った結果におけるところの問題を、だれがどのように世話するかをお聞きしている。
  274. 園田直

    園田政府委員 おいでになった移民の方々が、契約が違うとか、あるいは条件が違うとかいうことを相手政府に折衝することは、当然われわれ政府がやるべきことだと考えております。
  275. 中村時雄

    ○中村(時)委員 その問題が今まで円滑にいかなかったことは、たとえば利子の回収の問題にしても、実際に入らなかった問題にしても、あるいはアマゾン地区からの逃げ出しにしても、すべてそういうところに原因があるということは、裏面からいきましたら、政府一つ方向としては非常に弱体である。そういう欠陥をあなたはお認めになりますか。
  276. 園田直

    園田政府委員 そういう点につきましては、しばしば申し上げます通り移民協定を急ぐとともに、政府といたしましても、在外公館の配置人員の変更あるいは技術官の配置あるいは本省における移住局の拡張などと伴って、そういう点に逐次努力いたしたいと考えております。
  277. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私はそういうような面に関して、特に資金配分の状況から見、あるいは今の政務次官の御答弁から推察いたしまして、どうしても海外移住振興株式会社法というものは、その重点は、将来あるいは企業移民のあなたが考えていらっしゃるような方向になるかもしれない。しかしここしばらくは、農業移民がその九割以上を占めるのじゃないかと推察するのですが、これに対して、あなたはどういうお考えをお持ちになりますか。
  278. 園田直

    園田政府委員 当分は、お説の通りであると考えております。
  279. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすれば、たとえば資金の面において、先ほどの赤路委員のところに返ってくるわけです。大蔵大臣との協議という問題になってくる。しかも技術なり、あるいは受け入れ態勢なり、あるいは掲げられたところの現地における営農指導なり、あるいは入植後の営農資金なりあるいは地方の減退防止のための畜産の導入なり、そういう個々の問題が重点になってくる。その九割以上が今言った農業移民ということになれば、その経営に対する内容の指導とか、あらゆる面に農業関係重点になって現われてくるわけです。そういたしますと、片方で国家資金を投ずるからといって大蔵大臣が出るならば、その技術指導なり営農指導というものが、より以上高い評価に基いて農林関係が出てくるだろうという考え方になってくるわけです。私の言っていることが間違いであるならば、政務次官から御指摘を願いたい。
  280. 園田直

    園田政府委員 本会社の事業遂行並びに事業計画の策定に当りまして、農林大臣が有力なる発言権を持ち、この計画の遂行並びに推進に当ることは当然である。私も同様に考えております。ただこれが法文上に明記されなかったのは、先ほど申し上げましたような理由で、大蔵大臣との関係は、協力関係というよりも、金銭上に関する監督の関係であって、事業計画その他について協議すると申しましても、それは主として政府支出に関係する、たとえば損失補償であるとか、あるいは事務費の支出であるとか、あるいは渡航費の支出であるとか、そういう面についての協議で、金銭のための権限、義務というものは、一般のものとは別個でございます。大蔵大臣と外務大臣との場合には——労働、通産とは比重の点においては、農林の方がうんと上であることは認めますが、それは事務当局であるならば、先ほどだれかが申されました通りに、法文に明記していろいろ規定することも必要でございましょうが、一つ政府のもとに統轄された各省でございますし、その各大臣は一つの党から出ている意思相通じたる大臣でございますから、これは法文に明記しなくても、申し合せその他によって十分農林大臣の発言権が出てくる、こういうことで意見を調整し、農林大臣は閣議においてこれに署名をしたわけでございます。
  281. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私はちょっと園田先生とは意見が異なるのですが、あなた方が今の内閣においてそういう考え方を持つことは御勝手であります。しかし法律にして出す以上は、恒久的のものだろうと私は思う。その場合において、たとえばあなたのような考え方に基いて結論を出していきますと、どうしてもあなた方のは投融資の格好でこの会社を考えているのじゃないかと考えられる。しかし投融資の問題でなくして、私の言っているのは、移民の生活の実態の上に確定的な問題を取り上げていきたいということが骨子になっている。立場が違う。だから私たち移民されて行った者が、その目的である農業経営によって生活ができるということの上に立ってものを考えていこう。あなたの考え方からいきますと、投融資の問題を取り上げていって、それによってまかなっていこうという考え方である。そこに根本的な食い違いがある。だから私のような考え方になっていくと、今言った何も農林大臣を入れなくてもいいじゃないかという結論よりも、入れたっていいじゃないかという結論が強く出てくる。そこの考え方をもう一回伺いたい。
  282. 園田直

    園田政府委員 それは本質的に変っているわけではありません。やはり移民された後のいろいろなお世話をするには、農林大臣の権限というよりも、農林省が持っている技術あるいは識見等を多数お力添えを願った方がいい、これは私は当然のことだと考えております。ただ大蔵大臣との場合には、いろいろなそういう事業を計画した後、さてこれを実施するについては、資金面の支出がございますし、あるいは会計監督の面がございますから、法文上に明記してございますが、他の農林大臣、通産大臣、労働大臣、外務大臣との間は、これは同等の資格をもって協議をすればよいことであって、協議並びに発言権については中村委員と同様の意見を持っております。
  283. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私は何もあなた方を信用しないという意味じゃない。何もこれを書かなかったからといって、そのことが問題になるほどのことではない。しかもここしばらくの間は、やはりそういう農林関係重点的な施策が盛られていく。そこで、あなたの党の中においてはそういう意思の疎隔がないとおっしゃるかもしれませんが、あるときによっては、法文にないから次の内閣ができた場合やろうと思えばやれぬことはないと思うのです。だから私の言っておることは、ここしばらくの間の基本的なものをここであなた方の賢明な知識によってはっきりさせておく方が、将来問題を起さないという基本ができるのではないかということを言っておるのです。だからあなたの今の立場を言っておるのじゃないのです。
  284. 園田直

    園田政府委員 私も決して外務省出身でもなければ、外務事務当局を代表する者でもなく、これを統一、調停の立場に立つ側にあるわけでございまして、決して外務省の権限だけを主張しているわけではございません。しかし中村委員の御主張される点等もございましたし、農林省からさらに強い要求もございましたが、政府としては今のように統一したわけでございます。
  285. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私がなぜこういうことを言うかといいましたら、今までもこの会社ができる問題あるいはその以前の問題、そういう問題を考えた場合に、農林、外務のあつれきという非常に大きな問題があったはずです。これは御承知通りだろうと思う。そういたしましたときに、このこと自身が将来において再びそういうことを惹起しないということの結論には私はならないのです。そういうことをやられると困ってくるのは移民そのものなのです。何もあなた方や官僚が実際困るのじゃないのです。これをやられているためにおくれているのです。そのことは血のにじむような悲痛の状態をたくさん出してきていることでもわかる。私どもあの予算委員会でそれを読み上げましたけれども、ああした悲惨な状態が至るところに起っているのです。ただわれわれが渡航し一カ月か二カ月見てきて、それによってどうこうというような簡単なものではない。向うは血みどろの戦いなのです。ただ言えることは、向うには食生活というものがある程度緩和されている、飯だけは何とか食えるけれども、文化は非常におくれた状態である。そういうような観点から考えまして、将来政争の具やあるいは各官庁のなわ張りの争いの用に供せられぬようにしておくことが、今の内閣において最も重大だと思う。また政治力とかなんとかいうことではなくて、あなた自身賢明な感覚を持っているのだから、それを取り上げてはっきりとした態度を出されるということが一つ。もう一つは、ここであなたはそうおっしゃっても、事実今農林政務次官がおっしゃったように、その内容の検討すらも政務次官が十分でないとおっしゃっているくらいに、どうしてもそういうことが今の官僚制度の上からも起ってくるのです。私が官僚でおったからかもしれませんが、そのような状態を中から見たときに、当然セクト的なことが起ってくると思う。それは園田さん自身もおわかりだろうと思う。私は何もここで官僚攻撃をしようとは思いませんけれども、そういう感情をあとにまで残したくないというのが私の念願です。
  286. 園田直

    園田政府委員 御質問の御趣旨も、御指摘を賜わった御注意の点も十分よくわかっております。法案作成の経緯につきましても、外務省農林省の間に熱心さの余りから来る対立があったことも私は承知しております。政府として統一をし、外務省事務当局としてもこの法律案には、外務省事務当局自体の考え方からいうと、まだまだ意見があるようでございますし、大蔵省にも意見があるし、農林省にも意見があるようでございますが、政府として今御指摘のような点がないように審議会を作り、その審議会には農林大臣あるいはその他の大臣をも加えて、人事の交流等もやり、次官の申し合せをやって、そういう欠陥がないように政府として統一をし法案作成をお願いした以上各省の熱心さの余りの意見を最後まで出し合うことは、これは熱心さの余りではなくて、官僚のなわ張り争いになるおそれがあると考えております。御指摘の点につきましては十分注意をして、運営上並びに今後の申し合せ等にはそういう点の御不審がないようにいたしたいと考えております。
  287. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今の問題は考えの違いなのですから、ただあなたがそれを六にとっておるか私が十にとっておるか、それによっての打ち方の相違なのです。だからこれ以上問題は取り上げません。  そこで最後に一点お願いしておきたいのは、これは農林省政務次官にお願いします。今申しましたようにこの農業対策の目論見を見まして、見れば見るほど私は納得がいかない。そこでこの両者の合同によるところのそういう目論見のはっきりした打ち出し方の資料を提出していただきたい。これを最後にお願いしておきます。
  288. 赤路友藏

    赤路委員 今中村君から資料の要求があったわけでありますが、そこで私の方も資料を御提出願いたい、こういうふうに思います。私の方のお願いしたいことは政務次官に非常に気の毒で、まことに食い下るようなのですが、どうもこの資料をいただいて私はまだ納得がいかない。先ほど政務次官がおっしゃった移民に対して国が責任を負う義務があるという、このことの外務省の具体的な対策の資料をいただきたい。  それから農林省に対して、私はおそらく目論見それ自体については、今次官が発言された通りであると思います。しかしこのことについては事前に外務省との間に相当話し合いもあったと思います。また移民そのものの指導については、農林省農林省なりの対策というものが立っていなければならぬと私は思う。この会社法案に関連したその具体的な対策を一つ資料としてお出し願いたい。これには何もありませんから、これをお願いいたします。
  289. 植原悦二郎

    植原委員長 農林次官も中村さんと赤路さんの要望は聞かれておったと思います。  ほかに御質疑はありませんか。
  290. 足鹿覺

    足鹿委員 議事進行について。委員長に伺いますが、いろいろと今まで委員の間で内々打ち合せをしてみますと、どうでもこの法案は本日審議を打ち切られるようなお話に聞いておりますが、さようでありますか。大体われわれ農林水産委員会も十幾つの重要法案をかかえまして、本日は政府側からも審議を非常に急いでくれという申し入れを受けたにかかわらず、本委員会にわれわれは来ている。審議をやめて農林水産委員会を打ち切ってこっちに来ている。そのような事情の中にありましてわれわれが本委員会に出席をし、そして今後の移民政策のあり方、特に日本の農民を送出した場合において、現地の受け入れ態勢をいかにして確立するかということが、直接この会社法案とは関係がなくても、表裏一体の関係においてこれを離すことはできない、こういう見地において慎重審議をいたしておるのでありますが、まだ質疑は十分ありますし、資料の要求はただいま赤路委員からも出ておりますし、私からもしております。なお私は午前中に委員長にも申し上げましてほぼ御納得いただいたと思いますが、参考人を招致する件について意見も申し上げております。あらためてよろしければ参考人を招致して、さらにもう一回連合審査会をお開き願って、十分審議を尽されんことを希望する次第でありますが、委員長はいかようにこれをおさばきになりますか。ただ形式でもってこの連合審査の申し入れがあったから開くというのではなかろうと思います。やはり開いた以上はその成果を上げることがこの連合審査の目的にかなうことでありますから、それに沿うような賢明な御措置を委員長としてはおとりになることを私は要望したいのでありますが、いきなり動議を出すこともどうかと思いますので、委員長におかせられてのその御所信を承わった後に、御休憩その他適当な御処置をとられんことを議事進行上発言をして善処を要望いたします。
  291. 植原悦二郎

    植原委員長 御意見は拝聴いたしました。本連合審査会は農林水産委員長から数日前に要求がありまして確定いたしたのでありますから、この間に数日間余裕があったわけで、農林水産委員の方は本日連合審査会が開かれることをよく御承知のことと思います。ただいまほかのいろいろの会があったというお話もありますが、さようでもございましたでしょう。しかし数日前に農林水産委員長から本委員長に連合審査の申し出がありましたので、さっそく決定いたして、本日のことを両三日前に通知いたしたわけであります。のみならず連合審査の問題は皆様方御承知通り、この場合でありまするならば外務委員会理事の一応の承諾を得、委員全体の承諾を得なければ開けないことになっております。さような手続をとって開きました会であります。ただいませっかくの御意見がありましたが、さような手続上の問題がありますから、委員長としては独自のお答えはできません。御意見のあったことはよく了承いたしました。外務委員会理事の方、外務委員の全体とも協議いたして、なるべく善処いたしたいと思います。さよう御承知を願いとう存じます。
  292. 足鹿覺

    足鹿委員 善処するということでありますが、お見受けしますと、外務委員の人はほとんどおいでになっていない。今わが党の稻村委員から承わりますと、理事の方は特に御出席が悪いようでありますが、少くともこういう重大な問題について私はいきなり動議をたたきつけるというような形ではなしに、きわめて穏やかにお話を申し上げておるのに対して、一応外務委員会としての取扱いを御協議になるのが至当なことだろうと思うのです。委員長においてさらに御善処あらんことを私は要望いたします。もしこれをどこまでもこういう要領で押し切られるということになりますと、将来連合審査の上に悪例を残すことになろうかと思います。またどのようなことで外務委員の皆さん方が他の委員会に連合審査を申し入れられる場合もないとは限らない。そうした場合にこのような仕打を受けられたときに、果してそれが愉快であるかどうか。それからまた適当であるかどうかということについてはおのずから御判断がつくと思います。そういう点についてはさらによく外務委員会において今後の取扱いについて慎重に御考慮あらんことをさらに私は委員長に要望申し上げます。
  293. 植原悦二郎

    植原委員長 足鹿君に誤解のないように願いたい。先刻もあなたの申し出もありましたが、連合審査会を開くには、本委員会理事と全体の委員の決定を受けなければならないのでありますから、ここにおいて委員長があなたに対してお答えをすることはできません。御意向はよくわかりましたから、その意向をくんで外務委員会理事並びに委員全体と相談いたして取り扱うことに善処いたしますということだから、あなたの御趣旨通り取り計らいます。きょうは理事がおりませんからいたし方がありません。
  294. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 先ほどからの非常な熱心な御質疑に対して、私は傾聴おくあたわざるものがございまして、さらにまた御質疑の次第がまだおありになるのみならず、最近現地方面からお帰りになった人を呼んで、その実情を聞くという次第も実にごもっともだと思うのでございます。個人としてはそういう時間がありますならば、われわれも呼んで聞きたいものだと思うのでございますが、先ほども委員の方々から御相談がございましたときに、はっきり申し上げた次第でございますが、先週以来われわれ外務委員会理事会といたしましては、審議を急がなければなりませんものがほかにもございまして、実は先週来すでにきまっておることを申しますれば、きょうの合同審査会また明日は秘密保護法を論議いたし、明後日は基地問題で参考人から意見を聴取いたし、それからその翌日の金曜日におきましてはまた韓国抑留者の話を聞くことに日程を先週以来きめてあるわけでございます。それをまた今朝理事会を開きまして理事会において一応またさらに確認をいたしまして、その通りに今週は実行いたすということをきめた次第でございまして、今週にはもう時間がないのでございます。そうしますと、さような意見を聞くような日、また今お話のありましたような合同審査会を開くことにいたしますと、ひっきょうこれは来週になるわけでございますが、来週になりますと、われわれの計算では十九日か二十日になりますので、会期といたしましても非常に短かいことになってしまいますし、またこの法案は実は国際的な関係を持っておることでもございますから、どうも時間がないということを申し上げまして、委員の方々には私自身としましては極力御了解をいただきたいということを申し上げた次第でございます。これは私の方の理事といたしましては一人だけ欠けておるので、二人は出ておりましてみな同感でございますから、私は委員長に対しましても、私ども理事会がきめましたことを率直に申し述べて御了解を得ようとした次第でございますから、これも御考慮に入れまして御裁断を願いたいと思います。
  295. 植原悦二郎

    植原委員長 今の須磨君の御意見は私も承知いたしております。なお連合審査会であるから非常に慎重に取り扱わなければならないというので、今朝も特に理事会を開いて何人の発言も制限しない、時間も制限しない、外務委員は遠慮して発言しない、そうしてもし農林水産委員の方々の間に関連質問があるならば、それは努めて寛大に許そう、そうしてできるだけ皆さん方の意見をこの委員会へ反映するようにしようというだけの慎重なる考慮を払って、この連合審査会は今日終了することにけさほどの理事会で決定したのであります。ただしただいま足鹿君の御意見もありますので、これも考慮すべきだと思いますから、明日外務委員会理事会を開きまして御相談いたし、また外務委員会も開かれますから、外務委員会の決定を待って農林水産委員長に御返事することにいたします。さよう御了承願います。  本日の連合審査会はこれにて散会いたします。     午後五時五十九分散会