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重光国務大臣 私は従来
日ソの
国交回復の際に、
日ソ間に横たわっておる全部の問題を
解決しなければならぬと申したことは決してございません。私は
日ソの間に横たわっておる、特に
戦争によって生じた重要な問題は
解決しなければ、平和を再び打ち立てることはできない、でありますから重要な問題は話し合いをして十分妥結した上で、
国交の
正常化回復という段取りになるのだということを申し上げております。そしてそれではどういう項目がその
交渉の題目になるべきものであるかという点につきましても、私と申しますか、
日本政府の
考え方ははっきりと申し述べて、その点においては私はむしろ国会の御
了解を得たと思っております。それについては領土問題のあることは言うまでもございません。
そこで領土問題に入りますが、今の
お話によりますと、領土問題では、
南樺太及び千島はサンフランシスコ条約によって
日本がすでに権利を放棄しておるのだから、
ソ連に対しても要求しない方がいいのじゃないかという御
意見、またそういう
意見もあるという
お話かもしれません。これは
ソ連の
意見であります。
ソ連はそう言うのであります。しかし私は必ずしも
ソ連がそう言うからそうとは
考えておりません。サンフランシスコ条約によって
日本が権利を放棄したということは、サンフランシスコ条約にはっきり書いてあります。しかし
ソ連はその放棄したものを受け取りたくないという頭でもって、サンフランシスコ条約に調印を拒絶している。
ソ連は受け取りたくないというふうに解釈するのは行き過ぎかもしれませんが、
日本の権利の放棄を
ソ連が認めておるわけではございません。これは条約上当然の解釈であります。そこでこれらの
南樺太及び千島の問題も、
日ソの間においてはまだ結末を得た問題ではございません。これをどうするかという結末がついておる問題ではありません。かような大きな問題について結末をつけなくて、
国交の
回復ということはちょっと
考えられないのであります。それは
ソ連から
マリク全権を通じて
提案された中にも、その点ははっきりあるわけであります。これは結末をつけなければならぬ。また結末をつけるべく、
日本が
日本自身としての要求を当然出し得る問題でありますから、私はこれを出すべきだと
考えて、初めからそのつもりで出しておるわけでございます。ただし
お話の
通りに、
日本がサンフランシスコ条約によって
——これはサンフランシスコ条約調印国に関する限りは、これは放棄しておるのだ、こういう点は認めざるを得ません。そこでその上は
日ソの
交渉の俎上に上っておる問題でありますから、
日本は主張すべきを主張し、
ソ連も大いに主張しておるわけでありますから、さようにして
交渉を進めていくということは私は当然のことである、こう
考えておるわけでございます。