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1955-07-20 第22回国会 衆議院 外務委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十日(水曜日)     午前十一時三十七分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 大橋 忠一君 理事 菊池 義郎君    理事 須磨彌吉郎君 理事 北澤 直吉君    理事 福永 一臣君 理事 穗積 七郎君       伊東 隆治君    草野一郎平君       夏堀源三郎君    並木 芳雄君       山本 利壽君    福田 篤泰君       渡邊 良夫君    高津 正道君       森島 守人君    戸叶 里子君       松岡 駒吉君    岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君  出席政府委員         外務政務次官  園田  直君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (移住局長)  矢口 麓藏君         大蔵事務官         (主税局税関部         長)      北島 武雄君         農林政務次官  吉川 久衛君  委員外出席者         外務事務官         (経済局第二課         長)      安倍  勲君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 七月二十日  委員淺沼稻次郎君及び中村時雄君辞任につき、  その補欠として戸叶里子君及び松本七郎君が議  長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本海外移住振興株式会社法案内閣提出第一  三六号)  関税及び貿易に関する一般協定への日本国の加  入条件に関する議定書への署名について承認を  求めるの件(条約第一六号)     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  日本海外移住振興株式会社法案議題といたします。  この際外務大臣より発言を求められておりますのでこれを許します。重光外務大臣
  3. 重光葵

    重光国務大臣 ちょっとお断わりをいたします。きょうはこの法案について討論採決をされるという内報を得ましたので、私は出席をいたしたわけでございます。ところが討論採決は午後に延びるかもしれぬということになりました。私はきょうビルマ総理大臣の歓迎で午後は宮中に行かなければなりませんから、午後の会議出席をいたすことができませんので一つあしからず。どうかそれにかかわりなく委員会の御審議はお進め願いたいことをお願いをする次第でございます。
  4. 植原悦二郎

  5. 園田直

    園田政府委員 前々から御注意をいただいておりました会社法案に対する各省業務を円滑ならしめるための次官申し合せ事項が、本朝来農林省外務省の間で円満に妥結をいたしましたので御報告申し上げます。    了解事項   外務省および農林省は、日本海外移住振興株式会社法運用に関し、次の通り了解する。       年  月  日          外務事務次官名          農林事務次官名 一、外務大臣は、日本海外移住振興株式会社事業計画資金計画およびその変更について認可しようとするときは、あらかじめ農林大臣に協議するものとする。 二、外務省は、日本海外移住振興株式会社法運用に関し、農林省に密接に連絡するものとする。 以上で円満に妥結をいたしました。なお念のために申し添えておきます。先般すでに申し合せ了解をいたしておりまする労働通産両省との了解事項も当時の了解の際に、他の省との了解事項が変更ある場合には、自分たちの省も同等の申し合せに変更してもらいたいという、外務省労働通産省との間の一致した意見でございます。従いまして、先般来から穗積委員の質問に応じてお答えしました労働通産省了解事項も、この線に従って変更されることを御了解願いたく、右念のために御報告いたします。
  6. 植原悦二郎

    植原委員長 この際大橋君より発言通告があります。大橋忠一君。
  7. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 この法案に関連いたしまして、外務委員会理事会共同提案といたしまして附帯決議を提議したいと思います。  まずその全文を読み上げます。   日本海外移住振興株式会社法案に関する附帯決議  本会社設立の上は、政府は左の事項につき充分留意せられたい。 (一)政府会社指導に当り、会社活動移民受入国利益及び需要に合致し誤解を招かないよう万全の配慮を加うること。 (ニ)外務省は円滑なる運営のため、つねに関係各省連絡を密にし、ことに事業計画及び資金計画に関する認可を与えるときは農林通産労働その他の関係各省事前に諒解を求めること。 (三)本会社配当は、如何なる場合に於ても一割を超えないこと。 こういう附帯決議を提議したいと思います。  これを簡単に説明いたしますと、第一の項目は、本会社は御承知の通り公社ではない、会社の形はとっておりますが、事実上これは政府指導する会社でありますために、この種の会社外国においてわが国移民保護促進をする場合においては、よほど注意をしてやらないと、外国誤解を招いていわゆる排日運動を激成するおそれがあるのであります。従いまして、この会社活動をする場合においては、事前当該国と完全なる了解を得た上に、その国の利益及び需要に反しないように、この会社活動することがその国の利益になるというような種類の活動をするという点に、常に注意を払う必要があると思うからであります。  第二項は、本会社活動目標はいわゆる企業移民でありまして、従いまして、実質的には内地農林通産並びに労働省密接不可離関係にあるのであります。従いまして、この会社業務促進する上において、これらの内地各省と円満なる関係を維持し、その心からなる協力を求めないと、会社業務を発展せしめることはできない、ここにおきましてこの附帯決議が必要になると思うのであります。  第三の項目は、本会社は言うまでもなく利潤追求目的としたものではありません。わが国の一大国策でありまする移民事業を推進するというところに目的があるのであります。従いまして、むろんアメリカから借款した大事なお金を使うのでありますから、それをむだに使わないように注意する必要がありますが、同時に、あまりもうけ過ぎて大きな配当をするというようなことは、本会社の本質から見て不適当である。従いまして、いかなる場合においても一割を越えないというようなふうに会社運営していただきたい。  以上の趣旨をもちまして、私はここに附帯決議の動議を提出したいと思います。
  8. 植原悦二郎

    植原委員長 これにて本案に関する質疑応答、及びかねて穗積七郎君より問題とされておりましたところの政府間の了解の御報告もありました。理事諸君の御決定になりました附帯決議もすでに提出されることになりました。  これにて暫時休憩いたしまして、午後には討論採決をすることにいたしたいと思います。午後は一時半から開会したいと思いますから、さよう御了承願いたいと思います。  暫時休憩いたします。     午前十一時四十七分休憩      ————◇—————     午後二時四分開議
  9. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  日本海外移住振興株式会社法案並びに大橋忠一君より趣旨弁明のありました各派共同提案本案に関する附帯決議を一括して討論に付します。討論通告がありますので、順次これを許します大橋忠一君。
  10. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 民主党を代表いたしまして本案賛成討論をいたしたいと思います。  終戦以後におけるわが国移民政策は、わずかに海外協会連合会を通して若干の移民を送り出したということ以外、あまり多くの施策をやっておらなかったように思います。ことにその受け入れ体制に関しましては、ほとんど手をつけておらなかったのでありますが、今回アメリカからの一千五百万ドルの借款が迎え水となり、今回の会社案が出されたことは、日本移民促進の上におきましてきわめて慶賀にたえないことであると思います。  思うに今回の法案は、その対外関係処理の上において、はたまたその運営の上におきまして、いろいろ困難な事態に直面しなければならぬのでありまして、この会社法を成功せしめることは容易なわざではないと考えられます。幸いにしてその当局者に人を得、運営よろしきを得てこの会社が大した赤字も出すことなく、強固な基礎を作って、まず中南米方面にその根を張ることができ、そして諸外国誤解を招かず、その協力を得て成功する段階になりますれば、私は日本移民の将来は実に洋々たるものであると思うのであります。  この会社の使用するところの経費というものがきわめて限られたものでありまして、私はこれではとうてい十分なる成果を上げることはむずかしいと思うのであります。私は今度の規模の会社——一千五百万ドルの使用すべきお金のごときものは、これはまず試験的のものである、この試験的の今回の企図を成功させるということができますれば、この次にはさらに多くのアメリカ借款なり、あるいは次第によっては内地から日本予算からでも出してもっと大々的に、しかも中南米に限らず東南アジアにあるいはアフリカにも世界至るところに、私はこの会社活動を発展せしめるべきものであると思うのであります。今回の会社はその第一歩でありまして、私はこの第一歩である日本移民主体といたしまするこの会社法案が成立せんとしておることに対して、非常な喜びを感ずるものであります。  ここに本会社法案並びにそれに付随して出されましたところの附帯決議に、民主党を代表して賛成意見を申し述べた次第であります。
  11. 植原悦二郎

  12. 北澤直吉

    北澤委員 私はただいま議題となりました日本海外移住振興株式会社法案につきまして、自由党を代表しまして、各派共同提案附帯決議を付しまして、賛成の意を表明せんとするものであります。  その理由を簡単に申し述べますれば、次の通りであります。  第一は、年々百万以上増加しまするわが国人口対策見地から見ましても、また中南米東南アジア等との貿易の増進、経済協力の推進の見地から申しましても、従来に比べまして画期的に大幅の海外移民を送り出すことの必要なことは、今さら申すまでもないことでありますが、近年中南米諸国日本移民に関する態度も幸いに好転して参りましたので、この際一つ積極的に移民政策を推進する必要があると考えるのであります。  第二は、従来日本移民所期目的を達成する上において、最も大きな支障となっておったものは、移民が仕事をする場合の資金の不足であったのであります。特に第二次大戦後の世界の移民の大きな傾向は、従来のような他に雇われる雇用移民でなくして、相当の資金を持ってみずから事業を営み得るところの企業移民であると思うのであります。今回米国の三民間銀行から五年間に千五百万ドルの移民借款の話し合いができまして、その受け入れ機関としてこの会社を作りまして、移民に必要な営農資金また事業資金を供給しますることは、旱天の慈雨のようなものであると思いまして、まことに時宜を得た措置と思うのであります。本来この借款は、昨年秋吉田総理が渡米の際のおみやげ一つであるのでありまして、これは米国朝野日本の人口問題の重大なることを考えまして、日本中南米移民好意的態度を示すに至ったことを示すものと思うのでありまして、日本移民の将来に一つの光明を与えるものと思うのであります。  第三に、この会社業務の中に、渡航費貸付が規定されておるのでありますが、渡航費の元利の回収は従来の経験から見ましても、必ずしも順調には参っておりません。そこでこの面から会社経営が不良となって、所期目的達成に困難を生ずることが心配せられておったのでありますが、外務大蔵両省の間に意見が一致しましたこの法案に基く政令要綱案によりますと、やむを得ない場合には、貸付の期間を延長することができることとなっておりまして、さらにそれでも回収不能となって会社に損失を生ずる場合には、次の通常国会提出予定債権管理法によって、政府会社に対する渡航費貸付金の一部の債権の放棄を認める、こういうふうな道も開こうと政府は考慮しておるようでありますので、この点からの心配は一応なくなったものと認めるのであります。本来この会社は、先ほど申しました米国民間銀行からの移民借款を根幹といたしており、また自由党予算修正によって一億の政府出資を決定しましたために、この会社法案ができたような次第でありますので、いわば自由党がこの会社の生みの親のようなものであるのであります。  私どもは以上の理由によって、自由党を代表してこの法案賛成するものであります。  次にこの法案に対する要望政府に申し上げます。  第一は、会社運営に当っては、附帯決議の第一にあります通り会社活動移民受け入れ国利益及び需要に合致しまして、受け入れ国政府及び民間との間に摩擦をなくするということが肝要でありまして、そのためにはまずもって関係国政府との間に、なるベくすみやかに移民協定を締結されんことを要望するわけであります。  それから要望の第二は、この会社所期目的を達成するためには、この会社事業計画が当を得るかいなかということが、重大なる関係を持つわけでありますので、外務省内閣に設置せられます海外移住審議会を十分活用しまするとともに、関係各省と緊密なる連絡をとって、衆知を集めるように措置されんことを要望するわけであります。  それから要望の第三は、先ほど大橋委員からも指摘されましたように、この会社事業資金米国民間銀行からの借款に依存しておるわけでありまして、何分にも少額であります。会社の出発当時におきましてはこれでもやむを得ないと思うのでありますが、将来この会社が十分に活動するためには、どうしてもこの程度の資金量では不十分であろうと思いますので、将来さらに米国民間からの借款を求めるとか、あるいはブラジルその他現地におきます日本人の資金を利用するとか、そういう方法によってこの会社事業資金をさらに増大するように考慮願いたい。これが要望の第三であります。  それから要望の第四は、本来会社事業主体外国にあるわけでありまして、しかもその事業資金は、主として先ほど申しましたように、米国民間銀行からの借款に依存しておるわけでありますので、この会社運営に当っては関係国の官民との連絡関係米国銀行との連絡というものに万全を期する必要があるばかりでありませず、事業計画等につきましても万遺漏なきを期する必要がありまして、この点からもこの会社の幹部その他の人事については、周到なる考慮を払うことが必要であろうと思うのであります。  それから要望の第五は、移民政策移民送出等を取り扱う海外協会連合会とこの会社との二本建で行われる建前になっておりますから、会社ができます暁におきましては、すみやかにこの海外協会連合会機構整備について所要の措置をとられんことを要望するわけであります。  以上をもちまして私の賛成討論を終ります。
  13. 植原悦二郎

  14. 穗積七郎

    穗積委員 私は日本社会党を代表いたしまして、先ほど各派理事から共同提案になっております附帯決議をつけて、この法案賛成の意を表明いたします。簡単にその理由を申し上げますが、同時に政府に対する要望もあわせて申し上げておきたいと思います。  従来わが国移民政策を見ておりますと、貧農または失業農民を非常に不親切に、外国移民をするというよりは、棄民といわれるような形容詞も過言ではない実情を示しておりました。ところが今度この法案を提出されるに当りまして、政府当局考え方は、四囲の進歩をみずから自覚されまして、むしろこれからの移民の比重を技術移民または企業移民により多くのウェートを置いていこうということは、われわれの本法案提案に対して賛成をいたします政府の基本的な考え方一つでございます。  ところが問題になりますのは、実はこのような移民に対する考え方並びに政策に重点を置いていこうということでありますならば、アメリカから千五百万ドルの金を借りてやるというようなけちなお考えでなくて、実は日本財政融資または民間資本の動員、すなわち民族の自己資本をもってやるのが当然だとわれわれは思います。その点については、実はわれわれとしては多くの疑点を持ちましたので、過去の委員会審議に当りまして、アメリカ出資の経過並びに条件政府考え等をただしましたところが、これは昨年吉田総理アメリカを訪問いたしましたときに、あまりにおみやげがなさ過ぎたので、これにれんびんの情を催したアメリカ政府または民間資本家どもわらじ銭として出した金でございますから、この千五百万ドルというものは三千万ドルが削り捨てられてこういうことになったので、従ってこれに対しましては、コマーシャルベースによります借款条件政府の保証という条件、並びに政府考えもわれわれの要望と同一であって、今後このような外国資本を拡大して借り受ける、またはその資本の投下に伴って外国資本日本移民政策発言をする、会社運営に干渉をするというような、金融資本家産業資本会社をコントロールするようなことは、万々今までの言質の中にないという事実を確かめましたし、この法案が成立いたしました後に借款協定を結ぶ場合に、政府アメリカ政府並びに銀行に対してそのことを念を押してかかるという確約を得ておりますので、この点についてはわれわれは了承して賛成の意を表する次第でございます。  次に私どもが問題にいたして、同時に賛成をいたしますが、政府に強く要望いたしておきたいと思いますことは、この会社法案を見ますと、会社移民との契約は単なる渡航費または経営資本貸借契約にほかなりません。従って宣伝、募集、選考、訓練、並びにかの地におきます受け入れ体制整備、さらにその後におきます移民めんどう等は、会社はこの法律案によりますと直接契約を通じて責任を持たないことになっております。そういたしますと、われわれがおそれますことは、この法案が実施されてどういう結果があとに生まれるかといえば、政府移民に対する基本的な考え方が、技術移民企業移民になって、より多くの資本を投下してかかるという考え方は非常に美しゅうございますが、実際は単にアメリカに借りた金を元手として、やや移民資金が増額されたにすぎない結果になり、その他のやり方については、もとのもくあみといいますか、旧態依然たるおそれもなしといたしません。そういう意味では、この法案だけを見ますならば、非常に希望的にも見えるとともに悲観的にも見られるのでありまして、そうなりますと、あと政府のこれに対する監督行政上のやり方と、それからできまする会社の当事者の責任感を持って会社運営に当る態度によって、それがよくも悪くもなるということにかかっているわけでございますから、従ってこの附帯決議でも申しましたように、われわれはこれを賛成するに当りまして第一に申し上げたいことは、その欠陥についてわれわれの心配することが杞憂に終りますように、そのためにまず第一には、特に附帯決議の第二で掲げましたように、今までは特に外務省農林省との間におきましてその責任を分っておったために、移民に対する責任は両方とも持つようで持たないような結果になっておりましたのを、今度一歩前進いたしまして外務省に統一いたしました。その統一いたしました結果、外務省が従来実務については農林省にまかせて、上の方だけ見て観念的に考えておった無責任さというものを同時に反省し、改める必要があろうと思うのです。すなわち移民行政の統一をはかり、責任の所在を明らかにするとともに、あくまで最後まで責任を持ってめんどうを見ていくという体制をとるために、特にこの附帯決議第二項につきましては、関係各省の間におきまして慎重なる反省と努力をお願い申し上げたい。これはこの附帯決議空文にならないように、また外務省を中心としまする農林省通産省労働省との問におきます了解事項空文にならないように、特に外務省において御努力要望いたしておきたいと思います。  それから第二の点につきましては、今北澤委員も申されましたが、この実務につきまするに当りましては、民間の団体はこの会社だけでなくて海外協会が当ることになっておりますが、これに対しまする補強政策については、これはこの会社法案が成立するとともに可及的すみやかにその補強体制について良心的に完了されたいことを特に要望いたしておきます。  第三には、かの地における受け入れ体制でございますが、この会社があるいは支店を設けあるいは外務省出先機関等を通じ、あるいは移民官をかの地に派遣いたしまして、そして移民受け入れ相手国政府あるいはまた企業主との間に密接なる連絡をとるようでございますが、その連絡調査だけでは不十分でございますから、どうぞ外務省は特に責任を持って、外務省並びに会社あとめんどうを見て、契約に従って権利義務を主張するだけでなくて、移民棄民になりませんように、困難なる開拓に当る移民でございますからその立場十分了とされて、受け入れ体制並びにその後の運営に当りましては十分責任を持って最後までめんどうを見られるように努力していただきたい。  以上がこの法案賛成するに当りまして私は特に強く要望いたしておきたい三点でございます。  最後につけ加えまして二点あります。一つ要望といたしましては、この会社外務省の外郭の利権の一つになる会社になるようなことのないようにしていただきたい。会社はもとより株式会社といたしましてコマーシャルベースによる運営をしなければなりません。しかしながら当座の会社経営というものは、おそらくは赤字になりましょう。国家が当然なすべきことを会社がかわってやるわけでありますから、従って赤字を覚悟してもやらなければなりませんが、しかし後に政府でしりぬぐいをしてもらえるというような安易な気持で会社運営に当らないように、特に監督責任のあります外務省としては心して、この事業計画資金計画並びに収支予算の決算に当りまして、厳重なる監督をしていただきたいということを特にお願いするとともに、裏返して申しますれば、会社としてはそういう立場でやりましても、おそらくは赤字が出る場合もございましょう。特に当初開拓時代においてはそういうことも予想されますが、そういう場合におきましては、先ほど北澤委員も言われましたが、これから政府移民予算も増額されまして、あくまで良心的にめんどうを見ていくという態度で臨んでいただきたい。  次にもう一つ政府にのみ要望いたしておきたいのは、これは会社運営とは直接関係がありませんが、先ほど北澤委員も言われましたように、各国との間に移民協定を早急に結ぶべきことを強く要望いたしまして、私の賛成趣旨といたします。
  15. 植原悦二郎

  16. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はただいま議題となっております日本海外移住振興株式会社法案並びにその附帯決議に対しまして、日本社会党を代表して賛成の意を表するものでございます。  海外への移民ということは、日本の人口問題から考えましても、この解決に当る上に非常に大切なことでございます。もっともっとたくさんの人が海外へ行って、そうして住めるようにしていかなければならないと思うのでございます。けれども、その行く人の身になって考えてみますと、なかなか大へんなことでございまして、非常に重大な決意をし、また自分たちの持っている財産を処理して、犠牲を払って行ってみましても、なかなか思うようにならない苦しい生活あるいは精神的苦しみ、いろいろなことがたくさんあると思うのでございます。もっと行った人たちが安心して楽しく働けるようにしてあげなければなりませんが、そのためにはこの指導に当る人が、教育の面でも技術の面でも、あるいはまた教養の面でも親切に、いわゆる海外へ移住する人の気持になって指導してあげなければならないと思うのでございます。にもかかわらず、ややもしますと今までの移民関係に骨を折っていた人たちが、むしろ移民人たちの気持で働いてあげなかったというきらいがあるのでございまして、そしてまた聞くところによりますと、あまりにもボス化していて、多くの人たちからの批判の対象となっていたというきらいさえあるのでございます。こういう点は今後十分気をつけていかなければ、移民行政というものは決して成功するものではないと思うのでございます。  今日日本移民に対しまして、まだなお警戒的な国があるということさえも、この委員会を通しても聞かれたのでございますが、そうした国に対しましてはりっぱな移民の方々を送り、その国の人たちの感情を十分ほぐしていただくような役割を、その移民の方々にしてもらうような努力こそ、今日最も必要であると思います。そのためには十分教養のある家族の人たちを選択すべきでありまして、そうすることによって将来の移民というものも、さらに発展する一つの道を作ることになる、こう考えるのでございます。  今日ここにこの法案を通しまして移民の振興をはかられようとしているのでございますけれども、この会社の今後の運営ということは非常に大事なことでございまして、これまでのこの種類のものが失敗をしたというそういうような失敗を再び繰り返さないように、そしてまた世の中の批判の対象となっていたという、そうした失敗を決して再び繰り返さないようにということが、十分に注意されなければならないと思うのでございます。  さらに注意しなければならないことは、この会社外国資本が入ってくるということございますから、その資本によって日本が卑屈になるというようなことがなくなってほしいと思います。そしてこの資本に負けずに、むしろそれを活用するという態度を、あくまでも堅持していっていただきたい、こういうことを要望するものでございます。  また委員会の質問の中にもございましたけれども、まだ現地においての受け入れ機関が十分にできていないということも聞いておりますが、そういう点につきましても十分注意を払っていただきたいと思うのでございます。  そしてまた同じ日本の中にありながら外務省農林省、そしてまた大蔵省とがお互いにいがみ合っているというようでは、決してその意図する目的は達せられないのでございまして、お互いに手を取り合って十分に移民の成果を上げなくてはならないと思います。  そこでこういう点を十分に勘案しまして、会社の設立されたその当初からそうした欠陥が補われるように、そうした失敗を繰り返されないように注意せられて、十分その成果を上げるようにということを要望いたしまして、私の賛成討論にかえる次第でございます。
  17. 植原悦二郎

    植原委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。まず日本海外移住振興株式会社法案を原案通り可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議なしと認めます。よって本案は原案通り可決いたしました。  次に各派共同提案附帯決議についてお諮りいたします。この附帯決議を本法案に付することに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議がなければさように決定いたします。なお本案に関する報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議がないと認めます。よってさように決定いたします。     —————————————
  21. 植原悦二郎

    植原委員長 次に関税及び貿易に関する一般協定への日本国の加入条件に関する議定書への署名について承認を求めるの件を議題といたします。質疑を許します。北澤直吉君。
  22. 北澤直吉

    北澤委員 ただいま議題となっております関税及び貿易に関する一般協定への日本国の加入条件に関する議定書への署名について承認を求めるの件につきまして、政府当局にお尋ねしたいのでありますが、委員諸君のいろいろ都合もありますので、きょうは簡単に質問しまして、また次の機会に質問を継続したいと思います。今回政府の非常な努力によって日本が待望のガット協定に大体参加し得る見通しがつきましたことは、まことに御同慶であります。  そこでまず第一に伺いたい点は、ガットの締約国の中で三分の二の締約国が日本の加入に賛成投票をする、それが八月の十一日までに三分の二の締約国の賛成があれば、九月十日に効力が発生して日本が加入を認められる、こういうふうな手続になっているようでありますが、八月の十一日までにこの三分の二の締約国の賛成が得られますかどうか、まずこの点を伺いたいと思います。
  23. 下田武三

    ○下田政府委員 現在までのところ、確実に賛成投票をしてくれます国が十九カ国ございます。そこで御承知のように三分の二は二十三カ国でございますから、残り四カ国を獲得するならばいいわけでありますが、これにつきましては目下関係国と鋭意折衝をいたしております。しかしながら、各国がそれぞれ国内的に非常にデリケートな立場にあるために、自分の国が賛成するという方向であることを公けにすることは非常に困るというような国がございまして、国の名をあげて御説明申し上げられないのは遺憾でございますが、この確実十九ヵ国のほかに、なお数国、わが方の見込みによれば、大丈夫賛成してくれると思う国がございますので、政府の腹づもりでは八月十一日までに所要数を獲得することは大丈夫間違いないと考えております。
  24. 北澤直吉

    北澤委員 ガットの協定には共産圏からはチェコスロバキアだけでありまして、ほかに共産圏諸国はどこも参加しておらないと了解しておりますが、その点いかがですか。
  25. 下田武三

    ○下田政府委員 その通りでありまする。
  26. 北澤直吉

    北澤委員 そうしますと私どもの心配いたしますのは、日本がこの協定に加入を認められた後におきましては、日本は輸出増進のためにたとえば補助金を出すとか、あるいは為替上の特別の措置をするとか、そういうことができなくなるわけであります。ところがソ連とか中共とかそういう国々がこれに入っておらないわけでありまして、現に東南アジア方面におきましては、近来中共が経済的に非常に進出をしまして、香港のマーケットその他におきましては、日本品よりも相当安い値段、特にこれは綿製品でありますが、日本の品物よりも安い下の値段でどんどん出ている。こういうふうな状態では、どうも日本東南アジア貿易におきまして、中共との競争が非常に激化する、中共の特殊の事情から安いコストで物ができる、こういうことから日本東南アジア・マーケットがどんどん荒される心配が現にあるのであります。こういうわけで、ソ連なり中共なりがこの協定に参加しておらないということになりますとその点で日本とは別個の立場に立って、貿易上のいろいろの方法がとれるというわけでありまして、その点について心配を持つわけでありますが、政府はこれについてどう考えておりますか。
  27. 下田武三

    ○下田政府委員 まことに仰せの通り、ガットという本来ユニヴァーサルであるべき国際的機関に、共産圏からわずかにチェコスロバキアのみということは、非常に大きな欠陥であると存じます。しかしこのガットに掲げますいろいろの規定は、当事国のみを拘束することは言うまでもないことでありますので、ただいま御指摘のような香港ないし中共方面に対するガット非加盟国たる共産圏諸国が不当な廉売競争をするというような事態に対しましては、ガットの方法を通じまして何ら解決することはできないわけであります。これはガット以外の方法で、国際的の見地から考えなければならない問題である、そういうように考えます。
  28. 北澤直吉

    北澤委員 ソ連はどういう事情でこれに参加しておらないのか。中共がこれに参加するについてはいろいろ問題がありまして、たとえば中共の方で希望してもガットの方で認めないということかと思いますが、ソ連がこれに入っておらないのはどういうことか。ソ連の方でこれは入りたくないというのか、あるいはガットの方でこれを入れないというのか、その点はどういうふうになっておりますか。
  29. 安倍勲

    ○安倍説明員 御存じの通り、ソ連は、貿易についてガットの建前といたしております貿易の自由化、従いまして輸出についての管理あるいは関税について交渉によって税率を引き上げる、こういうようなシステムをとっておりませんものですから、このガットに加入しますという希望も表明した事実はないのでございます。ただ最近の新聞で見るところによりますと、ジュネーヴでソ連が貿易国際協力機関と申します追ってガットが移り行くような国際機関でございますが、それに対して加盟したいというような新聞報道がございましたが、これについてはただそういったソ連側の言ったという、表明だけでございまして、手続的にもまたそれが正確な報道であるかどうか、まだこちらでは承知しておらない次第でございます。
  30. 北澤直吉

    北澤委員 この十八日からジュネーヴで開かれた四巨頭会談におきましては、東西の交流の促進というふうなことが議題に上っておりますが、今回の巨頭会談の結果両陣営の関係がある程度調整されれば、またソ連がこれに参加するというようなこと、そうしてただいま御説明のようにこの協定に関連する国際貿易機構にソ連が参加するというふうになる、そういう話でありますが、私どもはやはりソ連もこの世界的な貿易機構に参加することを期待するのであります。こういう点につきましては、ソ連がこれに入るかどうかということは、日本貿易から見ましても重大な関係がありますから、一つ政府におきましては、ソ連の動きについて十分注意されんことを希望するわけであります。  そこで次の問題に移りますが、今政府の答弁のように、大体八月の十一日までには三分の二の締約国、すなわち二十三カ国の賛成が得られるというのでありますが、イギリスとかあるいはオランダ、ベルギー、ルクセンブルグのベネルックス三国、こういう国々は、よしんば日本のガット加入を認めても、ガット協定の三十五条を援用して、日本とイギリスとの関係におきましてはガットの規定を適用しない、そういう三十五条を援用するというふうな動きがあるようでありますが、イギリスのほかに、日本の加盟そのものには反対しないでも、三十五条を援用して日本との関係においてはガットの規定の適用を排除する、こういうことを考えております国は、どういう国がありますか。
  31. 下田武三

    ○下田政府委員 英国は、仰せのように、先般日本に対しましてガット問題に関連させまして通商航海条約の締結にも言及した全般的な覚書をよこしております。その際に三十五条の援用ということにも触れていることは、御承知の通りであります。そのほかには御承知のベネルックス三国、フランスは、確実に三十五条の援用をいたすと思うのでございます。その他、従来の経緯から推測いたしますと、英連邦諸国の中にもあると思うのでありますが、これは実はわが方から、三十五条を援用するだろうということを予測しているようなことを申すのも非常にまずい点もございますので、その他なお数国というように御了解願いたいと思います。
  32. 北澤直吉

    北澤委員 三十五条を援用する国がどういう国かということは、ただいま政府の答弁のように、微妙な関係がございましょうから、これ以上追及しませんが、しからば日本としましては、三十五条を援用する国に対しては、一体どういうふうな対抗措置をとるか、一体政府はどういうふうにこれについて考えているか、この点について伺いたいと思います。
  33. 下田武三

    ○下田政府委員 三十五条を援用いたします国は、先方もわが方に関税上の最恵国待遇を与えないで、また輸出入規制につきましても差別待遇をしていいわけでありますが、そのかわりわが方におきましても、向うがやると同じような自由な立場に置かれるわけでありますから、理論的には、先方と同じ報復的と申しますか、措置をとれるわけであります。しかし理論上できますことを全部やるかどうかということは、これは政策的、経済的の利害から判断すべきことだろうと思いますが、少くとも理論的には、先方と同じ立場に立ちまして同じような措置がとれるわけであります。
  34. 北澤直吉

    北澤委員 わが方が報復措置をとる場合におきましては、今の日本の関税法できまっております特定税率というものがありますが、それよりさらに高い最高税率をきめてそういうものもできるようになっておりますかどうか。それをやるかやらぬかは別ですが、日本が希望する場合には、そういうふうな措置もとり得るかどうか、それだけの日本の制度ができておりますかどうか。
  35. 北島武雄

    ○北島政府委員 関税率の問題につきまして、下田さんがおっしゃったことを多少、補足しましてあわせてお答え申し上げます。  ガットの規定から申しますと、わが国に対しまして三十五条を援用した国に対しましては、関税率につきましても協定税率を適用する義務はないわけでございます。ただすでに三十五条を援用することを声明いたしております英国につきましては、例をあげてもよろしいかと思いますが、英国につきましては、これは税制の上におきましては特恵税率と一般税率の二本建でございます。従来ガットにおきまして関税交渉をいたしますと、一般税率をガット税率に合せて直しているわけでございます。従いまして、日本に対しましては今まで他のガット加盟国と同じような待遇を与えてくれている、すなわち事実上いわゆる最恵国待遇を与えてくれているわけでございます。この点から申しますと、来年の四月二十七日まで、すなわち平和条約第十二条によりまして、来年の四月二十七日までは、相手方が最恵国待遇を与える限りにおいて日本としては与える義務があるわけでございます。英国の産品につきましては、今度のガット税率を適用することに相なるかと存じます。その他の国につきましては、原則といたしまして一般の特定税率、すなわち関税定率法によるところの別表輸入税表を適用することになるわけであります。そこでガット加盟国に対しては、もし引き下げた税率があります場合には、その低い方の税率を適用する。ガット加盟国におきましても、三十五条を援用する国に対しましては、原則といたしましてただいま申し上げたような一般特定税率を適用することになる。なおそのほかに、関税定率法におきましては、わが国の産品に対しまして差別待遇をする国に対しましては、政令をもちまして国及び品名を指定して、当該貨物の価格と同額以下の関税をかけることに相なっております。これを関税定率法では複関税と名づけております。こういう措置はとれることになっておりますが、果してこれを適用するかどうかにつきましては、なお外務省その他ともよく慎重に研究いたしまして、利害得失を考えた上善処いたしたいと考えております。
  36. 北澤直吉

    北澤委員 今の点はよくわかりました。  次に伺いたい点は、もしある国が三十五条を援用した場合におきまして、日本との関係においてはガットの規定を排除いたしましても、今回の日本の加入によって日本とその他の国との間にいろいろ関税の譲許が行われても、そのものは生きているわけです。そうすると、たとえばイギリスからアメリカに物を輸出する場合におきましては、日本との関係においてはガットの規定を排除しましても、アメリカに輸入する場合におきましては、今回の関税の譲許によってきめられた率の恩典を受けるかどうか、その点を一つお伺いしたい。
  37. 北島武雄

    ○北島政府委員 お説の通りであります。英国からアメリカに輸出いたします場合におきましては、今回アメリカが譲許いたしました税率の恩典に浴するわけであります。
  38. 北澤直吉

    北澤委員 そういたしますと、せっかく一方は日本において相当の関税上のコンセッションを与えた。それに対応してアメリカその他の国も関税のコンセッションをした。これに対してイギリスは、日本との関係においてはガットの規定を排除しましても、そういう日本のコンセッションに伴って、今度はアメリカその他の国との関係におきましては、イギリスばかりでなく、三十五条を援用する国々は非常な恩典を受ける、こういうふうに解釈して間違いありませんか。
  39. 北島武雄

    ○北島政府委員 お説の通りであります。
  40. 北澤直吉

    北澤委員 今度の一般協定日本国の加入条件に関する議定書の付属の関税譲許表でありますが、この交渉は大へんむずかしい交渉であったと思うのでありますが、これによりますと、日本側においては少くとも相当の品目におきましてコンセッションを与えている。一方アメリカの方も相当たくさんの品目について譲許を与えている。その他の国はあまり譲許してない、こういうふうでありまして、アメリカとその他の国との間に、譲許をするについても非常に違いがあるのでありますが、それは特にアメリカがこのためによその国に比べて非常に好意的考慮を払ったかどうか、その点についてお伺いいたします。
  41. 北島武雄

    ○北島政府委員 御承知のごとく、今まで日本アメリカと関税交渉をいたしておりませんので、日本の特産品等につきまして、アメリカにおいてガット税率を設けられておらなかったものが相当あるわけです。これらの品目は非常に高い関税率でございます。代表団といたしましては、アメリカとの関税交渉におきまして、アメリカからはできるだけ多くのコンセッションをとるというふうにいたした次第であります。もちろん代償としてわが方からもアメリカに対して——アメリカの見方からすれば、非常に少かったと思えるかもしれませんけれども、代表団としては、できる限りの代償を払ったつもりでございます。その他の国においては、日本の関税率と比較しても、あまり違いはなかったというのが実情でありまして、わが方においても、非常に強く相手方の関税率の引き下げを特に必要としたというふうな国は、比較的少かったように思います。従って、わが方の第三国に対する譲許もまた、原則として据え置くという格好になっております。特にアメリカ日本に対して好意的にやってくれたかどうかということについては、これはいろいろ見方もあるわけでございますが、私どもとしては、アメリカとしては今回の関税交渉において、従来アメリカと各国に与えた程度の最大限度の譲許を与えてくれたのではないかと信じます。こういう点から申しますと、アメリカ日本に対して好意的にやってくれたということは言えるかと思います。
  42. 北澤直吉

    北澤委員 今回の日本とよその締約国との関税の譲許でございますが、この付属書によりますと、既締約国が譲許した成立の総数が二百八十八種、それから、日本が譲許した成立の総数が二百四十八種ということになっておりまして、政府の方においては、これでもってバランスをとった、こういうお考えでありましょうか。どの辺にめどを置いてバランスをとるかということは、非常にむずかしい問題であると思いますけれども日本の方では二百四十八、既締約国の方が全部ひっくるめて二百八十八、この線でバランスをとったについての政府考えを述べていただきたい。
  43. 北島武雄

    ○北島政府委員 関税交渉の過程において、どの点にバランスのめどを置くかということは、非常にむずかしい問題であったわけであります。一がいに申しかねますけれども、まず相手国の譲許品目の数、当方の譲許品目の数、それから相手国の関税率の高さ、これに対して、わが国の関税率の高さ、相手方の譲許の度合い、これに対するわが国の譲許の度合い、それから、相手方並びにわが国の譲許いたします品目の貿易額等、いろいろの要素を勘案して、一応これでもってバランスがとれておるというつもりで妥結いたしたのであります。
  44. 北澤直吉

    北澤委員 それではもう一点伺って、きょうは質問を打ち切って、また次の機会にいたしますが、今回のガットに関連する関税譲許によって、日本の対米貿易その他が非常に利益を受ける。新聞などの報道によりますと、これで対米輸出が二千万ドルか、二千五百万ドル増加するのではないか、その他の地方がこれによって千万ドルぐらい日本の輸出が増加するのではないか、こういう報道がありますが、政府当局においては、どのような見通しを持っておりますか。これによって、大体どのくらい日本の輸出増進ができるとお考えでありますか。
  45. 北島武雄

    ○北島政府委員 アメリカが関税率を引き下げた結果、どの程度日本の対米輸出が伸びるかということにつきましては、実は計算が非常にむずかしいのでありまして、いろいろな見方があるわけであります。まず第一に基準になりますのは、アメリカが今回の引き下げによって、どの程度の日本商品に対する関税収入の減があるであろうか、これが一つの目安になるわけであります。これは最低限度の目安であろうかと思います。他方、関税率を引き下げることによって、価格が下れば、それだけ日本の商品が伸びる関係にございます。この関係については、実はごく最近、新しく試算してみたのでございますが、昨年中における日本の対米輸出品目について、価格推移を見ました。価格がどの程度下ったならば、どの程度伸びておるか、こういう相関関係をつかんで試算してみたのでございますが、その結果によっても、約三千万ドルという数字が出ております。これは、そのほかさらに、くろうと筋の見方、業者その他から分析して当らなければならぬわけでありますが、通産省農林省、大蔵省いろいろ共同して査定をいたしますと、二千万ドルから三千万ドルということは申し上げることができるかと思います。
  46. 北澤直吉

    北澤委員 今年の一月から六月までの日本のドル地域との輸出を見ますと、非常に好調でありまして、今年は年間で全部ひっくるめて十八億ドルくらいの輸出になるだらうというふうなことで、最初の政府の予想よりもだいぶ上回っているようであります。もし今回のこれによって、さらにその上にアメリカだけでも二千万あるいは三千万ドルの輸出増加を認められるということになりますれば、非常な朗報であろうと思いますが、最近逆の方向でアメリカの方で日本との貿易について問題が起っているようでありまして、きょうの新聞を見ますと、アメリカの上院で、アメリカはこの関税交渉において関税を下げ過ぎた。従ってアメリカの関税委員会はすみやかにそれを調査しろ——国内の繊維業者その他の要請をいれてよく調査しろと言っているようであります。今回の関税譲許によって、米国方面においては、繊維業者その他がだいぶ悲鳴を上げている状況でございますが、大体どういう実情でございますか。
  47. 北島武雄

    ○北島政府委員 これは私から御答弁申し上げるのは適当かどうか存じませんが、私が存じている範囲において申し上げます。アメリカにおきましては、繊維、陶磁器、マグロその他の品目があるわけであります。従ってこの三つの方面においてアメリカが大きな譲許をし過ぎたという非難があるようでございます。幸いにわが国においては、日本の関税率を下げ過ぎたという御非難がないのはせめてもと存じておりますが、アメリカの一部においてこういう非難があることは、わが国の業者としても十分これから戒心しなければならぬところでなかろうかと存じております。関税が下ったからといって、直ちに安値で売るというようなことになりますと、あるいはダンピングその他の問題が起きまして、それを口実にきっかけを作られるおそれもございますので、日本の業界は十分厳重に戒心する必要があるのじゃなかろうか。これは私の個人的な考えでございますが、今回の関税の引き下げによって、とりあえず日本の業界として考えなければならぬことは、今までの悪かった取引状況を改善することにまず持っていくべきじゃなかろうか。関税が下ったからといいまして、すぐ多くの数量を出すということでなく、数量はある程度にとどめておいても、金額においてふえる、すなわち取引状況を改善する方向に持っていった方が、よりアメリカ国内におけるダンピングその他の問題を解消させる方法じゃなかろうかと考えております。
  48. 北澤直吉

    北澤委員 今回の関税譲許によって、アメリカの方では相当の品目にわたって関税の引き下げあるいは据置をしたわけでありますが、御承知のようにジョージ修正案を加えた例のクーパー法案通りましても、今回の譲許によって一五%下っている上に、さらに日米間に交渉が成立すれば、もっと下げる余地があるかどうか。
  49. 北島武雄

    ○北島政府委員 今回成立いたしました互恵通商協定法の延長法案については、ただいま御指摘のごとく、当初の原案においては、今年の七月一日現在の関税率に対して、今後三年間に一五%引き下げるということになっておりましたのを、今年の一月一日現在に改めたわけであります。従って今回の日本アメリカとの関税交渉に基きまして、すでに一五%以上税率を引き下げたものにつきましては、今回通過いたしました法案の恩典に浴しないわけでございますが、ただ今回の関税互恵協定におきましても、全然譲許のなかった品目、あるいは譲許がございましても据置だった品目、あるいはまた一五%に満たなかった品目、こういう品目につきましては、今後なお今回の法案の恩典を受けるわけであります。この点につきまして実は民間の中に多少誤解もあるやに存じられておるのでありますが、実は一五%の関税率の引き下げということは単純な差引計算ではないのでございまして、たとえば現在二〇%の関税率を一五%下げると申しますと、普通では五〇%まで下るもの、こんなふうに感ずる向きもあるようでございますが、それはそうではございませんで、二〇%の場合でありますと三〇%まで下る、つまり一七%まで下げられるということでありまして、この一五%という数字は必ずしも大きなものではない、これが実は巷間には不当に大きく伝えられておりまして、日本としては損をしたのじゃないか、そういうお説があるようでありますが、この一五%というものはさほど大きなものではないということが第一点かと思います。  それからもう一つ民間に大きな誤解がありますのは、わが方としまして何ら譲許しなくて向うが下げてくるというように考えられておるのでありますが、これがそうではありませんで、あくまでもギブ・アンド・テークの関係でありますから、わが方といたしましても、アメリカからさらに譲許を獲得する場合には、わが方の低い関税についてさらに何らかの譲許をしなければならぬ、こういう苦しい立場にはあるのであります。
  50. 北澤直吉

    北澤委員 それではきょうはこれだけにしておきます。
  51. 植原悦二郎

    植原委員長 松岡さん、きょうは質問はありませんね。——次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時十二分散会