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1955-06-04 第22回国会 衆議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月四日(土曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 大橋 忠一君 理事 菊池 義郎君    理事 須磨彌吉郎君 理事 北澤 直吉君    理事 福永 一臣君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    草野一郎平君       高岡 大輔君    並木 芳雄君       山本 利壽君    福田 篤泰君       渡邊 良夫君    高津 正道君       森島 守人君    戸叶 里子君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君  出席政府委員         外務政務次官  園田  直君         外務事務官         (大臣官房長) 島津 久大君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君         外務省参事官  寺岡 洪平君         外務省参事官  安藤 吉光君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 六月一日  航空業務に関する日本国カナダとの間の協定  の締結について承認を求めるの件(条約第七  号)  船舶滅失又は沈没の場合における失業補償  に関する条約(第八号)の批准について承認を  求めるの件(条約第八号)  海員の雇入契約に関する条約(第二十二号)の  批准について承認を求めるの件(条約第九号)  海上使用することができる児童最低年齢を  定める条約(千九百三十六年の改正条約)(第  五十八号)の批准について承認を求めるの件  (条約第一〇号)  船員健康検査に関する条約(第七十三号)の  批准について承認を求めるの件(条約第一一  号)  商品見本及び広告資料輸入を容易にするため  の国際条約への加入について承認を求めるの件  (条約第一二号)  観光旅行のための通関上の便宜供与に関する条  約の批准について承認を求めるの件(条約第一  三号)  観光旅行のための通関上の便宜供与に関する条  約に追加された観光旅行宣伝用資料輸入に  関する議定書批准について承認を求めるの件  (条約第一四号) 同月三日  日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法の一  部を改正する法律案内閣提出第一二一号) 同月一日  原子戦争準備反対に関する請願戸叶里子君  紹介)(第一五〇二号)  南樺太返還に関する請願町村金五君紹介)  (第一五〇三号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第四四号)  千九百三十六年の危険薬品不正取引の防止に  関する条約批准について承認を求めるの件(  条約第五号)  航空業務に関する日本国カナダとの間の協定  の締結について承認を求めるの件(条約第七  号)  船舶滅失又は沈没の場合における失業補償  に関する条約(第八号)の批准について承認を  求めるの件(条約第八号)  海員の雇入契約に関する条約(第二十二号)の  批准について承認を求める件(条約第九号)  海上使用することができる児童最低年齢を  定める条約(千九百三十六年の改正条約)(第  五十八号)の批准について承認を求あるの件(  条約第一〇号)  船員健康検査に関する条約(第七十三号)の  批准について承認を求める件(条約第一一号)  商品見本及び広告資料輸入を容易にするため  の国際条約への加入について承認を求めるの件  (条約第一二号)  観光旅行のための通関上の便宜供与に関する条  約の批准について承認を求めるの件(条約第一  三号)  観光旅行のための通関上の便宜供与に関する条  約に追加された観光旅行宣伝用資料輸入に  関する議定書批准について承認を求めるの件  (条約第一四号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  政府側より発言を求められておりますので、この際これを許します。園田外務政務次官
  3. 園田直

    園田政府委員 関税及び貿易に関する一般協定、すなわち、いわゆるガットへのわが国正式加入に関する議定書署名が数日中に実現の運びとなりましたので、この際ここに今日までの経緯を御報告申し上げたいと存じます。  さきに本院においてわが国ガットへの仮加入に関する宣言、次いでこの宣言を延長する議定書の御審議をわずらわしましたが、その際に御説明申し上げた通り政府といたしましては、もとよりガットへの仮加入に満足するものではなく、わが国際貿易伸長見地から、一日も早く正式加入実現すべく努力を続けて参りましたところ、昨年十月の第九回締約国団会議の決定に基き、本年二月二十一日からジュネーヴにおきまして、わが国正式加入実現前提となる関税交渉関係国十七カ国との間に開始いたしたのであります。この交渉は、会議参加諸国との間の多角的な交渉であり、かつ国々により利害関係の複雑な関税の相互譲許内容とするものでありますだけに、困難かつ長時日の折衝を必要といたしましたが、このほどようやく妥結の見通しがつくに至りました。  すなわち、ただいまお手元に配付いたしました関税及び貿易に関する一般協定への日本国加入条件に関する議定書案とこれに付属いたします関税譲許表とが、本月初旬中に最終的に確定し作成された上、直ちに関係国による署名のため開放されることと相なる予定でございます。  本来ならば国会開会中のことでございますから、関係分書を取りそろえて事前に御審議をわずらわした後、署名を行うべきでございますが、議定書付属関税譲許表最後の瞬間まで確定いたしませんので、署名開始期日の前に、国会提出して御審議をわずらわしますことは技術的にも全く不可能でございます。  さりとて本議定書は、わが国待望ガットへの正式加入実現せしめることを目的とし、かつ、わが国が率先して署名することを当然の前提として作成されたものである事実にかんがみまして、わが国署名をおくらせますことは、はなはだしく不適当かつ不得策なことでございます。また米国のごとく、わが国署名したならばその直後に署名しようと待ちかまえておる国も現にあるような状態でありまして、会議参加しました各国代表がそれぞれ本国に帰ります前に、会議地においてできるだけ多くの国の署名を獲得することを得策とするのであります。これがためにも、これらの分書署名のため開かれると同時に、わが国が直ちにこれに署名することが絶対に必要と相なる次第でございます。  よって付属書がそろいませんため、いまだ正式には国会提出手続がとり得ないのでございますが、関係分書中の主体たる議定書をここにお目にかけましてあらかじめ御検討おきを願い、できる限りすみやかに関係文書全部を取りそろえまして正式に御審議をわずらわすことといたしたいのでございます。本件に関する緊切な国家的利益を全ういたしますためにはこれ以外の方法がございませんので、ここに最近の経緯を御報告申し上げるとともに、かような措置をとりますことについてあらかじめ御了承を仰ぐ次第でございます。
  4. 並木芳雄

    並木委員 私議事進行についての発言があるのですが、それともう一つ、今のガットへの正式加入に関する事前報告についての質問は許されますか。
  5. 植原悦二郎

    植原委員長 これは報告ですから、報告として聞きおいて、審議のときに質問をしていただきたい。
  6. 並木芳雄

    並木委員 議事進行について私一つお願いがございます。それは、先般来濃縮ウランの受け入れについて、本委員会としても予備審査をやって参りました。ところが審査の過程において、私ども外務委員としていろいろ了解のつきかねる点が多うございますので、私考えたのでありますが、やはり外務委員としては、一度この問題について濃縮ウランを提供する本国であるアメリカに行って現地視察をする必要があるのではないかという点でございます。どなたに聞いても、重さは六キロであるけれども、大きさはどのくらいであるとか、それからどのくらいの動力を発するものであるかわからずに今審議をしておるようなもので、もし政府調印をいたしますれば当然この外務委員会にかかって参ります。われわれがその承認を与えるかどうかを審議するのでありますけれども、何も知らずにみずてんのような姿で審議をするということは、国会の権威にかけてもどうかと思われますので、私は委員長にお願いしたいのですが、至急外務委員会として委員アメリカに派遣して、そうして現地視察、現品、その他の情報について事情を調査してくる、そのことをお取り計らい願いたいのでございます。アメリカがほんとうに秘密がないというならば、私どもはこの協定締結しなくても、先方に行って当然見せてくれるはずでございますし、また説明もしてくれるはずでございます。できることならばなるべく大ぜいの委員が向うに行けるように、そして短期間でけっこうでございます。十日か二週間ですぐ帰ってきて、今国会中にもし調印をしたならば、われわれがその批准をすべきかどうかの審議ができるように帰ってくる。そういう段取りで委員派遣の点についてお取り計らいをお願いしたいと思うのであります。
  7. 松本七郎

    松本(七)委員 今の問題について……。ただいまの並木委員発言趣旨はわれわれも大賛成です。ただ、並木さんの御意見をここで決議でもするというような趣旨だろうと思うのですが、やはり本院全体の運営上の問題ですから、委員会としてはそういう希望のあることを委員長から一つ運営委員会にでも諮っていただいてやるのが一番いいのじゃないかと思います。
  8. 植原悦二郎

    植原委員長 今並木君の議事進行は、お述べになったようなことを希望するからそれを政府に伝えてみて、そしてよろしく取り計らえ、こういうことだと了解いたします。
  9. 並木芳雄

    並木委員 ほかの委員の皆さんにお諮りしていただいて、この委員会としての一つの結論が出たら、それを至急委員長としてはしかるべき筋へ取り上げていただきたい。
  10. 植原悦二郎

    植原委員長 それではあなたのは議事進行じゃなくて動議ですか。どちらです。議事進行というので発言を許したのですよ。あれは議事進行ですか。
  11. 並木芳雄

    並木委員 私の言うのは、その希望を述べたのですから、委員長がそういうふうに取り計らっていただけばけっこうだと思います。
  12. 植原悦二郎

    植原委員長 承わっておきます。松本君はそういう希望に対して賛成だ、こういうことですね。
  13. 松本七郎

    松本(七)委員 並木君の発言議事進行発言を求めて、そして正確に言うならば、そういう動議を出したんだが、その趣旨には私も賛成だけれども、ここで委員会に諮って決議をするというようなことをする前に、やはり全院の運営に関する問題だから、もしも理事会をもう一度開かれるなら開いて、そして委員長から運営委員会に持ち出してもらいたいというのです。
  14. 植原悦二郎

    植原委員長 了解いたしました。     —————————————
  15. 植原悦二郎

    植原委員長 次に本日の日程中、条約第七号より条約第十四号までの八件を一括して議題といたします。政府側より順次提案理由説明を求めます園田外務政務次官
  16. 園田直

    園田政府委員 ただいま議題となりました航空業務に関する日本国カナダとの間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、昭和二十八年四月以降カナダとの間に航空業務に関する協定締結のための交渉を東京において行なって参りましたが、昨年末に至り交渉当事者間の意見がまとまりましたので、その結果に基き、本年一月十二日にオタワにおいて、この協定が、わが松平大使カナダピアソン外務大臣及びマーラー運輸大臣との間で署名されるに至りました。  この協定は、さき国会の御承認を得ました日米日英日タイ日スウェーデン等航空協定と同一の目的及び意義を有しておりまして、その内容も大差はございません。カナダは、サンフランシスコ平和条約十三条(b)に基き、暫定的にわが国乗り入れの一方的な権利を持っておりますが、この協定締結により、わが国は、カナダとの関係においてこの片務的状態を解消して、わが国航空企業も、カナダ航空企業と平等の条件カナダ乗り入れを行うことができるようになるわけでございます。  よって、この協定の御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御承認あらんことをお願いいたす次第であります。  次に船舶滅失又は沈没の場合における失業補償に関する条約(第八号)、海員の雇入契約に関する条約(第二十二号)、海上使用することができる児童最低年齢を定める条約(千九百三十六年の改正条約)(第五十八号)及び船員健康検査に関する条約(第七十三号)について提案理由を御説明いたします。  船舶滅失又は沈没の場合における失業補償に関する条約は、一九二〇年に国際労働機関、すなわち、いわゆるILOの第二回総会で採択された条約でありまして、その目的とするところは、船舶滅失または沈没により海員失業した場合に、船舶所有者船員失業期間中、賃金と同じ割合補償金を支払わねばならないと規定することにより海員を保護しようとすることであります。  次に、海員の雇入契約に関する条約は、一九二六年にILOの第九回総会で採択されたものでありまして、主として海員利益保護見地から、船舶所有者海員との間に行われる海員雇契約成立要件契約内容等一定の規制のもとに置くことを目的とするものであります。  次に、海上使用することができる児童最低年齢を定める条約は、一九三六年にILOの第二十二回総会で採択されたものであります。この条約は、同じ名称を有する条約で大正十三年にわが国批准したものの全文改正条約でありまして、その改正趣旨は、前条約において十四歳未満の者の船舶における使用を禁止していたものを十五歳未満の者の使用禁止にまで及ぼすことであります。  最後に、船員健康検査に関する条約は、一九四六年にILOの第二十八回総会で採択されたものでありまして、その目的とするところは、健康証明書を保有する船員にのみ船舶乗り組みを認めることにより船員の健康を保護しようとすることであります。  以上四条約目的とするところは、それぞれただいま簡単に御説明申し上げました通りでありますが、これら条約内容は、いずれもわが国内法においてすでに規定せられ、実施されているところであります。従って、わが国がこれら四条約当事国となることには、特に法律的の意義があるわけではありませんが、これらの条約批准することにより、わが国が公正な国際労働慣行を遵守している実情を広く世界に知らせ、また、将来もそれを維持していくことを国際間に約束いたしますことは、ILO憲章趣旨に沿った国際協力を進める点からいいましても、また、わが国海外における信用を高める点から見ましても、きわめて事宜に適するものと認められます。  以上の点を了察せられ、御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望する次第であります。  次に商品見本及び広告資料輸入を容易にするための国際条約への加入について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、第七回ガット締約国団会議において、一九五二年十一月七日にジュネーヴで作成されたものでありまして、一九五三年二月一日から同年六月三十日まで署名のために開放されましたが、その後は、国際連合事務総長加入書を寄託して加入することになっております。  この条約は、わが国が、さき当事国となっている税関手続簡易化に関する国際条約第十条の見本に関する規定を拡充したものでありまして、商品見本及び広告資料輸入に関する規則を国際的に統一し、もって国際貿易の拡大を促進することを目的としたものであります。わが国は、この条約当事国となることにより、わが国商品見本及び広告資料に対し、他の締約国による統一的な取扱いを確保することができ、もってわが国商品海外進出と一そうの国際貿易の振興とをはかることができるわけであります。  この条約は、いまだ効力を生じておりませんが、十五ヵ国の参加を待って、近く効力を生ずるものと予想されております。わが国といたしましても、以上に述べました利点を考慮に入れ、この際この条約加入し、商品見本及び広告資料交流の分野における国際協力の実をあげることが必要であると考えます。  以上の事情了承せられ、慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望する次第であります。  最後観光旅行のための通関上の便宜供与に関する条約批准について承認を求めるの件及び観光旅行のための通関上の便宜供与に関する条約に追加された観光旅行宣伝用資料輸入に関する議定書批准について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約及び議定書は、国際連合主催のもとに客年五月から六月にかけてニューヨークで開催され、わが国代表参加せしめた国際会議において作成されたものでありまして、わが国は、客年十二月二日特命全権大使沢田廉三をして署名をいたさせました。  まず前者の条約は、外国からの観光客など一時旅行者が携帯搬入する身回り品嗜好品みやげ品一定品目一定数量につき、再輸出条件として、または消耗品の場合には再輸出条件とせずに、免税輸入することを当事国相互承認することを内容としております。わが国は、この条約当事国になることにより、外国からの観光旅行者に対し通関上の便宜を与え得ることとなるため、わが国観光事業を発展させる上に大きな利益を受けることになります。  次に議定書は、観光旅行など海外旅行の奨励を目的とする無料配布用宣伝資料を免税輸入すること、及び同目的無料展示用宣伝資料を再輸出条件として、一時的に免税輸入することを当事国相互承認することを内容としております。わが国は、この議定書当事国になることにより、これらの資料海外に向け容易に輸出することができるようになり、わが国への観光客誘致運動を従来よりも一そう活発に実施し得る利益があります。  よって、この条約及び議定書批准につき、御承認を求める次第でございます。右の事情了承せられ、慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  17. 植原悦二郎

    植原委員長 これにて提案理由説明は終りました。ただいま説明の各件に関する質疑次会に譲ることといたします。     —————————————
  18. 植原悦二郎

    植原委員長 次に在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案議題といたします。本件について質疑を許します。大橋忠一君。
  19. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 この前本件に関連していろいろな資料を求めておきましたが、その資料について口頭でもって要点だけを御説明願いたいと思います。
  20. 園田直

    園田政府委員 目下御審議を願っております在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案について、大橋委員より先般質問がございまして、資料提出を要求せられましたので、それに基き、本日在外公館の増置ないし格上げを予定しております設置理由目的等につきまして資料をお配りいたしましたので、詳細御検討を願いたいと考えます。これについて簡単に口頭で概略を御報告申し上げます。  今般新たに公館開設を予定している国ないし既設公館格上げを予定している国は、いずれもあるいはわが国の安危と関係の深い政治情勢の観察のため枢要であるか、あるいはわが国との間の貿易増進技術協力発展等のために必要欠くべからざる国であります。特にこれらの地域は、現在の貿易量はさして大きくない場合におきましても、将来性に非常に富んでおりまして、この将来性を開拓することが必要なわけであります。特に各国ともこの地域に対する経済発展に激烈な競争を展開している現状でございまして、経済関係密接化の基盤たるべき国交関係緊密化についても、いたずらに他国の先例を追うだけでなく、わが国の置かれている地位、これらの地域わが国との間の特殊関係等を顧慮し、自主的に公館開設の方針を定め、これを実施していかないと、立ちおくれになるおそれがございます。  また先般公館開設効果の問題が取り上げられましたが、外務委員会委員各位はすでに十分御了承のごとく、一般的に申しまして外務省の仕事はその性質上本年投下した人的、物的投資が、翌年直ちにそれに相応する報酬をもたらすものでなく、何十年にわたる長期的な目をもって見通さなければならない関係上、予算折衝その他においても説明上常に少からざる困難を感じているのでありますが、外務委員会各位は特定の政策の効果を判定されるに際し、右の点につき外務省の苦衷を御賢察あらんことをお願いいたします。  なお、先般来外務省がいたずらに在外公館を乱設し、貴重な国家経費を浪費するものにあらずやとの御懸念の御表明がありましたが、外務省といたしましても時節柄この点は特に留意し、必要最小限にとどめるようにしております。すなわち可及的に兼轄制度を活用することとし、これは十二館ございます。先方からすでにわが国独立公館開設いたしており、相互主義上当方も独立公館を設置する義理合いの国に対しても、いまだ設定を見ていない状況であります。ノルウエー、デンマーク、パナマ等はこの例でございます。今回の改正法律におきましても、ラオス、タイの兼轄になっております。ニカラグア、グアテマラ、メキシコの兼轄になっております。これは兼轄とし、またさしあたりエチオアピには代理公使を置くにとどめております。  また、外務省予算国家予算に対して占める割合他国の場合と比較してみましても、わが国の場合が〇・五七%であるのに対し、米国二・五%、インド一・一%、英国〇・九七%、イタリア一・〇八%であります。また各国の出している在外公館の数に見まするに、先般御報告申し上げました通りわが国の七十一館に対しまして、米国の二百四十四、英国の四百五十六はしばらくおくといたしましても、ドイツ百二十、イタリア三百三十九でありまして、わが国外交布陣といたしましては、まだ羽翼備わらずとのうらみを深くするところでございます。  なお、在外公館のうち特に大使館を乱設し過ぎるとの御批判のあったように記憶いたしますが、戦後新興諸国が多数独立するとともに、大使レベルによる国交開設が非常に多くなって参りましたことは御承知の通りでございます。二、三の他国の例に見ましても、わが国公使館二十五に対し大使館を二十四設置しているのでありますが、インド公使館十六に対し大使館三十二、イタリア公使館三十三に対し大使館は三十六、フランスは公使館十八に対し大使館五十七、イギリスは公使館十四に対し大使館五十を設置している状況であります。  また自国との近隣諸国関係の特に深い国に対しては、その大小にかかわらず大使館を設置する慣例となってきております。たとえば米国中南米諸国にはすべて大使館を設置し、また英国仏国等欧州諸国にはすべて大使館を設置していることは好個な実例と見られます。  もっともかかる趨勢になって参りましたので、大使人選も昔日と異なり若手の人が出る傾向になって参りまして、各国とも大使を済ませた人が本省で局次長をするというような慣例も出てきております。  右のごとく大使人選の基準を変更する要のあることについてはまさに御指摘の通りでございまして、外務省といたしましても大使に四階級ありますが、いわゆる二等大使以下は公使と同等の扱いであり、また在勤俸につきましても、今般格上げないし設置しました大使館のうちヴェトナム、カンボジア、ラオス、イラン、セイロン、アフガニスタン等はいずれも最も低い在勤俸を定めております。なお具体的な人事運営ないし人選の点について御指摘の点は、まことにごもっともでございますので、外務省としても従来とも十分慎重に心がけて参りましたが、今後とも御意図の存するところはとくと考慮に入れ、適所適材の実をあげることを念とする所存でありますので、よろしく御了承を願いたいと考えます。
  21. 植原悦二郎

    植原委員長 なおこの際政府に私から御注意を申したいと思います。ただいま園田政務次官の御説明はほぼこの前に御説明があって、それに対して大橋君が質問をしておるのですから、なるべく時間の節約の意味において政府でも繰り返しのないように御注意申し上げます。
  22. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 なおこれについては重光外相に直接私は三、四点について質問いたします。さらに続いて他の各委員の御質問が終りましたあとで、皆さんの賛成を得たらその趣旨に基いた附帯決議を出したい、こういう意図でありますから、重光外相の御出席を待って簡単に要点だけを質問いたしますから、どうか御承知おきを願います。
  23. 植原悦二郎

    植原委員長 承知いたしました。
  24. 松本七郎

    松本(七)委員 私もこの問題は大臣にも少しお伺いしなければならぬことがあるのですが、その前に少し事情について聞いておきたいと思います。私どもの考えは後ほどいずれ大橋委員からも付帯決議案というようなものについて御質問があるようでございますが、その案についてもすでに配付されておりますから、われわれもお伺いしたい点はたくさんあるのですが、大体においてその考え方は大橋委員におそらく賛成できるだろうと思います。それについては、実施しておる政府当局のいろいろな事情もお伺いしなければなりませんけれども、その前にわれわれの基本的な考え方は、これからも相手国のあることですから、ある程度の格式ということは当然必要になってくるだろうと思います。けれどもやはり根本的には今までの長年やつてきた、いわば宮廷外交式のものから、国民外交、大衆外交というものにこれから切りかえていかなければならぬ重要なときに私はきておるのではないかと思います。そういう意味で、戦前にもやられておったような文化アタッシェ、こういうものが今日でも私は十分活用されてしかるべきではなかろうかと思います。日本の場合は、どうかすると文化関係のものを扱っておる外交官あるいはアタッシェ等が冷遇されておる。しょっちゅうこういう人がかわる。せっかくある文化的な仕事に相手国と密接な関係を結んでやっておっても、しょっちゅうかわって、その土地にほんとうになじみを持たないために、外国でやっておるような文化活動は、日本の場合には実績が上っておらないように思います。戦後こういう点については、どのような状態なのか、一応御説明をお願いしたいと思います。
  25. 園田直

    園田政府委員 政府といたしましては、文化外交の重要性をよく考えておりますので、まずユネスコに加盟をいたしまして、種々の文化的国際会議参加するなど、諸外国との文化交流に十分注意をいたしております。外交再開以来、わが国はすでにブラジルとの間に戦前の文化協定を復活いたしました。新たに日仏、日伊、日墨、日タイ各文化協定を結びましたが、今後その他の諸国とも文化協定締結に努めたいと考えております。外務省としては情報文化局を中心として、わが国の文化の海外における紹介に努力をいたしておりまして、在外公館にも積極的に分化外交の推進に努力をさせております。なお昭和二十九年には科学技術関係担当者を在米大使館に配置し、原子力などの科学的な成果を吸収するよう努力しております。その成果は着々上っておると考えております。なお科学技術行政協議会、は科学アタッシェの活動に対応する、海外科学技術情報部会を設置し、昭和三十年度においてはヨーロッパに科学アタッシェ一名を置き、欧州の科学技術情報の入手に努める所存でございます。文化アタッシェの配置については、すでに主要在外公館においては情報文化担当の要員がおりますので、特に新たな配置をする必要は認めませんが、今後予算及び定員の許す範囲で、こういうものを強化したいと考えております。
  26. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると新たに文化アタッシェというものは拡充しないという方針でございますか。
  27. 園田直

    園田政府委員 今報告申し上げました通りに、ヨーロッパの各在外公館にはすでに要員を配置しておりますから、むしろ外務省としましては、要員の拡充よりもそれに伴ういろいろな実施上の予算とか、その他の面について拡充していった力が効果がある、このように考えております。
  28. 戸叶里子

    戸叶委員 事務的な問題ですが、一点お伺いいたします。在外公館大使館公使館、領事館とあるわけですが、その規模の違い、人員とか、予算の違いはどんなになっておるか、ちょっとお伺いしたい。
  29. 島津久大

    ○島津政府委員 その土地の事情によりまして、たとい領事館でありましても公使館よりも人員規模が大きいところもございます。事務の繁閑によりましてそれに適合しますように、規模なり人員を配置いたしております。大使館だからといいまして、当然に大きいということはございません。現在のところは大体主要な米、英、フランスその他の大使館は、かなりの規模を持っておるわけでございます。大使館でもごく三、四名というような規模のところもございます。また公使館にいたしましても、ところによりましては十名以上配置をいたしておるところもございます。総領事館で十二、三名配置をいたしておるところもございます。大体土地の事情によるわけでございます。
  30. 戸叶里子

    戸叶委員 各国大使格上げをしてきたので、日本でもそれに応じて格上げをしてくるういう御説明はわかったのですが、ただ日本と、行くべき相手の国との話し合いだけで上げていくものか、それともよその国と見合せて昇格させるのか、その辺のところを一つ……。
  31. 島津久大

    ○島津政府委員 大体は相手国と話し合いまして相互に交換するわけであります。もちろん第三国がどういうふうに扱っておるかということも影響を受けるわけであります。必ずしも相手国との話し合いだけということではございません。これはまた事情によることでございます。
  32. 菊池義郎

    ○菊池委員 今の戸叶さんの御質問に関連してでありますが、そうしますと大使館に昇格した場合、今までの経費と、昇格後の経費は、大体どのくらいの違いがあるのですか。一々でなく全体の総額です。
  33. 島津久大

    ○島津政府委員 人件費が多少増加するくらいで、全体の経費はあまり違いはございません。
  34. 菊池義郎

    ○菊池委員 名誉領事などを置くようなお考えはございませんか。これまでも置いたような例が日本としてございますか。つまり外国人に頼んで名誉領事にする、あるいは日本人に頼んで名誉領事にする、いろいろな場合がございましょうが……。
  35. 島津久大

    ○島津政府委員 外国人を名誉領事に任命しておる例がございます。ただいまのところ八名ございます。
  36. 菊池義郎

    ○菊池委員 そういう場合には、報酬とかなんとかはどういうことになりますか。
  37. 島津久大

    ○島津政府委員 ごく概括的に申しまして、名誉領事ないしは名誉総領事に嘱託しております人たちは、その地方の実業家が多いのでございます。従いまして日本政府からは、事務費という程度で月に百ドルに及ばないくらいの程度の手当を支給しております。
  38. 菊池義郎

    ○菊池委員 大使館に昇格してもらいたいという相手国からの要望があったというお話をこの間されましたが、どういう場合にそういうことを希望するのでございますか。
  39. 島津久大

    ○島津政府委員 国交を回復いたしまして、在外使臣を交換する場合に、大がい近来は大使を交換したいという申し入れがあるわけであります。
  40. 菊池義郎

    ○菊池委員 大蔵省や通産省の古手の役人を大使に充てるというようなお話が、この前あったように記憶しておりますが、そういう連中で間に合うですかどうですか。
  41. 島津久大

    ○島津政府委員 別にどういう資格の人が適格者であるというような方針は、申し上げた覚えもございませんし、そういうような一般的な方針はないわけでございます。適材を適所に置くということでございます。
  42. 高岡大輔

    ○高岡委員 この際ちょっとお伺いしたいのでありますが、先ほど園田政務次官の御説明によりますと、だいぶ日本の今までの外交と角度違ってきたように考えるのですが、大使館員を拡充されていきます際に、農業ということはお考えになっていらっしゃるのかどうか。今度大使館にしたいという御希望の地区は、農業国が非常に多いのでありますし、しかも農業の発達ということには、相当関心を持っております。従って大使館の仕事というものは、今さら申し上げるまでもなく、国交の問題とかいろいろありましょうけれども、私は農業問題ということが両国間の交わりを厚くしていく上において、相当必要だということを特に感ずるのでありますが、私は東南アジアの諸国の大使館には、どうしても農業に関する権威者というか、そういう人を加えていただくことが、今後の日本の東南アジアに対する外交上必要だ、こう思うのです。そういったものを当局としてお考えになっておりますかどうですか。
  43. 園田直

    園田政府委員 ただいまの御意見通りでございまして、外務省といたしましても、特に今日日本の経済が国際経済の一環に立った場合におきましては、第一に日本の農林行政というものが国際農林行政の一環に入る立場から、まずこの情報をとること、各国の農林行政の方向を知ることが、日本の国内農林行政を確立するための第一歩でございます。なおまたいろいろな農業技術の交換、あるいは移民によらざる農民の暫定的な交換、あるいは移民を伴うところの農業開拓など、特に東南アジア方面につきましては、農業関係の外交交流というものは逐次緊要性を加えてくるということを考えておりますので、ただいままでも、御承知の通り在外公館の配置要員は各省の人事を交流して、そういう面の技術者等もこれに取り入れておりますが、今後とも十分そういう点は検討してやりたいと考えております。
  44. 高岡大輔

    ○高岡委員 今の御答弁でけっこうでありますが、たとえていいますと、向うで農事改良についていろいろ説明を求めてくるのでありますが、これを受け継ぐところの大使館では、向うの言うことがさっぱりわからないということで、そのままのことを日本の方へ取り次いできましても、今度日本の方でも見当がつかない。御承知の通り農業というものは、同じ稲の種子にしましたところで、温度が違い土壌が違いますと、直ちに日本のものを持っていってそれでいいというわけには参りません。品種改良等につきましても、実に専門的な知識を必要とするのでありまして、こういう面からも、私は今の政務次官の御答弁の内容を十分御検討いただきまして、対策を講じていただきたいと思います。
  45. 園田直

    園田政府委員 ただいまの御意見よく了承いたしました。ただいま農林省より派遣しております者は八名で、ワシントン、イタリアタイ、ビルマ、インド、パキスタン等に派遣をいたしております。ただいまの御意見十分了承いたしまして、今後善処するようにいたしたいと考えております。     —————————————
  46. 植原悦二郎

    植原委員長 高岡君の御質問中でありますが、この際千九百三十六年の危険薬品不正取引の防止に関する条約批准について承認を求めるの件を議題にいたします。  本件に関して質疑を許します。——別に御質疑がなければ、本件質疑はこれにて終了いたしました。  本件は別に討論もないようでありますので、直ちに採決いたします。本件承認すべきものと議決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議がなければさように決定いたします。なお本件に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、別段御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議がなければさように取り計らいます。
  49. 高岡大輔

    ○高岡委員 これは政府質問というよりも希望でありますけれども、東南アジア諸国との品種改良の問題、それから農機具の購入の問題につきましては、いろいろな事実があります。実例もたくさんあるのでありますが、この点は、外務省は農林省とよくお打ち合せ下さいまして、十分御研究の上、今後大使館を拡充する際にはこの点を十分取り入れていただきたいことをお願いします。
  50. 松本七郎

    松本(七)委員 大橋委員意見の中にこういう考え方があるのです。たとえば「大使の任命について、任地の実情に応じて、いかなる下級者をも任命し、任終りたるときはもとの下級者に返り得る制度と確立すること」こういう意見も出ておるのですが、それは私非常にいい着想だとは思うのですが、外務省として今の官制上その他からそういうことが可能なのかどうか、今までそういう例もあるのか、そういう点を伺います。
  51. 島津久大

    ○島津政府委員 実例も一、二ございまして、公使をしておった者が本省に帰りましてただいま参事官として勤務いたしておる例がございます。ただこれは、下の方から任命しようと思えば幾らでもできるわけであります。これはおのずから相手国との関係もございます。程度問題だと考えます。
  52. 植原悦二郎

    植原委員長 本件に関して別に御質疑を有する方がなければ、これにて休憩し、午後一時から開会することにしたいと思います。     午前十一時二十五分休憩      ————◇—————     午後一時七分開議
  53. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢等に関する件について、政府当局に質疑を行うことといたします。通告順によって質疑を許します。時間は、多数の質疑者でありますから、十分限度にしていただきたいのであります。もしそれを越えてするような場合においては、委員長においてしかるべく取り扱うことをお認め願いとうございます。松本七郎君。
  54. 松本七郎

    松本(七)委員 通告順というと、穂積君が先になっておりますが、おられませんので、私先にお伺いいたします。三日の読売新聞を見ますと、二日に丸ノ内ホテルで民主党の有志議員に対して、外務大臣が日ソ交渉についての説明をやっておられるのでございます。この重要な日ソ交渉が始まるに当って、相当デリケートな内容にわたって外相がこういう意見を公けにされたことについて、私ども非常にふに落ちない点があるのでありますが、どういう意図をもってこれをなされたのか、お伺いしたいのであります。
  55. 重光葵

    ○重光国務大臣 二日の夜、与党であります民主党の有志代議士が、外交のことを非常に心配して聞きたいということで集まった会合があって、私に外交問題についての質問に答えてもらいたいということでありましたので、私は喜んで出席をいたしました。そこで時節柄日ソ交渉の問題などを中心にしていろいろな質問がございました。それに応答いたしました私の応答は、議会におけるこの問題に対する応答の趣旨をもってすべて応答いたしました。その筋それ以上を出たことは一つもないつもりです。そしてまた私の説明も、議会ではこういう説明をしたのだというふうにして説明をいたしました。ところがそれが、新聞記者がおったというわけじゃなかったつもりですが、翌日の読売新聞に出て、私も実ばそういうつもりでもなかったので驚いたのであります。しかし、これは新聞記事でございますから、その新聞記事そのものについては、私は責任は持てないわけでございます。しかし、さような会合があって、さような趣旨で、私ができるだけの説明をしたということは事実でございます。さようなことででございます。
  56. 松本七郎

    松本(七)委員 公けにされるつもりはなかったと了解できると思うのですが、それが内容も相当詳しく、まるで速記でもとったかのごとく詳細に新聞に報道されておりますので、公けにする御意図があってされたのかとも解釈していたわけです。そうでないとすると、ここでその内容に立ち至っていろいろ御質問申し上げることは、この重要な交渉を控えてどうかと思いますが、新聞に出てしまった以上、その内容をいろいろ討論することもむしろ必要になってくる面もあると思うのです。しかし、新聞の発表ですから、国会という公けの席でその内容についていろいろ論議することはどうかと思いますが、もし、ある程度質問が許されるものならば、少し内容にわたって御質問したいと思うのですが、いかがでしょうか。
  57. 重光葵

    ○重光国務大臣 よろしゅうございます。どうど御遠慮なく。
  58. 松本七郎

    松本(七)委員 私はぜひ伺っておきたいのは、外務大臣は、ソ連がオーストリアに対するような日本の中立化をねらうであろうが、日本とオーストリアの立場は違う、こういう趣旨のことを言っておられるのですね。その中立化をねらうであろうと予想されるものが、どういう内容のものでソ連は日本の中立化ということを提案してくるか、そういう点についての予想はいかがですか。
  59. 重光葵

    ○重光国務大臣 あれは二日の会合でしたか、実は二日あたりにしきりに外国からの新聞通信が来て、ソ連はオーストリア型で交渉を進めるということがしきりに来ておったのです。ちょうどそれが来たときです。そこで質問が起ったのです。ソ連はこういう意図をもってオーストリアのような中立化を日本に要求するということを言っておるが、それに対してはどういう意見を持っておるかという質問でございました。そこで私は、これは御承知の通りに議会で——衆議院でしたか、参議院でしたか、それはちょっと記憶しませんが、本会議にもその説明をしましたように、オーストリアの地位と日本の地位は全然違うのだから、そういうオーストリアと同様な意味における日本の意図はないということをはっきり申したのです。それがさように書かれたわけだと思います。
  60. 松本七郎

    松本(七)委員 日本政府としてはそういう意図がなくても、ソビエトの方としては、オーストリア方式でやりたいというようなことを、交渉を始める前に向うから声明いたしましたね。それをとって、外務大臣は、おそらく日本の中立化を要求してくるのではあるまいか、こういうことを言われておるわけでございましょう。その中立化をどういう形で、どういう内容のものでソビエトは日本に話しかけてくると予想されておるのかということを伺いたいのです。それを拒絶するという外務大臣のお気持はもうわかっております。
  61. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点は実はわからねのです。その点は私にもわからないのです。ソ連がどういう提案を、その意味においてしてくるかということは、実際わからないです。しかし、そういうふうな意味をもって提案してくるであろうというその通信に対しての批判を求められたから、それはオーストリアと地位が違うのだということをはっきり申したわけであります。
  62. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、この二日のお話の内容は、これをソビエト側から受け取った場合に、非常にソビエトに対しては中傷誹謗を加えながら、アメリカに対しては何から何まで——最後の方にも、政治上、経済上、アメリカの協力を失えば日本の立場が全然なくなるということから、それを対比して、非常に対照的に述べてあるように思うのですが、そういうことがこの大事なときに伝わっていくと、交渉に悪影響を及ぼしはしないかという点が心配でございますが、いかがでございますか。新聞をごらんになったと思いますが、実際に話された内容が違えば、そこのところを御訂正願います。
  63. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは、先ほど御説明した通りに、民主党の同志の人々が外交上のことを心配されて私の意見を聞かれて、質問応答をしたわけでございます。そこで日ソ交渉の問題が何としても最も重要に取り上げられたことは、これは御了承を得ると思います。そこに出席をされておった方は、ここに須磨君もおられますが、そういうことなんでございます。それで、新聞に書かれた記事は一通りは見ましたが、それは、私がこう言ったというよりも、私はこういう趣旨で言ったというふうな記事になっておりますから、それを一々弁駁するということもどうかと思って——これは私が書くことを許したわけでも何でもないのです。記事としてそれが出ているものですから、私は、読売の新聞記者には言っておきました。何も許したわけではないがどうして書かれただろうかと言ったら、いや、あれは出席した人から聞いたのだということでした。さような記事になっておりますから、抗議はそのくらいな程度にはいたしておいたのであります。そこで、その趣旨において、今言われたかと思うのですが、ソ連の方を誹謗して一方をどうすると言われますが、そういう意向は毛頭なかったのです。これは質問応答の形においてそういう説明をしたわけです。そこで私としては、交渉が今始まる場合において、交渉問題に対する日本側の意図をはっきりするということはむろん考えておらぬのです。それからまた、交渉相手に対して不愉快な言動をするということはむろん避けなければならぬので、そういうことは避けて説明はしたつもりでありましたけれども、中立的の意向は、オーストリアの場合とは違うのだというようなことははっきり説明をいたしました。これは議会で説明している通りです。また、こういうことも説明いたしました。日本の外交の基調は、繰り返し繰り返し議会でも言っている通りに、米国との協力関係が基調であるということも申しました。しかし、それは事新しいことでも何でもないであります。そこで、それだからといってソ連との戦争状態をそのままにしておくということは、平和に忠実なるゆえんでないから、これを終局せしめたいのだ、この筋でずっと説明をしたのでであります。だから、その記事の言葉の点については、新聞の意向も相当あるのじゃないかと思われますが、それは一々あとからその字句について記事の訂正方を申し込むということはしなかったのでございます。記事として聞き流しておく程度にいたしておるわけでございます。
  64. 松本七郎

    松本(七)委員 内容についてはあまり多くは申し上げませんが、ただ一つだけ、この説明に一貫して流れておる外相の考え方があると思うのです。それは、ソビエトの態度というものはいわゆる平和政策と申しますか、平和攻勢と申しますか、そういう平和政策を、今は不利な状態にあるから時かせぎにしばらく平和的な戦術を一時とっておるのだ、こういうふうな観察が対ソビエト観として外相に一貫して流れておるように思えるのですが、その点のお考え方を承わりたい。  それから時間がございませんから、もう一つお伺いしたいと思っておったことを、まだほかにたくさんあるのですが一つだけお伺いしておきたいのは、これはやはり三日の朝の朝日新聞の報道によりますと、濃縮ウラン協定の問題で、日本側から出した案に、トルコの協定の第九条の趣旨は本協定の中に入れないで、了解事項としてこれを含めて出したというような報道がされておる。それが事実だとすると——おそらくこれは事実だろうと思うのですが、果して外相はそういう訓令をされたのか。もしされておらないとするならば、これはすみやかに調査して、そういう了解事項として日本が申し出ておるということになれば、これは今、国会審議中で、国会で一番御注意をしておる大事な問題なので、むしろ外務大臣としてはそういう了解事項に入れるというようなことはとめるように、訓令をされるのが至当な処置だと思いますが、この点に対する御意見だけお伺いしておきたい。
  65. 重光葵

    ○重光国務大臣 前者の御質問は二日の会合の記事に関係する御質問でございます。そこで二日の会合についてソ連の態度がどうであろうかというようなことは質問応答に事実ずいぶん出ました。そのうちのヨーロッパあたりの最近の通信において、ソ連の態度と申しますか、あるいは一部の人はこれは戦術だと言っておけるれども、変化が出てきた。この変化はソ連内部の情勢に多分に動かされておるのだという意見はあったのでございます。そういうのがございました。それからまたそういう意見を持っておる評論家がずいぶんあるということは私も申しました。しかしこれは実にむずかしい問題で、果してそうであるかどうかということは、よほどソ連通でも断言はできぬと思うのです。そこで今の世界の専門家のうちでそういうようにソ連を観察しておる者が相当あるのだという話が出たことは事実でございます。  それから第二の問題のウランの問題です。これは十分取り調べまして実はウランの交渉につきましては専門的の事項がずいぶん多うございますから、これは関係の専門家と協議をしつつ外務省は進めておるわけで、実は外務省としては内容について十分の——そう申してはなんですが、了解、自信をもってやり得る問題じゃございません。そこで関係の当局、特に経審長官、また経審庁方面と、これも専門家とは言えぬかもしれませんが、十分協議をして進めておるわけであります。そこで今のトルコ条約の第九条の問題が議会で非常に議論の対象になっておるということはよく承知をいたしておりますので、その辺のなにを十分に取り調べて、そうしてそれに対するお話の趣旨を頭に置いてこれを取り扱うことにいたすことに御了解を得たいと思うのであります。私は十分にその趣旨をもって進めていきたい。しかしこれらについては、それらの人々と、また関係方面と十分協議をした上でなければできませんので、十分協議をしてやりたいと考えております。
  66. 松本七郎

    松本(七)委員 外務大臣は、それは技術的な専門的なことで手に負えないというお口ぶりですが、専門的なこと自体を外務省や外務大臣が直接理解しようと思っても、無理な点がたくさんあろうと思います。けれども、これを政治的にどう扱うかということは、日本政府としても根本的に考えなければならぬし、国会でも今問題になって、第九条の問題も中心になってきておるわけですから、その点をよほどしっかり考えていただいて、専門的なことだから人にまかせるというようなことだと、大事な、大きな問題で失態を来たす危険がございますから、特にこの問題は今後国会の意向を十分尊重されて連絡を密にしながら、場合によっては向うに政治的な訓令を発する、そういう処置を適切にはかっていただくことを要望しておきます。
  67. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点は十分心得てやるつもりでございます。全体の問題として、この問題について米国との協力関係をこしらえるということになるわけです。協力する必要がなければ、条約をこしらえる必要も何もないのです。しかし問題の主眼点は、日本の自主性、また行動の自由を拘束されてはいかぬ、いわゆるひもつきじゃいかぬという趣旨が根本だと私どもは思っております。それについては社会党方面から要望書について御説明を受けたときにもそういう御説明であった。だからこちらの不利益になるようなひもつきは一切ごめんだ、こういう点に重きを置いて処理しておるのであります。専門的の、量をどうするというようなことは、どうしても専門家の意見を聞くよりほかにしようがありません。大体それで御了承を得たいと思います。
  68. 植原悦二郎

  69. 穗積七郎

    穗積委員 時間が限られておりますから、簡単にお尋ねしますから簡潔にお答えいただきたいと思います。私もちょっと日ソ交渉の問題についてお尋ねしたいのですが、御質問に入ります前に一言お尋ねしておきたいことがあるのです。今松本委員が言われました二日の民主党議員団との会談の中で、私ども左派社会党並びに共産党の諸君の意向を見ておると、この交渉をきっかけにして日本の外交政策を向米一辺倒から向ソ一辺倒に切りかえるように持っていこうとする意図が見られる、こういうことをおっしゃっておられるようですが、もしそれが真とするなら、共産党のことについては、私は他党のことですから存じませんが、われわれ社会党左派が向ソ一辺倒の外交政策を主張した覚えはございません。あくまで独立と、それから平和、中立政策を主張いたしております。しかしながら向ソ一辺倒の外交政策を主張したことは、個人としても団体としても一ぺんも覚えはございません。にもかかわらず、何を理由にしてこういうことをおっしゃったのか、それを伺いたいし、これはばく然とおっしゃったことであるのか、私はそれを示していただきたい。それはおそらくは大臣の誤解に基くものであると私は信じますが、こういうことが外へ出ますと、私どもの真実な点について大衆から批判を受けることについては差しつかえございませんが、誤解であるとか中傷によってわれわれが大衆から批判を受けるということは、はなはだ心外でございますし、迷惑でございますから、こういう誤解並びに大臣のわれわれの党の外交政策に対しまする認識を改めていただきたいと思うので、こういう発言一つ取り消すようにしていただきたいのですが、いかがでございますか。それを最初に伺っておきます。
  70. 重光葵

    ○重光国務大臣 その記事は、先ほど申しました通りのようなわけで、新聞社の責任において新聞社の記事としてやられただろうと私は思うのです。私は社会党の左派の主張が向ソ一辺倒であるということをそのときでも言ったことはございません。そういうようなことは考えておりません。そこははっきりと共産党の主張と異なるものがあるということはよく承知をいたしております。それからまた院内におけるいろいろな御質問の場合の趣旨も、そういうふうに私は受け取っておるのであります。でありますから、私はそれに対しては、私の考えておるところ、もしくは持っておる情報に基いて、詳細に御答弁をいたしておるつもりでございます。そこでそういうことについては少しも誤解がない。そうでなければまじめに質問応答も実はできぬわけでありますから、どうか一つ誤解のないように……。
  71. 穗積七郎

    穗積委員 今の御答弁によりまして、この記事は大臣の認識ではなくて、新聞社の誤伝であるということが明らかになりましたので、それを確認いたしまして内容について二、三お尋ねしたいのです。交渉前でございますからあまり立ち入ったこともなんでございますが、しかし大体こちらから国会を通じて政府の方針を示されたもの、または第三者等が予測いたしましても、もう問題の所在は大体わかってきておるわけです。ですからそういう意味でちょっと具体的に内容をお尋ねいたします。  まず交渉に当りまするこちら側の心構えといたしましては、先般国会に示されましたような、たとえば未帰還者の帰還の問題、それから通商、漁業の問題、領土の問題、国連加入の問題、これらは問題の系列からいきますと話のできやすいものから大体並べておられるわけで、しまいの領土並びに国連加入承認の問題等は、他の問題、中立問題とかあるいは中共承認問題等とも多少からんでくる可能性もありますから、従ってできるだけこの交渉を早く妥結したいという意図を持つならば、話の順序といたしまして、今申しましたような、なるべく話のつくような帰還問題、漁業問題、通商問題等からできるところまでとにかく話をつけていくという態度で臨むべきだと私は思いますが、政府の御方針はそういう方針でお進みになるのかどうか、お尋ねいたします。
  72. 重光葵

    ○重光国務大臣 そういう点はあまり私からはっきりこの席で申し上げるのはいかがかと思います。しかし私は大体さような御趣旨交渉に当ってくみ入れていって差しつかえない問題だと思います。しかしその辺のことはやはり交渉委員、全権の裁量が非常にあると思います。そこで私の一般訓令はどういう訓令であるかということを申し上げると、これは議会には報告申し上げた通りであります。そこでこれは交渉目的はどこにあるかということは、国交を正常化したいということにあることは繰り返して申し上げるところでありますが、互いに他の立場を認めて領土に関する主権を尊重し、内政に介入せず、紛争は平和的に解決するという精神を互いに確認することが必要と思います。これは私はこうでなければならぬと思っておるのですけれども、何もこっちが向うのやっておることに、こうしてくれ、ああしてくれということも差し控えなければならぬが、日本に対していろいろ差し出がましいことをすることも差し控えてもらわなければ、話は進みはしないと思うのです。それから今お話の未帰還者の釈放ということは、これは実はこの父渉に関係なくしてもやらなければならぬ問題であります。こういう問題はまつ先に解決をはかるべき問題であると私は考えておるのでございます。それからいよいよ具体的の日本との間の解決しなければならぬ問題に入ります。そこで北海道所属の島々、千島、南樺太等のいわゆる領土問題、これはどういう問題であるかということを十分突きとめないと、領土主権の尊重ということが、それじやどこの領土を尊重するのかということにすぐかかり合いになる問題でありますから、これはすぐ爼上に上せなければならぬ。北洋漁業の問題、通商貿易の問題、また国連加入の問題、あるいはそのほかのござござした問題はあり得ると思うのです。検討してまた言わなければならぬ問題があり得るかもしれません。しかしこれらの問題について、お話の通りに結局は解決しやすい問題は先に解決するということになるわけでありますから、さように進めていったらいいと思うのであります。そこで二日の日の記事でありますが、私はこういう問題については、日本の正当な主張は必ず通す、解決はするのだという考え方をもってこの交渉に臨むのであって、今日から解決のできないことを予想していろいろ案を立てることはできないということはたびたび申し上げた。この点も私は御了承を得ておると思うのでありますが、さような考え方をもって全力を尽してみたい、こう思っておるのであります。繰り返して申しますが、そういうために解決しやすい問題から解決をしていくということは、これはある意味において当然の順序じゃなかろうか、こう考えております。
  73. 穗積七郎

    穗積委員 大体われわれもそういうふうに思います。そこで順を追うて少し考えてみますと、帰還問題は、これはもうわれわれの考えからいきましても、大体解決し得る問題だと期待いたしております。次に漁業並びに通商問題でございますが、これとてもすでにもう向うから代表部が来て、通商に対する態度も明らかになっているし、それから国交回復については、より困難な中共との間においてもああいう動きがあるわけですから、通商、漁業の問題は、双方の利益のために、多少時間の問題はありましても、やがては妥結しなければならぬものだし、妥結し得るものだ。今の鳩山外交の基本方針には何ら抵触しない問題でございますから、解決し得るものだと私は期待いたします。従ってただ問題は、これが完全に解決しなくても、大体解決し得る可能性が出てきた場合、その確約が得られた場合に、たとえば今まで日本が取り結びましたインドとかビルマとの講和条約におきまして、なるべく早い機会に通商協定その他を結ぶことを約束して、そうして講和条約を結ぶ、こういうことは今まで取り計らってきたわけですから、できるならば今度の会談中にはっきりした通商協定、漁業協定締結され、講和条約と同時に解決することが望ましいことでございますが、万一それが技術的な問題等について、多少延びるようなことがありましても、その見通しさえつく確約を得られますならば、今のビルマやインド条約の場合と同じように、その見通しのもとに講和関係を正常化する取りきめをする、こういうことの用意があってしかるべきだとわれわれは思いますが、大臣並びに政府の御所見を伺っておきたいのでございます。
  74. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点については、理論上はそれでいいと思います。しかしながら今日交渉を始めるのですから、これらの諸問題については解決するという心組みであくまでもかかることが必要だと思います。それでありますから、私は理論上はそういうことも考えなければならぬ。それでそのためには、いかなる場合についてもこれに応ずるだけの心用意をする必要はございましょうが、しかしたびたび繰り返して申しました通り、今から交渉がある程度で、それでいいんだということを申し上げることは果してどうかと思う。それからあまり一般論になりますと、いろいろ概括的に言う場合においては言えますが、たとえば通商の問題、漁業の問題にしても、大よその骨子が、重要な問題についてきまらなければどうにもならぬと思うのです。だから大よその骨子がきまって、その他の問題については他日に延ばすというようなことは私はそれでいいと思う。しかしそういう問題を解決しようとする以上は、少くとも内容の重要な部分については了解をつけるということがあくまで方針でなければならぬ、こう私は思っております。
  75. 穗積七郎

    穗積委員 次にお尋ねいたしますのは、問題は深刻な領土問題だと思うのです。領土問題につきまして、向う側から、議員団にもお話になっておられるように、あるいはその他の談話で発表されておられるように、日本の中立化、その具体的なものは何かというならば、アメリカとの安全保障条約、行政協定またMSA協定も廃棄しろというようなことを、条約問題と引きかえに向うが言ってくるならば、われわれの方針としてはそういう方向へいくべきだ。いつやるか、どういう方法でやるかは別として、そういう方向へいくべきだと考えておりますが、鳩山内閣の立場としては、そこまでは話に乗りにくいだろうというふうにわれわれは考えます。そこで交渉に当っておられるのが鳩山内閣ですから、その前提に立ってお尋ねいたしますならば、ソ連側が歯舞、色丹を初めとして、領土問題についてこれを日本の帰属を明らかにして、領土権を確認する場合の条件として、それが直ちに安保条約、行政協定によりまして、アメリカ軍に基地化されてしまうということになれば、これは日本に返したのではなくて、アメリカに返したことになるわけですから、日本に返したようになるように、沖縄におけるごとく、潜在主権は認められるが、顕在の領土主権は認められぬことになるならば、日本に返したことにはならないから、そこでその返した領土に対して、アメリカの基地化は絶対にいたしませんという確約を求めてきた場合においては、それに対して日本政府は当然応ずべきだ。そしてアメリカとの間におきましても、その点はちゃんとソ連を安心せしむるような方法を講じてそれに臨むべきだ。受諾をすべきだと思いますが、政府はどういうお考えを持っておられるか、伺いたいと思います。
  76. 重光葵

    ○重光国務大臣 そういう問題についても私のお答えとしては、先ほど申し上げた交渉の重要な部分でございますから、それについて私は意見を差し控えたい、こう言わざるを得ません。しかし今の行政協定などをそれじゃ廃止するか、これは今いかなる場合においても廃止しないということを、鳩山総理からもお答えしてあると思います。そこで今お話のソ連からアメリカの基地にしないことを条件としてそういう仮の前提の場合にどうするかということですが、私はこれは仮の場合でありますから何とも言えません。けれども領土は全部返してくれる、返してくれるけれどもこういう故障があるじゃないか、と向うが言ってきた場合には、その故障を除くべく全力を尽してその目的を達するということは当然のことであります。しかしそれでは行政協定など廃棄するということが故障を除くことであるかというと、そういうことが故障であるならばやる意思がない、廃棄しない、こう言っておるのです。そのことになるだろうと思います。
  77. 植原悦二郎

    植原委員長 穂積君、もう時間が過ぎております。
  78. 穗積七郎

    穗積委員 それは伺っておりません、基地の問題です。故障を除くことに努力するかという意思です。
  79. 重光葵

    ○重光国務大臣 それが私どもの言っております方針として立てている、あるいは御賛成を得ないかもしれないが、日米関係を基調とする、こういうことに根本から反すれば別ですが、私は反しないし、いろいろ話合いはできると思う。あまり御意見の差がないように思うのであります。
  80. 穗積七郎

    穗積委員 委員長議事進行について一言申し上げますが、松本委員の場合は二十七分使っております。それで私は人のことを言うのではなく、今お聞の通り……。
  81. 植原悦二郎

    植原委員長 どうぞ御議論をやめて時間を御質問に使って下さい。
  82. 穗積七郎

    穗積委員 私の質問は簡潔にいたします。それは大臣の答弁が長くかかるのです。  次にお尋ねいたしますが、国連加入問題について当然考えられることは、中共の国連加入賛成してもらいたいというような、これは何も他国加入問題でありますから直接の問題ではありませんが、そういう意向をどうかといってただされる可能性はあるのではないかと思う。そうした場合に、われわれ大体国連というものがギルド的に封鎖されているというのは大体おかしいと思う。国連精神というものは世界の万国が全部入らなければ意味をなさぬと思っている。まして将来は当然人口割合でもって発言権を持つべきだというのが国連のあるべき姿であるとわれわれは考えている。アジアにおいてはそういうことでありますから、従って当然日本としても中共の問題については、今すぐとは申しませんが、やがて本質的なアジアの問題を解決するために中共問題を解決しなければならないから、その時期、条件が到来するならば、その線に向って協力を惜しまないという態度を示していいのではないか、そうなるともとより台湾政府の問題が問題になるわけでありますが、これは中国の政府というふうな考え方に立つことはおかしいのであって、これは事実問題として処理していく以外にない。従って今度の協定に当って、日本の国連加入をする時期に中共の国連加入をわれわれは賛成をして、同時期に、同条件、そういうことまでいかぬにしても、われわれは当然そうあるべきだと思いますが、交渉しておられるのは鳩山内閣ですから、私が百歩を譲って申し上げるわけですが、アジアの問題についてやがて中共問題も解決しなければならない。そのときには当然あるべきこの巨大な政権については、これは無視することはできないのでありますから、そういう時期にそういう方法で解決したいというような、そういう意向は示すべきだと思いますが、政府にその御用意がないかどうか。この問題について国連加入問題と関連してお尋ねいたしてみたいのでございます。
  83. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は時間の関係上ごく簡潔にお答えいたします。それはおのずから世界情勢が解決すると思います。そうして世界情勢をよく見て、それに順応する考え方は、これはしょっちゅうとっておくべきだ、こう考えております。
  84. 穗積七郎

    穗積委員 最後に……。
  85. 植原悦二郎

    植原委員長 もういいでしょう。
  86. 穗積七郎

    穗積委員 もう一点だけで終りますから……。
  87. 植原悦二郎

    植原委員長 質問だけを単刀直入に願います。
  88. 穗積七郎

    穗積委員 それでは次の質問に入りますが、その前に一言、アジアの問題は、今の中共問題との関係ということは、これは当然世界の情勢が解決するのですが、これに一番関心の多いのは日本ですから、他力でなくて日本みずからが世界情勢を勘案して、それに逆行することなしに、積極的に努力すべきだと思うのですが、その努力を要望しておきます。  それから最後に一点お聞きしたいのは、やがてソ連からこの講和条約を契機に、続いて一つ不可侵条約を結ぼうじゃないかというような提案がありました場合には、これまた当然日本の平和独立を主張しておる日本としては、これに応ずべきだと思うのですが、政府の御方針はどうか。この不可侵条約締結の問題についてお尋ねいたします。
  89. 重光葵

    ○重光国務大臣 それはそのときに考えます。しかし私ども考え方は、特に私の、つまり日本政府の外務大臣の地位にある私の考え方としては、その点については、本会議の外交演説で私は根本的に十分述べてあるつもりでありますから、それで御了承を願いたいと思います。
  90. 植原悦二郎

  91. 戸叶里子

    戸叶委員 日ソ交渉の問題は、すでに他の委員からお聞きになりましたから、私はいたしませんが、ただ一点お伺いしたいことは、すでにロンドンで日ソ交渉が始まっておりますが、私ども了承している点は、新聞では、ただ単に儀礼的なあいさつをしただけであって、本交渉は七日から始まるというふうに了承しておりますが、何かすでにあちらから電報が入ったかどうか、この点だけ承わりたいと思います。
  92. 重光葵

    ○重光国務大臣 何も入っておりません。私どもの公けに得ておる報告もほとんど新聞の通りであります。まだ儀礼的のことで、これからだんだんと七日以後に実のある話に進んでいくのだろうと思います。
  93. 戸叶里子

    戸叶委員 七日以後にいろいろな情報が入りましたら、ぜひ外務委員会へそれをお知らせ願いたいということを要望しておきたいと思います。
  94. 重光葵

    ○重光国務大臣 ええ。
  95. 戸叶里子

    戸叶委員 私、きょうお伺いいたしたいことは、三十一日の日に余剰農産物協定締結を見たようでございますが、この協定は、私どもの立場から申しまして、いろいろな問題があるように考えております。重光外務大臣がこの協定調印なされたときの構想、どういうお考えをもって、また日本にどういうふうに有利になるからしだとか、あるいは仕方がなしにしたとか、いろいろなお気持があったと思いますが、その構想のほどを承わりたいと思います。
  96. 重光葵

    ○重光国務大臣 この問題は、前内閣時代から続いておったということは御承知の通りであります。どういう気持かと申されますが、これは借款の部分がおもですが、この借款をこちらの受諾し得べき条件で成立せしめて、日本の一般経済と申しますか、その向上に資することがいい、こう考えて私もこれに賛成し、私自身が調印したわけでございます。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 もしもそういうお気持だったとすると、日本の産業復興に対して資するところ多いというようには考えられないと思うのですが、どういう点でそれを認められるかということを承わりたいと思います。  それから時間をセーヴいたしましてもう一つ伺いたいのは、たとえば借款をいたしましても、それを何に使うか、どことどこに使うかということがすでにきめられておると思います。そういうことでアメリカのひもつきというふうにいわれるのではないかと思いますが、この点も承わりたいと思います。
  98. 重光葵

    ○重光国務大臣 たとえば電源開発とか、農地開発とか、生産力の向上とかいうようなことは、みんな日本の経済力の向上になると思います。御質問はどういう点でございましょうか。農産物を今入れることはよくないというような点じゃないかと思いますが、そういう点も非常に考慮してございます。そういうことは決して日本の今の一般経済に支障はないという検討を経た上でやったのでございます。なおその詳細のことは経済局長から御説明をしてもよろしいですが、質問の、どこが悪いと思うということをはっきりおっしゃって下さい。
  99. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、はっきり申し上げたつもりだったのですが、大臣の方でおわかりになっていただけなかったのです。いろいろなこまかい点は、大臣でなくて経済局長から伺えばいいと思うのですが、私どもが考えまして非常にもみにもんで締結された協定です。しかも電源開発あるいは愛知用水とかなんとか、そういうふうに特に限られたところに使用するというふうな条件締結されているという点が、非常にアメリカのひもつき的な性質を帯びているのじゃないか。この点を承わりたいわけでございます。もしもひもつきでないというならば、たとえば借款したのを日本で適当に何に使ってもいいというふうにもちろんされるべきではないかと思いますが、その点はどうなのでございましょうか。
  100. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点は借款の条件ですから、借款をすることが有利であるとするならばどういう条件でやるか、こういうことでございますから、その条件は決してひもつきであるわけじゃないのであります。全体の一般的の目的にかなうものだ、こう考えております。
  101. 戸叶里子

    戸叶委員 この点は協定が来てから私はもう少し詳しく伺いたいと思いますが、昨年ちょうど農産物購入の協定を結びましたときには、MSA協定と一緒に審議をいたしまして、農産物購入の協定に経済的措置協定の二つに分れておりました。それは五千万ドルのうちの四千万ドルが日本がお金を払い、一千万ドルは贈与の形になっていたのです。私どもはそれに対して二本にする必要はない、一本にすべきだということを質問いたしましたが、その当時外務省の方々が二本にした方が、すなわち贈与の額がだんだんふえる可能性があるから、経済措置協定と農産物協定と二本に分けておた方がいいとおっしゃって、二本に分けて国会審議を経たはずでございます。今回それを贈与も借款も両方一本にされました理由はどこにあるか、承わりたいと思います。
  102. 下田武三

    ○下田政府委員 一番大きな原因は、アメリカ自体の法律が変りましたことでございます。昨年度におきましては、MSA法によって余剰農産物を買い付けたわけでございますから、日本の自衛力増強に役立たせよという軍事的のねらいがあったわけでございます。ところが今度アメリカ本国におきまして軍事的のねらいが完全になくなりまして、農産物に関する別個の法律ができました。これは純経済的な関係からできたわけであります。そこで昨年度におきましては、見返り資金で特需を発注するとか、あるいは防衛産業に役立たせるとかいうことがねらいであったのであります。本年度は全然そういうねらいがございません。大臣が仰せられましたように、電源開発でありますとか、農地の干拓でありますとか、生産力の向上とか、純経済的の援助に使うわけであります。なお戸叶先生は、外務省が二本にすることを主張したようにおっしゃいましたが、これは実は大蔵省でございまして、大蔵省の経済的の観点から買付自体と見返り資金の利用とは別個のことであるから、別個の協定にすべきであるという意見があったのであります。本年度も二本ではありますが、一本が本協定であって、一本は借款条件に関するローン・アグリーメント、そういう形でやはり二本に分かれております。
  103. 戸叶里子

    戸叶委員 今条約局長は、外務省はそういうことをおっしゃらなかったとおっしゃいましたが、私がたしか質問してそういうお答えをいただいております。経済的な援助をたくさんもらうためには分けておいた方がいい、こういうふうにお答えを得ておりますので、私今回の協定を見てまつ先にその点が非常に不思議だったので、お尋ねしたわけであります。  それではその問題は別にいたしまして、小麦、大麦、葉タバコ、いろいろ参りますけれども、これを受け入れる場合の日本の受け入れ機関がどうなっておるかということを伺いたいのです。それを伺います理由は、昨年MSAの協定によって受けて日本に持ってきました小麦が、虫が入っているとかでいろいろ問題になりましたけれども、それに対する責任の所在がはっきりしていなかったわけです。今度は一体どこが責任をとるか、日本の港に着いたときにもしもそれが悪かった場合には、どういう組織でもってこれを監督できるか、そしてまたその悪いものに対してアメリカにどれだけの要求ができるかということを、一点伺いたいと思います。  それから時間をセーヴいたしまして、もう一点お伺いしたいのは、外務大臣が先ごろの委員会で、この協定国会承認を得ないうちは実施しないということをおっしゃいましたけれども、聞くところによりますと、六月一ぱいでアメリカの方でこれを積荷して出すというようなことも聞いておりますが、こういう点はないかどうか、国会でこの協定審議された後でなければ積み出されるというようなことはないかどうか、これを伺いたいと思います。
  104. 重光葵

    ○重光国務大臣 今の受け入れの点は、関係の局長から御説明を申し上げますことにしてお許しを得たいと思います。それから仮実施の問題でありますが、私はそう申しました。仮実施はしない、こういうことでございます。仮実施というのは、条約を前もってかりに実施するということが仮実施なのであります。それはむろんいたしません。私のそのお答えを何も変える意思は持っておりません。ただ今お疑いの点があると思います。それはアメリカ関係条約が成立しないでもやらなければならぬことがあるのでありまして、それはそうやらなければ損がいきますから、やるのでございます。しかしそれは買付問題であります。しかしそれは条約を実施するという意味では少しもございません。それは政府の権限でやり得べきこと以外には少しもやりません。政府の権限でやり得べきだけのことをやります。(「協定によらざる買付になりますか」と呼ぶ者あり)協定によらざる、つまり政府の権限内でやる。それを条約が実施になった後に、その政府の権限でやったことをこちらに引き直すとかなんとかいうことが、また便宜上あり得るかもしれませんが、それは仮実施でも何でもない。承認を経ない前にこれを実施するという考え方を持っておるわけではございません。もしそういうことを仮実施というならば、これは少し仮実施という言葉を乱用しておる、こう考えておるわけであります。
  105. 戸叶里子

    戸叶委員 それではその点具体的にお伺いしたいのですが、たとえばこの協定が日本で審議されないうちに、つまり国会を通らないうちに、もしも日本の政府が買っても、それは民間で買ったんだというふうにして、その点を仮実施とはみなさないかどうかということ。  それからもう一つ、もしもそういうふうなことをした場合に、この協定国会を通らなかった場合もあり得ると思いますが、そういう点はどういうことになりますか。
  106. 下田武三

    ○下田政府委員 仮実施とは何ぞやという定義を明らかにしませんとこんがらがるのでございますが、わが国は明治以来仮実施いたしたことはただ一回ございます。これは中国との間の郵便条約でございますが、「本条約署名と同時に実施せらるべし」とありまして、一方で「本条約批准せらるべし」とあります。ですから批准書の交換がなければ実施されるはずがないのでありますが、署名と同時に実施せらるべしとあるのであります。つまりこれは条約自体の効果として、批准書の交換前にかりに実施されるということなのであります。ところが、今度の協定は、協定自体の効果として実施されるのではないのであります。協定にいろいろのことが書いてございますが、その中の農産物の買付ということは、政府がしょっちゅういろいろな国から農産物の買付をやっておりますので、政府自体でできることなのであります。でございますから、その中の政府自体でできることは政府自体でやろうじゃないかということは、これは協定効果としてやるのでなく、別にそういう旨の交換公文をやりまして実行するわけでありますから、これは協定自体の仮実施ではないのでございます。でございますから、それをも仮実施とおっしゃりたいとするならば、そういう定義のもとで仮実施とおっしゃることはさしつかえないのでございますが、しかしそれはほんとうの意味の仮実施ではないわけでございます。
  107. 戸叶里子

    戸叶委員 この協定の中に何と何とを買うということが書いてあるわけでございますが、そうしますと、その協定は当然国会でもって審議されなければならないわけであります。それをしないで、そういうふうに書いてあるものを勝手に政府が買っても、これは仮実施でない、こういうふうにおっしゃるのですか。
  108. 下田武三

    ○下田政府委員 協定に、小麦は幾ら、大麦は幾らでというように、値段その他の条件がきまっておりまして、その条件通りに買うということになりますと、これは別問題でありますが、御承知のように、この農産物の買付ということは全然コマーシャル・ベースで行われる、民間の当事者がやるのでございます。ですから政府がふだんやっていることと実は同じことをやるわけであります。それでは同じことじゃないかとおっしゃいますと、結局その買付代金で借款をするというところが協定の実体になってくるわけであります。その借款をするということは、何も先に実施するわけでも何でもございません。これは国会で御承認を経ました後にやることでございます。
  109. 戸叶里子

    戸叶委員 これは議論が尽きないかもしれませんが、買付自身で借款をするということに一つの制限があるわけです。そうすると、当然その協定国会にかけられなければ、その前に実施するということは仮実施というふうに、私どもには了承できるのですけれども、この点条約局長とどうも違うようですが、もう少しわかるように説明をしていただきたいと思うのです。
  110. 下田武三

    ○下田政府委員 第一条の買付ということは、先ほど申し上げましたように、ふだんからいろいろな国と政府が実行しておることでございます。これは協定がなくても、また協定が御承認を得ません前でもできることでございます。将来一応この協定が成立したら、この買付に伴う見返り円というものは借款で使おうということに相なるのでございますが、そこまではまだつき進むわけじゃございません。買付自体を政府の権限でやろうということでございます。
  111. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 先ほどの御質問は、だれがどういうふうにして買うかという御質問だったと思います。これは小麦、大麦、米といった主食につきましては、結局は食糧庁が買うわけです。それからまた葉タバコ等については専売局ということになりますが、しかしそれを実施するに当りましては、できる限り民間経路を利用することになっております。     〔「検査機関の不正品に対する取扱いはどうするかという質問ですよ」と呼ぶ者あり〕
  112. 戸叶里子

    戸叶委員 そうなんです。
  113. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 その品物が初めの約束と非常に違っておるという場合には、クレームになると思います。
  114. 戸叶里子

    戸叶委員 クレームで簡単に解決されない問題があるわけですが、この次にまた質問いたしますから、きょうはこれで……。     〔「本会議までの約束だ」「休憩休憩」と呼ぶ者あり〕
  115. 植原悦二郎

    植原委員長 本会議がありましても委員会を継続する場合もあります。この場合は、あなた方にお諮りいたしますが、外務大臣は各方面に出る時間が非常に限られております。きょうの本会議には外務大臣はお出かけにならないでいいと思いますから、ここでかなり外務大臣に質問が継続できるという意味で、午後の委員会を開いたのであります。それでも本会議に出る必要があるということであれば……。     〔「申し合せじゃないか」「同意を得てからやれ」「与党がそんなことを言うんじゃない」と呼びその他発言する者あり〕
  116. 植原悦二郎

    植原委員長 委員長は午前にこの会議を休憩して、午後に開くときには、外務大臣は午後は継続して出席できる。外務大臣は本会議に出席するようにとしいて求められるようなことはない。それゆえに外務大臣の御都合もあり、委員の都合もありますので、なるべく外務大臣に継続して質問していきたいという意味で午後の委員会を開いたと、委員長は了解しております。     〔「二時までという申し合せをしていたじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  117. 植原悦二郎

    植原委員長 菊池さんに言いますが、そのときには二時という本会議の時間はきまっておりません。一時というので二時まで……(「本会議までということだった」と呼ぶ者あり)私は理屈を言いません。委員全体の方が休憩した方がよろしいというならば、委員長は何もしいてやらないのであります。けれども質問のある人はなるべく居残って質問を継続するのが委員会の……。     〔「どうして変更するんだ「順序がまるで違っている」「続行」と呼び、その他発言する者あり〕
  118. 植原悦二郎

    植原委員長 菊池君どういうことですか。
  119. 菊池義郎

    ○菊池委員 私はまつ先に申し込んでいるんです。質問の順序がまるで違っている。     〔「そんなことは理事会の問題だ」と呼び、その他発言する者あり〕
  120. 植原悦二郎

    植原委員長 違いませんよ。理事会の申し合せ通りやっておりますよ。申し合せと変ったことはありません。(「非常に違っている」と呼ぶ者あり)変っておりません。今度は北澤直吉君です。委員長は継続すべきだと思います。多数の人が継続しない方がよろしいと言えば別ですが……。     〔「継続継続」と呼ぶ者あり〕
  121. 植原悦二郎

    植原委員長 委員長は継続してやります。北澤直吉君。
  122. 北澤直吉

    ○北澤委員 時間があれば十分外務大臣にお尋ねしたいのですが、きょうは時間がありませんから、別の機会にゆっくりお尋ねすることとしまして、きょうは日ソ交渉に限ってお尋ねしたいと思います。この日ソ交渉に当りまして、ソ連がどういう態度で出てくるかということにつきましては、私どもは重大な関心を持っておったのでありますが、オーストリア国家条約、またユーゴスラビアとの関係等におきまして、大体ソ連の意図もある程度輪郭がわかってきたように思うのであります。従って今回の日ソ交渉に当りましても、結局ソ連は大きな世界政策の一環として、この日ソ交渉に当ってくると思うのでありますが、果せるかな私どもが心配しましたように、今回の日ソ交渉に当りましては、ソ連は日本の中立化を求めてくるような気配があるのであります。と申しますのは、先月の三十一日にロンドンのソ連大使館のスポークスマンが言っておりますが、オーストリア国家条約があらゆる平和条約の手本となる、これは日本やドイツの場合にも適用できる、こういうことを非常に強調したということがありまして、私どもが前から心配しておりましたように、ソ連は結局日本の場合におきましても、こういうふうな日本中立化の方針で臨んでくるのではないかと、実は心配するわけであります。そこで問題は、政府がたびたび国会で御答弁になっておりますように、日本はどこまでも日米協力体制を基礎として、その上に立って日ソ交渉をする。従ってサンフランシスコ対日平和条約はどこまでも堅持する、こういう態度で今後の交渉に臨むわけでありますが、そうすると、今のソ連の態度とは正面から対立してくるわけであります。従いまして私ども政府希望したいことは、まず日本としてはどこまでも桑港条約体制というものを堅持するという態度をはっきりしまして、これについてソ連側の確認を求めた上で、私は日ソ交渉に入るべきものと思うのでありますが、この点について大臣のお考えを伺いたいのであります。
  123. 重光葵

    ○重光国務大臣 それについては繰返し繰返し私の考え方を御説明申し上げておる通りでありまして、本会議における私の、報告中においても、まず第一に互いに他の立場を認めることが必要であるということを申し上げておるのであります。日本の立っておる立場、向うの立っておる立場、これを双方とも十分に尊重しなければ、これは話にも何にもならないことなのでありますから、立場を認めることが必要だと思います。
  124. 北澤直吉

    ○北澤委員 大臣は本国会におきまする外交方針演説などにおきまして、政府としてはいかなる国とも武力による紛争を排除し、平和的にこれを処理するということを約束する用意があるという重大な言明をしておるわけでありますが、あれはいかなる場合にも武力を使わないという意味で、もしよその国から不侵略条約の申し入れがあった場合には、日本はそれに応ずる意思があるという意味でありますか。世間ではそういう誤解を持っている人がありますので、その点大臣のはっきりした御見解を承わっておきたいと思います。
  125. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは交渉の後にどういう案が出てくるかわかりません。案が出てきた場合、またこっちから案を出す場合はむろんあります。そういうことについては、十分手落ちなくやらなければならぬと思っております。しかしここでお話のあるところは大体の方針だと思います。これも私の報告演説の中に申し上げておる通りに、紛争は平和的に解決するという精神を互いに確認することが必要である、こう思うのであります。平和条約をこしらえてすぐけんかをおっ始めるというようなことを予想するのは非常にまずいと思います。紛争があるならば武力を排して平和的に解決するという精神を確認することが必要だ、こう思います。
  126. 北澤直吉

    ○北澤委員 私の申し上げるのはソ連ばかりではありませんが、大臣はいかなる国ともそういう約束をする用意があるということを言われておるわけであります。私どもの考えでは一体日本はそういうことをはっきり無条件に言える立場にあるかどうかということを疑うのであります。と申しますのは、日本は国際連合にあらゆる協力をするということが平和条約の第二条でしたかに書いてある。それからまた日米行政協定の第二十四条でしたかには、もし日本地区に敵対行為が起った場合には日米の間でよく相談をする。こういうふうなことも書いてあるのでありまして、日本はいかなる場合にも武力を使わないということは言い切れないと思うのであります。と申しますのは……(「憲法に書いてあるじゃないか」と呼ぶ者あり)日本には軍はありません。国際連合にあらゆる協力をする。また将来日本が国際連合に加入した場合におきましては、国連のとるそういう強制措置には日本も参加する場合がある。また今の日本とアメリカとの共同防衛の関係から申しましても、ある場合にはそういう協力もあるのでありますが、大臣のように無条件にいかなる場合にもそれをやらぬ、そういうふうにはっきり言い切っていいものでありますかどうか。その点について大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  127. 重光葵

    ○重光国務大臣 私が外交演説において発表したことは、一般的の外交方針を思想的に発表しておるわけでありまして、いかなる条件でもということはたしかないはずでした。いかなる国ともとありました。どの国とも紛争は武力によらずして平和的手段によって解決することがいいと私は思います。それは正しい考え方であると思います。それがまた国際連合の趣旨にも合い、日本の全権がバンドン会議において提唱した宣言案にもこれを盛り込んでおるのであります。私は、これは正しいと思います。ソ連との平和を回復する場合において、平和条約をこしらえるということになれば、その平和条約にそういう思想を盛り込んだらいいと思うのです。紛争は平和的に解決する、こういうことを確認して、そして先に進むことが正しい、こう私は考えるのであります。しかしお話の通りにそれがためにアメリカとの条約を少しも顧みないとか、行政協定を云々と言われますが、そういう特殊な事態が起った場合に、その特殊な条約に忠実であるべきであることは当然のことでありますから、それは少しも矛盾するところはないと思っております。
  128. 北澤直吉

    ○北澤委員 そうしますと大臣のお考えは、現在の国際義務の範囲内でということですか。要するに現在の平和条約あるいは日米間の協定等によって——その場合は別として、とにかく大臣の「おっしゃるように現在の国際条約の中で日本が約束しているものは守るんだ。それ以外において紛争をどうこう、こういうのでありますか。先ほど私が申し上げましたように、無条件でいかなる国とも紛争を平和的に処理する、武力を使わぬということになりますと、これは必ず将来社会党などの一枚看板になって、日ソ不侵略条約とかあるいは中日不侵略条約とかこういうのです。非常に日本の中で不侵略条約を謳歌するような事態になりまして、あるいはそれをおっかぶせてアジアのロカルノ条約と盛んに言っておるのでありますが、この問題についてどうも大臣の外交演説の中の言明は、誤解を与えるように思われるのでありますが、この問題は非常に大きな問題でありまして、先ほど申しましたように現在の国際義務の範囲内において、こういうことなら私は了解できるのでありますが、こういう点についてもう一度はっきりと御答弁を願いたいと思います。
  129. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは伺っておりますと、少しも矛盾しないし差がないようであります。しかしこの紛争を平和的手段によって解決するということは、日本としては憲法を引き合いに出すまでもなく日本の大方針だろうと思います。しかしそれが個々の条約の規定をそれで変えるわけではないということは、これはあまり意見の差がないようでありますから、このくらいにして御了承を得たいと思います。
  130. 北澤直吉

    ○北澤委員 バンドン会議の共同コミュニケを見ましても、国際連合の憲章に従ってたとえば平和的にやる、こう書いてある。国際連合の憲章というものは、国際連合の憲章を基底にする場合には例があると思うのでありますが、外務大臣の外交演説ではそういうことは全然条件がないのであります。だから国際連合の憲章に従ってやるというのならば私は了解できるのでありますが、その点がないと非常に誤解を生みつつあるのであります。その点について伺いたいと思います。
  131. 重光葵

    ○重光国務大臣 そのことは実際の場合に遭遇しまして、それでは向うでどんどん日本に侵略戦争をやられて、それですべて無条件に、もう武力も何もやらない、自衛権も使わないということを考えておるわけでも何でもございません。それは特別の場合にはこうだというような条約が特別にできれば、その条約によらなければならぬと思います。しかしそれだからといって、その紛争を平和的手段によって解決するという大前提なり大主義、これに逸脱するということではないと思います。国際連合の趣旨にも同じことが書いてある。それからまたバンドンの会議にも同じ趣旨でわれわれは提案したのであります。これは実はその前ぶれを外交演説で私はしたわけなんでございますが、その趣旨は今お話のような御心配は少しもないと考えます。
  132. 北澤直吉

    ○北澤委員 この問題はまた後ほど大臣と議論したいと思うのですが、もう一点伺いたいのは、日ソ交渉と時を同じくして四巨頭会談が行われるわけであります。従ってこの四巨頭会談におきましては、いわゆる世界の民主主義陣営と共産主義陣営との間に大きな話し合いができるわけでありまして、私はこの四巨頭会談の運び工合と日ソ交渉の運び工合というものは、常に足並みをそろえていかなければならない、こう思うのであります。ソ連の方は世界的に一貫した方針で自由主義陣営に当っておるのに、自由主義陣営の足並みがばらばらであっては、結局ソ連側に乗ぜられるだけであります。従って日ソ交渉の進み工合と四巨頭会談の進み工合とにらみ合せまして、常に日本と英米仏との間によく連絡をとって、足並みがばらばらにならないようにしたいと思うのでありまして、これまで鳩山総理が言われるように、日ソ交渉について米国の許可を得る必要はない、こういうふうな小児病的な考えはやめて、ぜひとも米英仏ソの四巨頭会談の行われる場合には十分連絡をとって、民主主義陣営の足並みをそろえて御善処を願いたいと思うのでありますが、これについての外務大臣のお考えを承わりたいのであります。
  133. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは私もそう考えております。これは今お話の点が四国巨頭会議——ヨーロッパの問題それからまた日ソ交渉の問題も相手はソ連だ、これは一つの問題だ、そうして民主主義国の連携、つまり共同戦線によってすべて外交を処理するんだ、こういう趣旨ではないと私は思うのであります。今日さような考え方は行き過ぎだと思います。しかし最も緊密な関係を持っておる国々との間に連携をとるということは、これを普通の外交のやり方でありますから、何にも異存はないはずであります。特に親密な国との関係は、これは連絡をとる必要はある。そうでなければ様子もわかりませんから、それは密接にやらなければならぬと思っております。そういう意味で御趣旨には私は賛成でございます。またそうやっておるのであります。しかしそれだからといって、一々アメリカの指図を待って日本がやっておるわけでも何でもございません。独自の見解で情勢を綿密に判断をしてやることがいいのであって、そうしなければならぬ、この点において御了解を得たいと思っております。
  134. 植原悦二郎

    植原委員長 並木芳雄君
  135. 並木芳雄

    並木委員 大臣にガットのことでお尋ねをいたします。実はきょう午前の会議で、次官からガットに正式加盟の話が出たのであります。ついこの間までガット審議をやっておりますときに、七月か八月になって果して正式加入ができるかどうかについては、まだ断言できないというのが条約局長の答弁でございました。ただホワイト事務局長が日本においでになっておりまして、その節八月ごろには正式加盟になるのではないかという希望的観測は漏らしておったのであります。しかし昨今になって急に正式加盟の段取りになったことはまことに御同慶の至りであるとともに、いささかびっくりしたわけなのですけれども、どうして急転直下話がまとまってきたのでありますか、そのいきさつ、それからどういう国々が賛成をし、どういう国々が反対し、どういう国々が回答を留保しておるのか、そういう点について説明しておいていただきたいと思います。
  136. 重光葵

    ○重光国務大臣 私もガット加入がだんだん進んできておることは、実に予想以上になってきたことを非常に喜んでおるのでございます。そこでその事情を今関係局長からよく御説明を申し上げますが、やはり実際上の加入は八、九月になるのだそうです。
  137. 下田武三

    ○下田政府委員 本朝政務次官から御説明申しましたのは、わが国正式加入に関する議定書署名が数日中に実現する運びになったということでございます。つまり議定書という文書は署名の運びになりますが、これが実施されますのには、御承知のように二十三カ国が相次いで賛成するということが必要でございます。その三分の二の締約国賛成を得まして、初めて正式に実現するわけでございます。
  138. 並木芳雄

    並木委員 次にフィリピンとの賠償の問題でございます。この問題はなるべく内容に触れないでいてほしいという外務当局の意向がありましたから、私は質問を遠慮しておったのですが、昨日の外電によりますと、ネリ代表が向うに帰って発表しております。日本政府の方から八億ドルという数字を出された、それについて御了解を得たいというような発表をしておるのです。こうなったならば、私は向うだけがその発表をして、こちらでわれわれが知らされないという法もあるまいと思いますから、できるだけ詳しく発表していただきたいと思います。
  139. 重光葵

    ○重光国務大臣 私もそのマニラから来た電信はきのうかけさほどから承知いたしておりますが、それは向うで発表したわけではないようです。ネリは日本側とのそういう交渉内容については発表できないということを終始一貫言っておるようでございます。しかしこういう案もあったというので、発表でなくして通信員が探って想像記事を送っておるようであります。今その内容検討してみますのに、想像記事であることは疑いをいれぬようであります。  それからまた交渉内容については、これは先回御説明をした通りであります。いろいろな案が向うから出ました。またそれについていろいろ討議をしてみました。これは交渉でありますから当然のことであります。その数字も出ました、そしてそれを持って帰って、まだ交渉は妥結には至らぬのであります。今後どうなるかわかりません。こちらも最終的の意向を示したわけでもなんでもございません。しかしそれらのことがもとになって、向うは向うの国内事情がありますから、それでいろいろな方法によって国内の意見をまとめつつあるのだと思います。そのまとめつつある標準はどこか。できるだけ成立せしめるように、また日本側の希望にもできるだけ近寄るように向うの方法をもって——今議会の内外は日本の議会よりもまだいろいろな複雑な事情があるようでありまして、さようなところをまとめていこうとする努力がだんだん現われてきつつあるのじゃないか、こう判断されます。そこでそれに対して今こちらから、それならば内容はこうであった。何にもまとまっていないもの、討論の過程にあったことを今ここですべてぶちまけていくということは、そうなればまとめることがいよいよできなくなる、さようなことは私はお許し願いたいと思います。向うもそうやって一生懸命やっておる、国内事情もございましょうし、いろいろある程度のなには、まとまっていないけれども、このくらいとか何とかいって出しておることもございましょうから、そういうことは一つ大きく、向うのなにが十分にまとまって、なるたけこちらの受諾し得るような線に近寄せてくることの手続だけを向うにさせることは、こちらも十分に時間の余裕を与えて、いわばここでもがまんしていただきたい、こう考えるのでございます。
  140. 並木芳雄

    並木委員 次にソ連との交渉についてでありますが、これは行く行く自由党の協力を求めていかなければならないと思います。しかるに自由党は諸懸案が先決さるべきものである、戦争終結宣言を先にすべきでないということを強く主張しております。そうすると、このままで果してうまく行くかどうかということが危ぶまれるのでありますが、これは私のしろうとの考えかもしれませんが、戦争終結宣言というものを平和条約への一里塚と見ることができないだろうか、これを大臣にお伺いするのであります。大臣は平和条約締結目的であると言われる、これはその通りだと思うのです。終結の終局の目的はそこにあると思いますが、その前に平和条約か戦営終結宣言かという問題、あるいは諸懸案解決が先決か、戦争終結宣言が先かという問題ではなくして、大臣の言われる平和条約締結へのワン・ステップとして戦争終結宣言があってしかるべきものではないでしょうか、お尋ねをいたします。私がこのことをなぜお尋ねするかというと、この前の外務委員会のときに重光外務大臣は、戦争終結宣言というものは大したものではないけれども、これをやると拘束を受けることがあるというような言葉をちょっとつけ加えられたように私は聞いておるのであります。その拘束という言葉が私の耳に残っておるものですから、果して平和条約への一里塚として戦争終結宣言をした場合に、どのような具体的の不都合が起ってくるであろうか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  141. 重光葵

    ○重光国務大臣 戦争終結宣言のことについて過日、単独の宣言、これを共同してやるというようなことについて、分けて説明を申し上げましたが、そういうことに入るとお話が少し複雑になるようでありますから、私は端的に言ってさような形成が起ったときにはそういう場合においてとくと考慮するとして検討すればいいのであって、今は普通の国際間の常識によって、戦争をやめて平和を持ち来たすためには平和条約をやるのだ、サンフランシスコ条約も平和条約だ。その平和条約締結するために、両国の間に横たわっておるこれこれの重要な問題を解決するのだという方針を、今日本としては国会の御承認を得てやっておるわけですから、一つ全力を尽してその目的を達するように努力しようじゃありませんか。その間に交渉の道程においていろいろな案も出て参りましょう。そのときはそのときで十分に遺漏なくいろいろなことを考慮して、国家的の利益の命ずるようにこれを解決していったらばよかろうと考えておるのであります。
  142. 並木芳雄

    並木委員 その点についてぜひ一つだけ、これは要望的の御質問になりますが、領土の問題であります。社会党の左派の方では南樺太、千島に対する領土の返還を求めることは、サンフランシスコ条約でその権利を放棄しておる日本の鳩山内閣としてはできないことである、わが党内閣ができた場合に初めて行い得るのだというようなことを言っておりますけれども、私はサンフランシスコ条約とは関係なしに、ソ連に対して当然申し入れをすることができると思うのであります。領土問題で歯舞、色丹の問題だけがクローズ・アップされて、南樺太、千島のことがやや薄らいでおりますけれども、領土に関する限りは当然南樺太、千島をも含めて問題にすべきであると思いますが、大臣のはっきりした御所見を伺っておきたいと思います。
  143. 重光葵

    ○重光国務大臣 これももう論議をし尽した問題だと私は思っておりますが、何も社会党の方々と意見の差があることじゃないと私は思っております。というのはサンフランシスコ条約調印しなかったソ連に対して、千島、南樺太のような日ソ間に横わっておる領土問題を解決するということは、これは当然のことであります。これは社会党の方々だけでなくして、自由党の人も民主党の人も当然これは同じことです。サンフランシスコ条約を認めるとか認めないとか、日本人の個人やどの党派が言っても、日本は調印しておるのですから、日本はサンフランシスコ条約を認めて、議会においても批准しておるのですから、その法案に反対した人が永久に反対した権利を保留するわけには国家的にいかぬのであります。それは当然同じ立場に立っておるのであります。私はどの党派も同じ立場に立っておると思います。だからこれは日本の領土権を解決する問題として取り上げなければならぬ問題であると思います。その取り上げた場合においていろいろこちらの立場が強いとか弱いとかいう議論はありましようけれども、それは一応取り上げる。それが解決しなければ領土問題は解決しないということになる。それから今私は自由党と社会党ということを言いましたけれども、かような外交の問題、特に日ソ問題についてはむろん自由党の御了解また御援助も得なければならぬ。しかしながら同様に社会党の御意見を伺って、私のつもりではほんとうに超党派的に考えて進めておるつもりでございますから、それは誤解のないように、あまり党派的に取り扱わないようにお願いいたします。
  144. 並木芳雄

    並木委員 これは別な問題ですが、この二十二日にフインランドのヘルシンキで世界平和愛好者大会というのが開かれます。大臣御存じだろうと思うのですけれども、それについて趣旨を読みますと、原子戦争準備反対の訴え、いわゆるこれがウイーン・アピールとなっております。それからまた最近問題になっておる飛行場の拡張は、やがて原爆を日本に持ってきて、これを乗っけた飛行機を立たせるため、おろすための拡張であるというような趣旨の会合なんです。その実態が私つかめませんので、これはほんとうに率直な質問なんですけれども、これをどういうふうに大臣お考えになっておりますか。そしてこれに対して旅券の下付を申請する者がすでに二十名ぐらいあって、先方の費用で行かれるのだそうですが、旅券は普通通り出すお考えでありますか。
  145. 重光葵

    ○重光国務大臣 その会議のことについては私よりも関係局長が御答弁するのが一番いいと思います。それからまた旅券の問題は一般的にここでもずいぶん御議論がありまして、一般的な法則に従って国家の利害から判断しなければならぬので、その例外とするわけにはむろん参りませんが、しかしその会議それ自身については一つ政府委員から……。
  146. 寺岡洪平

    ○寺岡政府委員 今回の会議はヘルシンキで行われるわけでありますから、別に特にむずかしい問題があるわけではありませんで、一般の旅行の基準によって決定されることと考えております。ただし現在までのところ具体的な手続がとられておりませんので、どういう条件であるかということについてはっきりわかっておりませんから、その条件審査した上で決定することにいたします。
  147. 植原悦二郎

    植原委員長 菊池義郎君、
  148. 菊池義郎

    ○菊池委員 対ソ交渉に当りましてソ連がこの大戦において日ソの不可侵条約をじゆうりんして、突如として満州に侵入して遼東半島その他の日本の権益をみなさらってしまった。こういう問題について今度の交渉においてこれを取り上げるかどうかということについて、大臣からもまた総理大臣からも一言も言及しておられぬのでありますが、これはたな上げにして不問に付するつもりでありますか、あるいはまた交渉の対象とせられるつもりでありますか。このことにつきましては国民はみな憤激しております。それからヤルタ協定に立ち会った国家以外の国民はみなこれに対して——共産圏の国の国民といえども憤激おくあたわざる不信行為でありますが、こういうことについて代償を求めるとかなんとかいうようなことを考えておられるかどうか、お伺いしたいと思います。
  149. 重光葵

    ○重光国務大臣 今おっしゃることは、今日ではすべて過去の歴史になってきておることかと思います。過去の歴史は、これは十分頭に置いてすべてやらなければならぬことは当然のことであります。しかしこれは歴史は歴史として——今日のことのようにしてこれにこだわると何もできない。過去の歴史として頭に置いてやっても差しつかえなし、またそうすべきものであると思っております。
  150. 菊池義郎

    ○菊池委員 こういう重大問題を歴史であるとして不問に付するといたしますならば、すべてのものはみな歴史になってしまう。私はこれを歴史として看過することは絶対にできないと思うのであります。そうすると、全然不問に付するというお考えでありますか。日本の権益をみな奪ってしまった。婦女子は強姦され、男子は虐殺された。しかも条約を破棄してそういうことをやった。これを不問に付することは、日本国民の思想にも重大な影響を及ぼすと私は考えておるが、いかがですか。
  151. 重光葵

    ○重光国務大臣 御趣旨は十分一つ頭に置いて検討して交渉を進めることにいたしましょう。
  152. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから過般台北において二十一カ国の反共会議が開かれるはずであったが、反共会議が流れてしまった。その原因は、韓国が日本の参加を拒んだためだと聞いておるが、台湾政府は、韓国側だけに気がねをしてこの会議を流すようにしたのか、その原因はほかにまだあったか、そういう点について事情を承わりたい。
  153. 重光葵

    ○重光国務大臣 外務省の得ておる情報によりますと、全く韓国の態度によっものであるということが明らかでございます。
  154. 菊池義郎

    ○菊池委員 そういう韓国の僭越な態度に対して、日本の外務省は、何ら手を打たなかったのでございますか。
  155. 重光葵

    ○重光国務大臣 今韓国との交渉がとぎれているような状況で、さようなことを取り上げても何ら効果のないような状況でありますから、取り上げませんでした。
  156. 菊池義郎

    ○菊池委員 今度のソ連とユーゴとの共同宣言を見ますと、彼らは台湾の中国復帰を掲げておるのであります。中共の方でも、台湾問題は中国の内政問題だといっておる。さらにまたこういう宣言が出るというわけで、米国はこれに不満のようでありますが、今日この台湾の問題には、日本といたしましても重大な関心を持たなければならぬと思うのでありますが、国際法上中共に所属すべきものであると考えられるか、あるいはまたどこにも所属することのできない地域であると考えられるか、その点を国際法に詳しいどなたでもけっこうですから、ちょっと教えていただきたい。
  157. 下田武三

    ○下田政府委員 日本といたしましては、立場は明らかでございます。日本は、台湾の国民政府との間に平和条約を結びまして、中国を代表する政府は国民政府であるという立場をとったのでございます。そうして同平和条約の適用地域につきましては、現に国民政府が支配する地域ということをはっきり書きまして、従って台湾は国民政府の支配のもとにあるということもはっきりと認めておるわけであります。
  158. 菊池義郎

    ○菊池委員 フィリピンの賠償問題でありますが、先ほど並木君も指摘されたように、四億ドルから八億ドルに譲ってしまったとかいうことで、大へんな問題だとわれわれもびっくりしたが、こちらからそういうことを言わないが、向うの新聞が勝手にそういうことを書いておるのですか。
  159. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点は何もきまっている問題ではありません。八億ドルではない、十億ドルが最小限度だということは、たびたび向うから言ってきております。
  160. 菊池義郎

    ○菊池委員 電報を見ますと、日本が八億ドルに譲ったというふうに書いておりますが、どうですか。
  161. 重光葵

    ○重光国務大臣 先ほど御説明した通りで、そこまではいかない。
  162. 菊池義郎

    ○菊池委員 フィリピンの賠償について沈船の引き揚げは賠償からはずすということが新聞にも出ておりますが、それはどうですか。
  163. 下田武三

    ○下田政府委員 それは事実と違うのでありまして、先般参りましたラヌーサ氏等専門家会議の討議に取り上げる事項からは、はずされております。しかし賠償全体の問題は、当然沈船引き揚げの協定も含むわけであります。
  164. 菊池義郎

    ○菊池委員 それからほかのことですが、最近の気象台の予報はまるで違っておって、雨といえば晴れ、晴れといえば雨といったほとんど害あって益なきような状態である。これは中共からの気象通報を取ることができないために、完全な通報をすることができないというようなことを気象台で言っておりますが、そういうことについて、たとい国交の回復していない国でありましても、こういう問題については、外務省としては、向うの通報を取ることができるように折衝すべきであると思うのでありますが、この点についてどうお考えになっておりますか。今まで全然そういったような手を打っておられなかったのですか。
  165. 寺岡洪平

    ○寺岡政府委員 気象問題につきましては、戦後ある程度の通報はございました。その後突如として打ち切られて現在に至っている次第でございまして、本件につきましては、漁業関係からも種々陳情がありまして、今度の機会にぜひその問題を取り上げたいと考えております。
  166. 菊池義郎

    ○菊池委員 日ソ交渉の機会も何もあったものではない。そういうことは日本から申し入れがあれば、向うは喜んで応ずるはずです。要するにこちらの怠慢としか考えられない。
  167. 下田武三

    ○下田政府委員 この問題につきましては、先般国会の卸承認を得ました国際気象機関条約の際にも論議されたところであります。国際気象機関条約によりますと、陸地にある測候所のみならず船にある測候所も、国際的に緊密な連絡を取って気象通報をお互いに交換することになっております。しかし朝鮮戦争が勃発しましてから、もう共産側は、気象の通報を出すことは、自由諸国側に軍事上の便宜を与えることになるという見知からこれをストップいたしまして、そのために無事の日本漁民も被害をこうむったというのは事実であります。しかし今日日本は、国際気象機関のメンバーになっておりますので、この国際的機関である気象機関を通じまして、朝鮮戦乱の敵対行為は事実上終止したのでありますから、また再び条約規定通りの通報交換を開始いたしたいということは、機関を通じて種々言っておる次第であります。
  168. 菊池義郎

    ○菊池委員 朝鮮の戦争はとっくの昔に済んでおりますから、その直後におていただちに手を打たれるべきであったと思います。漁夫ばかりではなく、全国民が困り切っておる。一日も早く手を打っていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を打ち切ります。
  169. 植原悦二郎

    植原委員長 松本七郎君。外務大臣は渉外関係で三時半までにはここを去らなければなりませんから、なるべく簡単にお願いいたします。
  170. 松本七郎

    松本(七)委員 大橋さんが在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案について大臣が来られたら質問するというので私はわざわざそれを待っていたのですが、肝心の大橋さんが来られない。本会議と並行してやられているのですから、無理はないのですけれども、なるべくこの審議を早くして態度をきめる上から御質問しておきたいことがありますので、御迷惑ですけれどもちょっと御質問いたします。  先ほど外務省の事務当局の方にも少しはお伺いしたのですけれども大橋さんの意見として附帯決議でも出そうというのでここに案が出てきておるのです。その内容についてわれわれ検討するのに、外務大臣なり当局の考え方を少し伺っておかないと判断のしようがないものですから、一つお願いいたします。
  171. 植原悦二郎

    植原委員長 大橋さんのはまだここの委員会として取り上げたものでなく、ただ参考に大橋さんの案として配付したものであることをこの場合にはっきりしておくことを御了承願いたいと思います。
  172. 松本七郎

    松本(七)委員 まず第一に大使そのものにもう少し階級でもつけて、それぞれの任地の実情に応じていかなる下級者でも任命して、そうして任務が終ったらもとの下級者に返り得る制度を確立したらどうか、こういうことが大橋さんの意見として出ておるわけです。これは趣旨として非常にいいことだと思うのですが、先ほど事務当局のお話ではそういう例もすでにあったということなんです。ですからそういうことを今後大臣としてむしろ積極的にやった方がいいと考えられるかどうか、この点をまず伺いたい。
  173. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点については戦前の考えと戦後の考えというものは非常に違っております。私も実はその大橋君の御意見を聞きました。さような気持を待っておったのです。ところが実際戦後にはすっかり変っておるのです。戦後の大使というのは国内的の地位の問題としては公使と何ら変りのないものです。それが四級か五級かに分れておるのです。だから大使はやめて公使になることもできます。しかし公使の上級者は大使の下級者よりも俸給も何も上です。それからまた大使はやめても、これは下級とか上級とか書いてありますけれども、どっちが上級かわからない、そういうことはないわけです。たとえば外務事務官、今はみんな事務官になっているが、われわれの時代の事務官といったら書記官以下ではなはだ貧弱なものでした。今は外務省員はみんな事務官じゃないですか。私も実は不案内なところがあるのですが、大使をやめても外務事務官になる。たとえば最近の荒川大使のごときは、やっぱり外務事務官になるのです。だから下級者も上級者もない、そういうふうになっているのです。戦前の大使というのは、これは大へんなことでした。これをやるのにはいわゆる親任官で大臣と同じ待遇でしたが、今は大使公使も認証官で、やっぱり認証式をやるのでございます。これは外国に使臣としてやるのだからというところに重きが置かれておるのだ、こう私は思っております。しかし、今では大使が上か、公使が上か、実はわからぬような事態になっておるのであります。しかしこれを国際間から見れば、何といっても大使は昔の伝統がありますから、大使といえば上のように感じます。国内的の何じゃございません。国際的には公使よりも下に下ることはございません。  そこでわれわれはアジア外交に重きを置いておる。どうもヨーロッパを先にしてアジアをあとにする、これはもう絶えず国会でも攻撃のあった点です。私どもはさような国会の攻撃などに耳を傾けて、アジア外交に重きを置かなければならぬ、アジアに大いに力を尽さなければならぬ、力を尽す以上はアジアの国が貧弱であるからといって、大使はヨーロッパの二、三の国に限ってアジアの国にはやらぬのだ、そういう昔の考え方は私は悪いと思う。アメリカアメリカ中心の国際外交を動かしておる。アメリカは中南米のどこの国へも大使をやって決して公使はやらない。これは一つの大きな見識だと私は思う。日本はさような例に学ぶわけではありませんけれども、そのくらいの気位が東洋人として、またアジアの先進国としてあってもいいのだと私は思っております。だから大橋君などが戦前のことを考えて、アジアの国はアジアの何で、それはちっぽけな公使館でいいのでという考えについては私は同調しかねるのです。そこでそういうアジア外交をやろうという以上は、少くともアジアのおもな国、また小さな国であっても、大使をよこしてくれた、さすがに日本だ、こういうような関係を作りたいのが私の主張であります。  そうしてその大使の中には、たとえば今台湾の国民政府に使いされておる芳澤大使のごときは非常な大先輩で、これは一番高い大使になっております。芳澤大使と同級な大使は一人もないのであります。それからずっと五段くらいに分れております。その五段目、六段目くらいの大使より以上の公使はたくさんおります。そうしてそういう大公使が本省に帰ってくればこれは外務事務官ということになるのです。これは少しも差はないのであります。そういうふうにやっておるのでございます。それが戦前と戦後の差でございます。
  174. 松本七郎

    松本(七)委員 今の外務大臣の考え方には私も賛成なんです。そこで戦前と戦後の違いで一つ伺っておきたいのは、日本はいわば斜陽族といいますか、そういうふうな立場にあるので、あまり格式ということにとらわれるのは私はまずいのじゃないかと思います。そうかといってやはり相手国があるのですから、国によっては格式を重んずる国もあればない国もあるのですから、一がいには言えないけれども、今までのように大公使が相手国のいわゆる上層階級の一部とのつき合いは非常にやるけれども、そこの国民大衆生活との接触が非常にないというような欠陥があったと思う。ですから格式ということも必要ですけれども、今後の大公使の仕事、それからこの敗戦から立ち直ろうとする日本が新しい外交舞台に乗り出す一つの道としては、やはりそこの国民大衆の生活をよく理解し、その大衆と密接に接触するというような努力が今後は必要じゃないか、そういうことを規則できめるわけにはいきませんし、大公使自身の考え方、人柄、そういうものによってきまってくることではありますけれども、やはり外務省全体としてそういうことについての心がまえについて相談なり話し合う機会があってもいいのではないかと思いますが、そういう点について外務大臣自身のお考え方と、それからこれからの日本の外交官のあり方として、こうなければならぬというようなことを相談でもして新しく打ち出そうというようなお考えがあるかどうか、その点をお伺いしたいのです。  それからさっき荒川昌二さんが外務事務官だと言われたのですが、荒川さんはやっぱりそういうことになるのでございましょうか。
  175. 重光葵

    ○重光国務大臣 ごく最近外務事務官にしたのです。今のお話は私どもにとっては実は非常な旧聞です。そういうような気持で、これは戦前からそういうふうに考えている。日本の外務省ぐらい平民的なところはない。イギリスの外務省とかヨーロッパの古い国なんかは、外務省は貴族の出身者に限られているというような実情があるのですが、外務省の採用試験のごとく、いわば人材主義と申しますか、どこからでもとっておるのです。これは議会の内部における外務省の出身者にお聞きになってもその通りなのです。外務省の大公使の仕事を、お話のように大衆的にやらなければならぬということも、これも従来ともそういうように考えているのです。しかしこれはお話の点もありますが、人の性質の関係もございますし、いろいろそれは全部が全部満足なということはいきません。しかし外交の仕事が個人的からだんだん大衆的になっている今日においては、ぜひそういうふうな心がけを持ってやらなければならぬ、そういうふうに指導しておるのであります。ただそれが、なおそれについて十分満足してないという見地から、いろいろな批評はこれはいただきたいのでございますが、さような方針でやっておることは事実なのであります。これはお話の通りに、人の運用によってやらなければなりません。しかしそれだからといって、ただ外部から大衆的な人をとって効果的ということじゃこれはございません。外交は訓練した軍隊よりも一層訓練を要する仕事でございます。さような意味、方針をもって訓練をいたすことには少しも異存はございませんし、またそうやらなければならぬ、こう思っておるのであります。
  176. 松本七郎

    松本(七)委員 そういう点、心がけていただいておるとすれば非常に喜ばしいことだと思います。私ども外務省は、他の役所との比較はあまりしたくはないのですが、学閥というような点もないし、どこからもとられるし、また実力本意でやられておるし、仕事の面でも学閥の不快な思いをするということは、あまり聞かないくらいない方だと思っておるのでありますが、その点は今後も一つ御努力をお願いしたいと思います。  それから大橋さんの御意見の中に、人件費を節約して流動経費を増額するとかいうようなこと、これは私の方にも意見がございますので質問は省略いたしますが、「中立的立場の査察使による査察を厳重にすること。」というような御意見があるのですが、これもけっこうなことだと思うのですが、今までこういうことがやられておるのか、あるいはないとすれば、何かそういうやり方について外務省の立場としてどのようにお考えか。
  177. 重光葵

    ○重光国務大臣 これは従来、戦前にもやっておりましたが、戦後にも私は外務省に入ってみると全くこの通りにやっております。ここには「中立的立場の査察使による査察を厳重にすること。」中立的立場におる、外務省と全然関係のない人を査察使にしてたびたび回しております。一例をあげますならば、最近では元の東京銀行の総裁浜口氏を、東京銀行の総裁をやめた後、得にわずらわして査察をしてもらったというようなこともございます。その他の例もございます。しかしそれはかえってあまりそういう人をわずらわすのは悪いのじゃないかという議論もまたありますけれども、しかしそれはやっておるのです。そうしてできるだけ効果を上げたいということに着手をしておることをよく御承知を願いたいと思うのであります。最近もそういう人を出します。
  178. 松本七郎

    松本(七)委員 では最後一つだけ。外務省にも電報が入ったと思うのですが、例の海馬島の漂着漁夫の死体問題で、きのうですかたしか日赤にソ連の赤十字社から電報が入っておるのです。「貴殿に対し回答します。日本人四名の死体はソ連の船により貴方の代表に引き渡すことができます。引き渡しの場所はクリビオン岬南方十二海里、ソ連領水末端、宗谷海峡東経百四十二度五分三十秒、北緯四十五度十二分の地点とします。貴方船舶到着の日時、引き渡しの場所及び貴方代表の氏名を引き渡しの十日前にお知らせ下さい。風雨の際は五日後同じ場所で引き渡すこととします。」こういうのが来ておりますから、いずれ赤十字の方から御連絡があると思うのですが、できるだけすみやかに完了できるようにお取り計らい願うと同時に、この際やはり政府から元ソ連代表部には何らかの形で謝意を表しておく方がいいと思うのです。
  179. 重光葵

    ○重光国務大臣 謝意は謝意で別だが、しかしそれはどこから得られました。
  180. 松本七郎

    松本(七)委員 きのう赤十字に電報が入った。
  181. 重光葵

    ○重光国務大臣 赤十字から得られたのですか。
  182. 松本七郎

    松本(七)委員 そうです。
  183. 重光葵

    ○重光国務大臣 今の問題は人命の——人命はもうないけれども、重要問題ですからすぐ処置します。  今これを伺いしまたから、御質問にない点についてちょっと私申し上げたいと思いますが、「在外公館の固定経費、人件費を節約し流動経費を増額して館の効率を挙げること。」これはいいことです。いいことですが、実は外務省の経費があまりにも少いのです。これは他の国に比較してみてもそうなのです。人件費などを節約して最小限度の人間でやるということは、私は少しも異存はございません。私も努めておるつもりでございます。流動費を増すということも非常にけっこうであります。われわれも歓迎するところで、ぜひこの委員会の方々の御尽力を実は仰ぎたい、こう思います。  それから「名誉領事制度を拡充し重要ならざる正式公館を整理すること。」これはどうですかね。名誉領事へ、他国の名誉領事へすべて依頼するということが果して今日——それがいい場合もあります。いい場合はどんどんやるがよろしい。いい人があれば困難なことではございません。しかし今日の通商外交を進める上においては、領事館の一つや二つの経費を倹約する、整理をする、そういうようなことでは、通商外交といった大きな貿易の発展はできません。だからかようなことでなくして、どんどん正式の公館を、通商網を広げていく、公館を広げていかなければ、そういうことが先に立たなければ通商はできません。何となれば、今日の通商は、大体において各国とも計画通商になっておりますから、どうしても政府当局その他に接触して、談じ込んでいく、引っぱっていくというふうな努力をしなければなりませんので、ただ名誉領事に頼んでおいて、経費が少いからいい、頼んでおいて、そうしてこちらの在外公館を整理しよう、こういう考えだったら、われわれが声を大きくしておる通商の伸展とか、日本の国の外国に対する権威をあげるとか、そういうようなことは私は望むことはできぬと思います。それは私の意見でございます。
  184. 松本七郎

    松本(七)委員 今大臣の方から言われたから、ちょっと触れておかなければならなくなったのですけれども、私もこれには意見があるから、人件費云々の問題は特に御質問しなかったわけです。人件費、それは冗費を節約しなければならぬということは当然なことですけれども、不当に仕事を非能率にするようにまでして人件費を節約するということは間違いだと思います。むしろ十分に仕事のできるような人ならば、日本の方で費用は増額してでも仕事をしなければならぬ。そこで私は関連してお伺いしたいのは、流動経費という、そういう使い方ですね。これは外務省で特にそういう使い方があるのかどうか知りませんけれども、この中には交際費だとかそういうものを一切含めての意味じゃなかろうかと解釈するのですが、そういう意味でございますか。
  185. 重光葵

    ○重光国務大臣 そういう意味でございましょう。しかし御承知の通りに、外務省の費用は、これは毎年、私どもが次官としてやっておったときにも相当の機密費がございました。しかし、その使い方は、全部、受け取りも何もちゃんと整備した使い方を強要しておったのでございます。それはしかし一応会計検査院に当時は出たわけじゃありません。今日ではそういう費目はないのじゃないかと思います。みんな厳密な何でやっておるのでございます。けれどもそういうことでなくして、活動費が在外公館などは相当要るのが事実でございます。そういう方面にいま少し費用をかけなければならぬということはよく感じております。これは御承知の通りに、内幕を申せば大蔵省との関係になります。なかなか外務省のそういう費用をとるということは困難であることを頭に置いていただいて、私どもを御鞭撻願うということは非常に希望するところであります。
  186. 松本七郎

    松本(七)委員 もう一つ。流動経費とか、そういう費目はないということでしたが、交際費だとかあるいは機密費だとかあるいは何らかそういう内容のものだろうと思うのです。そういうものはむしろもっと多くする必要が——私は方々へ行って大公使のお話なんかを聞いたり、それからそのお仕事上から見てうんとふやす必要があると思うのです。ただそれを使う場合に非常にこまかい規則に縛られて使いにくい制度になっておるのじゃないかと思うのです。一方これは公費ですから非常に厳密にしなければならないけれども外国で働く場合には、もう少し融通ある取扱いというものはできないものだろうかということをかねがね考えておるのですが、いかがでしょうか。
  187. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点は、やはり実際的に中庸を得なければ私はいかぬと思うのです。これをあまりルーズにすると乱雑になる。そういう非難を受けたことも過去にはあるのでございます。だからこれは十分に厳格にする。しかしながら有効に使うその方法を見出すことだろうと思います。しかし主義としては、私としては国家の経費でございますから、非常に厳格に気を引き締めて、いやしくも冗費のないようにやらなければいかぬと思ってそうやっておるのでございます。しかし規則上などについては相当やはり改善の余地があろうかと思います。なお詳細のことは、もし御必要ならば……。
  188. 植原悦二郎

    植原委員長 それでは最後に念のために、並木君と松本君の御両方の希望の申し出につきまして、衆議院議長益谷秀次君に外務委員長よりかように進達をしておきましたことを御了承願いたいと存じます。その進達はかようなことであります。  当委員会に於ては、目下日米間に於て交渉中の濃縮ウラニューム受入れ問題について重大なる関心を寄せ、種々調査を進めてきたのでありますが、特に米国の濃縮ウラニュームに関する諸般の実情を調査するため、当外務委員をワシントンに派遣されるよう希望があり議院運営委員会にとりあげられたいとのことでありますので、本件について然るべく御取扱い願います。  こう委員長から衆議院議長にあてて書簡を出しておきましたから、お含みおきを願いたいと思います。  次会は公報をもってお知らせします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十五分散会