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1955-05-30 第22回国会 衆議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月三十日(月曜日)     午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 菊池 義郎君 理事 須磨彌吉郎君    理事 福永 一臣君 理事 穗積 七郎君       伊東 隆治君    草野一郎平君       高岡 大輔君    並木 芳雄君       山本 利壽君    福田 篤泰君       高津 正道君    森島 守人君       戸叶 里子君    岡田 春夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         外 務 大 臣 重光  葵君  出席政府委員         外務事務官         (大臣官房長) 島津 久大君         外務省参事官  矢口 麓蔵君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  国際情勢等に関する件について鳩山内閣総理大臣及び政府当局に対し質疑を行うことといたします。質問者が多いので、なるべく十分以内に時間を制限して全般に行き渡るように御注意願います。通告順により質疑を許します。  なお総理大臣は都合で一時間しか在席されませんので、一人十分程度に時間を制限いたしますゆえあらかじめ御了承を願います。森島守人君。
  3. 森島守人

    森島委員 二、三点について総理大臣並びに外務大臣に対して御質問をいたしたいのでございます。  組閣直後重光外務大臣は、内国人記者外国人記者とに対し二様の声明を出しました。いわゆる二枚舌問題というものを引き起したのでございますが、内人記者に対する声明はきわめて抽象的なものでありまして、重光外務大臣委員会における答弁によりますと、閣議決定を経ておるということでありますが、外人記者に対する分はいかが相なっておりますか、ちょっと伺いたいのでございます。
  4. 重光葵

    重光国務大臣 その問題につきましては、当時本委員会でもかなり問題になりまして、詳しくそのときに御説明申し上げたのでございます。そこでそれを繰り返すわけでございますが、私は内外に対して政府方針説明を使い分けたことはございません。ただ言葉は、今記憶しておるところでは内外に対する発表は閣議決定を経て一本にいたしました。それは内外に対して同文でございます。しかしその前後に、外人記者質問に対して、その趣旨を私は私の言葉でもっていろいろと説明をいたしました。説明をいたしまして、そのために、外人記者がその説明を長く取り扱ったことがありまして、そこで一方は短かく、一方は長いのはどういうわけかというようなことで、問題になったことがあったようでございます。しかしその趣旨は、その文章通りよく御検討下さればわかることでありまして、双方趣旨は同じでございます。閣議に了解を得て発表した文章は、内外に対して発表した声明でございます。以上でございます。
  5. 森島守人

    森島委員 そうなりますと、外人記者質問に詳しく説明されたというのが文章になっておりまして、それは私確実な筋から入手しておるのです。これに対しても総理は御承認になるものと確信しておりますが、総理の所見を求めたい。
  6. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 もちろん承認をしております。
  7. 森島守人

    森島委員 そうなりますと、外国人に詳しく御説明になったことは非常に重要な点を含んでおる。ここにはっきり申し上げますが、ソ連に対すると中共に対すると両国を同列に置いて、ソ連との国交回復を希望するというのみならず、中共との国交回復を希望するということをはっきりここにうたっておるのでございます。総理日自党総裁時代中共との間に戦争状態終結を宣言するということで結末をつけるということをはっきりうたっております。重光外務大臣もその線に沿ったか沿いませんか知りませんが、ここにははっきりうたっております。「ウイ・アー・ゼアフォア・ウイリング・ツー・リストア・ノーマル・リレーションズ・ウイズ・ラシャ・アンド・チャイナ・オン・ミューチュアリ・アクセプタブル・タームズ」云々、こういうふうにはっきり出ておるのでございますが、その後になりますと総理は、中共との国交回復の問題についてはほとんど触れられておらない。中共とは貿易を増大するのだという一言説明で終始しておられます。重光外務大臣もその後になりますと、二、三日たつとその外人に対する説明はあたかも忘れたように、中共との国交回復という点には一言も触れないで、むしろ中共との国交回復については国際関係の重大なる変化を待つというふうに根本的に態度が変ってきておる。この原因が果してどこにあるのか、総理重光外務大臣の明確なる御答弁を願いたいのでございます。
  8. 重光葵

    重光国務大臣 私が外人説明をしたのでございますから、私からお答えをいたします。  それはその当時、日ソ関係正常化したいという考え方を持っておったのでございます。それからまた、東ア事態正常化したい、こう考えておったのでございます。それでございますから、中共が事実あそこに政権を立てておる、こういうことを頭に置いて、これに対して処理をいたしてきたわけでございます。これは東アの安定を持ち来たすために、つまり東ア情勢正常化するために、さようなことに進んでいくことがよいとそのときも考えておったわけでございます。しかしそれは、ソ連中共とに対するやり方がすべて同じであるということを言っておるつもりはございません。そういうことはございません。またそういうことはその当時から言えるわけでもない。これは外交上の常識です。そこでとにかく、国際間のあつれきを少しでも正常化いたしたい、こういう全体的の政府考え方を端的に発表したわけであります。それでありますから、ソ連との関係においても、今日でも、双方受諾し得べき条件を発見するために交渉をやる、こう私は説明をしておるのでございます。中共との関係は、今すぐ承認の問題に行くわけにいきませんから、そこで実際の取扱いとして、漸次東アの形勢の正常化を持ち来たすように進んできているわけであります。
  9. 森島守人

    森島委員 ただいまの説明は私は納得できないのでございますが、これが少くとも外交政策——フォーリン・ポリシーのステートメントである以上は、政権をおとになりましてから数カ月か半年か知りませんが、比較的短期間に実行し得る政策を掲げるのが当然だと思います。ところが今の御説明ですと、まるで夢のような、一年たってできるか二年たってできるかわからないことを具体的の政策にお書きになりましたところに私は非常なそごがあると思います。時間がございませんからこれ以上この問題を追及することは避けますが、ただいまの御説明によりますと、漸次正常な状態を回復するのに力を尽したいということでございましたが、そこで私のお尋ねしたいのは、重光外務大臣も、領事承認は事実上の承認になるという学説があるから検討しておる、こう御答弁になったのでありますが、この検討しておるというお言葉は、果してこれを進めるために検討しておるのか、これは事実上の承認になるから困るということで、消極的の意味で御検討になっておるのですか、この点を私は伺いたいのであります。
  10. 重光葵

    重光国務大臣 さようなわけで、なるべく東ア情勢正常化したいという考え方を持っておりますがゆえに、私は、中共との関係においても、貿易使節の交換の場合に領事の問題すら説明を加えたわけであります。しかしそれは今検討をいたしておるわけでございます。検討しておるわけでございますが、この領事を置くということについては、またいろいろ難点があるようでございます。それですからすぐ結論は出ないように感ずるのであります。しかし、さようなことで、できることから順次に進めていくことが一番よろしい。それで民間通商代表を送るということもよいだろう、ただし外交官特権をこれに与えることはできないということを御説明申したわけであります。
  11. 森島守人

    森島委員 ただいまの御説明で幾らかはっきりいたしましたが、一歩ずつ法律上の正式承認に近づく措置をおとりになるということと了解いたします。ただし領事派遣は困るということでありますれば、通商代表派遣については御異議がない、こう私は了承しておきます。しかし中共からはあるいは役人が来ることになると思うのでありますが、重光外務大臣外務次官をやっておられたときにも、満、独双方の間で通商使節派遣するという問題が起きました。満州独立国だったという形式的な御説明をなさるのなら別ですが、通商代表相互派遣ということについては、そのときの局に当られた重光外務大臣は別に御異議はないものと了解して差しつかえないですか、その点をお伺いしたいのであります。
  12. 重光葵

    重光国務大臣 満州の場合は、われわれと一緒に仕事をしておった時代のことを今かれこれ引き合いに出してもどうかと私は思いますけれども、私としては引き合いに出す意向はございませんが、私も森島君と御同感でした。そこでかようなことは、私はあまり急進的にやると故障のみ多くして実際正常化目的も達しない。そこで先ほど御指摘になりました社会情勢ということも考えなければならぬと思うのですが、そういうことで、徐々に情勢のおもむくところに従って、あまり紛糾を見ずして進むことが一番目的を達するゆえんだと考えておるのであります。従いまして、今の通商代表の問題は、最近できました通商協定のあの第何点かの問題から御議論があったと思います。そこで私は、これは通商貿易のことでありますから、なるたけこれに協力をする態度がいいと考えます。しかしそれだからといって外交官特権を要求されては、私は少し行き過ぎると思うのです。そこで外交官特権というようなことのないようにして、そして通商代表はこれは民間代表としてくるという建前でいくならそれでよかろう、こう考えておるわけです。いろいろ御議論もありましょうけれども、実際的に徐々に大勢のおもむくところに従って解決していくのが一番事態に合うのじゃないかと考えておるわけであります。
  13. 森島守人

    森島委員 時間がありませんので別の機会にまた外務大臣に詳しく質問することにいたしまして私は質問を打ち切りますが、その前にただ一点だけ伺いたい。先日来の論議を見ておりますと、ウラニウムの受け入れについてはあたかも協定形式、トリーティでなしにアグリーメント形式でやるということが前提条件のようになっておるのであります。外務大臣も、国会審議を経るやいなやは協定内容を見た上で決定したい、こういう御答弁をなさいました。それから国会側質問しておるものも、あたかも協定ということが当然のようにしておられますが、これは非常な重要問題ですが、同僚の委員からいろいろ意見も出ておりますので詳しいことは申し上げませんけれども、私は日本に及ぼす影響等を考慮しまして、条約形式でおとりきめになることができるのではないかと考えておるのであります。アメリカ原子力法を私は読んでおりません。しかしこれは私は条約でやるのが最も適当であると確信しておるのであります。続けて申し上げますが、日本枢密院の官制によりますと、国際条約その他国際約定という字が使ってありまして、たとえば先般の日米共同声明のごときものもすべて枢密院の諮問に付議されておった。枢密院の制度がいいか悪いか、これは別問題です。私もこれはいいとは思っておりません。しかし国会を重視するという点と日本の国に及ぼす利害関係から考えれば、なるべくすべてのものは条約形式をとってやるのがいい、こう私は確信しておるのであります。現在の憲法によると国際条約だけが国会審議に付されるということになっておりますが、これはアメリカ憲法イギリス憲法一緒に取り入れた際に、私はその国会審議中重要な点を忘却したのではないかと考えておるのであります。そういうふうな見地から、条約形式によっておきめになることが適当じゃないかと思うが、その点に関する御意見を伺いたいのであります。ただいまの情勢ですと、これは知らぬうちに済んでしまいます。そして国会に押しつけられるというのが落ちであろうと私は思っております。条約ということになりますれば国会側におきましてもこれに保留条件も付することができまして、日本側で懸念しておる点については日本側でこれを適当に処理する道もあることと私は確信しております。その点に関する御意見を伺いたいのでございます。
  14. 重光葵

    重光国務大臣 ごもっともと存じます。私ども外国とのそういうとりきめにつきまして、ごく簡単な行政的の処置のようなことならともかくとして、いやしくも国を拘束することのあるようなことは、これはみんな御承認を得た方がいいと考えておるのです。ただ、これは長くなりますから何しますが、枢密院時代のことは、私もそれに非常に携わった人間の一人ですが、それはあのときも国際約束を何もかも枢密院にかけたわけではないのです。それは国際約束を何もかもかけるというと、口頭で約束したことも枢密院承認を経なければならぬような極端なことになります。国際約束口頭でもやらなければなりません。しかしそういうことじゃないのです。今日の憲法上、条約でなければすべて国会の御承認を経なくてもいい、こういうふうな解釈でありましょうか。これは私は一つ憲法学者なり法制局長官の方に何しなければなりませんが、私自身は実はそうは考えておらないのです。私自身は、形式条約であろうとあるまいと——これは場合によっては条約といい、場合によっては協定といい、これはどっちが重要なものであるかということは場合によって違います。それからまた英語でいえばパクトとかなんとかいうこともある。それは実質によって決定すべき問題だと考えております。これは誤まっておれば何ですが、実質上そういう重要なものならばこれは御承認を経るのが当然だと考えております。これが新しい憲法の精神だと心得ておるのであります。それですから、今のお話条約形式にしなければならぬということは、これは私はすぐお受けするわけには参りません。参りませんけれども、さような実質において重要なものは当然私は御承認を経べきだ、こう考えて、そういうふうな処置を今日までもしておるつもりでございますし、また今後も……。     〔「今度の協定はかけるのですか」と呼ぶ者あり〕
  15. 植原悦二郎

    植原委員長 私語を禁じます。     〔「答弁していないからだ」と呼ぶ者あり〕
  16. 植原悦二郎

    植原委員長 あらためて森島守人君。
  17. 森島守人

    森島委員 どうせ時間をゆっくり得まして、その上で御意見を詳しく承わりたいと思いますが、ただ一点、今度の協定と申しますか、トリーテイ条約ということについて、憲法の定めておる通り措置をおとりになる方が適当である、こう思うのでございますが、今度のとりきめについては条約形式をおとりになるか、あるいはアグリーメント形式をおとりになるか。さらにアグリーメント形式をおとりになる場合においても、国会審議に付されるかどうか。直截簡明にお答えを願いたいと思います。
  18. 重光葵

    重光国務大臣 条約形式によるかどうかということは、今ここでお答えをいたしたと思います。私はそれはどういう形式によるかということは交渉の結果によるのでありますから、これはお受け合いすることはできません。しかしながらこの問題は私は非常に重要な問題だと私自身思っております。だからこれは議会承認を経ることが当然だと思っております。それだけ申し上げればよかろうと思います。
  19. 森島守人

    森島委員 一点申し上げますが、アグリーメント形式をとった場合に、国会でこれに保留条件をつけたり、またその他の条件をつけた場合にはどういうふうな法律的効果を生ずるか。これは外務大臣でなくても条約局長からでもよろしいですから御説明を願いたいと思います。
  20. 下田武三

    下田政府委員 条約協定締結の際に、政府自身留保することもございますが、これは日本にはないことでありますが、アメリカ議会が御承知のように日米通商条約のときにも留保ということをいたしました。その場合にどういう措置をとるかということは留保内容のいかんによることでございます。留保がただ単に希望の表明であるというような場合は、ただ相手国はそれを聞き流しておけばいいわけでありますが、もし留保条約内容実質上変更するような留保でございましたならば、政府はその留保した相手国承認するかどうかを確かめる必要がございます。そこであらためて相手国交渉をしなければならないという結果に相なるわけでございます。もし相手国がその留保承認いたしません場合には、条約自体が成り立たないという結果をも来たすわけでございます。
  21. 森島守人

    森島委員 ただいま私がお伺いしましたのは、トリーテイの場合の留保じゃございません。トリーテイの場合の留保は、今条約局長の御説明のあった通り。これはお聞きせぬでもわかっておる。アグリーメントの場合に、国会留保をつけた場合にはどういう効果を生ずるか、その点を聞きたいのです。
  22. 下田武三

    下田政府委員 これはトリーテイの場合でもアグリーメントの場合でも、全く同じでございます。
  23. 植原悦二郎

    植原委員長 森島君の御質問に関連するアグリーメントに関する事項は、かなり重要な問題だと思いますから、どうか政府においても十分の御研究を願います。これはただ問題となっておる濃縮ウランの問題だけではありません。(「その通り」)将来国会条約アグリーメントに対する政治上の問題のことでありますから、十分な御研究と、お取扱いの御注意を願います。戸叶里子君。
  24. 戸叶里子

    ○戸叶委員 森島委員からただいま大へんにいい御意見が出まして、委員長からもそれに対しての意見が出ました。私もそれについて伺いたいのですが、時間がございませんから、濃縮ウラン関係して一点だけお伺いしたいのは、この間の外務委員会で、この濃縮ウラン日本受け入れることについて、賛成不賛成両方の方からのいろいろな意見を拝聴いたしました。そのときに賛成論者でさえも、今すぐ受け入れるということに対しましては、相当慎重な態度を示していたように私どもは伺っております。外務省の方におきましても非常に慎重であったようですし、重光外務大臣のただいまの御答弁を伺っておりましても、これは非常に重要な問題であるからよく研究しなければいけない、こういうことをお伺いしましたが、伺うところによりますと、アメリカ国会ともにらみ合せまして、濃縮ウランを一応受け入れるというような取りきめを、近いうちにしようというようなこともあると伺っております。これはいかがでございましょうか。
  25. 重光葵

    重光国務大臣 この前政府方針ははっきりと申し上げたのでございますが、(「閣議決定後聞いていません」と呼ぶ者あり)そうでしたか。それじゃこの決定は、原子力利用準備調査会の決議がこうなっておって、これを閣議が了解して受け入れたということになっております。第一項は、わが国における今後の原子力開発の一環として、適当な条件のもとに濃縮ウラン並びにこれに伴う所要の技術等援助提供受け入れるものとする、こういうことが第一項でございます。第二項は、なお本件受け入れと並行して、わが国原子力開発に必要なる態勢をすみやかに整備するものとする。この第二項はだいぶ専門的な御意見が戦わされてこういう工合になったことを記憶いたしておりますが、あるいは私よりも経審長官が見えたときに御説明する方が適当しゃないかと考えておるのでございます。第一項はかような技術援助提供受け入れるという大体の考え方をもって——しかしそれは条件をはっきりしなければいかぬ、適当な条件のもとに、こういうことがついておるわけであります。これに基いて外務省交渉をいたしております。その交渉内容は、いろいろ今往復をいたしておりますが、だいぶ専門的のことになりますので、私の心得ていないところがずいぶんございます。しかし今交渉中でございまして、それについて実はどうなるか私も予想がつきません。果してその交渉が成立するかどうかということは予想がつきません。しかし、ワシントンでやっておりますが、向うの状況は逐一こちらに反映いたしますから、こちらといたしましては、専門家その他と——政府部内の官庁はむろんのことでありますが、十分連絡をとり、協議をしつつ進めておるような状況でございます。
  26. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、原子力利用準備調査会で申し合せたことを閣議決定したということは了承いたしました。そこで今ワシントン交渉中というお話でございましたが、アメリカ国会とにらみ合せて、この国会の済まないうちに一応はっきり協定というようなものを結んで、そのあとこまかい技術的な面を含んでの協定を結ぶというようなことも巷間伝えられておりますが、そういうことがあり得るかどうか伺いたいと思います。
  27. 重光葵

    重光国務大臣 実はそれは私は的確に申し上げる自信がございません。というのは、これは非常に高級の専門的の知識を必要とするのでございます。それから、このことについては社会党の方からも党議として私のところには要望書を出されております。これも十分頭に入れて交渉の資料にしておるわけでございます。それによっても、交渉は異存はないけれども、誤まりをしちや困る、一がいに言えばそういう御趣旨のようでもございます。慎重に今やっておるので——これは決して外務省だけがやることのできないことはわかり切った話でございます。そこで交渉外務省が責任を持ってやりますけれども、こういう専門的のことは、十分に慎重に各方面の意見を聞いて進めていかなければならぬと思ってやっておるわけでございます。しかし慎重といってもただ長引いてばかりおっても工合が悪い。そこでまとめることが有利であるとする場合には、これはまとめなければなるまいと思います。相手のあることですから。しかしそれかといって、閣議決定においても、適当な条件のもとにということになっておるわけでありますから、その辺に手落ちのないように審議を尽していきたい、こういう状態でおることを申し上げて、私の御説明といたします。
  28. 戸叶里子

    ○戸叶委員 重光外務大臣大へん御親切に御答弁をいただきましたけれども、これを私が伺いましたことは、二つ協定といいますか、二つの取りきめの形にするのかどうかということだったのですが、このことは高碕長官の方が詳しいとのことでございましたので、いずれあらためてお伺いしたいと思います。  次に、先ごろから衆参両院の本会議で、日ソ国交調整の問題についていろいろな質問が行われました。私両方聞いておりまして、どうしてもその答弁ではっきりしないことが一点ございました。それは鳩山総理大臣重光外務大臣も、特に鳩山総理大臣がおっしゃったことは、諸懸案を解決する平和条約を締結して、日本ソ連との間の国交調整をする。この点はよくわかり、私どももそれを望んでおりますけれども、諸懸案を解決する講和条約を結ぶという前提の上に立っての戦争終結宣言を結ばれるような御意思はあるかないかというふうな質問に対しましては、どの委員質問にもお答えをそらしていたように私拝聴しておりました。このことは鳩山総理大臣が選挙の前にもはっきりおっしゃったことでございますので、それに対するお考えのほどをこの際承わりたいと存じます。
  29. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日ソ間が戦争をしまして、そのままになっておるということは非常に嘆かわしいことであります。もしも世界第三次大戦でも起りましたらば、ただちに日本は攻撃せらるるおそれがありますから、そういうようなおそれをなくすことが非常に必要だと思いまして、日ソ間の国交正常化ということを言い出したのであります。それですから、目的日ソ間の国交正常化するということにあるのは当然であります。だから日ソ間の国交調整を何するかといえば、正常化したいからというのであります。けれども日ソ間の国交正常化したいというのは、つまり戦争のないような場合に持っていきたいというのでありますから、戦争によって起きた諸懸案は当然に考慮に入れなければならないと思っているのであります。それですから、それじゃいつどれだけの目的を達したならば、国際関係正常化という平和条約みたいなものを締結するか、それが問題なんだろうと思うのです。それはそのときの情勢によって考えなければならないことで、今日諸懸案のうちどれだけが片づいたら平和条約を結ぶということは、当局としてはどうしても言明はできないわけです。
  30. 戸叶里子

    ○戸叶委員 鳩山総理大臣お答えはこの前の他の委員に対するお答えと大体同じで、私もその点は了承しているわけです。それでは言葉をかえてお伺いしたいのですが、過去の戦争終結宣言の他の国のあり方を私少し研究してみましたが、四つ五つの例がここにございます。それを別に引く時間もございませんので、大体そういう例を参照してみますと、講和条約、つまり領土問題などを含んだ講和条約を解決するという条件で、一応戦争終結の共同宣言を結んでいる例がございますが、その場合に大てい負けた方でない方から一応宣言して、そしてそのあとで講和条約を結んでいるというような例がございます。今度の場合に日本代表ソ連代表との間で諸懸案を解決していく、そしてまたそういった問題を含んだ講和条約を締結するというふうな条件のもとに、もしもソ連側から戦争終結宣言を一応結んでいこうじゃないかというふうな話が出るなり、またそうした条件を含んでいるならば、日本側としてもそれを受けて戦争終結共同宣言というものを一応結んで、諸懸案の解決に当ろうとされる意思はございませんかどうか、その点を承わりたいと存じます。
  31. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は自分の大体の考え方は申した通りでありますが、どういうような交渉をして、どういうものになっていくかという技術の点にわたりましてはわかりませんから外務大臣から答弁していただきます。
  32. 重光葵

    重光国務大臣 国交正常化ということ、またそれをどうしてやるかということでございますが、それについて今お話の題目になった戦争終結宣言、これはだれでもできることであることは御存じの通りであります。そこで一番日本の場合に当てはまる場合は、これはいずれそういうことは御研究になっているわけでありましょうが、ソ連がドイツに対して戦争終結宣言をした、しかしソ連とドイツとの間の国交というものは何ら正常化はいたしておりません。ある意味では、私はますます関係は尖鋭化してくるのではないかとすら最近は思うようになってきた、しかしながらソ連戦争終結をするということはソ連の国内的の効果はあるのであります。そこでまた戦争終結を宣言し、かつまた抑留者の釈放をするというようなことも、戦争がなくなつたのであるから、国内的に効果があり得ると思います。さようなことは、また対外的、つまりドイツに対して外交上の非常に大きな効果があるだろう、こう思います。しかしそれをそれではドイツが受けて、今お話通り共同の戦争終結宣言ということをして、これでもって両方とも意思合致して戦争終結しようということになれば、これはもう平和条約と異なるところはございません。それではあとからいろいろ講和条約形式的に結ぼうといっても、これはあとからの予定を示すことなので、国交正常化はそれできまるわけでございます。しかしその場合において、果して共同の戦争終結宣言をするという行為をすることがいいか悪いかということは、その国のおのおのの立場により、また国の利益を考慮しなければできないことでございます。ドイツは、現にソ連がそういう戦争終結宣言をしても、あれは何ら顧慮をしない、受けこたえをしておらないのでございます。それで将来の平和条約をどうするかということをしきりに苦慮しておるように見えます。オーストリアの問題もそうだったと思います。オーストリアもようやく最近御承知の通り、これは国家条約と称しておりますが、平和条約をこしらえて、独立をいたしたということに相なっております。そういうわけでありますから、戦争終結宣言はでき得ることでありますが、それを共同してやるということになりますと、一方的でなくして双方ともこれによって拘束されることになります。私は戦争終結宣言というようなことにかかわらず、そういうことは時期を見て日本の利益になるときにそれはやって悪いとは決して申しません。そういうことが必要なときがくるでしょう。しかしながらそれよりも何よりも国交調整正常化するという正攻法でいった方がいいと私は思います。それは平和条約を締結する、懸案を解決する、こういう意味で政府方針決定をし、国会の御承認も求めるために私は報告をいたしておるわけであります。その問題の解決をできるだけすみやかに、かつ有利にこれをやるということに全力を尽してみるべきだ、こう思っております。今日から、交渉に入らぬ前から交渉のできないことを予想し、中途半端でやめるということを予想するということは私にはできがたいことでございます。
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大体重光外務大臣のお考えも、端的に申し上げますならば、諸懸案を解決する講和条約を結ぶようにしていくということで、まだ交渉に入らないから、そういう問題については触れられたくない、こういうふうに了承したわけです。  それでは先ごろの本会議におきましても重光外務大臣が発表されましたが、引き揚げの問題、戦犯の問題でございますが、これは別個に一日も早く人道上の問題として解決したい、この御意思のほどは私どもは大へんうれしく思いますが、交渉と別にだれかソ連の方へ専門家をやって、そうして一日も早く解決するようなお考えはないかどうか。さらにもしもまだ戦犯で刑に服している人があるとすれば、その方々を日本に連れてきて、日本で何とかその戦犯の刑を終えるとか、そういったようないろいろな問題があると思いますが、そのためにだれかソ連へ直接交渉にやるような御意思はないかどうか、この点も伺いたいと思います。
  34. 重光葵

    重光国務大臣 その問題も効果的に私はやることを考えなければならぬと思います。そこで今日の状況において、その問題のために特にソ連に人を出すということが効果的であるということは、今考えておりません。しかし日ソ交渉も始まることでございますから、むしろその前提として、さようなことを正式の有力なる全権の間において、十分話し合って解決を試みるということが最も効果的の方法ではないか、今のところではそう考えております。
  35. 戸叶里子

    ○戸叶委員 これは直接関係ないかもしれませんが、七月に開かれます米英仏ソの四国巨頭会談で日ソ交渉に何らかの影響があるとお考えになるかどうか、この点を承わりたいと思います。
  36. 重光葵

    重光国務大臣 私はそれはあるしまたないと、こういうことになるかもしれませんが、日ソ交渉も今世界の大きな動きの一つの重要なことであるのに違いはございません。それからまたオーストリア問題からひいて行われる大国の会議、これは特に世界情勢の全般からいって重要な事件であることは言うをまちません。そういう意味において、私は世界情勢の一環として関係のないということを申すわけには参りません。しかしそれならば日ソ交渉が大国の会議によって左右されるか、私はそれは左右される状況にも、また見込みも今ないと申し上げて差しつかえないと思います。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 沖繩の問題をいろいろ承わりたいと思いましたが、時間がありませんからただ一点、基本的な問題だけを鳩山総理大臣に伺いたいと思います。先ごろ条約局長といろいろこの委員会で問題になりましたが、それは別といたしまして、沖繩の領土主権が日本にあるということは、はっきり鳩山首相もおっしゃいました。そこでアメリカには沖繩の領土を統治する権利があっても処分権はないと思います。そこでもしもアメリカがそこを恒久基地化しようとして土地を買い上げようという場合には、もちろん日本政府の承諾を必要とすると思いますが、その点鳩山総理大臣はいかに思いますか、その点だけは伺いたいと思います。
  38. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 アメリカが沖繩の土地を買い上げるというのは、その住民の承諾じゃないでしょうか。日本政府の承諾という——日本政府は領土権を持っているけれども日本政府の承諾が要るのか……(「要りますよ、領土権を侵害されるのだから当然じゃないか」と呼ぶ者あり)さあ私の考えは、よくわかりませんが、土地の買い上げは領土の処分とは違うのじゃないでしょうか。日本の領土を処分するというのならば、領土権を持っておる日本政府の承諾が必要にきまっておりますけれども日本の領土権をどうするというわけでもないのですから、その土地について、使用するについて必要なることをするわけなんですから、それは土地の住民の権利は尊重しなければならぬと思うのですが、日本の領土の処分権が要るというふうには今のところちょっと考えられないのですが、これは私も、突然の質問でして、常識でお答えする以外に方法はないのですが、よく聞いてみます。
  39. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大へん重要な問題だと思うのです。では鳩山総理大臣個人の御意見を伺いたいのですが、もしも住民も反対しているにもかかわらず、アメリカの方でこれを買い上げて——それはアメリカ法律でどうにでもできると思います。強制的にでも買い上げてこれを基地化するというようなことになった場合に、潜在主権とはいいながら、ともかく日本に潜在主権というものがある。そして沖繩の住民は日本の国籍を持っておるのですから、こういう人たちを保護するという意味からも、私は当然黙っていてはいけないと思うのですけれども、その点についてどういうふうにお考えになるでしょうか。
  40. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 土地の処分については、その土地の所有者の意志を無視して法律違反なことはできないと思うのです。それですから日本の領土権の上においてそういうことが起きた場合には、日本政府はその中間に立ってアメリカ交渉する義務はあると思います。が、土地の処分について日本政府は必ずしも交渉をする義務はないと思うのですけれども、その上に起きたところのトラブルについては、領土権の上に起きたところの諸問題について日本政府が知らぬ顔をしておるということはできない。日本が領土を持っておる、そこに住んでおる住民の権利を尊重してアメリカ交渉するという責任は、日本政府に十分あると思っております。
  41. 植原悦二郎

    植原委員長 菊地委員
  42. 菊池義郎

    ○菊池委員 ソ連日ソ交渉を利用して日本の中立化をはかるだろうということを外国の新聞がしきりに言っておりますが、鳩山先生が本会議においても宣明されました通り——日米安全保障条約は絶対に破棄しないということをおっしゃった、こういうことになっておりますが、それはソ連がどういうよい条件を持って来ても、たとえば南樺太を返すとか、あるいは講和成立後において、日ソの軍事同盟を締結しようじゃないか、あるいは不可侵条約を締結しようじゃないかというようなことを言われました場合においても、この日米安全保障条約は破棄する意思は持っておりませんかどうか、そういう点をはっきりしていただきたいと思います。
  43. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 破棄する意思はございません。
  44. 菊池義郎

    ○菊池委員 この間立川基地に代議士連中が話を聞きに行ったのでありますけれども、参謀長がわざわざ九州から飛行機で一時間で帰って来て、そうしてみんなに堂々と説明したのです。それで立川を基地としてバイカルの向うまでもたたくということを言っております。軍人ですから単純で、こういうことを言えば、日本人は好戦国民だから喜ぶであろうと考えて、そういうことを言ったらしい。辻政信君などは、ああいううかつなことを言うものでないかというようなことを言って、非常に心配しておりました。それで原爆を持ち込むということは、今日の安保条約、行政協定はこれを制限することができないわけでございますので、持ち込むということはできる。また安保条約や行政協定を改訂して持ち込むことができないとしても、一旦緩急の場合には、秘密に持ち込むということも実際においては可能であるということを私は聞いておる。それが左派の諸君の攻撃の材料になるであろうということが言われております。こういう点について総理大臣及び外務大臣はどういう考えを持っておられるか。つまりあそこを基地として出撃するということをはっきり言っておるのです。代議士連中の前にはっきり言っておるのですが……。
  45. 重光葵

    重光国務大臣 今の立川における会話の状況は、私は全然知りません。いかにアメリカの参謀長といえども、あそこから原爆をもってソ連を攻撃するのだとは、私は説明しなかっただろうと思います。それは説明を、そういうことをし得る地位におらないのであります。
  46. 菊池義郎

    ○菊池委員 原爆とは言わない、飛行機です。
  47. 重光葵

    重光国務大臣 それは飛行機は出ております。もちろん飛行機は行くだろうと思います。そこで、原爆の問題については——原爆の問題が御質問趣旨でございましたか。——それならば、原爆の問題については、私の従来の説明を繰返します。行政協定は原爆が自由に持ち込み得る、こうわれわれは考えておらぬのであります。原爆などを持ち込んで日本を原爆の基地にするということは、これは日本の、何というか、死活の問題になると思います。さような場合に、日本を原爆の基地にするということは、必ず日本の承諾なくしてはやれぬと思います。やれぬと思うと言うのは、そう申し上げる相当な理由を持っておるから私は申し上げるわけでございます。そこで、その場合においては、国際情勢の全体を考慮して、どういう場合に——これは戦争の場合ですが、戦争の場合にどうなるかというようなことは原爆の問題できまる問題ではございませんから、慎重に考慮して、そのとき日本の行く道をきめなければならぬと思います。しかし原爆自身の問題については、必ずそういう作戦をとることについて日本の了解を求めた上でなければできぬと、こう向うも考えておることを私は承知いたしておりますから、さよう御了承願いたいと思います。
  48. 菊池義郎

    ○菊池委員 フィリピンへの賠償でございますが、日本が四億ドルを主張し、向うが八億ドルを主張した。フィリピンの方は最初二十億ドルと言っておったのが、八億ドルということになっております。いつも私が言いますように、われわれ現地を回って見ましたが、当時の軍の話を聞いてみますと、損害の起ったのは、日本軍の攻撃をはばむために橋梁を破壊する、あるいはホテルを焼く、学校までも焼いた彼らみずからのゲリラ戦によって起った損害が七割、八割を占めておると言われている。日本軍が加えた損害はほんの三割ないし四割にすぎないといっている。かりに日本軍が加えた損害が四割といたしましても、向うが八億ドルを主張するなら四、八、三十二で、三億ドルくらいがちょうどよくないかと思いますが、日本の方としても、その損害をだれが起したかということをはっきり言って交渉すべきであろうと思うのです。増長さしてはならぬと思うのです。もちろんこういったような交渉は、そのあとの講和の問題やら、貿易の問題やら考えてせんければならぬことは当然でございますが、なお四億ドル以上に譲るつもりでございますかどうか。大体そういうことは機密に属することでございましょうが、われわれはむしろ四億ドルでもまだ高いと考えております。大体切り出すときに、四億ドルをねらうならば三億か二億ドルとこっちから切り出すべきだ、向うは最初二十億ドルと言っておった、そうして八億ドルに負けている、あまりにもかけ引きがなさ過ぎると思う。これはもっとも当時の自由党内閣の責任でございまして、わが党の内閣に責任はないのでありますが、その損害の起った原因がどっちにあるのかもっともっとはっきりそれを明示して、そうして交渉に当るべきだと思います。その点について一つ……。
  49. 植原悦二郎

    植原委員長 少し声を高く、聞えないところがあるそうですから。それから菊池君も、質問意見とごっちゃにしないように。質問の時間に制限がありますから、きりっと御質問願います。
  50. 重光葵

    重光国務大臣 フィリピンの賠償問題につきましては、何とかしてこれを双方の満足し得る程度においてまとめたいと一生懸命に努力をいたしておるわけでございます。なかなか容易ではございません。今のような御意見もありますし、また反対に、非常に極端な反対の御意見もございます。しかしながら、政府といたしましては、何とか双方の満足し得る、妥協し得る程度において、ごくいわば常識的に、一つこの問題はできるだけまとめたいという気持をもって進んでおります。
  51. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから……。
  52. 植原悦二郎

    植原委員長 まだ賠償の問題は交渉中で、それを想定して議論すれば議論になると思います。あなたの質問外務大臣に限られておりますが……。ちょっと委員長の言うことを聞いて下さい。総理大臣はきょう非常に時間を制限されております。総理大臣に対する質問の残っておる方があるのだから、あなたの外務大臣への質問留保して、そうして総理への質問の方にお譲り願えば、委員長としては取扱い上非常に便利だと申すのであります。
  53. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから、フィリピンの軍票の所持君たちが結束いたしまして日本政府に迫って来ておりますが、これはやっぱり賠償の中に含んで交渉しますかどうですか、その点。
  54. 重光葵

    重光国務大臣 その問題も懸案でございますが、しかしこれは賠償の問題が片づけば全部含まれる問題です。
  55. 植原悦二郎

    植原委員長 その問題は他日あると思いますから、どうかお譲りを願いとうございます。
  56. 菊池義郎

    ○菊池委員 ではあとに持って行きます。
  57. 植原悦二郎

    植原委員長 岡田春夫君。
  58. 岡田春夫

    ○岡田委員 委員長の注意がありますので、外務大臣質問いたしますことはあとに留保いたしまして、総理大臣に主としてお伺いをいたしたいと思います。  先ほど森島君の御質問によりましても、条約あるいは協定について、国会との関係、これが相当論議されました。特に委員長から、国会承認の問題はきわめて重要であるから、政府としてはこの点について十分留意を願いたいという意味の発言もあったわけであります。私たちといたしましては、協定あるいは条約において、国会承認を当然要すべきものについてはこれを何らかの——単なる行政協定というような名目のもとに国会承認を得ないでごまかしていくということは、われわれは国会審議権をじゅうりんする意味において断じて許し得ないのであります。にこで具体的な点を伺いたいのでありますが、二、三日前の新聞によりますと、余剰農産物の協定が、今週早々重光外務大臣アメリカ関係当局において調印されることになっておるそうでありますが、余剰農産物の協定国会承認を得ることに、すでにこの委員会においても政府当局としては再三答弁をいたしておるわけであります。この点は間違いない事実であります。それにもかかわらず、ここで特に鳩山総理大臣にお伺いいたしたいことは、二日ばかり前の新聞によると、余剰農産物の協定国会承認を得ない前にこれを仮実施するというようなことが新聞に実は再三報道されているのであります。こういうようになって参りますと、先ほど外務大臣からも答弁をされた国会審議を尊重するということにこれは明らかに反してくる。批准の条項が明らかに出ているにもかかわらず、この批准を待たないで仮実施をするという法的根拠は実はないのであります。しかもこの点は、外務省のある局長に対して私は十日ばかり前のこの委員会におきまして、仮実施をやるのではないかという点を念を押して聞いている。このときには、その局長は仮実施はいたしませんと、こう答弁をしております。うそだと思ったら、下田条約局長こっちを向かれたから、あなたの言われたところを私読んでもいいのですが、そこまで言っておられるのに、新聞によると、アメリカ側の都合によって国会承認を得ない前に仮実施をして、七月一ぱいにはこの協定に基いた農産物を日本に輸出するということまで、明らかになっているじゃありませんか。口の上では外務大臣やその他の諸君はうまいことを言いながら、実際には条約の批准を待たないで、言葉をかえて言うならば、国会審議権を侵害して、国会承認というものを問題にしないで、このような形で仮実施をしようとしていることが明らかであります。こういう点から見ると、先ほど外務委員長からも厳重に注意を喚起した問題であるだけにきわめて重大であると考えますので、特に総理大臣からこの点についての責任ある御答弁を伺いたいと思います。
  59. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 議会にはかけるつもりでございます。仮実施ということはぼくはよくわかりませんが、当局から説明してもらいます。
  60. 岡田春夫

    ○岡田委員 当局から御答弁伺わなくてもよろしいのです。議会にかけることはもうわかっておるのです。しかし議会にかける前に、この協定によって生ずる効力を国会承認する以前において、この協定によって行われる実際上の仕事が七月初めにはもう行われる、こういっておる。これは事実において国会審議権をじゅうりんしていることになっているではありませんかと私は伺っている。もしあなたがほんとうに国会承認をとってから、批准を得てからこれを実行するとお考えになるならば、それが正しいのだとお考えになるならば、そういうように、協定に基いて行われるそのようなことはやらないというのが本筋でなければならない。承認を得るというだけでは話にならぬ、答弁にならないのであります。
  61. 重光葵

    重光国務大臣 そういうことは考えておりません。——考えておりません。それはどういう——外務省の発表でございますか。そうじゃないはずですが。必ず国会承認を求めます。
  62. 岡田春夫

    ○岡田委員 それならばそれでよろしいのです。外電において、アメリカ側の都合において仮実施をやるであろう、やるようになっておるという話し合いも済んでいる旨の記事も出ているから、これは重大な問題であるから私は伺っておる。ですからあなたが仮実施をやらない、批准を得ない限りにおいてやらないという御答弁をされるならそれでけっこうなのです。今のはされないというように伺いましたから、私はそれでよろしいと思います。
  63. 重光葵

    重光国務大臣 それは政府の権限にないことを仮実施をしてみたって、それは権限のないことは何もできません。政府に権限がないことをやろうとは少しも考えておりません。
  64. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは外務大臣お聞き願いたいのですが、これは初めてやっているのじゃないですよ。去年やっているのです。あなたの内閣じゃない。吉田内閣というわれわれがはっきり反動内閣といっている内閣が去年やっているのです。ですからあなた方もまたやるのではないかということを私は言っているのです。この点はやらないというお話ならそれでけっこうであります。  そこでその次には、もう一度同じ問題に触れてくることになりますけれども国会承認の問題ですが、先ほど重光外務大臣は、濃縮ウラニウムの受け入れの問題については、これは国会承認を得るようになるだろう。こういう意味の答弁がありました。しかしこの前の外務委員会における答弁によると、得ない場合もあるというような答弁もしておられるわけであります。しかしこの問題は、先ほど森島君からも非常に大切な問題であるし、国民にとって重大な問題であるからして、国会承認を得べきである、こういう点についての質問があって、あなたの答弁があったわけですが、この点については、私はきわめて重大であると思いますので、総理大臣からも重ねて言明を伺っておきたいと思うのです。濃縮ウラニウムの受け入れの問題について協定を結ぶ場合には、当然これは国会承認を得べきものであると私は考えております。先ほども申したように、余剰農産物の関係においても、ともすればごまかして国会承認を得ない前において政府が事務的に扱ってしまうというような危険性が現実に起っているわけでありますから、この機会に、鳩山内閣の総理大臣であるあなたからも、濃縮ウラニウムの問題について国会承認を得たいと思っているという旨のはっきりした御答弁を、重光外務大臣と同じような答弁でもけっこうでありますからあなた御自身お答えになることが重要であると思います。
  65. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 むろんあなたのおっしゃる通り議会承認を得たいと思っております。
  66. 岡田春夫

    ○岡田委員 あまり時間をとってはいけませんから簡単に言いますが、濃縮ウラニウムの問題ですが、最込濃縮ウラニウムの受け入れについて非常に急がれているのであります。総理大臣としてはアメリカだけからこれをもらいたいとお考えになっているのか。現実にイギリスあたりでも濃縮ウラニウムは世界の希望する国に対しては与えてもよろしいということをいっていると伝えられております。あるいはソ同盟においてもこういうことがすでにいわれているといわれているのでありますが、アメリカダけからもらいたいとお考えになっているのか、この点が第一点であります。  それから第二の点は、現在までアメリカと双務協定を結ぶべくアメリカから話し合いの進められている国々は、全部で十一カ国あるといわれております。そのうちで一国だけのトルコの場合だけが協定を結ばれて、そのほかはこの際は急ぐ必要がないとこういっている。そしたその理由の一つとしては、八月に原子力の平和利用の問題についてジュネーヴで国際会議が行われる。この国際会議においてはイギリスからもいろいろな研究の結果が発表されるし、ソ同盟からも研究の結果が発表されるし、もちろんアメリカ研究の結果を発表するので、その結果を見てから協定を結んでもいいのではないかというのが残り十カ国の意見であると伝えられております。特に日本においても学界の関係においては、この問題は慎重に取り扱うべきであるということを盛んにいっておりますし、今まで急いで受け入れをすべきであるということを言って参りました海外調査団の団長である藤岡博士も、この間この外務委員会の参考人として参りましたときに、私の質問に答えて、この点は慎重にやってもらいたい。むしろ自分個人の意見としては、八月の国際会議のあとにこの問題をきめることにした方がいいと考えていると、このように答弁をいたしているわけでありますが、私はこの際は日本側がこの受け入れ協定をきめるのは、八月以降に、少くともこれは国際会議の模様を見て態度を決すべきものであると考えておる。それにもかかわらず、政府は今非常にこれを急いでやろうとしておられるのであるが、なぜこれを急ぐのか、そしてまた八月以降にこの問題をやっていこうという考えがあるのかどうか、こういう点についても総理大臣に伺っておきたいと思います。
  67. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 米国から受け入れるということに、もちろんきまってはおりません。たといきまっても、米国と協定を締結いたしましても、英国その他の国から受け入れることを排除するものでもないのであります。  最後の御質問に対しては、もとより、国際情勢等を見て、慎重な態度をもって決定すべきものでありまして、ただいまのところ、まだ、全く決定しておるわけではございません。
  68. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは第一点にお伺いいたしますが、アメリカ以外の国とも日本は濃縮ウラニウム問題について別個な協定を結び得るというような意味のことを、交渉内容として、現在交渉されるおつもりであり、そしてまた、もし日本アメリカとの協定が結ばれるとするならば、その協定の中にそういう点をお入れになるおつもりであると私は了承してよろしいかどうか。この点が第一点。  それから第二の点は、原子力の利用問題というのは、あなたも十分御存じのように、平和的にも利用できると同時に、これが戦争目的にも利用できるわけであります。これを扱う者がどちらにでも利用できるという点に、原子力の問題の重要性を含んでいるわけであります。そこで、平和的に利用するとあくまでも政府が考えられる限りにおいて、戦争のために使わないための具体的な措置がぜひとも必要になってくる。これは憲法上の規定からいっても、当然の話であろうと思います。そこで、戦争目的に使わないためには、何としても原子力を国際的に管理するということ、それから原子爆弾、水素爆弾を使用しないということを、具体的に取りきめていかなければならないと思うのです。そこで、原子力の平和利用の協定受け入れるという考えにもし政府の方がなっておられる限りにおいては、そういう戦争目的に使わないという積極的な努力が行われなければならないと私は考えますが、この積極的な努力について、何か具体的な案をお持ちであるかどうか。お持ちでないとするならば、この点に対しての熱意が足りないと私は考えざるを得ないのでありますが、この点についてはどうであるか。  それから第三点。委員長はだいぶ時間を気にしておられますから、一緒にやりますが、第三点、これは原子力の問題でありません。先ほども戸叶さんからちょっと御質問があって、あなたから具体的な御答弁がなかったのでありますが、ヨーロッパにおいては、四巨頭会談が行われようといたしております。そして、ヨーロッパの問題を主としてここで解決するような状態が招来されようといたしております。そこでアジアにおいては、われわれ日本の国民として、そして日本政府としては、アジアで今緊迫の状態を続けている台湾の問題について、重大な関心を持っていなければならないはずでありますが、台湾問題の解決について、中国の周恩来総理から、アメリカとの間に直接交渉によってこの問題を解決したいということを、すでに再三にわたって提案をいたしております。これについては政府としても、この提案に関心を払わざるを得ないと私は考えておりますが、この台湾問題の解決について、そして、特に周恩来総理のこの発言について、鳩山総理大臣としてはいかにお考えになっているか。特に常日ごろ友愛精神を説いておられるあなたでございますから、話し合いに反対するというようなことはまさかあるまいと私は考えておりますけれども、その友愛精神の発露として、これについて積極的なお考をお持ちになっておられるか、この点についてもお伺いをいたしておきたいと思います。
  69. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 台湾問題については、もとより重大なる関心を持っております。ぜひあそこでトラブルを起さないように切望しております。この問題については、四巨頭会談においても、必ずや問題がこの点について協定せらるべきものと考えております。
  70. 岡田春夫

    ○岡田委員 周総理の提案は賛成ですか。
  71. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 周総理の提案は私は賛成で、当然だろうと思っております。  それから、濃縮ウラニウムというものが平和的に利用せられるというほかに、戦争についても使わぬという約束をする必要があるかということは、あなたと同様な考え方を持っております。  第一の御質問に対しましては、重光君から答弁をしていただきます。
  72. 重光葵

    重光国務大臣 第一の御質問は、米国との協定ができても、ほかの国との関係は何ら拘束されるものではないという、この点だったと思いますが、それは、全く拘束をされぬようにやっております。
  73. 岡田春夫

    ○岡田委員 協定を結ぶつもりですか。
  74. 重光葵

    重光国務大臣 結ぶつもりであるかどうかは、まだ決定をいたしておりません。
  75. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたの御意見を伺いたい。政府意見を聞いているのですよ。
  76. 重光葵

    重光国務大臣 政府意見として、決定いたしておりません。決定しておりませんけれども協定を結びたいという方針になれば結び得るわけでございます。何らそれを妨げることはないのでございます。
  77. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではこれで終りますが、今の答弁は何だかわけのわからない答弁で、あなたは結ばないつもりだというが、協定の中にそれが入っていない、そういう協定は結ばないというならお話しはわかるのですが、あなた自身協定を結ばないつもりだけれども協定の結果によってどうなるかわからないというようなことをおっしゃられるならば、はっきりしない。私は、この点の御答弁を求めただけで私自身総理大臣に対する質問はやめまして、あとは留保いたします。
  78. 森島守人

    森島委員 総理に一点だけ関連して伺いたい。ただいま、濃縮ウラニウムに関する協定国会審議に付したいという御答弁でしたが、付すべきものであるかどうかという点に明確なる御答弁を願いたいと息います。
  79. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、国会承認を得べきものと考えております。
  80. 植原悦二郎

    植原委員長 それでは総理大臣、どうぞ、よろしゅうございます。——山本利壽君。
  81. 山本利壽

    ○山本(利)委員 私も鳩山総理大臣にお尋ねいたしたいことがあったのでありますが、御都合でいたし方がありませんから、すべて外務大臣にお尋ねいたしたいと存じます。  吉田内閣時代には、米国を中心とした自由主義諸国家とのみ外交交渉が行われておったのに、鳩山内閣になってから、日ソ交渉とか、日中貿易振興とかいうような問題が直接間接取り上げられてきたことは、日本の立場を、政治的にも経済的にも国際的に一段と広げるということになって、国民は切にその成功をお祈りしておる次第でございます。そこで、自由主義国家群を片手に、また他方に、共産主義の国家群とも外交を進めようという際においては、アジアの諸国との善隣関係を一段と強めていくことが非常に重大なことであると思います。そのために各国と賠償交渉が行われておるのでありますが、フィリピンとかインドネシアという国々との関係は目下交渉中でございましょうから質問を差し控えまして、ただビルマとの関係を考えますと、昭和二十九年の十一月の五日に賠償協定が調印されて、本年の四月の十六日にはその批准書も交換されておるのでございます。われわれはこういう協定ができましたからには一日も早くその実行をすることがビルマの人々に対しても非常に望ましいことであるし、あるいはフィリピンやインドネシア等の国国もわずかの金額の増額を長期間かかって交渉するよりも、ビルマのように早く妥結して、そうしてその国の経済の発展に寄与する方が得策であると考えるように日本は仕向けることが私は外交上有利ではないかと思うのであります。しかるに、わが国からは稻垣平太郎氏を団長として経済使節団が昨年の十二月ごろからビルマへ参って、一カ月半もおられました。しかしその結果についてはわれわれあまり芳ばしい報告を得ていない。さらに担当の参事官としてたしか牛島氏であったと思いますが、これも先方へ参られてビルマの外務省のウー・ソー・ティーン局長、さらに国家企画省のウー・タン・ティン教授を向うに回して、しきりに交渉しておられますけれども、もう二カ月もたっておるのにさっぱりこの実施が進捗しない。これはまことにわれわれ国民としても、あるいはもちろんビルマの国々の人々としても残念なことに思っておるのでありますが、一体こういう工合にせっかく賠償協定ができ上った、それを実施に移す際に、かくも長い月日を要するということは、一体どういうことであるかその点について、まず外務大臣にお尋ねいたしたいと思うのでございます。
  82. 重光葵

    重光国務大臣 今述べられた御趣旨はわれわれも全然御同感で、そうなければならぬと思って、実はこの賠償協定の実施を急ぎたいと思って努力を進めておるわけであります。しかし何分にもこの賠償協定はいわゆる金銭賠償でなくして、キャピタル・グッズの賠償だということにもうなっているのだし、その一々について実行をする細目協定を伺うとこちらとの担当官において話し合をするということが細目に至るまでこれを決定するに非常に時間を費しております。これはわれわれもいま少し早くやりたいと思って、実はこの促進方に非常に苦慮しておるわけでございますが、まだ担当当局の間には結末がついておりません。おりませんが、今の御趣旨のあるところは、われわれも全然そう考えております。そのなにで、今後も一つこれを促進するように努力をいたしたい、こう考えております。  なおどの点でどう行き詰まっておるかということは、一々これを公表するわけにはいかぬのじゃないかと思いますが、それは担当官から御説明をさせてもよろしゅうございます。
  83. 山本利壽

    ○山本(利)委員 根本的な方針についてはただいま承わりましたが、私どもの聞きますところでは、かつて岡崎外務大臣とウー・チョウ・ニェン氏との会談において、先方は自分の方から支払い額は初めの二年間は少くてもよいというたということである。それを日本側は主張し、先方では日本側からかような申し出があったがはっきりこれは拒絶したといって、そういうことの交渉は非常に長引く原因の一つであるということを聞いておるのでありますが、かような重大な会議においては速記録というようなものはとられないものでありますか。こういう水かけ論でいたずらに月日を過ごすということは非常に不可思議なことであるとわれわれは考えます。  もう一点のおそくなるという理由の一つは、日本側は賠償のための特別会計を設置して日本政府が実際の支払いを行う方式をとりたいといい、先方では初年度から平均予定額の二千万ドルを一括引き受けてこれを市中銀行に預託してビルマ側において支払いを管理する方式をとりたい、こういうような点が非常に根本的な問題であるようにも聞き及んでおるのでありますけれども、われわれからいえばこういうことはあまり長い日にちを費さないでできることだと考えるのでありますが、この点についてお伺いいたしたいと考えます。
  84. 重光葵

    重光国務大臣 今お話の点が重要な点であるということはその通りであります。しかしこの問題は大体今日では日本側においても約束通りに支払うということは考えておるのでございます。その他の問題についてまだ決定をいたしていない点が種々あるようでございます。それはアジア局長から御説明申し上げます。
  85. 植原悦二郎

    植原委員長 山本君、今のあなたの御質問はかえって事務当局の方がはっきりお答えできると思います。外務大臣は今参議院の方で暫定予算で答弁を要することがあるそうですから、あなたが外務大臣の退席を御承知下さって、あなたの質疑は事務当局でよろしいなら御継続願います。いかがですか。
  86. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それではあと一点だけ大臣にお聞きしてあとの点は事務当局にお尋ねいたします。  アジア善隣外交の一環として日本は朝鮮との国交を回復するということが、位置の関係から申しましても非常に取り急ぐべき問題であると考えます。その朝鮮には実際問題として北鮮政府と南鮮政府との二つがある。ちょうど国際連合の第三回総会ににおいて国際連合は大韓政府を正統な政府としてやるということを認めた点、及びわが国との平和条約を結んだ諸国が北鮮政府を認めておる国がないというようなところがおもな原因だと思うのでありますが、今日までわれわれは南朝鮮の政府交渉相手としておる。具体的な問題はあとから担当官の方にお尋ねいたしますが、その経過において李承晩政府というもののわが国に対する態度というものは、すこぶる非協力的であると私は考えるのであります。それでもし今日その交渉関係が妥結しないとするならば、われわれはちょうど台湾政府があると同様に中共政府というものとも少くとも貿易関係に入ろうとしておる今日でありますから、その政府を正式に認めるかどうかということは別な問題として、北鮮の政府とも今後いろいろな貿易関係その他において交渉を始める用意があるかどうかというような点について、お尋ねいたします。
  87. 重光葵

    重光国務大臣 韓国の関係、これは従来の機会において私もたびたび御説明を申し上げたと思います。またわれわれの考え方を申し上げたと思います。これは国際連合においても韓国を認めてやっておる従来のいきさつもございます。そして日本としては一番近いこの韓国とはなるべくすみやかに正常関係を回復したい、こういう見地に立ちまして、従来熱心に努力を続けてきたのでございます。そこで両国にまたがっておるいろいろな問題の解決についても内交渉に入ったのでございます。ところがこれはまだ遺憾ながら妥結に至りません。なかなか困難の点がたくさんございまして、容易に妥結する見込みも、今報告する段取りにまだ立ち至っておらないことを、私は遺憾といたします。しかしながらこれはどうしてもやらなければならぬ、ぜひこれは、成功さしていきたい、幾ら時間がかかっても努力を進めていきたい、こういう考え方を持っております。その場合にほかのことを今考えておらないことを私の御答弁として申し上げます。
  88. 山本利壽

    ○山本(利)委員 続いて外務当局にちょっとお尋ねいたします。先ほどのビルマとの賠償交渉の問題でございますけれども、一体日本政府は従来は非常になわ張り争いが強過ぎたように聞いております。今日もこの問題については、外務大臣だけでなしに大蔵大臣あるいは大蔵当局の出席を求めたかったのでございますが、それは別の機会に聞くといたしまして、このビルマに対する賠償交渉の実際問題が進まないということについての一つの原因が、あるいは外務当局とわが大蔵当局との間に意見の相違があるのではないかというふうに私は憂えるのでございます。もしこういう点があればいかに処置せられるかということを私は鳩山総理大臣に聞きたかったのですが、この点に対するそういう懸念があるかどうか、このことを私は外務当局にお尋ねいたしたいのでございます。
  89. 中川融

    ○中川(融)政府委員 ただいま御質問になりましたビルマとの賠償の進捗のおくれておるということの事情でございますが、これは一言にして申せば、結局準備がまだできていないということでございます。これは必ずしも日本側の準備のみではないのでありまして、先方の準備もあるのであります。その点を簡単に御説明いたします。  この賠償が発効いたしますまず第一年度の賠償実施計画というものを、双方が合意してつくることになっておるのであります。つまり賠償の具体的内容をきめることになっておるのでありますが、その具体的内容につきましての案が、まだ先方から出てきていないというのが、現在の状況であります。これは先方もいろいろ国内に、こういうこともしたい、ああいうこともしたいという事業その他がたくさんあるので、その中の取捨選択ということに相当ひまどっておるようでございます。一方賠償を実施するに当りましての契約のやり方であるとか、その契約によって品物ができました際日本政府がお金を支払うということがあるわけでありますが、その日本政府が金を支払う際の方式こういう問題につきまして先方と協議をしてきめなければならないのでありますが、その点もまだ最終的にはきまっていません。つまり形式実質双方がまだ先方と交渉中ということでございます。  その形式の点につきましての現状を御説明いたしますが、今山本委員から御指摘になりましたように、日本側は支払いの際に日本政府が直接日本の業者に支払うというのを大体考えの骨子といたしております。これは賠償協定それ自体に、日本は現金によって払うのではなく、日本の生産財、それから日本人のサービス、この二つのもので支払うということになっておりますので、それから来る一つの当然の帰結といたしまして、日本側としては、支払いは直接日本側がやる、向うに渡るものは品物とかサービスである、かように考えておるのでありますが、先方は、やはりある機関をきめまして、日本の円を先方に渡してもらいたい。渡したものを先方が自分の考える銀行に預入いたしましてそこから直接支払うということを主張しておるのであります。従ってその限度におきましては、先方に日本の円を渡す際に、必ずしも一年分を全部一度に渡してもらいたいということではなくして、あるいは四半期ごとに分けるという方法もあろうかと思いますが、日本円で渡すということを向うは希望いたしておるのであります。そういたしますと、国会承認を得た賠償協定それ自体から、実質的の段階におきまして若干考え方が変って参りますので、日本側としましては、できるだけその間に話し合いによって賠償協定の規定そのものにそぐわないようなことのないようなやり方は何かないだろうかといろいろ苦慮いたしておるのでありますが、最終的なものができるまでの間の、いわばそれほど重くない意味での暫定取りきめというようなものでもつくったらどうかというようなことを提案いたしております。従ってビルマ側の実施計画ができますまでには、何とか賠償支払い契約の方式等につきましても話し合いを進めたい、かように考えております。なお賠償協定が四月十六日に発効いたします前から、日本側の業者とビルマ政府との間にいろいろ契約ができておるものもあるのであります。それらのものの内容を、ビルマ側の希望によっては賠償に切りかえるということも考えておるのでありまして、それらについては、今の具体的な根本的な方式等がきまらない、あるいは第一年度のビルマ側の賠償実施計画がきまらない間におきましても、これだけは別に取り上げまして、所要の変更を加えることによって賠償の中に加えるということも考えておりますが、そのことは先方にわが方の意向として伝えてあります。従ってその点についても目下打ち合せが行われておるのであります。結局賠償協定発効以後まだ実施には至っておりませんので、具体的な事例はまだ起きていないのでありますが、これは結局双方においての準備がまだ整っていないということから来ておるのでございます。
  90. 植原悦二郎

    植原委員長 山本君の御質疑中ですが、ちょっと委員長からお諮りしたいことがあります。それは先日理事の諸君の御了解を得ておきましたが、オーストラリアは太平洋周辺においてかなり重要な地位を占めるにかかわらず、ここから得るところのニユースが少い。幸い西春彦大使が英国に赴任する前に帰られて時間がありますから、交渉いたしたところでは明日午前中ならば出られるということです。そこで明日定例日ではありませんが、特に委員会を開いて西大使の豪州に関するお話を聞くことにしたいと思いますが、いかがでしょうか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 植原悦二郎

    植原委員長 御異存なければ、日程をさようにして取り扱いたいと思います。
  92. 山本利壽

    ○山本(利)委員 再び朝鮮の問題についてお尋ねいたします。一九五三年の十月六日に再開された日韓会談において、在韓財産に対する日本の請求権についての討議の途中で、十月十五日日本側の久保田代表の発言が原因となって、同会談は十月二十一日に決裂したと記憶しておりますが、その後この問題はどうなっておるのか。ことに私個人としては、久保田発言は撤回する必要はないと思いますけれども、一九五四年の五月十二日に岡崎外相は、外人記者との会見の際に、久保田発言を撤回する用意があるということを言明しておられる。そういう言明があっても、韓国側は日韓会談の再開に応じないのであるか、あるいはその後わが国としては、同発言についてどういう態度をとっておるかという点についてお伺いいたしたい。
  93. 中川融

    ○中川(融)政府委員 今後指摘の通り、一昨年の末に第三回の日韓会談の話がこわれて以来今日に至るまで、日韓の間の会談は再開しないのでありますが、その間政府としては、先ほど外務大臣も申しました通り、日韓会談を再開していろいろの懸案を解決すべく、絶えずいろいろ試みて来ておるのであります。これをかいつまんで申せば、日本側としては誠意を持って日韓間の懸案を解決する用意があると同時に、韓国側においても、従来の主張そのままでなく、ある程度歩み寄ってもらいたい、そこに解決点を発見しようではないかというのがわが方の根本的な考え方であります。その趣旨に基きまして、あるいは韓国と直接に、あるいは米国を通じます方法によりまして、韓国側の意向打診を試みてきておるのであります。韓国側はまず再開の前提として二つのことを言っておるのであります。  一つは久保田発言の撤回であります。久保田発言の内容につきましては、日本側でもいろいろの賛否両論があるようでありますが、韓国側から申しますれば、久保田発言というものは、韓国のよって立つ基本原則、基本主義と根本的に相違しておる、これを日本側から正式に言われたのでは引っ込むわけにいかないという、いわば一つの体面に関する重大問題となっておるようでありまして、日本側としても、外交交渉をする限りにおいては、先方の体面なり主張というものもある限度まではこれを容認し、その間に何らかの打開の道を講ずるというのはやむを得ないことと考えられますので、この点につきましては、久保田代表のこの当時の発言は、政府の訓令による正式の発言ではないのであって、ある委員会におきましてちょうど議論がそういうところにだんだんと行きました際に、いわば久保田代表一人だけの個人的な印象といいますか、意見として言ったものであって、何も政府の意向を代表したものではない、そういう意味合いにおいてはこれを撤回しても差しつかえないという趣旨で、昨年五月、当時の岡崎外相が外人記者との会見でそういうことを言ったことがあるのでありまして、これは要するに撤回してもよいというだけであって、まだ撤回していないのであります。  第二の韓国側の条件は、日本の在韓財産に対する請求権というものは、サンフランシスコ平和条約によって日本はすでに放棄してあるはずである、それを日本がいまだ権利ありと主張しているのは了解できない。これにつきましては、法理論上、日本側としてはいろいろの見解があり得るわけでありまして、これは、従来の三回までの会談におきましては、日本側は、サンフランシスコ条約はそういうことは規定しているのではないのである。国際法上当然できる権限内で、在韓米国軍司令官がした措置のみを認めているのであって、それ以上の措置を認めていないのであるという主張をずっと継続してきているのであります。これらにつきましては、鳩山総理のしばしばの言明にもあります通り、決して日本側としても従来の態度を固執する考えではないのであります。先方の考え方次第によりまして、つまり会談をどう持っていくかということの内容次第によりましては、これらの点についても十分話し合いによって打開をはかりたい、かように考えているであります。この点につきましてまだ先方との話し合いが片づくに至っていないのでありまして、従って韓国側の主張しております二つ前提というものは、依然そのまま残っており、韓国側政府も会談再開にはいまだ応じていないというのが現在までの実情でございます。
  94. 山本利壽

    ○山本(利)委員 次に日韓会談の暗礁となっているであろうと思う問題は、李承晩ラインの問題でありまして、ことに日本海における竹島の問題でございますが、この竹島の問題については、平和条約締結のころに、私自身外務委員会及び平和条約特別委員会等において、数回にわたってその時の政府に向って質問いたしました。そのたびごとに、竹島は平和回復後はわが国の領土である、それは間違いないという言明をいただいたのでありまして、このことが当時の新聞あるいはラジオをもって報道されて、ちょうど戦争前にこの島が島根県の管轄下にありましたので、特に島根県民及びその漁民たちは非常な喜びをもって講和条約の締結を待っておったのである。しかるにもかかわらず、その後において、たとえて申しますと、二十九年の八月には日本の巡視船の「おき」という船が韓国の竹島警備の官憲から銃撃を受けており、また同年の九月十五日には韓国側は竹島の風景入りの郵便切手を発行している。また多数の漁船がこの李承晩ラインにひっかかって拿捕されておって、これは水産庁海洋第二課の調べによるのでございますが、現に五月二十四日までにまだ帰ってこないところの船が九十一隻、人の数が二百八十九人おり、その中で五人は撃沈されて死亡しているというような状況でございます。これらの問題について政府当局は一体どういう態度をとるのか。そのたびごとに抗議はしておられるようでありますけれども、先方においてはこれを全く受け付けていない。さらにこれを国際司法裁判所に提訴しようとして、このことを韓国側に交渉したところが、これを拒否せられたということも報道されている。一体こういう提訴の問題になると、相手側が拒否したらこれを提訴できないものであるか。今政府がかわっておりますが、あの講和条約締結当時における日本外務省側の手落ちというものは、私などが再三にわたって警告を発したにもかかわらず、それを甘く見ておった。その責任をわれわれは追及したいのであるけれども、それよりも今後この問題を一体どうして打開しようとするのであるか。先ほど来これからぼつぼつと相手のきげんをとりつつ交渉を始めようというような様子に受け取れたのでありますけれども、それでは私どもとしてはまことになまぬるいと思うのであります。これらの竹島の問題、ことに国際司法裁判所に提訴するという問題、またその効果がいかにあるかというような問題についての当局の御見解を承わりたいと思います。
  95. 中川融

    ○中川(融)政府委員 国際司法裁判所に提訴いたしますことは、日韓双方国際司法裁判所のいわば当事国でないということでありますから、やはり双方の同意が要るのでございますが、その同意を韓国政府に求めまして、韓国政府は竹島が自分の国の領土であることはすでに明らかであるから、今さらこの問題につきまして国際司法裁判所に提訴する必要はないということを理由として、提訴を拒否したのであります。これは日本側としては非常に不満とするところでありまして、日本側は同島が日本の領土であるということをかたく信じておるにもかかわらず、なお韓国側がこれについていろいろ異議を申し立てますので、日韓間に直接話し合いをしておりましてもなかなか解決がつかないという状況を考えまして、最も公平な機関であるべき国際司法裁判所に提訴するという方法を講じたのでありますが、それをすら拒否されたということで、これははなはだ不満に考えるのであります。これをどうしても国際司法裁判所に持っていかせるという方法はただいま法律上はないのであります。あとの方法といたしましては、この地域におきます平和を害するおそれのある事件ということにいたしまして、これを国際連合に提訴するという方法があるのであります。目下日本は平和的にこの問題を処理したい、こういう考えでありますので、平和を害する問題として取り上げるということは、どうも今の事態では適当でないと考えます。やはりこれは時間はかかり忍耐は要しますけれども、日韓間の外交交渉としてこれを解決していきたい、かように考えておるのであります。はなはだなまぬるいというおしかりは重々われわれにも痛く響くのでありますが、平和を国交の基本といたしますわが国といたしましては、これ以上の方法はどうもないのでありまして、この点は御了承願いたいと思うのであります。  なお李ラインの問題がございます。これは法律上李ラインというものを承服し得ないことはこれまた当然なことでありまして、日本側の根本的な主張というものは常に明らかにいたしまして、李ラインにおける漁船拿捕事件が起るごとに抗議をし、日本側の権利を留保しておるということもただいま御指摘になった通りであります。抗議を幾ら続けましてもなかなか事態は改善しないのでありまして、これを改善するためには二つの方法しかないと思うのであります。二つの方法と申しますと、一つは平和的な外交手段による解決であります。もう一つは力を用います解決方法であります。これも先ほど申しました通り、平和日本といたしましては力をもってこういう問題を解決するということはとり得ないところでありますので、外交手段によって解決いたしたいというふうに考えております。この問題は純法律問題を含みますけれども、なおそれを日韓間の諸懸案の一つといたしまして、日韓交渉の題目として、これによって大局的な解決をはかりたいと考えております。この解決をはかるためには若干の御指摘の点はございましたが、向うの立場というものもある程度は尊重する格好において妥結をはかっていくよりほかこの解決方法はないのではないか、かように考えております。今後も引き続き解決の努力を続けていきたいと考えております。
  96. 穗積七郎

    穗積委員 私は本日総理並びに外相にお尋ねしたかったのでございまして、山本委員の次は私の番でしたが、委員長の御希望もありまして、総理並びに外相に対する質問はこの次にさしていただくことにいたしまして、そのことを確認しておいていただいて、中川局長に山本委員の発言につきまして関連質問を一点だけしたいのです。ビルマ賠償の問題について私もお尋ねしたい点が多々ございますが、きょうは関連質問ですから簡単にいたします。ただ一点は、実施細目につきましてまだ両方の調整が十分できていないというようなお話で、こちら側に日本政府が直接資材並びにサービスを向うへ提供する、向う側は円払いを要求して、それを日本の銀行に積み立てておいて、向う側が欲する資材を欲する業者から買い付けたい、こういう希望を持っておられる、それがまだ調整のできていない一点であるような先ほどの御説明でした。これは非常に重要な点だと私は思うのです。それを向う側の希望するようにとりきめましても私は差しつかえないと思うのですが、あえてこちら側の主張を固持しておられる外務省のお考え並びに理由はどこにあるのか、それを最初にお尋ねしておきたいと思います。
  97. 中川融

    ○中川(融)政府委員 穗積委員の御指摘になったことで大体尽きておりますが、先方のほしいものまたは役務を先方が直接日本で求めるということにつきましては、日本側は異存がないのであります。従って日本側の言っておりますような方式によりましても、具体的な内容自体は先方が直接選び、先方が直接日本の業者と契約するのであります。その契約に基いて日本の業者が向うの欲する品物を渡した際にどちらが支払うかということでありまして、日本側協定の建前上向うに渡るのは品物及び役務で渡るということが書いてありますので、品物及び役務で渡り、日本側が支払いをするようにしたいというのに対しまして、先方は日本側から円の現金を先にもらっておいて、その中から支払っていきたい、こういうことを言っておるのでありまして、違いはそこの支払いをどちらがするかということだけでございます。先方の言うようなやり方にいたしますと、結局個々の品物及び役務によって支払うという形でなくて、一括いたしまして、たとえば一カ月ごととかあるいは三カ月ごととかに日本側がまとまった金を先方に支払うという格好になるのでありまして、ビルマ賠償協定の建前と少し食い違ってくるように思いますので、主たる理由はビルマ賠償協定にできるだけのっとってやりたいということがわれわれの主張の原因になるのでございます。実際的には日本側の支払いも非常に急いでやるということは可能でありますし、またビルマ側がたとえば日本銀行を欲しないで何か別にビルマ側の欲する銀行がありとすれば、その銀行に日本の金を預けておくことができるのでありまして、実際上の差異は非常に少くなるのではなかろうかと考えております。
  98. 穗積七郎

    穗積委員 関連質問ですからこれでやめておきますが、ちょっともう一ぺん確かめておきいのは、そうしますと日本側の方式によりましても、ビルマ側が日本のいかなるメーカーから、いかなる品物を、いついかなる価格で引き取るかということに対しては完全な選択の自由が与えられておるということは間違いございませんね。私の質問の要点は、その契約はビルマ政府がビルマ政府の自由によって、契約の時期、数量、価格等につきましては直接日本の個々の業者と話し合いをして契約を結ぶ選択の自由は与えられておるのか、そうでなくて欲するもののオーダーを日本政府が受け取って、それを日本政府の責任においてメーカー、価格、品質等を日本政府が選択して向うへ送り出すのか、私は当然前の場合であるべきだと思うのですが、日本側の提案によりましても、前の場合のようなビルマ側の選択の自由は完全に与えられておるものと理解して差しつかえないかどうか、その点をもう一ぺん確認しておきたい。
  99. 中川融

    ○中川(融)政府委員 ただいま穗積委員の御指摘になりました場合のうち、前者が基本的な考え方であります。日本側もビルマ側も直接日本の業者と契約をし、欲するものをその契約によって得るということには異存はないのでございます。これは契約の方式の問題になるのでありますが、その中で一つだけ申し上げておきたいのは、日本側が最終的には金を払うものでありますから、契約をそのままに放置するということではないのでありまして、ビルマ側と日本の業者との間に契約ができますと、その契約を日本政府に見せて、日本政府はその契約の内容が、あらかじめきめてあります一年間のビルマ賠償の大体のプランに合っておるかどうかというようなことを見ますと同時に、その他これが日本貿易為替等の法令に違反することがないかどうかというようなことも見まして、これが両国政府において根本的に相談されたところに合致しておるということを認証いたしまして、初めてその契約が有効になる。その契約に基いてなされた物及び役務の提供には、日本政府が支払いをするという義務がそこで生ずるのでありまして、その点が普通の私契約と一つだけ違う点でございます、日本政府の認証という行為が中に入ります、それ以外におきましてはただいま穗積委員が御指摘になりました前の場合の通りになるのでございます。
  100. 山本利壽

    ○山本(利)委員 時間がだいぶおそくなりましたが、もう少し質問を続けたいと思います。  わが国民の生活がなかなか安定しない原因の一つが、人口の過剰にあることはもちろんでございます。この問題を移民問題だけで解決するわけには参りませんけれども、これは重要なる一環をなすものであり、さらに将来の貿易振興という点についても非常な役割をなすものであると考えます。ことに最近では独身移民ということが認められてきて、農家の次、三男等に非常な明るい希望を与えておるというような点から、この問題についてはこの際十分に努力されなければならぬと考えるのでありますが、この問題は従来非常に手ぬるいと考えます。八千万以上の人口を持っておるのに、かけ声ばかりやかましくて、一年に三千、五千の移民を送っておるというようなことでは間尺に合わないと考えるのでありますが、一体送るといっても受け入れるところがなければならないのでありますが、こちらの側の都合を考えないでもしどんどん送るとしたら、現在のところ一年間にどのくらい受け入れてくれる望みがあるのか、各方面総合しての概数でよろしゅうございますから、御答弁を願いたいと存じます。
  101. 矢口麓蔵

    ○矢口政府委員 どのくらいの人間を送り得るかという御質問でありますが、これは日本にそれだけのものを送り出すだけの実力がございませんので、実際上は仮定論となるのでありますが、現在一番よけい移民を受け入れますのは御承知の通りブラジルでございます。その次には現在入っておりますのは、数からいいましてパラグァイでございます。その次にはアルゼンチン、それに最近登場して参りましたのがドミニカとボリビア、これは原則として無制限に入れる、こういっております。でありますから、もし日本の事情が許せば——というのは渡航費並びに船によって制限されるのでありますが、その制限がないと仮定すれば、私は五万は楽に出せると確信いたします。
  102. 山本利壽

    ○山本(利)委員 この移民事務のはかどらない理由として、この方面にも各関係機関のなわ張り争いが非常に強くて困るということを新聞雑誌等で見るのでございますが、果してそういうことがあるかどうか。そしてこの移民を取り扱う政府機関及び公私関係団体の実情及びさらに相互間の関係等について御説明を承わりたいと存じます。
  103. 矢口麓蔵

    ○矢口政府委員 なわ張り争いという言葉が果して適切であるかどうかは別といたしまして、関係各省間に意見の相違がございますのは事実であります。まず第一に、農林省との間に若干の意見の相違がございます。また最近新聞等で伝えられております移民借款の受け入れ機関につきましては大蔵省との間に意見の対立もございます。その他労働省とも多少の意見の差異がございますけれども、先般根本官房長官の裁定によりまして外務省と農林省との間の権限は明確にいたしました。よって現段階におきましては別段の意見の対立というようなものはございません。その内容を一応御参考までに申し上げさしていただきますと、要するに国内事務につきましては外務省と農林省が共管していく、国外事務につきましては外務省が専管していく、こういったような線であります。
  104. 山本利壽

    ○山本(利)委員 その他の省といいますか、先ほどは大蔵省とも対立があるということでございましたが、今は大蔵省との関係については触れられませんでしたが、その点はどうかということと、それから日本海外協会連合会というのが今ある。これをさらに改組しようということが出ておりますが、ちょうど住宅公団のように移民公団といったようなものがつくられるような報道を得ておりますが、それらの点について御説明を承わりたい。
  105. 矢口麓蔵

    ○矢口政府委員 前段の大蔵省との関係でございますが、これは新聞等で御承知のことかと思いますが、アメリカ政府日本の移民政策推進のために千五百万ドルを貸し出すという話がありまして、その受け入れ機関をどうするかという問題につきまして、大蔵省と外務省との間が必ずしも意見が一致しておりません。換言いたしますと、大蔵省側はいわゆるこれを公団ないしは公社という形でいくのが適切である、しかもただいま山本委員のおっしゃいました海外協会とこの公団というものを一本にして一元化して推進していきたい、これが大蔵省の主張でございます。それに対しまして外務省におきましては、これは諸般の理由によりまして特殊会社であった方がいいという意見を持っているのであります。しかしこう申しましても事務当局は一応民主党の政調会の意見におまかせしますという、現在までのところでは態度をとっておりますが、現在の主張は今申し上げたような通りであります。  それから第二点の海外協会をどうするかというお話しでございますが、この海外協会連合会の弱体ということにつきましては、かねて種々御意見がございまして、われわれ事務当局といたしましても今回右借款受け入れ機関成立の機会に何とかこれを改組して強化いたしたいと強い希望を持っております。
  106. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それらの機関のほかに財団法人で日本力行会とかあるいは神戸の日伯協会とか、それから株式会社で南米移民旅行社とかいったようなものがございますが、これらはただ旅券の申請等をするだけであって、政府あるいは政府に直接関係のある機関で送られる移民とはどういう関係に立つのか、受け入れ数の中にこれも入っておるのか。そうすればそれらに対する割当というものはどういうようにされるのか。こまかいことを聞くようでありますが、お尋ねいたします。
  107. 矢口麓蔵

    ○矢口政府委員 こういう私的団体とは別に特別の関係はございません。その都度、たとえば永田稠氏の経営する力行会につきましては向うで学校で訓練している者に対してどの程度まで渡航を許すかいなかは、その都度その都度きめるのでありまして、別に特段の関係はございません。
  108. 山本利壽

    ○山本(利)委員 一番難点は、その各機関における事務の調整ということと、もう一つは費用の問題でございますけれども、計画移民等に対しては大体旅費その他の貸付というものがあるようでありますが、その他の単独移民と申しますか、独身移民等についてはただ選考だけがなされるものかどうか。その選考についても、伝えるところによると今回は独身移民の第一回の募集を約百二十名全国の農業協同組合でこれを選考をするということになっておるようでございますけれども、これは愚見でありますが、そういうふうにわずかな移民を全国各地から同じように選抜させるということは非常な手数であると私は思う。一年間を通じて何千人、でき得れば何万人というものを送るのであれば、今月はどこの県から幾ら、その次はどの県から幾らというふうに、向うにおけるその土地の状況とか気候の状況とかということを考えて、大体まとまって、その人情風俗をひとしくしておるところの移民を送り出すことが、先方へ行ってからの移民間の磨擦もないし、取り扱いの上の点から言っても私は非常に便利であると考えるのであります。こういう扱いの問題について、今まであまりに理屈にこだわって煩雑であったのではないかという点、お尋ねいたします。
  109. 矢口麓蔵

    ○矢口政府委員 第一点の貸し出しの問題でございますが、渡航費の貸し出しはただいまのお説の通り従来は開拓移民にだけいたしておりましたけれども、つい最近からは単独移民、いわゆる呼び寄せ移民に対しましても貸し出しております。でありまして今度下元健吉氏の募集しております単独移民に対しましても、渡航費の貸し出しはいたすつもりであります。  第二点の、募集を全国各府県から集めるというのは煩雑ではないかという御説、まことにごもっともでございまして、われわれ事務当局といたしましても何とかそうしたいとかねがね思っておりますけれども、各府県に海外協会というものがございまして、そういう海外協会からの強い意見もございまして、現段階におきましては一カ所ないしは数カ所に集めるということにはきておりませんけれども、今後何とかお説の線に沿ってやりたいという熱意はかねがねから持っております。
  110. 山本利壽

    ○山本(利)委員 今の移民選考の問題に関しましては四月五日の朝日新聞の論壇で、大久保毅一という人の報告が載っておる。見出しはアマゾン移民の危機というのでございますが、その一節に「日本内地での移民選考は不合理である。純農業者が絶対条件のはずなのに、非農業者が大半を占めており、不具者は採用されないはずなのに、精神異常者が入植十日後殺人事件を起したり、耳の聞こえぬもの、トラホーム患者など、ぶらじる丸に百余名乗っていたという有様である。また移民募集の時、いいかげんな好条件ばかり並べて、実際とは非常に違っているため、現地に着いて後ごたごたが絶えず、しかも、その責任を問うべき相手がない有様である。また入植条件に不適格な者がいるため、ブラジル官憲から上陸を拒否されるなど、日本の移民機関と現地との連絡不十分を暴露した件があまりにも多い。」という記事が載っておる。この点について私は多少誇張したのではないかとは思いますけれども、朝日新聞にこういう記事が載るということは、海外渡航を目ざしておる者に対して非常に不安な気持を起させることであって、事実さようなことがあったとしたならば、移民奨励をしようとするわが政府としてはまことに残念なことであると思いますが、これらに対する真相を御説明願いたいと思います。
  111. 矢口麓蔵

    ○矢口政府委員 この新聞記事の御質問でございますが、若干の真理は含んでおります。特に不具者あるいはトラホーム患者が中に入っているというようなことにつきましては、われわれも非常な関心事でありまして、こういうものが連続いたしますと、わが移民が受け入れてもらえなくなるような事態がくることを、われわれはほんとうに心配しているのであります。よって機会あるごとに各地に指令いたしまして、こういうものを送り出さないようにしきりに鞭撻、督励いたしておるのでありますがなかなか実行されないで、ときどきこういったような例外があるのであります。現に私も各地を遊説に歩きますと、手のない人、指のない人たちが、それがないだけに非常に熱心でありまして、これを断わるのにまことに断腸の思いをするというようなことがしばしばありましたのですが、ましてや現地におきまして、たとえば山口県なら山口県におりまして、何十年来つき合っている人から哀願、懇願されると、指が一本ないとか、あるいは片手が伸びないというようなことは大目に見るということはときどき起るのが実情であるようであります。しこうして、トラホームのことにつきましては、ブラジル官憲は非常にやかましく言っておりますけれども、御承知の通り日本の農民の七〇%はトラホームにかかっておるそうでありまして、トラホームのついてない者を送り出すということになりますと、事実ほとんど送れないというような実情に相なるのだそうであります。でありまして、このトラホームの問題につきましては、船中における治療に大いに力をいたしまして、できるだけ、やかましく言うが、ある程度のものはやむを得ないというのが実情のようであります。それから純農云々のことにつきましては、これはまた不具者云々と非常に似ておりまして、終戦後庭の手入れをしたり、その他のことで、農業に従事したという、一つの証明書として持ってくると、これは選考者は断わりにくいという事情があるようであります。私自身としては現地の実情を見て参りまして、現地の農法というものは日本の農法とは全く違っておりますので、必ずしも純粋の日本の農業労働者であらねばならないというようなことはないのじゃないかと思いますが、これは私限りの意見でございます。われわれが現在標準としておりますのは、純農というのではなく、農業に経験のある者ということになっておるのであります。  それから最後の御質問でありました、実際に行ってみた姿と、日本において話ないしは宣伝していることと非常に食い違いがあるではないかということがあるのでありますが、実際私も現地に行ってみまして、それまで日本で人の話を聞き、また本で読んだこととは相当に違うのでありまして、これはやはり幾ら努力しても、現地を一度見ぬことには、完全というか、十分に現地の実情を行く人たちに知らしむるということは、事実上不可能に近いものであると私は考えております。その対策としましては、現在移民船というものが一カ月に一ぺんないし一ぺん半出ておりますから、各地方の海外協会から、助監督ないしはその他の形式におきまして、できるだけ多数の人間を海外に行ってもらう、そしてその話を聞かしてもらうというふうな方便をとっております。
  112. 山本利壽

    ○山本(利)委員 今の御答弁の中で、海外に移民として参りたいというものの七〇%くらいはトラホームであるということで、トラホームの者を入れなければ、その予定数に入らぬということでございましたが、それはほんとうでございましょうか。その点は各方面で診断されました結果をお調べ願えばすぐわかることでございますから、本日でなくてもよろしゅうございます。あなたを困らせようとするのが趣旨でございませんから……。  移民の問題で、見てきた人たちが、ある者は非常に有望なように、ある者は非常に困難なように言う。これはどちらも、その部分々々によってほんとうだと思うのでございます。たとえたら、昨年国会から参りました吉川君の報告等を聞きますと、あのアマゾン流域において、またマカバ市の郊外で野菜を作っている日本人は、毎月十五万円くらいは貯金ができるといっておる。それからベレン市の郊外にいる山形出身の五十嵐氏のごときは、毎年五百万円くらいは貯蓄ができるといっている。トムアスのピーモンタの栽培をやっておる人たちは、昭和二十八年度で二千万円以上の収益を上げた者が二十二名あって、平均は五百七十万円の成績である。そうしてどの家でも自家発電をやっており、テレビを楽しんでおり、電気冷蔵庫もあれば、電気洗たく機もあるというふうな報告をしておりますので、こういうのもまたあると思うのですが、私の今ここに申し上げたいことは、日本が移民を送るについて一番難点は費用の問題である。たくさん行きたいけれども金がないという問題でありますから、政府が予算をできるだけ多く組むということ、さらには先ほどのお話アメリカからの千五百万ドルの借款を受けるということ、これらのことも非常に大切でありますが、現地においてすでにこういう裕福な状態に達したところの日本の植民地の人々、組合なら組合というものが、日本の移民を迎えるような一つの強力な団体を作って、そしてその費用、あるいは向うへ着いてからの世話をしてもらうということも私は不可能ではないように考えるのでありますが、その点に対しての努力が今日までなされておるかどうか、今後ますますその方向へ向っての努力をすべきではないかという点について、私の意見を申し述べて、当局の御検討をお願いいたします。
  113. 矢口麓蔵

    ○矢口政府委員 一番最初のトラホーム云々のことにつきましては、予定数に達しないと私は申し上げたつもりではございません。現在ならしまして二倍半くらいの応募者がございますから、トラホームでない者でも、選ぼうと思えば選ぶことができないことはないと思いますが、非常にむずかしいと申し上げたのでありまして、また七〇%と申し上げましたのは、いずれ調べまして御報告申し上げますが、私がこの前神戸の移住あっせん所という訓練所がございますが、あそこの所長に聞いた話を簡単に、軽く申し上げたのであります。いずれ調べまして御報告申し上げます。  第二点の、現地の実情につきましては、これは移民政策それ自体がほかのものと違うのであって、一つのアドヴェンチュア、非常な冒険でございますから、ある方面におきましては非常な成功をしておるが、ある方面におきましては、特に当初の四、五年の間は非常に苦労しているというのが実情でございまして、少し長くなりますけれども御参考までに申し上げますと、サンパウロ周辺、南伯におきまして年間一億円の収入があるとみなされるものが四十人ないし五十人といっている。日本では八千万人のうち、私の知る限りではわずか一人しかない。わずか四十万の移民の中に、年間一億円以上収入あるものが四十ないし五十近いといわれておるのでありまして、大体これによって見ても、移民の成功数というものはお察し相なることができるのじゃないかと思います。それからアマゾンにおきましても、今のトムアスとか、そういうコショーを作り、あるいはジュートを作るものはほとんど巨万の富をなしておりますので、問題になりません、まるで雲を突くような財産を作っております。生産費はわずか二分くらしかかかりませんから、九八%ただもうけというようなことであります。しかしその陰には多年の非常に苦しい努力の結果そういうものができ上った。最近新聞その他でやかましくいわれますのは、アマゾンに入りました最初の移民でありまして、これは移民の一つの特質ともいいましょうか、ことに開拓移民は当初の五年ないし十年は非常な苦しみをなめるのでありまして、どこを見てくるかによってその人その人の結論が違うのじゃないかと私は考えます。  それからそういった大成功者をもって何のために団体を作り上げないか、日本の財政にのみたよらないで、親はやせて、子供は太ったのであるから、子供をもって親を養うということにしないかという御議論でございますが、全く同感でございまして、今日これができなかった一つの理由といいますのは、御承知の通り、南伯ないし中伯におきましては、勝ち組、負け組とありまして、お互いに相対立して、日本人会さえできなかったのであります。ところが最近の現地からの報道、在外公館からの報告によりますと、最近勝ち組も負け組もようやくその実態を了解いたしまして、各地方において日本人会が次から次にできつつあるという朗報に接しているのであります。日本人会ができにくいというのは、日本人というものは、だれを大将にするかということがきめられない。皆大将になる。あれが大将になれば私は行かない、あいつが副大将ならば私はやめるというようなことであります。現にアラサツーパでも今度いよいよ日本人会ができるということでありまして、逐次そういう方向に向いつつあるように察知せられるのであります。  それからどういう努力をしたかという御質問に対しましては、われわれは今度の移民供款の機会に、いわゆる企業移民、工業移民をいたしたいという強い念願を持っておりますので、そのためには資本を必要とする。もちろんアメリカから借用する年三百万ドルの金では十分でございませんので、先ほど申し上げたような雲突くような財産家の財産を企業と結びつけたいという念願を持っておりまして、今度新たに最近赴任されました安東大使も、われわれの意を了とせられまして、日本技術と現地にある資本とを結び合せるという工作を大いに努力しておられるはずであります。
  114. 山本利壽

    ○山本(利)委員 これで終りますが、ただいままでの後答弁で、今後ますますこの移民の問題については御努力を願いたいと存じます。今日お尋ねできなかった点については、さらに後日あらためてお尋ね申し上げますが、今の移民選考の際において、とかく病人でも、かたわでも、その地方々々で選ぶ場合においては、情実がからまって非常に拒否しにくいという点は、これは人情のしからしむるところでございますから、先方へ参りましてからは日本移民の価値ということを非常に考える。だから指一本でも、実際は日本ではまことに気の毒だと思っていても、外国へ行くと犯罪人ではないかと思われるような節もある。例は申しませんが、かような次第でありますからわずかの移民をばらばらに募集しないで、できるだけ全国から集めて、そうしてその地方へはそのつど外務省なりあるいは移民関係の特殊団体からその検査をするための選考委員が参られて、優秀なものを選秀して送っていただきたい、この点を要望いたしまして私の質問を終ります。
  115. 植原悦二郎

    植原委員長 菊池君、何か御質問ありますか。だいぶ時間が迫っておりますから簡単に……。
  116. 菊池義郎

    ○菊池委員 最近日本の一部の貿易商社から国民政府の中央信託局に対しまして、中共と一切取引をしないという誓約書を出したということでございますが、こういうことがありますと、中共貿易促進の運動が始まっております今日において、相当向うを刺激し、感情を害するようなことがあって、その前途に障害を来たすのではないかと思うのでありますが、これに対して外務省は何か打つ手がございますか、そういう点をお伺いしたいと思います。
  117. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 お答えいたします。ただいまのお話は台湾から輸入する砂糖の取扱いについて、信託局の方で中共貿易をしないという保証を出してくれ、それを関係業者に申し、日本の商社が相当そういうものを出してやるということになったのだそうであります。これについては、台湾側からいえば中共はとにかく一種の敵国関係で、そことどんどん貿易をするというものには自分のところとの貿易はやらせない、こういう論になるのであります。従ってこれが国民政府の一つの政策としてそういうふうにするという場合には、どうもこれに対して抗議をするといった問題はないのでありますが、しかし日本中共に対しては戦略物資の輸出はしないのであります。そういう荒立てた措置をしないようにしてくれということでいろいろ話しております。しかしまだその点では、そういう措置を取り消すというような事情に至っておりません。
  118. 菊池義郎

    ○菊池委員 もちろん法的にはそういう措置もできるでありましょうが、日本の商社と話し合いでそういうことをさせないようにしてはどんなものですか、あるいは湾台政府との話し合いでそういうことは何とか緩和できないものですか。そこが外交でございましょう。
  119. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 日本の商社が一致してそういう誓約書を出さないというふうになれば、これはまた問題は別であります。それを出してもやりたいという商社もありますので、ちょっと必ずそれを出すなということも言えない現状であります。
  120. 植原悦二郎

    植原委員長 菊池さん、もう一時過ぎになりますから、もし何なら……。
  121. 菊池義郎

    ○菊池委員 この前は二時までやったが、それではこの次に大臣に質問いたしましょう。
  122. 植原悦二郎

    植原委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時六分散会