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1955-05-18 第22回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十八日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 大橋 忠一君 理事 菊池 義郎君    理事 須磨彌吉郎君 理事 福永 一臣君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       芦田  均君    高田 大輔君       並木 芳雄君    山本 利壽君       江崎 真澄君    福田 篤泰君       渡邊 良夫君    高津 正道君       細迫 兼光君    森島 守人君       和田 博雄君    戸叶 里子君       岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         外務政務次官  園田  直君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君         外務事務官         (情報文化局         長)      田中 三男君         大蔵事務官         (為替局長)  東条 猛猪君  委員外出席者         外務事務官         (欧米局渡航課         長)      針谷 正之君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 五月十四日  委員大橋武夫辞任につき、その補欠として水  田三喜男君が議長指名委員に選任された。同月十八日  委員古屋貞雄辞任につき、その補欠として稻  村隆一君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十六日  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第四四号) 同月十七日  千九百三十六年の危険薬品不正取引の防止に  関する条約批准について承認を求めるの件(  条約第五号) の審査を本委員会に付託された。 同日  海外抑留同胞帰還促進に関する陳情書  (第一三一号)  李ライン撤廃に関する陳情書  (第  一三二号)  日中、日ソ国交回復促進に関する陳情書  (第一四三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人招致に関する件  日本国イタリアとの間の文化協定批准につ  いて承認を求めるの件(条約第二号)  日本国メキシコ合衆国との間の文化協定の批  准について承認を求めるの件(条約第三号)  日本国タイとの間の文化協定批准について  承認を求めるの件(条約第四号)  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第四四号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  日本国イタリアとの間の文化協定批准について承認を求めるの件、日本国メキシコ合衆国との間の文化協定批准について承認を求めるの件、日本国タイとの間に文化協定批准について承認を求めるの件及び在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案、これを一括議題といたします。  政府より順次提案理由説明を求めます。園田政務次官
  3. 園田直

    園田政府委員 ただいま議題となりました日本国イタリアとの間の文化協定批准について承認を求めるの件、日本国メキシコ合衆国との間の文化協定批准について承認を求めるの件及び日本国タイとの間の文化協定批准について承認を求めるの件の三件につきまして一括提案理由を御説明いたします。  まず、わが国イタリアとの間には、戦前昭和十四年三月に署名されました文化的協力に関する協定が存在していましたが、第二次大戦後両国間の文化交流が再び活発になるに従い、現実の状態に即した新たな文化協定締結する要望両国政府の間で漸次高まった結果、昭和二十八年一月から東京具体的交渉を行なって参りましたところ、昨年五月に至って両国政府間で意見一致を見るに至りました。よって、同年七月三十一日に岡崎外務大臣在京イタリア大使との間に、この文化協定署名調印が行われたのであります。  第二に、メキシコ合衆国については、政府は昨年日仏文化協定及び日伊文化協定締結交渉の進展とともに、メキシコとの間にも文化協定締結する話し合いを進めたところ、先方においても同国アジア諸国のうちで最初に結ぶ文化協定をぜひわが国との間に締結したいとの熱心な態度を示し、昨年九月より両国政府間で具体的折衝を行い、同十月末までに政府間で意見一致を見るに至りました。よって、十月二十五日、メキシコ市において、当時中南米諸国訪問旅行中の岡崎外務大臣先方外務大臣との間でこの文化協定署名調印が取り運ばれました。  第三に、タイとの関係につきましては、わが国タイとの間には、昭和十七年十月に署名されました文化協定が存在しておりましたが、戦後タイとの文化交流は、仏、伊等と並んで最も活発なものがあり、かねてから新たな文化協定締結の必要が痛感されていましたので、本年三月両国政府間で具体的交渉を開始しました結果、四月六日に東京において本大臣と来朝中のタイ外務大臣との間でこの協定署名調印を了した次第であります。  これらの三協定は、いずれもほぼ同様な規定を内容とし、わが国とそれぞれの相手国との間に伝統的に存在しております密接な文化関係を今後も維持すると同時に、いよいよ緊密にすることを目的としております。これらの協定の実施により、相手国との文化交流を通じて両国民間の相互理解に一層深められ、ひいて両国間の政治的及び経済的友好関係増進に資すべきことを信じて疑いません。また、これらの協定効力発生により、わが国が戦後締結した文化協定は、昨年五月に署名された日仏文化協定を加えて、四協定となるわけでありますが、これによって日本文化の諸外国に対する紹介の機会が著しく増大されることが期待できることと存じます。  よって、ここに本件協定批准について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上本件につき、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。  引続いて今議題となりました、在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案提案理由説明いたします。  外務省といたしましては、在外公館昇格、新設及び廃止につきまして、目下次方針を持っているのであります。  一、わが国とヴィエトナム、カンボジア、セイロン及びイランの各国との間におきまして、既設公使館相互に至急大使館昇格せしめることにつきましては、本年二月彼我間の合意が成立し、わが公使館を至急大使館昇格せしめる必要がありましたので、在外公館の種類の変更に関する政令昭和三十年二月二十一日政令第十七号)をもって右の昇格を実現せしめたのでありますが、今般右の四大使館法律上正式に大使館にしたいのであります。  二、在ラオス日本国公使館は、法律上は設置されていますが、実際には設置されていないのでありまして、今般先方から大使交換の申し出あり、わが方としても、ヴェトナム及びカンボジア両国大使交換している関係もあり、アジア地域重視の見地からもこの際同公使館昇格せしめて大使館としたいのであります。  三、最近スイス各種国際機関が設置せられ及び種々の国際会議同国において開催される等、在スイス公使館の使命がますます重大となりつつある状況にかんがみまして、米、英、仏、白、伊、加が大使を置いている現状にならい、既設のわが公使館昇格せしめて大使館としたいのであります。  四、在アフガニスタン日本国公使館は、法律上は設置されていますが、予算措置が伴なかったため及びかねてから先方大使派遣を希望してきたものの、隣国イランには公使を派遣していた関係同国との振り合いもあり、実際上の開設は現在まで見送ってきたのでありますが、今般在イラン公使館大使館昇格も実現しましたので、この際同公使館昇格せしめて大使館としたいのであります。  五、イスラエルとの外交関係開始につきましては、先方の熱心な要望にこたえ、昨夏在外公館増置令昭和二十九年八月二十四日政令第二百四十三号)をもって在イスラエル日本国公使館(在トルコ大使兼轄)を設置したのでありますが、今般同公使館法律上正式に設置したいのであります。  六、グアテマラ及びニカラグアとの国交回復に伴い、彼我通商貿易関係緊密化のためにも、また、国連、各種国際機関等においてわが国に対する支持を獲得するためにも、この際わが公使館(在メキシコ大使兼轄の予定)を新設したいのであります。  七、エチオピアとわが国との戦前からの親善友好関係にかんがみ、また通商貿易拡大のためにも、この際わが公使館を新設したいのであります。  八、ベルリンの国際政治上における重要性にかんがみまして、わが総領事館同地に新設したいのであります。  九、カサブランカは、西アフリカにおける重要都市でありますから、同地にわが領事館を新設して西アフリカにおけるわが貿易市場拡大をはかりたいのであります。  十、在ラングーン日本国大使館は、昨年十二月一日に法律上の設置手続を完了し、同日から大使館としての職務を行なっているので、従来の在ラングーンのわが総領事館は廃止することとしたいのであります。以上でありますが、この方針を実際に実現するためには、法律上の措置を必要とし、これがためには、昭和二十七年法律第八十五号在外公館名称及び位置を定める法律昭和二十七年法律第九十三号在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律及び昭和二十九年法律第十一号外務省設置法等の一部を改正する法律、以上三つ法律の一部を改正する必要がありますので、今般右三法律の一部改正をうたった本法律案を今次の第二十二回特別国会に提出する次第であります。  以上が提案理由説明でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御採択あられんことをお願いいたします。
  4. 植原悦二郎

    植原委員長 ちょっとお諮りいたしたいのですが、日本国イタリアとの間の文化協定批准について承認を求めるの件、日本国メキシコ合衆国との間の文化協定批准について承認を求めるの件、日本国タイとの間の文化協定批准について承認を求めるの件、この三案につきましては、別段御質疑もなし、また御異議もないと思いますから、この三件を一招して採決いたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 大臣はどうしたのですか。
  6. 植原悦二郎

    植原委員長 すぐ見えます。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 大臣が来てからやったらどうですか。
  8. 植原悦二郎

    植原委員長 大臣が来なければ採決しないというのですか。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 どうせすぐ大臣が来られるのだから、来られてからやってもらった方がいいだろうと言うのです。
  10. 植原悦二郎

    植原委員長 すべての承認を求める件まで大臣を待つということになると、大臣一つのからだでは国会を回りきれないと思うのです。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 もう来られるのだから、何も私は無理を言っているのじゃありませんよ。
  12. 植原悦二郎

    植原委員長 筋ばるわけでも何でもないのですが、すべての法案は大臣出席を求めて採決するけれども、場合によっては大臣出席しないでも、その関係法律案を採決することはある。この三案はそうむずかしい御質疑のあることでもなかろうと思いますし、問題も非常にむずかしいことでないから、大臣がおらなくても政府委員も、次官もおりますし、採決されて、そうして次の案は私は質疑があろうと思います。それは質疑がなければ次の機会にまわしてもいい。あるいは質疑があるかもしれません。だからこれは今採決しようとするのではありません。それからなおきょうは国際情勢に対する御質疑をなさるのですから、それは順次通告順によって御質疑を願おうと思っております。そうしてその間に大臣が来るから、この三案だけを大臣がおらなくても一つ採決するということで御承認を願いたい、こういうことですよ。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 趣旨はよくわかりますけれども、大臣が旅行して御不在であるとか、しばらくここに来る見込みがないというならば別ですが、もう来られるのですから……。
  14. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ちょっと質問させて下さい。
  15. 植原悦二郎

    植原委員長 今の三案に対して御質疑があるならばどうぞ。
  16. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この文化協定締結はまことにけっこうなことだと思いますが、ただこれらの国との間に何か文化交流というような意味から、学生交換の案をすでにお持ちであるかどうか。もしおありになりましたらそれを伺いたいと思います。
  17. 園田直

    園田政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします。留学生交換状況は、イタリアとの間には、日伊両国相互政府給費留学生制度を実施しておりますが、本制度に基く留学生の数は十分な予算措置が得られないため、いずれも年二、三名程度にとどまっております。  それからメキシコとの留学生交換は現在出されておりませんが、同国はこれを非常に希望しておりますので、わが国としましてもできるだけ予算等を獲得をしてやりたいと考えております。  タイとの留学生交換は、タイ国からの日本政府給費留学生の招待は昨年度から行われております。本年度学生数は昨年度と同様に三名でございます。しかしこのほかタイ政府からの派遣留学生や、私費による留学生相当数に上っておりまして、東南アジア諸国中では最高位を占めており、その受け入れ日本語教育等については外務省補助団体であります国際学友会が当っております。またタイ政府も本年度において日本から給費留学生募集を申し越しましたが、目下のところ応募希望者がない模様でございます。以上お答え申し上げます。
  18. 和田博雄

    和田委員 この三つ文化協定ですが、これは自由党内閣のときにたしか出ておったのですが、今までおくれたのは何か特別な理由でもあるのですか。
  19. 下田武三

    下田政府委員 仰せのようにイタリアとの文化協定と、メキシコとの文化協定は前内閣時代に出たのでございますが、その後国会がございましたが、すぐ解散になったりいたしまして、御審議を願う機会がなかったのでございます。
  20. 和田博雄

    和田委員 それならもちろんけっこうで、間違っていたら訂正していただきたいのですが、最近の、戦後のこの条約のあり方を見ると、たとえば日米通商航海条約のようなものは、通商航海だけの条約ではなくて、その中にやはり文化協定も入っておるような条約を結んでおるのです。そういうやり方を自由党のときにはしておった。これはアメリカだけは特別にそうではなくて、イタリアがほかの国と結んでおる条約でもたしかそういうものがあった。こういうような個別的な文化協定というものも非常にけっこうです。これはいいと思うのだが、通商航海条約の点なんかはどういうふうに取り運んできたのか。もしも経過があれば私は知らしてもらいたいと思います。
  21. 下田武三

    下田政府委員 仰せのように、日米通商航海条約には、文化関係のある条文もございました。しかしながらアメリカは特殊な国でございまして、よその国と文化協定というものを締結いたしておりません。だからと申して文化交流をしていないのかと申しますと非常にいたしております。日本との間におきましても、お承知フルブライト計画その他で学生交換その他非常に盛んにやっておりますが、このアメリカ政府考え方は、こういう文化交流予算に計上してあって、政府が権限をもっておれば何も協定がなくてもどんどん実施できるじゃないかという考えによるのではないかと思っております。従いまして、実際に日米間の文化交流が盛んであるにもかかわらず文化協定が結ばれていないという現状でございます。ほかの国との間におきましては、戦後は、先ほど政務次官から御説明申し上げましたように、昨年日仏文化協定を加えて四つの協定に相なるわけでございますが、戦前におきましては、これまた仰せのように、実はタイイタリアとの文化協定は多分に政治的色彩が濃かったものでございます。政治的の緊密関係を強化するという前提のもとに、文化はむしろその手段にすぎなかったという傾向があったのでございます。しかしながら戦後の文化協定は、何らそういう特殊な政治的のねらいがなくて、純文化交流と、いうところに主眼を置いておるというのが戦後の特色であると申し上げられる次第でございます。
  22. 和田博雄

    和田委員 私は、今あなたが最後にお答えになったのが筋だと思います。文化政治上の手段に供せられるというものじやなくて、文化協定は平等の立場でほんとうに文化交流をするという建前から協定を結ぶというのが筋だと思うのです。アメリカとの通商航海条約のときに私が非常にしつこく質問したのを覚えておるのですが、あれは非常に妙な形だと思うのです。あのときにおいては、予算関係ではなくて、航海条約自体一つ政治的な面に使われておった。政治的な面に使われることが非常に不合理な文化が入っておって、僕はやはりそこにある程度のごまかしがあったと思う。そういう点で、どうして今までこれがおくれておったのか、また早く出ておったのになぜ国会に出されなかったかということに疑問を持ったので聞いたのですが、今の説明で了解しました。まあできればそういうような協定については、やはり日本自主性をはっきりした協定を結ぶように、これは外務大臣一つ希望しておきます。
  23. 植原悦二郎

    植原委員長 これにてただいまの三件に関する質疑は終りました。これにつきましては別に討論はないようでございますので、これより採決いたしたいと思いますが。いかがでしょう。     〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  24. 植原悦二郎

    植原委員長 それでは採決いたします。ただいまの三件を承認するに決定いたして御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議なければさように決定いたします。なお、ただいまの三件に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。     —————————————
  27. 植原悦二郎

    植原委員長 なお濃縮ウラニウム受け入れに関する問題について、参考人を招致して意見を聞くようにというこの前の理事会の御決定がありました。それゆえに招致いたすべき人を各党より御指名になれば、それによってこの理事会決定について参考人意見を聞くこととしたいと思いますが、いかがでしょうか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。どうか理事会決定の実行できますように迅速に招致するような参考人の名前を委員長まで申し出を願います。     —————————————
  29. 植原悦二郎

    植原委員長 国際情勢に関する質疑通告者がありますから、順次これを許します。菊池義郎君。
  30. 菊池義郎

    菊池委員 私はきょうはやりません。
  31. 植原悦二郎

  32. 穗積七郎

    穗積委員 大臣がお見えになりますが、前にちょっとお尋ねしておきますが、大臣のお時間はいつまでですか。
  33. 重光葵

    重光国務大臣 私は予算委員会におりましたが。予算委員会から要求されれば、すぐ行かなければなりません。
  34. 穗積七郎

    穗積委員 あまり時間がありませんが……。
  35. 重光葵

    重光国務大臣 いやどうぞ、時間のある限り……。
  36. 穗積七郎

    穗積委員 この前十四日の委員会日中貿易協定促進に対する政府態度についてお尋ねいたしましたが、当日は質問者が多くてお互いに時間が制約されましたので、ちょっとお尋ね漏れがありますから、一、二その問題について最初にお尋ねいたしておきたいと思います。  第一は中国講和条約締結する以前に領事交換をすることを、総理は考慮してもよろしいという御答弁が、非常にわれわれとしては賛成をする御答弁でございました。これはすでに外務大臣とお話し合いをなすって、領事交換政権承認とは別問題であるという観点に立って、そういう解釈であったら考慮したいというような御答弁もございましたが、外務省当局としては最近の国際緊張緩和情勢をながめたりいたしまして、同時にせっかく締結されました貿易協定が円滑に参りますためにも、これが必要だろうと思うのですが、すでにこのことは急を要しておりますので、外務省当局としてはいついかなる形でこれを促進されるおつもりであるか、外務省当局のお考えを伺っておきたいと思います。
  37. 重光葵

    重光国務大臣 中国との間——まあ中共との間ですが、領事交換をすることも、これは承認の問題にならないということになれば、考えてもいいじゃないかと思っておるという鳩山総理の御発言がありまして、私もおりました。理屈はその通りでありますので、これは慎重に一つ検討をしたいと思っております。ただ領事を置くということでありますれば、正式の承認ではむろんないわけでございます。しかしこれが事実上の承認になる、国際法上にいわゆる事実上の承認になるという説などがございまして、いろいろ検討を要する点があろうかと思います。それで今ここで、それでは領事交換を提案するんだというふうに申し上げるわけには参りませんけれども、通商貿易増進ということは、これは政府として希望し、またその方針でありますから、十分に検討いたして処置したい、こう考えております。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 領事交換は、政権承認前提または条件になるような解釈もあるという今のお言葉でございましたが、政府はそういう御解釈ではなくて、領事交換政権承認とは別個の問題であるという解釈に立っておられることには間違いございませんでしょうね。そういう学説があったにいたしましても、政府解釈はそうではない、鳩山内閣解釈は。その点はちょっとあいまいになるといけませんからもう一ぺん伺います。
  39. 重光葵

    重光国務大臣 正式の承認ではないということは申し上げられます。しかし今申します通り国際法上の事実上の承認であるという説があるのでありますから、これは検討を要します。検討を要しますが、これらのことにつきましては条約局長から意見を申させましょうか。それでよろしければ条約局長から、承認の問題にどうひっかかるかということを説明申させましょう。
  40. 下田武三

    下田政府委員 政権承認につきまして、明示の承認と黙示の承認と二つあることは御承知通りであります。そのほかに学者は事実上の承認という観念を考えております。国家機関たる領事交換あるいは協定締結等は、やはり相手方に法的の資格を認めた上での行為でございますから、これらは事実上の承認になるという説があるわけでございます。これは学説でございますが、しからば国際慣例はどうかと申しますと、御承知のようについ最近の例でも、戦前のドイツ、イタリア片方中国を認めておきながら、片方では満州国領事を派遣いたしまして、そうしてまた満独貿易協定、満伊貿易協定というような協定も結んでおります。そしてこれは中国側から見れば非常な非友誼的行為としてみなされた。そしてまた第三国もこれは事実上の承認であると認めておったわけであります。でございまするから、事実上の承認になるようなことを行いながら承認はしていないんだと言い張ることもできるでございましょう。しかしこの辺は国際法上の問題と、もう一つ政治上の問題とが微妙にからむところでございまして、政府といたしまして早目にこれを断定してかかるということは非常に危険ではないかと思うのであります。また現在問題になっております日中貿易協定にも通商代表をということは言ってございますけれども、領事交換ということはまだうたわれていない現在におきまして、先ばしって政府当局の見解を申し上げるということは過早な措置ではないかと存じております。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 私は通商協定領事交換に努力することをうたったからとか、うたわないとかいうこととは無関係にお尋ねするわけです。代表部をどういう資格において、どういう内容でその自由を認めるかということについては、本協定関係したことですが、協定外のことでも、政府は少くとも日中貿易に対しまして支持と協力を与えたいという態度でありますならば、当然それとは別個に、領事交換の問題は、たとえばアジアにおきまして、この前申し上げましたように、英国と台湾政権との間においても、すでにこういう事実があるわけですから、従ってこれが何ら国際紛争の種になっておりません。まして国際情勢全般が武力の外交よりは経済の外交の時代ですから、当然そうあらねばならぬと思うのです。その基本方針が今さらぐらつくようなことでは、選挙当事の公約にも反するのみならず、この間鳩山総理のお言葉は、責任者である外務大臣と話した結果、これは無関係のことだから考慮したいという責任のある御答弁をなさったのに、事務当局がそういう学説を引き出して、あるいはそういう説をなす者があるということを引き出して、これをチェックしたりすることは、はなはだ私は遺憾だと思うのです。もちろん問題の検討はけっこうです。いろいろな条件その他国際関係もあることですから、御検討はけっこうですが、そういう学説に対して外務大臣にいずれをおとりになるか、その基本の態度だけははっきりしておいていただきたいと思うのです。
  42. 重光葵

    重光国務大臣 先ほどの御答弁で尽きているように思うのでありますが、法律上の承認ということには関係はないようであります。しかし学説として事実上の承認関係を持つわけでありますから、これはよく検討して、そこでお話の通り国際関係にからむわけでございますから、検討した上でこれは決定したい、こういうことを先ほども申し上げましたが、そういうつもりでございます。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、くどいようですが、もう一ぺん聞いておきます。この間総理があなたの意見も加えて答弁なさった答弁を取り消す意味じゃございませんでしょうね。
  44. 重光葵

    重光国務大臣 実はそのことを総理検討したわけじゃないのであります。私が、予算委員会だったと思いますが、領事交換ということはすぐ法律上の承認となるわけでもないからということを申しましたが、しかしそれは領事交換をやろうという題目で申し上げたわけじゃない。私の説明のうちにその言葉がございました。そうでありとするならば、それも考えられることじゃないか、こういう、つまり承認にならないということであるから、それでは考え検討しよう、こういうことを総理は言われた。私は……。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 その答弁に対して外相の態度はどうですか、否定なさるのですか。
  46. 重光葵

    重光国務大臣 否定はしません。検討する、こういうことで今日申し上げたわけであります。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 大体御趣旨はわかりました。なおその問題についてはしばらく日をかして、御検討の上であらためて御方針をお尋ねいたしたいと思いますから、できれば至急検討していただきたいという希望を申し上げておきます。  続いてもう一点お尋ねしたいのでございます。それは例の濃縮ウラニウム受け入れの問題でございますが、予算委員会その他新聞紙上を通じまして伺いますと、政府方針は、近く交渉に入って、こちらの希望する条件であるならば受け入れたいという御希望のようです。それに対して実はきょう、高碕長官が非常に多くの答弁をしておられますから伺いたいと思いましたが、例の調査会の会長は重光外相、あなたがなっておられるわけでございますから、当分の間はいろいろな検討の中心になろうと思いますので、その責任者としてちょっとお尋ねするわけですが、ひもつきでなければ、これを受けたいというような御趣旨に変りはございませんか。
  48. 重光葵

    重光国務大臣 この問題は、予算委員会でも御説明申し上げた通りに、今慎重に検討をいたしておる問題でございます。調査会の会長は私が勤めておりますことは、今お話の通りでございます。しかしこれは何分むずかしい専門的の事項に関係をいたします。そこで専門家の意見を十分に聞かなければならぬ。それで実は専門家を調査団として派遣をして十分資料を集めてもらったという経緯すらあるのでございます。そして調査会に持ち込んでもらいまして、調査会をごく最近開きまして、それらの材料をすべて検討いたしまして、そうしてこの交渉に入るかどうかということをきめたい、こう考えておりますが、何分概括論として、かような科学の進歩のためにこれが非常に重要なものである、こう思われますので、ひもつきとかそういうことがない限り、つまり全然それが自由な立場で研究を進め得るという前提のもとに立つ以上は、これに対して交渉を進めていって差しつかえないじゃないか、こう今思っておるわけでありますが、しかしこれは調査会の検討の上にさらにきめたいと考えております。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 実は当委員会といたしましても、この問題は重要な問題だと考えます。日本の将来の原子力産業の自立のためにも、あるいは技術学問の独立のためにも、自由のためにも大事な問題だという観点に立って、先ほど委員長からもお話がありましたから、参考人を呼んで誤まりなきを期したいという意味で勉強いたしたいと思っております。いずれあらためてその席上には、あなたを初め責任者の方も御出席をいただいて、その参考人意見を伺いましたあとで、またいろいろ伺いたいと思っております。にもかかわらず、私がきょう先にこの問題についてお話しを願いたいと思いましたことは、この協定を結ぶことになりますと、昨年改正になりましたアメリカの原子力法を基準として協定ができることは当然でありまして、しかも昨年は、あれは国際的協力と訳すべきか、国際的活動と訳すべきか、とにかくその章の百二十三節にちゃんとそういう特に重要なものは条件があげられております。従ってたとえばさきのMSA協定がMSA法自身を基準として協定が行われるごとく、この協定も当然国際的なプールの中へ入れて、国連のプールならプールから、各国が自由に民主的に、公開の原則に従ってこれを受けるというのではなくて、アメリカ国と単独の双務協定によって受け入れるという形になっているところに問題があるのであって、そういうことになりますと、当然この百二十三節が規定しておりますように——私条文を忘れて参りましたが、私の記憶に誤まりがないならば、三つの条件があって、第一は秘密保持の義務、これに対する保証の義務が被受入国にあるわけでございます。第二は軍事的にこれを利用または公開しないということ。第三はオーソライズされない人または外国、ですから、これに関係のない者——政府機関または関係しております受け入れ機関の係官がおそらくはオーソライズされたという意味でごさいましょう。それ以外の者に知らしめたり、渡したりしてはならない。こういうふうに非常にセクト的にできておるわけでございまして、この条件は、おそらくはあえて国際的協力または国際活動という一章を設けて掲げました原子力法の中の動かせない条件になっておるわけです。こういう条件もあらかじめお含みの上で、これをのむおつもりで交渉に当られるのか、どうなのか。これは交渉に当る前に当然予想すべきことでございますから、政府のお考えをちょっと聞いておきたいのであります。
  50. 重光葵

    重光国務大臣 それらの問題について、今私はこの席からはっきりしたことを申し上げられないことを遺憾といたします。しかしそれらの問題について、そういうことがあります以上は、十分に検討いたしまして、国家の利益とどういうふうにそれが調和し、もしくは矛盾するものであるかということを、すべて検討しなければなりません。調査会においてもそれは十分論議を尽して、この検討を進めたい、こうお答えすることが適当であろうと思います。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 政府方針は、新聞発表によりますと、この月の末から交渉に入りたいということである。アメリカ側は御承知通り予算の切りかえ前、六月中にはその態度をはっきりしたい、こういう希望を持っておるわけなんです。もうすでに目の前で始めようというのです。しかもあなたは、その最高の責任者なんです。それが今申しましたような、こまかいことなら別でございますが、向うの原子力法に明確に規定されておりまして、当然交渉に当っては予想さるべき問題に対していまだに方針がきまってない、答弁ができないということでは、これはちょっとおかしいと思う。重要な問題ですから、特に答弁をお避けになるべき理由はないと思います。たとえば、日ソ交渉、ロンドン会議に当りましては、向うがどういうことをやるか、向うの意向もわからない。従ってこういう委員会等で事前に政府方針をあけすけとしゃべつてしまうということは、相手のある交渉に当りましては、支障がございましょう。これはわれわれも控えておる。しかし、こういうようなもうすでに向うの法律で明らかになっておる、しかも当局者がたびたび談話を発表し、声明もしていることなんです。それに対して、これから受けようという態度をきめておられる政府が、そういう問題についてわれわれ国民に対して説明することができぬというのは、一体どういうわけなのか。第一その理由が、重光外務大臣に対しては少し非民主的だと思うので、遺憾に存ずる次第でございます。  他の質問者もあって御催促がありますから、なるべく簡単にするために、続いてお尋ねいたしますが、もしそういう協定を結んだならば、これは国際協定の一種でありますから、当然国会を通すべきであると思う。第三にお尋ねしたいのは、原子力問題は技術的にも日進月歩の情勢であります。また国際的にも変りつつあります。従ってわれわれの考えで一言ここで申し上げておくと、われわれのひがみかもしれませんが、アメリカは、御承知通り、一九四六年の原子力法においては、これは全く秘密に付しまして、そのために非人道的な学者の追放という事態もあったわけでございますが、そのときには、アメリカだけの技術的な独占だと思い上って考えておられた。従って、これを全く秘密のベールに隠してしまって、原子力法ができておった。ところが、その後ソ連、英国がどんどん進んで参る。われわれも科学者から聞いているところによると、原子力の技術研究等につきましては、すでに英国の方がはるかに進んでおるという段階に参りました。そこでアメリカはあわてて、昨年この法律を改正いたしまして、国際協力、国際活動の態度を変えて来た、こう思うのです。従って、この世界の潮流をながめますと、昨年の話合いで失敗をいたしましたが、当然の結論として世界的な国際管理または国連のプール——それは機構は別といたしまして、解念的に申しますならば、国際管理に移されて、万国に対してこういう問題に対する秘密はないという段階になるべきなんです。そのときに日本があわてて、しかし産業化するのではなくて、単なる試験炉のための六キロでございますか何キログラムでありますか知りませんが、今までの前例から見ますと、大体その見当でございましょう。その見当のものを受ける。一年早く研究に着手するという長所もございましょうが、逆に今申しました先の見通しを失って、長期にわたってアメリカからこれを発電炉に活用するときには協議をしてその了承を求めなければならぬというようなオブリゲーションを負ってみたり、あるいはまたその他産業の広範な利用に対しまして、濃縮ウラニウム製造前の技術に対しましても、われわれを無知にしていこうというような含みのありますこういう協定を結ぶことは危険だから、われわれとしては希望を申し上げれば、もう小し情勢を見てからでおそくはないから、そういうふうにしたらどうですかと言いたいのですが、それを振り切って政府の方でおやりになろうというなら、今申しました通り国会承認を求める、すなわち国民の納得の上におやりになるつもりであるかどうか。またやるとしても、多数をもってその協定をお通しになるとしても、将来こういう情勢を判断すれば、やるやらぬの立場は違いましても、当然私とあなたの間で共通なことは、将来そういうつまらない、日本の産業の発展とか技術の研究の自由、独立と、さらに経済的なものがアメリカによって押えられるという危険を防ぐためには、この協定は当然一年ないし二年という短期間でこれを切りかえることができるような、協定の期間をごく短期間にすべきだとわれわれは思うのです。そういうことを申し上げる背後の認識を私は今申し上げたのですが、そういう意味で今申しました三点についてもう一ぺんよく答弁をしていただきたい。繰り返しますならば、第一は、さっき申しました原子力法百二十三条で明確になっておりますひもを、一体どう解釈されているのか。これを受けられるつもりか。それから第二は、今申しましたような協定を結ばれるならば、当然国会通り、国民の納得の上にやるべきだと思うが、お取扱いをどうされるつもりであるか。それからわれわれとしては、こういうことはおやめになって国際管理——この技術が世界に秘密でなくなる段階がくると思いますが、それまでお待ちになる気持がないか。もしないとすれば、この協定の期間はごく短期間に短縮すべきだと思うが、どういうふうにお考えになっておられるか。これは外務省当局の技術の問題でなくして、政治的の問題であり、しかもあなたが責任者でございますから、ここで答弁していただけぬという理由は私はないと思う。率直に一つお答えをいただきたいのでございます。
  52. 重光葵

    重光国務大臣 この問題を処理する上におきまして、今お述べになりました御趣旨は、十分に頭に置いて検討いたしたいと考えます。それは十分申し上げられます。しかし先ほどお話になった、向うの法律にこうある、それに対してどう対処して交渉しようかということにつきましては、今まだ事実その決定を見ておらぬのでありますから私から申し上げるわけに行きませんが、ただそれらのことを十分に検討をいたしまして、先ほど申しました通りに、国の利益とどうこれを調整して行くかということを慎重に考えなければならぬと思っております。調査会もすぐ開かれることでございますから、私どもとしましては、その調査会における各専門家等の意見を十分に徴して、そうして政府は交渉に入るか、入るならばどういう考えを持って入らなければならぬかということを決定するよりほかに、実はしょうがございません。それじゃ非常になまけておるじゃないかというお話になりましようけれども、これはもうこの問題が起って以来各関係庁と十分に連絡をして、そして検討を続けて、ようやく調査会でいよいよ交渉の問題をどう取り扱うかというところまで今こぎつけたのでありますから、その調査会の検討を十分した上で、お話の点等を考慮して決定に導きたい、こう思うのでございます。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 この問題はすでにあなたより下におる高碕長官——この問題に対してはあなたが最高の責任者になっておる。その方ですらもうすでに、今日ではない、数日前の委員会におきまして、相当内容に触れて答弁をしておられるわけです。そのときに、いよいよ交渉に当ればむろん外務省が大体責任官庁となって、ワシントンでやるか東京でやるか知りませんが、交渉なさるだろうと思う。そのあなたが今さらまだ答弁ができぬということは、ちょっと私どもとしては納得が参りません。ですからさっきに申しました百二十三条をどのように受け入れるか、どういうふうにこれをこなすかということについては、これはもう少し調査会で研究なすって、内容について、並びにまた交渉の戦術等もございましょうから、きょうは一歩譲って、調査会が二十日に開かれるということでございますからそれまで待ちましょう。次の委員会でお尋ねしたいと思うが、しかしさっき私が申しました——もっとも何もそんな専門家の意見なんて聞く必要はないのであって、少くとも政治的な関係のある問題として、私が伺っております協定国会承認を求めるのか求めぬのか、期間はどうするのかという点、これについては外務大臣として当然所信を明らかにさるべきだと思うが、どういうわけでございましょう。
  54. 重光葵

    重光国務大臣 その点は今私の考え方を申し上げることを実は忘れました。この協定ができました後に国会承認を求めるか求めないかということは、一に協定の内容にかかっておると思うのであります。私はこれが新たな国際約束であって、新たな権利義務を伴うものであるということになれば、むろん国会の御承認を得なければならぬ、こう思っております。内容がどういうものになりますかということを十分に検討した上で、それを決定したいと思っております。それからこの条約を短期のものにした方がいいという御意見は、十分伺っておくことにいたします。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 期間の問題はどうでございましょうか。
  56. 重光葵

    重光国務大臣 期間は、短期にした方がいいというお考えを十分頭に入れて……。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 そういうふうに協力するということですか。
  58. 重光葵

    重光国務大臣 その御趣旨を十分考慮に入れたい、こう考えております。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと大事な問題ですから、ほかの質問もあるようですが、済みませんが質問を続行さしていただきたい。  条約局長にお尋ねしますが、先般トルコと、それからあれはどこでございましたか、イタリアでございましたか、交渉をやっておりますね。ああいう内容のものを一応タイプとして考えたときに、当然これは新たなる国際的な権利義務を生ずべき協定であり、当然国会承認を求めるべき性質のものだと思いますが、条約局長法律的にどういうふうにお考えになっておりますか、ちょっとお尋ねいたしておきたい。
  60. 下田武三

    下田政府委員 大臣のおっしゃいましたように、協定の内容いかんによって国会にかけるかかけぬかがきまるわけでありますが、御指摘のトルコのあれ、これは第一に、この協定国会にかける必要がありますかどうかは、立法上の義務を負うかどうか、あるいは財政上の義務を負うかどうかということにかかるわけであります。そこでMSA協定に基く秘密物件を保護するために秘密保護法のような立法を必要としますならば、やはりこれは国会にかける必要があります。トルコの例を見ましても、そんな秘密保護の必要はないのであります。どだい秘密に付さなければならないようなものはくれないのでございます。でございますから、秘密保護の立法はおそらく必要ないと思います。この点からも国会にかける必要はないのじゃないか。またもう一つは財政上の問題でございますが、これは昨年度からの繰り越しを入れまして、大体三億六千万円くらいの資金がすでに政府の手にあるわけであります。これを上回らない限りは、政府のすでに持っておる予算を使って済むのでありますから、あるいは国会にかけないで済むということも考えられるのであります。ただこれからの交渉でございますから、どちらになるということを今はっきり断定いたすことはできない次第でございます。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 私は当然これは国会にかくべきものだと思うのです。たとえばさっき申しました、特に重要な点は三つの条件ですね。これを日本の国内において実行し、アメリカに対してこちらでそれを責任を持って保証するということになりますれば、当然新たなる、国民に対する、義務を生ずるような一つ措置が必要になって参ります。それは法律で行くか政令で行くか、そこはまた政府解釈で、われわれと意見が違うかもしれませんが、これは当然国民の権利義務に関係いたします。たとえばオーソライズされないものに渡してはいかぬとかいくとか、あるいはまたこれをだれが監督するか、監督する機関が問題になりましょう。向うがそういう義務を日本国に負わしましたときに、これを監視する関係ですね。そういうようなことになりますと、当然予算の問題だけでなくて、国民の権利義務に関係いたすことでございますから、国内におきましても法律措置を必要とする。そうしてまた国際関係におきましても、そうでなくてもこれは憲法に規定いたします国際条約の観念の中へむろん入るべき性質のことであって、当然双務協定でございますから、国際的に義務をこっちが負うわけですですから私は当然そう考えるべきだと思うのです。もしそういうような内容のものであるならば、当然国会にかけるべきだと思うのですが、今大臣も局長も両方とも、非常にあいまいにして、将来の未確定なことに対しては答弁できないということで、場合によれば国会承認を求めないで素通りするかもしれぬというような不安をお与えになっておられますが、この際はそういうことをおっしゃらないで、ぜひとも一つ国会承認を求めて、国民の納得のいくような方法でおやりになっていただきたい。もう一ぺん大臣の御答弁をお願いいたします。
  62. 重光葵

    重光国務大臣 私は今の御趣旨には少しも異存はございません。当然そう考えております。しかし今これを国会に出すか出さぬかということについてのイエス、ノーを問われれば、それに対してまだお返事ができないということだけを申し上げておるわけであります。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 これに関連しまして、もう二点だけ大臣にお尋ねしておきたいと思います。あとはまた先ほど申しましたように今後の委員会に譲りたいと思います。  それは第一は、この協定を結ぶことによって、アメリカ以外の国、たとえばイギリス、ソ連、これらの国との間にウラニウム受け入れの別の協定を結ぶ、そういう自由を当然確保しておくべきだと思いますが、それに対する大臣のお考えはどうであるか、これが一点。  それから時間がありませんから、ついでにもう一問さしていただいて打ち切りたいと思います。それは、これは世界の人類の平和と福祉のためにいい意味の産業革命が行わるべき原子力の問題でございますから、当然万国の人類の共通の目標である平和と福祉のために利用だてるべきなんです。それが、公開さるべきものが公開されず、自由であるべきものが自由でない、今申しましたような秘密保持の協定であるとか、あるいはまたオーソライズされない人間にはそんなものを渡してはいかぬとか、外国に渡してはいかぬとか、こういうような秘密のヴェール、かきを結わなければならぬということは、一にかかってこの原子力が軍事的目的のために利用される重要な技術であり、物質であるというところに重要な問題があると私は思うのです。大臣も大体御承知だと思いますが、われわれが科学者から伺いましたところでは、平和用の原子生産と軍事用の研究または生産工程というものは可分でないそうです。分けることができないそうです。たとえば鉄に例をとりますと、製鉄化されますまでは、平和的か軍事的かわからない。農機具にすれば平和的であり、あとこれを大砲にすれば軍事的だということになりますが、原子力の問題につきましては、この研究または技術あるいは生産工程等が、平和的である、軍事的であるということの関係が、原子爆弾になる直前までは不可分なんです。だから平和利用と称しながら実はこれがすぐ軍事力に利用される危険があること、看板は平和だ、原子爆弾を作る直前までは、前の日までは、平和利用に限ると言っておって、あくる日からひっくり返ってこれを軍事的利用にすることができるという危険があるということ、そのためにこういう秘密条項というものがどうしても必要になり、国際管理が困難になってくるわけでございましょう。それは大臣もそういうふうにお認めになると思うのです。ですから、日本といたしましては、日本国はもとよりでございますが、国際的に見て原子兵器の製造、貯蔵、それから使用、実験の禁止に対しましては、やはりこういうような、今申しました技術製造におきまして、平和的と軍事的との差別のつかない物質を扱う場合におきましては、日本態度はそうであるし、国際的にこの原子力兵器の一切の禁止をこの際政府態度として、日本態度として国際的にも強く推し進めてこの問題に当るべきだと私は思うのですが、原子力兵器の一切の禁止、これに対するお考えはないか。これがもし行われれば、今申しました一国と一国の双務協定、それは秘密協定を結び義務を負うような双務協定にならない、当然国際管理のうちに入り、国際的に自由であり、すべての民族が利用できる、こういう今政府がやろうとしておる平和利用の目的に合致することです。ですから、この際、そういう態度を明確にして進まれることが私は必要だと思うが、大臣はどういうふうにお考えになっておられるか、その二点について、この際あらかじめの問題としてお尋ねしておきたいのでございます。
  64. 重光葵

    重光国務大臣 同じものでも、これは使いようによっては非常に危険なものになることはお話の通りだろうと思います。軍備についてもそうだろうと思います。しかし、あくまでこれは平和的利用に使わなければならぬ。平和的利用に限るべきものである、この御趣旨は、特に原子力の問題についてはまさにその通りだろうと思います。日本といたしましても、国際的には常にその立場をとっておることも御存じの通りでございます。国際連合においても、平和的利用にのみ協定していくわけでございます。それをどういうふうな形において日本が提案するかということでございますが、機会あるごとにそれはやらなければならぬと思います。そこで、たとえばバンドン会議でもその趣旨で取扱われておることは御承知通りでございます。私は、今お話のあった御趣旨には少しも異論がないのみならず、その趣旨によって処理をいたしたい、こう考えております。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 それから、第一問の他の国との受け入れ協定自由の問題……。
  66. 重光葵

    重光国務大臣 できるだけ広くしなければならぬことは当然のことだと思います。当然のことでございますが、それでは今それをどういうふうな規定にするというところまでは——一つ交渉の上でやって参りたい。御趣旨は私異はないのみならず、それはよいことだと考えております。
  67. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、もし向うがアメリカ協定を結んだならば、他の国から受け入れをやってはいけないという禁止条項を入れよとしたら、これを拒否するつもりだと解釈してよろしゅうございますね。
  68. 重光葵

    重光国務大臣 そういう趣旨で交渉をしたい、とこう思っております。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 なおまだありますが、ほかの委員の御質問もありますので、実はきょうは日銀と人民銀行との貿易の決済問題等について、大蔵大臣に来ていただいて御説明をいただくことを委員長に通告申し上げておきましたが、大蔵大臣はお見えになりませんか。
  70. 植原悦二郎

    植原委員長 東条為替局長が来ておりますが……。
  71. 穗積七郎

    穗積委員 もう一つは、旅券の問題で外務省渡航課長にお尋ねしたいことを前もって通告いたしておきましたが……。大蔵大臣はお見えになりませんか。
  72. 植原悦二郎

    植原委員長 大蔵大臣は今予算の方で……。
  73. 穗積七郎

    穗積委員 きょうはちょっと無理ですね。——それでは大蔵大臣に対する質問は次の機会にいたしまして、重光外務大臣には他の委員も御質問があるようですから、大蔵省の事務当局の方がおられたら、大臣に対する質問が済んでからお尋ねしたいと思います。渡航課長にもお尋ねいたしたいと思いますが、大臣の時間を食ってはいけまんから、他の方の大臣に対する質問を先にやっていただいて、それが済んでからあとで時間をいただいてお尋ねいたしたいと思いますから、さようお取り計らいを願いたいと思います。
  74. 植原悦二郎

    植原委員長 並木芳雄君。
  75. 並木芳雄

    ○並木委員 私は、当面の問題を二、三お尋ねいたしたいと思います。その一つは、行政協定についてであります。実は昨日の拡暁起った国鉄の事故に関連して、アメリカの方では、国鉄職員は日本政府の職員であるから、損害賠償の求めに応じないという態度をとっているやに伝えられております。いわゆる公社、国鉄とか専売公社そういうものの職員は準公務員ではありますけれども、政府の職員ではない。     〔委員長退席、須磨委員長代理着席〕  政府機関ではない。少くとも行政協定に関する限り日本政府の機関ではないという立場で臨んで来たと了解しておるのでございますけれども、いつこういうふうな問題がこじれて参りましたでしょうか。国民感情にも関連する問題でございますから、この際大臣から政府としての見解をはっきりさしておいていただきたいと思います。
  76. 重光葵

    重光国務大臣 今関係の局長から聞くところによると、これは政府職員として取扱っておらぬということでございます。従いまして、お話のような問題はないということでございます。なお詳しいことは局長からお答え申し上げたいと思います。
  77. 下田武三

    下田政府委員 中央政府の職員あるいは中央政府の出先の地方事務局等の職員、それから府県の職員等は公務員のカテゴリーに入れておりますが、国鉄その他の公社の職員等は、たといその使命が公共的なものでございましても、行政協定関係におきましては政府職員として扱っておりません。
  78. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは今度の場合に、政府としては、調査の結果当然責任が先方にありとすれば、アメリカに対して損害賠償の請求をするものと思いますが、その通り了解してよろしゅうございますか。
  79. 下田武三

    下田政府委員 これは政府が損害賠償を要求するのではなくて、国鉄対米軍との問題でございます。ですから当然国鉄と米軍の間で話をすることになっております。
  80. 並木芳雄

    ○並木委員 私のお聞きしたいのは、国鉄がそういう請求をして、先方ががえんじない場合に、政府としてはどういう交渉をされますか、それを拱手傍観しておるのかどうか。
  81. 下田武三

    下田政府委員 むろん国鉄、米軍の当事者間に話がつきません場合には、政府は傍観するわけじゃございません。日米行政協定によります合同委員会というものが、そういう事件を処理する機関でございますので、当事者間に話がつきませんなら、合同委員会であっせんをするということに相なろうと思います。
  82. 並木芳雄

    ○並木委員 合同委員会のお話が出ましたが、最近飛行場の拡張問題で各地で反対の運動が出てきております。そこで私はこの際大臣にお尋ねしておきたいのですけれども、合同委員会で協議がきまらなかった場合には、両国政府にその話を持ち込むというのが行政協定であります。しかしそれでも両国政府間で話が成立しない場合があるわけでありますが、日本アメリカに守つてもらつておるという立場をとっておる関係上、どうしても飛行場の拡張の問題その他この間起りました富士山ろくの演習の問題等では、先方の言うことを、日本政府が無条件にというとちょっと語弊がありますが、どうしても受け入れがちな傾向にあるのではないかと思います。これを是正するために、何らかここに日本政府としてもある種機関を設けて、そうして先方は、たとえばジェット機の発着にこれだけのものが必要だというならば、日本政府としても、技術的にもそれが了解できるような線を出してきませんと、解決がむずかしいのではないかと思います。その点について、大臣としてはどんなお考えでしょうか。最近の飛行場拡張反対の問題とからんで、十分国民を納得せしむるに足るような方法を行政協定の範囲内においてとられることが必要と思うのです。もしそれがとれなければ行政協定そのものを改訂していく必要が起るのではないかと思いますが、この点についてお尋ねをいたします。
  83. 重光葵

    重光国務大臣 行政協定は、御承知通りに安保条約から生まれてきておるのでございます。すなわち共同防衛の見地からこれができておることは御承知通りであります。そこでその大なき目的を達するために、いろいろなことをやらなければならぬ。そうして国内において、日米関係についていろいろ調節をしなければならぬところがある。そこで合同委員会を設ける。すべて調節する目的を持って合同委員会ができておるのでありますから、その合同委員会の仕事において、これが調節ができるものと一応しなければならぬわけです。それで万一合同委員会で解決できぬというならば、これは普通の外交交渉によってやる。普通の外交交渉でまとまらぬものをどうするか。これは国際法上国と国との関係で、方法がないわけです。その場合においては、政治的の結論によってこれを判断するよりほかにしょうがない。また国力の差とかもそこに作用しましょう。これは普通の外交交渉になるわけであります。しかしそれを避けるために、行政協定において、できるだけこれを調和しようという趣旨でできているのが合同委員会であります。それによって処理するということが一番適当だと考えております。
  84. 並木芳雄

    ○並木委員 今の大臣のお話の点はわかるのですが、基地拡張のために農地をとられたりする側からいいますと、飛行機を発着せしめるのにどうしてこんなに広い地域を必要とするであろうかという抽象的な疑問を持つわけであります。それをどうしても技術的に日本政府の方で説明してやる必要が起ってきたのではないか。この点なんですが、そういう意味におきまして、政府の中に権威ある技術家を集めて、アメリカの方からそういう申し出があったときに、日本政府としても、確かにその必要を認めるのだという説明がつくような機関がほしいように私は思いますが、いかがでございましょうか。
  85. 重光葵

    重光国務大臣 ごもっともな御意見で、そういうことは十分に納得のいくように説明もし、努力もしなければならぬと思っております。また条約が外国と結ばれた以上は、その条約に対して忠実に、日本として、また日本国民としても、これは考えなければならぬと思うのであります。それがために調達庁は、その問題についても非常に苦労をしているわけでございます。私は十分調達庁の努力が実を結ぶものと考えている次第であります。
  86. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは次に私はMSA関係でお尋ねいたします。特に最近問題になっております余剰農産物の受け入れについてでありますが、前年度の余剰農産物受け入れのときには比較的円滑にいったのであります。今度はドル払い条項の問題で双方の意見が食い違っていると申しますか、また日本政府の中でも、必ずしも意見一致していないようにも受け取れるのでありますけれども、今度の余剰農産物交渉についての交渉は、現段階でどうなっておりますでしょうか。六月一日ごろまでに何らかの結論を出しませんと、アメリカで、いろいろな利害関係上この問題が流れてしまうのではないかという危惧もあるのでありますが、はっきりしていただきたいと思います。
  87. 重光葵

    重光国務大臣 今の御質問は、私に対してなされたことと思いますが、ちょうどここに高碕経審長官がおられます。この問題については非常に苦心をされておられるのでありますから、高碕長官にお答えさせていただきます。
  88. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 余剰農産物の交渉は、重光外務大臣の責任においてやっておりますが、実は私が国内の取りまとめ方をやりまして、ときには直接交渉にも当っておるわけでありますから、私からお答え申し上げます。  昨年のMSA援助の一千万ドルの問題は、向うからもらう、みなほとんどギフトになっておりますから支払い問題がありませんので、この問題は簡単に解決したのであります。今度の一億ドルの余剰農産物購入の問題は、一億ドルの中の千五百万ドルはギフトになってもらうのでありますから、これは問題はありません。あとの八千五百万ドルの中の七割は、日本が長期で借りるということの問題のために、今日までごてごていたしたのでありますが、そのいきさつを簡単に申し上げますと、最初私どもはこの八千五百万ドルの七割、五千九百五十万ドルというものは、日本にその品物を持ってきて円で売ってその円でわれわれは長期に金を借りて一定の時期をおいて円で返す、こういう考えでおったのであります。ところが円で借りたときに、払うときには円で払っていいが、そのときのドル相場によって円で返す、こういうわけなんです。従いまして、借りますときの円の金額はきまっておりますが、返すときの円の金額はきまらないわけなんです。つまりドル・クローズというわけです。そういうことは政府としてはほかに影響することがあるからいたしかねるわけであります。  そうなればいっそ余剰農産物を持ってきたときに、それをドルで借りてしまってドルで返すという方針で進んだらどうだ。そういたしますと、日本ではドルが要るのだから、ドルで返すのはつまらぬじゃないかという意見もありますが、そうすると円で借りて円で返す場合は利息が四分でありますけれども、ドルで返せば三分になる。三分と四分は大へんな違いであるから、そうなると利益じゃないか、こういうことも考えたのであります。もう一つは円で返しましても、ドルで返しましても、その金は——大体アメリカ大使館がこちらで使います金は一年で約三百万ドルくらい使うようであります。これはアメリカからドルで持ってきて円にかえて使うのだから、そうなればアメリカからドルを持ってこずに日本の円を使うわけですから、実際はその金は日本において使われるわけです。ドルで払っても円で払っても同じ結果になる。私どもはそう感じまして、ドルで借りてドルで払うことが一番有利だ、こういう考えで交渉いたしまして大体三年据え置きのドルで返します場合は利息は三分ということにして、四十年年賦でいくということで話をしたのであります。  ところがここに一つ問題が起りましたことは、一体日本の方は世界銀行に借財を申し込んでおります。世界銀行の方といたしますと、日本がそうむやみにドルの負債を持つことになりますと対外信用上困る。自分の方も考慮しなければならぬといってきて、できれば円で払うようにしておかぬかという意見もあったのであります。そこでいろいろ折衝いたしました結果、現段階におきましては五千九百五十万ドルの金は一応円で払いますが、それをすぐにドルにかえてしまって、ドルの借款にしてしまう。そうして日本の都合によってはドルで払ってもいいし、円で払ってもいい、どっちでもいい、こういうふうなことで交渉を進めまして、大体先方の方はそれで承認したようであります。世界銀行も承認したようでありますが、その手続がなかなか厄介なのであります。どういうふうな形式にするということは政府政府との取扱いになっておりますけれども、中にアメリカの輸出入銀行を介することになっております。また支払い手形をどうするかという問題もありまして、相当手続上時間をとっておりますけれども、相なるべくならば今月内にこれをきめたいと思って、せっかく努力しておるような次第でございます。以上御報告申し上げます。
  89. 並木芳雄

    ○並木委員 MSAに関連してもう一つお伺いしたいのは、今度のMSAの条項で前年度と違うところは、今のほかにどんな点が出て参っておりますか。あるいは大臣が御無理なら局長でけっこうですけれども、この前岡崎外務大臣時代に一年たてばたとえば顧問団の数は半分に減ってしまうというようなことも言明しておられたのであります。ちょうどあれからもう一年たちました。実際に顧問団も半減しておるかどうか、MSA関係についての説明を求めたいと思います。
  90. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 ちょっと並木君に申し上げますが、高碕長官は都合で三十分ぐらいしかおられないそうであります。まだ質問通告者はほかに穗積君、岡田君、松本君等がおりますからなるべく簡単にお願いいたしておきます。
  91. 下田武三

    下田政府委員 昨年のMSAとの比較でございますが、ただいま仰せになりましたのは、MSAによる武器援助の問題を御言及になりましたが、これは全然別問題でございまして、それに相当するものは本年はできません。本年にできますのは、昨年のMSAに五百五十条による余剰農産物の購入協定があるわけです。これの大きな比較は、ただいま高碕大臣仰せになりました点のほかには、昨年度におきましては購入協定とそれから特別勘定に関する経済協力協定と二本立に相なっております。本年度におきましては協定は一本でございまして、そのほかに日本政府とおそらくは向うの輸出入銀行になりますでしやうが、ペイメントの付属協定、そういう縦の関係になりまして、横に二本立の協定に相ならないという見通しでございます。顧問団はMSAの武器援助の方の協定の問題でございますが、これは予想いたしましたように、人数は相当減つておるようでございます。
  92. 並木芳雄

    ○並木委員 それではちょうど高碕大臣がお見えになっておりますから、これは外務大臣でもどちらでもけっこうです。在外資産の問題がございます。私どもアメリカの在外資産返還の問題について非常な期待を待っておったのでございますが、返還される件数といい額といい予想よりもはるかに小さくなってしまったようでありますが、どういうわけでアメリカからの在外資産の返還はうまくいかなかったのでありましょうか、また今後この打開の方法としてどういうふうに政府は処置していかれるつもりでございましょうか、在外資産関係の点についてお尋ねいたします。
  93. 重光葵

    重光国務大臣 関係の千葉局長から今の点を御説明申し上げます。
  94. 千葉皓

    ○千葉政府委員 在米資産につきましては、先般来交渉といいますか、米国側から返還について申し出がありました。向うはドイツに対しても同様財産の返還についての処置を進めておるようでありまして、双方に対しまして、これは財産全部を返すのでなくて、個人の持っておる財産について私有財産尊重の原則ということもありますけれども、個人の困窮を救うということを趣旨といたしまして、一万ドルを限度として返還する、こういうことになりました。これはもちろん御指摘のようにわが方が期待したところと非常に距離があるのであります。しかしこれは向うが日本に対する好意の一端として向うの一方的行為として実施するわけでありまして、これについては苦情は申されないわけです。しかし今後の問題といたしまして、われわれ機会をとらえまして、さらに大幅の資産の解除を申し出るように考えたいと思っております。
  95. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 穗積七郎君。
  96. 穗積七郎

    穗積委員 高碕長官に御答弁をわずらわしたいのです。実は濃縮ウラニウムの問題ですが、ただいま長官がお見えになりませんでしたので重光外務大臣にちょっとお尋ねしたのですが、あなたが他の委員会で御答弁になりましたよりはるかに内輪のお話で十分伺えませんので、同じようなことでございますがちょっと伺っておきたいのです。  それは、あなたの御方針によりますと、ひもつきでないならばこれを受け入れる交渉に入りたい、受け入れたいというような御趣旨を明らかにされたようでございますが、予想されるひもつきとは一体どういうことを意味しておられるのか、そのひもつきだと懸念される中に、アメリカの原子力法の百二十三節に受け入れ国の三つの義務規定がございますが、こういうもののことを言っておられるのかどうか。そして当然その中に入っているのだと思うのですが、このほかに何かひもつきとしてあなたが前もって警戒すべき、またはなるべく避けたいと思うひもとは一体どんなことを頭の中に描いておられるか、そのことを明らかにしていただきたいと思います。
  97. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 先方がどういう条件を出すとか、またアメリカの原子力法はどうなっておるかという詳しい問題は逐次検討いたしておりますが、原則的に申し上げまして、一番おそるべき問題は秘密の保持というふうなことであり、これが公開できないということは私は非常に困る問題だと思います。なぜかと申しますと、今後やはり研究の自由ということが根本であり、それで研究の自由を阻止するような条件がつくというようなことは非常に困ると思っておるわけなのでございます。従いまして、これはどこまでも民主的にかつ自主的に、日本はこの原子力というものについては研究が自由にできるということを保持していきたいと思います。それにひびが入るようなことについてはお断わり申し上げたい、こういう所存であります。
  98. 穗積七郎

    穗積委員 第二の条件であります軍事的に利用しないということは、よくわかりきったことで、日本にはそういう心配はないわけですが、第三にオーソライズされない人物または外国にこれを渡したり明らかにしてはいけないということがありますが、特に問題になりますのは、オーソライズされない人物となりますと——おそらくは政府受け入れ機関もできましょう。それに関係する係官はオーソライズされた人物ということになりましょう。それからその実験炉を中心としていろいろな勉強をされる技術者、科学者、これらもおそらくはそうでしょう。しかし、日本の物理学者ないしは医学者等等は全部がこれに参加できるものではなくて、おそらくは限られた人になると思うのです。そうした人だけがオーソライズされたことになる。それ以外の学者には渡していかぬとか、アメリカから見て思想的に好ましくない学者には渡してはいかぬとかいうようなことが、オーソライズされないということで区別される危険が生ずると思うのですが、そのことはお考えになっておりませんか。それでそういうことをオーソライズされたとはどういうことを言っておられるのか、また頭の中に描いておられるのか。それによって、われわれの解釈によると、あなたがいみじくおっしゃいました研究の自由、公開の自由ということについて、実は第三の条件も抵触してくるわけでございます。長官はそういうものは当然排除して、日本の勉強したいと思うすべての学者、あるいはこれを利用したいと思う人は——最初は実験炉でございますが、将来これがだんだん産業化されていきますと、当然学者のみならず広く公開されなければいけない。そういうことに対してこの条文が抵触するということはお考えになっておられるかどうか。もし抵触するということが交渉の結果明らかになりましたときには、これはやめてもらうように努力されるつもりであるかどうか。その点を念のために、内容にわたりますが、お答え願いたいと思います。
  99. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私は先方がそういう条件を出すかいなかということはまだ考慮いたしておりません。そういう点がかりに条件といたしますれば、よく検討いたしまして、先ほど申し上げました私の原則にそれは合わないというならば断わらなければならないという方針で進みたいと思っております。
  100. 穗積七郎

    穗積委員 次にお尋ねいたしますのは、今朝の新聞にも出ておりますが、昨日もホプキンスを初めとする他の二人の学者が、日本の記者会見で、天然ウラニウムも供与してよろしいという態度を示したそうです。これは向うの権威ある政府ではございませんで、民間人またはもと関係があった学者でございますから、これをもってアメリカ政府の意図であると政府が直ちに公式上受け取ることは困難だと思いますが、もしそういう意図がアメリカ政府の側にありました場合には、どうなさるおつもりであるか、これも伺っておきたいと思います。
  101. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 先ほど申し上げました原則に反しないということならば、予算の許す範囲におきましてこれは受け入れたいと存じております。
  102. 穗積七郎

    穗積委員 次にお尋ねいたしたいのは、特にあなたは財界のヴエテランであり、経験者でありますから、私は日本の将来の原子力産業のために重大だと思うのでお尋ねするのでございます。それは何かと言いますと、学者の一部の諸君が単に研究の自由であるとか、あるいは公開性を主張するとか、あるいはそれに参加する者に区別をつけて非民主的な扱いをしないようにという要求をしておられます。同時にここに重要な学術会議の提案があるわけですが、それは、日本の原子力研究並びに原子力産業建設に対しての自主的計画を持つことが先である、こういう主張なんです。これは私は経済的に見ても、あなたが実際家としてすぐれた識見をお持ちになっておられるとすれば、当然このことはあなたのお耳にはピンとくると思うのです。私のささやかな研究によりましても、たとえば一例を申し上げれば、自動車工業にいたしましても、船舶工業にいたしましても、今までの日本政府ないしは財界の方々の態度というものは、日本で独自の研究を進めることに努力をしないで——努力を全然しないということではありませんが第二として、そしてお金の使い方、技術者の使い方は、何かといえば欧米においてできました技術、パテントをすぐ安易に買ってきて、それを翻訳させるのが日本の技術者に対する要求であった。そのために日本の造船界にいたしましても、その他精密工業にいたしましても、技術が非常に立ちおくれておる。これは日本独自の研究がなかったということである。大学の研究機関または国立の理研等がかすかにございましたが、これも予算が少い。そして三井、三菱その他の大財閥の産業機構の中におきましても、独自の研究機関、オリジナリティを持った研究機関には資本を投下しないで、外国でできたパテントをすぐ買ってきて、部内における学者または技術者の協力は、それをいかに翻訳するかということ、そうして明日すぐ経済的利益をとることができるという目先に走ったために実は日本の技術の立ちおくれた点があります。こういう点はあなたはもとより賢明にも見破っておられると思う。そこで私は、単に学者の研究の自由というような問題にとどまらずして、日本の産業の独立は、急がば回れで、かえってその方が早いと思うのです。富士山に登るのに、六合目から登って、手っ取り早く上まで行ってしまったらどうだといっても、それでは登れない。こういうような研究は、原鉱石からウラニウム金属を取り出す技術並びに生産設備がなければならない。そうしてだんだんと濃縮ウラニウムに至る研究と生産設備が必要だと思うのです。それが実は日本では遺憾ながらまだできていないのです。そういう状態におきますと、ここでもう一ぺん明治初年の日本の資本主義産業発展の過程におきまして犯しましたあやまちを繰り返すことになる。しかもそのことによって、先ほど私は憂えて重光外務大臣にお尋ねしたのですが、原子力問題はまさに国際的にこれから公開されようとしております。もう一ぺん繰り返しますが、あなたも当然認識されていると思うが、一九四六年に作りましたアメリカの原子力法によりますと、秘密にしておった。それはなぜかといえば、アメリカだけがこの技術を独占しておるという自負を持っておったからである。ところがその後ソ連もイギリスもやり、特にこれらの二国の方がアメリカより進んできているという事実を見て、そこでアイソトープのごときはどんどん自由販売で売り出す。そういう段階になったから、昨年原子力法を改訂して、国際協力という態度を示してきた。しかしこれも不徹底であって、悪く解釈すれば、そういうふうに世界的なプールになり、公開され、そして国際管理になり、だれも秘密がないという段階になる前に、機を選んで、そこで日本のウラニウム産業、原子力産業というものをアメリカのイニシアチブにおいてつかみ、技術でもアメリカの下請的な性格を持たしたいという意図が——当事者にはないかもしらぬが、今私が日本の産業発展の過程における客観的事実として申し上げたように、客観的事実として現われてくると思う。そういうことでございますから、従って私がここでそういう観点に立ってあなたに明らかにしていただきたいと希望をいたしますことの第一の点は、この問題は一年を争って先を失うことなしに、やがて国際的管理になることをわれわれは情勢判断として見通すことができる。そうしてほんとうに公開、自由の原則に従ってやるという意思がおありになるかどうか。これはもう一ぺんお考え直しをいただくことができないかどうか。  それから第二の点としては、今申しましたように、外国との関係であります。アメリカ協定を結んだらソ連または英国とは協定を結ぶことができないというような条項がもしありとすれば、これを拒否すべきであると思うが、大臣のお考えはどうか。それから第三点にお尋ねいたしたいのは、もしその国が進んでおりますれば、せっかくの好意でありますから、軍事的に利用しないということをはっきりいたしまして、そうして濃縮ウラニウム以前の技術公開もこの際要求する。今度の協定でそれができないならば、次の時期にはできるような、そういう道を開いたような協定に当然すべきだと私は思うのですが、そのことについてどうお考えになっておられるか、これが第三点。  第四点は、今申しましたような観点に立ってこの一切の条件による受け入れをする前に、日本政府といたしましては独自の技術研究並びに生産工程の計画を立てる、これは日本の技術の独立、経済の独立のために当然必要なことでございます。そうして経済的な識見を持っておられるあなたは、日本の産業の技術の進歩とそれから独立性を確保するために、パテントを買ってきておっちょこちょいをやるというような式のお考えを持たないで、この際は原鉱石から濃縮ウラニウム、発電または医薬あるいは農業生産等に一切利用できるような、ちゃんと筋道の通った計画をされて、そこでアメリカから自主的な、自由な独立の原則に反しない条件であるならば、濃縮ウラニウムまたは天然ウラニウムから受け入れていこう、こういうふうに私は乗せるべきだと思うが、そういうお考えはないかどうか、その点をお尋ねいたしたいのでございます。  さらに第五点に私がお尋ねしたいのは条約の期限でございます。これは今申しました通り、たとい結んだといたしましても、技術的にも、国際管理の点から見ましても、情勢がどんどん変っておりますから、今度結ばれようとしておるこの条約によって、情勢が変化してもそれに縛られて動きのとれないことのないように、これは内容のみならず、期間も一年ないし二年三年というように、ごく短期間でどんどん切りかえていけるような、欲するならば廃棄ができ、欲するならば改訂して継続できるというように協定の期間を短期間にすべきだと思うが、これについて大臣の御識見をこの際一つ伺っておきたいのでございます。
  103. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。第一の御質問の、従前日本の産業資本といいますか、資本家がとった外国の技術導入ということは、まことにお説ごもっともでありまして、そういうことがあったということも事実であります。ところがこれは急がば回れのお言葉のごとく、根本的にやっていった方がいいことははっきりわかっておりままが、何しろそうやっていると利益がない、こういうふうなことで、手つとり早くやろうというために外国の技術をなるべくそのまま持ってくるというような事実があったのでありますが、今後の日本の進み方は、どうしても日本独特で、日本自主性を持ってやっていく、特に原子力につきましては、これは日本といたしましてはどの国よりも平和的にこれを利用することが一番必要だと存ずるわけでございまして、御承知のごとく、天然のエネルギー資源がどの国よりも少いわけでありますから、これを開発し、利用していくということが、この過剰人口を処理する上において非常に大事なことだと存じておりますから、これはあくまで日本自主性を持っていきたいという考えは間違いありません。ただ今日原子力の研究は戦争後おくれておったのでありますから、できるだけひものつかない条件の技術はどんどん輸入していきたい、こういう所存でございます。  第二に、お説の通り現在では必ずしもアメリカが第一に進んでおるかというと、これは私は疑問だと存じております。特にイギリスの今日の原子力の利用というものは相当程度進んでおりまして、それがために先般来世界各国の原子力のことについて調査団を出したのでありますから、その報告等を基礎にして私は検討いたしたいと存ずるわけでありまして、アメリカ協定を結んだために、あるいはソ連あるいはイギリスあるいはその他の国の研究が受け入れられないというふうなことはないように努力いたしたい、こう存じております。  それから条約の問題だとか、そのほかいろいろの問題がございますが、これはお話のごとくよく参考にいたしまして御期待に沿うようにいたします。私はただいまの御質問については、全部非常に参考になるものだということで、同感でございますから、そういうことについて、先方との交渉に当ります上においてよく記憶しておきたいと存じております。
  104. 穗積七郎

    穗積委員 長官にもお願いいたしておき、外務大臣にもお願いしたのですが、当委員会におきましては、この問題を技術的にも、将来の日本の産業発展のためにも非常に大事な問題だと考えまして、近くその方面の専門の学者等も参考人として呼んで、その意見も参考にしながら誤まりなきを期したいと考えておるわけです。従って、きょうはその事前のごく大づかみの基本的な問題等について少しお尋ねしたのですが、近くそういう機会があろうと思いますし、同時にまたアメリカの方とのいろいろな政府の交渉の御方針もおきまりになろうと思いますから、その具体化を待って、その上でこの問題について続けてわれわれの意見も申し上げ、政府の御方針も包み隠しなしに討論していただくようにお願いいたしまして、他の質問者もありますから、きょうはこれで打ち切っておきます。さようお含みおき下さい。
  105. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 まことにけっこうでございます。ただいま政府が持っております原子力利用準備調査会は重光総理が会長、私が副会長をやっておりますが、重光外務大臣はほかに非常にお忙しいのでありますから、私が今後このことにつきましては当りまして、外務大臣の責任でございますが、私がこれを持っていきたいと存じておりますから、よろしく御協力をお願いいたします。
  106. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 ちょっとお諮りいたします。高碕国務大臣はちょうど外人とお会いになる時間が参っておりますから、一応高碕国務大臣に対する御質問はこの次の機会に譲っていただきたいと思いますがよろしゅうございますか
  107. 岡田春夫

    ○岡田委員 実は高碕さんに来ていただきたいということは私が一番先に申し上げたので、それを帰られると私は困るのですが、そう長い時間はとりませんから……。
  108. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 それではなるべく簡単にお願いいたしたいと思います。岡田君。
  109. 岡田春夫

    ○岡田委員 できるだけ簡単にやりますが、まず第一の点は、今の濃縮ウラニウムの点です。今の高碕さんのいろいろな御答弁を聞いておると、この受け入れの問題はきわめて重要な問題であるし、そしてまた慎重に考慮するべき問題であるというお話がだんだんあったわけであります。それだけにこの受け入れに当って結ばれる協定というものは、当然両国間の双務協定としても国会承認を得る必要があるとわれわれは考えておりますが、これについて一つ明確な御答弁をお願いしておきたいと思います。
  110. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。これはよくわかりませんが、大体現在アメリカにおきましてもこれはやはり国会承認を得るというようなことを言っておるようなわけでありますから、もちろんこちらにおきましてもよく研究いたしまして、国会承認を得ることだと存じますが、まだはっきり私はお答えすることはできません。
  111. 岡田春夫

    ○岡田委員 五四年の原子力法によりましても、相手国に対して相当の保証を要求しておりますだけに、これは単に政府間における単なる協定、その程度のものとしては、相手国であるアメリカはこれは認めないと私は考えます。法律の精神からいいましても当然こうだと考えておりますので、この機会においては特にこれは慎重に御考慮を願っておかなければならぬと私は思います。それから特に日本の場合にしましても、先ほどからだんだんお話しのあったような重要な問題であるだけに、国会承認がぜひとも必要であると私は考えております。  それからひもがつくかつかないかとかいう問題については、先ほど高碕さんがお見えになる前に、外務省の方から実はトルコ協定との関係で大分お話があって、下田さんの話しによると、アメリカとトルコの協定をきわめて強調をして話しをされたような印象があって、それによるとひもがついていないのだ、だから日本の場合においてもひもがつかないのではないかという印象を与えているわけです。しかし私はこの問題だけで日本の場合にはひもがつかないという断定を下すわけにはいかないと思う。こういう点についてお伺いいたしたい点と、もう一つは多分にひもがついているであろうと、これは考えられる意味で、高碕さんが衆議院の予算委員会答弁をしておられるわけですが、フィリピンとの協定の場合においては相当注意を要すべき点があるという意味のことを、実はあなた御自身が答弁されているわけです。フィリピンの協定の場合には一体どういうようになっているのですか、どういう点に注意を要すべき点があったのか、こういう点についてもひとつ御答弁を願いたい。
  112. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは正確には申し上げかねますが、フィリピンとの協定につきましては、フィリピンでできるウラニウムを必ずアメリカに持っていくというオブリゲーションがついているように私は聞いたのです。これはほんとうかどうかわかりませんが、そういうような条件のものであるならばはなはだ大きな問題だ、警戒しなければならぬということを、私の希望を申し上げたわけです。
  113. 岡田春夫

    ○岡田委員 従ってアメリカとトルコとの協定だけによって、ひもがつかないだろうとかつくだろうとかという断定を下す、そういう論拠には私はならないと思うのです。そういう点についてやはり全体の問題として日本の立場からこれを考えていかなければならない問題だと私は考えております。こういう点について特に、これは重光外務大臣にも重要な点でありますから——受け入れ前提になってくるものです。ひもがつくかつかないか、ことに百二十三条の問題がどうなるかということが重要な問題だと思う。この点は先ほど穗積さんからも再三にわたって質問しておりますので、特に私は要望しておきます。これに関連いたしましてこれは委員長を通じても特にお願いをしておきたいのですが、先ほど穗積君からも、本委員会として濃縮ウランの受け入れの問題については慎重に審議をしていきたいという考え方を持っていることを申し上げたのでありますが、そのためにもこれはぜひとも重光さんと高碕さん、それぞれその担当の方にお願いをしたいのですが、一九五四年の原子力の法律ですね。この全文がまだ外務委員会には配付されていないというような状態なのです。ですからこういう資料の全文はすみやかに配付をしていただくようにお願いをしたい。これは委員長に資料の請求として特にお願いをしたい。それからもう一つは先ほどから大分問題になっておりますアメリカとトルコとの協定、あるいはアメリカイタリア——現在交渉中の問題でありますが、この協定の概略でもけっこうです。それからフィリピンとの協定が結ばれていると高碕さんのお話しがあるわけですか、この協定の全文、それからノルウエーとの間においても協定が結ばれております。それからベルギーとの協定もすでに結ばれておる、ただいま申し上げた五カ国との協定の全文を委員会に配付願いたいということを私は要望したいのであります。この点委員長から正式に政府側にも御要求を願っておきたいと思います。
  114. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 ただいまの岡田春夫君からの御希望については、御希望に沿うように取り計らうようにいたします。
  115. 岡田春夫

    ○岡田委員 高碕さん大分急いでおられますが、余剰農産物の問題で実は伺いたかったのですが、先ほど並木君から二、三質問がありましたので、交渉の経過等は大分わかって参りましたけれども、しかしまだ重要な問題がだいぶあるのであります。第一に、先ほども質問の中にあったように、これはアリカの会計年度としても、一九五五年度の会計年度としては六月の末までにこの問題を解決しなければならない。とすると、この協定締結されて、調印されて、そのあと日本国会承認をおとりになるつもりであるかどうか、こういう点についてまず御質問したいと思います。
  116. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 相なるべく早く締結いたしまして国会承認を得たいと存じております。
  117. 岡田春夫

    ○岡田委員 とすると、六月の末までには国会承認を得られるような段階になるというお見通しであるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  118. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 相なるべくは本月中くらいに大体締結いたしまして、六月末までには国会承認を得たいと存じております。
  119. 岡田春夫

    ○岡田委員 余剰農産物の問題については、この間予算委員会でやはり質問応答が行われたのですが、たしか私の記憶では自由党の野田卯一君の質問に対するあなたの答弁で、この協定を結んだ場合においては、今後二年、三年継続するというようなことも考えるけれども、しかしそれはそのときの事情によるのであるというような御答弁をされたように記憶いたしております。しかし今度のこの余剰農産物の受け入れの問題は、相手国であるアメリカ側の法律から申しますと、これは当然三カ年間十億ドルという余剰農産物の処理を基礎にしてこの法律ができているのであって、この協定を一度結んだ場合において、来年になってから事情が困るから日本の側としてはこれは受け入れないのである、こういうようなことを自由に言い得る協定ではないと私は考える。こういう点について一つ高碕さんはどういうようにお考えになっておるか御答弁を願いたい。
  120. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私どもの解釈いたしております範囲におきましては、一年ごとに協定を結んで、二年目、三年目は縛られない、こういうふうな解釈でございます。
  121. 岡田春夫

    ○岡田委員 じゃ協定の中には期限は出ておりませんか。
  122. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 協定の中には来年、再来年のことは何ら期限を持っておりません。
  123. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたの御記憶の通りということになりますとそうかもしれませんが、折衝に当られた過程においては、あるいはこれは前の吉田内閣のときにできたことですから、あなた御存じでないといえばそれっきりかもしれませんけれども、しかしこの余剰農産物の問題が起って参りましたのは、たしか去年の一月の二十日前後にアメリカ国会で余剰農産物の処理についての方針が出て、これについての法律ができたわけであります。この法律に基いて今度の受け入れの問題が起っておるものだと私は考えておる。その内容は、三カ年間で十億ドルの農産物を処理するということになっておるわけですから、この協定受け入れたとするならば、当然日本側はこれを三カ年間受け入れていくことが義務づけられるような結果になるのではないかと私は考えるのであります。この点をもう一度明確にしておきたい点と、それからだいぶお急ぎのようですから二、三あわせて質問いたして参りますが、今度のこの余剰農産物の問題はともすれば混乱しがちなのであります。MSA協定の五百五十条に基く買い入れ協定と、一緒にこんがらがってしまう場合が実は非常にあるわけです。今度のこの余剰農産物の受け入れというものは、アメリカの国内法によると、百一条に明確に規定しておるのは、通常の取引のそれのプラス・アルフアとして、その上積みとしてこの余剰農産物を受け入れるものである、こういうことが明文化されていると私は考えておるのです。この点は間違いないかどうかという点を、まず伺っておきたいと思います。
  124. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。第一の御質問の、来年度買わなければならぬ義務があるというふうなことでありますが、それは断じてないものと御解釈願ってけっこうだと思います。さょうに私は存じております。それで進みたいと思います。第二の、お話のごとくこれはMSA援助と違いまして、余剰農産物の問題は、現在取引されておる数量の上置きにするのだ、それを食い込まないのだということになっております。それはその通りでございます。
  125. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、上置きにするとするならば、従来の通常輸入の分の数量は、これは当然これだけを履行しない限りにおいて、上積みになる余剰農産物を受け入れることはできないことになるのではないか。この点はいかがですか。
  126. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 その通りでございます。従前の買っておりますものは、これはそれに食い込んでいかないということになっております。
  127. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうしますと、通常輸入の分というのは、大体数量その他においてどれだけのものがあり、今度の余剰農産物の分については一億ドルというお話がありましたが、大まかな点でけっこうですが、数量、品目を一つ伺っておきたいと思います。
  128. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまその詳細の数字はここに持っておりませんが、従前日本が買っておりました数量の、それ以上のものだということで、その当時いろいろ細目について折衝いたしました結果、あれだけのものがきまったのであります。
  129. 岡田春夫

    ○岡田委員 お答えがはっきり伺えませんでしたが、それ以上のものだというわけですか。
  130. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 はい。
  131. 岡田春夫

    ○岡田委員 通常輸入がそれ以上のものになるわけですか。
  132. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 通常輸入のもの、それからの上置きになるものとしてはこれだけの数量がとれるという、その数量をきめたのが、昨年来折衝いたしておりました余剰農産物の内容及び数量であります。
  133. 岡田春夫

    ○岡田委員 通常輸入にプラス・アルフアだ、こういうのですね。通常輸入の分を買わない限りにおいて、この分はもらえないのだ、こういう意味ですね。
  134. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 その通りでございます。
  135. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると、アメリカから今まで持ってきたより以上のものをこれは受け入れなければならない、こういうことになります。そこで問題になってくるのは、あなたもこの間バンドン会議にも御出席になりましたが、従来農産物は東南アジアからずいぶん入れております。これは日本の輸入国としてはアメリカと競争国であります。プラス・アルフアの分が入って参りますと、東南アジアの分については、当然これを制限していかなければならないというような結果になって参りますが、この点についてはいかにお考えになりますか。
  136. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 それは根本方針でございまして、従前東南アジアその他から買っておった数量には、これを食い込まないということが原則であります。
  137. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうなりますと、東南アジアは今まで通り入る。それからアメリカは通常通りにプラス・アルフアとして余剰農産物が入ってくるとすれば、日本の国内にはますますよけいに外国の農産物がどんどん入ってきて、日本の農産物をどんどん圧迫していくような結果になってもやむを得ないというお考えでおやりになるのであるかどうか。この点、特にこれはあとで御質問したいと思っておるのですが、アメリカの国内法によりますと、この協定に基いてアメリカの農産物の新市場を開拓することを目的としているという一項が入っているわけです。従ってただいまお話のあったように、プラス・アルフアの分を通じて、ますます日本の農業関係においては大きな打撃を受けてくるとわれわれは考えざるを得ないわけです。こういう点についてはいかにお考えになりますか。
  138. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 その点は慎重に考慮いたしまして、日本の農業政策及び従前輸入しておりました相手国の立場も考慮いたしまして、これだけの数量なれば差しつかえない、こういうところの前提でやつております。
  139. 岡田春夫

    ○岡田委員 それからもう一つ、こういうように輸入の相手国との関係で大きな問題があるのですが、このアメリカの国内法の三百四条によりますと、中国、ソ同盟の、いわゆる社会主義陣営から農産物を入れることに対して、大体こういうように書いてございます。
  140. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 ちょっと岡田春夫君に申し上げます。先ほど来十五分経過いたしまして、高碕国務大臣は非常に急がれていますから、きわめて簡単にして下さい。
  141. 岡田春夫

    ○岡田委員 私が来てもらったのに、そう簡単に、簡単にと言われても、まだ質問の始まりに入ったばかりです。ちょっと待って下さい。三百四条で、ソ同盟、中国などから食糧品、原材料あるいは市場取引について、余剰農産物の受け入れ国が、つまり日本が、独立することを援助するように、大統領はこの法律で定める権限を行使しなければならないという条項があるわけです。従って、この余剰農産物の協定受け入れるとするならば、この間きめられた日中貿易の協定の中に、たとえば、具体的に申し上げますと、米なんかを輸入することになっている。これと当然競合いたして参りますし、そればかりじゃなく、こういう米を輸入させることを制限するようなことになってくるのではないか。この点は非常に重要な問題でありますからこの点について高碕さんはどういうようにお考えになって交渉されているか。
  142. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 そういう点は、抵触しないことと存じております。
  143. 岡田春夫

    ○岡田委員 条文に書いてあるじゃありませんか。条文に、独立するようにするのだということで、当然抵触してくるのじゃないですか、具体的に…。
  144. 下田武三

    下田政府委員 御指摘の米国の国内法の趣旨は、共産圏からの食糧輸入にたよらざるを得ないために、どうしても共産圏の言うなりにならざるを得ないというような、政治的な境遇にある国を対象としているのでありまして、日本のように、共産圏の食糧に何もたよっていない国は、全然考慮していない規定でございます。
  145. 岡田春夫

    ○岡田委員 今の下田さんのお話では、考慮しておらないとするならば、日中貿易協定に基いたこれは、全然対象にはならない、こういうように解釈してよろしいわけですか。
  146. 下田武三

    下田政府委員 仰せ通りでございます。
  147. 岡田春夫

    ○岡田委員 高碕さんはお急ぎのようですから、もう少し急いで、質問を二つ、三つ並べましょう。一つは、この余剰農産物の協定によって輸入さるべき品目、これはどういう品目が輸入されるのか。それから第二は、この品目について、いわゆる日本側からの選定の自由が与えられているか。第三は、この価格については、これはどういうようなきめ方が行われるのか、こういう点についてお伺いいたしたいと思います。
  148. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。先ほど申しました通り、ただいま資料を持っておりませんから、何々ということは、今ここではっきり申し上げかねますが、それは全体において、日本の農業政策そのほかに差しつかえないという数量と品目がきめられたのであります。ですから、私は今その内容はここではっきり申し上げかねますが、そういうふうな前提でこの数量と内容はきめられたのでございます。
  149. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 岡田春夫君に申し上げますが、大体いかがでございますか。
  150. 岡田春夫

    ○岡田委員 もう一つだけお伺いしたいと思います。先ほどからお話のあったように、従来の通常の取引の分を入れない限りにおいて、この分は認められないということになって参りますと、現状においては、従来の通常取引によって輸入されている分、たとえば米なんかにしても、アメリカの一九五五年の年度においては、全部通常取引分が完了しているというような段階になっておりません。そうするとそのあとに出てくる、余剰農産物によって生ずる積立円が日本に入ってくるのは、当然ずっとあとになってくる。そうするとこれは三十年度の財政投融資計画の中にこの積立円を二百十四億円見込んでおるわけです。実際に予算の上には見込んでおるけれども、これは日本の会計年度として今年度において実行できるのかどうか、こういう点は非常に疑問視されるわけでありますが、こういう見通しのないような協定をお結びになっておるのかどうか、こういう点を伺っておきたい。
  151. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 先ほどの御質問の価格の問題を忘れましたが、それはコマーシャル・ベースで買い取りまして、それをこの協定の中に割り込むというふうなことになっておりますから、さよう御承知を願いたいと思います。従いまして大体私どもの予算に組んでおりますものは実行できるものと考えております。
  152. 岡田春夫

    ○岡田委員 実際の問題として、通常取引の分が今年度としてはまだ見通しもつかない。それが完全に解決しない限りにおいては、この余剰農産物の実際の品物が日本に入ってこない。そうするとこれによって出てくる積立円というものは、これは実際に現金化しないわけです。そうすると現金化するという前提のもととに三十年度の財政投融資計画をお立てになっておるけれども、この点は実際には実行不可能になってくるわけです。こういう点を考えてみても、この余剰農産物の協定を今結んでみても、実際にあなた方のお考えのように、日本のあるいは電源開発とか、農地開発とかこういう面に使うといっても、使えないということになってくるのではないか。そういうことであるならば、この協定をあなた方のお考え方によってお結びになっても、これは意味のないことになってしまうのではないか。特にこれは吉田内閣のときに作られた協定であるので、何かの新聞によると、高碕さんはこういう協定を結ぶとかえって東南アジアとも競合してしまって、都合の悪いことになるから、これはもうどっちかというとやめてしまった方がよいのではないかという意見も吐いておられるやに私は聞いたのでありますが、これはこういう点から見て、鳩山内閣としてはこの際思い切って余剰農産物のこの協定は交渉をもうやめてしまった方がよいのではないかと私は考えるのですが、こういう点について一つ。たしか日本経済か何かに書いておられたように私は記憶しておりますが、こういう点に関連して、最後に一言だけ御答弁を願っておきます。まだだいぶあるのですが、それはまたあとで質問いたしたいと思います。
  153. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。いろいろ新聞や何かには誤報があるようでありますけれども、私はこの協定は結んだ方がよかったと思いますいまさらやめるという考えはありません。できるだけ早く結んでで、きるだけ予算に合致するように努力いたしたいと思います。
  154. 岡田春夫

    ○岡田委員 財政計画の問題はどうなりますか。
  155. 下田武三

    下田政府委員 通常輸入量の上積みで買うということは、時期的に通常輸入が全部終ってしまってからアメリカの農産物を買うということではございません。これは通常輸入量というものは見通しできまっておりますから、時期的にはアメリカの買付を先にやる。時期的には買付を先に了するということに相なっておりますから、御指摘の予算の使用の障害というものは全然起らない問題であります。
  156. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると、これは今のお話しを聞いておると、私はまた思い出してくるのですが、たしかMSAの五千万ドルのギフトの分だったと思いますが、国会承認を得ないうちに仮実施をしてしまったような実例があるわけです。今あなたの御答弁を聞いておると、政府としてはこれは仮実施をしようという魂胆で、今お話しのような答弁をしておられるのではないかと疑りたくなってくるのでありますが、そういうお考えなのではございませんか。
  157. 下田武三

    下田政府委員 そういう考えはございません。昨年度はその買付自体を米会計年度、六月三十日までにコミットしなければならぬという事情がありましたが、本年度は交渉の関係上九月一ぱいまで、その時期が延びているわけでありますから、本年度は時期的に余裕があります。
  158. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると九月一ぱいまで延期することができるようになっているということでありますが、そうなると通常取引の分についても九月までには大体完了の見通しがついておらなければ——これは相手国アメリカ側としては当然その点が基礎になってくるわけですから、その点の見通しがつかない限りにおいては、九月になったから買付を許すということになってこないのではないかと思うのですが、この点はいかがですか。
  159. 下田武三

    下田政府委員 先ほど申し上げましたように、通常輸入の完了を待って、しかる後アメリカからの農産物を買うのではございませんで、これは毎年の食糧輸入計画というのがございまして、通常輸入をどう見てやるということがきまっておりますから、その買付の時期と全然並行しましてアメリカの余剰農産物を買い、しかる後に通常輸入をやるということで、食糧年度が終りました暁においては、通常輸入も計画通りアメリカの余剰買付も計画通りという結果が年度の終りに出ればいいわけでありますから、御指摘の御心配はないと思います。
  160. 岡田春夫

    ○岡田委員 それから千五百万ドルのギフトの分ですが、このギフトについては贈与分の選定権といいますか、どういうものをもらいたいという希望を申し入れる権限があるか、あるいはそのギフトの条件はどういうようになっているか、この点も伺っておきたい。
  161. 下田武三

    下田政府委員 経済局長がおりませんので詳しいことは存じませんが、贈与分の方も、日本側が一方的にどれとどれとがほしいといってきめるわけでございませんし、またアメリカ側からどれとどれとをやるといって押しつけるわけでもございません。協議の上で両方の都合のいいものをもらうことになっております。これは学童の給食用のパンにいたします小麦でありますとか、あるいは学童の制服にいたしますコットン、綿をもらって日本で加工して織物にし制服を作る、それが二大品目だと承知をいたしております。
  162. 岡田春夫

    ○岡田委員 もう少し堀り下げていきたいのですが、時間も相当たっておりますからこの程度にしますけれども、この余剰農産物を輸送するについて、当然アメリカの船に五〇%は載せなければならないという協定がこの中に入っていると思うのですが、これは運賃その他について非常に高くなってくる点はあなたも御存じの通りです。そういう点からこの五〇%の条件というものをやめさせるような何らかの交渉を行われているかどうか。これは実は去年の十一月にたしかノルウエーで、石炭の輸入について五〇%アメリカの船を使うということに関連して、ノルウエーがアメリカの石炭を拒否している実例もあるわけです。こういう点からいって当然日本の側としても、こういう余剰農産物については、アメリカのあり余って困っている小麦などを受け入れなければならないような義務を、今日本のあなた方の政府によって負わされつつあるわけですから、こういう点の交渉をしておられるかどうか、こういう点についても伺っておきたい。
  163. 下田武三

    下田政府委員 その点は昨年と同様本年も話しをいたしております。しかしこれは現なまを積まないで、ほしい食糧が買えるのでありますから、船腹の半分は先方に譲るということはやむを得ないことで、日本だけでなく各国ともこれと同種の協定において認めているところでありまして、仕方がないと思います。
  164. 岡田春夫

    ○岡田委員 この余剰農産物の問題はまた別の機会に、もう少し掘り下げたいと思いますが、特に重光さんに要望しておきたいのは、これは重光さんもよくおわかりの通りに、アメリカは小麦や綿花があり余って困っている、どこかに売りたくてしょうがない、押しつけ輸出をしたい、だからただいま答弁のあったように、通常輸入にプラス・アルフアをつけて日本の国内に押しつけ輸入をしておるわけです。そのために日本の農業はどんどん破壊されるという危険性が出てきているわけです。ですからこういうような余剰農産物の協定を結ぶ必要はわれわれは毛頭ないと思う。そういうことを考えるよりも、日本の農業の発展のことを考えた方が、日本政府としては正しい行き方であるとわれわれは考えております。この協定の内容その他に触れてもっと詳細に、こういう点を私申し上げたかったわけなのでありますけれども、これは別の機会にいたしますが、ともかくこういうような日本にとって非常に不都合な点が各所に現われておりますので、ドル条項の問題だけにからまって——もちろんドル条項の問題も日本としては重要な問題でありますが、この問題だけが解決すればすべてが解決したのだというような安易な態度一つやめていただいて、日本の産業の発展のために十分考えていただく必要があると私は考えております。この点はデンマークの場合においても、デンマークの国内の農産物を破壊するというので拒否しているという実例もありますし、日本政府も、自主独立ということをこの間外務大臣が外交方針の演説で言っておられるだけに、一つ自主独立の方針をもっともっと強く堅持されて、こういうような日本にとっては自主性を失うような協定というものは、ぜひとも破棄する方向に進んでいただきたいということを希望いたしまして、あとの点についてはまた別の機会質問いたしたいと思います。
  165. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 松本七郎君。
  166. 松本七郎

    ○松本(七)委員 先ほどから濃縮ウラニウムの問題でだいぶけっこうずくめのお話があったのですが、なお二、三点この問題でお伺いしておきたいと思います。このウラニゥム受け入れでは、今一般に心配されておるようなアメリカからどういう条件がつくか、この点をまず慎重に検討していただかなければならないわけだし、また政府もこの点は十分検討するとは言われておるわけですが、何か私どもの新聞紙その他を通じた印象では、大体アメリカの本年度予算が、七月から新しい予算になるわけですが、予算関係から六月一ぱいまでに返事をしなければ来年に持ち越される、そういうところから受け入れをまず大体方針としてきめて、そうして六月一ぱいになるべく早く受け入れの返事をしたい、しかしいろいろな条件についても検討してみようというような行き方のように感じるわけであります。何かその点本年六月一ぱいに早く返事をしようというような急いだ気持がおありになるのじゃないかという感じを受けるのですが、この点いかがですか。
  167. 重光葵

    重光国務大臣 決してそういう予算関係だけではございません。これは全体の問題について十分に検討してやりたいという考えを持っております。
  168. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それからその次は、いつも問題になるが、軍事に使われるという問題、これはアメリカの方でもこういうものについては軍事に使わせないという条件がついてくるのですから、表面は心配がない。しかし私どもが考えなければならないことは、今日の新聞にも原子外交という言葉が出ておりますが、原子力というものは、今後は軍事的に使われるばかりでなくして、平和的にも使われ、かつ産業の動力として大きな力を持ってくるわけでありますから、昔においても一国の外交を進めていくためには背後には軍事力があり、その背後にはまた大きな産業力というものがあって国の力になり、外交の力になっておったわけです。ですから当然今後原子力というものは、その国の外交の背後の力として大きな比重を持つことは当然のことなんです。それが当然であるからこそ直接軍事力に使われなくとも——外交の基本となるところの外交の方針は、いわゆる力外交ということが今いわれておるわけなのですが、この間鳩山総理大臣も今日の世界の平和は結局力による平和だ、こういうことを言われておったようです。またチャーチルさんなんかも、しきりに力による平和政策というものを強調しておるわけなんで、私どもは現内閣もこの力による平和政策、力外交というものを支持しておるものと理解しておるわけですが、実はここに今後の一番大きな問題があるのではないかと思います。特に原子力というものが国の力のすべての中心になろうとする場合に、この力外交というものが果して破綻なくやつていけるものかどうか。私はこの点について十分再検討する必要を感ずるのでございますが、今の内閣は依然としてこの力による平和、力政策というものを支持される御方針かどうかを承わつておきたいのでございます。
  169. 重光葵

    重光国務大臣 国際関係の根本の問題を提起されたわけでございますが、私どもが力の外交、力による平和が今世界の情勢であると、こういうことを申し上げましたのは、私どもの世界情勢を客観的に観察した観測でございます。しかしこれはおそらく世界情勢に知識を持っておられる人は否定することはできぬと思います。しかしそれだからといって、日本自身がいわゆる力による政策をやるんだということを申し上げたつもりはございません。日本としては、あくまで平和を維持するために平和外交をやろう、こういうことは多くの機会において強調して参ったのでございます。しかし外交の背後において国の力がなければならぬということはいなむことはできません。その力というのは単に武力でもって行こうというような意味の力とは私は思いません。国の力は、今お話の通りに、これは武力もございましょう。自衛力というものはなければならぬと私は思っております。しかしそれのみにたよるとか、それにたより過ぎてやるとかということは、これは平和外交ではございません。しかし平和外交といえども一国の外交である以上は国の力、これは無形の力もございましょう。また有形の力もございましょう。経済上の力もありましょう。生産力もありましょう。また国の伝統もありましょう。しっかりした民族精神ということもございましょう。さような力が背景になっておると申してもさしつかえないように思います。しかし私どもが、今力による平和が世界に保たれておる、こう申し上げるのは世界情勢を判断して両陣営の力が今均衡を保たれておるということに平和の根拠がある、こう見ておるわけでございますが、しかし国家の政策としては、私どもは力をもってすべて政策を遂行しようというふうな考え方は毛頭ないのでございまして、あくまで平和手段によって日本の利益を進めていきたい、政策を運用したい、こういう考えであることを申し上げて御説明にかえる次第でございます。
  170. 松本七郎

    ○松本(七)委員 外務大臣は、現在の平和は力によって保たれておる、しかし日本自体は、その力外交をやるものじゃないのだ、こう言われるのですが、日本自身はそういう力外交をやらずにほんとうの平和外交をやりたいと考えておつても、たとえば今の内閣がたびたび明らかにしておるように、対米協調ということは根本原則だ、こういう前提がございますと、御承知のようにアメリカとしてはやはり力外交、力による平和というものを一貫した方針として推し進めるわけなんです。ですから日本自身は必ずしもそれと同じようなやり方をしないということであっても、アメリカとの協調を根本原則とする以上は、この政策と同調せざるを得なくなるのではないか、私はこれを心配するわけなんです。一方今の内閣は自主外交ということを言われる。従って具体的にどういうふうな点で自主性を発揮するかということが、一番これからの問題になるだろうと思うのでございますが、そのアメリカが——もちろん外相の指摘されるように、文化的な問題、精神的な問題、あらゆるものが総合されて外交というものは推し進められるのですから、一つだけを取り上げるわけにはいきませんけれども何といっても武力、その中心になったところの原水爆の力が中心になってアメリカの外交が推し進められておるということは認められるのでございましょうか。
  171. 重光葵

    重光国務大臣 私はアメリカとの協力が、すなわち力による日本の外交となるとは信じません。今アメリカがすべて力の外交をやっているのじゃないというお話もございましたが、私もそう思います。日本としてはあくまで日本の自主的の立場によって平和外交を進めていこう、こういうことにならなければならぬと思っておるのであります。
  172. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それは希望であって、実際は私はアメリカにおいてはやはり原水爆の力というものが中心になって進められておると思うのです。さっき外相のおっしゃったように、世界の平和は力の均衡の上に立っておる、こう言われますけれども、きょうの新聞でもアメリカの国防省から発表したものによれば、原水爆の関係ではソビエトも非常に軍事的な力が増大しておるというようなことを言っておるし、それからソビエトの最高会議においても、二月にはモロトフ外相が原水爆が非常にソビエトでも進歩しておるので、おくれておるのはソビエトではなくてむしろアメリカだ、こういうことを言っておるのです。こうなればソビエトも進んでくる、そうすれば力の均衡を保つためにはどうしても原水爆の競争は激しくならざるを得なくなると思う。そういうことで今後いつまでも平和が維持できるとお考えでございましょうか、この点を聞いておるわけであります。
  173. 重光葵

    重光国務大臣 今両陣営の間において力の一つの大きな中心が原水爆の力であるということは、これは否定することはできません。そこで今の国際関係において原子力の競争ということも行われておる状況でありまして、非常に国際関係が緊張しておるということも、そこに大きな原因があるわけでございます。その緊張はあくまで除くように、緩和するようにいたさなければならぬと思うのであります。その緩和することが日本の立場として、日本の政策としてできますならば、またできます範囲であろうと思いますが、それは全力を尽してやるべきことであろうと思う。それがわれわれの言う平和外交の少くとも一部である、こう申し上げ得ると思うのであります。
  174. 松本七郎

    ○松本(七)委員 ただいまお話がありましたように、緊張緩和をする努力、そこに私は日本自主性を発揮する残された道があると思う。で、その点を少しお伺いしたいのですが、今濃縮ウラニウム受け入れその他で原子力の平和的利用ということが非常に叫ばれておる。これは先ほどから申しますように、いろいろなアメリカの条件も考えてみなければならぬ。それから日本ばかりでなしに、フィリピンその他との間で行われておる——さっき高碕長官もちょっと指摘されたように、アメリカはそういう協定を結ぶことによってウラニウム資源を独占しようという傾向も多少出てきておる。そういう点も検討しなければなりませんし、それから濃縮ウラニウムは現にアメリカでは生産過剰になっておる、この処置に困っておるというような傾向も出つつある、あらゆる条件を全部検討しなければならぬと思います。けれども根本的には、これを平和的に人類の福祉のために使うということは、日本としても人後に落ちてはならぬと思う。けれどもこの平和的利用といういい面ばかりに目がくらんで、それが破壊的に利用されるということを放置しておったのでは、これは何もならぬと思う。これは差引プラス・マイナス・ゼロになるばかりでなく、かえってマイナスの方が大きくなるから、何とかして破壊の面に使われることを防止する方法も積極的に講じて、これを平和的に利用する面に積極的な努力をして初めてわれわれ日本国民は安心できると思う。特に原爆の最初の被害国である日本の国民としては、ただ平和的に利用したい、けれども一方破壊的に利用されるのでは心配があるわけであります。ですから今日こういう重大なときになって、政府としては濃縮ウラニウム受け入れるについては、条件についてもいろいろな検討をする、と同時に受け入れ方針をきめる場合も、並行して原子兵器の禁止、国際管理その他のことについても積極的な研究もし、調査もし、立案もする必要があるのではないかと思う。そういう点をもう少し具体的に政府が努力をして、方向をきめていただく段階じゃなかろうかと私は思うわけでございます。たとえば私どもが思いついた案から申しますと、そういう平和的な利用のきっかけとして濃縮ウラニウム受け入れるという問題を政府が研究されるために、原子力平和利用準備委員会というものができるわけでございますが、第一この委員会の構成はできるだけいろいろな意見を持った人を広くこれに吸収して、そして客観的な正しい結論を出すように努力していただきたいということを要望として申し上げたいのですが、どういうような御構想か、それを一つ承わりたい。  それから私はそういう平和的利用のための調査機関を作ると同時に、だいぶ前から国連でも問題になっており、やがて日本も国連に加入するときは、原爆の被害国として大きな発言力を将来こういう点について特に持つべきだと思うのでありますが、原子力の国際管理について日本は今までのソ連の案、米国の案その他の折衷案を研究し、今後どういう案で臨むべきかというような点についても当然積極的な案を日本は持つべきだと思う。従って原子兵器の全面的禁止はどうするのか、あるいは原子力の全般的な国際管理はどうするのかということをいろいろ研究するための国際管理調査研究機関というようなものを政府は率先して作るべきだと思うのですが、こういう点についてお考えはございますでしょうか。
  175. 重光葵

    重光国務大臣 今お話の御趣旨は、われわれといえども少しも異存のないところでございます。私どももさような御趣旨で、同感の考え方でもって進んでおるわけでございます。     〔須磨委員長代理退席、委員長着席〕 でありますから、国際連合の原子力の平和利用ということについてはこの方面にあくまで協力をしなければならぬ、また原子力を破壊のために使う、戦争のために使うということは禁止しなければならぬという考え方を持って、いろいろな機会にその意向を表示しておるわけでございます。従いまして将来国際連合に入る場合には、さような方針をもって進み、これをどう具体化するかということについても十分考慮しなければならぬと思っております。そして必要な組織と申しますか、機関をこしらえて少しも差しつかえないことだと思っております。今日さしあたっての問題は、原子力が平和的に使われる、戦争のために使われる、ともに可能性があることは、これはもう事実でありますから、それを悪用されぬようにするということは、これはあらゆる努力をしなければならぬと思っております。それと同時に、人類の進歩、科学の進歩ということについては、日本としてはあくまで貢献をしていかなければおくれてしまうということも、これは注意すべきことだと考えております。
  176. 松本七郎

    ○松本(七)委員 時間が大へんおそくなりましたので、もう問題を少し切り上げたいと思うのですが、この前の委員会のときに、私ども今なお話を進めておりまする日本とソビエトとの国会議員の交換の問題について、鳩山総理大臣は、研究してなるべく早い機会に御返事しようということだったのですが、これはその後私どももいろいろ研究を進めておるのですが、日ソ間の正式のロンドンにおける交渉も始まろうとする場合に、やはり両国間の友好的な気分というものを増大しておくということが、この交渉を円満に成功裡に進めるのに非常にいいことだと思う。そういう意味で国会議員団の交換というものも非常に望ましいことだと考えるのでありますが、外務大臣これは賛成でございますか。
  177. 重光葵

    重光国務大臣 私はその問題も考えてみました。国会日本では最高の地位を持っておる機関でございます。主権の地位を持っておる。国家の主権の地位を持っておるところの相互の間において国交の開始せられぬ前に交換をするということは、これはよほど考えなければならぬ。私はかような問題は、日ソ交渉の結果を待って、もしくはその経過を待って初めて考えられる問題だと考えております。
  178. 松本七郎

    ○松本(七)委員 総理大臣とはそれについての意見交換をされたのでございますか。
  179. 重光葵

    重光国務大臣 さようでございます。
  180. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると、たとえば日本から行くことだけは差しつかえないが、向うから来ることが都合が悪いと言われる意味か、それとも行くこと自体も、国会の代表が行くことはまずいと言われるのでありますか。
  181. 重光葵

    重光国務大臣 これは国会の代表として行く問題になるというと話がむずかしくなりますが、国会議員が個人として行くということになれば、またこれは別の考え方になるものと思います。
  182. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると、たとえば国会の中には日中貿易促進議員連盟というような団体がございます。その団体が中心になって代表が国会代表の形で中国へ行く、それから中国から貿易使節団が来るというようなことも、政府考え方からすればまずいということになるわけですか。
  183. 重光葵

    重光国務大臣 それはそのときにどういうふうにしてやるか、どういう意味でやるかということをよく考慮して私はこれを決定してしかるべき問題だと考えております。
  184. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それですから、日ソが交渉を始めようという場合には、やはり国民と国民の間の気分が友好的になるということが非常に望ましい。そういう場合に国民の代表である国会議員が交流交換するということは非常にいいのではないか。私どもはそういういい面を非常に強く考えてこの問題を持ち出しておるわけなんで、その点をもう少し政府としても考える余地はないのでございましょうか。
  185. 重光葵

    重光国務大臣 私は先ほどのお話は、国会国会とが代表者を互いに交換してやろうというお話に伺つたのでありまして、しかしそういうことでない場合においては、これは今申し上げる通りに、その方法及び時期等についてとくと検討した上で、今の日ソ交渉の上にむしろいい影響があるかどうかということを検討していい問題だ、こう考えております。
  186. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それは国会でももちろん独自の立場でそういう点は研究しておるわけなのですが、政府としてもそういう交渉の時期その他とにらみ合せてなお研究していただいて、どういう点がどうなのか、具体的に明らかにしていただくことができますでしょうか。
  187. 重光葵

    重光国務大臣 その場合によっては政府考えます。また国会としては、これは国家の最高の権威者でありますから、日本の国としてどうすべきであるかということも十分御審議の上で決定されることと私は信じます。
  188. 松本七郎

    ○松本(七)委員 また少し申し上げておきたいのですが時間がありませんから、それに関連して一つだけ政府考え方をはっきりしておいていただきたいのは、この前から予算委員会で、これはしばしばなのですが、鳩山総理大臣は二つの中国ということをよく言われるのです。あたかも中国に二つの国があるように、法律的に国が二つあるがごとき答弁をされているのです。おそらくこれは通俗的な意味で二つの中国総理は言われるのだろうと思うのですが、法的にいえばこれは明らかに二つの政権ということでなけばならぬと思うのですが、この点間違いないかどうか。はっきりした法的な表現の仕方を伺いたい。
  189. 重光葵

    重光国務大臣 鳩山総理が二つの中国と言われたことを私も伺ったように記憶しております。そしてそのことについては、実は私からこれを解釈して申し上げるのは、あるいは少し間違っておるといけませんから申し上げにくいのでございますが、私が総理からそのことについて確かめたところは今お話の通りに、鳩山総理は法理的なことを言っておるのではないが、おれはとにかく二つあるから二つあると言うのに間違っておるか、こういうことを言われるのでございますが、それはその通りでございます。それはそこに、中国の本土にああいう政権が事実あるということ、それからまた台湾においてもちゃんとしたものがある。これは日本承認しておるのであります。そういうことで二つあるから二つじゃないか、こういうふうなごく通俗的なことを言われたわけでありまして、むろん法律的の意味でないことを私は確かめておるのであります。おそらく総理が直接説明を申されてもそういうことじゃないかと思います。
  190. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それで二つの政権ということは、これは間違いないことになったわけですが、外務大臣もその点はすでに三月三十一日のこの外務委員会の席上だったと思うのでありますが、中国の政権の問題に関して、中共政権は中国の内乱によって成立したものである、従って中共、台湾両政権の関係は、内乱の継続である、こういうふうな御答弁をされておるわけです。そうなると今米国がしきりにやっておる台湾の防衛の問題ということ、これは結局内政干渉という解釈が成り立つわけだと思うのですが、政府はどういうふうな解釈をされておりますか。
  191. 重光葵

    重光国務大臣 それは内政干渉ということは御承知通りに中共が言うことでございます。あなたが御承知通りであります。しかしそれは、私は中共がそういのはそれはもっともだと思う。もっともだと思うというのは、中共の立場としてそう言う。しかしこれが第三者から見て内政干渉であるかという判断はまたおのずから別問題だと私は思います。御承知通りのような発展で台湾の国民政府ができた。これはアメリカ承認した、日本承認した。国際連合もこれを承認しておる。中共は朝鮮の戦争で侵略者として取り扱われておる。まだその何は今日まで残っておる。ここで非常に問題が重大になって、そして台湾の防衛ということは、あたかもアメリカの防衛であるというごとき情勢を今展開しておるということは、これは事実でございます。さような国際情勢の変化によってできたものであって、これをすぐ国際関係の研究者が内政干渉と判断するかどうかということは、私は別問題だと思います。日本としては国民政府承認しておるのでありますから、アメリカがその承認しておる国民政府条約をもって共同防衛の任務をもってこれを援助しておる、また韓国に対してもそれをやっておる、それだから、これはアメリカ中国における内政干渉だと断ずることはでき得ない、こう思っております。
  192. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それについてもまだ問題がございますけれども、また別な機会にいたしまして、最後に、この前成立したオーストリア国家条約の第十六条に、オーストリアはドイツ及び日本で設計された航空機を購入あるいは製造しないというような条項があるのです。これはどうして日本とドイツの設計をわざわざここで入れることを禁止するのか、どういう趣旨か、おわかりでしたら御説明を願います。
  193. 重光葵

    重光国務大臣 はなはだ私は不案内ですが、そういうことは新聞でごらんになりましたか。
  194. 松本七郎

    ○松本(七)委員 はあ。
  195. 下田武三

    下田政府委員 まだオーストリア国家条約の全文を入手いたしておりませんので、私どもも新聞で見ておりますが、確かに御指摘の規定が入っております。これは日本人から見ましたら考えられもしないことでありますが、いまだに旧枢軸国家というものは、将来万一また再び提携するようなことがありはしないか。そうすると、ドイツまたは日本で設計した飛行機が購入されあるいは製作されるということになりますと、枢軸国家間の航空機というものの代替性を可能ならしめるということになりますと、やはり連合国側の脅威になるという、第二次大戦末期の枢軸恐怖心理と申しますか、それの残滓がいまだに現われておるのではないかと思われるのであります。私どもから見ましたらまことに意外千万な規定でございますが、国際の現実はまだそういう残滓が残っているということを物語っているものと思われます。
  196. 松本七郎

    ○松本(七)委員 今条約局長が心配されておるようなことからこれが挿入されたとすれば、これは日本として非常に大きな問題で、こういう条項を入れられたこと自体も問題ですし、またそういう趣旨で入れられたとすれば、これは日本としてよほど考えなければならぬ問題だと思う。従いまして十分政府としても情報を収集されて、詳しい御報告をこの委員会でしていただきたいことを要望して、本日はこれで私は終ります。
  197. 植原悦二郎

  198. 菊池義郎

    菊池委員 与党の議員はなるべく質問をお控えしたいと思いましたが、なかなか閣僚の方々にお目にかかって懇談する機会がございませんので、最小限度にとどめて御質問申し上げたいと思います。  私が国会図書館に質問して調べてもらったところによりますと、ソ連は原子力を利用してオビ、エニセイ河をさかさまに流して、そうしてゴビの砂漠に濁流を流してこれを緑地帯に切りかえ、そうして莫大な農産物を上げようという計画までしている。それで世界の学者が異口同音に言っているところによりますと、この原子力が産業に十分に活用されることになると、今日の工場労働者の大半、六割、七割、八割も失業せんければならぬというようなことになるであろうということをいわれているのです。ウラニウムの取り入れについて、日本政府でもってそういう点についても、失業者をもたらす場合についてどういう構想を持っておられますか。閣僚の方々もみなそれぞれ専門の知識を持っておられる方が多くおられましょうが、そういう点について将来の構想をお伺いしたいと思います。
  199. 重光葵

    重光国務大臣 原子力時代に入りましてから非常に大きな人類文明の革命であるということは、私はよく承知をいたしているつもりでございますが、ソ連のエニセイをさかさまに流してゴビ砂漠を農地にする、そういうようなことはまだ的確には存じておりません。そしてまた原子力の問題が労働問題にむろん重大な影響もありましょう。しかしまだこれに対する対策を研究いたしておりませんことを遺憾といたします。
  200. 菊池義郎

    菊池委員 原爆、水爆が出現した今日において、これを戦争に使うということは人類の破滅であるということを、自由主義国家の指導者も、あるいは共産国家の指導者もみな知っていることでありますかがら、ブルガーニンといえども、あるいはマレンコフといえども、あるいは毛沢東といえども、彼らの頭が狂わない限りは、彼らが戦争などに手を出すようなことは絶対にあり得ない。従って戦争というものは絶対にあり得ないとわれわれは考えておるのですが、そういう点についてどういうお考えを持っておられますか。
  201. 重光葵

    重光国務大臣 非常にむずかしい問題であります。原子爆弾の威力をおそれて人類はもう戦争はやらぬのだ、絶対平和主義になったのだというふうに観察する人もあるようでありますが、今日の世界情勢は、御承知通り米国でも、それから英国でも——英国の原子力研究は進んでいるのでございますが、それによって戦争を防止することはできないという観点に立ってすべて政策を運用していることは事実でございます。あるいは御承知通り、ウインストン・チャーチルが退職する前に、三月の初めだったと思っていますが、イギリスの議会で最後の大演説をして、原子力のおそるべきことを述べて、そうしてまだアメリカを中心とする原子力は共産側よりも数年間先に行っている。進歩している。それがある間はまだ戦争は起らないだろうと思う。しかしどう頭が狂って戦争になるか、それはわからないことであって、そうしてまたその数年間の優先というものが消える時期が来る。来た場合には果してどういうふうになるかということは、ほとんど予想がつかないのであります。こう言って心配をいたしております。これが現状でございます。だから国際間において頭の狂った歴史も相当あるようでございますから、これは油断がならぬ、こういう考え方をもって平和の努力をする必要がある、こう私は考えております。
  202. 菊池義郎

    菊池委員 それから外務省の移民局の将来の仕事に関する構想についてお伺いしたいと思うのですが、これまで外務省が移民に対して冷淡であったということは有名なことでございますが、外務省に移民局が設けられますと、かれこれ五億、六億の金が要るのでございます。それで今後移民を送る対象となる国々は南米諸国に限るのですか。ほかにまだどこか考えておられるのですか。
  203. 重光葵

    重光国務大臣 中南米です。
  204. 菊池義郎

    菊池委員 それからどのくらいの移民をこれから一年間に送り得るか、そういう点について。
  205. 重光葵

    重光国務大臣 これは本会議においても予算委員会においても私は説明をいたしましたが、次年度といいますか、三十年度予算は六千名足らずです。そうして国々の割り振りも大体予定いたしております。これが輸送関係等にかんがみて今日の限度でございまして、輸送船などがどんどんでき、またでかしたいのでございますが、そうすればまたよけいに送ることができます。なるべく早くやらなければならぬのでございます。しかし何分にも予算関係——外務省予算の制約を特に受ける省でありまして、非常に予算が取りにくいのであります。これまで移民の問題について不熱心であったということでございますが、実は不熱心ではないのです。どうしてもそれに要する経費の問題でありますから、一つ外務委員会においても政府を御鞭撻になって、外務省予算も少し取れるように御援助をいただきたいと考えております。
  206. 菊池義郎

    菊池委員 最近民間人が個人としてずいぶんたくさん向うに移民を引っぱっていく、それから個人として中南米諸国に土地を持っている人がかなりあるように記憶していますが、私の知っている前閣僚のごときも四国くらいの土地を獲得しておるのです。所有権も持っている。ですから日本政府といたしましても外務省といたしましても、そういうことに興味を持った日本の財閥に勧めて、どしどし向うに土地を獲得させて、民間人によって移民を募集して向うに出すというようなことも考えてしかるべきだと思うのですが、こういった点についてどういうお考えを持っておられますか。
  207. 重光葵

    重光国務大臣 むろんそれは考えております。考えておりますが、結局は政府の手で移民の世話をしなければならぬことにみんななるのであります。それがために政府の機関をこしらえ、かつまた世話をするいろいろな方法を考えて、そうして民間人と協力してこれの実現をするということに相なっておるわけでございます。
  208. 菊池義郎

    菊池委員 日本人が個人として向うの土地の所有権を獲得することができるわけでありますから、日本の国家としても、もっともっと大きな、日本の何倍かの面積の土地を向うに買い占めて、どしどしそこに送るというような方式をとったらどんなものでしょうか。
  209. 重光葵

    重光国務大臣 国家が移民のために、日本国として外国において土地を買い占めるということは、これは国際間の重大な問題になりますから、これは考えておりません。
  210. 植原悦二郎

    植原委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。     午後一時四十六分散会