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穗積委員 次にお尋ねいたしたいのは、特にあなたは財界のヴエテランであり、経験者でありますから、私は
日本の将来の原子力産業のために重大だと思うのでお尋ねするのでございます。それは何かと言いますと、学者の一部の諸君が単に研究の自由であるとか、あるいは公開性を主張するとか、あるいはそれに参加する者に区別をつけて非民主的な扱いをしないようにという要求をしておられます。同時にここに重要な学術
会議の提案があるわけですが、それは、
日本の原子力研究並びに原子力産業建設に対しての自主的計画を持つことが先である、こういう主張なんです。これは私は経済的に見ても、あなたが実際家としてすぐれた識見をお持ちになっておられるとすれば、当然このことはあなたのお耳にはピンとくると思うのです。私のささやかな研究によりましても、たとえば一例を申し上げれば、自動車工業にいたしましても、船舶工業にいたしましても、今までの
日本の
政府ないしは財界の方々の
態度というものは、
日本で独自の研究を進めることに努力をしないで——努力を全然しないということではありませんが第二として、そしてお金の使い方、技術者の使い方は、何かといえば欧米においてできました技術、パテントをすぐ安易に買ってきて、それを翻訳させるのが
日本の技術者に対する要求であった。そのために
日本の造船界にいたしましても、その他精密工業にいたしましても、技術が非常に立ちおくれておる。これは
日本独自の研究がなかったということである。大学の研究機関または国立の理研等がかすかにございましたが、これも
予算が少い。そして三井、三菱その他の大財閥の産業機構の中におきましても、独自の研究機関、オリジナリティを持った研究機関には資本を投下しないで、外国でできたパテントをすぐ買ってきて、部内における学者または技術者の協力は、それをいかに翻訳するかということ、そうして明日すぐ経済的利益をとることができるという目先に走ったために実は
日本の技術の立ちおくれた点があります。こういう点はあなたはもとより賢明にも見破っておられると思う。そこで私は、単に学者の研究の自由というような問題にとどまらずして、
日本の産業の独立は、急がば回れで、かえってその方が早いと思うのです。富士山に登るのに、六合目から登って、手っ取り早く上まで行ってしまったらどうだといっても、それでは登れない。こういうような研究は、原鉱石からウラニウム金属を取り出す技術並びに生産設備がなければならない。そうしてだんだんと
濃縮ウラニウムに至る研究と生産設備が必要だと思うのです。それが実は
日本では遺憾ながらまだできていないのです。そういう状態におきますと、ここでもう一ぺん明治初年の
日本の資本主義産業発展の過程におきまして犯しましたあやまちを繰り返すことになる。しかもそのことによって、先ほど私は憂えて
重光外務大臣にお尋ねしたのですが、原子力問題はまさに国際的にこれから公開されようとしております。もう一ぺん繰り返しますが、あなたも当然認識されていると思うが、一九四六年に作りました
アメリカの原子力法によりますと、秘密にしておった。それはなぜかといえば、
アメリカだけがこの技術を独占しておるという自負を持っておったからである。ところがその後ソ連もイギリスもやり、特にこれらの二国の方が
アメリカより進んできているという事実を見て、そこでアイソトープのごときはどんどん自由販売で売り出す。そういう段階になったから、昨年原子力法を改訂して、国際協力という
態度を示してきた。しかしこれも不徹底であって、悪く
解釈すれば、そういうふうに世界的なプールになり、公開され、そして国際管理になり、だれも秘密がないという段階になる前に、機を選んで、そこで
日本のウラニウム産業、原子力産業というものを
アメリカのイニシアチブにおいてつかみ、技術でも
アメリカの下請的な性格を持たしたいという意図が——当事者にはないかもしらぬが、今私が
日本の産業発展の過程における客観的事実として申し上げたように、客観的事実として現われてくると思う。そういうことでございますから、従って私がここでそういう観点に立ってあなたに明らかにしていただきたいと希望をいたしますことの第一の点は、この問題は一年を争って先を失うことなしに、やがて国際的管理になることをわれわれは
情勢判断として見通すことができる。そうしてほんとうに公開、自由の原則に従ってやるという意思がおありになるかどうか。これはもう一ぺんお
考え直しをいただくことができないかどうか。
それから第二の点としては、今申しましたように、外国との
関係であります。
アメリカと
協定を結んだらソ連または英国とは
協定を結ぶことができないというような条項がもしありとすれば、これを拒否すべきであると思うが、
大臣のお
考えはどうか。それから第三点にお尋ねいたしたいのは、もしその国が進んでおりますれば、せっかくの好意でありますから、軍事的に利用しないということをはっきりいたしまして、そうして
濃縮ウラニウム以前の技術公開もこの際要求する。今度の
協定でそれができないならば、次の時期にはできるような、そういう道を開いたような
協定に当然すべきだと私は思うのですが、そのことについてどうお
考えになっておられるか、これが第三点。
第四点は、今申しましたような観点に立ってこの一切の条件による
受け入れをする前に、
日本政府といたしましては独自の技術研究並びに生産工程の計画を立てる、これは
日本の技術の独立、経済の独立のために当然必要なことでございます。そうして経済的な識見を持っておられるあなたは、
日本の産業の技術の進歩とそれから独立性を確保するために、パテントを買ってきておっちょこちょいをやるというような式のお
考えを持たないで、この際は原鉱石から
濃縮ウラニウム、発電または医薬あるいは農業生産等に一切利用できるような、ちゃんと筋道の通った計画をされて、そこで
アメリカから自主的な、自由な独立の原則に反しない条件であるならば、
濃縮ウラニウムまたは天然ウラニウムから
受け入れていこう、こういうふうに私は乗せるべきだと思うが、そういうお
考えはないかどうか、その点をお尋ねいたしたいのでございます。
さらに第五点に私がお尋ねしたいのは
条約の期限でございます。これは今申しました
通り、たとい結んだといたしましても、技術的にも、国際管理の点から見ましても、
情勢がどんどん変っておりますから、今度結ばれようとしておるこの
条約によって、
情勢が変化してもそれに縛られて動きのとれないことのないように、これは内容のみならず、期間も一年ないし二年三年というように、ごく短期間でどんどん切りかえていけるような、欲するならば廃棄ができ、欲するならば改訂して継続できるというように
協定の期間を短期間にすべきだと思うが、これについて
大臣の御識見をこの際
一つ伺っておきたいのでございます。