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1955-05-14 第22回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十四日(土曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 須磨彌吉郎君 理事 菊池 義郎君    理事 北澤 直吉君 理事 福永 一臣君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       池田正之輔君    伊東 隆治君       並木 芳雄君    山本 利壽君       犬養  健君    江崎 真澄君       大橋 武夫君    福田 篤泰君       高津 正道君    古屋 貞雄君       細迫 兼光君    森島 守人君       戸叶 里子君    西尾 末廣君       松岡 駒吉君    岡田 春夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         外 務 大 臣 重光  葵君  出席政府委員         内閣官房副長官 松本 瀧藏君         外務政務次官  園田  直君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 五月十四日  委員水田三喜男君及び稻村隆一君辞任につき、  その補欠として大橋武夫君及び古屋貞雄君が議  長の指名で委員に選任された。     ————————————— 五月十三日  日本国とイタリアとの間の文化協定批准につ  いて承認を求めるの件(条約第二号)  日本国メキシコ合衆国との間の文化協定の批  准について承認を求めるの件(条約第三号)  日本国とタイとの間の文化協定批准について  承認を求めるの件(条約第四号) 同日  南樺太返還に伴う海豹島開拓に関する請願  (松前重義紹介)(第五八〇号)  在外未帰還同胞帰還促進に関する請願(坂田  道太紹介)(第六三二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税及び貿易に関する一般協定のある締約国と  日本国との通商関係の規制に関する千九百五十  三年十月二十四日の宣言の有効期間を延長する  ための議定書への署名について承認を求めるの  件(条約第一号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  公報に発表してありまする二件について、また鳩山内閣総理大臣及び政府当局質問を行うことといたします。  通告順によってこれより質疑を許しますが、総理大臣はすわったまま御答弁なさることを御了承願います。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 委員長にちょっとお尋ねしますが、外務大臣はお見えになりますか。
  4. 植原悦二郎

    植原委員長 外務大臣は今呼んであるから来るようになっております。ただ時間を午前中と限ってありますから、なるたけ大勢の方にこの機会に質問をお許しするようにいたしたいと思っております。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣も御同席の方が好都合と思いますが、私はきょうは与えられた時間が少うございますから、鳩山総理日中貿易の問題に対する、あなたのおっしゃった支持協力を与えるという内容について少し具体的に御方針を伺っておきたいと思うのです。  この前の予算委員会での御答弁では、協定個々文章は別といたしまして、協定内容のアウトラインは大体了承した上で、支持協力を与えるという意見であるということもお答えになったようでございますが、大体そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  6. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 促進議員連盟諸君から要望書というものが出ました。それに対して私は協力を惜しまないと申しました。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 要望書もさることでございますが、先月の二十七日に在京のわれわれ議員連盟代表諸君が、各党からそれぞれ総理に直接御面会をいたしまして、協定内容、特に重要になっております決済方式の問題、見本市の問題、または代表部設置等の問題につきまして、よく口頭でもって御説明申し上げ、それをお聞きになった上で、総理は、それらの諸点については当然のことであるからでよかろう、こういうお答えをなすったようにわれわれは正式に報告を受けておるわけですが、単に要望書文章の上のみならず、今申しました口頭による説明も、これは総理としてのお答えとしてわれわれ議員連盟では理解しておるわけですが、それでよろしゅうございましょうね。
  8. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 少し違います。協定内容というものは私は知らなかったのです。説明は受けませんでした。けれども協定内容要望書というものはほぼ同じものなんです。大して違わないのです。ただ今ちょっと覚えておりますことは、設置せられる民間代表部生命、交通の自由等は保障しろ、あるいは通信の自由も持たせてくれというように書いてあるやつが、協定書には外交官として取り扱うように希望する、こういうふうに書いてあるのです。少しは違うのです。だけれども、大体同じですから、協定書についても協力は惜しみません、こう申し上げました。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 大体その御趣旨はわかりましたから、その具体的な内容についても、協定文そのものは見ないにしても、内容そのものは大して違いはない内容と御承知の上で支持協力を与えたのですから、その個々の問題の重要な点についてだけ二、三お尋ねしておきたいと思いますが、第一に問題になりますのは、協定文で申し上げますと第五条になるわけですが、日本銀行中国人民銀行との間に特別の勘定を相互設置いたしまして——その前にむろん支払い協定を結ぶわけですが、それに対して決済をこれからは直接決済でいこう、ロンドンを一々通さないでいこうというお考え方、しかもそうなりますと円建による直接決済が認められるようになりますが、日本としてはその点は非常なメリットとして考えていいと思うのです。それを一体どういうふうにお進めいただくつもりであるか。その後協定文が正式に四日の日に調印されまして、その内容総理はお目通しを願ったと思うのですが、この決済具体化のための両銀行間におきます支払い協定促進の問題について、政府はどういうふうにお考えになっておられるか。特に日本銀行は言うまでもなく国立銀行でございますから、政府にこの理解支持がなければそういうことになかなか乗り出せないと思いますが、それに対する政府の御方針を伺ってみたいと思います。
  10. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はまことに申しわけありませんが、決済についての具体的な方法についてはよく知りません。ただあそこに書いてあるような目的を達するように協力をしたいというだけの考え方きり持っていないのです。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 それではこの所管外務臣というよりはむしろ外交方針に対して総理の御方針がそういうことでございますれば、外務大臣もそれと矛盾をした御方針があろうはずはない。大体鳩山内閣の大方針は今の総理お答えをもって足れりと思うのです。そうなりますと、あと大蔵大臣所管だと思いますが、大蔵大臣がどういうふうな具体的な内容を持った促進をするかということについては、大蔵大臣にもうすでに指示されましたかどうか、ちょっと伺っておきたい。
  12. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 大蔵大臣もそういうようなことが可能になるように骨は折るという言明をしております。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 それでは大体この条文の通り日本銀行中国人民銀行との間に支払い協定が締結できるように鳩山内閣協力をするという御確答をいただいたと理解してよろしゅうございますね。
  14. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 よろしゅうございます。その通りであります。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 それではなおこまかいことについては大蔵大臣にもいろいろ意見を伺いまして促進いたしたいと思っております。
  16. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 さようにお願いいたしたいと思います。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 次に見本市の問題でございますが、これについてはあるいは外務大臣からお答えをいただくのがいいかもしれませんが、総理から今協定内容も大体理解した上でそれが実現できるように協力をしたいということを確答していただいたわけでございます。従って第二に問題になるのは見本市開催の問題でございますが、これは中国側が今年度中に東京及び大阪において開きたいという意思を持っておるわけですが、これに対して外務省としては当然そのようにできる、あっせんなり理解をしていただけると思うのですが、さよう理解してよろしゅうございますか。
  18. 重光葵

    重光国務大臣 大体さように御了解願ってよろしいと思います。しかし見本市をどこにどうやって開催するというようなことにつきましては、やはりとくと打ち合せをしなければならぬと思います。これは御了承を得ることだろうと思いますが、打ち合せをして協力のできるように——私の方はもう趣旨は御了解を得ておる通りにできるだけのことはいたしますから、その御協力が十分でき得るように、また向うからも御協力を願わなければならぬと思っております。その打ち合せをするように一つ仕向けていただきたい、こう思うのです。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 理解のある御答弁で喜んでおりますが、いずれ今度の協定の当事者であります国際貿促並びに議員連盟から向う計画を具体的に受け取りまして、検討いたしました上で外務省へ御協力お願いに上ると思いますが、その節はどうぞよろしくお願いいたしたいと思っております。ただしかし一点事前に伺っておきたいことは、この見本市が今丸ノ内で行われておりますような国際的な見本市だけではなく、中国単独見本市になりました場合でもこれは当然許さるべきものだと思いますが、これについては外務省も御異存はございませんでしょうね。
  20. 重光葵

    重光国務大臣 さようなことをば、一つお打ち合せをしたいと思っております。私は今そういうことの実行方面についてすべて申し上げることは少し差し控えたいと思いますが、できるだけのことはやります。それだけは御了承願います。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 ただいまの御答弁はちょっと不明確でございますから、もう一ぺんくどいようですが念を押しておきたいと思います。私の申しておりますのは、何月何日からどういう品物をどこを会場として——東京大阪はきまっておりますが、その中の会場、そういうこまかいことについてお尋ねしておるのではないのです。ですからそのときにならなければ具体的な返事ができないというようなことでなくて、大方針としては今御答弁がいただけると思うのです。すなわち中国だけの単独見本市の場合におきましても、当然外務省はこの協定協力するという以上は、協力していただけるものと理解いたしてよろしゅうございますか。もう一度念のために伺っておきたい。
  22. 重光葵

    重光国務大臣 できるだけの協力はいたしたいと思います。ただしそれらのことをここで取引するわけにはいかぬと思います。その計画等についてはお打ち合せが出てくることと思いますが、ここではそういう取引のことはするわけにはいかぬと思います。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 大体単独見本市協力するという御確答をいただきましたので、なお具体的な問題についてはいずれ後刻お願いに上りたいと思います。  総理からまずお尋ねいたしますが、その次に問題になりますのは常駐通商代表部の問題であります。ここで一番問題になるのは、さっき総理もちょっと触れられましたが、協定内容によりますと外交官待遇を希望しておるわけでございます。この問題については、たとえば公式の国家の儀式に参加するとか、国権行使のための、あるいはまた直接通商事務を推進するのに必要のないいろいろな特権というものがあろうと思うのですが、そういうことでなくて、ここで問題になっておりますのはその入国、居住、生命、財産に対する保障、それから国内旅行の自由、通信の自由、特に問題になりますのは商売のことでありますから、暗号通信を使用しなければならないような問題も出てくると思うのですが、そういうようなものの総括的な目的達成のために、最大限度待遇が得られるように外交官並み待遇を要望するという趣旨であろうと思うのです。言うまでもなく、今の中共政府承認をこれによって求めるというようなそういう意地の悪い意味ではなくて、今申しました通り貿易協定に伴います業務を実行するために必要な限度のいろいろな自由あるいは便宜を与えてもらいたい、そういう趣旨のものだと思うのです。従って外交官並み待遇を与えていただきましても何ら差しつかえがないという理解に立って、われわれもこの協定には非常に賛成をいたしたわけですが、政府もそういう趣旨一つこの代表部入国並びに設置常駐の問題につきましてはお願いいたしたいと思うのですが、いかがなものでございましょうか。
  24. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 この協定目的日本中国との貿易を伸長したいというような目的でありますから、その目的に沿うような取り扱いはいたしたいと思います。けれども外交官と同様の待遇を与えるというようなことについては私はわかりませんから、これは承認の問題とも関係があるしいたしますから、それについても私はここで承諾するということは申し上げられません。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 それでは具体的にお尋ねいたします。外相からでもどちらからでもけっこうですが、第一、居住いたしておりまする地域は、東京または大阪になったと仮定いたしました場合におきましても、九州あるいは東北等商売の都合で自由に旅行しなければならぬと思いますが、その旅行につきましてはやはり一々旅行承認外務省に求めるとか、そういうような方法をおとりになるお考えですか。自由な行動ができるようにされるつもりでございますか。今まで、ソ連の関係者が参っておりますのは、島に限られて、本土へ渡ります場合には非常な制限を受けているのですが、そういうようなことは当然なかろうと常識的にわれわれは考えておりますが、そのことが一点。  それから暗号通信の問題に対しては外務省は一体どういうふうにお考えになっておられるか、その二点を具体的内容としてお尋ねしておきたいと思います。
  26. 植原悦二郎

    植原委員長 時間が制限されておりますから、外務大臣も立ったりすわったりでなんですから、少し声高にすわったままでお答えになるように御承知を願います。
  27. 重光葵

    重光国務大臣 旅行の自由は、私は無制限にはいかないと思います。こういう点は国際間では相互主義という点もありますし、私の申し上げられるのは、業務遂行範囲内においてできるだけの便宜を与えるということは十分申し上げられます。またその意向であります。そうでなければこういうものを置いてもらって貿易を増進しようという目的にはかないませんから、それはする。しかし幾らでも旅行の自由を認めるということは、今の国際間において完全にやっておりません。必要な制限は加えなければならぬと思います。しかし全体の考え方は今申し上げる通りであります。  それから暗号の件は私はむずかしいと思います。商業用の簡単な暗号とか、たとえばこちらも十分管理し得るような方法があれば、これは別ですけれども、そうでなければむずかしいと思います。暗号を自由に使われていく場合においてはすぐ問題が起ると思います。それらのことは今の業務遂行範囲内においてできるだけ便宜を供与したいという考え方によって処理したいと思うのでありますが、それじゃ暗号を自由に許せというここでお申し入れがあっても、私はそうはいくまいと考えております。
  28. 穗積七郎

    穗積委員 それはどういう理由でございますか。
  29. 重光葵

    重光国務大臣 通商を振興するために暗号が自由に使われるということはあまり慣例にないことであります。それは暗号でなくてもできることだと考えております。暗号商業用暗号として普通知られていることならば、これは便宜を与えて差しつかえないことの意見を申し上げた次第でございます。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 今のお話を伺うと、暗号電報を使うことの自由を非常に悪用して政治的にスパイを行うとか、軍事的なスパイを行うとかいうようなことの危険もあるかのごとき印象を与えるようですが、むろんそういうことではなくて、先ほど私の申しましたように、協定の場合においても通商業務を行うためには、もとよりお互いにいろいろな取引でございますから、国際市況なり価格の問題等につきましては当然暗号を必要とする、国内商売でもそれをやっているわけです。そういう趣旨でございますから誤解のないように一つ答弁をしていただきたいです。そういう趣旨のために暗号を使うことは何ら私は差しつかえないと思うのです。国際法上にもそういうことは慣例のないことではございませんでしょう。ですから、そのことについても業務遂行のための暗号でございますならば、当然支持協力を与えて差しつかえないと思うのですが、いかがなものでございましょう。
  31. 重光葵

    重光国務大臣 私は万一の誤解を避けるために今申し上げたのです。暗号を自由に許すということは、私は乱用があると申し上げたわけではありません。しかし国家的処置としては、十分これは注意しなければならぬ点だと思います。しかし今申し上げた通りに、商業上に普通使われる暗号ということならば、これは便宜を与えるという考え方を今持っておることを申し上げて、それで御了解を得たいと思います。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 時間がありませんから、最後に二点、一括してお尋ねしておきたいと思いますが、外交官並み待遇——われわれの理解では、たとえば領事なんかが頭の中に浮んでおるわけですが、その場合には、国交の未回復の国におきましても、たとえばイギリスと台湾等におきましても、ちゃんと領事というものは置いておるわけであります。これはむろん経済上の業務が主たる業務になろうと思います。そういうことですから、私はそういう趣旨理解して、これにある程度の自由と特権を与えて、そして目的完遂のために一そう協力していただくことが、政府として私は当然だと思うのです。ですが、私は中国政権承認することになるかならぬかというようなことにあまりおとらわれにならぬで、もう少しフランクに、すなおに考えていただいて、そしてこの問題をもっと善処していただきたいと思うのです。特にこのことは鳩山総理お願いいたして御所見を伺っておきたい。  それからもう一つ、ついでですから一括してお尋ねいたしますが、協定文の十一条によりますと、今度は民間同士協定になりましたが、やがて本格的にやるためには、特に相手国家貿易をやっておるわけですから、日本政府相手国との間において貿易協定を結ぶことを目標としておるわけです。それにお互いに努力を約しておるわけですが、これは未条約国におきましても、貿易協定あるいは支払い協定等を結ぶことは何ら差しつかえないし、事実ある例でございますから、これに対しても当然われわれは正常な講和条約締結前におきましても、経済上の必要のために貿易協定または支払い協定国家間において結んでいただくことも差しつかえないと思いますが、これは必要が生じた場合には、講和条約締結前におきましても、こういう方策を進めていただくべきだと思うのですが、それに対する総理の特に御意見をこの際伺っておきたいと思います。その二点一括して一つお答え願いたい。
  33. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 第一の点につきましては、過日外務大臣から、領事というものを認めることにおいて、中国承認にはならない先例もあるというようなお話がありました。ですから、そのことは考え得る問題だと思います。第二の点も同様に考慮し得る問題だと思います。
  34. 植原悦二郎

  35. 松本七郎

    松本(七)委員 日ソ交渉は、新聞の報道通り六月早々から始められる予定でございますかどうか。
  36. 重光葵

    重光国務大臣 大体そういう予定をわが方においていたしております。
  37. 松本七郎

    松本(七)委員 これは国民としては非常に期待を持っておるところだろうと思います。民主党が、絶対多数とはいえないまでも、百八十六からの議席を獲得した中には、いろいろたくさんの公約がその原因でもございましょうが、そのうちでも日ソ交渉ということは非常に大きな国民期待を持ったところだろうと思う。そこでこれを実現するについて私どもが今いろいろ見通し等を立てているわけでございますけれども、結局は鳩山総理大臣誠意と力にかかってきているのではなかろうかと思います。もちろん内閣の中にいろいろ意見相違のあることは、これは当然なことでございますけれども、それを何とか鳩山総理の力によってまとめて、一定の方向をはっきり打ち出していただくことをわれわれは期待しているわけです。現在のところまだはっきりした定見というか、方針というようなものが確立されておらないように私どもは見受けるわけです。これは今後になお期待することといたしまして、残るところの鳩山首相誠意の問題について少しお伺いいたしたいのでございます。もちろん鳩山首相御自身の誠意は、主観的には私は非常に誠意にあふれたものがあると思います。たとえばこの前の十日の予算委員会における田中稔男議員質問に答えられて、からだも一、二年間は大丈夫だろうから、保守合同というような問題よりも、この日ソ交渉の成立のために真剣にやって、平和のために尽したい、こういうことを言っておられる。これは私は総理の言葉通り受け取るのでございます。誠意は非常にあふれておりまして、頼もしく思うのでございますけれども、この誠意が具体的にどういう形で出てくるかということが、一番これからの問題になると思うのでございます。そこで、そういう点で今までのいろいろな経過にかんがみて私どもがいささか不安に思うところがございます。第一、交渉地ロンドンにするということにおさまるまで数カ月を要しております。これなどもどもから考えますならば、もっと簡単に解決する方法幾らでもある。誠意を具体的に披瀝すればやれる道はあると思いますが、これは済んだことでございますから、今長くは申し上げませんけれどもソビエト代表部というものは、これは対日理事会等関係でできたのでございますから、法的な解釈からいえば、対日理事会がなくなって、それでこれは正式なものと認められないというような意見から、今日までそのまま正式なものとしては認められておらないわけですけれども、少くともこの交渉地の問題については、いわゆるドムニッキーさんから鳩山首相に書簡が出された。それがソビエト政府の正式な意思かどうかということを、わざわざソボレフ国連大使を通じて問い合せておられる。その結果ソビエト政府から、これは正式な意思であるという返事がきたのでございます。従いまして少くともこの問題に関する限りは、ドムニッキー氏をソビエトの正式な意思を伝えるものとして話し合い相手にするくらいの誠意は披瀝されてよかったのではないかと私は思うのでございますけれども、あくまでこのドムニッキーさんを直接の話し相手とされなかった理由というものを明らかにしていただきたいのであります。
  38. 重光葵

    重光国務大臣 交渉地の問題でいきさつのあったことは、これはすべてのいきさつを発表しておりますから、それによって御存じ通りであります。しかしながら交渉地の問題の実際のいきさつはどうであるかということになりますと、そう意見相違があったわけじゃないのでございます。向う東京もしくはモスクワ交渉地としていいという意思表示をしたことは事実であります。これに対してわが方は、東京及びモスクワ——交渉国領土内でやるよりも、領土外でやった方がいい。これはわが方としては過去の非常に大きな経験からきております。日ソ平和回復交渉は四年半も続きました。東京でもやりました。これは失敗に終ったことは御存じ通りです。それは必ずしも東京でやったから失敗だというわけでもないでございましょう。しかしながら結局は中立国でずっとやって、しかも二所も三所もやって、中立国における両方の代表者の間で静かに話し合いをしてこれがまとまったというような関係を持っております。それとこれとは別かもしれません。別かもしれませんが、われわれは日ソ交渉をなるべく円満に、また効果あらしめるためには、さような経験をも生かして両方の領土外で、しかも世界平和の殿堂である国際連合の所在地において平和の空気でやる。こういうことが目的を達するのに一番適当であると考えてニューヨークがいいと申したことは御承知通りであります。向うの言うことを全部初めからこっちが受け入れなければ誠意がないということは、全然言い得られないことだと思います。こちらはこちらの考えることを率直にかつまた強力に申し述べることが誠意の表示であると私は考えます。そこでなにをやったわけであります。ところが向うの方では非常にこれを了解して、日本の希望するところで差しつかえないという書きものをよこしてきたわけなんです。ところがその後に、どういうことになりましたか向う考え方が変ってきました。それでニューヨークは困る、ニューヨーク以外のところで一つやりたい、ゼネヴァもしくはロンドンでやりたい、日本側にこのどちらかについて異存がなければソ連の側においても異存はない。そこでわが方は向うの意向を尊重してロンドンということに決定しました。私はこちらの誠意の問題がそこに問題となる理由は少しもないと思います。そしてこれはできるだけ効果的に交渉を進める、予備交渉としては当然の経緯であろう、こう考えておるのでございます。
  39. 松本七郎

    松本(七)委員 外務大臣の多年の経験をこういうときに十分生かしていただくことはけっこうですから、私どもそれを期待いたすわけなんですが、ただ経験だけではないかぬ。今日、御承知のようにソビエト日本は戦争をやって、そして戦争状態が続いておるのです。それを鳩山総理大臣は早くやめた方がよろしいという大きな観点から、ああいう日ソ交渉ということを打ち出された。それに対してソビエトの方でも、そうだ、自分の方も一つ平和確立に努力しよう、こういう態度に出てきたのですから、当然これは常識からいってもほんとうに誠意向うに示すためには向うの希望するところで、モスクワがいいというなら手みやげでも持ってモスクワに出かける、東京がいいというなら万端整えてお待ちするからどうぞおいで下さい、こういう態度に出るのが私は誠意の披瀝になるのではないかと思うわけです。しかしこれは今詳しく経過その他を申し上げる時間もございませんから申し上げませんけれども、そういう点から私は総理大臣のお考えをお伺いしたかったわけであります。しかしこれは考え方の違いとしてこれ以上追及するのは、今後の交渉にも差しさわりがあるでありましょうから多くは申し上げません。ただ私は総理大臣一つぜひ具体的な問題としてお伺いしておきたいのは、実は二月の九日に——たしか九日だったと思います。九日ごろのソビエト同盟最高会議におきまして、ソビエト同盟最高会議は列国の国会間の関係を樹立して国会議員を交換することは有意義である、それは友好関係協力の発展に役立つものである、こういうディクラレーション、宣言を発しておるのであります。これに基いて現に今インドとソビエトとの間に国会議員の交換についての話し合いが進められておるわけでございます。そこで私どもも今日日本はこういう友好関係、講和条約でも結ぼう、日ソ交渉が始まろうという大事なときですから、そういうことを円満に促進する意味からでも、これは国民のあらゆる面における交流、友好関係促進の努力をすべきではなかろうか。ただスポーツその他文化関係でやることもけっこうでございましょう。この前は学術会議代表団もすでに行った。これは非常にいいことでございますが、こういうときですから、せっかくソビエトの最高会議でそういう適切な決議をしておるのですから、日本の国会議員も一つ代表を派遣したらどうだろうか、そういうことを実はこの前の外務委員会理事会で私は御提案申し上げたわけでございます。これは政府が直接関係あることじゃございませんけれども、まだその結論は——自由党の方は総務会でこれは反対にきまったそうでございますが、その理由はまだよく伺っておりませんけれども、おそらく民主党それからその他の政党は、反対どころではない、賛成するだろうと思います。そうなれば国会の意思として交換することにきまるだろうと思いますが、そういう場合、せっかく国会で何らかの決議をした、ところが政府はいろいろなことでもって十分な協力が得られないというようなことになりますると、日本の国会の権威ばかりではなく、日本全体の信用にもかかわるような事態が起るわけであります。現に外国では、日本では何か国会できめてそれがいろいろな都合で実現できないというようなことがあまりに多過ぎる、こういうことをよく言われるのですが、これは国内の問題でも私は同じだろうと思う。何か決議をやったが政府の都合でさっぱり実行できない。議員は議員でいろいろな——あるいは選挙中に政党が公約を出し過ぎる、この跡始末に困るというようなことは、よほどこれから考えなければならぬ。ましてやこれが外国に対する場合にはよほど慎重に考えていかなければならぬことだと思います。従いまして私どもはこの問題を今後具体的に推し進めていくにつきましても、やはりそういうことに対して国会議員の鳩山総理大臣、また総理としての鳩山さんがそういうことは非常にけっこうだと思われるかどうか、またけっこうだと思われるならば、そういうことがいよいよ実現する場合に、この国会の代表ソビエトに行く方はまだといたしまして、今度は向うから議員団がこちらに来るということになりますから、そういう場合にはいろいろな公式の手続その他万事について、公式、非公式にできるだけの御協力お願いしたいと思うのでございますが、それはできますかどうか、この際にお伺いしておきたいと思います。
  40. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はまだいまおっしゃった問題についていまだかつて考えたことがございませんでした。どういう目的でどういう機関で交換をするのか知りませんものですから、是非について申し上げるわけにはいきません。
  41. 松本七郎

    松本(七)委員 それではその概略を申し上げますが、ソビエトの最高会議、つまり日本でいえば国会です。国会でもって決議をしたわけなんです。あらゆる国と友好関係促進するためには、国会議員を交換するということも非常に大事だ。つまり、たとえばインドならインドの国会議員、上下両議院の代表ソビエトに行くわけです。そうして場合によってはソビエトの最高会議で演説をしてもらう、こういうことを具体的に言っておるのです。そうしてソビエトの方の最高会議の議員が今度はインドの国会に行って演説をして交歓をするというようなことなんです。これはその国の国会の議場で演説するとかそういうことはそれぞれの国内法で制限その他がございますから、その通りにはいきませんけれども趣旨はそれなんです。ですから友好関係を樹立しようということのためにそれがまずいと言われればそれまでですが、けっこうなことだと考えられるならば、そうこれをどうのこうのとむずかしく考えることはないだろうと思います。従いましてこれは政府自身が直接これに介入する問題ではないのです。けれども外国の国会議員が日本なら日本に今度は来られるのでございますから、当然入国その他のことについては政府も何らかの形で関係があるのですから、そういう場合に政府は快くこれを迎えるために、できるだけの協力がしてもらえるか、こういうことなのでございます。
  42. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうような問題が起きたときに考えたいと思います。(「起きている」と呼ぶ者あり)まだソビエトから日本に対して要求はないんでしょう。
  43. 松本七郎

    松本(七)委員 今問題はすでに起きているんです。日本に対して要求というか、要求というとずいぶん変なんですが、招請ですね。それも向うから来てはおりませんけれども、いやしくもソビエトの最高会議というのは、あそこは最高意思の決定機関なんです。そこで各国に呼びかけたわけです。ですからもうちゃんと基礎はあるわけです。そういう基礎はすでにあるのでございますから、もしも日本がそれでは日本一つそういうことをやろうという気さえあって、国会でその意思を決定すれば向うにその旨を問い合せるわけでございます。皆さんソビエトの最高会議の決定に基いて、日本もそれをやりたいから一つどうだということを言うわけです。そうすると向うから——それはインドもその例なんです。インドはインドの国会におきましては、ソビエトの二月の九日における最高会議の決定に基いてなされた宣言は非常に賛成だからインドの国会議員もぜひ行きたい、こういう申し入れを、いつでしたか正式にやっておるわけです。インドから出しましたのが四月の九日ですか四月八日ですか、そのころです。これに対して今度はソビエトの方から、どうぞそれでは具体的な話し合いをやりましょうといってやっておるわけであります。従ってそういう例があるのですから、日本も国会がそれはいいことであるという決定がなされたときには、具体的にもうどんどん進むわけです。現に私からその問題を提案して、具体的に国会ではこの外務委員会でも協議すると同時に、国会対策委員長会議でこれを協議することに話がすでに進んでおるわけでございます。ですからそういう話を進めるに当って、内閣が全然そっぽを向いて、ソビエトの国会議員が日本に来る場合に、おれのところは知らぬぞというような態度をされるのでは、私どもそういう話をするのに、国会を代表してそういう話をできないでございましょう。やはり政府がある程度好意を示して、そういうことには便宜をはかるという態度があって、初めてわれわれは責任を持ってこの話を進めることができるのです。そういうことをやりませんと、今までのようにもしも政府と何ら関係なしにこれは国会がやるんだからお前の方は勝手にやれ、おれの方は政府関係なしに勝手にやるんだ、もしこういう態度でやればやれますけれども、もし万一いよいよソビエトの国会議員がそれじゃ私の方でも日本に参りましょうといって、向うで決定した場合に、日本政府がそっぽを向いたとあっては、これは日本の大きな恥辱になるでありましょう。従いまして今から皆さん方の考え方政府考え方なり協力ができるかどうかということの大体の見通しを聞いておきたい、こういうわけでございます。
  44. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 インドとソ連とは正常の国交をやっているわけでありますが、日本はソ連とはまだ正常の国際関係がないわけであります。それですからとにかくそのことは六月の一日から会議が始まって国交について正常化がせられるわけでありますから、そういうようになってから断判をして差しつかえないと私は今のところ考えております。
  45. 松本七郎

    松本(七)委員 それを私は最初から誠意の問題と言っておるのでございます。すべて国交未回復ということで片つけられるところに実は問題がある。私どもは将来のこの交渉に対しても安心できないところがあるわけです。未回復であっても現にスポーツ関係その他のものは交流をやっておるでございましょう。政府と直接の関係はない、それは公式の機関ではあっても、政府からこれから正式な交渉をやろうという段階にあって、国会議員と国会議員がその機関同士で交換をやることが何が悪い、それは国交未回復の国と絶対そういうことをやってはならぬというような態度であっては、これは誠意があるとは認められないと思う。それは相手の立場から考えれば、せっかく友好を促進しよう、議員の交換もやろう、こういうことがあって、それで日本の国会でもそういうことをやろうという場合に、これから平和の交渉をやろうとしている政府が、まだ未回復だからそういう問題には協力はできないということが、果してこの国交回復交渉というものが円満に行くものとお考えでありましょうか、そういう点につきまして、外務官僚その他から未回復だからやるべからずという意見が出ると思います。けれどもそういうのを克服して、あなたが先般来予算委員会その他で言われておるように、平和のためにはからだが悪くても一、二年はがんばるんだと、そういう総理誠意を具体的に表わしていただくためには、外務官僚のそういう形式的な意見というものを克服して、総理がひっぱっていただくことを私は期待しておるのです。その決意をここで一つお伺いしたいというわけであります。
  46. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はインドとソ連との間に国会議員の交流といいますか、それがあったということを知りませんでした。今日初めてあなたから伺いました。そうしてこの問題についてはよく考慮をしなくてはならないと思っております。
  47. 植原悦二郎

    植原委員長 もう時間のリミットですからどうか一つ……。
  48. 松本七郎

    松本(七)委員 総理大臣、これは国会でも話を進めますけれども、その話を進めるについては、政府考え方、特に総理大臣考え方というものが非常に大事な要素になりますから、一つなるべく早い機会に意思表示をしていただきたいと思います。そのうちに委員長を通じてなり、あるいは再度委員会を開いてなり、ぜひそのはっきりした御意見を伺うことにいたします。きょうはこの程度にとどめておきたいと思います。そのほかにいろいろ問題はあるのでございますが、何しろ時間の制約がございますから、またの機会に一つぜひ出席していただいて御答弁お願いすることにいたして、この程度で私の質問は打ち切ります。
  49. 植原悦二郎

    植原委員長 北澤直吉君。
  50. 北澤直吉

    ○北澤委員 この国会におきましても外交問題があらゆる機会に論議されたのでありますが、鳩山内閣外交方針が内外に十分に明瞭になったと、残念ながら申し上げるわけに参りません。そこで私はきょうはほんとうに国家的の立場に立って、基本的な問題について質問したいと思いますから、率直明快に御答弁を希望いたします。まず第一に伺いたいのは、日本外交方針を策定するに当りましては、現下の国際関係をいかに把握し、これをいかに認識するかということが大前提だろうと思います。国際関係の認識いかんによっては外交方針も変って参りますことは、これは理の当然であります。重光外務大臣はこの特別国会の外交方針演説におきまして、国際情勢はこの前の国会以来少しも改善されておらない、世界情勢の緊張は依然として緩和されていない、ヨーロッパにおいては西ドイツの再軍備が始められ、西欧連盟が結成されたのでソ連は二月の政変によって力には力をもってする政策に転換して以来、いわゆる共産勢力の平和攻勢は様相を変え、ために国際関係は緊張の度を増してきたと、こう判断する、こういうふうに述べているのでありますが、総理国際情勢の分析について、外務大臣の御意見と同意見でございますか、その点を伺いたいと思います。
  51. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣国際関係の緊張の度が増したと言ったのはどういう観点からそういうことを御発言になったか、私にはわかりません。私は第三次世界大戦の空気は遠のいたような気分をしているのであります。
  52. 北澤直吉

    ○北澤委員 総理は別の機会におきましても、ソ連、中共は日本を侵略する意図はないように思う。世界の情勢はただいまお話のように、第三次戦争の危険は遠のいたように思う、こういうように認識されておるのでありますが、外務大臣はこれと違って先ほども申しましたようにしかもこの国会の外交方針演説の中において、国際緊張の度はだんだん増してきた、こういうふうに述べておられますので、総理大臣外務大臣との間に国際情勢の分析について根本的に違いがある。従って、そこから自然外交方針というものが違ってくるではないかと思いますが、もう一度総理の、現在の国際情勢に対する認識について伺いたいと思います。
  53. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、現在の平和が力による平和だということは考えているのであります。それでありますから、とにかく現在は、第三次世界大戦が少し、一歩後退したように見えるけれども、しかしながら、やはり第三次世界大戦を回避するために、できるだけの努力をしていかなくてはならない、こういうように思っております。
  54. 北澤直吉

    ○北澤委員 私の見るところでは——実はきょうワルソーで、ソ連を含む東ヨーロッパの共産国八カ国の安全保障条約が調印されるわけであります。またそれに関連して、ソ連はイギリス、フランスとの相互援助条約を破棄しております。また先だっての火曜日におきましては、北朝鮮の国境方面で、共産軍のミグ飛行機が米軍の飛行機を攻撃しております。こういうふうな事態が一方においてあるにかかわらず、総理が、第三次世界戦争の危険が遠のいた、こう簡単に判断されますことは危険だと思うのでありますが、一体外務大臣はこれに対してどういうお考えでありますか、伺いたいと思います。
  55. 重光葵

    重光国務大臣 これは私は、少し説明を要すると思います。私は今の国際間、特に民主自由陣営と共産陣営との争い、これが今申しました通りに、互いに力——原子爆弾の競争までもやっておるので、これが少しも結末がつきません。つきませんのみならず、私の演説にも申しております通りに、民主自由陣営の方で、いろいろと力、つまり武力同盟まで進めて来ておる。相手ははっきりと共産陣営であるということを申しておる。これに対してソ連側で、これははっきりはわかりませんけれども、今までのような政策ではいかぬのだと、はっきりと、重工業をもってこれに対抗しなければならぬという政変すらあったわけでありますから、その対抗する姿勢というものは当然激しくなってくるのであって、そこで理論上、これは国際関係、この両者の関係は緊張の度を増すものである、こう判断せざるを得ないものであると思います。ところが、今その緊張の度が増す——増すくらいならいいけれども、これが破裂でもしたら大へんなことになります。原子爆弾の戦争になる。そこで世界の有力なる指導者が、あらゆる努力をして、さようなことを防ぎたいということで全力をあげておるのが現状であると思います。これは必ずしも自由民主陣営の方の指導者ばかりというわけじゃございません。共産党側の指導者もやっぱりその点においては一致しておると私は思います。そこでソ連側の、共産陣営側の今日までの平和攻勢ということも少し様相をかかえて、そうしてあらゆる外交的手段によって、一つさような衝突は避けようという努力が急に起ってきたということは、いなむことができないと思います。そこで、たとえばオーストリア問題、ヨーロッパではオーストリアの問題等が急に展開をし始めた。それからまた、御承知通りオーストリアの問題の展開は、ヨーロッパにおける極度の緊張の後においてこれが展開された。それからまたバンドン会議のごときも、これは私は日本の平和的の努力もよほど——日本代表の努力も力があったと思っておりますが、バンドン会議において、すべての紛争は平和的手段によってやらなければならぬというこの空気に——これは語弊があるかもしれませんが、押されて、そうして中共側も、台湾のごときを悪化せしめないということに非常に努力したということがございます。さようなことで、何とかこの緊張は避けなければならぬという努力が、最近において急に進められたということは、これはいなむことができません。そこで、さような努力を見越してみれば、国際緊張して来たこの緊張は緩和されるではないかという希望がたくさんに持たれると思います。その希望の方面を主として観察をされて、総理が、国際緊張は、将来は緩和するのだ、とこう判断されたのではないかと私は思います。私の判断をしたときはさような現象の起る前でございましたが、しかしその緊張は、これは緩和するように一生懸命努力をしなければならぬ、日本もその努力のために全力を注ぐということが平和外交の根本である、こういうふうに考えております。
  56. 北澤直吉

    ○北澤委員 時間もありませんから、この問題は一応その辺にしまして次の問題にしますが、ソ連、中共の指導者は、近来、いわゆる平和的共存、こういう思想を盛んに言っておるわけでありますが、これは従来のソ連なり中共の歴史というものをしさいに研究しますれば、一種の平和攻勢であって、戦略の一時的転換、こういうふうに見なければならぬと思います。私ども考えでは、ソ連、中共の指導者は依然として世界革命というものを最終の目標にしていると思うのでありまして、その世界革命の方針を共産主義指導者は捨てておらない、こう見ておるのでありますが、この点について総理外務大臣のお考えをお伺いいたします。
  57. 重光葵

    重光国務大臣 共産党の根本の問題につきましては、これはそうであろうかと思います。私自身は。共産主義の根本を研究いたしました私の研究ではそうであろうと思います。しかし私は、実際そうであるとしても、実際の国際関係を扱っておる現実の問題といたしましては、双方ともこれはあるいは敵味方であるかもしれぬけれども、共存しているということは事実でありますから、この事実に基いて適当な措置をしなければならぬ、またさような平和を害するような方向に向わぬようにあらゆる努力をしなければならぬ、こう実際政策としては考えておる次第でございます。
  58. 北澤直吉

    ○北澤委員 まあ大臣も、大体私どもと同じような考えを持っておるようでありますが、要するに平和的共存というのは、これはソ連、中共等の指導者の一時的の戦略であります。従って平和共存のそういう何と申しますか、そういうような態度に出てきたときをとらえて日本が共産圏諸国との国交を調整するということは一案と思いますが、しかしながらその底には、先ほど申しましたような世界革命の思想を捨てていないということを常に頭に置いてやらないと、とんでもない間違いを起すというふうに考えますので、やはりソ連なり中共なりとのいろいろな折衝をする場合においては、もし世界情勢が共産主義者に有利に展開する場合には、彼らはまた世界革命の思想でやってくる、ちょうど過去において、ソ連の力が弱いときにはいわゆる一国社会主義を唱えて、世界革命の思想を捨てたような格好をしたのでありますが、いよいよ世界情勢が有利になると、また世界革命の思想を出してくる、こういう過去の歴史から考えても、今の共産党の平和共存の思想は一時的な戦略だ、従って、その底には、世界革命の思想が依然として残っておるということを考えて折衝に当らなければならない、こういう考えで申し上げたわけであります。しかし時間もありませんから、次に移ります。  先ほど外務大臣が申されましたが、ソ連のオーストリアあるいはドイツに対する中立化の方針が出て参ったのでありますが、こういう点から考えますと、ソ連、中共の日本に対する政策のほんとうの腹は、やはり日本をアメリカから切り離して、これを中立化し、できれば、さらに進んで日本を共産陣営の方にだんだん引っぱっていく、こういうような考えがソ連、中共の底意、真意であると思います。これについて総理大臣外務大臣の御見解を承わりたいと思います。
  59. 重光葵

    重光国務大臣 オーストリア問題を中心にして、ソ連の政策がオーストリアを中立化し、その政策をドイツにも及ぼしていきたい、さらにソ連のまわりに中立地帯をずっと設けていきたいということであるという観察がずいぶん行われております。その観察のうちには、その延長として、日ソ交渉もその政策の遂行の一つの現われであるというような観察、評論もずいぶんあることは私も承知をいたしております。しかし、他の委員会でも私の考えを申し述べました通りに、オーストリアの地位と日本の地位とは異なるものがありますから、同様なことで日本に臨むことはできないことであります。またこちらもこれを受諾することはむろんできないことであろう、これは根本問題としてそう思うのであります。そこで、さような考え方がソ連の考え方であるというこの重要なる観察、世界のソ連研究者の観察がずいぶん行われております。これは参考として十分頭に持っていなければならぬことであるということは、私はお話通りであろうかと考えます。
  60. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいま申し上げましたような国際情勢の認識の上に立てば、一国の安全と平和を守るためには、どうしても集団安全保障機構というものに参加しなければならないわけであります。昔のように一つの国だけで国の安全を保つことは、今日の時代ではできないわけであります。そういうわけで、世界の各地にヨーロッパにおきましてもアジアにおきましても、集団の安全保障機構というものができて参っておるわけであります。そこでわが日本の態度でございますが、日本はこの目的のために、国際連合に協力する一方、平和条約によって認められた集団的自衛権によってアメリカとの間に安全保障条約、行政協定、MSA協定、こういう一連の条約協定を結んで、一応の集団安全保障体制を整えたわけであります。日本の平和と安全に対する根本方針というものは、平和条約、日米安全保障条約の締結によってすでに確定し、不動のものとなっておると思うのであります。鳩山内閣は盛んに平和外交ということを宣伝するのでありますが、日本の平和外交の骨格と申しますか、そういうものは、平和条約及び安保条約によってすでにでき上っておる、こういうふうに思うのでありますが、この点に対する総理外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  61. 重光葵

    重光国務大臣 その点においては、私も大体そう申していいと思います。日本は、平和条約で独立回復国際連合の趣旨を認めて、そうして安全保障条約もできておるのでありますから、これらの問題については、日本の置かれた地位について、十分に国際信用を上げる意味において、条約は十分尊重して忠実に守っていかなければならぬと思っております。しかしその場合においても、すべて日本の進み方は、日本の立っている立場を通じて、自分中心と申しますか、日本の自主独立の見地から常にこれを判断して進んでいかなければならぬと考えておるのであります。そこで、過去の条約等につきましても、これを忠実に守るということはむろんのことでありますが、それと同時に、日本の自主独立の立場から常に判断をして、この条約の適用についてなり、また、その条約の改訂問題等についても考えをめぐらしていかなければならぬように感ずるのであります。しかし、それらのことについて決定をいたし、日本の置かれた立場は忠実にこれを守っていかなければならぬという趣旨については、これはお話しの通りであろうかと思います。
  62. 植原悦二郎

    植原委員長 北澤君、もう時間ですから、どうぞ簡単にお願いいたします。
  63. 北澤直吉

    ○北澤委員 いろいろ伺いたいのでありますが、時間もありませんので、あと二点だけ伺って私の質問を終ります。第一点は、重光外務大臣は自主独立外交ということをよく申されるのでありまして、私どもその考え方に大体賛成なのでありますが、先ほど申しましたように、今の時代は集団安全保障の時代であります。従って、そういう見地に立って世界の自由諸国はアメリカと緊密な協力関係を持って、そうして常に緊密な連絡を取って外交をやっているというわけであります。今回、英米仏ソ連の四巨頭会談というものが大体実現する段階に入ったようでありますが、これにつきましても、パリ協定の締結によって西欧陣営の足並みが固められて、相互に十分協議をした上で、今度はソ連の方に巨頭会談をやろうというふうな申し入れをしておるわけであります。日本の場合は、ほとんど同盟的関係にある米国と十分な意見の交換もせずに、ソ連の方に日ソ国交調整の申し入れをしたために、対米関係に非常に悪影響があるのでありますが、アメリカ、イギリス、フランスというもののソ連に対する政策を見ますというと、相互の間に十分意見の交換をやって、意見の一致したところでソ連に申し入れをしているというわけでありまして、日本のやっていることと逆であります。私どもは、やはりソ連との交渉をやる場合におきましても、こういうふうにほとんど共同防衛、ほとんど同盟の関係にある国との間に十分意見の交換を行なって、その上で一糸乱れない足並みをそろえて、ソ連もしくは中共に当るべきであろうと思うのでありますが、その点から申しまして、今度の日ソ国交調整に当ります政府のやり方は本末を転倒しておる。ますソ連と話をしてから今度はアメリカと話をする、こういうことでありまして、もし米国と日本との関係に何か冷たいものがあるというふうになりますと、それでは日本の最小限度の日ソ交渉に対する要求も実現できないのではないか、こういうふうに思うのでありまして、その点につきましては、国会におきましてもたびたび議論があったのでありますが、今後もソ連、中共と話をする場合におきましては、日本はアメリカその他の民主主義陣営諸国と十分意見の交換を行なって、誤解のないようにした上で、ソ連、中共に当るべきだ、こういうふうに思うのでありますが、その点についての御意見と、それからもう一つ最後に伺いたい点は、ソ連との交渉にしましても、中共との交渉にしましても、あるいはアメリカとの交渉にしましても、こういう大きな外交を強力に進めるためには、どうしても日本に強力な内閣ができて、そうして強力な世論の支持がなければ、こんなむずかしい外交問題はできないのであります。外国の新聞などを見ておりますと、今の日本の最も大きな欠点はリーダー・シップがないことだといっておるのでありますが、そういう大きな困難な外交問題を日本に有利に処理するためには、どうしても国内の強力な世論のバックをもってやらなければならないと思うのでありますが、先ほど申しました点と今の点について総理の御答弁を伺いたいと思います。
  64. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 第一点につきましては、アメリカと日本との間に誤解が生ずるようなことがないように万全の処置を講じていきたいと思っております。  それから第二の点につきましては、あなたのおっしゃる通りに、保守の連携もしくは調整ができていくということは日本のために非常に必要なことだと思っております。
  65. 植原悦二郎

  66. 古屋貞雄

    古屋委員 私は総理大臣にお尋ねしたいと思うのです。富士山頂の北富士演習場の問題ですが、御承知通り富士山は世界の名山でもあるし、わが国の象徴として国民崇拝の的となっておる山であります。その山のふもとにおける今回の百五十五ミリ砲の実弾射撃に対する関係なんですが、これに対する現地との調整が議論になっておりますが、私はそういう問題でなくて根本の問題を総理から承わりたい。その理由はただいま申し上げましたように、世界の名山であり、しかも日本国民の崇拝の的であり、わが国の象徴ともいわれる山であります。しかもこれは国立公園になっておるという事実があるのであります。従いまして国立公園として世界の人々が自由に平和の中にあそこにレクリエーションができる地域なのであります。なお御承知通り大室山、長尾山、そのほか御殿庭と、日本にはかけがえのない文化財のある場所であります。さらに天然資源林の樹海という有名な広範囲における、これもまたかけがえのない森林がございまして、日本の文化財としては非常に大切なところであります。従って平和であり、大切なところを、何を好んで、あそこに特別なこうした百五十五ミリの砲弾を撃ち込むような場所としての提供を日本でアメリカにいたしておりますことに対しての質問を申したいのであります。御承知通り全国の国民感情から申し上げましても、ただいまも問題になっております協定の条件の解釈問題にあらずして、実際問題といたしまして、国民のほうはいとした霊峰富士を汚すな、アメリカの泥ぐつで日本の象徴の山を汚してはいけないという反対の感情が強まって参りました。そこで私は十一日に米軍中央管区の幕僚のクィッグという少佐に会いまして、一体あれはあなたの方でかけがえのない特殊な場所であって、アメリカから要求したものであるかどうかという質問をいたしました。そうしたところが、そうじゃないのだ、日米行政協定の過程において日本から提供されたものだ、こういうことを私は承わって驚いた。従いまして総理はすみやかにアメリカと交渉をされて、これをやめるか、しからざれば他に移すか、さような処置をとる御決意があるかどうか。もう一つは、今ほうはいとして国民感情が、ただいま申し上げたような意味において強く盛り上って参りますと、せっかく総理が御配慮になっておりますアメリカとの親喜関係、友好関係に大きなひびが入ってくる、いわゆるアメリカに対する外交政策の根本がぐらついてくるおそれがあるということを私どもは心配するわけでありますが、総理の御決意、お考えを承わりたい。
  67. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私もあなたと同じように、あの土地から、今回のような問題が起きたことを非常に残念に思っておりますが、極東軍司令官と調達庁長官とで話し合いをすれば、ああいうばかげたことは起きなかったのであります。それがちょっとのことからああいうようなことが起きまして、大問題を引き起しましたことは、まことに残念なことと思います。将来ああいうことのないように、これから直ちに調達庁長官、極東軍司令官とが話し合いをするようになっております。
  68. 古屋貞雄

    古屋委員 総理答弁は的がはずれておるのでございます。今のごたごたが起きる経緯のお話でございますが、そうではない。私は根本の、あの特殊な場所をアメリカに提供して百五十五ミリという曲射砲の実弾射撃場としておることを、あらためて交渉をし直してやめることの交渉をする意思があるかどうか。さようなことによって、国民鳩山内閣に非常な信頼を持っておりますその気持をつなぎ得ると思うのですが、不幸にしてさようなことができないとなりますならば、おそらく鳩山内閣に対しては、国民は総スカンの反撃を加えるでありましょう。従ってそのあなたのお考えを承わりたい。場所を変える、あるいはやめさせる御努力をなさる意思があるかどうか、国民の前に御発表願いたい。
  69. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あの場所でああいうことの起きないように将来はいたしたい。交渉をしますと言ったのは、あなたのおっしゃるような意味で申し上げたのであります。
  70. 古屋貞雄

    古屋委員 そうすると今やっておりますところの実弾射撃を中止させる、そういうような個々の問題でなくて、根本的にあの場所の提供をしております日米行政協定を根本から変えて他の場所に移そうというお考えでありましょうか。それとも全然やらせないようなことにする交渉をなさるというお考えでありましょうか。どちらでございましょうか。
  71. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あの場所を使わないで済むようにいたしたいと思っております。
  72. 古屋貞雄

    古屋委員 これは総理が使わないように御努力をなさる、この点はぜひさように願いたいと私は思うのであります。おそらくこれは国民の強い要望であると私は考えますが、ただこちらにおいての答弁のみならず、具体的にすみやかにさようなあなたの御決意を御進行なさることを私はかたく信じて、ただいまのあなたの御答弁はまことにありがとうございました。  そこで外務大臣にお尋ねしたいのですが、私現地に参りましてアメリカ側の現地の司令官に会いますと、上の方の命令であるから、上部に行って交渉してもらいたい、こういうことでございましたので、私自身も地元の代表とともに、ただいま申し上げたように、麻布の中央管区司令部に参りましてクイッグという少佐に会ったのですが、その解釈の問題は調整の問題ではございますが、どうもアメリカさんの方の解釈と、こちらの解釈がまるで食い違っておって、むしろ押しつけられているような形に考えられるわけです。あの協定条項の原則は、あそこはただいまのような百五十五ミリの曲射砲の実弾射撃をやらないということのように承わっておるのですが、さようでございましょうか。協定の原則はやらない、使わないのだ、曲射砲の実弾演習をやらないということが原則になっておるというように承わっておりますが、さようでございましょうか。その点を御答弁願いたいと思います。
  73. 重光葵

    重光国務大臣 御承知通り、これは日米合同委員会で合意決定した問題でございます。そうしてその解釈についての疑義から困難な問題が起った、こういうことになっておることはお話通りであります。その合意の文言及びその解釈につきましては条約局長説明させますから、どうぞ御了承願いたいと思います。
  74. 古屋貞雄

    古屋委員 私が承わっておるのは、協定の原則として使わないということになっておるのかどうか。例外的に使う場合には、今問題になっておりますような現地の調整が必要だということになるのであって、使わないということが原則だという点はどうですか、これは外務大臣おわかりでしょう。
  75. 重光葵

    重光国務大臣 そのはっきりしたことを今条約局長から説明を申し上げたいと思いますが、それはこうなっておるのでございます。六、七、八月の登山期は使わない、その他は使う、ただし使うことについて調整をする、こういうことになっておるので、その他は使うことが原則になっておる、こう解釈せざるを得ないと思います。
  76. 古屋貞雄

    古屋委員 どうも外務大臣お答えはおかしい。私は訳したものと原文を持っておりますが、こういうことが書いてある。一般事項の中の四ですが、「在日合衆国軍は富士吉田、富士御殿場口及び須走口の登山道を越える実弾射撃を原則として禁止することに同意する。」こうありますが、今私の持っております翻訳したものは間違っておるのでしょうか。今の点と根本から違う。そうして「但し七月八月及び九月を除いては、現地に於て調整の上、上述の射撃を行うことが出来る。この場合は射撃中充分な注意を払うものとする。」こういう訳文を持っておりますが、違うのでございましょうか。今の御答弁はまるきり違っておりますが……。
  77. 重光葵

    重光国務大臣 この合意の解釈でございますから、はっきりした解釈を政府委員にやらしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  78. 古屋貞雄

    古屋委員 よろしゅうございます。
  79. 千葉皓

    ○千葉政府委員 お答えいたします。ただいまお話のように、四項によりましてこのような演習を原則として禁止することに同意するとありますけれども、次のただし書きによりましてその禁止を解除しておるわけであります。七、八、九の三カ月はやりませんが、その他の期間は現地との調整の上でやってよろしい、こういうことになっておるわけであります。
  80. 古屋貞雄

    古屋委員 あなたは専門家なんですが、ただし書きの方が中心になってしまって、本文の方があとになるようなことにかわってしまったら、そんな答弁では国民承知しません。原則では禁止しておる、例外にやるんだ。ただし書きというものは例外です。それはどなたが考えられましても、こういうような欧米局長のお考えでやられては国民はたまりません。原則はどっちで例外はどっちか、それをはっきり答弁して下さい。
  81. 千葉皓

    ○千葉政府委員 お話通り、原則は禁止するということになっておりますけれども、例外的にその禁止は解除されております。
  82. 古屋貞雄

    古屋委員 それは条件付の解除じゃないでしょうか。今度は現地において調整の上ということがあります。調整の上上述の射撃をすることができる、こういうことで解除されるためには調整ということが条件なんだ。その点は解釈上の問題でどうですか。その条件が完備しなければできないと思うがどうか。
  83. 千葉皓

    ○千葉政府委員 条件と申してよろしいかどうか存じませんが、調整を期待しておると思うのであります。調整ということは、演習を全然禁ずるという調整はあり得ないと考えるのであります。
  84. 古屋貞雄

    古屋委員 今の条件ということは、そういう事実がなければいけないということなんじゃないでしょうか。従って調整が行われなければだめなんだ。調整の解釈の問題は議論になるでしょうが、この条文の精神本意は、そういうことを条件とする、まず第一前提条件、先行行為として演習をするには現地において調整をしなければいかぬ、この点は、この字句の上から考えて議論の余地がないと思う。調整ということは議論する余地はあるのですが、今のような御解釈でなくて、実弾射撃をアメリカがやる場合には、りっぱに先行行為として現地の山梨県知事なら山梨県知事と調整ができなければやれないのだということなんです。今の解釈では、できなくてもやれるという解釈になってしまう。これはアメリカ人ならいいが、日本人でそんなことを言っていただいたのでは国民がほんとうに承知しませんよ。はっきりして下さい。
  85. 千葉皓

    ○千葉政府委員 お説の通り調整が前提になります。
  86. 古屋貞雄

    古屋委員 そこで、これは外務大臣にお尋ねするのですが、調整が行われておる行われておらぬという議論があります場合には、その議論が解決されて納得のいく場合においてやっていただかなければならぬということがこの協定の本意だと思う。その両者の間に意見相違があった場合には、別に行政協定の二十七条ですか、両本国でどうとかいうような議論がありますけれども、そういう問題でなくして、やはり実際にあれだけ国民の感情を刺激し、国民に対する生活を圧迫し、国民の自由をじゅうりんするということになれば、この点は外務省が中心になって先方に御交渉を願って、今やっておりますことをやめてもらいたい。両方納得いくなら交渉したいということだが、その交渉する過程であまりにも一方的の通告においてやられておることは、私は山梨県の出身ですから詳しく知っております。これは二度通告があっただけです。やりますよという通告と、前にやろうと思うがどうかということがあっただけで、知事からの意思表示がないのです。調達庁長官の福島さんの答弁を新聞で拝見すると、どうも日本が義務づけられておるのだからやむを得ないのだ、また知事は全面的反対をしておるのだが、それはこの協定に反するから仕方がないというような答弁をされておりますが、欧米局長もやはりそういう考えを持っておるでしょうか。
  87. 千葉皓

    ○千葉政府委員 調整につきましては、ただいま調達庁長官が米軍側と話し合い中で、近く何らかの解決が見られると考えております。
  88. 植原悦二郎

    植原委員長 古屋君、時間が来ておりますから、御注意いたします。
  89. 古屋貞雄

    古屋委員 最後に一言、あまりに無責任な御答弁ですから申し上げますが、欧米局長は今片づくだろうと言っておるが、すでに実際に射撃をしてしまったのですよ。また十七日もやると言っています。これは私はクイッグ少佐に会ったら、十七日もやりますとはっきり言っている。あとのことはまだわからぬから、やるともやらぬともはっきり言っていないが、十七日にやるとは言っている。そうすると、先方で先行行為としての条件が整わないことになる。私は、外務大臣なり外務省の皆さんにお願いしたいことは、これをたてにとって強い交渉をして、一応やめさせて、国民の納得のいくような姿において、この協定通りのことをやっていただきたいということを、私は要望しておく。その点どうですか。その御決意があるかどうか、外務大臣の御答弁を承わりたい。
  90. 重光葵

    重光国務大臣 お話の点はまことにごもっともと思います。それで実は米軍と協力して、日本の共同防衛の責任を果したいという大前提のもとに立って、あらゆることについて意思疎通をやっていかなければならぬ。こう考えておるので、この問題が発生しますと、すぐ相方の当事者、つまり向うの総司令官とそれから調達庁の長官と折衝をいたしまして、いろいろ調整に乗り出したことは事実でございます。そしてわが方の立場も十分に向うに納得せしめる努力を払ったのであります。その結果は、調達庁長官の報告によりますと、向うもこちらの言い分をずいぶん納得した点があるのでございます。つまり、向うがいれた点があるのでございます。しかしなお今お話の点は、根本問題にも触れますので、将来かようなことの再発しないように、相方の了解に食い違いのないように、極力努力をいたす方針であります。その努力を払いたい、こう考えております。
  91. 古屋貞雄

    古屋委員 今の答弁では結論が出ませんが、最後に要望だけしておきます。すみやかにこの条件の具備する努力をされて、しかる上で実弾射撃をするような御努力をしていただくように要望いたしまして、時間がございませんから私の質問を終ります。
  92. 植原悦二郎

    植原委員長 岡田春夫君。
  93. 岡田春夫

    ○岡田委員 時間が制限されておりますから、簡単に主要な問題を二、三特に鳩山総理大臣に伺いたいと思いますが、この間予算委員会において相当論議された例の日米共同声明の問題であります。この問題について、予算委員会では赤松君の質問に対しまして、鳩山総理大臣並びに重光外務大臣答弁をいたしておりますが、その要旨は、今度の共同声明というものは、両国の政府が合意した共同の意思表示であって、このことは両国間における法律的な権利義務を発生するものではない、こういう点を明確にされたと思うのであります。しかもこの拘束力については、今後の歴代内閣を拘束するものではないが、少くとも鳩山内閣は政治的な責任を負う。そうして今後の内閣においては、これを尊重することを期待する。この意味の答弁があったとわれわれは記憶をいたしておるのでございますが、この点はきわめて重要な問題でありますので、大体ただいま私が要約して申し上げました点について、間違いがないかどうか、この点を鳩山総理大臣からまず第一に伺いたいと思うのであります。
  94. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたは、それは速記録から抜萃されたのでしょうか。私は大体そういうように思います。ただ誤解を生ずるといけませんから申し上げますが、ああいう約束をしたのは、法律的にいえば、条約とは違って将来の内閣を拘束はしない。けれどもあの中にも二色ありまして、現在実行すると約束した約束があり、将来のことについても声明みたいなものがあります。将来についての声明みたいなものは、将来の内閣を拘束はしないという意味で言ったのであります。予算に関することは、あの行政協定に書いてある通りに、日本の予算に計上して国会の承認を経ることが必要であることは明瞭であります。
  95. 岡田春夫

    ○岡田委員 今の答弁でちょっと重要な問題がありますが、内容は二つに分れている。将来の問題については、これは今後の内閣を拘束すべきものではないという点が明確になりました。しかし現在の問題について、この点は別である。こういう意味の御答弁であったようでありますが、現在の問題につきましては、これは法的な拘束力を持つものであるかどうか。
  96. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政府が約束したのでありますから、その政府は、約束したその責任を負うのは当然であります。
  97. 岡田春夫

    ○岡田委員 それは約束でありますから、責任を負うのは当然であるというお話であるならば、これは政治的責任であると私は解釈いたします。法的な責任であるとは解釈できないと思いますが、その点はいかがですか。
  98. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 法律的という意味は、条約上の義務を負うのではないという意味で言っているのです。
  99. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは次に問題を発展させて伺いますが、ただいまのお話のように、共同声明の内容国際法上による条約の規定、あるいは憲法上に規定されておりますこういう条約の規定、そういうものではないということが明確になってきたわけです。従って今度の三十年度の予算の中に組まれております防衛分担金の内容について、国会が審議した場合に、この審議権を拘束するものでないということも、もちろん言うまでもないと私は考えておりますが、いかがでございますか。
  100. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りであります。
  101. 岡田春夫

    ○岡田委員 といたしますならば、今度の国会の審議によりまして、防衛分担金について、これを削減するというような場合が可能であるかどうか。もしそのようになりました場合に、当然これは可能であると私は考えますが、その場合に、鳩山内閣が共同声明を出されました限りにおいて、削減されましたその予算案に対して、政府はどのような責任をおとりになるお考えですか。
  102. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 予算が通過しない場合においては、内閣として責任をとるよりほかに道はありません。
  103. 岡田春夫

    ○岡田委員 この点はきわめて重要でありますから、もう一度明確に伺っておきたいと思いますが、予算全体が通過しないということを申し上げたのではないのであります。防衛分担金の額において、これが減額されるというような場合においては、鳩山内閣はどのような責任をおとりになるか、この点を明確にしておいていただきたいということなんです。
  104. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 内閣は、約束をしたことを破るのでありますから、それについての責任はとります。
  105. 岡田春夫

    ○岡田委員 責任をとるというお話を今伺ったのですが、しかしこれは日本とアメリカとの両国間における共同声明という、きわめて重要な、いわば両国間の声明、国際間における声明であると思うのです。単なる鳩山内閣だけの声明ではないと思う。従ってこのような両国間における共同声明に反したような国会の審議の結果が出てきたならば、単なる責任を負うという程度、たとえば間違いましたとか、あるいは申しわけありませんとかいうような責任のとり方の程度ではないだろうと私は考えますが、それについてどのような決意をお持ちになっておるか。その点をもう一度明確に伺いたいと思います。
  106. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの、責任をとるという以外に御答弁はできません。
  107. 岡田春夫

    ○岡田委員 ただいまで明確になりましたことは、あなたがどのような共同声明をされようとも、われわれは国会の審議権を通じて、この防衛分担金について適当な処理を行わなければならないということを明確にしておるわけであります。ですから、あなた方が、これが条約あるいは法的な拘束力というものを持たない限りにおいては、どのような共同声明を行われようともこれは一片のほごにしかすぎないということを明確に知っておいていただきたいと思います。  そこで次の問題でありますが、アジア・アフリカ会議の問題です。いわゆるバンドン会議につきましては、これはすでに予算委員会においても再三質疑応答が行われておりますし、本会議でも、私の記憶によると一部の質疑応答が行われたような記憶をいたしておりますが、このバンドン会議について政府は全面的に賛成である、こういうように答弁をしておられるように私は記憶いたしておりますが、その点は間違いございませんか。
  108. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 間違いありません。
  109. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは私はここで読み上げますが、バンドン会議の最後の段階に入りましてから共同コミュニケが発表されております。この共同コミュニケの中でこういうことが明確に実はうたわれているのであります。これは「世界平和と協力促進」の中で、原水爆の問題についてであります。読んでみますと、「会議はアジア・アフリカ会議に集まった諸国民が軍縮、右にあげた兵器の禁止」——「右にあげた兵器の禁止」というのは、核兵器並びに熱核兵器の生産、実験、使用の禁止、これをいっているわけです。「禁止を支持することを宣言し、関係国民と世界世論に以上の軍縮と禁止をなし遂げるよう呼びかけることは、人類文化に対するその義務であると考えた。」このように明確にうたっております。それからその少し前に「会議は人類と文化をその絶滅の恐怖と見通しから救うには、軍縮と核兵器熱核兵器の生産、実験、使用の禁止がぜひ必要であると考えた。」このように明確に共同コミュニケとして、しかも日本代表である高碕代表も参加いたしましたこの共同コミュニケが発表されておりますが、この点について特に日本としては重大な関心があるわけでありますけれども、去年は、吉田内閣の当時において太平洋の公海上において原水爆の実験が行われました。これに対してその当時の岡崎外務大臣は、この実験に対して協力をする、こういう態度を明確にいたしたのでありますが、少くとも鳩山内閣においては、この共同コミュニケに対して全面的に賛成された限りにおいては、この実験についてもあくまでも禁止するように協力をするのが、このバンドン会議を通じての鳩山内閣の責任であると私は考えますが、この点はいかにお考えになりますか。
  110. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたのおっしゃる通り考えます。禁止されることが理想であります。
  111. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではそれについてどのような努力をされるお考えですか。
  112. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 実験をしないように望んで、その目的の達成のために努力をするのであります。
  113. 岡田春夫

    ○岡田委員 このバンドン会議の精神を全部認められたとするならば、そこで平和十原則の問題もこれは当然認めておられると私たちは考えておりますが、この点については重光外務大臣に特にお伺いをいたしたいと思いますけれども、この平和十原則については、政府としてはこれを支持されますか、いかがでありますか。
  114. 重光葵

    重光国務大臣 その原則は支持する方針でございます。
  115. 岡田春夫

    ○岡田委員 外務省のバンドン会議に関する正式の報告書によりますと、平和五原則並びに平和共存という思想を排除し得たことは日本代表の成功であったという旨の報告が実はあるのですが、そういう関係からいうと、平和五原則並びに平和共存と、平和十原則とはどういう違いがあるとお考えになるか、この点を伺いたい。
  116. 重光葵

    重光国務大臣 委員長が御説明になると思います。(笑声)その点は、私の了解しておるところを御説明申し上げますと、平和五原則は御承知通りに、ある国々の代表者が非常に熱心に主張しておった原則でございます。日本といたしましては、さような一部分の代表者の主張するものよりも全部が認め得る、また広い平和原則が採用されることを希望したのでございます。そうして特に日本側としては、いかなる紛争でも国際紛争となり得る紛争は、武力を排して平和的手段で解決するというその点に非常に重きを置いて主張をいたしてその主張は十原則の中に取り入れられておる、こういうことになりました結果、この十原則は非常に平和のために有意義である、こう考えております。
  117. 岡田春夫

    ○岡田委員 時間が来たらしいですから簡単に言いますけれども、今の御答弁を伺っていると、ああいうものは武力に訴えないで平和的に解決する、そういうような精神をできるだけ平和十原則に盛り込んでいくということに成功したのだというような御答弁があった、と思いますが、実は平和五原則もそれと同じことをいっておるのです。大体平和五原則は、平和十原則の中に全部精神は盛り込んで入っております。それなのに、あなたは平和十原則は認めるけれども、平和五原則は認めないかのような今の御答弁でございますが、今の御答弁に関する限り、平和五原則もお認めになっておるものであろうと私は考えますが、さように了承して間違いございませんか。
  118. 重光葵

    重光国務大臣 今申しました通りに、平和五原則というのは、ある国々の特に主張したものでございます。日本側としては国際連合の憲章ということに重きを置いて、これを世界的の平和原則にしたい、こういう希望を持ってその希望を成就することに成功したと思っておるのであります。むろん平和五原則のごときが、この十原則の中に入っているわけでありますから、それに異存はございません。しかしそれを別々に取り扱うという取扱いぶりに満足を感じなかったのであります。それを国際連合の憲章の趣旨として世界的に取り扱うことによって非常に大きな意義があったわけだ、こう考えております。
  119. 植原悦二郎

    植原委員長 岡田春夫君、時間ですから御注意下さい。
  120. 岡田春夫

    ○岡田委員 この問題はもう少し実は伺いたいのでありますけれどもこれは外務委員会であとで重光外務大臣にこの問題だけに限ってやりたいと思います。  それで問題を進めますが、先ほどきっと穂積君からいろいろ御質問があったと思うのですが、日中貿易協定の問題について特に鳩山総理大臣にお伺いしておきたいと思うのですけれども、アメリカ側がいろいろな形で日中の貿易協定を実際上進めること、また協定を締結すること、今後実際に貿易を進めていくことについても阻害をしつつあるという事実がたくさんあがっております。これは政府の側でも御存じないとは私は言わせないつもりでありますが、たとえば、住友銀行が中華人民共和国との取引に基いた決済ロンドンで行なった際に、このドルが凍結をされている事実があがっております。あるいはまたこれは日本の問題ではありませんけれども、去年ソビエトからの金の売却に対してベルギー銀行便宜を与えたというようなことで在米ドルを凍結したというような、こういう幾つかの問題で実際上アメリカが日本中国との貿易を阻害しつつある事実が続々と実は出てきているわけであります。そこで具体的な問題としては、ことしの春の選挙中におけるアメリカの声明でも明らかになってきているわけですが、外国資産凍結令、この問題が一番今後の問題として日中貿易促進する意味ではいろいろな障害として出てくるであろうと考えておりますし、現実にも出てきているわけであります。これはアメリカの国内法ですが、これによって日本貿易が阻害され、制限をされるということはわれわれとしては断じて認めるわけにはいかないわけであります。そこでこの問題について鳩山総理大臣はこのようなアメリカからの拘束というものをどういう形で解決されていくか、この問題を解決しない限り、日中貿易を今後大きく発展さしていくことは困難である、かように考えておりますが、今までの鳩山内閣の一般的な、ただできるだけ進めますというような抽象的な御答弁ではなくて、ただいま申し上げたような具体的な事実に対してはどのような形をとられるか、このような点について具体的な御答弁を願いたいと思います。
  121. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 何かアメリカが誤解をしなければ、そういうようなことはないはずでありますから、誤解を生じないようにして参りたいと思います。
  122. 植原悦二郎

    植原委員長 岡田君、もう時間ですから、ごく簡単に願います。
  123. 岡田春夫

    ○岡田委員 何か誤解をしておるというお話ですが、すでに現実にただいま申し上げたような住友銀行の実例などが起っているのです、それではこういう問題についてどのような努力をされてきておられるか、そしてこれをどういう形で解決されるおつもりであるか、こういう点をもっと明確に御答弁を願いたいと思う。
  124. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 はなはだ遺憾でございますが、私はそういうような事実について知りませんでした。よく調査をいたしまして答弁をいたします。
  125. 植原悦二郎

  126. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私は特に鳩山総理大臣にお伺いいたしたいのは、ただいまも岡田君からの質問にもありました共同声明の問題でありますが、鳩山内閣が政治的責任を負う、こう言っておられます。この責任はだれに対する責任でございますか。
  127. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 どういう質問ですか。
  128. 大橋武夫

    大橋(武)委員 あなたが責任をとるべき相手方は何人でございますか。
  129. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 アメリカと約束したわけです。
  130. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、あなたの答弁はアメリカに対して責任をとるということですか。ただいまの総理大臣答弁は、アメリカ政府に対して鳩山内閣はこの共同声明の結果責任をとらざるを得ない立場にある、こういうお答え総理大臣からいただいたと思いますが、それでよろしゅうございますか。
  131. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りです。
  132. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうなりますと、鳩山内閣としてはアメリカに対して責任をとらなければならぬ立場になっている。これは単に権利義務に関係した外交上の法律的文書ではないという今までの政府の御発表とは大分違っているのではないかと思いますが、その点いかがですか。
  133. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は違っていないと思っております。
  134. 大橋武夫

    大橋(武)委員 あなたはしかしこの共同声明の結果として、アメリカ政府に対して責任をとらなければならぬという新しい立場に追い込まれている。これは政府として、そういう日本の国の立場から見ますれば、日本政府が外国に対して一つの新しい責任を負担することでありますからして、これは私はいわゆる憲法上の条約の一種であるといわざるを得ないと思いますが、この点についてはいかがですか。
  135. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私の責任をとると言ったのは、政治上の責任をとるという意味であります。誤解のないようにお願いいたします。
  136. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると責任はとらなくてもいいけれども、特にとってやる、こういうことでございますか。
  137. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政治上の責任というのは、そういう場合が生ずればさらにアメリカと交渉をしなくちゃなりますまい、そういうような意味の政治的の責任であります。
  138. 大橋武夫

    大橋(武)委員 アメリカに対して政府は政治上の責任を負うという根拠をもう少し私ども理解できるようにして下さい。あなたは憲法によって国会及び国民に対して責任を負うというのならわかるのですけれども、法律あるいは条約によらずして、鳩山内閣はなぜアメリカ政府ないしアメリカに対して責任を負わなければならないのであるか。それはそのままでは私ども理解することはとうてい不可能であります。
  139. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は政府としてアメリカと交渉をすれば、政府としてアメリカに対して責任を負うのは当りまえだと思います。法律的にどういうふうに申しますか、私にはわかりませんから、もしもその点についてもっと詳細の説明が必要ならば、法制局長官からどうぞお聞き下さいませ。
  140. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私は総理の御弁明に対する説明を承りたいのであって、ほかの問題ならば他の機会にいたします。そこで鳩山内閣はアメリカから要求がなくても責任をとるのですか。あるいは要求されるだろうから責任をとる、こういうことでございますか。
  141. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 要求の有無にかかわらず、約束上の責任をとるのです。
  142. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、責任をとるということを約束されたわけですね。
  143. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 約束したから政治上の責任をとるという意味であります。
  144. 大橋武夫

    大橋(武)委員 その責任は約束の内容によってきまるべきものです。従ってその約束の内容はそれじゃどういうことでございますか。
  145. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 声明に書いてあることがその内容であります。
  146. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それでは伺いたいですが、声明の内容には、日本側のなすべき事柄として予算ということが規定してある。それからアメリカ側においては分担金の削減に応ずる、こういうことがきめてあるわけです。そこでこの予算の方がうまくいかなかった場合には鳩山内閣としては責任をおとりになる、こういうことになっておりますが、うまくいった場合に、それではアメリカは必ず分担金を削減するというようなそういう義務は、この声明からは全然発生していないのでございましょうか。
  147. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その声明は交換の文書でありますから、アメリカもそれについて約束したことは——共同の声明ですから、アメリカも声明をしているわけでありますから、責任はむろんとると思います。
  148. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすればやはりアメリカにも削減をするという責任があり、日本側には予算を成立せしめるという責任があるわけなんであります。これが単なる政治的な問題であって法律的な問題でないと言われる根拠を、どうしても私は理解ができないのでございますが、十分に御説明をいただきたいと思います。
  149. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 法制局長官から答弁してもらいます。
  150. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私は総理大臣予算委員会において言明された事柄自体について質問いたしておるのでございますから、総理大臣の明快なる御説明を伺いたいと思います。政府委員からの御答弁でございましたならば、この限られた時間でなく、また他の時間にゆっくり伺わせていただきます。
  151. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が今日まで答弁をいたしたことによって御了解を願いたいと思います。
  152. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、今までの答弁以外に私の質問に対する答弁はないということでございますか。
  153. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 必要を感じません。
  154. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私は質問をいたしておるのであって、法的な責任がないとあなたが言われておるその根拠を伺いたいというのに、何ゆえにそれに対して説明ができないのですか。できないならできないとはっきりおっしゃい。必要を感じないとは何事ですか。われわれは国会法の規定によって質問の権利を持っておるからこそ質問しておる。これに対して政府答弁の必要を認めないというのは一体何事でございますか。
  155. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政府としては共同に声明したのでありますから、それによって政治上の責任を負うと言ったのであります。それ以外には答弁ができません。
  156. 大橋武夫

    大橋(武)委員 だからその責任が出てくる根拠を伺いたいと言っているのです。どうしてその責任が出てくるのか、そしてどうしてそれが法律的の責任でなくして単なる政治的の責任にすぎないのであるかということを説明していただきたい。
  157. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういう内容として声明をしたのですから、声明をしたことによって責任をとるのだ、これ以上答弁のしようがないじゃありませんか。
  158. 大橋武夫

    大橋(武)委員 この問題は幾ら質問してもこの際は御答弁がないと思いますから、また他の機会に質問を留保いたしまして、次の問題に移ります。それではこういう共同声明をしなければならなくなって事情について総理大臣から伺いたいと思います。
  159. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 行政協定上防衛分担金の相談をしなくてはならない事態でありますから、それで交渉をいたして共同の声明をしたわけであります。
  160. 大橋武夫

    大橋(武)委員 交渉をしなければならぬ事情はよくわかっておりますが、交渉の結果なぜ声明をしなければならなかったか。その点の理由を承わりたいのです。
  161. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はアメリカと相談をしてきめたことでありますから、これはやはり共同声明をした方が両国のために便宜であると思ったのであります。
  162. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうするとこれは日本側の希望によって声明するに至ったわけでございますか。
  163. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 両方の合意によって、両方で希望したのであります。
  164. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そこで次にこの声明の内容になっておりまする点の中で予算について伺いたいのですが、この予算外契約が声明の中に入っておりますが、かような予算外契約はいかなる理由によって予算外契約をする必要があったか。予算外契約の必要な理由について御説明をしていただきたいと思います。
  165. 重光葵

    重光国務大臣 はっきりと予算に組む段取りに至っておりませんでしたから、その問題を予算外契約に持っていった次第でございます。
  166. 大橋武夫

    大橋(武)委員 これで予算の中にはっきり組めば予算外契約が要らなかった。しかし予算の中に組むことができなかったから予算外契約としてこれを予算以外にはみ出した、こういう意味でございますか。
  167. 重光葵

    重光国務大臣 そうでございます。そうでございますが、三十一年度、三十二年度の分が当然予算外になるからさようにいたしました。
  168. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それでは三十一年度分はどういう理由で、特に本年度において予算外契約をする必要がありましたのですか。また三十二年度の分はどういう理由によって予算外契約をしなければならなかったのですか。予算外契約を必要とする理由について伺いたいと思います。
  169. 重光葵

    重光国務大臣 その点は予算に関係する問題で、私はやや不案内でございますけれども、それは予算書に書いてある通りに、今年において発注の契約をしなければ、これは間に合わぬわけでありますから、さようなことにいたしました。
  170. 大橋武夫

    大橋(武)委員 特に三十二年度において支払いを予定されております予算外契約の内容といたしましては、飛行機が数台載っております。しかも同種の飛行機は今年度に契約をして、今年度に引き渡されて、今年度に支払わなければならぬものは今年度の予算として計上されておる。来年度に引き渡されて、来年度に支払うべきものは、三十一年度の予算外契約として掲げられております。一体飛行機一台をなぜ三十二年度のものを今年度において契約しなければならぬのであるか。この理由をぜひ伺いたいと思います。
  171. 重光葵

    重光国務大臣 防衛庁長官がおりませんものですから、十分な御説明はできないかもしれません。私の知る限りのことをお話しますが、それは飛行機の製作に関係している問題でありまして、飛行機の計画は本年度においていたさなければならぬ状態でございますので、本年度において計画をいたしまして、そしてその計画に従って直ちに発注する必要を生じましたのでそういうことになったと私は承知をいたしております。
  172. 植原悦二郎

    植原委員長 大橋君、時間制限をこえますから御注意願います。
  173. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それは抽象的理論としては納得することができるかもしれませんけれども、具体的にわずかに四千万円か五千万円の飛行機が、しかも三十二年度においてでき上って引き渡しを受けるべき飛行機が、何ゆえに今年度において予算外契約として発注しなければならぬか。これはそう一通りのことではないと思うので、その具体的な事情をぜひ明らかにしていただきたい。
  174. 重光葵

    重光国務大臣 失礼でございますが、私から御説明を申し上げるのもいかがかと思いますから、防衛庁長官の出席のあった上で御説明申し上げることに取り計らいたいと存じます。
  175. 大橋武夫

    大橋(武)委員 これは外務大臣所管事項でありますところの共同声明の内容そのものについて今質問しておるのですが、防衛庁長官がいなければわからないということを外務大臣言っておられますが、委員長、いかがでしょう、それは。
  176. 植原悦二郎

    植原委員長 委員長にその問題を御相談にあずかってもいたし方ありませんが、時間制限外ですから、大橋君に申し上げますが、あなたの御質問中、総理大臣にお尋ねになった非常にこまかい法理上の問題は、私は法制局長官でいいと思います。それをあなたは……。
  177. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それはあなたの内閣ができたときに……。
  178. 植原悦二郎

    植原委員長 議論をいたすのではありませんが、委員長としての考えを言うと、公平に見てそう思いますが、ただいまのような問題は、それはかなり予算に関する問題でありますから、むしろ外務大臣大蔵大臣とのおいでのところであなたはさらに御追及なさるならなさった方がよかろうと私は思います。それで時間がこえておりますから……。
  179. 大橋武夫

    大橋(武)委員 時間は時間ですが、私の聞いたところを何も答えてくれない。それで時間がない、時間がないと言われることはひどい。
  180. 植原悦二郎

    植原委員長 委員長は答えておると思います。
  181. 大橋武夫

    大橋(武)委員 いや答えておりません。
  182. 植原悦二郎

    植原委員長 それはあなたと私の意見相違ですから仕方がありません。
  183. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それでは私はただいまの問題は、さらにこの委員会において、総理大臣外務大臣大蔵大臣列席の上で一つ明快な御答弁を要求いたします。委員長、よろしくお取り計らいを願います。
  184. 植原悦二郎

    植原委員長 大蔵大臣のことなら予算委員会の方でお尋ねになる方がいいのではないですか。あなたは予算委員——ここには外務委員としてかわっておいでになっただけで、またいつでも予算委員としてかわれるのだから、そちらの方で御質問になった方が委員長は適当だと思います。
  185. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それでは一点だけ外務大臣に特にお伺いいたしたいと思いますが、平和条約第五条の(a)の三項というもの、それからMSA協定附属書Dという文書がございます。これらの文書と今度の日中貿易についての総理大臣協力ということは、抵触するかしないかということについての政府の御見解を明確にしていただきたいと思います。——外務大臣の声明を要求します、これは事が重大でありますから。
  186. 重光葵

    重光国務大臣 私はそれは矛盾はないと思います。
  187. 大橋武夫

    大橋(武)委員 どちらもですね。
  188. 重光葵

    重光国務大臣 どちらもです。前の平和条約第五条(a)の第三項、それとは矛盾がないと思います。その次はMSA協定の御指摘の条文と、これは同じ趣旨のようでございますから、矛盾はないと思います。
  189. 植原悦二郎

    植原委員長 時間をこえているから……。
  190. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それではもう一度保留してある点を明確にいたします。先ほどの政治的責任だけであって法律上の責任はないのだと言われた鳩山総理大臣の先般の予算委員会における答弁、これについて私は明確な根拠を承わりたいと、こう申し上げたのですが、それについては必要はないとか、あるいはわからぬとか、こういうお話でございましたが、これは一つなるべくすみやかに総理大臣からはっきりしていただきたい。こう存じます。
  191. 植原悦二郎

    植原委員長 私は委員長として、その御質問に対しても答弁してあると思います。御研究を願います。
  192. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それはとんでもない話で、さっきあなたは、法制局長官から話すと言われた。それで私は法制局長官ならゆっくりまた伺うということを申し上げたじゃありませんか。法制局長官に説明させたいということは、これは政府としてはまだ言うべきことかあるということを前提としているわけだ。だから……。
  193. 植原悦二郎

    植原委員長 総理大臣としては——あなたお聞きなさい。総理大臣としては、予算委員会やここにおいて答えた以外につけ加えることはないのだ、それで御了解願いたい。なおさらに法理上の問題があったなら法制局長官から答えさせますというのが、さっきのあなたの質問に対する最後の問題で、そういうことに御了承願いたいと思います。
  194. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そういうことに速記録がなっておりますか——あとで速記録を、そういうことになっているかどうか調べたいと思います。
  195. 植原悦二郎

    植原委員長 戸叶里子君。
  196. 戸叶里子

    戸叶委員 私、時間がございませんから、日ソ国交調整の点で一、二点伺いたいと思います。その前に一点伺いたいことは、六日にフィリピンのネリ大使が賠償の問題で日本に来られておりますが、その後日本とフィリピンとの国の賠償の交渉はどんなふうになされたか、その経過を御報告願いたいと思います。なおついでにお伺いしたいのは、そのネリ大使がマグサイサイ大統領から鳩山首相あてに、そうしてガルシァ外相から重光外相あてに手紙を持ってきたということも承わっておりますが、もしお差しつかえなければ、それもお聞かせ願いたいと思います。
  197. 重光葵

    重光国務大臣 フィリピンの賠償の交渉が進んでいることは事実でございます。ネリ大使が到着いたしまして、そうしてわが方と数次会談をいたしております。そうしてこの問題の促進をはかっている次第でございますが、交渉内容は今申し上げられないことを御了承願います。今お話の手紙のことでございます。これは持って参りました。それはネリ大使がこの問題について十分の権限を持って日本側と交渉をする地位にあるのだという趣旨の手紙でございます。一つ向う政府首脳から日本政府首脳にあてた手紙、そして一つ外務大臣から外務大臣にあてた手紙、その内容はさような趣旨のものでございます。
  198. 戸叶里子

    戸叶委員 フィリピンの政府からネリ大使に対して十分な権限を与えているという身分上の保障、あるいはまた正式な代表に対する裏づけをしております以上は、今度の大使と日本側との折衝によって大体賠償協定は成立するお見通しでございましょうか。
  199. 重光葵

    重光国務大臣 極力成立させたいと思って努力をいたしておることを申し上げます。
  200. 戸叶里子

    戸叶委員 けさほどの新聞に出ておりますところによりますと、フィリピンの方から八億ドル十年支払いというふうに伺っておりますが、これは大体そういう線をフィリピンから出されたのでしょうか。もしそれが出されたとすると、日本はそれにどういうふうなお考えを持って臨まれるのでしょうか。
  201. 重光葵

    重光国務大臣 交渉内容はここで申し上げることを差し控えさしていただきたいと思います。新聞記事は何も双方の交渉委員の責任を負うべき記事ではございませんことを申し上げます。いろいろな点について真相に近いものはないとは申し上げませんけれども、これは双方から出たものでないということを申し上げます。
  202. 戸叶里子

    戸叶委員 何かわかったようなわからないような御答弁に私は伺ったのですけれども、そうすると新聞の報道に近いものはあるけれども、あれが正しいとはいえない、こういうふうに了承していいわけですか。
  203. 重光葵

    重光国務大臣 私は新聞記事については何とも申さないのでございます。私は新聞記事については責任を持つわけには参りません、こう申し上げます。
  204. 戸叶里子

    戸叶委員 新聞社の方がどこかから聞いて書かれたのでしょうから、結局何かそこに根拠があったものと思われますが、これは政府の方で交渉中であって、公けの席でおっしゃれないのでしたらこれ以上追及いたしません。ただ私賠償交渉に当りまして一言お願いしたいのは、ほんとうに誠実をもって臨んでいただきたいということでございます。それは先ごろ来られました未亡人の方々のお話を聞きましても、戦争中の憎しみを持たれておりましたものを超越して、しかも夫が殺されるときには子供がおなかにいたにもかかわらず、その子供を生んで、その子供にまで日本に対しての親善の気持を持たせたいという希望で連れて来たと言ってこの前あいさつされました。そういう考え方を持っておられる未亡人の訪問であり、しかも賠償の額ということは問題でなくて、むしろ国と国との誠実の問題が大事だ、こう言われておりました言葉を聞きましても、日本政府もどうかそうした誠実さをもって交渉に当っていただきたい、これを私はお願いする次第でございます。  次に日ソ交渉の問題でございますが、正式に日ソの間の正常な国交が結ばれるということはまことに望ましいことで喜ばしいことだと思います。ただ先ごろからの予算委員会等の御答弁を伺っておりまして、私まだはっきりしない点がございます。鳩山総理大臣の御答弁によりますと、正常な国交回復に入るには領土の問題とかあるいは漁業権、引き揚げの問題、そういった懸案の問題を解決した上で正常な国交に入る、つまりそういった問題をロンドン松本全権が交渉して、そして正常な国交回復になるというふうにも了解したのですが、その点はいかがでございましょうか。
  205. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とにかくソ連と日本とはいくさの済んだままになっておるわけでありましてソ連はその結果日本領土をまだ占領しておるわけでありますから、戦争が済んだ後には講和条約をするというのが常識であります。講和条約をするのには、占領していた地域はどうなるか、あるいは戦争によってソビエトに抑留されている日本人はどうなるか、日本の漁業権はどうなるかということが、当然戦争をやめることに付随して出なくちゃならない問題だと思いますから、そういうような問題を片づけて常識的な講和条約を結びたい、それが国際関係を正常化するのには最も常識のある道だと思ってそういうことを申したのであります。
  206. 戸叶里子

    戸叶委員 鳩山総理大臣のお考え、まことにごもっともだと思うのですが、ただその場合にいろいろな問題にぶつかってくると思います。そうした場合に、もしも話がうまくいかなかった場合、日本から持っていった話に先方が応じなかった場合にはそのまま交渉を打ち切られますか、それとも一応そういう問題はあとにしても戦争を終えて正常国交にするというような方式をとられますか、いかがでしょうか。
  207. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 六月の初めから交渉をいたすのでありまして、交渉する前にいろいろな場合を想像して申し上げない方がよいと思いますから、国際関係を正常化することについての私の話だけでどうか御了承を願いたいと思います。
  208. 戸叶里子

    戸叶委員 ここで特に領土や引き揚げなどの大きな問題がございます。二十一日にはソ連に抑留されておられる家族の人たちを中心に国民大会を開きまして、日ソ交渉が始まる場合にぜひ一人残らず抑留者を帰してもらいたい、こういうことを国民の要望として訴えることになっており、鳩山首相もそこに出られることになっておりますので御承知だと思います。この間引き揚げてこられた方のお話を聞いてみましても、もう刑期がすでに終った人であっても抑留されておる人もあり、そしてまたそこにおる方々も薬が不足であり、栄養不足のためにどんどんなくなっていくというような人道上の問題も起きておりますので、ぜひともこの引き揚げの問題や領土の問題はこちらの望む通りに解決して、そして戦争終結宣言、講和条約にしていただきたい、これをお願いしたいのでありますが、いかがでございましょうか。
  209. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私もあなたのおっしゃるようにぜひいたしたいと思います。
  210. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで領土の問題でございますが、これもおそらくは何とも積極的には御答弁願えないと思います。ただ伺っておきたいことは、戦時中に締結されましたいわゆる秘密ヤルタ協定というものは、鳩山首相のお考えになる面では間違っていたと、こうお考えになりますかどうですか、この点伺いたいと思います。
  211. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本はヤルタ協定にはもとより当事者ではございません。しかし日本に対してはずいぶん耐えられない約束をしたものだと思います。
  212. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで鳩山首相のお気持もわかりましたが、日ソ交渉に当って領土問題を早く解決するという意味からも、私は一日早もくヤルタ協定を破棄するような会合を当事国に持ってもらうべく要請して、そして破棄するというような宣言をしてもらうのが非常にいいことだと思いますが、この点について首相はどうお考えになりますか。
  213. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私もああいうような条件は、むろん無条件降伏はしておるにせよ、ずいぶん不都合な条約だと思いますから、破棄してもらうように努力をいたしたいと思います。
  214. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは首相が努力をするようにお話しになるということを伺って、了承したいと思います。そのほか二、三ございますが、時間がありませんのでこれをもって終了いたします。
  215. 植原悦二郎

    植原委員長 福田篤泰君。
  216. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 ただいま戸叶委員質問されたことについて、私はもう一歩突っ込んでお尋ねし、またもう一歩突っ込んだ御答弁をいただきたいと思います。  それは日ソ交渉でありますが、本会議または各委員会におきまする総理大臣の御答弁は、いまだに統一された最終的のものとはどうしても伺えない点がございます。そこでもう一歩突っ込んではっきりお伺いしておきますが、日ソ交渉の懸案、いわゆる日ソ間の漁業、引き揚げ、また領土問題、こういう点を解決しなければ日ソ交渉の話はつかないのであるか、この点もう一度再確認したいと思います。
  217. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 福田君、外務大臣から答弁してもらっていいでしょう。そういう手続を解決して国際関係を正常化したいという以上の答弁は私にはできませんから、外務大臣から……。
  218. 重光葵

    重光国務大臣 この点は、私の考え予算委員会でもはっきり申し上げたつもりでございます。これは私の考えだけというわけではなくて、政府考えと私は申していいと思います。国交を回復する、正常化する、戦争状態をやめて平和状態にするということは、すなわち平和条約をこしらえるということであります。そうでなければ平和関係はできません。その平和関係回復して平和条約をこしらえる、サンフランシスコ条約もその近い一例であります。それには関係国の間に横たわっている重要な問題についてはこの平和条約によって処理しておかなければならぬ、すなわち解決をしておかなければ平和条約は成り立たないと思います。さて重要な問題は、関係国というのはこの場合においては日ソの間でございますが、その日ソの間にどういう重要な問題があるか。その間に横たわっている問題の全部を解決しなければ目的を達しないかということは、その点にいきますと私はやはりそこに常識的の限界もあろうかと思います。しかしこれを概括的に言えば、重要なる問題については、これはぜひとも解決をしていかなければ条約はできぬとこう思います。そういう御答弁をいたしたのでありますが、私は今日の場合もそのことを申し上げて、それで御答弁としては尽きておる、こう考えます。
  219. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 これはこれからの問題でありますから、国家的見地からあまりこまかい点、政府当局も困るような点は私もお尋ねしたくありません。ただお尋ねしたいことは、条約内容の重要なるものという前提の問題であります。われわれ常識的には一応考えておりますが、政府考えておられる重要なものという範疇を一つお示し願いたいと思います。
  220. 重光葵

    重光国務大臣 その点は一つ一つ申し上げることを一つ差し控えさせていただきたいと思いますが、しかし今日、今御議論になっておるような問題はすべて重要な問題だと私は考えます。
  221. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 今議論になっておることが重要であるならば、領土その他すべてを含むと了解いたします。もう一歩突っ込んで私ども心配する点は、今までのソ連外交の常套手段として、こういう手を向うが打ってくる場合も考えられると思うのであります。それはまず国交調整、すなわち戦争状態を終結させよう、従って相互に大使を交換して大使館を正式に設置する、懸案についてはゆっくりその上で話し合おうという、いわば肩透かしの戦術でやってくることも十分考えられるのでありますが、そういう場合には政府は当然拒否されまして、一応重要な問題について話し合いがついた上で初めて国交調整を正式にされて、大使を交換するものと考えますが、この点はどうですか。
  222. 重光葵

    重光国務大臣 戦争終結の宣言ということについてのお話でありましたが、これはいつでもできます。現にソ連は、ドイツに対しては戦争終結の宣言をやっております。これは国交の回復と何も関係はございません。一つ国内的な処置となるわけでありますが、しかしそれ自身として政治的な効果はあるでございましょう、またそれをねらったものでございましょう。しかしながら戦争終結の宣言をやりこれを受諾して、そしてここに合意が成立して国交回復をやろうということになれば、これはまた別問題でございます。しかしさような例はドイツの例にもございません。おそらくドイツも、はっきりした平和条約をこしらえなければ国交の正常化ということは得られないつもりではっきり声明をいたしております。方針がそうであります。オーストリアの問題でも今回の国家条約なるものにみんな調印をして、これが平和条約になる、こういう関係にあります。従いまして日本といたしましては、やはり平和条約によって国交を回復する、こういうことにしなければならぬのであります。一方的の戦争終結の宣言等によって左右さるべき問題じゃない、こう考えております。
  223. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 私の申し上げておる点はこういう点であります。いわば重大な懸案の解決、すなわち日本が自主的に当然ソ連に要求して目的を達成しなければならない重要な懸案の解決はたな上げになりまして、ただ大使の交換となり、大使館の設置となって日本国内に合法的な、しかも強力な特権を持った共産主義の宣伝の根拠ができるということになった場合には、大へんなことになるということをお尋ねしておるのでありまして、今の御答弁でそういうことはない、いわば内容的にも懸案を解決しなければ向うの大使館設置なり、大使交換まではしないということがはっきりすればいいのでありますから、この点もう一度お答えを願いたいと思います。
  224. 重光葵

    重光国務大臣 さようなことにならぬようにやりたいと考えております。
  225. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 ならぬようにというのは、おそらくそれはしないという御意思だと思いますからそう了解いたします。  もう一点、これは総理大臣にお伺いしますが、この問の御答弁をお伺いしておりますと、日ソ交渉のためにはいわゆる保守合同を犠牲にしてもかまわぬ、正確な表現ではございませんが、こういう御答弁がありました。鳩山総理がいわゆる国家的な見地から超党派外交を提唱されたこともあり、またいわば保守政権の安定という点からも相当熱意を示されたこともあるわけでございますが、最近この保守合同につきまして、あなたが総裁をされておりまする民主党内にもその点に思想的な分裂があるとわれわれは考えておりますが、総裁として、総理大臣として、いわゆる保守合同ないし連携についてのはっきりした基本的なお考えをまとめて御答弁いただきたい。
  226. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、保守合同をするのにはその前提となるものは政策の一致だと思いますので、国民生活の安定とか、おもなる外交問題ということについては案ができなければ合同は無意味だというような考え方をしております。
  227. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 政策を一つの前提とし、その政策の共通性を前提としての合同という御意見は一応意見としてわかりますが、しからば今まで外交問題に関し、あるいは重要な内政問題に関しまして他党に、特に保守党としての自由党にどういう具体的な交渉をされたか、また熱意を示されたか、これを具体的に伺いたい。
  228. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 かって私が自由党に入党いたしますときに吉田君に、外交調査委員会、憲法改正委員会をこしらえてくれ、そうして政策を一致することにして合同したい、そういうような方向に進むようにしたならば入りましょうというような話をしたのでありまして、そのときから外交問題と、その当時におきましては憲法改正問題を重要な問題として進んできたようなわけでありますから、その委員会はただいまでも自由党にあるかどうか知りませんけれども、ずいぶん熱心に自由党において調査をしたはずであります。その文書ができておるはずでありますから、そういうような点からだんだんとその方に進んでくるものと思っております。
  229. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 憲法調査会については御説の通りでありますが、今現内閣の重大な対外方針一つの目標である日ソ交渉、この問題については自由党に何ら事前に基本的な話し合いもなければまた打ち合せもないものとわれわれは了解しておりますが、どうでありますか。
  230. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまのところまだそのところまで進んでおりません。
  231. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 全権随員の一人である松本君も近く御出発のようでありますが、このような重要な交渉が間近に迫っておるにかかわらず、まだその時期ではないというようにお考えになっておりますか。
  232. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 まだその時期に来ておらないというような気がしております。
  233. 福田篤泰

    ○福田(篤)委員 しからばどういう時期が一番よいとお考えになりますか。
  234. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 両党の間に合同問題についてもう少し真剣に考える人が多くなってきたときがその時期だと思っております。
  235. 植原悦二郎

    植原委員長 これにて通告者の質疑は全部終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。     午後一時四分散会