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1955-07-28 第22回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十八日(木曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 高岡 大輔君    理事 臼井 莊一君 理事 堀内 一雄君    理事 逢澤  寛君 理事 中山 マサ君    理事 戸叶 里子君       木村 文男君    保科善四郎君       眞鍋 儀十君    田村  元君       仲川房次郎君    山下 春江君       河野  正君    受田 新吉君  出席政府委員         外務政務次官  園田  両君         厚生政務次官  紅露 みつ君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局第二         課長)     小川平四郎君         大蔵事務官         (主計官)   大村 筆雄君         厚生事務官         (引揚援護局引         揚課長)    坂元貞一郎君         厚生事務官   田島 俊康君         建設事務官         (住宅局住宅企         画課長)    南部 哲也君         日本国有鉄道参         事         (営業局旅客課         長)      久山 富治君     ――――――――――――― 七月二十五日  ソ連抑留胞引揚促進に関する請願鈴木義男  君紹介)(第四五五八号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十六日  海外抑留同胞帰還促進等に関する陳情書外一  件  (第四六九号)  同(第四九七  号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  ソ連地区残留胞引揚日ソ交渉における残留  同胞引揚問題)に関する件  引揚者定着援護引揚者住宅の問題)に関する  件  留守家族援護に関する件  閉会中審査に関する件  委員派遣に関する件 請 願  一 在外帰還同胞帰還促進に関する請願(   亀山孝一紹介)(第六八二号)  二 同(中村時雄紹介)(第六八三号)  三 同(仲川房次郎紹介)(第七一五号)  四 同(伊瀬幸太郎君外三名紹介)(第七五一   号)  五 同(小川半次紹介)(第七五二号)  六 同(田中織之進君紹介)(第七五三号)  七 同(安平鹿一君紹介)(第七五四号)  八 在外帰還同胞帰還促進に関する請願(   柳田秀一紹介)(第七九〇号)  九 同(坊秀男紹介)(第八六九号)  一〇 戦没者遺族等援護強化に関する請願(   松平忠久紹介)(第八〇四号)  一一 在外帰還同胞帰還促進に関する請願   (菅太郎紹介)(第一〇六七号)  一二 同(山下春江紹介)(第一一一七号)  一三 在外帰還同胞帰還促進等に関する請   願(平田ヒデ紹介)(第一一二三号)  一四 ソ連抑留胞引揚促進に関する請願(田   中伊三次君紹介)(第一一二五号)  一五 在外帰還同胞帰還促進等に関する請   願(助川良平紹介)(第一二五四号)  一六 在外帰還同胞帰還促進等に関する請   願(粟山博紹介)(第一五三〇号)  一七 ソ連抑留胞引揚促進に関する請願(坂   田道太紹介)(第四三一六号)  一八 ソ連抑留胞引湯促進に関する請願(草   野一郎平紹介)(第四三四五号)  一九 ソ連抑留胞引揚促進に関する請願(平   田ヒデ紹介)(第四四五八号)  二〇 ソ連抑留胞引揚促進に関する請願(鈴   木義男紹介)(第四五五八号)     ―――――――――――――
  2. 高岡大輔

    高岡委員長 これより会議を開きます。  本日は引揚者定着援護に関する件及び留守家族援護に関する件について質疑を行いますが、その前に、この際日ソ交渉における未帰還同胞の問題について特に発言を求められておりますので、これを許します。中山マサ君。
  3. 中山マサ

    中山(マ)委員 私どもは、松本全権がお出ましになりますときに大会をやりまして、ぜひ抑留者を帰してもらいたい、それが前提で、その段階を越して初めて国父の調整ということも考えられる、それが一応のとってもらうべきはずのものであろうという話をあちらでお互いにかわしまして、お別れをしたのでございますが、その後、数回の会合におきましても、この問題で大使は粘っていただいておりましたので、非常に感謝をしておったのでございますけれども、今度発表されました巨頭会談後の動きを見てみますると、大した変りはないように私は思うのでございます。ソ連は、いわゆる戦犯者以外はソ連にはもう日本人はいないのだと言って主張をしていらっしゃいまして、その刑期が満了した者を帰す。それは今までソ連がとってきた一本道であったのでございますが、今度、巨頭会談後に、あそこでああいうふうな非常に友好的な空気が出たので、今度こそ大きな開きがあるだろうと思って、私どもは期待しておったのでございます。ところが、ただ十六名だけ、しかもそれが刑期満了の人であるということを聞かされたことに対しましては、いささか期待はずれというようなことを考えておりまして、外務省におきましても、何だか少しまゆつばもののようにお考えになっているということを新聞で見るのでございます。しかも、その十六名の中に、私どもの耳にあまりなれないところの外国人名前一つ出ております。その外人に対しての御調査——それは外国人名前を持っておりますけれども、これは日本人なのでございましょうか。その点も伺いたいのでございますが、外務省としてのこの問題についての御意見と申しましょうか、お気持と申しましょうか、まず承わってみたいと思います。
  4. 園田直

    園田政府委員 御質問の点につきましては、われわれも同様な観測をしてこれを見ております。先般の二十六日のマリク松本全権の会見の模様は、すでに新聞に報ぜられた通りでございますが、ただ、日本新聞は、どちらかと申しますと、抑留同胞送還の問題に一転機を来たし、一つの進展を来たしたかのごとき印象の書き方をしております。しかし事実は決してそうではございませんので、むしろ、日ソ交渉の過程としては、われわれが非常な警戒をもって観測しておった方向に来たような感じであります。  具体的に会談模様を簡単にまず申し上げますと、会談開始をいたしまして、劈頭、松本全権は、訓令通りに、国民支持による引き揚げ問題を取り上げまして、これを強く主張して、しばしばわが方より主張し依頼しておるが、この問題はどうなったのか、なお抑留者氏名についても聞きたいところであるが、その後どういうふうになっておるのかと問いただしたところ、マリクは、自分の方からもちょうど発言したいと思っておったところであると言って、このようにして、いかにも吉報かのごとき印象前提で、十六名の刑期満了の者の釈放の話題を提供いたしております。そうして、ソ連は、しばしば申し上げる通りに、抑留者送還自分たちは自発的に今までやってきたのである、これは完了されるまで逐次続行されるであろう、われわれの調査によると、今日未帰還の者は、服役中の旧軍人が千十六名、一般市民が三百五十七名、そのほかは一名もいないと言い切っております。目下刑期が満了した十六名の者については、これを日本送還すべく赤十字を通じて措置をとってきたところである、このようなことで、その名前を手交したわけでございます。そこで、残留者あと氏名については、その氏名をこちらに手交するというわけで、これは、外交郵便と申しますか、外交行のうがこちらに到着すれば、向うから手交するものであると考えておりますが、そこで、松本全権は、それは感謝をする、しかし、われわれが主張しているのは抑留者全般の問題であるから、これは一つ全面的に無条件に釈放してくれろ、これを釈放されることが日ソ国交調整の最大の前提であると強く主張いたしております。  そこで、今度の会談ではっきりしたことは、今までは、ソ連日本国交調整がうまく行けばこの問題も有利に解決されるであろうと言っておりましたが、今度は、具体的にはっきりと、そのあと残留者については、ソ連日本の間の平和条約ソ連最高首悩部が署名すると同時に全部帰す、これは同時に帰すと約束してもよろしい、このように具体的な主張向うは続けてきたわけでございまして、それについて、松本全権は、今中山委員からおっしゃいました通りに、この問題は、国交調整とは別個の問題であるから、早急に解決してもらいたいと主張したのであります。  これが大体この前の会談の概略の要旨でございまして、政府といたしましても、これによって抑留同胞の問題が一進展したものである、非常な吉報であるとは遺憾ながら決してとっていないのでございます。むしろ、刑期満了した十六名のわずかな者を帰すことによって、あと条約が調印されれば帰すのだから、こっちの話をしようというように議題を進展せしめられるようなおそれなきにしもあらずというところでございまして、今後のソ連の出方については十分警戒するとともに、しばしば本院で全会一致の御支持を賜わりました抑留同胞送還の問題については、政府が、全責任をもって、これが前提として解決をしよう、こういう点につきまして、さらに訓令を与えまして、強く主張したいと考えております。  なお、十六名の名簿は、電報で参りましたものを翻訳をいたしまして、これを厚生省のものと照合いたしまして、そのうち、今まで全然こちらの名簿にもなければあるいは留守宅調査にもなかったような名前が出てきておりまするので、これは、今後の——ソ連主張日本主張が人員の数において違っておりますが、その差というものは意外にもっと大きくなって、こちらで生存しておると思っている者が実際にはなくなっておったり、あるいはソ連ではいないと言ったものがもっと数があったりするのではなかろうかと私は推察しているわけでございます。  なお、その中に外人名のような名前がございましたが、これはことごとくかなで電報を打ったやつをこちらで直しただけでございまして、日本人らしき名前のものを厚生省に照会したるところ、両方にわかっておりまする者はごく一部でございまして、数名は初めて聞く名前でございます。この外人名前の者も、以上のようなことでございますので、向うがさらに電報を打ったり、外交官が到着するのを待って、正式の文書と照合しなければ、今のところ不明でございます。直ちに調査をいたします。
  5. 中山マサ

    中山(マ)委員 外務省の御態度を聞かせていただきまして、私もいささか安心をしたようなものでございまするが、ただ、御承知通り、私どもの方からは戦争を宣言した覚えもなければ、ただああいう状態満州あたりに攻め込まれ、そうして樺太の人も連れて行かれて、いわゆる一方的の戦犯であり、私どもとしては、本来は戦犯として考えるべき立場にはない、ここまですら考えておるような問題でございまするが、そういうわけで、私はソ連におる指導者たちは実に世界一の外交官だと考えております。申されますこと、あるいは一々世界の動きに乗って非常に巧妙な外交官である、腕がいいと私は考えるのでございます。悪い意味で腕がいいと言っておるのでありまするが、今度の四巨頭会談があって世界じゅうがほっとしたというそれに乗りまして、わずか十六名を出すことによって、ソ連もやはりいい態度を示しておるなというような印象を与えようとしているのではなかろうか。私は、こういうことにだまされないように、この十六名の釈放は、むろん戦犯よりいないのだと向うが言っているのですから、これは釈放されたとたんに戦犯ではないのですから、どうぞ一つ外務省がそういうお考えをどこどこまでも徹底させていただきたい。ただ私が一つ気がかりになりますのは、大使を送る前、いつかも政務次官にお尋ねをしたのでございまするが、閣議決定国交調整して懸案解決するということをおきめになっていらっしゃいましたので、私は、ソ連外交部が、今の鳩山内閣考え方は、こういうものに対してこだわっていないのだ、野党及び留守家族に攻め上げられてそういうふうに切りかえてきているのだから、ある程度の人を釈放すれば、あるいは鳩山内閣はそういうふうに傾いてくるのではないかというような考え方を持って、鳩山内閣代表者を攻めてくるという戦法をとるのではなかろうかという、ひがんだ考えも私は持つわけでございますが、この点政務次官はどうお考えになりますでしょうか。
  6. 園田直

    園田政府委員 ただいまの御意見の中に、閣議決定では、国交調整をしてしかる後に諸懸案解決する、こういうふうな御意見でございましたが、御承知のごとく、日ソ交渉を開始するに先だちまして、国民の世論はもちろん、国会の御意見によっていろいろ御検討されましたが、最後の閣議決定並び松本全権に持参せしめました訓令は、決してそのようなものではございません。この点だけははっきりいたしておりまするが、戦争によって起った諸懸案解決、特に当面の問題である抑留同胞及び領土の問題、漁業の問題、こういう各種の問題と国交調整の問題は明瞭に別に分けまして、明記して訓令を持たしてやっておるのであります。特にその中でも、抑留同胞引き揚げの問題は、人道上の問題であるから、これは国交調整とは完全に別個である。約八回にわたる会談におきましても、この問題と国交調整一般諸条項の問題とは、全然別個に取り扱ってもらいたい。別側という意味は、それ以前に、国交調整の話し合いを進めるに先だって、この問題を解決していただきたい。そういうわけで、今までは、国交調整、いわゆる平和条約調印と申しまするか、それ以前に解決したい諸懸案の中でも、抑留同胞の問題とごく一部領土の問題が研究されただけで、議題といたしましても、まだその他には進展していないのではなくて、この問題が解決しないうちには、他の問題に話を進めないという方針で行っております。
  7. 中山マサ

    中山(マ)委員 いつか、どなたかお帰りになった方の話で、私は、どこで伺ったのか、今はっきりと頭に浮んでこないのですが、人道的見地からの話ではこの問題は解決にならない、政治的の解決によってこれは解決されるものである、というのは、向うがいわゆる国交調整をやる政治の動きによってでなければこの問題は解決しないという気持であるかどうかは、松本全権折衝の間にこれが現われて参っておりますのでしょうか、どうでございましょうか。
  8. 園田直

    園田政府委員 悪意に解釈すれば、向うは政治的にこれを利用して、端的な言葉で言えば食い逃げをされてはいかぬ。むしろ、ソ連としても、好意的にこれを解釈すれば、ほんとうに日本国交調整をやる腹があるのかどうか、ただ困っている抑留同胞の問題その他を片づけたら、あとは御破算にして逃げて帰るのじゃないかという憶測も一部あるようでございまするし、われわれとして、日本外交の側から考えると、この問題を押えておいて、そして他の彼らが欲する面から解決をしていって、これはもちろんそのときは帰そう、こういうふうにからんできているのではなかろうかと推察したのであります。
  9. 中山マサ

    中山(マ)委員 昨日でございましたか、夕刊であったかと思いまするが、中共周恩来の呼びかけに対して、またこちらから大使を送る用意があるというような鳩山総理の御発言がございましたが、それは松本全権と同じ立場において送るというお考えでございましょうか。どういうことで大使をお送りになるのでございましょうか。
  10. 園田直

    園田政府委員 周恩来鳩山総理代理と会いたいということは、新聞上ではございまするが、ただいま中共に行っておられます松本七郎君、田中織之進君にそういう発言をされたということであります。これに対する鳩山総理発言は非常に慎重でございまして、今急にそういうことは考えていないが、将来は何があるかわからぬ、こういう意味発言で、大使を送るという発言はなかったようでございます。
  11. 中山マサ

    中山(マ)委員 それでは、話が房りまするが、今度帰ってくる十六名の人たちは、今、外務省あるいは厚生省におきまして、どういう地区から連れていかれたものか、またそれがどういう関係であったか、どういう犯罪であるか、たとえば地区的に満州におった者が連れていかれたか、あるいはどこから連れていかれた十六名であるか、もしおわかりでありましたら御発表願います。
  12. 園田直

    園田政府委員 ただいま電報だけで、その電報を基準にして照合しているところでございまするから、若干は推察にかかるところがあるかもしれませんが、事務当局から説明をいたさせます。
  13. 田島俊康

    田島説明員 ただいままでに調査いたしましたところでは、軍人村外に少かったのでございまして、十八名中ただいま四名発見いたしております。それから先ほど御発言のありました全然未把握であった者が五名あるわけでありますが、これは、推測ではございますけれども、おそらくは樺太関係者が大部分ではないか、こういうことでございます。なお、赤十字名簿にあった方、赤十字名簿にはないが把握しておった方は大体通信をしております。これはハバロフスク並びにタイシェット、そういうところから参っております。
  14. 高岡大輔

  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 政務次官もお急ぎのようですし、すでに中山委員からもお聞きになりましたので、私はただ関連して一点だけ伺いたいと思います。日本考えておりますところの引揚者の数、先方にいられる数と、それからソ連側の言われている数とが違って、だいぶ問題になっておりますが、先ほどの政務次官の御答弁を伺いましても、今度の十六名でさえも名簿にない人たちがいるということを言われましたので、日本側で言う数にも非常に確実さがあるのではないかというようなことも考えられるわけでございます。そこで十六名の中で名簿になかった数というものは大体どのくらいか、おわかりになりましたら、お伺いしたいと思います。
  16. 園田直

    園田政府委員 五名でございます。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それから、先ほど、この交渉によって引き揚げ問題が一歩前進したという考えは決して持っていない、こういうお話でございまして、なおこの引き揚げ問題は人道上の問題として早く解決するように、むしろ諸懸案を別にしても早く解決するようにという訓令を再び出したいというお話でありましたが、その点お出しになったとおっしゃったのでしょうか。出したいというお考えなのでしょうか。もしまだでしたら、ぜひとも早く出していただきたいと思います。
  18. 園田直

    園田政府委員 先日の会談後にはまだ出しておりませんが、それ以前に、議題が先に進展するようなことが察知せられましたので、依然として従来の方針でやれという意味の詳細な訓令を発しております。それからまた、電報翻訳を終りましたのが昨日の午後でありましたので、本日また外務省内で設置しております日ソ交渉最高幹部会議を開きまして意見を取りまとめて、今のような御趣旨の点は十分伝達したいと考えております。
  19. 受田新吉

    受田委員 これに関連することなんですが、戦犯のうちで巣鴨に抑留されている人々について、先般外務当局アメリカ当局に対してその釈放を要請したところ、これは拒否されたという記事を私拝読したのでありますが、これはいかなる経緯によってそういうことが生まれたのか、お答えを願いたいと思います。
  20. 園田直

    園田政府委員 イギリス、フランス、オランダ、豪州、以上の四カ国が主たるものでありますが、これに関しましては、国会の御意見に基きましてしばしば関係在外公館には訓令を発しまして、八月の十五日もしくは九月の二日、日本の方では八月十五日を休戦記念日考えておりますが、連合国の方は九月二日ミズーリ艦上調印式をもって休戦記念日考えておりますので、この日には全面的な釈放を要請するようしばしば措置をいたしております。なお、先般国会議決に相なりましたので、この議決に基きましても直ちに以上の点を在外公館に伝達をいたしまして、休戦記念日を機として全面的に戦争犯罪人釈放あらんことを要請せよという電文を送り、なおまた、これについては、皆さん方の御支援によりまして、全国各所国民連動も展開されておりますので、このような国民運動の資料も在外公館には送付いたしております。  しかるところ、昨日の夕刊並びに一昨日の朝刊だったと思いますが、外務省からの戦犯釈放申し入れば全面的に拒否されたという意味記事があったのでございまするが、これは、調査いたしましたところによると、UPであったと考えますが、UP記者が、国務省に参りまして、八月十五日に全面的に戦犯釈放する準備があるかどうかという質問をしたのに対して、そのようなことはないと某高官が答えたという電報が来ておるのでございます。この電報から起った事件でありまして、外務省からの申し入れを拒否された事実は全然ございません。しかもなお、向うの方から、今までの折衝に対して、それはいけないという申し入れもないようであります。委員長、ちょっと速記を……。
  21. 高岡大輔

    高岡委員長 速記をとめて。   〔速記中止
  22. 高岡大輔

    高岡委員長 速記を始めて。
  23. 受田新吉

    受田委員 戦犯全面的釈放が拒否されたという記事によって巣鴨戦犯の方々が非常な憂色を示しておるというような声も聞いておるのでありますが、こういうことは、そうした一新聞記者質問に対しての答えなどがそういうように現われておるとするならば、十分そういう点について真相を明らかにして、巣鴨に暮される人々があまり心配しないようにしておかれる必要があると思います。  もう一つは、田付総領事をして中共との交渉をさせておる政府の現状における中共との交渉経緯というようなものをお示し願えれば、幸甚です。
  24. 園田直

    園田政府委員 ジュネーブの田付総領事から中共総領事代理沈平氏申し入れをしたことは、先般御報告を申し上げた通りでございますが、その後これについての返答がまだ来ておりません。われわれとしては今週中には正式な回答があるのではなかろうかと考えております。正式な回答がありますれば、われわれといたしましては、これを契機に、やはり人道上の問題でございまするから、一部には、これは引き揚げの問題であるから厚生省責任を負うてやったらどうか、という御意見もあるようではございますが、私といたしましては、この際こそは断じて外務省が全責任を負ってこの折衝に当るべきであると決意を固めております。
  25. 受田新吉

    受田委員 いま一つ、先ほどの話に戻りますが、ソ連の今度の十六名の方方のお帰りに当ってのその輸送方法について、日航機を用いてやるというような記事が出ていたのでありますが、この点、政府といたしましては、いかなる態度をもって、少人数ではあっても心を尽してこの人々を迎えようとするのか、御所信を伺いたい。
  26. 園田直

    園田政府委員 日航機をもってお迎えするということは新聞情報でございまして、そういう一案もございます。実は、本日この委員会が終りましたならば、厚生省、日赤、外務省の係官がお迎えする方法について協議をする手はずになっております。その協議をする際には、十分ただいまの御意見をくみ取りまして、少人数ではございますが、心を込めて早くお迎えをするような方法をやりたいと考えております。
  27. 受田新吉

    受田委員 終ります。
  28. 堀内一雄

    堀内委員 関連して。運輸当局にお伺いをするのですが、ただいまも各委員から御質疑のありましたように、ロンドンの交渉においてマリク代表から十六名の者はすぐもう帰すというようなことも言ってきておるのですが、今日まで引揚者出迎えに行く人たち、こういう人たちの中には、援護法または扶助料等をいただいておって、非常に困難な状態にある方が多いのでありますが、そういう人たち出迎えの際における汽車のパスといったようなものをいただきたいというような請願情陳もたくさん出てきておるのでございますが、聞くところによりますれば、靖国神社のお詣りの際にはそういう便宜をはかっておられるということも聞き、また先般、傷痍軍人パスの問題というようなことも、当委員会において取り上げられて、本院としては通過しておるのでございますが、この際引揚者家族出迎えの際におけるパスといったようなものをぜひ出してやっていただきたいと思うのでありますが、これに対する政府の所信を承わりたいと思います。
  29. 久山富治

    ○久田説明員 舞鶴へ引揚者が帰って参ります場合に、残された留守家族出迎えをする場合の乗車方について何か便宜をはかれないかというお話でございますが、これにつきましては、政府側からは運輸省その他厚生省など関係の方から御答弁がございますと思いますが、私国鉄の旅客課長でございますので、国鉄の今までの立場を御参考までに申し上げたいと存じます。  国有鉄道といたしまして割引ないしは無賃の扱いをいたしておりますのは、社会政策的な意味と、営業政策的な意味と、この二つに大別できるのであります。営業政策的な割引と申しますのは、たとえば、夏海水浴に行くから、あるいは冬にスキーに行くから一割引あるいは二割引ればお客さんがふえるだろうというような増収的な観点からやりますので、これは国有鉄道限りやっておるものであります。それから、社会政策的な割引として現在やっておりますのは四つございますが、一つは、被救護者の割引、つまり生活保護法の適用を受けている人の割引、これは、戦前国有鉄道が鉄道省と申しまして行政に権限を持っておりまして、私鉄の監督、バスの監督、その他狭い意味政府でございました時代の遺物として、今国有鉄道内部でやっております。それから、それ以外に、戦後やりましたものとしましては、身体障害者福祉法五十条に基きまして、身体障害者が旅行する場合には五割引しろということが法難自体にきめてございますので、それに基いて割引いたしております。  そういうふうに分析して参りますと、国有鉄道が社会政策的な割引をいたしますのは、法律自体ないしは政府が政令でもってきめたような場合、非常に強い意味でそういうような何かの措置がございましたときにやるのでありまして、日本国有鉄道自体が、この社会政策を、これは無賃であるいは五割引でやるとか、あるいはこれはやらないでおこうとかいうことをやるのはどうかと、私ども考えておるのでございます。  たとえば、どういうものがあるかということを考えて参りますと、ニシンの漁に行った、行ったところかニシンの漁獲高が非常に少かった、そのために帰りの運賃を五割引にしてくれというのがございます。あるいはまた、教科書が今非常に高い、義務教育の教科書が非常に高いからこれの運賃を割引しないかとか、そういうような社会政策的な意味の割引がございますが、これにつきましては、そういう社会政策的なものを私ども国有鉄道がやる能力もございませんし、また国有鉄道にやらすのは今の政府のやり方としては少し筋が違っているのではないでしょうかというふうに考えて、社会政策的なものは、法律でおきめになるなり、あるいは政府がその施策の一環としておきめになるなり、そういうふうにお願いいたしておるのでございます。  それからさらに、引揚者自身の運賃の割引、無賃などの問題がございますが、これは、引揚者送還が開始されました当初から政府の方の負担でございまして、国有鉄道は無賃の扱いも五割引の扱いもいたしておりません。そういうような観点から、国有鉄道としてはその気持は十分わかりますし、個人的にはまことに申しわけないとは思っておりますけれども、現在までの経過はそういうふうになっております。
  30. 堀内一雄

    堀内委員 ただいま国有鉄道の方の御答弁がありましたが、それに関して運輸省のどなたか来ておりますか。
  31. 高岡大輔

    高岡委員長 運輸省は今のところ見えておりません。
  32. 堀内一雄

    堀内委員 それでは、運輸省当局に対する質疑は保留いたしまして、私の質問は終ります。
  33. 高岡大輔

    高岡委員長 木村文男君。
  34. 木村文男

    ○木村(文)委員 今旅客課長より無賃あるいは割引の運賃の御答弁がございましたが、引揚者に対しては、国家が負担して、国鉄としては無賃といったことについては考えていないということですが、それはそれとして、私は、かりに認めたといたしましても、一つだけお聞きしたい。あなたは社会政策的な面の運賃割引といったようなことまで言及されましたけれども、現在あなたの方の鉄道関係者に対する無賃の状況はどうなっているか、ちょっとお聞きしたい。たとえばあなたの方の職員に対する家族の問題、あるいは退職者の問題、たとえば顧問をやったとか、前に大臣をやったとか、総裁をやったとかいうような退職者、普通一般の退職者、こうったような人の無賃の範囲を明らかにしていただきたい。
  35. 久山富治

    ○久田説明員 ただいまの私の答弁に関連して、国有鉄道の中で職員ないし退職者に対する無賃の扱いはどうなっているかという御質問でございますが、これに関連いたしまして、私ごく常識的な御答弁ならできますのでございます。私は運賃を取る方の立場でございまして、無賃で輸送するというのは文書課長の所管でございます。  そこで、今のお尋ねに関連してでございますが、それは無賃乗車証規程という国有鉄道内部の規程がございます。その方に詳しく資格要件、それから年に発行回数を幾らにするかということをこまかく規定いたしております。それから、乗車証の種類、年何回くらい発行しておるかということは、後刻関係の者に連絡いたして御答弁申し上げたいと思います。
  36. 木村文男

    ○木村(文)委員 無賃乗車証規程の詳細なことは、あなたのただいまの答弁に従って後日に保留いたしますが、あなたは課長の席に着くまでには鉄道に相当御奉職になったと思います。あなたの職員として今日まで勤めた範囲内において知っておられる点を御説明願いたい。先ほど社会政策の問題とかいろいろなことをおっしゃっておりますから、それについてお尋ねしたい。のみならず、大村主計官に対して、大蔵省の立場においてちょっと念を押しておきたいことがある。この無賃乗車の問題は大きな社会問題です。今なぜこれを突っ込むかというと、私ども関係している引き揚げ運動の面からと、これにつながるところの社会保障制度の上からいって、これはきわめて重大な結果が出てくるのです。ですから、参瀞までに、ぜひともあなたが職員として知っている範囲内において私はお聞きしたいと思う。
  37. 久山富治

    ○久田説明員 私の所管外のことでございますが、職員といたしまして私の知っている範囲で御答弁申し上げます。  家族のための無賃乗用証というのは出しておりません。精勤乗車証という名前でありまして、勤続年数五年以上とかあるいは十年以上とか資格要件をつけまして、それに基いて勤続年数五年以上は年一回とか、あるいは勤続年数十年以上は年二回とかいう出し方をいたしております。本人と同伴した場合は、その精勤乗車記が家族にもたまたま適用になるというふうなやり方をいたしております。  それから、退職者につきましては、勤続二十年以上は年五回とか、あるいは勤続三十年以上は年十回、そういうふうに、これもまた、その勤続年数に応じまして、待遇的に無賃乗車証を出しておる次第でございます。
  38. 木村文男

    ○木村(文)委員 これは、あなたにこれ以上お尋ねしても、所管外だと逃げられればそれまでの話でございますから、申し上げませんが、関連いたしまして大村主計官にお尋ね申し上げたい。今旅客課長が、一職員として、またその前には課長として、社会政策、社会保障的な立場に立って、こういうような程度の割引なり無賃乗車なりがあると言われた。ただし、今の職員としての答弁によると、鉄道内においては精勤という言葉を使っている。あるいは退職者の十年以上という功労的な意味のものであろうと思うのですが、これに無賃乗車証が出ておる。これは、旅客課長からいうと金を取る方であります。それが、全部俸給も退職手当ももらっている。そういう人たちがこういう恩典を受けて、実際社会保障制度の上から考えて、どうしてもやらなければならない傷痍軍人の場合、これは過去においては無賃乗車であった。今現在どうなっているか、まだ詳細には調査しておりませんが、多分ないはずであります。そういう場合、国の金を使用する面から、大蔵省の立場において、この点をどうお考えになるか、ことにまた主計官は大蔵省内においての事務担当着でありますから、そういう点からいってどういう考えを持っておるか、お答え願いたい。
  39. 大村筆雄

    ○大村説明員 お答え申し上げます。ただいま国鉄側から御答弁ございましたが、国鉄は、御承知通り、昭和二十四年以来公共企業体に変っておりまして、一応広い意味では政府機関には入りますけれども政府とは違う立場に立ちまして、一般の民間の会社と政府機関との中間的な存在として独立採算的にやらせる。従いまして、国鉄はある程度公共的な立場において事業を運営していく、従って、社会政策的な国家政策的な意味においての政策をやる場合には政府の方にお願いして、むしろ国鉄は営業の立場において物事を判断していくという立場で一応割り切って考えておりますので、ただいま御質問のありました社会政策的な立場では、国鉄は公共企業体になりましてからはやっていないという状態であります。  そこで、社会政策的立場からどう考えるかという御質問であります。たとえば、これは、身体傷害者福祉法にも出ておりますように、法律でもって運賃の五割引をこういう場合に特例的にやっているが、原則としては、国鉄の公共企業体的な立場を尊重いたしますと、そういう社会政策的な問題は、国の金でもって処置していくのがあるいは、妥当かというように考えております。従いまして、国家財政の許す範囲内でその問題を処理していくのが適当ではないかというように考えております。
  40. 木村文男

    ○木村(文)委員 もう一つ大村主計宮にお尋ねいたしたいのでありますが、あなたも言いにくい点もあるかと思いますが、勇気を出してお答えを願いたい。国家のために犠牲になった傷病軍人に割引が行かないで、国鉄に奉職して働いた者が十分なる恩給なり一時退職金なりで優遇されて、その上でさらに無賃乗車証をもらっているということは、社会保障制度を国家全体として軽視している一つの面ではなかろうかと思う。そういう点社会保障制度が非常に軽んぜられているような気がしてならない。国鉄職員だけがこういう工合に優遇されていることは納得ができない。その点について御見解を承わりたい。
  41. 大村筆雄

    ○大村説明員 私どもとしては、国鉄に対してそういう問題を特に申し上げる立場ではございませんので、これは私見としてお聞き願いたいと思うのでございます。もちろん、国鉄は、元をただせば全部国からの支出でありますから、公共企業体として公共という名がついております以上は公器であります。従って、国鉄内部における公共的立場としてどの程度許されるかという一つの常識的判断の問題になるのではないかと思います。それは決して私するような立場で乱用されるようなことがあってはならないと考えておりますが、国鉄内部の経営がどの程度公共的企業として判断されるかということは、総裁、副総裁として判断される問題だと思います。
  42. 木村文男

    ○木村(文)委員 無賃乗車証は規定に基いてやっておりますから、私はあえてそれを責めるのではありませんが、こういうような立場から、この委員会関係しあるいは長い間社会事業をやった者としては、先ほど中山マサ先生が外交問題についてもひがみの点もあるかもしれないがというような非常に御謙遜なさったそういう気持からの——私ひがみといえば何ですが、申し上げたいのでありますが、退職者やあるいは精勤者に対してはまだいいとしましても、私の漏れ承わるところによりますと、この無賃乗車券は規定にない者にまで出ている向きがあるというようなところまで、これは悪宣伝であるかもしれませんが、あるいはまた、そうでなくても、この規定があまりにもずさんな我田引水的なところなきにしもあらずというように実は聞いているのです。でありますから、私ども、傷痍軍人であるとかそういう面にタッチしている者とすれば、何とかしてこの規定の中にでもまたあなたの方でみずから考えてみていただいて、そして政府の方と進んで折衝して、この点は入れるべきであると思う。ただ、独立採算制をたてにとってできないというようなことでなく、ほんとうに社会政策の面も盛っての国鉄経営、そういうむだのない経営、非難を受けない経営というものを私はやってもらいたい。こういう面からただいま関連質問をいたしたわけであります。私も、今規定があるということも聞きましたから、その規定も、事務的にあなたの方に伺って資料をもらいまして研究してから、いずれ機会を得て関係課長の御出席を願いましてお尋ね申し上げたいと思いますから、その点一応御連絡しておいていただくようにお願い申し上げたいと思います。
  43. 中山マサ

    中山(マ)委員 関連して厚生省に伺いたいのでございますが、今度はわずか十六名でございます。そして一番遠方なのが長崎であるようでございます。それが日航機で帰ってきますれば、あるいはそれがどうなるかわかりませんけれども外務省ではそんなものをまだ考えていないとおっしゃいますが、飛行機でしたら東京、船でしたら舞鶴かどこかになるのでございましょうが、援護局としてはこの問題に対して何かの御処置ができ得る余地がありますでしょうか、その家族に対して。
  44. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 留守家族の運賃割引の問題につきましては、厚生省としまして、従来から、事務的に、国の方でめんどうを見てやりたいということで、関係のところといろいろ相談はいたしていたわけでありますが、いろいろな事情のために現在まで実現を見なかったわけであります。従いまして、これまでのところは、都道府県なり市町村あるいはいろいろな引き揚げ関係の団体にお願いいたしまして、留守家族のうちで運賃負担ができない方々に特別にめんどうを見ていただくということで、今日まで立ち至っているわけであります。今御質問のように、今帰ってこられます十六名の方についてそういう考え方ができるかどうかということでございますが、これにつきましては、はなはだ事務的な答弁でございますけれども、予算にそういうことも入っておりませんので、現在のところは不可能じゃないか、かように考えております。あるいはかりに日航機などで帰ってきますと、そういうことは一応考えなくてもいいのかもしれませんけれども、従来のように舞鶴の方に一応引き揚げてくるという場合には、そういう問題も出てくるのでありますが、ただいま申し上げましたように、現在のところはちょっと困難じゃないか、かように考えております。
  45. 中山マサ

    中山(マ)委員 私も、厚生省におりまして、厚生省は蚊の涙ほどの予算をとっておるじゃないかと言って、議員の方々ら激励というか何というか妙な御発言も聞いたことがございますが、全くその通りでございまして、入間が生まれる前から死んだあとまで世話するところなのに、ほかの省と比べると予算が非常に少いということは、私もしみじみ身にしみてわかったのでございますが、しかし、そこで何とかやりくりをつけられて、しかもこれが一万六千名が帰ってくるというのならなんですけれども、いろいろ留守家族の御様子を見ておりますと、もう死んだものと思って、けなげにもお母さんが学校の先生をしてこれまでやってきた、そういう立場の方は何とか行けるでしょうけれども、どうしても行かれないような人の家庭には、厚生省の中で少しゆとりを作ってやれないことはないと思うのでございますが、どうでございましょうか。
  46. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 重ねて申し上げますが、ただいまの御質問に対しましては、ちょうど、ただいまの国会で、帰ってこられたら、従来未帰還留守家族援護法という法律がございますが、その法律によって、舞鶴に帰ってこられたら、従来渡しておった留守家族手当というものを打ち切ることになっていたわけであります。たまたま、今度の国会で、衆議院の方でその点を修正していただきまして、さらに三ヵ月間延ばしていただくということで、現在参議院の方で審議していただいておりますが、この法律がかりに衆議院の修正案通り参議院の方でお認め願えますと、三ヵ月間は従来のように留守家族手当が支給できることになります。そういうような措置も今後の引揚者については考えていくということになります関係もありますので、今のところでは十六名の方々についてだけということにしますと、今後帰ってこられるあとの相当の方にも同様の措置をしなければならぬということになりまして、そのあたりは非常に検討しなければならぬ問題ではないか、現在のところは、ただいま私が申し上げましたように、非常に困難じゃないか、検討さしていただきたい、かように思います。
  47. 中山マサ

    中山(マ)委員 それでは、この間この委員会でできましたところの、帰ってきた人たちに三ヵ月というようなあの法案がすみやかに参議院を通過するように、厚生省の方でも御努力下されたい。私の方でもまた懸命にやりまして、非常に困難な人たちで、それをもらえないと思っておった家族がそれをもらえれば、あるいは何とかそれを処置していただけば、ほんとに死んだと思っておった人たちに会えると思えば、私が留守家族なら、どんな思いをしても出迎えるだろうと思いますので、ぜひ、その案が早急に通りまして、そのお金が何とかして希望する者、要求した人には支給されるように御尽力をお願いいたしまして、私の質問を打ち切ります。
  48. 高岡大輔

  49. 仲川房次郎

    ○仲川委員 木村委員の無料乗車券に関連して質問いたします。これは私が痛切に感じておる問題であります。私、奈良から東京に参りますときに、これはとても二等に乗る人じゃないというのが乗っている。再々乗るから、聞いてみると、私は金が要らないと言う。おりようと言うと、その人は、僕と一緒におりないで、別の方におりていく。何でももと鉄道に勤めておったらしい。そういうようなことで、とても二等に乗れぬような人が二等に乗っておる。戦争で負傷した軍人の方方は負傷のからだで三等に乗っておるのに、一方の人は、二等に乗る身分でないような人がいつも二等に乗っておる。かようなことを見まして矛盾をつくづくと感じた。今木村委員質問で思い起したのでありますが、この点を考えますと、私は無料乗車券の交付に非常に矛盾があるように思う。そこで、先ほど木村さんが申されたように、なるほどその人は鉄道に勤めたには違いないけれども、それは月給をもらっておる、あるいは恩給をもらっておる。それになぜそういう無料乗車券をやらなければならぬかということと、それから傷痍軍人に今までやっておった既得権まで剥奪しなければならぬのは、矛盾が非常に多いと思うので、今日の実情に合うようにしてもらうというお考えはないかということを一つお聞きしたい。そういう問題についてどういうお考えをしておられるか。
  50. 久山富治

    ○久田説明員 ただいま仲川委員から、国有鉄道の在職者の無賃扱いの現状と、社会政策的な意味での身体障害者とか戦傷病者とか、そういう人の扱いとのアンバランスがあるという点について私の見解を聞かれたのでありますが、なるほど私個人といたしましてはそういう点のアンバランスもあると思います。特に、先ほど木村委員からも言われました通り、もし何か無賃乗車証規程による成規の発行以外に乱用でもございましたならば、これは関係の個所を督促いたしまして徹底的に取り締らなければならない問題だと私考えます。それはそれといたしましても、国有鉄道の在職者に出しております無賃乗車証は、戦争前の鉄道省時代、あるいはまた国有鉄道が企業体になりました前に比べますれば、少しおかしい表現でございますが、非常に自粛いたしまして、世論のあるところをおもんぱかってまことに自粛しておるつもりでございます。これはおかしい表現ではございますが……。それで、私個人の率直な考え方といたしましては、社会政策的な面が日本の国情からいたしましてなかなかついてこれないのだから、それにバランスをとる意味で国有鉄道をさらにもっともっと徹底的に自粛すべきかとも思いますが、これはやはり、ほかのいろいろの民間会社、たとえば交通関係のいろいろな企業体と横につながっておる問題でございます。私鉄の交通従事員に対する待遇とか、あるいは私鉄の交通従事員の退職者に対する待遇とか、あるいは同様の大きな企業体の従事員に対する待遇とか、横に一連のつながりのあるものでございまして、国有鉄道だけを戦前に比べ著しくしぼり、さらにまたほかの企業体に比べて著しくしぼるということは、なかなか、同一関連のある産業としては、産業自体ではしぼりかねることではないかと思います。それで、私ども、率直に申し上げますれば、むしろ、社会政策的な面をもっともっと政府ないし関係皆さん方の御協力で努力していただきまして、その間のアンバランスは関係の個所で是正していただくのが妥当じゃないか、そういうふうに考えておるのでございます。
  51. 仲川房次郎

    ○仲川委員 国家のために負傷した、不具の身になったこうした人こそ、国有鉄道は無賃乗車をさせる必要があると思います。それはどうしてもやはりその人に対する国家の義務だと思います。これは当然であります。しかるに、今申しました通り、国鉄当局でも月給をもらいあるいはその他の退職した人ももらっておる。それはある程度はよろしいと思います。悪いとは申しません。程度の問題です。それをするならば、私は、進んで、国家のために負傷した人のために、不具になった人のためにやってもらいたいと思います。戦前にひとしく、これにはどうして無料乗車券を出すということにならないかということを私は強く言いたいのであります。
  52. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私も一点御要望したいと思います。他の委員からすでに触れられた問題でございますが、特に引き揚げてこられる方々を迎えに行かれる家族の身になりましたときに、どんな思いをしても行きたいと思いますけれども、中にはなかなか行けないというような経済上の事情の人も多いと思います。今度は特に、たった十六名の方がお帰りになることなんですから、この家族の方にはとりあえず何とかしてあげる、無賃の乗車券を出してあげるということをぜひお考えになっていただきたいと思うのですけれども、そういうようなことは、見通しとしてはいかがでございましょうか。ぜひ、さっそくお帰りになって御相談をされて、そうして大いにこの際国鉄の面目を取り戻していただけたらと思うのですが、こういうことに対する見通しはいかがでございますか。
  53. 久山富治

    ○久田説明員 ただいま戸叶委員からの御質問は、今回の十六名の御帰還家族について、出迎えのために何かそれを無賃扱いにするなり便法はないかという御質問でございますが、これにつきましては、もちろん、厚生省とかあるいは運輸省とか、関係の個所とも私どもこれから御協議をいたしたいと思っております。先ほど私が答弁を申し上げたことをさらに繰り返すようでございますが、今までの経過といたしましては、国有鉄道自体がやりまする営業政策的な割引以外の社会政策的な割引でございますが、これについては、国会の御意思の決定なり、あるいは政府部内での政府としての御意思の決定をいただくとか、何かそういう方面の根拠をいただきまして、国有鉄道はその指示に従って事務を取り進めていく。国有鉄道自体が、社会政策の中で、この社会政策は取り上げて無料にする、この社会政策はあまりよくないから全部やめる、この社会政策は五割引にしようということを国有鉄道はやる能力もございません、またやるべきでないと私は考えております。そういうようなわけでございまして、現在、引揚者御自身がお帰りになる場合につきましても、国有鉄道は全然特殊な扱いはいたしておりませんので、厚生省の方で御負担願いまして、それを国有鉄道の会計の中へ入れていただくという格好にいたしておるわけでございます。以上が現在やっております状況でございまして、何分この状況によりまして御判断をいただきたいと思う次第でございます。
  54. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今回の十六人の家族の方の無賃乗車券の問題は一つの例として申し上げたので、できればやはり引き揚げてこられる方の家族に対して特別な御考慮を願いたい。今回もし十六人の方の家族のためそういうことをすることによって、将来家族の人にパスを上げる、乗車券を上げる突破口にでもなればというような気持で、私は発言をしたわけなんでございますが、今旅客課長さんから根本的な態度について伺ったわけなんですけれども、私どもといたしましてもこの担当の委員会におきまして、極力その実現のために、これは重大な問題でございますから努力をしたいと思いますので、そちらの方でも十分お考えをいただきたいということを要望いたすのであります。
  55. 木村文男

    ○木村(文)委員 私、旅客課長に資料の提出を求めたいと思います。一つは現在無賃乗車証の交付者の総数を内訳別に願いたい。それから右のこの三カ年における運賃の内訳と総額。それから右のうち鉄道在職者及び家族と退職者に対しての交付の数と総額。なぜ私はこれを求めるかと言いますと、理由を申し上げます。いずれ機会を与えられまして、その資料に基きまして、私は、社会政策の面と生産事業いわゆる産業の面から対比して、あらためて質問をいたしたいと考えておりますから、その資料として御提出を願いたいと思います。
  56. 仲川房次郎

    ○仲川委員 無料乗車券は、先ほど申しました通り、私はいつも考えておるのですが、ああいうような者が無料で乗ってくるということは、無料乗車券に非常なずさんがあると思う。どうぞこれらの点をお考え下さいまして、社会政策の面から見て、極力そういう方に乗車券等を出してもらいたい、それに対してお力添え願いたい、かように考えております。     —————————————
  57. 高岡大輔

    高岡委員長 次に、引揚者定着援護に関しまして、引揚者住宅の問題についての質疑を行うことといたします。河野正君。
  58. 河野正

    ○河野(正)委員 引き揚げ後の援護対策等につきましては、私はいろいろな方法があると思うのでございますが、それを大きくしぼり上げましても、大体引き揚げ後の更生の問題をどう解決するか。資金等いろいろな面があると思いますが、あるいはまた就職あっせん等によりまして、いかにして生活の安定を求めてやるかというような問題、あるいはまた住居の問題等があるわけでございますが、その中で、一番大きな、そして深刻な問題といたしましては、やはり住居の問題であろうと私ども考えております。ところが、引揚者引き揚げて参りましても、もちろん、そういった引揚者の要望にこたえるためには、その住居の問題が質的にもまた量的にも非常に貧困なものでございますし、また今日まで政府当局の施策によっていろいろな対策が講じられたわけでありますけれども、しかしながら、ただいま申し上げますように、量的に質的に申し上げましても非常に貧困な事態だったわけでございます。そこで、引き揚げて参りまして、まずそういった住宅の問題を解決しなければならぬということが一番重大な問題でございますけれども、しかしながら、引き揚げて参りました当時、そういった住宅の問題が解決しておらないということに問題がございます。なおまた、いろいろ地方公共団体のあっせんによりまして、結局は何とかして住居を求めるであろうけれども、御承知のように今日地方財政が非常に圧迫を受けて参りましたので、一応求めましたそういった施設というものが、 その後、地方公共団体のいろいろな事情によって、たとえば浮浪者設備に転換しなければならないという事態が起って参りまして、せっかく入るには入ったけれども、今日におきましては再び追放のうき目にあわなければならないというふうな事態が起って参っておるわけでございます。もちろん、先ほども申し上げましたように、帰って参りまして、根本的にはその住宅対策を考えていただくということが重大な問題でございますが、今日ますます地方の事情が逼迫いたしまして非常に深刻な事態に追い込まれておりまするので、私は、この際、中共引揚者を含めまして、引揚者に対する三十年度の住宅問題に対しまするところの具体的な一般方針について、実は、この点は方針でございますから、大臣あるいは次官にお尋ね申し上げたいと思うのでございますけれども、今日は御出席がないようでございますから、厚生省の方の重要な立場の方にまず方針をお漏らし願いたいと思います。
  59. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 引揚者の住宅の問題につきましては、厚生省といたしまして従来からいろいろな努力はいたしているわけでございます。とりあえず昭和三十年度における住宅対策はどのようになっているかという御質問でございますので、本年度の問題について御答弁をいたします。  本年度の引揚者の住宅対策といたしましては現在厚生省の方で考えていることは、大体今後本年度内に新しく帰ってこられる方々に対する住宅の問題が一つございます。それから第二審目に、これは北海道だけの問題でございますが、北海道における引揚者の施設が内地の場合と比べまして非常に腐敗老朽がひどいというような現状でございますので、北海道に対する特別な住宅、この二つに分れるのではないかというふうに考えております。  第一番目の内地の分でございますが、これにつきましては、本年度引き揚げてこられる方に対しましては、建設省の第二種公営住宅というものを二百五十戸準備いたしてございます。それで、この二百五十戸のワクの中で、現実に引き揚げてこられておのおの郷里に落ち着かれてから住宅に困窮せられている、その困窮の度合いなどを勘策しまして、住宅を建設しまして判り当てるということにしております。この二百五十戸というのは、もちろん本年度の引揚者の予想人員を一応三千人といたしまして計算したわけでございます。  それから、第二番目に、北海道についてだけは特に住宅事情が悪いというような現状でございますので、内地の場合と違いまして、北海道については特別な対策を講じているわけでございます。と申しますのは、北海道については、すでに、私の方で申し上げますと、引揚者の集団収容施設というのがございますが、相当腐敗老朽いたしているわけでございます。いつまでもこのまま放置しておくわけには行きませんので、過去数年間の事業といたしまして、疎開事業というものを実施いたしておるわけでございます。特に、そういった収容施設の中で、いかに補修をしても役に立たないというようなものについて、疎開住宅というものを考えております。住宅を別に作りまして、疎開させているわけでございます。これが本年度約六百戸準備いたしております。それから、疎開させるまでもない、何らか手を加えて補修すればまだ数年持つというような施設につきましては、補修事業を実施したいということで、北海道につきまして約八百万近くの国庫補助で事業を実施いたしたいといりふうに考えております。本年度の引揚者住宅対策は大体そういうようなことであります。
  60. 河野正

    ○河野(正)委員 次官がおいでになりましたので、後ほど次官からも三十年度の引揚者に対します住宅問題に関する根本的な方針を承わりたいと思います。  それから、ただいま事務当局から御答弁いただきました中で、私どもが一番問題といたしております点は、ただいま御答弁の中で、本年度帰ってくる者に対して、内地におきましては二百五十戸建設を予定しておるというふうなお考え方でございます。今日まで私ども引揚者の住宅問題解決のためにいろいろと地方公共団体と折衝を持って参ったわけでございますけれども、その中でいつも問題になります点は、ただいまの御答弁で、三十年度に帰ってくると予想される者について二百五十戸というお話でありました。ところが、今日まで、帰ってきたものの中で、多数の人が住宅の問題で非常に御苦労なさっておるわけでございます。ところが、そういった場合に問題になりますのは、地方公共団体でいつも申しますのは、本年度たとえば内地におきましては二百五十戸ということでございます。本年度につきましてはそういった一つの処置が行われますけれども、しかしながら、今日まで、帰って参りましたけれども、割当戸数が少いために、その要望にこたえられぬという人がたくさん残っておられるわけでございます。そこに、いつも、今日まで帰ってきました引揚者と今後帰って参りまして入居いたします引揚者との間に、いろいろな問題が起って参るわけでございます。そういった問題を御考慮下さった上で、そのような二百五十戸という問題が措置されるものであるかどうか この点は先ほど御答弁がございました事務当局に重ねてお尋ね申し上げたいと思います。
  61. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 先ほど申し上げました二百五十戸というワクは、これから本年度内に引き揚げて来る方々に対する住宅の割当のワクであります。従いまして、ただいま御質問のございましたような、すでに過去において引き揚げた方々に対しての住宅の割当はどうなっているかということにつきましては、一応、私どもといたしましては、従来から、引揚者の住宅の対策としまして、その年度内における引揚者の見込み人員というものを一応予想しまして、大体これぐらいあったら、従来の例からいってまかない得るだろうという想定のもとで、一応のワクを決定し、そのワクの範囲内で特に住、宅に困っている方から優先的に入れてやるという方針で、現在まで過去数年やってきているわけでございます。従いまして、今御質問のように、あるいは中には住宅に困っているんだけれども、住宅の割当がなかったというような方がおありになるということがあるかもしれませんが、引揚者以外の一般の現在の国内の住宅事情というものを考えました場合に、私たちは引揚者の場合には非常に優遇しているわけであります。一般の住宅困窮者との比較においては、引揚者は相当ワクを割よくしているわけでございます。従いまして、中にはただいま御指摘のように住宅割当がなかったという方がおいでになるかもしれませんが、私どもとしましては、一応のワク内で、特に困窮している方々から優先的に引揚者の住宅割当をするという方針で、それ以外の方につきましては、建設省の方でやっていただいておる一般の公営住宅の対象にして割当をやっていただくということで、現在までやってきているわけでございます。今後といえども、全体のワクが必ずしも十分ではございませんので、あるいはそういう方が出てこられるかもしれませんが、そういう方については一般の生活困窮者の第二種公営住宅の方で救済していただくというふうに考えているわけでございます。
  62. 紅露みつ

    紅露政府委員 ただいま引揚課長からお答え申し上げましたように、住宅については内地の一般の方々も非常に困窮しておりますので、ことに引き揚げてこられた新しい引揚者の方々につきましては、御縁故も薄いし、さらにお困りだろうと思うのですが、大体予想で新規には二百五十戸という線を出しておるわけでございます。それから特に今お尋ねの重点は、これまでの引揚者が非常に困っておられるという点を御指摘だと思うのでございますが、それもよくわかります。わかりますが、もうだいぶんの月日がたっておりますので、最近帰られた方は別でございますけれども、その他につきましては、今事務当局からお答え申し上げましたように、一般の住宅困窮者という面で大きく取り上げていきたいと存じております。ですから、その生活の程度に応じまして、第二極というものが大きく考えられるわけでございまして、この第二種を私どもはこうした面に回してもらいたい、かように考えておるのでございます。住宅についての困窮ということは、引き揚げ問題とは切っても切れない問題でございますので、常に心配していることでございますが、大体においてそのような考えで今進んでおるわけでございます。
  63. 河野正

    ○河野(正)委員 言葉を返して恐縮でございますけれども、先ほど、事務当局の御答弁の中で、引揚者については過去においても一般住宅問題の建前から言うと非常に優遇しておるということでございましたが、私はそこにやはり問題があると思うのでございます。というのは、引揚者と今日まで日本内地に定住しております一般社会の人々とが同じ条件でございましたならば、それは形式的には優遇されたことになるかもしれませんけれども、もともと、内地に定住しております一般社会の人々と、経済状態の非常に悪い内地に帰って参りました引揚者とは、おのずから条件が違うだろうと私は思います。そういった中で、多少形式的には優遇されたという立場をとりましても、実質的には決して優遇されたのではないというふうに、私は確信をもって考えておるわけでございます。そこで、ただいま事務当局の御答弁にありましたような、われわれは今日引揚者の住宅問題については一般社会人よりも優遇しておるんだというような考え方、思想はこの際一倒していただいた方が、今後の引揚者のいろいろな問題を解決する上において非常に大きな要素をもたらすというふうに考えておりますので、この点につきましては事務当局に一考をわずらわしたいと思います。  それから、ただいま次官が御答弁なさいました、今日までの引揚者に対する対策につきましては万全を期しておるということでございますが、われわれも、一般住宅難の建前から見て参りまして、ある程度了承できないわけではないのでございます。ところが、冒頭に私が指摘いたしましたように、一応地方公共団体のあっせん等によりまして地方団体のいろいろな施設を利用しておった引揚者がおられたわけでございます。ところが、今日地方財政が非常な圧迫を受けて参りましたので、失業者もふえて参り、浮浪者もふえて参ったというようなことで、今日まで引揚者が入っておりました施設を追放して、そのあとに結局いろいろな保護施設を設けようというような地方団体があることを、私はここで指摘いたしたいと思うのでございます。そこで、当局におかれましては、そういった事情をおそらく把握しておられないので、ただいま御答弁になりましたように、今日までの問題については最善の善処をした、今後の問題についても善処したいというようなお考えが生まれて参ったのだろうと思うのでございますが、そういった新事態が生まれつつあるという事実を私はここで申し上げるとともに、そういった問題について厚生当局は今後どういうふうな指導をやっていかれようとするのか、その点についての御所信を一つ承わっておきたいと思います。
  64. 紅露みつ

    紅露政府委員 地方の公共団体に属しておりました建物をだんだん福祉施設に変えていく、こういうお話でございますが、私どももそういうことを耳にしないわけではございません。これは福祉事業の面がだんだん強化されていきますので、そういうことにもなっていくであろうとも思いますが、しかし、引揚者の方たちは、年月は相当たっているとは申しますものの、御指洞のように御縁故が薄いものですかり、なかなか五年や十年でずっと内地に住まった者と同じようなつながりが一般の方々とできようとも思えません。ですから、そこは一時は御苦労のことだと思いますので、それらの点はよく調査をいたしまして、あまりひどい困難のかからないように、しかし住宅難の折柄でございますから、やはり  一緒に御苦労されないというわけには参りませんが、そういう気持でもってめんどうを見て差し上げなければならない、かように考えております。
  65. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいまの次官のお話は了承できました。  さらになお一、二点お尋ね申し上げたいと思います。と申しますのは、それは運営上の問題でございますが、三十年度におきましては引揚者に対しまして一応二百五十戸の建設が予定されたわけであります。ところが、今日までの運営の状態を見て参りますと、Aという地区引き揚げてきたが、実際に割当されたのはB地区の住宅であるというようなことで、せっかく就職はしたけれど、非常に遠いところから通勤しなければならぬ、あるいはまた、それがために、結局せっかく得た就職口も放棄しなければならぬというような、実情にそぐわない運営が今日まで行われてきましたことも、私どもつぶさに見て参りましたし、またそういった批判の声を非常に強く受けて参ったわけでございますが、そういった点につきまして今日までどういう指導方針を持って参られたのか、あるいはまた三十年度におきましてはそういったことにつきまして十分善処される御方針であるかどうか、そういう点につきまして御方針を承わっておきたいと思います。
  66. 紅露みつ

    紅露政府委員 職業と住宅の関係でございますが、これは引き揚げ問題が始まって以来いつも困難な問題を引き起すのでございまして、今お話のように、住宅はきまったが、就職した場所との距離の関係その他非常に不便なところに集団的にできてしまったというようなことで、これまでたびたび問題を起してきた点でございまして、それらにかんがみまして、本年度から、今申し上げた二百五十戸の分につきましても、建設省と連絡を取りまして、そうした弊害が最小限度に食いとめられるように御相談をしつつ進んでおります。
  67. 河野正

    ○河野(正)委員 さらに一点、これは希望にもなると思いますが、お尋ね申し上げたいと思います。その点は、先ほど次官からもあるいは事務当局からも第二極公営住宅の問題がいろいろ御指摘になったようでございますが、庶民住宅、公営住宅、いろいろの住宅が今後建設されて参ると思うのでございますが、そういった場合に、引揚者に対しましては優先的に入居できるような処置について、当局が今後それぞれ折衝される御意思があるのか、あるいはまた折衝されておりましたならば、今日まで折衝の過程がどういうふうになっておるか、その点を最後に一つお聞きしておきたいと思います。
  68. 紅露みつ

    紅露政府委員 ワクのきまっておりますのは問題ございませんが、ワク外につきましては、建設省ともよく御相談をしまして、別段法規はございませんけれども、優先的に配慮していきたいと存じます。
  69. 中山マサ

    中山(マ)委員 これに関連いたしましてお尋ねをいたしますが、政府におかれましては四十二万戸の住宅を建てるということが選掌中の大きな看板であったと思うのでございますが、この四十二万戸も、政府でほんとうにお建てになるのはどうやら十七万戸ということになって、十七万戸と二百五十というと、何だか非常に比率が悪いように私は思っておるのでございますが、この二百五十というのは第二種の公営住宅で、北海道でなしに内地向けなんでございますね。−そういたしますと、北海道も広いのでございますから、私も、北海道へ行って、旭川でございましたか、引き揚げの寮を見たのですが、昔の軍隊か何かのお古で、ほんとうに馬か牛ならまあ十分なと思うほど暗くてひどいところでございまして、私も非常に悪い印象を受けたのです。ここに六百万円のお金が入れられるということは非常に喜ばしいと思うのですけれども、内地と申しますか、北海道以外の土地で二百五十戸というのは私は割合に少いと思うのでございます。この二百五十をどういうふうな地区に分布なさるお考えでございましょうか。その割当ですね。たとえば、内地と申しましても、北の方もあるし、東京もあるし、近畿もございますし、九州もございますし、この二百五十をどういう、ふうに配分なさるか、伺いたいのであります。
  70. 紅露みつ

    紅露政府委員 その分布でございますが、落ちつき光が一応わかりませんと、大へん片寄った形になっては困るわけでありまして、一応引き揚げておいでになりましたら、の落ちつき先、また落ちつき先のうちでどれだけ住宅がないかというようなことをやはり一応調べてからでないといけないと思うのですが、その場合に、第二種でございますならば、これは、ワクを坂っておきますと、そこへ回していただける。特にあの初めにおきまして引揚者住宅というふうな考えで建てておりませんのでございましたら、これはもうどこへも通用するわけでございますから、一応落ちつき先を調べて割当を行う、こういうふうな方針でございます。
  71. 中山マサ

    中山(マ)委員 落ちつき先を調べてそれからということになりますと、間拍手に合わぬことになりますが、帰ってきた人をそれでは一時定着寮にでも入れておいて、もし今度の十六名の中で、どこかの人は奥様が先生をして子供を一人育てる、そういう家のある人は何とか間に合って心配はないのでございますが、さっき政務次官もおっしゃっていらっしゃいましたように、もう長いこと向うにおって、全然内地に関係のないような人が、まるで外国へでも帰ってくるような調子で帰ってくる人もあろうかと私は思いますが、そうなりますと間に合わぬ。そういう人たちが帰ってきて、住宅に申し入れをして、それが許可になって一あれは一軒で四十二万円もらうのですか。建設省にお尋ねいたしますが、普通のと同じですか、二百五十戸というのは住宅金融公庫的の建物でしょうか。ちょっと伺いますが、それを先に知らせて下さい。この二百一五十戸という尿に対するプランはどういうプランを持っていらっしゃるのですか。どういうプランを持って、何畳の部屋と何畳と——この間私は住宅の問題でラジオの都民の時間ですか聞いておったのでございますが、ひどい家がおひざ元にあるわけです。お便所もないというような家が現存しておるそうで、鳩山内閣はよっぽがんばって住宅をお建てにならないと、雨が漏るというよりも雨が降るのだというような、そんなひどい家が現在都内にあるということを、ラジオの都民の時間だったと思いますが、聞いて実にびっくりしたのでございまして、この四十二万戸というものがいかに必要なものであるかということは、しみじみと私は感じたのでございますが、今度の二百五十戸というものの大体のプランでございますね。東京郊外でございますか、住宅社で建てていらっしゃったのを、私、三年前でございますか、見に行ったのですが、それと同様なプランでございましょうか。どういう計画を頭の中に描いてこの二百五十戸に対して持っていらっしゃるのですか。
  72. 南部哲也

    ○南部説明員 お答え申し上げます。本年度の第二種公営住宅——公営住宅には一種と二種とございまして、二極はもっぱら社会政策的な意味で月収一万六千円以下の収入の方々のために建てる、こういうようにしております。昨年は八千戸程度でありましたが、本年は、これを倍にいたしまして、一万七千三百戸全国に建てるのであります。これが四十二万戸の中で引揚者のような方々に向けられる住宅だろうと思いますが、先ほど厚生省から御答弁がありました二百五十戸はこの一万七千三百戸のうちのものでございます。従いまして、木造で申し上げますれば大体八坪のもので、六畳と三畳、台所、便所というようなことに相なろうと思います。耐火構造の場合には六坪でございまして、大体六畳一間と便所、台所、こういうようなものになっておるのではないかと思います。
  73. 中山マサ

    中山(マ)委員 お家賃は幾らくらいお取りになるのですか。
  74. 南部哲也

    ○南部説明員 家賃は、木造では大体千円見当、耐火構造で八百五十円見当であります。なお、家賃につきましては、これは全部御承知のように都道府県、市町村が経営しておりますので、都道府県条例あるいは市町村条例におきまして特殊な場合には減免できるという規定がございますので、そちらの方もお考え願うことと思います。
  75. 中山マサ

    中山(マ)委員 それで、二百五十戸というのは、私は、いわゆる北海道をのけた日本全国としては非常に少いという感じがいたします。厚生省にお尋ねをいたしますが、これまでの大体平均でございますが、数万人帰ってきた場合に、その中の割合で、家族があって、帰ってもすぐに困らない人たち、あるいは全然なくて定着寮に入れなければならなかった比率はどんなものでございましたか。
  76. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 お尋ねの点につきましては、今ここに資料の持ち合せがありませんので、後ほど資料で提出いたしたいと思いますが、大体の感じといたしましては、従来の実績といたしまして、引揚者の帰ってきた数は——大体私の方で住宅の措置をしているものが二割見当かと思います。それでこれは非常に住宅に困っている方を特に優先的に救済しているわけであります。今御質問のように、それ以外にも住宅に困っておられる方があります。そういう方の数につきましては、今申し上げたように、ちょっとここに資料を持ち合せておらないのでわかりませんが、大体ソ連地域につきましては、ほとんどの方が住宅を必要としないと思います。大体八割見当の方が住宅を必要としない。中共につきましては、大部分が戦争前から一家総出で向うへいらっしゃった方が多い関係上、住宅を必要とすると考えられるものは、予想でございますが、中共の場合は七割くらい要るんじゃないか、大体そういうような実績になっているのではないか、こういうように考えております。
  77. 紅露みつ

    紅露政府委員 帰ってきましてからきめるんじゃ間に合わないじゃないかという御心配、私どももその点を心配いたしますが、やはりこれは実態がわかりませんと、いたし方ございませんので、そこのズレがございましょうけれども、よくよく困る方はやはり一時寮に入っていただくか、親戚がおありになる方は一時そこに身を寄せていただいていて、その間にできるだけ早く用意をしたい、こういう方針でございます。
  78. 中山マサ

    中山(マ)委員 政務次官は、御婦人でいらっしゃいますので、この住宅問題ということについては、男子のお方方がおわかりになる以上に、その立場というものがおわかりになると思います。私思い出すのでございますが、今親類に一時身を寄せておいてというお話でございましたが、その親類そのものが住宅に困っている連中でございますから、狭いところに何人か——もうこの間は三畳に六人寝ているというラジオの報道を聞いたのであります。これはもうほんとうにすわっただけでも一ぱいになるのに、それだけの人間が寝たら大へんなことになると思う。せっかく帰ってきた人たちを、帰ってきた当時はよく帰ってきたという気持で迎えるでありましょうが、自分のところも苦しいということになってくると、そこに妙なものができて、私どもは、家庭婦人といたしまして、初めよかったものも、同居生活というものがいろいろな問題を惹起する。たとえば婦人関係でもいろいろな妙な問題が起って、非常に悩みを訴えられた体験を持っておりますので、私は、この住宅の問題は、婦人政務次官としてはぜひ一つ格段のお力をお入れいただきたいと思います。  それで、いろいろ住宅が建つにつけましても、お上のなさいますことはとかくひまがかかるのでございます。帰ってきてから徐々にやろうということでは拍子に合わなくて、引揚者がこれならいっそ帰って来なかった方がよかったということにもなる。中共からの方には七割も必要だということですが、なるほど次材道具を売り払って向うに行った人がたくさんあります。義勇団、開拓団というような人たちは特にそうでございまして、この間来た人は、つけもの石まで売ってしまって向うに行った。そうしてそういうものもみな置いて裸一貫で帰って来た。裸一貫と言いたいけれども、何もつけてないような格好で帰ってきたという人たちが多いのでございまして、中共関係が住宅を必要としているということは私もよくわかります。どうぞ一つ政務次官におかれましては、この問題に関し、特に家庭にいる婦人たちの苦しみという点からして力をお入れいただきまして、ぜひ督促していただいて、建て始めましたならば早急に完成するようにやっていただきたいということを要望申し上げます。なるほど、先ほどこの問題について第一に御質問になりました先生からもおっしゃいましたように、勤め先によりまして放棄しなければならぬようなこともありますから、お待ちになった上でというお心持はわかりますが、帰ってきた人たち気持よく住めるように、狭いながらも楽しいわが家という感覚が十分に出ますように、御婦人政務次官として格段の御尽力をお願いして、私の質問を打ち切ります。
  79. 紅露みつ

    紅露政府委員 こまごまとしたお心づかいが私にもぴんぴんと響くのでありまして、政務次官としては、先輩の中山委員にもいろいろ御努力いただいていたことでございますが、何かとまた御相談にも乗っていただきまして、できるだけの努力をいたしたいと存じます。
  80. 高岡大輔

    高岡委員長 受田新吉君。
  81. 受田新吉

    受田委員 引揚者の集団住宅の補修問題についてお尋ねいたしたいと思います。今公爵住宅、特に引揚者のための第二種公営住宅の問題等が出て、相当周到な用意をもって対拠しようという心がまえだけはお聞きしたわけでありますが、しかし、住宅が今お説のごとき焼石に水のような少数のものでは、これは当面を守ることはできません。従って、現在引揚者の集団住宅として全国各地に散在している住宅は、今中山さんのお説のごとく、馬小屋のようなところにおいてまたこの冬を迎えなければならぬ。あらしが吹きまくる中で、ガラス戸ははずれ、壁は落ちているという不衛生なところで、補修をしないままでこのまま冬を越させるということになったら大問題だと思いますが、厚生省あるいは大蔵省としては、引揚者の哀れなる集団住宅をこのまま補修もされずに冬を越させようと、こうお考えになっておられるかどうかを伺いたいのであります。
  82. 紅露みつ

    紅露政府委員 受田委員には引き揚げ問題の当初から御努力を願っておりますが、引揚者と住宅という問題は切っても切れない問題であります。ところが、だんだんあの集団住宅も老朽して参りまして、今お説のような状態のところが多いのでございます。ところで、中山委員からお話がございました北海道の集団のことでございますが、あれはもう排水も悪いし暗さも暗し、非常に陰気な惨たんたるありさまでございますので、北海道につきましては補修費が七百八十万取れたわけでございますが、その他につきましては、北海道は六百戸疎開でいこうということでございますが、お話の東京都内にも老朽したところがあるわけでございます。これらにつきましても、私ども非常にこれは予算のときにも心を痛めたのでございますけれども、今回は北海道がまず集団しておるからということで補修も疎開も実現するわけでございますが、国家財政の点が問題でございますけれども、私どもは、新規の住宅とともに、この集団住宅が手を入れて少しでも使えるということでございますならば、またそれに努力しなければならないと思っておりますので、今度の予算編成に当りましては、できるだけ予算を獲得いたしますように努力したいと存じます。
  83. 受田新吉

    受田委員 今私申し上げたように、全国各地に集団住宅がばらばらにあるわけであります。そして今先生のお説のごとき、哀れなる状況になっております北海道だけを今さしあたりやられるために七百八十万ほど用意されたということなんですが、全国各地に散らばっている他の地域は、そのまま放置されるような運命になっているのか、あるいは今年度に何か用意を考慮されているか、お聞きしたいと思います。
  84. 紅露みつ

    紅露政府委員 今年度はぜひ努力をいたしたいと思います。ただし、まだ私がここで必ず実現をというよりなことは申し上げられませんが、少くとも厚生省としてはあげてこの問題に努力する、これだけははっきり申し上げられることでございます。
  85. 受田新吉

    受田委員 それでは、厚生省調査したところによる補修を要する寮の引揚者の収容人員、そしてその府県が申請した補修のための申請額、それから政府自身が査定を終っておるのがあると思いますが、その査定を終った政府査定額との総計だけを一つ示していただきたい。総計でけっこうです。
  86. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 実は、先ほど政務次官から答弁がございましたように、補修の問題につきましては、非常に現状がこのまま放置できない状況にございますので、従来からもこの問題については実態調査をいたしていたわけでございます。昨年度各都道府県から実態調査していただいて、集計いたしまして、私の力で一応の査定基準に基きまして査定いたしまして、昭和三十年度予算としまして予算要求をいたしたわけでございます。そのときの全国の都道府県からの申請の金額でございますが、北海道を除きまして全国約二億七千万でございます。これは都道府県からの生の申請額でございます。それに対しまして厚生省で一応査定いたしました額は約一億でございます。こういう数字になっております。
  87. 受田新吉

    受田委員 政府としてはできるだけ集団の暗い住宅から明るい疎開住宅へ転換させようという意図を持っておられることはよく了承します。しかし、そのために、その独立した住宅に住むことのできない人に、それまでの間を補修でまかなってあげようという方は非常に軽く取り扱っておられるということが、これではっきりわかったわけであります。北海道を除いて、すでに厚生省が査定しているだけでも一億余りという数字が出ているのに、北海道の七百八十万だけが通って、その残りはそのままに放置されているということは非常な問題だと思うのですが、親切にしてあげる、冬を寒くないようにしてあげるということは、ちょっとした心づかいをしていただくだけで、この人人は希望を持つことができる、喜びを持つことができると思うのでありますが、疎開に入っている人はほんとうに仕合せに暮しているのに、この馬小屋にいる人をこの冬もまた放置しておくということになると、これはほんとうに社会問題としても重大だと思うのであります。厚生省のお考えは、一億円の補修を要する。すでに厚生省が調べて査定した額の十分の一にも足らぬ北海道だけをわずかに認めて、そのほかを認めていないということに対する御見解と、また大蔵省は、厚生省がそういう要求をしたことに対して、思い切って補修費を北海道以外において削ったその理由を、明らかに御説明を願いたいのであります。
  88. 大村筆雄

    ○大村説明員 お答え申し上げます。ただいまの受出先生の御質問は非常にごもっともでございます。従来、引揚者住宅の補修の問題につきましては、昨年でございましたか、御質問がございまして、お答え申したこともあるかと存じますが、建物の管理は実は地方公共団体にお願いしておりまして、借り料も地方公共団体の歳入になっております。従いまして、常識的に申しますと、地方公共団体が借り料を取り、公共団体の責任において補修して、これも、全国的に計算いたしますと、あるいは一億という数字になるかと存じますが、これを各地方公共団体にばらしますと、金額としてはごくわずかな金額になりますし、借り料も歳入として入るのでございますから、できるだけ地方公共団体にごめんどうを願うという方針で従来やってきた次第でございます。ただ、昨年、北海道につきましては、受田先生初め皆さん実地をごらんになりまして、相当ひどいという点も明らかになりましたし、また北海道につきましては、一時集団的に引揚者を受け入れたという関係もございまして、そういう住宅が多量にございます。それからまた北海道自体の特別な事情もございますので、放置できないという熱烈な御意見もございまして、本年は特別に北海道の分を計上したわけでございますが、内地の分も決して放置してあるという状態ではございませんので、これはできるだけ地方公共団体にも御努力を願い、早急に片方では第二種公営住宅の新築を促進いたしまして、新しいいい住宅に受け入れるとともに、その間の補修はできるだけ促進いたしまして、悲惨な状態にならないように、ぜひ私どもも心がけなければならぬと考えております。
  89. 受田新吉

    受田委員 地方財政は逼迫して、各府県ともまさに塗炭の苦しみをなめていることは、今回それらの関連の諸法案が出て、その審査の際に地方公共団体の悲痛な声を送られていることでも御承知いただいていると思うのですけれども政府としてはこの補修問題を尊重されるということであるならば、今厚生省が一億という査定をして府県にも通告している額の十分の一にも足らぬ北海道だけを認めたということではなくて、もっと各府県の特に重要なところにも心を配るほどのお心づかいをされるべきではなかったものか。大村さんは、昨年非常に決意を披瀝されまして、補修に対する何とかの処置もとりたいという決意を表明されたわけですが、それが形の上では北海道に現われたということになるわけです。ところが他の府県で同様の関係のあるところにはこれが現われていないわけなんです。そういうことにおきまして、政府としては、新築の住宅の方へ重点を置いて、もういずれ解いてそこを処分するような集団住宅などはなるべく補修をやらぬで、重点的に新築の方に持っていこうという意図があるのじゃないか、この点率直にお聞きしたいのです。
  90. 大村筆雄

    ○大村説明員 お答え申し上げます。今年度は特に住宅対策には政府としても重点を置いてやっておることは御承知通りでございます。政府としては、新築問題は、地方公共団体に渡しますことは地方財政の関係もございまして十分に参りませんので、従いまして、重点的に政府は取り上げまして、これが政府の重点政策の一つであります。補修という点になりますと、これは、受田先生の御説もございましたが、地方財政も相当お困りでなかなか容易でないと存じますけれども、個々の団体にいたしますと、金額にしますとそう大きい点もございません。この程度は地方団体で何とかお願いできないか、私どもはそういうふうに考えておる次第でございます。
  91. 受田新吉

    受田委員 これは大へん御親切なお考えのようでありますが、実は、引揚者にとっては、おおむね社会的には不遇な地位にあるのでありますが、こういう人々に心を配っていただくほどの余裕が地方公共団体にはないのです。従って、国家として大きな見地からこの人々を守ってあげるという施策を講じていただかなければ、この人々は救われません。金額は少額で、地方公共団体にとっても負担がさほどないというお言葉があったようでありますが、その額の多少を問わず、少くとも久しく不遇な目にあった人々に対するあたたかい心づかいという意味でも、政府として北海道同様の措置をこの際おとりになることが、特にこうした時勢における人道尊重の政策推進の政治的責任だと思うのですが、どうですか。冬にこのまま放置されたら、各府県とも早急に手が打たれないという結論が出るので、おそらく驚くべき寒さにふるえる気の毒な生活がそのまま続けられると思います。まだ冬には間がありますので、これから何かの措置をとられて、ごく少額で済むというお言葉が今あったわけですが、その少額の措置をお取りになられて、せめて政府の誠意を国民の前特に引揚者人々の上にお示しいただく措置が今からありませんでしょうか。この点、冬までの補修ですから、すぐ仕事はぱぱっとできるのですから、ぱぱっとやれるような軽い気持で、一つお手を打っていただけませんか。
  92. 大村筆雄

    ○大村説明員 この問題は本年度予算に計上していないものでございます。予算の補正という問題にも関連いたすものでございますので、今ここで責任を持って御答弁いたしかねますが、先生の御意見は十分拝聴しておきます。
  93. 中山マサ

    中山(マ)委員 私家庭におる者としてはよくわかるのでございますが、その補修費というものが、いわゆる腐れかかった家に金をつぎ込むことほどばかばかしいお金の使いようはないというお考えで、この補修費は削っていらっしゃるのでしょうか。なるほど、下手に金を入れる家よりも、いっそのことそれをつぶして新しく建てた方が、経済観念から行けば、かえってその方が得であるろうと私は思いますけれども、そういう意味で補修費は出さぬということを大蔵省は考えていらっしゃるのですか。それを一つ伺いたい。
  94. 大村筆雄

    ○大村説明員 お答え申し上げます。決してそういう考えではございませんので、先ほど申し上げましたように、事柄自体が地方公共団体でおやり願っていい問題ではなかろうか。また負担自体もそう大した負担ではございませんので、従来もそういう考えでやって参った次第でございます。
  95. 中山マサ

    中山(マ)委員 そのお金はどういうところに入れて流していらっしゃるのですか。地方公共団体に頼む、頼むとおっしゃっているが……。
  96. 大村筆雄

    ○大村説明員 建物の管理は地方公共団体か管理の責任者でございます。従いまして家賃なども地方公共団体が歳入として取り上げております。従いましてこれは第二次公営住宅でも第一次公営住宅でも同じでありますが、その間家賃の収入で地方が補修して参っておるわけでございまして、ほかの住宅にも同様に補助金を出していないのでございます。
  97. 中山マサ

    中山(マ)委員 補正予算にもかかわってくるという今の御発言でございまするが、それならば今度の十月にはまた臨時国会ですかあると聞いておりますが、そのときに、厚生省から今御要求が出ておりまするのに近いお命が出していただけるお見込みがあるのでしょうか。
  98. 大村筆雄

    ○大村説明員 補正予算の問題につきましては、これは実は、総理からも明言されておりまする通り、特に災害の方に大きな天変地異がない限りは組まないという総理の方針でありますので、この問題について補正予算を組むという答弁は、私からできかねます。
  99. 中山マサ

    中山(マ)委員 総理はそうおっしゃっていますが、どうやら政界の動きは、バナナ、砂糖、そういうふうな問題が国会では片づかない、三日から五口くらいは延びそうな動き政府及び与党がなさっていらっしゃるようでございますけれども、これは引き延ばしをしようというお考えの代議士さんが相当あるといたしますれば、三日や五日延ばしたって、引き延ばされたらもともとじゃないかというような考えがいたします。そうなって参りますると、幾ら鳩山総理が天変地異がなければしないのだとおっしゃっても、総理大臣だけではこういうことは決定ができない問題だと思いますから、いずれはそういうことになってくるのではなかろうか、そういうことになってきたら自分は内閣を投げ出すというような御声明もあったように、私も記憶のどこかにございますけれども、そういうことが実現いたしましたとすれば、お考えになりますか。仮定のことだからお話しできぬとおっしゃれば、それまでですけれども……。
  100. 大村筆雄

    ○大村説明員 お答え申し上げます。今ここで御満足の行く答弁はいたしかねると思いますけれども、十分研究してみたいと思います。
  101. 木村文男

    ○木村(文)委員 ただいま受田さんから引揚げ集団住宅の問題につきましては十分御質疑があり、また政府当局からも、ことに政務次官からほんとうに誠心を込めての御答弁がございまして、私了承するにやぶさかではございません。しかしながら、念のために二、三、いわばだめを押しておきたいと思うのであります。  先ほど大村説明員から御説明がございましたが、北海道だけことしやったということについては、私も先ほどの質問者同様不満でございます。それは、予算は一兆円のワク内における操作でありまするので、政府の大方針を曲げるということは私は忍びがたいところもあると思いますので、了承はいたしますが、もしかりに北海道が寒冷地帯であるということによって北海道の住宅をやったとするならば、私は青森県でありますが、また青森県のみならず、雪国は一連の関連性を持つものだと考えます。従いまして、この理由は、またある程度同じものではないかと考えます。また、そうでなく、北海道は特異な災害だとか、あるいは無理して北海道にやったとか、収容させたとかいうような理由があるとすれば、これまた各県ともいろいろの無理なりあるいはつらい収容の仕方をしただろうと考えます。従いまして腐朽度の問題は腐朽度の問題だと思う。御承知通りこの集団収容施設はおおむね兵舎を改修したものが多いのであります。私の体験からするならば、実に私は厚生省を責めたい一人であります。なぜかというと、私自身青森県の団体長でありまして、受託施設をさせられたわけであります。その跡始末のためにどれだけ苦労したかわからぬのであります。こういうことを考えますと、今その施設がどうなっておるかというと、先ごろも行って見て参りましたが、実にみじめさを通り越したもので、先ほどの中山先生その他の委員の方々からじゅんじゅんと申し上げた通りでございます。従って、大蔵省当局に、特に質問よりもその決意なり方針を新たにしてもらいたいという見地から申し上げる。というのは、いろいろの施策があるでありましょうが、大方金の使い方の面において犠牲になっているのは社会保障政策の面で、これが大てい投げられるおそれが多い。これは中央政府だけじゃない。地方においてもそれが見られるところです。そこで私は強調したいのでありますが、私、与党としてこういったことを申し上げるのは、あと委員長にしかられるかもしれませんけれども、私は、社会事業に二十余年間身を挺した者として、切々の訴えをしたい。それで、農林水産委員会から、重要な愛知用水の問題がかかっておるにもかかわらず、実は出て参ったようなわけでございます。その点の決意を新たにできるかどうかということは、これはもう論じなくても尽きていると私は思いますが、政務次官も割合に長く在職していますから、相当やれると私は思う。ですから、あなた方は特に決意せられて、その決意のほどをここに表明してもらいたい。大村説明員は、長い間、この社会保障制度のために、おそらく大蔵省内においてもずいぶんつらい目にあわされているだろうと思う。ことにまた課長でもないし、つらい立場に置かれていて御同情申し上げるところであります。しかしながら、その役目を通して職を賭して戦うだけの決意があれば、道おのずから開けるかもしれません。その決意ありやいなやを両氏に私はお尋ね申し上げたい。  それからもう一つ、住宅課長は主管課長でありますから、この住宅問題はあなたに実に大きな責任があると思う。かつて、私は、今ここへ速記録を持ってきていませんけれども、たしか昨年の十二月の二、三日から十二日までの間において、この委員会質問をいたしたはずでありますが、根本的にこの佳名の方針を改めなければならぬと私は主張して、そのことは援護局長にも私は十分申し上げた。申し上げたが、その結果が現われない。ですから、私は、その点についてあなたがどういう決心を持っているか、お尋ねしたいのであります。  それは、建設省が今所管事項として住宅の問題について大きな力を持っているやに私は見られてならない。かつて、私ども役人時代は、これは別にその系統だから私は厚生省につくわけじゃないのですけれども厚生省の社会局がこれを担当しておった。昔と今とは違うといえばそれまでの話でありますけれども、社会政策の一端であるその住宅、しかも今日終戦後すでに十年、この間引揚者が帰って参りまして住宅難に襲われている今日、これ以上の大きな社会政策というものはないと思う。かつてそういう時代でないときでさえも、厚生省がこれを担当しておった。ましてその社会保障政策的な面がさらに増大された今日において、厚生省が弱腰になって住宅政策に当っておるとすれば、私はまことに遺憾でありますから、その点の調整をどういう工合に両省がやっているかということ、そしてどれだけの主張厚生省がこの住宅政策の七においてしているかという、一つの例でもいいからあげて、その実績を示していただきたいと思います。  第四点は、この収容施設の補修の問題について、これは政務次官初め各関係政府委員説明員の方々にお尋ねしたいのでありますが、私は、この住宅のことが心配になりましたので、農林水産委員会においてもこのことは申し上げました。台風十五号によってわれわれの調べたところによりますと、北海道だけにおいて風倒木が約五千万石に上っておるのであります。これを処理するにまことに苦慮しているのでありますし、またその実績は遅々として今上らない。そこで私は、農林水産委員会においてこういうことを林政部長に質問した。この風倒木五千万石の処理は何年間にできるのかという質問に対して、林政部長が、三年でやってお目にかけます。そこで私は重ねて質問いたしまして、三年間でできると思うか、私はできないと思う。その間におそらく腐るだろうということを申し上げた。そこで、その一端として、この住宅難に襲われている今日、収容施設のごときはまさに腐朽して、雨が漏るのじゃない、降っているというような先ほどの言葉の通りでございますので、これに政府が、横の行政的な連絡をとられて、そして無償で、この施設のために各府県に割り当てて、これを運搬あるいは処置するくらいの経費さえあれば、あの地方公共団体が非常に困っている今日でありますから、無償で配ることによって、きわめて少い補修費でこれが補修できるということを私は主張いたしまして、その善処方を要望したのでございます。そこで私は、当委員会におきまして、政務次官に要望し、そしてその決意を伺いたい。それは、私が農林水産委員会において発言いたしましたし、またその言質もありますから、よく林野庁と横の連絡をとられまして、そしてこの補修の目的にかなうような何らかの、風倒木を利用したところの住宅面における方法を講じていただきたい。その御決意があるかどうか、一つ伺いたいのが第四点。  最後に、第五点として、先ほどから全国の収容施設の問題が論ぜられておりますが、限られた政府の予算、しかも、ことしは査定されて、大なたをふるわれて、二億七千万円のものが一億そこそこになった。実に遺憾なことであります。そういうような現状でありますから、これの運営がまたおのずと必要になってくると私は思う。そこで私は、温かいところの方々にはまことにお気の毒でございますが、せめて、そのワク内において、冬に困る——先ほどから同僚委員の方々が、言をきわめて、雪ざらしになっている人のこれからの越冬のことを説かれたのでありますが、それに対処するために、重点的に、これが腐朽の状態とそれから気候の面を勘案いたしまして、施策を講ずるような交付の査定の仕方をとっていただけないものかどうかということを、私はお尋ね申し上げたいのであります。  以上であります。
  102. 紅露みつ

    紅露政府委員 木村委員から経験に基くいろいろな点でお話がございまして、そんなにも熱心にお考えいただいておるのかと、私も感激しておるところでございます。  集団施設に対する補修の実現についての決意はどうかという冒頭のお尋ねでございますが、もう決意は私は十分あるのでございます。どうかこれを実現したい、今はその思いで一ぱいでございます。努力させていただきます。  それから、北海道についての青森との関係でございますが、気候がそんなに違わないのに、北海道が寒いからということで北海道にやったとすれば、非常に不公平じゃないかというお話もよくわかりますが、そういうことではなかったろうと思うのでございます。というのは、集団は方々にいたしておりますけれども、北海道は何といっても非常に多いのでございますし、そういう点で私は北海道が特に重点に置かれたのではないかと思うのでありますが、なおこの点は事務当局からも説明を申し上げたいと存じます。  それから、風倒木のことでございますが、これは大きな問題でございまして、三年かかって腐ってしまうというようなお見通しがありますことも私もちょっと伺ってはおりますが、これが無償で出されて、そうしてこうした引揚者の住宅その他の福祉施設に使われるということであれば、これは大へんありがたいことだと思うのでございますが、ただし、これはお話のように各省にまたがっている問題でございますので、よく連絡をとらせていただきます。そうして検討いたしたいと思います。  それから、最後のお話でございますが、気候とか地域とかいう問題も十分に考えて、暖かい所はこの冬を迎えてもそれほどの苦痛はないのじゃないか、そういう点もよく考えろということは、ごもっともなことだと存じます。  なお、どうも厚生省は弱腰なのではないかというようなお言葉でございますが、住宅に関して私は厚生省は弱腰ではないと存じます。それなら、この引揚者の住宅に当てられたこの三百五十戸、これでよろしいか。これはこれで決して十分だとは存じておりませんが、今年度は御承知通り母子住宅のワクなども強い要望がございまして、実は、特にこのワクは、初めての試みといたしまして、八千戸母子住宅に振り当ててもらったわけでございまして、全く新しい試みといたしましては相当にこれは建設省も熱意を示されたと存じます。建設省も、この住宅の問題について、弱い面に決して冷淡であると私は思っておりません。ただし、引き揚げの問題につきましては、今申し上げました通り決して十分だとは思っておりませんので、その状況に応じましていろいろに工夫をし、また地方の公共団体等におきましても、地方財政が困窮しておりますことは御指摘の通りで、私どもも十分それは察しております。厚生省といたしましては、その金がかかるということにつきましてもできるだけの配慮をしていただきたいとは存じますが、なお、それ以外にも、この人ならばこういうふうな縁故をたどればここに落ちつけるではないかというような点を、あたたかい気持を持って指導してもらいますように、各県に連絡をとっておるわけでございます。従いまして、ただいまのところでは、本年度の引き揚げに対してはこれで一応落ちつくことができる、こう見通しておるわけでございますが、しかし十分でないということは私どももよくわかります。これらの諸点につきましての決意はというお尋ねでございますので、これは十分な決意を持って、国家財政の許す限りやりたい。もう何と申しても国家財政が問題でございまして、この点は木村委員も同じお心持だと思いますが、これに差しさわりのない範囲で繰り合せがつきまする限り、私どもは全力をあげて今後努力をいたしたいと存じます。
  103. 大村筆雄

    ○大村説明員 お答え申し上げます。社会保障関係の経費につきましては、これは御承知通りに過去数年にわたって毎年着実に増加いたしておりますし、また施策内容も毎年どんどんと進んで参っております。この点につきましては、今後とも財政の許す範囲内においてできるだけ増加に努めます。特に社会保障の内容の充実に努力をいたしたい、かように考えております。
  104. 南部哲也

    ○南部説明員 お答えいたします。公営住宅のうち第二種公営住宅につきましては、その割当要求戸数についてはすべて厚生省協議することに相なっております。昨年まで五万戸のうち九千二百五十戸であった第二種公営住宅が、今年度は一万七千三百戸、約八千戸の増加を見ましたことは、決して建設省におきましても社会保障の面をおろそかにしてはいないと、われわれは考えておる次第であります。なお、今後におきましても、第二極住宅の全体における比率は今年度同様維持していきたい、かように考えておる次第でございます。
  105. 木村文男

    ○木村(文)委員 政務次官にちょっとお尋ねいたします。今の第一種と第二種住宅の問題です。第二極住宅、結局は庶民住宅でございますが、私は住宅の問題は区別してやる必要はないと思う。これはあなた方とは根本的に考えの違うところでございます。たとえば坪五万円の耐寒住宅、これは私は必要はないと思う。それは日本の財政が許せばもちろん全部あれでけっこうでございます。だが、現在の敗戦後の日本は大方みな庶民であります。ことに農地改革後の今日の日本は、私はなおさら大方庶民であろうと思う。これはもっと極端に平たく言えばみんな労働者であると私は思う。そういうような見地からいっても、もうすでにその区別をする必要はないと思う。力のある者は、これは別です。ですが、政府の施策としてやるものについては区別する必要はないというのが、私の住宅に対する考えであります。そこで、きわめてこの住宅難の場合であるから、数多くの住宅を与えるということが結論です。政務次官がその区別を廃止するだけの政治的な折衝一つやってみるお考えがあるかどうか。私がなればやりますよ。ですから、その意味で言うのであって、その決意を承わりたい。
  106. 紅露みつ

    紅露政府委員 ただいまの木村委員の住宅に対するお考えは大へんに貴重な御意見を伺ったと存じます。私は女性のことでもありまして、そういう風倒木の問題にいたしましてもそうですが、住宅の問題にもそう深いわけではございません。局所々々のこうした問題とのつながりにタッチしておるわけでございまして、こういうような広いお考えを伺ったことがございませんで、今伺ってこれは大へんに新しい御意見だと思って傾聴したわけでございます。これが実施できますかどうか、私の方だけで実現するなどとは存じておりませんが、しかし、大へん貴重な、参考に聞かせていただいたのでございますから、検討をいたしましたり、またいろいろ御指導をいただく点もあろうかと存じます。私も、大へんこれはおもしろいと申しますか、新規な御意見と思いますので、尊重して検討いたしたいと存じます。
  107. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私簡単に一点だけ伺いたいと思うのでございます。引揚者の方方の集団住宅が各県でどんなにみじめなものであるかということは、他の委員からすでに述べられまして、私から申し上げるまでもないと思います。実は私どもの方も大へんみじめなんですが、つゆとか冬になりますと、県庁の方へその修理方を申し出て参ります。そうしますと、家賃は一応県の方でとっているから、県の方で修理しなければならない。これは実施しているとおっしゃるわけなんですけれども、財産としては国に属するものだということで、その間にいろいろややこしい問題が起きてくるのじゃないかと思うのですが、一体最後はこの所有はどういうふうなことになるのでしょうか、最後までやはり国が持っていることなのでしょうか。
  108. 紅露みつ

    紅露政府委員 この点は事務当局から説明をいたさせていただきます。
  109. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 今の戸叶先生の御質問でございますが、現在私の方で管理いたしております引揚者集団収容施設の中には、全国的に見ますと約四割から五割程度のものが、ただいま御指摘のございました国有財産として国の所有に属しているものでございます。残余のものにつきましては、民間のものも若干ございますが、大体は都道府県なり市町村の所有のものが多いわけでございます。それで、国有財産の分につきましては、中に入っておられる引揚者の方の御要望、あるいは管理しております当該都道府県なり市町村の御要望がありまして、一定の条件に合致いたしましたならば、これを当該都道府県に払い下げることができるような制度になっております。現にそういうふうなことで都道府県なり市町村に払い下げている例も若干ございます。それには条件があります。
  110. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その条件というのはどういう条件でしょうか。ついで申し上げますが、むしろ県の方へ修理させたり何かしているのですから、もしも希望があるならば、それを払い下げてまかせてしまった方が、お互いにやりいいのじゃないかと思うのですけれども、所有は国の方で、しかも県の方で管理しなければならないというので、いろいろむずかしい点が起きているように思うのです。どうして払い下げられないか。ただいま一定の条件とおっしゃいましたが、その条件を承わりたいと思います。
  111. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 実際の事務は大蔵百の管財局の方でやっておりますので、私もよくは承知しておらないのであります。私の知っている限りにおきましては、大体五年以上たっているということ、その施設が老朽腐朽度のひどいということ、それから中に入っている大部分の方々の払い下げてもらいたいという意見があること、それから払い下げたあとの代金でございますが、この代金は同種の目的の経費に使用する、たとえば引揚者のための新築予算に使用するとか、あるいは他の補修費に回すというような、そういった条件が付せられているようでございます。
  112. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今のお答えの中で二点私は了承できないのです。一つは、大部分の人が払い下げを望んでいるということですけれども、その中にいる人たちは、県のものであろうが、国のもであろうが、住みよくさえしてもらえばいいわけです。だからそういうことはあまり関係ないと思います。もう一つは、腐朽度がひどければ払い下げるのですか。
  113. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 さようでございます。
  114. 戸叶里子

    ○戸叶委員 腐朽度がひどければ払い下げるというのは、ずいぶん八をばかにした考え方ではないですか。悪い家ならば払い下げてやるという、そういう考え方引揚者の住宅を考えておられるから、親切に解決できない、こういうふうに言わざるを得ないと思うのであります。この点はあなたの所管ではないようでありますから、お聞きしてもむだだと思いますので、こういう点向かの機会に大蔵省の係の方をお呼びして伺いたいと思いますが、そちらの係の方からお考えになりまして、むしろこういうものは県の方へ払い下げた方がやりいいとお思いになりますか、それとも今のままで別にどうということはないとお思いになりましょうか、そのお立場からの御意見を承わりたいと思います。
  115. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 先ほど中に入っておる住居者の意見が大事だということを申し上げましたが、これにつきましては、過去におきまして、私の記憶しておりますところによりますと、当該都道府県なり市町村は払い下げを希望するが、中に入っている人が希望しないというような事例がございまして、都道府県なり市町村も希望し、大部分の住居者も希望する、そういうように両者の意見が合ったところで払い下げるというようなことになったように記憶しております。  それから、今お尋ねの都道府県に払い下げた方がいいかどうかということでございますが、これにつきましては一がいにどうとも申し上げられないのでありまして、そのときそのときの事情によりまして、払い下げるのが結果的にいいという場合もありましょうし、またそうでない場合もあるのではないか、そういう点については一がいに抽象的にどうとは申し上げにくいのではないかと思います。
  116. 高岡大輔

    高岡委員長 ほかに御質疑はございませんか。——ほかに御質疑がなければ、本件はこの程度にいたします。     —————————————
  117. 高岡大輔

    高岡委員長 次に、請願日程の審査に入ります。  日程第一ないし第九、第十一及び第十二の在外帰還同胞帰還促進に関する請願を一括して審査いたします。紹介議員の説明を聴取いたします。仲川房次郎君。
  118. 仲川房次郎

    ○仲川委員 本請願の要旨は、ソ連中共地域等における戦犯及び犯罪者として残留を余儀なくさせられている未帰還者の引き揚げ問題は、現在赤十字社間の交渉によって逐次解決せられつつあるが、この交渉交渉団体としての限界ともいうべき障壁にはばまれている現状にかんがみ、これを解決するためには政府の直接交渉を持つほかはない実情にある、ついては、第一、日ソ交渉がいろいろな形ですでに開始されている今日、政府は未帰還問題の全面解決を最優先的に取り扱うこと、第三、中共、北鮮、外蒙、ヴェトナム等に対してもすみやかに交渉を開始する等の措置を論ぜられたいというのであります。     —————————————
  119. 高岡大輔

    高岡委員長 なお、日程第十二の請願については私より説明いたします。  本請願の要旨は、最近日ソ国交調整交渉が開始せられる機運にあることは大いなる希望を抱かせる近来の快事であり、ソ連領土に多数未帰還の肉親を有する留守家族がこの交渉に寄せる期待は絶大なるものがある、ついては、日ソ国交調整交渉に当っては、すべての案件に先だって引き揚げ問題を解決するとともだ、未帰還者の処遇改善等について配慮されたいというのであります。  右請願について政府意見を伺います。
  120. 小川平四郎

    ○小川説明員 ただいまの請願の中にございました事項につきましては、先ほど園田政務次官からも答弁のありましたように、日ソ交渉につきましては先ほどのお話のようになっております。また、中共との問題につきましても、先ほどちょっと触れられましたように、ジュネーヴにおいて話し合いの口火を切っております。なお、北鮮につきましては、ただいま日赤が北鮮赤十字及び南鮮赤十字に連絡をして促進をはかっておる次第でございますので、請願の御趣旨におおむね沿えるのではないかと考えております。     —————————————
  121. 高岡大輔

    高岡委員長 日程第一〇、戦没者遺族等援護強化に関する請願審査をいたします。  紹介議員の出席がありませんので、私より説明いたします。  本請願の要旨は、戦傷病者戦没者遺族に対し、戦傷病者戦没者遺族等援護法の制定及び恩給法の改正より、国家処遇が確立されつつあることは、まことに感謝にたえないが、いまだ現今諸般の情勢に照らして十分とは言えず、また他に比し不均衡の点があることから、今後一そう強力な措置を講ずる必要がある、ついては、一、戦没者遺族の公務扶助料を文官同様に引き上げ、二、公務死の範囲を拡大し、三、扶養家族の加給金を増額し、四、旧国家総動員法に基いて徴用された者及び国民義勇兵となった者にも遺族年金並びに弔慰金五万円を支給する等の措置を講ぜられたいというのであります。  右請願につき、政府意見を伺います。
  122. 田島俊康

    田島説明員 ただいまの請願についてでございますが、文官と同様にせよという第一点、これは、今回の措置によりまして、昭和二十八年十二月三十一日以前に退職をなされました文官とおおむね同等ということになっておるのであります。  なお、公務死の範囲拡大でございますが、これも、すでに、衆議院におきまして修正を受けました援護法によりまして、恩給法がそういう取扱いをする、こういうことになっております。  扶養手当の増額につきましては、これは一般の公務員の扶養手当とおおむね同額ということの取扱いになっております。  なお、総動員法によりますところの徴用者あるいは義勇隊という方々につきましては、現在のところ弔慰金が相当広く行く、こういうことになっておるのでございます。     —————————————
  123. 高岡大輔

    高岡委員長 日程第一三、第一五及び第一六、在外帰還同胞帰還促進等に関する請願は、同趣旨でありますので、一括して審査をいたします。  紹介議員の御出席がありませんので、私より説明いたします。  本請願の要旨は、戦後在外同胞の引き揚げについては、内外関係当局の好意と努力とによって漸次促進せられてきたことは、まことに喜びにたえないが、ソ連中共地域においては、いまだ完了を見るに至らず、さらに戦犯者として今なお外地拘置所において日夜労役に服している多数の同胞のあることは、まことに悲痛きわまるものがある、ついては、これら在外同胞をすみやかに送還せしめられるよう、適切なる措置を講ぜられたいというのであります。     —————————————
  124. 高岡大輔

    高岡委員長 日程第一四、第一七ないし第二〇、ソ連抑留胞引揚促進に関する請願は、同趣旨でありますので、一括して審査をいたします。  紹介議員の御出席がありませんので、私より説明いたします。  本請願の要旨は、ソ連抑留同胞は数次にわたって釈放帰還を許されたが、今なお戦犯者として多くの者が抑留されている、幸いにして近く日ソ国交回復の交渉が開始されるので、交渉に際しては、あらゆる懸案に先だって抑留問題を解決することは、ひとしく国民が熱望してやまないところであり、かくして日本国民感情を抜本的に改めることがソ連のためにも必要であると考えられる、ついては、ソ連抑留同胞全員を即時釈放帰国せしめるよう折衝されたいというのであります。  右請願について政府意見を伺います。
  125. 小川平四郎

    ○小川説明員 最初の請願と大体研趣旨の請願と存じますので、先ほどの件と同様に、請願の趣旨に沿いまして極力努力したいと思います。
  126. 高岡大輔

    高岡委員長 委員並びに紹介議員の御発言はありませんか。     —————————————
  127. 高岡大輔

    高岡委員長 御発言がなければ、ただいま審査いたしました請願はその趣旨が適切でありますので、本日の請願日程第一ないし第二〇の各請願は、いずれもこれを採択の上内閣に送付すべきものと決することとし、報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任願うことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 高岡大輔

    高岡委員長 御異議なきものと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  129. 高岡大輔

    高岡委員長 この際お諮りをいたします。今国会あと数日に迫りましたので、閉会になりました場合、引き続き閉会中も、国会法第四十七条の二項によりまして、継続して審議していきたいと思うのであります。つきましては、閉会中審査すべき案件として、各般の諸問題を大別して、海外同胞引揚に関する件及び遺家族援護に関する件につき閉会中審査の旨を議長に申し出たいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 高岡大輔

    高岡委員長 御異議なきものと認め、さよう手続をすることにいたします。     —————————————
  131. 高岡大輔

    高岡委員長 なお、継続審査の件に基き、その実地調査を必要とする場合におきましては、委員を派遣いたし、調査いたしたいと思いますが、その際における委員派遣の手続等に関しましては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  132. 高岡大輔

    高岡委員長 御異議なきものと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十八分散会