運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-07-20 第22回国会 衆議院 運輸委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十日(水曜日)     午後二時十分開議  出席委員    委員長 原 健三郎君    理事 有田 喜一君 理事 臼井 莊一君    理事 木村 俊夫君 理事 山本 友一君    理事 青野 武一君 理事 大西 正道君       岡崎 英城君    上林山榮吉君       佐々木秀世君    濱野 清吾君       堀内 一雄君    眞鍋 儀十君       伊藤 郷一君    徳安 實藏君       永山 忠則君    井岡 大治君       栗原 俊夫君    下平 正一君       正木  清君    山口丈太郎君       池田 禎治君    竹谷源太郎君       小山  亮君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         運輸事務官         (海運局長)  粟澤 一男君         運 輸 技 官         (船舶局長)  山下 正雄君         運輸事務官         (自動車局長) 眞田  登君         運輸事務官         (自動車局業務         部長)     岡本  悟君  委員外出席者         運輸事務官         (海運局海運調         整部長)    朝田 静夫君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 七月十九日  委員山本友一君及び栗原俊夫辞任につき、そ  の補欠として小澤佐重喜君及び坂本泰良君が議  長の指名委員に選任された。 同月二十日  委員松岡松平君、今松治郎君、關谷勝利君、小  澤佐重喜君及び坂本泰良辞任につき、その補  欠として濱野清吾君、志賀健次郎君、永山忠則  君、山本友一君及び栗原俊夫君が議長指名で  委員に選任された。 同 日  委員志賀健次郎辞任につき、その補欠として  今松治郎君が議長指名委員に選任された。 同 日  理事今松治郎君及び山本友一委員辞任につき、  その補欠として今松治郎君及び山本友一君が理  事に当選した。     ————————————— 七月十九日  国鉄熱海駅改築に関する請願畠山鶴吉君紹  介)(第四二九一号)  熱海修築工事促進に関する請願畠山鶴吉君  紹介)(第四二九二号)  伊王島海区平瀬航路標識設置請願田口長治  郎君紹介)(第四三三一号)  戦傷病者国鉄無賃乗車復活に関する請願(大  野伴睦紹介)(第四三六二号)  江川崎村、窪川町間の鉄道敷設促進に関する請  願(關谷勝利紹介)(第四三六三号)  弥彦線踏切警手廃止中止等に関する請願(稻  村隆一紹介)(第四三六四号)  若江本線国営自動車運転区間大津市まで延  長の請願草野一郎平紹介)(第四三六五  号)  大津測候所設置請願草野一郎平紹介)(  第四三六六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  自動車損害賠償保障法案内閣提出第八六号)  造船計画に関する件     —————————————
  2. 原健三郎

    原委員長 ただいまより運輸委員会を開会いたします。  お諮りいたすことがございます。すなわち昨十九日山本友一君、今二十日今松治郎君が、それぞれ当委員辞任せられ、本日再び当委員となられましたが、両君は理事でありましたので、これが補欠選任を行わなければなりませんが、選挙の手続を省略して、委員長において指名するに御異議がございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 原健三郎

    原委員長 それでは山本友一君及び今松治郎君をそれぞれ理事指名いたします。     —————————————
  4. 原健三郎

    原委員長 次いで自動車損害賠償保障法案議題といたします。前会に引き続き質疑を行います。なお最初に締めくくり的に委員長より政府に対し若干の質問をいたしたいと存ずるのであります。  お聞きいたしたい第一点は、この法案実施する時期であります。政府原案によりますと、十月一日ごろと聞いておりましたが、法案内容も複雑であるし、いろいろ政府準備もあろうし、業界の準備もあろうというようなことを勘案しまして、われわれの用意しておる修正案においては、八カ月以内において実施すべしということにしておるのであります。それでありますから、政府はこの点に対して十分意を尊重して実施されるよう要望いたしたいのでありますが、政府はいかなる考えであるか、お聞きいたしたいのであります。
  5. 三木武夫

    三木国務大臣 今御指摘のように、これはいろいろ万全の準備をしなければなりませんから、委員長の御指摘のくらいの期間はかかる、八カ月以内、できるだけすみやかにはいたしたいと思いますけれども、万全の準備を整えていたすことにいたしたいと考えております。
  6. 原健三郎

    原委員長 第二点としてお尋ねいたしたい点は、自家保障については非常に議論が沸騰いたした点であります。かかるがゆえに、われわれ当委員会といたしましては、自家保障についてはすみやかに一定基準のもとに相互保険へ移行せしめるよう——これは附帯決議においても要望する予定でありますが、一定基準のもとにおいて相互保険へ移行せしめるよう、政府においても十分すみやかなる処置をとられたい、これが本委員会としての要望でありますので、この際政府所見を承わりたいのであります。
  7. 三木武夫

    三木国務大臣 相互保険の問題は、受け入れ態勢整備等勘案をして、御趣旨のように善処いたしたいと考えております。
  8. 原健三郎

    原委員長 第三点としてお伺いいたしたい点は、本法実施されますと、むろん自動車損害による被害者は非常に恩典をこうむることは言うまでもないところでありますが、それに伴って運転者その他労働者労働条件、特に勤務時間とか賃金制度改善とかいう点が非常に要望されておるのでありまして、労働条件を悪化せざることはもちろん、労働時間の適正化賃金制度改善等を要望いたしたいのでありますが、政府のこれについての所見を承わりたいのであります。
  9. 三木武夫

    三木国務大臣 御趣旨はまことにごもっともと存じますので、関係官庁とも密接に連絡をとって、業者の指導その他適切な処置をとりたいと考えております。
  10. 原健三郎

    原委員長 第四点として承わりたい点は、保険料業者に対しては非常に負担となる、保険料が非常に高いということが一般にいわれておるのであります。かかるがゆえに、保険料の引き下げを考慮することはもちろんであるが、さらにこれが支払いについては、たとえば年四回あるいは二回というような分割払い考慮されることを非常に要望するのでありますが、政府はいかなる御所見でありますか。
  11. 三木武夫

    三木国務大臣 保険料低廉化はごもっともなことでございます。従ってこれは公正な保険料をきめると同時に、無事故報償制あるいは地域差あるいは業種別等勘案をいたしまして、公平な保険料考えて参りたいと考えております。  なお保険料分割払いには、あるいは短期保険などの方法によって、実質的に分割払いが可能になるような方法をとりたいと考えております。
  12. 原健三郎

    原委員長 なおただいまの質問に関連質問あれば許しますが、時間等の関係もありますので、ごく簡単にお願いいたしたいと思います。
  13. 上林山榮吉

    上林委員 数日前から本法案に対して質疑をしたいという通告をしてあったのでありますが、審議都合でこれができなかったのを遺憾といたしますが、ただいま簡単に質疑を試みたいと思います。  まず第一点は、昨年六月農協法改正によって共済事業が法的にできるようになっておるのでありますが、本法案提出するに当りまして、政府はこの点を考慮したことがあるかどうか。あるいはもし考慮したとすれば、この農協法改正によって共済事業ができるという法的処置は、これは一種の特別法だと考えておるが、今出されておる法案もこれと同じ性質のものを取り扱う法案で、これまた特別法といわなければならぬ。特別法特別法がここに競合しておるという事態にも受け取れないことはない。これに対してどういう見解を持っておるか。ただ一方が強制である、一方が任意であるという点のみによって、そういう区別をしておるのであるか、法の秩序というものに対して、政府が検討を加えられたることがあるかどうか。  さらにただいま委員長附帯決議に対する運輸大臣答弁で、——自家保障については、すみやかに一定基準のもとに相互保険へ移行せしめなければならない、この附帯決議に対する運輸大臣答弁の中に、何ら具体的に示されたものがない。たとえばただいま私が申し上げておる農業協同組合等に対して、相互保険をなさしめるという意図を含んでおるかどうか、こういう点等は具体的に明確にしておいてよろしい問題だと考えるので、この点もあわせてお尋ねをいたしたいと思います。
  14. 眞田登

    眞田政府委員 農業協同組合法にございます事業としていろいろあげてございますその中に、共済に関する施設というのがございます。またその他われわれの方で関係しております事柄に通運事業とか、あるいは貨物運送事業というようなものがございますが、これは農協がこういう事業を営むことができるという規定でございまして、実際にその事業を営みます際には、別途運輸大臣に、こういった事業を営みたいという申請を出していただきまして、それに基いて免許する、あるいはほかの関係でございますと、認可なり許可という問題が起るわけであります。従いまして今度の法案との関係で、農協がそういった保険事業を営みたいと言ったときに、許可されるかどうかという問題でございますが、ここにございますのはこの自動車関係だけでなしに、いろいろの事業についての能力規定だと思うのでございますが、今度の法律では、とりあえずは相互保険式のものは認めないで、最初保険会社にやらせるという形で出ておりますので、将来相互保険というものをこの法律で認めるようになりました際には、もちろん農業協同組合としての御申請があった場合には、これについて内容を審査して、適当と認めた場合は許可する、こういう形になると思います。  附帯決議に具体的に農業協同組合を認めるかどうかという問題も、相互保険というものを認めるようになった場合に、農業協同組合等についても許可するかどうかという問題が起るのでございますが、この最初発足の際には、相互保険をこの中に加味しておりませんので、組合による保険というものは最初は認められない、しかし将来認められるようになったときには、相互保険組合の一つとして農協から御申請になることもあるだろう、こういうことでございます。
  15. 上林山榮吉

    上林委員 時間を制約されているので、どうも正確な質疑を試みることができないのを遺憾に思いますが、もう少しくらいは一つ許していただきたい、こう思います。  ただいまの御答弁によりますと、相互保険の場合は農協が所定の規定によって手続をすれば、あるいは認めることになるであろう、こういうことでありますが、附帯決議趣旨は、これは農業協同組合にも次期国会あたりで当然相互保険を認める処置を含んでおるものだ、この了解のもとに、私どもは直ちに修正をしたのであるけれども審議都合考慮して、附帯決議に賛意を表せんといたしておるのでありますが、どうもこの答弁については私は不満足であるので、附帯決議が出てきた場合にあるいは詳しく質問せよということがあるなら、この点はこの程度にいたしておきますが、もしそうでなくしてここで簡単にできるなら、順序はちょっと変でありますけれども委員長質問も、どうも本案附帯決議を合せての質問であったので、私としては質疑をいたしたいわけであります。  なお農協法第十条第八号の共済規定によりますと、これは保険と同じ規定を含んでおるのであります。この点なども私は、政府はもう少しお考えになる必要があるのじゃないかと考える。  なお特別法——特別法であると一応私は考えるが、これはどういうふうに処置するものであるかという、いわゆる法律秩序の問題についての政府見解も、私は参考のために承わっておきたい。  それから第四番目に申し上げたいことは、相互保険農協等に正式に許可される、あるいはそういう法案次期国会で制定するまでには相当の時間がかかる。そこで本法案を見てみますと、代理契約ができる点があるが、農協などに代理契約を認めてもよいというお含みを持っているかどうか、この点もあわせてお尋ねをいたしておきたい。
  16. 眞田登

    眞田政府委員 最初の、農協法とこの法案との関係でございますが、これは先ほど申し上げました通運事業等を免許いたします道路運送法農協法との関係と同じでございまして、農協通運事業を営むことができるというが、そういった種類のことができるということと、運輸大臣通運事業法に基いてこれを免許するということとは、別の法律によって行われるわけであります。そういった関係で、農協自動車に関する保険を行いたいという場合に、この法律で将来相互保険に対しても認めるのだという形になりました際に、その形で農協の方から申請していただく、こういう形になると思います。  それから、代理店として組合を認めるかというお話は、できるだけそういう組合代理店として認めていきたい、こういうふうに考えております。
  17. 原健三郎

    原委員長 井岡君。
  18. 井岡大治

    井岡委員 三点ほどお尋ねをいたしたいと思います。第三十五条の審議会委員でありますが、三十五条に「学識経験のある者」あるいはその二に「自動車運送に関し深い知識及び経験を有する者」、このうちいずれか一方に労働代表を入れていただきたい、こういう希望を持つものでありますが、大臣見解を承わりたいと存じます。
  19. 三木武夫

    三木国務大臣 御趣旨に沿うように努力をいたします。
  20. 井岡大治

    井岡委員 先ほど委員長大臣に対する御質問の中で、相互保険受け入れ態勢の問題に関して、大臣から受け入れ態勢確立云々、こういう御答弁がございました。私はこの受け入れ態勢云々という問題は、おそらく協同組合あるいは共済組合というものがこの法案で認められる場合、こういうように理解したい、こう考えるが、大臣答弁を求めます。
  21. 三木武夫

    三木国務大臣 その通りであります。
  22. 井岡大治

    井岡委員 さらにもう一点。この法案実施した場合において、労務者あるいは労働者に対して賃金制度確立あるいは時間制度確立をはからない限り、今日の事故防止というものは必ずしも万全を期せるとは考えられない。従って、これは運輸大臣の所管ではないといたしましても、運輸行政を担当する立場から、時間制の確立あるいは労働条件賃金制度確立努力をしてもらいたい、こういうように考えるが、大臣の御所見をいただきたいと存じます。
  23. 三木武夫

    三木国務大臣 関係官庁とも連絡して、御趣旨に沿うように努力をいたしたいと思います。
  24. 原健三郎

    原委員長 これにて質疑は終了いたしました。  この際、委員長の手元に、井岡大治君より各派提案になる修正案提出されておりますので、その趣旨弁明を許します。井岡大治君。
  25. 井岡大治

    井岡委員 自席で失礼をいたします。  本法案の第十条で、国、国鉄専売公社電電公社あるいは都道府県、この五つの団体が、除外措置が講じられております。このことは私どもとして最も適切なる措置であると考えますが、その規模あるいは均衡の上から、「地方自治法第百五十五条第二項の市」、これを「都道府県」の下に入れることが妥当であると考えます。従ってこのように御修正をいただきたい。なおこの修正に伴いまして、第七十二条の「都道府県」、の下にも同様の趣旨を入れる。さらに第七十八条の「都道府県」の下に同様の趣旨を入れる。さらに先ほど委員長総括質問の中で、六カ月を八カ月とすることは大臣も認めておられますので、附則の第一項の「六箇月」を「八箇月」に改めてもらいたい、このように修正動議提出するものであります。
  26. 原健三郎

    原委員長 これより、ただいま井岡君より提出されました修正案並び原案を一括して討論に付します。岡崎英城君。
  27. 岡崎英城

    岡崎委員 私は日本民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております自動車損害賠償保障法案に関する共同修正案賛成し、修正部分を除く政府原案賛成するものであります。  今回の政府提案によりますと、本法案自動車の運行によって人の生命を失い、または身体が害された場合において、その賠償責任適正化賠償能力確保とをはからんとするものでありまして、特に賠償能力確保のためには、強制保険制度をとり、さらに政府が再保険を行うことにいたしましたほか、いわゆるひき逃げ事故に対しても政府被害者損害を填補するところの自動車損害賠償保障事業規定しておるのでありまして、大体において自動車事故による被害者の保護と、自動車運送の健全なる発達に資するところがあると思うのでございます。ただ国都道府県、三公社などは、その性格財政能力等から見まして、本法適用から除外されておるのでありますが、ただいま修正意見がありましたように、均衡上いわゆる五大都市もまた同様に適用除外を詰めるのが妥当であると同時に、また本法の完全なる実施をはかるためには、その実施機関に対して相当考慮を払うべきだと思うのでございます。二カ月施行延期をいたしましたことにつきましても私は賛成するものであります。すなわち修正案修正個所を除く原案賛成するものでありますが、ただ一点お願い申し上げたいことは、いずれ後ほど附帯決議提案されると思うのでございますが、本法施行につきましては保険金額の定め方、保険料率の算定の方法代理店問題等につきましてはもちろんのこと、国庫負担金の増額につきましても相当考慮を払っていただきますと同時に、ことに相互保険制度に対しましては将来十分なる考慮を払われんことを切に希望するものでございます。政府はわれわれの意のあるところを十分に考慮されまして、的確なる措置を早急に講ぜられることを切望いたすのであります。これらの点につきまして運輸大臣は格別の努力をいたされることを重ねて切望いたしまして、私の賛成討論を終ります。
  28. 原健三郎

  29. 山本友一

    山本(友)委員 私は自由党を代表いたしまして、本案に対する討論を行わんとするものであります。  本案は立法の精神から考えましても、時勢上こういうような性格を持つ社会制度が当然必要であるということを前提といたしまして、今日までわれわれは真剣にこの問題の審議に当ったわけでありますが、審議の途中におきましてそれらの意見がるる開陳されましたので、重ねて申し上げることを差し控えますが、以下申し上げますように、私どもといたしましては本法案に対して理念承服ができない点がたくさんあったのであります。しかしながら私どもは以下いろいろな点におきまして、相互保険を将来出現するという政治的の含みにおいて、このラインは譲ったのでありますが、理念承服のできないということは、特に聞いておいていただきたい。将来も立案する政府当局においてあくまでも考えていただきたいと思うことは、この法案は御承知のように社会制度的な性格を持ちながら、第一に予算的の裏づけが少しもなく、業者負担においてのみこれを行わんとするところに非常に無理がある。しかもまたその構成の要素である業者の中に、有力なるメンバーがこれから除外されておるということであります。これを考えますとお互いは国民、ことに業者というような観点から見ます場合には、何人といえども法の前には平等でなければならないという原則がはっきりしておるはずであります。その原則の前にこれらの特定のものを除外して、一体どういう精神除外されておるかということはるる申し上げたわけでありますが、これは了承の範囲でありますから重ねて申し上げませんけれども、そもそも保険経済を健全化ならしめるためには、これらの強いものも入れ、あるいは各官庁も、あるいは先ほど井岡君から出ました提案の自治体に属します分も全部入れることが、原則上ほんとうではないか。これら国、県というものが自動車という特殊の物件に対し、機関に対して、いかなる特権をもってこれを除外するかということにおいて、私は原則承服ができないのでございます。これらを入れて、これらの強いものもお互いに力を合せてこそ、相互扶助精神が出るのじゃないか。偉いものは抜いて弱いものだけやれという原則は、私はあくまでも反対であります。でありますが、附帯条件等において、将来これを特に勘案する政治含みにおきましてこれを了承いたしたわけでございますが、委員長から質問をいたしましたことで要点は尽きておることでございますので控えますが、とにかくそういうように議論が重ねられまして今日通過の前提になったわけでありますので、政府当局におかれましてはわれわれの意のあるところを、行政面においてよろしく運用をしていただきたい。ことに六カ月の施行期間を二カ月延ばしたということは何を意味するかといえば、申すまでもなくこの期間内においてこれらの非常に欠陥のある点を是正して、発足に当ってよりよくうまく、よりよく円満な運営を期していかんとするその期間でありますので、私どもはこれに運輸当局の善処を強く要望し、かつ期待をしておるわけであります。以上のような諸般の問題がたくさんありますけれども、前段の理由において井岡提出修正案並び修正部分を除く政府原案賛成をいたしたいと思います。以上私の討論といたします。
  30. 原健三郎

  31. 青野武一

    青野委員 私は日本社会党を代表いたしまして、各派共同話し合いの上提出しました井岡君説明の修正部分に対して賛成自動車損害賠償保障法修正部分を除く原案に対してもまた賛成をいたすものであります。  賛成趣旨を明らかにいたします際に、特に運輸当局に対して将来十分考慮してもらいたい点をも含めて、私は賛成意思表示をしたいと思います。それはこういう自動車損害賠償保障をする法律ができたら、ある一定損害賠償ができるから、これから先は人をひいてけがをさせても、ひき殺してももう大丈夫だ。保障法律ができたのだ、こう言って事故を奨励するような形は困るのです。それは将来見ておっていただけばわかるのです。こういう法案が議会に提出をせられました原動力は、二十二名のいたいけな中学生が神奈川県の相模湖でついに湖底に沈んで遭難をされた。経営者損害賠償能力を持たない場合は、事実上泣き寝入りに終る。私が五つ六つ手にかけました進駐軍関係事故でもそうなんです。B29が埼玉の金子村に雪の降っておるときに墜落をした。三十数名の入の家を焼き払って、三名の日本人が死んだ。現地に行って調べてみると、日本人自動車事故で殺された人が、厚生省規定によってたった一ぺんきりでわずかに六万五千円で追っ払われた。福岡県のしょうゆ屋に落ちたときは十一人の人が殺されて、同じく六万五千円たった一ぺんの弔慰金で済まされている。千五百万円からの大きなしょうゆ屋が、原料から商品そっくり焼かれ、千五百万円の損害を二十五万円で片づけられたという実例を、私はみずからその交渉に当って知っておる。国鉄のように政府機関のような責任のある立場事故である場合は、それは賠償能力がありますから、そう極端な例はございません。アメリカが日本に来て十年間、占領当時からいまだにおりまするが、今でもこういう問題は続いておる。  そこで一定基準の生まれるということは、私はこの内容について、損害賠償金額について大体お聞きしておりまするが、この程度で満足ではありません。けれども事故を奨励するような結果になるというおそれはどこにあるかと申しますると、自動車運転手の二十四時間勤務制度は、心身ともに疲れてくる。あるいは不心得な人が千人に一人か二人いて、酒を飲んで酔っぱらって運転して起す事故もありましょう。けれども大体が自分がけがをすることは、悪くすれば死ぬことでありますから、なるべく慎重に運転するでしょうけれども、夜昼通して二十四時間勤務ということは無理なのです。こういう点、事故防止の見地から、人権尊重立場から、将来どうして改正をしていくかという点は、重大な問題であります。それから全国的な問題でございますが、特に東京もそうですが、一日に三百円とか四百円の固定給では、勢い疲れたからだに無理をする。無理をするところに事故が生まれる。問題は二十四時間勤務制度もありまするが、歩増し制度だけではいかぬと思う。やはり月に三万円なり三万五千円なりの最低生活ができる基本給というものは、将来何らかの形で法で保障せられて、それから先は歩増し制度によって、経営者と相協力してやっていくという一つの制度が生まれてこなければ、この自動車損害賠償保障法だけでは万全を期するわけにいきません。この法律案は、あくまでも事故を起さないという精神が流れておらなければ、何の役にも立たないと思う。そういう点と、もう一つは、外国に旅行しましても、飛行機に乗り、沖縄で一ぺんおりる。あるいはバンコックでおりる。何でこんなに飛行場におりて一時間も休むのかと思いますると、注油をやる。そして故障のないことは知りながら、専門家、優秀な技術者がやってきて、一時間かかってエンジンの調節をし点検をして、そうして人命尊重、事故防止立場から、これなら大丈夫だという折紙を押されて次の飛行場に立っていく。それが果して自動車の営業にあるかどうか。優秀なる専門家が二十四時間なら二十四時間現在の交代制のときに、その自動車を点検して、エンジンにしろチューブにしろタイヤにしろ、あるいはハンドルの故障はないか、ブレーキがきくかきかないか、そういう点の十分整備が行われておるかどうか、こういう点をも考慮しなければ、こういう法律案がかりに決定をいたしまして、これが実施せられるということになっても、自動車事故によるところの被害者の保護立法であるという点はりっぱだけれども事故が激増していくようなことを放任するということは、見のがすことのできない事実である。こういう点をも運輸当局は十分に考慮いたして、絶対に事故を起さないという立場に立って、この法律を活用していく。万やむを得ず事故が起ったときには、適切なる方法を講じていくために、こういう法案が必要であることは、申すまでもない。もうすでにこういうものは二、三年あるいは四、五年前に決定されておらなければならぬ。こういう点を私は特に運輸当局に申し上げまして、十分善処せられるように要求をいたしまして、賛成討論にかえた次第であります。
  32. 原健三郎

    原委員長 大西正道君。
  33. 大西正道

    ○大西委員 私は日本社会党を代表いたしまして、本案に対しまして修正案並び修正部分を除く原案に対しまして、賛成の意思を表明いたします。  最近の自動車事故の頻発は、大きな社会問題になっておるのであります。欧米先進国におきましては、このような自動車事故に対しましては、つとにこれが賠償の対策を講じておったのでありますが、幸いにも今回わが国におきましても、かかる趣旨にのっとるところの本法案提案されまして、われわれは慎重審議をやりました結果、ここにこの成立を見る暁に至ったことを、私は非常に喜びに存ずるのであります。この法案は、当面物的事故に対する賠償除外されておりまして、人的事故のみに対する損害賠償だけの規定になっておるのでありますけれども、将来はこの法の趣旨を推し進めまして、そうして物的事故も含めたところの広範なる社会保障の実現を、われわれは希望いたしておきたいと思うのであります。なおこの内容につきましては、すでに概括的に委員長から質問が発せられまして、その点は明確になったのでありますが、私は二点だけなお私の見解を繰り返しまして、そうして賛成の意向を表明したいと思います。せっかくかかる進歩的な意図を持つ保険実施されましても、その保険経済の健全化が達成されなければ、これは途中で挫折するおそれがあります。この法律強制保険であるにもかかわらず、政府負担は至って貧弱である。すべからくこれは国家の負担を増額していく、そうして業者負担を軽減していく方向がとられなければならぬと思うのであります。いま一つは審議の過程においても種々論議され、後ほど提案されるであろうと思いますところの附帯決議の中にも載っておりますが、大企業と弱小企業との間におけるアンバランスの問題であります。大企業におきましては、自家保障能力あるものはこれは自家保障をさせることになっておりますが、弱小企業に対しましては、これはこの法案の建前上平等でなければなりませんから、この弱小企業が寄り集まって一つの組合を作って、そうして自家保障までできるというそういう態勢ができますれば、私は当然これらにも自家保障の道を開くべきであろうと考えます。なお先ほど問題になりましたところの農協等自家保障能力の十分あるものに対しましては、これまたこういう措置が講ぜらるべきが当然だと考えております。この保険の結局の目的は、相互保険へ移行せしめるということでありまして、この点は一刻も早くそういう状態になることを私は望むのでありますが、その過程におきましても、今私が申しましたところの弱小企業の組合による自家保障並びに農協というものに対して、その能力十分ありと認められた場合は、自家保障の道が講ぜられるということ、私はそのような意味に解釈をいたしておるのであります。また先ほど問題になりましたこの法律趣旨は、事故の起きたものに対して十分な損害賠償をやるということのみにとどまらず、事故を絶滅するということがこの法律の大目的でなければなりません。事故が多いという原因をいろいろ考えますと、そのうち最も大きな問題は、これは私は今の状態においては運転者の低賃金、労働強化によるところの事故の激発、こういうところにあると考えるのであります。従いましてこの法律実施されるこの時期にこそ、この運転者に対するところの待遇の改善労働条件改善ということが、並行的に行われなければならないと考えております。特にこの保険におきまして被保険者は、運転者と車の所有者ということになっておりますが、ややもするとこの被保険者は、特に経営上のいろいろの理由から、運転者負担が転嫁されるという点であります。この点をもしあやまって運転者にこの負担を転嫁するということがありますれば、今申しました本法の根本的な趣旨がこわされるのでありまするから、この点は特に私どもの党の建前から申しましても強調をいたしておきたいと思っておるのであります。本法律案は非常に広範ないろいろな問題を含んでおるのでありまするから、当然その実施に当りましては、政令にまかされておる部面が非常に多いのであります。従いましてこの政令の内容いかんということが、この法律趣旨をほんとうに実現するかどうかという大きな意味を持つものだと考えるのであります。私どもが後に八項目にわたるところの附帯決議をここできめるだろうと思うのでありまするが、この趣旨につきましても、運輸省は十分なる対策によって誠心誠意法の趣旨を完全に実現するように、一つ私は要望をいたしておきたいと思います。修正の部分につきましては、私がここに申し上げるまでもなく、国、都道府県と並んで、この五大都市は当然除外さるべきものであるし、また実施に当りましても、六カ月を八カ月に延ばすということは、これはいろいろな意味から申しまして、最も妥当なものだと考える次第であります。これだけの見解を申し述べまして、私は本案に対しまして、修正案修正部分を除く原案に対して賛成の意向を表明するものであります。
  34. 原健三郎

    原委員長 これにて討論を終局いたしました。  これより自動車損害賠償保障法案について採決いたします。まず各派共同提案にかかる井岡大治提出修正案について、採決いたします。本修正案賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  35. 原健三郎

    原委員長 起立総員。よって本修正案は可決されました。  次いで右修正部分を除いた原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  36. 原健三郎

    原委員長 起立総員。よって本案修正議決すべきものと決しました。  この際臼井莊一君より発言を求められておりますので、これを許します。臼井莊一君。
  37. 臼井莊一

    ○臼井委員 ただいま委員会におきまして通過いたしました自動車損害賠償保障法案につきましては、その審議の過程並びに政府委員間の質疑の経過等を見ますると、政府におきましていろいろ適切な方途を考慮する余地が十分あると考えられますので、この際附帯決議を動議として提出いたしますので、何とぞ御採択、御決定あらんことをお願いいたします。案文を朗読いたします。    附帯決議案  本法の適切且円滑な運営を期するためには、政府は次の事項について速かに有効適切な措置を講ずること。  一、保険金額を政令で定めるにあたつては、本法制定の趣旨にかんがみ、一事故あたりの保険金額の制限を行うごとなく充分に被害者並びに被保険者の利益を考慮すること。  二、保険料率についてはこれが低廉化を図り、その算定にあたっては、無事故に対する報償制の採用、交通繁雑なる地域と然らざる地域等との間における料率に差等を付し、輸送の態様、業種別等による事故率の差異に相応して料率に差等を付すること。  三、収受した保険料総額から、支払った保険金総額と附加保険料総額との合算額を控除し、なお相当の残額あるときは、これを一定の比率に保険契約者に割戻すが如き方法考慮すること。  四、保険会社代理店契約を締結するにあたっては、特別な事情で止むを得ないと認められる場合の外、本保険加入義務者の組織する団体で運輸大臣の指定するものとの間にこれを行うものとすること。  五、本法が多分に強制保険方法被害者の保護を図る目的を有するものである点にかんがみ、更に国庫負担の増額を考慮すべきこと。  六、自家保障については、速かに一定基準の下に相互保険へ移行せしめること。  七、商品たる自動車保険については、その特質にかんがみ、実情に即するよう特別の措置を講ずること。  八、本制度実施に伴い、運転者その他労働者労働条件の悪化を来さざるはもとより特に勤務時間の適正化賃金制度改善を図ること。   右決議する。 以上であります。
  38. 原健三郎

    原委員長 ただいま臼井莊一君より提案されました附帯決議を付すべしとの動議を採決いたします。本附帯決議を付することに御異議はございませんか。   〔「異議なし」 呼が者あり〕
  39. 原健三郎

    原委員長 別に御異議がございませんので、さよう決しました。  お諮りいたします。ただいま修正議決されました法律案の委員会報告書の作成並びに提出手続等につきましては、委員長に御一任いただきたいと思いますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 原健三郎

    原委員長 それではさよう取り計らいます。  この際三木運輸大臣より発言を求められております。これを許します。三木運輸大臣
  41. 三木武夫

    三木国務大臣 ただいま臼井君より提案で、満場一致可決されました附帯決議趣旨につきましては、これを尊重して、今後の運用を行政でやって参りたいと存じますが、念のために各条項について簡単にお答えをいたして、責任を明らかにしておく次第であります。  第一番の保険金額の制限につきましては、一事故当りの制限は行わないことにいたします。  保険料低廉化につきましては、今後御趣旨に沿うて、加入者の納得し得る方法考慮していきたい。無事故報償制地域差業種別等、公平適正な方法を採用して参りたいと考えます。  第三の保険金の払い戻しの点につきまましては、報償制とも関連して、具体的な方法を検討いたしたいと考えます。  また第四の保険の代理業務の点については、御趣旨については大蔵省と協議をして実行をいたしたい。なお条件については、すでに委員会提出した覚書について大蔵省と協議済みであります。  第五の国庫負担金を増額せよとの趣旨のものについては、今後一段の努力を払いたいと思います。  第六の相互保険については、先刻お答え申し上げましたように、これはすみやかに善処いたしたいと考えております。  第七の商品たる自動車保険については、無理のない方法をとりたい、こう考えております。  第八の労働条件については、関係官庁とも密接な連絡をとって、業者の指導その他適切の処置を検討して参るということでございます。  今回の自動車賠償法は、わが国に新しい制度、画期的な法案でありまして、本委員会においてもいろいろと議論の出ることは当然の法案でございます。これが万全なものとは政府考えておりませんので、今後実施後においても常に改善を加えまして、被害者の保護、自動車所有者の負担の軽減、また御指摘事故防止対策あるいは労働者労働条件自動車行政全般にわたりまして、本委員会の御質疑等に現われました御趣旨を体して、遺憾なきを期したいと存じます。酷暑の折柄御精励、本案の通過に御協力を賜わった各位に敬意を表する次第でございます。     —————————————
  42. 原健三郎

    原委員長 続いて昨日に引続き造船計画に関して調査を進めます。質疑を許します。池田禎治君。
  43. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 先般の本委員会におきまして、運輸大臣に対しまして丸善石油の自己保有船の建造申請について、慎重を期して、造船合理化審議会はもちろん、本委員会におきましても、その納得のいくような結果をもって承認を得る、こういうことでございましたが、それがどういうふうになっておるのでございましょうか。実は私の聞いたところでは、先般の造船合理化審議会でこのことを質問いたしましたところが、これはいまだ運輸大臣より諮問されておらないから、諮問されておらざる事項を取り上げるわけにもいかないというお話があったということを聞いておりますが、その後の経過はどういうふうなものでございますか。
  44. 三木武夫

    三木国務大臣 本委員会等におきましても、参考人をお呼びになっていろいろ意見を聞かれるということでもございますので、そういう御意見も承わりますし、あるいは各方面の意見も私自身が徴し、あるいは海運局で徴しておるわけでございます。ただいまのところまだ結論は出ておりません。検討を加えておる状態でございます。
  45. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 造船合理化審議会にあなたは諮問を出すのですか出さないのですか、その点はどうです。
  46. 三木武夫

    三木国務大臣 こういうことは造船合理化審議会の諮問をする事項にはなっていないわけです。将来この問頭で船舶建造法等の基準等について検討を要するような結論が出て参ったときに、諮問をいたす必要が起ってくれば諮問をする、こういうことでありまして、直ちにこういう問題を造船合理化審議会に諮問をするというわけではないのです。将来船舶建造法の基準等について再検討を加える必要が起ったときには、当然に造船合理化審議会に諮問をいたさなければならぬと考えておるのでございます。
  47. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 私は先般あなたに御質問をいたしましたとき、あるいはまた同僚委員からもその質問がなされたときに、あなたは造船合理化審議会にも十分議を経て、そうして慎重に考慮を払いたい、こういう御答弁をなさったということを、私は記録の中において発見しておるのでございます。そこでそのときはただ言葉のあやで申されたのか、また造船合理化審議会にこれをかける必要がないのであるのを、たまたまあなたが申したのであって、それは別にかまわぬというならば、別にそれをとがめようと思いません。けれどもあなたが慎重な態度をもって臨むということを御言明になって、そして造船合理化審議会におきましても十分その議を経るということを、あなた御自身が御答弁なさっておるのであります。ところが現に造船合理化審議会においてこの質問をいたしたところが、それは諮問事項としてまだ出ていないから、今ここで審議するわけにはいかないということで、議題に供されなかった。そのように委員の人は申しているのでございます。そこであなたがあのときは自分も知らなかったからそういうふうに答えたというのなら、追及する気持はございませんが、今はそういう必要は認めていないということなのか、その辺の御見解はいかがでしょうか。
  48. 三木武夫

    三木国務大臣 私は言葉のあやとして申したのではないのです。将来この問題について造船の基準等について再検討を加えるような必要があった場合には、造船合理化審議会等の意見も当然徴さなければならぬわけでありますから、そういうお答えをいたしたので、あの池田委員質問のときに、このものを直ちに造船合理化審議会に諮問するというふうにはお答えしなかったのであります。速記録をごらん下さればわかります。そういう今後の造船の基準等に再検討を加えなければならぬ必要が起らないとは限らない。そのときには当然造船合理化審議会に諮問をしなければならぬ、こういうふうに考えてお答えをいたしたのでございます。
  49. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 そういたしますると、今のところ造船合理化審議会にあなたがこのことを特に諮問するという用意は起らないわけですね。そういうふうに受け取れます。そういたしますと、これは同僚小山さんからも後ほど出ると思いますが、あなたの答弁に関連をいたしまして小山さんからは、運輸大臣の御答弁はこれをいかにも許可するというような前提の上に立っているがごとき印象を受けるが、これについていかに考えるかという質問をされたときに、そうではないということをあなたが申された。それなら幾つなら許す、一ぱいなら許すとか、二はいなら許すとか、三ばいなら許すとか、どれだけなら許す、許さぬかという質問が出たときに、大臣はそれは十分慎重に考慮して検討いたした上できめたい。幾つ許すとも、また許さないとも、そういうことの言明は何もこの際なされなかったのであります。そうなりますと、この問題は御承知のように昨日も参考人の人々から意見が述べられましたが、参考人そのものの意見におきましては区々たるものがあったことは私も率直に認めますけれども、その基本方針をどうするかということは、本委員会においてあなたがお述べになる約束をなさっている。その辺がどういうふうになるか、お伺いたしたいのであります。
  50. 三木武夫

    三木国務大臣 原則としてやはり船は足りないのでありますから、今でも相当な外貨を支払っているのであります。全体として四割程度のものは外国船によって運んでおり、国際収支の上から言ったならば、やはり日本の船を充実することが、国際収支の改善からは好ましいのであります。政府の六カ年計画を通じて見ても、タンカーのごときはやはり七〇%、将来石油工業等が盛んになって石油の需要がふえれば、さらに日本船で運ぶパーセンテージは落ちてくるわけであります。それで今のような需給が平均化れたとしても、なおかつ三〇%の石油は外国船によって運ばなければならぬ。チャーター料を外国に外貨で支払わなければならぬという状態でございますから、国際収支改善の面からいったならば、タンカーを充実するということは好ましいことなのであります。ただ慎重に検討をしたいということは、そういうことによってわが国の海運界に影響を与えたくない。もし影響を与えなくて、国が求めておる船腹の増強をするとしたならば、どういう方法考えられるか。あるいはまたこれがどの程度に影響を与えるか。また将来こういうふうな希望がどの程度にあって、それが行政の公平という見地からどういうことになってくるかということ、あるいはまた大きくは一体タンカー業者と石油業者とのあり方というものは、将来どういうあり方であるべきか、こういう問題が関連をするものがきわめて多いのでございます。そういうものに対していろいろ検討を加えて参りたいと考えておりますので、相当な時間を要することを御了承願いたいと思うのでございます。
  51. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 先般のあなたの御答弁とは、私は相当食い違いが出てきておるということを認めなければなりません。昨日は参考人でありますから、参考人に対して私どもは難詰するがごときことは言えなかった。しかし開発銀行総裁のごときは、造船計画についても、それは作った方がよかろう、こういうことで無礼千万なんだ。そういうものに開発銀行は一つも金は出しておらない。私はそれはずいぶん僭越だと思うけれども、これは政府でもなければ単なる参考人でありますから、私ども申さなかった。けれどもそういうことを言うならば、計画造船だけで足らないのだから、これは自己資本で作るというならば——きょう木村委員かどなたか言われましたけれども、開発銀行が金を貸さぬのは無礼千万だ。貸せる間は開発銀行から金を借りて借りっぱなしにしておいて、貸さなくなったら自己資本でやる。そんな国家の金を乱費するということは認めることができない。少くとも政党の責任において、本会議において、それを十分糾弾しなければならぬ。本委員会でなく、さらに衆議院の本会議でしばしば決議案というものを上程した。わが国の造船界の実情、船舶の需給の調整ということと、また労働問題も含めてぜひとも国家の使命としてやらなければならぬ。当時改進党や自由党は乗り気でないのを、社会党がこれをとらえてやった。わが国の造船界は手をあげておる。三十万の失業者が出るという状態なんだ。ところがこういうふうに金は借りっぱなしにおいて、そのワクが出てくると今度は自己資本でやる。そんなに開銀が金を乱発しておるというのなら、日本の国の産業は大産業の保護育成であって、まさに国民よりの税金は大産業にのみ集中して、ほんとうの勤労階級にはいっておらぬ。これは運輸大臣の所管ではありません。総理大臣の管轄に属する——私は奇怪なことを聞くと思う。私はあなたのような答弁ならばここで全文を読み上げてみたい。あなたの先般の答弁と全然違います。  あなたが言っておるものの中で項目的なもの、大きなものだけを取り上げてみましても、「これは私個人の考えですが荷主が計画造船の中に割り込んでタンカーを作るということは、どうも賛成しがたいという意見を持っております。タンカー業者が、計画造船でおやりになるということならば、これは当然そうなんですが、荷主が計画造船の中に——ただでさえ財政資金が少くて困っておるわけですから、もう少し本年の造船資金もふやそうとして努力したけれども最初考えておったよりもだいぶ少くなった、」こういうことから出て、さらに小山委員質問に対しまして、「造船合理化審議会等で船主の選考の場合に御審議を願う建前になっておりますから、私の個人の意見だということを申し上げたのでございます。」こういうことも言っておる。さらにまた「海運業者が船を持つということが、海運政策の大きな筋であることは間違いがない。いろいろそういう場合に御指摘のような例外はあろうと思います。たとえば鉄鋼業者が鉄鋼を運ぶ船の場合もありますが、海運政策の大筋としてはそういうことが筋である」これもお認めになって、そうして造船合理化審議会に諮って十分慎重を期してやるという御答弁です。あなたは今、新しく建造の方式が、新しい場合が起きたならば、そのときはそれにかけるといっておる。これは全然答弁の中で食い違っておる。あなたの答弁を全部読み上げるとえらい時間になるから、きょうは時間もないので読み上げませんけれども、あなたのおっしゃったことは大へんなことなんです。根本的にやり直さなければならぬ。最後に木村委員の発言に対しまして、「いろいろ慎重に考慮いたしたいと私お答えした通りでございます。そうして慎重な考慮の結果、これに対して判定を下したいと考えております。そういう場合に、私がどういう判定の上に立ったかということを、当委員会に御報告はいたしたいと考えております。」こういうことも申しておる。こういうことは今日から見ると、あなたは全然もうそういうことをお忘れになったかのごとき態度なんだ。これはどうなんです。私がこの前言ったことは今日情勢が違うのだ、こういう考えはないと、お考えになっておるのか、それともそれはやはり、御承知のように会期があと十日間まだございます。最後の日にでもまたお考えになって、議会が済んでから、これはあなたの運輸行政上の措置としてお認めになるお考えであるか、どうですか。
  52. 三木武夫

    三木国務大臣 私が終始今まで答弁をしてきておることに食い違いはないと思う。何も前回の答弁と今回の答弁とは食い違いはない。先般も予算総会等で池田委員の御質問に答えた趣旨は、今日申し上げる趣旨と変りはないのであります。そういう意味であるいは言葉のニュアンスでいろいろそういうふうにおとりになるかもしれませんが、私はここで申し上げておる趣旨は終始変らないつもりであります。できる限りすみやかに結論を出して、当然、その結論が国会中に出ますれば、木村委員にもお答えいたしましたように、ここに申し上げたいと考えておるのでございますが、御承知のようにこの問題は、一方からいえば非常に船がほしいという事情は国の状態から、あるのであります。しかし海運業界に与える影響等も慎重に考慮しなければならぬので、そういう点で今までいろいろ検討を加えておるのでございますから、これは時間がかかるということもやむを得ない性質のものであるということを御了承願いたいことと、またこの船の点につきましては、もし日本に自己資本というものがあれば、必ずしも計画造船というような方法によらなくても、船が建造できるといえば、その方法によってよろしいのである。ところがなかなか自己資本と申しましても、そんなに自己資本によってみなが船が作れるような状態ではないのであります。これはごく例外のことに属するわけでございまして、今日海運業界自体としても、ほとんど余裕の資本力というものはない、こういうことでありますから、どうしてもある程度船腹を確保しなければならぬということが、国の経済の上に必要であるとするならば、計画造船という線は続けていかなければ、船舶の拡充はできないのであります。そうして一方において、この例外的な場合として、そういうものの自己資本による船の建造を認めるかどうかということは、これは例外的な点として、考慮検討いたす余地があるのでありまして、本筋はやはり計画造船、これが日本の船腹拡充の中心の政策であることは間違いはないのであります。それ以外に今資金を入れる方法はないのであります。
  53. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 あなたが船が足らぬ、絶対量が足らぬというなら、私ばかりにそれを認めるとするならば、先般言ったように何ばい認めるか、どれだけならよろしいか、計画造船を破壊しないで、必要なものを満たすに足りるか、そういう計画をどうして言わないのですか、何ばいまでならよろしい、何百万トンまではよろしい、こういう方針であるか、それをお示し下さいということを言っておる。だからそれを述べていただきたい。さらにまた油会社が、一方において国家の助成金を受けておる。片っ方においてはもうかっているから、今度は自己船を作る。あなたはそうは思わぬと言うけれども、これは事実においては大きな税金をまけてもらっている。これは思わずさように相なったにしても、結果においては国家の大きな恩恵をこうむっておる。しかし一方においては、精製施設にいたしましても、いろいろなことにおいてあるいは開銀を通じ補助政策を受けておる。国からもそういうことを受けておりながら、一方においては自己の蓄積でもって船を作る。そんなに多く金があるならば、そんな金は早く国に返して、国は金がなくて船が作れぬのだから、それこそ国のためにどうぞお使いなさいということにならなければならぬ。あなたは石油は管轄ではない、石油事業につきましては通産大臣の管轄であるとおっしゃるなら、鳩山内閣の国務大臣責任においてそれは直すべきではありませんか。計画造船はあなたの言う通りだが、船会社に金があるなら自分で作らしたい。それができないから国家の金をもって計画的にこれを行わしめている。しかしそれも限度があって、毎年毎年計画を立ててやらなければならない。これは要するに金が足りないからだ。なぜそういうところに貸しておる金を返してもらわないのだ。予算上の措置において是正されるものは、お返ししてもらって、これで国家が船を作るといい。もうかってしようのないところに金を貸さないで、計画造船の方をふやす、これが国策だと思うのですが、そういう点に対する御見解はどうですか。
  54. 三木武夫

    三木国務大臣 今回の場合は、これは自己資本といっても外資であります。外資を入れるという意味で、純然たる日本の資本で、そんなに次々に船が建造できるだけの資本力があるとは私は思っておらない。今度の場合も外資を借りて作るという。また先般私はよくは聞きませんでしたか、開発銀行等も、現在は石油会社に開発銀行からは金を貸してないというような答弁をしておったのを聞いたのであります。
  55. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 だからどの程度までならあなたはお許しになるのか。それは計画造船とは反しない、絶対量の足らざる現今においてこうだということはどういう方針であるのか。またさらに現在日本のタンカーはいろいろな制約があって、標準型と申しますか、いわゆる小型で、これがために非常に大きな赤字を出しておる。こういうものもまた損益を与えざる立場において合理化していける、その方法はこういうのだ、そういうあなたの構想をお示しになっていただきたい。こういうふうにお願いしているのです。
  56. 三木武夫

    三木国務大臣 私が検討を加えておるというのは、今申したように次々にこういうことがあるとは思っていない。そんなに外資というものも簡単に借りられるものではないのであります。しかしこれまでほかに計画がないというわけでもないわけでありますから、今後の計画造船というものを乱したくない、これが大きな筋であります。その範囲内において自己資本というものについてどの程度の船の建造を許したならば、この計画造船を乱さないか、あるいはまたどういうふうな運営の方法によったならば、日本の海運界を乱さないか、これは池田委員もおわかりの通り、いろいろな点で非常に関連するところが多いのでありまして、今御指摘になったものは、検討を加えておる中心の題目の一つでございます。それの結論がつき次第御批判を受けたいと思っておるのでございます。
  57. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 私はだからあなたが今国会中に本委員会におきまして、その根本方針を——申請はそうあるものでもないとおっしゃる。けれどもうわさされるだけでも、四つくらいはすでに用意しておられるとおっしゃる。そういうものはうわさでは認めない。あなたは一番最初のときには丸善石油も自分はよく知らぬ、こういうことをおっしゃった。それはあなたの立場でそう答えざるを得ないかもしれませんが、これは明らかな事実なんです。きのうも現に石油会社の参考人は、私どもは幾らでも作らしてもらおうと思っておる、こういうことを述べておる。これは作れないというのはおかしいのです。外資委員会でも、私の調べたところによれば、外資委員会は二日間事前審査があったという。これは私はまことに奇怪な委員会日本にもあるものだと思う。大がい諮問機関というものがあるのだけれども、これだけ権限を持っておる委員会は少い。しかもその資本が入ってきているものをほとんど認めておる。これはこれから先も外資委員会で大きな問題になるとは思わない。今の機構のままではそうなるとは思わない。ところが行政上の措置において不許可にすることができぬという方針が、あなたの権限において与えられておらぬとするならば、私ども委員会におきまして何とか臨時船舶建造法ですか、これは修正を加えなければならぬ。本委員会として、そういう処置はどの範囲においては認むべし、これは認むべからずという項目を、委員会としてはきめる以外にはない。それ以外にあなたの方針は確たるものはわからない。そのときに臨んで慎重に考えますというだけでは、私どもは計画造船は海運界にはなはだしき混乱を与えざるものという認定に立つものと、それは大きな権限を与えるおそれがあるということを大きく憂えておる部面もございます。昨日参考人に参りました海員組合の陰山君のごときは、これは私は変なことを申し上げますが、海員組合についてもいろいろ批判がありましょうけれども日本の海員組合くらい何と申しますか、海運政策のために業界あるいは監督官庁からいろいろ大きな観点に立って、ときにはその組合の本質論について非難を受けることもあります。賃金をストップしてわが国の海運政策というものを国際的水準に持っていくためにはこうしろという、日本組合の中でも特異の組合であることは皆さんが周知の事実であります。その人々がこの結果をおそれておるということは、単なる階級闘争に基くところの賃上げ闘争や、わが国の船舶建造に対する非常に小さな眼をもって見ておると思わないという点は、私は考えてみるならば、しかしそれも運輸大臣がおそれなし、業界を混乱せしめるおそれなし、必要なしという観点に立つならば、私は立法上の措置を講じなければならぬ、それが破れるならば問題はありませんけれども、そういうことを私どもとして考えられる。だからあなたがどの程度のことである、その一応の本質論を本日申すことができなければ、すみやかにその基本構想というか、どのくらいまでなら差しつかえない、本年度においてはどの程度のものならば計画造船を破壊しない、また将来も海運界の混乱を来たさない、海運育成政策の上からいってこの程度のものは必要なりと、その構想をお差しつかえなければ示していただきたい、こういうのですが、いかがですか。
  58. 三木武夫

    三木国務大臣 当然に私がそれを処置する基準としてそういうことは考えなければならぬ点であって、検討を加えておるのでございますから、そういう一つの基準と申しますか、これに対する結論の基準になるものが、われわれの議がまとまりましたときには、当然に批判を受けたいと考えておるのであります。そういう基準は当然に持たなければならぬ、こう考えております。
  59. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 大臣答弁でございますが、どうかすみやかに本委員会に御提示のほどを私は希望いたしておきます。
  60. 原健三郎

    原委員長 小山亮君。
  61. 小山亮

    ○小山(亮)委員 ただいま池田君の御質問がございましたので、タンカーの方から一応大臣考えておいでになるお考えを率直に伺いたいのですが、石油会社の自社船のタンカーを建造させるということになって、それは臨時船舶建造調整法というものと抵触する部面がございませんかどうか、簡単にお答えを願いたい。
  62. 三木武夫

    三木国務大臣 この臨時船舶建造法の立法精神とは、直接に抵触する部面はないというのが事務的な見解でございます。
  63. 小山亮

    ○小山(亮)委員 臨時船舶建造調整法の第三条第一項第一号には当該船舶の建造によってわが国の国際海運の健全な発展に支障を及ぼすおそれのないこと。」同法告示事項の第四百三十二号の四「当該船舶の建造によって、わが国商船隊の公正なる海外活動に著しく不利な影響を与えるおそれのないこと。」こうありますが、これには抵触いたしませんか。
  64. 三木武夫

    三木国務大臣 わが国船舶の海外発展に悪影響を与えないとか、いろいろ御指摘になりました点を、これを運輸大臣の一人の解釈にたよらないで、基準というものがさらに設けられておる。運輸省の告示第四百三十二号によって「臨時船舶建造調整法第三条第二項の規定に基き、同法第二条の許可の判断の基礎となる事項を次のように定める。」といって、その今御指摘になった二項目のさらに判断の基準というものを個条書きにしてあるのであります。そのときはこういう場合のことを考えなかったのでしょう、こういうふうな立法をいたしましたときに、こういうものが直接にその項目の中に入っていないことは事実であります。
  65. 小山亮

    ○小山(亮)委員 その判断の基礎となる基礎事項といいますか、それを一応私は伺いたいのですが……。
  66. 粟澤一男

    粟澤政府委員 ただいま御指摘の条文によりまして、外資によって石油会社が船を建造いたしております。従いまして今までのこの法律あるいは運輸省告示の適用といたしましては、そういう場合も一応前例としては許可されておるというふうな考え方からいたしますと、今回に限ってこれを許可しないという点の判定は非常にむずかしいかと思います。
  67. 小山亮

    ○小山(亮)委員 私の質問しておることは、先般運輸省の内規ですか、規定があるとおっしゃったから、その規定を一応読んでいただいて、どういうことだという説明を私は伺いたい。その規定がいかにあろうとも、すでに大協石油とか出光興産という両会社に建造を許した。それはその当時日本の造船業界が非常に不振でありまして、船台があいておってどうにもならないというときに、これは造船業者救済のためにやったところの処置であろうと私は思う。そういう特例があるから、今回も許さなければならぬということになりますと、法律はあってないようなものだと私は思いますが、その基礎になるところの、あなた方が許可するかしないかの基準があるならば、その基準をお示しを願いたい。
  68. 粟澤一男

    粟澤政府委員 運輸省で本法の許可するかしないかという判断をする基準は、ただいま大臣が申し上げました告示が基準でございまして、それ以外には小山先生のおっしゃるような内規というようなものはないと聞いております。
  69. 小山亮

    ○小山(亮)委員 その告示はどういう告示ですか、伺いたい。
  70. 粟澤一男

    粟澤政府委員 運輸省告示第四百三十二号、昭和二十八年十月二日の告示でございます。
  71. 小山亮

    ○小山(亮)委員 どういう内容ですか。
  72. 粟澤一男

    粟澤政府委員 「臨時船舶建造調整法第二条の規定に基く船舶の建造許可の判断の基礎となる事項 一 当該船舶の建造によって、わが国商船隊の質的低下をもたらすおそれのないこと。二 当該船舶の建造が、それを配船しようとする航海区域又は航路における船腹の需給状況からみて著しく過剰となるおそれのないこと。三 当該船舶の種類、船型、構造及び性能が、それを配船しようとする航路及びその輸送需要の性質に適応していること。四当該船舶の建造によって、わが国商船隊の公正なる海外活動に著しく不利な影響を与えるおそれのないこと。」以上でございます。
  73. 小山亮

    ○小山(亮)委員 タンカーを建造することによって、自社船を建造しますと、自分の船は、どこもそうでしょうが、一番大事にいたしますから、それがピストン・ワークをやるということになる。そうすると、ほかの会社の持っておるところのタンカーはなるべく借りないようになります。それから一つには、運賃が非常に上りかげんなときに、自分の会社が船を持っておって、その会社の運賃を上げない場合には、他の当然上るべき運賃というものをある面においてチェックする、押えてしまうのです。だから上らないのです。そうなると海運業者というものは、俗に申します十年に一回くらいしか景気が回ってこない。その十年に一回くらい、たまに回ってきた景気によって、今まで借りておりました建造資金を返済していくというような、十年ないし十五年に一回という機会をねらっておるというような船の仕事、海運業というものは、上りかけたときにどんどん自社船を作って、それで運賃を抑圧されたならば、他のタンカー業者は成り立たなくなる。それがタンカー業者が非常に苦しんでおるところじゃないでしょうか。そうしますと、国家が貴重な国民の血税によるところの資金を貸し出して、そうしてこれは返済を確保しなければならぬ。しかるにそういうことを許すことによって、確実に返済せしめるという見通しがつかなくなる。そうなった場合には再び国に対して大きな損失を及ぼすということになります。これが計画造船に何ら影響がないということを当局が考えておいでになるならば、私はそれは大きな間違いだと思う。私はこういう船をどんどんと許すことによって、計画造船に影響ありと考えますが、それに対する見解を伺いたい。
  74. 三木武夫

    三木国務大臣 どんどん許すということでございますが、今具体的に海運局で調べました場合に、東京タンカーがそういう希望があるということであります。外資というものが、そうどんどんと入ってくるとは私は考えていない。過去においても、たとえばこれは御指摘のように出光、大協——去年は大協に同じような条件で許された例がある。それもなるべく抑制したということではなかったのでしょうが、そんなにどんどんと建造されたわけではないのであります。そういう点で、これは全然影響がないとは申せません。しかしその影響の度合いがどの程度である、それが日本の海運界に対して非常な影響を与えるもので——船がほしいという要請はあるわけです。このほしいという国としての要請より、海運界に与える影響というものは非常に大きいから、国としての要請の方を押えなければならぬという結論になるか、多少の影響はあるけれども——タンカーも六十万トンくらいあるのでしょう。その中であまりどんどんというようなことでなければ、その影響よりも、日本の船腹を拡充していきたいという国の要請の方が強いというような判断になれば、これはむろんタンカーを自家船で作るという場合もあり得るのでしょうし、そういう点について検討を加えておるわけでございます。単に運輸省のみならず、通産省あるいは経審、大蔵省とも、この問題については十分に連絡をとって検討を加えて参りたい、こう考えておるのでございます。
  75. 小山亮

    ○小山(亮)委員 大臣の常識的な答弁、いわゆる常識論というようなものを伺っておるのではない。私はここは少くとも運輸交通の専門の話を専門的に伺いたいと思っております。従ってただいまお話の中で、私はこれを反撃するわけではございませんが、国に船が足りないから船をたくさんふやしたいというのは国家的な熱望であり、それが業界に及ぼす影響とをにらみ合せて慎重に考えるとおっしゃいますが、もし国家が外資を導入してもどんどん船を作らなければならぬような状態であるならば、なぜこの調整法を改正なさらないか。調整法というものが作ってあって、そしてそれと国の要請とが抵触した場合にはどちらをおとりになるか。その場合には明らかに法律改正なさっておやりになるのが正しい行き方ではないのか。国家にそれほど強い要求があるなら、法律改正しないでおいて、その法律を横に押し切ってやっていこうとするところに無理があろうと思うのでありますが、こういう点について常識論でなくて、御見解を伺いたい。  それから外資を導入するというが、そんなにたくさん外資を日本に貸してくれるということは、今後あり得ないことだと考えますが、それは要するに運輸大臣の見通しで、あるいはこれを見通しが違うかもしれません。ですから外資がどんどん導入されるような状態ならばどうする、入ってこないならばどうする、この対案が要ると思う。今後は入ってこないと思うから、ここで一隻や二隻ぐらいできてもいい、こういうことでは私は納得ができない。幾ら入ってきてもいい、また入ってこないときはどうする、そのどちらかの簡単なはっきりした答弁を願いたいのです。法律をどうする、こういうことです。
  76. 三木武夫

    三木国務大臣 法律は直してもいいという考えは、それはあり得ない考えでございます。法律を尊重しながらやっていくことはやはり当然のことでございます。ただ外資の問題については、私は外資というものがそんなにどしどしと入ってくるという見解ではないのであります。外資というものはやはりコマーシャル・ベースでありますから、特に特権があるわけではないので、コマーシャル・ベースの上に乗った外資というものが、そんなに無制限に入ってくるという見解はとっていないことを申し上げます。
  77. 小山亮

    ○小山(亮)委員 私はコマーシャル・ベースから言うと、現在ほとんどアメリカ資本であるところの——丸善は除きますが、ほとんどアメリカ資本であって、しかも利益が十分に見込まれておるところの石油会社に外国が外貨を貸し付けるということは、私は一番採算に乗った投資だと思う。これはあり得ることだろうと思う。だから将来ないという考え方ではなくて、あっても日本はこうするのだという確固たる考え方がなくちゃならぬと思う。その点がないというならなくてもいいのですが、あるなら伺いたい。
  78. 三木武夫

    三木国務大臣 そんなに無制限に外資が日本に入って参りまして、日本の産業というものに対して外資が入り過ぎて影響があるというときには、政府として当然措置考えなければならぬでありましょう。
  79. 小山亮

    ○小山(亮)委員 丸善のタンカーと最近やはり同様なケースとして、外国から外資を借りましてすでに建造の申請を、今議会でやかましいからちょっと待てと当局が言われておるのに、東京タンカーがあります。きのう参考人としてこられた栗田さんが関係しておられる東京タンカー、これがやはり三万三千トンばかりの船を作ろうという計画を持っております。これはすでに外資を借りてしまっております。そうしますと今現実に現われておるものは丸善と東京タンカー、こういうことなんです。東京タンカーの場合は、東京タンカーという会社は外国資本が入っておりますが、少くもその半分以上は日本の資本です。そうするととにもかくにも系統は同じでしょうが、独立した会社になっておりますから、その独立したところの会社が船の建造をしたいという申請を出す場合には、運輸省としてこれに対して拒否することはできないだろう。しかしながら丸善タンカーの場合は船舶会社ではない。ただの石油会社であります。それが建造をしたいという申請をしておるのでありますから、これをただ何らの制限も与えず、何らの条件も付さないで、どんどんと認可してしまいますと、日本の計画造船というものに将来影響があるようになる、こういうことを心配する。だから私はきのうの大臣に対する質問でも、私自身としては結論を出しておるつもりなんです。何とかして、すでにそういう外資を借りて船の建造をすることになって、造船所もきめてしまって、今着手するばかりになっておるものを、運輸大臣が法によって阻止してやめさせるというようなことになりましても、実際の政治としては今日の日本の状態において、これがいいか悪いかということも考えなければならぬ。そうしますとすべてをにらみ合せて、筋を立てて建造のできるようにするという方法もまたあり得ると思う。ですから今度のような場合には、ただ常識論の押し問答のようなことをしないで、議会があります間に、私ども委員会において論議しておる間に、政府の方針というのが、少くともこういう方針で建造させるならば、あるいは許せると思うくらいの御所信を伺いたい。そうでありませんと、議会がうるさいから、議会では右へ行くか左へ行くかわからない、もやもやにしておいて、議会が済んだらわっと許可する、こういう食い逃げ的な処置をなさらないで——三木運輸大臣である限りそういうことはないと私は思いますけれども、そういうことのないように、少くとも結論としては、こういう方法ならばあるいは許可し得るのではないかというようなお考えはございませんか、これを伺いたい。
  80. 三木武夫

    三木国務大臣 小山委員から昨日そういう場合には別に海運会社を起して、それに運営をやらしたらどうかという意味の御発言があったことは承知しております。それも一つの方法でございましょう。この問題は国会中だからどうというのではないのです。いろいろな点で今までも過去に何回も例があった。そのときにもう少し慎重に考えるべき課題であったと私は思います。従ってこういう機会にいろいろ将来のこともにらみ合せて、一つの基準と申しますか、将来においてこういう例があってもさばき得るような考え方の基準をここに確立しておきたい。こう考えておるので、国会中だからどうという配慮はございません。やはり将来においてこういうことがいつも問題にならないような基準を、ここに確立しておきたいということが私の考え方でございます。小山委員の御指摘の一つの案も当然に検討させていただきたいと思います。
  81. 小山亮

    ○小山(亮)委員 将来こういうことのないようにお考えをなさるのはいいのですが、現在どうなさるのか、現在すでに外資は借りてしまって、造船所はきまって、一日か二日の間に事を起そうとしておる。向うは今にでも仕事をしなければならないのです。それはこの仕事をやりたい人からいいますと、造船所にしましても石油会社にしましても、今船がほしいでしょう。一刻を争ってすみやかにやりたいというときに、将来これから相談をしてというようなことでは、間に合わないのではないか。将来は将来として、今さしあたっての問題をどうするか。私がきのう質問をしましたことは、私の案です。ですけれども、小山君の言うことも一つの案だがとおっしゃるなら、私の言うことも一つの案ならば、あなた方の方にもいろいろな案がおありになるはずです。そうすれば私の方の案も一つの案だ、参考にするとおっしゃるなら、ほかにあなたのお持ち合せの案も伺いたい。私の案一つしかないので、運輸省が全然案を持ち合せないというはずはないでしょうから、ほかの案をお持ち合せならば、そのお持ち合せの案を伺いたい。
  82. 三木武夫

    三木国務大臣 将来と申しましても、それはやはり関連すると思います。この問題は過去においてもこういう例があって許可になっておるということは、いろいろな点で考慮しなければならぬ問題の一つになって参ります。そういう点で、現在のことと将来のこととを区別して考えることは必ずしも適当でない。やはり現在のことがまた将来において、そういうものの考え方の基準になっていくわけでありますから、現在の処理に対して将来のこともあわせて考えるということが、現在の問題を処理するについて不適当な考え方であるとは私は思っていないのであります。方法論についてどうするかということは、今申したようにいろいろ各方面の意見——衆議院でもきのう公聴会を拝聴したわけでございますが、私は最後まで承われなかったのですが、海運局からも出ておりましたし、こういう各方面のいろいろな意見も参酌いたし、また運輸当局としても、今後の海運政策という運輸当局意見、あるいはまたこの問題が外資の導入等に関連をいたしますから、経済関係の閣僚等とも相談をいたしまして、結論をすみやかに出したいということでありまして、今運輸当局の案はこの案だといって、当委員会にお示しする成案を得る段階にはまだなっていないのであります。
  83. 小山亮

    ○小山(亮)委員 いろいろおっしゃるが、そうしますと運輸省には案がないのですね。東京タンカーの建造の申請に対しましても、あるいは丸善タンカーに対しましても、運輸省は全然白紙で考えがない、これから大ぜいの意見を聞かなければまとまらぬ、その上できめる、こういうふうに承知してよろしいのですか。
  84. 三木武夫

    三木国務大臣 それは御解釈によるわけでありますが、全然ないわけのものでもないのであります。要するにまだ成案と申しますか、これだという案を申し上げる段階ではない。その都度こういうことだ、こういう段階だと申し上げることは、かえって委員会に対して御理解を願う上において適当でない。やはり一応の成案を得てから、御理解願うことが適当であると考えるので、全然何もない、白紙であるということではなく、いろいろなことを考えているわけでございますから、そういうことで御了承願います。
  85. 木村俊夫

    ○木村(俊)委員 それについてちょっと大臣に確認をしておきたいことが一つありますが、先般の委員会で私の質問に対しまして、いろいろタンカー政策その他について再考なさるというお話でありましたが、今承わりますと、まだその最高方針がお立ちになっておらぬようであります。それができた場合には当委員会に御報告をいただく。しかも丸善問題の許可の前にそれをいただくということを申し上げたはずでございます。それに対して大臣はそのように御了承なすっておる。しかるに先ほどの御答弁では、もし国会開会中にそういう最高方針がまとまればここに報告するというお話だったのですが、私が考えますのは、この問題は大臣措置いかんによっては、海運政策上大きなミステークにならぬとも限らぬ重大な問題でありますので、たとい国会が開かれておりませんでも、当委員会においては国政審議権に基く調査等の機会も与えられておりますので、開会されていない間にそういう最高方針がおきまりになった際は、委員長にもお願いしておきますが、一つ本委員会を開催して事前にその報告を承わりたいと考えております。再確認の意味において、大臣の御答弁を承わりたいと思います。
  86. 三木武夫

    三木国務大臣 国会開会中ならばそういうことを御報告を申し上げて、事前にいろいろ最高方針を申し述べたいと考えております。できるだけすみやかにそういうふうにいたしたいと思いますが、あるいは国会開会中でないような場合には、行政上の措置に対しては責任を負うわけでありまして、事前ということには参らないかもしれませんが、その場合には責任を負うということで御了承を願います。
  87. 小山亮

    ○小山(亮)委員 今の丸善の問題あるいは東京タンカーの問題は、少くとも二、三日中に——こんな軽微な問題は国会開会中に、二、三日の間に運輸当局の方針がきまらなければいかぬと思います。きめようと思えばきまるわけですが、国会開会中には見込みはないのですか。その方針を御決定なさるのは二、三日でできるのではないですか。もう腹案があるのではないのですか。
  88. 三木武夫

    三木国務大臣 今のところできるだけすみやかに結論を出したいと思っております。しかし期限を切って二、三日というふうなわけには参らぬかもしれません。実情は小山委員の御指摘の通りでありまして、早急に結論を出したいとは考えておりますが、何日という日にちを切って当委員会とのお約束はいたしかねるのであります。
  89. 小山亮

    ○小山(亮)委員 問題を新たにして伺いたいのは、運輸省の方針として、国庫から融資をされて造船業者に船を作らせる場合に、どういうような建前で融資をおやりなさるおつもりですか。たとえば造船会社が船を作りたいという要請をした場合に、その資産状態を見て、資産的に有力なものに金を貸してやるという建前でおやりになるのか、それとも将来の日本の海運界を見通しまして、船の建造意欲に燃えておるものに、できる限り広い範囲に船を作らせようとなさるのか、そのどちらをおとりになるのか伺いたい。
  90. 三木武夫

    三木国務大臣 これは御承知のように市中銀行、開発銀行で、今年度の融資基準は開発銀行八割、市中銀行二割——銀行の一つの金融という面から見まして、国の財政投資でありましてもただ渡すわけではないのでありますから、資産信用状態が考慮されることは当然でございます。また一方後段で御指摘になりました海運政策上の見地も考えなければなりませんので、どれに重点を置くかということは、総合的な判断であると御承知おきを願いたいのでございます。   〔委員長退席、木村(俊)委員長代理着席〕
  91. 小山亮

    ○小山(亮)委員 私は大衆の税金から出す大事な金で、こういうものに国が融資をするときには、なるべく機会均等の建前を主にしなければならぬと思うのです。その場合に、あまりに貧弱であって、国に損害をかけそうなところは考うべきでありますが、運輸省の政策というものは、常に大財閥、大資本家偏重なんです。多くの会社が新船の建造を申請しまして、許可を得る会社を見ますと、会社の名前は違っておりますけれども、その資本系統から申しますといずれも財閥の系統であって、もし資本の系列から船を区別しますと、ほとんど資本家本位に、資本家、財閥だけに船が建造されておるというのが現状なんです。名前が違った会社が申請しましても、その背後には大資本家、大財閥、大船舶会社の保証があります。そしてそのバックで作っておるのですから、結局わずか五社か六社の大手筋が船を作っているにすぎなくて、独立資本をもってやっているようなものには、ほとんど船が作られないというのが現状なんです。そうしますと、日本の国民全体が国の費用を出して、あの造船疑獄事件まで巻き起しておいて、その金を大財閥や大手筋だけに融資して、特権階級だけに船の運営をやらせるためこ国民がこの金を出すということは、おそらくその内容がわかったら承認するものではないと私は思う。すべからく国の費用等を貸し付ける場合には、建前としては、機会均等の建前をとるということが当然過ぎるほど当然だと考えますが、運輸大臣のお考えはそうではないのですか。そういうことも考えるけれども、返す方も考えるというと、どちらにやっておるのか、首鼠両端を持しておってはわからない。これでは私はいかぬと思うのですが、お考えをもう一度伺わせていただきたいのです。
  92. 三木武夫

    三木国務大臣 財政投資はこれは補助金ではございませんから、償還ということを全然考慮外において財政投資をするという建前にはなってないのであります。従って償還能力と申しますか、資産、信用状態ということも船主選考の基準になることは、これは当然のことでございます。そこで小山君へのお答えとしては、どこが重点だとずばりと言うことが、質問者の御趣旨にかなうのでしょうけれども、なかなかそう一がいに言い切れない課題であると私は思う。小山君の御指摘のようなことはよくわかる。しかしそういうことも体しまして、やはり一方においては資産、信用状態も無視することができないということで、これに甲乙をつけるということは、なかなかこれはむずかしい課題であって、そういう小山君御指摘のようなことも頭に入れながら、資産、信用状態も勘案をするということより、お答え申し上げられないと思います。
  93. 小山亮

    ○小山(亮)委員 そういうお答えでございますならば、適格船主選考に当っての条件をおきめになる、その条件をおきめになるうちに、過去の実績であるとか、かつて保有した船舶保有量であるとか、あるいは戦争によって戦時国家補償を受けなかったものも含めて、そういうようなのれんというものを大事に考えて、選考に当るというふうな条件がございますならば、こういう条件をおつけになるときに、すでにこれは違っているのじゃないでしょうか。現在及び将来に対してどういう運営をしておるか、そして現在と将来とを見通して、金が返せるとか返せないとかいうことを御判定になればいいので、過去においてたくさんの船を持っておったとか、あるいは過去においてどういう仕事をしておったとか、あるいはのれんが古かったとか、あるいは船をたくさんに持っておったが、戦争でもって犠牲になったから、そういう人たちも考慮に入れてやるとかいうような、そういう政治的な面を御考慮にお入れになるならば、正しい判定というものはできなくなる。そういうことをおきめになること自体がすでに暗いのです。私は今日ここに非常に暗い、いわゆる大資本家、大財閥偏重になるということを、この面からはっきり知るものですから、そこで伺ったのです。小委員会を作って練達たんのうな人が相談したとおっしゃるけれども、練達たんのうな人必ずしも船舶界の造詣が深いとも限りません。あなた方の御指摘になる委員の中で、たとえば村田省蔵さんにしましても、あるいは石川一郎さんにしましても、こういう人が海運界の事業者であるなどとは私は考えない。海運に対してどれだけの造詣を持っておいでになるか、またどれほど自分が真剣に身を挺して海運業に対して研究なさったかということを私は知りません。ですから名前だけの有名な人を並べて、それでこれらの人がきめたことだから、それに従えということでは、われわれは承服できかねるのです。この点についてこういうような基準をおきめになるそのことから、すでに私は非常に暗く考えられる部面がありますが、大臣はこういう点に対して何も不審をお持ちになったことはございませんか。
  94. 三木武夫

    三木国務大臣 それは小委員会の結論でございまして、運輸大臣が諮問をして、小委員会でいろいろ答申をされるということは、小委員会としてのいろいろなお考えがあるわけでございましょう。しかし船主選考を第十一次造船にいたしますときに、過去の実績というようなものについては、あまり重視をいたさないという考えでございます。
  95. 小山亮

    ○小山(亮)委員 大臣がそういうことをおっしゃっても、それは必ずしもそういうような状態にはならないのは、これはやはり会議や何かの関係がありますから、運輸大臣けがこうだと言われても、結局その通りにならないうらみがあると思います。だからでき得る限りは運輸省の省の建前からいいまして、これは開銀あたりが返済能力をいろいろ考えたり、資産状態を調査したりすることはわかりますけれども、運輸省としては開銀の考える面まで踏み込んで、あまりに親切過ぎるような選考をなさるということは、私はどうかと思う。それから今までの選考を見ましても、運輸省が選考をすると、とかく政治的に、あるいはその他社会から非難を受けては困るというので、なるべく運輸省が選考しないで、開銀に選考させるように押しつける。開銀の方も自分で選考するということになると、また非難を受けると困るものだから、運輸省できめてくれといって押しつけて、あっちに押しつけたりこっちに押しつけたり、やり合っていたことを私は聞いております。それでは私はだめだと思う。やはり運輸省は運輸省としての基準を作って、あらゆる面から検討したものをお出しになって、その中で開銀がどれといってきめることは、また開銀の見方で別でしょうけれども、運輸省としては運輸省の権威ある独自の見方というものがなければならぬと私は思うのですが、この点について御意見はいかがでしょうか。
  96. 三木武夫

    三木国務大臣 これはやはり融資を受けるわけでございますから、全然開銀あるいは市中銀行、こういうふうな意見を無視するわけには参りません。しかし御指摘のように、運輸省は運輸省としての海運政策上の見解があるのですから、そういう会議の場合に強く運輸省の考え方を主張するようにという御意見であるならば、さようにいたしたいと考えております。しかし全然そういう方面の意見も無視するわけにはいかないのであります。今後運輸省の主張ができ得る限り通るような努力はいたしたいと思っております。
  97. 小山亮

    ○小山(亮)委員 定期船と不定期船との比率、これを運輸省の大体の案としては、定期船を五〇%以上とするというふうな御決定が、運輸省の御決定でなさったかどうか知りませんが、小委員会の答申があったようですが、この点に対して運輸省の御見解はいかがでございますか。
  98. 粟澤一男

    粟澤政府委員 御承知のように資金計画を作りました当初の案は、定期船が五〇%、それから不定期船が五〇%ということで、私ども計画をいたしております。実際のトン数を申し上げますと、六万九千トンに六万八千トンに予定いたしております。その後小委員会で御検討になりましていろいろ議論もございまして、現在の定期航路の整備状況を見ると、まだ非常に不定期船が入っております。こういうものはできるだけ早く整備しなければいかぬだろうというような意見相当出まして、いろいろ議論がございましたが、一方はやはり不定期船も現在非常に必要である。たくさん外国船も借りて外資も入っておるというような現状から見まして、不定期船も相当必要である。両方勘案した結果、大体五〇、五 ○でよろしいが、定期船の方をややはみ出すという余地のある程度の五〇%、こういうことになっておったわけであります。先ほど六万九千トン、六万八千トンと申しましたが、六万八千トンと六万七千トンが政府の案でありました。それでも数字だけ見ますと、定期船の方が五〇%を少しこしております。従いまして現在の結論は私ども考え方としてはそう変っておらぬ。また定期船が五〇%以上でも、隻数その他のものがはみ出すものがあるという程度の五〇%、こういうふうにいたしております。
  99. 小山亮

    ○小山(亮)委員 定期船の建造をしておる人たちの意見を聞きますと、何も不定期をそんなに作る必要ないじゃないか、定期船を作って、定期船が古くなったらそれを不定期に回せばいいじゃないかというお話があるように伺った。しろうとから見るとなるほどそれがいいように思いますが、元来船というものは古なくれば古くなっただけに修繕費というものが非常にふえてくる、性能が非常に劣ってくる、それからまた燃料や何かについても、定期船の燃料と不定期船の消費燃料というものは全然違うのです。馬力が違うのですから燃料もむろん違う。そういうような不経済な船を不定期の船に回すよりも、不定期は不定期として初めからどんどん作った方が正しいのじゃないか。いつも申しますように、採算のとれるような不定期船を作る。英国の海運が今日のように盛んになりましたのは、不定期船を中心にどんどんとこれを奨励してやったことによる。戦後のイギリスもやはり相当不定期船というものに重点を置いてどんどんと建造させておる点から見まして、私は日本のような国が定期定期といって、外国との非常な摩擦のあるところにまで無理やりに割り込んで、そうして定期航路を獲得していくことが今日有利であるのか、それとも今の採算の合う不定期船をどんどん作って盛んに外貨を獲得する方が利益であるのかという点は、私は政府としては考えなければならぬことだろうと思う。最近の不定期船の運賃の上昇率というものは、ほとんど毎月毎月飛躍的に伸びてきておる。ある程度でとまるとしましても、今日の不定期船の運賃の状況というものは、一年なり一年半くらいの間は見通しは明るいということを考えますときに、私どもは定期船を何割にするか、不定期船を何割にするかということを、運輸省の方で頭からきめてしまうということはどうか、なるべくはこれは採算の合う面から許可不許可をきめていくべきものだと思いますが、この点に対して当局のお考えはいかがですか。
  100. 粟澤一男

    粟澤政府委員 前段御指摘のように私ども考えまして、昨年は十次では不定期船は三〇%でありました。十一次では五〇%までふやすようにいたしておりますが、ただ数字にわたって御指摘のように計画造船でございますので、定期の現状を見まして、定期についてはどれだけの整備が必要だ、不定期についてはどれだけの整備が必要だという計画を立てまして、計画に基いて逐次整備していくことが必要かと思います。従いまして多少の出入りはあると思いますが、全然そのワクを考えないで、もう個々に選考するという点はいかがかと思います。私どもやはりある程度のワクを考える。そのワクの中で選考して計画を立てて進めたい、かように考えております。
  101. 小山亮

    ○小山(亮)委員 そうしますと、今年度の運輸省の計画しておられるところの建造計画というものは大体においてわかりますが、そうしますと定期船が八隻、不定期船が九隻、タンカーが三隻といったような勘定になると思いますが、どうでしょうか。
  102. 粟澤一男

    粟澤政府委員 隻数は一隻くらいの出入りはあるいはあるかもしはませんが、似たような数字になるのではないかと私ども記憶しております。
  103. 小山亮

    ○小山(亮)委員 これをもう少し船をよけい作るようなお考えはございませんか。現在の融資のワクの中では不可能だとおっしゃるが、不可能を可能にするようなお考えはございませんか。
  104. 三木武夫

    三木国務大臣 われわれも船は急速に充足しなければなりませんから、いろいろ考えるのでありますが、たとえば自己資本でもう少しやれるような余地はないものか、いろいろ考えて検討を加えたが、なかなかむずかしいという結論でございましたが、それは小山委員妙案がございますれば、それをお示し下さればいろいろ検討いたしたいと存じます。
  105. 小山亮

    ○小山(亮)委員 これはかって外国にあった例で、きめられたワクの中で住宅建築ができないだろうというのを、そのきめられたワクの中で住宅建築をしたという例がございますが、私は今のような野放図な金の貸し方をしていれば、船価が高くなるのは当然だと思うのです。だからこれは必ず大手筋の船舶会社から小言が出ることだろうと思いますけれども、船価を安くするというねらいから融資をするのには、一つイギリスの同型の船の建造費用、あるいはドイツの同型船の建造費用と、日本の同型船の建造費用というものとにらみ合せて、それより高い船を作るものは自分の金を出して作る。それより安く、少くとも並び得るくらいの船価をきめて、八割なら八割だけを貸すというように融資のワクをおきめになったらどうですか。たとえば一万トンの船を作る場合に、四千五百馬力なら大体イギリスの船価が七万円であって、ドイツが六万五千円であるということなら、日本の船価も六万四、五千円で押えて、その八割しか国家は金を貸さない。それが定期船になりますと、馬力がふえます。馬力がふえると船体の強度も増しますから、大体一馬力に対して費用として三万円くらいプラスすれば大体値段が出てくるのでありますから、そうしますとその率で金を貸して、イギリスやドイツなんかで作る船、その価格より高い船を作るものはその言いなりに貸さない。少くともそれ以下の費用で食いとめ得るだけの国家の費用を貸してやる。そういうやり方でやれば、今どんなに高い船を作っても、たとえば十五億、二十億の船を作っても、それに対して八割貸してやる。七億の船を作っても八割貸してやる。そういうことになれば、日本で戦後作った、たとえば五次、六次以降に作った船なんかを見ますと、非常に豪華船で、部屋の間取りなどは帝国ホテルの一等の客室でも、このようなりっぱな部屋の装飾のものはないというものを作って、そうして芝浦あたりへ持ってきてレセプションをやって、お役人さんを招待する。それも自分の金で招待しない。政府資金を貸してくれるから、その金でお客に見せている。日本が世界一の船でも作った場合にレセプションをやるならわかりますけれども、わずか七千トンか八千トンの貨物船を作って、いかに日本が戦後衰えたりといえども、そんなものを芝浦に持ってきてレセプションをやって、新橋や赤坂の芸者をたくさん呼んで豪華なレセプションをやっていたのが、今までのやり方なんです。またそれに呼ばれていくのを役人は非常に喜んだ。金を貸す方も、東京へ持ってきて芝浦あたりでレセプションをやりなさいといって金を貸しておった。それが現状です。ですから船価が高くなる。幾ら高くなってもそれに対して八割貸すのでありますから、世界一船価が高くなるのも当りまえと思う。自分の金では作らないのですが、政府が金を貸してくれる。しかも政府の金は、やがて返せなくなれば、何とかいって泣きついてすわり込んで、政党の方に運動でもすればまた延びるだろうという、そういう甘い見通しでやるものですから、結局国に損害がかかるということになるのです。私はそういう点から見まして、こういうような船主に非常に強い刺激を与えるためには、融資金というものは一ぱいの船に対しては、幾ら、馬力どのくらいの船に対しては幾ら、しかもそれはイギリスやドイツなんかの船価より以上をこえない、その八割を貸す、それ以上のものを作るなら自分の金で勝手に作れ、こういうような態度に政府が出られるならば、私は今度の十九万トンくらいの船を作るだけの計画された予算の中で、少くとも私の計算では二十一万トンないし二十一万五千トンできるのですが、こういう点について運輸省の御見解を伺いたい。
  106. 粟澤一男

    粟澤政府委員 ただいまの御趣旨、私も全く同感であります。あるいは海運局長としての立場からということになるかもしれませんが、日本の船主が今海運企業を再建して世界中の競争に耐えていくためには、おっしゃるように船価を安くしなければできないということは現実の事実だと思います。従いまして私どもも少くとも今度の十一次船につきましては、今のお話のようなことを考えながら船価の査定をしたいと思っております。ただ、ただいまお話のように、鋼材の価格がまだきまっておりませんので、ぴったりドイツあるいはイギリスの船価と同じようになることはあるいは不可能と考えますが、少くとも日本で安い船を作っていきたいと考えております。なお設計、仕様その他につきましても、ただこれは造船所をたたくというのでは意味はないのであります。安かろろう悪かろうは私どもが望むところではないのであります。船主も、設計についても仕様についても十分これを簡素化して、やはり努力しなければならないと考えております。ただいまのお話は私全く同感であります。できるだけそういうつもりで今後の船価を安くしたいと考えております。
  107. 小山亮

    ○小山(亮)委員 ただいまの海運局長のお言葉通りもしいきますと、戦後日本で初めて国家再建にふさわしい船ができるのではないかと思います。願わくば今までのような放漫な、作りさえすればいいというような造船計画でなくて、あくまでも採算を考え、国際競争に勝ち得る船を作るという強い方針で、造船計画を進めて下さらんことをお願いします。  それからもう一つ、造船所の船価をきめます一つの基準は、なるほど優秀造船所はいろいろな研究施設やあるいは造船技術等において進歩しておって、非常に金がかかっておるから高い。一がいに船舶局の方々の今までのお考えはそうでありました。今度の新しい山下局長の考えはまだ伺っておりませんが、船は芸術品じゃないのだから、もしほんとうに芸術品のような船を作ろうとすれば、一隻の船に三年も五年もかかって、一本一本のリベットをみがき上げるようにすれば、芸術品でしょう。ですけれどもそういうのを作るのじゃないので、船はやはり採算に合う船を作らなければいかぬのです。そうしますと、優秀な造船所、優秀な造船所といって折紙をつけるのはどういう造船所だ。たとえば日本でいうならば三井の造船所であるとか長崎三菱であるとかいうのは、優秀造船所だと一応折紙がつけられております。優秀造船所の資格としては、非常にいい船を作る、そしてまたその船は安い船でなくちゃならぬ。非常に安い船でなくちゃならぬ。そして早くできる、この三つの条件がそろわなければ、私は優秀造船所じゃないと思うのです。いい船ができても、高いということになれば、これは優秀じゃない。その証拠には、世界で一番優秀な船を作る技術を持っており、現に作っておるところのドイツ及びイギリスは、一番優秀な技術を持っておって、世界で一番安い船価だ、そうして一番早く船を作る。しかしながら高いから優秀じゃない。いい船が安くできるところに、初めて優秀造船所という折紙がつけられると私は思うのです。第一に船やなんかを見る技術というものは運輸省の方も目が肥えておいでになるが、たとえば船舶局が船を見る場合には、船体の構造であるとか、いろいろな設計であるとかいうものを見て、これは優秀だというふうに考えられるが、私どもからいいますると、そうでないと思う。造船所が優秀であるかないか、船価が高くなるか安くなるかということのそのにらみはどこでにらむかというと、労務管理なんです。労務管理が完全にできておるところの造船所であれば、船価は安いです。労務管理ができていないところの造船所は、船の値段が高い。ですから長崎三菱の一工数当りの値段を算出しますと、長崎三菱の工数なんというものは、一工数三百円になっております。大阪あたりの造船所がなぜ安いかというと、名村造船所なんというものを見てみますと、一工数当りが百八十二円になっておる。そうすると一万トンの船を作るには大体十二万五千人ないし十三万人の延べ人員がいるのですから、そういうふうに割り当てますと、やはり船の値段が高くなるのは工数というものが大事なんです。そうして労務管理ができておりませんと、自然に遊んでおる労務者が多くなる。そして材料をむだに使う。完全に労務管理ができておって、協力一致して働けるような態勢になっておりますと、労働者の協力の仕方が違うのですから、やはりむだが省ける。そうして非常にいい仕事が行われる。人間の遊んでおるのがなくなる、こういう点から見まして、私どもはこれからの船会社が経営がいいか悪いかということをごらんになる見方、造船所がいいか悪いかということをおきめになる標準、そういうようなものの中に、どうしてもやはり労務管理ができておるかできておらないかということを、重要な要素としてお考えになる必要があると考えますが、この点についてはいかがでしょうか。これはどなたから御答弁下さってもけっこうです。
  108. 山下正雄

    ○山下政府委員 ただいまのお話は、造船界の最も核心にお触れになっておられるお話だと存じます。先ほどから造船の船価が非常に高いというお話でございましたが、最近におきまして造船所が大いに努力をいたしましたのと、輸出船等の仕事が相当加わりましたので、操業度が上りまして、しかも労務管理につきましては、この多くの船をやるために極力労務管理をうまくやりまして、材料の手配とか仕事の割り振りというような点につきまして、各造船所とも非常に苦心をいたしております。その結果におきまして、最近の船価は輸出船がどんどん取り得るというような船価にまで、結局外国の船に比しましてそう高くない、場合によってはそれよりも安いというような船価にまで低減いたしております。私どもとしましては、この船価の低減につきましては、船価をいたずらに安くしまして、船の性能が落ちるということがありましては、日本の海運界にとって非常に不幸な事態でございますので、船の性能を落さず、しかも嘆く作るという方に努力いたす所存でございます。お話の御趣旨を十分注意いたしまして、今後やっていきたいと思っております。
  109. 小山亮

    ○小山(亮)委員 私は戦後の日本の船舶が今日のような復興を見ましたことは、実に驚異に値するものだと思うのです。それはどういうわけでこういうふうになったかといいますと、やはり終戦直後にやりました船舶公団のシステムというものが非常によかった。あのシステムがなかったならば、ほとんど船を建造するような意欲は海運業者にはわかなかった。あのシステムがあったがために、今日のように海運が盛んになるところの動機を作ったと私は思うのであります。船舶公団はだれが考えたか——運輸省の若い役人が考えられたそうですが、この功続というものは永久に没すべからざる功績だと思います。しかしながら中途においてアメリカ軍のために、公団にいろいろな疑獄事件が起ったときに、船舶公団も同じ公団という名前なものだから、その渦中に入れられてつぶされてしまいましたが、最近船の建造の担保力がなくなってきたために、海事公社というような案を運輸当局はお持ちになっておる。私はこういう案は非常にけっこうな案だと思うのですが、どうしてそういう案を途中でお取りやめになったのでありますか、伺いたい。
  110. 三木武夫

    三木国務大臣 これはやはり第一番には担保力、御指摘になりました資本構成が悪化してくるわけであります。これを是正しなければならぬ。そうして企業の基盤を強化していきたいということで、御指摘のような海事公社という案も事務当局の案として出たのであります。しかしこの問題は単に海運界のみならず、日本の企業全体の課題であるわけであります。オーバー・ボローイングの問題をどういうふうに解決するかということは、あるいは日本経済の今後解決をしなければならぬ一番中心の課題であるかもしれません。企業の基盤を強化していくためには、資本構成というものの是正をはかっていくということが、一番大きな課題の一つでしょう。そこでこれは海運界のみを取り出してきて、資本構成を是正するというわけにはなかなかいかない。日本経済全体の関連性においてこれを考えないと、部分的になかなかやることが困難でございます。そういう点でそういうふうな構想は、この際全然取りやめになったというわけではございませんが、日本経済全体との関連性において、これは検討を加えつつあるわけであります。何らかの方法で資本の構成を是正していきたい、こういうことでいろいろ検討を加えておるわけでございます。
  111. 小山亮

    ○小山(亮)委員 この間も航空会社の問題からいろいろ議論をされましたが、今日国家が国家資本を有して、設備資金に貸し出しておるというものでは、海運が一番巨額な金高だろうと思うのです。一会社に対して数億ないし何十億というような金を貸し出す。しかも担保がない。担保がないものにまた国が金を貸し出すということは、見方によると非常に危険なことに考えられます。だからやはりそうなってくれば、海事公社のようなものができて、国がそれだけの金を貸してあるならば、その金を返すまでは国家がその船を共有で持っておる。国家がその貸し出した分だけを国の所有として持っておる。そして金を返したならば、それを戻してやるという考え方が一番安全な考え方だと思うのです。ただそういうようないい案を考えたけれども、たまたま郵船会社とか、ああいう大財閥の会社が、自社船であるならば運賃同盟に加入できるけれども、国家との共有船である場合には運賃同盟に加入できないというような問題が起きてきて、大手筋の会社が二、三首を振ったならば、たちまちその海事公社の案がくずれてしまったというようなことを私は聞いておる。もしそうであったならば、それはとんでもない間違いで、そういう特別な会社は特別な融資方法考えられるべきものでありまして、そうでない会社はやはり国家が金を貸し出す以上は、借金の返済するまでは国がその船を所有しておる。そして返したならば返済した本人に船を渡してやるという行き方が、一番正しい方法だと思いますが、これはもう一度お考えになったらどうでしょうか。郵船会社とかなんとかいうような一社や二社の会社の利害で、日本全体の船舶会社が左右される。しかも国がそれだけの大きなリスクを承知して貸しておきながら、その金が、国家が何も回収できないような金の貸し方をするということは困るではないでしょうか、私はその点もう一度御意見を伺いたい。
  112. 三木武夫

    三木国務大臣 私も率直にいって、これは近い将来に何らかの新しい一つの構想で出直さなければならぬと思っております。こういうことで確かに船舶を海事公社とか、名前はいろいろありましょうが、共有にするという方式も有力な考えの一つだと思うのであります。そういう点でこれはできる限りすみやかに何らかの方法を講じなければ、このままでずっと行くということは、ますます海運事業の基盤を強化する意味においては、何らかの方法を講じなければならぬ段階である、この船の共有案も検討を要すべき有力な一つの案である、こう考えております。
  113. 小山亮

    ○小山(亮)委員 造船に船価を低下させるということに対しましては、いつでも反対の出てくるのは造船業者なんです。しかも大手筋の造船業者から反対が出ておる。大手筋であるほどまた高いのです。また大手筋は非常に力を持っておって、名前を言っても差しつかえないのですが、十次造船で十数隻船が建造された。その中の八、九隻が三菱系統の造船所で作られておる。そうすると、そういう大きなところで作られますから、ほかには回っていくワクが少くなる。三井や三菱のような大財閥のシステムというものは、一つの経済的な独立国家と同じです。ですから造船所も持っておりますし、保険会社も持っております。鉱山も持っております。荷物も皆持っておる。それからエンジンを作る会社から、電気の器具を作る会社から、どんな部品を作る会社も同一資本系統の中に皆持っておる。ですから国家から融資した金あるいは自分の、三井系統で作る場合は三井の銀行、三菱系統で作る場合には三菱銀行が自己資金の二割は出します。八割は国家が出す。その金はみな一応三菱財閥の大きな独立王国の中で消化されてしまうのですから、どんなものでも自分の財閥の経済的独立王国の中でできてしまう。ところがほかの弱小造船所はどうかというと、それを全部外注で自分の資本系統でないところに注文して作っていくのです。ですから財閥で金を借りる場合には、なるべく同じ資本系統からたくさん借りて、しかもそれは三年の据え置きの十五年年賦の七割五分という有利な金なんですから、それと同じ財閥で五隻も六隻も同一系統の中で作れば、その金がみな長い間自分の財閥の銀行を潤して、そして一割で金を貸しておる銀行に二割安い低利資金から流用できるということになれば、財閥はますます肥え太るばかりです。だから私はそういう財閥がいけないとかなんとかいうのではございませんが、船価の点になりますと運輸省の方もよほど内容を御検討なさる必要がありはしないか。たとえば一例をとりますと、さっきから問題になりました東京タンカーの船、三万三千三百トンですか、二百トンですか、この船は入札した結果、日立造船所が十六億何千万円かで請けた。ところが新三菱が横から、おれの方はもっと安くやるからといって、これを横取りした。これは競争ですから差しつかえないといたしましても、二億下げた十四億何千万円かで取った。そこで造船業界ではけしからぬじゃないかという非常な議論が出た。ところが新三菱の方では、おれの方ではそれでそろばんが合うのだ、日立の方はトン当り五万幾らになりますか、新三菱の方は四万五千何がしになりますか、これでおれの方は出血もしていないし、そろばんに合うのだ、もしこれより高い船を作るというならもうけ過ぎておるのだということを、新三菱の専務が明言している。そうすると、同じ一ぱいの船で、片方は十六億五千万円、片方は十四億と、二億も違う、二億も安くできる。二億安く作っている方が、一方を指さして、あいつはもうけ過ぎておるのだ、こういうことを公然と言うのです。そう言っておきながら、今度は国家が船を作ろうというときには、そう安くはできないといって、みんな連携をとってがんばる。そういう行き方をしておりますが、こういう点についてはもっと——運輸省で入札制度という案を考えられたことは、私はうまくできればいい制度だと思うのです。外国船が安いのは、日本の各船主に引き合わして入札制度で作るからです。日本では、ある一定の人をきめてしまって、これなら金を貸してやるが、ほかの造船所には金を貸してやらぬということで高くなる。何とかこれに対して、競争入札のような工合で、できるだけ安い船を作るという方法についての新しいお考えはございませんか、伺いたい。
  114. 山下正雄

    ○山下政府委員 お答え申し上げます。ただいま船を安く作るというお話でございましたが、入札制度で規格を厳重にきめましてやるのも一つの方法でございます。しかし入札制度になりますと、造船所間に適正な競争が行われればけっこうでございますが、不必要な競争があった場合には、造船工業自体として非常に苦しい立場に追い込められる。そのために造船所が金融的にも非常な苦しい立場になりまして、健全なる発達を遂げ得られないというような事態がなきにしもあらずでございます。しかし入札の趣旨自体としては、船価低減のためには非常にいい措置ではないかと考えております。しかし私どもで今考えておりますのは、海運造船合理化審議会におきまして、そこに専門部会を設けまして、この専門部会の委員といたしまして、船会社の実際の運航に従事して、おられる経験者、それから造船所におかれまして毎日設計に従事しておられる方、そういうエキスパートに三十五人ほどお集まり願いまして、そうして船の仕様につきまして先般来いろいろ検討をいたしております。先ほどもお話がございましたように、船が幾ら安くなりましても、この船が非常に悪い船になりましては、これは何にもなりませんので、もっと船を安く作るということについて、船主の要望が不要不急なものにわたりますものは、これをやめていただく、また船の艤装その他につきましても、不要不急なものはこれを排除し、そのかわりいいものはぜひこれを使うようにリコメンドするというような方法をもちまして、船を安く、しかもいい船にするという目的を果したいという考えで、今仕事を進めております。トランパーにつきましては、まだ少し検討を要する点もございますが、一応成案ができまして、大臣にも申告を申し上げておる次第でございます。
  115. 小山亮

    ○小山(亮)委員 山下局長は新任早々ですから、なお一つこれから十分に御検討願いたいのであります。ただ運輸省のお話を承わりますと、ちょっとむずかしい問題はすぐ造船合理化審議会の専門の方に寄っていただいて、そこで審議して、その意見を聞いた上でそれを尊重していく、みんなそっちに逃げてしまう。自分の方では一つも頭を使わないで、人の知恵だけで仕事をしていこうという考え方、私はそれではだめだと思うのです。  この際、これは問題外ですが、特に三木運輸大臣に聞いておきたいことは、運輸大臣の将来の日本の海運を考えられての一つの功績として運輸省の造船であるとか海運であるとか船員であるとか、そういう、将来の運輸省を背負って立たなければならぬような、日本の役人の中の運輸省のバック・ボーンになるような若手の官僚を思い切って外国にお出しになって、ほんとうに真剣に勉強させるお考えはございませんか。今運輸省では二人か三人行っておるそうですが、たくさんの運輸省のお役人の中で、二人か三人ヨーロッパへやったところで、どうにもならない。戦後の日本は、御承知のようにずいぶんおくれておるのです。イギリスの船やドイツの船で日本に来た船を見ますと、ほとんどわれわれは想像のできないような独創的な新しい仕組みをやっております。そういう面から見ても港湾行政の面から見ても、荷役能率の点から見ましても、すべてにおいて日本が戦前から戦後外国に対しての交通があまりなかった。だから今は残念ながら書物で見ておる程度であります。百聞は一見にしかずで——衆議院の議員が、議会が済めば、ぞろぞろと外国にたくさんおいでになるが、そういう人たちがおいでになることよりも、むしろ役人でほんとうに専門的な考えで、将来おれは日本の海運行政の背骨になるために勉強するのだという、真剣な気持の連中を外国に相当数お出しになる、これをもし今日おやりになるならば、将来、十年、二十年後の日本は思い切って変るのです。これを一つ大臣、特に予算の面では取りにくいとおっしゃいますけれども、やはり日本の将来のことを考えたならば、人間の養成ということが一番大事なんですから、人間がいなかったら、機構や何か幾らあってもだめです。人間の数は多いけれども、ほんとうにこいつはと思うような人間が日本には足りないのですから、そういうような、ほんとうに将来の日本の海運行政をになって立つと思うような人を、思い切って外国へお出しになるお考えはございませんか。
  116. 三木武夫

    三木国務大臣 将来の海運政策のために、非常に御理解のあるお言葉を感謝いたします。私もそう思う。これはやはり戦事中からとにかく日本は立ちおくれておることは事実であります。海運のみならずその他のことにも言えると思います。本年度は非常に少いのですが、将来においてはぜひそうしたい、将来日本の海運行政の中心になるような人を海外に送って、先進諸国の状態を見せるようなことにしたい、同感であります。
  117. 小山亮

    ○小山(亮)委員 将来は三木運輸大臣も総理大臣にもなられるでしょうが、将来あなたが総理大臣になってからのことを言うのではなくて、現在運輸大臣でおいでになる間におやりになるお考えはないのか。議会が済んだら内閣を改造するというような声もありますが、おそらく改造するといったって、あなたのいすは動くとは思いませんが、それにしたところで、そう長い間運輸大臣をしておいでになるとは考えません。従って将来などと言わないで、さっそく、できるならば直ちにこういうことをやりたいということをお考え願いたいのですが、いかがですか。
  118. 三木武夫

    三木国務大臣 私の進退に異動がございましても、これは十分に受け継いで、来年度の予算にはやはり将来の海運行政のバック・ボーンになる者を海外に送りたい、こう考えております。
  119. 小山亮

    ○小山(亮)委員 もう一点伺います。そうすると今年の建造ではタンカーは何隻御予定ですか。六万トンとありましたね。スーパーは何ばいお作りになるのですか。
  120. 粟澤一男

    粟澤政府委員 五万四千トンの予定でございます。従ってスーパーはトン数によりますが、二万一千トンのスーパーでありますと三ばいはできません。これは二はいで並型が一ぱいであればちょうどうまいことになるというふうな数字になっております。従いまして隻数といたしましては大体三ばいということになります。なお先ほど大臣からも御説明がありましたように、スーパーに重点を置いて作りたい、こういうことであります。
  121. 小山亮

    ○小山(亮)委員 十一次造船では並型の計画もお入れになっておるのですが、並型のタンカーは将来の採算はとれるというお見込みなんでありましょうか。そうでありませんとまた国に御迷惑をかけることになる、それを承知しておやりになるかどうか、そうしてまた並型のタンカーは現在足りないのですか。
  122. 粟澤一男

    粟澤政府委員 ただいまありますタンカーのうちで約十八万トンは、御承知のようにここ三、四年で脱落するタンカーでありまして、従いましてそれに合うようにやはり補充をいたしていかなければなりません。  それから並型について将来採算が合うか合わないか、こういうお話でございますが、私ども並型は採算が合わないとはまだ必ずしも考えておりません。日本の港にしましても、昨日もお話がありましたように、水深その他これからまた掘さくすれば深くなるのじゃないか、あるいはタンカーを作ればいいじゃないかというお話がありますけれども、そう急に日本の港が全部スーパーを使えるようになるということでもございません。また外国の例を見ましても、現在建造隻数で大体六割ぐらいは並型を作っております。なお日本の船主としましても、自分としてはやはり並型にしたいという船主もございます。これが必ずしも将来長いことを考えての計算の上かどうかという点はなお検討を要しますが、現在全部スーパーでなければならぬという結論は少し早いのではないかという気がいたします。
  123. 小山亮

    ○小山(亮)委員 昨日私の質問中に、関連質問で原君からの質問がありまして、昨年あの疑獄事件に関連したような船会社に対しては、それに対する懲罰的な考え方で紛争については考慮しなければならぬじゃないかという御意見がございました。私は原君の意見とは全く反対なんです。大体運輸省は行政官庁として、懲罰を食わせるような権能を持った役所じゃないと私は思う。すでに二、三の会社に遠慮させたことは私は非常に行き過ぎだと思っている。それを今度またさらに世論に迎合して、あるいは巷間の人々の言うことに迎合して、そうして将来のことも考えないで、関係した会社に対して懲罰的な処置をするということになったら、これは私はおそらくとどまるところを知らないと思う。あの造船疑獄事件というのは、ちょうど私は国会におりませんでしたけれども、あの起った原因というものは、おそらく議員としては私ぐらいよく知っているものはないと思うぐらいに、私は内容はほとんど知っております。それではどうしてああいう事件が起ってきたかというと、これは船を建造するときに有力な筋に行って頼む。そうしてなるべく自分の会社に船を作らせてくれと頼みに行く。頼んだ場合にその人の努力であるかないかはとにかくとして、あるいはそれが偶然に資格があってとれたにしましても、一応商売人というものは仁義を通して菓子折の一つも持ってくるとか、あるいは選挙に対してはあれだけ努力していただいたのだから、何とか選挙資金わずかでも出そうとするのが自然の人情だと思います。それがいいか悪いかは別問題です。将来そういうことが当りまえであるとかないとかいうことを言うのではないので、従来までの日本の慣例としては、そういうことが行われてきたのであります。それからまた利子補給の適用を受けました第六次以降の船会社といたしましては、それによって自分の会社の経営が非常に楽になった。ところがたまたま選挙が近づいてきた。そのときにこれは船主協会が指令を出した。そして利子補給を受けた会社を寄せ集めて、こういうわけでわれわれの方は利子補給を受けて、自分の会社は楽になった。そこでこの際そういうように骨を折ってくれた政党には、何とかしてお礼のつもりで金を出そうじゃないかというので割り当てて集めて、政党の幹事長に持っていった、こういうのが実情なんです。受け取った方は、そういうことの礼であるかどうか知らずに受け取ったのでしょうけれども、出す方はそういうことで大体割当をきめて出した。だからこれを厳重に言ってそれが悪いということになれば、おそら(第六次以降船を作った会社でもって利子補給を受けた会社で、これの適用で懲罰を食わされない会社はないはずなんです。そうすると日本じゅう船はできぬことになるのです。私はそういう詳しいこともきのうは申し上げなかったのですけれども、そういう意味ではこういうものはとどまるところを知らないような問題になるのですから。だから去年でも岡田海運局長には、そういう懲罰を食わしてはいかぬ。運輸省が懲罰を食わすべきものでなくて、法務省が食わす。またああいう事件にひっかかったのは、新聞にある通り氷山の一角なんですから、業界に言わせれば運の悪いやつがひっかかったと言っておるくらいですから、そういうものだけが懲罰を受けて、ほかに免れて罪なかったものは、てん然として何の懲罰も受けないということになれば、非常な不公平なんです。そういう意味から、過去のいろいろな戦前の業績なんかを勘案して、運輸省が懲罰的に船を作らせるとか作らせないとかいうことをおきめになる必要もないし、また過去においてのいろいろな犯罪で、司直の手によって処断なれておるものは、これに対してあなた方の方がいろいろの考慮を払う必要はないと思うのです。というのはなぜかといいますと、なるほど政治献金をしたとか、やれリベートを取ったとかいうものがございましょう。それは会社の社長とか重役とか専務とかいうほんの一人か二人がやった。公然とやったのでも何でもない。ところが下に働いておる船員であるとか店の連中は、そんなことはつゆ知らずに働いておるのです。そうして一生懸命でやっておりながら、たまたま一番最上の経営者がそういうことを自分の考えだけでやった。自分のふところを肥やしたかどうか知らぬが、他に会社全体の従業員には何ら利益がなかった。それなのにその懲罰をみなが受けなければならぬという理屈は、あまりにかわいそう過ぎるのです。そういう点も考えて、私は深く前後の事情を考えてやらなければいかぬのに、それを懲罰的に遠慮させてしまった、だから今年もまた遠慮させろというような意見になりますと、私はそれはあまりに酷過ぎると思う。私はこれは大臣の御答弁を必要としません。ただ選考に当っては、こういうような問題で波乱に次ぐに波乱をもってするようなことのないようにしたいというのが私の希望です。私の希望を申しまして質問を終ります。
  124. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 実は今小山委員からそういう発言がありましたので、私実は次の委員会大臣なり関係政府委員所見お尋ねしたいと思って、実は先ほども原委員長にそのことを申し上げた。昨日の委員会で、ただいま小山委員の言った通り、造船疑獄に関係したものを十一次造船に入れない、五年も十年もとは言わないが、一年や二年は懲罰的にもいかぬ、こういうお話でありました。私はこのことを先ほど委員長に申し上げた。ところが委員長は、そのことについては多少自分の誤解もあったということを聞きました。それで、あらためて原君のおるときに当局の意向をただしたいと思っております。実は私のところにも、造船関係組合から陳情が参っておりますが、たとえばあの事件のときの重役は総退陣をさせた、さらにまた自分の船会社だけでも二千万円の経費を節約して企業の合理化をはかるとともに、全員が一体となってこういう不祥事件に対するみずからの責めをとっておる。ひたすら業界の発展のため、社運の興隆のため、自分たちは賃金もストップして今日まで忍んできた。しかし昨年度においても認められず、本年度においてももしそういうことがあるとすれば、今まで従業員は耐えがたきを耐え、社運の興隆のためにこういうことを忍んできたのだが、それをあくまで懲罰的にやられるとすれば、それはわれわれにとっても何とも耐えがたいところである、どうかそういう点の実情を考えてもらいたい、責任の所在も明らかにし、重役の退陣も求めて、われわれは世間に対し、国家に対し、利子補給の国家的恩恵を受けた事実についても反省しておるのだ、そういう点を何かの形において生かしてもらわなければ、弱いものが自分の待遇を切り詰めてまで合理化をはかってやってきたのであるから、こういうことを私どもはるる陳情を受けたわけです。こういうことを聞きますると、ただいま小山委員の申しました通り、やはり当局としてもそういう懲罰的な態度をもって臨むということは、少し行き過ぎではないか。ただしそれは、実際において十一次造船に入れるべからざるものを入れろというのではない。当然の資格を持ち、該当するものがありながら、疑獄事件についてその責任を追及する意味から認められぬというなら、これは少し乱暴ではなかろうか。御承知のように社会党においては、造船利子の補給法についても、衆議院においても、委員会を問わず、本会議においても反対をして参りました。さらに造船疑獄事件が発生しまするや、それをわれわれは大きく糾弾いたしたのであります。党をあげて、国家資金をこういうところに利用するということは許すべからざる罪悪なりとして、全力をあげてたたいのであります。そして疑獄事件が発生しまするや、造船所はまったく弱ってしまって、さらに政府も政党も全く造船計画というものを放棄してしまって、だれ一人この国会において取り上げるものがなかった。それはそれとしてわれわれとしてはあくまでも糾弾しなければならぬ。しかし船を作るということは国家の要請であるから、疑獄そのものの罪は徹底的に糾弾しなければならぬが、船腹を作るということは国家の要請であるという観点に立って、私どもは十一次造船については、自由党も民主党もやらざることを社会党があえて説いて、そうして各党一致の形で造船についての決議案を院議をもって通過せしめたのであります。こういうことをもってしても加うべからざるところの懲罰的報復手段というものは、厳に慎んでもらわなければならない、こういう見解を持っております。これは原君にも、個人的には、お互いこの委員会において相対立するがごとき意見を出すことを私どもは避けておったために、了解の上で当局の意向をただしたいと思っておりましたが、たまたま、ただいま小山委員から要望的な発言がありましたので、あえて私もまたその経営の合理化というか、再建の方式の涙ぐましい姿に対して、私どもは見のがすわけに参らないのであります。こういう点についてあなた方大臣にしても局長にしても、そういうことをお考えになっておるかどうか。もし今日その所信が披瀝できないというなら、またあらためて質問してもかまわないと思っておりますが、もしお漏らしを願えるならば御意見を承わりたいと思います。
  125. 三木武夫

    三木国務大臣 小山委員並びに池田委員の御意見はよく承わっておくことにいたします。
  126. 井岡大治

    井岡委員 私は、この問題について御意見を承わっておくということでございますので、あえてこの問題を追及しようとは思いませんが、最初運輸当局は入札制をお考えになった。これについて船舶業者が反対をした。しかも最近に至って疑獄を起した会社が、現在まだ計画造船の指名は受けておらないけれども、募集が終っていよいよ実施に当っては、自分のところに造船指名がくるということを従業員に漏らし、あるいはまた一般に漏らしておるということが明らかになって参っておるのであります。私はただいまの池田氏の御質問のように、私の住む近くにも造船所がございますから、非常に努力をされておることは認めます。しかしながら自分のところには必ず造船の指名があるというようなことが発表されるというに至っては、国民はまた造船疑獄が起るのではないか、こういうような危惧を持つのはやむを得ないのではないかと思うのであります。従って、そういうようないきさつがあるかどうか、こういう点について私は昨日来からお聞きしたいと考えておったのでありますが、時間も非常に経過しておりますので、私は本日この問題について深くお聞きしょうとは考えません。しかしながらこういう事実が巷間伝えられておりますと、努力をして再建をしようとする会社に再びひびが入るのではないか。日本の海運行政あるいは海運の発達に対して、大きな疑惑と混乱が生ずるのではないかと思いますので、この点について十分お考えをいただきたいと思います。
  127. 三木武夫

    三木国務大臣 ただいま公募を開始しておりますが、まだ一件も申し込みはないのであります。そういうことは絶対にあり得ようはずはないのでございます。どうかそのように御了承を願います。
  128. 井岡大治

    井岡委員 公募を開始してから一件も申し込みがないということは、私もお聞きいたしました。会社がそういうことを言うのは、従業員を鼓舞rる立場から言われておるのかもしれませんが、それが外部に漏れるとすると、あるいは町に伝わると、非常に大きな問題になってきます。同時にまたそれがたまたま非常に優秀であって、政府の期待する造船をやるということになって、指名をされたということになってくると、やはりそうであったかということになって、暗い影を残すことになろうと考えます。従ってこの点については十二分の考慮を払っていただきたいということをお願いをしておきます。
  129. 三木武夫

    三木国務大臣 重ねて申し上げますが、十一次造船については絶対に疑惑を残さないように、明朗な方法をとることをかたく申し上げておきます。
  130. 木村俊夫

    ○木村(俊)委員長代理 それでは委員各位にお知らせいたしますが、国土開発縦貫自動車道建設法案につきまして、建設委員会に対する連合審査会は、明二十一日午後一時より開会いたすことになりましたので、さよう御了承願うとともに、委員各位の御出席をお願いいたします。  次会は公報をもってお知らせすることといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十一分散会      ————◇—————