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永山委員 私は大臣並びに事務当局の御尽力で、大体解決を見たという
関係を聞きまして、ただいまの取締り、処罰等の問題については、またその結果に応じて質問をいたすことにいたしまして、こういうことがないように、抜本的な処置を今後講じられるかという点を質問をいたしてみたいと思うのでございます。すなわち当局はきぜんたる態度で、こういう大混乱が来ないように最善の処置をするというその方途に対して、積極的な
意見を申し述べ、また御
意見を承わりたいのでございます。
この混乱状態は、これは業者の混乱だ、こんな業者混乱を
運輸委員会へ持って出るなんかばからしいことだといったような、きわめて皮相な観察をするというのが往々あるのでございますけれ
ども、この大混乱こそは実に——もちろん法治国家としての点から見る点は、別途の立場において今論議されましたが、そうでなしに、業界が全く致命的な状態に追い込まれて、業界を滅亡に導きますと同時に、また運輸当局もこの道路運送法の権威を保つことができずして、ついに公益企業として
監督指導をいたしておるこの
認可制が全く破れまして、いわゆる免廃の状態になってきました。いわゆる免許を廃止して、自由営業へ移行していくということへ追い詰められることになるのでございまして、当局のこれに対する十分の取締りができない、当局の威令が行われないということになるならば、道路運送法は全く空文化いたしまして、ここに免許制から免廃へ移行をいたしまして、輸送状態が大混乱に立ち入るものであると思います。時間的
関係がございますので、一問一答を避けまして総合的に申し上げ、あと総合的な御
意見を承わることにしたいのでございますが、すなわちその免許制が破れまして、免廃になって無免許制になった場合はどういう結果になるかというと、
民間側においては、車がふえて安くなればいいのじゃないかという
考え方が往々ございまして、安易につく状態になるのでありますけれ
ども、その状態は往年、一万一千台で戦前に起りました。その結果は何を物語っておるか。すなわち雲助稼業となりまして、その雲助稼業は、結局善良なる都民を苦しめたのであります。強い者に対しては安く行きますけれ
ども、弱い婦女子を乗せた場合においては料金をひったくるという状態で、安心して乗ることができない、この混乱状態が続きました。これは人間の生命を扱う公益企業である。またトラックにしましたら、大切なる荷物を扱うものであるからして、ここに十分なる公益性を持たす統制をしなければならぬという観点に立たれまして、二年前に免廃問題が、ちょうど終戦後の状態の思想
関係と相待ちましてがぜん起きましたときにおいて、当局は、これに対しては免廃へ持っていったならば、どうしても大混乱が起るのであるというので、道路運送法の
改正となりまして、ここにむしろ強力なる統制をされるということに、逆に移行をいたしたのがこの定額運賃制でございまして、安くしてもいかぬという
法律にいたしたのでございます。この定額運賃制をとっておるものがどこにございます。酒屋さえも、酒を安く売っても処罰されないことになっておるのに、この自動車輸送運賃だけは定額運賃制をとりまして、安くしてもいかぬ、高くしてもいかぬというほど強い統制力を持って、そうしてこの人命を運ぶところの自動車営業に対して、強く
政府が
監督指導をしようということに至りました。ここにおいて、国民は安心して自動車に乗ることができ、荷物を預けることができるという、この指導的立場に立っておるところの運輸省の権威が全く失墜されてくるということは、ゆゆしき問題であると
考えなくてはならぬのでございます。
そこにおきまして、ここで特に運輸当局に申し上げて、さらにこれが抜本的施策を講じて、こういう混乱が再び起らぬようにする
ためにはどこに重点を置くべきであるかといえば、料金の問題ではないのでございまして、道路運送法の第八章、すなわち前々議会、前議会から免廃問題を中心に
改正をされましたところの自動車運送協議会の本質的性格を、十分立法精神にのりとって運用をされるということでなくてはならぬのでございます。その道路運送法の
改正されました重点は、需給の調整でございます。そのときに中村
自動車局長は、とにかく自動車がたくさん許可されて、安くさえあればいいという、こういう
常識的な気持になりやすいのであるが、その結果は雲助稼業となって、善良なる人々を不安に陥らしめ、そうして運賃のひったくり断行ということが起きて、結論的には良民が苦しむのだ、正しい人々が苦しむというところに持っていってはいけないので、ここで東京都のごとき状態は、これ以上の許可は押えて、そうして
経営の合理化、健全化に向って指導するのだという
方針のもとに、道路運送法の
改正に力を入れられたのでございまして、その
考え方が実際上行われておるならば、ここにこの大混乱は来たさなかったのでございますが、すでに資料を提供いたしましたように、宮田前福岡陸運局長、現東京陸運局長のごとく、自動車運送協議会の答申は尊重しなければならぬということが道路運送法においてはっきり書いてあるにもかかわらず、その答申があって一カ月もたたぬうちに、しかも東京へ栄転のその前に、新規許可をするというような暴挙をあえていたし、さらにまた権田前東京陸運局長は、東京都のこの交通
関係におきまして乱許、乱立そうして大混乱を目の前に置きながら、需給の調整に対して熱心にやろうという
考え方を持たずに、自動車運送協議会の答申の精神を無視して、どんどんと許可をいたしました。安くなりさえすればいいというような
考え方でやりましたことに、大混乱が来ておるのでございますから、当局はこの自動車運送協議会のこの答申を中心といたし、需給の調整に対して、この状態を見られまして一段と指導的立場に立って、これが解決の方途に向われませなければ、今日の混乱を是正することはできないと
考えておるのでございます。ここにおきまして私は需給の調整に関して新しい構想をもってそういう積極的指導
方針で、業界を健全なる企業に向って進めていくということに対する信念を承わりたいのでございます。
今日残念なことには陸運局は、これは陸運局の責任ではございません。運輸省自体の政治力が弱い
ために、
予算がない
ために取締りの手足を持っていないのでございます。担当全域にわたりまして取締りに出る者はわずかに、三人、四人ということで、この東京都だけで一万何千というこのタクシー、ハイヤーを取り締ることはできはしない。それを関東一円を持っておる取締り指導目が、わずかに二、三名というような
予算でできるはずはない。これが
予算的制約を受けておりますから、全く無能の状態になっておりますが、健全企業を阻害しておるところの名義貸しというのがありまして、
会社組織ではあるけれ
ども、名前だけ借りて自分の車で営業をいたしておる、この名義貸しが横行いたしておる。そうすれば安くていいではないか、その方がかえってよろしいといったような
考え方を
常識的に持つのでございますが、陸運当局並びに運輸当局は、この弊害ははっきり御存じのはずでございます。何となれば自分の車だから大切にしてよく運転するだろうという
考え方、また
会社形態でありながら
会社でないのだから、費用が安くなるから結局安く運転されるのだろうといったような、きわめて安易な
常識で判断をしがちなのでありますけれ
ども、これこそ輸送秩序を乱す一番根幹をなすガンである。このガンであるということは、自動車保険をやっておる保険
会社に行ってみればすぐわかる。名義貸しのある
会社には保険はかけられません。かけたならば現在の料率では損をする。ということは何を物語っておるかといえば、そういう個人持ちの名義貸しをやっているところの自動車の事故は実におびただしいものでありまして、その事故たるや想像することのできないような大事故を起すのでございます。その
理由はどこにあるかといえば、結局自分は欲である、欲であるから労働強化になる、欲であるから車両の手入れをする時間を惜しむ、車両の手入れをする金を惜しむ、そうして労働強化の
ために思わざるところの大事故を起すものは、実にこの名義貸しをやっておる、個人持ちの企業をやっておる者が大きな事故を起しておる。事故率の大なるものがここにあることは、すでに保険
会社がはっきりこの
会社に保険をつけることはできませんと言うことから見てもわかっておるのでございまして、名義貸しを横行させたならば、料金を多く取りたいのですから、談合でもって弱い者と見ればうんと取り、強い者と見れば安くする、こういうことによりまして全く輸送の大混乱を来たして、ここに交通事故の根源があるのでございまして、断固としてこれは処罰をしなければならぬということは論議の
余地なくして、運輸当局も
方針を確立されておるのでございますけれ
ども、これがどうしても処置できない状態になっておるのであります。そのことは今日の取締りが運輸省において非常に困難なのと同じように、
予算関係、人の
関係等で十分できていないので、こういう点から見れば、全く取締り
関係は公安
委員会へ移譲する。公安
委員会と税務署と手を握って、
ほんとうに、これが取締りに税の面とすべての面で各官庁が
協力してやるという強い
態勢を持っていかなければ、この取締りはできないのでありまして、この名義貸しがどれだけ横行いたしておるか、いかに巧妙にこれが経理上操作されておるかということを探知することは、なかなか困難な問題でございますが、これらを断固として業界とともに手を握って排除してやる。そうして健全なる企業形態へ移行するという、この輸送秩序の確立に向いまして、需給の調整に強い信念と方途を用いられて、業界の
事業が安定するときにおいて初めてここに料金問題が解決するのでございまして、七十円問題、八十円問題というこの問題は金によって解決すべきものではない。根本の需給の調整ということに対して、道路運送法の精神にのっとって断固としてこれに指導的立場に立って、業界とともに手を握って十分指導していくのだという、この決意のほどを承わらなければならぬのであります。