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1955-05-16 第22回国会 衆議院 運輸委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十六日(月曜日)     午前十一時六分開議  出席委員    委員長 原 健三郎君    理事 有田 喜一君 理事 今松 治郎君    理事 臼井 莊一君 理事 山本 友一君    理事 青野 武一君 理事 中居英太郎君       岡崎 英城君    加藤常太郎君       佐々木秀世君    濱野 清吾君       越智  茂君    關谷 勝利君       徳安 實藏君    畠山 鶴吉君       井岡 大治君    栗原 俊夫君       下平 正一君    正木  清君       山口丈太郎君    池田 禎治君       竹谷源太郎君    小山  亮君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君         運輸事務官         (船員局長)  武田  元君  委員外出席者         運 輸 技 官         (船員局教育課         長)      冨田 正久君         専  門  員 堤  正威君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 五月十三日  委員楢橋渡君及び大西正道君辞任につき、その  補欠として堀内一雄君及び竹谷源太郎君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 五月十三日  大糸線全通促進に関する請願田中彰治君紹  介)(第五八二号)  同(塚田十一郎君紹介)(第五八三号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  紫雲丸沈没事件に関し派遣委員より報告聴取  船員の再教育に関する件     —————————————
  2. 原健三郎

    原委員長 これより運輸委員会を開会いたします。  運輸行政に関して調査を進めたいと存じますが、日程に入ります前に、紫雲丸衝突沈没事件調査のため本委員会より派遣いたしました委員各位が、一昨夜帰京されましたので、この際一応の中間報告聴取いたします。越智茂君。
  3. 越智茂

    越智委員 調査に参りました四名を代表いたしまして、御報告を申し上げます。  本調査団は、民主党より加藤常太郎君、自由党より越智茂日本社会党より青野武一君及び日本社会党より中居英太郎君の四名をもって構成をいたしたのであります。  一行は五月十二日夕方羽田を出発いたしまして、伊丹、神戸を経まして、海上保安庁巡視船くまの丸で海路高松に直航いたしました。十三日午前六時に高松に着きまして、同八時より高松海上保安部において池端第六管区海上保安本部長荷宮高松海上保安部長木村神戸地方海難審判所所長及び沈没船紫雲丸乗船客であった伊藤宏君、深田サルベージ株式会社高松出張所長より海難当時の実況を聴取いたし、午前九時から巡視船あさぐもによって遭難現場を視察いたし、遭難者に哀惜の花束をささげるとともに、現場付近の第二宇高丸及び鉄栄丸にある遺族人々並びに遺体捜査作業中の人々に対し、深甚なる弔意と激励の辞を放送し、さらに現場にあって事件発生直後から引き続き現場の総指揮に活躍中の海上保安庁巡視船さよちどりを視察し、十時四十分帰着いたしました。  引き続いて高松市内労働会館に向い、同所に安置してある遺体並びにつき添いの遺族弔意を表し、花輪をささげ、焼香の後、直ちに同じく市内にある四国鉄道病院に加療中の負傷者約二十名をそれぞれ見舞い、十一時五十五分、四国鉄道管理局長室に帰着し、新聞記者会見を行い、正午過ぎからまず間瀬四国鉄道管理局長及び井上営業部次長より、紫雲丸沈没事件経過概要聴取いたしました。応急輸送対策等につき事情を詳細聴取いたしました。続いて紫雲丸事務長氏家正臣、四十九才)より遭難当時の救助作業状況につき説明聴取いたし、午後三時には高松気象台長野口篤美)及び同予報課長橋本清美)から、当日の気象状況並びにその伝達状況、特に紫雲丸沈没当時における濃霧状況についての説明聴取いたしました。引き続き紫雲丸二等運転士立岩正義(二十七才)から当日の紫雲丸の航行の実情衝突より沈没までの状況につきしさいな説明聴取いたし、次いで同じく紫雲丸三等運転士鈴木秀夫(二十九才)から、当時本人の服務いたしていた見張りの実情等につき説明聴取いたしました。かくて午後六時ころに及びましたが、これから当日第三宇高丸の当務船長であった三宅実(三十七才)から、第三宇高丸の当日午前六時十分宇野出港から、紫雲丸衝突、これを沈没せしめるに至るまでの経過、特に霧中運航につき詳細なる説明聴取し、次いで同じく第三宇高丸の二等運転士杉崎敏(二十九才)から当日のレーダー監視補助服務実情聴取し、これから三十数名の説明につき、それぞれ調査団各員から詳細にわたる質疑がなされ、午後十時ようやく終了いたしたのであります。  十四日午前六時四十分からは、沈没した紫雲丸同型船である鷲羽丸に乗船し、紫雲丸沈没当時の就航ダイヤによる運航高松発午前六時四十分、宇野着同七時四十五分、第八便)を視察いたし、船内操舵室操舵現況レーダーによる監視実情船内救命用具備付状況貨車甲板現況及び船舶構造等につき説明聴取、種々質疑応答を重ねた次第であります。  調査団一行宇野より第二百四十六列車、大阪よりはとに乗車したのでありますが、途中連絡船発着時はもとより調査列車の主要駅発着ごとに、たまたま同船、同車の遺霊及び遺家族に対する国鉄側敬弔実情を視察し得たのであります。この国鉄側敬弔の誠意に至るところまことに敬虔なものがありまして、この点に関しましては調査団一行といたしましても満足はしたのであります。かくして本調査団は十四日午後八時三十分、帰京いたした次第であります。  本調査団調査の目的が、遭難者及び遺家族に対する弔慰と事件の真相並びに責任の所在の究明にあることは、申し上げるまでもないのでありますが、いたずらに非違の摘発のみに流れることなく、緊急及び恒久的対策確立という建設的立場において、調査を行なったということを申し上げておきたいのであります。  次に、調査の結果につきましては明日詳細を御報告申し上げます。以上であります。
  4. 原健三郎

    原委員長 これに関連いたしまして中居英太郎君。
  5. 中居英太郎

    中居委員 この席から関連いたしまして中間的に二、三の原因について、私ども調査の結果を簡単に御報告申し上げたいと思います。  私ども調査いたしました結果による原因の一つと思われるのは、濃霧中における航法に対する注意が十分でなかったということがあげられると思います。出入港につきましては、視界二百メートルないし三百メートル以下の場合には、常に欠航しておるのが常識となっておったようであります。当日は、現状での視界は五百メートル程度でありましたが、気象台からの通報では、海上においては視界四十メートルないし五十メートル以下になる、こういう注意報を受けながらも、なおかつ注意を怠っておった、こういうことが第一にあげられると思います。  さらに第二の理由といたしましては、非常事態におけるところの警戒態勢が不十分であったということであります。この船員服務上の規程によりますと、霧笛が吹鳴せられた場合には、船員非番の者もあげて非常態勢につくということが規定せられておるようであります。ところが紫雲丸のごときは、霧笛を吹鳴しながらも、みずからは何ら非常態勢をとっていなかった形跡が濃厚であります。ことに非番船員のごときは、衝突してからあわててベッドの中から、あるいはふろから裸になって飛び出したというような醜態を演じておるようであります。  第三は、濃霧中においてはレーダーを特に信頼すべきであるにもかかわらず、原始的な霧笛による相手船判断にたより過ぎておる点であります。そのために実は紫雲丸直線コースの上にあるところの第三宇高丸を、常に右側にあるという認定をとって、みずから左へ左へと旋回しておったというのが、衝突原因であるようであります。  第四は、両船とも霧の中におけるところの航法に誤まりがあったと思われます。霧の中における航法は、すべての船は速力を減ずるとか、あるいは機関を停止するとかいうようなことを講ずべきでありますが、両船とも十ノットないし十二ノットのフル・スピードをもって航法をとっておった。それから航法に定められておるところによりますると、すれ違う場合には右側をすれ違うというのが原則でありますが、もしも万が一左側を横切る船があった場合には、その船は停止しなければならない。あの場合には紫雲丸が第三宇高丸を横切ったようでございますが、紫雲丸には規定によりまして、停止するところの義務が背負わされておるのでありますが、何ら停止しないで、依然として十・八ノットのフル・スピード運航を続けておった、こういうことでございます。  その次に言えることは、第三宇高丸三宅船長は、出港時から終始レーダーを使いまして紫雲丸の位置をとらえまして、適当な指示を与えておったのでありますが、紫雲丸海上において交差する時間を承知しながらも、最も必要な時間にレーダーから離れております。最も重要な時刻、六時五十分から衝突に至るまでの六時五十六分まで、三宅船長レーダーから離れておった、こういうことが調査の結果明らかになったのであります。  大体これら五点の原因を総合いたしますと、常識を逸脱したような航法がとられ、かつまた船員の士気が弛緩しておった、こういうようなことがああいう大惨事を惹起した原因ではないかと思われるのでありまして、いずれそれらの点につきまして四名の委員はそれぞれ情報を交換し合いまして、明日さらに詳しい報告を提出したいと思っております。
  6. 原健三郎

  7. 青野武一

    青野委員 越智さんからの御報告中居さんからの補足で大体は尽きておると思いますので、蛇足をつけ加える必要はないと思いますが、特に一、二点申し上げておきたいと思いますのは、二重になるかわかりませんが、第三宇高丸は大体二マイルの距離を置いて、紫雲丸船影レーダーを通じてとらえております。紫雲丸の方は船長が死んでおりますので、終始一貫この船長が見て、ほかの者は全然レーダー関係してなかったから、どういうことになっておるか、死人に口なしでわかりませんが、第三宇高丸三宅船長は、われわれの質問に約一時間ばかりいろいろな点で答えたのですが、二マイルの距離から真直線紫雲丸船影を認めておる。ところが幾ら行っても相手方が右の方にかわらないから、やむを得ずみずから右にかじをとった。そこで、ずっとある程度の間隔を置いて行くうちに——紫雲丸も第三宇高丸も同じ型の船で、船の長さが七十六メートルで、その七十六メートルから百メートルぐらいは視界がきいておったが、霧の中からばっと出てきて、あっというひまもなしに胴中に打ち込んだ。船尾から数えて三十六枚目の竜骨でありますが、それはちょうど三分の一どころですから、大体二十五メートルぐらいなところでしょう。そして、これがエンジンを落しておればとにかくも、大体紫雲丸で十・八ノット、第三宇高丸は終始一貫レーダーをたよっておりますから、霧中汽笛を鳴らしながら十二ノットの全速力で走っておったところに、大きなあやまちがあったとも思う。それでかなり間隔を置いて走っておるうちに、紫雲丸の方は第三宇高丸汽笛を右の方で約三べんほど聞いた。これは大へんだというので左にぐっと旋回して、あうという間に霧の中から第三宇高丸が飛び出してきて、よけるひまがなかった。旋回して、それからまっすぐ切ってずっと行けば、それでかわっておったのですけれども、ぐるっと回って切って、第三宇高丸目がけてしりの方がずっと接近していったものだから、もう逃げるひまがなかった。一秒間に大体五メートルの速力で走っておると推定できる。そうすると、わずかに五秒間だけ早目に行けば衝突を免れておった。しかも両方とも全速に近いスピードを出しておった。船長以外の者は全然レーダーをのぞいておりませんでしたから、紫雲丸に関する限りは、どういうわけで左に回したのか、私たちではわかりませんという大体答弁でした。問題は何のために左に切ったか。レーダーを見ておって、汽笛は右の方に聞いた。それが三、三回続けて聞いた。だから危いと思って左に切った。そうすると、第三宇高丸は二マイルの距離で、すでに相手方紫雲丸船影を認めておるということになれば、紫雲丸もまたそれを認めておらなければならぬ。そうすると方角がそういう形になって、衝突する理由がないのです。どう考えても常識判断のできないような衝突をしておるということが、相手方中村船長が死んでおりますから、その点ははっきりしません。けれども大体国鉄側責任があったということの裏書きになる資料を握ってくることができました。この点補足いたしまして、詳しいことは明日までの委員会に、文書によって各委員のお手元に配付したいと存じております。
  8. 原健三郎

    原委員長 法務省刑事局長政府委員井本君が出席しておりますので、この際小山亮君に質問を許します。小山亮君。
  9. 小山亮

    小山(亮)委員 刑事局長にお伺いいたしたいのですが、新聞によりますと、高松地検では十三日午後三時第三宇高丸三宅船長、同二等航海士紫雲丸二等航海士任意出頭の形で取調べていたが、同十時半過失艦船覆没罪業務過失致死罪容疑逮捕状を執行、身柄を高松署に留置した。これにより紫雲丸側過失があるとする四国鉄道局側と、反対に第三宇高丸にも過失があると断定した高松地検との間に、衝突原因をめぐって大きな食い違いが現われた。同地検では、濃霧中とはいえレーダーを持った双方が、危険防除に万全を期していなかった点を追及する、こういう記事がございますが、これは事実でございましょうか。
  10. 井本台吉

    井本政府委員 今お尋ねのような新聞記事を私も読んでおります。ただし私の方にはこの点に関する公式の報告がまだ参っておりません。この関係につきましては、現地小坂高松高検検事長並び中島検事正及び地検の幹部が、全力を上げて捜査しておるのでございますが、これに加えまして十三日、私ども長戸刑事課長、最高検から佐藤検事現地に出張いたしまして、現地でつぶさに事情を聞きながら、捜査指揮に当っておるわけでございまして、明日一行がこちらに帰る予定になっておりますが、帰りますと、その間の事情がはっきり判明すると存じます。現在の事情では正式な報告が来ておりませんので、何とも申し上げかねる次第であります。
  11. 小山亮

    小山(亮)委員 逮捕されたということはお認めになりますか。それもわかりませんか。
  12. 井本台吉

    井本政府委員 正式な報告がありませんので、確言はできませんが、多分逮捕されたのではないかと存じます。
  13. 小山亮

    小山(亮)委員 海上においての船舶遭難の場合に起る船員処罰の問題は、船員という特別な立場考えて、船員法改正のときに、司法当局からはっきりとした言明がありまして、事実審判が先行する、事実審判が済まない間は検察庁が逮捕しない、そうして刑事問題としては処罰しないという、はっきりとした司法省公約があるのですが、それは御承知ですか。
  14. 井本台吉

    井本政府委員 海難審判先行という協定があるということは聞いておりますが、この海難審判が必ず先行して、それが済まなければ司法処分はしないということが、絶対的なものであるということは聞いておりません。
  15. 小山亮

    小山(亮)委員 これは昭和十二年に、船員二重刑罰問題という大きな問題が起りました。当時私は質問をいたしまして、塩野司法大臣ははっきりした約束をしておるのです。自来今日までこういう非常に微妙な、技術的な問題は、検事だけでお調べになったって非常に間違っておることが多いですから、技術審判を先行する、それによってあらためて刑事問題を追及すべきものは追及するということが、はっきりとした約束になっております。必ずしも法文にないからといったところで、司法省議会ではっきりと言明したことなんです。それをあいまいであって、はっきりとしたことはないということをおっしゃるのは、はなはだ不可解でありますが、その点をよく御調査願いたいのです。
  16. 井本台吉

    井本政府委員 海難審判先行に関する問題につきましては、原則としてはお尋ねのような趣旨のことがあったと存じますが、さような点につきましても従来の通牒などを見ますと、刑事証拠の十分なるものは格別なれどもということが書いてあります。従って必ず海難審判が先行するため、刑事処分をやってはいけないのだということではないので、証拠の明らかなるものにつきましては、事情によっては、刑事処分の方の調べを進めても差しつかえはないという見解を私どもはとっております。
  17. 小山亮

    小山(亮)委員 その場合に証拠隠滅のおそれありと考え、あるいは逃亡のおそれありとお考えですか。
  18. 井本台吉

    井本政府委員 具体的にその証拠隠滅するということを直接考えておるわけではございませんが、時日の経過によって記憶も薄らぎ、あるいは十分な証拠の収集もできない。客観的には証拠隠滅になるというような事情十分考慮に入れての上のことであります。
  19. 小山亮

    小山(亮)委員 事件発生と同時に、神戸海難審判所はあげて現地捜査に行っております。現に神戸海難審判所がこれを捜査して、いろいろなことを聞きただしておる途中で、検察庁が逮捕された。従って技術的の審判というものができない。そうすると技術的審判を、あなた方の方が公約を破って妨害をなさっておいでになるということになりますが、この点御見解はいかがですか。
  20. 井本台吉

    井本政府委員 先ほども申し上げましたように、証拠の十分なるものは格別ということが、従来の通牒などにもうたっておりまして、われわれの方でも十分調べがつき得るものにつきましては、ある程度刑事処分を先行するということもあり得るわけでございますので、私ども考えといたしましてはこの調べによって刑事事件として、ある程度結着をつけるという考えでございます。
  21. 小山亮

    小山(亮)委員 私はこれは検察庁が行き過ぎじゃないかと思っております。なぜならば、海事審判というのは、事件が発生してからは、乗組員全員をどんなに召喚したとこで、両方とも自分の都合のいいことを言うのですから、両方都合のいいことを聞いておりますと、船が衝突しないということになる。両方の言った通りやっておりますと、どうしても船が衝突しない。それが衝突しているのです。それですから海事審判になりますと、大きな海図を作りまして、船の模型を作って、当時の潮流であるとか風向とかを全部そこに参酌しまして、航海日誌に載っておる通りに船をだんだん運航させてみるのです。それによって初めてわかるので、これは多年の経験を持った人ですら調べてもわからない。ところが一片の海事に関する経験もない人が、これを刑事事件の問題としてお取り上げになって、これで詳細に正確にわかるとお考えでしょうか。それだったら海事審判というものの必要はない、経験者を必要としない、私はその点を言うのです。両方をあなた方がただ現象的な問題だけをとらえて、いろいろ審判なさることが間違いである。結局しろうとの審判になる。結果論だけに陥る。その原因から突きとめていって、どうしてやむを得ざる状態においてぶつからなければならなかったかということを、はっきりわからせるのが海事審判なんです。この点をあなたの方で無視されておやりになると、全く罪のない人間が検察庁でどんどん追い込まれていくために、法律上の知識のあまりない船員が司法官にどんどん追及されて、心にもないことを申し立てておるということがあり得る。私は人権尊重という面から見ましても、この海員の特殊的な職業に従事しておるという点を考えまして、この点をはっきりしませんと、こういう問題で何か事件があれば、すぐ検察庁が逮捕してしまう、どんどん処分してしまうというならば、日本ではこんな海員なんかになり手がなくなるのです。こんなばかな商売のやり手がなくなるのです。その点を非常に心配して——これは昭和十二年に当時の司法大臣塩野さん、そのときの刑事局長木村さんでしたが、そのときに議会で問題になりまして、一週間も論議をしたあげく司法省では、法律にはこれを明記はしないけれども、おっしゃることはもっともであるから、そこで技術審判を先行させて、しかる後に刑事審判にかかる、こういうことをはっきり言われておる。だからその点を御承知になっておやりになったのか、御承知にならないでおやりになったのか。御承知になっておやりになったならば、私は法務省に対してかつての公約に対する責任を大いに糾弾しなければならないと思います。けれどもそれはさだかにわからなかったからやったということならば、とくと御考慮を願いたい、こう思うのです。御答弁を願います。
  22. 井本台吉

    井本政府委員 海難審判先行原則といいますか、かようなことにつきまして従来いろいろの用意がなされておるということは、われわれも現地関係者十分承知の上でやっておることと存じます。ただしかしながら検察庁といたしましては、これだけの大きな事件が起きまして、しかも漫然手をこまねいておるわけには参りませんので、われわれはわれわれの職権の範囲におきまして、ある程度の調査をしなければならないのであります。その協定趣旨も、全然検察庁がそういうものに手をつけてはいけないというようには私ども解釈いたしておりません。
  23. 小山亮

    小山(亮)委員 刑事局長の御答弁は、私ははなはだ奇怪だと思う。法務省が手をつけてはいかぬということを私が言っておるのではない、けれども、特殊なこういう海員技術上のことに関する限り、そういう技術上のことに対して何らの理解もない人が、ただだしぬけに普通の陸の交通事故と同じような取調べをやった場合には、往々にして間違いがある。それゆえに慎重を期するために一応海事審判審判を経て、その報告聴取した上であなた方の方で手をおつけになる、こういうことが申し合せになっておるのです。私は念のために、そのときの司法省の出しました古い書類を探し出して、持ってきたのであります。これは昭和十二年三月十五日、それは陳情書理由です。  「船員ハ其職務ニ関スル取締ニ就テハテ其特別法タル船員法ニヨリテ規律セラレ従テ其業務上ノ過失行為ニ関シテモ同第七十三条ニヨリ船員が著シク其職務ヲ怠リテ一定結果ヲ惹起シタル場合、即チ其過失タルコト明確一点ノ疑無キトキニ限リ刑事訴追行フコト、相成居候処明治四十一年刑法改正以来其業務過失処罰スル規定ニヨリ過失ノ軽重ヲ問ハズ訴追セラルコト、相成、船員ハ別ニ海員審判制度ニヨリテ行政上ノ懲罰ヲ受クルモノナルヲ以テ、結局二重処罰受クルコト、ナリ、船員一般ニシキ衝激ト恐慌ヲ来シ候 元来船員ハ海難ニヨリラ生命危険ニ曝ラサルモノナルヲ以テ、日夜最善ヲ竭シテ事故ノナカラムコトヲ祈願シツ、アルモノニシテ、如斯生命ニスル脅威以テ最高絶対ノ取締受ケツ、アルモノニ対シ、刑罰ヲ以テ臨ムモ何等注意ヲ深カラシムル効果無キモノニシテ、一面如斯ハ船員ニシ幾多不当苛重ノ結果ヲ齎ラシ海運能率維持ニ於テモ憂慮スベキ影響ナカラズト信ゼラレ、即チ百弊アリテ益ナキモノナルヲ以テ、適当ノ方法ニヨリ速カニ船員ニシテハ其特別法タル船員法第七十三条ヲ刑法業務過失処罰規定ニ優先シテ適用スルノ根本方針確立セラレムコトヲ切望シテ、当協会ハ既ニ大正三年以来屡々帝国議会並ニ政府当局ニ請願乃至陳情ヲ重ネ来リ、就中昭和十年五月二十八日日本船主協会ニ於テハ問題ガ独り船員問題タルニ止マラズ船舶所有者海運業者ニ於テモ均シク利害ヲ共ニスル重要案件タリトシ、当協会ト連名以テ当局ニ陳情スルニ至リタル次第ニ候然ルニ未ダ此原則ハ司法当局ニヨリテ確認セラルルニ至ラズ船員一同署シク不安ニ駆カレ居レル折柄、今回政府ハ船員法改正スルコトトシ今期議会ニ改正法案上程セラルコト、相成候由ノ処、右法案ニハ現行船員法第七十三条ト同旨法条ハ一切削除セラレ居り候 右ノ如キハ本邦船員明治三十二年船員法制定以来亨有シ来レル重要ナル保障乃至既得権ヲ剥奪セラルルモノニシテ、其結果船員ハ単一行為ニ対シテ行政上ノ懲戒処分ト刑事訴追及ビ人的無限ノ民事賠償責任ト実際上長期ニ亘ル失業苦トノ四重ノ制裁ヲ受クルコト、ナリ、全ク他ノ職業ニ類例ナキ不当ノ結果ト可相成、船員個人ノ利害ニ取リテハ勿論、帝国海運能率維持上寔ニ憂慮スベキ事態ト被存候ニ付、此際右法案ニ修正ヲ加ヘラレ、特ニ現行船員法第七十三条ノ趣旨ヲ挿入セラレ、一般船員ノ不安ヲ除キ、各員ヲシテ安ンジテ其天職ニ最善ヲ竭シ、帝国海運ノ降昌ニ寄与シ得ル様御取計ニ預リ度、詳細ノ理由陳述ニ代ヘココニ許別紙関係請願書及理由書相添此段陳情ニ及ビ候也」  これを陳情しまして、それが議会の問題になりまして、その当時の委員会において慎重に、ほとんど一カ月にわたる審議を尽しまして、そして船員法の改正に反対したのです。ところが司法省の方では、今私が申し上げましたように、この趣旨にのっとりまして技術審判を優先的にやって、その後にその結果によって刑事訴追を行うということを明確に言明されましたために、その船員法の改正を行わずに済ましております。当時の大臣の言明が今なお速記録に厳然と残っておりますから、もしあなた方が御必要とあれば、いつ何どきでも図書館にありますから提示いたします。この点に対して、あなたの方には何かそういう関係書類は残っておりませんか。
  24. 井本台吉

    井本政府委員 突然のお呼び出しでございましたので、詳細の資料を検討して参らなかったのでございますが、原則として海難審判先行主義ということについて協定がなされておるということは、十分われわれも承知しております。
  25. 小山亮

    小山(亮)委員 私は刑事訴追を行なってはいけないということを言っているのではないのです。要するに海事審判をやりましても一週間か十日、その間にすべて明確になる。それをその前にやってしまえば——あなた方がお調べになって海事審判にかけてみて、その責任の所在が、検事局の側が罪があると認めた人が罪がないという場合もあるのですから、その点もぞひ御考慮を願いたいと思います。というのは、先ほどからの委員報告にもよりましていろいろお聞きでありましょうが、一例を申しますと、普通の船と違いまして普通の船長じゃないのです。連絡船船長というものは普通の船長じゃないのです。いわば鉄道と鉄道との間をつなぐ渡し船のようなもので、一時間で行って一時間で帰ってくるというような航海をやっておるのですから、普通の船長の権限を考えたり何かしてはできないことなんです。そしてかじを右に切った、左に切ったということは、これは衝突予防法は国際公法ですからそれをごらんになればわかりますが、濃霧中においては権利船、義務船という観念はなくなるのです。権利船、義務船という観念は、視界が水平線がおぼろげにわかるような、船と船との所在がはっきりわかるような場合においてのみ、右によけるか左によけるかという理屈が成り立って、そこでそういう条文が適用されるのです。ですからほとんど真向いあるいは真向いに迎えた船は、互いに右と左とに進路を回避するというようなことがちゃんと書いてある。あるいは右舷に反対船が見えたときは、必ずその見た船の進路をかわさなければならぬということも、条文にはっきりと書いてあります。それは明確なんです。何らの疑義を差しはさむ余地はない。そして濃霧中において速力を持つということは、絶対に許されないのです。それは紫雲丸にしても宇高丸にしても、両方とも濃霧中においては絶対に速力を持つことは許されない。濃霧のために視界が明瞭にならない。つまり濃霧という解釈は船から約二町です。百二十間向うが見えないときは、濃霧という限界になっておる。その場合には、どの船も停泊していなければならない。しかしながらいかりがやれない場合においては、船のかじがきく程度に船を運航していくことが許されておる。そうしますと微速力です。あの程度の船になりますと四マイルないし四マイル半の速力が許されますが、十一マイルの速力をもってお互いに走ることは許されない。ですから、ともどもに最高速力をもって走ったということは、海上衝突予防法上許されないことになる。しかしながら、なぜ速力を持たなければならなかったかということになりますと、これは鉄道省のダイヤがある。何時から何時までには連絡線があるから、それにどうしても着けなければならぬという、鉄道省のダイヤを守るという非常に強い制度がある。それがあるために、そのダイヤを狂わしてはいけない、狂わしてはいけないという頭でやりますから、夢中で無理して走るということになる。そのダイヤの作り方が、十五分でも二十分でもそれだけのゆるみがあるならばいい。きちきち一ぱいのダイヤを作られておる。それは現状をお調べになればわかります。そうしますと、そのダイヤに合わそう、五分でもおくれてはいけないというので力を気ばっていきますから、どうしたって事故が起りがちなんです。あの状態をこのままにすれば、今後何万年たっても、これを改良しない限りはああいう事故はどんどん起ります。防止することは絶対にできませんよ。そういうむちゃくちゃなことをやらなければいけないようになっておるのですから、お調べになるならば、ダイヤの点から全部調べてやらないと、事故が起った船の船員だけがどんどん処分されてしまう。そうならなければならなかったように押し込めていった制度が改まらないということになったら、船に乗る人間はありません。だれが好んで船に乗りますか。私はこの点は、検察庁だけがお調べになってもおわかりにならないでしょう。だから当委員会でもその原因から突き詰めようとして、特に調査員まで派遣していろいろ調べておる。それを海事審判技術審判をやらない前に、いきなり検察庁で本人を、一番大事な調べなければならぬ責任者をみんな引っぱって逮捕し、拘禁してしまって、外界との接触を遮断してしまう。こうしたらだれが一体技術審判をはっきり調査することができるのですか。あなた方は自分の功を急がれるのかどうかしらぬけれども、おれはやらなければならぬのだということで、人のことも考えないで自分だけでどんどんやって、事の真相をきわめようという気持がない。処罰するだけのことをお考えにならないで、国家のためにどうしたらこういう事故がなくなるかということを、それを防止するために一つ司法省も特に考えていただきたい。それがためにはやはり海難審判所とよく打ち合されて、支障のないように——わずか五日や七日おくれたところで、人間が逃げていくわけでもない。証拠隠滅などはできるものじゃありませんよ、陸の問題と違うのですから。海の事件はすっかり何もかも残っておりますから、そうしてまた証拠隠滅をしようとしても、大きな海図と船の形をしたものをこしらえて持っていきますと、のがれるところはないのです。これは何も悪いことをして、どろぼうしたとか、計画的にやっておる仕事ではないのですから、だれだって自分の船をぶつけようと思ってぶつける者はないのですから、それがはからずも安全に行こう、安全に行こうと思っていながらぶつかってしまったのですから、悪意があるということなら、結果的にいえば悪意のあることだが最初から命がけで自分の船を沈めようなんという人間はおりませんよ。ですからこの点は普通の陸におけるところの詐欺やどろぼうや強盗や殺人をする人間をつかまえるつもりで、こういう事件のものをどんどんと検挙してしまう。新聞に大きく書かれたから、大ぜいの被害が出たからといって、司法官が冷静を欠いて、その新聞や何かにつられて、世論にまどわされてあわてふためいて検挙してしまうというやり方は、往々にして人権じゅうりんにもなるし、そうしてまた真相をつかむことに対してかえって非常な妨害になる。こういうことに対する刑事局長の御見解はいかがですか。
  26. 井本台吉

    井本政府委員 われわれといたしましても、刑事事件を作り上げることが何も目的ではないのでありまして、できるだけ真相を発見いたしたいということが念願でございます。現実ではおそらく海事審判の方とも何らかの形で連絡がついておると思いますけれども、冒頭に申し上げましたように正式な報告を受けておりませんので、なお御指摘の点はよく考えまして、できるだけ真相の発見に努めたいという念願でございます。
  27. 小山亮

    小山(亮)委員 この問題は、私は十四日に神戸に参りましてけさ帰ってきたのです。そうしてこの技術審判の方と連絡がとれておるだろうとおっしゃいますが、とれておりません。やはり十四日に海事審判審判官の連中は、みんな神戸を引き揚げました。それは検察庁がみんな押えてしまったので調査ができないので、調査の途中で引き揚げて帰ってきておりますから、真相がわからない。従って議会から派遣されたところの調査団の人が行かれまして、技術審判所の審判官に聞きましても、調べられないのですから、事件の真相がわからぬのですから、議会調査団にも一言も言えなかった、こういうことを言っております。それは要するに捜査が妨げられているのですから、その点をお考えになって、こんな事件を幾日も幾日も捜査の必要上逮捕されることは、これはすでにでき上っている事実ですからいたし方ないことですが、すでにこういうような申し合せもあるのですから、すみやかにあなたの方の一通りのお調べがお済みになったら、これをお帰しになって、実際の技術審判の方を先にやらせるように御考慮願いたいと思うのですが、いかがですか。
  28. 井本台吉

    井本政府委員 現地事情がよくかりませんので、明確なことはお答えいたしかねますが、御指摘の点については十分考慮いたしたいと思います。
  29. 小山亮

    小山(亮)委員 刑事局長がわからないのは、私どももわからなかったので行って見てきた。ここにおってわからないと言わないで、私どもが言ったことがもし正しいとお考えになったらすぐにでも手続して、そうして早く釈放して海事審判をやらせるというふうに、あなたの方でお取り計らいを願いたい。わからない、わからないと言わないで、わかっていることだ、わかったならばこうするということをはっきり言っていただきたい。
  30. 井本台吉

    井本政府委員 事情がわからないので、これ以上お答えのいたしようがないのでありまして、現地刑事処分が先行するのが相当であるといういろいろな事由があってやったのであって、お話のように海事審判の方を先行するのが原則であるということになれば、その方を先にやるのが適当であると考えております。
  31. 小山亮

    小山(亮)委員 刑事の方を先行するのが正当であるということを現地で言った場合にはどうするとかこうするとかいうことを言われましたが、そうですか。
  32. 井本台吉

    井本政府委員 かような事件はこの事件だけではないのでありまして、前にも昭和二十三年にやはり同じような問題が起きております。その際にも刑事処分の方が先行されておりまして、いろいろ物議があったようでありますが、海難審判先行原則というのは、原則としてはその通りやるべきものだと思いますけれども、個々具体的な事情によりまして、どうしても刑事処分の方が先にやらなければというような事件もないとは言えないのでありまして、本件がそれのどれに該当するか、はっきり今申し上げかねますので、かようなお答えを申し上げた次第であります。
  33. 小山亮

    小山(亮)委員 これは従来といいますけれども、こういう言明がありましてから、そういう事件がなかったのであります。しかるに戦後になって、司法省の方でこういう事件に対する言明をお忘れになっておるか知りませんが、一件やはり同じ事件のときに、刑事訴追を先にやった例があります。そのときには日本海運団体から非常な強硬な抗議が出まして、あなたの方ですみやかに釈放された事実がある。今度はその二回目です。また海員組合あるいは労働組合の団体が、あなたの方に抗議を申し込まれなければ釈放しない、こういうことでは、私は司法省の権威がないと思う。すでにこういう約束があるのですから、塩野司法大臣がはっきり議会において公約されたという事実はお認めになりますか。それも知らないから知らないとおっしゃるのですか。
  34. 井本台吉

    井本政府委員 先ほど申し上げましたように、突然の呼び出しで、その点まで調べて参ってきたわけではございませんので、私としましては何とも申し上げかねるのでございます。
  35. 小山亮

    小山(亮)委員 司法大臣がそういう言明をされたということは、記録をごらんになればわかりますから、はっきりその記録をごらんになりましたならば、戦前の司法大臣でありましても、とにかく大臣をして国会に対してはっきりとして公約されたのですから、その公約を今日といえどもお守りになるのが至当と私は思いますから、もし帰られて御調査になって、その事実がございましたら、公約通りにやっていただきたい。もう一応御言明を願いたい。
  36. 井本台吉

    井本政府委員 私どもの手元にある簡単な資料では、もっと古い明治二十六年ごろの申し合せがここにあるのでございますが、当時から海難審判先行ということが叫ばれておりました。ただしその海難審判先行にも先ほどもちょっと申し上げましたように、刑事処分の事由あるものは格別なるものという例外のものが書いてありまして、従って特殊な事情のものは、全部海難審判を先行するというわけには行きませんので、特殊なものにつきましては刑事処分をやるものもないとは言えないので、必ずしもその海難審判を先にしなければならぬというところまでは申し上げかねますけれども原則として海難審判を先行するのが相当であるというふうに私ども考えております。
  37. 小山亮

    小山(亮)委員 ですからあなたがお帰りになりまして、当時の記録をごらんになって、そうして御調査なさった上で、この事件が果して刑事問題として早くつかまえなければならない問題であるということも御審議になりまして——私は罪を軽くしてくれとか重くしてくれとかいうことを言うのではない。海事技術審判を先にやらなければ、むだなことを何べんも何べんもやられて、船員は生活ができなくなる。船員はほかの仕事と違って、家に休んでおって裁判所のしばしば呼び出しを受けておって、船に乗るというわけにはいかないのですから、船をすっかりやめて失業して、そうしてこの審判を受けなければならぬのですから、そういう意味から私は技術審判を先にやって、その技術審判の打ち合せが済んで、それからおやりになってもおそくないと思う。なお事件の全貌がはっきりしてきて、あなた方の捜査をされるにもはっきりしたことがおわかりになっていい、こういうことを言うのですから、お帰りになりましてよく書類をお調べになって、議会に対して司法大臣がはっきりと公約している事実があるのですから、事実がありましたらその公約通りにやっていただきたい。どうぞその点を御了承願いたい。私はこれで終ります。
  38. 原健三郎

    原委員長 これに関連して山口丈太郎君。
  39. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 今の小山委員質問に関連して、刑事局長に一、二御質問いたしたいと思います。今の御答弁から見ますと、私も交通機関の者ですから、実際には特にこういう法律制度上、海難審判については、これは審判の方を先行させる、そうしてそれを明らかにした後に、刑事事件として検察庁がおもむかれる、これは私はきわめて適切な順序を踏んでおるものだと思います。特に海上交通に限らず、交通という特殊な一つの仕事が、たといそれが自動車でありましても電車でありましても、自分ももろとも物にぶつけてこわそうというような悪意があって、やっているものでは決してないわけであります。そこに特殊の技術上の欠陥を明らかにしなければ、普通の刑事犯罪のようにその人間を取り扱うわけには参らないと思うのであります。そこにこういう審判制度が設けられておるのであって、今日陸上においても審判制度を採用しろという声は非常に多い。しかるに、私もその被害者の一人ですが、とにかくわけがわからないのに、検察官の言うようにしなければ、ちょっと逮捕して豚箱に入れて、そうしてその思うように白状をさせて自分の面目を立てよう、事件に立てよう、こういうような行為が今までもあるわけなんです。今あなたの御答弁でいきますると、どうも検察庁の面目上これは逮捕してそうして、社会的に検察庁の存在を誇張しようというような態度に、悪く言いますと見える。そういうことは私は、この人権の尊重がやかましく叫ばれているときに、最も人の権利を守らなければならない検察行政担当官が、みずからその使命を無視するものではないかと思いますが、どうですか。そういう態度をもって今臨まれておるのでありますか、一つ所見を承わりたい。
  40. 井本台吉

    井本政府委員 自白を強制するということは、憲法でも刑事訴訟法でもこれは厳禁しているところであります。従って自白を求めるためにさような逮捕が行われたということになりますれば、それはその通りであればゆゆしい問題だと私は思いますが、お話のような検察庁が自分の存在を誇張するためにかような措置に出たということは、私は毛頭考えておりません。
  41. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 そのゆゆしい問題が、実際は平気で行われておるのであります。たとえば今の小山委員質問に対するあなたの答弁からいいましても、たとえばこれを今日のこの紫雲丸にとってみますと、これはその責任は明らかに国鉄側にあるというのははっきりしている。そうしてその調査の結果というものは、これは隠滅することのできない現実の事実なんです。それならばなぜかりそめにも人を豚箱にほうり込んで調べなければならぬのでしょうか。私はそのような司法官、検察官の技術であるならば、そんな危ないものにまかしておけない。何でもかでも人を拘束して、人間の自由を拘束して、そうして検察官の取調べ技術の拙劣さのためにわれわれが犠牲になるとすれば、一体どうなるのですか。私はこれは言語道断だと思うのですが。どうですか。あなた方はそういう点を少しもお考えにならないで、ただいたずらに何か起きれば、人はうしろ手に縛るか前手に縛るかして、二、三日ほうり込んでいさえすればいい、こういう態度でおいでになるのですか。どうもあなたの御答弁では満足できないのでありますが、その点一つ御答弁願いたい。
  42. 井本台吉

    井本政府委員 犯罪の捜査は、任意捜査原則でございます。また犯罪の捜査は、個人々々の刑跡がどこにあるかということを調べるのでありまして、全体として国鉄が責任を負うべきであるとか、あるいは個人が責任を負うべきであるとかいうようなことは、犯罪の捜査の対象にはならぬので、どの運転手、どの船長責任があるというようなことを確かめるのが、犯罪捜査の常道でありまして、本件につきましてはその点に全力を注いでおると私は考えておるのであります。具体的にどういう事情でこの方々を逮捕したのか、逮捕した報告もまだ受けていないような状況でございますから、ただいま明確には申し上げかねますが、個人個人にどの程度の過失があって、どの程度の責任があるかというような、刑事責任上の問題を取り調べておるというのが実情であろうと思います。
  43. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私はそれはわかるのです。それはわかりますけれども、それを調べるに当って、何も拘束して調べなくても私は調べられると思うのです。ただこの問題だけじゃありません。犯罪のはっきりしている、刑事事件としてだれが見てもはっきり立証できるものなんです。しかも証拠隠滅に対しては一切のおそれがない、常識的に考えてもないと思うのに、それにその者をいたずらに逮捕するということは、これは私はいけないと思うのです。たとえば重大な殺人犯人であって、これを社会に出しておけば次にまたそれを継り返すおそれがあるというような重要な、そういう犯罪人とはこれは違うのです。何もこれは拘束して調べなくたって、別にそういうような性質のものではない。こういうことは船のこの事件に限らず、幾らもあります。たとえば交通の事故にいたしましてもそうであります。電車の運転手が電車の追突をさせてたくさんのけが人を出したとか、列車が転覆してたくさんのけが人を出した、もちろんその行為に対してはそれ相当の法律上の制裁、反省を加えられることは当然であります。またその軽重のことを私はどうせよと言うのではございません。その犯罪を構成する要因なるものを取り調べ技術として、別に拘束しておいて調べなくても十分に調べられるものを、いたずらに逮捕状によって逮捕するということは、これは今あなたの御答弁にありまする不逮捕を原則としてやっていくのだ、それが原則なのだと言われますが、それではその原則というものは、たとえばこれを数字的にいえば一体どういうことなんです。やむにやまれぬ絶対的なものだけを拘束するというのが原則であって、ほとんどのものは拘束しないで調べるということでなければならぬと思うのです。しかるにこのごろの検察庁のやり方というものは、反対になっております。とにかく事件が起きれば遠慮会釈もなしに人をふん縛る。ふん縛つて、遠慮会釈もなく豚箱へほうり込んでおいて、そうしてあなた方だけは自由なからだで何の不便も考えていない。こういうようなやり方は、この不逮捕を原則とするものではないじゃないですか。そういう点では現在実際に行われている面からどういうお考えを持っておられるか。非常に私はこの点について疑問を持つのです。
  44. 井本台吉

    井本政府委員 具体的な数字的なことは今覚えておりませんが、五、六百の刑事事件のうちで、逮捕、勾留に至るものはごくその少部分であると私は考えております。問題になる事件が逮捕されておるから、何かどの事件でも逮捕、勾留して調べておるというようにおとりかもしれませんが、実際の数からいきますと、ごく少い数ではないかと私は考えております。またこの逮捕、勾留は全部判事の令状によってやるのでありまして、一応人身の保護という点につきまして判事さんの方で、これは逮捕相当であるということでなければ、逮捕状も勾留状も出ないのでありますから、ある程度その意味におきましては人身保護の保障がされておるといいますか、さような仕組みになっております。しかしながら、先ほど申し上げましたように犯罪の捜査というものは、なるべく人を拘束するとか強制力を用いないでやるというのが原則でありまして、何でもかんでも縛って調べるということは慎しまなければならならぬと私は考えております。
  45. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 今御答弁にあるように、実際にその取調べに当っては不拘束を原則にしてやるが、それが実際にその通り行われておれば、私どもはこういうことは言わぬのです。あなたの言われるのは、微罪はこれを罰せずという原則によってほんとうは——人を押して、つまずいて倒れた。しかしそれは何らけがはなかったけれども、その押す行為というものがいかぬのだ、このくらいのことならば何も拘束することはない。そういうような微罪なものは、当然そんなものは私ども常識から見て逮捕する必要はないものなんです。ですから私はそういうことを言っているのではないのです。現にこの事件でも何も逮捕して調べる必要はないし、しかも先行してやるべき法的手続もちゃんとあるのです。だから、あなたの今の言でいくと、これだけの事件を起しておいて、検察庁が何もせぬということはいけない、検察庁としても何もせぬで捨てておくわけには参りませんから逮捕いたしました、こう言っている。そんなべらぼうな逮捕の仕方がありますか。逮捕の請求権というのはあなたにある。検察庁にあると思うのです。検察庁から判事の方へ請求して、判事が承諾して初めて逮捕されるのでしょう。そうすればその逮捕請求権を乱用しているではありませんか。そういう精神でこのような事故を取り扱われたのでは、それこそ国民が迷惑をいたします。もちろん犠性者になられた方々に対しても深く同情いたします。いたいけな子供がたくさん死んでおる。この事実についても——私も子供をなくしております。子供をなくした親として私はまことに御同情にたえません。しかしながら、だからといって何も犯罪的意図を持ってやったのではないのです。いわゆる不可抗力——そこにこのような不祥事件を起す原困があったかもしれませんが、それらについては、身柄を自由にして一刻も早くそれらの人々の真相を糾明して、そして事故、ひいてはその立場を明らかにしていくということが、私は社会に報いる道でなければならぬと思うのです。しかるにこれだけの事故を起しているのだから、検察庁も何かしなければならぬ、何か起れば逮捕して世間をつくろうということは許されないと思うのですが、あなたはどう考えますか。
  46. 井本台吉

    井本政府委員 事故が起きたから、それがすぐ逮捕の理由になるということは毛頭ございません。取調べの過程におきまして刑訴上所定の事由があったので、逮捕の請求をしたと私は考えるのであります。従って何か私の言明で、事故が大きいし、逮捕しなければならなかったという趣旨のことがありましたら、全然私の言い違いでありますから、その点についてはそうではないというふうに御了承願います。
  47. 小山亮

    小山(亮)委員 一言だけ伺います。今度の逮捕は艦船覆没罪、業務過失致死罪となっているが、船は大なり小なり衝突すれば沈没します。ですから艦船覆没罪と過失致死罪というのは並立するのです。大きいとか小さいとかいいましても、船が大きいほど大きいし、小さい船ほど小さいので、これは当然なんです。だからこの事件で当然逮捕する必要があるとお認めになるならば、今後ぶつけた船はみんないかなければならぬ。必ずたれか死ぬし、何億という非常に高い金でこしらえた艦船が沈没し、荷物がなくなるのですから、とにかく非常な損害なんです。だからただそういうことだけで逮捕する理由があるということになると、どんな問題でも必ず検察庁が一番先に引っぱっていかなければならぬことになってしまって、真相をつくことが困難になるのです。それから検察庁でお調べになって、また海難審判所調べるということは二重の手間になる。そうすると、海難審判所審判が違うと、また検察庁調べなければならぬ。これは非常によけいなことをやることになる。ですからこれはすでに戦争前の、かなり人権が尊重されなかった時代であってすら、その時代の松阪司法大臣は、そういう意味において人権は尊重しなければならぬと、そのようにはっきりと公約なさった。しかるに新憲法になりまして、人権が非常に尊重されるという時代になって、逆になっているように思う。しかも法務省の役人の頭というものは、日を経るに従って進歩的になっているはずなのに、それにもかかわらず今日この時代に逆行するようなことをおやりになる。新憲法の時代に逆行するような人権じゅうりんということを、あなた方は深く考えておいでにならぬのではないかと思う。山口委員質問されましたことは、私もそう思ったのであります。ああいう事件が起って大ぜいなくなったから、手をつけたんだというような表現をなさいますと、これは人が死んだり、新聞が大きく書いたから、検察庁がすぐあわててつかまえるということにわれわれは判断いたしますから、事に当っては慎重に、しかも司法官は冷静に事の善悪を考えられて、処置をしていただきたい。ともすれば人権じゅうりんという誤解を招く際でありますから、この点については特に御留意願いたいと思う。もし御所見がございましたら伺いたい。
  48. 井本台吉

    井本政府委員 人権につきましては、十分尊重しなければならぬことは当然でございますし、刑法百二十九条、二百十一条の事件が常に逮捕の理由になるということでは、これは大へんなことになります。個々別々の事件によりましてそれぞれの事情によって取り調べるようにいたしますが、なるべく調べは逮捕しないでやるというのが原則であると私も考えます。
  49. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私の質問の核心は、今まで質問したことで尽きているのですが、一言申し上げておきたいのは、今小山委員も申されましたが、どうも最近は局長の言われるような、ほとんど逮捕しないのを原則として事件を取り扱っているのだが、もちろんやむを得ないものについてはやはり逮捕をしなければならぬ——そのやむを得ないとお考えになっている事件でも、やはりこれは世間の話題にならぬような微細なものなんです。しかし世間の話題になるような、あるいは新聞種に大きく報道せられるようなものでありましても、その事件が大きい小さいという、ただそのことのみをもってこういう逮捕等を乱用されますことは、それ自体また反面から申しますると、検察官のいわゆる検察技術というものが全くなっていない。自分の検察事務の拙劣さというものをたなに上げて、そうして人権を拘束することを何とも思っていない。こういう声がちまたにほうはいとして起りつつあるのです。ですから、司法行政を尊重する意味からいっても、その秩序を保っていく上から申しましても、そういう印象を与えたくありません。せっかく検察庁が一生懸命になってお調べになっても、そのことが社会に益することでなければならぬ、害することであってはならぬのです。ところが最近伝えられるところの検察庁の態度なるものについては、非常に誤解されて伝えられていると私は解釈しているのです。たとい誤解にいたしましても、そのような誤解を生ずるような態度をとられること自体も反省してもらわなければならぬと思うのです。ですから私は申し上げたのです。ところが今のあなたのお言葉の中にも——私は言葉じりをつかまえてどうこう言うのではありません。しかしこれだけの事件が起きたのですから、検察庁としても何ら手を下さないで置いておくわけには参りませんから、取調べを始めたのだ、こういうふうにとれるようなことをおっしゃる。もしその精神でやられるといたしますならば、大へんなことになる。その精神だけは全検察官から払拭してもらいたい。そうでない限り私は司法の威厳を守ることはできないと思う。ですから私は申し上げたのですから、その点を十分に理解してもらいたいと思います。  第二には、こういうようなことがあるからといって、決して司法行政に携わる人々が萎縮してはならぬと思います。やはりそれには勇気の要ることだと思うのです、なぜかといえば、法律に従ってその秩序を守っていくとすれば、よほどの勇気がなければできないことであります。ですからそれについては非常にむずかしいことのあることも了解いたしますが、また萎縮してはならないこともよく承知いたしております。しかしみずから世の批判を招き、みずからも萎縮しなければならないことになっては大へんなことでありますから、どうかその点については十分な注意を払って、そのきめに基いて十分慎重にこの事件についても、あらゆる事件についても処せられるように希望いたしたいと思います。     —————————————
  50. 原健三郎

    原委員長 次に船員の再教育に関して、政府当局より実情について御説明聴取いたします。そのあとに質疑を行います。武田船員局長
  51. 武田元

    ○武田(元)政府委員 一般船員の再教育の方策について御説明申し上げます。船員教育は御承知のように職業教育の中でもきわめて特殊なものであり、海運国策に関連が深いので、特殊な考慮を必要といたします。従来高級船員の新人教育は、現在まで学校教育法によりまして商船大学または商船高等学校として文部省が所管している。既成船員の再教育並びに普通船員の短期職業教育及び船舶実習は、現在海運政策の一環として運輸省で実施いたしております。学校教育法による新人教育を文部省で所管し、再教育等を運輸省で所管することは、船員需給の調節とその素質の向上、従って海難事故防止の見地から、現在における船員教育の基本方針でございます。再教育の沿革については、御説明を省略いたします。  次に現状を申し上げます。現在神戸に、船員教育機関といたしまして、海技専門学院というものがあります。この海技専門学院の教育内容は、船舶職員に対する再教育によりまして、各職階の需給に対応するための上級免状の取得とその素質向上に必要な教育を実施しておりますが、同時に船員全般に対します専門的知識及び技能の向上に必要な通信教育及び短期の講習を実施いたしております。これまで海技専門学院は、神戸商船大学の施設の一部を併用いたしまして教育を実施して参りましたが、神戸商船大学の学年進行に伴いまして施設が漸次狭隘となって参りましたので、本年四月、現在海技専門学院が芦屋に所有しております校舎、寄宿舎のありますところに仮本部を移転して、神戸商船大学のあります深江では、大学の教室を一部借用しておる実情であります。  再教育の今後の具体的方策を申し上げますと、御承知のように海運の国際競争力の強化をはかるため、船員の素質を向上して優秀船員を確保し、船舶の安全と運航能率を増進する要があることは申し上げるまでもございませんが、このため船員の唯一の再教育機関であります神戸の海技専門学院を整備強化いたしたいと考えております。これがためただいま申し上げましたように海技専門学院の芦屋にございます校舎、寄宿舎を全面的に活用いたしますとともに、一部不足校舎を新営いたし、教室と寄宿舎と庁舎が同一地域に確保できるような予算措置を講じている次第でございます。この措置につきましては、運輸省に運輸大臣の諮問機関としてございます船員教育議会の答申の線に基きましたものでございまして、答申の内容は別紙二の3にございます。「海技専門学院と神戸商船大学とはその教育目的が異なるのみでなく、学生の年令、経歴等も格段の差があるから、現在のように教育の特質上並びに同大学の施設の整備状況等よりしても教育上支障があるから、他の適当な場所に移転して、その施設を整備すべきである。」というこの答申の線に基きまして、この措置を講じたいと考えている次第でございます。なお移転新営後も従来通り、神戸商船大学と協力することにつきましての基本的な事項につきましては、文部省当局においても了解済みでございます。  次に再教育の強化の具体的方策の第二としまして、通信教育制度の改善をはかりたいと考えております。通信教育制度は昭和二十六年から開始されましたが、二十九年度の完成年度を終えまして、その間の実施状況にかんがみまして、左の諸点を検討して、運輸制度の改善充実をはかりたいと考えております。第一は海員技術証制度の改正であります。これは現在海員の資格証明制度というものを検討しておりますが、もしこれができました場合に、この海員技術証制度を改正したいと考えているものであります。第二は司厨部員の通信教育の制度の設定であります。第三は通信教育に関しまして船内指導の強化をはかっております。第四は現在の通信教育制度の教育内容等の改訂を考えております。次に海技専門学院の中に講習科を再開いたしたいと考えております。講習科としましては、船舶通信士のために海技免状取得に必要な教育を実施する。それから航海士及び機関士につきまして、鉄道連絡船の事故等にかんがみまして、短期講習制度というものを実施する。  次に海技専門学院におきます計画養成の実施の強化を考えております。これにつきましては海技専門学院の学生の入学につきましては、現在本人または船主の熱意にのみまかしておりまして、養成員数その他につきまして計画通り実施し得ないうらみがありますので、今後学生の募集につきまして、積極的に努力し、組織的に船主の協力を求めたいと考えております。  次に学資金の負担の軽減につきましても措置を考えております。  最後に小型船舶職員につきましても、小型旅客船、機帆船等の乗組員のために必要な講習会を開催し、それに対し補助金を交付することにいたしたいと考えております。  以上が船員の再教育の具体的な内容であります。
  52. 原健三郎

    原委員長 これに対し質疑を許します。關谷勝利君。
  53. 關谷勝利

    ○關谷委員 今度の予算に海技専門学院の新築の費用が二千三百六十万円でありましたか計上せられているのでありますが、聞くところによりますと、これに対しまして、神戸の商船大学が非常に反対しているというようなことを聞くのでありますが、そういうような事実があるのかないのか。もしありとすればどういうような理由で反対をしているのか、その点お聞き及びでありますれば御説明を願いたいと思います。
  54. 武田元

    ○武田(元)政府委員 神戸の商船大学が反対していることは事実でございます。神戸の商船大学長から運輸大臣に対しまして、海技専門学院の新庁舎の建設については芦屋に建てないで、深江の大学のすぐそばに建設してもらいたいという要望が出ております。その理由といたしますところは三つございますが、簡単に申し上げますと、学院と大学はともにその規模が小さくて、単独では大学程度の教育実施が困難であるというのが第一点、第二点は新庁舎を芦屋に建設する場合には、必然的に学院と大学の協力態勢がくずれて、教官の兼担、技術員の併用も困難となり、教育の成果が上らないという点が第二点、第三点は芦屋で教育を本格的に実施するのには、大学程度の施設、設備を要し、巨額の経費を必要とするという理由でございます。これに対して私ども考えておりまする見解といたしましては、深江市はきわめて近接地でございまして、移転後においても、今後とも両校の自主性を尊重しながら相互協力できるものと信じておりまして、これがため文部当局と必要な措置について協議中でございます。私どもといたしましては深江に、大学にする前に施設を分離して一部施設をいたしますことは、教育実施管理上非常な支障を来たしますので、教室と寄宿舎と庁舎と同一地域に確保いたすことが絶対に必要であると考えております。それから教官、技術員につきましては、文部当局と協議の上、従来通り相互供任の措置を講ずる。また学院が大学の一部教材を利用する不便等を考えますと、この程度の地域差ではさしたることでなく、これが不便除去の措置を十分考えたいと思います。いずれにいたしましても、芦屋に移転新営し、同一地域にすべての施設を確保することによりまして、これまで学生が全面的に芦屋から深江に通学していたことを思えば、学生の不便が除かれますし、学院の自主性は確立され、学風の確保が期せられるものと考えております。それから施設につきましては、大学と教育目標及び対象が異なりますから、大学と同じような施設、設備をする必要はございませんから、国家財政上二重支出になる懸念はないものと考えております、以上の通り運輸省としては考えております。
  55. 關谷勝利

    ○關谷委員 海技専門学院が再教育のために必要であるということは、私たちよく承知をいたしております。そのためにこれを充実しなければならないということもまた同感でありまして、ただいま船員局長からいろいろ御説明になったことは、私は当然であると思います。もともと神戸商船大学を作りますために海技専門学院の施設を譲った、そうして再教育には支障のないようにするのだ、こう言いながら、今大学の方に偏重して海技専門学院をおろそかにするというふうな態度が見えておることは、所管こそ違え、私はまことに遺憾であると考えておるのでありまして、再教育機関はますます充実すべきであると思います。いろいろ大学側から言っておりまするが、その真意が那辺にあるかといいますると、今回新設されようとするあの経費をもって、大学の施設を増強する方へ回したいというのが本音であろうと思いまするし、またそういうことを関係者の中から強く言うておるのでありまするが、もともとあの大学を作りまする際には、地元が、二億円でありましたか、大体それだけのものを負担するという約束のもとにあれは大学の方へ譲ったのでありますが、地元においてはそういうふうな熱意がなくしていまだその寄付金といいますか、地元負担金というふうなものも、約束を履行しておられない、そうしてそのために施設が十分に増強をせられておらない。それを今回の学園の施設の増強費もそちらへ横取りをしようというがごとき、まことにもってのほかであります。ひさしを貸しておもやを取っておきながら、なおまたまだその後の経費まで取ろうとするがごときは、もってのほかであろうと私は考えておるのでありまして、もしそういうふうな施設が足らない、どうしても地元負担ができないというのでありましたならば、私はそういう意味から申しますると、商船大学は一校にすべきものである、そうして一極に集中して施設を増強するのが大学側としての言い分でなければならず、再教育ははっきりと別途のもので増強しなければならぬと考えておるのでありますし、船員教育議会委員会の答申等にも、分離して別途にやらなければならないというふうなことも出ておりまするので、私たちはもし文部省側がそういうような意見、先ほど私が言っておりまするような、その費用は向うへ回せというような意見でも持ち、あるいはそういうふうな動きがあるというのでありましたならば、この問題に関する限り、私委員長にお願いをしておきたいのは、文部委員会と合同審査をしてもらいたい。なおそれ以前に一応委員長から、そのような動きがあるのか、文部委員会がどのようなことを考え——そうして現地視察をするというふうな企てまであったというのでありまするが、何の目的のために現地視察をしようとしておったのか、なおわれわれとしては、この海技専門学院に対する経費二千三百六十万円の計上には賛成するものであり、これを大学へ流用することは反対である、こういう申し入れをして、その回答をとっていただきたいのでありまして、それ以上いろいろまだ問題が残る、了承しないという場合には、合同審査を行うように取り計らってもらいたいことをお願いして、私の質問を打ち切ります。
  56. 原健三郎

    原委員長 ただいまの關谷委員趣旨に対して善処いたします。次に山口丈太郎君。
  57. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 本日議題になったこの海技専門学院の問題については、今私の質問する点を關谷委員がほとんど質問なさったのですが、私文部委員会の方で非常にこの問題を問題にして、むしろこの商船大学の強化策に持っていこうというような動きがあるということを承わっておるのですが、私も直接聞いたところによりますると、これは予算のぶんどり合いとか、その仕事のぶんどりとか、そういうセクト的なことではなくて、一つ大学の方に併設することを至当なりという考えに立ってほしいというようなことを聞いたことがあるのであります。けれども私は今關谷氏の言われるように、やはりこういうような実際に社会人を教育する再教育機関と、いわゆる純然たる学問として、その社会人となる基礎を教育する学校、すなわち純然たる学問をやろうという学校と、そうではなくて社会人を再教育して実用面を訓練していこうという学校とでは、根本からその学校設置の趣旨というものが違っていなければならぬ、もうこういう実社会に入った人間は、純然たる学問的に真理を探求していくというような教育の仕方では実効は上らない、私はこういうふうに考えるわけであります。そういう点で、もし文部省との間に、あるいは文部委員会との間に意見の相違があるとすれば、私はこういう再教育機関としてのこの専門学院のあり方については、十分にこれらの関係方面に説明をして了解を求める必要がある。もちろん各党の党内においても、これは文教委員会で問題になっておるのですから、意見の調整ということが必要になろうと思いますが、そういう場合にはやはり十分に運輸省からそれぞれ説明をされて、党内意見の調整に必要なる了解をまず進んで求められる必要があると思うのですけれども、そういう点についてどういう措置をとられるのですか、お伺いしたいと思います。
  58. 武田元

    ○武田(元)政府委員 ただいまお考えのような基本的な考え方につきましては、文部当局は同様の見解を持っております。ただ文教委員会委員の方にいろいろお考えがあることは、先般文教委員会に私出席いたしまして御質問を受けましてわかりましたので、今後とも基本的な考え方につきましては、機会のあり次第御説明をいたしたいと思います。
  59. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 文教委員会の方でどういう考えを持っているかについては、また合同審査等において十分に——その必要性については合同審査のときの質問を通じて私は明らかにいたしたいと思います。何といたしましても、私もこの予算は少いくらいに思っておるのですが、職業人の再教育というものはおのおの、通産省であれば通産省の所管するもの、あるいは運輸省であれば運輸省の所管するものというふうに、やはりその行政面の責任としてもっと充実さすことが必要であって、これは社会の普通の学問を探求する機関と全然別個に切り離して考えるべきだと思います。たとえば今度の船の衝突事件等にいたしましても、あるいはレーダーの取扱い——近代安全設備としては、レーダーほど安全なものはないというふうに私は考えておるのです。ところがこれを取り扱う方法を乗組員のだれもが知っていなければ、何にもならない。レーダーのとらえました船影が、自己の船体から見て何ぼの距離にあるか、あるいはそれがどういう方法で映っておるのか、そういう実際面の取扱いというものについて知っていなければ、これはせっかくの近代性というものが間に合わなくなる。ですから、これを言いかえますと、学問ということになりますと、無から有を生むのですから、このレーダーというものはこういうふうにして作るのだという真理を探求すればいいのです。けれどもそんなことは職業人には必要がないわけです。ただそれは全然必要がないというものではありませんけれども、それよりも、主としてレーダーをどうして生み出すかということよりも、生み出したレーダーをどう使って、実際の事故の場合の安全を守るか、こういうことが職業人の再教育に最も必要だと思います。そうそうすれば純然たる学問として存在いたします商船大学に、こういう職業的教育を施そうとする再教育科目を編成するということはきわめて不適当だというふうに考えるわけです。言いかえますと、社会人の再教育というものは、純然たる学問を探求していく場合の、いわゆる学生教育とはある意味において異なる。従って二つの大きな意味を持つ。一つは、やはりそのレーダーというものは、どういうふうにして作られているのかということだけは知らなければならぬ、すなわち真理の探求も必要であります。それと同時に、また現実の真理の探求から生まれて参りましたものをどう利用して、自分の職業を完全に遂行するか、こういうことが必要になるのでありますから、その意味から言えば全く性格が異になると思いますが、見解はどうでしょうか、お伺いしたいと思います。
  60. 武田元

    ○武田(元)政府委員 再教育の性格というものは御趣旨の通りであろうと思います。船員技術は日進月歩いたしますから、この日進月歩の技術に即応するために、これを再教育して技術の向上をはかるということが一つ、それからその持っております技術の裏づけの議論について研究するという二つの面があると思いますが、御指摘のいわゆる基礎教育を行う新人教育とは性格を異にするということは、御指摘の通りわれわれもさように考えております。
  61. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 さらに私はもう一点お伺いいたしますが、この社会人とまだ社会に出ない学生等には、年令構成上から申しましても、また生活環境上から申しても、社会生活の環境上から申しても非常な相違がある。大学側の主張を聞くところによりますと、その大学の施設を拡充しても、少しもそういう点について矛盾はないかのように主張しておるようでありますけれども、たとえばこれを私の身にとりますと、二十三の私の子供と私とが同じ場所で同じ学校に行くといたします。ところが子供の方は先生について今言うように真理の探求をやる。ところが私の方はもう真理の探求は済んでいるので、実際の真理から生まれてきた現実というものを、どう利用するかということだけを教えてもらえばそれでいい。そしてそれによって二等航海士を一等航海士にしてもらう、こういうことになるのであります。でありますから全然そこに受ける考え方が違う。また形態も違う。のみならず私は完全なる社会人であると同時に家庭人であります。ところが学生諸君では、これは家庭人でもなければまた社会人でもない、いわめる自由の白紙の環境にあるわけであります。そういたしますと社会的責任においても全然環境が異なる。こういうものが一つの施設の中に入って勉強する。あるいはこの教育の衝に当る者にいたしましても、そういうような環境の中にそういう観念でこの再教育をいたしましても、それは実効が上らないということになると思います。私はそういう点からいたしますと、この専門学校の施設を分離して、——もっと厳格に分離をして、全然性格を異にしてやられるようにすることが理想的だと思いますが、しかしそれができないといたしましても、今日それを急速に実行に移していくということが、これだけ海上の事故を累発しております現在におきましては、焦眉の急務だと私は考えておるのです。その場合に今予算が二千三百六十万円か計上せられておりますが、これだけをもってしては私は不十分ではないかとさえ思われるのですが、これについて御所見を承わりたい。
  62. 武田元

    ○武田(元)政府委員 教育の対象の異なる年配また経歴が著しく異なる者を同一個所において教育することは、教育上非常に支障がある、教育の徹底を期せらたないということにつきましては、従来教育の実施に当って参りました海事専門当局から非常に強い要望がございまして、また船員教育議会でもそういう見地に基きまして答申があったわけでありまして、私どもといたしましてはお話のようにはっきり分離すべきものと考えております。  予算につきましては、現在国家財政の許される最低限度の予算という意味で、大蔵省から内示を受けたのでございますが、なお不足といいますか、必要な施設の利用につきましては、大学の施設ででき得るものについては、従来通りその教育の体制のもとにおいて協力するということについては、文部省並びに大学においても了解せられておるところであります。
  63. 小山亮

    小山(亮)委員 御提出になりました案の内容ですが、ことしは本科はおやりにならないのですか。
  64. 武田元

    ○武田(元)政府委員 本科は実は現在中止中でございますが、これの再開については検討いたしております。もし再開できなくても、実情において本科的教育を行う措置を講じたい、かように考えております。
  65. 小山亮

    小山(亮)委員 おっしゃるけれども、本科をおやりになる予算はおありになるのですか。これは関係者から強く何回もあなた方陳情を受けておいでになって——海技専門学院は本科が本来の使命なんです。専科というのはただ免状だけのことになるのですが、その本科をどうしても置かなければいかぬということを強く関係者から言われておって、予算措置がないというのはおかしいじゃないですか。ただ校舎を別にしただけでは内容は充実しないですよ。
  66. 武田元

    ○武田(元)政府委員 予算につきましては、実行予算におきまして実質的に本科的教育を実行し得る措置を考えることはできると思っておりますから、そういう御希望の方が相当あります際には実行可能と思っております。
  67. 小山亮

    小山(亮)委員 本科的教育とおっしゃるが、本科というものがあるのですか。廃止になさったのですか。
  68. 武田元

    ○武田(元)政府委員 廃止しておりません。停止しております。
  69. 小山亮

    小山(亮)委員 そうすると本科的教育なんということをおっしゃらないで、本科を復活させるとか復活させないとかおっしゃらなければうそでしょう。あなた方は予算をお出しになって、教育内容を充実するというのが目的なんでしょう。ところがそれをやらなければ、教育内容を充実したということにはならないでしょう。ただ別になったということだけでしょう。それではだめなんじゃないですか。
  70. 武田元

    ○武田(元)政府委員 教育内容の充実につきましては、従来停止されておりました船舶通信士並びに航海士の講習科を再開いたしたいと考えております。本科につきましては、私どもだんだん希望者がふえて参っておるということを聞いておりますから、この点につきましては再検討いたします。
  71. 小山亮

    小山(亮)委員 復活させるのですか、させないのですか。
  72. 武田元

    ○武田(元)政府委員 復活させるように再検討いたします。
  73. 小山亮

    小山(亮)委員 今年からでもできるのですか。
  74. 武田元

    ○武田(元)政府委員 今年は実行上本科の復活をいたします。
  75. 小山亮

    小山(亮)委員 実行予算ですか。
  76. 武田元

    ○武田(元)政府委員 はい。
  77. 小山亮

    小山(亮)委員 神戸の深江の商船大学と海技専門学院とを一緒にすることは、内容において非常に弊害がある。なぜかというと、海技専門学院の方は地方の商船学校なり、実地なりを経てきまして、すでに免状を持って、それで実務をとってきた人が、さらにそれ以上の教育を受けるために入る学校であり、大学の方はもとから学生がずっと入ってくる。ですからどっちかといえば専門学院の人の方が、海上の実歴を持っておるから資格は上でなくてはならぬ。それなのに商船大学と一緒にしておりますその実情を見ますと、最初は、あそこに商船大学を作るときには、専門学院の建物を利用させてくれ、あくまで専門学院の授業は妨げないと言っておきながら、今日になっては、もうだんだんじゃまになるから早く出て行ってくれ、わきへやれというようなことで宿宿舎を追い立てる。いわば、ひさしを貸しておもやを取られてしまう、こういうことになるのです。実際に内部で受けておる生徒の待遇はどうかというと、たとえば今まで食堂で一緒に食事をする場合には、大学生の方にはちゃんと給仕がついておって食事をさせるが、専門学院の生徒は、自分で食事を取りに行って、自分でさらを運んだり何かして食わせる。同じ食堂の中でそういうように区別しておる。今日はそれすらもやらないで、食堂では大学生がやって、海技学院の生徒は教室のすみで飯を食っている。それから一年に一回商船大学の開校記念日をやる。その開校記念日に祝賀会をやる、運動会をやるというときには、同じ建物の校内におる海技専門学院の学生をそれに参加させそうなものであるのに、遠足ということでわきに出してしまう。そうして学校に置かない。こんな手の込んだこまかいことをやって、どうしてこれをいつまでも一緒にやっていこうとするのか。ただ予算を取りたい、建物を使いたいということのためにやるなら、こんなばかげたことはない。また現在清水の商船学校の内容を見ましても、清水の商船学校は、かつて戦時中に四千人の兵学校の学生を養成したところなんです。ですから、教官の住む宿舎、職員の住む宿舎は、三保の松原に二百八十何ぼもあります。住宅難の今日住宅があり余って、小使が大きな家に入っておるような状態なんです。それであるのに、その大きな校舎に四百八十人収容しておる。全部で四百八十人です。そして先生の数が大かた百六十人くらいおりましょう。こんなぜいたくな学校はない。それに清水にあるにもかかわらず、また神戸の海技専門学院に入れる。これにも四百八十人くらいの生徒が住んでおって、先生が約百五、六十人ついておる。全校の生徒あげてたった四百八十人、先生の数がその三分の一くらい、こんなぜいたくな学校は日本にない。世界にも珍しいのではないかと思う。敗戦後こんなぜいたくな学校をなぜ二つ持っていなければならぬのか。国費がなくて節約しなければならぬときに、なぜ二つでなければならぬのか。しかもこれが二つあることが、将来非常に弊害になるのです。船では出身学校によって学閥があって、非常に熾烈な闘争を続けてきておる。今までは全国にありました地方の商船学校と東京にありました学校との間に、海上において熾烈な闘争があって、困ってきた。ようやく今日両方が融和して合併しようという状態にまでなってきた際に、また神戸に作って、現に猛烈なせり合いをやっております。海上保安庁神戸大学の出身者が押えておって、東京の者は入れないということでやっておる。船は一年ないし二年の長い間航海をするでしょう。その中に学閥争いがあって船内がもめたら、船の海難事件はどんどん起る。ちょうど自動車の運転手が家庭争議をやると翌日自動車の事故が多いように、船の中でもめていたら海難が多いことは、あなた方は御承知のはずです。船員局長なんか幾多の統計で御承知のはずです。船内が融和しなければ、絶対に船は円滑にいかない。船内に和ができなかったときには必ず故障がある。甲板部と機関部であるとか、あるいは中にいろいろ対立があると必ず故障がある。これは御承知でしょう。それであるにもかかわらず、なぜ大学を二つ置かなければならぬのか。いろいろな政治勢力の関係とはいいながら、こんなむだなことをなぜしておくのか。二つ置いておくものだから、こういう紛擾が起る。もしこれを一つにして——あの神戸商船大学というのは、神戸の海技専門学院としてりっぱな世界に誇る設備を持った専門学院であったのです。これを突然あそこに大学を入れて、しかも今度はもとの家主を追い出してしまうという結果になっていじめ上げる。私はわざわざあそこに行って全校の生徒を集めて聞いたら、専門学院の生徒は一人残らず早く別にして下さいと言っている。だんだん内容を聞けば、まるでしゅうとが嫁をいじめるように、食事までそんなことをしたり、記念会には参加させないようなことをして、そうして同じ教育を受けた人が、今度海に行けば、商船大学を出た人が専門学院を出た人の下に来るのです。資格は上なんですから、今度はいじめられるでしょう。それでは船内が融和しませんよ。こういうばかなことをなぜ考えるのか。国家が月給を出して教員に払い役人に払って、そして教員や役人があとで始末に困るようなことをしてもらったら、一体何のために国民の税金をあなた方に払っているのか、不思議に思う。とくと考えて下さい。文教委員会と合同委員会が開かれたら、私は文部省の人にもよくわかってもらうつもりです。私は今の原案に賛成するし、あなた方の主張されるように芦屋にこれを別に置くことが正当なりと思う。できれば予算をもっと追加させなければ、内容が充実しないのではないかとすら思っておる。局長のお考えはどうでしょうか。
  78. 武田元

    ○武田(元)政府委員 御意見の通りでございます。
  79. 原健三郎

    原委員長 本日はこの程度にして、後日は公報をもって御報告申します。    午後一時三分散会