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1955-05-12 第22回国会 衆議院 運輸委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十二日(木曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 原 健三郎君    理事 有田 喜一君 理事 今松 治郎君    理事 臼井 莊一君 理事 木村 俊夫君    理事 青野 武一君 理事 中居英太郎君       岡崎 英城君    加藤常太郎君       佐々木秀世君    佐伯 宗義君       中嶋 太郎君    濱野 清吾君       眞鍋 儀十君    越智  茂君       關谷 勝利君    徳安 實藏君       畠山 鶴吉君    井岡 大治君       栗原 俊夫君    下平 正一君       正木  清君    山口丈太郎君       池田 禎治君    大西 正道君       吉田 賢一君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         海上保安庁長官 島居辰次郎君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       長崎惣之助君         日本国有鉄道参         事         (総裁室法務課         長)      鵜沢 勝義君         日本国有鉄道参         事         (営業局船舶課         長)      篠田寅太郎君         専  門  員 堤  正威君         専  門  員 志鎌 一之君     ――――――――――――― 五月十日  委員伊東岩男君及び大西正道辞任につき、そ  の補欠として中嶋太郎君及び木下哲君が議長の  指名委員に選任された。 同月十一日  委員堀内一雄君及び永山忠則辞任につき、そ  の補欠として楢橋渡君及び越智茂君が議長の指  名で委員に選任された。 同月十二日  委員木下哲君、竹谷源太郎君及び上林山榮吉君  辞任につき、その補欠として吉田賢一君、大西  正道君及び加藤常太郎君が議長指名委員に  選任された。 五月十日  大糸線全通促進に関する請願植原悦二郎君紹  介)(第四八一号)  同(下平正一紹介)(第五五八号)  日豊線急行列車西鹿児島駅まで延長請願(  池田清志紹介)(第五一五号)  急行たかちほ号を鹿児島市まで延長請願(池  田清志紹介)(第五一六号)  碁石崎燈台設置等に関する請願小澤佐重喜  君紹介)(第五二六号)  能登線敷設促進に関する請願南好雄君外四名  紹介)(第五三三号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  紫雲丸沈没事件に関する説明聴取     ―――――――――――――
  2. 原健三郎

    原委員長 これより会議を開きます。  昨日早朝、宇野――高松連絡船紫雲丸が沈没いたし、多数の犠牲者を出しました。まことに哀悼にたえません。ひたすら御冥福を祈り上げる次第であります。  ついては本委員会としても哀悼の意を表するため、この際つつしんで一分間の黙祷をささげたいと存じます。御起立をお願い申し上げます。   〔総員起立黙祷
  3. 原健三郎

    原委員長 次にお諮りいたしますが、昨日の打合会におきまして一応御了承を得たのでありますが、この際その慰問と調査のため、現地委員派遣したいと思いますが、議長承認を得なければなりませんので、この際委員派遣承認申請書議長に提出いたしたいと存じます。なお派遣委員には、民主党加藤常太郎君、自由党越智茂君、両派社会党より青野武一君、中居英太郎君を、期間は三日間として、その承認を求めたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 原健三郎

    原委員長 それではさよう決定いたしました。なお期間も短かいので航空機を利用したいと存じますので、これを議長に申し入れたいと存じますので、さよう御了承を願います。  なお派遣委員その他について変更があれば、これを委員長に御一任いただきたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 原健三郎

    原委員長 それではさよう決定いたしました。     ―――――――――――――
  6. 原健三郎

    原委員長 これより宇野――高松連絡船紫雲丸沈没事件に関しまして、昨日の打合会におきまして大体概略を非公式に伺ったのでありますが、その後の情況などもあわせて、この際運輸大臣より正式に説明を聴取いたしたいと存じます。三木運輸大臣
  7. 三木武夫

    三木国務大臣 洞爺丸事件のまだ涙のかわかない時期に、再び紫雲丸事故が起りまして、当委員会に御報告をいたしますことは、まことに遺憾に存ずる次第でございます。  昨五月十一日午前六時五十五分ごろ、国鉄宇野――高松連絡航路におきまして、客貨船紫雲丸と、貨車航送船第三宇高丸とが衝突して、紫雲丸が沈没したのでございます。船員法の規定によって、平水航路には船客名簿の義務がございませんために、昨日のいろいろ御発表を申し上げた数字と、事態が判明するにつれて数字上の食い違いが――大体きょう御発表申し上げる数字は、そう大した食い違いはないと考えるのでございます。それによりますと、紫雲丸乗客並びに乗組員総数は、約九百三十名と推定をされます。うち乗客は、中学生あるいは小学生等の団体三百七十名を含めて約八百七十名と推定されるのでございます。今朝八時現在の状況は次の通りでございます。死亡が確認された者、乗客七十六名、乗組員はございません。生存者乗客七百十一名、乗組員生存者六十四名、うち負傷者乗客中五十一名ということになっております。なお乗客中七十九名、乗組員中二名の不明な者がございます。  昨日、事故発生直後において、衝突した第三宇高丸を初めとする国有鉄道船舶はもとより、海上保安庁海上自衛隊所属船現地漁業組合その他各方面よりの応援などにより、救助全力を注いでおるのでございます。なお海上保安庁のヘリコプターも大村より現地に急派いたしまして、その他サルベージ船八隻が出動、また香川県水産課の手配により、底びき網の船も出動いたしておるのでございます。しかしながらまだ現在までのところ、約八十名という多数の人々が不明となっておるのでありまして、引き続きこれが捜査に全力を尽したいと考えておるのでございます。国鉄としては昨日天坊副総裁現地に急派いたしますとともに、国鉄本庁及び高松緊急対策本部を設けて、善後措置を講じておりますことは御承知通りでございます。  本件の原因につきましては、ただいま調査中でございますが、両船にはみな乗組員生存者があるわけでございます。その言い分が、伝達して参りまして、お手元に資料としてお配りしてあるわけでございます。詳細はその資料を御一読を願いたいのでございますが、いずれにいたしましても、濃霧中において操船を誤まったことは明らかであると思うのでございます。運輸大臣といたしましては、昨年の洞爺丸事故に引き続いて、再びこのような大きな連絡船事故を起しましたことに対して、国民の各位にまことに申しわけないと存じておる次第でございます。さしあたり救助、遺体の収容、負傷者の医療に全力を注ぎますとともに、不幸遭難されました御遺族に対しましては、できるだけの弔慰方法をすみやかに講じたいと思っております。なお今回の事故洞爺丸事故の場合と異なり、国鉄責任であることは明瞭でありますので、ただちに弔慰の手続をとることにいたしたいと存じております。  昨日運輸大臣代理として植田鉄道監督局長現地派遣いたしますとともに、省内においても緊急対策本部を設けて、本事件善後措置の万全を期するとともに、再びこの種の事故が起らないような方策も講じたいと思っております。特に職員の再訓練でございますが、現在でも高級船員海技専門学院に入れて訓練をしており、下級般員職員養成所特設船員科というところで訓練をしておるのでございますが、しかし訓練はまだまだ、再訓練と申しますか、再教育と申しますが、強化しなければならぬ、こう考えております。また船舶安全性につきましては、洞爺丸事件経緯等にもかんがみて、造船技術審議会船舶安全部会で、連絡船の船の構造あるいは性能等いろいろな点について検討を加えて、いろいろな結論が出て参っておるのでございます。今後の連絡船の新造には、そういう審議会意見を十分に尊重していきたいと考えております。さらに今後この事件に対する責任を明確にいたしまして、綱紀の高揚をはかっていきたい決意であります。  以上御報告を申し上げる次第であります。
  8. 原健三郎

    原委員長 本事件に関して質疑がありますので、これを許します。關谷勝利君。
  9. 關谷勝利

    關谷委員 ただいま大臣からもお話のありましたように、洞爺丸事件がありまして、まだその涙のかわかない間にこのような大きな事故を起した、こういうふうなお話でありました。そのつど繰り返される言葉が、ただ口の先だけで、二度とこのような事故を発生しないように努力をいたしますとか、いろいろ言っておるのでありますが、ただ口先だけであるがために、またこのような事故が起きたことは、まことに私は遺憾にたえないと思うのであります。いつもただその直接の原因だけを確かめて、そして実際そのよって来たるところを一つも究明していない。そのためにこのような事件が引き続いて起るのである、私にはこういうふうに考えられるのであります。先般の委員会の際におきまして、今の鉄道が現在のような状態ではなかなか責任が持てないのではないか。もし事故があった場合に、大臣総裁連帯して責任を負うかということを、私はっきりとお尋ねいたしておるのでありまして、大臣もその際には連帯をして責任を負うとはっきり言われておるのでありますし、ただいまも責任を明確にすると言われておりますので、おそらく大臣にはそこらのお考えはすでにはっきりしておられるだろうと思うのでありますが、念のためにお伺いをしておきたいと思うのであります。  いつも国鉄関係事故が起りましても、その直接の関連のありますところの者は責任を負う、こういうことになっておりますけれども、その上司というところが責任を負ったというふうな例を、私たちはあまり聞いておらないのであります。ただ簡単に職場を変えたという程度のことだけでありまして、そこにはっきりとした責任を負っておらないということから、二度と繰り返さないと言いながら、全部の精神が弛緩しておりますために、ただそのときに断わりを言って弔慰金さえ出せばいい――これはそうまで露骨ではないかもわかりませんけれども、そのような結果になってきているのではないかと私は考えられるのでありまして、まことに遺憾であると存じておるのであります。今度の場合におきましてまず第一番に、この事件は――責任の所在ということを今大臣もはっきり言われておるのでありまして、洞爺丸事件とは全然異なっております。いずれにいたしましても国鉄の全責任であることは間違いない。従って大臣責任であることは間違いないのでありますが、これに対しましてどのような責任をとられようとするのか、この点まず伺っておきたいと思います。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 運輸大臣として国鉄監督の立場にあるわけであります。それに対して責任も十分に私は感じております。御承知のように連絡船事故というものは人命関係をするわけであります。これはただその場を、委員会を過ごせればいいという問題では断じてない。やはり人命の尊重ということが政治の基本であると私は考えております。従って今後こういう事件が起らないようにできる限り善処したいという私の決意は、ただこの場をのがれるために言っておるのではない。国民に対しての非常な責任から言っておるということは、額面通りお受け取りを願いたいと思うのであります。
  11. 關谷勝利

    關谷委員 大臣からはっきりとした御答弁がありましたので、私はそれをその通り了承をしておくことにいたします。今まで事故が起りましても、その際に首脳部がはっきりとした責任をとっておらない。なお大臣あたりでも連帯責任をとっておらない。こういうふうなことから、もしこれで責任をはっきりととっておったということになりますならば、従業員あたりも、これは総裁大臣まで迷惑を及ぼすのだ、もしあやまった場合にはそれほど大きく迷惑をかけるのだ、こういうふうなことで非常に緊張をして参りますので、私はこのような事故は起らないだろう、士気が弛緩するようなことはない、こういうふうに考えておるのでありますが、今回の場合に、今の遭難者状況調査等を見ましても、あれだけたくさんの死傷者を出しておりながら、船員等におきましては全部が助かっておるというのであります。ほんとう責任感のないということが明白に数字の上に出ておる。こう言っても差しつかえはないのであります。首脳部責任を感じない、大臣責任を感じない、総裁も感じない。そうしてそれでじんぜん日を過ごしておるのだ、そういうふうになってくると、当然にそういうことが精神の弛緩の原因となって参ります。事故の際に、ほんとうでありましたならば自分の生命をなげうってでもその際に救助に従事をして、そのあげくこの遭難者の数を少くして、乗組員の方に死傷が起るというのが、昔の船員魂といいますか、海員魂であったように私たち考えておるのでありますが、上が上でありますならば下これにならいというようなことで、私はこの職員あたりも弛緩しておるのではないか、こういうふうに考えられるのでありますが、この点に関しては大臣はどのようにお考えになりますか、その感想を承わっておきたい。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 新聞紙などで、今朝の新聞でありましたか、船員救助に対して全力を尽しておったという生存者の記事が出ておりました。当然に船員はまず乗客救助に対して、全力を尽すべきものであるということは申すまでもないのであります。しかしいろいろな原因があって、船員の中から犠牲者が出なかったということ自体から、それはいけないとか、いいとかいうことは私は考えてはいない。しかし全力を尽したことと期待をいたしますし、そうなければならぬわけでございます。
  13. 關谷勝利

    關谷委員 ただ簡単にそのように考えておられるが、私はそのようなものではない、このように考えておるのであります。大体自分のからだを犠牲にしてでも、遭難者を救うためにあらゆる手を打つということであろうと思いますが、まず安全なところに退避をして、それから後に救助に移るというふうな情勢でなかったかと私たちは想像されるのであります。そうでなかったならばこういうふうな数字は出てこない、こういうふうに考えられるのでありまして、今の大臣の御答弁というものは私まことに不可解なと申しますか、無責任なような御答弁であると考えております。非常に遺憾であります。大臣はそのようにただ簡単に考えられておるのかどうか、もう一回伺っておきたいと思います。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 簡単に考えておるのではないわけであります。今申したようにこういう人命損傷に対して非常に遺憾しごくに考えておるわけで、それに対して責任も感じておるということで、今關谷委員の御指摘は、船員の中から犠牲者が出なかった、それは船員がそういう場合に救助全力を尽さなかった証拠でないかという御指摘でありますが、私は、船員は当然に全力を尽すべきものであるし、その場合に全力を尽したものと考えておるわけでございます。船員は海にもなれておるというようないろいろな原因があって、その結果全員生存した、そのこと自体を私は非難する気持はない。しかし、そういう場合にまず乗客救助を第一に旨とすべきであるということは、当然に船員の本領であって、今後といえどもこのお考え方は全く同感であります。
  15. 關谷勝利

    關谷委員 私は今回のことにつきましてまず大臣責任をお尋ねしたのでありまして、そこで明確な御答弁を得ておりますので、これはこの程度にいたしたいと思います。なおこの直接の原因につきましてはいろいろ報ぜられております。レーダーが近距離ではきかないということも、私は専門家意見も徴してみたのでありますが、そのようなことも言っておりますし、これにたより過ぎるということは危険である。しかもあそこはわずか一時間ほどの航海距離でありますので、絶えずやっておりますと、何といいますか、過信に基く冒険的な事柄が多いということが、この直接の原因であったということを聞いております。この報告書を見ますと、一番大事な船の行動の中に、速度を何ぼ出しておったかということが出ておらないのでありますが、聞くところによりますと、二十ノット以上出しておった、二十二ノット出ておったのではないかということさえいわれておるような状態でありまして、あのもやの中でそんな速度を出しておったならば、大へんなことになることはわかり切っておるのであります。とにかく非常に機械にたより過ぎたとか、あるいは平生この航路になれていて過信し過ぎたというふうなこともいろいろあると思いますが、こういうことにつきましては、調査団派遣がただいま決議せられましたので、いずれそれが帰ってから後のことにいたしたいと思いますが、とりあえず私はその責任の問題だけを明確にお尋ねしておいて、さらにお願いしておきたいことは、この救急その他の善後措置について万遺憾のないように取り計らってもらいたい、こういうこと申し上げておきまして、私の質疑を一応打ち切ります。
  16. 三木武夫

    三木国務大臣 今の關谷委員質問に関連して、乗務員に行方不明が二人あった、中村船長の遺骸が発見をされたという報告を受けましたので、御報告しておきます。
  17. 原健三郎

  18. 青野武一

    青野委員 大体きのうの打合会かなり詳細に質問が繰り返されておりますので、なるべく重複をしないように二、三点御質問したいと思います。  私どもはこの前の洞爺丸事件から、こういうことが起らないことをひそかにこいねがっておったものでございますが、昨日の早朝に起ったこの事件は、遭難者はもとより、遭難者遺族に対して心からお気の毒に存ずる次第でございます。きのうの質問に対する御答弁によると、洞爺丸沈没事件とは異なって、これは明らかに国鉄責任である、国鉄が無条件で責任を負うべきであるという御意見が、長崎総裁並びにその他の方から出ました。私もそう感じておりますが、この種の濃霧による沈没事件遭難事件が将来も避けられるかどうか。きのうはそういう点について触れませんでしたからお尋ねしますが、聞くところによると、真偽はわかりませんが、高松から宇野に行く船舶航路は右の方である。それから宇野から高松へ来るのはやはり右の方である。それがどちらも左側を通っておる。この往復の航路はひんぱんに行われるから、かなり距離を作って、航路もおのずから衝突などのないようにすでに決定しておった。ところが事実はどちらも左側の方の航路を通っておった。そういう点がどうして食い違いが起ったか。それから濃霧の場合に、レーダーを利用してやっておりましたが、果してこういう事故は避けられるかどうか。われわれはそれを好むものではありませんが、今のような国鉄当局者考え方によると、あるいは将来こういう問題が起らぬとも限らない。国鉄責任であると言明せられる前に、この極道難事件は人事を尽して方法を立てれば、避けられるというお考えが果してあるかどうか。今回の濃霧による衝突事件で、どうして三分か五分の間に紫雲丸が沈没したのか。私は若いときに、五、六年造船所に働いて、船にも経験があるのですが、洞爺丸事件のときもそうでありましたが、これを読んでみると、貨車が十五両、乗客も八百七十名、いろいろ重たいものを積んでおりますから、だっと急激な衝突を受けたときには、普通の船と違いますから、あるいは急激に沈没しないとも限らない。けれども第三宇高丸紫雲丸のどの辺に衝突して、横転して沈没したかという点について、こういう濃霧によるところの遭難沈没事件というものは、将来も起るかもしれない問題でございますから、もう少し詳細に所見を承わっておきたいと思います。
  19. 篠田寅太郎

    篠田説明員 先ほどお話にありましたように、航路を西と東に分けまして、東の方を上り便に、西の方を下り便ということに分けて航行するという措置をとりまして、衝突事故をなるべく避けるという方法を講じておったのでございますが、残念ながら船長錯誤等もあったように見受けられるのであります。なおその点は詳細に調べなければならないのでありますが、今後そういった錯誤を起さないような指導、それから航路自身を大きく開くというような問題について、さらに積極的な手を打つ。それから霧中における航法というような問題につきまして、残念ながら万全であったとは申し上げかねるのでございます。そういう点を今後十分指導、教育していくことによって、また文明の利器と申しましても、レーダーにもおのずからその有効に使い得る範囲もございますので、そういった点の実際の扱い上の問題等について、研究指導を実施することによって、こういった事件の防止について、もう少し具体的に掘り下げて研究いたしたいと考えておる次第でございます。  さらにその衝突の詳細でございますが、これは第三宇高丸が相当の速力、これはまだ正確に何ノットとは申し上げかねるのでございます。この航跡をプロットしていきますと、大体の速力は見当がつくのでありますが、速力が十二ノット近くあったのではないかと思います。そういった関係で非常に大きな破口を生じております。まだダイバーを入れまして正確にはかったわけではございませんが、紫雲丸は船首を真南より少し右の方に向けまして、右舷を上の方にして横転しております。それで破口の大体の大きさは、ビルジキールから下の方六一・五メートルぐらいのところで、幅が一メートルくらい、車両甲板で三メートルくらい、上下の高さは八メートルくらいの破口があった模様でございます。しかもこの衝突いたしました個所機関室の後部に近い部分、肋骨の番号で申し上げまして三十五番というところでございまして、機関室の中に相当突っ込んでおります。ここはちょうどそれに隣接しております車軸室とのバルクヘッド個所に当りまして、その点なんかも相当大きな影響を与えておるのではないかと思われます。なおこの実際の破口を今後精密に調査し、またさらに内部の損傷等調査いたしまして、なお研究を進めていきたいと考えておる次第でございます。
  20. 青野武一

    青野委員 そうすると国鉄責任であるということはすでに決定しておる。われわれは現地に今晩行くわけでございますが、濃霧のためかどうか、理由はわかりませんが、西と東の航路を全然取り違えておる。結局高松から宇野に行く船は右の方を通らなければならないのを、左側を通っておった。その航路航路の間はキロにして大体どれくらいあるのですか。そうして今回の場合は、濃霧によって視界が四十メートルとか五十メートルとかいう報告がありますが、それによってふだん晴天の場合の航路を取り違えたのかどうか。いずれ取り違えたにしても、すでに決定をしておる航路の全然反対側を通っておったというところが、第一の国鉄責任である。それからその次に、汽笛がかなりぶうぶう鳴っておったけれども、小さい船が来るのだろうぐらいの程度乗客の一部分の人は考えておったが、何と千四百トンも千五百トンもある船がだあっと横腹に来て、かなり速力で来たものだから、あっというひまもありません。新聞によると、こういうことを遭難者人々が言っておりましたが、これが事実とすれば、大体機関室の横、三十六番の龍骨のところでしょう。そこにのしかかったら、千五百トンもある船が三分か五分で横になって、そのまま沈むような構造になっておるのですか。船というものはそう簡単に三分や五分で沈むはずがないのですが、そういう点についてもう少し詳しく。第一が大体航路と全然反対側を通っておるという点は、これは言いのがれするすべはない。国鉄責任であることはもちろんわかり切っておるのですが、そういう点について。それから船の構造というような点について、国鉄当局としては今のような状態ではいけないから、将来かなり改造せねばならないということも考えさせられるわけでありますが、そういう点についてはどういう御見解を持っておられるか、もう一ぺん聞いておきたい。
  21. 篠田寅太郎

    篠田説明員 船が大きくなりますれば、それより小さいものが当りますれば破損も小さくて、沈没までに比較的時間があるのであります。ところが大きな船でも、たとえば魚雷を食うように突然大きな破口をあけますと、どうしても早く沈む。要するに船の大きさとそのとき生じた破口との関係にあるのではないかと考えている次第であります。  なお今度の場合には機関室の後部でございまして、ちょうど次の区画も衝撃によって穴があけられて浸水したかどうか、その点はなお潜水夫を入れて調査しなければわからないのでありますが、そういう悪条件も重なったのではないか、こう考えております。
  22. 青野武一

    青野委員 それについては私ども現地に行って、かなり関係当局の諸君と会って詳しく調べたいと思っておりますが、問題は今も關谷君から御質問がございましたが、衝突をして横倒しになって沈没するのが、当局の御答弁では約五分、新聞では二分ともいい、三分間とも書いてありますが、それまでの間にあっというひまではありますが――船長と操舵手、この二人が現在八十一名の行方不明の中に船員関係として含まれております。これは気の毒にやはり御死亡なさったと推定をされるのでありますが、この沈没するまでのわずかな間に、船員の諸君があのいたいけな児童生徒に対してどのような処置をとったかということは、相当な時間がたっておりますから、現地に天坊副総裁あたりも行っておられるのでありますから、やはりこの沈没までの応急処置に万全の対策をとられたかどうか、それからまた負傷者に対する応急処置、慰安方法、そういうものがきのうのニュースによりますとかなりごうごうたる非難を言っておりますが、これらに対してはどのような応急処置を講じておられるのか、負傷者等についてはこれまた先の問題になりますが、慰安方法については今のところどういう処置をとられているかということを一つお尋ねいたします。
  23. 鵜沢勝義

    ○鵜沢説明員 御遺族並びに生存者の留守宅に対しましては、遭難があったという事実と、それからその留守宅のわかり次第に係員を派遣いたしまして、生死の不明な方に対しましては遭難のあったというだけのこと、それからおなくなりになった方については不幸おなくなりになった旨、それから幸いに生存された方にはその旨をお伝えいたしまして、そして国有鉄道といたしましてはそういう御遺族、留守宅の方が行かれ場合については、途中における乗車、乗船のお手配並びに途中の食事、それから現地に参ります場合の宿舎の手配は国有鉄道でいたしますからとお話をし、こういう趣旨のおわびとごあいさつを申し上げました。なおその際に留守宅お見舞金として五千円を差し上げて、相当の数の御遺族の方が現地に行かれて御遺体のお引き取り、それから生存者に対するお手当をされております。それから中には汽車で行かれるよりは、便宜な場所におきましては船を雇って現地に行く、こういうようなお手当をいたしております。それからきのうも一総裁から申し上げたのでありますけれども、おなくなりになりました御遺族にはとりあえずの応急のお見舞と申しますか、御香典といたしまして総裁名義で五万円、現地の局長名義で一万円、その他花、くだもの、お線香、こういうものを差し上げて丁重に弔慰を表しております。幸いに御生存された方に対しましては、とりあえずのお見舞といたしまして一万円、それから急遽旅行を継続されるような方に対しましては、旅行を継続し得る限度におきまして衣服、はきもの類等を現物で差し上げております。それから御生存なさいましても負傷されたような方に対しましては、鉄道病院等で目下治療をいたしております。御遺族並びに生存者に対する応急のお手当というのは、今申し上げたようなとりあえずの措置をとっております。
  24. 篠田寅太郎

    篠田説明員 船員の活動についてでございますが、第三宇高丸紫雲丸衝突をいたしまして、この船はぶつかりまして食い込みますと、すぐ後進をかけますとその反動でぼこっと沈むものでございますから、第三宇高丸全力を上げて般の沈むのを一分でも延ばそうということで、アヘッドをかけまして船の分離を避けるという努力をいたしました。同時に紫雲丸もまた、私たちとしては今後遭難船員を一々調べまして、いろいろの行動を、これは今後の船員のあり方というような問題についても参考にするため調べるのでございますが、紫雲丸においても船長以下旅客の救助、退避について全力を尽し、特に第三宇高丸については、まだ本船が一番近くにありまして救助電話を至急かけたのでございますが、なかなか救助船はすぐ簡単に参らないのであります。そこで救命艇を降下させて極力海に入っておる人々救助する。さらにまた船が接近しておりますものですから、紫雲丸から第三宇高丸に旅客を移乗させるというような方法をとりまして、他船の救助に来るまでの間、全力を上げて第三宇高丸に人を収容しておったのでございます。なおまだこまかい点につきましては詳報が参りませんが、船員全力を尽して救助作業に当ったものと思われます。
  25. 青野武一

    青野委員 これは三木運輸大臣と長崎国鉄総裁にお尋ねいたしますが、私が先ほど御質問いたしました内容についての重大な問題が御答弁になっておりませんので、明確にしておいてもらいたいと思います。もちろんこれは航路の変更とか、それぞれ第三宇高丸とか紫雲丸船長の判断力にもよりましょうし、天候の関係にもよりましょうが、将来やはり大きな問題を投げかけております。こういう大きな問題については、はっきりした当局の言明が今最も必要なときではないかと思います。このような視界が四十メートルあるいは五十メートルといったような濃霧のときに、こういう衝突事件というものは不可抗力であるのか、あるいは避けようと思えば完全に避けられるものであるのか。今回の問題は運輸省なり国鉄責任でございます。もとよりわれわれは責任をとりますという御言明をきのう聞いておりまするが、こういう濃霧の場合に出港して、そして衝突事件を起し、それによって沈没して遭難者を多数出した。この種の問題は果して人為的な方法をとれば避けられるものであるか、不可抗力であるか、今回の事件をどうお考えなっておるか。これが非常に重要な点になっておりますので、その点を総裁並びに大臣から別々に一つ所信を聞いておきたいと思います。
  26. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 今日までに受けましたいろいろの報告によりますると、どうも私どもには理解ができない点が非常に多いのでありまして、レーダーもきいておる、無線電話もあり、霧笛信号も鳴らしておった、こういう際にどういう錯誤でああいうような操船方法をとったかということは、非常に不可解なのであります。私はやはり船長が何か錯誤を起しておったのじゃないかと思っております。ですからその錯誤さえなければ、ああいう事故は起らなかったのではないか、かように考えております。
  27. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように海上衝突予防法という法律もあって、濃霧の場合の処置等の規定はある。濃霧のときには停船もしなければならぬことになっておるわけで、そういうことを厳重に履行するならば、濃霧の場合においてもこういう事故は避けられると私は思う。事故の場合にはいろいろな条件が重なり合うわけでございますから、複雑になって参りますけれども、しかし濃霧で視界がきかぬという場合には、その衝突予防法に規定してあるように停船をするというようなこと等を励行すれば、絶対にこういう事故は避けられぬものだとは私は考えていないことを申します。
  28. 青野武一

    青野委員 非常に重大な御答弁でございますから重ねて御質問いたしますが、では今回の紫雲丸と第三宇高丸衝突事件は、視界が大体四十メートルないし五十メートルということを新聞で報道しておりますが、実際はその法律によって停船するのがほんとうでありますか、あるいはそれを無視して出港したのがこの原因になっておるか、その点今回の衝突事件についての所信を聞きたい。
  29. 三木武夫

    三木国務大臣 その点は今後調査してみなければならぬと思いますが、濃霧の場合でもいろいろ気象上、出港した場合には濃霧がなくて、航海中に急に濃霧になるような気象の変化も考えられるでしょうし、今の御質問に対しては詳細にそのときの状態調査してお答えする方が適当だと考えるのでございます。
  30. 青野武一

    青野委員 そういう今の御答弁でございますが、きのう中央気象台から大体霧が非常に濃いといったような情報もわれわれの方に配付され、と同時にそれがすでに通知されておるのであります。そういうものを無視したところに、こういう遭難事件が起ったものと私たち考えておるのですが、とにかく濃霧も晴れるであろうとか、船長が勝手に独断的にそういうことを考えて出た。実はもう気象台からすでにはっきりした予報が出ておる。それを、結論から申しますと無視して出た。しかも航路を右左取り違って衝突をした、沈没をした、遭難者を出したということになるのであって、私は個人的には不可抗力とは断じて思っておりません。こういうものはやはり十分慎重な態度をとっていけば避けられるものを、とうとうこういうような事件に持っていったというように私は考えておるのですが、もう少しはっきりした御説明を願いたいと思います。
  31. 三木武夫

    三木国務大臣 今青野君に御答弁いたしました中の海上衝突予防法、それの規定がここにありますから、この重要な個所だけを一ぺん読み上げてみます。これは第十六条の二項であります。「動力船は、その正横の前方に当って他の船舶又は水上航空機の前条第三項の信号を聞いた場合で、その位置を確かめることができないときは、状況の許す限り、機関の運転を止め、しかる後衝突の危険がなくなるまで注意して運航しなければならない。」、状況の許す限り機関の運転をとめる、こういうことが第十六条二項の規定にあるわけでございます。今いろいろ気象の問題等につきましては、現地でもう少し調査をしなければならぬ個所があると思いますが、いずれにいたしましても私自身が考えてみても、いろいろ潮流の関係もあったかと思うのですが、一つの航路のコースが違っておった。今言う上り下りのコースが違っておった。あるいは潮流の関係で押し流されたのか、これは私自身の想像でございますが、そういう点、そうして速度もむろん落したに違いないでしょうが、今申したように、落しても相当なスピードを出しておれば、停船をする場合でも多少の時間がかかると思います。そういういろいろな状態というものが、今度の場合にはもう少し現地調査の詳細がわかって参るでしょうが、結局は非常な専門的なことになれば、海難審判所の問題ではございますが、しかしこれは必ずしもそう複雑な事件でもないのでありますから、そういう原因については、これはごく近いうちに一そう明白になるものと、こう考えておるのでございます。
  32. 青野武一

    青野委員 最後に、希望を兼ねて御質問をしたいと思いますが、ただ問題は、紫雲丸は昭和二十五年でしたか、一ぺん衝突して沈没をした船でございますが、現在の海深では紫雲丸の引き揚げは、私どもはしろうとでございますが、大体可能であろうと思うが、紫雲丸の今沈没している船を引き揚げるのは結局いつごろになるか。それから八十一名ばかり行方不明者がありますが、この八十一名の相当数はおそらく船内におられるのではないかと私どもは想像するのですが、船内の遺体引き揚げの時期、そういうものについて何か十分現地と打ち合せができて御計画があるか、その点を一つお尋ねしたい。それから、先ほど御答弁になりましたが、遭難者遺族に対する旅費とか食費あるいは宿泊等については、洞爺丸事件のときには相当ごたごたが起きましたが、これはもうもとより万全を期して、とやかく非難を受けないように、国鉄当局者の善処を私は希望しておきたい。それと同時に、負傷者に対する応急措置、それから後日に至ってそれについての慰安方法等も講ぜられると思いますが、まず何はさておいても、一応乗客全体に対する健康診断といったようなものは、私は相当必要じゃないかと思う。特別に壮健な者で用事を控えておる者は、旅費でももらってよそへ行けばいいが、大体一通り国鉄責任で十分りっぱな医者を迎えて、健康診断等の措置をするのが当然であると思います。それから遺族に対する弔慰方法、それから遺体捜査には全力を尽してもらいたい。こういう希望を申し上げて、最後に、紫雲丸の引き揚げと船内における遺体の引き揚げは、大体目安をいつごろに置かれておるのか、今のところではこれが一番重要だと思いますが、そういう点についての見込みを一つ聞いておきたいと思います。
  33. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 海上に漂流しておりまする遺体につきましては、大体捜査が終ったような格好になって、ほとんど見当らない。そこで即刻サルベージを呼びまして、船内の遺骸の捜査に当っております。ただいまお手元に差し上げてありますのはけさの八時現在でございますが、その後不明者の数が減りまして、減ったということは、結局船内から遺体を収容したのであります。先ほど大臣から申し上げました船長の遺体も、船内からこれを発見したのであります。かようなわけでありまして、この遺体の捜査ということについては、もとより全力を上げて急いでやるつもりであります。紫雲丸の浮揚ということについても即刻研究をいたして、なるべく急いでこれを引き揚げるつもりでおります。
  34. 原健三郎

  35. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は、すでに同僚委員から各項にわたっていろいろ御質問がありましたから、重複を避けつつ、二、三質問をいたしたいと思います。  まず、昨年以来の国鉄における事故の続発は、私ども当委員会におきましても、その事故を防止するために、あるいは従業員の志気の高揚、あるいは再教育、あるいはまたその施設の改善等、あらゆる点にわたって再三決議をし、勧告をいたして参りました。そのつど、監督官庁である前石井運輸大臣はもとより、国鉄総裁におきましても、これらの事故の再発防止につきましては、極力その善処方を言明せられて参っておるのであります。しかるに今日に至りましてもなおこのような事故の続発を見ますことは、私どもといたしましてまことに遺憾千万に思うのであります。これを要するに、私ども考えますると、今まで運輸省当局並びに国鉄当局の当委員会において言明せられましたその言明を、そのままに実行せられておらないのではないか、実行されておるものとすれば、その効果というものは、このような現実の事故の皆無によって私は立証されるものであると思うのでありますが、それについてもいまだその効果を上げていない事実は、これはあまりにも今までに私どものとって参りましたその努力、あるいはまた当局並びに監督省である運輸省がとりましたそれらの努力なるものが、国鉄の重要なる業務運営上に反映しておらないのではないか。そうすれば、その反映せない理由はどこにあるか、それをどういうふうに当局者としてお考えになっておるか。私はこの点、監督省である運輸大臣に一つ所見を承わっておきたいと思うのであります。
  36. 三木武夫

    三木国務大臣 いろいろ御指摘になりました、要するに国鉄あるいは運輸当局が、委員会でのいろいろな注意を実施しない結果、こういう事故が起ったのではないかという、御質問は非常に抽象的なお話でございましたが、これはこういう事故の頻発についていろいろ反省をしてみなければならぬ面があると思います。これは単にこの点だけということではなくして、いろいろな面について反省をしなければならぬ面があるので、国鉄、運輸省の関係も、御承知のように公共企業体としての関係のもとに置かれておる、こういう関係も私自身は少し考えてみたいという考えでございます。運輸省と国鉄との関係については検討を加えてみたいという心境でありますが、いずれにしてみても、いろいろな面でこういう事故が起らないように、いろいろな角度から運輸省もあるいは国鉄も、深刻に検討しなければならない問題であると思います。
  37. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 大臣はきわめて抽象的だという御答弁でありますけれども、監督省である運輸省とコーポレーションである国鉄との監督権限の関係等においても、幾多改善せられなければならない点を指摘されておる。私もそれを痛感するがゆえに、今までいろいろ国鉄法の改正その他についても意見を述べておったのであります。ところがそれは自由党内閣のときの石井運輸大臣、または自由党の政策によりますと、むしろ私有に近い存在にする方がよいのであって、国家的の統制を強めるような、監督権を強めるような措置はとらないという逆の方向を示されておった。それがひいては監督責任の所在というものが非常に不明確になった。従って政府機関でありながら、その不明確な存在のままに今日まで参っておりますために、部内における非常なる精神的な業務運営上の弛緩というものが大きく左右して、その業務運営について緻密なる計画のもとにその運行が行われていない。きわめて放漫なやり方によって、現場における機関の運営がなされておる、こういうことがこの事故の大きな原因をなしておると思う。現に具体的に申せば、この紫雲丸衝突事件にしましても、指定の航路を成規のきめられた手続によって運航しておれば、こういうことは断じてないのであります。ところがそれが行われないで、どちらが航路を変更したのかは知りません。それは調査の結果でないと軽率に言明はできないと思いますけれども、いかなる事情があろうと、勝手に航路を変更するというような行為は、いわば陸上における道路を踏みはずして自動車がたんぼに勝手に飛び込むのと同じことでありまして、そういうことでは人命、財産を預かる重要な仕事に従事をする交通従事員の、本来の使命を重く考えてない軽率な行動である、こういうふうに私は考える。そういうように従業員に勝手な行動をとらせる原因が一体どこにあるかということを十分に当局としては反省して、その欠陥があるとすれば、その欠陥を是正するということに全力を注がない限り、私はこういう事故を防止することはできないと思うのでありますが、これについてどういう考えでおられるか、一つ運輸大臣の所見を伺いたい。
  38. 三木武夫

    三木国務大臣 やはり再訓練と申しますか、再教育、ああいう技術的な面もあるわけでございますから、精神の緊張ということも必要でしょうが、それはやはり技術を加えての訓練ということが必要だと思う。これは強化すべきだ、今もやっておるけれども、もう少し再訓練、再教育というものは強化すべきものであると考えております。あるいは機構の点についてもいろいろ検討してみたいと思います。この事件を一つの反省の資料といたしまして、機構、訓練、この面について検討を加えていきたいと考えております。
  39. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は今非常な傷心の中にある総裁に向って、その責任を追及することはどうかと思いますが、しかし事はそういう人情だけをもって制禦することのできないほど大きな事故を起したのでありますから、従って私はそのような感情だけではなく、この際現実を正視して、国鉄当局者国鉄当局者として、国民の前に納得のいく解決策を講ぜられることが最も必要であり、そのためには法律的な結論等は別といたしましても、やはり道義的、道徳的にその所信を国民の前に明らかにせられることが最も大切なことであり、それが部内をまとめていくために最も重要ではないかと考えるのであります。そのためには国鉄総裁を初め、船舶関係の衝に当る首脳部の方々は、一体どういう心境で今後の部内を固め、また今後の国鉄のために一身をどのように処していこうとされるのか、この点について所見を伺っておきたいと思います。
  40. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 お説の通りでございまして、私どもも今回の事件については深く責任を感じておる次第であります。これをいかなる形においてとるかということについては、今後十分にお説のようなことも考え、善処していかなければならぬ、かように考えております。
  41. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 ただいま心境についてお話があったのでありますが、私の思いますのは、もちろん最高責任者として総裁のその心境はよくわかります。しかしいずれの社会においても、その長一人の責任においてすべてが運営されておるものではありません。どんなに優秀な長を迎えたといたしましても、それを補佐する責任のあるよき協力者がなければ、私はいかなる社会も正常に運営されることは困難であると思うのであります。今日国鉄といわず、いわゆる一つの企業を経営する場合においても、会社を経営する場合においても、善良なる指導者であり、善良なる経営者であるということは、よき協力者を得るということでなければならないと思う。でありますから、このような事故が起った場合における善良なる企業者、善良なる企業的責任者というものは、もちろん総裁責任にもかかりますけれども、その総裁責任を分担し補佐する職員諸君の責任は、より重大であると考えるのであります。しかるにそれについては何らの意思表示はいまだにありません。こういうことは私は非常に不可解に思うのであります。これを悪くとりますと、今までの国鉄のやっておられる様子を見ますと、洞爺丸事件におきましても、死人に口なしというようなことで、ことごとく殉職をした者に責任を転嫁しておるという態度が見えるのであります。たとえば台風時における出港の問題にしましても、それは船長責任であるというように、単に船長責任であることにしておる。しかるに平常においてその船長を指揮監督している。それらの職員諸君については、一切その責任の所在を明確にしない。こういう態度は最も卑劣な態度と言わなければならない。それら当事者あるいは船舶関係の者あるいはその輸送の大事な責任者等々、要路に当る者、衝に当る者が進んで責任をとってこそ、この業務を正常に運営する能力が自然に下部から出てくるものと思う。ところがそういうことがないことが、今日職場における精神の弛緩となって、事故の大きな原因となっているのでないか。こういうふうに考えますと、私は今の総裁の心境だけをもって全部くみ取るわけには参らない。ですからこの際国鉄の空気を一新するために、総裁はまず自分責任を明らかにするのは、みずからの進退を決するだけではない。その協力者であったそれらの部内における一切の人事、一切の弛緩した空気を緊張させるための措置をみずから進んでとるという御決意を示されることが、私は肝要であると思いますが、それについてどういう考えであるか。
  42. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 お説の通りでございまして、私はやはりその衝に当って直接責任の地位にある者並びにこれを指揮監督する者等について、今後十分に調査いたしまして、それぞれ責任を明確にするつもりでございます。
  43. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私はもう一点、重要ですからお尋ねしたいのは、この問題に関してはなるほど濃霧等の原因があって、多少はほんとうの平常の状態からいえば天災的な要素もあるでしょう、しかし私はこの事件はそのような天災を克服するに、これ以上のことができないというくらいほとんど完備に近い近代的な装備が施されていたと思うのです。レーダーがあり、無電があった、このほとんど完備に近いもの同士が衝突を起している。こうなりますとその場における直接の運航の衝に当った者の責任はきわめて重要である。それと同時にその非は国鉄にあるということもきわめて明確であるということは、総裁も御承認になっている。そして言明されている。それにつきましては私はこまかく申し上げるものではありませんが、それゆえにこの損害に対します損害賠償の責任もまたきわめて重要である。そのことによって国民に対しても、国鉄の日本交通機関としての信用を挽回する重要な要素をなすと思うのであります。この賠償責任について、それらを裏づけする予算が必要でありますから、その予算措置について総裁はどういうふうに処置されるお考えであるか、お伺いしたい。
  44. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 これは大体予測される金額が出ると思いますが、こういう事故に対する賠償というものは大体見てあるのであります。のみならずそれに不足いたしますれば、予備費の制度もございますから、金額にもよりますけれども、おそらく予備費等によってまかなえるのではないか、かように考えております。
  45. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 予備費ということでありますが、ただいま予算も審議されつつあるときでありますし、必ずしも予備費のみにたよらなくとも、必要な措置はとれるものじゃないかと私は思いますが、それについては十分予算措置をとられるよう、政府に折衝されるよう望みたいのであります。同時にまた昨年の青函間における船の喪失とあわせ考えますと、代行船等も非常に逼迫してくるのじゃないかと思いますが、これについでの対応措置ができるものか、伺いたい。
  46. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 今あそこの航行路には、お客さんを乗せます船が三そうございます。一つはいつも予備という格好になっております。それが今度ドックに入ることになっておりましたけれども、それを引き返させまして、とりあえず鷲羽、眉山という両船でもって運航する。それで今度は紫雲の模様を見まして、引き揚げが可能であるかどうか、修繕が可能であるかどうかというようなことを考えまして、その間にそういう措置でもってお客さんに御迷惑をかけないようにいたします。
  47. 井岡大治

    ○井岡委員 大臣初め関係の方が非常に傷心のときに、こういうお尋ねをするのは非常に酷なことでございますが、同僚議員からお尋ねになっておりませんので、一言お尋ねしたいと思います。  第三宇高丸の最高、最低のノットはどのくらいのものか、その点をまずお知らせ願いたい。同時に紫雲丸についても同様のお知らせをいただくと同時に、新聞ではおのおの十一ノットでもって走っておったということを報じておりますので、この点は非常に重要なことでございますから、お知らせをいただきたい。
  48. 篠田寅太郎

    篠田説明員 簡単に申し上げます。船のスピードは非常にスローで走ることはできますので、おそい方はある程度おそくなるのでございますが、あの海中におきましは潮流がそのときによって違いまして、三海里とか五海里とかありますので、そういう潮流のありますときには、その潮流に打ちかつよりも少し速いスピードで走らなければならない。これを幾らスローにしましても、それ以下に落すということはできませんので、それが最低のスピードになります。それから現在紫雲の事故がありましてから、運航時間をあまり詰めるということは、いざというときに避航その他の余裕がないというような点を考えまして、実は上り便については一時間であったものを六十五分、五分延べにいたしました。下り便については六十分のものを七十分。大体普通の航海状態におきましては、十一ノットから十二ノットというところの間を主としていたしております。それはそのときの風の方向とか潮によりましても違います。それからなお潮がありますから、実際の速力は潮に乗りますと十二ノットで走っておりましても一ノット以内――あれは横に走りますから、全部が全部潮の影響を受けませんけれども、〇・何ノットというものがふえるという状態考えられるわけであります。
  49. 井岡大治

    ○井岡委員 そうしますと当時の状況から申しますと、すでに注意警報が出ておった、こういう状態の中で、平時の運航をしておったということになるのですが、そうですか。
  50. 篠田寅太郎

    篠田説明員 紫雲丸が、先ほどお手元に上げたものにもございますように、その当時においては相当の視距離もございますし、また女木島のところに参りましたときにも相当視距離があったのでございますが、濃霧が出ましたのでエンジンをとめております。ただ第三宇高の問題でございますが、これもオゾノ瀬のところに来るまでは視界がよくきいておった。オゾノ瀬を過ぎますときにガスが出て来た。ガスが出ますと適当な速力を選ぶというのが建前になっているのでございますが、その点なお調べてみなければわからぬのですが、どうもそこをそのまま走ったというのは、そのとき船長がどういう考えであったか、まあその点あたりに欠陥があったのじゃないかと私考えている次第であります。
  51. 井岡大治

    ○井岡委員 そうしますと、今のお話で大体わかるわけですが、いわゆる運航については大幅に船長にその権限をまかしておる、こういうように理解していいのですか。
  52. 篠田寅太郎

    篠田説明員 さようでございます。
  53. 井岡大治

    ○井岡委員 私はそこにやはり大きな問題があるのではないかと思うのです。なるほど一つの船を運航する場合において、当然船長にある種の権限をまかすということは適当であろうと考えるのでございますが、濃霧とかあるいは天災というものは時として起ってくる問題です。従ってその場合における問題は、これは私はその船長措置にまかせてよろしかろうと思うのでございますが、あらかじめ注意警報が出ておる、こういう場合について、これを船長にまかせていくということは非常に危険なことじゃないか、こう思うのです。この点どういうようにお考えになりますか。
  54. 篠田寅太郎

    篠田説明員 それは気象の状況の変化というようなもの並びにそのときの潮流の変化というようなものも非常に複雑でございまして、これは陸上におります人には、とてもその場面を想像することはできないわけなんでございまして、航海運用については一応船長がやることになっております。ただ先ほども運輸省の方が御説明になりましたように、衝突の予防というような関係で、こういうことはしてはいかぬという規定を作って、一応制限をしておる、こういうことでございます。
  55. 原健三郎

  56. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 詳細な調査が精密に行われまして、その結果、恒久対策あるいは責任の問題なども具体化するものと思いますが、今この重大なできごとのとっさの場におきまして、国民として知っておきたいと思います二、三の点について、一つ大臣の所見を伺っておきたいと思います。いろいろ資料によりましたり、気象の関係から見ましても、あるいは濃霧、海流の関係などから見ましても、その他総裁のきょうの御説明あるいは大臣の御説明などによって見ましても、船長の錯覚があったであろう、あるいは衝突予防法による適切なる措置が行われなかった、こういうような辺はやはり相当重視すべきことであろうと思うのであります。われわれしろうとから考えましても、船長ともあろう者がどうしてそういうような場合にその事故を起したであろうというふうに、実に奇怪にたえぬ。そういうように考えて参りますと、この事件といたしましてはともかく当の船を運航する責任のあった船長が、自己の業務上なすべき相当な措置をとらなかったことに基因しているということだけは、そういう程度のことは今日言えるのであって、また新聞等の社会に与えている印象から見ましても、その程度のことはみな常識的にそうだということになっております。そういたしますと、これはやはり国鉄当局責任があるだけではなしに、これはいわゆる業務上の重大な過失、こういう範疇に属すべき案件でないかと思うのです。その程度のことは調査未了の今日といえども、私は確認して差しつかえないと思うのです。そこで今日このような重大なできごとを業務上の重過失を原因として起したような場合、一体責任の限界はどうあるべきなんだろうか。詳細な具体的なことは将来きまるといたしましても、今日その辺がどこかわからぬ。あるいは一部であるかもわからぬ、あるいは詳細調べてみぬとわからぬというような印象を国民に与えましては大へんだと思う。第一運輸行政に対する信頼感がなくなってしまいます。国鉄に対する信頼感もなくなってしまいます。また船に命を預けるというようなことにつきまして、一そう危惧の念が生ずるわけであります。でありますから、その辺はどこまで責任を負うのか、上はどこまでいくのであろうか、総裁もそうであろうか、さらに行政の監督の面におきましてもどうなるであろうか。ここらにつきまして一つ大臣の大綱の御所見をこの際出していただきたい。詳細、具体的なことは将来といたしましても、これがやはり行政並びに国鉄への国民の信頼を回復する一つの手でもないかと思いますので、この点を大臣から言明を願いたい。
  57. 三木武夫

    三木国務大臣 吉田委員指摘責任というものは一体どこまでいくのかという御質問ですが、これは具体的にどこまでいくのかということはお答えの限りではございませんが、申し上げ得ることは、今御指摘のような国鉄あるいは運輸行政、こういうものに対して国民の信頼を失墜させないように、国民の納得のいく処置をとりたいと運輸大臣としては考えておるわけでございます。
  58. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 もちろん信頼を落さないように、回復するように、また国民の納得するように、それは当然でございます。さるがゆえに責任をどうするか、こういうことになって参ると思うのであります。第一、当の責任者である国鉄総裁の立場はどうなるのですか。依然として国鉄の運営の改善などに当るということで相済むのでしょうか。私どもいたいけな小学児童が多数死んでおるあの姿を見たり、棺おけの前に涙にぬれておられる両親の写真を見ましたり、また海に漂っておるセーラーの服を着た小学生の姿を見るときに、国民はやはりその辺について、何か政府としてしゃんとした意思表示がほしい。あなたの行政の末端の問題について論議するならば、私は今こんなことを言うのではないのです。やはり政治は生きものなんですから――あなたにしても国鉄の将来についてはいろいろと構想を持っておられると思う。これほど不幸な目にあわされた国民の前に、最高の責任者としてはぴんとしたところを示して、そうして生きた政治のあり方を国民の前に出すということでなければならぬと思うのです。行政の事務をお聞きするなら、今は聞きません。それなら将来のことでよいのです。ここはやはり生きた政治ですから、行政の首長として内閣に列するあなたとしては、八千万民衆にこたえるという態度をもって、この点はもっと具体的に申し述べてもらわなければいかぬと思う。国民の納得するようにするぞ、行政の信頼を落さないようにするぞ、そういうようなことはおよそ政治性のないことである。そういうことは第三者の言う言葉であります。あなたとしては身をもって体当りで、この責任を明らかにするというその気魄と、そして責任感がなければならぬと思うのであります。従って大臣としてどうするかというようなことは、明敏なあなたとしては当然即座に出なければならぬ。それが出て初めて私は行政の信頼感を保ち得ると思う。いかがでしょう。
  59. 三木武夫

    三木国務大臣 それは、あるいはじんぜん日を過ごすというのでなくして、すみやかに国民の納得のいく処置をとりたいと考えておりますので、これで一つ御了承を願いたいと思います。
  60. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それならば総裁に伺いますが、今のこの問題は――どうもあなたと問答すると、いつもあなたの責任論ばかりにひっかかる機会が多くて、まことにお互いに不幸なことであります。数日前に決算で、鉄道会館の問題でやはりこの種のことが繰り返されたのでございますが、いかがでございましょう。国民に対して済まぬ済まぬというようなことでは、およそ実が伴わぬことになります。あなたとしては裸になって、もう一切を超越いたしまして、霊に対しても済まぬし、また国の財産を預かりなすっておるあなたとしても済まぬし、また国鉄運営のそれに対しても済まぬ、あるいはたくさんな、遠慮してでしょうけれども名前すら出されない従業員の諸君にも済まぬし、あらゆる観点からいたしまして、これはもうほんとにいろいろなものを断ち切って、そして相済まぬという気持が出てこなければいかぬと思います。でありまするので、責任の究極が一体どうなるのだろうかということについても、あなたも相当なお覚悟があるだろうと思うのだが、一つここではっきりと八千万国民にこたえるというような意味で、今の大臣のあの心中もわかりますが、これに対応いたしまして、あなたの心境も明白にしていただきたいと思います。
  61. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 お説の通りでございます。私としましては、むろん自分なんというものにかかわっておりません。すべてを超越して、この責任について善処していきたい、こう考えております。先ほど大臣も申されましたように、八千万国民が納得のいくような方向に向って考えていかなければならぬ、かように考えております。
  62. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 善処なさることはもちろんでありますが、不善処になるようなことは、そんなことはだれも想像もしておりませんです。誠心誠意全力を上げて善処なさる、これはもちろんのことでありますが、あなたとしては、これは依然としてこの地位を保っていき得るほどの軽少事であろうか、こういうことを考えますが、その点はいかがでしょう。
  63. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 そういうこともいろいろ考えております。
  64. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 次にこれは大臣の所見を伺いますが、これも詳細はまた他日に譲りまするが、一番大事な点といたしましては、国鉄内部の綱紀が弛緩しておるのじゃないか、こういうことも考えるのです。大体総裁が、船長が錯覚しておったのじゃないかと言われるような、そんな批評を受けるそのだらしなさというものは、一体どうしたものでしょう。また衝突予防法によって当然停船措置をとらなければならなかったものがとられなかったということは、一体どういうことなんでしょうか。こういうことを考え来たりまするときに、私はやはり船長におきましても――なくなった人をむちうつ意味じゃございませんが、やはりこれも一切を超越して考えていきたいのでありまするが、綱紀が弛緩しておったのじゃないか。くぎが抜けておったのじゃないか。こういうところからこの種の事故が起ります。われわれがあらゆる日常の小さい交通事故について見ましても、突き詰めればきっと原因があります。そしてどこか抜けておるときに、こういったあらゆる事故が生ずるものであります。すべての場合、人間のやったことで、天災、不可抗力によることは、これはもうほとんど絶無といってもいいくらいだと私は思います。でありまするので、この綱紀の頽廃綱紀紊乱ということは、これは国鉄の今日における最大の課題でないだろうか。あるいは、そうでない、綱紀は実に厳粛に、緊張して粛正されておるのだというふうな弁解もあるかもしれませんが、しかし何といいましても、私は綱紀の問題についてどうしても大きな反省がなければならない、そう思います。レーダーの操作等につきましてもとかく批判も出ておるらしいが、こまかいことはきょうは言いません。ともかく大まかに見まして、土性骨について綱紀弛緩という問題が最大の原因をなしておるのではないか、こういうふうに考えております。こういう点について思い当ることはないでしょうか。またそういう点についてはノーということになるでしょうか。これは一つ大臣、この点も倉卒の際に、大事故発生の瞬間に、国民が大きなショックを受けておるときでありますから、やはり重大な点の一つとして大臣の言明をいただきたい。
  65. 三木武夫

    三木国務大臣 一般的に国鉄の綱紀が紊乱しておるとは私は考えておりません。いろいろな悪条件のもとで、国鉄職員が非常に勤勉にやっておる面もあって、全体として紊乱しておるということを言うことは酷に過ぎると私は思います。しかしながら今吉田委員の御指摘のように、今度の事故等を考えてみて、その間にやはり一つの注意力の弛緩はなかったか、こういう点で遺憾の点のあることは申すまでもない。そういう点で、今後私も、当初に申し上げたように、これはどの企業体にも適用することでございますが、国鉄はことに人間の命に関係する一つの企業を預かっておるわけでございますから、どの企業にも増して常に重大な責任を自覚して、事故があれば必ず人命犠牲者が出るような結果になるのでありますから、そういう点については一段と綱紀を引き締めていきたい。これは部分的にいえば弛緩しておる面もある。これは今後この綱紀を引き締めていくということに対して、私は責任を感じておるということを申し上げておきます。
  66. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は、一切を超越するという観点に立って、今の綱紀問題を論じておるのであります。あなたが部下をかばう――部下と言うとあるいは少し語弊がありますけれども、国鉄公社の多数の従業員の立場をお思いになるという、その心情はわかります。また大臣の立場として、被監督の立場にあるすべての人にあたたかい気持を持って臨むという、そういう気持の発露としての今の、一般論として全体に綱紀弛緩とは思えない、それぞれその職務に一生懸命になっておると思う、これはもっともだと思います。ただしかしこの際は、やはりこの重大なできごとがあったのだから、綱紀問題も重要原因の一つではないか、こういう観点をはずしたら大へんだと私は思います。一々それをどうこう言うわけではありませんけれども、やはり問題の重点だけははずさないように一つ進んでもらいたい。綱紀問題に遺憾なしというようなことを前提にしてお扱いになりましたら、また不可抗力だとか、それに近いものだということに内部からなってきますよ。そうなったら大へんですよ。でありますので、やはりこの綱紀問題は、この背景をなすところの一重要要素である、こういうような観点から大臣としてこの問題に対処されることは、最も国民の望むところであります。でありますので、これは当初の責任論との関連において私は申しておるのでありまするから、あなたの気持もわかりますが、一つ善処されんことを願いたいのであります。  もう一つ伺っておきたいことは、こういうことがあるのじゃないだろうかと思うのです。たとえば対策といたしまして、弔慰金か見舞金が五万円か出された。それでもう一万円は四鉄の局長名でいただいた。六万円出されたという問題であります。私は人命を金で買うという思想があったら大へんだと思います。いやしくも人命は最高のものでなければならぬ。最高のものが五万円、六万円で買えるというような考え方があったら大へんであります。とかく人命損傷しました交通事故等におきましては、やれ生存年令が何ぼだから十万円が妥当であるとか、いや十五万円が妥当であるとかいうようなことが論ぜられております。これはやむを得ざる損害賠償の計算の結論だと思いますけれども、こういうふうな人命を物質的に換算するという思想が根本にあるのじゃないか。こういうようなことがたとい一名たりとも、一名の国民の命がなくなるやいなやの問題でも、ほんとうに全政府が全能力を上げてその防御に当るというくらいな、生命尊重の思想が行政府には一貫しておらなければいかぬと思う。そういうようなことについて、普通の生命を尊重をしないところのだらしがない自動車運転手のような、そんな中にみなぎっておるところの生命を金でかえる、損害賠償をすればいいじゃないかというような頭があったら大へんであります。でありまするので、およそ損害賠償には基準があるとかいうことが、先ほど山口君の質問に対してちょっと出ておりましたが、基準とかなんとかいう問題は末の問題であります。やはりまっ先に国鉄といたしましては相当な弔慰をしなければならぬ、こういうふうに考える。根本にそういうようなお考え方があるのじゃないか。それで洞爺丸の不幸な事件が起り、ここにまたすでに現われた七十数名の生命がなくなるというような事件が起るのじゃないか。あちらこちら至るところで犠牲者が生じておるのじゃないか、こういうことを実はおそれるのであります。もちろんそれはないと思います。もしありとすれば大へんでございます。生命は最も尊重されなければならない。生命なくして一体何が残りますか。何にも残りはしません。だからそれを評価する――評価という言葉もあるいは適当ではないかと思う。私はそれくらい生命に対する実に峻厳なとうとさを自覚するというところに出発してこない考え方、思想があるのが、こういう事件を起すに至ったのじゃないか、人命を尊重しないのじゃないだろうかということを実は心配しているのであります。こういうようなことについての大臣のお考え。またしからば一体そういうようなことについて、平素国鉄なんかが具体的に何か少しやっておるのだろうか。人命を預かっている。それはもちろん預かることはわかり切っておる。わかり切っておりますけれども、とかく損害賠償多いとか少いとかいって、たとえば青函の遭難のときにもずいぶん問題になっておる。これはやはり生命に対する考え方が根本から違う。でありまするから、死者に対して霊を弔うというような気持に一脈通ずるごとくに、生命は最高のものなりというような考え方で、常にこういう運輸に携わっておらぬところに、この原因があったのじゃはいかというふうに考えますので、大臣の所見を伺っておきたい。
  67. 三木武夫

    三木国務大臣 吉田委員の御指摘の生命を尊重するということが文明の基礎であるということは、全く同感であります。私自身ももとより鳩山内閣としても、いろいろ友愛精神と鳩山首相が説いておられる根底は、人命の尊重の思想が基礎であります。これがなければ文明は成り立たないわけでございますので、その御指摘はわれわれと意見を異にするものではございません。私が運輸行政をいろいろと監督いたしていきますのにも、この人命を預かっておるということに対して責任を自覚して、こういう犠牲をなくさなければならぬということが、運輸大臣に対しての第一の基本の責任だ、こう考えておるのでございます。そういう点でこういう事故の発生を防止するために、いろいろな運輸行政をとっていきますことは、みな究極においては人命を尊重したいという意図から、いろいろな運輸行政が出てきておる。いろいろそういう点に財政的にも制約があって、なかなか自分の思うようなことには参りません。けれども根底にあるものは、人命尊重というこの基本的な考え方については、強く責任を感じておるということを申し上げておきたい。
  68. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうであれば私はやはりこの際、最大限の弔慰をしなければいかぬと思います。最大限の損害賠償をしなければいかぬと思います。一つは人命尊重を具体的に現わす道でもあります。一つはまたそれによって国鉄が損害をこうむりますから、将来に対して一そう自粛、自戒、戒めの一つの契機にもなることと思います。そこでやはり最大限の賠償なり、弔慰方法をおとりにならなければいかぬと思います。いただいておる資料によりますと、桜木町の事故の際には最高百五十万円の弔慰金を出しております。ところで最低は十五万円、一体十五万円で人間の生命をまかなうというような、そういう考え方を持っておるのか。これはやはり少くとも今日の貨幣価値から見ましても、また一般を戒めるという上から見ましても、最低百万円くらいの金は出さなければいかぬ。国鉄に金があるとかないとか、そんなことは論外だと思います。場合によれば国の責任におきまして、一切の国の力を動員いたしまして、これに対処してもらわなければいかぬと思います。それで最低はやはり百万円くらい、こういうような線を打ち出していくくらいの意気込みをもって、弔慰なり損害賠償なりの方法考えなければいかぬと思います。そういうふうにつまり最大限の弁償なり弔慰方法を講ずる。最低百万円くらい、過去においての最高を最低にするというくらいの意気込みで臨んでいただきたい。具体的な話は要りませんから、そういう心がまえでやっていただきたい。これは大臣総裁両方から聞いておきたい。
  69. 三木武夫

    三木国務大臣 金額を指摘してのお話でございますが、この金額についてのお答えはできません。しかしできるだけのことをいたしたいと考えておるわけでございます。なお人命尊重については、単に弔慰金の問題だけでなしに、いろいろの根本的の問題その他の問題があり、それはやはり政治の根幹に触れる問題であります。これはそういう点で単に今吉田委員の御指摘になった弔慰金の額ということだけではなくして、政治全般について深刻な反省を加えなければならぬというふうに考えております。弔慰金の問題については、額を御指摘になってお話しになりましたけれども、この具体的の金額をどうということについては今申し上げられませんけれども、こういう不幸な事件で、しかも責任国鉄にあるという事件でございますから、できるだけのことをいたしたいという考えでございます。
  70. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 慰謝、弔慰等につきましては、国鉄自身に責任のある点でございますので、これはできる限りのことをして、御納得のいくようにしなければならないというふうに考えております。また安全の問題、人命尊重ということにつきましては、国鉄は自来三つの原則を持っております。安全、正確、迅速、安全を一番先に置いております。その三つの原則をもってわれわれも教育され、現在おる同僚諸君も教育されてきております。いつでも安全ということが最も根本的な考え方になっております。とりもなおさず、貴重なる人命をお預かりするからであろうと私は考えるのであります。
  71. 原健三郎

    原委員長 正木清君。
  72. 正木清

    ○正木委員 私は船舶課長というのですか、航海課長というのですか、わかりませんが、専門的にお尋ねしたい。  どうも何だか私らしい判断ですが、衝突原因がおぼろげながらわかってきたような感じを受けるのです。あなたの出された報告書に基いて私らしい質問をいたしますから、あなたも簡潔に御答弁を願いたいと思うのです。  まず宇高丸の方から質問をいたしますが、「航海後視界が約六〇〇米になったので、レーダーを発動し、一二〇度に変針して」こう報告書に書かれていますね。そうしますと宇高丸は、宇野から出て右へ右へと走ってくるわけですね。それから紫雲丸は、高松を出てこれまた右へ右へと走ってくるわけですね。そこで羅針盤を読んだと思うのですが、百二十度に変針したということは、宇高丸の方から見た場合に右へ百二十度変針したのか、左へ百二十度変針したのか、その点をまず御答弁願いたい。
  73. 篠田寅太郎

    篠田説明員 百二十度と申しますのは、真方位で出しました角度――これからぐるっと回りまして、それで百二十度という方向でございます。それで下り便のコースは、ここが宇野でございますが、この三井造船所の方がずっと西の方に回ってきます。そしてここがオゾノ瀬の西側、それからここが高松でございまして、非常にこちらでございます。ここで百二十度に変針して高松に向うわけでございます。
  74. 正木清

    ○正木委員 宇野の方から見た場合に、右の方に変針するのか、左の方に変針するのか。
  75. 篠田寅太郎

    篠田説明員 これは西から東の方に変針するわけであります。
  76. 正木清

    ○正木委員 われわれにわかりやすく、右か左か。
  77. 篠田寅太郎

    篠田説明員 左の方に変針をいたします。
  78. 正木清

    ○正木委員 そうすると今度は、六時四十分ごろ西行する汽船を避航するためにまた百三十度に変針したとなると、また左に寄ったわけですね。
  79. 篠田寅太郎

    篠田説明員 いや、これは左の方に行きまして、今度は右に十度寄っている。百二十度から百三十度になったわけですから、今度は右です。
  80. 正木清

    ○正木委員 それからその次に、六時五十分ごろ他船をレーダーでほぼ船首に認め、一分間その方位を監視したとあるが、約一分間その方位を監視したということは停船したという意味ですか、ただ監視したという意味ですか。
  81. 篠田寅太郎

    篠田説明員 それは停船したという意味ではございません。船が走りながら、レーダーに相手の船が映っておりますから、その動き方を見て、船が大体どっちの方に走っておるかということを、一分もじっと見ておりますと点が移動いたしますから、それで判断したという意味でございます。
  82. 正木清

    ○正木委員 それで監視したが、方位が変らないので直ちに百四十度に変針して、相手船の動静に注意したということですが、百四十度に変針したというのは……。
  83. 篠田寅太郎

    篠田説明員 それは百三十度のコースから、さらに十度右の方に寄っておるのであります。
  84. 正木清

    ○正木委員 そうすると常識から言うと、高松から出た紫雲丸も右へ右へと走って行くことになっておるのでしょう。
  85. 篠田寅太郎

    篠田説明員 そうでございます。
  86. 正木清

    ○正木委員 そうですね。それから宇野から出てきた宇高丸も、あなたの言うように百二十度から百三十度右へ右へと寄ってくるわけですね。そうするとだんだん右へ右へとこちらが離れてくるのですから、理屈の上からいうと衝突原因などあるはずがないわけですね。そうでしょう。
  87. 篠田寅太郎

    篠田説明員 さようでございます。
  88. 正木清

    ○正木委員 ところが、その理屈なのにもかかわらず、百四十度に方位が変り、他船の霧中信号も左舷に聞えたので、百四十度に変針して相手船の動静に注意していたところ左へ方位が変り――左へ方位が変りというのは紫雲丸のことをさしているのですから、宇高丸から言えばそれはどうなんですか。宇高丸は百二十度から百三十度、百四十度と、右へ右へこう行ったわけですな。それから紫雲丸高松を出て、その航海法に基いて右へ右へと進んできた。そこで百四十度のところでにわかに左に見えたというのはどういうことなんですか。この報告書によると「注意していたところ左へ方位が変り」とあるのですが……。
  89. 篠田寅太郎

    篠田説明員 実際にこのコースをじかになまのまま書いていきますと、ずっと西側に寄るのでございます。実際には紫雲丸と当らない位置に行くのでございますが、このときにちょうど東流の潮がありましたので、その潮の流れによって、位置が東側に寄っていたのではないかと今推定されるのでございます。
  90. 正木清

    ○正木委員 私は西とか東とかわかりませんが、常識上から言って、宇高丸は百二十度、百三十度、百四十度と、あなたのおっしゃるように右へ右へと行った。紫雲丸も航海法に基いて当然右へ右へと進んできた。ところがこの報告書によると「方位を監視したが、方位が変らないので直ちに一四〇度に変針して相手船の動静に注意していたところ左へ方位が変り」と、その左へ方位が変ったのは紫雲丸なんですね。
  91. 篠田寅太郎

    篠田説明員 そうでございます。
  92. 正木清

    ○正木委員 そうでしょう。しかもその霧の中で霧中信号も左に聞えた、こう報告書に出ているから私にはおかしいのです。あなたは専門家なんだし、私はしろうとなんだから、私にわかるように御説明を願いたい。
  93. 篠田寅太郎

    篠田説明員 それで概括的にお話し申し上げますと、紫雲丸は当時右へ右へというふうなコースをとっておりません。紫雲丸は初め港外を出まして北西に向って進みまして、北西からさらに四分の一点西へ変針しておるわけでございまして……。
  94. 正木清

    ○正木委員 変針はどっちの方に変針したのですか。
  95. 篠田寅太郎

    篠田説明員 これは左側でございます。
  96. 正木清

    ○正木委員 そこに一つ大きな間違いの原因が出てきたのです。右へまっすぐに行くべきものを、左に出たこと自体が大きな間違いじゃないか。
  97. 篠田寅太郎

    篠田説明員 そういう点が今回の……。
  98. 正木清

    ○正木委員 だからそういう点を君はこの委員会で明らかにすべきじゃないか。きのうから僕はそう言っているじゃないか。君たちはわかっているにもかかわらず、この委員会で明らかにしないと私が言っているのはそれだから、あなた、はっきり言いなさいよ。それをはっきり言えば、もう結論は、国鉄の全責任にあることは議論の余地はないのですから、あとは弔意の問題が残っておるだけで、あとは何も調査しなくても、こういう単純なものは、あなた方専門家から見ればすぐわかるじゃないか。わかったら明らかにして、責任の具体的なものはこうなんだということを、国民に知らせることが必要じゃないか。それを明らかにしなさい。
  99. 篠田寅太郎

    篠田説明員 実は本件の事故については、いろいろの要素があるのでございますが、まず紫雲丸のとりましたコースがいいかどうかというような問題、それから第三宇高丸のとりましたコースの問題並びに速力の問題、それから当時のガスについての航法の問題、それから船自身が接近しましたときの船の行動の問題というような点について、過誤がないとは申し上げられませんが、こういった点をもう少し詳細に――いずれにいたしましても錯誤があったということははっきりしておるのでありますが、そういった点についてさらに詳しくしないと――概略の問題はそういうことでございますが、さらに詳細にいたしませんと、どこに重点があるかということがわからないのであります。
  100. 正木清

    ○正木委員 僕の常識判断では、紫雲丸が当然右の線を行くべきものを、あなたのおっしゃるように左へ入ってしまった、左へ入ってしまったから宇高丸に右腹をやられたのだ、紫雲丸がこの航路法に基いて正当なる道を行けば、当然衝突しなくて済んだんだというように常識判断されるのだが、その点について答弁してもらえばいい。
  101. 篠田寅太郎

    篠田説明員 それは紫雲丸も幾分西の方へ――西の方といいますと左の方へ寄ったということも事実なんでありますが、第三宇高自身もコースのとり方及びその当時の潮流から参りまして、右の方へとるべく努力をしていた結果は、百二十度から百三十度、百四十度を引いておりますからわかるのであります。わかるのでありますが、このときの潮流がちょうど西から東の方、つまり船を左の方へ流す条件下にあった。それでちょうど行き合い船のような格好になって、ガスの中で間近に発見して、お互いにかじを引いて逃げようとしたが逃げ切れなかった。これが直接の原因であります。
  102. 正木清

    ○正木委員 直接の原因がそこにある……。そこできのうきょうかかって、その直接の原因が明白になりました。そこで私は聞きたいのだが、ここに欠陥があるのだと思う。これは長崎さんがおられるのだが、国鉄としてやはり運航時間に非常なスピードをかけておるために、無理があるのじゃないか。これは青函の場合にがい経験をなめたのです。出港の命令権が一体どこにあるのだ、船長ほんとうに持っておるのか、それともおかにおるところの管理局長が持っておるのかということで、当委員会でずいぶん議論しました。この議論の最終結論はまだ出ていないのです。ところがあなたも御存じのように青函であれだけの事故がありますと、そのあとではちょっと風が吹いても船長は出さぬのです。これは統計にはっきりと出ております。もうちょっと風が吹くと出さぬのです。出して事故を起して責められるより、安全地帯におった方がいいわけですから……。国鉄としては責任の所在を当委員会で明らかにしないのだから、私はこの運航時間に非常な無理があるということが一つあげられるのじゃないかと思う。これは先ほど船舶課長からこの時間の点を全体として調整をとったということから考えてみても、一点言い得られるのです。必ずここに非常な無理があるということ、それから出港の命令というものの所在がいまだに明確でないのだ、だから航海法から言うと、こういう場合には停船することも必要なんだ、こう言いながら、一面課長の口から聞くと潮流の関係で、潮流を乗り切るためには相当程度のスピードも出さなくちゃいけないのだ、こう言っておるのです。だから専門的な行政面について、私は総裁と課長からもう一つ簡単に御答弁を願っておきたい。そうして私の質問はきょうは打ち切る。
  103. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 連絡船の性質上、その調節は確かに正木委員のおっしゃる通りでございます。しかしといって航海の安全ということが、最も重大な要素でございます。従いまして港外に出航するとか、航海を継続するとか、停船するとかいうようなことは、そのときの情勢に応じて船長が決定することになっておるのが、法規の建前でございます。
  104. 篠田寅太郎

    篠田説明員 先ほど船のスピードの問題を申し上げましたが、実際航海いたしますときは十一か十二の間を使っておりますが、実際に船自身として走る場合には、もう少しスピードが出るのでございます。ある程度しけた場合には、エンジンをよけい回しませんと定位がとれないのでございます。そういう余裕を持たしておきます。余裕を持たすということは、結局船を運航する人が、操作をする場合に余裕を持って仕事ができるということになるわけであります。そういった点も考慮してあるわけでございます。  それから潮流と船のスピードの話がございますが、これは御承知のように三ノット半の潮流がございますれば、三ノット半以上のスピードを維持いたしませんと、船位が一定しないわけでございます。船位を喪失することになるわけでございます。そういった点を考えまして、船長はそのときどきに応じて操船をやるわけでございます。
  105. 原健三郎

    原委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこの程度で散会いたします。    午後零時五十六分散会