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説明員(
福島慎太郎君) 御指摘の保安
解雇という問題は、まことに重大な問題でありまして、これがまた
調達庁に
関係します
米軍労務の最も重大なデリケートな問題であるということは、事実であります。それに
関連いたしまして、われわれが今後なお一そうの努力をいたさなければならないということも、御指摘の
通りであります。ただ、まあ私は実は
調達庁長官になりましてからさほど古いことではございませんので、一昨年の終りごろ初めての
ストライキの問題でもめましたころに、前内閣当時に頼まれまして、ずっと以前に廃業して民間に一般人として暮しておったのでありますが、頼まれてまた
役人になったばかりでありまして、そのときに格別私といたしましては
役人に舞い戻らなければならないという
事情もありませんでしたし、どこに義理があるということもなかったのでありますが、実は私は戦争以前は
外務省で職を奉じたことがありまして、それも全部
アメリカで暮しておりましたので、日米
関係ということには相当の興味も持っておりましたし、また義理もあるように思っておりましたので、
駐留軍労務のこの
関係から日米
関係が悪くなる一方だと、若干でも援助できればという気持でなったわけでありまして、従ってそういう
事情で今日この職を汚しております次第でありますので、初めに御指摘のありましたような自主的な
交渉という面は特に力を入れておるつもりでございます。
調達庁従来の過去数ヵ年の経緯には、
占領時代もございましたし、御指摘のような傾向もあるにはあったのではないかと思いますが、過去一年半の間にはでき得る限りそれを改めて、自主的な
態度で
アメリカ軍との間に話し合いを進めて行く。またあらゆる方法を用いて
アメリカ側を説得する。軍が聞かなければ大使館、大使館が聞かなければワシントンというような、私
どもの経験を通じてあらゆる努力をしておるつもりであります。冗談のようになりまして、まじめでないという御批判をいただいては恐縮なんですが、私は本当に本気で言っておるつもりなのでありますが、実は
アメリカ人たちに対しまして、先般
仙台に参りまして、一昨日帰って参りましたが、その際に、
先方の司令官にも申したのでありますが、私は
調達庁の
長官として
アメリカ軍にかわって
使用主という
立場でこの
労務の問題を見ておることも事実であるけれ
ども、同時にまた日米
関係を心配する一人として、円満に問題が解決するということに重大な利害
関係も持っておるつもりである。私はまあ在来年数も非常に長い。
外務省の
関係者の中では最も長いのでありまして、
アメリカ人に対して言うのでありますが、私の家族で
日本籍を持っておるのは私一人で、あとは全部
アメリカ人なんだ、従って私の子供
たちはみんな
アメリカ人で、お前さん
たちは
アメリカの兵隊で、肩章か何かつけてえらそうな顔をしておるけれ
ども、単なる
アメリカ人ではないか。私は
アメリカ人でこそないけれ
どもアメリカ人の父である。一段上なんだ。ジョージ・ワシントンみたいなものだ。
アメリカとの
関係を心配してやっておるのだから、そんな兵隊の事務上の話なんかで私の言うことを聞かないなんということは
考えられないということを再三再四言って来ておるわけでありまして、まだ自慢するわけに参るほどの成績も上っておりませんけれ
ども、
態度としては御指摘になりました点をよく
考えて行動させていただいておるつもりであります。従いまして、自主的にでき得る限り
アメリカの主張と
日本の
労務者の
事情との間に調整をとって、具体的な解決ができるようにして参るということにつきましては、相当の努力をしておるつもりであります。ただ特殊な問題、ただいま御指摘になりました保安
解雇のように極めてデリケートな問題につきましては、思うようにゆかない面が多々ある。
相手が
軍隊のことでありますので、これが保安上の問題で
解雇――保安
解雇というのは、その保安上の危険を排除するということ、また英語と
日本語との差の問題もあるのでありますが、
先方の言っていることは保安上の危険を排除する、セキュリティのリスクを排除する、従って保安上の危険として排除されるということほ、何も犯罪者を
解雇するとかそういうことでもなんでもないのだ。またその人がいいとか悪いとかいう問題ではない。
軍隊としての安全を維持するために、たとえば先般非常にたくさん行われました島根県の美保の保安
解雇のごとき、大ぜい出ましたが、その理由が同じような理由で
解雇された人もあり、
解雇されない人もあるというときに、つまりあそこら辺は全部親戚
関係でつながっておりますから、なんといいますか、
米軍にとって危険思想の持主である者がたとえば一人あったとして、その親戚その他は危ないから保安
解雇した。その人は何も
アメリカ軍がその人目体が危険と認めておるわけではないのだ、こういう
説明をするわけでありますが、それならばほとんど全部が親戚みたいなところで、こっちも親戚、あっちも親戚、同じようなところで、なぜこっちだけ
解雇して、あっちを
解雇しないのか、どっちも同じような人であるということで、親戚
関係も同じようである。しかし片方の人は平生の性格が安定しておる人である、片方の人は性格的にそそっかしい、だから親戚
関係として同じような危険性があるというのだが、性格の安定しておるほうは大丈夫だろう、そそっかしいほうは持って帰れと言われておらないものを持って帰る、そういうものは危ないということで、従って保安
解雇の
一つ一つが犯罪とかそういうわけではない。こういうことを言うわけでありますが、いくら保安
解雇でも
解雇は
解雇である。現在の
制度では
アメリカが保安上の危険と認めれば出勤停止をすることができるわけです。それで停止をいたしまして、その間は六割の俸給を払わなければならないのですが、そうして
日本側との手続によって
解雇に持ってゆくということになるわけです。われわれのほうとしては、事実をわれわれのほうの
立場においても調べまして、不当な事実認定をされているということがあれば、もちろん抗議は申し込むのですが、
先方はその事実の
説明がなかなかむずかしいということなんです。
説明をしてしまうと一切合切白状してしまうような形になる。どうも
説明ができない。
説明をしないで
解雇ができないということから、もみにもみましたあげくに、現在ございますのが、保安
解雇の
基準といるものがA、B、Cと三つある。で、まあその一人々々について、こいつはこういうことと、こういうこと、こういう
関係だからと言うといかんから、A、B、Cのうちのどれだということを言うから、あとは大体それで察してくれ、それで仕方がないということで、これは組合も入ったのですが、それで現在の保安
解雇基準というものが定まりまして、
米軍とわれわれと組合との間に意見の一致を見まして、個人々々の
事情が言えない場合には保安
解雇基準だけ示すということになっておるわけです。なお言えるのであれば、
解雇ですから言えるところまで言うのが至当でありますけれ
ども今のところの取りきめは保安
解雇基準をA、B、Cのいずれかということを示すということになっておるわけなんですが、これすらも示さないという事例もあるにはあります。がしかし大体われわれに関します限りは、保安
解雇基準の指定とか、あるいはそれ以上の理由も示しておるのでありまして、われわれとしては納得がゆくところまで
説明を求めなければ
承知せぬという
態度はとっております。しかしじゃ
調達庁長官には
説明するが、
向うに
説明してくれるなという問題もときどきある。これもやむを得ませんから、われわれの良心を満足することができれば、
先方が若干無理でもいたし方がないという
解雇の仕方もあるわけです。なおそういう
解雇をわれわれの主張によって取り返させたりなんかしておるものもありますけれ
ども、いずれにいたしましても
日本の
法律制度といいますか、憲法上認められた
権利というものと、
軍隊が自己の安全のための危険の排除という非常にデリケートな
関係のところがありまして、保安階雇の件はしょっちゅうもめるのであります。先般も現在行われております
米軍と
日本政府並びに組合との間に話し合いがつぎまして、現在の保安
解雇における付属協定を
アメリカ側が改訂したいということを強く申し出てきたのでありますが、私
どもはあくまでがんばりましてこれを断わったという事例もあるのであります。
保安
解雇問題につきましては
日本側は保安
解雇は不当な
解雇が行われやすいし、また行われた事例も多いということで、組合側は非常にこれに不満であると思いますが、同時にまた
アメリカ側が現在の保安
解雇の規定は非常に不完全であって、もっと強化したいという非常な不満を持っておって、われわれはちょうど間に入っておるという実情でありますので、確かに御指摘のような保安
解雇の問題はむずかしい問題ではございますが、同時にまたこれを扱いますわれわれの
立場も非常にむずかしいところに追い込まれておりまして、この現状の改良というものは事実上の
関係で改良してゆく以外になかなか解決の方法はむずかしいだろうと思っております。幸いにしてだんだんに
アメリカ側もその保安上の危険を調べます際に、
自分たちの
判断だけでなくて、
日本政府に相談するという事例がふえて参りましたので、少しは改良する見込みもあるのではないかと
考えております。