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1955-01-21 第21回国会 参議院 労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年一月二十一日(金曜日)    午後二時四十四分開会   ―――――――――――――   委員の異動 十二月二十一日委員平林剛辞任につ き、その補欠として菊川孝夫君を議長 において指名した。 十二月二十二日委員具根登辞任に つき、その補欠として高田なほ子君を 議長において指名した。 一月十九日委員高田なほ子辞任につ き、その補欠として阿具根登君を議長 において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     藤原 道子君    理事      劔木 亨弘君    委員            加藤 武徳君            山本 米治君            阿具根 登君            菊川 孝夫君            赤松 常子君            長谷部ひろ君   国務大臣    労 働 大 臣 千葉 三郎君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    調達庁長官   福島慎太郎君    法務省民事局参    事官      平賀 健太君    大蔵省銀行局特    殊金融課長   加治木俊道君    労働省労政局長 中西  実君    労働省労働基準    局長      亀井  光君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件労働情勢一般に関する調査の件  (駐留軍労務者労働問題に関する  件)  (政府労働政策に関する件)  (労働金庫の運用に関する件)  (調達庁における人員整理に関する  件)  (会社更生法適用会社における労働  問題に関する件)   ―――――――――――――
  2. 藤原道子

    委員長藤原道子君) それではただいまから労働委員会を開会いたします。  まず駐留軍労務者労働問題及び調達庁における人員整理の問題を議題といたしたいと思います。  ただいま外務省安川第三課長労働省中西労政局長が御出席でございますので、御質疑をお願いいたしたいと思います。調達庁長官内閣委員会のほうへただいま出ておられますので、後刻こちらへ御出席でございますから、あらかじめ申し上げておきます。ただいま安川課長が三時で退席されたいということでございますので、この面から御質疑をお願いしたいと思います。では本件につきましては、最近の交渉、その他について要求いたしておきましたので、その後の状況について一つ説明を願いたいと思います。
  3. 赤松常子

    赤松常子君 昨日の新聞でもそういう問題が出ておりまして、解雇の問題が取り上げられておりながら、最近それがまた引っ込められたという事情一つに、やはり選挙に際しまして、労働者を刺激してはならないというような意向から、急にそれが変更されたというようなことで、ちょっと不明朗と申しましょろか、そういう政策に利用されているような印象を受けるわけであります。ここ最近の保安に関する解雇問題もさることながら、整理による解雇問題についても事情を少し話してもらいたいと思います。
  4. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 委員長から申し上げますが、昨日新聞に出ておりましたのは調達庁の問題で、調達庁はちょっと遅れて参ります。駐留軍労務者が直接雇用の面でずいぶん不当労働行為のような問題が各所に起っておるのです。昨年の末から二、三問題を当委員会で取り上げまして、日米合同委員会でこの問題は十分強く要望してほしいということを労働省のほうへも申し出てあるわけで、幸い中西労政局長日米合同委員会労働部議長おいでになるので、従ってその後の折衝の結果がどうなっておるかというようなことのお見通しと、全国的にこういう情勢が起っておるのじゃないかというようなことについても、もしおわかりだったら、最近の問題をここで御説明願いたいと思います。
  5. 中西実

    説明員中西実君) 駐留軍労務の問題となっております事件は、現在青森三沢基地クラブ従事員解雇問題、それから東京ユニオンクラブ従業員解雇問題が、当面私のほうにおいても関心をもってこれの処理に努力をしておるところでございます。三沢地区解雇問題につきましては、これは地元労働組合側不当労働行為事件として青森地労委に仲裁を申し立てておるのでありまして、これは昨年の十一月二十六日に申し立てております。地労委は十二月二日に現地調査を行い、これに対して米軍側弁明書をこの二十四日までに出すということになっておりまして、なお来月の十一日に第一回の審問が行われる予定でございますが、現在のところ米軍側としましても、協力的態度をとってくれておりますので、この労働法によります規定の手続によりまして、問題が処理されるのじゃなかろうか、しばらくその推移をみたい、こういうふうに思っております。  それからユニオソ・クラブ従業員解雇問題につきましては、その後、問題が東京都の問題でございますので、東京都の労働局に厳重にこの処理推進方を依頼いたしまして、東京都はその後、軍側折衝をしておりまして、八名解雇になりましたうち、一名はそれを取り消しまして、七名の者について問題があるのでありますが、向う担当の少佐の人が、ごく近いうちに、できれば、あしたあたりこの七名の人と会って、いろいろと言い分を聞いて善処したいという回答がございましたので、その結果をわれわれ見たいというふうに考えております。なお、このほかにユニオンクラブにおきましては、労働基準法違反が相当あるというようなことでございましたが、これにつきまして地元監督署がこれの是正に努力しつつあるのでありますが、これに対しましては、やはり関係の軍の責任者が、今まで相当な違反があった、そこでこれを訂正するということで、現在基準法の順法につきましても、いい方向に向っておるということでございました。なおこの点につきましても、是正の確証をつかみたいというので、さらに折衝を続けたいというふうに考えておる次第でございます。  なおそのほかに全般的な問題といたしまして、不当労働行為の場合、軍が十分に労働委員会調査なり、あるいはまたその下しました決定に対して協力をするように、これは、われわれとしましては当然と思うのでありますけれども、なおそこらの円滑を欠いておる向きもございますので、ごく近く合同委員会の小委員会向うに申し入れまして、十分に話合いをしたいというふうに考えております。  大体以上でございます。
  6. 赤松常子

    赤松常子君 ちょっと中西局長に伺いたいのでございますが、事件が発生いたしまして解決いたします期間が、日本労務者に問題が起きた場合の、起きてから解決するその期間と比較いたしまして、何か長くかかるようなことをしばしば私は聞くのでございますが、そういう点はいかがでございましょうか。それに引き連れまして、その間の生活保障というものが十分守られておるのでございましょうか。
  7. 中西実

    説明員中西実君) 不当労働行為の問題で軍側関係のできましたのは、最近仙台事件、それから今の三沢事件、これが実は初めてなんでございます。それで占領中には一、二神奈川その他でございましたけれども、いわゆる独立後は正式に労働委員会が取り上げた事件はなかったわけであります。それで十分に向う協力してくれれば、一般日本企業におけると同様の速度で進むわけでございます。そこいらが、たとえばこ間の仙台事件にいたしましても、向うが呼び出しに応じようか応じまいかというようなことで、少しごたごたしたことがございまして、そういうようなことで、もし向うが欣然と協力しませんければ、非常に延びるという心配があるわけであります。で、今実はテスト・ケースなんで、そういうことのありませんように、実はごく近いうちに合同委員会の小委員会を開きまして、向うに十分に、日本労働法に基いてあるいろいろの制度、手続きには、十分に協力してくれということを申し入れて、全国的にそういうことのないようにしたい。こういうふうに考えております。
  8. 赤松常子

    赤松常子君 占領中の例に比較したわけでございますけれども、いつもこちらが不利であって、そうして長引いて結末もうやむやに近いような扱いを受けておる例がずいぶんございますものですから、ことに独立後はどうぞ日本法律がしっかり守られるように、ぜひ処置して頂きたいと要望いたします。
  9. 阿具根登

    ○阿具根登君 局長お尋ねしますが、うわさであったらば、それでうわさということにしてもらいたいと思うのですが、私たちが聞くところによりますと、駐留軍労働者に対してスト規制法考えておられる。今のような姿で、非常に駐留軍のほうから何かストを規制するような考えを持って折衝されたように聞き及んでおるが、それはどうであるか。それから、そうでない場合には、現在今御質問があったような直接雇用にするか。今調達庁を通じて間接雇用をしておるから非常に工合が悪い。直接軍が雇用して、そうしてクラブなんかでやっておるような態度をとる、こういうようなことも聞いておりますが、この二点については、何かお聞きになったことがあるか。お考えはどうであるか。
  10. 中西実

    説明員中西実君) ただいまの点は、昨日の日本タイムスにも出ておったようなので、私より福島長官のほうが直接に御存じなんで、長官のほうから……。
  11. 阿具根登

    ○阿具根登君 それじゃちょっと……。福島長官に御答弁を願うならば、もう一つ、聞いていいかどうか非常にむずかしいのですが、これもまた聞きでですが、私は直接聞いておりません。調達庁担当大臣労働大臣から防衛庁長官にかわる、こういうようなことが政府で言われておるというようなことも聞きますが、それもあわせて一つ答弁願いたい。
  12. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 駐留軍労務者関連いたしまして、スト規制の問題というお話でございます。これはうわさでお聞きいただいたということでありますが、そういう話があることは事実であります。アメリカ側にそういう希望があるということであります。私どもはまだ事務的にこれを相手にいたしておりません。従いまして今日スト規制の問題は具体化いたしませんけれども、今後アメリカ側がどの程度の強さの希望でこれを繰り返すかということで、今後の問題になる余地はあると思います。今日の問題ではございません。  それからなおスト規制と申し上げましたが、これはストライキの禁止ということ、それを単独に立法する場合に、いわゆるそれをスト規制の形で行うか、あるいは駐留軍労務者身分変更の形で行うか、それはいろいろやり方は分れて来るわけでありまして、いわゆるスト規制という形だけで出てくるかどうか、それはわからないと思いますが、いろいろ御承知通りに、駐留軍労務者関係いたしましては懸案が多うございますので、これの解決に関連して今後とも問題となって来るであろうと考えておりますが、ただいまのところまだアメリカ側希望であるという程度でありまして、日本側としては一応かかり合わないという態度で推移しているわけでございます。なお、これに今関連といいますか、関連はしてないようにも思いますが、ディレクト・ハイヤー、軍の直用にする、調達庁間接雇用を廃して、軍の直用にしたいという問題もこれまたございます。これまた、しかし極東米軍と申しますか、極東米軍を統轄する司令部と私との間の具体的な話にはなっておりません。しかし陸海空いわゆる三軍のそれぞれの下部機構おいでは、そういう希望を持っておる事実はあると承知しております。で、その希望極東軍司令部へ伝わりつつあるところであります。従いまして極東軍司令部からは私どもに直接まだその交渉はございませんけれども、これは先ほどのスト規制問題以上に、日本政府と申し上げても差しつかえないと思いますが、私どもは絶対反対立場をとろうとしております。従いまして、直用問題が現実に表に出て、それは問題とはなるでありましょうが、労働者諸君に迷惑をかけるというような事態には、私に関する限りしないようにする党悟もまた自信も、ある程度持っておるつもりでありますが、今のところまだ表向きの交渉事項になっておらないということでございます。  なお、最後お尋ねございました、千葉大臣調達庁担当大臣となられました以後、防衛庁長官である大村国務大臣との間に担当変更するという問題がありましたことは事実でありますが、その担当変更するという問題としては、一応大村大臣希望せられないということで解消いたしました。しかしながらそれ以上の問題として、機構調達庁防衛庁関係をどう調整するかという問題は、今日引続き討議されておるという状況であります。お尋ねになりました担当大臣変更という問題は解消いたしましたけれども機構上の問題としての研究が続行されておるという実情でございます。
  13. 阿具根登

    ○阿具根登君 三点お尋ねいたしましたが、第二点は、はっきりと、もうそういう直接の雇用制度に対しては反対をしておるのだという御意見をお聞きいたしましたが、第一点につきましては、非常に自主性のない、相手出方によっては考えざるを得ないのだと、こういうようなふうに私はお聞きして非常に残念に思うのですが、長官として、十六国会にスト規制法が出された場合のこともお考え願って、その後どういうように電産、炭労労働者が進んでおるかということもお考え下さったならば、おそらくこういうスト規制法、あるいはそういうのに似た、それより非常にひどいのが出るかもわかりませんが、そういうのに対しては断固として適用することができないのだ。極端に申し上げますれば、たとえアメリカ人であろうと英国人であろうと、日本において仕事をする場合に、日本労働者を使う場合に、日本労働法以外の法を押しつける、あるいは向う考え法律を押しつけるということに対して、それを反撥するというようなことでなくて、出方を待っておられるというようなことに受け取れるのですが、そういうようなお考えですか。
  14. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 正直にありていに申し上げますと、そういうような考えだと言わざるを得ないのでございます。それはまあ向うの言っている理屈もありますけれども、今日極東軍日本政府との間に行われておりますいろいろの、種々雑多の懸案その他の関係もありまして、はっきりとストライキ問題はこれを蹴ると……一応まあ蹴っておるわけなんでありますが、蹴るという最後の腹はきまるかどうか、これからの問題になるわけであります。それは先方の申しておりますことは、日本においては労務関係というのは、政府が人を雇用しておるという関係は、公務員という関係になっており、勿論ストライキはできない。国鉄等公共企業体は、ストライキが一応規制されて方法がきまっておる。公共企業体ストライキはできない。電産、炭労に至ってもストライキは規制されておる。米国陸軍は、軍隊は電産、炭労以下であるか。こういうことを言うわけであります。外国においては、軍隊が人を雇用するという関係は、一般民間産業とは違ったレベルにおいて、違った法律においてなされておるというのが例である。不幸にして日本軍隊がないから、自衛隊、あれを軍隊とは称さないから、軍隊に対する日本側法律がないだけの話であって、法律がないということであって、労働三法が一般産業なみであるということは軍隊の待遇としては不当である。よきにつけ悪しきにつけ行政協定を締結して、民事についても特別法ができ、刑事においても特別法ができたから、労働関係においても特別法ができていいというわけでありまして、これは私どもあまり好かないのでありますけれども十分先方の言わんとする理屈その他も出て参りませんと、好く好かないの面におきましては好かないのであるということは申し上げられるのでありますが、断固としてこれを蹴るということになるかどうか、今のところは進んで、アメリカ側の出てくる前に、出してもだめだということを言う決心のところまでは私はついておりませんと申し上げる方が正直であると思います。と申しますのは、駐留軍労務者関係はあまりにも懸案が多過ぎる。何もかも片づいておらない。そしてこのスト権の問題、根本的な問題になったときに、これらの問題が片づくのであろうかどうかということも、私ども立場としては考えざるを得ない。私ども労働者的立場ではないのでありまして、使用主的立場をとらざるを得ないのでありますので、結局労務者利益が守られるかどうか、利益を増進することができるかどうかということが私の仕事判断の境目になるわけでありまして、そのために、そのスト権がなくなるということ、スト権がなくなるということと、問題が全部解決されるということのバランスをとって考えまして、それはまあ労働者権利の最高のものはスト権であるのかもしれませんが、私は不幸にして使用主でありますものですから、実質的な利益が守られるスト権は、ストを楽しむためにあるのではなく権利を守るためにあるのであろう、しからば実質的利益を守られてあればスト権考ええられるのではないかというような考え方も、時にすることもあるわけであります。いずれにいたしましても問題がせんじつまりますまで、まだ考えがきまっておりませんと申し上げた方が正しいかと思いますが……。
  15. 阿具根登

    ○阿具根登君 非常に率直にお答え願って、私は非常に困ったんですが、長官使用者立場考え願うということについて私は相当違った考えを持っておるわけです。しかし調達庁長官として米軍の要求に応じて人を出しておられるので、私はその立場はわかりますけれども駐留軍労働者に対して非常に問題が多過ぎて、そして片づかない面もあって困るんだと、こういうことは何がその原因になっておるかということをお考えになれば、私はおのずから解決できると思う。これをストライキをなくするから、あるいは規制したならば、そるいう問題が起らんのであるかということになれば、ますます私はそういう問題は起ってくるのではないか、こう思う。そういう点から考えて、どこの労働者でもストライキを喜んでやる労働者はおらない。ただ長官がちょっと言われましたのですが、ストライキをもてあそんでもらっては困るということをおっしゃったのですが、それは、ただもてあそんでいる労働者というものはおらないと思う。いよいよどうにもできなかった場合に最後の力をふりしぼっておる。そういう武器を取り上げてしまうことが労働者のためにいいのか、あるいは事業をやる上にいいのか、あるいは調達庁長官としての立場からもいいのかということを考えます場合に、そういう労働者に多くの権利を与えておってこそ、はじめて交渉においても妥結もみられて行くし、事業も進んで行くのではないか。私はこういうふうに思うのですが、その点は、やはり、長官使用者側として、スト権を取ったほうがいろんな難問題は解決するのだと、こういうふうにお思いになるか、もう一度お聞きしたい。
  16. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 使用主ということにはたしかになっておりますが、スト権を取ったほうが難問が解決すると考えているのでは――言い方が悪かったかも知れませんが、さような考え方ではないのでございまして、難問が解決するとわかったときに、スト権との取りかえで解決するとわかったときに判断に苦しむこともあろうかということを申し上げたつもりでございます。
  17. 藤原道子

    委員長藤原道子君) お諮りいたしますが、外務省安川さんがもう退席されたいのですが、外務省側に対する御質疑がございましたら、この際、それを進めて頂いたほうが便利かと存じます。――よろしゅうございますか。
  18. 長谷部ひろ

    長谷部ひろ君 私、新米なもんで、どうしてもわからないのですけれども、今の長官の御答弁の中にございましたが、なぜ使用者側立場に立ってお考えにならなきゃならないかということそれ自体が私には了解できないのですよ。そこから本当に私の新米にわかるように説明していただきたいと思うのです。
  19. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) これは、アメリカ軍日本におりますと、おるという事実にまず出発するわけでありまして、これが日米行政協定でその権利の範囲がきめられておるわけです。そこで、そのアメリカ軍がここにおる際に、アメリカ軍業務というものを一々日本政府に相談してやるかやらないかという問題がありまして、直接調達間接調達という問題がここにあるわけです。それで、日本におきましては、日米行政協定の結果、米軍調達関係は、労務については間接調達、その他の調達については直接調達ということになっておるわけです。従いまして、労務調達日本政府に依頼して来ておる。その他の物品調達は直接自分たちで業者を集めて入札する。これがいわゆる特需であったのであります、そういう関係になっておるわけです。  調達庁と申しまするのは、終戦直後アメリカ軍のそういう調達関係業務担当するために日本側機関として設けられたのでありますが、その頃は、御承知終戦処理費というものがありまして、日本側の金でそういう一切の調達アメリカのためにしてやったわけです。従いまして、その調達日本機関がやっておりまして、調達庁物品調達労務調達も全部アメリカのためにやっておる。いわゆる間接調達であったわけであります。それと申しますのは、日本側の金で払うから当然そういうことになったわけでありますが、講和条約が成立いたしまして、その後は終戦処理費のごとき金をアメリカに支払わないということになりまして、アメリカ側は全部自弁でこれをやることになりました。自弁でやる以上は、調達庁を中に介在さすかどうかということになるわけでありますが、自分で物を買うのに、自分の金で、ドルで物を買うんだからということで、買う問題はアメリカ軍が直接やる。労務のほうは多少めんどうな節もあるので、引続いて調達庁担当してもらいたいということになりまして、労務間接調達といることになりました。それで、現在それで行なっておるのでありますが、労務でありますので、従いまして、事実上アメリカが金を払ってアメリカ自分で使うのでありますけれども法律上の雇用主は誰であるかとか、雇用契約をどうするかとか、いろんな関係がありますので、調達庁長官雇用主となりまして労務者との間に雇用契約を結びまして、従いまして、賃金も払うということ。一方、アメリカとの間にその払った掛りは全部取立てるという約束をしておりまして、賃金のみならず調達庁の私ども月給まで……アメリカがそういうものを頼んで来るからわれわれみたいな役人が必要になるので、日本の税金の結集である一般会計が負うべきものではないから、金を返してもらうということで、賃金のほかに、簡単に申しますと、二%半の手数料を取っておるわけです。それが大体十億円くらいになる。それでわれわれの月給その他、調達庁労務関係者であります。日本全国で申しますと、四千人以上の人間がおりますが、そういうものの給料までアメリカから取返しているわけであります。勿論私どももこれは、れっきとした役人でありますので、一般会計予算から普通役人基準に従って予算をつけてもらい、給料をもらっておりますけれども、それに該当するものを……労働者に払いますほうの金は一般会計からとりませんで、アメリカのほうから金をとりまして、特別調達資金というものを拵えまして、そこにプールしておきまして、労務者のほうへこれを払って行く。その特別調達資金の中から二%半はわれわれが手数料としてとってしまう。それを大蔵省に返す。大蔵省ではそれは収入としておきまして、一般会計の中に年々われわれのほうに普通の役人と同じように庁費人件費を出してくれるという関係になっておりますが、実質的には労務者の上前をはねてわれわれ月給をもらっているという傾向は多分にあるわけであります。そういう関係でございますので、アメリカの必要のために調達庁長官が雇い主となって日本労務者を雇い、そうしてアメリカから金をとって払い、そのために要した日本政掛りは又アメリカからとるという建前で仕事をしているわけであります。そこでこの調達庁長官労務者との間に契約を結ぶのでありますが、これが又こちらでアメリカがあとで金をくれる関係がありますので、こちらの了解を得ておかないと、この契約は幾ら払うとか、どういう払い方をするとか、どういう退職金を払うとかというようなことは、こちらの了解を得ないと、こちらだけでやりましても、あとで金をくれないというおそれがありまして、両方に契約が要るわけなのであります。そこで、その一つ一つ労務契約をするのも大変でありますし、又アメリカとの関係も困難でありますので、これを全部一本にまとめまして、労務基本契約というものをわれわれもアメリカとの間に締結をしているわけであります。その労務基本契約で日本労務者を使う条件はこういうふうにするとうことを調達庁長官アメリカ軍との間に約束している。これは調達庁長官と申しましても個人ではないのでありまして、国であると思いますが、国と国との間の、政府政府との間の私契約であると考えております。政府政府との間の私契約によって、お前さんのほうから金はもらうのだ、こういう条件で労務者を雇って提供してやるから、それに異存ないか、それなら払うという約束をして、そうすると、その約束が又労務者のほうで言うことを聞かんことにはこちらで契約ができないことになりますから、大体こういる契約を結ぶぞということを労務者のほうにも相談をしておくということになります。本来ならば、労務基本契約というものは日米政府間の私契約でありまして、その内容によりまして、今度は使用主でありますから調達庁労務者との間に労働協定を結ぶというのが本当でありますけれども、それは同じものになるわけでありますから、労働協定もやりますけれども労務基本契約をする際に三者集まって初めから交渉してしまおうじゃないかということで労務基本契約というものがある。それに対して三者交渉というものがあるわけであります。そこで交渉ごとと申しますのは、二者間の交渉でも相当手間がかかりますのを、三者を集めてやる交渉でありますので、相当めんどうなことになりますし、対照的な主張を持っているものが、少くとも米軍労務者側とは持っておりますし、その間に調達庁も介在いたしましてやるのでありますが、日本人として労働者の味方であるかという心境と、アメリカ人に対して日本人同士の味方であるかという心境と、労務の共同管理者であるという立場と、同時にまた政府の代表であるという立場と、いろいろまじっておりますので、まあ単純に使用主であると申し上げましたけれども、これはなかなか複雑な心境でもあるわけなのであります。使用主立場をとると申し上げたわけでありますが、まあ四角ばっていえば確かにそうだと思います。しかしながら、あくまで使用主としてできるだけ労働条件をしぼれるだけしぼってもうけたいという精神ではないわけでありまして、労働条件がよくなればよくなるほど、われわれの二%半もふえるわけでありまして、決してさような考えは持っておらないわけであります。
  20. 赤松常子

    赤松常子君 今のことと関連いたしまして……、対アメリカ軍との交渉の場合は、長官労務者も同じ共通な利害に立たれると思うのですね。ですから、使用者ということの性格というものは、私は、今非常にあなたが強くおっしゃったものですから、しわ寄せがみんな労働者にかかるような印象を受けるわけなんでございますが、今最後におっしゃったように、共通の立場にお立ちになる場合もずいぶんあると思うのでございますから、どうぞ対アメリカ軍との交渉の場合には、日本人としての性格と申しますか、それに徹底してやっていただいた方があなた様方のためにもいいのではありませんかということを……、あまり使用者ということを強くおっしゃらないほうがいいのではないかと思います。
  21. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 認知いたしました。
  22. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 菊川委員に申し上げます。ただいま駐留軍の問題と調達庁の問題が出ております。
  23. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 まず一番僕は考えなければならんのは、長官に申し上げたいのですが、今まで負けたことがないものが負けて、そうして完全に虚脱状態になっておった、そういう惰性がずっと占領軍から駐留軍にかわってもあるし、またアメリカ駐留軍側の方もそういういまだに占領軍気取りでおる、こういうところから一つ問題が発生する面が多いのじゃないか。従って、独立したのだ独立したのだといって盛んに吉田内閣以来言って来たのですから、まず自主性をしっかり持つということが私は一番必要だと思うのです。その上に立って、今労務者の間で問題になっております保安解雇というやつですね、向う側からすれば軍隊ですから、機密の保護というやつは厳格であることは、これは一応認めてやらなければならん。しかしこの保安解雇の問題が発生するに当りまして一番困るのは、労務者とそれから現地の兵隊との間に言葉が十分に通じないために、誤解を起したり、向うにも猜疑心を持たせる、こちらもそのために弁解しようと思ってもできない、そのためにすぐ解雇というようなことになってしまうので、従って保安解雇というような事態が発生した場合に、事実を十分調査して、そうしてまたこれに対して該当者が抗弁をして、そういうことじゃない、これは誤解に基くものだという、救済制度というものをはっきりと確立させる、これは私は必要じゃなかろうかと思うのですがね。それをしっかりしておけばよいと思うのだが、その点について調達庁長官の方で十分な配慮をなされておるか。今資料として出された、これはあなた方の方から出されたのではなしに、労務者側の方で出されたのですが、だいぶ解雇された数は多いのですが、戻してもらったのは少い。これには、はっきりした裏づけがあって、皆戻してもらえないかと、この点をはっきりしておく必要があると思うのですが、どうですか。そういうふうに納得できるように、お前はこういう理由でいかんのだというふうに本人に明示されておるのか、ただお前は怪しいということでやられておるのか、その点をちょっと御説明願いたいと思うのです。
  24. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 御指摘の保安解雇という問題は、まことに重大な問題でありまして、これがまた調達庁関係します米軍労務の最も重大なデリケートな問題であるということは、事実であります。それに関連いたしまして、われわれが今後なお一そうの努力をいたさなければならないということも、御指摘の通りであります。ただ、まあ私は実は調達庁長官になりましてからさほど古いことではございませんので、一昨年の終りごろ初めてのストライキの問題でもめましたころに、前内閣当時に頼まれまして、ずっと以前に廃業して民間に一般人として暮しておったのでありますが、頼まれてまた役人になったばかりでありまして、そのときに格別私といたしましては役人に舞い戻らなければならないという事情もありませんでしたし、どこに義理があるということもなかったのでありますが、実は私は戦争以前は外務省で職を奉じたことがありまして、それも全部アメリカで暮しておりましたので、日米関係ということには相当の興味も持っておりましたし、また義理もあるように思っておりましたので、駐留軍労務のこの関係から日米関係が悪くなる一方だと、若干でも援助できればという気持でなったわけでありまして、従ってそういう事情で今日この職を汚しております次第でありますので、初めに御指摘のありましたような自主的な交渉という面は特に力を入れておるつもりでございます。調達庁従来の過去数ヵ年の経緯には、占領時代もございましたし、御指摘のような傾向もあるにはあったのではないかと思いますが、過去一年半の間にはでき得る限りそれを改めて、自主的な態度アメリカ軍との間に話し合いを進めて行く。またあらゆる方法を用いてアメリカ側を説得する。軍が聞かなければ大使館、大使館が聞かなければワシントンというような、私どもの経験を通じてあらゆる努力をしておるつもりであります。冗談のようになりまして、まじめでないという御批判をいただいては恐縮なんですが、私は本当に本気で言っておるつもりなのでありますが、実はアメリカ人たちに対しまして、先般仙台に参りまして、一昨日帰って参りましたが、その際に、先方の司令官にも申したのでありますが、私は調達庁長官としてアメリカ軍にかわって使用主という立場でこの労務の問題を見ておることも事実であるけれども、同時にまた日米関係を心配する一人として、円満に問題が解決するということに重大な利害関係も持っておるつもりである。私はまあ在来年数も非常に長い。外務省関係者の中では最も長いのでありまして、アメリカ人に対して言うのでありますが、私の家族で日本籍を持っておるのは私一人で、あとは全部アメリカ人なんだ、従って私の子供たちはみんなアメリカ人で、お前さんたちアメリカの兵隊で、肩章か何かつけてえらそうな顔をしておるけれども、単なるアメリカ人ではないか。私はアメリカ人でこそないけれどもアメリカ人の父である。一段上なんだ。ジョージ・ワシントンみたいなものだ。アメリカとの関係を心配してやっておるのだから、そんな兵隊の事務上の話なんかで私の言うことを聞かないなんということは考えられないということを再三再四言って来ておるわけでありまして、まだ自慢するわけに参るほどの成績も上っておりませんけれども態度としては御指摘になりました点をよく考えて行動させていただいておるつもりであります。従いまして、自主的にでき得る限りアメリカの主張と日本労務者事情との間に調整をとって、具体的な解決ができるようにして参るということにつきましては、相当の努力をしておるつもりであります。ただ特殊な問題、ただいま御指摘になりました保安解雇のように極めてデリケートな問題につきましては、思うようにゆかない面が多々ある。相手軍隊のことでありますので、これが保安上の問題で解雇――保安解雇というのは、その保安上の危険を排除するということ、また英語と日本語との差の問題もあるのでありますが、先方の言っていることは保安上の危険を排除する、セキュリティのリスクを排除する、従って保安上の危険として排除されるということほ、何も犯罪者を解雇するとかそういうことでもなんでもないのだ。またその人がいいとか悪いとかいう問題ではない。軍隊としての安全を維持するために、たとえば先般非常にたくさん行われました島根県の美保の保安解雇のごとき、大ぜい出ましたが、その理由が同じような理由で解雇された人もあり、解雇されない人もあるというときに、つまりあそこら辺は全部親戚関係でつながっておりますから、なんといいますか、米軍にとって危険思想の持主である者がたとえば一人あったとして、その親戚その他は危ないから保安解雇した。その人は何もアメリカ軍がその人目体が危険と認めておるわけではないのだ、こういう説明をするわけでありますが、それならばほとんど全部が親戚みたいなところで、こっちも親戚、あっちも親戚、同じようなところで、なぜこっちだけ解雇して、あっちを解雇しないのか、どっちも同じような人であるということで、親戚関係も同じようである。しかし片方の人は平生の性格が安定しておる人である、片方の人は性格的にそそっかしい、だから親戚関係として同じような危険性があるというのだが、性格の安定しておるほうは大丈夫だろう、そそっかしいほうは持って帰れと言われておらないものを持って帰る、そういうものは危ないということで、従って保安解雇一つ一つが犯罪とかそういうわけではない。こういうことを言うわけでありますが、いくら保安解雇でも解雇解雇である。現在の制度ではアメリカが保安上の危険と認めれば出勤停止をすることができるわけです。それで停止をいたしまして、その間は六割の俸給を払わなければならないのですが、そうして日本側との手続によって解雇に持ってゆくということになるわけです。われわれのほうとしては、事実をわれわれのほうの立場においても調べまして、不当な事実認定をされているということがあれば、もちろん抗議は申し込むのですが、先方はその事実の説明がなかなかむずかしいということなんです。説明をしてしまうと一切合切白状してしまうような形になる。どうも説明ができない。説明をしないで解雇ができないということから、もみにもみましたあげくに、現在ございますのが、保安解雇基準といるものがA、B、Cと三つある。で、まあその一人々々について、こいつはこういうことと、こういうこと、こういう関係だからと言うといかんから、A、B、Cのうちのどれだということを言うから、あとは大体それで察してくれ、それで仕方がないということで、これは組合も入ったのですが、それで現在の保安解雇基準というものが定まりまして、米軍とわれわれと組合との間に意見の一致を見まして、個人々々の事情が言えない場合には保安解雇基準だけ示すということになっておるわけです。なお言えるのであれば、解雇ですから言えるところまで言うのが至当でありますけれども今のところの取りきめは保安解雇基準をA、B、Cのいずれかということを示すということになっておるわけなんですが、これすらも示さないという事例もあるにはあります。がしかし大体われわれに関します限りは、保安解雇基準の指定とか、あるいはそれ以上の理由も示しておるのでありまして、われわれとしては納得がゆくところまで説明を求めなければ承知せぬという態度はとっております。しかしじゃ調達庁長官には説明するが、向う説明してくれるなという問題もときどきある。これもやむを得ませんから、われわれの良心を満足することができれば、先方が若干無理でもいたし方がないという解雇の仕方もあるわけです。なおそういう解雇をわれわれの主張によって取り返させたりなんかしておるものもありますけれども、いずれにいたしましても日本法律制度といいますか、憲法上認められた権利というものと、軍隊が自己の安全のための危険の排除という非常にデリケートな関係のところがありまして、保安階雇の件はしょっちゅうもめるのであります。先般も現在行われております米軍日本政府並びに組合との間に話し合いがつぎまして、現在の保安解雇における付属協定をアメリカ側が改訂したいということを強く申し出てきたのでありますが、私どもはあくまでがんばりましてこれを断わったという事例もあるのであります。  保安解雇問題につきましては日本側は保安解雇は不当な解雇が行われやすいし、また行われた事例も多いということで、組合側は非常にこれに不満であると思いますが、同時にまたアメリカ側が現在の保安解雇の規定は非常に不完全であって、もっと強化したいという非常な不満を持っておって、われわれはちょうど間に入っておるという実情でありますので、確かに御指摘のような保安解雇の問題はむずかしい問題ではございますが、同時にまたこれを扱いますわれわれの立場も非常にむずかしいところに追い込まれておりまして、この現状の改良というものは事実上の関係で改良してゆく以外になかなか解決の方法はむずかしいだろうと思っております。幸いにしてだんだんにアメリカ側もその保安上の危険を調べます際に、自分たち判断だけでなくて、日本政府に相談するという事例がふえて参りましたので、少しは改良する見込みもあるのではないかと考えております。
  25. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 この点について簡単にもう一言だけお聞きしておきたいのは、なるほど今長官から御説明を承わりまして、御努力、また基本方針ということについては一応納得しますし敬意を表します。つきましてこれはあまり大きなことを日本人として言った場合に、それなら過去の日本はどうだ、日本軍隊が南方に行ったときにこんなことをしておったじゃないかということを言われた場合に、なかなかこれは汗顔の至りの面もあるだろう。しかし時代も変りました今日まで、こういう思想を日本人に押しつけたといいますか、すすめたのはアメリカがすすめてくれたのですが、たとえば苦情処理にいたしましても、従ってこの保安解雇のよろな場合に、今の制度ではあまりそういうことはなされておらないようですが、日本政府側とアメリカ軍側と該当労務者との三者構成の苦情処理委員会というようなので簡単にさばくというような、こういう制度を、これはアメリカが最初に来たときに盛んにすすめたのですが、そういうところまで一歩、付属協定を少し改正するということはなかなか困難なものですか、どうですか。苦情処理委員会へ特ち出す、おれはどうも保安解雇をされる覚えがないのにやられちゃった、一つたのむとか言って、苦情処理委員会に持ち出しまして審査を受ける、裁判まで行くと非常に時間がかかりますから……、こういう方法はどうでしょう。
  26. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) そういうことを希望しておるのでありますが、苦情処理の方法として、おっしゃるようなことが協定の間に用意されておることは事実でありますが、ただし保安解雇関係は除くということになっておりまして、保安解雇関係はそういうことになっておらないのでありますが、それを一昨年になりますが、一昨年のストライキ後の三者交渉におきまして、なんとかかんとか交渉いたしまして、でき上りましたのが今日の協定なのでありまして、四週間の限度を限って日本側アメリカ側との協議が行われることになっておるのでありますが、これをおっしゃるような苦情処理機関でやるというところまで持って来るのは、実を申しますと容易なことではなかろうと思われるのであります。それは労務基本協定が、一昨年私どもアメリカ側のハンロン少将と調印をいたしましてできておるにもかかわらず、今日なおその付属書類が完成しないという理由で効力を発生しておりませんのですが、これはなんのかんの理屈は言いますけれどもアメリカ側が動いて来ないということは、その人もかわりましたし、あるいは上級方面の反対もありましたのですが、やはりあの当時できた草案がアメリカ側としては日本側にへこまされ過ぎておる。日本側にしてやられたということで今日だだをこねておる。それの眼目が現在の保安解雇に関しまする付属協定なのでありまして、これがアメリカ側のいやがる、とにもかくにもおっしゃるような本式の苦情処理機関ではありませんけれども、まあちょっと似たようなところまでこぎつけたわけなのであります。まあまあ辛うじて組合の面子が形だけできたかと思われる程度のところまでできたわけであります。アメリカ側はこれはおもしろくないということで、基本協定そのものの運命が危ぶまれているという、それをまあ基本協定を承認しないということもせっかく自分たち、せっかくではありません。自分たちも判を押したものを今さら承認しないということもできかねるということが、ひょっとすると先ほど申し上げましたスト権の否認という言い出し方で現われて来ているのではないかと思われるくらいでありまして、付属協定を、保安解雇関連いたしまして、おっしゃるように制度の改善をいたしたいと私ども念願しておりますが、容易なことではなかろうと申し上げた方が事実に近いのではないかと思っておる次第であります。
  27. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私申し上げるのは、半年か一年、あるいは二年か三年ということでアメリカ駐留軍も撤退する、こういう見通しでもあれば、それはまたなんでございますが、これは相当長く駐留状態というものは続くのじゃないかというふうに見通さなければならないと思うのですが、これはもうそれぞれ日本人の、各党とかあるいは学者等の主張においてはいろいろ主張はございます。ございますけれども最後にこれの完全な撤退というまでは相当続く、その期間長いこと軍隊が外国に駐留するというときは、これはもうどんないい軍隊が駐留しておってもその民族の反抗というものは必ず起きるものです。従って国内におけるより以上におおらかな気持でおっても、これはもう必ず問題が起きてくる。この際一つ、なかなか困難だと思いますけれども、さらに長官の外交手腕で進めていただくようにお願いしたい。これは希望しても非常にむずかしいでしょうけれども、これは長官もお認めになるだろうと思います。外国軍隊が駐留したらその民族の反抗というものは起きてくるのは当りまえですよ、どこでも同じですよ。ソビエトが来ていても同じことで、ソビエト軍に対する反抗は起きますよ。私はそういうふうに思いますので、これは日米間の関係をやはりあくまでも親善関係に置かせるという立場からはアメリカも一肌脱がなければならん。これはもう長官も十分御承知だと思いますので、一そう御努力願いたいと思います。  その次に不当解雇、それから不当労働行為の問題ですが、これも厄介な問題ですけれども、実は労働基準法にいたしましても労働組合法にいたしましても、日本のこの法律を、ほんとうのことをいうと、誰がこれをこしらえたかというと、はっきり言うと占領時代に置いて行った。そうして置いて行っておいて、それを自分たちは守らぬというのでは、これは話にならぬので、自分たちは率先してこれを守るのが当りまえだ。自分たちに守れぬようなものを日本へ置いて行ったというのだったら、これは後世歴史家に痛烈に批判されると思うのです。だから自分たちこそ先に守って、そうして日本の資本家も守れ、いろいろ経緯はございましょうけれども、何と言っても占領時代に相当日本に教え込んで、日本政府をしてこれを公布させているということは否定できないと思います。法律の一条々々を作る場合にもみんな占領軍がチェックしまして承認して、国会の議決まで制約を加えて、彼らがこしらえさせた法律です。その後えらい変っておらないのに、労働組合法が自分らの使う面において、不当労働行為や不当解雇の問題がたびたび発生する。しかもそれはなかなか解決しないということでは、これは困ると思うのですが、特に裁判まで持っていく。労働問題はできたら裁判までいかずに、労働委員会の裁定には服する。特に調停、仲裁というようなことをやかましく言い、指導したのはアメリカ軍です。直接行動に訴えずに、それでなるべく解決せよと言って、僕らも何回も教えられて来たのですが、それを労働委員会が裁定しても従わぬというのでは、おれの方はこれは不服があるというのでは話にならぬので、一つ労働委員会をうんと尊重させるように、不当労働行為や不当解雇の問題についてさせるという工合にいかぬものでしょうか、この点どうですか。
  28. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 不当労働行為、不当解雇の問題等につきましては、全くおっしゃる通りなんでありますが、これが労働委員会の裁定、場合によりましては裁判ということになり、アメリカ側自分たちでかって教え込んで行った法律を守らないというような形になっておることは確かに事実であります。しかしアメリカ側もこれにつきましては非常なへ理屈でありますが、若干の法律論を並べておる傾向はあるのでありまして、全然法律を守らないのではなくて、私どもはそう思っておりますが、守らなくてもいいのだというへ理屈は並べておるのであります。ちょっとした理屈はあるのであります。しかし事実上の問題といたしましては、私はアメリカとの間の話し合いでは労働委員会で負けたものはもう負けたということで手を上げてしまおう、あまりこれを裁判々々とまで持っていくことは感心しないということで極力交渉しておりますが、何さまアメリカ側軍隊とは申しても、一々の問題をハル司令長官がやるわけでもありませんので、係のやつがおり、不当解雇で負けた、しかしそれを中労委へ持っていけ、裁判に持っていけというようなことを言っておると四、五年かかってしまう。その間には自分も転任してしまうので、とにかく上へ持っていって時間ばかりかけさせる。もう地労委くらいでも、負けたものは負けたもので手を上げてしまえということでアメリカ側を説得しておるのです。しかしその場合に一応アメリカ側から仕事を預かっておるのです。アメリカ側がぐずぐず言っても、負けた場合には金を払ってしまうということに問題がある払ったのだからあとから返せということになりますと、その問題は、かりに日米間の債権債務になるかどうか知りませんけれども、そういう問題として残りましても、労働問題としては片づくという面もある。そういう面も相当考えておるのでありますが、悲しいかな、役人でありまして、払ってしまう場合にはやはり大蔵省という問題を控えておりまして、これの同意を取りつけないと、金がないということ、そういう面もありますのですが、しかしあらゆる努力をいたしまして、でき得る限り今後労働委員会の裁定に服するという事実を積み上げて参りたいと、アメリカ側の説得に努力したいと考えております。
  29. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それで長官お尋ねしたいが、その方針、僕はそういうふうにお願いしたいと思うのですが、どうしてもいけないという場合に、一つの構想として、私はこういうふうに考えるのですが、海員には海員の特別の労働委員会がございますね。これと同じようにアメリカも服するような、日本労働委員会だけではどうも工合が悪いというのだったら、そういう特別の制度というようなことについて、これは労務者側とも相談しなければならぬし、あなた方の御意見もあろうと思うが、あなた方の御意見だけ伺っておきたいと思うが、労務者側の意見はまた別途聞きたいと思うが、特別の労働委員会、そうすると労働基凖法の一部を改正して、こういう問題だけを扱う特別の労働委員会、その構成についてはいろいろ意見もございましょうし、アメリカ側の弁護士も入れるというようなことも考えなければならぬと思いますけれども、それは日本の自主権の問題とも関連するが、どうせ駐留軍がおるのだから、五十歩百歩ですが、そういうような特別の委員会というようなものはどうでしょうか。そのかわりそれには服するというような工合に話がつかぬものかどうか。そういう交渉をされたことがあるかどうか。
  30. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) そういう交渉をいたしました記憶はちょっとないのでございます。そういう考え方はあり得ると思いますが、問題のむずかしい点は、先ほどスト権の問題でちょっと申し上げましたけれどもアメリカ軍隊はここにおって、日本一般民間産業とは違った立場、違った性絡を持っておるのである。日本政府がこれを労働三法で一般民間産業並みにするのが腑に落ちないという主張をアメリカ側が持っておるわけでありまして、今仰せのような問題を取りあげますためには、それは先方の、とにかく非常に都合のいい問題ですが、それからそれへとアメリカ側の、軍隊としての特殊問題という懸案が非常にたくさんありまして、それからそれへと広がるおそれがありまして、はなはだそれはいくじがないということになればそれまででございますが、得策であるかどうか、とつおいつ考えておるというのがまあほんとうのところであると申し上げたいと思います。
  31. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それじゃまた今後一ぺんわれわれもとっくりと一つ、皆さんゆっくりとあなた方の御意見も伺い、また労務者側の意見も伺って、これは一つの研究課題として研究を進めていきたいと思います。いいか悪いか、いろいろございますから、今日はこれで打ち切ります、長官に対する質問は。   ―――――――――――――
  32. 藤原道子

    委員長藤原道子君) ちょっとお諮りいたします。福島長官にはおそれ入りますが、まだ質問ございますので、しばらくお待ち願いまして、ただいま大臣が見えましたので、時間が三十分というような制約がございますので、この際大臣から御所見を伺って、そうして皆さんの御質問をお願いしたい、かように存じますが、異議ございませんか。
  33. 藤原道子

    委員長藤原道子君) さようはからいさして頂きます。
  34. 千葉三郎

    国務大臣千葉三郎君) この機会におきまして所管行政について所信の一端を申し述べたいと存じます。  独立後第三年を迎えて、なお困難な経済情勢のもとにあるわが国にとりまして、すみやかに経済の自立を達成して産業の興隆をはかることは喫緊の要務でありますが、これがためには、総合的な経済計画を基調とする経済再建のための強力なる諸施策がとられなければならないと信ずるのであります。政府におきましては、こうした基本方針のもとに、財政経済を初め、あらゆる分野にわたって清新な施策を研究し、あるいは実施しつつあることは、さきに閣議決定を経て発表いたしました三十年度の予算大綱を通じて皆さんも御承知のところであります。私は労働行政もまたこうした総合的な経済諸施策の一環といたしまして、強力に推進されなければならないと考えております。  こうした観点に立って見ますときに、第一に重要なことは、生産の基盤をなす平和にして安定した労使関係、換言するならば、生産高揚のために労使協力態勢を確立することであります。そのためには労働組合運動を正常化して、その健全な発達をはかるべきことはもとよりでありますが、まず労使双方が互いに胸襟を開いて、労使間の問題をすべて話し合いによって平和裏に解決するという基本態勢を樹立することが根本であると存じます。このことはもとより労使双方の間におきまして、平素友愛の精神と相互の信頼関係を確立することを基礎としなければなりませんが、生産向上のためには何らかの労使の話し合いの制度を設けておくこともまた有効であると考えておるのであります。しかも、このような話し合いの機関は、ただに労使間の紛争を解決するという消極的なものではなくて、さらに労使相携えて、生産の向上に資するための基盤として十分に活用されなければならぬと思います。  こうした見地から、私としては公共企業体、公営事業、財政投融資を受ける事業等につきましては、必要に応じて生産協議会のような制度を設けることも一つではないかと考えております。で、このような労使協力態勢の確立によりまして、初めて合理的な労使関係が作り出されるのでありまするが、さらに労働意欲を高揚し、生産性を飛躍的に高めて行くためには、これに応じた態勢がとられなければならないと考えておるのでありまして、さきに私からいわゆる生産報償制度を検討したいということを申し上げましたのも、こうした考えによるものであります。で、生産褒賞制度というのは、これを率直に言うならば、勤労者の協力によって生産が増大して能率が向上した場合には、その寄与に見合って労働者に褒賞を与えるということであり、換言すれば、生産性の向上に見合った合理的給与制度の樹立ということになるのであります。でかかる生産褒賞を行うに当りましては、国民経済の現状、各企業の実情を十分考慮しなければならないことはもちろんでありまして、生産が増大し、利益が上った場合には、まず企業は必要な社内積立を行って、企業経営の健全化に努力するとともに、商品価格、または料金の引き下げに努力して、消費者の利益をはかり、ひいては一般物価の安定に寄与することが必要でありますが、労働者に対しましては、その奇与と努力に見合った褒賞を行うことは、労働意欲の増進と生産の増大のためにきわめて有意義であると考えるのであります。生産褒賞の具体的方途につきましては、目下慎重に検討を行なっておるところでありますが、この問題の中心は、従来のような一律のべースアップということでなくて、合理的な能率給制度を採用することであると考えております。しかしながら、我が国の給与制度の現状から見ましてもいろいろ困難な点もありまして、特にデフレ経済での今日、しかも給与というきわめて重要な問題に関することでもあるし、企業の実態を考慮しながら、今後さらに慎重に研究していくつもりであります。なお給与の面ばかりでなく、一般勤労者で、その勤労を通じて生産能率の向上と明朗なる職場環境の確立によりまして、社会文化の発展に寄与した者に対しましては国家的褒賞を行い、明朗なる勤労尊重の社会的機運を醸成することが必要と考えておりますので、今回、現行の褒章条例を改正いたしまして、新たに黄綬褒章を設けて、いわゆる勤労褒章として、勤労者に対してこれを授与することといたしたのであります。  次に私の特に意を用いておりますことは、労働者の福祉の向上をはかることであります。労働者が真にその生活を安定して、明るい希望を持って働くためには、何といってもその福祉を増進しなければならないと考えるのでありまして、これがために必要な施策は重点的に取り上げる所存であります。特に労働者住宅の建設につきましては、従来のようなこそくな方途を廃しまして、高度の計画性を持たせて、これが拡充を推進していきたいと考えておるのであります。資金的には各種社会保険積立金の合理的運用をはかることはもちろん、税制の改正を考慮いたしまして、さらに住宅建設事業につきましては、失業対策とも密接な関連を持たせつつ、総合的な、かつ実効的である方法を講じて参りたいと思っております。  次に失業対策でありますが、一昨年秋以来、デフレ政策によりまして、産業活動は低下し、雇用は締小し、失業者は増大してきたことは御承知通りであります。元来失業問題の解決は、労働政策としてのみならず、経済、財政等の政策と密接な関連を有する事柄でありますが、政府としては、問題を政策全般にわたって総合的に検討した上に、さきに総合経済六カ年計画を樹立して、わが国の経済の自立発展と、雇用、失業問題の解決を並行的に達成すべく考慮しておるのであります。当面の問題としては、来年度におきましても、わが国経済の拡大均衡をはかるために、地固めの政策がある程度堅持されなければなりませんので、約八十万人の労働力人ロの増加と相待って、雇用情勢の好転は望み得ないことにかんがみまして、住宅の建設、道路の整備、その他公共事業の大幅拡充によりまして、雇用機会の達成に努めるとともに、緊急就労対策事業、失業対策事業の拡大、失業保険制度の活用等によりまして、失業情勢の緩和と社会不安の防止に万全を期する所在であります。  すなわち、政府としては来年度におきましては、道路を重点的に整備し、住宅の建設を大規模に実施し、及び余剰農産物見返り円資金等により土木事業を実施する等、公共事業及び財政融資事業を拡大したい考えであります。さらに緊急就労対策事業につきましては、本年度におきまして一日平均一万五千人を吸収したのでありますが、来年度はこれをさらに大幅に拡大して、失業者多発地区に重点的に実施するとともに、現行の失業対策事業につきましては、本年度の一日平均十七万人を大幅に拡大する一方、その労働能率の高い失業者吸収を目的とした特別失業対策事業を計画的に実施して、これと並んで実情に応じた簡易な一般失業対策事業を拡充する所存であります。また失業保険制度については、その整備改善と適切な運営をはかり、さらに大学卒業生等の知識層の失業者に対しましては、国勢調査、官公庁の統計調査等に大幅に吸収するとともに、学生就職対策本部を中心とする就職の促進等によりまして、雇用機会の増大、雇用の安定を期して参りたいと存ずるのであります。なお、デフレ経済の労働問題に対する影響等につきましては、でき得る限り失業者の発生、特に中小企業に与える影響を考慮いたしまして、これを未然に防止することに努めるとともに、不幸にして発生した失業者に対しましては諸般の実情を勘案いたしまして、今後の失業態勢に十分留意して、その対策に当りたい所存であります。  たとえば昨年末におきまして、北九州の中小炭鉱におきまして、年末資金として日銀の追加信用、あるいは中小企業金融公庫からの貸し出しといたしまして、計十億円の融資を行なったのでありますが、今後もできる限り措置を事前に講じて参りたい考えであります。  以上、労働省所管行政につきまして私の意見を申し述べたのでありまするが、私は以上のような基本的な考え方に立って、閣内におきましては経済閣僚の一員といたしまして、適切な労働施策の推進に当りたいと考えておりますので、今後も皆さんの御指導を得たいと存じております。
  35. 藤原道子

    委員長藤原道子君) お諮りいたしますが、十六分ばかりしかないのでありますが、よろしうございますか。大体御質問のある方の御意見を伺いまして、なるべく時間を不公平のないようにいたしたいと思いますが、御質疑のある方は……。それではごく簡単にお願いいたしまして、大臣にも御勉強願うというふうにいたしたいと思います。
  36. 阿具根登

    ○阿具根登君 じゃ簡単に……。ただいまの大臣の施政方針と申しますか、それについて申し述べられました点について質問を申し上げたいと思います。非常にいいことばかり並べていただいて、それがでぎれば非常に結構なんですけれども、非常にできにくいということが事実ではないかと私は思うのです。まず健全なる労働組合の運動ということを言われましたが、健全なる労働組合の運動とは何か、今の労働運動は健全なる労働運動ではないのか、ないとすればどこが悪いのか、その点をはっきりと御回答願います。  それからその次に、生産意欲、労働意欲、労使協調を非常に強く叫ばれて、その上で生産褒賞制度を設ける。いわゆる昔の軍国時代に非常に大きくお互いの胸にぶら下ったり、あるいは光ったりしたような褒賞制度を思わせるようなことを言っておられますが、現在の労働者がそういう褒賞制度、なんという名前になるかしれませんけれども、そういう褒賞制度で勤労意欲が上って行くのであるか、あるいは現在の労働者は、勤労意欲がそういうことでもしなければ上らないのか、それ以外に上る方法はないのか。私の考えとしては、こういう褒賞制度を設けられても、それに喜んで勤労意欲が上るというような問題ではないと私は考えております。  それからその次に、労働者住宅の問題をおっしゃいまして、非常にこれも私たちといたしましても感謝いたしておるのでありますが、ただ住宅を多く作るのだ、大幅に作るのだと言われたんでははっきりわかりませんが、自由党がいわれておるように、今までできもしなかった三年間に百万戸、あるいは民主党としては、三年間に三百万戸も作っていただけば、今のやつは非常によくなるかわかりませんが、どのくらいの労働者住宅を作ろうと思っておられるのか、どういう計画を立てておられるのか。  それから失業対策でありますが、失業対策も道路の整備、あるいは緊急就労対策等のことを抽象的に言われましたが、現在八十一万の失業者が、完全失業者ができておる。潜在失業者まで合わせるならば七百万から一千万の失業者がおるというものを、ころいう抽象的な問題ではなくて、もう少し具体的に御説明を願いたいと思います。  それから最後に、昨年末の中小企業対策のことを言われまして、九州地方に十億の金を融資した、こういうお話でありましたが、最も苦しんでおる中小炭鉱に、昨年末、年末融資として五億四千万円の金が出ておることは、私も承知いたしております。その後あるいは発電所に対して、来年度分の買い上げをするために十三億の融資をするとか、あるいは同じ閣僚の中でも、中小炭鉱がこれだけ苦しんでおるのを見るに忍びないから、十三億なり十五億なりの金を融資し、それでかりに炭鉱が払えなかった場合い、国家が補償してやると言われたよしに聞いておりますが、その点どう考えておられるか。  以上の点について御回答を願います。
  37. 千葉三郎

    国務大臣千葉三郎君) 第一の御質問の、労働組合運動の健全化ということは、これは私は非常に現在健全化が行われておると思って考えておりますが、これ以上にすべて平和的に、そして日本の国の実情、私のいう言葉で言いますと、私は日本の国は狭くて、人ロが多くて、資源が貧弱だから、お互いに日本の国の富をふやして行く。こういうような目的のために、お互いに一つ話し合って行こうじゃないか。それでみんなお友だちになって、そしてこの目的の達成に協力しようじゃないかというような話し合いを今までもしておるのでありますが、そうしたような目的、また自分たちの組合の使命を、民主主義のルールのもとにやっていきたいということを健全化と私は考えておるのであります。  それから第二の褒賞制度でありますが、大体私どもはこの褒賞制度考えまして、そしてこれをスタハノフ運動のような労働を強圧しようとか、そういう考えは毛頭ありません。また一部からいわゆる選挙運動というようなことも……、選挙対策というようなこともないのであります。ただ、こういうような制度としていきますためには、いずれも国会で立法化を必要とするのでありますが、現内閣といたしましては、この現在の制度を何とかこれを活用いたしまして、直ちにお役に立つもの、いわば労働省関係からいうならば、勤労者諸君が喜んで働いてもらうというようなことをまあ考えておるのであります。いろいろなことを発表いたしましたが、私ども褒賞制度もその一つであると、そこでこれは従来とも各府県の自治体なんかがやっておるのもあるのです。実際あるのですが、国家褒賞というものはなかった。ですからこの問題は、そのチーム・ワーク、職場を褒賞するというのではありません。個人褒賞でありまして、職場を褒賞することによってあまり緊張し過ぎてもいけませんので、個人褒賞というところに重点をおいて考えております。本来ならば各国の立法例を調べてみますと、もう各国で勤労者褒賞のない国はほとんどありません。もうない国は日本だけぐらいのものであります。そこでこれはもうおそ過ぎたというふうな感じがいたしますが、私どもは単独立法化する前に、現在の、既存の褒賞制度を多少修正して、なるべく急いでこういう目的を達したい、こう考えております。  それからこの住宅問題でありますが、これは御指摘のように、従来はやや羊頭を掲げて狗肉を売るというようなことでありました。しかしこの内閣といたしましては、これに非常な重点をおきまして、そして昨年度が大体十二万戸ですか、年間において十二万戸の住宅が完成いたしましたが、私どもといたしましては、この少くとも三倍程度、三十万戸、実は二十四万戸程度考えておったのでありますが、もう少しやれそうだというので、今せっかく考究中でありますが、少くとも二十四、五万戸を下らざる線に出たいと考えております。この詳細の点につきましては、明日の大蔵大臣の施政方針に譲りたいと思っておりますが、この問題は、御承知のように住宅問題は、住宅そのものというよりも土地に制限を受けておりまして、それから東京の勤労者が、東京に土地がない、近隣府県にもはみ出す。そこに多少の摩擦もあったようでありますが、私どもといたしましては、むしろこれは大都会を中心として、そして付近の県を同じ行政のもとに考えて、そして土地問題を考えて、その上に不燃化住宅を建てる。その資金の方は先ほど申上げましたような厚生年金あるいは失業保険積立金、こういうようなものを利用したいと考えております。  それから失業対策の問題でありますが、ただいま御指摘のように、そのもとは失業者を出さざるにあるわけなんですから、それは将来経済が好転して参り、拡大均衡という線がだんだん出て参りましたらそういうことになりまするが、それには少し、何カ月先のことになりますので、その間に現在の失業者をどうしたらよろしいかという問題であります。そこで今の住宅建設というのもやはりこの失業対策の一つ考えておるのであります。たとえば不燃化住宅を建てる、その不燃化のためにセメントを要する、そのためにセメントの事業が繁栄する。繁栄したものに対しては新たに雇用者、人を採用してもらうというようなひもつきでおろしたいと考えております。要するに住宅の建設、間接にはこの失業者の救済というところに持っていきたいのであります。  その失業対策の第二といたしましては、道路の問題でありますが、これも単に救済事業というよりも、道路の技術を覚えてもらいまして、そうして臨時的じゃなくて、もう少し恒久的に技術を修得すると同時に、日本全体にまたがる国道の舗装、そういうようなものに重点をおきたいと考えております。なお、ことし三月に学校を出る大学生の就職の問題でありますが、これらにつきましては非常に頭を悩めておる問題でありまするが、さいぜんも申し上げましたようにあらゆる階層に呼びかけて、そうしてこれらの諸君を採用してもらうことを依願すると同時に、最後には国家的に考えて、統計事業とか、そういうようなところに吸収する、いわゆる国勢調査というようなところに吸収するという面も考えて、今予算措置を講じておるのであります。  それから最後の問題の、中小企業に対する金融問題でありますが、この点につきましては、北九州のほうは電力会社に主として金融いたしまして、そうして電力会社から中小炭鉱その他にひもつきで、そうして貯炭を買い入れるという措置をとりました。効果の直ちに上ったところもありますけれども、効果が十分には上らなかったところもありますが、大体においてこの政策は成功したと思っております。それで御承知のように、これは石炭金融をして、国家で損をした、それでその国家で尻をぬぐうということにはそれぞれ国会の承認を要しますので、まずわれわれといたしましては、国会の承認を得るような措置の前に、金融措置だけでやっていけるという措置をとったのであります。これは私個人の考えでありますが、将来とも中小企業の組織の問題、それからまた金融の問題につきましても、今までのような考え方では中小企業はなかなか救えないのじゃないか。たとえば中小企業の連合体に対しましては、ある程度まで連合体そのものに中央銀行から金融してもいいのじゃないか、これは私個人の意見であります。政府の意見じゃありません。そういうようなことは今度は考えてもいいのじゃないか、それによってみんな生きてくる、産業が生きてくる。産業が生きてくる結果によって失業者が減少されるわけなんですから、そういうようなことを考えてみたならば、失業してさびしい生活を送るよりも、多少国家が犠牲を払っても、こういうように持っていった方がいいのじゃないかというようなことも考えておるのでありますが、いずれにしましても、中小企業の金融問題は非常なむずかしい問題である、同時に重要な問題でありますので、御意見の点は一つ十分拝承いたしまして、そして御相談を申し上げたいと考えております。
  38. 阿具根登

    ○阿具根登君 もう一つ……。
  39. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 阿具根委員、ごく簡単に、答えのほうも一つ簡潔に。
  40. 阿具根登

    ○阿具根登君 失業者対策の問題につきまして、失業者を出さないのが第一だということをおっしゃったのですが、きょうの新聞でも見てみますと、大臣のおひざ元に坐り込みがあって、首切り反対をやっておりますが、首切られるつもりですか、それとも今おっしゃったように失業者を出さないおつもりですか、それだけをお伺いしたい。
  41. 千葉三郎

    国務大臣千葉三郎君) 今のは調達庁の問題であろうと思いますが、調達庁のほうの問題は、これは法律で定員できまったものであります。従って調達庁責任者といたしましては、この定員を整理、すなわち法律を順法するというところからきておるのでありますが、しかしそれは理屈でありまして、このデフレのときに少しでも失業があるということになると、御心配の点もありますので、先ほど福島長官からもお話があったと思いますが、あるいは欠員、あるいは希望退職、そういうものを十分考えて、そうして失業者をなるべく少くし、また将来、今直ちに勧告するというわけじゃないのですから、その間の時間の余裕もありますので、その間に調達庁の所管問題という根本問題も考えて見たいと思っております。これはやっぱり国家的に考えておきませんと、この従事している職員なんかはほかの官庁と違って年限が短かいですから、退職金なんかももらえないというような非常な気の毒な立場の人たちなんですから、特にこういうことは考えて、犠牲をなるべく最小限にとどめていきたい、こう考えております。
  42. 藤原道子

    委員長藤原道子君) ほかに御質疑ございませんか。
  43. 赤松常子

    赤松常子君 私も簡単にちょっとお聞きしたいと思いますが、ただいまの大臣のさまざまな御方針、ほんとにこれが実現されたらどんなにかいいだろうと思うことばかりでございます。けれども、いろいろ伺いまして、非常に予算を伴う問題もずいぶんございますわけです。この中で道路問題をお取り上げになったのでございますけれども、これなども大へんな予算が伴う問題でございまして、住宅政策は社会保険の積み立てとおっしゃっておりまして、ほぼ私も想像できるわけですが、こういうふうな施策をなさいます際に伴う予算の問題でございますけれども、大へんロはばったいことでございますけれども、そういう予算関係におきまして従来労働省関係ではいつも削られる、減らされる、そういう苦い経験を私どもずっとなめて来ているわけでございますが、そういう予算問題について御自信がおありでございましょうか、どうでしょうか。それからもう一つ、労使間の平和体制の確立ということをお述べになりました。その条件というものもさまざまあるわけですけれども、一番大事な条件は、労働者権利を伸張し、そして話合いの対象になる労働者の意見というものを強く取り入れるということが一番大きな条件だと思うのでございますが、こういう労働組合対策に関する現政府のお考えをはっきりお聞きしたいということ。それからもう一つは、生産協議会の構想がもしおありでございましたらお伺いしたい。以上三つ、簡単でございますが。
  44. 千葉三郎

    国務大臣千葉三郎君) 第一の予算の問題ですが、これはちょっと今までの内閣とは違っているのです。というのは、今度は経済自立のために計画経済、それを六カ年間ということでこれを打ち出しているのです。その中の一環になりますから、だからこの予算労働省に来なくてもいいのです。建設省に来ても、どこに来てもいいんです。全体のワクの中にあればそれでいいわけでありまして、おそらくは今の住宅問題も建設省に行くし、道路問題も建設省に行くんですが、その使ってもらう失業者、使ってもらう労働者は、労働省のほうから十分吟味し、十分それに対して意見を出すということで、打って一丸とするように、セクショナリズムを捨てて、一つの団策として考えておりますから、だから労働省予算が少いからということじゃなくて、国全体の予算のワクの中に、十分六カ年計画のワクの中にはめていきますので、御心配のようなことはないと考えております。  それから第二の労使協調の問題でありますが、これは結局やっぱり人間の信頼の問題だと思うのです。そうして、たとえば労働者を厄介なものだというようなことを考えないで、やっぱり友だちとしてどこまでも話し合いをする。そうして一緒に泣き一緒に笑い、一緒に将来を憂えるというようなことでいいのじゃないか。ですから、お互いが信じ合うというところに率直に進んでいく、そこに何ものかができると思いますので、私はもう各地に参りましても、第一に組合の諸君と一番最初に会って、そうして話をしておるのでありますが、今後もそれを続けて参りたいと思っております。時間の許す限りはお目にかかって話を聞く、そうしてできることはできる、できないことはできない、できないのは国家のためにどうしようかという御相談をするという態度を今後もとりたいと思っております。また、鳩山総理も決して組合に会わないのじゃない、いつでも時間があったら会うという態度をとっておるのであります。  それから第三の生産協議会のことでありますが、これは具体的にまだできておりません。できておりませんが、私は将来今度マンデス・フランスがやったようなフランスの最近のやり方が非常に日本一つの示唆になると思いますから、そうした面を十分研究してみたいと考えております。
  45. 長谷部ひろ

    長谷部ひろ君 ただいま労働大臣の施政方針の御意見伺いまして、私もほんとにうれしいと思ったんです。私の貿問は、赤松委員もおっしゃいましたが、私は昨年の秋、ちょっと中国のほうへ行ったわけなんです。そうするとあちらの方ではもう労働者がとっても喜んで、男も女もみんな政府協力して働いているわけなんですわ。で、今大臣のお話を伺ってみますと、日本もきっとあんなにみんなが喜んで一生懸命に働くという状態にすぐなりそうな気がほんとうにするのです。で、これは非常に国の制度も違う日本のことですから、そうよくは大臣の御方針のようにはならないと思いますけれども、どうか一つがんばってやっていただきたいと思います。それを私くれぐれもお願いを申し上げます。
  46. 千葉三郎

    国務大臣千葉三郎君) 私はまことに微力でありますが、どうぞ皆さんのこの上ともなき御協力と、また御鞭撻をお願いしたいと思います。
  47. 長谷部ひろ

    長谷部ひろ君 先ほど大臣が羊頭狗肉を売るものにあらずとおっしゃいましたが、私は大臣がそういう言葉を非常に軽べつしていらっしゃるんだと思います。ですから私も大臣のおっしゃることを信じておりますから、どうぞ一つお願いを重ねて申し上げます。
  48. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私はもう極端にお尋ねしますがね、一つは、あとで大臣退席されますので、この問題を先にやりますが、今問題になっておりまする労働金庫の連合会を作りたいというのは、大体各地方の労働金庫の要望ですわ。ところがこれに対して小坂さん当時に労働中央金庫という構想を発表されておる。従ってそれを推進すると、今ここに連合会を作らしたら中央会ができないというので、どうも押えているらしい、しかもこれは労働省側が押えておる。大蔵省の方ではまあいろいろ当ってみたのですが、いろいろ異議があるだろう、問題があるだろうと思いますが、認可してもいいのではないかというような御意見らしい。ところが労働省側で押えている。しかもそれは理由としては、争議資金に流す、争議金庫をこしらえては困ると、そういうことだと思うのだが、今までの実績としてはこういうことはない。それはなるほど争議行為か何かあったときに、今後の生活の困難があったために貸し付けを受ける。争議が片づいて賃金がもらえるようになったときに返すというようなことで、直接争議資金を返すというようなことはなかった。従ってこの際これをその理由の一つとして、また労働省側では、選挙管理内閣だからそんなことはしないのだという、こういうことを理由にしておられるようでありますが、今、千葉労相のお話を聞いておりますと、選挙管理内閣どころか、えらい膨大な計画を特って本委員会に臨まれまして、とてつもなく長谷部さんが感謝されましたが、われわれからすれば、そのくらいな抱負を持っておられることは結構ですが、このくらいの労働金庫は選挙管理内閣だからできませんというのはどうかと思いますし、労働金庫が選挙資金を流すということは毛頭ございません。そんなものは貸してくれません。そういう心配もないので、これは労働中央金庫がかりにできたとしまして、この総選挙には間に合いません。社会党へ流れるような心配ももちろんございませんから、この際、一つこれをすみやかに認可してもらいたい。かり認可でもいいですから、準備を進められて、四月一日からでも発足させるようにしてもらいたい、こう思うのですが、これに対する労相の御返答を承わりたい、端的に一つ御返答を承わりたい。  それから第二番に伺いたいのは、アメリカから余剰農産物をあれをして、円資金をためておいて、これを失業対策費用に回すように一ついたしたい、こういう今のお話でございました。非常に結構だと思うのですが、アメリカの余剩農産物は恐らくひもを持って参りまして、あれは軍需産業、ジェット戦闘機をこしらえたり、それから機関銃をこしらえたりするような、こういう軍需産業にだけよりこれはなかなか回しっこない。MSAのやつはもちろんそうですが、MSA以外にいたしましても、土木事業には、ちょっと失業対策事業の土木事業には回しっこはないと思うのですが、これを強力に折衝される決意をお持ちになって今日発表されたのか、あるいは発表されるに当られてはどう打診して、可能であるという見通しのもとに御発表になったかどうか、この点を一つ伺っておきたい。  その次に、失業対策の際にいろいろ今後お尋ねしたいのは、今日はポイントだけを伺っておきたいと思いますが、財政投融資をいたしまして、どこの企業だって今財政の投融資の恩恵に浴さないで、自立して食えるというのは味の素かビール会社くらいのものでありまして、大ていは財政の投融資の恩恵に浴していると思うのです。従いまして、財政投融資によって生産規模を拡大するに当りましては、やはり雇用量の割合というくらいに僕はいかなければならないと思うのですが、これらについて一つそこまで踏み切られるか、この点を一つ伺いたい。  それから拡大均衡という言葉をお使いになる。盛んに拡大均衡拡大均衡と言っておるのですが、具体的に三十年度はやはり一萬田さんも一兆の枠内を確保すると、こう言っておるのですが、この拡大均衡というものは一体私もよく意義がわからぬのですが、労相が今言われましたけれども、三十年度は拡大均衡じゃなしに一兆だ。いわゆる三十一年度から拡大均衡、こういうふうに進められるのか、この点一つ伺っておきたい。  この四点だけ端的に伺っておきたいと思います。
  49. 千葉三郎

    国務大臣千葉三郎君) 第一の労働金庫の問題でありますが、私自身も、いろいろお話がありますが、それで今十分これを検討いたしておるのであります。何月何日ということはちょっと現在のところ申し上げかねますが、十分検討しておるということだけを申し上げたいと思うのです。  それから第二の円資金の問題でありますが、この円資金の問題につきましては、これはたとえば愛知用水だとかいうような、ああいうような土木事業にこれを回しまして、それで付近の失業者をこれに吸収するというようなことを考えております。  それから第三の、この財政投融資の問題は、私はまた政府ではっきり立てたわけじゃありませんが、私個人としては全然同感です。これはそうすべきであるというふうに考えております。  それから第四の拡大均衡の問題でありますが、その点につきまして、一応均衡の線を、菊川さんは一兆億円の一般会計に押えて、それでこれを一つの目途としておるのでありますが、予算面から見るとそういうことも言えますが、あるいは他の投融資の面を考えてみますと、先の方にやや拡大均衡の光がほのかにしてきておるのであります。これはまことに言いにくいことでありますが、大体において今は地ならし、デフレの総仕上げというようなことがありましょうが、先のほうには明るさが増してきておる。それは先日の国際収支で、昨年の年末に九十万ドルの赤字が二億二千万ドルの黒字になったということでうちょうてんになってそんなことを申し上げておるのじゃありません。大体において輸出面その他を考えてみましても、どうやら今年の暮ごろになったならば、その拡大均衡の線が出てくるという実は自信がついて来たのでありまして、そういう点について私は申し上げるのでありまして、選挙が済んだらそれは知らぬというようなことは決して申し上げませんから、その点だけは一つ御了承願いたいと思います。
  50. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 一番最初にお尋ねしました労働金庫の問題ですが、あとでこの金庫の問題を論議したいと思うのでのですが、あなたが帰ってしまってはできないからお聞きしますが、検討しておると、こう言われたのだが、これはあらゆる弊害、障害といいますか、踏み切って一つ検討を進めて頂きたいと思うのです。せっかくべテランがみな各省へおいでになりまして、政界のつわ者がそれぞれお坐りになったので、今の労働省大蔵省との間の違いというようなことを抜きにして、自主的に、金庫がほんとうにつぶれそうになって、会員に迷惑をかけたというような事故も今までございません。あまり不正事故もなかった。ただ一番心配されるのは、争議資金ということだろうと思うのです、あなたのほうでこれを言うとすれば。その点の心配は今まで調査の結果ない。それからもう一つ、盛んに選挙管理内閣だから困るので、これは選挙でも済んだらと、こう言うのだが、どうも選挙管理内閣の気がまえを見ますと、あなたのを聞いておると、こいつも一つやっておいてそうして選挙に臨む。もう四、五日のうちですから、この間の方針をきめてもらいたいと思うのですが、どうですか、きめてもらえますか。二十五日の解散までに一つ踏み切ってもらいたいと、こう思うのですが、これを一つ伺っておきたい。
  51. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 労働金庫法の中に連合会を作るということはちゃんとうたってあるのです。それが成規の手続きをして認可を申請したのですが、労働省が押えておるということになりますと、小坂さんがあの中央金庫法という構想を発表したのです。それで今言われるような争議資金云々というようなことが根底をなしておるというようなことで、大蔵省のほうで全国的にお調べになっても、争議資金に出しておるという例はほとんどないということをはっきり言っております。それでどうも労働者を守っていただかなければならない労働省のほうがちゅぅちょして、大蔵省の方はそれに対して賛成しておるやに聞いておるのでございますが、これが納得いかない。自由党に反対してお立ちになった民主党の労働大臣だから、それに労働者の福祉を守るということをしきりに言っておいでになる千葉さんだから、ここでもしもお出しになったならば今度の選挙で勝ちますよ。これは冗談じゃないのですよ。全国の労働者がいかにこの労働金庫連合会の発足を念願しておるかということは、もう大臣の御想像以上なんです。こういう点を一つ腹に締めて御答弁をお願いしたい。
  52. 千葉三郎

    国務大臣千葉三郎君) 委員長のお言葉もありますので、十分その意のあるところを尊重いたしまして、そして省内においてなるべく至急に解決をはかりたいと思いますが、日時のことはちょっと今のところは何月何日というふうには申しかねると思いますが、御趣旨の点は十分了承して、今後善処したいと考えております。
  53. 赤松常子

    赤松常子君 一つそれに関連して、大蔵省とのやはり連絡や交渉や話合いが大事だと思うのですが、今どの程度進行いたしておりますのでしょうか、ちょっとその辺の事情をお聞かせ願いたい。  それから連合会から申請書が出ておりますが、その申請書の扱いは今どういうふうになさっているのでございましょうか、ニ点について伺いたいと思います。
  54. 中西実

    説明員中西実君) この労働金庫の所管省は大蔵省労働省と共管になっておりまして、そこで先々月両省に一免許の申請が同時に出ておりまして、大蔵省大蔵省で御審査になっておると思います。で私の方も実は幕、正月とありましたので、最近よく金庫側の方と話合いをいたしまして、十分連合会機構としましてもその内容を検討いたしつつあります。これは両省の意思が合致いたしませんで、どちらかといいますれば、これのおい立ちからいいますれば、労働省が共管とはいいながら、主役をしておるというような格好でございますので、私の方で近いうちに態度をきめて、さらに大蔵省の御意見を伺って運んで行きたい、こういうふうに思っております。
  55. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 中西さんお聞きしますが、あんたそれじゃ主管の局長ですか、それじゃあんた御意見どうですか、これに対してもう大体あなたのお腹はきまっておるのでしょう、主管局長としての……。これは一つ早いところやった方がいいと思うのですが、どうですか。
  56. 中西実

    説明員中西実君) この問題は単位労働金庫の将来、それから労働者の福祉厚生、これに非常に重大な影響を与えるものでございまして、従ってわれわれもちろん法律にあります連合会組織、これのための申請が出ておりますので、これがどうのこうのといって握りつぶすという、そういう権限がないことはよく存じておりますししますので、目下のところは十分金庫側の方とお話合いをいたしまして、同じ連合会にしましても内容的にこうした方がいいとか、いろいろなまた意見もあるわけなんです。従って実は本年に入りまして金庫側の方と本式に話を始めたという段階なのでございます。従ってだいふ意見の交換もいたしました。日ならずしてやはりある程度の結論に達し得られるのじゃなかろうかというふうに考えております。
  57. 藤原道子

    委員長藤原道子君) ほかに御貿問ございますか、大臣に対して……。  大蔵省の方から加治木特殊金融課長が見えておられます。
  58. 赤松常子

    赤松常子君 中西局長さん、新春になって連合会のお話合いを始めたという今の御答弁でございましたけれども、まあこれは小坂構想でありまして、ずっと以前からのお話合いがあったわけですね。これほど連合会に反対するようなこの問題を、もっとその当時から対象となる労働金庫側とお話合いを進めるべきだったと思うのでありますが、その辺の御出発当時はどうだったのでございましょうか。もう少し民間の意見をお聞きになって頂きたいと思います。
  59. 中西実

    説明員中西実君) おっしゃる通りでございまして、実は労働金庫が一昨年数回の国会を経ましてやっと成立した。そこでその当時から、実はわれわれとしましては労働中央金庫を考えておったわけでございます。どうしてかといいますと、結局今後は労働者の福祉厚生ということが非常に重要な問題だ、福祉厚生ということをやりますには結局は金だ。施設を作りますにしましてもあるいはいろいろとこの融資をしますにしましても、結局は金の問題だ。そこでいろいろの社会保険の積立金もございます。これあたりが実は有効にはっきりと労働者の福祉に還元されているものも少い。従ってなんとかこの労働者の福祉厚生のための基金を持ちたいというのが、われわれ労働行政に当っている者としまして、単に労政局だけじゃございません。基準局にしましても、また職安、婦人少年、すべての希望だったわけでございます。そこで実は寄り寄りまあ構想を練らしておりました。ところが実は小坂構想という構想、これは大臣の御発案です。その中にもう一項目入ったわけでございます。で、もちろん大臣とも、こういう構想があるんだが、あまり御賛成になれないような構想じゃこれは困りますので、前々話しておりましたのでありますが、それがまあ構想としてあの中へ入ったわけでございます。当時実はわれわれはばく然とそういう構想は持っておりましたが、具体的な案は持っていなかったわけでございます。そうして実はやりますには十分に御意見を聞き、ことにその関係労働金庫、それから一般の関係者にも御意見を聞いてやりたいと思っておったのでありますが、実はそういうようなことで具体的な案もまたなかったのでございます。そこであれが出ましたので、まあ急速に実は案をある程度練って、そうしてこれを一応もとにいたしまして話合いを始めるというようなことになりまして、実は非常にまあ事務としましては後手になったわけでございまして、これはほんとうのざっくばらんのお話を申し上げた方がかえって間違いはないかと思いまして……。そういう実はいきさつであったわけでございまして、われわれとしましては、事務的にはまことに順序が前後いたしまして遺憾であったと思っております。で、この間うちから金庫側の方ともいろいろ話をしてみますと、結局は将来やはり中金がいいだろうということにだんだんなってくるのでございます。しかしながら、時期的にもう少し労働金庫に苦労させてくれというお話が大体の主張なんでございまして、それならそれもまた結構で、私としましては、できるだけ一つ労働者の福祉のために十分な資金の貯炭場として中金というようなものを活用したいと思っているのでありますけれども、もし労働金庫側で時期的にそういう御意見があれば、あるいはまたそれも一つ考え方だというふうに考えているのであります。これが労働者の福祉、厚生を伸ばす一つの手がかりとして非常に重要な役割を持っておりますので、われわれとしましても十分急速に話合いを固めまして通めたい。決して私ども悪かれと思って実はやっているのじゃございません。その点一つ十分御了承いただきたいと思います。
  60. 阿具根登

    ○阿具根登君 それじゃ今まで問題になりました労働金庫の問題につきまして、金庫側の方からは連合会を作りたいということを盛んに陳情申し上げてきておるようでございますが、大蔵省側から見た、労働金庫法によって連合会を作るということはどうであるかということについて大蔵省の見解をお尋ねしたい、かように思います。
  61. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 労働金庫の中央機構の問題については、労働省の方からもいろいろと御意見を伺っております。それからまた金庫側からも伺っております。まだ実は大蔵省として正式に意見を決定するまでに至っておりません。これは先ほど中西局長の方からも話がありましたように、まあ共管事項でもありますしして、われわれの方としては、労働省の意見が固まらなければ先に大蔵省の透意見をきめかねるような立場にあるわけでございます。これは御承知のように、労働金庫法の趣旨は、一つ労働金庫というものが労働者の福祉増進のための……金融を通じての福祉増進でありますが、そういう使命を持っておる。その機能をできるだけ伸ばす。それからもう一つは、やはりここに労働者の財産が預託されるわけであります。これを安全に保護しなければならない。大体特に労働金庫について法律のある趣旨は、そういうニ本の柱だと思います。共管になっておりまするのは、主として労働者の福祉増進というような、そういう、何といいますか、労働対策というような色の濃い観点からの問題は、どうしても労働省のほうからの御意見を聞かなければわれわれとしては意見を出しがたいのでありをす。むしろ大蔵省の方としては預金者の保護というものと金融の安全というものを考えて、そういう観点でわれわれとしては考えております。  それからただもう一つ中央機構の問題になりますと、これはもちろん単位の金庫でもそうでありますけれども、単位の金庫とはより異なって、特に中立性が確保されなければ、中央機構としてはほとんど機能が伸びないことになることはほかの例を見ても明らかであります。もちろん政治的中立ということは単位金庫についても当てはまる問題でありまして、特に労働金庫法にも規定がございますが、もちろんそういった観点もありますが、その中央機構傘下のあらゆる金庫に平等な機会を与えなければならないわけであります。従ってそういう意味の中立性、厳正中立という言葉はあるいは適当でないかもしれませんが、おわかり頂けるようなそういう中立性というものが特に要求されるのであります。このわれわれ大蔵省考えます立場というのは、そういう預金者保護とそれから中央機構ができた場合の中立性保護と、これがいかにして確保されるか、そうして今回の制度の趣旨を生かすことができるかということに重点を置いて考えざるを得ないのであります。しかしながら問題は、われわれはそのニ点だけで意見を出すわけにいかない。同時に労働者福祉対策として労働省の方からもまた中央でも新聞紙上でも拝見したのでありますが、前労働大臣の特に労働者の福祉という点に重点を置かれて中央金庫の構想がされております。そういう構想が労働省側にあるということであれば、またそういう交渉の熟したところを見計らって、果して連合会の制度と中央会の制度とどちらがいいかということで結諭を出さざるを得ないのであります。従ってわれわれとしては、労働省側の意見か固まるのを待っているような段階でありますが、正式には一度も内部でこれの決定をいたしたことはございません。委員会で、個人的にどういうことを考えるかということを聞かれたことはありますが、はっきりした御返事は申し上げておりません。やはり同様な御返事を申し上げまして、中立性の確保、預金者の保護ということについて特別な関心を持っているというような意向を申し上げましたが、この委員会でありましたか、あるいは衆議院でありましたか、大体そういう状況になっております。
  62. 阿具根登

    ○阿具根登君 非常に上手な言い回し方をされたわけでありますが、大蔵省として労働者の保護、金融の安全、福祉対策、こういうような問題だけを考えて、中立性という、今おっしゃった中立性はもちろんわかりますが、大蔵省考え方として、それは金融の安全を阻害するのかどうか、あるいは労働者の保護になるかならないか、福祉対策になるかならないかという問題で考えた場合に、連合会ができることはいいとお思いになりますか、悪いとお思いになりますか。
  63. 中西実

    説明員中西実君) 私は連合会できることが今言ったような観点から悪いというふうには毛頭考えておりません。私は一歩の前進だと思います。しかしながら、中央金庫のほうがさらにニ歩の前進であれば、中央金庫のほうをとりたい、かように考えております。
  64. 阿具根登

    ○阿具根登君 中西局長お尋ねいたしますが、先ほどの説明を聞いておりますと、労働中金というのですか、中央金庫の問題は、小坂前労相の考え方というよりも中西構想に近いような感じがするのですが、中西構想は中金の考え方ではないのですか。なぜこんなことを聞くかというと、労働金庫という場合に、先ほども言われたように中立性ということを非常に強く叫んではっきりしておるわけなんであります。それについて何か政治的な中立性が咀害されておるような感じを私は持つわけなんですが、中西構想であったならばその点をはっきりさしてもらいたいと思うのです。
  65. 中西実

    説明員中西実君) これは先ほども申しましたごとく、労働者の福祉厚生ということが今後のわれわれの行政面で非常な問題でございますが、ついてはこれのために相当な資金源を持ちたいというのが、これは単に労政局だけではなく、労働事務当局どこも希望でありまして、省議あたりにでも諮りますれば、皆がこれに賛成だということでございます。従ってたまたま小坂構想の中に入っておりましたけれども、事務的に見まして、やはりわれわれとしまして今後の労働者の福祉行政を伸ばして行く上において中金のほうがいいというふうには考えております。ただ先ほど申しましたように、金庫側においてしばらく自主的に連合会で苦労させてもらいたい。行く行くは中金ということは、これはまあわれわれも考えておるというようなお話もございますので、そこらの話し合いをいま少し進めて行きたいというふうに考えております。
  66. 阿具根登

    ○阿具根登君 中西構想みたいになって来ましたが、金庫を作って資金源の確保をはかるのに反対するのはだれもおらぬと思います。だれもおらない。その資金源の確保はだれでもしたいのだが、その確保した資金源はだれが握るかという問題が中西構想に入っていると思います。政府がそれを握っているとか、皆さんの意向でどうなるとか、そうなればそれは一つの政治的中立を欠いておる。労働者労働者自主的に作って行った金庫であって、それを法的に認めてもらって連合会にするのだ。そうするならばそれに対する資金源の応援はもちろんやってもらうことに越したことはない、やってもらわなければできないが、いわゆる小坂構想、中西構想で行けば、根っこを握って、労働者希望するような福祉になるかならないかということを、労働者がきめることではなく、握っておる人がきめる。それでだれがきめるかという問題で私は構想が違うのだ、こう思うのですが、それは違いますか。
  67. 中西実

    説明員中西実君) この今のお話を解明するには少しく専門的になり、事務的になるのであります。実はだれが握るかということでありますが、それは結局中央金庫といたしましてもあるいは連合会にいたしましても、それ自体やはり一つの経営体としまして、その経営体が握るのであります。連合会の今の計画を見まして、握った金をどう運用するかということになりますと、全く同じになるのでありまして、われわれの狙いはト結局低利、長期の資金をどうやって確保するかということに問題があると思います。連合会では零細なる貯金の吸い上げだけなので、それは低利、長期のほうにはなかなか使えない。そこはわれわれは福祉行政、ことに福祉施設を拡充強化していく上には不足があるのじゃなかろうか。それにはやはり中金というようなもので政府の低利長期に貸し得る金を導入する、さらには債券を発行して、これはまあ政府に引き受けてもらう。そうしてこれを福祉のほうに使うということでなければ、われわれの考えておる目的は達せられない。従ってどこで握るか、あたかも政府が自由自在に、中金になるというとその金を左右できる、そこを大いに強調されて反対する。これは実は技術的に言いますると、当らないというふうに私らは考えておるのであります。われわれはあくまで今言いましたように、長期低利の資金源を持つというのがねらいであります。
  68. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすれば、連合体に反対される理由がないわけです。裏返せば、連合体と連合会ということになれば、連合会の人たちが勝手に金を使うのだというようなことで、そういうことをきめると思うのです。そうしなければ、たとえば、理事の任命にしても政府が任命するのだとか、あるいはその中の理事專は何名政府がとる、そういうようなことが出て来るわけはないのです。私が、だれが握るかというのは、そういうことを言っているのであって、労働者自分たちが預けた金が主体になっているわけなのです。それを理事の任命その他にまでもそういうことを規制されるということになれば、自主性はなくなってしまえのじゃないか。苦労してもいいから自主性のあるやつをやらしてくれ、今までの実績を見てくれ、そういう資金にだけ金を出したか、そうじゃないのだということを、はっきり、すでに今までの業績がわかっておるのではないか、それをなぜそういう形式にしなければできないか、連合会にやらしてくれ、こういっておるのに、それが十一月の一日に出されておるのは、事務的な手続が済んでおると私は思うのです。それにまだそれが許可されぬというのは、何かそういうような政治的な中立外の考えがありはしないか、こういう考えで言っているわけなのですが、連合体になったならば、なぜできないか。
  69. 中西実

    説明員中西実君) 決して不純な他意はございません。今、先ほどからも申ましたように、低利長期の資金を獲得するには連合会では不十分であるということは、おわかりいただいたと思うのです。そこで、連合会だけで悪いというのじゃございません。ただ連合会があって、さらに長期低利のために中金あるいは公庫というようなものは非常に重複した金融組織になるわけでございます。従って同じするのなら、この際、同時に長期低利の資金源も入れ、また連合会の作用もするというものを作ったらどうかというのが、実は中金の構想なのでありまして、従って連合会は悪いと言ったことは一ぺんもございません。その点一つ十分に御理解を頂きたいと思います。
  70. 阿具根登

    ○阿具根登君 結論を申し上げますが、私が心配するのは小坂構想であったならば、もろ小坂大臣はやめた人だからその構想はもう一応御破算になっておると思うのだけれども中西構想であるとすれば、これは問題だと私は思うのです。だけれども、今、千葉労相は、はっきり委員長の意見も尊重して、そうして各省によく話をして実現するように善処いたします、ということをはっきり言っておられる。それへもってきて中西さんが、自分の構想でこれをやられるということになったら問題だろうと思って、私は今まで質問したわけですが、今、労働大臣もはっきりああいうように言っていただいたので、労働金庫の方の切なる申し入れもあるし、手続も十分済んでいるはずでありますから、早急に連合会の、一つ設立できるように御尽力を願いたいと思います。
  71. 赤松常子

    赤松常子君 今だれが握るかということは、中央金庫の場合も連合会の場合も同じだとおっしゃったのですが、私どもがそこが納得いかないのでございます。この小坂構想の発表の中に、人事の問題もこれば労働大臣――主務大臣が任命すると書いてございますし、この業務関係労働大臣及び大蔵大臣が行うということになっておりまして、中央政府の圧力というものが――圧力と言いましょうか、監督権というものが相当人事、それから運営の面に加えられるということは決して同じではないと思うのであります。それはもちろん長期低利の融資をして頂くことはいいことでございますけれども、それをして頂くことと、それから今申しました人事権、監督権が中央に委託されるということは非常に、私は金の問題ではない、個人的な問題だと思いますので、むしろ融資の問題をお考え下さるのならば、連合会の形において政府がなさるべきであって、そうしてこの労働者自主性をもって福祉をやって行こうという、その事業をむしろそういう方面から助長して、助けて行くべきが労働省態度ではないでしょうか、その辺につきまして……。
  72. 中西実

    説明員中西実君) 自主的ということでございますが、これは金融機関というのは、大蔵省からの説明のほうが適切かと思いますけれども、やはり公益性の極めて強いものであるので、行政庁の監督が十分に行われるということは、これはやむを得ないのでございます。連合会といたしましても、両省の共管で単位労金以上に厳格な監督を受けるようなことになると思います。今連合会のまま、で政府の金を導入する、これは制度の上から絶対不可能でございます。もちろん中央金庫というようなことで政府の金を導入いたしますれば、他の中金と同じように少くとも一番責任者政府になると思います。しかしそれはいろいろな民主的な手続きがあるので、決してそれだからすぐに非常に政府の圧力が連合会以上に加わるということも言えないのではないかとは思います。が、しかし、もちろん、政府の監督権もその面からある程度強まることは、これは確かでありまして、それは政府が資金を出し、あるいは債権引受というようなことをします限りは、これはもうやむを得ないところでございまして、それもよこせ、運営も自分勝手だというふうには、金融機関である限りは絶対これはむずかしい注文じゃないかというふうに考えております。
  73. 赤松常子

    赤松常子君 私あまり文句を言っておるつもりじゃないのでございますけれども、従来困難な中から労働金庫がこれほどの実績を示しているという点で、そうむちゃな懸念を持つ必要はないと思うのであります。もちろん金融でありますから、ことに庶民の金でございますので、これを安全に保護するということは、これは大事なことですが、それはまた別の面からなされていいことであって、だから中央金庫の必要性というものがそこからのみ生まれるということは解せない。庶民の金融機関でございますから、安全に運営して行かなければならないことはもちろんでございますけれども、要は私はほんとうに、ここまで運営して来た労働金庫側の意見というものを相当私取り入れ下さいまして、こういう問題を円満によき解決を願いたい、これは要望いたしておきます。
  74. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 僕はちょっとお尋ねしたいのですが、大蔵省側といたしましては、これは何といっても銀行局長の河野君がいつも言っておりますように、預金者の保護、これが大蔵省としては眼目であって、一番重要なポイントだと思う。大蔵省の監督というのは、預金者の保護、たとえば、これが倒れてしまったりして多数の人間に損害を与えないようにする、こういう意味からあなたの方は監督されると思うのです。これが主眼だと思うのですが、そういうふうに解釈してよろしいか、それが第一点。  それから次に長期資金の確保ということを中西労政局長は盛んに言われるが、この長期資金の確保について、何も中央金庫であるから政府資金の財政の投融資といいますか、金を出せ、そうでないと金は出せんということになったら私は問題だと思う。これはあなたの方で、預金者の保護ということを監督しておる以上は、不健全な経営をさせないということになりますと、その意味において監督しておれば、政府の金を出しましても、何にも人事権を握らなくったって、そんなことを言い出したら、造船の金なんか考えたりする場合に、私は問題になって来るだろうと思うのですよ。財政投融資というのは、みな大きく考えた場合に、これはやはり政府が出しておる。しかしこれを経営は自主的にやらしておるのですからね。これはまあ直接ではないかもしれないけれども、従ってそこをあまり強くせずに、いわゆるあなたのほうの不健全なる経営をやっておるかどうかという面、特に預金者に対して不利益を与えないという点から監督を十分にされた場合には、政府の資金をここへ預託したって何ら私は差支えないと思うのだが、法律的に政府からその人事権を握ったからして、政府資金がここへ出せるのだ、こういうふうには、私はできないと思う。そう画一的に考えなくてもいいのですが、技術的に、一つ答弁願いたい。
  75. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 第一点は、預金者保護と、中央金庫の問題でございますが、仰せのように、われわれとしては、金融の安全、これは国民経済的な立場からのみいうのでなく、預金者の保護という点に重点を置いて、大体各金融においてここに主眼があると思います。労働金庫の柱はこれである、大蔵省立場として、特に関心を持たなければならない柱であるということは、これはさっき申し上げた通りであります。その場合に、連合会と、中央金庫とどちらがよいかというお尋ねでございますが、これは通常の場合に、別に、連合会の組織である場合と、その他の中央金庫というような、新しい構想によるような場合とで、特別な差は出ておりません。が、しかし、いざという場合に、万が一経済界の変動、その他によって、場合によれば、理事者の経営の不適当というようなことで、一時金繰りに困る、場合によっては、店を締めなければならんという事態が発生しないとも限らない。そういうような不測の情勢を予想した場合には、通常の場合には、中央銀行と結びついておるのでありますから、普通の金融機関は。ところが信用金庫にしましてもそうでありますが、労働金庫にしても、直ちにこれを、発券機能を持った中央銀行に結びつけることは、必ずしも適当でないと思うのであります。そういう場合に、やはり政府出資の中央機構であれば、その中央機構を通じて、そういった、これは財政資金だけでもあるいは片づけられるかも知れませんし、場合によれば中央銀行の機能も動員して事態に処するというような、そういった事態を想定いたしますと、あるいは中央金庫のほうが一歩前進かと思うのであります。  それから長期資金の確保の問題、これはおっしゃられる通りでありますが、ただ、この点が少し違うのであります。これは主として、たとえば資金運用部資金、昔の預金部の金を出す場合は、御承知のように全額政府出資でなければ出せないことになっておるわけであります。それから預金部から直接金を貸す場合に、連合会では金は貸せません。それから長期の低利と言いますか、政府出資であれば無利子なのであります。ですから低利以上の低利になりますが、そういった意味で、低利以上の低利な政府資金を確保する途が、連合会の場合には考えられないので、特別な法律がなければ、そういう政府出資というものは考えられないのであります。そうじゃなく、連合会のままで、政府出資でやったらどうだろうかということになると、ほとんど案が両者似通ったようなことで、名前は連合会と中央金庫ということになるので、そういった点だけで違うのであります。そういうことをしないで、国民公庫があるじゃないか、中小公庫があるじゃないか――中小公庫はちょっと不適当かも知れませんが、住宅公庫と、それから労働者の生計資金ということになれば、国民公庫も考えられます。それから貸せばいいじゃないかということは、あるいはその通りかも知れません。そうなれば、国民公庫法の立場から、国民公庫の制度の趣旨に従って運用することになりまして、労働者だからといって特に資金配分を厚くするということはできない。一般庶民も相手にしなければならん。中小企業者も相手にしなければなりませんから、住宅公庫でありますれば、労働者にワクを設けて、労働三法というものがありますが、ああいったことはできましょうが、全部を労働者の住宅のみに振り向けることはできない。しかし、もし中央金庫のような構想で、ここに直接低利な財政資金が導入されれば、その分は明らかに労働者の福祉のためにのみ使われることになることは間違いない、その点にのみ差が出て来るのです。
  76. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 第一点の、たとえばパニック――恐慌状態になって取り付けにあう。その場合には、日本銀行から金を借りることはできない、今の連合会であったら。これは政府出資の場合の中央金庫であった場合には、日本銀行から直接貸し出しすることができると、こういうお話ですが、一般の三井でも、三菱銀行でも、いざという場合には中央銀行から借ります。銀行法という法律によってこれは借りるのだ。伊藤斗福のねらった投資銀行法というのはそこなんだ。あれは倒れそうになったときに、日本銀行から金を借り出そうと思って運動した。民間の三井や三菱銀行でも、直接中央銀行から貸し出す法律をこしらえればできる。何も政府出資があるからして、政府出資が必ず条件で中央銀行から貸し出すことができるということはいえない。一般の銀行でも、今は法律がないからできないかも知れないが、こしらえようと思えばできる。現に政治家の中には投資銀行法に動いた連中もあるのだから、こういうことからして、必ずしも原則論としてこれは政府出資がある中央金庫でなければ絶対的に中央銀行からの貸し出しの途というものは開けないということは断定できないと、こう思う。原則論――法律論は抜きにして、私はそういうふうに思うのですが、この点を伺いたいということと、それから政府出資ということですが、政府出資ということはなるほど十億なり、十五億なりは政府出資されるかも知れませんけれども、将来において政府出資あるいは財政投融資になんでもかんでもたよることはいけない、原則としては金融機関はやはり独立性でなければならん。政府になんでもたよるということは、これは終戦以来の一つの惰性で悪い傾向だと思う。むしろ今では銀行なんかではオーバー・ローンその他で日銀に頭が上らない。今一萬田さんが勢力を持っておるのも日銀総裁であったからで、法王なんといっていばっておるのも日銀から金を出しておるからである。三井の池田成彬のがんばっておった当時は日銀なんかくそくらえだった。大蔵省は金融機関をこういう状態に誘導して行くべきである。金がなくなると、なんでも政府にたよるという行き方はだんだん改めて行かなければならん。ところが今のお話ですと、政府資金にたよって政府の金を出させる。これは自分で税金を出して、それをもう一遍取り合うということで、こういうことは一つ断ち切って行かなければならん。連合会はむしろこれを断ち切ろうといっておる。これはちょっと抽象論 原則論であるかも知れないが、そういう意味からすれば、私は本来の姿であると思う。この点をもう一つ伺っておきたい。
  77. 加治木俊道

    説明員加治木俊道君) 第一点ですが、私は預金者保護の観点から連合会と中央金庫では非常な差があるということを申し上げたつもりはありません。あまり差はありません。しいていえば、こういう差がある。原則論はおっしゃった通りであります。実際中央銀行の資金運用に当りますと、これは実際上政府出資の機構である場合とそうでない場合では差が出て来ざるを得ないだろうと思います。それからちょっと金融制度に関する考え方を述べなければならんが、商業銀行は金融制度的に特殊の関係にある。しかしその他の金融機関は必ずしも中央銀行と結びつかない。これは発券機能を持っておるので、その点で特殊の事情があります。しかしだからといってパニックにあったときに、ほかの金融機関日本銀行は一切知らない、そういうことを私は申し上げるつもりはありません。必要があればめんどうをみなければならん。その場合でも中央銀行は要するに札を出すわけでありますから、通貨の信用を維持するために、この札を回収できるという見通しがなければ札を出すことができない。そういう場合には政府出資であるかないかで事実上の差が出て来ると思う。原則論はあなたのおっしゃる通りであります。それから政府の資金を導入する、そういう場合に役に立つであろう。この点は実際問題として預金者保護においてきわめて大きな差があるということを申し上げたつもりはありません。しいて申し上げると、ある程度の差があると考えていいじゃないか、どちらかといえば政府出資のほうがよりそういった場合に役に立つであろうということがいえるだろうという程度のことであります。この点にあまり論点をおいて、この問題は論議されたことはありません。私はむしろこういう点に中心は労働省もおいていないと思います。  それから第ニの点もおっしゃった通りであります。ただもちろん中央金庫になったからといって政府出資、政府からの借入金だけで、借入金は場合によれば或る程度大きなボリュームを想定しておられるかも知れませんが、やはり大部分を占めるものは労働金庫から上ってくる金利であろうと思います。そういう特殊な低利に出そうということであれば、やはり労働単位金庫から上ってくる資金というのは単位金庫の預金レートをどうしても高くせざるを得ない。還元するときは営利を目的とするわけじゃないのですから、ある程度のマージンをおいてまた金庫に還元せざるを得ませんから、かなりずっと高くなってくる。しかし個別の資金源がもしあるならば、それはプラス・アルファーに、しかも非常に低利なプラス・アルファーであることは、あくまで政府の資金というものはプラス・アルファーとして考えて頂きたい。これを本筋として、おそらく労働省のほうもそういうふうなお考えはないと思います。しかしそのプラス・アルファーもおよそ打ち切るべきじゃないかという御議論は、われわれはあらゆる場合についてそういうあれを持っておりますが、しかしこういう時代になりますと、およそ財政投融資と関連なく経済の運用をうまくやれるかどうかということは、実際問題としてむずかしい問題があると思うのであります。この議論はながくなりますが、原則論はあなたのおっしゃった通りであります。しかしプラス・アルファーが出る出ないをどう考えるかという問題はむしろあなたのほうで、そんなプラス・アルァーはありがた迷惑だということになれば、つけるべきじゃないでしょうけれども、むしろそういう問題であろうかと思います。
  78. 藤原道子

    委員長藤原道子君) ちょっとお諮りしますが、もうすでに五時二十分過ぎております。まだ会社整理法についての御質疑も願わなければならないことになっておりますので、一つ簡潔に、六時頃にはどうしても終りにしなければならないと思いますので、お含みの上で御質疑を願いたいと思います。調達庁の問題を最後質疑長官にして頂かなければならないという点もございますので、お含みの上で御質疑をお願いいたします。
  79. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それじゃ中西さんに一つお伺いしておきたいのですが、大蔵の意向は大体わかりましたが、あなたのほうではやはり長期資金をどうして確保してやろうかというところが、連合会に選ぶか中央金庫にするかという、それだけが分れ目で、これが一つの長期資金を何とかして、それが労働者の福祉になるから長期資金すなわち政府の出資、これが唯一の右すべきか左すべきかという分れになっておるのですか、ポイントを伺っておると、どうもそういうふうに考えられる。
  80. 中西実

    説明員中西実君) それも大きな目標でございますが、そのほかに現在この労働委員会でもかつてから取り上げられております問題として、労働金庫の融資に補償がほしい、こういう話があるのであります。この補償制度をもしやりますにいたしましても、これは連合会では非常に政府の代行機関として扱いにくい。現在中小企業につきまして補償法がございまして、これの取り扱いを商工中金がやっております。若しも労働金庫の融資補償制度考えるという場合には、やはり中金というようなものでなければ政府としてもまかさないのじゃなかろうか、そのほかいろいろな面におきまして、これはほかの点は大体程度の差でありますけれども、やはり私は勝っておるのじゃなかろうか、そこで時間がございませんので結論的に申せば、実は出発において非常に間違っておる。つまり先ほど赤松委員の御質問に私申しましたように、最初に非常に手続きが逆になった。そこで最近よく話をしますと、結局ゆくゆくはなるほど中金だろうというふうになるのであります。現在でも労働金庫関係者で中金のほうがいいという人たちがこれは相当あるのです。しかしながら現在の金庫協会というのが中央にございますが、それの協力メンバーの方々はこぞって一応連合会、こういう話で、それでこんなことを申すのは誠にあれですが、こういうことになってきましたので、ざっくばらんに申しますと、とにかく去年あたり政府の主張することはとりあえず反対しておいたほうがいいというような空気で、あれが出ますやいなや新聞反対意見が出た。そのときは中央金庫の構想というものはだれも知らないわけです。ただ単に中央金庫であれば人事は政府がとるだろうというようなところを主張して非常に反対が出た。しかし今となれば、そこにそういう間違いがあったことは認めなければならん。そうだとすれば、その間違いを、今これをどういうふうにして行くか、結局連合会の――これは法律にもございますし、それから現在の労金の幹部の方々は大多数はやはり連合会で行きたいというような御希望もございますので、いましばらく話を進めて、そうして落ちつくところへ落ちつくのじゃなかろうか。これはそう大して時間のかかることじゃございませんので、十分に一つ話合いを進めて結論にもっていきたいというふうに考えております。
  81. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それではもう一つ最後に、この二十五日には解散になりますか、そうすると中央の大臣衆も皆ほとんど選挙運動の方に没頭されまして、なかなか落ちついてこういう問題ととりくんで協議している時間が、一月くらいはどうしても空白になる。引き続いて地方選挙ということになりますと、やはり大臣連中も忙しくなってなかなか結論が出ないと思うのです。そこでやはり一つ連合会をあれして、申請は出ているのですから、まあ今聞いていると、必ずこれでなければならん、連合会ではだめだということは言いきれないと思います。それで政府の出した案については一ぺん反対をやる、何でもかんでも反対々々といって悪口を言いますが、それじゃいかんと思います。政府考え考えでいいことは賛成しなければならんと思いますが、それにあまりこだわって、両方とも、何だ政府の言うことには反対々々なんだから、これだけはのましてやろうということになって意地にならずに、この際、解散になったら又ずっと延びてしまうのだから、すみやかに一つ連合会でやらせる。あなたの方も大らかな気持で絶対にこれでなければならん、中央金庫でなければならんというふうにも考えられんし、連合会でもそうえらい何はない。長期資金の確保を考えれば、便法を講ずれば必ずしも講じられないことはないというふうにも考えられるので、この際は一つ十分慎重な検討をなされて申請書について善処方を一つお願いしたいと思います。
  82. 藤原道子

    委員晨(藤原道子君) その点委員長からも強く要望申上げます。私いろいろ申したいこともございますが、時間もございませんので、それでは……。   ―――――――――――――
  83. 阿具根登

    ○阿具根登君 調達庁長官に非常に長くお待ち願っておりますが、時間もありませんから、ごく簡単に御質問申上げますが、先ほど労働大臣も言われたように、一応調達庁の三百三十二名の馘首の問題は見送った、延ばしたということを言われたのでありますが、長官もそうだと思いますが、労働大臣考え方を聞いておれば、いわゆる選挙前だから、あまり労使双方に喧嘩してもらうと困る、選挙に響くから、しばらく延ばしてくれ、こういうような考え方が私は多分にあると思います。おそらく選挙を有利に闘うために首切りをそっとしておいて、それがすんだらばっさりやろうという考え方が多分にあると思うのですが、そういう考えでなくて長官にはもっと組合と話合って了解のできる線がある。また了解をしてもらいたいというような何か構想がおありになるか、どういうお考えか、その点だけお聞きしたいと思います。
  84. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 調達庁整理の問題でおさわがせをして申訳ありませんけれども、これは定員法に基く三百三十二名の整理をしなければならぬというところから出発しておるのであります。そこで私ども考え方は、組合と話し合いをしておりますが、これは組合との意見の対立がどうとかであるという、意見が合わないということではないと私は少くとも考えております。三、四十名の整理があとに残っておりますが、これは当分延期ということにいたしまして、その間にいろいろ状況の変化もありましょうし、変化に従って調整される面も、それは変化があれば出てくるわけであります。このままの形で延期して適当なときにばっさりということでは私はないつもりであります。その理由は、三百三十二名の整理というものは法律で要求されておるのでありますから、この法律が変らない限り――法律を変えるには法律をもってせねばならないのでありますから、私どもの問題にはならない。法律をお変え願うという可能性があれば、これにこしたことはないと思っておりますけれども、私どもは当面三百三十二名の整理をするという、そこで整理をするためには幸いにして欠員というものがありますから、利用し得る欠員の全部をこれに充当する。希望退職者をつのる。希望をつのりまして、出てきました希望退職者と利用し得る欠員の全部との数が三百三十二になれば、それでおしまいなのです。ところが不幸にして利用し得る欠員の総数というものは七十ぐらいでありまして、今日まで希望を表明した諸君は百三十ぐらいでありますので、合計二百になるか、ちょっとこしたかというところであります。三百三十二にいたしますためには百三十ぐらいの勘定が合わないのであります。百二十――両方とも多少の半端がついておりますので、百二十名ぐらいと聞いておりますが、従いまして組合の諸君が欠員と希望退職をやってくれということを言われまして、私がその通りにいたしましょうと言っても数は二百しかない。組合の言うことに賛成いたしましても、もう百をどうするかという問題を持っておるわけです。  そこであとの百と申しますか、百二十と申しますか、これは希望しない人の中からつのらなければならぬという問題を持っておる。組合との主張の相違であって、組合の欠員と希望退職をやれというのを私どもが賛成しないからこの問題が起ったのではなくて、賛成しても問題が残るのでありまして、そこで百二十名ぐらいの整理をどういうふうにいたしましょうかということを、いずれにいたしましても、これは希望しない人から人数を集めなければなりませんので、調達庁の組織は全国に今またがっておりまして、本庁並びに地方八局ということで地方にちらばっておりますので、どういう人たちから、希望しないのであるならば退職者を集めるかということを放任いたしましたのでは、各地によってやり方が違うとか情実が入ってくるとか、バランスがとれないとかいう問題が起りますので、私としては幾ら数の整理をいたしましょうとも、良心に恥じない整理をいたしますためには、一定の基準を示しまして、これによって人々がきまっていかなければならないと考えるのであります。役人のことでありますから、当然に成績という問題が出てくるわけでありますが、その成績という際にも、能力とか、頭の程度とかいうようなことを申し出しますと、認定するほうとされるほうとで、どれほどの相違があるのだというような問題も、デリケート問題も起るはずでありますので、そういう方面に重点を置かないことと、それから簡単なものさしでだれでもわかるものさしではかれるという基準をとりたい。たとえば出勤常ならずとか、出勤しても外出ばかりしておって態度がよくないとか、そういうようなことで逐次そういう意味の成績順でとって行こうと、これはまあそれでむずかしい点もあるだろうとは思いますが、そういう意味で百二十近い数がまあ出て来れば、それで問題は解決すると思っておりますが、三千七百数十名の中でそういう百二十名も、そういういわゆるだれが見ても成績不良だというのがあるようでは、役所としてははなはだ情けない話でありますけれども、まあそれに近いところまでとにかく考える必要があるというのが現実であります。そのうち七十や八十名近くは、すでに昨年のうちにそういったような話が行われまして納得をしている人も出てきましたので、残り四十人ばかりがここに残っているというのが今日の問題なのであります。そこで私どもとしては、これを延期いたしましたから、その間に希望退職者があるいはふえてくるかもしれん。そうすれば当然にもともと欠員と希望退職者を合算したものを三百三十二から引いたところにその問題があるのでありますから、何も今後考えを変えるとかいうことではございませんので、そういう事情が変化してくれば、その差でありますから変化があるということは当然言えるわけであります。ただ希望者と申しましても、希望したものだれでもかれでも承認するというわけには参らない。希望者の中で成績の非常にいい人とか、あるいは調達庁は、まあ御承知だろうと思いますけれども、官庁の中でそれほど羽ぶりのいいほうでもありません。他の官庁との間になかなか問題が多い。特にまたアメリカ軍というのをひかえておって、もっとしっかりした交渉アメリカ側にも、あるいは日本側の官庁との間にもしなければ、労務者にいたしましても、被補償者の利益を擁護するためにいたしましても、まだまだ成績を向上しなければならぬ余地がたくさんあるのでありまして、その成績向上のためにいてもらわなくては困る人が希望した場合は、幾ら希望しても一応は引きとめざるを得ないという事情にございます。それからまた私ども立場といたしましては、成績――まあ成績によって勧告をしていくわけでありますけれども、それ以外に、調達庁というのは、今日まあ一人前のれっきとした役所の中では、どちらかというと風向きがよろしくない。しかも仕事が困難の度合いを加えてきており、調達庁の今回やめる三百三十二名の人は非常にお気の毒でありますけれども、しかし残る人も一体全体調達庁はどうなるのかという首の不安を持っている。残るもののためにも首の座を安定してやらなければならない。そのためには調達庁仕事がもっとしっかりと強力に行われなければならない。しかし今三千七百人の人間を全部入れかえてしまうわけには参りませんが、私としてももっとしっかりした者がいることはいるのでありますから、若い者でも何でも抜擢して仕事をさせ、役所の中に新しい空気を吹き込むとか、そういうことをして建て直していかなければ調達庁のためにもならないし、また仕事の対象となる人々のためにもならない。われわれの役所の予算とか、いろいろの問題がありましても、よその役所の予算と非常に性格が違っているわけであります。よその役所の予算というものは、事業費と申しましても、公共事業費なり助成費なり建設費であって、これと次第によっては、政策上のことで使わなければならぬということでありましょうけれども政府として使っても使わなくてもいいという性格がありますけれども調達庁事業費は全部補償費であります。政府法律上の債務として人に払うべき金でありますが、これが十分にいかないということがあっては調達庁の任務は達成できない。人間の全員の入れかえができなければ、やはりできる人を引き上げ、内部をしっかりさせるということになりますので、たまたまこういう事態になって、百人以上の人をどうしてもやらなければならぬ。欠員と希望者だけでは間に合わないということになれば、だれかやめてもらうということになりますれば、私といたしましては、局長だろうが部長だろうが課長だろうが、この方は本当に能力がないと認めれば、就職の世話をして勇退してもらって、一人でも引ぎ上げてしっかりしたものに建て直すということをしたほうが調達庁のためにいいんだという信念でございますので、どうしてもだれかこちらから希望を申し出ない人に勧告をするという面がどうしても残るわけであります。そういう趣旨でやっているわけでありますが、申し上げましたように、根本は欠員と希望者が三百三十にならないというところにあるのでありますから、これできょう組合の諸君とも話をしまして、当分延期ということにいたしましたから、当分延期いたしました間に、その数字の関係が変って参りますれば、当然にやめなければならぬ人の数字の関係も変ってくることは事実であります。
  85. 阿具根登

    ○阿具根登君 定員制の問題につきましては、私たち反対をしたにしろ、これは法律としてでき上った以上は、これは長官がそういうお考えを持っておられるのは、これは仕方がないと思うのです。私たちもその責任がありながら、なぜ切るかということを言えないわけです。自分たちのきめた定員法ですから……。しかし今言われたことがほんとうに組合員にわかっておるかどうか、たとえば四十名にしわ寄せされてしまって、あと四十名でいいんだということになっておっても、この四十名は長官が勝手に、自由に切られるのだ、こういうことになっておるのか、あるいは十分やめてもらう、もらわなければできないということについては、その人事面についても組合と十分お話になるおつもりなのか。それともその人事については、お前たちはおれにまかせろ、おれが人事権を持っておるのだから、それでおれはこういう尺度で切るのだということであるのか。そういう点が非常に問題になってくると思うのでありまして、これで質問をやめますが、そこまできておるのであれば、今度は延期された期間内に十分組合とも話し合って頂いて、そうして組合の中でも、そこまできておるのならば、もう少しくらい希望退職者があるのじゃないかというような気分でもなってきて、希望退職が出てくるとか、あるいはどうしても何十人か残るというような場合には、今言われた長官の気持を反映して、それ以上の線が出てくるかも知れません。いろんな方法があるかもわからないから、この点は十分と組合とこの期間に話し合っていただきたい、こう私は思いますが、長官としてはこの機関に組合とほんとうに話し合う気持がおありになるか、もう今まで話をしてきて、あと四十名だからあとは悪いことせんから、おれにまかせろというようなことでやられるのか、そういう点をちょっと……。
  86. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) 御指摘の問題は私の最も気に病んでいる問題でございますが、残るところ四十名の問題であるということは事実であります。私どもとしてはそれをできるだけ早くやりたい、と申しますのは、整理になりますれば、当然にかってございましたので、今後も御心配をいただけるだろうと思いますが、臨時待命という制度ぐらいはできるであろう、ところが臨時待命という制度は各省一般のためにできる制度でありますので、調達庁のような特別に新らしい役所には在職年限によって何カ月の待命機関をくれるのだ、二十年勤めた者が十カ月とか、特別待命の制度がなくてもほとんど同じだということになるのですけれども、それは私どもの役所に通用しないのでありまして、役所自体というものが新しいのでありまして、在職年限というものはない、一番古くても役所と同じ年令になるわけでありますから、従いまして臨時待命だけでは平均して一カ月とか二カ月だということで、退職する人についてもできるだけ再就職してもらわなければならないのでありまして、私どもできるだけそのめんどうは見ようと思っておりますが、しかし一カ月、二カ月しか待命期間がないので、今の誤解をいただいては困るのでありますが、今の退職問題は本年の六月ごろの退職の問題を今騒いでおる。六月ごろに退職してくれという交渉を今しておるということは、ほかの役所と違って待命期間が短かいから、今からやれば待命機関が長いと同じ効果になる、場合によってはもう出てこなくもいいということも言っても差しつかえない、そういうことでありますから、これを早くやるということが、役所を離れられるということになります限りは、有利であるということには間違いないのであります。しかしながら残りました四十名、とにかく組合の要望もありますので、そういう面の理屈から言いますと、ちょっと割り切れない節もあるのでありますけれども、とにもかくにも延期した、別に選挙が済むまでとか始まるまでとかという、そういうふうなことは考えておりません。とにかく延期だということです。従いまして法律に要求されております最後の瞬間まで延期してもかまわないのです。しかしそうなりますと、やめてくれと言われたとたんにおしまいということになりますので、それこそ就職運動の期間も何もなくなってしまうということになりますので、やはりいわゆる法律上のデッド・ラインの少し前には話もし、その人たちの個人的な事情を聞いてみた上で、どういう方面にあるいは個人的に若干の連絡でもあるかないか調べました上で、就職運動その他の面にも資さなければならぬと思いますので、理論上はそれは法律にひっかからない限り、どこまででもそれまでは延ばせるわけでありますけれども、実際上の扱いとしてはそうは参らないだろう。それからまあ人によって就職の見込みの早い人もあるでしょうから、そういう人は早くからもっと出てもいいでしょうし、画一的には参らないと思いますが、当分延期ということは、私は別に選挙がどうのこうのという基準を設けておるわけではございません。それからまたこれからの四十人に対しましては組合と相談するかというお話でございましたが、これはわれわれとしては、一定の方針でその人たちを並べてみましたのでありますので、四十人についてはそれを御破算にして、あらためて組合と話し合いの上きめるということは、その他の人たちとのバランスの関係でいたしかねると思います。しかし組合に申しておりますことは、われわれはそういう基準でこれらの人々をきめたので、まだ言ってなければわかりませんけれども、きめたのであるけれども、そのものさしの扱い方がかりに違っておったり、だんだんに言っていけばわかりますから、その際に間違っておったり、あるいは事実に錯誤があったり、情報に不確実なものがあったり、それに基いてきまったことであれば、指摘されれば当然に考慮しなければならないという方針は持っておるということを言っておりますので、全般的に残りました部分については、今までの考え方を御破算にして組合と相談し直すということはできかねますけれども、われわれの考えに基きまして、一応の候補に立てました人々、それが話し合いが始まってくるにつれて人名もわかって参りますから、それにつれ、間違いを指摘されれば直すという態度は、当然持たなければならないということを申し上げたいと思います。
  87. 赤松常子

    赤松常子君 ちょっと長官お尋ねいたしますが、最近保安関係解雇者の中で、これはいろいろ先ほどのお話にA、B、Cと分れておるようでございますが、一番微妙なのは思想関係だと思います。そういう場合に、調査機関で、そういう思想の持ち主でなかったという判定が下りました場合に、一ぺんそういう嫌疑を受けられました方は、なかなかちょっと雇用者のほうでも、また政府のほうでも、その人をして元に復職させるというようなことがむずかしいのじゃないかというような懸念も聞いているわけでございますし、そうしてまた最後の決定にまでいろいろの調査機関を通過いたしますのに、ずいぶん時間がかかりまして、生活の保障の問題などにも不安を感じているやに聞いているのでございますが、そういう辺のことのお扱いをどうしていらっしゃいますか、簡単でよろしゅうございます。
  88. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) この保安解雇のほうの問題でございますが、これはその点が非常にむずかしいのは、アメリカ側は、この保安解雇は安全のために排除するのであるから、処罰で免職するのではない、その人自体がどういぅ思想の持ち主であるということを烙印を押すわけではないということを言うわけですが、実際上は、やはり保安解雇ということになりまするので、他に職を求めようとすれば、危険人物ということになって迷惑をこうむるということは事実あるのであります。それに対しまして、再調査とかいろいろなこともございますが、再調査その他で軍との関係において、こちらの理屈通りますものは、これは軍との関係においては復職させることはさせております。まあ世間に参りましてから不自由しておる人が多いだろうと思います。軍との関係においては、ただいまの御心配の点はめったに通りませんけども通りました限りはこれは復職できます。しかしまた軍で保安解雇をくったらこれは危険人物だろうということで、就職上の困難があるということはたしかに事実であろうと思いますけれども、しかしだんだんに軍の保安解雇というものは、かなり幅広く軍の安全のために、単に安全のためにどいてもらうという趣旨でもって、保安解雇が、必ずしも危険人物をどうのこうのということでないのだ、ということも、少しづつ――これは余り保安解雇が多かったために、そういうことがだんだんわかったという傾向もありまして、余り感心しない面もありますけれども、わかって参りましたので、そういう弊害があることは事実だろうと思いますけれども、極端なことにはならないようになりつつあるではないかと思っております。
  89. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 いろいろあっち聞き、こっち聞いて恐縮ですが、あなたのほうの整理の問題でもう一点お聞きしたいのですが、福島さん、あなた長官をおやりになって以来、占領軍から駐留軍に変ってからもですが、最初に占領軍当時に、いろいろ講負をやらしてもらって、もうけた連中が多い。個人の名前をあげてはなんですが、明治座の主人の新田さんなんというのは、代表的な人物だと思います。中央競馬の優秀な馬を持って、隆々たるものだ、そういう時代の典型的の人が相当あると思います。この際、あなたのほうは拡大均衡はあっても、これは殖えっこはない。ところがああいう事業家にあっては、拡大均衡の恩恵にあずかれるので。四十名にしぼれたのですから、四十名を、まず首切りの言い渡しをされる前に、おれたちのほうはこうなったのだ、駐留軍のおった場合にこうなったのだ、先ほども千葉労相の言ったように、拡大均衡で土木事業もどんどん起こすのだ。この際に、あなたがた、御苦労でも、政治手腕を発揮されて、売り込みに行かれて、これくらいの引受けならということをまず一つやってきて、適任者を送る。もちろんいいやつを要求されるということは事実ですが、折角今まで使って来たのだから、いい、悪いということになりますと――われわれも行政整理で非常に苦境に立ったのですが、国鉄で七万五千が首切りにあった、首切りにあってから、向うへもって行きますと、悪質者、赤紙ということになる。行政整理でいかれたやつは、赤紙というので困った。前もって折衝をして、一つ御努力願って、四十名の売り込みロを探して、六月までというのですから、それまでに探して、大体行き先も目鼻がついた、こういう条件でこういうところがある、もう一遍四十名のうちで、みんなの全般のために希望してもらえんか、こういうふうに一つ出ていただきますと、まことにうまくいくのじゃないかと思うのですが、どうですか。その点を一つ簡単でよろしうございますから御説明願いたいと思う。
  90. 福島慎太郎

    説明員福島慎太郎君) おっしゃること、まことにその通りでありますので、そういう努力をいたしたいと思います。ただなお、つけ加えて申し上げたいことは、調達庁は、かつて一万二千人の定員を擁しておりまして、これが業務の減少に従って、毎年々々整理をいたしまして、今日三千七百になって、それから三百二十をはじき出すということになっておるのです。一万二千から三千七百と、相当の数でありまして、毎年々々やっておるのです。毎年々々業務は減って参るわけであります。従いまして、百二十名も、四十名も、どういうわけで候補者が簡単にあがるのだ、そんな成績不良ばかりはあるまいということになりますが、毎年々々やっておりますから、今年は勘弁してくれ、来年というようなことに、自然話が固まっておることになるのですが、しかし終戦直後に普通の役所から来た人もありますけれども、いろいろなところを一挙に寄せ集めて、一万二千人デッチ上げたわけでありまして、交易営団を中心にいたしまして、住宅営団も来れば、満鉄、その他も来るということで、でき上った役所でありますが、その後、おそらく日本の役所の中で行政整理でこんな手荒い整理を繰り返したところはないでありましょうが、そのわりにみな就職のあっせんとか、そういう問題は、割合に、お互いに弱い役所でありましたから、助け合ってやって来たという事実はかっていただきたいと思っております。しかし今までは、一万二千から減らしますときに、余り数が激しいものですから、整理ができないものですから、よそへ行ける人は出てくれというような、整理を重ねて来たわけであります。自然今日に来ましては、行ける人は出てくれという整理が、調達庁の命脈を維持するためにできないということになって来ておる。私といたしましては、調達庁は、もういいかげんに臨時的な性格を捨てて、恒久的な国内行政機構に成りかわるべきである。またそのチャンスがあるというふうに考えております。ここらで一つ調達庁の内容を充実するということにも力を傾けなければならん。それが残った三千五百人の人たちの将来にわたっての首の座を安定するゆえんであろうと考えております。今回の整理は、従来のように、よそに売り込める人は片づけるというわけにも参らないという面もございます。しかし最終的の数は、これから希望者の数によって、これからきまるわけでありますけれども、百名以上になりますが、これらの人たちの就職先については、できるだけの努力をしてみたいと思っております。ただその就職先の世話ということは、最後に残りました四十名だけではないのでありまして、その前にあっさり承知した七、八十名の人も、六、七月ころまでに職を離れてもらうのでありますから、これらの人たちとの話し合いもして行かなければならん。それからまた希望退職者についても、やはりやって行かなければならん。今日から職の可能性をいろいろ探しております。そういたしますと、今日でも職は多少とも交渉は成立しておるわけであります。そういたしますと、前に承知してもらった人が七、八十名おるのですから、最初はこれらの人に、お前ここに行ったらどうかということを言うわけですから、あとに残った四十名についても同じようなことはいたしますけれども、実際問題としては、そのときの就職先はかすになるということを承知しておいてもらいたいと、組合にも言っておる。なにもそういうふうにする方針ではないが、事実上そうなることは数の関係からいたしかたない。従いまして今御指摘になりました、これから延期する四十名については、最善の努力はいたしますけれども、事実問題として、さきにやめるということにして、今待っておる人に比べて不利になるということをあらかじめ御承知おきいただきたいと思います。
  91. 藤原道子

    委員長藤原道子君) お諮りいたします。調達庁人員整理の問題につきましては、この程度質疑を打ち切りたいと思いますが、よろしうございますか。
  92. 藤原道子

    委員長藤原道子君) それでは私から一つお願い申し上げます。この人たちに対しては親心をもって、さらに善処方をお願いします。   ―――――――――――――
  93. 藤原道子

    委員長藤原道子君) もうすでに時間もないのでございますが、最後にごく簡潔にお願いいたします。会社更生法適用の会社における労働問題を議題にいたしたいと思います。
  94. 阿具根登

    ○阿具根登君 それでは簡単に質問いたしますが、会社更正法ができましてから、約百六十ぐらいの適用されておるところがあるということを聞いておりますが、この中で二、三私どものところに見えておるのは、この更生法によって管財人ができた場合に、管財人は団体交渉にも応じない。そしてなににかいえば、会社はもうつぶしてもいいのだという態度をとっておられるようでありますが、管財人は団体交渉に応ずる義務があるのかないのか、この点をはっきりしてもらいたいというのと、すでに組合が会社と労働協約をしておる。ところがそういう労働協約もなにも全部無視してしまって、管財人はおれは裁判所の任命によって来ておるのだから、そういうやつはおかまいなしだ、こういうような態度に出ておられる。そういうことはおそらくあり得ないと私は思うのですが、それに対してどういうようなお考えを持っておられるか、それから否認権といいますか、そういうように会社と組合が労働協約でも持っておったものを、それを否認する、もうそういう協約なんかは認められない、こういうようなことも言われておると聞いておりますが、これに対してはどういうお考えを持っておられるか。  もう一つは、この会社更生法は労働三法は優先するのであるかどうであるか。極端な例は、賃金の遅配になっておるものも、それをそのままたな上げにして、賃金も払っておらない。これは六カ月以前のものは、払わなければならないということになっておると思うのですが、そういうことすらも、基準局にでも行って騒いだ場合には、払った例もあるようでありますが、ほとんどこの管財人いう人は、組合を圧迫して、そういう今までの協約も何も踏みにじってやっておるという傾向が非常に大きく現われているようでありますが、これに対してどういう御解釈を持っておられるか、御回答を願いたいと思います。
  95. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 先ず第一の御質問でございますが、管財人と申しますのは、会社の事業をやはり継続するのでございまして、更生法の解釈といたしましても、やはり管財人が労働者に対する関係においては、使用者にかわる立場に立つわけでありまして、団体交渉に応ずる義務があると解すべきものと思っております。  それから第二の点は、労働協約を否認できるかという点でございますが、株式会社が更正手続きに入りますと、この会社の財産の処分行為あるいは債務の負担行為、具体的に直接に権利を処分し、あるいは債務を負担するという、そういう行為を否認するという否認権の規定がございますが、労働協約というものは、そういう処分行為ではないのでございまして、使用者労働者間との労働関係を規律するところの準則、これが労働協約の性質でございますので、労働協約を否認する――否認権を行使して労働協約を否認する、全部または一部分に否認するというこうは、法律上も、実際上もあり得ないのではないかというふうに考えております。従って更生手続開始前に協約が成立しておる、その協約はやはり効力が引き続いてあるのでありますし、管財人としても、その労働協約の定めは尊重して行かなければならぬ、こういうふうに考えております。  それから会社更生法と労働三法ではいずれが優先するかというご質問でございますが、これはいずれもニつの法律が現行法としてあるのでありまして、労働三法が会社更生法の適用を排除するのでないと同様に、また会社更生法の規定が労働三法を排除するということもないわけで、法律の中にも具体的に明文の規定も若干ございますように、両方それぞれ調節をとって行くようになっておるのでございまして、解釈もまたそういうふうに解釈されるものであろうと思うのでございます。でございますから、いずれが優先するということはないと思います。たとえば賃金の問題でありますというと、更生手続開始前六カ月間の賃金、これは会社更正法では共益費用と申しておりまして、これは更生手続によらないで支払う、支払ってよろしい。通常の賃金と同じように、これは支払われるわけであります。ただ六カ月以前に生じておりますところの賃金債権でありますと、これはやはり債権でございますから、更生債権と同じように、更生計画に従って支払われるということになるわけであります。それから整理開始後でありますが、事業は引き続いて経営されておるわけであります。だから労使関係も引き続いて存続しておるわけで、整理開始後の賃金――整理開始後に生じますところの賃金債権、これは共益費用、共益債権に当るわけであります。これは通常の手続によって、やはり更生手続によることなく、支払われなくてはならぬ、こういうことになってくるわけで、矛盾なく解決つく。いずれか一方が他方を排除する、優先するという関係ではないと思っております。
  96. 阿具根登

    ○阿具根登君 まあ私たち考えておるような御答弁を願って、非常にうれしいのですが、実際起っておる問題は、この管財人が、極端なところは、私はこの会社をつぶしてもいい権限を持っておるんだ。あなた方がそういうことをおっしゃるならば、この会社はもうつぶしますと、こういうことまで言っておる。裁判所に尋ねに行ったところが、つぶすためにやっておるのじゃなくて、更生法というのは更生するためにやっておるので、そういう権限がないということを聞いて交渉をやった、こういうところもありますし、団体交渉はほとんどやっておらない、団体交渉を私はやる必要はありません、私は管財人であるから、私は社長でもなんでもないから、あなた方と団体交渉をやる必要はありませんと言って、ほとんど団体交渉をやつておらない。また労働協約等も、それは前の社長がやったのであって、私は管財人として裁判所の命令で来ておるのだから、そういうものを認めるわけにゆかない、こういうことを言っておるということを聞いておりますが、基準局では何かそういう問題をお手がけになったことがありますか、それともそういうことをお聞きになったことがあるか伺いたい。
  97. 亀井光

    説明員(亀井光君) ただいま民事局のほうからお話がございましたように、われわれとしましても、会社更生の手続きをとりましたのちにおきましても、過去の賃金の不払い等につきましても、一般の賃金不払いの例にならいまして、これが解決に努力をして参っておるのであります。御指摘のような点につきまして、管財人がそういう言語を弄したということについてまだ私聞いておりません。
  98. 阿具根登

    ○阿具根登君 日本パルプとか高砂鉄工の労働組合から来ておるのですが、こういうところは全部更生法を適用されておるのですが、団体交渉も何も持っておらない、こういう陳情が来ておるが、そういう調査はされておらないか、基凖局のほうには陳情されておらないか、その点を一つ……。
  99. 亀井光

    説明員(亀井光君) 日本パルプにつきましては、監督をいたしました実績からいたしまして、現在賃金の不払いはないようでございます。団体交渉そのものにつきましては、実はわれわれの行政の範囲外でございまして、労使関係でございますので、われわれとしてその具体的内容を承知しておりません。
  100. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、高砂鉄工はどうですか。
  101. 亀井光

    説明員(亀井光君) 高秒鉄工も同様に現在賃金不払いはないという報告を監督署から受けております。同じく今の労使関係の問題につきましては、私たちの情報としてもまだ入っておりません。
  102. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 先ほども民事局のほうからの御意見もありましたように、管財人となると、やはりどっちかというと、倒れかけたのを助けに来たのだという気持になって、正常な労使関係というものは、どうしても忘れがちになる。また会社もそういう状態になっているから、何を言われても、組合側としても文句を言わずに、まあついてくるだろう。こういうふうにならんように、やはり最低限度は三法を守って、そうして会社を更生させてゆかなければならぬものだということを、一つ更生法を適用されたような会社については、指導をお願いしたいと思います。これはどうですか、亀井さん、できますか。
  103. 亀井光

    説明員(亀井光君) 先ほど民事局のほうからのお解釈の通り、われわれとしても会社更生手続をとりました後にも、管財人は使用者の責任を持つものと考えております。従いましてそういう点について指導をいたしますことは、当然一般の会社の使用者に対しまして指導いたしますと同様なことだと考えます。当然指導すべきものだとか考えております。
  104. 赤松常子

    赤松常子君 この会社更生法をいろいろ伺って参りまして、何か資本擁護に重点を置いている傾きがあるわけですね。管財人の人選というものの中に……。その手続に私少し改正しなくてはならん点があるのじゃないか。会社を更生するというのは、経営者だけの責任をもってやるということよりもむしろその労使がほんとうに一致して考えていき、解決していくということが重要じゃないかという場合に、管財人の中に、そういう労働者の意見というものも加え得るような窓口が開かれていって、初めて会社の更生が完全に行われるのじゃないかと、私しろうと考えですけれども思うのであります。管財人の人選というものはどういう手続でなされておるのでございましょうか、そこに問題があるように思うのでございますが。
  105. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 会社更生法と申しますのは、結局会社が行き詰まると債務超過になりまして破産になる、普通の手続で行きますと破産になりますと、もう元も子もなくなって、事業の継続もできない。労使関係も破産宣告によって当然労使関係が消滅するわけではありませんけれども、やがては消滅しなくてはならない。労働者にとっても非常にこれは不幸な事態になるわけであります。それから会社には多数の債権者がおるわけであります。債権者が結局破産者の残っておる僅かの財産で債権を按分する、労働者の未払い賃金がありますと、未払い賃金も結局按分によりまして弁済を受けるということになる。結局元も子もなくなってしまう。そうなっては一般債権者、労働者も含めまして、非常に気の毒な状態に陥る、もし可能であるならば引き続いて事業を継続させて労使関係もそのまま存置していく、そして債権者に対する債務の弁済もやっていく、これが全部のために、債権者のためにも労働者のためにもいいのであるという見地で、まあ会社更生法ができておるわけでありまして、決して資本擁護ということではないだろう。労使関係というものもやはりこの企業を維持していくという点も考慮には十分入っておるわけであります。  それからなお一般債権者もございますが、その債権者もやはりいろいろの人がおるわけでありまして、中小企業企業者もおるでしょうし、その企業者は当然に労働者をかかえておるわけでありまして、その中小企業者の債権がとれないということは、直ちにそのかかえている労働者賃金が満足に払えるかどうか、あるいは債権の取り立てができないために、その中小企業者自体も破産してしまう、労使関係も根本から崩れてしまうということにもなり得るわけです。この会社更生法の目的はそういうわけで、決して資本の立場だけを擁護する、そういうものでないように私どもは了解しております。  それから管財人の選任のことでございますが、これは裁判所が選任いたすわけでございまして、公正な見地から選ぶわけでありまして、労使関係というようなことも十分考慮に入れまして、ひとり労使関係ではございません。一般債権者の関係もいろいろございますけれども、あらゆる点を考慮いたしまして、裁判所が適当と認める人を選任するわけでありまして、ただいまの御心配非常にごもっともでございますけれども、今までの実施の成績に致しまして、管財人の選任は非常に悪い、一般的にでございますね。個々的にはあるいは先ほどあちらからお尋ねのようなことも、たまにはあるかもしれませんが、非常に悪いということは一般的にはいえないのではないかというふうに私ども考えております。
  106. 赤松常子

    赤松常子君 もう一つ。管財人の中に出資者の中からお選びになる場合もあると思うんですが、たくさん出資しておる人、少額出資しておる人、いろいろございますが、それは公平の発言権を持っておるようになっておるのでございますか。多額の出資者が強い発言権を持っておるのじゃないのでございましょうか。
  107. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 結局更生手続が始まりますと、この管財人が更生計画というものを、今後の一ロに申しますと、会社の運営方針というものをきめていくわけでございます。その運営方針をきめます場合には、債権者でございますね、債権者とやはり協議していく、労働者もやはりその債権者の一人でありますし、そういう人たちと協議をして、関係者集会というのがそのためにあるわけでありますから、関係者集会において、その各グループの債権者の意見を聞きまして、そうして整理計画というものを作っていくわけであります。もっとも関係者集会におきましては、債権の額がものをいうわけで、多額の債権を持っておる人の発言権が強いのは当然でございますけれども、しかし関係者集会の決議の承認を得ました更生計画案というものができましても、これは最後にはやはり裁判所の認可を受けなければならんのであります。著しく労働者に不利益なような、労働三法の精神を無視するような更生計画というものができておりますれば、これは裁判所としても認可をいたしませんし、それからさらにかりに裁判所がそういう重大な誤まりがある更生計画をもし見落しまして認可いたしましても、この更生計画については不服の手投も設けられておりますので、法律としては十分救済の余地というものは――救済の可能性を認めておるのでございますから、これを活用すれば決して労働者のために非常に不公正な著しく不利益な更生計画というものはできることはないだろう、こういうふうに思っております。
  108. 藤原道子

    委員長藤原道子君) 本日はこの程度で打ち切りたいと思いますが、御異議ございませんか……。  私はちょっと亀井さんと平賀参事官にさらに注文しておきたいのですが、これは更生計画ができて裁判所が決定をして、そうして初めて効力を発生するはずだと思うのです。ところが先ほど来御説明があったように、管財人がお前たちの結んでいた労働協約はおれは知らんのだというようなことを公言しておる。首を切っても、退職手当を出さなくてもいいのだというようなことで、ほとんど不利なことを強行しておりますので、こういう点に対しては、裁判所が管財人を決定するわけですね。従いましてあなたのほうでも管財人を決定した場合に、そういうことがあってはいかんのだ、こういうふうにしろという御指導を願いたい。  それから亀井さんのほうでも、労働者側に、そういう不当なことはないはずだからという、あたたかいお気持を持って御協力を願いたい。たださえ不利益労働条件がこうなると、さらに引き下げられることはわかり切ったことですから。さらにひどい扱いだというと、これは赤松委員じゃございませんけれども、資本家擁護のためだという声が出てもいたし方ないのでございまして、そういうことがございませんように一つ協力を願いたい、かように考えます。  では、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十八分散会