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参考人(
橋本末吉君) 私にも一言発言させて頂きたいと思います。大体
タクシー、
ハイヤーの問題が中心にな
つていろいろ御
意見を伺
つたわけでございますが、トラツクの場合においても、
ハイヤーの場合においても、いわゆる
交通業者として、先ず
道路運送法の面から考え合せますと、先ほど
鈴木さんの御発言にございましたように、
道路運送法の目的は、公正な競争によ
つて、いわゆる不当競争を防止して、
公共の
事業に服するといぅのが原則にな
つておると思うのでございます。併し現在は余りにも不当競争がその度を過ぎているのではないかと、かように考えられるわけでございます。陸運局の蜂須賀部長さんもおりますし、非幣にお差障りがあると存じますが、部長さんは不当競争はないというような御
意見でございました。私は不当競争というものが秩序を紊乱し、かような労使共に塗炭の苦しみをしているのだと、而も利用者側にも更にこの幅寄せが大きな迷惑を来たしておるんではないかと、こういうふうに存ずる次第でございます。何となれば、先ほど来
タクシーの場合には
名義貸しの問題でいろいろ取上げてございます。これを半面トラツクの場合に見ますると、トラツクの現在の
免許の
条件は大体三両が最低にな
つております。小型の場合においてもやはり四、五両というのが枚挙にいとまのないほど申請され、且つこれの大半が認可にな
つております。乗用車の場合には現在二百九十五社だというふうに承わ
つておりますが、トラツクの場合には戦時中一次から二次統合を強制されまして、当時は四十三社でございました。現在は大体一千社でございます。その一千社が始んど特定
免許、或いは限定と称しまして、大体当時は十台が基本で認可されております。それがだんだん下りまして、
只今申上げたように最低三台でどしどし認可にな
つている。その半面、当初に申上げましたように、一方、
タクシー関係には
名義貸しという大きな癌はあり、我々においては十五万円か二十万円の老朽車によ
つて、これで第一前提としてもぐり営業をや
つております。それが一応の基礎を基きまして申請をし、許可をと
つている。これが大きないわゆる法の盲点でもあり、秋序の混乱でもあり、又
事故に大きな関連を持
つているということ、これは又更に不当競争の
原因となる。何故に不当競争ということを申上げるかと申しますと、我々にしては、とことんまで労働基準法という枠にはめ込まれて
事業をしなければならん。勿論拘束八時間で実働七時間で、而も共済組合というものも設置してございます。これはいわゆる
運転手一人に対して月額三十円、又
会社側一台について三十円、これによ
つて事故の
原因を探求して共済会というものが
事故の負担をしております。更にこの不足金というものは
会社が負担して、努めていわゆる法を基礎に、いわゆる注意度の面等と噛み合せて、飽くまでも誠心誠意
事故の解決をいたしてございます。それから
保険というものも、勿論全般を称して国民
保険と申しておりますあらゆるすべての
保険も、いわゆる基準法に則
つて扱わなければならんということ、退職金の問題然り、有給休暇然り、大体大づかみに言いまして一年の勤務日数は三百日というふうな
状態にな
つております。と言うのは、週休休暇、毎週の日曜を休む、それから年次有給休暇が最高二十日でございます。更に祝祭日が私どものところでは九日でございます。この面から行くと、大体出勤しなければならんというのが大体三百日でございます。そうすると、六十五日というものはこれはいろいろな名目で休ませなければならんということ、この半面、
只今申上げましたように、大体一千社の中に、基準法の適用を受けている
会社は大体百社ないと
思つております。殆んどが基準法というものを棚上げしちや
つて運営しておるというのが現実でございます。そこに不当競争が生じ、
事故に大きな関連性を持つということを申上げても過言でないと
思つております。更に
車両数の問題にも触れたようでございまするが、これは
業者といたしますと、
車両数は減
つていると
思つております。併し先ほど申上げましたように、白ナンバーのもぐり
業者がどんどん殖えております。かようなものが現状でございまして、そこに先ほど御
意見もあり、私もこれに同感申上げたように、いわゆる国家政策として、飽くまでも統一した運営が必要である。これによ
つて初めて不当競争も防止できるし、又公益
事業としての本分が全うできるというふうに信ずるものでございます。かように、基準法の面におきましても、さような矛盾があ
つて、片一方はもぐりの野放し政策である。いわゆる基準法を何ら適用しないのである。野放し政策である。我々はとことんまでそこへぶつこまれておる。そこに大きな不当
原因がある。それから数の面におきましても、今年の七月以降、これは大きにデフレの影響も
関係あると
思つておりまするが、大体七月は二割五分、八月以降大体二割の減収にな
つております。而もこの二割という推定は、月額一千万なら一千万の
収入がなければ
経営が成り立たないのだという基礎から考えまして、やはり一千万なければ
経営が成り立たないのだというにもかかわらず、八百万なり八百五十万。これでは毎月みすみす二百万円なり二百五十万円の赤字を来たしておる。これがやはり無理を生じ、又労務者にも非常に
しわ寄せをし、不当なる労働行為にも関連をする。勿論労働組合というものもございまするから、我々においては不当の労働行為というものは到底許されるわけではないのでございますが、そこで
参考までにトラツクの場合を申上げますると、トラツクは、大体トラツク協会の平均走行キロ、これは一日七十五キロでございます。かように低いキロの結果に相成
つております。かようなわけでございまして、非常にタクシイ、
ハイヤー関係と事情が違うわけでございますし、又、実は私はトラツクが専門
業者でございまするが、
タクシーにおきましても、富国
交通というものの代表取締役をや
つております。いろいろ
ハイヤー、
タクシーの
状態を一応申上げてみますと、一昼夜交替とか、或いは待遇上における給料の半額を
固定給にすべきではないかと、
鈴木さんの御
意見でございましたが、誠に御尤もでありますし、又四百キロなり四百五十キロ走
つて来いという
業者も一部あると
思つております。併しこれは事によ
つて、例えばルノーとかワーゲンとかいうものは、非常にあれはスピードの出るような装置にな
つておりまして、先ずセコンドであ
つても四十キロ出さなければトツプに入らないというような高速を原則にした
車両でございまして、而も非常に人気がある
関係上、自然に四百キロや四百五十キロ走
つてしまうのです。私の経験で見ますると、大体平均三百キロに
行つていないのです。三百五十キロも
行つておりません。そこで一体、一昼夜ということを考えてみますると、非常に過酷な制度でございまするが、一昼夜に平均三百キロと申しますと、三十キロ平均走
つても、十時間の労働で解決はつくわけでございます。そういう考えから行きまして、時間的には不当のように考えられまするが、決して不当じやない。いわゆる運営上の問題だと
思つております。二部交替ということが理想だと
思つております。併しこれはいわゆる住宅の問題とか何とかとして、実行がなかなかむずかしいということが
一つの問題、それからいわゆる社会
情勢というものは非常に深刻な
関係上、実際にそれは理論に帰するのではないかということが考えられるわけでございます。従いまして、相成るべくならば二部交替で、勿諭労働基準法の枠も適用されなければならない。又いわゆる
固定給によ
つて最低の
生活保障もしなければならんということに相成ると
思つております。併しこの問題には触れなか
つたと
思つておりますが、勿諭お差障りがあるという点から恐縮だと
思つておりますが、先ずいろいろなこの問題を解決するにつきましては、これは
業者が称してサイド・ポケットとか、チヤージとかいうことを言
つております。先ず
事業の最も利潤として入るところの大半、これは大半と言いますか、一部と申しますか、大体これが
業者のふところに入らずに、途中で流れてしまう。称してチャージとかサイド・ポケツトとかいわれておりますが、この解決がなくしては、いわゆるニ部制も、
固定給によるところの
生活保障、労働基準法の枠にはめることも無理だと
思つております。
従つて結局、結論は理論で終るのではないか。いわゆる根本問題から考えまして、国策的に、国家方策として統一した運営方法ということこそ、
道路運送法もあり、又労働基準法もあるということに相成るとかように考えておるような次第でございます。又賃金の問題にもいろいろそれぞれの方から触れましたが、トラツクの場合は大体基準給ということから考えますと、大体べースというものが基本にな
つておりまして、大体の掴みから申しますと、三十二才のB級、扶養者二人ということによ
つて、一万三千円べースとか一万二千円べースとかいうことの規定が大体共通しておるように考えております。併し今申上げましたように、労働基凖法という面から考えますと、三割以上といろうのが時間外で支払わなけれぱならんということでございます。従いまして三百万円というものの基本給を保障するにおいては、一応四百万円の給料を払わなければならない。一方は何ら拘束されずに一万三千円なら一万三千円きり支給しないのだ。而も時間に
制限なしに、朝六時からでも、夕方七時にな
つても八時にな
つても、いわゆる規定の給料以外に給与は支給しないのだ、そこに大きな矛盾があり大きな不当競争が生ずるということにな
つて、要するに輸送秩序の紊乱ということを申しておりますが、私はこれは輸送秩序の紊乱ではない。国家秩序の紊乱だということを言
つております。何となれば、いわゆるあらゆる法の盲点をつき、而も脱税行為をや
つている。これはトラツクの場合でございます。という観点からい
つても、とりもなおさずこれは国家秩序の紊乱だということを申上げても過言でない。それから今日はいろいろの面の方がお集まりにな
つておるといぅことを知らないで、非常に極論を吐いて、御気色に触れた方もあると
思つております。と申しますのは、二重処罰の問題、これはいろいろ御
意見もございます。御尤もだと
思つております。私は憲法
違反ではないか、行政の行ぎ過ぎではないかということを申上げましたが、要はいわゆる自由民権の尊重というものからも考えたとぎに、いわゆる
事業上の過失なり
違反であ
つて、そこで先ほど
警視庁もあり、安全協会もあり、而も安全協会、各警察ごとに支部があり、運転者会がある。私は勿論、運転者
会長もしておりますし、
事業者の一人として飽くまでも包容力を持
つた指導によ
つて育成向上を図らなければならんということが私の理念でありますとともに、而もそのいろいろな機関を通じて、こういう場合にはこういう処罰をするぞということを、これを十分に納得させて、そうしてやはり法の尊厳というものによ
つてこれに適用される場合には、これはやむを得ないと思います。私はあくまでも法の運営を緩和してくれとか、行き過ぎだとかということでなく、やはりはつきりその行政上の面を滲透させて、又
業者においても、安全協会においても、
警視庁においても納得させ、その反面指導、育成、向上という理念と並行してやらないことには、
事故の防止は成立たないのだということが先ほど私が申上げた問題であ
つて、法の行き過ぎとかということは
ちよつと私の或いは行き過ぎた
意見であ
つたかも知れません。私はさような
意見から申上げた次第でございまして、いろいろまだあると思うのですが、とにかく時間の
関係もございますし、まあ御
参考に供すれば結構だと思います。いわゆるこれをいろいろお取上げ願いまして、先ず
道路運送法を、陸運局の方々もお帰りに
なつたようですが、非常に或いは運送法を緩和したがために更にこういう結果に
なつたと
思つております。これは運送法というものは変りはないのですが、
タクシーの場合には二十台というものを
一つの目録にして申請しなけれぱ書類を受付けないようにな
つております。併しトラツクの場合には先ほど申上げたように三台でも何台でも取上げてみんな許可してしまう。そこに又基準という言葉がございますが、私はあれは陸運局の扱い方ほ、あれは
条件という扱い方で、その
条件に合致すればどんどん許可するのだ、私は基準という文字が
使つてある以上は、あくまでも広く信用を原則とし、又本日取上げた
事故の問題についても、
事故の負担能力という面から考えても、防止の面から考えても、やはり基準というものはあくまでも基準であ
つて、何台が基準であるか、少くとも公益
事業という面から行きましても、すべてあらゆる広範囲から考えて、あくまでも基準でなければならない。
条件がかなえば二台でも三台でも
免許するということではいかんと思う。
従つて道路運送法の盲点というものを是正しなければならないし、又その盲点があるために非常に陸運局としても扱い方に困難を来たしておると
思つております。従いまして、
道路運送法の改正、勿論基準法のいわゆる統一した運営上の問題、これもいわゆる一方において適用し、一方においては野放しだということは、例えば
一つの警察単位ですね、私はこういうことも考えておるのです。いわゆる不当競争という面から解釈したときに、これは
一つのいわゆる警察を単位にした連合体的な労働組合というものを作
つて、あくまでも法に従うところの組織を持たしてこそ、いわゆる公正な
事業或いは公正な営業行為ですね。自由競争という明文に則
つた事業が成り立つのじやないかということを痛切に感ずるものでございまして、どうぞこれらの点も御
参考頂きまして、何とかこの矛盾したすべての問題を、もう少し正常な、いわゆる法治国として、いわゆる立法精神に基くところのすつきりした行政ができるように、又それに我々がの
つて事業ができるような
状態にな
つてこそ、
事故の問題も自然に少くな
つて行くのではないか、かように考える次第でございます。