○愛知揆一君 私は自由党を代表いたしまして、
政府の
施政方針のうち、主として
経済政策の問題につきまして質疑をいたしたいと思います。
顧みまするに、私は昨年の一月第十九
国会におきまして、当時の
政府としての
経済政策の大綱を述べたのでありまするが、当時私は
国際収支の
均衡を回復すること、正常な均斉のある
経済を確立するということが最大の急務であることを強調いたしたのであります。しこうして
昭和二十九年度の
経済政策の基調を、第一に
わが国経済の正常化、特に
わが国物価を国際水準へさや寄せをするということを通じて、
国際収支の回復に置くということの決意を表明いたしまして、この決意に基くところの一連の施策を発表いたしたのであります。
今日その結果を顧みてみまするに、物価は低落いたしました。
国際収支におきましては三億ドルに近い実質的な
黒字をあげ得るに
至つたのであります。このことは一
萬田大蔵大臣が一昨日の
演説において確認せられておる
通りでございまして、私はこれはまさしく自由党
吉田内閣の
政策の大成果というべきものと存するのでございます。(
拍手)この一カ年間においてはもとよりでございまするが、さらにさかのぼれば、第二次
吉田内閣組閣以来六年有余にわたりまする
日本経済の発展の跡につきましては、
国民所得、
生産、消費、
貿易、その他あらゆる部面にわたりまして、目ざましい回復と発展を遂げておりますことは、今さら数字をあげて申すまでもないところであります。それのみならず、この事実は広く国際的な信頼と評価とを高めて参
つたのでありまして、このオーソドックスな
地固めの工作は、今やようやくその成果をあげつつあるのであります。今こそわれわれは、このわれわれのなし得た
地固めの上に一段と努力を新たにいたしまして、一そう積極的に
国民生活水準の
向上のため、またわが民力充実のために邁進すべきときだと考えるものであります。(
拍手)
このときに当りまして、私は最も必要なことは、諸般の
政策が相互に有機的な連関を持つことであり、統一性がなければならない。またあくまでも実行が可能である具体性のあるものでなければならないということであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、
拍手)しかも、これは国の内外にわたりまして信頼の高い誠実なものでなければならないということであります。(「しかり」「その
通り」と呼ぶ者あり)私はこの
観点に立ちまして、
鳩山内閣の
経済政策についていろいろと質疑をいたし、また批判をいたしてみたいと存ずるのであります。
まず第一に私が取り上げたいと思いますのは、
貿易、為替の
自由化の問題でございます。
大蔵大臣の
演説は新聞の伝うるところによりますと、数回にわた
つてその草案を書き直されたということでありまして、新味を盛
つたものだというので一部に迎えられておるようでございます。この
演説を拝聴いたしますると、まず
世界各国が
貿易の
自由化に真剣な努力を続けており、このために
西欧諸国の通貨の
交換性の回復は遠い将来の問題ではないというふうにみておられる。従
つてわが国もこれに対応して
貿易自由化の態勢を推進する必要を力説しておられるのでありまするし、さらにこの
貿易、為替の
自由化という、この一つの命題、この一つの言葉をも
つてこれからの
経済政策の中心である、こういうふうにしておられるのであります。なるほど
西欧諸国における通貨
交換性に対する努力は引き続き顕著なるものがあるようでございまするが、私から言いまするならば、これはすでに定ま
つた既定の事実であ
つて、何ら耳新しいことではないのであります。前
内閣におきましても、かかる
世界の
情勢に対処して
日本の
経済を持
つて参りまするためには、先ほども申しましたように、
経済の正常化ということのために諸般の
政策を凝集してや
つて参らなければならないという決意をいたして、いろいろの施策を進めて参りましたことは先ほど申し上げた
通りでございます。そこで、私がここに問題として提起し、特に
政府の御
意見を承わりたいというのは次の数点でございます。
まず、それは第一点といたしまして、そもそも為替、
貿易の
自由化、こういう命題によ
つて示されておるところの
基本的な考え方の問題、
大蔵大臣はこの命題を一つの理想として、為替も
貿易も自由にするということが長い将来の目で見て一つの人類の理想である。そういうふうな意味合いにおいての命題として掲げられておるのであるかどうか。それならば私はまた格別だと思うのでありまするが、先ほども申しましたように、この命題はわれわれがこれからや
つていく
政策の第一の中心課題である。こういうふうに言
つておられるのでありまするから、これには相当な具体性が裏打ちされておるものでなければならないはずでございます。(「その
通り」と呼ぶ者あり)そこで私が伺いたいのは、現実のこれは問題として、一体今日の
日本の国情において
貿易や為替をすぐさま自由にするということが、具体的に可能なことであろうか、どうであろうか、このことを伺いたいのでございます。
まず問題を分けまして
貿易の問題、
日本の
貿易の問題は、きわめてむずかしい問題でございます。
輸出はともかくといたしまして、
輸入についてざつと考えてみまするだけでも、
輸入の大半が原料及び食糧というこの
日本の国情でございます。もし
輸入が自由勝手ということになりまするならば、その肝心の必要な物質が
計画的に
輸入ができないことになるのではないでしようか。たとえば不急不要品とか、ぜいたく品の
輸入が殺到するというような事態も起り得ないとは保しがたいのであります。小さな例ではございまするが、か
つて自動承認制という
制度が大いに行われましたときですら、そのおそれは非常に強か
つた。また今度は逆に、外国の大規模な経営によるところのコストの安い食糧が殺到して来る。この点については後ほど農林
大臣にも御
意見を伺いたいことがあるのでございまするが、コストの安い食糧が大量に殺到するということになりますると、国内の食糧
対策や、あるいは農村
対策をいかにするかといふ問題も当然起
つて参ります。(「農林
大臣いないぞ」と呼ぶ者あり)また、他の面を見てみますると、
政府のいろいろの
政策の中には、国産奨励といふまことにけつこうなことも大いに取り上げられておるわけでございまするが、この辺のあれやこれやと、いろいろ考えてみました場合に、一体この
貿易の
自由化というものが具体性をも
つて当今考えられる問題であろうかどうか。この点を伺いたいわけであります。
次に、為替の
自由化の問題、これも
わが国といたしましては、理想といたしましてはともかくでございまするが、具体性を持
つた問題としてここ数年内に、たとえば
政府の六年
計画というものがございまするが、その六年というような限られた時間において、その目的を達し得るものと私は考えられないのでありまするが、いかがにお考えでございましようか。為替の
自由化と言えば、私は、きわめてこれを平たく言えば、為替管理も何もない、全部これを撤廃するということを意味するもりだと思うのでありまするが、しかりこいたしまするならば、か
つての井上
財政の当時の金解禁というようなことも一つ思い起されるわけでございます。あの当時は
わが国の
経済が全盛の時代であ
つた。あの
わが国の
経済が全盛の時代でさえも、金解禁すなわち為替の
自由化ということは一年とこれを続けることができなか
つたではありませんか。(「その
通りだ」と呼ぶ者あり、
拍手)為替、通貨の自由ということの前提には、その国の通貨に対する、国内だけではなく、外からの、外国からの信頼ということもまた絶対に必要な基礎であります。外国人の
わが国の通貨に対する信頼が完全にゆるがない、このことが保証せられざる限りにおいては、国際間の為替、通貨の自由ということは、とうてい望むべくもないと思うのであります。
私は以上申しましたことを総合いたしまして、
大蔵大臣は
貿易、為替の
自由化ということを、具体的な問題としてどの程度のものと考えておられるかということをお尋ねいたしたいというのが、先ほど来申し上げておる
通りでございます。もしそれ、
大蔵大臣の
財政演説の中にあるようでございまするが、為替、
貿易の
自由化方策の具体的の
政策の例として、たとえば
わが国産業の国際競争力を培養、強化することである、正常
輸出を伸ばして
国際収支の実質的改善をはかることであると言
つておられます。そうしてこれがためには
産業の
合理化、コストの引き下げをはかるほか、商社を育成強化して、
輸出入銀行の資金の確保をはかり、
輸出免税措置等を
拡大する等
輸出の振興をはかる、これがその
具体策だと言
つておらるるのでありまするが、まさしく今あげましたこれらの事例は、冒頭に私が申し上げましたごとく、前
内閣におきまして私どもがや
つておりましたその
通りのことがここに羅列されておるのであります。(
拍手)これは文字
通り前
内閣政策を踏襲するものでございまして、当面
具体策の乏しいところの
貿易、為替の
自由化というような、ユートピアに通ずるものとは言えないのではなかろうかと思います。
さらに続いて、補償リンク制の改廃、
特殊貿易の縮小等、いずれもここにあげられておりますることは、前
内閣と全く同様の施策なんであります。そうしてこれらは一
萬田大蔵大臣もその言葉の中に使
つておられまするが、これはいわゆる
日本経済の正常化方策と申すべきものだと思うのであります。
もしそれ、さらに進んで
財政演説の中にございまするが、為替相場の建て方を簡素化するとか、外貨
予算の運用の長期化をはかるとか、こういう方策があげられてございまするが、これはむしろ技術的な細目の手段の問題であると私は思うのでありまして、これが為替、
貿易の
自由化というような、何か目新しい新鮮味あるものだと自画自賛されるようなことは、率直に申しまして、失礼ではございまするが、しろうとをだます大ぶろしきと言わざるを得ない。(「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)別段に大上段から振りかざして、
自由化自由化とおつしやるほどの新鮮味のあるものではないというふうに私は断じたいのでありまするが、これはきわめて重大な問題でございまするから、特に何か重大な、大きな理想的な
政策を直ちに打ち出されると、さような用意があるのだということでありまするならば、特に鳩山
総理大臣から、その点をお伺いいたしたいと存じます。(
拍手)
さて、次は私は冒頭に指摘いたしましたごとく、こういう大事な現在の
日本の状態においては、少くとも
経済政策においても統一性ということが保持されなければならないと思うのであります。いろいろの
経済政策がばらばらであるということであ
つては、これは致命的である。ところが、昨日わが党の津島
議員からお尋ねをいたしましたごとく、私どもが非常に心配いたしておりまする点は、ひとり、
外交政策について
鳩山内閣内において何らか
意見の
調整ができていないのではないか、こういう危惧を持
つておるのでございますが、その危惧のほかに、
経済政策に同様にこの閣内には二つの違
つた主張が対立しておるのではなかろうかと、この疑いは、むしろ私よりも一般
国民大衆がもつと痛切に危惧の念を持
つておるところと思うのであります。(
拍手)
すなわち、今さら申し上げるまでもございませんが、一
萬田大蔵大臣は吉田
自由党内閣とともに、
経済の正常化について少くとも
政策の面においては
金融の引き締めや緊縮
財政を常に主張し、かつ、これを実行せられ、そうしてこれからも私の考えではその
政策を堅持していかれたいという闘志を持
つておられると拝察いたします。ところが石橋
通商産業大臣におかれましては、平素から積極
財政論者でございまして、その御
意見には一人のりつぱな
財政家として掬すべきものが非常に多いように私も考えるのでありまするが、要するに
産業経済政策について独自の見解をお持ちのようでありまするし、しばしばこれは公けの
機会にも発表せられておるところでございます。今回のこの
国会におきましては、いまだ通産
政策の全般について石橋
大臣から親しくその抱懐する御
意見を具体的に伺う
機会に恵まれないのでありまするが、ともかく世間の感覚からい
つても、具体的の
意見の対立があることは明白であります。(
拍手)同一の閣内にあ
つて水と油のごとき存在をなしておられるとさえ言い得ると思うのであります。(
拍手)私はこの大切なときに、
経済政策の道は一つでなければならない。統一性がなければならない。この角度から申しましても、鳩山
総理大臣はこの対立する見解をいかに
調整せられてこられたのであるか。なかなか御苦心が多いと思いまするが、また
経済運営の根本方針を今後いかに統一せられようとしておられるのでありまするか。特に鳩山
総理大臣から御
意見を伺いたいと存じます。(
拍手)
こうした
意見の対立あるいは
政策に統一性と連関性がないということは、具体的に幾多の例をも
つて私は示すことができると思います。私はこれからしばらくの間、
政府が今回発表せられました総合
経済六カ年
計画を中心といたしまして、
質問を続けたいと存じます。
この
経済六カ年
計画というものは、
鳩山内閣におきまして、長期
経済計画について閣
議決定をせられました唯一の
計画であります。従
つて鳩山内閣の
経済政策の根幹として取り上げてかまわないと思うのでございまするが、実はまことに失礼なことを申すようでございまするが、この六カ年
計画というものの骨子になりましたものは、実は私が
経済審議庁に在任いたしておりました当時にできたところの、
昭和四十年度には
日本の
経済がどういう格好になるであろうか、そういう一つの姿を描いてみた。その案というものがわすかの時間、わずかの
調整を加えられて、この六カ年
計画という堂々たる閣
議決定にな
つて現われてきたのであります。(
拍手)私はこの
昭和四十年度に対しての
経済の見取図というものが、か
つて十九
国会のときに、当時のある野党
議員から御
質問があ
つたときに、あれはわれわれ
政府内部で非公式にいろいろと勉強しておるところのものであ
つてこれには幾多の前提や、あるいは予想される、あるいは予想されないいろいろの要素がたくさんある。従
つて政策の基調として、いわんや
政策の具体的な目標としてこれを公けのものとして公表するというようなものにするのには、いまだ相当熱心な、かつ深刻な、そうして相当の日月を重ねなければ、これはまともなものには、なかなかなし得ないということを御答弁をいたしましたことは、おそらく速記録にもはつきりしておると思いまするが、それがただいま申しましたように、唯一のいわゆる長期
経済計画はこれであると言
つてここに出てきたものであることをまず第一に私は指摘しなければならないと思います。従
つて私はこの
内容について質疑を申し上げますることは、いささか武士の情に欠くるところがあるかもしれません。しかしながら問題は重要でございまするから、ごく簡略に各項目にわた
つて私の
意見を交えながら質疑をいたしたいと思うのであります。
まず第一に、私は
昭和三十年度という年は、いろいろの御
説明を伺
つてみましても、また私自身の考えからいたしましても、
日本の
経済全体が特に大きな
拡大への契機、きつかけを持つとは考えられない。そうだといたしますれば、この
昭和三十年度という年とこの長期
計画において示されているところの将来のある年度との間をいかにして橋渡しをしてだんだんと
拡大に持
つていくのかというところが、まず第一に解明されなければならないわけであります。(
拍手)私はそこで第一に伺いたいのは、まず
昭和三十年度
予算大綱も、数字も何もないのでありますから、これを伺うのは無理だと思いまするが、しかし、ともかくも
昭和三十年度について一体
日本の
経済においては
国民所得がどうなるのか、
産業活動がどのくらいになるのか、
国際収支がどうなる、そのくらいのところはまず三十年度について伺わなければならない。そうして昨日津島
議員が指摘せられました
通り、今日われわれ
国民が欲しておるのは一マイル先のことが知りたいということもありましようが、一マイル先よりも一インチ先のことが今日の問題であります。従
つて私は三十二年度がどうか、三十五年度がどうかということもありまするが、三十年度がどうか。そうして三十二年度にはそれらの諸般の指数がどういう格好に現われると見通され、かつ橋渡しがされるか。その当面するところのこの橋渡しの移り変りの現実の事態の見通しが私は伺いたいのでございます。
さて、次は物価の問題でございます。この
経済六カ年
計画におきましても、物価の問題は十分に織り込まれておらないのであります。従
つてこの
計画のねらいとしてうたわれておりますことは、インフレによらないで
経済発展をしていこうということが述べられてあるけれども、物価についてかくかくになるという見通しの保証がなければ、そのねらいというものが果してできるものかどうかわからないのであります。また物価の見通しについて確たる自信がなけらねば、
輸出計画を打ち立てることができないはずだと思うのであります。さらに先ほども指摘いたした
通りでございますが、
経済の正常化をやり、国際競争に打ち勝ちまするためには、私はもう少し、いな、ますます物価の引き下げが問題であると考えるのでありますが、
政府は
わが国の物価と国際物価との開きについて、今日ただいまの状況において、いかなる認識を持
つておられるか。またさらに、さや寄せをするという必要があるとすれば、具体的にいかなる施策をとられんとするのでありますか。この点をお尋ねいたしたいと思うのであります。
次は
予算との関係の問題であります。この点についてはすでに多くの
同僚議員から御質疑が活発に行われましたから、詳しくここに繰り返すことは避けたいと思いますが、結論的に申しますと、私はこの六カ年
計画というものは、明年度のいわゆる
予算大綱との間に何のつながりもないと言
つても言い過ぎではない。
大蔵大臣がお作りになりましたところの
予算大綱は一言にして言えば、
経済審議庁長官のお作りに
なつたところの六カ年
計画について一顧も与えてはおられないように思われるのであります。もし私が、以下一例として申し上げるのでありまするが、たとえば
財政投融資の関係等から御想像願いまするならば、この六カ年
計画に織り込まれている、あるいは見込まれている程度の今後の
予算の問題、あるいは今後期待されておるところの
経済の発展の問題について、果して関係
経済閣僚がほんとうにこれを御勉強に
なつたならば、とてもこれは勤まらぬといわざるを得ないはずであります。(
拍手)前
内閣以来、
実施いたしておりました
経済の
地固めの
政策に照応いたしまして、
日本経済の確固たる自立をはかるということのためには、申すまでもございません、
基幹産業の
合理化と立て直しということがその中心の課題である。しかしながら、かかる中心の課題、
経済の立て直しということは、手ぶらではできないのであります。少くとも
計画を作る以上、
計画に示された年度中、着実な資金
計画がなければならないはすでございます。この六カ年
計画におきましては、たとえば
昭和三十五年度における推定
労働力の人口は四千三百万人と見ておる。その
完全雇用を実現するということにな
つておる。そうして
輸入が二十三億九千万ドル、
輸出が二十三億四千万ドルという
貿易のバランスを達成しようとしておられるようでありますが、このバランスを達成いたしまするためには、各般の係数を試算してみますると、初年度の三十年度におきましては、
基幹産業の関係だけでも、少くともどんなに圧縮をしてみましても、千百億円ないし千二百億円の
財政投融資の
実施ということが前提となるようでございます。通産当局の研究、要請もさような線にな
つておるようでございます。ところが昨日来指摘されておりまするように、明年度の
予算大綱における
説明におきましては、
財政投融資は二十九年度とほぼ同額、変りないということにな
つており、津島
議員が御指摘になりましたが、余剰農産物の見返り円がこの中に入
つておるのかおらないのか。この点も私は伺いたいところではありますが、それはともかくとして、二十九年度に、しからばこういう
基幹産業の関係にどれだけの
財政投融資がされておるかと言えば、開発銀行に集約されておるもの、あるいは電源開発会社から投融資されております総額は八百二十億円程度なんである。二十九年度程度ということは、この程度なんです。幾ら圧縮いたしましても千百億、千二百億円という
計画が、具体的にこれは今日進行している。これだけの
財政投融資がなければ、三十年度の
計画が立たない。こういうことは現実の事態において、昨年度同様という、八百二十億円との間には、どんなしろうとでも大きな開きがあることは一目瞭然なんであります。(
拍手)こういうことであ
つては、私は各省
大臣に一つ一つ例をあげて伺いたいのでありますが、時間がございませんから、この一点に集約いたしまして、こういうことでは、いかに有能なる石橋
通産大臣におかれましても、通産行政は
責任を持
つて行えないんじやなかろうかと、(
拍手)ひそかに私は心配でございまするが、どういうふうにお考えになりまするか。お答えをいただきたいと思います。
次には、
国際収支の問題。この
内閣において考えられておりまするいわゆる長期
経済計画というものにおいては、
昭和三十二年度も、また
昭和三十五年度も、
国際収支は
均衡するということにな
つておる。ところが遺憾なことではありまするが、
日本の
現状におきましては、他国に対して支払わなければならない債務は相当に多いのであります。まず第一に賠償がございます。すでにビルマとの間には、その額もきまりました。その他の国ともどんどんこれはきまる方が望ましいと思います。またガリオアの返済という問題もございます。外債の元利払いもございます。連合国財産補償もございます。平和条約第十六条関係の債務もございます。
金融協定の債務もある。外資導入の返済の
計画もしなければならないし、技術提携によるところのロイアリティの返済も考えなければならない。これらは一体どういうふうに見通して、この
国際収支計画に織り込んでおられるのか。私はなかなか甘いことではないと思うのでありまするが、できるならば一つ一つについて明確な数字的根拠をお示しいただきたいと存じます。(
拍手)
次に、雇用の問題であります。この
計画によ
つて示されておりまするところの雇用
計画へ見ますると、まず第一次
産業部門の
昭和三十五年度における就業者数は、二十八年度のそれとほとんど同一だと見ておる。そうして第二次、第三次の
産業部門の就業者についてのみ約二割程度の
増加を見込んでおられるのでありまするが、先ほど来も質疑にありまするように、現在すでに多数の潜在
失業者を擁しておりまする第一次
産業の就業者数にさして変化が見られないとするならば、この見通し作業というものが、
完全雇用の達成を標榜しておりながら、
わが国に特有な潜在
失業者には、何らの解決を与えていないものと考えられるわけでございます。(
拍手)また第二次、第三次
産業部門への就業者の
増大は、なかなか実現に困難性があると思われまするが、特に第二次
産業における
合理化の進行によ
つて、そこで発生するところの
失業者が農山漁村へ還流いたしますることが容易に考えられる。ここに農村を圧迫し、ここに農村の次、三男
対策というものを、さらに非常に必要にするという問題も起りまするし、失業
対策事業というものが画期的に多くを期待されなければならないと思うのであります。
さて私は時間の都合上、先を急ぎたいと思いまするが、ここで一つ指摘したい問題がございます。それは、この長期
経済計画というようなものを考えられた
政府が意識しておられるかおられないかは別問題といたしまして、
経済の統制、あるいは規制ということを、ここにおいて十分の問題として考えなければならないと思うのであります。こうい
つたような
計画が、
個人及び
企業の創意を、これは生かしつつとは言
つておられまするけれども、必要な限度において
調整をするというくらいの原則の範囲内で、こういう
計画が達成できるかどうかという問題は、きわめて重要な点であります。なかんずく、この
計画におきましては、
政府としても、資金の確保と、その
重点的な配分がいかにしてなされるかが最大の問題であるというふうに考えられておるようであります。しかも、その際
政府におかれては、民間の資本の形成ということを非常に多く見ておる。その関係上、こういう民間の資金というものが所期の部門へ流れて行きまするためには、相当強い資金統制が必要にな
つてくることは必然だと思います。さらにまた進んで資金統制を成果あらしめまするためには、過去の実例においてもしかるがごとく、必然的に物の面の統制にまで及ぶごとが想像されるのであります。いわゆる
計画経済、統制
経済になるのではないかと思われるのでありまして私は、もしそうなれば、われわれとしてはかかる考え方に絶対に反対しなければならないと思うのであります。(
拍手)私はここで
鳩山内閣成立のときのあの当時の社会党両派とのいろいろの取引に思いをいたさなければならない。組閣のときの社会党とのつながりということもきわめて簡単にお考えにな
つて、
鳩山内閣としては、ただいま申しましたような筋書きから言うて、おそらく
経済政策についても、簡単に、十分な思慮と研究なくして、統制
経済への道をとられるのではなかろうか。この点が私として非常に心配であり、われわれとしては断然反対しなければならぬ点であると思います。(
拍手)
私はこの最後の点につきましても、特に鳩山
総理大臣の御答弁を求めまして、私の質疑を終りたいと思います。(
拍手)