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1954-12-19 第21回国会 参議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十二月十九日(日曜日)    午後一時十六分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     石黒 忠篤君    理事            小滝  彬君            羽生 三七君            曾祢  益君    委員            大谷 贇雄君            岡田 信次君            川村 松助君            重宗 雄三君            佐藤 尚武君            高橋 道男君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            天田 勝正君            杉原 荒太君            大山 郁夫君   国務大臣    外 務 大 臣 重光  葵君   政府委員    外務政務次官  床次 徳二君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君   説明員    外務省アジア局    長       中川  融君   ―――――――――――――  本日の会議に付した事件 ○日本国ビルマ連邦との間の平和条  約の批准について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○日本国ビルマ連邦との間の賠償及  び経済協力に関する協定締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 只今から外務委員会を開会いたします。  日本国ビルマ連邦との間の平和条約批准について承認を求めるの件、日本国ビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定締結について承認を求めるの件、この二つを一括して議題に供します。  昨日に引続いて質疑を続行いたします。
  3. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 重光外務大臣に少しばかりお尋ねを申上げたいと思います。ただ私は外務委員は初めてでございまして、外交の問題につきましても十分の知識を持合せておりませんが、ただ国民の一人といたしまして、日本の今日立つておりまする国際情勢の中におる位置につきましては非常な心配をいたしておる一人でございます。従つて私のお尋ねを申上げますることが、ずぶの素人の、庶民的な感覚で申上げまするので、いろいろ蒙をお啓き頂き、御教示を賜わりたいと、かように存ずる次第でございます。  そこで第一にお尋ねを申上げたいのは、この頃外務大臣外交政策に関しまする声明の御発表がございまして、それはモロトフ氏が、日本政府日ソ関係正常化という方向において措置をとる用意を真に持つておるならば、ソ連政府はそのための実際的な措置に関する問題を討議する用意があるという声明を発したのでございますが、これに関しまして、この頃中各同僚委員からの御質問、又衆議院における質疑に対しまして、外務大臣はまあ将来の発展を眺める、こういうようなお言葉でありましたし、又昨日のこの委員会におきまして、曾祢さんからの御質疑に対しまして、戦争終結宣言を出すというような一歩踏み出す意思はないか、又具体的に手を打つ考えはないか、こういう質問に対しまして、外務大臣はすぐには交渉に入れん、こちらから具体案を持ち出すことはしないというようなお言葉であつたのでございますが、又この十七日の閣議のあとで、新聞記者団へのお話では、ソ連サンフランシスコ条約調印を拒絶したのだから、それが又日本との平和関係を回復することを希望したのは一つ前進ではあるけれども、その真意がよくわからんから、なお将来の発展を注意するより方法がないというお言葉であつたようでございますが、外務大臣の御声明に対して向うが答えた、声明を発したのでありますから、これはまあ私ども普通の常識から考えて、日本外務大臣としてはこれに対して意思表示をなさるのが当然ではなかろうか、かように思うのですが、それについての御意見、お考えを頂きたいと存じます。
  4. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 大体お話のことはそうだと思います。そこでお話通りに、私は共産国であるからサンフランシスコ条約のときに調印をしなかつたために、これは実際とは違いますけれども、その条約上、法理上敵味方関係になつておる。これは共産主義国であるとないとを問わず、その戦争状態をすぐに終結させて行くということは、日本中心とする国際関係を緩和する上において私はいいと、こう考えておるから、私はそういうような形勢になることを歓迎しておるわけであります、そしてモロトフ声明に対しても、それはそういう考え方に対して受け答えがあつたことを私は歓迎して、それは一つ前進であるということをはつきり申しておるわけでありまして、それ以上にそれじや、早く今交渉委員を設けてどこで交渉をするとか、どういうことをするとかいうことをこちらから具体的に出す意向は、そこまで行くのは順序としてまだ早過ぎると、こう思つておるのであります。それは何故かというと、御承知通りに、今共産国ソ連中心として非常に何というか激しいいわゆる平和攻勢をやつておる。又それが社会全部に亘る情勢であるのでありまして、どこの国もソ連がどういうことを、新たなことを言つた場合に、その意味がどういう意味であるかということを十分検討するのには、これは時間も要するし、且つ又いろいろ準備的の施策が必要であるのであつて、これはどこの国もそういつてそういう手段をとつておる。そこで私は一歩前進して、これを歓迎しておるのでありますが、それ以上に具体的に交渉を進めて行き得る時期が実は来ることを希望はいたしておるわけであります。それが一貫した方針でなければならんと思うけれども、今それだからそれ以上に具体的に進んで行くという時期じやない、こういうことを申しておるわけなんであります。
  5. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 大臣仰せになりますことは無論私どももよくわかるのでございます。日本仮想敵国とした中ソ友好同盟条約がありますし、まだ捕虜の問題、領地の問題等、幾多山積をしておる今日の現段階におきまして交渉に入ることは早過ぎるというお言葉はよくわかります。併しこの重光外相声明には、我々は相互に受諾できる条件ソ連中国との正常関係を回復する意思を有しておるということを御声明になつておられるのでありますが、そうすれば、それに対して向うが回答としての声明を発しておるのでありますから、早過ぎることはよくわかりまするけれども意思表示をなさるということは私はこれは当然な常識であつて向うが答えたのを知らん顔をしているのだ、黙殺をするのだということは、無論敵国でありますから、そういうことでいいのかも知りませんが、併しいろいろ謀略もありましようし、平和攻勢意思も多分にあるように、国民もこれは割り切れん気持を実は持つておりますが、額面通りに受取るような気持国民もございませんけれども、併し大臣のそういう正常関係を回復する意思を有するということに対しての声明でありますから、何らかの意思表示をなさるということが私は必要ではなかろうか、こう思うのでございますが、重ねて一つお答えを頂きたいと思います。
  6. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その点については今申した通りであります。御意見は今すぐ具体的の意思表示をして交渉に進んだがいいと、こういうふうな結論になるようでありますが、私はそこまでは考えておらんのであります。なぜ考えておらんかというと、これはもうこういう過去の長い間のいきさつを持つておる大きな事柄については、そう簡単に声明受け答えがあつたから、すぐそれに飛びついて行くというようなふうには簡単には私は参らんと思う。よく真意確めて、確めつつ行くということが今後必要であつて、そういうことがロシアとの交渉については各国とも定石になつておるのであつて、やはりそれによつて進んで行つたほうが私は日本の利益になる、こう思つておるわけであります。それから私ははつきりとそれに対して意思表示をしておるのでありまして、これは一つ前進であるということをはつきり言つておるのであります。そのくらいの程度で私はいいと思う。
  7. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 これはなかなか、微妙な問題でありますから、深くお尋ねすることは如何かと思いますが、一歩前進だということは一体第三者が言うことじやなかろうかというような実は感じがするのでありますが、ちよつとこれは政治評論家言葉ならよろしいけれども、国を背負つて外交責任者のお言葉としてどうもちよつと受取りがたいように私は思うのであります。そこで何か十七日の閣議では、新聞の伝えるところによりますと、外務大臣からこのモロトフ声明に対しては政府としてもこれを聞き放しにしておくべきではないと思う、何らかの意思表示をすべきものと考えるというようなお言葉があつたように伝えられておりますが、又我が国立場サンフランシスコ平和条約大前提になつておるのだから、この基本線を狂わさん限りはソ連側日ソ関係正常化の問題について話合つてもよいのではないかと思う、ただ時期、方法については十分検討をする必要があるということで各閣僚の御意見も徴せられたというようなふうに伝えられておりますが、それを考えるというと、何か意思表示を、ただ一歩前進だという政治評論家的なお言葉だけでなしになさるという御意思があるように窺われるのでありますが、如何でございましようか。
  8. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今申した通りでございます。閣議でこのいわゆるモロトフ声明なるものがあつたということを私は報告をいたしました。これは一つ前進であるとして私はこれを迎えるのに躊躇するものではないということを申しておきました。その線によつて今処置をとつて来たのでございます。そのほかのことについて新聞にどうごげいますか存じませんけれども、実情はそうでございます。そうしてこれが当局者としてその声明なるものが一歩前進であるということは、これは新聞評論家の言つておることでないのでありますから、これでちやんと意味をなすわけでございます。私はそういうことにして事態の発展、四囲の状況を今よく見張つておるわけであります。
  9. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 どうも心の底から納得が行きませんが、これはまあ非常に慎重を要する問題でありましようから、深くはこれ以上にはお尋ねを申上げませんが、何か国民としましては非常に割り切れんような気持があるのでございまして、こつちから呼びかけたのに、まあいろいろ国際情勢なり、今までのソ連の不思議なやり方があるから、この際極めて慎重に行くんだということでございますが、話合ぐらいはしてもよさそうに思われますが、まあこれもソ連内閣の変つたこの情勢、又来年度のサンフランシスコ条約の時期を狙つて謀略だというふうにもとれまするから、とにかく慎重にやらなければならんということは、これはまあ私どもよくわかるわけであります。どうもそれならなぜあの声明にああいうことを発表なさつたか、「相互に受諾できる条件ソ連中国との正常関係を回復する意思を有する。」と、こうきつぱりとなぜなさつたかということに私どもはちよつと疑問を持つのでありますが、まあこの問題は一歩前進したという意思表示をしたんだというお言葉でありますから、この程度にいたしておきたいと存じます。ただ一昨日も鳩山総理大臣のラジオの放送に関しまして、閣内の思想並びに表現の統一を私からお願いをいたしておきましたが、この上とも慎重な、まあ今の一歩前進ということで慎重だということでありますが、この上とも一つども国民としましては、日本立場が重大であればあるだけに慎重なる御態度を、これは閣僚全部の方々に一つ総理としての外務大臣からお話を頂きたいと、かように思うのでございます。一昨日参りましたあのセイロン総理大臣のコテラワラ氏が「世界をニ分しておる主義思想との対立をしておる中で日本の果すべき役割は極めて深い意義を持つておる。日本指導者の賢明で真面目な指導の下に日本のとる態度世界の平和と発展に寄与するであろうことを疑わん」という声明を発しておりますが、私はセイロン首相期待をしておりまするように、日本の果す役割が殊にアジアにおいては非常に大きいものと存ずるのでございまして、日本外交界の大立者であり、又日本の運命を背負つておいでになる外務大臣が、日本の進路を誤まりなくお進めを頂くようにお願いを申上げたいと思うのでございます。  次に、中共貿易の問題につきましてお尋ねを申上げたいと思うのであります。対中共貿易の問題は、前内閣におきましても輸出品日の増加ということには非常に努められまして、ヨーロツパなみになつて来ておるのでありますが、なお今度の外務大臣の御声明では、共産諸国との貿易国際義務に反しない限りできるだけ拡大すべきものである、こういうお言葉でありまして、これは戦前二割も貿易がありました中国に対しましては是非とも拡大しなければならんことは、これは申すまでもないことでございますが、併し外務大臣のこのうちに問題になつておりまする国内向け声明では、「拡大すべきであります。」ということで、国民要望をここにお取り上げになつての御声明でございますが、従つて国民としては共産諸国との貿易が非常に拡大をするという期待を持つておるわけであります。ところがこの外国向けの御発表によりますると、「ソ連中共との貿易については、現段階では必ずしも多くを期待しない。併しながら現在比較的少量である両国との貿易量拡大する機会はこれを歓迎するものである」、こういうふうに御発表になつておるのでございます。これはどうも割り切れんのでありまして、国内には非常な期待を持たせるような御発表である。外国のほうには「現段階では必ずしも多くを期待しない。」と、一体これはどういうお気持で、こういう二重の御発表をなさつたのか、その点を拝承いたしたいと存じます。
  10. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私の発表というのは、これは談話の総合したものでありますから、その点を一つ……。どうしてそういう疑問ができ得られるか私にはよくわかりませんから全部読んでみます。私はこういう意味談話外国通信記者としたのでございます。「大陸の諸隣邦との国交の再調整は慎重な考慮を要する問題である。我々はイデオロギーの如何にかかわらず世界のすべての国と友好関係を結びたい希望であることを留意せられたい。」、そういう希望であると、こう私は相手に申したのであります。従つてそうであるから、「我々は相互に受諾できる条件ソ連中国との正常関係を回復する意思を有する。」、これは中国というのは中国一般でございまして、一般というのは抽象的に申した中国でございます。「但し、これは、自由諸国我が国との基本的協力を妨げないことが条件である。」ということもちやんとはつきりいたしておるのであります。ソ連中共との貿易について、更に現実の問題で貿易については、「現段階では必ずしも多くを期待しない。併しながら現在比較的少量である両国との貿易量拡大する機会はこれを歓迎するものである。」というのでありまして、国内に対しても国外に対しても私は常にこれと同じことを言っております。少しも矛盾はないと思います。今日共産国との貿易は思う通りに大きな、特に中共との関係が、中共が来なかった戦前貿易額に達するということはこれはできない状態であつて必らずしも多くを期待することはできないのであります。これは事実の問題であります。併しその期待のできない戦前のよちうに帰ることはできないとしても、現在の少量である両国との貿易量を更に拡大する機会をつかんで行きたい、こういう意思表示をしているのでありますから、私はこれは内外に対しても、どこに対しても私は今日の状況はそうである、こう思っているのでありますから矛盾は少しも感じておりません。どういうことになりましようか。
  11. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 今、外務大臣の全文を御説明頂きましたが、私もこの訳文は拝見をしましたので、この隣邦諸国との国交調整の問題については慎重な考慮を要することも承知をしておりますし、又併しながら「世界のすべての国と友好関係を結びたい」ということは、これも国民の強い要望でございます。ただ今私のお尋ねいたしておりますることは、貿易についての御談話についてのお尋ねをしているわけでございますが、国内に対してはただ簡単に、共産諸国との貿易国際義務に反しない限りできるだけ拡大すべきある、いろいろ簡単な御発表でございます。国民はこのソ連なり、殊にまあ中共貿易に関しましては非常な期待を持っております。で、ただ簡単に拡大をすべきであるというお言葉であれば、国民認識ではどこまでも拡大できるんだというような期待を実は持っているのであります。今お話のように、実際には「現段階では必ずしも多くを期待しない。」というようなことは一般国民承知をしておらんのであります。中国産業構造戦前とはすつかり違つておりますから、日本の軽工業の品物がどんどん入るというようなことは望み得んわけでございますし、又ソヴイエトロシアとの貿易は七割五分にも達している、或いは又この単なる経済上の合理的な貿易でなしに、とかく政権的なふうな意図があるというような外務大臣お話しの、外国記者の御発表ソ連中共両国貿易は、「現段階では必ずしも多くを期待しない。」こうゆう事実の認識というものは比較的国民の大多数は少ないのであります。従って中共ともやらなければならんが、ソ連ともやらなければならんが、このほかのほうとの貿易を進める、ほかのほうとの貿易拡大をするということでなければ私はならんと思うのですが、国内向けのほうはこういうふうに簡単で、拡大すべきであるということで、国内に非常な期待を持たせておいて、外国のほうにも現実状況をお示しになるということは、これは私は恐らくこの国内向けの御発表はこれは選挙用の御発表じゃないか、こういうふうに感じざるを得んのであります。私はやはり外国に詳細に御発表談話をなさるならば、国民に対しても今日日本輸出が一番大事である、これがもう国家の一番根本である、併しながら、現実はこういう姿であるというような詳細なる談話外国人に向けてと同様に御発表になるのが私は当然の御措置であろうと存ずるのでございますが、その点重ねて一つお伺いをいたしたいと思います。
  12. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 重ねて御税明いたします。この私の言っておることは、国内にも国外にも少しも分け隔てなく言っておるのであります。国内発表したのじやありません。これは世界に向つて私は発表しておる声明であつて国内に限つて発表したのじやございません。これは国内は無論のこと全世界に向つてこう言っておるのであります。少しも内外を区別しておるのじやありません。そこで同じことをどちらにも言っておるのであります。国内においていろんな質問がある場合には当然詳細に答えて、それは同じ意味で答えておるのであります。そこで今問題にされております閣議後の政府声明となって出ているこの文書は無論国内限つた声明でないのであつて外国新聞にもみんなこれはこの通りに出ております。それが如何にも中共以外との貿易は軽視しておつて中共貿易を幾らでもできるように印象付けんとしておると、こう言われますが、私はここで読んでみます。
  13. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 いや、それは大臣よくわかつているのです。
  14. 重光葵

    国務大臣重光葵君) いや、ちょっと読んでみます。これはどうしてそういうことが読めるか私はわからんのです。前にずっとありますが、それを略して貿易のところだけです。資源の乏しい、過剩な人口を持つ我が国としては官民相協力して貿易の増進を図らなければならないことは申すまでもありませんと、私はこれが大前提です。又共産諸国との貿易も……もです。国際義務に反しない限りできるだけ拡大すべきものであると……。私はどうしてそういう疑問が起り得るかということについて甚だ了解がしにくいのであります。そうして共産諸国との貿易が今日限定されておるということはこれは今の事実であります。その事実は人々の質問によって、それは事実を事実として私は言うことは何も矛盾したことがないように思いますが、その制限された困難な貿易を少しでも一つ実際的な方法によって進んで行こう、こういうことなのでございます。それが私ども考え方であつて、これは私は日本としては当然のことじゃないかと思うのですが、どこにそれが矛盾がございましょうか。併しともかくも中共貿易も大いにやつたらよかろう、ソ連との国交も開くことは非常に結構だというような御趣旨の御発言のようでありますから、それは従来の自由党のお考えとは或いは少し違ったとは私は申しませんが、これも一つの前提として歓迎をいたすわけであります。
  15. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 何か私の言いましたことを大臣誤解しておとり頂いたようなのですが、私、大臣のおっしゃることは全部わかるのであります。その通りですが、世界に向つて発表だと、併し国内新聞にはこの短かいこれしか出ておらん。一般の人はこれより承知しない。
  16. 重光葵

    国務大臣重光葵君) いや、ほかのものもすつかり出ています。
  17. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 外国向けのは出ていません。外国人への記者発表というのは出ていません。そこで私は今、後段におっしゃった事実のことも国内になぜ仰せにならなかったのかということを申上げただけのことなのです。ですから私は恐らくこれはまあ国民に対して工合のいいように声明されたということで、事実は質問があったら答えるのだということだろうと思いますが、それを私は申し上げておるだけで、全部大臣の御意思、これとこれとが同じことなら何も二枚お出しになる必要がないので、一枚におまとめになつたらよかったと私は思うのです。それをお尋ねしておるのです。
  18. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今申す通りに、政府外交声明一つです。併しその外交声明を元としてですが、必要において私が外務大臣として、若しくは外務大臣就任前の民主党の首脳部として、我々の考えておることはこうであるとして誤解のないように、たとえ制限があつて日本の行くべき道について非常に故障の起らんようにいろいろ説明するということは当然の義務であると思い、いろいろ私は説明をしたのであります。外国人に対しても日本人に対しても……。それは相当効果があったと今日思っておるのでありまして、それをしてはいかんということはないと私は考えております。何も……。
  19. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 私は委員長として議事進行について皆様に御注意申上げます。本日は午前より会議をしようと思ったのでありまするが、各会派の御相談で午後一時よりやつて、大体六時までには採決を終るというお申合せで、始めを一時ということにいたしたわけでございます。そこで成るべく本問題であります条約及び協定に関しますることに重きを置いてやつて頂きませんというと、審議の責任が果せないような感じがいたします。そのおつもりで各委員の御質問を願い、又御答弁も成るべく肝要を得るようにお願いをいたしたいと思います。
  20. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 私は、何か外務大臣私の言うことを誤解しておられるようにとれてならんのですが、私は御発表なつていかんとも何とも言つていないので、それは結構なのです。外国新聞記者に詳細御発表があつて、それによつて外国人の人にわからせなければならんと思うのであります。その御趣旨は全く同感だと思います。ただ国内のほうが簡単であつたというだけのことをまあ申上げたのですが、これ以上のことを申上げません。  なお委員長に申上げますが、この間、一昨日の皆さんとのお話合いでは、外務大臣に対しては一般的な質問をして、そうしてビルマの問題に入るということは申合せみたいに話合つて委員長も御了承なすつているはずだと思います。そのことが一つと、それから私は成るべく簡単にやります。御趣旨従つて、昨日の申合せで私も一時間ほど頂いておりますが、成るべく繰上げてやるつもりでありますから、どうぞ…‥。
  21. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 大谷委員に申上げます。国際情勢全般に関して、又外交方針に関しての質問を私は制限しようとは思つておりません。故に大谷委員の御質問に対して制限はいたしたのではございません。
  22. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 そこで外務大臣に、今お話中共貿易のみならず、アジア全体のことを、無論貿易も振興されなければならん、こういうことで、私はその通りだと存じます。そこで東南アジア経済開発につきましては、東南アジア諸国の経済復興の促進を図ることが極めて重要である、こういうことが御談話の中にございまして、これはもう全く私ども同感でございます。そこでちよつとお尋ねをこの際しておきたいのは、このアメリカの東南アジア経済援助計画につきまして、先に吉田・アイク声明でも明らかになつておるのでございますが、これに関しまして最近内閣からアメリカの政府に対しまして向う意見を徴せられましたに対しましての回答があつたと承わつておりまするが、これについてのどういう御回答であるか、又この御声明にありまするアジアの貧困状態を打開をして行くことが共産主義の滲透を防ぐ大きな重要なることである、こういう観点から、この米国のアジア経済援助計画は私ども極めて重要であると存じておりますが、これに対する大臣のお考えを承わつておきたいと存じます。
  23. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今のお話の前段でございますが、前にそういうことをアメリカに申入れたか、その回答があつたかどうかという点でございますね。これは今このことに関係しておりました事務当局に聞いてみましても、そういうことはないそうです。そういう事実がないそうです。そういう交渉従つて回答もそれはないそうです。それから又東南アジア経済開発でございますね。この点につきましてはお話通りだと私は思う。私は前回もその点に触れたと思いますが、東南アジアの民族主義を尊重して、民生の安定、即ち生活水凖の向上をするようにできるだけ国際的の協力をするということは、これはいいことだと、こう考えております。
  24. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 そこで何でございますか、東南アジア諸国の経済復興の促進を図ることは極めて重要なわけですが、それについての大臣の御構想は何かございますですか、具体的な……。
  25. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは今すぐどういう具体的の構想を持つておるかというお話ならば、今いろいろ考究中だと申上げるよりほかにございません。
  26. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 それから今の東南アジア経済復興並びに開発の問題は、自由主義国家群にとりましても、又アジア全体、日本にとりましても極めて大切な問題でございますが、先ほどの日ソ、日中問題解決の問題につきましても、これらが、大臣はますます対米関係を密接にして、日本立場をアメリカにも理解してもらいたい、理解をさせなきやならん。自由諸国、特に米国との永続的な協力を以て東亜の安全と安定を図る、こういうお言葉でございますが、この対ソ、対共親善の問題或いは又貿易の問題につきましては、これは英米諸国と緊密な提携並びに話合いを以て行かなければならんと存じまするが、そういうような点についての日本外交方針を、要するにアメリカ側に理解させる、その努力を無論お図りになつておられると思いますが、それについてのお考えを承わつておきたいと思います。
  27. 重光葵

    国務大臣重光葵君) そういうような大体の筋でせいぜい努力をして行きたい、こう考えております。
  28. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 それでは大分委員長にも御心配を頂いておりますので、時間を繰上げて参ります。  今日ビルマとの条約締結をされることになりましたことは、私ども非常な喜びに堪えん次第でございます。今日、先はど申しましたセイロン総理大臣も来ておられますが、あのサンフランシスコの講和条約の際に、セイロンの大蔵大臣のジヤイエワルデネ氏が賠償を要求しない、恨みは恨みを以ては消えない、恨みは恨みなき心を以てのみ消ゆるものである。この東洋の偉大なる聖人である釈尊のお言葉従つている我々の国は、その建前をとつて賠償を要求しないという、誠に感激すべきセイロンの国の首相が来ておられますが、同じくビルマも釈尊の教えを受けておる国でありまして、この間中、第三回の世界仏教徒会議が国を挙げて開かれておりますることは御承知通りでありまするが、このビルマの国との平和条約が成立ちますること、賠償協定ができますることは誠に国民といたしまして喜びに堪えん次第でございますが、報ずるところによりますると、国交が開けまして経済協力等が進んで参りますると、日本からも相当の技術者なりいろいろな人が参る。ところがそれらの人々が、いわゆる満州、北支等に参つて日本の威信を傷付けたような悪質な者が来られたり、或いは一旗組みが来られて一旗挙げようなんということで経済撹乱をされたりなんかされるということに一部の人々が非常に心配をいたしておる。かように伝えられておるのでございます。これは今後日本から通商条約のできました所、或いは移民等で世界各国に今後行かなければならん際に、如何に日本外交がうまく行きましても、殆んど全部の日本人は善良なる国民であるが、そうした善良ならざる者が行つて日本の信用を落すというようなことは、これは相当あり得ることである。現在でも貿易商社が互いに鎬を削つて、そうして日本貿易の進路をみずから壊しつつあるというような点から考えましても、よほど戒心をしなければならんと存じますが、これらの点につきましての外務大臣の御所見を承わつておきたいと存じます。
  29. 重光葵

    国務大臣重光葵君) さような弊害があつては無論ならんのでありまして、この弊害のないように私どもも大いに努めますが、どうか外務省以外の方面の皆さん方にも一つ十分それは監視をして頂きたいと、こう思います。
  30. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 今の問題につきましては、日本の再出発をして行く際に、日本人お互いの戒心すべきときでありますし、又国民の教養なり品位を向上させて行くことによりまして、世界各国の信頼を受けるということは非常に大事の問題と存じまするので、これは外務大臣としてだけでなしに、関係各省とも御連絡を頂きまして、よりよき成果を挙げまするようにお願いをいたしまして私の質問を終ります。
  31. 高橋道男

    ○高橋道男君 先輩同僚各位によつて外交一般の問題が議せられ、いろいろ啓蒙されたことがございまするが、私からは当面の条約協定の問題を主としてお尋ねを申上げたいと思います。先ずお尋ねをいたすのは、この上程されておる条約協定以外の秘密な協定とか、覚書とかいうようなものはないか。つまりこの条約協定を議するに当りまして、そういうものはないという前提で出発してよいかどうかということをお尋ね申すのであります。と申しますのは、昨日のどなたかとの応酬にありました中に、カンボジアとの間に何か約束をされたことがあるが、只今においてはこれを発表する段階でないということも仰せられましたが、同様のことがビルマとの間にないかということを先ずお尋ねいたします。事務当局からでも結構です。
  32. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私からお答えしましよう。何もこれに関連して秘密の約束はないと、そういうふうに考えております。
  33. 高橋道男

    ○高橋道男君 次にお尋ね申しますのは、条約ができておりますが、恐らくは我が国といたしましても、或いはビルマの国といたしましても、この成文となつ条約協定以外に、こういうことを条約に盛りたい、或いは協定に残したいというような案件をお持ちではなかつたかと思うのでありますが、この条約の成文となつていないものでそういうものがありますれば、それをお示し頂きたいと存じます。
  34. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 日本側から挿入を欲しました条項といたしましては、インドとの平和条約の場合にもございましたように、適商航海条約締結されるに至りまするまでの間、取りあえず最恵国待遇及び内国民待遇を定める条項でございます。これは先方の反対によりまして挿入の目的を達し得ませんでございました。先方のほうから挿入を希望いたしまして我がほうの反対により漏れたというような条項は別にございません。
  35. 高橋道男

    ○高橋道男君 その最恵国待遇の問題につきましては、前々からのお話で事実上は最恵国待遇をされておるということで満足できると思うのでありまするが、防衛というような問題につきましては、何らお話合に出なかつたものかどうか。伺うところによりますと、SEATOの場合にもビルマはこの問題に相当積極的だつたと申すか、協力的だつたと申すか、そういう態度であつたということを聞きますので、この問題について何か議せられたところがないかどうか、これをお尋ねします。
  36. 中川融

    説明員(中川融君) 防衛に関連いたしましては一つも議題となつて論議されたことはないのでございます。
  37. 高橋道男

    ○高橋道男君 その防衛の問題について議せられたことがないとおつしやいますが、これは全然今後も問題とする必要はないか、そのことも併せてお尋ね申します。
  38. 中川融

    説明員(中川融君) 日本ビルマとの関係を見てみますと、どうも防衛というような問題が日本ビルマとの間に今後議せられるというふうなことは今のところ想像できないというような工合に考えられます。
  39. 高橋道男

    ○高橋道男君 私が重ねてお尋ねを申したいのは、ビルマ日本との間だけならば或いはそういう問題が起らないかも知れないけれども、東南アジア一般の問題として問題とされることがありはしないかということを思うのでありますが、これは単なる御見解を伺うことにとどまるかも知れませんが、お尋ねを申したいと思います。
  40. 中川融

    説明員(中川融君) 東南アジア全体につきまして、何か防衛に関する話合が近い将来に行われる可能性がないかという衛質問と思いますが、御承知のように東南アジアの国々がいろいろその国際情勢に対する考え方というものに違いがあるのでございまして、私どもとしてこれらの国が全部一つの何か考えを持つて防衛について話合うというようなことは近い将来では起らないのではないかと、かように考えております。
  41. 高橋道男

    ○高橋道男君 次にお尋ねを申しますのは、文化の提携という問題でございます。このことにつきましては、私は岡崎前大臣の時代にも御意見を伺つたことがございますが、今回は直接にこの条約の問題についてお尋ねを申したいのであります。と申しますのは、この条約がまあ実質的には賠償の問題を中心にしておることは申すまでもないことでございます。併しながら、この条約の本当の狙いとすべきところは、私は平和の成立と正常なる国交の回復という点にあるだろうと思うのでありまして、その点から考えれば、これは単なる賠償乃至は経済の問題ということに限つて締結さるべきものじやないと私は考えるのであります。で、そういう観点から見ますと、この条約にいたしましても、協定にいたしましても、文化的な協定折衝というような問題が全然扱われていないのであります。まあ全然ということは或いは行過ぎかも知れませんけれども、ビダウダ計画の一環かどうかというような点が、病院の建設とか、或いは医療の提供、或いは学生の日本国における教育というようなものを取上げておりまするから、全然文化的な匂いがないとは申しませんけれども条約の本文におきましては、そういうものが見当らないのであります。私は曾つてサンフランシスコの平和条約のときにも、そういう問題が平和条約の正文の中にないということを論じたことがございまするが、先ほど大谷委員が引用されたように、サンフランシスコの条約会議において、セイロンの代表が日本に対する非常な好意のある見解を述べられたときに、仏教文化によつて繋がれておるということを主要点として述べられ、これを基調として日本に対する賠償はいたさないというような強い表現があつたことを私も記憶しておるのでありますが、この本条約におきましては、近い将来に通商関係条約についての協議をするというようなことは見えますけれども、文化に関する問題は全然現われていない。我が国が文化国家を標榜し、又これを元として世界との提携を緊密にするということが私は一つの土台にならなければならないと思うのでありますけれども、そういうことが、現われない。このことにつきまして、そういうような問題は議せられなかつたかということと、又この問題についての外務大臣の御意見を伺いたいと思います。
  42. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 御説誠に御尤もでございますが、平和条約と申しますものは、元来戦争をやつておりました敵国同士が正常な関係を回復しようという根本の目的を持つておるわけでございます。でございますから、御承知サンフランシスコ平和条約でも、第一条に戦争関係条約発効の日に中止するということを規定するにとどまつておるのであります。然るにこの条約では、第一条に、両国の間には「永久の平和及び友好の関係が存在するものとする。」と規定しております。これは本来なら和親条約の冒頭に出るべきものでありまして、単に戦争状態の終結だけを謳えばいいところのものに和親条項を持つて来たということは、これはむしろ従来の平和条約よりも一歩前進であろうと私どもは思うのでございます。でございまするから、この友好関係というものは将来の文化関係、文化交流の関係というものの礎を意味するわけでありまするから、取りあえず平和条約ではこの程度で、文化交流等は追つて将来の両国間の関係の基礎として将来に発展せしめるということが順序ではないかと存ずる次第であります。
  43. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 議せられたかどうかということについて……。
  44. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 文化条項を挿入しようということは、我がほうからも、ビルマ側からも何らそういう発言はございませんです。
  45. 高橋道男

    ○高橋道男君 この問題について、これは直接条約関係はないかも知れませんが、外務大臣からも是非御見解を伺いたいと思います。
  46. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私はそういう方向に将来導いて行くことは大変結構だと考えております。
  47. 高橋道男

    ○高橋道男君 只今条約局長からは、将来文化協定を結びたいというような御発言があつたように思いまするが、そういうように了解してよろしうございますか。
  48. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 私は文化条約を結ぶということを只今から御約束申上げたわけではないのでございまして、この第一条の永久の友好関係ということの設定ができました上は、将来文化交流等も発展いたすでございましよう。そうなりまして、その事由が生じまして初めて文化協定の必要性ということも生れるであろうと存ずると、そう申上げた次第でございます。
  49. 高橋道男

    ○高橋道男君 それではこのビルマとの間においては、只今のところは文化関係に関しての協定などの必要はないという意味でございましようか、只今のところ……。
  50. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 平和条約によりまして正常の国交関係が回復いたしまして、そこで人が往き来し、船も往き来し、実業家も往き来するということに相成るわけでございますから、もう少しこの正常な国交関係がしげく回復する現実の基礎ができましてから、文化関係というものがおのずから発展する順序に相成ると思うのでございます。
  51. 高橋道男

    ○高橋道男君 次に賠償直接の問題について、これは解釈になるかと思うのでありますが、お伺いしたいと思います。それはビルマにありました日本国及び日本国民の財産が、先方の権限において処理されるということが示されておりますが、そういう財産の評価総額というものはどのくらいになるものなのでございましようか。
  52. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これはビルマ側が留置或いは差押えいたしておりまする財産でございまして、本来ならビルマ側に統計資料があつて然るべきものなのでございますが、実は交渉の際もその額が判明しておつたならばもらいたいということを申したのでありまするが、何分行政事務的にはそうきちんといたしてないと見えまして、政府の統計資料というものの提示に接しなかつた次第でございます。ただこの中国等の場合に比べまして、在緬日本資産というものは非常に少かつたということは、漠然とでございますが、申上げられると思います。
  53. 高橋道男

    ○高橋道男君 そうしますと、向うで処理される対象となるものから除かれる政府なり、宗教団体、慈善団体などの財産の総額というようなものもはつきりいたさんわけでしようか。
  54. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは大蔵省の所管の下に在外資産調査委員会と申しますか、そういう機関ができたのでございますが、この在外資産の全貌がこれ又非常に正確につかめておりません。財産の存在自体の確認、確認いたしましても、その評価というようなことが非常に困難でございまして、大蔵省といたしましても正確な統計を有しておらないのでございます。従いまして、この場で幾らという数字を申上げられないのは誠に残念でございます。
  55. 高橋道男

    ○高橋道男君 私はこの外交関係について余り知識がありませんのでお尋ねいたすのでありますが、こういうような条約の場合には勿論一〇〇%正確な資料を得ることはむずかしいかも知れませんが、大方このくらいだというようなつかみ方もできなくて、こういう条約が結ばれることが先例になつておるのでございましようか。これは国民の権利義務に相当深い関係があると思いますので、重ねてお尋ねいたします。
  56. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この第五条の後段の在緬日本資産の返還と申しますことは、本来は、先方が在緬の日本資産を押えるという原則に対する例外として当然入つて来たものでございますが、日本側はこの条項は必要ないという見解を初め申したのであります。と申しますのは、先ほど申し上げましたように、在緬日本資産が極めて微々たるものであるし、従つてその例外となるものに至つては更に微々たるものであるという見解であつたのでございますが、併しサンフランシスコ平和条約にすでにこのことと同じ規定が入つております。そうしますと、ビルマとしましては、例え少くともこのサンフランシスコ条約にありましたものをビルマに限つて落すということは、国内から非難をこうむることになるんで、条約上の権利はやはりサンフランシスコ条約並みにこれは挿入しておかなければならない、これも誠に尤もな主張でありますので、これを入れた次第でございます。従いまして、この差押え財産の除外例も、原則が入りますればこの除外例も入れることは当然でありまして、その当然のことを主張しまして入れたのでありますが、御指摘の外交用並びに領事用財産というものは、戦前ビルマは独立国ではございませんで、日本が大使館或いは公使館を有しません。僅かラングーンに総領事館がございます。この総領事館の財産或いは総領事館員が若し銀行預金等を持つておりましたならば、その預金というものが入つて来るわけでございます。
  57. 高橋道男

    ○高橋道男君 只今の条約局長の言葉尻をつかまえるわけでは決してありませんが、日本人の財産が僅かしかないだろうからどうでもいいというふうにちよつと受取れるようなお言葉のように思つたのですけれども、そういう意味ではないのでしようね。
  58. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 勿論そういう意味ではございません。
  59. 高橋道男

    ○高橋道男君 それに関連いたしますが、この賠償の主たるものは、サンフランシスコ条約では役務でございましたが、今回の条約には生産物というものも加わつておりますが、この場合、只今おつしやいました没収される、押収される日本人の財産というものは極めて少ないかも知れませんけれども、そういうものはこの生産物としての賠償の対象にはなり得ないのか、又それを賠償として扱いたいというような問題は、話題は起らなかつたのか、これも念のために伺つておきたいと思います。
  60. 中川融

    説明員(中川融君) 賠償は第五条の第1号の(a)のほうできまるわけでございます。只今御指摘になりました日本の在緬財産は(b)項によつて先方が押えてきまるということになつて参りまして、これは要するに別のものとなつております。従つて(b)によつて押えられる財産は(a)の賠償に繰入れることはできないのでございまして、これはサンフランシスコ条約の際からの原則でございまして、特にビルマ、在緬日本財産を賠償に繰入れてもらいたいというふうな話合は交渉の過程で出て来なかつたのであります。
  61. 高橋道男

    ○高橋道男君 これは仮定の問題になるかも知れませんが、押収される日本人の財産というものは相当多額になり得る場合、これはほかの国の場合にはあると思うのですから、そういう場合にも賠償の対象に考えることはできないのか、その点お尋ねしたいと思います。
  62. 中川融

    説明員(中川融君) これは結局サンフランシスコ条約をきめました際のことに入るわけでございますが、御存じのようにサンフランシスコ条約におきましては、日本が参戦しました国にある日本の財産のみならず、中立国の財産も取られてしまうというのが一搬原則でありました。併しながら、日本と交戦した国の中で、又日本現実に占領した国につきましては、更にその上に賠償ということが加わりまして、賠償請求権ありということになつたのであります。従つて日本が交戦し、占領した国につきましては、その国にある日本の財産を没収することができるほかに、なお日本に対して賠償を要求することができる、かような仕組になつておつたわけでございます。尤もサンフランシスコ条約におきましては賠償請求権について規定してあるだけでございまして、具体的に幾らの賠償を払うということに対して規定してございませんから、日本賠償額をきめる交渉におきましては、その国に曾つてありました日本の財産、没収されました財産というものをも頭の中に入れて、その賠償額を交渉するということは可能でございますが、論理的に申せば賠償は押収財産とは別のものということになつておる次第でございます。従つてビルマ以外の国におきましても、やはり観念的にはこれが賠償と押収財産とはやはり別ということになつておる次第でございます。
  63. 高橋道男

    ○高橋道男君 私はサンフランシスコ条約の及ぼす年限が三年だ、三年以後に結ばれるほかの国との条約は全然これを無視することはできないでしようが、これとは違つてもいいのじやないかというようなふうに理解しておつたのですけれども、そうじやないのでございますか。
  64. 下田武三

    政府委員(下田武三君) サンフランシスコ平和条約の二十六条に、桑港条約と同様又は実質的に同一条件平和条約を結ぼうという申出を日本政府になされた場合には、日本政府はこれに応じなければならないという義務が規定してございます。従いまして、三年経つてしまいましたならば、日本政府は桑港条約の条項ではもう拒絶する自由を回復するわけでございます。三年間という意味は、その間に同じものを持つて来られたならば日本は拒絶し得ない、これに応じなければならないという義務が謀せられているというだけのことでございます。
  65. 高橋道男

    ○高橋道男君 細かいことをもう一点お伺いしますが、協定関係で三条の二項、三項に「収用」とあります。向うに供与したもの、投資したものはその約束があれば収用しないということがございますが、そういうものは改めて、賠償に相当する生産物などとして賠償物に供与されることはないのか。
  66. 中川融

    説明員(中川融君) 賠償並びに経済の協力に関する協定の第三条二項、三項に規定しております「収用」と申しますのは、日本ビルマとの間の合弁事業が一応成立いたしまして、これが仕事を開始しましたのちに、何かの理由によつてビルマ側がビルマ側の法令に基きましてその事業を政府が強制的に収用するということを考えまして設けました規定でございます。従つてこの収用は、例えば如何なる政府でも必要に応じまして法律の定めるところによつて強制収用ということを行うことができるのでございますが、その際の規定でございまして、特にこれと賠償とを関連せしめては考えていないのであります。賠償とは別のものである、かように考えております。収用の際に、併し収用が勝手にできるようになつておりますと、日本の事業家はなかなか進出を肯んじないということがおもんぱかられますので、収用する条件、時期等については必らず契約の際にそれを明らかにしておくという趣旨の規定を設けた次第でございます。
  67. 高橋道男

    ○高橋道男君 そうすると、話合があればそういうものを賠償の対象として提供することもあり得るというわけですね。全然別個の話として……。
  68. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは一旦ビルマに出資しました日本の持分を含めまして、事業全体をビルマ政府が収用する場合の規定でございまして、賠償にそれが繰入れられる、そういうことは予定していないのでございます。賠償は一々その際に日本政府と協議いたしまして、協議の結果日本の生産物を賠償として先方に渡すという手配になるのでありまして、この合弁事業を収用してそのものを賠償に繰入れる、そういうことは恐らく起らないのではないかと思います。この収用の際は、結局ビルマ政府日本の出資者に対しまして補償を払つて収用するということになります。日本の出資者はその補償を内地に送金するなり、現地でほかのことに使うなりする、こういうことになろうかと思います。
  69. 高橋道男

    ○高橋道男君 付属書にありまする第五の「ビルマ人の技術者及び学生の日本国における教育」というこの具体的な問題につきまして、日本で教育をする場合には、それだけの施設、設備を要すると思うのでありますが、そういうものを日本国内に設ける場合には、やはり年額五百万ドルのうちの費用として認められるわけでございましようね。
  70. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 現在外国人の学生を教育いたしますための機関として、国際学友会というものがあるのでありますが、収用力が非常に少なく、恐らくビルマ等から、賠償によりまして多数の学生、技術者が来るという場合には、そのような従来からの機関では収用しきれないことになろうかと思います。そのような際には、ビルマ側が希望する場合におきましては、賠償の一部として日本にそのような収用施設を作るということも勿論可能となる次第でございます。
  71. 高橋道男

    ○高橋道男君 質問を終ります。
  72. 羽生三七

    ○羽生三七君 先月来の各委員の御質問で、私のお尋ねしたい問題の大要はすでに尽きておるのでありますが、併しなお念のためお尋ねしたいことがあります。併しまあ議事の進行を促進する意味で、与えられた時間の半分以下に切詰めて非常に簡明にお尋ねしたいと思います。  その第一点は、先日もお尋ねし、それから各委員からもお話があり、先ほど又大谷委員からも触れた問題でありますが、実は私今日昼、ラジオを聞いてみますと、鳩山総理が車中談で、どこか、沼津あたりですか、車中談で、鳩山内閣外交方針は前内閣と基調を一にする、大体同じだというような意味のことを言われたようにラジオを聞いたのであります。これは私のラジオの聞き違いかも知れませんが、併しそういうようにも聞えたのであります。併しこのことは決して今までの鳩山さんの言われたことと全面的に矛盾するわけではないでしようが、つまり重光外相の言われたように、自由国家というか、民主主義国家の一員として、今までのそういう基調は変えないが、併し更に中ソ等についてももつと幅のある外交をやるということと全面的に矛盾するとも思いません。思いませんが、併しただ前内閣外交方針と大体基調を同じくするということを言われますと、実は私先日来重光外相のこの委員会におけるお話を承わつてつて、少くとも吉田、岡崎外交時代より一歩を進めた、そういう印象を受けた、これは率直な意見でありますが、そういう印象を受けました。それで又モロトフ声明なんかも、政府から言えば一歩前進と言われますが、私から見れば、一歩前進と言われた重光言明も又一歩前進であるというように期待しておるわけでありますが、そこでこの鳩山内閣と吉田内閣との違いという点から考えて、何らかそこに相違点がなければならない。一歩進める以上相違点がなければならない。それはソ連に対しても中共に対しても、取りあえず貿易の幅を拡め、既成事実をだんだん積み重ねて行く、そういう点で前内閣よりも今度の政府のやり方のほうがとにかく一歩を進めたという実績を示すものがなければならないと思うのであります。確かに外相の御発言を承わつてつて、そのニユアンスにおいて、前の吉田さん、岡崎さんの何というか、誠にそつけない、全然受け付けないというような態度に比べて、私たちはかなりの積極性を汲み取ることができるのであります。そこで先ほど大谷さんも触れたモロトフ声明の問題でありますが、こういう微妙な国際情勢のもとで、向う声明があつたから、じや今日すぐこつちもこうだということも勿論言い兼ねるでしようし、我々もそういう無理な注文をして、今すぐさあどうだというわけでもありません。併し仮に向うから何らかの提案があつた場合、而もそれが重光外相にとつて望ましいものであるならば、即ち事と次第によつてはそれを受けて立つ用意がおありになるかどうか、この問題であります。つまりそうでないというと、先ほど大谷さんもお話なつたように、国民には非常な積極的な印象を与えたが、実質上においてはそう大した変りはないということになつて来ると思うのですが、併し私はそうは解釈したくないので、少くとも前内閣よりは一歩進められておる、そう解釈したいのであります。だからそういう立場で、相手国が、つまりソ連側が何らかの意思表示をした場合には、事と次第によつてはそれを受けて立つ、そういう用意がおありになるかどうか、そういうことについての意思表示を頂きませんと、何か先ほどのラジオを聞いていると、全然吉田内閣と何ら変りがなさそうになつて来ますので、この辺お答えを頂きたいと思います。
  73. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは無論事と次第によつてはと言われましたが、その通りだと思います。日本の国際上の地位及び日本ソ連に関してどういうような主張を持つているかというようなことは大体出ておるのでありますから、そこで私は向うのその後の発展を待つと申上げておるわけでございます。
  74. 羽生三七

    ○羽生三七君 大体その後の発展を待つというお答えで、私は一つのお答えがあつたと、こう了解いたしまして、これ以上は申上げません。  次に、今朝ほどの新聞に、この国府、国民政府の行政院長の談話として、日本と韓国と国府の三国反共同盟の結成をやつたら、どうかということがあるのであります。もとより正式に日本に何らの意思表示があつたわけではない。向うが一方的な試みの提案をしたに過ぎないと思うのでありますが、併しこのことはしばしばアメリカ側かちも放送されており、それに相呼応するように国府行政院長が言つたように見受けられます。そこで先刻来、SEATOの問題については外務省から経済的な意味のものであれば考える価値がある、軍事的な意味のものならばこれは一考を要するというお答えがありましたが、この東南アジアの防衛機構でなしに、言われている東北アジア防衛機構というようなもので、日本と韓国と台湾を含むような何らかの軍事同盟的な性絡を持つもの、こういうものが正式に、今何も問題になつているわけではありませんが、併しそれはそういうことが問題になつたときに考えてみるというSEATOの場合と非常に私は違うと思うのであります。これは非常に問題の性格が明暸でありますので、そういうことは好ましいとか、好ましくないとか、はつきりとお答えを頂ける性質のものと思いますので、これに関する外務省の御見解をお尋ねしたいと思います。
  75. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 無論お話通りに、その問題は今何にも関係国との間に問題になつておるということを承知いたしておりません。問題になつておらないのだと、こう申上げてよかろうと思います。ただその問題はそれじやどういう工合に考えるか、これが果して東亜の平和増進に役立つかどうかというような見地から、これは十分に考慮する必要があるだろうと思います。私は今日これがどういうふうな役割を持つのであるかということは、それこそどういう内容の提案がなされるかということでなければ考慮することができんように思います。併し全体的にみて私は国際間において対立的な方向に向くような傾向のものであるとするならば、それはよほど考えものだと、こう思つておるのであります。
  76. 羽生三七

    ○羽生三七君 この問題は私は正式の提案がなくても、大よその御見解を承わりたいと申上げた理由は、実は前内閣の吉田総理、岡崎外相等にもしばしば申上げたのでありますが、昨日重光外相も言われたいわゆる民主国家群、前内閣では自由国家群と言つておりましたが、民主国家群というものにもいろいろあると思うのであります。例えばイギリスやフランスやイタリーはこれは単一の民主国家であります。自由国家の構成員である。ところが韓国は同一国内が二つに分れておつて南鮮北鮮に分れている、その一方が韓国であります。中国も正統主権がどちらにあるかの議論は別として、とにかく本土と台湾に分れている。その一方が台湾政権であります。だから民主国家群の連繋を強化するということから、若し三国同盟というようなものが結ばれる場合が仮にあるとするならば、それはむしろ国際紛争の渦中に日本が巻添えを食うことになる。だからアジアの安定とか、平和とか、或いは日本の真の意味の安全とかいうものとは全くかけ離れたものになると思うのであります。だから今申上げましたように単一の、つまり分裂しておらない一つの単一国家、そういうものの結集体である民主国家群と、今申上げた韓国とか、台湾というようなものを同一の範疇で議論をされ、又そういうことで将来台湾から正規の提案があるとか、或いはアメリカから、何らかの提案があつた場合でも、これは私どもは非常に危険なことだと思うのであります。だからこのことはSEATOのような場合に、我々は勿論こういうものにまあ賛成をしておりませんが、併し政府立場から言えば経済的なものならばいいというような御見解もある。併し今申上げたこの問題に関する限りは、たとえ政府であろうと、我々の立場であろうと、純粋に、客観的にも主観的にも、どちらから見てもこれは好ましくないものだと思う、そういうことを私は伺つたのであります。これはまあこれ以上別にお答えを頂く必要はありません。私の見解としてこういうことを申上げた次第であります。  それから次に、このビルマとの賠償と関連して対米債務の問題にちよつと触れたいのでありますが、これはガリオア、イロア等の対米債務問題であります。実はこれも私前内閣の時代に岡崎外務大臣その他各閣燎のかたに意見を申上げたのでありますが、これが当時御承知のように、向うの推算では二十億五千四百万ドルですか、と言われておりましたものが、最近ではその約三分の一くらいになりそうであります。ところがその総額は大部分が日本の場合では食糧と衣料であります。西独の場合は、これは私向うへ参つたときも若干それを聞いて参りましたが、西独の場合は殆んど純粋の経済援助である。ところが日本の場合は今申上げたように食糧と衣料が大部分であります。試みに一例を申上げますと、一九四五、六年の援助額中に占める食糧費関係比は八八%、一九四七年が七一%、一九四八年が五〇・五%、一九四九年が六〇・八%というように食料費関係が庄倒的に多いわけであります。ところが日本国民はこれに対して正当な代価を支払つて参りました。これは一つの問題であります。それからもう一つは、終戦処理費として日本がアメリカに支払つたものは総額五千二百億円であります。併しこれは法的に終戦処理費を日本が五千二百億円支払つたから、対日援助というものは棒引していいのだという議論をするものではありません。又国内的に言えば、国民が食糧費をすでに支払つておるのだから、アメリカに支払う必要はないという議論をするものでもありません。国内問題と国際問題と純粋に区別して考えておるつもりでありますが、それにしても、これは私相当アメリカに日本の置かれておる経済的な条件をよく述べて相手国の理解を求めることはできると思います。そういう意味から考えまして、とにかく当初の二十億ドル余というものが約三分の一に減らされるであろうということは、それは非常に結構なことでありますが、併しそれでも日本経済の中に占める六億ドルとか、七億ドルとかいう比率は必ずしも少額ではありません。それに又ビルマの二億ドル、それからインドネシア或いはフィリピンその他の国の賠償額等が将来我が国経済上の負担となる場合には、これはなかなか自立経済と申しましても、私は容易ならざることだと思います。そういう点から考えて、国際的な、法的な問題はとにかくとして、日本経済の置かれておる純粋なこの経済的な面から条理を尽して相手側と折衝をなさつて、更にその減額を求める御意思があるかどうか、これを承わりたいと思います。
  77. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お話のように、その問題は日本の対外債務の全般に関係する問題であるわけであります。今日日本はどうしても自立経済を達成しなければならんのでありますが、さような大きな負担を予想しなければならん。そこでまあ非常に困難である。ということはもう言うを待たんのであります。そこで米国関係においても基本的な関係を私は常に培いつつ、さような問題についてできるだけの日本に利益になるように仕向けて行くと、こういうことが非常に必要だと考えてそれに努力を惜しまないつもりでございます。ただ、今お示しになつたすべての項目については今急速に研究を進めておるような次第でございます。
  78. 羽生三七

    ○羽生三七君 これも私はくどくはお尋ねいたしません。更に努力をして政府が対米債務の引下げ方について御努力があることを希望する次第であります。  その次にお伺いしたいことは、アメリカの対日援助に若干関係する問題でありますが、先にMSA協定で一千万ドルの贈与と、それから四千万ドルの円払いの食料、計五千万ドルの援助、これは援助という言葉が値いするかどうか知りませんが、一応そういう形で協定ができたわけでありますが、その結果かどうか知りませんが、とにかく数日前の新聞には日本に対日経済使節団というものが近く来るそうで、そのミツシヨンの団長のマイヤー氏がいろいろと日本経済の当面の問題についてアメリカの出発を前にして語つております。それでこのマイヤー氏の発言を見ますると、日本経済に対するいろいろな考え方指導とか激励とかいう言葉薬を使つておりますが、これはかなり細目に亘つておると思います。それから又現にこの贈与を受けた一千万ドル、三十六億円につきましても、もうすでに本年の五月にあの協定ができて今日に至るまで長い日時を経過したわけでありますが、その使途についても最終的なまだ決定ができていない。僅か一千万ドル、三十六億円分についても、而も純粋援助の分についてもなかなか両倒なことになつております。そういう場合に今度マイヤー氏が日本に参るわけであり、それから更に続いて余剰農産物を日本が買入れる場合の処置についていろいろと向うから発言があると思うのであります。この場合私是非外相にお考え置き願いたいことは、私は決してこの三十六億円、一千万ドルの贈与が少いとは言いません、三十六億円の金を少いと言つて笑うわけではありません。或いはこの余剰農産物の円払いというものが全部が全部そういうものは排斥すべきものだというような議論をするわけでもありません。併し日本が予想しておつたよりもなかなか紐がうるさい紐であるということは言えると思うのであります。だからむしろ私は、例えば五千万ドル分の仮に経済援助があつたとしましても、それが円払いでやるのは当面好ましいように見えますが、実際から言うと、それが例えばドル収入に果して代位し得るものであるかどうか、却つてドル収入と逆の結果になるのじやないか、ドル収入を阻害する結果になりはしないかという虞れもある。或いは金融引締めということをやつておる場合に相当な円が国内に流通するということと矛盾がないかどうかという問題もあります。或いは又マイヤー氏の談によるというと、この今度使われるうちの二千万ドルはアメリカ駐留軍の住宅建設に使うということも言われております。そうすると、この吉田内閣が言つて来た自衛力の漸増、それからアメリカ駐留軍の漸減というような話がありましたが、それとは別に非常に長くアメリカが駐留することを意味するのじやないか。これから新たに二千万ドル使つて駐留軍の住宅を造る、そういう問題も出て来ている。だからこの余剰農産物の受入等は非常に結構でありますが、いや、結構と言いますか、紐も何もつかないものであるならば、時には問題はないと思いますけれども、あまりにいろいろと面倒な問題が起り、そのために日本の正常な経済活動が阻害されるようであるならば、むしろ苦しくとも日本国内で十分な経済的な施策を講じて、一にも十にもアメリカの余剰農産物とその円払いを当てにして日本経済の将来を考えて行くというような、こういうやり方は必ずしも私は好ましいものではないと思うのであります。マイヤー団長が近く来るということについて談話発表がありましたので、それに関連してこの余剰農産物を中心とする対日経済援助、それと日本外交方針とも関連がありますので、この点について重光外相の一応の御見解を承わつて置きたいと思います。
  79. 重光葵

    国務大臣重光葵君) この余剰農産物に関連する米国との借款の問題、これがその使途等について十分先方とやはり打合せを要するということに相成つておるのでありますから、これは日本側は日本側の立場を維持して十分打合せをするということは、これは必要だろうと思います。そして又そうしなければならんことで、できるだけ有利な方法に落着くような努力をしなければならん、今お話のその努力の仕方の気持をどこに置くかということについては、今お示しになつたことは、私は非常に、実はそういう趣旨で、そういう頭で行かなければならんように実は考えておるのであります。そういう頭で一つ話合をしてみて、どこまで行くか、又私はこの問題については大体輸郭はできておるのですから、必ず相当なところで私は落着き得ると、こう実は考えて、そのやり方はお示しのような趣旨で行くことに私は少しも依存はございません。それを十分に一つ何と申しますか、そういうつもりでやつて行きたいと、こう考えております。
  80. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は質問を終りますけれども、このずつと長い間の習慣に慣れてしまつて、もう日本経済がアメリカに頼ればすぐよくなるのだ、又それ以外には生きる途はないのだというような印象をずつと長く与えて来たことは、私は日本のために非常に不幸だと思うのであります。もとより乏しい国の経済でありますから、少しでも援助があればそれに飛びつくというのは、日本に限らず多くの国の例でありましようが、併しまあなかなかその条件もきびしいし、国民が想像しておるよりも実質的にはきびしいし、又そういうことだけを当てにして来た故に日本経済自立というものはなかなかできなかつた。速かにそれを脱却する必要があると思うので、特に又日本のこの経済一般のみならず、個々の問題で言えば、農村なんかにも重大な影響のあるこの余剰農産物等の問題、それを中心とする受入態勢、このことが恐らくマイヤー団長が来られていろいろな個々の折衝が始まるに従つて漸次具体的な様相を示して来るだろうと思うのであります。その点につきましては、先ほどのお答えにあつたような気持で、十分成果を挙げられるように御努力を願います。いろいろ申上げたいことがありますが、時間の節約の意味でもうこれで終わります。
  81. 天田勝正

    ○天田勝正君 私は最初にお願いいたしておきますが、私は議員の一員として本案の速かなる審議をば委員長に懇請いたした一人でございますから、その立場から自分の質問時間は僅か十分通告しただけであります。従つ私は極めて簡潔に質問いたしますので、政府側においては、懇切に、且つ明快に一つ御答弁賜わりたいのであります。  最初にお伺いいたしますことは、本案の提案の説明に当りまして、ビルマに対する賠償の負担は我が国経済にとつて容易ならぬ負担である云々、こう言われております。ところがその額は経済協力を含めまして日本円にして百億円でございます。若しこの程度の数字が国内に支払われる問題ならば容易ならぬというような説明はないはずでありますけれども、問題は、一つはこれが外貨建になつておりますから、外貨の問題も起りましようけれども、更に外国に払われるということから、直ちにこれが国民の生活水準に影響して参るということを考えられて、容易ならざる負担、こうおつしやつたんだろうと思うのであります。又当然賠償問題は、ビルマのみならず、その他の国にも支払う事柄でございますから、これらがだんだんと重なつて行くということを想定されておるものと考えます。そこで私は問題は国民生活水準をどこどこまで引下げても差支えないというならば、容易ならざるなんという問題が起きないのであつて、問題は今の生活水準を維持しつつ支払いができない、容易でない、こういうことだろうと思うのでありまして、かように考えますると、鳩山内閣の財政経済政策というものが大きく問題になつて来るのであります。そこで現内閣は成立早早でございますから、まだ予算も作つておらないのでございましようから、私は細かい、いじの悪いことを聞こうとは存じません。けれども大綱において、荒筋において、今後国民生活の水準を維持しつつ、どうしてこの賠償ビルマのみならず、他の国にも起るであろう賠償を払つて行くかという、その荒筋においては私は一つ、むしろ外相としてでなくして副総理として見解をこの際承わつておきたいと思うのであります。
  82. 重光葵

    国務大臣重光葵君) ビルマ賠償額は、これはお話通り国内的に処理ができるならば、これはそんなにむずかしい問題じやないかも知れません。併し国際的の大きな貸借関係にすぐ影響を持つことでございまして、従いまして、お話通りに、今後に来る賠償問題を予想しますときに、先ずビルマにこれだけの賠償額を払うということは、相当な日本として努力した結果であることは申すまでもないことでございます。我々は国民生活の生活水準を維持しつつ日本の将来の経済発展を行いたいと、こういうことに考えておることはこれは当然のことであります。又そういうふうにやつて行きたいという大まかな考え方を持つておることも申上げて差支えないと思います。ただ将来国際関係でいろいろな負担が出て来る、それを処理する場合においては、何と言つてもこれはよほど国民的に努力をする必要のあるということも、これははつきりしたことであると思います。さようなわけで、将来の一般経済的の考え方といたしましては、日本人の生活水準を下げずして、何とかして対外的の債務その他も処理して行きたということにあることを申上げ得ると、こう考えます。
  83. 天田勝正

    ○天田勝正君 私はその国民の生活水凖を下げることなしに、これらの賠償を、今後も起きるでありましよう賠償を払つて行くということについては、国内の現内閣の財政経済政策というものが大きく影響を受け、又大きくその財政経済政策によつて国民生活水準の維持に影響を与える、こう考えるので、内閣考えておりますその国民生活水準の維持ということについての荒筋を承わりたいと、こう申上げたのであります。お答えがその点については触れておりませんから、更に私は具体的に伺いますけれども国民生活水準の維持をするということは、私の解釈からすれば健全なる家庭の生活を維持するという考えでございまして、ところが巷には奢侈的な、或いは浪費的な消費が横行いたしております。このほうまでも維持しつつということは、これは到底困難なことでありましよう。であるから健全なる勤労者等の家庭生活を破壊しないという意味における国民生活水準の維持ということは、これは絶対必要であります。その他の若干抑制してもよろしいといういわゆる浪費的な、奢侈的な方面は抑えるということがなければ、これはたとえ少額なりといえども外国へ支払うものでありますから、直ちにこれが国内のそうした経済なり、或いは生活水準なりへ影響して来ることは明瞭でございます。だからこういう観点に立つて国内のそうした経済政策についてあらましどのように処置して行かれるおつもりかどうか、こういうことでございます。
  84. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 一般経済問題についてどうしていい生活水準、極くノーマルな生活を維特して行く、そして全体の経済をやつて行くかということについては、これは一ロに我々はこう考えております。今お話通りに浪費を防いで、そうして実質的に生産を殖やして、そうして行くというような大まかなことにつきましては、私どもの多年主張しておるところは経済の全局を考えて、そうしてこれを総合的に、且つ又将来生活水準を維持するというような大きな目的のために総合的に、且つ又必要なものと、必要でないものと前後をよく勘案して、比較を立てて進んで行くことにしなければならんと、こう考えておるのでございます。そのうちでどの生産工業についてはどうする、工業の順位をどうする、そういうようなことはここでお尋ねもございませんし、私も十分の何を持つておりませんが、全部を総合して、そしてよく重要性を考えて、国家全体の経済を進めて行きたい、こういうふうに一口に考えておるわけであります。
  85. 天田勝正

    ○天田勝正君 今の質問内閣成立早早で或いは無理であつたかも存じませんので、時間の関係上その点はこの程度でやめます。  そこで次にお伺いいたしたいことは、第五条の(b)項でございますが、その(I)におきまして、これは日本国の在外財産は別問題といたしまして、私有財産、いわゆる個人の在外資産を放棄する規定でございます。そういたしますると、仮に平和条約においてはかように規定いたしましても、ただこれだけではいわゆる私有財産権の侵害ということになるのであつて、これを国内法等によつて何らかの賠償を与えるという措置がなければならないと私は思うのでございますが、従来も中国大陸等の在外資産の問題についてはしばしば本院においても議論がなされました。だんだんこうした賠償条約等が結ばれて参りますると、まさしくこの事柄は大きな問題になつて来ると思うのですが、現内閣におきましては、私有財産を、国と国との条約において、一面においては侵害する結果になるのであるが、併し国内法において、これを何らか補償する、こういう構想を持つておられるのでございましようか。
  86. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 只今条約局長から一応お答えいたします。
  87. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 御指摘の点は、実はサンフランシスコ平和条約にもこれと同様の規定がございまして、条約自体には日本国民に対する補償のことは何ら書いておらないわけであります。つまり白紙に残しているわけでございます。目下大蔵省関係の在外財産問題調査会という機関におきまして、ビルマに限りませず、広く今次大戦後外国に財産を有しているがために、これを広義の賠償としてとられた日本人に対する賠償を如何にすべきかという問題を検討いたしておりまして、やがてその調査会におきまして、何らかの結論が出ました暁におきましては、政府としてこの問題をお取上げになる段階であろうと存じます。
  88. 天田勝正

    ○天田勝正君 どうもね、私質問を簡略にするから……。どうも見当違いですよ、そういうお答えは。さつきから形式論で高橋委員に対して答えたと同じなんです。だから特に私は質問している。サンフランシスコ条約に如何ようにあろうとも、本条約にどうあろうとも、問題は個人の在外資産を国と国との条約によつて勝手に、いわば処分した規定がここにあるわけなんです。そういうことは、私有財産権の侵害なんであるから、これはどういう機関で今検討しているなどということでなくして、内閣方針としてですよ、だから私は外務大臣に伺つた、内閣方針としてそうした私有財産権侵害をどこかで救済の途を講じなければならない、こういうことを申上げているのであります。だから現内閣においては、その用意がおありかどうか、どういう方針を持つておられるか、このことを聞いているのであります。
  89. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 全くお話通り、その条約によつて、国家と国家との間に結ばれた条約によつて、傷付けられた個人の損害というものについては、国家は十分これを考慮しなければならんと思います。そこでその個人の損害については、十分調査をして、そうしてこれに対する補償をどういう形においてするかということも考慮しなければならんと、こう考えております。ただその調査等は、今条約局長の説明した調査の結果を待つて十分それは考慮するのほかはないと考えます。
  90. 天田勝正

    ○天田勝正君 時間がございませんので、もう一点だけ伺つてやめます。今度は第三条の関係でございますが、これは両締約国はこれこれのことで「友好的な基礎の上に置くために、条約又は協定締結するための交渉を」云々と、こう書いてございますが、そこでこれは将来のことを謳つたことではありますけれども、この平和条約交渉に当りまして交換公文というような上下を着た取極なんかは勿論ないに違いはございませんが、何か想定してこれこれのものについては将来話合おう、或いはその時期はいつ頃にしようと、こういうようなことが、私当然話に出たと存じますけれども、これらの点が話が出たならば、又やや合意されたようなことがありまするならば、この際お示し願いたいと存じます。
  91. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 第三条につきましては仰せのような話は出ました。殊に日本側は最恵国条項を入れようと試みましたためにいろいろな話をいたしました。併しながら文書としては何らまとまつたものはございません。この第三条の規定だけでございます。
  92. 天田勝正

    ○天田勝正君 議事進行関係上、私たくさんまだ質問したいことがございますが、これで私の質問はやめます。
  93. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 先ず第一に簡単なことからお伺いしますが、この第五条に「戦争中に日本国が与えた損害及び苦痛を償うためビルマ連邦賠償を支払う用意があり」ということを言つておりますが、その戦争中に日本が与えた損害というのは、ビルマはどういうふうに見積つているのか、日本はそれをどういうふうに評価しておるのか、先ずそれからお答え願いたい。
  94. 中川融

    説明員(中川融君) 先方では戦争中に日本が与えました損害を初めは数十億ドル程度ということを言つておりましたが、その後約一年ほど前に岡崎前大臣ビルマに行きましたときには、大体百億ドルくらいということを一応言つていた経緯がございます。日本側としては特に戦争被害を算定する実は資料もございませんので、この点についての算定はいたしておりまん。
  95. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それに関連してインドネシア、フイリピン、ヴエトナム、そういうところはどれくらいとおのおの見ておりますか。
  96. 中川融

    説明員(中川融君) インドネシアはこれははつきりは申しませんが、大体七、八十億米ドル程度というのが一応の算定になつておるようでございます。フイリピンにつきましてはやはりこれは八十億米ドル程度と、かように一応なつております。
  97. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこで昨年、二十九年度の予算を審議いたします場合に、百五十億の平和回復善後処理費、これをいろいろ討議いたします際には、大体日本賠償予定額としてフイリピンには二億五千万ドル、インドネシアには一億二千五百万ドル、ビルマには七千万ドル、インドシナには三千五百万ドル、計ほぼ五億ドルというようなものを予定をしているというようなことが伝えられましたが、そういうことがあつたかどうか。
  98. 中川融

    説明員(中川融君) 約一年ほど前に岡崎前外務大臣が東南アジアを旅行したことがあるのでありますが、その際にフイリピンに対しましては、大体二億五千万ドル程度賠償を一応提示したのであります。インドネシアにつきましては、これははつきりした提示はなかつたのでありますが、おおむね大体只今御指摘になりましたような見当の話を一応したのであります。ビルマ及びインドシナ三国等につきましては、それほどのはつきりした数字を示してはいないのであります。いずれにせよそれは交渉の過程におきます一応の数でございまして、本年度の予算を想定いたします際にそのような数字を基礎にして百五十億円の枠をきめたというような事実は、私は承知しておりません。さようなことはなかつたと思います。
  99. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その後何かフイリピンが四億ドルというような話が大体きまりかけたときに当つて、当時は日本政府としてはフイリピンに四億ドル、インドネシアに二億ドル、ビルマに一億ドル、従つて四対二対一というような大体の比率でこれに対処したいというような意向だということが伝えられたのですが、その点の政府方針はどうだつたのですか。
  100. 中川融

    説明員(中川融君) フイリピンに一応四、更にインドネシア二、ビルマ一というような基準を政府が持つているかのように新聞等に伝えられたことがあるのでありますが、政府としてはそのような固苦しい枠を何も持つていたのではないのでありまして、又その趣旨は十分先方政府に伝えてあるのであります。
  101. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、先ほどのお話からビルマには一億足らずのものを大体予定しておられたのじやないかと思いますが、それがいろいろな交渉の経緯を経て大体今の二億或いは二億五千万ドルという数字に落ちついたように思うのですが、その辺の妥結した経過はどういうことだつたのか、その辺を一応御説明願いたいと思います。
  102. 中川融

    説明員(中川融君) 交渉をいたします際には、勿論初めから我々がこのくらいと思つている額を打出すわけには行かないのでありまして、交渉のやり方としては、自然低い数から交渉が開始されたわけであります。双方の話合いの結果或る点に妥協ができる、その結果交渉がまとまるという過程になるのでございまして、従つてビルマとの交渉に当りましても、最初は低い額、日本側としては大体一億見当の額から始めたのであります。先方は四億ドルを主張いたしました。結局それが中間と申しますか、二億ドル・プラス五千万ドルの経済協力というところで妥結ができた次第であります。
  103. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 新聞の伝うるところによりますると、その場合にビルマは他国との間に平等の待遇を要求しているということが伝えられておりましたが、その点に対する日本政府方針はどういう方針で謳まれたのか、更に今後その方針をどういうふうに貫いて行こうとされるのか、それから事実としては事務当局の御答弁を求めますが、今後の方針としてはどうされるかは、更に外務大はに御答弁を願いたい。
  104. 中川融

    説明員(中川融君) 交渉の当初におきましては、只今御指摘のありました通りビルマ側はその他の国との衡平の原則或いは平等の原則と申しますか、そういうことを主張いたしまして、そのために交渉は相当困難であつたのでありますが、漸次話合いの結果双方の態度が歩み寄りまして目下御審議願つております額にきまつたのでありますが、なおその関係の条項が五条の一項の(a)の(III)のところに書いておるのでありまして、日本国ビルマ以外のすべての賠償請求国に対する賠償の最終的解決の際におきまして、日本国経済力に照らしてビルマの公正且つ衡平な待遇に対する要求というものを再検討するという規定を置いたのでございます。この規定は平等という字句を用いないのでありまして、公正且つ衡平な待遇という字句を用いておるのでありまして、日本は他の求償国との話が最終的に解決いたしました際に、このビルマ側の主張をもう一遍顧みるという意味がある次第でございます。併しながらこれをどのようなスタンダードで考えるかというようなことにつきましては、何らのきめた話合いがないのでございます。
  105. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 将来の賠償交渉に関連するお話のようでございましたが、やつぱり賠償交渉は各国との間の特殊な状況によつてこれは交渉を進めるよりほかにしようがないと考えます。そうしてそのときの日本経済力、それから又各国が負うた損害、これを照らし合して行くほかはないと思いす。
  106. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 日本が与えた戦争災害、そういうものも考慮し、各国の特殊な事情も考慮し、というような外務大臣の御答弁でありましたが、丁度このビルマ賠償協定がはぼ成立した、仮調印されたときですか、九月の二十五日でしたか、あのときに同日フイリピンの副大統領ガルシアはすぐ談話発表して、賠償の割当は日本政府方針によると四対二対一で、それを基としてビルマには大体一億を予定していると伝えられている、それがこの協定によると二億五千万ドルに増額をされたのだから、フイリピンは当然にこれまで問題になつた四億ドルを相当上廻つて決定されるということを期待をする、そういう気持で対処するんだということをフイリピンでは言つておるようですが、日本政府としてはその点をどういうふうにお考えになつておるか。
  107. 重光葵

    国務大臣重光葵君) そういう誤解があるので実は困るんです。困るのでございますが、それは先ほども交渉の経緯に関する説明通り、誤解でありますので、十分これは誤解を解いて、そういう尺度で初めから行くことの話合いには乗れんわけでありますから、今いろいろフイリピンとの間はそういう尺度によつてやらずして行くように今凖備、いろいろの工作を進めておるわけでります。
  108. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それが誤解であれば幸いでありますが、若しフイリピンで考えておるようなことを一律に上に上げて参りますと、今外務大臣も非常に心配をしておられますように、十億ドルを越すものになりかねない、従つて一年には一億ドル、国内円で三百六十億になんなんというような非常に大きな負担が永年に亘つて固定をする、こういうことは日本の現在の賠償能力からして殆んど考えられないし、許されないことであると思うのですが、そうなると問題は、更に日本の一体賠償能力をどういうふうに見ればいいのかという問題になると思うのですが、この点については昨日も大蔵大臣にもお尋ねをいたしましたが、外務省としてはその辺のことをどういうふうに勘案をしておられるか、それをほぼ見当をつけて折衝をされなければ向うの言いなりにずるずるに引きずり込まれて来て、向うに対する説得力は何もないというようなことになるのじやないかと思うのですが、その辺をどういうふうにお考えになつておるか。
  109. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その点は非常に交渉の過程としては技術的に見ても非常にまあむずかしい、慎重にやらなければならん点だと思われるのであります。一方賠償問題は、まあ細かなことを言わず、成るべく早く、遠き将来のことを考え一つ早くやつたらいい、こういう考え方が、これは政治的だけじやありません、経済的にもそういうふうな考え方があるわけであります。そういう考え方と、差当つて賠償支払能力が非常に無理があるから飽くまで譲れん、そこに制限があるという、まあいわば窮屈な考えと、どうしてこれを調和して賠償交渉を成功に導くかということに主として困難があると思います。そこで私はそれを他の経済方両を担当しておる二、三の閣僚としよつちゆうこの辺の相談をして、そうして日本の将来の経済力をも考慮に入れて、そうして交渉の基礎をこしらえて行きたい、こういう工合に今考えております。数字のことはちよつと私もここで申上げる何を持つておりません。
  110. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 大臣としては、就任早早でございますし、無理でありましようが、政府としてはそういう点については相当はつきりした数字的な検討を持つた上で、それをどう使うかは、今お話のように政治的な考慮その他があると思いますけれども、併し少くとも自分たちの尺度を一つにははつきりしたものを持つておられなければならないと思うし、更にもう直ちに三十年度からは現実に財政支出の問題としても出て参りますので、この点は今直ちにとは申しませんが、この次の予算審議までにはもう少ししつかりした数字的な検討を遂げ、更に我々にも納得の行くような説明を御提示願いたい。これは強く要望をいたしておきたいと思います。  それからそれに関連をいたすのでありますが、平和条約の第十四条によりますと、当時日本が支払うべき賠償はサービスに限るということで、そういう点から一応日本国民は賠償義務負担を了承をいたしたのだと思います。然るにその後の経緯によつて、現物賠償も又止むを得ないといようなことになり、更に今度のビルマ賠償方式によると、円貨借款までお考えになつておるとすれば、広い意味の一種の現金賠償まで更に認めた、少くとも日円の現金賠償は認めたというようなことになつて賠償方式、方針として非常に平和条約の当時とは変つて来たというふうに考えるのでありますが、こういうふうに変ることなきやを我々は非常に恐れたから平和条約の審議に際してはこの点を非常に問題にしたのでありますが、方式なり、方針は変らないからというお話であつた。然るに今やそういうふうに変つて来ておる。なぜ変えなければならなかつたのか、変えてもなおそれでやつて行けるというふうにお考えになつておるのか、その辺を詳しく御説明を願いたい。
  111. 中川融

    説明員(中川融君) 御指摘の通りサンフランシスコ条約では賠償はサービスということに限定しておるわけでありまして、若しも、原材料が必要な場合には外国為替上の負担を日本に課さないために原材料は求償国から持つて来なければならないという規定があるのであります。この規定に関連いたしましてその当時から果してこの原材料を当該国が持つて来るという義務外国為替上の負担を避けるという趣旨だけからであろうか、そうすれば日本で産する原材料は必ずしもこの当該国から持つて来ることを要求しなくてもいいのではないか、外国から輸入すべき原材料については、やはり当該国から持つて来なければいけないというようないろいろの議論があつたのでありますが、結局フイリピン、インドネシア等と相当長い交渉をいたしました経緯におきまして、この点が非常に先方国の最も危惧しておるところでありまして、賠償というものをもらうのに自分のほうから原材料を出さなければならない、又原材料が自分の国で産しない場合には外国から外貨を使つて輸入してそれを日本に提供しなければ賠償をもらえないというようなことでは非常に不満であるという論議が非常に強いことがわかつたのであります。これが一つの理由ともなりましてインドネシアはサンフランシスコ条約批准しないという態度を明らかにしたのであります。又フイリピンにおきましても、この点について日本側が若干態度を緩めなければ到底サンフランシスコ条約批准する考えはないということをこれ又国会等におきまして明らかにして参つたのであります。従つて日本としてはサンフランシスコ条約の規定の解釈とは又別に、解釈の問題とは離れましても何とかこの賠償につきまして求償国から原材料の提供を要求するという制度につきまして考え直さなければ、賠償交渉自体が進捗しないという状況に直面したのであります。そのような事情からすでにフイリピンとの交渉過程におきましても政府としてはできるだけ十四条を拡く解釈したいということを言つたことがあるのであります。そのときの考えはやはり原材料の点につきましては相当ゆとりのある解釈をできるだけとつて先方を満足せしめなければいけないだろうという考えがあつたわけであります。ビルマとの交渉が片付くに当りましてビルマサンフランシスコ条約調印をしない関係上、サンフランシスコ条約の規定には拘束されないわけでありますので、この点につきましてはやはりビルマも同様の強い要望を持つております関係上、この点はむしろはつきりと生産物を出すことができる、併しそれは日本国の生産物でなければいけないのであります。日本国の生産物を、役務のほかにそのようなものを提供できるということを規定したのであります。なお円貨による現金賠償ではないかという話でございますが、成るほど日本国の生産物、日本人の役務というものが提供されるという意味におきましてこれを日本円の代つたものであるというふうに解釈すれば或いは円貨による現金賠償というふうに見られないこともないかと思いますけれども、併しこの条約及び協定の規定を御覧になりますと円を提供するということではなく、やはり飽くまで役務又は物を提供するというふうになつておるのでありまして、その実施の方法も大体それに適合した方法によつてやりたい、かように考えております。円貨借款という規定はございますが、これは飽くまでも借款でありまして、賠償ではないのでありまして、先方が必ずこれは返すことになつておる次第でございます。
  112. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 一種の現金賠償になつておるかどうかという点については議論の余地があると思いますが、それを別にしてもすでに現物、而も資本財による賠償という点まで発展した以上は、これは単にゆとりを持つて解釈をするというような問題じやなくて、大きな方針の変更の問題である、方針を変更せざるを得なかつたいろいろな事情はよくわかりますが、平和条約を審議するときにすでにそれは予見されていたことであつたから我々はそういう用意があるのかどうかということを非常にやかましく問題にしたのですが、そういうことにはならないというようなお話であつた、特にそのときに強調されたのはアメリカ側とのいろいろな話合いもあるのでその点はそういう話合いとの関連においてうまく解決をしたい、こういうようなお話であつたと記憶をいたします。殊に平和条約第十四条が成立する過程は、申上げるまでもなく、当初は賠償条項がなかつたのにかかわらず賠償条項を入れる、これはアメリカ側との間に何か話合いがあるかのごとき風説が伝えられた、更に越えて二十七年の暮でありましたか、アリソン氏が当時まだ国務次官補であつたと思いますが、吉田首相へ勧告して、丁度アリソン氏か東南アジア諸国を廻つて来て日本と東南アジアとの提携が大事だと、これは中国との貿易その他を遮断をいたしているので、そうだとすればそれに代る市場として東南アジア考えなければならんということから、日本と東南アジアとの提携には賠償問題の解決が先決だということを強く勧告をした。これに基いていよいよ日本もこの問題の解決に積極的に乗出したし、従つて又、単にサービス賠償だけではなくて、現物賠償、或いは資本財賠償という方針に変つて参つたそういう経緯を考えると、この賠償をな日本経済が存立可能であり、而も日本国民の生活水準を引下げないということを前提にしながらこういう賠償負担を可能にするためには、アメリカ側の何と言いますか寄与、それが非常に重要な問題になると思うのであります。  従つて、私がお尋ねしたいのは、この賠償実施に関連をしてアメリカとの関係をどういうふうにお考えになつておるか、今までどういうお話合いになつておるか、更に今後この問題の話合いをどういう方針態度でお進めになるか。その点を前者の実績の問題は事務局、今後の方針の問題は外務大臣お尋ねしたい。
  113. 中川融

    説明員(中川融君) サンフランシスコ平和条約に入つております賠償規定が、当初ないものが求償国東南アジア戦争の被害を受けた諸国の強い要望によつて入つたということは事実であるというふうに我々も聞いております。なお、このサンフランシスコ条約調印当時と申しますか、そのときの状況ではまさしくフイリピンもインドネシアもはつきりとこれに調印をいたしたのでありまして、当時日本政府としてはフイリピンもインドネシアもこの条項そのままの適用を承諾したものとするというふうに、こういうふうに考えたのであります。現実交渉状況は先ほど申しました通り条約の規定は規定としてこれにやはり不満である、この純粋の役務に限るという点については不満であるということが事実問題として出て参りましたために、只今御指摘のありましたような、解釈を拡げる、或いはそれと違つた規定を、別の条約でやらなければならんという事態に立至つた次第であります。  なお、賠償の実施とアメリカとの関連ということでございますが、これは賠償はやはり日本義務としてする賠償でありまして、これについては日本政府が全責任を負つてすることになるのであります。勿論アメリカから何らかの形で日本に金が入つて来るというような事態になりますれば、その金が廻り廻つて賠償の金に充てられるということは勿論可能なわけでありますが、それとこれとは直接の関係はないのでございます。
  114. 重光葵

    国務大臣重光葵君) この賠償の問題について、条約上の今解釈として、義務の問題としてアメリカに何らかの義務があるというような条約上の問題じやないと思います。従つて賠償の問題は条約を結んでおらないフイリピンその他と成るたけまあ条約を結びたいと、こういう日本希望、そこで当該国と当該国、即ち日本とこれらの国との問題であることはこれはもう理窟はその通りであるのであります。併し賠償の問題は、先ほどから他のかたの御意見にもございました通り日本経済力全般の問題であるし、日本の国際的の経済の力という問題にすぐ関係をするのでありますから、その意味において私は大きくこれは考えてやらなければならんことは当然のことであります。そこで、条約上の問題としては、この当該国、国と国との問でこれはやらなければなりませんが、その広い意味経済問題として、やはりアメリカとの関係も当然これはいろいろ考えなければならんと思います。そこでアメリカがそれをどうするかという義務の問題じやなくして、いろいろ国交を進めて行く間において、全体的に経済を勘案して、そしてアメリカとの関係などをつけて行きたい、こう私は考えております。
  115. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 前の内閣は勿論のこと、現在の内閣でもアメリカとの協力とか、アメリカとの協調ということを非常に強調をされる。或る意味においては、我々は反対でありますが、いい意味において、そして日本が本当の自主独立のための協力という問題であるならば、大いにやらなければならない。そこでこの賠償に関連をして、アメリカに本当に協力を求められるのならば、従来吉田内閣ではアメリカに経済援助をもらつて、その一部で賠償能力を作り上げようというような考え方でいろいろ折衝をしておられたのじやないか、余剰農産物の利用の問題その他についてもそういうことをお考えなつたやに私たちは理解をしておるのでありますが、併しそれが邪推であれば幸いであります。併しもう一つの問題は、アメリカに本当に日本が存立可能なそして生活水準を下げないような形において賠償負担を負担し得るように日本に協力をする意思があるのならば、当然に先ほども羽生委員から問題になりました対米債務をどう処理するかという問題が関連をして参ると思うのです。私たちは乞食みたような、何か援助をやつてくれ、その一部で賠償の負担もいたしましようというような、卑屈な態度はとりたくないと思う。併しながら、今対米債務なりとして論議をされているところの占領に関連をした経費、これは対米債務というには余りにもひどいものであると思う。殊に経済力を非常に大きく持つておるアメリカが、これを債務の名前において今経済的に非常に困つておる日本に要求を突きつける、成るほど二十億ドル幾らのものを三分の一に負けてやるからというようなことで、七億ドルであるとか、六億ドルであるとか、五億ドルであるとかいろいろ折衝をしておられるという話でありますが、併しこういうものを債務として考えること自体が間違いであると思うのですが、それをどう考えるかは別問題として、実際の日本賠償能力なり債務負担能力からして、この五億なり六億のものを全部背負い込みながら、なお且つビルマに二億五千万ドルを前提にして、実にフイリピンやインドネシアに賠償負担をするということは、我々の算定によれば、日本賠償能力としては非常に無理なものであると思う。そこで本当にアメリカとの協力をお求めになるのならば、こういうことに対してこそ毅然とした態度で本当の意味の協力を要求されることこそ必要な点であると思うのですが、外務大ははその点をどういうふうにお考えなさいますか、どういうふうに対処なさるのですか。
  116. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今お話の点は私は多分に精神的の問題に触れておると思います。というのはお話通りに、私は日本としては自分のやらなければならんことは飽くまでやるんだというその精神、その国としては方針、それはまあ根本的のことになりますが、それでなければいかんと思います。だから自分のやらなければならんことはやる、たとえ苦しくてもやるというだけの気持を以てすべてを進めて行く、そこでその気持があればあることによつて私は他国の援助ということも来やすいのだと考えます。だからその何がなくて、ただできないからこうしてくれではなかなか他国も援助はできないと、そからその精神的の根本の問題については、私は全然その通り考えます。そこでアメリカとの間において援助を求める場合においても、常にその態度が必要だと思います。併し日本経済力においてはこれはリミツトのあることは普通の常識上当然のことであります。そうであるけれども自分のやらなければならんことをべストを尽した上で、アメリカの申分に対して今お話のような一番向うの申分の弱い点は十分にこれを衝いて行つて、そしてその目的を達するようにしなければならんということは当然のことのように感じますので、そういうつもりでやりたい。
  117. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点をもう一遍明瞭にしておきたいのですが、私はアメリカに乞食根性を出して、援助をくれ、援助をくれというようなことをそう懇願する必要はないと思う。それよりも対米債務として大きく負担をかけられようとしておる五億なり六億の債務、これの削減或いは減額をむしろ当然の権利として、当然の主張として毅然とした態度で主張をして頂きたい。それが本当に日本経済を、従つて日本国民の生活水準を守るゆえんであり、それを守ることこそはアメリカが日本に最も期待をしておる点だとも思いますので、その点を是非一つそういう態度で折衝を願いたいと思います。  それからそれと問題は、東南アジアの開発全体の問題に関連をすることになりますが、この間からの御意見御議論を聞いておりますと、アメリカ側は東南アジア条約機構、これに経済的な面を持たそうとしているし、そういう意味のものであるならば、或る意味においては日本としても歓迎をしたいというようなお話もあつたように思います。更にコロンボ計画に対しては、日本はすでに参加して行つておる、又アメリカのほうでも最近においてアジア自由諸国経済開発を助けるために、集団的な援助を行う時期が来たんだというような意味で、アジア経済協力の問題を本格的に取上げて来ようとしております。で、本当にアメリカがアジアにおける軍事同盟その他のものを作る方向を変えて、更にはそれを全然諦めて、本当にアジアに共産主義の侵透を防ぐものはアジア経済開発であり、アジアの民族の生活水準の引上げであるというふうに、大きく方針を転換をしたのであれば、その限りにおいては我々もその態度には賛成したいと思います。そこで一体そういう意味での経済協力機関を日本側としてはどういうふうにお考えになつておるのか。二、三日前の新聞によると、すでにアジア経済協力機関設置案の一つの案を政府としてはお持ちになつて、アメリカの井口大使にはその案を出されたというふうにも伝えられております。更にその前に吉田総理がアメリカに行かれたときにもはつきり数字まで挙げて、年間四十億ドルのアジア開発計画、投資計画の必要を力説をしておられたと思うのですが、それらの点から考えると政府においてはそれらの構想、方針それらは相当まとまつたものとしてでき上りつつあるというふうに考えられるのでありますが、それらの問題を重光大臣としてはどういうふうにお考えになるか、それからすでにアメリカ大使にそういうものを通達されたのか、通達されたとすればその内容はどういうものなのか、それらの辺の御意見と御説明お願いしたい。
  118. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 案を在米大使に通達したという事実はないようでございます。私の時代には無論ございません。そこで実情はいろいろなことが新聞その他にも議論があるのでありますが、今は政府として、特に外務省としては各方面の情報を集めて慎重にこれを研究しようと今審議中であると、こう御報告申上げるのであります。そしてそれによりまして私は十分これは一つ経済閣僚とも相談をしてそうして決定をいたしたい、こう考えております。まだ具体案を審議するまでには至つておりません。
  119. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今審議中であるということでありますからこれ以上それについての御説明は求めませんが、併しこれは非常に重要な問題であります。これがアジアを軍事的に軍事力を増強するという形において共産主義に対抗をするという方向でなくて、経済建設、或いは生活水準の引上げという問題を主にするという方向であるならば、方向としては我々もその点は同じ意見でありますが、併し同時に、それが例えばアメリカの資本主義的な、或いは帝国主義的なアジアへの進出の一つの触手になるとか、或いは仮に西欧諸国と一諸になつたとしても、英米のそういう企図の一つの現われであるとかというようなことになれば、我々としてはそれに対して賛成をすることができないし、もつとそういう形でなしに、本当にアジアの開発なり、アジアの生活水準を引上げる方向としては、方式としては、どういうふうな案にすべきかということは、日本がそれにどういう形で参加をして行くかということの非常に重要な因子になると思いますので、その点を十分にお考えの上に案を練つて頂きたいし、その案が出たら私たちもそれに対する更に具体的な態度なりあれをきめたいと思いますから、早い機会一つお出しを願いたいと思います。  それから今度は賠償の実施に関連をする問題でありますが、一体賠償の実施はすでに間近に迫つていると思いますが、或いは場合によつては今年度中にも実施に入るかも知れないのでありますが、それを実施する場合の機構、方式をどういうふうに今お考えになつているか、その点の御説明を願いたいと思います。
  120. 中川融

    説明員(中川融君) 賠償実施の方式及び機構の問題でございますが、そのうち後者即ちどのような機構で賠償を実施するかということにつきましては、日本政府限りで大体できる問題でございますので、只今関係各省と協議いたしまして、一応大体におきましては各省がそれぞれの主管に応じてこれを面倒を見ると出しますか、実質的に面倒を見るわけでございますが、併しやはり賠償実施ということは重大なことでございますので、やはり総合機関を設けまして、そこが企画に当ると同時に、いろいろのことの調整をやり、又ビルマ側との連絡に当るという仕組にしたいというふうに考えております。  なお賠償実施の方式につきましては、一応案は練つておりますけれども、今後更にビルマ側と折衝いたしました上でないときまらない問題でございます。但しビルマ側としましては、日本政府が中に入りまして、日本政府の窓口になつたものを、日本政府が業者から買つて、これをビルマに提供するという様式を好まないということが相当はつきりいたしております。ビルマ側が直接自分の欲する業者と契約を結ぶ、それを日本政府がその内容をよく検討しまして差支えないものであるとして認めた場合には、日本政府がその代価を支払う。このような方式を希望しているということが相当はつきりいたしておりますので、大体その方式を骨子といたしまして、具体的な案を只今練つているところでございます。案が一応できますれば、その案に基いて更にビルマ側と折衝いたしまして、本条約及び協定が実施になるまでにはその方式を確定いたしたい、かように考えております。
  121. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 賠償実施の機関でありますが、特に官庁側の機関、今の御説明じやはつきりしないのですが、それは一体連絡協議会式のものになるのか、私はこれは賠償実施ということは、ビルマの問題だけでなく、今後更にフイリピン、インドネシア等が加わると、金額的に言つても、或いは日本の産業、輸出入計画との関連においても非常に重要な問題になるのみならず、その仕事は総合的に、計画的に、而も能率的に運営されなければならないというふうにも考えるのでありますが、そうだとすると、単なる連絡協議会というようなものでは対処ができなくなつてしまう。一つの一元的な、恒常的な機関を、例えば賠償庁というようなものを設置することが必要になつて来るのじやないかと思いますが、その辺は外務大臣はどういうふうにお考えになつておるか伺いたい。
  122. 重光葵

    国務大臣重光葵君) そういう機関を必要とするようにだんだんなつて来ると思います。今聞きますところによりますと、賠償連絡部というような、今それでは不満足じやないかと言われる連絡部を先ず作つて、そして将来仕事がますます重要になり、且つ多くなる場合においては、更にそれを強化することが必要となると、こう考えておるのでありますが、差当つて現在の機関をそのまま使つて一つ外務省の統合の下に進めて行きたいと、こういうふうに手筈を進めております。
  123. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それは連絡部というような問題では処理しおおせないようなものになることがはつきり見通されるのじやないかと思います。これは私の意見になりますけれども、その点もお考え願いたいと思います。  それから更に、今のお話によりますと、民間契約方式みたいなことになると思いますが、そうだとすると、民間がこの賠償実施についてどういうふうに参加をして行くか、特に機関としてどういうふうに参加をして行くかという問題が重要な問題になると思いますが、この点についてはどういうふうにお考えになつておりますか。
  124. 中川融

    説明員(中川融君) 賠償実施に当りましては勿論政府が直接の責任に当るわけでありますが、その実施の態様、或いは業者の選定と申しますか、そういうようなものにつきましては、できるだけ民間自身の意見を聞きたい、参考に供したいと、かように考えておりますので、只今大臣から御説明のありました賠償実施連絡部というようなものと並行いたしまして、民間の学識経験者から成ります一つの審議機関をやはりそれに附置いたしまして、その意見を常時聞いて円滑なる実施を図るような仕組みにしたいというふうに考えて準備をいたしております。
  125. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 この賠償実施、特にビルマとの賠償実施になりますと、この間から御説明通りに、ビダウダ計画或いはビルマの社会主義建設と直接の関連をしておる問題だと思います。そこで相手側の性絡から見ても、それから或いは国内の事情から見ても、よくこういう問題についてはいわゆる資本家が個別資本家の利害関係だけで動くというような問題が非常にたくさんあるのでありますが、少くともビルマその他に対しては、相手国の性格も十分に考えた上に、民間のそういう実施の懇談会と言いますか、連絡会と言いますか、そういうものには、従来の資本家だけでなくて、もつと広く本当の意味での経験者なり技術者なりそういうものを十分にお考えになる必要があるのではないか。今噂されておる調査団その他の人は、個別に見ればどうも純粋の資本家的な古い感覚の経営者であり、のみならず人の間にはいろいろな噂もありますし、更には前吉田内閣との個人的な関係の特に強い人たちもあるのではないかと思います。そういう点も、そういうことのないように、而も相手国ビルマの社会主義建設という特殊な性格を十分に考慮に入れながら民間との意見調整はお考えになつて然るべきだと思いますが、その辺を大臣はどういうふうにお考えになつておるか伺いたい。
  126. 重光葵

    国務大臣重光葵君) この実施が実際経済面に直接関係するわけでありますから、いろいろなそういうお話のような点は十分に注意して考慮して実施に当らなければならんと、こう考えております。非常にその点は重要な点だと考えております。
  127. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今アジア局長のほうから、賠償の実施方式につきまして、向うへ引渡すものについて、政府が買入れてこれを渡すのではなくて、向う日本国内の業者から買つてそのつけを政府のほうへ廻すのだと、こういう方式をとるというお話を聞きました。これは非常にいろいろな問題を含んでおると思うのです。特にこういう点には十分留意をして頂きたいと思う。そうなるというと、入札の方式なり何なりを或いはとるかも知れません。又、そういう方法をとらないでも、業者のほうから自分のところが相当大きなものを買つてもらうということで非常に安い値で提供するという問題が起るかも知れない。その場合に、国内における価格を崩すだけならばともかくとして、今度は輸出すべき品物についても価格を崩すという問題も起つて来ると思う。ですから、この方式については、何かその辺に値を崩されないようにするというようなことについての注意、それからもう一つは、業者自身がそういうことのないようにする一つの……、個々の何でなく、何か業者のほうでそういうことの起らないようにする機関なんか作るというようなことも、これは考えて行かなければならんと思いますが、その点はどうお考えですか。
  128. 中川融

    説明員(中川融君) 只今御指摘に相成りました通り、先方が日本の業者と直接の契約をするという方式には、何と申しますか、出血して注文に応ずるというような、或いは非常な激しい競争をやるというような懸念があるのでありまして、この点につきましては十分注意したいと、一つには、やはり御指摘のありましたように、業界自体で何らかの組織を作つてそのような抜駈的なことをやる人を排除するということが必要だろうと思います。これは行政指導というような形でできればそういうふうにしたいと考えますが、なおそういうことをやりましてもやはり自分だけ離れて抜駈的にするということがあり得るのでありまして、このような事態を防ぐためには、ビルマ側との話合いによりまして、日本政府が最終的に承認しないものは結局日本政府が支払を引受けないわけでありますので、承認の際の条件といたしまして、適正な価格であるということをはつきりさせたいと、なお必要に応じましては、その品目ごとにどれが大体適正な価格であるかということをあらかじめビルマ側と相談しておくというような方法をとりたいと、従つてこの点につきましてはビルマ側も、今まで非公式に当りましたところでは、十分その必要性を考えておるようでありますので、大体その方式の運営によりまして、不当に安い価格で注文に応ずるというような事態は避けることができると考えております。
  129. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 賠償輸出入との関係ですが、去年の実績によりますと、ビルマに対して三千二百万ドルの輸出があつた。今後は賠償による輸出はこの正常な輸出に更にプラスになるというふうに措置をされる確実な計画なり話合い、取極ができておるのかどうか。若しそれがはつきりしないとするならば、その三千二百万ドルの中に食い入つて来て、何ら貿易規模の拡大に資するところがないと思うが、それらの点の用意はどういうふうにされるか。
  130. 中川融

    説明員(中川融君) 賠償の実施に当りまして、元来ならば貿易として輸出になるべきものが賠償という形で出るということになりますと、まさしく通常貿易を害することになるのであります。この点は賠償交渉の当初から我々が心配しておりまして、先方にも十分話した経緯があるのであります。従つて我々は、できれば通常貿易を害さないというような字句をむしろ賠償協定に入れるということも考えて見たのでありますが、その点につきましては先方は、あらゆる賠償の提供というものが全部そのたびごとに両国政府で合意するということになつておりますので、そういう虞れのあるものは日本では同意しなければいいじやないか、十分それで目的を達するじやないかというようなことがありまして、そのためにそのような字句を入れなかつたのでありますが、運用におきましては通常貿易と競合するようなものは賠償には入れないようにできるだけやつて行きたい。この点につきましてはビルマ側も異存はないように考えております。又賠償自体の内容を御覧になりましても、いわゆる生産資材と申しますか、通常貿易ではむしろ行かないような機械とかその他大規模のものが大部分になると思いますし、又事業といたしましても、今後ビルマ側がビダウダ計画に則りまして、新規に起す事業に必要なものが大部分になりますので、我々としてはおおむね通常貿易を害することなく、この賠償義務を遂行し得るのではないかと思います。なおこの賠償に関連して、又殊に経済協力に関連いたしまして、日本の通常貿易自体が又更に促進するというこの効果は見逃せないのでありまして、恐らくこの協定の実施によりまして貿易関係は非常に改善されることになろうかと、かように考えております。
  131. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ここの附属書に出ているような建設資材、機械器具、そういうものであるならば、現在の正常輸出と余り競合しないということで非常に楽観しておられるようですが、私は必ずしもそうじやないのじやないかと思う。更に今お話のように、この負担をあえてしても、なお且つこれをやるのだ、やつたほうがいいのだという決意は、これに関連をして今お話のように正常輸出も更にうんと伸びるのだという希望なり期待があると思う。従つてそういうふうに問題を運んで行くためには、単に漠然とそういうふうになるだろうと思うというような楽観でなくて、もつとその点は通商協定なり或いは貿易計画なりとしてはつきりした見通しと計画とを以て積極的に進まれなければ、所期の希望は達成をせられないと思うのですが、その辺に対してどういう用意を持つておられますか。
  132. 中川融

    説明員(中川融君) その点につきましては今後十分注意して、御指摘のありましたような方法によつて通常貿易は通常貿易としてますます振興させ、賠償賠償としてそれに競合しないように実施するよう計画を立てたい、こう考えております。
  133. 小滝彬

    ○小滝彬君 ちよつと簡単に関連質問をお許しを願いたい。この附属書の十九項の「両政府間で合意される他の生産物及び役務の提供」とあるのだが、勿論これは二千五百万ドルとか二千万ドルとかいう額と睨み合せて、この十八の項目ではカバーできない場合、合意でやるとかいろいろ抽象的な説明としては官僚としてうまくおやりになるでしようが、私としてお伺いしたいのは、交渉の過程はどうだつたのですか。一応は書いておくという程度のものか、でき得ればこれだけに限定したいというような気持でやられたのか、その点をお伺いしたいのです。
  134. 中川融

    説明員(中川融君) この十九の項目はこれは結局第一条の第三項に掲げております「ビルマ連邦経済の回復及び発展並びに社会福祉の増進のため」ということ、これの要するに内訳として一応このようなものが考えられるという趣旨で附属書に掲げたのであります。これはビルマ側におきまするいわゆる福祉国家計画の内容を是非ここに例示的にでもよいから書きたいという先方の希望によりまして、大体先方の案によりましたものをここに掲げたのであります。もちろんこれによつて福祉国家計画全部が綱羅されておるわけでもございませんし、又賠償が必ずこのいずれかの項目にぴたりと当てはまるということも、将来十年に亘るものでありますから、期待できないのでありますが、一応この賠償協定それ自体が如何なる目的を以て行われるものであるかということをここに幾らか具体的に書いておきたいという趣旨でこの附属書が添付されるようになつた次第であります。
  135. 小滝彬

    ○小滝彬君 そうするとこの第一条の趣旨が根本であつて、余り深い意味はない、ただ例示的なものに過ぎないと軽くとつてよろしいということですね。
  136. 中川融

    説明員(中川融君) 大体そのような趣旨におとりになつて差支えないと思います。
  137. 曾禰益

    曾祢益君 賠償問題だけに即してニ、三点伺いたいと思います。  最初にこれは佐多委員からも提起された問題で、論議を重ねるようで甚だ恐縮ですけれども、私たち、多くの同僚委員諸君も御同意だろうと思うのですが、この最初の賠償協定及びこれに伴つてできた平和条約に大体のかたは御賛成だと思いますし、殊に賠償については御議論ないと思いますが、そこでこの賠償だけならば議論がないが、併しいろいろ縷々御意見があつたように、結局はこの賠償を他の求償国に対する日本義務と申しますか、これとかけ離れて考えるわけにも当然行かないのです。而も従来からのいきさつもあつてビルマに二億及び経済協力五千万ドルということになりますれば、当然に例えばフイリピンとの関係において、これは如何なる内閣といえども、大野ガルシア協定で二十年四億ドルというような線が一応当時の日本政府が呑んだような形になつておるわけです。又インドネシアにつきましても、大体において一億五千万とか二億ということを当然に先方は期待しており、或いはもつと大きな要求が出ておるわけですが、条理的に行きましてこの協定締結し、又議会がこれに賛意を表するという場合においては、日本側の或る種の腹づもりとして、どうしても向うに最小限度の期待を与えることには成ろうと思うのです。従つてやはり少くともフイリピンに対しては、二十年に亘つて全額四億、即ち十年でやはり二億、インドネシアもやはり全額二億くらいを最小限度腹づもりとして持つであろう、このことを全然抽象してしまいまして、そうしてビルマだけの問題を決定することは、これは対外的にも、又国民に対しても、私は重大なる責任の回避になろうと思うのです。かような見地からまあ仮にビルマ二億という標準で行きまして、他の二国が大体同等程度といたしますならば、これはやはり年額六千万ドル、まあ年額にして二百十億、二百二十億というような線がどうしても財政負担として考えられる。又これを五千万ドルという経済協力の線を合せて考えるならば、或いは二百億から三百億に到達するような財政負担ということを、これは一応のやはり腰だめというか、考えずしてこの問題を最終的に処理するわけに行かない。併し勿論新内閣成立のまだ早々の際でもありますし、大蔵大臣に対しても、又副総理外務大臣に対しても今三十年度の仮に骨格予算で今まで百五十億と考えていたものを、相手国の話も進んでおらない、又御準備もないときに、一体幾らに見積るかということを聞くのは無理だ。併し大体そのくらいのことはやはり考えて、そしてこの問題を処理する必要があるのではないか、又その点から言うと、この第五条の(III)のビルマから要求された結果であるけれども、他のすべての求償国との最終解決の結果、いわゆるビルマの要求を再検討するという項目は、或る意味ではこれは日本側にとつても決して悪い規定ではない、或る意味では日本がここで一線を引いたことになり、少くとも四、二、一というような、伝えられたような割合ということは、これは我々としては考えられない。むしろどちらかと言えば各国それぞれんの事情もあろうけれども、大体ビルマと最終にやつた結果というものは、大体これを動かしたならば、各国平等でないとえらいことになるぞという一つのまあ線を引いたことにも私はなると思います。まあかようにも考えるのですが、そうこう考えまして、やはり或る程度の財政上の見通しというものは相当私は考えておられて、そしてこの条約承認を求められておると思うので、極めて私の問い方も抽象的でありまするが、この点に関連して、これは事務当局で若し困難ならばやはり外務大臣からでも私の質問に対するお答えを願えるならば結構だと思います。
  138. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 賠償問題は先ほど出しました通りに各相手国と我が国との間の交渉によつてこれを解決するという建前がいいと思います。又法的にもそうなると思います。そこでビルマとの間に解決ができた、恐らく第五条を待たずともこの解決をしたというこの標準は次の交渉に私は影響を持つと思う。理論は、これは次の交渉は別個の交渉でありますし、又別個の事態として考えなければならない。又それを主張しなければならんと思いますけれども、実際は何と言つて一つの先例ができておるということは、これは争われぬことだと私は思います。そこでその標準で行けば将来の日本の財政計画はどうなるか、経済全体の計画がどうなるかということに無論これは考えを及ぼして進まなければならんと思います。が、併しながら今日の場合では、今の場合ではビルマ条約ができた、そこで私どもはこれは、だから将来どうもこの標準で行かれては非常に日本の将来は困難だから、これはもう前の内閣でこしらえたのだからやめにしたらよかろうというふうには実は進みたくないのです。こういう何ができても幸いにビルマとの間の関係が平和的に設定されるわけでありますから、これは非常ないいことだと思う。いろいろな先例を作つた。その点については一つの将来の心配もあるわけであります。併しそれにもかかわらずこれを成立さして、そうして将来に無論影響を私は及ぼすと思いますれども、すべての政治経済の全局を勘案してできるだけ有利に将来も進めて行きたいという感覚の下にこれを進めておるわけであります。それならば将来そういう何でどれだけの、金目にしてどういう負担をするという見込でやつておるのかと、こういう具体的の数字等につきましては私は今それをはつきりと予想することもできません。というのは、各国の賠償問題は各国との交渉によつてきまるわけでありますから、それをできるだけ有利に導いて而もでぎるだげ早くその他の国との賠償をも結末をつけたい、こういう希望によつて一つ飽くまで努力をして行きたい、この程度で私は進むよりほかにしようがないと思います。
  139. 曾禰益

    曾祢益君 只今の外務大臣の御答弁で了承いたします。以下事務当局にお答え願えば結構なんですが、協定第一条の、先ほど来も問題になりました点に関連するのですが、この生産物と役務の価額の全体の価額は一体誰が決定するのか、これは勿論個々のあれの計算の問題もありましようが、最終的にこれは一体幾らになつたということは日本だけの決定ができるのか、やはり合同委員会で両方が認定し合うのか、その十八億円なり七十二億円の価額の決定権はどこにあるのか。
  140. 中川融

    説明員(中川融君) 賠償につきましては結局ビルマ政府日本の業者なり日本人と個々に契約ができるわけでありまして、その契約において向うに提供いたします物なり役務なりそれが幾らかということがおのずから契約の中ではつきりするわけであります。契約は恐らく日本円建になると思いますが、一応それがはつきりする、従つてその契約を日本政府承認いたしますれば日本政府もその価額を承認したということになるわけでありまして、契約の実施と共に日本政府はその契約に書いてある価額を当人に払いまして、その分だけ日本政府賠償義務を果したことになるわけであります。為替換算率が変更等の場合は別といたしまして、はつきりするわけであります。  一方経済協力につきましては価額が必ずしもそのようにはつきりしないと思うのでありまして、これにつきましては個々の経済協力の契約を十分双方で見まして、この中でこれは一体幾らというようなところで計算しなければならんと思いますが、これは合同委員会においてこういうものをきめて行きたい、そうして双方で帳簿を持ちまして、その帳簿によつてそれぞれ帳簿を毎回照合いたしまして双方の数字の食い違いがないようにはつきりいたしたいというふうに一応考えております。
  141. 曾禰益

    曾祢益君 そうしますと、大体物品購入、生産物購入ばかりでなくて、役務もビルマ側の個々に購入或いは契約官が来て、主として日本に来てそうして個々に契約する、そういう方式になるわけですか。
  142. 中川融

    説明員(中川融君) そういう方式になる予定で進んでおります。
  143. 曾禰益

    曾祢益君 そこで先ほど岡田君が指摘されましたような、これは生産物についても値崩しの問題があろう、同時に日本側、ビルマ側にも公正な機会を与えて、無理矢理に高売りするようなことは勿論慎しむべきことでありますが、その問題、業者間の自制の問題もありましようが、やはりサービスのほうでもこれは余り、元来ならば相当いいサービスなら国連の技術官が来て技術援助をするときの給料くらいを本来要求すべきにもかかわらず、日本のテクニシアンもチープレーバーのために非常にみつともないくらいの価額で行くようなことがないようにこの点を一体どういうふうに抑えて行くかということは私はこれは非常に重要な問題だと思うのですが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  144. 中川融

    説明員(中川融君) サービスの評価という問題も今御指摘になりました通り非常に注意しなければならん問題でございますので、この協定が実施に至りますまでに日本側とビルマ側におきまして大体のサービスの給料表のようなものを一応作りまして、A級、B級、C級というように分けまして、A級の者は月給で月額大体幾ら、B級は幾らというふうに表を作りたいと思つて只今準備いたしております。勿論個個の人をそのA級のいずれに当てるや、B級のいずれに当てるや、いろいろの問題が出て参りますけれども、大体の考え方としては個々にきめるのではなくして、一定のスタンダードをあらかじめきめておきたいというふうに考えております。尤もそのスタンダードはこれも御指摘になりました通り、今までの実績におきまして日本の技術者の或る者は相当安い俸給で以て契約に応じている例がビルマについてもあるのであります。このようなことが今から起りますと、それが前例となつてその表を作ります際に悪影響を及ぼしますので、内面指導によりましてこのような安い俸給で向うに契約はできるだけ今からでも結ばないようにというふうな指導を只今実施いたしております。
  145. 曾禰益

    曾祢益君 くどいようですけれども、まあ生活水準が違うのですから、向うに行つた場合にいわゆる西欧側から非常に以下のようなことで却つて侮りを買うことのないようにまあ一つビルマとの話合いにおいても国連の技術官の技術援助の場合の水準くらいを主張して頂きたいと考えるわけです。  次にこのビルマのこの第ニ条のビルマ連邦義務、「この協定の第一条の規定を円滑に実施するため必要な措置を執る」これは一体どういうような義務があるのですか、この点御説明願いたいと思います。
  146. 中川融

    説明員(中川融君) この条文はこの協定の実施のためにビルマ側でするべき義務を書いておるわけでありますが、二項、三項、四項にはそのうちの主だつたものと言いますかを規定しておりますが、第一項は概括的に「円滑に実施するため必要な措置を執るものとする。」というふうに書いてあるわけであります。2、3、4は観念的にはこの1の中に含まれるわけであります。なおこれに含まれておるものとしては、例えば税金につきましては必要な免除をする、或いは交通その他についての便宜を供与する、或いは治安その他についてその本人の保護に当る、さようなことはいろいろこのほかにも考えられるわけでありまして、これらを一応概括的に網羅する意味で第一項のような規定をいたしておる次第であります。
  147. 曾禰益

    曾祢益君 次に第四条の合同委員会はどの程度の権限を持つことになるか。ここに書いてありまするのは、「協定の実施に関する事項についての協議及び両政府への勧告のため」、この権限はもう少しはつきり説明して頂きたいのですが……。
  148. 中川融

    説明員(中川融君) 合同委員会で先ずきめなければならない仕事といたしましては、賠償並びに経済協力の実施の具体的計画であります。これは十年間に亘るものでありますが、原則といたしまして毎年度ごとにやはり詳細な実施計画を立てまして、その実施計画によつて賠償並びに経済協力を実施して行きたいと、従つて計画の策定、合議ということが先ず最初の仕事であろうと思います。なお個々の具体的契約の実施の過程におきまして、いろいろ紛議を生ずることがあるわけでありまして、これは勿論原則としては、当事者間で片付けるべきものでありますが、更にそれがどうしても片付かないという場合は外交交渉になることもあると思いますが、その際には合同委員会にかかるわけであります。なお協定のいろいろの解釈その他については、最終的には仲裁の規定があるのでありますが、毎日の運営におきまして合同委員会でこのような異議については相談をすることになると考えます。
  149. 曾禰益

    曾祢益君 交換公文による貸付ですね、これは毎年二百万ドルに相当するものを貸付ける、個々のやつが全部十年間ということになるわけですか。或る年に貸付けたやつが十年、その次の年のやつが十年と、こういうふうに支払期間が貸付けたときから十年、こういう計算になるわけですか。
  150. 中川融

    説明員(中川融君) そのときの考えは、毎年、年平均にいたしまして二百万米ドルに相当するものを毎年十年間貸す。これは従つて一番最後の十年目に貸した分は恐らく返すのは相当先になると思いますが、そのような思想であります。併し必ずしも一年ごとに切つて貸さなければならんという思想でもないのでありまして、二百万ドルを或る年度に越した場合は次の年度はぐつと減る、或いは全然貸付しないということもあろうかと存じます。
  151. 曾禰益

    曾祢益君 その前に戻りまして、第一条の2の、つまり経済協力のやつですが、この一体「日本国」といいますか、政府義務程度は一体どの程度になるのですか。「あらゆる可能な措置を執る」、これは必要に応じてやはり政府が財政出資をする、或いは少くとも融資まではしてやるということまで含むわけなんですか。どういうふうに、この義務の内容ですね。
  152. 中川融

    説明員(中川融君) 「あらゆる可能な措置」というのでありまして、その内容がはつきりここではしていないのでありますが、従つてどういう措置を具体的に必要とするかということは、やはりこれをこの規定に基きまして、合同委員会で結局ビルマ側と相談することになろうと思いますが、今、日本側として一応予定しておりますことは、必要な資金というものをやはり用意する。日本人の業者でビルマ側と合弁事業を行いたいという希望者がおり、而も条件等が当地に十分合つているというようなものについては、資金がないためにその合弁事業ができないというような事態は起してはいけない、従つて政府としては、資金についてはやはり必要な措置をとるということが必要であろうと考えてこの準備をいたしておるのであります。
  153. 曾禰益

    曾祢益君 そうすると、その少くとも場合によつては融資までは政府が世話をしてやる、こういうわけですか。
  154. 中川融

    説明員(中川融君) 大体そのように考えております。
  155. 曾禰益

    曾祢益君 私もう最後に一点だけ伺いますが、この条約協定が英文でできておる、日本語はまあ、而も訳文ではないということになつておるのですが、まあ少し変なものだと思うのですが、例えば日本語訳の点でもただ一つの例に過ぎないのですが、協定の第一条の3の「供与され又は使用に供される役務及び生産物」、こういうところは英語によると、ただこれらのサッチというよう言葉でやつているのですが、これはどうしてこういうふうに、これはこういう訳が一等正しい訳だということになるのですか。私は全部を見たわけではないのですが、こういうようなちよつと素人が考えると、英語と日本語と違うじやないかというところも出て来ると、皆さんが心配していらつしやるように英語だけで、我々が本当は英語について責任を持たなければならないのに日本語でやつて、これで我々の責任は達したという問題とも関連するから、一点だけ伺つておるわけですが、この点はどうですか。
  156. 下田武三

    政府委員(下田武三君) サッチをただそのとかこれらのとか訳しますと意味はつきりしないという虞れから「供与され又は使用に供される」ということを繰返して入れたものでございます。
  157. 曾禰益

    曾祢益君 ほかの点は大丈夫ですか、一々見ないでも。
  158. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 日本文は実は外務省だけで作つてもよさそうでございますが、国内法令との関連統一をして、従つてすべての条約内閣法制局の厳密な審査を経ておりますので、その点について必ずしも外務省の見地からこう訳したいという訳例がすべて通つておるわけではないのであります。多少国内法制的な、法律的正確さ、厳密さということの要求が入つて訳されておるために、ときによると英語以上のことが入つてくることもあるわけであります。
  159. 岡田宗司

    岡田宗司君 ちよつと条約局長に第六条についてお伺いします。  第六条の仲裁委員の件ですが、仲裁委員のうちつまり「第三の仲裁委員は、両国のうちいずれかの国の国民であつてはならない。」こういうことがあるのですが、この条約を作るときに、第三の仲裁委員について大体どこの国の人をそうするのかということについて話合いがあつたかどうか、それから又日本政府としてはこれについてどう考えておられるか。
  160. 中川融

    説明員(中川融君) この協定を作ります交渉におきまして、第三の仲裁委員をいずれの国の国民から選ぶかということについては何ら話合いがなかつたのでありまして、これはその際にきめることになります。
  161. 小滝彬

    ○小滝彬君 曾祢君の質問について関連質疑をやろうと思つたのですが、岡田君が質問をしたので元に戻します。  先ほど中川君の答弁では、融資を斡旋する程度だということだつたんですが、一体非常にアトラクテイヴなエンタープライズがある場合はそれでいいのですが、そうでない場合には、或いは政府保障でもしなければ、十八億円の価値の活きるような役務乃至生産物を提供し得ないという事態が起りはしないかと思うのです。或いは政府保障、財政支出というものも考えなければならん事態がありはせんかと思うのだが、それについては先方との話合いがなかつたにしても、大蔵当局なんかとアジア局とはいろいろ話しているのではないかと想像するわけです。その辺のところはどういうお気持ですか。
  162. 中川融

    説明員(中川融君) 只今御指摘の点、即ち経済協力について日本政府が、どの程度責任乃至義務を負うかということにつきましては、我々も交渉の当初からこれについて少しいろいろこうかああかというふうに考えたのでございますが、結局ビルマ側との話合いの結果、ビルマ側としてはこうは書いてありましても、合弁事業として是非来てもらいたいものは、ビルマ側の条件をよくして、日本の業者が放つといても来るように非常にアトラクテイヴなものにする、むしろ自分のほうの余り好まないものはそうアトラクテイヴにしておかなくてもいいという、こういういろいろビルマ側の要望がありまして、従つてこういう「あらゆる可能な措置」ということが書いてありますが、結局日本側としてとるべき措置は、一応必要な資金の面倒を見る途だけはつけておくというような程度で大体目的を達するように考えまして、只今のところは大体そういう案で行きたいと考えております。
  163. 大山郁夫

    ○大山郁夫君 実は一般外交方針に関する質問についてお伺いしたかつたのですが、時間の関係でできなかつたのですが、併しかなり大切なことと思うので、極く簡単に私の質問の要旨を述べて、外務大臣の御答弁を願いたいと思うのであります。  実は一昨日の毎日新聞、ほかの新聞にもあつたかもしれませんが、毎日新聞を見ていると、「共産圏渡航、大幅に緩和」といつたような表題での記事があるが、それは法務省或いは外務省の事務当局の方面で、今の旅券法を新たに改訂しよう、その中へこういう項目を入れよう、その項目が並べられておるのであります。それを読むと、将来共産圏の国々との経済交流、文化交流に関係した人たちの渡航の問題にも非常に関係するのだが渡航が大幅に緩和すると書いてあるが、私たち読んでみると、緩和よりむしろ逆だと見ているのです。その点から非常に大きな問題となるのではないかと思われるのです。それから渡航といつた基本的人権は、民主主義において非常に重要視されている、殊にあの世界人権宣言においても渡航の自由ということは基本的人権というか、基本的自由、そういうような立場から非常に貴重な性質が強調されておる、こういうことにも関係して日本の民主主義の前途の上からいつても、これは大きな問題となるべきものであると考えられるのでありますが、外務及び法務の事務当局の考えておることは、今の旅券法を変えて、その中にこういうふうな項目を加えようとしている。新聞を読みますと、一が、「文化、芸術、貿易の交流を目的として共産圏への渡航を希望するものには審査のうえ原則として一般旅券を下付する。」第二は貿易業者に関係しておるのですが、貿易業者も従来において共産圏の国々と貿易をしておるような、そういうものには旅券を発行する。それから第三は文化とか芸術の方面のそういう人たちは、過去において相当業績を挙げておつて、そしてこれが世界的に紹介する価値のあるものであるということが明らかであるもの、こういうものに対しては旅券を発行する。第四は、その点が大事ではないか、「共産党員に対しては国会議員を除き旅券を下付しない。」非常にはつきり書いてあるのでございます。それから第五も漠然であつて、第五は、「その他政治活動を目的とするおそれのあるものには旅券を下付しない。」こういう項目を旅券法の中へ入れようとしているような計画があると言われておるのであります。これまではこういうことはなかつたので、これは明文で旅券を発行する場合を制限しようとしておるというような意味を持つておると我々考えられるのですが、それから民主主義の上から殊に問題となるのは、一体こういう人たちに旅券を発行する、こういう人たちに旅券を拒否するということは誰がきめるか、結局外務大臣がきめる、外務大臣の認定権というものを非常に大きくしておるのであるが、そして殊に最後の政治的活動を目的として渡航するような者には旅券を発行するかしないかということも外務大臣がきめるということになつておるんだが、この政治的目的なんというようなことも、解釈のしようによつて非常に無限の広範囲に亘る、殊に平和会議、あの国際的平和会議に出席しようとしておる者に対して旅券を拒否するというような権能までも外務大臣に与えることになりはしないかという、非常な大きな結果を生む条文であると思うのであります。それから又共産党員に対しては、国会議員を除いては、原則としてという言葉も書いてない、旅券を交付しないとはつきり書いてあるのでありますが、これはイデオロギーの問題で、外務大臣はこのイデオロギーの相違ということから、それは対外政策を決定するようなことをしないということを言われるんだが、この基本的人権の擁護に対しても、やはりこの点は非常に大事なんではないか、共産党員が例えばあの破防法に引つかかつたとか或いは刑法の上から犯罪者になつたとか、それから刑事特別法とか現在非常に悪法がたくさんあるが、まあ悪法とか悪法でないということは別問題としますが、そういう法律に引つかかつて、そういうものに交付しないというような生まやさしいものじやないのであつて、この議員のほかは共産党員というものは誰にも、如何なる場合にも旅券を交付しない、イデオロギーで非常に大きな差別待遇をしておる。こういうような規定を設けられるときに、恐らくジヤステイフイケーシヨンとして出されたのはアメリカにおいて最近反共的の立法が非常にたくさん出されておる。丁度太平洋戦争の直前ぐらいのときから非米活動委員会といいますか、コンミツシヨン・オン・アメリカン・アクテイビテイース、初めはあのテキサス州選出議員のダイスなんという者が委員長になつてそれが行われた。そのときからかなりアメリカでは非常に悪名を浴びていたわけでありますけれども、その後最近においてますますそれが激しくなつて来ておる。現在の副大統領のニクソン或いはムント、あの連中たちが反共的な立法を盛んに共同して出し或いは最近においてはマツカーランのやはり日本の破防法の手本となつたあの何といいますか、サツバーシヴ・アクテイビテイース・コントロール・アクト、こういうような立法となつたり或いは丁度最近の選挙前にあの共産党を非合法化するあの法律が出たのだが、そういうようなもののあとを追うたような法律であるけれども、併しこれはアメリカにおいて非常に評判が悪いのです。あの最近の共産党を非合法化する法律のときは、アメリカの言論界は挙つて反対しておる。ニユーヨーク・タイムズ、ニユーヨーク・ヘラルド・トリビユーン、こういうように大新聞は申すに及ばず、他の多くの新聞が反対しておつたのだし、それから又このイデオロギーによつて差別待遇をするという本当の張本人とも見られるマツカーシー、一時飛ぶ鳥を落す勢いを持つていました、朝日の昇るごとき勢いであつたが、最近において非常に批判されておる。殊にアメリカの大衆が選挙において批判しておる、マツカーシー自身はまだ任期が満了しておらなかつたので選挙に立たなかつたと思いますが、併しマツカーシーに私淑しておるような連中は殆んど枕を並べて落選しておるというようなことは、マツカーシズムというものがえらいアメリカで不評判になつておるかということを物語つておる。併しアメリカだけなら問題はないが、日本においてももうマツカランのサツバーシヴ・アクテイビテイース・コントロール・アクトによつて作られた日本の破防法に、日本の労働者、農民の大衆が揃つて反対した、あれがあの立法の上に影響を及ぼさなかつたということは日本の民主主義に大きな欠陥があるのだけれども日本の大衆は本当にどこへ行つてもあれに対する反対運動というものは……。
  164. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 大山委員に御注意申上げますが、大山委員質問時間を十分にお超しになつておるものでありまして、特別の御要求がありましたからそういうわけでお許ししたわけでありますから、どうぞ簡潔にお願いいたします。
  165. 大山郁夫

    ○大山郁夫君 それでは大体私の言うところはおわかりになつたことと思うのでありますが、これは非常に共産党員の立場から見ても重要な問題であるが、日本の民主主義の前途から見て非常に大きな問題だから、なおざりにできない、殊に今鳩山内閣は成立当時で、大衆は、どういうような手を打とうとしておるか、対外政策においてもそうである、基本的人権の擁護、民主主義的方面において何をしようとしておるかということを非常に今見守つておるときであるから、殊に注意して御答弁を願いたいのだが、それで私の御答弁を願いたいことは二つか三つかあります。  先ず第一にこういうような計画があるのかないのか、それは法務省及び外務省の事務当局だけがそういうようなことを考えておるので、そしてやがて重光外相に具申するというようなことが書いてあるが、その程度のものか、まだ外務省全体の問題となつておらないのか、外務省とか或いは法務省の指導部の問題となつておるのか、或いはなつておらないのか、併し若し事務当局のほうからこういう案を作つてそうして具申したら、それに対してどういう態度をとろうとしておいでになるのであるか、今更吉田内閣のあの悪い遺産を押付けて、そうして反動立法をもつと促進しようとするような、そんなことをするのはけしからん、日本の民主主義立場からけしからんといつて、そうしてそういうような案を作つた者を譴責するとか或いは解職するとかそういうような意思がおありなのか、そういうような点について……。
  166. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 旅券法の改正をやる気があるかないかというお話が第一点のようでございましたが、そういうことが前に審議されたことがあるそうでございますけれども、現内閣としてはまだそういうところまで行つておりません。そのときはどういう態度をとるかということにつきましては、今御質問にございますが、そのときの国内の態勢などをとくと検討しなければならんことだと思います。併しまだそこまでに行かんのでありますから、そのときの情勢をとくと検討して、方針としてはその態勢に逆転のないように進んで行きたいと、こう考えております。
  167. 大山郁夫

    ○大山郁夫君 逆転がないとはどういう意味か、多分民主主義に対して確固不動の方針をとつておられると思うのですが、その方針から生ずる必然的の傾向としては、この案に対してどういう態度をとられるか、この点はつきり……、そのくらいのことはわかると思うのでありますが
  168. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 無論民主主義の原則に従つて考慮することは当然のことでございます。
  169. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) この際委員長として一言申上げたいと思います。  付託の案件は極めて重要であつて、且つ緊急なものでありまするので、連日熱心な御審議を得たことを委員長として深く感謝いたします。なおまだ審議を重ねたい気特もございますが、今日これを許さない事情の下にございます。而して本件は前内閣時代に政府が全力を尽してなしたところであり、且つ重光新外相は極めて公明なる態度を以て、これを貴重なる遺産と思うということを申されました。これは条約協定の内容は勿論、形式においても大体よく整つておる、少くとも欠陥を持たないものと認められたことと存じまするが故に、これを信頼いたしまして、質疑に関しましてはこれで打切りをいたしたいと存じますが、御異議はございませんか。
  170. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 御異議がないものと認め、これより討論に入ります。御意見のおありのかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。
  171. 小滝彬

    ○小滝彬君 ビルマとの平和条約並びにビルマとの賠償経済協力に関する協定批准について承認を与えることに自由党を代表いたしましてこれに賛成するものであります。  この両条約交渉は、前内閣時代において岡崎前外務大臣以下外務省の諸君が非常な努力をせられまして、その賜物としてでき上つたものであるばかりでなく、特に私はここで強調いたしたいのは、ビルマ側のウー・チヨン・ニエン外相代理が非常なステーツマンシツプを発揮せられて、この妥結に至つたということに対しまして、私は深くウー・チヨン・ニエン外相に対して敬意を表するものであります。勿論この条約の内容につきましては、質疑を通じて忖度いたしましても、いろいろ御議論の余地もあろうかとは存じまするけれども、大局的な見地から見まして、この条約ができるということは日本にとつて外務大臣のお言葉を借りまするなら、一歩前進或いは乃至二歩前進の実績を挙げたものでありまするから、我々はこれを承認いたしまして、この両条約が実施せられて、その基礎において日本ビルマ両国間の親善関係がますます増進し、そうしてこの両条約両国相互のために有利なものとなるように今後両国関係発展することをこいねがつてやまないと同時に、これを契機といたしまして、折角御就任なられました重光大臣指導の下に、フイリピン及びインドネシアとの間にもこれ以上に立派な条約が成立せられるよう今後御努力あらんことを期待いたしてやまない次第でございます。なお又、この両条約を見ますると、大体ここにきめられたことは原則的な問題でありまして、例えば通商航海に関してもいろいろの事情があつて平和条約にあるような暫定的な規定すらもできなかつたということでありまして、今後是非とも外務当局の御努力によつて通商航海条約も作つてもらわなければならないし、又その次の条に掲げてある漁業協定というようなものも必要によつては作られなければならない。高橋委員が指摘されるような文化協定というようなものも進められなければならない。いろいろ今後なされることは多いわけであります。且つ又経済の協力につきましても、双方の政府間での合意によつてやるということが書いてあるし、又合同委員会を作るというような条項もありまするから、これが円満に推進できますように、政府の最善の努力を強く要望いたしましてこれに賛成するものであります。殊に岡田委員が指摘せられましたように、この取扱に当りましては、現下の日本経済情勢から考えまして、業者間に或いは不当競争というようなことが行われる余地もあるやに考えられまするから、この辺の点についても十分すでに審議は重ねられておるようでありますが、今後一層こうした面にも努力せられて、そうして内面的指導とかいうようなお言葉を使つておられましたが、とにかく十分なる行政指導の行われることを期待してやまないのであります。  以上を以ちまして私は只今申上げましたような要望を付してこれに賛成するものでございます。
  172. 高橋道男

    ○高橋道男君 私は上程されておりまするこの条約並びに協定承認を与えることに賛成するものでございます。  ビルマ連邦が長年の茨の道を辿つて先年独立の宿望を果され、現在新興の意気に燃えておられることに対して、まず祝意を表するものであります。  而して、ビルマ連財は我が国の大戦後における独立を認めるべきサンフランシスコ平和条約には参加されませんでしたけれども、そのサンフランシスコ条約会議に参加をして調印をされたフイリピン或いはインドネシアに先立つて我が国との戦争終結の宣言をいたし、更に今回この条約協定の成立を見るに至りましたことにつきましては、同国の当局者に対し又同民族に対して謝意を表するものでございます。  それから今回のこの条約及び協定の実施されることになるにつきましては、質疑段階においても明瞭になつておりまする通り、平和の回復は結構でございまするけれども、この条約中心をなしておりまする賠償ということにつきましては、我が国の現状を以てしては非常に困難な段階を経なければならんと思うのでございます。戦争中の被害或いは苦難の代償として今回の賠償が与えられる点につきまして、ビルマ側から見れば無論過少であるかも知れませんけれども、敗残の廃墟から起ち上つた我が国我が国民の負うものとしては非常に大きいものであるということを私は正直に告白していいと思うのでありまするけれども、これは我が国が平和の道を世界と共に歩むという意味におきまして当然辿らなければならん我が国としてのこれは一つの茨の道であるかも知れませんが賠償を果すということによつて平和をかち得るのでありまするから、又平常の国交回復を得るのでありまするから、我我はこれを天命として、更に申し添えることは、或いはこの賠償額は非常に大きいかも知れないけれども、併し今回のこういうことがなければ、ビルマ経済協力をし且つビルマ国内において我が国経済力を進展せしめ得ない。この意味においては我が国の国力を海外に発展せしめる好個の機会を与えられておるというようなことにも考えられまするので、こういう面を十全に活かして、この今回の条約協定との精神を正しく活かして、これらの道を新らしく、強く進むことを私は願望する次第でございます。  その他の点につきましてはおおむね小滝委員が申されましたと同様の意味におきまして私も賛成をいたすのでございまするが、どうか外務当局におかれましても、新大臣が申される通り、これを貴重なる遺産として、十全にこれを活用して行かれ、更にその他の未締結国との条約締結もこれに従つて促進されることを念願して私の討論を終る次第であります。
  173. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は社会党第四控室を代表して只今上程された両案に賛成するものであります。この不幸な戦争のあと長く国交が鎖されておつた国々との国交回復は当然望ましいことでありまして、我々の心からなる賛成をするところであります。又若しこれが軍事同盟的な性格の協定とか条約であるならば、これは問題でありますが、ただ単純に鎖されておる国交を回復するということが本条約の目的であり、その内容でありまするので、我々としてはこれに何らの異議を挾む余地はありません。当然望ましいこととして全幅の賛意を表する次第であります。従つて又この機会中国ソ連等を初めとする国交未回復国との国交回復促進が速かになされることを又心より願つてやまないものであります。更に賠償協定或いは経済協定につきましては、金額等についてはそれぞれの議論があるかと思いますが、先はども小滝委員も申されましたように、ウー・チヨー・ニエン外相代理が来られて長い機関に亘つて双方の検討を通じて合議をされた金額でありますので、又これおおむね妥当なるものと考えられるわけであります。その意味でこの協定にも勿論賛成をいたします。ただその実施につきましては、これ又小滝委員が指摘されたごとく、その実施上の具体的な問題につきましては、それぞれのケースでそれぞれの問題があると思います。併しそれは外務当局が熱意と努力を持つて遺漏のないように、この協定の精神が活かされるように御配慮あることを希望いたします。なお又一つ先ほど来議論になりましたように、この賠償協定は単にビルマだけではないのでありまして、あとに幾多の国を控えているわけであります。従つて我が国の国力並びにその支払能力等から勘案いたしますならば、必ずしも問題なしとはいたしません。従つてそれらの総合的な面をも勘案して、今後の賠償支払等につきましては万全の処置をとられることを希望するわけであります。その他なお特に申すなれば問題は多くあると思いますけれども、おおむね小滝委員の申されたことに尽きていると思いますので、以上申上げまして社会党の本案賛成の理由といたします。
  174. 曾禰益

    曾祢益君 私は社会党第二控室を代表いたしましてこのビルマとの平和条約に対して批准を与える件とビルマとの賠償並びに経済協力協定に対して承認を与える件に対しまして賛成の意を表明したいと存じます。  賛成の第一の理由は、今更申上げるまでもなく日本が真に自主独立の国といたしまして、更には経済自立を完成いたしますためには、国交未回復国、殊に東南アジアの新らしい独立国との間に政治的にも国交を回復し、経済的にも経済協力の実を挙げることが極めて肝要であることと存ずるのであります。従いましてこれらの点に関しまして国会の意思を代表して、今日までいろいろな政府が努力して来られたと思うのでありますが、その難問題である東南アジア調印国或いは未批准国殊に賠償問題を先駈として、このたびこのビルマとの間に平和条約並びに賠償問題の解決を見たことは極めて慶賀すべきことであるからでございます。  第二の賛成の理由は、只今羽生委員から或いは小滝委員からも申されたが、このたびのこの協定ができまして、この条約ができましたことにつきましては、確かにビルマ国の特殊な事情ということが大きく作用していると思うのであります。なかんずくウー・チヨー・ニエン工業大臣の非常なステーツマンシツプの発揮があつたと思います。のみならずこのことはビルマ国の特殊な性格にも関連することでありまして、これらの難問題殊に賠償問題の求償国といたしましては、真に安定した政権なくてはステーツマンシツプの発揮のしようがなかつたのではないかと思うのであります。ビルマにおいては幸いにして安定した而も極めて民主的復興の意気に燃え、而も働く大衆のためになる新らしい民主的な社会主義の実現を企図しているという国柄であるので、このことが又積り積りまして、この難問題解決のために非常に大きな役割を演じたことは、これは当然のことと存じます。而して私たちが国民に対して、この乏しいところを分つてこの重大な負担をやつて頂くに当りまして、やはり賠償を受ける国の国柄而して我々のこの血と汗の結晶であるものが如何に使われるかということは、これは極めて大きなことと存ずるのであります。又このビルマに対しましてその社会福祉計画に寄与し、そうしてビルマが西ヨーロツパの植民地主義に対してはこれに敢然と闘い、英連邦からも敢然としてはつきりと離脱し、而も更に赤色共産主義国に対しましても敢然とそのみずからの社会秩序を守つた立派な民主的な行き方をしているこのビルマに対しまして、我々が和親を求め、政治的にも経済的にも協力し得るという自信を持ちまして、私たちはこの大きな負担に対して十分に国民に対してこれを忍んで頂くことをお勧めする気持になるのでございます。かような二つの理由によりまして、私どもはこの平和条約並びに賠償及び経済協力協定に特に賛成する理由といたしたいと存ずるのでございます。  最後に審議の際に多くの同僚委員諸君からもそれぞれ御発言がありましたごとく、本来ならばこの問題は日本賠償負担能力と申しまするか、否日本の国力上どの部分を賠償に充て、どの部分を他の外債支払に充てるべきかという問題、更に一層根本的な問題としては、日本の極めて乏しいこの財政の能力を如何に民生に、如何に防衛に、如何に賠償等に充てるかということ、これらの基本的な問題に対するはつきりとした見通しなくして実はこの問題を処理することは軽卒の譏りを私は免れないと思います。併しながら今日さような理由を以てこの賠償問題を躊躇することは、これ又我々のとらざるところであります。従いましてこれらの点については国会においても十分に責任感じなければなりませんが、なかんずくこの問題を処理する当面の責任者であります現在の政府におかれましても、十分なるその責任を自覚され、そうして少なくとも来るべき休会明けの国会には、それらのものを十分勘案されたところの予算の骨格等を示し、以て賠償問題と日本の国政運営、日本と他のアメリカ等との関係をどうするか、更には外交上の一つの大きな問題である東南アジアの開発という世界的に大きな、世界の平和に寄与し同時に日本経済自立に大きくプラスする問題とこの賠償問題を如何に結び付けて考えるか、これらの問題に対する政府の所信のほどを明瞭にお示しあらんことを特に希望いたしまして、右希望条件を付しましてこの条約協定に対する賛成討論といたします。
  175. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 本案は我が国の対外関係の打開上極めて重要な意義を持つものでありますが、その内容においておおむね妥当と認めまするので、この条約交渉に当られた前内閣及びビルマ政府当局の御努力に対して敬意を表しまして、民主党を代表して賛成いたします。
  176. 大山郁夫

    ○大山郁夫君 私はこの賠償協定にはもう腹蔵なく賛意を表するものでありまするが、平和条約関係してはまだ私の疑義がすつかり解けないので、むしろ平和条約の内容ということもございますし、それに対して私が如何なる態度をとつていいかというその決定に実は迷つているところなんで、私は非常に複雑な気持を以てこの協定条約に対しておるわけなのであります。一体この協定並びに条約に対するさまざまの態度がありますが、皆歴史的の産物なのであります。殊に私の場合は、第一次世界対戦以後の歴史的の自分たちがとつて来た態度の結果であるという、又私と同じような考えを以てこの二つの文書に対しておる人々も非常に数が多いので、それで私の気持ちよつと一言だけさせて頂きたい。それは決して無意義じやないと私は考えるのであります。  私たちはこの賠償の問題に対して異議があるはずはないので、私たちは第一次世界対戦後長い間帝国主義戦争反対、政治的自由獲得というような、アジア諸国の独立というようなことでいろいろ闘つて拳りました。そしてあの第一次世界大戦だけは是が非でもこれを防止したいといろいろな努力をいたしておつたわけでありますが、到頭失敗いたしました。若しあの第二次世界大戦防止に成功していればこんな問題も起らなかつたのに、この問題が起るときに私はこの過去の失敗を見て常に慙愧に堪えない。何とも言えない。失敗したということは決して自慢になるどころではなく、私たちのあの第二次世界大戦を防止する努力が到頭水泡に帰したということに対しては非常に慙愧の念を禁じ得ないので、そうしてあの第二次大戦が起つた結果としてビルマは非常な大きな苦痛を受けた。日本の軍隊の蹂躙に曝されて何とも言えない苦痛を受けたので、この賠償協定並びに条約を見るというと、この賠償というのは日本軍がビルマ国民に与えた苦痛と損失に対して行われるといういうに書いてあると理解しております。損失のほうは計算ができるかも知れませんけれども、苦痛のほうは到底その計算ができないものではないかと……。だが併し、日本の負担能力もあり、又今後他の国々と賠償問題を解決しなくてはならないような地位にあるわけだから、いろいろな制限があります。この十年間に二億ドルの賠償をしてビルマ国民の気が済むわけでもありますまいが、それで納得してくれるというようなことがあつたならば実にもう望外の仕合せであるということが言えるのでありますが、併し私たちは、今申しましたようにその苦痛というものは決して金で買えるものではないのであるからして、どうしてもビルマに対して再びああいうような苦痛と損失を与えないような保証を与え或いは保証を与えるに等しいような状態を作るということが必要じやないか。そういうことからして私は日本の再軍備に要る費用というようなものをそつちに廻すというようなことも考えたのでありますが、併しこれは別問題でありまして、やはり再軍備は再軍備として考えて取扱いたい。併しともかくビルマの人々の苦痛が到底金で報いられないというようなことを強く考えられたのは、やはり昨年のあのビキニの水爆実験の時からなんで、あれから賠償問題が起りました。賠償ということは非常に大事である。我々はできるだけたくさんの賠償を被害者に与えるように努力しなければならないのだが、併しアメリカが何千億の金を積んだところで、日本人が受けた苦痛というものは決して慰められるものじやない。あの問題に関しては私たちは賠償問題も大事だが、賠償以上に大事なのは、水爆実験の禁止だと、こういうふうに考えるのと同じで、ただ被害者が違うだけで、問題は同じ点にあると思います。ともかくあの賠償額をビルマの人たちが受けてくれて、今後日本ビルマとが友好関係に入つて行くことができるならば、これ以上の仕合せはないので、その賠償協定に対しては文句はありませんし、もう絶対の賛意を表するものであります。  平和条約のほうにおいてもそうなので、平和関係を結ばなければ賠償ができない。平和条約条件になるから、賠償協定に対してそれほど賛成しておるならば、平和条約にもすぐに賛成していいのじやないかというようなことも言われると思うのであります。殊にビルマは御存じの通りアジアの問題に対しては我々と同じような考えを持つておるのであります。中国を早くから承認しておるのであります。サンフランシスコのあの講和会議に対してとつ態度も我々にちやんと腑に落ちる。それから最近周恩来総理ビルマのウー・ヌー首相とはあの共同宣言を発して、平和五原則というものをはつきり認めておる。平和五原則こそは今後アジアの諸国民世界の平和のために尽す行動、政策というものを決定する非常に重大な問題であると思います。ビルマは賛成どころが周恩来と一緒に共同声明を出して平和五原則を認めておるのであります。又我々が今後アジアの問題として非常に重視しておるあのSEATOに対しては、ビルマが入つておらない。こういうような国と友好関係に入るということは本当に我々は仕合せで、そうして世界平和を非常に念願しておる者から言つたならば、もうすぐに飛びついても手を握らなければならない。そういう意味で、そうして平和条約というものが賠償協定の実施の条件となつておるものと見るときに、そういうようなときに、我々は勿論もう本当に百パーセントそれに賛成しなければならない、そういう気持も私に湧いておるのでありますが、ただ一つ、私たちはサンフランシスコ条約の結ばれたときに、あの講和条約と、それから日米安全保障条約に対しては青色を投じたのであります。ところが今度のこの平和条約というものが相当にあのサンフランシスコ条約と関連した意味を持つておるので、それでこの条約に無条件に賛成するということは、平和条約、それから日米安全保障条約を否定した我々の態度矛盾するようなことがあるのじやないか。併しだんだん考えてみると、積極的に矛盾するようなことはないと思います。それから又将来中国の問題とか、或いは朝鮮の問題、それから極東の問題、全アジアの問題に関する我々の発言、或いは行動がそれによつて積極的に直接に制肘せられるということがないということは、それは確信しておるのであるけれども、併しともかくも私はこの平和条約をもつと研究して、そういう点をはつきりさせようとしたが、併し審議期間が非常に短かくて、私は十分の質疑をすることができなかつたわけで、今まだ私の疑義をすつかり解くまでに至らない。併し賠償協定にそれほどの賛意を表しておるならば、そういうような問題は政治的に取扱つて、こういうことを乗り越えてというようなこともあるのでありますが、併し私はむしろ棄権するのが本当じやないか。自分が棄権したところで平和条約が成り立たないというようなことはないのだから、それで自分の疑義がまだすつかり解けておらないというその点を表明するために一つの手段として棄権したい。平和条約のほうに関しては棄権したいと、こういうふうに考えております。そこで一括して議題に供せられることは非常にむずかしい問題になるので、どうしていいかわからないのですが、併し別々に取扱つて下さるならばそういうふうなこと……。私は平和条約に反対しているのではないが、平和条約に対して如何なる態度をとるべきかということに対して迷つている、そういうような状態で、非常に複雑な気持ちですから、そういうふうに御了解願います。
  177. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) よくわかりました。他に御発言ございませんか。他に御発言がないようでございますが、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。
  178. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 御異議ないものと認めます。  案件を二つに分けて採決をいたしたいと思います。これより採決に入ります。  日本国ビルマ連邦との間の平和条約批准について承認を求めるの件を原案通り承認することに賛成のかたの御挙手を願います。
  179. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 全会一致であります。  よつて本件は原案通り承認すべきものと決定いたしました。   ―――――――――――――
  180. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 次に日本国ビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定締結について承認を求めるの件を採決いたします。本件を原案通り承認することに賛成のかたの御挙手を願います。
  181. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 全会一致であります。よつて本件は原案通り承認すべきものと決定いたしました。  なお本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四条によつてあらかじめ多数意見者の承認を経なければならないことになつております。  本委員会において、付託せられた案件のほかに、いろいろ外交方針等に関してすこぶる重要且つ熱心なる御審議を重ねたことは、時局柄現下の外務関係のことが国内的にも又国際的にも極めて重大にして且つ微妙な勢情にある関係上極めて当然のことであつたと存じますが、委員長は主としてこの報告において、本委員会に付託せられたる両件の内容並びに委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することといたしたいと存じます。御承認を頂くことができましようか。
  182. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 御異議ないものと認めます。  それから本院規則第七十二条によりまして委員長が議院に提出する報告書には多数意見者の署名を附することになつておりますから、二件を承認せられたるかたは順次御署名を頂きます。   多数意見者署名    〔日本国ビルマ連邦との間の平和条約批准について承認を求めるの件〕     佐藤 尚武  高橋 道男     羽生 三七  岡田 宗司     曾祢  益  佐多 忠隆     岡田 信次  大谷 贇雄     川村 松助  重宗 雄三     小滝  彬  杉原 荒太    〔日本国ビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定締結について承認を求めるの件〕     大山 郁夫  杉原 荒太     小滝  彬  重宗 雄三     川村 松助  大谷 贇雄     岡田 信次  曾祢  益     佐多 忠隆  岡田 宗司     羽生 三七  高橋 道男     佐藤 尚武
  183. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 御署名漏れはございませんか……。御署名漏れないものと認めます。  連日誠に有難う存じました。きつちり六時に終りましたことを感謝いたします。  本日はこれを以て散会いたします。    午後五時五十七分散会