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説明員(中川融君)
日本国と
ビルマ連邦との間の
平和条約につきまして簡単に御
説明申上げます。
日本国と
ビルマ連邦間の
平和条約締結の経緯につきましては、先ほど
外務大臣から
提案理由の御
説明のありましたところに尽きておりますので省略いたしまして、条文について御
説明申上げます。
この
平和条約は、大きく申しまして
日本とインドとの間に
締結されました
平和条約の大体そのままの形を踏襲しております。併しながら、御
承知のように、インドとの間におきましては、
賠償ということがなか
つたために、
賠償に関する条項は新たに、大体
サンフランシスコ平和条約十四条の型に則りまして、この
条約に挿入してあるのであります。爾余の条項はおおむね
日印平和条約の形に則
つております。
前文は大体これはインドとの
平和条約と同様でございます。
第一条はこの
平和条約の根本の思想を簡単に言
つておるのであります。要するに
日本と
ビルマとの間に、永久の平和があるということの精神を謳
つておるのであります。これもインドとの
平和条約にそのままの形のがございます。
その次は戦前
条約の復活に関する規定でございますが、これもインドとの間の
条約にもございますし、なお
サンフランシスコ条約第七条と同じような規定でございます。要するに
ビルマは
日本と
ビルマとの戦前ある
条約の中で復活を
希望するものを、
日本国に通告することによ
つてこれが復活する、こういう規定でございます。現実には
日本と
ビルマとの間に戦前に適用されております
条約というものは極めて少いのでありまして、恐らく曾
つて日本とイギリスとの間に、船舶積量に関する
協定というものがございました。これが
ビルマにも適用されておりましたが、この
日本とイギリスとの間の船舶積量に関する
協定という
条約が復活に該当する
条約の例であろう、それ以外には
ちよつと見当らないのでございます。
次の第三条は通商
条約、通商航海
条約を速かに
締結するように
交渉を開始するという規定でございます。これも
日本とインドとの
条約にその原形があるのであります。インドとの
条約と違いますことは、暫定的に
締結ができるまで最恵国の契約を相互にするという規定がこれに入
つておりません。これは
ビルマとの
交渉の
一つの難点、困難のありました点でありましたが、
ビルマ側は末だ曾
つて如何なる国とも最恵国待遇を含む
条約を
締結していないということで、いわば敵国
関係であ
つた日本との間に最初にそういう条項を入れた
条約を
締結するということは、国内感情から見ても困難である、併し現実には
ビルマは
日本のガツト加盟ということについて
承認を与えております。現実にはこのガツトの
関係からも、最恵国待遇ができるようになる。
従つて二国間の
条約においてそれをはつきり謳うのはやめたいという非常に強い
希望でありましたので、実質的にはこれがないことによ
つて支障はないものと認めまして、その点の規定がこれにはないのでございます。
次の第四条でございますが、これは公海における漁猟の
協定というものを速かに
締結するということの規定でございました。これもインドとの
条約にその例があるようでございます。
第五条は、これはインドとの
条約に例のない、いわゆる
賠償に関する規定でございます。大体
サンフランシスコ条約十四条の形に則
つておりますが、併し違いますところは、
サンフランシスコ条約は要するに
賠償というものの原則だけきめまして、内容については何ら規定はないのであります。これには内容を規定しておるのでありまして、その
賠償として払うものはこれは十年間に二億米ドルに相当するものを払う。
従つて年平均は二千万米ドルということになるのでございます。なお規定の形式といたしましては、米ドルと共に、それに等しい円貨をも同じくここに記載してございます。なお
賠償のほかに、
経済協力という項目があります。
経済協力といたしまして、
年平均五百万米ドル、十年間通計いたしまして五千万米ドルに相当するものを
経済協力として
ビルマに提供するようにあらゆる可能な
措置を
政府がとるということを約束しておるのでございます。なお、その次にほかの
賠償請求国との
関連を書いてあるのでございまして、ほかの
賠償請求国に対する最終的
解決があ
つた場合には、
日本は
ビルマの公正且つ衡平な待遇に対する要求といるものを再検討するということがここに規定してあるのでございます。その次の(b)というところは、大きく言いまして
サンフランシスコ条約十四条の(a)の二項というものに相当するのでありまして、在
ビルマ日本財産を没収するといることに関する規定でございます。その次の第五条の第二項でございますが、これは
ビルマが、それ以外の対日
戦争請求権を放棄するということを謳
つておるのでございまして、
サンフランシスコ条約の規定の趣旨にこれも則
つたものであります。
次に第六条であります。これは
日本にある
ビルマ財産の返還及び補償に関する規定でありまして、これも
サンフランシスコ条約及び
日本インド間の
平和条約にそれぞれこれに相当する規定があるのでございます。
第七条は
戦争と戦前債務との
関係について規定しておるのでありまして、
戦争状態の介在が戦前の債務等に支障を及ぼさない、影響を及ぼさないという規定でございまして、これもインドとの間の
平和条約及び
サンフランシスコ条約にそれぞれ似た規定があるわけでございます。
第八条は
我が国の対
ビルマ請求権の放棄という規定でございます。これもインドとの
条約、
サンフランシスコ平和条約にそれぞれ同じ趣旨の規定がございます。
第九条は紛争の
解決でありますが、これは紛争については先ず
外交交渉によ
つて解決する。それで片付かないものは
国際司法裁判所に付託するということにな
つておりまして、インドの場合には
国際司法裁判所に付託する規定にはな
つておりませんで、これは
両国の定めるところによ
つて仲裁に付することにな
つておりまして、若干差異がございます。
第十条は
批准に関する規定でございます。
引続きまして
日本国と
ビルマ連邦との間の
賠償及び経済協力に関する
協定につきまして簡単に御
説明申上げます。これは今の
平和条約の第五条に規定しております
賠償並びに
経済協力細目
協定を作るということが書いてあるのでありますが、その細目
協定として
締結いたしましたのがこの
協定でございます。
この第一条は、結局
平和条約第五条に謳
つてあります
賠償の原則、金額というものをそのまま第一項、第二項に、
賠償及び経済協力についてそのまま規定してございます。
第三項は新らしい規定でございまして、これらの
賠償及び経済協力は
ビルマの
経済の
回復及び発展並びに社会福祉の
増進のために供与されるものである。而うしてその項目においては、付属書に掲げたところのものに使うということが規定してあるのでございます。付属書につきましてはあとで御覧願いたいと思いますが、十九項目ほど掲げてございまして、いずれも
ビルマの
経済回復並びに社会福祉の
増進に供与する項目が掲げてあるのでございます。
その次の第二条は、これはこの
賠償及び経済協力の
実施に
関連いたしまして、
ビルマ側でするべき義務が書いてあるのでございまして、この第二項におきましては、現地の労務、資材及び設備は
ビルマ側が提供するということが規定してございます。第三項には合弁事業に当りましては、
ビルマ側が、その
ビルマ側の
負担分を提供しなければならない、当然のことでございますが、そのことが規定してございます。第四項には
賠償として
ビルマに渡されました
生産物を
ビルマが他の第三国にそのまま再輸出してはいけないということが規定してあるのでございます。これは
我が国と第三国との正常貿易を阻害することがないようにということの注意のための規定でございます。
第三条は
経済協力として行われます共同事業、或いは合弁事業と申しますか、この共同事業に関する基本的な事柄が規定してあるのでありまして、一項によりまして、共同事業におきます双方の持分は
日本側が四割、
ビルマ側が六割という原則が書いてあるのでございまして、これは
ビルマの憲法に、
外国と合弁事業する際には、少くとも六割は
ビルマ国民が資本を持たなければいけないという規定があるのでございまして、そのことから原則としてこういうことにするということを書いたわけでございます。第二項及び第三項は、これら合弁事業を
ビルマ政府が強制収用するに当りましてのことを規定しておるのでございます。一定期間は強制収用しない、又その一定期間が過ぎたのちに強制収用する場合には、その
条件はあらかじめ契約においてきめておかなければいけない、かようなことが規定してあります。第四項は同じく合弁事業から生じますいろいろな
日本側の本国へ送付すべき利益等が出るわけでございますが、それらの
日本側の送金についての
条件は、やはり契約にはつきり書いておかなければいけないという規定でございます。
第四条は、
賠償及びこの
経済協力に
関連いたしまして
両国間におこるいろいろな事案を円滑に協議するための合同
委員会を設置するということが規定されております。
第五条は、細目に関することは別に
両国政府間において協議されるという規定でございます。
第六条は、紛争の
解決でございまして、先ず紛争は
外交上の径路によ
つて解決する。なおそれを
解決し得ない場合には、三人から成る仲裁
委員を設けて、これに裁決を依頼する。その
決定には
両国が従わなければならないという規定でございます。
第七条は
承認に関する規定でございまして、国内法によ
つてそれぞれ
両国が
承認したときから効力を生ずるという規定でございます。
なお付属書は先ほど申しました
通り、
賠償及び経済協力の項目が列記してございます。
更に交換公文というものがございますが、その交換公文によりまして、
経済協力によ
つて供与される年五百万米ドルに相当するもののうち、二百万米ドルに相当するものは、
日本から
ビルマ政府に供与される貸付の形によることができるという規定なのでございます。いわゆる労務に関する規定でございまして、その
条件は同じく同種の貸付における
国際復興開発銀行、いわゆる
世界銀行のきめます
条件を参考といたしまして、
両国政府において協議してきめるということを規定してあるのでございます。
以上簡単でございますが、両
条約、
協定の御
説明を申上げました。