○水田三喜男君 私は、
自由党を代表して、
政府に対し、財政金融の
方針並びに綱紀粛正の問題に関して
質問をなさんとするものであります。(
拍手)
質問の第一点は、本日わが党の
緒方総裁並びに河上委員長からも指摘された問題でありますが、国法の規定するところによ
つて、
政府は通常
国会に
予算案を
提出する
義務を負うておるのにかかわらず、何ゆえにこれを怠
つたのであるかについて、
大蔵大臣からあらためて明快な
答弁を承わりたいことであります。
鳩山総理は、
組閣の劈頭において少数与党の
組閣を僭越であるとして、非常に謙遜されましたことにつきましては敬意を表するものでありますが、しかしながら、たとい
国民の審判を経ていない少数者の
政府であるとしても、国法に規定するところに
従つて合法的に
成立した、りつぱな
日本国
政府であ
つて、その任務に関しては何らの謙遜をも要しないものであります。たとい社会党両派との話し合いによ
つて選挙を公明に執行するだけの任務を請け負
つて成立したものであるといたしても、それはあくまで私的な協定であり、国法の命ずる
義務を怠
つていいという
理由にはなりません。総
選挙によ
つて国民の審判を経なければならぬ事態に直面しておればおるだけ、むしろ
政府及び与党は、
国民の前に堂々と
予算案の全貌を示して、その信を問うべきであると存するのであります。現に、
鳩山総理は、
組閣直後の
予算委員会において、
予算案提出の
義務は果すと
言明されたのにかかわらず、ただいまの御
答弁によりますというと、
国会に審議期間がなかつたから
提出しなか
つたのだという御
答弁でありますが、
国会が審議するかしないかは
国会の問題でありまして、
政府が
提出する
義務を免れる
理由にはいささかもならぬだろうと存じます。(
拍手)
従つて、
大蔵大臣は、
予算を
提出しないという閣議の決定に対して、当時いかに対処せられたかについて承わりたいと存じます。
鳩山内閣は
選挙管理内閣であり、
従つて暫定
内閣であるということは、
国民周知の事実であります。
従つて、
内閣の
性格にかんがみて、この際
予算案の
提出を遠慮されたというのでもしあるとしたならば、
政府が
施政方針を
国会で
演説したことは明らかに誤
まりであります。(
拍手)現に、今回の
施政方針に関しまして、野党の各党は、まじめな
質問を試みようとしても、
質問の仕方がなくて困り抜いていることは事実であります。たとえば、四十二万戸の住宅を一年間で作り上げると
大蔵大臣は
言明されました。これはすでに
自由党の
政策でもあり、私どもは大賛成であります。しかしながら、四十二万戸の住宅を建設するためには一千数百億円の資金を必要とするものであ
つて、財政投融資に依存するものだけでも、
おそらくは六百億円をこえることと思われるのでありますが、その資金を捻出するためには、他のいかなる部分を削減しようとするのであるか、その全貌はほとんど示されておりません。(
拍手)数字を一切示さずにおいて、ただ減税は行う、
予算のワクは変えない、財政投融資のワクもふやさない、しかしながらこういう
政策は必ず実施するとい
つて資金の拡張、拡大強化という字を使つた二十数項目の項目を盛りだくさんに発表するというごときは、明らかに無
責任なる
放言と言わなければならぬとわれわれは考えます。(
拍手)それでは、
選挙を公明に執行する管理
内閣ではなくて明らかに
選挙運動
内閣であり、しかも国法の命ずる
義務を怠
つて省みない知能犯
内閣であるとすら私どもは思うのでありますが、(
拍手)
大蔵大臣の
所信を承わりたいと存じます。
質問の第二点は、財政と金融
政策の
あり方についてであります。御
承知のように、戦後の
日本経済を今日の
程度まで立て直しましたことは、国の
内外における真剣な努力によることは言うまでもありませんが、生産の拡大による
国民生活の繁栄を求めるためには、何としても
日本経済の基盤を固めることが先決の問題でありまして、そのために、インフレを押えようとするデフレ
政策が
政府施策の
基調とならざるを得なか
つたのでありますが、正常でない、異常な
日本経済の立て直し策であつただけに、副作用も当然に現われて、
国民の各層に
政策のしわ寄せが見られましたことは現実の事実であります。ここにおいて、私どもは、いよいよ第二段階としての施策を
国民経済の正常化と産業規模の拡大に集中すべき時期に当面したと信ずるのでありますが、この点に関する
政府の
方針は、昨日はきわめて不明確でありました。
大蔵大臣が
演説されました財政金融に関する
基本方針は、果して
政府部内において十分に検討され、
統一されている
方針であるかどうか、疑わしいものを各所に包蔵しておりますので、以下数項目にわた
つて、
大蔵大臣、通産大、経済審議庁長官の御
答弁をわずらわしたいと存じます。
まず第一に、財政金融の正常化施策に一歩の前進をしようとするならば、従来の傾向であつた財政インフレ・金融デフレという
あり方をここで変更して、財政デフレ・金融インフレヘの傾向的転換をはかるべきであろうと私どもは考えております。
大蔵大臣は、日銀総裁の時代において、財政のしわを金融に持ち込まれることは迷惑であるとたびたび申しておられたのでありますが、今回の
予算編成の
方針におきましては、
大蔵大臣の従来のこの持論がほとんど消え去
つており、むしろ総花式なインフレ財政が依然として約束されているような感じを与えるのみでありまして具体的の抱負がどこにも現われておりません。財政金融
一体としてのデフレ
政策を今後まだ継続するのかしないのか、あるいはここらで一時ゆるめようとするのか、奥歯に物のはさまつた言い方でございまして、あの表現では
国民のだれにも了解はできません。
そこで、私は、むずかしい理論の応答はやめることにいたしまして率直にお聞きしたいと存じますことは、過日関西の経済人に対して
大蔵大臣が申されたそうでありますが、経済の地固めはようやく八合目あたりに来た、ここらでミルクを飲ませたい、飲ませてもいいということを申されたそうですが、そのお話のうちの、
一体ミルクとは果して何でありますか。昔から日銀蔵相に景気なしという言葉が伝えられておりますが、
日本銀行の総裁が
大蔵大臣にな
つて好景気に
なつた例はないというのが歴史的事実だそうでございます。(
拍手)これを少し
大蔵大臣が気にされて地固め
政策を中心としてのなだめ薬を与えるといつた意味でありますか、それとも、西ヨーロッパの好景気に
日本が追随できる受け入れ態勢をここらで作るという意味でございますか、この点が明確でありません。か
つて法王とまで言われた
大蔵大臣でございますから、まさかこのミルクが学童給食用の粉ミルクという
程度のものでごまかされようとは思いませんので、ます、ミルクとは何ぞやということの御説明を願えれば、
大蔵大臣の全
政策の全貌がわれわれに了解できるのではないかと思
つております。(
拍手)
質問の第三点は、減税・貯蓄を中心とする財政と金融の
あり方についての問題でございます。御
承知の通り、ドツジ
政策以来、私どもは、その年の国家の経費はその年の税金でまかなうという
方針を一貫して参りました。しかし、この
方針は正常でない
方針であ
つてそのために今日まで
日本の税金は不当に高くな
つているのであります。もし
国民の資本蓄積が推進されるとしたら、治山治水とか、あるいはその他の経済効果が長い将来に持続されるような事業は、その年の税収入のみで行うべきものではなくて公債の発行によ
つてまかなうことがむしろ本筋であろうと存じます。
従つてそれだけ減税を行な
つても国家が
予算の
編成に困難することはございません。
自由党は今回一兆円の貯蓄と一千億円の減税を
主張しているのでありますが、何のために一兆円の貯蓄を目途にするかと申しますと、日銀の
信用造出によらないで、公債とか金融債の発行を、すなわち財政投融資的な資金を、税金によらなくて
国民蓄積の中から求めようとする
構想を私どもは持
つているからであります。(
拍手)私どもは、
国民の税金によ
つて国家が金貸しをや
つているような仕事だけは、この辺でやめたいと考えております。(
拍手)金融債を発行してもインフレにならないといち経済基盤を早く作り上げて、財政の正常化を実現したい。そのためにこそ今日まで努力してきたと申しても差しつかえございません。御
承知のように、本年度の
国民貯蓄は六千億円になんなんとしておりますので、一兆円貯蓄の増加は、あと一息というところまで参
つております。
従つて、私どもは、ここでまず資本の蓄積を阻害する税金を思い切
つて減免したいと考えます。定期性の貯蓄をしてくれた者には基礎控除を行な
つて減税したいと考えております。もし三百億円の国税を犠牲にすれば一千億円の貯蓄の確保はできるだろうという計算を私どもはいたしております。もしこういろ減税
政策によ
つて国民貯蓄が増加するならば、そのうちの一定部分を金融債の消化等に充てさせるようなことは、そういう行政
措置をとるようなことは決して誤りではなかろうと私どもは考えております。
自由党は、以上のような
構想によ
つて、税金にたよらない財政投融資資金の調達を考えておりますからこそ、勤労所得者あるいは中小企業者の減税を中心として、一千億からむしろ一千二百億円くらいの減税を可能とすることができるのであります。(
拍手)ここで通産
大臣にお伺いしたいのでありますが、石橋通産
大臣は、就任早早、輸出入銀行債の発行その他の抱負をかなり勇ましく述べられたはずでありますが、
政府の
施政方針の中からはいつの間にか姿を消してしま
つたのはどういういきさつでありますか、伺いたいと存じます。石橋
政策というものは従来
日本の経済界から敬遠されておつたことは事実でありますが、それは、公債発行の主体的
条件が成熟していないときに公債発行論を述べたために、インフレ論者であるとして恐れられたのであろうと考えております。もし資本の蓄積が一定の水準に達して、その中から公債を消化できるとするならば、インフレーションは絶対に起らないはずであります。むしろそうすることが財政金融正常化への一歩であるはずであると、われわれは考えております。しかるに、
大蔵大臣の
施政方針には、この点に関する何らの新しい積極的
構想が見られないことは、非常に遺憾であります。何のために貯蓄を奨励するかの目的も、
予算の
方針の中には全く不明瞭にな
つております。
政府は五百億円の減税を申しておりますが、最も不景気と思われておる二十九年度においてさえ、すでに自然増収は三百億をこすと言われております。
従つて、
昭和三十年度において五百億円
程度の減税などは、これは問題になりません。むしろ減税ではなくして増税であるとすら考えられる数字であります。
従つて、私は、現
内閣において、この際、いい意味の石橋
構想、これを取り上げるくらいの勇気がなかつたら、事実上
予算の
編成は不可能であると考えます。五百億の減税も結局はうそにな
つてしま
つて、反対にそれだけの消費税を増徴して、
日本の物価を上げてしまうということが、せいぜい落ちではないかと懸念するものであります。(
拍手)
一体、なぜ通産
大臣は、
日本の主体的
条件の成熟を見て、ここらで当初の意向をもう少しがんばらなか
つたのでありますか。閣議で全面屈服をしてしま
つて、少し私どもはふがいなさ過ぎると思うのでありますが、この点について、
一つ石橋通産
大臣の明確な御所見を伺いたいと思います。
質問の第三点は、六カ年計画についてであります。
日本経済の自立を達成するためには、総合的、計画的施策を必要とすることは当然でありまして、私どもにおいても、経済審議庁において、十年後の見通し策定という方策を今日まで行な
つて参りました。ところが、今経済審議庁でわれわれが準備した十年後の見通しは、計画の前提となるべき基礎要因がきわめて不明確で、ことごとくが仮定に基いた立案であつたことは事実であります。しかも、拡大均衡のための特別施策を前提とした計画では絶対にございませんでした。
従つて、私どもは、この計画を正しいものとして
国民の前に発表する決意を持ちませんでした。そうして長い間審議しておりましたところが、今度
政府が
組閣するやいなや、二、三日のうちに、三、四日のうちに、この十年計画の数字を算術的に十分の六にみんな直して、そうしてこれを六カ年計画の自立と銘打
つて一枚看板にされた
態度は、何としても無
責任きわまるものと私どもは考えております。(
拍手)
一体、経済審議庁長官は、この計画の達成に何時間の討議の時間を費したのでありますか。果して、これを
国民の前に、国家の設計図として、希望を与える設計図として
提出する自信がございますかどうかについての所見は、ぜひとも伺いたいと存じます。しかも、前半の三年間は地固めの年であ
つて、後半の三年間は拡大均衡の年であると割り切つた説明をされておるのでありますが、何をも
つてそういう説明ができるかの根拠を十分にお伺いしたいと思います。理論的に、観念的に、経済の地固めと経済の拡大ということを区別することは、あるいはできるかもしれませんが、現実の産業
政策においてこれを区別することは全く不可能であると私どもは考えます。(
拍手)デフレ
政策を現に行いながらも、その反面において、電源を開発したり、新興産業の育成を行うなど、拡大への積極
政策を同時に行わなければならないとい、うところに
日本経済の苦しみがあることは、長官といえども十分御
承知のはずであります。(
拍手)
従つて、私ども
自由党は、最も可能と思われる前提の上に立
つて経済拡大に関する三年計画を準備したわけでありますが、これでも私どもはまだ長過ぎるとさえ思
つております。きわめて短かい期間、せいぜい二、三年の間に総合
政策を実施してしまうのでなければ、
日本経済は国際競争に破れてしまうではないかということを、私どもは真剣におそれております。
従つて、ごく短期間の非常立法まで行な
つて、総合
政策の実施を急ごうとするのが私どもの
態度でありましたが、経済審議庁長官は、かくのごとき悠長な、ずさんきわ
まりない、成り行きまかせの六カ年計画というようなものを、ここでいさぎよく撤回して、もつと短期の計画に立て直し、そうして施策を具体化して、短期の臨時
措置法というようなものによ
つてこれ一を断行するというごとき考えを持
つておられるかどうか、この点についても、あわせて
所信を承わりたいと存じます。(
拍手)
最後に、私は、非常に不本意ではございますが、綱紀粛正の問題につきまして御
質問をいたしたいと思います。(
拍手)昨日も、
総理大臣の
施政方針の
演説におきまして、
鳩山総理は特に声を大にして政界、官界の綱紀粛正を強調されました。しかるに、
鳩山内閣の今年度北洋漁業に関する許可問題をめぐりまして河野農林
大臣が業者の手によ
つて告発せられ、
鳩山内閣の一枚看板ともいうべき綱紀、官紀の粛正に反するごとき問題が新聞紙によ
つて報道されておりますことは非常に遺憾であります。(
拍手)
そもそも北洋のサケ、タラ漁業は国際的重要漁業でありまして、またその価値は往年においてさえ莫大な権益として取扱われていたことは世上周知の事実であります。敗戦後のわが水産業界におきましては、さらに往年に倍する収益でありまして、昨年の七船団の水揚げ総額は六十三億円に上
つて、この船団の許可の権利は莫大であるといわれております。
従つて、かくのごとき重大な国家の権益に属する許可については、まず第一に重要なことは、行政の公平性が確保されなければならないということであります。しかるに、今年度の船団許可に当りましては、農林
大臣は、水産事務当局が公平性を基礎とした
方針を堅持したにもかかわらず、か
つて農相が社長であつた日魯漁業会社に対して強引に四船団を許可するために、
選挙管理内閣の
性格を逸脱して、
事情に精通した水産庁長官を交迭せしめ、さらに最後まで公正な事務当局案をひつさげて農相に反省を促したといわれる生産部長をも異動する強硬手段を行な
つて、この許可をあえてした、こういうことを言われて、全水産庁をあぜんたらしめておることは事実であります。このことは、漁業法第六十五条による省令第三十号の第四条の不当集中の排除に関する規定に明らかに違反するばかりではなくて、行政の公平性を無視した取扱いであります。しかも、この四船団中の一船団は、出願のなか
つたのを、聞くところによれば、年末急速出願をなさしめて、これに許可を与えた。さらに驚くべきことは、船名さえまだきま
つておらず、未定のままのものに一船団を許可しておるといわれておりますが、これらのいずれもが日魯漁業傘下のものであると指摘されております。
ここにおいて、世上いろいろな疑惑の目が
鳩山内閣に向けられておることは、まことに看過できない重大なる綱紀問題であると私どもは考えておるのであります。(
拍手)
明朗政治を叫び、官紀粛正を一枚看板とせられておる
鳩山首相みずから率直にこの理非曲直を明らかにされんことを要求いたしまして、私の
質問を終ることにいたします。(
拍手)